説明

免疫原性組成物

本開示は、
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチドおよび少なくとも1種類の追加の抗原(例えば、タンパク質のポリヒスチジン三連構造ファミリー(例えば、PhtD)からなる群より選択される、単離された免疫原性肺炎レンサ球菌ポリペプチド)を含む免疫原性組成物、および肺炎レンサ球菌により生じる疾病を予防するおよび治療するためのこれらの組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、ここに引用する、2009年12月22日に出願された米国仮特許出願第61/289236号、および2010年4月19日に出願された米国仮特許出願第61/325660号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、免疫学の分野に関し、特に、肺炎レンサ球菌抗原および免疫法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)は、健康な子供と大人の上気道によく見つかる、どちらかと言えばどこにでもあるヒト病原体である。これらの細菌は、肺、中枢神経系(CNS)、中耳、および鼻道を含むいくつかの器官に感染し、例えば、副鼻腔感染症、中耳炎、気管支炎、肺炎、髄膜炎、および菌血症(敗血症)などの様々な疾病を生じ得る。これらの肺炎球菌疾病の最も重症な形態である肺炎球菌性髄膜炎は、抗生物質による治療にもかかわらず、深刻な死亡率および疾病率を伴う(非特許文献1)。特に、2才未満の子供と高齢者は、症候性肺炎球菌感染症に罹りやすい。
【0004】
現在、利用できる肺炎球菌ワクチンには2種類がある。最初のものは、合わせて、肺炎球菌感染症を生じる菌株の約90%を占める莢膜タイプである、23タイプの肺炎レンサ球菌からの莢膜多糖体を含む。しかしながら、このワクチンは、2才になる前には多糖体抗原に対して良好な免疫反応を生じないので、肺炎球菌感染症に非常に罹りやすい年齢層である幼い子供においては、大して免疫原性ではない。大人においては、このワクチンは、菌血症性肺炎に対して約60%の効き目があることが示されてきたが、年齢や根底にある病状のために、肺炎球菌感染症のリスクの高い大人においては、それほど効き目がない(非特許文献2から4)。
【0005】
二番目のものは、複合体(conjugate)ワクチンである。タンパク質担体に結合した(conjugated)血清型特異的莢膜多糖体抗原を含むこれらのワクチンは、血清特異的防御を引き出す(9)。7価と13価の複合体ワクチンが現在利用できる。7価のものは7つの多糖体抗原(血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23Fの莢膜に由来する)を含み、13価のものは、13の多糖体抗原(7価のものにより対処されるものに加え、血清型1、3、5、6A、7Fおよび19Aの莢膜に由来する)を含む。9価と11価の複合体ワクチンも開発されてきた。各々は、7価のものにより対処されない血清型に特異的な多糖体を含む(すなわち、9価のものにおいて、血清型1および5、並びに11価のものにおいて、血清型3および7F)。
【0006】
複合体ワクチンの製造は複雑であり、一部には、それぞれがタンパク質担体に結合する7(または9または11)種類の異なる多糖体を製造する必要があるために、費用がかかる。そのようなワクチンは、それらの複合体ワクチンにより対処されない肺炎レンサ球菌の血清型が非常に一般的にである発展途上世界において、感染症に対処するのに良い働きをしない(非特許文献5および6)。7価の複合体ワクチンを使用すると、ワクチンに含まれる7つの多糖体により表されない莢膜タイプの菌株による疾病とコロニー形成の増加がもたらされることも示されてきた(非特許文献7から9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Quagliarello et. al. (1992) N. Engl. J. Med. 327:864-872
【非特許文献2】Fedson, and Musher 2004, “Pneumococcal Polysaccharide Vaccine”, pp. 529-588
【非特許文献3】In Vaccines. S.A. Plotikin and W.A. Orenstein (eds.), W.B. Saunders and Co., Philadelphia, PA
【非特許文献4】Shapiro et. al., N. Engl. J. Med. 325:1453-1460 (1991)
【非特許文献5】Di Fabio et al., Pediatr. Infect. Dis. J. 20:959-967 (2001)
【非特許文献6】Mulholland, Trop. Med. Int. Health 10:497-500 (2005)
【非特許文献7】Bogaert et al., Lancet Infect. Dis. 4:144-154 (2004)
【非特許文献8】Eskola et al., N. Engl. J. Med. 344-403-409 (2001)
【非特許文献9】Mbelle et al., J. Infect. Dis. 180 :1171-1176 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在利用できる多糖体系ワクチンに代わるものとして、肺炎レンサ球菌に対するタンパク質系ワクチンの潜在的な候補として、数多くの肺炎レンサ球菌抗原が提案されてきた。しかしながら、これまで、そのようなワクチンは現在、市販されていない。したがって、肺炎レンサ球菌の効果的な治療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
レンサ球菌感染症(例えば、肺炎レンサ球菌など)に対する免疫反応を引き出すための免疫原性組成物および方法が記載される。より詳しくは、本開示は、免疫原性PcpAポリペプチドおよび/またはポリヒスチジン三連構造ファミリー(PhtX:PhtA、B、D、E)の免疫原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物、その製造方法およびその使用方法に関する。PcpAおよびPhtDの断片および各々の変異株を含む免疫原性PcpAおよびPhtXポリペプチド、並びにそのポリペプチドをコードする核酸も提供される。免疫原性PcpAポリペプチドおよび/またはポリヒスチジン三連構造ファミリー(PhtX:PhtA、B、D、E)の免疫原性ポリペプチド、および/または無毒化(detoxified)ニューモリシンを含む免疫原性組成物。さらに、レンサ球菌ポリペプチドに対する固体を調製する方法、およびそのような抗体を使用して、レンサ球菌感染症(例えば、肺炎レンサ球菌感染症)を治療するおよび/または予防する方法も提供される。
【0010】
また、1種類以上の免疫原性PcpAポリペプチド、PhtXポリペプチドおよび/または無毒化ニューモリシンタンパク質を含む、薬剤組成物(例えば、ワクチン組成物)などの組成物も提供される。その組成物は、必要に応じて、アジュバントを含んでも差し支えない。その組成物は、1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、前記ポリペプチド/タンパク質の熱安定性を増加させる、1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。一例において、この1種類以上の薬学的に許容される賦形剤は、この1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、0.5℃以上、PcpA、PhtXおよび/または無毒化ニューモリシンタンパク質の熱安定性を増加させる。組成物は、液体形態にあっても、凍結乾燥、噴霧乾燥および/または発泡乾燥された乾燥粉末形態にあっても差し支えない。この1種類以上の薬学的に許容される賦形剤は、例えば、緩衝液、等張化剤、単純な炭水化物、糖、炭水化物ポリマー、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリアミノ酸、多価アルコールおよびそのエーテル、洗浄剤、脂質、界面活性剤、酸化防止剤、塩、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、ホルムアルデヒド、またはそれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0011】
被験者において肺炎レンサ球菌に対する免疫反応を誘発させる方法であって、ここに記載した組成物を被験者に投与する工程を含む方法も提供される。被験者における肺炎レンサ球菌に対する免疫反応の誘発、またはこの目的に使用するための薬剤の調製に、本発明の組成物を使用することも提供される。
【0012】
本発明にはいくつかの利点がある。例えば、本発明の組成物を被験者に投与すると、肺炎レンサ球菌の多数の菌株による感染症に対する免疫反応が引き出される。その上、本発明の多価組成物は、投与されたときに、抗原干渉を経験せずに、追加の効果を与えるであろう、肺炎レンサ球菌の免疫原性ポリペプチドの特別な組合せを含む。ここに記載された賦形剤を使用すると、組成物内でのポリペプチド/タンパク質の熱安定性を増加させることができる。
【0013】
本発明の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、図面を参照して、以下の説明からさらに理解されるであろう。
【図1】図1は、様々な投与量のPcpAおよびPhtD(実施例2)で免疫化されたマウスの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。
【図2a】図2aは、50μgの抗原/投与量のPcpAで免疫化したラットの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。
【図2b】図2bは、50μgの抗原/投与量のPcpAで免疫化したラットの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。
【図2c】図2cは、50μgの抗原/投与量のPhtDで免疫化したラットの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。
【図2d】図2dは、50μgの抗原/投与量のPhtDで免疫化したラットの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。
【図3】図3は、免疫化したマウスの各グループについての生存率を示す(実施例5)。
【図4a】図4aは、各グループについて、エンドポイント希釈ELISAによって測定した全抗原特異的IgG力価および相乗平均力価(±SD)を示す。
【図4b】図4bは、定量ELISAにより測定された全抗原特異的力価を示す。
【図5】図5は、各グループについての生存率を示す。
【図6】図6は、Mn2+欠乏培地中で増殖させた様々な肺炎球菌株への対応するウサギ抗血清による、細菌表面上のPcpAおよびPhtDの認識を示す。
【図7】図7は、菌株WU2の細菌細胞表面上のタンパク質(PcpA、PhtD)への精製ヒト抗PcpAおよび抗PhtD抗体の結合を示す(実施例9)。
【図8】図8は、投与した血清の対数希釈当たりの観察された生存%を示す(実施例10)。
【図9】図9は、ELISAにより測定した全IgG力価の要約を示す(実施例11)。
【図10a】図10aは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPcpAの安定性を示す。
【図10b】図10bは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPcpAの安定性を示す。
【図10c】図10cは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPhtDの安定性を示す。
【図10d】図10dは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPhtDの安定性を示す。
【図10e】図10eは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPcpAの安定性を示す。
【図10f】図10fは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPcpAの安定性を示す。
【図11】図11は、ELISAにより評価した、ストレス条件下でのPhtDおよびPcpAの安定性を示す。
【図12】図12Aは、RP−HPLCによる、10%のソルビトール(■)、10%のトレハロース(●)、10%のスクロース(△)、TBSpH9.0(◆)、およびTBSpH7.4(○)の存在下でのPcpA(3日間に亘り50℃で貯蔵した)の安定性への賦形剤の影響の研究を示す。図12Bは、定量ELISAサンドイッチ法による、10%のソルビトール、10%のトレハロース、10%のスクロース、TBSpH9.0、およびTBSpH7.4の存在下でのPcpA(3日間に亘り50℃で貯蔵した)の安定性への賦形剤の影響の研究を示す。
【図13】図13は、アジュバント入りタンパク質の物理的安定性へのpHの影響を示す。
【図14】図14は、各グループについて、エンドポイント希釈ELISAによって測定した全抗原特異的IgG力価および相乗平均力価(±SD)を示す。
【図15A】図15Aは、マウスに投与された抗原投与量当たりのELISAにより測定された、誘発された全抗原特異的IgGを示す。
【図15B】図15Bは、マウスに投与された抗原投与量当たりのELISAにより測定された、誘発された全抗原特異的IgGを示す。
【図15C】図15Cは、マウスに投与された抗原投与量当たりのELISAにより測定された、誘発された全抗原特異的IgGを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、様々な投与量のPcpAおよびPhtD(実施例2)で免疫化されたマウスの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。この研究において、組換えPhtDおよびPcpAを、1価または2価の配合物としてAlOOHアジュバントと組み合わせた。Balb/cマウスを、3週間間隔で3回、皮下で免疫化し、最初の免疫化前と、最初と2回目と3回目の免疫化後に採血した。IgG力価をエンドポイントELISAによって評価した。PcpAおよびPhtDタンパク質が接種された全てのマウスは、免疫化後に抗原特異的抗体反応を生じた。
【0016】
図2aからdは、50μgの抗原/投与量のPcpAおよび/またはPhtDで免疫化したラットの血清抗タンパク質IgG抗体力価を示す。この研究において、トリス緩衝生理食塩水の対照(10mMのトリスpH7.4、150mMのNaCl)、50μgの抗原/投与量を使用した、水酸化アルミニウムアジュバント入り2価PhtDおよびPcpA、アジュバントなし2価PhtDおよびPcpAまたは水酸化アルミニウムアジュバント入りPcpAのいずれかでラットを0日目、21日目および42日目に免疫化した。予備試験からの血清、44日目と57日目の採血を、ELISAによって、PhtDおよびPcpA特異的IgG抗体力価に対する抗体力価について試験した。
【0017】
図3は、免疫化したマウスの各グループについての生存率を示す(実施例5)。この研究において、鼻腔内接種モデルを使用して、組換えPhtDおよびPcpAの2価配合物を評価した。免疫化した動物に、致死量の肺炎レンサ球菌株(MD、14453または941192)を接種した。
【0018】
図4a,bは、各グループについて、エンドポイント希釈ELISAによって測定した全抗原特異的IgG力価および相乗平均力価(±SD)を示す。この研究(実施例7)において、PhtDおよびPcpAの2価組成物を調製し(PhtDおよびPcpAの各々の2つの異なるロットを使用して)、リン酸処理AlOOH(2mM)を配合した。6匹の雌のCBA/jマウスのグループを、適用できる配合物により、3週間間隔で筋肉内または皮下に3回、免疫化した。3回目(最後)の採血後、マウスに致死量の肺炎レンサ球菌株MDを接種した。
【0019】
図5は、各グループについての生存率を示す。この研究(実施例6)において、PhtDおよびPcpAの2価組成物を調製し(PhtDおよびPcpAの各々の2つの異なるロットを使用して)、リン酸処理AlOOH(2mM)を配合した。6匹の雌のCBA/jマウスのグループを、適用できる配合物により、3週間間隔で筋肉内または皮下に3回、免疫化した。3回目(最後)の採血後、マウスに致死量の肺炎レンサ球菌株MDを接種した。
【0020】
図6は、Mn2+欠乏培地中で増殖させた様々な肺炎球菌株への対応するウサギ抗血清による、細菌表面上のPcpAおよびPhtDの認識を示す(実施例9)。
【0021】
図7は、菌株WU2の細菌細胞表面上のタンパク質(PcpA、PhtD)への精製ヒト抗PcpAおよび抗PhtD抗体の結合を示す(実施例9)。
【0022】
図8は、投与した血清の対数希釈当たりの観察された生存%を示す(実施例10)。
【0023】
図9は、ELISAにより測定した全IgG力価の要約を示す(実施例11)。
【0024】
図10aからfは、1価および2価配合物(AlO(OH)またはリン酸処理AlO(OH)(PTH)が配合された)中のPcpAおよびPhtDの安定性を示す。AlO(OH)または最終濃度が2mMのリン酸となるPTHを使用して、配合物を調製し、次いで、様々な温度(すなわち、5℃、25℃、37℃または45℃)でインキュベーションした。次いで、そのままの抗原濃度をRP−HPLCによって評価した。
【0025】
