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免疫グロブリンFABフラグメントを選択的且つ定量的に官能基化する方法
説明

免疫グロブリンFABフラグメントを選択的且つ定量的に官能基化する方法

【課題】分子の所望の特定部位のみが選択的且つ定量的に官能基化され,それ故に予め定められた正確な置換の化学量論を示すFabフラグメントを活性成分として含む,医薬製剤を,患者に投与する必要性がある問題について解決のための有用な示唆はされていない。
【解決手段】本発明は,免疫グロブリンFabフラグメントと,診断又は治療の効用を付与する分子化合物との間の化学的結合体を提供し,前記Fabフラグメント上での唯一の結合部位は,前記Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合の選択的且つ定量的な還元から生じたスルフヒドリル基の一方又は両方であり,前記診断又は治療の効用を付与する分子化合物は,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,分子化合物のFabフラグメントに対する前記結合の化学量論モル比は,0.95〜1.05の範囲又は1.95〜2.05の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,分子の所望する所定の特定部位だけが官能基化される,免疫グロブリンFABフラグメント(Fab)に関する。
【0002】
本発明は,前記選択的且つ定量的な官能基化を達成するための方法に関し,さらに,前記結合体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
単クローン抗体(mAB)は,細胞上又は組織上において,それらが特異的な抗原顕在化させる部分を,インビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)の両方に局所化させる公知の能力を備えたタンパク質である。この特性は,それらの周知のタンパク質分解フラグメント,例えば,Fab,Fab’及びF(ab)等で維持される。特に,免疫グロブリンFabフラグメント(以下,複数形も含めてFabとする)は,この特性を維持する。
【0004】
診断用又は治療用の種々の分子又はそれらのプレカーサーが,mAb又はそのフラグメントに共有結合され得ることは周知である。結合された診断用又は治療用の分子によって標的抗原に結合する能力が阻害されていないこれらの結合体を輸送し,それにより,この分子は抗原を有する細胞及び組織を標的にすることが可能であり,そこで,この分子は,例えば,診断用信号の生成又は治療上の細胞殺滅等,その意図する目的を達成することが可能である。
【0005】
Fabフラグメントは,無傷(intact)の免疫グロブリン若しくはそれらのその他のフラグメント,例えば,F(ab’)2等よりも小さいので,特に診断又は治療用の薬剤として興味深い。小ささによって,血液から,それらの多くが標的を見出す組織の間質(interstitium)への通過速度が増大される。組織の間質内へのそれらの拡散も増進され,それにより,それらの標的部位への到達及び非結合分子の前記部位からの消失が容易化及び加速される。さらに,それらの排出速度も増大され,それにより,非特異的な背景による影響が好適に減少される。
【0006】
Fabフラグメントよりも最小限だけ大きいのは,Fab’フラグメントである。これらは,F(ab’)2フラグメントから,2の重鎖を結合するジスルフィド架橋を還元することによって得られ,遊離スルフヒドリル基の化学修飾によって安定化させる必要がある。
【0007】
適切な診断用又は治療用の分子をmAB及びそれらの種々のフラグメントに結合させる方法は,既に多数,開示されている。通常,結合分子は,mAB又はそのフラグメントを種々の部位で修飾し,その一部には,抗原との結合を阻害してしまうものも含まれる。抗原への結合の主たる損失は,多くの場合,タンパク質に対しての結合分子の化学量論比を低くすることによって成し遂げられる。特に,放射性診断(radiodiagnostic)を目的として,1を大幅に下回る化学量論比が,常にではないが,場合によって許容可能である。それらが許容可能である場合,その説明は,一方で,mAB又はそのフラグメントの数に比べて十分な信号生成のために必要な抗原部位の数が多いことに見出せる。他方で,mAB又はそのフラグメントの高濃度は,有害な薬理活性を有していないという事実に見出せる。これらの特殊の場合,過剰に存在する非標識mAb又はそのフラグメントによって,それらの放射性標識結合体の結合が著しく阻害されることはなく,また,信号生成の観点から見ると,それらは静かである。
【0008】
対照的に,抗原部位の数が非常に少ない場合,若しくはmAb又はそのフラグメントが有害な薬理活性を有する場合,mAb又はそのフラグメントの全て又はほとんどに放射性標識がされることが非常に好ましい。
【0009】
mAb又はフラグメントが高い比率で,好ましくは全部が,放射性標識される必要性は,放射線療法の場合に特に顕著である。この場合,抗原結合部位の数によって,治療効力がほぼ常に制限される。同じ必要性は,mAb又はそのフラグメントが,封じ込める必要のある有害な薬理活性を有する場合に適用される。これらの場合,非標識のmAb又はフラグメントによって任意の部位が占有されてしまうことが回避されるようにする必要がある。
【0010】
タンパク質に対しての結合分子の高い化学量論比は,例えば,遊離アミノ基(アミノ末端のα-アミノ基及びリシンのε-アミノ基)又は遊離カルボキシル基(カルボキシル末端のα-カルボキシル基と,アスパラギン酸及びグルタミン酸の各々,γ-カルボキシル基及びδ-カルボキシル基)の化学修飾によって容易に達成される。残念ながら,これは,多くの場合,抗原にそれ以上結合しないか又は結合が不十分な結合体の高比率の生成を伴う。放射性標識されると,そのような結合体によって,診断手順に信号の代わりに雑音が付加され,また,治療内容に治療上の効能を伴わない放射能の負荷が付加される。さらに,開示されている化学結合方法は,タンパク質の選択部位に関して非特異的であり,それゆえに,タンパク質又はタンパク質フラグメントの結合部位の数及び/又は種類がよく知られており,且つ明確に規定された最終の生成物を取得するのに有用でない。それどころか,結合は,複数の反応部位及び明確に規定されていない部位に不規則に発生する。その結果,結合生成物の化学量論,即ち,タンパク質/タンパク質フラグメントに対する診断/治療部分のモル比は,不明確になる。せいぜい,タンパク質に対しての結合分子の平均の化学量論的モル比が測定可能であったり,一部のアミノ酸残基の部分的な占有を見積もることが可能であったりするだけである。実際の最終的な生成物は,各々が置換の化学量論を有する種々の置換された化合物から成る,複雑で,明確に規定されていない混合物で概ね構成される。結合生成物のそのような混合物の臨床応用は,従来的な医薬品に関する基準と相違している。それゆえに,保健の規制機関は,化学的により明確に規定された,免疫グロブリン及び/又はそのフラグメントに関する結合体を要求している。
