説明

免疫原としてのClostridiumdifficileの無毒の組換えホロトキシン

無毒のClostridium difficile毒素タンパク質は、C.difficile感染(CDI)の発生および重症度を減少させるワクチンを開発するために、エンドトキシンを含まないBacillus系において発現された。可能性のあるワクチン候補として評価された免疫原は、変異した毒素A(TcdAによってコード化された)および毒素B(TcdB)、並びに受容体結合ドメインがTcdAの受容体結合ドメインと置換されることを除いて、完全長TcdBタンパク質を含む、合理的に設計されたキメラタンパク質である。膜貫通ドメインの小さな欠失(97のアミノ酸)が毒性を低減または除去するために使用された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年12月2日に出願された米国仮出願第61/265,894号の利益を主張し、本明細書によって、その全体が参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、無毒の組換えC.difficile(クロストリジウム・ディフィシル)毒素タンパク質に由来する免疫原のワクチン組成物、およびそのための作製する方法および使用する方法に関する。
【0003】
(政府支援)
本発明は、部分的に、国立衛生研究所からの許可K01DK076549、N01AI30050、R01AI088748およびR01DK084509のもとなされた。
政府は本発明に一定の権利を有している。政府は、本発明にある権利を有する。
【背景技術】
【0004】
C.difficile(グラム陽性芽胞形成嫌気性バチルス)は、病院の抗生物質に関連する下痢の最も一般的な原因および偽膜性大腸炎の原因微生物である(Cloud,J.et al.2007 Curr Opin Gastroenterol 23:4−9)。その疾患は、軽症の下痢から生命を脅かす電撃性大腸炎まで及ぶ(Bartlett,J.G.2002 N Engl J Med 346:334−339;Borriello,S.P.1998 J Antimicrob Chemother 41 Suppl C:13−194)。
【0005】
C.difficile感染(CDI)は、細菌またはこの株の細胞の芽胞の経口摂取によってかかる(Dubberke,E.R.et al.2007 Am J Infect Control 35:315−318;Roberts,K.et al.2008 BMC Infect Dis 8:7)。芽胞は、胃液酸度へ接触しても生き延びて、結腸で発芽する。C.difficileは、院内感染性および抗生物質関連下痢(AAD)の最も一般的な原因(25%までの)であり、および偽膜性大腸炎のほとんどすべての症例である(Cloud,J.et al.2007 Curr Opin Gastroenterol 23:4−9)。
【0006】
高齢および入院と同じく、抗生物質処置はその疾患に対する重要な危険因子である(Bartlett,J.G.2006 Ann Intern Med 145:758−764)。抗生物質の使用によって、ほとんどの抗生物質に耐性のあるC.difficileは、抗生物質の投与時に、栄養を求めて正常細菌叢と競合する必要がないため、増殖し、毒素を生ずることが可能となる(Owens,J.R.et al.2008 Clinical Infectious Diseases 46:S19−S31)。毒素TcdAおよびTcdBは、疾患の主要な原因である。
【0007】
プロバイオティクス、毒素吸収ポリマーおよびトキソイドワクチンの投与を含む介入は、CDIの増加する発生率および重症度を予防も処置もしない(Gerding,D.N.et al.2008 Clin Infect Dis 46 Suppl 1:S32−42)。さらなる懸念は、抗生物質に耐性のある強毒性の(hypervirulen)株が最近出現していることである。
【0008】
感染の発生率は、着実に増加している(Archibald,L.K.et al.2004 J Infect Dis 189:1585−1589)。北アメリカにこの数年に生じた、高い罹患率および死亡率を伴うCDIのいくつかの院内発生は、広域抗生物質の広範囲の使用が原因であった。新しく、より有毒なC.difficile株の出現はまた、疾患の増加した発生および重症度の原因となった(Loo,V.G.et al.2005 N Engl J Med 353:2442−2449;McDonald,L.C.et al.2005 N Engl J Med 353:2433−2441)。発生と重症度の急増のため、CDIは、いまや、重大な新たな疾患と考えられる。
【0009】
米国医療品質研究調査機構(AHRQ)によると、CDIに感染した病院患者の発生率は、1993年から2000年までの74%の増加に続いて、2000年から2005年まで200%急増した。発生率のそのような急速な増加は、広域抗生物質の使用及び/又は新しい強毒性のC.difficile株の出現に起因すると考えられる。さらに、感染のほとんどの場合が、抗生物質が関連する大腸炎に対する危険因子を持った患者に生じ、増加する割合の患者は標準的な危険因子を有さず、患者は、妊婦、臓器移植患者、ヘルスケア職員、および生活共同体で暮らす以前健康な人々さえも含む(Severe Clostridium difficile−associated disease in populations previously at low risk−−four states.2005.MMMWR 54:1201−1205)。
【0010】
標準的治療は、バンコマイシンまたはメトロニダゾールでの処置を含むが、そのどちらも十分に有効でない(Zar,F.et al.2007 Clinical Infectious Diseases 45:302−307)。C.difficileに感染した者のおおよそ15−35%が、処置の後再発する(Barbut,F.et al.2000 J Clin Microbiol 38:2386−2388;Tonna,I.et al.2005 Postgrad Med J 81:367−369)。
【0011】
CDIの管理は、毎年、合衆国保健医療(the US healthcare system)の11憶ドル($1.1B)を要すると推測されている(Kuijper, E.J.et al.2006 Clin Microbiol Infect 12 Suppl 6:2−18)。CDIの割合の増加はまた、従来より、高まった重症度、および高い%の結腸切除(10.3%)およびより高い死亡率(およそ25%)の増加した割合に関係している(Dallal,R.M.et al.2002 Annals of surgery 235:363−372)。
【0012】
CDI感染の臨床所見は、無症候性の保因から軽症の自己制御式下痢まで、より重症の生命を脅かす偽膜性大腸炎まで、非常に変わりやすい。最も一般的な症状は下痢である。他の一般の臨床症状は、腹痛、痙攣、高い体温および白血球の増加を含む。CDIの軽度の場合では、抗生物質の退薬と経口的水分補給がしばしば有効である。より重篤なCDIの場合については、標準的治療はメトロニダゾールの経口投与であり、またはバンコマイシンが推奨されるが、そのどちらも十分に有効でない(Zar,F.et al.2007 Clinical Infectious Diseases 45:302−307)。この処置も、55%もの高い再発率に関係している(Barbut,F.et al.2000 J Clin Microbiol 38:2386−2388;Walters,B.A.et al.1983 Gut 24:206−212)。あいにく、再発性CDIに対する一次処置の選択肢は、メトロニダゾールまたはバンコマイシンのままである。現在臨床的な開発における実験的処置は、毒素吸収ポリマー、いくつかの抗生物質およびモノクローナル抗体を含む(Anton,P.M.et al.2004 Antimicrob Agents Chemother 48:3975−3979;Hinkson,P.L.et al.2008 Antimicrob Agents Chemother 52:2190−2195;McVay,C.S.et al.2000 Antimicrob Agents Chemother 44:2254−2258)。
【0013】
CDIを予防するために、および重症度を低下させ、進行中の慢性病を排除し、およびどうにかして再発を予防するために、容易に生成され、強い全身性免疫および粘膜免疫を誘発するTcdAおよびTcdBを標的とするワクチンに対する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(実施形態の要約)
本明細書で提供される本発明の実施形態は、感染に対して被験体を免疫化するための無毒の組換えクロストリジウム毒素タンパク質を含むワクチン組成物であり、そのタンパク質は、C末端に配置されたタンパク質精製タグに操作可能に連結される(linked)、グルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテイナーゼドメイン(CPD)、膜貫通ドメイン(TMD)および受容体結合ドメイン(RBD)を有する。組成物は被験体を免疫化するのに有効である。組成物のタンパク質は、Bacillus宿主において組換え技術で産生される。例えば、Bacillusは、B.megaterium、B.subtilisなどである。例えば、Clostridiumは、C.difficile、C.perfringens、C.sordellii、C.septicum、C.tertium、C.botulinumなどの群の少なくとも1つから選択される。
【0015】
関連する実施形態におけるタンパク質は、C.difficileのTcdAタンパク質およびTcdBタンパク質の群から選択される少なくとも1つの毒素タンパク質に、少なくとも1つの変異を含み、その結果、変異は、毒性を減少させ、かつ天然のタンパク質構造を保持する。様々な実施形態において、変異は、少なくとも約10倍から約1,000倍まで毒性を減少させる。例えば、変異は、少なくとも約10,000倍から、約1000万倍まで毒性を減少させる。代替的な実施形態において、変異は、TcdAタンパク質およびTcdBタンパク質の少なくとも1つのGTドメインに位置する。変異はアミノ酸置換またはアミノ酸欠失を含む。例えば、置換は、トリプトファンのアラニンでの置換またはアスパラギン酸のアスパラギンでの置換を含む。様々な実施形態におけるタンパク質は、複数の変異を含む。
【0016】
代替的な実施形態における組成物は、TcdAタンパク質に由来する第1アミノ酸配列およびTcdBタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を有するキメラ融合cTxABであるタンパク質を含む。例えば、第1アミノ酸配列は、TcdA RBDドメインを含み、および第2アミノ酸配列はTcdB GT、CPDおよびTMDドメインを含む。タンパク質ドメインは、精製タグに操作可能に連結され、タンパク質は、さらに、タグを除去するためのプロテアーゼ切断部位を含む。関連する実施形態における精製タグは、以下の群から選択される少なくとも1つである:Arg−タグ、カルモデュリン−結合ペプチド、セルロース−結合ドメイン、DsbA、c−myc−タグ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAG−タグ、HAT−タグ、His−タグ、マルトース−結合タンパク質、NusA、S−タグ、SBP−タグ、Strep−タグおよびチオレドキシン。関連する実施形態における組成物は、欠失変異を含む。例えば、欠失は、TMDドメインに少なくとも1つのアスパラギン酸を含む。
【0017】
1つの実施形態は、有効量で組成物を提供する。関連する実施形態における組成物は、アジュバント、及び/又は薬学的に許容可能な担体を含む。
【0018】
代替的な実施形態において、組成物は、細菌ベクタ―に操作可能に連結されるタンパク質をコードする核酸を含む。
【0019】
代替的な実施形態において、組成物は、TcdAタンパク質かTcdBタンパク質のいずれか、または両方を含み、そのタンパク質は、別々に組換え技術で産生される。
【0020】
別の実施形態における本発明は、単位用量の上記の実施形態のいずれかに係る組成物、容器、および使用のための指示書を含むキットを提供する。
【0021】
本明細書の本発明の実施形態は、被験体において、クロストリジウム−ディフィシーレ(Clostridium difficile)毒素に特異的な免疫反応を誘発する方法であり、その方法は:タンパク質がグルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテイナーゼドメイン(CPD)、膜貫通ドメイン(TMD)、受容体結合ドメイン(RBD)およびC末端に配置された精製タグを含むように、C.difficile毒素タンパク質組成物の無毒の変異をコード化する核酸を設計する工程;Bacillus細胞にタンパク質を発現し、そのタンパク質を精製し、および精製タグを取り除く工程;および組成物を調剤し、被検体を組成物と接触させ、それによって、被験体に、そのタンパク質に特異的な、少なくとも1つの体液性免疫反応および細胞媒介性免疫反応を誘発する工程。
【0022】
関連する実施形態における設計工程は、TcdAタンパク質に由来するアミノ酸配列をコード化する第1核酸配列、およびTcdBタンパク質に由来するアミノ酸配列をコード化する第2核酸配列の少なくとも1つに変異を得る工程を含む。例えば、変異は、TcdAタンパク質およびTcdBタンパク質の少なくとも1つのGTドメインにある。関連する実施形態における変異を設計する工程は、アミノ酸置換またはアミノ酸欠失を導入する工程を含む。例えば、置換変異は、トリプトファンをアラニンに置換する工程、およびアスパラギン酸をアスパラギンに置換する工程の少なくとも1つを含む。1つの実施形態におけるタンパク質を設計する工程は、少なくとも1つの変異、例えば、複数の変異を導入する工程を含む。関連する実施形態における方法は、TMDドメインの少なくとも1つのアスパラギン酸を欠失させる工程を含む。
【0023】
本明細書の方法において使用される組成物は、TcdAタンパク質に由来する第1アミノ酸配列、およびTcdBタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を有する無毒のキメラタンパク質cTxABを含む。従って、アミノ酸配列の実施形態を設計する工程は、タンパク質ドメインがC末端にある精製タグ、およびタグの除去のためのプロテアーゼ切断部位に操作可能に連結されるように、TcdAタンパク質からのRBDドメインをコード化する核酸を、TcdBタンパク質のGT、CPDおよびTMDドメインのアミノ酸配列をコード化する核酸と組換え技術で連結する工程を含む。
【0024】
一般に、被験体は、ヒト、研究動物、高価値の動物園動物および農業動物(agricultural animal)の群の少なくとも1つから選択される。
【0025】
関連する実施形態における方法は、被験体と接触し、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、粘膜、皮下、舌下、鼻腔内および経口からなる群の少なくとも1つから選択される経路によって組成物を投与する工程をさらに含む。
【0026】
その方法の実施形態は、被験体の血清中の抗体力価を分析する工程、および免疫反応が被験体において誘発されたという指標として、Clostridium抗原を特異的に結合する抗体の増加を、接触していない対照の被験体の増加と比較して観察する工程をさらに含む。
【0027】
本発明の実施形態は、本明細書において、Bacillus宿主において、組換え変異型Clostridium毒素タンパク質を産生する方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:タンパク質はグルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテイナーゼドメイン(CPD)、膜貫通ドメイン(TMD)、受容体結合ドメイン(RBD)を含み、遺伝子は、Bacillus細胞に又は選択可能なマーカーに、およびC末端に位置された精製タグに、遺伝子を発現するための調節シグナルに操作可能に連結されるように、Clostridumタンパク質に関して遺伝子をコード化する核酸ベクターを構築する工程;Bacillus細胞の原形質体をベクタ―と接触させる工程;および選択可能なマーカーを有し、形質転換体の細胞に組換えタンパク質を発現する形質転換体を選択する工程。
【0028】
一般に、Bacillusは、以下の群から選択される:bacilliの他の種類も想定されるが、B.megaterium、B.subtilis、B.thuringiensis、B.cereus、およびB.licheniformis。
【0029】
方法の関連する実施形態において、Clostridiumタンパク質遺伝子は、C.difficile、C.perfringens、C.sordellii、C.septicum、C.tertium、C.botulinumなどの群からの少なくとも1つから得られる。
【0030】
関連する実施形態における核酸ベクタ―を構築する工程は、無毒の変異型C.difficileのTcdAタンパク質をコード化する第1核酸配列、および無毒の変異型C.difficileのTcdBタンパク質をコード化する第2核酸配列を、(例えば)第1と第2の核酸を結紮して組み合わせる工程を含む。
【0031】
方法の1つの実施形態におけるタンパク質は、少なくとも1つの変異を含む。例えば、少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸の置換または欠失を含む。例えば、少なくとも1つの変異は、GTドメインに位置する。例えば、少なくとも1つの変異は、トリプトファンのアラニンとの置換またはアスパラギン酸のアスパラギンとの置換を含む。関連する実施形態において、タンパク質は複数の変異を含む。
【0032】
方法の1つの実施形態において、組換えキメラcTxABタンパク質をコード化する遺伝子は、TcdBタンパク質に由来する第1アミノ酸配列、およびTcdAタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を含む。例えば、タンパク質ドメインが、タグの除去のためのプロテアーゼ切断部位を有する精製タグに操作可能に連結されように、TcdBタンパク質アミノ酸配列は、GTドメインを含み、TcdAタンパク質アミノ酸配列は、RBD、CPDおよびTMDドメインを含む。
【0033】
方法の実施形態において、組換えキメラTxB−Arタンパク質をコード化する遺伝子は、TcdAタンパク質に由来する第1アミノ酸配列、およびTcdBタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を含む。例えば、タンパク質ドメインが、タグの除去のためのプロテアーゼ切断部位を有する精製タグに操作可能に連結されように、TcdAタンパク質アミノ酸配列は、RBDドメインを含み、TcdBタンパク質アミノ酸配列は、GT、CPDおよびTMDのドメインを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、免疫感作および経口細菌のチャレンジのための実験計画を示す。C57BL/cマウスは、−37、−23および−9日目に、3回免疫化された(マイナスは、チャレンジ前の日数を示す)。−6日目に、マウスを、3日間の抗生物質カクテル処置によって、その後、−1日目に、1回のクリンダマイシンの腹腔内の(IP)の投薬によって、腸の微生物叢を枯渇させた。0日目に、マウスは、10または10のCPUのC.difficileでチャレンジされた。疾患と死亡の推移がモニタリングされた。
【図2】図2は、野生型と変異型の組換え毒素を示す1セットの図面である。 図2のパネルAは、B.megateriumにおいて発現された野生型TcdA(長さ2710個のアミノ酸)およびTcdB(長さ2366個のアミノ酸)を示す。両方の毒素は機能ドメイン:GT(グルコシルトランスフェラーゼドメイン)、CPD(システインプロテイナーゼドメイン)、TMD(膜貫通ドメイン)およびRBD(受容体結合ドメイン)を含む。6−アミノ酸ヒスチジンタグは、両方の毒素のC末端に導入された(Terpe,K Appl Microbiol Biotechnol(2003)60:523−533)。領域基質(UDP−グルコース)中の毒素のGTドメインのアミノ酸WおよびDXDが示される。TcdB活性にとって重大な意味を持つことが認識されている(アミノ酸1754〜1851までの)D97は、白いバンドとして示される。 図2のパネルBは変異型ホロトキシンまたは毒素キメラタンパク質を示す。A1、A2およびaTcdAは、それぞれ、単一変異(D278N)、二重変異(W101AとD278N)および三重変異(W101A、D278NおよびW519A)を有するTcdA毒素を表わす。表記aTcdBは、GTドメインの中に2つの変異(W102AとD278N)を有する変異型TcdBを示す。cTxABは、TcdAのRBDと置換されたRBDを有するTcdBである。D97は、このキメラタンパクにおいて欠失され、その結果、完全に無毒なcTxABを生じる。His(6)タグに加えて、Strepタグが加えられ、高い親和性でアビジン様タンパク質に結合する8−アミノ酸タグが、His−タグのN末端に導入された。トロンビンプロテアーゼ切断部位はタグと毒素タンパク質の間で融合され、両方のタグの除去を適切にすることを可能とした。
【図3】図3は、毒素の変異型の毒性および細胞の結合を示す1セットの免疫ブロット、Kaplan−Meierプロットおよび写真である。 図3のパネルAおよびBは、それぞれ、CT26またはHT29の細胞の免疫ブロットを示す。細胞は、示された時間の間、示された濃度の野生型のTcdBまたはaTcdBにより処理され、回収され、溶解され、グルコシル化されていないRac1にのみ結合するモノクローナル抗体(Clone 102)を使用して、イムノブロッティングによって分析された。β−アクチンは、等しいサンプル充填を制御するために使用された。 図3のパネルCは、PBS100μl中で腹腔内に投与された50または100ngの野生型TcdBで、またははるかに高い投与量100μgの変異型aTcdBでIPチャレンジされたBalb/cマウスの生存を示す1セットのKaplan−Meierプロットである。マウス生存はモニタリングされ、時間の関数として図示された。 図3のパネルDは、37℃で30分間、培地、TcdAまたはcTxABに接触されたマウス白血病の単球RAW 264.7細胞を示す1セットの写真である。細胞は回収され蛍光色素結合抗体(fluorochrome−conjugated antibody)により染色され、画像は蛍光顕微鏡を使用して得られた。
【図4】図4は、変異型組換えホロトキシンおよびキメラタンパク質の構造を示す1セットの図である。 図4のパネルAおよびBは、それぞれ、変異型TcdAおよびTcdBの構造を示す図である。パネルAに示されたaTcdAは、GTドメインに三重変異(W101A、D287NおよびW519A)を有する変異型TcdAを表し、パネルBに示されたaTcdBは、GTドメインに二重変異(W102AとD288N)を有する変異型TcdBを表わす。 図4のパネルCは、そのRBDをTcdAのRBDで交換されたTcdBである変異型TxB−Arを示す。 図4のパネルDは変異型cTxABを示し、それはそのGTドメインに二重変異(W102AとD288N)を有するTxBArである。GT:グルコシルトランスフェラーゼドメイン;CPD:システインプロテイナーゼドメイン;TMD:膜貫通ドメイン;RBD:受容体結合ドメイン;His(6):6−ヒスチジンタグ。数は、アミノ酸残基の位置を示す。
【図5】図5は、野生型と変異型の毒素の円偏光二色性(CD)構造分析の結果を示す1セットの折れ線グラフおよび表である。 図5のパネルAおよびBは、野生型と変異型のTcdA(パネルA)およびTcdB(パネルB)の二次構造分析を示す。遠紫外線CDスペクトルは22℃で記録された。この構造分析によって、CDスペクトルが実際に同定されるので、野生型と変異型のGT毒素が機構的に類似していることが証明された。 図5のパネルCは、TcdAタンパク質(上部)およびTcdBタンパク質(下部)の二次構造の組成物の構成要素の表である。
【図6】図6は、変異型毒素のグルコシルトランスフェラーゼ活性を示す免疫ブロットの1セットの写真である。ベロ細胞溶解物は、1時間または2時間の間、1μg/mlの野生型または変異型の毒素タンパク質と接触された。Rac1グリコシル化は、グルコシル化されていないRac1にのみ結合するモノクローナル抗体(Clone 102)を用いるイムノブロッティングによって分析された。β−アクチンは、等しい充填制御のために使用された。
【図7】図7は、変異型毒素の細胞毒性を示す1セットの折れ線グラフである。結腸癌CT26細胞は、72時間の間、異なる濃度で野生型または変異型の毒素と接触された。毒性は、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物、黄色テトラゾール)を用いてアッセイされ、細胞の生存率は、毒素処理のない細胞と比較して、生存する細胞の百分率として表示された。アッセイは3回行なわれ、データは平均±s.e.mを表わす。 図7のパネルAは、aTcdA(黒丸)またはTcdA(黒三角)と接触された96ウェルプレート中のCT26細胞のパーセント生存率を示す。データは、1000ng/mlでさえ、aTcdAの非毒性を示す。 図7のパネルBは、aTcdB(黒丸)またはTcdB(黒三角)と接触されたCT26細胞のパーセント生存率を示す。データは、10000ng/mlでさえ、aTcdBの非毒性を示す。
【図8】図8は、時間とインビボでの毒性の関数として、マウスの生存を示す1セットのKaplan−Meierプロットである。Balb/cマウスは、100ng/マウスの野生型(実線)のTcdA(暗灰色の線)またはTcdB(薄灰色の線)、または100μg/マウスの変異型(点線)のaTcdA(暗灰色の線)またはaTcdB(薄灰色の線)のいずれかによりIPチャレンジされた。マウス生存は、モニタリングされ、データは、aTcdA(100μg)およびaTcdB(100μg)の生存を示し、野生型TcdA(100ng)およびTcdB(100ng)が毒性であったことを示す。
【図9】図9は、キメラ毒素タンパク質の細胞毒性を示す折れ線グラフである。96ウェルプレート中のCT26細胞は、72時間の間、異なる濃度でTcdB−Ar(黒三角)またはcTxAB(黒丸)と接触された。MTTアッセイが行なわれ、細胞の生存率が、毒素処置のない細胞と比較して、生存する細胞の百分率として表示された。アッセイは3回行なわれ、データは平均±s.e.mを表わす。
【図10】図10は、精製の2つの工程の後に組換え毒素調製物中のTLR2リガンドの不存在を示す1セットの棒グラフである。ヒトTLR2を発現するモノクローナルHEK293細胞は、Ni−アフィニティークロマトグラフィーによって、さらに、パネルA上に示されるTcdAのためのチログロブリンカラムで、またはパネルB上に示されるTcdBのためのQ−カラムで精製された、示された濃度の組換え毒素タンパク質と共に、24時間インキュベートされた。TLR2シグナル伝達は、NF−κBプロモータの制御下で、レポーター遺伝子(分泌型アルカリフォスファターゼ、SEAP)の発現によってモニタリングされた。培地中へ分泌されたSEAPの量は、SEAP Reporter Assay(Cat#rep−sap,Invivogen)によって測定された。mTcdAは、rTcdAの変異型形態(A1)を表わす。Lm(加熱殺菌リステリア菌)は、アッセイのための陽性対照として役立った。データは、高度に精製された組換え毒素調製物は、TLR2リガンドをほとんど、またはまったく含まないことを示す。
