説明

免疫反応を調節する組成物および方法

本発明は、Fasciola hepaticaの排出/分泌(ES)成分またはその分画を含む、炎症性免疫反応を抑制する組成物を提供する。組成物は、T細胞介在性炎症性免疫反応および特に自己免疫疾患の処置および予防において特に有用である。本発明は、T細胞介在性免疫反応を調節する方法にまでさらに及び、この場合、反応の進行を抑制するために、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分の治療的有効量をこのような処置を必要とする被検体に投与する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、例えばTh1またはThIL−17介在性炎症状態、慢性炎症状態および自己免疫疾患等の、Tリンパ球細胞が病原性役割を有する疾患および/または状態を、予防または処置するために免疫反応を調節する新規の組成物および方法に関する。
【0002】
[背景技術]
自然免疫系の細胞、特に樹状細胞(DC)は、未感作(ナイーブ)CD4T細胞の、機能的に別個のTh1、Th2、ThIL−17(Th17としても知られる)または制御性T(Treg)細胞のサブタイプへの分化を方向付ける。保存微生物分子と病原体認識受容体(PRR)、例えば、Toll様受容体(TLR)およびインテグリンの結合を介した未成熟DCの活性化は、DCの成熟およびリンパ節へのホーミングを伴い、ここで、成熟DCは、未感作T細胞に対して抗原(Ag)を提示する。病原体由来分子による樹状細胞の活性化は、未感作CD4T細胞の、別個のT細胞のサブタイプへの分化を制御する重要な役割を果たす。Th1細胞は、細胞内感染に対して防御するが、さらに炎症反応および自己免疫疾患に関連し、一方、Th2細胞は、アレルギー性反応に関与する。IL−17産生T細胞(ThIL−17またはTh17)は、T細胞の病原性サブセットであり、これらは、自己免疫疾患に寄与する重要な炎症促進性サイトカインであるIL−6、TNF−アルファおよび特に、IL−17およびIL−17Fの産生を特徴とする。Treg細胞は、Th1、Th2およびTh17反応を抑制することができる。
【0003】
免疫介在性状態
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系に影響を及ぼす自己免疫疾患である。この疾患を有する個体は、自己反応性T細胞(自己抗原を認識するT細胞)を有し、これは、インターロイキン(IL)−1ベータおよび腫瘍壊死因子(TNF)アルファと合わせて、神経線維のミエリン鞘に沿った炎症性病変の形成に関与する。MS患者の脳脊髄液(CSF)は、活性化T細胞を含有し、これは、脳組織に浸潤し、特徴的な炎症性病変を引き起こし、ミエリンを破壊する。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、MSの動物モデルである。これは、マウスまたはラットにおいて、完全フロインドアジュバントと、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)またはそのペプチドの注射により誘導される。この疾患はまた、IL−17を分泌する(ThIL−17細胞またはTh17細胞と呼ばれる)MBPまたはMOG特異的T細胞の移入によっても誘導することができる。動物は、中枢神経系のミエリン鞘の細胞浸潤を進行させ、脱髄およびついには麻痺を生じる。臨床兆候および病理学的変化は、MSと似ている。
【0004】
クローン病および潰瘍性大腸炎は、ヒトの炎症性腸疾患である。これらの自己免疫疾患は、CD4T細胞により媒介される腸の炎症状態である。
【0005】
多くの自己免疫および慢性炎症性疾患は、満足できる処置がなく、多くの場合、ステロイドおよび非ステロイド系抗炎症薬を使用する。しかし、これらは、非特異的であり、副作用を有する。ごく最近、主要な炎症性サイトカイン、特に腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)を阻害する薬剤が開発されている。これらは、特定の自己免疫疾患に対して効果的な抗体または可溶性TNF受容体を含むが、(再発性結核および癌を含めた)副作用と関連し、TNF−アルファが病状の主要なメディエーターである疾患に限定される。別の治療的手法は、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10)の直接投与であるが、これは、in vivoのサイトカインの半減期が短いことにより効果が損なわれる。別の方法は、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10を誘導する薬剤を使用し、これは、in vivoで直接の免疫抑制効果を有する。サプレッサーまたは制御性T細胞の誘導を促進する分子は、炎症性Th1介在性免疫反応を制限する可能性を有し、T細胞介在性自己免疫反応の炎症性反応を媒介する、IL−17を分泌するT細胞(ThIL−17)もまたそうである。
【0006】
蠕虫感染
寄生蠕虫類の感染は、免疫抑制および低下したT細胞反応に関連する。マウスにおいて、肝吸虫であるFasciola hepatica感染は、高濃度のサイトカインIL−4、IL−5およびIL−10ならびにIgG1抗体を伴う、非常に分極されたTh2反応を誘導する。F.hepatica感染は、IFN−ガンマ分泌性T細胞(Th1細胞)反応および細菌病原体であるBordetella pertussisに対する防御を抑制した。F.hepatica感染はまた、Th1反応および全細胞pertussisワクチンで誘導されたB.pertussisに対する防御を阻害した。
【0007】
F.hepaticaの排泄/分泌(ES)成分はまた、全細胞B.pertussisワクチンにより誘導されたTh1反応を抑制することが示されている。この抑制は、カテプシンLプロテイナーゼの阻害剤により反転することが示され、これは、カテプシンLプロテイナーゼが抑制効果の媒介に関与したことを示唆する。
【0008】
さらに、F.hepatica ES成分から精製されたカテプシンLプロテイナーゼは、Pwワクチンで誘導されたTh1反応を抑制した。これらの試験はまた、免疫反応の抑制がIL−4欠損マウスにおいて反転することが示されたことから、F.hepaticaまたはカテプシンLプロテイナーゼにより誘導された抑制が、IL−4により媒介されたことを明らかにした。
【0009】
それゆえ、上記の試験の結論は、カテプシンLプロテイナーゼが、F.hepaticaおよびF.hepatica ES成分に関与し、これらの抑制効果を媒介し、かつこの抑制がIL−4誘導を介して媒介されることであった。
【0010】
自己免疫疾患、炎症状態または免疫介在性障害の発症および進行を、これらの状態の原因であるT細胞反応の調節を介して予防する方法は、これらの状態の予防および処置に非常に有利であるだろう。
【0011】
本発明の発明者等は、驚くことに、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分が免疫反応の抑制を媒介するカテプシンLプロテイナーゼ以外の化合物を含むことを同定した。カテプシンLプロテイナーゼによる免疫反応の抑制がIL−4サイトカイン産生により媒介されると考えられる一方、本発明者らは、ES成分が、免疫反応を調節するよう作用する多くの別のメカニズムを介した免疫抑制を媒介することを同定した。特に、本発明者らは、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分が自然免疫系の細胞と相互作用し、樹状細胞をT制御性表現型へと活性化し(これは、IL−10を産生する)、これがTh1および/またはThIL−17表現型を有するT細胞の産生から免疫応答を偏らせることによって、サイトカイン発現の調節、特にIL−10サイトカインレベルの上方制御を介して、免疫反応を調節することを同定した。
【0012】
特に、本発明者らは、F.hepaticaのES成分が抗炎症性サイトカイン、例えば免疫反応の強力な調節物質として作用することができるIL−10の産生を刺激することを同定した。
【0013】
さらに、本発明者らはまた、驚くことに、F.hepatica由来のES分画が制御性T細胞(Treg)の産生を促進する表現型に樹状細胞を活性化することができることを示しており、続いて、これらのTregは、Th1およびThIL−17型反応の抑制を介して免疫反応を調節する。特に、このような樹状細胞は、未感作(ナイーブ)の樹状細胞の細胞表面マーカーの発現濃度に比べ、細胞表面マーカーCD80、CD86、CD40およびMHCクラスIIの発現濃度が低い一方、CCR5の発現濃度が高いことが観察されることが示された。IL−17産生T細胞サブセットは、IL−17、IL−17F、IL−17H、IL−17F、IL−17A、IL−6およびTNFを含めたサイトカインプロフィールを分泌する。IL−1およびIL−23またはIL−6およびTGF−ベータにより促進されるIL−17産生T(Th17(ThIL−17))細胞は、Th1細胞とは別個の炎症性T細胞のサブタイプであり、多くの自己免疫疾患および慢性炎症状態の病原である。
【0014】
これらの効果は、今までにカテプシンLプロテイナーゼに関連して認められている免疫調節効果から独立している。本発明者らにより認められた免疫調節効果は、カテプシンLプロテイナーゼ阻害剤により抑制されず、IL−4依存性ではないことが重要である。理論に制約されることを望まないが、それゆえ、本発明者らは、ES成分により媒介される免疫調節効果が少なくとも部分的に、カテプシンLプロテイナーゼ以外のES成分由来の成分または産物により媒介されると予測する。
【0015】
免疫系の特定の細胞型により発現される反応およびサイトカインプロフィールの調節は、言い換えると、免疫反応全体のより広範囲の調節を導くことができる。本発明者らは、さらに驚くことに、F.hepatica由来のES分画がIFN−ガンマ、IL−17産生Th1細胞(Th17(ThIL−17)細胞)およびTh1細胞の誘導を、Th1およびThIL−17細胞の増殖を促進するIL−12およびIL−23の阻害、またはTh1およびThIL−17細胞の活性化を阻害すること、あるいはTh1およびThIL−17細胞の機能を抑制することによるいずれかを介して阻害することを示した。
【0016】
[発明の開示]
本発明の第1の態様において、T細胞介在性炎症性免疫反応の処置または予防のための組成物を提供し、この組成物は、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体を含む。
【0017】
組成物が、Fasciola hepaticaのES成分から単離されたタンパク質もしくはペプチドの分画、誘導体産物、突然変異体、断片または変異体を含む場合、次いで、前記分画または分子は、ES成分に関連して、本明細書において本発明者らにより同定されたものと同じ免疫調節活性、すなわち、Th1およびThIL−17細胞の増殖を促進するIL−12およびIL−23の阻害、またはTh1およびThIL−17細胞の活性化を阻害すること、あるいはTh1およびThIL−17細胞の機能を抑制することによるいずれかを介して、IFN−ガンマ、IL−17産生Th1細胞(Th17(ThIL−17)細胞)およびTh1細胞の産生および/または活性の抑制を示す。
【0018】
適切には、ES成分から単離されたタンパク質は、カテプシンLではない。
適切には、組成物により処置されたT細胞介在性炎症性免疫反応は、炎症促進性免疫反応である。典型的な炎症促進性免疫反応は、Th1介在性免疫反応であり、この進行は、本発明の本態様の組成物投与後に抑制される。特に、この組成物は、Th1細胞の誘導および機能を抑制または阻害する。適切には、Th1細胞産生の上記抑制または阻害は、抗炎症性サイトカイン、特にIL−10の産生により引き起こされる。適切には、IL−10産生は、ES成分またはその分画あるいは産物の投与により誘導される樹状細胞の成熟後に誘導される。上記抑制は、サイトカインTGF−ベータの産生または機能の強化によりさらに媒介されることができる。さらに、前記炎症促進性免疫反応の抑制は、ES成分またはTreg(制御性T細胞)を刺激するその成分に起因し、細胞間接触により炎症促進性免疫反応の抑制を媒介することができる。
【0019】
適切には、ES成分は、寄生虫Fasciola hepaticaにより放出される排泄/分泌産物を含む。一実施形態において、ES成分は、単離形態または精製形態として提供されることができる。ES成分は、生組織由来のES成分の回収により得ることができる。
【0020】
他の実施形態において、ES成分は、複数の分画に分画されることができ、上記得られた分画の少なくとも1つは、本発明の本態様の組成物として使用される。さらなる実施形態において、具体的な分子が、ES成分から単離または精製されることができる。さらなる実施形態において、具体的な分子を組換え手段により産生することができる。
【0021】
一実施形態において、ES成分は、少なくとも1つのカテプシンLプロテイナーゼ(FhCatL)タンパク質が欠乏している。
【0022】
さらなる実施形態において、ES成分内に存在する場合に単離または同定された分画またはペプチドは、組換え手段により産生される。このような産物は、ES成分から同定された、2つ以上のペプチド成分を含有することができる。
【0023】
本発明の第2の態様は、T細胞介在性炎症促進性状態の予防および/または処置のための医薬組成物を提供し、この場合、組成物は、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分または分画あるいはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体、突然変異体、断片もしくは変異体および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。
【0024】
T細胞介在性炎症促進性状態により、本発明者らは、天然において炎症促進性であり、Th1細胞およびCTL(細胞傷害性Tリンパ球)により媒介される免疫反応を意味する。炎症促進性反応は、IL−12およびIFN−ガンマ等の炎症促進性サイトカインにより促進されることができる。
【0025】
本発明のさらなる態様において、このような処置を必要とする被検体においてT細胞介在性免疫反応を調節する方法を提供し、この方法は、
このような処置を必要とする被検体に、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは分画または誘導体産物、そこから単離されたタンパク質またはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与するステップを含む。
【0026】
適切には、Fasciola hepaticaのES成分または分画または誘導体産物、突然変異体、またはそこから得られた断片またはタンパク質が、
被検体のIL−10サイトカインレベルの増加、
被検体のTGF−ベータサイトカインレベルの増加、
制御性T細胞の増加、
IL−12、IL−2および/またはIFN−ガンマ等の少なくとも1つの炎症促進性サイトカインの減少、
細胞傷害性Tリンパ球の減少、
Th1細胞の減少または
混合リンパ球反応の低下
の少なくとも1つを媒介するよう作用する。
【0027】
適切には、T細胞介在性免疫反応は、T細胞介在性炎症促進性免疫反応である。
【0028】
適切には、被検体は、自己免疫疾患の処置またはそれに対する防御を必要とする。
【0029】
本発明の本態様の一実施形態において、T細胞介在性炎症促進性免疫反応が抑制される。理論に制約されることを望まないが、本発明の本態様の方法に従い、この抑制は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分を含む薬剤と免疫細胞とが接触するステップに起因する。
【0030】
本明細書において定義される、サイトカイン産生の増加に関連して使用される場合の「上方制御」という語句は、そのサイトカインの活性または発現が休止細胞に認められたものに比べ大きいことを意味する。
【0031】
本明細書において定義される、サイトカイン産生の低下に関連して使用される場合の「抑制」という語句は、サイトカインの活性または発現が休止細胞に認められたものに比べ小さいことを意味する。
【0032】
本明細書において定義される、サイトカイン産生の阻害に関連して使用される場合の「阻害」という語句は、サイトカインの活性または発現が休止細胞に認められた活性または発現濃度に比較した場合、阻害または実質的に阻害されていることを意味する。
【0033】
適切には、ES成分の投与は、IL−12および/またはIFN−ガンマ等の炎症促進性サイトカインの抑制およびIL−10および/またはTGF−ベータ等の抗炎症性サイトカインの上方制御を生じる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分または誘導体産物あるいはそこから単離されたタンパク質またはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む有効量の薬剤が、少なくとも1つの免疫細胞型の少なくとも1つの細胞表面活性分子と連結、結合または会合することを提供し、これは、その細胞の1つまたは複数の機能的活性の抑制、阻害または下方制御を生じる。
【0035】
本発明の一実施形態において、機能が調節される免疫細胞は、自然免疫系の少なくとも1つの細胞である。適切には、細胞は、抗原プロセッシングおよび提示機能を有する細胞型であり、例えば、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞またはマクロファージあるいはB細胞である。
【0036】
APCが樹状細胞である場合、それは、未成熟樹状細胞、半成熟樹状細胞であってよく、または成熟樹状細胞であってよい。
【0037】
さらなる実施形態において、自然免疫系の細胞は、抗原提示細胞として機能しない細胞、例えば、肥満細胞である。肥満細胞は、IL−4等のサイトカインを分泌し、したがって、免疫反応を促進する役割を有することが知られている。しかし、これらは、関連する抗原プロセッシング機能を有さない。
【0038】
一実施形態において、被検体は、哺乳動物である。さらなる実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0039】
理論に制約されることを望まないが、本発明の発明者らは、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分の投与後に生じるT細胞反応の下方制御が、抗原提示細胞(APC)および特に、免疫反応を抑制するIL−10および/またはTGF−ベータ等のサイトカインプロフィールを発現する制御性T細胞(Treg)の産生を誘導する、樹状細胞(DC)の活性を調節することにより引き起こされると考える。
【0040】
