説明

免疫原性組成物

本願は、30〜100%がO-アセチル化されたS. aureus由来の5型及び/又は8型莢膜多糖体又はオリゴ糖体を含む免疫原性組成物に関する。30〜100%のO-アセチル化を有する5型及び/又は8型莢膜多糖体を含む免疫原性組成物を用いるワクチン、治療方法、および該免疫組成物を製造するための方法についても説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ球菌(スタフィロコッカス:Staphylococcus)の免疫原性組成物及びワクチンの分野、それらの製造、及び医療における前記組成物の使用に関する。より具体的には、黄色ブドウ球菌(S. アウレウス:S. aureus)由来の5型及び/又は8型多糖体でO-アセチル化の程度が30〜100%のものを含むワクチン組成物に関する。また、前記ワクチンを使用するブドウ球菌感染症の治療又は予防方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
市中感染数及び院内感染数の双方が、血管内装置の使用の増加に伴い、近年増加している。院内(病院内で起こる)感染症は、罹患率及び死亡率の主な原因となっており、特に米国では、毎年200万人以上に影響を及ぼしている。以下の種々の研究で、約6%の米国患者は、院内での滞在期間に感染している。米国における経済的負担は、1992年には45億ドル以上と見積もられた(Emori and Gaynes, 1993, Clin. Microbiol. Rev. 6; 428)。最も頻度の高い感染は、尿路感染(urinary tract infections:UTI;感染の33%)で、肺炎(15.5%)、手術部位感染(14.8%)、及び原発性血流感染(13%)がそれに続く(Emori and Gaynes, 1993, Clin. Microbiol. Rev. 6; 428)。
【0003】
Staphylococcus aureus(スタフィロコッカス・アウレウス:黄色ブドウ球菌)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(主に、Staphylococcus epidermidis:スタフィロコッカス・エピデルミディス:表皮ブドウ球菌)、Enterococcus spp(エンテロコッカス菌種:腸球菌種)、Esherichia coli(エシェリキア・コリ:大腸菌)、及びPseudomonas aeruginosa(シュードモナス・エルギノーザ:緑膿菌)が、主な院内病原菌である。これらの病原菌の引き起こす感染数は、ほぼ同数であるが、抗生物質耐性の頻度と相まってそれらが引き起こし得る疾患の重症度という点で最も重要な院内感染病原菌は、S. aureusS. epidermidisの順となる。
【0004】
Staphylococcus aureusは、深刻な罹患率と死亡率を伴う院内感染で最も一般的な原因である(Romero-Vivas et al 1995, Infect. Dis. 21; 1417)。当該菌は、骨髄炎、心内膜炎、敗血症性関節炎、肺炎、膿瘍、及び毒物ショック症候群のいくつかの症例の原因となる。
【0005】
S. epidermidisは、皮膚常在共生菌であり、埋め込み型医療装置の感染及び外科部位における感染に関与する重要な日和見病原体でもある。S. epidermidisに汚染される医療装置には、心臓ペースメーカー、髄液短絡術、持続的携帯型腹膜透析カテーテル、整形装置、及び人工心臓弁がある。
【0006】
S. aureus及びS. epidermidis感染は、抗生物質を用いて治療される。ペニシリンを用いるのが最適だが、メチシリン耐性分離株にはバンコマイシンが使用される。抗生物質に対して広帯域耐性を示すブドウ球菌株のパーセンテージが、1980年代からますます高くなってきており(Panlilo et al 1992, Infect.Control. Hosp. Epidemiol. 13; 582)、効果的抗菌療法に脅威をもたらしている。さらに、近年のバンコマイシン耐性S. aureus株の出現は、有効な治療法がないメチシリン耐性S. aureus株が出現し、広まることの恐怖を呼び起こしている。
【0007】
ブドウ球菌抗原に対する抗体を使用する別のアプローチが受動免疫療法において研究されている。ポリクローナル抗血清の投与を伴う治療法(国際公開WO 00/15238号、国際公開WO 00/12132号)、及びリポテイコ酸に対するモノクローナル抗体を用いる治療(国際公開WO 98/57994号)が開発中である。
【0008】
他のアプローチは、活性ワクチン接種を用いて、ブドウ球菌に対する免疫応答を生じさせることであろう。ワクチン成分に包含されるいくつかの候補が同定されている。それらには、フィブロネクチン結合タンパク質(米国特許第5840846号)、MHC II類似体(米国特許第5648240)、フィブリノーゲン結合タンパク質(米国特許第6008341号)、GehD (米国特許出願第2002/0169288号)、コラーゲン結合タンパク質(米国特許第6288214号)、SdrF、SdrG及びSdrH(国際公開WO00/12689号)、SEA変異体及びSEBエクソトキシン(国際公開WO00/02523号)並びに52kDaビトロネクチン結合タンパク質(国際公開WO 01/60852号)が含まれる。
【0009】
S. aureusゲノムは、配列決定が完了しており、多くのコード配列が同定されている(欧州特許第786519号、国際公開WO02/094868号)。S. epidermidisについても同様である(国際公開WO 01/34809号)。このアプローチの改良版として、他に、ブドウ球菌感染に罹患した患者由来の過免疫血清により認識されるタンパク質が同定されている。
【0010】
S. aureus、又はそれが産生するエクソタンパク質を標的とするワクチンの第1世代は、限られた成果しかあげられなかった(Lee 1996 Trends Microbiol. 4; 162)。それ故、ブドウ球菌感染に対する効果的なワクチンを開発する必要性が残されていた。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、S. aureusの5型及び/又は8型多糖体を含む免疫原性組成物を開示する。この5型及び/又は8型莢膜多糖体及びオリゴ糖体は、30%〜100%がO-アセチル化されている。具体的な実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、さらに、PNAG又はブドウ球菌タンパク質を含む。PNAGは、グラム陽性菌間で高度に保存されており、広範囲の細菌に対する防御を提供する。一方5型及び8型多糖体は、院内感染の最も一般的な原因であるS. aureusのほとんどの株に対して免疫応答を誘発させる強力な免疫原となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
多糖体
本発明の免疫原性組成物は、PNAG並びにS. aureus由来の5型及び8型多糖体で、いずれか一方又は両方が30%〜100%O-アセチル化されているものを含む。
【0013】
ポリN-アセチル化グルコサミン(PNAG)
PNAGは、細胞間接着多糖体であり、β-(1→6)結合型グルコサミンからなり、任意にN-アセチル及び/又はO-サクシニル成分で置換されている。この多糖体は、S. aureus 及びS. epidermidisの両者に存在し、いずれか一方のソースから単離することができる(Joyce et al 2003, Carbohydrate Research 338; 903; Maira-Litran et al 2002, Infect. Imun. 70; 4433)。例えば、PNAGは、S. aureusのMN8m 株(国際公開WO 04/43407号)から単離することができる。dPNAGの調製法は、国際公開WO 04/43405号に開示されている。
【0014】
前記多糖体は、以前は、ポリN-サクシニル-β-(1→6)グルコサミン(PNSG)として知られていたが、最近になって、N-サクシニル化の同定は間違いであり、予期された構造を持たないことが明らかになった(Maira-Litran et al 2002, Infect. Imun. 70; 4433)。それ故、公式にはPNSGとして知られ、現在はPNAGであることが判明している多糖体も、PNAGに包含される。
【0015】
PNAGは、最大30個の反復ユニット((1→6)結合型グルコサミンで、任意でN−アセチル及びO-サクシニル成分で置換されている)からなるオリゴ糖体によって400kDa以上から75〜400kDaまで、又は10〜75kDaまで、さまざまなサイズであってもよい。PNAG多糖体又はオリゴ糖体のいずれのサイズも、本発明の免疫原性組成物に使用することができる。例えば、40kDaを越えるサイズを使用することができる。サイジングは、当該分野で公知のあらゆる方法、例えば、微少溶液操作、超音波照射で、又は化学切断で達成することができる(国際公開WO 03/53462号、欧州特許第497524号及び第EP497525号)。
【0016】
PNAGのサイズ範囲は、例えば、40〜400kDa、50〜350kDa、40〜300kDa、60〜300kDa、50〜250kDa及び60〜200kDaである。
【0017】
PNAGは、酢酸を用いたアミノ基の置換によって程度の異なるアセチル化を有し得る。in vitroで生成されたPNAGは、アミノ基でほぼ完全に置換されている(95〜100%)。あるいは、50%、40%、30%、20%、10%又は5%未満のN-アセチル化を有する脱アセチル化されたPNAGを使用することもできる。脱アセチル化されたPNAGの使用により、グラム陽性菌の、また任意でS. aureus及び/又はS. epidermidis(国際公開WO 04/43405号)のオプソニン殺菌が可能になる。一の実施形態で、PNAGは、40kDa〜300kDaのサイズを有しており、50%、40%、30%、20%、10%又は 5%未満のアミノ基がN-アセチル化されているように脱アセチル化されている。
【0018】
一実施形態で、PNAGは、O-サクシニル化されていないか、又は25、20、15、10、5、2、1若しくは0.1%未満の残基がO-サクシニル化されている。
【0019】
脱アセチル化されたPNAG(dPNAG)とは、50%、40%、30%、20%、10%又は5%未満のアミノ基がアセチル化されたPNAG多糖体又はオリゴ糖体をいう。
【0020】
本明細書で使用する場合、PNAGは、アセチル化された多糖体及び脱アセチル化された多糖体の両形態を包含する。
【0021】
一実施形態で、PNAGは、天然の多糖体が化学的に処理されることにより脱アセチル化されてdPNAGを形成する。例えば、天然の多糖体は、pHが10を超えるように塩基性溶液で処理される。例えば、天然のPNAGは、0.1〜5M、0.2〜4M、0.3〜3M、0.5〜2M、0.75〜1.5M若しくは1MのNaOH、KOH又はNH4OHで処理される。処理は、少なくとも10〜30分間で、又は1、2、3、4、5、10、15若しくは20時間で、20〜100、25〜80、30〜60、30〜50又は35〜45℃の温度にて行われる。dPNAGは、国際公開WO 04/43405号に開示されているように調製してもよい。
【0022】
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物中に包含される多糖体は、以下で説明するような担体タンパク質とコンジュゲート(複合体化)されている、あるいは、コンジュゲートされていない。
【0023】
S. aureus由来の5型及び8型多糖体
ヒトで感染を起こすS. aureusのほとんどの株は、5型又は8型多糖体のどちらかを含んでいる。ヒト感染株の約60%は8型であり、約30%が5型である。5型及び8型莢膜多糖体抗原の構造は、Moreauらの Carbohydrate Res. 201; 285 (1990)、及びFournierらのInfect. Immun. 45; 87 (1984)に記載されている。双方とも、反復ユニット中にFucNAcp、及びManNAcA(スルフヒドリル基を導入するのに用いることができる)を有する。
【0024】
近年(Jones Carbohydrate Research 340, 1097-1106 (2005))、NMR分光法により、莢膜多糖体の構造が以下に修正された。すなわち、
(5型)
→4)-β-D-ManNAcA-(1→4)-α-L-FucNAc(3OAc)-(1→3)-β-D-FucNAc-(1→
(8型)
→3)-β-D-ManNAcA(4OAc)-(1→3)-α-L-FucNAc(1→3)-α-D-FucNAc(1→
である。
【0025】
多糖体は、S. aureusの適当な株から当業者に周知の方法、例えば、米国特許第6294177号又はInfection and Immunity (1990) 58(7); 2367に記載されたような方法を用いて抽出することができる。例えば、ATCC 12902は、5型S. aureus株であり、ATCC 12605は、8型S. aureus株である。
【0026】
多糖体は、天然サイズである。あるいは、例えば、微少溶液操作、超音波照射による、又は化学処理で処理されたサイズであってもよい。また、本発明は、S. aureusの5型及び8型多糖体に由来するオリゴ糖体も包含する。
【0027】
本発明の免疫原性組成物中に包含される5型及び/又は8型莢膜多糖体又はオリゴ糖体は、O-アセチル化されている。一実施形態で、5型莢膜多糖体又はオリゴ糖体のO-アセチル化の度合は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%、又は80〜90%である。一実施形態で、8型莢膜多糖体又はオリゴ糖体のO-アセチル化の度合は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%、又は80〜90%である。一実施形態で、5型及び8型莢膜多糖体又はオリゴ糖体のO-アセチル化の度合は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90% 又は 80〜90%である。
【0028】
多糖体又はオリゴ糖体のO-アセチル化の度合は、当該分野で公知のあらゆる方法で、例えば、プロトンNMR(Lemercinier and Jones 1996, Carbohydrate Resarch 296; 83-96、Jones and Lemercinier 2002, J Pharmaceutical and Biomedical analysis 30; 1233-1247、国際公開WO 05/033148号、又は国際公開WO 00/56357号)で、測定することができる。さらに解説的に使用される方法が、Hestrin (1949) J. Biol. Chem. 180; 249-261により記載されている。
【0029】
O-アセチル基は、加水分解によって、例えば、無水ヒドラジンのような塩基を用いた処理により(Konadu et al 1994; Infect. Immun. 62; 5048-5054)、又は0.1NのNaOHで1.8時間処理することにより、除くことができる。5型及び/又は8型多糖体又はオリゴ糖体において高レベルのO-アセチル化を維持するためには、O-アセチル基の加水分解を誘導する処理を最小限にする。例えば、極端なpHでの処理は、最小限に留める。
【0030】
本発明の免疫原性組成物を包含する5型及び8型多糖体は、任意で以下に記載の担体タンパク質とコンジュゲートされている、あるいはコンジュゲートされていない。
【0031】
本発明の免疫原性組成物は、5型又は8型多糖体のどちらかを二者択一的に含む。
【0032】
S. aureus 336抗原
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、米国特許第6294177号に開示されたS. aureus 336抗原を含む。
【0033】
336抗原は、β結合型ヘキソサミンを含み、O-アセチル基を含まず、ATCC 55804の登録番号で寄託された336型S. aureusに対する抗体と特異的に結合する。
【0034】
一実施形態で、336抗原は、天然サイズの多糖体である。あるいは、それは、例えば、微少溶液操作、超音波照射で、又は化学処理で処理されたサイズであってもよい。本発明は又、336抗原に由来するオリゴ糖体も包含する。
【0035】
本発明の免疫原性組成物中に包含される336抗原は、任意で以下に記載の担体タンパク質とコンジュゲートされている、あるいはコンジュゲートされていない。
【0036】
S. epidermidis由来のI、II、及びIII型多糖体
S. epidermidisのATCC-31432株、SE-360株及びSE-10株は、それぞれ3つの異なる莢膜型(I、II、及びIII型)の特徴を示す(Ichiman and Yoshida 1981, J. Appl. Bacteriol. 51; 229)。S. epidermidisの各血清型から抽出された莢膜多糖体は、I、II、及びIII型多糖体を構成する。多糖体は、米国特許第4197290号に記載された方法、又はIchiman et al 1991, J. Appl. Bacteriol. 71; 176に記載された方法を含む、いくつかの方法で抽出することができる。
【0037】
本発明の一実施形態で、免疫原性組成物は、S. epidermidis由来のI型及び/又はII型及び/又はIII型多糖体又はオリゴ糖体を含む。
【0038】
多糖体は、天然サイズである。あるいは、例えば、微少溶液操作、超音波照射で、又は化学処理で処理されたサイズであってもよい。また、本発明は、S. epidermidis株から抽出されたオリゴ糖体も包含する。
【0039】
これらの多糖体は、以下に記載のように非コンジュゲートされている、又は任意でコンジュゲートされている。
【0040】
多糖体のコンジュゲーション
ワクチン接種における多糖体の使用に関連した問題の中で、多糖体それ自体が免疫原として弱いという問題がある。この免疫原性の欠如を打破するために編み出された戦略に多糖体と巨大タンパク質担体との結合がある。当該結合は、バイスタンダーT細胞補助を提供する。一実施形態で、本発明で利用される多糖体は、バイスタンダーT細胞補助を提供するタンパク質担体と連結される。多糖体又はオリゴ糖体免疫原と連結させるのに使用することのできるこれらの担体の例として、ジフテリア及び破傷風トキソイド(DT、DT Crm197及びTT)、スカシ貝ヘモシアニン(Keyhole Limpet Haemocyanin:KLH)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のエクソプロテインA(rEPA)及びツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)、Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)由来のプロテインD、ニューモリシン、又は前記いずれかの断片が挙げられる。使用に適した断片は、ヘルパーTエピトープを含む断片を包含する。特に、プロテインD断片は、任意で、該タンパク質のN末端側1/3を含む。プロテインDは、Haemophilus influenzae由来のIgD結合タンパク質である(欧州特許第0 594 610 B1号)。
【0041】
本発明の免疫原性組成物に使用するための他の担体タンパク質は、ブドウ球菌タンパク質単体若しくはその断片、あるいは以下の節で列挙される少なくとも、又は厳密に1、2、3、若しくは4つ又はそれ以上のブドウ球菌タンパク質若しくはその断片を含む融合タンパク質である。
【0042】
ブドウ球菌のワクチンに使用する上で特に有利となり得る新たな担体タンパク質として、ブドウ球菌アルファトキソイドがある。コンジュゲーション工程で毒性が低減するので、天然型を多糖体とコンジュゲート化することができる。残余毒性が低いことから、任意でHis35Leu変異体又はHis35Arg変異体のような遺伝的に解毒されたアルファトキシンが担体として使用される。あるいは、アルファトキシンは、架橋剤、ホルムアルデヒド、又はグルタルアルデヒドを用いた処理によって化学的に解毒される。遺伝的に解毒されたアルファトキシンは、さらに毒性を低減するため、任意で架橋剤、ホルムアルデヒド、又はグルタルアルデヒドで処理することにより、任意で化学的に解毒される。
【0043】
あらゆる公知の方法(例えば、Likhiteによる方法、Armorらによる米国特許第4,372,945号、米国特許第4,474,757号、WO及びJenningsらによる米国特許第4,356,170号)で多糖体を担体タンパク質に連結することができる。任意で、CDAPコンジュゲーションケミストリーが実行される(国際公開WO95/08348号参照)。
【0044】
CDAPにおいて、シアン化剤1-シアノ-ジメチルアミノピリジニウム・テトラフルオロホウ酸(1-cyano-dimethylaminopyridinium tetrafluoroborate:CDAP)が、多糖体タンパク質コンジュゲートの合成に任意で使用される。シアン化反応は、アルカリ感受性多糖体の加水分解を回避した、反応的に穏やかな条件下で行うことができる。この合成により、担体タンパク質と直接的に連結することが可能となる。
【0045】
多糖体は、水又は生理食塩水溶液に溶解されてもよい。CDAPをアセトニトリルに溶解し、直ちに多糖体溶液に添加することができる。CDAPは、多糖体のヒドロキシル基と反応し、シアン酸エステルを形成する。活性化ステップ後、担体タンパク質が添加される。リジンのアミノ基が活性化された多糖体と反応し、イソウレア共有結合を形成する。結合反応後、大過剰のグリシンが添加され、残りの活性化された官能基が不活化される。その後、産物をゲル浸透カラムに通して、未反応の担体タンパク質や残余試薬を除去する。
【0046】
タンパク質
本発明の免疫原性組成物は、任意で、さらにブドウ球菌タンパク質(例えば、S. aureus又はS. epidermidis由来のタンパク質)を含む。本発明のいくつかの実施形態は、S. aureus及びS. epidermidisの両方に由来するタンパク質を含む。
【0047】
本発明の免疫原性組成物は、図1のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性、任意で少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも97〜99%又は厳密な同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質を含む。
【0048】
タンパク質を本明細書で具体的に言及する場合、天然体又は任意で組換え体について、全長タンパク質又はあらゆるシグナル配列が除去された成熟タンパク質を任意で言及している。タンパク質は、ブドウ球菌株から直接的に単離してもよく、又は、組換えDNA技術により製造してもよい。タンパク質の免疫原性断片は、本発明の免疫原性組成物に包含することができる。これらの断片は、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、又は少なくとも100アミノ酸を含み、前記タンパク質のアミノ酸配列から連続的に取り出される。さらに、前記免疫原性断片は、通常、ブドウ球菌タンパク質に対して製造された抗体、又はブドウ球菌による哺乳動物宿主の感染により作り出される抗体と、免疫学的に反応し、又はT細胞エピトープを含む。一実施形態で、免疫原性断片はまた、効果的用量で(単独で又は担体と結合したハプテンとしてのいずれかで)投与した際に、ブドウ球菌感染に対する防御免疫反応を誘発する断片も包含する。この防御免疫反応は、任意でS. aureus 及び/又はS. epidermidis感染を防御する。前記免疫原性断片は、例えば、N末端リーダー配列、及び/又は膜貫通ドメイン、及び/又はC末端アンカードメインを欠如したタンパク質を含み得る。一実施形態で、本発明の免疫原性断片は、図1から選択される配列に対して断片配列の全長にわたって少なくとも85%、90%、95%、97%又は99%の同一性を有する実質的に全てのタンパク質細胞外ドメインを含む。
【0049】
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、ブドウ球菌タンパク質の融合タンパク質、又はブドウ球菌タンパク質の断片を含んでいてもよい。前記融合タンパク質は、組換え技術によって作ることができ、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのブドウ球菌タンパク質の一部(例えば、以下に列挙するブドウ球菌タンパク質の組み合わせ)を含むことができる。あるいは、融合タンパク質は、少なくとも2つ、3つ、4つ、又は5つのブドウ球菌タンパク質の複数部分を含んでいてもよい。これらは、異なるブドウ球菌タンパク質又は同一タンパク質におけるその断片の組み合わせであってもよい。あるいは、本発明は、T細胞エピトープの供給者又は精製タグ(例えば、β-ガラクトシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、エピトープタグ(例えば、FLAG、myc タグ、ポリヒスチジン)、ウイルス表面タンパク質(例えば、インフルエンザウイルスの血球凝集素)、又は細菌タンパク質(例えば、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197))のような異種配列をもつ融合タンパク質のような、ブドウ球菌タンパク質又はその断片の単一の融合タンパク質も包含する。融合タンパク質は、本発明の免疫原性組成物中に遊離タンパク質として存在することができる。あるいは、多糖体に結合した担体タンパク質であってもよい。
【0050】
タンパク質
一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、さらに一以上の以下で述べるタンパク質又はその免疫原性断片を含む。多くのタンパク質は、細胞外成分結合タンパク質、トランスポータータンパク質、又は毒素及び毒性調節因子のカテゴリーに含まれる。本発明の免疫原性組成物は、任意で、さらに、ブドウ球菌細胞外成分結合タンパク質、ブドウ球菌トランスポータータンパク質、又はブドウ球菌毒素若しくは毒性調節因子を含む。本発明の免疫原性組成物は、任意で、少なくとも又は正確に1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、若しくは6つのブドウ球菌タンパク質を含む。
【0051】
表1
以下の表は、図1及び図2においてそれぞれ示された好ましいタンパク質配列及びDNA配列の配列番号を示している。SAは、S. aureus由来の配列を示し、またSEはS. epidermidis由来の配列を示す。
【表1】


