説明

免疫学的測定方法及び免疫学的測定キット

【課題】 短時間にHMGB1の測定が可能な抗体、例えばHMGB1抗体の組み合わせを明らかにし、免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットを提供する。
【解決手段】 担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを下記抗体(A)、抗体(B)、抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを含むことを特徴とするHMGB1の有無または濃度もしくはその両方を測定する免疫学的測定方法及び測定キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症及び関連症状の重症度をモニタリングするための診断方法であって、敗血症等の疾患のマーカーとなりうるHMGB1を短時間に測定するための免疫学的検出方法及びその免疫学的測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
High Mobility Group Box 1(以下「HMGB1」と略すことがある)は、非ヒストン核タンパクの主要成分であり、転写調節因子として知られている約30kDaのタンパク質である。
1999年、WangらによりHMGB1が敗血症のマーカーとなり得ることが示され、今では敗血症性ショック時の晩期に発現するメディエーターとして注目されるようになった。また、HMGB1は、敗血症時に核外へと遊離された場合には細胞障害性を示すこと、また、従来の炎症性サイトカインであるTNF−αやIL−1βよりも遅れて出現することから、敗血症時の致死性に関与する可能性が指摘されている。
【0003】
これらのことから、HMGB1は敗血症ショック時の臓器障害の重要なメディエーターとしての可能性が高く、敗血症時のあらたな治療目標となる可能性も示唆されている。
これに関連して、特許文献1では、敗血症または敗血症性ショックの重症度または考え得る致死率をモニタリングするための診断方法として、HMGB1の血清濃度を測定する方法を提案している。
【0004】
また、特許文献2では、ヒトHMGB1に特異的に結合する抗体並びにこの抗体を用いるヒトHMGB1の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットに関する提案が行われている。さらに、ヒト血清や血漿中のHMGB1濃度を測定する研究用試薬、HMGB1 ELISA KitII(商品名、株式会社シノテスト)やHMGB1(human)Detection Set(商品名、Apotech社)も販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−520763号公報
【特許文献2】特開2003−096099号公報
【0006】
特許文献1(請求項7)は、炎症性カスケードの活性化を特徴とする症状に伴うショック様症状を示しているか、またはその症状を示す危険性のある患者に関する敗血症及び関連症状の重症度をモニタリングし、そして起こり得る臨床経過を予測するための診断及び予後判定方法に関する提案である。
【0007】
特許文献2では、GKGDPKKPRGKで表されるアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として調整される抗体に関する発明である。また、GKGDPKKPRGKで表されるアミノ酸配列に、1ないし数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、もしくは付加、または修飾を施したペプチドを免疫原として調整される抗体に関する発明である。さらに、それら抗体を用いるヒトHMGB1の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットに関する発明である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先に述べたように、HMGB1は敗血症性ショック時の晩期に発現するマーカーとしての役割だけでなく、敗血症のあらたな測定目標として注目されつつある。つまり、敗血症の診断及びその経過の評価をくだすために、より短時間にHMGB1の測定結果を知ることが重要であると言える。
例えば特許文献1(表2)は、HMGB1の血清濃度と死亡症例との関係を示しており、血清HMGB1が最高レベルに達した患者には、致死症例が観察されたと報告している。
また、特許文献1([0012]段落)では、HMGB1の血清レベルは、敗血症の周知の初期メディエーター(例えばTNF及びIL−1)より16時間ほど遅れて上昇し、プラトーレベルに達すると報告されている。
【0009】
つまりHMGB1の血清濃度を短時間に測定することが、敗血症及びその重症度を診断する上で重要であると言える。だが、特許文献1に記載の診断アッセイには、測定時間に関する具体的な記載はない。一方、特許文献2に記載の抗体は、ヒトHMGB1に特異的に結合するという目的で調整された抗体であり、短時間にヒトHMGB1を測定するという目的で調整された抗体ではない。よって、特許文献1及び特許文献2に記載の抗体は、前記目的で用いられることは困難であった。
【0010】
また、市販されている研究用試薬、HMGB1 ELISA KitII及びHMGB1(human)Detection Setにおいても、測定結果を得るのに一晩以上の時間を要するため、上記目的での使用は困難であった。
つまり、敗血症及び関連症状の重症度を迅速にモニタリングするためには、HMGB1を短時間に測定することが重要であることは公知の事実と言えるが、これを満たす免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットは報告されていなかった。
これに対し本発明の課題は、短時間にHMGB1の測定が可能な抗体、例えばHMGB1抗体の組み合わせを明らかにし、免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意に検討した結果、特定の抗体から選んだ、担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体との組合せを用いた、HMGB1の有無または濃度もしくはその両方を測定する免疫学的測定方法及びその測定キットを見出した。
