免疫応答を増強するため、およびインビトロでのモノクローナル抗体の産生のための方法および組成物
【課題】標的細胞にのみに対し薬剤を標的特異的に送達する組成物および方法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法および組成物は、特定の免疫系成分の同時または連続的標的化を通して、免疫応答を増強し、そしてワクチンの効力を増加することに関する。特定の免疫系成分(例えば、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞)は、成分特異的免疫刺激因子によって個々に活性化される。1つのこのような成分特異的免疫刺激因子は、抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体である。本発明はまた、血液由来免疫細胞(例えば、マクロファージおよびリンパ球)のインビトロ変換に依存する、抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体のインビトロ産生のための方法に関する。ワクチンの効力は、成分特異的免疫刺激因子および他の要素(例えば、抗原またはキャリア粒子、例えば、コロイド法(例えば、金))を含む組成物の投与によって増強される。
【解決手段】本発明の方法および組成物は、特定の免疫系成分の同時または連続的標的化を通して、免疫応答を増強し、そしてワクチンの効力を増加することに関する。特定の免疫系成分(例えば、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞)は、成分特異的免疫刺激因子によって個々に活性化される。1つのこのような成分特異的免疫刺激因子は、抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体である。本発明はまた、血液由来免疫細胞(例えば、マクロファージおよびリンパ球)のインビトロ変換に依存する、抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体のインビトロ産生のための方法に関する。ワクチンの効力は、成分特異的免疫刺激因子および他の要素(例えば、抗原またはキャリア粒子、例えば、コロイド法(例えば、金))を含む組成物の投与によって増強される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連した出願の相互参照)
この出願は1997年11月10日に出願された合衆国仮出願60/065,155号、および1998年2月24日に出願された合衆国仮出願60/075,811号、および1998年11月6日に出願された番号が割り当てられていない合衆国仮出願に対して優先権を請求する。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は一般的には免疫学に関連する。より具体的には、本発明はヒトおよび動物における免疫応答の増強に関する方法および組成物に関連する。そのような増強は、免疫応答の刺激または抑制を生じ得る。本発明はまた、ヒトまたは動物において免疫応答を増強するために、抗原性の成分を特定の免疫細胞に対して簡単に効果的に提示する、標的化成分刺激組成物に関連する。本発明はさらに、そのような方法および組成物を抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体の産生のために使用すること、およびそのような抗体のインビトロでの産生方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
所望の薬剤を特定の標的細胞に導入することは、長い間科学者たちの努力目標であった。薬剤の特異的な標的化の目標は、生物体の他の部分に曝露しすぎることない、生物体の標的細胞に対する適当な量の薬剤または正しい薬剤を得ることである。特定の薬剤を送達する非常に望ましい標的は、免疫系の選択的な制御である。免疫系は体の複雑な応答系で、様々な活性を有する多くの様々な種類の細胞が関与する。免疫系の一部分の活性化は、この系の他の関連する部分の望ましくない活性化に起因して、通常多くの様々な応答を引き起こす。現在、免疫系の特定の成分を標的化することによって、望ましい応答を起こす方法または組成物は存在しない。
【0004】
使用されて限られた成功をおさめた1つの方法は、特異的なレセプターを持つ細胞を標的化し、そして薬剤のキャリアとして働く、そのレセプターに対する抗体を提供することである。その薬剤は細胞の刺激物である薬物的組成物であり得る。また、治療剤は細胞死を引き起こす放射活性部分であり得る。この技術の固有の問題点は、特異的なレセプターの単離、そのレセプターに選択的な活性を持ち、そして他の同様なエピトープに対して交差応答性を示さない抗体の産生、および薬剤の抗体への結合である。そのような限られた送達に伴う問題点は、薬剤が標的細胞内部で放出され得ないこと、薬剤が抗体に放出可能に結合されないことであり、従って、薬剤が一旦その部位に送達されると完全に活性であり得ないか、または全く活性であり得ない。
【0005】
免疫系は体の複雑な相互作用系であり、体内および体外の両方からの刺激と相互作用する細胞、細胞因子を含む多くの種類の成分が関与する。その直接作用に加えて、免疫系の応答は神経系、呼吸器系、循環系、および消化器系を含む体の他の系によってもまた影響される。
【0006】
免疫系のよりよく知られている局面の1つは、侵入してきた生物体、体内の細胞の変化、またはワクチン接種により提示される、外来性抗原に対して応答する能力である。免疫系のそのような活性化に応答する最初の種類の細胞のいくつかは、食細胞およびナチュラルキラー細胞である。他の細胞の中で、食細胞は単球、マクロファージ、および多形核好中球を含む。これらの細胞は一般的に外来性抗原に結合し、中に取り込んでそれを破壊し得る。それらはまた、炎症性応答のような他の免疫応答を媒介する可溶性分子を産生する。ナチュラルキラー細胞は特定のウイルスに感染した胚細胞、および腫瘍細胞を認識して破壊し得る。免疫応答の他の因子は、外来性抗原に対して独立に応答し得るか、あるいは細胞または抗体と共同して作用し得る両方の補体経路を含む。
【0007】
ワクチン接種に重要な免疫系の局面の1つは、特定の病原体または外来性抗原に対する免疫系の特異的な応答である。応答の一部分はその外来性抗原に対する「記憶」の確立を含む。2回目に曝露されたとき、記憶機能により、外来性の抗原に対するより早い、そして一般的にはより大きな応答が可能となる。リンパ球が他の細胞および因子と共同して、記憶機能および応答の両方において主要な役割をはたす。
【0008】
一般的には、抗原に対する応答は体液性の応答および細胞性の応答の両方が関与すると考えられている。体液性免疫応答は、細胞によって放出され、そして血漿または細胞内液中に遊離して見られても見られなくてもよい非細胞因子によって媒介される。免疫系の体液性応答の主要な要素は、Bリンパ球によって産生される抗体によって媒介される。細胞性免疫応答は、抗原提示細胞およびBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)を含む細胞の相互作用の結果起こる。
【0009】
外来性抗原を、様々な種類の細胞、主としてマクロファージまたは他の抗原提示細胞が認識することにより応答が始まる。これはリンパ球、特にその特定の外来性抗原を特異的に認識するリンパ球の活性化に至り、免疫応答の発生を生じ、そしておそらく外来性抗原を排除する。外来性抗原の排除を指向する免疫応答の構築は複雑な相互作用で、ヘルパー機能、刺激機能、抑制機能、および他の応答を起こす。免疫系応答の強さは、刺激および抑制のために複数の部位で注意深く制御されなければならない。さもないと応答は起こらないか、過剰に応答するか、または排除の後も終わらないかである。
【0010】
外来性抗原に対する応答の認識段階は、外来性抗原が免疫細胞上の特定のレセプターに結合することからなる。これらのレセプターは一般的に抗原への曝露の前に存在する。認識はまた、マクロファージ様細胞によるか、または血清または体液中の因子による認識による、抗原との相互作用を含み得る。
【0011】
活性化段階では、リンパ球は少なくとの2つの主要な変化をうける。リンパ球は増殖し、抗原特異的リンパ球のクローンを拡大、および応答の増幅をもたらす。そして抗原刺激されたリンパ球は、エフェクター細胞または、生存し、抗原に対する再曝露への応答に備える記憶細胞のどちらかに分化する。この応答を増強する数多くの増幅機構が存在する。
【0012】
作用段階では、活性化されたリンパ球が、抗原を排除またはワクチン応答の確立をもたらし得る機能を行う。そのような機能は、調節機能、ヘルパー機能、刺激機能、抑制機能、または記憶機能のような細胞の応答を含む。多くのエフェクター機能は、細胞および細胞因子が組み合わさって関与することを必要とする。例えば、抗体は外来性抗原に結合して血中好中球および単核食細胞による食作用を増強する。補体経路は活性化されて、発熱のような他の体の応答を引き起こすのに加えて、微生物の溶菌および食作用に関与し得る。
【0013】
抗原に対する免疫応答において、免疫細胞は直接の細胞間の接触によってか、または間接的な細胞間の(因子が媒介する)情報伝達によって、お互いに相互作用する。例えば、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、およびB細胞間の相互作用が有効な免疫応答に必要である。BおよびT細胞は、抗原を提示し、そして休止細胞に活性化シグナルを伝える抗原提示細胞(APC)である樹状細胞またはマクロファージからのシグナルにより活性化される。活性化されたT細胞は、免疫応答を制御するのを助け、そして外来性の生物体の除去に関与する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞前駆細胞がキラー細胞になるのを助け、B細胞が抗体を作るのを助け、マクロファージのような他の細胞の機能を高めるのを助けるような、より良好なエフェクター細胞に細胞をする。活性化されたB細胞は分裂し、抗原特異的抗体および記憶B細胞を産生する。免疫応答に関与する細胞はまた、食作用の機能を増強し、炎症性応答を刺激し、様々な細胞に作用する細胞因子またはサイトカインを分泌する。
【0014】
これらの細胞の応答はまた、フィードバック回路を含む。マクロファージおよび他の単核食細胞、またはAPCは、活発に抗原を食作用してBおよびT細胞に提示し、そのような活性はリンパ球の細胞因子により増強され得る。マクロファージもまたサイトカインを産生し、とりわけ、T細胞の増殖および分化を刺激し、他の炎症性細胞、特に好中球を呼び寄せ(recruit)、例えば発熱のような多くの全身性の炎症性効果の原因となる。インターロイキン−12と呼ばれる、そのようなサイトカインの1つは、細胞性免疫の発生に特に重要である。
【0015】
樹状細胞もまた免疫応答を開始するAPCである。リンパ系樹状細胞および皮膚のランゲルハンス細胞を含む多くの異なった型の樹状細胞が存在する。それらは全身、特に脾臓、節、扁桃、パイアー斑、および胸腺で見られ得る。それらは不規則な形をした細胞で、樹状(木のような)突起を連続的に伸ばしたり縮めたりする。免疫系におけるそれらの役割の1つは、BおよびT細胞の活性化および分化を調節および誘導することである。それらは細胞傷害性T細胞の発生、B細胞による抗体形成、および酸化的有糸分裂生起のようないくつかのポリクローナルな応答に対する強力なアクセサリー細胞である。それらはまた、T細胞を刺激してサイトカインであるインターロイキン−2を放出させる。
【0016】
ワクチン接種の重要な武器は、Bリンパ球またはB細胞によって提供される抗原に対する応答である。B細胞は循環リンパ球の約5から15%を占める。B細胞はイムノグロブリンであるIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを産生し、それらは体液中に放出されるか、付随するタンパク質と共に分泌されるか、またはB細胞の膜表面に挿入され得る。そのような固定化されたイムノグロブリンは特異的な抗原レセプターとしてはたらく。抗原に応答して、これらのイムノグロブリンレセプターはキャップ形成として知られる架橋をされ、次に内部に取り込まれてイムノグロブリンが分解される。キャップ形成はまたB細胞の膜表面に存在する糖タンパク質とともに起こる。
【0017】
血漿B細胞は、細胞外に存在する、または細胞と付随した形態における外来性タンパク質、多糖、脂質、または他の化学物質に結合し得る抗体分子を産生し分泌する。単一の血漿細胞によって産生された抗体は1つの抗原に特異的である。分泌された抗体は抗原に結合し、その破壊を促進する機構を誘発する。
【0018】
(モノクローナル抗体)
最も広く採用されている免疫応答能力の局面の1つは、モノクローナル抗体の産生であ
る。1970年代中頃のモノクローナル抗体(Mab)技術の出現は、有用な新しい処治および診断の手段をもたらした。当初、研究者および臨床医は、あらかじめ決められた抗原性部位に結合し様々な免疫学的エフェクター機能を有し得る均質な抗体を無制限に入手できることになった。現在、モノクローナル抗体の産生技術は当該分野で周知である。
【0019】
これらのモノクローナル抗体は薬剤および診断において大いに有望であると考えられた。残念ながら、モノクローナル抗体治療に固有の問題のために、これらのタンパク質を基にした治療的産物の開発は限られたものであった。例えば、ほとんどのモノクローナル抗体はマウス由来であり、したがって、ヒト補体を十分に固定しない。それらはまたヒトにおいて使用したとき他の重要なイムノグロブリン機能の特徴を欠いている。
【0020】
モノクローナル抗体の使用に関する最も大きな欠点は、非ヒトモノクローナル抗体はヒト患者に注射したとき免疫原性を持つという事実である。外来性の抗体を注射した後、患者でおこる免疫応答はかなり強いものであり得る。その免疫応答は外来性の抗体をすばやく排除し、初期の処治後、本質的に抗体の処治的有用性を無くす。残念ながら、一旦免疫系が外来性の抗体に応答するように感作されると、同じまたは異なった非ヒト抗体による後の処治は無効であり得るか、または交差応答性のために危険でさえあり得る。
【0021】
マウスは外来性の抗原で容易に免疫され、広い範囲の高親和性の抗体を産生し得る。しかし、マウス抗体をヒトに導入すると、体内に外来性タンパク質が提示されるため、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こす。患者におけるマウス抗体の使用は、一般的に数日または数週間に限られる。より長い処治期間はアナフィラキシーを引き起こし得る。さらに、一旦HAMAが患者で発生すると、しばしば将来的に診断または治療目的のためにマウス抗体を使用しない。
【0022】
HAMA応答の問題を克服するために、研究者たちは非ヒト抗体を修飾してそれらをヒト様にするいくつかの方法を試みた。これらの方法はマウス/ヒトキメラ、ヒト化、および霊長類化を含む。よりヒト様である抗体を作製する初期の研究は、ウサギおよびヒト抗体を組み合せて使用した。抗体のタンパク質サブユニット、ウサギFab断片およびヒトFc断片を、タンパク質ジスルフィド結合を介して連結させて、新しい人工的なタンパク質分子またはキメラ抗体を形成した。
【0023】
組換え分子生物学的技術がキメラ抗体を作成するために使用された。組換えDNA技術を使用して、マウス抗体可変領域の軽鎖および重鎖とヒト抗体定常領域の軽鎖(LC)および重鎖(HC)コードするDNA配列との間の融合遺伝子を構築して、キメラ抗体の発現を可能にした。これらのキメラ抗体は多数の非ヒトアミノ酸配列を含み、ヒトにたいして免疫原性である。これらのキメラ抗体に曝露された患者はヒト抗キメラ抗体(HACA)を産生する。HACAはマウスV領域に対して指向し、そしてまた、組換えキメラ抗体に存在する新しいV領域/C領域(定常領域)結合部位に対しても指向し得る。
【0024】
キメラ抗体の免疫原性によって提示される制限のいくつかを克服するために、分子生物学的技術を使用し、ヒト化または新形態の抗体を作成する。マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位または相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列を、分子学的な手法で、ヒト抗体重鎖および軽鎖の枠組み構造をコードするDNA配列に移植する。ヒト化MabはキメラMabよりも多い割合のヒト抗体配列を含む。約90%のヒト抗体および10%のマウス抗体を含む最終産物は、ヒト抗体上にマウス結合部位を含む。それはまた、正しい形を保持するため、従って標的抗原への結合親和性を保持するために、マウスMabからヒト化Mabの枠組み構造へ置換される特定のアミノ酸を含む。
【0025】
実際には、ヒトCDRをマウスCDRと単純に置換するだけでは、もとのマウス抗体の特異性を保持した有効なヒト化抗体を産生するには十分でない。少量の決定的なマウス抗体の残基をヒト可変領域に含むことがさらに必要である。これらの残基の同一性は、もとのマウス抗体および受容側ヒト抗体の両方の構造に依存する。これらのマウス抗体残基の存在が患者においてHACA応答を引き起こし、モノクローナル抗体のすばやい排出およびアナフィラキシーの心配をもたらす。
【0026】
再表面形成(resurfacing)技術と呼ばれる別の技術が、マウス抗体をヒト化するために使用される。再表面形成は、他のヒト化技術よりもより早くより効果的なプロセスで、マウス抗体の表面をヒト抗体の表面と置換することを含む。この技術は、組換えFvのV領域表面の接近可能なアミノ酸のみをヒト化することによって、マウスモノクローナル抗体をヒト抗体に似せて再設計する方法を提供する。天然の枠組み構造−CDR相互作用が保持されているので、マウスモノクローナル抗体の再表面形成は、新形態に作り替えたものにおいて、もとのマウスモノクローナル抗体のアビディティを保持し得る。再び、これらの抗体はその起源がマウスであるために抗原性を持つという問題点がある。
【0027】
他の技術はMabをヒト化するためにマウスよりむしろ霊長類の配列を使用する。霊長類化と呼ばれるこの方法の原理は、霊長類抗体可変領域のほとんどの配列はヒト配列と区別がつかないということである。慢性関節リウマチおよび重症喘息の処治のために、霊長類化抗CD4 Mabが開発中である。しかし、これらのMabは患者の免疫系にとって依然として外来性タンパク質であり、免疫応答を引き起こす。
【0028】
外来性タンパク質に対する免疫応答を避けるための努力において、ヒト抗体成分のみを含むヒトMabを作製するための様々な方法が開発されている。1つの方法は、望ましい抗原に対する抗体を天然に作製するヒトB細胞クローンを単離して、トリオーマ(trioma)細胞培養システムで培養する方法である。ヒト抗体は宿主にとって外来性の抗原に対してのみ作られるので、ヒト抗原に対して抗体を作製するヒトB細胞は存在しない。従って、この方法はヒトタンパク質である抗原に対してMabを産生するには有用でない。
【0029】
ヒトMabを作成する他の2つの方法は、ファージディスプレイおよびトランスジェニックマウスの使用である。ファージディスプレイ技術はヒトがあらゆる可能な構造に対して抗体を作ることができる能力を利用する。この技術は、それぞれが機能的な抗体可変ドメインをその表面に提示する、ファージ抗体の大きなライブラリーを作成するために、多くの個々のヒト由来の抗体遺伝子を使用する。このライブラリーから、個々の可変ドメインを望ましい抗原に結合する能力によって選択する。分子生物学的技術を用いて、望ましい結合特性を持った抗体可変ドメイン、および潜在的なヒト治療産物の要求を満たす定常ドメインを組み合せることによってMabが作成される。再び、この技術は抗原特異性を欠いている。ファージライブラリーは任意のそして全ての望ましい抗原に対するあらゆる結合領域を含むことはできない。それはまた特異性を欠く結合領域を含み得る。従って、この技術は有用な段階まで抗体の親和性を高めるためにかなりの操作を必要とし得る。
【0030】
トランスジェニックマウスもまた「ヒト」抗体を作成するために使用されている。トランスジェニックマウスは、マウスイムノグロブリン遺伝子座をヒトイムノグロブリン遺伝子座と置換することによって作成される。この方法はマウスのインビボでの親和性成熟機構を利用しているので、ファージディスプレイ技術より有利であり得る。
【0031】
ヒトまたはヒト様Mabを産生する現在の技術は全て、望ましい抗原に対して抗原特異的な、種特異的抗体を提供するには不十分である。キメラ抗体はマウス抗体の特異性を保持し、そしてヒトFc依存性補体固定および細胞媒介性細胞毒性を刺激するという利点がある。しかし、これらのキメラ抗体のマウス可変領域が依然としてHAMA応答を誘発し得る。それによってキメラ抗体の診断および処治薬としての有用性が限られる。
【0032】
ヒトB細胞を不死化する、または望ましい抗原に対してイムノグロブリンを産生する能力のあるヒトハイブリドーマを作成する努力は、特にヒト抗原については、一般的に成功しなかった。さらに、ヒトにおける免疫寛容が、自己抗原に対して抗体をうまく産生することを妨げる。
【0033】
(ワクチン治療)
ワクチンを、他の生物体、変化した細胞、または正常「自己」細胞において誘導された異質な特質のいずれからにせよ、あらゆる外来性抗原に対して作成し得る。外来性抗原の投与経路が、生成される免疫応答の型を決定するのを助け得る。例えば、ポリオの生ウイルスを経口で接種するように、粘膜表面への抗原の送達は、粘膜表面の免疫応答を起こすように免疫系を刺激する。抗原を筋肉組織に注射すると、しばしば長時間続くIgG応答が起こるのを促進する。
【0034】
ワクチンは一般的に、全体およびサブユニットワクチンの2つの型に分けられ得る。全ワクチンは不活化された、または弱毒化された、または殺菌されたウイルスまたは微生物から産生され得る。生弱毒化ワクチンは、野生型の生物体に対する応答と同様な免疫応答を引き起こすのに十分なほど、天然の感染を模倣するという利点がある。そのようなワクチンは一般的に、天然の経路で投与された場合には特に、高レベルの防御を提供し、そしていくつかは免疫性を与えるのに1回のみの投与を必要とし得る。いくつかの弱毒化ワクチンの別の利点は、集団の構成員の間でヒトからヒトへの継代を提供することである。しかし、これらの利点はいくつかの欠点と釣り合いを保っている。いくつかの弱毒化ワクチンは限られた貯蔵寿命しかなく、熱帯環境での保存に耐えられない。また、ワクチンが有毒な野生型生物体に復帰して、有害な、命さえ脅かすような疾患を引き起こす可能性もある。弱毒化ワクチンの使用はAIDSのような免疫不全状態、および妊娠中は禁忌である。
【0035】
殺菌したワクチンは、有毒な菌に復帰し得ないという点でより安全である。それらは一般的に送達および貯蔵中より安定であり、免疫無防備状態の患者における使用が許容できる。しかし、それらは生弱毒化ワクチンに比べて有効性が低く、通常1回以上の投与を必要とする。さらに、集団の構成員の間でヒトからヒトへの継代を提供しない。
【0036】
サブユニットワクチンの産生は、ワクチンが指向されるべき微生物または細胞のエピトープについての知識が必要である。サブユニットワクチンを設計するとき他に考慮すべき問題は、サブユニットの大きさおよび、そのサブユニットがその微生物または細胞の株全てを、どれだけよく代表しているかということである。細菌の全ワクチンを産生する場合に直面する問題、およびその使用に伴う副作用のために、細菌のワクチン開発における現在の焦点は、サブユニットワクチンの産生へ移動した。そのようなワクチンはVi莢膜多糖を基にした腸チフスワクチン、およびHaemophilus influenzaeに対するHibワクチンを含む。
【0037】
開発された他のワクチンは、コンビネーションワクチンおよびDNAワクチンを含む。コンビネーションワクチンの1つの例は、Bordetella pertussis毒素、およびその表面の線毛の赤血球凝集素である。DNAワクチン接種において、患者はタンパク質抗原をコードする核酸を投与される。次に、それは転写され、翻訳されてある形態で発現し、抗原に対する強力な長時間続く体液性および細胞性免疫応答を起こす。核酸はウイルスベクターまたはリポソームのような他のベクターによって投与され得る。
【0038】
ワクチンによって引き起こされた免疫応答は、アジュバントの使用により非特異的に増強され得る。これらは、リポソーム、エマルジョン、またはマイクロスフィアのような物質または担体成分の不均一な群であり、いくつかの異なった作用機構を持つ。
【0039】
疾患に対する防御のためのワクチンの代表的な使用に加えて、ワクチン接種はガンと闘うために使用されている。腫瘍を拒絶するために非特異的に免疫系を刺激するという考えはほぼ1世紀近く前からある。この分野での初期の研究者であるColeyは、細菌の濾液を使用してかなり成功した。精製したサイトカインおよび免疫刺激剤でガンに対してワクチン接種する試みは、限られた成功しかおさめられず、少数の型のガンのみに有効であった。
【0040】
ガンに加えて、多くの疾患が免疫系によって媒介される。それらの疾患はアレルギー、湿疹、鼻炎、じんましん、アナフィラキシー、移植の拒絶反応、(例えば、腎臓、心臓、膵臓、肺、骨、および肝臓移植)、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、血清応答陰性の脊椎炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、後天性免疫不全症候群、橋本甲状腺炎、グレーヴズ病、アジソン病、多発性内分泌(polyendocrine)自己免疫疾患、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病(coeliac diseease)、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、顕微鏡的(microscopic)多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルトン症候群、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群(X−linked hyper IgM syndrome)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含む。
