説明

免疫グロブリンの精製

本発明は、免疫グロブリンを精製するための方法であって、単量体型、凝集型及びフラグメント化型の免疫グロブリンを含む緩衝化水溶液(ここで、その緩衝化水溶液は8.0〜8.5のpH値を有する)を、単量体型の免疫グロブリンが陰イオン交換物質に結合しない条件で陰イオン交換クロマトグラフィー物質に適用すること、及び陰イオン交換クロマトグラフィー物質からのフロースルー中に単量体型の免疫グロブリンを回収することを含む方法を報告している。一態様では、陰イオン交換クロマトグラフィー物質は、膜陰イオン交換クロマトグラフィー物質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドの精製の分野にある。溶液中の免疫グロブリンを不純物から、特に凝集型の免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメントから分離することによって単量体型の免疫グロブリンを提供するための方法が報告されている。
【0002】
発明の背景
タンパク質、特に免疫グロブリンは、今日の医学ポートフォリオにおいて重要な役割を果たしている。ヒトに適用するために、あらゆる治療用タンパク質は別個の基準を満たさなければならない。ヒトに対する生物学的製剤の安全性を確保するために、危害を及ぼすおそれのある核酸、ウイルス、及びホスト細胞タンパク質を特に除去しなければならない。取締上の規格を満たすために、一つ又は複数の精製工程が発酵工程に続かなければならない。とりわけ、純度、処理量、及び収率が、適切な精製工程を決定する際に重要な役割を果たす。
【0003】
微生物タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換(スルホプロピル又はカルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合モードイオン交換)、チオフィリック(thiophilic)吸着(例えば、β−メルカプトエタノール及び他のSHリガンドを用いたもの)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル−セファロース、アザ−アレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂、又はm−アミノフェニルボロン酸を用いたもの)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)−及びCu(II)−アフィニティ物質を用いたもの)、サイズ排除クロマトグラフィー、及び電気泳動法など(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)の様々な方法が十分に確立されており、タンパク質の精製のために広く使用されている(例えばVijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102参照)。
【0004】
Necina, R.ら(Biotechnol. Bioeng. 60 (1998) 689-698)は、高電荷密度を示すイオン交換媒体による細胞培養上清からの直接的なヒトモノクローナル抗体の捕捉を報告した。国際公開公報第89/05157号では、細胞培養培地を陽イオン交換処理に直接供することによる産物免疫グロブリンの精製のための方法が報告されている。マウス腹水からのモノクローナルIgG抗体の一工程精製が、Danielsson, A., et al., J. Immunol. Meth. 115 (1988), 79-88により記載されている。
【0005】
Mhatre, R., et al., J. Chrom. A 707 (1995) 225-231は、陽イオン交換クロマトグラフィー及びpH勾配溶出による抗体Fabフラグメントの精製を調査した。国際公開公報第94/00561号には、ヒト抗アカゲザルモノクローナル抗体及びそれを産生する細胞系が報告されている。一つ又は複数の混入物質から関心が持たれるポリペプチドを分割するために勾配洗浄が使用される、イオン交換クロマトグラフィーによりポリペプチドを精製するための方法が、国際公開公報第2004/024866号に報告されている。Schwarz, A., et al., Laborpraxis 21 (1997) 62-66は、CM−HyperDカラムを用いたモノクローナル抗体の精製を報告している。国際公開公報第2004/076485号には、プロテインA及びイオン交換クロマトグラフィーによる抗体精製のための工程が報告されている。EP 0 530 447では、三つのクロマトグラフィー工程の組み合わせによりIgGモノクローナル抗体を精製するための工程が報告されている。抗体調製物からのプロテインAの除去が、米国特許第4,983,722号に報告されている。
【0006】
組換えモノクローナル抗体工程は、多くの場合に陰イオン交換クロマトグラフィーを採用して、DNA、ホスト細胞タンパク質、及びウイルスなどの痕跡レベルの不純物及び潜在的な混入物質を結合し、抗体を通過させる(Knudsen, H.L., et al., J. Chrom. A 907 (2001) 145-154)。
【0007】
国際公開公報第95/16037号には、プロテインA及び陽イオン交換クロマトグラフィーによって行われるハブリッドハイブリドーマからの抗EGF−R/抗CD3二重特異性モノクローナル抗体の精製が報告されている。イオン交換クロマトグラフィーの使用による抗体単量体のその多量体からの分離が、EP 1 084 136に報告されている。米国特許第5,429,746号は、疎水性相互作用クロマトグラフィー組み合わせクロマトグラフィーの抗体分子タンパク質の精製への適用に関する。荷電微粒子が混入した液体、特に非経口又は生物学的液体のろ過に使用するための陰イオン性改変ミクロ細孔膜が、米国特許第4,604,208号に報告されている。国際公開第03/040166号には、タンパク質含有流動体中の痕跡量不純物を除去するために設計された膜及びデバイスが報告されている。