図11は、ELISAにより評価した、ストレス条件下でのPhtDおよびPcpAの安定性を示す。100μg/mLでの2価配合物を12週間に亘り37℃でインキュベーションし、抗原性をELISAにより評価した。
【0026】
図12Aは、RP−HPLCによる、10%のソルビトール(■)、10%のトレハロース(●)、10%のスクロース(△)、TBSpH9.0(◆)、およびTBSpH7.4(○)の存在下でのPcpA(3日間に亘り50℃で貯蔵した)の安定性への賦形剤の影響の研究を示す。
【0027】
図12Bは、定量ELISAサンドイッチ法による、10%のソルビトール、10%のトレハロース、10%のスクロース、TBSpH9.0、およびTBSpH7.4の存在下でのPcpA(3日間に亘り50℃で貯蔵した)の安定性への賦形剤の影響の研究を示す。配合物を3日間に亘り50℃で貯蔵した。時間ゼロ(白い棒)および3日間の貯蔵後(黒い棒)に、各配合物について抗原性を評価した。
【0028】
図13は、アジュバント入りタンパク質の物理的安定性へのpHの影響を示す。PcpA(A)、PhtD(B)およびPlyD1(C)に、異なるpH値で水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムのアジュバントを添加し、Tm値を、蛍光トレースの微分分析によって得た。
【0029】
図14は、各グループについて、エンドポイント希釈ELISAによって測定した全抗原特異的IgG力価および相乗平均力価(±SD)を示す。
【0030】
図15A,B,Cは、マウスに投与された抗原投与量当たりのELISAにより測定された、誘発された全抗原特異的IgGを示す。
【0031】
肺炎レンサ球菌に対する免疫反応を誘発するための組成物および方法、並びに例えば、ヒトなどの哺乳類における肺炎レンサ球菌により生じる疾病を治療および予防するための組成物および方法が記載されている。免疫原性PcpAポリペプチドおよび/またはポリヒスチジン三連構造ファミリー(PhtX:PhtA、PhtB、PhtD、PhtE)の免疫原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物、その製造方法およびその使用方法に関する。その組成物は、無毒化ニューモリシンまたはその免疫原性断片を含んでもよい。方法は、受動的および能動的な免疫化手法を含み、これは、1種類以上の実質的に精製されたレンサ球菌(例えば、肺炎レンサ球菌)ポリペプチド、そのポリペプチド自体に対する抗体、またはその組合せを含む免疫原性組成物の投与(例えば、皮下、筋肉内)を含む。本発明は、レンサ球菌属全般(例えば、肺炎レンサ球菌)のポリペプチド、レンサ球菌ポリペプチドを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)、そのような組成物を製造する方法、およびレンサ球菌(例えば、肺炎レンサ球菌)抗体を産生する方法も含む。これらの方法と組成物を以下にさらに説明する。
【0032】
本発明の組成物は、1つ、2つ、3つまたはそれより多くの免疫原性ポリペプチドを含む。その組成物は、例えば、PcpAの免疫原性ポリペプチド;タンパク質のポリヒスチジン三連構造ファミリー(例えば、PhtA、PhtB、PhtD、およびPhtE、ここでは、PhtXタンパク質と称する)の一員の免疫原性ポリペプチド;無毒化ニューモリシンポリペプチドを、個々にまたは組合せで含んでもよい。これらのポリペプチドの免疫原性断片および融合物も、組成物に含まれてよい(例えば、PhtBおよびPhtEの融合物)。これの免疫原性ポリペプチドは、必要に応じて、肺炎球菌糖体また他の肺炎球菌ポリペプチドと組み合わせて使用してもよい。
【0033】
ある多成分の例において、免疫原性組成物は、免疫原性PcpAポリペプチドおよび1種類以上の免疫原性PhtXポリペプチドを含む。そのような組成物の好ましい実施の形態は、免疫原性PhtDポリペプチドおよび免疫原性PcpAポリペプチドを含む。別の例において、その組成物は、免疫原性PcpAポリペプチド、免疫原性PhtXポリペプチド(例えば、PhtD)および無毒化ニューモリシンを含む。免疫原性組成物のある実施の形態(例えば、2価または3価の形態)が、ここの実施例に記載されている。
【0034】
ポリペプチド
免疫原性PcpAポリペプチドは、全長のPcpAアミノ酸配列(シグナル配列の存在下または不在下で)、その断片、およびその変異体を含む。ここに記載された組成物に使用するのに適したPcpAポリペプチドの例としては、肺炎レンサ球菌株B6からのGenBank登録番号CAB04758、肺炎レンサ球菌株TIGR4からのGenBank登録番号NP_および肺炎レンサ球菌株R6からのGenBank登録番号NP_359536のもの、並びに肺炎レンサ球菌株14453からのものが挙げられる。
【0035】
肺炎レンサ球菌14453ゲノムにおける全長PcpAのアミノ酸配列は配列番号2である。本発明に使用するのに好ましいPcpAポリペプチドは、配列番号2または配列番号7に対して50%以上(例えば、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%またはそれ以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明に使用するのに好ましいポリペプチドは、配列番号2の少なくとも8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上の連続したアミノ酸の断片を含む。好ましい断片は配列番号2からのエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号2のエピトープを少なくとも1つ維持しながら、配列番号2のN末端からの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれ以上)のアミノ酸および/または配列番号2のC末端からの1つ以上のアミノ酸を欠如している。さらに好ましい断片は、配列番号2のN末端からのシグナル配列を欠如している。好ましいPcpAポリペプチドは配列番号7である。
【0036】
必要に応じて、PcpAの免疫原性ポリペプチドは、1つ以上のロイシンの豊富な領域(LRR)を含む。これらのLRRは、天然に生じるPcpA中に存在するか、または例えば、天然に生じるLRRに対して80%、85%、90%または95%の配列同一性を含む、約60から約99%の配列同一性を有する。成熟PcpAタンパク質(すなわち、シグナルペプチドを欠如したタンパク質)中のLRRは、国際公開第2008/022302号パンフレットに開示された特定の配列(例えば、国際公開第2008/022302号パンフレットの配列番号1、2、41および45)中に見つけられる。
【0037】
PcpAの免疫原性ポリペプチドは、必要に応じて、天然に生じる成熟PcpAタンパク質中に一般に存在するコリン結合ドメインアンカー配列が欠如している。成熟PcpAタンパク質のコリン結合アンカーの天然に生じる配列が、配列番号52として、国際公開第2008/022302号パンフレットに開示されている。より詳しくは、免疫原性ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換基を有する天然に生じるPcpAのN末端領域および天然に生じるPcpAに対して、約60から約99%の配列同一性またはその間の任意の同一性、例えば、80、85、90および95%の同一性を含む。このN末端領域は、1つ以上の同類アミノ酸置換基の存在するまたは存在しない、かつシグナル配列の存在するまたは存在しない、配列番号2(または国際公開第2008/022302号パンフレットの配列番号1、2、3、4、41および45)のアミノ酸配列を含んでもよい。このN末端領域は、配列番号1または7(ここに含まれる配列リストに列記された)もしくは国際公開第2008/022302号パンフレットの配列番号1、2、3、4、または41に対して約60から約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0038】
配列番号2および7の免疫原性断片は、配列番号2および7の5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190および191のアミノ酸残基または5と191の間の任意の数のアミノ酸残基を含む。PcpAの免疫原性断片の例が、国際公開第2008/022302号パンフレットに開示されている。
【0039】
必要に応じて、PcpAの免疫原性ポリペプチドはLRRを欠如している。LRRを欠如している免疫原性ポリペプチドの例が、配列番号29、配列番号30、および配列番号31として国際公開第2008/022302号パンフレットに開示されている。
【0040】
本発明の組成物に適した免疫原性PhtXポリペプチドは、全長のPhtA、PhtB、PhtDまたはPhtEアミノ酸配列(シグナル配列の存在下と不在下で)、その免疫原性断片、その変異株およびその融合タンパク質を含む。ここに記載された組成物に使用するのに適したPhtDポリペプチドの例としては、特に、GenBank登録番号AAK06760、YP816370およびNP35851が挙げられる。肺炎レンサ球菌14453ゲノム中の全長のPhtDのアミノ酸配列は、配列番号1である。PhtDの好ましいポリペプチド(肺炎レンサ球菌14453ゲノムから由来の)は、配列番号5である。
【0041】
本発明のPhtXポリペプチドの免疫原性断片は、対応する全長の成熟アミノ酸配列に特異的な免疫反応を誘発することができる。
【0042】
免疫原性PhtX(例えば、PhtD)ポリペプチドとしては、シグナル配列が結合した全長のタンパク質、シグナルペプチド(例えば、N末端にある20のアミノ酸)が除去された成熟した全長のタンパク質、PhtXの変異株(天然に生じるか、そうでなければ、例えば、合成由来の)およびPhtXの免疫原性断片(例えば、天然に生じる成熟PhtXタンパク質中に存在する少なくとも15または20の連続アミノ酸を含む断片)が挙げられる。
【0043】
PhtDの免疫原性断片の例が、国際公開第2009/012588号パンフレットに開示されている。
【0044】
本発明に使用するのに好ましいPhtDポリペプチドは、配列番号1または配列番号5に対して50%以上(例えば、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%またはそれ以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明に使用するのに好ましいポリペプチドは、配列番号1の少なくとも8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上の連続したアミノ酸の断片を含む。好ましい断片は配列番号1または配列番号5からのエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号1のエピトープを少なくとも1つ維持しながら、配列番号1のN末端からの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれ以上)のアミノ酸および/または配列番号1のC末端からの1つ以上のアミノ酸を欠如している。さらに好ましい断片は、配列番号1のN末端からのシグナル配列を欠如している。好ましいPhtDポリペプチドは配列番号5である。
【0045】
ニューモリシン(Ply)は、繊毛運動の阻害および上皮細胞間の密着結合の破壊を含む、肺炎球菌病原の多段階に関わる細胞溶解活性化毒素である(Hirst et al. Clinical and Experimental Immunology (2004))。例えば、特に、GenBank登録番号Q04IN8、P0C2J9、Q7ZAK5、およびABO21381を含む、いくつかのニューモリシンが公知であり、(その後の無毒化)が、ここに記載された組成物に使用するのに適しているであろう。ある実施の形態において、Plyは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。
【0046】
本発明に使用するための免疫原性ニューモリシンポリペプチドとしては、シグナル配列が結合した全長のタンパク質、シグナルペプチドが除去された成熟した全長のタンパク質、ニューモリシンの変異株(天然に生じるか、そうでなければ、例えば、合成由来の)およびニューモリシンの免疫原性断片(例えば、天然に生じる成熟ニューモリシンタンパク質中に存在する少なくとも15または20の連続アミノ酸を含む断片)が挙げられる。
【0047】
本発明の免疫原性ニューモリシンポリペプチドの免疫原性変異株および断片は、対応する全長の成熟アミノ酸配列に特異的な免疫反応を誘発することができる。本発明の免疫原性ニューモリシンポリペプチドは無害化されている。すなわち、それらのポリペプチドは、肺炎レンサ球菌により産生され放出される成熟した野生型ニューモリシンタンパク質と比べて毒性が減少しているか、または毒性がない。本発明の免疫原性ニューモリシンポリペプチドは、例えば、化学的に(例えば、ホルムアルデヒド処理を使用して)、または遺伝学的に(例えば、成熟形態で組換えにより産生された)、無毒化されていてよい。
【0048】
本発明に使用される免疫原性無毒化ニューモリシンの好ましい例が、国際公開第2010/071986号パンフレットに開示されている。その出願に開示されているように、無毒化ニューモリシンは、野生型配列の65、293および428位でアミノ酸置換基を含む変異ニューモリシンタンパク質であってもよい。好ましい無毒化ニューモリシンタンパク質において、3つのアミノ酸置換基は、T65→C、GG293→C、およびC428→Aを含む。好ましい免疫原性の無毒化ニューモリシンポリペプチドは、配列番号9である。
【0049】
本発明に使用するのに好ましいニューモリシンポリペプチドは、配列番号9または配列番号10に対して50%以上(例えば、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%またはそれ以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明に使用するのに好ましいポリペプチドは、配列番号9または10の少なくとも8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上の連続したアミノ酸の断片を含む。好ましい断片は配列番号9または配列番号10からのエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号9または10のエピトープを少なくとも1つ維持しながら、配列番号9または10のN末端からの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれ以上)のアミノ酸および/または配列番号9または10のC末端からの1つ以上のアミノ酸を欠如している。さらに好ましい断片は、配列番号10のN末端からのシグナル配列を欠如している。
【0050】
PcpA、PhtX(例えば、PhtD)の免疫原性ポリペプチド、およびここに記載されたニューモリシン、並びにその断片は、変異株を含む。ここに記載された免疫原性ポリペプチドのそのような変異株は、当該技術分野においてよく知られた方法を使用して、その免疫原性能力について選択され、1つ以上の同類アミノ酸修飾を含んでもよい。免疫原性ポリペプチド(PcpA、PhtD、ニューモリシンの)の変異株は、開示された配列(すなわち、配列番号2または7(PcpA);配列番号1または5(PhtD);配列番号9または10(Ply))に対して約60から約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列修飾としては、置換、挿入または欠失変化が挙げられる。置換、欠失、挿入またはその任意の組合せは、その変異株が免疫原性ポリペプチドである限り、単一の変異株において組み合わされてもよい。挿入は、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合並びに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は、通常、例えば、1から4の残基ほどの、アミノまたはカルボキシル末端融合のものよりも小さい挿入である。欠失は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去により特徴付けられる。典型的に、約2から6以下の残基が、タンパク質分子内の任意の1つの部位で欠失している。これらの変異株は、通常、タンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異により調製され、それによって、その変異株をコードするDNAが産生され、その後、組換え細胞培養においてDNAを発現する。公知の配列を有するDNAにおいて所定の部位で置換変異を生じさせるための技法は、よく知られており、以下に限られないが、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発が挙げられる。アミノ酸置換は、典型的に単一残基のものであるが、同時に多数の異なる位置で生じ得る。置換変異株は、少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入されたものである。そのような置換は、一般に、以下の表にしたがって行われ、同類置換と称される。他のものも、当業者によく知られている。
【0051】
ここに用いたように、アミノ酸置換は、同類であっても、非同類であってもよい。同類アミノ酸置換は、その位置でのアミノ酸残基のサイズ、極性、電荷、疎水性、または親水性に影響がほとんどまたは全くなく、特に、免疫原性を減少させないような、天然のアミノ酸残基の非天然のアミノ酸残基による置換を含んでよい。適切な同類アミノ酸置換が、以下の表1に示されている。
【表1】