【0041】
弱毒化ワクチンの使用に伴う安全性の問題、および不活化ワクチンの低い効力のために、当該分野においてワクチンの効力を増強する組成物および方法が必要である。また、当該分野において体液性および細胞性応答の両方を刺激する、免疫系を増強する組成物および方法も必要である。さらに、当該分野において免疫応答の選択的な調整、および免疫系の様々な成分を操作して望ましい応答を起こす必要もある。それに加えて、活性化におけるより速い応答のために免疫応答を促進および拡大し得る方法および組成物が必要である。1回の投与のみで防御を提供ワクチンを用いてヒトおよび動物の両方の集団をワクチン接種できる能力についての必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
標的細胞にのみに対し薬剤を標的特異的に送達する組成物および方法が必要である。薬剤が標的細胞に取り込まれる場合には、いくつかの投与および処治にとって好ましい。一旦細胞の中に入れば、薬剤は薬剤が活性になるように送達システムから十分に放出されるべきである。そのような組成物および方法は治療剤を標的細胞に効果的に送達し得る。インビトロおよびインビボの系の両方で使用され得る組成物および方法もまた必要である。
【0043】
一般的に抗原特異的、種特異的抗体の組成物、およびそれらを産生する改良された方法もまた必要である。特に、所定の抗原に対する親和性を有する完全なヒト抗体を産生する方法が必要である。これらのヒトイムノグロブリンは、治療処方物および診断処方物について適当な方法で、容易におよび経済的に産生されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0044】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1) プラットホームと結合した少なくとも1つの成分特異的免疫刺激分子を含む、標的化した送達系。
(項目2) 項目1に記載の標的化された送達系であって、ここで前記成分特異的免疫刺激分子が以下:
a)前記プラットホームへの直接結合;
b)該プラットホームに結合される組み込み分子に対する特異的結合;
c)該プラットホームに結合される組み込み分子に対するより小さい特異的結合;または d)相補的に結合するメンバーの結合
を含む様式で該プラットホームに結合する、送達系。
(項目3) 項目2に記載の標的化された送達系であって、以下:
a)前記プラットホームへの直接結合;
b)該プラットホームに結合される組み込み分子に対する特異的結合;
c)該プラットホームに結合される組み込み分子に対するより小さい特異的結合;または
d)相補的に結合するメンバーの結合
を含む様式でプラットホームに結合した抗原またはワクチン分子をさらに含む、送達系。
(項目4) 項目2に記載の標的化された送達であって、ここで前記組成特異的免疫刺激分子が、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌内毒素Bおよび他の毒素、インターフェロンI型、インターフェロンII型、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージ CSF、顆粒球 CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスホーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液群の炭水化物部分、Rh因子、繊維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;flt3 リガンド/レセプター系;B7ファミリーの分子およびレセプター;CD40リガンド/レセプター;および免疫治療薬物(例えば、AZT);ならびに血管形成薬物および抗血管形成薬物(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、および塩基性繊維芽細胞増殖因子、または血管内皮増殖因子(VEGF))の少なくとも1つを含む、標的化された送達。
(項目5) 項目3に記載の標的化された送達系であって、ここで前記抗原またはワクチン分子が、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼ A2、内毒素、ブドウ球菌内毒素 Bおよび他の毒素、インターフェロンI型、インターフェロンII型、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージ CSF、顆粒球 CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスホーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液群の炭水化物部分、Rh因子、繊維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、および熱ショックタンパク質(HSP);変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;免疫治療薬物(例えば、AZT);ならびに血管形成薬物および抗血管形成薬物(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、および塩基性繊維芽細胞増殖因子、または血管内皮増殖因子(VEGF))の少なくとも1つを含む、標的化された送達系。
(項目6) 前記プラットホームが金属コロイドである、項目1に記載の標的化された送達系。
(項目7) 項目6に記載の標的化された送達系であって、ここで前記金属コロイドが以下の工程:
a)抗原のpIより上の1〜3pH単位pHで水中で抗原を再構成する工程;
b)約200〜500μgの抗原を金属コロイドと共にインキュベートする工程;
c)必要に応じてポリエチレングリコール、Brij58または天然もしくは合成リン脂質の10〜100%溶液の体積で1%とともに一晩、該コロイド結合抗原をインキュベートすることによってそれを安定化する工程;
d)金属コロイド結合抗原溶液を遠心分離する工程;および
e)生じたペレットをタンパク質再構成緩衝液中のヒト血清アルブミンの1%溶液で安定化させる工程
を包含するプロセスによって調製される、標的化された送達系。
(項目8) 免疫細胞に対する成分特異的免疫刺激分子の標的化された送達のための方法であって、1以上の成分特異的免疫刺激分子、および必要に応じて1以上の推定抗原またはワクチン分子を投与する工程を包含する、方法。
(項目9) 前記分子がインビボで投与される、項目8に記載の方法。
(項目10) 1より多い成分特異的免疫刺激分子が同時に投与される、項目8に記載の方法。
(項目11) 異なった時間で、または異なった投与の方法によって投与されて、1以上の成分特異的免疫刺激分子が該成分特異的免疫刺激分子の連続的な送達を提供する、項目8に記載の方法。
(項目12) 2以上の異なった成分特異的免疫刺激分子の投与を包含する、項目8に記載の方法。
(項目13) 前記異なった成分特異的免疫刺激分子が、免疫応答の異なった工程で投与される、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記分子がインビトロで投与される、項目6に記載の方法。
(項目15) 抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体のインビトロ産生のための方法であって、以下の工程:
a)ヒトまたは動物からの免疫細胞をインビトロで活性化し、該細胞を刺激して抗原に対する最初の応答を生成する工程;および
b)最初の応答を生じる該活性化免疫細胞を不朽化する工程
を包含する、方法。
(項目16) 抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体のインビトロ産生のための方法であって、以下の工程;
a)抗原および抗原提示細胞をインキュベートして該抗原提示細胞をインビトロで活性化する工程;
b)該活性化APCにB細胞を添加して最初のクローンを産生する工程;
c)該最初のクローンを不朽化する工程;および
d)モノクローナル抗体産生細胞を選択する工程
を包含する、方法。
(項目17) 工程a)およびb)が単一の工程で行われる、項目16に記載の方法。
(項目18) 前記活性化が少なくとも1つの成分特異的免疫刺激分子を含む、項目16に記載の方法。
(項目19) 単一種由来のタンパク質から全体に構成される抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体。
(項目20) 前記種がヒトである、項目19に記載のモノクローナル抗体。
(発明の要旨)
本発明は、成分特異的免疫刺激分子を個々の免疫細胞に標的化送達するための方法および組成物を含む。これらの成分特異的免疫刺激分子は、細胞上に特異的なレセプターがあるために、特定の免疫細胞に結合して刺激する。従って、異なった細胞型の混合物中で、成分特異的免疫刺激分子は、選択されたレセプターを有する細胞にのみ結合し、レセプターを欠く細胞は影響を受けない。免疫細胞のいくつかの集団において、1つの細胞型のみが所定の成分特異的免疫刺激剤に結合するレセプターを含む。他の細胞集団においては、複数の免疫細胞が成分特異的免疫刺激剤に結合するレセプターを含み得る。所定の細胞型が複数の成分特異的免疫刺激剤に対するレセプターを含むことも可能である。
【0045】
免疫細胞に対する標的化送達の方法は、細胞培養物または培地への添加のようなインビトロの技術で使用されるような、またはインビボの投与で使用されるような方法であり得る。インビボでの投与は、細胞への直接適用、またはワクチンをヒト、動物、または他の生物体に送達するのに使用されるような投与経路を含み得る。
【0046】
1つの実施態様では、本発明は、推定される抗原またはワクチン分子によって、抗原/ワクチンに対する免疫応答を増強、変化、または抑制するために、免疫系における特定の個々の成分の同時および/または連続的な標的化刺激のための方法および組成物を含む。本発明の別の局面は、抗原およびワクチンが免疫応答を誘導する有効性を高めることを提供する。1つの実施態様では、本発明の方法および組成物は、多くの異なった個々の免疫成分を特異的な成分刺激組成物を提示することによって同時に刺激することができる。
【0047】
本発明はまた、成分刺激組成物を因子および細胞の相互作用の免疫応答カスケードにおける1つ以上の段階で提供することにより、免疫系の連続的な刺激のための組成物および方法を含む。1つの開示された実施態様において、刺激される特定の免疫成分はマクロファージ、樹状細胞、B細胞、およびT細胞である。
【0048】
好ましい実施態様においては、その方法は、成分刺激組成物の連続的な投与を含む。その組成物は、異なった時間にまた異なった投与方法(例えば、最初は経口、2回目は注射)によって与えられる、同じ成分特異的免疫刺激剤を含み得る。別の好ましい実施態様においては、その方法は、異なった成分特異的免疫刺激剤の連続的な投与を含む。例えば、最初の成分特異的免疫刺激剤は、免疫応答の開始段階を刺激し、次に2番目の成分特異的免疫刺激剤を後で加え、免疫応答の後の段階を刺激する。本発明は、複数の成分特異的免疫刺激剤を、免疫系のいくつかの経路を開始させ、次に後で同じまたは他の成分特異的免疫刺激剤を、免疫応答を継続および増強するために投与することを企図している。
【0049】
さらに、本発明において、本明細書中に記載の組成物および方法は、免疫応答の刺激または免疫反応の抑制のために使用され得ることが企図される。免疫応答を抑制するための成分特異的免疫刺激剤の投与は、自己免疫疾患または臓器の拒絶応答を制御するために使用され得る。
【0050】
別の実施態様においては、本発明は抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体を産生する方法および組成物を含む。これらの方法および組成物は、免疫細胞の変換に依存する。好ましい実施態様においては、その方法および組成物は、循環免疫細胞のインビトロでの変換を含む。これらの細胞は抗原に対する一次応答を生じ、抗原特異的抗体の産生を引き起こす。これらの選択された一次クローンは次に、選択された種由来のタンパク質で全体的に構成される抗体を分泌する細胞を産生するために不死化される。
【0051】
本発明の好ましい実施態様においては、産生された抗体は、ヒト末梢血リンパ球をインビトロで培養することによって産生された、完全なヒトモノクローナル抗体である。本発明の重要な要素は、「自己」分子の抗原性認識である。そのような自己分子は、天然の、または個体に天然に存在する分子、および特定の種に天然に存在するものと同じ構造を有する任意の分子を含む。その抗体は1つの種のみから由来するタンパク質を含むので、この認識は免疫原性を減少させる。
【0052】
しかし、抗体内に含まれているタンパク質は、同じ種由来であるが、個体にとっては外来であるので、これらの抗体は依然としていくらか免疫原性を示し得る。別の好ましい実施態様においては、インビトロで産生されたモノクローナル抗体が1人のヒトまたは動物の血液から作製され、次いで同じ個体に注射される。そのような状況では、抗体が個体由来のタンパク質で全体的に構成されているので、その抗体はわずかな免疫原性しか示さないか、または免疫原性を示さない。
【0053】
一旦これらの一次培養物が抗原特異的抗体を産生するために変換されると、それらは例えばヒト不死化ガン細胞と融合することによって、または抗体産生細胞をrasのようなガン遺伝子またはEpstein Barrウイルスのようなウイルスでトランスフェクトすることによって不死化される。その結果できたハイブリドーマは特異的な抗体の分泌に関してスクリーニングされ、次いで、単一のモノクローナル抗体産生細胞を単離するために、例えば限界希釈法によって処理される。その結果できたヒトモノクローナル抗体はヒトタンパク質のみを含む。いかなる動物タンパク質もヒトモノクローナル抗体の構築に入り込まない。全ての動物タンパク質が存在しないことは、これらの抗体の処置的投与によりヒト抗動物抗体ができないことを保証する。
【0054】
本発明の方法および組成物は、免疫応答の標的化した刺激のためのシステムに対する新しく用途の広いアプローチを提供する。1つの開示された実施態様においては、本発明は成分刺激組成物を含む。好ましい実施態様においては、成分刺激組成物は成分特異的免疫刺激剤を含む。別の好ましい実施態様においては、成分刺激組成物は金属コロイドと結合した成分特異的免疫刺激剤を含む。さらに別の好ましい実施態様においては、そのような組成物は成分特異的免疫刺激剤と組み合わせた抗原を含む。さらに好ましい実施態様においては、抗原および成分特異的免疫刺激剤は金コロイドのような金属コロイドと結合し、その結果できるキメラ分子が免疫成分に提示される。
【0055】
別の開示された実施態様においては、本発明の成分刺激組成物は送達構造またはプラットホームを含む。結合グループの1つのメンバーがこれに結合し、結合グループの相補メンバーが、抗原に結合するか、または成分特異的免疫刺激剤に結合する。より好ましい実施態様においては、結合グループの相補メンバーの1つが成分特異的免疫刺激剤に結合して、結合グループの別の相補メンバーが推定される抗原/ワクチンに結合する。結合グループメンバーはこのような既知の全ての組になった結合グループから選択され得る。この結合グループは抗体/抗原、酵素/基質、およびストレプトアビジン/ビオチンを含むが、この限りではない。
【0056】
そのような組成物の1つの実施態様は、これに可逆的に結合した結合グループの1つのメンバーを有する送達構造またはプラットホームを含む。本発明の好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激分子および抗原/ワクチン分子が結合し、成分刺激組成物を作る結合グループの1つのメンバーに結合できるプラットホームとして金コロイドを含む。より好ましい実施態様においては、結合グループはストレプトアビジン/ビオチンであり、成分特異的免疫刺激分子はサイトカインである。本発明の実施態様はまた、成分特異的免疫刺激分子または抗原/ワクチンの、ポリカチオンを使用することによるような、より特異的でない方法での結合を含む。
【0057】
本発明はまた、様々な異なったキャリアの組み合わせでの抗原および成分特異的免疫刺激剤の提示を含む。例えば、好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激剤および金コロイドと結合した抗原をリポソームキャリア中で投与することを含む。さらなる組み合わせは、活性のあるワクチン候補であるか、または推定されるワクチンのDNAを含むようにパッケージングされたウイルス粒子が散在した金コロイド粒子である。この金粒子はまた、次いでウイルスを特定の免疫細胞に標的化するのに使用され得るサイトカインを含み得る。そのような実施態様は、長期の応答のために、免疫系に抗原をゆっくり放出する内部ワクチン調製物を提供する。この型のワクチンは特にワクチンの1回投与に有利である。リポソームおよびマイクロカプセルを含むがこれに限らない、全ての型のキャリアが本発明において企図されている。
【0058】
従って、本発明の目的は、免疫応答を増強するための、信頼できる、かつ容易な方法を提供することである。
【0059】
本発明の別の目的は、ワクチンの有効性を改善する方法を提供することである。
【0060】
本発明の別の目的は、1回の投与のみで有効な防御をするワクチンを提供することである。
【0061】
さらに本発明の別の目的は、特異的な様式での個々の免疫成分の標的化刺激のための方法を提供することである。
【0062】
本発明のさらなる目的は、抗原および成分特異的免疫刺激剤を、免疫系の個々の成分に対して、同時に提示する方法を提供することである。
【0063】
本発明の別の目的は、免疫系の特定の成分に影響を与え得る、成分特異的免疫刺激剤を含む組成物を提供することである。
【0064】
さらに本発明の別の目的は、免疫応答を抑制するための方法および組成物を提供することである。
【0065】
本発明の別の目的は、原発性腫瘍に対する免疫応答を増強し得るだけでなく、残留疾患に対する全身性の免疫応答をも起こし得る、原発性ガンに対する免疫応答を開始するために、成分特異的免疫刺激剤を同時に/連続的に使用するための組成物を提供することである。
【0066】
本発明のなお別の目的は、原発性腫瘍に対する免疫応答を増強し得るだけでなく、残留疾患に対する全身性の免疫応答をも起こし得る、原発性ガンに対する免疫応答を開始するために、成分特異的免疫刺激剤を同時に/連続的に使用するための組成物を提供することである。
【0067】
本発明のさらなる目的は、分子の抗原性/免疫原性を増大させることである。
【0068】
さらに本発明の別の目的は、インビトロで抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体を生成することである。
【0069】
さらに本発明の別の目的は、ヒト末梢血リンパ球をインビトロで培養することにより、完全なヒトモノクローナル抗体を生成することである。
【0070】
本発明のさらなる目的は、ヒト抗原特異的抗体による疾患の処置を提供することによって、抗原特異的、種特異的な誘導免疫の問題を排除することである。
【0071】
本発明の別の目的は、個人特異的なモノクローナル抗体を産生し、それによって外来性の免疫応答を排除することである。
【0072】
さらに本発明の別の目的は、免疫増強剤の免疫細胞への送達化を標的するための、信頼できる、かつ用途の広い方法および組成物を提供することである。
【0073】
本発明のさらなる目的は、インビトロおよびインビボで成分特異的免疫刺激剤を標的化して送達するための方法および組成物を提供することである。
【0074】
さらに本発明の別の目的は、成分特異的免疫刺激剤を特異的なレセプターを有する細胞に標的化して送達するための方法および組成物である。
【0075】
本発明の別の目的は、成分特異的免疫刺激剤を用いて、推定される抗原/ワクチンに結合および送達し得る標的化した送達システムを含む方法および組成物を提供することである。
【0076】
本特許は少なくとも1つのカラー写真を含む。カラー写真を伴う本特許のコピーは、要求および必要な料金の支払いに際して、特許商標局によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、マクロファージによるEGF/CG/IL−1β複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図2】図2は、樹状細胞によるEGF/CG/TNF−α複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図3】図3は、B細胞によるEGF/CG/IL−6複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図4】図4は、T細胞によるEGF/CG/IL−2複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図5】図5は、本発明のプロセスによるヒト抗ヒトTNF−α抗体の産生を例示する。
【図6a】図6aは、金コロイド/TNF−αとの単離されたヒトリンパ球のこの長期間のインキュベーションによって誘導された巨大細胞形成を例示する200倍の明視野顕微鏡写真である。
【図6b】図6bは、同じ細胞の200倍位相差顕微鏡写真明視野モノグラフである。
【図7】図7は、タンパク質自身に対する抗体応答を生じる金コロイドの必要性を実証する。
【図8】図8は、金染色が活性化B細胞の浮動性クラスターと関連しているが、マクロファージまたは樹状細胞とは関連しないことを例示する。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施態様の模式図である。
【図10】図10は、TNF−αを用いた送達プラットホームの飽和結合動態力学を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
(開示された実施態様の詳細な説明)
(免疫応答の増強)
本発明は、特定の免疫成分を同時にまたは連続的に標的化することによって、免疫応答を増強する、およびワクチン有効性を増大させるための組成物および方法に関連する。より具体的には、マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)、B細胞およびT細胞のようなリンパ球を含むがこれに限らない特定の免疫成分が、1つ以上の成分特異的免疫刺激剤によって個別に影響を受ける。特に好ましい実施態様は、特異的抗原を成分特異的免疫刺激剤と組み合わせて使用する免疫応答の活性化を提供する。本明細書中で使用されているように、成分特異的免疫刺激剤は、免疫系の成分に特異的であり、その成分に影響を与えて、その成分が免疫応答において活性を有するようにし得る薬剤を意味する。その薬剤は免疫系のいくつかの異なった成分に影響を与えることができ、この能力は本発明の方法および組成物に採用され得る。その薬剤は天然に存在し得るか、または分子生物学的技術またはタンパク質レセプター操作によって生成および操作され得る。
免疫応答における成分の活性化は、免疫応答の他の成分を刺激または抑制し、免疫応答の全体的な刺激または抑制を引き起こし得る。表現を簡単にするために、本明細書中では免疫成分の刺激が述べられるが、全ての免疫成分の応答は、刺激、抑制、拒絶およびフィードバック活性を含むがこれに限らない、刺激という用語によって企図されることが理解される。
【0079】
影響を受ける免疫成分は複数の活性を有し得、抑制および刺激の両方か、またはフィードバック機構の開始もしくは抑制を引き起こす。本発明は本明細書中に詳述された免疫学的応答の例に限らず、免疫系の全ての局面における成分特異的効果を企図する。
【0080】
免疫系のそれぞれの成分の活性化は同時、連続的またはそのいずれもの組み合わせであり得る。本発明における方法の実施態様の1つにおいては、複数の成分特異的免疫刺激剤が同時に投与される。この方法においては、免疫系は、それぞれ成分特異的免疫刺激剤を含む組成物を含む4つの別々の調製物によって、同時に刺激される。好ましくは、組成物は、金属コロイドと結合した成分特異的免疫刺激剤を含む。より好ましくは、組成物は、1つの大きさの粒子または異なった大きさの粒子からなる金属コロイドおよび抗原と結合した、成分特異的免疫刺激剤を含む。最も好ましくは、組成物は、1つの大きさの金属コロイドおよび抗原と結合した、または異なった大きさの金属コロイドおよび抗原と結合した成分特異的免疫刺激剤を含む。
【0081】
本発明者らは、個々の免疫成分に、特異的刺激性の、上方制御する効果を与えるのに、ある成分特異的免疫刺激剤を使用し得ることを発見した。例えば、TNF−α(腫瘍壊死因子α)およびFlt−3リガンドは樹状細胞を特異的に刺激するのに対して、インターロイキン−1β(IL−1β)はマクロファージを特異的に刺激する。熱で殺傷したMycobacterium butyricumおよびインターロイキン−6(IL−6)はB細胞の特異的刺激剤であり、インターロイキン−2(IL−2)はT細胞の特異的刺激剤である。そのような成分特異的免疫刺激剤を含む組成物は、それぞれマクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞の特異的な活性化を提供する。例えば、成分特異的免疫刺激剤IL−1βを含む組成物を投与すると、マクロファージが活性化される。好ましい組成物は金属コロイドと結合したIL−1βであり、最も好ましい組成物は、金属コロイドおよび抗原と結合したIL−1βであり、その抗原に対する特異的なマクロファージの応答を起こす。