【0011】
そのような生成物は,非常に必要な場合であっても,少なくとも実用的ではない。なぜならば,現在の手段では,それらは低収率で得られ,さらに,経費がかかり且つ工業的に非実用的な分離方法を必要とする。従って,化学量論比が少なくとも1つであり,抗原への結合を阻害せず,明確に規定された部位のみで,診断用又は治療用の分子のmAb又はそのフラグメントへの結合を可能にする方法を見つけるのが非常に望まれる。本発明によって,好適には,Fabフラグメントに関し,この問題の解法が提供される。
【0012】
Fabフラグメントは,4のポリペプチド鎖内のジスルフィド架橋及び1のポリペプチド鎖間のジスルフィド架橋を含有する。単一の鎖間ジスルフィド架橋は,2のポリペプチド鎖のカルボキシ末端に近接して,即ち,分子上において抗原結合に関与する部位の反対端に配置される。それゆえに,この部位での化学修飾は,抗原に対する親和性に及ぼす影響は最小限であると予想される。従って,他の4の鎖内のジスルフィド結合と,分子内のその他の反応可能性のある基とに手を付けずに,前記鎖間ジスフィルド結合だけを選択的に官能基化することを可能にする方法を実現することは,非常に純粋で且つ構造的に非常に明確にされた化合物が得るために最大に重要である。
【0013】
タンパク質内のジスルフィド架橋は,遊離スルフヒドリル基の組に還元可能である。ほとんどの場合,それは,タンパク質を,例えば,メルカプトエタノール,ジチオスレイトール,ジチオエリトリトール,システイン又はグルタチオン等の小分子量スルフヒドリル化合物過剰の非常に大きい分子に曝すことで達成される。これらの条件下では,ジスルフィド結合が,小分子量スルフヒドリル化合物の間に形成されるのに対して,タンパク質のジスルフィド架橋は,遊離スルフヒドリル基に還元される。反応の最後に,タンパク質のスルフヒドリル基の再度のジスルフィド架橋への大量の再酸化を生じさせずに,過剰な還元スルフヒドリル化合物及びその酸化生成物を除去することは困難である。従って,通常,続いてタンパク質のスルフヒドリル基に対するスルフヒドリル特異の化学修飾を望む場合,修飾剤が,引続き存在する過剰な小分子量スルフヒドリル化合物及びそれらの酸化生成物に付加される。反応混合物中の全てのスルフヒドリル基は,タンパク質上のもの及び小分子スルフヒドリル化合物上のものが両方とも,この修飾剤によって同じ反応を生じてしまうので,この修飾剤は,タンパク質のスルフヒドリル基の数を大幅に超過し,実際に,小分子量スルフヒドリル化合物のスルフヒドリル基を若干超過するように,付加される必要がある。高価な修飾剤を問題にすると,この種の手順は,工業的な観点から非実用的である。さらに,そのような条件は,標準化が困難である。また,全ての中で特によくないのは,他の基に手を付けずに,関心のあるタンパク質又はそのタンパク質フラグメントの所望する1以上のスルフヒドリル基における,特異的且つ明確に規定された修飾が許されないことである。換言すると,この種の反応は,少なくとも部分的に,タンパク質の全てのジスルフィド基と,場合によっては,タンパク質のその他の反応基までが関与してしまうので,その結果,不規則に反応したスルフヒドリル基と未反応のスルフヒドリル基との混合物が生じてしまう。
【0014】
本発明は,その大きさに概ね起因して,主にFabに関する結合体に焦点を当てる。
【0015】
既に述べたように,適切な診断又は治療の部分(mojeties)のために免疫グロブリン及びそのフラグメントの調製を取扱っている文献は,特許文献及び特許出願の文献を含め,多数存在する。実際には,分子の所望の特定部位のみが選択的且つ定量的に官能基化され,それ故に予め定められた正確な置換の化学量論(substitution stoichiometry)を示すFabフラグメントを活性成分として含む,医薬製剤を,患者に投与する必要性がある問題は,前記文献のいずれによっても解決されないし,解決のための有用な示唆もされない。
【0016】
例えば,特許文献1には,複数の鎖間ジスルフィド結合を過剰なメルカプトエタノール,ジチオスレイトール又はジチオエリトリトールで還元し,その後,生じたスルフヒドリル基をアルキル化することによって得られる,ヒト免疫グロブリン(IgG)のS−アルキル化されたFab又はFcフラグメントが開示されている。しかしながら,開示された方法では,抗体フラグメント上の結合体の化学量論(stoichiometry)を正確に制御することが不可能であるので,従って,可能性の有る種々の生成物の複雑の混合物が得られてしまう。さらに,過剰な還元剤のせいで,非常に大量なアルキル化剤が必要になってしまう。
【0017】
同様の方法が特許文献2に開示されており,そこでは,無傷のIgG又はF(ab’)2フラグメントにのみ適用されている。ジスルフィドの還元は,過剰のチオール誘導体によって行なわれており,1より多くのジスルフィド基が関わる可能性がある。最終的な結合体は,抗体又はF(ab’)2フラグメント当たり少なくとも1のリガンドを含む可能性があり,種々の比率が等しく許容されてしまう。正確且つ明確に規定された結合の化学量論は全く説明されておらず,正確な結合部位も報告されていない。さらに,この場合,過剰な還元剤に打ち勝つために非常に大量のアルキル化剤が必要となる。
【0018】
特許文献3には,ジチオスレイトールを用いて,例えば,pH=7等,非常に厳格に制御された条件の下でのみ可能なF(ab’)2フラグメントの鎖間ジスルフィド架橋の選択的な還元が示されている。さらに,その後にGF-250 HPLCカラム上での精製をしなければならない。これは,この方法は,工業規模に適用できず,また,少なくとも一部の遊離スルフヒドリル基がジスルフィド結合に再び戻ってしまうことを意味する。
【0019】