【0008】
ポリペプチドを回収するための方法が、米国特許第6,716,598号に報告されている。US 2006/0194953では、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製された抗体から、漏出したプロテインAを選択的に除去するための方法が報告されている。イオン交換クロマトグラフィーの使用による凝集物からのタンパク質単量体の分離が、国際公開公報第99/62936号に報告されている。Lynch, P. and Londo, T., Gen. Eng. News 11 (1997) 17は、アフィニティー精製された治療等級の抗体から凝集物を除去するためのシステムを報告している。ヒトにおける治療適用が意図されたマウスモノクローナル抗体の2工程精製が、Jiskoot, W., et al., J. Immunol. Meth. 124 (1989) 143-156によって報告されている。
【0009】
発明の概要
本発明は、免疫グロブリンの精製の分野における複数の局面を含む。単量体型の免疫グロブリンをフロースルー方式で陰イオン交換物質から得ることができる陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、例えばpH7.8〜pH8.8の狭いpH値範囲で行わなければならないことを見出した。驚くことに、このpH値範囲から例えばpH7.0又はpH9.0への小さな逸脱は、この効果を打ち消す。本発明による方法を用いると、単量体型の免疫グロブリンを凝集型の免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメントから一工程で分離することが可能になる。
【0010】
一局面は、以下の工程を含む、単量体型の免疫グロブリンを得るための方法である:
単量体型及び凝集型の免疫グロブリン並びに/又は免疫グロブリンフラグメントを含む緩衝化水溶液(ここで、その緩衝化水溶液は、pH7.8〜pH8.8のpH値を有する)を陰イオン交換クロマトグラフィー物質に適用し、それにより免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントが枯渇した免疫グロブリンが、陰イオン交換クロマトグラフィー物質のフロースルー又は上清から回収されて、単量体型の免疫グロブリンが得られること。一態様では、緩衝水溶液は、pH8.0〜pH8.5のpH値を有する。別の態様では、陰イオン交換クロマトグラフィー物質は、膜陰イオン交換クロマトグラフィー物質である。さらなる態様では、陰イオン交換クロマトグラフィー物質は、強陰イオン交換クロマトグラフィー物質である。別の態様では、強陰イオン交換クロマトグラフィー物質は、Q-セファロース(登録商標)、すなわち式R-Ο-CHCHOHCHOCHCHOHCH+(CH)の第四級アンモニウム基が共有結合した架橋アガロースマトリックス(R)である。なお別の態様では、その方法は、第1工程として追加的なプロテインAクロマトグラフィー工程又は追加的なHCICクロマトグラフィー工程又は追加的なイオン交換クロマトグラフィー工程を含む。
【0011】
発明の詳細な説明
「イオン交換物質」という用語又はその文法的相当語句は、共有結合した荷電置換基を有する不動性マトリックスを意味する。全体的な電荷中性のために、共有結合していない対イオンがイオン相互作用により荷電置換基に結合している。「イオン交換物質」は、その共有結合していない対イオンを、周囲の溶液の同様に荷電した結合パートナー又はイオンと交換する能力を有する。その交換可能な対イオンの電荷に応じて、「イオン交換物質」は「陽イオン交換物質」又は「陰イオン交換物質」といわれる。荷電基(置換基)の性質に応じて、「イオン交換物質」は、例えば陽イオン交換物質の場合、スルホン酸若しくはスルホプロピル樹脂(S)、又はカルボキシメチル樹脂(CM)といわれる。荷電基/置換基の化学的性質に応じて、「イオン交換物質」を、追加的に、共有結合した荷電置換基の強度に応じて、強又は弱イオン交換物質として分類することができる。例えば、強陽イオン交換物質は、荷電置換基としてスルホン酸基、好ましくはスルホプロピル基を有し、弱陽イオン交換物質は、荷電置換基としてカルボン酸基、好ましくはカルボキシメチル基を有する。強陰イオン交換物質は、荷電置換基として第四級アンモニウム基を有し、そして弱陰イオン交換物質は、ジエチルアミノエチル基を有する。
【0012】
「膜」という用語は、ミクロ細孔膜又はマクロ細孔膜の両方を意味する。膜自体は、ポリマー物質、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(ナイロン、例えば、Zetapore(商標)、N66Posidyne(商標))、ポリエステル、酢酸セルロース、再生セルロース、セルロース複合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアクリロニトリル、フッ化ポリビニリデン、不織布及び織布(例えば、Tyvek(登録商標))、繊維性物質など、又は、無機物質、例えば、ゼオライト、SiO、Al、TiO、若しくはヒドロキシアパタイトなどから構成される。
【0013】
