説明

免疫刺激性ウイルスRNAオリゴヌクレオチド

【課題】新規のおよび変更された免疫刺激性特性を付与するための、新規および既存のオリゴヌクレオチドの提供。
【解決手段】一本鎖のマイナス−センスRNAゲノムRNAの3’末端配列に相当する免疫刺激性の配列特異的なRNAオリゴヌクレオチド、または、5’−C/U−U−G/U−U−3’として提供される免疫刺激性4マーRNAモチーフに関連する組成物および方法。この短いRNAモチーフの組み込みは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含む、新規および既存のオリゴヌクレオチドにおいて、新規のおよび変更された免疫刺激性特性を付与するのに十分である。また、インビトロおよびインビボにおいて免疫応答を誘導するため、そして被験体においてアレルギー、喘息、感染および癌を処置するための、免疫刺激性RNAオリゴヌクレオチドおよびDNA:RNAキメラオリゴヌクレオチドの使用のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、免疫刺激性核酸組成物およびその使用の方法に関する。さらに詳細には、本
発明は、免疫刺激性ウイルスRNA配列、その改変体および結合体、ならびにそれらの使
用に関する
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫応答は、概念的には、先天性免疫および適応免疫に分けられる。先天性免疫は、感
染性微生物によって発現される特定のクラスの分子または外来の高分子によって通常共有
される病原体関連分子パターン(PAMP)の認識に関与すると考えられる。PAMPは
、特定の免疫細胞上でパターン認識レセプター(PRR)によって認識されるものと考え
られる。トール様(Toll−like)レセプター(TLR)はPRRの重要なクラス
に相当するということが、最近報告されている。
【0003】
TLRは、哺乳動物における先天性免疫において重要な役割を果たす、高度に保存され
たポリペプチドのファミリーである。現在、TLR1〜TLR12と命名される12個の
ファミリーメンバーが特定されている。種々のTLRは、ロイシン−リッチリピートを有
する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質のシグナル伝達ドメインの存在によ
って構造的に特徴付けられる。種々のTLRの細胞質ドメインは、トール−インターロイ
キン1レセプター(TIR)ドメインによって特徴付けられる。非特許文献1。TLRに
よる微生物侵襲の認識は、Drosophilaおよび哺乳動物において進化的に保存さ
れているシグナル伝達カスケードの活性化を誘発する。TIRドメイン含有アダプタータ
ンパク質MyD88は、TLRと会合すること、そしてIL−1レセプター関連キナーゼ
(IRAK)および腫瘍壊死因子(TNF)レセプター関連因子6(TRAF6)をTL
Rに対して補充することが報告されている。TIR−依存性および/またはMyD88−
依存性シグナル伝達経路は、免疫活性化および炎症性サイトカインの産生における重要な
工程である、NF−κB転写因子およびc−Jun NHターミナルキナーゼ(Jnk
)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性化をもたらすと考えられる
。概説については、非特許文献2を参照のこと。
【0004】
多数のTLRについてのリガンドが報告されている。TLR2のリガンドとしては、ペ
プチドグリカンおよびリポペプチドが挙げられる。非特許文献3;非特許文献4;非特許
文献5。リポポリサッカリド(LPS)はTLR4のリガンドである。非特許文献6;非
特許文献7。細菌性フラゲリンは、TLR5のリガンドである。非特許文献8。ペプチド
グリカンは、TLR2についてだけでなく、TLR6についてもリガンドであることが報
告されている。非特許文献9;非特許文献10。
【0005】
前述に加えて、特定のTLRについての天然のリガンドは、特定のタイプの核酸分子を
含むことが報告されている。細菌DNA(CpG DNA)は、TLR9リガンドである
ことが報告されている。非特許文献11;非特許文献12。さらに最近では、ウイルス由
来の二本鎖RNA(dsRNA)およびdsRNAの合成アナログであるポリI:CがT
LR3のリガンドであることが報告された。非特許文献13。
【0006】
最近まで、TLR7およびTLR8の天然のリガンドは未知であった。特定の低分子量
合成化合物であるイミダゾキノロンイミキモド(R−837)およびレシキモド(R−8
48)がTLR7およびTLR8のリガンドであることは以前に報告されていた。非特許
文献14;非特許文献15。さらに最近では、Lipfordらは、特定のG,U−含有
オリゴリボヌクレオチドが免疫刺激性であり、かつTLR7およびTLR8を通じて作用
することを発見した。特許文献1。Lipfordらによって記載された免疫刺激性G,
U−含有オリゴリボヌクレオチドは、リボソームRNA、トランスファーRNA、メッセ
ンジャーRNA、およびウイルスRNAを含むRNA供給源に由来すると考えられた。
【0007】
Lipfordらによって記載された特定の免疫刺激性RNAは、5’−RURGY−
3’を含む塩基配列を有するRNAを含み、ここでRはプリンであり、Uがウラシルであ
り、Gがグアニンであり、そしてYがピリミジンである。Lipfordらによって記載
された特定の免疫刺激性RNAは、GUAGUGU、GUUGB、GUGUG、GUGU
UUAC、GUAGGCAC、CUAGGCAC、CUCGGCACまたはGUUGUG
GUUGUGGUUGUG(配列番号1)を含むか、またはその配列によって提供される
塩基配列を有するRNAを含み、ここでAはアデニンであり、Cがシトシンであり、そし
てBがU、GまたはCである。ある実施形態では、Lipfordらによって記載される
免疫刺激性RNAは、カチオン性脂質N−[1−(2,3ジオレオイルオキシ)−プロピ
ル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP)と合わさ
れる。
【特許文献1】国際公開第03/086280号パンフレット
【非特許文献1】Medzhitov Rら、Mol Cell (1998年)2:p.253〜8
【非特許文献2】Aderem Aら、Nature (2000年)406:p.782〜87
【非特許文献3】Yoshimura Aら、J Immunol (1999年)163:p.1〜5
【非特許文献4】Yoshimura Aら、J Immunol (1999年)163:p.1〜5
【非特許文献5】Aliprantis AOら、Science (1999年)285:p.736〜9
【非特許文献6】Poltorak Aら、Science (1998年)282:p.2085〜8
【非特許文献7】Hoshino Kら、J Immunol (1999年)162:p.3749〜52
【非特許文献8】Hayashi Fら、Nature (2001年)410:p.1099〜1103
【非特許文献9】Ozinskyら、Proc Natl Acad Sci USA (2000年)97:p.13766〜71
【非特許文献10】Takeuchi Oら、Int Immunol (2001年)13:p.933〜40
【非特許文献11】Hemmi Hら、Nature (2000年)408:p.740〜5
【非特許文献12】Bauer Sら、Proc Natl Acad Sci USA (2001年)98,p.9237〜42
【非特許文献13】Alexopoulou Lら、Nature (2001年)413:p.732〜8
【非特許文献14】Hemmi Hら、Nat Immunol (2002年)3:p.196〜200
【非特許文献15】Jurk Mら、Nat Immunol (2002年)3:p.499
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、比較的高度に保存され、かつ一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノ
ムの3’末端でまたはその近位で見出され得る特定の短いRNA配列が免疫刺激性である
という本発明者らによる驚くべき発見に一部基づく。これらの配列は特定の接触ポイント
を含み、これが、免疫細胞上で発現された特定のトール様レセプター(TLR)を介する
シグナル伝達を刺激することを可能にすると考えられる。関与するTLRは、TLR8お
よびTLR7のうち少なくとも1つを含むと考えられる。TLR3はまた、これらの核酸
分子についてのレセプターとして作用し得るが、本発明の免疫刺激性核酸分子の重要な特
徴は塩基配列である。このように、配列非特異的な二本鎖RNAがTLR3についてのリ
ガンドであることが報告されているが、本発明は、配列特異的な一本鎖RNAおよび関連
の組成物の免疫刺激性の性質を開示する。本発明の免疫刺激性組成物は、ヒト末梢血単核
球細胞(PBMC)およびマウス白血病単球マクロファージ(RAW 264)細胞にお
いて、1型インターフェロン、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキ
ン−6(IL−6)、および腫瘍壊死因子α(TNF−α)を含む多数のサイトカインの
強力な誘発物質として作用することが見出されている。
【0009】
本発明はまた、配列5’−C/U−U−G/U−U−3’によって提供される免疫刺激
性の4マーのRNAモチーフの本発明者らによる驚くべき発見に一部は基づく。ちょうど
記載された一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末端の多くで見出され
ることに加えて、このモチーフは、このオリゴヌクレオチドに対して新規な免疫刺激性特
性を付与するように別のオリゴヌクレオチドに接合され得ることが発見されている。例え
ば、このモチーフは、非免疫刺激性のオリゴヌクレオチドを、多数のサイトカインおよび
免疫活性化の他の徴候を誘導し得るオリゴヌクレオチドに変換するのに十分である。さら
に、このモチーフは、DNAの状況におかれても、またはRNAの状況におかれてもよい

