説明

免疫原としてマスクされたガン細胞を用いて産生された、ガンに対する抗体

本発明は、ガン細胞には結合するがヒトの血球にも組織細胞にも結合しない抗体を産生する方法に関する。この方法は、ヒト非ガン性細胞により免疫された非ヒト被験体から抗血清を集める工程;該抗血清をガン細胞と接触させてマスクされたガン細胞を提供する工程;該マスクされたガン細胞により被験体を免疫する工程;および該ガン細胞に結合する抗体を回収する工程を包含する。マスクされたガン細胞を提供する別の方法は、このガン細胞を、非ガン性ヒト細胞上に存在する受容体に対する1または複数の抗体と接触させることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は米国仮特許出願第60/586,812号(2004年7月10日出願)の優先権を主張する(その開示はその全体が本明細書中に援用される)。
【0002】
(技術分野)
本開示は、望ましい特徴を有する抗体を多様な抗体の集団から選択するための方法に関連する。より具体的には、本開示は、ガン細胞には結合するが、ヒトの赤血球にも、白血球にも、正常な組織細胞にも結合しない抗体を同定するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
モノクローナル抗体技術は、ガンの診断剤、治療剤および予後診断のための重要なツールを作製してきた。ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイまたは他の技術によるマウスモノクローナル抗体の作製は、基礎科学および臨床化学の両方のために特に重要である。臨床適用において用いられる抗ガンモノクローナル抗体(例えば、HerceptinおよびC225)は、もともと、マウスから産生された。これらは、乳ガン、卵巣ガンおよび頭部/頸部ガンなどの固形腫瘍を有する患者にとって有益である。
【0004】
多くの研究が、細胞全体による免疫、続いて、抗体スクリーニングにより、ガン細胞の表面分子に結合する抗体を同定するために行われている。このアプローチの理論は非常に魅力的ではあるが、数年の努力の後でも、多くの治療抗体が見出されたわけではない。このアプローチは、いくつかの理由から困難であることが判明している。
【0005】
1つの理由は、免疫のために用いられる細胞上の種々の抗原エピトープの異なる免疫原性に起因して、標準的な免疫手順によっては、所望の特異性を有するモノクローナル抗体をしばしば提供できないことである。より多くの免疫原性エピトープまたはタンパク質に好都合な免疫応答が優勢である。伝統的な免疫は通常、制限されたエピトープおよび免疫優勢分子に対するモノクローナル抗体の作製をもたらす。
【0006】
細胞全体による免疫についての別の困難性は、細胞全体による免疫が、高い抗原密度を有する制限された表面抗原については効率的な抗原濃度を提供するが、他の表面分子についてはずっと低い有効抗原濃度を提供することである。表面抗原の複雑さから、伝統的な細胞全体による免疫およびスクリーニングは、広範囲の抗体特異性を生じないかもしれない。
【0007】
また、ガン細胞は、循環中の赤血球および白血球を含め、正常細胞と多くの共通の表面抗原を共有する。それゆえ、マウスによる免疫応答は、ガン細胞が免疫原として用いられたとしても、腫瘍特異的でないかもしれない。ファージディスプレイ技術は、腫瘍特異的抗体を選択するための強力なツールである。しかし、これは、ヒトのガン細胞により免疫したマウス、ウサギおよびニワトリのような動物から腫瘍特異的抗体を選択するためのチャレンジである。特に、正常な細胞およびガン細胞の両方にある共通の抗原に対する抗体は、治療用抗ガン抗体についてのスクリーニングを激しく妨害して、細胞全体でのパンニングアプローチの成功を顕著に減らし得る。実際、7種類の異なるガン細胞株により免疫したマウスからの抗血清は、ヒト赤血球(RBC)と交差反応することが見出されている。表1を参照のこと。それゆえ、腫瘍特異性抗体は、時間がかかり、非生産的であり得る。
【0008】
【表1】

サブトラクティブ免疫は、上記の課題を解決するために用いられている。サブトラクティブ免疫では、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の生成を高めることができる異なった免疫寛容化アプローチが利用される。サブトラクティブ免疫は、目的とする抗原に構造的または機能的に関連し得る免疫優性抗原またはそうでない場合には望ましくない抗原に対して宿主動物を寛容化することに基づいている。宿主動物の寛容化は3つの方法(ハイゾーン寛容化、新生児寛容化または薬物誘導寛容化)のうちの1つによって達成されている。寛容化された動物には、所望の抗原が接種され、その後の免疫応答によって抗体が生じ、次いで所望の反応性についてスクリーニングされる。しかしながら、最近の研究では、新生児「寛容化」は、免疫学的意味での寛容性ではなく、免疫偏向を誘導することが示唆された。新生児は免疫特権を有しないが、免疫様式に依存して、T2応答またはT1応答を生じさせる。シクロホスファミドを用いた化学的免疫抑制は最も効果的なサブトラクティブ免疫技術である。当業者が理解するように、正常細胞による免疫、その後のシクロホスファミド処置は、正常細胞の抗原との反応性を有する増殖中の免疫細胞のすべてを殺すことになる。しかしながら、このレジメンではまた、B細胞の成熟および分化のために要求されるヘルパーT細胞のすべてが殺される。従って、このレジメンの後に、腫瘍抗原に対して特異的な抗体を誘発させるためのガン細胞免疫が続く場合、IgMイソタイプの低親和性抗体のみが生じるだけである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ガン細胞の表面分子に結合するが正常細胞には結合しない抗体を同定するための改善された方法を有することは好都合である。ガン罹患個体を処置するための改善された方法もまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
ガン細胞には結合するがヒトの血球にも組織細胞にも結合しない抗体は、マスクされたガン細胞を免疫プロセスにおいて使用して同定される。抗体のライブラリーは、正常(すなわち、非ガン性)ヒト細胞で予め免疫された被験体からの抗血清と接触されることによりマスクされたガン細胞により被験体を免疫することにより作製される。あるいは、このガン細胞は、免疫の前に、正常(すなわち、非ガン性)細胞上のエピトープに対する抗体と接触させられる。マスキングのために用いられる抗体は、例えば、抗血清からの抗体または組換え産生された抗体を含め、任意の供給源由来であり得る。いくつかの実施形態では、マスクされていない優勢でないエピトープに対する抗体応答は、高度免疫原ハプテンであるジニトロフェニル(DNP)によるマスクされた細胞の改変により、必要に応じて増強される。ジニトロフェニルは、ガン細胞を免疫系によってより容易に認識されるようにする。マスクされたガン細胞上の、ブロックされていない腫瘍特異性エピトープに応答して産生される抗体ライブラリーが作製される。抗体ライブラリーは、正常細胞を用いた負の選択プロセスに必要に応じて供され得る。次いで、抗体ライブラリーはガン細胞についてパンニングされて、ガン細胞に結合するがヒトの血球にも正常細胞にもほとんどまたは全く結合を示さない抗体が同定される。これらの抗体は、治療目的および/または診断目的のために使用され得る。
【0011】
従って、1つの実施形態では、本発明の方法は、非ガン性ヒト細胞により免疫された非ヒト被験体から抗血清を集める工程;該抗血清をガン細胞と接触させてマスクされたガン細胞を提供する工程;該マスクされたガン細胞を含む組成物により被験体を免疫する工程;および該ガン細胞に結合する抗体を該被験体から回収する工程を包含する。
【0012】
本発明の別の実施形態では、非ガン性ヒト細胞上に存在する受容体に対する1または複数の抗体とガン細胞を接触させてマスクされたガン細胞が提供され;該マスクされたガン細胞により被験体が免疫され;そして該ガン細胞に結合する抗体が該被験体から回収される。
【0013】
