説明

免疫ガンマ・グロブリンのウイルス限外濾過後の確固とした溶媒/洗剤の処理の最適な配置

【課題】 ウイルスを含んでいる血液製品の中のウイルスの不活性化の方法を提供する。
【解決手段】 本方法は、ウイルスを含んでいる血液製品を、ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および非イオン性の洗剤に接触させる処理を含み、血液製品タンパク質の収率が少なくとも90%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスの不活性化を達成するために、溶媒/洗剤の処理の使用により、例えば、免疫グロブリン等の、不安定なタンパク質を含む、血液タンパク質、血漿含有製品および血漿フラクション含有製品を含有している、血液、血液成分、血漿またはこれらの何らかのフラクション、濃縮物または誘導体を含む、血液製品および血液製品の組成物におけるウイルスの不活性化の分野に関連している。特に、使用されている溶媒はジ−(di-)およびトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)を含み、洗剤は、オキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenols)、特に、トリトン(Tritons)(登録商標)を含む、無水ソルビタール(sorbital anhydrides)の部分エステルを含む。これにより、上記の血液製品は、例えば、肝炎ウイルスおよびその他のウイルスの感染性等のような、外皮型ウイルス(enveloped viruses)を実質的に含まない状態になり、それゆえ、その血液製品および血液製品の組成物は精製される。
【背景技術】
【0002】
上記のような溶媒/洗剤の処理は血漿製品の中の外皮型ウイルスを不活性化するために20年近くにわたり用いられており、この処理はウイルスの不活性化の方法であり続けており、この方法により、別の新規な方法が比較されている。1.0%の洗剤および0.3%のトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)(TNBP)の溶媒の濃度はウイルスの活性の確固とした除去のために必要であると考えられていた。このような溶媒/洗剤の処理は、一般に、その処理の比較的に後期に、すなわち、不純物が減少して、その製品がたいていの場合に比較的に十分に限定されて、比較的に高い純度および減少された量で効能を有するようになる時に、あるいは、少なくとも1回の確固としたウイルスの除去工程によりウイルスの負荷が減少されるか減らされる(すなわち、外皮型のウイルスにおいて対数4以上であり、非外皮型のウイルス(non-enveloped viruses)において対数3以上である対数の除去を生じる)場合に、おけるよりも、その処理の初期において(すなわち、原料が比較的に低い純度および効能を有している結果として、処理の量が比較的に多く、製品が比較的に十分に限定されていない場合に)達成される場合に、その処理を行なうために多量の薬品を必要とし、長い時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、著しく低下されている濃度の溶媒および洗剤の使用を可能にしている、例えば、免疫ガンマ・グロブリン製剤等のような、血液製品または血液製品の組成物の分別およびナノフィルトレーションまたはサイズ排除濾過の後における溶媒/洗剤の処理の有効性、を開示している。本発明は、さらに、精製されたタンパク質の系の中においてサイズ排除濾過の後に用いられると、最近の20年間において訓練された分別者および専門家により使用されている溶媒/洗剤のウイルスの不活性化の濃度に対して比べられた場合に、外皮型ウィルスの完全な不活性化を達成するために、10〜20倍少ない溶媒/洗剤の薬品が必要とされるという意外な発見、を開示している。
【0004】
本発明の好ましい方法は上記の溶媒/洗剤の薬品の除去を開示している。この方法によれば、シリカに対するタンパク質の結合を減少するために、気孔の空間が三次元架橋型の疎水性のアクリル・ポリマーにより充填されているシリカ・ビーズ、を含んでいる拡散カラムを使用することにより、溶媒/洗剤の薬品が有効に除去できることが開示されている。このカラムは十分に限定されているタンパク質の溶液からの溶媒/洗剤の除去のために特殊に設計されている。上記の溶媒/洗剤の処理を本明細書において論じられている低下された濃度において実施することにより、ウイルスの不活性化の処理の後にその溶媒/洗剤の生成物を除去するために、10〜20倍少ないカラムの材料を必要とすることが可能になる。さらに、このような少量の詰め込みは、たいていの場合に、それぞれの使用後にそのクロマトグラフィの材料を廃棄することを可能にする。このことは、生きている非外皮型のウイルスおよび伝染性海綿状脳障害(TSEs)に伴うプリオン粒子の存在によるバッチ間の可能な交差汚染を調整するために重要である。
【0005】
上記の溶媒/洗剤の処理は血液製品の精製に対する比較的に有利なウイルス不活性化の接近方法であり続けており、別のさらに侵襲性の破壊的な技法はアルデヒドの使用を含み、紫外光はタンパク質に対して過度に変性性を有しているか破壊的であることが立証されている。血液製品および血液製品の組成物の他に、ウイルス汚染の可能性を有するあらゆるタンパク質の溶液が本発明の方法を用いて精製できる。例えば、哺乳類の乳、腹水液、唾液、胎盤抽出物、組織培養抽出物、発酵製品、トランスジェニック誘導型の製品、および組換えタンパク質、を含むタンパク質含有の溶液はすべて上記の方法により精製可能である。なお、本特許出願人の方法において、精製のための好ましいタンパク質の溶液は血液製品および血液製品の組成物である。
【0006】
本発明の一例の実施形態において、(1)タンパク質のサイズ排除濾過後の人間または動物の誘導タンパク質の製造後の溶媒/洗剤の処理のための方法と、(2)それゆえ、当業界において既に用いられているよりもはるかに少ない溶媒および洗剤を使用する溶媒/洗剤の処理のための方法と、(3)シリカに対するタンパク質の結合を減少するために、気孔の空間が三次元架橋型の疎水性のアクリル・ポリマーにより充填されているシリカ・ビーズを使用することにより、溶媒/洗剤を除去するための方法と、が開示されている。この場合に、上記の後者の材料の使用は洗剤の除去を可能にしてその製品の中の内毒素の負荷を減少する。さらに、上記のビーズは溶媒/洗剤を捕捉するためのシリカの自然な能力を使用していると共に、上記のポリマーは、例えば、免疫グロブリンG(IgG)等の、関連のタンパク質の95%よりも高い回収を可能にしている。
【0007】
本明細書において、製造後の工程としての、タンパク質の中の、具体的には、分別およびナノフィルトレーションの後の精製された免疫グロブリンの中の、ウイルスの不活性化の速度が開示されている。本発明者は、減少されても確固としたウイルスの不活性化を依然として維持できる溶媒および洗剤の量、を決定している。さらに、上記のTNBPおよびトリトンX−100(Triton X-100)の量を減少するための能力は、吸着剤を簡単に廃棄することを経済的に実行可能にして、その材料を再生する必要性を排除すると考えられる点まで、これらの溶媒/洗剤を除去するために必要とされる材料の量を減少できる可能性がある。また、このことは吸着剤の再生を確実なものとする必要性を排除して、繰り返された使用の後に材料から浸出する溶媒/洗剤の薬品または抽出可能な物質の漏出に関する問題を最小限にすると考えられる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、上記のウイルス不活性化の方法は、RhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード(Ultra-Filtered)(オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)、ラリタン、ニュージャージー州)として、市場において知られているヒト免疫ガンマ・グロブリンに関して行なわれている。このRho(D)免疫グロブリン(ヒト)は抗体仲介型の免疫抑制を達成するための特異的な抗体の最初の有効な予防の使用例である。また、このRhoGAM(登録商標)は1回の用量当たりに300マイクログラムの抗D活性物質の用量で抗Rho(D)を含有しているIgGの免疫グロブリンの溶液である。さらに、このRhoGAM(登録商標)は、適当な時期に、免疫化されていない、Rho(D)陰性の妊婦に対して、彼女のRho(D)陽性の子孫における将来の病気を予防するために、投与できる。なお、この病気はその新生児の、溶血性の病気、さらに具体的には、Rh胎児赤芽球症、と呼ばれている。
【0009】
さらに、比較的に少ない用量の抗Rho(D)である、MICRhoGAM(登録商標)Rho(D)・イミューン・グロブリン(ヒューマン)・マイクロ−ドース(Rho (D) immune Globulin (Human) Micro-Dose(50マイクログラムの抗Rho(D))も、懐胎から12週目にまたはこれよりも早く、堕胎および自然流産の経験を有する女性の治療のために、本特許の譲受人により販売されている。なお、上記の完全な用量は15mlまでのRho(D)陽性の赤血球に対応してその受容者を保護するが、上記の比較的に少ない用量は2.5mlまでのRho(D)陽性の赤血球の保護を行なう。また、上記のRhoGAM(登録商標)は懐胎から26〜28週目における出生前の予防薬として用いられている。さらに、別の適応例は、妊娠の継続を伴っている懐胎からのあらゆる段階における切迫流産と、懐胎から13週目またはこの時期を超えてからのその妊娠の堕胎または中絶と、腹部の傷害または遺伝的な羊水穿刺と、絨毛膜の絨毛サンプリング(CVS)および経皮的臍帯血サンプリング(PUBS)と、を含む。
【0010】
食品医薬品局(FDA)および生物局(Bureau of Biologics)により使用について認可されているたいていの免疫グロブリンの注入可能な材料が、1940年代にハーバード大学のE.コーン(E. Cohn)博士により開発されていて、参照により本明細書に組み入れられている、コーン(Cohn)他,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am. Chem. Soc.),68巻,p.459,(1946年)、において記載されている、アルコール分別法により製造されている。この方法は、肝炎感染性、HIV、および利用可能な最高の感度の試験により決定されるその他の血液により運ばれる病原体、に対して陰性の血漿の注意深い選択と合わされる場合に、この方法の結果として得られる製剤が安全であることを保証している。なお、この事実はその製品の何百万人もの感染されない受容者により容易に立証できる。
【0011】
最新のRhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード(Ultra-Filtered)による製造方法によれば、抗D活性物質含有の血漿が分別されて(コーン(Cohn)他(上記)を参照されたい)、その結果として得られる沈殿物が緩衝液中に再懸濁され、バイリゾルブ(Viresolve)(商標)限外過膜を用いてウイルスが除去されている。その後、このウイルスが除去された材料はバイオマックス(Biomax)サイズ排除フィルターを用いてダイアフィルトレーションおよび濃縮される。さらに、タンパク質濃度およびpH値が調節されて、この結果として得られるバルクの材料が注射器の中に充填される。例えば、共通譲渡されている米国特許第6,096,872号を参照されたい。
【0012】
上記の溶媒/洗剤の処理は血漿および血漿誘導型の治療用のタンパク質の中における脂質外皮型のウイルスを不活性化するための方法として広く受け入れられている。多数の研究が血漿、免疫グロブリン製剤、凝固因子濃縮物およびその他の血漿タンパク質に対するこの処理の有効性を立証している。
【0013】
一般的に、溶媒/洗剤の処理を行なう場合に、その溶媒および洗剤がそれぞれ1%の濃度で製造プロセスの開始時(初期)において、あるいは、それぞれ、0.3%および1.0%の濃度でその処理中の中間の工程において、血漿に添加される。一方、本発明は、ウイルスを除去した、脂質を含まない、バルクの製品を不活性化するために、製造後において、比較的に低い濃度の溶媒(約0.003%から0.3%よりも低いTNBPの範囲内)および洗剤(約0.01%から1.0%よりも低いトリトンX−100(Triton X-100)の範囲内)が用いられているということにおいて独特なウイルスの不活性化の工程、を開示している。また、最終の製品から溶媒および洗剤を除去するための除去処理も抽出工程を伴わずになし遂げられるということにおいて独特である。その代わりに、溶媒および洗剤はシリカ・ビーズの吸着材料の使用により直接的に除去される。この吸着材料は再生可能であるが、この吸着材料は1回の使用のみのためであることが好ましい。
【0014】
本明細書において開示されているように、上記の最新のRhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード(Ultra-Filtered)の方法の製造後に、ウイルス不活性化の工程を加えることが好ましい。先行技術は、1.0%の洗剤および0.3%のトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)(TNBP)の溶媒の濃度がウイルスの活性の確固とした除去のために必要である、と考えてきた。このような溶媒/洗剤の高い濃度とは対照的に、本発明の方法を用いることにより、ヒト免疫ガンマ・グロブリン(RhoGAM(登録商標))のバルクの材料が、約0.01%から1.0%よりも低い洗剤(トリトンX−100(Triton X-100)等)および約0.003%から0.3%よりも低い溶媒(トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)(TNBP)等)を伴って、製造後に、処理可能になる。好ましい実施形態における上記の処理は15℃〜25℃において最低限で約1時間にわたっている。また、上記の溶媒および洗剤に対応するそれぞれの範囲は温度における変化および/またはインキュベーションの延長された時間により変化することが予想され、例えば、高められた温度および/または長期のインキュベーション時間はさらに低い溶媒/洗剤の濃度を可能にする。さらに、この処理の後に、溶媒および洗剤は、好ましくは、例えば、SDR・ハイパー・D・ソルベント−ディタージェント・リムーバル・ソーベント(SDR Hyper D Solvent-Detergent Removal Sorbent)(カリホルニア州、フレモントのシファーゲン・バイオシステムズ・インコーポレイテッド(Ciphergen BioSystems, Inc.)のバイオセプラ事業部(BioSepra Division)により製造されている)等の、シリカ吸着材料を入れているカラムの中における材料の通過により除去される。この吸着剤は、細孔の空間が溶媒および洗剤を固定する三次元架橋型の疎水性のポリマーにより充填されている、シリカ・ビーズを含む。次に、ウイルスを不活性化したRhoGAM(登録商標)(RhoGAM・SD(RhoGAM SD)(商標))が集められて、バイオマックス(Biomax)フィルターによりダイアフィルトレーションおよび濃縮される。その後、ポリソルベート80(polysorbate 80)の濃度、pH値およびタンパク質濃度が、その最終のRhoGAM・SD(商標)の製品が現用の配合に一致するように、調節することが可能になる。
【0015】
上記の溶媒/洗剤の工程は製造プロセスの初期において使用することも可能である。この溶媒/洗剤の工程が製造の初期において本発明の方法に用いられる場合には、約0.2%の洗剤および約0.2%〜約1.0%の溶媒を使用することが好ましい。
【0016】
ウイルスの不活性化のために必要とされる、提案されている製造工程、のフロー・チャートが図1において示されている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、著しく低下されている濃度の溶媒および洗剤を用いる、血液製品のウイルスの不活性化のための方法、を提供しており、この場合に、その溶媒/洗剤の工程は、好ましくは、製品の製造後に用いられる。本発明の方法は、対数4よりも大きい、脂質被覆型のウイルスの不活性化の程度を有している、実質的にウイルスを含まない無菌の血液製品またはその組成物の製剤、を結果として生じており、この場合に、その血液製品タンパク質の収率は少なくとも90%である。
【0018】
上記の方法は、血液製品を、製造後に、約0.003%から0.3%よりも低い濃度範囲内の少なくとも1種類の溶媒と、約0.01%から1.0%よりも低い濃度範囲内の少なくとも1種類の洗剤と、に対して接触させる処理を含む、血液製品をウイルスに関して精製する処理を含み、この場合に、上記の方法は、対数4よりも大きい、脂質被覆型のウイルスの不活性化の程度を結果として生じ、その血液製品タンパク質の収率は少なくとも90%である。好ましい実施形態において、上記溶媒の濃度は、約0.006%から0.3%よりも低く、さらに好ましくは約0.015%〜約0.15%、さらに好ましくは約0.03%〜約0.15%、最も好ましくは約0.03%〜約0.06%、の範囲内であり、最も好ましくは約0.06%である。また、好ましい実施形態において、上記洗剤の濃度は、約0.02%から1.0%よりも低く、さらに好ましくは約0.05%〜約0.5%、さらに好ましくは約0.1%〜約0.5%、さらに好ましくは約0.1%〜約0.2%、の範囲内であり、最も好ましくは約0.2%である。
【0019】
なお、本発明の好ましい方法において、上記の溶媒/洗剤の工程はサイズ排除濾過の後に行なわれるが、この溶媒/洗剤の工程は製造プロセスの初期において行なうことも可能である。このように、溶媒/洗剤の方法が製造プロセスの初期において行なわれる場合には、その溶媒は約0.2%〜1.0%よりも低い濃度において、また、その洗剤は約0.2%〜1.0%よりも低い濃度において、用いられることが好ましい。
【0020】
本発明の目的において、上記の血液製品またはその組成物は、例えば、哺乳類の乳、腹水液、唾液、胎盤抽出物、組織培養抽出物、発酵製品、トランスジェニック誘導型の製品、および組換えタンパク質、モノクローナルまたはポリクローナルな免疫グロブリンG(IgG)、または凝固製品、とすることができる。
【0021】
また、別の実施形態において、ヒト免疫グロブリンの完成された製品を少なくとも1種類の有機溶媒および少なくとも1種類の洗剤に接触させる処理を含む、ヒト免疫グロブリンを実質的にウイルスに関して精製する、製造後の方法が開示されており、この場合に、上記の方法は、対数4よりも大きい、脂質被覆型のウイルスの不活性化の程度を結果として生じ、その血液製品のタンパク質の収量は少なくとも90%であり、上記の溶媒/洗剤は拡散吸着剤を用いて除去される。この吸着材料は、当該吸着剤が詰め込まれているカラムの中を通して上記の溶媒/洗剤の製品を移動させることにより、その製品に対して導入できるか、あるいは、その製品に直接的に導入して、その後に、遠心分離または排除濾過のいずれかによるか、あるいは、デカンテーションにより、除去することも可能である。なお、拡散クロマトグラフィを用いる場合に、好ましい実施形態は、上記の製品を吸着剤のカラムの中を通して移動させることである。
【0022】
本発明は、とりわけ、血液、血漿および血液フラクション等のような、血液製品の組成物を製造することに関連しており、これらの製品はビリオンを実質的に含んでいないが、相当な量の血液製品のタンパク質を含有している。特に、本発明は脂質を含んでいるウイルスの不活性化、および、B型およびC型の肝炎ウイルスのようなウイルスの選択的な不活性化に関連している。さらに、本発明の方法により不活性化される別のウイルスは、例えば、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バー・ウイルス、ヘルペス群ウイルス、およびパラミクソウイルス、を含む。
【0023】
特に、本発明の方法において、上記の血液製品は、好ましくは、コーン(Cohn)他(上記)および共通譲渡されている米国特許第6,096,872号において開示されているフルスケール用の改良型のコーン−オンクレイ(Cohn-Oncley)低温アルコール分別法に従って、さらに、その後の、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)サイズ排除フィルターを用いるナノフィルトレーションにより分別されているヒト免疫ガンマ・グロブリンである(RhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード・Rho(D)・イミューン・グロブリン(ヒューマン)(Ultra-Filtered Rho(D) Immune Globulin (Human))(オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)、ラリタン、ニュージャージー州))。なお、このナノフィルトレーションは共通譲渡されている米国特許第6,096,872号の方法に従って行なわれている。
【0024】
上記のような血液製品の精製は、タンジェンシャル・フィルトレーション、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、または電気泳動の手段、またはこれらの技法の組み合わせにより、行なうことも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えば、免疫グロブリン等の、不安定なタンパク質を含む、血液タンパク質、血漿含有製品および血漿フラクション含有製品を含有している、血液、血液成分、血漿またはこれらの何らかのフラクション、濃縮物または誘導体を含む、血液製品および血液製品の組成物における、効果的なウイルスの不活性化技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】RhoGAM(登録商標)の溶媒/洗剤によるウイルス不活性化処理のフロー・チャートである。
【図1A】本発明のプリオンおよびウイルスの除去処理において使用したバイリゾルブ(VIRESOLVE)(登録商標)180システムの限外濾過システムを示している概略図であり、製品維持用タンクを、符号1として、ウイルス除去フィルター・ホルダーを、符号2として、限外濾過フィルター・ホルダーを、符号3として、50mMのNaCl−グリシン緩衝液の貯蔵タンクを、符号4として、T−1再循環タンクを、符号5として、T−2の限外濾過(UF)再循環タンクを、符号6として、P1バイリゾルブ−180(Viresolve -180)フィード・ポンプを、符号7として、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)浸透ポンプを、符号8として、UV計器を、符号9として、UFフィード・ポンプを、符号10として、UF浸透物を、符号11として、サンプル・ポートを、符号12として、さらに、製品回収およびイン−ライン無菌用の濾過装置を、符号13として、示している。
【図1B】本発明のプリオンおよびウイルスの除去処理において使用したバイリゾルブ(VIRESOLVE)(登録商標)180システムの限外濾過システムを示している概略図であり、製品維持用タンクを、符号1として、ウイルス除去フィルター・ホルダーを、符号2として、限外濾過フィルター・ホルダーを、符号3として、50mMのNaCl−グリシン緩衝液の貯蔵タンクを、符号4として、T−1再循環タンクを、符号5として、T−2限外濾過(UF)再循環タンクを、符号6として、P1バイリゾルブ−180(Viresolve-180)フィード・ポンプを、符号7として、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)浸透ポンプを、符号8として、UV計器を、符号9として、UFフィード・ポンプを、符号10として、UF浸透物を、符号11として、サンプル・ポートを、符号12として、さらに、製品回収およびイン−ライン無菌用の濾過装置を、符号13として、示している。
【図1C】本発明のプリオンおよびウイルスの除去処理において使用したバイリゾルブ(VIRESOLVE)(登録商標)180システムの限外濾過システムを示している概略図であり、製品維持用タンクを、符号1として、ウイルス除去フィルター・ホルダーを、符号2として、限外濾過フィルター・ホルダーを、符号3として、50mMのNaCl−グリシン緩衝液の貯蔵タンクを、符号4として、T−1再循環タンクを、符号5として、T−2限外濾過(UF)再循環タンクを、符号6として、P1バイリゾルブ−180(Viresolve-180)フィード・ポンプを、符号7として、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)浸透ポンプを、符号8として、UV計器を、符号9として、UFフィード・ポンプを、符号10として、UF浸透物を、符号11として、サンプル・ポートを、符号12として、さらに、製品回収およびイン−ライン無菌用の濾過装置を、符号13として、示している。
【図2】抗Rhグロブリンを得るためのヒト血漿の分別の方法を示しているフロー・シートである。
【図3】BVDVによりスパイクされたIgGに関する本発明の溶媒/洗剤の処理方法を使用しているウイルス不活性化を示しているグラフである。本明細書における実施例2を参照されたい。
【図4】PRVによりスパイクされたIgGに関する本発明の溶媒/洗剤の処理方法を使用しているウイルス不活性化を示しているグラフである。本明細書における実施例2を参照されたい。
【図5】BVDVによりスパイクされたIgGに関する本発明の溶媒/洗剤の処理方法を使用しているウイルス不活性化を示しているグラフである。本明細書における実施例2を参照されたい。