ジスルフィド架橋を還元して生じる遊離スルフヒドリル基とスルフヒドリル基の種々の修飾物質との反応によって得られる抗体又はそのフラグメントの他の結合体は,特許文献3〜10に開示されている。しかしながら,これらの文献は全て,構造が規定されていない生成物の混合物を生じる化学が大体開示されている。また,これらの文献には,予め定められ且つ概ね制御された結合の化学量論によって特性付けられる特異的に置換された結合体の調製を,可能にする,又は開示する,又は直接的若しくは間接的に教示する文献は1つもない。
【0020】
ごく最近,非特許文献1にて,2−メルカプトエタノールを用いてジスルフィド結合の還元が実施されたFabフラグメントが開示された。C末端スルフヒドリル基が修飾されたFabの図が示された。しかしながら,ここで開示された還元は,Fabの分子当たり3.67チオール基を導入しており,従って,この場合でさえも,結合して明確に規定されていない結合体の化学量論がもたらされる。さらに,還元剤としてのチオール誘導体の使用は,Fabフラグメントの所望する選択的な還元と,それに付随する化学量論的に明確に規定された結合体とを達成する必要性を解決しない。
【0021】
抗原結合部位を有するFabフラグメントの場合,C末端スルフヒドリル基だけでの選択的な結合の問題は,研究者によって非常に考慮されているが,無傷の免疫グロブリンに用いられている方法では,処理できていない。この明白な必要性にも関わらず,ポリペプチド鎖の折畳み(folding)に関与しない,即ち,結合の反応を,鎖間ジスルフィド結合から生じる2つのスルフヒドリル基だけに,特異的且つ定量的に方向付けることが可能な別の方法は,全く記載されていない。
【0022】
トリブチルホスフィン又はトリス−(カルボキシルエチル)ホスフィン(TCEP)等の特定のホスフィン誘導体をタンパク質のジスルフィド結合に対する還元剤として使用することは,例えば非特許文献2〜非特許文献9等の多くの文献で既に開示されてきた。それにも関わらず,前記ホスフィン剤は,Fab及びFab'フラグメントの鎖間ジスルフィド結合に対して可能な選択的還元剤として全く示唆されなかった。
【0023】
当技術分野の従来的な教示をよそに,驚くべきことに我々は今や,Fabフラグメントと診断又は治療用の薬剤,若しくはその有用なプレカーサーとの結合体を,容易且つ好都合な収率で調製可能であることを発見した。この結合体は,正確な結合の化学量論によって誤差が狭い範囲内にある,即ち,1又はそれ以上の薬剤とFabとの結合モル比が1:1又は2:1を示し,このFabは,Fabの所定位置の1又は2の特異的なスルフヒドリル基,即ち,ジスルフィド鎖間結合の選択的な還元から生じるスルフヒドリル基だけが選択的に官能基化されることに特徴付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】欧州特許出願131836号公報
【特許文献2】米国特許出願5612016号公報
【特許文献3】米国特許出願5274119号公報
【特許文献4】欧州特許出願453082号公報
【特許文献5】米国特許出願4741900号公報
【特許文献6】欧州特許出願417927号公報
【特許文献7】欧州特許出願023779号公報
【特許文献8】欧州特許出願332022号公報
【特許文献9】欧州特許出願453082号公報
【特許文献10】欧州特許出願277088号公報
【特許文献11】米国特許出願5082930号公報
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Bioconjugate Chem誌2001年, 12号, 178〜185頁
【非特許文献2】Methods in Enzymol誌 1977年, 47号, 116〜122頁
【非特許文献3】J. Org. Chem誌 1991年,56号, 2648〜2650頁
【非特許文献4】Eur. J. Nucl. Med.誌 1995年, 22号, 690〜698頁
【非特許文献5】Biophisical Journal誌 1998年, 74号, A179, abstr. Tu-Pos196
【非特許文献6】Faseb Journal誌 1997年,11号, A1361, abstr. 2948
【非特許文献7】Eur. J. Nucl. Med.誌 1999年, 26号, 1265〜1273頁
【非特許文献8】Anal. Biochem.誌 1999年, 273号, 73〜80頁
【非特許文献9】Protein Scinece誌 1993年, 2号, 1749〜1755頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
分子の所望の特定部位のみが選択的且つ定量的に官能基化され,それ故に予め定められた正確な置換の化学量論(substitution stoichiometry)を示すFabフラグメントを活性成分として含む,医薬製剤を,患者に投与する必要性がある問題は,上記文献のいずれによっても解決されないし,解決のための有用な示唆もされない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
そこで,本発明によれば,1結合又は2結合のFab結合体を調製するための手順であって,a)Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合を選択的且つ定量的に還元して2の遊離スルフヒドリル基をホスフィンによって得る工程と,b)工程a)からの前記スルフヒドリル基のうちの一方又は両方を,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,且つ診断の効用を付与する分子化合物で定量的に官能基化する工程と,c)1結合(mono-conjugate)又は2結合(diconjugate)のFab化合物を得る工程であって,前記2結合は,前記スルフヒドリル基を対称的又は非対称的のいずれかに官能基化して得られる,1結合又は2結合のFab化合物を得る工程と,を有することを特徴とする手順が提供される。
【0028】
前記鎖間ジスルフィド結合の選択的且つ定量的な還元は,トリブチルホスフィン又はトリス−(カルボキシルエチル)−ホスフィンから選択されるホスフィンで実行されても良い。前記ホスフィンは,トリス−(カルボキシエチル)−ホスフィンであっても良い。
【0029】
前記工程a)は,緩衝化された条件下で反応種を混合させて実行され,以下の特性:Fab濃度:1〜100μM;ホスフィン濃度:0.1〜10mM;緩衝化された溶液のpH:4〜8;反応時間:5〜180分;反応温度:4〜45℃を有する最終的な緩衝化された水性反応溶液(buffered aqueous
reaction solution)を得ることとしても良い。
【0030】
