説明

免疫学的組成物

本発明は、スルホリポ−シクロデキストリン(SL−CD)およびサポニンまたはQuil A、ならびに場合により、少なくとも1つの抗原を含む免疫学的組成物に関する。本発明は、動物抗原であってよい少なくとも1つの抗原を含む方法および免疫学的組成物に関する。本発明の方法および免疫学的組成物における動物抗原は、ウシ抗原であってよい。本発明は、ウシ流行熱ウイルス(BEFV)、ウシヘルペスウイルス1(IBR)、またはブルータングウイルス(BTV)を含む方法および免疫学的組成物に関する。本発明は、動物においてBEFV、IBR、またはBTVに対する免疫応答を引き起こすための方法であって、本発明の組成物を動物に投与することを含む方法を含む。本発明において、特に、免疫応答は、防御免疫応答である。本発明は、Quil Aをウイルスに添加することを含む免疫学的組成物を調製するための方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月19日出願のオーストラリア仮出願第2008904261号の利益を米国特許法第119条(a)の下で、および2008年8月27日出願の米国仮出願第61/092091号の利益を米国特許法第119条(e)の下で主張するものである。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、スルホリポ(sulpholipo)−シクロデキストリン(SL−CD)およびサポニンまたはQuil A、ならびに場合により、少なくとも1つの抗原を含む免疫学的組成物に関する。本発明は、SL−CD、サポニンまたはQuil A、および抗原を含む免疫学的組成物を調製するための方法にも関する。本発明は、ウシ流行熱ウイルス(BEFV)、ウシヘルペスウイルス1(IBR)、またはブルータングウイルス(BTV)に対する免疫応答を引き起こすために免疫原性組成物を使用するための方法も提供する。本発明は、本発明の免疫学的組成物を含むキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
サポニンアジュバントは、動物用のワクチンにおいて商業的に使用されてきた、知られているクラスのアジュバントである。サポニンは、様々な植物種において見いだされる二次代謝産物の1クラスである。それらは、水溶液中で振盪された場合にそれらが作り出す石鹸様の発泡により現象学的に寄せ集められる両親媒性グリコシドである。構造的に、サポニンは、親油性トリテルペン誘導体と組み合わせられている1つまたは複数の親水性グリコシド部分で構成されている。市販のサポニンは、南アメリカの樹木キラヤサポナリアモリーナ(Quillaja Saponaria Molina)およびユッカシジゲラ(Yucca schidigera)とも呼ばれるモハベユッカ(Mohave Yucca)植物の樹皮から主に単離される。サポニンは、Berghausen Corporation(Cincinnati、OH)を包含するいくつかの供給源から入手可能である。サポニンの精製形態は、Quil Aと一般に呼ばれ、Berghausen Corporation、Sergeant Chemical Company(Clifton、NJ)、Superfos a/s(Vedbaek、Denmark)、およびBrenntag Biosector(Frederikssund、Denmark)を包含するいくつかの供給源から市販されている。Quil−Aの物理的および化学的な特性は、Purified Saponin Adjuvant Quil−Aという表題で、Superfosから入手可能な営業用文献に記されている。Quil−Aは、トリテルペノイドキラ酸とのグリコシド結合における炭水化物部分として化学的に特徴付けられている。
【0004】
アジュバントとしてQuil Aについて議論しているいくつかの米国特許が出願されている。例えば、米国特許第6,416,764号および第6,291,228号は、アジュバントとしてQuil Aを使用し、ウシウイルス性下痢ウイルスの非細胞病原性株を含むワクチンに関する。米国特許第4,432,969号は、吸入アレルゲンおよびサポニンまたはQuil Aアジュバントを含む吸入アレルゲン組成物に関する。
【0005】
米国特許第4,900,549号は、Quil Aを含有する免疫原性複合体を調製するためのプロセスについて記載している。
【0006】
米国特許第6,165,995号は、SL−CD誘導体の調製に関する。米国特許第6,610,310号は、アジュバントとしての、SL−CDなどのポリイオン性ポリマーに関連している。
【0007】
ウシ流行熱(BEF)は、特に、北部オーストラリアにおいて、乳牛と肉牛の両方に影響を及ぼす衰弱性ウイルス疾患である。BEFは、ウシが商業的に飼育されている大部分のアジア諸国においても認められる。BEFは、「三日病(three day sickness)」として知られており、乳生産量に実質的な影響を与えるか肉牛および乳牛において病的状態を引き起こす恐れがある(Walker,P.J.、2005、Curr.Top.Microbiol.Immunol.292:57〜80)。
【0008】
BEFの原因因子は、ウシ流行熱ウイルス(BEFV)である。このウイルスは、エフェメロウイルス属(genus Ephemerovirus)に分類されてきたラブドウイルスである。BEFVビリオンは、弾丸型または円錐型であり、マイナス一本鎖RNAゲノムを含有する。BEFVゲノムは、核タンパク質、ポリメラーゼ関連タンパク質、マトリクスタンパク質、大きなRNA依存性RNAポリメラーゼ、および2つの糖タンパク質をコードする。
【0009】
修飾生BEFワクチンは、何年にもわたってオーストラリアにおいて入手可能であり、BEFシーズンの前に年1回のブースターにより与えられる。このワクチンは、獣医の処方箋を必要とし、投与前にアジュバントを含有する希釈液による再構成を必要とする凍結乾燥形態で提供される。ナイーブ動物は、2回のワクチン投薬と、それに続く、年1回のワクチン再接種を必要とする。
【0010】
PCT公開第WO/1994004685号は、BEFV表面糖タンパク質を含むBEFVワクチンの調製に関する。
【0011】
Vanselowら(1995、Vet.Microbiol.46:117〜130)は、様々なBEFワクチンの試験について記載している。
【0012】
Hsiehら(2006、J.Vet.Med.Sci.68:543〜548)は、ウイルス株Tn88128およびTn73を使用するBEFVワクチンに関する。これらのワクチンは、バイナリーエチレンイミンおよび水酸化アルミニウムまたは水中油中水型アジュバントの添加によりウイルスを不活化することにより調製された。
【0013】
ランピースキン病ウイルス(SA−Neethling型)ベクター中にクローニングされたBEFV構造糖タンパク質を含む組み換えワクチンは、Wallace,D.B.およびViljoen G.J.(2005、Vaccine 23:3061〜3067)によって報告されている。
【0014】
Chuangら(2007、J.Virol.Meth.145:84〜87)は、RNA干渉およびBEFV表面糖タンパク質遺伝子発現の抑制を使用することに関する。
【0015】
ウシヘルペスウイルス1は、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルスとしても知られている。それは、BHVかIBRのどちらかと略される。ウシヘルペスウイルス−1は、鼻気管炎、膣炎、亀頭包皮炎、流産、結膜炎、および腸炎を包含する、ウシにおける疾患を引き起こすヘルペスウイルス科(family Herpesviridae)のウイルスである。BHV−1は、輸送熱における寄与因子でもある。それは、性的接触、人工授精、およびエアロゾル感染を通して広がる。他のヘルペスウイルスのように、BHV−1は、生涯にわたる潜伏感染およびウイルスの排出を引き起こす。疾患の重症度および発生率を軽減する利用可能なワクチンがある。BHV−1により引き起こされる呼吸器疾患は、伝染性ウシ鼻気管炎として一般に知られている。
【0016】
ブルータングウイルス(BTV)は、二本鎖RNAレオウイルス科(family Reoviridae)に属するオルビウイルス属(genus Orbivirus)のプロトタイプウイルスである。BTVは、ヒツジ、ヤギ、ウシおよびシカなどの家畜において重篤な疾患を引き起こす。24の血清型が、不顕性感染から急性劇症型感染に及ぶ問題を引き起こすと文献で報告されている。慢性的にかつ持続的にウイルスを排出するウシも認められてきた。ワクチンは、家畜におけるブルータングの治療のために入手可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、スルホリポ−シクロデキストリン(SL−CD)およびサポニン、ならびに場合により、少なくとも1つの抗原を含む免疫学的組成物を提供する。本発明の一部の実施形態において、サポニンはQuil Aである。本発明の一部の実施形態において、少なくとも1つの抗原は、細菌、ウイルス、ペプチド、ポリペプチド、核酸、またはそれらの組合せから選択される。本発明の一部の実施形態において、少なくとも1つの抗原は、動物抗原である。本発明の一部の実施形態において、動物抗原はウシ抗原である。本発明の一部の実施形態において、抗原はウイルス抗原である。本発明の一部の実施形態において、ウイルス抗原は、ウシヘルペスウイルス1(IBR)、ブルータングウイルス(BTV)、またはウシ流行熱ウイルス(BEFV)である。ウイルス抗原は、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型、または不活化型であってよい。一部の実施形態において、本発明は、抗原が生菌弱毒化ウイルスである免疫原性組成物を提供する。本発明の一部の実施形態において、ウイルスはウシ流行熱ウイルス(BEFV)である。本発明の様々な実施形態において、ウイルスは、凍結ストック、乾燥ストック、凍結乾燥ストック、または新鮮ストック由来である。様々な実施形態において、サポニンは、本発明の免疫学的組成物中に約0.5mg/mLの最終濃度で存在する。様々な実施形態において、Quil Aは、本発明の免疫学的組成物中に約0.1mg/mL〜約0.2mg/mLの最終濃度で存在する。一部の実施形態において、Quil Aは、本発明の免疫学的組成物中に約0.158mg/mLの最終濃度で存在する。様々な実施形態において、SL−CDは、本発明の免疫学的組成物中に約0.2mL/mLの最終濃度で存在する。一部の実施形態において、サポニンおよびSL−CDを含むかQuil AおよびSL−CDを含む本発明の免疫学的組成物は、少なくとも1つの追加アジュバントを含む。本発明の様々な実施形態において、追加アジュバントは、水酸化アルミニウム、SP−油、またはカルボポールから選択される。本発明の一部の実施形態において、抗原は、一部の実施形態においてウイルスサブユニットであるポリペプチドである。本発明の一部の実施形態において、ウイルスサブユニットは、BEFV、IBR、またはBTVから選択される。
【0019】
一実施形態において、本発明は、動物において動物抗原に対して免疫応答を引き起こすための方法であって、サポニン、SL−CD、および少なくとも1つの動物抗原を含む免疫原性組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。一実施形態において、免疫応答は、免疫原性組成物の単一投与量の投与後に引き起こされる。一実施形態において、本発明は、動物においてIBRに対して免疫応答を引き起こすための方法であって、サポニン、SL−CD、および少なくとも抗原としてのIBRを含む免疫原性組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。一実施形態において、本発明は、動物においてBTVに対して免疫応答を引き起こすための方法であって、サポニン、SL−CD、および少なくとも抗原としてのBTVを含む免疫原性組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
一実施形態において、本発明は、動物においてBEFVに対して免疫応答を引き起こすための方法であって、Quil A、SL−CD、および抗原を含む免疫原性組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。一実施形態において、免疫応答は、免疫原性組成物の単一投与量の投与後に引き起こされる。一実施形態において、本発明は、動物においてIBRに対して免疫応答を引き起こすための方法であって、サポニン、SL−CD、および抗原を含む免疫原性組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。一実施形態において、本発明は、動物においてBTVに対して免疫応答を引き起こすための方法であって、サポニン、SL−CD、および抗原を含む免疫原性組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。本発明の一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物の投与後に引き起こされる免疫応答は、防御免疫応答である。