イオン交換物質は、様々な名称で、多数の企業から入手可能である:例えば、陽イオン交換樹脂Bio−Rex(登録商標)(例えば、タイプ70)、Chelex(登録商標)(例えば、タイプ100)、Macro−Prep(登録商標)(例えば、タイプCM、High S、25 S)、AG(登録商標)(例えば、タイプ50W、MP)(全てBioRad Laboratoriesから入手可能)、WCX 2(Ciphergenから入手可能)、Dowex(登録商標)MAC−3(Dow chemical companyから入手可能)、セルロースCM(例えば、タイプ23、52)、hyper−D、partisphere(Whatman plc.から入手可能)、Amberlite(登録商標)IRC(例えば、タイプ76、747、748)、Amberlite(登録商標)GT 73、Toyopearl(登録商標)(例えば、タイプSP、CM、650M)(全てTosoh Bioscience GmbHから入手可能)、CM 1500及びCM 3000(BioChrom Labsから入手可能)、SP−Sepharose(商標)、CM−Sepharose(商標)(GE Healthcareから入手可能)、Poros樹脂(PerSeptive Biosystemsから入手可能)、Asahipak ES(例えば、タイプ502C)、CXpak P、IEC CM(例えば、タイプ825、2825、5025、LG)、IEC SP(例えば、タイプ420N、825)、IEC QA(例えば、タイプLG、825)(Shoko America Inc.から入手可能)、50W陽イオン交換樹脂(Eichrom Technologies Inc.から入手可能)、及び、例えば、陰イオン交換樹脂Dowex(登録商標)1(Dow chemical companyから入手可能)、AG(登録商標)(例えば、タイプ1、2、4)、Bio−Rex(登録商標)5、DEAE Bio−Gel 1、Macro−Prep(登録商標)DEAE(全てBioRad Laboratoriesから入手可能)、陰イオン交換樹脂タイプ1(Eichrom Technologies Inc.から入手可能)、Source Q、ANX Sepharose(登録商標)4、DEAE Sepharose(登録商標)(例えば、タイプCL−6B、FF)、Q Sepharose(登録商標)、Capto Q(登録商標)、Capto S(登録商標)(全てGE Healthcareから入手可能)、AX−300(PerkinElmerから入手可能)、Asahipak ES−502C、AXpak WA(例えば、タイプ624、G)、IEC DEAE(全てShoko America Inc.から入手可能)、Amberlite(登録商標)IRA−96、Toyopearl(登録商標)DEAE、TSKgel DEAE(全てTosoh Bioscience GmbH, Germanyから入手可能)。膜イオン交換物質は、以下のように様々な企業から入手可能である:例えば、膜陽イオン交換物質Mustang(商標)C及びMustang(商標)S(Pall Corporationから入手可能)、Sartobind(商標)CM、Sartobind(商標)S(Sartoriusから入手可能)など、及び陰イオン交換膜、例えばMustang(商標)Q(Pall Corporationから入手可能)、Sartobind(商標)Q(Sartoriusから入手可能)など。膜イオン交換物質では、結合部位はフロースルー孔壁で見出すことができ、拡散孔内に隠されていないことから、拡散よりも対流による物質移動が可能になる。一態様では、追加的なクロマトグラフィー工程は、Sartobind(商標)CM、又はSartobind(商標)S、又はMustang(商標)S、又はMustang(商標)Cより選択される膜陽イオン交換物質を採用した陽イオン交換クロマトグラフィー工程である。別の態様では、陰イオン交換物質は、Qタイプ膜陰イオン交換物質又はQタイプ陰イオン交換カラムである。
【0014】
「ポリペプチド」は、天然に産生されるにせよ合成で産生されるにせよ、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基のポリマーである。約20個未満のアミノ酸残基のポリペプチドを「ペプチド」という。
【0015】
「タンパク質」は、一つ若しくは複数のポリペプチド鎖又は100個超のアミノ酸残基の少なくとも一つのポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質は、糖質基などの非ペプチド性成分も含みうる。糖質及び他の非ペプチド性置換基は、タンパク質が産生される細胞によりタンパク質へ付加されることがあり、そして細胞の種類によって変動する。タンパク質を、それらのアミノ酸主鎖構造により本明細書において定義する;糖質基などの置換基は一般的に特定されないが、それにもかかわらず存在しうる。
【0016】
「免疫グロブリン」という用語及びその文法的相当語句は、2本の軽ポリペプチド鎖及び2本の重ポリペプチド鎖から成る分子を意味する。重及び軽ポリペプチド鎖の各々は、可変領域(一般的に、ポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含み、それは抗原との相互作用のための結合ドメインを有する。重及び軽ポリペプチド鎖の各々は、また、定常領域(一般的に、ポリペプチド鎖のカルボキシル末端部分)を含み、それは免疫系の様々な細胞、いくつかの食細胞、及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含めた宿主組織又は因子への抗体の結合を仲介しうる。一態様では、軽及び重ポリペプチド鎖は、各々が、可変領域、すなわちV又はV、及び定常領域、すなわち、軽ポリペプチド鎖の場合はC、又は重ポリペプチド鎖の場合はC1、ヒンジ、C2、C3、及び場合によりC4から成る鎖である。