【0012】
試料中に存在するHMGB1を測定する本発明の免疫学的測定方法は、担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを下記抗体(A)、抗体(B)、抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)と、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを使用することを特徴とする。
【0013】
抗体(A):
GKGDPKKPRGKMSSYA(式I)
で表されるペプチドにKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)で修飾したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
【0014】
抗体(B):
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式II)
で表されるタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
【0015】
抗体(C):
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFK(式III)
で表されるポリペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグで修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体。
【0016】
抗体(D):
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式IV)
で表されるタンパク質にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグで修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体。
【0017】
また、試料中に存在するHMGB1を測定する本発明の免疫学的測定キットは、担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを前記抗体(A)、抗体(B)抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)と、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本免疫学的測定方法及び本免疫学的測定キットでは、市販されているHMGB1抗体の中から、短時間にHMGB1の測定が可能な第1の抗体及び第2の抗体を選び抜き、抗体の組み合わせを用いる。それによって、これまで1日近く要していたHMGB1の測定時間を、数十分にまで短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施例に係る、免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットによるHMGB1の短時間測定、を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る、免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットによるHMGB1の短時間測定、を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、個々に開示する実施形態は、本発明の測定方法及びその測定キットの例であり、これに限定されるものではない。
【0021】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態は、担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを下記抗体(A)、抗体(B)抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)と、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを使用することを特徴とするHMGB1の有無または濃度もしくはその両方を測定する免疫学的測定方法である。
【0022】
抗体(A):
:GKGDPKKPRGKMSSYA(式I)
で表されるペプチドにKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を修飾したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
【0023】
抗体(B):
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式II)
で表されるタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
【0024】
抗体(C):
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFK(式III)
で表されるポリペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグを修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体
【0025】
抗体(D):
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式IV)
で表されるタンパク質にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグで修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体。
