説明

免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含む薬剤学的組成物

【課題】本発明は、免疫グロブリンFc領域の新規用途を提供し、より具体的には、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含む薬剤学的組成物を提供する。
【解決手段】免疫グロブリンFc領域を薬物のキャリアとして含む薬剤学的組成物は、結合する薬物の生体内活性は比較的高く維持しながら血中半減期を著しく増加させる。また、薬物がポリペプチド薬物の場合、免疫グロブリンFc領域と目的蛋白質の融合蛋白質に比べて免疫反応誘発の危険が少なくて様々なポリペプチド薬物の持続型製剤の開発に有用に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリンFc領域の新規用途に係り、より具体的には、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含む薬剤学的組成物、および免疫グロブリンFc領域と結合した薬物の生体内持続性を増加させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過去、数多くの薬学者および化学者は、天然的に存在する生理活性分子の生体活性を化学的に変化および/または修飾しようと努力した。このような努力の大部分は、生理活性物質の特定の生体活性を増加させたり、生体活性を持続させたり、毒性を減少させたり、副作用を除去または減少させたり、特定の生理活性を変化させたりすることであった。生理活性物質が化学的に修飾される場合、大部分は生理活性が除去されるかあるいは相当減少するが、場合によっては生理活性が増加または変化することもある。したがって、目的とするところに応じて生理活性を変化させることが可能な化学修飾についての研究が多く行われており、大部分の研究は、生理活性物質(薬物)を生理学的に許容可能なキャリアと共有結合させることであった。
【0003】
国際特許公開公報第WO01/93911号には、多数の酸性残基を持つ重合体が薬物のキャリアとして用いられた例が開示されており、国際特許公開第WO03/00778号には、陰イオン基を含有する両親媒性ブロック共重合体をキャリアとして用いて陽イオン性薬物の安定性を増加させた例が開示されており、ヨーロッパ特許第0681481号には、シクロデキストリンと酸をキャリアとして塩基性薬物の特性を改善させる技術が開示されている。一方、疎水性薬物の場合、生体内での安定性の低下は主に疎水性薬物の低い水溶解特性に起因する。このような疎水性薬物の低い水溶解特性を改善させるために、脂質(Lipid)をキャリアとして用いた技術が国際特許公開第WO04/064731号に開示されている。ところが、今まで免疫グロブリンFc領域を薬物のキャリアとして用いた例は、公知となっていない。
【0004】
一方、一般的に、ポリペプチドは、安定性が低くて変性し易く、血液内蛋白質加水分解酵素によって分解されて腎臓または肝臓を介して容易に除去されるため、薬理成分としてポリペプチドを含む蛋白質医薬品の血中濃度および力価を保つためには、蛋白質薬物を患者に頻繁に投与する必要がある。ところが、大部分注射剤の形態で患者に投与される蛋白質医薬品の場合、活性ポリペプチドの血中濃度を保つために頻繁に注射を打つことは、患者に夥しい苦痛を引き起こす。このような問題点を解決するために、蛋白質薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長期間高く持続させて薬効を最大化しようという努力が続けられてきた。このような蛋白質薬物の持続性製剤は、蛋白質薬物の安定性を高めると同時に薬物自体の力価が十分高く維持されなければならず、患者に免疫反応を誘発してはならない。
【0005】
蛋白質を安定化させ、蛋白質加水分解酵素との接触および腎臓による消失を抑制するための方法として、従来では、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:以下「PEG」という)のように溶解度の高い高分子を蛋白質薬物の表面に化学的に付加させる方法が使用された。PEGは、目的蛋白質の特定の部位または様々な部位に非特異的に結合して溶解度を高めることにより、蛋白質を安定化させ且つ蛋白質の加水分解を防止するのに効果があり、しかも、深刻な副作用を起こさないものと知られている(Sada et al., J. Fermentation Bioengineering 71: 137-139, 1991)。ところが、PEGの結合により、蛋白質の安定性は増加できるが、生理活性蛋白質の力価が著しく低くなるという問題を生じる。さらに、PEGの分子量が増加するほど蛋白質との反応性が低くなり、その結果、収率が減少するという問題がある。
【0006】
最近は、PEGの両末端に同一の蛋白質薬物を結合させた二重体を作って活性の増加を図り(米国特許第5,738,846号)、あるいはお互い異なる種類の蛋白質薬物をPEGの両末端に結合させて同時に2種の活性を示す蛋白質(国際出願公開第WO92/16221号)も開発されたが、これらは蛋白質薬物の活性を持続させる面では明確な効果を示していない。
【0007】
一方、Kinstler等は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)とヒトアルブミンをPEGに結合させた融合蛋白質が増加した安定性を示すと報告した(Kinstler et al., Pharmaceutical Research 12(12): 1883-1888, 1995)。ところが、G−CSF−PEG−アルブミン構造を有する前記文献の修飾された薬物は、体内残留時間が天然型薬物を単独で投与した場合に比べて約4倍増加するに止まり、血中半減期の増加が微々であって、蛋白質薬物の効果的な持続性製剤として実用化されていない。
【0008】
生理活性蛋白質の生体内安定性を高める別の方法として、遺伝子組み換えにより血中安定性の高い蛋白質遺伝子と生理活性蛋白質遺伝子を連結した後、前記組み換え遺伝子で形質転換された動物細胞などを培養して融合蛋白質を生産する方法が開発されている。例えば、現在まで蛋白質の安定性の増加に最も効果が高いものと知られているアルブミンまたはその断片を遺伝子組み換えによって目的の生理活性蛋白質に結合させて生産した融合蛋白質が報告されている(国際出願公開第WO93/15199号および第WO93/15200号、ヨーロッパ特許公開第EP413,622号)。また、ヒューマンゲノムサイエンス(Human Genome Science)社が酵母で生産したインターフェロンアルファとアルブミンの融合蛋白質(製品名:AlbuferonTM)は、猿でインターフェロンの半減期を5時間から93時間に増加させたが、修飾していないインターフェロンに比べて生体活性度が5%未満に著しく減少するという問題がある(Osborn et al., J. Phar. Exp. Ther. 303(2): 540-548, 2002)。
【0009】
一方、遺伝子組み換え方法として、インターフェロン(大韓民国特許公開第2003−9464号)、およびインターロイキン−4受容体、インターロイキン−7受容体または赤血球生成因子受容体(大韓民国特許登録第249572号)を免疫グロブリンのFc断片と融合している形態で哺乳動物で発現させた。国際特許公開第WO01/03737号では、サイトカインまたは成長因子をペプチド結合によって免疫グロブリンのFc断片に結合させた融合蛋白質を製造した。また、米国特許第5,116,964号では、免疫グロブリンFc領域のアミノ末端またはカルボキシル末端に遺伝子組み換え方法によって融合させた蛋白質を開示しており、米国特許第5,349,053号では、IL−2を免疫グロブリンFc領域にペプチド結合によって融合させた融合蛋白質を開示している。その他にも、遺伝子組み換えによって製造されたFc融合蛋白質の例として、インターフェロン−βまたはその誘導体と免疫グロブリンFc領域の融合蛋白質(国際特許公開第WO0/23472号)、IL−5受容体と免疫グロブリンFc領域の融合蛋白質(米国特許第5,712,121号)、インターフェロンアルファと免疫グロブリンG4のFc領域の融合蛋白質(米国特許第5,723,125号)、およびCD4蛋白質と免疫グロブリンG2のFc領域の融合蛋白質(米国特許第6,451,313号)が開示されている。
【0010】
一方、免疫グロブリンFc領域のアミノ酸を変形させた技術も公知になっているが、米国特許第5,605,690号では、免疫グロブリンFc領域で特に補体結合部位または受容体結合部位のアミノ酸を変形させたFcを用いて遺伝子組み換え法によって製造されたTNFR−IgG1 Fc融合蛋白質を開示しており、このように変形された免疫グロブリンFc領域を用いた遺伝子組み換え方式の融合蛋白質の製造方法は、米国特許第6,277,375号、第6,410,008号および第6,444,792号にも開示されている。
【0011】
このような遺伝子組み換え法によって生産されたFc融合蛋白質は、免疫グロブリンFc領域の特定の部位、すなわちアミノ末端またはカルボキシル末端でのみ蛋白質融合が可能であり、主に同種二量体の形態でのみ発現される。糖鎖化蛋白質間の融合または非糖鎖化蛋白質間の融合のみが可能であって糖鎖化蛋白質と非糖鎖化蛋白質の融合は不可能であるという欠点がある。また、融合によって新たに発生したアミノ酸配列により免疫反応が誘発されるおそれがあるだけでなく、リンカー部位に対する蛋白質加水分解酵素の敏感性が増加するおそれがあるという問題点を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許公開第WO01/93911号
【特許文献2】国際特許公開第WO03/00778号
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0681481号
【特許文献4】国際特許公開第WO04/064731号
【特許文献5】米国特許第5,738,846号
【特許文献6】国際出願公開第WO92/16221号
【特許文献7】国際出願公開第WO93/15199号
【特許文献8】国際特許公開第WO93/15200号
【特許文献9】ヨーロッパ特許公開第EP413,622号
【特許文献10】大韓民国特許公開第2003−9464号
【特許文献11】大韓民国特許登録第249572号
【特許文献12】国際特許公開第WO01/03737号
【特許文献13】米国特許第5,116,964号
【特許文献14】米国特許第5,349,053号
【特許文献15】国際特許公開第WO0/23472号
【特許文献16】米国特許第5,712,121号
【特許文献17】米国特許第5,723,125号
【特許文献18】米国特許第6,451,313号
【特許文献19】米国特許第5,605,690号
【特許文献20】米国特許第6,277,375号
【特許文献21】米国特許第6,410,008号
【特許文献22】米国特許第6,444,792号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Sada et al., J. Fermentation Bioengineering 71: 137-139, 1991
【非特許文献2】Kinstler et al., Pharmaceutical Research 12(12): 1883-1888, 1995
【非特許文献3】Osborn et al., J. Phar. Exp. Ther. 303(2): 540-548, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような背景の下に、本発明者は、ポリペプチド薬物を含んだ様々な薬物において生体内活性の減少は最小化または維持されるが、薬物の生体内安定性は増加させるための方法を研究し、免疫グロブリンFc領域を薬物と結合させて投与する場合、結合した薬物の生体内安定性は向上するが、生体内活性の減少は最小化されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の一目的は、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含む薬剤学的組成物を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含むことにより、薬物の生体内持続性を増加させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の使用方法は、薬物の生体内持続性を増加させるための薬剤を製造するときのキャリアとしての免疫グロブリンFc領域の使用方法であって、該免疫グロブリンFc領域を、非ペプチド性リンカーを媒介として、生理活性ポリペプチドと共有結合させ、該免疫グロブリンFc領域と該生理活性ポリペプチドとの間の結合は、遺伝子組換えによる融合ではないことを特徴としている。
【0018】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域が非糖鎖化されることが好ましい。
【0019】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域が、C1、C2、C3およびC4ドメインよりなる群から選択される1〜4個のドメインから構成されることが好ましい。
【0020】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含むことが好ましい。
【0021】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択されることが好ましい。
【0022】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択されることが好ましい。
【0023】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域であることが好ましい。
【0024】
本発明の使用方法では、免疫グロブリンFc領域がヒト非糖鎖化IgG4 Fc領域であることが好ましい。
【0025】
本発明の使用方法では、非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、ポリオオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、およびヒアルロン酸、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択されることが好ましい。
【0026】
本発明の使用方法では、生理活性ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造蛋白質、リガンド蛋白質および受容体よりなる群から選択されることが好ましい。
【0027】
本発明の使用方法では、生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子、グルカコン類似ペプチド類、G蛋白質共役型受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合蛋白質類、サイトカイン結合蛋白質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポ蛋白質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、プロテインC、C−反応性蛋白質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進蛋白質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体よび抗体断片類よりなる群から選択されることが好ましい。
【0028】
本発明の使用方法では、生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ、ヒト赤血球生成因子およびFab’抗体断片よりなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
本発明の使用方法では、非ペプチド性リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】免疫グロブリンをパパインで切断して得た免疫グロブリンFc領域をクロマトグラフィで精製した結果である。
【図2】精製された免疫グロブリンFc領域をSDS−PAGEで分析した結果である。
【図3】カップリング反応後に生成されたIFNα−PEG−Fc(A)、17Ser−G−CSF−PEG−Fc(B)およびEPO−PEG−Fc(C)結合体をSDS−PAGEで分析した結果である。
