説明

免疫原性の高いタンパク質マトリックスワクチン

本発明は、架橋した担体タンパク質マトリックスで封入された目的とする抗原を含む免疫原性組成物、そのようなワクチンの製造方法およびワクチンの投与方法に関し、低分子量(例えば直径が100nm未満)の粒子を除外するようにタンパク質マトリックス粒子の粒径を制御または選択することによって、タンパク質マトリックスの免疫原性、従って、ワクチンとしてのその有効性を高める。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2009年9月9日に出願された米国仮特許出願第61/276,183号の優先権を主張するものであり、その内容は本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、免疫原性組成物、ワクチンの製造方法およびワクチンの投与方法に関する。具体的には、本発明は、目的とする抗原が架橋した担体タンパク質マトリックスに封入されていることを特徴とするタンパク質莢膜マトリックスワクチンに関し、ここでは、タンパク質莢膜マトリックスの粒径は、本組成物の免疫原性を高めるように制御されている。より具体的には、本発明は、低分子量のマトリックス粒子(例えば、直径が100nm未満)が除かれたマトリックスワクチン調製物に関する。高免疫原性という利点は、直径が100nmより大きい平均粒径(すなわち、150nm、200nm、500nm、1ミクロン、2ミクロンまたはそれ以上の粒径が想定される)を有するように調製したマトリックスワクチン製剤で得られる。
【背景技術】
【0003】
多くの抗原、特に病原体の莢膜層に会合している抗原は、免疫応答をほとんどあるいは全く刺激しないため、それらの抗原に対する有効なワクチンを創り出すという試みを難しいものにしている。莢膜は、炭水化物、アミノ酸またはアルコールなどの有機化合物からなる高分子化合物で典型的に構成されている微生物の表面成分である。莢膜は化学的に非常に多様である。莢膜を構成する単量体単位(例えば、炭水化物)を、様々な分子配置で互いに結合させることができ、リン酸、窒素、硫酸および他の化学修飾基でさらに置換することができる。無傷の微生物莢膜の免疫原性は低いため、微生物は宿主免疫系のエフェクタ細胞から免れることができる。莢膜は、微生物が宿主マクロファージおよび多形核白血球によって取り込まれ、死滅することを防止する病原性因子になることもできる。
【0004】
莢膜に対する抗体は、補体を微生物の表面に固定することによって、封入された微生物に対する強力な防衛を提供し、それにより、それらの溶菌またはそれらのオプソニン化、取り込みならびに宿主免疫食細胞による死滅を引き起こすことができる。微生物の莢膜に対する最も強力な抗体はIgG抗体である。莢膜抗原は一般にT細胞非依存性抗原として分類されるが、それは、T細胞の助けを必要としない免疫応答を誘発し、通常は、長期間の免疫記憶応答を誘発しないからである。莢膜抗原に対するタンパク質の共有結合によって莢膜抗原が「T細胞依存性」となり、そのようなT細胞依存性抗原は、ヘルパーT細胞媒介性(T依存性)IgG応答を誘発する。
【0005】
抗原をより免疫原性にし、理想的にはT細胞依存性にする様々な方法が研究されている。多くの場合、微生物の表面多糖の断片を単離することによって、微生物の莢膜中に自然に存在する抗原を認識する免疫応答を誘発することができる免疫原性抗原を得る。多価免疫原を得るために抗原を担体タンパク質に共有結合させると、抗原の免疫原性が非常に高まり、また、所望のT細胞依存性免疫応答(または免疫記憶)が促進され、それにより、宿主を抗原保有微生物による続発性感染から保護することができることも実証されている。例えば、非結合型肺炎球菌ワクチン、例えばメルク社製Pneumovax(登録商標)は、個体の侵襲性肺炎球菌感染症に対して有効であるが、(例えば、幼児において)生涯にわたる免疫および絶えず続く再免疫の回避を可能にする免疫記憶および所望の防御免疫を誘発するのには有効でない場合が多い。タンパク質担体に結合した複数の肺炎球菌多糖抗原を有するファイザー社製Prevnar(登録商標)などの結合型ワクチンは、2ヵ月の乳児にさえも高い免疫原性があり、かつT細胞依存性免疫を誘発することを示した。
【0006】
しかし、結合型ワクチンは免疫学的に有望であるが、極めて製造が難しく、かつ複雑(および高価)になり得るため、それらを必要とする世界中の全ての患者および患者集団にそれらを提供することができない。例えば、Prevnar(登録商標)の場合、結合に使用される7種類の多糖抗原を提供するために用いられる各肺炎連鎖球菌株をバイオリアクタで増殖させ、その細胞を回収し、多糖を抽出、精製および加水分解して適当な大きさにし、次いで、個々の抗原をタンパク質担体に結合させ、その複合体を再精製し、同様の方法で調製したさらなる6種類の他の多糖−タンパク質複合体(結合体)と混合し、最後に、複数結合混合物にミョウバンをアジュバント(免疫補助剤)として添加する。七価のPrevnar(登録商標)ワクチンの製造には200を超えるGMP工程が存在すると推定される。
【0007】
近年では、タンパク質マトリックスワクチンは、結合型ワクチンに代わるものとして提案されている。米国特許出願公開第2008−0095803号を参考されたく、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。目的とする抗原を担体に共有結合させるのではなく、所望の抗原の存在下で担体タンパク質を架橋して調製されるタンパク質マトリックスワクチンでは、抗原を担体タンパク質マトリックスに封入する。抗原の担体タンパク質への有意な共有結合が回避されて、抗原はマトリックス形成(架橋反応)中にタンパク質担体に封入されることでマトリックスに会合したままである。そのようなタンパク質マトリックスワクチンは、抗原のみを用いて調製したワクチンよりも非常に高い免疫原性を有することが分かり、タンパク質マトリックスワクチンは、結合型ワクチンによって認められる種類の免疫原性(およびT細胞依存性免疫の誘発)も達成することができる。そのような利点は、結合型ワクチンを製造するために必要な多くの処理工程および結合反応を、より少ない工程(例えば半分)および結合反応で達成される。
【0008】
タンパク質マトリックスワクチンによっていくつかの利点が得られるが、タンパク質マトリックスワクチンによって誘発される抗原特異的な抗体力価は、それが利用可能な場合に対応する結合型ワクチンによって誘発される力価よりも著しく低い場合が多い。従って、この新興技術の科学的将来性ならびに製造および費用上の利点を活用するために、タンパク質マトリックスワクチンの免疫原性を高める手段を得ることは、本分野では長く続く技術的問題である。高い免疫原性もしくは効力を有する改良型タンパク質マトリックスワクチンがなお必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、(1)目的とする抗原および(2)担体タンパク質を含む免疫原性組成物に関し、ここでは、該担体タンパク質は架橋していてタンパク質マトリックスを形成しており、該目的とする抗原は該タンパク質マトリックスに封入されており、例えば、該組成物は直径が100nmより大きい平均粒径を有する高分子量のタンパク質マトリックス粒子で構成される。そのような組成物は、抗原および担体タンパク質成分を混合し、架橋反応を開始して該担体タンパク質の架橋を引き起こした後、該反応生成物を処理して、より低分子量の化学種(例えば、直径が100nm未満の化学種)を除外することにより、容易に調製してもよい。本発明に係る高分子量のタンパク質マトリックス粒子からなるタンパク質マトリックスワクチン組成物は、低分子量のタンパク質マトリックス粒子からなる組成物またはより低分子量のタンパク質マトリックス粒子を含む広範囲の粒径を有する組成物と比較して、高い免疫原性を有する。
【0010】
本発明は、より低分子量の粒子(直径が100nm未満)を除外するように該組成物のタンパク質マトリックスの粒径を選択する工程、または直径が100nmより大きい粒径を含むように該組成物の該タンパク質マトリックスの粒径を選択する工程を含む、タンパク質マトリックスワクチン組成物の免疫原性を高める手段も提供する。本発明に係る好ましい組成物は、直径が120〜2000nmの範囲の粒径を有するか、あるいはその範囲内から選択された粒子を主に含む。好適な組成物は、該架橋反応混合物のサイズ分別および高分子量の化学種からなる所望の画分の選択によって、該抗原含有タンパク質マトリックスの形成直後に調製してもよい。
【0011】
本発明の一態様は、目的とする抗原および担体タンパク質マトリックスを含むワクチン組成物であり、ここでは、該抗原を該担体タンパク質マトリックスに封入して複合体を形成する。本発明の望ましい態様では、該抗原/タンパク質複合体は、直径が100nmより大きい平均粒径を有する。本発明のより望ましい態様では、該複合体は、直径が120nmより大きい、170nmより大きい、200nmより大きい、500nmより大きい、1000nmより大きい、2000nmより大きいまたはそれ以上(例えば、該タンパク質マトリックス粒子を回収する方法の限界まで)の平均粒径を有する。本発明のさらにより望ましい態様では、該ワクチン組成物の該タンパク質マトリックス/抗原複合体は、直径が100〜2000nmなどの直径が100nmより大きい粒径範囲、またはその範囲内の選択範囲、例えば、120〜200nm、200〜400nm、250〜500nm、120〜1000nm、200〜2000nm、および他のそのような粒径範囲を包含する。本発明のなおさらなる望ましい態様では、該組成物は、直径が170〜185nmの粒径を有する複合体を含む。本明細書には、該複合体の平均粒径を増加させるか、あるいは該ワクチン組成物からより小さい粒径の成分を除外することによって、該封入された抗原の免疫原性が驚くべき程高まることが実証されている。さらに、非常に少量の抗原を含むより大きなタンパク質マトリックス粒子は、該粒径選択したタンパク質莢膜マトリックス組成物の何倍もの(例えば67倍)莢膜抗原を含む該抗原のみからなる組成物(非複合型)を超えるかそれに匹敵する免疫応答を誘発することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様では、本発明の改良型タンパク質マトリックスワクチン組成物は、哺乳類に投与した場合、該哺乳類においてT細胞依存性免疫応答を誘発する(すなわち、該ワクチンを接種した宿主において免疫記憶を引き起こす)。
【0013】
さらなる望ましい態様では、該ワクチン組成物は、2種以上の目的とする抗原、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10種以上の目的とする抗原をさらに含む。
本発明の別の態様は、ワクチン組成物を製造する方法を特徴とする。本方法は、(i)目的とする抗原を担体タンパク質と混合して該抗原および該担体タンパク質からなる混合物を形成する工程、(ii)該目的とする抗原を該担体タンパク質で封入して抗原/タンパク質複合体を形成する工程、および(iii)直径が100nmより大きい平均粒径を有する複合体を選択する工程を伴う。
【0014】
本発明の好ましい態様では、該抗原/タンパク質複合体は、直径が100nmより大きい平均粒径を有する。より好ましくは、該抗原/タンパク質マトリックス複合体は、直径が500nmより大きい平均粒径を有する。なおさらに好ましい態様では、該抗原/タンパク質複合体は、直径が1000nmより大きい平均粒径を有する。なおさらに好ましい態様では、該抗原/タンパク質複合体は、直径が1500nmより大きい平均粒径を有する。なおさらに好ましい態様では、該抗原/タンパク質複合体は、直径が2000nmより大きい平均粒径を有する。
【0015】
本発明の望ましい態様では、該免疫原性組成物は、担体タンパク質マトリックスに封入された目的とする抗原を含み、医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。
好ましい態様では、本発明は、ワクチン組成物を製造する別の方法を特徴とする。本方法は、(i)目的とする抗原を担体タンパク質と混合する工程、(ii)担体タンパク質分子間または同じ担体タンパク質分子の異なる部位間に架橋を形成することができる架橋剤を添加する工程、(iii)該担体タンパク質と該架橋剤との架橋反応を開始する工程、および(iv)該反応生成物から直径が100nmより大きい粒径を有する複合体を選択する工程を伴う。該架橋剤の反応基と該担体タンパク質の反応部位が接触するとすぐに反応する特定の場合には、該混合および開始工程(ii)および(iii)は、同時に行うか、あるいは1つの工程と見なしてもよい。さらに、工程(iv)の前に該架橋反応を軽減する工程を含めることによって(例えば、適当な失活剤または遮断剤の添加によって)、該架橋反応を失活させると有利な場合がある。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるでろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】セファロース(登録商標)CL−2Bカラムによる、炭疽菌防御抗原の架橋したドミナントネガティブ変異体(DNI)に封入された肺炎連鎖球菌14型多糖抗原を含むタンパク質莢膜マトリックスワクチン(PCMV)組成物(PPS14:DNI−PCMV)のサイズ分別クロマトグラムを示すグラフである。DNI溶出量を示すそのUV280吸光度をプロットしたものである。陰影部分は、後の免疫実験のために回収および貯留した画分を示す。貯留物1のDNI平均粒径範囲および貯留物2の平均粒径を、SEC−MALS−RI(多角度レーザ光検出器および屈折率検出器を備えたサイズ排除クロマトグラフィ)によって測定した。
【図2】実施例1で調製し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびクーマシーブルー染色に供した組成物を示す画像であり、PCMV画分のDNI担体タンパク質の架橋度を示す。架橋されていないDNIタンパク質は、架橋の非存在下で、83kDaで移動する(組成物5)。組成物1(貯留物1、粒径200〜120nm)、組成物2(貯留物2、粒径63nm)および組成物3(未分別PCMV、0.25%グルタルアルデヒドを用いて架橋したDNIを含む)はすべて、より高分子量の化学種側への染色バンドの移動によって証明されているように、DNI担体タンパク質は広範囲に架橋している。組成物4(0.05%グルタルアルデヒド架橋剤によって調製された未分別PCMV)でも、DNI担体タンパク質は架橋しているが、より低分子量からより高分子量の化学種に及ぶより広範囲な染色バンドを示した。
【図3】DNI捕捉ELISAの結果を示し、ここでは、捕捉したマトリックス組成物を、架橋したDNIの完全性を確認するために抗DNI抗体で検出し、捕捉したDNIマトリックス中の多糖(PPS14)抗原の封入および提示を確認するために抗PPS14抗体を用いて検出する。試験製剤を、ELISAプレートに固定された抗DNI捕捉抗体に結合させた。未結合材料を洗い流し、抗DNI抗体(パネルA)または抗多糖抗体(パネルB)を使用して、DNIマトリックス中のDNIマトリックスまたは多糖をそれぞれ検出した。パネルAは、DNIを含むワクチン製剤が捕捉抗体に結合されていることを実証するために、DNI捕捉抗体によって捕捉されたDNIの検出を示す。パネルBは、抗多糖特異的検出抗体によって検出されるように、多糖抗原がDNIタンパク質マトリックスに会合していたことを示す。
【図4】実施例1に記載するように、4種類のPCMV調製物で免疫したマウスにおける抗PPS14特異的IgG免疫応答を示す棒グラフである。マウスを隔週で3回免疫し、免疫から10〜12日後に各マウスから血清を採取した。組成物1(貯留物1、直径が120〜200nmの粒径を有するPPS14:DNI−PCMV)のタンパク質5μgで免疫したマウスは、組成物1が組成物2で投与される多糖抗原の半分の用量しか含まないにも関わらず、組成物2(貯留物2、直径が63nmの平均粒径を有するPPS14:DNI−PCMV)で免疫したマウスと同程度であるかそれよりも良好な抗PPS14特異的IgG力価を生じた。
【図5】2μgの組成物1(貯留物1+ミョウバン、0.95μgのPPS14を含む)で免疫したマウスからの抗PPS14特異的IgG抗体力価を2μgのPPS14抗原のみで免疫したマウスからの抗PPS14特異的IgG抗体力価と比較して示す棒グラフである。マウスを隔週で3回免疫し、免疫から10〜12日後に各マウスから血清を採取した。このデータから、0.95μgの多糖を含む貯留物1のPCMVで免疫したマウスからの血清は、2μgのPPS14抗原のみで免疫したマウスからの血清と比較して、PPS14特異的なIgG応答が時間とともに上昇することが実証されている。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、実施例1の調査における、38日目(採血3)からの抗PPS14特異的IgG相反終点力価の棒グラフを示す。図6Aは、タンパク質5μgを含む組成物1(貯留物1+ミョウバン;2.4μgのPPS14を含む;120〜200nmの粒径範囲)、組成物2(貯留物2+ミョウバン;5.0μgのPPS14;平均粒径63nm)、組成物3(0.25%グルタルアルデヒドを用いて架橋した全PCMV)、組成物4(0.05%のグルタルアルデヒドを用いて架橋した全PCMV)および抗原対照(PPS14のみ;5μg)で免疫したマウスからの力価を示す。図6Bは、タンパク質2μgを含む組成物1(貯留物1+ミョウバン、0.95μgのPPSを含む)または2μgのPPS14のみで免疫したマウスからの血清から得た38日目(採血3)のデータを示す。このデータから、より低度に架橋したDNI担体およびより小さい粒径を生じさせる0.05%グルタルアルデヒドで調製したPCMV、および多糖抗原のみで免疫したマウスと比較して、高度に架橋した担体タンパク質を含むPCMV製剤(すなわち、形成反応で0.25%グルタルアルデヒドを用いたPCMV組成物もしくは画分)で免疫したマウスにおいて、抗PPS14特異的IgG応答が有意に高いことが実証されている。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、実施例1の調査における、38日目(採血3)からの抗PPS14特異的IgG相反終点力価の棒グラフを示す。図6Aは、タンパク質5μgを含む組成物1(貯留物1+ミョウバン;2.4μgのPPS14を含む;120〜200nmの粒径範囲)、組成物2(貯留物2+ミョウバン;5.0μgのPPS14;平均粒径63nm)、組成物3(0.25%グルタルアルデヒドを用いて架橋した全PCMV)、組成物4(0.05%のグルタルアルデヒドを用いて架橋した全PCMV)および抗原対照(PPS14のみ;5μg)で免疫したマウスからの力価を示す。図6Bは、タンパク質2μgを含む組成物1(貯留物1+ミョウバン、0.95μgのPPSを含む)または2μgのPPS14のみで免疫したマウスからの血清から得た38日目(採血3)のデータを示す。このデータから、より低度に架橋したDNI担体およびより小さい粒径を生じさせる0.05%グルタルアルデヒドで調製したPCMV、および多糖抗原のみで免疫したマウスと比較して、高度に架橋した担体タンパク質を含むPCMV製剤(すなわち、形成反応で0.25%グルタルアルデヒドを用いたPCMV組成物もしくは画分)で免疫したマウスにおいて、抗PPS14特異的IgG応答が有意に高いことが実証されている。
【図7】チフス菌多糖抗原ViおよびDNI担体タンパク質を用いて調製したPCMVの分別を示すクロマトグラムである。セファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースゲルカラムから溶出するVi:DNI反応生成物のUV280吸光度をプロットしたものである。回収した画分は、x軸から始まる短い垂直線で示されている。陰影のある領域は、貯留物1〜4を構成するように回収および組み合わせた画分を示す。各貯留物の粒径を、混合物に含まれる最大粒径を示す動的光散乱(DLS)法で測定し、その粒径(nm)が各貯留物の上に記載されている。貯留物1の粒径は直径179nmであった。貯留物2の粒子は、直径が171nmであった。貯留物3の粒子は直径が198nmであり、貯留物4の粒子は直径が185nmであった。
【図8】実施例2に記載するように調製した4種類のPCMV調製物:貯留物1+ミョウバン(粒径179nm)、貯留物2+ミョウバン(粒径171nm)、貯留物3+ミョウバン(粒径198nm)、貯留物4+ミョウバン(粒径185nm)、全(未分別)PCMV(0.25%グルタルアルデヒド)、および抗原対照調製物(10μgのVi抗原のみ)で免疫したマウスにおける抗Vi特異的IgG免疫応答を測定するアッセイの結果を示す棒グラフである。
【図9】莢膜抗原のみで免疫した場合と比較した、実施例2に記載されているPCMV調製物の1つでそれぞれ免疫したマウスの38日目の抗Vi特異的IgG終点力価を示す棒グラフである。
【図10】肺炎連鎖球菌14型多糖抗原と0.25%グルタルアルデヒドを用いて架橋したDNI担体タンパク質とを用いたPCMV調製物の分別のクロマトグラムである。セファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースサイズ排除カラムで画分を分離した。タンパク質のUV280吸光度をプロットしたものである。回収した画分は、x軸から始まる短い垂直線で示されている。陰影のある領域は、貯留物1、2、3および4のために回収および組み合わせた画分を示す。
【図11】実施例3に記載されているPPS14:DNI−PCMV組成物の架橋の完全性を実証するクーマシーブルーで染色したSDSポリアクリルアミド電気泳動ゲル(4〜12%のBis−Trisゲル)の画像である。4種類のPCMVの貯留物および全(未分別)PCMV反応混合物は全て、濃縮用ゲル内への移動がないことによって証明されているように、DNI担体タンパク質は広範囲に架橋していた。全PCMV反応系のウェルの下のスメアに類似した貯留物4のウェルの下のスメアの出現は、これらの試料中により低分子量の化学種が存在することを示している。
【図12】多糖抗原の封入およびDNIの架橋の完全性を確認するための、DNI捕捉ELISAおよび抗PPS14もしくは抗DNI検出抗体による検出の結果を示す。様々な濃度のPPS14:DNI−PCMV貯留物(貯留物1〜4;実施例3および図10を参照)、全PCMV反応混合物、または外から加したPPS14多糖を含む架橋したDNIを、固定されたDNI捕捉抗体と共にインキュベートした。図12Aは、捕捉および洗浄後の架橋したDNIタンパク質マトリックスに結合したままのPPS14の検出を示す。図12Bは、ELISAで捕捉された粒子がDNIで構成されていることを確認するために、固定されたDNI捕捉抗体によって捕捉されたDNIの検出を示す。
【図13A】抗原対照PPS14のみ、またはPrevnar(登録商標)結合ワクチンで免疫したマウスと比較した、実施例3に記載されているPCMV調製物で免疫したマウスにおける抗PPS14特異的IgG免疫応答を示す棒グラフである。図13Aは、全PCMV、0.5μgのPPS14のみ、またはPrevnar(登録商標)(2μgのPPS14を含む)と比較した、0.5μgのDNIおよび様々な量、すなわち、0.03μgのPPS14(貯留物1)、0.06μgのPPS14(貯留物2)、0.13μgのPPS14(貯留物3)および0.48μgのPPS14(貯留物4)の封入された抗原を含むPCMVで免疫したマウスからのPPS14特異的IgGを示す。
【図13B】図13Bは、全PCMV、2μgのPPS14のみまたはPrevnar(登録商標)(2μgのPPS14を含む)と比較した、2μgのDNIおよび様々な量、すなわち、0.12μgのPPS14(貯留物1)、0.22μgのPPS14(貯留物2)、0.52μgのPPS14(貯留物3)および1.91μgのPPS14(貯留物4)の封入された抗原を含むPCMVで免疫したマウスからのPPS14特異的IgGを示す。終点力価切り捨て値は、陰性対照(免疫前の血清)の平均を超える2種類の標準偏差である力価として計算する。より大きなDNI担体粒子を含む貯留物1および2は、著しくより少ない用量のPPS14抗原において、Prevnar(登録商標)結合型ワクチンに匹敵する抗PPS14応答を誘発した。
【図14】実施例3に記載されている0.5μgの免疫計画の完了直後に採血3(39日目)から回収した個々の血清からの抗PPS14特異的IgG終点力価を示す。PCMVの貯留物1(0.5μgのDNI、0.03μgのPPS14)および貯留物2(0.5μgのDNI、0.06μgのPPS14)で免疫したマウスは、Prevnar(登録商標)で免疫したマウスと比較して、匹敵する抗PPS14特異的IgGのGMTを呈した。PCMVによる免疫では、結合型ワクチン(Prevnar(登録商標))と比較して有意に減少した量のPPS14抗原を送達したにも関わらず、貯留物1および2の場合、使用したPrevnar(登録商標)製剤に含まれていた2μg用量のPPS14によって誘発される応答と比較して、有意な抗PPS14特異的IgG応答および匹敵する抗PPS14特異的応答が誘発された。
【図15】実施例3に記載されている2μgの免疫計画の完了直後に採血3(39日目)から回収した個々の血清からの抗PPS14IgG終点力価を示す。PCMVの貯留物1(0.5μgのDNI、0.12μgのPPS14)および貯留物2(0.5μgのDNI、0.22μgのPPS14)で免疫したマウスは、Prevnar(登録商標)結合型ワクチンで免疫したマウスと比較して、匹敵する抗PPS14特異的IgGのGMTを呈した。PCMVによる免疫では、結合型ワクチン(Prevnar(登録商標))と比較して有意に減少した量のPPS14抗原を送達したにも関わらず、貯留物1および2の場合、使用したPrevnar(登録商標)製剤に含まれていた2μg用量のPPS14によって誘発される応答と比較して、有意な抗PPS14特異的IgG応答および匹敵する抗PPS14特異的応答が誘発された。図14で認められた結果と同様に、大きな粒径のDNIマトリックスを含むPCMV画分による免疫では、有意に減少した用量のPPS14において、Prevnar(登録商標)中の2μg用量のPPS14によって誘発される力価に匹敵する抗PPS14特異的IgG応答が誘発された。
【図16】セファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースゲルカラムによる、実施例4に記載されているVi:DNI−PCMV調製物の分別のクロマトグラムである。UV280の吸光度をプロットしたものである。回収した画分は、x軸から始まる短い垂直線で示されている。陰影のある領域は、貯留物1、2、3および4のために回収した画分を示す(実施例4を参照)。
【図17】架橋したDNIマトリックスへのVi抗原の封入および会合を確認するためのDNI捕捉ELISAの結果を示す。図17Aは、抗Vi検出抗体によってDNIマトリックスタンパク質に会合したままであるViの検出を示す。図17Bは、DNI捕捉抗体によって捕捉されたDNIの検出を示す。
【図18】実施例4に記載されているVi:DNI−PCMV画分の貯留物および全PCMVの架橋の完全性を示すクーマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲル(4〜12%Bis−Trisゲル)の画像である。PCMVの貯留した画分および全PCMV反応混合物は、目視でゲル内に移動せずに充填ウェル内に残留した非常に高分子量の化学種を含んでいた。架橋されていないDNI(対照)は、電気泳動後に低分子量の染色バンド(ラベルのない矢印)を示した。
【図19】実施例4に記載されているPCMVおよび対照調製物で免疫したマウスにおける抗Vi特異的IgG免疫応答を示す棒グラフである。採血1(8日目)、採血2(22日目)および採血3(41日目)から回収した個々の血清からの抗Vi特異的IgG終点力価が示されている。貯留物1〜4および全PCMVに対して未確定用量のViを含み10μgのDNIを含むPCMV製剤で免疫したマウスについてVi特異的IgG応答を決定する。マウスの対照群を、Vi−BSA結合体に含まれていた5μgのViあるいはチフス菌またはシトロバクターフロインディのいずれかに由来する10μgのVi多糖抗原のみで免疫した。より大きな担体マトリックス粒子(貯留物1〜3)で免疫したマウスからの血清は、10μgのViのみで免疫したマウスからの血清よりも高いVi特異的IgG応答を呈した。貯留物4(より小さい粒子)または全PCMVによる免疫では、マウスがViのみで免疫された場合と類似したVi特異抗体応答が生じた。
【図20】実施例4に記載されている4種類のPCMVおよび対照調製物の抗Vi終点力価を示す棒グラフである。抗Vi特異的IgG終点力価は、免疫計画完了直後に採血3(41日目)から回収した個々の血清から測定した。
【図21】抗PPS14特異的IgG/IgMの比を示す棒グラフである。10、54、239、243および260日目の血液試料からのデータを、PPS14特異的IgGおよびIgMのために回収および分析し、IgG/IgMの比を計算した。貯留物1および貯留物2群について観察された免疫の過程で高くかつ上昇するIgG/IgMの比は、免疫学的「記憶」応答の徴候である。時間とともに弱まる対照の応答および低いIgG/IgMの比は、免疫記憶が多糖抗原のみを含む調製物によって誘発されなかったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
タンパク質マトリックスワクチン、特にタンパク質莢膜マトリックスワクチン(PCMV)については、2008年2月21日に公開された国際公開第2008/021076号(Mekalanos)および2008年4月28日に公開された米国特許出願公開第2008−0095803号(Mekalanos)に記載されており、その両方の開示内容全体が本明細書に組み込まれる。これらの公開特許は、タンパク質マトリックスワクチンが典型的な多糖−タンパク質結合型ワクチンの強力な免疫学的特性を有するが、目的とする抗原を担体タンパク質に結合させるために有意な共有結合を必要としないという点で結合型ワクチンとは望ましくは異なることを教示している。それどころか、目的とする抗原(例えば、多糖、莢膜有機高分子化合物または他の抗原)は、担体タンパク質マトリックスに封入されている。
【0019】
病原体の莢膜生体高分子化合物または多糖が架橋したタンパク質マトリックスに封入されているワクチンを、タンパク質莢膜マトリックスワクチン(PCMV)と呼ぶ。国際公開第2008/021076号および米国特許出願公開第2008−0095803号に記載されているように、T細胞非依存性莢膜抗原モデル、ポリ−γ−D−グルタミン酸(PGA)、ならびにアルギン酸(アルギン酸塩)およびデキストラン、および例示的な担体タンパク質、すなわちドミナントネガティブ阻害変異体(DNI)をベースとしたPCMVを含むPCMVが製造された。DNIは、炭疽菌の防御抗原(PA)の突然変異型であり、Bensonらの方法、Biochemistry, 37:3941-3948 (1998)、に従って大腸菌から産生された。
【0020】
本発明は、タンパク質マトリックスワクチン組成物の免疫原性を高めるという観点からなされた発見および観察に関する。
本発明をより明確に理解するために、以下に定義する以下の略語および用語を使用する。
【0021】
列挙されている1つ以上の要素または工程「を含む("comprising")」ものとして本明細書に記載されている組成物または方法は非限定的(open-ended)であり、列挙されている要素または工程は必須であるが、他の要素または工程も本組成物または方法の範囲内で追加し得ることを意味する。また、冗長を避けるために、列挙されている1つ以上の要素または工程「を含む("comprising"またはwhich "comprises")」ものとして記載されている任意の組成物または方法は、列挙されている同じ要素または工程「から本質的になる("consisting essentially of"またはwhich "consists essentially of")」対応するより限定された組成物または方法についても述べており、これは、本組成物または方法が、列挙されている必須の要素または工程を含み、かつ本組成物または方法の基本的かつ新規な1つ以上の特徴に実質的に影響を与えないさらなる要素または工程も含み得ることを意味するものとする。また、列挙されている1つ以上の要素または工程「を含む("comprising")」または「から本質的になる("consisting essentially of")」ものとして本明細書に記載されている任意の組成物または方法は、任意の他の列挙されていない要素または工程を除外して、列挙されている要素または工程「からなる("consisting of"または"consists of")」対応する、限定的な(closed-ended)組成物または方法についても述べているものとする。本明細書に開示されている任意の組成物または方法では、列挙されている任意の必須の要素または工程の公知または開示されている均等物をその要素または工程の代わりに使用してもよい。また、「〜からなる群から選択される("selected from the group consisting of")」要素または工程とは、その後に続く列挙の中の1つ以上の要素または工程(列挙されている2つ以上の任意の要素または工程の組み合わせを含む)を指すものとする。
【0022】
本明細書でワクチン組成物と共に使用されている「投与」という用語は、対象において免疫応答を誘発するのに十分な用量でヒトの対象などの対象にワクチン組成物を提供することを意味し、ここでは、免疫応答によって、ワクチン組成物に含まれる抗原に特異的に結合する抗体が産生される(すなわち、治療ワクチン中の抗原は、病原体上の抗原マーカーに対応する)。投与としては、望ましくは、投与されるワクチン組成物の剤形、性質および活性に適当な筋肉内注射、皮内注射、静脈内注射、腹腔内注射、皮下もしくは経皮注射、吸入または経口摂取が挙げられる。投与では、ワクチンの単回投与または複数回投与を行ってもよい。望ましくは、第2の(「追加免疫」)投与は、対象での抗体産生を高めて病原体による感染を予防するように設計されている。ワクチン投与の頻度および量は、ワクチンの特異的活性に依存し、日常の実験で容易に決定することができる。
【0023】
「架橋("cross-link"または"crosslink"」という用語は、「ゼロ長さ」のリンカーを使用する(直接結合を形成する)場合には直接的に、あるいは2つの反応部位間に分子架橋もしくはリンクを形成する二官能性架橋分子を用いて、2つの分子、巨大分子または分子の組み合わせ(例えば、担体タンパク質分子)間あるいは同じ分子の2つの部位(例えば、同じタンパク質の2つのアミノ酸残基)間に共有結合を形成することを指す。二官能性架橋剤は、2つの別々の分子のうちの一方と、あるいは同じ分子内の2つの別々の基の間でそれぞれが共有結合を形成することができる(すなわち、担体タンパク質などの分子内に「ループ」または「折り畳み」を形成するための)2つの官能基を提供する。例示的なリンカーとしては、2つの担体タンパク質を架橋することができる二官能性架橋剤が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用されている「抗原」という用語は、抗体または抗体断片に特異的に結合する任意の分子または分子の組み合わせを指す。
本明細書で使用されている「二官能性架橋剤」または「二官能性リンカー」という用語は、互いに結合される2つの別々の分子、原子または分子の集合体上の反応基との共有結合をそれぞれ別々に形成するができる2つの官能基を有する化合物を意味する。例示的な二官能性リンカーについては、例えば、G. T. Hermanson, Bioconjugate Techniques(バイオ複合化技術)(Academic Press, 1996)および Dick and Beurret, "Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens," in Conjugate Vaccines(結合型ワクチンにおける「細菌性炭水化物抗原の複合多糖」) (Cruse and Lewis, eds), Contrib. Microbiol. Immunol. Basel, Karger, 1989, vol.10, pp. 48-114)に記載されている。望ましくは、二官能性リンカーは、グルタルアルデヒド、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)またはアジプイミド酸ジメチルである。
【0025】
本明細書で使用されている「リンカー」または「架橋剤」という用語は、2つ以上の分子または同じ分子内の2つ以上の部位を結合する共有結合的化学結合または架橋を形成することができる化合物を指す。望ましいリンカーとしては、例えば、グルタルアルデヒドまたは式OHC−R−CHOの他のジアルデヒドが挙げられ、式中、Rは、炭素原子数1〜12の二価の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン、原子数1〜12の二価の直鎖状もしくは分枝鎖状ヘテロアルキル、炭素原子数2〜12の二価の直鎖状もしくは分岐鎖状アルケニレン、炭素原子数2〜12の二価の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキニレン、炭素原子数5〜10の二価の芳香族ラジカル、原子数3〜10の環状系、−(CHCHO)qCHCH−(式中、qは1〜4である)または2つのアルデヒド基を結合する直接化学結合である。結合は、結合(架橋)分子を用いずに直接的であってもよい。例えば、カルボジイミド化学を用いて、あるいは遊離アミノ基と(例えばGlnの)カルボキサミド基との架橋を触媒するグルタミン転移酵素を用いて酵素的に、例えば担体タンパク質カルボキシル基内のAspまたはGlu残基の側鎖のカルボキシル基を、例えばLys残基の側鎖の遊離アミノ基に直接結合してもよい。
【0026】
抗体産生を誘発する文脈中の「追加免疫する」という用語は、抗原に対する第2の曝露中に生じる記憶B細胞の活性化を指す。これは、「追加免疫応答」とも呼ばれ、長期の抗体産生を引き起こす長期の「二次」免疫記憶応答を表す。
【0027】
