説明

免疫分析に基づいた抗原検出用キット及び抗原検出方法

【課題】捕獲抗体、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドと結合された検出抗体、前記DNAオリゴヌクレオチドと相補的配列を有して、蛍光物質で標識された一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、及びRNA分解酵素を含む抗原検出用キット、及びこれを利用する抗原検出方法を提供する。
【解決手段】酵素を利用したシグナル増幅のために、両末端が蛍光物質及び蛍光消光物質で標識されたDNAオリゴヌクレオチドを抗体に連結し、DNAオリゴヌクレオチドに相補的なRNAオリゴヌクレオチド及びRNase(例えばRNase H)を使用して、標的分子の存在時にRNase HがRNAを切断することによって発生する蛍光シグナルの増加を利用してシグナル増幅を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕獲抗体、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドと結合された検出抗体、前記DNAオリゴヌクレオチドと相補的配列を有し、かつ蛍光物質で標識された一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、及びRNA分解酵素を含む抗原検出用キット、及びこれを利用する抗原検出方法に関するものであって、1つの装置及び1種類のRNA分解酵素を使用することによって、2種類以上の抗原の分析が可能になることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
免疫分析方法のうちの一つであるELISA(Enzyme‐linked Immunosorbent Assay)法は、試料内の分析しようとする特定の物質の量を、その物質の抗体との反応を利用して測定する方法である。ELISA法は、Engvallらによって初めて開発され、後にLjunggrenやKemneyらによってさらに改善された。ELISA法の開発以前には、1960年代にRosalyn Sussman Yalow及びSolomon Bersonが初めて報告して以来、主に放射線同位元素が標識された抗原及び抗体を利用した免疫分析方法が使用されてきたが(Yalow R, Berson S, J. Clin. Invest. 1960, 39, 1157‐75)、有害な放射線物質の使用を避けるために、放射線でなく他のシグナルの感知によって分析を行うことができる免疫分析方法の開発が要求され、これによって開発されたELISA法は、試料内の多様な標的物質を敏感に検出するために現在最も広く使用される免疫分析法(immunoassay)のうちの一つである。
【0003】
一般に、ELISA法は、特定の分析物質を酵素が標識された抗体との酵素反応によって発色する基質を使用して検出する工程を伴う。2種類以上の物質をELISA法を利用して分析するためには、各々の物質に対する分析工程を別途に行わなければならないため、一つの試料内の、複数の物質の相対的な量を直接比較するのは難しいという問題がある。
【0004】
一般的な免疫分析方法及びELISA法を区分する一つの基準は、酵素によるシグナル増幅工程の有無である。大部分の免疫分析方法は、酵素によるシグナル増幅工程を経ないので、相対的にシグナルの検出感度が高い蛍光シグナルに基づいた分析方法が主流を占める。酵素を利用せずに蛍光シグナルを免疫分析に使用すれば、異なる波長帯で蛍光発散する蛍光物質を、各々異なる物質の抗体に標識して使用することができるので、多様な物質を同時に検出しなければならない多重免疫分析(multiplex immunoassay)が容易となる。反面、ELISA法の場合、基質が酵素によって反応した場合の吸光度または蛍光の変化を測定しなければならないため、多重分析のためには、各々の物質の抗体に、各々異なる基質に選択的に反応する酵素を付着しなければならない。この方法は、多様な酵素−基質ペアを発掘して利用しなければならないので、試料内の分析対象物質の種類が増加するほど、技術的に達成するのが非常に難しくなる。したがって、従来開発された多重分析方法は、蛍光を利用した免疫分析方法が主流を占める。
【0005】
酵素を使用しない多重免疫分析方法のうちで最も広く知られているものは、Luminex社で開発したxMAP技術である。この技術は、各々異なる蛍光物質を含む微小球(microsphere)上に、各々の物質に対する抗体を固定化して、物質が抗体と結合した場合の微小球の蛍光色を分析する工程を利用する。しかし、この方法は、高価な装置であるフローサイトメトリーが必要であるため、実験室で容易に取り扱うことができるELISA法に比べて費用的な面から非効率的である。これとは別に、最近、多重免疫分析を一つのマイクロプレート上で実行することができる方法が、いくつかの研究グループにより紹介された。Swarzmanらは、直径6マイクロメートル程度のポリスチレン球に、抗IgG抗体を固定化した後、分析物質の捕獲抗体を結合させて、免疫分析に使用することを報告した(Anal Biochem. 1999, 271, 143−151)。この方法では、多重分析のために、各々の物質の検出抗体に多様な蛍光物質を付着させて使用した。Nichkovaらは、分析しようとする複数の物質に対する各々の抗体に、各々異なる波長の光を発光するQdotを連結して、蛍光強度分析によって一つの試料内の多様な物質に対する免疫分析を同時に行う、multiplex−ELISA法(fluorescence‐linked immunosorbent assay)を報告した(Anal Lett. 2007, 40, 1423‐1433)。これらの方法は、酵素によるシグナル増幅工程がないので、従来のELISA法に比べて検出限界があまり高くないという短所がある。GenTel社では、各々異なる蛍光物質を各々の抗体に直接付着させて蛍光強度を分析する、多重免疫分析方法を提供する。
【0006】