【図4】カップリング反応後に精製されたIFNα−PEG−Fc結合体をサイズ排除クロマトグラフィで分析した結果である。
【図5】EPO−PEG−Fc結合体をMALDI−TOF質量分析器で分析した結果である。
【図6a】天然型免疫グロブリンFcと脱糖鎖化免疫グロブリンFc(deglycosylated Fc:DG Fc)のMALDI−TOF質量分析器およびSDS−PAGEで分析した結果である。
【図6b】天然型免疫グロブリンFcと脱糖鎖化免疫グロブリンFc(deglycosylated Fc:DG Fc)のMALDI−TOF質量分析器およびSDS−PAGEで分析した結果である。
【図7】IFNα−PEG−Fc結合体およびIFNα−PEG−DG Fc結合体をMALDI−TOF質量分析器で分析した結果である。
【図8a】IFNα−PEG−Fc結合体、IFNα−PEG−DG FcおよびIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体を逆相HPLCで分析した結果である。
【図8b】IFNα−PEG−Fc結合体、IFNα−PEG−DG FcおよびIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体を逆相HPLCで分析した結果である。
【図8c】IFNα−PEG−Fc結合体、IFNα−PEG−DG FcおよびIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体を逆相HPLCで分析した結果である。
【図9】天然型IFNα、IFNα−40K PEG、IFNα−PEG−アルブミン結合体およびIFNα−PEG−Fc結合体の薬物動態解析グラフである。
【図10】天然型EPO、高糖鎖化EPO、EPO−PEG−FcおよびEPO−PEG−AG Fc結合体の薬物動態を分析したグラフである。
【図11】IFNα−PEG−Fc結合体、IFNα−PEG−DG FcおよびIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体の薬物動態を分析したグラフである。
【図12】Fab’、Fab’−S−40K PEG連結体、Fab’−N−PEG−N−Fc結合体およびFab’−S−PEG−N−Fc結合体の薬物動態を分析したグラフである。
【図13】Fab’、Fab’−S−40K PEG連結体、Fab’−N−PEG−N−Fc結合体およびFab’−S−PEG−N−Fc結合体の細胞内活性を分析したグラフである。
【図14】ヒトIgGサブクラスにおける補体Clqの結合活性を比較分析したグラフである。
【図15】糖鎖化Fc、酵素を用いて糖を除去したDG Fc、および大腸菌で生産したAG Fcをキャリアとして用いたインターフェロン−PEG−キャリア結合体における補体Clqの結合活性を比較分析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一つの様態として、本発明は、免疫グロブリンFcをキャリアとして含む薬剤学的組成物に関するものである。
【0032】
本発明において、「キャリア」とは、薬物と共に結合する物質を意味する。一般に、薬物にキャリアを結合させた結合体の場合、薬物の生理活性を増減または除去するが、本発明の目的上、キャリアは、結合する薬物の生理活性の減少を最小化し且つ薬物の生体内安定性を増加させるためのものである。
【0033】
このような目的を達成するために、本発明では、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして使用することを特徴とする。
【0034】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドなので、薬物のキャリアとして使用するには安全である。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン全体分子に比べて相対的に分子量が少ないため、結合体の製造、精製および収率の面で有利であるうえ、アミノ酸配列が抗体ごとに異なるため、高い非均質性を示すFab部分が除去されるから、物質の同質性が大きく増加し、血中抗原性の誘発可能性も低くなる効果も期待することができる。
【0035】
本発明において、「免疫グロブリンFc領域」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域、重鎖不変領域1(C1)と軽鎖不変領域1(C1)を除いた、重鎖不変領域2(C2)および重鎖不変領域3(C3)部分を意味し、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等あるいはより向上した効果を持つ限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体重鎖不変領域1(C1)および/または軽鎖不変領域1(C1)を含んだ、拡張されたFc領域であり、あるいはC2および/またはC3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域である。すなわち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)C1ドメイン、C2ドメイン、C3ドメインおよびC4ドメイン、2)C1ドメインおよびC2ドメイン、3)C1ドメインおよびC3ドメイン、4)C2ドメインおよびC3ドメイン、5)1つまたは2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。
【0036】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、この配列誘導体(mutant)も含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによって相異なる配列を持つものを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322または327〜331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として利用できる。また、ジスルフィド結合を形成することが可能な部位が除去されるか、あるいは天然型FcからN末端の幾つかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されることもあるなど様々な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能を無くすために、補体結合部位、例えばClq結合部位またはADCC部位が除去されることがある。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第WO96/32478号などに開示されている。
【0037】
分子の活性を全体的に変更させない蛋白質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知となっている(H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0038】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などで修飾(modification)されることもできる。
【0039】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同一の生物学的活性を示すが、熱やpHなどに対するFc領域の構造的安定性を増大させた誘導体である。
【0040】
また、このようなFc領域は、ヒトおよび牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離して得られた天然型であり、あるいは形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体である。ここで、天然型から得る方法では、全体免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、蛋白質分解酵素を処理して得ることができる。パパインを処理する場合にはFabおよびFcに切断され、ペプシンを処理する場合にはpF’cおよびF(ab’)2に切断される。これらの断片からサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cを分離することができる。
【0041】
好ましくは、ヒト由来のFc領域は微生物から収得した組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0042】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖、または糖鎖が除去された形態である。このような免疫グロブリンFcの糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法および微生物を用いた遺伝工学的方法などの通常の方法が利用できる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(Clq)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が減少または除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このような点において、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態は、脱糖鎖化免疫グロブリンFc領域、または非糖鎖化免疫グロブリンFc領域である。
【0043】
本発明において、「脱糖鎖化(Deglycosylation)」はFc領域から酵素によって糖を除去することを意味し、「非糖鎖化(Aglycosylation)」はFc領域を糖鎖化されていない形態で原核細胞、好ましくは大腸菌で生産することを意味する。
【0044】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源または牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、好ましくはヒト起源である。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらの混成(hybrid)によるFc領域である。好ましくは、ヒトの血液に最も豊富なIgGまたはIgM由来であり、最も好ましくは、リガンド結合蛋白質の半減期を向上させるものと公知になっているIgG由来である。
【0045】
一方、本発明において、「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが相異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD FcおよびIgE Fc断片よりなる群から選択された2つ以上の断片から二量体または多量体の製造が可能である。
【0046】
本発明において、「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFc領域内に、2つ以上の相異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE FcおよびIgD FcのC1、C2、C3およびC4よりなる群から選択された1〜4つのドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含むことができる。
【0047】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のサブクラスに分けられるが、本発明では、これらの組み合わせおよびこれらのハイブリッドも含む。好ましくは、IgG2およびIgG4サブクラスであり、最も好ましくは、補体依存性細胞毒性(CDC、Complement-dependent cytotoxicity)のようなエフェクター機能が殆どないIgG4のFc領域である(図14および図15参照)。
【0048】
すなわち、最も好ましい本発明の薬物のキャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化Fc領域である。ヒト由来のFc領域は、ヒトの生体で抗原として作用し、これに対する新しい抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こすおそれのある非ヒト由来のFc領域に比べて好ましい。
【0049】
前記免疫グロブリンFc領域は、任意の薬物と連結されて結合体を形成する。
【0050】
本発明において、「薬物結合体」または「結合体」は、一つ以上の薬物が一つ以上の免疫グロブリンFcとお互い連結されているものを意味する。
【0051】
本発明において、「薬物」は、ヒトまたは動物に投与される場合、治療的活性を示す物質を意味し、ポリペプチド、化合物、抽出物、ヘキサンなどを含むが、これに制限されない。薬物は、好ましくはポリペプチド薬物である。
【0052】
本発明において、「生理活性ポリペプチド薬物」、「ポリペプチド薬物」および「蛋白質薬物」は同一の意味で使われており、生体内で様々な生理的現象に拮抗作用を示す生理活性型であることを特徴とする。
【0053】
このようなポリペプチド薬物は、変性し易い、あるいは生体内に存在する蛋白質分解酵素によってよく分解されるといった理由で長時間にわたって生理学的活性を持続することができないという欠点がある。しかし、本発明の免疫グロブリンFc領域とポリペプチドを結合させた結合体の場合、薬物の構造的安定性が増加し、分解半減期が増加する。ところが、Fc領域の結合によるポリペプチドの生理学的活性の減少は、その他公知となっている他のポリペプチド薬物製剤に比べて非常に軽微であるといえる。したがって、既存のポリペプチド薬物の生体内利用率に比べて本発明のポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域の結合体は、生体内利用率が著しく増加したことを特徴とする。これは、下記本発明の実施例によっても開示されているところ、本発明の免疫グロブリンFc領域が結合したIFNα、G−CSF、hGHなどが、PEGのみが結合しあるいはPEGとアルブミンが結合した既存の製剤に比べて約2〜6倍程度増加したことを確認することができる(表8、表9および表10)。
【0054】
一方、本発明の免疫グロブリンFc領域と蛋白質の結合は、従来の組み換え的な方法による融合ではないことを特徴とする。免疫グロブリンFc領域と薬物として用いられる活性ポリペプチドが組み換え的な方法によって融合している形態は、Fc領域のN末端またはC末端にポリペプチドがペプチド結合で連結された形態であって、これをコードする核酸配列において一つのポリペプチドとして発現されてフォールドされる。
【0055】
蛋白質の生理学的機能体としての活性が構造によって決定されるという点に基づくとき、これは融合蛋白質活性の急激な減少をもたらす。したがって、ポリペプチド薬物がFcと組み換え的な方法によって融合する場合、構造的安定性が増加したとしても、生体内利用率の面で効果がない。また、このような融合蛋白質は、ミスフォールド(misfolding)されて凝集体の形態で発現される傾向があるので、蛋白質の製造、分離の収率面で不経済である。また、活性型ポリペプチドが糖鎖化された形態の場合、真核細胞で発現させなければならず、このような場合、Fcも糖鎖化されるので、生体内で不適切な免疫反応を引き起こすおそれもある。
【0056】
すなわち、本発明によってこそ始めて、糖鎖化された活性型ポリペプチドを非糖鎖化された免疫グロブリンFc領域に連結させた結合体が可能となり、最上のシステムでそれぞれが製造、分離されるので、蛋白質獲得の収率を高めることができるなど、前記の問題点を全て克服することができる。
【0057】
