説明

免疫センサにおいて使用するための接着剤組成物

【課題】血液中の抗原などの特定の構成成分の存在又は濃度を測定するための装置及び方法において、測定を効率的かつ正確なものとするための、センサに使用する接着剤組成物を提供する。
【解決手段】接着剤組成物は、接着剤、水、ポロキサマー、及び抗凝固剤を含む。該接着剤組成物は、親水性、感圧性、加熱活性、及び/又は水溶性であるなどの性質を有する。該接着剤組成物は、装置へのサンプルの流動性を改善するのに有用である。例えば、装置が免疫センサである場合、該接着剤組成物は、血液が免疫センサのチャンバー内で凝固するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫センサなどの血液接触性装置において使用するための接着剤組成物、及び、血液サンプル中の抗原などのサンプルに付随する成分の濃度を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理液、例えば血液又は血液由来の製品中の分析物を検出することが、今日の社会で今まで以上に重要性を増している。分析物検出の定量法は、臨床検査、家庭検査などを含めて、多様な用途に利用法が見出されるものであり、そのような検査の結果は、多様な病状の診断及び処置において主要な役割を果たしている。目的の分析物には、糖尿病の処置のためのグルコース、コレステロールなどが挙げられる。こうした分析物検出の重要性の高まりに応じて、臨床での使用と家庭での使用の両方に対応する多様な分析物検出の手順及びデバイスが開発されてきた。
【0003】
血液サンプルを検出及び分析するために使用される装置の一種が免疫センサである。免疫センサは一般に、複数の電極と、サンプルを受容及び分析するように構成されたチャンバーとを有する。免疫センサの種々のチャンバーは、異なる目的に役立つものである。例えば、免疫センサの充填チャンバーは、サンプルを受容するように構成されることができ、反応チャンバーは、サンプルを、免疫センサ内に配置された抗体と反応させるように構成されることができ、検出チャンバーは、サンプル及び抗体との反応の後に、サンプル内のタンパク質又は抗原の存在又は濃度を検出するように構成されることができる。免疫センサの各種の構成要素は、例えば、基材、プラスチック、積層体、及び接着剤の組み合わせを用いて製作されることができる。
【0004】
通常の接着剤が使用されて、基材などの材料とプラスチックとが互いに接合される。これは、例えば、接着剤を基材上にコーティングし、接着剤を積層し、次いで、積層した接着剤と基材との組み合わせをプラスチック層と接合することによって達成されることができる。通常の接着剤は一般に疎水性であり、そのため、湿潤環境においてもその接合性を維持することができる。しかしながら、このことは、接着剤の疎水的性質によって液体の流れが阻害され得るため、液体の流動性に対しては不利益となる。したがって、多くの場合、血液サンプルが免疫センサの各種チャンバーの間で移動することは困難となり得る。特に、サンプルが免疫センサ内で凝固し、それによって、免疫センサを通じたサンプルの移動が阻止される傾向が生じ得る。この結果として、サンプルを分析する際に、望ましくない複雑化、誤り、及び遅延が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに、免疫センサを用いて行われる測定の精度及び速度を改善するだけでなく、免疫センサを通じた血液の流れをも改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
広義には、サンプル中の特定の物質の存在又は濃度を測定するための装置及び方法が提供される。また、そのような装置及び方法において使用するための接着剤組成物が提供される。免疫センサにおいて使用するための接着剤組成物の一実施形態において、組成物は、接着剤、水、ポロキサマー、及び抗凝固剤を含む。接着剤と水は、ポロキサマー及び抗凝固剤を含められるのに先立って、化合されて混合物を形成することができる。接着剤は、感圧性、加熱活性、及び水溶性であることを含めて、接着剤に付随する多種多様な性質を有することができる。一実施形態において、接着剤はスルホポリエステルである。抗凝固剤は、ヘパリン、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、及びシュウ酸塩を含む群から選択されることができる。ポロキサマーは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに由来する単位を含むことができる。一実施形態において、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドは、ブロックコポリマーにてモノマーとして働く。接着剤に対するポロキサマーの濃度はおおよそ、約0.05パーセント〜約0.5パーセントの範囲内となり得る。抗凝固剤がヘパリンである実施形態において、接着剤に対するヘパリンの濃度はおおよそ、1ミリリットル当たり約0.1ミリグラム〜約10ミリグラムの範囲内となり得る。
【0007】
免疫センサの例示的な一実施形態は、下部電極と、上部電極と、それらの間に配設されたセパレータとを有することができる。免疫センサはまた、反応チャンバー、検出チャンバー、及び充填チャンバーを含めて、多数のチャンバーを有することができる。反応及び検出チャンバーはそれぞれ、セパレータ内に形成されることができ、一方で、充填チャンバーは、セパレータ及び下部電極と上部電極との一方に少なくとも部分的に形成されることができる。充填チャンバーは、検出チャンバーからある距離だけ離間され、反応チャンバーの少なくとも一部分に重なり合うことができる。更に、通気孔が、セパレータ、下部電極、及び上部電極の各々に少なくとも部分的に形成されることができる。通気孔は、反応チャンバーからある距離だけ離間され、検出チャンバーの少なくとも一部分に重なり合うことができる。親水性の接着テープが、下部電極と上部電極との一方に取り付けられ、通気孔の上に配設されることができ、一方で、封止用構成要素が、下部電極と上部電極とのもう一方に取り付けられ、同様に通気孔の上に配設されることができる。親水性の接着テープ及び封止用構成要素は、完全に同じ物質を含めて、1つ以上の同じ物質から製作されることができ、あるいは、1つ以上の異なる物質から製作されることができる。親水性の接着テープは、充填チャンバーの壁を形成することができ、更には、その中に抗凝固剤を組み込まれることができる。
【0008】
下部電極は、液体の形態にある第1の試薬、及び液体の形態にある第2の試薬を下部電極上に配設されることができる。第1の液体試薬は、酵素と抱合した抗体を緩衝液中に含むことができ、一方で、第2の液体試薬は、フェリシアニド、酵素の基剤、及び電気化学的媒体を薄い酸性の溶液中に含むことができる。第1及び第2の液体試薬は、下部電極上に縞模様で付けられ、乾燥されることができる。上部電極は、抗原と抱合する磁気ビーズを有することができ、その磁気ビーズは、上部電極上に縞模様で付けられ、乾燥される。免疫センサは、反応チャンバーが、下部電極の第1の試薬、及び上部電極の抗原と抱合する磁気ビーズを配設され、検出チャンバーが、下部電極の第2の試薬を配設されるように組み立てられることができる。
【0009】