酵素を利用した免疫分析方法であるELISA法に基づく多重分析方法には、Quansys Biosciences社が提供する方法がある。この方法は、96ウェルのマイクロプレートの一つのウェルの底に20ナノリットル体積の点状配列(spot array)を形成させ、一つの点が一つの標的物質に対するELISA法による分析結果を表わすようにする。この方法では、ペルオキシダーゼ及び基質の反応によって増幅した発光強度をイメージによって定量することによって、多重ELISA(multiplex‐ELISA)フォーマットを提供する。この方法は、マイクロプレートのウェル内に予め点状配列作業が行われたプレートのみが使用されること、及びイメージ獲得及び分析のために高価な装置が必要であるという短所がある。また他の多重ELISA法としては、試料内の2種類の物質を分析するために、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが各々連結された2種類の抗体を使用して、酵素によるシグナル増幅によって2種類の物質を同時に検出した(米国特許出願第20040241776A1号)。この方法は、原理的な面では多重ELISA法としての意味があるが、実質的に試料内の分析しようとする物質の数が2種類以上に増加する場合、ペルオキシダーゼ及びホスファターゼに対して独立的に反応する酵素を継続して発掘しなければならないだけでなく、多種類の酵素の使用による費用的な面から非効率的である。したがって、より容易な方法で多重免疫分析が可能な、新たな技術の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明者は、従来のELISA法のような免疫分析方法で使用される抗体が施与された支持体、及び蛍光または吸光を利用する分析機器をそのまま使用すると同時に、一つの酵素のみを使用して多重免疫分析を行うことができる技術を開発した。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、捕獲抗体、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドと結合された検出抗体、前記DNAオリゴヌクレオチドと相補的配列を有して、蛍光物質で標識された一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、及びRNA分解酵素を含む抗原検出用キットを提供することを目的とする。
【0009】
本発明のまた他の態様は、前記捕獲抗体、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドと結合された検出抗体、前記DNAオリゴヌクレオチドと相補的配列を有して、蛍光物質で標識された一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、及びRNA分解酵素を使用して抗原を検出する抗原検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来のELISA法のような免疫分析方法を変形して、抗体を利用した新たな多重免疫分析を可能にする技術に関連するものである。
【0011】
本発明による技術は、酵素を利用したシグナル増幅のために、従来のELISA法で主に利用されるペルオキシダーゼが融合された抗体を使用する代わりに、両末端が蛍光物質及び蛍光消光物質で標識されたDNAオリゴヌクレオチドを抗体に連結し、DNAオリゴヌクレオチドに相補的なRNAオリゴヌクレオチド及びRNase(例えばRNase H)を使用して、標的分子の存在時にRNase HがRNAを切断することによって発生する蛍光シグナルの増加を利用してシグナル増幅を行う方法である。このような技術は、酵素の代わりにオリゴヌクレオチドが抗体に連結されるので、「OLISA(oligonucleotide‐linked immunosorbent assay)」と称する。
【0012】
本発明のOLISA法を利用すれば、分析しようとする試料に存在する2種類以上の多様な標的分子(抗原)を同時に検出することができる。2種類以上の抗原に対する各々の抗体に、各々異なる塩基配列を有するDNAオリゴヌクレオチドを連結し、前記各々のDNAオリゴヌクレオチドと相補的配列を有し、かつ各々異なる蛍光物質及び蛍光消光物質で両末端が標識されたRNAオリゴヌクレオチドを利用すれば、RNase Hによる蛍光シグナル増幅を利用して、標的物質を多重分析方法によって同時に分析することができる。つまり、本発明によれば、1種類の酵素を用いて検出シグナル増幅工程を行うことにより、試料内の多様な種類の抗原を同時に分析することができる多重免疫分析が可能である。
【0013】
このために、本発明の一態様は、オリゴヌクレオチドを利用するOLISA法に基づく新たな免疫分析方法を提供する。本発明の分析法の一態様は、DNAオリゴヌクレオチドと結合した検出抗体(d−Ab−DNAと称する)、両末端が各々蛍光物質(fluorophore, F)及び蛍光消光物質(quencher, Q)で標識されたRNAオリゴヌクレオチド(F−RNA−Qと称する)、及びRNase Hを使用して、検出シグナルを増幅して免疫分析を行う工程を含む。本発明では、OLISA法の原理及び実施例、そしてこれを利用した多重OLISA法、及びそのための多重OLISAキットを提供する。
【発明の効果】
【0014】
ELISA法は、現在抗原検出及び医療診断分野で最も幅広く利用されている免疫分析方法の一つであるが、1種類以上の物質をELISA技術を利用して分析するためには、各々の物質に該当する分析工程を別に行わなければならないため、一つの試料内の、分析しようとする多様な物質の相対的な量を直接比較するのが難しい。特に最近では、癌、痴呆などのように診断が難しい病気は一つのマーカーによって診断できるわけではなく、多様な関連タンパク質及び生理物質マーカーの増減による相対的な相関関係分析を行った場合にのみ、より正確な診断が可能であるといわれている。このような一つの試料内に存在する多様なマーカーのプロファイリングのためには、マイクロプレートの一つのウェルで多様なマーカーを同時に分析することができる多重ELISA法を使用しなければならない。従来の多重ELISA法は、多様な酵素−基質ペアを使用して分析を行う方法である反面、本発明で提供する多重OLISA法及びそのためのキットは、従来のELISA法で利用された形式の、抗体が施与されたマイクロウェルプレート及び蛍光または吸光を利用するマイクロウェルプレート分析機器をそのまま使用しつつ、1種類の酵素だけを使用して多重免疫分析を行うことができる。したがって、従来の方法に比べてより簡単であると同時に、費用を節減することができる。したがって、本発明の多重OLISA法は、多様な抗原を同時に検出しなければならない状況、特に多様な診断マーカーを同時に分析しなければならない医療診断分野に大きく貢献する技術である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】多重OLISA法の概略図である。