【0026】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態は、担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを前記抗体(A)、抗体(B)抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを使用することを特徴とするHMGB1の有無または濃度もしくはその両方を測定する免疫学的測定キットである。
【0027】
以下に本発明の第一実施形態及び第二実施形態を詳述する。
(1)免疫学的測定方法について
本発明の免疫学的測定方法とは、試料に含まれるHMGB1を、抗原抗体反応を利用して測定を行う免疫学的測定方法において、前記第1の抗体と第2の抗体との組合せが、HMGB1を短時間に測定可能な抗体の組み合わせであることを特徴とする。具体的には、前記抗体(A)と(B)、抗体(A)と(C)、抗体(B)と(A)、抗体(B)と(C)、抗体(B)と(D)、抗体(C)と(B)の6つの組合せのいずれか1つである。
【0028】
即ち、HMGB1の免疫学的測定方法において、測定対象物質であるヒトHMGB1に結合する第1の抗体と第2の抗体との組合せを前記6つの組合せのいずれか1つを使用することを特徴とする測定方法である。これにより、本発明の免疫学的測定方法では、試料に含まれるHMGB1を短時間で測定することができるのである。
【0029】
この免疫学的測定方法としては、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、酵素抗体法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法、等を挙げることができる。
また、本発明の免疫学的測定方法における測定は、用手法で行ってもよいし、分析装置等の装置を用いて行ってもよい。
【0030】
また、本発明における免疫学的測定の操作方法は、公知の方法に従い行うことができる。例えば、担体に固相化された第1の抗体と、試料及び標識物質が修飾されている第2の抗体を、同時または順に反応させる。この反応により、「担体に固相化された第1の抗体−HMGB1−標識物質が修飾されている第2の抗体」の複合体が形成され、この複合体に含まれる標識物質が修飾されている第2の抗体の量から、試料中に含まれるHMGB1の量(濃度)を測定することができる。
【0031】
例えば、酵素免疫測定法の場合は、第1の抗体が固相化されたマイクロプレート、検体希釈液、HRP等の酵素が修飾された第2の抗体、洗浄緩衝液、及び基質溶液を用いて行うと良い。また測定は、第2の抗体に修飾されている酵素に、その至適条件下で基質を反応させ、その酵素反応生成物の量を光学的方法等により測定すると良い。
また、蛍光免疫測定法の場合には、第1の抗体が固相化された光導波路、検体希釈液、蛍光物質が修飾された第2の抗体、洗浄緩衝液を用いて行っても良い。また測定は、第2の抗体に修飾されている蛍光物質に励起光を照射し、その蛍光物質が発する蛍光強度を測定すると良い。
【0032】
さらに放射免疫測定法の場合には、放射性物質による放射線量を測定する。また、発光免疫測定法の場合には、発光反応系による発光量を測定する。
また、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法等の場合には、エンドポイント法またはレート法により透過光や散乱光を測定する。また、イムノクロマトグラフィー法などを目視により測定する場合には、テストライン上に現れる標識物質の色を目視的に測定する。なお、この目視的に測定する代わりに、分析装置等の機器を用いてもよい。
【0033】
(2)測定試料について
本発明の免疫学的測定方法における試料は、人の血液、血清、血しょう、尿、精液、ずい液、唾液、汗、涙、腹水もしくは羊水などの体液など、HMGB1が含まれる可能性のある生体試料であれば全て対象となる。
【0034】
(3)抗体について
本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットにおける抗体(A)とは、
GKGDPKKPRGKMSSYA(式I)
で表されるペプチドにKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を修飾したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体であればよい。より好ましくは、アブカム株式会社が販売しているRabbit polyclonal to HMGB1 − Aminoterminal end(商品名、Code ab67281)である。
【0035】
また、抗体(A)には、式Iで表されるアミノ酸配列から1ないし数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、もしくは付加、または修飾を施したペプチドにKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を修飾したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体も含む。
【0036】
また、本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットにおける抗体(B)とは、
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式II)
で表されるタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体であればよい。より好ましくは、Proteintech Group社が販売しているAntibody to HMGB1(商品名、Cat. No. 10829−1−AP)である。
【0037】
抗体(B)には、式IIで表されるアミノ酸配列から1ないし数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、もしくは付加、または修飾を施したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体も含む。
【0038】
また、本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットにおける抗体(C)とは、
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFK(式III)