理論に制約されることを望まないが、本発明者らは、少なくとも1つの特異的なタンパク質分子が免疫機能調節に関与する排泄/分泌(ES)成分内に存在し、この少なくとも1つのタンパク質が、認められた免疫調節に関与すると考える。さらに、またはタンパク質の存在以外のものとして、脂質、リポペプチドまたはペプチド分子がES成分に存在し、下方制御に関与するかも知れない。
【0041】
IL−10発現の促進に加え、ES成分分画はまた、自然免疫系の細胞由来の他の抗炎症性サイトカインの発現を誘導することができる。
【0042】
さらに、本発明者らは、樹状細胞の機能が、ES成分に暴露後に調節されることを同定したが、自然免疫系の他の細胞、例えばマクロファージの機能もまた、調節されることができ、この調節は、抗炎症性反応を促進する。
【0043】
さらに、ES成分は、少なくとも1つのToll様受容体(TLR)リガンドをさらに含むことができる。しかし、本発明の本態様の他の実施形態において、TLRリガンド(作動薬)を本発明の組成物とともに外部から投与することができる。
【0044】
したがって、一実施形態において、本方法は、前記組成物とともに少なくとも1つのTLR作動薬を投与するステップをさらに含むことができる。
【0045】
TLR作動薬は、TLR−2、TLR−3、TLR−4、TLR−5、TLR−7、TLR−8およびTLR−9の少なくとも1つに結合特異性を有することができる。適切なTLR作動薬の具体例は、Pam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、dsRNA、LPS(リポポリサッカライド)、モノホスホリル脂質A(MPL)、フラジェリン、CpG−ODN(CPG−オリゴデオキシヌクレオチド)、イミキモド、R838およびR837を含むがそれだけに限定されない。さらに、Bordetella pertussisおよびMycobacterium tuberculosis等の全菌体もまた、TLR作動薬(Toll作動薬)として作用することができる。さらに、上記のTLR作動薬の適切な類似体もまた使用することができ、この場合、この類似体は、少なくとも1つのToll様受容体を活性化するよう機能する。
【0046】
本発明のさらなる態様は、自己免疫疾患の処置方法を提供し、
(i)Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質を得るステップと、
(ii)ES成分または分画あるいはペプチドの治療的有効量を、自己免疫疾患を患う個体に投与するステップ
を含む。
【0047】
適切には自己免疫疾患は、リウマチ様関節炎または多発性硬化症からなる群から選択される。さらなる自己疾患について、以降に詳述する。
【0048】
適切にはES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質は、
混合リンパ球反応を阻害し、
細胞傷害性Tリンパ球反応を阻害し、
Th1リンパ球を誘導し、
Th1サイトカインプロフィールを誘導し、
IL−2産生を阻害し、
IL−12産生を阻害し、
インターフェロンガンマ産生を阻害すること
の少なくとも1つからなる群から選択される免疫反応を抑制することができる。
【0049】
さらに、ES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質は、
IL−10産生を強化し、
TGF−ベータ産生を強化し、
制御性T細胞の機能を強化し、かつ/または
Th2サイトカインプロフィールを強化すること
により免疫反応の進行をさらに抑制することができる。
【0050】
本明細書において定義される、サイトカイン産生の阻害に関連して使用される場合の「阻害」という語句は、サイトカインの活性または発現が休止細胞に認められた活性または発現濃度に比較した場合、阻害または実質的に阻害されていることを意味する。
【0051】
「ES成分タンパク質を投与する」という語句は、ES成分タンパク質の投与およびES成分タンパク質をコードする核酸配列の投与をともに含む。後者の場合において、ES成分タンパク質は、動物においてin vivoで産生される。
【0052】
ES成分由来の分画またはペプチドを得るために、ES成分は、ゲル濾過クロマトグラフィー、例えばSepharyl S−3000により分離後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)し、続いてウェスタン法により分析することができる。
【0053】
「有効量」により、それは、自己免疫疾患を患う患者に投与される場合、ES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の濃度が治療的に有益な効果を産生することを意味する。本発明のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量は、疾患状態、年齢、性別および被検動物の体重等の因子によって異なる。投与計画を調節し、至適治療反応を提供することができる。例えば、1日に用量を数回に分割して投与することができ、または用量を、緊急の治療状況である場合、比例的に減量することができる。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、レシピエント動物の移植された器官または組織に対する免疫寛容を誘導する方法を提供し、これは、器官または組織の移植前にレシピエント動物に、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量を投与することを含む。
【0055】
本発明は、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量を使用し、移植された器官または組織に対する免疫寛容を誘導することを含む。
【0056】
「免疫寛容を誘導する」という語句は、長期の全身免疫欠損を誘導することなく、免疫系に特定抗原への非反応性を付与することを意味する。「抗原」という語句は、免疫反応を誘導することができる物質を意味する。自己免疫疾患の場合において、免疫寛容は、免疫系に、宿主が異物として認識しており、それゆえ、自己免疫反応を引き起こす自己抗原への非反応性を付与することを意味する。アレルギーの場合において、免疫寛容は、免疫系に、通常、宿主の免疫反応を引き起こすアレルギー抗原に、非反応性を付与することを意味する。移植の場合において、免疫寛容は、免疫系に、移植片上の抗原への非反応性を付与することを意味する。アロ抗原は、種のいくつかのメンバーにのみ見つけられる抗原、例えば、血液型抗原を指す。異種抗原は、ある種のメンバーに存在するが他のメンバーには存在しない抗原を指す。これに対応して、同種移植片は、同種のメンバー間の移植片であり、異種移植片は、異種のメンバー間の移植片である。
【0057】
レシピエントは、げっ歯類、ブタ、ネコ、イヌ、反芻動物、非ヒト霊長類および好ましくはヒトを含めた動物界のいずれのメンバーであってもよい。移植される器官または組織は、レシピエントと同種由来(同種移植片)であってよく、または別種由来(異種移植片)であってよい。組織または器官は、心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、膵島、脳組織、角膜、骨、腸、皮膚および造血細胞を含めたいずれの組織または器官であってもよい。
【0058】
本発明の方法を使用して、移植片対宿主病を予防することができ、この場合、移植片の免疫細胞は、レシピエントの免疫系において免疫攻撃を開始する。これは、移植された組織が免疫細胞を含有する場合、例えば、骨髄またはリンパ組織を、例えば、白血病、再生不良性貧血および酵素もしくは免疫疾患を処置する場合に移植する場合に生じうる。
【0059】
したがって、別の実施形態において、本発明は、器官または組織移植片を受け入れるレシピエント動物の移植片対宿主病を予防または阻害する方法を提供し、レシピエント動物に移植する前に、器官または組織に、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量を投与することを含む。
【0060】
本発明は、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量を使用して移植片対宿主病を予防または阻害することを含む。
【0061】
本発明の方法を使用して、アレルギー性反応を処置または予防することもできる。アレルギー性反応において、免疫系は、通常無害、無毒な抗原またはアレルゲンに対する攻撃を開始する。本発明の方法を使用して予防または処置することができるアレルギーは、花粉症、喘息、アトピー性湿疹、およびウルシおよびツタ(ivy)、イエダニ、ハチ花粉、ナッツ、貝、ペニシリンおよびその他多くのものに対するアレルギーを含むがそれだけに限定されない。
【0062】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、アレルギーを予防または処置する方法を提供し、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量を、アレルギーを有するまたは有する疑いのある動物に投与することを含む。本発明は、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画あるいはそこから単離されたタンパク質の有効量を使用して、アレルギーを予防または処置することを含む。
【0063】
別の態様において、本発明は、Fasciola hepatica感染を患う宿主において媒介される免疫抑制を予防する方法を提供し、Fasciola hepatica由来のES成分またはその分画の有効量をその必要とする動物に投与することを含む。
【0064】
本発明のさらなる態様は、免疫反応の下方制御により有利となる疾患または状態の処置および/または予防の方法に関し、この方法は、
このような処置を必要する被検体に、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは分画、またはそこから単離されたタンパク質またはペプチドの誘導体、突然変異体、分画、断片もしくは変異体を含む薬剤の治療的有効量を投与するステップを含む。
【0065】
適切には、免疫反応は、炎症性免疫反応、例えば、Th1細胞またはThIL−17細胞により媒介される免疫反応である。
【0066】
被検体は、哺乳動物、特にヒトであってよい。適切には、被検体は、免疫介在性状態、例えば、アレルギーまたは自己免疫障害である状態を有する。一実施形態において、状態は、自己免疫疾患、特に、Th1介在性および/またはThIL−17介在性自己免疫疾患である。
【0067】
具体的な実施形態において、免疫介在性疾患は、自己免疫状態および多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、2型糖尿病、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、関節炎(リウマチ様関節炎、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、乾癬、紅斑性狼瘡、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性貧血、血小板減少症、喘息またはアトピー性疾患を含むがそれだけに限定されない疾患を含むがそれだけに限定されない。
【0068】
「免疫介在性疾患」の定義もまた、他の免疫介在性障害、例えば1つまたは複数の皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群、シェーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎、円形脱毛症、節足動物の刺咬傷反応によるアレルギー反応、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚紅斑性狼瘡、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病逆転反応(leprosy reversal reactions)、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、真性赤血球性貧血、特発性血小板減少症、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、後ブドウ膜炎、間質性肺線維症およびセリアック病を含む。
【0069】
さらなる実施形態において、疾患または状態は、具体的なサイトカインプロフィールの発現が疾患の発症または進行に寄与することが示された神経変性状態を含むことができる。このような状態および疾患は、アルツハイマー疾患(AD)、軽度認知機能障害(MCI)、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、CJD等のプリオン病、AIDS関連性認知症、脳炎、脳卒中および頭部外傷を含むことができる。
神経変性状態はまた、細菌およびウィルス感染の結果として生じる脳の急性炎症状態を含むことができる。
【0070】
上記の自己免疫状態に加えて、本発明は、望ましくないまたは不必要な免疫反応が抗原の提示により誘発されるいずれの免疫介在性障害にも及ぶことができる。
【0071】
したがって、本発明のなお追加の態様は、被検体の異常な、不必要なまたは不適切な免疫介在性反応を特徴とする状態の予防および/または治療目的の処置の方法を提供し、この方法は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは分画、誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む有効量の薬剤を被検体に投与することを含み、これらの薬剤は、上記細胞型の免疫活性を十分に抑制、阻害または下方制御する時間および状態下において、自然免疫系に属する少なくとも1つの細胞型に連結し、結合しまたは会合する。
【0072】
典型的な自然免疫系に属する少なくとも1つの細胞型は、樹状細胞(DC)または濾胞性DC、マクロファージあるいはB細胞等の抗原提示細胞(APC)を含む。別法として、自然免疫系に属する少なくとも1つの細胞型は、肥満細胞等の具体的な抗原提示細胞機能を呈しない少なくとも1つの細胞であってよい。
【0073】
APCが樹状細胞である場合、それは、未成熟、半成熟または成熟樹状細胞であってよい。
【0074】
本発明のさらなる態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくはその断片、誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の免疫介在性疾患の処置への使用を提供する。
【0075】
本発明のさらなる態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくはその断片、誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の免疫介在性疾患の処置のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0076】
本発明のなお追加の態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物もしくは突然変異体、断片もしくは変異体の自己免疫疾患の処置のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0077】
一実施形態において、ES成分は、カテプシンLプロテイナーゼを欠乏する。
【0078】
さらなる実施形態において、組成物は、さらにカテプシンLプロテイナーゼ阻害剤を含む。
【0079】
本発明のさらに追加の態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは分画もしくは誘導体産物、またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の炎症状態の処置のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0080】
本発明のさらに追加の態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の神経変性疾患の処置のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0081】
本発明のさらに追加の態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の心臓病または心疾患の処置のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0082】
樹状細胞調節
本発明者らは、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分を使用して、サイトカイン発現プロフィールおよび樹状細胞の成熟状態を調節することができることをさらに同定した。
【0083】
樹状細胞は、免疫反応の主要な調節因子である。これらが発現するサイトカインプロフィールは、免疫反応の進行において重要な影響を有する。特に、樹状細胞により発現されるサイトカインは、Th1またはTh2経路の下流に偏らせる場合またはThIL−17またはサプレッサー活性を持つT細胞の産生を誘導する場合に重要となりうる。
【0084】
F.hepatica感染マウスの腹腔から単離された樹状細胞は、高濃度のIL−10を分泌し、未感作マウス由来の樹状細胞に比べ、CD80、CD86、CD40およびMHCクラスIIの細胞表面発現は顕著に低いが、高濃度のCCR5を有した。F.hepaticaは、IL−10またはTGF−ベータ等の樹状細胞産生のサイトカインを誘導することにより、T細胞反応を抑制することを示し、これは、サプレッサーT細胞活性を誘導する。
【0085】
したがって、本発明のさらなる態様は、このような処置を必要とする被検体の免疫介在性疾患の処置に適切な免疫反応を抑制する方法を提供し、この方法は、
樹状細胞の機能を調節するために、単離された樹状細胞を、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは分画もしくは誘導体産物、またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤にex−vivoで暴露し、
樹状細胞を被検体に投与する、
ステップを含み、これにより、続いて被検体内の樹状細胞により誘導された免疫反応は、免疫介在性疾患の発症または進行を十分に予防する。
【0086】
一実施形態において、樹状細胞を活性化して、高濃度のサイトカインIL−10またはTGF−ベータ等の他の抗炎症性サイトカインあるいはTregの誘導を促進する他のサイトカインを発現する。
【0087】
本発明の本態様の一実施形態において、樹状細胞は、被検体に対して自家性である。
【0088】