免疫センサの下部電極の第1の液体試薬の酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼ−PQQとされることができ、酵素が装填され得る緩衝液は、シトラコン酸、スクロース、ポロキサマー、及びカルシウムイオンを含むことができる。免疫センサの下部電極の第2の液体試薬は、フェリシアニド、グルコース、フェナジンエトスルフェートを薄いシトラコン酸塩の溶液中に含むことができる。一実施形態において、接着テープの抗凝固剤はヘパリンとされることができる。親水性の接着剤の濃度に対するヘパリンの濃度はおおよそ、1ミリリットル当たり約0.1ミリグラム〜約10ミリグラムの範囲内となり得る。免疫センサは、反応チャンバーの下方に配設された計器を更に有することができる。例示的な一実施形態において、計器は磁石を具備することができる。計器は、結果として生じた電流を測定するだけでなく、下部電極と上部電極との間に電位を印加するように構成されることができる。一実施形態において、加熱要素が計器に取り付けられることができる。別の実施形態において、計器は、親水性のテープと通気孔の上に配設された封止用構成要素との少なくとも一方に穿孔するように構成された穿孔用構成要素を有することができる。
【0010】
血液サンプルを測定するための一方法は、2つの電極の間に配設されたセパレータ内に形成された反応チャンバー及び検出チャンバーを設ける工程を含むことができる。更に、セパレータ及び2つの電極のうちの一方に少なくとも部分的に形成された充填チャンバーも設けられることができる。充填チャンバーは、検出チャンバーからある距離だけ離間されることができ、反応チャンバーの少なくとも一部分に重なり合うことができる。また更に、セパレータ及び2つの電極に少なくとも部分的に形成された通気孔が設けられることができる。通気孔は、反応チャンバーからある距離だけ離間されることができ、検出チャンバーの少なくとも一部分に重なり合うことができる。この方法は、第1の緩衝液中の抗体酵素抱合体、及び第2の緩衝液中の抗原と架橋した磁気ビーズを反応チャンバーに供給する工程と、希酸中のフェリシアニド、グルコース、及び媒体を検出チャンバーに供給する工程を更に含むことができる。親水性の接着テープによって、第1の封止が通気孔の第1の側の上にもたらされることができる。このテープはまた、充填チャンバーの壁を形成することもできる。封止用構成要素によって、第2の封止が通気孔の第2の側の上にもたらされることができる。
【0011】
この方法は、血液サンプルの少なくとも一部分が充填チャンバーから反応チャンバーに移動するように、血液サンプルを充填チャンバーに供給する工程を更に含むことができる。通気孔は、例えば、親水性の接着テープと封止用構成要素との少なくとも一方に穿孔することによって、所定時間の後に開口されることができる。所定の時間の後に通気孔を開口することにより、磁気ビーズに拘束されていない抗体酵素抱合体を含有する血液サンプルの一部分を検出チャンバーに移動させることができる。検出チャンバーにおけるグルコースの酸化は触媒されることができ、その結果として、フェロシアニドを形成することができる。この方法はまた、2つの電極の間に電位を印加する工程と、フェロシアニドからの電流を電気化学的に検出する工程と、検出された信号に基づいて血液サンプル中の抗原の濃度を算出する工程を含むことができる。
【0012】
この方法のいくつかの実施形態において、2つの電極は加熱されることができる。一実施形態において、親水性の接着テープの親水性の接着剤は、ヘパリンを含むことができる。親水性の接着剤の濃度に対するヘパリンの濃度は、1ミリリットル当たり約1ミリグラムとなり得る。別の実施形態において、親水性の接着剤はポロキサマーを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、添付の図面と共になされる以下の詳細な説明によって、更に十分に理解されよう。
【図1】本発明による免疫センサの例示的な一実施形態の分解図。
【図2】本発明による免疫センサを使用した、C反応性タンパク質の測定値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、特定の例示的実施形態について、これから説明することにする。これらの実施形態の1つ以上の例を添付の図面に示す。本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示す装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに、本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることは、当業者には理解されよう。ある例示的実施形態に関連して例示又は説明した特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような修正及び変形は、本発明の範囲に含まれることを意図したものである。
【0015】
主題の組成物、装置、及び方法は、多種多様なサンプル中の多種多様な分析物の測定において使用するのに好適であり、全血、血漿、血清、間質液、又はそれらの類縁体中の分析物の測定において使用するのに特に好適である。本発明の組成物は、多様な量及び濃度にて多数の構成成分を含むことができる。本明細書で議論する構成成分、量、及び濃度は、本発明で使用するための例に過ぎないものであり、1つ以上の組成物を形成する多様な他の組み合わせが本開示の趣旨において達成され得ることが、当業者には理解されよう。
【0016】
同様に、組成物は、種々様々な装置と共に使用されることができる。したがって、一般に免疫センサと共に使用するための組成物について論じる限りにおいて、それらの組成物は、多数の装置、例えば、非限定的な例として、電気化学セル、電気化学センサ、抗酸化センサ(antioxidantsensor)、及びバイオセンサーにおいて使用されることもできる。接着剤組成物と共に使用できるタイプの装置のうちのいくつかの非限定的な例が、「電気化学的方法(Electrochemical Method)」と題され1997年5月7日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第5,942,102号、「電気化学セル(Electrochemical Cell)」と題され1999年5月18日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第6,174,420号、「センサ接続手段(Sensor Connection Means)」と題され1999年9月20日に出願されたチェンバーズ(Chambers)らの米国特許第6,379,513号、「加熱電気化学セル(Heated Electrochemical Cell)」と題され2000年9月11日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第6,475,360号、「ヘモグロビンセンサー(Hemoglobin Sensor)」と題され2000年7月14日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第6,632,349号、「抗酸化センサ(Antioxidant