説明

免疫応答を増強するワクチンベクターおよび方法

本明細書で提供されるものは抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドを含むワクチンベクターであり、前記ポリペプチドはワクチンベクターの表面に存在する。前記ワクチンベクターを含む組成物もまた提供され、前記は医薬的に許容できる担体、適切には経口投与または鼻投与用担体を含む。さらにまた提供されるものは、免疫応答、特に抗体免疫応答および適切にはIgA応答を、本明細書に開示したワクチンベクターまたは組成物を対象動物に投与することによって増強する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本特許出願は、米国仮特許出願61/297,098(2010年1月21日出願)(前記文献は参照により本明細書にその全体が含まれる)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、抗原(特に病原体、腫瘍細胞などに由来する抗原)に対して、疾患の緩和または予防のために適応免疫応答を開始させるために用いられる。合成ペプチドまたは殺滅もしくは弱毒化微生物ワクチンは、完全に防御性である激しい免疫応答を刺激するためにしばしば有効である。いくつかの事例では、これらのワクチンは防御性ではないか、または単に部分的に防御性であり、他の方法を用いて防御性ワクチンを開発しなければならない。弱毒化微生物によるワクチンもまた遺伝子移転または変異修復のリスクを伴い、免疫低下個体へのリスクは避け得ない。安全でしかも持続的な防御性免疫応答の刺激に有効な新規ワクチンの開発が希求される。
インフルエンザウイルス感染、特にトリインフルエンザH5N1は、大きな健康上および経済上の懸念を提示する。H5N1が、世界中の拡大する領域で感受性を有する鳥類とブタの間で循環し続けていることを明瞭に示す証拠が存在する。多くの研究者らが、もし阻止せずに放置するならば、従来のH5N1トリインフルエンザは変異し、ヒトからヒトへの伝播を可能にして世界的な流行病を引き起こすであろうと考えている。50%を超える死亡率と併せて、そのような勃発は壊滅的なものであろう。ヒトの疾患を引き起こすウイルスの能力には関係なく、感染地域の家禽群の全滅のために莫大な経済的影響を有するトリインフルエンザH5N1はすでに脅威である。したがって、ヒト、家禽、ブタおよび他の家畜化動物をH5N1インフルエンザから防御するワクチンの開発が希求される。他のインフルエンザウイルス(例えばH1N1)と同様にH5N1に対する防御能力を有するインフルエンザワクチンが最適であろう。
【発明の概要】
【0003】
免疫応答を刺激するワクチンベクターおよび方法並びにインフルエンザ感染に関連する病的状態を緩和する方法が本明細書で提供される。ある特徴では、抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドまたはその機能的フラグメントを含むワクチンベクターが提供される。抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドの少なくとも一部分がワクチンベクターの表面に存在する。ワクチンベクターは、抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドおよびHMGB1ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含むことができる。HMGB1ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドは、例えば融合タンパク質の状態で連結され得る。HMGB1ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドはともにトランスメンブレンタンパク質の外部ループ内に挿入できる。
別の特徴では、ワクチンベクターおよび医薬的に許容できる担体を含む組成物が提供される。医薬的に許容できる担体は経口使用または鼻での使用に許容できる。ワクチンベクターは複製不能であり得る。
【0004】
さらに別の特徴では、バシルス種(Bacillus spp.)ワクチンベクターが提供される。ワクチンベクターは、前記ワクチンベクターの表面で発現される抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列、および前記ワクチンベクターの表面で発現される免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含む。抗原性ポリペプチドは、インフルエンザM2eポリペプチド、インフルエンザHAポリペプチドもしくはインフルエンザNPポリペプチドまたは前記の組合せであり得る。免疫刺激性ポリペプチドは、CD154ポリペプチドもしくはHMGB1ポリペプチドまたは前記の組合せであり得る。免疫刺激性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドは、例えば融合タンパク質の状態で連結でき、さらにトランスメンブレンタンパク質の外部ループ内に挿入できる。
【0005】
さらに別の特徴では、対象動物において免疫応答を増強する方法が提供される。本方法では、本明細書で提供されるワクチンベクターまたは組成物が、対象動物の抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を増強するために有効な量で対象動物に投与される。適切には、ワクチンベクターは経口的にまたは鼻内に投与される。
さらに別の特徴では、本明細書に記載するバシルス種ワクチンベクターを投与することによって対象動物において免疫応答を増強する方法が提供される。前記ワクチンベクターは、前記ワクチンベクターの表面で発現される抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列、および前記ワクチンベクターの表面で発現される免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含む。前記抗原性ポリペプチドは、インフルエンザM2eポリペプチド、インフルエンザHAポリペプチド、インフルエンザNPポリペプチドまたは前記の組合せであり得る。前記免疫刺激性ポリペプチドは、CD154ポリペプチド、HMGB1ポリペプチドまたはそれらの組合せであり得る。
さらにまた別の特徴では、対象動物においてインフルエンザ関連病的状態を緩和する方法が提供される。本方法では、本明細書に開示するワクチンベクターまたは組成物の投与は、その後のインフルエンザ感染に関連する病的状態を緩和する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1またはCD154を発現する枯草菌(Bacillus subtilis)ワクチンベクターを表示の投薬量で経口胃管栄養により投与した後のニワトリのM2e特異的抗体産生について、食塩水ワクチンを投与されたニワトリと比較したELISAにおけるS/P(サンプル対陽性コントロール)比を示すグラフである。
【図2】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1またはCD154を発現する枯草菌ワクチンベクターを表示の投薬量で経口胃管栄養により投与した後のニワトリのHA LB特異的抗体産生について、食塩水ワクチンを投与されたニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図3】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1またはCD154を発現する枯草菌ワクチンベクターを表示の投薬量で経口胃管栄養により投与した後のニワトリのHA UA特異的抗体産生について、食塩水ワクチンを投与されたニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図4】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1またはCD154を発現する、生または様々に不活化した枯草菌ワクチンベクターを表示の投薬量で経口胃管栄養により投与した後のニワトリのM2e特異的抗体産生について、バシルスベクター単独(BSSS)ワクチン投与ニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図5】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1またはCD154を発現する、生または様々に不活化した枯草菌ワクチンベクターを表示の投薬量で経口胃管栄養により投与した後のニワトリのHA