一実施形態において、樹状細胞は、未成熟樹状細胞である。
別法として、樹状細胞は、成熟樹状細胞である。
【0089】
さらなる実施形態において、樹状細胞は、Toll様受容体(TLR)リガンドとともに投与することができ、この例は、Pam3Cysである。
【0090】
さらに、自己抗原を、場合により、樹状細胞とともに共投与することができる。自己抗原の例は、MOGまたはミエリン塩基性タンパク質である。
【0091】
本発明のなお追加の態様は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分の自己免疫疾患の処置のための医薬品の調製における樹状細胞の処置への使用を提供する。
【0092】
IL−17活性の阻害
本発明者らは、さらに驚くことに、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分がIL−17(いわゆるThIL−17細胞)を発現するT細胞の誘導を抑制することを示した。IL−17は、自己免疫疾患および慢性炎症状態、特に多発性硬化症、大腸炎およびリウマチ様関節炎の発症および進行の主要な調節因子として同定されている。したがって、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤によるIL−17濃度の調節は、自己免疫疾患および慢性炎症状態の予防および/または処置に適用可能な新規の治療を提供する。
【0093】
本発明のなお追加の態様において、免疫介在性状態の予防および/または処置の方法を提供し、この方法は、
Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤を投与するステップ
を含み、この場合、薬剤投与がIL−17を分泌するT細胞の産生を抑制または阻害するよう作用する。
【0094】
本発明のさらに追加の態様において、免疫介在性状態の予防および/または処置の方法を提供し、この方法は、
Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤を投与するステップ
を含み、この場合、薬剤投与がIL−23の産生を抑制または阻害するよう作用する。
【0095】
典型的には、IL−23の阻害は、IL−17の産生の阻害をさらに生じるだろう。
【0096】
本発明のさらに追加の態様は、免疫介在性疾患の処置のためのIL−17産生を阻害する医薬品の調製において、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分、そこから単離されたタンパク質の誘導体、突然変異体、断片もしくは変異体の使用を提供する。
【0097】
IL−12抑制
本発明者らは、ES投与の結果として、IL−12の産生が抑制されることをさらに同定した。IL−12は、免疫反応の促進を促す役割を有し、特に、これらは、Th1およびThIL−17細胞により媒介される。この抑制は、IL−12サイトカインファミリー、例えばIL−23およびIL−27のメンバーにまでさらに及ぶことができる。
【0098】
したがって、本発明のさらなる態様は、IL−12産生の抑制またはIL−12ファミリーメンバーの産生の抑制のための組成物を提供し、この組成物は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む。
【0099】
さらに追加の態様は、IL−12産生の抑制またはIL−12ファミリーメンバーの産生の抑制において使用する医薬組成物を提供し、この場合、組成物は、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む。本発明のなお追加の態様は、IL−12またはIL−12ファミリーメンバーの産生を抑制する方法を提供し、この方法は、
Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与するステップ
を含む。
【0100】
一実施形態において、IL−12ファミリーメンバーは、IL−23および/またはIL−27である。
【0101】
肝吸虫ホモジネート(LFH)
Fasciola hepaticaのES(排泄/分泌)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の投与に加え、組成物、上記組成物の使用および本発明の方法はまた、ES成分の代わりに肝吸虫ホモジネート(LFH)の使用を介して実現することができる。
【0102】
本発明者らは、驚くことに、LFHの投与が免疫介在性炎症状態において重要となる特定のサイトカインの発現を調節することができることを同定した。例えば、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは分画もしくは誘導体産物、またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体は、サイトカインIL−4およびIL−10の発現レベルを調節することができる。
【0103】
したがって、本発明のさらなる態様は、炎症状態の予防および/または処置のための組成物を提供し、この組成物は、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む。
【0104】
一実施形態において、炎症状態は、T細胞介在性炎症性免疫反応である。
【0105】
本発明のなお追加の態様は、炎症状態の予防および/または処置のための医薬組成物を提供し、この場合、組成物は、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む。
【0106】
一実施形態において、炎症状態は、T細胞介在性炎症性免疫反応である。
【0107】
本発明のなお追加の態様は、炎症状態を調節する方法を提供し、この方法は、
このような処置を必要とする被検体に肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を被検体に投与するステップ
を含む。
【0108】
一実施形態において、炎症状態は、T細胞介在性炎症性免疫反応である。
【0109】
一実施形態において、炎症状態は、免疫介在性状態であり、例えば、アレルギーまたは自己免疫障害である。さらなる実施形態において、状態は、自己免疫疾患、特にTh1介在性および/またはThIL−17介在性自己免疫疾患である。具体的な実施形態において、免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、2型糖尿病、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、関節炎(リウマチ様関節炎、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、乾癬、紅斑性狼瘡、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性貧血、血小板減少症、喘息またはアトピー性疾患を含むことができるがそれだけに限定されない。
【0110】
免疫介在性状態、例えば、上記のものの調節においてLFHの新規および思いがけない使用を同定するのに加え、本発明者らはまた、驚くことに、LFHがIL−4レベルを調節する場合、特に有効であることを同定した。
【0111】
本発明のさらに追加の態様において、認知機能障害の予防および/または処置のための方法を提供し、この方法は、このような治療を必要とする個体に、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤を投与するステップを含む。
【0112】
本発明のさらなる態様は、認知機能障害の処置において、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の使用にまで及ぶ。
【0113】
さらに追加の態様は、認知機能障害の処置のための医薬品の調製において、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用に関する。
【0114】
好ましい実施形態において、LFHの投与は、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−4の上方制御および炎症促進性サイトカイン、例えば、IL−1の下方制御を生じる。好ましくは、上方制御は、海馬においてであり、最も好ましくは、この抗炎症性サイトカインプロフィールの上方制御は、ミクログリア細胞に存在するだろう。LFHまたはESを、脳または直接に中枢神経系(CNS)の別の領域に投与することが好ましい。
【0115】
典型的に、上方制御される抗炎症性サイトカインは、IL−4、IL−10およびTGF−ベータである。下方制御される炎症促進性サイトカインは、典型的にIL−1ベータおよびTNF−アルファである。炎症促進性および抗炎症性サイトカインレベルの調節は、海馬において好ましく、サイトカインプロフィールのこの調節は、ミクログリア細胞において最も好ましい。
【0116】
本発明のなお追加の態様は、脳またはCNSへの肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の直接投与を介した認知機能障害の処置方法を提供する。
【0117】
さらに追加の態様は、認知機能障害の処置のための、脳またはCNSに直接投与する医薬品の調製における、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用に関する。
【0118】
さらに追加の態様は、免疫介在性状態の処置のための医薬品の調製における、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用に関する。
【0119】
Toll様受容体(TLR)作動薬
本発明者らは、驚くことに、TLR作動薬がFasciola hepaticaのES(排泄/分泌)成分に存在することを同定した。このTLR作動薬は、免疫反応の誘導においてアジュバントとして非常に有用でありうる。
【0120】
TLR作動薬は、例えば、治療薬、例えば、癌または悪性状態の処置のためのワクチンとともにまたは感染性疾患に対するワクチンとともに投与することもできる。
【0121】
さらなる態様において、本発明は、樹状細胞の成熟を誘導する方法において、Fasciola hepaticaのES(排泄/分泌)成分内で同定されたTLR作動薬の使用にまで及ぶ。
【0122】
本発明のなお追加の態様において、癌または感染性疾患の処置に適切な被検体においてTh1反応を誘導する方法を提供し、この方法は、
エフェクター細胞機能を促進する表現型に樹状細胞を成熟させるために、Fasciola hepaticaのES(排泄/分泌)成分から単離されたワクチンおよびTLR作動薬の存在下において、単離された樹状細胞を疾患特異的抗原にex−vivoで暴露するステップと、
樹状細胞を被検体に投与するステップ
を含み、それにより被検体に産生された免疫反応が、癌の発症または進行を十分に予防し、または病原性微生物感染を十分に予防し、それにより感染性疾患を予防する。
【0123】
定義
本明細書において使用される、「免疫細胞」という語句は、造血系に由来する細胞を含み、免疫反応の役割を果たす。免疫細胞は、リンパ球、例えば、B細胞およびT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄系細胞、例えば、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および顆粒球を含む。
【0124】
本明細書において使用される、「T細胞」という語句は、CD4T細胞およびCD8T細胞を含む。「T細胞」という語句はまた、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞ならびにさらにTh−IL17細胞を含む。
【0125】
本明細書において使用される、「1つまたは複数の抗原提示細胞」またはその省略形「1つまたは複数のAPC」は、抗原のエンドサイトーシス吸着、プロセッシングおよび提示することができる1つまたは複数の細胞を指す。この語句は、専門の抗原提示細胞、例えば、Bリンパ球、単球、樹状細胞(DC)およびランゲルハンス細胞ならびにケラチノサイト、内皮細胞、グリア細胞、線維芽細胞および乏突起膠細胞等の他の抗原提示細胞を含む。「抗原提示」という語句は、細胞表面上においてMHC分子に結合されたペプチド断片としての抗原の表示を意味する。多くの様々な種類の細胞、例えば、マクロファージ、B細胞、濾胞性樹状細胞および樹状細胞を含めた細胞が、APCとして機能することができる。
【0126】
本明細書において使用される、「免疫反応」という語句は、T細胞共刺激の調節により影響されるT細胞介在性および/またはB細胞介在性免疫反応を含む。免疫反応という語句は、T細胞活性化により間接的になされる抗体産生(液性反応)およびマクロファージ等のサイトカイン反応性細胞の活性化等の免疫反応をさらに含む。
【0127】
本明細書において使用される、「1つまたは複数の樹状細胞」(DC)という語句は、その最も広義の内容の、1つまたは複数の樹状細胞を指し、抗原提示することができるあらゆるDCを含む。この語句は、免疫反応を開始し、かつ/またはTリンパ球に抗原を提示し、かつ/または免疫反応の刺激に必要な他のあらゆる活性化信号を有するT細胞を提供する全てのDCを含む。本明細書において、「DC」への言及は、樹状細胞の形態、表現型または機能活性を呈する細胞およびその突然変異体または変異体への言及を含めるものとして読むものとする。樹状細胞の形態学的特徴は、長い細胞質突起または多数の微細樹状突起を有する大細胞を含むことができるがそれだけに限定されない。表現型の特徴は、1つまたは複数のMHCクラスI分子、MHCクラスII分子、CD1またはCD4の発現を含むことができるがそれだけに限定されない。
【0128】
本明細書において使用される、「抗原」という語句は、免疫反応を刺激することができるあらゆる有機または無機分子である。本明細書において使用される、「抗原」という語句は、免疫反応を刺激することができる、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸分子、炭水化物分子、有機または無機分子に限定されないあらゆる分子にまで及ぶ。
【0129】
本発明に関して「被検体」は、ヒト、霊長類および家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマおよびロバ)、実験用試験動物、例えばマウス、ウサギ、ラットおよびモルモットならびにペット動物、例えばイヌおよびネコ等の哺乳動物を含み、包含する。本発明の目的において、哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。
【0130】
処置
本明細書において使用される「処置」という語句は、ヒトまたは非ヒト動物に有利となることができるあらゆる療法を指す。処置は、存在する状態に関してであってよく、または予防(予防的処置)であってよい。処置は、治癒、緩和または予防的効果を含むことができる。
【0131】
より具体的には、本明細書において「治療的」および「予防的」処置の言及は、その最も広義の内容において考慮される。「治療的」という語句は、被検体が完全に回復するまで処置されることを必ずしも意味しない。同様に、「予防的」は、被検体が最終的に疾患状態にかからないことを必ずしも意味しない。
【0132】
したがって、治療的および予防的処置は、特定の状態の症状の改善または特定の状態を進行する危険を予防あるいは低下させることを含む。「予防的」という語句は、特定の状態の重症度または発症を低下させるものとして見なすことができる。「治療的」はまた、存在する状態の重症度を低下させることができる。
【0133】
投与
本発明において使用するFasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体は、単一で投与することができるが、医薬組成物として投与することが好ましく、これは、一般に、意図される投与経路に応じて選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体を含むだろう。
【0134】
本発明において使用するFasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を、あらゆる適切な経路を介して、処置を必要とする患者に投与することができる。正確な用量は、投与されるFasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の形態の正確な性質を含めた多くの因子に応じて決定されるだろう。
【0135】
好ましい投与経路は、非経口(皮下、筋肉内、静脈内を含む)であるが、いくつかのさらに適切な投与経路は、経口、経直腸、経鼻、局所(経頬および舌下を含む)、注入、経膣、皮内、腹腔内、頭蓋内、鞘内および硬膜外投与あるいは経口または鼻吸入を介した投与、例えば、ネブライザーまたは吸入器により、あるいは移植を含む(がそれだけに限定されない)。
【0136】
静脈内注射において、有効成分は、発熱物質非含有であり、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であるだろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液または乳酸加リンゲル注射液などの等張性ベヒクルを使用して適切な溶液を十分に調製することができる。防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を、必要な場合含むことができる。
【0137】
経口投与の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体形態であってよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバント等の固体担体を含むことができる。一般に、液体医薬組成物は、水、石油、動物または植物油、鉱油あるいは合成油等の液体担体を含む。生理食塩溶液、デキストロースまたは他のサッカライド溶液あるいはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等のグリコールを含むことができる。
【0138】
また、組成物を、ミクロスフィア、リポソーム、他の微粒子送達系または血液を含めた特定の組織に入れる徐放性製剤を介して投与することができる。徐放性担体の適切な例として、シェア製品(shared articles)の形態の半透過性ポリマーマトリックス、例えば、座剤またはマイクロカプセルがある。移植可能またはマイクロカプセル状の徐放性マトリックスは、ポリラクチド(米国特許第3773919号;欧州特許出願第0058481(A)号)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー(Sidman et al,Biopolymers 22(1):547−556,1985)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはエチレンビニルアセテート(Langer et al,J.Biomed.Mater.Res.15:167−277,1981およびLanger,Chem.Tech.12:98−105,1982)を含む。
