説明

免疫応答を作製するための組成物および方法

【課題】核酸を細胞に分配するために用いることができるプラスミドベクターおよびウイルスベクターの提供。
【解決手段】(a)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の第1サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ベクター;および(b)HIVの第2サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ベクターからなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2002年3月8日出願の米国特許出願第10/093,953号の一部継続出願であり、そして2001年3月2日出願の米国特許出願第09/798,675号の一部継続出願であり、そして4つの仮出願(2000年12月1日出願の米国特許出願第60/251,083号、2000年3月2日出願の米国特許出願第60/186,364号、2001年9月25日出願の米国特許出願第60/324,845号および2001年9月26日出願の米国特許出願第60/325,004号)の出願日の恩典および2001年12月6日に国際公開番号第WO01/92470号の下で英語で公開された2001年3月2日出願の国際出願PCT/US01/06795の出願日の恩典を請求する。これは、前記で列挙した先行の出願の内容はその全てを参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は概して分子遺伝学および免疫学の分野を指向する。さらに詳細には、本発明は発現ベクターよびこれらのベクターを動物に投与する方法を特徴とする。
【0003】
政府支援
本明細書に記載する研究は少なくとも一部、国立衛生研究所からの助成金による支援を受けた(P01 AI43045、P01 AI49364、およびR21 AI44325)。従って米国政府はこの発明において一定の権利を有している。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ワクチンは世界保健に及ぼす絶大で、そして長期的な影響を有している。天然痘は撲滅され、ポリオはほぼ廃絶されており、そしてジフテリア、麻疹、流行性耳下腺炎、百日咳、および破傷風のような疾患が含まれる。それにもかかわらず、現在のワクチンはヒトおよび家畜が被る少数の感染しか対処していない。ワクチンがない一般の感染疾患に米国だけで年間約1200億ドルが費やされている(Robinsonら、American Academy of Microbiology、1996年5月31日から6月2日(非特許文献1))。先進工業国では、免疫不全ウイルスのような感染が出現し、そして結核の薬物耐性型のような疾患が再出現しており、ワクチン開発に関する新たな脅威および挑戦をもたらしている。有効なワクチンがしばしば利用できないかまたは多大な経費がこのような第三世界諸国では、新しく、そして改善もされてもいるワクチンに関する必要性がさらに顕著である。
【0005】
HIV-1感染の有病率により、この近年出現した病因に関するワクチン開発が世界保健にとって最優先されている。DNAワクチンに関する前臨床試験により、チンパンジーにおいて高度に弱毒化したHIV-1誘発に対してDNA単独で保護することができる(Boyerら、Nature Med.3:526-532(1997)(非特許文献2))が、マカクではより毒性の強いSIV誘発に対して保護できない(Luら、Vaccine 15:920-923(1997)(非特許文献3))ことが実証されている。DNAプライミングにエンベロープ糖タンパク質ブーストを加えた組み合わせは、SIVとHIVのと間の非病原性キメラ(SHIV-IIIB)での同種誘発に対して保護を伴って中和抗体を上昇させた(Letvinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:9378-9383(1997)(非特許文献4))。SHIV(サルおよびヒト免疫不全ウイルス間のキメラ)での一連の誘発に対して保護する能力に関する8つの異なるプロトコルを試験する比較試験により、DNAの皮内接種によるプライミングおよび組換え鶏痘ウイルスベクターでのブースティングを含む免疫プロトコルによる誘発感染の封じ込めが最良であることが示された(Robinsonら、Nature Med.5:526(1999)(非特許文献5))。この誘発感染の封じ込めは誘発ウイルスに対する中和抗体の存在に依存しなかった。これらのおよび多くのその他の努力に関わらず、HIV感染を封じ込めるためのワクチンは未だ市販されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Robinsonら、American Academy of Microbiology、1996年5月31日から6月2日
【非特許文献2】Boyerら、Nature Med.3:526-532(1997)
【非特許文献3】Luら、Vaccine 15:920-923(1997)
【非特許文献4】Letvinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:9378-9383(1997)
【非特許文献5】Robinsonら、Nature Med.5:526(1999)
【発明の概要】
【0007】
AIDSの蔓延の持続力は、しばしば変異し、そしていくつかの異なるクレード(またはサブタイプ)および組換え体で存在するヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する有効なワクチンに関する差し迫った必要性を明示している。天然にまたはヒトの介入の結果として生じ得るこれらのサブタイプおよび組換え体を、その核酸の配列における差異により区別することができる。1つのHIVクレード、サブタイプ、もしくはHIVの組換え体に対する、または複数のHIVクレード、サブタイプ、もしくはHIVの組換え体に対するワクチンとして単独で、または組み合わせで用いることができるDNAベクター、ウイルスベクターおよび組換えウイルス、例えば組換え改変ワクシニア・アンカラ(MVA)ウイルス(以下に詳細に記載する)を開発した(特記しない場合、「(複数の)クレード」なる用語はHIVのサブタイプまたは組換え体を包含することを意味する)。さらに、ベクターは、1つのクレードまたは2つもしくはそれ以上の異なるクレードから得られる種々の抗原をコードすることができ、そして選択された抗原および/またはベクターを処方する様式(例えば混合する)を操作して種々のクレード(例えば患者が暴露される可能性が最も高いクレード)に対する保護免疫応答を作製することができる。
【0008】
ポックスウイルス、例えば天然痘を引き起こす天然痘ウイルスに対する有効なワクチンに関する必要性も存在する;現在の天然痘ワクチンは実質的な副作用の小さい危険性を担っている。天然痘は撲滅されているが、人々は生物学的兵器としての天然痘に依然脅かされている。本明細書に記載するウイルスベクターを用いてポックスウイルスに対する免疫応答を作製することができる。従って、(以下の正確なプロトコルに関わらず)このようなベクターを投与する方法は天然痘のような症状に対する保護または治療効果を付与する免疫応答を引き出すこともできる(すなわち対象が天然痘のようなウイルス疾患を引き起こす病因に暴露前または後(例えば1から4日またはそれ以上経過後)でポックスウイルスベクター投与することができる)。ベクターがワクチンインサートを含有するかどうか、またはインサートが何をコードするか(例えばHIVから得られたタンパク質または一つまたは複数のHIVクレードに対して免疫応答を引き出すタンパク質)にかかわらず、これらの方法は有効である。
【0009】
本発明は核酸を細胞に分配するために用いることができるプラスミドベクターおよびウイルスベクターを提供するが;一方患者を免疫または処置する場合、本発明はワクチン「インサート」を含有しないベクターを包含するが、ベクターは病原体(例えば、一つまたは複数のHIVクレード(またはサブタイプもしくは組換え体))に対する免疫応答を誘起するかまたは増強するタンパク質抗原をコードする核酸を含む。本明細書で記載する核酸またはポリヌクレオチドはcDNA(またはmRNA)もしくはゲノムDNA、またはその誘導体(ピリミジンまたはプリン環は五炭糖、例えばリボースまたはデオキシリボースに付着できる)に由来する天然発生および/または合成ヌクレオチド(またはヌクレオシド)の直線アレイを有するものを含む。核酸の配列は天然発生の配列に同一であってもなくてもよい(例えば配列は、ワクチンを安全とさせるようHIVタンパク質の変異体をコードしうる)。本明細書に記載するベクターにより発現され得るタンパク質の具体的な特性および具体的な配列を以下で論じる。
【0010】
プラスミドまたはウイルスベクターは、発現されたときに核酸が由来するかまたは得られるウイルス(またはウイルスクレード)に対して免疫応答を引き出す、一つまたは複数のHIVクレードまたはそのいずれかの断片もしくは誘導体において見出される一つまたは複数の遺伝子を表す核酸を含むことができる。核酸をHIVから精製することができるか、またはこれらを予めクローン化、サブクローン化、または合成しておくことができ、そしていずれにしても天然発生核酸配列と同一であるかまたは異なっていてよい。本発明のプラスミドベクターを本明細書では特に、それらがワクチンインサート(すなわち抗原または免疫原をコードする核酸配列)を含むかどうかに関わらず、発現ベクター、発現構築物、プラスミドベクター、または単にプラスミドとして言及することができる。類似の変形である「ウイルスベクター」なる用語も同様であると考えられる(例えば「ウイルスベクター」を「ポックスウイルスベクター」、「ワクシニアベクター」、「改変ワクシニア・アンカラベクター(modified vaccinia Ankara vector)」、または「MVAベクター」として言及することができる)。ウイルスベクターはワクチンインサートを含んでも、含まなくてもよい。
【0011】
本明細書で記載するDNA分子およびウイルスベクターを用いて、患者を予防的にまたは治療的に免疫するために、プラスミドベクターとの組み合わせで用いることができる組換えウイルスを作製することができる。
【0012】
従って、1つの局面では、本発明は、非限定例としては、ワクチンインサートを有する、プラスミドまたはウイルスベクターでよいベクターを含有する組成物(薬学的にまたは生理学的に許容される組成物を含む)を特徴とする。インサートは本明細書に記載する一つまたは複数の配列を含むことができる(インサートの特徴および代表的な配列を以下に詳細に記載する;これらのいずいれか、またはこれらのいずれかの組み合わせをインサートとして用いることができる)。インサートが発現される場合、発現された(複数の)タンパク質は一つまたは複数のHIVクレードに対する免疫応答を作製することができる。単一のベクターのインサートに1つより多くのクレードに由来する配列を含めることにより、免疫応答が1つより多くのクレードに対して有効である可能性を高めることができる(マルチベクターワクチンもまた有用であり、そして以下でさらに記載する)。例えばクレードBおよびクレードCに対する免疫応答を作製する可能性を高めるために、各々がクレードBおよびクレードCのタンパク質をコードするインサートを含むベクターを対象に投与することができる。対象はHIVクレードBおよびクレードCが蔓延している世界の地域に居住しているか、またはその間を旅行しているヒトでよい。もちろん、単一のクレードの一つまたは複数のタンパク質を発現することもまた有益であり、そしてそのようにするベクターは本発明の範囲内である(再度、本明細書に記載する例示的なインサートの特徴または配列を有するいずれかのイサートを用いることができ、そしてインサートそのものが本発明の特徴である)。
【0013】
別の局面では、本発明は、非限定例としては2つのベクター:HIVの第1のクレードに対する免疫応答を引き出す(例えば誘起するまたは増強する)一つまたは複数の抗原をコードする第1のベクター(すなわちワクチンインサートを含むベクター)、およびHIVの第2クレードに対する免疫応答を引き出す(例えば誘起するまたは増強する)一つまたは複数の抗原をコードする第2のベクター;を含有する組成物(薬学的または生理学的に許容される組成物)を特徴とする。しかしながら、組成物は第1および第2ベクターより多くを含有することができ、これは3個、4個、5個、6個またはそれ以上の異なるベクター(「異なる」ベクターとは、異なる制御エレメント(例えば異なるプロモーター)を含有するか、または異なる抗原もしくは抗原の組み合わせをコードするか、またはそうでなければ変化している(例えばその「骨格(backbone)」配列において変化している)ベクターを意味する)を含有できる。ある態様では、組成物は2個、3個、4個、または全てではない場合大分部のHIVクレードに対する免疫応答を引き出すのに必要であるほどの多くのベクターを含有することができる。1つのベクターが1つの抗原(例えばGag-Pol)をコードすることができるが、一つまたは複数のベクター(すなわち第1ベクター、第2ベクター、または双方;第1、第2、第3または3つ全てのベクター等)が少なくとも3つの抗原(例えばGag-PolおよびEnv)をコードする核酸を含むことができ、その各々が主に同一のHIVクレードに対して指向される免疫応答を引き出すことができる(すなわち第1ベクターは3つの抗原を発現でき、その各々は主にクレードAに対する応答を作製し、そして第2ベクターは3つの抗原を発現でき、その各々は主にクレードBに対する応答を作製する)。別の態様では、一つまたは複数のベクターは1つより多くのHIVクレードに対する免疫応答を引き出すことができる(すなわち第1ベクターはクレードAに対する応答を作製する第1抗原(例えばGag-Pol)およびクレードBに対する応答を作製する第2抗原(例えばEnv)を発現することができる)。このように一つまたは複数のベクターは1つより多くのHIVクレードに対する免疫応答を引き出すことができる。本明細書に記載するいずれかの型のベクターを、それらがプラスミドであっても、ウイルスベクターであっても、またはそれらが個々に主に1つのHIVクレードに対する免疫応答を引き出す抗原をコードしていても、1つより多くのHIVクレードに対する免疫応答を引き出す抗原をコードしていても、免疫を作製したい特定のHIVクレードに依存して単独でまたは互いに組み合わせて使用することができる。
【0014】
ワクチンインサート自体(すなわち抗原または免疫原として提供されるHIVタンパク質をコードする配列)もまた本発明の範囲内である。これらのインサートを以下で詳細に記載するが、ここで、本発明が修飾されたHIVゲノムを表す種々の単離された核酸(例えば何らかの方法で組換えまたは変異している、ゲノムまたは一つまたは複数のHIV遺伝子の断片または組換え体)を特徴とすることに留意される。例えば、一つまたは複数の核酸を一つまたは複数の遺伝子から除去するか、または別の核酸で置換することができる(すなわち配列は遺伝子または複数の遺伝子の断片でよく、そして点変異を含有することができる)。より具体的には、本発明は安全な変異(例えばLTRの、およびインテグラーゼ(IN)、Vif、VprおよびNefをコードする配列の欠失)を有するHIVゲノムを表す単離された核酸を特徴とする。核酸はGag、PR、RT、Env、Tat、RevおよびVpuタンパク質をコードすることができ、その一つまたは複数は安全な変異を含有することができる(特定の変異を以下で詳細に記載する)。さらに、単離された核酸はいずれかのHIVクレードのものでよく、そして(以下に記載するように)異なるクレードに由来する核酸を組み合わせで用いることができる。本明細書に記載する研究では、クレードBインサートをJS(例えばJS2、JS7、およびJS7.1)と称し、クレードAGインサートをIC(例えばIC2、IC25、IC48およびIC90)と称し、そしてクレードCインサートをIN(例えばIN2およびIN3)と称する。これらのインサートは本発明の範囲内であり、それらを含有するベクター(プラスミドでもウイルスでも)も同様である(特定のベクター/インサートの組み合わせを、以下で例えばpGA1/JS2、pGA2/JS2等と称する)。
【0015】
DNAを担持する発現ベクターは、DNAによりコードされる生成物(すなわちタンパク質)で患者を免疫するためのみ用いることができることに限定される必要があり、そして細菌および寄生虫タンパク質が真核細胞により非定型的にプロセシングされ得る。既存のDNAワクチンに伴う別の問題は、いくつかのワクチンインサート配列は細菌内でのDNAワクチンプラスミドの成長および増幅の間、不安定であることである。ワクチンインサートまたはプラスミドベクター(「骨格」)の2次構造が細菌性エンドヌクレアーゼにより変化する可能性がある場合、プラスミド成長の間に不安定性を生じ得る。本発明の発現ベクターは安定性を改善する終止配列を含むことができる。終止配列およびその他の制御成分(例えばプロモーターおよびポリアデニル化配列)については以下で詳細に論じる。
【0016】
本発明の組成物を、子供を含むヒトに投与することができる。従って、本発明は一つまたは複数の型のベクター(例えば一つまたは複数のプラスミド、これは同一の配列、成分またはインサート(すなわち抗原をコードすることができる配列)を有しても有さなくてもよく、そして/または一つまたは複数のウイルスベクター、これは同一であってもなくても、もしくは同一の抗原を発現してもしなくてもよい)を投与することにより患者を免疫する(または患者において免疫応答を引き出す、これはマルチエピトープCD8T細胞応答を含んでよい)方法を特徴とする。前記したように、ベクターは、プラスミドでもウイルスベクターでも、一つまたは複数のHIVクレードから得られたか、またはそれから誘導された(例えば変異配列は誘導配列である)一つまたは複数の核酸を含むことができる。これらの配列は発現される場合、一つまたは複数のHIVクレードに対する免疫応答を引き出す抗原または複数の抗原を生成する。特定の態様では、患者は第1ベクターおよび第2ベクターを投与される。第1ベクターは第1 HIVクレードの一つまたは複数の抗原をコードすることができ(これらの抗原はそのHIVクレードに対する免疫応答を引き出す(例えば誘起または増強する)ことができる)、第2ベクターは第2 HIVクレードの一つまたは複数の抗原をコードすることができる(ここでもまた、これらの抗原は第2 HIVクレードに対する免疫応答を引き出す(例えば誘起または増強する)ことができる)。また別の態様では、対象に第3、第4、第5等のHIVクレード(またはその変異体)に由来する一つまたは複数の抗原をコードする第3、第4、第5等のベクターを投与することができる。さらに、および別の態様と同様に、(複数の)抗原はいずれかのクレード(例えば一つまたは複数のクレードAからL)またはいずれかのHIV単離体に由来してよい。
【0017】
組成物が、その骨格、制御エレメント、または(複数の)インサートのいずれかが異なるベクターを含有する場合、組成物におけるベクターの比率およびそれが投与される経路を変えることができる。1つの型のベクターの別のものに対する比率は等しいか、またはほぼ等しい(例えばほぼ1:1または1:1:1等)。または、比率をいずれかの望ましい比率にすることができる(例えば1:2、1:3、1:4...1:10;1:2:1、1:3:1、1:4:1...1:10:1等)。このように本発明は、抗原発現ベクターの相対量がほぼ等しいか、または望ましい比率である、種々のベクターを含有する組成物を特徴とする。混合物を作製する(そしてより都合よくする)ことができるが、もちろん、2つまたはそれ以上のベクター含有組成物を投与することより(例えば同時に(互いに数分以内に)またはほぼ同時に(例えば連日))、同一の目的を達成することができる。
【0018】
プラスミドベクターを単独で(すなわちプラスミドをまた別の型のワクチン処方を伴って、または伴わずに(例えばタンパク質または別の型のベクター、例えばウイルスベクターの投与を伴って、または伴わずに)1回または数回の頻度で投与することができる)、および選択的に、アジュバントと共に、または、また別のブースター免疫(例えばベクター化された生ワクチン、例えば免疫の「プライム」部分によりコードされるものと同一かまたは異なる抗原をコードできるDNAインサートを含む組換え改変ワクシニア・アンカラ(MVA)ウイルス)と組み合わせて(例えばその前に)投与することができる。例えば、ウイルスベクターまたはMVAウイルスは、接種プロトコルの「プライム」部分として投与されるプラスミドと共に含まれる少なくともいくつかの配列(例えば同一抗原をコードする配列の一つまたは複数、そして恐らく全て)を含有することができる。アジュバントは「遺伝子アジュバント」(すなわちDNA配列により分配されるタンパク質)でよい。同様に、以下でさらに記載するように、ベクター化された生ワクチン(例えばMVAベクターまたは組換えMVAウイルス)を投与し、プラスミド基盤の(または「DNA」)ワクチンを投与しないで患者を免疫する(または免疫応答を引き出す、それはマルチエピトープCD8T細胞応答を含んでよい)ことができる。このように、また別の態様では、本発明は組換えウイルスまたはウイルスベクター(選択的に、一つまたは複数のいずれかの本明細書で記載したインサートまたはその特徴を有するインサートを伴う)のみを有する組成物およびそれを投与する方法を特徴とする。ウイルス基盤の試験計画(例えば「MVAのみ」または「MVA-MVA」ワクチン試験計画)は本明細書で「DNA-MVA」試験計画に関して記載したものと同一であり、そしていずれかのワクチンのMVAを望ましいいずれかの比率にすることができる。例えば、いずれの場合も(免疫プロトコルがプラスミド基盤の免疫原のみを用いても、ウイルス担持免疫原のみを用いても、その双方の組み合わせを用いても)、アジュバントを含めることができ、そして投与した複数のベクターによりいずれかのHIVクレードから得られたものを含む種々の抗原を投与することができる。
