説明

免疫促進用組成物

テアニン又はテアニンの供給源と、シャンカプシュピ(Shankhpushpi)、シャタバリ(Shatavari)、又はそれらの混合物から選択される薬草とを含む、免疫促進のための可食性組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫促進をもたらす可食性組成物に関する。本発明は、とりわけ、相乗的に相互作用して免疫促進をもたらす天然材料の組み合わせを含む食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは日々の生活において多くのストレスを経験する。その様なストレスには、職場における不快な交流、社会全体における不快な交流、及び肉親との不快な交流よって引き起こされる精神的なプレッシャーが含まれる。ヒトの身体に対するストレスは、汚染された空気を吸うこと、汚染された水及び食品を消費すること、並びに紫外線及び他の放射線に対する暴露によっても引き起こされる。ストレスの他の原因は、環境温度及び他の天候条件における持続的な変化に対するヒトの身体の曝露を含む。その様な外的ストレスに対するヒトの身体の曝露は、微生物又は他の原因の疾患に対するヒトの身体の免疫を低減させると解されている。現代において、ヒトは、免疫を促進し得る方法を常に探し求めている。しかしながら、一般的に、ヒトは、免疫の低減という問題を解決するのに医薬による解決方法を好まない。これは、医薬による解決方法は効果的であるが、それらは望ましくない副作用をもたらすと解されているからである。かくして、そのような問題に対する「天然物による」解決方法が依然として望まれている。薬草剤の科学は、古くからの科学の1つであり、現代の医薬研究においても重要である。薬草剤の例としては、インド国のアーユルベーダ及び中国の漢方薬が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、薬草、薬草抽出物、及び他の天然材料を使用して、個体の免疫促進をもたらすという課題に取り組んでいる。直面している課題の1つは、免疫促進のための伝統的な医薬システムに多数の薬草が挙げられているにもかかわらず、多くの場合において、その効力には化学的な根拠が欠落していることである。さらに、薬草と天然材料との多数の組み合わせが配合されて、各種の健康利益のために数百年に亘って人々に消費されてきた伝統的な薬草処方が為されてきた。
【0004】
本発明者は、伝統的な処方において使用されている個々の薬草及び薬草の組み合わせについて言及されている健康利益の効力の検証に広く従事している。こうした広範にわたる研究の過程の間において、本発明者は、ある薬草、すなわち、シャンカプシュピ(Shankhpushpi)及び/又はシャタバリ(Shatavari)と組み合わせた際の、茶に大抵存在する天然材料、すなわち、テアニンの組み合わせが、免疫をもたらす点において相乗的な利益を与えることを発見した。本発明者は多数の組み合わせを試みたが、これらの組み合わせのみにおいて相乗効果が認められ、数多くの他の薬草とテアニンとの組み合わせは、相加的な利益をもたらすのみであるか又は拮抗的な相互作用があった。
【0005】
テアニンは、多数の健康利益を有することが知られている。これらの利益は、ヒトの脳に対する鎮静効果及びリラックス効果を含む。テアニンは、間接的な抗微生物作用ももたらすことが知られている。
【0006】
シャンカプシュピは、一般的な健康利益を有することが知られている。シャタバリは、伝統的な食品及び医薬の処方において使用されている。シャタバリは、肝臓保護薬であると解されており、胃腸管及び呼吸器系に良好な作用を有し、且つ、免疫調節作用を有すると解されている。
【0007】
本発明者の知る限りにおいて、上述の二種の薬草のいずれかとテアニンとの組み合わせは、これまでは提案されていない。
【0008】
本発明の主題は、相乗的に相互作用して免疫促進という利益をもたらす、天然材料の組み合わせを含む可食性組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の主題は、多様なヒトに摂取されながら、確かな免疫に関する利益を提供することが予期される可食性の食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、テアニンと、シャンカプシュピ及び/又はシャタバリから選択される薬草とを含む、免疫促進のための可食性組成物を提供する。