特定の実施形態では、ガン細胞に結合する抗体は、前記マスクされたガン細胞を含む組成物により免疫された被験体から抗体ライブラリーを作製すること;該ライブラリーから、ヒト赤血球およびヒト白血球に結合する抗体、ならびに少なくとも1つの他のタイプの非ガン性細胞に結合する抗体を除く工程;ならびにその後、該ガン細胞に結合する抗体を該ライブラリーから回収する工程により回収される。他の実施形態では、ガン細胞に結合する抗体は、前記マスクされたガン細胞により免疫された被験体から臓器を集める工程;抗体を発現するハイブリドーマを作製する工程;および該ガン細胞に結合するがヒト赤血球にもヒト白血球にも結合しない抗体についてスクリーニングする工程により回収される。特に有用な実施形態では、ガン細胞に結合する抗体を回収する工程は、ファージディスプレイされた抗体ライブラリーを、マスクされたガン細胞により免疫された被験体から集められた細胞を使用して作製する工程;ヒト赤血球に結合するライブラリーメンバーを除いて、サブライブラリーを作製する工程;および該ガン細胞に結合する抗体を呈示するメンバーを該サブライブラリーから回収する工程により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
モノクローナル抗体を産生するための本発明の方法は、マスキング免疫、続いて抗体のファージディスプレイおよび選択のための細胞全体でのパンニングを利用する。この方法は、免疫系がB細胞増幅および抗体の親和性成熟によって以前に遭遇したエピトープに対する二次応答を生じる固有の能力を利用する。本発明の方法では、ガン細胞全体および/または正常細胞全体における共通のエピトープは、正常細胞に対する抗血清または特異的抗体を用いてブロックされる。次いで、マスクされた細胞は免疫のために使用される。通常、この免疫プロセスは、数回繰り返される。共通のエピトープの持続した遮断は、これらのエピトープに対する二次応答が生じるのを妨げ、一方、ガン細胞に特異的な、ブロックされていないエピトープは、二次応答を生じ得る。このことは、低密度で免疫原性がより低いが腫瘍特異的なエピトープに対する小さな開始応答が、各々の引き続いたマスキング応答において増幅されることさえ生じる。現在記載される方法は、伝統的な免疫における多くの問題を克服する。治療目的のためには、本明細書に従って記載される方法に従って同定される抗体は、正常細胞に対して副作用を有さないべきである。この特徴は、がん治療のための抗体の安全性プロフィールを確実にする。
【0015】
特定の実施形態では、マスクされたガン細胞上のマスクされていない優勢でないエピトープに対する抗体応答の強化が、ハプテン(例えば、ジニトロフェニル(DNP)など)による修飾によって達成される。DNPは、ガン細胞を、免疫系によってより容易に認識されるようにする非常に免疫原性のハプテンである。DNPは、ハプテンの立体配置を有する芳香族化合物(ニトロ基で二置換されたベンゼン環)である。ハプテンは、抗体に結合することができるが、それ自身では抗体応答を誘発することができず、しかし、キャリアタンパク質に連結されたときには抗体応答を誘発する抗原性決定基である。ガン細胞の表面が、正常な細胞に対して惹起された抗体でコーティングされる場合、優勢な抗原のほぼ全てが、抗体応答の活性化について、優勢でない、潜在的に低密度の抗原のみを残してマスクされる。これらのマスクされていない優勢でないガン特異的抗原に対して有効な免疫応答を惹起することは、「干草の山で針を探す」シナリオと類似する。これらの優勢でないマスクされていない抗原の免疫原性を増強する1つの方法は、DNPを用いてこれらを修飾することである。DNP修飾された自己ガン細胞ワクチンは、遅延型過敏性、前炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γなど)の放出、ならびに、CD4およびCD8の両方のT細胞サブセットの増幅によって特徴づけられる堅固な免疫応答を誘発することが示されている。低密度抗原のDNP修飾はB細胞を免疫原部位(マスクされたガン細胞)に優先的に引き寄せ、DNP修飾の抗原に対する応答におけるB細胞の認識および増幅を可能にする。免疫原へのB細胞移動およびその後の増幅のプロセスは炎症促進性(proinflammatroy)サイトカインの放出によってさらに助けられ得る。DNP修飾を、当業者の範囲に含まれる様々な技術を使用して、例えば、Berdら、J Clin Oncol 22:403(2004);およびSojkaら、Cancer Immunol Immunother 1:200(2002)に記載される技術などを使用して達成することができる。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、選択された標的に結合することができる、完全な抗体または抗体フラグメントをいう。Fv、scFv、Fab’およびF(ab’)2、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、操作された抗体(キメラ抗体、CDRグラフト化抗体およびヒト化抗体、完全なヒト抗体、ならびに、人為的に選択された抗体が挙げられる)、ならびに、ファージディスプレイ技術または代わりの技術を使用して作製される合成または半合成の抗体が含まれる。小さいフラグメント(例えば、FvおよびscFvなど)は、その小さいサイズ、および、その結果としての優れた組織分布によって、診断適用および治療適用のために有利な性質を有する。
【0017】
本発明の抗体は、抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって同定される。抗体は、例えば、免疫剤および所望される場合にはアジュバントの1回または複数回の注射によって被験体において惹起させることができる。本発明の方法のける免疫剤には、その表面のエピトープが本明細書の以下においてより充分に記載されたとおりマスクされた、任意のタイプのガン細胞またはガン細胞フラグメントが含まれ得る。代表的には、免疫剤および/またはアジュバントは複数回の皮下注射または腹腔内注射および/または静脈内追加免疫によって被験体に注射される。好適なアジュバントとしては、ガン細胞ワクチンに関連して使用されているアジュバント、例えば、非メチル化CpGモチーフおよびカルメットゲラン杆菌(BCG)などが挙げられるが、これらに限定されない。免疫プロトコルが、過度な実験を用いることなく当業者によって選択され得る。
【0018】
任意のタイプのガン細胞を、本発明の方法に従って被験体を免疫するために使用することができる。好適なタイプのガン細胞としては、メラノーマ、乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、結腸ガン、頭頸部ガン、肺ガン、腎臓ガン、胃ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、膀胱ガンおよび脳のガンが挙げられるが、これらに限定されない。ガン細胞は様々な供給源から得ることができる。例えば、ガン細胞の一次サンプルを外科的技法または生検によって患者から直接に得ることができる。ガン細胞はまた、National Development and Research Institutes,Inc.(「NDRI」)(New York、NY)から入手することができる。様々なタイプのガン細胞がまた、American Type Culture Collection(Manassas、VA)(「ATCC」)または他の寄託機関(例えば、National Cancer Instituteなど)に寄託されており、そのような機関から入手可能である。ガン細胞のフラグメント(例えば、細胞膜またはミトコンドリアなど)が免疫剤として使用される場合、当業者の範囲に含まれる様々な技術を、ガン細胞を破壊し、免疫における使用のための好適な成分を単離するために用いることができる。
【0019】
免疫の前に、ガン細胞上のエピトープの一部がマスクされる。マスキングは、ヒトの血球もしくは正常(すなわち、非ガン性)ヒト細胞により免疫された被験体からの抗血清、あるいはヒトの血球または正常細胞上の受容体に結合することが公知である特異的抗体を用いて、達成され得る。本開示によって提供されるガイダンスを考慮すると、当業者は、過度の実験を伴うことなく、マスキングを達成するための適切なパラメーターを容易に決定できる。
【0020】
特定の実施形態では、正常細胞に対する抗ガン血清の交差反応性を低減するために、正常細胞に対する抗体のプールを用いて、免疫中のガン細胞をマスクする。抗血清は、ヒトの赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血球全体、正常な組織細胞(正常細胞株または後期胎児組織細胞、または異なるタイプの正常細胞の組合せが挙げられる)により適切な被験体を免疫することにより生成される。次いで、ヒトのガン細胞は、細胞全体での免疫におけるガン細胞の使用の前に、正常細胞に対する抗血清とともにインキュベートされて、共通の表面分子がマスクされる。