ワクチン組成物の文脈中の「担体タンパク質」という用語は、それ自体に対して、および/またはそのような担体タンパク質に会合するかそれと複合体を形成する抗原に対して免疫応答を惹起するワクチン組成物に使用されるタンパク質を指す。タンパク質マトリックスワクチン組成物では、抗原は、好ましくはマトリックスに対する抗原の有意な共有結合なしに、架橋してタンパク質マトリックスを形成し、それにより抗原を封入して担体タンパク質との複合体を形成する担体タンパク質に会合している。結合型ワクチン組成物では、抗原は担体タンパク質と反応し、従って、抗原および担体タンパク質は意図的に互いに共有結合されている。望ましくは、担体タンパク質は、T細胞によって認識されるエピトープを含む。分岐鎖状ペプチドである多重抗原性ペプチド(MAP)も「担体タンパク質」の定義に包含される。望ましくは、MAPはリジン(Lys)を含む。例示的な望ましい担体タンパク質としては、突然変異させて例えば反応原性を減少させ得る毒素およびトキソイド(化学的または遺伝的)が挙げられる。好適な担体タンパク質としては、例えば、ジフテリア毒素またはその変異体、ジフテリアトキソイド、破傷風毒素またはその変異体、破傷風トキソイド、緑膿菌外毒素Aまたはその変異体、コレラ毒素Bサブユニット、破傷風毒素断片C、細菌性フラジェリン、ニューモリシン、リステリオリシンO(LLOおよび関連分子)、髄膜炎菌の外膜タンパク質、緑膿菌Hcplタンパク質、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、志賀様毒素、ヒトLTBタンパク質、全細菌細胞からのタンパク質抽出物、炭疽菌の防御抗原のドミナントネガティブ阻害変異体(DNI)、大腸菌β−ガラクトシダーゼ、あるいはリンカーで架橋することができる任意の他のタンパク質が挙げられる。
【0028】
抗原に関して本明細書で使用されている「封入」という用語は、抗原が生理学的な条件下で担体タンパク質との複合体内に留まるように、抗原と担体タンパク質(特に、架橋してマトリックスを形成し、それにより抗原との会合体または複合体を形成する担体タンパク質)との会合体または複合体形成を意味する。望ましくは、抗原と担体タンパク質との間の有意な共有結合の非存在下で、抗原を担体タンパク質との複合体に封入する。本明細書で使用されている有意な共有結合の非存在とは、抗原の50%以下が担体タンパク質に共有結合していることを指す。望ましくは、抗原の40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または、望ましくは5%以下が、タンパク質マトリックスワクチン組成物中の担体タンパク質に共有結合している。
【0029】
「感染」とは、微生物(例えば、細菌、真菌、寄生虫またはウイルス)が対象に侵入することを意味する。感染としては、例えば、通常は対象の体内または体表に存在する微生物の過剰な増殖あるいは通常は対象の体内または体表に存在しない微生物の増殖が挙げられる。望ましくない(例えば、病原性の)過剰な微生物個体群が対象の体内または体表に存在する場合、あるいは1種以上の微生物個体群の存在によって細胞が損傷されているか対象の組織内に病的症状が生じている場合、対象は微生物感染に罹患している。
【0030】
「病原体」とは、感染を引き起こす微生物を意味する。
「免疫原性」という用語は、対象において免疫応答を誘発する化合物を指す。望ましくは、免疫応答は、IgG抗体の産生に関与するT細胞依存性免疫応答である。
【0031】
「微生物の莢膜高分子化合物」という用語は、微生物の莢膜被覆の中または表面に存在する高分子化合物を指す。望ましくは、微生物の莢膜高分子化合物は、多糖、リン酸化多糖、N−アセチル置換を有するアミノ糖を含む多糖、スルホニル化された糖を含む多糖、別の硫酸修飾した糖もしくはリン酸修飾した糖、多価アルコール、ポリアミノ酸、テイコ酸またはリポ多糖のO側鎖などの有機高分子化合物である。
【0032】
「単量体」とは、同様の単量体と2つ以上の結合を形成し、「高分子化合物」の一部である場合には、多くの場合、繰り返し単量体下部構造の鎖または一連の分岐鎖状の連結鎖を生成することができる分子構造を指す。
【0033】
「有機高分子化合物」は、それぞれが炭素、酸素、水素もしくは窒素原子またはリン酸もしくは硫酸部分からなる共有結合された単量体で構成された高分子化合物を指す。望ましくは、有機高分子化合物は、多糖、リン酸化多糖、N−アセチル置換を有するアミノ糖を含む多糖、スルホニル化された糖を含む多糖、別の硫酸修飾した糖もしくはリン酸修飾した糖、多価アルコール、ポリアミノ酸、テイコ酸およびリポ多糖のO側鎖である。
【0034】
「多価アルコール」は、カルボニル基が一級もしくは二級ヒドロキシル基に還元されている炭水化物の水素化形態を意味する。例示的な多価アルコールは、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(MPEG)およびポリプロピレングリコールを含むポリアルキレングリコール(PAG)などのポリアルキレンオキシド(PAO);ポリビニルアルコール(PVA);ポリエチレン−co−マレイン酸無水物;ポリスチレン−co−リンゴ酸無水物;カルボキシメチルデキストランなどのデキストラン;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース;キトサンの加水分解物;ヒドロキシエチル澱粉およびヒドロキシプロピル澱粉などの澱粉;グリコーゲン;アガロースおよびその誘導体;グアーガム;プルラン;インスリン;キサンタンガム;カラゲナン;ペクチン;アルギン酸加水分解物;ソルビトール;グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、グロース、キシロース、トレオース、ソルボース、フラクトース、グリセリン、マルトース、セロビオース、スクロース、アミロースもしくはアミロペクチンのアルコール;またはモノプロピレングリコール(MPG)である。
【0035】
「ポリアミノ酸("poly amino acid"または "polyamino acid")」は、ペプチド結合で結合された少なくとも2つのアミノ酸を意味する。望ましくは、ポリアミノ酸は、繰り返しアミノ酸配列または同じアミノ酸の鎖を含むペプチド(すなわち、単独重合体)である。
【0036】
「シッフ塩基を還元する」という用語は、アゾメチンまたは式RC=N−R(式中、R、RおよびRは部分化学構造であり、典型的に炭素原子を含む)の化合物を、水素原子でシッフ塩基の二重結合を飽和させる還元剤に曝露することを指す。還元方法は当業者に知られている。
【0037】
抗体またはその断片に関して本明細書で使用されている「特異的に結合する」という用語は、特定の抗原に対する抗体または抗体断片(例えば、等量の任意の他の抗原に対するタンパク質またはそのセグメント)の親和性を増加させることを意味する。酵素結合免疫吸着法(ELISA)などの標準的な方法を用いて測定される抗体または抗体断片のその抗原に対する親和性は、関連する抗原などの等量の任意の他の抗原よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、30倍または100倍以上であることが望ましい。
【0038】
「対象」とは、微生物に感染され得る動物を意味する。望ましくは、対象は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ヤギまたはウマなどの哺乳類である。ヒトの対象は、成人のヒト、小児、乳児、幼児または思春期前の小児であってもよい。
【0039】
「T細胞非依存性抗原」とは、Tリンパ球の協力なしに抗体産生を引き起こす抗原を指す。T細胞非依存性抗原は、Tリンパ球の協力なしにBリンパ球を直接刺激することができる。例示的な望ましいT細胞非依存性抗原としては、莢膜抗原ポリ−γ−D−グルタミン酸(PGA)、アルギン酸(アルギン酸塩)、デキストラン、多糖、ポリアミノ酸、多価アルコールおよび核酸が挙げられる。
【0040】
本発明のタンパク質マトリックスワクチン組成物は、免疫応答を惹起することを目的とした抗原とマトリックスを形成するために使用される担体タンパク質との共有結合を必要としない。これにより、タンパク質マトリックスワクチン組成物の調製を単純化し、結合型ワクチン技術と比較してそれらの調製コストを低減させるため、有利である。多糖−タンパク結合型ワクチンは、発展途上世界では製造および販売するには非常に高価であることが分かっている。従来の結合型ワクチンは安く製造することが難しい、というのも各ワクチンのために極めて専門性の高い化学操作が必要で、多糖抗原および担体タンパク質の製造コストや精製コストが高いからである。
【0041】
本発明に係るワクチン組成物は、以前は免疫が難しかった抗原に対して安全に免疫を誘発することができるワクチンの必要性に対処するものである。本明細書に記載されているワクチン組成物は、一価(免疫応答を誘発するために単一の抗原を有する)または多価(複数の免疫応答を誘発するために複数の抗原を有する)であってもよい。Toll様受容体(TLR)リガンドを含むワクチン組成物は、別の方法では免疫が難しい抗原の免疫応答を惹起することが分かっているが、TLRリガンドが炎症誘発性であり、低用量であっても有毒であり、反応原性であり、かつ本発明の組成物と比較して有害な症状を引き起こす可能性があるため、危険なものとなりやすい。
【0042】
他の用語の意味は、それらが現れる文脈によって理解されるか、あるいは、有機化学、薬理学、微生物学、タンパク質生化学および免疫学の分野の専門家などの当該技術分野の専門家によって理解されるであろう。
【0043】
本発明は、(1)目的とする抗原および(2)少なくとも1種の担体タンパク質を含む免疫原性組成物に関し、ここでは、担体タンパク質は架橋していてタンパク質マトリックスを形成しており、前記目的とする抗原は前記タンパク質マトリックスに封入されており、本組成物は、例えば、直径が100nmより大きい平均粒径、望ましくは直径が100〜2000nm以上の範囲の平均粒径を有する高分子量のタンパク質マトリックス粒子で構成される。そのような組成物は、抗原および担体タンパク質成分を混合し、架橋反応を開始して担体タンパク質の架橋を引き起こした後、反応生成物を処理して、より低分子量の化学種(例えば、直径が100nm未満の化学種)を除外することにより、容易に調製してもよい。大きなタンパク質マトリックスの粒径(例えば、直径が100nmより大きい)を有するタンパク質マトリックスワクチン組成物の製造によって、運搬される(封入される)抗原の免疫原性が高まることを発見した。さらに、タンパク質マトリックスの粒径を増加させることによる免疫原性の増強は、粒径の増加と共に顕著になり、従って、本明細書では、直径が200nmより大きい、300nmより大きい、500nmより大きい、750nmより大きいまたは1000nm(1μm)より大きいあるいはさらにそれ以上の大きさの粒子が想定されている。本発明に係る高分子量のタンパク質マトリックス粒子からなるタンパク質マトリックスワクチン組成物は、低分子量のタンパク質マトリックス粒子からなる組成物またはより低分子量のタンパク質マトリックス粒子を含む広範囲の粒径を有する組成物と比較して高い免疫原性を有する。
【0044】
本発明は、特に、高分子量のタンパク質莢膜マトリックス粒子のタンパク質莢膜マトリックスワクチン組成物、ならびに抗原、特にT細胞非依存性抗原、または例えば、多糖、多価アルコール、ポリアミノ酸および他の有機高分子化合物などの通常は弱い免疫応答を惹起する抗原に対して免疫を与えるためのそのような組成物の製造および投与方法を特徴とする。本発明のワクチン組成物は、典型的な多糖−タンパク結合型ワクチンの強力な免疫学的特性を有するが、目的とする抗原(例えば、多糖または莢膜有機高分子化合物)を担体タンパク質に結合させるために有意な共有結合的な原子結合形成を全く必要としないという点で望ましくは結合型ワクチンとは異なる。それどころか、目的とする抗原(例えば、多糖または莢膜有機高分子化合物)は、担体タンパク質マトリックスに封入されている。例えば、タンパク質マトリックスは、可溶性抗原(例えば、多糖または莢膜有機高分子化合物)の存在下で、担体タンパク質分子をそれらに共有結合的に架橋して形成してもよい。互いに高度に架橋した担体タンパク質は、抗原を捕捉し、その抗原の取り込みおよび免疫細胞での抗体産生の刺激を容易にすることができるマトリックスを形成することができる。本明細書で実証されているように、タンパク質莢膜マトリックスワクチン組成物の免疫原性は、より低分子量の粒子(直径が100nm未満)を除外するように本組成物のタンパク質マトリックスの粒径を選択する工程、または直径が100nmより大きい粒径を含むように本組成物のタンパク質マトリックスの粒径を選択する工程によってさらに高められる。
【0045】
担体タンパク質マトリックスは、抗原を封入する「メッシュ」の形態、あるいは一連の「紐に担持されたビーズ」(ここでは抗原が「紐」であり、タンパク質または架橋タンパク質の複合体が「ビーズ」である)の形態であってもよい。担体タンパク質が抗原を取り囲み、抗原を取り囲む環またはその中で抗原が絡み合っている3次元メッシュを形成する場合、抗原は担体タンパク質に封入されている。
【0046】
望ましい態様では、担体タンパク質の分子は共有結合的に架橋されており、例えば、共有結合としては、リジン側鎖の一級アミノ基とアスパラギン酸塩もしくはグルタミン酸塩側鎖のカルボキシ基とのペプチド結合が挙げられる。他の望ましい態様では、共有結合的架橋は、式OHC−R−CHOの化合物などの架橋剤を用いて開始することができ、式中、Rは、炭素原子数1〜12の二価の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン、原子数1〜12の二価の直鎖状もしくは分枝状ヘテロアルキル、炭素原子数2〜12の二価の直鎖状もしくは分岐鎖状アルケニレン、炭素原子数2〜12の二価の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキニレン、炭素原子数5〜10の二価の芳香族ラジカル、原子数3〜10の環状系、−(CHCHO)CHCH−(式中、qは1〜4である)または2つのアルデヒド基を結合する直接化学結合である。好ましい態様では、共有結合は、架橋剤としてグルタルアルデヒドを用いて形成し、あるいは、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミドまたはビスビアゾ化ベンジジン、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)またはアジプイミド酸ジメチルなどの架橋剤を使用してもよい。
【0047】
タンパク質マトリックスワクチン組成物の形成では必要ではないが、例えば、抗原表面に存在し得る保護されていない反応基または末端のアミノ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基により、例えば、架橋した担体タンパク質マトリックスの形成に付随する程度に、目的とする抗原を担体タンパク質に共有結合させてもよい。一般に、抗原の担体への共有結合は、タンパク質マトリックスワクチンの形成では目的としていない。本発明の目的では、タンパク質マトリックスワクチンは、抗原の50%以下が担体タンパク質に共有結合しているワクチン組成物である。
【0048】
望ましい態様では、抗原および担体タンパク質は、非共有結合されている。そのような非共有結合としては、疎水的相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用または水素結合が挙げられる。非共有結合は、抗原をタンパク質複合体に非共有結合的に会合させる物理的幾何学的構造(すなわち、上記の類推で「紐に担持されたビーズ」のような)を含むことができる。
【0049】
本発明のワクチン組成物は、目的とするいかなる抗原の存在下で多くの担体タンパク質候補のうちのいずれかと架橋するための多くのリンカー候補のうちのいずれかを用いて調製してもよい。例示的な好ましいリンカー、担体タンパク質および目的とする抗原は本明細書に述べられている。
【0050】
多糖は、糖類(糖)の高分子化合物である。微生物の莢膜に由来する多糖は、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、チフス菌およびインフルエンザ菌タイプBなどの被包性細菌病原体に対する防御免疫に関与する一次抗原成分である。微生物の多糖をベースとするワクチンによる青年および成人の免疫は、疾病負荷を減少させることに成功しているが、乳児および幼児(すなわち、生後24ヵ月未満の小児)に防御免疫を与えるには効果が低いことが分かっている。幼児は、成熟した適応免疫レパートリがまだ発達しておらず、また、莢膜多糖などのT細胞非依存性抗原の免疫原性が不十分であるため、そのような若いワクチン接種者では長期的な防御免疫応答(すなわち、免疫記憶応答)が引き起こされない。
【0051】
多糖をタンパク質に化学的に結合させることで、多糖などのT細胞非依存性抗原をT細胞依存性抗原に転換することができる。「結合」として知られているこのプロセスは、多糖構造中の原子と「担体」タンパク質中に存在するアミノ酸の側鎖原子との共有結合の形成を伴う。そのような「結合型ワクチン」は、B細胞成熟の誘発およびイソ型への転換をより効率的に促進し、それにより、正しい抗多糖防御特性を有する非常に高濃度の抗体が産生される。防御抗体は、それらの多糖抗原に対して高い親和性を有し、典型的に、補体固定およびオプソニン化エフェクタ活性を有する長寿命の抗体である免疫グロブリンG(IgG)サブクラスである。
【0052】
T細胞非依存性抗原は一般に、持続的な免疫(すなわち、IgG抗体の産生)を促進しないが、より作用が弱くかつより一時的なIgM抗体の産生を刺激する場合がある。従って、多糖抗原のみでは、典型的にIgGの追加免疫応答は引き起こされない。しかし、一次免疫化が多糖−タンパク結合体によって行われる場合は、結合体によって誘発される記憶細胞がIgGを産生するように既にプログラムされているため、多糖によって追加免疫応答が引き起こされる。実際、ワクチン接種された動物またはヒトにおける追加免疫応答は、多糖を提示している微生物への曝露により、防御応答を模倣すると考えられている。ワクチンがそれらの免疫後の数年間にわたって免疫された対象に防御免疫を与えるように作用するためには、この長期記憶は重要である。従って、多糖−タンパク結合体は、(1)多糖抗原に対して高レベルのIgGを誘発するそれらの能力、および(2)多糖抗原に対して免疫記憶応答を誘発するそれらの能力について評価される。多糖抗原は典型的にこれらの特性を示さず、従って、性能の低い抗原である。結合型ワクチンの合成の難しさおよびそれらの製造コストによって、多糖抗原に対する免疫応答が防御され得る多くの細菌性疾患のための結合型ワクチンの開発は遅れている。
【0053】
他のT細胞非依存性抗原としては、ポリ−γ−D−グルタミン酸(PGA)などのアミノ酸の同種重合体および多価アルコールが挙げられる。大部分の生物高分子化合物はT細胞非依存性抗原である。高分子化合物は、それらの化学構造(従って、エピトープ)の反復性によりそれらを認識するB細胞上の免疫グロブリン(Ig)受容体を架橋することができる。従って、高分子化合物は、多糖と同じ方法で抗高分子化合物IgMの産生のためにB細胞を活性化することができる。例えば、アミノ酸同種重合体である炭疽菌のポリ−γ−D−グルタミン酸(PGA)は、免疫原性が乏しい莢膜高分子化合物であり、T細胞非依存性抗原でもある。タンパク質担体に結合したPGAからなるワクチンは、高度に免疫原性であり、抗PGA特異的IgGおよびPGAに対する免疫記憶を誘発することができる。従って、大部分の高分子化合物は、MHC−IIに関連する処理も提示もされず、従って、T細胞の助けを借りることができないため、それらの免疫原性の点で多糖のように応答する。Toll様受容体(TLR)と呼ばれる別のクラスの受容体と相互作用する自然に存在するいくつかの高分子化合物には例外が認められる。活性化されると、TLRは、宿主細胞によるサイトカインの産生を誘発し、適応免疫応答に変化を生じさせることができる。いくつかの多糖は、共有結合的にTLRリガンドに付着したり、そのようなリガンドが混入したりする。例えば、リポ多糖(LPS)は、高度に免疫原性であり、かつIgGおよび記憶応答を誘発する多糖である。LPSの脂質A部分はTLRリガンドであり、免疫学的特性に関与することがある。
【0054】
従来の結合型ワクチンは、多糖抗原および担体タンパク質の製造および精製コストならびに各多糖−タンパク質結合に関与する特異的な化学操作のために、安く製造することが難しい。通常は、多糖抗原および担体タンパク質はどちらも、結合化学を適切な結合効率で行うことができるようになるには、かなり純粋でなければならない。典型的には、選択した多糖および担体タンパク質の化学操作に固有である結合化学を、様々な多糖に対して特異的に開発しなければならない。この結合化学操作によって、典型的にリジン残基のイプシロンアミノ側鎖を介して担体タンパク質に結合することができる多糖に官能基を導入する。そのような結合基を導入するための多糖の化学修飾によって、多糖上のエピトープを破壊し、新しいエピトープを導入する(例えば、リンカーまたは修飾された糖類基に会合させる)ことができ、その有意性は、慎重な免疫学的分析を行うことによってのみ評価することができる。さらに、従来の多糖−タンパク結合型ワクチンでは、多糖の大きさ、1つのタンパク質担体分子当たりに結合される多糖分子の数、選択した担体の性質および結合化学の種類はすべて、結合型ワクチンの免疫原性に影響を与えることができる。従って、例えば、90種以上の公知の血清型のそれぞれが異なる多糖構造を有する肺炎球菌による疾患の場合(Bentley et al, PLOS Genetics 2(3):e31 262-269, 2006)、1つの単結合方法が、全ての血清型にふさわしくはなり得ない。
【0055】
再現可能な免疫学的特性を有する結合型ワクチンを再現よく合成するには、多糖の大きさ、1つのタンパク質担体分子当たりに結合される多糖分子の数、選択した担体の性質および結合化学の種類を慎重に制御することが必要であり、これにより、結合型ワクチンの製造コストが著しく上昇する。
【0056】
抗生物質抵抗性の発現により、安全かつ有効なワクチン開発の緊急性が高まる。特に発展途上国の人々に広く利用可能なワクチンを製造するには、費用効率も優れたワクチンの製造が求められる。1種以上の細菌種の異なる血清型由来の多くの多糖抗原に対する結合型混合ワクチンを小児期の予防接種計画に組み込むことによって、その感染リスクの高い集団におけるワクチン投与が単純化される。しかし、現在の結合型ワクチン技術は費用効率が悪いため、結合型混合ワクチンのコストが高いという理由から、発展途上世界への提供は実質的に不可能である。
【0057】
望ましい態様では、本発明の免疫原性ワクチン組成物は、1種以上の細菌の莢膜成分が100nmより大きい、望ましくは直径が100nm〜2000nmの範囲の粒径を有する架橋した担体タンパク質マトリックスに封入されたタンパク質莢膜マトリックスワクチン(PCMV)であるか、あるいはその範囲内で選択された粒子を主に含む。目的とする抗原(例えば莢膜)を出発物質として必要とし、それらは、加水分解してより小さい断片にする必要がなく、複数の多糖を同時に封入することができるため、PCMVを容易に製造することができる。
【0058】
本発明のワクチンの製造方法は、目的とする抗原(例えば莢膜多糖)の化学知識を全く必要としないため、本方法は、目的とする抗原および担体タンパク質の化学操作に適合する架橋化学反応を開発する必要性とは無関係である。それにも関わらず、いくつかの抗原が架橋剤と相互作用する可能性があるが、これによって本ワクチンの有効性が損なわれることはなく、それは、目的とする抗原および担体タンパク質の意図しない架橋は、いずれにしても免疫原性特性を有することが期待されるからである。本発明のワクチンでは、目的とする抗原の担体タンパク質への架橋は、ワクチンを有効にするための要件ではない。これは、その要件のために製造および開発が妨げらている従来の結合型ワクチンと著しく対照的である。本発明のワクチンは、担体タンパク質の少なくとも、例えば、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはさらに100%が架橋され、かつ目的とする抗原の例えば、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%以下が担体タンパク質に架橋されていることが望ましい。抗原の10%以下が担体タンパク質に架橋され、担体タンパク質の少なくとも50%が架橋されていることが望ましい。
【0059】
本明細書に述べられているように、本発明に係る高分子量のタンパク質マトリックス粒子からなるタンパク質マトリックスワクチン組成物は、低分子量のタンパク質マトリックス粒子からなる組成物またはより低分子量のタンパク質マトリックス粒子を含む広範囲の粒径を有する組成物と比較して高い免疫原性を有する。従って、抗原および担体タンパク質成分を混合し、架橋反応を開始して担体タンパク質の架橋を引き起こした後、より低分子量の化学種(例えば、直径が100nm未満の化学種)を除外するように、あるいは少なくとも直径が100nmより大きい粒径を含むように本組成物のタンパク質マトリックスの粒径を選択することによって、反応生成物をさらに処理することが望ましい。本発明に係る好ましい組成物は、直径が120〜2000nmの範囲の粒径を有するか、あるいはその範囲内から選択された粒子を主に含む。本発明の望ましい態様では、タンパク質マトリックスワクチン組成物は、直径が120nmより大きい、170nmより大きい、200nmより大きい、500nmより大きい、1000nmより大きい、2000nmより大きいまたはさらにそれ以上(例えば、タンパク質マトリックス粒子を回収する方法の限界まで)の平均粒径のタンパク質マトリックス粒子を有する。本発明のさらにより望ましい態様では、本発明の免疫原性組成物は、直径が100〜2000nmなどの直径が100nmより大きい粒径範囲、またはその範囲内の選択範囲、例えば、120〜200nm、200〜400nm、250〜500nm、120〜1000nm、200〜2000nm、および他のそのような粒径範囲を有するタンパク質マトリックス/抗原複合体で構成されている。本発明のなおさらに望ましい態様では、本組成物は、直径が170〜185nmの粒径を有する複合体を含む。本明細書に述べられているように、複合体の平均粒径を増加させるか、あるいはワクチン組成物からより小さい粒径の成分を除外することによって、封入された抗原の免疫原性が驚くべき程に高まる。さらに、非常に少量の抗原を含むより大きなタンパク質マトリックス粒子は、本発明の粒径選択したタンパク質莢膜マトリックス組成物の何倍もの(例えば67倍)抗原を含む抗原のみからなる組成物(非複合型)を超えるかそれに匹敵する免疫応答を誘発することができる。
【0060】
所望の大きさの粒子は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)などの任意の好適な手段と、その後、より大きな粒子を集め、より小さな粒子を廃棄することにより分別することができる。あるいは、所望の大きさの粒子を保持しながら、精密な分子量切り捨て値を有するフィルタ膜を使用して、より小さな粒子を除去することができる。より低分子量の化学種(例えば、直径が100nm未満の化学種)の除外または少なくとも直径が100nmより大きい粒径を含めるための本組成物のタンパク質マトリックスの粒径の選択は、当該技術分野で知られている任意の手段、例えば、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、ゲル濾過クロマトグラフィまたはゲル浸透クロマトグラフィなどのクロマトグラフィによって達成することができる。ゲル電気泳動技術も使用することができる。
【0061】
本明細書に記載されているワクチンの製造方法では、目的とする抗原(例えば、莢膜高分子化合物)の広範囲な修飾はなされない。抗原は、可能な修飾、例えば高分子鎖の末端に還元性糖基をもつ多糖莢膜の還元性糖の還元、と同じ状態を一般に維持する。末端の糖は、高分子化合物の内部残基よりも100〜10000倍も数が少ないため、そのような些細な修飾が、大部分の莢膜多糖の免疫原性に影響を与える可能性は低い。対照的に、従来の結合型ワクチンでは通常、抗原(例えば、莢膜高分子化合物)に、担体タンパク質の共有結合的付着点として機能するリンカー基を導入することが必要である。多くの抗原(例えば、莢膜高分子化合物)が、それらの構造の一部としてカルボキシル基またはアミノ基などの反応基をもたないため、リンカーを使用する必要がある。例えば、多糖への反応基の導入によって、莢膜エピトープが破壊され、宿主自己エピトープとのそれらの未知の免疫学的交差反応のために、ワクチン製品には望ましくない新規なエピトープが産生される可能性がある。
【0062】
本明細書に記載されているワクチンの製造方法は、その化学操作が担体タンパク質(例えば、DNI、コレラ毒素Bサブユニット、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドもしくは断片Cまたは大腸菌β−ガラクトシダーゼ)の架橋化学反応にのみ依存しているため、結合型ワクチン技術ほど複雑ではない。例えば、DNIと混合する場合、莢膜高分子化合物は架橋率に影響を与えるが、それは、使用しているタンパク質によってより制御される架橋のパターンもしくは程度、その濃度および添加される架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)の濃度には影響を与えない。これらのパラメータは容易に調節することができ、それにより、ワクチンを製造するために必要な時間および労力が減少し、出費が抑えられる。
【0063】
本明細書に記載されているPCMV組成物の製造方法は、任意の抗原(例えば、莢膜高分子化合物)または存在したとしても非常に僅かなアミノ基を有する任意の生物高分子化合物、および、架橋することができる任意の担体タンパク質(例えば、ホウ化水素還元によって破壊し得る重要なエピトープを持たない担体タンパク質)と共に使用することができる。本明細書に記載されている方法に使用し得る担体タンパク質は、少なくとも2つのリジン残基あるいは保護されていないために化学修飾によって架橋し得る他の残基を持つことが望ましい。破傷風トキソイドは、1つの担体タンパク質候補である。この毒素は、ホルムアルデヒド(タンパク質のアミノ基と反応する試薬)を用いた処理によって無毒化されている。他の望ましい担体タンパク質としては、コレラ毒素Bサブユニット(SBL Vaccin AB社から入手可能)、ジフテリアトキソイドもしくはCRM197、破傷風トキソイドもしくは断片C(Sigma Aldrich社から入手可能)、DNI、または大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(Sigma Aldrich社から入手可能)が挙げられる。
【0064】
最初に個々の結合型ワクチンを合成した後、それらを混合して、結合型「混合」ワクチン(例えば、Wyeth社製の七価肺炎球菌ワクチン、Prevnar(登録商標))を製造することによって、現在の多価結合型ワクチンは製造されている。担体タンパク質と例えばグルタルアルデヒドまたは他の架橋剤を用いる架橋前に、化学的に異なる抗原(例えば、莢膜有機高分子化合物)を混合することによって、あるいは別々に合成された本発明の特異的ワクチンを混合することによって、本発明のワクチン製造方法を使用して多価ワクチンを製造することができる。この柔軟性によって、従来の多価ワクチン製造方法に勝る顕著な利点が得られる。
【0065】
実施例に述べられている本発明の例示的なワクチンは、これらのワクチンを、抗原分子および担体タンパク質を構成している原子間に何らかの共有結合が生成されることは予想されない方法で合成したという事実にも関わらず、結合型ワクチンと同等に機能した。グルタルアルデヒドは、リジン残基のイプシロンアミノ基によって代表されるタンパク質のアミノ側鎖とのみ反応する。多糖抗原は、グルタルアルデヒドまたはアルデヒド官能性架橋剤(例えば、上記OCH−R−CHO)と反応する遊離アミノ基をほとんど含んでおらず(任意のアミノ側鎖は典型的にアセチル化されている)、従って、そのような抗原は、抗原の50%未満が担体タンパク質に直接架橋されているPCMV形成によく適している。以下の実施例に示すように、PCMV(結合体対照と有利に比較される)によって生成された免疫応答は、多糖分子がDNIタンパク質分子の架橋したマトリックスに分子的に封入されたことを示す。
【0066】
非限定的なモデルによれば、封入は、タンパク質マトリックスワクチン組成物を、免疫学的にPGAを認識するIg受容体によってそのようなマトリックスに結合するB細胞内に運搬するように作用する。当該マトリックスは、これらのB細胞内に取り込まれると、従来の結合型ワクチンに類似した方法で分解され、これにより、対応するB細胞のMHCクラスII分子の表面に提示される担体タンパク質由来のペプチドが生じる。次に、これにより、T細胞の助けを借りることによって、抗原に特異的なIgGを産生する血漿および記憶細胞になるそのようなB細胞の増殖および成熟を引き起こす。従って、非限定的なモデルによれば、PCMVは、免疫学的にタンパク質結合型莢膜ワクチンのように作用するが、PCMVには担体タンパク質と莢膜高分子化合物との顕著な共有結合形成がないため、区別することができる。
【0067】
PCMVなどの本発明のワクチンは、例えば小児ワクチンと併用してもよい。さらに、本発明のワクチンは、例えば、肺炎球菌感染、連鎖球菌(AおよびB群)感染、インフルエンザ菌タイプB(「HiB」)感染、髄膜炎菌(meningococcal)(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitides))感染に対してワクチン接種するために使用してもよく、グラム陰性菌(例えば、緑膿菌、野兎病菌(Thirumalapura et al, J. Med. Microbiol. 54:693-695, 2005; Vinogradov and Perry, Carbohydr. Res. 339:1643-1648, 2004; Vinogradov et al, Carbohydr. Res. 214:289-297, 1991)、赤痢菌種、サルモネラ菌種、アシネトバクター種、バークホルデリア種および大腸菌)由来のO抗原ワクチンとして使用してもよい。
【0068】
本発明のワクチンは、例えば、本明細書に記載されているような1種以上の目的とする抗原の存在下で、例えば、本明細書に記載されているような任意の担体タンパク質を架橋するために、例えば、本明細書に記載されているような任意のリンカーを用いて製造してもよい。1種の目的とする抗原を使用する場合、本発明のタンパク質マトリックスワクチンを一価であると言う。1より多い目的とする抗原を使用する場合、本発明のタンパク質マトリックスワクチンを多価であると言う。微生物の莢膜高分子化合物または多糖が目的とする抗原である場合、本発明のタンパク質マトリックスワクチンを、タンパク質莢膜マトリックスワクチン(PCMV)であると言う。
【0069】
リンカー
担体タンパク質を架橋するために有用な架橋剤は、当該技術分野でよく知られており、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミドおよびビス−ジアゾ化ベンジジンが挙げられる。
【0070】
同種二官能性もしくは異種二官能性リンカーを用いて担体タンパク質を直接架橋する一般的な方法および部分については、例えば、G. T. Hermanson, Bioconjugate Techniques(バイオ複合化技術)(Academic Press, 1996)およびDick and Beurret, "Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens," in Conjugate Vaccines(結合型ワクチンにおける「細菌性炭水化物抗原の複合多糖」)(Cruse and Lewis, eds), Contrib. Microbiol. Immunol. Basel, Karger, 1989, vol.10, pp. 48-114)に記載されている。例えば、n個のリジン部分を有する担体タンパク質を用いる場合、理論的には、例示的な架橋剤のカルボキシル基との反応のために、n+1個の一級アミン(末端アミンを含む)が利用可能である。従って、この直接結合手順を用いる場合、その製品は、形成されたn+1個のアミド結合を有するように制限される。
【0071】
本発明の望ましい態様で用いられるリンカーは、その最も単純なものでは、2つの担体タンパク質を繋げる結合である。当該リンカーは、2つの担体タンパク質(A)および(B)に共有結合するペンダント基を有する直鎖状、環状もしくは分岐鎖状分子骨格とすることができる。目的とする抗原が封入され得る相互接続した担体タンパク質のマトリックスが生成されるように、任意の所与の担体タンパク質は、1より多い担体タンパク質に結合されていてもよい。
【0072】
「連結基」という用語は、リンカー(L)の反応性部分と官能基(A)または(B)との組み合わせから生じる共有結合を指す。連結基の例としては、エステル、カルバミン酸エステル、チオエステル、イミン、ジスルフィド、アミド、エーテル、チオエーテル、スルホンアミド、イソ尿素、イソチオ尿素、イミドエステル、アミジン、アミド亜リン酸エステル、リン酸ジエステル、チオエーテルおよびヒドラゾンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
(A)と(B)との結合は、(A)および(B)上に位置づけられた1つ以上の官能基との結合(連結基)形成を伴う共有結合手段によって達成される。この目的のために用いられ得る化学反応性官能基の例としては、アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、カルボニル、チオエーテル、グアニジニル、イミダゾリルおよびフェノール基が挙げられるが、これらに限定されず、これらのうちの全てが、多くの担体タンパク質中に自然に存在するアミノ酸中に存在している。
【0074】