【0011】
本発明は、個体における免疫低下に関連する疾患の治療又は予防に医薬として使用するための、テアニンと、シャンカプシュピ及び/又はシャタバリから選択される薬草とを含む組成物も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、免疫促進をもたらす組成物に関する。前記組成物は、テアニンを本質的に含む。
【0013】
テアニンは、天然に存在する化合物であり、茶系の植物において殆どの場合において認められる。本発明の可食性組成物において使用するのに最も適切なテアニンは、茶由来である。茶は、カメリア・シネンシス・ヴァル・シネンシス(Camellia sinensis var. sinensis)又はカメリア・シネンシス・ヴァル・アッサミカ(Camellia sinensis var. assamica)由来の葉材料である。茶は、紅茶、緑茶、又はウーロン茶であってよい。好ましい実施態様では、前記組成物は茶材料を含み、前記テアニンは茶材料の一部として存在する。
【0014】
完全発酵によって生産され、黒/茶色である茶は、紅茶と称される。生産される茶の大半は、この種の茶である。紅茶の製造技術は、茶の新芽の細胞の完全性を破壊し、それによって基質(ポリフェノール)と酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)との混合を可能にすることを伴う。これにより、大気中の酸素を取り込んで一連の生化学的反応及び化学的反応を開始させ、茶に特徴的な香りを与える揮発性の香味化合物とともに、茶に特徴的な酸化ポリフェノール化合物を形成させる。
【0015】
緑茶は、発酵工程を回避することによって生産される。酸化酵素は、例えば、穴の開いたトレイにおいて、新しく積んだ新芽に蒸気をあてること、又は、例えば、加熱した鉄鍋において、ローストすることで殺滅/変性される。蒸す工程は1分未満で実施される。次いで、茶葉を更なる加熱及び回転に、暗い緑色になるまで供する。茶葉を最終的に3から4%の水分含量になるまで乾燥させる。ポリフェノールオキシダーゼの不活化によって発酵が停止され、ポリフェノールが酸化されず、茶葉は緑のままとなる。飲料としては、テアフラビン及びテアルビジンの不在により、紅茶よりも弱い香味が得られる。
【0016】
半発酵(ウーロン)茶も利用可能である。発酵を部分的に実施する際には、得られる茶葉はウーロン茶と称される。ウーロン茶は、医薬としての意義のために主に消費される。
【0017】
テアニンは、下記の構造を有する。
【0018】
【化1】

【0019】
テアニンは、リラックス、沈静、及び良好な睡眠を消費者に与えることが知られている。テアニンは茶において認められる。100mlの紅茶は約2.2ミリモルのテアニンを含む。
【0020】
多数の薬草が、免疫に関する利益に関する伝統的な薬草医薬についての文献に挙げられている。その様な薬草の多数が、伝統的な医薬の処方に存在する。しかしながら、いずれかの効力が実際に存在するか決定すべき場合に、その効力を検証し、その後に定量した文献は数少ない。本発明者は、細胞培養in vitroアッセイを使用して、その様な薬草の多数、及びそれらのテアニンとの組み合わせを評価し、相乗的な効力をもたらす組み合わせに至った。本発明において有用であると決定されている薬草は、シャンカプシュピ及びシャタバリである。
【0021】
シャンカプシュピは、ヒルガオ科のエボルブルス(Evolvulus alsinoides)、アサガオカラクサ(Convolvulus pluricaulis)、及びチョウマメ(Clitoria turnatea)を含む。英語の一般名は、Dwarf morning−glory(サンシキヒルガオ)である。Shankhapushpiと標記されることもある。シャンカプシュピは、ほふく性の枝と、小さな楕円から長方形の葉を有する多年生の薬草であり、葉腋の上部に多くの場合には単独の花を有する。薬草全体が、熱、神経衰弱、及び記憶喪失のための医薬として使用されている。シャンカプシュピは、健脳剤としても使用されている。本発明では、シャンカプシュピの任意の部分が使用されてよい。
【0022】