【0010】
本発明は概して、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスのゲノムRNAの3’末端
に存在する特定の高度に保存された核酸配列に関する免疫刺激性組成物、およびその使用
のための方法を提供する。この組成物は、インビトロまたはインビボにおいて免疫応答を
刺激するために有用であり、そしてワクチン接種;アレルギー、喘息、感染および癌を含
む特定の条件を処置すること;または他の免疫調節性組成物のスクリーニングという目的
のために、単独で、または抗原もしくは他の因子と組み合わせて用いられてもよい。
【0011】
1局面では、本発明は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末端に
よって提供される配列を含む10〜30ヌクレオチド長の単離された核酸分子であって、
安定化された骨格を有する核酸分子を含む免疫刺激性組成物を提供する。この一本鎖のマ
イナス−センスRNAウイルスゲノムがセグメント化されたゲノムである場合、このゲノ
ムの3’末端によって提供される配列は、このセグメント化されたゲノムの任意のセグメ
ントの3’末端によって提供される配列であってもよい。以下にさらに詳細に記載される
ように、安定化された骨格を有する核酸とは、ホスホジエステル骨格を有する核酸に比較
してヌクレアーゼ分解に対して比較的安定である核酸分子をいう。1実施形態では、この
核酸分子は、10〜20ヌクレオチド長である。1実施形態では、この核酸分子は、10
ヌクレオチド長である。
【0012】
1実施形態では、この核酸分子は、配列モチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’
を含み、Uがウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、C/Uがシトシン(C)オ
キシリボヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、かつG/U
がグアニン(G)オキシリボヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌクレオシド
である。本発明のこの局面および他の局面による種々の具体的な実施形態では、この配列
モチーフは、5’−CUGU−3’、5’−UUGU−3’、5’−CUUU−3’また
は5’−UUUU−3’である。本発明のこの局面および他の局面による1実施形態では
、この核酸分子は、配列5’−GUUGU−3’を排除する。
【0013】
1実施形態では、この安定化された骨格は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌク
レオシド間結合を含む。例えば、1実施形態では、この安定化された骨格は、ホスホロチ
オエート骨格であり、すなわち、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合のみを含む。特
定の実施形態では、この安定化された骨格は、少なくとも1つのピロリン酸ヌクレオシド
間結合を含むか、またはこの安定化された骨格はピロリン酸骨格であり、すなわち、ピロ
リン酸ヌクレオシド間結合のみを含む。
【0014】
1実施形態では、この単離された核酸分子はRNAであるが、1実施形態では、この核
酸分子は、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0015】
本発明の免疫刺激性組成物は、少なくとも1つのトール様レセプター(TLR)を介し
てシグナル伝達すると考えられる。1実施形態では、この核酸分子は、TLRアゴニスト
である。1実施形態では、この核酸分子は、TLR8のアゴニストである。1実施形態で
は、この核酸分子は、TLR7のアゴニストである。1実施形態では、この核酸分子は、
TLR3のアゴニストである。
【0016】
特定の実施形態では、上記の一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは、モノネガウ
イルス目(order Mononegavirales)に属し、かつセグメント化さ
れるゲノムを有しても、またはセグメント化されないゲノムを有してもよい。1実施形態
では、この一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは、オルトミクソウイルスである。
1実施形態では、この一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは、パラミクソウイルス
である。1実施形態では、この一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは、ラブドウイ
ルスである。さらに別の実施形態では、この一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは
フィロウイルスである。1実施形態では、この一本鎖のマイナス−センスRNAは、ボル
ナウイルスである。1実施形態では、この一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは、
インフルエンザAウイルスである。1実施形態では、この一本鎖のマイナス−センスRN
Aウイルスは、インフルエンザBウイルスである。
【0017】
本発明の免疫刺激性組成物は、必要に応じて、上記核酸の免疫刺激性機能を増強し得る
かそうでなければ改変し得る別の因子と会合されてもよい。1実施形態では、この核酸分
子は、カチオン性脂質と会合される。
【0018】
あるいは、またはさらに、本発明の免疫刺激性組成物は必要に応じて、抗原を含んでも
よい。
【0019】
1局面では、本発明は、単離された4〜30ヌクレオチド長の核酸分子であって、一本
鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末端によって与えられた配列を含み、
この核酸分子が安定化された骨格を有する核酸分子と、抗原とを含む、免疫刺激性組成物
を提供する。
【0020】
1局面では、本発明は、
5’−N−C/U−U−G/U−U−N−3’
を含む、7〜40ヌクレオチド長の単離されたオリゴヌクレオチド(ORN)を含む免疫
刺激性組成物であって、Uがウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、C/Uがシ
トシン(C)オキシリボヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであ
り、G/Uがグアニン(G)オキシリボヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌ
クレオシドであり、NおよびNが独立して、0〜10ヌクレオチド長のRNA配列で
あり、かつこのオリゴリボヌクレオチドが安定化された骨格を有する、免疫刺激性組成物
を提供する。
【0021】
1局面では、本発明は、
5’−dX−N−C/U−U−G/U−U−N−dX−3’
を含む、7〜40ヌクレオチド長のキメラDNA:RNAオリゴヌクレオチドを含む免疫
刺激性組成物であって、Uがウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、C/Uがシ
トシン(C)オキシリボヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであ
り、G/Uがグアニン(G)オキシリボヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌ
クレオシドであり、dXおよびdXが独立して、0〜6ヌクレオチド長のDNA配列
であり、dXおよびdXの少なくとも1つが少なくとも1ヌクレオチド長であり、か
つNおよびNが独立して、0〜10ヌクレオチド長のRNA配列である、免疫刺激性
組成物を提供する。本発明のこの局面に従う1実施形態では、NおよびNが両方とも
0ヌクレオチド長である。また本発明のこの局面によれば、1実施形態では、dXは0
ヌクレオチド長であり、そして1実施形態では、dXが0ヌクレオチド長である。本発
明のこの局面による種々の実施形態では、dX、dXまたはdXおよびdXの両
方がCpGモチーフを含んでもよい。このCpGモチーフは、中央の5’−シトシン−グ
アノシン−3’(CG)ジヌクレオチドを含むDNA配列を含み、このCGジヌクレオチ
ドのCは、メチル化されておらず、そしてCGジヌクレオチドは、グアノシン−チミジン
(GT)、グアノシン−グアノシン(GG)、グアノシン−アデノシン(GA)、アデノ
シン−チミジン(AT)、およびアデノシン−アデノシン(AA)から好ましくは選択さ
れる5’ジヌクレオチドに、そしてチミジン−チミジン(TT)およびシトシン−チミジ
ン(CT)から好ましくは選択される3’ジヌクレオチドに隣接する。
【0022】
別の局面では、本発明は、参照免疫刺激性プロフィールを有する参照オリゴヌクレオチ
ドの免疫刺激性プロフィールを変更するための方法を提供する。本発明のこの局面による
方法は、RNAモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’を含むように3〜40ヌク
レオチド長の参照オリゴヌクレオチドを変更させる工程を包含し、ここでUがウラシル(
U)オキシリボヌクレオシドであり、C/Uがシトシン(C)オキシリボヌクレオシドま
たはウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、G/Uがグアニン(G)オキシリボ
ヌクレオシドまたはウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、この参照オリゴヌク
レオチドは、免疫刺激性RNAモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’を含まず、
この変更の結果として、この参照免疫刺激性プロフィールとは別個の変更された免疫刺激
性プロフィールを有する変更されたオリゴヌクレオチドが生じる。1実施形態におけるオ
リゴヌクレオチドの免疫刺激性プロフィールとは、このオリゴヌクレオチドが、TLR9
、TLR8、TLR7およびTLR3から選択される1つ以上のTLRによるシグナル伝
達を刺激する能力をいう。1実施形態では、オリゴヌクレオチドの免疫刺激性プロフィー
ルとは、このオリゴヌクレオチドが免疫応答に関連する1つ以上のサイトカイン、ケモカ
インまたは免疫グロブリンのクラスの分泌を刺激する能力をいう。1実施形態では、オリ
ゴヌクレオチドの免疫刺激性プロフィールとは、このオリゴヌクレオチドが、免疫系にお
ける1つの細胞または細胞集団において免疫活性化に関連する同時刺激分子を含む1つ以
上の細胞表面マーカーの発現を刺激する能力をいう。
【0023】
1局面では、本発明は、参照免疫刺激性プロフィールを有するCpGオリゴデオキシヌ
クレオチド(CpG ODN)の免疫刺激性プロフィールを変更するための方法を提供す
る。本発明のこの局面による方法は、CpG ODNの少なくとも1つのdC、CpG
ODNの少なくとも1つのdT、またはCpG ODNの少なくとも1つのdC、および
CpG ODNの少なくとも1つのdTをUで置換する工程を包含し、ここでUはウラシ
ルオキシリボヌクレオシドであり、この置換の結果として、この参照免疫刺激性プロフィ
ールとは別個の変更された免疫刺激性プロフィールを有する変更されたオリゴヌクレオチ
ドが生じる。本発明のこの局面による変更されたオリゴヌクレオチドは常に少なくとも1
つのUを含む。本発明のこの局面による種々の実施形態では、この変更されたオリゴヌク
レオチドは、部分的にRNAであってもまたは完全にRNAであってもよい。
【0024】
本発明は、1局面では、単離された免疫刺激性オリゴリボヌクレオチドであって、その
配列が、5’−UUGUUGUUUUGUUGUUUUGUUGUU−3’(配列番号2
86)として提供される、免疫刺激性オリゴリボヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0025】
本発明は、1局面では、単離された免疫刺激性オリゴリボヌクレオチドであって、その
配列が、5’−TUGTUGTTTTGTUGTTTTGTUGTT−3’(配列番号2
87)として提供され、その各々のTがリボヌクレオチドの5−メチルウリジンである、
免疫刺激性オリゴリボヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0026】
別の局面では、本発明は、免疫応答を刺激するための方法を提供する。本発明のこの局
面による方法は、免疫系の細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させて免疫応答を刺
激する工程を包含する。1実施形態では、免疫応答は、Th1様免疫応答である。1実施
形態では、この方法は、免疫系の細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させて、1型
インターフェロン、例えば、インターフェロンα(IFN−α)またはインターフェロン
β(IFN−β)の発現を刺激する工程を包含する。1実施形態では、この方法は、免疫
系の細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させて、IL−12の発現を刺激する工程
を包含する。
【0027】
別の局面では、本発明は、TLRシグナル伝達を刺激するための方法を提供する。本発
明のこの局面によるこの方法は、TLRを発現する細胞と、本発明の組成物の有効量とを
接触させてTLRによるシグナル伝達を刺激する工程を包含する。1実施形態では、この
TLRはTLR9である。1実施形態では、TLRはTLR8である。1実施形態では、
TLRはTLR7である。1実施形態では、TLRはTLR3である。
【0028】
本発明はまた、1局面では、被験体における免疫応答を刺激するための方法を提供する
。本発明のこの局面による方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与して、この被
験体における免疫応答を刺激する工程を包含する。1実施形態では、この被験体における
免疫応答はTh1様免疫応答である。1実施形態では、この方法は、本発明の組成物の有
効量を被験体に投与して、この被験体における1型インターフェロンの発現を刺激する工
程を包含する。1実施形態では、この方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与し
て、この被験体におけるIL−12の発現を刺激する工程を包含する。
【0029】
1局面によれば、本発明は、被験体における抗原特異的免疫応答を刺激するための方法
を提供する。本発明のこの局面によるこの方法は、有効量の本発明の組成物および抗原を
被験体に投与して、この被験体における抗原特異的免疫応答を刺激する工程を包含する。
1実施形態では、この抗原は、アレルゲンであり、そしてこの抗原特異的免疫応答は被験
体におけるアレルゲン特異的免疫応答である。1実施形態では、この抗原はウイルス抗原
であり、そしてこの抗原特異的免疫応答は、この被験体におけるウイルス抗原特異的免疫
応答である。1実施形態では、この抗原は細菌抗原であり、そしてこの抗原特異的免疫応
答は、この被験体における細菌抗原特異的免疫応答である。1実施形態では、この抗原は
癌抗原であり、そしてこの抗原特異的免疫応答は、この被験体における癌抗原特異的免疫
応答である。
【0030】
本発明は1局面では、被験体におけるアレルギー性の状態を処置するための方法を提供
する。本発明のこの局面による方法は、本発明の組成物の有効量を、アレルギー性状態を
有するかまたは発症する危険にある被験体に投与して、このアレルギー性の状態を処置す
る工程を包含する。
【0031】
本発明は1局面では、被験体における喘息を処置するための方法を提供する。本発明の
この局面による方法は、本発明の組成物の有効量を、喘息を有するかまたは発症する危険
にある被験体に投与して、この喘息を処置する工程を包含する。
【0032】
本発明は1局面では、被験体における感染を処置するための方法を提供する。本発明の
この局面による方法は、本発明の組成物の有効量を、感染を有するかまたは発症する危険
にある被験体に投与して、この感染を処置する工程を包含する。1実施形態では、この感
染はウイルス感染である。1実施形態では、この感染は細菌感染である。
【0033】
本発明は1局面では、被験体において癌を処置するための方法を提供する。本発明のこ
の局面による方法は、本発明の組成物の有効量を、癌を有するかまたは発症する危険にあ
る被験体に投与して、この癌を処置する工程を包含する。
【0034】
1局面では、本発明は、TLRのアンタゴニストについてスクリーニングするための方
法を提供する。本発明のこの局面による方法は、TLRを発現する参照細胞と、本発明の
組成物の有効量とを、TLRの候補アンタゴニストの非存在下で接触させて、TLRによ
るシグナル伝達の参照量を測定する工程と;TLRを発現する試験細胞と、この組成物の
有効量とを、TLRの候補アンタゴニストの存在下で接触させて、TLRによるシグナル
伝達の試験量を測定する工程と;このシグナル伝達の参照量がこのシグナル伝達の試験量
を超える場合、TLRのこの候補アンタゴニストがTLRのアンタゴニストであることを
確認する工程、を包含する。1実施形態では、TLRはTLR9である。1実施形態では
、TLRはTLR8である。1実施形態では、TLRはTLR7である。1実施形態では
TLRはTLR3である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書において用いる場合、「アレルゲン」という用語は、アレルギー性反応または
アレルギー性状態を惹起し得る抗原をいう。
【0036】
本明細書において用いる場合、「アレルギー性状態」という用語は、ある物質(アレル
ゲン)に対する後天性の過感受性をいう。アレルギー性の状態としては、湿疹、アレルギ
ー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、気管支喘息、蕁麻疹(じんま疹)および食物アレルギー
、ならびに他のアトピー性状態が挙げられる。
【0037】
本明細書において用いる場合、「抗原」という用語は、T細胞抗原レセプターまたはB
細胞抗原レセプターによって認識され得る任意の分子を指す。この用語は広義には、宿主
免疫系によって外来性として認識される任意のタイプの分子を包含する。抗原としては一
般には、限定はしないが、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ポ
リサッカリド、ポリサッカリド結合体、ポリサッカリドおよび他の分子のペプチド模倣物
および非ペプチド模倣物、低分子、脂質、糖脂質、ポリサッカリド、炭化水素、ウイルス
およびウイルス抽出物、ならびに寄生生物のような多細胞生物、ならびにアレルゲンが挙
げられる。タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドである抗原に関して、このような抗
原は、このような抗原をコードする核酸分子を包含し得る。抗原としてはさらに具体的に
は、限定はしないが、癌細胞および癌細胞中でまたは癌細胞上で発現された分子を含む癌
抗原;微生物または微生物中でまたは微生物上で発現された分子を含む微生物抗原;なら
びにアレルゲンが挙げられる。
【0038】
本明細書において用いる場合、「喘息」という用語は、炎症によって特徴付けられる呼
吸器系の障害、気道の狭窄、および吸入された因子に対する機能の反応性の増大をいう。
喘息は高頻度に、ただし排他的ではないが、アトピー性の症候群またはアレルギー性の症
状に関連する。
【0039】
核酸分子に関して本明細書において用いる場合、「骨格」という用語は、天然に存在す
る核酸の重合体の糖リン酸骨格、ならびにその修飾された対応物および模倣物であって、
ここに特定の核酸分子の塩基配列を規定する核酸塩基が共有結合されるものを指す。
【0040】
本明細書において用いる場合、「癌」という用語は、外部シグナルによる調節なしに増
殖する異常な細胞の集団を指す。2つのタイプの癌または新生物、良性および悪性が存在
する。ほぼ全ての良性の癌は、被膜で覆われており、非侵襲性である。対照的に、悪性の
癌はほとんど、被膜で覆われることはないが、浸潤性の破壊的な増殖によって隣接する組
織に侵入する。この浸潤性の増殖は、もとの癌と連続しない部位に移入する癌細胞を伴い
得る。
【0041】
本明細書において用いる場合、「免疫系の細胞」という用語は、先天性の免疫応答また
は適応免疫応答に関与し得る任意の骨髄由来細胞を指す。免疫系の細胞としては、限定は
しないが、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、
顆粒球、Bリンパ球、形質細胞、Tリンパ球およびその前駆細胞を挙げることができる。
【0042】
本明細書において用いる場合、「有効量」という用語は、所望の生物学的効果をもたら
すのに必須であるかまたは十分である物質の量を指す。有効量は、限定する必要はないが
、単回投与で投与される量であり得る。
【0043】
本明細書において用いる場合、「免疫応答」という用語は、増殖するため、エフェクタ
ー免疫機能を行うため、または免疫応答に関与する遺伝子産物を産生するために、免疫細
胞の活性化を反映する先天性免疫応答または適応免疫応答の任意の局面を指す。免疫応答
に関与する遺伝子産物としては、分泌された産物(例えば、抗体、サイトカインおよびケ
モカイン)、ならびに免疫機能の特徴である細胞内および細胞表面の分子(例えば、特定
の表面抗原分類(cluster of differentiation)(CD)抗
原、転写因子、および遺伝子転写物)を挙げることができる。「免疫応答」という用語は
、単独の細胞に適用されても、または細胞の集団に適用されてもよい。
【0044】
本明細書において用いる場合、「感染」という用語は、宿主における感染性微生物また
は感染性因子の異常な存在をいう。感染性微生物での感染とは具体的には、細菌、ウイル
ス、真菌または寄生生物の感染、およびその任意の組み合わせを含む。
【0045】
本明細書において用いる場合、ある化合物を記載するために用いられるときの「単離さ
れた」という用語は、この化合物が天然に存在する天然の環境から取り出されたことを意
味するものとする。1実施形態では、単離されたとは、ある細胞の非核酸分子から取り出
されたことを意味する。
【0046】
本明細書において用いる場合、「核酸分子」という用語は、複数のヌクレオチドを含む
任意の分子(すなわち、置換されたピリミジン(例えば、シトシン(C)、チミン(T)
またはウラシル(U))または置換されたプリン(例えば、アデニン(A)またはグアニ
ン(G))のいずれかである、リン酸基に対して、そして交換可能な有機塩基に対して結
合された糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)を含む分子)を指す。以下にさ
らに記載されるとおり、塩基は、C、T、U、CおよびG、ならびにその改変体を含む。
本明細書において記載されるように、この用語は、リボヌクレオチド(オリゴリボヌクレ
オチド(ORN)を含む)、およびデオキシリボヌクレオチド(オリゴデオキシヌクレオ
チド(ODN)を含む)を指す。この用語はまた、ポリヌクレオシド(すなわち、ポリヌ
クレオチドからリン酸塩がない)およびポリマーを含む任意の他の有機塩基を含むものと
する。核酸分子は、既存の核酸供給源(例えば、ゲノムまたはcDNA)に由来してもよ
いが、好ましくは合成である(例えば、オリゴヌクレオチド合成によって生成される)。
【0047】
本明細書において用いる場合、「薬学的に受容可能なキャリア」という用語は、1つ以
上の適合性の固体もしくは液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質であって、ヒトま
たは他の脊椎動物に対する投与に適切であるものをいう。
【0048】
本明細書において用いる場合、「ホスホロチオエート骨格」という用語は、核酸分子の
安定化された糖リン酸骨格であって、非架橋リン酸酸素が、少なくとも1つのヌクレオシ
ド間結合でイオウによって置き換えられる骨格を指す。1実施形態では、非架橋リン酸酸
素は、各々およびあらゆるヌクレオシド間結合でイオウによって置換される。
【0049】
本明細書において用いる場合、「一本鎖のマイナス−センスRNAウイルス」という用
語は、モノネガウイルス目に属しており、脊椎動物宿主を有する任意のウイルスをいう。
1実施形態では、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスは、5’末端および3’末端
を有する、すなわち環状ではないゲノムRNAを有する。
【0050】
本明細書において用いる場合、「安定化された骨格」という用語は、ホスホジエステル
骨格に比較してヌクレアーゼ分解に対して比較的安定である核酸分子の骨格をいう。
【0051】
本明細書において用いる場合、「被験体」という用語は、ヒトまたは非ヒト脊椎動物を
指す。非ヒト脊椎動物としては、家畜、ペットおよび実験室動物が挙げられる。非ヒト被
験体としてはまた具体的には、非ヒト霊長類およびげっ歯類が挙げられる。非ヒト被験体
としてはまた具体的には、限定はしないが、ニワトリ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、イヌ、
ネコ、モルモット、ハムスター、ミンク、ウサギおよび魚が挙げられる。
【0052】
本明細書において用いる場合、ある条件を「発症の危険のある被験体」という用語は、
この条件を生じるかもしくはこの条件に関連することが公知である因子に対する既知のも
しくは疑われる曝露、またはこの条件を発症することが公知のもしくは疑われる素因(例
えば、この条件の家族歴についての遺伝子マーカー)を伴う被験体を指す。
【0053】
本明細書において用いる場合、「Th1様免疫応答」という用語は、1型インターフェ
ロン、インターフェロンγ(IFN−γ)、IFN−γ−誘導性の10kDaのタンパク
質(IP−10)、インターロイキン12(IL−12)、IgG2a(マウスで)、I
gG1(ヒトで)の産生によって特徴付けられる任意の適応免疫応答またはその局面、ま
たは細胞媒介性免疫、またはその任意の組み合わせをいう。Th1様免疫応答としては、
限定はしないが、Th1免疫応答が挙げられる。
【0054】
本明細書において用いる場合、「Th2様免疫応答」という用語は、インターロイキン
4(IL−4)、IgE、IgG1(マウスで)、IgG2(ヒトで)の産生によって特
徴付けられる任意の適応免疫応答もしくはその局面、または体液性免疫、またはその任意
の組み合わせをいう。Th2様免疫応答としては、限定はしないが、Th2免疫応答が挙
げられる。
【0055】
本明細書において用いる場合、「TLRシグナル伝達」という用語は、TLRを通じた
シグナル伝達に関連する細胞内シグナル伝達の任意の局面をいう。
【0056】
本明細書において用いる場合、「TLRアゴニスト」および等しく、「TLRのアゴニ
スト」という用語は、特定のTLRによるシグナル伝達を誘導し得る任意の因子をいう。
TLRシグナル伝達アゴニストとは詳細には、限定はしないが、本発明の免疫刺激性組成
物を包含する。
【0057】
本明細書において用いる場合、疾患もしくは状態に関して用いる「処置する」という用
語は、このような疾患もしくは状態を邪魔して、これによってこの疾患もしくは状態を防
ぐか、またはその発症を遅らせるか、その進行を防ぐか、遅らせるかもしくは妨害するか
、または排除することを意味するものとする。
【0058】
本明細書において用いる場合、「1型インターフェロン」という用語は、インターフェ
ロンα(IFN−α)またはインターフェロンβ(IFN−β)の任意のアイソフォーム
をいう。
【0059】
(特定の実施形態)
本発明は、特定のRNAウイルスのゲノムRNAの概して高度に保存された領域に存在
する特定の核酸配列が高度に免疫刺激性であるという、本発明者らによる発見に一部関す
る。さらに詳細には、一本鎖マイナス−センスRNAウイルスゲノムのRNA分子の3’
末端で見出される配列が免疫刺激性であるということが本発明者らによって発見されてい
る。さらに、ちょうど記載された配列を保有する本発明の核酸分子が、特定のTLRによ
るシグナル伝達のためのアゴニストとして作用するということが本発明者らによって現在
発見されている。本発明の核酸分子は、Th1様免疫応答の強力な誘発物質であり、従っ
て、Th1様免疫応答に向かう免疫応答を指向するために有用である。このような免疫の
ゆがみは、Th2様免疫応答を減少させるかまたは再指向させることが所望される状況で
、ならびにTh1様免疫応答を誘発または増強することが所望される状況で有用である。
Th2様免疫応答を減少させるかまたは再指向することが所望され得る状態としては、限
定はしないが、アレルギーおよび喘息を挙げることができる。Th1様免疫応答を誘導ま
たは増強することが所望され得る状態としては、限定はしないが、ワクチン接種、種々の
感染の処置、癌の処置、および抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の増強を挙げること
ができる。
【0060】
本発明の免疫刺激性組成物は、モノネガウイルス目に属するウイルスのゲノムRNAに
おいて見出される配列を有する比較的短い核酸分子を含む。このようなウイルスは一般に
、マイナス−センス(ときに、(−)、ネガティブ鎖、ネガティブセンスまたはアンチセ
ンスと呼ばれる)である一本鎖のRNA分子から構成されるセグメント化されるかまたは
セグメント化されていないゲノムを有するウイルスを包含する。RNA依存性RNAポリ
メラーゼは、ゲノムRNAを転写して、相補的な、ポジティブ鎖RNA分子を作成し、こ
れが次に、さらにマイナス−センスのゲノムRNAを作成するため、そしてウイルスのポ
リペプチド遺伝子産物をコードするためのテンプレートとして機能する。この群のいくつ
かのウイルスは、環状のゲノムRNAを有し、そして他のウイルスは直線(非環状)のゲ
ノムRNAを有する。各々の非環状ゲノムRNA分子は、5’末端および3’末端を有す
る。これらの5’末端および3’末端は、高度に保存されて、しばしば部分的にまたは正
確に相補的である配列を有する。この保存は、ファミリー内でおよびファミリーにまたが
っての両方で、特にファミリー内で存在する。これらの同じ5’末端および3’末端は、
ウイルス複製に重要であると考えられるが、それらは一般に非コードであり、すなわち、
ウイルスポリペプチド遺伝子産物には翻訳されない。
【0061】
モノネガウイルス目は詳細には、オルトミクソウイルス科(Orthomyxovir
idae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、フィロウイル
ス科(Filoviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、
ボルナウイルス科(Bornaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyavir
idae)、およびアレナウイルス科(Arenaviridae)のウイルスファミリ
ーを包含する。オルトミクソウイルス科のファミリーとしては、限定はしないが、インフ
ルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、トゴトウ
イルス、ドーリウイルスおよび感染性サケ貧血ウイルスが挙げられる。パラミクソウイル
ス科のファミリーとしては、限定はしないが、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒト呼
吸器合胞体ウイルス(RSV)、センダイウイルス、ニューカッスル病ウイルス、流行性
耳下腺炎ウイルス、麻疹(はしか)ウイルス、ヘンドラウイルス、トリニューモウイルス
およびイヌジステンパーウイルスが挙げられる。フィロウイルス科のファミリーとしては
、限定はしないが、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスが挙げられる。ラブドウ
イルス科のファミリーとしては、限定はしないが、狂犬病ウイルス、水疱性口内炎ウイル
ス(VSV)、モコラウイルス、ドウベンハーゲウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス
、サケ伝染性造血器壊死症ウイルス、ウイルス性出血性敗血症ウイルス、コイ春ウイルス
血症およびライギョラブドウイルスが挙げられる。ボルナウイルス科のファミリーとして
は、限定はしないが、ボルナ病ウイルスが挙げられる。ブニヤウイルス科のファミリーと
しては、限定はしないが、ブニヤンベラ(Bynyamwera)ウイルス、ハンタンウ
イルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、およびスナバエ熱ウイ
ルスが挙げられる。アレナウイルス科のファミリーとしては、限定はしないが、リンパ球
性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ラッサ熱ウイルス、デルタ(D型肝炎)ウイルス、
および南アメリカ出血熱ウイルスが挙げられる。
【0062】
インフルエンザA型ウイルスは、人、鳥類、ブタ、ウマ、オットセイ(アザラシ)、ク
ジラおよび他の動物に感染し得るが、野生の鳥類がこれらのウイルスの天然の宿主である
。インフルエンザA型ウイルスは、ウイルスの表面上の2つのタンパク質に基づいてサブ
タイプに分けられる。これらのタンパク質は、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニ
ダーゼ(NA)と呼ばれる。15個の異なるHAサブタイプおよび9つの異なるNAサブ
タイプが存在する。インフルエンザAウイルスのサブタイプは、それらのHAおよびNA
の表面タンパク質に従って命名され、そしてHAおよびNAのタンパク質の多くの異なる
組み合わせが可能である。例えば、「H7N2ウイルス」は、HA7タンパク質およびN
A2タンパク質を有するインフルエンザAサブタイプを指名する。同様に「H5N1」ウ
イルスは、HA5タンパク質およびNA1タンパク質を有する。いくつかのインフルエン
ザAサブタイプのみ(すなわち、H1N1、H1N2、およびH3N2)が、現在一般に
人々の間で循環している。他のサブタイプは、他の動物種において最も一般的に見いださ
れる。例えば、H7N7およびH3N8ウイルスは、ウマの病気を起こす。
【0063】
ヒトは、インフルエンザA型、B型およびC型に感染され得る。しかし、人々に通常感
染するインフルエンザAウイルスのサブタイプは、インフルエンザAのサブタイプH1N
1、H1N2、およびH3N2しかない。1957〜1968年に、H2N2ウイルスは
また、人々の間で流行したが、現在は流行していない。
【0064】
種々のタイプのインフルエンザウイルスのなかでも、インフルエンザAウイルスのみが
鳥類に感染する。野生の鳥類は、インフルエンザAウイルスの全てのサブタイプについて
の天然の宿主である。代表的には、野生の鳥類は、インフルエンザウイルスに感染した場
合でも病気にはならない。しかし、シチメンチョウおよびニワトリのような家禽は、重篤
な病気になり、トリのインフルエンザで死ぬことがあり、そしていくつかのトリのウイル
スはまた、野性の鳥類で重篤な疾患および死亡を生じ得る。
【0065】
3’末端の20マーの配列の例としては、以下が挙げられ、ここでは5’から3’の読
み取りを左から右に示している:
【0066】
【数1】