で表されるポリペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグを修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体であればよい。より好ましくは、Abnova社が販売しているHMGB1 monoclonal antibody (M08),Clone 2F6(商品名、Cat. No. H003146−M08)である。
【0039】
また、抗体(C)には、式IIIで表されるアミノ酸配列から1ないし数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、もしくは付加、または修飾を施したペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグを修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体も含む。
【0040】
また、本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットにおける抗体(D)とは、
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式IV)
で表されるタンパク質にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグで修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体であれば良い。より好ましくは、Abnova社が販売しているHMGB1 monoclonal antibody (M02),Clone 1D5(商品名、Cat. No. H003146−M02)である。
【0041】
また、抗体(D)には、式IVで表されるアミノ酸配列から1ないし数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、もしくは付加、または修飾を施したペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグを修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体も含む。
【0042】
(4)担体に固相化された第1の抗体について
本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットにおける担体に固相化された第1の抗体とは、抗体(A)、(B)、または(C)と、担体とを、物理吸着法、化学的結合法またはこれらの併用等の方法により、吸着、結合させて調整した抗体を意味する。
物理吸着法により抗体を固相化する場合は、公知の方法に従い調整することができる。例えば、抗体と担体を緩衝液などの溶液中で混合し接触させる方法、緩衝液などに溶解した抗体と担体を接触させる方法などが挙げられる。
【0043】
また、化学的結合法により抗体を固相化する場合も公知の方法に従い調整することができる。例えば、抗体と担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステルまたはマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させて、抗体と担体双方のアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基、または水酸基等と反応させる方法などが挙げられる。
【0044】
また、非特異的反応や、抗体を固相化させた担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、公知の方法により処理することができる。例えば、抗体を固相化させた担体の表面または内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミンもしくはその塩などのタンパク質、界面活性剤または脱脂粉乳等を接触させ、被覆させる方法などが挙げられる。
【0045】
(5)標識物質が修飾されている第2の抗体について
本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットにおける標識物質が修飾されている第2の抗体とは、抗体(A)、(B)、(C)、または(D)と、標識物質とを、物理吸着法、化学的結合法またはこれらの併用等の方法により、吸着、結合させて調整した抗体を意味する。
物理吸着法により抗体に標識物質を結合させる場合は、公知の方法に従い調整することができる。例えば、抗体と標識物質を緩衝液などの溶液中で混合し接触させる方法、緩衝液などに溶解した抗体と標識物質を接触させる方法などが挙げられる。
【0046】
例えば、標識物質が金コロイドやラテックスである場合は物理吸着法が有効であり、抗体と金コロイドとを緩衝液中で混合し接触させることで、金コロイド標識を有する抗体を得ることができる。
また、化学的結合法により抗体に標識物質を修飾させる場合には、公知の方法に従い調整することができる。例えば、抗体と標識物質をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステルまたはマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させて、抗体と標識物質双方のアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基、または水酸基等と反応させる方法などが挙げられる。例えば、標識物質が蛍光物質や酵素、または化学発光物質である場合、化学結合法が有効である。
【0047】
また、非特異的反応や、標識物質を修飾させた抗体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、公知の方法により処理することができる。例えば、標識物質を結合させた抗体に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミンもしくはその塩などのタンパク質、界面活性剤または脱脂粉乳等を接触させ、被覆させる方法などが挙げられる。