LB特異的抗体産生について、バシルスベクター単独(BSSS)ワクチン投与ニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図6】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1またはCD154を発現する、生または様々に不活化した枯草菌ワクチンベクターを表示の投薬量で経口胃管栄養により投与した後のニワトリのHA UA特異的抗体産生について、バシルスベクター単独(BSSS)ワクチン投与ニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図7】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1を発現する、106の生または種々の表示投薬量のホルマリン不活化枯草菌ワクチンベクターを経口胃管栄養により投与した後のニワトリのM2e特異的IgG抗体産生について、バシルスベクター単独(BSSS)ワクチン投与ニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図8】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1を発現する、106の生、ホルマリン不活化またはホルマリン不活化凍結乾燥枯草菌ワクチンベクターで経口的にまたは皮下にワクチン接種したニワトリのM2e特異的IgA抗体産生について、バシルスベクター単独(BSSS)ワクチン投与ニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【図9】インフルエンザAエピトープおよびHMGB1を発現する、106の生、ホルマリン不活化またはホルマリン不活化凍結乾燥枯草菌ワクチンベクターで経口的にまたは皮下にワクチン接種したニワトリのM2e特異的IgA抗体産生について、バシルスベクター単独(BSSS)ワクチン投与ニワトリと比較したELISAにおけるS/P比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
組換えDNA技術は、多くの細菌およびウイルス種の比較的容易な操作を可能にする。いくつかの細菌およびウイルスは、本来または選択もしくは操作によって、軽度に病原性または非病原性であるがなお激しい免疫応答を生じる能力を維持することができる。これらの細菌およびウイルスは、異種または外来抗原に対する免疫応答の誘引のための魅力的なワクチンベクターとなる。細菌またはウイルスワクチンベクターは天然の感染を模倣し、激しく長期間持続する免疫を生じることができる。ワクチンベクターは、しばしば製造および投与が比較的安価である。さらにまた、そのようなベクターはしばしば2つ以上の抗原を保持でき、多数の感染因子に対して防御を提供できる。
生の細菌またはウイルスワクチンベクターは免疫低下個体に対してはなおリスクを避け得ず、さらに別の規制監視を必要とすることがある。したがって、殺滅もしくは不活化されてあるか、または食品医薬品局(FDA)によって一般的に安全とみなされる(Generally Regarded As Safe(GRAS))生物として適格とされるベクターの使用が望ましい。問題は、そのようなベクターを用いて激しい免疫応答を生じるかということである。実施例に示すように、ワクチンベクターの表面にHMGB1(高可動性グループボックス1(high mobility group box 1))ポリペプチドを含めることによって、我々は、バシルス種ベクターを用いて抗原性ポリペプチドに対して激しい免疫応答を生じさせることができる。実際、実施例は、このベクターは、多様な方法を用いて複製できないように不活化されるが投与後になお激しい免疫応答を誘引できることを示している。
【0008】
抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドまたはその機能的フラグメントを含むワクチンベクターが本明細書で提供される。抗原性ポリペプチドの少なくとも一部分およびHMGB1ポリペプチドまたはその機能的フラグメントの少なくとも一部分がワクチンベクターの表面に存在する。ワクチンベクターは、抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドおよびHMGB1ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含むことができる。HMGB1ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドは例えば融合タンパク質の状態で連結されてあっても、または別々に発現されてもよい。HMGB1ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドはともにトランスメンブレンタンパク質の外部ループ内に挿入できる。
ワクチンベクターは、細菌、ウイルスまたはリポソーム系ベクターであり得る。可能なワクチンベクターには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):バシルス(Bacillus)(枯草菌(Bacillus subtilis))、サルモネラ(Salmonella)(腸炎菌(Salmonella enteritidis))、シゲラ(Shigella)、エシェリキア(Escherichia)(大腸菌)、エルジニア(Yersinia)、ボルデテラ(Bordetella)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ビブリオ(Vibrio)(コレラ菌(Vibrio cholerae))、リステリア(Listeria)、アデノウイルス(adenovirus)、ポックスウイルス(poxvirus)、ヘルペスウイルス(herpesvirus)、アルファウイルス(alphavirus)、およびアデノ関連ウイルス。適切には、ワクチンベクターはGRAS生物である。ワクチンベクターは、複製できないように不活化または殺滅することができる。細菌またはウイルスワクチンベクターを不活化または殺滅する方法は当業者には公知であり、例えば実施例に示す方法(すなわちホルマリン不活化、抗生物質依存不活化、熱処理およびエタノール処理)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0009】
抗原性ポリペプチドは、適応免疫系によって特異的に認識される能力をもつポリペプチドである。抗原性ポリペプチドには任意の免疫原性ポリペプチドが含まれる。前記抗原性ポリペプチドには病原体関連、アレルゲン関連、腫瘍関連または疾患関連抗原が含まれるが、ただしこれらに限定されない。病原体にはウイルス性、寄生虫性、菌類および細菌性病源体とともにタンパク質病原体、例えばプリオンが含まれる。抗原性ポリペプチドは完全長タンパク質またはその部分であり得る。多くのタンパク質の免疫系による認識は比較的少数のアミノ酸(しばしばエピトープと称される)に依拠することはよく知られている。エピトープは単に8−10アミノ酸であり得る。したがって、本明細書で述べる抗原性ポリペプチドは、完全長タンパク質、8アミノ酸の長さのエピトープまたはこれら両極端の間の任意の部分であり得る。実際、抗原性ポリペプチドは単一の病原体またはタンパク質に由来する2つ以上のエピトープを含むことができる。
【0010】
同じエピトープの多数のコピーまたは異なるタンパク質に由来する多数のエピトープをワクチンベクターに含むことができる。同じまたは異なる病原体もしくは疾患に由来するいくつかのエピトープまたは抗原を一つのワクチンベクターとして一緒に投与して、多数の抗原に対して増強された免疫応答を発生させることができる。組換えワクチンベクターは、多数の病原性微生物、ウイルスまたは腫瘍関連抗原に由来する抗原をコードすることができる。多数の抗原を発現することができるワクチンベクターの投与は、2つまたは3つ以上の疾患に対する免疫を同時に誘発するという利点を有する。
抗原性ポリペプチドはインフルエンザポリペプチドであり得る。適切には前記は、インフルエンザH5N1ポリペプチド、または多数のインフルエンザウイルス株に付随するポリペプチド(例えばインフルエンザM2タンパク質のポリペプチド)である。インフルエンザAウイルスM2タンパク質のエクトドメイン(M2eとして知られている)はこのウイルスの表面から突き出ている。M2タンパク質のM2e部分は約24アミノ酸を含む。M2eポリペプチドはインフルエンザ内のある単離株と別の単離株でほとんど変動しない。実際、1918年のインフルエンザ大流行以来、M2eでは天然に出現した数変異が感染ヒトから単離されただけである。さらにまた、トリおよびブタ宿主から単離されたインフルエンザウイルスは異なっているがなお保存されたM2e配列を有する。ヒト、トリおよびブタ宿主から単離されたM2eポリペプチド配列の概要については以下を参照されたい:Liu et al., Microbes and Infection 7:171-177, 2005;Reid et al., J. Virol. 76:10717-10723, 2002 (前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。さらに配列番号:1−4もまた参照されたい。