【0021】
一実施形態において、本発明は、SL−CDを添加する前にQuil Aおよびウイルスを混ぜ合わせることにより調製される免疫原性組成物を提供する。ウイルスは、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型、または不活化型であってよい。本発明の一部の実施形態において、Quil Aおよびウイルスは、室温にて混ぜ合わせられる。本発明の一部の実施形態において、Quil Aおよびウイルスは、少なくとも15分にわたって混ぜ合わせられる。本発明の一部の実施形態において、Quil Aおよびウイルスは、少なくとも120分にわたって混ぜ合わせられる。
【0022】
一実施形態において、本発明は、動物において免疫応答を引き起こすための本発明の免疫原性組成物を含むキットを提供する。
【0023】
様々な実施形態において、本発明は、BEFVにより引き起こされるウイルス感染、すなわちウシ流行熱に対してウシにおいて免疫応答を誘導するための方法を提供する。BEFVに対して免疫応答を誘導するための方法は、BEFV、SL−CD、およびQuil Aを含む組成物をウシに投与することを含む。
【0024】
一実施形態において、本発明は、免疫学的有効量のBEFV、SL−CD、およびQuil Aを含む免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
【0025】
様々な実施形態において、本発明は、IBRにより引き起こされるヘルペスウイルス感染、すなわちウシ鼻気管炎に対して免疫応答をウシにおいて誘導するための方法を提供する。IBRに対して免疫応答を誘導するための方法は、IBR、SL−CD、およびサポニンを含む組成物をウシに投与することを含む。
【0026】
様々な実施形態において、本発明は、BTVにより引き起こされるウイルス感染、すなわちウシブルータングに対して免疫応答をウシにおいて誘導するための方法を提供する。BTVに対して免疫応答を誘導するための方法は、BTV、SL−CD、およびサポニンを含む組成物をウシに投与することを含む。
【0027】
一実施形態において、本発明は、免疫学的有効量のIBR、SL−CD、およびサポニンを含む免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、免疫学的有効量のBTV、SL−CD、およびサポニンを含む免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、部分的に、SL−CD、およびサポニンまたはQuil Aを含む免疫学的組成物が、少なくとも1つの抗原の免疫原性を増強することができるという発見に基づいている。本発明の様々な実施形態において、少なくとも1つの抗原は、細菌、ウイルス、ペプチド、ポリペプチド、核酸、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0030】
本発明の一部の実施形態において、少なくとも1つの抗原は、動物抗原である。本発明の様々な実施形態において、動物抗原は、ウシ抗原であってよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、動物抗原は、ウイルス抗原であってよい。本発明の一部の実施形態において、ウイルス抗原は、BEFV、IBR、またはBTVの株を包含するが、それらに限定されるものではない。BEFVは、オーストラリア、アフリカ、中東、およびアジアにおいてウシ流行熱を引き起こすことが知られているラブドウイルスである。BB2271−919およびその親株(919)、TN73、Tn88128、BEFV2001の株1〜11、またはBEFV2004の株1〜3などのBEFVの多くの株が知られている。株の選択は、本発明の免疫原性組成物が使用されることになる国によって変わることがある。ウシヘルペスウイルス−1は、BHVまたはIBRとも呼ばれ、鼻気管炎、膣炎、亀頭包皮炎、流産、結膜炎、および腸炎を包含する、ウシにおける疾患を引き起こすヘルペスウイルス科(family Herpesviridae)のウイルスである。IBRは、輸送熱における寄与因子でもある。それは、性的接触、人工授精、およびエアロゾル感染を通して広がる。他のヘルペスウイルスのように、IBRは、生涯にわたる潜伏感染およびウイルスの排出を引き起こす。IBRにより引き起こされる呼吸器疾患は、伝染性ウシ鼻気管炎として一般に知られている。
【0032】
ブルータングウイルス(BTV)は、二本鎖RNAレオウイルス科(family Reoviridae)に属するオルビウイルス属(genus Orbivirus)のプロトタイプウイルスである。BTVは、ヒツジ、ヤギ、ウシおよびシカなどの家畜において重篤な疾患を引き起こす。24の血清型が、不顕性感染から急性劇症型感染に及ぶ問題を引き起こすと文献で報告されている。慢性的にかつ持続的にウイルスを排出するウシも認められてきた。ブルータングは、オーストラリア、北アメリカ、アフリカ、中東、アジア、およびヨーロッパにおいて観察されてきた。
【0033】
本発明の様々な実施形態において、免疫原性組成物中のウイルスは、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型、または不活化型であってよい。生菌弱毒化ウイルスを調製するための方法は、文献で知られている。例えば、ウイルスを、組織培養、孵化卵、または生きた動物などの異種宿主内のウイルスの通過を介して弱毒化することができる。弱毒化BEFVを、非ウシ細胞において優先的成長について選択し、選択の過程で、ウシ細胞において成長しにくくすることができる。これらの弱毒化株は、ウシ宿主において不完全に複製するため、ウシに与えられた場合、疾患ではなく免疫を誘導する。ウイルスは、自然宿主に対する病原性が低下し新宿主に対するその病原性が増大した場合に弱毒化型であると言われている。一部の弱毒化ウイルス株は、天然に存在することがある。遺伝子工学を使用し、確定した方法でウイルスを弱毒化することができる。免疫原性組成物、ワクチン、および方法において使用するために死菌ウイルスまたは不活化ウイルスを調製する方法は、当技術分野において知られている。化学的不活化プロセスにおいて、適当なウイルスサンプル、またはウイルスを含有する血清サンプルは、ウイルスを不活化するための十分に高い(または、不活化剤に応じて低い)温度またはpHにおいて、十分な量または濃度の不活化剤により、十分な長さの時間にわたって処理される。例えば、ウイルスは、ホルマリン、バイナリーエチレンイミン(BEI)、または疎水性溶媒、酸などの不活化剤で処理することができる。ウイルスは、紫外線またはX線の照射、加熱などにより不活化することができる。加熱による不活化は、ウイルスを不活化するのに十分な温度にてかつ十分な長さの時間にわたって行われる。照射による不活化は、ウイルスを不活化するのに十分な長さの時間にわたって光の波長または他のエネルギー源を使用して行われる。本発明の一部の実施形態において、免疫原性組成物は、生菌弱毒化ウイルスを含む。
【0034】
本発明の一部の実施形態において、免疫原性組成物は、凍結ストック、乾燥ストック、または新鮮ストックから得られる抗原を含む。抗原が、乾燥ストックから得られる場合、凍結乾燥ストックから得ることができる。一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、凍結ストックからの抗原を含む。
【0035】
サポニンは、植物および海生動物界に広く分布しているステロイドまたはトリテルペングリコシドである。サポニンは、水中でコロイド溶液を形成し、振盪すると発泡し、コレステロールを沈殿させることで知られている。サポニンが、細胞膜の近くにある場合、膜に細孔様構造を作り出し、膜を破裂させる。サポニンは、動物用のワクチンにおいてアジュバントとして使用される。個々のサポニンのアジュバント活性および溶血活性は、広く研究されてきた(Lacaille−DuboisおよびWagner、1996、A review of the biological and pharmacological activities of saponins」 Phytomedicine 第2巻 pp363〜386)。サポニンは、様々な植物種において見いだされる二次代謝産物の1クラスである。それらは、水溶液中で振盪された場合にそれらが作り出す石鹸様の発泡により現象学的に寄せ集められる両親媒性グリコシドである。構造的に、サポニンは、親油性トリテルペン誘導体と組み合わせられている1つまたは複数の親水性グリコシド部分で構成されている。市販のサポニンは、キラヤサポナリアモリーナ(Quillaja Saponaria Molina)およびユッカシジゲラ(Yucca schidigera)から主に抽出される。「Quil A」とは、サポニンの精製形態を指す。
【0036】
サポニンは、本発明の免疫原性組成物中に約0.4mg/mL〜約0.6mg/mLの最終濃度で存在することがある。サポニンは、本発明の免疫原性組成物中に約0.5mg/mLの最終濃度で存在することがある。Quil Aは、本発明の免疫原性組成物中に約0.1mg/mL〜約0.2mg/mLの最終濃度で存在することがある。Quil Aは、本発明の免疫原性組成物中に約0.12mg/mL〜約0.18mg/mLの最終濃度で存在することがある。Quil Aは、本発明の免疫原性組成物中に約0.14mg/mL〜約0.16mg/mLの最終濃度で存在することがある。Quil Aは、本発明の免疫原性組成物中に約0.158mg/mLの最終濃度で存在することがある。一実施形態において、Quil Aは、本発明の免疫原性組成物中に約0.158mg/mLの最終濃度で存在する。
【0037】
水中スクアラン型エマルジョン中のスルホリポ(sulfolipo)−シクロデキストリン(SL−CD/スクアラン)を、様々なワクチンの調製において使用した。SL−CD/スクアランは、Hilgersら(Sulfolipo−cyclodextrin in squalane in−water as a novel and safe vaccine adjuvant.Vaccine 17(1999)、pp.219〜228;Fort Dodge Animal Health Holland、Weesp、The Netherlands)により記載されているように調製することができる。
【0038】
SL−CDは、本発明の免疫原性組成物中に約0.09mL/mL〜約0.3mL/mLの最終濃度で存在することがある。SL−CDは、本発明の免疫原性組成物中に約0.1mL/mL、約0.15mL/mL、約0.17mL/mL、約0.2mL/mL、または約0.25mL/mLの最終濃度で存在することがある。本発明の免疫原性組成物は、Quil AおよびSL−CDに加えて、少なくとも1つのアジュバントをさらに含むことがある。そのような追加アジュバントは、本明細書においてさらに詳細に議論されるように、当技術分野において知られているアジュバントのうちのいずれか1つから選択することができる。
【0039】
一部の実施形態において、本発明は、免疫応答を引き起こすための方法であって、サポニンおよびSL−CDを含む免疫学的組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、該方法は、サポニン、SL−CD、および少なくとも1つの抗原を含む免疫学的組成物を動物に投与することを含む。一部の実施形態において、少なくとも1つの抗原は、動物抗原である。本発明の一部の実施形態において、動物抗原は、ウシ抗原である。本発明の一部の一実施形態において、動物抗原は、ウイルス抗原である。一部の実施形態において、ウイルス抗原は、BEFV、IBR、またはBTVである。一部の実施形態において、ウイルスは、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型、または不活化型である。一部の実施形態において、ウイルスは、死菌型である。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストック、乾燥ストック、または新鮮ストックから得られる。抗原が、乾燥ストックから得られる場合、凍結乾燥ストックから得ることができる。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストックから得られる。
【0040】