【0019】
「免疫」(およびその変種)なる用語が意味するように、本発明の組成物を未だ病原体に感染するに至っていない対象に投与することができる(このように本明細書で用いる「対象」または「患者」なる用語は明らかに健康な、またはHIVに感染していない個体を包含する)が、本発明はそれに限定されるものではなく;本明細書に記載する組成物を投与して、すでに病原体(例えばいずれかのクレードのHIV、現在クレードAからLとして公知のもの、またはその組換え体を含む)に暴露されているか、または病原体に感染していることがわかっている対象または患者を処置することもできる。
【0020】
DNAおよびrMVA免疫の利点は、MHCクラスIおよびクラスII分子の双方により免疫原を提示できる点である。内因的に合成されたタンパク質は容易に、MHC IおよびMHC II分子にペプチドエピトープを負荷するプロセシング経路に入る。MHC I提示エピトープはCD8細胞毒性T細胞(Tc)応答を上昇させ、一方MHC II提示エピトープはCD4ヘルパーT細胞(Th)を上昇させる。対照的に、細胞で合成されない免疫原は主にMHC IIエピトープの負荷に限定され、そして従って、CD4Thを上昇させるが、CD8 Tcを上昇させない。さらに、DNAプラスミドはトランスフェクトされた細胞において免疫抗原のみを発現し、そして免疫応答を免疫に望ましいこれらの抗原だけに向けるために用いることができる。対照的に、生ウイルスベクター、例えば組換えMVAウイルスは多くの抗原(例えばベクターの抗原および免疫抗原)を発現し、そしてベクターおよび免疫原の双方に対する免疫応答をプライムする。このように、これらの生ウイルスベクターは、高度に標的化されたDNAプライムされた免疫応答を優先的にブーストする生ウイルスベクターにより発現され得る多量の抗原のためにDNAプライミング応答をブーストするのに非常に有効であると考えられている。生ウイルスベクターはまた免疫応答を増強する炎症誘発性サイトカインの生成を刺激する。このように本明細書に記載する一つまたは複数のDNAベクターの(「プライム」としての)投与および続く一つまたは複数の組換えMVAウイルスの(「ブースト」としての)投与が、DNA単独または生ウイルスベクター単独よりも細胞性および体液性の双方の免疫の上昇により有効であろう。これらのワクチンをDNA発現ベクターおよび/または組換えウイルスにより投与できる限り、細菌宿主で安定であり、そして動物において安全であるプラスミドに関する必要性がある。この付加された安定性を有することができるプラスミド基盤のワクチンを、ヒトを含む動物に投与するための方法と一緒に本明細書にて開示する。
【0021】
DNAまたはrMVAによりコードされる抗原はタンパク質性である必要がある。「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」なる用語は概して互換性があるが、「ペプチド」なる用語は通常アミノ酸残基の短い配列または大きなタンパク質の断片を意味するために用いられる。いずれにしても、DNAを発現するための(例えば本明細書で記載されそして例示されたワクチンインサートに関して行われたのと同様の)組換え技術を用いることにより、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸残基の連続した並びを入手し、天然供給源から精製し、または合成することができる。
【0022】
DNA基盤のワクチン(およびウイルスベクター、例えばポックスウイルス基盤のベクター)のその他の利点を以下に記載する。本発明の一つまたは複数の態様の詳細を添付の図面および以下の記載に示す。本発明のその他の特徴、目的および利点は記載および図面から、並びに請求の範囲より明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】プラスミド構築物pGA1の略図である。ベクターに存在するエレメント(例えばプロモーター(本明細書では、イントロンAを含むCMVプロモーター))の同定および位置、多重クローニング部位、ターミネーター配列(本明細書では、ラムダT0ターミネーター)、および選択遺伝子(本明細書では、カナマイシン抵抗性遺伝子)を示す。ワクチンインサートのプラスミドへのクローニングに有用な独特な制限エンドヌクレアーゼ部位をも示す。
【図2a】pGA1に関する。図2aはpGA1(配列番号:1)のヌクレオチド配列の説明である。
【図2b】pGA1に関する。図2bはpGA1の機能的領域、配列番号:1内のその位置、および配列の起源を列挙する表である。
【図3a】pGA1.1に関する。図3aはpGA1.1(配列番号:2)のヌクレオチド配列の説明である。
【図3b】pGA1.1に関する。図3bはpGA1.1の機能的領域、配列番号:2内のその位置、および配列の起源を列挙する表である。pGA1.1はその多重クローニング部位にEcoRI制限部位を含む点でpGA1と異なっている。
【図4a】pGA1.2に関する。図4aはpGA1.2(配列番号:3)のヌクレオチド配列の説明である。
【図4b】pGA1.2に関する。図4bはpGA1.2の機能的領域、配列番号:3内のその位置、および配列の起源を列挙する表である。pGA1.2はその多重クローニング部位にBamH I制限部位を含む点でpGA1.1と異なっている。
【図5】プラスミド構築物pGA2の略図である。ベクターに存在するエレメント(例えばプロモーター(本明細書では、イントロンAを含まないCMVプロモーター))、多重クローニング部位、ターミネーター配列(本明細書では、ラムダT0ターミネーター)、および選択遺伝子(本明細書では、カナマイシン抵抗性遺伝子)の同定および位置を示す。ワクチンインサートのプラスミドへのクローニングに有用な独特な制限エンドヌクレアーゼ部位をも示す。
【図6a】pGA2に関する。図6aはpGA2(配列番号:4)のヌクレオチド配列の説明である。
【図6b】pGA2に関する。図6bはpGA2の機能的領域、配列番号:4内のその位置、および配列の起源を列挙する表である。
【図7a】pGA2.1に関する。図7aはpGA2.1(配列番号:5)のヌクレオチド配列の説明である。
【図7b】pGA2.1に関する。図7bはpGA2.1の機能的領域、配列番号:5内のその位置、および配列の起源を列挙する表である。pGA2.1はその多重クローニング部位にEcoRI制限部位を有する点でpGA2と異なっている。
【図8a】pGA2.2に関する。図8aはpGA2.2(配列番号:6)のヌクレオチド配列の説明である。
【図8b】pGA2.2に関する。図8bはpGA2.2の機能的領域、配列番号:6内のその位置、および配列の起源を列挙する表である。pGA2.2はその多重クローニング部位にBamH I制限部位を有する点でpGA2.1と異なっている。
【図9】HIVゲノムのプロウイルス(DNAが組み込まれている)形態(HIV-1 野生型)および代表的なワクチンインサートの略図である。この代表的なインサートはLTRの欠失、インテグラーゼ(IN)、Vif、VprおよびNefをコードする配列の欠失を含む安全性変異を有する。インサートはGag、PR、RT、Env、Tat、RevおよびVpuタンパク質をコードする。クレードBインサートをJS(クレードB)、IC(クレードAG)およびIN(クレードC)と称し、アラビア数字は特定のワクチン構築物を指定している(例えばJS2、JS7およびJS7.1は特定のクレードBワクチン構築物の実例であり;IC2、IC25、IC48およびIC90は特定のAGワクチン構築物の実例であり、そしてIN2およびIN3は特定のクレードCワクチン構築物の実例である)。pGA1ベクターに挿入された場合、インサート担持プラスミドをpGA1/JS2等と称し;pGA2ベクターに挿入された場合、プラスミドをpGA2/JS2等と称する。
【図10a−1】pGA2/JS2に関する。図10a-1はpGA2/JS2クレードBワクチンベクター(配列番号:7)の配列の説明である。
【図10a−2】pGA2/JS2に関する。図10a-2は、図10a-1の続きを示す図である。
【図10b】pGA2/JS2に関する。図10bはpGA2/JS2の7個の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図10c】pGA2/JS2に関する。図10cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化(例えばC392Sはアミノ酸残基392でのシステインのセリンへの置換を示す)、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図11a−1】pGA2/JS7に関する。図11a-1はpGA2/JS7クレードBワクチンベクター(配列番号:8)の配列の説明である。
【図11a−2】pGA2/JS7に関する。図11a-2は、図11a-1の続きを示す図である。
【図11b】pGA2/JS7に関する。図11bはpGA2/JS7の7個の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図11c】pGA2/JS7に関する。図11cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化(例えばC395Sはアミノ酸残基395でのシステインのセリンへの置換を示す)、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図12a−1】pGA2/JS7.1に関する。図12a-1はpGA2/JS7.1クレードBワクチンベクター(配列番号:9)の配列の説明である。
【図12a−2】pGA2/JS7.1に関する。図12a-2は、図12a-1の続きを示す図である。
【図12a−3】pGA2/JS7.1に関する。図12a-3は、図12a-2の続きを示す図である。
【図12b】pGA2/JS7.1に関する。図12bはpGA2/JS7.1の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図12c】pGA2/JS7.1に関する。図12cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図13a−1】pGA1/IC25に関する。図13a-1はpGA1/IC25クレードAGワクチンベクター(配列番号:10)の配列の説明である。
【図13a−2】pGA1/IC25に関する。図13a-2は、図13a-1の続きを示す図である。
【図13a−3】pGA1/IC25に関する。図13a-3は、図13a-2の続きを示す図である。
【図13b】pGA1/IC25に関する。図13bはpGA1/IC25の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図13c】pGA1/IC25に関する。図13cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図14a−1】pGA1/IC2に関する。図14a-1はpGA1/IC2クレードAGワクチンベクター(配列番号:11)の配列の説明である。
【図14a−2】pGA1/IC2に関する。図14a-2は、図14a-1の続きを示す図である。
【図14a−3】pGA1/IC2に関する。図14a-3は、図14a-2の続きを示す図である。
【図14b】pGA1/IC2に関する。図14bはpGA1/IC2の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図14c】pGA1/IC2に関する。図14cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図15a−1】pGA1/IC48に関する。図15a-1はpGA1/IC48クレードAGワクチンベクター(配列番号:12)の配列の説明である。
【図15a−2】pGA1/IC48に関する。図15a-2は、図15a-1の続きを示す図である。
【図15a−3】pGA1/IC48に関する。図15a-3は、図15a-2の続きを示す図である。
【図15b】pGA1/IC48に関する。図15bはpGA1/IC48の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図15c】pGA1/IC48に関する。図15cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図16a−1】pGA1/IC90に関する。図16a-1はpGA1/IC90クレードAGワクチンベクター(配列番号:13)の配列の説明である。
【図16a−2】pGA1/IC90に関する。図16a-2は、図16a-1の続きを示す図である。
【図16a−3】pGA1/IC90に関する。図16a-3は、図16a-2の続きを示す図である。
【図16b】pGA1/IC90に関する。図16bはpGA1/IC90の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図16c】pGA1/IC90に関する。図16cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図17a−1】pGA1/IN3に関する。図17a-1はpGA1/IN3クレードCワクチンベクター(配列番号:14)の配列の説明である。
【図17a−2】pGA1/IN3に関する。図17a-2は、図17a-1の続きを示す図である。
【図17a−3】pGA1/IN3に関する。図17a-3は、図17a-2の続きを示す図である。
【図17b】pGA1/IN3に関する。図17bはpGA1/IN3の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図17c】pGA1/IN3に関する。図17cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図18a−1】pGA1/IN2に関する。図18a-1はpGA1/IN2クレードCワクチンベクター(配列番号:15)の配列の説明である。
【図18a−2】pGA1/IN2に関する。図18a-2は、図18a-1の続きを示す図である。
【図18a−3】pGA1/IN2に関する。図18a-3は、図18a-2の続きを示す図である。
【図18b】pGA1/IN2に関する。図18bはpGA1/IN2の機能的領域の位置、これらの領域内の遺伝子配列(そこに存在する変異を記載)、およびその配列の起源を列挙する表である。
【図18c】pGA1/IN2に関する。図18cは変化したコドン、得られたアミノ酸変化、変異が存在するゲノムの領域、および変異の機能を列挙する表である。
【図19】HIV-1 Env糖タンパク質の略図である。矢印はgp160をgp120およびgp41に切断する部位を示す。gp120では、斜交平行線部分が可変ドメイン(V1からV2)を表し、そして白抜きのボックスは保存配列(C1からC5)を表す。gp41外部ドメインでは、いくつかのドメインを示す。N末端融合ペプチドおよび2個の外部ドメインらせん(N-およびC-らせん)。膜貫通ドメインを黒色のボックスで表す。gp41細胞質ドメインでは、Tyr-X-X-Leu(YXXL)エンドサイトーシスモチーフおよび2個の予測されるらせんドメイン(らせん1およびらせん2)を示す。100間隔でアミノ酸残基に数字を付けている。
【図20a】プラスミドトランスファーベクターpLW-48に関する。図20AはpLW-48のマップである。
【図20b】プラスミドトランスファーベクターpLW-48に関する。図20Bはその配列の表示である。
【図21−1】プラスミドトランスファーベクターpLW-48、Psy IIプロモーター(これはADAエンベロープ発現を調節する)、ADAエンベロープ(トランケートされている)、PmH5プロモーター(これはHXB2 gagおよびpol発現を調節する)、およびHXB2 gag-pol(RTにおける安全性変異、不活性化点変異およびインテグラーゼの除去)の配列の表示。
【図21−2】図21-2は、図21-1の続きを示す図である。
【図21−3】図21-3は、図21-2の続きを示す図である。
【図21−4】図21-4は、図21-3の続きを示す図である。
【図21−5】図21-5は、図21-4の続きを示す図である。
【図21−6】図21-6は、図21-5の続きを示す図である。
【図21−7】図21-7は、図21-6の続きを示す図である。
【図21−8】図21-8は、図21-7の続きを示す図である。
【図21−9】図21-9は、図21-8の続きを示す図である。
【図22】プラスミドトランスファーベクターpLW-48の表示およびMVA組換えウイルス(MVA/HIV 48)を作成するためのスキーム。
【図23】クレードBgag polの表示。
【図24】Psyn IIプロモーターの表示。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明は幅広い種類のベクターおよびベクターの型(例えばプラスミドおよびウイルスベクター)を包含し、その各々は、必ずしも必要というわけではないが、その抗原が得られたまたは誘導された病原体に対して免疫応答を引き出す(例えば誘起または増強する)一つまたは複数の抗原をコードする一つまたは複数の核酸配列を含むことができる(免疫応答を引き出すタンパク質をコードする配列を本明細書では「ワクチンインサート」または単に「インサート」と称することがあり;変異が天然発生配列に導入される場合、得られた変異体は天然発生配列から「誘導される」)。「インサート」を含まないベクターは本発明の範囲内であり、そしてインサート自体もまた本発明の組成物であることを明らかにするために、ベクターは必ずしも抗原をコードする必要がないことが指摘される。
【0025】
従って、本発明は本明細書に開示する核酸配列、その類似体、およびこれらの核酸を含有する組成物を特徴とする(ベクターにインサートを加えたものか、またはインサートのみか;例えば生理学的に許容される溶液、これは担体、例えばリポソーム、カルシウム、粒子(例えば金ビーズ)またはDNAを細胞に分配するために用いられるその他の試薬を含んでよい)。類似体は本明細書に開示したものと同一でないが、本発明の配列に含まれるもの(例えば本明細書に開示するJS、ICまたはIN配列のいずれか)に類似する位置で同一または類似の変異(例えば同一の点変異または類似の点変異)を含む配列でよい。規定の残基またはドメインを、それが正確に同一の数字で示される位置ではないようであったとしても、種々のHIVクレードで同定することができる。本明細書に記載するものと区別されるが、HIV遺伝子生成物を同様に不活性化する変異を含む類似体をシークエンシングすることもできる。例えば、本明細書に記載する遺伝子の1つよりも多かれ少なかれトランケートされているが、同様に不活性化されている(例えば特定の酵素活性を喪失している)遺伝子は本発明の範囲内である。
【0026】
以下でより詳細に記載する病原体および抗原はいずれかのクレードの(例えばいずれかの公知のクレード由来か、またはいずれかの単離体由来の(例えばクレードA、AG、B、C、D、E、F、G、H、I、J、KまたはL))ヒト免疫不全ウイルスを含む。ベクターが病原体に由来する配列を含む場合、免疫応答を引き出すためにこれを患者に投与することができる。このように抗原コード化ベクターを単独でまたは互いに組み合わせて投与する方法もまた本明細書に記載する。患者を免疫するために(それにより患者が感染するようになる危険性を低減させる)、またはすでに感染してしまった患者を処置するためにこれらの方法を実施することができ;発現された場合、抗原は実質的に感染を防御できる(例えば免疫が続く病原体による誘発に対して保護することができる)か、または患者の健康に及ぼす影響の程度を制限できる、細胞媒介のおよび体液性の双方の免疫応答を引き出すことができる。多くの場合、患者はヒト患者であるが、本発明はそのように限定されるものではない。非ヒト霊長類、飼い馴らされた動物および家畜を含むその他の動物を処置することもできる。
【0027】
本明細書で記載する組成物は、それらが指向する病原体または病原体のサブタイプ(例えば(複数の)HIVクレード)に関わらず、核酸ベクター(例えばプラスミド)を含むことができる。本明細書で記載するように、pGA1、pGA2と称するプラスミド(もちろんこれらのベクター自体を含む)の一つまたは複数の特徴または特性(特に指向された終止配列および強力なプロモーター)を有するベクターをワクチンまたは治療の基礎として使用することができる。標準的な組換え技術(そのいくつかを以下の実施例で説明する)を用いてこのようなベクターを操作して、投与し、続いて発現させた場合、抗原が得られたかまたは誘導された病原体に対するいくつかの形態の保護(例えば感染に対する保護、疾患に対する保護、または一つまたは複数の疾患の徴候または症状の改善)を患者に提供する免疫応答を患者が引き出す(例えば誘起または増強する)抗原をコードする配列を含むようにすることができる。コードされる抗原はいずれかのHIVクレードもしくはサブタイプまたはいずれかのその組換え体のものでよい。免疫不全ウイルスに由来するインサートに関して、異なる単離体が集団多様性を呈し、その各々の単離体はクレードのコンセンサス配列から全体的に類似する多様性を有している(例えばSubbaraoら、AIDS 10(補冊A):S13-23(1996))。このように、いずれかの単離体を同一クレードの別の単離体の配列の合理的な代表として用いることができる。従って、組換え事象、代替スプライシングまたは変異の結果である遺伝子または核酸分子の天然変種を用いて本発明の組成物を作製し、そして本明細書に記載する方法を実施することができる(これらの変種を本明細書で単にHIVの「組換え体」と称することができる)。