以下の:Fab濃度:1.5〜10μM又は1〜5μM;ホスフィン濃度:0.5〜5mM;緩衝化された溶液のpH:5〜7;反応時間:25〜70分;反応温度:25〜40℃が好適な条件であっても良い。
【0031】
工程b)の前記定量的な官能基化は,工程a)の最後に,還元されたFabフラグメントを精製せずに,前記結合させる分子化合物の緩衝化された水性溶液を付加することによって,同じ反応媒質中で即座に実行されても良い。
【0032】
前記最終的な緩衝化された水性反応溶液は,以下の特性:Fab濃度:2〜5μM;ホスフィン濃度:0.5〜5mM;結合部分濃度:0.1〜100mM;緩衝化された溶液のpH:5〜7;反応時間:30分以上;反応温度:4〜45℃又は20〜40℃を有していても良い。
【0033】
工程d)Fab結合体を投与に最適な医薬組成物として処方する工程,を有していても良い。
【発明の効果】
【0034】
第1の実施の形態では,本発明によって,免疫グロブリンFabフラグメントと診断又は治療の効用を付与する分子化合物との間の化学的結合体が提供され,前記Fabフラグメント上の結合部位は,前記Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合の選択的且つ定量的な還元によって生じたスルフヒドリル基の一方又は両方だけであり,診断又は治療の効用を付与する前記分子化合物は,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,分子化合物とFabフラグメントとの結合の化学量論の分子比が0.95〜1.05又は1.95〜2.05の範囲内であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は,実施例1のrFabとβ−マレイミドプロピオン酸との間での反応混合物の陽イオン交換HPLC解析を示している。
【図2】図2は,デアミド化された(deamidate)形態がほとんどない,rFabのHPLC陽イオン交換解析における,図3のレーン3及び4に対応する実施例2の化合物Dとの完全な結合の前(上図)及び後(下図)を示している。
【図3】図3は,rFab調製物のnative電気泳動における,実施例2の化合物Dとの完全なアルキル化の前及び後を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
結合体は,Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合だけを選択的且つ定量的に還元し,次に,得られた2のスルフヒドリル基のうちの一方を,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,治療又は診断の効用を付与する第1の分子化合物との反応によって定量的に官能基化し,次に,所望に応じて,Fabのスルフヒドリル基のうちの他方も同様に,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,治療又は診断の効用を付与する第2の分子化合物によって,定量的に官能基化する。前記第2の部分は,前記第1の部分と同一か,若しくは相違し,この場合,相違する診断又は治療の特性も提供し得る。
【0037】
代替的に且つ好適に,鎖間ジスルフィド結合の還元後に,前記還元されたFabフラグメントと化学量論的に過剰の前記結合部分と直接的に反応させることによって,対称的に2結合(diconjugate)された生成物を定量的に得ることが可能である。
【0038】
この明細書中で用いられる用語「定量的な官能基化」は,最終的な結合化合物が;
a)還元されたFabの2の遊離スルフヒドリル基のうちの一方だけが結合される場合,0.95〜1.05の範囲にある,結合分子化合物とFabフラグメントとの分子比を,
b)2のスルフヒドリル基の両方が非対称的又は対称的のいずれかに結合される場合,1.95〜2.05の範囲にある,結合分子化合物とFabフラグメントとの分子比を示すことを意味する。
【0039】
Fabの鎖間ジスルフィド結合の選択的且つ定量的な還元によって生じるスルフヒドリル基の一方だけが結合されることを望む場合,他方のスルフヒドリル基は,遊離スルフヒドリル基として保持されるか,又は,次にbocking基によって官能基化される。このブロッキング基は,好適には,診断又は治療の効用を与えない化学的部分を有し,前記化学的部分は,好適には,チオール基,小さいアルキル化剤,又はアリール剤より成る保護基の中から選択される。
【0040】
本発明の一般性を制限するものではないが,スルフヒドリル反応基を有し,治療又は診断の効用を付与する第1の分子化合物の好適な例には,放射性核種,常磁性金属イオン,又はルミネセンスの金属イオン(luminescent metal ions)のキレート若しくはキレート剤の適切な誘導体,発色蛍光(chromophoric fluorescent)又は燐光塗料の分子,ビオチン分子,別個の抗体又はそのフラグメントによって認識されるハプテン,アビジン又はストレプトアビジン分子,治療薬剤,リポソーム中に組込まれる分子化合物を有する親油性鎖,リン脂質で安定化された微小気泡,トリグリセリド又はポリマーのミクロスフィア,診断又は治療用の薬剤を運ぶ微小バルーンが含まれる。前記第1の部分は,さらに,第1のフラグメントと同一であるか又は相違する第2のFabフラグメント,若しくは診断又は治療の効用を付与する第2の分子化合物が,選択的に付着するための標的として,そのままで用いられ得るか,若しくは脱保護又は化学的修飾の後に用いられ得る1以上の官能基を含んでよい。
【0041】
本発明の一般性を制限するものではないが,適切なスルフヒドリル反応基の好適な例には,ヨードアセチル基,ブロモアセチル基,ビニル基又はマレイミド基,若しくはポリフルオロベンゼン又はジニトロフルオロベンゼンの誘導体が含まれてよい。所望に応じて,他のジスルフィド含有分子との反応,及び混合ジスルフィドの形成によって可逆な連鎖(reversible linkage)が達成されてもよい。
【0042】
第2の分子化合物は,第1のものと同一であってもよいし,相違していてもよく,それにより,種々の残留物の組合わせが得られる。また,場合によっては,種々の診断又は治療の効果が得られる。さらには,混合された診断及び治療の使用が可能になり得る。
【0043】