本発明の免疫グロブリンFc領域に連結可能な蛋白質薬物の例としては、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類とインターフェロン受容体類(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ、水溶性タイプIインターフェロン受容体など)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、グルカコン様ペプチド類(GLP−1など)、G蛋白質共役型受容体(G-protein-coupled receptor)、インターロイキン類(例えば、インターロイキン−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、−21、−22、−23、−24、−25、−26、−27、−28、−29、−30など)とインターロイキン受容体類(例えば、IL−1受容体、IL−4受容体など)、酵素類(例えば、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、イズロネート−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、α−ガラクトシダーゼ−A(alpha-galactosidase-A)、アガルシダーゼα(agalsidase alpha)、アガルシダーゼβ、α−L−イズロニダーゼ(alpha-L-iduronidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ(imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、 ウリカーゼ(uricase)、血小板−活性因子アセチルハイドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)など)、インターロイキンおよびサイトカイン結合蛋白質類(例えば、IL−18bp、TNF−結合蛋白質など)、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン(alpha-lactalbumin)、アポリポ蛋白質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類(angiopoietin)、ヘモグロビン、トロンビン(thrombin)、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン(thrombomodulin)、血液因子VII、血液因子VIIa、血液因子VIII、血液因子IX、血液因子XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン(hirudin)、プロテインC、C−反応性蛋白質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン(angiostatin)、アンギオテンシン(angiotensin)、骨形成成長因子、骨形成促進蛋白質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン(elcatonin)、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤(tissue factor pathway inhibitor)、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類(例えば、神経成長因子、毛様体神経栄養因子(cilliary neurotrophic factor)、アキソジェネシス因子−1(axogenesis factor-1)、脳−ナトリウム利尿ペプチド(brain-natriuretic peptide)、神経膠由来神経栄養因子(glial derived neurotrophic factor)、ネトリン(netrin)、好中球抑制因子(neurophil inhibitor factor)、神経栄養因子、ニューチュリン(neuturin)など)、 副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン(autotaxin)、ラクトフェリン(lactoferrin)、ミオスタチン(myostatin)、受容体類(例えば、TNFR(P75)、TNFR(P55)、IL−1受容体、VEGF受容体、B細胞活性因子受容体など)、受容体拮抗物質(例えば、IL1−Raなど)、細胞表面抗原(例えば、CD2、3、4、5、7、11a、11b、18、19、20、23、25、33、40、45、69など)、ウイルスワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片類(例えば、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)およびFd)、ウイルス由来ワクチン抗原など様々な種類を含み、前記例示された種類に限定されない。抗体断片は、特定の抗原に結合することが可能な能力をもったFab、Fab’、F(ab’)、FdまたはscFvであり、好ましくはFab’である。Fab断片は、軽鎖の可変ドメイン(V)および不変ドメイン(C)と重鎖の可変ドメイン(V)および第1不変ドメイン(CH1)を含む。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシル末端にヒンジ(hinge)領域からの一つ以上のシステインを含む数個のアミノ酸残基が付加されている点でFab断片とは区別される。Fd断片は、VおよびCH1ドメインのみから構成された断片であり、F(ab’)は、2分子のFab’断片がジスルフィド結合あるいは化学的反応によって結合したものである。scFvは、VおよびVドメインのみがペプチドリンカーで連結された単一ポリペプチド鎖である。
【0058】
特に好ましい生理活性ポリペプチドは、疾病の治療または予防の目的で人体に投与されるとき、投与頻度の高いヒト成長ホルモン、インターフェロン類(インターフェロン−α、−β、−γなど)、顆粒球コロニー刺激因子、赤血球生成因子および抗体断片類などである。また、前記生理活性ポリペプチドの天然型と実質的に同等或いはより増加した機能、構造、活性または安定性を有する限り、任意の誘導体または誘導体も本発明の生理活性ポリペプチドの範囲に含まれる。本発明の最も好適なポリペプチドの薬物はインターフェロン−アルファである。
【0059】
本発明では、ポリペプチド薬物以外に他の薬物も使用可能であり、テトラサイクリン、ミノサクリン、ドキシサイクリン、オフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、セファクロール、セフォタキシム、イミペネム、フェニシリン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、バンコマイシンなどの誘導体および混合物から選択される抗生剤;メトトレキサート、カルボプラチン、タクソール、シスプラチン、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、エトポシド、パクリタキセル、カンプトセシン、シトシンアラビノシドなどの誘導体および混合物から選択される抗癌剤;インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ジクロフェナクなどの誘導体および混合物から選択される消炎剤;アシクロビル、ロバビンなどの誘導体よび混合物から選択される抗ウイルス剤;およびケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アムホテリシン−B、グリセオフルビンなどの誘導体および混合物から選択される抗菌剤を例示することができるが、これに限定されない。
一方、免疫グロブリンFc領域は、リンカーを媒介として薬物に連結された結合体を形成することができる。
【0060】
このようなリンカーは、ペプチド性リンカーまたは非ペプチド性リンカー全てを含むが、好ましくは非ペプチド性リンカーであり、より好ましくは非ペプチド性重合体である。
本発明において、「ペプチド性リンカー」とは、アミノ酸、好ましくはペプチド結合で連結された1〜20個のアミノ酸を意味し、糖鎖化された形態であってもよいが、本発明の目的上、非糖鎖化されることが好ましい。このようなペプチド性リンカーは、Gly、Ser反復単位を持つペプチドであって、T細胞に対して免疫学的に不活性のペプチドを使用することが好ましい。
【0061】
本発明において、「非ペプチド性重合体」とは、反復単位が2つ以上結合した生体適合性重合体を意味し、前記反復単位は、ペプチド結合でない任意の共有結合によってお互い連結される。このような非ペプチド性重合体の例としては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエーテル、PLA(poly(lactic acid))およびPLGA(poly(lactic-glycolic acid))のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸などを挙げることができ、最も好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)などがある。
【0062】
本発明の免疫グロブリンFc領域−薬物または免疫グロブリンFc領域−リンカー−薬物は、様々なモル比の結合が可能である。すなわち、一つのポリペプチド薬物に結合する免疫グロブリンFc領域および/またはリンカーの数は制限されない。ところが、好ましくは本発明の薬物結合体において薬物と免疫グロブリンFc領域は1:1〜10:1、好ましくは1:1〜2:1のモル比で結合できる。
【0063】
また、免疫グロブリンFc領域、任意のリンカーおよび薬物の結合は、遺伝子組み換え方法によってFc領域とポリペプチド薬物が融合蛋白質の形態で発現される場合のペプチド結合(peptide bond)を除いた全ての共有結合と水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用のような全ての種類の非共有結合を含む。しかし、薬物の生理活性の面で共有結合であることが好ましい。
【0064】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域、任意のリンカーおよび薬物は、薬物の任意の部位(site)との結合が可能である。一方、免疫グロブリンFcおよびポリペプチド薬物の場合は、N末端、C末端の結合も可能であるが、遊離基と結合することがより好ましく、特にこれらのアミノ末端、リジンのアミノ残基、ヒスチジンのアミノ残基または遊離システイン残基で共有結合がよく形成される。
【0065】
一方、本発明の免疫グロブリンFc領域、任意のリンカーおよび薬物の結合は、任意の方向に結合できる。すなわち、リンカーと免疫グロブリンFc領域のN末端、C末端および遊離基の結合が可能であり、リンカーと蛋白質薬物のN末端、C末端および遊離基の結合が可能である。リンカーがペプチドリンカーの場合、任意の結合部位における結合が可能である。
【0066】
また、本発明の結合体は、いろいろの架橋剤(coupling agent)で結合可能である。このような架橋剤の種類は、当業界に公知となっており、例えば1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4−アジドサリチル酸とのエステル、イミドエステル、例えばジスクシンイミジルエステル、例えば3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)および二官能性(bifunctional)マレイミド、例えばビス−N−マレイミド−1,8−オクタンを含むが、これに制限されない。
【0067】
一方、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含む本発明の薬剤学的組成物は、いろいろの経路によって投与できる。
【0068】
本発明において、「投与」はある適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記結合体は薬物が目的の組織に到達することができる限り、いずれの一般的な経路を介しても投与できる。例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与が可能であるが、これに制限されない。ところが、経口投与の際、ペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコートし、或いは胃における分解から保護するために剤形化することが好ましい。好ましくは、注射剤の形態で投与できる。また、製薬組成物は、活性物質が標的細胞に移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
【0069】
本発明の結合体を含んだ薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、経口投与の場合には結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、上述したような薬剤学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。例えば、経口投与の場合には錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤(elixir)、サスペンション、シロップ、ウェーハなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐方形製剤などに剤形化することができる。
【0070】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0071】
本発明において、免疫グロブリンFc領域がキャリアとして用いられた薬物の実際投与量は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別並びに体重、および疾患の重症度などのいろいろの関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。本発明の薬剤学的組成物は、生体内持続性に非常に優れるので、本発明の薬剤学的製剤の投与回数および頻度を著しく減少させることができる。
【0072】
別の様態として、本発明の別の目的は、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含むことにより、薬物の生体内持続性を増加させる方法を提供することである。
【0073】
本発明の一実施様態に係る生理活性ポリペプチド−PEG−免疫グロブリンFc領域の結合体は、ポリペプチド−PEG連結体またはポリペプチド−PEG−アルブミン結合体より著しく優れた安定性を示す。薬物動力学分析(pharmacokinetic analysis)結果、インターフェロンアルファ(IFNα)の血中半減期がインターフェロンアルファ−40kDa PEG連結体(IFNα−40K PEG)の場合には天然型に比べて約20倍増加し、IFNα−PEG−アルブミン結合体の場合には約10倍増加した反面、本発明のIFNα−PEG−Fc結合体は約50倍程度に画期的に増加した(表3参照)。また、目的蛋白質としてIFNαの代わりにヒト成長ホルモン(hGH)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)およびその誘導体(17S−G−CSF)または赤血球生成因子(EPO)を用いた場合にも同一の結果を示したが、PEG−Fcを結合させた本発明の蛋白質結合体が天然型蛋白質またはPEGまたはPEG−アルブミンを結合させた場合に比べて約10倍まで増加した平均滞留時間(mean residence time;MRT)および血中半減期を示した(表4〜表7参照)。
【0074】
また、Fab’−PEG−Fc結合体は、PEG−Fc連結体がFab’のC末端近くの−SH基またはN末端に連結された場合、いずれも40K PEG−Fab’連結体に比べて2〜3倍延長された血中半減期を示した(図12参照)。
【0075】
そして、免疫グロブリンFcの糖鎖を除去した脱糖鎖化免疫グロブリンFc(DG Fc)と組み換え非糖鎖化免疫グロブリンFc(AG Fc)誘導体を用いて蛋白質結合体を製造しても、血中半減期と生体外活性が同様に維持されるものと確認された(表3および8、図11参照)。
【0076】
このように、本発明の蛋白質結合体は、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、赤血球生成因子、コロニー刺激因子またはその誘導体および抗体誘導体を含む多様な生理活性ポリペプチドに適用され、卓越した血中半減期と平均滞留時間(MRT)を示すので、様々な種類の生理活性ポリペプチドの持続型製剤の開発に利用できる。
【0077】
以下、下記の実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【0078】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0079】