概して、最も高度に保存されている配列は、3’末端の最も近くに位置するようである
。すなわち、一般には3’末端の1ダースのヌクレオチドは、3’の最後から2段階目の
1ダースのヌクレオチドよりも高度に保存されている。全てではないがこれらの代表的な
配列のうちいくつかは5’−CpG−3’ジヌクレオチドを含むことも注目されるべきで
ある。
【0067】
以下にかなり詳細に記載されるように、本発明の免疫刺激性の一本鎖RNA配列の多く
が以下の4マーの配列モチーフ:
5’−C/U−U−G/U−U−3’
であって、C/UはCまたはUを示し、そしてG/UはGまたはUを示すモチーフの存在
によって特徴付けられ、このモチーフは代表的には、一本鎖のマイナス−センスRNAウ
イルスゲノムまたはそのセグメントの3’末端の15程度のヌクレオチド内で見出され得
ることが、本発明によって発見されている。従ってこの4マーの配列モチーフは以下の4
マーの配列:CUGU、UUGU、CUUU、およびUUUUを含む。特定の理論にも機
構にも束縛されることは意味しないが、この4マーの配列モチーフは、レセプターTLR
8、TLR7、および/またはTLR3との相互作用についての接触ポイントを含むと本
発明者らは信じている。また特定の理論にも機構にも束縛されることは意味しないが、こ
のモチーフの1位置は、CまたはUであり、決定的にはこの塩基上に2つの酸素を含み;
このモチーフの2位置は、決定的にUであり;このモチーフの3位置は、GまたはUであ
り、決定的にはこの塩基上にそれぞれ4つの酸素または6つの酸素を含み;そしてこのモ
チーフの4位置は、決定的にUである。この4マーの配列モチーフは、非セグメント化ウ
イルスゲノムについての報告された転写開始位置、すなわち5’−CUGUU−3’と全
く同様であることが注目される。
【0068】
本発明は1局面では、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末端によ
って得られる配列を含む10〜30ヌクレオチド長の単離された核酸分子であって、安定
化された骨格を有する核酸分子を含む免疫刺激性組成物を提供する。1実施形態では一本
鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末端とは、一本鎖のマイナス−センス
RNAウイルスゲノムであってこのゲノムがセグメント化されていないゲノムの3’末端
を指す。別の実施形態における一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末
端とは、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムのセグメントであってこのゲノ
ムがセグメント化されているゲノムの3’末端を指す。本発明のこの局面によれば、従っ
て免疫刺激性組成物は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムまたはその直鎖
状セグメントの最も3’側の少なくとも10個のヌクレオチドを含む。1実施形態では、
この免疫刺激性組成物は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムまたはその直
鎖状セグメントの10個の最も3’側のヌクレオチドを含む。1実施形態では、この免疫
刺激性組成物は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムまたはその直鎖状セグ
メントの11個の最も3’側のヌクレオチドを含む。1実施形態では、この免疫刺激性組
成物は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムまたはその直鎖状セグメントの
12個の最も3’側のヌクレオチドを含む。同様の方式で、特定の具体的な実施形態では
、この免疫刺激性組成物は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムまたはその
直鎖状セグメントの13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、27、28、29または30個の最も3’側のヌクレオチドを含
む。
【0069】
以下は、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムのRNAの3’末端に存在す
る固有の10〜30マーのRNA配列の列挙である。2つ以上の配列が特定のアクセッシ
ョン番号と関連して列挙される場合、短い方の配列は、この群における最長の配列の5’
切断である。
【0070】
(ウイルス;ssRNA ネガティブ鎖のウイルス;モノネガウイルス目;フィロウイ
ルス科)
(フィロウイルス科;マールブルグ様ウイルス)
GenBankアクセッション番号Z12132
vp35、vp40、vp30、vp24、糖タンパク質、核タンパク質、ポリメラーゼ
についてのマールブルグウイルスの遺伝子、
長さ=19104
【0071】
【数2】