【0082】
免疫応答の多くの要素が効果的なワクチン接種のために必要である。同時刺激の方法の実施態様は、1)マクロファージに対してIL−1β、2)樹状細胞に対してTNF−αおよびFlt−3リガンド、3)B細胞に対してIL−6、ならびに4)T細胞に対してIL−2を含む成分特異的免疫刺激剤の組成物の、4つの別々の調製物を投与することである。成分特異的免疫刺激剤組成物は、当業者に公知のいかなる経路でも投与され得、そして、望ましい免疫応答に依存して同じ経路または異なった経路を使用し得る。
【0083】
本発明の方法および組成物の別の実施態様においては、個々の免疫応答が連続的に活性化される。例えば、この連続的な活性化は、二期に、感作期および免疫期に分けることができる。感作期はAPC、好ましくはマクロファージおよび樹状細胞の刺激を含み、一方免疫期はリンパ球、好ましくはB細胞およびT細胞の刺激を含む。2つの期それぞれにおいて、個々の免疫成分の活性化は同時または連続的であり得る。連続的な活性化のためには、活性化の好ましい方法は、マクロファージ、次に樹状細胞、次にB細胞、次にT細胞の活性化である。最も好ましい方法は組み合わせた連続的な活性化である。ここでは、マクロファージおよび樹状細胞が同時に活性化され、次にB細胞およびT細胞が同時に活性化される。これは複数の成分特異的免疫刺激剤が免疫系の複数の経路を開始する方法および組成物の1つの例である。
【0084】
本発明の方法および組成物は、あらゆる型のワクチンの効果を増強するために使用し得る。本方法は、活性化のために特定の免疫成分を標的化することによって、ワクチンの効果を増強する。金属コロイドおよび抗原と結合した成分特異的免疫刺激剤を含む組成物は、抗原と特異的免疫成分との接触を増すために使用される。ワクチンが現在入手可能な疾患の例は、コレラ、ジフテリア、Haemophilus、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふくかぜ、百日咳(pertussis)、痘瘡、肺炎球菌肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核、腸チフス、水痘−帯状疱疹、百日咳(whooping cough)、および黄熱病を含むがこの限りではない。
【0085】
抗原を免疫系に送達するのに使用される投与経路およびパッケージングの組み合わせは、望ましい免疫応答を設計するのに強力な手段である。本発明は、免疫刺激組成物の長時間放出を提供し得、リポソーム、マイクロカプセル、またはマイクロスフィアのような様々なパッケージング方法を含む方法および組成物を含む。これらのパッケージングシステムは、抗原を保持して、免疫系を活性化するために抗原をゆっくり放出する、内部貯蔵所のように作用する。例えば、リポソームは、抗原および金属コロイドと結合した成分特異的免疫刺激剤を含む組成物で満たされ得る。さらなる組み合わせは、活性のあるワクチンの候補である、または推定されるワクチンのDNAを含むようにパッケージングされるウイルス粒子が散在した金コロイド粒子である。金粒子はまた、ウイルスを特定の免疫細胞に標的化するために、次いで使用され得るサイトカインを含む。さらに、2つ以上の潜在的なワクチン候補を標的化する融合タンパク質ワクチンを作製して、2つ以上の適用のためのワクチンを生成し得る。粒子は、物質をゆっくり放出し得るポリエチレングリコールを加えることによって化学的に修飾された免疫原も含み得る。
【0086】
抗原/成分特異的免疫刺激剤/金属複合体は、リポソームからゆっくり放出され、免疫系によって外来性のものとして認識され、そして成分特異的免疫刺激剤が指向する特異的成分が、免疫系を活性化する。免疫応答カスケードは、成分特異的免疫刺激剤の存在によってより速く活性化され、免疫応答はより速く、より特異的に起こる。
【0087】
本発明において企図される他の方法および組成物は、抗原/成分特異的免疫刺激剤/金属コロイド複合体(ここでは金属コロイド粒子が、異なった大きさを有する)の使用を含む。成分特異的免疫刺激剤の連続的な投与は、これらの異なった大きさの金属コロイド粒子を用いることによって1回の投与で達成され得る。1回の投与は、抗原およびそれぞれ異なった大きさの金属コロイド粒子と複合体化した、4つの独立した成分特異的免疫刺激剤を含む。従って、同時に投与すると、免疫成分の連続的な活性化が提供され、より効果的なワクチンおよび集団のよりよい防御を生じる。他の型のそのような連続的に活性化する1回投与は、異なった大きさの金属コロイド粒子およびリポソームの組み合わせ、または異なった大きさの金属コロイド粒子で満たされたリポソームによって提供され得る。
【0088】
上記で述べられたようなこのようなワクチン接種システムの使用は、1回で投与し得るワクチンを提供するのに非常に重要である。1回投与は家畜または野生動物の集団のような動物集団を処置するのに重要である。1回投与は低所得者、ホームレス、農村住民のような健康管理に抵抗する集団、または健康管理が不十分な発展途上国の人々を処置するのにきわめて重大である。全ての国の多くの人々が、ワクチン接種のような予防的な型の健康管理を利用できない。結核のような感染性疾患の再出現が、1回で与えることができ、かつなお長時間続く効果的な防御を提供するワクチンの需要を増した。本発明の組成物および方法はそのような効果的な防御を提供する。
【0089】
本発明の方法および組成物は、免疫応答の一部である成分を刺激または抑制することによって、免疫応答が起こっている疾患を処置するために使用され得る。そのような疾患の例はアジソン病、アレルギー、アナフィラキシー、Bruton症候群、固形および血液保有腫瘍を含むガン、湿疹、橋本甲状腺炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、後天性免疫不全症候群、腎臓、心臓、膵臓、肺、骨および肝臓移植のような移植拒絶応答、グレーヴズ病、多発性内分泌(polyendocrine)自己免疫疾患、肝炎、顕微鏡的(microscopic)多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病、抗体による腎炎、糸球体腎炎、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、血清応答陰性の脊椎炎、鼻炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、硬化性胆管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、じんましん、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群(X−linked hyper IgM syndrome)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含むがこの限りではない。
【0090】
本出願は1997年11月10日に出願された米国仮出願第60/065,155号、および1998年2月24日に出願された米国仮出願第60/075,811号、および1998年11月6日に出願された、番号が割り当てられていない合衆国仮出願に対して優先権を請求し、そのまま本明細書中において参考として援用される。
【0091】
(インビトロでのモノクローナル抗体の産生)
本発明の方法および組成物はさらに、免疫応答を増強する抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体を産生するために使用され得る。例えば、これらの抗体は、インビトロで抗原、抗原提示細胞(APC)、B細胞のような免疫細胞、および必要に応じて1つ以上の成分特異的免疫刺激剤を接触させることにより産生される。一旦抗原特異的抗体が検出されれば、活性化された免疫細胞は、例えばヒト不死化ガン細胞と融合することにより不死化される。その結果できたハイブリドーマは特異的な抗体の分泌に関してスクリーニングされ得、次に単一のモノクローナル抗体産生細胞が単離され得る。
【0092】
抗原、APC、免疫細胞、および成分特異的免疫刺激剤は、全て同時にインビトロの培養物へ導入され得る。必要に応じて、これらの様々な成分は、任意の順番または組み合わせで連続的に加えられ得る。抗原および成分特異的免疫刺激剤は2つの別々の分子であり得るか、または複合体の形で存在し得る。例えば、抗原は異なったサイトカインと複合体を作り得る。そのサイトカインは連続的に加えたとき、培養物中の特定の細胞を予想できる段階的な様式で刺激する。
【0093】
APCおよびB細胞のような細胞は任意の供給源から、好ましくは末梢血から得られ得る。あらゆる供給源からの末梢血が、本発明の抗原特異的、種特異的抗体を産生するために使用され得る。本発明の最も重要な使用はヒト抗ヒト抗体の産生であるが、他の動物種に関して抗原特異的、種特異的抗体を開発するために、本発明のプロセスを使用することも同様に可能である。ヒト抗ヒト抗体の産生のために、血液は好都合にAmerican Red Crossから得ることができる。
【0094】
好ましい実施態様では、バフィーコートを全血から分離することが所望される。本発明の実施について重要であるバフィーコート内に2つの異なる成分が存在する。これらは、抗原提示細胞(APC)(例えば、マクロファージ、リンパ球、ランゲルハンス細胞、および樹状細胞およびB細胞)である。B細胞はまた、抗原提示細胞であるが、抗原での提示に際して、それらは抗体応答を生じる。一旦全血から分離されると、バフィーコート全体が使用され得るか、またはAPCおよびB細胞が分離され、そして個々に使用され得る。これらの成分のいずれかが単離され得、そして当業者に周知の手順(例えば、フローサイトメトリ、磁性細胞分離および凍結保存)に従って凍結され得、そして抗体の生成に影響を与えることなく後に使用され得る。
【0095】
抗原、抗原提示細胞(APC)、成分特異的免疫刺激剤、およびB細胞の任意の組み合わせは、本発明において任意の様式でインビトロで使用され得、好ましい調製物は、コロイド金属に結合した抗原を使用する。この実施態様において、バフィーコートまたはAPCを容器に入れる。次いで、コロイド金属結合抗原を、容器に添加し、そしてバフィーコートまたはAPCとともにインキュベートする。
【0096】
抗原結合コロイド金属組成物は、以下に記載の方法によって生成され得る。この抗体結合コロイド金属は、バフィーコートまたはAPCに、単独でまたはアジュバント、免疫原性タンパク質、ヌクレオチドまたは補助的サイトカイン/免疫刺激因子の存在下で(これらは、Th2/B細胞応答の発達を補助する)で添加され得る。必要に応じて、これらのアジュバント、免疫原性タンパク質、ヌクレオチド、および補助サイトカイン/免疫刺激因子は、その抗原が、バフィーコートまたはAPCとのコロイド金属結合抗原のインキュベーションに前に結合した様式と類似の様式でそのコロイド金属に結合され得る。
【0097】
バフィーコート全体が使用される場合のようにB細胞が最初に存在する場合、それらの数は、コロイド金属結合抗原とのインキュベーションの間に涸渇され得る。それゆえ、インキュベーション後、さらなるB細胞を、必要に応じてその容器に添加する。これらのB細胞は、新鮮な状態で得られ得るか、凍結され得るか、または同じサンプルのバフィーコートとは分離されたものであり得る。容器中のAPCは、B細胞を活性化して、コロイド金属に特異的結合した抗原に応答して抗体を生成する。
【0098】
一旦インビトロセロコンバージョンが確認されると、その細胞を不死化させる。この細胞は、いくつかの種々の方法によって不死化され得、これは、例えば、不死化ガン細胞と融合してハイブリドーマを生成することか、またはrasのようなオンコジーンもしくはエプスタインバーウイルスのようなウイルスで抗体生成細胞をトランスフェクトすることによる。しかし、不死化細胞を生成する任意の方法が本発明によって意図される。本発明において有用である、非限定的な不死化ガン細胞株の例は、K6H6/B5細胞、HUNS−1(米国特許第4,720,459号)、KR−12(米国特許第4,693,975号)、WIL2−S、WI−L2−729HF2(米国特許第4,594,325号)、UC729−6(米国特許第4,451,570号)、SKO−007、SKO−007のクローンJ3、GK5、およびLTR−228(米国特許第4,624,921号)である。
【0099】
初代クローンの不死化は任意の様式で達成され得るが、以下の方法が好ましい方法である。不死化したガン細胞を、セロコンバージョンした細胞を含む容器に直接加える。インキュベーション後、その細胞を、無血清DMEM(ダルベッコ最小必須培地)、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)、または任意の無血清生理的緩衝液において洗浄する。次いで、この細胞を、例えば、無血清DMEMに希釈した40%〜100%のPEG溶液を用いて融合する。次いで、融合した細胞を、洗浄し得、そしてそのペレットを、10%のウシ胎仔血清(FBS)、10%OrigenTM、上記で言及した抗原カクテル、および選択培地(例えば、10%の最終濃度でのハイブリドーマン選択因子HAT)を含む50%DMEM/RPMI培地中で再構成し得る。この細胞を、150μlアリコートで、96ウェルの組織培養プレートに播種する。クローンの増殖を増加させるために、必要に応じてその細胞を、初期抗原または抗原/成分特異的な免疫刺激因子混合物(例えば、初期免疫において使用されるもの)の添加によって刺激され得る。
【0100】
その細胞を、約2週間、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を含有する培地中で増殖させ得る。次いで、非選択培地(例えば、HT(ヒポキサンチン、チミジン)で、選択薬物としてHATを置換する。およそ2週間のさらなるインキュベートの後、その細胞を、増殖培地(例えば、抗原カクテル、10%OrigenTM、および10%FBSを補充した50%DMEM/RPMI)中で増殖させる。
【0101】
このサンプルを、増殖期のいずれかの間に抗原特異的な抗体の存在について試験し得、そして好ましくは、全ての増殖期の間で試験する。この試験は、任意の一般的な免疫学的手順(例えば、RIA、EIA、ELIZA、RIDまたはOuchterlony試験)によって行い得る。次いで、陽性クローンを、96ウェルプレートから6ウェルプレートに規模拡大する。この時点で、そのクローンを後の使用のために凍結し得る。
【0102】
このクローンの活性を、プリスタン(pristine)でプライム刺激したマウスにおいて腹水を産生することによるような当該分野で公知の方法によって試験し得る。この腹水を精製し、次いで、この抗体を、十分特徴付けられた細胞株(例えば、TNF感受性細胞株WEHI 164)において生体活性を中和するその能力について試験する。次いで、中和能力を示すクローンを、規模拡大して精製抗体を大量に生産する。
【0103】
本発明の別の実施態様において、バフィーコートまたはAPCは、コロイド金属結合抗原、および必要に応じてアジュバントと同時にインキュベートし得る。。この型のインキュベーションは、Th1様応答から誘発される免疫応答の型(ここで、コロイド金属抗原は、APCと会合し、このAPCは、細胞成分を含んでいても含んでいなくてもよい)を、Th2型応答(ここで、コロイド金属結合抗原は、B細胞の自由に浮遊するクラスターと会合する)へと変化させることが見い出されている。
【0104】
(成分刺激組成物)
本発明の組成物は、成分特異的な免疫刺激因子を含有する。このような組成物は、1つの成分特異的免疫刺激因子または複数の成分特異的免疫刺激因子を含み得る。1つの好ましい実施態様において、この組成物は、コロイド金属と会合した、成分特異的な免疫刺激因子を含む。より好ましくは、この組成物は、コロイド金属と会合した、成分特異的な免疫刺激因子および成分特異的な免疫刺激因子の効果を特異的に標的化するための別のエレメント(これには、抗原、レセプター分子、核酸、医薬、化学療法剤およびキャリアが含まれるがそれらに限定されない)を含む。
【0105】
本発明の組成物は、任意の様式で免疫成分へと送達され得る。別の好ましい実施態様において、抗原および成分特異的な免疫刺激因子は、単一のコロイド金属粒子が抗原および免疫刺激因子の両方に結合するような様式でコロイド金属に結合している。別の実施態様において、多重抗原および/または多重成分特異的な免疫刺激因子は、単一のコロイド金属粒子に結合している。抗原ならびに成分特異的な免疫刺激因子および他のエレメントの、1つ以上のコロイド金属粒子との組み合わせは、本発明によって意図される。これらの錯体化金属粒子の1つまたはいくつかの投与は、本発明の方法の範囲内に含まれる。
【0106】
別の実施態様において、本発明の成分特異的な免疫刺激分子は、送達構造またはプラットフォームを包含する。成分特異的な免疫刺激分子および/または抗原/ワクチンは、そのプラットフォームに直接結合してい得るか、または結合基のメンバーを介してそのプラットフォームに結合してい得る。本発明の好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激因子および推定抗原/ワクチンが結合して標的化免疫増強因子を作製する結合基のメンバーに結合し得るプラットフォームとしてコロイド金属を含む。最も好ましい実施態様において、結合基はストレプトアビジン/ビオチンであり、そして成分特異的免疫刺激因子はサイトカインである。本発明の実施態様はまた、例えば、ポリカチオンまたはタンパク質を用いることによる結合パートナーの使用を伴わずに、あまり特異的でない方法において抗原/ワクチンを結合することを包含し得る。
【0107】
本発明は、コロイド金属をプラットフォームとして使用する、成分特異的な免疫刺激分子の標的化送達のための方法および組成物を包含する。そのようなコロイド金属は、抗原/ワクチンまたは成分特異的免疫刺激因子もしくは抗原/ワクチンのいずれかと相互作用する分子を、可逆的または非可逆的のいずれかで結合する。相互作用する分子は、特異的結合分子(例えば、結合対のメンバー)であり得るか、またはむしろ、あまり特異的には結合しない非特異的な相互作用分子であり得る。本発明は、ポリカチオン性エレメントのような当業者に公知の相互作用分子の使用を意図する。これは、ポリリジン、プロタミン硫酸塩、ヒストンまたはアシアログリコタンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0108】
結合ペアのメンバーは、当業者に公知の任意のそのような結合対を含み、これには、抗体抗原対、酵素−基質対;レセプター−リガンド対;およびストレプトアビジン−ビオチン対が含まれるがそれらに限定されない。新規の結合パートナーが特異的に設計され得る。結合パートナーの必須要素は、その結合パートナーが特異的に結合され得るような、結合対の一方と、その結合対の他のメンバーとの間の特定の結合である。結合メンバーの別の所望される要素は、各メンバーがエフェクター分子もしくは標的分子へ結合し得るかまたは結合され得ることである。
【0109】
本発明の組成物および方法は、上記に記載した結合能力および方法の混合物の変更および組み合わせを含む。例えば、本発明の実施態様は、金属プラットフォームに直接結合した成分特異的な免疫刺激分子、および上記に記載される結合対を結合することのように分子を組み込むことによって特異的な結合またはあまり特異的でない結合のいずれかを介して金属プラットフォームに結合されつつある抗原/ワクチンを含む。本発明の別の実施態様は、コロイド金属プラットフォームに直接的に結合された抗原またはワクチンおよび分子を組み込むことによって特異的な結合またはあまり特異的でない結合を介して結合した成分特異的な免疫刺激分子を含む。さらに別の実施態様では、本発明は、分子を組み込むことまたは成分特異的な免疫刺激分子および抗原/ワクチンの金属プラットフォームへの直接の結合によって、特異的な結合またはあまり特異的でない結合を通じた、金属プラットフォームに対する成分特異的な免疫刺激分子および抗原/ワクチンの両方の結合を含む。本発明のなおさらなる実施態様は、分子をあまり特異的でない組込みによる結合を介して金属プラットフォームへ結合した成分特異的免疫刺激分子、および相補的結合メンバーの結合によって、金属プラットフォームに結合した抗原/ワクチンを結合することを含む。このような実施態様の他の組み合わせおよび変更は、本発明の部分であることを意図する。
【0110】
(プラットフォームに対する組成物成分の結合のための方法)
この組成物のエレメントの各々は、別個にまたは組み合わせて、任意の方法によってコロイド金属に結合され得る。しかし、このエレメントとコロイド金属とンの結合のための好ましい方法は以下のとおりである:この実施例において、この組成物は、抗原および成分特異的免疫刺激因子を含むが、この方法は、この実施態様に限定されない。この抗原は、水中で再構成される。次いで、約50〜100μgの抗原をコロイド金属と共にインキュベートする。
【0111】
コロイド金属混合物のpHは、その成分特異的因子のpIを1〜3pH単位上回るように調整される必要があり得る。次いで、50〜100μgの成分特異的因子を、抗原コロイド混合物に添加し、そしてさらに24時間インキュベートする。この時間の間、この標的成分特異的因子は、抗原金錯体に取り込まれ、免疫成分標的化抗原送達系を生じる。本発明者らは、そのような実験を首尾よく実施し、そして実際、同じコロイド金属粒子において3つまでの異なる部分を連結した。
【0112】
その成分特異的因子の、抗原/Auへの結合後、その混合物を、1〜100%のポリエチレングリコールの1%v/v溶液の添加によって安定化する。他の安定剤には、Brij58およびシステイン、他のスルフヒドリル含有化合物、リン脂質、ポリビニルピロリドン、ポリ−L−リジンおよび/またはポリ−L−プロリンが挙げられ得る。この混合物を、一晩安定化し、そして続いて遠心分離して、結合していない物質から結合した抗原および成分特異的因子を分離する。この混合物を、14,000rpmで30分間遠心分離し、上清を除去し、そしてペレットを1%アルブミンを含有する水中に再懸濁する。この手順は、比較的高い効率の抗原および標的成分の連結を有する。なぜなら、75%〜95%の両方の部分が結合するからである。さらに、そのコロイドに結合しない遊離の物質を、遠心分離によって分離する。
【0113】
(例示成分)
用語「コロイド金属」は、本明細書において使用される場合、任意の水不溶性金属粒子または金属成分ならびに非金属起源のコロイド(例えば、液体または水中に分散したコロイド状炭素(ヒドロゾル))を含む。本発明において使用され得るコロイド金属の例には、周期表のIIA族、IB族、IIB族、およびIIIB族の金属、ならびに遷移金属、特にVIII族の金属が含まれるが、それらに限定されない。好ましい金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムを含む。他の適切な金属はまた、それらの種々の酸化状態における以下のものを含む:リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、錫、タングステン、レニウム、白金およびガドリニウム。金属は、好ましくは、イオン形態(好ましくは、適切な金属化合物に由来する)で提供される(例えば、Al3+イオン、Ru3+イオン、Zn2+イオン、Fe3+イオン、Ni2+イオンおよびCa2+イオン)。好ましい金属は、金(特にAu3+の形態)である。金コロイドの特に好ましい形態は、HAuCl4(E−Y Laboratories、Inc. San Mateo、California)である。別の好ましい金属は、銀(特にホウ酸ナトリウム緩衝液中)であり、約0.1%〜0.001%の間の濃度を有し、そして最も好ましくは約0.01%溶液である。このようなコロイド銀溶液の色は、黄色であり、そしてコロイド粒子は、1〜40nmの範囲である。このような金属イオンは、錯体中で単独で、または他の無機イオンと共に存在し得る。
【0114】
任意の抗原が本発明において使用され得る。本発明において有用である抗原の例は、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンド毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホ毒素、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオテンシン、トランスフォーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、および他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART,MAGE、BAGE、および熱ショックタンパク質(HSP);p53変異体;チロシナーゼ;自己免疫抗原;免疫治療薬物(例えば、AZT);ならびに血管形成薬物および抗新血管形成薬物(例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン)、および塩基性線維芽細胞増殖因子および血管内皮増殖因子(VEGF)を含むがそれらに限定されない。
【0115】