【0048】
また標識物質としては、酵素免疫測定法の場合、ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、またはアミラーゼ等を用いることができる。
また、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、シアニン、またはメロシアニン等を用いることができる。
また、放射免疫測定法の場合には、トリチウム、ヨウ素125またはヨウ素131等を用いることができる。
【0049】
また、発光免疫測定法の場合には、ルミノール系、ルシフェラーゼ系、アクリジニウムエステル系、またはジオキセタン化合物系等を用いることができる。
また、イムノクロマトグラフィー法、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法の場合には、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン酸共重合体、メタクリル酸所オ剛体、アクリル酸重合体、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、金属コロイド、セラミックス、または磁性体等の材質よりなる微粒子を用いることができる。
【0050】
(6)担体について
本発明の免疫学的測定方法における担体は、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス、または、磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック、メンブレン、または試験片等の形状の固相担体を用いることができる。具体的に本発明の担体が最も好ましくは、光導波路として構成されるウェイブガイドである。
【0051】
(7)免疫学的測定キットについて
本発明の免疫学的測定キットとは、試料に含まれるHMGB1を、抗原抗体反応を利用して測定を行うための免疫学的測定キットにおいて、前記第1及び第2の抗体が、抗体(A)と抗体(B)、抗体(A)と抗体(C)、抗体(B)と抗体(A)、抗体(B)と抗体(C)、抗体(B)と抗体(D)、抗体(C)と抗体(B)の組み合わせのうち、少なくとも1つであることを特徴とするものであり、前述した本発明の免疫学的測定方法に使用することができるものである。従って、本発明の免疫学的測定キットに使用する測定原理等については、前述した免疫学的測定方法と同様である。
【0052】
(8)その他の試薬成分について
本発明の免疫学的測定キットにおいて、溶媒としては、各種の水系溶媒を用いることができる。この水系溶媒としては、例えば、精製水、生理食塩水、またはトリス緩衝液、リン酸緩衝液もしくはリン酸緩衝液生理食塩水などの各種緩衝液を挙げることができる。この緩衝液のpHについては、適宜適当なpHを選択して用いればよく、特に限定されることはないが、pH3〜12の範囲内のpHを選択して用いることが一般的である。
【0053】
また、本発明の免疫学的測定キットには、前述した担体に固相化された第1の抗体と標識物質が修飾されている第2の抗体の他に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼインもしくはその塩などのタンパク質、各種塩類、各種糖類、脱脂粉乳、正常ウサギ血清などの各種動物血清、アジ化ナトリウムもしくは抗生物質などの各種防腐剤、活性化物質、反応促進物質、ポリエチレングリコールなどの感度増加物質、非特異的反応抑制物質、または非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤もしくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種または2種以上を適宜含有させてもよい。そして、これらを測定試薬に含有させる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0054】
(9)免疫学的測定キットの構成について
本発明の免疫学的測定キットは、前記第1及び第2の抗体が、抗体(A)と抗体(B)、抗体(A)と抗体(C)、抗体(B)と抗体(A)、抗体(B)と抗体(C)、抗体(C)と抗体(B)のうち、少なくとも1つが含まれている限り、特に限定されるものではない。
さらに本発明の免疫学的測定キットは、上記2つの抗体を含む試薬以外にも、他の試薬と組み合わせて販売してもよい。
【0055】
前記の他の試薬としては、例えば、緩衝液、試料希釈液、試薬希釈液、標識物質を含有する試薬、発色などのシグナルを生成する物質を含有する試薬、発色などのシグナルの生成に関与する物質を含有する試薬、校正(キャリブレーション)を行うための物質を含有する試薬、又は精度管理を行うための物質を含有する試薬等を挙げることができる。
そして、前記の他の試薬を第1試薬とし、本発明の免疫学的測定試薬を第2試薬としたり、又は本発明の免疫学的測定試薬を第1試薬とし、前記の他の試薬を第2試薬としたりして、適宜様々な組み合わせにて使用、及び販売を行うことができる。
【0056】
また、本発明の免疫学的測定キットの形態としては特に限定されるものではないが、短時間かつ簡便に測定を行うためには、本発明の免疫学的測定キットの構成成分が一体となった、一体型の診断キットであることが好ましい。上記一体型の診断キットとしては特に限定されるものではないが、例えば、ELISAキット、蛍光免疫測定キット、イムノクロマトキットなどが挙げられる。
例えばELISAキットの形態としては、第1の抗体が固相化されたマイクロプレート、検体希釈液、HRP等の酵素が修飾された第2の抗体、洗浄緩衝液、及び基質溶液等が含まれる。
【0057】
また、蛍光免疫測定キットの場合には、第1の抗体が固相化された光導波路、検体希釈液、蛍光物質が修飾された第2の抗体、及び洗浄緩衝液等が含まれる。
またイムノクロマトキットの場合には、反応カセット内にメンブレンが収納されており、そのメンブレン上の一端(下流側)に前記第1の抗体が固相化されている。また、メンブレン上の逆の一端(上流側)には、展開液が装着されており、その近傍の下流側には、上記標識剤の基質が添加されたパッドが配置されており、メンブレンの中間部には前記標識を有する第2の抗体が添加されたパッドが配置されている態様等を挙げることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0059】
