説明

免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドを用いてバイオテロ病原体による感染症を予防する方法

本開示は、バイオテロ病原体によって引き起こされる感染症の予防または治療の方法に関し、特にCpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを用いてバイオテロ病原体に対する免疫応答を増大させる方法、およびCpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを用いてバイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高める方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、米国仮特許出願第60/422,964号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、バイオテロ病原体(bioterrorism agent)によって引き起こされる感染症の抑制または治療の方法に関し、特に、CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを用いてバイオテロ病原体に対する免疫応答を増大させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
バイオテロ病原体とは、環境中に故意にまき散らされてヒトまたは動物の疾患または死を引き起こす細菌、ウイルスおよび毒素のことである。バイオテロ病原体には、炭疽菌(炭疽)、ペスト菌(ペスト)、大痘瘡(疱瘡)、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)(ダニ媒介脳炎)およびエボラウイルス(エボラ)が非制限的に含まれる。バイオテロ病原体にはまた、ある種の生物によって産生される毒素である生体毒素も含まれうる。生体毒素の例には、ボツリヌス菌によって産生されるボツリヌス毒素、およびトウゴマ種子から単離されるリシンがある。
【0004】
免疫系は炭疽などのバイオテロ病原体による感染症と闘うために2つの総合的戦略を進化させてきた。このうち迅速な「先天性」免疫応答は、宿主細胞表面にあるToll様受容体(TLR)が、感染性微生物によって発現される高度に保存された病原体関連分子パターン(PAMP)と相互作用した場合に誘導される(Marrack and Kappler, Cell 76: 323, 1994;Medzhitov and Janeway, Cur. Op. Immunol. 9: 4, 1997)。この結果産生された多反応性抗体および免疫刺激性サイトカインが病原体の初期増殖および伝播を阻止する(Marrack and Kappler, Cell 76: 323, 1994;Medzhitov and Janeway, Cur. Op. Immunol. 9: 4, 1997;Medzhitov and Janeway, Cell 91: 295, 1998)。それに続いて、その病原体に特有の決定基に対する抗原特異的免疫応答が生じ、これは残存微生物の根絶を促すとともに長時間持続する防御記憶をもたらす。
【0005】
ある種のバイオテロ病原体の影響に対する防御にはワクチン接種を用いることができる。例えば、炭疽の場合には「防御抗原」(PA)がワクチン免疫原性のために必要である(Ivins et al., Infect. Immun. 60: 662, 1992;Welkos and Friedlander, Microb. Pathog. 5: 127, 1998)。PAに対する抗体は炭疽毒素が宿主細胞と結合するのを妨げ、それによって毒性を無効にする(Little and Ivins, Microbes. Infect. 1: 131, 1999)。さらに、PAに対する抗体は胞子の発芽を抑制するとともに、マクロファージによるそれらの貪食および死滅も促進させる(Welkos et al., Microbiology 147: 1677, 2001)。残念ながら、現在許可されているヒト炭疽ワクチン(AVA)は、防御性のある抗PA抗体価を誘導して維持するために、6回のワクチン接種を18カ月にわたって行い、その後も毎年の追加免疫処置を行うことを必要とする(Pittman et al., Vaccine 20: 1412, 2002;Pittman et al., Vaccine 20: 972, 2001)。一部のワクチンでは、このレジメンに伴って、望ましくない局所反応性がみられる(Pittman et al., Vaccine 20: 972, 2001)。
【0006】
したがって、バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある個人における感染症を治療または予防することを目的とする、バイオテロ病原体によって引き起こされる感染症を予防もしくは治療する作用物質(agent)、またはバイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高める作用物質に対しては需要が存在する。
【発明の開示】
【0007】
概要
本明細書に記載されるのは、バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症を治療または予防する方法である。いくつかの態様において、本方法は、CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを用いてバイオテロ病原体に対する免疫応答を増大させる方法である。また別の方法は、CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドおよび別の抗感染症薬を用いてバイオテロ病原体に対する免疫応答を増大させる方法である。さらに別の方法は、CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを用いて、バイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高めることを含む。
【0008】
いくつかの態様においては、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量を対象に投与し、そのことによって感染症を治療または予防する。
【0009】
同じく本明細書に記載されるのは、炭疽菌に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防の方法である。いくつかの態様において、本方法は、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量を対象に投与することを含む。
【0010】
本明細書に記載される他の方法には、バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防の方法であって、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量を抗感染症薬と組み合わせて対象に投与し、そのことによって感染症を治療または予防する方法がある。
【0011】
さらに別の態様は、炭疽菌に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防の方法である。いくつかの態様において、本方法は、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量を抗感染症薬と組み合わせて対象に投与することを含む。
【0012】
同じく本明細書に記載するのは、対象におけるバイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高める方法である。いくつかの態様においては、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量をバイオテロ病原体に対するワクチンと組み合わせて対象に投与し、それによってバイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高める。
【0013】
さらに別の態様は、炭疽菌由来の抗原の免疫原性を高める方法であって、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量を炭疽菌由来の抗原と組み合わせて対象に投与することを含み、それによって抗原の免疫原性を高める方法である。
その特徴および利点は、添付した図を参照しながら進めていく、以下のいくつかの態様の詳細な説明によってさらに明らかになると考えられる。
【0014】
配列表
添付した配列表に列記した核酸配列は、米国特許法施行規則1.822条(37C.F.R. 1.822)に定義されたヌクレオチド塩基に関する標準的な文字略号を用いて示されている。明細書中では文字Xが任意の不特定のヌクレオチドを指して用いられるが、配列表では文字Nが任意の不特定のヌクレオチドを指して用いられることは当業者には明らかであろう。添付した配列表には以下のものがある:
SEQ ID NO 1〜16、17、18および21〜25は、免疫刺激性CpG Dオリゴヌクレオチド配列である。
SEQ ID NO 19、20および26〜28は、対照Dオリゴヌクレオチド配列である。
SEQ ID NO 29〜43は、Kオリゴヌクレオチド配列である。
【0015】
詳細な説明
I. 略号
A:アデニン
Ab:抗体
AVA:吸着炭疽ワクチン
C:シトシン
CpG ODN:CpGもチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド(D型またはK型)
DC:樹状細胞
EU:エンドトキシン単位
FCS:ウシ胎仔血清
G:グアニン
h:時間
IFN-α:インターフェロンα
i.m.:筋肉内
i.p.:腹腔内
IFN-γ:インターフェロンγ
μg:マイクログラム
mRNA:メッセンジャーリボ核酸
NK:ナチュラルキラー細胞
ODN:オリゴデオキシヌクレオチド
PA:防御抗原
PAMP:病原体関連分子パターン
Pu:プリン
Py:ピリミジン
rPA:組換えPA抗原
SQ:皮下
T:チミン
TLR:Toll様(Toll-like)受容体
【0016】
II. 用語
別に指摘する場合を除き、技術用語は慣例的用法に従って用いられる。分子生物学の一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, 「遺伝子V(Genes V)」、Oxford University Press発行、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al.(eds.), 「分子生物学事典(Encyclopedia of Molecular Biology)」、Blackwell Science Ltd.発行、1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(ed.)、「分子生物学およびバイオテクノロジー:包括的便覧(Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference)」、VCH Publishers, Inc.発行、1995(ISBN 1-56081-569-8)に記載がある。
【0017】
本発明のさまざまな態様の吟味を容易にするために、特定の用語に対して以下の説明を提示する。
【0018】
動物:
哺乳動物および鳥類などを含むカテゴリーである、生きた多細胞脊椎生物のこと。哺乳動物という用語にはヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方が含まれる。同様に、「対象(subject)」という用語にはヒトおよび獣医学的な対象の両方、例えばヒト、非ヒト霊長動物、イヌ、ネコ、ウマおよびウシが含まれる。
【0019】
抗原:
動物における抗体の産生またはT細胞応答を誘発しうる化合物、組成物または物質のことであり、これには動物の体内に注射または吸収される組成物が含まれる。抗原は、異種免疫原によって誘導されるものを含む、特異的な体液性または細胞性免疫の産物と反応する。「抗原」という用語は、関連性のあるすべての抗原エピトープを含む。1つの態様において、抗原はバイオテロ病原体抗原である。いくつかの態様において、抗原はバイオテロ病原体に対するワクチンの成分であり、これはまき散らされて動物またはヒトにおける疾患または死を引き起こすことが可能な任意の細菌、ウイルス、真菌または生体毒素に付随する、またはそれらによって発現される抗原である。
【0020】
抗感染症薬:
対象の感染症の治療に用いられる物質(化合物、タンパク質、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは他の分子)。抗感染症薬には、抗真菌化合物、抗ウイルス化合物および抗生物質が非制限的に含まれる。抗生物質には、アモキシシリン、クラリスロマイシン、セフロキシム、セファレキシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テルビナフィン、レボフロキサシン、ニトロフラントイン、テトラサイクリンおよびアジスロマイシンが非制限的に含まれる。抗真菌化合物には、クロトリマゾール、ブテナフィン、ブトコナゾール、シクロピロックス、クリオキノール、クリオキノール、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナフチフィン、ニスタチン、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾールおよびトルナフテートが非制限的に含まれる。抗ウイルス化合物には、ジドプジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフロビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インディナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アンプレナビルおよびロピナビルが非制限的に含まれる。抗感染症薬には高度免疫グロブリンも含まれる。高度免疫グロブリンとは、目的の物質による免疫処置を受けたドナーまたはドナーのプールから単離されたガンマグロブリンのことである。特に、高度免疫グロブリンは、病原体に対する反復的なワクチン接種を受けたドナーから精製された抗体のことである。いくつかの態様において、高度免疫グロブリンは、抗原、微生物(加熱滅菌された微生物)またはウイルスによる反復的な免疫処置を受けたドナーまたはドナーのプールから単離されたガンマグロブリンである。1つの特定の非制限的な例において、炭疽菌に対する高度免疫グロブリンは、炭疽ワクチン(AVA)による反復的な免疫処置を受けたドナーからの血清を用いて製造される。
【0021】
アンチセンス、センスおよびアンチジーン:
二本鎖DNA(dsDNA)には、プラス鎖と呼ばれる5'→3'鎖、およびマイナス鎖と呼ばれる3'→5'鎖(逆相補鎖)という2本の鎖がある。RNAポリメラーゼは核酸を5'→3'の向きに付加するため、転写時にはDNAのマイナス鎖がRNAのテンプレートとしての役割を果たす。このため、形成されたRNAはマイナス鎖に対して相補的であってプラス鎖とは同一な配列を有すると考えられる(塩基ウラシルがチミンに置換される点を除く)。
【0022】
アンチセンス分子とは、RNA、またはDNAのプラス鎖のいずれかと特異的にハイブリダイズする、または特異的に相補的である分子のことである。センス分子とは、DNAのマイナス鎖と特異的にハイブリダイズする、または特異的に相補的である分子のことである。アンチジーン分子とは、dsDNA標的を目標とするアンチセンス分子またはセンス分子のことである。1つの態様において、アンチセンス分子は標的mRNAと特異的にハイブリダイズし、標的mRNAの転写を抑制する。
【0023】
AVA:
AVAは米国で許可されている唯一のヒト炭疽ワクチンであり、BioPort Corporation(Lansing, MI)によって製造されており、死菌も生菌も含まない炭疽菌培養物の無細胞濾液から調製される。このワクチンの調製に用いられる菌株は、V770-NP1-Rとして知られている毒素産生性無莢膜株である。濾液はPA(防御抗原)を含む細胞産物の混合物を含んでおり、これをアジュバントとしての水酸化アルミニウム(Amphogel, Wyeth Laboratories)に吸着させる。用量0.5mL当たりのPAおよび他のタンパク質の量は不明であり、製品中にはLF(致死因子)、EF(浮腫因子)およびPAという3種類の毒素成分すべてが存在する。
【0024】
一般に、初回ワクチン接種は概ね0週、2週および4週の時点での3回の皮下注射からなり、追加ワクチン接種は6カ月、12カ月および18カ月の3回行う。免疫を維持するために、製造元は毎年の追加免疫注射を推奨している。しかし、投与回数を減らしたスケジュールおよび筋肉内(IM)投与を用いるスケジュールも提唱されている。炭疽菌への曝露が疑われる場合には、AVAを予防的抗生物質と同時に投与してもよい。
【0025】
炭疽菌:
炭疽菌は炭疽の原因微生物であり、これは大型でグラム陽性であって運動性のない胞子形成性の桿菌である。炭疽菌には浮腫毒素、致死毒素および莢膜抗原という3つのビルレンス因子がある。炭疽菌への感染がヒトの炭疽の原因である。ヒトの炭疽には主に3種類の臨床形態がある:皮膚性、吸入性および胃腸性のものである。皮膚炭疽は皮膚を介した胞子の導入の結果であり;吸入炭疽は気道を介し;胃腸炭疽は経口摂取による。治療されなければ、いずれの形態の炭疽も敗血症および死亡に至る恐れがある。皮膚炭疽は早期に治療されれば通常治癒し、いずれの形態も回復のためには早期治療が重要である。胃腸炭疽の患者の致命率は25%〜75%と報告されている。吸入炭疽の致命率は90〜100%に近いと考えられている。
【0026】
炭疽菌は、防御抗原(PA)、浮腫因子(OF)および致死因子(LF)という3種類のタンパク質から構成される毒素を分泌する(Stanley et al., J. Gen. Microbiol. 26: 49-66, 1961;Beall et al., J. Bacteriol. 83: 1274-1280, 1962)。PAは宿主の細胞膜上にある細胞表面受容体と結合する。プロテアーゼによって切断された後に(Bradley et al., Nature 414: 225, 2001)、PAは2つの毒性酵素OFおよびLAと結合してそれらのサイトゾルへの輸送を媒介し、それらがそこで病原性作用を発揮する。すなわち、切断されて小型化した63kD PAレムナント(PA63)はオリゴマー化して、新たに露出した第2の結合ドメインを特徴として示すようになり、89kDタンパク質であるEFと結合して浮腫毒素を形成するか、または90kDタンパク質であるLFと結合して致死毒素(LeTx)を形成し(Leppla et al., Salisbury Med. Bull. Suppl. 68: 41-43, 1990)、この複合体が細胞内へのインターナリゼーションを受ける(Singh et al., Infect. Immun. 67: 1853, 1999;Friedlander, J. Biol. Chem. 261: 7123, 1986)。これらのエンドソームにより、PA63チャンネルがLFおよびEFをpH依存的かつ電位依存的な機構によってサイトゾルに移動させることが可能になる(Zhao et al., J. Biol. Chem, 270: 18626, 1995)。
【0027】
バイオテロ病原体:
故意にまき散らされてヒトまたは動物の疾患または死を引き起こすことが可能な種々の細菌、ウイルスおよび毒素のうち任意のもの。バイオテロ病原体の例には、炭疽の原因となる炭疽菌、ペストの原因となるペスト菌、痘瘡の原因となる大痘瘡(Variola major)、ダニ媒介脳炎の原因となるダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、およびエボラの原因となるエボラウイルスが含まれる。バイオテロ病原体には、ある種の生物によって産生される毒素である生体毒素も含まれる。生体毒素の例には、ボツリヌス菌によって産生されるボツリヌス毒素、およびトウゴマ種子から単離されるリシンがある。西側諸国の拡散対抗当局(Western counter-proliferation agencies)は現在、23種の細菌、43種のウイルスおよび14種の生体毒素を、バイオテロ病原体の可能性があるものとして認識している。
【0028】
バイオテロ病原体のその他の例には、大腸菌、インフルエンザ菌、コブラ毒、貝毒、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、リシン毒素、フレキシナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌(Shigella bacillus))、サルモネラ、ブドウ球菌エンテロトキシンB、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、トリコテシン系マイコトキシン、アフラトキシンが非制限的に含まれる。バイオテロ病原体はまた、クリプトコッカス症、ブルセラ症(波状熱)、コクシジオイデス真菌症(サン・ホアキン渓谷熱または砂漠熱)、オウム病(オウム熱)、腺ペスト、野兎病(ウサギ熱)、マラリア、コレラ、腸チフス、出血熱、ダニ媒介脳炎、ベネズエラウマ脳炎、肺ペスト、ロッキー山紅斑熱、デング熱、リフトバレー熱、ジフテリア、類鼻疽、鼻疽、結核、感染性肝炎、脳炎、ブラストミセス症、ノカルジア症、黄熱病、チフスおよびQ熱を引き起こす恐れもある。
【0029】
CpGまたはCpGモチーフ:
シトシンの後にリン酸結合によってグアニンが結合した核酸のことであり、シトシンのピリミジン環はメチル化されていない。「メチル化CpG」とは、ピリミジン環のシトシンのメチル化のことを指し、これは通常、ピリミジン環の5位で起こる。CpGモチーフとは、メチル化されていない中央のCpGが、中央のCpG(の3'側および5'側)に隣接する少なくとも1つの塩基によって囲まれている塩基パターンのことである。理論には拘束されないが、CpGに隣接する塩基は活性の一部をCpGオリゴデオキシヌクレオチドに付与する。CpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも約10ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであり、非メチル化CpGを含む。CpGオリゴヌクレオチドはDおよびKのいずれのオリゴデオキシヌクレオチドも含む(以下を参照)。CpGオリゴデオキシヌクレオチドは一本鎖である。CpGオリゴデオキシヌクレオチドの全体がメチル化されていなくてもよく、部分がメチル化されていなくてもよい。1つの態様において、5' CG 3'の少なくともCはメチル化されていない。
【0030】
サイトカイン:
リンパ球のように他の細胞の挙動に影響を及ぼす細胞によって作られるタンパク質。1つの態様において、サイトカインは細胞輸送に影響を及ぼす分子であるケモカインである。サイトカインの具体的で非制限的な例にはIFN-γ、IL-6およびIL-10がある。
【0031】
D型オリゴデオキシヌクレオチド(D ODN):