Sensor)」と題され2000年7月14日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第6,638,415号、「電気化学セルと計器との電気接続を形成する方法(Method of Forming an Electrical Connection Between an Electrochemical Cell and a Meter)」と題され2002年12月9日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第6,946,067号、「毛管又はウィッキング式充填型器具のサンプリング不良を防止する方法(Method of Preventing Short Sampling of a Capillary or Wicking Fill Device)」と題され2003年4月3日に出願された米国特許第7,043,821号、「電気化学セル(Electrochemical Cell)」と題され2002年10月1日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許第7,431,820号において、より詳細に論じられており、これらの米国特許の各々は、その全容が参照によって本願に組み込まれる。
【0017】
同様に、特定の構成を有する装置と共に使用するための組成物について論じる限りにおいて、多数の構成が使用されることができる。例えば、本開示と共に使用され得るいくつかの構成は、互いに面する2つの電極を有するセンサ、同じ平面上に2つの電極を有するセンサ、及び、3つの電極を有し、それらの電極のうちの2つが対向し、それらの電極のうちの2つが同じ平面上にあるセンサを含む。これらの種々の構成は、前述の装置を含めて多数の装置に見出され得る。
【0018】
また更に、組成物の形成、装置の組み立て、及び装置の使用に関連する方法など、本明細書で論じる方法は、特定の工程又は工程の順序によって限定されるものではない。当業者には、それらの方法を実施し得る種々の順序が理解され、また、それらの工程が本発明の趣旨から逸脱することなく修正又は追加され得ることが理解されよう。
【0019】
免疫センサにおいて使用するための組成物の例示的な一実施形態において、組成物は、接着剤、水、ポロキサマー、及び抗凝固剤を含む。接着剤は、粘着性があることに加えて、接着剤に付随する多様な性質を有することができる。これらの性質は、組成物中に使用される特定の接着剤に付随する性質から生じ得るものであり、あるいは、性質を生じさせるか又は向上させるのを支援するために、他の構成成分を組成物に加える結果として生じ得るものである。接着剤は、例えば親水性となることができ、それによって、水及び他の液体と良好に相互作用することが可能となる。そのような実施形態において、接着剤は十分に湿潤した状態を維持することができ、その結果、組成物が付けられる装置を通じて液体サンプルをより容易に流動させることが可能となる。親水的性質を有する接着剤を得る1つの方法は、親水性の血液適合性ポリマーを接着剤に混ぜ入れることである。流動性を改善する接着剤を含んだ装置が、血液サンプルと共に使用される場合、そのような接着剤の使用により、装置内に発生する凝固の量を減じることができる。また、流動性を改善することにより、そのような装置に関連する多様な反応の時間を短縮化することもできる。例えば、免疫センサにおいて、サンプルの流動性を改善する接着剤を含んだ組成物は、抗原抗体反応が発生するのに要する時間を減少させることができる。これは、バイオセンサーに充填される液体サンプルが、乾燥した試薬を溶解させ、充填経路に沿ってその試薬を「押し付ける」傾向を持ち得るからである。次に、電極のうちの試薬が枯渇した領域は、置き去りにされ、したがって反応の速度を低下させることができる。
【0020】
また、組成物を付けられた装置を通じた流体の流動性は、接着剤を水溶性にすることによって改善されることができる。また、そのような性質は、接着剤を十分に湿潤した状態に維持するのに役立ち、更にまた、そのような性質は流動性を改善するのに役立つため、流動性が改善する結果としてもたらされる他の前述の利点もまた、接着剤が水溶性となる結果としてもたらされる。更に、水溶性の接着剤は、接着剤が免疫センサなどの装置の表面に塗布される場合、揮発性有機化合物又は有毒成分の解放を防止するのに役立ち得る。
【0021】
また、接着剤は、感圧性及び/又は加熱活性とされることもできる。接着剤を感圧性及び/又は加熱活性にすることにより、接着剤を付けられる装置は、より容易に処理されることができる。例えば、接着剤が加熱活性となるように作られている場合、接着剤は、したがって装置のうちの接着剤を付けられる部分は、装置を製造するために使用する切断工具に強固に粘着しないことが可能となる。
【0022】
多数の種々の接着剤が本発明の組成物と共に使用され得るが、例示的な一実施形態において、接着剤はスルホポリエステルである。また、Eastman AQ(商標)というポリマー製品群によるポリエステル及びスルホポリエステルなど、他のポリエステルが使用されることもできる。
【0023】
組成物を加えられた水は、その典型的な形態を有することができ、また、任意の所望の時点で組成物の他の成分を加えられることができる。濾過水、純水、水道水、及び処理水はすべて、接着剤組成物中に使用され得る水の種類の例である。例示的な実施形態において、接着剤をより容易に水と相互作用させるために、水は実質的に溶解イオンのないものにされることができる。これは、接着剤の溶解を防止するのにイオンが役立ち得るために生じ得るものである。例示的な一実施形態において、接着剤と水は混合されて混合物を形成する。接着剤が、親水性及び/又は水溶性であるなどの性質を有する場合、結果として生じる混合物は、ポロキサマー及び抗凝固剤など、接着剤組成物の他の構成成分と容易に混合することができる。
【0024】
組成物を親水性にするのを支援するために、時にその商標名プルロニック(Pluronics)(登録商標)で呼ばれる1つ以上のポロキサマーが接着剤組成物の一部に含められることができる。その1つ以上のポロキサマーは、ブロックコポリマー、例えば非イオン性トリブロックコポリマーとされることができ、この非イオン性トリブロックコポリマーは、時にポリ(プロピレンオキシド)と呼ばれるポリオキシプロピレンと、時にポリ(エチレンオキシド)と呼ばれるポリオキシエチレンとの双方から誘導されることができ、またそれら双方を含むことができる。プロピレンオキシド及びエチレンオキシドは、ブロックコポリマーにてモノマーとして働くことができる。
【0025】
コポリマーのブロックの長さは、多種多様なポロキサマーを生じるように調整されることができ、各ポロキサマーは、ポロキサマーの各々の特定の構成成分に基づいて種々の性質を有する。ポロキサマーは、直接接着剤に、あるいは一般的には構成成分に混ぜ入れられることができる。多くの接着剤は疎水性であるため、ポロキサマーを使用することにより、接着剤組成物の性能を高めることができる。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドポリマーブロックは、利用可能なポロキサマーが広範囲にわたる望ましい特性及び望ましくない特性を呈するように、多様な化学構造を有することができる。例えば、いくつかのポロキサマーは、ヘマトクリット値の高い血液の影響を打ち消すのに役立ち得るため、より良好に働いて、免疫センサに血液を充填するのに役立つ。BASFプルロニック(登録商標)L 62(PE 6200としても知られる)及びBASFプルロニック(登録商標)F 87 Prillは、組成物を親水性にすることができるため、免疫センサに血液を充填するのを支援し得るポロキサマーの2つの例となるものである。