【0028】
さらに、いずれかの構築物内の一つまたは複数のインサートを変異させてヒトにおけるその天然の生物学的活性を低減させることができる(そしてそれによりその安全性を高める)(これらのヒトにより作製された変種を本明細書でHIVの「組換え体」と称することもできる(同様に天然発生組換え体が存在する))。前記したように、JS2、JS7およびJS7.1の記載では、そして以下に記載するように(例えば実施例7から10を参照)、キャプシド形成に参加する配列に変異を導入することができる。例えばHIV(例えばHIV-1)の非コード化制御配列のシス作動性RNAキャプシド形成配列を(例えばその全てまたは一部の欠失により)変異させることができる。また別に、あるいはそれに加えて、いずれかの抗原タンパク質(例えば前記で列挙したものを含むいずれかのHIV抗原(例えばウイルスRTまたはプロテアーゼ))をコードする配列を変異させることができる。
【0029】
例えば本発明の組成物は2個のベクター:(a)第1サブタイプまたは組換え体のヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ベクター、および(b)第2サブタイプまたは組換え体のHIVに対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ベクター;を有するものを含む。組成物は薬学的に許容されるものでよく、そして担体またはアジュバント(さらに以下で論じる)を含むことができる。さらに、第1ベクターのインサートまたは第2ベクターのインサートは2つまたはそれ以上の、(a)gag、pol、env、tat、rev、nef、vif、vprもしくはvpu遺伝子、または(b)その変異体、および選択的に(c)HIVゲノムの非コード化制御配列(単一のプロモーターの配列を含む);の配列を含むことができる。2つまたはそれ以上の配列のうちの少なくとも1つは変異体であるか、またはウイルスRNAのキャプシド形成を制限するように変異させることができる((複数の)変異がキャプシド形成を感知できるほどに制限するのが好ましい)。
【0030】
当技術分野において公知の技術を用いて変異を導入し、そして(例えば発現または免疫原性に及ぼす)その影響を決定することができ;依然十分に発現される(例えば野生型の対応物とほぼ同様に、またはそれよりも良好に発現される抗原)が、その野生型の対応物よりも生物学的活性が低い抗原は本発明の範囲内である。免疫応答を検定するための技術を利用することもできる。例えば抗ウイルス抗体またはウイルス特異的T細胞を検出することができる。
【0031】
変異体構築物(例えばワクチンインサート)は本明細書で記載する一つまたは複数の置換変異体(例えば実施例参照)または別のHIVクレードの類似の変異をコードする配列を含むことができる。さらに、または、それをコードする遺伝子配列の一部を除去することによりHIV抗原の活性を低くすることができる。このように、本発明の組成物は、免疫応答を引き出すことができるが、変異体であり(対応する野生型配列とは異なる長さのタンパク質をコードしても異なる内容のタンパク質をコードしても)、そしてそれにより患者において発現されたときに正常な生物学的機能をあまり実行できない抗原をコードする構築物を含むことができる。前記したように、分子生物学および免疫学で標準的な技術を用いて発現、免疫原性、および活性を検定することができる。
【0032】
いくつかのプラスミドを構築し、そしてそれを用いて抗原を発現させた(例えばpGA2/JS2構築物でマカクにおける免疫原性の研究を行った)。作成しそして使用したプラスミドにはpGA1およびその誘導体pGA1.1およびpGA1.2;並びにpGA2およびその誘導体pGA2.1およびpGA2.2などがある(実施例1から8を参照)。作製したワクチン構築物は典型的には「骨格」ベクターおよび「インサート」と称され、バックスラッシュとは区別されている。これらの構築物はHIV-1抗原を発現し、そしてこれらの構築物を本明細書で記載するように患者に投与することができる。抗原(野生型および投与するためにそれを安全にする変異を含有するもの)を以下で詳細に論じるが、ここでは現在の証拠に基づいて、JS7様インサートを含有するプラスミドは、JS2様インサートを含有するプラスミドよりもさらに良好な免疫原性を呈するようであり、そして(抗Env抗体により明らかであるように)免疫応答のプライミングにさらに有効であることに留意される。pGA2/JS7およびpGA2/JS7.1はpGA2/JS2とはいくつかの点で異なっており、その1つはその各々の抗原の供給源である。pGA2/JS7およびpGA2/JS7.1では、GagおよびPol遺伝子がHIV-1 HXB2から得られ、一方pGA2/JS2ではこれらの遺伝子はHIV-1の非常に近縁の単離体であるHIV-1 BH10から得られた。従って、本発明はHIV-1 HXB2から得られたGagおよびPol遺伝子を含むインサート(並びにそれらを含有するベクターおよび組成物)を特徴とする。さらにこれらのインサートはGag-Polにより実行される一つまたは複数の生物学的活性を阻害する変異を含有することができる。JS7およびJS2と称されるワクチンインサートもまた、JS7がそのプロテアーゼ遺伝子に不活性化点変異を有している点で異なっている。この変異は、本発明者らが考えるには、pr55 Gagタンパク質の時期尚早な細胞内切断を妨げることにより、ウイルス様粒子(VLP)の形成を促進する。pGA2/JS7およびpGA2/JS7.1の双方はこのプロテアーゼ変異を含有し、そして双方の構築物はVLPを大量に生成する。従って、本発明は変異体gagおよび/またはpol配列(例えばプロテアーゼ遺伝子を阻害する変異(例えば一つまたは複数の欠失または点変異))を含むインサートを特徴とする。pGA2/JS7.1のvpu遺伝子におけるさらなる点変異により、Vpu発現の喪失およびEnv発現の増加に至る(pGA2/JS7.1では、Vpuの開始部位が顆粒のATGと一緒に変異されVpuの翻訳を排除する)。Env発現の増加はGag発現に影響しない。
【0033】
gag、polを含むいずれかのワクチンインサート;ウイルスプロテアーゼをコードするいずれかのワクチンインサート;またはvpu遺伝子を含むいずれかのワクチンインサートにおいて(それが得られたクレードまたは単離体に関わらず)同一のまたは類似の変化を起こすことができる。さらに、本明細書で記載するいずれかのプラスミドまたはベクター化された生ワクチン(例えばMVA)に配置されたワクチンインサートにこれらの変化を起こすことができる(すなわちpGAベクター、pGAベクター自体、または単独でまたはDNAプライムした患者と関連して(例えばブーストするために)用いることができるワクシニアベクターの一つまたは複数の特徴または特性を有しているいずれかのプラスミドにおいて)。
【0034】
本発明の範囲内のいずれかのプラスミドを細胞、例えば293T細胞(ヒト胚腎細胞系)をトランスフェクトし、そして(例えば抗原捕捉ELISAまたはウェスタンブロットにより)抗原発現のレベルを検定することにより発現に関して試験することができる。本明細書で試験するプラスミドに匹敵するか、またはそれよりも高いレベルで免疫原を発現するプラスミドは強力な治療候補であり、そして本発明の範囲内である(もちろん、それが作製する抗原発現のレベルに関わらず、有効な免疫応答(例えば、いずれかの望ましい程度の感染からの保護またはその他の治療上の利益)を引き出すいずれかの構築物は本発明の範囲内である)。VLPを生成するための候補ベクターの能力を同様に検定することができ;VLPに類似するベクターの生成物が増えるほど、それらが強力な抗体応答を引き出す可能性が高くなる(これは望ましい特徴であるが、それにも関わらず、VLPの形成に失敗したベクターは有用であり、そして本発明の範囲内である)。細胞培養中の発現およびVLP形成を検定することに加えて、インビボで候補ベクターを検定することができる。例えば、動物モデルにおいて(そして最終的にはヒト患者において)免疫原性を検定することができる。実質的に本明細書に記載するpGAベクターと同一の配列を有し、そして本明細書に記載する一つまたは複数の抗原を発現するプラスミドは、それが患者において治療上有益な応答を誘起または増強するのに十分免疫原性である限り、本発明の範囲内である(たとえプラスミドの一つまたは複数の構成部分、例えばマーカー遺伝子または抗生物質抵抗性遺伝子が除去されていても、プラスミドは実質的にpGAベクターと同一の配列を有することができる)。動物の免疫原性に関する試験では、そのペプチドに応答するT細胞の頻度を評価するために、抗原ペプチドでの刺激に応答するIFN-γ生成に関して細胞内サイトカインアッセイ法またはELISPOTアッセイ法を実施することができる。増殖アッセイ法を実施することもできる。一過性のトランスフェクションにより生成された抗原を刺激に用いることができ、そして偽トランスフェクション培養物の上澄を対照として提供することができる。望む場合、データを刺激インデックスとして提示することができる(偽抗原の存在下の培養物の成長により分けられた病原性(例えばウイルス)抗原の存在下での培養物の成長)。
【0035】
pGA1およびpGA2ならびにそれらの誘導体を含む本発明の核酸ベクターは、いずれかのHIVクレードまたは単離体(すなわちHIVのいずれかのサブタイプまたは組換え体)から得られるか、または誘導される少なくとも1つの抗原(これを免疫原と称することもできる)をコードすることができる。抗原(または免疫原性)は、HIVウイルスの構造成分でよく;グリコシル化、ミリストイル化、またはリン酸化されてよく;細胞内で、細胞表面で発現されるか、または分泌されてよい(通常分泌される抗原は分泌を指向するシグナル配列に連結されていてよい)。さらに具体的には、抗原はGag、gp120、Pol、Env(例えばCCR-5を用いるEnv;例えば図19参照)、Tat、Rev、Vpu、Nef、Vif、Vpr、またはVLP(例えばEnv欠損HIV VLPなどのVLPを形成できるVLPから誘導されたポリペプチド)の全てまたは抗原部分でよい。
【0036】
特定のインサートおよびインサート担持組成物は以下を含む。組成物がインサートを伴うベクターまたはインサート単独のいずれかを含み、そしてインサートが単一の抗原をコードする場合、抗原は野生型かまたは変異体gag配列(例えばジンクフィンガーをコードする一つまたは複数の配列において変異を有するgag配列(例えば配列番号:7もしくは8の1279〜1281位、1288〜1290位、1342〜1344位もしくは1351〜1353位のいずれかの位置で、または別のクレードのHIV gag配列の類似の位置でのヌクレオチドでの変異))でよい。変異はコードされたタンパク質を変化させることを意図しているので、サイレント変異ではない(例えばコドンの第3塩基ゆらぎ位置でのもの(本発明のインサートに含まれるgagまたはいずれか別のHIV配列の文脈で、これは真実である))。一つまたは複数のちょうど列挙した位置での変異は、392、395、413または416位の一つまたは複数のシステイン残基を別の残基(例えばセリン)に変化させる。または、変異は配列番号:10〜13の1271〜1273位、1280〜1282位、1334〜1336位、もしくは1343〜1345位のいずれかの位置、または別のクレードのHIV gag配列の類似の位置でよい。このような変異は390、393、411または414位の一つまたは複数のシステイン残基を別の残基(例えばセリン)に変化させる。または、変異は配列番号:14または15の1260〜1262位、1269〜1271位、1323〜1325位、もしくは1332〜1334位のいずれかの位置、または別のクレードのHIV gag配列の類似の位置でよい。このような変異は390、393、411または414位の一つまたは複数のシステイン残基を別の残基(例えばセリン)に変化させる。
【0037】
組成物がインサートを伴うベクターまたはインサート単独のいずれかを含み、そしてそのインサートが複数のタンパク質抗原をコードする場合、抗原の1つは野生型または前記したものを含む変異体gag配列でよい。同様に、組成物が1つより多くの型のベクターまたは1つより多くの型のインサートを含む場合、少なくとも1つのベクターまたはインサート(単一の抗原をコードしても、複数の抗原をコードしても)は、野生型または前記したものもしくは別のHIVクレードに由来する類似の配列を含む変異体gag配列を含むことができる。例えば、組成物が第1および第2ベクターを含む場合、いずれかまたは双方のベクターのワクチンインサートは(インサートが単一の抗原をコードしても、複数の抗原をコードしても)Gagをコードすることができ;双方のベクターがGagをコードする場合、第1ベクターのGag配列は一方のHIVクレード(例えばクレードB)に由来してよく、そして第2ベクターのGag配列は他方のHIVクレード(例えばクレードC)に由来してよい。
【0038】
組成物がインサートを伴うベクターまたはインサート単独のいずれかを含み、そしてインサートが単一の抗原をコードする場合、抗原は野生型かまたは変異体Polでよい。配列は一つまたは複数の核酸を除去または置換することにより変異され、そしてこれらの削除または置換により、結果的にその野生型の対応物よりも酵素活性の低いPol遺伝子産物を生成することができる(例えば低インテグラーゼ活性、低逆転写酵素(RT)活性、または低プロテアーゼ活性)。例えば配列番号:7の2454〜2456位または2697〜2699位の一つまたは複数の位置で、または別のサブタイプもしくは組換え体の配列の類似の位置で変異を導入することによりRTを阻害することができる。本発明は酵素活性に及ぼすいずれかの特定の影響を有する変異に限定されるわけではないが、2454〜2456位での変異はポリメラーゼ活性を不活性化することによりRTを阻害し、そして2697〜2699位での変異は鎖転移活性を切除することによりRTを阻害すると考えられる。従って、これらの変異および遺伝子産物の活性に及ぼす類似の影響を有するその他の変異は本発明の範囲内である。さらに具体的には、変異は配列番号:7の2454〜2456位のヌクレオチドによりコードされるアミノ酸(アスパラギン酸(D))をいずれか別のアミノ酸(例えばアスパラギン(N))に変化させることができる。また別に、あるいは加えて、例えば配列番号:7の3333〜3335位のヌクレオチドに変異(例えばグルタミン酸残基(E)をトリプトファン(W)に変化させる変異)を導入することにより、ポリメラーゼのRNアーゼH活性を阻害することができる。または、変異は配列番号:8または9(別のクレードBインサート)の2418〜2420位、2661〜2663位、または3297〜3299位のいずれかの位置でよい。または、変異は配列番号:10から13の2410〜2412位、2653〜2655位、または3289〜3291位のいずれかの位置でよい(例えばこれらの位置のアルパラギン酸(D)、トリプトファン(W)およびグルタミン酸(E)残基を各々アスパラギン(N)、スレオニン(T)、および/またはグルタミン(Q)に変化させることができる)。または、変異は配列番号:14または15の2387〜2389位、2630〜2632位、または3266〜3268位のいずれかの位置でよい。当業者は別のクレードの類似の残基をコードする核酸を、たとえこれらの残基が本明細書で試験したクレードの位置と正確に同一の位置で見出されなくても、同定することができる。
【0039】
組成物がインサートを伴うベクターまたはインサート単独のいずれかを含み、そしてそのインサートが複数のタンパク質抗原をコードする場合、抗原の1つは野生型または前記したものを含む変異体pol配列でよい(これらの多タンパク質コード化インサートは野生型または前記した変異体gag配列をコードすることもできる)。同様に、組成物が1つの型のベクターまたは1つより多くの型のインサートを含む場合、少なくとも1つのベクターまたはインサートは(単一の抗原をコードしても、複数の抗原をコードしても)、野生型または前記したものを含む変異体pol配列(および、選択的に、野生型または前記したものを含む変異体gag配列(すなわちインサートはGag-Polをコードすることができる))を含むことができる。例えば、組成物が第1および第2ベクターを含む場合、いずれかまたは双方のベクターのワクチンインサートは(インサートが単一の抗原をコードしても、複数の抗原をコードしても)Polをコードすることができ;双方のベクターがPolをコードする場合、第1ベクターのPol配列は一方のHIVクレード(例えばクレードB)に由来してよく、そして第2ベクターのPol配列は他方のHIVクレード(例えばクレードAG)に由来してよい。
【0040】
インサートがいくつかまたは全てのpol配列を含む場合、変化できるpol配列の別の部分はプロテアーゼ活性をコードする配列である(別のPolの酵素活性に影響する配列が変化していてもいなくてもそれに関わらない)。例えば、配列番号:8の1641〜1643位で変異(例えば通常このコドンによりコードされるグルタミン酸残基を別のアミノ酸残基、例えばアラニン(A)に変化させる変異)を導入することができる。本明細書に記載する別の変異体(例えばgag変異体)と同様に、別のHIVクレードから得られた配列に類似の変異を作ることができる。例えば、配列番号:10の1633〜1635位(アルギニン(R)を別のアミノ酸、例えばアスパラギン(N)に変化させる)、配列番号:12の1703〜1705位(グリシン(G)を別の残基、例えばバリン(V)に変化させる)または配列番号:13の1828〜1830位(ロイシン(L)を別の残基、例えばメチオニン(M)に変化させる)に変異を導入することができる(配列番号:10、12および13は全てクレードAG配列を示す)。クレードCのインサートでは、配列番号:14の1610〜1612位で変異を導入することができる(アスパラギン酸(D)を別のアミノ酸残基、例えばアスパラギン(N)などに変化させる)。
【0041】
組成物がインサートを伴うベクターまたはインサート単独のいずれかを含み、そしてそのインサートが単一の抗原をコードする場合、抗原は野生型または変異体Env、Tat、Rev、Nef、Vif、Vpr、またはVpuでよい。組成物がインサートを伴うベクターまたはインサート単独のいずれかを含み、そしてそのインサートが複数のタンパク質抗原をコードする場合、抗原の1つは野生型または変異体Envでよい。例えば複数のタンパク質発現インサートが野生型または変異体Gag-PolおよびEnvをコードすることができ;それらはまた野生型または変異体Gag-PolおよびEnv並びに一つまたは複数のTat、Rev、Nef、Vif、Vpr、またはVpu(その各々は野生型または変異体でよい)をコードすることができる。その他の抗原と同様、Env、Tat、Rev、Nef、Vif、Vpr、またはVpuを一つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、付加、または置換により変異させることができる(例えばこれらの抗原のいずれかは点変異を含むことができる)。Envに関しては、一つまたは複数の変異は図19に示すいずれかのドメインにおいてでよい。例えば、一つまたは複数のアミノ酸をgp120表面および/またはgp41膜貫通切断生成物から除去することができる。Gagに関しては、一つまたは複数のアミノ酸を一つまたは複数の、マトリックスタンパク質(p17)、キャプシドタンパク質(p24)、ヌクレオキャプシドタンパク質(p7)およびC末端ペプチド(p6);から除去することができる。例えば一つまたは複数のこれらの領域におけるアミノ酸を除去することができる(これは特に、ベクターがウイルスベクター、例えばMVAである場合に望ましい)。Polに関しては、一つまたは複数のアミノ酸をプロテアーゼタンパク質(p10)、逆転写酵素タンパク質(p66/p51)、またはインテグラーゼタンパク質(p32)から削除することができる。
【0042】
さらに具体的には、本発明の組成物は、(a)一つまたは複数のジンクフィンガーが不活性化されていてウイルスRNAのパッケージングが制限されているGagタンパク質;(b)(i)インテグラーゼ活性がいくつかのまたは全てのpol配列の欠失により阻害されている、および(ii)ポリメラーゼ、逆転写酵素の鎖転移および/またはRNアーゼH活性がpol配列内の一つまたは複数の点変異により阻害されているPolタンパク質;並びに(c)変異を伴うかまたは伴わないEnv、Tat、Rev、およびVpu;をコードするベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクター)を含むことができる。この態様では、その他と同様、コードされたタンパク質をサブタイプA、BもしくはC HIV(例えばHIV-1)またはその組換え体から得るか、または誘導することができる。組成物が同一でないベクターを含む場合、各々の型のベクターの配列は異なるHIVクレード(もしくはそのサブタイプまたは組換え体)に由来してよい。例えば、本発明はちょうど記載した抗原(Gag-Pol、Env等)をコードするプラスミドベクターを含む組成物を特徴とし、その場合、プラスミドのいくつかは1つのクレードから得られるかまたは誘導される抗原を含み、そしてその他のプラスミドは別のクレードから得られる(または誘導される)抗原を含む。2、3、4、5、6、またはそれ以上のクレード(全クレードを含む)を示す混合物は本発明の範囲内である。
【0043】