によって表される配列を有する非メチル化CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、RはAまたはG(プリン)であり、YはCまたはT(ピリミジン)である)。D型オリゴデオキシヌクレオチドは非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。CpGの逆位、置換またはメチル化により、Dオリゴデオキシヌクレオチドの活性は低下または消失する。
【0032】
1つの態様において、D型ODNは少なくとも約16ヌクレオチド長であり、式IIIによって表される配列を含む:

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、Puはプリンヌクレオチドであり、Pyはピリミジンヌクレオチドであり、XおよびWは任意のヌクレオチドであり、Mは0から10までの任意の整数であり、Nは4から10までの任意の整数である)。一般に、D ODNは細胞応答を誘発することができる。例えば、D ODNはナチュラルキラー細胞を刺激し、樹状細胞の成熟を誘発する。
【0033】
エピトープ:
抗原決定基のこと。これらは、抗原性のある、すなわち特異的な免疫応答を惹起する、分子上にある特定の化学基またはペプチド配列である。抗体は特定の抗原エピトープと結合する。
【0034】
機能的に等価な:
例えば免疫刺激性ODNにおける、本明細書に記載したものと同じ結果が得られる配列変化のこと。このような配列変化には、欠失、塩基修飾、変異、標識および挿入が非制限的に含まれうる。
【0035】
免疫応答:
刺激に対する、免疫系の細胞、例えばB細胞またはT細胞の応答。1つの態様において、応答は特定の抗原に対して特異的である(「抗原特異的応答」)。「免疫応答のパラメーター」とは、免疫応答の測定しうる任意の特定の様相のことであり、これにはサイトカイン分泌(IL-6、IL-10、IFN-γなど)、免疫グロブリン産生、樹状細胞成熟および免疫系の細胞の増殖が非制限的に含まれる。当業者はこれらのパラメーターの任意のものの増加を既知の検査アッセイを用いて容易に決定することができる。1つの具体的で非制限的な例においては、細胞増殖を評価するために、3H-チミジンの取り込みを評価することができる。免疫応答のパラメーターの「実質的な」増加とは、対照と比較したこのパラメーターの有意な増加のことである。実質的な増加の具体的で非制限的な例は、少なくとも約50%の増加、少なくとも約75%の増加、少なくとも約90%の増加、少なくとも約100%の増加、少なくとも約200%の増加、少なくとも約300%の増加および少なくとも約500%の増加である。当業者は有意な増加を既知の統計学的方法を用いて容易に同定することができる。実質的な増加を評価するために用いられる統計学的検定の具体的で非制限的な一例は、バイオテロ病原体に対するワクチン単独に対して反応する試料の割合を、バイオテロ病原体に対するワクチンを免疫刺激性ODNと併用投与した場合に応答する試料の割合と比較するためにZ検定を用いることである。ワクチン単独によって誘導される応答の強度の差異を、ワクチンを免疫刺激性ODNと併用投与した場合に応答する試料の割合と比較するためには、ノンパラメトリックANOVAを用いることができる。この例では、p≦0.05が有意であり、免疫応答のパラメーターに実質的な増加があることを示す。当業者は有用な他の統計学的アッセイを容易に特定することができる。
【0036】
「免疫防御応答」とは、バイオテロ病原体への感染によって生じる症状の軽減をもたらす、または感染に伴う疾患の遅延もしくは予防をもたらす免疫応答のことである。「ワクチンの免疫原性を高める」ことは免疫応答の増大の一例である。
【0037】
疾患の抑制または治療:
疾患を「抑制すること」とは、例えば、疾患に対する素因を有することが判明している人、例えばバイオテロ病原体に曝露されたか曝露されるリスクのある人における、疾患の完全な発症を抑えることを指す。バイオテロ病原体に曝露されたか曝露されるリスクのある人の例には、軍人、郵便物取り扱い者、医療従事者および政府当局者のほか、免疫系が弱っている人、例えば高齢者、免疫抑制薬を投与されている人、癌の患者およびHIVに感染した人が非制限的に含まれる。「治療(treatment)」とは、疾患の徴候もしくは症状、またはその発症が始まった後の病的状態を改善するための治療的介入のことを指す。
【0038】
単離された:
「単離された」生体成分(核酸、ペプチドまたはタンパク質)は、その成分が天然に存在する生物体の細胞中の他の生体成分(すなわち他の染色体性および染色体外性のDNAおよびRNAならびにタンパク質)から実質的に分離されている、それらとは別に作製されている、またはそれらを除いて精製されている。このようにして「単離された」核酸、ペプチドおよびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸、ペプチドおよびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
【0039】
K型オリゴデオキシヌクレオチド(K ODN):


によって表される非メチル化CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、QはT、GまたはAであり、WはAまたはTであり、N1、N2、N3、N4、N5およびN6は任意のヌクレオチドである)。1つの態様において、QはTである。K型CpG ODNは以前に記載されている(米国特許第6,194,388号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,214,806号;米国特許第6,218,371号;米国特許第6,239,116号、米国特許第6,339,068号;米国特許第6,406,705号および米国特許第6,429,199号を参照。これらは参照として本明細書に組み入れられる)。一般に、K ODNは体液性応答を誘発することができる。例えば、K ODNはIgMの産生を誘発する。
【0040】
白血球(leukocyte):
「白血球(white cell)」とも呼ばれる血液中の細胞であり、感染性微生物および異物に対する身体防御にかかわる。白血球は骨髄中で産生される。白血球には主に5つの種類があり、これは大きく2つの群に分かれる:多形核白血球(好中球、好酸球、好塩基球)および単核白血球(単球およびリンパ球)。感染が存在すると白血球の産生が増加する。
【0041】
哺乳動物:
この用語にはヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方が含まれる。同様に、「対象」という用語にはヒトおよび獣医学的な対象がともに含まれる。
【0042】
核酸:
一本鎖または二本鎖の形態にあるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの重合体であり、別に限定する場合を除き、天然に存在するヌクレオチドと類似した様式で核酸とハイブリダイズする、天然ヌクレオチドの既知の類似体も含まれる。
【0043】
オリゴヌクレオチドまたは「オリゴ体」:
多数のヌクレオチド(すなわち、糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)がリン酸基および交換可能な有機塩基(これは置換ピリミジン(Py)(例えば、シトシン(C)、チミン(T)もしくはウラシル(U))または置換プリン(Pu)(例えばアデニン(A)もしくはグアニン(G))と結合したものから構成される分子)のこと。本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」という用語は、オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)の両方のことを指す。「オリゴヌクレオチド」には、オリゴヌクレオシド(すなわち、オリゴヌクレオチドからリン酸を除いたもの)および任意の他の有機塩基重合体も含まれる。オリゴヌクレオチドは既存の核酸源(例えば、ゲノムまたはcDNA)から入手可能であるが、合成物(例えば、オリゴヌクレオチド合成によって生成されるもの)であることが好ましい。
【0044】
「安定化されたオリゴヌクレオチド」とは、インビボ分解(例えば、エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによる)に対する抵抗性が比較的高いオリゴヌクレオチドのことである。1つの態様において、安定化されたオリゴヌクレオチドは修飾されたリン酸骨格を有する。安定化されたオリゴヌクレオチドの1つの具体的で非制限的な例は、ホスホロチオエートにより修飾されたリン酸骨格(リン酸の酸素の少なくとも1つがイオウにより置換されている)である。その他の安定化されたオリゴヌクレオチドには以下のものが含まれる:非イオン性DNA類似体、例えば、アルキルホスホネートおよびアリールホスホネート(荷電性ホスホネート酸素がアルキル基またはアリール基によって置換されている)、ホスホジエステル、および荷電酸素部分がアルキル化されているアルキルホスホトリエステル。テトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールなどのジオールを一方または両方の末端に含むオリゴヌクレオチドもヌクレアーゼ分解に対して実質的に抵抗性であることが示されている。
【0045】
「免疫刺激性オリゴヌクレオチド」「オリゴデオキシヌクレオチドを含む免疫刺激性CpG」「CpG ODN」とは、シトシン、グアニンジヌクレオチド配列を含み、脊椎動物の免疫細胞を刺激する(例えば、マイトジェン作用を有する)オリゴデオキシヌクレオチドのことを指す。シトシン、グアニンはメチル化されていない。「免疫刺激性ODN」という用語には、D型およびK型のいずれのODNも含まれる。
【0046】
「オリゴヌクレオチド送達複合体」とは、ターゲティング手段(例えば、標的細胞(例えば、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞)表面との高親和性結合を生じる、および/または標的細胞による細胞取り込みを増加させる分子)と結合した(例えば、イオン的もしくは共有的に結合した;または内部に封入された)オリゴヌクレオチドのことである。オリゴヌクレオチド送達複合体の例には、以下のものと結合したオリゴヌクレオチドが含まれる:ステロール(例えば、コレステロール)、脂質(例えば、カチオン性脂質、ビロソームまたはリポソーム)または標的細胞特異的結合因子(例えば、標的細胞に特異的な受容体によって認識されるリガンド)。好ましい複合体は、標的細胞によるインターナリゼーションの前に明らかな結合解離が起こるのを防ぐようにインビボで十分に安定でなければならない。しかし複合体は、オリゴヌクレオチドが機能を発揮するように、細胞内の適切な条件下では開裂可能または別の様式でアクセス可能でなければならない(Gursel, J. Immunol. 167: 3324, 2001)
【0047】
防御抗原(PA):
炭疽菌は、防御抗原(PA)、浮腫因子(EF)および致死因子(LF)という3種類のタンパク質から構成される毒素を分泌する。PAは宿主の細胞膜上にある細胞表面受容体と結合する。プロテアーゼによって切断された後に、PAは2つの毒性酵素EFおよびLAと結合してそれらのサイトゾルへの輸送を媒介し、それらがそこで病原性作用を発揮する。
【0048】
米国で許可されている唯一のヒト炭疽ワクチンであるAVAは、PA(防御抗原)を含む細胞産物の混合物を含む。防御抗原の配列は知られており、GenBankアクセッション番号13423(これは参照として本明細書に組み入れられる)として示されている。PAを含むワクチン調製物は、例えば米国特許第5,591,631号(これは参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。組換え防御抗原(rPA)は、現在開発中の炭疽ワクチンである。rPAはPAワクチンの組換え型である。
【0049】
医薬剤または医薬物(pharmaceutical agent or drug):
対象に適切に投与された場合に所望の治療的または予防的な効果を誘導しうる化合物または組成物。医薬剤には、抗生物質、抗真菌化合物、抗ウイルス化合物および高度免疫グロブリンなどの抗感染症薬が非制限的に含まれる。
【0050】
薬学的に許容される担体:
本開示において有用な薬学的に許容される担体は通常のものである。E. W. Martinによる「レミントン薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition(1975)は、本明細書に開示した融合タンパク質の薬学的送達のために適した組成物および製剤を記載している。
【0051】
一般に、担体の性質は、用いる具体的な投与様式に依存すると考えられる。例えば、非経口的製剤は通常、 水、生理的食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理的に許容される液体を含む注射可能な液体を媒体として含む。固体組成物(例えば、粉剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤)の場合、従来の非毒性固体担体には、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムなどが含まれうる。投与しようとする薬学的組成物は、生物学的に中性な担体に加えて、湿潤剤および乳化剤、保存料およびpH緩衝剤などの非毒性補助物質を微量に含みうる。
【0052】
自己相補的核酸配列:
Watson-Crick塩基対を形成しうる核酸配列のこと。DNAのデオキシリボ核酸単位の特徴をなす4種類の塩基はプリン(アデニンおよびグアニン)ならびにピリミジン(シトシンおよびチミン)である。アデニンは2つの水素結合によってチミンと対合し、グアニンは3つの水素結合によってシトシンと対合する。核酸配列が、同じ核酸配列中の2つまたはそれ以上の他の塩基と水素結合を形成しうる2つまたはそれ以上の塩基を配列中に含むならば、その核酸は自己相補的配列を含む。
【0053】
治療的有効量:
疾患の進行を予防する、もしくは消退を引き起こす、またはその疾患によって生じる症状、例えば発熱、呼吸器症状、疼痛もしくは腫脹を緩和するのに十分な用量のこと。
【0054】
ワクチン:
感染症の抑制、予防、改善または治療のために投与される、抗原、DNA、タンパク質サブユニット、ペプチド、弱毒化した微生物(細菌およびウイルスを非制限的に含む)、生きている微生物または死滅させた微生物の調製物。いくつかの態様において、バイオテロ病原体に対するワクチンには、バイオテロ病原体由来の抗原、例えばAVAまたはPAが含まれる。
【0055】
一般に、ワクチンの製造における最初の段階は、疾患を引き起こすことはできないが、それでも宿主の免疫応答を誘導する原因となる抗原は保っている微生物またはその一部を単離または作製することである。これは多くの手法によって行うことができる。1つの手法は、加熱またはホルマリンを用いて微生物を死滅させることである;このようにして製造されたワクチンは「不活化」ワクチンまたは「死滅」ワクチンと呼ばれる。今日一般的に用いられている死滅ワクチンの例には、腸チフスワクチンおよびSalkポリオワクチンが含まれる。
【0056】
ワクチンを製造するためのもう1つの方法は、病原性微生物の抗原部分のみ、例えば莢膜、鞭毛、またはタンパク質細胞壁の一部を用いることである;これらのタイプのワクチンは「無細胞ワクチン」と呼ばれる。無細胞ワクチンの一例はインフルエンザ菌B(HIB)ワクチンである。無細胞ワクチンは死菌ワクチンとある程度の類似性を示す:死滅ワクチンも無細胞ワクチンも一般的には非常に強い免疫応答を誘導しないため、その効果を確実に持続させるために「追加免疫」が数年毎に必要である。さらに、死滅ワクチンも無細胞ワクチンも疾患を引き起こすことはないため、これらは免疫低下状態の患者における使用の点で安全と考えられる。
【0057】
ワクチンを製造するための第3の手法は、微生物を変異させてその増殖能を変化させることにより、生きている微生物を「弱毒化する」または弱めることである。1つの態様において、弱毒ワクチンは複製能を欠損している、または必須タンパク質を欠いている。弱毒ワクチンの例には、麻疹、ムンプスおよび風疹に対する防御に働くものがある。弱毒ワクチンを用いた場合の免疫はしばしば生涯を通じて持続し、追加免疫処置を必要としない。
【0058】
ワクチンを毒素から製造することもできる。これらの場合には、しばしば、毒素をアルミニウムで処理するかアルミニウム塩に対して吸着させて「トキソイド」を形成させる。トキソイドの例には、ジフテリア破傷風ワクチンが含まれる。トキソイドから製造されたワクチンが誘導する免疫応答はしばしば低レベルであるため、これは時に「アジュバント」―免疫応答を増大させる作用物質―とともに投与される。例えば、ジフテリア破傷風ワクチンはしばしば百日咳ワクチンと組み合わせられ、DPT予防接種として同時に投与される。百日咳菌はこのワクチンにおけるアジュバントとして作用する。複数のワクチンが同時に投与される場合、それらは「複合(conjugated)ワクチン」と呼ばれている。
【0059】
ワクチンを製造するもう1つの手法は、痘瘡ウイルスによる感染に対する防御に働く牛痘ウイルス、または結核菌に対する防御のために用いられるウシ型結核菌の弱毒株であるBCGワクチンを用いるというように、病毒性微生物と類似しているが重篤な疾患を引き起こさない微生物を用いることである。
【0060】
「サブユニットワクチン」は、強い免疫応答を誘発するために、感染性微生物由来のポリペプチドを用いるワクチンのことである。「抗原ワクチン」は、防御免疫応答を誘導するためにポリペプチドの免疫原性エピトープを用いる。「DNAワクチン」は、防御免疫応答を誘導する抗原をコードする核酸を用いる。
【0061】
「バイオテロ病原体に対するワクチン」には、炭疽菌、ペスト菌、大痘瘡、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、エボラウイルス、大腸菌、インフルエンザ菌、コブラ毒、貝毒、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、リシン毒素、フレキシナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌)、サルモネラ菌、ブドウ球菌エンテロトキシンB、ヒストプラスマ・カプスラーツム、トリコテシン系マイコトキシン、アフラトキシンに対する、加熱もしくはホルマリンによる死滅ワクチン、弱毒ワクチン、サブユニットワクチン、抗原ワクチン、DNAワクチン、無細胞ワクチンまたはトキソイドワクチンが含まれる。また、「バイオテロ病原体に対するワクチン」を、クリプトコッカス症、ブルセラ症(波状熱)、コクシジオイデス真菌症(サン・ホアキン渓谷熱または砂漠熱)、オウム病(オウム熱)、腺ペスト、野兎病(ウサギ熱)、マラリア、コレラ、腸チフス、出血熱、ダニ媒介脳炎、ベネズエラウマ脳炎、肺ペスト、ロッキー山紅斑熱、デング熱、リフトバレー熱、ジフテリア、類鼻疽、鼻疽、結核、感染性肝炎、脳炎、ブラストミセス症、ノカルジア症、黄熱病、チフスおよびQ熱に対する防御免疫応答を誘導するために用いることもできる。
【0062】
ウイルス:
生きた細胞の内部で繁殖する微小な感染性生物。ウイルスは本質的には、タンパク質外被によって囲まれた単一の核酸であるコアからなり、生きた細胞の内部のみで繁殖する能力がある。「ウイルス複製」とは、ウイルスの少なくとも1回のライフサイクルの発生によって別のウイルスが生成されることである。ウイルスが宿主細胞の正常な機能を妨げて、細胞にウイルスにより決められた様式での挙動を行わせることもある。例えば、ウイルス感染により、サイトカインを産生する細胞またはサイトカインに応答する細胞が、感染していない細胞は通常そうでなくても生じることがある。
【0063】
別に説明する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。単数形の「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は、その文脈で別の指示が明らかになされない限り、複数のものに関する言及も含む。同様に、「または(or)」という単語は、文脈で明らかに別のことが示されている場合を除き、「および(and)」を含むものとする。さらに、核酸およびポリペプチドに関して提示したすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズおよびすべての分子量または分子質量の値は概略値であり、説明のために提示したものである。本開示の実施または検討のために本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、適した方法および材料は以下に説明するものである。「含む(comprise)」という用語は「含む(include)」のことを意味する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。対立が生じた場合には、定義を含め、本明細書が支配的であるものとする。さらに、材料、方法および例は例示的なものに過ぎず、限定を意図したものではない。
【0064】
III. いくつかの態様の説明
A. D型およびK型ODN
本開示は、免疫活性化を誘発する、例えば、B細胞、単球、樹状細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞による先天性免疫応答または適応免疫応答を誘発する、1つのクラスのDNAモチーフに関する。K型CpG ODNは以前に記載されている(米国特許第6,194,388号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,214,806号;米国特許第6,218,371号;米国特許第6,239,116号、米国特許第6,339,068号;米国特許第6,406,705号および米国特許第6,429,199号を参照。これらは参照として本明細書に組み入れられる)。最も大きい免疫刺激活性を示すK ODNは共通した特有の特徴を有する。これらの特徴は式IIのものともD ODNとも異なる(下記参照)。さらに、K ODNは免疫系の細胞に対して、D ODNの影響とは異なる特有の影響を及ぼす。例えば、K ODNはB細胞の増殖を誘発し、IL-6の産生を誘発する。
【0065】
K ODNは少なくとも約10ヌクレオチドを含み、式I