【0139】
上記の技法およびプロトコールならびに本発明において使用することができる他の技法およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Siences,18th edition,Gennaro,A.R.,Lippincott Williams&Wilkins;20th edition(December 15,2000)ISBN 0−912734−04−3およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems;Ansel,H.C.et al.7th Edition ISBN 0−683305−72−7に見つけることができ、これらの開示全体を参照として本明細書に組み込む。
【0140】
医薬組成物
上記のように、本発明は、免疫反応の調節、特に、T細胞反応の下方制御のための医薬組成物にまで及び、この場合、組成物は、少なくともFasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体あるいはその組換え形態の誘導体、断片、変異体、突然変異体を含む。
【0141】
本発明における医薬組成物および本発明に従う使用は、有効成分(すなわち、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体)に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に公知の他の材料を含むことができる。
【0142】
このような材料は、非毒性であるべきであり、有効成分の効果と干渉しないものであるべきである。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路に応じて決定し、これは、例えば、経口、静脈内、鼻内または経口もしくは鼻吸入を介してであってよい。
【0143】
製剤は、液体、例えばpH6.8〜7.6の非リン酸緩衝液を含有する生理食塩溶液または凍結乾燥もしくは冷凍乾燥粉末であってよい。
【0144】
用量
組成物は、治療的「有効量」または「所望量」において個体に投与することが好ましく、これは、個体に十分に役立つことを示す。
【0145】
本明細書において定義されるように、「有効量」という語句は、所望の反応を少なくとも部分的に得るために、または発症を遅延もしくは進行を阻害し、あるいは処置された特定の状態の発症または進行を完全に停止するために必要な量を意味する。
【0146】
量は、処置される被検体の健康および身体的状態、処置される被検体の分類群、所望される防御の程度、組成物の配合、医学的状況および他の関連因子の評価に応じて変化する。量は、相対的に広範囲であり、これは、所定の試験を介して決定することができることが期待される。
【0147】
処置の処方、例えば、用量等の判断は、最終的には一般開業医、内科医または他科の医師の責任の範囲および判断であり、典型的に、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および実施者の公知の他の因子を考慮する。
【0148】
至適用量は、例えば、年齢、性別、体重、処置される状態の重症度、投与される有効成分および投与経路を含めた多くのパラメーターに基づいて医師により決定されることができる。
【0149】
広範囲の用量を適用することができる。患者を考慮して、例えば、薬剤約0.1mg〜約1mgを1日当たり体重kg当たりで投与することができる。至適治療反応を得るために投与方法を調節することができる。例えば、1日毎、週毎、月毎または他の適切な時間間隔で数回に分割して投与することができ、または用量を、緊急の状況である場合、比例的に減量することができる。
【0150】
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は全て、本発明の分野の当業者により通常、理解される意味を有する。
【0151】
本明細書を通して、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、「comprise(含む)」もしくは「include(含む)」という語句または「comprises(三人称)」もしくは「comprising(進行形)」、「includes(三人称)」もしくは「including(進行形)」等の変形は、明記された整数または整数群の包括を意味するが、いくつかの他の整数もしくは整数群を排除しないことが理解されるだろう。
【0152】
本明細書において使用される、T細胞反応の調節に関連して使用される場合の「阻害する」という語句は、T細胞の増殖および/または活性の部分的または完全な下方制御を意味する。
【0153】
本発明の各態様の好ましい特徴および実施形態は、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、他の態様のそれぞれに関して必要であれば変更を加える。
【0154】
本発明は、ここで、説明の目的において提供され、本発明を限定するように解釈されることを意図しない以下の実施例を参照し、さらに図を参照して記載される。
【実施例】
【0155】
材料および方法
動物および免疫化
雌BALB/cマウスをHarlan Olac(ビセスター、英国)から購入し、6〜8週齢、1群マウス4匹にて使用した。マウスを個別換気ケージで飼育し、全ての実験は、アイルランド保健局(Irish Department of Health)、欧州連合およびTrinity College Dublinの倫理委員会の規則に従い行われた。マウスを脱発熱化したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(5μg;Calbiochem、ラホーヤ、カリフォルニア州);KLH(5μg)およびES(20または50μg;またはダルベッコのPBS(Sigma、プール、英国)で最終的に200μlを側腹部に皮下(s.c.)免疫した。免疫7日後に、マウスを頸椎脱臼により屠殺し、血清および鼠径リンパ節を採集した。
【0156】
F.hepatica由来の排泄−分泌産物の調製
生きた成熟吸虫を地域の食肉処理場にてウシ肝臓から採集した。吸虫をCa2+非含有およびMg2+非含有ダルベッコPBSを数回交換して洗浄後、空気中5%CO、37℃にてPBSで一晩インキュベートした。排泄−分泌(ES)産物を含有する上清液を採取し、4℃、13000gにて15分間遠心分離により浄化し、0.22μmフィルターに通した。ES調製物のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸タンパク質キット(Pierce)を使用して決定した。抗原調製物を必要な時まで−80℃で保存した。
【0157】
マウスのF.hepatica注射
メタセルカリア(metacercariae)をCompton Paddock Laboratories(バークシャー、英国)から得た。実態顕微鏡を使用して、生存能力を検討し、その後、F.hepaticaのメタセルカリア10個をマウスに経口感染させた。これは、動物100%に感染する結果となった。他に明記されない限り、マウスを感染3週間後に頸椎脱臼により屠殺した。
【0158】
骨髄由来DC(BMDC)の単離および培養
骨髄由来未成熟DCを、マウスの大腿骨から得られた骨髄細胞をGM−CSF発現性細胞株(J558−GM−CSF)由来の上清(10%)を補充した10%FCSを含むRPMI1640において培養することにより調製した。3日目に、10%GM−CSF細胞上清を含む新鮮な培地を付着細胞に添加した。7日目に、細胞を採集し、洗浄し、アッセイに使用した。BMDCを細胞1×10個/mlにて培養した。
【0159】
腹腔マクロファージ、CD11cDCおよびCD4T細胞の精製
腹腔マクロファージの単離において、腹腔滲出細胞(PEC)をマウスから洗浄により採取した。PECを6ウェル組織培養プレートにおいて2時間インキュベートし、マクロファージを可塑的に付着させた。付着しなかった細胞を洗浄により除去し、付着マクロファージを、刺激するためにプレートから採取した。CD4T細胞またはCD11c樹状細胞をMACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、独国)およびautoMACS細胞分離装置を用いた正の選択を使用して脾臓およびPECから単離した。赤血球細胞の溶解後、PECまたは脾臓細胞のどちらかの単一細胞懸濁液をMACS CD4またはCD11c免疫磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)のどちらかとともにインキュベートし、正の選択を使用してautoMACSに通した。autoMACS分離後のCD4T細胞およびCD11c樹状細胞の純度をFITC標識CD4またはCD11cそれぞれを使用して、FACScan分析により評価した場合、通常90〜95%であった。
【0160】
J774細胞培養
J774.A1細胞(ATCC番号TIB67)を組織培養フラスコにおいて、10%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するRPMI1640培地を用いて空気中5%CO、37℃にて成長させた。細胞がコンフルエンスに達した場合、それらを培養物から取り出し、1200rpmにて5分間遠心分離して細胞を沈殿させ、1×10個/ml濃度にて新鮮なフラスコに再播種した。細胞が実験に十分な数に達した場合、次いで、細胞を激しくピペッティングすることより採集し、1200rpmにて5分間遠心分離した。細胞を10%RPMIで1回洗浄後、刺激するために1ml/ウェルの容量で1×10個/mlにて24ウェル培養プレートに播種した。
【0161】
サイトカイン産生の誘導または阻害
J774および腹腔マクロファージ、骨髄由来DC、MACS単離CD11cDCおよび腹腔滲出細胞を1×10個/mlの細胞密度にて24ウェル組織培養プレートで培養した。いくつかの実験において、腹腔滲出細胞およびJ774マクロファージは、10mM濃度のカテプシン阻害剤E−64(Sigma)の存在下のESまたは100℃で20分間加熱した熱不活性化ESで刺激した。空気中5%CO、37℃にて24時間インキュベーション後、上清を取り出し、市販の免疫アッセイキット(R&D systems)を使用するIL−10、IL−12p40濃度の分析まで、またはIL−4およびIL−5、IL−12p70およびTGF−ベータ用モノクローナル抗体の対(Pharmingen)を使用する分析まで保存した。IL−12産生におけるES効果を、ES(4および20μg/ml)を用いてBMDCまたはJ774マクロファージ(1×10個/ml)を2時間前刺激し、その後、LPS(10ng/ml)およびIFN−ガンマ(20ng/ml)またはLPSのみを添加し、さらに22時間インキュベーションして決定した。上清を取り出し、IL−10、IL−12p40および/またはIL−12p70の濃度を免疫アッセイにより決定した。ConA誘導性サイトカインの産生および増殖におけるESの効果は、ConA(5μg/ml)の存在または非存在下においてES(4および20μg/ml)を用いて未感作マウス由来の脾臓細胞(2×10個/ml)を刺激することにより決定した。上清を空気中5%CO、37℃にて72時間インキュベーション後に取り出し、T細胞サイトカイン濃度をELISA法により決定した。T細胞の増殖は、48時間培養の最後の4時間における[H]チミジン取り込みにより測定した。in vivoのESによるサイトカイン誘導を評価するため、BALB/cマウスに50μgのESを合計200μl/マウスs.c.の容積で注射した。6時間後、鼠径リンパ節を取り出し、氷冷PBS 1mlでホモジナイズした。4℃にて、1200rpm、5分間の遠心分離により細胞を除去後、上清を取り出し、市販のサイトカインDuoSets(R&D)を使用して、IL−4およびIL−10の存在について分析した。別の実験において、BALB/cマウス4匹の群にPBSまたはES(50μg)のどちらかを300μl注射した。2時間後、PBS注射およびES注射マウス由来の腹腔滲出細胞(PEC)を氷冷PBSの腹腔洗浄により採取した。細胞を50%PBS/FCS(v/v)でブロックし、抗CD11cで表面標識し、その後、固定し、PE標識化抗IL−10ならびにFITC標識化抗IL−4および抗IFN−ガンマモノクローナル抗体またはラット対照Igを添加することにより透過させ、細胞内サイトカイン標識した。氷上に30分後、次いで、細胞をPBS/BSA/アジドで洗浄し、速やかに回収した。試料当たり合計20000個の細胞を得た。細胞をCD11c集団上にゲートし、細胞内タンパク質の発現を、CellQuestソフトウェアを使用してFACSCaliburフローサイトメーターで分析した。
【0162】
抑制アッセイ
CD4T細胞をMACSマイクロビーズおよびAutoMacs system(上記)を使用して、OVA特異的TCRトランスジェニック(TCR−Tg)マウスから精製した。OVA−特異的T細胞(1×10個/ml)をOVA323−339ペプチド(2μg/ml)、および、抗原提示細胞(APC)として、照射した脾臓細胞(2×10個/ml)とともに培養した。このOVA特異反応は、対照として機能した。F.hepatica特異的T細胞(FH T細胞)をCD4MACSマイクロビーズ(上記)を使用して感染3週間後に感染マウスの腹腔洗浄液から単離した。次いで、FH T細胞を、抗原もしくはAPCを全く含まないか、肝吸虫ホモジネート(LFH)20μg/mlまたはES(20μg/ml)を含むどちらかで、APCとして未感作BALB/cマウス由来の照射された脾臓細胞とともに培養した。次いで、同じウェルまたは半透過膜(transwell)による分離されたウェルのどちらかにおいて、OVA特異的およびFH T細胞を1:1比で合わせて培養した。空気中5%CO、37℃にて72時間インキュベーション後、ELISA法によるIL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマ濃度の決定のために、上清をtranswellの上下から、およびに共培養細胞から取り出した。増殖を96時間培養後のHチミジン取り込みにより決定した。
【0163】
FACSによる自然細胞活性化の分析
BMDCまたはJ774マクロファージ(1×10個/ml)を培地のみ、ES(20μg/ml)またはE.coli LPS(10ng/ml)中で培養した。細胞を取り出し、表面マーカー発現を蛍光により標識化した抗体(BD Pharmingen)を使用してフローサイトメトリーにより評価した。50%FCS/PBS(w/v)でブロックング後、細胞をマウスCD80、CD86、CD11c(BMDCのみ)、MHCクラスII、CD40およびCCR5に特異的な抗体を用いて暗室にて氷上で30分間インキュベートした。非関連の特異性を有する適当なアイソタイプ適合抗体で標識した細胞は、対照として作用した。試料当たり合計20000個の細胞をFACSCaliburフローサイトメーターで分析した。分析をCellQuestソフトウェア(バーション3.3;Becton Dickinson immunocytometry Systems、サンノゼ、カリフォルニア州)を使用して行った。
【0164】
J774表面マーカー発現の調節
LPS誘導性細胞表面マーカー発現におけるESの効果を、ES(20μg/ml)を用いてJ774マクロファージ(1×10個/ml)を2時間前刺激後、LPS(10ng/ml)を添加し、さらに22時間インキュベーションすることにより決定した。24時間後、細胞を回収し、洗浄し、ブロックし、表面マーカー発現をCD86、CD80、CD40、CCR5およびMHCクラスIIを使用して評価した。非関連の特異性を有するアイソタイプ適合した直接標識抗原でインキュベーションした細胞は、対照として作用した。暗室において、氷上で30分間インキュベーション後、細胞を洗浄し、免疫蛍光分析をFACScan(Becton Dickinson)において行い、CellQuestソフトウェアを使用して分析し、試料当たり細胞20000個を分析した。
【0165】
細胞内サイトカイン合成のフローサイトメトリー分析
F.hepatica感染マウス由来DCおよびT細胞のサイトカイン産生を分析するため、腹腔滲出細胞(PEC)を最初に、50%PBS/FCS(v/v)を用いて、室温にて20分間インキュベートした。次いで、DCおよびT細胞を抗CD11cおよび抗CD4それぞれを用いて染色した。細胞内IL−10、IL−4およびIFN−ガンマの検出において、細胞を固定し、市販の細胞内サイトカイン染色キット(Caltag)を使用して透過処理した。PE標識抗IL−10およびFITC標識IL−4、IFN−ガンマmAbまたはラット対照Igを所定の飽和濃度にて30分間添加した。次いで、細胞をPBS/BSA/アジドで洗浄し、速やかに回収した。試料当たり合計50000個の細胞を得た。細胞をDCおよびT細胞それぞれにおいてCD11cまたはCD4上にゲートし、細胞内タンパク質の発現を、CellQuestソフトウェアを使用してFACSCaliburフローサイトメーターにおいて分析した。
【0166】
抗原特異的サイトカイン産生
免疫マウスまたは感染マウス由来の脾臓(2×10個/ml)またはリンパ節細胞(1×10個/ml)をMOGペプチド(10および100μg/ml)またはKLH(2〜50μg/ml)あるいはホルボール12−ミリスチン酸13−酢酸(PMA)(25ng/ml;Sigma)および抗CD3(0.5μg/ml;BD Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州)あるいは培地のみのいずれかを用いてRPMI培地において37℃および5%COにて培養した。72時間後、サイトカイン決定において上清を採集し、培地を置き換えた。増殖を[H]チミジン取り込みにより評価した。IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマ濃度を免疫アッセイにより決定した。
【0167】
EAEの誘導およびES処置
各マウスにMycobacterium tuberculosis H37Ra(Difco)5mg/mlを含有するCFA中のMOG35−55ペプチド150μgを尾の根元にs.c.注射した。全てのマウスに0日目および免疫化2日後にi.p.注射によりpertussis毒素(Sigma)500ngを投与した。ES処置において、PBS中のES 50μgを2日毎にi.p.注射した。マウスをEAEの臨床兆候において毎日評価し、以下のようにスコアした:1=尾の麻痺、2=不安定な歩行、3=後肢の筋力低下、4=後肢の麻痺、5=四肢の完全な麻痺、6=死亡。疾患指数は、1日の平均疾患スコア全てを加算し、平均発症日を割り、100を掛けることにより算出した。対照EAEマウスが臨床スコア3〜4を表示した場合、実験を終了した。マウスを頸椎脱臼により屠殺し、血清および脾臓を採取した。