【0052】
細胞外成分結合タンパク質
細胞外成分結合タンパク質は、宿主細胞外成分に結合するタンパク質である。本用語は、限定はしないが、接着因子を包含する。
【0053】
細胞外成分結合タンパク質の例としては、ラミニン受容体(Naidu et al J. Med. Microbiol. 1992, 36; 177)、SitC/MntC/唾液結合タンパク質(米国特許第5801234号, Wiltshire and Foster Infec. Immun. 2001, 69; 5198)、EbhA (Williams et al Infect. Immun. 2002, 70; 6805)、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS) (Park et al 1999, J. Biol. Chem. 274; 2845)、EFB (FIB) (Wastfelt and Flock 1995, J. Clin. Microbiol. 33; 2347)、SBI (Zhang et al FEMS Immun. Med. Microbiol. 2000, 28; 211)、自己溶菌酵素(オートリシン)(Rupp et al 2001, J. Infect. Dis. 183; 1038)、ClfA (米国特許第6008341号, McDevitt et al Mol. Microbiol. 1994, 11; 237)、SdrC、SdrG (McCrea et al Microbiology 2000, 146; 1535)、SdrH (McCrea et al Microbiology 2000, 146; 1535)、リパーゼGehD(米国特許出願第2002/0169288号)、SasA (Roche et al Microbiology 2003, 149; 643)、SasC (Roche et al Microbiology 2003, 149; 643)、SasK (Roche et al Microbiology 2003, 149; 643)、FnbA (Flock et al Mol Microbiol. 1994, 12; 599, 米国特許第6054572号)、FnbB(国際公開WO 97/14799号, Booth et al 2001 Infec. Immun. 69; 345)、コラーゲン結合タンパク質Cna (Visai et al 2000, J. Biol. Chem. 275; 39837)、ClfB (WO 99/27109)、SdrD (国際公開WO 99/27109号)、SdrE (国際公開WO 99/27109号)、FbpA (Phonimdaeng et al 1988 J. Gen Microbiol.134; 75)、Npase (Flock 2001 J. Bacteriol. 183; 3999)、IsaA/PisA (Lonenz et al FEMS Immuno. Med. Microbiol. 2000, 29; 145)、SsaA (Lang et al FEMS Immunol. Med. Microbiol. 2000, 29; 213)、EPB (Hussain and Hermann symposium on Staph Denmark 14-17th 2000)、SSP-1 (Veenstra et al 1996, J. Bacteriol. 178; 537)、SSP-2 (Veenstra et al 1996, J. Bacteriol. 178; 537)、17kDaヘパリン結合タンパク質 HBP (Fallgren et al 2001, J. Med. Microbiol. 50; 547)、ビトロネクチン結合タンパク質(Li et al 2001, Curr. Microbiol. 42; 361)、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig(国際公開WO 97/48727号)、及びMAP(米国特許第5648240号)がある。
【0054】
SitC/MntC/唾液結合タンパク質
このタンパク質は、ABCトランスポータータンパク質であり、S. pneumoniae(肺炎双球菌)の接着因子PsaAのホモログ(相同体)である。本タンパク質は、高い免疫原性を有する32kDaのリポタンパク質で、細菌細胞壁全体に分布している(Cockayne et al Infect. Immun. 1998 66; 3767)。本タンパク質は、S. aureus及びS. epidermidisにおいて32kDaのリポタンパク質として発現しており、S. hominisにおいては40kDaのホモログが存在する。S. epidermidisにおいて、本タンパク質は、鉄制御オペロンの成分である。Streptococcus parasanguis(ストレプトコッカス・パラサンギス)のFimAを含む接着因子、及び鉄輸送機能が立証された又は推測されているABCトランスポーターファミリーのリポタンパク質の両方とかなりの相同性が見られる。
【0055】
米国特許第5,801,234号に開示された唾液結合タンパク質も、SitCの形態を有し、本発明の免疫原性組成物に包含することができる。
【0056】
ClfA及びClfB
これらのタンパク質は、いずれもフィブリノゲン結合活性を有し、血漿存在下でS. aureusが凝集形成する引き金となる。これらは、細胞壁関連タンパク質に共通するLPXTGモチーフを含む。
【0057】
ClfAは、米国特許第6008341号に記載され、またClfBは、国際公開WO 99/27109号に記載されている。
【0058】
コアグラーゼ(FbpA)
このタンパク質は、S. aureusを血漿存在下で凝集形成させる引き金となるフィブリノゲン結合タンパク質である。コアグラーゼに関しては、Phonimdaeng et al (J. Gen. Microbio. 1988, 134:75-83)、Phonimdaeng et al. (Mol Microbiol 1990; 4:393-404)、Cheung et al. (Infect Immun 1995; 63:1914-1920)、及びShopsin et al. (J. CLin. Microbiol. 2000; 38:3453-3456)に概説されている。一実施形態で、本発明の免疫原性組成物に包含される断片は、シグナルペプチド(C末端方向に27アミノ酸)が除去された成熟タンパク質を含む。
【0059】
コアグラーゼは、3つの異なるドメインを有する。コイルドコイル領域であるアミノ酸59〜297、プロリン−グリシンリッチ領域であるアミノ酸326〜505、そしてβシート構造を有するアミノ酸506〜645に由来するC末端ドメインである。これらのドメインのそれぞれは、本発明の免疫原性組成物中に包含することのできる断片である。
【0060】
SdrG
このタンパク質は、国際公開WO 00/12689号に開示されている。SdrGは、コアグラーゼネガティブのブドウ球菌において見いだされ、LPXTG配列を含む細胞壁関連タンパク質である。
【0061】
SdrGは、シグナルペプチド(アミノ酸1〜51)、フィブリノゲン結合部位及びコラーゲン結合部位を含む領域(アミノ酸51〜825)、2つのCnaBドメイン(アミノ酸627〜698と738〜809)、SD反復領域(アミノ酸825〜1000)、並びにアンカードメイン(アミノ酸1009〜1056)を含む。
【0062】
一実施形態で、SdrGの断片は、シグナルペプチド、及び/又はSD反復領域、及びアンカードメインが除去されているポリペプチドを包含する。これらは、アミノ酸 50〜825、アミノ酸 50〜633、アミノ酸50〜597(国際公開WO 03/76470号の配列番号2)、アミノ酸273〜597(国際公開WO 03/76470号の配列番号4)、アミノ酸273〜577(国際公開WO 03/76470号の配列番号6)、アミノ酸1〜549、アミノ酸219〜549、アミノ酸225〜549、アミノ酸219〜528、アミノ酸225〜528(配列番号: 70又は20又は21)を含む又はそれよりなるポリペプチドを包含する。
【0063】
任意で、配列番号70、20、又は21の配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%又は100%相同な配列を有するSdrGポリペプチドは、本発明の免疫原性組成物中に包含される。
【0064】
本発明の組成物は、任意で上記SdrGポリペプチドの断片を含む。
【0065】
一実施形態で、断片は、除去されるシグナルペプチド及び/又はSD反復ドメイン及び/又はアンカードメインを有する。例えば、配列番号70の1〜713、1〜549、225〜549、225〜529、24〜717、1〜707、1〜690、1〜680、1〜670、1〜660、1〜650、1〜640、1〜630、1〜620、1〜610、1〜600、34〜707、44〜697、36〜689アミノ酸に相当する配列、又は配列番号70若しくは20若しくは21と85%、90%、92%、95%、97%、98%、99% 又は100%の同一性を有する配列である。
【0066】
一実施形態で、除去されるシグナルペプチドを有する断片は、その断片のN末端にメチオニン残基を有し、正確な翻訳が確保されている。
【0067】
一実施形態において、前記断片は、以下の配列を有する。
MEENSVQDVKDSNTDDELSDSNDQSSDEEKNDVINNNQSINTDDNNQIIKKEETNNYDGIEKRSEDRTESTTNVDENEATFLQKTPQDNTHLTEEEVKESSSVESSNSSIDTAQQPSHTTINREESVQTSDNVEDSHVSDFANSKIKESNTESGKEENTIEQPNKVKEDSTTSQPSGYTNIDEKISNQDE
LLNLPINEYENKARPLSTTSAQPSIKRVTVNQLAAEQGSNVNHLIKVTDQSITEGYDDSEGVIKAHDAENLIYDVTFEVDDKVKSGDTMTVDIDKNTVPSDLTDSFTIPKIKDNSGEIIATGTYDNKNKQITYTFTDYVDKYENIKAHLKLTSYIDKSKVPNNNTKLDVEYKTALSSVNKTITVEYQRPNENRTANLQSMFTNIDTKNHTVEQTIYINPLRYSAKETNVNISGNGDEGST
IIDDSTIIKVYKVGDNQNLPDSNRIYDYSEYEDVTNDDYAQLGNNNDVNINFGNIDSPYIIKVISKYDPNKDDYTTIQQTVTMQTTINEYTGEFRTASYDNTIAFSTSSGQGQGDLPPEKTYKIGDYVWEDVDKDGIQNTNDNEKPLSNVLVTLTYPDGTSKSVRTDEDGKYQFDGLKNGLTYKITFETPEGYTPTLKHSGTNPALDSEGNSVWVTINGQDDMTIDSGFYQTPKYSLGNY
VWYDTNKDGIQGDDEKGISGVKVTLKDENGNIISTTTTDENGKYQFDNLNSGNYIVHFDKPSGMTQTTTDSGDDDEQDADGEEVHVTITDHDDFSIDNGYYDDE
【0068】
EbhA及びEbhB
EbhA及びEbhBは、S. aureus及びS. epidermidisの双方で発現するタンパク質であり(Clarke and Foster Infect. Immun. 2002, 70; 6680 , Williams et al Infect. Immun. 2002, 20; 6805)、フィブロネクチンと結合する。フィブロネクチンは細胞外マトリックスの重要な成分なので、EbhA及びEbhBは、ブドウ球菌を宿主細胞外マトリックスに接着する上で重要な機能を有する。
【0069】
Ebhタンパク質は大型で、1.1メガダルトンの分子量を有する。Ebhタンパク質の断片の使用は、製造や製剤が容易なため完全な配列よりもむしろ都合が良い。本タンパク質の中心領域は、フィブロネクチン結合部位を含む不完全な反復を包含する。以下に記載する一以上の反復ドメインを含む断片は、本発明の免疫原性組成物に包含するのに適した断片である。
【0070】
Ebhタンパク質は、コンセンサス配列を含んでいることによって特徴付けられる127アミノ酸長の不完全な反復ユニット、すなわち、
L.G.{10}A.{13}Q.{26}L...M..L.{33}A
又は
.{19}L.G.{10}A.{13}Q.{26}L...M..L.{33}A.{12}
又は
.....I/V..A...I/V..AK.ALN/DG..NL..AK..A.{6}L..LN.AQK..L..QI/V..A..V..V.{6}A..LN/D.AM..L...I/V.D/E...TK.S.NY/F.N/DAD..K..AY/F..AV..A..I/V.N/D.......
を含む。
【0071】
ここで、「.」は、あらゆるアミノ酸を意味し、「.{10}」は、あらゆる10個のアミノ酸を意味し、またI/Vはアミノ酸の二者択一的選択を意味する。
【0072】
Kuroda et al (2001) Lancet 357; 1225-1240、及び表2に開示された配列を参照することにより、Ebhタンパク質内の反復配列は容易に推測される。
【0073】
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物に包含されるべき断片は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又は10個以上の127アミノ酸の反復ユニットを含むタンパク質を包含する。前記断片は、127アミノ酸反復領域の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の反復から構成されていてもよく、あるいは断片の一方の又は両方の末端に付加的なアミノ酸残基を有する1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の反復から構成されていてもよい。任意で、断片は、Clarke et al., Infection and Immunity 70, 6680-6687, 2002に記載されたような、3つの反復にまたがる(アミノ酸3202〜3595)約44kDaのH2ポリペプチドである。このような断片は、任意で、フィブロネクチンと結合することができ、及び/又は全Ebhタンパク質に応答する抗体を誘発することができるであろう。
【0074】
Ebhタンパク質は、フィブロネクチンと結合できる。一実施形態で、これらのポリペプチド配列の断片は、フィブロネクチンに結合する能力を保持している。フィブロネクチンへの結合は、Clarkeら( Infection and Immunity 70; 6680-6687 2002)によって説明されているように、ELISAによって評価することができる。
【0075】
一実施形態で、前記断片は、B細胞又はヘルパーTエピトープ(例えば、表3及び4に記載した断片/ペプチド)を含む断片である。
【0076】
表2 Ebhの全長配列における反復配列
Ebhの全長配列は、Kuroda et al (2001) Lancet 357; 1225-1240において開示されている。以下の表は、127アミノ酸の反復の全長配列内での始まり及び終わりのアミノ酸残基を示す。
【表2】


【0077】
表3 127アミノ酸の反復に関するB細胞エピトープ予測
全長配列は、Kuroda et al (2001) Lancet 357; 1225-1240の中で開示されている。全長配列のアミノ酸3204〜3331にコードされているこれらの反復の一つを選択して、エピトープ予測を行った。すなわち、以下の配列である。
MDVNTVNQKAASVKSTKDALDGQQNLQRAKTEATNAITHASDLNQAQKNALTQQVNSAQNVHAVNDIKQTTQSLNTAMTGLKRGVANHNQVVQSDNYVNADTNKKNDYNNAYNHANDIINGNAQHPVI
【0078】
【表3】

【0079】
・「始まり」及び「終わり」のカラムは、127アミノ酸反復における予測されるB細胞エピトープの位置を示す。
・「開始」及び「終結」のカラムは、Ebh全長配列における予測されるB細胞エピトープの位置を示す。
【0080】
表4 EbhにおけるヘルパーT細胞エピトープ予測
全長配列は、TrEMBLデータベースに、配列参照番号Q8NWQ6で開示されている。全長配列のアミノ酸3204〜3331にコードされている、これらの反復の一つを選択し、エピトープ予測を行った。すなわち、以下の配列である。
MDVNTVNQKAASVKSTKDALDGQQNLQRAKTEATNAITHASDLNQAQKNALTQQVNSAQNVHAVNDIKQTTQSLNTAMTGLKRGVANHNQVVQSDNYVNADTNKKNDYNNAYNHANDIINGNAQHPVI
【0081】
【表4】