成分特異的な免疫刺激因子は、APCが抗体のB細胞産生を刺激する能力を増加させる任意の分子または化合物であり得る。成分特異的免疫刺激因子の例は、抗原、コロイド金属、アジュバント、レセプター分子、核酸、免疫原性タンパク質、および補助的なサイトカイン/免疫刺激因子、医薬、化学療法剤およびキャリアを含むがそれらに限定されない。これらの成分特異的免疫刺激因子は、別個に、または組み合わせて使用され得る。これらは、遊離状態または錯体(例えば、コロイド金属との組み合わせ)で使用され得る。
【0116】
本発明において有用なアジュバントは、熱殺傷M.butyricum、およびM.tuberculosisを包含するがそれらに限定されない。非限定的なヌクレオチドの例は、DNA、RNA、mRNA、センスおよびアンチセンスである。免疫原性タンパク質の例は、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン(Cyanin))、チログロブリン、および融合タンパク質(これは、アジュバントおよびその遺伝子にコードされた抗原部分を有する)である。
【0117】
補助的サイトカイン/免疫刺激因子は、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンド毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホ毒素、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオテンシン、トランスフォーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、および他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART,MAGE、BAGE、およびHSP;flt3リガンド/レセプター系;分子およびレセプターのB7ファミリー;CD40リガンド/レセプター;および免疫治療薬物(例えば、AZT)、ならびに新血管形成薬物および抗新血管形成薬物(例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン)、および塩基性線維芽細胞増殖因子および血管内皮増殖因子(VEGF)を含むがそれらに限定されない。
【0118】
コロイド金属の使用以外の方法および組成物を使用して、成分特異的免疫刺激因子を、単独または抗原もしくは他のエレメントと組み合わせて送達し得る。例えば、この組成物は、リポソームまたはミクロスフェアにカプセル化され得るか、あるいはウイルスベクターのような他の細胞送達ビヒクルの手段によって送達され得る。さらなる組み合わせは、ウイルス粒子とともに包埋した金コロイド粒子である。これは、活性なワクチン候補であるかまたは推定のワクチンのためのDNAを含むようにパッケージングされる。この金粒子はまた、サイトカインを含み、これは、次いで、特定の免疫細胞に対してそのウイルスを標的化するために使用され得る。さらに、2つ以上の潜在的なワクチン候補を標的化し、そして2つ以上の適用についてワクチンを生成する融合タンパク質ワクチンを作製し得る。この粒子はまた、その物質をゆっくり放出し得る、ポリエチレングリコールの添加によって化学改変され得る免疫原を含み得る。
【0119】
成分特異的免疫刺激因子は、公知の遺伝子治療方法を用いてそれらの核酸の形態で送達され得、そして翻訳後にそれらの効果を生じる。免疫成分(例えば、抗原)の活性化のためのさらなるエレメントが同時にまたは連続的に送達され得、その結果細胞で翻訳された成分特異的免疫刺激因子および外的に添加されたエレメントが協調して作用して、免疫応答が特異的に標的化される。
【0120】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。これは、いかなるようにも本発明の範囲に対して限定を課すとは解釈されない。対照的に、種々の他の実施態様、改変およびその等価物に対して手段が講じられ得、本明細書における説明を読んだ後に、それら自体が本発明の精神および/または添付の請求の範囲から逸脱することなく当業者に示唆し得ることは明らかに理解されるはずである。
【実施例】
【0121】
(実験的データ)
(実施例1)
以下は一般的な実験プロトコルであり、分子(抗原であれ分特異的免疫刺激因子であれ)を金コロイドへ結合するために、このプロトコルに従った。この分子を、水中で再構成した。200μgのこの分子を25mLの金コロイドとともに24時間インキュベートした。次いで、分子/金コロイド錯体溶液を14,000rpmで20分間、室温で微小遠心分離機中で遠心分離した。次いで、上清をペレットから除去した。
【0122】
(実施例2)
50μgの上皮増殖因子(EGF)を、pH11.0で25mLの40nMの金コロイド粒子に結合させた。この溶液を、揺動台(rocking platform)上で24時間揺らした。50μg(50μlとして添加した)の標的化サイトカイン(すなわち、マクロファージを標的化するためのIL−1β、T細胞を標的化するためのIL−2、B細胞を標的化するためのIL−6、および樹状細胞を標的化するためのTNF−αまたはFlt−3リガンドのいずれか)を、EGF/Au溶液に添加し、そしてさらに24時間揺らした。次いで、物質に結合した金コロイドおよび結合していない金コロイドを分離するために,その溶液を14,000rpmで遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを、1%ヒト血清アルブミンを含む1mlの水中で再構成した。
【0123】
(実施例3)
EGFを、実施例2での手順を用いて金コロイド(CG)に結合させた。次いで、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG錯体に結合させてEGF/CG/TNF−αキメラを作製した。
【0124】
(実施例4)
EGFを、実施例2での手順を用いて金コロイド(CG)に結合させた。次いで、インターロイキン6(IL−6)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG錯体に結合させてEGF/CG/IL−6キメラを作製した。
【0125】
(実施例5)
EGFを、実施例2での手順を用いて金コロイド(CG)に結合させた。次いで、インターロイキン2(IL−2)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG錯体に結合させてEGF/CG/IL−2キメラを作製した。
【0126】
(実施例6)
バフィーコートを、当該分野で周知であるように、全血のサンプルから分離した。100〜500mLの全血をヘパリン上で収集した。この血液を注意深く50%(v/v)フィコル−ハイパック溶液上に重層し、そして2700rpmで7分間遠心分離した。血清/フィコル界面での白血球細胞の収集物であるバフィーコートを、パスツールピペットで収集し、そして0.5mg/mLヘパリンを含む10mLのPBSに配置した。これを1500rpmで遠心分離し、そしてペレットを洗浄し、そして再遠心分離した。この細胞を、2回PBS溶液中で洗浄し、そして再び1回遠心分離した。
【0127】
この細胞を、10%の仔ウシ血清または正常ヒト血清のいずれかを含むRPMI中に再懸濁し、そして6ウェルプレートで細胞密度106細胞/ウェルで培養した。この細胞を次いで、50〜100μlの1つまたはすべての抗原/サイトカイン混合物を刺激した。
【0128】
図1に示すように、マクロファージのみがEGF/CG/IL−1βキメラをインターナライズさせたが、樹状細胞のみがEGF/CG/TNF−αキメラをインターナライズさせた(図2)。同様に、B細胞のみがEGF/CG/IL−6キメラをインターナライズさせたが(図3)、T細胞のみがEGF/CG/IL−2キメラをインターナライズさせた(図4)。
【0129】
この実験によって示されるように、特定の成分特異的免疫刺激因子は、個々の免疫成分について特異的である。従って、成分特異的免疫刺激因子を用いて特定の免疫成分を標的化し、それによってそれらの免疫応答を増強して免疫応答全体における活性の上昇をもたらすことが可能である。
【0130】
(実施例7)
この実施例について、ブドウ球菌エンテロトキシンBを、推定の抗原/ワクチン分子として使用した。なぜなら、その毒素を金コロイドに結合させるとその毒性が減少するという証拠が存在するからである。500μgのその毒素を、最初に250mlの40nM金コロイド粒子に結合させた。次いで、このコロイド溶液をアリコートした。50μgの標的化サイトカイン(IL−1β、IL−2、IL−6およびTNF−α)を、そのアリコートの1つに添加し、そして24時間再インキュベートした。この毒素−AU−サイトカインコロイドを、14,000rpmで遠心分離し、そして上清を除去した。ペレットを1mlの水で再構成した。このペレットを、サンドイッチELISAまたは競合ELISAのいずれかによってサイトカイン濃度についてアッセイした。これを行って、生理食塩水または毒素単独を受けるコントロール動物において注射されるべききれいな(neat)サイトカイン(結合していない)の量を決定した。
【0131】
免疫戦略は、きれいな毒素/サイトカイン混合物(組成物コントロールとして)、あるいは毒素−Au−サイトカインキメラの同時投与または連続投与を伴う。5匹のマウス/群に、1日目、5日目、および9日目に、2.5μgのきれいな毒素または同じ用量の金コロイドに結合した毒素/サイトカイン混合物を注射した。14日間の免疫期間の間、2つのさらなる群のマウスに、表1に提供されるスケジュールに従って、きれいな毒素/サイトカインまたは毒素−Au−サイトカインを与えた。
【0132】
【表1】
全ての群を、1μgのきれいな毒素単独で30日目に再チャレンジした。保護的免疫は、きれいな毒素の、罹患率を誘発する能力の減少または欠如によって実証された。鍵となる観察は、金コロイドに結合した毒素は、その毒素の毒性を非常に減少させたことである。第二に、その毒素に対する血清抗体力価は、きれいな処置単独を受けたマウスよりも10倍高かった。しかし、連続的な処置を受けた動物の血清抗体は、きれいな処置を受けた動物よりも、100倍高かった。最後に、きれいな毒素で再チャレンジすると、毒素で処置した動物の100%が死んだが、他方で、同時の群においては20%の致死率が観察されたのみであった。
【0133】
従って、本発明の組成物および方法は、ワクチンの効力を増加するために使用され得る。
【0134】
(実施例8)
(金コロイドに対するサイトカインの結合)
ヒトTNF−αをpH11の水中で1μg/mlの最終濃度に戻した。300μgの組換えヒトTNF−αを、混合している間、一晩、25mlの30〜40nmの金コロイド粒子と共に揺動台でインキュベートした。
【0135】
25mlの金コロイド結合TNF−α溶液を半分に分けた。1つのアリコートを125μlの100% PEG溶液でブロックした。他のアリコートはブロックしなかった。2つのアリコートを揺動台上に戻し、さらに1〜5日インキュベートした。
【0136】
次いで、2つのアリコートを14,000rpmで20分間遠心分離した。上清をペレットから取り除いた。ペレットをpH11の水中で10mlのヒト血清アルブミン(HSA)の1%溶液を用いて再構成することによってブロックした。
【0137】
アリコートを6時間、揺動台で混合した。次いで、このアリコートを14,000rpmで20分間遠心分離し、そしてpH11の水中で3.5mlの1% HSAにおいて再構成した。
【0138】
(実施例9)
(ヒト−抗−ヒト TNF−α抗体の生成)
軟膜をフィコレーション(ficollation)によって末梢血液から分離し、そして0.5mg/ml ヘパリンおよびEDTAを含むPBSで洗浄した。細胞を10−T−75培養フラスコに置いた。この細胞を2週間、10% 加熱して不活性化したウシ胎仔血清、10% OrigenTMおよび以下のサイトカインから構成される100ng/mlのサイトカイン反応混液とRPMI中で2週間培養した:IL−4、IL−6、IL−7、IL−10、IL−11、幹細胞因子(「SCF」)、GMCSF、およびGSFの単独および金コロイドと結合したもの両方。
【0139】
(実施例10)
(ヒト−抗−ヒトTNF−α抗体についてのELISAアッセイ)
1mlのアリコートを実施例9に示したように処置した3つのフラスコの細胞から採集し、そして1,500rpmで15分間遠心分離した。この上清を回収し、そして−20℃で保存した。
【0140】
組換えヒトTNFを炭酸/炭酸水素緩衝液中でマイクロタイタープレートのウェル上にコートした。プレートを2.0ml/l Tween20を有するTBSで4回洗浄した。100μlの上清を各ウェルに添加した。コントロールウェルには使用していない増殖培地を入れた。サンプルを室温で一晩インキュベートした。
【0141】
次いでプレートを洗浄し、そして1:1000希釈した(TBS+0.1% BSAで)100μlのアルカリホスファターゼ結合体化したヤギ−抗−ヒトIgGを1時間ウェルでインキュベートした。次いで、プレートを再洗浄し、そして100μlのアルカリホスファターゼ基質(pNPP)を適切な色が発色するまでウェルでインキュベートした。
【0142】
このアッセイの結果を図5に例示する。この図は、ヒト−抗−ヒトTNF−α抗体を、実施例8および9に記載されているような本発明の方法によって生成したことを示す。
【0143】
(実施例11)
(細胞融合およびハイブリドーマ選択)
一旦、実施例9における細胞のインビトロセロコンバージョンが確認されると、106〜107のK6H6/B5ミエローマ細胞を、セロコンバージョンされた細胞が検出される容器に直接加えた。この細胞を緩やかに混合し、回収し、そして1,200rpmで15分間遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを血清を含まないDMEMで洗浄した。細胞を最後に1回、遠心分離し、そして上清を完全に除去した。ペレットを緩やかに叩いて取出し、そして細胞を以下の表に記載される戦略に従って53% PEG 1450を加えることによって融合した。
【0144】
PEG溶液を37℃で細胞を振とうしている間に、以下の方法およびインキュベーションを使用して細胞に添加した。
【0145】
【表2】
次に血清を含まないDMEMを、以下のスケジュールを使用して細胞に添加した。
【0146】
【表3】
細胞を、引き続いて1,200rpmで15分間遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを10% FBS、10% OrigenTM、上述のサイトカイン反応混液およびハイブリドーマ選択剤HATを、10%の最終濃度で含む50% DMEM/RPMI培地中で再構成した。細胞を最初に、150μlのアリコートで5つの96ウェル組織培養クラスターに播種した。クローンの増殖を増加するために、細胞をまた最初の免疫化において使用される25μlの金コロイド結合TNF−αで刺激した。
【0147】
細胞を2週間、培地を含むHAT中で増殖し、この後、HTを選択薬剤としてHATと置換した。増殖の2週間後、細胞をサイトカイン反応混液、10% OrigenTMおよび10% FBSで補充された50% DMEM/RPMI培地中で増殖した。
【0148】
(実施例12)
(陽性抗体機能に関する上清の試験)
実施例13におけるサンプル中のTNF−α−特異的抗体の存在を増殖のすべての段階中に試験した。上清を最初に直接EIAによって、次いでTNF−αによる用量依存様式でWEHI細胞の増殖の阻害を測定するインビトロアッセイによって試験した。ポジティブクローンを元の96ウェルプレートから6ウェルプレートにスケールアップした。引き続いて、ポジティブを試験するクローンすべてを低温保存法、ならびに元の初回刺激のマウスにおける5mlの腹水の生成のためにスケールアップした。腹水を精製し、そして抗体をTNF−αによるWEHI細胞の増殖の阻害を妨げるその能力について試験した。生物活性をブロックする精製抗体の能力は、その中和活性を示した。
【0149】
中和活性を示すクローンを10〜100mgの精製抗体を生成するためにスケールアップした。これらの抗体を最初に、外因的に投与されたTNF−αのインビボ中和化についてスクリーニングした。
【0150】
(実施例13)
(フローサイトメトリーによって測定された細胞表面マーカーに対する金コロイド結合TNF−αの効果)
軟膜を米国赤十字から得、そしてフィコールを使用して分離した。リンパ球を0.2mg/ml へパリンを含むPBSで3回洗浄し、そしてフィコールで再度処理した。洗浄後、ウェル当たり100〜500万の細胞を10% FBSで補充したDMEM中で9〜12ウェル組織培養クラスターに播種した。
【0151】
各ウェルは、2mlの(1)培地単独、(2)0.5μg/mlのマイトジェン、フィトヘマグルチニン(PHA)(T細胞応答の誘導のため)、(3)1.0μg/mlのマイトジェン、リポポリサッカライド(LPS)(炎症応答の誘導のため)または(4)マイトジェン、LPSおよびPHAのそれぞれ0.5および1.0μg/mlの最終濃度での組み合わせのいずれかを含んだ。他のマイトジェン(例えば、ヤマゴボウマイトジェン)ならびにスーパー抗原(例えば、このアッセイにおけるブドウ球菌の菌体内毒素AおよびB)を含むほかの薬剤を使用することが可能であることに留意のこと。細胞をマイトジェン(PHAまたはLPS)単独、あるいはHSA(ヒト血清アルブミン)においてポリエチレングリコール(PEG)で安定化された金/TNF−αまたはHSA単独で処理した金/TNF−αのいずれかの存在下でのマイトジェンのいずれかで刺激した。培養プレートを細胞表面、細胞活性マーカー、およびサイトカイン発現のフローサイトメトリ分析のために採集した。
【0152】
細胞をBeckton Dickinson FacscaliburおよびBecton Dickinson tritest MABセットを使用してこれらのCD4、CD8、およびCD19レベル、ならびに活性化マーカーCD69における変化について分析した。これを、細胞を収集し、遠心分離し、そして1.8mlの上清を除去することによって行なった。細胞を力価測定した(すなわち細胞ペレットを再懸濁し、そして75μlのサンプルを製造者の指示書に従って、適切なMABとともにインキュベートした)。
【0153】
フローサイトメトリーによって、処理後24〜48時間でコントロール細胞と金処理した細胞との間でCD4、CD8またはCD19レベルにおいていずれの相違も検出しなかったが、プレートの可視検査は、クラスター様形成物が未処置および金処理細胞の両方において形成したことを示した。さらに金コロイド結合体化TNF−αで処理した細胞において、クラスターの数がより多く出現し、より多い頻度および細胞密度であった。さらに興味深いことに、周辺の細胞は、金処理したクラスターに向かって移動するようであった。このことは、明確な細胞移動の段階的変化が存在するので、金を溶出しているTNF−αを反映し得る。さらに、細胞の移動は、PEG安定化金結合TNF−αで処理した細胞において著しくなく、このことはTNFは金を溶出しないか、またはずっと少ない程度で溶出していたことを示す。
【0154】
マイトジェン処理後48時間で、PHAを使用した白血球の刺激によって誘導される培地の代表的な馴化を観察した。しかし、PEGで安定化されるか、または、安定化されない金結合TNF−αで処理したウェル中の細胞は、有意には培地の馴化をほとんど示さず、このことは金/TNF−αがPHA誘導有糸分裂誘発をブロックしたことを示す。このことは、金コロイドがTh1−様T細胞応答をブロックすることを示し得る。
【0155】
フローサイトメトリー分析は、刺激後24〜48時間内にCD4、CD8またはCD19細胞集団におけるいずれの有意な変化も示さなかったが、いくつかの細胞型内への金コロイド結合TNF−αの輸送が観察された。コントロール細胞が正常な透明な表現型を有したが、安定化金処理細胞および非安定化金処理細胞は、細胞ならびに細胞クラスター上のいくつかの位置において金染色の濃度を有した。金の分布は、中央の細胞内位置から細胞表面まで変動した。また、この物質は、円形および樹状細胞を含む多重細胞型でみられた。円形細胞において、金物質の局在化は、核においてか、細胞表面の一方の側においてかのいずれかであった。細胞表面マーカーによって同定されないが、巨大細胞を形成する細胞の能力ゆえに、円形細胞は、単核細胞/マクロファージを分化していると考えられる(図6aおよび6b)。金コロイド染色は時間と共に消失し、従って持続性ではないようである。このことは、金コロイド/TNF−α混合物が一旦、細胞中に入ると、それが代謝されていることを示す。しかし、この染色は金コロイド結合TNF−αでの再刺激で再出現したので、細胞は金コロイドを取り込む能力を保持していた。
【0156】
図6aは、金コロイド/TNF−αとともに単離されたヒトリンパ球を長期間インキュベートして誘導された巨大細胞形成を例示する、200倍明視野顕微鏡写真である。図6bは、同じ細胞の200倍位相差顕微鏡写真明視野モノグラフである。
【0157】
(実施例14)
リンパ球をアメリカ赤十字から得たヒト末梢血液の軟膜から単離した。リンパ球を(1)金コロイド単独、(2)ヒト血清アルブミン(HSA)と結合した金コロイド、または(3)TNF−αと結合した金コロイドのいずれかで処理した。各群を2つのアリコートに分けた。1つのアリコートを1% PEGでブロックし、そして残った他方を無処理とした。
【0158】
金または金/HSA群を取り込む最初の細胞型は、マクロファージであった。これを巨大細胞形成によって確認した。しかし、図7に例示したように、TNF−α/金群において金を取り込む最初の細胞型は、伸長した形態の樹状細胞を有した。
【0159】
この結果は、金コロイド結合TNF−αのレセプター媒介結合を示す。さらに、樹状細胞の分化に関するTNF−αの必要性は、金コロイド結合TNF−αがその生物学的活性を保持したことを示唆する。
【0160】
(実施例15)
この実験を、単離されたリンパ球による金コロイドの取り込みに対するアジュバント成分の効果を決定するために設計した。この実験を、さらなる群の細胞を含むことを除いて、実施例6および7と同じ様式で行った。これらの細胞は、100μlの加熱殺傷したMycobacterium Butyricumの1.0mg/ml懸濁物を受容した。この細菌を抗体生成のためのアジュバント調製において慣用的に使用する。
【0161】
図8に例示するように、金染色は、マクロファージまたは樹状細胞のいずれとももはや関連しないが、細胞の浮動性クラスターと関連し、これはB−細胞を活性化し得る。表現型を決定する研究を、この仮説を確かめるために現在進行中である。
【0162】
(実施例16)
金コロイドに結合したストレプトアビジンは飽和性の結合動力学を示した。この実験のために、500μgのストレプトアビジンを50mlの32nm金コロイドに1時間結合させた。次いで、5mlの安定化溶液(5% PEG 1450、0.1% BSA)をチューブに添加し、そしてさらに30分間混合させた。この溶液を遠心分離して、非結合ストレプトアビジンを除去し、そして5mlの安定化溶液で2回洗浄した。最終遠心の後、ペレットを安定化溶液で5mlの容量に戻した。1mlのアリコートを微量遠心チューブに分配した。これらのチューブに量の増加量のビオチン化ヒトTNFαを添加した。ビオチン化したサイトカインを1時間ストレプトアビジン金とともにインキュベートした。この物質を10分間、10,000rpmで遠心分離した。生じた上清を回収し、そしてTNF測定のために使用した。各チューブからのペレットを1回、安定化溶液で洗浄し、そして再度遠心分離した。この遠心からの上清をすてた。ペレットを安定化溶液で1mlに戻し、そしてペレットおよび最初の上清の両方を本発明者らのCYTELISATMTNFキットを使用して、TNF濃度についてアッセイした。ビオチン化TNF免疫反応性の90%以上がペレット中で見出され(図10)、ビオチン化TNFがストレプトアビジンに結合した金によって捕捉されることを示すことが理解され得る。
【0163】
(実施例17)
この実施例は、標的化した薬物送達系としてストレプトアビジン金複合体の実施可能性を評価するためであった。このことが生じるためには、ストレプトアビジン結合体化金コロイドは、ビオチン化した標的リガンドならびにビオチン化した治療薬の両方に結合しなければならない。このことを研究するために、本発明者らは、以下の実験を行った。
【0164】
100mlの32nmの金コロイド溶液を飽和濃度のストレプトアビジンで結合させた。1時間後、この溶液を遠心分離し、そして上記のように洗浄した。次いで、金コロイド結合ストレプトアビジンを準飽和濃度のビオチン化サイトカインと結合させた。この物質をボルテックスし、そして室温で1時間、インキュベートした。その後、この溶液を遠心分離し、そしてペレットをビオチン化したポリリジン溶液とともにインキュベートした。1時間のインキュベートの後、この溶液を再遠心分離し、そして洗浄した。最終の遠心および再懸濁の後(溶液の最終濃度は約1mlであった)、50μgのβガラクトシダーゼレポーター遺伝子を、濃縮したストレプトアビジン/ビオチン化サイトカイン/ポリリジンキメラとともに1時間インキュベートした。この物質を遠心分離し、非結合プラスミドDNAを除去した。最終構築物(ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチン ポリリジン−DNA)を14,000rpmで遠心分離した。上清を260nmでそのODを測定することによってDNAの存在についてアッセイした。本発明者らは、ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチンポリリジン構築物とともにプラスミドDNAをインキュベートした後、260nmでの上清ODにおいて0.95〜0.25までの減少を観察した。DNAをビオチン EGF−SAP−Au−ビオチンポリリジン−DNAによって結合し、そして溶液からペレットに遠心分離した。これらのデータは、新しい薬物送達系が金コロイドに結合しているアビジンを使用して開発されたことを示す。次いで、金コロイドに基づいた薬物/遺伝子送達系にこれらの分子を結合するための方法として、標的化および送達ペイロードのビオチン化を使用した。