【0168】
0日目にCFA中のMOG35−55ペプチドで免疫し、0および2日目にpertussis毒素の注射により、C57BL/6マウスにおいてEAEを誘導した。1つのマウスの群は、処置しないままにした。2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個で感染させた。3つ目は、EAE誘導1日前およびその後2日毎にES 50μgをi.p.注射した。EAE誘導後20日後に、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。脾臓細胞(2×10個/ml)を培地のみ、MOG35−55ペプチド(10および100μg/ml)または抗CD3およびPMAで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−17、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により決定した。結果は、マウス4〜5匹の群において、3回調べた平均値である。
【0169】
結果
F.hepatica感染は、樹状細胞成熟を阻害する
F.hepaticaメタルセルカリアで経口感染後、寄生虫は、腹腔を通り、内臓から肝臓に移動する。それゆえ、腹腔が肝吸虫の産物に暴露される。本明細書において、本発明者らは、腹腔において自然免疫反応の細胞におけるF.hepatica感染の影響を検討した。マウスにF.hepaticaを感染させ、感染3週間後、細胞を腹腔から回収した。未感作マウスの細胞は、対照として機能した。成熟の指標である細胞表面マーカーの発現について、樹状細胞(DC)を検討した。対照マウス由来の細胞の比較において、F.hepatica由来のDCは、MHCクラスIIおよび共刺激分子、CD80、CD86およびCD40の発現がかなり低く、CCR5の発現は高かった(図1)。これは、感染がDC成熟を阻害するか、または腹腔へ未成熟DCの動員することを示唆する。
【0170】
F.hepatica感染マウスの腹腔由来の樹状細胞は、高頻度でIL−10を分泌し、低頻度でIL−4を分泌する。
マウスにF.hepaticaを感染させ、感染3週間後に、細胞を腹腔から回収した。未感作マウス由来の細胞は、対照として機能した。CD11cDCについて、細胞内IL−4、IL−10およびIFN−ガンマを、免疫蛍光分析により検討した(図2)。未感作マウスの腹腔由来のDCと比較して、F.hepatica感染マウス由来のDCは、高頻度でIL−10を分泌した(未感作2〜3%に対して感染34〜35%)。また、DC分泌性IL−4(未感作0.37%に対して感染2.26%)およびIFN−ガンマ(未感作0.48%に対して感染1.57%)の頻度もわずかに増加した。
【0171】
F.hepatica感染マウスの腹腔において、制御性表現型を有するIL−10分泌性T細胞が高頻度で検出される
IL−10産生DCがIL−10分泌性制御性T(Treg)細胞の誘導を促進することが示されているため、本発明者らは、F.hepatica感染がTreg細胞の誘導にも関連する可能性を検討した。BALB/cマウスをF.hepaticaに感染させ、感染3週間後、細胞を腹腔から回収した。未感作マウスの細胞は、対照として機能した。細胞内IL−4、IL−10およびIFN−ガンマにおいて、免疫蛍光分析によりCD4T細胞を検討した(図3)。結果は、F.hepatica感染マウスの腹腔のT細胞は、高頻度でIL−10を分泌することを示す(未感作3〜5%に対して感染66〜67%)。対照に、IL−4およびIFN−ガンマ分泌性T細胞の頻度は、顕著に強化されなかった。
【0172】
また、Treg細胞に関連することが知られている表面マーカーの表面発現において、腹腔由来のT細胞を評価した。特異的抗体を用いた免疫蛍光分析は、CTLA−4、IL−10R、CD28、T1/ST2およびCCR5の発現がF.hepatica感染マウス由来の細胞において強化されることを明らかにした(図5)。対照に、CD25発現は、低かった。これらの所見は、誘導性Treg細胞が産生され、またはF.hepatica感染中に腹腔に動員されることを示唆する。
【0173】
Fasciola hepaticaは、FOXP3発現T細胞を誘導する
図4は、F.hepatica感染が腹腔へのCD4CD25Foxp3制御性T細胞の非常に顕著な動員に関連していることを示す。感染マウスのリンパ節の制御性T細胞数がわずかに増加(5%〜6.7%)したが、一方、腹腔での頻度は、F.hepatica感染後に24%〜96%までに増加した。
【0174】
F.hepatica感染マウスの腹腔由来のT細胞は、サプレッサー活性を有する
F.hepatica感染マウスの腹腔由来のT細胞がIL−10を分泌し、制御性表現型を有することを明らかにしたので、本発明者らは、オボアルブミン(OVA)T細胞受容体(TLR)トランスジェニック(Tg)マウス由来のT細胞を用いた共培養実験において、これらのサプレッサー活性を検討した。高頻度のDO11.10 TCR Tgマウスは、OVAに特異的であり、抗原特異反応の読み出しに有用である。DO11.10 TCR Tgマウス由来のT細胞は、増殖し、in vitroで抗原(OVA)および抗原提示細胞(APC)で刺激後にIFN−ガンマ、IL−4、IL−5およびIL−10を分泌する。F.hepatica感染マウスの腹腔由来のT細胞を用いた共培養は、増殖およびIFN−ガンマ産生において顕著な抑制効果を有した。これは、抗原(肝吸虫ホモジネート;F.hepatica由来のLFHまたは排泄/分泌分画;ES)を用いた刺激または未刺激において認められた。また、IL−4産生は、F.hepatica感染マウス由来の未刺激T細胞で特に低下した。対照に、IL−5およびIL−10産生は、特にF.hepatica感染マウス由来の抗原刺激細胞で強化された(図6)。
【0175】
次に、本発明者らは、抑制のメカニズム、具体的に溶解性因子に対する細胞接触の役割を評価した。ここで、DO11.10 TCR Tgマウス由来のT細胞は、半透過膜によりF.hepatica感染マウス由来のT細胞から分離した。LFHまたはESを用いたF.hepatica感染マウスの腹腔由来のT細胞の刺激は、高濃度のIL−5およびIL−10および低濃度IFN−ガンマの産生を生じた。IL−4はまた、LFHで刺激後に検出されたが、ESでは検出されなかった(図7)。OVAを用いたDO11.10 TCR Tgマウス由来のT細胞の刺激は、強力な増殖およびIFN−ガンマ、IL−4、IL−5およびIL−10の分泌を生じた。F.hepatica感染マウス由来のT細胞を用いた共培養は、増殖およびIFN−ガンマ産生を部分的に抑制したが、IL−4、IL−5およびIL−10産生を強化した。
【0176】
これらの所見は、F.hepatica感染マウスのT細胞がバイスタンダー様式において、非関連抗原に対するT細胞反応を抑制することを明らかにする。さらに、この抑制は、溶解性因子、おそらくIL−10により部分的に媒介され、これは、F.hepatica感染マウス由来のT細胞により高濃度で分泌される。
【0177】
F.hepatica感染中のIL−10産生は、in vivoでIL−5およびIFN−ガンマ産生を制御する
in vivoの免疫反応の抑制におけるIL−10の役割を検討するため、C57BL/6およびIL−10ノックアウトマウスにF.hepaticaを感染させ、腹水において、およびin vitroで抗原を用いて再刺激された腸管膜リンパ節細胞において、サイトカイン産生を検討した。
【0178】
IL−10およびIL−5が、F.hepaticaを感染させたC57BL/6マウスの腹水において検出されたがIL−4およびIFN−ガンマは検出されなかった(図8)。対照に、顕著な濃度のIL−4および強化されたIL−5が、F.hepaticaに感染させたIL−10ノックアウトマウスの腹水において検出された。IL−10およびIL−5が、F.hepatica感染C57BL/6マウス由来のES刺激腸管膜リンパ節細胞で検出されたが、IL−5ならびにIFN−ガンマは検出されなかった(図9)。対照に、顕著な濃度のIFN−ガンマおよび強化されたIL−5が、IL−10ノックアウトマウス由来のES刺激腸管膜リンパ節細胞に検出された。これらの所見は、F.hepatica感染マウスのIL−10産生細胞がin vivoでTh1およびTh2サイトカイン産生をともに抑制することを示す。
【0179】
F.hepatica排泄/分泌(ES)産物は、自然IL−10産生を刺激する
F.hepatica感染が自然細胞およびT細胞由来のIL−10産生を誘導することを明らかにしたので、本発明者らは、自然免疫系の細胞によるIL−10産生におけるF.hepatica ESの影響を検討した。腹腔滲出細胞、腹腔マクロファージ、J774マクロファージ、骨髄由来DCおよび腹膜と脾臓由来のCD11cDCは全て、ESに反応してIL−10を分泌した(図10および11)。本発明者らは、肝吸虫ホモジネート(LFH)もまた、腹腔マクロファージ由来のIL−10産生を刺激することを見出した。IL−12p40産生は、骨髄由来DCおよびJ774細胞の上清において検出されたが、IL−12p70は検出されなかった(図11)。IL−10産生は、ESを用いてin vitro刺激後6〜48時間でマクロファージにおいて、および24〜48時間でDCにおいて検出された(図12)。
【0180】
ESは、in vivoで自然IL−10およびIL−4産生を刺激する
in vitroで自然免疫細胞によるIL−10の誘導を明らかにしたので、本発明者らは、in vivoでESの自然サイトカイン産生の刺激能を検討した。マウスの側腹部にs.c.注射し、流入領域リンパ節を6時間後に取り出し、ホモジナイズし、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により決定した。別法として、マウスにi.p.注射し、2時間後に腹膜DCのサイトカイン産生を評価した。結果は、ESのs.c.注射が流入領域リンパ節における顕著な濃度のIL−10および低濃度のIL−4の産生を刺激したことを明らかにした(図13)。i.p.経路によるES注射はまた、腹腔のIL−10およびIL−4産生DC細胞を刺激した。IL−10分泌性DCの頻度は、対照マウスの7〜12%からES注射マウスの15〜21%まで増加し、IL−4産生細胞の頻度は、7.5から17%まで増加した(図14)。IFN−ガンマ分泌性DCの頻度において、1.9から4.0%と、あまり顕著な増加はなかった。
【0181】
ESは、TLR作動薬誘導性IL−12p70産生を阻害する
自然細胞によるIL−10産生は、Treg細胞の誘導に関連し、一方、IL−12は、IFN−ガンマ分泌性Th1細胞の増殖を促進する。それゆえ、本発明者らは、マクロファージおよびDCによるIL−12p40およびIL−12p70産生におけるESの影響を検討した。ESのみは、IL−12p70を刺激しなかったが、J774マクロファージ由来のIL−12p40およびIL−10産生を刺激した(図15)。さらに、LPS誘導性IL−12p40は、ESを用いた2時間のプレインキュベーションにより阻害された。ESは、DC由来のIL−12p70を誘導せず、LPSおよびIFN−ガンマにより誘導されたIL−12p70を阻害した。ESの阻害効果は広範囲の濃度にわたり認められ、より高濃度において非常に顕著であった(図16)。
【0182】
ESの免疫調節効果は、カテプシン以外の熱感受性分子により媒介される
Fasciola hepatica由来のカテプシンLプロテイナーゼが免疫調節特性を有することは以前に報告されている。ここで、本発明者らは、IL−10産生の誘導において、カテプシンの役割を評価した。本発明者らは、最初に、ES活性の熱処理の効果を評価した。ESの熱処理は、腹腔滲出細胞によるIL−10産生を刺激するその能力を顕著に低下させた(図17)。対照的に、カテプシン阻害剤の添加は、IL−10を刺激し、またはDCによるIL−12p40あるいはmIL−12p70の産生を阻害するESの能力に全く影響しなかった(図18および19)。これらの所見は、IL−10産生を刺激するES分画の免疫調節産物は、カテプシンではないが、熱感受性分子であることを示唆する。
【0183】
ESは、DCおよびマクロファージにおける表面マーカー発現を調節する
DCおよびマクロファージは、強力な抗原提示細胞であるが、最初にMHCクラスIIおよび共刺激分子の発現を強化するよう活性化されなければならない。完全な成熟DCは、エフェクターT細胞、特にTh1細胞の増殖を促進し、一方、未成熟または部分的成熟DCは、アネルギー性または制御性T細胞の増殖を促進する。本明細書において、本発明者らは、ESがC57BL/6マウス由来のDCのCD86、CD80、CD40およびMHCクラスIIの表面発現を強化することを見つけた。活性化のレベルは、LPSで認められたものと同様であった。しかし、CCR5発現を抑制するLPSと異なり(CCR5発現は、通常、DC成熟後に低下する)、ESは、CCR5発現を強化した。IL−10欠損マウスにおいて、この強化は、認められなかった。さらに、CD80、CD86、CD40およびMHCクラスIIは、IL−10欠損マウス由来のES刺激DCで強化された(図20)。これは、DC成熟がES誘導性IL−10産生により強制されることを示唆する。
【0184】
ESはまた、J774マクロファージのCD80、CD86、CD40、CCR5およびMHCクラスIIの表面発現を強化し(図21)、ESにより阻害されたCD40を除いて、これらのマーカーのLPS誘導性発現を強化した(図22)。抑制されたCD40発現は、Treg細胞の誘導に関連している。それゆえ、これらの所見は、ESがDCおよびマクロファージの中間表現型への成熟を誘導することを示唆し、これは、Treg細胞を刺激するこれらの能力と一致する。
【0185】
ESは、IL−10産生Treg細胞を誘導し、エフェクターT細胞による増殖およびIFN−ガンマ産生を抑制する
本発明者らは、モデル抗原であるKLHに対するT細胞反応の誘導におけるESの影響を検討した。マウスにESのみ、KLHのみまたはKLHおよびESを注射し、流入領域リンパ節を7日後に取り出し、細胞をin vitroで抗原(KLH)を用いて再刺激した。この実験において、陽性対照刺激である抗CD3およびPMAに対して反応が検出されたが、KLHのみは、抗原特異的免疫反応を誘導しなかった。対照的に、ES(50μg)を用いた共注射は、高濃度の抗原特異的IL−10および低濃度のIL−5を分泌するが、IL−4およびIFN−ガンマを分泌しないT細胞を産生した(図23)。このサイトカインパターンは、Treg細胞の誘導と一致する。KLHのみの免疫に反応してIL−5およびIFN−ガンマを検出した別の実験において、本発明者らは、ES共投与(20μg)後にこのKLH特異的サイトカイン産生の抑制を認めた(図24)。
【0186】
また、本発明者らは、in vitroにおいて、分裂促進因子であるコンカナバリンA(ConA)に対するT細胞反応におけるESの影響を検討した。ConAで刺激された脾臓細胞は、増殖し、IFN−ガンマおよび低濃度のIL−10を分泌した(図25)。ESの共インキュベーションは、特に、高濃度で使用された場合に(20μg/ml)、これは、単独では増殖またはサイトカイン産生を誘導しないが、ConA誘導性増殖およびIFN−ガンマ産生を顕著に阻害し、IL−10を強化した。これらの所見により、ESが優先的にIL−10分泌性T細胞を誘導し、Th1細胞の誘導を抑制することが確認された。
【0187】
F.hepatica感染またはESの非経口投与は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対して防御する
IFN−ガンマおよびIL−17を分泌する自己抗原特異的T細胞は、多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を含めた多くの自己免疫疾患の病原体を媒介した。正常な個体において、病原性T細胞を抑制する天然および誘導性Treg細胞により、T細胞介在性自己免疫疾患が調整される。F.hepatica感染およびESがIL−10分泌性Treg細胞を誘導することを示したので、本発明者らは、pertussis毒素(PT)を有する完全フロインドアジュバンド(CFA)中のミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)ペプチドの投与を含む慢性疾患モデルのEAE進行におけるEAEの感染または非経口投与の影響を検討した。未処置のマウスは、12日後にEAEの臨床症状を進行させ、20日後にグレード3以上の臨床スコアに達し、この段階で屠殺しなければならなかった。対照的に、F.hepatica感染マウスは、14日まで症状が進行せず、ES処置マウスは、16日まで症状が進行しなかった(図26)。さらに、これらのマウスの疾患の重症度は、かなり低下した。これらの所見は、ESの非経口送達が、マウスの自己免疫疾患に対して防御効果を有することを明らかにする。
【0188】
F.hepatica感染またはESの非経口投与は、EAE進行中の病原性T細胞の誘導を抑制する
T細胞は、多くの自己免疫疾患を媒介し、従来、IFN−ガンマ分泌性Th1細胞が炎症性病原体に関与すると考えられてきた。しかし、最近の証拠では、IL−17分泌性T細胞が、リウマチ様関節炎、大腸炎、多発性硬化症および多発性硬化症のマウスモデルであるEAEを含めた多くの慢性炎症性疾患および自己免疫疾患において多くの損傷を媒介することを示唆する。本明細書において、EAE進行は、未処理のマウスのMOG特異的IL−17およびIFN−ガンマ分泌性T細胞の誘導に関連した(図27)。F.hepatica感染またはESの非経口投与(これは、EAEの臨床症状を低下させた)は、MOG特異的IL−17およびIFN−ガンマ産生T細胞の誘導を抑制した。さらに、ポリクローナル刺激、抗CD3およびPMAに対するIL−17産生も、感染またはES処置マウスにおいて抑制された。対照に、MOG特異的IL−10は、未処置マウスにおいて検出できなかったが、F.hepatica感染またはES処置マウスにおいてかなりの濃度にて検出可能であった。さらに、MOG特異的IL−4は、F.hepatica感染マウスにおいて強化された。さらに、抗CD−3およびPMA誘導性IL−4およびIL−10は、感染およびES処置マウスにおいて強化された。これらの所見は、F.hepatica感染またはES治療が、抗炎症性サイトカイン、IL−10を強化し、自己抗原特異的病原性IL−17およびIFN−ガンマ分泌性T細胞を抑制することにより、EAEの誘導を予防することを明らかにする。
【0189】
Fasciola hepatica感染は、C57BL/6野生型およびIL−10欠損マウスのEAEの発症を遅延し、臨床兆候を軽減する