従って、(A)と(B)の共有結合は、(A)および(B)中に存在するそのような官能基と反応することができる反応性部分を含むリンカー(L)を用いて行ってもよい。この反応生成物は、(L)と(A)および(L)と(B)を連結する新しく形成された結合を含む連結基である。例えば、(A)のヒドロキシル基を、(L)またはその活性化誘導体(下記参照)のカルボン酸基と反応させ、それにより、エステル連結基を形成してもよい。
【0075】
例えば、Gurd, Methods Enzymol, 11:532, 1967に記載されているように、スルフヒドリル基と反応することができる部分の例としては、スルフヒドリル基との特定の反応性を示すが、イミダゾリル、チオエーテル、フェノールおよびアミノ基を修飾するためにも使用することができるXCHCO−(式中、X=Br、ClまたはI)型のα−ハロアセチル化合物が挙げられる。N−マレイミド誘導体は、スルフヒドリル基に対して選択的であるとも考えられているが、さらに、特定の条件下ではアミノ基に結合させるのに有用となり得る。アミノ基の転換によってチオール基を導入する2−イミノチオランなどの試薬(Traut et al., Biochemistry, 12:3266, 1973)は、結合がジスルフィド架橋の形成によって生じる場合には、スルフヒドリル試薬とみなされることがある。
【0076】
アミノ基と反応することができる反応性部分の例としては、例えば、アルキル化剤およびアシル化剤が挙げられる。代表的なアルキル化剤としては、以下が挙げられる:
(i)反応性チオール基の非存在下でアミノ基に対して特異性を示し、かつXCHCO−型(式中、X=Cl、BrまたはD、例えば、Wong(Biochemistry, 24:5337, 1979)に記載されている)であるα−ハロアセチル化合物;
(ii)マイケル型反応によって、あるいは、例えば、Smyth et al. (J. Am. Chem. Soc, 82:4600, 1960 and Biochem. J, 91:589, 1964)に記載されている環状カルボニル基への添加によるアシル化によって、アミノ基と反応し得るN−マレイミド誘導体;
(iii)反応性ニトロハロ芳香族化合物などのハロゲン化アリール;
(iv)例えば、McKenziら(J. Protein Chem., 7:581, 1988)に記載されているハロゲン化アルキル;
(v)アミノ基と共にシッフ塩基を形成することができるアルデヒドおよびケトン(形成される付加物は通常、還元によって安定化されて安定なアミドを提供する);
(vi)アミノ、スルフヒドリルまたはフェノール性ヒドロキシル基と反応し得るエピクロロヒドリンおよびビスオキシランなどのエポキシド誘導体;
(vii)アミノ、スルフヒドリルおよびヒドロキシル基などの求核基に対して非常に反応性であるs−トリアジンの塩素含有誘導体;
(viii)開環によってアミノ基などの求核基と反応する、例えば、Ross(J. Adv. Cancer Res., 2:1, 1954)に記載されているような、上に詳述したs−トリアジン化合物に基づくアジリジン;
(ix)例えば、Tietze(Chem. Ber., 124:1215, 1991)に記載されているような、スクエア酸ジエチルエステル;および
(x)例えば、Bennecheら(Eur. J. Med. Chem., 28:463, 1993)に記載されているような、エーテル酸素原子によって引き起こされる活性化のために通常のハロゲン化アルキルよりも反応性のアルキル化剤であるα−ハロハルキルエーテル。
【0077】
代表的なアミノ反応性アシル化剤としては、以下が挙げられる:
(i)それぞれ安定な尿素およびチオ尿素誘導体を形成するイソシアン酸塩およびイソチオシアン酸塩(特に芳香族誘導体);
(ii)例えば、Herzigら(Biopolymers, 2:349, 1964)に記載されている塩化スルホニル;
(iii)酸ハロゲン化物;
(iv)ニトロフェニルエステルまたはN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルなどの活性なエステル;
(v)混合型、対称型またはN−カルボキシ酸無水物などの酸無水物;
(vi)例えば、M.Bodansky(Principles of Peptide Synthesis, Springer- Verlag, 1984)に記載されているような、アミド結合形成のための他の有用な試薬;
(vii)例えば、Wetzら(Anal. Biochem., 58:347, 1974)に記載されているような、例えば、アジド基が亜硝酸ナトリウムを用いて事前に形成されたヒドラジド誘導体から生成されているアシルアジド;および
(viii)例えば、HunterおよびLudwig(J. Am. Chem. Soc, 84:3491, 1962)に記載されているような、アミノ基と反応するとすぐに安定なアミジンを形成するイミドエステル。
【0078】
例えば、グルタルアルデヒドなどのアルデヒドおよびケトンをアミンと反応させてシッフ塩基を形成してもよく、このシッフ塩基を還元的アミノ化で安定化させると有利である。アルコキシルアミノ部分はケトンおよびアルデヒドと容易に反応して、例えば、Webbら(Bioconjugate Chem., 1:96, 1990)に記載されているような安定なアルコキシアミンを生成する。
【0079】
カルボキシル基と反応するできる反応性部分の例としては、例えば、Herriot(Adv. Protein Chem., 3:169, 1947)に記載されているような、高い特異性で反応してエステル基を生成するジアゾ酢酸エステルおよびジアゾアセトアミドなどのジアゾ化合物が挙げられる。また、O−アシル尿素形成によって反応した後、アミド結合を形成するカルボジイミドなどのカルボン酸修飾試薬を使用してもよい。
【0080】
(A)および/または(B)内の官能基を、必要に応じて、反応前に他の官能基に転換して、例えば、さらなる反応性または選択性を与えてもよい。この目的のために有用な方法の例としては、ジカルボキシル無水物などの試薬を用いたアミンのカルボン酸への転換;N−アセチルホモシステインチオラクトン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、2−イミノチオランまたはチオール含有スクシンイミジル誘導体などの試薬を用いたアミンのチオールへの転換;α−ハロ酢酸塩などの試薬を用いたチオールのカルボン酸への転換;エチレンイミンまたは2−ブロモエチルアミンなどの試薬を用いたチオールのアミンへの転換;カルボジイミド、次いでジアミンなどの試薬を用いたカルボン酸のアミンへの転換;および、塩化トシルなどの試薬を用いたアルコールのチオールへの転換後のチオ酢酸塩によるエステル転移反応および酢酸ナトリウムによるチオールへの加水分解が挙げられる。
【0081】
さらなる結合材料を導入しない(A)の反応性化学基と(B)の反応性化学基との直接共有結合を伴ういわゆるゼロ長さのリンカーを、必要に応じて本発明に従って使用してもよい。例としては、連結基がエステルまたはチオエステルであるように、(L)が、(A)の酸素原子を(B)中に存在するカルボニルもしくはチオカルボニル部分に結合させる化学結合を表わす化合物が挙げられる。例えば、アミノ基(A)は、A−L−Bを生じさせるカルボジイミド化学を用いてカルボキシル基(B)に結合することができ、式中、Lは、N−Rに結合されるアミド結合すなわちRC(:O)であり、Rは、同じまたは2つの異なるタンパク質分子のアミノ酸側鎖に由来する炭素鎖である。但し、最も一般には、リンカーは、上述したように、スペーサ要素によって連結された2つ以上の反応性部分を含む。スペーサの存在により、二官能性リンカーは(A)および(B)中の特異的官能基と反応し、これらの2つの化合物間に共有結合を生じさせることができる。リンカー(L)の反応性部分は、同じであっても(同種二官能性リンカー)、異なってもよく(異種二官能性リンカーまたは、いくつかの異なる反応性部分が存在する場合は、異種多官能性リンカー)、(A)と(B)との間に共有結合を生じさせ得る多様な可能な試薬が得られる。
【0082】
スペーサ要素は典型的に、炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル、原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝鎖状ヘテロアルキル、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルケン、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキン、炭素原子数5〜10の芳香族残基、原子数3〜10の環状系、または−(CHCHO)CHCH−(式中、nは1〜4である)によって、(A)および(B)を効果的に分離する鎖からなる。
【0083】
結合剤によって導入される外部材料の性質は、最終的なワクチンの製品の薬物動態および/または活性に影響を与えるものであってもよい。従って、生分解性もしくは化学的に敏感なスペーサアームまたは酵素の切断部位が組み込まれたスペーサアームを含む切断可能なリンカーを導入することが望ましい場合もある。
【0084】
これらの切断可能なリンカーは、例えば、国際公開第92/17436号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、生体内で容易に生分解される。場合によっては、連結基は、エステル分解酵素の存在下では切断されるが、そのような酵素の非存在下では安定である。従って、(A)および(B)は、疾患部位近くで活性な酵素によるそれらの徐放を可能にするように結合されていると有利である。
【0085】
リンカーは、式−(Z−(Y−(Z−(R11)−(Z−(Y−(Z−の生分解性ジエステル、ジアミドまたはジカルバミン酸基との連結基を形成してもよく、式中、Z、Z、ZおよびZはそれぞれ、O、SおよびNR12(式中、R12は、水素またはアルキル基である)から独立に選択され、YおよびYはそれぞれ、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、ホスホリルまたは類似した酸形成基から独立に選択され、o、p、s、t、uおよびvはそれぞれ独立に0または1であり、R11は、炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル、原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝鎖状ヘテロアルキル、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルケン、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキン、炭素原子数5〜10の芳香族残基、原子数3〜10の環状系、−(CHCHO)CHCH−(式中、qは1〜4である)、または−(Z−(Y−(Z−(R11)−(Z−(Y−(Z−を結合する化学結合である。
【0086】
本発明に使用される例示的な望ましいリンカー(L)は、式IまたはIIのいずれかによって表わされるものであってもよい:
−C:O−R13−C:O− I
−C:O−NH−R13−NH−C:O− II
ここで、リンカーは、(A)の酸素原子および(B)の酸素原子に共有結合されている。従って、式IまたはIIのリンカー(L)は、ジピラン、エステルまたはカルバミン酸エステル連結基を介して担体タンパク質(A)および(B)に結合されている。これらの態様では、R13は、炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル、原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝鎖状ヘテロアルキル、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルケン、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキン、炭素原子数5〜10の芳香族残基、原子数3〜10の環状系、−(CHCHO)CHCH−(式中、nは1〜4である)、または2つの窒素もしくは2つのカルボニルを結合する化学結合を表す。
【0087】
ヒドラゾン結合を形成するように設計されたリンカーは、化学式IIIを有する:
−(Y)−(Z−R14−C(:X)−R15 III
式中、Zは、O、SまたはNR16から選択され、R16は、水素またはアルキル基であり、R15は、水素、アルキルまたはヘテロアルキルから選択され、Yは、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、ホスホリルまたは(A)の酸素原子に共有結合される類似した酸形成基から選択され、wは、0または1であり、R14は、炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル、原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝鎖状ヘテロアルキル、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルケン、炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキン、炭素原子数5〜10の芳香族残基、原子数3〜10の環状系、−(CHCHO)CHCH−(式中、nは1〜4である)、または、−(Y)−(Z−を結合する化学結合であり、Xは、ヒドラジド基およびリンカーIIの前駆体を含む(B)の縮合反応によって生じるヒドラゾンであり、Xはケトンまたはアルデヒド基の酸素原子である。
【0088】
担体タンパク質
一般に、生理学的条件下で抗原を封入することができる任意の担体タンパク質を本発明で使用してもよい。望ましくは、抗原と担体タンパク質との間の有意な共有結合の非存在下で、抗原を担体タンパク質との複合体に封入する。有意な共有結合の非存在とは、抗原の50%以下が担体タンパク質に共有結合していることを指す。望ましい態様では、抗原の40%、30%、10%または5%以下が、担体タンパク質に共有結合されている。抗原/担体タンパク質複合体はミョウバンなどの別の化合物を含んでいてもよく、このような他の化合物は、望ましい態様では、抗原および担体タンパク質を封入することができる。
【0089】
本発明のワクチンに使用される担体タンパク質は、望ましくは、単独であるいは抗原と共に、対象において免疫応答を誘発するタンパク質である。望ましくは、担体タンパク質は、ヘルパーT細胞によって認識される複数のMCHクラスII制限エピトープを含む。望ましくは、エピトープは、対象においてT細胞応答を誘発することができ、B細胞を誘発して目的とする全抗原に対する抗体を産生する。本発明について記載する際に使用されているエピトープは、抗体分子またはその断片とのその特異的な相互作用に関与する任意の抗原決定基を含む。エピトープの決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの化学的に活性な表面分子群からなり、特異的な3次元の構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。免疫原性特性を有するように、タンパク質またはポリペプチドは一般にT細胞を刺激することができる。但し、T細胞によって認識されるエピトープが欠如している担体タンパク質も免疫原性になり得る。
【0090】
強い免疫応答を誘発する(すなわち、高度に免疫原性である)ことが知られている担体タンパク質を選択することによって、多様な対象集団を、本明細書に記載されているタンパク質マトリックスワクチン組成物で治療することができる。担体タンパク質は、ワクチンに対する強い免疫応答を誘発するのに十分に外来性であることが望ましい。典型的には、使用する担体タンパク質は、目的とする抗原に免疫原性を与えることができる分子である。望ましい態様では、担体タンパク質は、本質的に高度に免疫原性である担体タンパク質である。従って、高度な免疫原性を有し、かつそれと複合体を形成した複数の抗原に対する抗体産生を最大にすることができる担体タンパク質が望ましい。
【0091】
本発明の様々な担体タンパク質としては、例えば、変異体であっても変異体でなくてもよい毒素およびトキソイド(化学的または遺伝的)、例えば、炭疽毒素、PAおよびDNI(PharmAthene社)、ジフテリアトキソイド(Massachusetts State Biological Labs; Serum Institute of India, Ltd.)もしくはCRM197、破傷風毒素、破傷風トキソイド(Massachusetts State Biological Labs; Serum Institute of India, Ltd.)、破傷風毒素断片Z、緑膿菌の外毒素Aまたは外毒素A変異体、細菌性フラジェリン、ニューモリシン、髄膜炎菌(米国培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)、ヴァージニア州マナッサスから入手可能な株)の外膜タンパク質、緑膿菌Hcplタンパク質、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、志賀様毒素、ヒトのLTBタンパク質、全細菌細胞からのタンパク質抽出物、およびリンカーで架橋することができる任意の他のタンパク質が挙げられる。望ましくは、担体タンパク質は、コレラ毒素Bサブユニット(SBL Vaccin AB社から入手可能)、ジフテリアトキソイドもしくはCRM197、破傷風トキソイドもしくは断片C(Sigma Aldrich社から入手可能)、DNI、または大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(Sigma Aldrich社から入手可能)が挙げられる。他の望ましい担体タンパク質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、P40およびニワトリリボフラビンが挙げられる(特に明記しない限り、例示的な担体タンパク質は、Sigma Aldrich社から市販されているものである)。他の例示的な担体タンパク質は、分岐鎖状ペプチドの多重抗原性ペプチド(MAP)である。MAPを用いると、架橋密度は、複数の分岐鎖状アミノ酸残基により最大となる。MAPを形成するために使用することができる架橋目的にとって望ましいアミノ酸残基は、その側鎖に遊離アミノ基を有するリジンであるが、これに限定されない。
【0092】
動物実験をする場合、ワクチンの開発では、担体としてBSAおよびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の両方が一般に使用される。治療用ワクチンの調製で使用されている担体タンパク質としては、複数の病原菌の毒素およびそれらのトキソイドが挙げられるが、これらに限定されない。例としては、ジフテリアおよび破傷風毒素およびそれらの医学的に許容される対応するトキソイドが挙げられる。他の候補は、交差反応性物質(CRM)と呼ばれる細菌毒素に抗原的に類似したタンパク質である。本発明の実施で有用な担体タンパク質としては、ヒトに由来せずかつあらゆるヒトの食品中に存在しない任意のタンパク質も挙げられる。
【0093】
本発明の望ましい態様では、環状様(ring-like)構造を形成するタンパク質をPCMVの製造に使用する。そのようなタンパク質としては、緑膿菌のHcplタンパク質、コレラ毒素の非毒性「Bサブユニット」、大腸菌の熱不安定性エンテロトキシンおよび志賀様毒素が挙げられる。そのような環状様タンパク質複合体は、直鎖状多糖鎖がこれらの環状タンパク質複合体の中心溝を貫通した「紐に担持されたビーズ」を形成することができる。タンパク質架橋後は、そのような複合体は特に安定であると予測される。タンパク質の構造データは、これらの中心溝が多糖鎖が容易に入れる程に十分に大きいことを示唆している。例えば、Hcpl六量体環の中心溝は42オングストロームであり、これは、幅が5.5オングストロームのいくつかの多糖鎖を容易に収容するのに十分な幅である(Mougous et al, Science, 312(5779):1526-1530 (2006))。あるいは、タンパク質環は、(例えば、特定の物理的化学的条件下で自然に環の中に集合する単量体の担体タンパク質のサブユニットから)多糖の周囲に組み立ててもよい。環の中に集合することができるそのような単量体のタンパク質は当該技術分野で知られており、例えば、ニューモリシン(Walker et al, Infect. Immun., 55(5):1184-1189 (1987); Kanclerski and Mollby, J. Clin. Microbiol, 25(2):222-225 (1987))、リステリオリシンO(Kayal and Charbit, FEMS Microbiol. Rev., 30:514-529 (2006); Mengaud et al, Infect. Immun., 55(12):3225-3227 (1987))、DNI、炭疽菌PA、Hcpl、コレラ毒素Bサブユニット、志賀毒素Bサブユニット、フラジェリン、および当該技術分野で知られておりかつ様々な微生物によって産生される非常に多くの関連分子が挙げられる。
【0094】
別の望ましい態様では、Toll様受容体(TLR)作用薬を担体タンパク質として使用する。Toll様受容体(TLR)の活性化は、適応免疫応答を形づくるのに重要であり、抗体応答の親和性成熟、イソ型転換および免疫記憶に関与し得る。コレラ菌のフラジェリン(FLA)はTLR作用薬である。20mgを超えるFLAタンパク質を組換え型大腸菌から精製し、それが、IL−6マクロファージ誘発アッセイにおいて強力なTLR活性化因子であることが分かった。さらに、「ニューモリシン」と呼ばれるよく保存された肺炎連鎖球菌タンパク質は、TLR4を活性化することも分かっており、さらに防御抗原である。従って、このタンパク質もタンパク質マトリックスの担体タンパク質として使用することができる。
【0095】
さらに、外膜タンパク質(OMP)混合物(例えば、髄膜炎菌のOMP)は、HIB結合型ワクチンの製造のための担体タンパク質としてMerck社によって使用されており、肺炎連鎖球菌の全細菌細胞からのタンパク質抽出物は、動物の感染モデルにおいて少なくとも部分的に防御されることが分かった。本発明の望ましい態様では、これらのタンパク質混合物を担体タンパク質として使用してもよい。
【0096】
望ましい態様では、保護されていないため化学修飾によって架橋することができる、例えば、少なくとも2つのリジン残基または他の残基を有する担体タンパク質を用いて、ワクチン組成物を製造する。他の望ましい態様では、担体タンパク質は多量体(例えば、少なくとも5つのサブユニットを含む多量体)である。
【0097】
別の態様では、非毒性であるため使用前に毒性を弱める必要性が全くないという理由から、DNIを担体タンパク質として使用する。さらに、目的とする抗原に対して誘発される防御免疫応答だけでなく、DNIは炭疽菌に対する防御免疫応答を誘発し得るため、DNIの使用は望ましい。また、DNIは、内部ジスルフィド結合を全く有していない。そのような結合はホウ化水素還元しやすく、それにより、タンパク質を変性させ、炭疽毒素中和抗体を誘発するエピトープを喪失させることができる。
【0098】
目的とする抗原
本発明のワクチン組成物およびそのようなワクチンの製造および投与方法は、目的とするあらゆる抗原(例えば、多糖、多価アルコールまたはポリアミノ酸)に対して使用することができる。望ましくは、目的とする抗原は、ワクチンの製造方法によって用いられる化学反応によって破壊することができる一級基を全く有していない(例えば、ホウ化水素還元による抗原ジスルフィド結合の破壊によって引き起こされる抗原の変性)。例示的な目的とする抗原としては、多糖(例えば、少なくとも18個の残基を有する多糖)、リン酸化多糖、N−アセチル置換を有するアミノ糖を含む多糖、スルホニル化された糖を含む多糖、他の硫酸修飾した糖もしくはリン酸修飾した糖、多価アルコール、ポリアミノ酸、テイコ酸、リポ多糖のO側鎖などの有機高分子化合物が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な目的とする抗原としては、微生物(例えば、細菌、菌類、寄生虫およびウイルス)によって合成され、次いで、標準的な方法を用いてそのような生物源から精製されたものを含む莢膜有機高分子化合物も挙げられる。例示的な目的とする抗原としては、バシラス種(炭疽菌など)(Wang and Lucas, Infect. Immun., 72(9):5460-5463 (2004))、肺炎連鎖球菌(Bentley et al, PLoS Genet., 2(3):e31 (2006);Kolkman et al, J. Biochemistry, 123:937-945 (1998);およびKong et al, J. Med. Microbiol, 54:351-356 (2005))、赤痢菌(Zhao et al, Carbohydr. Res., 342(9):1275-1279 (2007))、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌、化膿連鎖球菌、大腸菌(Zhao et al, Carbohydr. Res., 342(9):1275-1279 (2007))、緑膿菌などの細菌性生物、および真菌性生物(例えば、クリプトコッカスおよびカンジダ)ならびに多くの他の微生物(例えば、Ovodov, Biochemistry (Mosc), 71(9):937-954 (2006); Lee et al, Adv. Exp. Med. Biol, 491:453-471 (2001);およびLee, Mol. Immunol, 24(10):1005-1019 (1987)を参照)から精製されたものを含む微生物の莢膜有機高分子化合物が挙げられる。例示的な目的とする抗原としては、自然に生じないために生物由来ではない高分子化合物が挙げられる。
【0099】
特定の肺炎連鎖球菌抗原としては、多糖莢膜型1(例えば、1−gまたは1−q)、2(例えば、2−g、2−qまたは2−41A)、3(例えば、3−g、3−q、3−cまたは3−nz)、4、5(例えば、5−q、5−c、5−qapまたは5−g)、6A(例えば、6A−g、6A−c1、6A−c2、6A−n、6A−qap、6A−6B−g、6A−6B−qまたは6A−6B−s)、6B(例えば、6B−c、6A−6B−g、6A−6B−qまたは6A−6B−s)、7F(例えば、7F−7A)、7A(例えば、7A−cnまたは7F−7A)、7B(例えば、7B−40)、7C(例えば、7C−19C−24B)、8(例えば、8−gまたは8−s)、9A(例えば、9A−9V)、9L、9N、9V(例えば、9A−9V)、9Vおよび14、10F(例えば、10F−q、10F−caまたは10F−10C)、10A(例えば、10A−17Aまたは10A−23F)、10B(例えば、10B−10C)、11F、11A(例えば、HA−nzまたは11A−11D−18F)、11B(例えば、11B−11C)、11C(例えば、11B−11C.または11C−cn)、11D(例えば、11A−11D−18F)、12F(例えば、12F−qまたは12F−12A−12B)、12A(例えば、12A−cn、12A−46または12F−12A−12B)、12B(例えば、12F−12A−12B)、13(例えば、13−20)、14(例えば、14−g、14−q、14−vまたは14−c)、15F(例えば、15F−cn1または15F−cn2)、15A(例えば、15A−ca1、15A−ca2または15A−chw)、15B(例えば、15B−c、15B−15C、15B−15C−22F−22A)、15C(例えば、15C−ca、15C−q1、15C−q2、15C−q3、15C−s、15B−15Cまたは15B−15C−22F−22A)、16F(例えば、16F−qまたは16F−nz)、16A、17F(例えば、17F−nおよび17F−35B−35C−42)、17A(例えば、17A−caまたは10A−17A)、18F(例えば、18F−ca、18F−wまたは11A−11D−18F)、18A(例えば、18A−nzまたは18A−q)、18B(例えば、18B−18C)、18C(例えば、18B−18C)、19F(例えば、19F−g1、19F−g2、19F−g3、19F−q、19F−nまたは19F−c)、19A(例えば、19A−g、19A−または19A−ca)、19B、19C(例えば、19C−cn1、19C−cn2または7C−19C−24B)、(例えば、13−20)、21(例えば、21−caまたは21−cn)、22F(例えば、15B−15C−22F−22A)、23F(例えば、23F−C、10A−23Fまたは23F−23A)、23B(例えば、23B−cまたは23B−q)、24F(例えば、24F−cn1、24F−cn2または24F−cn3)、24A、24B(例えば、7C−19C−24B)、25F(例えば、25F−38)、25A、27、28F(例えば、28F−28Aまたは28F−cn)、28A(例えば、28F−28A)、29(例えば、29−caまたは29−q)、31、32F(例えば、32F−32A)、32A(例えば、32A−cnまたは32F−32A)、33F(例えば、33F−g、33F−q、33F−chw、33F−33Bまたは33F−33A−35A)、33A(例えば、33F−33A−35A)、33B(例えば、33B−q、33B−sまたは33F−33B)、33D、34(例えば、34−caまたは34s)、35F(例えば、35F−47F)、35A(例えば、33F−33A−35A)、35B(例えば、17F−35B−35C−42)、36、37(例えば、37−gまたは37−ca)、38(例えば、25F−38)、39(例えば、39−cn1または39−cn2)、40(例えば、7B−40)、41F(例えば、41F−cnまたは41F−s)、41A(例えば、2−41A)、42(例えば、17B−35B−35C−42)、43、44、45、46(例えば、46−sまたは12A−46)、47F(例えば、35F−47F)、47A、48(例えば、48−cn1または48−cn2)またはジェンバンク受託番号AF532714もしくはAF532715が挙げられる。
【0100】
特に、莢膜型3、4、6B、7A、7B、7C、7F、9A、9L、9N、9V、12A、12B、12F、14、15A、15B、15C、15F、17、18B、18C、19F、23F、25A、25F、33F、35、37、38、44または46からなる群から選択される肺炎連鎖球菌多糖について述べる。
【0101】
ワクチン組成物
PCMVなどの本発明のワクチンは、例えば小児ワクチンと併用してもよい。さらに、本発明のワクチン組成物を、例えば、肺炎球菌感染、インフルエンザ菌タイプB(「HiB」)感染、連鎖球菌(AおよびB群)感染、髄膜炎菌(meningococcal)(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitides))感染に対してワクチン接種するために使用してもよく、また、グラム陰性菌(例えば、緑膿菌、野兎病菌、赤痢菌種、サルモネラ菌種、アシネトバクター種、バークホルデリア種および大腸菌)からのO抗原ワクチンとして使用してもよい。
【0102】
ワクチン製剤は、望ましくは、少なくとも1種の担体タンパク質、1種以上の目的とする抗原および医薬的に許容される担体もしくは賦形剤(例えば、リン酸アルミニウム、塩化ナトリウム、滅菌水)を含む。ワクチン組成物は、水中油系および当該技術分野で知られている他の系または他の医薬的に許容される賦形剤などの、本製剤の免疫原性を高めるためのアジュバント系も含んでいてもよい。生理学的条件下で不溶性である担体/抗原複合体は、対象への投与後に抗原を徐放するのに望ましい。そのような複合体は、医薬的に許容される賦形剤を含む懸濁液で送達されることが望ましい。但し、担体/抗原複合体は、生理学的条件下で可溶性であってもよい。
【0103】
典型的には、タンパク質マトリックスワクチンの体積は、皮下注射では約0.5ml、筋肉内注射では0.5ml、皮内注射では0.1ml、または、経皮投与では0.002〜0.02mlである。0.5mlの用量のタンパク質マトリックスワクチンには、約2〜500μgの担体タンパク質と共に封入された約2〜500μgの抗原が含まれていてもよい。望ましい態様では、0.5mlの用量では、約10μgの抗原が、約10μgの担体タンパク質と共に封入されている。抗原と担体タンパク質とのモル比は、望ましくは、1:10(例えば、1部の抗原:2部の担体または1部の抗原:3部の担体など)〜10:1(例えば、3部の抗原:1部の担体または2部の抗原:1部の担体など)である。望ましい態様では、抗原と担体とのモル比は1:1である。あるいは、抗原と担体タンパク質との乾燥重量比は、望ましくは、1:10〜10:1(例えば、1:1乾燥重量)である。
【0104】
ペプチドまたは結合体は胃の中で分解する可能性があるので、本ワクチンは、非経口的に(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内または皮内注射によって)投与することが望ましい。物理的に皮層を貫通する手段(例えば、針、エアガンまたは掻爬)による送達が望ましいが、本発明のワクチンを経皮吸収によって投与することもできる。
【0105】
特に、本発明のワクチンは、例えば、適当な免疫アジュバントを含む筋肉内注射、皮内注射または経皮免疫によって対象に投与してもよい。本発明のワクチンは1回以上投与してもよく、多くの場合、対象における抗体産生を高めて、ワクチンに含まれた抗原に対応する病原体による感染を予防するように設計された第2の投与を含む。所望の免疫応答または免疫レベルを得るためのワクチン投与の頻度および量は、ワクチンの比活性に依存し、日常の実験で容易に決定することができる。例えば、乳児のワクチンのスケジュールでは、約4〜8週間の間隔でそれぞれ0.5mlで3回投与した後(生後2ヵ月から開始)、生後約12〜15ヵ月に0.5mlで4回目の投与を行ってもよい。4歳と6歳の間の5回目の投与は、いくつかのワクチンでは望ましい場合もある。
【0106】
1回目の投与が行われる年齢は一般に生後2ヶ月であるが、ワクチンは、6週齢の若い乳児に投与してもよい。成人では、2〜8週間の間隔でその間に行われる2回以上の0.5mlの投与は一般に、長期的な防御を与えるのに十分である。追加免疫投与は、以前に免疫された成人および11歳より上の小児に対して10年毎に行うことが望ましい。
【0107】
本製剤を、単位用量または複数回用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルで提供してもよく、使用直前に無菌液体担体の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で貯蔵してもよい。本発明のワクチンは、薬理学的に許容される媒体(例えば、ミョウバンの水酸化物ゲル、アジュバント調製物または食塩水)で製剤化し、次いで、例えば、適当な免疫アジュバントを含む筋肉内注射、皮内注射または経皮免疫によって投与することができる。
【0108】
本発明は、本明細書に記載されているワクチン(例えば、PCMV)を含むキットも含む。本発明のキットは、本明細書に記載されているワクチン接種方法でのキットの使用説明書も含むことができる。
【0109】
免疫スケジュールの有効性は、対象における抗体力価を測定する標準的な方法を用いて決定してもよい。一般に、約1μg/mlの平均抗体力価(望ましくはIgGの力価)は、長期的な防御を示しているものと見なされる。
【0110】
本発明について、具体的な実施例、態様および図を参照しながら本明細書に記載されているが、その目的は、本発明を例示することであり、その範囲を限定することではない。以下の実施例は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0111】
本発明は、担体タンパク質マトリックスに封入された目的とする抗原を含むワクチン組成物、そのようなワクチンの製造方法およびワクチンの投与方法を提供する。本組成物の免疫原性、従って、ワクチンとしてのそれらの有効性は、担体タンパク質マトリックスの粒径を制御または選択することによって向上し得ることを発見した。
【実施例】
【0112】
実施例1
Bensonら(Biochemistry, 37:3941-3948 (1998))によって記載されているように、抗原として肺炎連鎖球菌多糖の14型莢膜多糖(PPS14)を用い、担体タンパク質として大腸菌から発現された炭疽菌防御抗原(PA)のドミナントネガティブ変異体(DNI)型を用いて、マトリックスワクチン組成物に対する粒子選別の効果を調査した。
【0113】
多糖抗原(PPS14)および担体タンパク質(DNI)を1:1の重量比で混合し、各成分は7.5mg/mlの濃度で存在した。架橋剤としてグルタルアルデヒドを添加して、DNI担体タンパク質の架橋を開始した。2種類の架橋反応混合物(最終グルタルアルデヒド濃度が0.05%のものと最終グルタルアルデヒド濃度が0.25%のもの)を調製した。4℃で23時間インキュベートして、0.5mlの総体積で架橋反応を行った。その時、シッフ塩基を還元するシアノホウ水素化ナトリウムを濃度が20mg/mlになるまで添加し、反応混合物をさらに1時間インキュベートした。
【0114】
0.25%グルタルアルデヒド反応混合物の一部を25mlセファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースゲルサイズ分別カラム(Sigma−Aldrich社)に供して、粒径に基づいてPPS14:DNIマトリックスワクチン組成物を分離した。分別は、150mMのNaClを含む10mMリン酸緩衝液を用いて行った。
【0115】
さらなる評価のために、PPS14:DNIマトリックスワクチンの2種類の貯留物を単離した。第1の貯留物は、空隙体積(貯留物1)と、空隙体積と単量体DNIタンパク質(83kD)の位置との間でカラムから溶出した2画分(貯留物2)の貯留物を含む3画分(1mlの画分)で構成されていた(図1を参照)。DNIは図1の約24mlの位置で溶出する。貯留物1および貯留物2を、屈折率(多角度レーザ光散乱クロマトグラフィ)(SEC−MALS−RI)によってさらに調査した。貯留物1中の粒径は直径が120〜200nmの範囲であり、貯留物2中の平均粒径は直径が63nmであった。各貯留物の組成を表1に示す:
【0116】
【表1】