【0082】
・「反復位置」のカラムは、反復中の予測されるT細胞エピトープの位置を示す。
・「位置配列」のカラムは、Ebh全長配列における予測されるT細胞エピトープの位置を示す。
【0083】
本発明のタンパク質の断片は、ペプチド合成によって相当する全長ポリペプチドを作るのに使用することができる。したがって、これらの断片は、本発明の全長タンパク質を作るための中間体として使用してもよい。
【0084】
一実施形態で、いくつかの、5〜10個の、1〜5個の、1〜3個の、1若しくは2個の、又は1個のアミノ酸があらゆる組み合わせで置換、欠失、又は付加されている変異体が使用される。
【0085】
エラスチン結合タンパク質(EbpS)
EbpSは分子量83kDaを有し、486アミノ酸からなる。本タンパク質は、S. aureusの細胞膜と関連し、膜内にタンパク質を留める3つの疎水性領域を有する(Downer et al 2002, J. Biol. Chem. 277; 243; Park et al 1996, J. Biol. Chem. 271; 15803)。
【0086】
アミノ酸1〜205及び343〜486間の2つの領域は、細胞膜の外側に露出した表面部となる。EbpSのリガンド結合ドメインは、N末端の14〜34残基に位置する(Park et al 1999, J. Biol. Chem. 274; 2845)。
【0087】
一実施形態において、本発明の免疫原性組成物に包含される断片は、エラスチン結合領域(アミノ酸1〜205)を含む表面露出断片である。任意で、前記断片は、露出ループ部の全てを含まないまでも、エラスチン結合領域(アミノ酸14〜34)を含む必要がある。使用可能な他の断片は、第二表面露出ループ部(アミノ酸343〜486)を形成するアミノ酸からなる。また、一方の又は両方の末端において最大1個、2個、5個、10個、20個、又は50個アミノ酸が少ない他の断片も使用できる。
【0088】
ラミニン受容体
S. aureusのラミニン受容体は、病原性に重要な役割を果たす。感染の特性は、血流への侵入であり、それが広範囲に及ぶ転移性膿症の形成を可能にする。血流侵入には、血管基底膜を通過して浸出する能力が必要である。これは、ラミニン受容体を介したラミニンとの結合を介することで達成される(Lopes et al Science 1985, 229; 275)。
【0089】
ラミニン受容体は、表面露出しており、S. aureus及びS. epidermidisを含む多くのブドウ球菌株に存在する。
【0090】
SBI
SBIは、プロテインAに加えて、第2のIgG結合タンパク質であり、ほとんどのS. aureus株で発現している(Zhang et al 1998, Microbiology 144; 985)。
【0091】
SBIの配列のN末端は、29番アミノ酸の後に切断部位をもつ典型的なシグナル配列を有する。それゆえ、本発明の免疫原性組成物に使用することのできるSBIの断片は、アミノ酸残基30、31、32、又は33番から始まり、SBI(例えば、配列番号26)のC末端にまで続く。
【0092】
SBIのIgG結合ドメインは、41番〜92番アミノ酸から本タンパク質のN末端領域に向う領域として同定されている。このドメインは、プロテインAのIgG結合ドメインと相同である。
【0093】
SBIの最小のIgG結合ドメインは、以下の配列を含む。
QTTQNNYVTDQQKAFYQVLHLKGITEEQRNQYIKTLREHPERAQEVFSESLK
** *** * *** * * * * *
「*」は、IgG結合ドメイン間で類似のアミノ酸を示す。
【0094】
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物に包含されるSBIの断片は、IgG結合ドメインを含む。本断片は、上記配列で「*」によって示したようなIgG結合ドメインのコンセンサス配列を含む。任意で、前記断片は、上記で示す完全配列を含む又はそれから成る。任意で、前記断片は、SBI(例えば配列番号26)の30〜92番、33〜92番、30〜94番、33〜94番、30〜146番、33〜146番、30〜150番、33〜150番、30〜160番、33〜160番、33〜170番、33〜180番、33〜190番、33〜200番、33〜205番、又は33〜210番アミノ酸を含む又はそれから成る。
【0095】
断片は、表示した配列に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個のアミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0096】
断片は、IgG結合ドメインの多重反復(2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個)を含んでいてもよい。
【0097】
EFB-FIB
FBIは、S. aureusにより細胞外培地中に分泌される19kDaのフィブリノゲンタンパク質である。本タンパク質は、検証された全S. aureus分離株で産生される(Wastfelt and Flock 1995, J. Clin. Microbiol. 33; 2347)。
【0098】
S. aureusは、フィブリノゲンの存在下で凝集し、フィブリノゲン被覆表面に結合する。この能力は、カテーテル及び内皮細胞におけるブドウ球菌の定着を促進する。
【0099】
FIBは、該タンパク質のN末端にシグナル配列を含み、また、およそ30番アミノ酸に予測切断部位をもつ。一実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、成熟タンパク質(本タンパク質の約30番アミノ酸からC末端)の配列を含む又はそれから成る。
【0100】
Fbe-EfB/FIG
Fbeは、S. epidermidisの多くの分離株に見られ、119kDaの推定分子量を有するフィブリノゲン結合タンパク質である(Nilsson et al 1998. Infect. Immun. 66; 2666)。本配列は、S. aureus(ClfA)由来の凝集因子のそれと関連する。Fbeに対する抗体は、S. epidermidisのフィブリノゲン被覆プレート及びカテーテルへの結合を阻害することができる(Pei and Flock 2001, J. Infect. Dis. 184; 52)。
【0101】
Fbeは、51番と52番アミノ酸の間に切断部位をもった推定シグナル配列を有する。それ故、Fbeの潜在的断片は、52番アミノ酸からC末端(1,092番アミノ酸)に及ぶFbeの成熟形態を含む。
【0102】
Fbe の52番アミノ酸から825番アミノ酸のドメインは、フィブリノゲン結合に関与する。一の実施形態で、Fbeの断片は、アミノ酸番号52〜825から成るか、又はそれを含む。
【0103】
Fbeの373番〜516番のアミノ酸領域は、Fbe及びClfA間で最大の保存性を示す。一実施形態で、前記断片は、Fbeの373番〜516番のアミノ酸を含む。
【0104】
Fbeの825〜1041番アミノ酸は、縦列反復したアスパラギン酸とセリン残基からなる高度な反復領域を含む。
【0105】
IsaA/PisA
IsaAは、PisAとしても知られる29kDaのタンパク質で、入院患者の敗血症の間で、免疫優性ブドウ球菌タンパク質であることが判明している(Lorenz et al 2000, FEMS Immunol. Med. Microb. 29; 145)。
【0106】
IsaA配列の最初の29アミノ酸は、シグナル配列であると考えられている。一実施形態で、本発明の免疫原性組成物に包含されるIsaAの断片は、コード配列の30番アミノ酸残基以降末端までを含む。
【0107】
フィブロネクチン結合タンパク質
フィブロネクチン結合タンパク質Aは、フィブロネクチンとの結合に関連するいくつかのドメインを含む(国際公開WO 94/18327号)。それらは、D1、D2、D3、及びD4と呼ばれる。一実施形態で、フィブロネクチン結合タンパク質A又はBの断片は、D1、D2、D3、D4、D1〜D2、D2〜D3、D3〜D4、D1〜D3、D2〜D4又はD1〜D4を含む又はそれから成る。
【0108】
フィブロネクチン結合タンパク質は、36個のアミノ酸シグナル配列を含む。例えば、
VKNNLRYGIRKHKLGAASVFLGTMIVVGMGQDKEAA
である。
【0109】
任意で、本シグナル配列が除かれた成熟タンパク質は、本発明の免疫原性組成物に包含される。
【0110】
トランスポータータンパク質
グラム陽性菌の細胞壁は、細菌内への代謝産物の自由拡散を防ぐ障壁として働く。タンパク質の一群は、細菌内への必須栄養素の通過を調整することから細菌の生存に必須である。トランスポータータンパク質という用語は、鉄のような代謝産物と結合する最初のステップに関係するタンパク質、及び実際にその代謝産物を細菌内に輸送するのに関係するタンパク質を包含する。
【0111】
鉄分子は、細菌の成育に必須の補因子である。シデロフォアは、分泌された後、遊離鉄と結合し、その後、細胞膜を通過する輸送のために鉄を送達する細菌表面受容体によって捕捉される。このクラスのタンパク質に対する免疫応答でブドウ球菌は生存不能となるので、鉄の獲得はヒトへの感染の樹立に重要である。
【0112】
トランスポータータンパク質の例としては、免疫優性ABCトランスポーター(Burnie et al 2000 Infect. Imun. 68; 3200)、IsdA (Mazmanian et al 2002 PNAS 99; 2293)、IsdB (Mazmanian et al 2002 PNAS 99; 2293)、IsdC (国際公開WO 06/59247号)、Mg2+トランスポーター、SitC (Wiltshire and Foster 2001 Infect. Immun. 69; 5198)、及びNi ABC トランスポーターが挙げられる。
【0113】
免疫優性ABCトランスポーター
免疫優性ABCトランスポーターは、十分に保存されたタンパク質であり、異なるブドウ球菌株に対しても交差防御な免疫応答を発生させることができる(Mei et al 1997, Mol. Microbiol. 26; 399)。このタンパク質に対する抗体は、敗血症に罹患した患者で発見されている(Burnie et al 2000, Infect. Immun. 68; 3200)。
【0114】
免疫優性ABCトランスポーターの任意の断片は、ペプチドDRHFLN、GNYD、RRYPF、KTTLLK、GVTTSLS、VDWLR、RGFL、KIKVYVGNYDFWYQS、TVIVVSHDRHFLYNNV及び/又はTETFLRGFLGRMLFSを包含し得る。これらに配列は、ヒト免疫システムにより認識されるエピトープを含んでいるからである。
【0115】
IsdA-IsdB
S. aureusのisd(iron-regulated surface determinant:鉄制御型表面決定因子)遺伝子は、ヘモグロビン結合及びヘム鉄の細胞質移行に関与するタンパク質をコードする。ヘム鉄は、必須栄養素として作用する。IsdA及びIsdBは、ブドウ球菌の細胞壁に局在してる。IsdAは、プロテイナーゼK消化感受性であることから細菌表面に露出していると考えられている。IsdBは、部分的に消化されたことから、細菌表面上に部分的に露出していることが示唆された(Mazmanian et al 2003 Science 299; 906)。
【0116】
IsdA及びIsdBは、いずれも29kDaのタンパク質で、ヘムと結合する。それらの発現は、Furリプレッサーを介して鉄利用可能性によって制御されている。それらは、鉄濃度が低い場合には、宿主に感染する間、高発現する。
【0117】
前記タンパク質はFrpA及びFrpBとしても知られている(Morrissey et al 2002, Infect. Immun. 70; 2399)。FrpA及びFrpBは、高い電荷をもつ主要な表面タンパク質である。それらは、プラスチックへの接着に大きく寄与することが判明している。
【0118】
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、国際公開WO01/98499号又はWO 03/11899号で開示されているIsdA及び/又はIsdBの断片を含む。
【0119】
毒素及び毒性調節因子
本タンパク質ファミリーのメンバーは、アルファトキシン、溶血素、エンテロトキシンB及びTSST-1のような毒素、並びにRAPのような毒素の生成を調節するタンパク質を含む。
【0120】
アルファトキシン(Hla)
アルファトキシンは、S. aureusのほとんどの株によって産生される重要な毒性決定因子である。本タンパク質は、溶血作用をもった孔形成毒素である。アルファトキシンに対する抗体は、動物モデルでアルファトキシンの有害な及び致死性の効果を中和することが判明している(Adlam et al 1977 Infect. Immun. 17; 250)。ヒト血小板、内皮細胞、及び単核細胞は、アルファトキシンの効果に影響を受けやすい。
【0121】
アルファトキシンの高い毒性は、免疫原として使用する前に解毒しておく必要性が求められる。これは、化学的処理によって(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、若しくは他の架橋剤を用いた処理によって、又はそれを下記で述べる細菌の多糖体と化学的にコンジュゲートさせることによって)達成することができる。
【0122】
毒性を除くさらなる方法は、毒性を除く一方で毒素の抗原性は保持させる点突然変異を導入することである。アルファトキシンの35番アミノ酸においてヒスチジン残基をロイシン残基で置換する点突然変異の導入は、毒性を除去する一方で抗原性の保持をもたらす(Menzies and Kernodle 1996; Infect. Immun. 64; 1839)。35番のヒスチジンは、孔形成に必要な適切なオリゴマー化に重要であるらしく、この残基の変異は毒性の喪失をもたらす。
【0123】
本発明の免疫原性組成物に取り入れる場合、アルファトキシンは、任意でHis35の変異によって(例えば、His35をLeu又はArgで置換することによって)解毒される。別の実施形態において、アルファトキシンは、免疫原性組成物の他の成分(例えば、莢膜多糖体又はPNAG)と、任意でS. aureusの5型及び/又はS. aureusの8型多糖体及び/又はPNAGとコンジュゲーション化することにより解毒される。
【0124】
RNA III活性化タンパク質(RAP)
RAPは、それ自身は毒素ではないが、毒性因子の発現の調節因子である。RAPは、ブドウ球菌により生成され、また分泌される。当該タンパク質は、他のブドウ球菌のagr調整システムを活性化し、かつ溶血素(ヘモリシン)、エンテロトキシンB及びTSST-1のような毒性因子の発現と、それに続く放出を活性化する。
【0125】
他の免疫優性タンパク質
蓄積関連タンパク質(Aap)
Aapは、140kDaのタンパク質であり、表面上でのS. epidermidis株の蓄積に必須である(Hussain et al Infect. Immun. 1997, 65; 519)。このタンパク質を発現している株は著しく多量の生物膜を産生したことから、Aapは生物膜形成に関与しているらしい。Aapに対する抗体は、生物膜形成を抑制し、またS. epidermidisの蓄積を抑制することができる。
【0126】
ブドウ球菌分泌抗原(SsaA)
SsaAは、S. aureusS. epidermidisの双方で見つかった30kDaの強免疫原性タンパク質である(Lang et al 2000 FEMS Immunol. Med. Microbiol. 29; 213)。心内膜炎罹患中にその発現が、感染症の発症に対して特定の毒性の役割を果たすことを示唆した。
【0127】
SaaAは、N末端リーダー配列及びシグナルペプチダーゼ切断部位を含む。リーダーペプチドの後に約100アミノ酸の疎水性領域が30番残基から130番残基まで続く。
【0128】
本発明の免疫原性組成物中に包含されるSsaAの任意断片は、成熟タンパク質(27番アミノ酸からC末端まで、又は30番アミノ酸からC末端まで)から構成される。
【0129】
さらなる任意の断片は、30番アミノ酸から130番アミノ酸までのSsaAの疎水性領域を含む。
【0130】
組み合わせ
ブドウ球菌感染は、いくつかの異なる段階を経て進行する。例えば、ブドウ球菌のライフサイクルは、片利強制的定着、隣接する組織若しくは血流にアクセスすることによる感染の開始、血液中での嫌気的増殖、S. aureus毒性決定因子と宿主防御機構との間の相互作用、並びに心内膜炎、転移性膿瘍形成及び敗血症候群を含む合併症の誘発を含む。細菌表面上の異なる分子が感染サイクルの異なるステップにおいて関与する。ブドウ球菌感染の異なる工程に関与する特定の抗原の組み合わせに対する免疫応答を標的とすることにより、ブドウ球菌機能は多面的局面で影響を受ける。またこれは優れたワクチン効率をもたらし得る。
【0131】
特に、異なるクラスに由来するいくつかの抗原の組み合わせ(それらのいくつかは宿主細胞への接着に関与し、それらのいくつかは鉄獲得又は他のトランスポーター機能に関与し、それらのいくつかは毒素又は毒性調節因子及び免疫優性抗原である)は、多段階の感染に対して防御する免疫応答を誘導できる。
【0132】
抗原のいくつかの組み合わせは、免疫応答を誘発する点で特に効果的である。これは、実施例に記載したような動物モデル解析で、及び/又は実施例で記載したようなオプソニン作用解析を用いることで測定することができる。理論に縛られることなく、前記抗原の効果的組み合わせは、抗原の組み合わせに対する多くの免疫応答の特性によって可能となると考えられる。抗原自体は、通常ブドウ球菌細胞の表面上に露出しており、それらは保存されている傾向にあるが、単一抗原に対して誘発される抗体を用いて行われる最適な殺菌反応のために十分な量が表面細胞上に存在する傾向にはない。本発明の抗原を組み合わせることは、臨界閾値を越えてブドウ球菌細胞と相互作用する抗体の有利な組み合わせを誘発する製剤をもたらし得る。この臨界値において、十分な特性をもつ十分な抗体は、細菌表面に結合し、補体による効果的な殺傷、又は細菌の中和のいずれかを可能にする。これは、実施例で記載したような動物実験、又はオプソニン解析のいずれかで測定することができる。
【0133】
本発明の好ましい免疫原性組成物は、少なくとも2つの異なるタンパク質カテゴリーから選択される複数のタンパク質を含む。これらのタンパク質は、ブドウ球菌内で異なる機能を有する。前記タンパク質カテゴリーの例として、細胞外結合タンパク質、Fe取得タンパク質のようなトランスポータータンパク質、毒素若しくは毒性調節因子、及び他の免疫優性タンパク質が挙げられる。
【0134】
好ましい実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、さらに、以下の2つ、3つ、又は4つの異なる群から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上の多数のタンパク質を含む。
・a群)細胞外成分結合タンパク質
・b群)トランスポータータンパク質
・c群)毒素又は毒性調節因子
・d群)構造タンパク質
【0135】
好ましい実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、さらに以下の2つ、3つ、又は4つの群から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上の多数のタンパク質を含む。
・a群)ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、SasB、SasC、SasD、SasK、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPからなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌細胞外成分結合タンパク質又はその断片;
・b群)免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、Mg2+トランスポーター、HarA、SitC及びNi ABCトランスポーターからなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌トランスポータータンパク質又はその断片;
・c群)アルファトキシン(Hla)、アルファトキシンH35R変異体,RNA III活性化タンパク質 (RAP)からなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌毒性調節因子、毒素又はそれらの断片;
・d群)MRPII及び自己溶菌酵素(オートリシン)からなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌の構造タンパク質又はその免疫原性断片
【0136】
好ましい実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、以下の2つ又は3つの群から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上の多数のタンパク質を含む。
・a群)ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、オートリシン、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、SasB、SasC、SasD、SasK、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPからなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌細胞外成分結合タンパク質又はその免疫原性断片;
・b群)免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーターからなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌トランスポータータンパク質又はその免疫原性断片;
・c群)アルファトキシン(Hla)、アルファトキシンH35R変異体,RNA III活性化タンパク質 (RAP)からなる群より選択される少なくとも一つのブドウ球菌毒性調節因子、毒素又はそれらの免疫原性断片
【0137】
好ましい実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、a群)から選択される少なくとも1つのタンパク質、及びb群)及び/又はc群)から選択される付加的タンパク質を含む。
【0138】
さらなる実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、b群)から選択される少なくとも1つの抗原、及びc群)及び/又はa群)から選択される付加的タンパク質を含む。
【0139】
さらなる実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、c群)から選択される少なくとも1つの抗原、及びa群)及び/又はb群)から選択される付加的タンパク質を含む。
【0140】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質の任意の組み合わせは、ラミニン受容体、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0141】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SitC、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、 Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0142】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、EbhA、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0143】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、EbhB、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0144】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、EbpS、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdA、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0145】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、EFB(FIB)、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0146】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SBI、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0147】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、自己溶菌酵素(オートリシン)、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0148】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、ClfA、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0149】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SdrC、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0150】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SdrD、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0151】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SdrE、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0152】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SdrG、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、及びRAPから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0153】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SdrH、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0154】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SasF、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0155】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、リパーゼGehD、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0156】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SasF、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0157】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、FnbA、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0158】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、FnbB、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0159】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、Cna、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0160】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