スルフヒドリル反応基を有し,診断又は治療の効用を付与する前記第2の分子化合物の好適な例には,放射性核種,常磁性金属イオン,又はルミネセンスの金属イオンのキレート若しくはキレート剤の適切な誘導体,発色蛍光又は燐光塗料分子,ビオチン分子,別個の抗体又はそのフラグメントによって認識されたハプテン,アビジン又はストレプトアビジン分子,治療薬剤,リポソーム中に組込まれる分子化合物を有する親油性鎖,リン脂質で安定化された微小気泡,トリグリセリド又はポリマーのミクロスフィア,診断又は治療用の薬剤を運ぶ微小バルーンが含まれる。前記第2の部分は,さらに,第1のフラグメントと同一又は相違する第2のFabフラグメント,若しくは診断又は治療の効用を付与する第2の分子化合物が選択的に付着するための標的として,そのままで用いられ得るか,若しくは脱保護又は化学的修飾の後に用いられ得る1以上の官能基を含んでよい。
【0044】
この場合にも,適切なスルフヒドリル反応基の好適な例には,ヨードアセチル基,ブロモアセチル基,ビニル基又はマレイミド基,若しくはポリフルオロベンゼン又はジニトロフルオロベンゼンの誘導体が含まれてよい。所望に応じて,他のジスルフィド含有分子との反応,及び混合ジスルフィドの形成によって可逆な連鎖が達成されてもよい。
【0045】
Fabフラグメントは,公知の方法で得られる。rFab(即ち,組換えDNA技術を介して得られるFab)の使用が特に好適である。
【0046】
別の好適実施例によれば,本発明は,前記結合体を調製するための工程を提供し,前記工程は:
a)2の遊離スルフヒドリル基を得るように,Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合を選択的且つ定量的に還元する工程と;
b)工程a)からの前記スルフヒドリル基の一方又は両方を,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,且つ診断又は治療の効用を付与する分子化合物を用いて定量的に官能基化して,1結合(mono-conjugate)又は2結合(diconjugate)の化合物を得る工程であって,前記2結合は,スルフヒドリル基を対称又は非対称のいずれかに官能基化して得られる,1結合又は2結合の化合物を得る工程とを有する。
【0047】
上記に開示したように,ジスルフィド結合を還元するために用いられ得る多くの還元剤が公知である。しかしながら,今回の場合には,他のジスルフィド結合に影響を及ぼさずに,Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合のみを定量的に還元するためには,特異的な試薬及び特異的な反応条件が必要である。即ち,当技術分野では,ジスルフィド結合に対する還元剤は,水素化ホウ素(borohydride),シアノ水素化ホウ素(cyanoborohydride),ホスフィン,チオール化合物,第1スズイオン(stannous ion),アスコルビン酸及びジチオン酸から選択され得る。しかしながら,それらのいずれも,Fabフラグメントの(od)鎖間ジスルフィド結合に対する特異的な還元剤としては,現在まで開示されていない。
【0048】
予想外に,ホスフィンが,この目的の達成するのに非常に有望であるという結果になった。特に,トリブチルホスフィン及びトリス−(カルボキシルエチル)ホスフィンがそうである。後者(これ以降,頭文字TCEPと短縮して呼ぶ)は,最適な還元剤の結果を示し,驚くべきことに,他の4の−S−S−鎖内結合に影響を及ぼさずに,Fabフラグメント内の鎖間ジスルフィド結合だけの望ましい定量的且つ選択的な還元を達成可能にした。この目標は,制御された作業条件と,還元剤を,他の還元される可能性のある化合物(possible reduing compounds)に比べて過剰度合い(excess)を非常に低くすることによって達成された。さらに,通常,結合部分との相互作用を生じないので,その後の縮合工程の間,結合部分の過剰度合いを制限することも可能であった。従って,より少ない反応剤が用いられ,より少ない副生成物が生成され,還元されたFabフラグメントの中間体の精製が不要で,より高収率で,より純度が高く,且つ精製がより容易な最終化合物が得られた。
【0049】
本発明の選択的且つ定量的な還元が生じる,発見された好適な実験条件は,以下で短く要約され,さらに実験の項目で詳述される。
【0050】
実施例1及び3での教示に従って,緩衝化された条件(所望のpH範囲を与えるあらゆる種類の緩衝液を等しく使用可能)の下で,反応種を混合させた後,以下の特性を有する最終的な緩衝化された水性反応溶液(buffered aqueous reaction solution)が得られる:
Fab濃度:1〜100μM,好適には1.5〜10μM,最も好適には2〜5μM;
ホスフィン濃度:0.1〜10mM,好適には0.5〜5mM;
緩衝化された溶液のpH:4〜8の間,好適には5〜7の間。
【0051】
反応時間は,5〜180分の範囲にあり,好適には,25〜70分の範囲にある。
【0052】
反応温度は,4〜45℃に保持される。好適には,25〜40℃に保持される。
【0053】
通常,縮合反応は,ジスルフィド結合の還元の最後に,還元されたFabフラグメントを予め精製せずに,所望の結合させる分子化合物の緩衝化された水性溶液を付加することによって,同じ反応媒質中で即座に実行される。
【0054】
発見された好適な縮合条件は,実験の項目の実施例1,4及び6で詳細に説明する。最終的な緩衝化された水性反応溶液(所望のpHを与えるあらゆる種類の緩衝液を等しく使用可能)は,好適には以下の特性を有する;
Fab濃度:2〜5μM;
ホスフィン濃度:0.5〜5mM;
結合部分濃度:0.1〜100mM;
緩衝化された溶液のpH:5〜7の間。
【0055】
反応時間は,好適には30分以上である。
【0056】
反応温度は,4〜45℃に保持される。好適には,20〜40℃に保持される。
【0057】
本発明の結合体の性質,特に,縮合反応の化学量論を確かめる目的で,我々は,実施例1に記載したように,本発明の方法を用いて鎖間ジスルフィド結合で選択的に還元された,組換え抗単純ヘルペスウィルスFabフラグメント(Cattani P, Rossolini GM, Cresti S,
Santangelo R, Burton DR, Williamson RA, Sanna PP, Fadda Gら著; J Clin Microbiol.誌 1997年 6月; 35(6)号: 1504〜1509頁 「Detection and Typing of Herpes
Simplex Viruses by Using Recombinant Immunoglobulin Fragments Produced in