によって表される配列を含む(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、WはAまたはTであり、N1、N2、N3、N4、N5およびN6は任意のヌクレオチドである)。
【0066】
これらの式IまたはK ODNは、身体の体液性免疫(異種抗原に対する抗体の産生など)にかかわるプロセスである、B細胞の増殖ならびにIgMおよびIL-6の分泌を誘発する。1つの態様において、K ODNは体液性免疫応答を誘導する。
【0067】
ある種のKオリゴヌクレオチドは式

を有するものであり、リン酸骨格修飾を含む。1つの具体的で非制限的な例において、リン酸骨格修飾はホスホロチオエート骨格修飾である(すなわち、国際特許出願WO 95/26204号(参照として本明細書に組み入れられる)に示されているように、非架橋性酸素の1つがイオウにより置換されている)。1つの態様において、K ODNはホスホロチオエート骨格および少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを有する。K ODNからCpGジヌクレオチドモチーフを排除すると免疫活性化が有意に低下する。多数のCpGを単一のK ODNに組み入れると免疫刺激性が増大する。いくつかの態様において、K ODNは少なくとも12塩基長である。さらに、CpGモチーフを5'末端に含むK ODNは最も刺激性が高いが、CpGの上流に少なくとも1つの塩基が必要である。より詳細には、最も活性の高いK ODNは、CpGジヌクレオチドのすぐ5'側にチミジンを含み、TpTまたはTpAをCpGモチーフの3'側の位置に含む。CpGジヌクレオチドモチーフから2塩基対よりも隔たりのある修飾はK ODN活性にほとんど影響を及ぼさない。
【0068】
K ODNの例には以下のものが非制限的に含まれる:

【0069】
特定の非制限的な例において、Kオリゴデオキシヌクレオチドは、

からなる群より選択される配列を含む。
【0070】
D ODNは構造および活性のいずれに関してもK ODNと異なる。D ODNに特有の活性については以下に開示している。例えば、本明細書に開示したように、Dオリゴデオキシヌクレオチドは免疫系の細胞からのサイトカイン放出を誘発する。具体的で非制限的な例において、Dオリゴヌクレオチドは、単球および/または形質細胞様樹状細胞によるIP-10およびIFN-αの放出および産生、ならびにNK細胞によるIFN-7の放出または産生を誘発する。DオリゴデオキシヌクレオチドによるNK細胞の刺激は直接的でも間接的でもよい。
【0071】
構造に関しては、DオリゴヌクレオチドのCpGモチーフは式II

によって記述することができる(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、RはAまたはG(aプリン)であり、YはCまたはT(ピリミジン)である)。Dオリゴヌクレオチドは非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。CpGの逆位、置換またはメチル化により、Dオリゴデオキシヌクレオチドの活性は低下または消失する。
【0072】
ある種のD ODNは少なくとも約16ヌクレオチド長であり、式III

によって表される配列を含む(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、Puはプリンヌクレオチドであり、Pyはピリミジンヌクレオチドであり、XおよびWは任意のヌクレオチドであり、Mは0から10までの任意の整数であり、Nは4から10までの任意の整数である)。
【0073】
領域Pu1 Py2 CpG Pu3 Py4はCpGモチーフと呼ばれる。領域X1X2X3は5'フランキング領域と呼ばれ、領域X4X5X6は3'フランキング領域と呼ばれる。ヌクレオチドがD ODN中のX1X2X3の5'側に含まれる場合、これらのヌクレオチドは5'ファーフランキング(far flanking)領域と呼ばれる。D ODN中のX4X5X6の3'側のヌクレオチドは3'ファーフランキング領域と呼ばれる。
【0074】
1つの具体的で非制限的な例において、Py2はシトシンである。もう1つの具体的で具体的で非制限的な例において、Pu3はグアニジンである。さらにもう1つの具体的で非制限的な例において、Py2はチミジンであり、Pu3はアデニンである。さらにもう1つの具体的で非制限的な例において、Pu1はアデニンであり、Py2はチロシンである。もう1つの具体的で非制限的な例において、Pu3はアデニンであり、Py4はチロシンである。
【0075】
1つの具体的で非制限的な例において、Nは約4から約8までである。もう1つの具体的で非制限的な例において、Nは約6である。
【0076】
D CpGオリゴヌクレオチドは修飾ヌクレオチドを含みうる。理論に拘束されることはないが、修飾ヌクレオチドはDオリゴヌクレオチドの安定性を高める目的で含めることができる。理論に拘束されることはないが、ホスホロチオエート修飾ヌクレオチドはエキソヌクレアーゼ消化に対する抵抗性を付与するため、ホスホロチオエート修飾ヌクレオチドを組み入れることによってD ODNは「安定化」される。1つの態様において、CpGジヌクレオチドモチーフおよびそれに直接隣接した領域は、ホスホロチオエートヌクレオチドではなくホスホジエステルを含む。1つの具体的で非制限的な例において、配列Pu1 Py2 CpG Pu3 Py4はホスホジエステル塩基を含む。もう1つの具体的で非制限的な例において、配列Pu1 Py2 CpG Pu3 Py4中の全塩基はホスホジエステル塩基である。さらにもう1つの具体的で非制限的な例において、X1X2X3およびX4X5X6(W)M(G)Nはホスホジエステル塩基を含む。さらにもう1つの具体的で非制限的な例において、

はホスホジエステル塩基を含む。さらなる非制限的な例において、配列X1X2X3は最大1つもしくは最大2つのホスホチオエート塩基を含む、および/または配列X4X5X6は最大1つもしくは最大2つのホスホチオエート塩基を含む。さらなる非制限的な例において、X4X5X6(W)M(G)Nは少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つのホスホチオエート塩基を含む。すなわち、Dオリゴデオキシヌクレオチドはホスホロチオエート/ホスホジエステルのキメラ体でありうる。
【0077】
本明細書に開示したように、任意の適した修飾を、Dオリゴデオキシヌクレオチドにインビボでの分解(例えば、エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによるもの)に対する抵抗性を付与するために本開示において用いることができる。1つの具体的で非制限的な例において、オリゴデオキシヌクレオチドの分解に対する感受性を低下させる修飾は、イノシンおよびクエシン(quesine)、さらにはアセチル、チオおよび同様の修飾型のアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンといった通常とは異なる塩基を含めることである。他の修飾ヌクレオチドには、非イオン性DNA類似体、アルキルホスホネートまたはアリールホスホネート(すなわち、米国特許第4,469,863号に示されているように、荷電ホスホネート酸素がアルキル基またはアリール基により置換されたもの)、ホスホジエステルおよびアルキルホスホトリエステル(すなわち、米国特許第5,023,243号および欧州特許第0 092 574号に示されているように、荷電酸素部分がアルキル化されたもの)が含まれる。一方または両方の末端にテトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールなどのジオールを含むオリゴヌクレオチドも分解に対する抵抗性が高くなることが示されている。また、Dオリゴデオキシヌクレオチドが二次構造(例えば、ステムループ構造)を含むように修飾することもできる。理論に拘束されることはないが、ステムループ構造を組み入れることにより、オリゴデオキシヌクレオチドの効果が増すと考えられている。
【0078】
さらにもう1つの態様において、Pu1 Py2とPu3 Py4は自己相補的である。もう1つの態様において、X1X2X3とX4X5X6は自己相補的である。さらにもう1つの態様において、X1X2X3 Pu1 Py2とPu3 Py4 X4X5X6は自己相補的である。
【0079】
Pu1 Py2とPu3 Py4が自己相補的であるDオリゴヌクレオチドの具体的で非制限的な例には、

が非制限的に含まれる。理論に拘束されることはないが、自己相補的な塩基配列は、免疫刺激機能が高まるようにCpGジヌクレオチドが先端部にあるステムループ構造を形成するのに役立つ。したがって、1つの具体的で非制限的な例において、Pu1 Py2とPu3 Py4が自己相補的であるDオリゴヌクレオチドは、免疫系の細胞からより高レベルのIFN-γ産生を誘導する(下記参照)。自己相補性は必ずしもPu1 Py2およびPu3 Py4には限定されない。したがって、もう1つの態様においては、CpG含有ヘキサマーの両端にある3つの塩基のそれぞれの端にある別の塩基が自己相補的配列を形成する(上記参照)。
【0080】
Pu1 Py2とPu3 Py4は自己相補的であるがファーフランキング配列は自己相補的でない配列の1つの具体的で非制限的な例は以下のものである:

このオリゴデオキシヌクレオチドは自己相補的でないファーフランキング領域を有し、高レベルのIFN-γおよびIFN-αを誘導する。
【0081】
Dオリゴデオキシヌクレオチドのもう1つの具体的で非制限的な例は以下のものである:

このオリゴデオキシヌクレオチドは免疫細胞からのサイトカインの産生および/または放出を誘導するために有用であるが、自己相補的モチーフは有していない。
【0082】
1つの態様において、本明細書に開示するDオリゴデオキシヌクレオチドは少なくとも約16ヌクレオチド長である。第2の態様において、Dオリゴデオキシヌクレオチドは少なくとも約18ヌクレオチド長である。もう1つの態様において、Dオリゴデオキシヌクレオチドは約16ヌクレオチド長〜約100ヌクレオチド長である。さらにもう1つの態様において、Dオリゴデオキシヌクレオチドは約16ヌクレオチド長〜約50ヌクレオチド長である。さらにもう1つの態様において、Dオリゴデオキシヌクレオチドは約18ヌクレオチド長〜約30ヌクレオチド長である。
【0083】
もう1つの態様において、オリゴデオキシヌクレオチドは少なくとも18ヌクレオチド長であって、オリゴデオキシヌクレオチドが式IV

によって表される配列を有するように、少なくとも2つのGが分子の5'末端に含まれる。このDオリゴデオキシヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチドの5'末端にさらに別のGを含みうる。1つの具体的な例において、式IVに示された配列を含むオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端に約1つまたは約2つのGが含まれる。
【0084】
Dオリゴデオキシヌクレオチドの例には以下のものが非制限的に含まれる:

(式中、Xは任意の塩基であるか、または塩基が全く存在しない)。1つの具体的で非制限的な例において、XはGである。特定の非制限的な例において、このオリゴデオキシヌクレオチドには、