【図2】OLISA法を利用した大腸癌マーカーCEAの検出グラフである。
【図3】多重OLISA法を利用した大腸癌マーカーCEA及び前立腺癌マーカーPSAの同時検出グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で、本発明を詳しく説明する。
【0017】
まず、本発明の一態様は、試料内に存在する1または2種類以上の標的物質(抗原)の検出のための、免疫分析に基づく抗原検出用キットに関するものである。
【0018】
より具体的には、前記抗原検出用キットは、基本的に、支持体と、試料内に存在する標的物質(抗原)に選択的に結合可能で、前記支持体に固定された捕獲抗体(capture antibody: c‐Ab)とを含む。前記支持体は、固体基盤の免疫分析方法に通常使用されるものであれば全ての固体支持体が可能であり、従来のELISA法で幅広く使用されるマイクロタイタープレートのウェルを支持体として使用することができ、例えば形状によって平底プレート、U字型底プレート;リガンドあるいはタンパク質のコーティングの有無によってアビジンコーティングプレート(avidin‐coated plate)、ストレプトアビジンコーティングプレート(streptavidin‐coated plate)、グルタチオンコーティングプレート(glutathione coated plate)、抗GSTコーティングプレート(anti‐GST coated plate);基板の材質によってポリスチレンプレート、ポリプロピレンプレート;などが使用されるが、これらに制限されない。捕獲抗体を支持体に固定させる方法には特に制限はなく、免疫分析法に通常使用される全ての方法が可能であり、例えば本発明の一実施例では、支持体に捕獲抗体をコーティングする方法によって固定させることができる。
【0019】
このように、抗原抗体結合ペアの一方を固体上に固定化して行う方法は、溶液中で混合して行う場合に比べて、体液などの液体試料を利用する診断に適用する場合に特に効果的である。その理由は、溶液中で行う場合には、体液内に存在するRNaseによってDNAとの結合有無と関係なくF−RNA−Qが切断されることによって偽陽性シグナル(false‐positive signal)が発生する恐れがあるので、正確な検出が難しいためである。これに反して、ELISA法及びOLISA法のように抗体を固体支持体上に固定化して、体液内の抗原を検出すれば、抗体及び抗原が結合するようにした後で、付着しなかった残りの体液及び体液内の、RNase等を含む分析を妨害する物質を洗浄によって全て除去した後で、RNase H及びF−RNA−Qを加えてシグナルを得るので、溶液中でのような偽陽性シグナルが発生する恐れが著しく減少するという利点がある。
【0020】
前記キットに試料を適用して十分な時間反応させれば、試料内に検出対象抗原が存在する場合には、前記抗原は捕獲抗体に結合するようになる。ここに前記捕獲抗体と異なる部位で前記抗原に選択的に結合可能な検出抗体(detection antibody: d−Ab)及び一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが結合された検出抗体−DNA接合体(d‐Ab‐DNA)を適用すれば、捕獲抗体に結合された抗原の捕獲抗体との結合部位と異なる部位で、前記抗原及び検出抗体が結合して、捕獲抗体−抗原−検出抗体−DNA接合体が形成される。ここに、前記検出抗体に結合されたDNAオリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列を有する一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、前記RNAオリゴヌクレオチドの一方の末端に結合された蛍光物質、及び前記RNAオリゴヌクレオチドの他方の末端に結合された蛍光消光物質からなる蛍光物質−RNA−蛍光消光物質接合体(F−RNA−Q)を適用すれば、DNAオリゴヌクレオチド及びRNAオリゴヌクレオチドが相補的に結合してDNA/RNA二本鎖を形成するようになって、捕獲抗体−抗原−検出抗体−DNA/F−RNA−Q接合体が形成される。つまり、本発明では、前記検出抗体に結合されたDNAオリゴヌクレオチドが、ELISA法における検出抗体の役割を果たす。
【0021】
前記形成されたDNA/RNA二本鎖にRNA分解酵素、例えばRNase Hを処理すれば、前記DNAと結合されたRNAが分解されて、蛍光物質が遊離して蛍光が発生する。この時に発生した蛍光の強度を測定することによって、標的物質(抗原)の存在の有無の判断及び定量的な分析が可能である。本明細書における「抗原検出」は、抗原の存在の有無の判断だけでなく、抗原の定量的な分析をも含む意味で使用される。
【0022】
したがって、本発明のキットは、前記支持体−捕獲抗体に加えて、検出抗体−DNA接合体、蛍光物質−RNA−蛍光消光物質接合体、及びRNA分解酵素を追加的に含むことができ、これらを全て前記支持体−捕獲抗体と単一の構成で含んだり、これらのうちの1または2種類を前記支持体−捕獲抗体と単一の構成で含み、残りを別個の構成で含んだり、これらを各々別個の構成で含むことができる。
【0023】
本発明のまた他の一態様は、試料内の特定の抗原(標的物質)の検出方法を提供する。より具体的には、前記検出方法は、以下のステップを含むことができる。
【0024】
前記検出方法は、
検出しようとする抗原に選択的に結合可能な捕獲抗体に試料を接触させて、試料内の抗原及び捕獲抗体を結合させるステップと、
前記捕獲抗体と異なる部位で前記抗原に選択的に結合可能な検出抗体、及び一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが結合された検出抗体−DNA接合体を、前記捕獲抗体と結合した抗原に接触させて、抗原及び検出抗体−DNA接合体を結合させるステップと、
前記DNAオリゴヌクレオチドに相補的な一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、前記RNAオリゴヌクレオチドの一方の末端に結合された蛍光物質、及び前記RNAオリゴヌクレオチドの他方の末端に結合された蛍光消光物質からなる蛍光物質−RNA−蛍光消光物質接合体(F−RNA−Q)を、前記捕獲抗体及び検出抗体−DNA接合体に結合した抗原に接触させ、前記DNA及びRNAをハイブリダイズさせて、DNA−RNA二本鎖を形成させるステップと、