Bacteria」:に従って調製した)を,β−マレイミドプロピオン酸(β-maleimidopropionic acid)と結合させた。この最後に記載した分子は,遊離スルヒドリル基にカルボン酸塩残基を付加し,それにより,単純なイオン交換クロマトグラフィを用いた結合分子の数及び種類を測定可能にする。
【0058】
アルキル化反応は,ジスルフィド結合の還元の最後に,同じ反応媒質中で,還元されたFabフラグメントを精製することなしに,即座に実行された。
【0059】
前記アルキル化反応は,実施例1に全てが記載されているように,本発明の発見された好適な条件下で実行された。
【0060】
この反応の最後に,付加されたカルボン酸塩の基の総数が計算可能であり,この場合には,図1にも示されるように,2の遊離スルフヒドリル基が共に結合反応を生じることが確認された。
【0061】
反応条件は,種々のチオール反応性分子化合物の反応性,それらの分子量及び立体障害,所望する(結合が1又は2であるか,対称的であるかないか)最終化合物に従って変更されてもよく,また,通常は,還元工程が省略される場合,側部の反応が生じないように制御するのが望ましい(これによって,Fabの単一の鎖間ジスルフィド架橋の還元から生じる2のスルフヒドリル基だけが1又は2以上の結合部分と反応することが確実にされる)。
【0062】
過剰な還元剤を事前に分離することなしに,アルキル化反応を実行することが特に好ましい。なぜならば,鎖間ジスルフィド結合は,容易に再形成(reform)されるためである。
【0063】
本発明の結合化合物は,特に効果的である。なぜならば;
結合体の予め決定され,制御された化学量論によって,最終化合物中で不活性,抑制的,若しくは有毒ですらあり得る残余不純物のパーセンテージを非常に低減させ;
生成物は,容易に特性付けられ,且つ医薬品登録を目的として,保健機関の前に特性を示すことが可能であり;
生成物の調製プロセスは,非常に容易であり,優れた収率を有し,工業規模にも適用可能であり;
最終的な診断又は治療用の化合物,若しくはそれらのプレカーサーの精製は,主として0,1又は2の置換基を有する生成物を含み,それらのうちの1だけが非常に豊富に含まれている混合物の分離を意味するので,容易に終わる;
結合部分は,Fab重鎖及び軽鎖のカルボキシル末端付近に独占的に配置されており,それゆえに,ポリペプチド鎖のアミノ末端部付近の残基によって形成される抗原認識部位を阻害する可能性がなく;
Fabの最初の構造が保持されるからである。
【0064】
本発明のFab結合体は,通常,診断又は治療の関心の有る抗原,例えば,腫瘍抗原,受容体,組織の標識,特定病変に対する標識,変性過程等に対して方向付けられる。
【0065】
従って,さらに好適な実施例によれば,本発明は,前記結合体を活性成分として含む診断及び/又は診断用の組成物も提供される。
【0066】
所望する診断又は治療の適用のために,本発明の結合化合物は,通常,非経口投与のための懸濁液,溶液又は乳液,若しくは使用前に戻される凍結乾燥の形態で,場合によってはその他の所望する種々の経口に適切な医薬組成物の形態で,適切な組成物に処方される。
【0067】
投与量は,複数のパラメータ(配位子の種類,患者の状態)に依存するが,概ね,診断用途の場合には,1回の投与当たり結合体が0.1〜10mgの範囲になり,治療用途の場合には,1回の投与当たり結合体が10〜500mgの範囲になる。
【0068】
本発明の結合化合物は,特に,それらをインビトロ(in vitro)の使用に対しても有効であり,それにより,それらはその有用性を示す。特に,インビトロで免疫化学試験に適用する場合に,それらはその有用性を示す。
【0069】
本発明は,前述したように,Fabと類似した構造を有し,且つFabよりあまり大きくない寸法であるFab’フラグメントに同等に適用される。
【0070】
図1は,実施例1のrFabとβ−マレイミドプロピオン酸との間での反応混合物の陽イオン交換HPLC解析を示している。全ての実行(run)で,5分の前に溶出しているピークは,215nmで吸収する塩及び反応物に起因するものである。
A)は,TCEP及びβ−マレイミドプロピオン酸を含む完全な反応混合物であり,
B)は,最初の未反応rFab溶液であり,
C)は,TCEPはないが,β−マレイミドプロピオン酸を含む不完全な反応混合物である。
A)は,最初のrFabが完全に反応し,それにより特有の結合化合物が得られたのを示している。質量分析法(MS)の解析によって,2基置換の生成物が得られたことが示された。用いられた質量分析法は,MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置)方式である。
B)は,rFabと,1の脱アミド化された(monodeamidated)rFabで構成される微量成分/不純物とを含有する,実施例1の最初のrFabを示している。
C)は,反応が特異的で,還元剤がないと生じないことを示している。
【0071】
図2は,脱アミド化された(deamidate)形態がほとんどない,rFabのHPLC陽イオン交換解析における,図3のレーン3及び4に対応する実施例2の化合物Dとの完全な結合の前(上図)及び後(下図)を示している。その外形は,結合によって主要なピークがより低い保持時間に移動すること,また,調製物の純度は,試薬を一度,除去してしまえば,開始時のrFab(約3分付近の空隙容量(void
volume)におけるピークは,試薬によるものである)に類似することを示している。
【0072】
図3は,rFab調製物のnative電気泳動における,実施例2の化合物Dとの完全なアルキル化の前後を示している。反応混合物は,何らの精製工程なしに,解析されている。化合物Dとの反応後の移動距離の減少によって,負に荷電された基の明確な数の付着が確認される。MALDI-TPOF
MS解析によって,2基置換された生成物が得られていることが確認される。
1.rFab(調製物1)
2.化合物Dと結合されたrFab(調製物1)
3.rFab(調製物2)
4.化合物Dと結合されたrFab(調製物2)
5.rFab(調製物3)
6.化合物Dと結合されたrFab(調製物3)
【0073】
本発明は,以下の限定されない実施例を参照することによって,詳細がさらに説明される。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
組換え抗単純ヘルペスウィルスFab(recombinant anti-Herpes simplex virus
Fab)をβ−マレイミドプロピオン酸で還元及びアルキル化する。