【0021】
当業者が認識するように、正常細胞に対する抗血清は、抗体依存性細胞傷害性(antibody−directed cellular cytotoxicity;ADCC)または補体依存性細胞傷害性(complement−directed cytotoxicity;CDC)をインビボで誘導し得、そしてガン細胞死を引き起こし得、これは、マスキング免疫の成功確率を低減し得る。この場合、Fabフラグメントのプールを用いて表面分子をマスクする。Fabフラグメントは、Fc領域を欠き、Fc領域は、ADCCおよびCDCに必須である。
【0022】
Fabフラグメントを用いて表面マスキングを達成する少なくとも2つの方法が存在する。1つの実施形態では、正常細胞により免疫した被験体の脾臓、リンパ節および骨髄からのFabライブラリーが構築され得る。Fabフラグメントは、正常細胞でのファージディスプレイされたライブラリーの数回の細胞全体でのパンニングにより選択される。選択されたFabフラグメントまたはscFvフラグメントのプールが増幅され、そして正常細胞に対する結合について確認され、次いでマスキング免疫のために用いられる。このプロセスの1つの利点は、選択プールが、正常細胞においてよりも高い免疫原性および密度を有する抗原に対する抗体からなることである。
【0023】
さらに、正常細胞により免疫されたマウスからの血清IgGから調製されたFab、scFvフラグメントおよび/またはF(ab’)の同じプールは、正常細胞に対する結合物(binder)を除外するためのインビトロでのエピトープマスキングのために用いられ得る。この目的のための抗体の供給が制限されないので、前者が好ましい。インビトロでのエピトープマスキングのために、正常細胞により免疫されたマウスからの血清IgGから調製された選択されたFabまたはF(ab’)のプールは、ライブラリーファージとのインキュベーションの前に標的ガン細胞と混合され、ガン細胞および正常細胞の両方に見出されるエピトープがブロックされる。このことは、パンニングによって選択されるFabがガン特異的標的のみに結合し得ることを確実にする。
【0024】
別の実施形態では、Fabは、正常細胞に対する抗血清から精製された総IgGのペプシン消化によって作製され得る。FabおよびF(ab’)フラグメントは、Fc領域の切断後に精製され得、次いでマスキング免疫のために用いられ得る。
【0025】
強化されたマスキングは、ガン細胞注射の後にさらなる抗体を注射することにより達成され得る。この目的のためには、さらなるFab、scFvまたは抗血清は、毎週1〜2回静脈内注射され得る。
【0026】
FabフラグメントまたはscFvフラグメントの組合せはまた、マスキング免疫のために用いられ得る。これらとしては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:赤血球または正常細胞上の高密度抗原(既知または未知)に結合する、細胞全体でのパンニングにおいて予め選択された精製された抗体;正常細胞に対する精製されたマウスIgG抗体。正常細胞上の受容体に対する他の抗体は、当業者に公知である。さらに、特異的な望ましくない標的に対するFabフラグメントまたはscFvフラグメント(例えば、Her2/neuおよびEGF受容体に対する抗体)が含まれ得る。本明細書に記載したこのような抗体の単一の試薬または種々のタイプの抗体の組合せは、ガン細胞免疫の前に表面分子をマスキングするために用いられ得る。
【0027】
一旦免疫応答が被験体において誘発されると、抗体を選択プロセスのために集めることができる。抗体を産生または含有する組織からの細胞が、最後の免疫が行われてから代表的には約3日後〜5日後に被験体から集められる。好適な組織としては、血液、脾臓、リンパ節および骨髄が挙げられる。
【0028】
一旦細胞が集められると、RNAが、当業者に知られている技術を使用してその細胞から単離され、コンビナトリアル抗体ライブラリーが調製される。一般に、コンビナトリアル抗体ライブラリーを調製するための技術は、抗体の単離されたRNAを使用して、抗体またはその一部分(例えば、軽鎖および/または重鎖など)をコードする標的配列を増幅することを含む。従って、例えば、天然では多様である抗体mRNAのサンプルを用いて出発して、第1鎖cDNAを、テンプレートを提供するために作製することができる。その場合、従来のPCRまたは他の増幅技術を、ライブラリーを作製するために用いることができる。いくつかの実施形態では、抗体Fabフラグメント(IgG重鎖フラグメントに複合体化されたκ軽鎖またはλ軽鎖(Fd))を発現するファージライブラリーが、米国特許出願第10/251,085号(その開示は本参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載される方法を使用してプラスミドベクターにおいて構築される。
【0029】
次いで、ガン細胞に結合する抗体は、当業者の範囲内の技術(例えば、細胞全体のパンニング、ELISAまたはFACSなど)を用いてライブラリーから選択され得る。
【0030】
正常細胞に結合する抗体の全てが除かれることを確実にするのを補助するために、ヒト血球(赤血球または白血球または両者のいずれか)、および、必要に応じて、正常な(すなわち、非ガン性の)組織細胞が、必要に応じて、ライブラリーのスクリーニングの前に厳しいサブトラクションを行う際の吸収剤として使用される。サブトラクションプロセスにおいて使用される適切なヒト正常組織細胞としては、肝臓、肺、心臓、腎臓、腸、胃、膀胱、脾臓、膵臓、骨髄、脳、胸腺、前立腺、卵巣、精巣および皮膚などのような組織から単離された内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞および他の細胞が挙げられる。適切な組織は、例えば、正常なドナーから、または、後期段階の胎児から、または、これらの組織から樹立された細胞株から得ることができる。
【0031】
サブトラクションは、抗体のライブラリーを正常な細胞と接触させ、その後、正常な細胞を、それに結合した何らかの抗体と一緒に除くことによって行うことができる。細胞の除去を、当業者の範囲に含まれる任意の技術(例えば、遠心分離など)を使用して達成することができる。未結合の抗体を含有する上清が保持される。なぜならこれは、上清が、正常な細胞に対してではなく、ガン細胞に結合する抗体のサブライブラリーを含有する部分であるからである。正常な細胞に結合する抗体のすべてを確実に除くことを助けるために、複数回のサブトラクションが行われ得る。特に有用な実施形態において、赤血球を使用する少なくとも3回のサブトラクションが行われる。他の実施形態において、複数回のサブトラクションが、少なくとも2つのタイプの非ガン性細胞(すなわち、少なくとも1つのタイプの血球および少なくとも1つの他のタイプの正常な組織細胞)を使用して行われる。好ましくは、他の正常な組織は、免疫のために使用されたガン細胞と同じタイプの組織に由来する。例えば、被験体が膵臓ガン細胞により免疫されたならば、正常な(すなわち、非ガン性の)膵臓組織細胞が、サブトラクションを行うために使用される。
【0032】
十分な数のライブラリーメンバーを提供するために、サブライブラリーは、各回のサブトラクションの間において、そして/または、ガン細胞に結合する抗体についてのスクリーニングの前に増幅することができる。増幅のための技術は当業者の範囲内である。
【0033】
負の選択プロセスの後、組換えライブラリーに由来する抗体を、標的特異性に基づいて抗体を単離するために、ガン細胞またはガン細胞に由来するポリペプチドを使用して選択することができる。ガン細胞に結合する抗体を選択するための適切な技術は当業者の範囲内である。
【0034】