【0026】
接着剤組成物はまた、1種類以上の抗凝固剤を含むことができる。抗凝固剤を含めることは、組成物が使用される装置内で血液などの液体が凝固する危険性を減じるのに役立ち得る。更に、抗凝固剤は、装置に液体を充填しようとするとき、及び/又は、液体が装置内の各種のチャンバ間で移動しようとするときに、充填挙動をより一貫したものにすることができる。サンプル充填の速度及び範囲は、抗凝固剤を組成物に含めることによって、より良好に制御することができる。抗凝固剤は、直接接着剤に混ぜ入れられることができ、あるいは組成物全体に混ぜ入れられることができる。抗凝固剤は、サンプルが装置に充填されるときに抗凝固剤をサンプルに通す表面を生じさせることができる。多数の種類の抗凝固剤が使用され得るが、いくつかの例示的な物質には、ヘパリン(ヘパリンナトリウム、ヘパリンリチウムを含む)、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩(時にEDTAと呼ばれる)、及びシュウ酸塩が挙げられる。
【0027】
接着剤組成物の形成は、多数の方式で実施されることができる。本明細書で論じる方法は、各種の構成成分を組み合わせて、あるタイプの接着剤組成物を形成し得る方法の例に過ぎない。本開示を鑑みれば、接着剤、水、ポロキサマー、及び抗凝固剤を含み得る接着剤組成物に含まれる構成成分の量は、実用的な溶液を得るために微細に調和され得ることが、当業者には理解されよう。例えば、過剰な量の接着剤を含有する組成物は、サンプルが免疫センサに適切に充填されるのを妨げることがある。更に、含有するポロキサマーが過度に多い組成物は、サンプルをディウェッティングさせないことがあり、サンプルは免疫センサのチャンバーの間で流動しなくなる。同様に、含有するポロキサマーが過度に少ない組成物は、サンプルを全くウェッティングさせないことがあり、免疫センサのチャンバー内でのサンプルの望ましくない凝固をもたらし得る。更にまた、含有する抗凝固剤が過度に多い組成物は、サンプルに悪影響を与えることがある。例えば、サンプルが血液である場合、抗凝固剤が過度に多いと、サンプルの赤血球が悪影響を受けることがある。それゆえに、接着剤組成物を形成するために使用する構成成分の特定の調和が、免疫センサの性能を改善するのに重要となり得る。
【0028】
接着剤組成物を形成する例示的な一実施形態において、接着剤と水が化合及び混合されて、それらの混合物を形成する。例えば、スルホン化ポリ(エチレン)テレフタレートである約4.5kgのEastman AQ(商標)2150が、約13.5Lの純水と化合されることができる。水は実質的に溶解イオンのないものにされることができ、そのため、接着剤の溶解が高められる。Eastman AQ(商標)2150は、実質的に、少数の変性剤と添加剤を有する水分散性のスルホポリエステルから作られることができる。接着剤と水の混合物が形成された後、その混合物は加熱され、次いで保存されることができる。例えば、混合物は、約60℃(華氏140度)に加熱されたオーブン内に約4日間にわたって置かれることができる。その混合物は、毎日約5分間〜10分間にわたって撹拌されることができる。続いて、混合物は、約8℃(華氏46度)以下で保存されることができ、これは微生物の増殖を減じるのに役立ち得る。
【0029】
接着剤を水と混合する前に、あるいは混合物が形成された後に、1つ以上のポロキサマーが混ぜ入れられることができる。例えば、BASFプルロニック(登録商標)L 62は、ポロキサマーの終濃度がおおよそ約0.05パーセント〜約0.5パーセントの範囲となるような方式で混合されることができる。例示的な一実施形態において、ポロキサマーは、組成物の約0.1パーセントをなす。同様に、接着剤を水と混合する前に、あるいは混合物が形成された後に、1つ以上の抗凝固剤が混ぜ入れられることができる。例示的な一実施形態において、抗凝固剤は、ポロキサマーが混ぜ入れられた後に混ぜ入れられる。上記の接着剤組成物の例に続いて、BASFプルロニック(登録商標)L 62を添加した後に、組成物と比較したヘパリンの終濃度が約0.1mg/mL〜約10mg/mLの範囲となるような方式で、ヘパリンナトリウムが混ぜ入れられることができる。例示的な一実施形態において、組成物の濃度と比較したヘパリンの濃度は、約1mg/mLである。本発明の組成物と共に使用され得るヘパリンナトリウムの一種が、シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich)によるブタの粘膜のヘパリンであり、これは約172単位/mgの濃度を有することができる。全体として、接着剤(例えば、4.5kgのEastman AQ(商標)2150)と、水(例えば、13.5Lの純水)と、ポロキサマー(例えば、組成物全体に対して約0.1%の濃度のBASFプルロニック(登録商標)L 62)と、抗凝固剤(例えば、約172単位/mgであり、全体としての濃度が約1mg/mLとなるように組み合わされた、シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich)によるブタの粘膜のヘパリン)との組み合わせにより、例示的な接着剤組成物を形成することができる。
【0030】
本開示の結果として得られる接着剤組成物は、多種多様な装置において使用されることができる。それらの接着剤組成物と共に使用され得る装置の種類は、組成物がどのような形態で使用されるかに影響を与え得る。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば組成物を直接電極に塗ることによって、直接装置に塗布されてもよく、一方で、他の実施形態において、まず組成物がシート上に塗られ、その後に、組成物を上に配置されたシートが、そのシートと共に使用される装置に取り付けられてもよい。例示的な一実施形態において、接着剤組成物は、時にマイラーと呼ばれることもある二軸延伸エチレンテレフタレートのシート上にコーティングして接着テープを形成することができる。組成物は、そのようなシートに多様な方式で塗布することができ、例えば、Kバー(K−bar)を使用して塗布されることができる。組成物をシートに塗布するための他の方法には、限定するものではないが、スロットヘッドコーティング(slot−head coating)及びカーテンコーティングが挙げられる。
【0031】
本開示の結果として得られる接着剤組成物はまた、血液の様々な様相を測定する装置と共に使用するように限定されるものではない。むしろ、それらの接着剤組成物は、接着剤組成物が有用となり得る多様な方式で使用されることができる。非限定的な例として、本開示の結果として得られる接着剤組成物は、例えば、接着剤組成物を包帯の中に添合することによって、創傷の治療に使用されることができる。以下でより詳細に論じる接着剤組成物の構成成分は、接着ガーゼ包帯での使用に望ましい効果を生じるように調和されることができる。接着剤組成物を接着ガーゼ包帯において使用する成果として、接着ガーゼ包帯によって凝固が改善されること、並びに、接着ガーゼ包帯を創傷から取り外す際の傷害及び/又は痛みが軽減されることを挙げることができる。また、標準的な接着剤に代わる接着剤組成物の他の使用法が、本明細書における開示によって企図される。