【0165】
もちろん、前述は本発明の好ましい実施態様のみに関し、そして多数の改変または変更が添付の特許請求範囲に示されるような本発明の意図および範囲から逸脱することなくそこに使用され得る。
【技術分野】
【0001】
(関連した出願の相互参照)
この出願は1997年11月10日に出願された合衆国仮出願60/065,155号、および1998年2月24日に出願された合衆国仮出願60/075,811号、および1998年11月6日に出願された番号が割り当てられていない合衆国仮出願に対して優先権を請求する。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は一般的には免疫学に関連する。より具体的には、本発明はヒトおよび動物における免疫応答の増強に関する方法および組成物に関連する。そのような増強は、免疫応答の刺激または抑制を生じ得る。本発明はまた、ヒトまたは動物において免疫応答を増強するために、抗原性の成分を特定の免疫細胞に対して簡単に効果的に提示する、標的化成分刺激組成物に関連する。本発明はさらに、そのような方法および組成物を抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体の産生のために使用すること、およびそのような抗体のインビトロでの産生方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
所望の薬剤を特定の標的細胞に導入することは、長い間科学者たちの努力目標であった。薬剤の特異的な標的化の目標は、生物体の他の部分に曝露しすぎることない、生物体の標的細胞に対する適当な量の薬剤または正しい薬剤を得ることである。特定の薬剤を送達する非常に望ましい標的は、免疫系の選択的な制御である。免疫系は体の複雑な応答系で、様々な活性を有する多くの様々な種類の細胞が関与する。免疫系の一部分の活性化は、この系の他の関連する部分の望ましくない活性化に起因して、通常多くの様々な応答を引き起こす。現在、免疫系の特定の成分を標的化することによって、望ましい応答を起こす方法または組成物は存在しない。
【0004】
使用されて限られた成功をおさめた1つの方法は、特異的なレセプターを持つ細胞を標的化し、そして薬剤のキャリアとして働く、そのレセプターに対する抗体を提供することである。その薬剤は細胞の刺激物である薬物的組成物であり得る。また、治療剤は細胞死を引き起こす放射活性部分であり得る。この技術の固有の問題点は、特異的なレセプターの単離、そのレセプターに選択的な活性を持ち、そして他の同様なエピトープに対して交差応答性を示さない抗体の産生、および薬剤の抗体への結合である。そのような限られた送達に伴う問題点は、薬剤が標的細胞内部で放出され得ないこと、薬剤が抗体に放出可能に結合されないことであり、従って、薬剤が一旦その部位に送達されると完全に活性であり得ないか、または全く活性であり得ない。
【0005】
免疫系は体の複雑な相互作用系であり、体内および体外の両方からの刺激と相互作用する細胞、細胞因子を含む多くの種類の成分が関与する。その直接作用に加えて、免疫系の応答は神経系、呼吸器系、循環系、および消化器系を含む体の他の系によってもまた影響される。
【0006】
免疫系のよりよく知られている局面の1つは、侵入してきた生物体、体内の細胞の変化、またはワクチン接種により提示される、外来性抗原に対して応答する能力である。免疫系のそのような活性化に応答する最初の種類の細胞のいくつかは、食細胞およびナチュラルキラー細胞である。他の細胞の中で、食細胞は単球、マクロファージ、および多形核好中球を含む。これらの細胞は一般的に外来性抗原に結合し、中に取り込んでそれを破壊し得る。それらはまた、炎症性応答のような他の免疫応答を媒介する可溶性分子を産生する。ナチュラルキラー細胞は特定のウイルスに感染した胚細胞、および腫瘍細胞を認識して破壊し得る。免疫応答の他の因子は、外来性抗原に対して独立に応答し得るか、あるいは細胞または抗体と共同して作用し得る両方の補体経路を含む。
【0007】
ワクチン接種に重要な免疫系の局面の1つは、特定の病原体または外来性抗原に対する免疫系の特異的な応答である。応答の一部分はその外来性抗原に対する「記憶」の確立を含む。2回目に曝露されたとき、記憶機能により、外来性の抗原に対するより早い、そして一般的にはより大きな応答が可能となる。リンパ球が他の細胞および因子と共同して、記憶機能および応答の両方において主要な役割をはたす。
【0008】
一般的には、抗原に対する応答は体液性の応答および細胞性の応答の両方が関与すると考えられている。体液性免疫応答は、細胞によって放出され、そして血漿または細胞内液中に遊離して見られても見られなくてもよい非細胞因子によって媒介される。免疫系の体液性応答の主要な要素は、Bリンパ球によって産生される抗体によって媒介される。細胞性免疫応答は、抗原提示細胞およびBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)を含む細胞の相互作用の結果起こる。
【0009】
外来性抗原を、様々な種類の細胞、主としてマクロファージまたは他の抗原提示細胞が認識することにより応答が始まる。これはリンパ球、特にその特定の外来性抗原を特異的に認識するリンパ球の活性化に至り、免疫応答の発生を生じ、そしておそらく外来性抗原を排除する。外来性抗原の排除を指向する免疫応答の構築は複雑な相互作用で、ヘルパー機能、刺激機能、抑制機能、および他の応答を起こす。免疫系応答の強さは、刺激および抑制のために複数の部位で注意深く制御されなければならない。さもないと応答は起こらないか、過剰に応答するか、または排除の後も終わらないかである。
【0010】
外来性抗原に対する応答の認識段階は、外来性抗原が免疫細胞上の特定のレセプターに結合することからなる。これらのレセプターは一般的に抗原への曝露の前に存在する。認識はまた、マクロファージ様細胞によるか、または血清または体液中の因子による認識による、抗原との相互作用を含み得る。
【0011】
活性化段階では、リンパ球は少なくとの2つの主要な変化をうける。リンパ球は増殖し、抗原特異的リンパ球のクローンを拡大、および応答の増幅をもたらす。そして抗原刺激されたリンパ球は、エフェクター細胞または、生存し、抗原に対する再曝露への応答に備える記憶細胞のどちらかに分化する。この応答を増強する数多くの増幅機構が存在する。
【0012】
作用段階では、活性化されたリンパ球が、抗原を排除またはワクチン応答の確立をもたらし得る機能を行う。そのような機能は、調節機能、ヘルパー機能、刺激機能、抑制機能、または記憶機能のような細胞の応答を含む。多くのエフェクター機能は、細胞および細胞因子が組み合わさって関与することを必要とする。例えば、抗体は外来性抗原に結合して血中好中球および単核食細胞による食作用を増強する。補体経路は活性化されて、発熱のような他の体の応答を引き起こすのに加えて、微生物の溶菌および食作用に関与し得る。
【0013】
抗原に対する免疫応答において、免疫細胞は直接の細胞間の接触によってか、または間接的な細胞間の(因子が媒介する)情報伝達によって、お互いに相互作用する。例えば、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、およびB細胞間の相互作用が有効な免疫応答に必要である。BおよびT細胞は、抗原を提示し、そして休止細胞に活性化シグナルを伝える抗原提示細胞(APC)である樹状細胞またはマクロファージからのシグナルにより活性化される。活性化されたT細胞は、免疫応答を制御するのを助け、そして外来性の生物体の除去に関与する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞前駆細胞がキラー細胞になるのを助け、B細胞が抗体を作るのを助け、マクロファージのような他の細胞の機能を高めるのを助けるような、より良好なエフェクター細胞に細胞をする。活性化されたB細胞は分裂し、抗原特異的抗体および記憶B細胞を産生する。免疫応答に関与する細胞はまた、食作用の機能を増強し、炎症性応答を刺激し、様々な細胞に作用する細胞因子またはサイトカインを分泌する。
【0014】
これらの細胞の応答はまた、フィードバック回路を含む。マクロファージおよび他の単核食細胞、またはAPCは、活発に抗原を食作用してBおよびT細胞に提示し、そのような活性はリンパ球の細胞因子により増強され得る。マクロファージもまたサイトカインを産生し、とりわけ、T細胞の増殖および分化を刺激し、他の炎症性細胞、特に好中球を呼び寄せ(recruit)、例えば発熱のような多くの全身性の炎症性効果の原因となる。インターロイキン−12と呼ばれる、そのようなサイトカインの1つは、細胞性免疫の発生に特に重要である。
【0015】
樹状細胞もまた免疫応答を開始するAPCである。リンパ系樹状細胞および皮膚のランゲルハンス細胞を含む多くの異なった型の樹状細胞が存在する。それらは全身、特に脾臓、節、扁桃、パイアー斑、および胸腺で見られ得る。それらは不規則な形をした細胞で、樹状(木のような)突起を連続的に伸ばしたり縮めたりする。免疫系におけるそれらの役割の1つは、BおよびT細胞の活性化および分化を調節および誘導することである。それらは細胞傷害性T細胞の発生、B細胞による抗体形成、および酸化的有糸分裂生起のようないくつかのポリクローナルな応答に対する強力なアクセサリー細胞である。それらはまた、T細胞を刺激してサイトカインであるインターロイキン−2を放出させる。
【0016】
ワクチン接種の重要な武器は、Bリンパ球またはB細胞によって提供される抗原に対する応答である。B細胞は循環リンパ球の約5から15%を占める。B細胞はイムノグロブリンであるIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを産生し、それらは体液中に放出されるか、付随するタンパク質と共に分泌されるか、またはB細胞の膜表面に挿入され得る。そのような固定化されたイムノグロブリンは特異的な抗原レセプターとしてはたらく。抗原に応答して、これらのイムノグロブリンレセプターはキャップ形成として知られる架橋をされ、次に内部に取り込まれてイムノグロブリンが分解される。キャップ形成はまたB細胞の膜表面に存在する糖タンパク質とともに起こる。
【0017】
血漿B細胞は、細胞外に存在する、または細胞と付随した形態における外来性タンパク質、多糖、脂質、または他の化学物質に結合し得る抗体分子を産生し分泌する。単一の血漿細胞によって産生された抗体は1つの抗原に特異的である。分泌された抗体は抗原に結合し、その破壊を促進する機構を誘発する。
【0018】
(モノクローナル抗体)
最も広く採用されている免疫応答能力の局面の1つは、モノクローナル抗体の産生であ
る。1970年代中頃のモノクローナル抗体(Mab)技術の出現は、有用な新しい処治および診断の手段をもたらした。当初、研究者および臨床医は、あらかじめ決められた抗原性部位に結合し様々な免疫学的エフェクター機能を有し得る均質な抗体を無制限に入手できることになった。現在、モノクローナル抗体の産生技術は当該分野で周知である。
【0019】
これらのモノクローナル抗体は薬剤および診断において大いに有望であると考えられた。残念ながら、モノクローナル抗体治療に固有の問題のために、これらのタンパク質を基にした治療的産物の開発は限られたものであった。例えば、ほとんどのモノクローナル抗体はマウス由来であり、したがって、ヒト補体を十分に固定しない。それらはまたヒトにおいて使用したとき他の重要なイムノグロブリン機能の特徴を欠いている。
【0020】
モノクローナル抗体の使用に関する最も大きな欠点は、非ヒトモノクローナル抗体はヒト患者に注射したとき免疫原性を持つという事実である。外来性の抗体を注射した後、患者でおこる免疫応答はかなり強いものであり得る。その免疫応答は外来性の抗体をすばやく排除し、初期の処治後、本質的に抗体の処治的有用性を無くす。残念ながら、一旦免疫系が外来性の抗体に応答するように感作されると、同じまたは異なった非ヒト抗体による後の処治は無効であり得るか、または交差応答性のために危険でさえあり得る。
【0021】
マウスは外来性の抗原で容易に免疫され、広い範囲の高親和性の抗体を産生し得る。しかし、マウス抗体をヒトに導入すると、体内に外来性タンパク質が提示されるため、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こす。患者におけるマウス抗体の使用は、一般的に数日または数週間に限られる。より長い処治期間はアナフィラキシーを引き起こし得る。さらに、一旦HAMAが患者で発生すると、しばしば将来的に診断または治療目的のためにマウス抗体を使用しない。
【0022】
HAMA応答の問題を克服するために、研究者たちは非ヒト抗体を修飾してそれらをヒト様にするいくつかの方法を試みた。これらの方法はマウス/ヒトキメラ、ヒト化、および霊長類化を含む。よりヒト様である抗体を作製する初期の研究は、ウサギおよびヒト抗体を組み合せて使用した。抗体のタンパク質サブユニット、ウサギFab断片およびヒトFc断片を、タンパク質ジスルフィド結合を介して連結させて、新しい人工的なタンパク質分子またはキメラ抗体を形成した。
【0023】
組換え分子生物学的技術がキメラ抗体を作成するために使用された。組換えDNA技術を使用して、マウス抗体可変領域の軽鎖および重鎖とヒト抗体定常領域の軽鎖(LC)および重鎖(HC)コードするDNA配列との間の融合遺伝子を構築して、キメラ抗体の発現を可能にした。これらのキメラ抗体は多数の非ヒトアミノ酸配列を含み、ヒトにたいして免疫原性である。これらのキメラ抗体に曝露された患者はヒト抗キメラ抗体(HACA)を産生する。HACAはマウスV領域に対して指向し、そしてまた、組換えキメラ抗体に存在する新しいV領域/C領域(定常領域)結合部位に対しても指向し得る。
【0024】
キメラ抗体の免疫原性によって提示される制限のいくつかを克服するために、分子生物学的技術を使用し、ヒト化または新形態の抗体を作成する。マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位または相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列を、分子学的な手法で、ヒト抗体重鎖および軽鎖の枠組み構造をコードするDNA配列に移植する。ヒト化MabはキメラMabよりも多い割合のヒト抗体配列を含む。約90%のヒト抗体および10%のマウス抗体を含む最終産物は、ヒト抗体上にマウス結合部位を含む。それはまた、正しい形を保持するため、従って標的抗原への結合親和性を保持するために、マウスMabからヒト化Mabの枠組み構造へ置換される特定のアミノ酸を含む。
【0025】
実際には、ヒトCDRをマウスCDRと単純に置換するだけでは、もとのマウス抗体の特異性を保持した有効なヒト化抗体を産生するには十分でない。少量の決定的なマウス抗体の残基をヒト可変領域に含むことがさらに必要である。これらの残基の同一性は、もとのマウス抗体および受容側ヒト抗体の両方の構造に依存する。これらのマウス抗体残基の存在が患者においてHACA応答を引き起こし、モノクローナル抗体のすばやい排出およびアナフィラキシーの心配をもたらす。
【0026】
再表面形成(resurfacing)技術と呼ばれる別の技術が、マウス抗体をヒト化するために使用される。再表面形成は、他のヒト化技術よりもより早くより効果的なプロセスで、マウス抗体の表面をヒト抗体の表面と置換することを含む。この技術は、組換えFvのV領域表面の接近可能なアミノ酸のみをヒト化することによって、マウスモノクローナル抗体をヒト抗体に似せて再設計する方法を提供する。天然の枠組み構造−CDR相互作用が保持されているので、マウスモノクローナル抗体の再表面形成は、新形態に作り替えたものにおいて、もとのマウスモノクローナル抗体のアビディティを保持し得る。再び、これらの抗体はその起源がマウスであるために抗原性を持つという問題点がある。
【0027】
他の技術はMabをヒト化するためにマウスよりむしろ霊長類の配列を使用する。霊長類化と呼ばれるこの方法の原理は、霊長類抗体可変領域のほとんどの配列はヒト配列と区別がつかないということである。慢性関節リウマチおよび重症喘息の処治のために、霊長類化抗CD4 Mabが開発中である。しかし、これらのMabは患者の免疫系にとって依然として外来性タンパク質であり、免疫応答を引き起こす。
【0028】
外来性タンパク質に対する免疫応答を避けるための努力において、ヒト抗体成分のみを含むヒトMabを作製するための様々な方法が開発されている。1つの方法は、望ましい抗原に対する抗体を天然に作製するヒトB細胞クローンを単離して、トリオーマ(trioma)細胞培養システムで培養する方法である。ヒト抗体は宿主にとって外来性の抗原に対してのみ作られるので、ヒト抗原に対して抗体を作製するヒトB細胞は存在しない。従って、この方法はヒトタンパク質である抗原に対してMabを産生するには有用でない。
【0029】
ヒトMabを作成する他の2つの方法は、ファージディスプレイおよびトランスジェニックマウスの使用である。ファージディスプレイ技術はヒトがあらゆる可能な構造に対して抗体を作ることができる能力を利用する。この技術は、それぞれが機能的な抗体可変ドメインをその表面に提示する、ファージ抗体の大きなライブラリーを作成するために、多くの個々のヒト由来の抗体遺伝子を使用する。このライブラリーから、個々の可変ドメインを望ましい抗原に結合する能力によって選択する。分子生物学的技術を用いて、望ましい結合特性を持った抗体可変ドメイン、および潜在的なヒト治療産物の要求を満たす定常ドメインを組み合せることによってMabが作成される。再び、この技術は抗原特異性を欠いている。ファージライブラリーは任意のそして全ての望ましい抗原に対するあらゆる結合領域を含むことはできない。それはまた特異性を欠く結合領域を含み得る。従って、この技術は有用な段階まで抗体の親和性を高めるためにかなりの操作を必要とし得る。
【0030】
トランスジェニックマウスもまた「ヒト」抗体を作成するために使用されている。トランスジェニックマウスは、マウスイムノグロブリン遺伝子座をヒトイムノグロブリン遺伝子座と置換することによって作成される。この方法はマウスのインビボでの親和性成熟機構を利用しているので、ファージディスプレイ技術より有利であり得る。
【0031】
ヒトまたはヒト様Mabを産生する現在の技術は全て、望ましい抗原に対して抗原特異的な、種特異的抗体を提供するには不十分である。キメラ抗体はマウス抗体の特異性を保持し、そしてヒトFc依存性補体固定および細胞媒介性細胞毒性を刺激するという利点がある。しかし、これらのキメラ抗体のマウス可変領域が依然としてHAMA応答を誘発し得る。それによってキメラ抗体の診断および処治薬としての有用性が限られる。
【0032】
ヒトB細胞を不死化する、または望ましい抗原に対してイムノグロブリンを産生する能力のあるヒトハイブリドーマを作成する努力は、特にヒト抗原については、一般的に成功しなかった。さらに、ヒトにおける免疫寛容が、自己抗原に対して抗体をうまく産生することを妨げる。
【0033】
(ワクチン治療)
ワクチンを、他の生物体、変化した細胞、または正常「自己」細胞において誘導された異質な特質のいずれからにせよ、あらゆる外来性抗原に対して作成し得る。外来性抗原の投与経路が、生成される免疫応答の型を決定するのを助け得る。例えば、ポリオの生ウイルスを経口で接種するように、粘膜表面への抗原の送達は、粘膜表面の免疫応答を起こすように免疫系を刺激する。抗原を筋肉組織に注射すると、しばしば長時間続くIgG応答が起こるのを促進する。
【0034】
ワクチンは一般的に、全体およびサブユニットワクチンの2つの型に分けられ得る。全ワクチンは不活化された、または弱毒化された、または殺菌されたウイルスまたは微生物から産生され得る。生弱毒化ワクチンは、野生型の生物体に対する応答と同様な免疫応答を引き起こすのに十分なほど、天然の感染を模倣するという利点がある。そのようなワクチンは一般的に、天然の経路で投与された場合には特に、高レベルの防御を提供し、そしていくつかは免疫性を与えるのに1回のみの投与を必要とし得る。いくつかの弱毒化ワクチンの別の利点は、集団の構成員の間でヒトからヒトへの継代を提供することである。しかし、これらの利点はいくつかの欠点と釣り合いを保っている。いくつかの弱毒化ワクチンは限られた貯蔵寿命しかなく、熱帯環境での保存に耐えられない。また、ワクチンが有毒な野生型生物体に復帰して、有害な、命さえ脅かすような疾患を引き起こす可能性もある。弱毒化ワクチンの使用はAIDSのような免疫不全状態、および妊娠中は禁忌である。
【0035】
殺菌したワクチンは、有毒な菌に復帰し得ないという点でより安全である。それらは一般的に送達および貯蔵中より安定であり、免疫無防備状態の患者における使用が許容できる。しかし、それらは生弱毒化ワクチンに比べて有効性が低く、通常1回以上の投与を必要とする。さらに、集団の構成員の間でヒトからヒトへの継代を提供しない。
【0036】
サブユニットワクチンの産生は、ワクチンが指向されるべき微生物または細胞のエピトープについての知識が必要である。サブユニットワクチンを設計するとき他に考慮すべき問題は、サブユニットの大きさおよび、そのサブユニットがその微生物または細胞の株全てを、どれだけよく代表しているかということである。細菌の全ワクチンを産生する場合に直面する問題、およびその使用に伴う副作用のために、細菌のワクチン開発における現在の焦点は、サブユニットワクチンの産生へ移動した。そのようなワクチンはVi莢膜多糖を基にした腸チフスワクチン、およびHaemophilus influenzaeに対するHibワクチンを含む。
【0037】
開発された他のワクチンは、コンビネーションワクチンおよびDNAワクチンを含む。コンビネーションワクチンの1つの例は、Bordetella pertussis毒素、およびその表面の線毛の赤血球凝集素である。DNAワクチン接種において、患者はタンパク質抗原をコードする核酸を投与される。次に、それは転写され、翻訳されてある形態で発現し、抗原に対する強力な長時間続く体液性および細胞性免疫応答を起こす。核酸はウイルスベクターまたはリポソームのような他のベクターによって投与され得る。
【0038】
ワクチンによって引き起こされた免疫応答は、アジュバントの使用により非特異的に増強され得る。これらは、リポソーム、エマルジョン、またはマイクロスフィアのような物質または担体成分の不均一な群であり、いくつかの異なった作用機構を持つ。
【0039】
疾患に対する防御のためのワクチンの代表的な使用に加えて、ワクチン接種はガンと闘うために使用されている。腫瘍を拒絶するために非特異的に免疫系を刺激するという考えはほぼ1世紀近く前からある。この分野での初期の研究者であるColeyは、細菌の濾液を使用してかなり成功した。精製したサイトカインおよび免疫刺激剤でガンに対してワクチン接種する試みは、限られた成功しかおさめられず、少数の型のガンのみに有効であった。
【0040】
ガンに加えて、多くの疾患が免疫系によって媒介される。それらの疾患はアレルギー、湿疹、鼻炎、じんましん、アナフィラキシー、移植の拒絶反応、(例えば、腎臓、心臓、膵臓、肺、骨、および肝臓移植)、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、血清応答陰性の脊椎炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、後天性免疫不全症候群、橋本甲状腺炎、グレーヴズ病、アジソン病、多発性内分泌(polyendocrine)自己免疫疾患、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病(coeliac diseease)、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、顕微鏡的(microscopic)多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルトン症候群、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群(X−linked hyper IgM syndrome)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含む。
【0041】
弱毒化ワクチンの使用に伴う安全性の問題、および不活化ワクチンの低い効力のために、当該分野においてワクチンの効力を増強する組成物および方法が必要である。また、当該分野において体液性および細胞性応答の両方を刺激する、免疫系を増強する組成物および方法も必要である。さらに、当該分野において免疫応答の選択的な調整、および免疫系の様々な成分を操作して望ましい応答を起こす必要もある。それに加えて、活性化におけるより速い応答のために免疫応答を促進および拡大し得る方法および組成物が必要である。1回の投与のみで防御を提供ワクチンを用いてヒトおよび動物の両方の集団をワクチン接種できる能力についての必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
標的細胞にのみに対し薬剤を標的特異的に送達する組成物および方法が必要である。薬剤が標的細胞に取り込まれる場合には、いくつかの投与および処治にとって好ましい。一旦細胞の中に入れば、薬剤は薬剤が活性になるように送達システムから十分に放出されるべきである。そのような組成物および方法は治療剤を標的細胞に効果的に送達し得る。インビトロおよびインビボの系の両方で使用され得る組成物および方法もまた必要である。