(比較例1)
「短時間でHMGB1の測定が可能なHMGB1抗体の選定(1)」
比較例1では、短時間でHMGB1の検出が可能な抗体の組み合わせを選定するために、市販されているHMGB1抗体を用いて、蛍光免疫測定法(サンドイッチ法)による測定を行い、検量範囲と検出限界を比較した。
【0060】
(1)選定に使用したHMGB1抗体
選定に使用したHMGB1抗体の一部を表1に示した。また、表に示したHMGB1抗体は、Mouse Anti−HMGB1,2 Monoclonal antibody(商品名、SHINO−TEST社)、HMGB1 monoclonal antibody (M08),Clone 2F6(商品名、Abnova社)、HMGB1 monoclonal antibody (M02),Clone 1D5(商品名、Abnova社)、Rabbit polyclonal to HMGB1 − Aminoterminal end(商品名、Abcam社)、Rabbit polyclonal to HMGB1(商品名、Abcam社)、Mouse monoclonal [HAP46.5] to HMGB1(商品名、Abcam社)、Antibody to HMGB1(Proteintech Group社)、High mobility group protein 1 (human) Detection Set(Apotech社)を用いた。
【0061】
なお、市販抗体の選定に当たっては、N末端側のペプチドを免疫原として用い、種々の動物に免疫することにより産生し、取得された抗体と、全長のリコンビナントHMGB1を免疫原として用い、種々の動物に免疫することにより産生し、取得された抗体を中心に選んだ。
また、HMGB1抗原は、ATGen社、Biological industries社、Proteintech Group社、SHINO−TEST社のHMGB1を適宜使用した。
【0062】
【表1】

【0063】
(2)担体への第1の抗体の固相化
表1に示した記号ア〜クのHMGB1抗体を用いて下記の操作を行った。
まず、蛍光免疫測定に用いる光導波路であるウェイブガイド(キヤノン化成社製)を用意した。次に、HMGB1抗体をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で10μg/mLに希釈した後、ウェイブガイド専用ホルダー(キヤノン化成社製)に100μLずつ分注し、ウェイブガイドをホルダー内の溶液に浸漬させて4℃で一昼夜静置した。その後、ウェイブガイドを取り出し、表面をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。次に、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で5%に希釈したBSAをウェイブガイド専用ホルダーに100μLずつ分注し、これにウェイブガイドを浸漬させて、室温で2時間静置した。その後、ウェイブガイドを取り出し、表面をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。最後にウェイブガイドを乾燥させて4℃で保存した。
【0064】
(3)第2の抗体への蛍光物質の標識
表1に示した各HMGB1抗体(第2の抗体)への蛍光物質の標識は、
HiLyte Fluore(商標名) 647 Labeling Kit(商品名、DOJINDO社製)を用いてメーカープロトコール通りに行った。
次に、1%BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を用いて、蛍光標識された第2の抗体を5μg/mLに調整し、4℃で保存した。
【0065】
(4)短時間でHMGB1の測定が可能なHMGB1抗体の組み合わせ選定
短時間でHMGB1の測定が可能なHMGB1抗体の組み合わせの選定には、蛍光免疫測定装置PR610−2(商品名、Research International社製)を用いた。
具体的には、PR610−2専用の測定ホルダーに、第1の抗体を固相化したウェイブガイドを挿入し、また、5μg/mLの蛍光標識された第2抗体100μLを分注した。更に、5%BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を用いて、8濃度(10000、1000、100、10、1、0.1、0.01、0ng/mL)または8濃度(1000、250、62.5、15.6、3.91、0.98、0.24、0ng/mL)のHMGB1抗原溶液を調整し、それぞれを専用ホルダーに100μLずつ分注した。
【0066】
本比較例では、短時間にHMGB1の測定が可能な抗体の組み合わせを選定するために、第1の抗体を固相化したウェイブガイドとHMGB1抗原との反応時間を10分間とし、また、蛍光標識された第2の抗体との反応時間を5分間に設定した。
また抗体選定の評価基準としては、前記8濃度のHMGB1を測定し、得られた検量線が検量範囲1〜100ng/mLを包括する抗体の組み合わせを合格とした。
表2の評価1の欄に、HMGB1抗体の組み合わせの選定結果を示した。その結果、No.11、12、14、16、19、22、43の7通りの抗体の組み合わせが選定基準に合格した。そして、この7種類の抗体の組み合わせは、4つの抗体(記号イ、ウ、エ、キ)から選択される2つの組み合わせであることが分った。
【0067】
【表2】

【0068】
(比較例2)
「短時間でHMGB1の測定が可能なHMGB1抗体の選定(2)」
比較例2では、比較例1で選定した7通りの抗体の組み合わせ(No.11、No.12、No.14、No.16、No.19、No.22、No.43)を用いて、HMGB2との交差性について調べた。
【0069】
(1)選定に使用したHMGB1抗体