「免疫グロブリン」という用語は、また、免疫グロブリン遺伝子によりコードされるポリペプチドから成るタンパク質を表す。認められた免疫グロブリン遺伝子には、種々の定常領域遺伝子に加えて無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。免疫グロブリンは、様々な形態で存在しうる。免疫グロブリンフラグメントは、例えばFv、Fab、及びF(ab)に加えて1本鎖である(例えばHuston, J.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883; Bird et al., Science 242 (1988) 423-426; Hood et al., Immunology, Benjamin N.Y., 2nd edition (1984);及びHunkapiller and Hood, Nature 323 (1986) 15-16)。本発明による方法の一態様では、免疫グロブリンは、モノクローナル免疫グロブリンである。
【0017】
「単量体型の免疫グロブリン」という用語及びその文法的相当語句は、第2の免疫グロブリン分子と結合していない(すなわち、別の免疫グロブリン分子に共有結合も非共有結合もしていない)免疫グロブリン分子を意味する。「凝集型の免疫グロブリン」という用語及びその文法的相当語句は、少なくとも一つの追加的な免疫グロブリン分子又はそのフラグメントと共有又は非共有のいずれかで結合している免疫グロブリン分子であって、サイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いたクロマトグラフィーで単量体型の免疫グロブリンの前に溶出する免疫グロブリン分子を意味する。本出願内で使用する「単量体型の」という用語及びその文法的相当語句は、免疫グロブリン分子の100%が単量体型で存在することを必ずしも意味しない。それは、免疫グロブリンのサイズ排除クロマトグラムのピーク面積として決定するとき、免疫グロブリンが本質的に単量体型であること、すなわち免疫グロブリンの少なくとも90%が単量体型であること、一態様では免疫グロブリンの少なくとも95%が単量体型であること、別の態様では免疫グロブリンの少なくとも98%が単量体型であること、さらなる態様では免疫グロブリンの少なくとも99%が単量体型であること、なお別の態様では免疫グロブリンの99%超が単量体型であることを意味する。「単量体型及び凝集型/フラグメント化型の」という用語は、他の免疫グロブリン分子と結合していない免疫グロブリン分子及び他の免疫グロブリン分子と結合している免疫グロブリン分子、及び/又は他の免疫グロブリン分子の部分を少なくとも含む混合物を意味する。この混合物において、単量体型も凝集型もフラグメント化型も排他的には存在しない。
【0018】
「100%」という用語は、特定成分以外の成分の量が、言及された分析方法の特定条件下での検出限界未満であることを意味する。
【0019】
「90%」、「95%」、「98%」、「99%」という用語は、厳密な値を意味するのではなく、言及された分析方法の特定条件下での精度内の値を意味する。
【0020】
「免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントを枯渇した単量体性免疫グロブリン」という用語は、単量体性免疫グロブリンが、ある態様において少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%を占めることを意味する。そしてまた、免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントは、ある態様において調製物の10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下を占める。
【0021】
一般的なクロマトグラフィー法及びそれらの使用は、当業者に公知である。例えば、Chromatography 5th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Heftmann, E. (ed.), Elsevier Science Publishing Company, New York, (1992); Advanced Chromatographic and Electromigration Methods in Biosciences, Deyl, Z. (ed.), Elsevier Science BV, Amsterdam, The Netherlands, (1998); Chromatography Today, Poole, C.F., and Poole, S.K., Elsevier Science Publishing Company, New York, (1991); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982); Sambrook, J., et al. (eds.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M., et al. (eds), John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい。
【0022】