【0075】
複数の反応条件を試験し,且つ反応生成物を容易に特性付けるように,あるモデルの反応系が構築される。市販されているイオン性基を有するマレイミド誘導体,β−マレイミドプロピオン酸(後述の化1の化合物)をモデル化合物として選択した。それらは,MS解析と共に単純なイオン交換クロマトグラフィ解析を用いることによって,結合部分の数の評価が可能である。
【0076】
【化1】

【0077】
最適な手順は,以下の通りである。
【0078】
ある体積Vの2mMのTECP溶液が,0.5Mの市販の製品(Pierce社製)を,50mMのトリス−HCl,5mMのEDTAをpH=7.0で含む完全にdeareatedされた緩衝液中に1〜250倍に希釈することによって調製される。次に,この溶液が,同一体積Vの10μMの表記(title)のrFab溶液(前述したCattani
P 他の参照文献に従って調製された)に加えられ,37℃で30分間,定温放置される。次に,pH=5の0.1Mのアセテート緩衝液中の50mMのβ−マレイミドプロピオン酸が体積V/2加えられ,その反応混合物が37℃で1時間保たれる。この時点でこの反応は完了し,所望に応じて,例えば透析又はゲル濾過等の従来的な分離手順によって余分な反応物が除去されてよい。
【0079】
解析目的で,ある試料が陽イオン交換HPLCカラムの中に注入され,塩の濃度勾配によって溶出される。クロマトグラフィは,pH=5.8の60〜120mMのリン酸緩衝液で15分間の濃度勾配を用いて,WPカルボキシ−スルホンのカラム(WP
Carboxy-sulfon column)(J.T. Baker社製)上で1mL/分で実行される。検出は,215nmで実行される。その結果が,図1に示されており,rFabが2多い負の電荷を有する同種の生成物への完全な変換が示されている(図1A参照)。従って,2基置換された誘導体に対応している。MS解析によって,2基置換が確認される。結合されていない同じ最初のrFabが,8.8分での小さなピークの溶出と共に,図1Bに示されている。この小ピークは,rFabの1の脱アミド化がされた(mono-deamidated)形態によるものであり,1の電荷だけ異なるrFab種の溶出位置の有用な標識である。さらに,この種は,還元及びアルキル化され,対応する2基置換された誘導体の溶出が,図1Aの6.38分で得られる。図1Cは,還元工程が省略された,即ち,還元剤TCEPが付加されなかった反応混合物の内容が示されている。図1Bの結合されていないrFabに対して,修正されていないその溶出外形から,アルキル化がチオール基に特異的であり,ジスルフィド結合が損なわれていない場合には生じないことが示される。
【0080】
実施例1のrFabは,鎖間ジスルフィド結合が選択的に還元された後,よく知られ,広く使用されている診断及び治療の効果の実績のあるキレート剤であるジエチレントリアミノ5酢酸(DTPA)の新規のマレイミド誘導体(実施例2の化合物D)と反応させて,それにより結合生成物を得た。
【0081】
(実施例2)
N2N2−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]−N6−[4−(2,5−ジオキソ−1H−ピロロ−1−イル)−1−オキソブチル]−L−リシン(化合物D)の合成。
【0082】
表記(title)の化合物は,化合物A(「Anelli,
P.L.他著;Bioconjugate Chem.誌
1999年, 10号, 137〜140頁」に従って調製された)から開始して,後述の2工程の手順(scheme)に従って合成された。
【0083】
第1工程:
イソブチルクロロホルメート(15mmol)が,テトラヒドロフラン(55mL)中に商業的供給源による4−マレイミドブチル酸(化合物B:13.6mmol)及びトリエチルアミン(15mmol)を入れた溶液中に,窒素雰囲気下,−15℃で滴下された。15分後,前述のように調製されたテトラヒドロフラン(20mL)中の化合物Aの溶液(13.6mmol)が,温度を−4℃に保持しながら,その中に滴下された。15分後,冷却が中断され,混合物は室温で1時間,撹拌されてから,真空下で留去された。その残留物が酢酸エチル(50mL)中に溶解され,水で洗浄された。次に,有機相(organic
phase)が硫酸ナトリウム上で乾燥され,真空下でフィルタされて留去された。
【0084】
その残留物が,フラッシュ・クロマトグラフィによって酢酸エチル/石油エーテル混合物中に精製され,それにより黄色油として化合物Cが得られた(収率:8.12mmol,60%相当)。解析データは,所望の構造と合致している。
【0085】
第2工程:
トリフルオロ酢酸(68.6mmol)が,ジクロロメタン(100mL)中の化合物C(6.25g,6.86mol)の溶液に付加された。15時間後,この溶液は,真空下で留去され,その残留物がさらに10mlのトリフルオロ酢酸中に溶解された。6時間後,この混合物は,
【化2】

再度,留去され,その残留物は50mlの水の中に溶解され,アンバーライト(Amberlite)XAD 16.00Tカラム上で水/アセトニトリル混合物で精製され,関連フラクション(relevant fractions)が留去され,それにより化合物Dが白色固体(収率59%)として得られた。解析データは,示された構造と合致している。
【0086】
(実施例3)
rFab鎖間ジスルフィドの選択的な還元。
【0087】
ある体積Vの実施例1の10μMのrFab溶液の還元が,等しい体積Vの,pH=5の100mMのアセテート緩衝液中の5mMのTCEP溶液によって,37℃で1時間,実行された。使用前に窒素を緩衝剤を通して泡立てることによって,できる限りの酸素が反応媒質から除去された。これらの条件下で,鎖間ジスルフィドの還元が,SDS−PAGE解析で観察されたように,概ね完了した。しかしながら,還元剤を除去し,還元されたrFabを,pH=8で0.1Mのトリス−HCl中で2時間,定温放置することによって,鎖間ジスルフィドが再度形成される事実から明らかなように,rFab構造は,失われていなかった。この事実は,非常に重要であり,最終生成物が,抗原の反応部位を認識する能力を保持することを意味する。
【0088】
(実施例4)
還元されたrFabを用いた化合物Dの2結合(diconjugation)。
【0089】