【0052】
選択した特定のアミノ酸置換基は、選択した部位の位置に依存するであろう。ある実施の形態において、ポリペプチドおよび/または断片をコードするヌクレオチドは、遺伝コードの縮重(すなわち、「ゆらぎ(Wobble)」仮説に一致する)に基づいて置換される。核酸が、細胞(例えば、発現ベクター)中でポリペプチドを発現するのに有用な組換えDNA分子である場合、ゆらぎ型置換によって、DNA分子により元々コードされたものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが発現される。しかしながら、上述したように、置換基は、同類、非同類、またはそれらの任意の組合せであってよい。当業者は、公知の技法を使用して、ここに提供されたポリペプチドおよび/または断片の適切な変異株を決定することができる。
【0053】
類似体は、アミノ酸配列において天然に生じる肺炎レンサ球菌ポリペプチドから、および/または非配列修飾によって、異なり得る。非配列修飾としては、アセチル化、メチル化、ホスホリル化、カルボキシル化、またはグリコシル化における変化が挙げられる。本発明のポリペプチドの「修飾」としては、1つ以上の構成アミノ酸で化学的または酵素的に由来したポリペプチド(または例えば、その断片などのその類似体)が挙げられる。そのような修飾の例としては、側鎖修飾、主鎖修飾、および例えば、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、および炭水化物または脂質部分の結合、補因子などのN末端とC末端修飾、並びにそれらの組合せが挙げられる。本発明の修飾ポリペプチドは、未修飾ポリペプチドの生物活性を維持しても、減少または増加した生物活性を示してもよい。
【0054】
2つのポリペプチドの構造的類似性は、それらの配列の長さに沿って同一のアミノ酸の数を最適化するように2つのポリペプチド(例えば、候補のポリペプチドと例えば、配列番号2のポリペプチド)の残基をアライメントすることによって決定できる;同一のアミノ酸の数を最適化させるために、アライメントする上で、一方または両方の配列におけるギャップが許されるが、それでもなお、各配列におけるアミノ酸は、適切な順序のままでなければならない。候補のポリペプチドは、基準ポリペプチドと比べられているポリペプチドである。候補のポリペプチドは、例えば、微生物から単離しても、もしくは組換え技法を使用して産生されても、もしくは化学的または酵素的に合成されても差し支えない。
【0055】
アミノ酸配列の一対比較分析は、例えば、ニードルマン・ヴンシュ(Needleman-Wunsch)のグローバル・アルゴリズムを使用して行うことができる。あるいは、Tatiana等(FEMS Microbiol. Lett, 174 247-250 (1999))により記載され、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトで入手できるような、BLAST2サーチアルゴリズムのBlastpプログラムなどの局所的アライメントアルゴリズムを使用して、ポリペプチドを比較してもよい。マトリクス=BLOSUM62:ギャップ開始ペナルティー=11、ギャップ伸張ペナルティー=1、ギャップxドロップオフ=50、10を予測、ワードサイズ=3、およびフィルータオンを含む、全てのBLAST2サーチパラメータのデフォルト値を使用してよい。スミス・ウォーターマンアルゴリズムが、使用できる別の局所的アライメントツールである(1988)。
【0056】
2つのアミノ酸配列の比較において、構造的類似性は、「同一性(identity)」パーセントにより称しても、「類似性(similarity)」パーセントにより称してもよい。「同一性」は、同一のアミノ酸の存在を称する。「類似性」は、同一のアミノ酸の存在だけでなく、同類置換の存在も称する。本発明のポリペプチドにおけるアミノ酸の同類置換は、表1に示されている、アミノ酸が属する部類の他の構成員から選択してもよい。
【0057】
前記免疫原性ポリペプチドをコードする核酸は、例えば、限定するものではないが、野生型または変異肺炎レンサ球菌細胞から単離してもよく、あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによって、または当業者が認識している代わりの標準技法を使用することによって、適用できるDNA遺伝子(例えば、pcpA、phtD、ply)を担持する肺炎レンサ球菌株のDNAから直接得てもよい。使用の可能性のある菌株の例としては、肺炎レンサ球菌株TIGR4および14453が挙げられる。好ましい実施の形態において、ポリペプチドは、肺炎レンサ球菌株14453から組換え的に由来する。本発明の単離された核酸分子の好ましい例は、配列番号3、4、6および8に列記された核酸配列を有する。これらの配列の配列同類変異株および融合同類変異株は、本発明により包含される。
【0058】
本発明のポリペプチドは、標準分子生物学技法および発現システムを使用して産生できる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition by Sambrook et. al., Cold Spring Harbor Press, 2001を参照のこと)。例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする遺伝子の断片を単離し、その免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、任意の市販の発現ベクター(例えば、pBR322、およびpUCベクター(マサチューセッツ州、イプスウィッチ所在のニュー・イングランド・バイオラブス社(New England Biolabs, Inc.)などの)または発現/精製ベクター(例えば、GTS融合ベクター(ニュージャージー州、ピスカタウェイ所在のファイザー社(Pfizer, Inc.)などの)中にクローニングし、次いで、適切な原核、ウイルスまたは真核宿主中に発現してもよい。次いで、従来の手段によって、または市販の発現/精製システムの場合には、製造業者の指示にしたがって、精製を行ってよい。
【0059】
あるいは、変異株を含む、本発明の免疫原性ポリペプチドは、例えば、限定するものではないが、野生型または変異肺炎レンサ球菌細胞から単離してもよく、また、例えば、排他的固相合成、部分固相法、断片縮合または溶液合成などの、工業的自動化手法を使用した化学合成によって、合成してもよい。
【0060】
本発明のポリペプチドは免疫原性活性を有することが好ましい。「免疫原性活性」は、被験者において免疫反応を誘発するポリペプチドの能力を称する。ポリペプチドに対する免疫反応は、被験者における、ポリペプチドに対する細胞および/または抗体媒介免疫反応の発生である。通常、免疫反応は、以下に限られないが、以下の効果の内の1つ以上を含む:ポリペプチドのエピトープに対する抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。「エピトープ」という用語は、抗体が産生されるように特異的B細胞および/またはT細胞が応答する抗原の部位を称する。免疫原性活性は防御的であってもよい。「防御的免疫原性活性」という用語は、肺炎レンサ球菌による感染(疾病を生じる)を防ぐまたは阻害する免疫反応を被験者において誘発するポリペプチドの能力を称する。
【0061】
組成物
開示された免疫原性肺炎レンサ球菌ポリペプチドを使用して、例えば、ワクチン組成物などの免疫原性組成物を製造する。免疫原性組成物は、被験者(例えば、哺乳類)に投与した際に、組成物内に含まれる抗原に対して向けられた免疫反応を誘発するまたは向上させるものである。この反応は、抗体の産生(例えば、B細胞の刺激により)またはT細胞に基づく反応(例えば、細胞溶解反応)を含むであろう。これらの反応は、防御的または中和的であっても、なくてもよい。防御的または中和的免疫反応は、抗原に対応する感染性微生物(例えば、抗原が由来する)に対して有害であり、被験者に対して有益である(例えば、感染を減少させるかまたは防ぐことによって)ものである。ここに用いたように、防御的または中和的抗体は、対応する野生型肺炎レンサ球菌ポリペプチド(またはその断片)に対して反応性であり、動物において試験した場合、対応する野生型肺炎レンサ球菌ポリペプチドの致死率を減少させるかまたは抑制するであろう。宿主に投与した際に、防御的または中和的免疫反応を生じる免疫原性組成物は、ワクチンと考えられるであろう。
【0062】
前記組成物は、被験者に投与したときに、免疫反応を誘発するのに十分な量で免疫原性ポリペプチドを含む。ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に効果的な量の免疫原性ポリペプチド、並びに必要に応じて、任意の他の成分を含む。「免疫学的に効果的な量」とは、一回の服用または一連の服用の一部のいずれかで、被験者へのその量の投与が、治療または予防に効果的であることを意味する。
【0063】
2、3またはそれより多くの免疫原性ポリペプチド(例えば、PcpA、PhtD、および/または無毒化ニューモリシン)を含む組成物において、そのポリペプチド成分は、相溶性であることが好ましく、抗原干渉を防ぎ、任意の可能性のある相乗効果を最適化するのに適した比率で組み合わされる。例えば、各成分の量は、投与量当たり約5μgから約500μg、投与量当たり約5μgから約100μg、または投与量当たり約25μgから約50μgの範囲にあり得る。その範囲が、投与量当たりの抗原成分当たり5または6μgから50μgであり得ることが好ましい。一例において、組成物は、25μgのPhtX(例えば、PhtD)の免疫原性ポリペプチドおよび25μgのPcpAの免疫原性ポリペプチドを含む。前記組成物は、別の例において、25μgのニューモリシン(例えば、無毒化ニューモリシン;PlyD1(配列番号9))も含む。
【0064】
下記に述べる実施例では、動物モデルにおいて、PhtX(例えば、PhtD)およびPcpAの二成分ワクチン組成物についてと、PcpA、PhtX(例えば、PhtD)および無毒化ニューモリシン(例えば、PlyD1)の三成分ワクチン組成物について、様々な抗原比を比べた。意外なことに、試験した抗原比では、統計的に有意である抗原干渉は観察されなかった。また、意外なことに、2価組成物(または3価組成物)による免疫化に対する反応において誘発された抗原特異的抗体が、ウサギ血清を使用したマウスにおける受動免疫化の研究において、加法様式で働くことが分かった。それゆえ、多成分組成物において、これらの成分は、等量(例えば、1:1、1:1:1)で存在してよい。これらの成分は、各抗原についての推測の最小抗原投与量に関して他の比率で存在してもよい(例えば、PcpA:PhtX(PhtD):ニューモリシン、約1:1:1から約1:5:25)。一例において、3価組成物は、1:4:8のPcpA:PhtD:ニューモリシンの比率にある量(μg/投与量)のPcpA:PhtD:ニューモリシン(例えば、PlyD1)を含む。別の例において、PcpA:PhtD:ニューモリシンの比率は、1:1:1である。
【0065】
本発明の組成物は、当業者により適切であると決定された量と処方計画で、例えば、注射などの経皮的(percutaneous)(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内または皮下)、経皮的(transderml)、粘膜(例えば、鼻腔内)または局所などの適切な経路により投与することができる。例えば、1〜250μgまたは10〜100μgの組成物を投与することができる。予防法または療法の目的のために、前記組成物を1、2、3、4回以上投与して差し支えない。一例において、1回以上の投与は、「プライム・ブースト」法の一部として行ってもよい。複数回の投与を行う場合、投与は、例えば、1週間、1ヶ月または数ヶ月、互いに間隔を空けても差し支えない。
【0066】
本発明の組成物(例えば、ワクチン組成物)は、アジュバントの有無にかかわらずに投与してよい。アジュバントは、一般に、抗原の免疫原性を向上させられる物質である。アジュバントは、後天的および先天的免疫の両方において役割を果たし(例えば、Toll様受容体)、全てが理解されているわけではないが、様々な様式で機能するであろう。
【0067】
天然と合成の両方の多くの物質が、アジュバントとして機能することが示されてきた。例えば、アジュバントとしては、以下に限られないが、鉱物塩、スクアレン混合物、ムラミールペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁調製物、特定のエマルション、モノホスホリルリピッドA、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤、Quil−A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、免疫刺激複合体(ISCOM)、サイトカインアジュバント、MF59アジュバント、リピッドアジュバント、粘膜アジュバント、特定の細菌外毒素および他の成分、特定のオリゴヌクレオチド、PLGなどが挙げられる。これのアジュバントを、ここに記載された組成物および方法に使用してよい。
【0068】
ある実施の形態において、前記組成物は、少なくともスクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、疎水性非イオン性界面活性剤を含む水中油エマルションを含むアジュバントの存在下で投与され、ここで、この水中油エマルションは転相温度プロセスにより得られ、油滴の個体群の90体積%が200nm未満、必要に応じて、150nm未満のサイズを有する。そのようなアジュバントが、ここに全てを引用する国際公開第2007/006939号パンフレット(Vaccine Composition Compising a Thermoinversable Emulsion)に記載されている。その組成物は、上述したスクアレン水中油エマルションに加え、またはその代わりに、製品E6020(CAS番号287180−63−6を有する)を含んでもよい。製品E6020は、米国特許出願公開第2007/0082875号明細書(ここに全てを引用する)に記載されている。
【0069】
ある実施の形態において、前記組成物は、単独で、またはアジュバントとの組合せで一緒に、TLRアゴニスト(例えば、TLR4アゴニスト)を含む。例えば、アジュバントは、TLR4アゴニスト(例えば、TLA4)、スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化学群に属する非イオン性親水性界面活性剤、非イオン性疎水性界面活性剤を含み、熱可逆性である。そのようなアジュバントの例が、ここに全てを引用する国際公開第2007/080308号パンフレット(Thermoreversible Oil-in-Water Emulsion)に記載されている。ある実施の形態において、組成物は、CpGおよびアルミニウム塩アジュバント(例えば、Alum)の組合せによりアジュバントが添加されている。
【0070】
アルミニウム塩アジュバント(または化合物)は、本発明の実施に使用するアジュバントの内である。使用されるアルミニウム塩アジュバントの例としては、水酸化アルミニウム(例えば、結晶質オキシ水酸化アルミニウムAlO(OH)、および水酸化アルミニウムAl(OH)3)が挙げられる。水酸化アルミニウムは、Al3+イオンおよびヒドロキシル基(−OH)を含むアルミニウム化合物である。水酸化アルミニウムと他のアルミニウム化合物(例えば、水酸化リン酸塩または水酸化硫酸塩)との混合物を使用してもよく、その場合、結果として生じる混合物は、ヒドロキシル基を含むアルミニウム化合物である。特別な実施の形態において、アルミニウムアジュバントはオキシ水酸化アルミニウム(例えば、Alhydrogel(登録商標))である。アルミニウム塩アジュバントを含む組成物は、極端な温度、すなわち、氷点(0℃)未満または非常な暑さ(例えば、≧70℃)に曝露すべきではないことがよく知られている。何故ならば、そのような曝露は、吸着される抗原とアジュバントの両方の安定性と免疫原性に悪影響を及ぼすことがあるからである。
【0071】
発明者等は、水酸化アルミニウムアジュバント(AlO(OH))でアジュバントを添加した場合、PcpAおよびPhtDポリペプチドの劣化速度が速い(以下の実施例において論じられている)ことに気が付いた。発明者等は、ホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、ジホスホネートまたはこれらの化合物2種類以上の混合物で前処理された、水酸化物基を含むアルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウムアジュバント)でPcpAおよびPhtDポリペプチドにアジュバントを添加すると、これらのポリペプチドの安定性が増加することを発見した。それゆえ、免疫原性PcpAポリペプチドまたは免疫原性PhtXポリペプチド(例えば、PhtD)と、ホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、ジホスホネートまたはこれらの化合物2種類以上の混合物で処理された、水酸化物基を含むアルミニウム化合物とを含む組成物の配合物であって、前記処理によって、前記ポリペプチドが未処理のアルミニウム化合物に吸着している組成物に対して、免疫原性ポリペプチドの安定性が増加している配合物がここに提供される。好ましい実施の形態において、前記アルミニウム化合物は、ホスフェートにより処理されている。PcpAおよびPhtX(例えば、PhtD)の両方の免疫原性ポリペプチドと、ホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、ジホスホネートまたはこれらの化合物2種類以上の混合物で処理された、水酸化物基を含むアルミニウム化合物とを含む多価組成物であって、前記処理によって、前記ポリペプチドが未処理のアルミニウム化合物に吸着している組成物に対して、免疫原性ポリペプチドの安定性が増加している組成物も提供される。
【0072】
本発明の特別な実施の形態において、アルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウムアジュバント)は、ホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、ジホスホネート、またはこれらの化合物2種類以上の混合物で処理される。このようにしてアルミニウム化合物を処理することによって、アルミニウム化合物中の多数のヒドロキシル基(−OH)が、このアルミニウム化合物を処理する対応するイオン(例えば、ホスフェート(PO4))と置換される。この置換により、アルミニウム化合物のPZCとこの化合物の微環境のpHが低下する。ホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、またはジホスホネートイオンは、微環境のpHを、抗原が安定化される(すなわち、抗原の加水分解の速度が減少する)レベルまで低下させるのに十分な量で加えられる。その必要な量は、例えば、関与する抗原、抗原の等電点、抗原の濃度、使用されるアジュバント添加方法、および配合物中に存在する任意の追加の抗原の量と性質などの数多くの要因に依存する。ワクチンの分野の当業者は、関連する要因を評価し、抗原の安定性を増加させるためにアルミニウム化合物に加えられるホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、ジホスホネートの濃度を決定することができる(したがって、対応する配合物および組成物を調製できる)。例えば、滴定研究(すなわち、増加する濃度のホスホネートなどをアルミニウム化合物に添加する)を行ってもよい。
【0073】
使用するのに適したホスフェート化合物としては、リン酸に関連する化合物(例えば、リン酸の無機塩および有機エステルなど)のいずれも含まれる。リン酸塩は、任意の陽イオンと共に、リン酸イオン(PO43-)、リン酸水素イオン(HPO42-)またはリン酸二水素イオン(H2PO4-)を含有する無機化合物である。リン酸エステルは、リン酸の水素が有機基により置換された有機化合物である。リン酸塩の代わりに使用してよい化合物の例としては、陰イオンアミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)およびリン脂質が挙げられる。
【0074】
使用するのに適したカルボキシレート化合物としては、カルボン酸(例えば、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、グルタル酸、EDTA、およびEGTA)の有機エステル、塩および陰イオンのいずれもが挙げられる。使用するのに適した硫黄陰イオンとしては、硫酸の塩またはエステル(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、サルファイト、メタ重亜硫酸塩、チオサルフェート)などのサルフェート(SO4ラジカル)を含有するどのような化合物もが挙げられる。使用するのに適したジホスホネート化合物の例としては、クロドロネート、パミドロネート、チルドロネート、およびアレンドロネートが挙げられる。
【0075】
本発明の好ましい実施の形態において、ホスフェートは塩の形態で水酸化アルミニウムアジュバントに加えられる。リン酸イオンは、リン酸二ナトリウム一ナトリウムを含む緩衝液により提供されることが好ましい。
【0076】
ここに実証するような、本発明の好ましい実施において、アルミニウム化合物(例えば、オキシ水酸化アルミニウム)はホスフェートにより処理される(例えば、実施例に記載されたようなプロセスによって)。このプロセスにおいて、オキシ水酸化アルミニウムの水性懸濁液(約20mg/mL)は、リン酸緩衝液(例えば、約400モル/L)と混合される。好ましい最終ホスフェート濃度は、約2mMから20mMまでである。次いで、この混合物は、緩衝液(例えば、トリス−HCl、生理食塩水を含むトリス−HCl、HEPES)で希釈されて、オキシ水酸化アルミニウムとホスフェート(PO4)の懸濁液が調製される。緩衝液は、約7.4のpHでの10mMのトリス−HClおよび150mMのNaClであることが好ましい。次いで、この懸濁液は室温で約24時間に亘り混合される。最終懸濁液中の元素のアルミニウムの濃度は、約0.28mg/mLから1.68mg/mLの範囲内にあることが好ましい。元素のアルミニウムの濃度が約0.56mg/mLであることがより好ましい。
【0077】
次いで、PcpA、PhtDおよび無毒化ニューモリシンの免疫原性ポリペプチド(個別にまたは組合せで)を、処理済みの水酸化アルミニウムに吸着させてもよい。約0.2〜0.4mg/mLの抗原を、処理済みの水酸化アルミニウムアジュバントの懸濁液と混合する(例えば、約30分間、または約12〜15時間、もしくは約24時間に亘り、オービタルミキサ内において、室温または2〜8℃で)ことが好ましい。
【0078】
抗原吸着の割合を、当該技術分野に公知の標準方法を使用して評価してもよい。例えば、抗原/アジュバント調製品のアリコートを取り出し、遠心分離して(例えば、10,000rpmで)、アジュバント懸濁液(上清)から未吸着のタンパク質(ペレット)を分離してもよい。上清中のタンパク質の濃度は、ビシンコニン酸タンパク質アッセイ(BCA)または逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を使用して決定してよい。吸着の割合は、以下のように計算される:%A=100−([PrSN]×100/[PrCtr])、式中[PrSN]は上清中のタンパク質濃度であり、[PrCtr]は対応するアジュバントを未添加の対照中の濃度である。好ましい実施の形態において、吸着%は、約70%から約100%に及ぶ。より好ましい実施の形態において、吸着%は少なくとも約70%である。