本発明の薬剤学的組成物は、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含むことを特徴としている。
【0080】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域が非糖鎖化され得る。
【0081】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域が、C1、C2、C3およびC4ドメインよりなる群から選択され得る。
【0082】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含み得る。
【0083】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択され得る。
【0084】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群より選択され得る。
【0085】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域であり得る。
【0086】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域がヒト非糖鎖化IgG4 Fc領域であり得る。
【0087】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域と結合する薬物が生理活性ポリペプチドであり得る。
【0088】
本発明の薬剤学的組成物では、生理活性ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造蛋白質、リガンド蛋白質および受容体よりなる群から選択され得る。
【0089】
本発明の薬剤学的組成物では、生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子、グルカコン様ペプチド類、G蛋白質共役型受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合蛋白質類、サイトカイン結合蛋白質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポ蛋白質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、プロテインC、C−反応性蛋白質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進蛋白質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体よび抗体断片類よりなる群から選択され得る。
【0090】
本発明の薬剤学的組成物では、生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ、ヒト赤血球生成因子およびFab’抗体断片よりなる群から選択され得る。
【0091】
本発明の薬剤学的組成物では、免疫グロブリンFc領域がペプチド性または非ペプチド性リンカーを媒介として薬物と結合し得る。
【0092】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法は、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして含むことを特徴としている。
【0093】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域が非糖鎖化され得る。
【0094】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域が、C1、C2、C3およびC4ドメインよりなる群から選択される1〜4個のドメインから構成され得る。
【0095】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含み得る。
【0096】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択され得る。
【0097】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択され得る。
【0098】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域であり得る。
【0099】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域がヒト非糖鎖化IgG4 Fc領域であり得る。
【0100】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域と結合する薬物が生理活性ポリペプチドであり得る。
【0101】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、生理活性ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造蛋白質、リガンド蛋白質および受容体よりなる群から選択され得る。
【0102】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子、グルカコン類似ペプチド類、G蛋白質共役型受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合蛋白質類、サイトカイン結合蛋白質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポ蛋白質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、プロテインC、C−反応性蛋白質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進蛋白質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体よび抗体断片類よりなる群から選択され得る。
【0103】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ、ヒト赤血球生成因子およびFab’抗体断片よりなる群から選択され得る。
【0104】
本発明の薬物の生体内持続性を増加させる方法では、免疫グロブリンFc領域がペプチド性または非ペプチド性リンカーを媒介として薬物と結合し得る。
【実施例】
【0105】
(実施例1)インターフェロンアルファ(IFNα)−PEG−免疫グロブリンFc領域(Fc)結合体の製造I
(段階1)免疫グロブリンを用いた免疫グロブリンFc領域の製造
免疫グロブリンFc領域を製造するために、10mMのリン酸塩緩衝液に溶解された分子量150kDaの免疫グロブリンG(Immunoglobulin G;IgG、緑十字)200mgに蛋白質加水分解酵素パパイン(Papain、Sigma社)を2mg処理して37℃で2時間徐々に攪拌しながら反応させた。酵素反応後、生成された免疫グロブリンFc領域を精製するために、Superdexカラム、プロテインAカラムおよび陽イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィを順次行った。具体的に、反応液を10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(PBS、pH7.3)で平衡化させたSuperdex200カラム(Superdex 200、Pharmacia社)で滴下し、同一の緩衝液を用いて流速1mL/分で溶出させた。免疫グロブリンFc領域より分子量が相対的に大きい未反応免疫グロブリン(IgG)とF(ab’)などは早く溶出するので、これを先に除去した。免疫グロブリンFc領域と類似の分子量を持つFabは、次のようにプロテインAカラムクロマトグラフィを行って除去した(図1)。20mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)で平衡化させたプロテインAカラム(Pharmacia社)にSuperdex200カラムから溶出した免疫グロブリンFc領域含有分画を5mL/分の流速で負荷した後、カラムに結合していない蛋白質を除去するために同一の緩衝液で十分洗浄した。ここに100mMのクエン酸ナトリウム(Na citrate、pH3.0)緩衝液を流して高純度の免疫グロブリンFc領域を溶出させた。プロテインAカラムで精製されたFc分画を最後に陽イオン交換樹脂カラム(polyCA、PolyLC社)を用いて精製したが、10mMの酢酸塩緩衝液(pH4.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.4M)法によって溶出して高純度のFc分画を得、これを12%SDS−PAGE上で確認した(図2のレーン2)。
【0106】
(段階2)IFNα−PEG連結体の製造
両末端にアルデヒド反応基を持つ分子量3.4kDaのポリエチレングリコールALD−PEG−ALD(Shearwater社)を、ヒトインターフェロンアルファ−2b(hIFNα−2b、分子量20kDa)が5mg/mLの濃度で溶解された100mMのリン酸塩緩衝液にIFNα:PEGのモル比が1:1、1:2.5、1:5、1:10および1:20となるように添加した。ここに還元剤のナトリウムシアノボロハイドライド(NaCNBH、Sigma社)を最終濃度が20mMとなるように添加し、4℃で徐々に攪拌しながら3時間反応させた。インターフェロンアルファのアミノ末端部位に選択的にPEGが連結され、PEGとインターフェロンアルファが1:1で結合した連結体を得るために、前記反応混合物をもってSuperdex(SuperdexR、Pharmacia社)サイズ排除(size exclusion)クロマトグラフィを行った。溶出液として10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてIFNα−PEG連結体を精製し、PEGと結合していないインターフェロンアルファ、未反応PEGおよび2つのインターフェロンアルファがPEGと連結された二量体副産物を除去した。精製されたIFNα−PEG連結体を5mg/mLの濃度に濃縮した。これにより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないIFNα:PEGの最適反応モル比は1:2.5〜1:5であることを確認した。
【0107】
(段階3)IFNα−PEG−Fc結合体の形成
前記段階2で精製されたIFNα−PEG連結体に免疫グロブリンFc領域のN末端に結合させるために、段階1で準備された免疫グロブリンFc領域(約53kDa)を10mMのリン酸塩緩衝液に溶解させた後、IFNα−PEG連結体:Fcのモル比がそれぞれ1:1、1:2、1:4および1:8となるように、IFNα−PEG連結体と混合して反応させた。反応液を100mMのリン酸塩緩衝液に調製し、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で20時間徐々に攪拌しながら反応させた。これにより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないIFNα−PEG連結体:Fcの最適反応モル比は1:2であることを確認した。
【0108】
(段階4)IFNα−PEG−Fc結合体の分離および精製
前記段階3の結合反応後、未反応物質および副産物を除去し、生成されたIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体を精製するためにSuperdexサイズ排除クロマトグラフィを行った。反応混合物を濃縮した後、10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.3)を用いて流速2.5mL/分でカラムに通過させ、結合していないFcおよび未反応物質を除去し、IFNα−PEG−Fc蛋白質結合体分画を得た。得られたIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体分画には不純物として少量の未反応Fcおよびインターフェロンアルファ二量体が混在しているので、これを除去するためにさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィを行った。IFNα−PEG−Fc蛋白質結合体分画を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化させたPolyCAT LPカラム(PolyLC社)に仕込み、1Mの塩化ナトリウム(NaCl)を含む10mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.5M)法で溶出してさらに精製した。最後に、陰イオン交換カラムを用いてIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体を純粋に獲得した。PolyWAX LPカラム(PolyLC社)を10mMのTris−HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化させた後、精製されたIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体分画を負荷し、1Mの塩化ナトリウムを含む10mMのTris−HCl(pH7.5)緩衝液を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.3M)法で溶出して純粋なIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体を精製した。
【0109】
(実施例2)IFNα−PEG−Fc結合体の製造II
(段階1)Fc−PEG連結体の製造
両末端にアルデヒド反応基を持つ分子量3.4kDaのポリエチレングリコールALD−PEG−ALD(Shearwater社)を、前記実施例1の段階1で準備された免疫グロブリンFc領域が15mg/mLの濃度で溶解された100mMのリン酸塩緩衝液に免疫グロブリンFc:PEGのモル比がそれぞれ1:1、1:2.5、1:5、1:10および1:20となるように添加した。還元剤のNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で徐々に攪拌しながら3時間反応させた。免疫グロブリンFc領域のアミノ末端部位に選択的にPEG:Fcが1:1で結合した連結体を得るために、前記反応混合物をSuperdex(SuperdexR、Pharmacia社)サイズ排除クロマトグラフィにかけた。溶出液として10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてFc−PEG連結体を精製し、PEGと結合していない免疫グロブリンFc領域、未反応PEGおよび2つの免疫グロブリンFc領域がPEGに連結された二量体副産物を除去した。精製されたFc−PEG連結体を約15mg/mLの濃度に濃縮した。これにより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないFc:PEGの最適反応モル比は1:3〜1:10であることを確認した。
【0110】
(段階2)Fc−PEG連結体とインターフェロンアルファの結合体の形成および精製
前記段階1で精製されたFc−PEG連結体をIFNαのN末端に結合させるために、10mMのリン酸塩緩衝液に溶解されたインターフェロンアルファを使用し、Fc−PEG連結体:IFNαのモル比がそれぞれ1:1、1:1.5、1:3および1:6となるように添加して反応させた。反応液を100mMのリン酸塩緩衝液に調製し、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で20時間徐々に攪拌しながら反応させた。反応後、実施例1の段階4と同一の方法で精製して未反応物質および副産物を除去し、これから生成されたFc−PEG−IFNα蛋白質結合体を純粋に分離した。
【0111】
(実施例3)ヒト成長ホルモン(hGH)−PEG−Fc結合体の製造
インターフェロンアルファの代わりにヒト成長ホルモン(hGH、分子量22kDa)を使用し、hGH:PEGのモル比を1:5とする以外は、実施例1と同一の方法でhGH−PEG−Fc蛋白質結合体を製造および精製した。
【0112】
(実施例4)ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)−PEG−Fc結合体の製造