ハイブリドーマ法もまた、所望の特徴を有する抗体を同定するために使用することができる。そのような技術は当業者の範囲内である。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物が代表的には、ガン細胞に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球を誘発するために、(本明細書の上記に記載されるようにマスクされた)ガン細胞により免疫される。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することができる。その後、リンパ球は、好適な融合剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)を使用して不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press(1986)、pp.59〜103;Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker,Inc.、New York(1987)、pp.51〜63を参照のこと、これらの開示は本参照により本明細書中に援用される)。ハイブリドーマ細胞は、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する適切な培養培地において培養される。その後、ハイブリドーマ細胞が培養されている培養培地を、当業者の範囲に含まれる技術を使用して、ガン細胞に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができ、また、上記の通り負の選択に供してもよい。所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によってサブクローン化し、そして標準的な方法によって増殖させ得る。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物において腹水としてインビボで増殖させ得る。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地または腹水から単離または精製される。
【0035】
ガン細胞に結合するが、正常な細胞に対する結合をほとんどまたは全く示さないモノクローナル抗体を、当業者の範囲に含まれる組換えDNA法によって作製することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を使用して、(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定することができる。(抗体を同定するために用いられた特定の選択方法またはスクリーニング方法に依存して)ハイブリドーマ細胞またはファージがそのようなDNAの好ましい供給源として役立ち得る。一旦単離されると、DNAを発現ベクターに入れることができ、その後、発現ベクターは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、宿主細胞(例えば、そうでない場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しない、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは、NSO細胞または他のミエローマ細胞など)にトランスフェクションされる。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインについてのコード配列を相同的なマウス配列の代わりに置換することによって、または、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列のすべてまたは一部を免疫グロブリンのコード配列に共有結合的に連結することによって改変することができる。
【0036】
本開示に従って、ガン細胞には結合するが、正常な細胞に対する結合をほとんどまたは全く示さない本発明の抗体にはさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれ得る。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラな免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)または他の抗原結合性部分配列など)である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラットまたはウサギなど)のCDR(ドナー抗体)に由来する残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体あるいは移入されたCDR配列またはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含む場合がある。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(代表的には2つ)の可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが1つまたは複数の非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そして、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部、代表的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む(Jonesら、Nature,321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature,332:323〜329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992))。
【0037】
非ヒト抗体をヒト化するための方法が当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、1個または複数個のアミノ酸残基がヒト以外の供給源からヒト化抗体に導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、代表的には「ドナー」の可変ドメインから得られるので、「ドナー」残基と呼ばれることが多い。ヒト化は本質的には、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって、Winterおよび共同研究者(Jonesら、Nature、321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536(1988))の方法に従って実施され得る。従って、そのような「ヒト化」抗体は、実質的にインタクトではないヒト可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラな抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際、ヒト化抗体は代表的には、すべてまたは一部のCDR残基、および、可能であれば、一部のFR残基が、齧歯類抗体において類似した部位に由来する残基によって置換されたヒト抗体である。
【0038】
さらなる実施形態では、当業者に周知の方法によって本開示に従って抗体を用いる、ガン細胞において独特に発現されるタンパク質を同定するための方法が提供される。1つの方法では、Fab抗原またはscFv抗原は、免疫沈降および質量分析法により同定される。特に、これらの抗体についての抗原を同定するための1つのこのような方法では、scFvを用いて、細胞表面ビオチン化ガン細胞のミクロソーム画分から調製した溶解産物からの抗原が免疫沈降される。特に、ガン細胞は、PBS(pH8.0)中の0.5mg/mlスルホ−NHS−LC−ビオチンの溶液により30秒間にわたって標識される。PBSにより洗浄して未反応のビオチンを除去した後、細胞を窒素キャビテーションにより破壊し、そしてミクロソーム画分を分画遠心分離により単離する。ミクロソーム画分はNP40溶解緩衝液中に再懸濁され、そして正常なマウス血清およびプロテインAセファロースにより広範囲に予めクリアランスされる。抗原は、ラットHAアガロースビーズに結合したHAタグ化scFv抗体により免疫沈降される。免疫沈降後、抗原はSDS−PAGEにより分離され、そしてストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(AP)を用いてウェスタンブロットにより、またはクーマシーG−250染色により、検出される。ガン細胞に結合しない抗体は、陰性対照として用いられる。抗原のバンドはクーマシー染色ゲルから切り出され、質量分析(MS)によって同定される。免疫沈降した抗原はまた、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS)またはマイクロキャピラリー逆相HPLCナノエレクトロスプレータンデム質量分析(μLC/MS/MS)によって同定することができる。同定された抗原は、その後、当業者の範囲に含まれる技術を使用してそれに対するさらなる抗体を誘発させるための免疫原として使用され得る。