【0079】
アジュバントを添加した免疫化のある実施の形態において、免疫原性ポリペプチドおよび/またはその断片は、細菌多糖体に共有結合して、多糖体複合体を形成するであろう。そのような複合体は、前記ポリペプチドおよび/またはその断片に結合した細菌多糖体に対して向けられたT細胞依存性免疫反応を誘発するための免疫原として有用であろう。
【0080】
開示された配合物は、従来の冷蔵庫の温度、例えば、約2℃から約8℃で長期間貯蔵した場合に安定である。その配合物は、粒子の凝集をほとんどまたは全く示さず、抗原濃度の著しい減少を示さず、少なくとも6ヶ月または12ヶ月、好ましくは18ヶ月に亘り著しいレベルの免疫原性および/または抗原性を維持する。「抗原濃度の著しい減少」という句は、組成物が、最初に配合されたときに存在する、元の抗原濃度の少なくとも50%、60%、または70%、より好ましくは、元の抗原濃度の少なくとも80%、85%、または90%、より好ましくは、元の抗原濃度の少なくとも約91%、92%、98%、99%またはそれより多くを維持することを意味することが意図されている。抗原濃度は、例えば、RP−HPLC、SDS−PAGEまたはELISAに基づく方法によって測定してよい。
【0081】
安定な配合物または安定な配合物を含む免疫原性組成物は、相当な度合いの構造的健全性を維持する(例えば、元の抗原濃度の相当な量などを維持する)。
【0082】
安定性は、例えば、存在する抗原の濃度を測定することにより(例えば、RP−HPLCにより)、または例えば、SDS−PAGE分析によって、抗原の劣化を評価することによって、評価してもよい。配合物中の抗原濃度を、未処理である(すなわち、リン酸または炭酸イオンにより処理されていない)が同じアルミニウム化合物により調製した配合物のものと比較してもよい。安定性予測および/または比較ツールの例としては、Stability System(商標)(SocienTek Software, Inc.による)が挙げられ、これは、貯蔵温度(2℃〜8℃)での速度定数を予測するためにアレニウス処理を使用する。抗原濃度、および免疫原性を測定するための標準アッセイが、当該技術分野において公知であり、実施例に記載されている。予防効果は、例えば、配合物中に存在する特定の抗原に対応する疾病を発症する病原または毒素の接種後の、免疫化した被験者と、免疫化していない被験者の生存率を評価することによって、判断してもよい。
【0083】
本発明の免疫原性組成物は、液体形態にあることが好ましいが、それらは、凍結乾燥(標準方法による)されていても、または発泡乾燥(国際公開第2009/012601号パンフレットに記載されているような、Antigen-Adjuvant Composition and Methods)されていてもよい。本発明のある実施の形態による組成物は液体形態にある。免疫化投与量は、0.5と1.0mLの間の容積で配合してよい。液体配合物は、例えば、溶液、または懸濁液を含む、投与に適したどのような形態であってもよい。それゆえ、組成物は、緩衝されていてよい、液体媒質(例えば、生理食塩水または水)を含み得る。
【0084】
配合物(および組成物)のpHは、約6.4と約8.4の間にあることが好ましい。pHが約7.4であることがより好ましい。組成物の例示のpH範囲は、5〜10、例えば、5〜9、5〜8、5.5〜9、6〜7.5、または6.5〜7である。pHは、緩衝液の使用によって維持してよい。
【0085】
本発明の免疫原性組成物の薬剤配合物は、必要に応じて、当該技術分野によく知られている賦形剤(例えば、希釈剤、増粘剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤、アジュバント、洗浄剤および/または免疫賦活剤)を1種類以上含んでもよい。適切な賦形剤は、当該技術分野に公知なように、アルミニウムアジュバントおよび抗原と相溶性である。希釈剤の例としては、結合剤、崩壊剤、もしくはデンプン、セルロース誘導体、フェノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセリンなどの分散剤が挙げられる。薬剤配合物は、抗菌剤、抗炎症剤および麻酔薬などの活性成分を1種類以上含んでもよい。洗浄剤の例としては、Tween 80などのTween(ポリソルベート)が挙げられる。本発明の組成物に含むのに適した賦形剤は当該技術分野において公知である。
【0086】
本発明は、PcpA、PhtX(例えば、PhtD)および/または無毒化ニューモリシンタンパク質および組成物に有益な特性を与える(例えば、組成物のタンパク質の1種類以上の安定性を増加させる)薬学的に許容される賦形剤を1種類以上含む組成物を提供する。本発明の組成物に含むことのできる化合物または賦形剤の例としては、緩衝剤(例えば、グリシン、ヒスチジン);張性剤(例えば、マンニトール);糖または糖アルコールなどの炭水化物(例えば、ソルビトール、トレハロース、またはスクロース;1〜30%)または炭水化物ポリマー(例えば、デキストラン);アミノ酸、オリゴペプチドまたはポリアミノ酸(100mMまで);多価アルコール(例えば、グリセロール、および20%までの濃度);洗浄剤、脂質、または界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、またはPluronic(登録商標)、0.5%までの濃度);酸化防止剤;塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、または酢酸マグネシウム、150mMまで);またはそれらの組合せが挙げられる。
【0087】
本発明の組成物に使用できる賦形剤の例としては、表11に列記されたもの、および以下の実施例が挙げられる。様々な実施例において、賦形剤は、例えば、以下に記載されたアッセイ(例えば、SYPROオレンジの外因性蛍光)によって測定される、熱安定性を増加させる(例えば、少なくとも0.5だけ、例えば、0.5〜5、1〜4、または2〜3だけ)ものであってよい。
【0088】
例示の賦形剤および緩衝剤としては、ソルビトール(例えば、4〜20%、5〜10%)(表11参照)が挙げられる。これらの賦形剤は、表11に列記された濃度で本発明に使用できる。あるいは、量は、当該技術分野に理解されるように、例えば、0.1〜10倍、変動しても差し支えない。当該技術分野に公知の他の炭水化物、糖アルコール、界面活性剤およびアミノ酸を本発明の組成物に含ませても差し支えない。
【0089】
賦形剤および緩衝剤は、個々にまたは組合せで使用して差し支えない。そのような組成物のpHは、例えば、5.5〜8.0であって差し支えなく、組成物は、液体または凍結乾燥形態において、例えば、2〜8℃で貯蔵することができる。組成物の変種において、ソルビトールをスクロース(例えば、4〜20%、または5〜10%)、またはトレハロース(例えば、4〜20%、または5〜10%)で置き換えても差し支えない。組成物の他の変種は、本発明に含まれ、ここに列記された他の成分の使用を含む。先に基づいて、本発明の例示の組成物は、10%のソルビトール、pH7.4を含む。
【0090】
ある実施の形態において、1価PlyD1組成物は、投与量当たり、5から50μgの範囲の抗原において、約7.4のpHで、約10mMのトリス−HClおよび約150mMのNaCl中に、PTHアジュバント(約7.5のpHで、約0.56mg/mLの元素のアルミニウムを含有する、2mMのリン酸ナトリウム緩衝液)を含んでもよい。
【0091】
別の実施の形態において、1価PhtD組成物は、投与量当たり、5から50μgの範囲の抗原において、約7.4のpHで、約10mMのトリス−HClおよび約150mMのNaCl中に、PTHアジュバント(約7.5のpHで、約0.56mg/mLの元素のアルミニウムを含有する、2mMのリン酸ナトリウム緩衝液)を含んでもよい。
【0092】
さらに別の実施の形態において、1価PcpA組成物は、投与量当たり、5から50μgの範囲の抗原において、約7.4のpHで、約10mMのトリス−HClおよび約150mMのNaCl中に、PTHアジュバント(約7.5のpHで、約0.56mg/mLの元素のアルミニウムを含有する、2mMのリン酸ナトリウム緩衝液)を含んでもよい。
【0093】
別の実施の形態において、2価配合物の組成物は、投与量当たり、各々5から50μg/投与量の範囲で2種類のタンパク質(以下:PhtD、PlyD1またはPcpAから選択される)、約7.4のpHで、約10mMのトリス−HClおよび約150mMのNaCl中に、PTHアジュバント(約7.5のpHで、約0.56mg/mLの元素のアルミニウムを含有する、2mMのリン酸ナトリウム緩衝液)を含んでもよい。
【0094】
さらに別の実施の形態において、3価配合物の組成物は、投与量当たり、各々5から50μg/投与量の範囲で3種類のタンパク質(PhtD、PlyD1、PcpA)、約7.4のpHで、約10mMのトリス−HClおよび約150mMのNaCl中に、PTHアジュバント(約7.5のpHで、約0.56mg/mLの元素のアルミニウムを含有する、2mMのリン酸ナトリウム緩衝液)を含んでもよい。
【0095】
別の例において、前記組成物は、安定性に対して利益を提供することが示されてきた、ソルビトール、またはスクロースを含む(下記参照)。これらの成分の量は、例えば、5〜15%、8〜12%または10%のソルビトールまたはスクロースであって差し支えない。これらの成分が10%で存在する特別な実施例が、下記に記載されている。好ましい実施の形態において、組成物は、10%のソルビトールまたは10%のスクロースを含む。
【0096】
本発明は、改善された性質を有する肺炎レンサ球菌タンパク質(例えば、PcpA、PhtX(例えば、PhtD)、無毒化ニューモリシン)を含む組成物を生成するために使用できる賦形剤を特定する方法も含む。これらの方法は、以下にさらに記載されているものなどのスクリーニングアッセイを含み、これは、組成物の1種類以上のタンパク質成分の安定性を増加させる条件の特定を容易にする。これらの方法は、以下にさらに記載されているような安定性アッセイを含む。さらに、本発明は、溶解度、免疫原性および粘度アッセイを含む、所望の配合物を特定するための他のアッセイの使用を含む。
【0097】
本発明のある実施の形態による組成物は、(i)水酸化アルミニウムアジュバントを、ホスフェート、カーボネート、サルフェート、カルボキシレート、ジホスホネートまたはこれらの化合物2種類以上の混合物で処理し、(ii)処理された水酸化アルミニウムアジュバントを、免疫原性PcpAポリペプチドおよび/または免疫原性PhtXポリペプチドと混合することによって調製してもよい。好ましい実施の形態において、免疫原性PhtXポリペプチドはPhtDである。
【0098】
本発明の肺炎レンサ球菌ポリペプチドを1種類以上含有する免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を使用して、肺炎レンサ球菌感染症を予防および/または治療してもよい。本発明の予防法および治療法は、例えば、治療自体の実施、その後の感染症の予防、または受動免疫化にその後使用するための抗体の産生において、開示された免疫原性ポリペプチド1種類以上によるワクチン接種を含む。
【0099】
本発明の免疫原性組成物には、疾病、疾患、肺炎レンサ球菌感染症に関連するまたはそれから生じる症状または症候を予防または治療する方法に用途が見出されている。疾病、疾患および症状という用語は、ここでは交換可能に使用される。詳しくは、予防法および治療法は、治療上効果的な量の薬剤組成物を被験者に投与することを含む。特別な実施の形態において、肺炎レンサ球菌を予防または治療する方法が提供される。
【0100】
ここに用いたように、疾病または疾患の予防は、肺炎レンサ球菌に関連する特定の疾病または疾患の発症から被験者を防御するために、本発明の薬剤組成物を治療上効果的な量で被験者に投与することを意味することが意図されている。
【0101】
疾病または疾患の治療により、肺炎レンサ球菌により発症する疾病に罹患した、または肺炎レンサ球菌に曝露された被験者に、本発明の薬剤組成物を治療上効果的な量投与することであって、その目的が、その疾病の症状または症候を治す、癒す、緩和する、軽減する、変える、治癒する、改良する、改善する、または影響を与えることである投与が意図されている。
【0102】
治療上効果的な量は、所定の症状または投与計画にとって治療効果を提供する量を称する。治療上効果的な量は、患者の特徴(年齢、体重、性別、症状、他の疾病との合併症など)に基づいて、医療従事者により決定できる。この治療上効果的な量は、前記組成物の投与経路によってもさらに影響を受ける。
【0103】
被験者における肺炎球菌疾病のリスクを減少させる方法であって、被験者に、開示された免疫原性ポリペプチド1種類以上を含む免疫原性組成物を投与する工程を含む方法も開示される。肺炎球菌疾病(すなわち、症候性感染症)の例としては、副鼻腔感染症、中耳炎、気管支炎、肺炎、髄膜炎、溶血性尿毒症および菌血症(敗血症)が挙げられる。これらの感染症の内の任意の1つ以上のリスクは、ここに記載された方法によって減少するであろう。好ましい方法は、被験者に侵襲性肺炎球菌感染症および/または肺炎のリスクを減少させる方法であって、被験者に、免疫原性PcpAポリペプチドおよび免疫原性PhtX(例えば、PhtD)ポリペプチドを含む免疫原性組成物を投与する工程を含む方法を含む。他の好ましい方法において、前記組成物は、無毒化ニューモリシン(例えば、PlyD1)も含む。
【0104】
本開示は、免疫原性組成物またはその配合物を被験者に投与することによって、哺乳類において免疫反応を誘発させる方法も提供する。これは、被験者に前記組成物の薬学的に許容される配合物を投与して、被験者の免疫系に免疫原性ポリペプチドおよび/またはアジュバントを曝露することによって行われるであろう。その投与は、一度で行っても、多数回行ってもよい。一例において、1回以上の投与は、いわゆる「プライム・ブースト」法の一部として行ってもよい。他の投与システムは、徐放性、遅延解除性または持効性送達システムを含んでよい。
【0105】
免疫原性組成物は、免疫原性組成物およびアジュバントまたは、従来のまたは他の装置を使用して哺乳類に投与するために組成物を溶液に容易に溶解させるために1種類以上の薬学的に許容される希釈剤を含むもどし溶液を含むキット形態で提示してもよい。そのようなキットは、必要に応じて、組成物の液体形態の投与のための装置(例えば、(皮下)注射器、マイクロニードルアレイ)および/または使用のための説明書を含むであろう。
【0106】
ここに開示された組成物およびワクチンは、様々な送達システムに含ませてもよい。一例において、その組成物は、投与のための「マイクロニードルアレイ」または「マイクロニードルパッチ」送達システムに適用してもよい。これのマイクロニードルアレイまたはパッチは、一般に、基材に取り付けられ、乾燥形態のワクチンが塗布された複数の針状突起を含む。哺乳類の皮膚に施用するときに、針状突起は、皮膚を突き刺し、ワクチンを送達して、被験哺乳類の免疫化を行う。
【0107】
定義
ここに用いた「抗原」という用語は、哺乳類に導入されたときに、対応する免疫体(抗体)の形成を開始し、媒介できるか、または主要組織適合複合体(MHC)によって結合され、T細胞に提示され得る物質を称する。抗原は、哺乳類の抗原への曝露により、異なる特異性を有する複数の対応する抗体を産生するように、多数の抗原決定基を有するであろう。抗原としては、以下に限られないが、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸およびそれらの断片、変異株および組合せが挙げられるであろう。
【0108】
「免疫原」という用語は、適応的免疫反応を誘発できる物質である。
【0109】
ペプチド、タンパク質およびポリペプチドという用語は、ここでは交換可能に使用される。
【0110】
「単離された」ポリペプチドは、天然の環境から除去されたものである。例えば、単離されたポリペプチドは、細胞質から、または細胞膜から、除去されたポリペプチドであり、天然の環境のポリペプチド、核酸、および他の細胞物質の多くは、もはや存在しない。「単離可能な」ポリペプチドは、特定の供給源から単離できるポリペプチドである。「精製された」ポリペプチドは、元々関連付けられる他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは少なくとも75%含まない、最も好ましくは少なくとも90%含まないものである。それらが天然に生じる微生物の外部で、例えば、化学的または組換え手段によって、産生されるポリペプチドは、天然の環境中に決して存在しないので、定義により、単離され、精製されたと考えられる。
【0111】
ここに用いたように、ポリペプチドの「断片」は、長さで、好ましくは少なくとも約40の残基、または60の残基、好ましくは少なくとも約100の残基を有する。肺炎レンサ球菌ポリペプチドの断片は、当該技術分野に公知の方法によって産生できる。
【0112】
「抗体」という用語は、未精製または部分精製形態(すなわち、ハイブリドーマ上清、腹水、ポリクローナル抗血清)または精製形態の全抗体または断片化抗体を含む。「精製」抗体は、最初に共に見つけられた(すなわち、ハイブリドーマ上清または腹水調製品の一部として)タンパク質の少なくとも50%から分離されたものである。
【0113】
明細書および添付の特許請求の範囲に用いられるように、単数形は、明らかにそうではないと文脈に記載されていない限り、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、断片の言及は、断片の混合物を含んでよく、薬剤担体またはアジュバントの言及は、そのような担体またはアジュバント2種類以上の混合物を含んでよい。
【0114】
ここに用いたように、被験者または宿主は、個体を意味する。
【0115】
随意的なまたは必要に応じては、その後に記載された事象または状況が、起こり得るまたは起こり得ないこと、並びにその記載が、当該事象または状況が起こる例と、起こらない例を含むことを意味する。例えば、「必要に応じて組成物が組合せを含み得る」という句は、その組成物が、異なる分子の組合せを含んでもよく、またはその記載がその組合せとその組合せの不在の両方(すなわち、その組合せの個々の構成員)を含むように組合せを含まなくてもよいことを意味する。
【0116】
範囲は、約ある特定の値から、および/または約別の特定の値までと、ここに表してよい。そのような範囲が表された場合、別の態様は、そのある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、約またはおおよそという先行詞の使用によって、近似として表現されている場合、その特定の値は、別の態様を形成すると理解されよう。さらに、範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、他の端点とは関係なくの両方で有意であると理解されよう。
【0117】
防ぐ、予防する、および予防という用語は、ここで、所定の症状に関する所定の治療に関連する(例えば、肺炎レンサ球菌感染症の予防)場合、治療される被験者は、臨床的に観察可能なレベルの症状を全く発症しないか、またはその治療が行われなかったであろうよりも遅くおよび/または少ない程度で発症することを意味する。これらの用語は、被験者がその症状の態様をなんであれ経験しない状況のみに限定されない。例えば、治療は、症状の所定の徴候を生じることが予測されたであろう刺激への患者の曝露中に与えられ、そうでなければ予測された症状より少ないおよび/または穏やかな症候を被験者が経験することになった場合、その症状を防いだと言われる。治療は、被験者が、感染の穏やかな明白な症候のみしか示さないことによって、感染症を「予防」できる。これは、感染する微生物が、どの細胞にも侵入しなかったに違いないことを意味するものではない。
【0118】
同様に、所定の治療による感染症のリスクに関連してここに使用される減少する、減少している、および減少(例えば、肺炎レンサ球菌感染症のリスクの減少)は、治療(例えば、免疫原性ポリペプチドの投与)を行わずに感染症を発症した対象または基準レベルと比べて、より遅いまたはより低い程度で感染症を被験者が発症することを意味する。感染症のリスクの減少により、被験者は、感染症の穏やかな明白な症候または感染症の遅い症候しか示さないであろう。これは、感染する微生物がどの細胞にも侵入しなかったはずであることを意味するものではない。
【0119】
本開示に列記した全ての文献をここに引用する。
【実施例】
【0120】
先の開示は、本発明を一般的に説明している。より完全な理解は、以下の特別な実施例を参照することにより得られる。これらの実施例は、説明の目的のためだけに記載されており、本発明の範囲を制限することを意図していない。形態の変化および同等物の置換は、状況が示唆するまたは便宜にするように、考えられる。特定の用語がここに使用されているが、そのような用語は、説明の意味であって、制限を目的とするものではない。
【0121】
使用されているが、本開示およびこれらの実施例に明白に記載されていない、分子遺伝学、タンパク質生化学、免疫学および発酵技法の方法は、科学文献に十分に報告されており、十分に、当業者の能力の範囲内である。
【0122】
実施例1A
組換えPcpAおよびPhtDポリペプチド
この実施例は、PcpAタンパク質およびPhtDタンパク質の組換えによる調製を記載する。手短に言うと、肺炎レンサ球菌(ATCC 55987として1997年6月27日に寄託された菌株14453(マウス毒性莢膜血清型6B菌株))からの2種類の組換え由来タンパク質抗原であるPhtD(国際公開第2009/012588号パンフレット)およびPcpA(国際公開第2008/022302号パンフレット)を大腸菌中で組換え発現し、単離し、従来の精製プロトコルにしたがって、連続カラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0123】
PhtD遺伝子(天然のシグナルペプチドは除く)を、AccuPrime High Fidelityポリメラーゼ(Invitrogen)およびプライマーのSpn0211とSpn0213を使用して、肺炎レンサ球菌14453ゲノムからPCR増幅した。Spn0211とSpn0213は、NocIおよびXhoI制限部位をそれぞれ、5’末端と3’末端に導入した(表2参照)。PCR産物を、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製し、アガロースゲル上で泳動させてサイズを確認した。PCR産物とpET28a(+)ベクター(Novagen)を両方ともNcoIとXhoIで消化し、その後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen)を使用してアガロースゲルから精製した。消化されたベクターおよび遺伝子を、TA DNAリガーゼ(Invitrogen)を使用して、一緒にライゲーションした。ライゲーション混合物を化学的コンピテントな大腸菌DH5α中に形質転換させ、50μg/mlのカナマイシンを含有するLuria寒天上に播種することにより、平板培養することによって、陽性クローンを選択した。プラスミドクローンpBAC27からDNAを単離し、塩基配列決定法によって正確であると確認した。
【0124】
次いで、プラスミド(pBAC27)をエレクトロポレーションによって大腸菌BL21(DE3)中に導入した。形質転換された菌株を約37℃で増殖させ、1mMのIPTGの添加によって、タンパク質発現を誘発した。遺伝子産物の発現を、SDS−PAGE解析によって、正確なサイズ(すなわち、約91.9kDa)の誘発タンパク質バンドの存在より確認した。
【表2】