インターフェロンアルファの代わりにヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を使用し、G−CSF:PEGのモル比を1:5とする以外は、実施例1と同一の方法でG−CSF−PEG−Fc蛋白質結合体を製造および精製した。
一方、天然型G−CSFの17番目のアミノ酸がセリンで置換された誘導体(17S−G−CSF)を用いて前記と同一の方法で17S−G−CSF−PEG−Fc蛋白質結合体を製造および精製した。
【0113】
(実施例5)ヒト赤血球生成因子(EPO)−PEG−Fc結合体の製造
インターフェロンアルファの代わりにヒト赤血球生成因子(Erythropoietin;EPO)を使用し、EPO:PEGのモル比を1:5とする以外は、実施例1と同一の方法でEPO−PEG−Fc蛋白質結合体を製造および精製した。
【0114】
(実施例6)反応基の種類を異にするPEGを用いた蛋白質結合体の製造
両末端の反応基が全てスクシンイミジルプロピオネート(Succinimidyl propionate;SPA)であるPEGを用いてIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体を次のように製造した。インターフェロンアルファ10mgの溶解された100mMのリン酸塩緩衝液に、両末端にSPA反応基を持つ分子量3.4kDaのポリエチレングリコールSPA−PEG−SPA(Shearwater社)をIFNα:PEGのモル比がそれぞれ1:1、1:2.5、1:5、1:10および1:20となるように定量して添加し、常温で徐々に攪拌しながら2時間反応させた。インターフェロンアルファのリジン残基のアミノ基部位に選択的にPEGが1:1で結合したPEG−IFNα連結体を得るために、反応混合物をSuperdexサイズ排除クロマトグラフィにかけた。溶出液として10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてIFNα−PEG連結体を精製し、PEGと結合していないインターフェロンアルファ、未反応PEG、およびPEGの両末端に2つのインターフェロンアルファが連結された二量体副産物を除去した。IFNα−PEG連結体を免疫グロブリンFcのリジン残基のアミノ基部位に融合させるために精製されたIFNα−PEG連結体を約5mg/mLの濃度に濃縮した後、実施例1の段階3および4と同一の方法でIFNα−PEG−Fc結合体を製造および精製した。これより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないインターフェロンアルファ:PEGの最適反応モル比は1:2.5〜1:5であることを確認した。
【0115】
一方、前記と同一の方法を行うが、両末端の反応基が全てN−ヒドロキシスクシンイミジル(N-hydroxysuccinimidyl;NHS)であるPEG(NHS−PEG−NHS;Shearwater社)、または両末端の反応基が全てブチルアルデヒド(buthyl aldehyde)であるPEG(BUA−PEG−BUA;Shearwater社)を用いてIFNα−PEG−Fc結合体の生成を確認した。
【0116】
(実施例7)分子量の異なるPEGを用いた蛋白質結合体の製造
両末端にアルデヒド反応基を持つ分子量10kDaのポリエチレングリコールALD−PEG−ALD(Shearwater社)を用いて実施例1の段階2と同一の方法でIFNα−10K PEG連結体を製造および精製した。この際、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないインターフェロンアルファ:10K PEGの最適モル比は1:2.5〜1:5であることが確認された。精製されたIFNα−PEG連結体を約5mg/mLとなるように濃縮した後、これを用いて実施例1の段階3および4と同一の方法でIFNα−10K PEG−Fc蛋白質結合体を製造および精製した。
【0117】
(実施例8)Fab’−S−PEG−N−Fc結合体の製造(−SH基)
(段階1)Fab’の発現および精製
抗腫瘍壊死因子−アルファFab’を発現する大腸菌形質転換体BL21/poDLHF(寄託番号:KCCM−10511)をLB培地100mLに接種して一晩中振盪培養した後、5Lの発酵器(Marubishi)に接種して温度30℃、空気投入量20vvm、攪拌速度500rpmの条件下で培養した。発酵が進むにつれて、微生物の成長のために足りないエネルギー源を補うために、葡萄糖(glucose)と酵母抽出液(yeast extract)とを微生物の発酵状態に応じて投与し、吸光度600nmでのOD値が80となる時期にIPTGを投与して蛋白質の発現を誘導した。これを40〜45時間高濃度で培養して吸光度600nmでのOD値が120〜140となるようにした。得られた発酵液を遠心分離(20,000g、30分)して沈殿物は捨て、上澄み液のみを取った。
【0118】
得られた上澄み液から次の3段階のカラムクロマトグラフィを経て抗腫瘍壊死因子−アルファFab’を純粋に精製した。20mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)で平衡化させたHiTrapプロテインGカラム(5mL、Pharmacia社)に前記上澄み液を点滴した後、100mMのグリシン(Glycine、pH3.0)緩衝液で溶出させた。
【0119】
溶出したFab’分画を10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で平衡化させたSuperdex200カラム(Superdex 200, Pharmacia社)に滴下し、同一の緩衝液で溶出させた。溶出したFab’分画をpolyCAT 21×250カラム(PolyLC社)を用いて最終精製したが、10mMの酢酸塩緩衝液(pH4.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.4M)法で溶出して純粋な抗腫瘍壊死因子−アルファFab’分画を得た。
【0120】
(段階2)Fc−PEG連結体の製造および精製
免疫グロブリンFcのN末端のアミノ基にリンカーPEGを結合させるために、前記実施例1の段階1と同一の方法で製造された免疫グロブリンFcを100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に5mg/mLの濃度で溶解させ、ここにNHS−PEG−MAL(3.4kDa、Shearwater社)をFc:PEGのモル比が1:10となるように添加した後、4℃で徐々に攪拌しながら12時間反応させた。
【0121】
反応終了後、反応緩衝液を20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で交換しながら、反応していないNHS−PEG−MALを除去した。緩衝液の交換後、反応物をpolyCATカラム(PolyLC社)に負荷し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.5M)法によって、免疫グロブリンFc−PEG連結体を先に溶出させて得た後、反応していない免疫グロブリンFcを溶出させて除去した。
【0122】
(段階3)Fab’−S−PEG−N−Fc結合体(−SH基)の製造および精製
Fab’の遊離システイン基に免疫グロブリンFc−PEG連結体を結合させるために、段階1で精製されたFab’を100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)に2mg/mLで溶解させた後、同一の緩衝液に段階2で準備された免疫グロブリンFc−PEG連結体をFab’:連結体のモル比が1:5となるように入れた。最終蛋白質の濃度が50mg/mLとなるように濃縮し、4℃で徐々に攪拌しながら24時間反応させた。
【0123】
カップリング反応の終了後、反応液を10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で平衡化させたSuperdex200カラム(Superdex 200、Pharmacia社)に滴下し、同一の緩衝液を1mL/分の流速で流して溶出させた。カップリングされたFab’−S−PEG−N−Fc結合体は、分子量が大きいので先に溶出し、反応していない免疫グロブリンFc−PEG連結体およびFab’は後で溶出するため除去することができた。残存する未反応免疫グロブリンFcを完全に除去するために、溶出したFab’−S−PEG−N−Fc結合体分画をさらにpolyCAT 21×250カラム(PolyLC社)に滴下し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.5M)法で溶出し、Fc−PEG連結体がFab’のC末端付近の−SH基に連結されたFab’−S−PEG−N−Fc結合体を純粋に得た。
【0124】
(実施例9)Fab’−N−PEG−N−Fc結合体の製造(N末端)
(段階1)Fab’−PEG連結体(N末端)の製造および精製
前記実施例8の段階1で得た、精製されたFab’40mgを100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に5mg/mLの濃度で溶解させた後、ブチルALD−PEG−ブチルALD(3.4kDa、Nektar社)をFab’:PEGのモル比が1:5となるように添加した。還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で徐々に攪拌しがら2時間反応させた。
【0125】
反応終了後、反応緩衝液を20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で交換した。緩衝液の交換後、反応物をpolyCATカラム(PolyLC社)に負荷し、20mMの酢酸塩緩衝液(pH4.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.4M)法で溶出し、Fab’のN末端にリンカーPEGが結合したFab’−PEG連結体分画を先に溶出させて得た後、反応していないFab’を溶出させて除去した。
【0126】
(段階2)Fab’−N−PEG−N−Fc結合体の製造および精製
段階1で精製されたFab’−PEG連結体を免疫グロブリンFcのN末端に結合させるために、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に10mg/mLの濃度で溶解させた後、同一の緩衝液に溶解された免疫グロブリンFcをFab’−PEG連結体:Fcのモル比が1:5となるように入れた。最終蛋白質の濃度が50mg/mLとなるように濃縮し、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で徐々に攪拌しながら24時間反応させた。
【0127】
カップリング反応の終了後、反応液を10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で平衡化させたSuperdex200カラム(Superdex 200、Pharmacia社)に滴下し、同一の緩衝液を1mL/分の流速で流して溶出させた。カップリングされたFab’−N−PEG−N−Fc結合体は、分子量が大きいので先に溶出し、反応していない免疫グロブリンFcおよびFab’−PEG連結体は後で溶出するため除去することができた。残存する未反応免疫グロブリンFcを完全に除去するために、溶出したFab’−N−PEG−N−Fc結合体分画をさらにpolyCAT 21×250カラム(PolyLC社)に負荷し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.5M)法で溶出し、免疫グロブリンFc−PEG連結体がFab’のN末端に連結されたFab’−N−PEG−N−Fc結合体を純粋に得た。
【0128】
(実施例10)脱糖鎖化免疫グロブリンFcの製造および精製
前記実施例1と同一の方法で製造した免疫グロブリンFc200mgを100mMのリン酸塩緩衝液(pH7.5)に2mg/mLとなるように調製した後、脱糖鎖化酵素PNGase F(NEB社)を300U/mgとなるように添加した。反応混合物を37℃で24時間徐々に攪拌しながら反応させた。反応終了後、脱糖鎖化免疫グロブリンFcを精製するために、反応物をSPセファロースFFカラム(Pharmacia社)に負荷し、10mMの酢酸塩緩衝液(pH4.5)条件で1MのNaClを使用した直線濃度勾配(0.1M→0.6M)法で溶出させ、天然型免疫グロブリンFc分画を先に溶出させた後、脱糖鎖化免疫グロブリンFc(deglycosylated FC:DG Fc)を溶出させて得た。
【0129】
(実施例11)IFNα−PEG−DG Fc結合体の製造
前記実施例1の段階2で精製されたIFNα−PEG連結体に、前記実施例10で製造された脱糖鎖化免疫グロブリンFcを結合させるために、IFNα−PEG連結体を10mMのリン酸塩緩衝液に溶解されたDG FcにIFNα−PEG連結体:DG Fcのモル比がそれぞれ1:1、1:2、1:4および1:8となるように添加して反応させた。反応液を100mMのリン酸塩緩衝液に調製し、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で20時間徐々に攪拌しながら反応させた。これにより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないIFNα−PEG連結体:DG Fcの最適反応モル比は1:2であることを確認した。
【0130】
結合反応後、未反応物質および副産物を除去し、生成されたIFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体を精製するために、反応混合物を用いてSuperdex(SuperdexR、Pharmacia社)サイズ排除クロマトグラフィを行った。リン酸塩緩衝液(pH7.3)を用いて流速2.5mL/分でカラムに通過させ、結合していないDG Fcおよび未反応物質を除去し、IFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体分画を精製した。これから得られたIFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体分画には、不純物として少量の未反応DG FcおよびIFNα−PEG連結体が混在しているから、これを除去するためにさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィを行った。IFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体分画を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化させたPolyCAT LPカラム(PolyLC社)に仕込み、1MのNaClを含んだ10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.6M)法で溶出してさらに精製し、最後に陰イオン交換カラムを用いてIFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体を純粋に獲得した。PolyWAX LPカラム(PolyLC社)を10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化させた後、精製されたIFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体分画を負荷し、1Mの塩化ナトリウムを含んだ10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.3M)法で溶出して純粋なIFNα−PEG−DG Fc蛋白質結合体を精製した。
【0131】
(実施例12)組み換え非糖鎖化免疫グロブリンFc誘導体の製造および精製
(IgG4 Fc誘導体1発現ベクターの製造)
ヒト免疫グロブリンIgG4重鎖不変領域を製造するために、天然型ヒンジ領域でアミノ末端から9個のアミノ酸が除去された誘導体1(IgG4 delta−Cys)と、12個のアミノ酸が全て除去されてヒンジ領域が欠失された誘導体2(IgG4単量体)を製造した。大腸菌分泌配列を含んだ発現ベクターは、本発明者によって開発されたpT14S1SH−4T20V22Q(大韓民国特許第38061号)を使用した。