【0011】
適切には完全なM2eポリペプチド全体をワクチンベクターに挿入できるが、一部分を用いることもできる。実施例では、8アミノ酸ポリペプチド(LM2(アミノ酸配列EVETPIRN(配列番号:5)を有する)、またはその変種M2eA(アミノ酸配列EVETPTRN(配列番号:6)を有する))がワクチンベクターに取り込まれ、ニワトリへの投与後に抗体応答を生じることが示された。適切には、ワクチンベクターに挿入されるM2eポリペプチド部分は免疫原性である。免疫原性フラグメントは、細胞性または液性免疫応答を誘引することができるペプチドまたはポリペプチドである。適切には、M2eの免疫原性フラグメントは完全長のM2eポリペプチドであってもよいが、また適切には完全長配列の20または21以上のアミノ酸、15または16以上のアミノ酸、10または11以上のアミノ酸、または8または9以上のアミノ酸でもよい。
インフルエンザAワクチンベクターに含まれる他の適切なエピトープには、インフルエンザAのヘマグルチニン(HA)または核タンパク質(NP)のポリペプチドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9または配列番号:10のペプチドをワクチンベクターに含むことができる。実施例では、配列番号:7(HAUA)および配列番号:8(HALB)がワクチンベクターに取り込まれ、ニワトリへの投与後に抗体応答を生じることが示された。図2−3および5−6を参照されたい。さらにまた、配列番号:9(NP54)および配列番号:10(NP147)のNPエピトープが実施例のワクチンベクターに取り込まれた。これらの配列のいずれも、任意の他のエピトープ(他の病原体または抗原に由来するエピトープを含む)と組み合わせて用いことができることは当業者には理解されるであろう。
【0012】
HMGB1(高可動性グループボックス1)は、まず初めにDNAの構造および安定性に必須のDNA結合タンパク質として同定された。前記は、配列特異性無しにDNAと結合する普遍的に発現される核タンパク質である。前記タンパク質は高度に保存され、植物から哺乳動物に至るまで見出される。ゼブラフィッシュ、ニワトリおよびヒトHMGB1のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:30、配列番号:18および配列番号:29に提供される。全哺乳動物にわたって、前記配列は98%のアミノ酸同一性で高度に保存され、アミノ酸変化は保存的である。したがって、1つの種に由来するHMGB1は、おそらく別の種のHMGB1の機能的な代用となり得る。完全長のHMGB1タンパク質またはその部分は、本明細書で述べるワクチンベクターでHMGB1ポリペプチドとして用いることができる。HMGB1は、配列番号:23および24に示されるAボックス並びに配列番号:25および26に示されるBボックスと称される2つのDNA結合領域を有する。以下を参照されたい:Andersson and Tracey, Annu. Rev. Immunol. 2011, 29:139-162(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
HMGB1は炎症の媒介物質であり、核損傷シグナル(例えば壊死細胞から生じる)として機能する。HMGB1はまた、タンパク質のアセチル化を必要とするプロセス、核を通過する転移および分泌で単球/マクロファージ系列の細胞によって活発に分泌され得る。細胞外HMGB1は、高度糖化最終生成物のためのレセプター(Receptor for Advanced Glycated End-Product, RAGE)、およびToll様受容体ファミリー(Toll-like Receptor family, TLR)、特にTLR4を介するシグナリングによって炎症の強力な媒介物質として機能する。RAGE結合活性は既に同定されており、配列番号:27のポリペプチドを必要とする。TLR4結合は配列番号:18の106位のシステイン(HMGB1のBボックス領域で見出される)を要求する。
【0013】
HMGB1の炎症活性には完全長タンパク質は必要でなく、機能的フラグメントが同定されている。Bボックスが、HMGB1の前炎症性作用の媒介に十分であることが示され、したがって、本発明の関係では配列番号:25および26がHMGB1ポリペプチドまたはその機能的フラグメントである。さらにまた、RAGE結合部位および前炎症性サイトカイン活性が、それぞれ配列番号:27および配列番号:28にマッピングされている。したがって、これらのポリペプチドは本発明の関係ではHMGB1ポリペプチドの機能的フラグメントである。
当業者は、前炎症性サイトカイン活性を刺激することができるHMGB1ポリペプチドおよびその機能的フラグメントを、例えば国際公開公報WO02 092004(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)に開示された方法を用いて同定することができる。適切には、HMGB1ポリペプチドは、配列番号:18(配列番号:27またはそのホモローグ)のアミノ酸150−183にRAGE結合ドメインを、および配列番号:18(配列番号:28またはそのホモローグ)のアミノ酸89−109に前炎症性サイトカイン活性を含む。特に、HMGB1ポリペプチドおよび機能的フラグメントまたはそのホモローグには、配列番号:18または23−30のHMGB1ポリペプチドと同一、または少なくとも99%同一、少なくとも98%同一、少なくとも95%同一、少なくとも90%同一、少なくとも85%同一、または少なくとも80%同一のポリペプチドが含まれる。
【0014】
抗原性ポリペプチドの少なくとも一部分およびHMGB1ポリペプチドの少なくとも一部分がワクチンベクターの表面に存在する。ワクチンベクターの表面に存在するものには、トランスメンブレンタンパク質内に含まれるポリペプチド、トランスメンブレンタンパク質、膜脂質または膜固着炭水化物と相互反応するか、共有結合によりまたは化学的に前記と架橋されるポリペプチドが含まれる。ポリペプチドは、N-末端、C-末端またはトランスメンブレンタンパク質の内部の任意の場所(すなわちトランスメンブレンタンパク質の2つのアミノ酸の間に挿入されるか、またはトランスメンブレンタンパク質の1つまたは2つ以上のアミノ酸の代わりに挿入される(すなわち欠失-挿入))とのペプチド結合を介してポリペプチドを構成するアミノ酸と連結させることによってトランスメンブレンタンパク質内に含まれ得る。適切には、ポリペプチドはトランスメンブレンタンパク質の外部ループに挿入できる。適切なトランスメンブレンタンパク質はcotBおよびlamBであるが、多くの適切なトランスメンブレンタンパク質が利用可能であることは当業者には理解されよう。
【0015】
或いは、ポリペプチドは、膜内のタンパク質、脂質または炭水化物、またはキャプシド(当業者が利用可能な方法によりウイルスベクターが用いられる場合)に共有結合によりまたは化学的に連結させてもよい。例えば、ジスルフィド結合またはビオチン-アビジン架橋を用いて、ワクチンベクターの表面に抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドを提示できよう。適切には抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドは融合タンパク質の部分である。2つのポリペプチドはペプチド結合を介して直接連結されてもよく、またリンカーもしくは第三のタンパク質の断片(前記にポリペプチドが挿入される)によって分離されてあってもよい。
抗原性ポリペプチドまたはHMGB1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはワクチンベクターに挿入されて発現され、抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドを生成できる。ポリヌクレオチドはワクチンベクターの染色体に挿入されるか、またはプラスミドもしくは他の染色体外DNA上でコードされ得る。適切には、抗原性ポリペプチドおよび/またはHMGB1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは独立して発現されてもよいが、または発現されるワクチンベクターのポリヌクレオチドに挿入される。適切には、ワクチンベクターのポリヌクレオチドはワクチンベクターの表面で発現されるポリペプチド、例えばトランスメンブレンタンパク質をコードする。抗原性ポリペプチドおよび/またはHMGB1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはワクチンベクターポリヌクレオチド配列に挿入されて、抗原性ポリペプチドおよび/またはHMGB1ポリペプチドのベクター表面上での発現を可能にできる。例えば、抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、トランスメンブレンタンパク質の外部ループ領域をコードする細菌のポリヌクレオチドの領域に、前記細菌のポリヌクレオチド配列がインフレームの状態を維持できるように細菌ポリヌクレオチドにインフレームで挿入できる。実施例1を参照されたい。