前記DNA−RNA二本鎖にRNA分解酵素を処理して、前記二本鎖中のRNAを切断し、前記RNAから蛍光物質を遊離させて蛍光を発生させるステップと、
前記発生した蛍光強度を測定するステップ
とを含む。
【0025】
本発明による検出方法は、単一抗原の存在の有無の判断、及び/または定量的な分析が可能であるだけでなく、検出しようとする抗原が2種類以上である場合にも、1種類のRNA分解酵素を使用して、1回の施行で、2種類以上の抗原の存在の有無の判断、及び/または定量的な分析が行われる多重分析が可能であるという利点がある。
【0026】
また、前記のような偽陽性シグナルの発生を防止して検出効率を増加させるために、前記抗原と検出抗体とを結合させるステップ後に、蛍光物質−RNA−蛍光消光物質接合体を接触させる前に、未結合試料を洗浄して、試料内のRNaseを含む分析を妨害する物質を除去するステップを追加的に含むことができる。
【0027】
検出しようとする抗原が2種類以上である場合、各々の抗原に特異的に結合された検出抗体と結合する一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列を、各抗原によって異なるように設計し、各抗原による一本鎖DNAオリゴヌクレオチド間で相補的配列が無いように設計して、DNA−DNA結合が起こらないようにすることができる。このように抗原によって異なるDNAオリゴヌクレオチド配列に相補的なRNAオリゴヌクレオチド配列を設計し、その末端を抗原によって異なる蛍光物質で標識すれば、各抗原の存在の有無、または濃度によってその抗原に対応する蛍光物質から発生する蛍光強度が異なるので、1回の施行によって2種類以上の抗原を検出する多重分析が可能になる。
【0028】
本発明による検出キットまたは検出方法において、検出対象抗原は、免疫分析方法によって検出可能である全ての生体活性物質(bioactive material)であって、特別な制限はなく、例えば自己抗体、リガンド、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、金属イオン、合成薬物、天然薬物、代謝物、遺伝子、ウイルス及びウイルスによる生成物、並びにバクテリア及びバクテリアによる生成物からなる群より選択された1種類以上であるが、これらに制限されない。このような抗原を含むか否か、またはその濃度を測定するための対象試料は、いかなる処理も経ていない状態、および/または適切な緩衝溶液によって希釈された状態で使用される。適当な時間でインキュベーションした後で、捕獲抗体とまだ結合していない標的物質及び結合が可能でない試料内の他の物質は、次のステップの前に洗浄して除去するステップを追加的に行うことができる。
【0029】
本発明による検出キットまたは検出方法において、前記捕獲抗体及び検出抗体は、検出対象抗原に特異的に結合するように製作されたモノクロナール抗体またはポリクロナール抗体である。前記捕獲抗体及び検出抗体は同一の抗原に結合するが、抗原の互いに異なる部位に結合するように設計することによって、捕獲抗体及び検出抗体が互いに非競争的に抗原に結合し、捕獲抗体−抗原−検出抗体接合体を形成することができるようにするのが望ましい。このように捕獲抗体及び検出抗体が、抗原の互いに異なる部位に結合するようにするために、抗原の互いに異なる部位から由来したエピトープを使用して抗体を製作するなど、関連技術分野で通常使用される全ての技術が使用可能である。最近では、このように一つの抗原の互いに異なる部位に結合する抗体のセットが購入可能であるので、標的物質(抗原)に応じて購入して使用することもできる。
【0030】
前記検出抗体に結合される一本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、標的物質(抗原)と結合された抗体(検出抗体)に連結され、蛍光物質で標識されたRNAオリゴヌクレオチドと相補的に結合してDNA/RNA二本鎖を形成させることによって、DNA/RNA二本鎖を特異的に認識するRNA分解酵素がRNAを分解して、蛍光物質を遊離させる役割を果たすものであるので、その配列は特定される必要がない。また、前記DNAオリゴヌクレオチドは、その長さにおいても制限はないが、RNAオリゴヌクレオチドと効率的に結合して効率的に検出するために、2乃至1000塩基長、好ましくは5乃至500塩基長のヌクレオチドからなる。1種類の抗体あたり連結されるDNAオリゴヌクレオチドの分子数は、平均1または2以上、例えば2乃至10分子が反復連結される。また、捕獲抗体及びDNAの結合時にRNase Hの作用部位が抗体と近すぎると、RNase H反応に影響を受ける恐れもあるため、このような反応阻害効果を防止するために、前記DNAオリゴヌクレオチドは、RNAオリゴヌクレオチドと結合する部位以外に、5′末端に5乃至50個、望ましくは10乃至30個の塩基(A、T、C、またはG)が反復された塩基反復配列を、追加的に含むことができる。この時、G反復配列の場合には、G−qudruplexのように所望しない二次構造(secondary structure)を形成して酵素反応を阻害する恐れがあるため、前記塩基反復配列は、A、T、またはCからなるものが好ましいが、これらに制限されるわけではない。
【0031】
また、前記のように、検出しようとする抗原が2種類以上である場合、各々の抗原に特異的に結合された検出抗体と結合する一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列は特定される必要はないが、効率的な検出のために、各抗原によって異なるようにし、各抗原による一本鎖DNAオリゴヌクレオチド間の相補的配列が無いようにして、DNA−DNA結合が起こらないように設計するのが望ましい。また、たとえ抗原によって異なるDNAオリゴヌクレオチド間の相補的な結合が起こるとしても、そのDNA−DNA間の結合が各DNAオリゴヌクレオチドに相補的に結合するようになるRNAオリゴヌクレオチドとの相補的な結合より安定していないので、DNA−RNA間の相補的結合が優勢であるように設計することができる。
【0032】
本発明の一態様において、検出抗体にDNAオリゴヌクレオチドを連結するために、アミド結合、ジスルフィド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合などの化学結合(共有結合)を利用することができる。このような化学結合を利用するためにクロスリンカーを使用することができるが、クロスリンカーの一方の端部は検出抗体とアミド結合、ジスルフィド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合などの化学結合によって連結され、残りの他方の端部はDNAオリゴヌクレオチドとアミド結合、ジスルフィド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合などの化学結合によって連結されるようにすることができる。