【0039】
本発明の抗体は一価の抗体であってもよい。一価の抗体を調製するための様々な方法が当該分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリンの軽鎖および改変された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖の架橋を妨げるように、一般にはFc領域内の任意のところで短縮化される。あるいは、関係したシステイン残基が、架橋を妨げるように、別のアミノ酸残基で置換されるか、または、欠失される。インビトロ方法もまた、一価の抗体を調製するために適切である。抗体のフラグメント(特に、Fabフラグメント)を作製するための抗体の消化を、当該分野で公知の慣用的な方法を使用して達成することができる。
【0040】
他の実施形態では、二重特異性抗体が意図される。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体(好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。この場合において、結合特異性の一方はガン細胞に対してであり、もう一方は任意の他の抗原に対するものであり、好ましくは、細胞表面のタンパク質または受容体または受容体サブユニットに対するものである。
【0041】
二重特異性抗体を作製するための方法が当業者の範囲内である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの重鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいている(MilsteinおよびCuello、Nature、305:537〜539(1983))。所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合することができる。融合は好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインの内部である。免疫グロブリン重鎖融合体、および、所望されるならば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別々の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に同時トランスフェクションされる。二重特異性抗体を作製するための例示的な現在知られている方法のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121:210(1986);国際特許出願公開WO96/27011;Brennanら、Science、229:81(1985);Shalabyら、J.Exy.Med.、175:217〜225(1992);Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547〜1553(1992);Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993);Gruberら、J.Immunol.、152:5368(1994);およびTuttら、J.Immunol.、147:60(1991)を参照のこと。
【0042】
本発明の抗体はガン患者に治療剤として投与することができる。本発明の抗体は、ヒトの血球または正常な組織細胞に対する結合をホトンドまたは全く示さないので、低下した副作用が、他の抗体治療と比較して観察され得る。
【0043】
本発明の抗体はまた、ガン性細胞をインビボで検出するために利用することができる。これは、抗体を標識し、標識された抗体を被験体に投与し、その後、被験体を画像化することによって達成される。本開示に従った診断的画像化のために有用な標識の例は、放射性標識(例えば、131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、H、14Cおよび188Rnなど)、蛍光性標識(例えば、フルオレセインおよびローダミンなど)、核磁気共鳴活性な標識(陽電子放射断層撮影法(「PET」)走査装置によって検出可能な陽電子放射同位体)、化学発光剤(例えば、ルシフェリンなど)および酵素マーカー(例えば、ペルオキシダーゼまたはホスファターゼなど)である。短距離放射線放出剤(例えば、短距離検出器プローブ(例えば、経直腸プローブなど)によって検出可能な同位体など)もまた用いることができる。これらの同位体および経直腸検出器プローブは、組み合わせて使用されたとき、前立腺窩再発および骨盤結節性疾患を検出することにおいて特に有用である。この抗体は、当該分野で公知の技術を使用してそのような試薬により標識され得る。抗体の放射性標識化に関連する技術については、例えば、WenselおよびMeares、Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy、Elsevier、N.Y.(1983)を参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。また、D.Colcherら、「Use of Monoclonal Antibodies as Radiopharmaceuticals for the Localization of Human Carcinoma Xenografts in Athymic Mice」、Meth.Enzymol.、121:802〜816(1986)も参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。
【0044】
本開示による放射性標識された抗体は、インビトロ診断試験のために使用することができる。抗体、その結合性部分、プローブまたはリガンドの比活性は、放射能標識の半減期、同位体純度、および、標識が生物学的因子にどのように組み込まれるかに依存する。免疫アッセイ試験では、比活性が高いほど、一般に感度が良好である。抗体を放射性同位体で標識するための様々な手順は、当該分野で一般に公知である。
【0045】
放射性標識された抗体を患者に投与することができ、ここで、放射性標識された抗体は、その抗体が反応する抗原を有する腫瘍に局在し、そして、放射性標識された抗体が、公知の技術を使用して、例えば、ガンマカメラまたは放射断層撮影法を使用する放射性核走査などを使用してインビボで検出または「画像化」される。例えば、A.R.Bradwellら、「Developments in Antibody Imaging」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W.Baldwin他(編)、pp.65〜85(Academic Press、1985)を参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。あるいは、陽電子放射長軸断面断層撮影走査装置(positron emission transaxial tomgraphy scanner)(例えば、Brookhaven国立研究所に設置された指定のPet VIなど)を使用することができ、この場合、放射性標識は陽電子(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)を放射する。
【0046】
発蛍光団および発色団で標識された生物学的因子を、当該分野で公知の標準的な部分から調製することができる。抗体および他のタンパク質は、約310nmまでの波長を有する光を吸収するので、蛍光性部分は、310nmを超える波長で、好ましくは、400nmを超える波長で実質的な吸収を有するように選択されるべきである。様々な適切な蛍光体および発色団が、Stryer、Science、162:526(1968);およびBrand,L.ら、Annual Review of Biochemistry、41:843〜868(1972)によって記載される(これらは本明細書に参考として援用される)。抗体を、従来の手順によって、例えば、米国特許第3,940,475号、同第4,289,747号および同第4,376,110号(これらは本明細書に参考として援用される)に開示される手順などによって蛍光性の発色団基で標識することができる。