【図11】図11は、TcdA特異的モノクローナル抗体(MAb)の反応性を示す免疫ブロットの1セットの写真である。 図11のパネルAは、ニトロセルロース膜上に見つけられた、示された量での天然の精製されたTcdAを示す。 図11のパネルBは、pre−cast gelを用いて分離され、ニトロセルロース膜上に移された、組換え型の全長および切断型のTcdAペプチドフラグメントF3(アミノ酸1185〜1838)およびF4(C末端に対してアミノ酸1839)を示す。膜は示された抗TcdA MAbsにより調べられ、タンパク質のスポットまたはバンドは、化学発光基質を使用して視覚化された。BID−555はMaridian Life Science Inc.から購入された。
【図12】図12は、MyD88−/−マウスにおけるTcdA媒介性腸炎症を示す棒グラフおよび組織学の1セットの写真である。MyD88−/−マウスは、麻酔をかけられ、各4cmの回腸ループは結紮され(ligated)、50μgの組換えTcdAまたは同量の対照PBSとともに注入された。その後の組織学の分析のために、回腸ループは4時間後に取り除かれた。 図12のパネルAは、ループ長さ(cm)に対するループ重量(mg)の割合によって測定された腸液蓄積を示す棒グラフである。TcdAは、重量の2倍以上の増加を引き起こした。 図12のパネルBは、TcdAまたは対照PBSで処置された腸からの切片のヘマトキシリン−エオジン(H&E)染色を用いた組織学切片の1セットの写真である。 図12のパネルCは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)に特異的な抗体を用いた免疫組織化学染色を示す。
【図13】図13は、C.difficileを接種されたノトバイオートの子ブタからの組織の1セットの検死画像である。 図13のパネルAは、毒素非産生株CD37を接種された子ブタからの腸管を示す。大腸は、メソ結腸(mesocolonic)浮腫または炎症(画像の前面の螺旋状の結腸)がなく正常に見えた。 図13のパネルBは、毒素産生菌UK6を接種され、2週の持続時間の慢性下痢になった子ブタからの腸管を示す。螺旋状の結腸(画像の前面)は中程度のメソ結腸(mesocolonic)浮腫および炎症を示した。
【図14】図14は、中和力価および毒素チャレンジに対する被験体の保護を示す1セットの棒グラフおよびKaplan−Meierプロットである。 図14のパネルAは、中和力価を示す1セットの棒グラフである。各免疫化されたマウスからの血清は、2倍に希釈され、TcdB(終末濃度0.25ng/ml)と混合され、CT26細胞にパルス化された(pulsed)。細胞球状化(cell rounding)は24時間後にモニタリングされ、中和力価は、血清が活性を失い、TcdBによって引き起こされた細胞球状化を妨げる希釈度の逆数として定義された。(n=5、データは独立T検定およびp=0.008によって分析された)。 図14のパネルBおよびCは、マウス生存を示すKaplan−Meierプロットである。トキソイド、aTcdBまたはPBS対照を用いた3回の免疫感作の後、マウスは、100ngのTcdB(パネルB)または200ngのTcdA(パネルC)のいずれかで腹腔内に(IP)チャレンジされた。生存はモニタリングされ、データはGehan−Breslow−Wilcoxon検定によって分析された。
【図15】図15は、cTxAB免疫感作がTcdAとTcdBの両方に対する抗体および保護反応を誘発することを示す1セットの棒グラフおよびKaplan−Meierプロットである。Balb/cマウスは、0日目、10日目および20日目にアジュバントとしてミョウバンを含むcTxABで腹腔内に免疫化された。 図15のパネルAは、cTxABによるマウスの免疫感作は、TcdAとTcdBの両方に対するIgG抗体を誘発したことを示す1セットの棒グラフである。各免疫感作7日後の前血清(presera)および血清が集められ、TcdAとTcdBに対するIgG抗体が、精製された天然の毒素をコーティングされたマイクロプレートを使用して、ELISAによって測定された。n=10、統計分析二元配置分散分析が用いられ、試験後のために、免疫化された血清群を前血清と比較するために、Bonferroni post−testが使用された。 図15のパネルBは、マウス生存を時間の関数として示すKaplan−Meierプロットである。cTxABを免疫化されたマウスは、200ngまたは100ngのいずれかのTcdAで腹腔内にチャレンジされ;PBS免疫化された群は、100ngのTcdAでチャレンジされた。cTxABで免疫化されたマウスは、100ngのTcdAでチャレンジを残らず生き残った。 図15のパネルCは、マウス生存を時間の関数として示す。cTxABとPBSで免疫化されたマウスの群は、100ngのTcdBでIPチャレンジされた。マウスの生存はモニタリングされ、データは、Gehan−Breslow−Wilcoxon検定によって分析された。cTxABで免疫化されたマウスは残らずチャレンジを生き残った。
【図16】図16は、TcdAとaTcdAの結合および内在化を示す1セットの顕微鏡画像である。RAW 264.7細胞は、37℃で30分間、野生型TcdA(左のパネル)、または変異型aTcdA(右のパネル)に接触された。細胞は回収され、蛍光色素結合抗体およびDAPIで染色された。毒素タンパク質分子の局在化は、共焦点顕微鏡によって分析された。
【図17】図17は、免疫化されたマウスにおける抗TcdB IgGサブタイプを示す1セットの棒グラフである。Balb/cマウスは、3回の5μg/注入のホルマリン不活性化TcdB(トキソイド)またはaTcdBでIP免疫化された。マウス血清サンプルは、3回目の免疫感作の7日後に集められた。 図17のパネルAは、HRP結合抗ネズミIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2cおよびIgG3の二次抗体を使用して測定された405nm(OD)での光学濃度としてのIgGサブクラスの量を示す。各々の群からのプール血清は、100または1000倍希釈する。データは、本質的により多くのIgGがトキソイドよりaTcdBによって引き起こされることを示す。2より大きな割合(線によって示された)は、陽性と考えられた。 図17のパネルBは、背景と比較したODの比率を示す。aTcdBで免疫化された群からの等しい数の血清サンプルからなるプールは、1:500の希釈度から連続的に2倍希釈された。
【図18】図18は、aTcdB免疫感作は、トキソイドより多くの迅速なIgG反応を誘発したことを示す棒グラフである。Balb/cマウスは、0日目、7日目、および21日目に、5μg/注入のホルマリン不活性化TcdB(トキソイド)で、または突然変異体aTcdBで腹腔内に免疫化された。マウス前血清(免疫感作の前の)および血清のサンプルは、各免疫感作の1週間後に集められ、抗TcdB IgGは、標準ELISAによって測定された。データは、aTcdBが2回目の免疫感作の後に強力なIgG反応を誘発したことを示す(n=5)。
【図19】図19は、毒素の一次構造の全長にわたるエピトープのaTcdB免疫感作に誘発された抗体による認識を示す免疫ブロットの写真である。aTcdB免疫化されたマウスからの血清は、TcdBおよび重複しないTcdBのフラグメント(N末端からC末端まで、F1からF4)の各々をイムノブロッティングするために使用された。Hisタグに特異的なあり得る抗体を取り除くために、血清は、無関係のHisタグ化組換えタンパク質で予めインキュベートされた。
【図20】図20は、IgG反応を誘発するaTcdBとトキソイドの免疫感作の能力を比較する棒グラフである。Balb/cマウスは、5μg/注入のホルマリンで不活性化されたTcdB(トキソイド)またはaTcdBで3回腹腔内に免疫化された。3回目の免疫感作の7日後にマウス血清サンプルが集められ、抗TcdB IgGが標準ELISAによって測定された。データは、aTcdBがトキソイドより著しく大きなIgG反応を誘発したことを示す。データは二元配置分散分析により分析され、星印は群間(n=5)の有意性を示す。
【図21】図21は、キメラcTxAB免疫感作が、毒素AとBの両方に特異的な強力な中和抗体、およびC.difficile実験室株での経口チャレンジに対する保護を誘発したことを示す、1セットの棒グラフ、Kaplan−Meierプロットおよび折れ線グラフである。パネルA、BおよびCは、同様の結果を伴って少なくとも3回行なわれたアッセイを示す。エラーバーは、平均±s.e.mを示す。 図21のパネルAは、cTxAB免疫感作の後の、血清の抗TcdA(白棒)IgG力価および抗TcdB(灰色棒)IgG力価を示す棒グラフである。 図21のパネルBは、cTxAB免疫感作の後の、血清の抗TcdA(白棒)中和力価および抗TcdB(灰色棒)中和力価を示す棒グラフである。 図21のパネルCは、PBSで処置された対照マウス(実線)、またはcTxABで免疫化されたマウス(点線)の生存を示すKaplan−Meierプロットである。免疫化されたマウスは、2つの群に分けられ、それぞれ、致死量(100ng/マウス)の野生型TcdA(薄灰色線)またはTcdB(暗灰色線)によりチャレンジされた。データは、免疫化されたマウスの完全な生存率を示す。 図21のパネルD−Iは、マウス生存率(パネルDおよびG)、重量(パネルEおよびH)および症状(下痢、パネルFおよびI)を示すKaplan−Meierプロット(P<0.01)、折れ線グラフ、および棒グラフのセットである。3回目の免疫感作cTxAB(灰色線)または対照PBS(黒線)の10日後(パネルD−F)または3か月後(パネルG−I)。マウスは、C.difficileVPI10463栄養細胞(10cfu/マウス)でチャレンジされた。マウスはモニタリングされ、データは集められ、分析された。
【図22】図22は、トキソイドと比較した、変異型ホロトキシンでの免疫感作後の抗体反応および保護を示す1セットの棒グラフ、Kaplan−Meierプロットおよび折れ線グラフである。 図22のパネルAは、aTcdB(灰色棒)での各免疫感作またはトキソイド(白棒)免疫感作の後の抗体力価を示す1セットの棒グラフである。(P<0.05)。データは、トキソイドよりaTcdBによって誘発された、より高い力価を示す。 図22のパネルBは、中和力価を示す1セットの棒グラフである。各免疫化されたマウスからの血清は、連続的に2倍希釈され、野生型TcdBと混合され、サンプルはCT26細胞へパルス化された(pulsed)。細胞球状化は24時間後モニタリングされ、血清が、TcdBによって引き起こされた細胞球状化を妨げる活性を失う時の希釈度の逆数として定義された各々のサンプルの中和力価が測定された。(p=0.008)。 図22のパネルCおよびDは、トキソイドB(暗灰色線)、aTcdB(薄灰色線)での3回目の免疫感作、または対照PBS(黒線)による処置の10日後の生存率を示す1セットのKaplan−Meierプロットである。マウスは、100ng/マウスの致死量の野生型TcdB(パネルC)またはTcdA(パネルD)でチャレンジされ、生存率はモニタリングされ、Kaplan−Meier生存曲線によって分析された。 図22のパネルEおよびFは、それぞれ、TcdAまたはTcdBに関する血清の中和力価を示す1セットの棒グラフである。マウスは、aTcdA、aTcdB、またはaTcdAとaTcdBの混合物で免疫化され、血清の中和力価が測定された。 図22のパネルGおよびHは、マウス生存率(パネルG)および下痢の発生(パネルH)を示す1セットのKaplan−Meierプロット、および棒グラフである。マウスの群は、3回、aTcdA(暗灰色線)、aTcdB(灰色線の淡い影)、aTcdAとaTcdBの混合物(薄灰色線)で免疫化され、または対照PBS(黒線)によって処置され、C.difficile細菌VPI10463株(10CFU/マウス)で経口的にチャレンジされた。 図22のパネルIおよびJは、それぞれ、生存率と重量を示す。マウスの群は、C.difficile芽胞(UK1株、10芽胞/マウス)接種の4時間後に、TcdA(抗A、暗灰色線)、TcdB(抗B、灰色線の淡い影)またはTcdAとTcdBの混合物(抗Aおよび抗B、薄灰色線;各々50μlまたは一緒に)に対するアルパカ抗血清を腹腔内注入された。対照マウスは、100μlの前血清(CRT、黒線)を注入された。マウスの生存率(パネルI)および重量(パネルJ)がモニタリングされた。データは、2つのアッセイ(星印は、抗A+抗BおよびCRTの群間の有意性を示す)からプールされた。データは同様の結果をもたらす3つの独立した繰り返しの代表である。エラーバーは、平均±s.e.mを示す。
【図23】図23は、cTxAB免疫感作が強力な中和活性によって抗体を誘発したことを示す棒グラフである。マウスは、10日の間隔に4回IP免疫化された。また、血清サンプルは第4の免疫感作の7日後に集められた。血清の中和力価は本明細書に記載されているものとしてCT26細胞を使用して測定された。TcdA(12,800)またはTcdB(2,600)に対する平均(n=4)の中和力価が示される。
【図24】図24は、cTxABワクチン接種が強毒性の(hypervirulent)株によって誘発された一次の(primary)再発性CDIを減少または除去することを示す1セットのKaplan−Meier曲線、折れ線グラフ、棒グラフ、写真および略図である。 図24のパネルA−Cは、マウス生存率(パネルA)、重量(パネルB)および疾患症状(下痢、パネルC)を示すKaplan−Meierプロット、折れ線グラフ、および棒グラフである。3回の免疫感作の後、マウスは、C.difficile株UK1芽胞(10/マウス;灰色線:cTxAB;黒の実線:PBS;黒の破線:芽胞のチャレンジのない抗生物質カクテル処置)によりチャレンジされた。 図24のパネルD−Gは、対照PBSによって処置されたマウス(パネルDおよびF)、またはcTxABにより免疫化されたマウス(パネルEおよびG)からの腸の剖検および盲腸の組織学を示す写真である。 図24のパネルHおよびIは、CDI再発(relapse/recurrence)モデルのための免疫感作およびチャレンジのスケジュールを示す1セットの図面である。 図24のパネルJ−Lは、パネルHに示されたスケジュールによる再チャレンジ(rechallenge)の後の1セットのKaplan−Meierプロット、折れ線グラフ、およびマウス再発性疾患の程度(パネルJ、生存曲線;パネルK、重量;およびパネルL、下痢)を示す棒グラフである。 図24のパネルM−Qは、パネルIで示されたスケジュールによる、最初のチャレンジおよび再チャレンジの後の、マウスの一次CDI(パネルM、生存曲線;パネルN、重量減少)および再発性疾患(パネルO、生存曲線;パネルP、重量減少;およびパネルQ、下痢)に関する1セットのKaplan−Meierプロット、折れ線グラフおよび棒グラフである。アッセイは、少なくとも3回行われ、同様の結果が得られた。エラーバーは、平均±s.e.mを示す。
【図25】図25は、cTxABまたは対照PBSにより免疫化されたマウスにおける感染の後の毒素排出(toxin shedding)を示す表である。C.difficileによる1回目および2回目のチャレンジの後にcTxABまたはPBSにより免疫化されたマウスから糞便のサンプルが集められ、毒素活性がCT26細胞を用いる標準細胞毒性アッセイによって測定された。一晩の培養後に細胞の100%で球状化を引き起こした陽性のサンプル、抗毒素ポリ血清によって中和された活性。データは、陽性のマウスの百分率を示す。
【図26】図26は、aTcdBでmp舌下腺(SL)免疫感作の子ブタ血清抗体反応を示す1セットの棒グラフである。子ブタは、一週おきに25μgのTcdBで4回免疫化され(子ブタ#1および#2)、またはアジュバントとしてmLTを有する、または有さない(子ブタ#3および#4)により、4回免疫化されたSLであった。免疫感作の2週間後、血清サンプルが集められ、精製された天然のTcdBをコーティングされたプレートを用いるELISAによって抗TcdB抗体反応が測定された。
【図27】図27はポリ−ラクチド−コ−グリコシド(PLG)ナノ粒子の調製を示す図である。DNAの水溶液は、ナノ粒子を形成するためにCHCl中でのポリマーの溶液に加えられ;粒子は油中水型エマルジョンに移され、せん断型ミキサーで混ぜ合わさられ;エマルジョンは、PVA水溶液中へ注がれ、水中油中水型エマルジョン中の形成をもたらした。CHClを蒸発させた後、粒子は使用のために集められた。
【発明を実施するための形態】
【0035】
強毒性の耐性菌の地球規模の出現、およびクロストリジウムディフィシレ感染(CDI)の発生率の急増は、主要な公衆衛生の関心事を表わす(Kelly,CP et al.2008 N Engl J Med 359:1932;Rupnik,M.H.et al.2009 Nat Rev Microbiol 7:526)。C.difficileは、2つの同族のグリコシル化する外毒素TcdAおよびTcdB(これは、両方とも病原性である)を分泌し(Lyras D et al.2009,Nature 458:1176;Kuehne,SA et al.2010 Nature)、従って、疾患の発症を防ぐためには中和が必要である。本明細書における実施例は、非経口のワクチンを含むワクチンを提供し、それは両方の毒素に特異的で、マウスにおいて一次の、再発性CDIに対する充分な保護を提供する強力な中和抗体を誘発する。非病原性のBaccillus megaterium発現系を用いて(Vary PS et al. 2007 Applied microbiology and biotechnology 76:957;Yang,G et al.2008 BMC Microbiol 8:192)、グリコシルトランスフェラーゼ(glucosyltranferase)(GT)−欠損ホロトキシンが生成され、毒性が無いことが立証された。無毒のホロトキシンの天然の形態は、相応するトキソイドより著しく強力な抗毒素中和抗体を誘発した。TcdAとTcdBの間にクロス免疫性(cross−immunogenicity)はほとんどなかった。両方の毒素に対する抗体を誘発するために、Clostridium毒素様のキメラタンパク質は、TcdBの受容体結合ドメインをTcdAの受容体結合ドメインで置換することにより設計され、GT欠損形態が作られ、cTxABと名付けられた。この単一の抗原cTxABでの非経口の免疫感作は、本明細書における実施例において、TcdAとTcdBの両方に特異的な迅速で強力な中和抗体を誘発し、実験室および強毒性の株の両方のCDIに対する完全な保護を与えたことが観察された。このワクチンが、一次と再発性の両方のC.difficile感染に対して迅速な保護を与えたことを示したネズミCDI再発モデルが確立され、それにより、CDIを進行させる高いリスクのある個体に適切な見込みのある予防的なワクチンを提供した。
【0036】
Clostridium difficile(クロストリジウムディフィシレ)TcdAおよびTcdBは、主要な毒性因子の原因となる宿主Rhoファミリータンパク質を修飾する能力を有するグルコシルトランスフェラーゼ(GT)である。2つの毒素に特異的な血清抗体は、患者における保護に関係する(Kyne,L et al.2001 Lancet 357:189;B.A.Leav,BA et al.2009 Vaccine 28:965)。TcdAおよびTcdBの各々に特異的なヒトモノクローナル抗体は、CDIの患者を再発から保護する(Lowy I et al.2010 N Engl J Med 362:197)。それ故、その毒素に対する中和抗体を誘発するワクチンは、疾患を予防し、またはその重症度を低下させるのにおそらく有用である。
【0037】
またCDIの保持に寄与し得る他の毒性特質が存在すると知られているが、CDIに対する保護は、2つの毒素に対する全身性および粘膜の抗体によって媒介される(Aboudola,S. et al.2003 Infection and immunity 71:1608−1610)。TcdAに対する中和モノクローナル抗体は、マウスの腸ループ中の体液分泌を阻害し、全身感染からマウスを保護する(Corthier,G.et al.1991 Infect Immun 59:1192−1195)。抗TcdAおよび抗TcdB抗体の両方の同時投与は、それほどストリンジェントでない再発モデルにおいてのみでなく、一次疾患ハムスターモデルにおいても、死亡率を著しく引き下げる(Babcock,G.J.et al.2006 Infect Immun 74:6339−6347)。C.difficileに対する抗体は、2歳より大きな個体の一般人口の中に存在し、およびより高いレベルの血清または粘膜の抗体反応が、あまり重篤でない疾患およびそれほど頻繁でない再発に関連している(Babcock,G.J.et al.2006 Infect Immun 74:6339−6347;Kelly,C.P.et al.1996 Antimicrob Agents Chemother 40:373−379;Kyne,L.et al.2000 N Engl J Med 342:390−397)。毒素に対するヒト化モノクローナル抗体は、CDADを患う患者の処置のための臨床試験の下にある。しかしながら、血清抗体が腸管毒性および粘膜の損傷を予防する機構は完全には理解されておらず、抗体は腸内での分解を受けやすく、それ故、有効性は損なわれる。研究は、全身に投与されたヒトモノクローナルIgG抗体が急性のC.difficile感染からハムスターを保護することを示したが、これらの抗体が慢性病に対して防御することができるかどうかは知られていない。
【0038】
トキソイドワクチンはホルムアルデヒド処理によって作られ、アジュバントとしてミョウバンを含む筋肉注入によって投与された(Kotloff,K.L.et al.2001 Infect Immun 69:988−995;Sougioultzis,S. et al.2005 Gastroenterology 128:764−770)。トキソイドは、ホルムアルデヒド処置の結果、粘膜表面に結合することができないので(Kunkel,G. R. et al.1981 Mol Cell Biochem 34:3−13)、化学的に無毒化されたトキソイドは、粘膜表面上の受容体を標的とする分子より乏しい粘膜反応を誘発する(Cropley,I.et al.1995 Vaccine 13:1643−1648;Torres,J.F.et al.1995 Infect Immun 63:4619−4627)。TcdAとTcdBの両方を標的とし、CDIを予防するために強い全身性免疫と粘膜免疫を誘発するワクチンは、重症度を低下させ、進行中の慢性病を除去するために必要である。
【0039】
aTxABまたはcTxABの免疫原は、トキソイドまたはそのフラグメントより優れていることが本明細書に示される。完全長タンパク質は、正確なフォールディングを有する天然の形態を模倣し、あらゆる範囲の(a full spectrum of)中和全身性抗体および粘膜抗体を発生させることが観察された。TcdAのごく一部を含む化学的に無毒化されたトキソイドまたはフラグメントと異なり、本明細書に提供される点突然変異を有する無毒のホロトキシンは、天然の毒素が有するのと同じアジュバント活性、抗原性および粘膜上皮への親和性を維持し;従って、トキソイドより大きな防御免疫を誘発し、フラグメントより幅広い抗体を発生させる。TcdAとTcdBの両方による致死のチャレンジに対する、マウスにおける強力な保護を誘発するために、キメラcTxABでの免疫感作は、本明細書の実施例において観察された。
【0040】
(疾患の症状発現と治療上の手法)
CDIは増殖型の生物体または芽胞の経口摂取によって獲得され、最もありそうなのは、後者である(Dubberke,E.R.et al.2007 Am J Infect Control 35:315−318;Roberts,K.et al.2008 BMC Infect Dis 8:7)。芽胞は、胃液酸度への接触を生き残り、腸において発芽する。抗生物質処置は、その疾患に対する最も重要な危険因子である(Bartlett,J.G.2006 Ann Intern Med 145:758−764)。CDIの臨床所見は、非常に変わり易く、無症候性から軽症の自己制御式の下痢まで、より重篤な偽膜性大腸炎までの範囲である。最も一般的な症状は下痢である。他の一般の臨床症状は、腹痛および痙攣、高い体温および白血球増加症を含む。CDIの軽度の場合では、経口的水分補給および抗生物質の退薬はしばしば有効である。より多くの重篤なCDIの場合は、メトロニダゾールまたはバンコマイシンの経口投与により処置される。
【0041】
しかしながら、この処置は55%もの再発率に関係し(Barbut,F.et al.2000 J Clin Microbiol 38:2386−2388;Walters,B.A.et al.1983 Gut 24:206−212)、および再発性CDIに対する一次処置の選択肢は、メトロニダゾールまたはバンコマイシンのままである。プロバイオティクスと陰イオン交換樹脂などの他の選択肢は、有効性を限定しており、潜在的に有害である(Gerding,D.N.et al.2008 Clin Infect Dis 46 Suppl 1:S32−42)。臨床開発における実験の処置は、毒素吸収ポリマー、抗生物質および毒素特異的ヒトモノクローナル抗体を含んでいる(Anton,P.M.et al.2004 Antimicrob Agents Chemother 48:3975−3979;Hinkson,P.L.et al.2008 Antimicrob Agents Chemother 52:2190−2195;McVay,C.S.et al. 2000 Antimicrob Agents Chemother 44:2254−2258)。臨床試験におけるホルムアルデヒド不活性化トキソイドワクチンは、筋肉内に投与される(Kotloff,K.L.et al.2001 Infect Immun 69:988−995;Sougioultzis,S.et al.2005 Gastroenterology 128:764−770)。
【0042】
(毒性因子)
CDIは、主として毒素媒介性疾患である。2つの広範囲に研究された外毒素、毒素A(TcdA)および毒素B(TcdB)は、主要な毒性因子であると考えられ、両方の毒素遺伝子を欠くC.difficile株は、ヒトおよび動物の両方にとって非病原性である(Elliott,B.et al.2007 Intern Med J 37:561−568;Kelly,C.P.1996 Eur J Gastroenterol Hepatol 8:1048−1053;Voth,D.E.et al.2005 Clin Microbiol Rev 18:247−263)。動物における結紮された腸ループの研究で測定されるように、精製されたTcdAは強力な腸毒性および炎症促進活性を有する(Kurtz,C.B.et al.2001 Antimicrobial agents and chemotherapy 45:2340−2347)。TcdAは、ナノグラムの量で培養細胞に対して細胞傷害性である。TcdBは、純粋なタンパク質として投与された時動物に腸毒性の活性(enterotoxic activity)を示さないことが報告されている(Lyerly,D.M.et al.1982 Infection and immunity 35:1147−1150;Lyerly,D.M.et al.1985 Infect Immun 47:349−352)。各毒素を欠損している同質遺伝子系統は、TcdBがハムスターの重要な毒性因子であることを実証した(Lyras,D.,et al.2009 Nature 458:1176−1179)。TcdBの腸毒性および炎症誘発性の活性は、免疫不全の(SCID)マウスにおけるヒト腸の異種移植片に関して観察された(Savidge,T.C.et al.2003 Gastroenterology 125:413−420)。TcdABC.difficile株は、何人かの患者において偽膜性大腸炎に関係する(Shin,B.M.et al.2007 Diagn Microbiol Infect Dis. 59:33−37)。少数のC.difficile分離株は、ADPリボース転移酵素活性を示す、二元毒素(CDT)を産生する(Blossom,D.B.et al.2007 Clin Infect Dis 45:222−227;Carter,G.P.et al.2007 J Bacteriol 189:7290−7301;McMaster−Baxter,N.L.et al.2007 Pharmacotherapy 27:1029−1039)。ヒト疾患の進行におけるCDTの役割はあまり理解されていない(Stare,B.G.et al.2007 J Med Microbiol 56:329−335)。毒素に加えて、他のいくつかの要因は、疾患の症状発現に役割を果たすことがあり、これは、付着、カプセル生成および加水分解酵素分泌を促進するフィンブリアおよび他の分子を含む(Borriello,S.P.1998 J Antimicrob Chemother 41 Suppl C:13−19)。C.difficileの表層タンパク質は、細菌コロニー化に関係する。また、これらのタンパク質に特異的な抗体は部分的に保護的である(Calabi,E.et al.2002 Infect Immun 70:5770−5778;O’Brien,J.B.et al.2005 FEMS Microbiol Lett 246:199−205)。