【0072】
【数3】

【0073】
【数4】

【0074】
【数5】

【0075】
【数6】

【0076】
【数7】

【0077】
【数8】

【0078】
【数9】

【0079】
【数10】

【0080】
【数11】

【0081】
【数12】

【0082】
【数13】

【0083】
【数14】

【0084】
【数15】

【0085】
【数16】

【0086】
【数17】

【0087】
【数18】

【0088】
【数19】

【0089】
【数20】

7ヌクレオチド長程度の短さであって、かつ免疫刺激性の4マーのRNAモチーフ5’
−C/U−U−G/U−U−3’を含むオリゴヌクレオチドは免疫刺激性であるというこ
とが本発明者らによって見出されてきた。この配列モチーフは、ちょうど上記のウイルス
配列の多くに存在する。従って、1局面では、本発明は、7ヌクレオチド長程度の短さで
あって、かつ免疫刺激性の4マーのRNAモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’
を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドを提供する。この4マーのRNAモチーフ外の配列
は任意の配列であってもよい。1実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、配列5’−
GUUGU−3’を含まない。この4マーのRNAモチーフ以外の配列は、RNAであっ
ても、DNAであっても、またはRNAおよびDNAの混合物であってもよい。このモチ
ーフ以外の配列は、1つ以上の修飾されたリボヌクレオシド、1つ以上の修飾されたデオ
キシリボヌクレオシド、1つ以上の修飾されたヌクレオシド間結合、またはそれらの任意
の組み合わせを含み得る。種々の実施形態では、この免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、
7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長であ
ってもよい。1実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、安定化された骨格を有する。
このようなオリゴヌクレオチドは、本明細書に開示される任意の方法で用いられてもよく
、この方法としては、免疫応答を刺激、Th1様免疫応答を刺激、TLRシグナル伝達を
刺激、被験体における免疫応答を刺激、被験体におけるTh1様免疫応答を刺激、被験体
における抗原特異的免疫応答を刺激、被験体におけるアレルギー性状態を処置、被験体に
おける喘息を処置、被験体における感染を処置、被験体における癌を処置、およびTLR
のアンタゴニストをスクリーニングするための方法が挙げられる。
【0090】
以下の実施例6に開示されるように、少なくとも3ヌクレオチド長の非免疫刺激性のオ
リゴヌクレオチドは、このような非免疫刺激性のオリゴヌクレオチドに免疫刺激性の4マ
ーのRNAモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’を導入することによって、免疫
刺激性オリゴヌクレオチドに変換され得るということも本発明者らによって発見されてい
る。この得られた免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも7ヌクレオチド長である
。このモチーフは、このオリゴヌクレオチドのいずれの場所に、例えば、5’末端、3’
末端、または5’および3’末端の内側に付加されても導入されてもよい。この4マーの
RNAモチーフ以外の配列は、任意の配列であってもよい。1実施形態では、得られたオ
リゴヌクレオチドは、配列5’−GUUGU−3’を含まない。4マーのRNAモチーフ
以外の配列は、RNAであっても、DNAであっても、またはRNAおよびDNAの混合
物であってもよい。種々の実施形態では、得られた免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21
、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長であり
得る。1実施形態では、この得られたオリゴヌクレオチドは、安定化された骨格を有する
。このようなオリゴヌクレオチドは、本明細書に開示される任意の方法で用いられてもよ
く、この方法としては、免疫応答を刺激、Th1様免疫応答を刺激、TLRシグナル伝達
を刺激、被験体における免疫応答を刺激、被験体におけるTh1様免疫応答を刺激、被験
体における抗原特異的免疫応答を刺激、被験体におけるアレルギー性状態を処置、被験体
における喘息を処置、被験体における感染を処置、被験体における癌を処置、およびTL
Rのアンタゴニストをスクリーニングするための方法が挙げられる。
【0091】
少なくとも3ヌクレオチド長の弱い免疫刺激性のオリゴヌクレオチドは、このような非
免疫刺激性のオリゴヌクレオチドに免疫刺激性の4マーのRNAモチーフ5’−C/U−
U−G/U−U−3’を導入することによって、さらに強力な免疫刺激性オリゴヌクレオ
チドに変換され得るということも本発明者らによって発見されている。この得られた免疫
刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも7ヌクレオチド長である。このモチーフは、こ
のオリゴヌクレオチドのいずれの場所に、例えば、5’末端、3’末端、または5’およ
び3’末端の内側に付加されても導入されてもよい。この4マーのRNAモチーフ以外の
配列は、任意の配列であってもよい。1実施形態では、得られたオリゴヌクレオチドは、
配列5’−GUUGU−3’を含まない。4マーのRNAモチーフ以外の配列は、RNA
であっても、DNAであっても、またはRNAおよびDNAの混合物であってもよい。種
々の実施形態では、得られた免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、
25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長であり得る。1実施形態では
、この得られたオリゴヌクレオチドは、安定化された骨格を有する。このようなオリゴヌ
クレオチドは、本明細書に開示される任意の方法で用いられてもよく、この方法としては
、免疫応答を刺激、Th1様免疫応答を刺激、TLRシグナル伝達を刺激、被験体におけ
る免疫応答を刺激、被験体におけるTh1様免疫応答を刺激、被験体における抗原特異的
免疫応答を刺激、被験体におけるアレルギー性状態を処置、被験体における喘息を処置、
被験体における感染を処置、被験体における癌を処置、およびTLRのアンタゴニストを
スクリーニングするための方法が挙げられる。
【0092】
少なくとも特定の免疫刺激性CpG DNAオリゴヌクレオチド配列は、UでTおよび
Cの両方を置換することによって、あるいはUでCを置換することによって本発明の免疫
刺激性RNAオリゴヌクレオチド配列に変換され得るということが本発明者らによって、
現在見出されている。1実施形態では、出発CpG DNAオリゴヌクレオチドは、配列
5’−tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt−3’(ODN 2006、
配列番号285)を有する。本発明の対応するRNAオリゴヌクレオチドは、配列5’−
uuguuguuuuguuguuuuguuguu−3’(配列番号286)を有する
。本発明の別の対応するRNAオリゴヌクレオチドは、配列5’−tugtugtttt
gtugttttgtugtt−3’(配列番号287)を有する。1実施形態では、出
発CpG DNAオリゴヌクレオチドは、配列5’−tcgtcgttttcggcgg
ccgccg−3’(配列番号288)を有する。本発明の対応するRNAオリゴヌクレ
オチドは、配列5’−uuguuguuuuuggugguuguug−3’(配列番号
289)を有する。本発明の別の対応するRNAオリゴヌクレオチドは、配列5’−tu
gtugttttuggugguuguug−3’(配列番号290)を有する。このよ
うな変化は、驚くべきことに、免疫刺激性CpG DNAオリゴヌクレオチドに対する比
較的保存的なヌクレオチド置換であって、得られたRNAオリゴヌクレオチドがTLR9
のパラログである、TLR9以外のTLRと相互作用することを可能にし得る置換である
と考えられる。
【0093】
詳細には、免疫刺激性の4マーのRNAモチーフである5’−C/U−U−G/U−U
−3’を含むようなCpG ODNの変換は、得られたオリゴヌクレオチドに対して新規
な免疫刺激性プロフィールを付与し得る、すなわち、得られたオリゴヌクレオチドは出発
CpG ODNによって刺激されるTLR9に加えて、および/またはそれとは異なるT
LRを刺激すると考えられる。例えば、ODN2006のようなCpG ODNの、免疫
刺激性4マーRNAモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’を含むオリゴリボヌク
レオチド(ORN)への完全な変換によって、TLR9を刺激する能力が失われ得、そし
てTLR7、TLR8、またはTLR7およびTLR8の両方を刺激する能力の獲得が生
じ得る。部分的な変換でさらに異なるプロフィールが生じ得る。
【0094】
ちょうど記載されたDNAからRNAへのCpG ODNの変換または部分的変換に加
えて、既存のCpG ODNは、このCpG ODNに免疫刺激性の4マーのRNAモチ
ーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’を付加するかそうでなければ導入することによ
って、新規なプロフィールの免疫刺激性活性を有するように変換され得るということが本
発明者らによって発見されている。得られた組み合わせのモチーフのオリゴヌクレオチド
は、出発のCpG ODNによって刺激されるTLR9に加えて、および/またはそれと
は異なるTLRを刺激する。
【0095】
本発明の組成物は、天然に見出される塩基配列に相当する塩基配列、すなわち、一本鎖
マイナス−センスRNAウイルスゲノムの3’末端に見出される塩基配列を有する特定の
人工的に合成されたオリゴヌクレオチドを含んでもよい。この組成物は、安定化された骨
格の特徴を含むように人工的に合成される。オリゴヌクレオチドの骨格は、この安定化さ
れた骨格を有するオリゴヌクレオチドが、全てホスホジエステル骨格を有する対応するオ
リゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解に対して比較的耐性である条件では、任意の適
切な化学的方法または修飾を用いて安定化されてもよい。
【0096】
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、天然のRNAおよびDNAに比較して、ホ
スホジエステルヌクレオシド間架橋、β−D−リボース単位、および/または天然のヌク
レオシド塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル)を含む、種々の化学
的修飾および置換を包含し得る。化学的修飾の例は、当業者に公知であり、そして例えば
、Uhlmann Eら(1990)Chem Rev 90:543;「Protoc
ols for Oligonucleotides and Analogs」Syn
thesis and Properties & Synthesis and An
alytical Techniques、S.Agrawal編、Humana Pr
ess、Totowa、USA 1993;Crooke STら(1996)Annu
Rev Pharmacol Toxicol 36:107〜29;およびHunz
iker Jら(1995)Mod Synth Methods 7:331〜417
に記載される。本発明によるオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾を有してもよく、各
々の修飾は、天然のDNAまたはRNAから構成される同じ配列のオリゴヌクレオチドに
比較して、特定のヌクレオシド間架橋、および/または特定のβ−Dリボース単位、およ
び/または特定の天然のヌクレオシド塩基の位置に位置する。
【0097】
例えば、オリゴヌクレオチドは各々の修飾が:
a)修飾されたヌクレオシド間架橋による、ヌクレオシドの3’末端および/または5’
末端に位置するホスホジエステルヌクレオシド間架橋の置換、
b)脱リン酸架橋による、ヌクレオシドの3’末端および/または5’末端に位置するホ
スホジエステルヌクレオシド間架橋の置換、
c)糖リン酸骨格由来の糖リン酸単位の別の単位による置換、
d)β−D−リボース単位の修飾された糖単位による置換、ならびに
e)修飾されたヌクレオシド塩基による天然のヌクレオシド塩基の置換、
から独立して選択される1つ以上の修飾を含んでもよい。
【0098】
オリゴヌクレオチドの化学的修飾のためのさらに詳細な実施例は以下のとおりである。
【0099】
オリゴヌクレオチドは、上記のaまたはbに記載されるような修飾されたヌクレオシド
間結合を含み得る。これらの修飾された結合は、分解に対して部分的に耐性であり得る(
例えば、安定化される)。「安定化されたオリゴヌクレオチド分子」とは、あるオリゴヌ
クレオチドが、このような修飾から生じるインビボ分解(例えば、エキソヌクレアーゼま
たはエンドヌクレアーゼを介する)に対して比較的耐性であることを意味するものとする
。ある実施形態では、ホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドは、最大活性
を提供し得、そして細胞内のエキソおよびエンドヌクレアーゼによる分解からこのオリゴ
ヌクレオチドを保護し得る。
【0100】
ヌクレオシドの3’および/または5’末端に位置するホスホジエステルヌクレオシド
間架橋は、修飾されたヌクレオシド間架橋によって置換されてもよく、この修飾されたヌ
クレオシド間架橋は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、NR
−ホスホラミデート、ボラノホスフェート、α−ヒドロキシベンジルホスホネート、ホス
フェート−(C−C21)−O−アルキルエステル、ホスフェート−[(C−C12
)アリール−(C−C21)−O−アルキル]エステル、(C−C)アルキルホス
ホネートおよび/または(C−C12)アリールホスホネート架橋、(C−C12
−α−ヒドロキシメチル−アリール(例えば、WO 95/01363に開示される)か
ら選択され、(C−C12)アリール、(C−C20)アリール、および(C−C
14)アリールは必要に応じて、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ニトロ、シアノで置
換され、RおよびRは、互いに独立して、水素、(C−C18)−アルキル、(C
−C20)−アリール、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキル、好
ましくは水素、(C−C)−アルキル、好ましくは(C−C)−アルキルおよび
/またはメトキシエチル、であるか、あるいはRおよびRは、それらが担持する窒素
原子と一緒になって、5−6−員の複素環式環を形成し、これはさらに、O、SおよびN
の基からさらなるヘテロ原子を含んでもよい。
【0101】
ヌクレオシドの3’末端および/または5’末端に位置するホスホジエステル架橋の脱
リン架橋による置換(脱リン架橋は、例えば、Uhlmann EおよびPeyman
Aの「Methods in Molecular Biology」、第20巻、「P
rotocols for Oligonucleotides and Analog
s」、S.Agrawal編、Humana Press、Totowa 1993、第
16章、pp.355ffに記載される)は、脱リン架橋ホルムアセタール、3’−チオ
ホルムアセタール、メチルヒドロキシルアミン、オキシム、メチレンジメチル−ヒドラゾ
、ジメチレンスルホン、および/またはシリル基から選択される脱リン架橋であってもよ
い。
【0102】
糖リン酸骨格(すなわち、糖リン酸骨格が糖リン酸単位から構成される)由来の糖リン
酸単位(すなわち、一緒になって糖リン酸単位を形成するβ−D−リボースおよびホスホ
ジエステルヌクレオシド間架橋)は、別の単位によって置換され得、この他の単位は、例
えば、「モルホリノ−誘導」オリゴマーを構築するために適切である(例えば、Stir
chak EPら(1989)Nucleic Acids Res 17:6129〜
41に記載される)単位によって置換され得(すなわち、例えば、モルホリノ−誘導体化
単位による置換)、またはポリアミド核酸(「PNA」;例えば、Nielsen PE
ら(1994)Bioconjug Chem 5:3〜7に記載される)を構築するた
めに適切である単位によって置換され得る(すなわち、PNA骨格単位による、例えば、
2−アミノエチルグリシンによる置換)。オリゴヌクレオチドは、アリキルリンカーまた
はアミノリンカーによる、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックされた
核酸(locked nucleic acids)(LNA)および骨格部位を有する
オリゴヌクレオチドの修飾および置換のような、他の炭化水素骨格の修飾および置換を有
してもよい。アルキルリンカーは、分枝しても分枝しなくてもよいし、置換されても置換
されなくてもよいし、キラルとして純粋でもラセミ混合物でもよい。
【0103】
上記で開示された安定化された骨格に加えて、本発明の組成物は、ピロリン酸ヌクレオ
シド間結合を、代替的にまたは追加して含んでもよい。3’,5’−ピロリン酸結合ヌク
レオチドによる合成およびリボヌクレアーゼ阻害は、例えば、Russo Nら(199
9)J Biol Chem 274:14902〜8に記載されている。
【0104】
本発明の組成物は、少なくとも1つのヌクレオチドがデオキシヌクレオチド、例えば、
デオキシリボヌクレオチドであるキメラRNA:DNA骨格を代替的にまたは追加して含
んでもよい。少なくとも1つのデオキシヌクレオチドの数および位置は、オリゴヌクレオ
チドの免疫刺激性活性に影響し得る。種々の実施形態では、4マーの配列モチーフ5’−
C/U−U−G/U−U−3’を有する本発明の免疫刺激性核酸におけるデオキシヌクレ
オチドの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、
15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26であ
ってもよい。2つ以上のデオキシヌクレオチドが存在する、いくつかの実施形態では、デ
オキシヌクレオチドはお互いに対して隣接(すなわち直接結合)する。種々の実施形態で
は、連続的な隣接するデオキシヌクレオチドの数は、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25または26であり得る。隣接するデオキシヌクレオチドの群はまた、デオ
キシヌクレオチドでない少なくとも1つの介在性のヌクレオチドによってお互いから隔て
られて存在してもよい。2つ以上のデオキシヌクレオチドが存在する、いくつかの実施形
態では、別のデオキシヌクレオチドに対して隣接するデオキシヌクレオチドはない。ある
実施形態では、少なくとも1つのデオキシヌクレオチドの位置は、厳密にRNAである、
相当するオリゴヌクレオチドに比較してオリゴヌクレオチドの免疫刺激性効果を増大し得
る。他の実施形態では、少なくとも1つのデオキシヌクレオチドの位置は、厳密にRNA
である、相当するオリゴヌクレオチドに比較してオリゴヌクレオチドの免疫刺激性効果を
低下させ得る。
【0105】
1実施形態では、本発明のキメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドが種々のTLRを
刺激し得る結合体を含むことが本発明によって発見されている。さらに詳細には、本発明
の特定のキメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドが、TLR9およびTLR8の両方を
刺激し得ることが発見されている。1実施形態では、キメラRNA:DNAオリゴヌクレ
オチドのDNA部分は、TLR9活性を刺激するCpG DNAである;同じキメラRN
A:DNAオリゴヌクレオチドのRNA部分は、TLR8を刺激する本発明の免疫刺激性
RNAである。1実施形態では、このようなキメラ結合体は、5’−tcgtcgttt
tguuguuuuguuguu−3’(配列番号291)であり、ここでtcgtcg
tttt(配列番号292)は、CpG DNAであり、そしてguuguuuuguu
guu(配列番号293)はRNAである。guuguuuuguuguu(配列番号2
93)が4マーの配列モチーフ5’−UUGU−3’および5’−UUUU−3’を含む
ことが注目されるべきである。別の実施形態では、このようなキメラ結合体は、5’−t
cgtcgttttuggugguuguug−3’(配列番号294)であり、tcg
tcgtttt(配列番号292)はやはりCpG DNAであり、そしてuggugg
uuguug(配列番号295)はRNAである。uggugguuguug(配列番号
295)は4マーの配列モチーフ5’−UUGU−3’を含むことが注目されるべきであ
る。
【0106】
1実施形態では、キメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドのDNAおよびRNA部分
の両方が、3’−5’ヌクレオチド間結合を含む。別の実施形態では、キメラRNA:D
NAオリゴヌクレオチドのRNA部分は、2’−5’ヌクレオチド間結合(3’−5’ヌ
クレオチド間結合ではない)を含む。例えば、1実施形態では、RNA:DNAキメラ結
合体は、5’−tcgtcgtttguuguguaat−3’(配列番号296)を有
し、ここでtcgtcgtttおよびaatは、DNAであり、そしてguuguguは
RNAであり、そして全てのヌクレオチド間結合が3’−5’ヌクレオチド間結合である
。このキメラRNA:DNA結合体は、TLR9およびTLR8の両方を刺激すること、
そしてIFN−α、TNF−α、およびIFN−γを誘導することが見出された。対照的
に、同一の配列ならびにDNAおよびRNA組成を有するが、guuguguaが3’−
5’ヌクレオチド間結合ではなく、2’−5’ヌクレオチド間結合によって相互接続され
るオリゴヌクレオチドは、TLR9を刺激するがTLR8は刺激せず、そしてIFN−α
は誘導するが、TNF−αもIFN−γも誘導しないことが見出された。
【0107】
本発明の核酸組成物は、修飾された糖単位を含み得る。β−リボース単位またはβ−D
−2’−デオキシリボース単位は、修飾された糖単位によって置換され、この修飾された
糖単位は、例えば、β−D−リボース、α−D−2’−デオキシリボース、L−2’−デ
オキシリボース、2’−F−2’−デオキシリボース、2’−F−アラビノース、2’−
O−(C−C)アルキル−リボース、2’−O−メチルリボース、2’−O−(C
−C)アルケニル−リボース、2’−[O−(C−C)アルキル−O−(C−C
)アルキル]−リボース、2’−NH−2’−デオキシリボース、β−D−キシロ−
フラノース、α−アラビノフラノース、2,4−ジデオキシ−β−D−エリトロ−ヘキソ
−ピラノース、および炭素環式の(例えば、Froehler(1992)J Am C
hem Soc 114:8320に記載される)および/または開放型鎖の糖アナログ
(例えば、Vandendriesscheら(1993)Tetrahedron 4
9:7223に記載される)および/またはビシクロ糖アナログ(例えば、Tarkov
Mら(1993)Helv Chim Acta 76:481に記載)から選択され
る。
【0108】
1実施形態では、4マーの配列モチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’の2位置
のUのリボースの2’ヒドロキシル基はインタクトであり、すなわちβ−リボース単位は
この位置では、前述の修飾された糖単位のいずれでも置換されない。1実施形態では、4
マーの配列モチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’の2位置のUのリボースの2’
ヒドロキシル基は、2’−O−メチルリボースによって置換されない。これらの位置にお
ける2’ヒドロキシル基は、RNAオリゴヌクレオチドとTLRとの間の相互作用に関与
し得ると本発明者らは考えている。この概念の支持では、2’−5’ヌクレオチド間結合
による、通常の3’−5’ヌクレオチド間結合の4−マーモチーフ内の置換は、このオリ
ゴヌクレオチドの免疫刺激性活性を有意に低下させるということが発見されている。しか
し、この4マーの配列モチーフの外側の位置で、このような2’−5’ヌクレオチド間結
合、または他のヌクレアーゼ耐性結合を含むことは可能であり得る。このようなRNAオ
リゴヌクレオチドは、TLRを通じてシグナル伝達する能力、および分解に対して比較的
抵抗性である特性という両方を保持する。
【0109】
本発明の核酸組成物は、グアノシン、シチジン、アデノシン、チミジンおよびウリジン
を含む、天然に見出されるヌクレオシドを含んでもよいが、この核酸組成物はそのように
限定はされない。本発明の核酸組成物は、修飾されたヌクレオシドを含んでもよい。修飾
されたヌクレオシドは、塩基、糖、または塩基および糖の両方を含む修飾を有するヌクレ
オシド誘導体を含む。
【0110】
核酸はまた、C−5プロピンピリミジンおよび7−デアザ−7置換プリン修飾塩基のよ
うな置換されたプリンおよびピリミジンを含む。Wagner RWら(1996)Na
t Biotechnol 14:840〜4。プリンおよびピリミジンとしては限定は
しないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシル、ならびに他の天然に
存在するおよび天然に存在しない核酸塩基、置換された芳香族部分および非置換の芳香族
部分が挙げられる。
【0111】
修飾された塩基とは、T,C、G、AおよびUのようなDNAおよびRNAに代表的に
見出される天然に存在する塩基とは化学的に異なるが、これらの天然に存在する塩基のう
ちの少なくとも1つと基本的な化学構造を共有する任意の塩基である。修飾されたヌクレ
オシド塩基は、例えば、ヒポキサンチン、ジヒドロウラシル、プソイドウラシル、2−チ
オウラシル、4−チオウラシル、5−アミノウラシル、5−(C−C)−アルキルウ
ラシル、5−(C−C)−アルケニルウラシル、5−(C−C)−アルキニルウ
ラシル、5−(ヒドロキシメチル)ウラシル、5−クロロウラシル、5−フルオロウラシ
ル、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシシトシン、5−(C−C)−アルキルシト
シン、5−(C−C)−アルケニルシトシン、5−(C−C)−アルキニルシト
シン、5−クロロシトシン、5−フルオロシトシン、5−ブロモシトシン、N−ジメチ
ルグアニン、2,4−ジアミノ−プリン、8−アザプリン、置換7−デアザプリン(例え
ば、7−デアザ−7−置換プリンおよび/または7−デアザ−8−置換プリン)、5−ヒ
ドロキシメチルシトシン、N4−アルキルシトシン、例えば、N4−エチルシトシン、5
−ヒドロキシデオキシシチジン、5−ヒドロキシメチルデオキシシチジン、N4−アルキ
ルデオキシシチジン、例えば、N4−エチルデオキシシチジン、6−チオデオキシグアノ
シン、およびニトロピロールのデオキシリボヌクレオシド、C5−プロピニルピリミジン
、およびジアミノプリン、例えば、2,6−ジアミノプリン、イノシン、5−メチルシト
シン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、または天然のヌクレオシド塩
基の他の修飾から選択され得る。この列挙は、例示的であることを意味しており、限定さ
れると解釈されるべきではない。
【0112】
本明細書に記載される特定の実施形態では、修飾された塩基が組み込まれてもよい。例
えば、シトシンは、修飾されたシトシンで置換されてもよい。本明細書に用いられるよう
な修飾されたシトシンは、シトシンの天然に存在するかまたは天然には存在しないピリミ
シン塩基アナログであって、このオリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を損なうことなくこ
の塩基を置換し得る。
【0113】
修飾されたシトシンとしては、限定はしないが、5置換シトシン(例えば、5−メチル
−シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−クロロ−シトシン、5−ブロモ−シトシン、
5−ヨード−シトシン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシメチル−シトシン、
5−ジフルオロメチル−シトシン、および非置換または置換5−アルキニル−シトシン)
、6−置換シトシン、N4−置換シトシン(例えば、N4−エチル−シトシン)、5−ア
ザ−シトシン、2−メルカプト−シトシン、イソシトシン、プソイド−イソシトシン、縮
合した環系を有するシトシンアナログ(例えば、N,N’−プロピレンシトシンまたはフ
ェノキサジン)、ならびにウラシルおよびその誘導体(例えば、5−フルオロ−ウラシル
、5−ブロモ−ウラシル、5−ブロモビニル−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−ヒド
ロキシ−ウラシル、5−プロピニル−ウラシル)が挙げられる。本発明の特定の実施形態
では、このシトシン塩基は、ユニバーサル塩基(例えば、3−ニトロピロール、P−塩基
)、芳香族環系(例えば、フルオロベンゼンまたはジフルオロベンゼン)、または水素原
子(スペーサー(Spacer)またはdスペーサー)によって置換される。
【0114】
シチジン誘導体はまた一般に、限定はしないが、修飾された糖を有するシチジンを含む
。修飾された糖を有するシチジンとしては、限定はしないが、シトシン−β−D−アラビ
ノフラノシド(Ara−C)、リボ−C、および2’−O−(C−C)アルキル−シ
チジン(例えば、2’−O−メチルシチジン、2’−OMe−C)が挙げられる。
【0115】
グアニンは、修飾されたグアニン塩基で置換されてもよい。本明細書において用いられ
る修飾されたグアニンは、グアニンの天然に存在するかまたは天然には存在しないプリン
塩基アナログであって、このオリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を損なうことなくこの塩
基を置換し得る、プリン塩基アナログである。
【0116】
修飾されたグアニンとしては、限定はしないが、7−デアザグアニン、7−デアザ−7
−置換グアニン(例えば、7−デアザ−7−(C2−C6)アルキニルグアニン)、7−
デアザ−8−置換グアニン、ヒポキサンチン、N2−置換グアニン(例えば、N2−メチ
ル−グアニン)、5−アミノ−3−メチル−3H,6H−チアゾロ[4,5−d]ピリミ
ジン−2,7−ジオン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、プリン、インドー
ル、アデニン、置換アデニン(例えば、N6−メチル−アデニン、8−オキソ−アデニン
)、8−置換グアニン(例えば、8−ヒドロキシグアニンおよび8−ブロモグアニン)、
および6−チオグアニンが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、グアニン塩基は、
ユニバーサル塩基(例えば、4−メチル−インドール、5−ニトロ−インドール、および
K−塩基)、芳香族環系(例えば、ベンズイミダゾールまたはジクロロ−ベンズイミダゾ
ール、1−メチル−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド)、また
は水素原子(スペーサーまたはdスペーサー)によって置換される。
【0117】
本発明の核酸組成物は、10〜30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである。しか
し、4または5ヌクレオチド長程度の短いオリゴヌクレオチドがTLRに対する結合に十
分であり得るというのが本発明者らの見解である。種々の実施形態では、オリゴヌクレオ
チドは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長である。
1実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、10〜20ヌクレオチド長である。1実施
形態では、このオリゴヌクレオチドは10ヌクレオチド長である。
【0118】
本発明の核酸組成物は、一本鎖であっても、部分的に二本鎖を含む二本鎖であってもよ
い。オリゴヌクレオチドが二本鎖核酸を含む場合、この二本鎖部分は、生理学的条件下で
二本鎖構造を維持するのに十分な相補的な配列を含む。これは、G−C、A−U、A−T
、G−T、およびG−Uから選択される複数の、隣接するかまたは隣接しない塩基対を含
み得る。1実施形態では、この塩基対は、G−C、A−U、およびG−Uから選択される
。この二本鎖構造は、RNA−RNA二重鎖形成、RNA−DNA二重鎖形成、DNA−
DNA二重鎖形成、または少なくとも1つのキメラRNA:DNA配列(すなわち、キメ
ラRNA:DNA−DNA二重鎖、キメラRNA:DNA−RNA二重鎖、またはキメラ
RNA:DNA−キメラRNA:DNA二重鎖)を含む二重鎖形成を包含し得る。
【0119】
(本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドの供給源および調製)
本発明における使用のために、本発明のオリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の任意
の多数の手順、例えば、β−シアノエチルホスホラミダイト法(Beaucage S
Lら(1981)Tetrahedron Lett 22:1859);またはヌクレ
オシドHホスホン酸法(Gareggら(1986)Tetrahedron Lett