【0117】
貯留物1中のDNIのより大きな粒子は、貯留物2中のより小さな粒子よりも非常に少ない抗原(PPS14)を含んでいた。貯留物2中の粒子は、MALSソフトウェア(Astra、Wyatt Technologies社)で測定したように、86%のPPS14および14%のDNIタンパク質で構成されていた(データは示さず)。架橋反応によるPPS14抗原の封入を確認するために組成物を試験した。5種類の組成物を調製し、SDS−PAGEに供した:
組成物
1.貯留物1(2.4μgのPPS14:DNI、粒径200〜120nm)
2.貯留物2(5.0μgのPPS14:DNI、平均粒径63nm)
3.全PCMV反応混合物(架橋済、0.25%グルタルアルデヒド、未分別)
4.全PCMV反応混合物(架橋済、0.05%グルタルアルデヒド、未分別)
5.対照:DNI(未架橋)のみ(ここから貯留物1および貯留物2を得る)
図2に示すように、SDS−PAGEで、より高分子量の化学種側への染色バンドの移動によって証明されているように、組成物1〜4ではいずれもDNI担体タンパクは広範囲に架橋している。組成物4(0.05%グルタルアルデヒドで架橋した全PCMV反応混合物)ではDNIは架橋しているが、より低分子量からより高分子量の化学種に及ぶより広範囲な染色バンドを示した(組成物1、2、3のレーンを参照)。
【0118】
PPS14抗原は、架橋したDNIマトリックスに会合したままであることを確認するために、DNI捕捉ELISAを行い、PPS14:DNIワクチン製剤を、室温で2時間、固定化マウス抗DNI捕捉抗体(社内で調製)に結合させた。未結合材料をPBS−0.5%Tween−20(PBST)で洗い流し、ウサギ抗PPS14抗体(Miravista Diagnostics社)を使用して、捕捉したDNIマトリックスタンパク質に会合したままの多糖を検出した。ウサギ抗DNI抗体(ハーバードメディカルスクールのJohn Collier氏からの贈答品)を用いて、DNIマトリックス組成物の固定化を確認した。アルカリホスファターゼ(Sigma社)に結合したモノクローナル抗ウサギ抗体と共にインキュベートして、ウサギ抗PPS14抗体またはウサギ抗DNI抗体を検出し、p−ニトロフェニルリン酸基質の添加によって視覚化した。対照実験では、PPS14のみの組成物(DNIに会合していない)と、外来性PPS14が添加された架橋したDNI(多糖抗原を含まない)の組成物を同時にアッセイした。最終的な検出工程では、これらの対照群においてPPS14は全く観察されなかった(図3Bを参照)。対照的に、抗DNI捕捉抗体をPCMV組成物1〜4と共にインキュベートした場合、DNIマトリックス中のPPS14は、PPS14特異的検出抗体によって検出可能であった。これにより、PPS14抗原が架橋したDNIマトリックスに会合したままであることが確認される。
【0119】
漸増濃度の試験組成物の検出信号(OD405)を、図3A(抗DNI検出)および図3B(抗PPS14検出)にプロットしたものである。図3Bを参照すると、0.05%グルタルアルデヒド(組成物4)と共に調製したPCMVは、抗PPS14検出抗体によってより弱い検出信号を示し、それは、SDS−PAGEゲルでの、より広範囲な分子種サイズに対応し得るものである。貯留物1および貯留物2組成物(組成物1および2)ならびに0.25%グルタルアルデヒドで架橋した全PCMV反応混合物(組成物3)は、SDS−PAGEゲルで、より高分子量の化学種との移動を示した(図2)。これらの試料(組成物1〜3)は、捕捉ELISAにおいて、最も高いPPS14の検出を示した(図3B)。
【0120】
PCMV製剤の免疫原性を試験した:
接種組成物
1.貯留物1+ミョウバン(2.4μgのPPS14)
2.貯留物2+ミョウバン(5.0μgのPPS14)
3.全PCMV(0.25%グルタルアルデヒド)+ミョウバン
4.全PCMV(0.05%グルタルアルデヒド)+ミョウバン
5.対照:5μgのPPS14抗原のみ(ミョウバンなし)
ミョウバンアジュバント(1用量当たり170μgのミョウバン)を含むPCMV接種組成物を、以下の投与計画を用いて、100μLの体積(5μgのDNI)でマウスに腹腔内注射した(以下の表2を参照)。また、マウスの対照群を5μgのPPS14抗原のみで免疫した。未処置のワクチン非接種マウス群も対照群として含めた。
【0121】
【表2】