【図6】WNVによりスパイクされたIgGに関する本発明の溶媒/洗剤の処理方法を使用しているウイルス不活性化を示しているグラフである。本明細書における実施例2を参照されたい。
【図7】トリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPを除去するための、SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)吸着剤の能力の評価を示しているグラフである。この場合に、トリトンX−100(Triton X-100)の漏出は70mlがカラムを通過した後に観察されている。一方、TNBPについて全く漏出が見られなかったことは、トリトンX−100(Triton X-100)の濃度が必要とされる吸着剤の量の計算において重要なパラメータになるということ、を示している。
【図8】本明細書における実施例2において用いられているウイルス不活性化プロトコルのフロー・シートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、先行技術の方法におけるよりも著しく低下されている濃度の溶媒および洗剤を用いて、例えば、血液製品または血液製品の組成物のサイズ排除濾過に続く、例えば、製造後の工程としての血液製品または血液製品の組成物の、タンパク質の組成物におけるウイルスの不活性化のための方法を記載している。すなわち、一つの精製されたタンパク質の系において、サイズ排除濾過後に、従来技術の方法に対して比べられた場合に、その精製された血液製品の中の外皮型ウイルスを完全に不活性化するために、10〜20倍少ない溶媒/洗剤の薬品が必要とされている。このような精製されたタンパク質の系は血液製品であり、特に、精製されたヒト免疫ガンマ・グロブリンまたはRhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード(Ultra-Filtered)およびMICRhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード(Ultra-filtered)の各製品(オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)、ラリタン、ニュージャージー州)である。
【0028】
上記のRhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード(Ultra-Filtered)はヒト抗D免疫グロブリンを含有している無菌溶液である。この製品はRh(D)陽性の赤血球細胞に曝露されたRh(D)陰性の個体におけるRh(D)免疫化を予防するために用いられている非経口用の製品である。さらに、この製剤は筋肉内投与のために意図されている。また、この製剤は、以前における輸血または妊娠により抗体を有しているか、D抗原に対して免疫化されているRh(D)陰性の、ドナーの血漿から得られる。また、比較的に少ない用量の抗Rho(D)である、MICRhoGAM(登録商標)のRho(D)・イミューン・グロブリン(ヒューマン)・マイクロ−ドース(Rho (D) immune Globulin (Human) Micro-Dose(50マイクログラムの抗Rho(D))も、妊娠の12週間目またはこれよりも早く、堕胎および自然流産の経験を有する女性の治療のために、本出願の譲受人により販売されている。なお、上記の完全な用量は15mlまでのRho(D)陽性の赤血球に対応してその受容者を保護するが、上記の比較的に少ない用量は2.5mlまでのRho(D)陽性の赤血球に対応して保護を行なう。
【0029】
溶液を含むタンパク質含有の組成物が本発明の方法を用いて精製できる。例えば、精製可能であるこれらの組成物は、例えば、免疫グロブリン等の、不安定なタンパク質を含む、血液タンパク質、血漿濃縮物、血液成分、血漿含有製品および血漿フラクション含有製品を含有している、全血、血漿またはこれらの何らかのフラクション、濃縮物または誘導体と、血漿の分別からの沈殿物と、血漿の分別からの上澄み液と、血清と、低温沈殿物と、低温上澄み液と、細胞溶解産物と、モノクローナルおよびポリクローナルな抗体を含む血液細胞の中において誘導されるタンパク質と、を含む、血液製品および血液製品の組成物を含む。さらに、上記の方法を用いて精製可能である別のタンパク質は哺乳類の乳、腹水液、唾液、胎盤抽出物、形質転換された細胞抽出物を含む組織培養抽出物、発酵製品、トランスジェニック誘導型の製品、および組換えタンパク質、を含む。
【0030】
本発明の方法はたくわえられた血液製品の組成物の処理を可能にする。この血液製品は、実質的にウイルスに関して精製されている組成物として、そのまま、あるいは、要望に応じてさらに処理を加えて、使用できる。
【0031】
本発明は、とりわけ、血液、血漿および血液フラクション等のような、血液製品の組成物を製造することに関連しており、これらの製品はビリオンを実質的に含んでいないが、相当な量の血液製品のタンパク質を含有している。特に、本発明は脂質を含んでいるウイルスの不活性化、および、B型およびC型の肝炎ウイルスのようなウイルスの選択的な不活性化に関連している。
【0032】
上記の方法は、本明細書において、血漿および血漿フラクション等のような、液体の血液成分の処理に関して説明されているが、この方法は血液の固体の成分、濃縮物等のような溶解産物またタンパク質、および類似の固体の組成物および血液成分等、の処理においても有用である。本発明の方法によれば、血漿自体または新鮮な凍結血漿または溶かされた凍結血漿、低温沈殿物、低温上澄み液または凍結血漿からの濃縮物ならびにこれらの希釈製品、を処理できる。また、これらの製剤は、製造の初期または製造後のいずれにおいても、本発明の方法を用いて処理できる。
【0033】
特に、上記のような血液製品は、好ましくは、コーン(Cohn)他(上記)、および共通譲渡されている米国特許第6,096,872号において開示されているフルスケール用の改良型のコーン−オンクレイ(Cohn-Oncley)低温アルコール分別法に従って、さらに、その後の、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)サイズ排除フィルターを用いるナノフィルトレーションにより、分別されているヒト免疫ガンマ・グロブリンである(RhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード・Rho(D)・イミューン・グロブリン(ヒューマン)(Ultra-Filtered Rho(D) Immune Globulin (Human))(オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)、ラリタン、ニュージャージー州))。なお、このナノフィルトレーションは共通譲渡されている米国特許第6,096,872号の方法に従って行なわれている。さらに、上記の材料は使用まで2〜8℃において無菌条件下に貯蔵されている。
【0034】
血漿の分別は、一般に、所望の血漿タンパク質を含有している選択された血漿のフラクションの沈殿を行なわせるために、低温において、調整されているpH値で、エタノール、メタノールまたはポリエチレン・グリコール等のような、有機溶媒の使用を含む。例えば、コーン−オンクレイ(Cohn-Oncley)分別法(コーン(Cohn)他(上記))を参照されたい。その後、この結果として得られる上澄み液自体を、所望の程度の分別物が得られるまで、沈殿させることができる。例えば、図2を参照して、フラクションIIおよびIIIは免疫ガンマ・グロブリンを得るためにさらに分別できる。
【0035】
上記の沈殿物II(例えば、コーン(Cohn)他(上記)の方法による)の材料が約4.6〜5.0mg/ml(約0.5%)まで希釈され、その後に、限外濾過により10倍に濃縮されることが必要である場合であって、さらに、その沈殿物が製造後に溶媒/洗剤により処理される場合における、本発明の方法において、賦形剤(例えば、ポリソルベート80(polysorbate 80))の低い初期の濃度を使用することが重要であり、例えば、上述されている範囲内であり、好ましくは、約0.002%の賦形剤の濃度は上記の方法に有害な影響を及ぼさない。なお、この有害な影響は、例えば、外皮型のウイルス、そのウイルスの外皮からの分離、および濾液内へのウイルス粒子の通過、によると考えられる。例えば、水疱性口内炎ウイルスである、弾丸形状で、外皮型の、RNA含有ウイルス、を使用している、本出願の譲受人のために行なわれている研究は、本発明において用いられている賦形剤の濃度において(100ppmまたは0.01%)、評価できるウイルスの不活性化が全く生じていないことを、示している。
【0036】
本発明の処理において使用されているタンパク質の濃度は約0.1〜約1重量%の範囲内である。すなわち、上記のタンパク質材料が単量体またはモノクローナルである場合に、約1%までが使用可能である。さらに、本発明において用いられている沈殿物IIの免疫グロブリンの場合に、処理において使用されているその初期のタンパク質濃度は約4.6〜5.0mg/ml(約0.46〜0.5%)である。
【0037】
内容が参照により本明細書に組み入れられている、コーン(Cohn)の米国特許第2,390,074号は、ガンマ・グロブリンが調製される血液を分別する方法、を開示している。このコーンの方法により調製されているガンマ・グロブリンは19Sグロブリン、プラスミノゲンおよび脂質を含有している。このガンマ・グロブリンは麻疹および破傷風等のような病気に対する予防のために著しく適しているが、19Sグロブリン、プラスミノゲンおよび脂質の存在は不要な汚染物質であり、胎児赤血球におけるRh因子に対する免疫化を防ぐことにおけるそのガンマ・グロブリンの効果を低下する可能性がある。
【0038】
本発明の確実なものとすることが可能な方法により製造されている実質的に純粋な抗Rhグロブリンは、アルブミン、プラスミノゲン、アルファ、ベータおよびガンマ・グロブリン、および種々の脂質、を含有しているヒト血漿により調製されている。具体的には、本発明の抗Rhグロブリンはガンマ・グロブリンである。
【0039】
上記の抗Rhグロブリンを得るためのヒト血漿の分別は、特許の内容が参照により本明細書に組み入れられている、ポラック(Pollack)他に共通譲渡されている、米国特許第3,449,314号の方法に従って、行なわれている。図2の添付のフロー・シートを参照して、上記のヒト血漿を分別するための能力はその血漿の種々の成分の溶解度に依存している。この分別のそれぞれの段階において、そのフラクションの分離および抗Rhグロブリンにおいて望ましくない成分の最終的な除去は、pH値、温度、沈殿物の濃度、およびその系のイオン強度、のきわどい調整により決定される。
【0040】
アセトンおよびアルコール等のような低誘電率の種々の有機溶媒が、タンパク質を沈殿させて、上記の血漿の分別において用いられている。本発明の方法において利用されている有機溶媒は、種々のアルコールおよびアセトン、好ましくは、メタノール、を含む。すなわち、メタノールは、他の有機溶媒よりも比較的に低い毒性および安全な取扱性(例えば、爆発の危険性等)により、好ましい。
【0041】
分別中のタンパク質の変性を防ぐために、析出が低い温度において行なわれる。タンパク質の溶解度は温度依存性であるので、分別のそれぞれの工程に対応して選択される温度は、変性を防ぐために所望の分離を可能にする、可能な限りに最も低い温度、である必要がある。
【0042】
図2のフロー・シートにおいて、本発明においてタンパク質を得る好ましい方法である、分別は全ヒト血漿により行なわれている。この血漿は約1℃まで冷却された後に、上澄み液から低温で不溶性の沈殿物を分離するために遠心分離される。その後、この上澄み液は沈殿物Iおよび上澄み液Iを得るためにさらに分別される。次に、フィブリノゲンにより主に構成されている沈殿物Iが廃棄される。その後、上澄み液Iは上澄み液II+IIIおよび沈殿物II+IIIを得るためにさらに分別される。この廃棄される上澄み液II+IIIはアルファおよびベータ・グロブリンおよび脂質を含有している。一方、沈殿物II+IIIはベータおよびガンマ・グロブリンおよび同種凝集素により主に構成されているが、プロトロンビン、プラスミノゲン、コレステロールおよびその他の脂質も含有している。この沈殿物II+IIIは、さらに分別されると、上澄み液II+IIIWおよび沈殿物II+IIIWを生じる。これにより、ベータ・グロブリン、コレステロールおよびその他の脂質が、主として、廃棄される上澄み液II+IIIWの中に除去される。一方、沈殿物II+IIIWはガンマ・グロブリン、同種凝集素、プラスミノゲン、およびプロトロンビンおよび一部のベータ・グロブリン、コレステロールおよびその他の脂質により主に構成されている。その後、さらに分別すると、沈殿物II+IIIWは上澄み液IIIおよび沈殿物IIIを生じる。この廃棄される沈殿物IIIは同種凝集素、プラスミノゲンおよびプロトロンビンを含有している。一方、上澄み液IIIはガンマ・グロブリンおよび少量のフィブリノゲンおよび脂質により主に構成されている。その後、この分別の最終工程は、19Sグロブリン、プラスミノゲンおよび脂質をほとんど全く含まない本質的に純粋なガンマ・Gグロブリンである、沈殿物IIを生じる。この本発明の方法により調製された沈殿物IIは抗Rhのガンマ・グロブリンである。
【0043】
本発明の好ましい方法において、再懸濁用の免疫グロブリンの開始材料は改良されたコーン(Cohn)他(上記)の方法による上記の沈殿物IIのペーストである。なお、上記の血漿から精製されている免疫ガンマ・グロブリンの初期的な精製が、濾過、沈殿物アフィニティ・クロマトグラフィ、イオン交換またはこれらの1種類以上の組み合わせにより、達成することも可能であることに注目する必要がある。
【0044】
本発明における上記沈殿物IIのペーストを再懸濁するために用いられる液体の希釈剤は、注射用水(米国薬局方(U.S.P.))(“W.F.I.”)、標準の塩水(米国薬局方)、または所与の範囲の適当な緩衝液の任意の物から選択される薬剤として許容可能な希釈剤を含み、この後者の緩衝液の任意の物は安定なpH値を与えるという利点を提供する。この場合に、適当な緩衝液は、約6.4のpH値における、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液およびグリシン緩衝液、から成る群から選択される緩衝液である。好ましくは、上記の初期的な希釈剤はペーストの3倍の重量の注射用水であり、この希釈剤は、後に、最初のナノフィルトレーションの前に、高イオン強度の緩衝液中において希釈される。また、上記の初期的な希釈剤として適当な材料は本明細書において考慮されている高イオン強度の緩衝液である。好ましくは、150mM±20%のイオン強度の材料が採用されており、好ましくは、150mM±20%のNaCl−グリシンの緩衝液(pH値:6.4)である。
【0045】
本発明の免疫グロブリンの処理および濾過の間に、高イオン強度の緩衝液が二量体および三量体の形態の免疫グロブリンを減少させるための処理補助剤として用いられて、フィルターを通るさらに多くの完全な通過を可能にすることが好ましい。適当な高イオン強度の希釈剤は、再懸濁用の希釈剤について上記において列挙されているが、比較的に高いイオン強度および約6.4のpH値における希釈剤、である。好ましくは、この処理補助剤は、最も好ましい濃度である、約150mM±20%のイオン強度で存在しており、このイオン強度はほぼ生理学的なイオン強度である。例えば、本発明の最も好ましい実施形態において、この高イオン強度の処理補助剤は150mMのNaCl−グリシンの緩衝液(pH値:6.4)である。
【0046】
本発明の実質的にプリオンおよびウイルスを含まない免疫グロブリンの処理において、上記の非イオン性の賦形剤はその処理の濾過工程の開始において上記の高イオン強度の緩衝液に適宜に添加できる。この点に関して、ポリソルベート80(polysorbate 80)を含有している高イオン強度の緩衝液の調製についての実施例1Aに言及されている。なお、本発明の処理補助剤は、ポリソルベート80(polysorbate 80)の濃度が高められる場合には、イオン強度の含有量を低下させることができるように、相互に調節可能である。
【0047】
本発明の免疫グロブリンの配合物、特に、1回使用型の非経口薬として設計されている上記のRhoGAM(登録商標)およびMICRhoGAM(登録商標)の配合物において、保存薬を使用する必要がない。
【0048】
例えば、バイオマックス−50(Biomax-50)(50,000K・カットオフ)フィルター(マサチューセッツ州、ベッドフォードの、ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation))のフィルターのような、例えば、約10,000Kから約60,000Kまでのカットオフ用のフィルター等の、第2の小さい気孔寸法のナノフィルトレーション・フィルターを用いる、本発明のタンパク質の濃縮および有機溶媒の除去工程においては、上記の高イオン強度の緩衝液は、例えば、50mMの緩衝液等の、比較的に低いイオン強度に随意的に交換することが可能である。このようなタンパク質の濃縮工程は、一部の賦形剤および有機溶媒を除去しながら、ナノフィルトレーション処理されたタンパク質の製品を濃縮するために役立つ。
【0049】
上記の溶媒/洗剤の処理の開始前における製品の濾過は可能性のあるウイルスの負荷を相当に減少させる任意の濾過または精製とすることができる。これらの処理は、直接的サイズ排除濾過、タンジェンシャル・サイズ排除濾過、デプス・フィルトレーション、アフィニティ・カラムの通過、またはイオン交換クロマトグラフィ、を含むがこれらに限定されない。
【0050】
バイリゾルブ−180(Viresolve-180)の膜システムを用いる濾過の間に、その経膜的な圧力は、好ましくは、約0psi(0パスカル)よりも大きく約3.0psi(2.07×104 パスカル)まで、の範囲内であり、さらに好ましくは、約1.5psi(10.4×103パスカル)よりも低い。また、そのふるい分け係数は約60%よりも大きい。
【0051】
本発明の処理は周囲温度において行なうことができる。一方、冷却温度(例えば、16〜17℃)は、一般に、粘度を高めるので、このような温度で処理を行うことは、一般に、濾過時間を長くする。また、処理中の生成物の温度は、約0℃またはそれよりもわずかに上から約45℃まで、さらに好ましくは約15℃〜30℃、最も好ましくは約20℃〜25℃、とすることができる。
【0052】
以下の用語は、本明細書においては、これらが以下のものとしてそれぞれ見なされる意味を有している。
横断流量:膜の表面を横切る供給溶液のml/分の単位での流量
透過物:膜を通過する精製された生成物
残留物:膜により固定された物質
流動率:透過物の流量/面積
変換率:透過物の流量/横断流量
ふるい分け係数:透過物のタンパク質含有量/残留物のタンパク質含有量、の係数
【0053】
本発明の一例の実施形態において、さらに、図1、図1A、図1B、および図1C、および米国特許第6,096,872号を参照して、ナノフィルトレーションによる、例えば、RhoGAM(登録商標)、の実質的に純粋な(プリオンおよびウイルスが除去されている)免疫グロブリンを生じるために処理している製造スケールは以下のようである。
【0054】
Rho(D)免疫グロブリンは、上記コーン(Cohn)の精製法(コーン(Cohn)他,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am. Chem. Soc.),68巻,p.459〜475)を用いて、工程の「沈殿物IIのペースト」まで精製されているが、この場合に、メタノールはエタノールに換えられており、2〜8℃に冷却されている注射用水(米国薬局方)の中に再懸濁されている。なお、この注射用水の量は以下の式を用いて計算されている。
沈殿物IIの重量(kg) × 3(l/kg) = 注射用水の必要量(l)
沈殿物IIのペーストのそれぞれ1kgが3lの注射用水の中に再懸濁される。
【0055】
上記の混合物はホールド・タンクの中において3〜8時間にわたり渦により混合され(発泡無し)−製品(1)、その後の使用まで、4℃において貯蔵されている。この場合に、スチーム・イン・プレイス(Steam in place)(SIP)の処置がウイルス除去システムにおいて行なわれており、このウイルス除去システムは、ウイルス除去フィルター・ホルダーの中へのバイリゾルブ(Viresolve)CIP/SIPモジュール(ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)、ベッドフォード、マサチューセッツ州)(2)と、限外濾過フィルター・ホルダーの上へのペリコン(Pellicon)CIP/SIPモジュール(ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)、ベッドフォード、マサチューセッツ州)(3)と、の設備を含んでいる。なお、上記CIP/SIPの処置は上記システムおよび50mMのNaCl−グリシンの緩衝液の貯蔵タンク(4)においても行なわれている。
【0056】
上記のクリーン・イン・プレイス(Clean in Place)(CIP)の処置は設備の各部品の分解を伴わずに処理設備を浄化する方法である。この設備における必要条件は、全ての配管がステンレス・スチールであることと、適当なピッチおよび配列であることと、最小限の数のガスケットを有していることと、を含む。このCIPの目的はそれぞれのロットにおける手動による浄化および交差汚染を排除することである。この処置は確実なものとすることができる。この場合に、浄化の要素は、時間と、温度と、薬品と、機械的なパラメータと、を含む。さらに、処理後に残っている残留物の種類は上記CIPの処置において使用されるクリーナーを決定することになる。また、医薬の処理技術において通常の熟練を有している人は上記CIPの方法および必要条件を熟知している。
【0057】
上記のSIPの処置に続いて、上記バイリゾルブ(Viresolve)CIP/SIPモジュール(2)の代わりに、およそ40lの容積の再懸濁された沈殿物IIの量に対応して、バイリゾルブ−180R(Viresolve-180R)モジュールの20個の重ね合わせ物(2)が設置される。(この場合に、10個の重ね合わせのバイリゾルブ−180R(Viresolve-180R)フィルターは10〜16lに対応して用いられており、20個の重ね合わせ物は16よりも多く40lまでの最終製品の量に対応して用いられている)。さらに、4個のバイオマックス−50(Biomax-50)のカセット(ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)、ベッドフォード、マサチューセッツ州)が上記のペリコン(Pellicon)CIP/SIPモジュール(3)の代わりに設置される。この場合に、2個のバイオマックス−50(Biomax-50)のカセットは10〜16lの再懸濁された沈殿物IIの量に対応して用いられており、4個のカセットは16よりも多く40lまでの量に対応して用いられている。なお、上記のバイリゾルブ−180R(Viresolve-180R)モジュールは塩素により衛生化されていて、その後、この塩素がジエチルフェニレン・ジアミン(diethylphenylene diamine)(DPD)法により0.3ppm以下の塩素の存在であると決定されるまで、すすぎ洗いされている。
【0058】
衛生化後の上記のモジュール(2)に関して圧力保持試験が行なわれている。すなわち、このモジュールは最低限で10psi(6.9×104 パスカル)に耐えて、要求されている5分の試験期間にわたり1psi(6.9×103 パスカル)以下の圧力降下を示す必要がある。
【0059】
上記バイオマックス−50(Biomax-50)の膜は注射用水(米国薬局方)により洗われている。さらに、塩化ベンズアルコニウム(Benzalkonium Chloride)の決定(ロッカル(Roccal))が最終の透過した水洗いのサンプルに関して行なわれており、この塩化ベンズアルコニウム(Benzalkonium Chloride)の含有量は10ppm以下である必要がある。その後、拡散試験が上記バイオマックス−50(Biomax-50)のカセットに関して行なわれており、放出速度が以下のように計算されている。
放出された量(cc) ÷ 時間(期間)(分) ÷ カセット数 = 放出速度(cc/分/カセット)
なお、この放出速度は18(cc/分/カセット)以下である必要がある。
【0060】
バイリゾルブ−180(Viresolve-180)フィルター(2)を用いるウイルス除去の限外濾過は50mMのNaCl−グリシンの緩衝液に関して行なわれている。すなわち、このウイルス除去の再循環タンク(T−1)(5)は50mMのNaCl−グリシンの緩衝液で満たされている。最大限で250lが満たされ、最小限で130lである。
【0061】
上記の緩衝液は上記T−1(5)の中において再循環されるのと同時に、その緩衝液の透過物がタンクのオフ−ラインの中に集められる。
【0062】
上記のウイルス除去の再循環タンク(T−1)(5)はタンクおよび膜に流し込むための最小限で60lの150mMのNaCl−グリシンの緩衝液により満たされる。
【0063】
上記沈殿物IIの再懸濁物は以下のように処理される。まず、沈殿物IIは、完全に懸濁されるまで、15〜30分間にわたり、発泡することなく渦を作る速度で混合される。その後、屈折率によるタンパク質の割合(mg/mlのタンパク質)の測定が沈殿物IIの再懸濁物に関して手持型のプロトメーター(protometer)を用いて行なわれる。この場合に、5.0mg/mlのタンパク質濃度を達成するための希釈された沈殿物IIの必要とされる最終的な量が以下の式を用いて計算される。
【0064】
【数1】