第1および第2ベクターが組成物に含まれる場合、いずれかのベクターはpGA1/JS2、pGA1/JS7、pGA1/JS7.1、pGA2/JS2、pGA2/JS7、pGA1/JS7.1でよい(pGA1.1またはpGA1.2をpGA1の代わりに用いることができ、そしてpGA2.1またはpGA2.2をpGA2の代わりに用いることができる)。同様にいずれかのベクターはpGA1/IC25、pGA1/IC2、pGA1/IC48、pGA1/IC90、pGA2/IC25、pGA2/IC2、pGA2/IC48またはpGA2/IC90でよい(ここでもpGA1.1またはpGA1.2をpGA1の代わりに用いることができ、そしてpGA2.1またはpGA2.2をpGA2の代わりに用いることができる)。また別の態様では、コードされたタンパク質はサブタイプC HIV(例えばHIV-1)もしくはその組換え体のタンパク質、またはそれから誘導されたタンパク質でよい。例えば、ベクターはpGA1/IN2、pGA1.1/IN2、pGA1.2/IN2、pGA1/IN3、pGA1.1/IN3、pGA1.2/IN3、pGA2/IN2、pGA2.1/IN2、pGA2.2/IN2、pGA2/IN3、pGA2.1/IN3またはpGA2.2/IN3でよい。
【0044】
コードされたタンパク質はまたいずれかのHIVクレード(またはサブタイプ)E、F、G、H、I、J、KもしくはLまたはその組換え体のタンパク質、またはそれから誘導されたタンパク質でもよい。HIV-1分類系はLos Alamos National Laboratory(HIV Sequence Compendium-2001、Kuikenら、Theoretical Biology and Biophysics Group T-10(Los Alamos、ニューメキシコ州)により発行(2001);http://hiv-web.lanl.gov))により公開されている。
【0045】
本発明の組成物はまた(a)1つのまたは双方のジンクフィンガーが不活性化されているGagタンパク質;(b)(i)インテグラーゼ活性がいくつかのまたは全てのpol配列の欠失により阻害されている、(ii)ポリメラーゼ、逆転写酵素の鎖転移および/またはRNアーゼH活性がpol配列内の一つまたは複数の点変異により阻害されている、および(iii)プロテアーゼのタンパク質溶解活性が一つまたは複数の点変異により阻害されているPolタンパク質;並びに(c)変異を伴うかまたは伴わないEnv、Tat、Rev、およびVpu;をコードするベクター(例えばプラスミドベクター)を含むことができる。前記したように、配列番号:8の1641〜1643位で、または別のHIVクレードの配列の類似の位置で変異を導入することによりタンパク質溶解活性を阻害することができる。例えば、プラスミドは本明細書でJS7、IC25およびIN3として記載したインサートを含有することができる。別の抗原をコードするプラスミドでも当てはまることであるが、ちょうど記載した抗原をコードするプラスミドは異なるHIVクレード(もしくはそのサブタイプまたは組換え体)から得られるかまたは誘導される別のプラスミドと組み合わせる(例えば混合する)ことができる。インサート自体(sansベクター)もまた本発明の範囲内である。
【0046】
本発明のその他のベクターはGagタンパク質(例えば1つまたは双方のジンクフィンガーが不活性化されているGagタンパク質);Polタンパク質(例えばインテグラーゼ、RTおよび/またはプロテアーゼ活性が阻害されているPolタンパク質);Vpuタンパク質(変異体開始コドンを有する配列によりコードされていてよい);並びにEnv、Tatおよび/またはRevタンパク質(野生型または変異体)をコードするプラスミドを含む。その他の抗原をコードするプラスミドにも当てはまることであるが、ちょうど記載した抗原をコードするプラスミドを、異なるHIVクレード(もしくはそのサブタイプまたは組換え体)から得られるかまたは誘導される抗原をコードするその他のプラスミドと組み合わせる(例えば混合する)ことができる。インサート自体(sansベクター)もまた本発明の範囲内である。
【0047】
クレードB HIV-1配列のJS2またはJS7シリーズを発現するものを含む前記したプラスミドをいずれかの対象に投与することができるが、クレードBのHIVに暴露されているか、または暴露されている可能性がある対象に投与するのが最も有利であろう(同じことがプラスミドベクター以外のベクターにも当てはまる)。同様に、クレードC HIV-1配列のINシリーズを発現するプラスミドまたはその他のベクターをクレードCのHIVに暴露されているか、または暴露されている可能性のある対象に投与することができる。種々のクレードの抗原を発現するベクターを組み合わせて1つより多くのクレードに対する免疫応答を引き出すことができるので(1つのベクターが異なるクレードに由来する複数の抗原を発現しても、複数のベクターが異なるクレードに由来する単一の抗原を発現しても、これを達成することができる)、規定の対象を最も良く保護するワクチン処方を調整することができる。例えば、対象がクレードB以外のクレードが優勢である世界の地域に暴露される可能性がある場合、優勢なクレードまたは複数のクレードに対する免疫応答を引き出すことを最適化する抗原(または複数の抗原)を発現するベクターまたは複数のベクターを処方および投与することができる。
【0048】
それが発現する抗原は、変えることができるプラスミドベクターの一部だけではない。有用なプラスミドは実質的に転写(相補的塩基対形成によりRNA分子がDNA鋳型で形成される方法)を阻害するターミネーター配列を含有してもしなくてもよい。有用なターミネーター配列はラムダT0ターミネーターおよびその機能的断片または変種を含む。ターミネーター配列は同一の配向でのベクター内、および原核細胞において発現されるいずれかのオープンリーディグフレームのC末端に位置する(すなわちターミネーター配列およびオープンリーディグフレームは動作可能なように連結されている)。原核細胞内でプラスミドが複製されるので、選択マーカーからワクチンインサートへの読み過ごしを防御することにより、細菌が成長し、そしてプラスミドが複製するのでターミネーターがインサートを安定化する。
【0049】
選択マーカー遺伝子は当技術分野において公知であり、そして例えばマーカーが発現される細胞に抗生物質抵抗性(例えばカナマイシン、アンピシリン、またはペニシリンに対する抵抗性)を付与するタンパク質をコードする遺伝子を含む。選択マーカーはマーカーの不在下でそれを破壊する条件下で、その生存により細胞を選択することを可能にするためにそのように称されている。選択マーカー、ターミネーター配列、または双方(または各々のもしくは双方の一部)を、必ずしも必要ではないが、それが患者に投与される前にプラスミドから切除することができる。同様に、プラスミドベクターを環状形態で、制限エンドヌクレアーゼで消化することにより直線化した後に、またはベクター「骨格」のいくつかを変化させるかもしくは除去した後に投与することができる。
【0050】
核酸ベクターは複製起点(例えば原核細胞ori)および、一つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するのに加えて、抗原コード化インサートをクローン化でき、選択的にプロモーター配列およびポリアデニル化シグナルを含むことができる転写カセットを含むこともできる。強力なプロモーターとして公知のプロモーターを用いることができ、そしてそれが好ましい。このようなプロモーターの1つはサイトメガロウイルス(CMV)極初期プロモーターであるが、本発明の範囲から逸脱することなくその他の(弱いものを含む)プロモーターを使用することができる。同様に、強力なポリアデニル化シグナルを選択することができる(例えばウシ成長ホルモン(BGH)コード化遺伝子に由来するシグナル、またはウサギβグロビンポリアデニル化シグナル(Bohmら、J.Immunol.Methods 193:29-40(1996);Chapmanら、Nucl.Acids Res.19:3979-3986(1991);Hartikkaら、Hum.Gene Therapy 7:1205-1217(1996);Manthorpeら、Hum.Gene Therapy 4:419-431(1993);Montgomeryら、DNA Cell Biol.12:777-783(1993)))。
【0051】
ベクターはさらにリーダー配列(組織プラスミノーゲンアクチベーター遺伝子リーダー配列(tPA)の合成相同体であるリーダー配列は選択的に転写カセットにあってもよい)および/またはイントロン配列例えばサイトメガロウイルス(CMV)イトロンAまたはSV40イントロンを含むことができる。イトロンAの存在によりRNAウイルス、細菌および寄生虫に由来する多くの抗原の発現が増加し、これは恐らく真核細胞mRNAとしてのプロセシングおよび機能を支持する配列を有するRNAを発現させることにより提供される。当技術分野において公知のその他の方法、例えば非限定例としては、真核細胞の原核細胞性mRNAのコドン使用の最適化などにより発現を増強することもできる(Andreら、J.Virol.72:1497-1503(1998);Uchijimaら、J.Immunol.161:5594-5599(1998))。マルチシストロン性ベクターを用いて1つより多くの免疫原または免疫原および免疫刺激タンパク質を発現させることができる(Iwasakiら、J.Immunol.158:4591-4601(1997a);Wildら、Vaccine 16:353-360(1998))。このように(およびベクター構築物のその他の選択的な成分でも当てはまることであるが)、一つまたは複数のHIVクレードまたは単離体に由来する一つまたは複数の抗原をコードするベクターは、必ずしも必要ではないが、リーダー配列およびイントロン(例えばCMVイントロンA)を含むことができる。
【0052】
本発明のベクターは抗原コード化配列を受け入れるために用いることができる部位で、そして転写カセットがCMVIEプロモーターのイントロンA配列を含むかどうかで異なっている。従って、当業者は本発明の範囲から逸脱することなく、プラスミド内の(複数の)挿入部位または(複数の)クローニング部位を修飾することができる。イントロンAおよびtPAリーダー配列の双方は、場合によっては抗原発現を増強することが示されている(Chapmanら、Nucl.Acids Research 19:3979-3986(1991))。
【0053】
以下でさらに記載するように、本発明のベクターを、遺伝子アジュバントなどのアジュバントと共に投与することができる。従って、核酸ベクターは、それが発現する抗原に関わらず、選択的にGM-CSF、IL-15、IL-2、インターフェロン応答因子、分泌型flt-3、および変異カスパーゼ遺伝子のような遺伝子アジュバントを含んでもよい。例えば一つまたは複数のC3d遺伝子配列(例えば1から3個の(またはそれ以上の)C3d遺伝子配列)を発現された抗原に融合することにより、遺伝子アジュバントを融合タンパク質の形態で供給することもできる。
【0054】
投与されたベクターがpGAベクターである場合、これは例えばpGA1(配列番号:1)もしくはその誘導体(配列番号:2および3)またはpGA2(配列番号:4)もしくはその誘導体(配列番号:5および6)の配列を含むことができる。pGAベクターを本明細書でさらに詳細に記載する(実施例1から8をも参照)。pGA1はプロモーター(bp1〜690)、CMVイントロンA(bp691〜1638)、tPAリーダー配列の合成擬似体(bp1659〜1721)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(bp1761〜1983)、ラムダT0ターミネーター(bp1984〜2018)、カナマイシン抵抗性遺伝子(bp2037〜2830)およびColEIレプリケーター(bp2831〜3890)を含む3897bpのプラスミドである。pGA1構築物のDNA配列(配列番号:1)を図2に示す。図1では、指示した制限部位は抗原コード化配列をクローニングするのに有用である。ワクチンインサートの5'末端をtPAリーダーの上流にクローニングする場合、Cla IまたはBspD I部位を用いる。tPAリーダー配列と共にフレーム内で配列をクローニングするためにNhe I部位を用いる。Sma IとBln Iとの間に列挙された部位を抗原コード化配列の3'末端をクローニングするために用いる。
【0055】
pGA2はpGA1に見出されるイントロンA配列の947bpを欠く2947bpのプラスミドである。pGA2はイントロンA配列の欠失以外はpGA1と同一である。pGA2は効率的な発現のために上流のイントロンを必要としない配列のクローニング、または上流のイントロンが良好な発現のために必要とされるスプライシングのパターンに干渉する配列のクローニングに役立つ。図5はワクチンインサートをクローニングするのに有用な制限部位を有するpGA2の概要のマップを示す。図6aはpGA2(配列番号:2)のDNA配列を示す。ワクチンインサートをpGA2にクローニングするための制限部位の使用はpGA1に断片をクローニングするのに用いられるものと同一である。pGA2.1およびpGA2.2はpGA2の多重クローニング部位誘導体である。図7aおよび8aは各々pGA2.1(配列番号:5)およびpGA2.2(配列番号:6)のDNA配列を示す。
【0056】
本明細書に開示したものと異なる「骨格」配列を有するpGAプラスミドもまた、プラスミドが治療上有効であるのに必要な実質的に全ての特性を有する限り本発明の範囲内である(例えば患者に投与した場合、プラスミドが所定のまたは望ましい病原体に対する免疫応答を誘起または増強する限り、ヌクレオチドを置換し、ヌクレオチドを付加し、またはヌクレオチドを除去することができる)。例えば1から10個、11から20個、21から30個、31から40個、41から50個、51から60個、61から70個、71から80個、81から90個、91から100個、または100個より多くのヌクレオチドを除去または置換することができる。
【0057】
1つの態様では、患者にベクターを含む治療上有効量の生理学的に許容される組成物を投与することにより本発明の方法(例えば患者において免疫応答を引き出す方法)を実施することができ、前記ベクターはHIVに対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含有することができる。ベクターは前記したpGA構築物の一つまたは複数の特性(例えば選択マーカー遺伝子、原核細胞性複製起点、終止配列(例えばラムダT0ターミネーター)そして選択遺伝子マーカーに動作可能なように連結されている、並びにプロモーター配列、免疫不全ウイルスから誘導された少なくとも1つの抗原をコードする核酸インサート、およびポリアデニル化シグナル配列を含む真核細胞性転写カセット)を有するプラスミドベクターでよい。もちろん、本発明のワクチンインサートをpGA構築物(例えばpGA1またはpGA2以外のベクター)の特性を有さないプラスミドベクターにより分配することができる。または、組成物は本明細書に記載するインサートを含むいずれかのウイルスまたは細菌ベクターを含むことができる。従って、本発明は単一の型のベクター(すなわち同一のワクチンインサート(すなわち同一抗原をコードするインサート)を含有するプラスミドまたはウイルスベクター)の投与を包含する。他でも明らかであるように、患者に2つの型のベクターを投与することができ、そしてこれらのベクターの各々が異なるクレードのHIVに対する免疫応答を引き出すことができる。例えば本発明は(a)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の第1サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ベクターおよび(b)HIVの第2サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ベクターを含む組成物を患者に投与する方法を特徴とする。第1および第2ベクターは本明細書に記載するいずれかでよい。同様に第1および第2ベクターのインサートは本明細書に記載するいずれかでよい。
【0058】
治療上有効量のベクター(第1、第2、第3等のベクターを考慮したとしても)を筋肉内または皮内経路により、生理学的に許容される担体、希釈剤、また賦形剤、および選択的にアジュバントと一緒に投与することができる。治療上有効量のいくつかのまたは異なるベクターを続いて筋肉内または皮内経路により、生理学的に許容される担体、希釈剤、また賦形剤、および選択的に免疫応答をブーストするためのアジュバントと一緒に投与することができる。それが誘導されたワクチンまたはベクターに組み込まれる抗原の正確な特性に関わらず、当業者はこのような成分を容易に選択することができる。
【0059】
本発明のプラスミドベクターのみを投与することにより、本発明のウイルスベクターまたは組換えウイルスのみを投与することにより、または双方を投与することにより(例えばプラスミドベクター(またはプラスミドベクターの混合物または組み合わせ)を投与することができる)免疫応答を「プライム」するように、そしてウイルスベクターまたは組換えウイルス(またはウイルスベクターの混合物もしくは組み合わせ)が免疫応答を「ブースト」するように免疫応答を引き出す方法を実施することができる。プラスミドおよびウイルスベクターまたは組換えウイルスを投与する場合、そのインサートは「対合する」ことができる。「対合する」ために、プラスミド内のインサート(例えばGagをコードする配列、Envをコードする配列等)および組換えウイルス内のウイルスベクターの一つまたは複数の配列が同一であるが、用語はそれほど限定的ではない。「対合する」配列はまた互いに異なっていてもよい。例えば、ウイルスベクターで感染された細胞において、DNAベクターに用いた配列が変異しているか、またはさらに変異してその配列をコードするウイルスベクターの複製およびコードされた抗原(例えばGag、Gag-Pol、またはEnv)の発現を可能にする(または最適化する)場合、ウイルスベクターにより発現されるインサートはDNAベクターにより発現されるインサートに「対合する」。
【0060】
少なくともいくつかの本発明の免疫不全ウイルスワクチンインサートを設計して単一のDNAから非感染性VLP(真のVLPおよびウイルスタンパク質の凝集物を包含し得る用語)を作製した。通常免疫不全ウイルスにより用いられて単一のウイルスRNAから複数の遺伝子産物を発現するサブゲノムスプライシングエレメントを用いてこれを達成した。サブゲノムスプライシンパターンは(i)全長ウイルスRNAに存在するスプライシング部位およびアクセプター、(ii)Rev応答性エレメント(RRE)および(iii)Revタンパク質により影響を受ける。レトロウイルスRNAのスプライシング部位は真核細胞性RNAのスプライシング部位に関する正準配列を使用する。RREはRevタンパク質と相互作用して核から細胞質へのウイルスRNAの輸送を可能にするおよそ200bpのRNA構造である。Revの不在下で、免疫不全ウイルスのおよそ10kbのRNAがほとんど制御遺伝子Tat、Rev、およびNefに関するmRNAにスプライシングを被る。これらの遺伝子はRTおよびEnvの間およびゲノムの3'末端に存在するエクソンによりコードされる。Revの存在下では、Envに関する1つスプライシングされたmRNAおよびGagおよびPolに関するスプライシングされていないmRNAが、Tat、Rev、およびNefに関して複数スプライシングされたmRNAに加えて発現される。
【0061】
単一のDNAからの非感染性VLPの発現は、免疫不全ウイルスワクチンに多くの利点を付与する。単一のDNAからの多くのタンパク質の発現は、ワクチン接種された宿主にこれらのタンパク質に包含される幅広いTおよびB細胞エピトープに応答する機会を与える。複数のエピトープを含有するタンパク質の発現により、様々な組織適合型によるエピトープの提示が可能になる。タンパク質全体を用いることにより、異なる組織適合型の宿主に幅広いT細胞応答を上昇させる機会が提供される。これはその高い変異率が免疫応答から即座に逃れるための助けとなる免疫不全ウイルス感染の有効な封じ込めに必須である(Evansら、Nat.Med.5:1270-1276(1999);Poignardら、Immunity 10:431-438(1999)、Evansら、(1995))。本発明のワクチン接種スキームの文脈で、薬物治療にも当てはまるように、逃れるために複数の変異を必要とする多重エピトープT細胞応答は単一のエピトープT細胞応答(これは逃れるために単一の変異のみを必要とする)よりも良好な保護を提供する。
【0062】
また免疫原を操作して、発現された抗原を特定の細胞区画に標的化させることにより抗体またはTcを上昇させるのに多かれ少なかれ有効にすることもできる。例えば抗体応答は細胞の細胞質膜に提示されるか、またはそこから分泌される抗原により、細胞の内部に局在する抗原によるよりもさらに有効に上昇する(Boyleら、Int.Immunol.9:1897-1906(1997);Inchauspeら、DNA Cell.Biol.16:185-195(1997))。迅速な細胞質分解およびMHC I経路へのさらに有効なペプチド負荷を引き起こすプロテオソームにDNAコード化タンパク質を標的化するN末端ユビキチン化シグナルを用いることによりTc応答を増強させることができる(Rodriguezら、J.Virol.71:8497-8503(1997);Toberyら、J.Exp.Med.185:909-920(1997);Wuら、J.Immunol.159:6037-6043(1997))。DNA上昇免疫応答についての機構的な基礎に関する概説に関しては、RobinsonおよびPertmer、Advances in Virus Research 53巻、Academic Press(2000)を参照されたい。
【0063】