【0032】
免疫センサは、本開示の接着剤組成物と共に使用され得る多数の種類の装置のうちの1つである。免疫センサは一般に、血液などのサンプルを受容し分析するように構成される。本開示の接着剤組成物は、多数の構成を有する免疫センサと共に使用され得るが、例示的な一実施形態において、免疫センサは、その間にセパレータを設けられた上部及び下部電極を有することができる。上部及び下部電極は、作用電極及び対電極又は対電極/基準電極として取り換え可能に使用されることができる。実際に、免疫センサに印加される電圧は、反転及び/又は交番することがあるため、下部及び上部電極の各々は、種々の段階において作用電極及び対電極又は対電極/基準電極として働くことができる。説明を容易にする目的で、本願において、下部電極は作用電極と見なし、上部電極は対電極又は対電極/基準電極と見なすことにする。
【0033】
複数のチャンバーが、免疫センサ内にて下部電極、上部電極、及びセパレータの少なくとも1つの一部分に形成されることができる。例として挙げることができるチャンバは、サンプルを免疫センサの中に導入することができる充填チャンバ、サンプルを1つ以上の所望の物質と反応させることができる反応チャンバ、並びに、サンプルの特定の構成成分の濃度を測定することができる検出チャンバである。また、免疫センサは、所望に応じて空気を免疫センサに進入させ、また免疫センサから脱出させる通気孔と、通気孔の一方の側を選択的に封止する接着テープと、通気孔のもう一方の側を選択的に封止する更なる封止用構成要素とを有することができる。接着テープはまた、充填チャンバーの壁を形成することもできる。
【0034】
図1に示すように、免疫センサ10の一実施形態において、免疫センサ10は、下部電極12を有しており、下部電極12は、その上に2種類の液体試薬30、32を縞模様で付けられている。下部電極12は、電極を形成するために用いられる多数の技術を用いて形成されることができるが、一実施形態において、硫酸バリウムを充填されたポリエチレンテレフタレート(PET)のシートが、金でスパッタコーティングされる。電極を形成する他の非限定的な例が、「電気化学セル(Electrochemical Cell)」と題され2000年11月10日に出願された、ホッジス(Hodges)らの米国特許第6,521,110号において開示されており、この米国特許第6,521,110号の内容はすべて、参照によって本願に組み込まれる。同様に、液体試薬30、32は、多数の様々な構成成分を有することができるが、一実施形態において、第1の液体試薬30は、スクロース、並びに、プルロニック(登録商標)(すなわちポロキサマー)、シトラコン酸(すなわち抗凝固剤)、及びカルシウムイオンを含有する緩衝液中に、GDH−PQQなど、酵素と抱合した抗体を含むが、第2の液体試薬32は、薄いシトラコン酸溶液などの酸性の緩衝液中に、フェリシアニドと、グルコースと、フェナジンエトスルフェートなどの第2の媒体との混合物を含む。第1及び第2の液体試薬30、32は、下部電極12の上で乾燥させることができる。試薬30、32を乾燥させるために多数の技法を使用することができるが、一実施形態において、下部電極12の上に試薬30、32が縞模様で付けられた後に、1つ以上の赤外線乾燥器が試薬30、32に作用されることができる。また、例えば、1つ以上の空気乾燥器が赤外線乾燥器に続いて使用されることもできる。本明細書における、第1の試薬と第1の液体試薬及び第2の試薬と第2の液体試薬についての言及は、同じ意味で用いられており、特定の実施形態に対して試薬が所与の時点で液体の又は乾燥した形態にあることを必ずしも示唆するものではない。更に、第1及び第2の液体試薬に付随する構成成分のいくつかは、交換可能に、かつ/又は、所望に応じて第1の液体試薬と第2の液体試薬の両方において使用されることができる。非限定的な例として、抗凝固剤は、第1の液体試薬20と第2の液体試薬32の一方又は両方に付随することができる。
【0035】
1本の線が、試薬30、32の一方の縁部がその線に近接するか又は接するように、試薬30、32の間のスパッタコーティングされた金として形成されることができる。この線は、レーザーアブレーションを利用して、あるいは鋭利な金属の縁部を用いて施されることができる。例示的な一実施形態において、この線は、試薬30、32が電極上に縞模様で付けられた後に施されることができる。この線は、下部電極12の検出チャンバーの下にある部分を、反応チャンバーの下に位置する部分から電気的に絶縁するように設計されることができる。これにより、電気化学的分析の間、作用電極の範囲がより良好に規定されることができる。
【0036】
また、免疫センサ10は、1つ以上の磁気ビーズ34を有する上部電極14を有することができ、磁気ビーズ34は、表面結合型抗原をその上に含有している。これらの抗原は、以下で更に詳細に説明するように、下部電極12に配設された抗体及び反応チャンバー18内のサンプルと反応するように構成されることができる。下部電極12の上及び上部電極14の上に配設された構成成分が相互に交換可能であることが、当業者には理解されよう。したがって、下部電極12は1つ以上の磁気ビーズ34を有することができ、上部電極14は、上部電極14上に縞模様で付けられた2種類の液体試薬30、32を有することができる。更に、図示の実施形態において、電極12の長さは、免疫センサ10の全体の長さを形成しているが、他の実施形態において、電極は、免疫センサの層のうちの下部又は上部電極として働く部分のみとされることができ、あるいは、複数の電極が、免疫センサの単一の層に配置されることができる。
【0037】
下部電極12と上部電極14との間に配置されるセパレータ16は、多様な形状及び寸法を有することができるが、一般的には、望ましくは下部及び上部電極12、14と係合して免疫センサ10を形成するように構成される。例示的な一実施形態において、セパレータ16は両面にある接着剤であるが、セパレータ16に付けられる接着剤は、以下で更に詳細に説明するように、免疫センサ10と共に使用される接着剤組成物から分離されることができる。セパレータ16は、セパレータ16の2面のそれぞれの側に剥離ライナーを更に有することができる。セパレータ16は、少なくとも2つの空洞を形成する方式で切断されることができる。第1の空洞は、反応チャンバー18として働くように形成されることができ、第2の空洞は、検出チャンバー20として働くように形成されることができる。一実施形態において、反応チャンバー18は、電極12、14と整列して反応チャンバー内での抗原抗体反応を可能にし、一方で検出チャンバー20は、電極30、32と整列して検出チャンバー20内でのフェロシアニドの電気化学的定量を可能にするように、セパレータ16はキスカット(kiss−cut)されることができる。
【0038】