27:4051−4;Froehler BCら(1986)Nucleic Aci
ds Res 14:5399−407;Gareggら(1986)Tetrahed
ron Lett 27:4055−8;Gaffneyら(1988)Tetrahe
dron Lett 29:2619〜22)を用いて新規に合成され得る。これらの化
学反応は、市販されている種々の自動的な核酸シンセサイザーによって行うことができる
。これらのオリゴヌクレオチドは、合成オリゴヌクレオチドと呼ばれる。単離されたオリ
ゴヌクレオチドとは一般に、通常は自然にともなう成分から分離されているオリゴヌクレ
オチドをいう。例えば、単離されたオリゴヌクレオチドとは、細胞から、核から、ミトコ
ンドリアから、またはクロマチンから分離されているオリゴヌクレオチドであり得る。1
実施形態では、単離されたオリゴヌクレオチドは、合成オリゴヌクレオチドである。
【0120】
修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエートは、ホスホラミダイトまたはH−ホスホ
ン酸化学のいずれかを使用する自動技術を用いて合成され得る。アリール−ホスホン酸お
よびアルキル−ホスホン酸は、例えば、米国特許第4,469,863号に記載されるよ
うに作成され得;そしてアルキルリン酸トリエステル(荷電された酸素部分は、米国特許
第5,023,243号および欧州特許第092,574号に記載されるようにアルキル
化される)は、市販の試薬を用いて自動的な固相合成によって調製され得る。他のDNA
およびRNA骨格の修飾および置換を作成するための方法は、記載されている(例えば、
Uhlmann Eら(1990)Chem Rev 90:544;Goodchil
d J(1990)Bioconjugate Chem 1:165)。
【0121】
特定の実施形態では、本発明の免疫刺激性核酸分子は、別の因子と結合体化され得る。
1実施形態では、本発明の核酸分子と結合体化され得る因子は、TLRリガンドであって
もよく、これには限定はしないが、本発明の別の核酸分子が挙げられる。1実施形態では
、本発明の核酸分子と結合体化され得る因子は、本発明の免疫刺激性核酸ではない免疫刺
激性核酸分子であってもよい。例えば、他の因子とは、CpG−DNA分子であってもよ
い(例えば、米国特許第6,194,388号;同第6,207,646号;同第6,2
14,806号;同第6,218,371号;同第6,239,116号;同第6,33
9,086号;同第6,406,705号;同第6,429,199号;および同第6,
653,292号を参照のこと)。1実施形態では、本発明の核酸分子と結合体化され得
る因子は、TLRアゴニストであってもよい。TLRアゴニストは、TLR媒介性シグナ
ルを誘発または増強する任意の因子である。TLRアゴニストとしては、例えば、R−8
37(イミキモド(imiquimod))またはR−848(レシキモド(resiq
uimod))のような低分子が挙げられる。1実施形態では、本発明の核酸分子と結合
体化され得る因子は、TLRアンタゴニストであってもよい。TLRアンタゴニストは、
TLR媒介性シグナルを阻害する任意の因子である。TLRアンタゴニストとしては、特
定の低分子(例えば、Macfarlaneらに発行された、米国特許第6,221,8
82号;同第6,399,630号;および同第6,479,504号)および特定の免
疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、Lenart Pら(2001)Antisen
se Nucleic Acid Drug Dev 11:247〜56;Stunz
LLら(2002)Eur J Immunol 32:1212〜22;Lener
t Pら(2003)Antisense Nucleic Acid Drug De
v 13:143〜50;およびLenert Pら(2003)DNA Cell B
iol 22:621〜31)が挙げられる。1実施形態では、本発明の核酸分子と結合
体化され得る因子は、抗原であってもよく、これには、抗原自体または抗原をコードする
核酸分子が挙げられる。1実施形態では、本発明の核酸分子と結合体化され得る因子は医
薬であってもよい。これらの実施形態の各々では、本発明の免疫刺激性核酸分子は、任意
の適切な直接または間接的な物理化学的結合を通じて他の因子と結合体化され得る。1実
施形態では、この結合は、共有結合である。1実施形態では、本発明の免疫刺激性核酸分
子は、リンカーを通じて他の因子と結合体化され得る。
【0122】
1局面では、本発明は、抗原または他の治療因子および本発明の単離された免疫刺激性
オリゴヌクレオチドの結合体を含む組成物を提供する。1実施形態では、抗原または他の
治療因子は、例えば共有結合を通じて、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドに直接結
合される。1実施形態では、この抗原または他の治療因子は、例えば、リンカーを通じて
、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドに直接結合される。この結合体の抗原または他
の治療因子が、ペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである場合、
この抗原または他の治療因子および単離された免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独の
発現ベクターに組み込まれ得る。この結合体の抗原または他の治療因子が事前形成された
ポリペプチドまたはポリサッカリドである場合、この抗原または他の治療因子および単離
された免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の方法を用いて結合され得る。
【0123】
1実施形態では、本発明の免疫刺激性核酸分子は、本発明の核酸分子の3’末端を含む
結合を通じてこの抗原または他の治療因子と結合体化され得る。1実施形態では、本発明
の免疫刺激性核酸分子は、本発明の核酸分子の5’末端を含む結合を通じてこの抗原また
は他の治療因子と結合体化され得る。
【0124】
1実施形態では、本発明の免疫刺激性核酸分子は、本発明の核酸分子の3’末端を含ま
ない結合を通じてこの抗原または他の治療因子と結合体化され得る。1実施形態では、本
発明の免疫刺激性核酸分子は、本発明の核酸分子の5’末端を含まない結合を通じてこの
抗原または他の治療因子と結合体化され得る。
【0125】
インビボの投与のためには、本発明の免疫刺激性核酸分子は、「核酸送達複合体(nu
cleic acid delivery complex)」を形成するように、標的
細胞(例えば、B細胞、単球細胞、NK細胞、樹状細胞)表面に対するより高い親和性結
合および/または標的細胞による増大された細胞取り込みを生じる分子と会合され得る。
核酸は、当該分野で周知である技術を用いて適切な分子とイオン的にまたは共有結合的に
会合され得る。種々のカップリング因子または架橋因子、例えば、プロテインA、カルボ
ジイミド、およびN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(S
PDP)が用いられ得る。あるいは、核酸は、周知の技術を用いてリポソームまたはビロ
ゾームにカプセル化されてもよい。
【0126】
ある実施形態では、本発明の免疫刺激性核酸分子は、カチオン性脂質と混合されてもそ
うでなければ会合されてもよい。カチオン性脂質と混合されるかそうでなければ会合され
る本発明の免疫刺激性核酸分子は、リポソームを含む、カチオン性脂質/核酸複合体の形
態をとってもよい。本発明の免疫刺激性核酸分子は、単独で(すなわち、「裸の(nak
ed)」オリゴヌクレオチドとして)用いられる場合、生物学的に活性であるが、カチオ
ン性脂質との会合は、本発明の免疫刺激性核酸分子の生物学的活性を増大することが観察
されている。いかなる特定の理論にも機序にも束縛されることは意味しないが、カチオン
性脂質の使用と関連される生物学的活性の増大は、本発明の免疫刺激性核酸分子の細胞取
り込みの効率の増大に起因すると考えられる。このような脂質は、分子生物学におけるト
ランスフェクションの適用のために通常用いられる。本発明において有用なカチオン性脂
質としては、限定はしないが、DOTAP(N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)
プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート)、DOTMA(
N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモ
ニウムクロライド)、DOSPA(2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカ
ルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセ
テート)、DMRIE(N,N−ジメチル−2,3−ビス(テトラデシルオキシ)−1−
プロパンアミニウムブロミド)、DOGS(ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン)
、コレステロール、リポソーム、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0127】
カチオン性脂質との会合の代用として、本発明の免疫刺激性核酸分子は有利には、例え
ば、ポリカチオン性ペプチドであって、ポリアルギニン、ポリアルギニン/ポリリジンお
よびプロタミンを含むポリカチオン性ペプチドを含む、他のタイプのカチオン性部分と会
合されてもよい。
【0128】
本発明の前述の局面の各々では、本発明の免疫刺激性核酸分子は必要に応じて、遊離の
核酸の塩または水和物として存在し得る。
【0129】
本発明の前述の局面の各々では、組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリアをさらに
含んでもよく、その結果、本発明はまた、本発明の単離された免疫刺激性オリゴヌクレオ
チドを含む薬学的組成物を提供する。このような薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキ
ャリアと接触させて本発明の単離された免疫刺激性オリゴヌクレオチドを置くことによっ
て調製され得る。
【0130】
(方法および用途)
本発明の組成物は、アレルギー、喘息、感染、癌または自己免疫疾患の処置に用いられ
得る。
【0131】
本発明の組成物は、アレルギー、喘息、感染、癌または自己免疫疾患の処置のための医
薬の調製に用いられ得る。この用途は、アレルギー、喘息、感染、癌または自己免疫疾患
を処置するための本発明の組成物の治療上有効な量を薬学的に受容可能なキャリアと接触
させる工程を包含する。
【0132】
本発明は、1局面では、免疫応答を刺激するための方法を提供する。本発明のこの局面
による方法は、免疫系の細胞を本発明の組成物の有効量と接触させて免疫応答を刺激する
工程を包含する。この方法は、インビトロで行われても、またはインビボで行われてもよ
い。特定の実施形態では、免疫系の細胞は、免疫系の細胞の集団の一部であってもよく、
この集団は、免疫系の種々のタイプの細胞の混合された集団であってもよいし、あるいは
、免疫系の細胞の単一のタイプの精製された集団であってもよい。この集団が免疫系の単
一のタイプの細胞の精製された集団である場合、1実施形態では、この選択された単一の
タイプの細胞は、細胞集団の少なくとも90%を占める。免疫系の単一のタイプの細胞の
精製された集団を含む他の実施形態では、この選択された単一のタイプの細胞は、細胞集
団の少なくとも95%または少なくとも99%を占める。1実施形態では、この方法は、
末梢血単核球細胞(PBMC)と、本発明の組成物の有効量とを接触させて免疫応答を刺
激する工程を包含する。
【0133】
免疫応答は、免疫応答の少なくとも1つの特徴を検出し得る任意の適切な方法を用いて
測定され得る。免疫刺激性効果、すなわち免疫応答を検出および測定するための方法は以
下に記載される。
【0134】
本発明は1局面では、Th1様免疫応答を刺激するための方法を提供する。本発明のこ
の局面による方法は、免疫系の細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させて、Th1
様免疫応答を刺激する工程を包含する。この方法は、インビトロで行われても、またはイ
ンビボで行われてもよい。1実施形態では、この方法は、末梢血単核球細胞(PBMC)
と、本発明の組成物の有効量とを接触させてTh1様免疫応答を刺激する工程を包含する
。Th1様免疫応答は、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、TNF−α、IL−12
、IL−18、IP−10、およびそれらの任意の組み合わせを含む、特定のサイトカイ
ンおよびケモカインの発現を包含し得る。ある実施形態では、Th1−様免疫応答は、I
L−4、IL−5、およびIL−13を含む特定のTh2関連サイトカインの抑制を含み
得る。Th1−様免疫応答は、IgEおよび(マウスでは)IgG1を含む特定のTh2
関連抗体のアイソタイプの抑制の有無において、(マウスでは)IgG2aを含む特定の
抗体アイソタイプの発現を包含し得る。
【0135】
本発明は1局面では、TLRシグナル伝達を刺激するための方法を提供する。この局面
による方法は、TLRを発現する細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させて、TL
Rによるシグナル伝達を刺激する工程を包含する。この方法は、インビトロで行われても
、インビボで行われてもよい。一本鎖のマイナス−センスRNAウイルスゲノムのRNA
の3’末端に存在する高度に保存されたRNA配列は、TLR8、TLR7、およびTL
R3を含む特定のTLRの天然に存在するアゴニストであり、そしてその潜在的なリガン
ドであるということが本発明者らの考えである。一本鎖のマイナス−センスRNAウイル
スゲノムのRNAの3’末端に存在する高度に保存されたRNA配列を組み込む、本発明
の免疫刺激性核酸分子は、これらの同じTLR、すなわち、TLR8、TLR7、および
TLR3のアゴニストであり、そしてその潜在的なリガンドであるということが本発明者
らの考えである。
【0136】
従って、1実施形態では、本方法は、TLR8を発現する細胞と、本発明の組成物の有
効量とを接触させて、TLR8によるシグナル伝達を刺激する工程を包含する。1実施形
態では、この方法は、TLR7を発現する細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させ
て、TLR7によるシグナル伝達を刺激する工程を包含する。1実施形態では、この方法
は、TLR3を発現する細胞と、本発明の組成物の有効量とを接触させて、TLR3によ
るシグナル伝達を刺激する工程を包含する。
【0137】
前述の実施形態の各々では、TLRを発現する細胞は、TLRを天然に発現する細胞で
あってもよい。このような細胞は、天然に見出される細胞、例えばPBMCを包含し得る
。あるいはそしてさらに、このような細胞は、クローニングされた細胞、または細胞株の
一部を含んでもよい。
【0138】
あるいは、前述の実施形態の各々では、TLRを発現する細胞は、TLRを人工的に発
現する細胞であってもよい。このような細胞は詳細には、TLRをコードするベクターで
一過性にまたは安定にトランスフェクトされた細胞であって、その結果このトランスフェ
クトされた細胞がこのベクターによってコードされるTLRを発現する細胞を含み得る。
特定のTLRをコードするベクターは、この特定のTLRのコード領域のヌクレオチド配
列を含む。このようなヌクレオチド配列は以下にさらに詳細に記載される、GenBan
kのようなデータベースから公的に入手可能である。
【0139】
人工的に発現されたTLRは、ヒトTLRであってもよい。1実施形態では、トランス
フェクトされた細胞は、ヒトTLR8の発現ベクターで安定にトランスフェクトされた2
93HEKヒト線維芽細胞である。1実施形態では、このトランスフェクトされた細胞は
、ヒトTLR7の発現ベクターで安定にトランスフェクトされた293HEKヒト線維芽
細胞である。1実施形態では、このトランスフェクトされた細胞は、ヒトTLR3の発現
ベクターで安定にトランスフェクトされた293HEKヒト線維芽細胞である。
【0140】
人工的に発現されるTLRは、非ヒトTLRであってもよい。1実施形態では、このト
ランスフェクトされた細胞は、マウスTLR8の発現ベクターで安定にトランスフェクト
された293HEKヒト線維芽細胞である。1実施形態では、このトランスフェクトされ
た細胞は、マウスTLR7の発現ベクターで安定にトランスフェクトされた293HEK
ヒト線維芽細胞である。1実施形態では、このトランスフェクトされた細胞は、マウスT
LR3の発現ベクターで安定にトランスフェクトされた293HEKヒト線維芽細胞であ
る。
【0141】
特異的なTLRを天然にまたは人工的に発現する細胞は必要に応じて、TLRによって
媒介されるシグナル伝達に対して感受性であるレポーター構築物を含む。このレポーター
構築物は、TLRシグナル伝達活性を検出するために用いられ得る。多数のこのようなレ
ポーター構築物が、本発明の方法の実施に用いられ得る。1実施形態では、このレポータ
ー構築物は、レポーター遺伝子を含み、その転写は、TLRシグナル伝達によって誘導さ
れる転写因子、例えば、NF−κBの制御下である。1実施形態では、このレポーター構
築物は、NF−κB応答エレメントの制御下に置かれたルシフェラーゼ(luc)遺伝子
、すなわち、NF−κB−lucを含む。このような構築物は市販されている。
【0142】
本発明は、1局面では、被験体における免疫応答を刺激するための方法を提供する。本
発明のこの局面による方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与して、この被験体
における免疫応答を刺激する工程を包含する。被験体に対する本発明の組成物の投与に関
与する本発明のこの局面および全ての局面では、有効量は、単回の用量で投与されてもよ
いし、または2回以上の用量で投与されてもよい。さらに、投与は、限定はしないが、腸
内投与、非経口投与、粘膜投与、局所投与および全身投与を含む、任意の適切な経路また
は適切な投与経路の組合せを用いて達成され得る。被験体における免疫応答を検出する方
法としては、限定はしないが、本明細書に記載される方法を含む、任意の適切な方法が挙
げられる。
【0143】
核酸分子の「有効量」という用語は、所望の生物学的効果をもたらすのに必須であるか
または十分である核酸分子の量をいう。例えば、障害を処置するための本発明の核酸分子
の有効量とは、癌またはウイルス、細菌、真菌もしくは寄生生物の感染を排除するのに十
分な大きさの免疫応答を誘導するのに必要な量であり得る。ワクチンとしての使用のため
の有効量は、被験体における防御免疫応答をプライミングおよびブーストするために有用
な量であり得る。任意の特定の適用のための有効な量は、処置される疾患または状態、投
与される特定の核酸、被験体のサイズ、または疾患もしくは状態の重篤度のような要因に
依存して変化し得る。当業者は、過度の実験を要することなく、特定のオリゴヌクレオチ
ドの有効量を経験的に決定することが可能である。予防的ワクチンとしての使用のための
有効量は、被験体における防御的な免疫応答をプライミングおよびブーストするために有
用な量である。1実施形態では、防御免疫応答は、抗原特異的な免疫応答である。
【0144】
本発明は1局面では、Th1様免疫応答を被験体において刺激するための方法を提供す
る。本発明のこの局面による方法は、被験体に対して本発明の組成物の有効量を投与して
この被験体においてTh1−様免疫応答を刺激する工程を包含する。
【0145】
本発明は1局面では、被験体において抗原特異的免疫応答を刺激するための方法を提供
する。本発明のこの局面による方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与する工程
と、この被験体と抗原とを接触させて、この被験体における抗原特異的免疫応答を刺激す
る工程とを包含する。この被験体と抗原との接触の工程は、抗原との能動的な接触(例え
ば、意図的投与)または受動的な接触(例えば、環境的な曝露)を包含し得る。1実施形
態では、この方法は、ある被験体に対して本発明の組成物の有効量を投与する工程と、こ
の被験体に対して有効量の抗原を投与してこの被験体において抗原特異的免疫応答を刺激
する工程とを包含する。1実施形態では、この抗原はアレルゲンであり、そしてこの抗原
特異的応答はこのアレルゲンに特異的である。1実施形態では、この抗原はウイルス抗原
であり、そしてこの抗原特異的な応答は、ウイルス抗原に特異的である。1実施形態では
、この抗原は、細菌抗原であり、そしてこの抗原特異的な応答は、細菌抗原に特異的であ
る。1実施形態では、この抗原は真菌抗原であり、そしてこの抗原特異的な応答は真菌抗
原に特異的である。1実施形態では、この抗原は寄生生物の抗原であり、そして抗原特異
的な応答は、寄生生物の抗原に特異的である。1実施形態では、この抗原は癌抗原であり
、そしてこの抗原特異的な応答は癌抗原に特異的である。
【0146】
本明細書において用いる場合、「癌抗原」および「腫瘍抗原」とは、交換可能に用いら
れて、癌細胞によって示差的に発現され、それによって癌細胞を標的するために利用され
得る抗原をいう。癌抗原は、明らかに腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激し得る抗原であ
る。これらの抗原のいくつかはコードされているが、正常な細胞によっては必ずしも発現
されない。これらの抗原は、正常な細胞において通常はサイレント(すなわち、発現され
ない)抗原、分化の特定の段階でのみ発現される抗原、そして胚性抗原および胎児性抗原
のように一時的に発現される抗原として特徴付けられ得る。他の癌抗原は、変異体細胞遺
伝子、例えば、発癌遺伝子(例えば、活性化ras発癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば、
変異体p53)、内部欠失または染色体転位から生じる融合タンパク質によってコードさ
れる。さらに他の癌抗原が、RNAおよびDNA腫瘍ウイルス上に担持されるウイルス遺
伝子のようなウイルス遺伝子によってコードされ得る。
【0147】
本明細書において用いる場合、癌抗原とは、腫瘍または癌細胞の表面と関連しており、
主要組織適合複合体(MHC)分子の状況では抗原提示細胞の表面で発現された場合、免
疫応答を誘発し得る、ペプチド、タンパク質または糖タンパク質のような化合物である。
癌抗原は、例えば、Cohen PAら(1994)Cancer Res 54:10
55〜8に記載のように、癌細胞の粗抽出物を調製することによって、抗原を部分的に精
製することによって、組み換え技術によって、または既知の抗原の新規な合成によって、
癌細胞から調製され得る。癌抗原としては、限定はしないが、組み換え発現される抗原、
腫瘍もしくは癌、またはそれらの細胞の免疫原性の一部、または全体が挙げられる。この
ような抗原は、組み換え的に、または当該分野で公知の任意の他の手段によって単離され
ても調製されてもよい。
【0148】
腫瘍抗原の例としては、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペ
プチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ−結合タンパク質(
ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−−C017−1A/G
A733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP−1およびCA
P−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫原性エピトー
プPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T−
細胞レセプター/CD3−ζ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えば、MAGE−A
1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A
6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−
A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(
MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−
C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGE−ファ
ミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE
−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAG
E、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53
、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテ
イン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ct
n、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫
様性ポリポーシスタンパク質(APC)、ホドリン、Connexin 37、Ig−イ
ディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ウイルスの生成
物、例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質、腫瘍抗原のSmadファミリー、lm
p−1、P1A、EBV−コード核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラー
ゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SS
X−5、SCP−1およびCT−7、ならびにc−erbB−2が挙げられる。この列挙
は限定を意味するものではない。
【0149】
本明細書において用いられる微生物抗原とは、微生物の抗原であって、これには限定は
しないが、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌が挙げられる。このような抗原としては
、インタクトな微生物、ならびに天然の単離物およびそのフラグメント、または誘導体、
そしてまた天然の微生物抗原に対して同一であるかまたは類似であり、その微生物に特異
的な免疫応答を誘発する合成化合物が挙げられる。化合物は、これが天然の微生物抗原に
対する免疫応答(体液性および/または細胞性)を誘発する場合、天然の微生物抗原と同
様である。このような抗原は、当該分野で慣用的に用いられて、当業者に周知である。
【0150】
この抗原は、核酸ベクターによってコードされる抗原であってもよく、または核酸ベク
ターにコードされなくてもよい。前者の場合、この核酸ベクターは、被験体に投与されて
、抗原がインビボで発現される。後者の場合、この抗原は被験体に直接投与され得る。本
明細書において用いられる、核酸ベクターにコードされない抗原とは、核酸ではない任意
のタイプの抗原をいう。例えば、本発明のある局面では、核酸ベクターにコードされない
抗原はポリペプチドである。ポリペプチド抗原の一次アミノ酸配列のわずかな修飾はまた
、修飾されていない対応のポリペプチドに比較して、実質的に等価な抗原活性を有するポ
リペプチドを生じ得る。このような修飾は、部位特異的突然変異誘発によるような、故意
であってもよいし、または自発性であってもよい。これらの修飾によって生じる全てのポ
リペプチドは、抗原性が存在さえすれば、本明細書に包含される。ポリサッカリド、低分
子、模倣物などのような核酸ベクターによってコードされない他のタイプの抗原は、本発
明内に含まれる。
【0151】
本発明はある実施形態では、抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用
する。抗原は、この抗原がインビボで発現され得るように、この抗原をコードする核酸分
子中で被験体に送達されてもよいことが想定される。核酸ベクター中で被験体に送達され
るこのような抗原は、核酸ベクターによってコードされる抗原と呼ばれる。抗原をコード
する核酸は、真核生物細胞内の抗原の核酸の発現を指向する遺伝子発現配列に対して作動
可能に連結される。この遺伝子発現配列は、任意の調節性ヌクレオチド配列、例えば、プ
ロモーター配列またはプロモーター−エンハンサーの組み合わせであり、それが作動可能
に連結されている抗原核酸の効率的な転写および翻訳を容易にする。この遺伝子発現配列
は、例えば、哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーター、例えば、構成的プロモ
ーターまたは誘導性プロモーターであってもよい。構成的な哺乳動物プロモーターとして
は、限定はしないが、以下の遺伝子のプロモーターが挙げられる:ヒポキサンチンホスホ
リボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナー
ゼ、β−アクチン、および他の構成的プロモーター。真核生物細胞において構成的に機能
する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)
、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト
免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス由来のプロモーター、モロニー白血病
ウイルスおよび他のレトロウイルスの長末端反復配列(LTR)、ならびに単純疱疹ウイ
ルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者
に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとしてはまた、誘導性
プロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターは、誘導性因子の存在下で発現される。
例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で転写および翻訳
を促進するように誘導される。他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。
【0152】
概して、この遺伝子発現配列は、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列
などのように、それぞれ、転写および翻訳の開始に関与する、5’非転写配列および5’
非翻訳配列を必要に応じて含むものとする。特に、このような5’非転写配列は、作動可
能に結合された抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を
含む。この遺伝子発現配列は必要に応じて、エンハンサー配列または上流のアクチベータ
ー配列を所望の場合、含む。
【0153】
この抗原核酸は、遺伝子発現配列に対して作動可能に連結される。本明細書において用
いる場合、この抗原核酸配列および遺伝子発現配列は、それがこの遺伝子発現配列の影響
または制御下でこの抗原コード配列の発現または転写および/または翻訳を行なうように
共有結合された場合、作動可能に連結されたと言われる。2つのDNA配列は、5’遺伝
子発現配列におけるプロモーターの誘導が抗原配列の転写を生じる場合、および2つのD
NA配列の間の結合の性質が(1)フレームシフトの変異の導入を生じず、(2)プロモ
ーター領域が抗原配列の転写を指向する能力を妨害せず、(3)対応するRNA転写物が
タンパク質に翻訳される能力を妨害もしない場合に、作動可能に連結されると言われる。
従って、遺伝子発現配列は、この遺伝子発現配列がその抗原核酸配列の転写を果たし得、
その結果、得られた転写物が所望のタンパク質またはポリヌクレオチドに翻訳される場合
に抗原核酸配列に対して作動可能に連結されるものである。
【0154】
本発明の抗原核酸は、免疫系に対して単独で、またはベクターとともに送達され得る。
広義では、ベクターとは、抗原が免疫細胞の表面上で発現されて提示され得るように、免
疫系の細胞に対する抗原核酸の移入を促進し得る任意のビヒクルである。このベクターは
一般に、ベクターの非存在下で生じる分解の程度に対して低下した分解でもって核酸を免
疫細胞に輸送する。このベクターは必要に応じて、免疫細胞における抗原核酸の発現を増
強するために、上記の遺伝子発現配列を含む。一般に、本発明において有用なベクターと
しては、限定はしないが、プラスミド、ファージミド、ウイルス、この抗原核酸配列の挿
入または取り込みによって操作されているウイルスまたは細菌の供給源に由来する他のビ
ヒクルが挙げられる。ウイルスベクターは、好ましいタイプのベクターであり、そして限
定はしないが、以下のウイルスに由来する核酸配列を含む:レトロウイルス、例えば、モ
ロニーマウス白血病ウイルス、ハービー・マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルスおよ
びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポ
リオーマウイルス;エプスタイン−バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイル
ス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;およびRNAウイルス、例えばレトロウイル
ス。当業者は、ここに挙げていないが当該分野で公知の他のベクターを容易に使用できる