一部の実施形態において、本発明は、免疫応答を引き起こすための方法であって、Quil AおよびSL−CDを含む免疫学的組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、該方法は、Quil A、SL−CD、および少なくとも1つの抗原を含む免疫学的組成物を動物に投与することを含む。一部の実施形態において、該方法において使用される少なくとも1つの抗原は、動物抗原である。一部の実施形態において、該方法において使用される動物抗原は、ウシ抗原である。一部の実施形態において、抗原は、ウイルス抗原である。一部の実施形態において、ウイルス抗原は、IBR、BEFV、またはIBRである。一部の実施形態において、ウイルス抗原は、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型、または不活化型である。一部の実施形態において、ウイルスは、生菌弱毒化型である。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストック、乾燥ストック、または新鮮ストックから得られる。抗原が、乾燥ストックから得られる場合、凍結乾燥ストックから得ることができる。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストックから得られる。
【0041】
本発明の免疫原性組成物は、複数投与量の投与後に免疫応答を引き起こすことができる。一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、2投与量の投与後に免疫応答を引き起こすことができる。一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、単一投与量の投与後に免疫応答を引き起こす。本発明の免疫原性組成物により引き起こされる免疫応答は、防御免疫応答であってよい。本発明の免疫原性組成物の初回投与量の投与後に、ブースター投与量を、約4週間後に投与し、免疫原性応答を増強することができる。さらなるブースター用量も投与することができる。
【0042】
一実施形態において、本発明は、動物において免疫応答を引き起こすためのキットを提供する。一部の実施形態において、該キットは、サポニンおよびSL−CDならびに場合により、少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物を含む。一部の実施形態において、キット中のサポニンは、Quil Aである。一部の実施形態において、キット中の少なくとも1つの抗原は、動物抗原である。一部の実施形態において、キット中の動物抗原は、ウシ抗原である。一部の実施形態において、キット中の動物抗原は、ウイルス抗原である。一部の実施形態において、キット中のウイルス抗原は、BEFV、IBR、またはBTVである。一部の実施形態において、キット中の抗原は、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型または不活化型であってよい。一部の実施形態において、キット中の抗原は、生菌弱毒化型である。一部の実施形態において、キット中の抗原は、死菌型である。一部の実施形態において、キット中の抗原は、凍結ストック、乾燥ストック、または新鮮ストックから得ることができる。一部の実施形態において、キット中の抗原は、凍結ストックから得られる。
【0043】
本発明は、少なくとも1つの追加アジュバントを含むことができる、SL−DCおよびサポニンおよび/またはQuil Aを含むキット、免疫学的組成物、およびワクチンを提供する。使用することができるアジュバントの中では、例として、水酸化アルミニウム、アブリジン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDABまたはDODABとしても知られている)、ポリホスファゼン、SPTエマルジョンなどの鉱油をベースとする水中油型エマルジョン(例えば、Vaccine Design,The Subunit and Adjuvant Approach、1995、Michael F.PowelおよびMark J.Newman編、Plenum Press、New York and London、147〜204ページを参照)、米国特許第6,368,601号に記載されているような代謝性油をベースとする油中水型エマルジョン、ならびに米国特許第5,422,109号に記載されているエマルジョンを挙げることができる。適当なアジュバントの他の例は、スクアランおよびスクアレン(または、動物起源の他の油);pluronic(登録商標)(L121)サポニンなどのブロックコポリマー;Tween(登録商標)80などの洗浄剤、DRAKEOL(登録商標)、またはMarcol(登録商標)などの鉱油;ピーナッツ油などの植物油;コリネバクテリウムパルブム(corynebacterium parvum)などのコリネバクテリウム由来のアジュバント;プロピオニバクテリウム由来のアジュバント;マイコバクテリウムボビス(Mycobacterium bovis)(カルメットゲラン桿菌(Bacillus Calmette and Guerin)、すなわちBCG);インターロイキン2およびインターロイキン−12などのインターロイキン;インターロイキン1などのモノカイン;腫瘍壊死因子;γインターフェロンなどのインターフェロン;リポソーム;ISCOMアジュバント;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ムラミルジペプチドまたは他の誘導体などの合成糖ペプチド;アブリジン;脂質A;硫酸デキストラン;DEAE−デキストランまたはリン酸アルミニウムと一緒のDEAE−デキストラン;Carbopol(登録商標)などのカルボキシポリメチレン;EMA;NeoCryl(登録商標)A640などのアクリルコポリマーエマルジョン(米国特許第5,047,238号を参照);ワクシニアまたは動物ポックスウイルスタンパク質;オルビウイルスなどのサブウイルス粒子アジュバント;コレラ毒素;臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム;またはそれらの混合物を包含する。他のアジュバントは、界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン(octadecylamine)、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N−ジオクタデシル−n’−N−ビス(2−ヒドロキシエチルプロパンジ−アミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニックポリオール);ポリアニオン(例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸、カルボポール)、ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン)、油エマルジョン、ミョウバン、およびそれらの混合物から選択することができる。アジュバントの組合せを選択することも可能である。
【0044】
一実施形態において、本発明は、SL−CDなどの追加抗原を添加する前にQuil Aおよび抗原を混ぜ合わせることにより調製される免疫原性組成物を提供する。ウイルスをQuil Aと混ぜ合わせることが、有効ウイルス力価を下げるであろうことは、当業者により理解されている(Walker,P.J.、2005、Curr.Top.Microbiol.Immunol.292:57〜80)。免疫原性組成物に少なくとも1つの他の成分を添加する前にQuil Aおよび抗原を混ぜ合わせることは、任意の長さの時間にわたって行うことができる。当業者は、本発明の免疫原性組成物が、様々な時間にわたって、免疫原性組成物に少なくとも1つの他の成分を添加する前にQuil Aおよび抗原を混ぜ合わせることにより調製することができることを容易に理解するであろう。例えば、Quil Aおよび抗原は、少なくとも5分〜少なくとも200分混ぜ合わせることができる。一部の実施形態において、Quil Aおよび抗原は、少なくとも10分〜少なくとも190分を包含する任意の長さの時間にわたって混ぜ合わせられる。一部の実施形態において、Quil Aおよび抗原は、少なくとも15分にわたって混ぜ合わせられる。本発明の免疫原性組成物が、多くの温度のうちのいずれか1つにおいてQuil Aおよび抗原を混ぜ合わせることにより調製することができることは当業者により理解されている。Quil Aおよび抗原を混ぜ合わせることは、得られる組成物が免疫原性である限りは、室温より低いか室温より高い温度にて行うことができる。Quil Aおよび抗原は、室温にて混ぜ合わせることができる。一部の実施形態において、SL−CDを添加する前にQuil Aおよび抗原を混ぜ合わせることにより調製される免疫原性組成物中の抗原は、ウイルスである。一部の実施形態において、ウイルスは、BEFVである。一部の実施形態において、ウイルスは、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型または不活化型であってよい。一部の実施形態において、抗原は、生菌弱毒化型である。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストック、乾燥ストック、または新鮮ストックから得ることができる。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストックから得られる。
【0045】
一実施形態において、本発明は、免疫応答を引き起こすための免疫原性組成物であって、サポニンおよびSL−CDを含む免疫原性組成物を提供する。本発明の一部の実施形態において、免疫応答を引き起こすための免疫原性組成物は、サポニンおよびSL−CD;ならびに少なくとも1つの抗原を含む。本発明の一部の実施形態において、免疫応答を引き起こすための免疫原性組成物中のサポニンは、Quil Aである。本発明の一部の実施形態において、免疫応答を引き起こすための免疫原性組成物中の少なくとも1つの抗原は、細菌、ウイルス、ペプチド、ポリペプチド、核酸、またはそれらの組合せから選択することができる。一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物では、少なくとも1つの抗原は、動物抗原である。一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物では、動物抗原は、ウシ抗原である。一部の実施形態において、本発明の免疫原性組成物では、抗原は、ウイルス抗原である。本発明の一部の実施形態において、ウイルス抗原は、少なくともBEFV、BTV、またはIBRの株である。一部の実施形態において、サポニンまたはQuil Aは、SL−CDを添加する前にウイルス抗原に添加される。一部の実施形態において、抗原は、生菌弱毒化型、組み換え型、死菌型または不活化型であってよい。一部の実施形態において、抗原は、生菌弱毒化型である。一部の実施形態において、抗原は、死菌型である。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストック、乾燥ストック、または新鮮ストックから得ることができる。一部の実施形態において、抗原は、凍結ストックから得られる。
【0046】
本発明の免疫学的組成物は、当技術分野において標準的である方法によりウイルス培養液から調製することができる。例えば、ウイルスは、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞(Vero細胞)、ヒト2倍体線維芽細胞、MDBK(Madin−Darbyウシ腎臓)、または他のウシ細胞などの組織培養細胞中で増殖させることができる。ウイルスの成長は、標準的技法(細胞変性効果の観察、免疫蛍光または他の抗体ベースのアッセイ)によりモニターされ、十分に高いウイルス力価(10TCID50/mLなど)が達成された場合に収集される。ウイルスストックは、ワクチン製剤への包含の前に、従来の方法によりさらに濃縮するか凍結乾燥することができる。Thomasら(1986、Agri−Practice、7(5):26〜30)により記載されているものなどのウイルスストックを調製するための他の方法を用いることができる。
【0047】
本発明の免疫学的組成物は、単独か、多価免疫学的組成物の構成成分として、すなわち、他の免疫学的組成物と組み合わせて与えることができる。免疫原性製剤中のウイルスは、生菌型または死菌型であってよく、生菌ウイルスか死菌ウイルスのどちらかを凍結乾燥し、場合により、当技術分野において知られているように再構成することができる。免疫原性組成物は、適切なラベリングおよび動物対象(例えば、家畜、有蹄動物、コンパニオンアニマル)または鳥(例えば、家禽)に免疫原性組成物を投与するための説明書を含むこともできるキットで提供することができる。
【0048】
SL−CDおよびサポニンまたはQuil A;ならびに少なくとも1つのウイルス抗原を含む免疫原性組成物は、薬学的および獣医学的に許容できる担体を含むこともある。そのような担体は、当業者によく知られており、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子などの、大きくゆっくりと代謝される巨大分子を包含する。薬学的および獣医学的に許容できる塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩などの鉱塩、ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩などの有機酸の塩もワクチンにおいて使用することができる。ワクチンは、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールなどの液体、ならびに湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤などの物質も含有することができる。リポソームも、死菌ウイルス用の担体として使用することができる。(例えば、米国特許第5,422,120号、PCT公開第WO95/13796号、PCT公開第WO91/14445号、または欧州特許第524,968B1号を参照。)