【0043】
(TcdAとTcdBのドメイン)
TcdA(308kD)およびTcdB(269kD)は、大きなクロストリディウム細胞毒素(LCT)ファミリーに属し、49%のアミノ酸同一性を有する(Just,I.et al.2004 Rev Physiol Biochem Pharmacol 152:23−47)。遺伝子tcdAおよびtcdB並びに3つのアクセサリー遺伝子が細菌染色体上に位置付けられ、19.6kbの病原性遺伝子座(PaLoc) (142)を形成する。TcdAおよびTcdBは構造上互いに類似しており(von Eichel−Streiber,C.et al.1996Trends Microbiol 4:375−382)、少なくとも3つの機能ドメインから成る。C末端は受容体結合ドメイン(RBD)を含み、β−ソレノイド構造を有し、受容体結合に含まれる(Ho,J.G.et al.2005 Proc Natl Acad Sci U S A 102:18373−1837)。毒素の一次構造の中心部分は、潜在的に標的細胞への毒素の転座に関係し、N末端は、グルコシルトランスフェラーゼ活性を有する触媒ドメインである(Hofmann,F.et al.1997 J Biol Chem 272:11074−11078)。3つのドメインの境界は、文献(Giesemann,T.et al.2008 J Med Microbiol 57:690−696)に規定されている。GTドメインは、アミノ末端をコード化するDNAに由来する組換えタンパク質の発現によって規定された(Hofmann,F.et al.1997 J Biol Chem 272:11074−11078)。さらに、GTドメインは、細胞質ゾルの送達の後に再生され(recover)、N末端アミノ酸が決定された(Pfeifer,G.et al. 2003 J Biol Chem 278:44535−44541)。TcdAのRBDの結晶構造は、ソレノイドのような構造を明らかにした。両方の毒素中のRBDの境界は、アミノ酸1850の近くである。C末端と宿主細胞受容体との間の相互作用は、受容体依存性エンドサイトーシスを開始すると考えられる(Florin,I.et al.1983 Biochim Biophys Acta 763:383−392;Karlsson,K.A.1995 Curr Opin Struct Biol 5:622−635;Tucker,K.D.et al. 1991 Infect Immun 59:73−78)。
【0044】
細胞内の作用様式は不明瞭なままであるが、毒素がエンドソームのコンパートメントの低いpHで構造変化を受け、膜挿入およびチャンネル形成に繋がることが提案されてきた(Giesemann,T.et al.2006 J Biol Chem 281:10808−10815;Qa’Dan,M et al.2000 Infect Immun 68:2470−2474)。宿主補助因子は、自触媒作用の開裂(cleavage)および細胞質ゾルへの触媒ドメインの放出を伴う第2の構造変化を引き起こす(Pfeifer,G.et al.2003 J Biol Chem 278:44535−44541;Reineke,J.et al.2007 Nature 446:415−419)。細胞質ゾルにおいて、毒素モノ−Oの触媒ドメインは、Rho、RacおよびCDC42を含むRhoファミリーの低分子量GTPaseをグリコシル化する(Just,I.et al.1995 Nature 375:500−503)。Rhoタンパク質のグリコシル化は、分子スイッチ機能を阻害し、腸の上皮細胞中のRhoのGTPアーゼ依存性シグナル伝達を遮断し、アクチン細胞骨格の変質、大量の液体分泌、急性炎症および結腸の粘膜の壊死につながる(Just,I.et al.1995 Nature 375:500−503;Pothoulakis,C.et al.2001 Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 280:G178−183)。
【0045】
(疫学と診断)
健康な成体におけるC.difficileの発生率は、3−5%であり、健康な新生児および幼児においては60%と高い(Larson,H.E.et al.1982 J Infect Dis 146:727−733;Viscidi,R.et al.1981 Gastroenterology 81:5−9)。新生児における高い保菌率にもかかわらず、症候性疾患はめったにない(McFarland,L.V.et al.2000 J Pediatr Gastroenterol Nutr 31:220−231)。抗生物質使用と入院を伴う成体において、コロニー形成の割合は、事実上20−40%まで増加する(Bartlett,J.G.2006 Ann Intern Med 145:758−764)。感染のための標準試験は、便中のC.difficile毒素の検出である。アッセイは、糞便サンプル中のTcdA及び/又はTcdBを検出するための、細胞培養ベースの細胞毒性アッセイ(Bartlett,J.G.et al.1978 N Engl J Med 298:531−534)および酵素免疫定量法(EIA;Russmann,H.et al.2007 Eur J Clin Microbiol Infect Dis 26:115−119;Staneck,J.L.et al.1996 J Clin Microbiol 34:2718−2721)を含む。代替的な検出方法は、細菌の嫌気培養および細菌抗原グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)の検出を含む。
【0046】
(医薬組成物)
本発明の1つの態様は、医薬組成物を提供し、これらの組成物は、C.dificileの毒素に由来する抗原を含み、およびさらにアジュバントを随意に含み、さらに薬学的に許容可能な担体を随意に含む。
【0047】
特定の実施形態において、これらの組成物は、随意に、1以上のさらなる治療薬をさらに含む。特定の実施形態において、さらなる治療薬または薬剤は、抗生物質、特に抗菌性化合物、抗ウイルス化合物、抗真菌剤、から成る群から選択され、成長因子、抗炎症剤、昇圧薬、コラゲナーゼ阻害剤、局所用ステロイド、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、アスコルビン酸塩、アンジオテンシンII、アンジオテンシンIII、カルレチクリン、テトラサイクリン、フィブロネクチン、コラーゲン、トロンボスポンジン、形質転換増殖因子(TGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インシュリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、neu分化因子(NDF)、肝細胞増殖因子(HGF)およびヒアルロン酸の1以上を含む。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「薬学的に許容可能な担体」は、所望の特定の剤形に適するように、任意または全ての溶媒、賦形剤または他の液状ビヒクル、分散または懸濁の補助剤(aid)、表面活性剤、等張剤、増粘剤 または乳化剤、防腐剤、固体の結合剤、滑沢剤などを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences Ed.by Gennaro,Mack Publishing, Easton,PA,1995は、医薬組成物を調剤する際に用いられる様々な担体およびその調製のための既知の技術を開示する。例えば、IP(腹腔内)、IV(静脈内)、皮下、粘膜、舌下腺、吸入、鼻腔内の投与の他の形態を含む任意の投与経路、または投与の他の経路の後の滞在時間を延長するために、担体は選択される。
【0049】
薬学的に許容可能な担体として役立つことができる物質のいくつかの例は、限定されないが、グルコースなどの糖およびショ糖;トウモロコシデンプンとジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガント粉末;麦芽;ゼラチン;滑石;ココアバターおよび坐薬のワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブオイル、トウモロコシ油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびエチルラウリン酸などのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張の食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液と同様、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒な適合性の滑沢剤、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤を含み、これらはまた、調合する人の判断によって組成物中に存在し得る。
【0050】
さらなる別の態様において、本発明の治療法によると、本明細書に記載されるように、免疫感作は被験体を医薬組成物と接触させることによって促進される。従って、本発明は、TcdAとTcdBの少なくとも1つに関係する抗原決定基があるC.dificileの免疫原の毒素タンパク質を含む活性剤を含む治療上有効な量の医薬組成物を、所望の結果を達成するのに必要であるような量で、およびそのような時間の間、それを必要とする被験体に投与する工程を含む免疫感作のための方法を提供する。これは、(特に栄養的にチャレンジされる人々のような易感染性の患者において、または高齢者または幼児のようなリスク患者で)C.dificileによる感染に対する免疫を促進するために、免疫の緩速現像に関係する合併症を最小限にするために、予防的または治療上の対策として、本明細書に記載のような創造性のあるワクチンを投与する工程を含むことが理解される。
【0051】
本発明の特定の実施形態において、医薬組成物の「治療上有効な量」は、C.dificileの毒素に特異的な血清中の抗体の出現、または糞便中の、体液、または他の分泌された生成物中の抗原若しくは毒素の量または細菌細胞などの疾患症状の消失を促進するのに有効な量である。組成物は、本発明の方法によると、抗体反応を生じさせるのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。従って、本明細書に使用されるように、表現「免疫を促進するのに有効な量」は、抗体産生またはC.dificileによる感染に特徴的な疾患症状改善を結果として生じるのに十分な量の組成物を指す。
【0052】
正確な投薬は、処置される患者を考慮して個々の医師によって選択される。用法および用量、十分なレベルの活性剤を提供し、または所望の効果を維持するように調節される。考慮に入れられてもよいさらなる要因は、疾患状態の重症度(例えば、過去か可能性のある将来における伝染因子への接触);患者の年齢、体重および性別;食事、投与の時間および頻度;複合薬;反応感受性;および治療に対する耐性/反応を含む。長時間作用型の医薬組成物は、特定の組成物の半減期およびクリアランス率に依存して、3〜4日ごと、毎週、または2週ごとに投与され得る。
【0053】
本発明の活性剤は、好ましくは、投与のし易さおよび投薬の均一性のために投薬ユニット形態で調剤される。本明細書に使用されるように、表現「投薬ユニット形態」は、処置される患者に投与されるべき1回分に適切な活性剤の物理的に別々の単位を指す。しかしながら、本発明の組成物の合計の毎日の使用は、安全な医学上の判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。任意の活性剤については、治療上有効な投与量は、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル(通常、マウス、ウサギ、イヌまたはブタまたは、子ブタ、あるいは他の適切な動物)においてのいずれかで最初に推測することができる。C.dificileによる慢性または再発する感染の動物モデルを含む本明細書に記載の動物モデルはまた、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するために使用される。その後、そのような情報はヒトにおける投与のための有用な投与量および経路を決定するために使用することができる。
【0054】
治療上有効な量は、少なくとも1つの徴候または症状を改善する活性剤の量を指す。活性剤の治療上の有効性および毒性、例えばED50(その用量は、個体群の50%に治療上有効である)、およびLD50(その用量は個体群の50%が死に至る)は、細胞培養または実験動物において標準の製薬の手順によって測定され得る。毒性の治療効果に対する用量比は、治療指数であり、比率LD50/ED50として表され得る。大規模な治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイから及び動物研究から得られたデータは、ヒトの使用のために様々な範囲の投与量を調剤するのに使用され得る。
【0055】
投与量は、免疫の技術分野における当業者に公知のように、被験体の年齢、健康状態、以前の感染の病歴、および免疫状態に多かれ少なかれ依存し得るが、本明細書の実施例において示された治療量は、被験体の体重1kg当たり精製された毒素ワクチン、少なくとも1kg当たり1μg、少なくとも1kg当たり約5、10、50、100、500μg、少なくとも約1mg/kg、5、10、50または100mg/kg体重である。用量は、1日当たり分割されることもあり、または単一のこともあり、および一回投与されることもあり、または適切な間隔で繰り返されることもある。
【0056】
(医薬組成物の投与)
所望の投薬内に適切な薬学的に許容可能な担体と共に製剤した後、本発明の医薬組成物は、予防または治療の目的および既存の感染の重症度および性質に依存して、ヒトおよび他の哺乳動物に、(粉末剤、軟膏、またはドロップなどによって)局所的に、経口で、直腸に、粘膜に、舌下に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、口腔内に、舌下に、眼内にまたは鼻腔内に投与され得る。
【0057】
本明細書における本発明の様々な実施形態において、改変された(engineered)無毒の毒素タンパク質の投与の後に、C.dificile毒素の致死量に対する保護に十分な高い力価の抗体が産生されたことが観察された。経口投与のための液体の剤形は、限定されないが、薬学的に許容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。活性剤に加えて、液体の剤形は、例えば、水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿の実、落花生類、トウモロコシ、胚、オリーブ、カスターおよび胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤などの当該技術分野で一般的に使用される不活性の賦形剤、およびそれらの組み合わせを含み得る。不活性の賦形剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、調味料および芳香剤などのアジュバントを含み得る。
【0058】
創造性のある医薬組成物の局所または経皮投与のための剤形は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、溶液、スプレー、吸入剤または貼付剤を含む。活性剤は、薬学的に許容可能な担体、および必要とされる場合、任意の必要な防腐剤または緩衝液と共に無菌条件下で混合される。投与は、治療上であることもあり、または予防的であることもある。
【0059】
注射可能な製剤、例えば、無菌の注射可能な水溶性または油性の懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って調剤されてもよい。無菌の注射可能な製剤はまた、無毒な非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、であり得る。使用し得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張食塩水がある。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁溶媒として従来使用される。この目的のために、合成のモノグリセリド、またはジグリセリドを含む任意の穏やかな不揮発性油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製において使用される。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターによるろ過によって、または使用前に滅菌水または他の無菌注射剤培地に溶かされるか分散することができる無菌の固体の組成物の形態中に滅菌剤を組み入れることによって、芽胞の付加前に消毒することができる。活性剤の効果を延長するために、皮下または筋肉注射から薬剤の吸収を遅くすることはしばしば望ましい。非経口的に投与された活性剤の遅らせた吸収は、油型ビヒクル中に薬剤を溶解するまたは懸濁することにより達成され得る。注射可能なデポー剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性高分子中に薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作られる。活性剤のポリマーに対する比率および使用された特定のポリマーの性質によって、活性剤の放出速度を制御することができる。他の生分解性高分子の例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー剤の注射可能な製剤も、体内組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中の薬剤を封入することによって調製される。
【0060】
直腸または膣の投与のための組成物は、好ましくは、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、それ故、直腸または鞘状腔で溶けて、活性剤を放出するココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤または担体と、本発明の活性剤を混合することにより調製することができる坐剤である。
【0061】
経口、粘膜または舌下の投与のための固体の剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤および果粒剤を含む。そのような固体の剤形において、活性剤は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な薬学的に許容可能な賦形剤または担体、及び/又はa)デンプン、ショ糖、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填材または希釈剤、b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖およびアラビアゴムなどの結合剤、c)グリセロールなど湿潤剤、d)寒天などの崩壊剤、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、また炭酸ナトリウム、e)パラフィンなどの溶液遅延剤(solution retarding agent)、f)第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、およびそれらの混合物と混合される。
【0062】
同様のタイプの固体の組成物も、高分子量ポリエチレングリコールなどと同様に、乳糖のような賦形剤を使用して、柔い、または固い充填ゼラチンカプセル中の充填材として使用され得る。錠剤、ドラゼー、カプセル剤、丸剤および果粒剤の固体の剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および製薬調剤技術において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルにより調製することができる。そのような固体の剤形において、活性剤は、ショ糖またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性の希釈剤と混合され得る。通常の方式であるように、そのような剤形は、不活性の賦形剤以外のさらなる物質、例えば、タブレットにする滑沢剤およびステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどの他のタブレットにする補助剤を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形はまた緩衝剤を含み得る。それらは、随意に乳白剤を含み、それらが活性剤のみを、または優先的に、あるいは胃管の一定の部分で、随意に遅延した様式で、放出する組成物であり得る。使用することができる組成物を組み込む例は、高分子物質とワックスを含む。
【0063】
(免疫感作の経路の確認)
全身性抗体および粘膜抗体、並びに保護反応を誘発するために適切な経路は、経口の免疫感作レジメン、鼻腔内の(IN)免疫感作レジメン、または舌下腺(SL)免疫感作レジメンの比較により、粘膜の保護のみでなく、IP免疫感作と類似する、またはIP免疫感作より優れた全身性の保護レベルを確立することをめざして確認される。
ル、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、およびそれらの混合物と混合される。
【0064】
aTxABとcTxABの両方は、天然の毒素のインタクトな(intact)受容体結合ドメインを含み、野生型毒素が有するように、おそらく、上皮細胞への同様の親和性を有するだろう。従って、粘膜免疫は、これらの免疫原への粘膜表面(経口、IN、またはSL)の接触によって誘発される。粘膜の免疫感作のいくつかの経路は比較され、全身性および粘膜の抗体反応の誘発が評価される。粘膜のアジュバントの使用法も評価される。
【0065】
本明細書中の実施例に記載のように確立された至適用量から始めて、マウスの群は、3回、aTxABまたはcTxABで、(粘膜のアジュバントとともに、またはなしで)INまたはSLで、または経口で(カプセル化されて)免疫化される。血清と糞便の抗体反応は各免疫感作の後に測定される。最後の免疫感作の1週間後に、マウスは、確立された相当するLD50i毒素でIPチャレンジされ、毒素および全身性のチャレンジに対する保護反応は、IPで免疫化された群およびプラセボ群と比較される。糞便および腸内容物中の毒素に対する血清と分泌型のIgAおよびIgGの全身性抗体が測定され、細胞培養物中の細胞毒性を遮断するための中和力価が測定される。粘膜保護は、毒素を直接注入された、免疫化されたマウスの結紮された回腸ループで評価される。抗体のレベルおよび保護反応が、非経口の免疫感作によって達成されたもの未満であるとき、及び/又は、粘膜抗体および保護反応が低いと考えられるとき、代替の粘膜アジュバントと組み合わせた免疫原の投与量最適化が続く。これらのアッセイは、粘膜の免疫感作がIP免疫感作として抗体および保護反応に関して効率的か否か、および保護粘膜免疫が粘膜の免疫感作によって誘発されるか否かを確証する。
【0066】
(アジュバントとしてのミョウバン)
アジュバントとしてミョウバンを用いるaTcdBまたはcTxABでの腹腔内の(IP)免疫感作は、強力なIgG反応および全身性の保護を誘発することが示された。重要なことには、ミョウバンはヒトワクチン接種のためにFDAに認可されたアジュバントであることであろう。それ故、非経口の免疫感作は、プラセボを含むアジュバントとしてミョウバンを含んだ。
【0067】
(粘膜アジュバント)
コレラ菌由来の細菌腸毒素コレラ毒素(CT)およびE.coli由来の易熱性毒素(LT)は、おそらく、最も一般に使用される粘膜のアジュバントであり、経口または鼻の経路によって同時投与された無関係な抗原に対する免疫反応を促進する(Rappuoli,R.et al.1999 Immunol Today 20:493−500)。しかしながら、これらの腸溶性毒素の野生型は有毒であり、それ故、CTとLTの毒性を、それらのアジュバント活性を保持しつつ減少させるために、広範囲な研究がなされている(Pizza,M.et al.2001 Vaccine 19:2534−2541)。1例は、タンパク質の分解を抑制し、タンパク質の毒性を弱めるアミノ酸192でAサブユニットのタンパク質分解部位に変異を有する変異型LT(mLT)である(Dickinson,B.L.et al.1995 Infect Immun 63:1617−1623)。これらのアジュバントは粘膜免疫反応を促進するために重要であるが、aTxABおよびcTxABの両方は、TcdAのインタクトなTBDを含み、これは、鼻腔内の投与後にCTまたはLTくらい強力なアジュバント活性を有する(Cavalcante,I.C.et al.2006 Infect Immun 74:2606−2612)。さらに、両方の毒素は、上皮細胞に高い親和性を有し、従って、これらの免疫原の至適用量は、外来のアジュバントなしで、強力な中和IgGおよびIgA反応を誘発するのに十分であり得る。
【0068】
比較は、アジュバントを欠く、または変異型LT(mLT)または変異型CpGを含む免疫原により免疫化された動物の群の間でなされた。mLTは、動物研究において、およびヒトの研究において使用されている(Dickinson,B.L.et al.1995 Infect Immun 63:1617−1623;Uddowla,S.et al.2007 Vaccine 25:7984−7993)。mLTは、A1をA2から分離するAサブユニットのジスルフィド境界領域(disulfides subtended region)内に一つのアミノ酸置換を引き起こすために、部位特異的変異誘発を使用して構築された(Dubberke,E.R.et al.2007 Am J Infect Control 35:315−318)。この一つのアミノ酸の変化は、この領域内にタンパク質分解性に感受性のある部位を変更し、トリプシン活性化に対して非感受性な変異をもたらす。5μgまたは10μgのmLTと混合された各免疫原の免疫感作の結果が比較され、結果が本明細書中の実施例に提示される。