【0122】
血清抗PPS14特異的IgG応答をPPS14のELISAによってアッセイし、個々の力価および終点幾何平均力価(GMT)としてプロットした。図4に示すように、直径が200nm〜120nmの範囲のPPS14:DNI−PCMV粒径を有する接種組成物1(ミョウバンをアジュバントとして添加した2.4μgの多糖を含む貯留物1の画分)は、驚くべきことに、免疫原性であること、すなわち、直径が63nmのPPS14:DNI−PCMV平均粒径を有する接種組成物2(ミョウバンをアジュバントとして添加した5.0μgの多糖を含む貯留物2の画分)よりも優れていることが分かった。より小さな貯留物2の画分と比較して、封入された抗原用量が半分である、より大きなPCMV粒子の匹敵する免疫原性によって、PCMV粒子の大きさがワクチン組成物の免疫原性または効力に影響を与えることが分かった。
【0123】
2μgのミョウバンをアジュバントとして添加した貯留物1(0.95μgのPPS14)を用いて実験を繰り返し、2μgの単独のPPS14と比較した。図5に示すように、抗PPS14の力価から、抗原用量が抗原のみの接種材料の半分よりも少ないにも関わらず(0.95μgの多糖対2.0μgの多糖)、より大きな粒径のワクチン組成物(すなわち、直径が120〜200nmの範囲の粒径を有する貯留物1)は、優れた免疫原性を示したことが分かる。
【0124】
上記免疫からの終点幾何平均力価を比較し(以下の表3)、プロットした(図6)。
【0125】
【表3】