【0049】
本発明の免疫原性組成物は、筋肉内または皮下経路により、または鼻腔内、腹腔内、静脈内、皮内、気管内、もしくは経口経路により投与することができる。本発明の免疫原性組成物は、エアースプレーにより、眼接種により、または乱刺(scarification)により投与することができる。哺乳動物(家畜、有蹄動物、またはコンパニオンアニマルなど)に本発明の免疫原性組成物を送達する別の好都合な方法は、経口投与による(例えば、食物もしくは飲用水の中または餌の中)。食物に免疫原性組成物を敷肥するか食物を免疫原性組成物と混ぜることが特に好都合である。典型的には、大きな動物(例えば、ウシなどの家畜/有蹄動物)は、免疫原性組成物の投与量当たり約10TCID50/mL、おそらく106。5〜10TCID50が投与される。
【0050】
単一投与量投与については、免疫原性組成物は、約10〜約10TCID50/mL、好ましくは10TCID50/mLに相当する量のBEFVを含有するべきである。動物1匹当たり、免疫原性組成物約1〜5mL、好ましくは2mLを筋肉内、皮下、または腹腔内に投与することができる。
【0051】
免疫原性組成物は、約6.8log/mLに相当する量のIBRを含有するべきである。動物1匹当たり、IBRを含む免疫原性組成物約1〜5mL、好ましくは2mLを筋肉内、皮下、または腹腔内に投与することができる。
【0052】
免疫原性組成物は、BTV血清型1約106.7TCID50および/またはBTV血清型8約107.3TCID50に相当する量のBTVを含有するべきである。動物1匹当たり、BTVを含む免疫原性組成物約1〜5mL、好ましくは2mLを筋肉内、皮下、または腹腔内に投与することができる。
【0053】
免疫原性組成物の調製は、文献、例えば、上に述べられている「Vaccine Design,The Subunit and Adjuvant Approach」、および「Vaccines」(2008、第5版、Plotkin,S.A.ら、編者、Saunders Elsevier)中に見いだされる。
【0054】
本発明は、動物におけるBEF、IBR、またはBTV感染の予防および治療に特に有用である免疫原性組成物を提供する。したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による免疫原性組成物が、そのような予防または治療を必要としている動物に投与されることを特徴とする、動物においてBEF、IBR、またはBTV感染を予防および治療するための方法に関する。本発明の免疫原性組成物は、筋肉内もしくは皮下注射により、または、鼻腔内、気管内、経口、皮膚、経皮もしくは皮内投与を介して投与することができる。BEFV、IBR、またはBTVのワクチンについては、ワクチン接種は、皮下または筋肉内であることが好ましく、筋肉内であることが最も好ましい。BEFV、IBR、またはBTVのための生菌ワクチンは、6月齢から投与されることが好ましい。
【0055】
本発明は、1つの感染性因子または同時に様々な感染性因子に対して動物、特に、ウシを免疫化するための方法であって、免疫学的有効量の本発明により提供される組成物を含有するワクチンの経口、鼻腔、皮下、皮内、腹腔内、筋肉内、またはエアロゾル投与(またはそれらの組合せ)を含む方法も提供する。
【0056】
定義
本明細書において使用される用語は、当業者に認識されかつ知られている意味を有するが、便宜および完全性のため、特定の用語およびそれらの意味を下に記載する。
【0057】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、「a」、「an」および「the」という単数形は、文脈が他の意味を明確に指示していない限り、複数の指示対象を包含する。すなわち、例えば、「その方法(the method)」への言及は、1つまたは複数の方法、および/または本明細書に記載されておりかつ/または本開示などを読むことで当業者に明らかになるであろうタイプのステップを包含する。
【0058】
「約」または「およそ」という用語は、ある値の統計的に有意な範囲内を意味する。そのような範囲は、所与の値または範囲の同じ桁内、典型的には50%以内、より典型的には20%以内、より典型的には10%以内、さらにより典型的には5%以内であってよい。「約」または「およそ」という用語により包含される許容変動は、研究中の特定のシステムに左右され、当業者が容易に理解することができる。
【0059】
BEFVの「感染単位」は、組織培養細胞の50%に感染するか50%を死滅させるのに必要とされるウイルスの量として定義される。これは、50%組織培養感染量またはTCID50として表されることがある。
【0060】
ウイルスは、自然宿主に対する病原性が低下した場合に弱毒化型であると言われている。ウイルスは、そのウイルスによる感染を受けやすい細胞において増殖することができない場合に不活化されたと見なされる。
【0061】
「抗原」という用語は、免疫応答を刺激することがある分子を意味する。抗原は、適応免疫系により認識されることがある任意の物質である。抗原は、通常、タンパク質または多糖である。抗原は、被膜、莢膜、細胞壁、鞭毛、線毛、または毒素などの細菌、ウイルス、または他の微生物の一部であってよい。抗原は、脂質または核酸であってもよい。組成物において使用される抗原は、新鮮培養液、凍結ストック、凍結乾燥ストック、または任意の他の一般に利用可能なストックから得ることができる。抗原がウイルスである場合、生菌不活化型または生菌弱毒型であってよい。
【0062】
「アジュバント」とは、組成物、典型的には、ワクチン組成物の抗原性を増強する1つまたは複数の物質を意味する。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織デポーとしての役割を果たすことができ、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化因子としての役割も果たすことができる(Hoodら、Immunology、第2版、Menlo Park、CA:Benjamin/Cummings、1984、p.384)。多くの場合、アジュバント非存在下での抗原単独による一次ワクチン接種は、体液性免疫応答も細胞性免疫応答も引き起こすことはできないであろう。また、環境に応じて、アジュバント非存在下での抗原単独による一次チャレンジは、十分な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も引き起こすことができないことがある。多くのサイトカインまたはリンホカインは、免疫調節活性を有するためにアジュバントとして有用であることが明らかにされており、インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、12(例えば、米国特許第5,723,127号を参照)、13、14、15、16、17および18(およびその突然変異型);インターフェロン−α、βおよびγ;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(例えば、米国特許第5,078,996号を参照);マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);ならびに腫瘍壊死因子αおよびβを包含する。本明細書に記載されている免疫原性組成物について有用であるさらに他のアジュバントは、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)、例えば、CCL−3およびCCL−4としても知られているMIP−1αおよびMIP−1βを包含するがそれらに限定されないケモカイン;ならびにRegulated on Activation Normal T cell Expressed and Secreted(RANTES);セレクチン、例えば、L−セレクチン、P−セレクチンおよびE−セレクチンなどの接着分子;ムチン様分子、例えば、CD34(シアロホリン、ロイコシアリン、またはSPNとしても知られている)、GlyCAM−1およびMadCAM−1;リンパ球機能関連分子LFA−1、2、および3、VLA−1、Mac−1およびp150.95などのインテグリンファミリーのメンバー;血小板内皮細胞接着分子(PECAM)、細胞内接着分子、例えば、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、ICAM−4、およびICAM−5、CD2ならびにLFA−3などの免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;CD40およびCD40Lなどの共刺激分子;血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、B7.2、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を包含する成長因子;Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を包含する受容体分子;ならびにカスパーゼ(ICE)を包含する。
【0063】
免疫応答を増強するために使用される適当なアジュバントは、米国特許第4,912,094号に記載されているMPL(商標)(3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A、Corixa、Hamilton、MT)をさらに包含するが、それに限定されるものではない。Corixa(Hamilton、MT)から入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されている合成脂質A類似体もしくはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはそれらの誘導体もしくは類似体も、アジュバントとして使用するのに適している。1つのそのようなAGPは、529としても知られている(正式にはRC529として知られている)、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−β−D−グルコピラノシドである。この529アジュバントは、水性形態(AF)または安定エマルジョン(SE)として製剤化される。
【0064】
さらに他のアジュバントは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などのムラミルペプチド;MF59(国際PCT公開第WO90/14837号)(110Y型ミクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)などのミクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化された5%スクアレン、0.5%Tween(登録商標)80、および0.5%Span85(場合により、様々な量のMTP−PEを含有する)を含有する)、およびSAF(サブミクロンエマルジョンにミクロフルイダイズされるか、より大きな粒子サイズエマルジョンを作成するためにボルテックスされかのどちらかで、10%スクアレン、0.4% Tween80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有する)などの水中油型エマルジョン;不完全フロイントアジュバント(IFA);水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);アムフィゲン(Amphigen);アブリジン;L121/スクアレン;D−ラクチド−ポリラクチド/グリコシド;プルロニックポリオール;死菌ボルデテラ(Bordetella);米国特許第5,057,540号に記載されているStimulon(商標)QS−21(Antigenics、Framingham、MA)、米国特許第5,254,339号に記載されているISCOMATRIX(CSL Limited、Parkville、Australia)、および免疫刺激複合体(ISCOMS)などのサポニン;結核菌(Mycobacterium tuberculosis);細菌性リポ多糖;CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,207,646号)などの合成ポリヌクレオチド;欧州特許第1,296,713号および第1,326,634号に記載されているIC−31(Intercell AG、Vienna、Austria);百日咳毒素(PT)またはその変異体、コレラ毒素またはその変異体(例えば、国際PCT公開第WO00/18434号、第WO02/098368号および第WO02/098369号);または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)、特に、LT−K63、LT−R72、PT−K9/G129(例えば、国際PCT公開第WO93/13302号および第WO92/19265号を参照)を包含する。