【0047】
本発明の抗体はまた、ガン性細胞をインビボで殺すか、または除去するために利用することができる。これは、細胞傷害性薬物に結合した抗体を、そのような処置を必要とする被験体に投与することを含む。この抗体はガン細胞を認識するので、抗体が結合するそのような細胞はどれも破壊される。厳しいサブトラクション技術が使用されるので、破壊される正常な細胞の量は最小限である。
【0048】
本開示の抗体は、治療的薬物、放射線放出化合物、植物起源、真菌起源または細菌起源の分子、生物学的タンパク質、および、それらの混合物を含めて、様々な細胞傷害性薬物を送達するために使用することができる。細胞傷害性薬物は、細胞内で作用する細胞傷害性薬物であり得、例えば、短距離高エネルギーα線放射体をはじめとする短距離放射線放射体などが可能である。酵素活性な毒素およびそのフラグメントが、例えば、ジフテリア毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素の非結合性の活性なフラグメント、外毒素A(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サクリン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)のある種のタンパク質、ディアンチン(Dianthin)のある種のタンパク質、ヨウシュウヤマゴボウ(Phytolacca americana)のタンパク質(PAP、PAPIIおよびPAP−S)、ニガウリ(Morodica charantia)の阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(Saponaria officinalis)の阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトギリン(mitogillin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)およびエノマイシン(enomycin)によって例示される。免疫毒素の酵素活性なポリペプチドを調製するための手順が国際特許出願公開WO84/03508および同WO85/03508に記載される(これらは本明細書に参考として援用される)。ある種の細胞傷害性部分は、例えば、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキサート、ネオカルジノスタチンおよび白金に由来する。
【0049】
抗体を細胞傷害性薬剤と結合体化するための手順は、以前から記載されている。
【0050】
あるいは、抗体を、腫瘍部位において局在化したとき、細胞数個分の直径の殺傷をもたらす高エネルギー放射線放射体、例えば、放射性同位体(例えば、131I、γ線放射体など)などに結合することができる。例えば、S.E.Order、「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W.Baldwin他(編)、pp.303〜316(Academic Press、1985)を参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。他の好適な放射性同位体としては、α線放射体(例えば、212Bi、213Biおよび211Atなど)およびβ線放射体(例えば、186Reおよび90Yなど)が挙げられる。放射線治療は、前立腺ガンが比較的放射線感受性の腫瘍であるので、前立腺ガンに関連して特に効果的であることが期待される。
【0051】
抗体が、ガン細胞を殺すために、または除去するために単独で使用される場合、そのような殺傷または除去は、内因性の宿主免疫機能(例えば、補体媒介または抗体媒介による細胞の細胞毒性など)を開始させることによって行うことができる。
【0052】
(改変されていない抗体または毒素もしくは放射性同位体に結合されてかのいずれかとして)抗体投与経路は、既知の方法に従って、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、脳内経路、筋肉内経路、皮下経路、眼内経路、動脈内経路、クモ膜下経路、吸入経路または病巣内経路による注射または注入に従って、あるいは、持続放出システムによってである。抗体は好ましくは、注入またはボーラス注射によって連続的に投与される。抗体を局所様式または全身様式で投与することができる。
【0053】
本発明の抗体は、医薬的に許容され得るキャリアとの混合物で調製することができる。本適用の化合物を処方および投与するための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る。このような治療用組成物は、好ましくは液体または(凍結乾燥された)粉末エアロゾルとして、静脈内に、あるいは、鼻または肺を介して投与することができる。この組成物はまた、所望に応じて非経口的または皮下に投与することができる。全身投与されるとき、この治療用組成物は、無菌で発熱物質を含有せず、かつ、pH、等張性および安定性について十分に考慮して、非経口投与に許容され得る溶液であるべきである。これらの条件は当業者に公知である。
【0054】
使用に適切な医薬組成物には、本発明の抗体の1つまたは複数が、それらの意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療に効果的な量は、疾患の症状を防止するか、または軽減するか、または改善するために、あるいは、処置されている被験体の生存を延ばすために効果的な抗体の量を意味する。治療に効果的な量の決定は、特に、本明細書中に提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。治療に効果的な投薬量を、様々なインビトロ方法およびインビボ方法を使用することによって決定することができる。
【0055】
さらなる実施形態において、本明細書中前記に記載されるガン結合性抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAが作製される。用語DNAには、コードする一本鎖DNA、前記コードDNAおよびそれに対する相補的DNAからなる二本鎖DNA、または、これらの相補的な(一本鎖)DNAそのものが含まれる。
【0056】
さらに、本明細書中に開示されるガン結合性抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAは、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする真のDNA配列あるいはその変異体を有する酵素的または化学的に合成されたDNAであり得る。真のDNAの変異体は、1つまたは複数のアミノ酸が欠失されたか、あるいは、1つまたは複数の他のアミノ酸と交換された、上記抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAである。好ましくは、前記改変は、ヒト化および発現最適化の適用においては抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。変異体DNAという用語はまた、1つまたは複数のヌクレオチドが他のヌクレオチドによって置換され、その新しいコドンが同じアミノ酸をコードするサイレントな変異体を包含する。変異体配列という用語にはまた、縮重配列が含まれる。縮重配列は、限定されない数のヌクレオチドが、最初にコードされたアミノ酸配列の変化を生じさせることなく他のヌクレオチドによって置換されているという点で、遺伝暗号の意味の範囲内で縮重している。そのような縮重配列は、その異なる制限部位、あるいは、重鎖のマウス可変ドメインおよび/または軽鎖のマウス可変ドメインの最適な発現を得るために特定の宿主(特に、大腸菌)によって好まれる特定のコドンの頻度、あるいはそのような制限部位と頻度の両者に起因して有用であり得る。
【0057】
変異(体)の用語は、当該分野で公知の方法に従って真のDNAのインビトロ変異誘発によって得られるDNA変異体を含むことが意図される。
【0058】
完全な四量体免疫グロブリン分子の組み立ておよびキメラ抗体の発現のために、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードする組換えDNAインサートが、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコードする対応するDNAと融合され、その後、例えば、ハイブリッドベクターへの組み込みの後、適切な宿主細胞に移される。