【0125】
pBAC27のポリペプチドの予測したアミノ酸配列は以下のとおりである:
【化1】

【0126】
PcpA遺伝子(シグナル配列およびコリン結合ドメインを除く)を、クローニングの簡素化のために設計された制限エンドヌクレアーゼ部位を含むPCRプライマー(表3参照)およびAccuprime Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を使用して、肺炎レンサ球菌14453ゲノムからPCR増幅した。pET−30a(+)(Novagen)のプラスミドDNAを低コピー数プラスミドとして精製し、NdeIおよびXhoIにより消化し、その後ゲル精製を行うことによって、クローニングベクターとして使用するために調製した。その結果得られた1335塩基対断片は、XhoI(3’末端)およびNdeI(5’末端)制限部位に挟まれたPcpA(シグナル配列およびコリン結合ドメインを除く)であった。増幅された断片を清浄にし、NdeIおよびXhoIにより消化し、次いで、ゲル精製し、pET−30a(+)ベクター中にライゲーションした。この挿入断片を塩基配列決定法により確認し、新たなプラスミドをpJMS87と指定した。
【表3】

【0127】
pJMS87のポリペプチドの予測したアミノ酸配列は以下のとおりである:
【化2】

【0128】
化学的コンピテントな大腸菌BL21(DE3)細胞をプラスミドpJMS87のDNAで形質転換した。遺伝子産物の発現を、SDS−PAGE解析によって、正確なサイズ(すなわち、約49.4kDa)の誘発タンパク質バンドの存在より確認した。
【0129】
クローニングされたPcpAポリペプチドはシグナル配列およびコリン結合ドメインを欠如しているので、そのアミノ酸配列は、全長のPcpAタンパク質のアミノ酸27から470に対応している。この領域は、8つの可変位置しか有さず、調査した菌株全ての中で極めて保存されている。配列の最も相違する対は、98.7%の同一性を有する。
【0130】
組換えPcpAタンパク質および組換えPhtDタンパク質に関するベクターNTiにより予測される等電点は、それぞれ、7.19および5.16であった。
【0131】
PcpA遺伝子およびPhtD遺伝子の各々は、以下の血清型において検出された:1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7、7F、9N、9V、11A/B、11A/D/F、12F/B、14、15B、15B/C、16、18C、19A、19F、22、23、23B、23F、33F、34、35B。数多くのこれらの血清型は、現在市販されている肺炎球菌複合体ワクチンPCV7により対処されない。
【0132】
これらの組換えタンパク質産物は、標準方法を使用して、発現させ、単離し、精製した。
【0133】
いずれかの組換えタンパク質のアジュバントを添加した1価組成物を、標準方法を使用して、トリス緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、単離され精製されたタンパク質にアジュバント(例えば、水酸化アルミニウムアジュバント(例えば、「Alhydrogel」85、2%)またはAlPO4)を配合することによって、調製した。配合された材料をガラスバイアルに移し、2℃から8℃で貯蔵した。PhtDおよびPcpA両方のアジュバントを添加した2価組成物を、各アジュバントを添加した所望の濃度の1価配合物のアリコートを容器に分取し、室温で約0.5時間に亘りNutator(転頭運動式ミキサ)により混合することによって調製した。次いで、所望の容積の配合物を、ゴム栓とアルミニウム蓋を備えた、殺菌済みの3mLのガラスバイアルに分取した。あるいは、所望の濃度の各単離し精製したタンパク質を一緒に混合し、次いで、トリス緩衝生理食塩水(pH7.4)中でその混合物にアジュバントを配合することによって、2価組成物を調製した。
【0134】
実施例1B
この実施例は、表面修飾したアジュバントおよびこのアジュバントを含む配合物の調製を記載する。表面修飾アジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(「Alhydrogel」、Brenntag)をホスフェートで処理することによって調製した。使用した水酸化アルミニウムアジュバントは、製造業者によれば、再度の加圧滅菌処理に耐えるが、凍結した場合には破壊される、湿潤ゲル懸濁液であった。製造業者によれば、pHが5〜7に維持された場合、アジュバントは、正の電荷を有し、負に帯電した抗原(例えば、中性pHに維持された場合、酸性等電点を有するタンパク質)を吸着できる。
【0135】
a) AlO(OH)のホスフェート処理−AlO(OH)の水性懸濁液(約20mg/mL)をリン酸緩衝原液(約400モル/L)と混合し、約pH7.4の10mMのトリス−HCl(Sigma Aldrich)で希釈して、約13mg/mLのAlOOH/200mMのPO4を有するホスフェート処理済みAlO(OH)懸濁液(ここで「PTH」と称する)を調製した。次いで、この懸濁液を室温で約30分間から24時間に亘り混合した。
【0136】
b) 抗原の吸着−組換え由来のPcpAおよびPhtD抗原(実施例1Aに記載したように、発現し、単離し、精製した)を個別にホスフェート処理AlO(OH)に吸着させた。
【0137】
約0.2〜0.4mg/mLの精製抗原(すなわち、rPcpAまたはrPhtD)および0.56mgの元素のアルミニウム/ml/PTH懸濁液PO4mMを含有する混合物を調製した。あるいは、標準方法を使用して、トリス緩衝生理食塩水(pH7.4)中に水酸化アルミニウムアジュバント(「Alhydrogel」85、2%)またはAlPO4と共に精製抗原を含有する混合物を調製した。混合物を室温で約30分間から24時間に亘りオービタルシェーカー内で混合して、抗原とアジュバントの会合を促進した。類似の吸着体をいくつも調製し、典型的な予備吸着組成物は:タンパク質(PhtDまたはPcpA):0.2〜0.4mg/ml、ホスフェート:2から80mM(好ましくは、2から20mM)およびAlO(OH):1.25mg/ml(0.56mgの元素のAl/ml)。調製した抗原吸着サンプルを、使用するまで、約2℃〜8℃で貯蔵した。あるいは、ホスフェート処理した水酸化アルミニウムアジュバントの原液を使用することによって、抗原に一緒にアジュバントを添加した(2価配合物を調製するために)。
【0138】
c) 2価配合物の調製−PTHに吸着されたPhtDおよびPTHに吸着されたPcpAの中間体バルクロット(1価配合物)をブレンドし、オービタルシェーカー内において室温で約30分間に亘り一緒に混合して、2価配合物を調製した。典型的な予備吸着組成物は:0.05mg/mlの各タンパク質(PhtDまたはPcpA);ホスフェート:2から20mMおよび1.25mg/mLのAlO(OH)(0.56mgの元素のAl/ml)。
【0139】
実施例2
様々な投与量のPcpAおよびPhtDが配合された2価組成物による抗原干渉および体液反応の評価
この実施例は、動物における多成分組成物の免疫原性の分析を記載する。精製したPhtDおよびPcpAタンパク質、水酸化アルミニウムアジュバント(「Alhydrogel」85、2%、25.52mg/mL)、トリス緩衝生理食塩水(10mMのトリス−HCl pH7.4/150mMのNaCl)を使用して、配合物を調製した(実施例1に記載したように)。配合物を約30分間に亘りNutatorで混合し、ガラスバイアルに分配した。
【0140】
6から8週間の年齢の10匹の雌のネズミBalb/cK−72(Charles River)のグループを、適用可能な配合物で3週間間隔で3回、皮下(SC)で免疫化した:
A. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(5μg/mLのPcpA+1.3mg/mLのAlOOH)
B. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(12.5μg/mLのPcpA+1.3mg/mLのAlOOH)
C. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(25μg/mLのPcpA+1.3mg/mLのAlOOH)
D. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
E. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(12.5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
F. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(25μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
G. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(5μg/mLのPcpA+5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
H. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(5μg/mLのPcpA+12.5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
I. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(5μg/mLのPcpA+25μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
J. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(12.5μg/mLのPcpA+5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
K. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(12.5μg/mLのPcpA+12.5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
L. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(12.5μg/mLのPcpA+25μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
M. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(25μg/mLのPcpA+5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
N. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(25μg/mLのPcpA+12.5μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
O. トリス緩衝生理食塩水pH=7.4中(25μg/mLのPcpA+25μg/mLのPhtD+1.3mg/mLのAlOOH)
【0141】
サンプル血液を、最初の免疫化の2日前、および最初と二回目と三回目の免疫化後に全ての動物から採血した。個々のネズミからの血液サンプルを5分間に亘り9,000rpmで遠心分離し、回収した血清を−20℃で貯蔵した。
【0142】
プールした処理前血液と、最初と二回目と三回目の免疫化後に採集した血清において、エンドポイント希釈ELISAによって、全抗原特異的IgG力価を測定し、各グループの相乗平均力価が図1に示されている。未処理血液中の抗体力価は検出限界未満(<100)であったのに対し、PhtDおよびPcpA両方の1価配合物に関する最終的な血液力価は、先の研究から観察したものと一致するように、全てのグループにおいて両方の抗原について高かった。PhtDおよびPcpA特異的抗体のELISA力価が表4に要約されている。
【表4】

【0143】
ELISAデータの統計分析で、1価PhtD配合物により誘発された抗PhtD反応と比較した、2価配合物により誘発された(三回目の免疫化後)抗PhtD反応へのPcpA濃度の影響を調査した。同様に、1価PcpA配合物により誘発された抗PcpA反応と比較した、2価配合物により誘発された(三回目の免疫化後)抗PcpA反応へのPhtD濃度の影響も評価した。抗PcpA IgG力価について、1価PcPA配合物により誘発された反応を、2価配合物により誘発されたものと比較した場合(9/9グループ)、統計的な有意差は観察されなかった。したがって、PhtDについて、統計的に有意な相互作用は、陽性でも陰性でも、調査したどの投与量において、観察されなかった。抗PhtD力価に関して、2価配合物により誘発された抗PhtD力価(すなわち、反応)と対応する1価のPhtD配合物による誘発された力価との間のほとんどの比較において、統計的に有意な阻害には気付かなかった(7/9グループ)。2つの例外が観察された:各々、抗PhtD力価において二分の一の減少が観察された:(i)2.5μg/投与量でのPhtDの1価配合物と比べた2.5μg/投与量でのPhtDおよび1μg/投与量でのPcpAを含有する2価配合物(p=0.034);および(ii)5.0μg/投与量でのPhtDの1価配合物と比べた5.0μg/投与量でのPhtDおよび1μg/投与量でのPcpAを含有する2価配合物(p=0.027)。1μg/投与量のPhtDでも、より多い投与量のPcpA(すなわち、2.5μgおよび5μg)でも、統計的な差は観察されなかった。しかしながら、この二分の一の減少は、モデルの変動性の範囲内であり、それゆえ、有意なレベルの干渉は反映していない。
【0144】
統計分析により決定された、2価組成物における各抗原(PcpA、PhtD)の最適濃度は、25μg/mL(すなわち、5μg/投与量)であった。この濃度の抗原を含む1価組成物(すなわち、25μg/mLのPcpAまたはPhtD)も、最高の抗原特異的IgG力価を誘発した。
【0145】
実施例3
2価ワクチンの3回の筋肉注射後のラットにおける免疫原性研究
この実施例は、別の動物種(すなわち、ラット)における多成分ワクチンの安全性および免疫原性の分析を記載する。
【0146】
(性別当たり20匹)Wistar Cr:WI(Han)ラットの4つのグループに、0日目、21日目および42日目の3週間間隔で、対照、アジュバントを含むものと含まない2価ワクチン組成物またはアジュバントを添加した1価PcpAワクチン組成物いずれかを3回筋肉注射した(下記の表5の研究設計を参照)。最後の投与から2日目または15日目に、動物の検死を行った。組成物は、実施例1に記載したように調製した。アジュバントが添加された組成物を調製するために使用したアジュバントは水酸化アルミニウム(「Alhydrogel」、Brenntag)であった。研究設計の概要については表5を参照のこと。
【表5】

【0147】
疾病率/死亡率チェックを少なくとも毎日二回行い、臨床検査を毎日行った。治療関連と考えられる、時期尚早の死、悪い臨床的症状、体重への影響、食物消費、臨床化学または眼科の特徴はなかった。
【0148】
血清を、ELISAによって、PhtDおよびPcpA特異的IgG抗体力価について分析した。結果が、図2aからdに示されている。全ての治療動物は、健全な抗PcpAおよび抗PthD反応を示したが、アジュバントを添加していないグループにおける反応は、むらが大きかった。アジュバントを添加した1価PcpAワクチンは、アジュバントを添加した2価ワクチンと同等の免疫反応を誘発し、2価配合物におけるPhtDによる免疫干渉のないことを示す。
【0149】
2価とPcpAの1価のワクチン組成物の各々は、全ての動物において免疫反応を誘発した。ここでの結果によれば、2価とPcpAの1価のワクチン組成物はラットにおいて免疫原性である。アジュバントを添加した組成物は、未添加の組成物よりも免疫原性が強かった。
【0150】
実施例4
異なるアルミニウム系アジュバントが配合された2価組成物の免疫原性の評価
この実施例は、異なるアルミニウム系アジュバントが配合された多成分組成物の免疫原性の分析を記載する。
【0151】
ある研究において、組換えPhtDおよびPcpA(実施例1に記載したように調製し、精製した)に、新しい水酸化アルミニウムアジュバント(「Alhydrogel」)、約6ヶ月間に亘り2〜8℃でインキュベーションしたねかせた(aged)水酸化アルミニウムアジュバント(「Alhdrogel」、Brenntag)、様々な濃度のホスフェートPO4(2mM、10mMおよび20mM)で処理した水酸化アルミニウムアジュバント(「Alhydrogel」、Brenntag)またはAlPO4(Adjuphos(登録商標)、Brenntag)いずれかを配合した。配合物は、実施例1に記載したように調製した。到着したときに6〜8週間の年齢の5(または4)匹の雌のBalb/cマウス(Charles River)のグループを、適用可能な配合物により、3週間間隔で筋肉内(IM)に3回、免疫化した。各グループに投与した具体的な配合物が、表6に列記されている。
【0152】
最後の採血後のPhtDおよびPcpA特異的抗体ELISA力価が表6に要約されている。PcpAおよび/またはPhtDタンパク質で免疫化したマウスは、免疫化後に抗原特異的抗体反応を生じた。新しいまたはねかせたAlOOHまたはホスフェートで前処理した(使用した3つの濃度のいずれかで)ものいずれかを含む2価配合物で免疫化した動物において、抗PhtDおよび抗PcpAの力価に有意な差は見られなかった。AlPO4(AlOOHよりも免疫原性が低い)を配合した2価組成物による免疫化で、AlOOHまたはPO4含有AlOOHアジュバントを含む配合物と比べたときに、著しく低い抗PhtD IgG力価が生じた。これらの結果は、水酸化アルミニウムアジュバントおよびAlPO4アジュバントを配合した2価組成物を比較した他の研究においても確認にされた。
【0153】
全体で、アルミニウム系アジュバント(水酸化アルミニウムアジュバント、様々な濃度のPO4で処理した水酸化アルミニウムアジュバント、AlPO4)を配合した、免疫原としての組換えPcpAおよびPhtDの両方を使用して、4種類の研究を完了した。両方の抗原は、1〜5μg/投与量に及ぶ様々な投与量で与えられた。プールした予め採血した血液および3回のIMまたはSC免疫化後に採集した血清において、特異的PcpAおよびPhtD抗原力価を測定した。予め採血した血液中の抗体力価は検出限界未満(<100)であったのに対し、最後の採血の力価は、抗PcpAについて、124827から204800まで、抗PhtDについて、36204から97454までに及んだ。
【0154】
要するに、ここでの結果によれば、試験したアジュバントのいずれかを配合した組成物は免疫原性であった。水酸化アルミニウムアジュバント(すなわち、水酸化アルミニウムアジュバントおよびホスフェート処理した水酸化アルミニウムアジュバント)を配合した組換えPhtDおよびPcpAタンパク質による免疫化で、AlPO4配合物による免疫化と比べると、PcpAおよびPhtDの両方に対して、著しく高い抗原特異的抗体反応(IgG力価)が生じた。
【表6】