免疫応答を操作する別の研究法は免疫原を免疫標的化または免疫刺激分子に融合させることである。今日では、最も成功するこれらの融合は、分泌された免疫原を抗原提示細胞(APC)またはリンパ節に標的化する(Boyleら、Nature 392:408-411(1998))。従って、本発明は、免疫標的化または免疫刺激分子、例えばCTLA-4、L-セレクチン、またはサイトカイン(例えばIL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-10、IL-15、またはIL-21のようなインターロイキン)に融合した本明細書に記載するHIV抗原を特徴とする。このような融合体をコードする核酸およびそれらを含有する組成物(例えばベクターおよび生理学的に許容される調製物)もまた本発明の範囲内である。
【0064】
種々の方法でDNAを分配することができ、その方法のいずれかを用いて本発明のプラスミドを対象に分配することができる。例えば、DNAを例えば生理食塩水中で注射する(例えば皮下注射用針を用いる)か、または微粒子銃で(例えばDNAコートされたビーズを加速させる遺伝子銃により)分配することができる。生理食塩水注射によりDNAが細胞外間隙に分配され、一方遺伝子銃分配はDNAを細胞に直接打ち込む。生理食塩水注射には遺伝子銃よりも多量のDNAが必要とされる(典型的には100から1000倍多い)(Fynanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11478-11482(1993))。これらの2つの型の分配はまた、生理食塩水注射が応答を1型T細胞ヘルプに偏らせるが、一方遺伝子銃分配は応答を2型T細胞ヘルプに偏らせるという点でも異なっている(Feltquateら、J.Immunol.158:2278-2284(1997);Pertmerら、J.Virol.70:6119-6125(1996))。生理食塩水中で注射されたDNAは迅速に体中に拡散する。銃により分配されたDNAは標的部位により局在化する。いずれの接種方法に従っても、細胞外プラスミドDNAは半減期が約10分間と短い(Kawabataら、Pharm.Res.12:825-830(1995);Lewら、Hum.Gene Ther.6:553(1995))。生理食塩水注射によるワクチン接種は筋肉内(i.m.)または皮内(i.d.)にでき;遺伝子銃分配は皮膚または外科的に暴露された組織、例えば筋肉に投与することができる。
【0065】
分配のその他の経路は概してあまり好ましくないが、それにも関わらず本発明の組成物を投与するために使用することができる。例えば粘膜に、または接種の非経口経路によりDNAを適用することができる。生理食塩水中のDNAの鼻内投与は良好な成功(Asakuraら、Scand.J.Immunol.46:326-330(1997);Sasakiら、Infect.Immun.66:823-826(1998b))および限定的な成功(Fynanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11478-11482(1993))の双方を経験している。遺伝子銃は膣粘膜にDNAを分配した後、IgGを上昇させるのに成功した(Livingstonら、Ann.New York Acad.Sci.772:265-267(1995))。DNAの粘膜表面への分配でのいくつかの成功はまたリポソーム(McCluskieら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.8:401-414(1998))、マイクロスフェア(Chenら、J.VIrol.72:5757-5761(1998a);Jonesら、Vaccine 15:814-817(1997))および組換え赤痢菌ベクター(Sizemoreら、Science 270:299-301(1995);Sizemoreら、Vaccine 15:804-807(1997))を用いても達成されている。例えばこれらの作用物質(リポソーム、マイクロスフェアおよび組換え赤痢菌ベクター)を用いて本発明の核酸を分配することができる。
【0066】
応答を上昇させるのに必要なDNAの用量は分配方法、宿主、ベクター、およびコードされる抗原に依存する。分配の方法は最も影響力のあるパラメーターであろう。DNAの生理食塩水注射には概してDNA10μgから5mgが用いられ、一方DNAの遺伝子銃分配にはより典型的にはDNA0.2μgから20μgが用いられる。概して、マウスでは低用量のDNA(生理食塩水注射には10から100μg、そして遺伝子銃分配には0.2μgから2μg)が用いられ、そして霊長類には高用量(生理食塩水注射には100から1mg、そして遺伝子銃分配には2μgから20μg)が用いられる。遺伝子銃分配に必要なDNAのさらに低量は、直接DNAを細胞に分配する金ビーズを反映している。
【0067】
前記したDNAベクターに加えて、多くの異なるポックスウイルスを単独で(すなわち核酸またはDNAプライムなしで)、またはワクチン投与計画のブースト成分として用いることができる。MVAは特にマウスモデルにおいて有効である(Schneiderら、Nat.Med.4:397-402(1998))。MVAは、天然痘の撲滅のためのキャンペーンの終盤に開発されたワクシニアウイルスの高度に弱毒された株であり、そして100,000人以上のヒトにおいて安全性が試験された(Mahnelら、Berl.Munch Tierarztl Wochenschr 107:253-256(1994);Mayrら、Zentralbl.Bakteriol.167:375-390(1978))。ニワトリ細胞における500を越える継代の間に、MVAはそのゲノムの約10%および霊長類細胞において効率的に複製する能力を喪失した。その複製の制限にも関わらず、MVAは高度に有効な発現ベクターであり(Sutterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10847-10851(1992))、霊長類におけるパラインフルエンザウイルス(Durbinら、J.Infect.Dis.179:1345-1351(1999))、麻疹(Stittelaarら、J.Virol.74:4236-4243(2000))および免疫不全ウイルス(Barouchら、J.Virol.75:5151-5158(2001);Ourmanovら、J.Virol.74:2740-2751(2000);Amaraら、J.Virol.76:7625-7631(2002))に関する保護免疫応答を上昇させることが判明した。MVAの相対的に高度な免疫原性はいくつかのウイルス抗免疫防御遺伝子の喪失に一部寄与している(Blanchardら、J.Gen.Virol.79:1159-1167(1998))。
【0068】
ワクシニアウイルスを用いて組換え遺伝子発現に関して、および組換え生ワクチンとしてウイルスベクターを操作した(Mackettら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:7415-7419;Smithら、Biotech.Genet.Engin.Rev.2:383-497(1984))。本明細書で記載するいずれかのHIV抗原をコードすることができるDNA配列をワクシニアウイルスのゲノムに導入することができる。遺伝子がウイルスのライフサイクルに必須でないウイルスDNAの部位で組み込まれる場合、新たに生成された組換えワクシニアウイルスを感染性にし(すなわち外来の細胞を感染することができる)、そして組み込まれたDNA配列を発現させることが可能である。本発明の組成物および方法の特徴であるウイルスベクターは高度に弱毒されているのが好ましい。天然痘ワクチン接種の望ましくない副作用を回避するために、ワクシニアウイルスのいくつかの弱毒株が開発された。改変ワクシニア・アンカラ(MVA)ウイルスは、ニワトリ胚線維芽細胞におけるワクシニアウイルスのアンカラ株の長期の連続継代により作製された(CVA:Mayrら、Infection 3:6-14(1975)参照)。MVAウイルスはAmerican Type Culture Collection(ATCC;番号VR-1508;Manassas、バージニア州)から公に入手可能である。MVA株の望ましい特性は臨床試験において実証されている(Mayrら、Zentralbl.Bakteriol.167:375-390(1978);Sticklら、Dtsch.Med.Wschr.99:2386-2392(1974);SutterおよびMoss、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10847-10851(1992)もまた参照)。高リスク患者を含む120,000人以上のヒトにおけるこれらの研究の間、MVAワクチンの使用に随伴される副作用はなかった。
【0069】
MVAベクターを以下のように調製することができる。DNA配列、例えば外来性のポリペプチド(例えば本明細書に記載するいずれかのHIV抗原)をコードし、そしてMVAゲノムでの天然発生欠失(例えば欠失IIIまたはその他の(複数の)非必須部位;6個の主要なゲノムDNAの欠失(欠失I、II、III、IV、VおよびVIと称する)全部で31,000塩基対が同定されている(Mayerら、J.Gen.Virol.72:1031-1038(1991))に隣接するMVA DNA配列によりフランキングされる、本明細書に記載するインサート配列を含有するDNA構築物を、相同組換えが生じる条件下で、MVAで感染させた細胞に導入する。一度DNA構築物が真核細胞に導入され、そして外来性DNAがウイルスDNAで組換えられると、当技術分野において公知の方法により組換えワクシニアウイルスを単離することができる(検出マーカーの使用により単離を促進することができる)。挿入されるように構築されたDNAは直線状または環状でよい(例えばプラスミド、直線プラスミド、遺伝子、遺伝子断片、または修飾されたHIVゲノム)。外来性DNA配列を、天然発生欠失をフランキングする配列の間に挿入する。DNA配列をより良好に発現させるために、配列は制御配列を含むことができる(例えばワクシニア11kDa遺伝子または7.5kDa遺伝子のプロモーターのようなプロモーター)。種々の方法、例えばカルシウムリン酸補助トランスフェクション(Grahamら、Virol.52:456-467(1973)およびWiglerら、Cell 16:777-785(1979))、エレクトロポレーション(Neumannら、EMBO J.1:841-845(1982))、マイクロインジェクション(Graessmannら、Meth.Enzymol.101:482-492(1983))、リポソームによる(Straubingerら、Meth.Enzymol.101:512-527(1983))、スフェロプラストによる(Schaffner、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2163-2167(1980))または当技術分野において公知のその他の方法などによりDNA構築物をMVA感染した細胞に導入することができる。組換えMVAウイルスの調製はMossら、PCT国際公開公報第02/07275号A2(国際出願番号第PCT/US02/06713号)にさらに詳細に記載されている。
【0070】
DNAを分配する場合、プラスミドベクターを用いる場合とちょうど同じように、ウイルスベクターにより適量に到達することができる。例えばMVA基盤のワクチンの1×108 pfuを分配でき、そして筋肉内、皮内、静脈内または粘膜経由で投与を実施することができる。
【0071】
従って、本発明は、(a)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の第1サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ウイルスベクター、および(b)HIVの第2サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ウイルスベクター;を含む組成物を特徴とする。ウイルスベクターは組換えポックスウイルスまたは改変ワクシニア・アンカラ(MVA)ウイルスでよく、そしてインサートはいずれかのクレードに由来する本明細書に記載するいずれかのHIV抗原でよい(例えばクレードA、B、またはC HIV(例えばHIV-1抗原)をコードする、予防的または治療的に有効な量のMVAを投与することができる)。さらに、プラスミドベクターと組み合わせて投与する場合(例えば「DNAプライム」に続いて投与する場合)、MVA担持配列はプラスミド担持配列に「対合する」ことができる。例えば、組換えクレードB配列を発現するワクシニアウイルス(例えばMVA)はプラスミドインサートのJSシリーズに対合することができる。同様に組換えクレードA配列を発現するワクシニアウイルス(例えばMVA)はプラスミドインサートのICシリーズに対合することができ;組換えクレードC配列を発現するワクシニアウイルス(例えばMVA)はプラスミドインサートのINシリーズに対合することができる。以下に特定のクレードを例示するが、本発明がそのように限定されるわけではない。ウイルスベクターを含有する組成物はいずれか公知のクレード(クレードA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、KまたはLなど)に由来するHIV抗原を発現するウイルスベクターを含むことができる。もちろん免疫応答を引き出す方法を、同様にこれらのクレードのいずれかに由来する抗原を発現する組成物を用いて実施することができる。
【0072】
本明細書に記載するプラスミドまたはウイルスベクターのいずれかをアジュバント(すなわちワクチンの免疫原性を高めるためにワクチンに添加されるいずれかの物質)と共に投与することができ、そしていずれかの慣用される投与経路(例えば筋肉内、皮内、静脈内、または粘膜経由;以下を参照)により投与することができる。本明細書に記載するベクター(DNAでもウイルス基盤でも)と一緒に用いられるアジュバントは徐々に抗原を放出するものでよい(例えばアジュバントはリポソームでよい)か、またはそれ自体強力な免疫原性であるアジュバントでよい(これらのアジュバントは相乗的に機能すると考えられる)。従って、本明細書に記載するワクチン組成物は公知のアジュバントまたは、DNAの取り込みを促進するか、免疫系細胞を接種部位に動員するか、または応答するリンパ細胞の免疫活性化を促進するその他の物質を含むことができる。これらのアジュバントまたは物質には油および水エマルジョン、コリネバクテリウム・パルブム、バシラス・カルメッテ・ゲラン、水酸化アルミニウム、グルカン、硫酸デキストラン、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、バクト・アジュバント、特定の合成ポリマー、例えばポリアミノ酸およびアミノ酸のコポリマー、サポニン、REGRESSIN(Vetrepharm、Athens、ジョージア州)、AVRIDINE(N,N-ジオクタデシル-N',N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-プロパンジアミン)、パラフィン油、並びにムラミルジペプチドなどがある。同一のまたは同時接種されたベクターの免疫変調分子をコードする遺伝子アジュバントを用いることもできる。例えばGM-CSF、IL-15、IL-2、インターフェロン応答因子、および変異カスパーゼ遺伝子を、病原性免疫原(例えばHIV抗原)をコードするベクターまたは免疫原の投与と同時もしくはほぼ同時に投与される別個のベクターに含めることができる。発現された抗原をアジュバント配列、例えば1個、2個、3個またはそれ以上のC3dコピーに融合させることもできる。
【0073】
本明細書に記載する組成物をいずれかの非経口または局所経路を経るなどの種々の方法で投与することができる。例えば静脈内、腹腔内、皮内、皮下または筋肉内の方法により個体に接種することができる。接種は例えば皮下注射用の針、針のない分配装置、例えば液体流を標的部位に推進させるものを用いて、または金ビーズ上のDNAを標的部位に打ち込む遺伝子銃を使用してよい。病原性ワクチンインサートを含むベクターを溶液、ゲル、泡または坐剤による鼻内投与、すなわち点鼻剤もしくは吸入剤、または直腸内もしくは膣内投与などの種々の方法により粘膜表面に投与することができる。または、ワクチンインサートを含むベクターを錠剤、カプセル、チュアブル錠、シロップ、エマルジョン等の形態で経口的に投与することができる。また別の態様では、ベクターを経皮的に、受動的皮膚パッチ、イオン泳動的手段等により投与することができる。
【0074】
いずれかの生理学的に許容される培地を用いてワクチンインサートを含むベクター(核酸基盤でもベクター化された生ワクチンでも)を導入することができる。例えば当技術分野において公知の適当な薬学的に許容される担体には、非限定例としては滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、または緩衝溶液などがある。培地は補助剤、例えば希釈剤、安定剤(すなわち糖(グルコースおよびデキストロースが以前に記された)およびアミノ酸)、保存剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘性または注入能力、色等を増強する添加剤を含むことができる。好ましくは培地または担体は副作用を生じないか、または利益が伝えられるよりもはるかに重量超過しないと副作用を生じない。
【0075】
本発明をさらに以下の実施例により説明するが、これは説明のために提供され、そして限定を意図するものではない。本出願の全体にわたって引用された参照文献、公開された特許出願および特許の全ての内容は、その全てを参照として本明細書に組み入れられる。本発明の多くの態様が記載されている。それにも関わらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修飾を行うことができることは理解されよう。
【実施例】
【0076】
実施例1 pGA1
pGA1(図1および2参照)は(1)ColE1複製起点(複製起点(ori)を含有し、そしてRNAプライマーおよび2個の複製開始の負のレギュレーターをコードする672bp配列)、(2)カナマイシン抵抗性遺伝子(細菌におけるプラスミド選択のための抗生物質抵抗性遺伝子)、(3)ラムダT0ターミネーター、並びに(4)上流のイントロン(ここではCNVイントロンA)、CNV極初期(CMVIE)プロモーター、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化配列由来の終止配列(BGHpA)を含む真核細胞発現カセットを含有する。組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)リーダー配列の合成擬似物質もまた発現カセット内に含まれる。発現カセットは複数の制限部位を含むことができ、そしてこれらの部位はいずれかのHIVクレードに由来する抗原をコードする発現カセットの封入を促進することを、所望どおりに含めるかまたは排除することができる。pGA1のクローニング部位はtPAリーダーの上流にCla I部位、tPAリーダーのフレーム内にクローニングするためのNhe I部位、並びにBGHpAに先立ってクローニングするためのXmn I、Sma I、Rsr II、およびAvr II部位を含む。ColE1レプリケーターを含有する元来の構築されたプラスミドはpBR322であった(Bolivarら、Gene 2:95-113(1977);Sutcliffeら、Cold Spring Harbor Quant.Biol.43:77-90(1978))。
【0077】
ラムダT0ターミネーター(Scholtissekら、Nucleic Acids Res.15:3185(1987))はプラスミドの原核細胞性成長中のカナマイシン抵抗性遺伝子から真核細胞発現カセット(この場合、ワクチン転写カセット)への読み過ごしを防御する。ワクチン発現カセットへの読み過ごしを防御することにより、ターミネーターは細菌の成長中のプラスミドインサートの安定化を助ける。
【0078】
市販のベクターpZErO-2.1(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア州)および真核細胞発現ベクターpJW4303(Luら、Vaccine 15:920-923(1997))からPCR断片を用いて、真核細胞のためのColE1レプリケーター、カナマイシン抵抗性遺伝子、および転写調節エレメントを1個のプラスミドに組み合わせた。
【0079】
pZErO-2.1由来の1859bp断片(ヌクレオチド1319〜3178位)はColE1複製起点およびカナマイシン抵抗性遺伝子を含んだ。pJW4303由来の2040bp断片(ヌクレオチド376〜2416位)はイントロンAを伴うCMVIEプロモーター、組織プラスミノーゲンアクチベーターリーダー(tPA)の合成相同体、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位(BGHpA)を含んだ。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりSal I部位を含有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて断片を増幅した。pZErO2由来のカナマイシン抵抗性の転写カセットおよび逆の転写配向のpJW4303の真核細胞性転写カセットとのライゲーション産物をさらに発展させるために同定した。pGAベクターのこの親のヌクレオチド番号付けをCMVプロモーターの5'末端の最初の塩基対から開始した。
【0080】
その5'末端にBamH I制限エンドヌクレアーゼ部位およびその3'末端にXba I制限エンドヌクレアーゼ部位を有する391bp断片のPCR増幅によりT0ターミネーターをpGAベクターのこの親に導入した。断片の最初の355bpはpJW4303転写カセットから誘導されたBGHpA配列における配列であり、合成オリゴヌクレオチドの次の36個の塩基はT0配列およびXba I部位を導入した。導入されたT0ターミネーター配列は配列