【0065】
さらに、150mMのNaCl−グリシンの緩衝液の必要とされる量は以下の式を用いて計算される。
必要とされる希釈された沈殿物IIの量(l) − 再懸濁された沈殿物IIの量(l) = 添加するための緩衝液の量(l)
【0066】
その後、緩衝液は希釈された沈殿物IIに添加されて最小限で30分間にわたり発泡することなく渦を作るために十分な速度で混合される。この混合物は、さらに処理するまで、最大限で2.5時間にわたり15〜30℃で貯蔵される。
【0067】
次に、上記の希釈された沈殿物IIのバッチが、限外濾過のために、上記のウイルス除去の再循環タンク(T−1)(5)の中に満たされる。その後、経膜圧の設定値が約3.0に設定される。なお、この経膜圧の設定値はさらに高くすることも可能であるが、仮に、この経膜圧の設定値が約12に到達すると、その膜は分極する可能性があり、その残留物によりその膜を洗うことが当然に可能になる(透過物を減少することによる)。なお、上記バイリゾルブ(Virsolve)の設定点は以下のように計算される。
【0068】
【数2】

【0069】
もしも、上記の結果が50より小さければ、50が上記バイリゾルブ(Viresolve)の量の設定点の設定として入力される。さらに、上記の1/3の全体の量は、最も近い整数のリットル数(l)まで、その端数が丸められる。
【0070】
上記の、例えば、免疫グロブリン等の、不安定なタンパク質を含む、血液タンパク質、血漿含有製品および血漿フラクション含有製品を含有している、血液成分、血漿またはこれらの何らかのフラクション、濃縮物または誘導体、の濃縮の終点は以下のように計算される。
【0071】
【数3】