【0065】
本発明の組成物に添加することができるアジュバントは、SL−CD、水酸化アルミニウム、SP−油、もしくはカルボポール、または1つもしくは複数の不飽和テルペン炭化水素、例えば、スクアレンもしくはスクアランなどの代謝性油、ならびにPluronic(登録商標)などのポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーを包含することがある。
【0066】
「哺乳動物」という用語は、単孔動物(例えば、カモノハシ)、有袋動物(例えば、カンガルー)、および家畜(ブタ、ヒツジ、ウシ、およびウマなどの食品、乳、または繊維のために飼育される家畜)およびコンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)を包含する胎盤動物を包含する。「有蹄動物」は、ウシ(cattle)(ウシ(bovine animal))、スイギュウ、バイソン、ヒツジ、ブタ、シカ、ゾウ、およびヤクを包含するが、それらに限定されるものではない。これらの各々は、成熟した形態と発育中の形態(例えば、子ウシ、子ブタ、子ヒツジなど)の両方を包含する。本発明の免疫原性組成物は、成熟した哺乳動物か発育中の哺乳動物のどちらか、好ましくは、家畜に投与することができる。
【0067】
「免疫学的有効量」は、免疫応答を引き起こすであろう抗原の量である。免疫学的有効量のウシ流行熱ウイルス(BEFV)は、ウシ流行熱ウイルスに対して免疫応答を引き起こすであろうBEFVの量である。免疫学的有効量のウシヘルペスウイルス1(IBR)は、IBR感染に対して免疫応答を引き起こすであろうIBRの量である。免疫学的有効量のブルータングウイルス(BTV)は、BTV感染に対して免疫応答を引き起こすであろうBTVの量である。「免疫学的有効量」は、レシピエント動物の種、血統、年齢、サイズ、および健康状態によって変わるであろう。「免疫学的有効量」は、1つまたは複数の株が、ウイルスの病原性株であろうと非病原性株であろうと、抗原の1つまたは複数の株への動物の以前の曝露により影響を受けるであろう。本明細書において使用されるように、「免疫学的有効量」のウシ流行熱ウイルス(BEFV)は、少なくとも1つの適当なアジュバントと組み合わせて用いられた場合、ウシ流行熱ウイルスの免疫原性を増強し、したがって病原性のウシ流行熱ウイルス株によるチャレンジに対して防御免疫を提供するのに十分であるBEFVの量である。一実施形態において、免疫学的有効量のBEFVは、組成物1mL当たり約106.20TCID50である。
【0068】
本明細書において使用されるように、「免疫学的有効量」のウシヘルペスウイルス1(IBR)は、少なくとも1つの適当なアジュバントと組み合わせて用いられた場合、ウシヘルペスウイルスの免疫原性を増強し、したがって病原性のウシヘルペス株によるチャレンジに対して防御免疫を提供するのに十分である量である。一実施形態において、免疫学的有効量のIBRは、組成物1mL当たり約6.8logである。
【0069】
本明細書において使用されるように、「免疫学的有効量」のブルータングウイルス(BTV)は、少なくとも1つの適当なアジュバントと組み合わせて用いられた場合、ブルータングウイルスの免疫原性を増強し、したがって病原性のブルータングウイルス株によるチャレンジに対して防御免疫を提供するのに十分である量である。一実施形態において、免疫学的有効量のBTVは、組成物1mL当たりBTV血清型1約106.7TCID50および/またはBTV血清型8約107.3TCID50である。
【0070】
本発明の一部の実施形態において、ウイルス抗原は、少なくとも伝染性ウシヘルペスウイルス1(ウシ鼻気管炎ウイルスまたはIBRとも呼ばれる)、パラインフルエンザウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、口蹄疫ウイルス、ブルータングウイルス、ウシ流行熱ウイルス、イヌパルボウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコカリシウイルス、ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ウエストナイルウイルス、ウマ脳脊髄炎ウイルス、ウマインフルエンザウイルス、ウマヘルペス(鼻肺炎)ウイルス、ウマ動脈炎ウイルス、ブタパルボウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ生殖および呼吸器症候群ウイルス、ブタロタウイルス、ブタインフルエンザウイルス、仮性狂犬病ウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、トリレオウイルス、トリインフルエンザウイルスの株であってよい。
【0071】
本明細書において使用されるように、「ウイルスサブユニット」という用語は、ビリオンの一部を意味する。例えば、ウシ流行熱ウイルス(BEFV)サブユニットは、BEFVビリオンの少なくとも一部、BEFVゲノムの少なくとも一部、BEFV核タンパク質、BEFVポリメラーゼ関連タンパク質、BEFVマトリクスタンパク質、BEFV RNA依存性RNAポリメラーゼ、またはBEFV糖タンパク質などのBEFVコードタンパク質の少なくとも一部であってよい。
【0072】
本明細書において使用されるように、「免疫原性の」という用語は、組成物が、体液性および/または細胞性の免疫応答を引き起こすことができることを意味する。免疫原性株は、抗原性でもある。免疫原性組成物は、動物に投与された場合、体液性および/または細胞性の免疫応答を引き起こす組成物である。
【0073】
「免疫原性組成物」という用語は、抗原、例えば、微生物を含有する任意の医薬組成物に関し、その組成物を使用し、動物において免疫応答を引き起こすことができる。免疫応答は、T細胞応答、B細胞応答、またはT細胞応答とB細胞応答の両方を包含することがある。該組成物は、細胞表面におけるMHC分子と併せた抗原の提示により哺乳動物を感作する役目を果たすことができる。さらに、抗原特異的なTリンパ球または抗体を生成し、免疫化宿主の将来の防御を可能にすることができる。「免疫原性組成物」は、生菌、弱毒化、または死菌/不活化抗原を含むことがある。該抗原は、免疫応答を誘導する丸ごとの微生物またはそれから誘導される免疫原性部分であってよい。免疫原性組成物は、微生物による感染に伴う1つまたは複数の症状から動物を守るか、微生物による感染に起因する死から動物を守ることができる。
【0074】
本明細書において使用されるような「非経口投与」という用語は、胃腸管を通じて以外の一部の手段による、特に、静脈内、皮下、筋肉内、または髄内注射による生物体内への物質の導入だけでなく、腹腔内注射もしくは局所塗布などの他の非経口および非鼻腔投与経路による投与を意味する。
【0075】
「ワクチン」または「ワクチン組成物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、動物において免疫応答を誘導する少なくとも1つの免疫原性組成物を含む医薬組成物を指す。ワクチンまたはワクチン組成物は、感染に起因する疾患または起こりうる死から動物を守ることができ、活性な構成成分の免疫学的活性を増強する1つまたは複数の追加構成成分を包含しても包含しなくてもよい。ワクチンまたはワクチン組成物は、医薬組成物に典型的なさらなる構成成分をさらに含むことがある。さらなる構成成分は、例えば、1つまたは複数のアジュバントまたは免疫調節剤を包含することがある。ワクチンの免疫学的に活性な構成成分は、修飾生菌ワクチンでは、それらの元の形態で、または弱毒化生物体として完全な生きた生物体を、死菌もしくは不活化ワクチン、またはウイルスの1つまたは複数の免疫原性構成成分を含むサブユニットワクチン、または当業者に知られている方法により調製される遺伝子操作された、突然変異した、もしくはクローン化されたワクチンでは適切な方法により不活化された生物体を含むことがある。ワクチンまたはワクチン組成物は、上に記載されている要素のうちの1つか同時に2つ以上を含むことがある。
【0076】
したがって、本出願において、当技術分野の技術内で従来の分子生物学、微生物学、および免疫学技法を用いることができる。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照されたい。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
ウシ流行熱ウイルス/Quil Aミックスの調製
生ウシ流行熱(BEF)ウイルス抗原は、凍結ストックから得た。室温にて解凍した後、ウイルスを、ワクチン用の残りの成分を添加する前にQuil Aと混ぜ合わせた。
【0078】
Brenntagにより製造されたQuil A粉末は、製品コード番号04307503としてAPS(A division of Nuplex Industries、Australia)から得た。
【0079】
Quil Aストック溶液は、水の中で10mg/mLまで希釈することにより製造した。
【0080】
手短に言うと、生菌BEF抗原ストック(1.38×10TCID50/mL)149.96mLを、9.643g/mL NaCl36.34mLで希釈し、10mg/mL Quil A20.70mLを1mg/mLにて添加した。該混合物を、室温にて2.5時間にわたって撹拌した。
【0081】
(実施例2)
BEFVワクチンの調製
BEFVワクチンを調製するため、下記の成分を、添加の間に5分にわたって混合物を撹拌しながら、順番に添加した。
8.5g/mL NaCl384.3mL
実施例1のとおり調製されたBEFV/QUIL A混合物94.87g
20%(v/v)を得るための10mg/mL SL−CDストック120.00mL
チオマーサル9.9%(w/v)1.36g
SL−CDは、Hilgersら(Sulpholipo−cyclodextrin in squalene−in−water as a novel and safe vaccine adjuvant.Vaccine 17(1999)、pp219〜228)に記載のとおり調製した。
【0082】
すべての成分を添加した後、ワクチンを30分にわたって撹拌し、pHを7.18に調整した。
【0083】
ワクチンを、さらに30分にわたって撹拌し、ラベル付きのピローパックに充填するために使用した。
【0084】
(実施例3)
BEFVワクチンの動物試験:
ワクチン安全性試験は、Fort Dodge Australia、Penrithサイトにて行った。ワクチン安全性は、EP2002:0062ガイドラインに従ってウシで試験した。
【0085】
10匹のモルモットおよび2頭のウシに、上記で調製されたワクチンを接種し、BEF抗原画分に対する血清学的応答を決定した。体重250g〜400gの10匹のモルモットに各々、ワクチン2.0mLを皮下接種した。モルモットを、接種から6週後に採血した。1歳より若い2頭のウシに、ワクチン4mLを皮下接種した。接種後14日目にウシから採血した。これらの動物に由来する血清を、Biosecurity Sciences Laboratory、Department of Primary Industries and Fisheries Animal Research Institute、Queensland(Australia)のプロトコルに従ってウイルス中和(VN)により試験した。使用されるウイルス中和試験法は、「Australia standard diagnostic procedures」に従う。
【0086】
ワクチンの2つのバッチについての試験の結果は、下の表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
ウシおよびウサギ試験における不活化BEFワクチンを使用した実験に基づき、実験動物血清学とBEFVからのウシ防御の間に相関の証拠がある。すなわち、表1に示されているモルモット結果は、本発明の免疫原性組成物がウシにBEFVからの防御を提供することを裏付けている。
【0089】
上のように調製された単一投与量BEFワクチン製剤は、安定エマルジョンを作り出した。このワクチンは、安全性について試験され、最初はウシ安全性試験において部位反応を与えなかった。全身性および行動的反応は認められなかったが、ワクチンは、観察期間の終わり頃に注射部位において局所反応をいくつか生じた。
【0090】
下の表2は、上に列挙したワクチン製剤4mLによる単一投与量ワクチン接種後にウシに現れる症状を記載する。
【0091】
【表2】