を含んだ。
【0081】
BamH I-Xba I断片を含有するT0ターミネーターを、pZErO-2およびpJW4303から作製したプラスミドのT0ターミネーターを含まない相同体断片と置換した。産物をシークエンシングしてT0配向を確認した(図1)。
【0082】
ヌクレオチド1755〜1845間の真核細胞性転写カセットにおける領域はSIV nefの読み枠の最後の30bpを含有した。ヌクレオチド1858位で配列を変異させ、そしてAvr II制限エンドヌクレアーゼ部位を作製することによりこの領域をpGAから除去した。天然発生Avr II部位はヌクレオチド1755位に位置する。Avr II酵素での消化そして次のT4 DNAリガーゼでの再ライゲーションにより、ヌクレオチド1755〜1845間でのDNAのSIVセグメントの除去が可能になった。HIV-1配列のpGAベクターへのクローニングを促進するために、部位特異的変異誘発のための標準的な技術を用いてbp1648位にCla I部位、およびbp1747位にRsr II部位を導入した。構築物を配列分析により確認した。
【0083】
実施例2 pGA1.1
pGA1.1(配列番号:2)は、多重クローニング部位がEcoRI部位を含むように変化していること以外はpGA1と同一である。これを以下のプライマー

(フォワード)
および

(リバース)(各々配列番号:17および18)を用いて部位特異的変異誘発により達成した。従って、pGA1.1ベクターは本発明の態様であり;pGAプラスミドの一つまたは複数の特徴または特性を有するその他のベクター(詳細な説明を参照)と同様であるが、多重クローニング部位の制限エンドヌクレアーゼ部位は異なっている(例えば本発明は、それ以外は実質的にpGA1に類似するが、その多重クローニング部位に多少異なる制限エンドヌクレアーゼ部位を有するプラスミドを包含する)。
【0084】
実施例3 pGA1.2
pGA1.2(配列番号:3)は、多重クローニング部位がEcoRI部位の5'にBamHIおよびXhoI部位を含むように変化していること以外はpGA1.1と同一である。これをプライマー