【0069】
本明細書に使用されるCpGs(Kindrachuk,J.et al.2009 Vaccine 27:4662−4671)の免疫修飾物質の性質は、多くの見込みのある医療用途に役立つ性質を含み:様々な悪性腫瘍の処置のための抗アレルゲンとして、および、特に、免疫反応が不十分な個体においてワクチン接種の有効性を促進するためのアジュバントとして、生来の免疫反応を準備する。アジュバント製剤中のCpGsの使用は、Th1−バイアスへのワクチン誘発性免疫反応を歪めることが以前に立証されたが実際は、これらの分子は、ヒト、ネズミおよびブタの新生仔の免疫反応を増強することが立証されている(Garlapati,S.et al.2009 Vet Immunol Immunopathol 128:184−191)。Th1とTh2の寄与の調節は、保護と免疫病理の間のバランスに影響を及ぼすので、ワクチンアジュバントの文脈では、バランスのとれたTh1/Th2反応が望ましい(Singh,V.K.et al.1999 Immunol Res 20:147−161)。
【0070】
(鼻腔内の(IN)免疫感作)
免疫感作の粘膜の鼻の経路は、マウスにおける、およびヒトの腸における全身性及び/又は粘膜の抗体反応を結果として生じる免疫反応を誘発する(Kozlowski,P.A.et al.2002 J Immunol 169:566−574;Rudin,A. et al. 1999 Infect Immun 67:2884−2890)。鼻の経路は、消化管におけるタンパク質の消化および分解を回避し、経口経路よりはるかにより少ない抗原が送達されることを可能にする(Kozlowski,P.A.et al.2002 J Immunol 169:566−574)。それ故、免疫感作の鼻の経路は、大きな可能性を有することが本明細書中で考慮される(Neutra,M.R.et al.2006 Nat Rev Immunol 6:148−158)。
【0071】
免疫感作の鼻腔内の経路に関して、アジュバントと共に、またはアジュバントなしで、aTxABまたはcTxABを含むPBS5μlが、各々の鼻孔へ送達される(1匹のマウス当たり合計10μl)。1つの鼻孔当たり5μlの量は、免疫原がすべて鼻腔の内部に分散されることを確実にする。30μlなどのより高い容量は、鼻/肺の免疫感作に繋がり得る(Southam,D.S.et al.2002 Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 282:L833−839)。鼻の上皮への免疫原の結合が評価される。アジュバントとしてLTを使用することは、鼻道の抗原輸送(trafficking)を変える。抗原のこのアジュバント依存性転送(redirection)がADPリボース転移酵素活性に依存するので、これはmLTではなく野生型LTの場合である(van Ginkel,F.W.et al.2005 Infect Immun 73:6892−6902)。
【0072】
(舌下の(SL)免疫感作)
SL経路は、血流低分子量薬物を送達するために(Zhang,H.et al.2002 Clin Pharmacokinet 41:661−680)に、およびアレルゲンに対する免疫療法のために(O’Hehir,R.E.et al.2007 Curr Med Chem 14:2235−2244)、長年使用されている。ワクチン接種のこの経路は、送達がし易い可能性、および広範囲の全身性および粘膜の免疫反応を誘発する可能性がある(Cuburu,N.et al.2007 Vaccine 25:8598−8610)。SL免疫感作は、腸溶性の病原体による感染に対する腸の粘膜免疫を誘発する(Huang,C.F.et al.2008 J Pediatr Gastroenterol Nutr 46:262−271)。アジュバントとして変異型LTを用いる、aTcdBで免疫化されたノトバイオートの子ブタは、本明細書中の実施例において示されるように、aTcdB単独より高い、循環中の抗TcdB IgGのレベルを誘発した。これらのすべての理由のために、免疫感作のSL経路は評価のために包含された。
【0073】
舌下の粘膜は、舌の腹側の側面および口底を含む。SL免疫感作のために、マウスにケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、アジュバントと共に、またはアジュバントなしで、aTxABまたはcTxAB5μlが、舌の腹側に送達され、口底の方へ向けられる。動物は、30分間、頭を前屈に置いて(with heads placed in anteflexion)維持する。
【0074】
(経口免疫)
腸粘膜を直接刺激することは、腸管感染症に対する効果的な保護を誘発する。粒子状物質、タンパク質またはDNAの不活性化されたまたはサブユニットのワクチンを送達する試みが、雑多な結果を伴って多くの群によって試みられた。経口のワクチン接種は、感染から腸を保護するための安全で、かつ有効な方法である。それはまた、タンパク質分解消化酵素または加水分解消化酵素、胆汁酸塩および極端なpHと同様に、内容物の急速な移動のために、当てにならない経路であり、粘膜の壁に対するアクセスをしばしば制限する。
【0075】
PLGポリマーは、カプセル化に使用されるポリマーが非免疫原であり、安全性の既知の記録があるので、本明細書中の実施例で使用するために選択された。これは、ドラッグデリバリーにおける、および外科縫合材料におけるような他の目的のためのそれらの使用で示されている。ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)は、2つの自然発生の物質、乳酸およびグリコール酸、にインビボで加水分解される。
【0076】
(医薬組成物の使用)
上論され、および実施例においてより詳細に記載されるように、C.dificileの毒素に対する抗体産生を誘発する際に、および疾患症状、感染および死を防止するために有効な改変された毒素タンパク質が本明細書中に提供される。一般に、これらのワクチンは、CDIに対する抵抗性のために、被験体を免疫化する際に臨床的に役立つと信じられている。本明細書中のワクチンは、易感染性の患者、特に、例えば、ステロイド、放射線治療、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、抗腫瘍性の薬物および抗代謝物質での全身療法に関係する免疫抑制および合併症を含む治療を予期する患者を処置するのに有用である。腸内菌叢を除去する、または減少させることが知られている抗生物質治療の多量の日常の投与量を受け取る患者(例えば外科患者、事故または争いの場の傷から生じるようなトラウマを経験する患者)は、競合する正常細菌叢が存在せずC.dificileが増殖するので、CDIの発生を予防するために免疫化され得る個体群である。CDIの予防のために、特に地震および洪水などの大災害の後に、学齢の子供達または軍隊のメンバーなどの全人口を免疫化するために、本明細書中のワクチンが予防的に使用され得ることがまた、想定される。
【0077】
(CDIからの保護における全身性および粘膜の抗体)
全身性免疫と粘膜免疫の両方は、毒素などの腸溶性の病原体および病原性の生成物に対する保護を提供する(Huang,C.F.et al.2008 J Pediatr Gastroenterol Nutr 46:262−271;Perez,J.L.et al.2009 Vaccine 27:205−212)。TcdAとTcdBがC.difficileの重要な病原性因子であるので、抗毒素調製物は動物において経口のC.difficileチャレンジからの十分な保護を伝えることができる(Kink,J.A.et al.1998 Infect Immun 66:2018−2025;Lyerly,D.M.et al.1991 Infect Immun 59:2215−2218)。TcdAまたはTcdB単独に対する抗体ではなく、両方の毒素に対する抗体は、ハムスターモデルにおける毒素産生性のC.difficile感染を予防する(Fernie,D.S.et al.1983 Dev Biol Stand 53:325−332;Kim,P.H.et al.1987 Infect Immun 55:2984−2992;Libby,J.M.et al.1982 Infect Immun 36:822−829)。致死の疾患および下痢の両方を予防することを評価するハムスターにおけるトキソイドワクチンの送達の経路の評価によって、粘膜と親の免疫感作の組み合わせは、下痢と死亡からの完全な保護を提供したことが分かり、このことは、全身性免疫と粘膜免疫の両方の誘発が最適な保護には必要であることを示した(Torres,J.F.et al.1995 Infect Immun 63:4619−4627)。全身的に投与されたヒトモノクローナルIgG抗体は、急性CDIおよび死からハムスターを保護した(Babcock,G.J.et al.2006 Infect Immun 74:6339−6347)。これらの抗体が成人病を防ぐか否かは知られていない。これらは全身的に投与され、受動的に獲得される抗体であるので、保護の期間は制限されており、費用がかかる。
【0078】
ヒトにおいて、高レベルの血清中の抗毒素抗体は、より重篤でない疾患およびそれほど頻繁でない再発に関係する(Kyne,L.et al.2000 N Engl J Med 342:390−397)。徴候的な感染の後に、ほとんどの個体は、血清中の2つの毒素に対する抗体を生じさせ(Aronsson,B.et al.1985 Infection 13:97−101;Viscidi,R.et al.1983 J Infect Dis 148:93−100)、これは、血清および便中の毒素中和IgAを含む(Johnson,S.et al.1995 Infect Immun 63:3166−3173)。全身性と粘膜の抗体反応は、後の感染からの保護に関係すると考えられる。疾患進行と再発は、循環における抗体の異なるサブセットに関係すると考えられ(Katchar,K.et al.2007 Clin Gastroenterol Hepatol 5:707−713)、およびこの観察の背後にある正確な理由は不明である。TcdAに特異的な抗体は、He,X.et al.2009 Infect Immune 77:2294−2303(これは、その全体が、参照として本明細書に組み込まれる)に示されるように、本質的にFcガンマレセプターI−媒介性エンドサイトーシスを介してマクロファージまたは単球上でTcdAの細胞毒性活性を増強した。
【0079】
(ワクチン開発)
高い毒素産生菌株によってコロニー形成された動物を保護するために、両方の毒素に特異的な抗体が必要とされる(Babcock, G. J. et al. 2006 Infect Immun 74:6339−6347)。修飾されないC.difficile毒素の毒性は、ワクチンとして直接の使用を妨げ;それ故、ホルムアルデヒド架橋によって発生したトキソイド、又は触媒ドメインを欠く毒素フラグメントは、候補ワクチンとして利用されてきた(Ghose, C. et al. 2007 Infect Immun 75:2826−2832; Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627; Ward, S. J. et al. 1999 Infect Immun 67:5124−5132)。
【0080】
親のトキソイド免疫感作は、急性ハムスター疾患モデルにおけるCDIに対する部分的な保護のみを提供し、ヒトのボランティアにおいて血清IgG反応を誘発する(Kotloff, K. L. et al. 2001 Infect Immun 69:988−995; Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627)。しかしながら、ワクチン接種のこのレジメンが、慢性病に有効であり、粘膜保護を提供するかどうかは不明瞭である。腸内感染の性質により、 C.difficile毒素に対する全身性及び粘膜の抗体反応を発生させることができるワクチン接種の粘膜経路が望ましい。従って、免疫感作の粘膜経路は、粘膜アジュバントのコレラ毒素(CT)を有するトキソイドを使用して検査されてきた。鼻腔内及び腹腔内の免疫感作の組み合わせは、 C.difficileの経口チャレンジの後にハムスターにおいて致死的な疾患及び下痢の両方からの十分な保護を提供した(Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627)。トキソイド免疫感作の経皮経路は、アジュバントとしてCTとともに粘膜のIgA反応を引き起こした(Ghose, C. et al. 2007 Infect Immun 75:2826−2832)。化学的に解毒されたトキソイドは、粘膜表面上の受容体を標的にし得る分子より弱い粘膜反応を誘発する(Cropley, I. et al. 1995 Vaccine 13:1643−1648; Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627)。なぜなら、トキソイドは、ホルムアルデヒド処理の性質により、粘膜表面に結合することができないからである(Kunkel, G. R. et al. 1981 Mol Cell Biochem 34:3−13)。そのため、CT又はE.coliの易熱性毒素(LT)などの、強力な粘膜アジュバントは、粘膜免疫の誘発に必要である。
【0081】
CDIのための実験ワクチンの別の形態は、GTドメインを欠き、それ故無毒である組換え発現された毒素フラグメントである。TcdBは、CDIにおける疾患の病因においてTcdAより重要であり得るが(Lyras, D., et al. 2009 Nature 458:1176−1179)、TcdAの受容体結合ドメインの一部分を含むフラグメントのみが、候補ワクチンとして検査されてきた(Sauerborn, M. et al. 1997 FEMS Microbiol Lett 155:45−54; Ward, S. J. et al. 1999 Infect Immun 67:5124−5132)。組換え発現された毒素フラグメントは、大量で生成するのが比較的容易である。ホロトキシンの重要な部分の欠失は、全体的な受容体結合及び上皮による毒素フラグメントの吸収に影響を与え得る。さらに、毒素の大部分の欠失が、フラグメントの立体組成に影響を与える可能性がある。従って、フラグメントは、欠失された部分に対する及びステレオタイプ的に(stereotypically)重要なホロトキシンのエピトープに対する抗体を誘発する能力を失い、それらの抗原性をかなり減少させた。ホロトキシンは対照的に、全毒素にわたってエピトープに特異的な抗体を誘発する(Babcock, G. J. et al. 2006 Infect Immun 74:6339−6347)。
【0082】
TcdAのC末端受容体結合ドメインを発現するDNAベクターでの筋肉内の免疫感作は、そのフラグメントに対する全身性のIgG反応を誘発すると示され、免疫化したマウスは、野生型TcdAでのチャレンジから生存した(Gardiner, D. F. et al. 2009. Vaccine 27:3598−3604)。DNAワクチンは、粘膜の免疫反応を生じさせると示されてきた(van Ginkel, F. W. et al. 2000 Emerg Infect Dis 6:123−132)。B型肝炎ウイルス、単純性疱疹ウイルス、HIV、マラリア、及びインフルエンザを含む、いくつかの病原体に対する、全身性の抗体及びCTLを誘発するために、プラスミドDNAが、臨床試験において使用されたが、これらの場合において粘膜コンパートメントにおける十分な反応を誘発しなかった(van Ginkel, F. W. et al. 2000 Emerg Infect Dis 6:123−132)。両方のホロトキシンは、大きなサイズを有し、それ故、哺乳動物細胞において発現されるような20以上のO−糖鎖付加部位及びN−糖鎖付加部位を有することが予期され、これらの部位は、グリコシル化によって、タンパク質の立体組成の重要な変化のない哺乳動物細胞中の毒素遺伝子の全体又は大部分さえも発現する際の困難性を与える。DNAを使用して発現された少量の毒素フラグメントは、抗原性を減少させた。
【0083】
CDIを予防及び処置するための選択肢が急速に減っているために、特に、最近出現した超高病原性C.difficile株に対して、新しい方策が必要とされる。トキソイド、毒素フラグメント、又はフラグメントを発現するDNAベクタ―を使用する現在のワクチンは、上に議論される様々な欠点を有する。C.difficileホロトキシンを発現する以前の試みは制限されていた(Park, E. J. et al. 1999 Exp Mol Med 31:101−107; Pizza, M. et al. 1994 J Exp Med 180:2147−2153)。
【0084】
これらの問題は、本明細書の実施例において扱われ、その中で、野生型及びGT欠損のホロトキシンタンパク質は、高い発現の収率を有してエンドトキシンを含まないB.megaterium系において発現された。これらの変異型毒素タンパク質は、インタクトなC末端の領域及び構成を有し、且つ野生型毒素として、等価なアジュバント活性、抗原性、及び粘膜上皮に対する親和性を維持すると見出された。無毒のホロトキシンタンパク質によるマウスの免疫感作は、対応するトキソイドによる免疫感作よりも強力な抗体反応及び防御免疫を誘発し、毒素フラグメントによる免疫感作よりも広いスペクトル抗体反応を誘発したことが本明細書において観察されている。さらに、TcdA及びTcdB(cTxAB)両方からの成分を含む、特別に設計されたキメラタンパク質によるマウスのワクチン接種は、両方の毒素に対して特異的な抗体を誘発し、両方の毒素による致死的チャレンジからマウスを保護した。それ故、本明細書の実施例における無毒の毒素タンパク質(aTxAB)及びキメラタンパク質(cTxAB)の各々は、様々な経路及び免疫感作のレジメンによって投与されるときの、安全性、免疫性、及び有効性の評価に対するワクチン候補として本明細書で評価される。
【0085】
2つの免疫原(aTxAB及びcTxAB)は、構築され、C.difficileによって経口チャレンジに対する強力な粘膜及び/又は全身性の保護を誘発することの相対的効力に関して評価された。全身性及び粘膜のチャレンジの野生型毒素に対する保護を誘発するように設計された、粘膜の免疫感作の幾つかのレジメン(経口、鼻腔内及び舌下)は、有効性に関して評価された。粘膜の免疫感作は、複数の追加免疫を受けることで恩恵を受ける患者に投与するのが適切である。本明細書に分析される様々な免疫感作レジメンの予防効果は、マウス急性感染症モデルを使用して評価された。マウス感染研究を行って得られたデータによって効果的なものとして評価された免疫感作方法は、その後、CDIの慢性ノトバイオートの子ブタモデルにおいて評価された。経口的に感染した子ブタは、CDIを有するヒトにおいて観察される幾つかの重要な特徴を示す。年齢及び感染量によって、これらは、下痢の急性疾患、拒食症及び起こり得る死の症状;又は、持続する間欠性の下痢、不健康、及び重量減少を発症する、典型的な偽膜性大腸炎、炎症及び深刻な粘膜損傷を有する慢性病を含む。
【0086】
2つの免疫原(aTxAB及びcTxAB)の安全性及び免疫性は、本明細書において観察され、これは、これらのタンパク質が、同時に、病気の胃腸及び全身性の発症から患者を保護する、有効な、無針の、耐熱性のワクチン候補の開発に適していることを示している。鼻腔内及び舌下の免疫感作のためのmLT及びCpGなどの粘膜アジュバント、及び経口免疫のためのCT(修飾されたコレラ毒素)マイクロカプセル化が調べられた。
【0087】
(動物疾患モデル)
CDIが、ハムスター、モルモット、ウサギ、及び無菌性マウス及びラットを含む、多くの動物種において研究されてきた(Abrams, G. D. et al. 1980 Gut 21:493−499; Czuprynski, C. J. et al. 1983 Infect Immun 39:1368−1376; Fekety, R. et al. 1979 Rev Infect Dis 1:386−397; Knoop, F. C. 1979 Infect Immun 23:31−33)。最も広く使用されたモデルはハムスターであり、その中でCDIは、抗生物質で処置された動物の毒素産生のC.difficile感染によって誘発される。ハムスターにおける疾患は、主として、回腸にいくらか関係する盲腸に影響を与え、動物は、重度の全腸炎が原因で致命的となる下痢を発症する。ハムスターにおける致死的疾患は、ヒトにおけるCDIの通常の経過及びスペクトルを表わしていない。ハムスターモデルは、疾患の治療及び機構を研究するために、30年間使用されてきた。ヒトCDIにより酷似している動物モデルが開発され(Chen, X. et al. 2008 Gastroenterology 135:1984−1992; 129)、それは、3日間の抗生物質の混合物への接触の後に、C.difficileに感染し易いC57BL/6マウスモデルを含む(Chen, X. et al. 2008 Gastroenterology 135:1984−1992)。マウスは下痢を発症し、体重が減少した。重症度は、チャレンジ用量によって劇症から最小まで変化した。CDIの典型的な組織学的特徴は明白であった。
【0088】
C.difficileはまた、ブタにおける自然発生の下痢に関連する疾患を、最も典型的には、寿命の最初の7日間の間に引き起こす(Songer, J. G. et al. 2006 Anaerobe 12:1−4; Songer, J. G. et al. 2000 Swine Health and Production 8:185−189; Songer, J. G. et al. 2005 J Vet Diagnost Investigat 17:528−536)。CDIは、新生仔ブタにおける腸炎の最も一般的な診断であり(Songer, J. G. et al. 2006 Anaerobe 12:1−4)、それは恐らく、消化路の解剖学及び生理学における類似性、食事の性質、及び要因のそのような組み合わせに起因する関係する腸ミクロフローラが原因である。これによって、子ブタはCDIのためのポテンシャルモデルとなる。無菌又はノトバイオートの(GB)子ブタは、腸を殺菌するための抗生物質の処置を必要としない、よく特徴づけられた、制御された、最適化された、標準化されたモデルであるという点で、さらなる利点を提供する。子ブタを超高病原性株027/BI/NAP1でチャレンジすることによって、一貫した結果をもたらし、その結果は、接種の48時間以内の100%のコロニー形成、100%の罹患率、及び接種時の用量及び年齢に依存する疾患の重症度及び死亡率を有した(Steele, J. et al. 2010 J Infect Diseases 201:428)。さらに、子ブタモデルは、制御された研究室の下で容易に操作され得る強度及び持続時間を備える特徴的な偽膜性大腸炎を有する、急性及び致死的な下痢から慢性下痢までの様々な疾患スペクトルを提供する。全身性の結果を含む臨床症状の範囲は、ヒトの場合において観察されるものと類似しており、これは、GB子ブタを、ワクチン候補及び治療薬の症状発現前の評価を行なうための魅力的なモデルにしている。
【0089】
(aTxAB及び/又はcTxABの免疫原の有効性を評価するための動物モデルの使用)
aTxAB及び/又はcTxABの免疫原は、C.difficile感染のノトバイオートの子ブタモデル、及びマウスCDIモデルを使用して、急性又は慢性のCDIと一致する、下痢及び/又は全身性の中毒の症状の進行を予防する際の有効性のために評価される。
【0090】
インビボの免疫反応及び毒素接種の結果として生じた病理学的結果を模倣することができる利用可能なインビトロの技術はない。感染のネズミモデルは、操作の容易性、遺伝的に近交系の株の存在及び豊富な免疫学的試薬が原因である、自然発生の宿主免疫反応を分析するための有用なモデルである。全身性のチャレンジモデルは、非経口又は粘膜の免疫感作によって生じた保護を評価するために使用される。回腸のループアッセイは、微環境に接種される毒素の用量の正確な対照、及びそれ故に、免疫感作の粘膜経路によって生じた粘膜の保護の解析及び定義を含む。伝統的に、ハムスターは、CDIの広く使用される動物モデルである。このモデルは、CDI研究に広範囲に使用されており、ハムスターは感染に対して極端に感受性がある。死亡率は、しばしば、毒性株による感染の48時間以内に100%に近づき、死病が、たった1つのコロニー形成単位cfuから発症し得る(Keel, M. K. et al. 2006 Vet Pathol 43:225−240)。ハムスターの急性発症には、ヒトにおける疾患と比較して、病因における事象の検査のための時間がほとんど残されていない。これらの理由のために、研究者は、ヒトの疾患の原因に酷似している動物モデルを積極的に求める。マウス感染モデルは、その疾患のヒトの経過に酷似している(Chen, X. et al. 2008 Gastroenterology 135:1984−1992)。2つの動物モデルを使用することで、ヒトにおけるCDIの制御又は処置への適用前に不可欠な候補ワクチンの安全性の評価が可能となる。マウス及び子ブタのCDIモデルの両方が、ヒトボランティアにおける第I相試験につながるPDPに必要な症状発現前のワクチン評価データを生むために、本明細書の実施例において使用された。
【0091】
全身性及び/又は粘膜の免疫感作のトップランクのレジメンの有効性は、 C.difficileによって経口的にチャレンジされた動物モデルによって誘発される急性及び慢性のCDIに対する動物の保護に関して評価される。(軽度の下痢、偽膜性大腸炎から、劇症の疾患及び再発及び多発性再発までの)CDIの発症の複雑さを考えれば、2つの動物CDIモデルが、潜在的な候補ワクチンとして、それらのうちの1つに対する症状発現前の評価を行う目的で、免疫原の有効性を十分に評価するために必要とされる。上記の結果に基づいて、C.difficileによって経口的にチャレンジされた動物がCDIを進行させるのを免疫感作が予防することができるかどうかを評価するために、マウス及びノトバイオートの(GB)子ブタモデルの両方が使用される。さらに、子ブタ感染モデルにおけるC.difficile媒介性、進行性、慢性の疾患の評価に関するワクチン接種の縮小又は排除が実行される。抗毒素抗体の持続性及び大きさが、数か月間にわたって測定され、評価は、子ブタにおけるCDIの再発(recurrence or relapse)を予防するための少なくとも1つのさらなる追加免疫を必要とする。
【0092】
全身性及び/又は粘膜の免疫感作のトップランクのレジメンの有効性は、 C.difficileでの経口チャレンジによって誘発された急性CDIからマウスを保護する能力に関して最初に検査され、その後、慢性CDIの子ブタモデルにおける選択されたレジメンの有効性が検査された。
【0093】
子ブタモデルにおいて、子ブタの2つの群は、特異血清及び分泌抗体のレベルをモニタリングするために、C.difficileでの経口チャレンジ後にさらに3か月間維持され、その後、再発(recurrence/relapse)からの保護を評価するために、再びC.difficileによってチャレンジされ;もし特異抗体レベルが低いと見なされると、第2のチャレンジ前に追加免疫が与えられる。そのようなワクチンの有効性は、子ブタモデルのために確立された、徴候的、病理的及び免疫学的パラメーターを使用して評価される。候補の有効性の包括的な症状発現前の評価は、ワクチンのための基準として、アジュバントを含んで又は含まずに様々な経路を使用して、aTxAB又はcTxABを使用して行われる。最良の候補ワクチンは、臨床評価のために選択される。本明細書の例は、再発からの保護の持続時間を記載して得られたデータ、及び追加免疫の恩恵を示す。