【0033】
クロスリンカーは、一般に二つの生体分子を連結するために使用される通常のクロスリンカーの全てが使用可能であり、例えばSMPH(サクシニミジル‐6‐[β−マレイミドプロピオナミド]ヘキサノエート:Succinimidyl‐6‐[β‐maleimidopropionamido]hexanoate)、SMPB(サクシニミジル‐4‐[p−マレイミドフェニル]ブチレート:Succinimidyl 4‐[p‐maleimidophenyl]butyrate)、スルホ(Sulfo)‐LC‐SPDP(スルホサクシニミジル‐6‐(3’‐[2‐ピリジルジチオ]‐プロピオナミド)ヘキサノエート:Sulfosuccinimidyl 6‐(3’‐[2−pyridyldithio]‐propionamido)hexanoate)、SIAB(N‐サクシニミジル[4‐ヨードアセチル]アミノベンゾエート:N‐Succinimidyl[4‐iodoacetyl]aminobenzoate)からなる群より選択された1種類以上であるが、これらに制限ない。
【0034】
このような化学結合及び/またはクロスリンカーによってDNAオリゴヌクレオチドが抗体に共有結合で連結されているので、抗原認識時に、抗原−抗体間の複合体上に共有結合によって連結されたDNAオリゴヌクレオチドが、ELISA法における酵素の役割を果たすことができる。
【0035】
前記検出抗体−DNA接合体は、一般的なELISA法で使用する検出抗体の代用として使用され、ここに付着されたDNAオリゴヌクレオチドは、前述の通り、その後の段階で加えられるF−RNA−Qと結合した後、RNase Hによって、F−RNA−Qが基質となるようにする鋳型鎖の役割を果たす。
【0036】
前記捕獲抗体−抗原複合体に選別的に結合する検出抗体−DNA接合体を加え、適当な時間インキュベーティングした後で洗浄して、結合していない余分な検出抗体−DNA接合体を除去するステップを追加的に行うことができる。
【0037】
本発明による検出キットまたは検出方法において、前記蛍光物質及び蛍光消光物質が両末端に標識された一本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、前記DNA配列に相補的なヌクレオチド配列を有するものであるため、前記DNAオリゴヌクレオチドと選択的に結合してDNA/RNA二本鎖を形成するものでなければならない。
【0038】
前記RNAオリゴヌクレオチドの一方の末端に結合する蛍光物質は、免疫分析に使用される全ての蛍光物質が可能であり、例えば、クマリン(coumarin)系蛍光物質(例えば7−ヒドロキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリンなど);キサンテン(xanthene)系蛍光物質(例えばROX、TET、Texas Red、フルオレセイン(fluorescein)、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)など);シアニン(cyanine)系蛍光物質(例えばCy3、Cy5など);Bodipy系蛍光物質(例えばBodipy FL、Bodipy 530、Bodipy R6G、Bodipy TMRなど);Alexa Fluor系蛍光物質(例えばAlexa Fluor 488、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 532など);DyLight Fluor系蛍光物質(例えばDyLight 405、DyLight 488、DyLight 549、DyLight 594、DyLight 633、DyLight 649、DyLight 680、DyLight 750、DyLight 800など);からなる群より選択された1種類以上であるが、これらに限定されない。
【0039】
また、RNAオリゴヌクレオチドの他方の末端に結合する蛍光消光物質は、特に制限されないが、DABCYL、QSY系物質(例えばQSY−35、QSY−7、QSY−9、QSY−21など)、及びBHQ系物質(例えばBHQ−1、BHQ−2、BHQ−3など)からなる群より選択された1種類以上であり、他にもFRET(fluorescence resonance energy transfer)作用をする蛍光物質(例えばシアン蛍光タンパク質(cyan fluorescent protein, CFP)、黄色蛍光タンパク質(yellow fluorescent protein, YFP)、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein, GFP)など)でもかまわない。このような蛍光消光物質は、他方の末端に結合された蛍光物質の種類に応じて決定される。蛍光物質及び蛍光消光物質は、各々5′末端及び3′末端、または3′末端及び5′末端の順序に標識される。
【0040】
前記で形成された捕獲抗体−抗原−(d−Ab−DNA/F−RNA−Q)では、RNA一本鎖の一方の末端に標識された蛍光物質(F)が、他方の末端に標識されて近くに位置した蛍光消光物質によって蛍光が消光されている状態である。ここに、RNase HなどのRNA分解酵素を適用して酵素反応を起こせば、d−Ab−DNAに結合されたF−RNA−Qに対するRNase Hの分解反応が触発され、蛍光物質及び蛍光消光物質の間の距離が遠くなるので、十分な量のRNase H及び十分な反応時間を適用した後には増幅された蛍光シグナルを得ることができる。捕獲抗体に結合された抗原の量が検出抗体であるd−Ab−DNAに比例し、d−Ab−DNAのDNA量がRNase HによるF−RNA−Qの分解によって得られる蛍光シグナル増幅量に比例するので、結局、抗原の量及び増幅された蛍光シグナルの量の間が比例関係を示すので、結果として得られた蛍光シグナルによって抗原の定量が可能になる。前記RNA分解酵素は、適切な緩衝溶液と共に適用されることができ、この時に使用可能な緩衝溶液は、本発明が属する技術分野にて通常に知られたものが使用可能である。
【0041】