【0126】
この結果から、より大きな粒径のワクチン組成物は、著しく少ない用量の抗原であっても(例えば、2回の実験において、0.95μgの多糖対2.4μgの多糖および5.0μgの多糖)、対照または小さな粒径の貯留物で構成された組成物よりも非常に免疫原性であることが分かり、さらに、架橋した担体タンパク質の粒径は、運搬(封入)された抗原に対する宿主免疫応答において有意な影響を有することも分かった。
【0127】
実施例2
抗原としてチフス菌の多糖抗原Vi(サルモネラ菌血清型チフス菌Ty2株から抽出)を用い、担体タンパク質として大腸菌から発現された炭疽菌防御抗原(PA)のドミナントネガティブ変異体(DNI)型を用いて、マトリックスワクチン組成物を調製して、Vi:DNIタンパク質の莢膜マトリックスワクチン(Vi:DNI−PCMV)を調製した。多糖抗原(Vi)および担体タンパク質(DNI)を1:1の重量比で混合し、各成分は7.5mg/mlの濃度で存在した。最終グルタルアルデヒド濃度が0.25%になるまで架橋剤としてグルタルアルデヒドを添加して、DNI担体タンパク質の架橋を開始した。4℃で23時間インキュベートして、0.5mlの総体積で架橋反応を行った。その時、シッフ塩基を還元するシアノホウ水素化ナトリウムを20mg/mlの濃度になるまで添加し、反応混合物をさらに1時間インキュベートした。反応混合物の一部を25mlのセファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースゲルサイズ分別カラム(Sigma−Aldrich社)に供し、粒径に基づいてVi:DNIマトリックスワクチン組成物を分離した。分別は、150mMのNaClを含む10mMリン酸緩衝液を用いて行った。さらなる評価のために、Vi:DNI−PCMV溶出画分の4種類の貯留物を単離した(図7を参照)。
【0128】
4種類の貯留物を、動的光散乱(DLS)でさらに調査した。各画分貯留物の粒径は、図7の対応する貯留物の上に示されている。貯留物1の粒径は179nmであった。貯留物2の粒径は直径が171nmであった。貯留物3の粒径は直径が198nmであり、貯留物4の粒径は直径が185nmであった。動的光散乱法によって、貯留した画分の中で最も大きな成分の大きさが得られる。動的光散乱法では、粒径範囲や最も大きな粒子の割合の測定値は得られない。
【0129】
貯留物1〜4を含む組成物を使用して、以下の手順に従ってマウスを免疫した。
接種組成物
1.貯留物1+ミョウバン
2.貯留物2+ミョウバン
3.貯留物3+ミョウバン
4.貯留物4+ミョウバン
5.全PCMV反応混合物(未分別)+ミョウバン
6.対照:10μgのVi多糖抗原のみ(ミョウバンなし)
ミョウバンアジュバント(1用量当たり170μgのミョウバン)を含むPCMV接種組成物を、以下の投与計画を用いて、100μLの体積(10μgのタンパク質)でマウスに腹腔内注射した(以下の表4を参照)。また、マウスの対照群を10μgのVi多糖抗原のみで免疫した。未処置のワクチン非接種マウス群も対照群として含めた。
【0130】
【表4】