図28は、F.hepatica感染がC57BL/6野生型およびIL−10欠損マウスのEAEの発症を遅延し、臨床兆候を軽減することを示し、F.hepaticaによるEAEの軽減がIL−10誘導により媒介されないことを示唆する。
【0190】
F.hepatica感染は、IL−10非依存性メカニズムによりEAE中の病原性IFN−ガンマおよびIL−17分泌性細胞を阻害する
図29は、F.hepatica感染がC57BL/6野生型およびIL−10欠損マウスのMOG特異的IL−17およびIFN−ガンマ産生を阻害し、野生型マウスのIL−10産生を強化することを示す。データは、F.hepatica感染による病原性T細胞の阻害がIL−10により媒介されないことを示唆する。
【0191】
Fasciola hepatica感染は、BALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎の臨床兆候を軽減する
図30は、Fasciola hepatica感染がBALB/cマウスのDSSにより誘導された大腸炎の臨床兆候(下痢および糞便血)を軽減することを示す。
【0192】
Fasciola hepatica感染は、DSS誘導性大腸炎中の結腸における炎症促進性サイトカイン産生を抑制する
図31は、DSS誘導性大腸炎中の結腸におけるIL−1ベータ、IL−17およびTNF−アルファの誘導がFasciola hepatica感染後に低下することを示す。これらのサイトカインは、大腸炎の病態を媒介することを示し、データは、F.hepaticaが炎症促進性サイトカインの産生を阻害することにより、ある程度の防御を付与することを示唆する。
【0193】
Fasciola hepatica ES産物を用いた治療は、BALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎の臨床兆候を軽減する
図32は、Fasciola hepatica ES産物の非経口投与が、BALB/cマウスのDSSにより誘導された大腸炎の臨床兆候(下痢、血便および体重減少)を軽減することを示す。
【0194】
Fasciola hepatica ES産物を用いた治療は、BALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎中の炎症促進性サイトカイン産生を抑制する
図33は、DSS誘導性大腸炎中の結腸におけるIL−1ベータ、IL−17およびIL−10の誘導がFasciola hepatica ES産物の投与により低下することを示す。IL−1およびIL−17は、大腸炎の病態を媒介することを示し、データは、F.hepatica ES産物がこれらの炎症促進性サイトカインの産生を阻害することにより、ある程度の防御を付与することを示唆する。
【0195】
ESは、共投与抗原に対する抗原特異的IL−17およびIFN−ガンマ産生を阻害する
図34は、in vivoで外来抗原とESの共投与が、抗原特異的T細胞、特に、IFN−ガンマ(Th1細胞)またはIL−17(Th17細胞)を分泌するT細胞の誘導を抑制することを示す。
【0196】
要約
本発明者らは、マウスへのF.hepatica感染またはF.hepatica ESの投与が高頻度のIL−10分泌性制御性T(Treg)細胞を誘導し、ES産物が自己免疫疾患の阻害能を有することを発見した。本発明者らは、F.hepatica感染マウスが、腹腔において、IL−4の非存在下で非常に高濃度のIL−10を分泌する非常に高頻度のCD4T細胞を有することを明らかにした。感染により誘導されたこれらのTreg細胞は、共培養系または半透過膜により分離された場合における、OVA特異的T細胞の増殖およびIFN−ガンマ産生を阻害し、これは可溶性因子介在性抑制を示した。さらに、F.hepatica感染マウスの腹腔由来の樹状細胞(DC)は、高濃度のIL−10を分泌し、未感作マウス由来のDCに比べCD80、CD86、CD40およびMHCクラスIIの細胞表面発現は顕著に低いが、CCR5は高く、未成熟状態を示した。OVA特異的T細胞において抗原提示細胞として使用された場合、F−hepatica感染マウス由来のDCは、未感作マウス由来のDCと比較した場合、顕著に低いサイトカイン産生を誘導した。これらの所見は、DC活性化およびTreg細胞誘導を調節することにより、F.hepaticaがT細胞反応を抑制することを示す。
【0197】
また、F.hepatica ESがDC成熟を調節し、in virtoでIL−10産生を強化することが思いがけなく示された。カテプシンLプロテイナーゼ阻害剤の添加が、ESの調節効果を反転しなかった。さらに、マウスへのES注射は、多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の進行を予防した。ThIL17と呼ばれるIL−17を分泌するT細胞は、EAEの病原体であり、本発明者らのデータは、ESがThIL−17細胞の増殖を促進するIL−23を阻害することにより、またはThIL−17細胞の活性化もしくは機能を阻害することによるどちらかでThIL−17細胞の誘導を抑制することを示唆する。所見は、F.hepatica由来のES分画がカテプシンLプロテイナーゼ以外の成分を含み、これは、自然免疫系の細胞と相互作用し、抗炎症性サイトカインの誘導を刺激し、Treg細胞の誘導を促進する表現型に樹状細胞を活性化する一方、ThIL−17細胞を阻害し、それにより自己免疫疾患の進行を予防することを示唆する。
【0198】
本明細書において参照する全ての文書は、本明細書において参照として組み込まれる。本発明の記載の実施形態に対する種々の修正および変更は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとっては明らかであろう。本発明は、具体的な好ましい実施形態に関して記載しているが、それは、請求される本発明がこのような具体的な実施形態に過度に制限されるべきではないと理解されるべきである。実際、当業者であれば明らかである本発明を実施する記載様式の種々の修正は、本発明により包含されることを意図する。本明細書において、いくつかの従来技術への参照は、この従来技術のいずれかの国における通常の一般的な知識の部分を形成するものとしての承認、またはいずれかの形態における示唆とみなされるものではなく、またそのようにみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1−1】図1は、F.hepatica感染が樹状細胞(DC)成熟を調節することを示す。BALB/cマウスにFasciola hepaticaを経口感染させた。感染3週間後、腹腔滲出細胞を洗浄により、未感作およびF.hepatica感染マウスから単離し、細胞蛍光分析(cytofluorometric analysis)において、CD11c、CD80、CD86、CD40、CCR5およびMHCクラスIIに特異的な抗体(Ab)または種およびアイソタイプ適合対照抗体で染色した。図1は、CD11cDC集団上にゲートした細胞を表す。
【図1−2】図1は、F.hepatica感染が樹状細胞(DC)成熟を調節することを示す。BALB/cマウスにFasciola hepaticaを経口感染させた。感染3週間後、腹腔滲出細胞を洗浄により、未感作およびF.hepatica感染マウスから単離し、細胞蛍光分析(cytofluorometric analysis)において、CD11c、CD80、CD86、CD40、CCR5およびMHCクラスIIに特異的な抗体(Ab)または種およびアイソタイプ適合対照抗体で染色した。図1は、CD11cDC集団上にゲートした細胞を表す。
【図2】図2は、F.hepatica感染がIL−10産生樹状細胞を誘導することを示す。腹腔滲出細胞(PEC)を惹起21日後に未感作およびF.hepatica感染BALB/cマウスから腹腔洗浄により採取した。細胞をブロックし、抗CD11cで表面標識し、その後、蛍光標識した抗IL−10、抗IL−4および抗IFN−ガンマ抗体による細胞内サイトカイン標識のために固定および透過処理した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析し、CD11c集団においてゲートした。図2は、CD11cDCによるIL−10およびIFN−ガンマ産生を示す。数字は、ゲートしたCD11c細胞の割合を表す。
【図3】図3は、F.hepatica感染がIL−10分泌性T細胞を誘導することを示す。未感作およびF.hepatica感染BALB/cマウス由来の腹腔滲出細胞(PEC)を惹起21日後に腹腔洗浄により採取した。細胞をブロックし、抗CD4で表面標識し、その後、蛍光標識した抗IL−10、抗IL−4および抗IFN−ガンマ抗体による細胞内サイトカイン標識のために固定および透過処理した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析し、CD4細胞集団においてゲートした。数字は、ゲートした細胞の割合を表す。
【図4】図4は、Fasciola hepaticaがFOXP3発現T細胞を誘導することを示す。未感作およびF.hepatica感染マウス由来の腸管膜リンパ節(MLN)細胞(A)および腹腔滲出細胞(PEC)(B)を感染21日後に単離した。細胞をブロックし、抗CD4で表面標識し、その後、FOXP3の細胞内染色のために固定および透過処理した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析し、CD4細胞集団においてゲートした。図4は、惹起21日後に、未感作およびF.hepatica感染マウス由来のMLNおよびPECのCD4T細胞上のFOXP3およびCD25発現の代表例を示す。数字は、ゲートした細胞の割合を表す。
【図5−1】図5は、F.hepatica感染中に誘導されたT細胞が制御性の表現型を有することを示す。T細胞を未感作およびF.hepatica感染マウス(惹起21日後)の腹腔から磁気分離によりCD4細胞の正の選択を使用して単離した。細胞をブロックし、抗CD4で表面標識し、細胞蛍光分析のために、CD25、CCR5、CD28、CD45RB、CTLA−4、IL−10RおよびT1/ST2を染色した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析し、CD4細胞集団においてゲートした。図5は、T細胞上の細胞表面マーカー発現を示す。
【図5−2】図5は、F.hepatica感染中に誘導されたT細胞が制御性の表現型を有することを示す。T細胞を未感作およびF.hepatica感染マウス(惹起21日後)の腹腔から磁気分離によりCD4細胞の正の選択を使用して単離した。細胞をブロックし、抗CD4で表面標識し、細胞蛍光分析のために、CD25、CCR5、CD28、CD45RB、CTLA−4、IL−10RおよびT1/ST2を染色した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析し、CD4細胞集団においてゲートした。図5は、T細胞上の細胞表面マーカー発現を示す。
【図6−1】図6は、F.hepatica感染中に誘導されたT細胞が抑制能力を有することを示す。CD4T細胞を感染3週間後のF.hepatica感染マウスの腹腔から精製した。F.hepatica感染マウス由来の精製CD4T細胞を、抗原提示細胞(APC;2×10/ml)として照射された脾臓細胞のみ、または精製されたDO11.10Tgマウス由来のCD4T細胞およびOVAペプチド(2μg/ml)と合わせてES(20μg/ml)またはLFH(20μg/ml)と培養した。OVA特異的T細胞およびF.hepatica特異的T細胞を図6に示されたように合わせて培養した。OVAペプチドおよびAPCとともに培養されたOVA特異的T細胞は、対照として機能した。上清を72時間後に取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマの濃度を特異免疫アッセイにより決定した。増殖は、培養96時間後のチミジン取り込みを測定することにより決定した。
【図6−2】図6は、F.hepatica感染中に誘導されたT細胞が抑制能力を有することを示す。CD4T細胞を感染3週間後のF.hepatica感染マウスの腹腔から精製した。F.hepatica感染マウス由来の精製CD4T細胞を、抗原提示細胞(APC;2×10/ml)として照射された脾臓細胞のみ、または精製されたDO11.10Tgマウス由来のCD4T細胞およびOVAペプチド(2μg/ml)と合わせてES(20μg/ml)またはLFH(20μg/ml)と培養した。OVA特異的T細胞およびF.hepatica特異的T細胞を図6に示されたように合わせて培養した。OVAペプチドおよびAPCとともに培養されたOVA特異的T細胞は、対照として機能した。上清を72時間後に取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマの濃度を特異免疫アッセイにより決定した。増殖は、培養96時間後のチミジン取り込みを測定することにより決定した。
【図7−1】図7は、F.hepatica感染中に誘導されたT細胞の抑制能力が可溶性因子により部分的に媒介されることを示す。CD4T細胞を感染3週間後のF.hepatica感染マウスの腹腔から精製した。F.hepatica感染マウス由来の精製CD4T細胞を、抗原提示細胞(APC;2×10/ml)として照射された脾臓細胞のみ、または精製されたDO11.10Tgマウス由来のCD4T細胞およびOVAペプチド(2μg/ml)ならびに脾臓APCと合わせてES(20μg/ml)産物またはLFH(20μg/ml)と培養した。OVA特異的T細胞およびF.hepatica特異的T細胞を半透過膜により分離した。OVAペプチドおよびAPCとともに培養されたOVA特異的T細胞は、対照として機能した。上清を72時間後に取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマ濃度を特異免疫アッセイにより決定した。増殖は、培養96時間後のチミジン取り込みを測定することにより決定した。
【図7−2】図7は、F.hepatica感染中に誘導されたT細胞の抑制能力が可溶性因子により部分的に媒介されることを示す。CD4T細胞を感染3週間後のF.hepatica感染マウスの腹腔から精製した。F.hepatica感染マウス由来の精製CD4T細胞を、抗原提示細胞(APC;2×10/ml)として照射された脾臓細胞のみ、または精製されたDO11.10Tgマウス由来のCD4T細胞およびOVAペプチド(2μg/ml)ならびに脾臓APCと合わせてES(20μg/ml)産物またはLFH(20μg/ml)と培養した。OVA特異的T細胞およびF.hepatica特異的T細胞を半透過膜により分離した。OVAペプチドおよびAPCとともに培養されたOVA特異的T細胞は、対照として機能した。上清を72時間後に取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマ濃度を特異免疫アッセイにより決定した。増殖は、培養96時間後のチミジン取り込みを測定することにより決定した。
【図8−1】図8は、F.hepatica感染マウスの腹腔において、IL−10およびIL−5が誘導され、IL−10欠損マウスにおいて、IL−4が誘導されることを示す。C57BL/6およびIL−10ノックアウト(KO)マウスをF.hepaticaで感染させた。感染3週間後、腹水を洗浄により回収した。遠心分離後、上清を取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマの存在を免疫アッセイにより分析した。データは、個々のマウス由来の平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図8−2】図8は、F.hepatica感染マウスの腹腔において、IL−10およびIL−5が誘導され、IL−10欠損マウスにおいて、IL−4が誘導されることを示す。C57BL/6およびIL−10ノックアウト(KO)マウスをF.hepaticaで感染させた。感染3週間後、腹水を洗浄により回収した。遠心分離後、上清を取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマの存在を免疫アッセイにより分析した。データは、個々のマウス由来の平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図9−1】図9は、腸管膜リンパ節において、F.hepatica感染がIL−5およびIL−10分泌性T細胞を誘導し、IL−10欠損マウスにおいて、IFN−ガンマ産生細胞を強化することを示す。C57BL/6およびIL−10ノックアウトマウスをF.hepaticaで感染させた。感染3週間後、ex vivoの腸管膜リンパ節細胞を培地のみ、ES(4および20μg/ml)またはPMAおよび抗CD3を用いてin vitroで刺激した。インキュベーション72時間後、上清を取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマ濃度をELISA法により評価した。データは、個々のマウス由来の平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図9−2】図9は、腸管膜リンパ節において、F.hepatica感染がIL−5およびIL−10分泌性T細胞を誘導し、IL−10欠損マウスにおいて、IFN−ガンマ産生細胞を強化することを示す。C57BL/6およびIL−10ノックアウトマウスをF.hepaticaで感染させた。感染3週間後、ex vivoの腸管膜リンパ節細胞を培地のみ、ES(4および20μg/ml)またはPMAおよび抗CD3を用いてin vitroで刺激した。インキュベーション72時間後、上清を取り出し、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−ガンマ濃度をELISA法により評価した。データは、個々のマウス由来の平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図10−1】図10は、ESが自然細胞由来のIL−10産生を誘導することを示す。腹腔滲出細胞(A)、腹腔マクロファージ(B)、腹膜由来のCD11cDC(C)および脾臓由来のCD11cDC(D)を1×10個/mlにて、ES(4.0、20.0μg/ml)または肝吸虫ホモジネート(LFH;20μg/ml)、培地のみあるいはLPS(10ng/ml)で刺激した。IL−10濃度を24時間後に評価した。図10は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図10−2】図10は、ESが自然細胞由来のIL−10産生を誘導することを示す。腹腔滲出細胞(A)、腹腔マクロファージ(B)、腹膜由来のCD11cDC(C)および脾臓由来のCD11cDC(D)を1×10個/mlにて、ES(4.0、20.0μg/ml)または肝吸虫ホモジネート(LFH;20μg/ml)、培地のみあるいはLPS(10ng/ml)で刺激した。IL−10濃度を24時間後に評価した。図10は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図11】図11は、ESがマクロファージおよび樹状細胞由来のIL−10およびIL−12p40産生を誘導することを示す。J774マクロファージ(A)および骨髄由来DC(B)(1×10個/ml)をES(4.0、20.0および100μg/ml)、培地のみまたはLPS(10ng/ml)で刺激した。IL−10およびIL−12p40濃度を24時間後に評価した。図11は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を表す。