組換えにより産生された免疫グロブリンの精製のために、多くの場合に異なるクロマトグラフィー工程の組み合わせが採用される。一般的に、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーに一つ又は二つの追加的な分離工程が続く。最終精製工程は、残留HCP(ホスト細胞タンパク質)、DNA(ホスト細胞核酸)、ウイルス、又は内毒素のような痕跡量不純物及び混入物質の除去のためのいわゆる「ポリッシング工程」である。このポリッシング工程のために、多くの場合に陰イオン交換物質だけがフロースルー方式で使用される。
【0023】
「フロースルー方式」という用語及びその文法的相当語句は、精製しようとする関心が持たれる物質(例えば、単量体型の免疫グロブリン)を含有する溶液を、固定相(一態様では固相)と接触させ、それにより関心が持たれる物質はその固定相に結合しない、精製方法の操作方式を意味する。その結果、関心が持たれる物質が、フロースルー(精製方法がクロマトグラフィー法である場合)又は上清(精製方法がバッチ法である場合)のいずれかにおいて得られる。固定相と接触させる前にこれもまた溶液中に存在していた関心が持たれない物質(例えば、凝集型の免疫グロブリン及び/又は免疫グロブリンフラグメント)は、固定相に結合し、そしてその方法で溶液から除去される。これは、関心が持たれない物質の100%が溶液から除去されることを意味するわけではなく、サイズ排除クロマトグラフィーのピーク面積により決定するとき、関心が持たれない物質の本質的に100%が除去される、特定の態様では、関心が持たれない物質の少なくとも50%が溶液から除去される、関心が持たれない物質の少なくとも75%が溶液から除去される、関心が持たれない物質の少なくとも90%が溶液から除去される、又は、関心が持たれない物質の95%超が溶液から除去されることを意味する。
【0024】
「に適用する」という用語及びその文法的相当語句は、精製しようとする関心が持たれる物質を含有する溶液を固定相と接触させる、精製方法の部分的工程を意味する。これは、a)溶液を、固定相が配置されているクロマトグラフィーデバイスに添加すること、又は、b)固定相を溶液に添加することを意味する。a)の場合、精製しようとする関心が持たれる物質を含有する溶液に固定相を通過させ、溶液中の固定相と物質との間の相互作用を可能にする。例えば、pH、伝導度、塩濃度、温度、及び/又は流速などの条件に応じて、溶液のいくつかの物質は固定相へ結合し、従って溶液から除去される。他の物質は溶液中に残存する。溶液中に残存している物質を、フロースルー中に見出すことができる。「フロースルー」は、クロマトグラフィーデバイスの通過後に得られる溶液を意味する。一態様では、クロマトグラフィーデバイスは、クロマトグラフィー物質を有するカラム、又は別の態様では膜クロマトグラフィー物質を有するカセットである。固定相に結合していない関心が持たれる物質は、例えば、沈殿、塩析、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、凍結乾燥、アフィニティークロマトグラフィー、又は濃縮溶液を得るための溶媒容積低下などの当業者によく知られる方法によってフロースルーから回収することができる。b)の場合、固定相を、例えば粉末として、精製しようとする関心が持たれる物質を含有する溶液に添加し、溶液中の固定相と物質との間の相互作用を可能にする。相互作用後、固定相を例えばろ過により除去し、そして固定相に結合していない関心が持たれる物質を上清中に得る。
【0025】
「に結合しない」という用語及びその文法的相当語句は、関心が持たれる物質(例えば、免疫グロブリン)が、固定相(例えば膜イオン交換物質)と接触させられたときに溶液中に残存することを意味する。これは、関心が持たれる物質の100%が溶液中に残存することを意味するわけではなく、サイズ排除クロマトグラフィーのピーク面積により決定するとき関心が持たれる物質の本質的に100%が溶液中に残存する、特定の態様では、関心が持たれる物質の少なくとも50%が溶液中に残存する、関心が持たれる物質の少なくとも65%が溶液中に残存する、関心が持たれる物質の少なくとも80%が溶液中に残存する、関心が持たれる物質の少なくとも90%が溶液中に残存する、又は、関心が持たれる物質の95%超が溶液中に残存することを意味する。
【0026】
「緩衝化」という用語は、酸性又は塩基性物質の添加又は遊離に起因するpHの変化が緩衝物質によって頭打ちになる溶液を意味する。そのような効果を生じる任意の緩衝物質を使用することができる。一態様では、薬学的に許容されうる緩衝物質、例えば、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、モルホリン、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸及びその塩、ヒスチジン及びその塩、グリシン及びその塩、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)及びその塩を使用する。別の態様では、緩衝物質は、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、又はヒスチジン及びその塩より選択される。場合により、緩衝化溶液は、追加的な塩、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、又はクエン酸カリウムなどを含みうる。
【0027】
「結合及び溶出の方式」という用語及びその文法的相当語句は、精製しようとする関心が持たれる物質を含有する溶液を固定相、一態様では固相と接触させ、それにより関心が持たれる物質が固定相に結合する、精製方法の操作方式を意味する。その結果、関心が持たれる物質は固定相上に保持され、一方、関心が持たれない物質はフロースルー又は上清と共に除去される。関心が持たれる物質はその後、第2工程において固定相から溶出され、それにより固定相から溶出溶液と共に回収される。