【0092】
要約すると、BEFVを含む製剤におけるアジュバントとしてのサポニン(Quil A)およびSL−CDを含む免疫原性組成物の使用は、単一投与量ワクチンとして有用である有効なBEFVワクチンを生み出す。
【0093】
(実施例4)
IBRワクチンブレンドの調製
未来のワクチンにとって適切なアジュバントを選択するため、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルス(IBR)としても知られている死菌組み換えウシヘルペスウイルス−1ワクチンを調製し、異なるアジュバントとブレンドし、評価した。3つの異なるアジュバントを組み合わせたワクチンを、IBR(EU)1ml当たり6.04logの1×力価で調製した。ワクチンAは、水酸化アルミニウム(AlOH)(15%)およびサポニンを含有し、ワクチンBは、5%SP油を含有し、ワクチンCは、20%SL−CDおよびサポニンを含有した。サポニンは、Berghausenカタログ番号#603013から得た。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
(実施例5)
IBRワクチンの動物試験
ワクチン試験は、Iowaにおいて行った。5〜6月齢の合計27頭の子ウシを、下の表6に示す群に無作為化した。
【0098】
【表6】

【0099】
群4〜6からの子ウシを除き、子ウシに、3週おいて2回、皮下にワクチン接種した。第2回ワクチン接種から2週後(または、群4についてはワクチン接種から3週後)、すべての子ウシ(群6からの2頭の子ウシを除いて)に、病原性IBRウイルスを鼻腔内にチャレンジした。すべての子ウシを、疾患の臨床的徴候についてチャレンジ後14日にわたって毎日モニターした。臨床的徴候は、粘液膿性鼻漏、眼漏、呼吸困難、食欲不振(poor appetite)(食欲不振(off−feed))、および抑鬱を包含するが、それらに限定されるものではなかった。直腸温度も、チャレンジ後14日にわたって毎日測った。動物からは試験中定期的に血清について採血し、IBRに対する抗体を、血清中和アッセイを使用して決定した。鼻腔スワブを、チャレンジ2日前からチャレンジ後14日にわたってウイルス単離のために毎日集めた。各日について各子ウシから単離されたウイルス力価を決定した。群2からの1頭の動物は、健康不良のためチャレンジの前に試験から取り除いた。
【0100】
IBRチャレンジに関係している観察された臨床的徴候は下の表7に要約し、ウイルス排出結果は表8に記載する。抗IBR血清中和抗体力価は、表9に列挙する。
【0101】
【表7】