【0131】
血清抗Vi多糖特異的IgG応答を、ViのELISAでアッセイし、個々の力価および終点GMTとしてプロットした。図8および図9を参照すると、組成物1(貯留物1、ミョウバンアジュバント)および組成物2(貯留物2、ミョウバンアジュバント)Vi:DNI−PCMVで免疫したマウスからの血清は、組成物3(貯留物3、ミョウバンアジュバント)、組成物4(貯留物4、ミョウバンアジュバント)または組成物5(全未分別PCMV、ミョウバンアジュバント)で免疫したマウスからの血清と比較して、優れた抗Vi多糖特異的IgG免疫応答を示した。図9および以下の表5から、貯留物3、貯留物4および未分別Vi:DNI−PCMV(ここから貯留物を得た)で免疫したマウスに比べ、貯留物1または貯留物2のVi:DNI−PCMVで免疫したマウスが優れた幾何平均力価を持つことが分かる。
【0132】
【表5】

【0133】
貯留物1および2の粒径はより大きく、それにより、貯留物3および4などのより小さな粒子よりも効率的にVi多糖を封入することができる。
実施例3
実施例1の手順に従ったが、より大きな規模でサイズ分別したPPS14:DNIタンパク質莢膜マトリックスワクチンに対してさらなる実験を行った。多糖抗原(PPS14)および担体タンパク質(DNI)を1:1の重量比で混合し、各成分は7.5mg/mlの濃度で存在した。最終グルタルアルデヒド濃度が0.25%になるまで架橋剤としてグルタルアルデヒドを添加して、DNI担体タンパク質の架橋を開始した。4℃で23時間インキュベートして、1.5mlの総体積で架橋反応を行った。その時、シッフ塩基を還元するシアノホウ水素化ナトリウムを20mg/mlの濃度になるまで添加し、反応混合物をさらに1時間インキュベートした。
【0134】
PPS14:DNI−PCMV反応混合物の一部を100mlセファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースゲルサイズ分別カラム(Sigma−Aldrich社)に供し、粒径に基づいてPPS14:DNIマトリックスワクチン組成物を分離した。分別は、150mMのNaClを含む10mMリン酸緩衝液を用いて行った。
【0135】
さらなる評価のために、PPS14:DNIマトリックスワクチンの4種類の貯留物を単離した。図10を参照すると、回収した画分は、x軸に沿った短い垂直線で示されている。画分の貯留物は陰影によって示されている。
【0136】
画分中に存在するPPS14抗原の量は、炭水化物に対するフェノール−硫酸アッセイを用いて測定した。画分中に存在するDNIの量はUV280吸光度によって測定した。画分中のDNI:PPS14の比を測定した。その結果を表6に示す。
【0137】
【表6】

【0138】
さらなる調査のために、画分を以下のように選択および貯留した:
貯留物1−画分14、15−DNI含有量0.74mg/ml
貯留物2−画分16−DNI含有量0.63mg/ml
貯留物3−画分17、18、19−DNI含有量0.31mg/ml
貯留物4−画分32、33、34−DNI含有量0.20mg/ml
貯留物の抗原および担体タンパク質の組成を表7に示す:
【0139】
【表7】

【0140】
PPS14:DNI−PCMVの貯留した画分および全PCMV組成物(ここから画分を得た)の架橋の完全性を、SDS−PAGE(4〜12%Bis−Trisゲル)およびクーマシーブルー染色によって分析した(図11を参照)。図11に示すように、貯留した画分および全PCMV反応物は全て、濃縮用ゲル内への移動がないことによって証明されるように、DNlタンパク質の広範囲な架橋を示した。全PPS14:DNI−PCMV組成物のウェルの下のスメアに類似した貯留物4のウェルの下のスメアの出現は、これらの試料中により低分子量の化学種が存在していることを示している。
【0141】
また、PPS14:DNI−PCMV画分貯留物および全(未分別)PPS14:PCMVマトリックスワクチン組成物を、抗PPS14血清で検出するDNl捕捉ELISAを用いて特徴づけて、PPS14抗原が封入され、かつ表面が露出したままであるか否かを決定する(図13を参照)。簡潔にいうと、ワクチン製剤を、固体支持体に固定されたマウス抗DNI捕捉抗体に結合させた。未結合材料を洗い流し、ウサギ抗PPS14ポリクローナル抗体(Miravista Diagnostics社)を使用して、DNlマトリックスタンパク質に会合したままのPPS14抗原を検出した。ウサギ抗DNI検出抗体を使用して、マトリックスワクチン製剤がDNl捕捉抗体によって実際に捕捉されたこと実証した。
【0142】
全てのPCMV分別貯留物1〜4においてPPS14が検出された。興味深いことに、貯留物4ではより少ないPPS14抗原が検出され、これは、PPS14の封入がより少ないこと示唆していた。この結果は、貯留物4中により低分子量の化学種が存在するという証拠を示したSDS−PAGEゲルと一致する。捕捉ELISAに使用した濃度では、全PCMV組成物に対するPPS14抗原の信号は弱かったが、より高濃度の全(未分別)PCMV組成物を捕捉DNl抗体と共にインキュベートした場合、担体マトリックス中のPPS14の存在は明らかに検出された(データは示さず)。対照的に、外因的に添加したPPS14を含む架橋したDNlを、捕捉DNl抗体と共にインキュベートした場合、PPS14抗体による検出は全く認められず、これは、架橋したDNlによる外来性PPS14の封入がないことを示していた(図13A、白い四角(□))。貯留物1〜4および架橋したDNl対照は、捕捉DNl抗体に結合していた(図13B)。ここでも、より高濃度の全PCMV組成物を捕捉抗体と共にインキュベートした場合、全PCMV組成物は、DNl捕捉抗体に結合し、かつDNl検出抗体によって検出された(データは示さず)。従って、DNl捕捉ELISAによって、DNIタンパク質マトリックスへのPPS14の有意な封入および表面局在化が存在することが実証された。
【0143】
実験からの貯留物1〜4を含む画分を使用して、以下の手順に従ってマウスを免疫した。貯留した画分から組成物を調製し、免疫調査のために、ミョウバンアジュバントを含む全未分別PPS14:DNI−PCMVを調製した。
【0144】
接種組成物
5〜6匹のマウスからなる群(全部で80匹のマウス)のそれぞれに、以下の設計による接種組成物を接種した:
1群−0.5μgの貯留物1(左側の空隙)+ミョウバン(6)
2群−2μgの貯留物1(左側の空隙)+ミョウバン(6)
3群−0.5μgの貯留物2(中央の空隙)+ミョウバン(6)
4群−2μgの貯留物2(中央の空隙)+ミョウバン(6)
5群−0.5μgの貯留物3(右側の空隙)+ミョウバン(6)
6群−2μgの貯留物3(右側の空隙)+ミョウバン(6)
7群−0.5μgの貯留物4(トレーリングピーク)+ミョウバン(6)
8群−2μgの貯留物4(トレーリングピーク)+ミョウバン(5)
9群−0.5μgの全PCMV組成物+ミョウバン(6)
10群−2μgの全PCMV組成物+ミョウバン(5)
11群−陽性対照:0.5μgのPPS14抗原のみ(5)
12群−陽性対照:2μgのPPS14抗原のみ(6)
13群−比較対照:Prevnar(登録商標)(市販の七価肺炎球菌結合型ワクチン)(5)
14群−陰性対照:未処理、ワクチン非接種(5)
上記用量は、担体タンパク質(DNI)の量によって並べられている。
【0145】
Wyeth社(米国ニュージャージー州マディソン)によって製造および市販されているPrevnar(登録商標)肺炎ワクチンはミョウバンがアジュバントとして添加された従来の結合型ワクチンであり、6種類の他の肺炎連鎖球菌多糖抗原と共に2μgのPPS14を含み、全てが、担体タンパク質として合計20μgのCRM197で架橋されている。対照ワクチンとしてPrevnar(登録商標)ワクチンを使用して、サイズ分別したタンパク質莢膜マトリックスワクチン(PCMV)によって誘発されたPPS14に対する免疫応答を、従来の結合型ワクチンによって誘発されたPPS14特異的応答と直接比較した。未処置のマウス群も対照群として含めた。
【0146】
免疫スケジュールを表8に記載する:
【0147】
【表8】

【0148】
血清抗PPS14特異的IgG応答をPPS14のELISAによってアッセイし、個々の力価および終点GMTとしてプロットした(図12を参照)。
図13Aを参照すると、貯留物1〜4または全PCMVで免疫したマウスからの血清(特に、0.03μgおよび0.06μgの多糖抗原をそれぞれ含むように決定した貯留物1および2)は、0.5μgのPPS14のみで免疫したマウスからの血清よりも著しく高いPPS14特異的IgG応答を示した。図13Aは、貯留物1〜4および0.5μgのDNIを含む全PCMVでの免疫後の抗PPS14特異的IgG応答を示し、図13Bは、貯留物1〜4および2.0μgのDNIを含む全PCMVでの免疫後の抗PPS14特異的IgG応答を示す。0.5μgのPPS14のみで免疫したマウスからの血清に対して、貯留物1〜4または全PCMVで免疫したマウスからの血清では、PPS14特異的IgG力価は、時間と共に増加した。
【0149】
図14は、0.5μgのDNIでの免疫について、38日目(採血#3)の抗PPS14終点力価を示し、38日目の幾何平均力価を以下の表9に示す。
【0150】
【表9】

【0151】
抗原のみを用いた免疫と比較して、マトリックスワクチン画分による免疫によって達成された抗PPS14抗原の力価に留意することが重要である。この結果から、抗原を架橋したタンパク質担体に封入することによって達成される免疫原性に関する利点が確認される。
【0152】
最も大きな架橋したDNI粒子(貯留物1〜3)を有する画分は、抗原単独、さらに貯留物4(貯留物1〜3と比較してより低分子量のDNI担体タンパク質粒子を特徴とする)または全PPS14:DNIワクチン組成物(全ての粒径範囲を含む)よりも有意に高い免疫原性を示した。貯留物1、2および3の組成物の封入された抗原含有量は、他のPCMV組成物(貯留物4および全PCMV)および多糖抗原のみの対照よりも3〜17倍少ないことを考慮すると、これらの結果は特に驚くべきものである。
【0153】
従来のPrevnar(登録商標)ワクチンと比較して、より大きな担体タンパク質粒子を含む貯留物1および2は、匹敵する抗PPS14応答を誘発した。PCMVの貯留物1および2の投与されたPPS14抗原の実際の用量が、Prevnar(登録商標)に含まれるPPS14の用量よりも有意に少ない(Prevnar(登録商標)の用量と比較して、PPS14抗原は、貯留物1の用量では約66倍少なく、貯留物2の用量では約33倍少ない)ことを考えると、この匹敵する抗PPS14応答は注目に値するものである。
【0154】
図15は、2μgのDNIでの免疫について、38日目(採血#3)の抗PPS14終点力価を示し、38日目の幾何平均力価を以下の表10に示す。
【0155】
【表10】