選定には、HMGB1 monoclonal antibody (M08),Clone 2F6(記号イ)、Rabbit polyclonal to HMGB1 − Aminoterminal end(記号エ)、Antibody to HMGB1(記号キ)の3種類の抗体を第1の抗体としてそれぞれ使用した。また、HMGB1 monoclonal antibody (M08),Clone 2F6(記号イ)、HMGB1 monoclonal antibody (M02),Clone 1D5(記号ウ)、Rabbit polyclonal to HMGB1 − Aminoterminal end(記号エ)、Antibody to HMGB1(記号キ)の4種類の抗体を第2の抗体としてそれぞれ使用した。またHMGB2抗原は、和光純薬工業社のHMG−1,−2Mixture(商品名)からHMGB2を精製して使用した。
【0070】
(2)担体への第1の抗体の固相化
記号イ、エ、キの3種のHMGB1抗体を、それぞれリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で10μg/mLに希釈した後、ウェイブガイド専用ホルダーに100μLずつ分注した。
次に、ウェイブガイドを各HMGB1抗体溶液に浸漬させて4℃で一昼夜静置した。その後、ウェイブガイドを取り出し、表面をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。次に、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で5%に希釈したBSAをウェイブガイド専用ホルダーに100μLずつ分注し、これにウェイブガイドを浸漬させて室温で2時間静置した。その後、ウェイブガイドを取り出し、表面をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。最後にウェイブガイドを乾燥させて、4℃で保存した。
【0071】
(3)第2の抗体への蛍光物質の標識
記号イ、ウ、エ、キの4種のHMGB1抗体への蛍光物質の標識は、HiLyte Fluor(商標名) 647 Labeling Kit(商品名、DOJINDO社製)を用いてプロトコール通りに行った。次に、1%BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を用いて、蛍光標識された第2の抗体を5μg/mLに調整し、4℃で保存した。
【0072】
(4)HMGB2との交差性の確認
HMGB2との交差性の確認には、蛍光免疫測定装置PR610−2を用いた。
具体的には、PR610−2専用の測定ホルダーに、第1の抗体を固相化したウェイブガイドを挿入し、また、5μg/mLの蛍光標識された第2抗体100μLを分注した。更に、5%BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を用いて、8濃度(1000、250、62.5、15.6、3.91、0.98、0.24、0ng/mL)のHMGB2抗原溶液を調整し、それぞれを専用ホルダーに100μLずつ分注した。
本比較例では、第1の抗体を固相化したウェイブガイドとHMGB2抗原との反応時間を10分間とし、また、蛍光標識された第2の抗体との反応時間を5分間に設定した。また抗体選定の評価基準としては、前記8濃度のHMGB2を測定し、何れの濃度においても信号が得られない抗体の組み合わせを合格とした。
【0073】
表2の評価2の欄に、HMGB2との交差性について検討した結果を示した。No.11、12、14、16、19、22、43の7通りの組み合わせを検討したところ、No.12に明らかなHMGB2との交差性が認められた。
以上のことから、No.11、No.14、No.16、No.19、No.22、No.43の抗体の組み合わせは、HMGB2との交差性を有することなく、HMGB1を短時間に測定可能であることが分った。
【0074】
(実施例1)
「本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットによるHMGB1の短時間測定」
比較例1及び2で選定したHMGB1抗体の組み合わせのうち、結果が良好であった抗体の組み合わせ(No.11、19)を用いて、HMGB1の短時間測定を行った。
【0075】
(1)担体への第1の抗体の固相化
記号エ及びキで示したHMGB1抗体を、それぞれリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で10μg/mLに希釈した後、ウェイブガイド専用ホルダーに100μLずつ分注した。次に、ウェイブガイドを各HMGB1抗体溶液に浸漬させて4℃で一昼夜静置した。その後、ウェイブガイドを取り出し、表面をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。次に、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で5%に希釈したBSAをウェイブガイド専用ホルダーに100μLずつ分注し、これにウェイブガイドを浸漬させて室温で2時間静置した。その後、ウェイブガイドを取り出し、表面をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。最後にウェイブガイドを乾燥させて4℃で保存した。
【0076】
(2)第2の抗体への蛍光物質の標識
記号エ及びキで示したHMGB1抗体への蛍光物質の標識は、HiLyte Fluor(商標名) 647 Labeling Kit(商品名、DOJINDO社製)を用いてプロトコール通りに行った。
次に、1%BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を用いて、蛍光標識された第2の抗体を5μg/mLに調整し、4℃で保存した。
【0077】
(3)本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットによるHMGB1の短時間測定
本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定キットによるHMGB1の短時間測定には、蛍光免疫測定装置PR610−2を用いた。
具体的には、PR610−2専用の測定ホルダーに、記号エまたはキのHMGB1抗体を固相化したウェイブガイドを挿入し、また、5μg/mLの蛍光標識された記号キまたはエのHMGB1抗体100μLを分注した。更に、5%BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を用いて、12濃度(10μg/mL−1pg/mL)のHMGB1抗原溶液(Proteintech Group社)を調整し、それぞれを専用ホルダーに100μLずつ分注した。