【図12】図12は、BMDCおよびPEC由来のES誘導性IL−10産生の動態を示す。骨髄由来DC(A)またはex vivoのPEC(B)(1×10個/ml)を培地のみ、ES(20μg/ml)またはLPS(10ng/ml)で刺激した。上清を6、12、24または48時間後に取り出し、ELISA法によりIL−10産生について評価した。図12は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を示す。
【図13】図13は、ESがin vivoで皮下投与後に流入領域リンパ節においてIL−10およびIL−4産生を誘導することを示す。マウス4匹の群にPBS200μlまたはES(50μg)のどちらかを皮下注射した。6時間後、鼠径リンパ節を取り出し、1ml氷冷PBS中でホモジナイズした。遠心分離後、上清を取り出し、IL−4、IL−10およびTGF−ベータ濃度についてELISA法により分析した。図13は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を示す。
【図14】図14は、ESがin vivoでi.p.投与後に腹腔の樹状細胞によりIL−10およびIL−4産生を誘導することを示す。マウス4匹の群にPBSまたはES(50μg)をi.p.注射した。2時間後、PBS注射およびES注射マウス由来の腹腔滲出細胞(PEC)を腹腔洗浄により採取した。細胞をブロックし、抗CD11cで表面標識し、その後、蛍光標識した抗IL−10、抗IL−4および抗IFN−ガンマ抗体による細胞内サイトカイン標識のための固定および透過処理を行なった。次いで、細胞を、フローサイトメーターを使用して分析し、CD11c細胞集団においてゲートした。図14は、PBS注射およびES注射マウス由来のPEC DCのサイトカイン産生を示す。数字は、ゲートしたCD11c細胞の割合を表す。
【図15】図15は、ESがJ774マクロファージのLPS誘導性IL−12p40を阻害することを示す。J774マクロファージ(1×10個/ml)を培地のみ、LPS(10ng/ml)、ES(20μg/ml)またはESで2時間のプレインキュベーション後にLPSで24時間刺激した。インキュベーション後、上清を取り出し、IL−10、IL−12p40およびIL−12p70濃度をELISA法により評価した。図15は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を示す。
【図16】図16は、ESが樹状細胞のLPS−IFN−ガンマ誘導性IL−12p70産生を阻害することを示す。骨髄由来DCを培地のみ、LPS(10ng/ml)およびIFN−ガンマ(20ng/ml)、ES(4.0または20.0μg/ml)、またはESで2時間のプレインキュベーション後にLPSおよびIFN−ガンマで24時間刺激した。サイトカイン濃度をELISA法により評価した。図16は、3回の培養における平均(±SE)IL−12p70およびIL−10濃度を示す。
【図17】図17は、ES誘導性IL−10産生が熱不活性化ESにより無効になることを示す。腹腔滲出細胞(PEC)を冷PBSの腹腔洗浄により未感作マウスから単離した。次いで、PEC(1×10個/ml)を天然または熱不活性化ES(4.0および20μg/ml)、陰性および陽性対照として、それぞれ培地のみまたはLPS(10ng/ml)を用いて刺激した。上清のサイトカイン濃度を24時間後に評価した。図17は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を示す。
【図18】図18は、ESによるIL−10誘導がカテプシンにより媒介されないことを示す。腹腔滲出細胞(PEC)を冷PBSの腹腔洗浄により未感作マウスから単離した。次いで、PEC(1×10個/ml)をカテプシン阻害剤E−64(10mM)の存在下または非存在下においてES(4.0および20μg/ml)で刺激した。培地またはLPS(10ng/ml)を用いた刺激は、それぞれ陰性および陽性対照として機能した。上清のサイトカイン濃度を24時間後に評価した。図18は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を示す。
【図19】図19は、J774マクロファージのLPS誘導性IL−12p40およびIL−12p70の阻害がカテプシンにより媒介されないことを示す。J774マクロファージ(1×10個/ml)が媒体のみ、LPS(10ng/ml)、ES(20μg/ml)またはESで2時間のプレインキュベーション後のLPSを用いてE−64(10mM)の存在下または非存在下において24時間刺激した。インキュベーション後、上清を取り出し、IL−10、IL−12p40およびIL−12p70の濃度をELISA法により評価した。図19は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度を示す。
【図20−1】図20は、ESがDCの成熟を誘導することを示す。C57BL/6またはIL−10ノックアウト(IL10−/−)マウス由来の骨髄由来DC(1×10個/ml)を培地のみ、ES(20μg/ml)またはLPS(10ng/ml)で刺激した。インキュベーション24時間後、細胞を細胞蛍光分析において、mAbs CD11c、CD80、CD86、CD40、CCR5およびMHCクラスIIまたは種およびアイソタイプ適合対照Absで染色した。細胞をCD11c(DC)集団上でゲートした。
【図20−2】図20は、ESがDCの成熟を誘導することを示す。C57BL/6またはIL−10ノックアウト(IL10−/−)マウス由来の骨髄由来DC(1×10個/ml)を培地のみ、ES(20μg/ml)またはLPS(10ng/ml)で刺激した。インキュベーション24時間後、細胞を細胞蛍光分析において、mAbs CD11c、CD80、CD86、CD40、CCR5およびMHCクラスIIまたは種およびアイソタイプ適合対照Absで染色した。細胞をCD11c(DC)集団上でゲートした。
【図21−1】図21は、ESがマクロファージ上のMHCクラスIIおよび共刺激性分子発現を強化することを示す。J774マクロファージ(1×10個/ml)を培地のみ、ES(20.0μg/ml)またはLPS(10ng/ml)で24時間刺激した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、CD80、CD86、CCR5、CD40およびMHCクラスIIに特異的な抗体またはアイソタイプ適合対照で染色した。次いで、細胞を、フローサイトメーターを使用して分析した。
【図21−2】図21は、ESがマクロファージ上のMHCクラスIIおよび共刺激性分子発現を強化することを示す。J774マクロファージ(1×10個/ml)を培地のみ、ES(20.0μg/ml)またはLPS(10ng/ml)で24時間刺激した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、CD80、CD86、CCR5、CD40およびMHCクラスIIに特異的な抗体またはアイソタイプ適合対照で染色した。次いで、細胞を、フローサイトメーターを使用して分析した。
【図22−1】図22は、ESがマクロファージ上のLPS誘導性CD40発現を抑制することを示す。J774マクロファージ(1×10個/ml)を培地のみ、LPS(10ng/ml)、ES(20.0μg/ml)またはESで2時間のプレインキュベーション後のLPSで24時間刺激した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、CD80、CD86、CCR5、CD40およびMHCクラスIIに特異的な抗体またはアイソタイプ適合対照で染色した。次いで、細胞を、フローサイトメーターを使用して分析した。
【図22−2】図22は、ESがマクロファージ上のLPS誘導性CD40発現を抑制することを示す。J774マクロファージ(1×10個/ml)を培地のみ、LPS(10ng/ml)、ES(20.0μg/ml)またはESで2時間のプレインキュベーション後のLPSで24時間刺激した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、CD80、CD86、CCR5、CD40およびMHCクラスIIに特異的な抗体またはアイソタイプ適合対照で染色した。次いで、細胞を、フローサイトメーターを使用して分析した。
【図23−1】図23は、ESが、共投与した抗原に対して抗原特異的IL−10産生を強化することを示す。BALB/cマウスをPBS(20μg)、KLH(5μg)またはKLH(5μg)およびES(20μg)で側腹部に皮下免疫した。7日後、鼠径リンパ節を単離し、KLH(2〜50μg/ml)、培地のみならびにPMAおよび抗CD3と陰性および陽性対照それぞれで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−4、IL−5、IFN−ガンマおよびIL−10産生について免疫アッセイにより調べた。図23は、マウス4匹/群の平均(±SE)を示す。
【図23−2】図23は、ESが、共投与した抗原に対して抗原特異的IL−10産生を強化することを示す。BALB/cマウスをPBS(20μg)、KLH(5μg)またはKLH(5μg)およびES(20μg)で側腹部に皮下免疫した。7日後、鼠径リンパ節を単離し、KLH(2〜50μg/ml)、培地のみならびにPMAおよび抗CD3と陰性および陽性対照それぞれで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−4、IL−5、IFN−ガンマおよびIL−10産生について免疫アッセイにより調べた。図23は、マウス4匹/群の平均(±SE)を示す。
【図24−1】図24は、ESが、共投与した抗原に対する抗原特異的T細胞反応を抑制することを示す。BALB/cマウスをPBS、ES(50μg)、KLH(5μg)またはKLH(5μg)およびES(50μg)で側腹部に皮下免疫した。7日後、鼠径リンパ節を単離し、KLH(2〜50μg/ml)、培地のみならびにPMAおよび抗CD3と陰性および陽性対照それぞれで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−4、IL−5、IFN−ガンマおよびIL−10において免疫アッセイにより調べた。図24は、マウス4匹/群の平均(±SE)を示す。
【図24−2】図24は、ESが、共投与した抗原に対する抗原特異的T細胞反応を抑制することを示す。BALB/cマウスをPBS、ES(50μg)、KLH(5μg)またはKLH(5μg)およびES(50μg)で側腹部に皮下免疫した。7日後、鼠径リンパ節を単離し、KLH(2〜50μg/ml)、培地のみならびにPMAおよび抗CD3と陰性および陽性対照それぞれで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−4、IL−5、IFN−ガンマおよびIL−10において免疫アッセイにより調べた。図24は、マウス4匹/群の平均(±SE)を示す。
【図25】図25は、ESがConA誘導性増殖およびIFN−ガンマ産生を阻害することを示す。脾臓細胞(2×10個/ml)を培地またはES(4.0および20μg/ml)のみあるいは、ConA(5μg/ml)の存在下において24時間刺激した。上清をインキュベーション72時間後に取り出し、IL−10およびIFN−ガンマ産生についてELISA法により評価した。増殖を[H]チミジン取り込みにより48時間後に決定した。図25は、3回の培養における平均(±SE)サイトカイン濃度および増殖数を示す。
【図26】図26は、F.hepatica感染およびF.hepatica ES処置が、EAEの臨床症状を改善することを示す。0日目に完全フロインドアジュバント(CFA)中のMOG35−55ペプチドを用いた免疫および0日および2日目のpertussis毒素の注射により、C57BL/6マウスにおいてEAEを誘導した。1つのマウス群は、処置しないままにした。2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個で感染させた。3つ目は、ES 50μgを、EAE誘導1日前におよびその後は2日毎にi.p.注射した。図26は、平均臨床EAEスコアおよび疾患指数を示す。
【図27−1】図27は、F.hepatica感染およびF.hepatica ES処置が、病原性IL−17およびIFN−ガンマ分泌性T細胞の誘導を抑制することを示す。0日目にCFA中のMOG35−55ペプチドを用いた免疫化および0日および2日目のpertussis毒素の注射により、C57BL/6マウスにおいてEAEを誘導した。1つのマウス群は、処置しないままにした。2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個で感染させた。3つ目は、ES 50μgを、EAE誘導1日前におよびその後は2日毎にi.p.注射した。EAE誘導20日後に、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。脾臓細胞(2×10個/ml)を培地のみ、MOG35−55ペプチド(10および100μg/ml)または抗CD3およびPMAで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−17、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により決定した。図27は、マウス4〜5匹の群において3回調べた平均値を示す。
【図27−2】図27は、F.hepatica感染およびF.hepatica ES処置が、病原性IL−17およびIFN−ガンマ分泌性T細胞の誘導を抑制することを示す。0日目にCFA中のMOG35−55ペプチドを用いた免疫化および0日および2日目のpertussis毒素の注射により、C57BL/6マウスにおいてEAEを誘導した。1つのマウス群は、処置しないままにした。2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個で感染させた。3つ目は、ES 50μgを、EAE誘導1日前におよびその後は2日毎にi.p.注射した。EAE誘導20日後に、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。脾臓細胞(2×10個/ml)を培地のみ、MOG35−55ペプチド(10および100μg/ml)または抗CD3およびPMAで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−17、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により決定した。図27は、マウス4〜5匹の群において3回調べた平均値を示す。
【図28】図28は、Fasciola hepatica感染がC57BL/6野生型およびIL−10欠損マウスのEAEの発症を遅延し、臨床兆候を軽減することを示す。0日目の完全フロインドアジュバント(CFA)中のMOG35−55ペプチドを用いた免疫および0日および2日目のpertussis毒素の注射により、C57BL/6またはIL−10ノックアウトマウスにおいてEAEを誘導した。各種のマウスにおいて、1つの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個を投与した。図28は、平均臨床EAEスコアを示す。
【図29−1】図29は、IL−10非依存性メカニズムにより、F.hepatica感染がEAEにおける病原性IFN−ガンマおよびIL−17分泌性細胞を阻害することを示す。0日目の完全フロインドアジュバント(CFA)中のMOG35−55ペプチドを用いた免疫および0日および2日目のpertussis毒素の注射により、C57BL/6またはIL−10ノックアウトマウス(k/o)においてEAEを誘導した。各種のマウスにおいて、1つの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個を投与した。EAE誘導20日後(IL−10k/oにおいて)または23日後(WTマウスにおいて)において、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。脾臓細胞(2×10個/ml)を培地のみ、MOG35−55ペプチド(10および100μg/ml)または抗CD3およびPMAで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−17、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により決定した。図29は、マウス6匹の群において3回調べた平均値を示す。
【図29−2】図29は、IL−10非依存性メカニズムにより、F.hepatica感染がEAEにおける病原性IFN−ガンマおよびIL−17分泌性細胞を阻害することを示す。0日目の完全フロインドアジュバント(CFA)中のMOG35−55ペプチドを用いた免疫および0日および2日目のpertussis毒素の注射により、C57BL/6またはIL−10ノックアウトマウス(k/o)においてEAEを誘導した。各種のマウスにおいて、1つの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、EAE誘導1日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個を投与した。EAE誘導20日後(IL−10k/oにおいて)または23日後(WTマウスにおいて)において、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。脾臓細胞(2×10個/ml)を培地のみ、MOG35−55ペプチド(10および100μg/ml)または抗CD3およびPMAで刺激した。上清を3日後に取り出し、IL−17、IFN−ガンマ、IL−4およびIL−10濃度をELISA法により決定した。図29は、マウス6匹の群において3回調べた平均値を示す。