【0094】
(マウスに関する処置計画)
変異体ホロトキシン及びcTxABの毒性の欠如は、全身的にチャレンジされたマウスにおいて細胞毒性及びインビボの毒性のアッセイによって測定される。
【0095】
免疫感作は、アジュバントとしてミョウバンを有する5又は10μgの精製された抗原の腹腔内(IP)注射によって行われる。抗体力価は、標準ELISAによって測定される。血清中和力価は、マウスの腸上皮株CT26細胞上の野生型毒素の細胞毒性を遮断することによって測定される。
【0096】
全身性の毒素からのワクチン接種の保護を評価するために、免疫化したマウスは、野生型TcdA又はTcdBのいずれかの致死量によってIPでチャレンジされ、マウスの疾患及び死亡率がモニタリングされる。
【0097】
CDIに対する防御免疫を評価するために、免疫化したマウスは、C.difficileの栄養細胞又は芽胞によって経口でチャレンジされ、下痢、重量減少、及びマウス生存などの症状の進行がモニタリングされる。腸の炎症及び組織損傷は、組織病理学的分析によって評価される。
【0098】
再発性CDIに対するcTxABワクチン接種による保護を評価するために、免疫化したマウスは、抗生物質のカクテルによって処置され、その後、最初のC.difficileのチャレンジの30日後にC.difficile芽胞によって経口で再チャレンジされる。マウス生存及びその疾患の症状がモニタリングされる。
【0099】
マウスは、6〜8週齢の、10匹のC57BL/6又はBalb/cマウスの群において処置される。各々の一連の処置は、陽性対照(トキソイド)及び陰性対照(ビヒクル、適切な場合はアジュバントを加える)を含む。動物は、2週間毎の間隔で3回ワクチン接種を受け、最後の免疫感作の1週間後にマウスは、関連する野生型毒素によってさらにチャレンジされる。マウスは、最後の免疫感作後及び実験室株VPI 10463、超高病原性C.difficile株027、又は対照(tcdAtcdB無毒性)株CD37による経口チャレンジ前に抗生物質によって処置される。毒素又は細菌による各々の免疫感作又はチャレンジの前に、血清及び糞便のサンプルが集められ、ELISA及び細胞毒性アッセイによる特異的な抗体アイソタイプに関して分析される。毒素又は細菌によるチャレンジの後に、マウスは、動きたがらない(reluctance to move)、拒食症、丸まった背中(arched back)、嗜眠、体重の減少、粥状便、ひだ状の被膜(ruffled coat)、及び横臥を含む病気の症状のために厳密にモニタリングされる。重病の動物は安楽死させられる。C.difficileによって経口でチャレンジされた動物において、糞便中の細菌の排泄が定量化され、内臓は、本明細書の実施例に示されるように、ホルマリン固定され、異常性に関して組織学的に検査される。血液中(毒素によってチャレンジされた動物)、又は血液中及び糞便中(C.difficileによって経口でチャレンジされた動物)で循環する毒素の存在は、記載されるような超高感度アッセイを使用して定量化される(He, X. et al. 2009 J Microbiol Methods 78:97−100、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0100】
Balb/c又はC57BL/cマウスは、抗生物質のカクテル(カナマイシン、ゲンタマイシン、コリスチン、メトロニダゾール、及びバンコマイシンの混合物)によって処置され、その後、以前に記載されたようにC.difficileの経口接種が続けられた(Chen, X et al. 2008 Gastroenterology 135: 1984)。3回目の免疫感作の10日後に、マウスは、胃管栄養法を使用して、10CFUの栄養型細菌(実験室VPI10463株)を与えられた。長期的な免疫を評価するために、マウスは、3回目の免疫感作の3か月後に105CFUの栄養型細菌によって経口的にチャレンジされた。いくつかの実施例において、免疫化したマウスは、UK1(027/B1/NAP1株, VA Chicago Health Care System)の10芽胞によってチャレンジされた。再発性CDIを誘発するために、生存するマウスは、抗生物質のカクテル処置が与えられ、一次感染の30日後に経口C.difficile芽胞(10/マウス)の接種が続けられた。二次チャレンジは、一次CDIとして類似した臨床症状及び腸の組織病理を誘発する。再発性疾患及び死亡がモニタリングされた。
【0101】
(C.difficileチャレンジ後の毒素排出)
C.difficile芽胞による一次及び二次チャレンジの後に、マウスの糞便は、集められ、プロテアーゼのカクテルを含む等しい量(w/v)のPBS中に分散され、及び上清は、遠心分離によって集められ、使用するまで−80℃で保存された。糞便サンプルの毒素媒介性の細胞毒性を測定するために、上清は、希釈され(最終100X)、CT26細胞単層に加える前にろ過された。細胞球状化は、位相差顕微鏡を使用して観察された。ヤギの抗TcdA及び抗TcdBのポリ血清(polysera)(Techlab Inc., Blacksburg, VA)は、C.difficile毒素の特異的活性を測定するために使用された。
【0102】
(サイトカイン測定)
サイトカイン濃度は、1週当たり3回、糞便において、及び市販で入手可能なブタのサイトカインELISAキット(Invitrogen and R&D)を使用する、IL−1β、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、TNF−α、TGF−β、及びIFN−γに関する大腸の内容物からの剖検で測定される。サンプルは、使用するまで−20℃で保存される。糞便サンプル及び大腸の内容物は、サンプルの一致性に依存して、無菌のPBSによって1:2から1:10で希釈され、ボルテックスを使用して徹底的に混合され、その後、遠心分離にかけられ、上清は、アッセイにおいて試薬のウェルに加えられる。アッセイは、製造業者の指示に従って行われ、サイトカイン濃度は、標準曲線に基づいて測定される(Steele, J. et al. 2010 J Infect Diseases 201:428)。
【0103】
(抗体力価及びインビトロの中和アッセイ)
血清、洗腸液、及び糞便サンプルのためのTcdA及びTcdBに関する中和力価が測定される。aTxAB、cTxAB、又はトキソイドの適量での最後の免疫感作の1週間後に、各々の免疫化したマウスからの血清が集められる。各群から血清はプールされ、TcdA又はTcdBのいずれかの細胞毒性の中和が測定される。非経口の免疫感作のための中和力価及び免疫原の適量が測定される。計算されたLD50i毒素チャレンジ用量が、各免疫原によって誘発された保護のレベルを測定するために使用される。保護レベルは、血清中和力価と相互関連しており、aTxAB及びcTxABの両方は、トキソイドよりも著しく高いLD50i及び中和力価を有する。LD50i及び中和力価は、参照として使用される。
【0104】
マウスモデルにおいて、免疫感作の1日前及び以前の免疫感作の7日後に、各々の免疫化したマウスからの血清サンプルが集められ、IgG力価が、精製された個々の天然又は組換え野生型のホロトキシンに対する標準ELISAを使用して測定された。いくつかの処置において、IgG力価は、ELISAプレートをコーティングするための天然の毒素を使用することによって、我々の組換え毒素を使用するIgG力価と比較され、その結果は本質的に同様であり、それは、His(6)−タグに対する抗体力価が無視できるものであったということを示した。いくつかの処置において、血清抗毒素IgM及びIgA、及び糞便IgG及びIgAは、ELISAによって評価された。血清サンプルのインビトロの中和活性を評価するために、TcdA及びTcdBの両方に感受性のあるマウスの腸の上皮細胞株CT26が使用された。中和力価は、標準濃度の毒素によって誘発された細胞球状化を妨げない血清の最大希釈の逆数として定義される。この濃度は、本質的にすべてのCT26細胞が、毒素に対する24時間の接触後に球状化するのを引き起こす毒素の最小量の4倍の濃度である。1.25ng/mlでの野生型のTcdA又は0.0625ng/mlでのTcdBは、毒素処置の24時間後に100%のCT26細胞球状化を引き起こす。それ故、6ng/mlでのTcdA又は0.25ng/mlでのTcdBは、その後、CT26細胞に適用される連続的に希釈される血清サンプルの各々と混合された。細胞球状化は、インキュベーションの24時間後に、位相差顕微鏡を使用して観察された。
【0105】
(超高感度免疫細胞毒性アッセイ)
細胞毒素Bアッセイ、抗体ベースの免疫アッセイ、GDHアッセイなどのCDIを診断するための現在利用可能なアッセイには、重大な制限がある。超高感度の、組織培養ベースのアッセイが、最近の結果に基づいて開発され、免疫細胞毒性アッセイとして本明細書に言及される(He, X. et al. 2009a Infect Immun 77:2294−2303; He, X. et al. 2009b J Microbiol Methods 78:97−100; Herrmann et al.、2010年1月14日に公開された国際特許出願公開番号 WO 2010/006326(その全体が引用によって本明細書に組み込まれる))。このアッセイは、4時間以内に生体サンプル中の1pg/ml未満の毒素の存在を検出する(He, X. et al. 2009 J Microbiol Methods 78:97−100、引用によって本明細書に組み込まれる)。このアッセイは、急性マウス及び子ブタモデルにおける全身性の毒素及び毒素を減少させるか又は除去する抗毒素の効果を評価するために使用された。
【0106】
候補ワクチン(aTxAB及びcTxAB)の非経口の免疫感作の有効性が評価され、免疫感作の適量は、保護反応を誘発する最大の抗体を誘発するように決定される。
【0107】
(用量最適化)
最初の処置は、免疫原の1回の注入当たり5μgの総タンパク質を使用した。aTxAB及びcTxAB及びトキソイドの用量最適化は、非経口の免疫感作のための2倍及び半分を最適化した用量を使用して測定することによって決定された。アジュバント、例えば、mLTが使用されると、同じ量のアジュバントは、注入前に免疫原と一緒に混合される。各々の用量及び免疫感作の経路に関しては、全身性及び粘膜の両方のIgG及びIgA反応がモニタリングされ、中和力価が測定された。各免疫原に対する最も高いレベルの血清及び/又は粘膜の抗体反応を誘発するのに必要な抗原の最低量が確立された。
【0108】
(LD50iのチャレンジ用量の確立)
aTxAB、cTxAB、又はトキソイドの適量での3回目の免疫感作の1週間後に、マウスは、2倍の用量のLD50nによってチャレンジされ、これは、野生型毒素によってナイーブマウス(naive mice)の50%の死亡を引き起こす用量と称される。免疫化したマウスの50%の死亡を引き起こす用量が決定され、LD50iと称された。各免疫原に対する各毒素のLD50iが決定され、aTxABのLD50iは、cTxABのそれに類似しており、その両方は、トキソイドのものより著しく高かった。
【0109】
<マウス、細胞株、及び毒素>
6〜12週齢のBALB/c、CD1及びC57BL/6のマウスは、Jackson Laboratory (Bar Harbor, ME)から購入され、専用の病原体を含まない設備に収容された。マウスは、プロトコルG950−07、G889−07、及びG795−06の下の、Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC)のガイドラインに従って扱われ、注意を払われた。全身性のワクチン接種を評価するために、1つの群当たり10匹のマウス(合計4つの群)が使用され、5匹のマウスが、各毒素又は免疫感作の2つの経路と各処置の3つの複製による毒素の組み合わせによるIPチャレンジに使用され、これは安全性評価を有していた。
【0110】
ネズミの結腸上皮細胞株CT26、ヒトの結腸上皮細胞株HT−29及びhCT−8、及びサル腎培養細胞株Veroは、American Type Culture Collection (ATCC; Rockwille, MI)から得られた。細胞は、10%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン及び1mMのピルビン酸ナトリウムを含む、ダルベッコ改変イーグル培地において保持された。天然のTcdA及びTcdB毒素は、以前に記載されたように、毒素産生のC.difficile株VPI 10463の培養上清から精製された(Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192、引用によって本明細書に組み込まれる)。完全長野生型組換えTcdA及びTcdBタンパク質は、以前に記載されたように、Bacillius megateriumの合計の粗抽出液から精製された(Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192)。組換えホロトキシンの生物活性は、それらの天然の形態と同一であった(Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192)。高度に精製された組換え毒素は、SDS−PAGEゲル上に単一バンドとして現われ、バイオアッセイによって測定されるように、検知可能なTLR2及びTLR4のリガンド活性を欠いており(He, X et al. 2009a. Infect Immun 77: 2294; Sun, X et al. 2009 Microb Pathog 46: 298、その各々は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)、別段の定めがない限り、本明細書の実施例において使用された。
【0111】
Balb/C又はC57BL/6マウスは、各注入のためのアジュバントとしてミョウバンを含むPBS中の5μgの精製された変異体毒素によって腹腔内で(IP)免疫化された。対照マウスは、ミョウバンを含むPBSを注入された。免疫原としてaTcdB(各々5μg)又はcTxABと混合されたaTcdAを使用して、1回の注入当たり合計10μgのタンパク質が投与され、マウスは、10〜14日の間隔で3回の免疫感作が与えられた。
【0112】
全身性の毒素チャレンジ:Balb/cマウス(4〜6週齢)は、野生型のTcdA又はTcdB(100ng/マウス)、aTcdA(100μg)、又はaTcdB(100μg/ml)をIPで注入された。マウスは、疾患の徴候に関して厳密に観察され、瀕死になった時に安楽死させられた。
【0113】
(粘膜上皮への免疫原の結合の評価)
粘膜の抗原送達が直面する問題は、粘膜による抗原の非効率的な吸収である。受容体は定義されていないが、両方のC.difficile毒素の受容体結合ドメイン(RBD)は、上皮細胞に対する高親和性を有する複数の細胞壁結合の繰り返しを含む。aTxAB及びcTxABの両方は、C.difficile毒素のインタクトなRBDを含み、従って、最も起こり得るのは、両方の免疫原が高親和性を有する上皮細胞に結合し得ることである。上皮細胞へのaTxAB及びcTxABの結合を評価するために、タンパク質は、Keel and Songer(Keel, M. K. et al. 2007 Vet Pathol 44:814−822)によって記載されるビオチン化のための方法を使用してマウスに投与する前にビオチン化され、その中で、毒素の活性も上皮へのそれらの結合も影響を受けない。ビオチン化されたaTxAB又はcTxABの粘膜の(IN、SL、及び経口での)投与の6時間後に、マウスは犠牲にされ、組織部分が免疫組織化学染色のために準備される。舌下粘膜を採取するために、舌と一緒の口底は、薄い曲剪刀でひとまとめにして下顎から切除される。鼻粘膜は、Eriksson et al (Eriksson, A. M. et al. 2004 J Immunol 173:3310−3319)によって詳しく記載される方法に従って解剖される。経口投与後のGIトラックに対する免疫原の結合を評価するために、免疫化したマウスからの胃の洞領域及び腸の部分が集められる。標本は、パラホルムアルデヒドによって固定され、パラフィンで埋め込まれる。免疫組織化学染色のために、脱パラフィンされた6μmの厚さの部分は、本明細書の実施例に記載されるように、HRP共役のアビジンで染色される前に、ビオチン遮断キットによって前処置される。
【0114】
(血清及び粘膜の(腸及び糞便の)抗体反応)
血清抗体反応が、本明細の実施例に記載されるように分析される。粘膜の抗体反応を検査するために、洗腸液(IL)が集められ、マウス及び毒素に特異的なIgG及びIgAからの糞便サンプルが測定される。
【0115】
各免疫感作の1日前及び最後の免疫感作の1週間後に、糞便及びILのサンプルが集められる(Elson, C. O. et al. 1984 J Immunol Methods 67:101−108)。簡潔に言うと、各マウスは、1mlのプロテアーゼインヒビターカクテルを含むプラスチックペトリ皿の上に置かれた、15cm×15cmのワイヤーメッシュ上で飼育される。マウスは、ワイヤーメッシュの上部のガラスビーカー内に監置される。腸の内容物の放出を誘発するために、0.5mlの洗浄溶液の4回の投与量(25mMのNaCl、40mMのNaSO、10mMのKCl、20mMのNaHCO、及び48.5mM(162g/l)ポリエチレングリコール(PEG)(平均のM 3350))が、胃管栄養法を使用して、15分間隔で与えられる。洗浄溶液の最後の投与の30分後に、マウスは、0.1mgのピロカルピンを腹腔内で与えられる。次の20分間で放出された腸の内容物(0.5ml以内)は、プラスチック管に集められ、使用するまで−70℃での冷凍を維持された。洗腸手順を開始する直前に、2つの新たに排泄された糞便は、1.5mlのあらかじめ量られた微小遠心管へ集められる。糞便は、プロテアーゼインヒビターカクテルを含む2倍量のPBSを加える前に量られる。固形物は、広範囲なボルテックスにより懸濁され、その後、10分間16,000×gで遠心分離にかけられ、及び澄んだ上清は、アッセイされるまで、−70℃で保存される。
【0116】
TcdA、TcdB IgG、及びIgAに特異的な抗体の力価は、ELISAによって測定される。精製された天然のTcdA又はTcdBは、プレートをコーティングするために使用され、それによって、Hisタグ又は免疫原中のあり得る汚染物質に対する交差反応を最小限にすることが可能とする。抗毒素IgA又はIgGの検出限界が、最低の希釈を有するウェルにおける背景を超えるOD405の2倍として設定された。
【0117】
(組織病理学的分析)
毒素によって誘発された粘膜の損傷及び炎症を評価するために、組織病理学的分析が行われた。切除された結腸又は盲腸の組織は、PBSによって緩衝された4%のホルムアルデヒド中で固定され、その後、パラフィンで埋め込まれた。脱パラフィンされた6μmの厚さの部分は、組織学的分析のためにヘマトキシリン及びエオジン(H&E)によって染色された。
【0118】
(毒素による粘膜チャレンジからの保護)
TcdAに特異的なラビット抗血清は、マウスの回腸ループモデルにおいて示されるように、TcdAに誘発された腸の炎症及び組織損傷を遮断するために観察された。毒素に対する、粘膜のIgA及びIgG抗体が生み出され、粘膜の毒素媒介性の破壊からマウスを保護する能力が検査される。純粋なTcdBが腸管毒性を有さず、マウスにおいて粘膜炎症及び組織破壊を誘発しないため、TcdAからの粘膜保護だけが、回腸ループモデルを使用して検査される。経口でチャレンジされたC.difficileマウス及び子ブタ感染モデルにおいて、TcdBから及びTcdAからの粘膜保護を誘発する、aTxAB又はcTxABの粘膜免疫感作の能力も検査される。
【0119】
回腸ループモデルは、3回目の免疫感作の1週間後に使用される。正常なBalb/cマウスにおいて、野生型TcdAの50μgの高用量は、かなりの液体貯留及び粘膜損傷を引き起こすことが観察され、一方で、TcdAの10μgのより低い用量は、毒素処理の4時間以内に軽度の粘膜破壊しか引き起こさなかった。それ故、これらの2つの用量が使用される。3つの3cmのループが、各マウスにおいて結紮され、10又は50μgの野生のTcdA、又は等しい量のPBS(100μl)とともに注入される。対照プラセボで処置されたマウスにおいて同じ処置が行われる。毒素に誘発された液体貯留の量が計られ、一元配置分散分析を使用してデータが分析される。群間のP値は、ボンフェローニの多重比較試験を使用して決定される。
【0120】
液体貯留の評価に加えて、好中球の浸潤及び柔突起損傷などの、病的徴候が組織学的に評価され、群間で比較される。組織病理学的及び好中球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性アッセイが、粘膜損傷及び好中球の浸潤を評価するために行われる。ループが集められ、切除された腸は、PBSによって緩衝された4%のホルムアルデヒド中で固定され、その後、パラフィンで埋め込まれる。脱パラフィンされた6μmの厚さの部分は、組織学的分析のためにヘマトキシリン及びエオジン(H&E)によって染色され、組織傷害が、組織学者によって盲検で採点される。使用される組織学的グレーディング基準は以下のとおりである:0、リンパ球、プラズマ細胞、及び好酸球の最小の浸潤;1+、リンパ球、プラズマ細胞、好中球、及び好酸球の軽度の浸潤、及び腸関連リンパ系組織の過形成を有する又は有さない粘膜の軽度のうっ血;2+、杯状細胞過形成、個々の表面細胞の壊死又は空胞化、及び腺窩拡張を有する又は有さない、混合した炎症細胞の中程度の浸潤、中程度のうっ血及び基底膜の浮腫;3+、粘膜における、重度の炎症、うっ血、浮腫、及び出血、表面細胞壊死、あるいは侵食又は潰瘍の悪化(Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627)。サンプル中のMPO活性を測定するために、切除された回腸の部分は、冷凍乾燥され、0.5%のヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム及び5mMのEDTAを含む50mMのリン酸カリウム緩衝液、1ml中で均質化される。組織は、超音波処理及び結氷融解サイクルによって破砕され、遠心分離される。上清中のMPO活性は、0.05%のH中の基質o−フェニレンジアミンを使用して測定され、吸光度は、プレートリーダーを使用して、490nmで測定される。
【0121】
粘膜のワクチン接種は、腸内のTcdAチャレンジからの保護が期待される。TNF−αは、C.difficile毒素に誘発された腸の炎症に重大な役割を果たすことが観察された。TcdAは、野生型マウスにおいて、絨毛の完全な破壊及び免疫細胞の大規模な浸潤を誘発し、TNFR KOマウスは、TcdAに反応して腸絨毛の軽度の損傷及び免疫細胞の中程度の浸潤を示した。
【0122】
(子ブタモデルの統計分析)
子ブタモデルにおいて、処置から得られたデータは、SigmaStat v.3.1 (Systat Software, Inc.)を使用する分散分析に従って、ノンパラメトリック検定法(Wilcoxon分析)を使用して分析される。対照群を含む4つの群に関して、0.8の累乗(a power of 0.8)及びアルファ=0.05のために、所望されるTのレベルに依存して5〜118のサンプルの大きさが必要とされる。7匹の動物/群(n=7)が、ワクチン候補の評価を含むチャレンジ研究に使用された。生存曲線は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、Log−rank(Mantel−Cox)Test又はGehan−Breslow−Wilcoxon Testによって比較され、分析される。
【0123】
これらのデータは、Group Pair−Wise Comparisons (Levene’s/ANOVA−Dunnett’s/Welch’s)によって補足される。Leveneの試験は、各々の指定されたエンドポイント及びすべての収集間隔に関して群分散の均一性を評価するために使用される。Leveneの試験が有意でないとき(p>0.01)、分散の統合した推定値(平均平方誤差又はMSE)は、一元配置分散分析(ANOVA)から計算され、各処置群の2つの対照群とのDunnettの比較によって利用される。Leveneの試験が有意であるとき(p<0.01)、対照群との比較は、ボンフェローニの補正を有するウェルチのt検定を使用して行われる。対での比較の結果は、0.05及び0.01の有意水準で報告される。エンドポイントは、他に明記のない限り、両側検定を使用して分析される。
【0124】
(技術的な利点)
全身性及び粘膜の免疫性の両方は、毒素などの腸溶性の病原体及び病原性の生成物からの保護を提供する(Byrd, W. et al 2006 FEMS Immunol Med Microbiol 46:262−268; Huang, C. F. et al. 2008 J Pediatr Gastroenterol Nutr 46:262−271; Lucas, M. E. et al. 2005 N Engl J Med 352:757−767; Perez, J. L. et al. 2009 Vaccine 27:205−212)。TcdA及びTcdBがC.difficileの有毒な因子であるため、抗毒素抗体製剤は、動物において経口のC.difficileチャレンジからの十分な保護を与えることができる(Kink, J. A. et al. 1998 Infect Immun 66:2018−2025; Lyerly, D. M. et al. 1991 Infect Immun 59:2215−2218)。TcdA又はTcdB、単独に対するものではないが、両方の毒素に対する抗体は、ハムスターモデルにおける毒素産生のC.difficile感染を保護する(Fernie, D. S. et al. 1983 Dev Biol Stand 53:325−332; Kim, P. H. et al. 1987 Infect Immun 55:2984−2992; Libby, J. M. et al. 1982 Infect Immun 36:822−829)。致死的疾患及び下痢の両方からの保護を評価するハムスターにおけるトキソイドワクチンの送達の経路の評価によって、粘膜及び親の免疫感作の組み合わせが、死亡及び下痢からの完全な保護を提供したことを発見し、それは、全身性及び粘膜の免疫性の両方の誘発が、最適な保護のために必要であることを示唆した(Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627)。
【0125】
ヒトにおいて、血清中の抗毒素のより高いレベルは、それほどひどくない疾患及びそれほど頻繁ではない再発に関係する(Kyne, L. et al. 2000 N Engl J Med 342:390−397)。徴候的な感染の後に、ほとんどの個体は、便中と同様に血清中の毒素中和IgAを含む(Johnson, S. et al. 1995 Infect Immun 63:3166−3173)、血清中の抗TcdA及び抗TcdB抗体を進行させ(Aronsson, B. et al. 1985 Infection 13:97−101; Viscidi, R. et al. 1983 J Infect Dis 148:93−100)、この全身性及び粘膜の抗体反応は、後の感染からの保護に関係するように見える。
【0126】