【0016】
或いは、抗原性ポリペプチドおよび/またはHMGB1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは分泌ポリペプチドに挿入でき、前記分泌ポリペプチドは、ワクチンベクターの表面のタンパク質、脂質または炭水化物との結合によりワクチンベクターの表面でディスプレーまたは提示される。抗原性ポリペプチドおよび/またはHMGB1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、多様なワクチンベクターポリヌクレオチドに挿入され、前記ワクチンベクターで処置された対象動物の免疫細胞に、抗原性ポリペプチドおよび/またはHMGB1ポリペプチドの発現および提示を提供できることは当業者には理解されるであろう。実施例では、M2eエピトープ、HAエピトープおよびNPエピトープを含むいくつかのインフルエンザエピトープが、枯草菌で植物性発現用プラスミドから発現された。得られた組換え細菌は、図1−6に示す免疫応答によって明らかなように、挿入されたエピトープを発現する。
実施例では、ワクチンベクターは、同じポリヌクレオチドでかつ互いにインフレームの状態でコードされる、抗原性ポリペプチド(M2e、HAおよびNPポリペプチド)および免疫刺激性ポリペプチド(CD154またはHMGB1)を有する。また別の実施態様では、免疫刺激性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドは別個のポリヌクレオチドによってコードされ得る。多様な方法を用いて、ワクチンベクターの表面で抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドの発現を得ることができることは当業者には理解されるであろう。
【0017】
ワクチンベクターおよび医薬的に許容できる担体を含む組成物もまた提供される。医薬的に許容できる担体はin vivo投与に適した任意の担体である。適切には、医薬的に許容できる担体は経口、鼻または粘膜デリバリーのために許容できる。医薬的に許容できる担体には水、緩衝溶液、グルコース溶液、または細菌培養液が含まれ得る。組成物のさらに別の成分には、適切には賦形剤、例えば安定化剤、保存料、希釈剤、乳化剤および滑沢剤が含まれ得る。医薬的に許容できる担体または希釈剤の例には、安定化剤、例えば炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、グルコース、デキストラン)、タンパク質(例えばアルブミンまたはカゼイン)、タンパク質含有物質(例えばウシ血清または脱脂乳)および緩衝液(例えばリン酸緩衝液)が含まれる。特にそのような安定化剤が組成物に添加されるときは、組成物は凍結乾燥または噴霧乾燥に適している。組成物中のワクチンベクターは複製能力をもたなくてもよく、適切にはワクチンベクターは組成物への添加前に不活化または殺滅される。
【0018】
本明細書に記載する組成物を用いて、免疫応答(例えば抗原性ポリペプチドに対する抗体応答)を増強することができる。インフルエンザポリペプチドを含む組成物もまた、その後のインフルエンザ感染に付随する病的状態を緩和するために用いることができる。前記組成物は、本明細書に記載した組成物またはワクチンベクターが投与された対象動物において、インフルエンザによる発症または付随する病的状態を予防できる。本明細書に記載した組成物およびワクチンベクターは、病期を短縮し、疾患に関連する病的状態または死亡率を低下させ、または発症の確率を低下させることによって、その後の疾病の重症度を緩和することができる。本明細書に記載したワクチンベクターの投与後の疾患関連病的状態または死亡率は、前記ワクチンベクターを提供されなかった同様な対象動物と比較して25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%さえも低下させることができる。
【0019】
ワクチンベクターを投与することによって対象動物において免疫応答を増強する方法もまた提供される。ワクチンベクターは、前記ワクチンベクターへの免疫応答を刺激することができるHMGB1ポリペプチドおよび前記と結合した抗原性ポリペプチドを含むことができる。HMGB1ポリペプチドを含むワクチンベクターは、前記ワクチンおよび特に抗原性ポリペプチドへの対象動物の免疫応答を増強するために有効な量で対象動物に投与される。適切には、ワクチンベクターは、HMGB1ポリペプチド(配列番号:18)のアミノ酸150−183および89−109を含むポリペプチドまたは前記のホモローグをコードするポリヌクレオチドを含む。実施例では、HMGB1の190アミノ酸ポリペプチドが用いられた。適切には、ポリヌクレオチドは対象動物と同じ種に由来するHMGB1ポリペプチドをコードする。HMGB1ポリペプチドと対象動物との異種組合せ(すなわちニワトリのワクチンで使用されるヒトHMGB1ポリペプチド)は、HMGB1は多数の種で高度に保存されているので本発明の方法で有用であり得る。HMGB1ポリペプチドを用いて、ワクチンベクター内またはワクチンベクター上に存在する任意の外来抗原または抗原性ポリペプチドへの免疫応答を対象動物において増強することができる。HMGB1ポリペプチドを用いて、ワクチンベクター内に存在する2つ以上の抗原性ポリペプチドへの免疫応答を増強できることは当業者には理解されるであろう。HMGB1由来ポリペプチドは、樹状細胞およびマクロファージを活性化し、したがってサイトカイン(例えばIL-1、IL-6、IFN-γおよびTNF-α)の産生を刺激することによって免疫応答を少なくとも部分的に刺激する。実施例では、HMGB1のポリペプチドはワクチンベクターの表面で発現された。
【0020】
さらにまた、インフルエンザAに対する免疫応答を増強する方法およびその後のインフルエンザA感染に関連する病的状態を緩和する方法が開示される。簡単に記せば、前記方法は、免疫応答を誘引することができるインフルエンザAエピトープ(インフルエンザの抗原性ポリペプチド)を、免疫応答の誘引に有効な量で対象動物に投与する工程を含む。インフルエンザAエピトープは、M2eポリペプチド、HAポリペプチドもしくはNPポリペプチドまたは上記で考察した別のインフルエンザポリペプチドであり得る。抗原性ポリペプチドのワクチンベクターへの挿入は当業者に公知の多様な方法で達成することができる。前記方法には、国際特許公開公報WO2008/036675に記載のスカーレス(scarless)位置特異的変異系が含まれるが、ただし前記に限定されない。細菌はまた、上記で考察した免疫応答を増強することができるポリヌクレオチドといっしょにインフルエンザポリペプチド発現させるために操作できる。特に、CD154またはHMGB1のポリペプチドをワクチンベクターによって発現させて、インフルエンザポリペプチドへの対象動物の免疫応答を増強することができる。実施例は、ニワトリにおける激しいIgAおよびIgG応答の発生を示す。そのような激しい応答は、前記抗原性ポリペプチドの供給源(実施例ではインフルエンザウイルス)によるその後の感染またはチャレンジに関連する病的状態を防御するかまたは少なくとも緩和するであろうと我々は期待する。
【0021】
組成物は、多様な手段(経口的、鼻内および粘膜を介する手段を含むがただしこれらに限定されない)によって投与できる。例えば、組成物またはワクチンベクターは、エーロゾル、スプレー、食物もしくは水への添加、経口胃管栄養または点眼によってデリバーできる。いくつかの実施態様では、組成物は、注射によって、例えば皮内、非経口的、皮下、腹腔内、静脈内、頭蓋内または筋肉内に投与される。ニワトリまたは他の家禽のために、組成物はin ovoで投与できる。
対象動物には脊椎動物、適切には哺乳動物(適切にはヒト、ウシ、ネコ、イヌ、ブタ)、または鳥類(適切には家禽、例えばニワトリ)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。他の感染動物モデルもまた用いることができる。免疫応答の増強には、対象動物の免疫系によって媒介される治療的または予防的作用の誘発が含まれるが、ただし前記に限定されない。具体的には、免疫応答の増強は、抗体産生の増強(例えば図1−3に示される)、抗体重鎖のクラス切り替えの増強(例えば図8に示すIgAの産生)、抗原提示細胞の成熟、ヘルパーT細胞の刺激、細胞溶解性T細胞の刺激、またはTおよびB細胞メモリー誘導を含むことができる。