、ClfB、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0161】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、FbpA、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0162】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、Npase、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0163】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、IsaA/PisA、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0164】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SsaA、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0165】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、EPB、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0166】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SSP-1、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0167】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SSP-2、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0168】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、HPB、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0169】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、ビトロネクチン結合タンパク質、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0170】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、フィブリノゲン結合タンパク質、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0171】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、凝固酵素(コアグラーゼ)、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0172】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、Fig、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0173】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、MAP、並びに免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAから成る群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0174】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、免疫優性ABCトランスポーター、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfA、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0175】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、IsdA、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrC、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfA、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0176】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、IsdB、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfA、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0177】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、SitC、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfA、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、アルファトキシン、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、RAP、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0178】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、アルファトキシン、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0179】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、アルファトキシンH35L若しくはH35R変異体、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0180】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、RAP、並びにラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、SasF、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC、Ni ABCトランスポーター、Aap及びSsaAからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのさらなる抗原を含む。
【0181】
本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質のさらなる組み合わせは、IsdA及びIsdB、IsdA及びClfA、IsdA及びClfB、IsdA及びSdrC、IsdA及びSdrD、IsdA及びSdrE、IsdA及びSdrG、IsdA及びSasF、IsdB及びClfA、IsdB及びClfB、IsdB及びSdrC、IsdB及びSdrD、IsdB及びSdrE、IsdB及びSdrG、IsdB及びSasF、ClfA及びClfB、ClfA及びSdrC、ClfA及びSdrD、ClfA及びSdrE、ClfA及びSasF、ClfB及びSdrC、ClfB及びSdrD、ClfB及びSdrE、ClfB及びSasF、SdrC及びSdrD、SdrC及びSdrE、SdrC及びSasF、SdrD及びSdrE、SdrD及びSasF、SdrE及びSasFを含む。
【0182】
上記及び以下の組み合わせにおいて、特定されたタンパク質は、任意で、本発明の免疫原性組成物中に上記のような断片又は融合タンパク質として存在していてもよい。
【0183】
3つのタンパク質の組み合わせ
一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、さらに、アルファトキシン、細胞外成分結合タンパク質(例えば、接着因子)及び、トランスポータータンパク質(例えば、鉄結合タンパク質)を組み合わせた3つのタンパク質成分を含む。
【0184】
前記組み合わせで、アルファトキシンは、化学的に解毒するか、又は点突然変異の導入(例えば、His35Leu点突然変異)により遺伝学的に解毒することができる。アルファトキシンは、遊離タンパク質として存在するか、あるいは免疫原性組成物の多糖体又はPNAG成分とコンジュゲート化している。
【0185】
組み合わせの例として、以下が含まれる。
【0186】
アルファトキシン、IsdA、並びに細胞外成分結合タンパク質であって、ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPから成る群より選択される前記細胞外成分結合タンパク質を含む免疫原性組成物。
【0187】
アルファトキシン、IsdB、並びに細胞外成分結合タンパク質であって、ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPから成る群より選択される前記細胞外成分結合タンパク質を含む免疫原性組成物。
【0188】
アルファトキシン、IsdA、並びに接着因子であって、ラミニン受容体、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、自己溶菌酵素(オートリシン)、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、SSP-1、SSP-2、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPから成る群より選択される前記接着因子を含む免疫原性組成物。
【0189】
アルファトキシン、IsdB、並びに接着因子であってラミニン受容体、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPから成る群より選択される前記接着因子を含む免疫原性組成物。
【0190】
アルファトキシン、IsdA、及びラミニン受容体を含む免疫原性組成物。
【0191】
アルファトキシン、IsdA、及びEbhAを含む免疫原性組成物。
【0192】
アルファトキシン、IsdA、及びEbhBを含む免疫原性組成物。
【0193】
アルファトキシン、IsdA、及びEbpSを含む免疫原性組成物。
【0194】
アルファトキシン、IsdA、及びEFB (FIB)を含む免疫原性組成物。
【0195】
アルファトキシン、IsdA、及びSdrGを含む免疫原性組成物。
【0196】
アルファトキシン、IsdA、及びClfAを含む免疫原性組成物。
【0197】
アルファトキシン、IsdA、及びClfBを含む免疫原性組成物。
【0198】
アルファトキシン、IsdA、及びFnbAを含む免疫原性組成物。
【0199】
アルファトキシン、IsdA、及び凝固酵素(コアグラーゼ)を含む免疫原性組成物。
【0200】
アルファトキシン、IsdA、及びFigを含む免疫原性組成物。
【0201】
アルファトキシン、IsdA、及びSdrHを含む免疫原性組成物。
【0202】
アルファトキシン、IsdA、及びSdrCを含む免疫原性組成物。
【0203】
アルファトキシン、IsdA、及びSdrDを含む免疫原性組成物。
【0204】
アルファトキシン、IsdA、及びSdrEを含む免疫原性組成物。
【0205】
アルファトキシン、IsdA、及びMAPを含む免疫原性組成物。
【0206】
IsaA及びSbiを含む免疫原性組成物。
【0207】
IsaA及びIsdBを含む免疫原性組成物。
【0208】
IsaA及びIsdAを含む免疫原性組成物。
【0209】
IsaA及びSdrCを含む免疫原性組成物。
【0210】
IsaA及びEbh又は上記断片を含む免疫原性組成物。
【0211】
Sbi及びSdrCを含む免疫原性組成物。
【0212】
Sbi及びEbh又は上記断片を含む免疫原性組成物。
【0213】
IsaA、Sbi又はSdrCを含む本発明の免疫原性組成物。
【0214】
異なるクローン系列で発現される抗原の選択
Staphylococcus aureusの母集団構造と関連する毒性因子の発生の解析により、S. aureusの自然集団における可変的な毒性遺伝子の存在が明らかとなった。
【0215】
Staphylococcus aureusの臨床分離体のうち、少なくとも5つのクローン系列が高度に蔓延していることが明らかになった(Booth et al., 2001 Infect Immun. 69(1):345-52)。アルファ‐ヘモリシン(hla)、フィブロネクチン結合タンパク質A(fnbA)及び凝集因子A(clfA)は、系列の同一性の有無にかかわらず、ほとんどの分離体に存在することが判明した。これは、S. aureusの生存においてこれらのタンパク質が重要であることを示唆している(Booth et al., 2001 Infect Immun. 69(1):345-52)。さらに、Peacock et al. 2002によれば、fnbA、clfA、凝固酵素(コアグラーゼ)、spa、map、pvl (Panton-Valentine ロイコシジン)、hlg (ガンマトキシン)、アルファトキシン、及びicaの分布は、基礎となったクローン構造に無関連らしい。これは、これらの遺伝子が少なからず水平伝播していることを示唆している。
【0216】
一方、フィブロネクチン結合タンパク質B(fnbB)、ベータ‐ヘモリシン(hlb)、コラーゲン結合タンパク質(cna)、TSST-1 (tst)、及びメチシリン耐性遺伝子(mecA) のような他の毒性遺伝子は、特定の系列と強く関連する(Booth et al., 2001 Infect Immun. 69(1):345-52)。同様に、Peacockら(2002 (Infect Immun. 70(9):4987-96))は、集団内のエンテロトキシン、tst、エクスフォリアチン(表皮剥脱毒素:eta及びetb)、ベータ及びデルタトキシン、sdr遺伝子群(sdrD、sdrE及びbbp)、can、ebpS及びefbの分布が、全てMLST法由来のクローン系列に著しく強く関連することを示した。
【0217】
MLSTデータによれば、院内感染症の原因である株が市中感染症を誘発する明らかに異なる亜集団又は無症状保菌者から回収された株であるという証拠はなかった (Feil et al., 2003 J Bacteriol. 185(11):3307-16)。
【0218】
一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、異なるクローン系列由来のブドウ球菌に対して効果的である。
【0219】
一実施形態で、免疫原性組成物は、ほとんどのブドウ球菌の分離体で発現している1つ、2つ、3つ、4つ、又は少なくとも1つのタンパク質を含む。このようなタンパク質の例として、アルファ‐ヘモリシン(hla)、フィブロネクチン結合タンパク質A(fnbA)及び凝集因子A (clfA)、凝固酵素(コアグラーゼ)、spa、map、pvl(Panton-Valentineロイコシジン)、hlg (ガンマ-トキシン)、ica、免疫優性ABCトランスポーター 、RAP、自己溶菌酵素(オートリシン)(Rupp et al 2001, J. Infect. Dis. 183; 1038)、ラミニン受容体、SitC、IsaA/PisA、SPOIIIE、SsaA、EbpS、SasF (Roche et al 2003, Microbiology 149; 643)、EFB(FIB)、SBI、ClfB、IsdA、IsdB、FnbB、Npase、EBP、骨シアロ結合タンパク質II、IsaB/PisB (Lorenz et al FEMS Immuno. Med. Microb. 2000, 29; 145)、SasH (Roche et al 2003, Microbiology 149; 643)、MRPI、SasD (Roche et al 2003, Microbiology 149; 643)、SasH (Roche et al 2003, Microbiology 149; 643)、オーレオリシン前駆体 (aureolysin precursor:AUR)/Sepp1及び新規自己溶菌酵素が挙げられる。
【0220】
他の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、クローン株の異なる集団で発現する2以上のタンパク質を含む。任意で、抗原の組み合わせは、複数のクローン株に対して、又は全てのクローン株に対して効果的な免疫応答を生じさせることができる。例えば、組み合わせには、FnbB及びベータ‐ヘモリシン、FnbB及びCna、FnbB及びTSST-1、FnbB及びmecA、FnbB及びSdrD、FnbB及びSdrF、FnbB及びEbpS、FnbB及びEfb、ベータ‐ヘモリシン及びCna、ベータ‐ヘモリシン及びTSST-1、ベータ‐ヘモリシン及びmecA、ベータ‐ヘモリシン及びSdrD、ベータ‐ヘモリシン及びSdrF、ベータ‐ヘモリシン及びEbpS、ベータ‐ヘモリシン及びEfb、Cna及びTSST-1、Cna及びmecA、Cna及びSdrD、Cna及びSdrF、Cna及びEbpS、Cna及びEfb、TSST-1及びmecA、TSST-1及びSdrD、TSST-1及びSdrF、TSST-1及びEbpS、TssT-1及びEfb、MecA及びSdrD、MecA及びSdrF、MecA及びEbpS、MecA及びEfb、SdrD及びSdrF、SdrD及びEbpS、SdeD及びEfb、SdrF及びEbpS、SdrF及びEfb、and、EbpS及びEfbがある。
【0221】
上記組み合わせは、上述したさらなる成分と組み合わせることもできる。
【0222】
S. aureus及びS. epidermidisに対する防御
本発明の一実施形態で、免疫原性組成物は、1株以上のブドウ球菌に対して(例えば、S. aureus及びS. epidermidisの双方に由来する株に対して)効果的な免疫応答を提供する。例えば、防御免疫反応は、S. aureusの5型及び8型血清型に対して生じる。
【0223】
本発明の免疫原性組成物の使用の一つは、入院治療前に接種することにより院内感染を(例えば、待機的手術患者において)予防することである。この段階では、患者がどのブドウ球菌株に晒されるのかを正確に予測することは困難である。それ故、種々のブドウ球菌株に対して効果的な免疫応答を発生させるのが可能なワクチン接種することが都合良い。
【0224】
効果的な免疫応答は、実施例で説明したようなマウスのチャレンジ(投与)モデル又はオプソニン化貪食作用解析において有意な防御を付与する免疫応答として定義される。マウスチャレンジモデルにおける有意な防御とは、例えば、実施例5で示すように、担体導入マウスと比較してLD50の少なくとも10%、20%、50%、100%又は200%の増加として定義される。コットンラットチャレンジにおける有意な防御とは、例えば、実施例8で示すように、平均してLogCFU/鼻腔の少なくとも10%、20%、50%、70%又は90%の減少として定義される。オプソニン化抗体の存在は、防御と関連することが知られている。それ故、有意な防御は、例えば、実施例7のようにオプソニン化貪食作用解析において、細菌数の少なくとも10%、20%、50%、70%又は90%の減少によって示される。
【0225】
免疫優性ABCトランスポーター、RNA III活性化タンパク質、ラミニン受容体、SitC、IsaA/PisA、SsaA、EbhA/EbhB、EbpS及びAapを含むいくつかのタンパク質は、S. aureus及びS. epidermidis間でよく保存されており、また実施例8で、IsaA、ClfA、IsdB、SdrG、HarA、FnbpA及びSbiが交差免疫反応(例えば、S. aureusの少なくとも1株とS. epidermidisの少なくとも1株間での交差反応性)を発生し得ることが明らかとなった。PIAもS. aureus及びS. epidermidis間でよく保存されている。
【0226】
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、PNAG、及び5型及び8型多糖体、並びに1つ、2つ、3つ、又は4つの上記タンパク質を含むことができる。
【0227】
ワクチン
一実施形態で、本発明の免疫原性組成物は、製薬上許容可能な賦形剤と共に、また任意でアジュバントと共に混合されて、ワクチンを形成する。
【0228】
本発明のワクチンは、特に、高年齢者における使用だけでなく、幼児における使用も予定する場合は、アジュバント化してもよい。適当なアジュバントには、水酸化アルミニウムゲル、リン酸アルミニウム、又はミョウバンのようなアルミニウム塩があるが、カルシウム、マグネシウム、鉄、又は亜鉛の塩のような他の金属塩であってもよく、あるいはアシル化チロシン若しくはアシル化糖の不溶性懸濁液、陽イオン置換した若しくは陰イオン置換した多糖体、又はポリホスファゼンであってもよい。
【0229】
アジュバントはTh1型応答の選択的誘導因子となるように選択されることが好ましい。高レベルのTh1型サイトカインは、所与の抗原に対して細胞仲介性免疫反応の誘導を好む傾向にある。一方、高レベルのTh2型サイトカインは、抗原に対して体液性免疫反応の誘導を好む傾向にある。
【0230】
Th1及びTh2型免疫応答の区別は、絶対的なものではない。実際には、記載された免疫応答がTh1が優勢であるか又はTh2が優勢であるかは個々人によって評価される。しかし、MosmannとCoffmanによってマウスCD4+ ve T細胞クローンで説明されたもの(Mosmann, T.R. and Coffman, R.L. (1989) TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties. (Annual Review of Immunology, 7, p145-173)に関して言えば、大抵の場合サイトカインのファミリーを考えると便利である。伝統的にTh1型応答は、Tリンパ球によるINF-γ及びIL-2サイトカインの産生と関連する。Th1型免疫応答の誘導に直接的に関連する他のサイトカイン(例えば、IL-12)は、通常T細胞では産生されない。一方、Th2型応答は、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10の分泌と関連する。Th1応答を主に促進する適当なアジュバントシステムには、モノホスホリルリピドA又はその誘導体(若しくは、一般に解毒したリピドA:例えば、国際公開WO2005107798号参照)、特に3-デ-O-アシル化モノホスホリピドA(3D‐MPL)(この調製物に関しては、ドイツ特許番号第2220211A号を参照されたい)、あるいはモノホスホリピドA、好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリピドAと、アルミニウム塩(例えば、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)又は水中油型(oil-in-water)エマルジョンのいずれかとの組み合わせがある。前記組み合わせにおいて、抗原と3D-MPLは、同一粒子構造体内に収納され、抗原性及び免疫賦活性シグナルのより効率的な送達を可能にする。研究により3D-MPLは、ミョウバン吸着抗原の免疫原性をさらに増強できることが明らかとなった(Thoelen et al. Vaccine (1998) 16:708-14; EP 689454-B1)。
【0231】
増強システムは、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組み合わせ、特に、国際公開WO 94/00153号で開示されたQS21と3D-MPLの組み合わせ、又は国際公開WO 96/33739号で開示されたようなQS21がコレステロールで不活化される反応性の低い組成物を含む。水中油型エマルジョンの中でQS21、3D-MPL及びトコフェロールと関連する特に強力なアジュバント製剤は、国際公開WO 95/17210号に記載されている。一の実施形態で、免疫原性組成物は、さらに、サポニンを含む。このサポニンは、QS21であってもよい。製剤はまた、水中油型エマルジョン及びトコフェロールを含んでいてもよい(国際公開95/17210号)。非メチル化CpGを含むオリゴヌクレオチド(国際公開WO 96/02555号)及び、他の免疫調節オリゴヌクレオチド(国際公開WO0226757号及び同WO03507822号)もTh1応答の選択的誘導因子であり、本発明での使用に適している。
【0232】
特殊なアジュバントは、金属塩、水中油型エマルジョン、Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll 様受容体2アゴニスト、Toll 様受容体3アゴニスト、Toll 様受容体4アゴニスト、Toll 様受容体7アゴニスト、Toll 様受容体8アゴニスト、Toll 様受容体9アゴニスト)、サポニン、又はそれらの組み合わせの群から選択される。
【0233】
本発明のワクチン組成物で使用することができるアジュバントは、国際公開WO02/09746号で開示されたようなグラム陰性菌株由来のブレブ又は外膜小胞、特にN. meningitidisのブレブである。ブレブのアジュバント特性は、その表面上に(例えば、0〜0.1%デオキシコール)での抽出を介して)LOS(リポオリゴ糖)を保有することによって向上し得る(例えば、低濃度の界面活性剤。LOSは、国際公開WO02/09746号に記載されているmsbB(-)又はhtrB(-)変異を介して解毒化することができる。アジュバント特性はまた、髄膜炎症菌性ブレブ由来のPorBを保有する(及び、任意でProAを除去する)ことで向上し得る。アジュバント特性は、例えば、国際公開WO2004/014417号に記載されているlgtB(-)変異を介して、髄膜炎症菌性ブレブ上のLOSの外核多糖構造をトランケートすることでも向上し得る。あるいは、上述のLOS(例えば、msbB(-) 及び/又はlgtB(-)株から単離されたLOS)を精製して、本発明の組成物にアジュバントとして用いることができる。
【0234】
本発明の組成物に使用することのできるさらなるアジュバントは、サポニン、リピドA若しくはその誘導体、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、アルキルグルコサミニドホスフェート、水中油型エマルジョン、又はそれらの組み合わせの群から選択することができる。さらに好ましいアジュバントは、金属塩と他のアジュバントとの組み合わせである。アジュバントは、Toll様受容体アゴニスト、特にToll様受容体2、3、4、7、8、若しくは9のアゴニスト、又はサポニン、特にQS21であることが好ましい。アジュバントシステムは、上記リストの二以上のアジュバントを含むことがさらに好ましい。特に好ましいのは、サポニン(特にQS21)アジュバント及び/又はCpG含有免疫賦活性オリゴヌクレオチドのようなToll様受容体9アゴニストを含む組み合わせである。他の好ましい組み合わせは、サポニン(特にQS21)とモノホスホリルリピドA又はその3脱アシル化誘導体である3D-MPLのようなToll様受容体4アゴニスト、あるいはサポニン(特にQS21)とアルキルグルコサミニドホスフェートのようなToll様受容体4アゴニストからなる。
【0235】
特に好ましいアジュバントは、3D-MPLとQS21(欧州特許第0 671 948 B1号)、3D-MPLとQS21を含む水中油型エマルジョン(国際公開WO 95/17210号。同WO 98/56414号)、又は他の担体で製剤化された3D-MPL(欧州特許第0 689 454 B1号)の組み合わせである。他の好ましいアジュバントシステムは、米国特許第6558670号、同6544518号に記載されたような3D-MPL、QS21及びCpGオリゴヌクレオチドの組み合わせからなる。
【0236】
一実施形態で、アジュバントは、Toll様受容体(TLR)4リガンドであり、好ましくはリピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドA、より好ましくは3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)のようなアゴニストである。
【0237】