【0043】
一般的に抗原特異的、種特異的抗体の組成物、およびそれらを産生する改良された方法もまた必要である。特に、所定の抗原に対する親和性を有する完全なヒト抗体を産生する方法が必要である。これらのヒトイムノグロブリンは、治療処方物および診断処方物について適当な方法で、容易におよび経済的に産生されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0044】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1) プラットホームと結合した少なくとも1つの成分特異的免疫刺激分子を含む、標的化した送達系。
(項目2) 項目1に記載の標的化された送達系であって、ここで前記成分特異的免疫刺激分子が以下:
a)前記プラットホームへの直接結合;
b)該プラットホームに結合される組み込み分子に対する特異的結合;
c)該プラットホームに結合される組み込み分子に対するより小さい特異的結合;または d)相補的に結合するメンバーの結合
を含む様式で該プラットホームに結合する、送達系。
(項目3) 項目2に記載の標的化された送達系であって、以下:
a)前記プラットホームへの直接結合;
b)該プラットホームに結合される組み込み分子に対する特異的結合;
c)該プラットホームに結合される組み込み分子に対するより小さい特異的結合;または
d)相補的に結合するメンバーの結合
を含む様式でプラットホームに結合した抗原またはワクチン分子をさらに含む、送達系。
(項目4) 項目2に記載の標的化された送達であって、ここで前記組成特異的免疫刺激分子が、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌内毒素Bおよび他の毒素、インターフェロンI型、インターフェロンII型、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージ CSF、顆粒球 CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスホーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液群の炭水化物部分、Rh因子、繊維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;flt3 リガンド/レセプター系;B7ファミリーの分子およびレセプター;CD40リガンド/レセプター;および免疫治療薬物(例えば、AZT);ならびに血管形成薬物および抗血管形成薬物(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、および塩基性繊維芽細胞増殖因子、または血管内皮増殖因子(VEGF))の少なくとも1つを含む、標的化された送達。
(項目5) 項目3に記載の標的化された送達系であって、ここで前記抗原またはワクチン分子が、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼ A2、内毒素、ブドウ球菌内毒素 Bおよび他の毒素、インターフェロンI型、インターフェロンII型、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージ CSF、顆粒球 CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンジオゲニン、トランスホーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液群の炭水化物部分、Rh因子、繊維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、および熱ショックタンパク質(HSP);変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;免疫治療薬物(例えば、AZT);ならびに血管形成薬物および抗血管形成薬物(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、および塩基性繊維芽細胞増殖因子、または血管内皮増殖因子(VEGF))の少なくとも1つを含む、標的化された送達系。
(項目6) 前記プラットホームが金属コロイドである、項目1に記載の標的化された送達系。
(項目7) 項目6に記載の標的化された送達系であって、ここで前記金属コロイドが以下の工程:
a)抗原のpIより上の1〜3pH単位pHで水中で抗原を再構成する工程;
b)約200〜500μgの抗原を金属コロイドと共にインキュベートする工程;
c)必要に応じてポリエチレングリコール、Brij58または天然もしくは合成リン脂質の10〜100%溶液の体積で1%とともに一晩、該コロイド結合抗原をインキュベートすることによってそれを安定化する工程;
d)金属コロイド結合抗原溶液を遠心分離する工程;および
e)生じたペレットをタンパク質再構成緩衝液中のヒト血清アルブミンの1%溶液で安定化させる工程
を包含するプロセスによって調製される、標的化された送達系。
(項目8) 免疫細胞に対する成分特異的免疫刺激分子の標的化された送達のための方法であって、1以上の成分特異的免疫刺激分子、および必要に応じて1以上の推定抗原またはワクチン分子を投与する工程を包含する、方法。
(項目9) 前記分子がインビボで投与される、項目8に記載の方法。
(項目10) 1より多い成分特異的免疫刺激分子が同時に投与される、項目8に記載の方法。
(項目11) 異なった時間で、または異なった投与の方法によって投与されて、1以上の成分特異的免疫刺激分子が該成分特異的免疫刺激分子の連続的な送達を提供する、項目8に記載の方法。
(項目12) 2以上の異なった成分特異的免疫刺激分子の投与を包含する、項目8に記載の方法。
(項目13) 前記異なった成分特異的免疫刺激分子が、免疫応答の異なった工程で投与される、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記分子がインビトロで投与される、項目6に記載の方法。
(項目15) 抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体のインビトロ産生のための方法であって、以下の工程:
a)ヒトまたは動物からの免疫細胞をインビトロで活性化し、該細胞を刺激して抗原に対する最初の応答を生成する工程;および
b)最初の応答を生じる該活性化免疫細胞を不朽化する工程
を包含する、方法。
(項目16) 抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体のインビトロ産生のための方法であって、以下の工程;
a)抗原および抗原提示細胞をインキュベートして該抗原提示細胞をインビトロで活性化する工程;
b)該活性化APCにB細胞を添加して最初のクローンを産生する工程;
c)該最初のクローンを不朽化する工程;および
d)モノクローナル抗体産生細胞を選択する工程
を包含する、方法。
(項目17) 工程a)およびb)が単一の工程で行われる、項目16に記載の方法。
(項目18) 前記活性化が少なくとも1つの成分特異的免疫刺激分子を含む、項目16に記載の方法。
(項目19) 単一種由来のタンパク質から全体に構成される抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体。
(項目20) 前記種がヒトである、項目19に記載のモノクローナル抗体。
(発明の要旨)
本発明は、成分特異的免疫刺激分子を個々の免疫細胞に標的化送達するための方法および組成物を含む。これらの成分特異的免疫刺激分子は、細胞上に特異的なレセプターがあるために、特定の免疫細胞に結合して刺激する。従って、異なった細胞型の混合物中で、成分特異的免疫刺激分子は、選択されたレセプターを有する細胞にのみ結合し、レセプターを欠く細胞は影響を受けない。免疫細胞のいくつかの集団において、1つの細胞型のみが所定の成分特異的免疫刺激剤に結合するレセプターを含む。他の細胞集団においては、複数の免疫細胞が成分特異的免疫刺激剤に結合するレセプターを含み得る。所定の細胞型が複数の成分特異的免疫刺激剤に対するレセプターを含むことも可能である。
【0045】
免疫細胞に対する標的化送達の方法は、細胞培養物または培地への添加のようなインビトロの技術で使用されるような、またはインビボの投与で使用されるような方法であり得る。インビボでの投与は、細胞への直接適用、またはワクチンをヒト、動物、または他の生物体に送達するのに使用されるような投与経路を含み得る。
【0046】
1つの実施態様では、本発明は、推定される抗原またはワクチン分子によって、抗原/ワクチンに対する免疫応答を増強、変化、または抑制するために、免疫系における特定の個々の成分の同時および/または連続的な標的化刺激のための方法および組成物を含む。本発明の別の局面は、抗原およびワクチンが免疫応答を誘導する有効性を高めることを提供する。1つの実施態様では、本発明の方法および組成物は、多くの異なった個々の免疫成分を特異的な成分刺激組成物を提示することによって同時に刺激することができる。
【0047】
本発明はまた、成分刺激組成物を因子および細胞の相互作用の免疫応答カスケードにおける1つ以上の段階で提供することにより、免疫系の連続的な刺激のための組成物および方法を含む。1つの開示された実施態様において、刺激される特定の免疫成分はマクロファージ、樹状細胞、B細胞、およびT細胞である。
【0048】
好ましい実施態様においては、その方法は、成分刺激組成物の連続的な投与を含む。その組成物は、異なった時間にまた異なった投与方法(例えば、最初は経口、2回目は注射)によって与えられる、同じ成分特異的免疫刺激剤を含み得る。別の好ましい実施態様においては、その方法は、異なった成分特異的免疫刺激剤の連続的な投与を含む。例えば、最初の成分特異的免疫刺激剤は、免疫応答の開始段階を刺激し、次に2番目の成分特異的免疫刺激剤を後で加え、免疫応答の後の段階を刺激する。本発明は、複数の成分特異的免疫刺激剤を、免疫系のいくつかの経路を開始させ、次に後で同じまたは他の成分特異的免疫刺激剤を、免疫応答を継続および増強するために投与することを企図している。
【0049】
さらに、本発明において、本明細書中に記載の組成物および方法は、免疫応答の刺激または免疫反応の抑制のために使用され得ることが企図される。免疫応答を抑制するための成分特異的免疫刺激剤の投与は、自己免疫疾患または臓器の拒絶応答を制御するために使用され得る。
【0050】
別の実施態様においては、本発明は抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体を産生する方法および組成物を含む。これらの方法および組成物は、免疫細胞の変換に依存する。好ましい実施態様においては、その方法および組成物は、循環免疫細胞のインビトロでの変換を含む。これらの細胞は抗原に対する一次応答を生じ、抗原特異的抗体の産生を引き起こす。これらの選択された一次クローンは次に、選択された種由来のタンパク質で全体的に構成される抗体を分泌する細胞を産生するために不死化される。
【0051】
本発明の好ましい実施態様においては、産生された抗体は、ヒト末梢血リンパ球をインビトロで培養することによって産生された、完全なヒトモノクローナル抗体である。本発明の重要な要素は、「自己」分子の抗原性認識である。そのような自己分子は、天然の、または個体に天然に存在する分子、および特定の種に天然に存在するものと同じ構造を有する任意の分子を含む。その抗体は1つの種のみから由来するタンパク質を含むので、この認識は免疫原性を減少させる。
【0052】
しかし、抗体内に含まれているタンパク質は、同じ種由来であるが、個体にとっては外来であるので、これらの抗体は依然としていくらか免疫原性を示し得る。別の好ましい実施態様においては、インビトロで産生されたモノクローナル抗体が1人のヒトまたは動物の血液から作製され、次いで同じ個体に注射される。そのような状況では、抗体が個体由来のタンパク質で全体的に構成されているので、その抗体はわずかな免疫原性しか示さないか、または免疫原性を示さない。
【0053】
一旦これらの一次培養物が抗原特異的抗体を産生するために変換されると、それらは例えばヒト不死化ガン細胞と融合することによって、または抗体産生細胞をrasのようなガン遺伝子またはEpstein Barrウイルスのようなウイルスでトランスフェクトすることによって不死化される。その結果できたハイブリドーマは特異的な抗体の分泌に関してスクリーニングされ、次いで、単一のモノクローナル抗体産生細胞を単離するために、例えば限界希釈法によって処理される。その結果できたヒトモノクローナル抗体はヒトタンパク質のみを含む。いかなる動物タンパク質もヒトモノクローナル抗体の構築に入り込まない。全ての動物タンパク質が存在しないことは、これらの抗体の処置的投与によりヒト抗動物抗体ができないことを保証する。
【0054】
本発明の方法および組成物は、免疫応答の標的化した刺激のためのシステムに対する新しく用途の広いアプローチを提供する。1つの開示された実施態様においては、本発明は成分刺激組成物を含む。好ましい実施態様においては、成分刺激組成物は成分特異的免疫刺激剤を含む。別の好ましい実施態様においては、成分刺激組成物は金属コロイドと結合した成分特異的免疫刺激剤を含む。さらに別の好ましい実施態様においては、そのような組成物は成分特異的免疫刺激剤と組み合わせた抗原を含む。さらに好ましい実施態様においては、抗原および成分特異的免疫刺激剤は金コロイドのような金属コロイドと結合し、その結果できるキメラ分子が免疫成分に提示される。
【0055】
別の開示された実施態様においては、本発明の成分刺激組成物は送達構造またはプラットホームを含む。結合グループの1つのメンバーがこれに結合し、結合グループの相補メンバーが、抗原に結合するか、または成分特異的免疫刺激剤に結合する。より好ましい実施態様においては、結合グループの相補メンバーの1つが成分特異的免疫刺激剤に結合して、結合グループの別の相補メンバーが推定される抗原/ワクチンに結合する。結合グループメンバーはこのような既知の全ての組になった結合グループから選択され得る。この結合グループは抗体/抗原、酵素/基質、およびストレプトアビジン/ビオチンを含むが、この限りではない。
【0056】
そのような組成物の1つの実施態様は、これに可逆的に結合した結合グループの1つのメンバーを有する送達構造またはプラットホームを含む。本発明の好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激分子および抗原/ワクチン分子が結合し、成分刺激組成物を作る結合グループの1つのメンバーに結合できるプラットホームとして金コロイドを含む。より好ましい実施態様においては、結合グループはストレプトアビジン/ビオチンであり、成分特異的免疫刺激分子はサイトカインである。本発明の実施態様はまた、成分特異的免疫刺激分子または抗原/ワクチンの、ポリカチオンを使用することによるような、より特異的でない方法での結合を含む。
【0057】
本発明はまた、様々な異なったキャリアの組み合わせでの抗原および成分特異的免疫刺激剤の提示を含む。例えば、好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激剤および金コロイドと結合した抗原をリポソームキャリア中で投与することを含む。さらなる組み合わせは、活性のあるワクチン候補であるか、または推定されるワクチンのDNAを含むようにパッケージングされたウイルス粒子が散在した金コロイド粒子である。この金粒子はまた、次いでウイルスを特定の免疫細胞に標的化するのに使用され得るサイトカインを含み得る。そのような実施態様は、長期の応答のために、免疫系に抗原をゆっくり放出する内部ワクチン調製物を提供する。この型のワクチンは特にワクチンの1回投与に有利である。リポソームおよびマイクロカプセルを含むがこれに限らない、全ての型のキャリアが本発明において企図されている。
【0058】
従って、本発明の目的は、免疫応答を増強するための、信頼できる、かつ容易な方法を提供することである。
【0059】
本発明の別の目的は、ワクチンの有効性を改善する方法を提供することである。
【0060】
本発明の別の目的は、1回の投与のみで有効な防御をするワクチンを提供することである。
【0061】
さらに本発明の別の目的は、特異的な様式での個々の免疫成分の標的化刺激のための方法を提供することである。
【0062】
本発明のさらなる目的は、抗原および成分特異的免疫刺激剤を、免疫系の個々の成分に対して、同時に提示する方法を提供することである。
【0063】
本発明の別の目的は、免疫系の特定の成分に影響を与え得る、成分特異的免疫刺激剤を含む組成物を提供することである。
【0064】
さらに本発明の別の目的は、免疫応答を抑制するための方法および組成物を提供することである。
【0065】
本発明の別の目的は、原発性腫瘍に対する免疫応答を増強し得るだけでなく、残留疾患に対する全身性の免疫応答をも起こし得る、原発性ガンに対する免疫応答を開始するために、成分特異的免疫刺激剤を同時に/連続的に使用するための組成物を提供することである。
【0066】
本発明のなお別の目的は、原発性腫瘍に対する免疫応答を増強し得るだけでなく、残留疾患に対する全身性の免疫応答をも起こし得る、原発性ガンに対する免疫応答を開始するために、成分特異的免疫刺激剤を同時に/連続的に使用するための組成物を提供することである。
【0067】
本発明のさらなる目的は、分子の抗原性/免疫原性を増大させることである。
【0068】
さらに本発明の別の目的は、インビトロで抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体を生成することである。
【0069】
さらに本発明の別の目的は、ヒト末梢血リンパ球をインビトロで培養することにより、完全なヒトモノクローナル抗体を生成することである。
【0070】
本発明のさらなる目的は、ヒト抗原特異的抗体による疾患の処置を提供することによって、抗原特異的、種特異的な誘導免疫の問題を排除することである。
【0071】
本発明の別の目的は、個人特異的なモノクローナル抗体を産生し、それによって外来性の免疫応答を排除することである。
【0072】
さらに本発明の別の目的は、免疫増強剤の免疫細胞への送達化を標的するための、信頼できる、かつ用途の広い方法および組成物を提供することである。
【0073】
本発明のさらなる目的は、インビトロおよびインビボで成分特異的免疫刺激剤を標的化して送達するための方法および組成物を提供することである。
【0074】
さらに本発明の別の目的は、成分特異的免疫刺激剤を特異的なレセプターを有する細胞に標的化して送達するための方法および組成物である。
【0075】
本発明の別の目的は、成分特異的免疫刺激剤を用いて、推定される抗原/ワクチンに結合および送達し得る標的化した送達システムを含む方法および組成物を提供することである。
【0076】
本特許は少なくとも1つのカラー写真を含む。カラー写真を伴う本特許のコピーは、要求および必要な料金の支払いに際して、特許商標局によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、マクロファージによるEGF/CG/IL−1β複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図2】図2は、樹状細胞によるEGF/CG/TNF−α複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図3】図3は、B細胞によるEGF/CG/IL−6複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図4】図4は、T細胞によるEGF/CG/IL−2複合体のインビトロ内部移行を例示する。
【図5】図5は、本発明のプロセスによるヒト抗ヒトTNF−α抗体の産生を例示する。
【図6a】図6aは、金コロイド/TNF−αとの単離されたヒトリンパ球のこの長期間のインキュベーションによって誘導された巨大細胞形成を例示する200倍の明視野顕微鏡写真である。
【図6b】図6bは、同じ細胞の200倍位相差顕微鏡写真明視野モノグラフである。
【図7】図7は、タンパク質自身に対する抗体応答を生じる金コロイドの必要性を実証する。
【図8】図8は、金染色が活性化B細胞の浮動性クラスターと関連しているが、マクロファージまたは樹状細胞とは関連しないことを例示する。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施態様の模式図である。
【図10】図10は、TNF−αを用いた送達プラットホームの飽和結合動態力学を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
(開示された実施態様の詳細な説明)
(免疫応答の増強)
本発明は、特定の免疫成分を同時にまたは連続的に標的化することによって、免疫応答を増強する、およびワクチン有効性を増大させるための組成物および方法に関連する。より具体的には、マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)、B細胞およびT細胞のようなリンパ球を含むがこれに限らない特定の免疫成分が、1つ以上の成分特異的免疫刺激剤によって個別に影響を受ける。特に好ましい実施態様は、特異的抗原を成分特異的免疫刺激剤と組み合わせて使用する免疫応答の活性化を提供する。本明細書中で使用されているように、成分特異的免疫刺激剤は、免疫系の成分に特異的であり、その成分に影響を与えて、その成分が免疫応答において活性を有するようにし得る薬剤を意味する。その薬剤は免疫系のいくつかの異なった成分に影響を与えることができ、この能力は本発明の方法および組成物に採用され得る。その薬剤は天然に存在し得るか、または分子生物学的技術またはタンパク質レセプター操作によって生成および操作され得る。
免疫応答における成分の活性化は、免疫応答の他の成分を刺激または抑制し、免疫応答の全体的な刺激または抑制を引き起こし得る。表現を簡単にするために、本明細書中では免疫成分の刺激が述べられるが、全ての免疫成分の応答は、刺激、抑制、拒絶およびフィードバック活性を含むがこれに限らない、刺激という用語によって企図されることが理解される。
【0079】
影響を受ける免疫成分は複数の活性を有し得、抑制および刺激の両方か、またはフィードバック機構の開始もしくは抑制を引き起こす。本発明は本明細書中に詳述された免疫学的応答の例に限らず、免疫系の全ての局面における成分特異的効果を企図する。
【0080】
免疫系のそれぞれの成分の活性化は同時、連続的またはそのいずれもの組み合わせであり得る。本発明における方法の実施態様の1つにおいては、複数の成分特異的免疫刺激剤が同時に投与される。この方法においては、免疫系は、それぞれ成分特異的免疫刺激剤を含む組成物を含む4つの別々の調製物によって、同時に刺激される。好ましくは、組成物は、金属コロイドと結合した成分特異的免疫刺激剤を含む。より好ましくは、組成物は、1つの大きさの粒子または異なった大きさの粒子からなる金属コロイドおよび抗原と結合した、成分特異的免疫刺激剤を含む。最も好ましくは、組成物は、1つの大きさの金属コロイドおよび抗原と結合した、または異なった大きさの金属コロイドおよび抗原と結合した成分特異的免疫刺激剤を含む。
【0081】
本発明者らは、個々の免疫成分に、特異的刺激性の、上方制御する効果を与えるのに、ある成分特異的免疫刺激剤を使用し得ることを発見した。例えば、TNF−α(腫瘍壊死因子α)およびFlt−3リガンドは樹状細胞を特異的に刺激するのに対して、インターロイキン−1β(IL−1β)はマクロファージを特異的に刺激する。熱で殺傷したMycobacterium butyricumおよびインターロイキン−6(IL−6)はB細胞の特異的刺激剤であり、インターロイキン−2(IL−2)はT細胞の特異的刺激剤である。そのような成分特異的免疫刺激剤を含む組成物は、それぞれマクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞の特異的な活性化を提供する。例えば、成分特異的免疫刺激剤IL−1βを含む組成物を投与すると、マクロファージが活性化される。好ましい組成物は金属コロイドと結合したIL−1βであり、最も好ましい組成物は、金属コロイドおよび抗原と結合したIL−1βであり、その抗原に対する特異的なマクロファージの応答を起こす。
【0082】
免疫応答の多くの要素が効果的なワクチン接種のために必要である。同時刺激の方法の実施態様は、1)マクロファージに対してIL−1β、2)樹状細胞に対してTNF−αおよびFlt−3リガンド、3)B細胞に対してIL−6、ならびに4)T細胞に対してIL−2を含む成分特異的免疫刺激剤の組成物の、4つの別々の調製物を投与することである。成分特異的免疫刺激剤組成物は、当業者に公知のいかなる経路でも投与され得、そして、望ましい免疫応答に依存して同じ経路または異なった経路を使用し得る。
【0083】
本発明の方法および組成物の別の実施態様においては、個々の免疫応答が連続的に活性化される。例えば、この連続的な活性化は、二期に、感作期および免疫期に分けることができる。感作期はAPC、好ましくはマクロファージおよび樹状細胞の刺激を含み、一方免疫期はリンパ球、好ましくはB細胞およびT細胞の刺激を含む。2つの期それぞれにおいて、個々の免疫成分の活性化は同時または連続的であり得る。連続的な活性化のためには、活性化の好ましい方法は、マクロファージ、次に樹状細胞、次にB細胞、次にT細胞の活性化である。最も好ましい方法は組み合わせた連続的な活性化である。ここでは、マクロファージおよび樹状細胞が同時に活性化され、次にB細胞およびT細胞が同時に活性化される。これは複数の成分特異的免疫刺激剤が免疫系の複数の経路を開始する方法および組成物の1つの例である。