【0022】
投与されるべき有用な投薬量は対象動物の齢、体重および種、投与態様およびルート、並びに免疫応答が求められる病原体または疾患のタイプに応じて変動するであろう。組成物は、免疫応答を引き起こすために十分なワクチンベクターの任意の用量で投与できる。103から1010ベクターコピー(すなわちプラーク形成単位またはコロニー形成単位)、104から109ベクターコピーまたは105から107ベクターコピーの範囲の用量が適切であると想定される。
組成物は1回だけ投与してもよいが、また2回または3回以上投与して免疫応答を増強してもより。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2カ月、3ヶ月、6ヶ月またはそれより長期間離して2回または3回以上投与してもよい。細菌は投与前には生きていてもよいが、いくつかの実施態様では、細菌は投与前に殺滅または不活化できる。いくつかの実施態様では細菌は対象動物において複製する能力を有し得るが、他の実施態様では細菌は対象動物において複製する能力を有し得ない。実施例で示すように、細菌性ワクチンベクターは、投与前にホルマリン、エタノール、熱または抗生物質を用いて不活化できる。ワクチンベクターを不活化する他の手段も同様に用いることができることは当業者には理解されよう。
【0023】
バシルス種ワクチンベクターもまた本明細書で提供される。バシルスワクチンベクターは、抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列および免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド配列を含む。抗原性ポリペプチドおよび免疫刺激性ポリペプチドは、上記に記載したようにバシルスワクチンベクターの表面に存在する。抗原性ポリペプチドは上記に記載のインフルエンザポリペプチドであり、免疫刺激性ポリペプチドは上記に記載のHMGB1ポリペプチドまたはCD154ポリペプチドである。
対象動物のタンパク質と相同であり、免疫系を刺激して抗原性ポリペプチドに応答することができる免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをワクチンベクターに挿入することもできる。より詳細に実施例に記載するように、ワクチンベクターは、対象動物においてCD40と結合して対象動物を刺激してワクチンベクターおよびそれに結合している抗原性ポリペプチドに応答することができるCD154ポリペプチドを、上記に記載したHMGB1と同様に含むことができる。バシルスワクチンベクターはHMGB1ポリペプチド、CD154ポリペプチドまたは前記の組合せを含むことができる。上記に記載したように、これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ワクチンベクターの染色体に挿入されるか、または染色体外で維持され得る。これらのポリペプチドはワクチンベクターの種々のポリペプチドに挿入され、ワクチンベクターの種々の部分で発現されるか、または分泌され得る。
【0024】
抗原性ポリペプチドへの免疫応答を増強することができる免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、前記抗原性ポリペプチドをコードすることができる。免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ワクチンベクター内で前記免疫刺激性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドが同じポリヌクレオチドによってコードされるように、前記抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと連結されてあってもよい。実施例では、CD154(CD40と結合することができる)またはHMGB1のポリペプチドコードするポリヌクレオチドはまた、インフルエンザAのM2eエピトープ、HAエピトープおよびNPエピトープをコードする。配列番号:19−22を参照されたい。実施例では、インフルエンザエピトープをコードするポリヌクレオチドおよび免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはともに植物性細胞発現のためにプラスミドから発現される。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドはcotB遺伝子または芽胞の表面で発現されるタンパク質をコードする別の遺伝子に挿入される。他のトランスメンブレンタンパク質をコードする細菌性ポリヌクレオチドもまた用いることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0025】
上記で考察したように、対象動物のタンパク質と相同で、エピトープへの免疫応答を増強することができる免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをワクチンベクターに含むことができる。実施例では、CD40と結合できるCD154ポリペプチドまたはHNGB1をコードするポリペプチドのどちらかをコードするポリヌクレオチドを含むバシルスワクチンベクターは、ワクチン接種に応答して増加した抗体産生によって測定されるように、M2eエピトープおよび2つの別個のHAエピトープに対して免疫応答を増強することが示された。
適切には、CD154は長さが50アミノ酸より短く、より適切には40より短く、30より短くまたは20アミノ酸より短い。ポリペプチドは、長さが10から15アミノ酸の間、10から20アミノ酸の間または10から25アミノ酸の間であり得る。CD154配列およびCD40結合領域は多様な種の間で高度には保存されていない。ニワトリおよびヒトのCD154配列はそれぞれ配列番号:11および配列番号:12に提供されている。
【0026】
CD154のCD40結合領域は多数の種(ヒト、ニワトリ、アヒル、マウスおよびウシを含む)について決定され、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17にそれぞれ示されている。CD40結合領域の配列には種間多様性が存在するが、下記の実施例は、ヒトCD154がニワトリで免疫応答を増強できたことを示している。したがって、種特異的CD154ポリペプチドまたは異種CD154ポリペプチドを用いて本発明を実施することができる。特に、CD154ポリペプチドおよびその機能的フラグメントまたはホモローグには、配列番号:11−17のCD154ポリペプチドと同一、または少なくとも99%同一、少なくとも98%同一、少なくとも95%同一、少なくとも90%同一、少なくとも85%同一、少なくとも80%同一のポリペプチドが含まれる。
本明細書に記載するバシルスワクチンベクターは、上記で述べたように、免疫応答を増強する方法および対象動物においてインフルエンザの病的状態を緩和する方法で用いることができる。バシルスワクチンベクターを用いて、対象動物(例えば同様に上記に記載した対象動物)に投与するための組成物を製造することができる。
【0027】
抗原性ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドは細菌ゲノムの非必須部位に挿入してもよいが、また別には当業界で周知の方法を用いてプラスミドで保持してもよい。ポリヌクレオチドのある適切な挿入部位はトランスメンブレンタンパク質の外部部分内であるか、または分泌経路のために異種ポリヌクレオチドを標的とする配列と結合される。ポリヌクレオチドの挿入のために適切なトランスメンブレンタンパク質の例は、バシルスのcotB遺伝子およびサルモネラのlamB遺伝子である。
異種ポリヌクレオチドには、ワクチンベクター以外の病原性微生物またはウイルスから選択される抗原をコードするポリヌクレオチドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。そのようなポリヌクレオチドは、病原性ウイルス、例えばインフルエンザ(例えばM2e、ヘマグルチニンまたはノイラミニダーゼ)、ヘルペスウイルス(例えばヘルペスウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子)、レトロウイルス(例えばgp160エンベロープタンパク質)、アデノウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルスなどから誘導され得る。異種ポリヌクレオチドはまた病原性細菌から入手することができ、例えば細菌タンパク質(例えば毒素および外膜タンパク質)をコードする遺伝子である。さらにまた、寄生虫(例えばアイメリア)由来の異種ポリヌクレオチドもベクターワクチンで使用される魅力のある候補である。