【図30】図30は、Fasciola hepatica感染がBALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎の臨床兆候を軽減することを示す。BALB/cマウスにおいて、0日目から実験期間中5%デキストラン硫酸塩(DSS)を飲水投与することにより、大腸炎を誘導した。1つのマウスの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、DSS投与5日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個を投与した。DSSまたはF.hepatica感染を受けていない追加のマウスの群は、対照として機能した。大腸炎の臨床症状は、A)下痢(以下のスコア1〜3:0、正常なペレット;1、わずかに緩いペレット;2、緩いペレット;3水様便)およびB)糞便血(以下のスコア:0、正常;1、わずかに血性;2、血性;3、全結腸内の出血)の毎日の観察によりモニターした。図30は、マウス6〜8匹/群の平均スコアを示す。
【図31】図31は、Fasciola hepatica感染がDSS誘導性大腸炎中の結腸の炎症促進性サイトカイン産生を抑制することを示す。BALB/cマウスにおいて、0日目から実験期間中5%デキストラン硫酸塩(DSS)を飲水投与することにより、大腸炎を誘導した。1つのマウスの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、DSS投与5日前にF.hepaticaのメタセルカリア10個を投与した。DSSまたはF.hepatica感染を受けていない追加のマウスの群は、対照として機能した。マウスを12日目に屠殺し、結腸を取り出し、タンパク質分解性酵素で1時間処理後、1または24時間インキュベートした。組織上清のIL−1ベータ、IL−17およびTNF−アルファ濃度をELISA法により決定した。
【図32−1】図32は、Fasciola hepatica ES産物による治療がBALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎の臨床兆候を軽減することを示す。BALB/cマウスにおいて、0日目から実験期間中5%デキストラン硫酸塩(DSS)を飲水投与することにより、大腸炎を誘導した。1つのマウスの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、−1、+1、3、5、7および9日目にF.hepatica ES 50μgを投与した。DSSまたはF.hepatica感染を受けていない追加のマウスの群は、対照として機能した。大腸炎の臨床症状は、A)下痢(以下のスコア1〜3:0、正常なペレット;1、わずかに緩いペレット;2、緩いペレット;3水様便)およびB)糞便血(以下のスコア:0、正常;1、わずかに血性;2、血性;3、全結腸内の出血)ならびにC)体重(0日目の重量の割合として表した)の毎日の観察によりモニターした。図32は、マウス6〜8匹/群の平均スコアを示す。
【図32−2】図32は、Fasciola hepatica ES産物による治療がBALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎の臨床兆候を軽減することを示す。BALB/cマウスにおいて、0日目から実験期間中5%デキストラン硫酸塩(DSS)を飲水投与することにより、大腸炎を誘導した。1つのマウスの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、−1、+1、3、5、7および9日目にF.hepatica ES 50μgを投与した。DSSまたはF.hepatica感染を受けていない追加のマウスの群は、対照として機能した。大腸炎の臨床症状は、A)下痢(以下のスコア1〜3:0、正常なペレット;1、わずかに緩いペレット;2、緩いペレット;3水様便)およびB)糞便血(以下のスコア:0、正常;1、わずかに血性;2、血性;3、全結腸内の出血)ならびにC)体重(0日目の重量の割合として表した)の毎日の観察によりモニターした。図32は、マウス6〜8匹/群の平均スコアを示す。
【図33】図33は、Fasciola hepatica ES産物による治療がBALB/cマウスのDSS誘導性大腸炎の炎症促進性サイトカイン産生を抑制することを示す。BALB/cマウスにおいて、0日目から実験期間中5%デキストラン硫酸塩(DSS)を飲水投与することにより、大腸炎を誘導した。1つのマウスの群は、処置しないままにし、2つ目の群は、−1、+1、3、5、7および9日目にF.hepatica ES 50μgを投与した。DSSまたはF.hepatica ESを受けていない追加のマウスの群は、対照として機能した。マウスを12日目に屠殺し、結腸を取り出し、タンパク質分解性酵素で1時間処理後、1または24時間インキュベートした。IL−17、IL−1ベータおよびIL−10濃度をELISA法により決定した。図33は、DSS誘導性大腸炎中の結腸におけるIL−1ベータ、IL−17およびIL−10の誘導がFasciola hepatica ES産物の投与により低下することを示す。
【図34−1】図34は、ESが、共投与された抗原に対する抗原特異的IL−17およびIFN−ガンマ産生を阻害することを示す。OVA−TgマウスをPBS、OVA(200μg)またはOVA(5μg)およびES(50μg)を用いて側腹部に皮下免疫した。14日後、マウスをOVAまたはOVAおよびESのどちらかで二次免疫した。二次免疫7日後、鼠径リンパ節を単離し、OVA(20および200μg/ml)、培地のみならびにPMAおよび抗CD3と陰性および陽性対照それぞれで刺激した。上清を3日後に取り出し、IFN−ガンマ、IL−10、IL−17およびIL−5産生を免疫アッセイにより調べた。図34は、マウス4匹/群の平均(±SE)を示す。
【図34−2】図34は、ESが、共投与された抗原に対する抗原特異的IL−17およびIFN−ガンマ産生を阻害することを示す。OVA−TgマウスをPBS、OVA(200μg)またはOVA(5μg)およびES(50μg)を用いて側腹部に皮下免疫した。14日後、マウスをOVAまたはOVAおよびESのどちらかで二次免疫した。二次免疫7日後、鼠径リンパ節を単離し、OVA(20および200μg/ml)、培地のみならびにPMAおよび抗CD3と陰性および陽性対照それぞれで刺激した。上清を3日後に取り出し、IFN−ガンマ、IL−10、IL−17およびIL−5産生を免疫アッセイにより調べた。図34は、マウス4匹/群の平均(±SE)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞介在性炎症性免疫反応の処置または予防のための組成物であって、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのToll様受容体作動薬をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物がカテプシンLを含まない、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物がIL−4濃度を調節しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫反応を調節する場合、
被検体のIL−10サイトカインレベルの増加、
被検体のTGF−ベータサイトカインレベルの増加、
制御性T細胞の増加、
IL−12、IL−2および/またはIFN−ガンマ等の少なくとも1つの炎症促進性サイトカインの減少、
細胞傷害性Tリンパ球の減少、
Th1細胞の減少、または
混合リンパ球反応の低下
の少なくとも1つを媒介するよう作用する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
T細胞介在性炎症促進性状態の予防および/または処置のための医薬組成物であって、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体とともに薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのToll様受容体作動薬をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
T細胞介在性免疫反応を調節する方法であって、
このような処置を必要とする被検体に、Fasciola hepatica由来の排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項9】
前記免疫反応を調節する場合、前記薬剤が
前記被検体のIL−10サイトカインレベルの増加、
前記被検体のTGF−ベータサイトカインレベルの増加、
制御性T細胞の増加、
IL−12、IL−2および/またはIFN−ガンマ等の少なくとも1つの炎症促進性サイトカインの減少、
細胞傷害性Tリンパ球の減少、
Th1細胞の減少、または
混合リンパ球反応の低下
の少なくとも1つを媒介するよう作用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤がPam3CSK4、ザイモサン、ポリIC、LPS、フラジェリンおよびCpG−ODNを含む群から選択される、TLR作動薬とともに投与される、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Th1免疫反応の下方制御により有利となる状態を有する被検体を処置する方法であって、
当該被検体に、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項12】
免疫介在性疾患の処置のための医薬品の調製のための、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用。
【請求項13】
自己免疫疾患の処置のための医薬品の調製のための、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用。
【請求項14】
このような処置を必要とする被検体において、免疫介在性疾患の処置に適切な免疫反応を抑制する方法であって、
樹状細胞の機能を調節するために、単離された当該樹状細胞を、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤にex vivoで暴露し、
前記樹状細胞を前記被検体に投与する
ステップを含み、それにより、続いて前記被検体中で前記樹状細胞により誘導される免疫反応が、前記免疫介在性疾患の発症または進行を十分に予防する方法。
【請求項15】
前記疾患が、自己免疫疾患である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記自己免疫疾患が、リウマチ様関節炎または多発性硬化症である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
免疫介在性疾患の処置に適切な被検体の免疫反応を誘発する方法であって、
樹状細胞の機能を調節するために、単離された当該樹状細胞を、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画またはそこから単離されたペプチドの誘導体産物、突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤にex vivoで暴露し、
前記樹状細胞を前記被検体に投与する
ステップを含み、それにより、前記被検体中で産生される免疫反応が、前記免疫介在性疾患の発症または進行を十分に予防する方法。
【請求項18】
免疫介在性状態の予防および/または処置の方法であって、
Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤を投与するステップを含み、当該薬剤の投与がIL−17を分泌するT細胞の産生を阻害するよう作用する方法。
【請求項19】
免疫介在性状態の予防および/または処置の方法であって、
Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤を投与するステップを含み、当該薬剤の投与がIL−23産生を阻害するよう作用する方法。
【請求項20】
免疫介在性疾患の処置のための、IL−17産生を阻害する医薬品の調製のための、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画またはそこから単離されたタンパク質の誘導体、突然変異体、断片もしくは変異体の使用。
【請求項21】
神経変性疾患の処置のための医薬品の調製のための、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用。
【請求項22】
心疾患または状態のための医薬品の調製のための、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体の使用。
【請求項23】
癌または感染性疾患の処置に適切な被検体のTh1反応を誘導する方法であって、
樹状細胞を、エフェクター細胞機能を促進する表現型に成熟させるために、単離された当該樹状細胞を、ワクチンおよびFasciola hepaticaのES(排泄/分泌)成分から単離されたTLR作動薬の存在下において、疾患特異的抗原にex vivoで暴露し、
前記樹状細胞を前記被検体に投与する
ステップを含み、それにより前記被検体中に産生された免疫反応が、癌の発症または進行を十分に予防し、あるいは病原性微生物感染を十分に予防し、それにより感染性疾患を予防する方法。
【請求項24】
IL−12産生またはIL−12ファミリーメンバーの産生の抑制のための組成物であって、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体を含む組成物。
【請求項25】
IL−12産生または前記IL−12ファミリーメンバーの産生の抑制において使用される医薬組成物であって、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体とともに薬学的に許容される賦形剤または担体を含む組成物。
【請求項26】
IL−12またはIL−12ファミリーメンバーの産生を抑制する方法であって、
Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与する
ステップを含む方法。
【請求項27】
制御性T細胞の活性化、増殖および/または産生を促進する組成物であって、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体を含む組成物。
【請求項28】
制御性T細胞の活性化、増殖および/または産生を促進する医薬組成物であって、Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体とともに薬学的に許容される賦形剤または担体を含む組成物。
【請求項29】
制御性T細胞の活性化、増殖および/または産生を促進する方法であって、
Fasciola hepaticaの排泄/分泌(ES)成分もしくはその分画もしくは突然変異体またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの誘導体産物、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項30】
炎症状態の予防および/または処置のための組成物であって、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む組成物。
【請求項31】
炎症状態の予防および/または処置のための医薬組成物であって、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体とともに薬学的に許容される賦形剤または担体を含む組成物。
【請求項32】
炎症状態を調節する方法であって、
肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項33】
認知機能障害の予防および/または処置の方法であって、このような治療を必要とする個体に、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤を投与するステップを含む方法。
【請求項34】
認知機能障害の処置のための、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体を含む薬剤の使用。
【請求項35】
認知機能障害の処置のための医薬品の調製のための、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用。
【請求項36】
免疫介在性状態の処置のための医薬品の調製のための、肝吸虫ホモジネート(LFH)もしくは誘導体産物またはそこから単離されたタンパク質もしくはペプチドの突然変異体、断片もしくは変異体の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26】
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【図27−1】
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【図27−2】
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【図28】
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【図29−1】
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【図29−2】
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【図30】
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【図31】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図33】
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【図34−1】
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【図34−2】
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【公表番号】特表2009−518387(P2009−518387A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543996(P2008−543996)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/IE2006/000136
【国際公開番号】WO2007/066313
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】