ヒト免疫グロブリンIgG4の重鎖不変領域を製作するために、ヒトの血液から収得した血球細胞のRNAを鋳型として次のようなRT−PCRを行った。Qiamp RNA bloodキット(Qiagen社)を用いて約6mLの血液から全体RNAを収得した後、このRNAを鋳型として配列番号1および2、配列番号2と3のプライマー対を合成した後、One Step RT−PCRキット(Qiagen社)を用いて遺伝子を増幅した。配列番号1は、下記IgG4ヒンジ領域の12個のアミノ酸配列のうち10番目のアミノ酸配列であるセリンから始まる配列であり、配列番号3は、CH2ドメインの一番目のアミノ酸であるアラニンから始まるように設計されている。配列番号2は、終結コドンを含んだBamHI制限酵素認識部位を挿入した。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
gag tcc aaa tat ggt ccc cca tgc cca tca tgc cca
ctc agg ttt ata cca ggg ggt acg ggt agt acg ggt
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Ser Cys Pro
それぞれ増幅されたIgG4不変領域断片を、大腸菌分泌配列誘導体を用いた発現ベクターにクローニングするために、本発明者によって開発された発現ベクターpT14S1SH−4T20V22Q(大韓民国特許第38061号)を使用した。前記発現ベクターは、配列番号4で表わされる塩基配列を有する熱安定性エンテロトキシン分泌配列誘導体を含む。クローニングを容易にするために、pT14S1SH−4T20V22Qプラスミドの熱安定性エンテロトキシン分泌配列誘導体に配列番号5および6のプライマー対を使用した部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)を行い、分泌配列の最後の遺伝子配列にStuI制限酵素認識部位を挿入し、塩基配列分析法によって正確にStuI制限酵素認識部位が生成されたことを確認した。pT14S1SH−4T20V22QプラスミドにStuI制限酵素認識部位が生成されたプラスミドをpmSTIIと命名した。前記のように製作されたプラスミドpmSTIIにStuI/BamII制限酵素を処理した後、アガロースゲルに電気泳動を行い、大腸菌熱安定性エンテロトキシ分泌配列誘導体を含む大きい断片(4.7kb)を回収した。前記増幅された遺伝子をBamHI制限酵素で処理した後発現ベクターに挿入してプラスミドpSTIIdCG4FcおよびpSTIIG4Moを製作した。
【0132】
前記製作された発現ベクターを発現宿主の大腸菌BL21(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIdCG4Fc(HM10932)とBL21/pSTIIG4Mo(HM10933)を得、これらを韓国微生物保存センター(KCCM)に2004年9月15日付で寄託した(寄託番号:KCCM−10597、KCCM−10598)。以後、吸光度600nmでのOD値が80となる時期に誘導物質(inducer)IPTGを投与して発現を誘導した。これを40〜45時間高濃度で培養して吸光度600nmでのOD値が100〜120となるようにした。発酵液から回収された大腸菌細胞を破砕して細胞溶血液(cell lysate)を得、細胞質内に存在する組み換え免疫グロブリン不変領域誘導体を2段階カラムクロマトグラフィによって精製した。
【0133】
プロテインA親和性カラム(protein A affinity column、Pharmacia社)5mLをPBSで平衡化した後、前記細胞溶血液を5mL/分の流速で負荷した。結合していない分画をPBSで洗浄した後、100mMのクエン酸溶液(pH3.0)で溶出させた。溶出した分画を脱塩カラム(desalting column、HiPrep 26/10、Pharmacia社)を用いて10mMのTris緩衝液(pH8.0)で交換した。その後、Q HP 26/10カラム(Pharmacia社)50mLを用いて2次陰イオン交換カラムクロマトグラフィを行い、1次精製された組み換えAG Fc誘導体分画を結合させた後、10mMのTris条件(pH8.0)で直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.2M)法によって溶出し、組み換え非糖鎖化免疫グロブリンFc(aglycosylated Fc:AG Fc)誘導体であるIgG4 delta−CysおよびIgG4単量体分画を高純度で得た。
【0134】
(実施例13)IFNα−PEG連結体と組み換えAG Fc誘導体の結合体の製造
前記実施例1および11と同一の方法により、実施例12で製造されたAG Fc誘導体であるIgG4 delta−CysのN末端にIFNα−PEG連結体を結合させた。融合反応後、未反応物質および副産物を除去し、生成されたIFNα−PEG−AG Fc蛋白質結合体(I)を精製するために、Q HP26/10カラム(Pharmacia社)50mLを用いて1次精製した後、高圧カラムのpolyCAT 21.5×250カラム(PolyLC社)で高純度の結合体を精製した。カップリング反応液を脱塩カラムHiPrep 26/10(Pharmacia社)を用いて10mMのTris緩衝液(pH8.0)で交換した後、Q HP 26/10 50mLカラムに8mL/分の流速で負荷して結合させた後、直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.2M)法で所望の分画を得た。溶出した分画を10mMの酢酸塩緩衝液(pH5.2)で平衡化されたpolyCAT21.5×250カラムに15mL/分の流速でさらに結合させた後、直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.1M→0.3M)法で溶出させて高純度の分画を得ることができた。同一の方法により、実施例12で製造された別のAG Fc誘導体であるIgG4単量体を用いてIFNα−PEG−AG Fc蛋白質結合体(II)を製造した。
【0135】
(実施例14)ヒト赤血球生成因子(EPO)−PEG−組み換えAG Fc誘導体の結合体の製造
前記実施例13と同一の方法により、EPO−PEG連結体とAG Fc誘導体であるIgG4 delta−Cysとが連結された結合体を製造した。
【0136】
(比較例1)IFNα−40K PEG連結体の製造
100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)にインターフェロンアルファ5mgを仕込んで最終体積が5mLとなるように調製した後、PEGの分子量40kDaの活性化メトキシ−PEG−アルデヒド(Shearwater社)をインターフェロンアルファ:40K PEGのモル比が1:4となるように前記溶液に添加した。前記反応溶液に還元剤NaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で18時間徐々に攪拌させながら反応させた。インターフェロンアルファに反応していないPEGを不活性化させるために、エタノールアミンを最終濃度が50mMとなるように添加した。
未反応PEGの分離および緩衝液の交替のためにセファデキスG−25カラム(Pharmacia社)を用いた。まず、2カラム体積(column volume;CV)の10mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)でカラムを平衡化させた後、反応混合物を滴下し、波長260nmで紫外部吸光計によって吸光度を検出した。前記カラムを同一の緩衝液で溶出させると、大きさが更に大きいPEGでN末端に修飾されたインターフェロンアルファが先に溶出し、未反応PEGは時差をおいて後で溶出するため、IFNα−40K PEGのみを分離することができる。
【0137】
前記で得た溶出液からIFNα−40K PEG連結体をさらに純粋に分離、精製するために、次のようにクロマトグラフィを行った。3mLのPolyWAX LPカラム(Polywax社)を10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化させた。PEG−IFNα連結体を含有する溶出液を1mL/分の流速でカラムに付加した後、15mLの平衡緩衝液で洗浄した。30mLの1M NaCl緩衝液を用いて、30分間に0〜100%へと変化する塩濃度勾配法を用いてトリ−、ジ−およびモノ−PEGが結合したインターフェロンアルファを順序とおりに溶出させた。
【0138】
さらに純粋なモノ−PEG結合インターフェロンアルファを分離するために、前記で収得したモノ−PEGとインターフェロンアルファの連結体溶出分画をもってサイズ排除クロマトグラフィを行った。10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化させたSuperdex200(Superdex 200、Pharmacia社)に前記溶出液を濃縮して滴下した後、同一の緩衝液で溶出させた。この際、1mL/分の流速で緩衝液を流した。トリ−およびジ−PEGが結合したインターフェロンアルファは、モノ−PEGが結合したインターフェロンアルファよりも溶出時間が相対的に早いので、これを除去して、モノ−PEGが結合したインターフェロンアルファのみを純粋に分離した。
【0139】
同一の方法により、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子およびその誘導体のアミノ末端に40K PEGが結合したhGH−40K PEG、G−CSF−40K PEGおよび40K PEG−17S−G−CSF誘導体の連結体を製造した。
【0140】
(比較例2)IFNα−PEG−アルブミン結合体の製造
実施例1の段階2で精製されたIFNαF−PEG連結体をアルブミンのアミノ末端に結合させるために、10mMのリン酸塩緩衝液に溶解されたヒトアルブミン(human serum albumin、HSA、約67kDa、緑十字)をIFNα−PEG連結体:アルブミンのモル比が1:1、1:2、1:4および1:8となるように添加した後、反応させた。反応液を100mMのリン酸塩緩衝液に調製し、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で20時間徐々に攪拌しながら反応させた。これにより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないIFNα−PEG連結体:アルブミンの最適反応モル比は1:2であることを確認した。
【0141】
結合反応の後、未反応物質および副産物を除去し、生成されたIFNα−PEG−アルブミン蛋白質結合体を精製するために、Superdexサイズ排除クロマトグラフィを行った。各反応混合物を濃縮した後、10mMの酢酸ナトリウム緩衝液を2.5mL/分の流速でカラムに通過させ、結合していないアルブミンおよび未反応物質を除去し、IFNα−PEG−アルブミン蛋白質結合体のみを精製した。得られたIFNα−PEG−アルブミン蛋白質結合体分画には、不純物として少量の未反応アルブミンおよびインターフェロンアルファ二量体が混ぜられているので、これを除去するためにさらに陽イオン交換樹脂クロマトグラフィを行った。IFNα−PEG−アルブミン蛋白質結合体分画を10mMの酢酸ナトリウム溶液(pH4.5)で平衡化させたカラム(SP5PW、Waters社)に仕込み、1Mの塩化ナトリウム(NaCl)を含んだ10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.5M)法で溶出してさらに精製し、IFNα−PEG−アルブミン蛋白質結合体を純粋に獲得した。
【0142】
同一の方法により、ヒト成長ホルモン、G−CSFおよびその誘導体にそれぞれアルブミンが結合したhGH−PEG−アルブミン、G−CSF−PEG−アルブミンおよび17S−G−CSF−PEG−アルブミン結合体を製造した。
【0143】
(比較例3)Fab’−S−40K PEG連結体の製造
実施例8の段階1で精製されたFab’に存在する遊離システイン基を活性化させるために、活性化緩衝液(20mMの酢酸ナトリウム(pH4.0)、0.2mMのDTT)に1時間放置した。PEG修飾緩衝液である50Mのリン酸カリウム(pH6.5)で緩衝液を交換した後、マレイミド−PEG(分子量40kDa、Shearwater社)をFab’:40K PEGのモル比が1:10となるように添加した後、4℃で徐々に攪拌しながら24時間反応させた。
【0144】
反応終了後、反応液を10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で平衡化させたSuperdex200カラム(Superdex 200、Pharmacia社)に滴下し、同一の緩衝液を1mL/分の流速で流して溶出させた。40K PEGが修飾されたFab’−40K PEG連結体は、分子量が大きくて、反応していないFab’より早く溶出し、Fab’は後で溶出するため除去することができた。完全に除去されていないFab’を除去するために、溶出したFab’−40K PEG連結体分画をpolyCAT 21×250カラム(PolyLC社)を用いて最終精製したが、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を用いた直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.15M→0.5M)法で溶出し、Fab’の−SH基に40K PEGが連結されたFab’−S−40K PEG連結体を純粋に得た。
【0145】
(実験例1)蛋白質結合体の確認および定量
(1−1)蛋白質結合体の確認
前記実施例で製造した蛋白質結合体は、4〜20%の濃度勾配ゲルおよび12%のゲルを用いた非還元性SDS−PAGEおよびELISA(R&D system社)法で確認した。
【0146】
SDS−PAGE結果、図3に示すように、生理活性ポリペプチド、非ペプチド性重合体であるPEGおよび免疫グロブリンFc領域のカップリング反応によってIFNα−PEG−Fc結合体(A)、17Ser−G−CSF−PEG−Fc結合体(B)およびEPO−PEG−Fc結合体(C)が生成されたことを確認した。
【0147】
また、前記実施例10で製造したDG Fcを確認するために非還元性12%SDS−PAGEを行った結果、図6bに示すように、天然型Fcに比べて除去された糖鎖分子量だけ減少した位置でDG Fcバンドが検出された。
【0148】
(1−2)蛋白質結合体の定量
前記実施例で製造したそれぞれの蛋白質結合体の量は、Superdexカラム(Superdex 75 26/60、Pharmacia社)と10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を溶出液として用いるサイズ排除クロマトグラフィ上でピーク面積を対照区と比較して換算する方法によって計算した。既に定量されているIFNα、hGH、G−CSF、17S−G−CSF、EPOおよびFcでそれぞれサイズ排除クロマトグラフィを行った後、濃度とピーク面積間の換算係数を測定した。各蛋白質結合体の一定量を使用して同一のサイズ排除クロマトグラフィを行い、ここから得られたピーク面積から免疫グロブリンFc領域に該当するピーク面積を差し引いた値を、各蛋白質結合体に存在する生理活性蛋白質の定量値として決定した。図4は精製されたIFNα−PEG−Fc結合体のサイズ排除クロマトグラフィカラム分析結果を示すもので、二量体以上の多量体不純物がない単一ピークを確認した。
【0149】
Fcが生理活性ポリペプチドに結合すると、生理活性ポリペプチドの抗体でその量を定量するとき、抗体と前記ポリペプチドとの結合が阻害され、クロマトグラフィによって計算される実際値より少なく定量される。ELISA分析結果、IFNα−PEG−Fcの場合には、ELISAによって測定された値が大略実際値の約30%程度であると確認された。
【0150】
(1−3)蛋白質結合体の純度および質量確認
それぞれの実施例で得た蛋白質結合体に対してサイズ排除クロマトグラフィを行った後280nmで吸光したとき、IFNα−PEG−Fc、hGH−PEG−Fc、G−CSF−PEG−Fcおよび17Ser−G−CSF−PEG−Fcは、分子量70〜80kDaの物質の滞留時間帯で単一ピークを示した。
【0151】
一方、実施例1、11および13で獲得した蛋白質結合体IFNα−PEG−Fc、IFNα−PEG−DG FcおよびIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体試料の純度を分析するために、逆相HPLCを行った。逆相カラム(Vydac社、259 VHP54カラム)を用いて分析し、0.5%TFAの存在下のアセトニトリル溶媒を用いた濃度勾配(40〜100%)法によって溶出した。純度は、280nmの吸収を測定することによって解析された。その結果、図8から分かるように、結合していないインターフェロンまたは免疫グロブリンFcは存在しておらず、IFNα−PEG−Fc結合体(A)、IFNα−PEG−DG Fc結合体(B)およびIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体(C)のいずれも96%以上の純度で純粋に精製された。