免疫系の起動に必要とされるまた別の免疫刺激性ポリペプチドもまた本明細書に記載のワクチンベクターに含むことができる。ポリヌクレオチドは、その刺激性作用について知られている免疫系分子(例えばインターロイキン、腫瘍壊死因子またはインターフェロン)または免疫調節に必要とされる別のポリヌクレオチドをコードしてもよい。
以下の実施例は例示を意図しているだけであり、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲を制限しようとするものではない。
【実施例1】
【0028】
実施例1:HA/NP/M2e/cCD154およびHA/NP/M2e/HMGB1の構築
バシルスベクター
株および培養条件
全てのプラスミドは、特段の記載がなければ最初TOP10大腸菌細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)で維持した。バシルス種を変異の導入に用いた(枯草菌、NP122と称される家禽衛生研究所(Poultry Health Laboratory)株である)。pDGIEFおよびpHT10を保持する細菌は37℃で増殖させた。
細胞の日常的増殖にはルリア-ベルターニ(Luria-Bertani(LB))培地を用い、エレクトロポレーション後の表現型発現にはSOC培地(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いた。適切な場合には以下を培地に添加した:1mM のイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)、100μg/mLのアンピシリン(Amp)、100μg/mLのスペクチノマイシン(SP)および5μg/mLのクロラムフェニコール(Cm)。
【0029】
プラスミド
本実験で用いたプラスミドpDGIEF(Bacillus Genetic Stock Center, Columbus, OH)およびpHT10は以前に記載されている(Zhang et al., Nuc. Acids Research 2006, 34 (9):1-8;およびNguyen et al., Curr. Micro. 2007, 55:89-93)。プラスミドpDGIEF は、mazF遺伝子(バシルスの染色体操作時に対抗選別マーカーとして使用)の増幅のための鋳型として供した。プラスミドpHT10は、バシルス種内でトリインフルエンザの異種エピトープ配列をコードし、これを生成するために用いた。このプラスミドはCM耐性遺伝子を含み、1mM IPTGの添加によって誘発され、37℃にてバシルス内で維持される。
【0030】
栄養細胞発現のための異種タンパク質の生成
業者(MoBioTec/Boca Scientific, Boca Raton, FL)から購入したプラスミドpHT10(Nguyen et al., 2007)を、枯草菌コドン最適化挿入配列の添加によってマルチクローニング部位で形質転換した。DNA配列決定を実施し、正確な配列挿入を確認した。続いてこの新規改変プラスミドで枯草菌を形質転換した。簡単に記せば、バシルス培養を37℃にて一晩HS培地(.5%グルコース、50μg/ml DL-トリプトファン、50μg/mlウラシル、0.02%カゼイン水解物、0.1%酵母抽出物、8μg/mlアルギニン、0.4μg/mlヒスチジン、1mM MgSO4を補充したスピチツェン(Spizizen)培地)で増殖させた。一晩培養(1mL)を用いて、20mLのLS培地(0.5%グルコース、5μg/ml DL-トリプトファン5μg/mlウラシル、0.01%カゼイン水解物、0.1%酵母抽出物、1mM MgSO4、2.5mM MgCl2、0.5mM CaCl2を補充したスピチツェン培地)に接種し、震盪しながら30℃にて3−4時間インキュベートした。得られたLS培養の1mLに、10μLの0.1M EGTAを添加し室温で5分間インキュベートした。続いて1−2μgのプラスミドDNAを添加し、37℃で2時間震盪して選別抗生物質を含むLBプレートで平板培養した。これらの形質転換バシルス種は、1mM IPTGで誘発したときAIから異種エピトープ配列を生成する。
【0031】
PCR
PCRに用いた全てのプライマーが表1に列挙されている。典型的なPCR条件は以下から成る:約0.1μgの精製ゲノム、プラスミドまたはPCR生成DNA(Qiagen, Valencia, CA, USA)、1x Pfuポリメラーゼ緩衝液、5U Pfuポリメラーゼ(Stratagene La Jolla, CA, USA)、1mM dNTP(GE Healthcare Bio-Sciences Corp., Piscataway, NJ)、総体積50μL中の各プライマー1.2μM。DNAエンジンサーモサイクラー(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)を以下の増幅条件で用いた:94℃で2分;1kbにつき94℃で30秒、58℃で60秒、72℃で90秒の30サイクル;および最終伸長のために72℃で10分。各PCR生成物をゲル精製し(Qiagen, Valencia, CA, USA)、オーバーラップ伸長PCRで用いる鋳型の調製のためには25μLのEB緩衝液で、または50μLのEB緩衝液で溶出させ、エタノールで沈殿させ、さらにバシルス種のエレクトロポレーションのために5μLのddH2Oに再懸濁させた。
【0032】
表1:ワクチンベクター生成に用いたプライマー配列

表1では、下線を付したヌクレオチドは、枯草菌のCotB遺伝子挿入部位のどちらかの側と相補的なヌクレオチドである。
【0033】
エレクトロポレーション
簡単に記せば、細胞を10mLのLB培地に接種し、37℃で一晩増殖させた。続いて100μLの一晩培養を10mLの新鮮なLB培地に37℃で3−4時間再接種した。細胞をddH2O水で5回洗浄し、60μLの10%グリセロールに再懸濁させた。続いて細胞を2.4−2.45kVで1−6分間パルスし、0.5mLのSOC中で2−3時間37℃にてインキュベートし、さらに適切な抗生物質を含むLB培地にプレートした。
【0034】
芽胞外皮での発現のための異種DNAの染色体への組み込み
選択したM2e、HAおよびNPエピトープの安定に組み込まれたコピーを含む組換えバシルス株を、最近報告された方法に改変を加えたものを用いて構築した。簡単に記せば、バシルス株をMazFカセット(Zhang et al., 2006)で形質転換した(前記カセットはIPTG感受性でスペクトマイシン耐性株を創出した)。各々の側に約300bpの同種DNAがフランキングするMazFカセットをバシルスベクターのCotB遺伝子(Isticato et al., 2001)にエレクトロポレーションによって導入し、続いて陽性クローンのためにスペクトマイシン含有培地で増殖させた(陽性クローンはMazFカセット(スペクトマイシン耐性)を含む)。
CotBでMazF変異を確認した後、この領域をAIの抗原性エピトープ(これもまた300bpの同種DNAによってフランキングされている)をコードするコドン最適化DNA配列によって置き換えた。前記操作は、オーバーラップ伸長PCRを用いてPCR生成物を作製し、バシルス染色体と相同な約300bpが各側にフランキングする抗原性配列を作製することによって実施した(Cox et al., 2007)。このPCR生成物を再度エレクトロポレーションおよびMazFカセットの置換によってバシルスに導入した。形質転換体をIPTG含有プレートで選別した(陽性クローンはIPTGに非応答性でスペクトマイシンに感受性であるはずである)。染色体配列への正確な挿入はDNA配列決定によって確認した。
【実施例2】
【0035】
実施例2:ワクチン接種試験1および2
孵化当日(0日目)のニワトリ雛を当地の孵化業者から入手し、無作為に処置グループに割り当てた(n=15/処置グループ、実験1;およびn=20/処置グループ、実験2)。各処置グループの全てのニワトリ雛にタグを付け番号を与えた。前記ニワトリ雛に、0.25mLの食塩水または、試験1については表2および試験2については表3に示す多様な処置バシルスの106−108cfu/mLを移管栄養により経口的に感染させた。
【0036】
表2:ワクチン接種試験1における各処置グループのチャレンジ用量

【0037】
表3:ワクチン接種試験2における各処置グループのチャレンジ用量

【0038】
試験2では、細菌をいくつかの異なる態様で不活化して、複製が、抗原性インフルエンザペプチドに対する抗体応答の発生に必要か否かを評価した。不活化の手段はエピトープの破壊をもたらし、データの誤判読およびバシルスベクターの複製または生存性の必要性の支持をもたらすので、いくつかの不活化手段を用いた。細菌は以下によって不活化した:0.022%ホルマリン中で10分間インキュベーション(ホルマリン不活化);70℃で10分間インキュベーション(熱不活化);5μg/mLのゲンタマイシン中でインキュベーション(抗生物質不活化);または70%エタノール中で10分間インキュベーション(エタノール不活化)。