【0028】
このように本発明は、単量体型の免疫グロブリンを得るための方法であって、以下の工程:
単量体型及び凝集型の免疫グロブリン並びに/又は免疫グロブリンフラグメントを含む緩衝化水溶液(ここで、その緩衝化水溶液はpH7.8〜pH8.8のpH値を有する)を、免疫グロブリンが陰イオン交換クロマトグラフィー物質に結合しない条件で陰イオン交換クロマトグラフィー物質に適用し、それにより単量体型の免疫グロブリンをフロースルーから回収すること
を含む方法を報告している。
【0029】
「単量体型の免疫グロブリンが陰イオン交換クロマトグラフィー物質に結合しない条件」という用語及びその文法的相当語句は、陰イオン交換物質と接触させたとき、単量体型の免疫グロブリンが陰イオン交換クロマトグラフィー物質によって結合されない条件を意味する。これは、単量体型の免疫グロブリンの100%が陰イオン交換物質に結合されないことを意味するわけではなく、サイズ排除クロマトグラフィーのピーク面積により決定するとき、単量体型の免疫グロブリンの本質的に100%が結合されない、特定の態様では、単量体型の免疫グロブリンの少なくとも50%が結合されない、単量体型の免疫グロブリンの少なくとも65%が結合されない、単量体型の免疫グロブリンの少なくとも80%が結合されない、単量体型の免疫グロブリンの少なくとも90%が結合されない、又は、単量体型の免疫グロブリンの95%超が結合されないことを意味する。一態様では、緩衝化水溶液はpH7.8〜pH8.8のpH値を有する。さらなる態様では、そのような条件は、pH8.0〜pH8.5の緩衝化水溶液のpH値である。
【0030】
今回驚くことに、単量体型の免疫グロブリンを陰イオン交換物質からフロースルー方式で得ることができる陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、pH7.8〜pH8.8の、一態様ではpH8.0〜pH8.5の狭いpH値範囲で行うことができることを見出した。驚くことに、このpH値範囲の(例えばpH7.0又はpH9.0への)小さな逸脱は、この効果を低減する。本発明による方法を用いると、単量体型の免疫グロブリンを凝集型の免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメントから一工程で分離することが可能である。
【0031】
本発明による方法は、一工程法として採用することができ、又は、例えば一態様ではプロテインAクロマトグラフィー工程若しくは疎水性電荷誘導クロマトグラフィー工程などの他の工程と組合せることができる。
【0032】
一態様では、陰イオン交換クロマトグラフィー物質は、膜陰イオン交換クロマトグラフィー物質である。例えばアフィニティークロマトグラフィーを採用する主要な精製工程で大部分のホスト細胞タンパク質及び培養副産物を除去することもまた、好都合である。アフィニティークロマトグラフィーは、例えばプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、プロテインGアフィニティークロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC、例えばフェニル−セファロース、アザ−アレノフィリック樹脂、又はm−アミノフェニルボロン酸を用いたもの)でありうる。一態様では、本発明による方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程前にプロテインAクロマトグラフィー工程又はHCICクロマトグラフィー工程を含む。
【0033】
精製方法の一工程(又はそれに続く工程)への溶液の適用前に一つを超えるクロマトグラフィー工程を含む、本発明による方法の一態様では、例えばpH値又は溶液の伝導度などのパラメーターを調整しなければならない。一態様では、陰イオン交換クロマトグラフィー物質に適用される緩衝化水溶液のpH値は、pH7.8〜pH8.8、別の態様ではpH8.0〜pH8.5である。
【0034】
本発明の理解を助けるために以下の実施例及び図面を提供し、その真の範囲は添付の特許請求の範囲において示す。本発明の精神から逸脱することなく示した手順を改変できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1a】抗CCR5抗体を含有する溶液をpH7.0、7.5及び8.0に調整し(pH×.×ロードと呼ばれる画分);5mgのタンパク質をそれぞれフロースルー方式で15cm2の膜吸着体と接触させた(pH×.×フロースルーと呼ばれる画分)ことを示す図である。結合した物質を塩化ナトリウムで溶出させた(pH×.×溶出と呼ばれる画分)。画分はSDS−PAGEによってクマシーブリリアントブルー染色を用いて分析した。
【図1b】抗CCR5抗体を含有する溶液をpH8.5及び9.0に調整し(pH×.×ロードと呼ばれる画分);5mgのタンパク質をそれぞれフロースルー方式で15cm2の膜吸着体と接触させた(pH×.×フロースルーと呼ばれる画分)ことを示す図である。結合した物質を塩化ナトリウムで溶出させた(pH×.×溶出と呼ばれる画分)。画分はSDS−PAGEによってクマシー染色を用いて分析した。
【図1c−1】pH7.5の抗CCR5抗体を含有する溶液のロード及びフロースルー画分(A及びB)並びにpH8.5のロード及びフロースルー画分(C及びD)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーによる比較を示す図である。凝集物及びフラグメントは、pH7.5でフロースルー中から検出できるが、pH8.5では検出できない。