一実施形態において、セパレータ16は、上部電極14の磁気ビーズ34及び下部電極12の第1の試薬30を少なくとも部分的に反応チャンバー18内に配設することが可能となり、かつ下部電極12の第2の試薬32のフェリシアニドとグルコースの組み合わせを少なくとも部分的に検出チャンバー20内に配設することが可能となるような方式で、下部電極12上に配置されることができる。第1及び第2の液体試薬30、32の各々に抗凝固剤を含めて、抗凝固剤が反応チャンバー18及び検出チャンバー20の各々に付随するようにすると有利となり得る。いくつかの実施形態において、上部電極12と下部電極14との一方とセパレータ16との組み合わせが、互いに積層されて二層積層体を形成することができ、一方で、他の実施形態において、下部電極12、上部電極14、及びセパレータ16の各々の組み合わせが、互いに積層されて三層積層体を形成することができる。しかしながら、更なる層を所望に応じて含めることは、本発明の趣旨に含まれる。
【0039】
充填チャンバー22は、下部電極12と上部電極14との一方及びセパレータ16の中に孔を打抜きすることによって形成されることができる。図示の実施形態において、充填チャンバーは、下部電極12の孔が反応チャンバー18と重なり合うように、下部電極12及びセパレータ16に孔を打抜きすることによって形成されている。図示のように、充填チャンバー22は、一定の距離だけ、検出チャンバー20から離されることができる。そのような構成により、サンプルは、検出チャンバー20に進入することなく、充填チャンバー22を通じて免疫センサ10に進入し、反応チャンバー18の中に流入して、例えば、第1の電極12上の、酵素と抱合した抗体を緩衝液中に含む第1の液体試薬30、及び、上部電極14上に縞模様で付けられた磁気ビーズ34と反応することが可能となる。サンプルが反応すると、そのサンプルは次いで、第2の液体試薬32、例えば、フェリシアニドと、グルコースと、酸性の緩衝液中の第2の媒体との混合物と相互作用するために、検出チャンバー20の中に流入することができる。
【0040】
通気孔24は、免疫センサ10の全体を通じて孔24が延びるように、2つの電極12、14の各々及びセパレータ16を貫いて孔を打抜きすることによって形成されることができる。孔は多数の種々の箇所に打抜きされることができるが、例示的な一実施形態において、孔は、検出チャンバー20のうちの反応チャンバー18から離間した領域と重なることができる。
【0041】
孔24は、多数の種々の封止用構成要素を使用して多数の種々の方式で封止されることができるが、図示の実施形態において、通気孔24のうちの下部電極12に位置する第1の側は、本発明の接着剤組成物を含んだ親水性の接着テープ40を使用して封止されており、通気孔24のうちの上部電極14に位置する第2の側は、スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ42などの封止用構成要素を使用して封止されている。接着テープ40は、上で論じたように、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートのシート上にコーティングすることを含めて、多様な方式で形成されることができる。接着テープ40及びスコッチ(登録商標)テープ42の双方の接着側は、共に免疫センサ10に面することができる。図示のように、接着テープ40は、通気孔24に対する封止を形成することができるだけでなく、サンプルが中に収容され得るように、充填チャンバー22の壁を形成することもできる。したがって、接着テープ40が本開示の接着剤組成物を含む実施形態において、接着テープ40の性質は、充填チャンバー22に関連し得るものとなる。それゆえに、充填チャンバー22の表面は、親水性にかつ/又は水溶性にされることができ、それによって、その表面は、サンプルが充填チャンバー内に配設されるとき、十分に湿潤した状態を維持することが可能となる。接着テープ40とスコッチ(登録商標)テープの双方は、免疫センサ10及びその中に配設された構成成分に対して所望に応じて通気及び/又は封止をなすように、免疫センサ10に選択的に取り付けられ、また取り外しされることができる。スコッチ(登録商標)テープ42は、封止用構成要素の一例に過ぎないものであり、親水性の接着テープ40を含めて、通気孔24を封止し得る多数の他の種類の構成要素もまた使用され得ることが、当業者には理解されよう。
【0042】
ヘパリンなどの抗凝固剤を接着剤組成物の一部として使用する利点について、図2のグラフで説明する。接着剤組成物の一実施形態においてヘパリンを含めることにより、臨床的に重要な広範囲のヘマトクリット値にわたってより容易に機能するという免疫センサの能力が改善された。図示のように、33.5%及び47.5%のヘマトクリット値の双方に対するC反応性タンパク質の測定値により、参照血漿の濃度及び実際に検知された濃度はデータセットにわたって比較的一貫したものであることが示される。完全に理想的な結果であれば1本の直線が形成され、各データ点に対し、計器で測定されたC反応性タンパク質の濃度は、C反応性タンパク質の標準濃度と等しくなる。実データの結果は、そのような理論的な線に近いか、あるいは、そのような線から離間する限りにおいて、データ点は線の両側から概して等しい距離にあり、サンプルサイズが大きくなるにつれて、その結果もまた理論的な線に近づくと見込まれることが示唆される。したがって、本発明の結果として、概ね正確である免疫センサが得られる。
【0043】
本開示では、本明細書で論じた接着剤組成物が使用され得る免疫センサに関連する多種多様な実施形態について論じられているが、免疫センサの他の実施形態が、本開示の接着剤組成物と共に使用されることもできる。そのような非限定的な例には、「直接的免疫センサ分析法(Direct Immunosensor Assay)」と題され2002年3月21日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許出願公開第2003/0180814号、「免疫センサ(Immunosensor)と題され2004年4月22日に出願されたホッジス(Hodges)らの米国特許出願公開第2004/0203137号、「バイオセンサー機器及び使用方法(Biosensor Apparatus and Methods of Use)」と題され2005年11月21日に出願されたライアット(Rylatt)らの米国特許出願公開第2006/0134713号、並びに、米国特許出願公開第2003/0180814号及び同第2004/0203137号の各々に対する優先権を主張する米国特許出願第12/563091号に記載されたものが挙げられ、これらの米国特許出願公開は、その全容が参照によって本願に組み込まれる。
【0044】
一実施形態において、免疫センサ10は、ある電位を電極12、14に印加し、その電位を印加した結果として生じる電流を測定するように構成された計器の中に配置されるように構成されることができる。その計器は、多数の種々の特徴を有することができる。例えば、計器は、免疫センサ10の特定の構成成分をあるチャンバー内に維持し、その一方で他の構成成分は他のチャンバーに流れるように構成された磁石を有することができる。例示的な一実施形態において、計器の磁石は、免疫センサ10を計器内に配置すると磁石が反応チャンバー18の下方に配設されるように設置される。これにより、磁石は、任意の磁気ビーズ34、より具体的には、ビーズ34に拘束されている任意の抗体酵素複合体が、検出チャンバー20の中に流入するのを防ぐことができる。もう1つの所望による計器の特徴は、加熱要素である。加熱要素は、反応速度を高速化するのを助け、また、粘度を減じることによってサンプルが所望の方式で免疫センサ10を通じて流動するのを助けることができる。以下でより詳細に説明するように、穿孔器具が計器に取り付けられることもできる。