【0152】
各精製された試料の正確な分子量を確認するために、各試料の質量をMALDI−TOF(Voyager DE−STR、Applied Biosystems社)超高速質量分析器を用いて分析した。マトリックスとしてはシナピン酸(sinapinic acid)を使用し、それぞれの試験用試料0.5μLを試料スライドに塗布して自然乾燥させた後、同量のマトリックス溶液を添加し、その後さらに自然乾燥させてイオン源(ion source)に導入した。検出はポジティブ方式でリニアモードTOF方式の装置を用いて行った。イオンは、遅延したイオン抽出(DE)を用いる分割抽出供給源で、遅延した抽出時間を750nsec/1500nsecとして、約2.5kVの全体電位差によって加速化した。
【0153】
下記表1は前記実施例で得たそれぞれのFc蛋白質結合体のMLADI−TOF質量分析結果を数値化して示したものであり、図5はEPO−PEG−Fc結合体、図7はIFNα−PEG−FcおよびIFNα−PEG−DG Fc結合体のMALDI−TOF質量分析結果を示したものである。その結果、収得されたEPO−PEG−Fc蛋白質結合体の純度は95%以上であり、理論値と非常に近い分子量を示した。また、免疫グロブリンFc領域に赤血球生成因子(EPO)が1:1で結合した形態であると確認された。
【0154】
【表1】

【0155】
また、MALDI−TOF質量分析法により、実施例10で製造されたFcおよびDG Fcの分子量を測定した結果、DG Fcの分子量は天然型Fcより3kDa程度小さい50kDaと確認された(図6a)。減少した3kDaは理論的糖鎖サイズに該当する分子量であって、糖鎖が完全に除去されたことを確認することができた。
【0156】
下記表2は、前記実施例11で製造されたIFNα−PEG−DG Fc結合体と、実施例13で製造されたIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体(IおよびII)のMALDI−TOF質量分析結果を示したものである。IFNα−PEG−Fc結合体の分子量(75.9kDa)と比較したとき、IFNα−PEG−DG Fc結合体は約3kDa程度小さい分子量を示し、IFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体(I)は約3〜4kDa程度小さい分子量を示した。Fc単量体に連結されたIFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体(II)は、Fc単量体分子量に該当する24.5kDaが減少した分子量を示した。
【0157】
【表2】

【0158】
(実験例2)薬物動態学的な調査I
各群当たり5匹のSDラットにおいて、天然型生理活性蛋白質(対照群)と前記実施例および比較例で製造した−40K PEG連結体、−PEG−アルブミン結合体、−PEG−Fc結合体、−PEG−DG Fc結合体、および−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体の血液内安定性および薬物動態学的係数(pharmacokinetic parameters)を比較した。対照群および−40K PEG連結体、−PEG−アルブミン結合体、−PEG−Fc結合体、−PEG−DG Fc結合体、および−PEG−組み換えAG Fc誘導体結合体(試験群)を各100μg/kgずつ皮下注射した後、対照群は注射してから0.5.1、2、4、6、12、24、30、48、72および96時間後に採血し、試験群は注射してから1、6、12、24、30、48、72、96、120、240および288時間後に採血した。ヘパリンを含有するチューブに血液試料を集めて凝固を防止し、エッペンドルフ高速マイクロ遠心分離機で5分間遠心分離して細胞を除去した。血漿内の蛋白質量は、各生理活性蛋白質に対する抗体を用いてELISA方法によって測定した。
【0159】
IFNα、hGH、G−CSFまたはEPOの天然型蛋白質、これらの−40K PEG連結体、−PEG−アルブミン結合体、−PEG−Fc結合体、および−PEG−DG Fc結合体の薬物動態の分析結果を下記表3〜表7に示した。下記表において、Tmaxは最高薬物濃度に到達する時間を、T1/2は薬物の血中半減期を、MRT(mean residence time)は薬物分子の平均的な体内滞留時間をそれぞれ意味する。
【0160】
【表3】

【0161】
【表4】

【0162】
【表5】

【0163】
【表6】

【0164】
【表7】

【0165】
前記表3および図9の薬物動態グラフから分かるように、IFNα−PEG−Fc蛋白質結合体の場合、血中半減期は90.4時間であって天然型に比べて約50倍増加した。これは比較例1で製造したIFNα−40K PEGの半減期である35.8時間より約2.5倍増加したものである。また、IFNα−PEG−アルブミンの半減期である17.1時間に比べても、本発明のIFNα−PEG−Fc蛋白質結合体が著しく優れた血中半減期を示すことを確認した。
【0166】
一方、表3および図11に示すように、IFNα−PEG−DG Fc結合体の場合には、血中半減期が71.0時間であって、IFNα−PEG−Fc結合体とほぼ同等なので、糖鎖がなくても生体内安定性には大きい影響がなく、組み換え方法で生産された組み換えAG Fc誘導体を用いた結合体も天然型由来のDG Fcと同一の効果を示すことを確認した。ところが、Fc単量体を使用した結合体の場合には、正常的なFc二量体の結合体と比較したとき、約半分に減少した血中半減期を示した。
【0167】
ヒト成長ホルモンの場合も、表4に示すように、本発明の蛋白質結合体が示す血中半減期の増加効果を確認することができる。すなわち、天然型(1.1時間)に比べてhGH−40K PEG連結体およびhGH−PEG−アルブミン結合体の半減期が7.7時間および5.9時間と多少増加した反面、本発明のhGH−PEG−Fc蛋白質結合体の場合には血中半減期が11.8時間と画期的に増加した。
【0168】
表5および表6における顆粒球コロニー刺激因子とその誘導体に対する薬物動態の分析結果においても、天然型、−40K PEG連結体および−PEG−アルブミン結合体に比べて本発明のG−CSF−PEG−Fcおよび17S−G−CSF−PEG−Fc結合体が一層長い血中半減期を示した。蛋白質の血中持続性を増加させる免疫グロブリンFc領域の効果は、天然型生理活性蛋白質だけでなく、一部のアミノ酸を変形させた誘導体においても天然型とほぼ同一の程度であることを確認することができ、このような結果より、本発明の方法が他の蛋白質の誘導体においても類似の効果を示すことを容易に予想することができる。
【0169】
表7および図10に示すように、糖鎖化されている天然型蛋白質としての赤血球生成因子に対しても本発明の蛋白質結合体の血中半減期増加効果が確認された。すなわち、天然型赤血球生成因子の血中半減期が9.4時間であり、EPOを高糖鎖化させて血中安定性を高めたダーベポエチン−α(Darbepoetin-α、Aranesp、Amgen社)の場合は半減期が18.4時間と増加することが分かる。赤血球生成因子に免疫グロブリンFc領域を結合させた本発明のEPO−PEG−Fc結合体の場合には、血中半減期がおおよそ61.5時間と画期的に増加し、糖鎖が除去された大腸菌由来の組み換えAG Fc誘導体を使用した結合体の場合には87.9時間まで半減期の増加を示し、糖鎖が除去されても、血中安定性には影響を及ぼすことなく、抗体機能がない結合体を製造することができることを確認した。
【0170】
前記結果から分かるように、本発明によって免疫グロブリンFc領域および非ペプチド性重合体と共有結合した蛋白質結合体は、天然型蛋白質に比べて数倍〜数十倍以上増加した血中半減期を示した。また、免疫グロブリンFcを遺伝子組み換え法によって大腸菌で生産し、あるいは酵素処理によって糖鎖を除去しても、これを用いて製造された蛋白質結合体における血中半減期の増加効果はほぼ同様に維持された。
【0171】
特に、既存の蛋白質血中持続性を増加させるためのPEG剤形のうち持続性が最も高い40kDa PEGを修飾した蛋白質との比較においても、免疫グロブリンFc蛋白質結合体が著しく高い血中安定性を示した。また、免疫グロブリンFcの代わりにアルブミンを結合させた蛋白質結合体との比較試験においても、本発明の蛋白質結合体が、卓越した血中安定性を示すことから、本発明の蛋白質結合体が持続型蛋白質薬物製剤の開発に効果的であることを確認することができた。点突然変異(point mutation)によるコロニー刺激因子誘導体まで広範囲な範囲の蛋白質において従来のPEG結合蛋白質またはアルブミン蛋白質結合体より卓越した血中安定性と平均滞留時間(MRT)を示す結果からみて、本発明の蛋白質結合体による安定性および持続性増加効果は他の生理活性ポリペプチドにも適用可能であることが分かる。
【0172】
一方、非ペプチド性重合体として10kDa PEGを使用したIFNα−10K PEG−Fc蛋白質結合体(実施例7)を用いて前記と同一の方法で血中半減期を測定したとき、血中半減期は48.8時間であって、分子量3.4kDaのPEGを使用した蛋白質結合体の血中半減期である79.7時間より多少減少した。
【0173】
また、非ペプチド性重合体PEGの分子量の増加に伴って血中半減期はむしろ多少減少したが、このような結果から、蛋白質結合体の血中安定性および持続性の増加の主な要因が非ペプチド性重合体の分子量よりは結合した免疫グロブリンFc領域による効果であることが確認できる。
【0174】
PEGの反応基をアルデヒド反応基以外の反応基に変化させた場合でも、見掛け分子量と血中半減期が、アルデヒド反応基を持つPEGを使用した場合と類似の様相を示した。
【0175】
(実験例3)薬物動態学的な調査II
実施例8および9で製造されたFab’−S−PEG−N−Fc、Fab’−N−PEG−N−Fc結合体および比較例3で製造されたFab’−S−40K PEG連結体の血中半減期を測定するために、Fab’を対照群として前記結合体または連結体を用いて実験例2と同一の方法で薬物動態学的な調査を行い、その結果を図12に示した。
【0176】
図12より、Fab’−S−PEG−N−FcおよびFab’−N−PEG−N−Fc結合体が、Fab’またはFab’−S−40K PEG連結体に比べて2〜3倍延長された血中半減期を示すことが分かる。
【0177】
(実験例4)細胞内活性の測定
(4−1)インターフェロンアルファ蛋白質結合体の細胞内活性比較
インターフェロンアルファ蛋白質結合体の細胞内活性比較のために、IFNα−PEG−Fc(実施例1)、IFNα−PEG−DG Fc(実施例11)、IFNα−PEG−組み換えAG Fc誘導体(実施例13)、IFNα−40K PEG(比較例1)およびIFNα−PEG−アルブミン(比較例2)の抗ウイルス活性を水泡性口内炎ウイルスで飽和させたMDBK(Madin Darby Bovine Kidney、ATCC CCL−22)を使用する細胞培養生検で測定した。この際、PEGが結合していないインターフェロンアルファ−2b(NIBSC国際標準品)を標準物質として使用した。
【0178】
MDBK細胞を、MEM(minimum essential medium:JBI社)に10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンが添加された培地で37℃、5%COの条件で培養した。測定しようとする試料および標準物質を一定の濃度で細胞培養培地に希釈して96ウェルプレートの各ウェルに100μLずつ分注した。前記で培養された細胞を回収し、試料が分注されているプレートに100μLずつ加えた後、37℃、5%COの条件で約1時間程度培養した。1時間後、ウイルスの濃度が5〜7×10PFUとなるように調節されたVSV(Vesilculer stomatitis virus)を50μLずつプレートに添加し、37℃、5%COの条件で約16〜20時間さらに培養した。試料および標準物質を入れないで細胞とウイルスのみを入れたウェルを陰性対照群として使用し、ウイルス希釈溶液を入れないで細胞のみを入れたウェルを陽性対照群として使用した。
【0179】
培養液を除去し、生きている細胞を染色するために、ニュートラルレッド(neutral red)溶液を100μLずつ添加した後、37℃、5%COの条件で2時間培養した。上澄み液を除去した後、100%のエタノールと1%の酢酸を1:1と混ぜて100μLずつ入れた。染色された細胞をよく振って溶解させた後、540nmで吸光度を測定した。陰性対照群をブランク(blank)とし、陽性対照群を細胞成長100%と見なして50%細胞成長時の濃度(ED50)を計算した。
【0180】
【表8】

【0181】
その結果、表8に示すように、IFNα−40K PEGは、その活性度が天然型の4.8%水準に低下することが確認できる。特に、修飾されたPEGの大きさが大きいほど、血中安定性は増加し、相対的に活性度は徐々に減少したが、インターフェロンアルファの場合、12kDa PEGが修飾された場合には25%、40kDa PEGが修飾された場合には約7%程度の試験管内活性を持つと報告されたことがある(P. Bailon et al., Bioconjugate Chem. 12: 195-202, 2001)。すなわち、PEGの分子量が増加すると、血中半減期は長くなるが、相対的に活性は急激に減少するので、血中半減期が長いながら活性も優れた蛋白質結合体の開発が要求されている。また、IFNα−PEG−アルブミン結合体も天然型に比べて約5.2%程度と低い活性を示したが、本発明のIFNα−PEG−Fc結合体およびIFNα−PEG−DG Fc結合体は、天然型に比べて相対的活性度が28.1%および25.7%と画期的に高くなることを確認することができ、組み換えAG Fc誘導体を使用した結合体においても類似の活性増加効果を示した。このような結果から、血中半減期の画期的増加に伴ってインターフェロンアルファと免疫グロブリンFc領域の結合体の生体内薬効が非常に優れるものと期待される。
【0182】
(4−2)ヒト成長ホルモン蛋白質結合体の細胞内活性比較
ヒト成長ホルモン蛋白質結合体の細胞内活性を比較するために、hGH−PEG−Fc、hGH−40K PEGおよびhGH−PEG−アルブミンの細胞内活性を比較試験した。
【0183】
ヒト成長ホルモン依存的に分裂を行う細胞としてのラット結節リンパ腫(rat node lymphoma)細胞株であるNb2細胞(European Collection of Cell Cultures (ECACC) 97041101)を用いて細胞内活性度を試験管内の分析によって確認した。
【0184】
Nb2細胞を、培養液(Fisher’s medium)に10%の牛胎児血清(FBS、fetal bovine serum)、0.075%のNaCO、0.05mMの2−メルカプトエタノールおよび2mMのグルタミンを添加した培地で培養した後、10%の牛胎児血清を除いた同一の培地で24時間さらに培養した。培養液で培養された細胞の数を数えて約2×10個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに入れた後、hGH−PEG−Fc、hGH−40K PEG、hGH−PEG−アルブミン、対照群である国際標準品(National Institute for Biological Standards and Controls、NIBSC)および天然型ヒト成長ホルモン(HM−hGH)をそれぞれ希釈して濃度別に添加した。その後、37℃、COの培養器で48時間培養した。その後、細胞の成長程度(各ウェルの細胞数)を測定するために、細胞染色薬(Cell Titer 96 Aqueous One Solution、Promega社)を各ウェルに25μLずつ入れた後、4時間培養した。その後、490nmで吸光度を測定して各試料の力価を計算し、その結果を下記表9に示した。
【0185】
【表9】

【0186】