C.difficileに関連する下痢及び腸溶性の炎症性疾患は、主として2つの分泌毒素によって引き起こされる。エンドトキシンを含まないBacillius megaterium系における最近発現された無毒のC.difficile毒素タンパク質を使用して、C.difficile感染(CDI)の発生率および重症度を減少させるために、本明細書にワクチン(粘膜の及び/又は非経口の送達)が提案される。その技術は、完全長の、生物学的に活性な、組換えホロトキシン、rTcdA及びrTcdBを製造するために、B.megaterium発現系を使用する、以前に実証された成功した方法論の延長である(Yang, G. et al. 2008 BMC Microbiol 8:192、引用によって本明細書に組み込まれる)。結果として生じるrTcdA及びrTcdBは、分子量及び生物活性の測定を含む広範囲な調査後に、それらの天然の対応物(counterparts)に類似していることが見出された(Yang, G. et al. 2008 BMC Microbiol 8:192、引用によって本明細書に組み込まれる)。B.megaterium発現系は、50年間以上使用されており、他の系を超えるいくつかの利点を有する。
【0127】
2つの候補ワクチンがここで評価される:点変異によって生じた、無毒の完全長のC.difficile毒素A及びBの混合物(aTxABと称される)、及び他の場合には完全長TcdBを含むが、TcdAの受容体結合ドメインに置換されたTcdBの受容体結合ドメインは含まない、良く設計されたキメラタンパク質(cTxABと称される)。cTxABは、膜貫通ドメイン中に小さな欠失(97のアミノ酸)を有するため、無毒である。
【0128】
CDIの発症の一因にもなり得る他の毒性特質が存在すると知られているが、CDIからの保護が、2つの重要な毒素に対する全身性及び粘膜の抗体を介して媒介されることが示されてきた。
【0129】
焦点は、強力な全身性及び粘膜の免疫性を誘発するために、TcdA及びTcdBの両方をターゲットとするワクチンを設計することに向けられた。aTxAB又はcTxABは、トキソイド又はそのフラグメントよりも優れていることが見出された。任意の理論又は作用様式に限定されることなく、本明細書の実施例は、そのような大きな分子の正確なフォールディングを有する天然の形態を模倣する完全長タンパク質が、中和抗体の十分なスペクトルを発生させるのに有用であることを示した。TcdAのほんの一部を含む、化学物質に解毒されたトキソイド、又はフラグメントとは異なり、点変異によって生じたこれらの無毒のホロトキシンは、天然の毒素がそうであるように、同じアジュバント活性、抗原性、及び粘膜上皮に対する親和性を維持し、それ故、トキソイドより優れた防御免疫及びフラグメントより広い抗体のスペクトルを誘発する。
【0130】
無毒のTcdBワクチン接種は、広域スペクトルのエピトープに対する抗体反応及びトキソイドより優れた強力な防御免疫を誘発すると示され;cTxAB免疫感作は、毒素に対する抗体及び保護反応を誘発した。さらに、aTcdBの免疫感作は、急速なIgG反応を誘発する。抗生物質での処置下にある及び/又は入院下にあるような、C.difficile感染の高いリスクを有する人々は、ワクチン接種の論理上の標的である。急速な防御免疫を誘発することができるワクチンは、特に入院患者において非常に望ましい。aTcdBワクチン接種は、急速な抗体反応を誘発することができる。aTcdBでのマウスの免疫感作が、2回目の免疫感作後に強力なIgG反応を生じさせことが示された一方で、トキソイド免疫感作は、3回目の免疫感作後に(初回抗原刺激後の28日目に)だけ検知可能なIgG反応を生じさせた。キメラcTxABワクチン接種は、TcdA及びTcdBの両方での致死的チャレンジからのマウスにおける強力な保護を誘発する。
【0131】
非経口で免疫感作され、その後野生型毒素でチャレンジされた後の、防御抗体反応を誘発するために、これらの無毒の組換えタンパク質の能力が評価され、その後、全身性及び粘膜のチャレンジからの保護を誘発するように設計された、粘膜の免疫感作(経口で、鼻腔内及び舌下の)のいくつかのレジメンの評価が続いた。開発した様々な免疫感作レジメンの予防効果が、マウス急性感染症モデルにおいて検査され、マウス感染研究から結果として生じる最も効率的な免疫感作方法は、CDIの慢性子ブタモデルにおいて症状発現前の評価を受ける。
【0132】
これらの実施例は、安全で、環境上の、エンドトキシンを含まない細菌宿主、B.megateriumにおいて生産的に発現される、新しいC.difficile候補ワクチンが開発されたことを示す(Vary PS et al. 2007 Applied microbiology and biotechnology 76: 957; Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192)。C.difficile培養物から精製された天然の毒素と比較して、組換えcTxABは、大量で精製するのが著しくより簡単でより安い。それは、毒素のような構成を維持し、両方の毒素に対する強力な中和抗体を誘発することができる、単一の抗原である。この候補ワクチンは、C.difficileに関連する罹患及び死亡からの十分且つ永続的な保護を誘発するだけではなく、一次及び再発性のCDIからの急速な保護も誘発する。本明細書の実施例は、一次及び再発性のCDIが、非経口のワクチン接種を介して全身性の抗体によって予防され得ることを示す。
【実施例】
【0133】
<実施例1.マウスモデルにおけるCDIからの保護>
マウスCDIモデルを、Chenによって記載される方法に従って確立した。候補ワクチンでのマウスの免疫感作が、C.difficile感染に対する防御免疫を誘発するかどうかを決定するために、このモデルを本明細書で使用する。免疫感作及びチャレンジのスキームを図1に示す。
【0134】
抗生物質での処置後、90%以上の野生型ナイーブマウスは、10CFUのC.difficileチャレンジの後に瀕死状態になり、10CFUのC.difficileチャレンジは、50%未満のマウス死亡につながる。免疫原での免疫感作は、10又は10のいずれかのCFUのC.difficileチャレンジからマウスを保護し、マウスはどれも、疾患又は重量減少の徴候を示さない。さらに、チャレンジ用量に関する細菌の量を少なくし、低用量の細菌によって誘発された、より慢性であるような疾患からの保護を検査する。これらのすべての場合において、糞便中の分泌された毒素の生物活性を、超高感度の、免疫細胞毒性アッセイを使用して測定する(He, X. et al. 2009 J Microbiol Methods 78:97−100、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0135】
免疫化したマウスは、10又は10のいずれかのCFUのC.difficileチャレンジから十分に保護される。生存するマウスを、3か月までの間、抗毒素抗体力価をモニタリングするために飼育する。血清サンプルを、半月毎に集め、抗毒素IgG及びIgA抗体力価を測定する。3か月後、マウスを抗生物質で処置し、その後、経口の10CFUのC.difficileチャレンジで処置する。抗毒素抗体の持続性と細菌の再チャレンジからの保護の間の相関性を確立する。aTcdB免疫感作は、永続的な防御免疫を誘発することが予期される。免疫化したマウスは、致死的TcdBチャレンジから十分に保護されることが予期される。それ故、最適化されたレジメン下でaTxAB又はcTxABによって免疫化されたマウスは、永続的な防御免疫を誘発することが予期される。CDI患者がしばしば再発に苦しむという事実を考えると、これは重要である。防御免疫が永続的でないならば、さらなる追加免疫を投与する。免疫感作及び抗生物質の処置後、マウスの群(1つの群当たり5匹)を、10CFUから始まる、C.difficile細菌の漸増用量で経口でチャレンジする。最適化されたレジメン下で免疫原によって免疫化されるマウスの罹病性は、アジュバントを含む又は含まない、免疫感作の特定の経路によって誘発された保護の有効性を評価することを可能にする。
【0136】
<実施例2.統計分析>
被験体の処置から集められたデータを、本明細書において、Kaplan−Meier生存率分析、分散分析によって、及びt試験又はPrism統計ソフトウェアプログラムを使用する一元配置分散分析によって分析した。他に明記のない限り、結果を平均±標準誤差として表した。
【0137】
<実施例3.Bacillius megaterium発現系及び組換えホロトキシンの生成>
タンパク質の大きなサイズ及び乏しい安定性が原因で、組換えC.difficileホロトキシンは生成するのが難しかった。Bacillius megaterium、土食から魚食及び乾燥食までの広く多様な生育地において見出される、グラム陽性、好気性の芽胞を形成する細菌は、細胞外酵素生成のための容量が高いために、50年以上産業上で使用されてきた。それは、組換えタンパク質の生成のための望ましいクローンを作る宿主であり、遺伝的手段は、強力な誘導可能なプロモーター及びアフィニティータグを運ぶシャトルベクターによって利用可能である。E.coli系と比較した、B.megaterium発現系の利点は、アルカリ性プロテアーゼ及び安定して維持するプラスミドベクタ―の欠如、エンドトキシンLPSの欠如、及び発現された異種タンパク質を培地へ分泌する能力を含み(Malten, M. et al. 2006 Applied and environmental microbiology 72:1677−1679; Vary, P. S. et al. 2007 Appl Microbiol Biotechnol 76:957−967)、それが、B.megateriumを、完全長及び生物活性の組換えTcdA及びTcdBタンパク質を発現するための魅力的な系にしている。
【0138】
完全長組換えTcdA及びTcdBは、B.megaterium系においてクローン化され、10mg/Lの毒素タンパク質に達する発現レベルでクローン化された(Yang, G. et al. 2008 BMC Microbiology 8:192、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。精製を促進するために6−アミノ酸HisタグがC末端に付けられる毒素の最初のアミノ酸から発現される、組換えTcdA及びTcdBの図面を、図2のパネルAに示す。細胞毒性アッセイ、Rho GTPasesのグルコシル化、及び上皮細胞の密着結合の破壊によって測定されるように、組換えホロトキシンの生物活性は、天然の対応物と同一であると観察された(Yang, G. et al. 2008 BMC Microbiology 8:192、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。rTcdBではなく、rTcdAが、結紮されたマウスの回腸ループにおける用量依存性の液体貯留を誘発し、組織学的変化が、Cavalcanteら(Cavalcante, I. C. et al. 2006 Infect Immun 74:2606−2612)によって記載されるようなものであったことが観察された。
【0139】
<実施例4.変異体ホロトキシン及びキメラタンパク質の生成>
天然の毒素のホルマリン不活性化によって生じるトキソイドは、現在、臨床試験におけるただ一つのC.difficile候補ワクチンである(Sougioultzis, S et al 2005 Gastroenterology 128: 764)。TcdA及びTcdBが複雑な構造及び構成を有する大きなクロストリジウム毒素であるため(Pruitt RN et al. 2010 Proc Natl Acad Sci U S A 107: 13467; Jank T et al. 2008 Trends in microbiology 16: 222)、ホルマリン交差結合は、立体構造エピトープを変更し、免疫性を減少させる。ホロトキシンを、グルコシルトランスフェラーゼの基質結合に関係するTcdA及びTcdBのそれらのアミノ酸における2つ又は3つの点変異によって生成した(Jank, T et al. 2007 J Biol Chem 282: 35222)。
【0140】
毒素のGTドメインがTcdA及びTcdBの両方の毒性に関係するため、GT活性において欠乏しているホロトキシンを、毒素及び疾患の病因に対する宿主免疫反応を分析するために使用した。GT欠損のホロトキシンを、基質結合において役割を果たすと知られる重要なアミノ酸の点変異によって生成した。TcdB(aTcdBとして設計される、図2のパネルB)における2つの点変異(W102A及びD287N)は、5logまでGT活性を減少させた。
【0141】
非常に高い10μg/mlの用量のaTcdBであっても、24時間の処置の後に、高感度のCT26細胞においてRac1の部分的なグルコシル化のみを誘発する(図3のパネルA)。対照的に、野生型TcdBは、1ng/mlの用量でRho GTPasesタンパク質の完全なグルコシル化を誘発する。10μg/mlでのaTcdBは、それほど感度のないHT29細胞上で活性を示さない(図3のパネルB)。重要なことに、aTcdBは、インビトロの細胞毒性アッセイ及びインビボのマウスチャレンジ処置によって測定されるように、その毒性を失った(図3のパネルC)。マウスへの100ngの野生型TcdBの注入は、結果として4時間以内に敗血症のような症状につながり、マウスの90%以上が24時間以内に死亡し、一方で、マウスはどれも、aTcdBの非常に高い用量(100μg)のIP注入の後に、疾患を発症する又は瀕死状態になることはなかった(図3のパネルC)。TcdAにおける同様の保存アミノ酸での変異も、TcdAのGT活性を本質的に減少させた。毒性の完全な損失を確かにするために、さらなる変異(W519A、図2のパネルB)を、TcdAにおける基質結合(Jank, T. et al. 2007 J Biol Chem 282:35222−3523)にとってまた重要である保存アミノ酸で導入し、その変異は、aTcdA(GTドメインにおける三重変異)と称される。GTで変異されたTcdAを利用することによって、GT活性の役割を、マクロファージ中の毒素媒介性のTNF−α生成において実証した(Sun, X. et al. 2009 Microb Pathg 46:298−305)。
【0142】
TcdBのTMDのC末端(D97と称される、約100のアミノ酸)は、TcdBの細胞毒性に必要である。D97が削除された組換えTcdBは、培養細胞上のその毒性を欠失した。
【0143】
TcdAの受容体結合ドメイン(RBD)が強力なアジュバント活性を有するため(Castagliuolo, I. et al. 2004 Infect Immun 72:2827−2836; Yeh, C. Y. et al. 2008 Infect Immun 76:1170−1178)、TcdBのRBDをTcdAのRBDと置換し、キメラタンパク質を作り出した(cTxABと称される、図2のパネルB)。cTxABはD97を含まず、この理由のために、培養細胞及び動物に対して無毒である。それは、野生型TcdAと同じくらい効果的に培養細胞に結合し(図3のパネルD)、そのため、これらのタンパク質は両方とも、受容体結合ドメインを含む。単一のタンパク質cTxABは、TcdA(RBD)の免疫優勢及び免疫刺激のドメイン、及びTcdBのほとんどの特徴を含み、それ故、評価するには恐らく有効なワクチン候補である。
【0144】
精製を促進し、精製されたバージョンを検査するために、さらなるアフィニティータグ(8−アミノ酸Strepタグ)を、Hisタグの上流に設置した(図2のパネルB)。トロンビンプロテアーゼ切断部位を設置し(図2のパネルB)、それによって、必要に応じた、Strepタグ及びHisタグの両方の除去を可能にし、これは結果的に、C.difficile毒素からのアミノ酸配列のみを含むキメラタンパク質を生じる。
【0145】
C.difficile変異体ホロトキシン(aTcdA及びaTcdB)を、野生型組換え毒素を使用して生成した(Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0146】
点変異を含む変異体GTドメイン遺伝子(TcdBに関するW102A及びD288N;及びTcdAに関するW101A、D287N、及びW519A)を合成し、各野生型毒素遺伝子において対応するGTドメイン遺伝子を置換するために操作した。TcdBのRBDをTcdAのRBDと置換することによって、TxB−Arを作り出した。GTドメインをaTcdBのドメインと置換することによって、cTxABを生成した。
【0147】
完全長TcdA及びTcdB遺伝子を、シャトルベクターpHis1522へクローン化し(それぞれ、pHis−TcdA及びpHis−TcdB)、B.megateriumにおいて組換えホロトキシンを発現した(Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192)。点変異を、基質ウリジン二燐酸グルコース(UDP−Glc)結合に関係する保存アミノ酸へ導入し、GT欠損のホロトキシンを生成した。GT変異体ホロトキシンAを生成するために、特有な制限酵素(BamHI)部位を、オーバーラップPCR(overlapping PCR)を使用して、GTをコード化する配列とCPDドメインの間で設置した。使用される主要なセットは次のとおりである:
pHis−F,5’−TTTGTTTATCCACCGAACTAAG−3’(配列番号1)、
Bam−R,5’−TCTTCAGAAAGGGATCCACCAG−3’(配列番号2)、
Bam−F,5’−TGGTGGATCCCTTTCTGAAGAC−3’(配列番号3)、及び
Bpu−R,5’−ACTGCTCCAGTTTCCCAC−3’(配列番号4)。
最終的なPCR生成物はBsrGIとBpu10Iによって消化され(digested with)、pHis−TcdA内での対応する配列を交換するために使用された。結果として生じるプラスミドを、pH−TxA−bと称した。GTにおける三重変異(W101A、D287N、及びW519A)をコード化する配列を、Geneart(Germany)によって合成し、BsrGI/BamHI消化(digestion)を介してpH−TxA−bへクローン化した。変異体ホロトキシンBの構成物を生成するために、2つの点変異(W102A及びD288N)を含む、BsrGIとNheIの間の配列を合成し、同じ制限酵素部位でpHis−TcdBに挿入し、結果的にプラスミドpH−aTcdBを生じた。
【0148】
キメラTxBArを生成するために,特有なRE Age I部位を、pHis−TcdBにおけるアミノ酸の配列を変えることなく、TMD及びRBDの間の位置で作り出した。その後、TcdAのRBDをコード化する遺伝子を、プライマー:
TxA−Ar−F:5’−AATTACCGGTTTTAACTTAGTAACTGGATGGC−3’(配列番号5)及び
TxA−Ar−R:5’−AATTGCATGCTGGTACCCTCCATATATCCCAGGGGCTTTTACTCC−3’(配列番号6)、
を使用して増幅させ、及びTcdBのRBD配列を、AgeI/KpnI消化を介してTcdAのRBD配列と置換し、プラスミド(pH−TxB−Ar)を生成した。キメラcTxABを生成するために、pH−TxB−ArにおけるXhoI/Bpu10Iフラグメントを、フラグメントを運ぶpH−aTcdBからのW102A及びD288N変異によって置換した。
【0149】
完全長変異体毒素及びキメラ遺伝子を運ぶ、結果として生じる構築物を、B.megateriumを形質転換するために使用し、変異体ホロトキシン(図4)を、以前に記載されたのと同じ方法を使用して、発現させ精製した(Yang, G et al. 2008 BMC Microbiol 8: 192、引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0150】
これらの変異タンパク質を、それぞれ、aTcdA、及びaTcdBと称した(図4のパネルA及びB)。TcdA及びaTcdBは、それらの天然の構造を維持することが観察され(図5のパネルA、B及びC)、両方の変異タンパク質は、事実上すべてのグルコシルトランスフェラーゼ活性(図6)、細胞毒性(図7のパネルA及びB)及びインビボの毒性(図8)を失ったことが見出された。従って、本明細書のGT欠損のホロトキシンは、本質的に無毒であると考えられた。
【0151】
TcdA及びTcdBの両方に対する抗毒素が、CDIからの十分な保護に必要であるため、両方の毒素に対する強力な中和抗体を誘発することができる単一の抗原を作り出した。TcdAの受容体結合ドメイン(RBD)は、毒素の免疫優勢ドメインであり、そのレクチンのような構造により強力なアジュバント活性を調べる(processes)(Castagliuolo, I et al. 2004 Infect Immun 72: 2827)。それ故、TcdBのRBDを、TcdAのRBDと置換し、結果的に、TxBArと称されるキメラ毒素を生じた(図4のパネルC)。驚いたことに、TxB−Arは、グルコシル化活性(図6)、強力な細胞毒性(図9)、及び示される強力な炎症誘発性活性を保持し、それにより、クロストリディウムのグルコシル化毒素の特性を保持した。GT変異体を操作するために、2つの点変異(W101A及びD288N)を導入し、結果として生じるキメラタンパク質を、cTxABと称した(図4のパネルD)。aTcdBが構造上その野生型に類似しているため(図5のパネルB及びC)、2つの変異がこのキメラタンパク質の全体的な構成を変更しそうにはなく、従って、cTxABは、毒素のような構成を有するが、無毒なままである(図9)。
【0152】
<実施例5.免疫原の安全性>
野生型TcdBは、一般に、TcdAよりもさらに多くの細胞毒性がある。GTドメインにおける2つの点変異は、5logまでグルコシルトランスフェラーゼ活性を減少させ、結果として生じるaTcdBは、マウスに対して無毒であった。aTcdBのLD100用量の1000倍(免疫感作に使用される用量の約100倍)でチャレンジしたマウスは、疾患の徴候を示さず、どれも死ななかった(図3のパネルC)。毒性の全損失を確かなものにするために、さらなる点変異を、aTcdAに導入した。cTxABは、D97ドメインを欠失しており、従って無毒である。それ故、aTxAB及びcTxABの両方は、非常に安全な免疫原である。候補ワクチンを設計し評価するときに安全性が重要な問題であるため、aTxAB及びcTxABの両方の安全性を、マウスにこれらのタンパク質の高用量を腹腔内に投与する(これによって、これらの組換えタンパク質の急速な吸収が可能となる)ことによってさらに評価した。マウスに、aTxAB又はcTxABの確立された最適な免疫感作の用量の少なくとも100倍を注入し、各免疫原を、10匹のマウスの群において確認した。マウスを、対照動物と比較して、任意の異常性に関してモニタリングした。これは、食欲不振、嗜眠、体重の減少などを含む。aTxAB又はcTxABの最適な免疫感作の用量の少なくとも10倍である安全域を確立した。
【0153】
<実施例6.検出可能なエンドトキシン及びTLRリガンドを欠いているB.megateriumからの精製された組換え毒素>
ワクチンとして組換えタンパク質を使用するために、細菌からのエンドトキシン及び他の汚染物質を含まない純粋なタンパク質を得ることが重要である。B.megaterium発現系を使用する利点の1つは、それがエンドトキシン(LPS)を含まないということである。しかしながら、グラム陽性細菌は、組換えタンパク質調製物を汚染し得るTLR2リガンドが豊富にある。それ故、精製スキームを本明細書で発展させ、銀染色したSDS−PAGE上の任意の目に見える汚染物質タンパク質バンドを欠いた高純度の組換え毒素タンパク質を得た(Yang, G. et al. 2008 BMC Microbiol 8:192)。SDS−PAGE上で目に見えないTLRリガンド汚染物を、高感度のバイオアッセイによって評価した。操作されたモノクローナルのhT2Y細胞は、NF−κBプロモーター下でヒトTLR2及び分泌性のアルカリホスファターゼ(SEAP)を発現する。TLR2の活性化で、細胞は、ホスファターゼ基質を使用して容易に測定され得るSEAPを発現する。His−タグアフィニティー精製の1つの工程は、TLR2リガンド汚染物質の除去に失敗した(図10のパネルA及びB)。さらなる精製(TcdA及びTcdBに関する、それぞれ、チログロブリンアフィニティー及びイオン交換クロマトグラフィー)は、結果的に、SEAP生成を刺激しない高度に精製された毒素を生じた。陽性対照L.monocytogenesは、SEAPの生成を明らかに誘発した(図10のパネルA及びB)。
【0154】
B.megaterium培養は、時に、エンドトキシンLPSの豊富なソースである、E.coliなどの他の細菌に汚染される。それ故、TLR4汚染を、類似したバイオアッセイをまた使用して検査した。組換え毒素調製物において検出可能なTLR4リガンドがなかったことを結果は示した。
【0155】
従って、高度に精製された組換え毒素は、TLR2又はTLR4のいずれに関しても検出可能なリガンドを含んでいなかった。ヒトにおいて敗血症性ショックを引き起こす、LPSなどの、TLRリガンドの欠如は、本明細書に使用される毒素タンパク質が、純粋であり、汚染物を欠いていることを示す。
【0156】
<実施例7.毒素のグルコシルトランスフェラーゼ活性>
変異体毒素のGT活性欠乏を、無細胞のアッセイにおいてRho GTPase Rac1をグルコシル化するそれらの能力の欠如によって評価した。Vero細胞(モドリザルの腎臓上皮細胞)のペレット剤を、グルコシル化した緩衝液(50mMのHEPES、pH7.5、100mMのKCl、1mMのMnCl及び2mMのMgCl)中に再懸濁し、注射器(25G、注射針を介する40回の挿入)によって溶解した。遠心分離(167,000g、3分)後、上清の後核(postnuclear)細胞溶解物を得た。グルコシル化アッセイを行なうために、細胞溶解物を、37℃で示された時間、TcdA、TcdB、又はそれらの変異タンパク質(毒素の終末濃度は1μg/mlであった)によってインキュベートした。反応を、SDS−サンプル緩衝液中で100℃で5分間加熱することによって終了した。Rac1グルコシル化の程度を測定するために、溶解物を、12%のSDS−PAGEゲル上で分離し、ニトロセルロース膜上に移動させた。Rac1のグルコシル化されていない形態を明確に認識する抗体(クローン102、BD Bioscience)、又は対照抗βアクチン(クローンAC−40、Sigma)、及びHRP共役の抗マウスIgG(Amersham Biosciences)を、それぞれ、一次及び二次抗体として使用した。
【0157】
<実施例8.野生型及び変異体の毒素の円偏光二色性(CD)分光法>
22℃での1cmの石英セル(quartz cell)における1.0nmの帯域幅、及び0.1cmの路程を使用する0.5nmの走査工程とともに、190〜260nmの波長領域におけるAviv 62分光旋光計上でCDスペクトルを記録した。タンパク質濃度は、50〜200μg/mlの範囲にあった。各々の場合において、少なくとも5つのスペクトルを、溶質の寄与に関して、蓄積し、滑らかにし、平均化し、修正した。
【0158】
<実施例9.細胞変性及び細胞毒性のアッセイ>
毒素の細胞変性及び細胞毒性の活性を、以前に記載されたようにアッセイした(He, X et al. 2009a Infect Immun 77:294)。96ウェルのプレート中に接種されたCT−26細胞(10/ウェル)を、野生型又は変異体の毒素によって処置した。細胞に対する毒素の細胞変性効果を評価するために、細胞の形態学的変異を、位相差顕微鏡を使用して観察した。MTTアッセイを、毒素の細胞毒性活性を測定するために行った。72時間のインキュベーション後、10μlのMTT(5mg/ml)を、各ウェルに加え、プレートを、37℃でさらに2時間インキュベートした。フォルマザンを、酸性イソプロパノールによって可溶化し(無水イソプロパノール中の0.4NのHCl)、570nmでの吸光率を、96ウェルのELISAプレートリーダーを使用して測定した。細胞の生存率を、治療されていない対照ウェルと比較した生存のパーセンテージとして表した。その処置を3回繰り返し、三つ組のウェルを、各処置における細胞変性の変化及び細胞毒性に関して評価した。