【0072】
もしも、上記の結果が20よりも小さければ、20が上記濃縮の終点として入力される。また、上記限外濾過のダイアフィルトレーションの終点は以下のように計算される。
濃縮の終点 − 3 = ダイアフィルトレーションの終点
【0073】
さらに、ダイアフィルターの全体の設定点は以下のように計算される。
濃縮の終点 × 5.5 = ダイアフィルターの全体の設定点(l)
【0074】
上記の限外濾過/濃縮の処理を始めるために、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)のフィード・ポンプ(P1)(7)の流量は、20個の重ね合わせ物に対して75%〜83%まで、または、10個の重ね合わせ物のフィルター・サイズに対して37%〜42%まで、一定比で変えられる。さらに、経膜圧制御装置が係合しており、経膜圧は浸透ポンプ(P2)の流量により制御されており、その経膜圧が3.0に達すると、このポンプはその流量を下げる。その後、バイリゾルブ(Viresolve)浸透ポンプ(P2)(8)の流量が、18%まで、または10個の重ね合わせのフィルターに対して9%まで、ゆるやかに一定比で変えられる。さらに、このポンプ(P2)の流量が完全に変えられると、5.0psi(3.45×104 パスカル)以上の残留物の圧力(PT3)が維持される。その後、経膜圧が平衡になると、ポンプの流量の範囲が、10個の重ね合わせのフィルターに対して9%〜11%に、または、20個の重ね合わせのフィルターに対して18%〜23%に、設定される。この場合に、経膜圧は制御されないが、この圧力は、好ましくは、比較的に低く、例えば、約3.0psi(2.07×104 パスカル)よりも低く、あるいは、この膜は分極してもよい。さらに、この経膜圧が比較的に高くなり、例えば、約3.0psi(2.07×104 パスカル)になると、上記の透過物が停止して、その残留物によりその膜を洗うことが可能になる。さらに、UV計器(UV1)(9)は4.0A.U.の下限値と7.7A.U.の上限値との間である必要がある。また、透過物の流量(FT1)は0.81リットル/分(LPM)の下限値と0.98LPMの上限値との間であるか、10個の重ね合わせのフィルターに対して0.40LPM〜0.49LPMである。さらに、処理温度は約15〜30℃に維持されている。なお、これらの条件は上記のウイルス除去/限外濾過の処理の全体を通してモニターされている。この場合に、上記UV計器(UV1)(9)は6.4A.U.の下限値と7.7A.U.の上限値との間である。また、ふるい分け係数は約75%以上にする必要がある。
【0075】
再循環タンク(T−2)(6)内の量が約75〜100lに到達すると、ペリコン(Pellicon)システム(3)が作動して、混合し始める。その後、UFフィード・ポンプ(P5)(10)が始動されて、流量が一定比で増加され、限外濾過の透過物の流量がそのポンプの流量により制御される。この場合に、限外濾過の供給圧力(PT4)および限外濾過の残留物の圧力(PT5)は以下のように維持される。
限外濾過の供給圧力 = 30psi(2.07×105 パスカル)以下
限外濾過の残留物の圧力 = 10psi(6.9×104 パルカル)以下
【0076】
上記の場合に、20psi(1.38×105 パスカル)以下の差が上記の供給圧力と残留物の圧力との間に維持されている。
供給圧力(psi) − 残留物の圧力(psi) = 差(psi)
【0077】
上記フィード・タンクT−1(5)の中の希釈された沈殿物IIの量のレベルが(重量により)モニターされて、T−1におけるロード・セルにより応答される。
【0078】
その後、定容ダイアフィルトレーションが上記タンクT−1(5)の中においておこなわれる。このダイアフィルトレーションはシステムを通して残留物のタンパク質を洗浄するために用いられており、これにより、上記バイリゾルブ−180(Viresolve-180)の膜はその収率を高める。次に、3倍量の150mMのNaCl−グリシン緩衝液のダイアフィルトレーションが行なわれ、この緩衝液がバイリゾルブ−180(Viresolve-180)の膜を通って除去される速度と同じ速度で、所定量の緩衝液が添加される。このダイアフィルトレーションの各工程が完了すると、タンクT−1(5)およびバイリゾルブ−180(Viresolve-180)のモジュール(2)は、塩素処理を用いて、上述されているように衛生化されて、保持されているあらゆるウイルスが不活性化されることが確実になる。その後、タンクT−2(6)の中のバルクの材料が、ウイルスが除去されている50mMのNaCl−グリシンの緩衝液を伴って、当該タンクT−2(6)の中の定容ダイアフィルトレーションにより濃縮される。すなわち、この工程は上記バルクの製品を濃縮し、上記の比較的に高いイオン強度の緩衝液の濃度を比較的に低いイオン強度の濃度に換えて、上記コーン(Cohn)法によりメタノールを除去し、さらに、ポリソルベート80の約半分を除去する。その後、このダイアフィルトレーションの処理が完了された後に、タンクT−2(6)の中の量がリットル単位で記録される。さらに、限外濾過の透過物のサンプルに関してデジタルの導電率の決定を行なうために、サンプルがタンクT−2(6)から抜き取られる。この結果は4.95〜5.67×10-3mhos/cmの間にある必要がある。もしも、この必要条件が最初の試験において満たされない場合には、その試験結果が上記の必要とされる範囲の中に入るまで、上記の定容ダイアフィルトレーションが継続される必要がある。
【0079】
5.5倍のダイアフィルトレーションの後の上記タンクT−2の量は上記の再懸濁された沈殿物IIの量の95%以下である必要がある。もしも、このタンクT−2の量が上記の再懸濁された沈殿物IIの量の95%よりも多ければ、このタンクT−2の量がその高い方の量の水準の必要条件を満たすまで、そのバルクの材料を濃縮することが継続される。その後、この量の水準が満たされると、限外濾過の透過物が止められて(11)、そのバルクの材料が再循環により混合され、10.5mlのサンプルが無菌の状態で取り出される(12)。その後、タンパク質の割合の測定が上記サンプルの0.5mlのアリコートに関して手持型のプロトメーターを用いて屈折率により行なわれる。この結果、タンパク質濃度が少なくとも約5.5%でなければ、その最小限の割合が満たされるまで、上記サンプルはさらに濃縮される必要がある。さらに、上記バルクの材料は仮の容器に移されて、そのバルクの重量が、以下の式を用いて、重量測定により計算される。
満たされた仮の容器(容器の重量)(kg)− 仮の容器(風袋の重量)(kg) = タンクT−2の中のバルクの製品の重量(kg)
【0080】
さらに、バルクの材料の調節は、以下の式を用いることにより、その最終的なバルクの量を達成するために添加する50mMのNaCl−グリシンの緩衝液の量を決定することにより行なうことができる。
【0081】
【数4】

【0082】
添加するために必要とされる50mMのNaCl−グリシンの量は以下のように計算される。
必要とされる最終的な量(l)− タンクT−2の中のバルクの製品の量(l) = 50mMのNaCl−グリシンの必要とされる量(l)
【0083】
さらに、初期のpH値の決定が、最初に上記のアリコートを0.9%のNaClにより1:10に希釈して、0.5N(規定)のHClまたは0.5NのNaOHの1:100の希釈液により6.3〜6.4のpH値に滴定することにより、上記の残りのサンプルのアリコートに関して行なわれている。
【0084】
この場合に、調節が必要であれば、そのバルクのpH値を調節するために必要とされる希釈されていない0.5Nの試薬の量は以下のように計算される。
必要とされる最終的な量(l)− 必要とされる1:100の滴定液の量(ml) = 希釈されていない0.5Nの試薬の量(ml)
【0085】
また、完全性の試験が容認されている方法により上記バイリゾルブ−180(Viresolve-180)のフィルター・モジュールに関して行なわれている。この完全性の試験の値は1.2以上である必要があり、このモジュールは上述されているように塩素により衛生化されていて、すすぎ洗いされている必要がある。
【0086】
上記50mMのNaCl−グリシンの緩衝液は、以下の式により計算されているように、上記バルクの材料に添加される。
タンクT−2の量(l) + 50mMのNaCl − グリシンの緩衝液の必要とされる量(l) = バルクの材料の必要とされる最終的な量に対応するタンクT−2の量(l)
【0087】
上記バルクの材料はタンクT−2の中にポンプにより送り戻されて、必要とされる最終的な量に到達した後に、10〜60分間にわたりタンクT−2の中において混合され続けた後に、そのバルクの製品の10.5mlのアリコートがpH値の決定のために無菌の状態で取り出される。このpH値は6.3〜6.4である必要がある。もしも、このpH値が上述されている範囲から外れていれば、そのアリコートは希釈されて、上述されているように、許容可能なpH値に滴定される必要があり、希釈されていない0.5Nの試薬の必要とされる量が、上記のように、計算されて上記バルクの材料に混合しながらさらに添加される必要がある。
【0088】
さらに、タンパク質の割合が上記のように手持型のプロトメーターを用いて屈折率により決定される。この場合に、このタンパク質の濃度が、許容可能である5.0%以上、であれば、そのバルクの材料は合格して次の工程に移ることができる。
【0089】
上記バルクの材料は随意的に、濾過処理中に15psi(1.04×105 パスカル)を超えない圧力により、0.2μのオプチシール(Optiseal)フィルター(13)を通して濾過された後に、そのバルクの材料は微生物学的に、さらに、血清学的に試験される。
【0090】
さらに、注射用水および蒸気によるすすぎから成る、クリーン・イン・プレイスの処置(上述されているCIPの処置)が上記のウイルス除去システムに関して行なわれる。
【0091】
上記製品の許容基準が以下の表1に列挙されている。