シャタバリ(Shatawariとも標記される)は、Shatamuliとしても知られ、薬草であるアスパラガス(Asparagus racemosus)を含む。シャタバリはユリ科に属する。シャタバリは、中央及び南インド及びヒマラヤの低地において認められる。前記薬草は、ステロイドのサポニンを含む。シャタバリは、一般的な強壮剤を製造するために伝統的に使用されており、特に、女性の生殖機能の強壮剤として使用され、乳の分泌を増大させる。加えて、赤痢及びけいれんの緩和のため、並びに抗酸化、免疫刺激、及び抗細菌という利益のためにも使用されている。本発明に関しては、シャタバリの好ましい部分は塊根である。
【0023】
特に好ましくは、薬草は、水性抽出物の形態で本発明の可食性組成物で使用する。水抽出の典型的な方法は、約1時間に亘って約1:8の重量比で、薬草又は薬草の所望の部分を煮沸する工程を伴う。かくして、得られた抽出物を、次いで、約8%未満の水分含量まで乾燥させて、粉末を得る。本発明では、薬草は、好ましくは、各種の薬草の水抽出物の粉末として存在する。
【0024】
可食性の食品組成物は本発明の可食性組成物を提供するためのより好ましい形態であるが、前記可食性組成物は、一般的に許容される医薬形態、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、又はシロップ剤の形態で消費者に提供されてもよい。
【0025】
本発明の可食性組成物は理想的には食品中で提供される。任意の食品が本発明の可食性組成物を提供してよいが、適切な食品は、茶飲料、コーヒー飲料、フルーツジュース、野菜ピューレ、スープ、ジャム、スプレッド、及びソースである。
【0026】
前記食品は、好ましくは、50:1から1:5の範囲の乾燥重量比においてテアニン及び薬草を含む。
【0027】
前記組成物は、好ましくは、個体における免疫低減と関連する疾患を治療又は予防するために使用される。前記疾患は、例えば、風邪又はインフルエンザであってよい。好ましくは、前記組成物は、個体に経口投与される。
【0028】
前記組成物は、個体における免疫低減と関連する疾患の治療又は予防のための医薬の製造において使用されてもよい。
【0029】
【表1】

【実施例】
【0030】
以下においては、本発明を実施例によって説明する。実施例は、説明のみのためのものであり、いずれの様式においても本発明の範囲を制限しない。
【0031】
in vitro細胞培養アッセイにおけるマクロファージの活性化を使用する、薬草の免疫学的効力の評価
マクロファージ活性化のための細胞培養アッセイを実施する方法を以下に記載する。
【0032】
使用した材料:
Raw 264.7細胞株を、National Centre for Cellular Science(NCCS) Pune,Indiaから得た。
DMEM(Dulbecos Modified Eagle Medium)、RPMI(Rosewell Park Memorial Institute)培地、ウシ胎仔血清(FBS)、ホルボール−12−ミリステート−13−アセテート(PMA)をSigma−Aldrich,USAから得た。
ラテックスビーズ(3μm)を、Polysciences Inc,Germanyから購入した。ギムザ染色を、S.D. Fine Chem.Ltd,Indiaから得た。
他の試薬は分析等級のものであった。
【0033】
方法
A.細胞培養
Raw 264.3細胞株は、10%FCS(ウシ胎仔血清)を含むDMEMに持続的に維持した。それらを2〜3日おきに継代培養し、37℃、5%二酸化炭素雰囲気下においてインキュベートした。
【0034】
B.植物抽出物を用いたマクロファージ細胞株の刺激
(i)植物抽出物の調製
所望の植物材料(200mg)を5mlの滅菌水に量りとって、2時間に亘って室温でローテーターに保持した。それを80℃で1時間に亘って煮沸し、10mlまで容量を増大させた。上清を0.22μmフィルターで濾過して、更なる分析に使用した。
【0035】
(ii)マクロファージ貪食アッセイ
Raw 264.7細胞を、10細胞/カバーガラスでカバースリップに乗せて、接着させた。細胞を、100ng/ml PMA(10分間)、又は植物抽出物、テアニン、若しくは植物抽出物とテアニンとの組み合わせ(2時間)とともにインキュベートした。インキュベート後に、細胞を、10ラテックスビーズ/10細胞(細胞:ビーズ=1:10)で2時間に亘ってインキュベートした。カバースリップ上の細胞を空気乾燥させて、メタノールで固定した。細胞を10分間に亘ってギムザ染色して、顕微鏡で計数した。