【0059】
ヒトIGg重鎖定常ドメイン(例えば、γ1、γ2、γ3またはγ4、好ましくはγ1またはγ4)に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の重鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAもまた提供される。ヒト定常ドメインのκまたはλ(好ましくはκ)に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の軽鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAもまた提供される。
【0060】
別の実施形態は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインがスペーサー基によって連結される組換えポリペプチドをコードする組換えDNAに関連し、この組換えDNAは、必要に応じて、宿主細胞における抗体のプロセシングを容易にするシグナル配列、あるいは、抗体の精製を容易にするペプチドおよび/または切断部位および/またはペプチドスペーサーおよび/またはエフェクター分子をコードするDNAを含むか、あるいはそのようなシグナル配列とDNAの両者を含む。
【0061】
エフェクター分子をコードするDNAは、診断適用または治療適用において有用なエフェクター分子をコードするDNAであることが意図される。従って、毒素または酵素(特に、プロドラッグの活性化を触媒することができる酵素)であるエフェクター分子が特に示される。そのようなエフェクター分子をコードするDNAは、天然に存在する酵素または毒素をコードするDNAまたはその変異体の配列を有し、当該分野で周知の方法によって調製され得る。
【実施例】
【0062】
当業者が、本明細書中に記載される組成物および方法をより良好に実施することができるように、下記の実施例が例示目的のために示される。
【0063】
(実施例1)
(抗体フラグメント(Fab)L52−2を用いた、赤血球およびヒト前立腺ガン細胞株PC3上のCD55抗原のマスキング)
抗CD55抗体(Fab L52−2)(同時係属中の国際出願第PCT/US2005/024260(発明の名称「Methods For Discovering Antibodies Specific To Cancer Cells And Antibodies Discovered Thereby」、これは、Express Mailラベル番号EL983568264USで2005年7月8日に出願された;その開示はその全体が本明細書中に組み込まれる)において記載される通りに生成される)を大腸菌ER2738から精製し、そして細菌内毒素を0.4U/ml未満になるまで除去した。Fab L52−2のアミノ酸配列は、以下であると決定された:
【0064】
【化1】

CD55の短縮された細胞外ドメインを、マスキング免疫プロトコルの確認に用いた。CD55trTMD−Hisに対するFab L52−2の反応性を、ELISAにより確認する。ヒトの赤血球および前立腺ガン細胞(PC3細胞を細胞全体での免疫に用いた。両方のタイプの細胞は、高レベルのCD55をその細胞表面に発現する)。3×10細胞を皮下注射した。2週間の間隔を空けた合計4回の皮下注射を行った。静脈内ボーラスを、同じ量の細胞を用いて、最後の皮下注射の時点で添加した。各免疫群につき4匹のマウスを用いた:
i.群1:ヒトRBC単独
ii.群2:L52−2でマスクされたヒトRBC
iii.群3:PC3細胞単独
iv.群4:L52−2でマスクされたPC3細胞。
【0065】
マスキング反応を、各細胞注射の前に設定した。300nMのFab L52−2を3×10細胞とともに4℃にて30分間インキュベートした。これは、3×10個の細胞上の10個のCD55受容体をブロックするに充分なはずである。
【0066】
細胞全体での免疫後、免疫応答およびマスキング効果を、RBCおよびPC3細胞についてのFACS分析によって、そしてFab L52−2を用いたELISAによって評価した。両方のタイプの細胞は多くの共通の抗原をそれらの細胞表面に有するので、RBCおよびPC3細胞の両方に対するマウス血清中の交差反応性免疫応答が観察された。好首尾の免疫のために、RBCおよびPC3細胞についてのFACS分析は、以下の結果を示した:
v.群1(ヒトRBC単独):RBC(+),PC3(+)
vi.群2(L52−2でマスクされたヒトRBC):RBC(+),PC3(+)
vii.群3(PC3細胞単独):RBC(+),PC3(+)
viii.群4(L52−2でマスクされたPC3細胞2):RBC(+),PC3(+)。
【0067】
注射した両方のタイプの細胞は、それらの細胞表面に高レベルのCD55を発現する。マスキング免疫の成功を分析するために、ビオチンで標識したFab L52−2を用いた競合ELISAを実施する。手短に述べると、96ウェルプレートをCD55trTMD−His抗原によりコーティングし、そして免疫された血清をウェルに添加し、そして異なる希釈においてインキュベートする。ビオチンで標識されたFab L52−2を各ウェルに添加し、そしてインキュベートした。検出は、当業者の範囲内の方法を用いて達成される。Fabマスキングを用いていないマウスからの血清(群1および群3)はFab L52−2と充分に競合し、一方、Fabマスキングを用いたマウスからの血清(群2および群4)は競合しないか、または高濃度でのみ競合する。
【0068】
マスキング免疫の成功をまた、FACSにより分析し得る。手短に述べると、RBCまたはPC3細胞を、免疫された血清とともに、またはこの血清を伴わずにインキュベートし、次いでフィコエリトリン(PE)標識Fab L52−2を各反応物に添加する。マスクされていない免疫からの血清(群1および群3)はCD55に結合し、それゆえ、(PE)標識Fab L52−2に対するその後の結合が減少し、減少したFACSシグナルを与える。マスクされた免疫からの血清(群2および群4)は細胞性CD55に弱く結合し、強いFACSシグナルを生じる(PE)標識Fab L52−2の強い結合を可能にする。
【0069】
(実施例2)
マウスを、正常細胞株、正常ドナーおよび後期胎児組織から単離した正常細胞、正常血球およびWBCを含めた正常細胞で免疫した。免疫後、血清力価をFACSおよび細胞全体でのELISAにより確認した。適切な組織(脾臓、リンパ節および骨髄)をマスキングFabライブラリーのために集めた。抗血清および/またはFabプールを用いてマスキング免疫を行う。正常細胞に対するFabライブラリーを作製し、続いて数回の正常細胞パンニングを行う。遺伝子IIIをライブラリーDNAから除去する。個々のクローンを正常細胞について試験する。ポジティブクローンのプールを精製し、そしてマスキング免疫のために用いる。
【0070】
別々に、抗血清からのIgGを精製し、そしてパパインまたはペプシンで消化する。FabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントを精製し、そしてマスキング免疫のために用いる。
【0071】
マスキング免疫を達成するために、ガン細胞を以下の表に記載の通りのFab、F(ab’)、IgGまたは抗血清とともにインキュベートして、最大のマスキング効率およびマスクされていない抗原に対する最良の抗体応答を達成する。
【0072】
【表2】

表面マスキング後に、ガン細胞をBalb/cマウス、C57BL6マウスまたはA/Jマウスに注射する。増強されたマスキングのために、ガン細胞注射後に、正常な細胞に対する抗体を静脈内注射する。上記の通り、4回の細胞全体での免疫およびマスキングを実施する。血清をマウスから集めて、ガン細胞に対するFACSおよびELISAによって評価して、免疫応答を評価する。
【0073】
マスキング免疫が成功した場合、脾臓、リンパ節、骨髄および全血をマウスから集めて、抗体ライブラリーを作製する。抗体を腫瘍細胞全体でのパンニングおよび正常細胞サブトラクション(RBC、全血球、または正常組織細胞)によって選択する。スクリーニング手順としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:発現ELISA、ガン細胞および正常細胞に対する細胞全体でのELISA、ガン細胞および正常細胞を用いたFACS、正常組織アレイおよび腫瘍組織アレイでの免疫組織化学的確認、種々のガン細胞株を用いた腫瘍抗原のウェスタンブロット分析、免疫沈降および質量分析法による腫瘍抗原同定、細胞ベースの機能的アッセイ、腫瘍抗原強度の分析、抗体インターナリゼーションの分析、および適切なアッセイ。