およびリバースプライマー

を用いて部位特異的変異誘発により達成した。
【0085】
実施例4 pGA2
pGA2を図5で図式的に説明し、そしてそのヌクレオチド配列を図6(配列番号:4)に示す。pGA2は、イントロンA配列がpGA2のCMVプロモーターから除去されていること以外はpGA1と同一である。CMVプロモーターのmRNAキャップ部位から8bp下流にCla I部位を導入することによりpGA1からpGA2を作製し;配列:

および

を有する相補的プライマーを用いたオリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発を用いてCla I部位を導入した。新たなCla I部位を挿入した後、Cla IでpGA1を消化してpGA1から946bpのCla I断片を除去し、そして次にライゲートしてpGA2を生成させた。
【0086】
実施例5 pGA2.1
pGA2.1(配列番号:5)は、多重クローニング部位がEcoRI部位を含むように変化していること以外はpGA2と同一である。これを以下のプライマー:フォワード

およびリバース

を用いて部位特異的変異誘発により達成した。従って、pGA2.1ベクターは本発明の態様であり;pGAプラスミドの一つまたは複数の特徴または特性を有するその他のベクター(詳細な説明を参照)と同様であるが、多重クローニング部位の制限エンドヌクレアーゼ部位は異なっている(例えば本発明は、それ以外は実質的にpGA1に類似するが、その多重クローニング部位に多少異なる制限エンドヌクレアーゼ部位を有するプラスミドを包含する)。
【0087】
実施例6 pGA2.2
pGA2.2(配列番号:6)は、多重クローニング部位がEcoRI部位の5'にBamHIおよびXhoI部位を含むように変化していること以外はpGA1.1と同一である。これをフォワードプライマー

およびリバースプライマー

(各々配列番号:23および24)を用いて部位特異的変異誘発により達成した。
【0088】
実施例7 免疫欠損ウイルスワクチンインサート
ベクターのpGA1およびpGA2シリーズのためのHIV-1ワクチンインサートを構築して、免疫欠損ウイルスにより用いられる同一のサブゲノムスプライシング機構を用いて単一のRNA転写体から複数のHIV-1タンパク質を発現した。これらの多タンパク質発現ベクターが感染性ウイルスを形成しなかったことを確認するために、欠失および点変異を導入してレトロウイルスライフサイクルの必須工程を不能化した。図9は正常なレトロウイルスゲノムおよび代表的なワクチンインサートの図式を示す。インサートで除去されている領域を点描する。Xは点変異を示す。欠失はプロウイルスDNAの逆転写、組み込みおよび発現のためのシス作動性エレメントをコードする長末端反復(LTR)の双方を含んだ。ウイルスRNAのキャプシド形成を促進する5'LTRに隣接する5'配列は除去されている。polコード化インテグラーゼの領域のコード化配列並びに補助遺伝子vifおよびvprは除去されている。そして、最終的にNef制御タンパク質をコードする遺伝子であるnefは除去されている。以下の実施例で記載する全てのインサートに共通する7つの点変異が図式に含まれる。これらは、ジンクフィンガーに媒介されるウイルスRNAのパッケージングを制限するヌクレオキャプシドタンパク質のジンクフィンガーにおける4つの変異、およびウイルスRNAの逆転写を防御する逆転写酵素における3つの変異を含む。gagおよび/またはpolを含むいずれかのワクチンインサートにおいて類似の変化を作製することができる。さらに、本明細書に記載するいずれかのプラスミドまたはベクター化された生ワクチンのいずれかに配置されるワクチンインサートにおいてこれらの変化(または類似の変化)を作製することができる(すなわちpGAベクターの一つまたは複数の特徴または特性を有するいずれかのプラスミド、pGAベクター自体、または単独でもしくはDNAプライムされた患者と組み合わせて(例えばブーストするために)用いることができるワクシニアベクター)。
【0089】
以下に記載するHIV-1ワクチンインサートをいずれかのpGAベクターまたはこれらのベクターのさらなる誘導体において発現させることができる。以下に提示するインサートの実例を、そのインサートの将来的な使用のために計画されているpGAベクターの実例と共に提示する。しかしながら、これらのインサートのいずれかをいずれかのpGAベクターおよびその他の真核細胞発現ベクターにおいて使用することができる。
【0090】
実施例8 pGA2/JS2、多タンパク質クレードB HIV-1インサート
pGA2/JS2の配列を図7a(配列番号:7)、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図7bに、並びにその点変異の位置を図7cに示す。本明細書に記載するJS2インサートを米国、欧州および日本で蔓延しているHIV-1配列に対する免疫応答を引き出すように、クレードB HIV-1配列で設計した。前記したように、いずれかのクレードB単離体をその他のクレードB単離体の合理的な代表として使用することができる。HIV-1単離体はコレセプターとして異なるケモカインレセプターを使用し、そして伝染する大部分のウイルスはCCR-5コレセプターを使用するので(Berger、AIDS 11(補冊A):S3-16(1997))、設計したワクチンインサートはCCR-5使用Envであった。もちろん、いずれかその他のコレセプターを介して機能するか、または天然発生もしくは合成配列から免疫原性を高めるように構築されたEnvを同様に作製し、そして使用することができる。
【0091】
高度に発現する多タンパク質発現クレードBワクチンインサートを達成するために、表1に示すような7個の異なるHIV-1配列から候補ワクチンを構築した。
【0092】
(表1)候補のワクチンインサートの比較

【0093】
最初の構築物であるpBH10-VLPを、細菌において安定であり、そして真核細胞において高度に発現するIIIB配列から調製した。HIV-1 BH10配列を、NIHが資金援助しているAIDSレポジトリー(カタログ番号90)から入手した。親pHIV-1-BH10をPCR反応の鋳型として用いてpBH10-VLPを構築した。
【0094】
プライマーを設計して、5'非翻訳リーダー配列の105bpおよびGagの開始コドンからRTコード化配列の終わりまでの配列を包含する(5'から3')Gag-Rt PCR産物(5'PCR産物)を生成させた。オリゴヌクレオチドプライマーはPCR産物の5'末端にCla I部位を、そしてPCR産物の3'末端にEcoR IおよびNhe I部位を導入した。センスプライマー

およびアンチセンスプライマー

を用いて5'PCR産物を増幅した。
【0095】
env領域のためのPCR産物(3'PCR産物)はvpu、tat、rev、およびenv配列、並びにその各々のmRNAの適切なプロセシングおよび発現に必要なスプライスアクセプター部位を包含する。EcoR I部位をこの産物の5'末端に導入し、そしてNhe IおよびRsr II部位を3'末端に導入した。センスプライマー

およびアンチセンスプライマー

を用いて3'PCR産物を増幅した。5'PCR産物をpGA1のCla IおよびNhe I部位でpGA1にクローン化し、そしてシークエンシングにより構築物の同一性を確認した。次いで3'PCR産物をEcoR IおよびNhe I部位で5'クローンに挿入してpBH10を生成させた。このプラスミドの構築によりLTR、インテグラーゼ、vif、vprおよびnef配列を欠くプロウイルス配列に至った(図9参照)。
【0096】
pBH10-VLPは、Envを用いるCCR-5ではなく、Envを用いるCXCR-4をコードしたので、pBH10中間体のenv配列を6個の異なるR5 Envをコードする配列で置換した(表1)。異なるウイルスゲノムに由来するtat、rev、vpu、およびenvコード化配列を包含するEcoR IからBamH Iまでの断片をpBH10に置換した。得られたenvおよびrev配列は置換された配列およびHIV-1-BH10配列のキメラであった(図9参照)。HIV-1-ADAエンベロープの場合、BamH I部位をHIV-1-ADA配列に導入して、pBH10のEcoR IからBamH Iまでの領域をEcoR IからBamH Iまでの断片に置換した。これらの構築の結果を表1にまとめている。試験した6個の配列のうち、6A-VLPが形質転換された細菌におけるプラスミド成長を不良にした。プラスミド6A-VLPをさらに発展させなかった。その他の構築物のうち、pBH10/ADAキメラはウイルスGagおよびEnvタンパク質の最高の発現を生じた(表1)。293T細胞における一過性のトランスフェクションでは、pBH10/ADAキメラからの発現がHIV-1-ADAまたはHIV-1-IIIBの野生型プロウイルスのものよりも高かった。発現はまた以前の、プライミングに成功したアカゲマカクにおける細胞毒性T細胞応答を有した(Kentら、J.Virol.72:10180-10188(1998))多タンパク質発現HIV-1ワクチン(dpol)の発現(Richmondら、J.Virol.72:9092-9100(1998))よりも高かった。pBH10/ADAキメラをここでJS1と称した。所定のまたは望ましいHIV-1インサートを有するプラスミドを同様に検定できることを認識すべきである。
【0097】
次に、ヒトにおいて非感染性ワクチン剤として使用するために、不活性化点変異をJS1に導入して構築物の安全性をさらに高めた(もちろん、何ら試験するまえに、変異を先制的に作製することができる)(図10c参照)。4つのコドン変異をヌクレオキャプシドのジンクフィンガーに導入してウイルスRNAのキャプシド形成を制限し、そして3つのコドン変異をpolの逆転写酵素領域に導入してウイルス逆転写酵素を不活性化した。これらの変異を有するJS1インサートをJS2と称した。
【0098】
部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いて製造者のプロトコルに従って変異を作製した。全ての変異をシークエンシングにより確認した。変異誘発に使用したプライマー対は、

であった。
【0099】
実施例9 pGA2/JS7ワクチンプラスミド
pGA2/JS7の配列を図11a(配列番号:8)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図11bに、そしてそのコドン変異の位置を図11cに示す。BH10のGag配列をJS7インサートではHIV-1-HXB-2のGag配列に置換する。これを以下のプライマー:
フォワード

およびリバース

を用いたHXB-2配列(p5'プラスミド、NIH AIDS Reserach and Reference Program、カタログ番号3119)のPCR増幅により達成した。フォワードプライマーはJS2インサートで見出されたのと同一の位置にCla I部位を導入し、そしてリバースプライマーはJS2インサートの同一部位に類似する独特なEcoR I部位を導入した。次いでこのPCR断片を変異誘発のためにpGA1.1に挿入した。次いでジンクフィンガー領域における安全性変異およびRT変異を、JS2インサートに関して前記したように導入した。JS7はまた、プロテアーゼの活性部位で不活性化コドン変異を有する点でJS2と異なっている。プライマー

および

を用いてこの変異を導入した。一度シークエンシングにより変異が確認されると、HXB-2 Gag-PolインサートをCla IおよびEcoR I部位を介してpGA2/JS2に導入した。ウイルスプロテアーゼによるpr55Gagポリタンパク質の時期尚早な切断のためにHIV-1タンパク質の凝集物を発現するJS2インサートと対照的に、JS7インサートはDNA発現細胞の原形質膜から出芽する未熟なウイルス様粒子(VLP)を形成する。
【0100】
実施例10 pGA2/JS7.1ワクチンプラスミド
pGA2/JS7.1の配列を図12a(配列番号:9)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図12bに、そしてそのコドン変異の位置を図12cに示す。pGA2/JS7.1は、vpuで開始コドンおよび直ぐ上流のATGが変異しているpGA2/JS7の誘導体である。これらの変異を導入してEnvの発現のレベルを上昇させた。部位特異的変異誘発キット(Stratagene)およびオリゴヌクレオチド:フォワード

およびリバース

を用いてVpuの開始コドンにおける変異を達成した。
【0101】
実施例11 pGA1/IS25ワクチンプラスミド
pGA1/IS25の配列を図13a(配列番号:10)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図13bに、そしてその点変異の位置を図13cに示す。本明細書に記載するIC25インサートを西アフリカで蔓延しているHIV-1配列に対する免疫応答を引き出すように、クレードAおよびG(AGと称する)の循環組換え体で設計した。前記したように、西アフリカからのいずれかのクレードAG単離体をその他のクレードAG単離体の合理的な代表として使用することができる。HIV-1単離体はコレセプターとして異なるケモカインレセプターを使用し、そして伝染する大部分のウイルスはCCR-5コレセプターを使用するので(Berger、AIDS 11(補冊A):S3-16(1997))、設計したAGワクチンインサートはCCR-5使用Envを有した。もちろん、いずれかその他のコレセプターを介して機能するか、または天然発生もしくは合成AG配列から免疫原性を高めるように構築されたEnvを同様に作製し、そして使用することができる。
【0102】
高度に発現する多タンパク質発現クレードAGワクチンインサートを達成するために、表2に示すような4個の異なるAG HIV-1単離体から候補ワクチンを構築した。
【0103】
(表2)候補のAGワクチンインサートの比較

【0104】
各単離体に関してフォワードプライマー

およびリバースプライマー

を用いて5'Gag-RT PCR産物を増幅した。Env領域に関する3'PCR産物はvpu、tat、rev、およびenv配列並びにその各々のmRNAの適切なプロセシングおよび発現に必要なスプライスアクセプター部位を包含する。EcoR I部位をこの産物の5'末端に導入し、そしてNhe IおよびRsr II部位を3'末端に導入した。フォワードプライマー

およびリバースプライマー

を用いて3'PCR産物を増幅した。もちろん、患者928に由来するものはさらに発展させるのに特に好ましい(表2)。コドン変異ではなく欠失を伴う928配列をIC1と称した。
【0105】
IC1よりもさらに不能なウイルスであるIC25を構築するために用いた試験計画はJS1からJS7を構築するために用いたものに類似した。具体的には4つのコドン変異をgag配列に導入してRNAパッケージングに関与するジンクフィンガーを不活性化し、3つのコドン変異をpol配列に導入して逆転写酵素の転写、鎖転移およびRNアーゼH活性を不活性化し、そしてプロテアーゼの活性部位のコドンを変異させてウイルス性Gagタンパク質のタンパク質溶解性切断およびウイルス粒子の成熟を制限した。プロテアーゼ変異はまたGagポリタンパク質の時期尚早な切断を制限し、そして未熟なVLPの出芽を可能にした。
【0106】
部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いて製造者のプロトコルに従って不活性化コドン変異を作製した。全ての変異をシークエンシングにより確認した。変異誘発に使用したプライマー対は、

であった。
【0107】
実施例12 pGA1/IC2
pGA1/IC2の配列を図14a(配列番号:11)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図14bに、そしてその点変異の位置を図14cに示す。pGA1/IC2は、プロテアーゼに不活性化点変異を含有しないこと以外はpGA1/IC25と同一である。
【0108】
実施例13 pGA1/IC48
pGA1/IC48の配列を図15a(配列番号:12)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図15bに、そしてその点変異の位置を図15cに示す。pGA1/IC48は、プロテアーゼにおけるコドン変異が薬物抵抗性変異体に生じたものであること以外はpGA1/IC25と同一である(Jocabsenら、Virology 206:527-534(1995))。この変異はプロテアーゼ機能を部分的にのみ不活性化する。Stratageneキットおよび以下のオリゴヌクレオチド:

および

を用いて変異誘発を実施した。この変異はプロテアーゼ機能を部分的にのみ不活性化する。
【0109】
実施例14 pGA1/IC90
pGA1/IC90の配列を図16a(配列番号:13)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図16bに、そしてその点変異の位置を図16cに示す。pGA1/IC90は、プロテアーゼにおけるコドン変異が薬物抵抗性変異体に生じたものであること以外はpGA1/IC25と同一である(Jocabsenら、Virology 206:527-534(1995))。この変異はプロテアーゼ機能を部分的にのみ不活性化する。Stratageneキットおよび以下のオリゴヌクレオチド:

および

を用いて変異誘発を実施した。
【0110】
実施例15 pGA1/IN3
pGA1/IN3の配列を図17a(配列番号:14)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図17bに、そしてその点変異の位置を図17cに示す。本明細書に記載するIN3インサートを、インドでウイルスから回収されたクレードC配列から構築した。前記したように、いずれかのクレードC単離体をその他のクレードC単離体の合理的な代表として使用することができる。HIV-1単離体はコレセプターとして異なるケモカインレセプターを使用し、そして伝染する大部分のウイルスはCCR-5コレセプターを使用するので(Berger、AIDS 11(補冊A):S3-16(1997))、構築するために選択したCワクチンインサートはCCR-5使用Envを有した。もちろん、いずれかその他のコレセプターを介して機能するか、または天然発生もしくは合成C配列から免疫原性を高めるように構築されたEnvを同様に作製し、そして使用することができる。
【0111】
高度に発現する多タンパク質発現クレードCワクチンインサートを達成するために、表3に示すような、米国NIAID AIDSレポジトリーから入手した4個の異なるクレードC HIV-1配列から候補ワクチンを構築した。これらのうち、インドのクローンからのものをさらに発展させるために特に好ましいことが判明した。
【0112】
(表3)クレードCの候補のワクチンインサートの比較