からなる群より選択される配列が含まれる。
【0085】
本明細書に開示したDおよびKオリゴデオキシヌクレオチドは、当技術分野で周知のさまざまな手順の任意のものを用いてデノボ合成することができる。例えば、オリゴデオキシヌクレオチドを、米国特許第6,194,388号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)に示されたように合成することができる。Dオリゴデオキシヌクレオチドを、例えば、B-シアノエチルホスホルアミダイト法またはヌクレオシドH-ホスホネート法を用いることによって合成することもできる。これらの化学的手法は、販売されている種々の自動オリゴヌクレオチド合成装置によって行いうる。または、オリゴデオキシヌクレオチドを、制限酵素、エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを用いるといった既知の方法を用いて既存の核酸配列(例えば、ゲノムまたはcDNA)から調製することもできるが、この方法は直接合成よりも効率が落ちる。
【0086】
B. 薬学的組成物
本明細書に記載した免疫刺激性ODNは、治療または予防を行おうとする疾患の部位および種類に応じてさまざまなやり方で製剤化することができる。すなわち、薬学的組成物は、局所的(例えば、局所外用または吸入)使用および全身的使用のいずれのためにも提供される。したがって、本開示はその範囲内に、ヒトの医学または獣医学に用いる目的で製剤化された少なくとも1つの免疫刺激性ODNを含む薬学的組成物を含む。免疫刺激性ODNはヒトの対象に対して用いられることが典型的と思われるが、他の霊長動物、イヌ、ネコ、ウマおよびウマといった他の脊椎動物における類似または同一の疾患を治療するためにそれを用いることもできる。
【0087】
本明細書に記載の免疫刺激性K ODNまたはD ODNの少なくとも1つを有効成分として含む薬学的組成物、または免疫刺激性ODNおよび別の抗感染症薬を有効成分として含む薬学的組成物は、選択する個々の投与様式に応じて、適切な固体担体または液体担体とともに製剤化することができる。追加的な有効成分には、例えば、抗生物質、抗真菌化合物、抗ウイルス化合物および高度免疫グロブリンなどの抗感染症薬が含まれる。適した投与形式は各対象に対して臨床医が個別に判断することが最良である。さまざまな薬学的に許容される担体およびそれらの製剤化については標準的な製剤の専門書に記載されており、これには例えば、B. W. Martinによる「レミントン薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」 がある。また、Wang, Y. J. and Hanson, M. A., Journal of Parenteral Science and Technology, Technical Report No. 10, Supp. 42: 2S,1988も参照されたい。
【0088】
薬学的組成物の剤形は、選択する投与様式によって決まると考えられる。例えば、注射液に加えて、吸入用および経口用の製剤を用いることができる。吸入用製剤には、エアロゾル、微粒子などが含まれる。一般に、吸入のための粒径の目標は、医薬剤を吸収のために肺の肺胞領域に到達させる目的には約1μmまたはそれ未満である。経口用製剤は液体(例えば、シロップ剤、液剤または懸濁剤)でも固体(例えば、粉剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤)でもよい。固体組成物の場合には、従来の無毒性固体担体をには医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムが含まれうる。このような剤形を実際に調製する方法は当業者に既知である、または明らかであると考えられる。
【0089】
いくつかの態様において、CpG ODNの生物学的利用能および作用持続時間によってその治療効果を改善することができる。CpG ODNを分解から防御すると同時に免疫系の細胞による取り込みを増加させるために考えられる1つの方法は、リポソーム封入を含む(MacDonald et al., Biochim. Biophys. Acta 1061: 297, 1991;Takeshita et al., Eur. J. Immunol. 30: 108, 2000)。立体的に安定化されたカチオン性リポソーム(SSCL)組成物は、K型CpG ODNを効率的に組み入れてインビトロおよびインビボの細胞に送達する。SSCLは、以下に述べるように、カチオン性脂質、コリピド(colipid)および安定化添加剤を含むリポソームである。
【0090】
カチオン性脂質には、スペルミジン-コレステロール、スペルミン-コレステロール、ジメチルアミノエタン-コレステロール(DC-CHOL)およびジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)が非制限的に含まれる。1つの態様において、カチオン性脂質はジメチルアミノエタン-カルボモル(carbomol)-コレステロール(DC-CHOL)である。コリピドには、中性、両性イオン性およびアニオン性の脂質が非制限的に含まれる。1つの態様において、コリピドはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)である。コリピドは安定化添加剤(下記参照)を複合体に組み入れることを可能にする成分である。理論に拘束されることはないが、脂質を添加剤で誘導体化することにより、この成分が安定化添加剤をカチオン性脂質複合体に対して係留することが可能になる。コリピドはカチオン性脂質-核酸複合体の凝集および沈降を防ぐ添加剤と結合させることができる。このような添加剤を本明細書に開示する組成物に組み入れるために用いうるコリピドには、両性イオン性または他のリン脂質が非制限的に含まれる。コリピドは不活性であって生体適合性があることが好ましい。
【0091】
カチオン性脂質とコリピドとの比(モル比)は約3:7〜約7:3である。1つの態様において、カチオン性脂質とコリピドとの比(モル比)は約4:6〜約6:4である。さらにもう1つの態様において、脂質とコリピドとの比(モル比)は約4:6である。したがって、1つの具体的で非制限的な例において、DC-CHOLおよびDOPEは立体的に安定化されたカチオン性リポソームに約4:6のモル比で含まれる。
【0092】
安定化剤も立体的に安定化されたカチオン性リポソームに含まれる。理論に拘束されることはないが、安定化剤は複合体の完全性を維持し、サイズ選別手順における安定性を維持し、保存寿命を延長させると考えられている。1つの態様において、添加剤は、複合体に組み込まれうるか結合しうる成分、例えばコリピドと結合される。このような添加剤は一般に親水性ポリマーから選択され、これにはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチル-オキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、および、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが非制限的に含まれる(公開済みのPCT出願第WO 94/22429号を参照されたい)。その他の安定化剤には、過フッ化または部分フッ化アルキル鎖、フッ化リン脂質、脂肪酸およびパーフルオロアルキル化リン脂質およびポリグルコロン酸が非制限的に含まれる(Oku et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 11:231-270, 1994)。
【0093】
リポソームの調製には、例えば以下のものに記載されたようなさまざまな方法を用いうる:Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467, 1980;米国特許第4,186,183号;米国特許第4,217,344号;米国特許第4,235,871号;米国特許第4,261,975号;米国特許第4,485,054号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,774,085号;米国特許第4,837,028号;米国特許第4,946,787号;PCT公報WO 91/17424号;Szoka & Papahadjopoulos, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 4194-4198, 1978;Deamer & Bangham, Biochim. Biophys. Acta 443: 629-634, 1976;Fraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 3348-3352, 1979;Hope et al., Biochim. Biophys. Acta 812: 55-65, 1985;Mayer et al., Biochim. Biophys. Acta 858: 161-168, 1986;Williams et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 242-246,1988, 「リポソーム(Liposome)」、ch.1(Ostro, ed., 1983);およびHope et al., Chem. Phys. Lip. 40: 89, 1986;米国特許第6,410,049号。適した方法には例えば、超音波処理、押し出し法、高圧/均質化、マイクロフルイダイゼーション、界面活性剤による透析、カルシウムによるリポソーム小胞の融合、およびエーテル注入法が含まれ、これらはすべて当技術分野で周知である。
【0094】
1つの態様においては、DまたはKオリゴヌクレオチドおよび薬理学的に許容される担体を含む薬理学的組成物が提供される。薬理学的に許容される担体(例えば、生理的または薬学的に許容される担体)は当技術分野で周知である。インビボでのK型またはD型ODNの利用を促進するために、適した薬学的組成物を製剤化することができる。このような組成物は、任意の適した宿主、例えば医療の対象となる患者に対する有効成分の送達に適しており、それ自体で知られている様式で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、磨砕、乳化、カプセル封入、封じ込めまたは凍結乾燥の工程により、製造することができる。
【0095】
組成物または薬学的組成物は、非経口的投与、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腹腔内、胸骨内もしくは関節内への注射もしくは注入、または舌下、経口、局所外用、鼻内もしくは経粘膜投与によるものまたは肺吸入によるものを含む、任意の経路によって投与することができる。免疫刺激性ODNを非経口用組成物として、例えば注射または注入用として提供する場合には、それらは一般に、水性担体中に、例えば、pH約3.0〜約8.0、好ましくはpH約3.5〜約7.4、3.5〜6.0または3.5〜約5.0の等張緩衝液中に懸濁化される。有用な緩衝液には、クエン酸ナトリウム-クエン酸およびリン酸ナトリウム-リン酸および酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液が含まれる。
【0096】
経口投与用の薬学的組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン)または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される添加剤とともに従来の手段によって調製された錠剤またはカプセル剤の形態をとりうる。錠剤には当技術分野で周知の方法によってコーティングを施すことができる。経口投与用の液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤もしくは懸濁液の形態をとることができ、またはそれらを使用前に水もしくは他の適した溶媒で構成するための乾燥製品として提供してもよい。このような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または食用硬化油脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム)、非水溶媒(例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油(fractionated vegetable oil))および保存剤(例えば、メチル-もしくはプロピル-p-オキシ安息香酸またはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物を用いる従来の手段によって調製することができる。製剤に緩衝塩、香味剤、着色剤および甘味剤を適宜含めることもできる。
【0097】
吸入による投与のためには、本発明の方法に従って用いる化合物を、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適した気体)を用いる加圧容器またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの剤形として送達することが好都合である。加圧エアロゾルの場合には、一定量を送達するためのバルブを用意することにより、単位投与量(dosage unit)を決定しうる。吸入器または吹入器において用いるためのゼラチンなどのカプセルまたはカートリッジを、化合物と乳糖またはデンプンなどの適切な粉末基剤との混合物を含むように製剤化することもできる。本明細書に記載の免疫刺激性ODNを有効成分として含む薬学的組成物は通常、選択する個々の投与様式に応じて、適切な固体担体または液体担体とともに製剤化することができる。
【0098】
薬学的組成物の剤形は、選択する投与様式によって決まると考えられる。例えば、注射液に加えて、吸入用および経口用の製剤を用いることができる。吸入用製剤には、エアロゾル、微粒子などが含まれる。一般に、吸入のための粒径の目標は、医薬剤を吸収のために肺の肺胞領域に到達させる目的には約1μmまたはそれ未満である。経口用製剤は液体(例えば、シロップ剤、液剤または懸濁剤)でも固体(例えば、粉剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤)でもよい。固体組成物の場合には、従来の無毒性固体担体をには医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムが含まれうる。このような剤形を実際に調製する方法は当業者に既知である、または明らかであると考えられる。有用な薬学的に許容される担体および添加剤は通常のものである。例えば、非経口用製剤は通常、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理的に許容しうる液体を含む注入可能な液体を媒体として含む。含めることができる添加剤には、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物などのタンパク質がある。必要に応じて、投与しようとする薬学的組成物が湿潤剤または乳化剤、保存料およびpH緩衝剤、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの無毒性補助物質を微量に含んでもよい。このような剤形を実際に調製する方法は当業者に既知である、または明らかであると考えられる。
【0099】
例えば、非経口投与のためには、免疫刺激性ODNは一般に、それらを所望の度合いの純度で、すなわち用いる投与量および濃度でレシピエントに対する毒性がなく製剤の他の成分と適合性のある値で、薬学的に許容される担体と混合することによって、単位用量が注射される形態(液剤、懸濁剤または乳剤)として製剤化することができる。薬学的に許容される担体は、毒性のない固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または任意の種類の製剤化補助物質である。
【0100】
一般に、製剤は、免疫刺激性ODNをそれぞれ、液体担体または微粒化した固体担体またはその両方と均等かつ密接に接触させることによって調製される。続いて、必要であれば、生成物を所望の製剤として成形する。選択的には、担体は非経口用担体であり、いくつかの態様においてこれはレシピエントの血液と等張な溶液である。このような担体媒体の例には、水、食塩液、リンゲル液およびデキストロース溶液が含まれる。固定油およびオレイン酸エチルなどの非水性媒体ならびにリポソームも本明細書において有用である。
【0101】
いくつかの態様において、免疫刺激性ODNを含む薬学的組成物は、正確な用量を個々に投与するのに適した単位投薬式剤形として製剤化される。投与される有効化合物の量は、治療する対象、疾患の重症度および投与様式によると考えられ、処方を行う臨床医の判断に任せることが最良である。これらの範囲において、投与しようとする製剤は、有効成分を、治療する対象において所望の効果を得るために有効な量として含むと考えられる。
【0102】
免疫刺激性ODNの治療的有効量は、用いるODN、治療する対象、疾患の重症度および種類、ならびに投与様式によって決まると考えられる。例えば、免疫刺激性ODNの治療的有効量は約0.01μg/キログラム(kg)体重〜約1g/kg体重の範囲でさまざまであってよく、例えば、約1μg〜約5mg/kg体重または約5μg〜約1mg/kg体重である。厳密な用量は、個々の化合物の効力(用いる免疫刺激性ODNなど)、対象の年齢、体重、性別および生理学的状態に基づき、当業者によって容易に決定される。
【0103】
C. 治療的用途
本明細書では、バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防のための方法を開示する。これらの方法は以下を含む:
1. バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象に対して免疫刺激性ODNの治療的有効量を投与すること、
2. バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象に対して免疫刺激性ODNの治療的有効量を抗感染症薬と組み合わせて投与し、それによって対象における感染症を治療または予防すること、および
3. 免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量をバイオテロ病原体に対するワクチンと組み合わせて対象に投与すること。
【0104】
バイオテロ病原体には、炭疽菌、ペスト菌、大痘瘡、ヒストプラスマ・カプスラーツム、インフルエンザ菌、エボラウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、大腸菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌)、サルモネラ菌、ブドウ球菌エンテロトキシンB、ボツリヌス毒素、リシン毒素、コブラ毒、貝毒、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、リシン毒素、トリコテシン系マイコトキシンまたはアフラトキシンが非制限的に含まれる。バイオテロ病原体に対する曝露は、炭疽、クリプトコッカス症、ブルセラ症、コクシジオイデス真菌症、オウム病、腺ペスト、野兎病、マラリア、コレラ、腸チフス、出血熱、ダニ媒介脳炎、ベネズエラウマ脳炎、肺ペスト、ロッキー山紅斑熱、デング熱、リフトバレー熱、ジフテリア、類鼻疽、鼻疽、結核、感染性肝炎、脳炎、ブラストミセス症、ノカルジア症、黄熱病、チフスおよびQ熱を引き起こす恐れがある。
【0105】
本方法のいくつかの態様は、バイオテロ病原体に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象に免疫刺激性ODNの治療的有効量を投与し、それによって対象における感染症を治療または予防することを含む。理論に拘束されることはないが、免疫刺激性ODNの投与は全身的な免疫活性化を増大させ、バイオテロ病原体またはワクチンに対する免疫応答の増大をもたらす。このようにして、対象の感染リスクを低下させること、または罹りやすい症状を減らすことが可能であり、必要に応じてさらに治療を行うことが可能である。1つの態様において、免疫刺激性ODNは吸入などによって局所的に投与することができる。もう1つの態様において、免疫刺激性ODNは静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射などによって全身的に投与される。
【0106】
いくつかの態様において、免疫刺激性ODNは、対象がバイオテロ病原体に曝露される前、例えば、曝露の2週前、1週前、1日前、6時間前また1時間前に投与される。免疫刺激性ODNを、対象がバイオテロ病原体に曝露された後、例えば、曝露の2週後、1週後、1日後、6時間後または1時間後に投与することもできる。いくつかの態様において、免疫刺激性ODNは、バイオテロ病原体に曝露されるリスクのある対象、例えば軍人、警察官、郵便物取り扱い者、政府当局者、またはバイオテロ病原体に曝露されるリスクのある他の任意の個体に投与される。例えば、1つの具体的で非制限的な例において、免疫刺激性ODNは軍人に対して、実践配備の3日前、6日前または2週前に投与される。適した対象には、バイオテロ病原体への曝露後に罹病しやすい例、例えば例えば、高齢者、免疫抑制薬を投与されている人、癌の患者およびHIVに感染した対象といった免疫系の低下した対象も含まれる。
【0107】
これらの免疫刺激性ODNの併用も有用である。したがって、1つの態様においては、それぞれ核酸配列の異なる複数の免疫刺激性DもしくはK ODN、またはDおよびK ODNの両方を対象に投与する。いくつかの具体的で非制限的な例においては、少なくとも2種類、少なくとも3種類または少なくとも4種類の免疫刺激性D ODNを対象に投与する。また別の具体的で非制限的な例においては、少なくとも2種類、少なくとも3種類または少なくとも4種類の免疫刺激性K ODNを対象に投与する。さらに別の具体的で非制限的な例においては、少なくとも2種類、少なくとも3種類または少なくとも4種類の免疫刺激性D ODNを、少なくとも2種類、少なくとも3種類または少なくとも4種類の免疫刺激性K ODNと組み合わせて対象に投与する。
【0108】
免疫刺激性ODNの有効量を単回投与することもでき、または多回投与を、例えば治療の経過に沿って毎週行うこともできる。1つの態様においては、免疫刺激性ODNの治療的有効量が、単回のパルス投与として、ボーラス投与として、または一定期間にわたって投与するパルス投与として投与される。すなわち、パルス投与においては、免疫刺激性ODNのボーラス投与を行った後に、免疫刺激性ODNを対象に投与しない期間をおき、さらにその後に2回目のボーラス投与を行う。具体的で非制限的な例において、免疫刺激性ODNのパルス投与は1日間のクールにわたり、1週間のクールにわたり、または1カ月のクールにわたり行われる。
【0109】
このように、本明細書に開示した免疫刺激性ODNは、対象に対して、その個体におけるバイオテロ病原体により誘導される感染症の治療のために投与することができる。ODN投与は全身性でも局所性でもよい。ODNの局所投与は当業者に周知の方法によって行われる。例えば、個体の肺への投与方法の一つは、ネブライザーまたは吸入器を用いた吸入による。例えば、ODNをエアロゾルまたは微粒子として製剤化し、当業者に周知の標準的なネブライザーを用いて肺内に吸引させる。
【0110】
また別の態様において、免疫刺激性ODNの投与は全身性である。経口、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、さらには直腸内投与を想定している。感染症の予防は、症状の予防および症状の発現の遅延の両方を含む。具体的で非制限的な例において、免疫刺激性ODNの投与は、さらに治療が必要になるまで感染症の症状を遅らせる。
【0111】
免疫刺激性ODNによる治療の有効性は、感染症の症状、例えば発熱をモニタリングすることによって計測しうる。例えば、時間経過に伴う発熱の低下はODN治療の有効性の指標の1つである。
【0112】
いくつかの態様において、本方法は、抗生物質、抗ウイルス化合物、抗真菌化合物または高度免疫グロブリンなどの抗感染症薬を、免疫刺激性ODNとともに対象に投与することを含む。追加する抗感染症薬および免疫刺激性ODNの投与は逐次的でもよく同時でもよい。
【0113】
抗感染症薬には抗真菌化合物、抗ウイルス化合物および抗生物質が非制限的に含まれる。抗生物質には、アモキシシリン、クラリスロマイシン、セフロキシム、セファレキシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テルビナフィン、レボフロキサシン、ニトロフラントイン、テトラサイクリンおよびアジスロマイシンが非制限的に含まれる。抗真菌化合物には、クロトリマゾール、ブテナフィン、ブトコナゾール、シクロピロックス、クリオキノール、クリオキノール、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナフチフィン、ニスタチン、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾールおよびトルナフテートが非制限的に含まれる。抗ウイルス化合物には、ジドプジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフロビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インディナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アンプレナビルおよびロピナビルが非制限的に含まれる。抗感染薬には高度免疫グロブリンも含まれる。
【0114】
本明細書に記載する他の方法には、対象におけるバイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高める方法がある。いくつかの態様においては、バイオテロ病原体に対するワクチンは抗原である。本方法は、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量をバイオテロ病原体に対するワクチンと組み合わせて投与し、それによってワクチンの有効性を高めることを含む。ワクチンは、感染症の抑制、予防、改善または治療のために投与される、抗原、DNA、タンパク質サブユニット、ペプチド、弱毒化した微生物(細菌およびウイルスを非制限的に含む)、生きている微生物または死滅させた微生物の調製物である。
【0115】
いくつかの態様において、ワクチンは加熱またはホルマリンによる死滅ワクチンである。今日一般的に用いられている死滅ワクチンの例には、腸チフスワクチンおよびSalkポリオワクチンが含まれる。
【0116】
また別の態様において、ワクチンは無細胞ワクチンである。無細胞ワクチンは、病原性微生物の抗原部分のみ、例えば莢膜、鞭毛、またはタンパク質細胞壁の一部を用いることによって製造される。さらに別の態様において、ワクチンは弱毒ワクチンである。弱毒ワクチンは、微生物を変異させてその増殖能を変化させることにより、生きている微生物を「弱毒化する」または弱めることによって製造される。さらに別の態様において、ワクチンはトキソイドである。
【0117】
また別の態様において、ワクチンは、関連性はあるが病毒性の弱い病原体を用いることによって製造される。関連性のある病原体は重篤な疾患を引き起こすことはないが、より病毒性の強い病原体に対する防御をもたらす。例えば、比較的弱い牛痘ウイルスが、類似性はあるがしばしば致死的である痘瘡ウイルスに対する防御のために用いられれる。さらに別の態様において、ワクチンはサブユニットワクチンまたはDNAワクチンである。
【0118】
このように、CpGオリゴヌクレオチドはバイオテロ病原体に対する多岐にわたるワクチンとともに用いることができ、これには、炭疽菌、ペスト菌、大痘瘡、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、エボラウイルス、大腸菌、インフルエンザ菌、コブラ毒、貝毒、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、リシン毒素、フレキシナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌)、サルモネラ菌、ブドウ球菌エンテロトキシンB、ヒストプラスマ・カプスラーツム、トリコテシン系マイコトキシン、アフラトキシンに対する、加熱もしくはホルマリンによる死滅ワクチン、弱毒ワクチン、サブユニットワクチン、抗原ワクチン、DNAワクチン、無細胞ワクチンまたはトキソイドワクチンが非制限的に含まれる。また、ワクチンを、クリプトコッカス症、ブルセラ症(波状熱)、コクシジオイデス真菌症(サン・ホアキン渓谷熱または砂漠熱)、オウム病(オウム熱)、腺ペスト、野兎病(ウサギ熱)、マラリア、コレラ、腸チフス、出血熱、ダニ媒介脳炎、ベネズエラウマ脳炎、肺ペスト、ロッキー山紅斑熱、デング熱、リフトバレー熱、ジフテリア、類鼻疽、鼻疽、結核、感染性肝炎、脳炎、ブラストミセス症、ノカルジア症、黄熱病、チフスおよびQ熱に対する防御免疫応答を誘導するために用いることもできる。いくつかの態様において、ワクチンは、炭疽菌、エボラウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、ペスト菌、大痘瘡、ヒストプラスマ・カプスラーツム、インフルエンザ菌、大腸菌、フレキシナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌)、サルモネラ菌またはブドウ球菌に由来する抗原である。
【0119】
いくつかの態様の特定の例において、ワクチンは、AVA(ただし、これには限定されない)などの炭疽ワクチン、または防御抗原(PA)もしくは組換え防御抗原(rPA)(ただし、これらには限定されない)などの炭疽抗原である。
【0120】
AVAによる初回ワクチン接種は一般に、0週、2週および4週の時点での3回の皮下注射からなり、追加ワクチン接種を6カ月、12カ月および18カ月の3回行う。免疫を維持するために、製造元は毎年の追加免疫注射を推奨している。6回の投与による初回ワクチン接種スケジュールの複雑さ、および局所的な注射部位反応の頻度の高さのため、投与回数を減らしたスケジュールが望ましいと考えられる。AVAを免疫刺激性DまたはK ODNとともに投与することにより、ワクチン単独を用いるよりもワクチンに対する良好な免疫応答が得られ、免疫防御応答を得るために必要な免疫処置の頻度を減らすことができる。
【0121】
特定の非制限的な例において、ワクチンは、炭疽菌由来の毒性のない防御抗原(PA)またはその免疫原性断片をコードするDNA配列である。PAの配列は決定されており、これはGenBankにアクセッション番号M22589として寄託されている。他の有用な抗原には、以下のものが非制限的に含まれる:米国公報US 2002/0051791A1号に開示された炭疽菌致死因子(LF)または免疫原性その断片、例えば米国特許第5,614,193号に開示されたハンタウイルス抗原、例えば米国特許第4,567,147号に開示された痘瘡抗原、例えばWO 98/24912A2号に開示されたペスト抗原、例えばWO 00/00617A2号に開示されたエボラウイルス抗原、例えば米国特許第6,372,221号および欧州特許第0691404 B1号に開示されたダニ媒介脳炎抗原、例えばWO 99/55874A2号および米国特許第6,391,313号に開示されたヒストプラスマ・カプスラーツム抗原、例えば米国特許第6,342,232号、EP 0432220 B1号および米国特許第RE 37741号に開示されたインフルエンザ菌抗原、例えば米国特許第5,370,872号、米国特許第6,077,516号および米国特許第3,975,517号に開示された大腸菌抗原、例えば米国特許第5,077,044号、米国特許第5,686,580号および米国特許第5,681,736号に開示されたシゲラ抗原、例えばWO 01/70247A2号、米国公報第2001/0021386A1号およびEP 1112747A1号に開示されたサルモネラ菌抗原、ならびに例えばEP 0694309A3号および米国特許第6,391,315号に開示されたブドウ球菌抗原。
【0122】
本方法は、免疫刺激性D ODNおよび/またはK ODNの治療的有効量をバイオテロ病原体に対するワクチンとともに対象に投与し、それによってワクチンの免疫原性を高めることを含む。1つの態様において、免疫刺激性ODNは局所的に、例えば局所外用または吸入によって投与することができる。もう1つの態様において、免疫刺激性ODNは全身的に、例えば静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0123】
免疫刺激性ODNの併用はバイオテロ病原体に対するワクチンの免疫原性を高めるにも有用である。したがって、1つの態様においては、それぞれ核酸配列の異なる複数の免疫刺激性ODNを対象に投与する。いくつかの具体的で非制限的な例においては、少なくとも2種類、少なくとも3種類または少なくとも4種類の免疫刺激性ODNをワクチンと組み合わせて対象に投与する。
【0124】
免疫刺激性ODNの有効量をバイオテロ病原体に対するワクチンと組み合わせて単回投与することもでき、または多回投与を行うこともできる。例えば、いくつかの態様においては、追加接種用のワクチンおよび免疫刺激性ODNを初回投与後に定期的に、例えば、初回投与から1カ月、2カ月または3カ月の時点で行うことができる。具体的で非制限的な例において、バイオテロ病原体に対するワクチンと組み合わせた免疫刺激性ODNのパルス投与は、初回ボーラス投与から2週後、4週後、6カ月後、12カ月後、18カ月後または毎年行われる。
【0125】
また別の態様においては、バイオテロ病原体に曝露された可能性のある対象に対して、バイオテロ病原体に対するワクチンを、免疫刺激性D ODNまたはK ODNおよび抗感染症薬と組み合わせて投与することが可能である。例えば、バイオテロ病原体に曝露されたか、曝露された可能性のある疑似症例(suspect)の治療の過程で、ワクチンおよびODNを毎日、毎週または2週おきに投与することができる。
【0126】
免疫刺激性ODNは、ワクチン投与の前、ワクチン投与と同時、またはワクチン投与の後に投与することができる。例えば、免疫刺激性ODNを、ワクチンを投与する前、例えばワクチンを対象に投与する2週前、1週前、1日前または1時間前に投与することができる。または、免疫刺激性ODNを、ワクチン投与と同時に、または例えば、ワクチンを対象に投与して2週後、1週後、1日後もしくは1時間後に投与することもできる。
【0127】
このように、本明細書に記載の免疫刺激性ODNは、ワクチンの免疫原性を高める目的で、バイオテロ病原体に対するワクチンと組み合わせて対象に投与することができる。ODN投与の有効性は、当業者に知られた方法により、バイオテロ病原体に対するワクチンの力価もしくは抗体応答の結合活性(avidity)、または細胞傷害性T細胞の応答をモニターすることによって計測しうる。例えば、時間経過に伴うバイオテロ病原体に対するワクチンの力価または抗体応答の結合活性の増大はODN治療の有効性の指標である。
【0128】
本開示を以下の非制限的な実施例によって例示する。
【0129】
実施例
実施例1
材料および方法
試薬
ホスホロチオエートODN(表1)を合成するか、または販売元から入手した。詳細には、CpG 7909およびCpG 10103はいずれも、Coley Pharmaceuticals(Wellesley, MA)から入手したK型ODNである。合成したODNはすべて、Limulusアメーバ様細胞溶解物アッセイ(QCL-1000, BioWhittaker)による評価ではODN 1mg当たりのエンドトキシン量が0.1 EU未満であった。
【0130】
AVAはBioPort Corporation(East Lansing, MI)から入手した。組換えPA(rPA)は以前に記載された通りに作製した(Farchaus et al., Appl. Environ. Microbiol. 64: 982, 1998)。ワクチン接種のためには、50μgのrPAをPBS 0.5ml+アルミニウム0.5mg(Alhydrogel、SuperFos/BioSector, Denmark)中に溶解した。
【0131】
炭疽菌のAmes株およびVollum 1B株は、United States Army Medical Research Institute of Infectious Diseases(Fort Detrick, MD)の培養物コレクションから入手した。胞子の調製および保存は以前の記載の通りに行った(Ivins et al., Infect. Immun. 58: 303, 1990)。
【0132】
(表1)マウスおよびヒトODNの配列および骨格