【0102】
群サイズが小さいため、ワクチン接種された動物と対照との間の観察された差は、統計的に異なっていなかった。しかしながら、数字上の差は、特に最初の3群について、ワクチン接種効果を示す。
【0103】
ウイルス排出の発生率および力価は、下の表8に記載する。
【0104】
【表8】

【0105】
ウイルス排出からの結果は、SL−CD+サポニンが、排出されたウイルスの数(少なくとも100倍)および発生率を低下させることにより最良の防御をもたらしたことを示す。この証明された防御は、下の表9に示す実験的チャレンジの時点での有意に高い抗体力価に起因している可能性が高い。
【0106】
【表9】

【0107】
この試験からの結果は、評価された3つのアジュバントの中で、SL−CD/サポニン組合せが最良の性能をもたらすことを示す。
【0108】
(実施例6)
ブルータングウイルスワクチンの調製
ブルータングウイルス血清型1および8に対する5つの異なる不活化ワクチンを、異なるBTV8抗原濃度および異なるアジュバント組成で製剤化した。BTV血清型1の力価(106.7TCID50)は、試験されたすべてのワクチンで一定のままであった。子ウシは、2週おいて2回の接種を受けた。ワクチンE−43、E−44、E−45、E−47、およびE−48の組成は、下の表10から14に記載する。
【0109】
【表10】

【0110】
【表11】

【0111】
【表12】

【0112】
【表13】

【0113】
【表14】

【0114】
(実施例7)
血清中和結果
中和抗体力価は、ワクチン接種後1週目(+28)および2週目(+35)にすべての子ウシで測定した。血清中和結果は、下の表15から20に示す。中和抗体の存在は、防御を示すが、中和抗体のない動物も、細胞媒介性応答によって防御されることもある。
【0115】
【表15】