本発明による検出キットまたは検出方法において、前記RNA分解酵素は、DNA/RNA二本鎖に対して特異的にRNA分解活性を有する全てのRNA分解酵素が可能であり、例えばRNase Hである。特に、RNase Hは、配列特異性がないので、多様なRNA配列が使用される多重分析に非常に有用である。前記RNase Hは、細胞から抽出して精製されたもの、または再組合タンパク質の形態に発現及び精製されたものを使用することができる。RNase Hの代表的な例として、E.coliから由来したRNase H(gene accession number: V00337, coding region: 243‐707, protein accession number: CAA23620)が挙げられるが、これに制限されない。
【0042】
本発明によって2種類以上の抗原を一度に検出する多重分析(多重OLISA)の工程をより詳しく説明する。
【0043】
まず、前記捕獲抗体は、検出しようとする試料内の多様な抗原を各々選別的に捕獲する多様な抗体が混合された形態の抗体混合物として使用される。多重OLISA法のために、前記検出抗体に付着されるDNAオリゴヌクレオチドは、各々の抗原によって各々異なる塩基配列を有するように準備されるが、例えばd−Ab−DNA、d−Ab−DNA、d−Ab−DNA、d−Ab−DNA(nは検出しようとする抗原の個数)などのように準備される。前記F−RNA−QのRNAは、各抗原に選別的に結合した検出抗体であるd−Ab−DNA内のDNAに相補的な塩基配列を有するように準備する。この時、各RNAに標識される蛍光物質は、抗原によって互いに異なる波長で発光する物質を使用し、蛍光消光物質は、使用された蛍光物質と適切にセットになるものを使用するが、例えばF−RNA−Q、F−RNA−Q、F−RNA−Q、F−RNA−Q(nは検出しようとする抗原の個数)などのように準備される。1種類の蛍光消光物質の使用によって、多様な蛍光物質の蛍光強度の消光も可能である。
【0044】
多重OLISA法において、RNase Hによって分解されたF−RNA−Qから発生及び増幅されたn種類の各々の蛍光シグナルを、適切な波長で検出する。各々の捕獲抗体は各々の抗原と結合し、ここに各々の検出抗体が結合して、各々の検出抗体内のDNAに相補的な各々のF−RNA−Qが結合する。したがって、RNase Hの酵素反応によって得られた各々の蛍光強度は各当該抗原の量に比例する。したがって、試料内に存在する多様な抗原の検出及び定量が、本発明によるRNase Hによる蛍光シグナル増幅を利用した多重OLISA法によって可能になる。
【0045】
従来のELISA法によって2種類以上の抗原を一度に検出する多重分析のためには、各抗原別に異なる酵素を使用しなければならないという短所があり、場合によっては、使用された酵素が対応抗原のみに特異的でない場合には、他の抗原の競争的基質として作用する場合もあるため、正確な検出結果を得るのが困難である。しかし、本発明によれば、各抗原別に異なるDNAオリゴヌクレオチド及びこれと相補的なRNAオリゴヌクレオチド、及び配列特異性なくDNA/RNA二重結合を認識してRNAを切断するRNase Hを使用することにより、標的抗原の個数に関係なく、多数の抗原を一度に容易な方法で検出可能であるという利点を有する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるわけではない。
【0047】
[実施例1]RNase Hを利用した一つの抗原のOLISA法
試料内の癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen, CEA, human metastatic liver of colon adenocarcinoma, CEA antigen grade, Biodesign)の検出を以下の方法で行った。
【0048】
1.1.検出プローブ(Ab−DNA)の製作
2.5mg/mL濃度の抗体溶液(CEAに対するモノクロナール抗体(1)を含む、サンドイッチELISA用としてBiodesign社よりセットで提供する製品、Cat#はM37401Mであり、抗体認識部位は「Gold」エピトープグループ5)50μlにPBS緩衝溶液50μl及び100mMのSMPH(succnimidyl‐6‐[β‐maleimidopropionamido]hexanoate)溶液1μlを入れた後、常温で30分間反応させた。得られた反応液を15mLのPBS緩衝溶液に希釈してアミコンウルトラ15(ウルトラセル30K)(Millipore)に入れて、4℃で4000rpmで40分間遠心分離した。この工程を3回繰り返して、残った上澄液Aを取った。
【0049】
これと同時に、100μMのDNA溶液(含まれているDNAオリゴヌクレオチド配列:5′−TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTAACCACAGTG−3′、配列番号:1)100μlに、1MのDTT(dithiothreitol)溶液15μlを添加して、常温で15分間反応させた後、酢酸エチル100μlを添加して除去する工程を5回繰り返し、マイクロスピンG25カラム(GE Healthcare)に通過させて、DTT及びチオール断片を除去した。残ったDNA溶液を前記得られた上澄液Aと混合して、常温で30分間反応させた。得られた反応液を15mLのPBS緩衝溶液に希釈してアミコンウルトラ15(ウルトラセル30K)に入れて、4℃、4000rpmで40分間遠心分離する工程を4回繰り返した。その結果として残った上澄液が前記モノクロナール抗体(1)及びDNA断片が接合されたAb−DNA接合体(1)であり、OLISA法で検出プローブとして使用した。
【0050】
1.2.捕獲プローブ及びRNA接合体の準備及びOLISA法
CEAに対するモノクロナール抗体(2)(サンドイッチELISA用としてBiodesign社よりセットで提供する製品、Cat#M37121M、抗体認識部位は「Gold]エピトープグループ4)をPBS緩衝溶液に10μg/mLの濃度に入れて96ウェルのマイクロプレートに100μlずつ入れて、4℃で約15時間保管した。PBS緩衝溶液200μlで3回洗浄した後、3%(w/v)のBSA(bovine serum albumin)/PBS溶液200μlを入れて、常温で2時間定置させた。200μlのPBST(PBS+0.05%(w/v)Tween−20)溶液で3回洗浄した後、3%(w/v)のBSA/PBS溶液に多様な濃度(図2参照)に抗原(CEA)を希釈して、各ウェルに100μlずつ入れて、2時間定置させた。
【0051】