【0155】
好ましいウイルスベクターは、必須でない遺伝子が目的の遺伝子で置換されている、非
細胞変性真核生物ウイルスに基づく。非細胞変性ウイルスはレトロウイルスを含み、その
ライフサイクルは、ゲノムのウイルスRNAのDNAへの逆転写を含み、これには引き続
く宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みを伴う。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治
療のトライアルについて承認されている。最も有用なのは、複製欠損である(すなわち、
所望のタンパク質の合成を指向し得るが、感染性粒子を製造できない)レトロウイルスで
ある。このような遺伝子操作されたレトロウイルス発現ベクターはインビボにおける遺伝
子の高効率の形質導入に一般的有用性を有する。複製欠損レトロウイルスを作製するため
の標準的プロトコール(プラスミドへの外因性の遺伝物質の組み込みと、プラスミドでの
パッケージング細胞株のトランスフェクションと、パッケージング細胞株による組み換え
レトロウイルスの産生と、組織培養培地からのウイルス粒子の収集と、ウイルス粒子での
標的細胞の感染の工程を含む)は、Kriegler、M.、Gene Transfe
r and Expression:A Laboratory Manual、W.H
.Freeman and Co.、New York(1991)and Murra
y、E.J.、Methods in Molecular Biology、vol.
7、Humana Press、Inc.、Cliffton、New Jersey(
1991)に示される。
【0156】
特定の適用のために好ましいウイルスは、二本鎖DNAウイルスであるアデノ随伴ウイ
ルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損となるように操作されてもよく、そして広
範な細胞タイプおよび種に感染し得る。これはさらに利点、例えば、熱および脂質溶媒に
対する安定性;造血細胞を含む多様な系等の細胞での高い形質導入頻度;およびこれによ
って多系列での形質導入が可能になる、重複感染阻害の欠失を有する。報告によれば、ア
デノ随伴ウイルスは、部位指向性の方式であって、これによって挿入の突然変異誘発の可
能性およびレトロウイルス感染の特徴である挿入された遺伝子発現の変動を最小限にする
方式で、ヒトの細胞DNAに組み込み得る。さらに、野性型のアデノ随伴ウイルス感染は
、選択性の圧力の非存在下で100継代を超えて組織培養中で継続されており、このこと
はアデノ随伴ウイルスのゲノムの組み込みが比較的安定な事象であることを意味する。ア
デノ随伴ウイルスはまた、染色体外の方式で機能し得る。
【0157】
他のベクターとしてはプラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは、当該
分野で広く記載されており、そして当業者に周知である。例えば、Sambrookら、
Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二
版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、19
89を参照のこと。ここ2〜3年間で、プラスミドベクターは、複製されず宿主ゲノムへ
組み込まれないという理由で、インビボで細胞に遺伝子を送達するには特に有利であるこ
とが見出されている。しかし、宿主細胞と適合性であるプロモーターを有するこれらのプ
ラスミドは、このプラスミド内で作動可能にコードされた遺伝子からペプチドを発現し得
る。いくつかの一般に用いられるプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pU
C19、pRc/CMV、SV40、およびpBlueScriptが挙げられる。他の
プラスミドが当業者に周知である。さらに、プラスミドは、DNAの特定のフラグメント
を除去および付加するために、制限酵素およびライゲーション反応を用いてカスタム設計
されてもよい。
【0158】
遺伝子を担持するプラスミドが細菌を用いて免疫系に送達され得るということが最近発
見されている。Salmonellaのような細菌の改変型は、プラスミドでトランスフ
ェクトされてもよく、そして送達ビヒクルとして用いられてもよい。細菌送達ビヒクルは
、経口的にまたは他の投与方法によって宿主被験体に投与され得る。細菌は、おそらく、
腸の障壁を通過することによって、免疫細胞、例えば、B細胞およびDCに対してプラス
ミドを送達する。高レベルの免疫防御は、この方法論を用いて達成されている。このよう
な送達方法は、抗原、免疫刺激性核酸および/または他の治療因子の全身送達を利用する
、本発明の局面に有用である。
【0159】
被験体と抗原とを接触させる工程、または被験体に抗原を投与する工程は、免疫刺激性
オリゴヌクレオチドの有効量を投与する前、本質的には同時に、またはその後に行なわれ
得る。例えば、特定の実施形態における免疫刺激性オリゴヌクレオチドの投与は、被験体
と抗原との接触の少なくとも1日前に行う。別の例では、特定の実施形態での免疫刺激性
オリゴヌクレオチドの投与は、被験体と抗原との接触の少なくとも1日後に行う。少なく
とも1日とは、24時間を超えて、最大4週間までを含む任意の時間を含む。個々の実施
形態では、少なくとも1日とは、少なくとも:2日、3日、4日、5日、6日、1週、2
週、3週、または4週である。他の実施形態では、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを投与
することは、抗原との接触または投与の24時間以内に行ってもよい。
【0160】
本発明は1局面では、被験体におけるアレルギー状態を処置するための方法を提供する
。本発明のこの局面による方法は、アレルギー状態を有するか、または発症する危険にあ
る被験体に対して、本発明の組成物の有効量を投与して、このアレルギー状態を処置する
工程を包含する。
【0161】
アレルギー状態を有する被験体とは、アレルゲンに応答するアレルギー性反応を有する
か、またはそれを発症する危険にある被験体である。アレルギー性の状態とは、代表的に
は、アレルゲンに対する曝露によって誘発される偶発性のものである。1実施形態では、
このアレルギー性の状態は、本発明の免疫刺激性組成物の投与の時点で活動的である。
【0162】
アレルギー性の状態を発症する危険にある被験体としては、アレルギー性状態を有する
が、免疫刺激性核酸処置の時点では活動的な疾患を有さないと確認されている被験体、お
よび遺伝的要因または環境要因のせいでアレルギー状態を発症するリスクがあるとみなさ
れる被験体が挙げられる。
【0163】
アレルゲンのリストは、膨大であって、花粉、昆虫の毒液、動物の鱗屑、菌類胞子およ
び薬物(例えば、ペニシリン)を挙げることができる。天然の動物および植物のアレルゲ
ンの例としては、以下の属に特異的なタンパク質が挙げられる:イヌ属(Canis f
amiliaris);Dermatophagoides(例えば、ヤケヒョウヒダニ
(Dermatophagoides farinae));ネコ属(Felis do
mesticus);ブタクサ属(Ambrosia)(Ambrosia artem
iisfolia;ドクムギ属(Lolium)(例えば、Lolium perenn
eおよびLolium multiflorum);スギ属(Cryptomeria)
(Cryptomeria japonica);アルテルナリア属(Alternar
ia)(Alternaria alternata);ハンノキ属(Alder);ハ
ンノキ属(Alnus)(Alnus gultinosa);カバノキ属(Betul
a)(Betula verrucosa);カシ属(Quercus)(Quercu
s alba);オレア属(Olea)(Olea europa);ヨモギ属(Art
emisia)(Artemisia vulgaris);オオバコ属(Planta
go)(例えば、Plantago lanceolata);ヒカゲミズ属(Pari
etaria)(例えば、Parietaria officinalisおよびPar
ietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えば、Blattella
germanica);ミツバチ属(Apis)(例えば、Apis multifl
orum);イトスギ属(Cupressus)(例えば、Cupressus sem
pervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressu
s macrocarpa);ネズミサシ属(Juniperus)(例えば、Juni
perus sabinoides、Juniperus virginiana、Ju
niperus communis、およびJuniperus ashei);クロベ
属(Thuya)(例えば、Thuya orientalis);ヒノキ属(Cham
aecyparis)(例えば、Chamaecyparis obtusa);ワモン
ゴキブリ属(Periplaneta)(例えば、Periplaneta ameri
cana);カモジグサ属(Agropyron)(例えば、Agropyron re
pens);Secale(例えば、Secale cereale);コムギ属(Tr
iticum)(例えば、Triticum aestivum);カモガヤ属(Dac
tylis)(例えば、Dactylis glomerata);ウシノケグサ(Fe
stuca)(例えば、Festuca elatior);イチゴツナギ属(Poa)
(例えば、Poa pratensisおよびPoa compressa);カラスム
ギ属(Avena)(例えば、Avena sativa);シラゲガヤ属(Holcu
s)(例えば、Holcus lanatus);ハルガヤ属(Anthoxanthu
m)(例えば、Anthoxanthum odoratum);オオカニツリ属(Ar
rhenatherum)(例えば、Arrhenatherum elatius);
ヌカボ(コヌカグサ)属(Agrostis)(例えば、Agrostis alba)
;アワガエリ属(Phleum)(例えば、Phleum pratense);クサヨ
シ属(Phalaris)(例えば、Phalaris arundinacea);ス
ズメノヒエ属(Paspalum)(例えば、Paspalum notatum);モ
ロコシ属(例えば、Sorghum halepensis);およびスズメノチャヒキ
属(Bromus)(例えば、Bromus inermis)。
【0164】
本発明は1局面では、被験体における喘息を処置するための方法を提供する。本発明の
この局面による方法は、喘息を有するかまたは喘息を発症する危険にある被験体に対して
、本発明の組成物の有効量を投与して喘息を処置する工程を包含する。1実施形態では喘
息はアレルギー性喘息である。
【0165】
喘息を有する被験体とは、喘息を有するか、またはそれを発症する危険にある被験体で
ある。喘息とは、代表的には偶発性で、ある時点では活動的であり、他の時点では静止状
態である。1実施形態では、喘息は、本発明の免疫刺激性組成物の投与の時点で活動的で
ある。
【0166】
喘息を発症する危険にある被験体としては、喘息を有するが、免疫刺激性核酸処置の時
点では活動的な疾患を有さないと確認されている被験体、および遺伝的要因または環境要
因のせいで喘息を発症するリスクがあるとみなされる被験体が挙げられる。
【0167】
本発明は1局面では、被験体における感染を処置するための方法を提供する。この実施
形態による方法は、感染を有するかまたは感染を発症する危険にある被験体に対して、本
発明の組成物の有効量を投与してこの感染を処置する工程を包含する。
【0168】
感染を有する被験体とは、感染性の病原体に対して曝露されており、身体においてこの
病原体の急性または慢性の検出可能なレベルを有する被験体である。免疫刺激性核酸は、
抗原特異的な全身または粘膜の免疫応答を上昇させるために抗原とともに用いられてもよ
く、これによって感染性病原体のレベルを低下させるかまたは根絶し得る。
【0169】
感染を発症する危険にある被験体とは、特定のタイプの感染性因子が見出される地域で
生活しているか、またはその地域に対する旅行を計画している被験体であってもよい。感
染を発症する危険にある被験体は、ライフスタイル、環境または医学的手順が感染性生物
体に暴露される被験体であってもよい。感染を発症する危険にある被験体としてはまた、
医療機関が特定の感染性生物体抗原でのワクチン接種を推奨する一般的な集団が挙げられ
る。
【0170】
1実施形態では、感染とはウイルス感染である。この方法は特に、本発明の有効量の組
成物がウイルス感染の早期に投与される場合、一本鎖のマイナス−センスRNAウイルス
でのウイルス感染の処置においてさえ有用であり得ると本発明者らは考えている。いかな
る理論にも機構にも束縛されることは意味しないが、本発明の組成物の早期の投与は、ウ
イルスに対する有効な免疫応答をブーストまたは加速して、それによってウイルス感染を
処置すると本発明者らは、考えている。
【0171】
ヒトで見出されているウイルスの例としては、限定はしないが:レトロウイルス科(例
えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV−1(HTLV−III、LAVまたはH
TLV−III/LAV、またはHIV−IIIとも呼ばれる;および他の単離体、例え
ば、HIV−LP;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;
エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カ
リシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を生じる株);トガウイ
ルス科(例えば、ウマ脳症ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デン
グ熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウ
イルス);ラブドウイルス科(例えば、水泡性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィ
ロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフ
ルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);
オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例え
ば、ハンタンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロビウイルス);ア
レナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウ
イルスおよびロタウイルス);ボルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイル
ス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、
ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイ
ルス科(単純疱疹ウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロ
ウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニ
アウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(例えば、アフリカ豚コレラ
ウイルス(アフリカ豚熱ウイルス));および非古典的ウイルス(例えば、δ肝炎の因子
(B型肝炎ウイルスの欠損性サテライトであると考えられる)、C型肝炎;ノーウォーク
および関連のウイルス、およびアストロウイルス)が挙げられる。
【0172】
別の実施形態では、感染は細菌感染である。細菌としては、限定はしないが、パスツレ
ラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌(Staphylococci)種、連鎖
球菌(Streptococcus)種、Escherichia coli、シュード
モナス(Pseudomonas)種、およびサルモネラ(Salmonella)種が
挙げられる。感染性細菌の特異的な例としては、限定はしないが、Helicobact
er pyloris、Borrelia burgdorferi、Legionel
la pneumophilia、Mycobacteria(マイコバクテリア)sp
s(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracell
ulare、M.kansasii、M.gordonae)、Staphylococ
cus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisser
ia meningitidis、Listeria monocytogenes、S
treptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)、Streptococ
cus agalactiae(B群連鎖球菌)、Streptococcus(ビリダ
ンス群)、Streptococcus faecalis、Streptococcu
s bovis、Streptococcus(嫌気性 sps.)、Streptoc
occus pneumoniae、Campylobacter(病原性カンピロバク
ター)sp.、Enterococcus(腸球菌)sp.、Haemophilus
influenzae、Bacillus anthracis、Corynebact
erium diphtheriae、コリネバクテリウム(Corynebacter
ium)sp.、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clo
stridium perfringens、Clostridium tetani、
Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumo
niae、Pasturella multocida、Bacteroides(バク
テロイデス)sp.、Fusobacterium nucleatum、Strept
obacillus moniliformis、Treponema pallidu
m、Treponema pertenue、レプトスピラ(Leptospira)、
リケッチア(Rickettsia)、およびActinomyces israeli
iが挙げられる。
【0173】
別の実施形態では、感染は真菌の感染である。真菌としては、酵母およびカビが挙げら
れる。真菌の例としては、限定はしないが、Aspergillus fumigatu
sを含むAspergillus(アスペルギルス)spp、Blastomyces
dermatitidis、Candida albicansを含むCandida(
カンジダ)spp、Coccidioides immitis、Cryptococc
us neoformans、Histoplasma capsulatum、Pne
umocystis carinii、Rhizomucor spp、およびRhiz
opus spp.が挙げられる。
【0174】
他の感染性微生物(すなわち、原生生物)としては、Plasmodium(プラスモ
ジウム)spp.、例えば、Plasmodium falciparum、Plasm
odium malariae、Plasmodium ovale、およびPlasm
odium vivax、およびToxoplasma gondiiが挙げられる。血
液由来のおよび/または組織の寄生生物としては、Plasmodium(プラスモジウ
ム)spp.、Babesia microti、Babesia divergens
、Chlamydia trachomatis、Leishmania tropic
a、Leishmania spp.、Leishmania braziliensi
s、Leishmania donovani、Trypanosoma gambie
nseおよびTrypanosoma rhodesiense(アフリカ睡眠病)、T
rypanosoma cruzi(シャーガス病)、およびToxoplasma g
ondiiが挙げられる。
【0175】
他の医学的に関連する微生物は、文献に広範に記載されている。例えば、その内容全体
が参照によって本明細書に援用される、C.G.A Thomas、Medical M
icrobiology、Bailliere Tindall、Great Brit
ain 1983を参照。
【0176】
本発明は1局面では、被験体において癌を処置する方法を提供する。本発明のこの局面
による方法は、癌を有するかまたは発症するリスクの被験体に対して、本発明の組成物の
有効量を投与してこの癌を処置する工程を包含する。
【0177】
癌を有する被験体とは、検出可能な癌細胞を有する被験体である。癌とは、悪性の癌で
あっても非悪性の癌であってもよい。癌または腫瘍としては、限定はしないが、胆道癌;
脳腫瘍;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;
リンパ腫;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);黒色腫;神経芽細胞腫;口
腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;腎臓癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;および甲状
腺癌、ならびに他の癌腫および肉腫が挙げられる。1実施形態では、癌は毛状細胞白血病
(hairy cell leukemia)、慢性骨髄性白血病、皮膚T−細胞白血病
、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、扁平上皮細胞癌、腎細胞癌、前立腺癌、
膀胱細胞癌、または結腸癌である。
【0178】
癌を発症するリスクの被験体とは、癌を発症する可能性が高い被験体である。これらの
被験体としては、例えば、遺伝的異常であってその存在は癌を発症する可能性の高さと相
関関係を有することが示されているかまたは有することが実証され得る異常を有する被験
体、およびタバコ、アスベストまたは多の化学的毒素のような癌発症因子に曝された被験
体、または癌について以前に処置されており明白に寛解している被験体が挙げられる。癌
を発症するリスクの被験体を、この被験体が発症する危険にあるタイプの癌に特異的な抗
原および免疫刺激性核酸で処置した場合、この被験体は、癌が発症した場合この癌細胞を
殺傷し得る。この被験体内で腫瘍が形成し始めた場合、この被験体は、この腫瘍抗原に対
して特異的な免疫応答を発達させる。
【0179】
(スクリーニング方法)
本発明は、別の局面では、TLRのアンタゴニストをスクリーニングするための方法を
提供する。本発明のこの局面による方法は、TLRを発現する参照細胞と本発明の組成物
の有効量とを、TLRの候補アンタゴニストの非存在下で接触させて、TLRによるシグ
ナル伝達の参照量を測定する工程と;TLRを発現する試験細胞とこの組成物の有効量と
を、TLRの候補アンタゴニストの存在下で接触させて、TLRによるシグナル伝達の試
験量を測定する工程と;シグナル伝達の参照量がシグナル伝達の試験量を超える場合、T
LRのこの候補アンタゴニストがTLRのアンタゴニストであることを確認する工程とを
包含する。参照細胞および試験細胞は各々が、上記のように、TLRを天然に発現しても
、または人工的に発現してもよい。1実施形態では、参照細胞および試験細胞は各々が、
細胞の共通の集団、例えば、単一のドナーから採取されたPBMC、またはTLRについ
ての発現ベクターで安定にトランスフェクトされた293HEK細胞の代表である細胞で
ある。種々の特異的な実施形態では、TLRは、TLR8、TLR7、またはTLR3か
ら選択され得る。
【0180】
(免疫刺激性効果の測定)
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドの免疫刺激性効果は、インビトロまたはインビ
ボで任意の適切な方法を用いて測定され得る。このような測定の基礎は、細胞増殖;限定
はしないが特にTLRシグナル伝達を含む細胞内シグナル伝達;可溶性の産物、例えば、
サイトカイン、ケモカインまたは抗体の発現;表面抗原分類(CD)抗原のような細胞表
面マーカーの発現;またはアポトーシスおよびNK細胞の細胞傷害性のような機能的活性
;の測定に関与し得る。このようなタイプの測定を行うための方法は、当該分野で周知で
あり、そしてこれには、限定はしないが、トリチウムチミジンの取り込み、酵素結合免疫
吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、バイオアッセイ、蛍光
活性化細胞分類、イムノブロット(ウエスタンブロット)アッセイ、ノーザンブロットア
ッセイ、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(
TUNEL)アッセイ、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイ、
およびクロム遊離アッセイを挙げることができる。測定は、定量的であっても定性的であ
ってもよい。
【0181】
特定の実施形態では、測定は、Th1様免疫応答に特異的に行われる。このような測定
は、上記のような、Th1様免疫応答と関連している特定のサイトカイン、ケモカイン、
抗体アイソタイプ、および細胞活性の測定を包含し得る。
【0182】
1実施形態では、測定は、特にTLRシグナル伝達活性について行われる。このような
測定は、直接的でも間接的でもよく、代表的には、それらの測定は、TLRによって媒介
される細胞内シグナル伝達経路のいくつかの成分によって影響される遺伝子の発現または
活性の測定を包含する。
【0183】
ヒトおよびマウスのTLR8のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が公知である。例えば
、その全ての内容が参照によって全体として本明細書に援用される、GenBankアク
セッション番号AF246971、AF245703、NM_016610、XM_04
5706、AY035890、NM_133212;およびAAF64061、AAF7
8036、NP_057694、XP_045706、AAK62677、およびNP_
573475を参照のこと。ヒトTLR8は、1つは1041アミノ酸長であって、もう