【0159】
<実施例10.TcdA及びTcdBに対する抗体の生成>
TcdAに特異的なモノクローナル抗体(mAbs)を生成し、それは、A1H3、IgG2aアイソタイプ、またA1B1及びA1E6、IgG1アイソタイプを含んだ。これらの抗体は、天然のTcdAを認識し(図11のパネルA)、TcdBと交差反応しなかった。
【0160】
これらの抗体の結合エピトープを位置付けるために、tcdA及びtcdBの両方の完全長を覆う非重複遺伝子のフラグメントを、pET32aベクターへクローン化した。ELISA及びウエスタンブロットは、A1B1及びA1H3が、TcdA C末端フラグメントF4(アミノ酸1839から最後まで)を認識し、A1E6が、フラグメントF3(アミノ酸1185から1838まで)及びF4を認識したことを示した(図11のパネルB)。A1H3は、FcγRI発現細胞上のTcdA細胞毒性を本質的に増強することができ、ここで、A1E6及びA1B1は、そのような活性を有さない(He, X. et al. 2009a Infect Immun 77:2294−2303、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0161】
TcdBに対するいくつかのIgG及びIgMのmAbsを生成し、ウサギ抗毒素多クローン性抗体を、TcdA又はTcdBのいずれかに対抗するように生成した。これらの抗体を生成するために使用される抗原は、高度に精製されたrTcdA又はrTcdBであった。多クローン性抗体は、天然の毒素に対して特異的に結合し、それらの細胞毒性活性を中和する(He, X. et al. 2009a Infect Immun 77:2294−2303、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。これらのモノクローナル及び多クローン性抗体を、本明細書の実施例において示される様々なアッセイに使用した。
【0162】
<実施例11.TcdAに誘発された全腸炎を分析するためのマウスの回腸ループモデル>
胃内に投与されるTcdAは、動物において重度の全腸炎を誘発し、TcdBは、動物において腸管毒性を有さない(Lyerly, D. M. et al. 1985 Infect Immun 47:349−352)。TcdAに誘発された全腸炎を分析するために、マウスの回腸ループモデルを、以前に報告された方法に従って、確立した(Cavalcante, I. C. et al. 2006 Infect Immun 74:2606−2612)。
【0163】
TcdAは、異なるマウス株の間の可変的な感受性を有する、CD1、129SV、NIH Swiss、Balb/c、及びC57BL/cマウス中の結紮されたマウスの回腸ループにおける液体貯留及び組織学的変化を誘発した。TcdBは、マウスにおいて腸管毒性を有さず、結紮されたループにおいて炎症又は組織損傷を誘発しない。
【0164】
腸のTLRリガンドが炎症反応の一因であるかどうかを決定するために、最良のTLRシグナル伝達に反応しない骨髄分化因子88(MyD88)のノックアウトマウスを利用した(Dunne, A. et al. 2003 Sci STKE 2003:re3)。MyD88ノックアウトマウスは、TcdAに誘発された腸炎に対する野生型(C57BL/6)と同じくらい感受性があることが見出された。50μgの組換えTcdAのMyD88ノックアウトマウスの結紮された回腸ループへの注入は、腸における炎症反応を誘発した(図12)。かなりの液体貯留が、PBS対照ではなく、TcdAを注入された回腸ループにおいて見られた(図12のパネルA)。病理組織検査は、PBS注入ではなく、TcdA後に、損傷を受けた絨毛及び免疫細胞の流入(図12のパネルB)及び(図12のパネルCで矢印によって示された)幾つかが腸管腔へ移動する好中球を示した。腸液貯留、炎症、及び粘膜の損傷を、TcdAに対するウサギ抗血清によって完全に遮断した。これらのデータは、MyD88アダプタータンパク質が、マウスにおけるTcdA媒介性の腸炎において役割を果たさないことを示す。
【0165】
<実施例12.ヒトにおけるCDIの症状に似たGB子ブタモデルにおける疾患の発症>
大腸炎に関係するC.difficileの粘膜の異常性を密接に反映するノトバイオートの子ブタモデルを確立した(Steele, J. et al. 2010 J Infect Diseases 201:428)。10の芽胞又は10の栄養細胞によって日齢2日目に(at two days of age)チャレンジされた子ブタは、回結腸の接合から直腸まで伸びる結腸間膜の浮腫の劇的な病変を伴って、2〜3日以内に急性下痢を進行させ、螺旋状の結腸は、しばしば膨張し、粘膜の巣状壊死を伴って出血した。より低い用量によって日齢5〜7日目にチャレンジされた動物は、典型的な偽膜性大腸炎、炎症及び深刻な粘膜損傷を伴う、より慢性的な疾患を進行させ、間欠性の下痢及び重量減少を発症した。これらの疾患の発症の特性は、ヒトCDIの症状に似ていた。従って、子ブタは、慢性疾患からの候補ワクチンの粘膜保護を評価するための有用なモデルを示す(図13のパネルA及びB)。
【0166】
<実施例13.全身性の毒素チャレンジからの保護>
全身性の毒素チャレンジからの保護を行った。各免疫原に対する粘膜の免疫感作によって誘発された全身性の毒素チャレンジからの保護のレベルを評価するための、本明細書の実施例において確立された標準チャレンジ用量としてLD50iを使用した。
【0167】
粘膜の免疫感作は、非経口の免疫感作のような類似したレベルの保護を誘発することが観察され、その中で、50%のマウスが、LD50i用量の各野生型毒素、又は一緒に与えられた2つの毒素のチャレンジから生存した。50%以上のマウスが死亡することが観察されると、用量最適化を行った。
【0168】
aTxAB又はcTxABで免疫化されたマウス(約20gの体重)が、最後の免疫感作の1週間後に、野生型のTcdA、TcdB、又はTcdAとTcdBの混合物のいずれかの致死量(各毒素に対して100ng)によってIPでチャレンジされた後に、野生型毒素の致死量でのチャレンジからマウスを保護する強力な抗体反応を生成した。aTcdBで免疫化されたマウスは、TcdAではなく、野生型TcdBの致死量のチャレンジから十分に保護されることが観察された(図14のパネルB及びC)。さらに、cTxABでのワクチン接種は、いずれかの毒素によって致死的チャレンジからマウスを保護することが観察された(図15のパネルB及びC)。aTcdAとaTcdBの混合物によって免疫化されたマウスは、本明細書のデータに基づいて、両方の毒素の活性から十分に保護されることが予期され、毒素の各々のチャレンジからのこの保護が、インビボで観察された。
【0169】
<実施例14.aTcdB免疫感作から結果として生じる血清中和力価及びインビボの保護>
aTcdBで免疫化されたマウスからの血清が、培養細胞においてTcdBの細胞毒性を中和することができるかどうかを評価するために、TcdBに対して高感度であるマウスの腸の上皮細胞株CT26を使用した。中和力価を、所望の濃度で毒素によって誘発される細胞球状化の遮断に失敗する血清の最大希釈の逆数として定義する。この濃度は、すべてのCT26細胞が、24時間のTcdB処置後に球状化するのを引き起こす、毒素の最小用量の4倍の濃度である。24時間の毒素処置後に100%のCT26細胞の球状を引き起こすTcdBのこの最小量(0.0625ng/ml)を確認した。それ故、TcdBの最小量(0.25ng/ml)の4倍である量を、その後、CT26細胞に適用した2倍希釈した血清サンプルと混合した。
【0170】
24時間のインキュベーション後に得られたデータは、aTcdBで免疫化されたマウスからの血清が、平均(n=5)で1対608に希釈されるように、遮断活性を失った。それ故、aTcdBで免疫化されたマウスからの血清の計算した中和力価は、608であった。対照的に、トキソイドで免疫化されたマウスからの血清の計算した中和力価は、24であった(図14のパネルA)。従って、aTcdB免疫感作によって誘発された抗体の中和活性は、トキソイドによって誘発された中和活性より著しく高かった。
【0171】
さらに、aTcdBによって免疫化されたマウスを、野生型TcdBでの致死的IPチャレンジから完全に保護した(図14のパネルB)。マウスが最後の免疫感作の2か月後でさえTcdBでの再チャレンジから生き残ったため、この抗TcdB免疫は永続的であることが観察された。免疫化されたマウスが、TcdAの致死量でのチャレンジから生き残らなかったため、この防御免疫は、特異的であることが観察された(図14のパネルC)。トキソイド免疫感作は、aTcdB免疫感作よりもかなり低い保護を提供した。トキソイドで免疫化されたマウスは、対照PBSで処置された免疫化されていないマウスより長く生き残ったが、すべてのマウスが24時間以内に死んだ(図14のパネルB)。これらのデータはまた、TcdA及びTcdBが、アミノ酸配列及びドメイン構造の両方において非常に類似しているが、それらの間にほとんど交差反応がなく、抗原性的に異なることを示す。それ故、両方の毒素に対する抗体を誘発するワクチンが、十分な保護を提供するために必要である。
【0172】
<実施例15.TcdA及びTcdBの両方に特異的な抗体及び保護反応を誘発するcTxAB免疫感作>
TcdAの受容体結合ドメイン(RBD)は、複数のレクチン結合の繰り返しを含み、強力な免疫刺激及びアジュバントの活性を有する(Castagliuolo, I. et al. 2004 Infect Immun 72:2827−2836; Yeh, C. Y. et al. 2008 Infect Immun 76:1170−1178)。TcdBは、C.difficileの有毒な因子である。これらの理由で、TcdBのRBDをTcdAのRBDと置換することによって、キメラ毒素タンパク質を設計した(図2のパネルB)。さらに、TMDのC末端における小さな欠失(TcdBの毒性にとって不可欠である97のアミノ酸)を作り出し、それ故、結果として生じるcTxABは無毒である(図2のパネルB)。
【0173】
cTxABでのマウスの免疫感作は、TcdA及びTcdBの両方に対するIgG抗体反応を誘発することが観察された(図15)。相当量の抗TcdA及び抗TcdBが、最初の追加免疫後に誘発され、第2の追加免疫は、TcdA又はTcdBのいずれかに対する抗体反応の規模を増大させなかった(図15のパネルA)。驚いたことに、cTxABでのマウスの免疫感作は、TcdA又はTcdBのいずれかによる致死的な全身性のチャレンジからの十分な保護を提供した。cTxABで免疫化されたマウスはすべて、100ngのTcdA又はTcdBのいずれかのIPチャレンジから生き残り、プラセボで免疫化されたマウスはすべて死んだ(図15のパネルB及びC)。TcdAのチャレンジ用量を200ngに増加させることによって、cTxABで免疫化されたマウスの死亡につながったが、これらのマウスは、100ngのTcdAでチャレンジされた対照マウスと比較して、かなり長く生き残った(p=0.0089)(図15のパネルB)。
【0174】
<実施例16.GT欠損のホロトキシン(aTcdA及びaTcdB)は、野生型毒素と同様に細胞内に結合し侵入する>
aTcdA及びaTcdBが、GTドメインに位置する2又は3点のアミノ酸変化しか有さず、受容体結合ドメインがインタクトであり、不変であるため、これらのタンパク質は、野生型タンパク質に類似した細胞表面に対する親和性を有する。蛍光免疫染色によって測定されるように、4℃で、aTcdAは、野生型TcdAと同様にRAW264.7細胞へ結合することが観察された。共焦点顕微鏡検査分析に従う特異的なモノクローナル抗体(A1H3)染色によって測定されるように、エンドサイトーシスを可能にする温度である、37℃で30分間RAW264.7細胞に毒素を晒し、結果として、aTcdA及びTcdAの各々が、比較的RAW264.7細胞へと内在化されるようになる(図16)。これらのデータは、GTドメインでの点変異が、ホロトキシンの細胞結合及び内在化に影響を与えないことを示す。キメラ毒素cTxABは、TcdAのインタクトなRBDを有し、従って、それは野生型TcdAと同様に細胞を培養するために結合する(図3のパネルD)。
【0175】
<実施例17.非経口の免疫感作及び抗体反応>
マウスの群を、アジュバントとしてのミョウバンを含む、aTxAB、cTxAB、又はトキソイド(TcdAとTcdBの混合物)の用量によってIPで免疫化する。IP免疫感作及び皮下の免疫感作を、それぞれ実行し、類似した結果がこれらの経路から得られることが予期される。トキソイド及びaTxABの両方は、等しい量の各々の毒素タンパク質を含み、初回量は、1回の注入当たり総タンパク質の5μgであり、これは、前の免疫感作で使用された用量に従う。血清サンプルを集め、抗毒素(TcdA及びTcdBの両方)の反応を、本明細書の実施例に記載されるような標準ELISAを使用して測定する。いくつかのパラメーターを以下の群の中で評価する:抗体反応の速度及び規模、IgGサブタイプ及びIgG1/IgG2a比率。aTcdB免疫感作は、主としてIgG1反応を誘発した(図17)。任意の特定の理論又は作用の機構に限定されずに、aTxAB又はcTxABのいずれかでの免疫感作は、IgG1反応を優勢に誘発することが予期される。Hisタグ及びStrepタグに対する起こり得る抗体反応の分析を行う。両方のタグは、非常に小さい大きさであり、それ故、それほど免疫優勢ではないようである。精製された天然のTcdA及びTcdBを使用して、毒素に特異的な抗体を、タグに特異的な抗体と区別する。タグを有する、関連性がない組換え抗原も、2つの間の区別の助けとなる。トロンビン認識部位が、cTxABに設置されたため、タグもトロンビンプロテアーゼによって取り除かれ得る(図3のパネルB)。トロンビン認識配列が、必要に応じて、aTcdA及びaTcdBへと同様に設置され得る。
【0176】
<実施例18.aTcdB免疫感作によって誘発されたIgGサブクラス>
aTcdB又はトキソイドの免疫感作によって誘発されたIgGサブクラスを測定した。aTcdB又はトキソイドのいずれかでのマウスの免疫感作は、著しい抗TcdB IgG1及びIgG2b反応を誘発した。対照的に、抗TcdB IgG2a、IgG2c、及びIgG3などの、他のIgGサブタイプの反応は低かった(図17のパネルA)。aTcdBで免疫化されたマウスからの血清の連続希釈は、結果的に、1:32,000の希釈での抗TcdB IgG1の力価の損失につながり、抗TcdB IgG2aは、1:2000まで下がっただけであった。これらのデータは、IPで与えられた免疫原aTcdBが、主としてTH−2型反応を誘発したことを示す。
【0177】
<実施例19.急速なIgG反応を誘発した、aTcdBでのマウスの免疫感作>
抗生物質での処置及び/又は入院の下など、C.difficile感染の高いリスクを有する人々は、ワクチン接種対象の被験体である。急速な防御免疫を誘発することができるワクチンが、特に入院患者において望まれる。aTcdBでのワクチン接種を、急速な抗体反応を誘発する能力に関して検査した。図18は、aTcdBでのマウスの免疫感作が、2回目の免疫感作後に強力なIgG反応を生じさせたことを示す。対照的に、トキソイド免疫感作は、3回目の免疫感作後(初回抗原刺激の28日後)にだけ検出可能なIgG反応を生じさせた。
【0178】
<実施例20.aTcdB免疫感作によって生じた抗体は、ホロトキシンのN末端及びC末端の両方に反応する>
C.difficile毒素の大きなサイズ及び毒性のために、GTドメインを欠き、それ故無毒である組換え毒素フラグメントは、潜在的なワクチン候補となりそうである。TcdAの完全又は部分的な受容体結合ドメインを含むC末端フラグメントは、免疫優勢であることが報告され、それ故、抗毒素抗体反応を誘発するために免疫原として使用されてきた(Kink, J. A. et al. 1998 Infect Immun 66:2018−2025; Sauerborn, M. et al. 1997 FEMS Microbiol Lett 155:45−54; Ward, S. J. et al. 1999 Infect Immun 67:5124−5132)。しかしながら、酵素ドメインを有するそれらのホロトキシンのN末端はまた、中和抗体を誘発することができる(Babcock, G. J. et al. 2006 Infect Immun 74:6339−6347)。aTcdBでのマウスの免疫感作は、ホロトキシンの全体にわたって見出されるF1からF4のフラグメントに特異的なエピトープを有する抗体を生じさせた(図19)。従って、マウスのaTcdBのワクチン接種は、抗体反応の広域スペクトルを誘発した。
【0179】
<実施例21.aTxAB又はcTxABによって免疫化されたマウスの抗体及び保護反応>
aTxAB又はcTxABによって非経口的に免疫化されたマウスの抗体及び保護反応を調べ、ホルマリンで不活性化された野生型TcdA及びTcdB(トキソイド)と比較した。マウスの群を、アジュバントとしてミョウバンと混合された、aTxAB、cTxAB、又はトキソイドの所望の用量で3回、腹腔内(IP)又は皮下で(SC)免疫化する。血清抗体反応を、各々の免疫感作の後に測定する。最後の免疫感作の1週間後に、マウスを、野生型毒素によってIPでチャレンジし、チャレンジに対する保護反応を、プラセボ(ビヒクルにアジュバントを加える)で免疫化した群と比較する。免疫原の用量最適化を実行し、その後、マウスに与えられた投与量を2倍及び半分にし、各々の免疫原の血清抗体反応の最も高いレベルを誘発するのに必要な最も少ない量の抗原を確立する。2つの免疫原の安全性を、用量最適化の後に確立された最適な免疫感作用量の10〜100倍によってマウスをチャレンジすることによって評価し、致死率を含む、毒性徴候及び他の異常性に関してモニタリングする。免疫化したマウスを、野生型毒素によってチャレンジし、各毒素及び2つの組み合わせに対する対応するLD50iを確立する。細胞毒性アッセイを、各々の野生型毒素に対する抗体の中和力価を測定するために行った。これらのアッセイは、全身性の免疫感作によって達成された最適な免疫感作用量、及び保護のこのレベルに必要な計算されたLD50i毒素チャレンジ用量を確立し;無毒の形態は、トキソイドより効果的である[と予期される?]。
【0180】
<実施例22.aTcdBでの免疫感作は、トキソイドより大きなIgG反応を誘発した>
ホルムアルデヒドで不活性化された毒素(トキソイド)が、ワクチンとして使用され、動物モデルにおいてC.difficile関連疾患に対して有効であると分かった(Sougioultzis, S. et al. 2005 Gastroenterology 128:764−770; Torres, J. F. et al. 1995 Infect Immun 63:4619−4627)。任意の特定の理論又は作用の機構に限定されることなく、本明細書のデータは、C.difficile毒素のトキソイド形態が、天然のホロトキシンと比較して、立体構造の抗原を欠き、同様に無毒のホロトキシンと比較しても、立体構造の抗原を欠くことを示す。
【0181】
トキソイドTcdBとaTcdBは、抗体反応を誘発するそれらの能力に関して比較された。アジュバントとしてミョウバンを含む、等しい量(1回の注入当たり5μg)のトキソイド又はaTcdBによって、マウスを免疫化した。3回の免疫感作後に、抗TcdB IgGのELISA結果(図20)は、aTcdBが、トキソイドよりも著しく高い量の毒素に特異的なIgGを誘発したことを示す。
【0182】
研究は、C.difficileの主要な毒性因子としてTcdBの重要性を強調した。aTcdBの免疫原性を、トキソイドTcdB(トキソイドB)の免疫原性と比較した。aTcdBでの全身性の免疫感作は、トキソイドBよりも強力なIgG反応及び本質的に高い中和活性を誘発した(図21のパネルA及びB)。aTcdBで免疫化されたマウスを、致死的な野生型TcdBのチャレンジから十分に保護し、一方、トキソイドBで免疫化されたマウスはすべて、全身感染の徴候を示し、マウスの70%は48時間以内に死んだ(図22のパネルC)。従って、aTcdB免疫感作は、トキソイドBよりも全身性の毒素チャレンジから有意により保護を誘発した(p=0.0014)。
【0183】
aTcdBの高い免疫性及び毒素TcdAとTcdBの間のかなりの相同性のために、aTcdB免疫感作によって生じた抗体を、TcdAに対する交差防御に関して検査した。驚いたことに、aTcdB免疫感作によって生じた抗体は、TcdAの細胞毒性に対する中和活性をほとんど有しておらず、致死的なTcdAチャレンジからのマウスの保護に失敗した(図22のパネルD及びE)。aTcdAでの免疫感作はまた、TcdBに対する中和抗体反応をほとんど誘発しなかった(図22のパネルF)。しかしながら、aTcdAとaTcdBの混合物によって免疫化されたマウスは、両方の毒素に対する強力な中和抗体を生じさせた(図22のパネルE及びF)。これらのマウスは、TcdA又はTcdBのいずれかでの致死的な全身性のチャレンジから十分に保護された。さらに、aTcdA又はaTcdBのいずれか単独でのマウスの免疫感作は、経口でのC.difficileのバクテリアに誘発されたCDIからマウスを部分的に保護した。aTcdA及びaTcdBは、共に免疫原として、CDIの致死性及び下痢からの十分な保護を誘発した(図22のパネルG及びH)。両方の毒素に対するポリ血清抗毒素の腹腔内投与によるマウスの受動免疫化は、部分的しか保護しない各毒素単独に対するポリ血清と比較して、C.difficileに誘発された死亡率及び重量減少からの著しい保護/治療を提供した(図22のパネルI及びJ)。
【0184】
<実施例23.マウスのcTxABの非経口の免疫感作は、TcdA及びTcdB両方の細胞毒性を遮断する優れた中和活性を誘発した>
ワクチンとしてのcTxABが、非経口の免疫感作後に中和抗体を誘発するかどうかを検査するために、マウスを、アジュバントとしてミョウバンとともに4回(10日ごと)IPで免疫化した。最後の免疫感作の7日後に、血清サンプルを集め、中和力価を測定した。cTxABで免疫化されたマウスからの血清は、TcdA及びTcdBの両方に対して優れた中和活性を有することが観察された。非常に高い希釈でさえ、血清は中和活性を依然として実証した(図23)。
【0185】
培養細胞におけるTcdAに対する中和活性は、TcdBに対する中和活性よりもはるかに大きいことが観察された(図23)。任意の特定の理論又は作用の機構に限定されることなく、これは、TcdAの受容体結合ドメイン(RBD)を遮断することができる抗体を誘発するcTxAB免疫感作能力が原因であり得、これは、毒素を培養細胞に結合するために及び後の毒性のために必要である(which is needed for the binding and subsequent toxicity the toxins to cultured cells)。データは、cTxABによって誘発された抗体が、インビボで両方の毒素の毒性を遮断する強力な能力を有していたことを示す。
【0186】
cTxAB候補ワクチンを、超高病原性株でのチャレンジからの保護を誘発する能力に関して評価した。cTxABでの3回の免疫感作の後、マウスを、UK1株、患者から分離された027/B1/NAP1株のC.difficile芽胞によってチャレンジした(Steele, J et al. 2010 J Infect Dis 201: 428)。対照PBSで免疫化されなかったマウスは、1日目に疾患の徴候(ひだ状の被膜、嗜眠、食欲不振、衰弱など)を示し始め、感染の2日後に重度の下痢を発症し、マウスの約40%が死んだ(図24のパネルA、B及びC)。対照的に、cTxABで免疫化されたマウスは、十分に保護され、感染の数か月後でさえ疾患の徴候を示さなかった(図24のパネルA、B及びC)。
【0187】
cTxABでのマウスの免疫感作は、TcdA及びTcdBの両方に対する強力な全身性の抗体反応を誘発することが観察された(図21のパネルA)。著しいIgG反応が、単一の免疫感作の後に生じ(図21のパネルA)、結果は、aTcdBが単一の免疫感作の後に測定可能な抗体反応を誘発しなかったため、TcdAのRBDの免疫刺激効果に起因し得る(図22のパネルA)。強力な全身性の抗体反応にもかかわらず、cTxABでのマウスの免疫感作は、結果的に、免疫化したマウスの糞便において測定される低い腸の抗毒素IgG及びIgAの力価につながる。cTxABでの3回の免疫感作の後、TcdA及びTcdBに対する血清中和力価は、それぞれ4560及び3440であることが観察された(図21のパネルB)。これらのラウンド後の免疫化したマウスを、野生型TcdA又はTcdBのいずれかでの致死的な全身性のチャレンジから十分に保護した(図21のパネルC)。
【0188】
キメラタンパク質が、両方の毒素に対する強力な中和抗体を誘発することができることが見出されたため、CDIに対する保護反応を誘発するcTxABワクチン接種の能力を、本明細書において検査した。マウスを、免疫感作の3回のラウンド及び実験室C.difficile株VPI10463の栄養細胞によって経口でチャレンジにさらし、ビヒクルのPBSで免疫化されたマウスは、典型的な下痢を発症し、重量減少を示し、及びマウスの約60%が死んだ(Chen, X et al. 2008 Gastroenterology 135: 1984)(図21のパネルD及びE)。しかしながら、わずかな重量減少は観察されたが、cTxABによって免疫化されたマウスはどれも、疾患の症状を進行させなかった(図21のパネルD及びE)。cTxABで免疫化されたマウスはどれも、下痢を発症しなかった。対照的に、PBS対照を投与されたすべてのマウスは、感染後の3〜4日以内に重度の下痢を発症し(図21のパネルF)、一週間以内に徐々に回復した。cTxABワクチン接種によって誘発された保護は永続的であり、免疫化したマウスを、3回目の免疫感作から3か月間も細菌でのC.difficileのチャレンジから十分に保護した(図21のパネルG、H及びI)。
【0189】
cTxABで免疫化されたマウスは、CDIの徴候を示さず、これらのマウスは、PBSで処置された対照マウスに類似したレベルで、1週間、検出可能な量の両方の毒素を排出した(図25)。マウスを、毒素によって引き起こされた任意の腸の病変又は損傷に関してさらに検査した。剖検データは、PBSで処置された対照マウスからの盲腸及び結腸が、著しく拡大し膨れたことを示し(図24のパネルD)、cTxABで免疫化されたマウスからのそれらの臓器は、正常であるように見えた(図24のパネルE)。PBS対照マウスからの盲腸の薄片は、著しい上皮の損傷、浮腫、及び免疫細胞の浸潤を示し(図24のパネルF)、一方で、cTxABで免疫化されたマウスは、粘膜の損傷又は炎症の証拠を示さなかった(図24のパネルG)。好中球の浸潤は、感染していないマウスと比較して、MPO活性によって測定されるように、PBSで処置されたマウスにおいて著しく高められ、cTxABで免疫化されたマウスからの腸において著しい好中球の浸潤を検出することはできなかった。従って、データは、cTxAB免疫感作によって誘発された抗体が、C.difficileの毒素に誘発された粘膜の損傷及び大腸炎からマウスを保護したことを示す。
【0190】
再発の高い割合という結果となる現在の抗生物質処置の無効性が原因で、CDIはいくぶんか管理するのがますます難しくなっている(Kelly, CP et al. 2008 N Engl J Med 359: 1932; Rupnik, M. H. et al. 2009 Nat Rev Microbiol 7: 526)。再発を予防する際に本明細書での候補ワクチンの有効性を評価するために、マウスにおけるCDI再発モデルを確立した。免疫感作及び疾患誘発のスキームを、図24のパネルHに示す。一次感染の後、PBSで処置された対照群から生存するマウスは、一次CDIの疾患に類似した重症度を有する疾患を発症した。これらのマウスは、重度の下痢及び重量減少を引き起こし、マウスの40%は瀕死状態になった(図24のパネルJ、K及びL)。cTxAB免疫感作は、対照的に、再発からマウスを保護した。これらのマウスはどれも、疾患の徴候を進行させず、第2のC.difficileチャレンジ後に100%の生存が観察された(図24のパネルJ、K及びL)。この保護は、cTxABで免疫化されたマウスにおいて見られる永続的な免疫にさらに関係した(図21のパネルJ、H及びI)。