[表1]
特性の必要条件
タンパク質 4.0〜6.0%
pH値 6.3〜6.4
ポリソルベート80 80〜200ppm
メタノール含有量 <50ppm
【0092】
本発明は、例えば、血液製品等の、上記において列挙されている組成物を含有している何らかのタンパク質を溶媒により接触させることに関連している。特に、このような血液製品は、好ましくは、コーン(Cohn)他(上記)、および共通譲渡されている米国特許第6,096,872号において開示されているような、改良されたコーン−オンクレイ(Cohn-Oncley)低温アルコール分別法に従って、分別されているヒト免疫ガンマ・グロブリンである。このIgGの分離の後に、その溶液は、外皮型および非外皮型のウイルスを除去するために、ミリポア・バイリゾルブ(Millipore Viresolve)サイズ排除フィルターを通して処理される。その後、このウイルスを除去した材料はミリポア・バイオマックス(Millipore BioMax)(50,000MW(分子量))のサイズ排除フィルターを用いてダイアフィルトレーションされて濃縮される。なお、上記の溶媒/洗剤の処理が行なわれることが好ましいのは、上記RhoGAM(登録商標)に対応する製造プロセスの中の、この段階においてである。
【0093】
ヒト免疫ガンマ・グロブリンまたはRhoGAM(登録商標)を含む、本発明によるウイルスの不活性化のために処理されることが求められている、タンパク質組成物、特に、ヒト免疫ガンマ・グロブリンは、例えば、1〜10個の炭素原子、特に、2〜10個の炭素原子、を含むアルキル基を有しているジ−アルキル・ホスフェート(di-alkyl phosphate)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)等の、例えば、トリ−(n−ブチル)・ホスフェート(tri-(n-butyl) phosphate)、トリ−(t−ブチル)・ホスフェート(tri-(t-butyl) phosphate)、トリ−(n−ヘキシル)・ホスフェート(tri-(n-hexyl) phosphate)、トリ−(2−エチルヘキシル)・ホスフェート(tri-(2-ethylhexyl) phosphate)、トリ−(n−デシル)・ホスフェート(tri-(n-decyl) phosphate)、を含むトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)等の洗剤に対して接触させられている。なお、特に好ましいトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)はトリ−(n−ブチル)・ホスフェート(tri-(n-butyl) phosphate)である。また、異なるトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の混合物も、例えば、エチル・ジ−(n−ブチル)・ホスフェート(ethyl di(n-butyl) phosphate)等の、異なるアルキル鎖のアルキル基を有するホスフェートと共に、使用できる。同様に、ジ−アルキル・ホスフェート(di-alkyl phosphate)における異なるアルキル基の混合物を含むジ−アルキル・ホスフェート(di-alkyl phosphate)を含む、それぞれのジ−アルキル・ホスフェート(di-alkyl phosphate)も使用可能である。さらに、ジ−(di-)およびトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkylphosphate)の混合物も使用可能である。
【0094】
上記の好ましい実施形態と同様に、上記の溶媒/洗剤の処理が最終的なサイズ排除濾過の後(製造後)に用いられる場合に、その使用されているトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒は、約0.003%から0.3%よりも低く、さらに好ましくは約0.006%から0.3%よりも低く、さらに好ましくは約0.015%〜約0.15%、さらに好ましくは約0.03%〜約0.15%、さらに好ましくは約0.03%〜0.06%、の範囲の濃度におけるトリ−(n−ブチル)・ホスフェート(tri-(n-butyl) phosphate)(TNBP)であるのが最も好ましく、この濃度は、先行技術において用いられている濃度に対する比較の目的においては、約1.0〜0.3%(mg/ml)になる。なお、好ましい実施形態において、上記の用いられる溶媒の濃度は約0.06%である。
【0095】
上記のジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒は、界面活性剤、すなわち、洗剤の添加を、伴っていても、あるいは、伴わなくても、使用可能である。しかしながら、このジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒を洗剤と共に使用することが好ましい。このような洗剤は上記のジ−(di-)またはトリアルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒が血液製品の組成物に接触する前、これと同時、またはその後、のいずれにおいても添加できる。この洗剤の目的は上記のジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)に対する血液製品の組成物中におけるウイルスの接触を増すことである。すなわち、上記のタンパク質組成物を、上記の溶媒/洗剤を組み合わせて含有している予備混合されている溶液により、ウイルスに関して不活性化させることが好ましい実施形態である。
【0096】
好ましい洗剤は非イオン性の洗剤である。特に、脂肪酸のポリオキシエチレン(polyoxyethylene)誘導体、無水ソルビタール(sorbital anhydrides)の部分エステル、例えば、トウィーン80(Tween 80)(登録商標)およびトウィーン20(Tween 20)(登録商標)として市場において知られているこれらの製品、および、例えば、ポリソルベート80(polysorbate 80)、さらに、商標をトリトンX−100(Triton X-100)(登録商標)(オキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol))として市販されているような非イオン性で油溶性の洗剤、を含む洗剤が考慮されている。また、デオキシコール酸ナトリウム(sodium deoxycholate)、ならびに、N−ドデシル−N,N−メチル−2−アンモニオ−1−エタン・スルホネート(N-dodecyl-N,N-methyl-2-ammonio-1-ethane sulphonate)およびその同族物等のような、「スルホベタイン(sulfobetaines)」として知られている合成の両性イオン洗剤である「両性洗剤(Zwittergents)」、または、オクチル−ベータ−D−グルコピラノシド(octyl-beta-D-glucopyranoside)等のような非イオン性の洗剤も考慮されている。なお、上記洗剤のトリトンX−100(Triton X-100)は、溶媒との組み合わせにおいて用いられる場合のその優れた相乗作用的なウイルス不活性化により、本発明の好ましい実施形態において用いられている。
【0097】
上記アルキル・ホスフェート(alkyl phosphates)の効果を高めることができると考えられる物質は、メルカプトエタノール(mercaptoethanol)、ジチオスレイトール(dithiothreitol)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol)、およびジチオオクタン酸(dithiooctanoic acid)等のような、還元剤を含む。また、適当な非イオン性の界面活性剤はオキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenols)、ポリオキシエチレン・ソルビタン(polyoxyethylene sorbitan)の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・オイル(polyoxyethylene oils)およびポリオキシエチレン・アルコール(polyoxyethylene alcohols)およびポリオキシエチレン・オキシプロピレン(polyoxyethylene oxypropylene)の脂肪酸である。また、一部の特定の例は以下の材料、すなわち、アルキルフェノキシポリエトキシ(30)エタノール(alkylphenoxypolyethoxy (30) ethanol)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・モノラウレート(polyoxyethylene (20) sorbitan monolaurate)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・モノパルミテート(polyoxyethylene (20) sorbitan monopalmitate)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・モノステアレート(polyoxyethylene (20) sorbitan monostearate)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・モノオレエート(polyoxyethylene (20) sorbitan monooleate)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・トリステアレート(polyoxyethylene (20) sorbitan tristearate)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・トリオレエート(polyoxyethylene (20) sorbitan trioleate)、ポリオキシエチレン(20)パルミテート(polyoxyethylene (20) palmitate)、ポリオキシエチレン(20)ラウリル・エーテル(polyoxyethylene (20) lauryl ether)、ポリオキシエチレン(20)セチル・エーテル(polyoxyethylene (20) cetyl ether)、ポリオキシエチレン(20)ステアリル・エーテル(polyoxyethylene (20) stearyl ether)、ポリオキシエチレン(20)オレイル・エーテル(polyoxyethylene (20) oleyl ether)、ポリオキシエチレン(25)水素化ヒマシ油(polyoxyethylene (25) hydrogenated castor oil)、およびポリオキシエチレン(25)オキシプロピレン・モノステアレート(polyoxyethylene (25) oxypropylene monostearate)、を含む。
【0098】
また、使用される場合の、上記洗剤の量は、約0.01%から1.0%よりも少ない、さらに好ましくは約0.02%から1.0%よりも少ない、さらに好ましくは約0.05%〜約0.5%、さらに好ましくは約0.1%〜約0.5%、最も好ましくは約0.1%〜約0.2%、の範囲である。さらに、上記の溶媒/洗剤の処理が、この処理がヒト免疫ガンマ・グロブリンを使用している上記の好ましい実施形態である場合のように、最終的なサイズ排除濾過の後(製造後)に用いられる場合には、その使用される洗剤は、約0.1%〜0.2%、最も好ましくは0.2%、における、トリトンX−100(Triton X-100)であることが最も好ましく、この濃度は、先行技術において用いられている濃度に対する比較の目的においては、約1.0%になる。
【0099】
上記の溶媒/洗剤の組み合わせおよび比率が本発明の方法において用いられているのが好ましく、すなわち、約0.03%〜約0.06%におけるトリ(n−ブチル)・ホスフェート(tri-(n-butyl) phosphate)(TNBP)および約0.1%〜約0.2%におけるトリトンX−100(Triton X-100)、がその確固としたウイルスの不活性化により用いられるインキュベーションの条件下において最も好ましく、本明細書におけるデータは上記ウイルスの不活性化がその反応が止められるのと同時に速やかに完了することを示している。
【0100】
本発明により考慮されているような溶媒/洗剤による血液製品の組成物の処理は約−5℃〜70℃、好ましくは約15℃〜25℃の温度において行なわれる。また、この処理のための時間(接触)は、少なくとも約1分、好ましくは約10分〜約1時間、最も好ましくは約1時間、である。また、この処理は通常において大気圧で達成されるが、大気圧よりも低い、さらに、大気圧を超える、両方の圧力も使用可能である。約0.06%におけるTNBPおよび約0.2%におけるトリトンX−100(Triton X-100)を用いている本発明の好ましい実施形態によれば、その処理は約15℃〜約25℃において約1時間にわたり行なわれる。この場合に、温度、インキュベーション(接触時間)および圧力、の増加は使用される溶媒および洗剤の量に影響を及ぼすと予想され、(比較的に少ない量を必要とするようになり、それゆえ)、同一の効果を結果として生じる。
【0101】
タンパク質の回収は洗剤−タンパク質の混合法に依存する。すなわち、上記の洗剤(例えば、トリトンX−100(Triton X-100))を上記の最終的なヒト免疫ガンマ・グロブリンと共に混合する方法は上記の溶媒/洗剤の処理の後のタンパク質の回収に影響を及ぼす。例えば、希釈されていない洗剤をタンパク質、この場合において、ヒト免疫ガンマ・グロブリン、に直接的に添加すると、80〜90%のみのタンパク質の回収を結果として生じる。なお、上記のような方法がタンパク質−洗剤の結合を生じて、その洗剤の除去がそのタンパク質の同時の除去を結果として生じていること、が理論づけられている。さらに好ましい方法は、上述されている溶媒/洗剤の濃縮を達成するために、上記のタンパク質溶液に添加される洗剤の10%の溶液(3%のTNBPを伴う)を使用しており、これにより、そのタンパク質の収率は95%以上になる。
【0102】
上記の再懸濁された沈殿物IIの材料(コーン−オンクレイ(Cohn-Oncley)低温アルコール分別法による、コーン(Cohn)他、(上記)、を参照されたい)に、(あるいは、別の方法、または、アルコール分別、沈殿またはアフィニティ・クロマトグラフィ等の組み合わせ、により精製された血漿誘導体に)に、添加されている溶媒/洗剤の量を知ることがウイルスの不活性化の処理において重要である。また、除去後の溶媒/洗剤の残留している量が約10ppmよりも少ないことを決定できることも同様に重要である。なお、上記製品に配給される溶媒/洗剤の量は重量および容積の測定により決定できる。さらに、上記のポリソルベート80(polysorbate 80)およびトリトンX−100(Triton X-100)の測定は分光光度計により、さらに、HPLCにより、測定可能であり、TNBPはガス・クロマトグラフィにより測定できる。例えば、ミルウィッドスキー,A.(Milwidsky, A.),アナリスト(Analyst),1969年,94巻,p.377〜86(ポリソルベート80(polysorbate 80)について)、カールッソン,G(Karlsson, G.)他,ジャーナル・オブ・クロマトグラフィ・A(J. Chromatography A),2002年,2月8日号,946(1−2)巻,p.163〜168(トリトンX−100(Triton X-100)について)、およびネライアッパン,K.(Nellaiappan, K.)他,ジャーナル・オブ・クロマトグラフィ・B(J. Chromatography B),バイオメデイカル・ソサイエティ・アプリケーション(Biomed Sci Appl.),2001年,6月5日号,757(1)巻,p.181〜189(TNBPについて)に対して、参照が行なわれている。
【0103】
通常において、タンパク質含有の組成物の処理後に、上記の溶媒/洗剤は除去されるが、このような処理は、本発明の方法を用いる場合には、必要でなくなる可能性がある。すなわち、このことは比較的に低い濃度の溶媒/洗剤によるためであり、そのウイルス不活性化性の物質の性質およびその意図されている将来の用途、および上記のように処理される、例えば、血液製品の組成物等の、組成物を含有しているタンパク質の処理方法、にも依存する。
【0104】
ただし、上記の溶媒/洗剤の除去はヒト免疫ガンマ・グロブリンのウイルス不活性化の実施形態において好ましい。この溶媒/洗剤の除去に対応する一般的な方法は、C−18のカラムの中の通過と、溶媒/洗剤または関連の血液製品の組成物のいずれかを固定する膜を通るダイアフィルトレーションと、クロマトグラフィまたはアフィニティ・クロマトグラフィの支持体の上への溶媒/洗剤または関連の血液製品の組成物の吸着と、を含む。さらに、幾つかの付加的な方法は、限外濾過と、濾過/吸着、すなわち、珪藻土の土を含んでいるフィルター、すなわち、キュノ・デリピッド・プラス(Cuno Delipid Plus)および、吸着剤として共に使用されて、例えば、遠心分離により、上記の組成物から除去される、そのフィルターの非晶質な沈殿されたシリカであるシパーナト50S(Sipernat 50S)による処理と、を含む。
【0105】
好ましい溶媒/洗剤の除去の方法は吸着剤の使用である。さらに、2種類のクロマトグラフィ用の吸着剤が好ましい。この第1の、そして、最も好ましい吸着剤である、SDR・ハイパー・D・ソルベント−ディタージェント・リムーバル・ソーベント(SDR Hyper D Solvent-Detergent Removal Sorbent)(シファーゲン・コーポレイション(Ciphergen Corporation)、フレモント、カリホルニア州)は溶媒/洗剤の各工程からトリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPを除去するために特定的に作られている三次元架橋型の疎水性のポリマーを伴うシリカ・ビーズである。また、第2の、アンバークロムCG161C(Amberchrom CG161C)(ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)は吸着剤および逆相液体クロマトグラフィ用の材料の両方として用いられているジビニルベンゼン(divinylbenzene)のポリマー樹脂である。なお、これらの両方の材料による結果は非常に優れている。すなわち、これら両方の吸着剤は、10,000ppmのトリトンX−100(Triton X-100)および3000ppmのTNBPを含有している溶媒/洗剤により処理されたRhoGAM(登録商標)から、1ppmよりも低いレベルまでそのトリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPを除去することにおいて有効である。さらに、カラムの中を通る流量および温度は共に溶媒/洗剤の試薬の除去に影響を及ぼす。例えば、比較的に少ない流量および周囲温度は(比較的に冷たい温度に対して)、漏出が生じる前にRhoGAM(登録商標)から除去される溶媒/洗剤の試薬の量を増加する。
【0106】
上記SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)のカラムは、溶媒/洗剤により処理したRhoGAM(登録商標)の重力による供給が可能であるので、好ましい実施形態であるが、蠕動ポンプがその流量を制御するために用いられている。このような重力による供給に対する能力は廃棄可能なカラムを用いて多数のサンプルから溶媒/洗剤の試薬を除去するための簡単な方法の開発に対する先駆けとなってきた。また、このような方法はウイルスの不活性化の研究における生物学的な流体からの溶媒/洗剤の試薬の除去を可能にして、これらの溶媒/洗剤の試薬の毒性作用を無くすためにそれぞれのサンプルを100倍〜1000倍に希釈するための必要性を排除してきた。さらに、このことはアッセイの感度において対数2〜3の増加につながっている。
【0107】
また、拡散クロマトグラフィのカラムが上記の製品を不活性化するために用いられている溶媒/洗剤の試薬と共にポリソルベート80(polysorbate 80)も除去できることも確定されている。
【0108】
本発明の好ましい実施形態において、上記ウイルスの不活性化がRhoGAM(登録商標)またはMICRhoGAM(登録商標)としても知られているヒト免疫ガンマ・グロブリンに関して行なわれる場合に、その処理後の溶媒/洗剤の除去は、好ましくは、その溶媒/洗剤の除去用の吸着剤の使用によりなし遂げられる。上記において論じられているように、この好ましい吸着剤はシリカ・ビーズにより作られており、この場合に、その気孔の空間は三次元架橋型の疎水性のポリマーにより充填されている。この結果、このような材料のカラムに曝露された後に観察される溶媒/洗剤の残留物は低いピー・ピー・エム値(ppms)になる。また、SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)のカラム(シファーゲン(Ciphergen))は1回使用型の吸着剤として使用することができ、あるいは、その溶媒/洗剤の除去により回復/再生することも可能である。さらに、この吸着剤を用いる溶媒/洗剤の除去の後に、そのグロブリンの溶液は、その緩衝液を最終的な配合物に換えるために、バイオマックス−50(Biomax-50)フィルター(ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation))に通される(図1を参照されたい)。
【0109】
本発明の方法は、例えば、血液製品の組成物の加熱等のような、非脂質被覆型のウイルスに対応する方法、を含む別の様式のウイルス不活性化の方法と組み合わせることができる。
【0110】
本明細書に開示されているものは、ウイルスによりスパイクされて、1.0%よりも低いトリトンX−100(Triton X-100)および0.3%よりも低いトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)(TNBP)から約0.005%のトリトンX−100(Triton X-100)および約0.0015%のTNBPまでの範囲の濃度を伴う、1/2000の製造スケールにおいて溶媒/洗剤の処理にかけられている、ナノフィルトレーション法の後に(製造後に)得られた血液製品の材料のサンプルのデータである。この場合に、それぞれの処理されたサンプルのアリコートがその処理中に種々の間隔で取り出されて、その不活性化を停止するために希釈されるか、溶媒/洗剤の吸着剤のカラム(SDR・ハイパー・D・ソルベント−ディタージェント・リムーバル・ソーベント(SDR Hyper D Solvent-Detergent Removal Sorbent)(シファーゲン・バイオシステムズ(Ciphergen BioSystems))の中に通される。この場合に、ウイルスの滴定量はTCID50(TCID50または組織培養感染用量50と呼ばれている、多数の細胞培養マイクロプレートのウェルまたは試験管の50%に感染する特定されている懸濁液の量の中のウイルスの量として当業界においてみなされている)の標準的な方法により決定される。
【0111】
特に、例えば、供給源の血漿に関して、製造前またはその初期において行なわれる溶媒/洗剤の不活性化の工程の以前の方法(ピエット,MPJ(Piet, MPJ)他,トランスフュージョン(Transfusion),1990年,30巻,p.591〜598)と、あるいは、例えば、ウイルスを除去するためのサイズ排除工程が処理の終点に置かれている場合の、その処理の中間において行なわれる以前の方法(ファン・ホールテン,RW(Van Holten RW)他,ボックス・サング(Vox Sang),2002年,83巻,p.227〜233、およびブルノウフ,T(Burnouf, T)他,ハエモフィリア(Haemophilia),2003年,9巻,p.24〜37)と、の対比において、その順序における溶媒/洗剤のウイルス不活性化の工程の配置は歴史的な理由によるものと考えられ、最適ではない可能性がある。一方、この溶媒/洗剤の工程の本発明の配置はタンジェンシャル・フロー・ナノフィルトレーション(tangential flow nanofiltration)によるウイルスの除去後の、その製造プロセスの終点の方に(製造後に)ある。
【0112】
上記において列挙されているような溶液および組成物は、B型およびC型の肝炎等のようなウイルスの対数4よりも多いウイルスの不活性化の程度まで、本発明の方法を用いて精製可能であり、例えば、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは約95%、最も好ましくは98%〜100%、の適当なタンパク質の収率を有している。
【0113】
好ましくは、ウイルスの対数4よりも多い不活性化と、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは約95%、最も好ましくは98%〜100%、のタンパク質の活性の収率を有する程度まで、B型およびC型の肝炎等のような脂質被覆型のウイルスを実質的に含まない、分別されたヒト免疫ガンマ・グロブリンが本発明において考慮されている。
【0114】
本発明の方法により処理された上記の成分のタンパク質の活性はタンパク質の活性を測定するための当業界において周知である標準的な技法により測定できる。
【0115】
本発明の溶媒/洗剤の処理は既に報告されている濃度よりも著しく低い溶媒および洗剤の濃度において効果的であることが分かっている。特に、ウイルスの確固とした不活性化のために必要な溶媒および洗剤の濃度は伝統的に用いられている濃度よりも著しく低くすることができる。さらに、製品の純度および干渉性の物質(すなわち、脂質)が存在しないことはウイルスの不活性化の速度に影響を及ぼす可能性がある。また、減少された量の溶媒および洗剤は、比較的に高い収率および減少された処理の費用に対する可能性を伴う、不活性化後のこれらの除去における比較的に高い効率につながる。
【0116】
上記の溶媒/洗剤の工程を製造プロセスの終点の方に(特に、好ましい実施形態において、タンジェンシャル・フロー・ナノフィルトレーション(tangential flow nanofiltration)によるウイルスの除去後に)配置することは以下の利点を有している。
1.その製品が精製プロセスの最終段階において十分に限定されていて均一であり、使用される溶媒/洗剤の減少された量を可能にしている。
2.溶媒/洗剤の除去がその減少された量により比較的に効率的に達成できる。
3.溶媒/洗剤の処理の前におけるナノフィルトレーションによるウイルスの負荷の除去が最終製品の中における比較的に少ないウイルスの残骸の可能性を残して、陽性のウイルスのPCRアッセイの可能性を減少する。
【0117】
血液製品を処理する場合における溶媒/洗剤の混合物の中への脂質の導入は試験ウイルスのウシ・ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)および西ナイル・ウイルス(WNV)に対するウイルスの不活性化の抑制を結果として生じる。この観察は、血漿の溶媒/洗剤の処理(初期の処理)が、比較的に少量の試薬により観察されるのと同一の効果を得るために、比較的に長い時間および高められた溶媒/洗剤の濃度を必要とすることと、血漿の処理が、第VIII因子等のような、血漿の精製された製品に対して用いられる濃度よりも高い溶媒の濃度において通常的に行なわれていることと、の理由を部分的に説明できる(ホロウィッツ,B(Horowitz, B)他,ブラッド(Blood),79(3)巻,1992年,p.826〜831)。
【0118】
上記のような製造後に(例えば、サイズ排除濾過による、精製後に)製品を処理する能力はそのカラムに導入されるタンパク質の量を減少させる。このことは、製造者が洗剤を除去するために用いられるカラムの再生を確実なものとすることができなかった場合に、重要である。
【0119】
また、上記の製品が溶媒/洗剤の処理の前にサイズ排除フィルターを通過する場合には、核酸試験によるウイルスの残骸の検出の機会が少なくなると結論づけることも妥当である。すなわち、溶媒/洗剤または低温殺菌は試験されるウイルスの感染性を破壊するが、PCRの滴定量には影響を及ぼさない(ヒルフェンハウゼ,J(Hilfenhause, J)他,トランスフュージョン(Transfusion),37巻,9月号,1997年,p.935〜940)。
【0120】
上記の溶媒/洗剤の処理の溶媒の部分が外皮型のウイルスのウイルス不活性化速度を犠牲にすることなく100倍だけ減少できるということは驚くべきである。この溶媒/洗剤の処理が(たくわえられた血漿等のような異種起源の系の中において)初期に行なわれる場合の本発明の実施形態において、血漿のウイルス負荷または脂質の含有量等のような変数を与えるために常に十分に過剰になるように比較的に多い量のTNBPおよびトリトンX−100(Triton X-100)ならびにインキュベーション時間を有することが賢明である。さらに、本発明者は、溶媒/洗剤の処理の前におけるアエロシル380(Aerosil 380)(デグッサAG社(Degussa AG)、ジュッセルドルフ、ドイツ国)による血漿の前処理により、本発明者がウイルス不活性化を高めることが可能になること、を見出している。
【0121】
上記の溶媒/洗剤の工程を上記の分別/精製のプロセスにおいて比較的に早い段階に配置することは、既に配置されている製造工程の1つ以上がその溶媒/洗剤の薬品の除去を達成する場合において、有利である。すなわち、標的のタンパク質がクロマトグラフィの樹脂に吸着される場合には、TNBPおよび洗剤はその他の汚染物質と共にそのカラムを通過し、これに続いて、その標的のタンパク質の溶出の前に、洗い出される。しかしながら、本発明において用いられているような、上記の好ましいSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)の吸着剤等のような、TNBPおよび洗剤の両方を同時に効率的に除去できる特定の吸着剤の使用を伴うことにより、上記の溶媒/洗剤の工程はその製造プロセスの中のいずれの場所においても行なうことができる。
【0122】
また、上記の溶媒/洗剤の処理を上記プロセスの終点において配置することは、処理される精製されたタンパク質の量が当然に相当に減少されるので、比較的に少量のTNBPおよび洗剤を必要とするという利点を有する。このことは溶媒/洗剤の薬品を除去するために必要な吸着剤の量も釣り合って減少する。また、TNBPに対する曝露も減少される。この場合に、抗D免疫グロブリンの40リットルのフルスケールのロットは、900リットルの開始用のたくわえられた血漿を処理するために用いられる溶媒/洗剤の薬品の量、の1/20よりも少ない量を必要とすることになる。
【0123】
なお、上記のウイルス不活性化の工程を上記製造プロセスの終点に配置することにより得られる溶媒/洗剤における減少よりもさらに、本発明はその減少された量のTNBPおよびトリトンX−100(Triton X-100)の両方によるウイルス不活性化の速度を評価している。
【0124】
本明細書におけるデータは、BVDVおよびPRVを伴う初期的な実験が、1.0%のトリトンX−100(Triton X-100)および0.3%のTNBPの標準的な濃度の1/50程度に低いトリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPの希釈物が検出の限界までそれらのウイルスを不活性化するために十分であったこと、を示したこと、を示している。このデータはまた、上記の不活性化が速やかに生じたことと、任意の与えられたサンプルにおいて生じた実質上の全ての不活性化が最初の2分間以内に起こり、この間隔を過ぎてから付加的な不活性化は全く生じなかったことも、示している(図3〜図6)。
【0125】
上記のシリカ拡散吸着剤のSDR・ハイパー・D・ソルベント−ディタージェント・リムーバル・ソーベント(SDR Hyper D Solvent-Detergent Removal Sorbent)(シファーゲン社(Ciphergen))は上記の溶媒/洗剤により処理されている材料からトリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPの両方を同時に除去する有効な手段である。このSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)の溶媒/洗剤の存在を伴わないウイルスの滴定量に関する効果は、標準の濃度のトリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPを除去するために用いられている割合よりも小さい割合で、そのSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)のカラムにウイルスによりスパイクされたサンプルを通過させることにより決定されている。このように、通常の量よりも少ない量を用いることは上記のサンプルからのウイルスのあらゆる除去を強調することになる。この結果、BVDVにおいては著しい減少はなく(図3および図5)、PRVにおいては約対数1の減少があった(図4)。なお、このPRVの損失は、おそらく、吸着剤による固定を生じる、そのPRVの大きさ(120〜200nm)に帰することができ、比較的に小さいBVDV(50〜70nm)は固定されない。本発明者はまた、15℃におけるインキュベーションの時間がPRVの除去における決定因子であるということ、も観察している。
【0126】
最初の実験がその試験された最低の溶媒/洗剤の希釈(1/50)に対する不活性化を示しているので、BVDVおよびPRVを伴う第2の組の実験においては、溶媒/洗剤の付加的な希釈(1/100および1/200)が評価されている。さらに、溶媒/洗剤により処理された後のサンプルはその溶媒/洗剤の薬品を除去するために廃棄可能なSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)カラムの中に通されている。このカラムの処理は、処理されるサンプルが、緩衝液中においてこれらを1/100に希釈するのではなく、希釈されていない状態で試験されることを可能にするので、そのウイルス・アッセイの感度を高める。これにより、BVDVのアッセイの感度は対数2〜3高まり(図6)、PRVのアッセイは対数1高まった。この、予想された対数2〜3ではなく、PRVにより見られた対数1の感度の上昇はSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)に帰される対数1のウイルスの減少に一貫している。つまり、上記の1/100および1/200の希釈の溶媒/洗剤の処理は不完全な不活性化を与えている。また、最初の実験において検出の限界までBVDVの不活性化を示していた溶媒/洗剤の1/50の希釈もこの時点においてその高められた感度により不完全な不活性化を示した(図5)。一方、PRVは1/50の希釈における検出の限界まで完全な不活性化を示し続けた。
【0127】
前濾過により調整されているウイルスの汚染により、上記吸着剤の処理を最適化できることが可能になる。すなわち、この処理の費用および時間は、比較的に少ない試薬を添加することと、インキュベーションの時間を短縮することと、試薬を除去するために必要とされる樹脂の量を減らすことと、により減少できる。
【0128】
減少された試薬の濃度において上記の処理が確固としていること、および、比較的に刺激の弱いインキュベーションの条件が、上記の溶媒/洗剤の環境の中における最初のインキュベーションの後の第2のウイルスのスパイクを行なうことにより、要求されている。すなわち、このような二重の課題が、減少された溶媒/濃度およびインキュベーションの時間においてもその処理が確固としていること、を強化している。例えば、以下の表2および実施例2を参照されたい。
【0129】
【表1】