その後、200μlのPBST溶液で3回洗浄した後、前記実施例1.1で製作されたAb−DNA接合体(1)溶液を3%(w/v)のBSA/PBSに1/30に希釈して、各ウェルに100μlずつ入れて、2時間定置させた。200μlのPBST溶液で3回洗浄した後、ここに40mMのTris−HCl、4mMのMgCl、1mMのDTT、0.003%のBSA、400nMのフルオレセイン(FAM)−RNA1−dabcyl(RNAオリゴヌクレオチド塩基配列:FAM−5′−CACUGUGGUU(配列番号:2)−3′−dabcyl、抗体及びDNAの結合によるRNase Hの反応阻害効果を防止するために、DNAの5′末端に20個のチミジンを添加した)、及び6UのRNase H(タカラバイオ株式会社、Code No. 2150A)を含む反応液100μlを入れて、常温で2時間反応させた。反応終了後、マイクロプレートリーダー(Varioskan flash, Thermoscientific社)を利用してフルオレセイン放出波長(励起波長は485±10nm、吸光波長は535±10nm)での蛍光を測定した。
【0052】
このようにして得られた結果を図2に示した。図2で確認できるように、標的物質であるCEAの濃度に比例して蛍光強度が増加することが分かる。したがって、本実施例の方法によってCEAが効率的に検出されることが分かる。
【0053】
[実施例2]RNase Hを利用した多重OLISA法による一つの試料内の2種類の抗原の同時分析
試料内の癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen, CEA)及び前立腺特異抗原(Prostate specific antigen, PSA, Fitzgerald, Cat # 30C‐CP1017U)を同時検出するために、以下の操作を行った。
【0054】
2.1.検出プローブ(Ab−DNA)の製作
CEA用検出プローブは前記実施例1.1と同一の方法で準備した。
【0055】
PSA用検出プローブは次の方法で準備した。2.25mg/mL濃度の抗体溶液(PSAに対するモノクロナール抗体(3)を含む、Fitzgeerald社の全てのPSA分析用に使用される抗体、サンドイッチELISA用としてセットで販売する製品、Cat#は10−P20Dである)50μlにPBS緩衝溶液50μl及び100mMのSMPH(succnimidyl‐6‐[β‐maleimidopropionamido]hexanoate)溶液1μlを入れた後、常温で30分間反応させた。得られた反応液を15mLのPBS緩衝溶液に希釈してアミコンウルトラ15(ウルトラセル30K)に入れて、4℃で4,000rpmで40分間遠心分離した。この工程を3回繰り返して、残った上澄液Bを取った。
【0056】
これと同時に、100μMのDNA溶液(含まれているDNAオリゴヌクレオチド配列:5′−TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTACTCTATGGG−3′、配列番号:3)100μlに1MDTT溶液15μlを添加して、常温で15分間反応させた後、酢酸エチル100μlを添加して除去する工程を5回繰り返し、マイクロスピンG25カラムに通過させて、DTT及びチオール断片を除去した。残ったDNA溶液を前記得られた上澄液Bと混合して、常温で30分間反応させた。得られた反応液を15mLのPBS緩衝溶液に希釈してアミコンウルトラ15(ウルトラセル30K)に入れて、4℃、4000rpmで40分間遠心分離する工程を4回繰り返した。その結果として残った上澄液が前記モノクロナール抗体(3)及びDNA断片が接合されたAb−DNA接合体(2)であり、OLISA法でPSA用検出プローブとして使用した。
【0057】
2.2.捕獲プローブ及びRNA接合体の準備及びOLISA法
CEAに対するモノクロナール抗体(2)(実施例1.2参照)及びPSAに対するモノクロナール抗体(4)(Fitzgerald社, Catalog # 10‐P20E)をPBS緩衝溶液に各々10μg/mLの濃度に入れて96ウェルのマイクロプレートに100μlずつ入れて、4℃で約15時間保管した。200μlのPBS緩衝溶液で3回洗浄した後、3%(w/v)のBSA/PBS溶液200μlを入れて、常温で2時間定置させた。200μlのPBST(PBS+0.05%(w/v)Tween−20)溶液で3回洗浄した後、3%のBSA/PBS溶液に多様な濃度に各抗原(CEA(Biodesign)、PSA(Fitzgerald))を希釈して、各ウェルに100μlずつ入れて、2時間定置させた。
【0058】
その後、200μlのPBST溶液で3回洗浄した後、実施例2.1で製作された各抗原に相当する各々のAb−DNA接合体を3%(w/v)のBSA/PBSに1/30に希釈して、各ウェルに100μlずつ入れて、2時間定置させた。200μlのPBST溶液で3回洗浄した後、40mMのTris−HCl、4mMのMgCl、1mMのDTT、0.003%のBSA、1μMのフルオレセイン−RNA1−dabcyl及びROX−RNA2−BHQ2(ROX−5′−CCCAUAGAGU(配列番号:4)−3′−BHQ2)、そして6UのRNase H(タカラバイオ株式会社、Code No. 2150A))を含む反応液100μlを入れて、常温で1時間反応させた後、マイクロプレートリーダー(Varioskan flash, Thermoscientific社)を利用してフルオレセイン及びROXの各々の放出波長(フルオレセイン:535±10nm、ROX:589±5nm)での蛍光を測定した。
【0059】
このようにして得られた結果を図3に示した。図3で確認できるように、標的物質であるCEA及びPSAの濃度に比例して蛍光強度が増加することが分かる。したがって、本実施例の方法によってCEA及びPSAが互いに干渉せずに効率的に検出されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
抗原に選択的に結合して、前記支持体に固定された捕獲抗体と、
前記捕獲抗体と異なる部位で前記抗原に選択的に結合する検出抗体及び一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが結合された検出抗体−DNA接合体と、
前記DNAオリゴヌクレオチドに相補的な一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、前記RNAオリゴヌクレオチドの一方の末端に結合された蛍光物質、及び前記RNAオリゴヌクレオチドの他方の末端に結合された蛍光消光物質からなる蛍光物質−RNA−蛍光消光物質接合体と、