【0191】
腸ミクロフローラを破壊させ、それ故、入院患者をC.difficile感染の高いリスクにさらす、処置を受ける入院患者において、CDIに対してワクチンが急速な保護を誘発することが望ましい。cTxABでのマウスの単一の免疫感作は、両方の毒素に対する測定可能な抗体反応を誘発し(図21のパネルA)、この抗体反応を、CDIからマウスを保護するための十分な効能に関して評価した。マウスを、抗生物質処置と同じ日に免疫化し、6日後に、10のUK1芽胞によってチャレンジした。データは、90%のcTxABで免疫化されたマウスが生き残ったことを示す。対照的に、PBS対照マウスのほぼ半分は、瀕死状態になった(p<0.05、図24のパネルM)。両方の群からの生存するマウスは、類似した程度の下痢及び重量減少を経験した(図24のパネルN)。それ故、cTxABでのマウスの単一の免疫感作は、下痢又は重量減少ではなく、重度の疾患及び死亡からの著しい保護を提供した。
【0192】
その後、急速なワクチン接種スキームを、これらの症状に対する、及び再発からの保護のために評価した。最初の免疫感作及びC.difficile芽胞のチャレンジの後に、両方の群から生存するマウスを、UK1芽胞での再チャレンジ前に、再び、cTxABによって2回免疫化した(図24パネルI)。cTxABで免疫化されたマウスはどれも、死んだり、再発性疾患を発症させることはなく、PBSで処置されたマウスは、死亡したり急な重量減少に苦しみ、90%が下痢を進行させた(図24のパネルO、P及びQ)。
【0193】
<実施例24.mLTを含む及び含まない、aTcdBでの子ブタの舌下の免疫感作>
2週齢のノトバイオートの(GB)子ブタを、10μgのmLTと混合した25μgのaTcdB(ブタ#1及び#2)、又は25μgのaTcdBのみ(ブタ#3及び#4)のどちらかによって2週ごとに3回舌下で(SL)免疫化した。mLTを含むaTcdBを受けた1匹の動物(ブタ#1)を、無関係な病気が原因で安楽死させた。図26は、mLTを含む(ブタ#2)又はmLTを含まない(ブタ#3及び#4)、aTcdBによって免疫化した3匹の残りの子ブタの血清抗体反応を示す。
【0194】
アジュバントとしてmLTと混合したaTcdBによる子ブタのSL免疫感作が、全身性の抗TcdB IgG反応を誘発したことが観察された(図26)。これらのデータは、SL免疫感作が投与の有効な経路であり、粘膜のアジュバントとしてのmLTの包含が、この免疫原に対する免疫反応を高めることを示す。
【0195】
<実施例25.ノトバイオートの(GB)子ブタモデル>
最適な免疫反応及び細菌のチャレンジからの100%の保護を刺激するための有効な免疫感作レジメンを、GB子ブタモデルにおいて評価する。このモデルは、FDAによって必要とされる2つの動物規則を満たすのに有用である;慢性CDIの既存の処置への免疫感作の影響を受けそうな子ブタモデル;CDIの慢性疾患の確立からの保護;再発からの保護;候補の安全性及び最適化の症状発現前の評価が、ヒトに対して等しく有効でありそうな最良のワクチン及び免疫感作のレジメンを識別し確認するためになされ得るモデル。
【0196】
マウス感染研究の後に選択されたワクチンを評価するために、GB子ブタを第2の動物モデルとして使用する。これらの動物を、研究の全体にわたって微生物学の隔離飼育器に日常的に収容し、それらに6週間赤ん坊の調乳を与え、次に、本明細書の実施例に示されるように、より長く飼育された時にそれらを乳離れさせ離乳食を与え、これらを、C.difficileのIACUCプロトコルG861−06の下で行った。
【0197】
C.difficileによって経口で感染したノトバイオートの子ブタは、下痢を示し、弱くなり、脱水状態になり、瀕死状態になることが予期される。子ブタを、処置の期間中、少なくとも1日当たり4回(午前9時ごろ、正午ごろ、午後4時ごろ、及び午後8時と午前12時の間に1回)モニタリングする。嗜眠性であるか、動くことができないか、又は5%を超えて脱水すると観察された子ブタは、液体電解液及びグルコースの非経口投与によって水分補給される。重病が観察されるとき、少なくとも1回のさらなる検査を、嗜眠、動けないこと、5%を超える脱水についての観察の後の、標準チェックポイントの各々の間に行う。いかなる時も瀕死状態であるように見える動物を安楽死させる。
【0198】
子ブタモデルは、制御された研究室の下で操作される強度及び持続時間を伴う、特徴的な偽膜性大腸炎を有する、極めて急性及び致死的な下痢から慢性下痢までの、疾患内の症状及び重症度の範囲スペクトルを提供する。全身性の結果を含む臨床症状のスペクトルは、ヒトの場合において観察されるものと類似しており、これは、ワクチン候補及び治療薬の症状発現前の評価を行なうために、子ブタを魅力的なモデルにしている。これらは、結果的に重度の疾患及び死病にさえなる、腹水、胸水、心肺機能停止、肝膿瘍、及び多臓器機能障害症候群などの、C.difficile感染のさまざまな全身性の結果を含む。免疫反応は、重症度において役割を果たし、これらの例において、サイトカインレベルを、大腸の内容物において分析する。特にIL−8濃度は、C.difficileによってチャレンジされた子ブタにおいて著しく高められた(Steele, J. et al. 2010 J Infect Diseases 201:428)。
【0199】
慢性CDIの子ブタモデルにおける免疫感作レジメンの有効性に関する症状発現前の評価を、C.difficileでの経口チャレンジに抵抗する免疫化された子ブタの能力を評価するために行う。子ブタを、帝王切開によって得、処置の間に無菌の隔離飼育器の内部で保持した。それらは乳飼料を与えられ、処理され、モニタリングされ、定期的にサンプリングされた(McMaster−Baxter, N. L. et al. 2007 Pharmacotherapy 27:1029−1039)。
【0200】
【表1】

【0201】
表1のプラセボ群は、もし含まれていれば、ビヒクルに加えて、アジュバントを受ける。対照群を、試験ワクチン群として免疫化するが、対照株によってチャレンジし、それに対抗して、株027によってチャレンジされた群を比較し測定する。2つ以上の試験ワクチンを、対照及びプラセボの群が共有され得るため、比較する目的で平行して、及びこれらの処置に使用される子ブタの数を保存するために検査する。
【0202】
症状発現前の評価を、感染を取り除き及び/又はC.difficileに感染した子ブタの症状の重症度を低下させる、上記の免疫感作レジメンの任意の能力に関して行う。
【0203】
【表2】

【0204】
C.difficileでの経口のチャレンジの後にさらに3か月間、子ブタを保持し、特異血清及び分泌抗体のレベルをモニタリングし、その後、再発からの保護を評価するために、子ブタを、C.difficileで再びチャレンジし;もし特異抗体レベルが低いと見なされると、第2のチャレンジ前に追加免疫を与える。
【0205】
【表3】

【0206】
子ブタを、0〜3にランク付けされる症状に関して少なくとも1日に2回観察する:0は、下痢なしを示す;1は、軽度の下痢を示す;2は、中程度の下痢を示す;3は、重度の下痢を示す。以下の症状をモニタリングする:下痢−水様性、間欠性、ペースト状;肌弾性及び全体的な外観によって測定された脱水症;健康状態を反映する、1週当たり3回測定される、体重、減少又は増加;拒食症、飲みたいという切望、1日当たりのミルクの摂取量、敏捷性、うつ、動きたがらない、猫背、持ち上げられるとキーキーと声を上げる(squealing when picked up);一般的な外観、ひだ状の被膜、汚れた会陰部;及び遠隔測定のモニタリング、生命徴候及び体温変動の図で示された記録、呼吸数及び心拍数(畜産下での以下を参照)。
【0207】
重大な脱水症の場合において、水分補給が完了するまで、1日に2回、IPで5%のDex Inj NTRMXと組み合わせたAminosyn II 3.5% Mを使用して、子ブタに水を与えた(20〜30ml/注入)。各4つの群内の各々の個体の、臨床的な、組織学的な、細菌数の、及び炎症(サイトカインレベル)の反応を、それぞれ個々の動物に対する重症度に従って、0〜3までランク付けし(0は効果を示さない)、観察記録をデータベースに入力した。
【0208】
4つの群の間の比較は、細菌チャレンジの後の臨床徴候の経過に対するワクチン接種の影響を反映し、剖検での粘膜病変の分析を含む。1〜3のランク付けを各臓器に割り当て、そこで変化を肉眼で又は微視的に観察し、0は、正常、又は群4で測定されるパラメーターの変化がないことを示す。データを数値に変換することによって、臨床観察及び剖検結果のための適切な統計分析で処理されるスコアリングシステムを展開させる。臨床観察は、下痢、拒食症、脱水症、敏捷性、遠隔測定及び体重など6つのパラメーターを含む。このカテゴリーの毎日のスコアは、0から最大で18(3x6)まで変化する。剖検結果は以下のパラメーターを含む:腸病変、炎症、細菌数、全身性の毒血症、内臓の異常性、臨床病理。このカテゴリーのスコアは、0〜18(3x6)まで変化する。このスコアリングシステムによると、理想的な対照群4のスコアは0であり;プラセボ群4のスコアは、臨床観察に関して18、及び剖検結果に関して18に近づく。群1及び2に関するスコアの大きさを、保護パラメーターを確立するために使用する。従って、18により近いスコアは、乏しい有効性を示し、0により近いスコアは、大きな有効性を反映する。
【0209】
上に記載された数値のスコアリングシステムに加えて、肉眼的及び微視的な観察の包括的及び具体的な記載を記録し、さらに別々に分析される付加的でより多くの詳細情報を提供するデータベースに入力した。
【0210】
<実施例26.経口免疫のためのPLGポリマー>
aTxAB及びcTxABのタンパク質を、図27に示される方法によってPLGにおいてカプセル化する。Medisorb PLGポリマー(Alkermes, Inc., Cincinnati, OH)を本明細書の方法に使用し、図6におけるワクチンを調製するための基本手順によって、水中油型エマルションとして調製し、Silverson Machines, East Longmeadow, MAによって製造されるような、せん断型ミキサーによって混ぜ合わせる(Herrmann, J. E. et al. 1999 Virology 259:148−153)。この方法によって生成される粒子は、一般に、5μm未満の大きさである。手順を操作することによって、一貫して100nmから250nmの範囲のナノ粒子も生成する。ナノ粒子は、2つの粘膜経路、鼻腔内及び経口の経路の各々によって投与される、カプセル化されたワクチンの吸収を増加させる。PLGナノ粒子の吸収に関する研究は、マウスへの経口投与の後に、PLGナノ粒子1μmから10μmが、腸関連リンパ系組織のパイエル集腺へ吸収されたことを示している。吸収された約5μmより大きい又は等しい大きさの粒子は、35日まで局在化されたままであり、約5μmより小さい粒子は、マクロファージ、腸間膜リンパ節、血液循環、及びひ臓内に広がった(Eldridge, J. H. et al. 1989 Curr Top Microbiol Immunol 146:59−66; Eldridge, J. H. et al. 1989 Adv Exp Med Biol 251:191−202)。PLG微粒子は、M細胞に選択的に標的化されないが、M細胞への非特異的結合及び後のトランスサイトーシスが、ウサギにおいて示された(Jepson, M. A. et al. 1996 Pflugers Arch 432:225−233; Jepson, M. A. et al. 1993 J Drug Target 1:245−249)。
抗原を含むPLGナノ粒子が、空のPLG微粒子によって見られるのと類似した方法で、M細胞に結合し、M細胞によって輸送されることが示された(O’Hagan, D. T. 1996 J Anat 189 ( Pt 3):477−482)。パイエル集腺によってPLGナノ粒子においてカプセル化されたウシ血清アルブミンの吸収は、ラットモデルにおいて示された(Desai, M. P. et al. 1996 Pharm Res 13:1838−1845)。カプセル化されたaTxAB又はcTxABを、胃管栄養法を使用して投与した。以下の請求項は単に例示的であり、さらに限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、実施例及び請求項から、本明細書中の本発明の範囲内にある多数の同等物を容易に判断するであろう。
【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】

【図11A】

【図11B】

【図13A】

【図13B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染に対して被験体を免疫化するための無毒の組換えClostridium毒素タンパク質を含むワクチン組成物であって、前記タンパク質が、C末端に配置されたタンパク質精製タグに操作可能に連結される、グルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテイナーゼドメイン(CPD)、膜貫通ドメイン(TMD)および受容体結合ドメイン(RBD)を有し、前記組成物のタンパク質が、Bacillus宿主において組換え技術で産生され、および前記組成物は被験体を免疫化するのに有効であることを特徴とするワクチン組成物。
【請求項2】
前記Clostridiumは、C.difficile、C.perfringens、C.sordellii、C.septicum、C.tertium、C.botulinumなどの群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質が、C.difficileのTcdAタンパク質およびTcdBタンパク質の群から選択される少なくとも1つに少なくとも1つの変異を含み、前記変異は、毒性を減少させ、かつ天然のタンパク質構造を保持することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記変異が、少なくとも約10倍から約1,000倍までで毒性を減少させることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記変異が、少なくとも約10,000倍から、約1000万倍までで毒性を減少させることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記変異が、TcdAタンパク質およびTcdBタンパク質の少なくとも1つのGTドメインに位置することを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの変異が、アミノ酸置換またはアミノ酸欠失を含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記置換が、トリプトファンのアラニンでの置換またはアスパラギン酸のアスパラギンでの置換を含むことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記タンパク質が、複数の変異を含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記タンパク質が、TcdAタンパク質に由来する第1アミノ酸配列およびTcdBタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を有するキメラ融合cTxABを含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1アミノ酸配列が、TcdA RBDドメインを含み、および前記第2アミノ酸配列が、TcdB GT、CPDおよびTMDドメインを含み、前記タンパク質ドメインが、精製タグに操作可能に連結され、前記タンパク質が、さらに、前記タグを除去するためのプロテアーゼ切断部位を含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記精製タグが、Arg−タグ、カルモデュリン−結合ペプチド、セルロース−結合ドメイン、DsbA、c−myc−タグ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAG−タグ、HAT−タグ、His−タグ、マルトース−結合タンパク質、NusA、S−タグ、SBP−タグ、Strep−タグおよびチオレドキシンの群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、欠失変異をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記欠失が、TMDドメインに少なくとも1つのアスパラギン酸を含むことを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記Bacillusが、Bacillus megateriumであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
有効量での請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
アジュバントをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に許容可能な担体をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記タンパク質をコードする核酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記核酸が、細菌ベクタ―に操作可能に連結されることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記TcdAタンパク質および前記TcdBタンパク質が、別々に産生されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項22】
容器および請求項1乃至21のいずれかに記載の組成物を含むキット。
【請求項23】
使用のための指示書をさらに含む請求項22に記載のキット。
【請求項24】
被験体において、Clostridium difficile毒素に特異的な免疫反応を誘発する方法であって、前記方法は、
タンパク質がグルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテイナーゼドメイン(CPD)、膜貫通ドメイン(TMD)、受容体結合ドメイン(RBD)およびC末端に配置された精製タグを含むように、C.difficile毒素タンパク質組成物の無毒の変異をコード化する核酸を設計する工程、
Bacillus細胞にタンパク質を発現し、前記タンパク質を精製し、および前記精製タグを取り除く工程、および
組成物を調剤し、被検体を組成物と接触させ、それによって、被験体に、前記タンパク質に特異的な、少なくとも1つの体液性免疫反応および細胞媒介性免疫反応を誘発する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記設計工程が、TcdAタンパク質に由来するアミノ酸配列をコード化する第1核酸配列、およびTcdBタンパク質に由来するアミノ酸配列をコード化する第2核酸配列の少なくとも1つに変異を得る工程をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記変異が、前記TcdAタンパク質および前記TcdBタンパク質の少なくとも1つのGTドメインにあることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記変異を設計する工程が、アミノ酸置換またはアミノ酸欠失を導入する工程を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記置換変異が、トリプトファンをアラニンに置換する工程、およびアスパラギン酸をアスパラギンに置換する工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質を設計する工程が、複数の変異を導入する工程を含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、TcdAタンパク質に由来する第1アミノ酸配列、およびTcdBタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を有する無毒のキメラタンパク質cTxABを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記アミノ酸配列を設計する工程が、TcdAタンパク質からのRBDドメインをコード化する核酸を、TcdBタンパク質のGT、CPDおよびTMDドメインのアミノ酸配列をコード化する核酸と組換え技術で連結する工程を含み、前記タンパク質ドメインが、C末端にある精製タグ、およびタグの除去のためのプロテアーゼ切断部位に操作可能に連結されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記TMDドメインを設計する工程が、少なくとも1つのアスパラギン酸を欠失させる工程を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記被験体が、ヒト、研究動物、高価値の動物園動物および農業動物の群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記被験体を接触させる工程が、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、粘膜、皮下、舌下、鼻腔内および経口からなる群の少なくとも1つから選択される経路によって組成物を投与する工程をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項35】
被験体の血清中の抗体力価を分析する工程、および免疫反応が被験体において誘発されたという指標として、Clostridium抗体を特異的に結合する抗体の増加を、接触していない対照の被験体の増加と比較して観察する工程をさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項36】
Bacillus宿主において、組換え変異型Clostridium毒素タンパク質を産生する方法であって、前記方法は、
前記タンパク質が、グルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテイナーゼドメイン(CPD)、膜貫通ドメイン(TMD)、受容体結合ドメイン(RBD)を含み、遺伝子が、Bacillus細胞に又は選択可能なマーカーに、およびC末端に位置された精製タグに、遺伝子を発現するための調節シグナルに操作可能に連結されるように、Clostridumタンパク質に関して遺伝子をコード化する核酸ベクターを構築する工程、
Bacillus細胞の原形質体をベクタ―と接触させる工程、および
選択可能なマーカーを有し、形質転換体の細胞に組換えタンパク質を発現する形質転換体を選択する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
前記Bacillusが、B.megaterium、B.subtilis、B.thuringiensis、B.cereus、およびB.licheniformisの群から選択されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記Clostridiumが、C.difficile、C.perfringens、C.sordellii、C.septicum、C.tertium、C.botulinumなどの群から少なくとも1つ選択されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記核酸ベクタ―を構築する工程が、無毒の変異型C.difficileのTcdAタンパク質をコード化する第1核酸配列、および無毒の変異型C.difficileのTcdBタンパク質をコード化する第2核酸配列を組み合わせる工程を含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質が、少なくとも1つの変異を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの変異が、少なくとも1つのアミノ酸の置換または欠失を含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの変異が、GTドメインに位置することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの変異が、トリプトファンのアラニンとの置換またはアスパラギン酸のアスパラギンとの置換を含むことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記タンパク質が複数の変異を含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記遺伝子が、TcdBタンパク質に由来する第1アミノ酸配列、およびTcdAタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を含む組換えキメラcTxABタンパク質をコード化することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記TcdBタンパク質アミノ酸配列が、GTドメインを含み、および前記TcdAタンパク質アミノ酸配列が、RBD、CPDおよびTMDドメインを含み、前記タンパク質ドメインが、タグの除去のためのプロテアーゼ切断部位を有する精製タグに操作可能に連結されることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記遺伝子が、TcdAタンパク質に由来する第1アミノ酸配列、およびTcdBタンパク質に由来する第2アミノ酸配列を含む組換えキメラTxB−Arタンパク質をコード化することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記TcdAタンパク質アミノ酸配列が、RBDドメインを含み、および前記TcdBタンパク質アミノ酸配列が、GT、CPDおよびTMDのドメインを含み、前記タンパク質ドメインが、タグの除去のためのプロテアーゼ切断部位を有する精製タグに操作可能に連結されることを特徴とする請求項47に記載の方法。

【図16】
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【図19】
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【図26】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【公表番号】特表2013−512916(P2013−512916A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542181(P2012−542181)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058701
【国際公開番号】WO2011/068953
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(507333649)タフツ ユニバーシティー (4)
【Fターム(参考)】