イタリック体で示した塩基はホスホジエステルであり、他はすべてホスホロチオエートである。CpGジヌクレオチドには下線を付している。
【0133】
動物
動物試験はすべてACUCの承認を受けており、AAALAC認定施設で行った。動物のモニタリングは獣医が毎日行った。特殊な病原体非含有BALB/cマウスはJackson Laboratories(Bar Harbor, ME)から入手し、仕切り環境にある滅菌マイクロアイソレーター(micro-isolator)ケージ内で飼育した。マウスには6〜8週齡の時点でCpG ODN 50μgをi.p.注射し、その後に11〜70 LD50の炭疽菌Vollum 1B胞子によるSQでの抗原曝露を行った。
【0134】
325〜375gmのHartleyモルモット(Charles River)に対して、用量0.5mlのAVA+100〜300μgのCpG ODNによるIMでの免疫処置を行い、4週後に同じ材料による追加免疫処置を行った。このモルモットに対して、第10週の時点で5,000個(50 LD50)のAmes胞子によりIMでの抗原曝露を行った。
【0135】
健常な3歳の雌性アカゲザルは、South CarolinaにあるFDAのコロニーから入手した。1群当たり5〜6頭のアカゲザルに対して0週および6週の時点で、ヒトの通常の用量のAVA(0.5ml)またはrPA(50μg)+250μgの「K」または「D」CpG ODNによる皮下への免疫処置を行った。これらのアカゲザルに対して、第27週に炭疽菌の動物用生ワクチン株(Sterne)によるIMでの「抗原曝露」を行った。投与および末梢血試料の採取はケタミン(10mg/kg, Ketaject, Phoenix Pharmaceuticals, St. Joseph, MD)で麻酔したアカゲザルに行った。
【0136】
実験のいくつかに関しては、5頭の雄性および雌性アカゲザル/群の5群に対して、0.5mLのAVA+0または250μgのCpG ODNによる皮下(SQ)または筋肉内(IM)での免疫処置を試験第0日および第42日に行った。すべての動物のモニタリングは獣医が毎日行った。投与は適切な麻酔下で行った。ベースラインの血液試料は初回注射の10日前(試験第-10日)に各々の非ヒト霊長動物(NHP)から採取した。血液は初回注射から第1、4、11、16、21、28、35、42、49、56日および第63日後に各NHPから採取した。
【0137】
抗PA ELISAアッセイおよび結合活性アッセイ
炭疽菌PAに対するIgG抗体価を固相酵素免疫アッセイ(ELISA)によりモニタリングした。抗PA抗体は炭疽菌毒素の結合を阻止することによって宿主細胞に防御を付与するため、抗PA IgGはワクチンの有効性のマーカーとみなされている(Pittman et al., Vaccine 20: 1412-1420, 2002)。また、抗PA抗体は胞子発芽を抑制し、マクロファージによる胞子の取り込みおよび排除を増大させる(Welkos et al., Microbiology 147: 1677-1685, 2001)。ワクチンとアジュバントとの併用による免疫原性の差異に関して評価するために、抗PA IgM抗体価もELISAにより評価した。
【0138】
マイクロタイタープレート(96ウェルのImmulon 2;Dynex Technologies Inc., Chantilly, VA)を1μg/mlのrPA(PBS中)でコーティングした後に、PBS-5%脱脂乳でブロックして一晩乾燥させた。ブロッキングバッファーで希釈した血清試料を、rPAをコーティングしたマイクロタイタープレート上で2時間インキュベートした。コーティング後にプレートを2%脱脂粉乳を含む0.1%Tween 20(PBS中)により室温で1時間ブロックした。続いて、記載の通りに(Ivins et al., Infect Immun 60, 662-668, 1992)、プレートの上に連続希釈した血清を重層させて37℃で1時間おいた。プレートを洗浄し、結合した抗体を、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗サルIgGまたはIgM(Kirkegaard & Perry, Gaithersburg, MD)に続いてABTS基質(Kirkegaard & Perry)を用いることで検出した。抗体価は、抗体価の高い抗PA血清を用いて作成した標準曲線との比較によって決定した。すべての試料を3回ずつ分析した。すべてのアッセイは同じ日に全プレートに対して同じ試薬を用いて行った。
【0139】
結合活性試験に関しては、プレートを洗浄して、200μlの6M尿素により15分間処理した。結合した抗体は、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗サルIgG(Kirkegaard & Peny Laboratories, Gaithersburg, MD)に続いてABTS(Kirkegaard & Perry Laboratories)を用いることで検出した。抗体価は、抗体価の高い抗血清を用いて作成した標準曲線との比較によって決定した。すべての試料を3回ずつ分析した。
【0140】
TNAアッセイ
TNAアッセイは、被験血清が炭疽菌致死毒素(PAと炭疽菌致死因子(LF)との混合物)の細胞傷害作用を中和する能力をインビトロアッセイで評価するものである。炭疽菌致死毒素に対する感受性のあるマウス標的細胞株を、致死毒素と対照血清との混合物または致死毒素と被験血清との混合物とともにインキュベートする。細胞傷害性の比率(%)は、比色分析用基質MTTを添加し、残存する生細胞による加水分解によって生じる紫色のホルマザン沈殿物を溶解し、プレート読み取り装置で定量することによって決定する。有効量50(ED50)を、致死毒素の50%中和が得られた被験血清の希釈度の逆数として算出する。中和抗体の濃度は被験血清のED50と標準参照血清のED50との比を用いて算出される。
【0141】
マウス血清防御アッセイ
上記の免疫原性アッセイのために採取した血清試料を使用時まで-80℃で凍結保存した。各処置群の全マウスから試験第11日および別個に試験第16日に採取した同容積の血清をプールした。この血清プールの100μlを6週齡の雄性A/JCrマウス(10匹/群)にIV注射した。24時間後に、血清IgG抗PA抗体価を評価するために、これらのマウスのサブセット(計4匹)の尾静脈から血液を採取した。続いてすべてのマウスに対して、30〜60 LD50のSterne株炭疽菌胞子(PBS 500μl中に希釈)によるi.p.抗原曝露を行った。これらのマウスの生存を3週間にわたって毎日モニタリングし、死亡までの時間を記録した。いずれの群でも第10日以後の死亡は観察されなかった。実験は2回ずつ行った。
【0142】
統計分析
抗原曝露実験は最低5〜10匹/群のマウスを用いて行った。生存性の差はStudentのt検定を用いて評価し、血清抗PA Ab価(または結合活性)の差は多重回帰ANOVAを用いて評価した。
【0143】
実施例2
CpG ODNの免疫防御活性
CpG ODNに、炭疽菌Vollum 1Bによる抗原曝露を受けた正常BALB/cマウスの生存性を改善する能力があることが示された。感染後に生存したBALB/cマウスの割合、および/またはそれらの死亡までの平均期間(MTD)は、抗原曝露の3〜6日前のCpG ODN投与によって有意に改善した(表II)。投与を早期に開始するほど薬効は大きく、このことは数日かけて成熟した後に数週間持続する免疫カスケードをCpGモチーフが賦活するという仮説に合致する(Elkins et al., J. Immunol. 162: 2291, 1999;Klinman et al., Immunity 11: 123, 1999)。抗原曝露の1日前にCpG ODNを投与したマウスでは死亡までの平均期間(MTD)のわずかな延長が観察されたが、病原体の曝露と同時またはその後に投与しても生存性に対する効果はみられなかった(表II)。
【0144】
(表2)炭疽菌の抗原曝露を受けたマウスの生存性に対するCpG ODNの効果

BALB/cマウス(N=10/群)に対して、50〜100μgのCpG D ODNを表示した日に投与し、第0日に70個(Exp 1)または11個(Exp 2)の炭疽菌1B胞子に感染させた。生存率および死亡までの平均期間(MTD、単位は時間)を示している。*非処置マウスとの比較で生存率が有意に改善、p<.05。
【0145】
このように、これらのCpG ODNは、炭疽菌に感染したマウスの死亡率を有意に低下させることができる。100%の生存率は達成できなかったが、死亡までの平均期間(MTD)は一貫して延長しているため、救命のための抗生物質療法を開始する「治療チャンス期間(window of opportunity)」が得られる。CpGジヌクレオチドをGpCに逆位させた対照ODNは防御を付与しなかったため、ODNの活性は明らかにそれがCpGを含むことによるものであった。
【0146】
実施例3
ワクチンアジュバントとしてのCpG ODN
炭疽菌に対する曝露を予測しうることは稀であるため、防御ワクチンの免疫原性を高めるためにCpG ODNを用いうる可能性についても示した。種の間でCpG認識には進化的多様性があるため、齧歯動物で活性の高いCpGモチーフは霊長動物では免疫刺激性が乏しく、逆もまた同様である(Bauer et al., Immunology 97: 699, 1999;Hartmann and Krieg, J. Immunology 164: 944, 2000;Verthelyi et al., J Immunol. 166: 2372, 2001)。このため、ヒトでの使用のために開発されているCpG ODNの活性を検討するには霊長動物モデルが最適である。アカゲザルの免疫細胞は、ヒト細胞を刺激するのと同じ2つのクラスのODNに応答する(Streilein et al., Immunol. Today 18: 443, 1997)。「D」型ODNは霊長動物細胞にIFN-αおよびIFNgを分泌させる引き金となり、APCの成熟を促進させるが、一方、「K」型ODNは免疫細胞の増殖ならびにIL-6および/またはIgMの産生を誘導する(Verthelyi et al., J. Immunol. 166: 2372, 2001)。
【0147】
ヒトおよびアカゲザルのどちらのPBMCも強く刺激するK ODNおよびD ODNの混合物(Streilein et al., Immunol. Today 18: 443, 1997)をアジュバントとして、承認済みのAVAワクチンおよび現在臨床評価中のrPAワクチンと同時投与した。図1に見てとれるように、K ODNは最大、平均および長期的IgG抗PA応答を有意に増大させた。試験期間を通じて、K ODNはワクチン接種アカゲザルのGMTを2.1+0.3倍に延長させた(p<.03)。
【0148】
ワクチン-アジュバント併用の質は、その結果生じるAb応答の結合活性および抗体価の双方に反映される。AVAまたはrPAワクチン接種によって誘発されたIgG抗PA Abの結合活性を、結合した血清Abを6M尿素とインキュベートすることによってモニタリングした。この処理により、結合活性の低いAbは選択的に溶出する(Eggers et al., J. Med. Virol. 60: 324, 2000;Cozon et al., Eur. J Clin. Microbiol Infect. Dis. 17: 32, 1998)。図2に見てとれるように、AVAによる初回ワクチン接種によって生じた血清Abのほぼ90%は尿素処理によって溶出した。これに対して、AVAによる追加免疫処置を受けた後に弱毒化炭疽菌による抗原曝露を受けた個体に存在した血清抗PA Abのうち溶出可能であったのは50%未満であり、これは記憶応答の親和性成熟と整合する。
【0149】
AVAまたはrPA+CpG ODNによる初期免疫処置を行ったアカゲザルの血清抗PA応答の平均結合活性にはほとんど差がなかった。しかし、K ODNおよびD ODNをアジュバントとして用いた場合には、ワクチン単独による免疫処置および追加免疫処置を行った個体と比較して、追加免疫処置後の結合活性が有意に高いAbが生じた(p<.02)。
【0150】
ヒト免疫細胞を活性化するCpGモチーフはマウスでは免疫刺激性が弱い傾向があるため、そのアジュバント効果は非ヒト霊長動物で評価するのが最良である。幸い、アカゲザルはヒトPBMCを刺激するのと同じCpGモチーフに対して応答する(Verthelyi et al、J. Immunol. 168: 1659, 2002)。AVAワクチンと同時投与したところ、K ODN(これはB細胞活性化を補助する)はIgG抗PA抗体応答の抗体価および結合活性をともに有意に増大させた(図1および3)。炭疽菌の非致死株による「抗原曝露」を行ったところ、AVAまたはrPA+K ODNによる免疫処置を受けたアカゲザルではより強くかつより長く持続する免疫応答が生じた(図1)。
【0151】
2種類のK型ODNであるODN 7909およびODN 10103を用いて別の試験を行った。これらの試験に関しては、5頭の雄性および雌性アカゲザル/群の5群に対して、0.5mLのAVA+0または250μgのCpG ODNによる皮下(SQ)または筋肉内(IM)での免疫処置を試験第0日および第42日に行った。すべての動物のモニタリングは獣医が毎日行った。投与は適切な麻酔下で行った。ベースラインの血液試料は初回注射の10日前(試験第-10日)に各々の非ヒト霊長動物(NHP)から採取した。血液は初回注射から第1、4、11、16、21、28、35、42、49、56日および第63日後に各NHPから採取した。
【0152】
この5つのワクチン接種群の抗PA IgG抗体価の幾何平均を各々の日に関して算出した。各血清採取物に関する各動物の抗PA IgG抗体価は補遺IIIに示されている。以下の3つの異なる区間に関して、曲線下面積(AUC)、TmaxおよびCmaxも算出した:
1. 初回ワクチン接種から第63日までの全試験期間。
2. 第42日までの試験期間、これは2回目のワクチン接種の前までのデータのみを含む。
3. 第21日までの試験期間、これは初期の抗体価応答をより詳細に評価するためである。
【0153】
AUCは台形公式を用いて算出した。Tmaxは、所定の期間中に動物の抗PA IgG抗体価が最大であった時点(初回ワクチン接種後の日数)であり、Cmaxはその日の抗PA IgG濃度である。
【0154】
表IIIは、定義した3つの期間(0〜63日、0〜42日、0〜21日)のそれぞれに関するAUC、TmaxおよびCmaxの中央値および平均値である。星印を付した数字は、Wilcoxon順位和検定に基づき、その群がAVA SQ群と有意水準0.05で有意差があったことを示している。
【0155】
(表3)処置群別にみた曲線下面積(AUC)、最高濃度までの時間(Tmax)および最大濃度(Cmax)の中央値(平均値)

* Wilcoxon順位和検定を用いたAVA SQとの比較でp<0.05
** 5つの処置群すべてを比較したKruskal-Wallis検定に基づくp値
【0156】
統計学的比較はノンパラメトリック検定を用いて行った。各々の成績に関して、Kruskal-Wallis検定を用いて5つの処置群を全体的に比較した。さらに、各々の成績に関して、AVA単独群と他の4つの処置群のそれぞれを別個に比較するためにWilcoxon順位和検定を行った。Wilcoxon順位和検定によりp<0.05でAVA単独群との有意差がみられた成績は表に星印によって示している。
【0157】
すべての分析に、実験に用いた25頭のNEPすべてを含めた。複数の有意性検定に関して補正は行わなかった。有意性検定はデータの解釈の手引きとする目的のみに用いた。各群の個体数が5頭に過ぎないという事実は、臨床的に重要な可能性のある差異が必ずしも統計学的に有意とは限らないことを意味する。その一方で、複数の有意性検定を行ったため、認められた差異のいくつかは単なる偶然に起因する可能性がある。
【0158】
それぞれの日の抗PA IgG抗体価の幾何平均を、5つの処置群すべてを比較したp値とともに表IVに示している。星印を付した数字は、その群がその日に有意水準0.05でAVA単独群と有意差があったことを示している。AVAをCpG ODNと併用して第11、16、21、28、35、42日および第49日に投与した群をAVA単独群と比較したところ、抗体価の幾何平均にいくつか有意な増加が認められた。すべての群およびすべての時点に関する抗PA IgG濃度の幾何平均を図6に示した。
【0159】
(表4)抗PA IgG抗体価の幾何平均