【0130】
本発明者においては、通常の0.3%のTNBPおよび1.0%のトリトンX−100(Triton X-100)よりも50倍低い濃度にされている溶媒/洗剤の濃度が比較的に短い期間において相当な不活性化を結果として生じている。
【0131】
近年における北アメリカ大陸の米国における西ナイル・ウイルスの増加された出現の結果として(ビッガースタッフ(Biggerstaff)他,トランスフュージョン(Transfusion),42巻,8月号,2002年,p.1019〜1026)、本発明者はWNVおよびBVDVの両方のウイルスにおける溶媒/洗剤の効果を比較している。また、本発明者は、BVDVおよび西ナイル・ウイルスがそれぞれの生理化学的な特性において極めて類似しているという、別の研究者(レミントン,K,M(Remington, K, M)他,ボックス・サング(Vox Sang),2004年,7月号,87(1)巻,p.10〜18)の結果も確認している。この類似性はこれら両方のウイルスの不活性化の速度のプロファイルを比較することにより観察できる。これらについては、図3〜図6を比較されたい。また、不活性化するために必要とされる時間および溶媒/洗剤の濃度における類似性が観察されている。
【0132】
この願書の全体を通して、種々の特許および研究論文が参照されている。これらの開示は、それぞれの内容全体において、本明細書に記載および特許請求されている本発明の出願の日付までに当業者において知られている技術の段階をさらに完全に説明するために、このようにして、この願書の中に参照により組み入れられている。
【0133】
以下の実施例は例示のみの目的のために記載されており、本発明の範囲の限定として見られることを目的としていない。
【実施例】
【0134】
[実施例1]
以下の変更を伴って、米国特許第6,096,872号におけるように実施された限外濾過によるウイルスを除去したRhoGAM(登録商標)の製造。
【0135】
改良されたコーン(Chon)精製法を用いて上記工程の「沈殿物IIのペースト」まで精製されているRho(D)免疫グロブリンの6.802kgを20.406lの4℃に冷却された注射用水(米国薬局方)の中に再懸濁した。その後、この混合物を4時間にわたり渦により混合(発泡無し)して、その後の使用まで4℃で貯蔵した。
【0136】
その後、SIPの処置に続いて、約27.208lの容積の再懸濁された沈殿物IIの量に対応して、バイリゾルブ−180R(Viresolve-180R)モジュール(20個の重ね合わせ物)を設置した。さらに、2個のバイオマックス−50(Biomax-50)のカセットをペリコン(Pellicon)CIP/SIPモジュール(3)の代わりに設置した。この場合に、上記のバイリゾルブ−180R(Viresolve-180R)モジュールは、上述されているように、塩素により衛生化されていてすすぎ洗いされている。また、バイオマックス−50(Biomax-50)の膜は注射用水(米国薬局方)により洗われている。さらに、塩化ベンズアルコニウム(Benzalkonium Chloride)の決定(ロッカル(Roccal))が最終の透過した水洗いのサンプルに関して行なわれており、この塩化ベンズアルコニウム(Benzalkonium Chloride)の含有量は8ppmであった。その後、拡散試験が上記バイオマックス−50(Biomax-50)のカセットに関して行なわれており、放出速度が上述されているように計算されて、放出された全体の量は5分以内に22ccであり、実際の放出速度は4.4cc/分であった。
【0137】
バイリゾルブ−180(Viresolve-180)を使用するウイルス除去の限外濾過を245lの50mMのNaCl−グリシンの緩衝液に関して行なった。まず、ウイルス除去用の再循環タンク(T−1)を245lの50mMのNaCl−グリシンの緩衝液により満たした。この緩衝液はタンクT−1の中において再循環されるのと同時に、その緩衝液の透過物が既に衛生化されている50mMのNaCl−グリシンの緩衝液の貯蔵タンクのオフ・ラインの中に集められる。この集められた透過した緩衝液の量は213lであった。その後、ウイルスを除去した緩衝液を約63〜78°F(17.2〜25.6℃)の周囲温度において貯蔵した。
【0138】
次に、150mMのNaCl−グリシンの緩衝液(調製については実施例1Aを参照されたい)の水洗いをその緩衝液のフィード・タンクをウイルス除去用の再循環タンク(T−1)に取り付けることにより行なった。この場合に、水洗いするために、60lの150mMのNaCl−グリシンの干渉液によりタンクT−1を満たした。
【0139】
その後、沈殿物IIの再懸濁物を以下のように処理した。まず、この沈殿物II(6.802kg)を、完全に懸濁するまで、55分間にわたり、発泡させることなく渦を作る速度で混合した。次に、屈折率によるタンパク質の割合(mg/mlのタンパク質)の測定をその沈殿物IIの再懸濁物に関して手持型のプロトメーター(protometer)を用いて行ない、その値は59mg/mlであった。
【0140】
さらに、5.0mg/mlのタンパク質の濃度を達成するために、希釈された沈殿物IIの必要とされる量を計算した。
【0141】
【数5】

あるいは
【0142】
【数6】

【0143】
次に、150mMのNaCl−グリシンの緩衝液の必要とされる量を以下の式を用いて計算した。
必要とされる希釈された沈殿物IIの量(l) − 再懸濁された沈殿物IIの量(l) = 添加するための緩衝液の量(l)
あるいは
(321.054) − (27.208) = 293.846(l)の添加する緩衝液
【0144】
以上の場合において、タンパク質の濃度は約5.9%であった。
【0145】
この結果、緩衝液(293.846l)を27.208lの希釈された沈殿物IIに添加して、30分間にわたり発泡させることなく渦を作るために十分な速度で混合した。
【0146】
上記ウイルス除去用の再循環タンクを107lの希釈された沈殿物IIにより満たした。その後、このウイルス除去用の再循環タンク(ポンプ番号1)を、使用されている20個の重ね合わせのバイリゾルブ−180(Viresolve-180)のモジュールに対して80%のフィード・ポンプの流量で、始動した。次に、このウイルス除去用の浸透ポンプの流量(ポンプ番号2)を、1.6psi(1.1×104 パスカル)よりも低い初期の経膜的な圧力(経膜圧)を維持するために20個の重ね合わせのモジュールに対して0.91LPM(リットル/分)(20%)に一定比で変えた。なお、維持されている実際の圧力は1.2psi(8.3×103 パスカル)であった。また、製品のポンプ(ポンプ番号3)の流量は制御の流量の水準に合わせるように調節されている。さらに、経膜圧は、上記ウイルス除去用の再循環タンクの残留物の側におけるタンパク質濃度をモニターすることにより、処理の全体を通して3.0psi(2.07×104 パスカル)よりも低く維持されている。加えて、イン−ラインのUVモニターが観測されて、4.5〜5.5mg/mlの範囲にタンパク質の含有量を一致させるように6.4〜7.7の吸光度の単位の範囲に維持されている。
【0147】
上記のウイルス除去タンクからおよそ75lの透過物を限外濾過タンクの中に満たした後に、限外濾過フィード・ポンプ(ポンプ番号5)を10%において始動した。次に、このポンプの流量を、限外濾過の透過物の流量が上記ウイルス除去の透過物の流量に等しくなるまで、高めて(25%まで)、その後、その量を維持するために25%に設定した。この場合に、この限外濾過の透過物の流量は0.91LPMであり、ウイルス除去の透過物の流量も0.91LPMであった。また、維持されている上記限外濾過タンクの一定の容積は152lであった。さらに、上記限外濾過の供給圧力は4.0psi(2.76×104 パスカル)であり、限外濾過の透過物の圧力は0.1psi(6.9×102 パスカル)であり、限外濾過の残留物の圧力は0.7psi(4.83×103 パスカル)であった。
【0148】
次に、タンクT−1が約15〜20lを収容した後に、定容ダイアフィルトレーションを1回だけそのタンクT−1の中において行なった。このダイアフィルトレーションを、150mMのNaCl−グリシンの緩衝液の最小限で3回の緩衝液の交換(約60lの全体の量)により、維持した。その後、このダイアフィルトレーションが完了すると、上記ウイルス除去タンクのポンプおよびミキサーを停止した。このウイルス除去再循環タンクの一定の容積は15lに維持されていた。また、交換された全体の緩衝液の量は45lであった。
【0149】
その後、タンクT−2の中のバルクの材料を再循環し、これにより、50mMのNaCl−グリシン緩衝液のウイルスを除去したロットと共に、このタンクT−2の中における定容ダイアフィルトレーションにより濃縮した。このバルクの材料は、これにより、上記の再懸濁された沈殿物IIの元の開始の量ぐらいに濃縮されていた。次に、濾過物の弁を全開し、限外濾過フィード・ポンプの流量を70%にして、その供給圧力を30psi(2.07×105 パスカル)よりも低く維持し、その圧力差を、残留物のループに対して背圧を加えることにより、14〜17psi(9.66×104 〜1.17×105 パスカル)に維持した。その後、上記限外濾過の定容カラムを22lに維持して、交換した全体の緩衝液の量を121.2lにした。次に、上記の限外濾過の透過物のサンプルに関してデジタルの導電率の決定を行なうために、タンクT−2からサンプルを抜き取った。この結果は5.47×10-3mhos/cmであった。次に、量の水準を合わせてから、限外濾過の透過物を止めて、そのバルクの材料を再循環により混合し、10.5mlのサンプルを無菌の状態で取り出した。その後、タンパク質の割合の決定を、上記サンプルの0.5mlのアリコートに関して手持型のプロトメーターを用いて、屈折率により行なった。この結果、タンパク質の濃度は7.9%であった。
【0150】
上記タンクT−2からのバルクの材料を仮の容器の中に取り出し、その満たされた容器の重さを量った(全体の重量)。次に、そのバルクの材料をタンクT−2に戻して、空の仮のバルク材料の容器の重さを量った。
全体の重量(kg) − 空の容器の重量(kg) = バルクの材料の重量(kg)
あるいは
58.180 − 25.24 = 32.94(kg)のバルクの材料の重量
【0151】
次に、5%のタンパク質濃度を達成するためのバルクの材料の必要とされる最終的な量を以下のように計算した。
【0152】
【数7】