【0156】
ここでも、マトリックスワクチン画分を用いた免疫によって達成された抗PPS14抗原力価は、抗原のみを用いた免疫によって達成されたものよりも優れていた。この結果から、抗原を架橋したタンパク質担体に封入することによって達成される免疫原性に関する利点が確認される。
【0157】
最も大きな架橋したDNI粒子(貯留物1〜3、図11を参照)を有する画分は、抗原単独、さらに貯留物4(貯留物1〜3と比較してより低分子量のDNI担体タンパク質粒子を特徴とする)または全PPS14:DNIワクチン組成物(全ての粒径範囲を含む)よりも有意に高い免疫原性を示した。貯留物1、2および3の組成物の封入された抗原含有量は、他のPCMV組成物(貯留物4および全PCMV)および多糖抗原のみの対照よりも3.7〜16.7倍少ないことを考慮すると、これらの結果は特に驚くべきものである。
【0158】
より大きな架橋したDNI担体粒子を含む貯留物1、2および3は、従来のPrevnar(登録商標)ワクチンと同程度に抗PPS14応答を誘発した。PCMVの貯留物1、2および3で投与されるPPS14抗原の実際の用量が、Prevnar(登録商標)注射に含まれるPPS14の用量よりも有意に少ない(PPS14は、貯留物1では約17倍少なく、貯留物2では約9倍少なく、貯留物3では約4倍少ない)ことを考えると、この匹敵する抗PPS14応答は注目に値するものである。
【0159】
再び図15を参照すると、PPS14特異的IgGの力価は、PPS14のみで免疫したマウスからの血清と比較して、PCMVの分別貯留物、未分別PCMV組成物またはPrevnar(登録商標)で免疫したマウスの全てにおいて増加した。PPS14抗原のみで免疫したマウスは、0.5μgおよび2μgのPPS14用量レベルでは、時間と共に減少するPPS14特異的IgG力価を示す。これは、「免疫記憶」応答がPCMVおよびPrevnar(登録商標)接種材料によって誘発されたことを示唆している。
【0160】
これらのデータから、マトリックスワクチンの一部としての莢膜抗原の提示が、抗原のみによる免疫だけではなく従来の結合型ワクチンよりも有効になり得ることが分かる。これは、ワクチン製剤プロセスにとって重要な意味を有し、マトリックスの粒径の賢明な制御によって、ワクチンの設計および製造プロセスを劇的に単純化することができ、防御免疫応答を誘発するのに必要とされる抗原の量を著しく減少させることができることを示している。
【0161】
所望の抗原の存在下での担体タンパク質の架橋反応によって、大きなマトリックス粒子(すなわち、直径が100nmより大きい)を製造し続けることを可能にすることで、非常に効率的に抗原が封入されることは明らかである。より大きな架橋した担体粒径を製造する(または反応系から高分子量の画分を選択する)ことで、粒子が非常に少量の抗原を含む場合であっても、PCMV組成物の免疫原性が実質的に高められる。データから、PCMV組成物の大きさを分別し、より大きな粒子で動物を免疫することによって、従来の結合型ワクチンによって誘発される応答に匹敵する向上した抗多糖特異的IgG応答を誘発するできることが分かる。さらに、これらのデータから、従来の結合型ワクチン(例えば、Prevnar(登録商標))によって誘発される免疫記憶応答が、PCMVを用いた免疫でも得られることが分かる。
【0162】
これらのPrevnar(登録商標)を対照とするPCMV粒径のデータから、PCMVの粒径の最適化ならびにPCMV組成物によって封入および提示される多糖抗原の量の最適化によって、場合によってはPrevnar(登録商標)のような従来のワクチンによって誘発される免疫応答を凌ぐように特異的抗多糖抗原反応をさらに増強させ得ることが分かる。担体タンパク質の架橋反応を行う前に、抗原多糖と担体タンパク質の比を調整することによって、最終的なワクチン組成物中の運搬される抗原と担体タンパク質の比の増加を達成してもよい。また、PCMVマトリックスへの封入前に多糖自体を分別して、得られる免疫応答を増加させてもよい。
【0163】
実施例4
シトロバクターフロインディ多糖ViおよびDNI担体タンパク質を用いたマトリックスワクチン組成物によって、Vi:DNI−PCMVを製造した。多糖抗原(シトロバクターフロインディ、Vi)および担体タンパク質(DNI)を1:1の重量比で混合し、各成分は7.5mg/mlの濃度で存在した。1.5mlの体積で架橋反応を行い、最終濃度が0.25%になるように架橋剤としてグルタルアルデヒドを添加し、反応混合物を4℃で23時間インキュベートした。この時点で、シッフ塩基を還元するシアノホウ水素化ナトリウムを20mg/mlの濃度になるまで添加し、反応混合物をさらに1時間インキュベートした。
【0164】
ウシ血清アルブミンに結合した0.9mg/mlのVi抗原を用いて、結合型ワクチンを比較対照として調製した。
Vi:DNI−PCMV反応混合物の一部を100mlセファロース(登録商標)CL−2B架橋アガロースゲルサイズ分別カラム(Sigma−Aldrich社)に供し、粒径に基づいてVi:DNIマトリックスワクチン組成物を分離した。分別は、150mMのNaClを含む10mMリン酸緩衝液を用いて行った。さらなる評価のために、Vi:DNI−PCMV溶出画分の4種類の貯留物を単離した(図16を参照)。
【0165】
個々の画分(図16)を、DNI捕捉ELISAによって評価し(図17)、その結果により、免疫組成物を製造するための画分の最終的な貯留方法を決定した。全てのPCMV分別製剤(図17A、画分13〜25)および固定化抗DNI抗体による捕捉後の全未分別PCMV中にViが検出された。Viは、カラムから溶出した最も大きな粒子に対応する画分13中で最も強く検出された。Viの検出は、試験した残りの画分では本質的に同等であり、その際に、より大きな架橋したDNI粒子を含む溶出が早い画分は、より小さなDNI粒子を含む溶出が遅い画分よりも僅かに多くの検出可能な表面提示Vi抗原を有するという一般的な傾向がみられた。これは、より小さな粒子がより少ないViを封入することに起因していると推測される。Vi多糖は、これらの画分が得られる全PCMV反応混合物中にも検出された。対照的に、外因的に添加したVi多糖を含む架橋したDNIを、捕捉抗DNI抗体と共にインキュベートした場合、Viの封入が欠如しているためにVi特異的抗体による検出は全く認められなかった。個々のVi:DNI画分、未分別Vi:DNIおよび架橋したDNI対照は全て、同程度まで捕捉抗DNI抗体に結合されていた(図17B)。従って、DNI捕捉ELISAによって、Vi:DNIタンパク質マトリックス中に検出可能なレベルの封入された表面局所化Viが存在することが実証された。
【0166】
封入された提示Vi多糖を示す画分を貯留し、接種組成物を調製するために使用した(図17、陰影のある棒)。SDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色によって架橋の完全性を分析した(図18)。貯留した画分および全PCMV反応混合物は、目視で濃縮用ゲル内に移動せずに充填ウェル内に残留した非常に高分子量の化学種を含んでいた。架橋されていないDNIは、より低分子量の染色バンド(下側の矢印)を形成した。画分中に存在するDNIの量はUV280吸光度によって測定した。PS14:DNI−PCMVの比に基づいて、担体/抗原の比を推定し、DNIに基づく10μg用量中に存在するVi抗原の量を計算し、表11に記載する:
【0167】
【表11】

【0168】
免疫実験に使用するために、貯留する画分および関連する対照を調製した:
接種組成物
1.貯留物1(10μgのDNI)+ミョウバン
2.貯留物2(10μgのDNI)+ミョウバン
3.貯留物3(10μgのDNI)+ミョウバン
4.貯留物4(10μgのDNI)+ミョウバン
5.10μgのDNI/全PCMV+ミョウバン
6.5μgのVi多糖−BSA複合体+ミョウバン、2μgのチフス菌由来Vi抗原のみ(対照)
7.2μgのシトロバクターフロインディ由来Vi抗原のみ(対照)
表12に示すように、標準的な投与計画(隔週で3回の注射)を用いて、組成物をマウスに腹膜内注射した。Vi−BSA結合型ワクチン比較対照は、BSAに共有結合した0.9mg/mlのViを含んでいた。未処置のワクチン非接種マウス群も対照として含めた。
【0169】
【表12】

【0170】
血清抗Vi多糖特異的IgG応答を、ViのELISAによってアッセイし、個々の力価および終点GMTとしてプロットした(図19を参照)。
図19は、分別PCMVの貯留物または全PCMVを用いた10μgのDNIでの免疫後の抗Vi特異的IgG応答の動態を示す。より大きな架橋したDNI粒子(貯留物1〜3)で免疫したマウスからの血清は、10μgのViのみで免疫したマウスからの血清よりも高いVi特異的IgG応答を呈した。それに対し、貯留物4(より小さなDNI粒子)または全PCMVでの免疫では、マウスをViのみで免疫した場合と類似したVi特異抗体応答が生じた。Vi特異的IgG力価は、10μgのViのみで免疫したマウスからの血清に対して、貯留物1〜3で免疫したマウスからの血清では、時間と共に増加した。
【0171】
免疫投与計画が完了したら、41日目(すなわち、最後の免疫から2週間後)のVi特異的IgG応答(図20)を、相反幾何平均力価(GMT)として計算し、以下の表に記載する。
【0172】
【表13】

【0173】
PCMVの貯留物1、2または3で免疫したマウスは、Viのみで免疫したマウスよりも2〜3倍高い抗Vi特異的IgGのGMTを示した。対照的に、Vi−BSA結合体による免疫によって、Viのみによる免疫と比較して、10倍高いVi特異的IgGのGMTが誘発された。Vi結合体およびVi PCMVはそれぞれ、Vi単独よりも高い抗Vi抗体レベルを誘発した。Vi−BSA結合体(5μgのVi)は、より少ないVi抗原を含むPCMV製剤よりも高い抗Vi抗体力価を誘発した(図16および表11を参照)。Viなどの免疫原性がより低い多糖を用いた場合、肺炎連鎖球菌PPS14と比較して、粒径および用量などの要因が、Vi多糖で免疫した場合と比較して、免疫原性に影響を与えることができる。PPS14:DNI−PCMV分別測定によって得られる同様の多糖のタンパク質の量に基づいて(溶出プロファイルが類似しているため)、サイズ分別したPCMVの貯留物1(〜0.66μg)中のVi多糖の量は、Vi−BSA結合体中のVi用量の量の13%であり、貯留物2(〜1μg)では20%であり、貯留物3(〜5μg)では40%であると推定された。従って、Vi結合体がVi:DNI−PCMVの貯留物の約4〜6倍の相反(reciprocal)抗Vi抗体力価(2263)を誘発したが、応答が用量に対して正規化されると、Vi:DNI−PCMVの貯留物1、貯留物2および貯留物3はそれぞれ、3030、2625および1515の相反抗Vi抗体力価を誘発する。従って、サイズ分別したVi:DNI−PCMV組成物は、Vi−タンパク質結合体よりも僅かに良好であった。
【0174】
異なる担体タンパク質:BSA対DNIマトリックスに基づいてワクチン組成物を比較したこの例の免疫に留意されたい。担体タンパク質の選択は、製剤の免疫力価(immunopotency)に対して影響を与えることができる。さらに、結合体およびPCMVを調製するために使用されるViが同じである場合、異なる源からのVi抗原の抗原性および免疫原性は、明確に異なり得るという決定はなされなかった。
【0175】
まとめると、Vi抗原では、実施例2および4のデータから、(i)生成物がより高分子量の化学種側に移動するより高濃度の反応系によって製剤化されたPCMVは、より効率的に多糖を封入すること、(ii)より大きな粒子(直径が120nmより大きい)を生成するように反応を続けると免疫原性が高まること、および(iii)PCMV反応系の大きさを分別し、より大きな粒子で動物を免疫すると、Vi/タンパク質結合体に匹敵する力価およびVi抗原単独よりも高い力価を誘発することが分かる。
実施例5
実施例1の免疫群からのマウスを免疫記憶実験のために維持した。7ヶ月後の時点でさらなる血清を回収して、抗PPS14免疫応答の動態を監視した。最終的に、マウスに、相同PCMVまたはPPS14製剤で追加免疫し、ヘルパーT細胞に基づく記憶(T依存性)免疫応答の発現について血清をアッセイした。
【0176】
実施例1の3回投与の免疫投与計画から約7ヶ月後に、以下の表に示されている組成物でマウスを追加免疫した:
【0177】
【表14】

【0178】
追加免疫した動物からの血清を、追加免疫から4日および3週間後に回収して、抗PPS14特異的IgG免疫応答をアッセイした。免疫記憶応答が誘発される場合、特異的IgG抗体の対応する増加が明白であるため、239日目(追加免疫から4日後)の時点を選択した。記憶応答が誘発される場合、IgG抗体力価が増加し続けるため、260日目(追加免疫から3週間後)の時点を選択した。152,691〜334,531の範囲の高い追加免疫前GMTによって示されるように、一般にPPS14特異的IgGは、最初のPPS14:DNI−PCMV免疫投与計画後も比較的高い状態を維持した(表14、列3)。PPS14特異的IgG抗体の増加は、PPS14抗原のみで免疫したマウスと比較して、PCMVで免疫した動物においてのみ、追加免疫から4日後に観察された(表14、列3対列4)。これらのデータと一致して、追加免疫応答は、PCMVで免疫したマウスでは、3週間後の時点で有意に増加した(816,890または863,756のGMT)が、多糖のみで免疫したマウスは、抗PPS14特異的IgGの増加を全く呈しないか、最小の増加を呈した(表14、列5)。
【0179】
PCMVで製剤化したPPS14がT記憶応答を誘発するか否かをさらに調査するために、IgM/IgGの比をアッセイおよび測定した(図21を参照)。多糖のみのワクチンは典型的に、IgMおよび低レベルのIgGを誘発するが、多糖−タンパク質結合型ワクチンは、実質的により高レベルのIgGを誘発する。一般に、IgMは、その抗原結合親和性においてIgGよりも非特異的である。従って、未処置の動物では、より低いIgG:IgMの比が観察され、これは、この群にはバックグラウンドレベルの非特異的抗体が存在していることを示す。PPS14のみでの免疫は、未処置の動物と比較して、より多くの抗PPS14特異的免疫応答を誘発し、IgMよりも特異的なIgG(IgG:IgM=〜1:1)を産生した。著しく対照的に、多糖のみで免疫したマウスと比較して、PPS14:DNI−PCMVの貯留物1および貯留物2製剤で免疫したマウスは、IgMと比較して、約10〜100倍の変化で、有意により多くのIgGを誘発した。
【0180】
これらの結果から、PPS14:DNI−PCMVで免疫した動物は、最初の3回投与の免疫投与計画から約7ヶ月後に投与された追加免疫後に、PPS14特異的IgGでの増加を呈したことが分かる。この追加免疫から4日後および3週間後に回収した血清は、T依存性、すなわち免疫「記憶」応答の発現を強く示した。さらに、PPS14:DNI−PCMV製剤で免疫したマウスのIgG:IgMの比は(図21)、誘発された記憶応答の観察をさらに支持するものである。
【0181】
引用または参照されている全ての特許、特許出願、特許出願公開および他の刊行物は、各独立した特許、特許出願、特許出願公開または刊行物が参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)目的とする抗原および(2)担体タンパク質を含む免疫原性組成物であって、該担体タンパク質は架橋されてタンパク質マトリックスを形成し、該目的とする抗原は該タンパク質マトリックスに封入され、該組成物は直径が100nmより大きい平均粒径を有するタンパク質マトリックス粒子で構成される、前記組成物。
【請求項2】
該組成物が、直径が120nmより大きい、170nmより大きい、200nmより大きい、500nmより大きい、1000nmより大きい、2000nmより大きいまたはそれ以上の平均粒径を有するタンパク質マトリックス粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該組成物が、直径が100nm〜2000nmの平均粒径を有するタンパク質マトリックス粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該組成物が、直径が100〜2000nmの粒径範囲を有するタンパク質マトリックス粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該抗原と該担体タンパク質とのモル比が、1:10〜10:1である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
該目的とする抗原が2種以上の抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該目的とする抗原が多糖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該多糖が、肺炎連鎖球菌多糖、野兎病菌多糖、炭疽菌多糖、インフルエンザ菌多糖、チフス菌多糖、シトロバクターフロインディ多糖、サルモネラ菌種多糖、赤痢菌多糖または髄膜炎菌多糖からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該肺炎連鎖球菌多糖が、莢膜型3、4、6B、7A、7B、7C、7F、9A、9L、9N、9V、12A、12B、12F、14、15A、15B、15C、15F、17、18B、18C、19F、23F、25A、25F、33F、35、37、38、44または46からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該担体タンパク質が、ジフテリアトキソイド、CRM197、破傷風トキソイド、緑膿菌外毒素Aもしくはその変異体、コレラ毒素Bサブユニット、破傷風毒素断片C、細菌性フラジェリン、ニューモリシン、髄膜炎菌の外膜タンパク質、緑膿菌Hcplタンパク質、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、志賀様毒素、ヒトのLTBタンパク質、リステリオリシンO、全細菌細胞からのタンパク質抽出物、炭疽菌の防御抗原のドミナントネガティブ阻害変異体(DNI)または大腸菌β−ガラクトシダーゼからなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
(i)目的とする抗原を担体タンパク質と混合して混合物を形成すること、
(ii)該担体タンパク質を架橋して、該目的とする抗原を封入する担体タンパク質マトリックスを形成すること、ここで該目的とする抗原の50%以下が該組成物中の該担体タンパク質に架橋しており、
(iii)得られた組成物から直径が100nm未満の平均粒径を有するタンパク質マトリックス粒子を除外すること、
を含む免疫原性組成物の製造方法。
【請求項12】
工程(iii)では、直径が120nmより大きい、170nmより大きい、200nmより大きい、500nmより大きい、1000nmより大きい、または2000nmより大きい平均粒径を有するタンパク質マトリックス粒子を選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該選択したタンパク質マトリックス粒子が、直径が100nm〜2000nmの範囲の平均粒径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該選択したタンパク質マトリックス粒子が、直径が200nm〜1000nmの範囲の平均粒径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該選択したタンパク質マトリックス粒子が、直径が120nm〜200nmの範囲の平均粒径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
(i)目的とする抗原を担体タンパク質と混合すること、
(ii)該担体タンパク質の官能基を架橋する架橋剤との架橋反応を開始すること、
(iii)該反応混合物から直径が100nmより大きい平均粒径を有するタンパク質マトリックス粒子を選択すること、
を含むタンパク質マトリックスワクチン組成物の製造方法。
【請求項17】
該選択されたタンパク質マトリックス粒子が、直径が120nmより大きい、170nmより大きい、200nmより大きい、500nmより大きい、1000nmより大きい、又は2000nmより大きい平均粒径を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該選択されたタンパク質マトリックス粒子が、直径が100nm〜2000nmの範囲の平均粒径を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
該選択されたタンパク質マトリックス粒子が、直径が200nm〜1000nmの範囲の平均粒径を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
免疫応答を誘発するのに十分な量で請求項1に記載の組成物を対象に投与することを含む、病原体に対するワクチンの対象への接種方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図2】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−504588(P2013−504588A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528904(P2012−528904)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048311
【国際公開番号】WO2011/031893
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512059730)マトリヴァックス・リサーチ・アンド・デベロップメント・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】