【0155】
実施例5
肺炎レンサ球菌株14453、MDまたは941192の接種後の生存
この実施例は、マウスの鼻腔内接種モデルにおける致死肺炎球菌接種に対する多成分ワクチンの防御能力を記載する。
【0156】
鼻腔内(IN)接種モデルを使用して、組換えPhtDおよびPcpAの2価配合物を評価した。このモデルにおいて、雌のCBA/jマウス(グループ当たりN=15)のグループを、アジュバント(2mMのPO4で処理したAlOOH(65μg/投与量))を含むTBS中に配合した、精製した組換えPhtDおよびPcpAタンパク質の各々を5μg/投与量含有する2価組成物により筋肉内(IM)で免疫化した。注射容積は、投与量当たり50μLであった。陰性の対照として、PBSプラシーボ含有アルミニウムアジュバントを注射した。動物を、研究の開始後の0週間、3週間、および6週間でIMにより免疫化した。9週間目に、動物に、PBS懸濁液(マウス当たり40μLの抗原投与容積)中、致死量(約106CFU)の肺炎レンサ球菌株MD、株14453または941192を鼻腔内に投与した。サンプル血液を、最初の注射の4日前(0週間での免疫化前)および接種の4日前に全ての動物から採取した。抗体ELISAアッセイによって、全PhtDおよびPcpA特異的IgG反応について、血清を分析した。
【0157】
接種後、死亡率について、マウスを毎日モニタした。全ての生存するマウスは、接種の11日後に安楽死させた。免疫化したグループにおける生存率をプラシーボ対照と比較することによって(0.05未満のp値を有意であると考えた)、フィッシャーの片側正確確率検定を使用して防御を決定した。この研究の結果(生存率%で示されている)が図3および下記の表7に示されている。
【表7】

【0158】
組み合わせた組換えPhtDおよびPcpAタンパク質による免疫化により、IN接種モデルにおいて、肺炎レンサ球菌の3種類の異なる菌株による致死IN接種に対する防御が生じた。14453株またはMD株のいずれかが接種されたグループにおいて示された防御は、統計的に有意であった。941192株を接種したグループも高い生存率%を有したが、陰性対照グループ(アジュバントのみで免疫化した)において示された生存率百分率に鑑みて、この防御は統計的に有意であるとは考えられなかった。
【0159】
実施例6
異なる投与経路(皮下または筋肉内)を使用した接種後の体液反応および生存率
この実施例は、マウスの鼻腔内接種モデルにおける致死肺炎球菌接種に対する多成分ワクチンの防御能力を記載する。
【0160】
PhtDおよびPcpAの2価組成物を調製し(rPhtDおよびrPcpAの各々に2種類の異なるロットを使用して)、2mMのホスフェートで前処理した水酸化アルミニウムアジュバント(AlOOH)を配合した(本出願と同時に出願された特許出願に記載されたプロセスにしたがう)。調製した配合物を、マウスの活性免疫化鼻腔内接種モデル(Zhang Y.A. et. al., Infect. Immunol. 69:3827-3836に記載されたモデルに基づく)において評価した。より詳しくは、到着した際に6〜8週間の年齢である、6匹の雌のCBA/jマウス(Charles River)の16のグループを、適用可能な配合物により3週間間隔で3回、筋肉内または皮下により免疫化した:
A. PcpAロットA、PhtDロットC、アジュバントなし、皮下(25μg/ml/タンパク質)
B. PcpAロットB、PhtDロットC、アジュバントなし、皮下(25μg/ml/タンパク質)
C. PcpAロットA、PhtDロットD、アジュバントなし、皮下(25μg/ml/タンパク質)
D. PcpAロットB、PhtDロットD、アジュバントなし、皮下(25μg/ml/タンパク質)
E. PcpAロットA、PhtDロットC+2mMのホスフェート処理AlOOH、皮下(25μg/ml/タンパク質)
F. PcpAロットB、PhtDロットC+2mMのホスフェート処理AlOOH、皮下(25μg/ml/タンパク質)
G. PcpAロットA、PhtDロットD+2mMのホスフェート処理AlOOH、皮下(25μg/ml/タンパク質)
H. PcpAロットB、PhtDロットD+2mMのホスフェート処理AlOOH、皮下(25μg/ml/タンパク質)
I. PcpAロットA、PhtDロットC、アジュバントなし、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
J. PcpAロットB、PhtDロットC、アジュバントなし、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
K. PcpAロットA、PhtDロットD、アジュバントなし、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
L. PcpAロットB、PhtDロットD、アジュバントなし、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
M. PcpAロットA、PhtDロットC+2mMのホスフェート処理AlOOH、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
N. PcpAロットB、PhtDロットC+2mMのホスフェート処理AlOOH、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
O. PcpAロットA、PhtDロットD+2mMのホスフェート処理AlOOH、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
P. PcpAロットB、PhtDロットD+2mMのホスフェート処理AlOOH、筋肉内(100μg/ml/タンパク質)
【0161】
投与された2価配合物の各々は、5μg/投与量の各抗原(すなわち、PhtDおよびPcpA)を含み、TBS pH7.4中のアジュバント(1.3mg/mLの2mMのホスフェートで前処理されたAlO(OH))が配合された。マウスに、三回目(最後)の採血から4日後に、致死量(1×106CFU)の肺炎レンサ球菌株MDを投与した。
【0162】
最初と二回目と三回目の免疫化の一日前、および三回目の免疫化の3週間後、全ての動物からサンプル血液を採取した。個々のマウスからの血液サンプルを、5分間に亘り9,000rpmで遠心分離し、回収した血清を−20℃で貯蔵した。
【0163】
エンドポイントELISAおよび定量ELISAにより全抗原特異的IgG力価を測定し、各グループの相乗平均力価が図4aから4bに示されている。生存率結果が図5に要約されている。
【0164】
異なるロットのPcpAおよびPhtDにより誘発された抗PcpAおよび抗PhtDのIgG力価の間には、統計的差はなかった。アジュバントが添加された配合物を皮下により投与することには、利点が認められた。より詳しくは、筋肉内投与された配合物は、皮下投与されたものより免疫原性が弱かった。その上、アジュバントなしの配合物は、アジュバントが添加された配合物よりも免疫原性が弱かった。
【0165】
生存率に関して、試験した配合物は、致死肺炎レンサ球菌接種に対して防御を与えた(100μg/mLの各PhtDとPcpAおよび前処理したAlO(OH)の配合物で免疫化されたグループにおいて、100%の生存率が見られた)。筋肉内で免疫化されたグループと皮下で免疫化されたグループとの間で、生存率%の著しい差はなかった。2つのPthDのロットで免疫化されたグループの生存率%は著しく違わなかったのに対し、2つのPcpAのロットで免疫化されたグループの生存率%は著しく違った(ロットBのほうが著しく高い生存率を与えた)。PcpAのロットBは、アジュバントなしの配合物に対して、アジュバントを添加した配合物のほうが、著しく高い生存率%を与えた。アジュバントを添加した配合物対アジュバントなしの配合物において、他の統計的な利点は認められなかった。
【0166】
この研究において、マウスに接種するために使用した細菌の特定のロットが、この細菌の菌株の先に使用したロットよりも毒性が少ないことが分かった。別の研究(鼻腔内接種モデルを使用した)において、pH=7.4でのトリス−HCl、生理食塩水、150mM中の100μg/mLの各PthDおよびPcpA+1.3mg/mLのAlO(OH)(「Alhydrogel」「85」2%、25.08mg/mL)を含む配合物で免疫化されたマウスの約80%(p値0.011)が、致死肺炎レンサ球菌接種に生存した。
【0167】
実施例7
この実施例は、ウサギPhtDおよびPcpA抗血清の調製を記載する。標準方法論によって、Hisタグ付きPhtD、Hisタグ付きPcpAおよび組換えPhtDおよびPcpAの両方を使用して、ウサギにおいて抗血清を生成させた。血清中のPhtDおよびPcpA特異的抗体の測定は、ELISAによって決定した。PthDの例として、表8に示されるように、PhtD特異的抗体の高い力価が、全ての免疫化したウサギの血清中に検出されたが、予め採血した(ワクチン接種前)血清中には検出されなかった。Hisタグ付きPhtDおよびPhtDタンパク質の両方は、ウサギにおいて免疫原性であり、抗血清は、高い力価のPhtD特異的抗体を有した。His−PcpAおよびPcpAタンパク質についても、同様に結果が観察された(データは示さず)。
【表8】

【0168】
実施例8
この実施例は、ヒトPhtDおよびPcpA特異的抗体の調製を記載する。アフィニティークロマトグラフィーを使用して、正常プールした成人血清から、ヒトポリクローナル抗体を精製した。精製した組換え抗原タンパク質(PhtDまたはPcpA)に共有結合したCNBr−活性化セファロース樹脂を使用して、アフィニティークロマトグラフィーカラムを調製した。ヒトAB血清(Sigma)をこのアフィニティーカラムに結合させ、次いで、これを洗浄し、特異的抗体をグリシン−HCl緩衝液により溶離させた。
【0169】
最終的な精製抗体は、プールした溶離分画を限外濾過により濃縮し、PBS中に緩衝液交換することによって得た。抗体溶液は、0.22μmのシリンジフィルタに通す濾過によって殺菌した。全タンパク質濃度は、UV分光法を使用して決定した。最終抗体調製品の内毒素レベルは、Charles River LaboratoriesからのEndosafe PTS Readerを使用して決定した。精製抗体の純度、特異性および交差反応性は、SDS−PAGE、ウェスタンブロット法および抗体ELISA分析によって決定した。別記しない限り、各ロットは、100mLのヒトAB血清から精製した。
【0170】
実施例9
抗PhtDおよび抗PcpA抗体による表面接触性(surface accessibility)FACSアッセイ
この実施例は、抗PhtDおよび抗PcpA抗体の結合能力の分析を記載する。完全培地またはMn2+欠乏培地いずれかにおいて、凍結菌株から培養物をOD450 0.4〜0.6まで成長させた。細菌を洗浄し、PBS中において様々な濃度のヒトアフィニティー精製抗体と共にインキュベーションした。PcpAに対するヒト精製モノクローナル抗体を陽性対照として使用した。細菌への抗体結合は、二次抗体であるFITC−結合(conjugated)抗ヒトIgGを使用して検出し、フローサイトメトリーを使用して評価した。同様に、抗PhtDおよび抗PcpA特異的ウサギ血清を使用した。細菌への抗体結合を、二次抗体であるFITC−結合抗ウサギIgGを使用して検出し、フローサイトメトリーを使用して評価した。
【0171】
蛍光信号が検出されたときに、定性的アッセイ読み出しとして、細菌を陽性であると記録した。平均蛍光強度(MFI)を、細菌の表面に結合した抗体の量を測定する手段として分析した。
【0172】
表面接触性アッセイ(「SASSY」)を行って、抗原特異的ウサギ血清および精製ヒト抗体の、生きている無傷な肺炎レンサ球菌に結合する能力を決定した。
【0173】
精製ヒト抗体およびウサギPhtd−およびPcpA−抗血清(実施例7および8に記載されたように調製した)は、生きている肺炎レンサ球菌の表面上のタンパク質に結合した。PcpAに陰性であった菌株D39を除いて、研究室および臨床単離体を含む、PhtDおよびPcpA両方の抗血清が、試験した肺炎レンサ球菌の全ての菌株に結合した。しかしながら、このことは、菌株D39(研究室菌株)が、PcpA遺伝子のPCR増幅によりPcpA陰性であったという発見に一致した。PcpAの場合、特に、Mn2+が欠乏し、Zn2+が増加した条件下で、細菌が増殖したときに、認識が生じた。同時に、このデータは、組換えタンパク質に対して高められた、または自然感染により生じた抗体が、天然タンパク質を認識し、様々な臨床単離体上のエピトープが保存されているという証拠を提供する。このデータは、PcpAおよびPhtDの両方が極めて表面接触性であることを示唆する(図6、およびデータは示さず)。陰性対照として、ウサギ免疫前血清を使用した。
【0174】
ヒト精製PhtDおよびPcpA抗血清が、肺炎レンサ球菌への結合に追加の効果を有するか否かを決定するために、10EU/mlの抗PhtD抗体を、増える量の抗PcpA抗血清を含有する各サンプルに加えた。細菌に結合した全抗体の量をMFIにより測定した(図7)。抗PcpA抗体は、用量依存様式で生きている肺炎レンサ球菌に結合できた。抗PhtD抗体の添加は、サンプルのMFIにおける一貫した増加をもたらし、多数の表面タンパク質に対する抗体が同時に結合でき、これにより、細菌の表面上に結合した抗体の総量が増加することが確認された。
【0175】
精製ヒト抗PhtD抗体の有無にかからわず、精製ヒト抗PcpA抗体を、Mn2+欠乏培地中で培養した生きた肺炎レンサ球菌株WU2と共に様々な濃度でインキュベーションした。細菌の表面に結合した抗体は、FITCヤギ抗ヒトIgGを使用して検出した。平均蛍光強度(MFI)が図7に示されている。抗体力価は、抗PcpA EU/ml(抗PcpAおよび抗PcpA+抗PhtDサンプル)または抗PhtD EU/ml(抗PhtDサンプル)において示されている。
【0176】
抗PhtDおよび抗PcpAウサギ血清および精製ヒト抗体に関する表面接触性実験は、PcpAおよびPhtDの両方とも表面接触性であることを示した。さらに、ヒト抗PcpAおよび抗PhtD抗体は同時に結合でき、したがって、細菌に結合する抗体の総量を増加させられた。
【0177】
実施例10
この実施例は、多価組成物により提供される受動的防御の分析を記載する。
【0178】
この研究において、2匹のニュージーランドホワイト種ウサギ(Charles River)を筋肉内(i.m.)で免疫化して、抗PcpA/抗PhtDポリクローナル血清を得るために、AlPO4が配合された組換えPhtDおよびPcpAの2価組成物を使用した。各ウサギに、AlPO4(3mg/ml)中の10μg/投与量のrPcpAおよび10μg/投与量のrPhtDを筋肉注射した(20μgの総タンパク質、500μlの総用量の注射/ウサギ)。その後の2回の免疫化で、、AlPO4中の10μg/投与量のrPcpAおよび10μg/投与量のrPhtDを、3週間間隔で与えた。最初と二回目の免疫化後に、サンプル血液を採取した。最後の血液は、最後の免疫化から3週間後に採取した。血液をゲル状分離剤中で収集し、凝固させ、血清を遠心分離により得、プールし、約−20℃で貯蔵した。両方のウサギについて、PhtDおよびPcpA特異的総IgG抗体力価を評価した。実験に使用したウサギの一方からの血清は、ELISAにより以下の力価を有した:PhtD 204,800およびPcpA 102,400。
【0179】
組換えPhtDタンパク質および/または組換えPcpAタンパク質を特定の血清サンプルに加えて、血清中に存在する対応する抗体を競合的に阻害(遮断)した。対照として、特定の血清サンプルには、どちらの組換えタンパク質も加えなかった。次いで、先に発行された文献(Briles DE et. al., J. Infect Dis. 2000 Dec.)に基づく受動的防御のマウスモデルを使用して、血清サンプルの様々な希釈物を、肺炎レンサ球菌を接種したマウスに投与した。プロビット用量反応曲線を特定するために、投与した血清の対数希釈当たりに観察された生存率%をグラフ化した(図8参照)。各血清サンプルについて、ED50(生存率50%に効果的な対数希釈)を計算した。統計モデルを使用して、遮断血清サンプルと未遮断血清サンプルとの間のED50での差を評価した(下記の表9参照)。
【表9】

【0180】
PcpAおよびPhtD両方の特異的抗体を含有する血清中でPcpA抗体を競合的に阻害すると、ED50(すなわち、生存率50%に効果的な血清の対数希釈)が著しく減少し、この差は、未遮断血清のED50と比べると、統計的に有意であった。PcpAおよびPhtD両方の特異的抗体を含有する血清中でPhtD抗体を競合的に阻害しても、ED50が減少した(統計的に有意ではないが)。PcpAおよびPhtD両方の抗体が競合的に阻害されている(血清に、1:10のタンパク質対血清比で、PhtDおよびPcpAタンパク質の各々を添加することにより)血清サンプルに関して、フィッシャーの正確確率検定により、使用した最高希釈のみで、低い生存率%が統計的に有意に得られ、したがって、ED50は確定できなかった。
【0181】
要約すれば、PhtDおよびPcpA両方の抗体は、2価配合物に対して高められ血清により誘発された受動的防御に寄与した。2価配合物に対して高められた血清により提供される防御は、PhtDおよびPcpA両方の抗体を競合的に阻害することによって遮断され、この結果は、抗体の内の一方のみ(PhtDまたはPcpA)が競合的に阻害されたときに得られた結果とは著しく異なっていた。同様の結果が、同じ受動的防御モデルにおいてウサギ3価超免疫血清(PhtD、PcpAおよびPlyD1を含む3価組成物を使用して高められた)と共にPhtDおよびPcpAタンパク質を使用して得られた。その研究において、PhtDおよびPcpAタンパク質と共に、3価超免疫血清の防御能力を遮断できた。この受動的防御からのこれらの結果は、各タンパク質特異的抗体の寄与は付加的であることを示す。
【0182】
実施例11
ワクチン配合物の免疫原性へのアルミニウム濃度の影響
この実施例は、ホスフェート前処理したAlO(OH)および様々な濃度の元素のアルミニウムを配合した多成分組成物の免疫原性の分析を記載する。
【0183】
雌のBalb/cマウスを使用して、アジュバントを添加した3価配合物により誘発された免疫反応を評価した。3価配合物を調製するために、組換えPhtD、PcpAおよび酵素的に不活性なニューモリシン変異株(PlyD1、PCT出願第CA/2009/001843号公報に配列番号44として記載され、ここに配列番号9として記載されている)に、実施例1に記載したように、AlO(OH)含有PO4(2mM)を配合した。調製した配合物のサンプルを、研究の開始前に2から8℃で貯蔵した。Balb/cマウスのグループを、適用可能な配合物により3週間間隔で3回、筋肉内(IM)で免疫化した:
A. アジュバントなし(TBS pH=7.4中の3価の50μg/mLのPcpAおよびPhtD並びに100μg/mLのPly変異株)
B. トリス生理食塩水 pH=7.4中の3価の50μg/mLのPcpAおよびPhtD並びに100μg/mLのPly変異株+0.56mgのAl/mL PTH、P:Alモル比=0.1(0.56mgのAl/mL 2mMのPO4で処理したAlO(OH))
C. トリス生理食塩水 pH=7.4中の3価の50μg/mLのPcpAおよびPhtD並びに100μg/mLのPly変異株+0.28mgのAl/mL PTH、P:Alモル比=0.1(0.28mgのAl/mL 1mMのPO4で処理したAlO(OH))
D. トリス生理食塩水 pH=7.4中の3価の50μg/mLのPcpAおよびPhtD並びに100μg/mLのPly変異株+1.12mgのAl/mL PTH、P:Alモル比=0.1(1.12mgのAl/mL 4mMのPO4で処理したAlO(OH))
E. トリス生理食塩水 pH=7.4中の3価の50μg/mLのPcpAおよびPhtD並びに100μg/mLのPly変異株+1.68mgのAl/mL PTH、P:Alモル比=0.1(1.68mgのAl/mL 6mMのPO4で処理したAlO(OH))
【0184】
最初と二回目と三回目の免疫化後に、血清を採取した。定量的ELISAによって、全抗原特異的IgG力価を測定し、各グループについて、相乗平均力価(±SD)を計算した。得られた全IgG力価の要約が図9に示されている。
【0185】
全てのアジュバント添加グループ(B、C、DおよびE)が、アジュバントなしのグループ(A)よりも、全ての3種類の抗体に対して、著しく高い力価を生じた(p<0.001)。各抗原について、0.56mgの元素のアルミニウム/mLをPTHに加えたときに、力価レベルはピークとなった(PhtDの場合、0.56mg/mLのアルミニウムで誘発された力価と、2つのそれより高い濃度によるものとの間の差は統計的に有意であった)。同様に、各抗原について、0.28mgの元素のアルミニウム/mLをPTHに加えたときに、力価レベルはより低くなった(PcpAの場合、その差は統計的に有意であった)。これらの発見は意外であった。抗体(IgG)力価は、アルミニウムの濃度に比例して増加すると予測された(Little S.F. et. al., Vaccine, 25:2771-2777 (2007)に報告されているように)。意外なことに、抗原の各々の濃度が一定に維持されていても、力価は、アルミニウム濃度を増加させると、安定水準に達するというよりもむしろ減少した(PhtDについて、これは統計的に有意であった)。
【0186】
実施例12
この実施例は、様々な条件下でのアジュバントを添加したワクチン配合物の安定性の評価を記載する。PTH吸着された数多くのワクチン組成物を5℃、25℃、37℃(すなわち、熱加速条件下)で5日間に亘りインキュベーションした。
【0187】
PcpAの4種類の異なるワクチン配合物(AlO(OH)またはPTH中に配合された)の安定性を評価するために、配合物の各々を37℃で6週間に亘りインキュベーションし、次いで、RP−HPLCにより評価した。得られた安定性の結果が表10に要約されている。未処理のAlO(OH)からの回収は、インキュベーション期間(37℃)後にほぼ50%減少したのに対し、PTH含有配合物においては、ほとんどから全く劣化は観察されなかった。
【表10】