3D-MPLは、GlaxoSmithKline Biologicals North Americaから入手でき、主としてIFN-γ (Th1)型でCD4+ T細胞反応を促進する。本物質は、英国特許第2 220 211 A号で開示された方法に従って作製することができる。化学的には、3、4、5又は6アシル化鎖を有する3脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。本発明の組成物にでは、3D-MPLの微小粒子を使用することが好ましい。3D-MPLの微小粒子は、0.22μmフィルターを通してフィルター滅菌することができるような粒子サイズを有する。このような調製は、国際公開WO 94/21292号に記載されている。リピドAの合成誘導体が知られており、TLR4アゴニストと考えられている。本誘導体には、限定はしないが、以下の物質が挙げられる。
【0238】
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ‐デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコビラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-リン酸二水素グルコピラノシル),(国際公開WO 95/14026号)
OM 294 DP (3S, 9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(リン酸二水素)(国際公開WO99 /64301号及び同WO 00/0462号)
OM 197 MP-Ac DP (3S-,9R)-3-[(R)‐ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール1-リン酸二水素10-(6-アミノヘキサン酸)(国際公開WO 01/46127号)
【0239】
使用可能な他のTLR4リガンドには、国際公開WO9850399号、又は米国特許第6303347号(AGPsの製造工程も開示されている)中に開示されているようなアルキルグルコサミニドホスフェート(AGPs)、又は米国特許6764840号に開示されているようなAGPsの製薬上許容可能な塩がある。AGPsのいくつかはTLR4アゴニストであり、またいくつかはTLR4アンタゴニストである。双方共にアジュバントとして利用できると考えられる。
【0240】
本発明で使用するための他の好ましいアジュバントは、Quil A及びその誘導体である。Quil Aは、南米産樹木キラヤ・サポニナリア(Quilaja Saponaria Molina)から単離されるサポニン調製物であり、1974年にDalsgaardらによって初めてアジュバント活性を有することが報告された(“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)。アジュバント活性を保持し、Quil Aに関連する毒性のないQuil Aの精製断片(例えば、QS7やQS21(QA7及びQA21としても知られる))が、HPLCによって単離されている(欧州特許第0 362 278号)。QS-21は、Quilaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する天然サポニンであり、CD8+細胞傷害性T細胞、Th1細胞、及び主要IgG2a抗体反応を誘導する。本発明に照らすとQS-21は好ましいサポニンである。
【0241】
特に好ましいQS21の詳細な化学式は、国際公開WO96/33739号に記載されており、さらにこれらの化学式は、ステロールを含む。本発明の一部を形成するサポニンは、ミセル、混合ミセル(胆汁酸塩を用いたものが好ましいが、それに限られない)の形態で分離することができる。又はISCOMマトリックス(欧州特許第0 109 942 B1号)、リポソーム、又はワーム(虫)様多量体若しくは環状多量体のような結合コロイド構造、又はコレステロール及び脂質で製剤化した場合には脂質/層状構造及びラメラの形態であってもよく、並びに水中油型エマルジョンの形態(例えば、国際公開WO 95/17210号に記載のようなもの)であってもよい。サポニンは、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムのような金属塩と結合していることが好ましい(国際公開WO 98/15287号)。サポニンは、リポソーム、ISCOM又は水中油型エマルジョンの形態で存在することが好ましい。
【0242】
増強システムは、モノホスホリルリピドA(又は、解毒したリピドA)とサポニン誘導体の組み合わせ、特に国際公開WO 94/00153号に記載されているようなQS21と3D-MPL、又は国際公開WO 96/33739号に開示されているようなQS21がコレステロールで不活化された、不活反応原性組成物の組み合わせに関与する。水中油型エマルジョン中のQS21及び/又は3D-MPLを用いる、又は用いないトコフェロールを伴うとりわけ強力なアジュバント製剤は、国際公開WO 95/17210号に記載されている。一実施形態で、免疫原性組成物は、さらに、サポニン(QS21であってもよい)を含む。
【0243】
免疫賦活化オリゴヌクレオチド、又は他のあらゆるToll様受容体(TRL)9アゴニストも使用することができる。本発明のアジュバント又はワクチンで使用する上で好ましいオリゴヌクレオチドは、CpG含有オリゴヌクレオチドである。少なくとも3個、より好ましくは少なくとも6個以上のヌクレオチドで分離された二以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含有していることが好ましい。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドにグアニンヌクレオチドが続く。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、通常、デオキシヌクレオチドである。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチド中の介在ヌクレオチド(internucleotide)は、ホスホロジチオエート、より好ましくはホスホロチオエート結合である。もちろん、ホスホジエステル結合及び他の介在ヌクレオチド結合も本発明の範囲内にある。混合介在ヌクレオチド連結を有するオリゴヌクレオチドもまた、本発明の範囲に含まれる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製造方法は、米国特許第5,666,153号、同5,278,302号、及び 国際公開WO95/26204号に記載されている。
【0244】
好ましいオリゴヌクレオチドの例は、以下の配列を有している。本配列は、好ましくはホスホロチオエート修飾した介在ヌクレオチド連結を包含する。
【0245】
オリゴ1(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
オリゴ2(配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
オリゴ3(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4(配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
オリゴ5(配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
オリゴ6(配列番号6): TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456)
【0246】
他のCpGオリゴヌクレオチドは、上記の好ましい配列中に重要度の低い欠失又は付加を含むことができる。
【0247】
本発明で利用されるCpGオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知のあらゆる方法(例えば、欧州特許第468520号参照)で合成することができる。好都合なことに、このようなオリゴヌクレオチドは、自動合成機を利用して合成することができる。
【0248】
アジュバントは、水中油型エマルジョンであってもよく、又は水中油型エマルジョンを他のアジュバントとの組み合わせで含んでいてもよい。エマルジョンシステムの油相は、代謝可能な油からできていることが好ましい。代謝可能な油の意味は、当該分野では周知である。代謝可能とは、「代謝によって変換することができる」と定義することができる(Dorland’s Illustrated Medical Dictionary, W.B. Sanders Company, 25th edition (1974))。前記油は、任意の植物油、魚油、動物油、又は合成油であって、受容者に有毒でなく、かつ代謝によって転換可能であればよい。木の実(堅果)、種子、及び穀類は、一般的な植物油源である。合成油も本発明の一部であり、NEOBEE(登録商標)他、市販の油も含むことができる。スクアレン(2,6,10,15,19,23‐ヘキサメチル‐2,6,10,14,18,22‐テトラコサヘキサエン)は、不飽和油であり、サメ肝油中に多量に、及びオリーブ油、小麦胚種油、米ぬか油、及び酵母中に少量見出され、本発明での使用に特に好ましい油である。スクアレンは、コレステロールの生合成中間体であるという事実から代謝可能な油である(Merck index, 10th Edition, entry no.8619)。
【0249】
トコール(例えば、ビタミンE)も、オイルエマルジョンアジュバントによく使用される(欧州特許第0 382 271 B1号;米国特許第5667784号、国際公開WO 95/17210号)。本発明のオイルエマルジョン(好ましくは水中油型エマルジョン)で使用されるトコールは、欧州特許第0 382 271 B1に記載のように製剤化することができる。このトコールは、任意で乳化剤を含む、トコール小滴(好ましくは直径1ミクロン未満)の分散体であってもよい。あるいは、トコールを他の油との組み合わせて使用し、オイルエマルジョンの油相を形成することができる。トコールと組み合わせて使用することのできるオイルエマルジョンの例は、上記の代謝可能な油のように本明細書中に記載されている。
【0250】
水中油型エマルジョンアジュバントは、それ自体がアジュバント組成物として有用であることが示唆されており(欧州特許第0 399 843B号)、また水中油型と他の活性剤との組み合わせもワクチン用アジュバントとして記載されている(国際公開WO 95/17210号、同WO 98/56414号、同WO 99/12565号、同WO 99/11241号)。油注水型エマルジョン(米国特許第5,422,109号、欧州特許第0 480 982 B2号)、及び水中水型エマルジョン(米国特許第5,424,067号、欧州特許第0 480 981 B号)のような他のオイルエマルジョンアジュバントが記載されている。それらの全ては、好ましいオイルエマルジョンシステム(特に、トコールを組み込んだ場合)を形成し、本発明のアジュバント及び組成物を形成する。
【0251】
最も好ましいオイルエマルジョン(例えば、水中油型エマルジョン)は、さらにTween 80のような乳化剤及び/又はコレステロールのようなステロールを含む。好ましいオイルエマルジョン(好ましくは、水中油型エマルジョン)は、スクアラン、スクアレン、又はアルファトコフェロールのようなトコフェロール(及び、好ましくはスクアレンとアルファトコフェロールの両方)といった代謝可能な無毒油と任意でTween 80のような乳化剤を含む。ステロール(好ましくは、コレステロール)を含んでいてもよい。水中油型エマルジョンの製造方法は、当業者には周知である。一般に、本方法は、トコール含有油相をPBS/TWEEN80TMのような界面活性剤と混合するステップ、続いてホモジナイザーを用いて均質化するステップ(注射針を介して混合物を2回通すことを含む方法が少量の液体を均質化するのに適していることは、当業者には明確であろう)含む。同様に、微量流動化装置(microfluidiser:M110S Microfluidics machine、最大通過回数50回、6barの最大圧力導入で2分間(約850barの流出圧力))が当業者によって適合されており、少量または多量のエマルジョンを製造することができる。本適合は、調製物が必要な直径の油滴となるまで結果として得られるエマルジョンの測定を含むルーチン実験として達成することができる。水中油型エマルジョンにおいて、油と乳化剤は、水性担体中に存在する必要がある。水性担体は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であってもよい。
【0252】
安定した水中油型エマルジョン内で見られる油滴のサイズは、好ましくは1ミクロン未満であり、光子相関分光法で測定したときに実質的に直径30〜600nm、好ましくは、30〜500nm、最も好ましくは直径150〜500 nm、特に直径約150nmの範囲であればよい。この点において、数量で80%の油滴が好ましい範囲内にあるべきであり、より好ましくは数量で90%以上、最も好ましくは95%以上の油滴が、定義された大きさの範囲内にある。本発明のオイルエマルジョンに存在する成分の量は、通常、0.5〜20%から2〜10%(総用量に対して)の範囲内にある油(例えば、スクアレン等)、及び、存在する場合には、2〜10%の範囲内にあるアルファトコフェロール、及び0.3〜3%の範囲内にある界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)である。油(好ましくは、スクアレン):トコール(好ましくは、α-トコフェロール)の比は、等しいか、1未満であることが好ましい。この比がより安定なエマルジョンを提供するからである。Tweem 80又はSpan 85のような乳化剤も約1%のレベルで存在し得る。いくつかのケースで、本発明のワクチンがさらに安定剤を含むことが有利である場合がある。
【0253】
好ましいエマルジョンシステムの例は、国際公開WO 95/17210号、同WO 99/11241号、及び同WO 99/12565号に記載されている。そこには、スクアレン、α-トコフェロール、及びTween 80に基づいた(任意でQS21及び/又は3D-MPLで製剤化された)エマルジョンアジュバントが開示されている。したがって、本発明の特に好ましい実施形態において、本発明のアジュバントは、さらにその上、LPS若しくはその誘導体、及び/又はサポニンのような免疫刺激剤を含んでいてもよい。さらなる免疫刺激剤の例は、本明細書中、及び「Vaccine Design - The Subunit and Adjuvant Approach” 1995, Pharmaceutical Biotechnology, Volume 6, Eds. Powell, M.F., and Newman, M.J., Plenum Press, New York and London、国際標準図書番号(ISBN)0-306-44867-X」に記載されている。
【0254】
好ましい態様において、本発明に記載のアジュバント及び免疫原性組成物は、サポニン(好ましくはQS21)及び/又はLPS誘導体(好ましくは3D-MPL)を上記オイルエマルジョン中に含み、また任意でステロール(好ましくはコレステロール)を有する。さらに、オイルエマルジョン(好ましくは水中油型)は、Span 85及び/又はレシチン及び/又はトリカプリリンを含むことができる。水中油型エマルジョン、ステロール、及びサポニンを含むアジュバントは、国際公開WO 99/12565号に記載されている。
【0255】
ヒトへの投与については、通常、免疫原性組成物のヒト投与量中に、サポニン(好ましくはQS21)及び/又はLPS誘導体(好ましくは3D-MPL)が、一服用あたり1μg〜200μg、例えば、10〜100μg、好ましくは10μg〜50μg存在し得る。オイルエマルジョン(好ましくは水中油型エマルジョン)は、通常、2〜10%の代謝可能な油から成る。好ましくはそれは、2〜10%のスクアレンから、2〜10%のアルファトコフェロールから、及び0.3〜3%(好ましくは0.4〜2%)の乳化剤(好ましくはTween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート))から成る。スクアレン及びアルファトコフェロールの両方を含む場合、スクアレン:アルファトコフェロールの比が1以下であることが好ましい。この比率がより安定したエマルジョンを提供するからである。Span 85(ソルビタン トリオレアート)も0.5〜1%のレベルで本発明で使用されるエマルジョン中に存在することができる。いくつかのケースで、本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、さらに、カプリル酸(merck index 10th Edition, entry no. 1739)を包含する安定化剤(例えば、他の乳化剤/界面活性剤)を含むことが都合よい。中でもトリカプリリンは特に好ましいカプリル酸である。
【0256】
スクアレン及びサポニン(好ましくは、QS21)が含まれる場合、製剤にステロール(好ましくはコレステロール)を含むことも有効である。エマルジョン中の油の総レベルを減らせるからである。これは、製造費用の低減、ワクチン接種の全般的な快適性の改善、及び例えば改善されたINF-γ産生のような結果として生じる免疫応答の質及び量の改善をもたらす。したがって、本発明のアジュバントシステムは、通常、代謝可能な油:サポニンを質量/質量(w/w)比で200:1〜300:1の範囲内で包含する。また、本発明は、1:1〜200:1、好ましくは20:1〜100:1、より好ましくは実質的に48:1の範囲の「低濃度油」型で使用することもできる。本ワクチンは、反応原性プロファイルの多くが減少する中で、成分中の全ての有益なアジュバントの特性を保持している。したがって、特に好ましい実施形態は、スクアレン:QS21のw/w比が1:1〜250:1の範囲内にあることである。望ましい範囲は、20:1〜200:1、好ましくは20:1〜100:1、より好ましくは、実質的に48:1である。ステロール(最も好ましくはコレステロール)も本明細書で説明したようにサポニン:ステロールの比率で包含されることが好ましい。
【0257】
本発明のエマルジョンシステムは、好ましくはサブミクロンサイズの小さな油滴を有することが好ましい。最も好ましくは、油滴サイズが直径120〜750nm、最も好ましくは120〜600nmの範囲内にあることである。
【0258】
好ましい強力なアジュバント製剤(本発明の免疫原性組成物においてAlPO4との究極的な組み合わせに関して)は、国際公開WO 95/17210号、又は同WO 99/12565号(特に、実施例2及び表1におけるアジュバント製剤11)に記載されたような、サポニン(好ましくはQS21)、LPS誘導体(好ましくは3D-MPL)及びオイルエマルジョン(好ましくは水中油型エマルジョンのスクアレン及びアルファトコフェロール)を包含する。
【0259】
TLR2アゴニストの例として、ペプチドグリカン又はリポプロテインがある。イミキモド及びレジキモドのようなイミダゾキノリンは、公知のTLR7アゴニストである。一本鎖RNAも、公知のTLRアゴニスト(ヒトのTLR8、及びマウスのTLR7)である。一方、二本鎖RNA及びポリIC(ポリイノシンポリシチジン酸:市販のウイルスRNAの合成類似体)は、典型的なTLR3アゴニストである。3D-MPLは、TLR4アゴニストの一例であるが、CpGはTLR9アゴニストの一例である。
【0260】
免疫原性組成物は、金属塩上に吸着された抗原及び免疫賦活剤を含むことができる。抗原及び免疫賦活剤3-デ-O-アシル化モノホスホリピドA(3D‐MPL)が同一粒子状に吸着されたアルミニウムをベースとするワクチン製剤が、欧州特許第0 576 478 B1号、同第0 689 454 B1号、及び同第0 633 784 B1号に記載されている。
【0261】
これらの場合においては、まず抗原がアルミニウム塩上に吸着され、続いて免疫賦活剤3D‐MPLが同じアルミニウム塩粒子上に吸着される。前記方法は、先ず、3D-MPLをウォーターバス内で超音波処理によって粒子サイズが80〜500nmに達するまで懸濁する必要がある。抗原は、通常、撹拌の下で、室温にて1時間でアルミニウム塩上に吸着される。それから3D-MPL懸濁液を吸着した抗原に加え、製剤を室温で1時間インキュベートする。その後、使用するまで4℃で保存する。
【0262】
他の方法において、免疫賦活剤及び抗原は、欧州特許第1126876号に記載のように、別々の金属粒子上に存在する。本改善された方法は、免疫賦活剤を金属塩粒子上へ吸着させた後、抗原を他の金属塩粒子上へ吸着させ、続いて個々の金属粒子を混合して、ワクチンを形成する。本発明で使用するためのアジュバントは、金属塩粒子(他の抗原を実質的に持たないことを特徴とする)上に吸着された免疫賦活剤を含むアジュバント組成物であってもよい。さらに、本発明によりワクチンが提供される。本ワクチンは、免疫賦活剤が実質的に他の抗原を含まない金属塩粒子上に吸着されていること、及び抗原に吸着される金属塩粒子が他の免疫賦活剤を実質的に含まないことを特徴とする。
【0263】
したがって、本発明は、金属塩の粒子上に吸着され、組成物中に他の抗原を実質的に含まないことを特徴とする免疫賦活剤を含むアジュバント製剤を提供する。さらに、本アジュバント製剤は、もし前記アジュバントを使用するのであれば、ワクチンの製造に必要な中間体であってもよい。したがって、抗原を有する金属粒子上に吸着された一以上の免疫賦活剤であるアジュバント組成物を混ぜることを含むワクチンの製造方法を提供する。抗原は、金属塩上に予め吸着されていることが好ましい。前記金属塩は、免疫賦活剤上に吸着される金属塩と同一又は類似のものであってもよい。金属塩は、アルミニウム塩(例えば、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)であることが好ましい。
【0264】
本発明は、さらに、金属塩の第一粒子上に吸着された免疫賦活剤、及び金属塩上に吸着された抗原を含み、金属塩の第一及び第二粒子が別個の粒子であることを特徴とするワクチン組成物を提供する。
【0265】
本明細書に記載のLPS若しくはLOS誘導体又は変異体、あるいはリピドA誘導体は、天然のリポ多糖よりも毒性が低くなるように設計されており(例えば、3D-MPL)、本明細書に記載のそれらの一部の任意の使用に関して互いに置換可能な同等物である。
【0266】
一実施形態において、本発明の組成物に使用されるアジュバントは、リポソーム担体(リン脂質(例えば、ジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)、及び任意でステロール(例えば、コレステロール))から公知技術によって作製されたもの)を含む。このようなリポソーム担体は、リピドA誘導体(例えば、3D-MPL;上記参照)及び/又はサポニン(例えば、QS2;上記参照)を運搬することができる。一実施形態において、アジュバントは、(0.5ml用量あたり)0.1〜10mg、0.2〜7、0.3〜5、0.4〜2、又は0.5〜1mg(例えば、0.4〜0.6、0.9〜1.1、0.5、又は1mg)のリン脂質(例えば、DOPC)、0.025〜2.5、0.05〜1.5、0.075〜0.75、0.1〜0.3、、又は0.125〜0.25mg(例えば、0.2〜0.3、0.1〜0.15、0.25、又は0.125mg)のステロール(例えば、コレステロール)、5〜60、10〜50、又は20〜30μg(例えば、5〜15、40〜50、10、20、30、40、又は50μg)のリピドA誘導体(例えば、3D-MPL)、及び5〜60、10〜50、又は20〜30μg(例えば、5〜15、40〜50、10、20、30、40、又は50μg)のサポニン(例えば、QS21)を含む。
【0267】
一実施形態において、本発明の組成物に使用されるアジュバントは、代謝可能な油(例えば、スクアレン)、乳化剤(例えば、Tween 80)及び任意でトコール(例えば、アルファトコフェロール)から作られた水中油型エマルジョンを含む。一実施形態で、前記アジュバントは、(0.5ml用量あたり)0.5〜15、1〜13、2〜11、4〜8、又は5〜6mg(例えば、2〜3、5〜6、又は10〜11mg)の代謝可能な油(例えば、squalene)、0.1〜10、0.3〜8、0.6〜6、0.9〜5、1〜4、又は2〜3mg(例えば、0.9〜1.1、2〜3、又は4〜5mg)の乳化剤(例えば、Tween 80)、及び任意で0.5〜20、1〜15、2〜12、4〜10、5〜7mg(例えば、11〜13、5〜6、又は2〜3mg)のトコール(例えば、アルファトコフェロール)を含む。
【0268】
本アジュバントは、任意でさらに5〜60、10〜50、又は20〜30μg(例えば、5〜15、40〜50、10、20、30、40、又は50μg)のリピドA誘導体(例えば、3D-MPL)を含むことができる。
【0269】
本アジュバントは、任意で0.025〜2.5、0.05〜1.5、0.075〜0.75、0.1〜0.3、又は0.125〜0.25mg(例えば、0.2〜0.3、0.1〜0.15、0.25、又は0.125mg)のステロール(例えば、コレステロール)、5〜60、10〜50、or 20〜30μg(例えば、5〜15、40〜50、10、20、30、40、又は5μg)のリピドA誘導体(例えば、3D-MPL)、及び5〜60、10〜50、又は20〜30μg(例えば、5〜15、40〜50、10、20、30、40、又は50μg)のサポニン(例えば、QS21)を包含することができる。
【0270】
一実施形態で、本発明の組成物に使用されるアジュバントは、リン酸アルミニウム及びリピドA誘導体(例えば、3D-MPL)を含む。本アジュバントは、(0.5ml用量あたり)100〜750、200〜500、又は300〜400μgのAlをリン酸アルミニウムとして、及び5〜60、10〜50、又は20〜30μg(例えば、5〜15、40〜50、10、20、30、40、又は50μg)のリピドA誘導体(例えば、3D-MPL)を含むことができる。
【0271】
本発明のワクチン調製物を用いて、前記ワクチンを全身経路又は粘膜経路を介して投与することによって、感染の影響を受けやすい哺乳動物を保護又は治療することができる。これらの投与は、筋肉内、腹腔内、皮内若しくは皮下の経路を介した注射、又は口腔/消化器、呼吸器、泌尿生殖器への粘膜投与を包含し得る。肺炎又は中耳炎の治療にはワクチンの鼻腔内投与が好ましい(鼻咽頭に保菌された肺炎双球菌をより効果的に予防し、それ故、最早期における感染を軽減するすることができるからである)。本発明のワクチンは、単回投与で投与することができるが、その成分は、同じ時間に、又は異なる時間に同時に投与することもできる(例えば、肺炎双球菌の多糖体を、別々に、同時に、又はお互いに対して免疫応答の至適調整のためにワクチンの任意の細菌タンパク質成分の投与後1〜2週間後に投与することができる)。同時投与については、任意のTh1アジュバントが種々の投与のいくつかに又は全てに存在していてもよい。例えば、ワクチンの細菌タンパク質成分と組み合わて存在し得る。単一経路の投与に加えて、2つの異なる経路の投与を使用することができる。例えば、多糖体をIM(又はID)投与することができ、かつ細菌タンパク質をIN(又はID)投与することができる。さらに、本発明のワクチンをIMでプライミング投与し、INでブースター投与することができる。
【0272】
各ワクチン投与におけるコンジュゲート抗原の量は、通常のワクチンで顕著かつ有害な副作用のない免疫防御反応を誘導する量として選択される。このような量は、どの特定免疫原が使用されたか、及びそれがどのように提示されるかによって変化するであろう。一般に、各投与には0.1〜100μgの多糖体が、多糖複合体用には通常0.1〜50μg、0.1〜10μg、1〜10μg、又は1〜5μgが含まれると予想される。
【0273】
ワクチン中のタンパク質抗原の量は、通常1〜100μg、5〜50μg、又は5〜25μgの範囲内にある。初回のワクチン接種に続いて、被験体は、十分な間隔を空けて1回又は数回のブースター免疫付与を受けてもよい。
【0274】
ワクチン調製物は、一般にVaccine Design(“The subunit and adjuvant approach” (eds Powell M.F. & Newman M.J.) (1995) Plenum Press New York)に記載されている。リポソーム内へのカプセル化については、Fullertonにより米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0275】
本発明のワクチンは、溶液で又は凍結乾燥した状態で保存することができる。任意で、溶液をスクロース、トレハロース又はラクトースのような糖の存在下で凍結乾燥することができる。通常、それらは凍結乾燥されており、使用前に即座にもどされる。凍結乾燥は、より安定した組成物(ワクチン)をもたらすことができる。
【0276】
方法
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物及びワクチンを製造する方法を包含する。
【0277】
一実施形態で、本発明の方法は、抗原を混合して本発明の免疫原性組成物を製造するステップ、及び製薬上許容可能な賦形剤を添加するステップを含むワクチンを製造する方法である。
【0278】
治療方法