【0084】
本発明の方法および組成物は、あらゆる型のワクチンの効果を増強するために使用し得る。本方法は、活性化のために特定の免疫成分を標的化することによって、ワクチンの効果を増強する。金属コロイドおよび抗原と結合した成分特異的免疫刺激剤を含む組成物は、抗原と特異的免疫成分との接触を増すために使用される。ワクチンが現在入手可能な疾患の例は、コレラ、ジフテリア、Haemophilus、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふくかぜ、百日咳(pertussis)、痘瘡、肺炎球菌肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核、腸チフス、水痘−帯状疱疹、百日咳(whooping cough)、および黄熱病を含むがこの限りではない。
【0085】
抗原を免疫系に送達するのに使用される投与経路およびパッケージングの組み合わせは、望ましい免疫応答を設計するのに強力な手段である。本発明は、免疫刺激組成物の長時間放出を提供し得、リポソーム、マイクロカプセル、またはマイクロスフィアのような様々なパッケージング方法を含む方法および組成物を含む。これらのパッケージングシステムは、抗原を保持して、免疫系を活性化するために抗原をゆっくり放出する、内部貯蔵所のように作用する。例えば、リポソームは、抗原および金属コロイドと結合した成分特異的免疫刺激剤を含む組成物で満たされ得る。さらなる組み合わせは、活性のあるワクチンの候補である、または推定されるワクチンのDNAを含むようにパッケージングされるウイルス粒子が散在した金コロイド粒子である。金粒子はまた、ウイルスを特定の免疫細胞に標的化するために、次いで使用され得るサイトカインを含む。さらに、2つ以上の潜在的なワクチン候補を標的化する融合タンパク質ワクチンを作製して、2つ以上の適用のためのワクチンを生成し得る。粒子は、物質をゆっくり放出し得るポリエチレングリコールを加えることによって化学的に修飾された免疫原も含み得る。
【0086】
抗原/成分特異的免疫刺激剤/金属複合体は、リポソームからゆっくり放出され、免疫系によって外来性のものとして認識され、そして成分特異的免疫刺激剤が指向する特異的成分が、免疫系を活性化する。免疫応答カスケードは、成分特異的免疫刺激剤の存在によってより速く活性化され、免疫応答はより速く、より特異的に起こる。
【0087】
本発明において企図される他の方法および組成物は、抗原/成分特異的免疫刺激剤/金属コロイド複合体(ここでは金属コロイド粒子が、異なった大きさを有する)の使用を含む。成分特異的免疫刺激剤の連続的な投与は、これらの異なった大きさの金属コロイド粒子を用いることによって1回の投与で達成され得る。1回の投与は、抗原およびそれぞれ異なった大きさの金属コロイド粒子と複合体化した、4つの独立した成分特異的免疫刺激剤を含む。従って、同時に投与すると、免疫成分の連続的な活性化が提供され、より効果的なワクチンおよび集団のよりよい防御を生じる。他の型のそのような連続的に活性化する1回投与は、異なった大きさの金属コロイド粒子およびリポソームの組み合わせ、または異なった大きさの金属コロイド粒子で満たされたリポソームによって提供され得る。
【0088】
上記で述べられたようなこのようなワクチン接種システムの使用は、1回で投与し得るワクチンを提供するのに非常に重要である。1回投与は家畜または野生動物の集団のような動物集団を処置するのに重要である。1回投与は低所得者、ホームレス、農村住民のような健康管理に抵抗する集団、または健康管理が不十分な発展途上国の人々を処置するのにきわめて重大である。全ての国の多くの人々が、ワクチン接種のような予防的な型の健康管理を利用できない。結核のような感染性疾患の再出現が、1回で与えることができ、かつなお長時間続く効果的な防御を提供するワクチンの需要を増した。本発明の組成物および方法はそのような効果的な防御を提供する。
【0089】
本発明の方法および組成物は、免疫応答の一部である成分を刺激または抑制することによって、免疫応答が起こっている疾患を処置するために使用され得る。そのような疾患の例はアジソン病、アレルギー、アナフィラキシー、Bruton症候群、固形および血液保有腫瘍を含むガン、湿疹、橋本甲状腺炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、後天性免疫不全症候群、腎臓、心臓、膵臓、肺、骨および肝臓移植のような移植拒絶応答、グレーヴズ病、多発性内分泌(polyendocrine)自己免疫疾患、肝炎、顕微鏡的(microscopic)多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病、抗体による腎炎、糸球体腎炎、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、血清応答陰性の脊椎炎、鼻炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、硬化性胆管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、じんましん、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群(X−linked hyper IgM syndrome)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含むがこの限りではない。
【0090】
本出願は1997年11月10日に出願された米国仮出願第60/065,155号、および1998年2月24日に出願された米国仮出願第60/075,811号、および1998年11月6日に出願された、番号が割り当てられていない合衆国仮出願に対して優先権を請求し、そのまま本明細書中において参考として援用される。
【0091】
(インビトロでのモノクローナル抗体の産生)
本発明の方法および組成物はさらに、免疫応答を増強する抗原特異的、種特異的モノクローナル抗体を産生するために使用され得る。例えば、これらの抗体は、インビトロで抗原、抗原提示細胞(APC)、B細胞のような免疫細胞、および必要に応じて1つ以上の成分特異的免疫刺激剤を接触させることにより産生される。一旦抗原特異的抗体が検出されれば、活性化された免疫細胞は、例えばヒト不死化ガン細胞と融合することにより不死化される。その結果できたハイブリドーマは特異的な抗体の分泌に関してスクリーニングされ得、次に単一のモノクローナル抗体産生細胞が単離され得る。
【0092】
抗原、APC、免疫細胞、および成分特異的免疫刺激剤は、全て同時にインビトロの培養物へ導入され得る。必要に応じて、これらの様々な成分は、任意の順番または組み合わせで連続的に加えられ得る。抗原および成分特異的免疫刺激剤は2つの別々の分子であり得るか、または複合体の形で存在し得る。例えば、抗原は異なったサイトカインと複合体を作り得る。そのサイトカインは連続的に加えたとき、培養物中の特定の細胞を予想できる段階的な様式で刺激する。
【0093】
APCおよびB細胞のような細胞は任意の供給源から、好ましくは末梢血から得られ得る。あらゆる供給源からの末梢血が、本発明の抗原特異的、種特異的抗体を産生するために使用され得る。本発明の最も重要な使用はヒト抗ヒト抗体の産生であるが、他の動物種に関して抗原特異的、種特異的抗体を開発するために、本発明のプロセスを使用することも同様に可能である。ヒト抗ヒト抗体の産生のために、血液は好都合にAmerican Red Crossから得ることができる。
【0094】
好ましい実施態様では、バフィーコートを全血から分離することが所望される。本発明の実施について重要であるバフィーコート内に2つの異なる成分が存在する。これらは、抗原提示細胞(APC)(例えば、マクロファージ、リンパ球、ランゲルハンス細胞、および樹状細胞およびB細胞)である。B細胞はまた、抗原提示細胞であるが、抗原での提示に際して、それらは抗体応答を生じる。一旦全血から分離されると、バフィーコート全体が使用され得るか、またはAPCおよびB細胞が分離され、そして個々に使用され得る。これらの成分のいずれかが単離され得、そして当業者に周知の手順(例えば、フローサイトメトリ、磁性細胞分離および凍結保存)に従って凍結され得、そして抗体の生成に影響を与えることなく後に使用され得る。
【0095】
抗原、抗原提示細胞(APC)、成分特異的免疫刺激剤、およびB細胞の任意の組み合わせは、本発明において任意の様式でインビトロで使用され得、好ましい調製物は、コロイド金属に結合した抗原を使用する。この実施態様において、バフィーコートまたはAPCを容器に入れる。次いで、コロイド金属結合抗原を、容器に添加し、そしてバフィーコートまたはAPCとともにインキュベートする。
【0096】
抗原結合コロイド金属組成物は、以下に記載の方法によって生成され得る。この抗体結合コロイド金属は、バフィーコートまたはAPCに、単独でまたはアジュバント、免疫原性タンパク質、ヌクレオチドまたは補助的サイトカイン/免疫刺激因子の存在下で(これらは、Th2/B細胞応答の発達を補助する)で添加され得る。必要に応じて、これらのアジュバント、免疫原性タンパク質、ヌクレオチド、および補助サイトカイン/免疫刺激因子は、その抗原が、バフィーコートまたはAPCとのコロイド金属結合抗原のインキュベーションに前に結合した様式と類似の様式でそのコロイド金属に結合され得る。
【0097】
バフィーコート全体が使用される場合のようにB細胞が最初に存在する場合、それらの数は、コロイド金属結合抗原とのインキュベーションの間に涸渇され得る。それゆえ、インキュベーション後、さらなるB細胞を、必要に応じてその容器に添加する。これらのB細胞は、新鮮な状態で得られ得るか、凍結され得るか、または同じサンプルのバフィーコートとは分離されたものであり得る。容器中のAPCは、B細胞を活性化して、コロイド金属に特異的結合した抗原に応答して抗体を生成する。
【0098】
一旦インビトロセロコンバージョンが確認されると、その細胞を不死化させる。この細胞は、いくつかの種々の方法によって不死化され得、これは、例えば、不死化ガン細胞と融合してハイブリドーマを生成することか、またはrasのようなオンコジーンもしくはエプスタインバーウイルスのようなウイルスで抗体生成細胞をトランスフェクトすることによる。しかし、不死化細胞を生成する任意の方法が本発明によって意図される。本発明において有用である、非限定的な不死化ガン細胞株の例は、K6H6/B5細胞、HUNS−1(米国特許第4,720,459号)、KR−12(米国特許第4,693,975号)、WIL2−S、WI−L2−729HF2(米国特許第4,594,325号)、UC729−6(米国特許第4,451,570号)、SKO−007、SKO−007のクローンJ3、GK5、およびLTR−228(米国特許第4,624,921号)である。
【0099】
初代クローンの不死化は任意の様式で達成され得るが、以下の方法が好ましい方法である。不死化したガン細胞を、セロコンバージョンした細胞を含む容器に直接加える。インキュベーション後、その細胞を、無血清DMEM(ダルベッコ最小必須培地)、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)、または任意の無血清生理的緩衝液において洗浄する。次いで、この細胞を、例えば、無血清DMEMに希釈した40%〜100%のPEG溶液を用いて融合する。次いで、融合した細胞を、洗浄し得、そしてそのペレットを、10%のウシ胎仔血清(FBS)、10%OrigenTM、上記で言及した抗原カクテル、および選択培地(例えば、10%の最終濃度でのハイブリドーマン選択因子HAT)を含む50%DMEM/RPMI培地中で再構成し得る。この細胞を、150μlアリコートで、96ウェルの組織培養プレートに播種する。クローンの増殖を増加させるために、必要に応じてその細胞を、初期抗原または抗原/成分特異的な免疫刺激因子混合物(例えば、初期免疫において使用されるもの)の添加によって刺激され得る。
【0100】
その細胞を、約2週間、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を含有する培地中で増殖させ得る。次いで、非選択培地(例えば、HT(ヒポキサンチン、チミジン)で、選択薬物としてHATを置換する。およそ2週間のさらなるインキュベートの後、その細胞を、増殖培地(例えば、抗原カクテル、10%OrigenTM、および10%FBSを補充した50%DMEM/RPMI)中で増殖させる。
【0101】
このサンプルを、増殖期のいずれかの間に抗原特異的な抗体の存在について試験し得、そして好ましくは、全ての増殖期の間で試験する。この試験は、任意の一般的な免疫学的手順(例えば、RIA、EIA、ELIZA、RIDまたはOuchterlony試験)によって行い得る。次いで、陽性クローンを、96ウェルプレートから6ウェルプレートに規模拡大する。この時点で、そのクローンを後の使用のために凍結し得る。
【0102】
このクローンの活性を、プリスタン(pristine)でプライム刺激したマウスにおいて腹水を産生することによるような当該分野で公知の方法によって試験し得る。この腹水を精製し、次いで、この抗体を、十分特徴付けられた細胞株(例えば、TNF感受性細胞株WEHI 164)において生体活性を中和するその能力について試験する。次いで、中和能力を示すクローンを、規模拡大して精製抗体を大量に生産する。
【0103】
本発明の別の実施態様において、バフィーコートまたはAPCは、コロイド金属結合抗原、および必要に応じてアジュバントと同時にインキュベートし得る。。この型のインキュベーションは、Th1様応答から誘発される免疫応答の型(ここで、コロイド金属抗原は、APCと会合し、このAPCは、細胞成分を含んでいても含んでいなくてもよい)を、Th2型応答(ここで、コロイド金属結合抗原は、B細胞の自由に浮遊するクラスターと会合する)へと変化させることが見い出されている。
【0104】
(成分刺激組成物)
本発明の組成物は、成分特異的な免疫刺激因子を含有する。このような組成物は、1つの成分特異的免疫刺激因子または複数の成分特異的免疫刺激因子を含み得る。1つの好ましい実施態様において、この組成物は、コロイド金属と会合した、成分特異的な免疫刺激因子を含む。より好ましくは、この組成物は、コロイド金属と会合した、成分特異的な免疫刺激因子および成分特異的な免疫刺激因子の効果を特異的に標的化するための別のエレメント(これには、抗原、レセプター分子、核酸、医薬、化学療法剤およびキャリアが含まれるがそれらに限定されない)を含む。
【0105】
本発明の組成物は、任意の様式で免疫成分へと送達され得る。別の好ましい実施態様において、抗原および成分特異的な免疫刺激因子は、単一のコロイド金属粒子が抗原および免疫刺激因子の両方に結合するような様式でコロイド金属に結合している。別の実施態様において、多重抗原および/または多重成分特異的な免疫刺激因子は、単一のコロイド金属粒子に結合している。抗原ならびに成分特異的な免疫刺激因子および他のエレメントの、1つ以上のコロイド金属粒子との組み合わせは、本発明によって意図される。これらの錯体化金属粒子の1つまたはいくつかの投与は、本発明の方法の範囲内に含まれる。
【0106】
別の実施態様において、本発明の成分特異的な免疫刺激分子は、送達構造またはプラットフォームを包含する。成分特異的な免疫刺激分子および/または抗原/ワクチンは、そのプラットフォームに直接結合してい得るか、または結合基のメンバーを介してそのプラットフォームに結合してい得る。本発明の好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激因子および推定抗原/ワクチンが結合して標的化免疫増強因子を作製する結合基のメンバーに結合し得るプラットフォームとしてコロイド金属を含む。最も好ましい実施態様において、結合基はストレプトアビジン/ビオチンであり、そして成分特異的免疫刺激因子はサイトカインである。本発明の実施態様はまた、例えば、ポリカチオンまたはタンパク質を用いることによる結合パートナーの使用を伴わずに、あまり特異的でない方法において抗原/ワクチンを結合することを包含し得る。
【0107】
本発明は、コロイド金属をプラットフォームとして使用する、成分特異的な免疫刺激分子の標的化送達のための方法および組成物を包含する。そのようなコロイド金属は、抗原/ワクチンまたは成分特異的免疫刺激因子もしくは抗原/ワクチンのいずれかと相互作用する分子を、可逆的または非可逆的のいずれかで結合する。相互作用する分子は、特異的結合分子(例えば、結合対のメンバー)であり得るか、またはむしろ、あまり特異的には結合しない非特異的な相互作用分子であり得る。本発明は、ポリカチオン性エレメントのような当業者に公知の相互作用分子の使用を意図する。これは、ポリリジン、プロタミン硫酸塩、ヒストンまたはアシアログリコタンパク質を含むがそれらに限定されない。
【0108】
結合ペアのメンバーは、当業者に公知の任意のそのような結合対を含み、これには、抗体抗原対、酵素−基質対;レセプター−リガンド対;およびストレプトアビジン−ビオチン対が含まれるがそれらに限定されない。新規の結合パートナーが特異的に設計され得る。結合パートナーの必須要素は、その結合パートナーが特異的に結合され得るような、結合対の一方と、その結合対の他のメンバーとの間の特定の結合である。結合メンバーの別の所望される要素は、各メンバーがエフェクター分子もしくは標的分子へ結合し得るかまたは結合され得ることである。
【0109】
本発明の組成物および方法は、上記に記載した結合能力および方法の混合物の変更および組み合わせを含む。例えば、本発明の実施態様は、金属プラットフォームに直接結合した成分特異的な免疫刺激分子、および上記に記載される結合対を結合することのように分子を組み込むことによって特異的な結合またはあまり特異的でない結合のいずれかを介して金属プラットフォームに結合されつつある抗原/ワクチンを含む。本発明の別の実施態様は、コロイド金属プラットフォームに直接的に結合された抗原またはワクチンおよび分子を組み込むことによって特異的な結合またはあまり特異的でない結合を介して結合した成分特異的な免疫刺激分子を含む。さらに別の実施態様では、本発明は、分子を組み込むことまたは成分特異的な免疫刺激分子および抗原/ワクチンの金属プラットフォームへの直接の結合によって、特異的な結合またはあまり特異的でない結合を通じた、金属プラットフォームに対する成分特異的な免疫刺激分子および抗原/ワクチンの両方の結合を含む。本発明のなおさらなる実施態様は、分子をあまり特異的でない組込みによる結合を介して金属プラットフォームへ結合した成分特異的免疫刺激分子、および相補的結合メンバーの結合によって、金属プラットフォームに結合した抗原/ワクチンを結合することを含む。このような実施態様の他の組み合わせおよび変更は、本発明の部分であることを意図する。
【0110】
(プラットフォームに対する組成物成分の結合のための方法)
この組成物のエレメントの各々は、別個にまたは組み合わせて、任意の方法によってコロイド金属に結合され得る。しかし、このエレメントとコロイド金属とンの結合のための好ましい方法は以下のとおりである:この実施例において、この組成物は、抗原および成分特異的免疫刺激因子を含むが、この方法は、この実施態様に限定されない。この抗原は、水中で再構成される。次いで、約50〜100μgの抗原をコロイド金属と共にインキュベートする。
【0111】
コロイド金属混合物のpHは、その成分特異的因子のpIを1〜3pH単位上回るように調整される必要があり得る。次いで、50〜100μgの成分特異的因子を、抗原コロイド混合物に添加し、そしてさらに24時間インキュベートする。この時間の間、この標的成分特異的因子は、抗原金錯体に取り込まれ、免疫成分標的化抗原送達系を生じる。本発明者らは、そのような実験を首尾よく実施し、そして実際、同じコロイド金属粒子において3つまでの異なる部分を連結した。
【0112】
その成分特異的因子の、抗原/Auへの結合後、その混合物を、1〜100%のポリエチレングリコールの1%v/v溶液の添加によって安定化する。他の安定剤には、Brij58およびシステイン、他のスルフヒドリル含有化合物、リン脂質、ポリビニルピロリドン、ポリ−L−リジンおよび/またはポリ−L−プロリンが挙げられ得る。この混合物を、一晩安定化し、そして続いて遠心分離して、結合していない物質から結合した抗原および成分特異的因子を分離する。この混合物を、14,000rpmで30分間遠心分離し、上清を除去し、そしてペレットを1%アルブミンを含有する水中に再懸濁する。この手順は、比較的高い効率の抗原および標的成分の連結を有する。なぜなら、75%〜95%の両方の部分が結合するからである。さらに、そのコロイドに結合しない遊離の物質を、遠心分離によって分離する。
【0113】
(例示成分)
用語「コロイド金属」は、本明細書において使用される場合、任意の水不溶性金属粒子または金属成分ならびに非金属起源のコロイド(例えば、液体または水中に分散したコロイド状炭素(ヒドロゾル))を含む。本発明において使用され得るコロイド金属の例には、周期表のIIA族、IB族、IIB族、およびIIIB族の金属、ならびに遷移金属、特にVIII族の金属が含まれるが、それらに限定されない。好ましい金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムを含む。他の適切な金属はまた、それらの種々の酸化状態における以下のものを含む:リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、錫、タングステン、レニウム、白金およびガドリニウム。金属は、好ましくは、イオン形態(好ましくは、適切な金属化合物に由来する)で提供される(例えば、Al3+イオン、Ru3+イオン、Zn2+イオン、Fe3+イオン、Ni2+イオンおよびCa2+イオン)。好ましい金属は、金(特にAu3+の形態)である。金コロイドの特に好ましい形態は、HAuCl4(E−Y Laboratories、Inc. San Mateo、California)である。別の好ましい金属は、銀(特にホウ酸ナトリウム緩衝液中)であり、約0.1%〜0.001%の間の濃度を有し、そして最も好ましくは約0.01%溶液である。このようなコロイド銀溶液の色は、黄色であり、そしてコロイド粒子は、1〜40nmの範囲である。このような金属イオンは、錯体中で単独で、または他の無機イオンと共に存在し得る。
【0114】
任意の抗原が本発明において使用され得る。本発明において有用である抗原の例は、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンド毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホ毒素、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオテンシン、トランスフォーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、および他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART,MAGE、BAGE、および熱ショックタンパク質(HSP);p53変異体;チロシナーゼ;自己免疫抗原;免疫治療薬物(例えば、AZT);ならびに血管形成薬物および抗新血管形成薬物(例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン)、および塩基性線維芽細胞増殖因子および血管内皮増殖因子(VEGF)を含むがそれらに限定されない。
【0115】
成分特異的な免疫刺激因子は、APCが抗体のB細胞産生を刺激する能力を増加させる任意の分子または化合物であり得る。成分特異的免疫刺激因子の例は、抗原、コロイド金属、アジュバント、レセプター分子、核酸、免疫原性タンパク質、および補助的なサイトカイン/免疫刺激因子、医薬、化学療法剤およびキャリアを含むがそれらに限定されない。これらの成分特異的免疫刺激因子は、別個に、または組み合わせて使用され得る。これらは、遊離状態または錯体(例えば、コロイド金属との組み合わせ)で使用され得る。
【0116】
本発明において有用なアジュバントは、熱殺傷M.butyricum、およびM.tuberculosisを包含するがそれらに限定されない。非限定的なヌクレオチドの例は、DNA、RNA、mRNA、センスおよびアンチセンスである。免疫原性タンパク質の例は、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン(Cyanin))、チログロブリン、および融合タンパク質(これは、アジュバントおよびその遺伝子にコードされた抗原部分を有する)である。
【0117】
補助的サイトカイン/免疫刺激因子は、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンド毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF−α」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホ毒素、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオテンシン、トランスフォーミング増殖因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、および他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART,MAGE、BAGE、およびHSP;flt3リガンド/レセプター系;分子およびレセプターのB7ファミリー;CD40リガンド/レセプター;および免疫治療薬物(例えば、AZT)、ならびに新血管形成薬物および抗新血管形成薬物(例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン)、および塩基性線維芽細胞増殖因子および血管内皮増殖因子(VEGF)を含むがそれらに限定されない。