【0188】
1価および2価の配合物(AlO(OH)またはPTHが配合された)におけるPcpAおよびPhtDの安定性を評価するために、AlO(OH)または2mMのホスフェートで処理されたAlO(OH)を使用して、配合物を実施例1に記載されたように調製し、次いで、サンプルを様々な温度(すなわち、5℃、25℃、37℃または45℃)で約16週間に亘りインキュベーションした。次いで、抗原濃度をRP−HPLCにより評価した。得られた安定性の結果が、図10aからfに示されている。図面に示されるように、未処理のAlO(OH)が添加された配合物と比べて、ホスフェート処理されたAlO(OH)が添加された配合物において、PcpAおよびPhtDの劣化速度は、特に加速(ストレス)条件下(例えば、25、37、45℃)で、著しく減少した。
【0189】
多価配合物(AlO(OH)またはPTHが配合された)におけるPcpAおよびPhtDの抗原性安定性を評価するために、2価配合物(100μg/mL)を実施例1に記載されたように調製し、次いで、サンプルを約37℃で約12週間に亘りインキュベーションした。各配合物の抗原性を、時間ゼロと12週間のインキュベーション期間後に、定量ELISAサンドイッチアッセイによって評価した。結果が図11に示されている。37℃での12週間のインキュベーション期間後のPcpAおよびPhtDの両方の抗原性は、AlO(OH)を含む配合物と比べて、PTHを配合したもののほうが著しく高かった。
【0190】
実施例13
この実施例は、数多くの配合物の安定性への様々な賦形剤の影響の評価を記載する。
【0191】
様々な濃度での18のGRAS(一般に安全と認められる)化合物のスクリーニングを行った。アッセイを使用して、評価される各タンパク質(すなわち、PcpA、PhtDおよび無毒化ニューモリシン変異株(PlyD1、PCT出願第CA/2009/001843号公報「Modified PLY Nucleic Acids adn Polypeptides」に配列番号44として記載されている))の熱安定性を増加させる化合物をスクリーニングした。
【0192】
タンパク質抗原の各々を大腸菌中で組換え発現させ、PhtDおよびPcpAについては、実施例1に実質的に記載されたように、PlyD1(ここでは配列番号9と示される配列)については、PCT出願第CA/2009/001843号公報(配列番号44として)に実質的に記載されたように、従来の精製プロトコルにしたがって、連続カラムクロマトグラフィーによって精製した。3種類の抗原全てに関するタンパク質純度は、PR−HPLCおよびSDS−PAGEにより評価されるように、典型的に、90%より高かった。タンパク質のバルクを、150mMの塩化ナトリウムを含有する10mMのトリス、pH7.4中に約1mg/mLで供給した。各タンパク質を、10mMのトリス緩衝液生理食塩水、pH7.5(TBS)中の適切な賦形剤溶液(表11に示された濃度)で所望の濃度(100μg/mLのPcpA;100μg/mLのPhtD;200μg/mLのPlyD1)に希釈し、このタンパク質溶液にPTHを加えて、0.6mgの元素のAl/mLの最終濃度を達成した。対照サンプル(適用可能な賦形剤を含まない)も検定した。SYPRO(登録商標)オレンジ、5000倍(カリフォルニア州、カールズバッド所在のInvitrogen, Inc.)をDMSO(Sigma)で500倍に希釈し、次いで、アジュバントを含むタンパク質溶液に加えた。全ての場合、「SYPRO」オレンジの最適希釈は、5000倍の市販の原液からの10倍であった。
【0193】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)装置(Mx3005p QPCRシステム、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ所在のStratagene)を使用して、96ウェルのポリプロピレンプレート(カリフォルニア州、ラ・ホーヤ所在のStratagene)においてアッセイを行った。約100μLのサンプル容積を各ウェルに加え、次いで、プレートに光学的キャップストリップ(カリフォルニア州、ラ・ホーヤ所在のStratagene)で蓋をして、サンプルの蒸発を防いだ。96ウェルプレートのロータを備えたContifuge Stratos遠心分離機(英国、Heraeus Instruments)内において、室温で1分間に亘り200gでプレートを遠心分離した。次いで、プレートを25℃から96℃まで、毎分1℃で加熱した。蛍光励起および発光フィルタを、それぞれ、492nmおよび610nmに設定した。蛍光読み取り値(610nmで発光、492nmで励起)を、25℃で、次いで、1℃ずつ上昇させながら、各サンプルについて収集した。
【0194】
最小の蛍光の一次導関数の対応温度を使用して、熱転移(溶融温度Tm)を得た。RT−PCRに提供されたMxProソフトウェアを使用して、溶融曲線(または解離曲線)から負の一次導関数トレースの最小を計算した。Tmは、熱溶融における中点と定義され、タンパク質の天然と非天然の形態の自由エネルギーが等しい温度を表す。各賦形剤の影響は、ΔTm=Tm(タンパク質+化合物のサンプル)−Tm(タンパク質の対照サンプル)として評価した。得られた結果の要約が、表11に示されている。このアッセイの感度は、±0.5℃であった。
【0195】
ポリオール、単糖および二糖が、濃度依存様式で、アジュバントが添加されたPlyD1のTmを増加させ、最大の安定化(すなわち、約4℃のTmの増加)は高濃度の糖で観察された。約2℃、PhtDのTmを減少させたアルギニンを除いて、同様の結果が、PcpAおよびPhtDの各々で検出された。以下の賦形剤が、3種類のタンパク質全ての熱安定性を効率的に増加させることが分かった:ソルビトール(20%、10%)、トレハロース(20%)、デキストロース(20%、10%)、スクロース(10%、5%)、および10%のラクトース。
【0196】
ストレス条件下で貯蔵されたPcpAの物理的安定性および抗原性への、スクリーニングアッセイにおいて特定されたいくつかの賦形剤の影響も研究して、先に留意した熱安定性の影響との相関関係に気付いた。PcpAタンパク質を、図に記載した適切な賦形剤溶液(10mMのトリス緩衝液pH7.4中の、10%のソルビトール、10%のスクロース、10%のトレハロース)により所望の濃度(例えば、約100μg/mL)に希釈し、このタンパク質溶液にPTHを加えて、0.6mgの元素のAl/mLの最終濃度を達成した。対照サンプル(賦形剤を含まない)もこの研究に含めた。サンプルを3日間に亘り50℃で貯蔵した。タンパク質の劣化をRP−HPLCにより評価し、抗原性は、定量性サンドイッチELISAにより評価した。結果が、図12Aおよび12Bに示されている。
【0197】
無傷のタンパク質の濃度を、ダイオードアレイUV検出器を備えたAgilent 1200 HPLCシステムにおいてRP−HPLCにより測定した。サンプルを、37℃で5時間に亘りPBS/Zwittergent(登録商標)緩衝液中でアジュバントから脱離させ、ACE C4カラム(英国、アバディーン所在のAdvanced Chromatography Technologies)および緩衝液A(水中0.1%のTFA)と緩衝液B(CAN中0.1%のTFA)の移動相勾配を使用し、1ml/分の流量で30分間に亘る毎分0.75%の緩衝液Bの勾配を使用して、分離した。タンパク質を210nmでのUV吸収度によりモニタし、外部標準により作成した5点直線較正曲線に対して定量化した。
【0198】
定量性抗原ELISAサンドイッチ法を使用して、時間ゼロおよび50℃での3日間のインキュベーション後のPcpA配合物の抗原性を評価した。抗原の捕捉にはウサギIgG抗PcpA血清を使用し、検出には十分に特徴付けられたモノクローナル抗PcpAを使用した。手短に言えば、96ウェルプレートを、室温(RT)で18時間に亘り、0.05MのNa2CO3/NaHCO3緩衝液中2μg/mLの濃度でウサギ抗PhtD IgGで被覆し、室温で1時間に亘り、1%のBSA/PBSでブロッキングし、その後、PBS/0.1%のTween20(WB)の洗浄緩衝液で2回洗浄した。試験サンプルの2倍希釈物、内部対照および公知の濃度の精製PcpAの参照標準を0.1%のNSA/PBS/0.1%のTween20(SB)内に調製し、ウェルに加え、室温で1時間に亘りインキュベーションし、その後、WB中で5回洗浄した。検出用一次mAbをSB中で0.1μg/mLの濃度に希釈し、室温で1時間に亘りインキュベーションし、WB中で5回洗浄し、SB中の1/40K希釈で特異的なF(ab’)2ロバ抗マウスIgG(H+L)を添加した。WB中の5回の洗浄後、ウェルにTMB/H22基質を加え、室温で10分間に亘りインキュベーションした。1MのH2SO4の添加により、反応を停止させた。ELISAプレートをA450/540nmでプレートリーダ(SpectraMax、M5、カリフォルニア州、サニーベール所在のMolecular Devices)内で読み取り、試験サンプルデータを、ソフトウェアSoftMax PROを使用して、4パラメータ・ロジスティックを使用した標準曲線からの外挿により計算する。
【0199】
図12Aに示されるように、RP−HPLCから導かれたデータは、アジュバントを添加したPcpAのTmを増加させた賦形剤は、3日間に亘る50℃でのタンパク質の劣化速度を減少させたことも示した。長期に亘るPcpAタンパク質の回収パーセントにより決定される最高の安定性は、10%のソルビトールにより与えられた(図12Aに示されている)。アジュバントを添加したPcpAの抗原性も、これらの賦形剤によって維持された(図12B参照)。RP−HPLCの結果と良好な相関関係で、ソルビトールは、スクロースやトレハロースよりも高い程度で抗原性を維持すると思われた。
【0200】
10%のソルビトール、10%のスクロースまたは10%のトレハロースの添加により、賦形剤を含まない対照サンプルのものと比べると、50℃での速度定数が著しく減少し、PcpAの半減期が増加した(表12)。9.0の緩衝液のpHは、対照のものと比べて、タンパク質のTmを減少させたが、50℃での劣化を加速させた(すなわち、速度定数を増加させた)(表12)。要するに、これらの結果は、アッセイにより検出された熱安定性、RP−HPLCにより検出された物理的安定性、およびELISAにより検出された抗原性の間の良好な相関関係を示唆する。
【0201】
これらの研究において得られた結果を考えると、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースおよび/またはトレハロースは、物理的安定性を増加させるための、PcpA、PhtDおよび無毒化ニューモリシンタンパク質(PlyD1などの)の1価または多価(例えば、2価、3価)配合物中に含んでもよい賦形剤の例である。
【表11−1】

【表11−2】

【表12】

【0202】
実施例14
アルミニウムアジュバントが配合されたか、されていない3種類の異なる抗原の安定性へのpHの影響を調査した。アッセイを使用して、評価される各タンパク質の熱安定性へのpHの影響を評価した(すなわち、PcpA、PhtDおよび無毒化ニューモリシンタンパク質(PlyD1、PCT出願第CA/2009/001843号公報「Modified PLY Nucleic Acids adn Polypeptides」に配列番号44として記載され、ここでの配列リストでは配列番号9として示された))。
【0203】
タンパク質抗原の各々を大腸菌中で組換え発現させ、PhtDおよびPcpAについては、実施例1に実質的に記載されたように、PlyD1については、PCT出願第CA/2009/001843号公報に実質的に記載されたように、従来の精製プロトコルにしたがって、連続カラムクロマトグラフィーによって精製した。3種類の抗原全てに関するタンパク質純度は、PR−HPLCおよびSDS−PAGEにより評価されるように、典型的に、90%より高かった。タンパク質のバルクを、150mMの塩化ナトリウムを含有する10mMのトリス、pH7.4中に約1mg/mLで供給した。各タンパク質を、適切な緩衝液(すなわち、10mMのトリス緩衝液(pH7.5〜9.0)、10mMのリン酸緩衝液(pH6.0〜7.0)および10mMの酢酸緩衝液(pH5.0〜5.5))で所望の濃度(100μg/mLのPcpA;100μg/mLのPhtD;200μg/mLのPlyD1)に希釈し、このタンパク質溶液にアルミニウムアジュバント(すなわち、水酸化アルミニウム(「Alhydrogel」、デンマーク国、Brenntag Biosector)、またはリン酸アルミニウム(Adju−Phos、デンマーク国、Brenntag Biosector)、または2mMのホスフェート(PTH)で前処理した水酸化アルミニウム)を加えて、0.6mgの元素のAl/mLの最終濃度を達成した。対照サンプル(適用可能な賦形剤を含まない)も検定した。「SYPRO」オレンジ、5000倍(カリフォルニア州、カールズバッド所在のInvitrogen, Inc.)をDMSO(Sigma)で500倍に希釈し、次いで、アジュバントを含むタンパク質溶液に加えた。全ての場合、「SYPRO」オレンジの最適希釈は、5000倍の市販の原液からの10倍であった。
【0204】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)装置(Mx3005p QPCRシステム、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ所在のStratagene)を使用して、96ウェルのポリプロピレンプレート(カリフォルニア州、ラ・ホーヤ所在のStratagene)においてアッセイを行った。約100μLのサンプル容積を各ウェルに加え、次いで、プレートに光学的キャップストリップ(カリフォルニア州、ラ・ホーヤ所在のStratagene)で蓋をして、サンプルの蒸発を防いだ。96ウェルプレートのロータを備えたContifuge Stratos遠心分離機(英国、Heraeus Instruments)内において、室温で1分間に亘り200gでプレートを遠心分離した。次いで、プレートを25℃から96℃まで、毎分1℃で加熱した。蛍光励起および発光フィルタを、それぞれ、492nmおよび610nmに設定した。蛍光読み取り値(610nmで発光、492nmで励起)を、25℃で、次いで、1℃ずつ上昇させながら、各サンプルについて採集した。
【0205】
最小の蛍光の一次導関数の対応温度を使用して、熱転移(溶融温度Tm)を得た。RT−PCRに提供されたMxProソフトウェアを使用して、溶融曲線(または解離曲線)から負の一次導関数トレースの最小を計算した。Tmは、熱溶融における中点と定義され、タンパク質の天然と非天然の形態の自由エネルギーが等しい温度を表す。得られた結果の要約が、図13に示されている。このアッセイの感度は、±0.5℃であった。
【0206】
ほとんどのタンパク質にとって、溶液のpHは、タンパク質へのタイプと総電荷を決定し、それゆえ、静電相互作用および全体的な安定性に影響するであろう。アジュバントが添加されたタンパク質にとって、溶液のpHと緩衝剤の種類は、アルミニウムアジュバントの表面での微環境のpHに強い影響力を有し、このことは、最終的に、アルミニウムアジュバントに吸着されるタンパク質の劣化速度に影響し得る。
【0207】
3種類のタンパク質全ては、研究したpH範囲で水酸化アルミニウムに90から100%吸着された。リン酸アルミニウムにおいて、PcpAの吸着率は80%超であったのに対し、PhtDおよびPlyD1(各々酸性タンパク質)は、pH5より上では、アジュバントに極わずかしか吸着されなかった(データは示さず)。
【0208】
図13は、アジュバントが配合された場合と、アジュバントを含まない対照の、3種類の抗原各々へのpHの影響を示している。アジュバントを含まない抗原は、特殊なpH安定性プロファイルを示した。PcpAは、6.0から9.0の広いpH範囲で安定なTm値を示し、pHが6.0から5.0に低下するにつれて、Tm値が減少した。他方で、アジュバントを含まないPhtDおよびPlyD1の熱安定性は、酸性pHで最大化されるようであった(図13参照)。アジュバントを含まないタンパク質の熱安定性プロファイルは、アルミニウムアジュバントを添加した結果として、著しく変えられた。アジュバントを含まない対照と比べると、水酸化アルミニウムは、比較的高いpH値と低いpH値で、3種類のタンパク質全ての安定性を減少させるようであり、pHが5から9まで増加したときに、ベル形曲線を示し、最大の安定性は中性pHに近かった。これらのデータは、2mMのホスフェートによるAlOOHの前処理により、未処理のAlOOHと比べると、高いpHと低いpHで3種類の抗原全ての安定性を著しく改善したことを示す(図13A〜C)。この方法によって、pH6.0〜7.5の範囲において、著しい変化は観察されなかった。
【0209】
アジュバントを含まない対照と比べると、リン酸アルミニウムをアジュバントとして使用した場合、PcpAおよびPlyD1のTm対pHプロファイルに重大な変化は観察されなかった(図13Aおよび13C)。APが添加されたPhtDの場合、アジュバントを含まない対照と比べると、6未満のpHで、Tmの著しい低下が観察された。
【0210】
実施例15
この実施例は、多成分配合物中の様々な抗原組成物の影響の評価を記載する。
【0211】
3種類の別々の肺炎レンサ球菌抗原を、1価、2価および3価の形態で配合し、IN接種モデルを使用して評価した(先の実施例において実質的に記載したように)。1価、2価および3価の配合物を、アジュバント(2mMのPO4により処理されたAlOOH(0.56μgのAl/投与量))を含むTBS、pH7.4中の最適未満の投与量の精製された組換えPcpA、PhtDおよびPlyD1(無毒化ニューモリシン)を使用して調製した。追加の影響を検出するように、限られた防御しか誘発しないか、全く誘発しないことが示された各抗原の最適未満の投与量を選択した。タンパク質抗原の各々を大腸菌中で組換え発現させ、先に実質的に記載したような従来の精製プロトコルにしたがって、連続カラムクロマトグラフィーによって精製した。3種類の抗原全てに関するタンパク質純度は、PR−HPLCおよびSDS−PAGEにより評価されるように、典型的に、90%より高かった。雌のCBA/Jマウス(n=15/グループ)のグループ(n=26)を、適用可能な配合物(50μL)で各免疫化間に3週間の間隔で3回、筋肉内で免疫化した。
【0212】
マウスに、最後の免疫化の3週間後に致死量の肺炎レンサ球菌株14453、血清型6B(1.5×106cfu/マウス)を投与し、2週間に亘り生存と健康について観察した。生存率結果(下記の表13に要約されている)を計算し、フィッシャーの正確確率検定法によって、統計的に分析した。全抗原特異的IgG力価(各免疫化後に採取した血清からの)を定量ELISAによって測定し、各グループについて相乗平均力価(±SD)を計算した。得られた全IgG力価の要約が図14に示されている。
【表13】