本発明はまた、ブドウ球菌感染、特に院内感染の治療方法を包含する。
【0279】
本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、待機的手術の場合の使用に特に都合が良い。そのような患者は、予め手術日を知っているであろうから、前もって接種することができる。患者がS. aureus又はS. epidermidis感染に曝露されるかどうかはわからないので、上記のように両者に対して防御する本発明のワクチンを接種するのが好ましい。通常、待機的手術を待つ17歳以上の大人が、本発明の免疫原性組成物及びワクチンで処理される。あるいは、待機的手術を待つ3〜16歳の子供が本発明の免疫原性組成物又はワクチンで処理される。
【0280】
医療従事者に本発明のワクチンを接種することもできる。
【0281】
本発明のワクチン調製物を使用して、全身経路又は粘膜経路を介して前記ワクチンを投与することによって感染の影響を受け易い哺乳動物を保護又は治療することができる。これらの投与は、筋肉内、腹腔内、皮内、若しくは皮下の経路を介した注射、又は口腔/消化器、呼吸器、泌尿生殖器への粘膜投与を包含し得る。
【0282】
各ワクチン投与の量は、通常のワクチンにおいて顕著かつ有害な副作用のない免疫防御反応を誘導する量として選択される。このような量は、どの特定免疫原が使用されたか、及びそれがどのように提示されるかによって変化するであろう。ワクチンのタンパク質の量は、一般に1〜100μg、5〜50μgの範囲内、通常は10〜25μgの範囲内であろう。特定のワクチンの最適量は、被験体における適当な免疫応答の観察を伴う標準的な研究によって確認することができる。初回のワクチン接種に続いて、被験体は、十分な間隔を空けて1回又は数回のブースター免疫付与を受けてもよい。
【0283】
本発明のワクチンは、あらゆる経路で投与することができるが、本発明を構成する一実施形態として前記ワクチンの皮膚内(ID)投与がある。人の皮膚は、角質層とよばれる、表皮を覆う外皮角質を含む。この表皮に下は、真皮と呼ばれ、同様に皮下組織を覆っている層がある。研究者らにより、皮膚内への、特に真皮におけるワクチンの導入は、免疫応答を刺激することが明らかとなった。これはまた、多数の付加的な優位性とも関連し得る。本明細書で説明したワクチンによる皮内ワクチン接種は、本発明の任意の性質を形成する。
【0284】
皮内注射の従来技術「マントウ法」は、皮膚を洗浄するステップ、その後、片手を伸ばすステップを含み、そして、狭ゲージの針(26〜31番ゲージ)のベベルを上方に向けて、針を10〜15度の角度で挿入する。一旦、針のベベルを挿入したら、針のバレルを低くして、僅かな圧力を与えながら、さらに挿入し、皮膚下でそれを持ち上げる。その後、液体を極めて緩やかに注入し、それによって皮膚表面上にブレブ又はバンプを形成させる。
【0285】
最近になって、皮膚内に又は皮膚を介して液剤を投与するために具体的に設計された装置が記載されている。例えば、装置は、国際公開WO 99/34850及び欧州特許第1092444号に記載されており、またジェット式注射器は、例えばalso国際公開WO 01/13977号、米国特許第5,480,381号、米国特許第5,599,302号、米国特許第5,334,144号、米国特許第5,993,412号、米国特許第5,649,912号、米国特許第5,569,189号、米国特許第5,704,911号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,893,397号、米国特許第5,466,220号、米国特許第5,339,163号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,503,627号、米国特許第5,064,413号、米国特許第5,520号、639号、米国特許第4,596,556号、米国特許第4,790,824号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,940,460号、国際公開WO 97/37705及び国際公開WO 97/13537に記載されている。ワクチン調製物の皮内投与における別の方法は、従来のシリンジと針、又は固体ワクチン(国際公開WO 99/27961号)の弾道送達用に設計された装置、又は経皮貼付(国際公開WO 97/48440号;同WO 98/28037号);あるいは皮膚表面への適用(皮内又は経皮送達;国際公開WO 98/20734号;同WO 98/28037号)を含むことができる。
【0286】
本発明のワクチンが皮膚、より具体的には真皮内に投与される場合、ワクチン量は、低量、具体的には約0.05ml〜0.2mlの容量である。
【0287】
本発明の皮膚又は皮下ワクチンにおける抗原の量は、筋肉内ワクチン(上記参照)で明らかにされたような従来の容量と同様にすることができる。しかしながら、製剤が「低用量」であってもよいというのが皮膚又は皮下ワクチンの特徴である。それ故、「低用量」ワクチンにおけるタンパク質抗原は、1回容量あたり任意で僅か0.1〜10μg、任意で0.1〜5μgで存在し、及び多糖体(任意でコンジュゲート化された)抗原は、1回容量あたり0.01〜1μgの範囲内、及び任意で0.01〜0.5μgの多糖体で存在することができる。
【0288】
本明細書で使用する場合、「皮内送達」は、皮膚中の真皮領域へのワクチンの送達を意味する。しかしながら、ワクチンは、必ずしも真皮中にだけ留まるわけではない。真皮は、ヒトの皮膚では表面から約1.0〜約2.0mmの間に位置する皮膚内の層である。しかし、個体間で、及び体の異なる部分においてある程度の幅がある。一般には、皮膚表面下1.5mmに達することによって真皮に届いたと予想することができる。真皮は、角質層及び表面表皮と、その下の皮下層の間に位置する。送達様式に応じて、ワクチンは最終的にもっぱら若しくは主として真皮内に留まることができ、又は最終的に表皮と真皮の中に分散することもできる。
【0289】
本発明の一実施形態は、ブドウ球菌感染又は疾患を予防又は治療する方法であって、本発明の免疫原性組成物又はワクチンをそれを必要とする患者に投与するステップを含んでいる。
【0290】
本発明のさらなる実施形態は、ブドウ球菌感染又は疾患、任意で術後ブドウ球菌感染の治療又は予防用ワクチンの製造における本発明の免疫原性組成物の使用である。
【0291】
「ブドウ球菌感染」は、S. aureus及び/又はS. epidermidis並びに哺乳動物、任意でヒト宿主において感染を引き起こし得る他のブドウ球菌株を原因とする感染を包含する。
【0292】
本明細書において「含んでいる」、及び「含む」という用語は、あらゆる場合において、任意でそれぞれ「から成っている」及び「から成る」と代替可能であることが本発明者により意図されている。
【0293】
本特許明細書の中で引用された全ての参考文献又は特許出願は、参照により本明細書に援用される。
【0294】
本発明がより一層理解できるように、以下に実施例を記載する。これらの実施例は、説明のみを目的とするものであって、いかなる方法においても本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。
【実施例】
【0295】
<実施例1>組換えタンパク質を発現するためのプラスミドの構築
A.クローニング
タンパク質がN末端又はC末端に(His)6アフィニティークロマトグラフィータグを含んだ融合タンパク質として発現できるようにブドウ球菌遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド内に遺伝子操作で導入された適当な制限部位によって、大腸菌発現プラスミドpET24d又はpQE-30の中にPCR産物を直接クローニングすることが可能となった。
【0296】
使用したプライマーは、以下の通りである。
【0297】
アルファトキシン:5’-CGCGGATCCGCAGATTCTGATATTAATATTAAAAC-3’、及び5’-CCCAAGCTTTTAATTTGTCATTTCTTCTTTTTC-3’
EbpS:5’-CGCGGATCCGCTGGGTCTAATAATTTTAAAGATG-3’、及び5’-CCCAAGCTTTTATGGAATAACGATTTGTTG-3’
ClfA:5’-CGCGGATCCAGTGAAAATAGTGTTACGCAATC-3’、及び 5’-CCCAAGCTTTTACTCTGGAATTGGTTCAATTTC-3’
FnbpA:5’-CGCGGATCCACACAAACAACTGCAACTAACG-3’、及び5’-CCCAAGCTTTTATGCTTTGTGATTCTTTTTCAAAC3’
Sbi:5’-CGCGGATCCAACACGCAACAAACTTC-3’、及び5’-GGAACTGCAGTTATTTCCAGAATGATAATAAATTAC-3’
SdrC:5’-CGCGGATCCGCAGAACATACGAATGGAG-3’、及び5’CCCAAGCTTTTATGTTTCTTCTTCGTAGTAGC-3’
SdrG:5’-CGCGGATCCGAGGAGAATTCAGTACAAG-3’、及び5’-CCCAAGCTTTTATTCGTCATCATAGTATCCG-3’
Ebh:5’-AAAAGTACTCACCACCACCACCACC-3’、及び5’-AAAAGTACTCACTTGATTCATCGCTTCAG-3’
Aaa:5’-GCGCGCCATGGCACAAGCTTCTACACAACATAC-3’、及び5’-GCGCGCTCGAGATGGATGAATGCATAGCTAGA-3’
IsaA:5’-GCATCCATGGCACCATCACCATCACCACGAAGTAAACGTTGATCAAGC-3’、及び5’-AGCACTCGAGTTAGAATCCCCAAGCACCTAAACC-3’
HarA:5’-GCACCCATGGCAGAAAATACAAATACTTC-3’、及び5’-TTTTCTCGAGCATTTTAGATTGACTAAGTTG-3’
オートリシングルコサミニダーゼ:5’-CAAGTCCCATGGCTGAGACGACACAAGATCAAC-3’、及び5’-CAGTCTCGAGTTTTACAGCTGTTTTTGGTTG-3’
オートリシンアミダーゼ: 5’-AGCTCATATGGCTTATACTGTTACTAAACC-3’、及び5’-GCGCCTCGAGTTTATATTGTGGGATGTCG-3’
IsdA:5’-CAAGTCCCATGGCAACAGAAGCTACGAACGCAAC-3’、及び5’-ACCAGTCTCGAGTAATTCTTTAGCTTTAGAGCTTG-3’
IsdB:5’-TATTCTCGAGGCTTTGAGTGTGTCCATCATTTG-3’、及び5’-GAAGCCATGGCAGCAGCTGAAGAAACAGGTGG-3’
MRPII:5’-GATTACACCATGGTTAAACCTCAAGCGAAA-3’、及び5’-AGGTGTCTCGAGTGCGATTGTAGCTTCATT-3’
【0298】
まず、PCR産物をTop10細菌細胞を用いて使用説明書に従いpGEM-Tクローニングベクター(Novagen社)の中に導入した。この中間構築物は、発現ベクター内へのクローニングをより容易にするために作製した。DNA挿入物を含む形質転換体を制限酵素解析によって選択した。切断後、〜20μlの反応液アリコート(分割量)をアガロースゲル電気泳動によって(Tris-酢酸-EDTA (TAE)バッファ内で0.8%アガロースを用いて)解析した。DNA断片をゲル電気泳動及びエチジウムブロマイド染色の後、UV照射により視認した。DNAの分子サイズ標準マーカー(1Kbラダー, Life Technologies社)を被検サンプルと同時並行で電気泳動し、それを用いてDNA断片のサイズを評価した。各クローンの選択された形質転換体から精製されたプラスミドを、続いて適当な制限酵素を用いて、メーカー(Life Technologies社)推奨の方法に従って完全に切断した。その後、切断したDNA断片をシリカゲルベースのスピンカラムを用いて精製した後、pET24d又はpQE-30プラスミドにライゲーションした。Ebh(H2断片)、AaA、IsdA、IsdB、HarA、Atl-アミダーゼ、Atl-グルコサミド、MRPII、IsaAのクローニングをpET24dプラスミドを用いて行い、ClfA、SdrC、SdrE、FnbpA、SdrG/Fbe、アルファトキシン及びSbiのクローニングをpQE-30プラスミドを用いて行った。
【0299】
B.発現ベクターの生成
ライゲーション用の発現プラスミドpET24d又はpQE-30を調製するため、同様に適当な制限酵素で完全に切断した。調製したベクターに対してモル濃度で約5倍過剰の切断断片を用いてライゲーション反応を行った。標準的な〜20μlのライゲーション反応(〜16℃、〜16時間)を、当該分野で周知の方法によりT4 DNAリガーゼ(〜2.0 ユニット/反応、Life Technologies社)を用いて行った。ライゲーション液のアリコート(〜5μl)を用いて、M15(pREP4)又はBT21::DE3エレクトロコンピテント細胞を当該分野で周知の方法により形質転換した。〜1.0mlのLB培地で37度にて2、3時間培養した後、形質転換処理した細胞をアンピシリン(100μg/ml)及び/又はカナマイシン(30μg/ml)を含むLBアガープレートに塗布した。抗生物質は、選択に包含される。プレートを37℃で一晩(〜16時間)インキュベートした。ApR/KanRの単一コロニーを滅菌した爪楊枝で拾い、新たに調製したLB ApR/KanRプレートに「パッチ」植菌し、同時に〜1.0mlのLB Ap/Kan培地に植菌するのに使用した。パッチプレート及び培養液の双方を標準インキュベータ(プレート)又は振とう式ウォーターバスのいずれかで37℃で一晩インキュベートした。全細胞ベースのPCR解析を用いて、DNA挿入物を含む形質転換体を確認した。ここで、〜1.0mlの一晩培養したLB Ap/Kan培養液を1.5mlのポリプロピレンチューブに移し、細胞体をBeckmann社の微量遠心機で遠心(室温にて〜3分、〜12,000×g)して回収した。細胞ペレットを〜200μlの滅菌水に懸濁し、〜10μlのアリコートを用いて、フォワード/リバース増幅プライマーの両方を含む最終容量〜50μlのPCR反応液を調製した。最初に95℃の変性ステップを〜3分間行い、細菌細胞体の熱破砕及びプラスミドDNAの遊離を確実に行った。ABI社 モデル9700サーマルサイクラーにより32サイクル、3ステップの熱増幅プロファイル(すなわち、95℃−45秒;55〜58℃−45秒;72℃−1分)を用いて、溶解した形質転換体のサンプルからBASB203断片を増幅した。熱増幅後、〜20μlの反応液アリコートをアガロースゲル電気泳動で解析した(Tris-酢酸-EDTA (TAE)バッファ内で0.8%アガロースを用いて)。DNA断片をゲル電気泳動及びエチジウムブロマイド染色の後、UV照射により視認した。DNAの分子サイズ標準マーカー(1Kbラダー, Life Technologies社)を被検サンプルと同時並行で電気泳動し、それを用いてPCR産物のサイズを評価した。予想サイズのPCR産物を生成した形質転換体をタンパク質発現構築物を含む株として同定した。発現プラスミド含有株を、その後組換えタンパク質の発現誘導性について解析した。
【0300】
C.PCR陽性形質転換体の発現解析
一晩培養した前培養液のアリコート(〜1.0ml)を〜25mlのLB Ap/Kan培地を入れた125mlのエルレンマイヤー(三角)フラスコに植菌し、37℃で振とう(〜250rpm)しながら、培養液の濁度がO.D.600で〜0.5、すなわち対数増殖期(通常約1.5〜2.0時間)に達するまで培養した。このとき、約半分の培養液(〜1.25ml)を第二の125mlフラスコに移し、組換えタンパク質の発現をIPTG(滅菌水で調製した1.0Mストック、Sigma社)を1.0mMの終濃度で添加することにより誘導した。IPTG誘導及び非誘導の両培地をさらに〜4時間、37℃で振とうしながらインキュベーションし続けた。誘導及び非誘導両培地のサンプル(〜1.0ml)をインキュベーション後に取り出し、細胞を微量遠心機で室温にて〜3分間遠心することによって回収した。個々の細胞ペレットを〜50μlの滅菌水で懸濁し、2-メルカプトエタノールを含む等量の2×Laemelli SDS-PAGEサンプルバッファと混合した。煮沸ウォーターバスに〜3分間置き、タンパク質を変性させた。等量(〜15μl)のクルードなIPTG誘導型及び非誘導型の両細胞溶解物を2つの12% Tris/グリシンポリアクリルアミドゲル(1mm厚 Mini-gels, Novex社)上に積載(ロード)した。誘導及び非誘導溶解サンプルを予め染色した分子量マーカー(SeeBlue, Novex社)と共に従来条件下で標準的なSDS/Tris/グリシン ランニングバッファ(BioRad社)を用いて電気泳動した。電気泳動後、一方のゲルをクマシーブリリアントブルーR250(BioRad社)で染色し、その後脱色して新規のIPTG誘導タンパク質を視覚化した。第二のゲルには、PVDFメンブレン(孔サイズ0.45ミクロン、Novex社)上にBioRad社 Mini-Protean IIブロッティング装置とTowbin(トービン)メタノール(20%)転写バッファを用いて、4℃にて〜2時間でエレクトロブロッティングを行った。メンブレンのブロッキング及び抗体インキュベーションを当該分野で周知の方法に従って行った。抗RGS (His)3モノクローナル抗体、続いてHRP結合ウサギ抗マウス二次抗体(QiaGen社)を用いて、組換えタンパク質の発現及び同定を確認した。抗His抗体反応パターンの視覚化は、ABT不溶性基質を使用して又はAmersham社のECL化学発光システムを用いたHyperfilmを使用して行った。
【0301】
<実施例2>組換えタンパク質の製造
細菌株
大腸菌の組換え発現用株であり、プラスミド(pQE30)を含んだM15(pREP4)株、又はブドウ球菌タンパク質をコードするプラスミドpET24dを含んだBL21::DE3株を用いて、組換えタンパク質の精製用細胞集団を調製した。
【0302】
培地
組換えタンパク質の調製に用いた増殖培地は、100μg/mlのアンピシリン及び/又は30μg/mlカナマイシンを含む2×YT培地(Difco)からなる。消泡剤を培養槽の培地に0.25ml/L(Antifoam 204、Sigma社)で添加した。組換えタンパク質の発現を誘導するために、IPTG(イソプロピル β-D-チオガラクトピラノシド)を培養槽に加えた(終濃度;1mM)。
【0303】
組換えタンパク質の生成
非変性条件下
IPTGを終濃度1mMで加えて、培養液をさらに4時間培養した。その後、培養液を6,000 rpmで10分間遠心し、ペレットをプロテアーゼインヒビターカクテルを含むリン酸バッファ(50mM K2HPO4/KH2PO4:pH7)で懸濁した。このサンプルを1500バールの圧力でフレンチプレスにより(2回のランで)溶解した。15,000rpmで30分間の遠心の後、上清をさらなる精製のために回収し、NaClを0.5Mになるまで加えた。その後、サンプルを50mM K2HPO4/KH2PO4 (pH7)で調整したNi-NTA樹脂(XK 16カラム Pharmacia社、Ni-NTA樹脂 Qiagen社)上に積載した。サンプルを積載後、カラムをバッファA(0.2M NaH2PO4 (pH7)/0.3M NaCl/10%グリセロール)で洗浄した。結合したタンパク質を溶出するため段階勾配を用いた。本勾配では、バッファB(0.2M NaH2PO4 (pH7)/0.3M NaCl/10%グリセロール/200mMイミダゾール)が異なる割合でバッファAに加えられている。バッファBの割合は、10%から100%へと徐々に増加している。精製後、タンパク質を含む溶出分画をプールし、0.002M KH2PO4/K2HPO4 (pH7.0)/15M NaClで濃縮、及び透析した。
【0304】
この方法を利用して、ClfA、SdrG、IsdA、IsaB、HarA、Atl-グルコサミン及びアルファトキシンを精製した。
【0305】
変性条件下
IPTGを終濃度1mMで添加し、培養液をさらに4時間培養した。その後、培養液を6,000 rpmで10分間遠心し、ペレットをプロテアーゼインヒビターカクテルを含むリン酸バッファ(50mM K2HPO4/KH2PO4:pH7)で懸濁した。このサンプルを1500バールの圧力を用いてフレンチプレスにより(2回のランで)溶解した。15,000rpmで30分間遠心した後、ペレットを1Mの尿素を含むリン酸バッファで洗浄した。本サンプルを15,000rpmで30分間遠心し、ペレットを8M 尿素/0.1M NaH2PO4/0.5M NaCl/0.01M Tris-Hcl (pH8)に懸濁し、室温に一晩置いた。サンプルを15,000rpmで20分遠心して、上清をさらなる精製のために回収した。それからサンプルを8M尿素/0.1M NaH2PO4/0.5M NaCl/0.01M Tris-Hcl (pH8)で調整したNi-NTA樹脂(XK 16カラム Pharmacia社、Ni-NTA樹脂 Qiagen社)上に積載した。流過後、カラムをバッファA(8M尿素/0.1M NaH2PO4/0.5M NaCl/0.01M Tris (pH8.0))、バッファC (8M尿素/0.1M NaH2PO4/0.5M NaCl/0.01M Tris (pH 6.3))、バッファD (8M尿素/0.1M NaH2PO4/0.5M NaCl/0.01M Tris (pH 5.9))及びバッファE (8M尿素/0.1M NaH2PO4/0.5M NaCl/0.01M Tris (pH 4.5))で連続的に洗浄した。組換えタンパク質をバッファD及びEでの洗浄間にカラムから溶出した。変性組換えタンパク質は、尿素を欠く溶液に溶かすことができる。このため、8M 尿素に含まれる変性タンパク質を4M尿素/0.1MNa2PO4/0.01M Tris-HCl(pH7.1)、2M尿素/0.1M NaH2PO4/0.01M Tris-HCl (pH7.1)/0.5Mアルギニン、及び0.002M KH2PO4/K2HPO4(pH7.1) /0.15M NaCl/0.5Mアルギニンで連続的に透析した。
【0306】
本方法を用いて、Ebh(H2断片)、AaA、SdrC、FnbpA、Sbi、Atl-アミダーゼ及びIsaAを精製した。
【0307】
精製タンパク質をSDS-PAGEで解析した。非変性条件下で精製したタンパク質の一つ(アルファトキシン)及び変性条件下で精製したタンパク質の一つ(SdrC)の結果を図3及び4に示す。
【0308】
<実施例3>CDAPを用いたS. aureus莢膜多糖体コンジュゲートの調製
CDAPを用いた天然(非変性)PS8の活性化及びカップリングケミストリー
SA08-TT004
活性化及びカップリングを室温で連続的な攪拌下において行った。10mgの天然多糖体を0.2M NaClに溶解し、最終PS濃度で2.5mg/mlの溶液を得た。その溶液を活性化ステップ前にpH6.0+/−0.2に調製した。
【0309】
開始時(0時)に、50μlのCDAP溶液(新たに調製したアセトニトリル/WFI:50/50の100mg/ml溶液)をCDAP/PS比で約0.5/1になるよう手動で添加した。1.5分後に、pHを0.5M NaOHを加えてpH9.00+/−0.05に上げた。NaOH添加を約1分間行い、担体を添加するまでpHをpH9.00+/−0.05に安定させた。
【0310】
4.5分後に、1.5 mlのTT(0.2M NaClに溶解した10mg/ml溶液)を適当なタンパク質/PS比に達するまで添加した。pHを直ちにカップリングpH9.00+/−0.05に調整した。溶液を手動のpH調節下で1時間放置した。
【0311】
カップリングステップ後、0.5mlの2M グリシン(gly/PS比(w/w):7.5/1)を添加し、pHをただちに9.00+/−0.05に調整した。溶液を30分間手動のpH調節下に放置した。その後、コンジュゲートを5μmのMinisartフィルターを用いて透明化させ、Sephacryl S400HR (XK16/100)に注入した。150mM NaClを用いて流速は30ml/時に固定した。
【0312】
溶出分画をレゾルシノール、及びμBCAで解析した。目的の分画をプールし、0.22μmのSterivexで濾過した。
【0313】
得られたコンジュゲートは、レゾルシノール及びLowry(ローリー)解析による評価で1.05の最終TT/PS比率(w/w)を有していた。
【0314】
<実施例4>整粒化した多糖体におけるCDAPを用いたS. aureus莢膜多糖体コンジュゲートの調製
CDAPを用いた整粒化PS8の活性化及びカップリングケミストリー
PSは、理論上10%の含水率で加重されている。2μgの天然(非変性)の湿ったPSを初濃度10mg/mlでWFIに一晩溶解した。整粒化前に、天然PS溶液を5μmのカットオフフィルターで浄化した。
【0315】
ホモジナイズされた細胞をマイクロフルイディクスF20Y-0.75μm相互作用器で置換するEMULSIFLEX C-50ホモジナイザー装置を用いて、活性化ステップ前の多糖体の分子量及び粘度を減少させた。サイズリダクションは、最初の10サイクルを10000 psiで、次の60サイクルを15000 psiで行った。続いて、サイズリダクションの進行度は製造過程で粘度を測定することによって判断した。70サイクル後で目標物が2.74±0.2 cpに達したときに整粒化を停止した。
【0316】
活性化及びカップリングは、室温にて連続的な攪拌下において行った。50mgの整粒化した多糖体8を0.2M NaClで希釈して、終PS濃度5mg/mlの溶液を得た。
【0317】
開始時(0時)に、375μlのCDAP溶液(新たに調製したアセトニトリル/WFI:50/50の100mg/ml溶液)をCDAP/PS比で約0.75/1になるよう手動で添加した。1分後に、pHを0.5M NaOHを加えてpH9.00+/−0.05に上げた。
【0318】
2.5分後に、10mlのTT(0.2M NaClに溶解した10mg/ml溶液)を適当なタンパク質/PS比(2/1)に達するまで添加し、pHを直ちにカップリングpH9.00+/−0.05に調整した。溶液を手動のpH調節下で55分間放置した。
【0319】
カップリングステップ後、2.5mlの2M グリシン(gly/PS比(w/w):7.5/1)を添加し、pHを調整器でただちに9.00+/−0.05に調整した。溶液を30分間手動のpH調節下に放置した。
【0320】
その後、コンジュゲートを5μmのMinisartフィルターを用いて透明化させ、Sephacryl S400HR (XK26/100)に注入した。流速は60ml/時に固定した。
【0321】
溶出分画をレゾルシノールで、及びタンパク質用量で解析した。目的の分画をプールして、0.22μmのMillipack20で濾過した。
【0322】
得られたコンジュゲートは、1.94の最終TT/PS比率を有していた。
【0323】
<実施例5>EDACを用いたS. aureus莢膜多糖体コンジュゲートの調製
EDACを用いた活性化及びカップリングケミストリー:
S. aureus8型莢膜多糖体-TTコンジュゲート
PS誘導体化
活性化及びカップリングを室温で連続的な攪拌下において行った。
【0324】
30mgの天然(非変性)多糖体を水で希釈して、最終多糖体濃度で5mg/mlの溶液を得た。その溶液を活性化ステップ前に0.5NのHClでpH4.5〜5.0に調整し、66μlのADHを加えた(2.2mg/ml PS)。完全に溶解した後、60mgのEDACを加えた(2mg/ml PS)。70分後、pHを1N NaOHでpH7.5に上げ、反応を停止させた。遊離のADHをSephacryl S100HR (XK 16/40)を用いた精製により除去した。0.2MのNaClを溶出バッファとして用い、流速は60ml/時に固定した。サイズリダクションは、15分間の超音波処理で行い、Millexフィルター(0.22μm)での濾過滅菌を可能にした。
【0325】
カップリング
破傷風菌トキソイドを0.2M NaClに溶解した5〜10mgの誘導化多糖体に加え、0.5N HClの添加によりpHをpH5.0又はpH6.0に調整した。EDACを0.1M Trisバッファ(pH7.5)に溶解し、その後EDACを10分間にわたって(1/5容量を2分間毎)添加した。
【0326】
使用した条件(表6参照)によれば、反応は、30〜180分間後に1M Tris-HCl (pH 7.5)の添加により停止させた。Sephacryl S400HRで精製する前に、コンジュゲートを5μmのMinisartフィルターを用いて透明化させた。あるいは、コンジュゲートを5分間の超音波ステップで透明化させた。その後、コンジュゲートをSephacryl S400HR (XK16/100)に注入した。流速を30 ml/時で固定し、溶出バッファとして150mM NaClを用いた。溶出プールをレゾルシノール及びμBCAプロファイル(それぞれ多糖体及びタンパク質用量を測定する)で解析した。コンジュゲートを0.22μmの滅菌メンブレン(Millipack 20)により10ml/分で濾過した。
【表5】