【0045】
使用中、免疫センサ10は、サンプルの抗原の濃度を測定することができる。免疫センサ10は、計器に接続されることができる。測定される抗原を含有するサンプルは、そのサンプルを免疫センサ10の充填チャンバー22の中に配置することによって、免疫センサ10の中に装填されることができる。サンプルは、多様な技法を用いて配置されることができるが、例示的な一実施形態において、指先からの1滴の血液が、毛管作用によって充填チャンバー22の中に引き込まれることができる。免疫センサ10の構成により、サンプルは充填チャンバー22から反応チャンバー18の中に流動することができる。スクロース、ポロキサマー、及びカルシウムイオンを含有する緩衝液中に、酵素と抱合した抗体を含むことができる第1の試薬30、並びに、表面結合型抗原を含有し得る磁気ビーズ34が、反応チャンバー18の内側に存在することができる。第1の試薬30と磁気ビーズ34はどちらも、サンプルの反応において、ある役割を果たすように構成されることができる。磁気ビーズ34の抗原及びサンプルの抗原は、第1の試薬30の抱合体が磁気ビーズ34の表面上の抗原と結合するのを防止するような方式で、第1の試薬30の抗体の結合部位を遮断することができる。所定の期間、例えば2分間乃至5分間が経過した後、下部電極12の通気孔24の上に配設された接着テープ40が穿孔されることができる。例示的な一実施形態において、免疫センサ10を取り付けられる計器は、通気孔24を穿孔するための穿孔器具を有する。穿孔器具の例には、針又は他の鋭利な工具が挙げられる。
【0046】
サンプルがセンサ10に加えられてから、通気孔24が穿孔されるまでの間に経過する時間は、センサ10が使用される特定の用途及びセンサ10を形成する特定の構成成分によって異なり得る。サンプルが反応チャンバー18の中に導入された後も、試薬30、32を溶解するには時間を要する。多様な要因が、試薬30、32を溶解するのに要する時間に影響を与え得るが、それらの要因には、非限定的な例として、化学的組成、粘度、センサ10と共に使用されるサンプルの量、並びに、センサ10の内部及びセンサ10の周囲の環境の温度が挙げられる。例えば、ヘマトクリット値の高い血液は、赤血球含量の低い血液と比べて、試薬30、32を溶解するのにより長い時間を要し得る。同様に、低温になるほど、試薬30、32を溶解するのに、より多く時間を要し得る。
【0047】
また、抱合体が磁気ビーズ34に結合するのに要する時間は、センサ10が使用される特定の用途及びセンサ10を形成する特定の構成成分に依存して変動する要因となり得る。非限定的な例として、抱合体がビーズ34に結合するのに要する時間は、サンプルの粘度、分析物と抱合体の抗体部分との親和性、及び温置の温度に依存し得る。通常、抱合体とビーズ34との結合の少なくとも一部は、試薬30、32のすべてが溶解する前に生じ得る。
【0048】
例示的な一実施形態において、通気孔24が穿孔されるまでに経過してよい最小時間は、反応が約37℃で実施される場合、約2分間となり得る。別の例示的な実施形態において、通気孔24が穿孔されるまでに経過してよい最小時間は、反応が約20℃で実施される場合、約5分間となり得る。十分な時間の経過が認められない場合、抗原と抗体との間に不十分な反応が存在することによって、精度が影響を受けることがある。対照的に、過剰な時間の経過が認められる場合、センサ10が少量のサンプルで使用される結果として、サンプルの蒸発が起こり得ることが原因で、精度が影響を受けることがある。加えて、過剰な時間の経過を認めることは一般に、実用的な観点から好ましいものではなく、一般には可能な限り迅速に反応を実施することが好ましい。
【0049】
計器の磁石は、磁石ビーズ34及びそれらのビーズに拘束された任意の抗体酵素抱合体を、通気孔24を通じて抜け出すかあるいは検出チャンバー20の中へと流動することによって反応チャンバー18から出ないように保持するのを支援することができる。抱合体の残りの部分は、検出チャンバー20に進入することができる。下部電極12上の第2の試薬32が検出チャンバー20内に存在することができ、第2の試薬32は、フェリシアニドと、グルコースと、第2の媒体との混合物を酸性の緩衝液中に含むことができる。反応チャンバー18から検出チャンバー20に流動する抱合体は、第2の試薬32のグルコースの酸化を触媒することができる。グルコースの酸化により、結果としてフェロシアニドが形成され得る。フェロシアニドの存在及び量は、検出チャンバー20内で電気化学的に検出されることができ、次に検出チャンバー20は、サンプル中の抗原の濃度を算出するために使用されることができる。その結果は、多数の方式で表示機構に伝送されることができる。
【0050】
免疫センサ10の様々な構成成分が、特定の物質を言及して論じられているが、同様の結果を生じ得る多様な他の物質もまた使用され得ることが、当業者には理解されよう。非限定的な例として、PETシートが金でスパッタコーティングされることについて論じたが、他の実施形態において、PETシートは、パラジウム、白金、イリジウム、銀、及びそれらの混合物、又は同様の結果を達成する性質を有する他の物質でスパッタコーティングされることができる。更に、上述の実施形態に基づいた本発明の更なる特徴及び利点が、当業者には理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって指定する場合を除いて、具体的に図示し説明した内容によって限定されるものではない。本明細書で引用されたすべての刊行物及び文献は、すべての内容が参照によって明らかに本願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫センサにおいて使用するための接着剤組成物であって、
接着剤と、
水と、
ポロキサマーと、
抗凝固剤とを含む接着剤組成物。
【請求項2】