【0036】
マクロファージ貪食アッセイの結果を、ファゴサイトーシス指数、すなわち、100細胞あたりの細胞内のビーズの総数として表わした。
【0037】
実験(実験ごとに4つのサンプル)は、Table 1に示す濃度の物質を使用して実施した。平均ファゴサイトーシス指数のデータも、標準偏差とともにTable 1にまとめた。統計学的方法を用いて分析したデータは、t−testにおいて95%超の信頼性を示す。
【0038】
【表2】

【0039】
Table 1のデータは、上記活性成分、すなわち、テアニン、シャタバリ、及びシャンカプシュピのいずれか1つが、広範な濃度(0.001から0.02)に亘って、1.3から1.45の範囲のファゴサイトーシス指数を与えることを示す。しかしながら、テアニンと薬草であるシャンカプシュピ又はシャタバリとの組み合わせは、同じ濃度範囲における個々の薬草で達成し得るものよりも、有意に高いファゴサイトーシス指数をもたらす。
【0040】
したがって、本発明は、相乗的に相互作用して免疫促進という利益をもたらす天然材料の組み合わせを含む可食性組成物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テアニンと、シャンカプシュピ、シャタバリ、又はそれらの混合物から選択される薬草とを含む、免疫促進のための可食性組成物。
【請求項2】
前記薬草の水性抽出物を含む、請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項3】
前記テアニンが茶に由来する、請求項1又は2に記載の可食性組成物。
【請求項4】
前記茶が、紅茶、緑茶、又はウーロン茶である、請求項3に記載の可食性組成物。
【請求項5】
前記テアニンが茶材料の一部として組成物中に存在する、請求項3又は4に記載の可食性組成物。
【請求項6】
錠剤、カプセル剤、粉末剤、又はシロップ剤の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の可食性組成物。
【請求項7】
食品である、請求項1から5のいずれか一項に記載の可食性組成物。
【請求項8】
前記食品が、茶飲料、コーヒー飲料、フルーツジュース、野菜ピューレ、スープ、ジャム、スプレッド、又はソースである、請求項7に記載の可食性組成物。
【請求項9】
前記テアニン及び薬草が、50:1から1:5の範囲の乾燥重量比で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の可食性組成物。
【請求項10】
個体における免疫低減と関連する疾患の予防又は治療に医薬として使用するための、テアニンと、シャンカプシュピ、シャタバリ、又はそれらの混合物から選択される薬草とを含む組成物。
【請求項11】
個体における免疫低減と関連する疾患を予防又は治療するための医薬の製造における、テアニンと、シャンカプシュピ、シャタバリ、又はそれらの混合物から選択される薬草とを含む組成物の使用。
【請求項12】
テアニンと、シャンカプシュピ、シャタバリ、又はそれらの混合物から選択される薬草とを含む組成物を個体に投与する工程を含む、前記個体における免疫低減と関連する疾患を予防又は治療するための方法。
【請求項13】
前記疾患が風邪及び/又はインフルエンザである、請求項10から12のいずれか一項に記載の組成物、使用、又は方法。
【請求項14】
前記組成物が可食性であり、前記個体に経口投与される、請求項10から13のいずれか一項に記載の組成物、使用、又は方法。

【公表番号】特表2011−505815(P2011−505815A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537336(P2010−537336)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010832
【国際公開番号】WO2009/077187
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】