* Wilcoxon順位和検定を用いたAVA scとの比較でp<0.05
** 5つの処置群すべてを比較したKruskal-Wallis検定に基づくp値
【0160】
動物個体において意味のある抗体価が最初に検出された時点は初回注射から11日後であった。AVA+CpG 10103のSQ投与およびAVA+CpG 7909のIM投与を受けた各5頭のアカゲザルのうちそれぞれ4頭および5頭では第16日にピークIgG濃度がみられた。これに対して、第16日にピークIgG濃度がみられたのは、AVA+CpG 7909のSQ投与を受けた群では5頭中3頭であり、AVA単独またはAVA+K型ODNの投与を受けた群では5頭中2頭であった。これらの群における残りの動物ではピーク濃度が第5週にみられた。個体間には応答性のばらつきがあったが、これは他のワクチン製剤とも一致する。AVAをCpG ODNとともに投与した各群ではいくつかの時点で有意差がみられたことから、CpG ODNは免疫処置プロセスにおいてより早期に抗PA抗体価を高めるように思われる。
【0161】
ベースラインおよび初回注射から最長16日までの抗PA IgM抗体価をELISAにより決定した。図7は、5つの試験群すべてにおける抗PA IgM抗体価の幾何平均を示している。それぞれの日のTNA力価の幾何平均を、5つの処置群すべてを比較したp値とともに表Vに示している。星印を付した数字は、その群がその日に有意水準0.05でAVA単独群と有意差があったことを示している。第4、11、16、35、42日および第56日に有意差が認められた(図8も参照)。
【0162】
(表5)TNA力価の幾何平均

* Wilcoxon順位和検定を用いたAVA scとの比較でp<0.05
** 5つの処置群すべてを比較したKruskal-Wallis検定に基づくp値
【0163】
TNA力価と抗PA IgG抗体価との相関について検討した。詳細には、線形回帰モデルを用いてTNA力価を抗PA IgG抗体価に対してプロットし、相関係数および確率を算出した。第11、21、28、35、42日および第63日の2つの分析物の力価の間での相関は統計学的に有意であった(P<0.05)。
【0164】
実施例4
マウス血清防御アッセイ
マウスに対して、初回免疫処置から11日後および16日後にNHPから採取したプール血清による受動免疫処置を行った。血清をプールしたワクチン群にはAVAのみ、AVA+CpG10103 SQ、AVA+CpG7909 SQおよびAVA+CpG7909 IMの4つが含まれる。非処置NHPの対照群からの血清および処置前血清のプールからの血清も検討した。2回の実験を行った(マウス10匹/群)。マウスにプール抗血清0.1mLをIV注射して24時間後に、血清を各群のマウス4匹から採取し、抗PA IgG抗体価を決定した。
【0165】
マウスを30〜60 LD50のSterne株炭疽菌胞子によるi.p.抗原曝露後の生存に関して観察した。生存データに関する統計分析は、Windows用SASソフトウエアPROC LIFETESTのVersion 8.2に含まれるログランク検定を用いて行った。両方の実験における処置群および対照群のマウスの生存率を表VIにまとめた。
【0166】
(表6)プールNHP血清の注射および炭疽菌胞子による抗原曝露後のマウスの生存率(N=1群当たりマウス10匹)

【0167】
第11日に採取したNHP血清に関しては(2つの実験をまとめた)、6群すべてを含めた場合には生存曲線にログランク検定による有意差があったが(p=0.0002)、2つの対照群を除外すると有意差がなくなった(p=0.12)。AVA-CpG併用をAVA単独と比較した対分析では、その1つであるAVA+CpG7909 SQに関して有意な結果が得られた(p=0.02)。第16日に採取したNHP血清に関しては(2つの実験をまとめた)、6群すべてを含めた場合には生存曲線にログランク検定による有意差があったが(p<0.0001)、2つの対照群を除外すると有意差がなくなった(p=0.12)。AVA-CpG併用をAVA単独と比較した対分析では有意な結果は得られなかった。
【0168】
各処置群に関する全生存率を、NHP血清の注射から24時間後に炭疽菌胞子による抗原曝露の直前に各処置群から採取したマウス血清の抗PA IgG抗体価の算術平均に対してプロットした(図9)。線形回帰を用いて、30〜60 LD50の炭疽菌胞子の注射に対する防御を抗原曝露の時点で得るためにマウス体内を循環する必要のある血清抗体価の予測指標として用いるためのデータ点に直線をフィットさせた。抗体価が6,000を上回った2つのデータ点は回帰直線の算出から除外した。回帰直線の外挿により、このデータから、循環血中の抗PA IgG抗体価が2,500であれば30〜60 LD50の炭疽菌胞子という致死的な抗原曝露に対してマウスの50%が防御されることが示唆される。
【0169】
このように、CpG ODNは250μgの量をヒトで承認されている用量のAVAと併用してアカゲザルに安全に投与することができる。CpG ODNとAVAとの併用により、単回の初回免疫処置後の総抗PA IgG濃度はAVAのみを投与した群よりも上昇した。AVA+CpG 10103およびCpG 7909を投与した動物の多くはAVAのみの場合と比べてピーク応答の時期も早くなった。AVAとCpG ODNとの併用による免疫処置を行った群の一部ではいくつかの時点で抗体価がAVAのみの場合と比べて統計学的に有意に高まったが、1群当たりの動物数が比較的少ないため、これらの結果の統計学的有意性は注意して捉えるべきである。しかし、これらの結果は全体的には、B型CpGを認可されている炭疽菌ワクチンと併用した場合、この組み合わせによって防御抗体の産生が増強される可能性があるという点で非常に有望である。
【0170】
実施例5
AVAの防御効果に対するCpG ODNの効果
抗原-アジュバント併用の決定的な指標は、それが防御免疫を誘導する能力である。AVAに対するアカゲザルの免疫応答がCpG ODNの同時投与によって増強されたことを示す結果に基づき、AVAとCpG ODNとの併用の防御効果を示すための試験を試みた。致死的な炭疽菌抗原曝露を伴う試験にアカゲザルを用いることには制限が伴うため、広く認められているモルモットモデルを用いた。通常のモルモットは、50 LD50のAmes株炭疽菌胞子による抗原曝露を行うと直ちに死亡する(表VII)。AVA単独による免疫処置および追加免疫処置は生存期間を改善したが、ほとんどの個体はそれでも感染により死亡した(表III)。これに対して、CpGアジュバントを用いたワクチンによる免疫処置および追加免疫処置を行った個体の75%近くは生存した(p=.05)。CpG ODNとAVAとの同時投与は抗原曝露を行った動物のMTDもわずかに延長させたが、この効果は統計学的有意性には達しなかった。
【0171】
(表7)炭疽菌による抗原曝露を行ったモルモットの生存に対するCpG ODN+AVAの効果

モルモットに対して、AVA+CpG D ODN 1555、1466およびK3(いずれもこの種で活性があることが判明している)の等モル混合物100〜300μgによる免疫処置を第0日に行い、第4週に追加免疫処置を行った。6週後にモルモットに対して50 LD50のAmes胞子によるIM抗原曝露を行った。生存率および死亡までの平均期間(MTD、単位は日)を示している。
* AVA単独による免疫処置を行った個体と比べて生存率が有意に改善、p=0.05。
【0172】
通常であれば致死的な炭疽菌抗原曝露に抗して生存したモルモットも割合は、CpG ODNとAVAとの同時投与によって有意に改善した。理論に拘束されることはないが、CpG ODNのいくつかの特性は、それらが免疫治療薬として有用なことの理由となる。第1に、単回投与で数週間の防御が得られることから、ODNを「リスクのある」集団(例えば、医療従事者および/または軍人)に対して、病原体への曝露が想定される前に投与することが可能となる(Elkins et al., J. Immunol. 162: 2291, 1999)。反復投与により、防御持続期間を何カ月も延長させることができる(Klinman et al., Infect. Immun. 67: 5658, 1999)。第2に、CpG ODNは広範囲にわたる病原体に対して有効であり、このため原因因子を特定する前でも有用と考えられる。第3に、CpG ODNは適応免疫応答に障害のある個体(新生児および高齢者など)の先天性免疫応答を改善するため、感染症に対して幅広い集団レベルでの防御を得ることができる(Klinman et al., Immunity 11: 123, 1999)。
【0173】
さらに、CpG ODNの反復投与は、齧歯動物および霊長動物に対して、有害な結果を伴わずに安全に行うことができる(Verthelyi et al., J. Immunol. 168: 1659, 2002;Klinman et al., Infect. lmmun. 67: 565, 1999)。本実施例において、CpG ODN(単独または炭疽菌ワクチンとの併用)による処置を受けた動物は、病原体抗原曝露の前の時点で健康で活動的な状態を保っていた。
【0174】
実施例6
CpG投与の用量および時期は、エボラウイルス曝露マウスにおけるCpGを介した防御に対して影響を及ぼす
エボラウイルスに対する防御に関するCpG投与の効果を示すために、マウスに対して25〜150μgのCpG ODNを第0日に投与した後に、300 LD50のマウス適合化エボラウイルス・ザイール株による抗原曝露を行った。図3aに示されているように、100〜150μgのCpG ODNを投与したマウスはウイルスに対して非常に高度の防御を獲得した。
【0175】
エボラに対する防御に関するCpG投与の時期の影響を明らかにするために、マウスに対して100μgのCpG ODNを図示した日に投与し、その後に300 LD50のマウス適合化エボラウイルス・ザイール株による抗原曝露を行った。図3bに示されているように、CpG ODNをエボラ曝露と同時に投与した場合にはマウスはエボラ感染に対して非常に高度の防御を示した。しかし、CpG ODNを曝露の3日前まで、または曝露から3日後までに投与した場合に得られた防御は部分的であった。
【0176】
実施例7
CpG ODNは炭疽菌胞子に曝露されたマウスの生存期間を延長させる
CpG ODNが炭疽菌胞子に曝露されたマウスの生存期間を延長させることを示すために、マウスに対して100μgのCpG ODNを図示した時点で投与し、その後に11 LD50の炭疽菌胞子による抗原曝露を行った。図4に示されているように、CpG投与により、炭疽菌胞子に曝露されたマウスの生存期間が延長した。
【0177】
実施例8
マウスにおけるCpG ODNのAVA/rPAとのアジュバント効果
本実施例はマウスにおけるCpG ODNのAVA/rPAとのアジュバント効果を示す。マウスに対して2.5μgのrPAまたは5μgのAVA+50μgのCpG ODNによる免疫処置を行った。2回目の免疫処置から10日後のIgG抗PA応答およびIFNγ応答の強度を以下に示す(N=マウス4匹/群)。
【0178】
(表8)AVAおよびrPAに対するマウス免疫応答に対するCpG ODNの効果

【0179】
実施例9
TBEVによる感染症を予防するCpG ODN単独での効果(抗原は用いず)
本実施例は、ダニ媒介脳炎ウイルスによる感染症の予防に関するCpG ODN単独での有効性を示す。マウスに対して図示した日に100μgのCpG ODNを注射した。マウスに対してTBECによる抗原曝露を行い、生存に関してモニタリングした。N=10/群。
【0180】
(表9)ダニ媒介脳炎ウイルスに対するマウス免疫応答に対するCpG ODNの効果