表9から分かるように、ヒト成長ホルモンの場合も、hGH−40K PEGの活性度は天然型の約7.6%と低下し、hGH−PEG−アルブミン結合体の試験管内活性は天然型に比べて約5.2%程度と低い活性を示した。ところが、本発明のhGH−PEG−Fc結合体は、相対的活性度が天然型に比べて28%以上画期的に増加した。このような結果より、血中半減期の画期的増加に伴ってヒト成長ホルモンと免疫グロブリンFc領域の蛋白質結合体の生体内薬効が非常に優れるものと期待することができる。また、本発明の免疫グロブリンFc蛋白質結合体の活性増加は、免疫グロブリンFcによる血中安定性の増加および受容体との結合力保存、または非ペプチド性重合体によって形成された空間的余裕によるものと把握される。このような作用は、他の生理活性蛋白質の免疫グロブリンFc蛋白質結合体においても類似であるものと期待される。
【0187】
(4−3)顆粒球コロニー刺激因子蛋白質結合体の細胞内活性比較
顆粒球コロニー刺激因子誘導体の蛋白質結合体の細胞内活性を比較するために、天然型G−CSF(Filgrastim、第一薬品(株))、17Ser−G−CSF誘導体、20K PEG−G−CSF(Neulasta社)、40K PEG−17S−G−CSF、17Ser−G−CSF−PEG−アルブミンおよび17S−G−CSF−PEG−Fcの細胞内活性を測定した。
【0188】
まず、ヒト骨髄由来の細胞株であるHL−60(ATCC CCL−240、Promyelocytic leukemia patient/36 yr old Caucasian female)を10%の牛胎児血清を含むRPMI1640倍地で培養してから、細胞の数を約2.2×10細胞/mLとなるように調整した後、DMSO(dimethylsulfoxide、culture grade、Sigma社)を最終1.25%(v/v)となるように添加した。前記の細胞株を96ウェルプレート(Corning/low evaporation 96 well plate)に90μLずつ入れてウェル当たり細胞が約2×10個となるようにした後、5%のCOが供給される37℃の培養器で約72時間培養した。
【0189】
G−CSF ELISAキット(R&D systems社)を用いて、濃度が決定された各試料を同一の濃度となるようにRPMI1640で希釈し、最終濃度が10μg/mLとなるようにし、これをさらにRPMI1640で1/2に希釈することを19回繰り返し行った。こうして作られた試料を培養中のHL−60細胞株の各ウェルに10μLずつ加え、最終濃度が1μg/mLから連続的に半減するようにした。前記で製造した蛋白質試料を処理した細胞株は、37℃の培養器で72時間をさらに培養した。
【0190】
培養後、細胞株の増加程度を調べるために、CellTiter96TM(Cat.No.G4100、Promega社)を用いて分析し、増加した細胞株の数は、670nm波長における吸光度を測定することによって決定した。
【0191】
【表10】

【0192】
その結果、表10から分かるように、G−CSFのアミノ酸を置換させた17Ser−G−CSF誘導体の免疫グロブリンFc蛋白質結合体も天然型蛋白質の蛋白質結合体と類似の効果を示した。17Ser−G−CSF−PEGの場合には、PEGで修飾されていないものに比べて、血中半減期は増加するが活性度は低下すると既に報告されたことがある(大韓民国特許公開第2004−83268号)。特に、修飾されたPEGの大きさが大きいほど、血中安定性は増加するが、相対的に活性度は徐々に低下することが分かり、17Ser−G−CSF−40K PEGは天然型に比べて約10%以下の非常に低い活性度を示した。すなわち、PEGの分子量が増加すると、血中半減期は長くなるが相対的に活性は急激に減少するので、血中半減期が長くて活性も優れた蛋白質結合体の開発が要求されている。17Ser−G−CSF−PEG−アルブミンも天然型に比べて約23%程度と低い活性を示したが、17Ser−G−CSF−PEG−Fcは天然型に比べて相対的活性度が51%以上と高くなることを確認することができた。これにより、血中半減期の画期的増加に伴って免疫グロブリンFc領域と17Ser−G−CSF誘導体の結合体の生体内薬効が非常に優れるものと期待することができる。
【0193】
(4−4)Fab’結合体の細胞毒性中和試験
実施例8および9で製造されたFab’−S−PEG−N−Fc、Fab’−N−PEG−N−Fc結合体、および比較例3で製造されたFab’−S−40K PEG連結体の試験管内活性実験を行った。マウス繊維亜細胞株L929(ATCC CRL−2148)を用いてTNFαの細胞毒性を測定する実験を基本骨格として、Fab’がTNFαの細胞壊死活性をどれくらい中和させるかを測定した。
【0194】
Fab’−S−PEG−N−Fc、Fab’−N−PEG−N−Fc結合体およびFab’−S−40K PEG連結体をそれぞれ2倍ずつ順次希釈して96ウェルプレートの各ウェルに100μLずつ分注した後、rhTNF−α(R&D systems社)およびRNA合成の阻害剤として用いられるアクチノマイシンD(actinomycin D、Sigma社)をそれぞれ最終濃度が10ng/mLおよび1μg/mLとなるように添加し、37℃、5%COで30分間反応させた後、分析用マイクロプレートに移した。プレートの各ウェルにL929細胞株を5×10個/50μL培地となるように添加し、37℃、5%COの培養器で24時間培養した。マイクロプレート内の培養液を除去した後、PBSに5mg/mLの濃度で溶けているMTT(Sigma社)を50μLずつ入れた。約4時間37℃、5%COの培養器で培養した。150μLのDMSOを添加して溶かした後、540nmで吸光度を測定して細胞毒性中和の度合いを確認した。対照群としては、実施例8の段階1で精製したFab’を使用した。
【0195】
その結果、図13に示すように、実験に使用した全ての蛋白質結合体は、Fab’と類似の力価を示しており、このような結果から、Fab’のN末端またはC末端近くの遊離システイン残基にPEGを介して免疫グロブリンFcを結合させた蛋白質結合体は、Fab’の血中半減期を画期的に増加させることは勿論のこと、生体内活性度も高く維持させることが分かる。
【0196】
(4−5)CDC活性の測定
前記実施例で製造した誘導体と大腸菌形質転換体から発現されて精製された免疫グロブリン不変領域蛋白質とがヒトClqに結合するか否かを確認するために、下記のように固相酵素免疫検定法(ELISA)を行った。実験群として、韓国微生物保存センター(KCCM)に2004年9月15日付で寄託した形質転換体HM10932(寄託番号:KCCM−10597)およびHM10927(寄託番号:KCCM−10588)から生産された免疫グロブリン不変領域試料と前記実施例で製造した誘導体を使用し、比較群として、糖が結合している免疫グロブリン(IVIG−グロブリンS、緑十字PBM)を始めとして、商業化されて治療用抗体として使われているいろいろの抗体を使用した。前記実験群と比較群の試料を10mMのカーボネート緩衝液(pH9.6)に1μg/mLの濃度で調製した。準備された試料を96ウェルプレート(Nunc)にウェル当たり200ngの量で分注した後、4℃で一晩中コートし、その後ウェルプレートをPBS−T溶液(137mMのNaCl、2mMのKCl、10mMのNaHPO、2mMのKHPO、0.05%のツイン20)で3回洗浄した。牛血清アルブミンを1%の濃度でPBS−T溶液に溶解させて準備したブロッキングバッファ250μLを各ウェルに添加した後、常温で1時間放置し、同一のPBS−T溶液で3回洗浄した。標準液と試料を適切な濃度でPBS−T溶液によって希釈した後、抗体がコートされたウェルに加えて常温で1時間放置させて反応させ、その後さらにPBS−T溶液で3回洗浄した。ブロッキング反応が完了したプレートに2μg/mLのClq(R&D systems社、米国)を添加した後、2時間常温で反応させ、反応済みのプレートを前記PBS−T溶液で6回洗浄した。ヒトの抗ヒトClq抗体とペルオキシダーゼとの結合体(Biogenesis社、米国)をブロッキングバッファに1000:1で希釈して各ウェルに200μLずつ加えた後、1時間常温で反応させた。反応が完了した後、各ウェルをPBS−T溶液で3回洗浄した後、発色溶液AとB(カラーA−安定化ペルオキシダーゼ[Color A-Stabilized peroxide]溶液およびカラーB−安定化クロモゲン[Color B-stabilized chromogen]溶液、DY999、R&D systems社)を同量で混合し、当該混合液を各ウェルに200μLずつ添加し、30分間放置した。その後、反応停止溶液である2Mの硫酸を50μLずつ添加して反応を停止させた。反応済みのウェルプレートは、マイクロプレートリーダー(Molecular Device社)を用い、標準液と検液の450nmの波長の吸光度を測定し、その結果を図14、図15にそれぞれ示した。
【0197】
免疫グロブリンのFc領域における補体活性をサブクラスによって比較した結果、ヒト免疫グロブリンIgG1(Fitzgerald)、IgG2(Fitzgerald)、IgG4(Fitzgerald)の順にClqに対する高い結合力を持っていることが確認でき、これにより補体活性もサブクラス間に差異があることが分かった。前記実験に使用したIVIGの場合、IgGサブクラスの集合体であるが、IgG1がほぼ大部分を占めているので、分離精製されたIgG1とほぼ類似の親和度を示した。このような対照群と比較するとき、非糖鎖化によるClqの親和度変異は補体活性が最も強いIgG1 Fcで著しく減少することが分かり、既に補体反応がないものと知られているIgG4 FcではClqに対する結合力が殆どないので、補体活性のない優れた組み換えキャリアであることが分かった(図14)。
【0198】
Clq親和度が除去されたキャリアの特性が生理活性ペプチドと結合体を作った後にも依然として維持されるかを調べるために、IFNαをモデルとして、糖鎖化Fc、酵素を用いた脱糖鎖Fcおよび非糖鎖化組み換えFcをキャリアとして用いて各結合体を作った後、Clqに対する結合力を検討した。糖鎖化FcとIFNα結合体(IFNα−PEG−Fc:Glycosylated IgG1Fc)は、Clqに対して依然として高い親和度を維持するが、ここにPNGaseFなどを用いて脱糖鎖化させたインターフェロン結合体(IFNα−PEG−DGFc:Deglycosylated IgG1Fc)は、結合力が著しく低くなることを確認し、その程度は大腸菌由来の非糖鎖化Fc結合体と同様の水準のClqに対する結合力を示した。それだけでなく、IgG1の非糖鎖化Fcを用いたインターフェロン結合体(IFNα−PEG−AGFcG1:Aglycosylated IgG1Fc)をIgG1からIgG4に変えたインターフェロン結合体(IFNα−PEG−FcG4誘導体1:Aglycosylated IgG4Fc)の場合、Clqに対する親和度が完全に除去されることを確認することができ、結合体を非糖鎖化IgG4 Fc単量体に変えた結合体(IFNα−PEG−FcG4誘導体2:Aglycosylated IgG4Fc)の場合にも、やはりClqに対する結合能力は完全に除去されることからみて、抗体断片のエフェクター(effector)機能がない良いキャリアであることを確認することができた(図15)。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の薬剤学的組成物は、薬物の血中半減期の増加が非常に高い。一方、蛋白質結合体の場合は、既存の持続型剤形の最も大きい欠点である力価の減少を克服することにより、従来最も効果が良いものと知られているアルブミンを用いた場合よりも著しい血中持続性と生体内活性を持つうえ、免疫反応誘発の危険も殆どないため、蛋白質薬物の持続型製剤の開発に有用に利用できる。また、本発明に係る蛋白質薬物の持続型製剤は、頻繁な注射による患者の苦痛を減少させることができ、活性ポリペプチドの血中濃度を持続的に維持して薬効を安定的に示すことができる。
【0200】
しかも、本発明の蛋白質結合体の製造方法は、発現システム確立の難しさ、天然型と異なる糖鎖化、免疫反応誘発、蛋白質融合方向性の制限など遺伝子操作による融合蛋白質生産方式の欠点と、反応の非特異性による低い収率、および結合剤として用いられる化学物質の毒性問題など化学的結合方式の問題点を克服することにより、増加した血中半減期と高い活性を持つ蛋白質薬物を容易かつ経済的な方式で提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物の生体内持続性を増加させるための薬剤を製造するときのキャリアとしての免疫グロブリンFc領域の使用方法であって、
該免疫グロブリンFc領域を、非ペプチド性リンカーを媒介として、生理活性ポリペプチドと共有結合させ、
該免疫グロブリンFc領域と該生理活性ポリペプチドとの間の結合は、遺伝子組換えによる融合ではない使用方法。
【請求項2】
免疫グロブリンFc領域が非糖鎖化されることを特徴とする請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
免疫グロブリンFc領域が、C1、C2、C3およびC4ドメインよりなる群から選択される1〜4個のドメインから構成される請求項1に記載の使用方法。
【請求項4】
免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含む請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択される請求項1に記載の使用方法。
【請求項6】
免疫グロブリンFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc領域よりなる群から選択される請求項5に記載の使用方法。
【請求項7】
免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域である請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
免疫グロブリンFc領域がヒト非糖鎖化IgG4 Fc領域である請求項7に記載の使用方法。
【請求項9】
非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、ポリオオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、およびヒアルロン酸、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の使用方法。
【請求項10】
生理活性ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造蛋白質、リガンド蛋白質および受容体よりなる群から選択される請求項1に記載の使用方法。
【請求項11】
生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子、グルカコン類似ペプチド類、G蛋白質共役型受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合蛋白質類、サイトカイン結合蛋白質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポ蛋白質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、プロテインC、C−反応性蛋白質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進蛋白質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体よび抗体断片類よりなる群から選択される請求項10に記載の使用方法。
【請求項12】
生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ、ヒト赤血球生成因子およびFab’抗体断片よりなる群から選択される請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
非ペプチド性リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)である請求項1に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−224635(P2012−224635A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166208(P2012−166208)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2006−539399(P2006−539399)の分割
【原出願日】平成16年11月13日(2004.11.13)
【出願人】(512186106)ハンミ サイエンス カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】