【図1c−2】pH7.5の抗CCR5抗体を含有する溶液のロード及びフロースルー画分(A及びB)並びにpH8.5のロード及びフロースルー画分(C及びD)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーによる比較を示す図である。凝集物及びフラグメントは、pH7.5でフロースルー中から検出できるが、pH8.5では検出できない。
【図2a】pH7.5(A)及びpH8.5(B)のCD19抗体のロード及びフロースルー画分を示すオーバーレイである。凝集物は、pH7.5でフロースルー中から検出できるが、pH8.5ではフロースルー中から検出できない。
【図2b】抗CCR5抗体及び抗CD19抗体溶液からの凝集物の除去を示す図である。フロースルー中で減少するのは、pH7.5を超えるpH値、例えばpH8.5の場合である。
【図3】スケールアップ実験を示す図である:抗CCR5抗体を含有する溶液をpH8.5に調整し、25mgに75cm2の膜吸着体を通過させてポンプ輸送した(pH×.×フロースルーと呼ばれる画分)。結合した物質を塩化ナトリウムで溶出させた(pH×.×溶出と呼ばれる画分)。画分はSDS−PAGEによってクマシー染色を用いて分析した。
【図4】抗CCR5抗体を含有する溶液をpH8.5に調整し(pH8.5ロードと呼ばれる画分)、6mgのタンパク質は1mlのQ-Sepharose(登録商標)ファストフロー陰イオン交換クロマトグラフィーカラムを通してポンプ輸送した(pH8.5フロースルーと呼ばれる画分)ことを示す図である。カラムを塩化ナトリウムで溶出させた(pH8.5溶出と呼ばれる画分)。画分はSDS−PAGEによってクマシー染色を用いて分析した。
【0036】
実施例
材料及び方法:
調節されたプロテインA溶出物:
抗CCR5抗体(本明細書下記においてmAb CCR5と呼ぶ、例えば国際公開公報第2006/103100号参照)及び抗CD19抗体(本明細書下記においてmAb CD19と呼ぶ)を一工程でプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。
【0037】
mAb CCR5は、酸性条件でプロテインAカラムから溶出させた。さらなる処理の前に、免疫グロブリンを含有する画分のpH値を、緩衝化溶液(例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(TRIS)又はリン酸緩衝液)に対する透析により7.0、7.5、8.0、8.5、及び9.0のpH値に調整した。この物質を、以下でmAb CCR5の調節されたプロテインA溶出物という。
【0038】
mAb CD19を酸性条件でプロテインAカラムから溶出させた。さらなる処理の前に、免疫グロブリンを含有する画分のpH値を、緩衝化溶液(例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(TRIS)又はリン酸緩衝液)に対する透析によりpH8.5のpH値に調整した。この物質を、以下でmAb CD19の調節されたプロテインA溶出物という。
【0039】
分析法:
サイズ排除クロマトグラフィー:
樹脂: TSK 3000(Tosohaas)
カラム: 300×7.8mm
流速: 0.5ml/min
緩衝液: 250mM塩化カリウムを含有し、pH7.0に調整した200mMリン酸カリウム緩衝液
波長: 280nm
SDS−PAGE:
LDS試料緩衝液、4倍濃縮液(4×):4gグリセロール、0.682g TRIS塩基、0.666g TRIS塩酸塩、0.8g LDS(ドデシル硫酸リチウム)、0.006g EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、0.75mlの1重量%(w/w)のServa Blue G250水溶液、0.75mlの1重量%(w/w)のフェノールレッド溶液に水を添加して10mlの合計容積にする。
【0040】
免疫グロブリンを含有する溶液を遠心分離して破片を除去した。清澄化した上清の一定分量を1/4容(v/v)の4×LDS試料緩衝液及び1/10容(v/v)の0.5M 1,4−ジチオトレイトール(DTT)と混合した。次に、試料を70℃で10分間インキュベーションし、タンパク質をSDS−PAGEにより分離した。NuPAGE(登録商標)プレキャストゲルシステム(Invitrogen Corp.)を製造業者の説明書にしたがって使用した。特に、10% NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)ビス−トリスプレキャストゲル(pH6.4)及びNuPAGE(登録商標)MOPS泳動用緩衝液を使用した。
【0041】
実施例1
pH7.0、7.5、8.0、8.5及び9.0を有するmAb CCR5の調節されたプロテインA溶出物を、それぞれ1mg/mlの濃度に調整した。クロマトグラフィーシステムの助けを借りて、再生及び(それぞれのpHに)平衡化したQ−膜吸着体(膜陰イオン交換物質、膜面積:15cm2)に5mlの各溶液をフロースルー方式で別々に適用した。その後、対応するpHの緩衝液で膜を洗浄した。結合したタンパク質は、塩勾配をかけて対応するpH値で溶出させた。
【0042】