【0074】
様々な改変が、本明細書中に開示された実施形態に対して行われ得ることが理解される。例えば、当業者は理解するように、本明細書中に記載される任意の具体的な配列は、抗体または抗体フラグメントの機能性に必ずしも悪影響を及ぼすことなくわずかに変化させることができる。例えば、抗体の配列における1個だけまたは複数個のアミノ酸の置換を、抗体またはフラグメントの機能性を破壊することなく頻繁に行うことができる。従って、本明細書中に記載される任意の具体的な抗体に対する同一性の程度が70%よりも高い抗体は本開示の範囲内であることが理解されるべきである。特に有用な実施形態では、本明細書中に記載される任意の具体的な抗体に対する同一性が約80%よりも高い抗体が意図される。他の有用な実施形態においては、本明細書中に記載される任意の具体的な抗体に対する同一性が約90%よりも高い抗体が意図される。従って、上記の記載は、限定として解釈すべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈しなければならない。当業者は、本開示の範囲および精神に含まれる他の改変を想定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ガン性ヒト細胞により免疫された非ヒト被験体から抗血清を集める工程;
該抗血清をガン細胞と接触させてマスクされたガン細胞を提供する工程;
該マスクされたガン細胞を含む組成物により被験体を免疫する工程;および
該ガン細胞に結合する抗体を該被験体から回収する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
非ガン性ヒト細胞上に存在する受容体に対する1または複数の抗体とガン細胞を接触させてマスクされたガン細胞を提供する工程;
該マスクされたガン細胞を含む組成物により被験体を免疫する工程;および
該ガン細胞に結合する抗体を該被験体から回収する工程
を包含する、方法。
【請求項3】
前記回収する工程が、
a)前記マスクされたガン細胞を含む組成物により免疫された被験体から抗体ライブラリーを作製する工程;
b)該ライブラリーから、
i)ヒト赤血球およびヒト白血球に結合する抗体、ならびに
ii)内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、肝臓細胞、肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、腸細胞、胃細胞、膀胱細胞、脾臓細胞、膵臓細胞、骨髄細胞、脳細胞、胸腺細胞、前立腺細胞、卵巣細胞、精巣細胞および皮膚細胞からなる群から選択される少なくとも1つの他のタイプの非ガン性細胞に結合する抗体
を除く工程;ならびに
c)その後、該ガン細胞に結合する抗体を該ライブラリーから回収する工程
を包含する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記回収する工程が、
a)前記マスクされたガン細胞を含む組成物により免疫された被験体から臓器を集める工程;
b)抗体を発現するハイブリドーマを作製する工程;および
c)該ガン細胞に結合するがヒト赤血球にもヒト白血球にも結合しない抗体についてスクリーニングする工程
を包含する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記除く工程が、
a)ヒト赤血球を前記ライブラリーと混合する工程;
b)該ヒト赤血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該ライブラリーの第1の部分を回収する工程;
c)ヒト赤血球を、該ライブラリーの第1の部分と混合する工程;
d)該ヒト赤血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該ライブラリーの第2の部分を回収する工程;
e)ヒト赤血球を、該ライブラリーの第2の部分と混合する工程;
f)該ヒト赤血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該ライブラリーの第3の部分を回収する工程;ならびに
g)該ライブラリーの第3の部分から、該ガン細胞に結合する抗体を回収する工程
を包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記除く工程が、ヒト白血球を該ライブラリーの少なくとも一部分と混合し、該ヒト白血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該ライブラリーの一部分を回収する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回収する工程が、
a)ファージディスプレイされた抗体ライブラリーを、マスクされたガン細胞を含む組成物により免疫された被験体から集められた細胞を使用して作製する工程;
b)ヒト赤血球に結合するライブラリーメンバーを除いて、サブライブラリーを作製する工程;および
c)該ガン細胞に結合する抗体を呈示するメンバーを該サブライブラリーから回収する工程
を包含する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
正常な組織細胞に結合するライブラリーメンバーを除く工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガン細胞が、メラノーマ細胞、乳ガン細胞、卵巣ガン細胞、前立腺ガン細胞、結腸ガン細胞、頭頸部ガン細胞からなる群より選択される、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記非ガン性ヒト細胞上に存在することが公知の受容体に対する1または複数の抗体が、補体受容体からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記マスクされた細胞が、前記免疫する工程において使用されるよりも前にハプテンと接触される、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ハプテンがジニトロフェニルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記回収する工程が、抗体ライブラリーをマスクされたガン細胞についてパンニングする工程を包含する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ライブラリーをマスクされたガン細胞についてスクリーニングする工程が、1または非ガン性ヒト細胞上に存在する受容体に対する複数の抗体とガン細胞を接触させることによりマスクされたガン細胞を用いることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非ガン性ヒト細胞上に存在する受容体に対する1または複数の抗体とガン細胞を接触させる工程が、IgGまたはIgG F(ab’)、Fab、およびscFvのようなフラグメントとガン細胞を接触させる工程を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、アジュバントをさらに含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記アジュバントが、非メチル化CpGモチーフおよびカルメットゲラン杆菌(BCG)からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2008−505921(P2008−505921A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520534(P2007−520534)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/024261
【国際公開番号】WO2006/017174
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】