【0327】
*カップリングはpH6.0で行った。
【0328】
得られたコンジュゲートは表6に示す以下の性質を有している。
【表6】

【0329】
S. aureus8型多糖体もADHで誘導体化する前に顕微溶液化によって処理をした。
【0330】
PS誘導体化
活性化及びカップリングを室温で連続的撹拌下において行った。
【0331】
200mgの整粒化した多糖体を水で希釈して、最終PS濃度で10mg/mlの水溶液を得た。その後、440mgのADHを添加した(2.2mg/ml PS)。400mgのEDAC(2mg/ml PS)の添加前に溶液を1N HClでpH4.7に調製した。60分後、5M NaOHでpHをpH7.5に上げ、反応を停止させた。混合物をAmicon Ultra (カットオフ値 10.000 MWCO)で濃縮した。Sephacryl S200HR (XK16/100)で精製する前に、コンジュゲートを5μmのMinisartフィルターを用いて透明化させた。0.15MのNaClを溶出バッファとして用いて、流速は30ml/時に固定した。
【0332】
カップリング
100mgのTTを0.2M NaCl溶液中の50mgの誘導体化した多糖体に添加した。pHを0.3N HClの添加によりpH5.0±0.02に調製した。EDACを0.1M Trisバッファ(pH7.5)で溶解し、それから10分間にわたって(毎分1/10量)添加した。使用した条件(表8参照)に従い、30〜180分後に1M Tris-HCl (pH7.5)の添加によって反応を停止した。Sephacryl S400HRで精製する前に、コンジュゲートを5μmのMinisartフィルターを用いて透明化させた。その後、コンジュゲートをSephacryl S400HR (XK50/100)に注入した。150mMのNaClを溶出バッファとして用いて、流速は60ml/時に固定した。溶出プールをレゾルシノール及びμBCAプロファイル(それぞれ多糖体及びタンパク質用量を測定する)に基づいて選択した。その後、コンジュゲートを0.22μmの滅菌膜(Millipack 20)により10ml/分で濾過した。
【表7】

【0333】
* EDACを「一回だけ」添加した。
【表8】

【0334】
<実施例6>脱Oアセチル化S. aureus8型多糖体におけるEDACを用いたS. aureus莢膜多糖体コンジュゲートの調製
脱-O-アセチル化
0.1N NaOHを16mlの整粒化したPS(10mg/ml)に添加し、最終PS濃度9mg/ml及び最終NaOH濃度0.1Nとなるようにした。37℃で1又は2時間の処理後、PSは非処理PSと比較してそれぞれ35%及び12%(Hestrin用量)のO-アセチル化レベルを有していた。
【0335】
0.1NのNaOHを9mlの整流化したPS(10mg/ml)に添加し、最終PS濃度9.5mg/ml及び最終NaOH濃度0.05Nとなるようにした。37℃で1又は2時間の処理後、PSは非処理PSと比較してそれぞれ78%及び58%(Hestrin用量)のO-アセチル化レベルを有していた。
【0336】
誘導体化工程は、未処理PSに関して上記で示したように行った。
【表9】

【0337】
* TNBSアッセイ
【0338】
O-アセチル基の除去により反応性カルボン酸基の利用度が増大した。実際、わずか12%のO-アセチル基を有するPSの誘導体化レベルが78%のO-アセチル基を有するそれを±2.5倍上回った。
【0339】
カップリングは、未処理PSに関して上記で示したように行った。
【表10】

【0340】
【表11】

【0341】
<実施例7>dPNAGのコンジュゲーション
dPNAGの活性化及びカップリング
dPNAG-TTコンジュゲート
以下のコンジュゲートを下記方法を用いて生成した。
dPNAG-TT010: dPNAG-S-GMBS + DTT処理済TT-LC-SPDP
dPNAG-TT011: dPNAG-S-GMBS + DTT処理済TT-LC-SPDP
dPNAG-TT012: dPNAG-S-GMBS + DTT処理済TT-SPDP
dPNAG-TT014: dPNAG-SPDP + DTT処理済TT-SPDP
dPNAG-TT017: DTT処理済dPNAG-SPDP + TT-LC-SPDP
dPNAG-TT019: dPNAG-S-GMBS + DTT処理済TT-SPDP
dPNAG-TT020: dPNAG-S-GMBS +DTT処理済TT-SPDP
【0342】
dPNAG
1gのPNAGを5N HClに20mg/mlの濃度で溶解し、1時間インキュベートした。その後、5N NaOHで中和した。溶液を5μmメンブレンで透明化させて、Sephacryl S400HRで精製した。「培地分子サイズ」(Infection and Immunity, 70: 4433-4440 (2002)参照)に対応する目的の分画をプールし、脱Nアセチル化処理前に濃縮した。
【0343】
溶液を1M NaOHで調整し、37℃に24時間放置した。中和後、産物を透析及び濃縮に供した。
【0344】
dPNAG活性化
S-GMBS(N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スルフォスクシンイミド; Pierce社)を0.2M NaCl(S-GMBS/PS (w/w)比:1/1)溶液中のdPNAGに添加し、pH7.0(1M NaOHを用いてpH調節)で室温にて2時間、インキュベートした。過剰なGMBSと副産物をToyopearl HW-40Fを用いた精製によりPBS/10mM EDTA/50mM NaCl (pH7.2)を溶出バッファとし、流速を60ml/時で固定して除去した。溶出プールは吸光度(UV=206nm)の分画を選択し、その後Vivaspinチューブ3,000 MWCO又はAmicon Ultra 10,000 MWCOで濃縮した。
【0345】
カップリング
GMBS活性化dPNAG及びDTT還元化TT-SPDPを混合し、室温で撹拌した。使用した条件によれば、20〜120分後に30分間システイン(リン酸ナトリウムバッファ(pH8.0)に4mg/ml)を添加して反応を停止させた。コンジュゲートを5μmフィルターで透明化させ、精製のためSephacryl S300HRレジン(XK16/100)に注入した。溶出は、200mM NaCl を用いて30ml/時に固定化した流速で行った。溶出分画をヘキソサミンにより、及びタンパク質用量により解析した。目的の分画をプールし、0.22μm Sterivexで濾過した。最終コンジュゲートを多糖体(ヘキソサミン用量)及びタンパク質組成物(Lowry用量)について検証した。
【表12】

【0346】
*コンジュゲーションに使用したロットでは行っていないが、同一の脱Nアセチル化法を用いるNMRによる以前のロットで評価した。
【表13】

【0347】
dPNAG-SPDP:
DMSO(ジメチルスルホキシド;Merck社)に溶解した5倍過剰モル濃度のSPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸、MW: 312.4;Pierce社)を100mMリン酸ナトリウム(pH7.2)に5mg/mlで溶解したdPNAG 100mgに加えて、室温で1時間インキュベートした。Sephacryl S100HR (XK16/40)での精製前に、反応混合物をAmicon Ultra 10,000 MWCOで±6mlにまで濃縮した(3000rpmで28分間遠心)。溶出は、リン酸バッファ(pH7.4)にて流速を60ml/時に固定して行った。目的の分画(206nmで読まれたもの)をプールし、Amicon Ultra 10,000 MWCO(3000 pmで30分間遠心)で1.1mlにまで濃縮した。
【0348】
TT-SPDP:
DMSO(ジメチルスルホキシド;Merck社)に溶解した15倍過剰モル濃度のSPDP(Pierce社)を100mMリン酸ナトリウム(pH7.2)に50mg/mlで溶解したTT 1gに加えて、室温で80分間インキュベートした。その後、産物をSephacryl S100HR (XK16/40)に注入して、100mM 酢酸ナトリウム(pH5.6)/100mM NaCl/1mM EDTAで、流速を60ml/時に固定して溶出した。溶出プールを吸光度(UV=280nm)の分画で選択し、その後、Amicon Ultra 10,000 MWCOで19.6mlにまで濃縮した(3000rpmにて75分間遠心)。
【0349】
TT-LC-SPDPは、TT-SPDPとして製造されたが、LC-SPDP(スクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサン酸;Pierce社)及び60分間のインキュベーションを用いている。
【0350】
TT-SH又はTT-LC-SH
DTTをTT-SPDP又はTT-LC-SPDPにDTT/TT比(mg/mg)が0.7/1となるように添加した。室温で2時間後、ピリジン‐2‐チオンの遊離が343nmにおける特徴的な吸光度に続いた。チオール化したタンパク質を過剰DTTからゲル濾過(PD-10;Amersham社)により精製した。Amicon Ultra 10,000 MWCOでの濃縮後、タンパク質量をLowry用量によって評価した。
【0351】
dPNAG-SPDP + TT-SH又はTT-LC-SH (dPNAG-TT014及び016)
カップリングは、室温で連続的撹拌下において、2/1の初期TT/PS比(w/w)で行った。
【0352】
dPNAG及びTT-SHを混合して、20mg/mlの最終PS濃度、及び40mg/mlの最終タンパク質濃度を得た。30分後、未反応スルフヒドリル基を2-ヨードアセトアミド(Merck社)の添加によって不活化した。
【0353】
dPNAG及びTT-LC-SHを混合して、10mg/mlの最終PS濃度、及び20mg/mlの最終タンパク質濃度を得た。75分後、未反応スルフヒドリル基を2-ヨードアセトアミド(Merck社)の添加によって不活化した。
【0354】
その後、コンジュゲートを5μm Minisartフィルターを用いて透明化させ、Sephacryl S300HR (XK16/100)に注入した。溶出は、200mM NaClで流速を30ml/時に固定化して行った。
【0355】
溶出分画をヘキソサミンによって及びタンパク質用量によって分析した。目的の分画をプールし、0.22μのSterivexで濾過した。
【0356】
得られたコンジュゲートは、2.18 (TT-SH)及び2.24 (TT-LC-SH)の最終TT/PS比(w/w)を有する。
【0357】
dPNAGのチオレーション
11.6mgのDTT(1,4-ジチオスレイトール;Boerhinger Mannheim社、MW: 154.24)を16.5mgのdPNAG-SPDPに添加した。室温で2時間後、ピリジン-2-チオンの遊離が343nmでの特徴的な吸光度に続いた。チオール化したPSを過剰DTTからゲル濾過(Toyopearl HW40F)により精製し、その後、Amicon Ultra 10,000 MWCOで860μlにまで濃縮した。
【0358】
dPNAG-SH + TT-SPDP (dPNAG-TT017)
カップリングは、室温で撹拌条件下にて、最初のTT/PS比(w/w)を1.7/1で行った。
【0359】
dPNAG-SH及びTT-SPDPを混合して、7.73mg/mlの最終PS濃度、及び13.3mg/mlの最終タンパク質濃度を得た。90分後、未反応スルフヒドリル基を2-ヨードアセトアミド(Merck社)の添加によって不活化した。
【0360】
その後、コンジュゲートを5μm Minisartフィルターを用いて透明化させ、Sephacryl S300HR (XK16/100)に注入した。溶出は、200mM NaClで流速を30ml/時に固定化して行った。
【0361】
溶出分画をヘキソサミンによって及びタンパク質用量によって分析した。目的の分画をプールし、0.22μのSterivexで濾過した。
【0362】
得られたコンジュゲートは、2.74の最終TT/PS比(w/w)を有する。
【0363】
<実施例8>製剤
アジュバント組成物
アジュバントAでアジュバント化した、又はアジュバント化していない以下の組成を有するコンジュゲートを接種した。
【0364】
アジュバントAの組成
定性及び定量(0.5mL用量あたり)
リポソーム:
−DOPC 1 mg
−コレステロール 0.25 mg
3DMPL 50μg
QS21 50μg
KH2PO4 13.124 mg バッファー
Na2HPO4 10.290 mg バッファー
NaCl 2.922 mg
(100 mM)
WFI q.s. ad 0.5 ml溶媒
pH 6.1
1. PO4 総濃度=50mM
【0365】
<実施例9>動物実験
雌CD-1マウス(8〜10週齢)は、Charles River Laboratories社(Kingston, Mass)から購入した。致死率検証のために、9〜11匹のCD-1マウスからなる5つのグループの腹腔内(i.p.)にCSAプレート上で増殖した S. aureusを段階希釈で投与した。接種量は、〜1010から108 CFU/マウスの範囲に及ぶ。死亡率は、3日間毎日評価した。50%致死用量(LD50S)は、用量反応関係のプロビットモデルを用いて評価した。通常のLD50Sの帰無仮説は、尤度比検定で検証した。亜致死性菌血症は、8〜20匹のマウスからなるグループに〜2×106 CFU/マウスを静脈内(i.v.)経路で、又は〜2×107 CFU/マウスをi.p.経路で投与することによって始めた。接種後、個々の動物グループについて、特定の時間に尾から血液を採取し、菌血症レベルを5%のヒツジ血液を含んだトリプシン大豆アガープレート(Becton Dickinson Microbiology Systems社)で二重試験にて行った量的生菌数により評価した。統計的有意性は、Welch 改変型対応のないスチューデントt検定で測定した。
【0366】
<実施例10>S. aureus PS8-TT及びdPNAG-TTコンジュゲートの免疫原性
30匹のマウスグループをアジュバント化されていない又はアジュバントAと組み合わせた糖量3μgのS. aureus PS8-TTコンジュゲートを用いて、0日目、14日目、28日目、及び42日目に皮下接種した。0日目に、0.001〜0.013μgを包含する最初の糖投与量をマウスに接種した。さらに食塩水に溶解した0.3μgの投与量で免疫付与を3回行った。55日目に、血清をそのマウスから回収し、各血清サンプルをELISAによって検証し、PS8に対する免疫応答を評価した。10匹のマウスのグループを対照グループに用いて、それらには食塩水又はアジュバントAを含む食塩水のいずれかを接種した。
【0367】
精製したPS8を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した2μg/ml溶液で高結合性マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp社)上に4℃で一晩被覆した。プレートをPBS-1% BSAで室温にて30分間撹拌しながらブロッキングした。マウス抗血清を1/100に前希釈し、その後、さらにマイクロプレート内で2倍希釈し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、結合したマウス抗体をPBS-0.05% tweenで1:5000に希釈したJackson ImmunoLaboratories Inc.社のペルオキシダーゼ結合affiniPureヤギ抗マウスIgG (H+L)(カタログ番号115-035-003)を用いて検出した。検出抗体を30分間室温で撹拌しながらインキュベートした。発色は、10mlの0.1Mクエン酸バッファ(pH4.5)あたり4mg OPD (Sigma社)+5μl H2O2を用いて15分間室温で暗所にて行った。反応は、50μl HClで停止させ、650nmに対する490nmの吸光度を読んだ。
【0368】
結果を中間点力価で表し、GMTは30サンプル(コントロール用は10)について算出した。結果を以下の表14に示す。
【表14】

【0369】
30匹のマウスのグループに、アジュバント化されていないか又はアジュバントAと組み合わせて200mM NaCl溶液に溶解した0.3μgの糖量で、S. aureus dPNAG-TTコンジュゲート(10%〜30%がN-アセチル化されたdPNAG含有)を皮下接種した。マウスには、0日目、14日目、及び28日目に3度接種した。41日目又は42日目に、血清をマウスから回収し、各血清サンプルをELISAによって検証し、PNAGに対する免疫応答を評価した。10匹のマウスのグループを対照グループに用いて、それらには食塩水又はアジュバントのみを接種した。
【0370】
抗-PNAG ELISA:
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈したメチル化HSA(2.5μg/ml)と混合した精製PNAG (2.5μg/ml)を高結合性マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp社)上に4℃で一晩被覆した。
【0371】
プレートをPBS-1% BSAで室温にて30分間撹拌しながらブロッキングした。マウス抗血清を1/100に前希釈し、その後、さらにマイクロプレート内で2倍希釈し、室温で1時間撹拌しながらインキュベートした。洗浄後、結合したマウス抗体をPBS-0.05% tweenで1:5000に希釈したJackson ImmunoLaboratories Inc.社のペルオキシダーゼ結合affiniPureヤギ抗マウスIgG (H+L)(カタログ番号115-035-003)を用いて検出した。検出抗体を30分間室温で撹拌しながらインキュベートした。発色は、10mlの0.1Mクエン酸バッファ(pH4.5)あたり4mg OPD (Sigma社)+5μl H2O2を用いて15分間室温にて暗所で行った。反応は、50μl HClで停止させ、650nmに対する490nmの吸光度を読んだ。
【0372】
GMTは、30サンプル(コントロール用は10)の中間点力価で算出した。
【表15】