一方は1059アミノ酸長である少なくとも2つのアイソマー、に存在することが報告さ
れる。マウスTLR8は、1032アミノ酸長である。TLR8ポリペプチドは、ロイシ
ン−リッチリピート領域を有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよびTIRドメイン
を含む細胞内ドメインを含む。
【0184】
ヒトおよびマウスのTLR7のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は公知である。例えば
、その全ての内容が参照によって全体として本明細書に援用されるGenBankアクセ
ッション番号、AF240467、AF245702、NM_016562、AF334
942、NM_133211;およびAAF60188、AAF78035、NP_05
7646、AAL73191、およびAAL73192を参照のこと。ヒトTLR7は、
1049アミノ酸腸であることが報告されている。マウスTLR8は1050アミノ酸長
であることが報告されている。TLR7ポリペプチドは、ロイシン−リッチリピート領域
を有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよびTIRドメインを含む細胞内ドメインを
含む。
【0185】
ヒトおよびマウスのTLR3のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は公知である。例えば
、その全ての内容が参照によって全体として本明細書に援用されるGenBankアクセ
ッション番号、NM_003256およびU88879(ヒト、cDNA);NP_00
3256およびAAC34134(ヒト、アミノ酸);NM_126166およびAF3
55152(マウス、cDNA);およびNP_569054およびAAK26117(
マウス、アミノ酸)。ヒトTLR3は、ロイシン−リッチリピートを有する細胞外ドメイ
ン、膜貫通ドメインおよびインターロイキン1型レセプターのファミリーのシグナル伝達
ドメインと同様の細胞内セグメントによって少なくとも一部は特徴付けられる904アミ
ノ酸のポリペプチドである。マウスTLR3は、ロイシン−リッチリピートを有する細胞
外ドメイン、膜貫通ドメインおよびインターロイキン1型レセプターのファミリーのシグ
ナル伝達ドメインと同様の細胞内セグメントによって少なくとも一部は特徴付けられる9
05アミノ酸のポリペプチドである。
【0186】
TLRによるシグナル伝達は、他のTLRファミリーのメンバーによるシグナル伝達と
同様に、NF−κB活性化を生じる。TLRシグナル伝達は最近、いくつかの他のTLR
ファミリーのメンバーによるシグナル伝達よりもいくらか複雑であることが報告されてい
る。詳細には、TLR3は、MyD88に依存してシグナル伝達経路を通じたサイトカイ
ン産生を誘導するが、ポリ(I:C)は依然として、MyD88−依存性マクロファージ
におけるNF−κBおよびMAPキナーゼの活性化を誘導し得、さらに、NF−κBおよ
びMAPキナーゼのTLR3媒介性活性化が報告によれば、シグナル伝達成分TLR3、
TRAF6、TAK1、TAB2、およびプロテインキナーゼRNA−調節(PKR)を
使用するIRAK依存性経路を通じて生じ得る。Jiang Zら(2003)J Bi
ol Chem 278:16713〜9。TLR3シグナル伝達機構のいくつかの特異
的な詳細にかかわらず、TLR3シグナル伝達は、NF−κB活性化を生じることに注目
すべきである。
【0187】
(投薬および投与)
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独で用いられてもよいし、それ自体と組
み合わされてもよいし、別の因子と組み合わされてもよいし、またはそれ自体とそして別
の因子と組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される結合体に加えて、別の因
子と組み合わせた免疫刺激性オリゴヌクレオチドはまた、所望の効果を達成するために一
緒に用いられる、別々の組成物であってもよい。例えば、免疫刺激性オリゴヌクレオチド
および第二の因子は、一緒に混合されて、そして被験体に投与されてもよく、または組み
合わせとして細胞と接触させられてもよい。別の例としては、免疫刺激性オリゴヌクレオ
チドおよび第二の因子は、被験体に投与されても、種々の時点で細胞と接触させられても
よい。さらに別の例として、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび第二の因子は、種々の
投与部位で被験体に投与されてもよい。
【0188】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび/または抗原および/または他の治療剤は、単独
で(例えば、生理食塩水または緩衝液中で)、または当該分野で公知の任意の送達ビヒク
ルを用いて投与され得る。例えば、以下の送達ビヒクルが記載されている:蝸牛状物(c
ochleate)(Gould−Fogeriteら、1994、1996);エマル
ゾーム(emulsome)(Vancottら、1998、Lowellら、1997
);ISCOM(Mowatら、1993、Carlssonら、1991、Hu et
.、1998、Moreinら、1999);リポソーム(Childersら、199
9、Michalekら、1989、1992、de Haan 1995a、1995
b);生きた細菌ベクター(例えば、Salmonella、Escherichia
coli、カルメット・ゲラン桿菌(bacillus Calmette−Gueri
n)、Shigella、Lactobacillus)(Honeら、1996、Po
uwelsら、1998、Chatfieldら、1993、Stoverら、1991
、Nugentら、1998);生きたウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノ
ウイルス、単純疱疹(ヘルペス))(Gallichanら、1993、1995、Mo
ssら、1996、Nugentら、1998、Flexnerら、1988、Morr
owら、1999);マイクロスフェア(Guptaら、1998、Jonesら、19
96、Maloyら、1994、Mooreら、1995、O’Haganら、1994
、Eldridgeら、1989);核酸ワクチン(Fynanら、1993、Kukl
inら、1997、Sasakiら、1998、Okadaら、1997、Ishiiら
、1997);ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、キトサン)(Hama
jimaら、1998、Jabbal−Gillら、1998);ポリマー環(Wyat
tら、1998);プロテオソーム(Vancottら、1998、Lowellら、1
988、1996、1997);フッ化ナトリウム(Hashiら、1998);トラン
スジェニック植物(Tacketら、1998、Masonら、1998、Haqら、1
995);ビロゾーム(Gluckら、1992、Mengiardiら、1995、C
ryzら、1998);ウイルス様粒子(Jiangら、1999、Leiblら、19
98)。他の送達ビヒクルが当該分野で公知である。
【0189】
上記のように、「有効量(effective amount)」という用語は一般に
、所望の生物学的効果をもたらすのに必要であるかまたは十分である量をいう。本明細書
に提供される教示と組み合わせれば、種々の活性化合物のなかでの選択、ならびに、力価
、相対的なバイオアベイラビリティー、患者の体重、有害な副作用の重篤度および好まし
い投与形態のような因子の重み付けによって、実質的な毒性を生じず、さらに特定の被験
体を処置するのに完全に有効である、有効な予防的または治療的な処置レジメンが計画さ
れ得る。任意の特定の適用のための有効量は、処置されている疾患または状態、投与され
る特定のオリゴヌクレオチド、被験体のサイズまたは疾患もしくは状態の重篤度のような
因子に依存し得る。当業者は、特定の免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび/または抗原
および/または他の治療因子の有効量を過度の実験の必要性なしに経験的に決定し得る。
【0190】
全身的または局所的な送達のための本明細書に記載される化合物の対象用量は代表的に
は、1投与あたり約10ng〜10mgの範囲におよび、これは、適用次第で、毎日、毎
週または毎月、そしてその間の任意の他の時間量で、またはそうでなければ必要時に投与
されてもよい。さらに代表的には全身用量または局所用量は、1投与あたり約1μg〜1
mg、そして最も代表的には約10μg〜100μgにおよび、2〜4回の投与が数日ま
たは数週間離れて行われる。非経口投与にはより高用量が必要とされ得る。しかし、ある
実施形態では、これらの目的のための非経口投与は、上記での代表的な用量よりも5〜1
0,000倍高い範囲で用いられてもよい。
【0191】
本明細書に記載される任意の化合物について、治療上有効な量は、動物モデルから最初
に決定され得る。投与量は、投与される化合物の相対的なバイオアベイラビリティーおよ
び投与される化合物の力価に基づいて調節され得る。上記の方法および当該分野で周知の
他の方法に基づいて最大の有効性を達成するための用量の調節は、当業者の能力の十分に
範囲内である。
【0192】
(投与経路)
臨床的使用のためには、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独で投与されて
もよいし、または所望の治療的結果を達成するのに有効である任意の適切な投与経路を介
して送達複合体として処方されてもよい。投与経路としては、経腸的および非経口的な投
与経路が挙げられる。経腸的な投与経路の例としては、経口、胃、腸内および直腸が挙げ
られる。非経口的な投与経路の非限定的な例としては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、
クモ膜下腔内、局所注射、局所、鼻腔内、粘膜および肺が挙げられる。
【0193】
(処方物)
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、被験体に対して直接投与されてもよいし、
または核酸送達複合体と組み合わせて投与されてもよい。核酸送達複合体は、標的化手段
(例えば、標的細胞に対してより高い親和性を生じる分子)と会合された(例えば、イオ
ン的にまたは共有結合的に結合するか;またはその中にカプセル化されて)核酸分子を意
味するものとする。核酸送達複合体の例としては、ステロール(例えば、コレステロール
)、脂質(例えば、カチオン性脂質、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、またはリ
ポソーム)または標的細胞特異的な結合因子(例えば、標的細胞特異的なレセプターによ
って認識されるリガンド)と会合した核酸が挙げられる。好ましい複合体は、標的細胞に
よる内部移行の前に有意なカップリングを妨げるようにインビボで十分に安定であり得る
。しかし、この複合体は、オリゴヌクレオチドが機能的な形態で放出されるように、細胞
内の適切な条件下で切断され得る。
【0194】
経口投与については、化合物(すなわち、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、抗原および
/または他の治療因子)は、活性化合物(単数または複数)と当該分野で周知の薬学的に
受容可能なキャリアとを組み合わせることによって容易に処方され得る。このようなキャ
リアによって、本発明の化合物は、処置されるべき被験体による経口摂取のために錠剤、
丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして処方す
ることが可能になる。経口使用のための薬学的な調製物は、所望の場合、錠剤または糖衣
錠コアを得るために、安定な補助剤の添加後に、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し
、顆粒の混合物を加工して、固体の賦形剤として得られてもよい。適切な賦形剤は詳細に
は、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む
糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジ
ャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメ
チルセルロース、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウムおよび/またはポリビニ
ルピロリドン(PVP)などである。所望の場合、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロ
リドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムが添加され
てもよい。必要に応じて経口処方物はまた、内部の酸性状態を中和するための生理食塩水
もしくは緩衝液に処方されてもよく、または任意のキャリア内で投与されてもよい。
【0195】
糖衣錠のコアは、適切なコーティングを設けられる。この目的のために、濃縮された糖
溶液が用いられてもよく、これは必要に応じて、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリ
ドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッ
カー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料が、
同定のために、または活性化合物の用量の種々の組み合わせを特徴付けるために、錠剤ま
たは糖衣錠のコーティングに加えられてもよい。
【0196】
経口的に用いられ得る薬学的調製物としては、ゼラチン製の押込み型のカプセル、なら
びにゼラチンおよび可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトールから作成された軟
性の密閉されたカプセルが挙げられる。この押込み型のカプセルは、ラクトースのような
充填剤、デンプンのような結合剤、および/または、滑石もしくはステアリン酸マグネシ
ウムのような潤滑剤、および必要に応じて安定化剤と混合して活性成分を含んでもよい。
軟性のカプセルでは、活性化合物は、適切な液体、例えば、脂肪油、液体パラフィンまた
は液体ポリエチレングリコール中に溶解されても、または懸濁されてもよい。さらに、安
定化剤が添加されてもよい。経口投与のために処方されたマイクロスフェアも用いられて
もよい。このようなマイクロスフェアは、当該分野で十分に規定されている。経口投与の
ための全ての処方物が、このような投与のために適切な糖衣錠中であるべきである。
【0197】
口腔投与のためには、この組成物は、従来の様式で処方された錠剤またはトローチ剤(
lozenge)の形態をとってもよい。
【0198】
この化合物は、肺の気道に対する、特には気管支そしてさらに詳細には肺深部の肺胞へ
の、標準的な吸入デバイスを用いた吸入によって投与されてもよい。この化合物は、圧縮
パックまたはネブライザーからのエアロゾル噴霧提示の形態で、適切な噴霧剤、例えば、
ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、
二酸化炭素、または他の適切なガスの使用とあわせて、送達され得る。圧縮されたエアロ
ゾルの場合、投与単位は、一定量を送達するためのバルブを設けることによって決定され
得る。吸入装置は、被験体に化合物を送達するために用いられ得る。本明細書において用
いる場合、吸入装置とは、エアロゾル、例えば、化合物の乾燥粉末型を投与するための任
意のデバイスである。このタイプの装置は、当該分野で周知であり、そしてReming
ton:The Science and Practice of Pharmacy
、第19版、1995、Mac Publishing Company、Easton
、Pennsylvania、1676〜1692頁に見出される説明のように詳細に記
載されている。米国特許第6,116,237号のような、多くの米国特許も、吸入デバ
イスを記載している。
【0199】
「粉末(powder)」とは、本明細書において用いる場合、微細に分散された固体
粒子からなる組成物をいう。好ましくは、この化合物は、比較的自由流動し、吸入デバイ
スに分散され得、そして引き続いて被験体によって吸入されて、その結果その化合物は肺
に到達して、肺胞への浸透が可能になる。「乾燥粉末(dry powder)」とは、
この粒子がエアロゾルを形成する吸入デバイスに容易に分散可能であるような含水量を有
する粉末組成物をいう。この含水量は一般に、水が約10重量%(%w)未満であり、そ
してある実施形態では、約5重量%未満、そして好ましくは約3重量%未満である。この
粉末は、ポリマーと処方されてもよく、または必要に応じて、他の物質、例えば、リポソ
ーム、アルブミンおよび/または他のキャリアとともに処方されてもよい。
【0200】
エアロゾル投与および送達系は、例えば、Gonda、I.「Aerosols fo
r delivery of therapeutic and diagnostic
agents to the respiratory tract,」Critic
al Reviews in Therapeutic Drug Carrier S
ystems、6:273〜313(1990)、およびMoren、「Aerosol
dosage forms and formulations,」 Aerosol
s in Medicine.Principles、Diagnosis and T
herapy、Morenら編、Elsevier、Amsterdam、1985に記
載されるように、当業者による特定の治療適用のために選択され得る。
【0201】
この化合物は、それを全身に送達することが所望される場合、注射による、例えば、ボ
ーラス注射または連続注入による、非経口投与のために処方され得る。注射用処方物は、
単位用量の剤形で、例えば、アンプル中にまたは多用量の容器中に、添加された防腐剤と
ともに存在してもよい。この組成物は、油状または水性のビヒクル中で、懸濁液、溶液ま
たはエマルジョンのような形態をとってもよく、そして懸濁剤、安定化剤および/または
分散剤のような処方因子を含んでもよい。
【0202】
非経口投与のための薬学的処方物としては、水溶性型での活性化合物の水溶液が挙げら
れる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油状の注射懸濁液として調製されてもよい
。適切な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂
肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが
挙げられる。水性の注射溶液は、懸濁液の粘度を増大する物質、例えば、カルボキシルメ
チル・セルロース・ナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含んでもよい。必要
に応じて、この懸濁液はまた、適切な安定化剤、または化合物の溶解度を向上して高度に
濃縮された溶液の調製を可能にする因子を含んでもよい。
【0203】
あるいは、この活性化合物は、適切なビヒクル、例えば、滅菌のパイロジェンフリーの
水との、使用前の、構成のために粉末型であってもよい。
【0204】
この化合物はまた、例えば、従来の坐剤の基剤、例えば、ココアバターまたは他のグリ
セリドを含む、坐剤または滞留式浣腸のような、直腸または膣の組成物に処方されてもよ
い。
【0205】
以前に記載された処方物に加えて、この化合物はまた、デポ調製物として処方されても
よい。このような長時間作用性処方物は、適切なポリマー性もしくは疎水性の物質(例え
ば、受容可能なオイル中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂とともに、また
は難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として処方されてもよい。
【0206】
この薬学的組成物はまた、適切な固相またはゲル相のキャリアまたは賦形剤を含んでも
よい。このようなキャリアまたは賦形剤の例としては、限定はしないが、炭酸カルシウム
、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー
、例えばポリエチレングリコールが挙げられる。
【0207】
適切な液体または固体の薬学的調製物の形態は、例えば、吸入のための水性もしくは生
理食塩水の溶液であるか、マイクロカプセル化されるか、エンコヒレート(encoch
leate)化されるか、顕微鏡的に金粒子上にコーティングされるか、リポソームに含
まれるか、噴霧されるか、エアロゾルであるか、皮膚への移植のためのペレットであるか
、または皮膚にスクラッチされる先鋭な物体上に乾燥される。薬学的組成物としてはまた
、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマ
ルジョン、懸濁液、クリーム、ドロップまたは活性化合物の持続的な放出を伴う調製物で
あって、その調製物の賦形剤および添加物および/または補助剤、例えば、崩壊剤、結合
剤、コーティング剤、膨張剤、潤滑剤、香味料、甘味料または可溶化剤が上記のように習
慣的に用いられる調製物が挙げられる。薬学的組成物は、種々の薬物送達系における使用
のために適切である。薬物送達のための方法の簡潔な概説については、参照によって本明
細書に援用される、Langer R(1990)Science 249:1527〜
33を参照のこと。
【0208】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび必要に応じて他の治療剤および/または抗原は、
それ自体で(そのままで)、または薬学的に受容可能な塩の形態で投与されてもよい。医
薬中で用いられる場合、塩は、薬学的に受容可能でなければならないが、薬学的に受容可
能でない塩が、その薬学的に受容可能な塩を調製するために都合よく用いられ得る。この
ような塩としては、限定はしないが、以下の酸から調製される塩が挙げられる:塩酸、臭
化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン
酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2
−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、このような塩は、アルカリ金属または
アルカリ土類金属、例えば、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩と
して調製され得る。
【0209】
適切な緩衝剤としては:酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3
%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0
.8〜2%w/v)が挙げられる。適切な防腐剤(保存剤)としては、塩化ベンザルコニ
ウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v)
;パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02
%w/v)が挙げられる。
【0210】
本発明の薬学的組成物は、有効量の免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび必要に応じて
抗原および/または必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアに含まれる他の治療剤を含
む。薬学的に受容可能なキャリアという用語は、ヒトまたは他の脊椎動物に対する投与に
適切である1つ以上の適合性の固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を
意味する。キャリアという用語は、適用を容易にするための活性成分が組み合わされる、
天然または合成の、有機または無機の成分をいう。薬学的組成物の成分はまた、本発明の
化合物と、そしてお互いに、所望の薬学的な有効性を実質的に障害する相互作用のない様
式で混ぜ合わされてもよい。
【0211】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、これはさらなる限定として解釈
されるべきではない。
【実施例】
【0212】
(実施例1)
(TLRシグナル伝達を検出するためのインビトロの方法)
ヒトTLRおよびNF−κB−ルシフェラーゼレポーター構築物(hTLR3−NFκ
B−293)で安定にトランスフェクトされたHEK293細胞上でNF−κB−ルシフ
ェラーゼ読み取りによって免疫刺激に関する分析を行った。要するに、細胞を免疫刺激性
オリゴヌクレオチドまたは他の試験因子またはコントロールの因子と、所定の期間、代表
的には16時間、接触させ、次いで、照度計で分析した。放射光は、NF−κB活性化に
直接比例して変化した。
【0213】
免疫刺激のための分析も、ヒト末梢血単球性細胞(PBMC)アッセイで、TNF−α
、IFN−α、およびIL−12 p40サイトカイン産生について行った。要するに、
健常なヒトドナーから得たPBMCを、免疫刺激性オリゴヌクレオチドまたは他の試験因
子またはコントロールの因子と所定の期間、代表的には16時間、接触させ、次いで、細
胞上清を、適切なサイトカイン特異的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用い
てサイトカインについて分析した。
【0214】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドの効果は、所定の実験でオリゴヌクレオチド濃度の量ま
たは濃度を滴定することによって評価した。免疫刺激性オリゴヌクレオチド濃度の効果は
、EC50(免疫刺激性オリゴヌクレオチドが最大効果に比較して50%有効である濃度
)として表した。所定の免疫刺激性オリゴヌクレオチドの力価を、最大刺激指数(SIマ
ックス;最大倍数は未処理のコントロールのものを超えるシグナルで増大する)または最
大活性として表した。
【0215】
(実施例2)
(オルトミクソウイルス科)
以下は、オルトミクソウイルス科のファミリーに属する以下のウイルスの3’末端(左
から右に読んで、5’から3’を示す、末端の26マー)を列挙する。ダッシュ(−)は
、示した位置での、インフルエンザA PR/8/34(Cambridge)H1N1
PB2との配列同一性を示す。
【0216】
【数21】