【0118】
コロイド金属の使用以外の方法および組成物を使用して、成分特異的免疫刺激因子を、単独または抗原もしくは他のエレメントと組み合わせて送達し得る。例えば、この組成物は、リポソームまたはミクロスフェアにカプセル化され得るか、あるいはウイルスベクターのような他の細胞送達ビヒクルの手段によって送達され得る。さらなる組み合わせは、ウイルス粒子とともに包埋した金コロイド粒子である。これは、活性なワクチン候補であるかまたは推定のワクチンのためのDNAを含むようにパッケージングされる。この金粒子はまた、サイトカインを含み、これは、次いで、特定の免疫細胞に対してそのウイルスを標的化するために使用され得る。さらに、2つ以上の潜在的なワクチン候補を標的化し、そして2つ以上の適用についてワクチンを生成する融合タンパク質ワクチンを作製し得る。この粒子はまた、その物質をゆっくり放出し得る、ポリエチレングリコールの添加によって化学改変され得る免疫原を含み得る。
【0119】
成分特異的免疫刺激因子は、公知の遺伝子治療方法を用いてそれらの核酸の形態で送達され得、そして翻訳後にそれらの効果を生じる。免疫成分(例えば、抗原)の活性化のためのさらなるエレメントが同時にまたは連続的に送達され得、その結果細胞で翻訳された成分特異的免疫刺激因子および外的に添加されたエレメントが協調して作用して、免疫応答が特異的に標的化される。
【0120】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。これは、いかなるようにも本発明の範囲に対して限定を課すとは解釈されない。対照的に、種々の他の実施態様、改変およびその等価物に対して手段が講じられ得、本明細書における説明を読んだ後に、それら自体が本発明の精神および/または添付の請求の範囲から逸脱することなく当業者に示唆し得ることは明らかに理解されるはずである。
【実施例】
【0121】
(実験的データ)
(実施例1)
以下は一般的な実験プロトコルであり、分子(抗原であれ分特異的免疫刺激因子であれ)を金コロイドへ結合するために、このプロトコルに従った。この分子を、水中で再構成した。200μgのこの分子を25mLの金コロイドとともに24時間インキュベートした。次いで、分子/金コロイド錯体溶液を14,000rpmで20分間、室温で微小遠心分離機中で遠心分離した。次いで、上清をペレットから除去した。
【0122】
(実施例2)
50μgの上皮増殖因子(EGF)を、pH11.0で25mLの40nMの金コロイド粒子に結合させた。この溶液を、揺動台(rocking platform)上で24時間揺らした。50μg(50μlとして添加した)の標的化サイトカイン(すなわち、マクロファージを標的化するためのIL−1β、T細胞を標的化するためのIL−2、B細胞を標的化するためのIL−6、および樹状細胞を標的化するためのTNF−αまたはFlt−3リガンドのいずれか)を、EGF/Au溶液に添加し、そしてさらに24時間揺らした。次いで、物質に結合した金コロイドおよび結合していない金コロイドを分離するために,その溶液を14,000rpmで遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを、1%ヒト血清アルブミンを含む1mlの水中で再構成した。
【0123】
(実施例3)
EGFを、実施例2での手順を用いて金コロイド(CG)に結合させた。次いで、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG錯体に結合させてEGF/CG/TNF−αキメラを作製した。
【0124】
(実施例4)
EGFを、実施例2での手順を用いて金コロイド(CG)に結合させた。次いで、インターロイキン6(IL−6)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG錯体に結合させてEGF/CG/IL−6キメラを作製した。
【0125】
(実施例5)
EGFを、実施例2での手順を用いて金コロイド(CG)に結合させた。次いで、インターロイキン2(IL−2)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG錯体に結合させてEGF/CG/IL−2キメラを作製した。
【0126】
(実施例6)
バフィーコートを、当該分野で周知であるように、全血のサンプルから分離した。100〜500mLの全血をヘパリン上で収集した。この血液を注意深く50%(v/v)フィコル−ハイパック溶液上に重層し、そして2700rpmで7分間遠心分離した。血清/フィコル界面での白血球細胞の収集物であるバフィーコートを、パスツールピペットで収集し、そして0.5mg/mLヘパリンを含む10mLのPBSに配置した。これを1500rpmで遠心分離し、そしてペレットを洗浄し、そして再遠心分離した。この細胞を、2回PBS溶液中で洗浄し、そして再び1回遠心分離した。
【0127】
この細胞を、10%の仔ウシ血清または正常ヒト血清のいずれかを含むRPMI中に再懸濁し、そして6ウェルプレートで細胞密度106細胞/ウェルで培養した。この細胞を次いで、50〜100μlの1つまたはすべての抗原/サイトカイン混合物を刺激した。
【0128】
図1に示すように、マクロファージのみがEGF/CG/IL−1βキメラをインターナライズさせたが、樹状細胞のみがEGF/CG/TNF−αキメラをインターナライズさせた(図2)。同様に、B細胞のみがEGF/CG/IL−6キメラをインターナライズさせたが(図3)、T細胞のみがEGF/CG/IL−2キメラをインターナライズさせた(図4)。
【0129】
この実験によって示されるように、特定の成分特異的免疫刺激因子は、個々の免疫成分について特異的である。従って、成分特異的免疫刺激因子を用いて特定の免疫成分を標的化し、それによってそれらの免疫応答を増強して免疫応答全体における活性の上昇をもたらすことが可能である。
【0130】
(実施例7)
この実施例について、ブドウ球菌エンテロトキシンBを、推定の抗原/ワクチン分子として使用した。なぜなら、その毒素を金コロイドに結合させるとその毒性が減少するという証拠が存在するからである。500μgのその毒素を、最初に250mlの40nM金コロイド粒子に結合させた。次いで、このコロイド溶液をアリコートした。50μgの標的化サイトカイン(IL−1β、IL−2、IL−6およびTNF−α)を、そのアリコートの1つに添加し、そして24時間再インキュベートした。この毒素−AU−サイトカインコロイドを、14,000rpmで遠心分離し、そして上清を除去した。ペレットを1mlの水で再構成した。このペレットを、サンドイッチELISAまたは競合ELISAのいずれかによってサイトカイン濃度についてアッセイした。これを行って、生理食塩水または毒素単独を受けるコントロール動物において注射されるべききれいな(neat)サイトカイン(結合していない)の量を決定した。
【0131】
免疫戦略は、きれいな毒素/サイトカイン混合物(組成物コントロールとして)、あるいは毒素−Au−サイトカインキメラの同時投与または連続投与を伴う。5匹のマウス/群に、1日目、5日目、および9日目に、2.5μgのきれいな毒素または同じ用量の金コロイドに結合した毒素/サイトカイン混合物を注射した。14日間の免疫期間の間、2つのさらなる群のマウスに、表1に提供されるスケジュールに従って、きれいな毒素/サイトカインまたは毒素−Au−サイトカインを与えた。
【0132】
【表1】
全ての群を、1μgのきれいな毒素単独で30日目に再チャレンジした。保護的免疫は、きれいな毒素の、罹患率を誘発する能力の減少または欠如によって実証された。鍵となる観察は、金コロイドに結合した毒素は、その毒素の毒性を非常に減少させたことである。第二に、その毒素に対する血清抗体力価は、きれいな処置単独を受けたマウスよりも10倍高かった。しかし、連続的な処置を受けた動物の血清抗体は、きれいな処置を受けた動物よりも、100倍高かった。最後に、きれいな毒素で再チャレンジすると、毒素で処置した動物の100%が死んだが、他方で、同時の群においては20%の致死率が観察されたのみであった。
【0133】
従って、本発明の組成物および方法は、ワクチンの効力を増加するために使用され得る。
【0134】
(実施例8)
(金コロイドに対するサイトカインの結合)
ヒトTNF−αをpH11の水中で1μg/mlの最終濃度に戻した。300μgの組換えヒトTNF−αを、混合している間、一晩、25mlの30〜40nmの金コロイド粒子と共に揺動台でインキュベートした。
【0135】
25mlの金コロイド結合TNF−α溶液を半分に分けた。1つのアリコートを125μlの100% PEG溶液でブロックした。他のアリコートはブロックしなかった。2つのアリコートを揺動台上に戻し、さらに1〜5日インキュベートした。
【0136】
次いで、2つのアリコートを14,000rpmで20分間遠心分離した。上清をペレットから取り除いた。ペレットをpH11の水中で10mlのヒト血清アルブミン(HSA)の1%溶液を用いて再構成することによってブロックした。
【0137】
アリコートを6時間、揺動台で混合した。次いで、このアリコートを14,000rpmで20分間遠心分離し、そしてpH11の水中で3.5mlの1% HSAにおいて再構成した。
【0138】
(実施例9)
(ヒト−抗−ヒト TNF−α抗体の生成)
軟膜をフィコレーション(ficollation)によって末梢血液から分離し、そして0.5mg/ml ヘパリンおよびEDTAを含むPBSで洗浄した。細胞を10−T−75培養フラスコに置いた。この細胞を2週間、10% 加熱して不活性化したウシ胎仔血清、10% OrigenTMおよび以下のサイトカインから構成される100ng/mlのサイトカイン反応混液とRPMI中で2週間培養した:IL−4、IL−6、IL−7、IL−10、IL−11、幹細胞因子(「SCF」)、GMCSF、およびGSFの単独および金コロイドと結合したもの両方。
【0139】
(実施例10)
(ヒト−抗−ヒトTNF−α抗体についてのELISAアッセイ)
1mlのアリコートを実施例9に示したように処置した3つのフラスコの細胞から採集し、そして1,500rpmで15分間遠心分離した。この上清を回収し、そして−20℃で保存した。
【0140】
組換えヒトTNFを炭酸/炭酸水素緩衝液中でマイクロタイタープレートのウェル上にコートした。プレートを2.0ml/l Tween20を有するTBSで4回洗浄した。100μlの上清を各ウェルに添加した。コントロールウェルには使用していない増殖培地を入れた。サンプルを室温で一晩インキュベートした。
【0141】
次いでプレートを洗浄し、そして1:1000希釈した(TBS+0.1% BSAで)100μlのアルカリホスファターゼ結合体化したヤギ−抗−ヒトIgGを1時間ウェルでインキュベートした。次いで、プレートを再洗浄し、そして100μlのアルカリホスファターゼ基質(pNPP)を適切な色が発色するまでウェルでインキュベートした。
【0142】
このアッセイの結果を図5に例示する。この図は、ヒト−抗−ヒトTNF−α抗体を、実施例8および9に記載されているような本発明の方法によって生成したことを示す。
【0143】
(実施例11)
(細胞融合およびハイブリドーマ選択)
一旦、実施例9における細胞のインビトロセロコンバージョンが確認されると、106〜107のK6H6/B5ミエローマ細胞を、セロコンバージョンされた細胞が検出される容器に直接加えた。この細胞を緩やかに混合し、回収し、そして1,200rpmで15分間遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを血清を含まないDMEMで洗浄した。細胞を最後に1回、遠心分離し、そして上清を完全に除去した。ペレットを緩やかに叩いて取出し、そして細胞を以下の表に記載される戦略に従って53% PEG 1450を加えることによって融合した。
【0144】
PEG溶液を37℃で細胞を振とうしている間に、以下の方法およびインキュベーションを使用して細胞に添加した。
【0145】
【表2】
次に血清を含まないDMEMを、以下のスケジュールを使用して細胞に添加した。
【0146】
【表3】
細胞を、引き続いて1,200rpmで15分間遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットを10% FBS、10% OrigenTM、上述のサイトカイン反応混液およびハイブリドーマ選択剤HATを、10%の最終濃度で含む50% DMEM/RPMI培地中で再構成した。細胞を最初に、150μlのアリコートで5つの96ウェル組織培養クラスターに播種した。クローンの増殖を増加するために、細胞をまた最初の免疫化において使用される25μlの金コロイド結合TNF−αで刺激した。
【0147】
細胞を2週間、培地を含むHAT中で増殖し、この後、HTを選択薬剤としてHATと置換した。増殖の2週間後、細胞をサイトカイン反応混液、10% OrigenTMおよび10% FBSで補充された50% DMEM/RPMI培地中で増殖した。
【0148】
(実施例12)
(陽性抗体機能に関する上清の試験)
実施例13におけるサンプル中のTNF−α−特異的抗体の存在を増殖のすべての段階中に試験した。上清を最初に直接EIAによって、次いでTNF−αによる用量依存様式でWEHI細胞の増殖の阻害を測定するインビトロアッセイによって試験した。ポジティブクローンを元の96ウェルプレートから6ウェルプレートにスケールアップした。引き続いて、ポジティブを試験するクローンすべてを低温保存法、ならびに元の初回刺激のマウスにおける5mlの腹水の生成のためにスケールアップした。腹水を精製し、そして抗体をTNF−αによるWEHI細胞の増殖の阻害を妨げるその能力について試験した。生物活性をブロックする精製抗体の能力は、その中和活性を示した。
【0149】
中和活性を示すクローンを10〜100mgの精製抗体を生成するためにスケールアップした。これらの抗体を最初に、外因的に投与されたTNF−αのインビボ中和化についてスクリーニングした。
【0150】
(実施例13)
(フローサイトメトリーによって測定された細胞表面マーカーに対する金コロイド結合TNF−αの効果)
軟膜を米国赤十字から得、そしてフィコールを使用して分離した。リンパ球を0.2mg/ml へパリンを含むPBSで3回洗浄し、そしてフィコールで再度処理した。洗浄後、ウェル当たり100〜500万の細胞を10% FBSで補充したDMEM中で9〜12ウェル組織培養クラスターに播種した。
【0151】
各ウェルは、2mlの(1)培地単独、(2)0.5μg/mlのマイトジェン、フィトヘマグルチニン(PHA)(T細胞応答の誘導のため)、(3)1.0μg/mlのマイトジェン、リポポリサッカライド(LPS)(炎症応答の誘導のため)または(4)マイトジェン、LPSおよびPHAのそれぞれ0.5および1.0μg/mlの最終濃度での組み合わせのいずれかを含んだ。他のマイトジェン(例えば、ヤマゴボウマイトジェン)ならびにスーパー抗原(例えば、このアッセイにおけるブドウ球菌の菌体内毒素AおよびB)を含むほかの薬剤を使用することが可能であることに留意のこと。細胞をマイトジェン(PHAまたはLPS)単独、あるいはHSA(ヒト血清アルブミン)においてポリエチレングリコール(PEG)で安定化された金/TNF−αまたはHSA単独で処理した金/TNF−αのいずれかの存在下でのマイトジェンのいずれかで刺激した。培養プレートを細胞表面、細胞活性マーカー、およびサイトカイン発現のフローサイトメトリ分析のために採集した。
【0152】
細胞をBeckton Dickinson FacscaliburおよびBecton Dickinson tritest MABセットを使用してこれらのCD4、CD8、およびCD19レベル、ならびに活性化マーカーCD69における変化について分析した。これを、細胞を収集し、遠心分離し、そして1.8mlの上清を除去することによって行なった。細胞を力価測定した(すなわち細胞ペレットを再懸濁し、そして75μlのサンプルを製造者の指示書に従って、適切なMABとともにインキュベートした)。
【0153】
フローサイトメトリーによって、処理後24〜48時間でコントロール細胞と金処理した細胞との間でCD4、CD8またはCD19レベルにおいていずれの相違も検出しなかったが、プレートの可視検査は、クラスター様形成物が未処置および金処理細胞の両方において形成したことを示した。さらに金コロイド結合体化TNF−αで処理した細胞において、クラスターの数がより多く出現し、より多い頻度および細胞密度であった。さらに興味深いことに、周辺の細胞は、金処理したクラスターに向かって移動するようであった。このことは、明確な細胞移動の段階的変化が存在するので、金を溶出しているTNF−αを反映し得る。さらに、細胞の移動は、PEG安定化金結合TNF−αで処理した細胞において著しくなく、このことはTNFは金を溶出しないか、またはずっと少ない程度で溶出していたことを示す。
【0154】
マイトジェン処理後48時間で、PHAを使用した白血球の刺激によって誘導される培地の代表的な馴化を観察した。しかし、PEGで安定化されるか、または、安定化されない金結合TNF−αで処理したウェル中の細胞は、有意には培地の馴化をほとんど示さず、このことは金/TNF−αがPHA誘導有糸分裂誘発をブロックしたことを示す。このことは、金コロイドがTh1−様T細胞応答をブロックすることを示し得る。
【0155】
フローサイトメトリー分析は、刺激後24〜48時間内にCD4、CD8またはCD19細胞集団におけるいずれの有意な変化も示さなかったが、いくつかの細胞型内への金コロイド結合TNF−αの輸送が観察された。コントロール細胞が正常な透明な表現型を有したが、安定化金処理細胞および非安定化金処理細胞は、細胞ならびに細胞クラスター上のいくつかの位置において金染色の濃度を有した。金の分布は、中央の細胞内位置から細胞表面まで変動した。また、この物質は、円形および樹状細胞を含む多重細胞型でみられた。円形細胞において、金物質の局在化は、核においてか、細胞表面の一方の側においてかのいずれかであった。細胞表面マーカーによって同定されないが、巨大細胞を形成する細胞の能力ゆえに、円形細胞は、単核細胞/マクロファージを分化していると考えられる(図6aおよび6b)。金コロイド染色は時間と共に消失し、従って持続性ではないようである。このことは、金コロイド/TNF−α混合物が一旦、細胞中に入ると、それが代謝されていることを示す。しかし、この染色は金コロイド結合TNF−αでの再刺激で再出現したので、細胞は金コロイドを取り込む能力を保持していた。
【0156】
図6aは、金コロイド/TNF−αとともに単離されたヒトリンパ球を長期間インキュベートして誘導された巨大細胞形成を例示する、200倍明視野顕微鏡写真である。図6bは、同じ細胞の200倍位相差顕微鏡写真明視野モノグラフである。
【0157】
(実施例14)
リンパ球をアメリカ赤十字から得たヒト末梢血液の軟膜から単離した。リンパ球を(1)金コロイド単独、(2)ヒト血清アルブミン(HSA)と結合した金コロイド、または(3)TNF−αと結合した金コロイドのいずれかで処理した。各群を2つのアリコートに分けた。1つのアリコートを1% PEGでブロックし、そして残った他方を無処理とした。
【0158】
金または金/HSA群を取り込む最初の細胞型は、マクロファージであった。これを巨大細胞形成によって確認した。しかし、図7に例示したように、TNF−α/金群において金を取り込む最初の細胞型は、伸長した形態の樹状細胞を有した。
【0159】
この結果は、金コロイド結合TNF−αのレセプター媒介結合を示す。さらに、樹状細胞の分化に関するTNF−αの必要性は、金コロイド結合TNF−αがその生物学的活性を保持したことを示唆する。
【0160】
(実施例15)
この実験を、単離されたリンパ球による金コロイドの取り込みに対するアジュバント成分の効果を決定するために設計した。この実験を、さらなる群の細胞を含むことを除いて、実施例6および7と同じ様式で行った。これらの細胞は、100μlの加熱殺傷したMycobacterium Butyricumの1.0mg/ml懸濁物を受容した。この細菌を抗体生成のためのアジュバント調製において慣用的に使用する。
【0161】
図8に例示するように、金染色は、マクロファージまたは樹状細胞のいずれとももはや関連しないが、細胞の浮動性クラスターと関連し、これはB−細胞を活性化し得る。表現型を決定する研究を、この仮説を確かめるために現在進行中である。
【0162】
(実施例16)
金コロイドに結合したストレプトアビジンは飽和性の結合動力学を示した。この実験のために、500μgのストレプトアビジンを50mlの32nm金コロイドに1時間結合させた。次いで、5mlの安定化溶液(5% PEG 1450、0.1% BSA)をチューブに添加し、そしてさらに30分間混合させた。この溶液を遠心分離して、非結合ストレプトアビジンを除去し、そして5mlの安定化溶液で2回洗浄した。最終遠心の後、ペレットを安定化溶液で5mlの容量に戻した。1mlのアリコートを微量遠心チューブに分配した。これらのチューブに量の増加量のビオチン化ヒトTNFαを添加した。ビオチン化したサイトカインを1時間ストレプトアビジン金とともにインキュベートした。この物質を10分間、10,000rpmで遠心分離した。生じた上清を回収し、そしてTNF測定のために使用した。各チューブからのペレットを1回、安定化溶液で洗浄し、そして再度遠心分離した。この遠心からの上清をすてた。ペレットを安定化溶液で1mlに戻し、そしてペレットおよび最初の上清の両方を本発明者らのCYTELISATMTNFキットを使用して、TNF濃度についてアッセイした。ビオチン化TNF免疫反応性の90%以上がペレット中で見出され(図10)、ビオチン化TNFがストレプトアビジンに結合した金によって捕捉されることを示すことが理解され得る。
【0163】
(実施例17)
この実施例は、標的化した薬物送達系としてストレプトアビジン金複合体の実施可能性を評価するためであった。このことが生じるためには、ストレプトアビジン結合体化金コロイドは、ビオチン化した標的リガンドならびにビオチン化した治療薬の両方に結合しなければならない。このことを研究するために、本発明者らは、以下の実験を行った。
【0164】
100mlの32nmの金コロイド溶液を飽和濃度のストレプトアビジンで結合させた。1時間後、この溶液を遠心分離し、そして上記のように洗浄した。次いで、金コロイド結合ストレプトアビジンを準飽和濃度のビオチン化サイトカインと結合させた。この物質をボルテックスし、そして室温で1時間、インキュベートした。その後、この溶液を遠心分離し、そしてペレットをビオチン化したポリリジン溶液とともにインキュベートした。1時間のインキュベートの後、この溶液を再遠心分離し、そして洗浄した。最終の遠心および再懸濁の後(溶液の最終濃度は約1mlであった)、50μgのβガラクトシダーゼレポーター遺伝子を、濃縮したストレプトアビジン/ビオチン化サイトカイン/ポリリジンキメラとともに1時間インキュベートした。この物質を遠心分離し、非結合プラスミドDNAを除去した。最終構築物(ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチン ポリリジン−DNA)を14,000rpmで遠心分離した。上清を260nmでそのODを測定することによってDNAの存在についてアッセイした。本発明者らは、ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチンポリリジン構築物とともにプラスミドDNAをインキュベートした後、260nmでの上清ODにおいて0.95〜0.25までの減少を観察した。DNAをビオチン EGF−SAP−Au−ビオチンポリリジン−DNAによって結合し、そして溶液からペレットに遠心分離した。これらのデータは、新しい薬物送達系が金コロイドに結合しているアビジンを使用して開発されたことを示す。次いで、金コロイドに基づいた薬物/遺伝子送達系にこれらの分子を結合するための方法として、標的化および送達ペイロードのビオチン化を使用した。
【0165】
もちろん、前述は本発明の好ましい実施態様のみに関し、そして多数の改変または変更が添付の特許請求範囲に示されるような本発明の意図および範囲から逸脱することなくそこに使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−14616(P2013−14616A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214639(P2012−214639)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2009−144707(P2009−144707)の分割
【原出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】(500209088)サイティミューン サイエンシーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2009−144707(P2009−144707)の分割
【原出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】(500209088)サイティミューン サイエンシーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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