mAb CCR5はpH7.0及び7.5で膜吸着体に結合しなかったことを見出した。pH8.0〜8.5でわずかな結合が達成された。pH9.0で抗体の強い結合が出現した。サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS−PAGEによるフロースルー及び溶出画分の分析から、pH8.0及び8.5でフロースルーからの免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントの著しい除去が明らかとなった。pH7.0及び7.5で除去は認められず、pH9.0でマトリックス結合による高い産物損失が生じた。pH8.0及びpH8.5での伝導度駆動溶出で免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントに富む画分が得られた。
【0043】
実施例2
pH7.0、7.5、8.0、8.5及び9.0を有するmAb CD19の調節されたプロテインA溶出物を、それぞれ1mg/mlの濃度に調整した。クロマトグラフシステムの助けを借りて、再生及び(それぞれのpHに)平衡化したQ−膜吸着体(15cm2)に5mlの各溶液をフロースルー方式で別々に適用した。その後、対応するpHの緩衝液で膜を洗浄した。結合したタンパク質は、塩勾配を用いて対応するpH値で溶出させた。
【0044】
mAb CD19はpH7.0及び7.5で膜吸着体に結合しなかったことを見出した。pH8.0〜8.5でわずかな結合が達成された。pH9.0で免疫グロブリンの強い結合が出現した。サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS−PAGEによるフロースルー及び溶出画分の分析から、pH8.0及び8.5で産物からの免疫グロブリンの免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントの著しい除去が明らかとなった。pH7.0及びpH7.5で除去は認められず、pH9.0でマトリックス結合による高い産物損失が生じた。pH8.0及びpH8.5での伝導度駆動溶出で免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントに富む画分が得られた。
【0045】
実施例3
mAb CCR5のプロテインA溶出物をpH8.5に調節し、1mg/mlの濃度に調整した。
【0046】
クロマトグラフィーシステムの助けを借りて、再生及び(pH8.5に)平衡化したQ−膜吸着体(75cm2の膜表面積)に25mlの溶液をフロースルー方式で適用した。その後、pH8.5の緩衝液で膜を洗浄した。結合したタンパク質は、塩勾配をかけて対応するpH値で溶出させた。
【0047】
実施例1の結果を、5倍大きな規模で再現することができた。フロースルーは、免疫グロブリン凝集物及び及び免疫グロブリンフラグメントを枯渇していた。両方の不純物は膜吸着体から塩勾配かけて溶出させることができた。
【0048】
実施例4
pH8.5に調節されたmAb CCR5のプロテインA溶出物を1mg/mlの濃度に調整した。クロマトグラフィーシステムの助けを借りて、再生及び(pH8.5に)平衡化したQ Sepharose(登録商標)FFにフロースルー方式で6mlの溶液を適用した。その後、対応するpHの緩衝液でセファロースを洗浄した。結合したタンパク質は、塩勾配をかけて対応するpH値で溶出させた。
【0049】
サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS−PAGEによるフロースルー及び溶出画分の分析から、pH8.5で産物からの免疫グロブリンの免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントの著しい除去が明らかとなった。pH8.0及びpH8.5での伝導度駆動溶出で免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントに富む画分が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体型の免疫グロブリンを得るための方法であって、
以下の工程:
単量体型及び凝集型の免疫グロブリン並びに/又は免疫グロブリンフラグメントを含む緩衝化水溶液(ここで、該緩衝化水溶液は、pH8.0〜pH8.5のpH値を有する)を陰イオン交換クロマトグラフィー物質に適用し、それにより免疫グロブリン凝集物及び免疫グロブリンフラグメントが枯渇した免疫グロブリンが、該陰イオン交換クロマトグラフィー物質のフロースルーから回収されて、単量体型の免疫グロブリンが得られること
を含む方法。
【請求項2】
陰イオン交換クロマトグラフィー物質が膜陰イオン交換クロマトグラフィー物質であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
陰イオン交換クロマトグラフィー物質が、強陰イオン交換クロマトグラフィー物質であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程a)の前に追加的なプロテインAクロマトグラフィー工程又はHCICクロマトグラフィー工程を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c−1】
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【図1c−2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513425(P2012−513425A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542709(P2011−542709)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009157
【国際公開番号】WO2010/072381
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】