【0373】
<実施例11>CDAP法で作製されたPS*-TTコンジュゲートの免疫原性
結果
【表16】

【0374】
<実施例12>オプソニン化貪食作用解析
ヒト多核白血球(polymorphonuclear leykocyte:PMN)によるS. aureusのin vitroオプソニン化貪食性殺傷をXu et al 1992 Infect. Immun. 60; 1358に記載のように行った。ヒトPNMは、ヘパリン処理した血液から3%デキストランT-250における沈降により調製した。オプソニン反応混合物(1ml)は、熱不活化ウシ胎児血清を10%追加したRPMI 1640培地中に〜106 のPMN、〜108 CFUのS.aureus、及び0.1mlの検査血清又はIgG調製物を含んでいる。過免疫付与したウサギ血清をポジティブコントロールとして用い、また0.1mlの免疫付与していないウサギ血清をIgGサンプルの完全なソースとして用いた。反応混合物を37℃で混合し、細菌サンプルを0時、60分、及び120分の時点で水に移し、直ちに希釈し、トリプシン大豆アガープレート上に広げ、一晩培養後の細菌数をカウントするため37℃にインキュベートした。
【0375】
<実施例13>マウス及びウサギにおけるブドウ球菌タンパク質の免疫原性
動物に精製したブドウ球菌タンパク質で免疫し、過免疫血清を発生させた。マウスに3回(0日、14日、及び28日目)、Specolでアジュバント化した10μgの各タンパク質で免疫した。ウサギに3回(0日、21日、及び42日目)、Specol(スペコール)でアジュバント化した20μgの各タンパク質で免疫した。免疫血清を回収し、抗タンパク質及び抗全死菌ELISAで評価した。
【0376】
抗タンパク質ELISA
精製したタンパク質を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した1μg/ml溶液で高結合性マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp社)上に4℃で一晩被覆した。プレートをPBS-1% BSAで室温にて30分間撹拌しながらブロッキングした。試験サンプルを1/1000に希釈し、室温で撹拌しながら1時間インキュベートした。洗浄後、結合したマウス及びウサギ抗体をPBS-0.05% tweenで1:5000に希釈したJackson ImmunoLaboratories Inc.社のペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG (H+L)(カタログ番号115-035-003)又はAffiniPureヤギ抗ウサギIgG (H+L)(カタログ番号11-035-003)を用いて検出した。検出抗体を30分間室温で撹拌しながらインキュベートした。発色は、10mlの0.1Mクエン酸バッファ(pH4.5)あたり4mg OPD (Sigma社)+5μl H2O2の溶液を用いて15分間室温で暗所にて行った。反応は、50μl HClで停止させ、650nmに対する490nmの吸光度を読んだ。
【0377】
Post IIIの1/1000希釈のO.D.を、同希釈の前免疫血清で得られたO.D.と比較した。
【0378】
マウス及びウサギ血清で得られた結果を図5に示す。各抗原に対する良好なセロコンバージョンが観察された。SBIに対する血清の評価は、このタンパク質のIg結合活性によって弱められた。
【0379】
抗全死菌ELISA
5型及び8型S. aureus又はS. epidermidis Hay株に由来する全死菌(熱又はホルムアルデヒドで不活化したもの)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した20μg/ml溶液で、高結合性マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp社)上に4℃で蒸発させながら一晩被覆した。プレートをPBS-1% BSAで室温にて30分間撹拌しながらブロッキングした。プロテインAを、PBS-0.05% tweenで希釈した10μg/mlのアフィニティー精製ニワトリ抗プロテインA(ICL カタログ番号CPA-65A-2)の添加によって中和した。続いて、室温で1時間インキュベートした。その後、試験サンプルをPBS-0.05%の入ったマイクロプレート上で1/10の開始希釈から2倍に希釈し、1時間室温で撹拌しながらインキュベートした。洗浄後、結合したマウス及びウサギ抗体を、PBS-0.05% tweenで1:5000に希釈したJackson ImmunoLaboratories Inc.社のペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG (H+L)(カタログ番号115-035-003)又はAffiniPureヤギ抗ウサギIgG (H+L)(カタログ番号11-035-003)を用いて検出した。検出抗体を30分間室温で撹拌しながらインキュベートした。発色は、10mlの0.1Mクエン酸バッファ(pH4.5)あたり4mg OPD (Sigma社)+5μl H2O2を用いて15分間室温で暗所にて行った。反応は50μl HClで停止させ、650nmに対する490nmの吸光度を読んだ。
【0380】
ブドウ球菌においてタンパク質の発現レベルが培養条件により変わることに留意する必要がある。したがって、ネガティブな結果は、免疫原性がないというよりも、むしろ誤った培養条件を選択したことを反映しているのかもしれない。
【0381】
マウス血清を用いた結果を表17に示し、またグラフのいくつかを図6に示した。S. aureus5型株の弱い認識が抗SdrC、FnbpA、Ebh、Sbi及びIsaAに対する血清で観察された。S. aureus8型の認識は、Sbiに対する血清でのみ観察された。S. epidermidis Hay株の弱い認識がAtlアミダーゼ、MRPII、IsdA、IsaA、Ebh、Aaa及びSbiに対する血清で観察された。
【0382】
ウサギ血清を用いて得られた結果から選択したものを図7に示し、表18にまとめた。非常に良好な3株の認識がIsaA及びIsdBで観察された。
【0383】
動物は、他のタンパク質で使用された3回の注射ではなく、むしろ1回の注射を受けたが、3株の弱い認識がHarAで観察された。
【表17】

【0384】
【表18】

【0385】
<実施例14>鼻腔保菌モデルにおけるブドウ球菌タンパク質の組み合わせの効果
3匹のコットンラットからなる15のグループに8種のブドウ球菌抗原の組み合わせを接種し、また対照として機能する5匹のコットンラットを抗原なしで処理した。これら16のグループについては以下の通りである。
【0386】
グループ 1:Atl-グルコサミン、Atl-アミダーゼ、AAA、アルファトキシン、SdrC、SdrG、Ebh、Sbi
グループ 2:Atl-グルコサミン、Atl-アミダーゼ 、IsdA、IsdB、ClfA、SdrC、Ebh、FnbpA
グループ 3:Atl-グルコサミン、Atl-アミダーゼ、HarA、IsdA、MRPII、IsdB、AAA、アルファトキシン
グループ 4:Atl-グルコサミン、HarA、IsdA、AAA、ClfA、IsaA、Ebh、Sbi
グループ 5:HarA、MRPII、AAA、アルファトキシン、ClfA、SdrC、Ebh、FnbpA
グループ 6:IsdA、IsdB、AAA、アルファトキシン、ClfA、SdrG、Sbi、FnbpA
グループ 7:Atl-アミニダーゼ、IsdA、MRPII、AAA、IsaA、SdrG、Ebh、FnbpA
グループ 8:対照(コントロール)
グループ 9:Atl-グルコサミン、IsdA、MRPII、アルファトキシン、IsaA、SdrC、Sbi、FnbpA
グループ 10:Atl-グルコサミン、MRPII、IsdB、AAA、ClfA、IsaA、SdrC、SdrG
グループ 11:Atl-アミニダーゼ、MRPII、IsdB、アルファトキシン、ClfA、IsaA、Ebh、Sbi
グループ 12:Atl-グルコサミン、HarA、IsdB、アルファトキシン、IsaA、SdrG、Ebh、FnbpA
グループ 13:Atl-アミダーゼ、HarA、IsdB、AAA、IsaA、SdrC、Sbi、FnbpA
グループ 14:Atl-グルコサミン、Atl-アミダーゼ、HarA、MRPII、ClfA、SdrG、Sbi、FnbpA
グループ 15:Atl-アミダーゼ、HarA、IsdA、アルファトキシン、ClfA、IsaA、SdfC、SdrG
グループ 16:HarA、IsdA、MRPII、IsdB、SdrC、SdrG、Ebh、Sbi
【0387】
各抗原混合物は、MPL及びQS21を包含するリポソームでできたアジュバントと混合したそれぞれの抗原を3μg含んでいる。コットンラットに実験第1日目、14日目、28日目の3回接種した。接種後2週間で、免疫付与効率をKokai-Kun et al (2003) Antimicrob.Agents.Chemother. 47; 1589-1597に記載の鼻腔内保菌解析法で評価した。
【0388】
データを古典的な重回帰分析により「Design Expert 6」ソフトウェアを用いて解析した。抗原の存在を+1で、また抗原の非存在を−1として符号化した。モデルの方程式を用いて、どの抗原が鼻腔あたりのコロニー数を大きく減少させる重要な抗原であるかを決定することができた。
【0389】
結果
鼻腔内保菌解析の結果を表19に示す。対照グループは、平均3.51335のlogCFU/鼻腔を有しており、鼻腔内保菌の減少は、ブドウ球菌タンパク質を接種したコットンラットの全グループで見ることができた。グループ4、9、及び13は、CFU/鼻腔において2ログを超える減少を有しており、鼻腔内保菌での最大減少を示した。グループ12及び16もまた、良好な結果を付与し、CFU/鼻腔で約2ログの減少を示した。
【表19】

【0390】
抗原混合物中における特定の抗原の寄与については、鼻腔保菌データの重回帰分析を用いて算出した。最終モデルには7種の最良抗原が含まれていた。これらの抗原の結果を表20に示す。タンパク質混合物の中で、HarAの含有が鼻腔保菌数の最大の低減をもたらし、続いてIsaA、Sbi、SdrC、オートリシン-グルコサミン、MRPII及びEbhの順であった。
【0391】
表20 モデルにおける7種の最良抗原に関するlogCFU/鼻腔差における効果及びCFU/鼻腔率並びに対応するp値
【表20】

【図面の簡単な説明】
【0392】
【図1−1】免疫原性組成物に包含されるタンパク質のポリペプチド配列である。表1は、各配列番号によって示されるタンパク質の情報を示す。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図1−3】図1−2の続きである。
【図1−4】図1−3の続きである。
【図1−5】図1−4の続きである。
【図1−6】図1−5の続きである。
【図1−7】図1−6の続きである。
【図1−8】図1−7の続きである。
【図1−9】図1−8の続きである。
【図1−10】図1−9の続きである。
【図1−11】図1−10の続きである。
【図1−12】図1−11の続きである。
【図1−13】図1−12の続きである。
【図1−14】図1−13の続きである。
【図2−1】免疫原組成物に包含されるタンパク質をコードするヌクレオチドである。表1は、各配列番号によってコードされるタンパク質の情報を示す。
【図2−2】図2−1の続きである。
【図2−3】図2−2の続きである。
【図2−4】図2−3の続きである。
【図2−5】図2−4の続きである。
【図2−6】図2−5の続きである。
【図2−7】図2−6の続きである。
【図2−8】図2−7の続きである。
【図2−9】図2−8の続きである。
【図2−10】図2−9の続きである。
【図2−11】図2−10の続きである。
【図2−12】図2−11の続きである。
【図2−13】図2−12の続きである。
【図2−14】図2−13の続きである。
【図2−15】図2−14の続きである。
【図2−16】図2−15の続きである。
【図2−17】図2−16の続きである。
【図2−18】図2−17の続きである。
【図2−19】図2−18の続きである。
【図2−20】図2−19の続きである。
【図2−21】図2−20の続きである。
【図2−22】図2−21の続きである。
【図2−23】図2−22の続きである。
【図2−24】図2−23の続きである。
【図2−25】図2−24の続きである。
【図2−26】図2−25の続きである。
【図2−27】図2−26の続きである。
【図2−28】図2−27の続きである。
【図2−29】図2−28の続きである。
【図2−30】図2−29の続きである。
【図2−31】図2−30の続きである。
【図2−32】図2−31の続きである。
【図2−33】図2−32の続きである。
【図2−34】図2−33の続きである。
【図3】非変性条件下でのアルファトキシンの精製を示す。パネルAは、アルファトキシンの精製中に調製されたサンプルのクマシー染色したSDS-PAGEを示している。レーン1:分子量マーカー、レーン2:過剰発現させたアルファトキシンを含有する可溶性分画、レーン3:Ni-NTAカラムからの流出物、レーン4:10%のバッファBでの溶出分画、レーン5:20%のバッファBでの溶出分画、レーン6:30%のバッファBでの溶出分画、レーン7:50%のバッファBでの溶出分画、レーン8:75%のバッファBでの溶出分画、レーン9及び10:100%のバッファBでの溶出分画、レーン11:誘導前T=0における細菌、レーン12:誘導のT=4時間後における細菌、レーン13:細胞溶解物、レーン14:可溶性分画、レーン15:不溶性分画。パネルBは、精製したアルファトキシンの10、5、2及び1μlのクマシー染色したSDS-PAGEを示す。
【図4】変性条件下におけるSdrCの精製を示す。パネルAはアルファトキシンの精製中に調製されたサンプルのクマシー染色したSDS-PAGEを示している。レーン M:分子量マーカー、レーンStart:過剰発現させたSdrCを含む不溶性分画から形成された上清、レーンFT1:Ni-NTAカラムからの流出物、レーン C:バッファCで溶出した分画、レーンD:バッファDで溶出した分画、レーンE:バッファEで溶出した分画。パネルBは、精製したSdrCの1、2、5及び10μlのクマシー染色したSDS-PAGEを示す。
【図5−1】精製タンパク質で被覆されたプレートにおけるブドウ球菌タンパク質に対する抗血清のELISA結果を示す。プールマウスPre:接種前のマウスから抽出され、プールされた血清を用いた結果。プールマウスPost III:免疫後に抽出され、プールされたマウス血清を用いた結果。プールウサギPre:接種前のウサギから抽出され、プールされた血清を用いた結果。プールウサギPost III:免疫後に抽出され、プールされたウサギ血清を用いた結果。Blc:ネガティブコントロール。
【図5−2】図5−1の続きである。
【図5−3】図5−2の続きである。
【図5−4】図5−3の続きである。
【図5−5】図5−4の続きである。
【図6−1】ブドウ球菌の死菌で被覆されたプレートにおけるブドウ球菌タンパク質に対するマウス抗血清のELISA結果を示す。パネルAは、5型の血清型S. aureusの全死菌で被覆されたプレートを用いている。パネルBは、8型の血清型S. aureusの全死菌で被覆されたプレートを用いている。パネルCは、S. epidermidisの全死菌で被覆されたプレートを用いている。四角で示される点を結ぶ線は、表示のブドウ球菌タンパク質で3回免疫したマウス由来の抗血清を用いたELISA結果を示している。菱形で示される点を結ぶ線は、免疫前のマウス血清のELISA結果を示している。
【図6−2】図6−1の続きである。
【図6−3】図6−2の続きである。
【図6−4】図6−3の続きである。
【図6−5】図6−4の続きである。
【図7−1】ブドウ球菌の死菌で被覆されたプレートにおけるブドウ球菌タンパク質に対するウサギ抗血清のELISA結果を示す。パネルAは、5型の血清型S. aureusの全死菌で被覆されたプレートを用いている。パネルBは、8型の血清型S. aureusの全死菌で被覆されたプレートを用いている。パネルCは、S. epidermidisの全死菌で被覆されたプレートを用いている。四角で示される点を結ぶ線は、表示のブドウ球菌タンパク質で3回免疫した(1回しか免疫付与していないHarAを除く)ウサギ由来の抗血清を用いたELISA結果を示している。菱形で示される点を結ぶ線は、免疫前のウサギ血清のELISA結果を示している。
【図7−2】図7−1の続きである。
【図7−3】図7−2の続きである。
【図7−4】図7−3の続きである。
【図7−5】図7−4の続きである。
【図7−6】図7−5の続きである。
【図7−7】図7−6の続きである。
【図7−8】図7−7の続きである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S. aureus(S. アウレウス:黄色ブドウ球菌)由来の5型及び/又は8型の莢膜多糖体又はオリゴ糖体を含む免疫原性組成物であって、該5型莢膜多糖体又はオリゴ糖体が30%〜100%O-アセチル化されている前記免疫原性組成物。
【請求項2】
S. aureus由来の5型及び/又は8型の莢膜多糖体又はオリゴ糖体を含む免疫原性組成物であって、該8型莢膜多糖体又はオリゴ糖体が30%〜100%O-アセチル化されている前記免疫原性組成物。
【請求項3】
5型莢膜多糖体又はオリゴ糖体が30%〜100%O-アセチル化されている、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
ブドウ球菌のPNAGを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
PNAGが40%未満N-アセチル化されている、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
S. epidermidis(S. エピデルミディス:表皮ブドウ球菌)由来の1型及び/又は2型及び/又は3型莢膜多糖体又はオリゴ糖体をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
S. aureus 336抗原をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
ブドウ球菌のタンパク質又はその断片をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記ブドウ球菌のタンパク質又はその断片が、ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPからなる群より選択される細胞外成分結合タンパク質である、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記ブドウ球菌のタンパク質又はその断片が免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーターからなる群より選択される輸送タンパク質である、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記ブドウ球菌のタンパク質又はその断片がアルファトキシン(Hla)、アルファトキシンH35R変異体、及びRNA III活性化タンパク質 (RAP)からなる群より選択される毒素又は毒性調節因子である、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
a)ラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、及びMAPからなる群より選択される少なくとも1つのブドウ球菌細胞外成分結合タンパク質又はその断片、
b)免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、HarA、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーターからなる群より選択される少なくとも1つのブドウ球菌輸送タンパク質又はその断片、
c)アルファトキシン(Hla)、アルファトキシンH35R変異体及びRNA III活性化タンパク質 (RAP)からなる群より選択される少なくとも1つのブドウ球菌毒性調節因子若しくは毒素又はそれらの断片、
より選択される少なくとも2つの異なる群より選択される2以上のブドウ球菌のタンパク質を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
ブドウ球菌の多糖体がタンパク質担体とコンジュゲートされている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
PNAGが担体タンパク質とコンジュゲートされている、請求項4〜13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
担体タンパク質がラミニン受容体、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、EbhA、EbhB、エラスチン結合タンパク質(EbpS)、EFB (FIB)、SBI、自己溶菌酵素(オートリシン)、ClfA、SdrC、SdrD、SdrE、SdrG、SdrH、リパーゼGehD、SasA、FnbA、FnbB、Cna、ClfB、FbpA、Npase、IsaA/PisA、SsaA、EPB、SSP-1、SSP-2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、凝固酵素(コアグラーゼ)、Fig、MAP、免疫優性ABCトランスポーター、IsdA、IsdB、IsdC、Mg2+トランスポーター、SitC及びNi ABCトランスポーター、アルファトキシン(Hla)、アルファトキシンH35R変異体、並びにRNA III活性化タンパク質 (RAP)からなる群より選択されるブドウ球菌のタンパク質又はその断片を含む、請求項13又は14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
担体タンパク質が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)プロテインD、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のエキソプロテインA、肺炎双球菌のニューモリシン、及びアルファトキソイドからなる群より選択される、請求項13又は14に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
効果的な免疫応答がS. aureus及びS. epidermidisの双方に対して生じる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物及び製薬上許容可能な賦形剤を含むワクチン。
【請求項19】
抗原を混合して請求項1〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を製造するステップ、及び製薬上許容可能な賦形剤を添加するステップを含む、ワクチン製造方法。
【請求項20】
請求項18に記載のワクチンをそれを必要とする患者に投与するステップを含む、ブドウ球菌感染の予防又は治療方法。
【請求項21】
ブドウ球菌感染の治療又は予防用ワクチンの製造における請求項1〜17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項22】
S. aureus由来の5型又は8型莢膜多糖体又はオリゴ糖体をコンジュゲート化するための方法であって、以下のステップ、
a)5型又は8型多糖体又はオリゴ糖体を水又は生理食塩水溶液に溶解するステップ、
b)シアン化剤(例えば、CDAP)を添加して、活性化された多糖体又はオリゴ糖体を形成するステップ、
c)アミノ基が前記活性化された多糖体と反応してイソウレア共有結合を形成するように担体タンパク質を添加するステップ、
を含む前記方法。
【請求項23】
5型莢膜多糖体又はオリゴ糖体が30%〜100%O-アセチル化されている、請求項22に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図1−12】
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【図1−13】
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【図1−14】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図2−15】
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【図2−16】
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【図2−17】
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【図2−18】
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【図2−19】
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【図2−20】
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【図2−21】
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【図2−22】
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【図2−23】
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【図2−24】
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【図2−25】
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【図2−26】
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【図2−27】
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【図2−28】
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【図2−29】
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【図2−30】
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【図2−31】
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【図2−32】
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【図2−33】
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【図2−34】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【公表番号】特表2009−531387(P2009−531387A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502100(P2009−502100)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053057
【国際公開番号】WO2007/113222
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】