【0078】
本実施例では、第1の抗体を固相化したウェイブガイドとHMGB1抗原との反応時間を10分間とし、また、蛍光標識された第2の抗体との反応時間を5分間に設定した。さらに、各濃度のHMGB1抗原を4回ずつ測定した。
図1にHMGB1抗体の組み合わせ(No.11、19)の検量線を示した。No.11及びNo.19の検量線は、検量範囲1〜100ng/mLを包括していた。また、測定時間はHMGB1抗原との反応時間が10分、蛍光標識された第2の抗体との反応時間が5分であり、蛍光免疫測定装置の洗浄操作時間を加えても、約20分でHMGB1の測定結果を得ることができた。
これらの結果は、従来の測定キットと比較し、非常に短時間であった。
【0079】
(4)組み合わせの評価
図2に、本発明のHMGB1抗体の組み合わせ(No.11、No.12、No.14、No.16、No.19、No.22、No.43)と、それ以外の組み合わせ(No.8、No.13、No.18)を比較したデータを示した。
本発明のHMGB1抗体の組み合わせは、それ以外の組み合わせに対して検量範囲1〜100ng/mLでの濃度変化に対する感度が顕著であり、迅速且つ高感度な検出が可能であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを下記抗体(A)、抗体(B)、抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)と、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを使用することを特徴とするHMGB1の有無または濃度もしくはその両方を測定する免疫学的測定方法。
抗体(A)
GKGDPKKPRGKMSSYA(式I)
で表されるペプチドにKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を修飾したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
抗体(B)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式II)
で表されるタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
抗体(C)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFK(式III)
で表されるポリペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグを修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体
抗体(D)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式IV)
で表されるタンパク質にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグで修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体。
【請求項2】
担体に固相化される第1の抗体と標識物質が修飾される第2の抗体とを前記抗体(A)、抗体(B)、抗体(C)及び抗体(D)の何れかとし、抗体(A)と抗体(B)と、抗体(A)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(A)と、抗体(B)と抗体(C)と、抗体(B)と抗体(D)、及び抗体(C)と抗体(B)との組合せのうちの何れか1つとなる前記第1の抗体と前記第2の抗体との組合せを含むことを特徴とするHMGB1の有無または濃度もしくはその両方を測定する免疫学的測定キット。
抗体(A)
GKGDPKKPRGKMSSYA(式I)
で表されるペプチドにKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を修飾したタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
抗体(B)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式II)
で表されるタンパク質を免疫原として用い、ウサギに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するポリクローナル抗体、
抗体(C)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFK(式III)
で表されるポリペプチドにGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグを修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体。
抗体(D)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEEEDEEDEDEEEDDDDE(式IV)
で表されるタンパク質にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タグで修飾したタンパク質を免疫原として用い、マウスに免疫することにより、産生し、取得される、ヒトHMGB1に特異的な反応性を有するモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記担体が光導波路として構成されるウェイブガイドであり、前記標識物質が蛍光物質であることを特徴とする請求項2に記載の免疫学的測定キット。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−95014(P2011−95014A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247127(P2009−247127)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】