実施例3の特異的な還元の結果として形成されたシステインは,単に半分の体積V/2の100mMの化合物D溶液を0.5Mの酢酸ナトリウム(反応溶液の最終pHは約5)中に付加し,30℃で16時間,定温放置することによって,還元の同一の反応媒質中で直接的に,実施例2の(od)化合物Dに結合された。図2(化合物Dとの結合前(上図)及び結合後(下図)のrFabのHPLC陽イオン交換解析)に示されるように,記載された条件下で,定量的な収量で形成された単一の生成物が,報告されている。
【0090】
クロマトグラフィは,pH=5.8の60〜120mMのリン酸緩衝液で15分間の濃度勾配を用いて,WPカルボキシ−スルホンのカラム(WP Carboxy-sulfon column)(J.T. Baker社製)上で1mL/分で実行された。検出は,215nmで実行された。
【0091】
最終生成物のMS解析によって,2の結合の形成が確認された。
【0092】
(実施例5)
化合物Dを用いた,還元されたrFabの2結合の特性付け。
【0093】
各DTPA誘導体分子の導入は,タンパク質の総負電荷を増大させるので,調製物の同種性の評価,即ち,種々の化合物より成る混合物を生じてしまう不定数のDTPA誘導体との結合体が全く形成されないことの確認に,タンパク質電荷解析が用いられてよい。電荷解析は,電気泳動及びクロマトグラフィの技術によって実行され得る。用いられた電気泳動技術は,native電気泳動である。この技術によると,タンパク質の移動は,分子量及び電荷の両方に依存するが,しかしながら,化合物Cと結合する前及び後の還元されたrFabの場合,タンパク質の質量は,概ね同じであり,電気泳動の走行距離の差は,単にDTPA誘導体によって導入された電荷の差異だけに起因する。図3に示されるように,化合物Dとの結合前及び結合後に解析されたrFabの3つの調製物は,同じ振舞いを示している。即ち,結合後の陰極に向かう移動距離の減少が同じである。同じ解析によって,結合生成物は,同種のものであり,再生可能であることが示された。
【0094】
(実施例6)
化合物Dを用いた,還元されたrFabの1結合(monoconjugation)。
【0095】
実施例1のrFabの鎖間ジスルフィド結合(ある体積Vの10μMのrFab溶液)は,実施例3に記載したように,選択的に還元され,次に,半分の体積V/2の,0.5M酢酸ナトリウム中の0.5mMの化合物Dの溶液(反応溶液の最終pHは約5)が,還元の同じ反応媒質中に,約5℃で非常にゆっくりと直接的に滴下され,その縮合は,HPLCによって連続的にモニタリングされる。
【0096】
モノアルキル化生成物(product of mono-alkylation)の形成は,未反応の還元されたrFabと2結合生成物との間の中間の保持時間において増大するピークが出現することによって示される。このピークの面積が,他の2つの生成物の一方よりも大きくなった時に,反応は停止され,最終的な混合物がクロマトグラフィによって精製された。MS解析によって,主たるピークがモノアルキル化された化合物に対応することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1結合又は2結合のFab結合体を調製するための手順であって,
a)Fabフラグメントの鎖間ジスルフィド結合を選択的且つ定量的に還元して2の遊離スルフヒドリル基をホスフィンによって得る工程と,
b)工程a)からの前記スルフヒドリル基のうちの一方又は両方を,少なくとも1の遊離スルフヒドリル反応基を有し,且つ診断の効用を付与する分子化合物で定量的に官能基化する工程と,
c)1結合(mono-conjugate)又は2結合(diconjugate)のFab化合物を得る工程であって,
前記2結合は,前記スルフヒドリル基を対称的又は非対称的のいずれかに官能基化して得られる,1結合又は2結合のFab化合物を得る工程と,
を有することを特徴とする手順。
【請求項2】
前記鎖間ジスルフィド結合の選択的且つ定量的な還元は,トリブチルホスフィン又はトリス−(カルボキシルエチル)−ホスフィンから選択されるホスフィンで実行されることを特徴とする請求項1に記載の手順。
【請求項3】
前記ホスフィンは,トリス−(カルボキシエチル)−ホスフィンであることを特徴とする請求項2に記載の手順。
【請求項4】
前記工程a)は,緩衝化された条件下で反応種を混合させて実行され,以下の特性:
Fab濃度:1〜100μM;
ホスフィン濃度:0.1〜10mM;
緩衝化された溶液のpH:4〜8;
反応時間:5〜180分;
反応温度:4〜45℃
を有する最終的な緩衝化された水性反応溶液(buffered
aqueous reaction solution)を得ることを特徴とする請求項1に記載の手順。
【請求項5】
以下の:
Fab濃度:1.5〜10μM又は1〜5μM;
ホスフィン濃度:0.5〜5mM;
緩衝化された溶液のpH:5〜7;
反応時間:25〜70分;
反応温度:25〜40℃
が好適な条件であることを特徴とする請求項4に記載の手順。
【請求項6】
工程b)の前記定量的な官能基化は,工程a)の最後に,還元されたFabフラグメントを精製せずに,前記結合させる分子化合物の緩衝化された水性溶液を付加することによって,同じ反応媒質中で即座に実行されることを特徴とする請求項1に記載の手順。
【請求項7】
前記最終的な緩衝化された水性反応溶液は,以下の特性:
Fab濃度:2〜5μM;
ホスフィン濃度:0.5〜5mM;
結合部分濃度:0.1〜100mM;
緩衝化された溶液のpH:5〜7;
反応時間:30分以上;
反応温度:4〜45℃又は20〜40℃
を有することを特徴とする請求項6に記載の手順。
【請求項8】
工程d)Fab結合体を投与に最適な医薬組成物として処方する工程,を有することを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の手順。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−148820(P2011−148820A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89945(P2011−89945)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【分割の表示】特願2004−550961(P2004−550961)の分割
【原出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【出願人】(503427359)ブラッコ イメージング ソチエタ ペル アチオニ (19)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】