【0116】
【表16】

【0117】
【表17】

【0118】
【表18】

【0119】
【表19】

【0120】
【表20】

【0121】
BTV1およびBTV8についてのウイルス血症の存在は、ワクチンE−43:ZULVAC1+8(BTV1:106.7+BTV8:107.3)(Al3+ +サポニン:現在の製剤)およびE−47:ZULVAC1+8(BTV1 106.7+BTV8:107.3)(SLCD+2.5×サポニン:新アジュバント)をワクチン接種された動物においてチャレンジ後4、5、および8日目に決定した。
【0122】
ワクチンE−43:ZULVAC1+8(BTV1:106.7+BTV8:107.3)(Al3++サポニン:現在の製剤)
BTV1についてウイルス血症の100%防御(0/8)
BTV8についてウイルス血症の87.5%防御(1/8)
ワクチンE−44:ZULVAC1+8(BTV1:106.7+BTV8:107.5)(Al3++サポニン:現在の製剤よりBTV8の抗原が1.58倍多い)
BTV1についてウイルス血症の100%防御(0/8)
BTV8についてウイルス血症の87.5%防御(1/8)
【0123】
直上の結果は、1.58×投与量のワクチンにおけるBTV血清型8の増加が、より良い防御を誘導しないことを示す。
ワクチンE−47:ZULVAC1+8(BTV1:106.7+BTV8:107.3)(SLCD+2.5×サポニン:新アジュバント)
BTV1についてウイルス血症の100%防御(0/8)
BTV8についてウイルス血症の100%防御(0/8)
ワクチンE−45:ZULVAC1+8(BTV1:106.7+BTV8:107.3)(Al3+ +2×サポニン:現在の製剤より2倍多いサポニン)
BTV1についてウイルス血症の100%防御(0/8)
BTV8についてウイルス血症の100%防御(0/8)
【0124】
(実施例8)
γインターフェロンの産生
Bovigam TB試験(Prionics)を、血液サンプルにおけるγインターフェロンの検出のために使用した。手短に述べると、末梢血単核細胞(PBMC)を調製し、VP7およびVP2で別々に刺激した。γインターフェロンの産生は、VP7による血液細胞の刺激後にのみ検出された。
【0125】
ワクチンE−43およびE−47をワクチン接種された動物におけるγ−IFNの特異的産生の評価の結果が続く。第1回ワクチン接種(D+0);第2回ワクチン接種(D+21);チャレンジ(D+45)
【0126】
BTVに対する抗体を持たない合計30頭の3月齢Frisean子ウシを試験に包含した。子ウシの性別は考慮に入れなかった。正常で健康な動物のみを試験に包含した。それらの健康状態は、到着時に確認した。動物は、耳タグで個々に識別した。30頭の血清反応陰性のFrisean子ウシを、以下のとおり4つの処置群(Microsoft Excelプログラムを使用して)に無作為に割り当てた。
群1:ワクチンE−43をワクチン接種およびワクチン再接種された10頭の子ウシ
群2:ワクチンE−47をワクチン接種およびワクチン再接種された10頭の子ウシ
群3:ワクチン接種されない10頭の対照子ウシ
【0127】
ワクチン接種は、ワクチン2mLを使用し、ウシにおけるワクチン投与の最も一般的経路である筋肉内経路(i.m.)により行った。
【0128】
群1および2の子ウシには、0日目(D+0)にワクチン接種し、3週後(D+21)にワクチン再接種した。
【0129】
群3の子ウシは、ワクチン接種しない対照として残した。
【0130】
血液は、第1回ワクチン接種の前、0日目(D+0);3週後のワクチン再接種(すなわち、第2回ワクチン接種)前(D+21);およびチャレンジ前の42日目(D+42)に子ウシから採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を個々のサンプルから調製した。
【0131】
第2回ワクチン接種から24日後に、子ウシを、Fort Dodge Veterinaria’s Challenge Facillities No.3に移動し、ワクチン再接種から24日後(D+45)に、各群の8頭の動物にBTV−1またはBTV−8をチャレンジした。血液を、VP7およびVP2に対するγ−IFNの特異的産生を評価するために、チャレンジから5日後に動物から採取した。
【0132】
γ−IFN検出
ヘパリンの存在下で集められた血液を、各ワクチン接種日、チャレンジ前日および感染5日後に実験中のすべての動物から採取した。PBMCを、密度勾配(Histopaque1077)で抽出し、洗浄し、再懸濁して、ウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地中で5×10細胞/mLの最終濃度とした。細胞を、組み換えタンパク質VP2およびVP7(1μg/mL)のどちらかと共に96ウェルプレートにプレートした。コンカナバリンA(5μg/mL)を陽性対照として使用した。プレートを、16hrs〜一晩にわたって37℃にてインキュベートした。γ−IFNアッセイは、ウシインターフェロン試験(Bovigam TB、Prionics)を使用して上清において行った。結果は、各動物の非刺激値の減算後にA450単位で表した。
【0133】
VP7組み換えタンパク質だけが、第2回ワクチン接種後のワクチン接種動物においてγ−IFNの特異的産生を誘導することができた。
【0134】
チャレンジの日、ワクチンE−47をワクチン接種された10頭のうち3頭(30%)の子ウシが、VP7に対するγ−IFNの産生を示した。チャレンジから5日後、陽性動物の比率は、63%まで増加した。ワクチンE−43をワクチン接種された動物は、チャレンジの日ではなく、チャレンジから5日後にVP7に対するγ−IFNの陽性産生を示した(8頭のうち2頭、25%)。
【0135】
結果は、A450単位として、およびγ−IFNの陽性産生(>0.065)の比率として表されている表21、および表22-26に示す。
【0136】
【表21】

【0137】
【表22】

【0138】
【表23】

【0139】
【表24】

【0140】
【表25】

【0141】
【表26】

【0142】
結論
ZULVAC1+8、バッチE−47(BTV1:106.7+BTV8:107.3)(SLCD+2.5×サポニン:新アジュバント)をワクチン接種された子ウシは、対照と比べ、またZULVAC1+8(BTV1:106.7+BTV8:107.3)(Al3++サポニン:現在の製剤)をワクチン接種された子ウシに比べ、チャレンジの日(第2回ワクチン接種から3週後)およびチャレンジから5日後に、より高い量のγ−IFNを示した。
ワクチンE−43(現在の製剤)をワクチン接種された子ウシは、チャレンジから5日後までVP7に対するγ―IFNの産生を示さなかった。その値は、ワクチンE−47(新アジュバント)によって誘導される値よりも有意に低かった(p=0.021)。
VP7組み換えタンパク質のみが、検出可能な量のγ−IFNを誘導することができ、したがって、VP7は、細胞性免疫の増強剤である可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホリポ−シクロデキストリン(SL−CD)およびサポニンを含む免疫学的組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項1に記載の免疫学的組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの抗原が、細菌、ウイルス、ペプチド、ポリペプチド、核酸、またはそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の免疫学的組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの抗原が動物抗原である、請求項3に記載の免疫学的組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの抗原がウシ抗原である、請求項4に記載の免疫学的組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの抗原がウイルス抗原である、請求項3に記載の免疫学的組成物。
【請求項7】
ウイルス抗原が、ウシ流行熱ウイルス(BEFV)、ウシヘルペスウイルス1(IBR)、またはブルータングウイルス(BTV)である、請求項6に記載の免疫学的組成物。
【請求項8】
SL−CDが約0.2mL/mLの最終濃度で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の免疫学的組成物。
【請求項9】
サポニンが約0.5mg/mLの最終濃度で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の免疫学的組成物。
【請求項10】
サポニンがQuil Aである、請求項1から8のいずれか一項に記載の免疫学的組成物。
【請求項11】
Quil Aが約0.1mg/mL〜約0.2mg/mLの最終濃度で存在する、請求項10に記載の免疫学的組成物。
【請求項12】
Quil Aが約0.158mg/mLの最終濃度で存在する、請求項10または11に記載の免疫学的組成物。
【請求項13】
それを必要としている動物において免疫応答を引き起こすための方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の免疫学的組成物を動物に投与することを含む方法。
【請求項14】
少なくとも1つの追加アジュバントを添加する前にQuil Aおよび少なくとも1つのウイルス抗原を混ぜ合わせることにより調製される免疫学的組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの追加アジュバントをさらに含む、請求項14に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの追加アジュバントが、SL−CD、水酸化アルミニウム、SP−油、またはカルボポールから選択される、請求項15に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの追加アジュバントがSL−CDである、請求項16に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項18】
SL−CDが約0.2mL/mLの最終濃度で存在する、請求項17に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項19】
Quil Aが約0.1mg/mL〜約0.2mg/mLの最終濃度で存在する、請求項14から18のいずれか一項に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項20】
Quil Aが約0.158mg/mLの最終濃度で存在する、請求項14から19のいずれか一項に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項21】
ウイルス抗原がウシ抗原である、請求項14から20のいずれか一項に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項22】
ウイルス抗原が、BEFV、IBR、およびBTVから選択される、請求項14から21のいずれか一項に記載のとおり調製される免疫学的組成物。
【請求項23】
動物においてBEFVに対する免疫応答を引き起こすための方法であって、請求項22に記載の組成物を動物に投与することを含む方法。
【請求項24】
免疫応答が、組成物の単一投与量の投与後に引き起こされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
免疫応答が防御免疫応答である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
SL−CDおよびサポニンを含む、動物において免疫応答を引き起こすためのキット。
【請求項27】
サポニンがQuil Aである、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項26または27に記載のキット。
【請求項29】
少なくとも1つの抗原が、細菌、ウイルス、ペプチド、ポリペプチド、核酸、またはそれらの組合せから選択される、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
少なくとも1つの抗原がウイルス抗原である、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
ウイルス抗原が、BEFV、IBR、およびBTVから選択される、請求項30に記載のキット。

【公表番号】特表2012−500282(P2012−500282A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523956(P2011−523956)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/054285
【国際公開番号】WO2010/022135
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】