各々の処置グループを個々のフロアペンに新しいおが屑を置いて収容し、水および飼料を随意に得させた。孵化後11日目および21日目にこれらのトリに、それらが0日目に受けた同じ処置の追加ワクチンを投与した。さらにまた、21および31/32日目に、タグを付けたこれらのトリの各々から血液を収集し、血清を取り出した。
各処置グループのタグを付したトリから収集した血清を続いて抗体捕捉ELISAで用いて、特異的M2e、HAUAおよびHALB抗体応答を決定した。簡単に記せば、96ウェルプレートの個々のウェルを、M2eエピトープ、HAUAエピトープまたはHALBエピトープのBSA複合体(10μg/mL)で被覆した。抗原付着は4℃で一晩進行させた。プレートをPBS+0.05%トゥイーン20で洗い流し、PBSスーパーブロック(PBS Superblock, Pierce Chemical Co.)で最低限2時間封鎖し、さらに上記に記載の各処置グループのトリから以前に収集した血清とともにインキュベートした。プレートをPBS+0.05%トゥイーン20で洗い流し、続いて業者(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)から入手したペルオキシダーゼ複合ヤギ抗ニワトリIgY二次抗体(1:7500稀釈)とともにさらに1時間インキュベートした。続いて洗い流した後、業者(Fisher Scientific)から入手したペルオキシダーゼ基質キットを用いて反応させ、分光光度計で450nmおよび405nmにて吸収を読み取った。
ベクターワクチンを投与したグループ由来のプール血清サンプルを陽性コントロールとして用い、さらに非ワクチン投与グループ由来のプール血清を処置グループ由来の血清と置き換えて各プレートで陰性コントロールとして用いた。陽性コントロール、陰性コントロールおよび実験サンプルについて得られた吸収を用い、以下の計算によりサンプル対陽性コントロール比(S/P比)を算出した:
S/Pの算出=(血清平均−陰性コントロール平均)/(陽性コントロール平均−陰性コントロール平均)
各試験について算出したS/P比は図1−6に示されている。図1−3は、試験1の孵化後21日目および31日目のM2e、HALBおよびHAAUの総抗体力価をそれぞれ示している。これらの結果は、これら抗原の各々に対して激しい免疫応答が、免疫刺激性ペプチドとしてのCD154またはHMGB1とともに各エピトープを発現するバシルスを経口投与された後で生じることを示している。図4−6は、試験2の孵化後21日目および32日目のM2e、HALBおよびHAAUの総抗体力価をそれぞれ示している。これらの結果は、エピトープの各々に対する激しい免疫応答が、前記エピトープおよび免疫刺激性ペプチドを発現する生バシルスの経口投与後に生じたことを示している。図4−6はまた、同様なレベルの特異的抗体が、ベクター(バシルス)が投与前に不活化されたときに生じたことを示している。
【実施例3】
【0039】
実施例3:ワクチン接種試験3
孵化当日(0日目)のニワトリ雛を当地の孵化業者から入手し、無作為に処置グループに割り当てた(n=20/処置グループ)。各処置グループの全てのニワトリ雛にタグを付け番号を与えた。前記ニワトリ雛に、0.25mLの食塩水、または105−108cfu/mLのバシルスベクター(BSBB)(前記バシルスベクターはトリインフルエンザエピトープおよびHMGB1を発現する(BS/AI/HMGB1))、またはホルマリン不活化(上記に記載のとおり)後の種々の量のBS/AI/HMGB1ベクターを胃管栄養法により経口的に感染させた。孵化後10日目に、これらのトリに、それらが0日目に受けた同じ処置の追加ワクチンを投与した。さらにまた、21および32日目に、タグを付けたこれらのトリの各々から血液を収集し、血清を取り出した。上記に記載した方法を用い、血清IgGのM2e特異的抗体レベルをペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgG特異的二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)により決定した。図7の結果は、ホルマリン不活化細菌は、生菌と同様にM2e特異的IgG抗体の産生を刺激できたことを示している。この結果は驚くべきであった。なぜならば、生菌のみが経口投与後に激しい免疫応答を刺激できると一般には信じられていたからである。
【実施例4】
【0040】
実施例4:ワクチン接種試験4
孵化当日(0日目)のニワトリ雛を当地の孵化業者から入手し、無作為に処置グループに割り当てた(n=20−35/処置グループ)。各処置グループの全てのニワトリ雛にタグを付け番号を与えた。前記ニワトリ雛に、106cfu/mL(0.25mL)のバシルスベクター(BSBB)、トリインフルエンザエピトープおよびHMGB1を発現するバシルスベクター(BSAI)、またはホルマリン不活化(上記に記載のとおり)後のBSAIベクター、またはホルマリン不活化後に凍結乾燥(投与直前に食塩水にて再構成)させたBSAIベクターを経口胃管投与により感染させるか、または皮下注射した。孵化後10日目に、これらのトリの数羽に、それらが0日目に受けた同じ処置の追加ワクチンを投与した。11、14および21日目に、タグを付けたこれらのトリの各々から血液を収集し、血清を取り出した。血清IgAおよびIgG M2e特異的抗体レベルを、上記に記載した方法を用いて、ペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgA(GenTex)、またはペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgG特異的二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)により決定した。図8の結果は、ホルマリン不活化細菌は、経口投与されたときは生菌と同様にM2e特異的IgA抗体産生を刺激できたことを示している。対照的に、不活化BSAIベクターは、皮下投与されたときはIgA抗体応答の刺激に効果的ではなく、凍結乾燥細菌はIgA応答を刺激しなかった。図9の結果は、BSAI投与プロトコルの各々が激しいIgG生成を支持したことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドまたはその機能的フラグメントを含むワクチンベクターであって、抗原性ポリペプチドの少なくとも一部分およびHMGB1ポリペプチドの少なくとも一部分が前記ワクチンベクターの表面に存在する、前記ワクチンベクター。
【請求項2】
抗原性ポリペプチドがインフルエンザ特異的ポリペプチドである、請求項1に記載のワクチンベクター。
【請求項3】
抗原性ポリペプチドがM2e、HAまたはNPインフルエンザポリペプチドである、請求項2に記載のワクチンベクター。
【請求項4】
インフルエンザM2eポリペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:1の免疫原性フラグメント、配列番号:2の免疫原性フラグメント、配列番号:3の免疫原性フラグメントおよび配列番号:4の免疫原性フラグメントから成る群から選択される、請求項3に記載のワクチンベクター。
【請求項5】
抗原性ポリペプチドが、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10および配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9または配列番号:10の免疫原性フラグメントから成る群から選択される、請求項3に記載のワクチンベクター。
【請求項6】
HMGB1ポリペプチドが、配列番号:18、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:18、配列番号:29または配列番号:30の機能的フラグメント、および前記のホモローグから選択される、請求項1−5のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項7】
HMGB1の機能的フラグメントが、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28から選択される、請求項6に記載のワクチンベクター。
【請求項8】
ワクチンベクターが細菌である、請求項1−7のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項9】
細菌がバシルス種(Bacillus spp.)である、請求項8に記載のワクチンベクター。
【請求項10】