【0113】
インドのクローン由来の5'および3'配列をオリゴヌクレオチドおよびPCRを用いてpGA1.2にクローン化して5'および3'断片を作製した。GagおよびRTをコードする5'断片を、断片の5'末端でBamH I部位を組み込んだフォワードプライマー

、並びに断片の3'末端でXho I部位および2個の停止コドンを組み込んだリバースプライマー

を用いて作製した。Tat、Rev、Vpu、およびEnvをコードする3'断片をフォワードプライマー

およびリバースプライマー

を用いて作製した。Xho IおよびNhe I制限部位が3'断片の各々5'および3'末端で組み込まれるようにこれらを設計した。これらの断片を、定方向クローニングを用いてpGA1.2に導入しpGA1.2/IN1を作製した。
【0114】
IN1よりもさらに望ましいウイルスであるIN3を構築するために用いた試験計画はJS1からJS7を構築するのに用いたものに類似した。具体的には4つのコドン変異をgag配列に導入してRNAパッケージングに関与するジンクフィンガーを不活性化し、3つのコドン変異をpol配列に導入して逆転写酵素の転写、鎖転移およびRNアーゼH活性を不活性化し、そしてプロテアーゼの活性部位のコドンを変異させてウイルス性Gagタンパク質のタンパク質溶解性切断およびウイルス粒子の成熟を制限した。プロテアーゼ変異はまたGagポリタンパク質の時期尚早な切断を制限し、そして未熟なVLPの出芽を可能にした。
【0115】
部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いて製造者のプロトコルに従って不活性化コドン変異を作製した。全ての変異をシークエンシングにより確認した。変異誘発に使用したプライマー対は、

であった。
【0116】
実施例16 pGA1/IN2
pGA1/IN2の配列を図18a(配列番号:5)に、その機能的領域およびこれらの領域の起源を図18bに、そしてその点変異の位置を図18cに示す。pGA1/IN2は、プロテアーゼにD25N不活性化点変異を有さない点でpGA1/IN3と異なっている。
【0117】
実施例17 対合したrMVAに提供された配列
JS、ICおよびINインサートの配列を用いて対合した組換え改変ワクシニア・アンカラ(rMVA)ベクターを調製した。これらの対合したベクターを種々DNAのブースター接種として使用することができる。また抗HIV免疫応答をプライミングおよびブースティングの双方を行うためにこれらを使用することもできる。ウイルスベクターを作製するために提供された配列は逆転写酵素に3つの不活性化点変異を含んだ。組換えMVAベクターを構築し、そして特徴づけした代表的な研究は以下のとおりである。
【0118】
MVAウイルス(これはAmerican Type Culture Collectionから入手できる)をニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の最終希釈により3回プラーク精製し、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)は9日齢SPF Premium SPAFAS ニワトリ受精卵から作製され、BおよびE卵(Stevens、ペンシルバニア州)により分配された。2次CEF細胞をMVAのMOI 0.05で感染させ、そして2 pLW-48でトランスフェクトした(前記したように;図20Aおよび20B参照)。37℃で2日間インキュベートした後、ウイルスを収集し、3回凍結および解凍を行った。ついでこれをCEFプレートに載せた。「4日」に、X-gluc基質を添加した後青色に染色されるこれらの感染の中心を取り、これはプラスミドおよび感染ウイルスの間で組換えが起こったことを示しており、そしてこれをCEFプレートに接種した。再度、青色に染色されたこれらの増殖巣を取った。これらのGUS-含有増殖巣を3検体ずつプレートに載せ、そしてGUS染色(ここではこれを削除したかった)およびADAエンベロープ発現に関して分析した。GUS染色および非染色増殖巣並びにたいていのエンベロープ染色増殖巣の約同数の混合集団を有したこれらのサンプルの第3の複製プレートから個々の増殖巣を取った。これらの増殖巣を3検体ずつ再度プレートに載せ、同じように分析した。5継代の後、エンベロープタンパク質を発現したが、二重反復のためGUS遺伝子が除去されたウイルスを誘導した。免疫染色により、このウイルスもまたGag-Polタンパク質を発現した。
【0119】
MAV/HIV48感染細胞ライゼートのアリコートを、EnvおよびGag-Polタンパク質の双方の発現に関するためのモノクローナル抗体での免疫沈殿および免疫染色により分析した。これらの試験の双方で、これらのタンパク質の各々を検出した。組換えウイルスが感染した細胞の上澄でgag粒子を産生することが20%スクロースクッションで35S標識粒子をペレット化することにより示された。電子顕微鏡により、細胞から外側および出芽、並びに細胞の小胞内の双方でgag粒子を可視化した。gag粒子はその表面にエンベロープタンパク質を有した。
【0120】
このように、ADAトランケートされたエンベロープおよびHXB2 Gag-Polタンパク質を発現する組換えMVAウイルスを作製した。最終ウイルスで除去されている一過性に発現されたGUSマーカーを用いてMVA組換えウイルスを作製する。新たなハイブリッド初期/後期プロモーターのために、ADAエンベロープの高発現が可能である(Psyn II;例えば図21、22および24参照)。さらに、感染細胞の表面のタンパク質の量を増強することができ、そして従って免疫原性を増強することができるので、エンベロープはトランケートされている。組換え体の安定性もまた増強された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の第1サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ベクター;および
(b)HIVの第2サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ベクター;
を含む組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される担体またはアジュバントをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第1ベクターのインサートまたは第2ベクターのインサートが、2つまたはそれ以上の、(a)gag、pol、env、tat、rev、nef、vif、vprもしくはvpu遺伝子または(b)その変異体および任意で、(c)HIVゲノムの非コード化制御配列;の配列を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
2つまたはそれ以上の配列の少なくとも1つが、ウイルスRNAのキャプシド形成を制限する変異を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
2つまたはそれ以上の配列の少なくとも1つが、ジンクフィンガーをコードする一つまたは複数の配列に変異を有するgag配列を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
HIV-1の非コード化制御配列からシス作動性RNAのキャプシド形成配列の全てまたは一部が削除されている、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
2つまたはそれ以上の配列が、一つまたは複数のpolの酵素活性を阻害する変異を有するpol配列を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
酵素活性がインテグラーゼ活性である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
酵素活性が逆転写酵素活性である、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
酵素活性がプロテアーゼ活性である、請求項7記載の組成物。
【請求項11】
酵素活性がpol配列の一部の削除またはpol配列への一つまたは複数の点変異の導入により阻害される、請求項8、9または10の組成物。
【請求項12】
第1ベクターのインサートまたは第2ベクターのインサートが、一つまたは複数の欠失または点変異を有するtat、rev、nef、vif、vpr、またはvpuを含む、請求項3記載の組成物。
【請求項13】
欠失または点変異がtat、rev、nef、vif、vpr、またはvpuの一つまたは複数の開始コドンを不活性化させる、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
第1ベクターまたは第2ベクターが、
(a)ジンクフィンガーが不活性化されているgagタンパク質;
(b)(i)pol配列のいくつかまたは全てを除去することによりインテグラーゼ活性が阻害されている、および(ii)pol配列内の一つまたは複数の点変異により逆転写酵素のポリメラーゼ、鎖転移および/またはRNアーゼH活性が阻害されているpolタンパク質;並びに
(c)変異を含まないenv、tat、rev、およびvpuをコードするプラスミドである、請求項3記載の組成物。
【請求項15】
コードされたタンパク質がサブタイプBもしくはD HIV-1またはサブタイプBもしくはD HIV-1の組換え体に由来する、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA2/JS2を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
コードされたタンパク質がサブタイプA HIV-1またはサブタイプA HIV-1の組換え体に由来する、請求項14記載の組成物。
【請求項18】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA1/IC2を含む、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
コードされたタンパク質がサブタイプC HIV-1またはサブタイプC HIV-1の組換え体に由来する、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA1/IN2を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
コードされたタンパク質がHIV-1のサブタイプE、F、G、H、I、J、KもしくはLサブタイプまたはサブタイプE、F、G、H、I、J、KもしくはL HIV-1の組換え体に由来する、請求項14記載の組成物。
【請求項22】
第1ベクターまたは第2ベクターが
(a)ジンクフィンガーが不活性化されているgagタンパク質;
(b)(i)pol配列のいくつかまたは全てを除去することによりインテグラーゼ活性が阻害されている、(ii)pol配列内の一つまたは複数の点変異により逆転写酵素のポリメラーゼ、鎖転移および/またはRNアーゼH活性が阻害されている、および(iii)プロテアーゼのタンパク質分解活性が一つまたは複数の点変異により阻害されているpolタンパク質;並びに
(c)変異を含まないenv、tat、rev、およびvpu;
をコードするプラスミドである、請求項3記載の組成物。
【請求項23】
コードされたタンパク質がサブタイプBもしくはD HIV-1またはサブタイプBもしくはD HIV-1の組換え体に由来する、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA2/JS7を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
コードされたタンパク質がサブタイプA HIV-1またはサブタイプA HIV-1の組換え体に由来する、請求項22記載の組成物。
【請求項26】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA1/IC25を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
コードされたタンパク質がサブタイプC HIV-1またはサブタイプC HIV-1の組換え体に由来する、請求項22記載の組成物。
【請求項28】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA1/IN3を含む、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
コードされたタンパク質がHIV-1のサブタイプE、F、G、H、I、J、KもしくはLサブタイプまたはサブタイプE、F、G、H、I、J、KもしくはL HIV-1の組換え体に由来する、請求項22記載の組成物。
【請求項30】
第1ベクターまたは第2ベクターが
(a)ジンクフィンガーが不活性化されているgagタンパク質;
(b)(i)インテグラーゼ活性が阻害されている、(ii)pol配列内の一つまたは複数の点変異により逆転写酵素のポリメラーゼ、鎖転移および/またはRNアーゼH活性が阻害されている、および(iii)pol配列内の一つまたは複数の点変異によりプロテアーゼのタンパク質分解活性が阻害されているpolタンパク質;
(c)変異体開始コドンを含むvpuタンパク質;並びに
(d)変異されていない形態のenv、tat、およびrevタンパク質
をコードするプラスミドである、請求項3記載の組成物。
【請求項31】
コードされたタンパク質がサブタイプBもしくはD HIV-1またはサブタイプBもしくはD HIV-1の組換え体に由来する、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
第1ベクターまたは第2ベクターがpGA2/JS7.1を含む、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
コードされたタンパク質がHIV-1のサブタイプA、C、E、F、G、H、I、J、KもしくはLサブタイプまたはサブタイプA、C、E、F、G、H、I、J、KもしくはL HIV-1の組換え体に由来する、請求項30記載の組成物。
【請求項34】
ベクターがウイルスである、請求項1記載の組成物。
【請求項35】
ウイルスが組換えポックスウイルスである、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
ウイルスが改変ワクシニア・アンカラウイルスである、請求項34記載の組成物。
【請求項37】
改変ワクシニア・アンカラウイルスが、JS2またはJS7の配列に対合するクレードB配列をコードする組換え核酸を有する、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
改変ワクシニア・アンカラウイルスが、IC2またはIC25の配列に対合するクレードA配列をコードする組換え核酸を有する、請求項36記載の組成物。
【請求項39】
改変ワクシニア・アンカラウイルスが、IN2またはIN3の配列に対合するクレードC配列をコードする組換え核酸を有する、請求項36記載の組成物。
【請求項40】
改変ワクシニア・アンカラウイルスがサブタイプA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、KもしくはL HIV-1の組換え体であるかまたはDNAワクチンの配列に対合するサブタイプA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、KもしくはL HIV-1の組換え体である、請求項36記載の組成物。
【請求項41】
(a)HIVワクチンを必要とする対象を同定する段階;および
(b)ヒト免疫不全ウイルスに対する免疫応答を誘導または増強するワクチンインサートを含むベクターを含む治療上有効量の組成物を対象に投与する段階;
を含む、対象を処置する方法。
【請求項42】
(a)HIVワクチンを必要とする対象を同定する段階;および
(b)(i)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の第1サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ベクターおよび(ii)HIVの第2サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ベクターを含む治療上有効量の組成物を対象に投与する段階;
を含む、対象を処置する方法。
【請求項43】
(a)HIVワクチンを必要とする対象を同定する段階;並びに
(b)(i)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の第1サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第1ベクター、(ii)HIVの第2サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第2ベクター、および(iii)HIVの第3サブタイプまたは組換え体に対する免疫応答を引き出す一つまたは複数の抗原をコードするワクチンインサートを含む第3ベクターを含む治療上有効量の組成物を対象に投与する段階;
を含む、対象を処置する方法。
【請求項44】
組成物を投与する段階が、保護免疫応答をプライムおよびブーストする目的で1回を超える頻度でプラスミドベクターを投与する段階を含む、請求項40、41、または42の方法。
【請求項45】
組成物を投与する段階が、免疫応答をプライムする目的で1回または1回を超える頻度でプラスミドベクターを投与する段階、および免疫応答をブーストする目的で続けて1回または1回を超える頻度で改変ワクシニア・アンカラウイルスを投与する段階を含む、請求項40、41、または42の方法。
【請求項46】
プラスミドベクターがJS2、JS7もしくはJS7.1と称するインサート、および/またはIC2、IC25、IC48もしくはIC90、と称するインサート、および/またはIN2もしくはIN3と称するインサートを含み、そしてここでブースティングは、プライミングのために用いられるプラスミドに対合したHIV配列を含有する改変ワクシニア・アンカラウイルスを投与する段階を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
プラスミドベクターがHIVクレードAおよび/またはクレードB、および/またはクレードC、および/またはクレードD、および/またはクレードE、および/またはクレードF、および/またはクレードG、および/またはクレードH、および/またはクレードJ、および/またはクレードK、および/またはクレードL、および/またはその組換えサブタイプを含み、そしてここでブースティングは、プライミングのために用いられるプラスミドに対合したHIV配列を含有する改変ワクシニア・アンカラウイルスを投与する段階を含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
組成物を投与する段階が、保護免疫応答をプライムおよびブーストする目的で1回を超える頻度で改変ワクシニア・アンカラウイルスを投与する段階を含む、請求項40、41、または42の方法。
【請求項49】
プライミングが、クレードB組換えMVAウイルスおよび/またはクレードA組換えMVAウイルスおよび/またはクレードC組換えMVAウイルスおよび/またはいずれかのその組換えサブタイプを投与する段階を含み、そしてここでブースティングは、プライミングのために用いられる同一の改変ワクシニア・アンカラウイルスを投与する段階を含む、請求項44記載の方法。
【請求項50】
プライミングが、改変ワクシニア・アンカラベクターのクレードAおよび/またはクレードB、および/またはクレードC、および/またはクレードD、および/またはクレードE、および/またはクレードF、および/またはクレードG、および/またはクレードH、および/またはクレードJ、および/またはクレードK、および/またはクレードL、および/またはその組換えサブタイプを投与する段階を含み、そしてここでブースティングはプライミングのために用いられる同一の改変ワクシニア・アンカラベクターを投与する段階を含む、請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a−1】
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【図10a−2】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11a−1】
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【図11a−2】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a−1】
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【図12a−2】
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【図12a−3】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a−1】
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【図13a−2】
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【図13a−3】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14a−1】
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【図14a−2】
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【図14a−3】
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【図14b】
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【図14c】
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【図15a−1】
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【図15a−2】
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【図15a−3】
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【図15b】
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【図15c】
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【図16a−1】
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【図16a−2】
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【図16a−3】
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【図16b】
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【図16c】
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【図17a−1】
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【図17a−2】
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【図17a−3】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18a−1】
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【図18a−2】
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【図18a−3】
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【図18b】
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【図18c】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図21−3】
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【図21−4】
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【図21−5】
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【図21−6】
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【図21−7】
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【図21−8】
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【図21−9】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−231112(P2011−231112A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113185(P2011−113185)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【分割の表示】特願2003−574798(P2003−574798)の分割
【原出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(503124447)エモリー ユニバーシティ (8)
【出願人】(504341173)ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ, ナショナル インステ (2)
【出願人】(505342977)ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ, センターズ フォー デジース コン (1)
【Fターム(参考)】