【0153】
その後、初期のpH値の決定を、最初に上記のアリコートを0.9%のNaClにより1:10に希釈して、0.5N(規定)のHClまたは0.5NのNaOHの1:100の希釈液により6.3〜6.4のpH値に滴定することにより、上記の残りのサンプルのアリコートに関して行なった。この結果、pH値は6.55であった。
【0154】
次に、上記のpH値を調節するために、0.9%のNaCl中における0.5NのHClの1.35mlの滴定液を加えて、最終的なpH値を6.35にした。この場合に、調節が必要であれば、そのバルクの材料のpH値を調節するために必要とされる希釈されていない0.5Nの試薬の量は以下のように計算される。
必要とされる最終的な量(l)− 必要とされる1:100の滴定液の量(ml) = 希釈されていない0.5Nの試薬の量(ml)
あるいは、上記の場合において、
34.128(l) × 1.35(ml) = 46.1(ml)の希釈されていない0.5Nの試薬
【0155】
また、完全性の試験を容認されている方法により上記バイリゾルブ−180(Viresolve-180)のフィルター・モジュールに関して行なった。この完全性の試験の値は1.2以上である必要があり、このモジュールは上述されているように塩素により衛生化されていて、すすぎ洗いされている必要がある。
【0156】
その後、上記バルクの材料を0.801lのウイルスを除去した50mMのNaCl−グリシンの緩衝液により上記の計算されている必要とされる最終的な量に調節して、10分間にわたり混合した。
【0157】
その後、pH値の決定のために、上記バルクの製品の10.5mlのアリコートを無菌の状態で取り出した。このpH値は6.3〜6.4である必要がある。また、2回の読み取りにおける実際のpH値は6.38および6.345であった。
【0158】
最終的なタンパク質の製品は以下のように許容基準を満たしていた。
タンパク質 = 5.3%
pH値: 上記の通り
ガス・クロマトグラムにより決定された場合のメタノール含有量は53.9ppmであった。
ポリソルベート80(polysorbate 80)= 2回の試験において、101.7ppm、102.2ppmであり、平均値は101.9ppmであった。
【0159】
[実施例1A]
実施例1において用いた150mMのNaCl−グリシンの緩衝液を以下のように調製した。
【0160】
調製するための緩衝液の適当な量を以下のように計算した。
[再懸濁したペーストの量(l)×10l] × 2 + 60 = 調製するための緩衝液のおおよその量
[27.208l×10l] × 2 + 60 = 604.16lの調製するための緩衝液
【0161】
さらに、必要とされる材料の量を決定して、較正されていて発熱原を除去されている容器に対して測定した。

[表3]

材料 必要とされる濃度 × ロット・サイズ = 必要とされる量
NaCl 8.87g/l 604.16l = 5,358.90g
アミノ酢酸 15.01g/l 604.16l = 9,068.44g
ポリソルベート80 0.02g/l 604.16l = 12.08g
【0162】
上記ポリソルベート(polysorbate)の秤量容器を数回、全体でおよそ2リットルの注射用水(米国薬局方)によりすすぎ洗いし、それぞれのリンス液のアリコートをバッチに加えて、604lに対して十分な量にした。さらに、以下の材料の量を決定した。

[表4]

材料 必要とされる濃度 × ロット・サイズ = 必要とされる量
1.0NのNaOH 0.125ml/l 604.16l 75.52ml
【0163】
上記の混合物を注射用水(米国薬局方)により上記の量に希釈して、その最終的な量を60分間にわたり混合した。次に、pH値を決定し、この必要条件は6.3〜6.5であった。また、実際のpH値は6.38であった。この場合に、上記の必要条件が満たされなければ、その必要とされるpH値が得られるまで、1.0NのHClまたは1.0NのNaOHを添加することが必要であり、その溶液はそれぞれの添加の後に15〜30分間にわたり混合されて、そのpH値の決定が確認されることが必要である。
【0164】
次に、デジタルの導電率の決定を行ない、25℃における必要条件は14.15〜15.59×10-3mhos/cmである。また、実際の結果は15.18×10-3mhos/cmであった。この場合に、上記の必要条件が満たされなければ、その材料を廃棄して、新しい試薬を調製する必要がある。
【0165】
その後、ポリソルベート80(polysorbate 80)の測定を行ない、この試験サンプルは15〜24ppmのポリソルベート80(polysorbate 80)である必要がある。一方、実際の濃度は19.5ppmであった。
【0166】
[実施例2]
溶媒/洗剤および吸着剤を用いるRhoGAM(登録商標)中のウイルスの不活性化
限外濾過の実行可能性の調査
材料および方法
抗D免疫グロブリン
フルスケール用の改良型のコーン−オンクレイ(Cohn-Oncley)分別法(米国特許第6,096,872号、および本明細書における実施例1および1Aを参照されたい)によりヒト免疫グロブリンを得たのに続き、RhoGAM(登録商標)ウルトラ−フィルタード・Rho(D)・イミューン・グロブリン(ヒューマン)(Ultra-Filtered Rho(D) Immune Globulin (Human))(オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)、ラリタン、ニュージャージー州))を製造するために、バイリゾルブ−180(Viresolve-180)のサイズ排除フィルターを用いるナノフィルトレーションを行なった。この材料を、使用まで、2℃〜8℃において、無菌の条件下に貯蔵した。
【0167】
ウイルスの調製
ウイルスを、上記の免疫グロブリンにスパイキングさせる前に、滴定された保存培養物として調製した。すなわち、ウシ・ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)および西ナイル・ウイルス(WNV)(菌株:NIAID・V−554−110−522、ATCC、マナサス、バージニア州)に対するこれらの保存培養物を業界の標準的な操作手順に従って調製した。
【0168】
上記のオーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス社(Ortho-Clinical Diagnostics)の方法により集められたサンプルに関するTCID50のアッセイを行なう前に、プレートをベロ(Vero)細胞により接種した。次に、試験サンプルを連続的に希釈して、8個、80個または800個の複製ウェルの中に、ウェル1個当たりに50μlで、接種した。また、陰性の対照を、ウェル1個当たりに50μlで、8個の複製ウェルの中に接種した。さらに、陽性の対照である、上記のスパイキング材料と同じロットの保存培養ウイルス、を連続的に希釈して、ウェル1個当たりに50μlで、8個の複製ウェルの中に接種した。次に、上記ウイルスの滴定濃度を決定するために、接種後の5日目における細胞変性効果(CPE)についての培養物の観察を採用した。この場合に、陰性の対照の培養物を含む有効な試験のための基準はウイルスにより誘発されたCPEが存在しないことを示す必要がある。一方、陽性の対照の培養物はウイルスにより誘発されたCPEが存在することを示す必要がある。陽性の対照のウイルスの滴定濃度はそのウイルスの確認されている滴定濃度の±対数1.0の範囲内である必要がある。
【0169】
溶媒/洗剤の吸着剤
上記の溶媒/洗剤により処理したサンプルの一部からトリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPを除去するために溶媒/洗剤の吸着剤を用いた。すなわち、各サンプルにおいて、再懸濁されたSDR・ハイパー・D・ソルベント−ディタージェント・リムーバル・ソーベント(SDR Hyper D Solvent-Detergent Removal Sorbent)(シファーゲン・バイオシステムズ社(Ciphergen BioSystems)、フレモント、カリホルニア州)の1.0mlのアリコートを3mlのボンド・エルート・リザーバー(Bond Elut Reservoir)(バリアン・インコーポレイテッド(Varian Inc.)、パロ・アルト、カリホルニア州)に加えた。次に、上記のSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)を4mlの50mMのNaCl−グリシン緩衝液により洗浄した。その後、2mlの溶媒/洗剤により処理したサンプルを上記のリザーバー(貯蔵器)に加えて、約5分間にわたりSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)の中を通して自然に重力により供給したのに続いて、50mMのNaCl−グリシンの緩衝液による1.0mlの洗浄を行なった。その後、このサンプルおよび緩衝液の洗浄物を集めて、標準的なTCID50の方法を用いてウイルスについてアッセイした。次に、上記のリザーバーを使用後に廃棄した。例えば、IgGの溶媒/洗剤の処理のフローシートである図1を参照されたい。また、このIgGの溶媒/洗剤の処理の方法は実施例4において見られる。
【0170】
溶媒/洗剤の処理
溶媒/洗剤の原液の調製
溶媒/洗剤の試薬を10%の洗剤および3%のTNBPを含有している原液として調製し、この原液の一部を9部の処理される材料に加えて、1%の洗剤および0.3%のTNBPの最終の濃度にした。なお、上記の原液は、10.0gの洗剤(トリトンX−100(Triton X-100))をおよそ70mlの50mMのNaCl−グリシン緩衝液(この緩衝液は最終的なヒト免疫ガンマ・グロブリン(RhoGAM(登録商標)またはMICRhoGAM(登録商標))の配合物において用いられる緩衝液であり、米国特許第6,046,872号および本明細書における実施例1を参照されたい)に加えることにより、調製されている。上記の粘性の洗剤を上記の緩衝液の中に溶解させるためには、かなり激しい攪拌が必要とされた。溶解した後に、ふたたび、かなり激しい攪拌を伴って、3.0gのTNBPをおよそ10分間にわたりゆっくりと加えた。このようにして、上記の溶媒/洗剤の原液を調製して、室温において貯蔵し、使用の前に混合した。なお、この溶液はその洗剤の曇り点によりいくぶん濁って見える可能性がある。
【0171】
3%のトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)(TNBP)(アルドリッチ・ケミカル・コーポレーション(Aldrich Chemical Co.)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)を伴う10%のトリトンX−100(Triton X-100)(シグマ・ケミカル・コーポレーション(Sigma Chemical Co.)、セント・ルイス、ミズーリー州)の原液と、0.3%のTNBPを伴う1%のトリトンX−100(Triton X-100)と、を50mMのNaCl−グリシンの緩衝液(pH値:6.4)の中において調製した。これらの溶液は、使用まで、15℃〜30℃において貯蔵した。
【0172】
次に、1/2000の製造スケールにおいて、溶媒/洗剤の処理を行なった。まず、ウイルスを1:20の比率において上記の免疫グロブリンにスパイクした。次に、このウイルスによりスパイクされた免疫グロブリンの20mlのアリコートを15℃に平衡状態にして、溶媒/洗剤の溶液(2.0ml)を、激しい攪拌を伴って、ゆっくりと加えた。この溶媒/洗剤の7種類の濃度を評価し、アリコートを、ウイルス・アッセイのために、種々の間隔において取り出した。なお、ウイルスによりスパイクされたIgGの各サンプルにおけるウイルス不活性化の方法のフロー・シートについて、図8を参照されたい。
【0173】
各試行において2回または3回の実験を伴う、試行1、試行2および試行3、として示されている3種類の別々のウイルス不活性化の試行が行なわれている。
【0174】
[試行1]
試行1においては(図3および図4を参照されたい)、BVDVおよびPRVが標準的な濃度の溶媒/洗剤(1.0%のトリトンX−100(Triton X-100)、0.3%のTNBP)およびこの標準的な濃度の1:10、1:30および1:50の高さを伴ってそれぞれ試験されている。この場合に、ウイルスは、1:20の希釈率において、溶媒/洗剤を伴わずに、その負荷サンプルの中にスパイクされている。2回の実験のために必要とされるこれらの負荷材料およびウイルスの全体の量は、それぞれ、125mlおよび6.6mlであった。また、これらのそれぞれの場合におけるウイルスの負荷は対数7である。次に、全ての濃度に対して溶媒/洗剤の添加のすぐ後およびその添加から60分後と、1:10および1:30の濃度に対して10,20,30および180分後と、において2.0mlのアリコートをそれぞれ得た。これらの時間の間に、各試験サンプルは5℃に維持されていた。加えて、溶媒/洗剤で処理されていないサンプルを、樹脂がウイルスの滴定量に何らかの影響を及ぼすか否かを決定するために、SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)カラムの中に通過させた。その後、全てのサンプルを緩衝液中において1:100に即時に希釈した。これらについては、図4(BVDV)および図5(PRV)を参照されたい。
【0175】
[試行2]
試行2においては、BVDVおよびPRVが標準的な濃度の溶媒/洗剤およびこの標準的な濃度の1:10、1:50、1:100および1:200の高さを伴ってそれぞれ試験されている。この場合に、全ての濃度に対して溶媒/洗剤の添加のすぐ後およびその添加から10分後と、1:50の濃度に対して20分後と、1:100および1:200の濃度に対して20および60分後と、においてアリコート(2.0ml)をそれぞれ得ている。これらのインキュベーションの間に、各サンプルは25℃に維持されていた。さらに、各試験の間隔において2個の2mlのサンプルを得た。この場合に、1個のサンプルは緩衝液中において1:100に即時に希釈されている。また、第2の2.0mlのアリコートはSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)カラムの中に即座に通されている。これらについては、BVDVについての図5を参照されたい。
【0176】
[試行3]
試行3においては、BVDVが標準的な溶媒/洗剤の濃度の1:10、1:20および1:50の高さにおいてそれぞれ試験されている。また、WNVは標準的な濃度の溶媒/洗剤およびこの標準的な濃度の1:10、1:20、1:50、1:100および1:200の高さにおいてそれぞれ試験されている。この場合に、全ての濃度に対して溶媒/洗剤の添加のすぐ後およびその添加から10分後と、1:20および1:50の濃度に対して20分後と、1:100および1:200の濃度に対して20および60分後と、において2.0mlのアリコートをそれぞれ得ている。これらのインキュベーションの間に、各サンプルは15℃に維持されている。さらに、各試験の間隔において2個のサンプルを得た。この場合に、1個のサンプルは緩衝液中において1:100に即時に希釈されている。また、第2の2.0mlのアリコートはSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)カラムの中に即座に通されている。
【0177】
結果
上記の仮性狂犬病ウイルス(PRV)およびウシ・ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)(図5を参照されたい)による最初の調査は、溶媒/洗剤の標準的な濃度ならびにその標準的な溶媒/洗剤の濃度の1:10、1:30および1:50の高さが検出の限界まで上記両方のウイルスを不活性化していること、を示している。さらに、この実験において試験されている対照の内の一つは、SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)カラムの中に通されているウイルスによりスパイクされたサンプル(溶媒/洗剤により処理されていない)であった。このデータ(図示されていない)は、SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)がBVDVの滴定量に影響を及ぼさないこと、を示している。
【0178】
上記の試行2において、BVDVは標準およびその1:10の高さの溶媒/洗剤の濃度により検出の限界まで不活性化されている。また、1:50の溶媒/洗剤の濃度のサンプルは対数4.63の減少を示しているが、この値は検出の限界ではない。一方、PRVは標準の溶媒/洗剤の濃度ならびにその1:10および1:50の溶媒/洗剤の高さにより検出の限界まで不活性化されていた。
【0179】
上記の試行3は、1:20の高さの溶媒/洗剤の濃度において検出の限界までの、さらに、1:50の高さの溶媒/洗剤の濃度において対数4.69の減少の、BVDVの不活性化を示していて、上記試行2の結果にぴったりと一致している。さらに、1:10の高さの溶媒/洗剤の濃度は、意外にも、検出の限界まで不活性化を示していない。一方、WNVは標準の溶媒/洗剤の濃度ならびにその1:10および1:20の溶媒/洗剤の高さにより検出の限界まで不活性化されている。なお、全ての試行は2回または3回の実験を伴っている。
【0180】
【表2】