抗原性ポリペプチドがトランスメンブレンタンパク質内に含まれる、請求項1−9のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項11】
抗原性ポリペプチドがトランスメンブレンタンパク質の外部ループ内に存在する、請求項10に記載のワクチンベクター。
【請求項12】
HMGB1ポリペプチドがトランスメンブレンタンパク質内に含まれる、請求項1−11のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項13】
HMGB1ポリペプチドがトランスメンブレンタンパク質の外部ループ内に存在する、請求項12に記載のワクチンベクター。
【請求項14】
トランスメンブレンタンパク質がcotBである、請求項10−13のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項15】
抗原性ポリペプチドおよびHMGB1ポリペプチドが融合タンパク質の部分である、請求項1−14のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項16】
請求項1−15のいずれかに記載のワクチンベクターおよび医薬的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項17】
医薬的に許容できる担体が経口投与または鼻投与用に許容できる、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
ワクチンベクターが複製する能力をもたない、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
ワクチンベクターが不活化または殺滅される、請求項16−18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
対象動物において免疫応答を増強する方法であって、前記方法が、請求項1−15のいずれかに記載のワクチンベクターまたは請求項16−19のいずれかに記載の組成物を、抗原性ポリペプチドに対する対象動物の免疫応答を増強するために有効な量で投与する工程を含む、前記方法。
【請求項21】
ワクチンベクターが経口的にまたは鼻内に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
免疫応答が抗原性ポリペプチドに対するIgA抗体応答である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ワクチンベクターが対象動物において複製する能力をもたない、請求項20−22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ワクチンベクターが対象動物への投与前に不活化または殺滅される、請求項20−23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ワクチンベクターの表面に存在する抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列、および免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含むバシルス種ワクチンベクターであって、前記抗原性ポリペプチドおよび前記免疫刺激性ポリペプチドがワクチンベクターの表面に存在し、抗原性ポリペプチドがインフルエンザポリペプチドであり、免疫刺激性ポリペプチドがCD154ポリペプチドまたはHMGB1ポリペプチドである、前記ワクチンベクター。
【請求項26】
第一のポリヌクレオチドおよび第二のポリヌクレオチドが、トランスメンブレンタンパク質の外部部分をコードする第三のポリヌクレオチド配列内に挿入される、請求項25に記載のワクチンベクター。
【請求項27】
トランスメンブレンタンパク質がcotBである、請求項26に記載のワクチンベクター。
【請求項28】
抗原性ポリペプチドがインフルエンザM2eポリペプチド、インフルエンザHAポリペプチドまたはインフルエンザNPポリペプチドである、請求項25−27のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項29】
インフルエンザM2eポリペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:1の免疫原性フラグメント、配列番号:2の免疫原性フラグメント、配列番号:3の免疫原性フラグメントおよび配列番号:4の免疫原性フラグメントから成る群から選択される、請求項28に記載のワクチンベクター。
【請求項30】
インフルエンザポリペプチドが、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9または配列番号:10を含む、請求項28に記載のワクチンベクター。
【請求項31】
HMGB1ポリペプチドが、配列番号:18、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:18、配列番号:29または配列番号:30の機能的フラグメント、および前記のホモローグから選択される、請求項25−30のいずれかに記載のワクチンベクター。
【請求項32】
HMGB1の機能的フラグメントが、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28から選択される、請求項31に記載のワクチンベクター。
【請求項33】
対象動物において免疫応答を増強する方法であって、請求項25−32のいずれかに記載のバシルス種ワクチンベクターを対象動物の免疫応答の増強に有効な量で対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項34】
ワクチンベクターが経口的にまたは鼻内に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
免疫応答が抗原性ポリペプチドに対するIgA抗体応答である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ワクチンベクターが対象動物において複製する能力をもたない、請求項33−35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
ワクチンベクターが対象動物への投与前に不活化または殺滅される、請求項33−36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
インフルエンザAに関連する病的状態を対象動物において緩和する方法であって、前記方法が、請求項1−15のいずれかに記載のワクチンベクターまたは請求項16−19のいずれかに記載の組成物をインフルエンザAに関連する病的状態の緩和に有効な量で対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項39】
インフルエンザAに関連する病的状態を対象動物において緩和する方法であって、請求項25−32のいずれかに記載のバシルス種ワクチンベクターをインフルエンザAに関連する病的状態の緩和に有効な量で対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項40】
免疫応答を対象動物において増強する方法であって、請求項1に記載のワクチンベクターを抗原性ポリペプチドに対する対象動物の免疫応答の増強に有効な量で投与する工程を含む、前記方法。
【請求項41】
ワクチンベクターが経口的にまたは鼻内に投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
免疫応答が抗原性ポリペプチドに対するIgA抗体応答である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ワクチンベクターが対象動物において複製する能力をもたない、請求項42に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−518052(P2013−518052A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550153(P2012−550153)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022062
【国際公開番号】WO2011/091255
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500467264)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー (10)
【出願人】(507191005)ザ テキサス エイ・アンド・エム ユニヴァーシティ システム (9)
【Fターム(参考)】