【0213】
PcpA1価配合物は、非常に低い投与量でさえも(低い抗体力価にもかかわらず)、防御的であった。PcpA1価配合物と比べると、3価配合物は、同様のレベルの防御を提供した。PhtDおよびPlyD1の1価配合物と比べると、3価配合物は著しく高い防御を提供した。3価配合物は、2価配合物と比べて高い生存率を誘発した(2価配合物(0.0067:0.027;PcpA:PhtD)と比べて、2種類の3価配合物(0.067:0.027:0.5;0.0067:0.027:0.116;PcpA:PhtD:PlyD1)に関して、差は統計的に有意であった、p=0.043)。2価の配合物は、それぞれ、PcpAおよびPhtDについて、0.0067および0.027で防御的ではなく、これは、PcpAにとって1価配合物として投与されたときに、防御的投与量であった。しかしながら、これら2つのグループ間での生存率の差は統計的に有意ではないので、1価/2価配合物の間に観察された差は、アッセイの変動性によるものであった。
【0214】
2価配合物(0.0067:0.027;PcpA:PhtD)および3価配合物における致死接種から少なくとも60%のマウスを防御する(ED60)上でのPcpAおよびPhtDの各々の平均効果的投与量を計算した(下記の表14)。PcpAおよびPhtDの各々について、対応する2価配合物と比べると、3価配合物において、ED60は減少した。これらの結果により、PlyD1の添加は、2価配合物(すなわち、PcpA+PhtD)に平均で2倍の投与量節約効果があった。
【0215】
これらのデータは、3価配合物による免疫化で、2価配合物と比べて良好な防御を誘発することを示す。3価配合物中にPlyD1を含むことには、防御全体に阻害効果はない。
【表14】

【0216】
実施例16
この実施例は、最高レベルの抗体反応を誘発する最小の効果的な抗原投与量の評価を記載する。
【0217】
実施した1価研究から、抗原投与量当たりの全抗原特異的IgG力価(ELISAにより測定した)をグラフにプロットして、最高の力価を誘発する最小の効果的な抗原投与量を評価した。代表的なグラフが図15A、B、Cに示されている。PcpAについて、予測した最小の抗原投与量は、0.196μg/マウス(0.147、95%低;0.245、95%高)と算定され、PhtDについて、予測した最小抗原投与量は、0.935μg/マウス(0.533、95%低;1.337、95%高)と算定された。PlyD1の最小抗原投与量は、>5μg/マウスと予測された。抗原の間の免疫干渉は、実施した2価と3価の研究(例えば、実施例15におけるような)において評価した比率のいずれでも検出されなかったので、多成分組成物において、1:1:1の比率のPcpA:PhtD:PlyD1を使用してよい。
【0218】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチドおよびタンパク質のポリヒスチジン三連構造ファミリーからなる群より選択される単離された免疫原性肺炎レンサ球菌ポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項2】
肺炎レンサ球菌感染により発症する疾病に対して被験者における防御を与えるための免疫原性組成物であって、単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチドおよびタンパク質のポリヒスチジン三連構造ファミリーからなる群より選択される単離された免疫原性肺炎レンサ球菌ポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項3】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチドおよび単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PhtDポリペプチドまたはその融合タンパク質を含むことを特徴とする請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記PhtDポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有することを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記PhtDポリペプチドが組換えにより産生されることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記組換えにより産生されたPhtDポリペプチドが、シグナルペプチド配列を欠如したN末端切断体であることを特徴とする請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記PhtDタンパク質が、配列番号5に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むことを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項8】
前記PcpAポリペプチドが組換えにより産生されることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記PcpAポリペプチドが、シグナルペプチド配列を欠如したN末端切断体であることを特徴とする請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記PcpAポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記PcpAポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号7に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項12】
配列番号1に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドおよび配列番号2に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項13】
配列番号5に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドおよび配列番号7に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項14】
配列番号2に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドおよび配列番号5に記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項15】
約5から100μg/投与量の前記PhtDポリペプチド、および
約5から100μg/投与量の前記PcpAポリペプチド、
を含むことを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項16】
ニューモリシンをさらに含むことを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
前記ニューモリシンが無毒化されていることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項18】
無毒化された前記ニューモリシンが、野生型配列の位置65、293および428にアミノ酸置換基を含む変異株ニューモリシンタンパク質であることを特徴とする請求項17記載の組成物。
【請求項19】
3つの前記アミノ酸置換基が、T65→C、G293→C、およびC428→Aを含むことを特徴とする請求項18記載の組成物。
【請求項20】
約5から100μg/投与量の前記ニューモリシンを含むことを特徴とする請求項18記載の組成物。
【請求項21】
さらにアジュバントを含むことを特徴とする請求項1から20いずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびホスフェート処理された水酸化アルミニウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項21記載の組成物。
【請求項23】
請求項1から20いずれか1項記載の免疫原性組成物、および同時または連続投与のためのアジュバントを含むワクチンキット。
【請求項24】
請求項1から22いずれか1項記載の免疫原性組成物および薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン。
【請求項25】
請求項1から22いずれか1項記載の免疫原性組成物を薬学的に許容される賦形剤と混合する工程を含む、請求項24記載のワクチンを製造するプロセス。
【請求項26】
肺炎レンサ球菌感染により発症する疾病に対してヒトの被験者を免疫化する方法であって、前記被験者に、免疫学的に効果的な量の請求項1から22いずれか1項記載の免疫原性組成物または請求項24記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項27】
前記ヒトの被験者が幼児であり、前記疾病が髄膜炎および/または菌血症であることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記ヒトの被験者が幼児であり、前記疾病が肺炎および/または結膜炎であることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記ヒトの被験者が幼児であり、前記疾病が中耳炎であることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記疾病が肺炎または侵襲性肺炎球菌感染症であることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項31】
肺炎レンサ球菌感染により発症する疾病の治療または予防のための薬剤の製造における請求項1から22いずれか1項記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項32】
哺乳類において肺炎レンサ球菌に対する防御免疫反応を誘発する方法であって、前記哺乳類に、免疫学的に効果的な量の請求項1から22いずれか1項記載の免疫原性組成物または請求項24記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項33】
被験者における肺炎レンサ球菌感染により発症する疾病の重症度の予防または減少のための薬剤の製造における請求項1から22いずれか1項記載の免疫原性組成物の使用であって、免疫学的に効果的な量の前記組成物が前記被験者に投与されることを特徴とする使用。
【請求項34】
肺炎レンサ球菌感染により発症する疾病に対する防御を与えるための追加の抗原性成分を少なくとも1種類さらに含むことを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項35】
前記単離されたポリペプチドの各々が、該ポリペプチドの個々の免疫原性を損なわない量で存在することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項36】
哺乳類における免疫反応を高めるための薬剤の製造における請求項1記載の組成物の使用。
【請求項37】
肺炎球菌感染に対して防御するために哺乳類における免疫反応を高めるための薬剤の製造における請求項1記載の組成物の使用。
【請求項38】
哺乳類における免疫反応を高める方法であって、前記哺乳類に、効果的な量の請求項1から22いずれか1項記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項39】
レンサ球菌属の細菌種による哺乳類における感染症を治療または予防する方法であって、前記哺乳類に、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体および配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体を投与する工程を含む方法。
【請求項40】
レンサ球菌属の細菌種による哺乳類における感染症を治療または予防する方法であって、前記哺乳類に、配列番号5に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体および配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体を投与する工程を含む方法。
【請求項41】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチド、少なくとも1種類の追加の肺炎レンサ球菌ポリペプチド、および水中油型アジュバントエマルションを含む免疫原性組成物であって、
前記水中油型アジュバントエマルションが、少なくとも、スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、および疎水性非イオン性界面活性剤を含み、該エマルションが熱可逆性であり、油滴の個体群の90体積%が200nm未満のサイズを有することを特徴とする組成物。
【請求項42】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチド、少なくとも1種類の追加の肺炎レンサ球菌ポリペプチド、および水中油型アジュバントエマルションを含む、肺炎レンサ球菌により発症する疾病に対して被験者における防御を与えるための免疫原性組成物であって、
前記水中油型アジュバントエマルションが、少なくとも、スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、および疎水性非イオン性界面活性剤を含み、該エマルションが熱可逆性であり、油滴の個体群の90体積%が200nm未満のサイズを有することを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項43】
ニューモリシンをさらに含むことを特徴とする請求項41または42記載の免疫原性組成物。
【請求項44】
前記ニューモリシンが無毒化されていることを特徴とする請求項43記載の免疫原性組成物。
【請求項45】
前記ニューモリシンが遺伝学的に無毒化されていることを特徴とする請求項44記載の免疫原性組成物。
【請求項46】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PhtDポリペプチド、少なくとも1種類の追加の肺炎レンサ球菌ポリペプチド、および水中油型アジュバントエマルションを含む免疫原性組成物であって、
前記水中油型アジュバントエマルションが、少なくとも、スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、および疎水性非イオン性界面活性剤を含み、該エマルションが熱可逆性であり、油滴の個体群の90体積%が200nm未満のサイズを有することを特徴とする組成物。
【請求項47】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PhtDポリペプチド、少なくとも1種類の追加の肺炎レンサ球菌ポリペプチド、および水中油型アジュバントエマルションを含む、肺炎レンサ球菌により発症する疾病に対して被験者における防御を与えるための免疫原性組成物であって、
前記水中油型アジュバントエマルションが、少なくとも、スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、および疎水性非イオン性界面活性剤を含み、該エマルションが熱可逆性であり、油滴の個体群の90体積%が200nm未満のサイズを有することを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項48】
ニューモリシンをさらに含むことを特徴とする請求項46または47記載の免疫原性組成物。
【請求項49】
前記ニューモリシンが無毒化されていることを特徴とする請求項48記載の免疫原性組成物。
【請求項50】
前記ニューモリシンが遺伝学的に無毒化されていることを特徴とする請求項49記載の免疫原性組成物。
【請求項51】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PhtDポリペプチドをさらに含むことを特徴とする請求項41から45いずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項52】
単離された免疫原性肺炎レンサ球菌PcpAポリペプチドをさらに含むことを特徴とする請求項46から50いずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項53】
前記PhtDポリペプチドおよび前記PcpAポリペプチドの各々を約1μg/投与量から約10μg/投与量含むことを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項54】
前記PhtDポリペプチドおよび前記PcpAポリペプチドの各々を約10μg/投与量から約100μg/投与量含むことを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項55】
前記PhtDポリペプチドおよび前記PcpAポリペプチドの各々を約10μg/投与量含むことを特徴とする請求項54記載の組成物。
【請求項56】
前記PhtDポリペプチドおよび前記PcpAポリペプチドの各々を約25μg/投与量含むことを特徴とする請求項54記載の組成物。
【請求項57】
約10μg/投与量から約100μg/投与量のニューモリシンをさらに含むことを特徴とする請求項54記載の組成物。
【請求項58】
ニューモリシンをさらに含むことを特徴とする請求項55または56記載の組成物。
【請求項59】
前記ニューモリシンが、野生型配列の位置65、293および428にアミノ酸置換基を含む変異株ニューモリシンタンパク質であることを特徴とする請求項57または58記載の組成物。
【請求項60】
3つの前記アミノ酸置換基が、T65→C、G293→C、およびC428→Aを含むことを特徴とする請求項59記載の組成物。
【請求項61】
前記PhtDポリペプチドおよび前記PcpAポリペプチドの各々を約50μg/投与量含むことを特徴とする請求項54記載の組成物。
【請求項62】
免疫原性PcpAポリペプチドおよび1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、該1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、前記免疫原性PcpAポリペプチドの熱安定性を増加させることを特徴とする組成物。
【請求項63】
免疫原性PhtXポリペプチドおよび1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、該1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、前記免疫原性PhtXポリペプチドの熱安定性を増加させることを特徴とする組成物。
【請求項64】
無毒化ニューモリシンポリペプチドおよび1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、該1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、前記無毒化ニューモリシンポリペプチドの熱安定性を増加させることを特徴とする組成物。
【請求項65】
前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、該1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、前記ポリペプチドの熱安定性を0.5℃以上増加させることを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項66】
アジュバントをさらに含むことを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項67】
前記アジュバントがアルミニウム化合物を含むことを特徴とする請求項66記載の組成物。
【請求項68】
液体形態にあることを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項69】
凍結乾燥、噴霧乾燥または発泡乾燥された、乾燥粉末形態にあることを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項70】
前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、緩衝液、等張化剤、単純な炭水化物、糖、炭水化物ポリマー、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリアミノ酸、多価アルコールおよびそのエーテル、洗浄剤、脂質、界面活性剤、酸化防止剤、塩、またはそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項71】
前記緩衝液が、トリス−HCl、NaClを含むトリスHCl、およびHEPESからなる群より選択され、5〜100mMの濃度であることを特徴とする請求項70記載の組成物。
【請求項72】
前記糖が、1〜30%の濃度のソルビトール、トレハロース、およびスクロースから選択されることを特徴とする請求項70記載の組成物。
【請求項73】
前記1種類以上の賦形剤が、表11に列記された賦形剤を1種類以上含むことを特徴とする請求項70記載の組成物。
【請求項74】
ソルビトールを含むことを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項75】
前記ポリペプチドを5〜100μg/投与量、ソルビトールを2〜20%含み、pH5.5〜8.5であることを特徴とする請求項62から64いずれか1項記載の組成物。
【請求項76】
免疫原性PcpAポリペプチドおよび1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を製造する方法であって、前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤が、該1種類以上の薬学的に許容される賦形剤を含まない組成物に対して、前記PcpAポリペプチドの熱安定性を増加させるものであり、免疫原性PcpAポリペプチドを提供し、該ポリペプチドを前記1種類以上の薬学的に許容される賦形剤と混合する各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項77】
被験者において肺炎レンサ球菌に対する免疫反応を誘発する方法であって、前記被験者に請求項62から75いずれか1項記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項78】
免疫原性PhtXポリペプチドをさらに含むことを特徴とする請求項62記載の組成物。
【請求項79】
免疫原性PhtDポリペプチドをさらに含むことを特徴とする請求項78記載の組成物。
【請求項80】
無毒化ニューモリシンをさらに含むことを特徴とする請求項62、63、78または79記載の組成物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−515015(P2013−515015A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545030(P2012−545030)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001977
【国際公開番号】WO2011/075823
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】