【0181】
実施例10
抗PA応答の結合活性に対するK ODNの効果
本実施例は抗PA応答の結合活性に対するK ODNの効果を示す。動物個体に対して、Elkins et al., J. Immunol. 162: 2291, 1999に記載された通りにODNを投与した。図5はK ODNが抗PA応答の結合活性を増大させることを示している。
【0182】
実施例11
乳酸-グリコール酸共重合体(PLG)微粒子の効果
DNAをカチオン性乳酸-グリコール酸共重合体(PLG)微粒子の表面に形成させることは、抗原提示細胞(APC)に対するDNAの標的指向性を向上させるための手段として開発されている。このポリマーには生体分解性および生体適合性があり、複数の薬剤送達システムに用いられていることから、PLG微粒子はワクチン送達のための興味深いアプローチである(Okada et al、Adv. Drug Deliv. Rev. 28: 43-70, 1997)。さらに、PLG微粒子は封入されたワクチン抗原用の送達システムとしても長年用いられている(Singh and O'Hanagan, Nat. Biotechnol. 17: 1075-1081, 1999)。さらに最近では、PLG微粒子は封入されたDNAワクチンなどのワクチン用の送達システムとしても記載されている(Hedley et al., Nat. Med. 4: 365-368, 1998;Jones et al., Vaccine 15: 814-817, 1997;米国特許第6,309,569号;米国特許第6,565,777号;米国特許第6,548,302号)。
【0183】
PLG微粒子などのポリマー微粒子中への生体活性物質の封入は一般に以下を含む:(1)ポリマーを溶媒中に溶解してポリマー溶液を作ること;(2)CpG ODNなどの生体活性物質の水溶液を調製すること;(3)ポリマー溶液と生体活性物質溶液を攪拌しながら混ぜ合わせて、油中水型エマルションを形成させること;(4)油中水型エマルションを、安定化剤または界面活性剤を含む別の水相に攪拌しながら添加し、水中(油中水)型エマルションを形成させること;(5)溶媒を抽出するために水中(油中水)型エマルションを過剰量の水相に添加し、それによって直径最大10ミクロンのポリマー微粒子を形成させること。この微粒子は生体活性物質を含む。一般にポリマーは分子量40kDまたはそれ未満のPLGを含む、またはそれからなる(米国特許第6,309,569号を参照)。一例として、PLGの分子量は30kDまたはそれ未満である。また別の態様において、微粒子は3kD、6kD、9kD、22kDのPLGおよびそれらの混合物を含む。適したポリマーの分子量の範囲は1.5kD〜250kDであると提唱されており、3、6、9、12、18、22、60、65および90kDのPLGの市販の調製物が利用されている(米国特許第5,309,569号を参照)。ポリマーの加水分解速度は分子量と関係すると考えられている。すなわち、低分子量のポリマーほど急速に分解される。
【0184】
DNAを吸着させたカチオン性微粒子が免疫応答を誘導する有効性をマウスで検討した。PLGポリマー(RG505)はBoehringer Ingelheim社から入手可能である。
【0185】
改変した溶媒蒸発工程を用いるカチオン性微粒子の調製のためのいくつかの例示的なプロトコールを以下に示す。
【0186】
1. 手短に述べると、IKAホモジナイザーを用いて、10mlの5%(wt/vol)ポリマー溶液(塩化メチレン中)を1mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)と高速で乳化させることによって微粒子を調製した。続いてこの一次エマルションをセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(0.5%wt/vol)を含む蒸留水50mlに添加して水中(油中水)型エマルションを形成させ、これを6,000rpmで室温にて12時間攪拌し、塩化メチレンを蒸発させた。この結果生じた微粒子を10,000×gでの遠心処理によって蒸留水で2回洗浄し、凍結乾燥させた。100mgのカチオン性微粒子を1mg/mlのDNA溶液と4℃で6時間インキュベートすることによってDNAを微粒子に吸着させた。続いて微粒子を遠心処理によって分離し、ペレットをTE(Tris-EDTA)緩衝液で洗浄した上で微粒子を凍結乾燥させた。物理的特性は以前の記載の通りに検査した(Singh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 811-816;O'Hagan et al., J Virol. 75(19): 9037-9043, 2001)。
【0187】
2. 改変した溶媒蒸発工程を用いてカチオン性微粒子を調製した。手短に述べると、IKAホモジナイザー(Ika-Werk Instruments, Cincinnati, OH)を用いて、10mlの5%(wt/vol)ポリマー溶液(塩化メチレン中)を1mlのPBSと高速で乳化させることによって微粒子を調製した。続いてこの一次エマルションをセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(0.5%wt/vol)を含む蒸留水50mlに添加した。これによって水中(油中水)型エマルションを生じさせ、これを6,000rpmで室温にて12時間攪拌し、塩化メチレンを蒸発させた。この結果生じた微粒子を10,000×gでの遠心処理によって蒸留水で2回洗浄し、凍結乾燥させた。PLG-ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)およびPLG-1,2-ジオレオイル-1,3-トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)微粒子を調製するためには、DDAまたはDOTAPをPLGポリマーとともにポリマー溶液に溶解し、続いて一次エマルションを0.5%ポリビニルアルコール溶液に添加して水/油/水型エマルションを形成させた(Singh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 97: 811-816, 2000を参照)。
【0188】
調製、洗浄および収集の後に、100mgのカチオン性微粒子を1mg/mlのDNA溶液中で4℃にて6時間インキュベートすることにより、DNAを微粒子に吸着させた。続いて微粒子を遠心処理によって分離し、ペレットをTris-EDTA緩衝液で洗浄した上で微粒子を凍結乾燥させた(Singh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 97: 811-816, 2000を参照)。
【0189】
下記の試験に関しては、CpG ODNをPLGと結合させ、rPAの方は遊離したままとした(しかし、PLG-ODNと混合した後に同時投与した)。
【0190】
マウスに対して、2.5、8または25μlのAVA、AVA+CpG ODN、AVA+PLG-CpG、AVA+GpC ODN(対照)、AVA+PLG-GpG ODN(別の対照)またはAVA+PLG(さらに別の対照)のいずれかによる免疫処置を行った。IgM抗PA抗体価、IgG抗PA抗体価、IgG1抗PA抗体価、IgG2a抗PA抗体価および動物の生存に関してモニタリングした。
【0191】
その結果、AVA+CpG、または架橋により乳酸-グリコール酸共重合体(PLG)中に封入したCpGの単回投与による免疫処置を行ったマウスでは免疫処置の11日後に早くも特異的抗体応答が生じたことが示された。AVA-CpG-ODN免疫原により誘発された抗体応答は、AVA単独またはAVA+対照ODNまたはPLG-対照ODNによる免疫処置を行ったマウスの免疫応答の5倍〜100倍であった。AVA+CpGまたはPLG-CpGによる免疫処置も対照群より強いTH1応答を誘発し、IgG2a/IgG1比もより高かった。対照マウスの大部分は、免疫処置から1週後および2週後の時点での300〜9000 LD50の炭疽菌Sterne株胞子(STI)による抗原暴露の後に死亡したが、AVA+CpGまたはPLG-CpGによる免疫処置を行ったマウスでは70〜100%の生存率が認められた。これらの結果から、CpGまたはPLG-CpGをアジュバントとして用いることにより、STI胞子抗原曝露に対するAVAの免疫原性および防御性が改善されるだけでなく、バイオテロ対策に用いるのに大きな可能性のある迅速な特異的免疫応答も得られることが示唆された。
【0192】
記載した方法または組成物の厳密な詳細を、記載した開示の精神を逸脱することなく変更または改変しうることは明らかであると考えられる。本発明者らは、このようなすべての改変および変更が、以下の特許請求の範囲の範囲および精神に含まれることを主張する。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】AVAまたはrPAと同時投与した場合に、K ODNがアカゲザルにおける最大、平均および長期的IgG抗PA応答を有意に増大させることを示したグラフである。アカゲザル(5〜6頭/群)に対して第0週および第4週の時点で0.5mlのAVAまたは50μgのrPA(ミョウバン中)によるSQ免疫処置を行った。いくつかの場合には、これらのワクチンを、K3、K23およびK123(K)またはD19、D29およびD35(D)ODNの等モル混合物250μgと同時投与した。第27週にこれらのサルに対して炭疽菌の動物用弱毒化生ワクチン株によるIMでの「抗原曝露(challenge)」を行った。結果は、図示した時点で独立に各動物からの血清を分析することによって算出したIgG抗PA抗体価の幾何平均(+SEM)を示している。K ODN+AVAまたはrPAによって誘導された応答の時間平均強度は、いずれかのワクチン単独によるものを有意に上回った。p<.05。
【図2】K ODNが血清IgG抗PA抗体価および結合活性を増加させることを示したグラフである。6頭のアカゲザルに対して0週および4週の時点で0.5mlのAVAによるSQ免疫処置を行い、第27週に炭疽菌の動物用弱毒化生ワクチン株によるIMでの「抗原曝露」を行った。血清IgG抗PA抗体価および結合活性(6M尿素による溶出後に結合したまま残ったAbのパーセンテージ)を示している。結果は、図示した時点で独立に各動物からの血清を分析することによって得たIgG抗PA抗体価の幾何平均(+SEM)を示している。
【図3】CpG投与の用量および時期が、エボラウイルスに曝露されたマウスにおけるCpGを介した防御に影響することを示したグラフである。図3aでは、マウスに対して第0日に25〜150μgのCpG ODNを投与した後に、マウスに適合させたエボラウイルス・ザイール株の300 LD50による抗原曝露を行った。図3bでは、マウスに図示した日に100μgのCpG ODNを投与した後に、マウスに適合させたエボラウイルス・ザイール株を300 LD50投与した。N=マウス10匹/群。
【図4】炭疽菌胞子に曝露されたマウスの生存期間をCpG ODNが延長させることを示したグラフである。マウスに図示した時点で100μgのCpG ODNを投与した後に、11 LD50の炭疽菌胞子による抗原曝露を行った。生存率を示している(N=10匹/群)。
【図5】抗PA応答の結合活性に対するK ODNの影響を示したグラフである。N=6匹/群。
【図6】炭疽ワクチンAVAのみ、AVA+K ODN、AVA+ODN 10103、およびAVA+ODN 7909を投与した後の、抗PA IgG抗体価の幾何平均の折れ線グラフを示している。
【図7】炭疽ワクチンAVAのみ、AVA+K ODN、AVA+ODN 10103およびAVA+ODN 7909を投与した後の抗PA IgM抗体価の幾何平均のグラフを示している。
【図8】炭疽ワクチンAVAのみ、AVA+K ODN、AVA+ODN 10103およびAVA+ODN 7909を投与した後の試験期間全体にわたるTNA力価の幾何平均の折れ線グラフを示している。
【図9】抗PA抗体価と全生存率との相関を図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭疽菌、ペスト菌、大痘瘡(Variola major)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、インフルエンザ菌、大腸菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌(Shigella bacillus))、サルモネラ菌、ブドウ球菌エンテロトキシンB、エボラウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ボツリヌス毒素、リシン毒素、コブラ毒、貝毒、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、リシン毒素、トリコテシン系マイコトキシンまたはアフラトキシンに曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象(subject)における感染症の治療または予防の方法であって、免疫刺激性(immunostimulatory)Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量を対象に投与することを含み、それによって感染症を治療または予防する方法。
【請求項2】
対象が炭疽菌に曝露されたか、または曝露されるリスクを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象がエボラウイルスに曝露されたか、または曝露されるリスクを有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
対象がダニ媒介脳炎ウイルスに曝露されたか、または曝露されるリスクを有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
感染症が炭疽、痘瘡、エボラまたはダニ媒介脳炎である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
感染症が炭疽である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
オリゴデオキシヌクレオチドが少なくとも約16ヌクレオチド長であって、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、Puはプリンヌクレオチドであり、Pyはピリミジンヌクレオチドであり、XおよびWは任意のヌクレオチドであり、Mは0から10までの任意の整数であり、Nは4から10までの任意の整数である)
によって表される配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
Nが約6である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Pu1 Py2 CpG Pu3 Py4がホスホジエステル塩基である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
X4X5X6(W)M(G)Nが1つまたは複数のホスホチオエート(phosphothioate)塩基を含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
X1X2X3 Pu PyおよびPu Py X4X5X6が自己相補的である、請求項7記載の方法。
【請求項12】
オリゴデオキシヌクレオチドが、

からなる群より選択される配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
オリゴデオキシヌクレオチドが、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、QはT、GまたはAであり、WはAまたはTであり、N1、N2、N3、N4、N5およびN6は任意のヌクレオチドである)
によって表される配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
QがTである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
オリゴデオキシヌクレオチドが、

からなる群より選択される配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
オリゴデオキシヌクレオチドを静脈内、筋肉内、皮下に、または吸入により投与する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
オリゴデオキシヌクレオチドを筋肉内に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
炭疽菌、ペスト菌、大痘瘡、ヒストプラスマ・カプスラーツム、インフルエンザ菌、大腸菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌)、サルモネラ菌、ブドウ球菌エンテロトキシンB、エボラウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ボツリヌス毒素、リシン毒素、コブラ毒、貝毒、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、リシン毒素、トリコテシン系マイコトキシンまたはアフラトキシンに曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防の方法であって、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量、および抗感染症薬(anti-infective agent)を対象に投与することを含み、それによって感染症を治療または予防する方法。
【請求項19】
抗感染症薬が抗生物質、抗ウイルス化合物、抗真菌化合物または高度免疫グロブリンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
対象が炭疽菌に曝露されたか、または曝露されるリスクを有する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
対象がエボラウイルスに曝露されたか、または曝露されるリスクを有する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
対象がダニ媒介脳炎ウイルスに曝露されたか、または曝露されるリスクを有する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
感染症が炭疽、痘瘡、エボラまたはダニ媒介脳炎である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
感染症が炭疽である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
オリゴデオキシヌクレオチドが少なくとも約16ヌクレオチド長であって、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、Puはプリンヌクレオチドであり、Pyはピリミジンヌクレオチドであり、XおよびWは任意のヌクレオチドであり、Mは0から10までの任意の整数であり、Nは4から10までの任意の整数である)
によって表される配列を含む、請求項25記載の方法。
【請求項26】
Nが約6である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
Pu1 Py2 CpG Pu3 Py4がホスホジエステル塩基である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
X4X5X6(W)M(G)Nが1つまたは複数のホスホチオエート塩基を含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
X1X2X3 Pu PyおよびPu Py X4X5X6がが自己相補的である、請求項7記載の方法。
【請求項30】
オリゴデオキシヌクレオチドが、

からなる群より選択される配列を含む、請求項18記載の方法。
【請求項31】
オリゴデオキシヌクレオチドが、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、QはT、GまたはAであり、WはAまたはTであり、N1、N2、N3、N4、N5およびN6は任意のヌクレオチドである)
によって表される配列を含む、請求項18記載の方法。
【請求項32】
QがTである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
オリゴデオキシヌクレオチドが、

からなる群より選択される配列を含む、請求項18記載の方法。
【請求項34】
オリゴデオキシヌクレオチドが、静脈内、筋肉内、皮下に、または吸入により投与される、請求項18記載の方法。
【請求項35】
炭疽菌に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防の方法であって、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量、および抗感染症薬を対象に投与することを含み、
オリゴデオキシヌクレオチドが少なくとも約16ヌクレオチド長であって、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、Puはプリンヌクレオチドであり、Pyはピリミジンヌクレオチドであり、XおよびWは任意のヌクレオチドであり、Mは0から10までの任意の整数であり、Nは4から10までの任意の整数である)によって表される配列を含んでおり、
それによって感染症を治療または予防する方法。
【請求項36】
炭疽菌に曝露されたか、または曝露されるリスクのある対象における感染症の治療または予防の方法であって、免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量、および抗感染症薬を対象に投与することを含み、
オリゴデオキシヌクレオチドが、以下の式

(式中、QはTである)を含んでおり、かつ
抗感染症薬が高度免疫グロブリンである、方法。
【請求項37】
対象におけるバイオテロ病原体(bioterrorism agent)に対するワクチンの免疫原性を高める方法であって、免疫刺激性Dオリゴデオキシヌクレオチドまたは免疫刺激性Kオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量をワクチンと組み合わせて対象に投与することを含み、それによってワクチンの免疫原性を高める方法。
【請求項38】
ワクチンが抗原ワクチン、DNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、ペプチドワクチン、弱毒化ワクチンまたは加熱死滅ワクチンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
ワクチンが、炭疽菌、ペスト菌、大痘瘡、エボラウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、ヒストプラスマ・カプスラーツム、インフルエンザ菌、大腸菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌(シゲラ菌)、サルモネラ菌またはブドウ球菌に対するワクチンである、請求項37記載の方法。
【請求項40】
ワクチンが炭疽菌からの抗原である、請求項37記載の方法。
【請求項41】
抗原が組換え防御抗原または防御アンチオゲン(Antiogen)である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
ワクチンが弱毒化炭疽ワクチンである、請求項37記載の方法。
【請求項43】
オリゴデオキシヌクレオチドが少なくとも約16ヌクレオチド長であって、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、Puはプリンヌクレオチドであり、Pyはピリミジンヌクレオチドであり、XおよびWは任意のヌクレオチドであり、Mは0から10までの任意の整数であり、Nは4から10までの任意の整数である)
によって表される配列を含む、請求項37記載の方法。
【請求項44】
Nが約6である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
Pu1 Py2 CpG Pu3 Py4がホスホジエステル塩基である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
X4X5X6(W)M(G)Nが1つまたは複数のホスホチオエート塩基を含む、請求項43記載の方法。
【請求項47】
X1X2X3 Pu PyおよびPu Py X4X5X6が自己相補的である、請求項43記載の方法。
【請求項48】
オリゴデオキシヌクレオチドが、

からなる群より選択される配列を含む、請求項37記載の方法。
【請求項49】
オリゴデオキシヌクレオチドが、以下の式

(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、QはT、GまたはAであり、WはAまたはTであり、N1、N2、N3、N4、N5およびN6は任意のヌクレオチドである)
によって表される配列を含む、請求項37記載の方法。
【請求項50】
QがTである、請求項13記載の方法。
【請求項51】
オリゴデオキシヌクレオチドが、

からなる群より選択される配列を含む、請求項37記載の方法。
【請求項52】
対象にワクチンを投与する前にオリゴデオキシヌクレオチドを投与する、請求項37記載の方法。
【請求項53】
対象にワクチンを投与する約2週前から約1日前までにオリゴデオキシヌクレオチドを投与する、請求項52記載の方法。
【請求項54】
対象にワクチンと同時にオリゴデオキシヌクレオチドを投与する、請求項37記載の方法。
【請求項55】
対象にワクチンを投与した後にオリゴデオキシヌクレオチドを投与する、請求項37記載の方法。
【請求項56】
対象にワクチンを投与して約2週後から約1日後までにオリゴデオキシヌクレオチドを投与する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
炭疽ワクチンの免疫原性を高める方法であって、免疫刺激性DまたはKオリゴデオキシヌクレオチドの治療的有効量および炭疽ワクチンを対象に投与することを含み、それによってワクチンの免疫原性を高める方法。
【請求項58】
ワクチンが防御抗原である、請求項59記載の方法。
【請求項59】
ワクチンが弱毒化炭疽ワクチンである、請求項59記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−518337(P2006−518337A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571713(P2004−571713)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034523
【国際公開番号】WO2004/098491
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
WINDOWS
【出願人】(505004983)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシス (4)
【Fターム(参考)】