【0217】
【数22】

(実施例3)
(パラミクソウイルス科)
以下は、パラミクソウイルス科のファミリーに属する以下のウイルスの3’末端(左か
ら右に読んで、5’から3’を示す、末端の20マー)を列挙する。ダッシュ(−)は、
示した位置での、センダイ(Sendai)ウイルスとの配列同一性を示す。
【0218】
【数23】

(実施例4)
(フラビウイルス科)
以下は、フラビウイルス科のファミリーに属する以下のウイルスの3’末端(左から右
に読んで、5’から3’を示す、末端の24マー)を列挙する。ダッシュ(−)は、示し
た位置での、マーブルグ(Marburg)ウイルスとの配列同一性を示す。
【0219】
【数24】

(実施例5)
(ヒトPBMCは、一本鎖マイナス−センスRNAウイルスのゲノムRNAの3’末端
の代表的な安定化されたORNに応答してサイトカインを分泌する)
一本鎖のネガティブ鎖RNAウイルスの3’ゲノムのRNAが免疫刺激性であるか否か
に関する仮説を試験した。5つの実験ウイルスから20マーのオリゴヌクレオチド(OR
N)を選択して、ホスホロチオエート骨格と化学的に合成した。コントロール配列として
、配列特異性を実証するために、インフルエンザA配列の相補的な鎖を用いた(ORN5
)。この試験配列を、インビトロ培養物中でヒトPBMCに用量滴定して、サイトカイン
の放出パターンをモニターした。用量滴定の結果を分析して、EC50および最大のサイ
トカイン放出値を得た。全ての試験配列は免疫刺激的であったが、コントロール配列はそ
うではなかった。このデータによって、一本鎖のネガティブ鎖RNAウイルスの3’のゲ
ノムRNAが、配列依存性の様式で免疫刺激性であることが実証される。
【0220】
健常な男性または女性のヒトのドナー由来の末梢血バフィーコート調製物は、Univ
ersity of Dusseldorf(Germany)のBlood Bank
から入手して、これから、Ficoll−Hypaque(Sigma)での遠心分離に
よってPBMCを精製した。精製されたPBMCは、あらゆるアッセイ中で新鮮に用い、
従って、5%(v/v)熱不活性化ヒトAB血清(BioWhittaker、Belg
ium)または10%(v/v)熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)、1.5mM L−グ
ルタミン、100U/ml ペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(全
てSigma由来)を補充したRPMI 1640培養培地中に再懸濁した。
【0221】
新鮮なPBMCは、3×10/ml〜5×10/mlの濃度で再懸濁して、96−
ウェルの丸底プレート(150μl/ウェル)に添加した。細胞をプレートした後、オリ
ゴリボヌクレオチド(ORN)に加えてDOTAPを、3倍階段希釈を用いて、種々の時
点で添加した。DOTAPの出発濃度は、50μg/mlで、ORNについては5μMで
あった。湿式インキュベーター中で37℃で細胞を培養した。培養上清を16時間後に収
集して、直ちに用いない場合は、必要になるまで−20℃で凍結させた。
【0222】
上清中のサイトカインの定量的分析は、市販の抗体(それぞれ、Becton Dic
kinson/PharmingenまたはPBL;GermanyまたはUSAより)
を用いて発色させた、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(IFN−
γまたはTNF−α;Diaclone、USA、IL−12 p40;Pharmin
gen)または独自仕様のELISA(IFN−α)を用いて評価した。代表的な結果を
表2〜4に示す。
【0223】
【数25】

【0224】
【数26】

(実施例6)
(4マーのモチーフについての原理の証明)
本実施例は、提唱された4マーのモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’の免疫
刺激能を実証する。原理の証明のためには、UUGUまたはUUUUから選択された4マ
ーのRNAモチーフを、各々のNが独立して任意の塩基A、G、U、またはCであるホス
ホロチオエートポリN組成物内でネスト化した。この骨格は、RNA骨格またはキメラR
NA:DNA骨格のいずれかから構成され、このNはRNAを示し、dNはDNAを示す
。オリゴヌクレオチドは、以下を含んだ:
【0225】
【数27】

ヒトPBMCを、実施例5に記載されたのと同様に刺激して、サイトカイン産生について
アッセイした。代表的な結果を表5〜7に示す。
【0226】
【数28】

【0227】
【数29】

(実施例7)
(キメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドによるサイトカイン誘導)
本実施例は、本発明の特定のキメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドがヒトPBMC
によるサイトカイン分泌を刺激する能力を記載する。サイトカインの誘導および検出は、
オリゴヌクレオチドとして以下のキメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドを用いて、実
施例5に記載されるように行ったが、ここでdT、dC、dG、およびdAはデオキシリ
ボヌクレオチドを示しGおよびUは、リボヌクレオチドを示す。
【0228】
【数30】

ORN12およびORN13は両方とも、ホスホロチオエート骨格を有する。さらに、O
RN12は排他的に3’−5’ヌクレオチド間結合を有するが、ORN13は、GUUG
UGUdAを相互接続する2’−5’ヌクレオチド間結合を有する。代表的な結果を表8
〜10に示す。
【0229】
【数31】

【0230】
【数32】

(実施例8)
(キメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドによるTLR刺激)
本実施例は、キメラRNA:DNA結合体オリゴヌクレオチドによるTLR8およびT
LR9と、排他的に3’−5’ヌクレオチド間結合を有するホスホロチオエート骨格との
組み合わせた刺激を実証する。ヒトTLR8またはヒトTLR9およびNF−κB−ルシ
フェラーゼレポーター構築物のいずれかで安定にトランスフェクトされたHEK293細
胞において、シグナル形質導入の刺激および測定を、実施例1に本質的に記載されるとお
り行った。キメラRNA:DNAオリゴヌクレオチドは実施例7に示したとおりであった
。結果を表11に示す。結果は、EC50(μM)として表し、刺激指数(SI)=リガ
ンド−パルスした細胞におけるNF−κB−ルシフェラーゼ活性の誘導倍数。
【0231】
【数33】

キメラRNA:DNAオリゴヌクレオチド ORN12は、TLR8およびTLR9を
通じて効果的に作用した。しかし、ORNにおける内部リボヌクレオチド結合が、2’−
5’(ORN 13)に変化された場合、TLR8活性は失われたが、TLR9活性は維
持された。この結果によって、TLRについて1つおよびTLR9について1つという、
2つのTLRモチーフを有するおかげでこのキメラは、それぞれのレセプターを特異的に
刺激することができるということが実証される。
【0232】
(実施例9)
(新規な免疫刺激性プロフィールを有するRNA含有オリゴヌクレオチドへのCpGオ
リゴデオキシヌクレオチドの変換)
本実施例によって、TLR9を刺激する能力を反映する免疫刺激性プロフィールを有す
るCpGオリゴデオキシヌクレオチドが、特定のリボヌクレオチドによる特定のデオキシ
ヌクレオチドの置換によって、TLR7および/またはTLR8を刺激する能力の反映で
あると考えられる新規でかつさらなる免疫刺激性特性を有するように改変され得るという
ことが実証される。また、この実施例で示されるとおり、極めてよく特徴付けられたCp
Gオリゴヌクレオチドでさえ、この方式で改変され得る。
【0233】
CpG ODN 2006(5’−tcgtcgttttgtcgttttgtcgt
t−3’、配列番号285)、ODN 10101(5’−tcgtcgttttcgg
cggccgccg−3’、配列番号288)、およびODN 8954(5’−ggg
gatgatgttgtggggggg−3’、配列番号_)の配列を、出発位置として
とった。これらのCpG ODNは、TをUで、CをUで、またはTおよびCの両方をU
で置換することによってORNとして再製した。ODN 2006、10101、および
8954に相当する、得られたORNは、ORN 14〜16、ORN 17〜18、そ
してORN 19〜20であった。
【0234】
【数34】

ヒトPBMCを刺激して、実施例5に記載されるのと同様にサイトカイン産生について
アッセイした。代表的な結果を表12および13に示す。
【0235】
【数35】

【0236】
【数36】

(実施例10)
(4マーモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’の原理のさらなる証明)
本実施例は、UUGUおよびUUUUから選択された4マーのRNAモチーフを用いて
、非免疫刺激性ORNを免疫刺激性ORNになるように変換させることができることを示
すことによって、実施例6における観察を拡大する。免疫刺激性活性を示さないORN2
1を出発位置としてとった。次いで、UUGU(ORN 22)またはUUUU(ORN
23)を保有する関連のORNを合成して、アッセイで用いて、それらの免疫刺激性活
性を評価した。
【0237】
【数37】

ヒトPBMCを、実施例5に記載されるのと同様に刺激して、サイトカイン産生につい
てアッセイした。代表的な結果を表14および15に示す。
【0238】
【数38】

【0239】
【数39】

(実施例11)
(4マーモチーフ5’−C/U−U−G/U−U−3’の原理のさらなる証明)
本実施例はさらに、4マーのRNAモチーフの3マーへの減少が免疫刺激性活性の劇的
な消失を生じることを示すことによって、実施例6および11における観察を拡大する。
ランダム配列デオキシヌクレオチドの状況に組み込まれるRNA配列GUUGUGUで開
始して、リボヌクレオシドは、dNデオキシヌクレオシドに首尾よく変化された。以下の
データからわかるとおり、4マーのモチーフUUGUはこの実験では活性であったが、3
マーのUUGおよび2マーのUGは活性ではなかった。
【0240】
【数40】

ヒトPBMCを、実施例5に記載されるのと同様に刺激して、サイトカイン産生につい
てアッセイした。代表的な結果を表16および17に示す。
【0241】
【数41】

【0242】
【数42】

(実施例12)
(ウイルス由来のORNは、ヒトPBMC由来のサイトカインの広範なパターンを刺激
する)
ヒトPBMCを、2.5μMのORNに加えてDOTAP、DOTAP単独、2.5μ
MのR−848、25ng/mlのLPS、または0.5μMのCpG ODN 239
5(5’−TCGTCGTTTTCGGCGCGCGCCG−3’、配列番号343)で
刺激した。この実験で用いたORNは、ORN 4およびORN 5(実施例5、上記)
を含んだ。上清を刺激の16時間後に回収して、種々のELISAに用いた。結果を図1
に示す。この図で示されるように、インフルエンザウイルスに由来するORN4による免
疫刺激のプロフィールは、TNF−α、IL−6、IL−12 p40、IFN−α、お
よびIFN−γの誘導を含んで、極めて広範であり、CpG ODN 2395の特徴的
なプロフィールとは別個であった。
【0243】
(実施例13)
(ウイルス由来のORNは、インビボでサイトカイン産生を刺激する)
マウスに50μgのORN21(実施例10を参照のこと)、ORN 3(実施例5を
参照のこと)、またはORN 35(5’−CCGUCUGUUGUGUGACUC−3
’、配列番号344)を、各々のORNを100μgのDOTAP、またはDOTAP単
独と組み合わせて、注射した。マウスを、注射後1時間または3時間で採血して、IL−
12およびIP−10に特異的な別々のELISAを行った。結果を図2(IL−12)
および図3(IP−10)に示す。サイトカイン誘導の存在によって、ORNによる配列
依存性の様式での免疫刺激が実証された。さらに、ORNは、疾患に対する免疫調節性の
処方物において有用であり得ることが実証された。IL−12の応答は、Th1誘導の能
力と相関している。IP−10の応答は、Th1誘導の能力と相関する、1型IFNの代
用のマーカーである。
【0244】
(実施例14)
(ヒトCD14+細胞は、ウイルス由来ORNでの刺激の際にCD80を上方制御する

本実施例は、ウイルス由来のORNでの刺激の際に同時刺激性の分子CD80をヒトC
D14+細胞(単球、骨髄球系統の細胞)が上方制御するということを実証する。ヒトP
BMCを、DOTAP、またはR−848、CpG ODN 2395、DOTAP単独
、または培地単独と混合した、1nM〜10μMにおよぶ種々の濃度のORN(ORN3
、ORN4、またはORN5;実施例5を参照のこと)を用いて刺激した。16時間後、
細胞をCD19、CD14、およびCD80について染色し、次いでFACS分析した。
細胞をCD14+染色について分類して、CD80表面染色のレベルを図4に示す。この
図によって、ORN3およびORN4、ならびにR−848が、CD14+細胞の表面上
で同時刺激分子CD80を、配列依存性の様式で誘導するということが実証される。
【0245】
(実施例15)
(ヒトCD19+細胞は、ウイルス由来ORNでの刺激の際に、CD80を上方制御す
る)
本実施例によって、ヒトCD19+細胞(B細胞)が、ウイルス由来のORNでの刺激
の際に同時刺激分子CD80を上方制御することが実証される。ヒトPBMCを、DOT
AP、またはR−848、CpG ODN 2395、DOTAP単独、または培地単独
と混合した、1nM〜10μMにおよぶ種々の濃度のORN(ORN3、ORN4、また
はORN5;実施例5を参照のこと)を用いて刺激した。16時間後、細胞をCD19、
CD14、およびCD80について染色し、次いでFACS分析した。細胞をCD14+
染色について分類して、CD80表面染色のレベルを図5に示す。この図によって、OR
N3およびORN4、ならびにCpG ODN2395およびR−848が、CD14+
細胞の表面上で同時刺激分子CD80を、配列依存性の様式で誘導するということが実証
される。
【0246】
(等価物)
前述で記載した明細書は、当業者が本発明を行うことを可能にするのに十分であるとみ
なされる。本発明は、示された実施例による範囲に限定されるとは解釈されるべきではな
い。なぜなら、本実施例は、本発明の1局面の単一の例示であって、他の機能的に等価な
実施形態が本発明の範囲内であるからである。本明細書に示され、かつ記載されるものに
加えて、本発明の種々の改変が、前述の詳細な説明から当業者に明らかとなり、そして添
付の特許請求の範囲内におさまる。本発明の利点は、本発明の各々の実施形態によって包
含される必要はない。
【0247】
本出願に引用される全ての引用文献、特許および特許刊行物は、その全体が参照によっ
て本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】図1は、CpG ODN 2395(5’−TCGTCGTTTTCGGCGCGCGCCG−3’、配列番号343)、リポポリサッカリド(LPS)、レシキモド(resiquimod)(R−848)、培地単独、カチオン性脂質単独(DOTAP)、ネガティブコントロールのオリゴリボヌクレオチドORN 5(5’−AGCGAAAGCAGGUCAAUUAU−3’、配列番号327)、およびウイルス由来RNAオリゴヌクレオチド ORN 4(5’−AUAAUUGACCUGCUUUCGCU−3’、配列番号5)を用いた一晩の刺激後にヒトPBMCにおける種々のサイトカイン(TNF−α、IL−6、IL−12 p40、IFN−α、およびIFN−γ)の誘導を示す棒グラフである。
【図2】図2は、ネガティブコントロール ORN 21(5’−GCCACCGAGCCGAAGGCACC−3’、配列番号337)、ウイルス由来のORN 3(5’−UGUUUUUUCUCUUGUUUGGU−3’、配列番号4)、ORN 35(5’−CCGUCUGUUGUGUGACUC−3’、配列番号344)、またはカチオン性脂質単独(DOTAP)を用いた注射後のマウスにおけるIL−12の誘導を示す棒グラフである。結果は、注射の1時間後および3時間後に得たサンプルについて示す。
【図3】図3は、ネガティブコントロールORN 21(5’−GCCACCGAGCCGAAGGCACC−3’、配列番号337)、ウイルス由来のORN 3(5’−UGUUUUUUCUCUUGUUUGGU−3’、配列番号4)、ORN 35(5’−CCGUCUGUUGUGUGACUC−3’、配列番号344)、またはカチオン性脂質単独(DOTAP)を用いた注射後のマウスにおけるIP−10の誘導を示す棒グラフである。注射の1時間後および3時間後に得られたサンプルについて結果を示す。
【図4】図4は、示した濃度のウイルス由来のORN 3(5’−UGUUUUUUCUCUUGUUUGGU−3’、配列番号4)、ウイルス由来のORN 4(5’−AUAAUUGACCUGCUUUCGCU−3’、配列番号5)、ネガティブコントロールのオリゴリボヌクレオチドORN 5(5’−AGCGAAAGCAGGUCAAUUAU−3’、配列番号327)、DOTAP単独、培地単独、R−848、CpG ODN 2395(5’−TCGTCGTTTTCGGCGCGCGCCG−3’、配列番号343)、または培地単独との一晩のインキュベーション後のヒトCD14+細胞におけるCD80の発現を示すグラフである。
【図5】図5は、示した濃度のウイルス由来のORN 3(5’−UGUUUUUUCUCUUGUUUGGU−3’、配列番号4)、ウイルス由来のORN 4(5’−AUAAUUGACCUGCUUUCGCU−3’、配列番号5)、ネガティブコントロールのオリゴリボヌクレオチドORN 5(5’−AGCGAAAGCAGGUCAAUUAU−3’、配列番号327)、DOTAP単独、培地単独、R−848、CpG ODN 2395(5’−TCGTCGTTTTCGGCGCGCGCCG−3’、配列番号343)、または培地単独との一晩のインキュベーション後のヒトCD19+細胞(B細胞)でのCD80の発現を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を刺激するための免疫刺激性組成物であって、該組成物は、単離された18〜24ヌクレオチド長のオリゴリボヌクレオチドを含み、該オリゴリボヌクレオチドは、5’−N−U−U−G−U−N−3’を含み、Uがウラシル(U)オキシリボヌクレオシドであり、Gがグアニン(G)オキシリボヌクレオシドであり、NおよびNは、独立して、0〜10ヌクレオチド長のRNA配列であり、かつ該オリゴリボヌクレオチドは安定化された骨格を有し、ここで、該安定化された骨格は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合または少なくとも1つのピロホスフェートヌクレオシド間結合を有するか、あるいは該安定化された骨格は、ホスホロチオエート骨格またはピロホスフェート骨格を有し、該5’−N−U−U−G−U−N−3’はRNA配列5’−GUUGU−3’を含まない、免疫刺激性組成物。
【請求項2】
オリゴリボヌクレオチドが18ヌクレオチド長である、請求項1に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項3】
オリゴリボヌクレオチドが20ヌクレオチド長である、請求項1に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項4】
オリゴリボヌクレオチドが22ヌクレオチド長である、請求項1に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項5】
オリゴリボヌクレオチドが24ヌクレオチド長である、請求項1に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項6】
前記オリゴリボヌクレオチドが、脂質、ステロール、または、標的細胞特異的な結合因子と会合される、請求項1〜5に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項7】
さらに抗原を含む、請求項1〜6に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の有効量を含む、免疫応答を刺激するための組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の有効量を含む、Th−1様免疫応答を刺激するための組成物。
【請求項10】
前記Th−1様免疫応答は、1型インターフェロンの発現を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記Th−1様免疫応答は、インターロイキン12の発現を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
TLRシグナル伝達を刺激するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、TLRを発現する細胞に接触され、該TLRによるシグナル伝達を刺激し、該TLRは、TLR9、TLR8、TLR7もしくはTLR3、またはそれらの組合せであることを特徴とする、組成物。
【請求項13】
被験体における抗原特異的な免疫応答を刺激するための組成物であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物および抗原の、被験体における抗原特異的な免疫応答を刺激するのに有効な量を含む、組成物。
【請求項14】
前記抗原は、アレルゲン、ウイルス抗原、細菌抗原または癌抗原を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
アレルギー状態、喘息、ウイルス感染、細菌感染または癌を有するかまたは発症するリスクのある被験体において、アレルギー状態、喘息、ウイルス感染、細菌感染または癌を処置するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232983(P2012−232983A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136831(P2012−136831)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2006−554267(P2006−554267)の分割
【原出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(508147669)コーリー ファーマシューティカル グループ,インコーポレイテッド (24)
【出願人】(508092912)コーリー ファーマシューティカル ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】