【0181】
さらに、その後の調査において、RhoGAM(登録商標)中における、表6において以下に示されている溶媒/洗剤の試薬の最終的な濃度が評価されている。
【0182】
【表3】

【0183】
上記の試行1によるデータ(図3および図4、および表6を参照されたい)は、標準の濃度の溶媒/洗剤ならびにその1:10の濃度が添加から2分以内に検出の限界までBVDVおよびPRVの両方を不活性化することにおいて有効であること、を示している。加えて、1:50の濃度により、PRVは10分以内に検出の限界まで減少されるが、不活性化されるBVDVの量はそれよりも高い濃度の溶媒/洗剤ほどには多くならない。また、試行2においては(図5および図6、および表6を参照されたい)、BVDVの実験が1:10および1:50の濃度を伴って繰り返されており、1:20の濃度が加えられている。これらのデータは1:10の濃度における完全な不活性化に一致しており、1:20の濃度においても完全な不活性化を示している。さらに、上記の試行1におけるのと同様に、1:50の濃度は不完全な不活性化を生じている。また、WNVのデータも同様の結果を示しており、1:10および1:20の濃度において、2分以内に完全な不活性化を生じている。
【0184】
さらに、上記データのグラフから、一般に、ウイルスの不活性が生じる場合はいずれも、添加後の最初の2分以内に起こり、その溶媒/洗剤に対する追加の曝露時間によるその後の減少を伴わないことが分かること、が明らかである。また、上記の溶媒/洗剤の曝露により本質的に影響を受けないウイルスの集団が存在すると考えられる。さらに、上記の溶媒/洗剤およびウイルスの混合物に2回目のスパイクが加えられると、そのウイルスの負荷は、さらに多くの溶媒/洗剤の添加を伴わなくても、再び著しく減少される。(表6を参照されたい。)
【0185】
[実施例3]
カラムの能力の調査
トリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPを除去する上記SDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)の吸着剤の能力を評価するために実験を行なった。これらの結果は、本発明者が溶媒および洗剤の有効な除去のために必要とされる材料のおよその量を決定すること、を可能にしている。まず、50mMのNaCl−グリシンの緩衝液中における、10%のトリトンX−100(Triton X-100)/3.0%のTNBP、の15mlを、22℃において混合しながら、135mlのRhoGAM(登録商標)のバルクの製品(実施例4の方法により得られている)に加えた。この添加の速度は1.5ml/分であった。さらに、1時間にわたる混合の後に、その145mlを、1.0ml/分の流量で、予備調整されている1×10cmのSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)のカラムの中をポンプにより通過させた。次に、アリコート(10ml)をそのカラムから集めて、トリトンX−100(Triton X-100)およびTNBPについてアッセイした。図8において示されているように、トリトンX−100(Triton X-100)の漏出は70mlが上記のカラムを通過した後に観察されている。一方、TNBPについては、全く漏出が見られず、トリトンX−100の濃度が、必要とされる吸着剤の量を計算することにおいて、重要なパラメータになることが示されている。
【0186】
[実施例4]
溶媒/洗剤の処理および吸着剤を用いるその除去によるRhoGAM(登録商標)の製造
完全な製造スケールのおよそ1/8である試験的なロットを製造した。まず、およそ1.3kgのIgGの沈殿物IIのペーストをRhoGAMの製造プロセスにより得た。次に、このペーストを注射用水中に再懸濁する前に2週間にわたり−20℃に維持した後に、ポリソルベート80(polysorbate 80)を含有している高濃度の塩の緩衝液(150mMのNaCl−グリシン)の中に希釈した。その後、バイリゾルブ(Viresolve)による限外濾過、ダイアフィルトレーションによる緩衝液の交換およびバイオマックス−50(Biomax-50)によるバルクの材料の濃縮を溶媒/洗剤の処理の前に行なった。
【0187】
上記バイリゾルブ(Viresolve)のサイズ排除限外濾過をミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)により提供されているバイリゾルブ・バイラス・リムーバル・モジュール・ユーザー・ガイド・P36451・REV・4/02(Viresolve Virus Removal Module User Guide P36451 REV 4/02)に記載されている説明の通りに2〜1平方フィートの標準面積のモジュールの設備において行なった。この限外濾過処理はフルスケールの実験(実施例1を参照されたい)中に用いられる条件と同様の条件の下に行なわれており、その横断流および透過流は使用されるモジュールの中の膜の比較的に小さい寸法を考慮に入れて調節されている。また、経膜的な圧力(経膜圧)は3psi(2.07×104 パスカル)よりも低く維持されており、これに匹敵するふるい分けがその実験の全体を通して見られた。
【0188】
その後、バイオマックス−50K(BioMAX 50K)(50kD)の膜を伴うミリポア・ペリコン・2・ミニ・システム(Millipore Pellicon 2 Mini System)を用いて、ウイルスを除去した免疫グロブリンを3〜5リットルに濃縮した後に、4.5倍の量の50mMのNaCl−グリシンの緩衝液に対してダイアフィルトレーションを行なった。さらに、この操作中に、3個の0.1m2 のミリポア・バイオマックス−50(Millipore BioMAX-50)のフィルターを用いた。
【0189】
上記の処理したバルクの材料は溶媒/洗剤の処理の開始の前に21℃であった。その後、このバルクの材料を混合しながら、10%のトリトンX−100(Triton X-100)/3.0%のTNBP、の原液をそのバルクの材料に蠕動ポンプにより加えることにより、0.2%のトリトンX−100(Triton X-100)/0.06%のTNBP、の最終的な濃度にした。次に、このRhoGAMのバルクの材料を1時間にわたり混合した後に、ポンプによりSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)のカラムの中に通過させて、溶媒/洗剤を除去した。このSDR・ハイパー・D(SDR Hyper D)のカラムの通過の後に、その製品を50mMのNaCl−グリシンにより3倍にダイアフィルトレーションしてから、およそ5%に濃縮した。上記のカラムはまたポリソルベート80(polysorbate 80)も1ppmよりも低く除去する。このポリソルベート80(polysorbate 80)は10分の期間にわたり2000ppmの原液の中からポンプ処理により、上記の製品の中に入れ替えられていたものである。
【0190】
〔実施の態様〕
(1)ウイルスを含んでいる血液製品の中のウイルスの不活性化の方法であって、
前記血液製品を、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、0.006から0.3%よりも低いジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および0.01から1.0%よりも低い非イオン性の洗剤に接触させる処理を含み、前記血液製品タンパク質の収率が少なくとも90%である、方法。
(2)実施態様1に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)がトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)であり、前記非イオン性の洗剤がオキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol)である、方法。
(3)実施態様2に記載の方法であって、
前記オキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol)がトリトン(Triton)(登録商標)である、方法。
(4)実施態様1に記載の方法であって、
前記血液製品が、0.003から0.3%よりも低いジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)および0.02から1.0%よりも低い非イオン性の洗剤、に接触させられる、方法。
(5)実施態様4に記載の方法であって、
前記血液製品が、0.06%のジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)および0.2%の非イオン性の洗剤、に接触させられる、方法。
【0191】
(6)実施態様1に記載の方法であって、
前記血液製品が、不安定なタンパク質を含む、血液タンパク質、血漿濃縮物、血液成分、血漿含有製品および血漿フラクション含有製品を含有している、全血、血漿またはこれらのフラクション、濃縮物または誘導体と、免疫グロブリンと、血漿の分別による沈殿物と、血漿の分別による上澄み液と、血清と、低温沈殿物と、低温上澄み液と、細胞溶解産物と、モノクローナルな抗体と、ポリクローナルな抗体と、から成る群から選択される、方法。
(7)実施態様1に記載の方法であって、
C−18のカラムの中における通過と、膜を通るダイアフィルトレーションと、クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、アフィニティ・クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、限外濾過と、濾過および吸着と、吸着剤の使用と、から選択される手段により、前記血液製品のタンパク質から前記溶媒および洗剤を除去する工程を付加的に含む、方法。
(8)実施態様7に記載の方法であって、
前記吸着剤がシリカ・ビーズの吸着材料である、方法。
(9)実施態様6に記載の方法であって、
前記血液製品が免疫グロブリンである、方法。
(10)実施態様1に記載の方法であって、
前記溶媒および洗剤に前記血液を接触させる前に、その血液製品の精製の工程を付加的に含む、方法。
【0192】
(11)実施態様10に記載の方法であって、
前記精製が、濾過、直接的サイズ排除濾過、タンジェンシャル・サイズ排除濾過、デプス・フィルトレーション、イオン交換クロマトグラフィ、沈殿アフィニティ・クロマトグラフィ、ナノフィルトレーション、タンジェンシャル・フロー・フィルトレーション、アフィニティ・クロマトグラフィ、電気泳動、またはこれらの組み合わせ、から成る群から選択される、方法。
(12)実施態様11に記載の方法であって、
前記精製がナノフィルトレーションである、方法。
(13)ウイルスを含んでいる免疫グロブリンの中のウイルスの不活性化の方法であって、
前記免疫グロブリンに関してナノフィルトレーションを行なう処理と、その免疫グロブリンを、0.06%のトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)および0.2%のトリトン(Triton)(登録商標)に接触させる処理と、その免疫グロブリンからそれらのトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)を除去する処理と、を含み、その免疫グロブリンの収率が少なくとも90%である、方法。
(14)実施態様13に記載の方法であって、
C−18のカラムの中における通過と、膜を通るダイアフィルトレーションと、クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、アフィニティ・クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、限外濾過と、濾過および吸着と、吸着剤の使用と、から選択される手段により、前記トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)が前記免疫グロブリンから除去される、方法。
(15)実施態様14に記載の方法であって、
前記トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)がシリカ・ビーズの吸着材料を用いて前記免疫グロブリンから除去される、方法。
【0193】
(16)実施態様15に記載の方法であって、
前記シリカ・ビーズの吸着材料が前記免疫グロブリンから除去される、方法。
(17)ウイルスを含んでいる血液製品の中のウイルスの不活性化の方法であって、
(a)前記血液製品に関してサイズ排除ナノフィルトレーションを行なう処理と、
(b)前記工程(a)のナノフィルトレーションの濾過物に、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および非イオン性の洗剤を混合する処理と、
(c)前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および非イオン性の洗剤を除去する処理と、を含む、方法。
(18)実施態様17に記載の方法であって、
前記血液製品が免疫グロブリンである、方法。
(19)実施態様17に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)がトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)であり、前記非イオン性の洗剤がオキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol)である、方法。
(20)実施態様19に記載の方法であって、
前記オキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol)がトリトン(Triton)(登録商標)である、方法。
【0194】
(21)実施態様20に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒が0.006から0.3%よりも少なく存在していて、前記非イオン性の洗剤が0.01から1.0%よりも少なく存在している、方法。
(22)実施態様21に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)が0.003から0.3%よりも少なく存在していて、前記非イオン性の洗剤が0.02から1.0%よりも少なく存在している、方法。
(23)実施態様22に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)が0.06%で存在していて、前記非イオン性の洗剤が0.2%で存在している、方法。
(24)実施態様17に記載の方法であって、
C−18のカラムの中における通過と、膜を通るダイアフィルトレーションと、クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、アフィニティ・クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、限外濾過と、濾過および吸着と、吸着剤の使用と、から選択される手段により、前記トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)が前記免疫グロブリンから除去される、方法。
(25)実施態様24に記載の方法であって、
シリカ・ビーズの吸着材料を用いて、前記トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)が前記免疫グロブリンから除去される、方法。
【0195】
(26)実施態様25に記載の方法であって、
前記シリカ・ビーズの吸着材料が前記免疫グロブリンから除去される、方法。
(27)ウイルスを含んでいる免疫グロブリンの製品の中のウイルスの不活性化の方法であって、
(a)前記免疫グロブリンを、賦形剤を含有している高いイオン強度の緩衝液に、混合する処理と、
(b)前記工程(a)の製品に関してサイズ排除ナノフィルトレーションを行なう処理と、
(c)前記工程(b)のナノフィルトレーションの濾過物に、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、0.06%におけるトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)および0.2%におけるトリトン(Triton)(登録商標)を混合する処理と、
(d)前記トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)を除去するために、前記工程(c)の製品にシリカ・ビーズの吸着材料を混合する処理と、
(e)前記製品から前記吸着材料を除去する処理と、を含む、方法。
(28)ウイルスを含んでいる血液製品の中のウイルスの不活性化の方法であって、
(a)前記血液製品に、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および非イオン性の洗剤を混合する処理と、
(b)前記血液製品から前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および非イオン性の洗剤を除去する処理と、を含む、方法。
(29)実施態様28に記載の方法であって、
C−18のカラムの中における通過と、膜を通るダイアフィルトレーションと、クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、アフィニティ・クロマトグラフィの支持体の上への吸着と、限外濾過と、濾過および吸着と、吸着剤の使用と、から選択される手段により、前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および非イオン性の洗剤が前記血液製品から除去される、方法。
(30)実施態様29に記載の方法であって、
前記血液製品にシリカ・ビーズの吸着材料を混合することにより、前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)および非イオン性の洗剤が前記血液製品から除去される、方法。
【0196】
(31)実施態様30に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)がトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)であり、前記非イオン性の洗剤がオキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol)である、方法。
(32)実施態様31に記載の方法であって、
前記オキシエチル化アルキルフェノール(oxyethylated alkylphenol)がトリトン(Triton)(登録商標)である、方法。
(33)実施態様32に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒が0.006から0.3%よりも少なく存在していて、前記非イオン性の洗剤が0.01から1.0%よりも少なく存在している、方法。
(34)実施態様33に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)が0.003から0.3%よりも少なく存在していて、前記非イオン性の洗剤が0.02から1.0%よりも少なく存在している、方法。
(35)実施態様34に記載の方法であって、
前記ジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)が0.06%で存在していて、前記非イオン性の洗剤が0.2%で存在している、方法。
【0197】
(36)実施態様28に記載の方法であって、
前記血液製品が免疫グロブリンである、方法。
(37)実施態様30に記載の方法であって、
前記拡散吸着剤を除去する処理を付加的に含む、方法。
(38)ウイルスを含んでいる免疫グロブリンの製品の中のウイルスの不活性化の方法であって、
(a)前記免疫グロブリンに、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、0.06%におけるトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)および0.2%におけるトリトン(Triton)(登録商標)を混合する処理と、
(b)前記トリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)およびトリトン(Triton)(登録商標)を除去するために、前記工程(a)の製品にシリカ・ビーズの吸着材料を混合する処理と、
(c)前記製品から前記吸着材料を除去する処理と、を含む、方法。
(39)ウイルスを含んでいる血漿の中のウイルスの不活性化の方法であって、
(a)前記血漿に、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、0.2%から1.0%よりも低いトリ−n−ブチル・ホスフェート(tri-n-butyl phosphate)および0.2%から1.0%よりも低いトリトン(Triton)(登録商標)を混合する処理と、
(b)前記工程(a)の製品に関して血漿の分別を行なう処理と、を含む、方法。
(40)実施態様13に記載の方法により作成した実質的にウイルスを含まない免疫グロブリン。
【0198】
(41)実施態様27に記載の方法により作成した実質的にウイルスを含まない免疫グロブリン。
(42)実施態様38に記載の方法により作成した実質的にウイルスを含まない免疫グロブリン。
(43)実施態様39に記載の方法により作成した実質的にウイルスを含まない免疫グロブリン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスを含んでいる血液製品の中のウイルスの不活性化の方法であって、
前記血液製品を、前記ウイルスを不活性化するために十分な時間にわたり、0.006から0.3%の範囲のジ−(di-)またはトリ−アルキル・ホスフェート(tri-alkyl phosphate)の溶媒および0.01から1.0%の範囲の非イオン性の洗剤に接触させる処理を含み、前記血液製品タンパク質の収率が少なくとも90%である、方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214513(P2012−214513A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178054(P2012−178054)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2005−333166(P2005−333166)の分割
【原出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(501131014)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Indigo Creek Drive, Rochester, NY 14626−5101, U.S.A.
【Fターム(参考)】