RNase H
とを含む、抗原検出用キット。
【請求項2】
前記抗原は、自己抗体、リガンド、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、金属イオン、合成薬物、天然薬物、代謝物、遺伝子、ウイルス及びウイルスによる生成物、並びにバクテリア及びバクテリアによる生成物からなる群より選択された1種類以上である、請求項1に記載の抗原検出用キット。
【請求項3】
前記抗原は、自己抗体、リガンド、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、金属イオン、合成薬物、天然薬物、代謝体、遺伝体、ウイルス及びウイルスによる生成物、並びにバクテリア及びバクテリアによる生成物からなる群より選択された2種類以上であり、
2種類以上の抗原を同時に検出可能であることを特徴とする、請求項2に記載の抗原検出用キット。
【請求項4】
検出抗体−DNA接合体に結合されたDNAオリゴヌクレオチドは、各々の抗原によって異なる塩基配列を有して、異なる抗原に対する検出抗体に連結されたDNAオリゴヌクレオチド間の相補的配列を含まないことを特徴とする、請求項3に記載の抗原検出用キット。
【請求項5】
前記検出抗体及びDNAオリゴヌクレオチドは、アミド結合、ジスルフィド結合、エステル結合、エーテル結合、及びチオエーテル結合からなる群より選択された1種類以上の化学結合によって結合されたものである、請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の抗原検出用キット。
【請求項6】
前記検出抗体及びDNAオリゴヌクレオチドは、SMPH、SMPB、Sulfo−LC−SPDP、及びSIABからなる群より選択される1種類以上のクロスリンカーによって連結される、請求項5に記載の抗原検出用キット。
【請求項7】
前記蛍光物質は、クマリン系蛍光物質、キサンテン系蛍光物質、シアニン系蛍光物質、Bodipy系蛍光物質、Alexa Fluor系蛍光物質、及びDyLight Fluor系蛍光物質からなる群より選択された1種類以上である、請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の抗原検出用キット。
【請求項8】
前記蛍光消光物質は、DABCYL、QSY系物質、BHQ系物質、及びFRETからなる群より選択された1種類以上である、請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の抗原検出用キット。
【請求項9】
検出しようとする抗原に選択的に結合可能な捕獲抗体に試料を接触させて、試料内の抗原及び捕獲抗体を結合させるステップと、
前記捕獲抗体と異なる部位で前記抗原に選択的に結合可能な検出抗体及び一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが結合された検出抗体−DNA接合体を前記捕獲抗体と結合した抗原に接触させて、抗原及び検出抗体−DNA接合体を結合させるステップと、
前記DNAオリゴヌクレオチドに相補的な一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、前記RNAオリゴヌクレオチドの一方の末端に結合された蛍光物質、及び前記RNAオリゴヌクレオチドの他方の末端に結合された蛍光消光物質からなる蛍光物質−RNA−蛍光消光物質接合体を前記捕獲抗体及び検出抗体−DNA接合体に結合した抗原に接触させ、前記DNAとRNAをハイブリダイズさせて、DNA−RNA二本鎖を形成させるステップと、
RNase Hで処理することによって前記二本鎖中のRNAを切断し、前記RNAから蛍光物質を遊離させて蛍光を発生させるステップと、
前記発生した蛍光強度を測定するステップ
とを含む、抗原検出方法。
【請求項10】
前記抗原は、自己抗体、リガンド、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、金属イオン、合成薬物、天然薬物、代謝物、遺伝子、ウイルス及びウイルスによる生成物、並びにバクテリア及びバクテリアによる生成物からなる群より選択された1種類以上である、請求項9に記載の抗原検出方法。
【請求項11】
前記抗原は、自己抗体、リガンド、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、金属イオン、合成薬物、天然薬物、代謝物、遺伝子、ウイルス及びウイルスによる生成物、並びにバクテリア及びバクテリアによる生成物からなる群より選択された2種類以上であり、
各々の抗原によって異なる蛍光物質と結合されたRNAオリゴヌクレオチドを使用して、2種類以上の抗原を同時に検出可能であることを特徴とする、請求項10に記載の抗原検出方法。
【請求項12】
前記2種類以上の抗原に対する各々の検出抗体−DNA接合体に結合されたDNAオリゴヌクレオチドは、抗原によって異なる塩基配列を有して、異なる抗原に対する検出抗体に連結されたDNAオリゴヌクレオチド間の相補的配列を含まないことを特徴とする、請求項11に記載の抗原検出方法。
【請求項13】
前記蛍光物質は、クマリン系蛍光物質、キサンテン系蛍光物質、シアニン系蛍光物質、Bodipy系蛍光物質、Alexa Fluor系蛍光物質、及びDyLight Fluor系蛍光物質からなる群より選択された1種類以上である、請求項9乃至12のうちのいずれか一つに記載の抗原検出方法。
【請求項14】
前記蛍光消光物質は、DABCYL、QSY系物質、BHQ系物質、及びFRETからなる群より選択された1種類以上である、請求項9乃至12のうちのいずれか一つに記載の抗原検出方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−33613(P2011−33613A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103434(P2010−103434)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(591074116)韓国科学技術研究院 (17)
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF SCIENCE AND TECNOLOGY
【住所又は居所原語表記】39−1 Hawolgok−dong,Seongbuk−gu,Seoul 136−791KOREA
【Fターム(参考)】