前記抗凝固剤は、ヘパリン、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、及びシュウ酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポロキサマーは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに由来する単位を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記エチレンオキシド及びプロピレンオキシドは、ブロックコポリマーにてモノマーとして働く、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記接着剤は感圧性である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記接着剤は加熱活性である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記接着剤は水溶性である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤はスルホポリエステルである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記接着剤に対する前記ポロキサマーの濃度がおおよそ、約0.05パーセント〜約0.5パーセントの範囲内である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記接着剤に対する前記ヘパリンの濃度がおおよそ、1ミリリットル当たり約0.1ミリグラム〜約10ミリグラムの範囲内である、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記接着剤と前記水は、前記ポロキサマー及び前記抗凝固剤を含められるのに先立って、化合されて混合物を形成する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
酵素と抱合した抗体を緩衝液中に含む第1の液体試薬と、フェリシアニド、前記酵素の基剤、及び電気化学的媒体を薄い酸性の溶液中に含む第2の液体試薬とを有する下部電極であって、前記第1及び第2の液体試薬は、前記下部電極上に縞模様で付けられ、次いで乾燥されている下部電極と、
抗原と抱合した磁気ビーズを有する上部電極であって、前記磁気ビーズは、上部電極上に縞模様で付けられ乾燥されている上部電極と、
前記下部電極と上部電極との間に配設されたセパレータと、
前記セパレータ内に形成された反応チャンバーであって、前記第1の試薬、及び前記抗原と抱合した前記磁気ビーズをその中に配設された反応チャンバーと、
前記セパレータ内に形成された検出チャンバーであって、その中に前記第2の試薬を配設された検出チャンバーと、
前記セパレータ、及び前記下部電極と上部電極との一方に少なくとも部分的に形成され、前記検出チャンバーからある距離だけ離間され、前記反応チャンバーの少なくとも一部分に重なり合う充填チャンバーと、
前記セパレータ、前記下部電極、及び前記上部電極の各々に少なくとも部分的に形成され、前記反応チャンバーからある距離だけ離間され、前記検出チャンバーの少なくとも一部分に重なり合う通気孔と、
抗凝固剤を混ぜ込まれた親水性の接着テープであって、前記下部電極と上部電極との一方に取り付けられ、前記通気孔の上に配設され、前記充填チャンバーの壁を形成すると共に前記通気孔を封止するように構成された親水性の接着テープと、
前記下部電極と上部電極とのもう一方に取り付けられ、前記通気孔の上に配設され、前記通気孔を封止するように構成された封止用構成要素と、を備える免疫センサ。
【請求項13】
前記第1の液体試薬は、グルコースデヒドロゲナーゼ−PQQと抱合した抗体を含み、前記緩衝液は、シトラコン酸、スクロース、ポロキサマー、及びカルシウムイオンを含む、請求項12に記載の免疫センサ。
【請求項14】
前記抗凝固剤はヘパリンを含む、請求項12に記載の免疫センサ。
【請求項15】
前記親水性の接着剤の濃度に対する前記ヘパリンの濃度がおおよそ、1ミリリットル当たり約0.1ミリグラム〜約10ミリグラムの範囲内である、請求項14に記載の免疫センサ。
【請求項16】
前記第2の液体試薬は、フェリシアニド、グルコース、及びフェナジンエトスルフェートを、薄いシトラコン酸溶液中に含む、請求項12に記載の免疫センサ。
【請求項17】
前記反応チャンバーの下方に配設された磁石を具備する計器を更に備え、前記計器は、前記下部電極と上部電極との間に電位を印加するように、また結果として生じる電流を測定するように構成されている、請求項12に記載の免疫センサ。
【請求項18】
前記計器に取り付けられた加熱要素を更に備える、請求項17に記載の免疫センサ。
【請求項19】
前記親水性のテープと前記通気孔の上に配設された前記封止用構成要素との少なくとも一方を穿孔するように構成された穿孔用構成要素を更に備える、請求項17に記載の免疫センサ。
【請求項20】
血液サンプルを測定するための方法であって、
2つの電極の間に配設されたセパレータ内に形成された反応チャンバー及び検出チャンバーと、
前記セパレータ及び前記2つの電極の一方に少なくとも部分的に形成され、前記検出チャンバーからある距離だけ離間され、前記反応チャンバーの少なくとも一部分に重なり合う充填チャンバーと、
前記セパレータ及び前記2つの電極に少なくとも部分的に形成され、前記反応チャンバーからある距離だけ離間され、前記検出チャンバーの少なくとも一部分に重なり合う通気孔とを設ける工程と、
第1の緩衝液中の抗体酵素抱合体、及び第2の緩衝液中の抗原と結びついた磁気ビーズを前記反応チャンバーに、
フェリシアニド、グルコース、及び希酸中の媒体を前記検出チャンバーに、
前記充填チャンバーの壁をも形成する親水性の接着テープによって、第1の封止を前記通気孔の第1の側の上に、及び
封止用構成要素によって、第2の封止を前記通気孔の第2の側の上に設ける工程と、
血液サンプルを前記充填チャンバーに供給する工程であって、前記血液サンプルの少なくとも一部分が前記充填チャンバーから前記反応チャンバーに移動する工程と、
前記親水性の接着テープと前記封止用構成要素との少なくとも一方に穿孔することによって、所定時間の後に前記通気孔を開口し、それによって、前記磁気ビーズに拘束されていない前記抗体酵素抱合体を含有する前記血液サンプルの一部分を前記検出チャンバーに移動させる工程と、
前記検出チャンバー内の前記グルコースの酸化を触媒する工程であって、結果として、フェロシアニドが形成される工程と、
前記2つの電極の間に電位を印加する工程と、
前記フェロシアニドからの電流を電気化学的に検出する工程と、
検出された信号に基づいて前記血液サンプル中の前記抗原の濃度を算出する工程とを含む方法。
【請求項21】
前記2つの電極を加熱する工程を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記親水性の接着剤はヘパリンを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記親水性の接着剤の濃度に対する前記ヘパリンの濃度が、1ミリリットル当たり約1ミリグラムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記親水性の接着剤はポロキサマーを更に含む、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−80987(P2011−80987A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217520(P2010−217520)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(506157570)シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル (39)
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
【住所又は居所原語表記】Landis & Gyrstrasse 1,Zug, CH−6300, Switzerland
【Fターム(参考)】