説明

免疫応答を誘発または誘導する方法

ヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導する方法であって、抗原およびアジュバントを含む組成物を前記被検体に投与し、前記組成物は、肺内経路によって被検体に投与される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、被検体、特にヒト被検体の免疫応答を誘発または誘導する方法に関し、さらには、投与で針を用いない経路に有用な方法に関し、それによって皮下および筋肉経路のようなワクチンの投与の従来の注入経路に代わる方法を提供できる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
長年にわたって、非生ワクチン抗原を送達する手段として気道を利用したさまざまな試みがなされている。この経路は、ワクチン受容性に関する長所を示し(「針恐怖症」を避ける)、局所免疫応答を誘導する機会、および粘膜免疫系の想定される統一性を考えれば、遠位粘膜サイトでの応答を誘導する可能性を有する。ヒトおよび動物において鼻腔内経路によるワクチン送達は多くの配慮が注がれる。現在までの結果によれば、この経路は、抗原接種と免疫誘導とを確保するために、非常に高い抗原投与量および/または特別な送達技術の利用が必要であることが分かっている。同様に、従来、肺内または肺経路を通じるワクチン送達は、免疫応答を最適化するために、概して、マイクロカプセル化(たとえば、オヤ アルパ(Oya Alpa)ら、2005参照)などの特別な送達の技術が要求された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明の先行する研究として、本発明者らは鼻腔内経路によるワクチン投与は、高い抗原投与量であったとしても、あまり効果的ではなく、局所免疫はほとんど誘導されないことを調べた。さらに、本発明者らは、「針恐怖症」を避ける長所を保ったワクチン投与の別の方法を発明した。
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、免疫応答を誘導する手段として、鼻腔内経路によるワクチン送達を超えて、肺にワクチン送達することの優位性について示した。彼らは、強い全身性免疫応答は、肺を通じてアジュバントと送達された際にとても少ない抗原量で誘導することができることも示した。特に、本発明者は、抗原とアジュバントとを組み合わせた単純なワクチンが、特別な接種技術を必要とせず、肺内送達によって強い全身性免疫応答を有することを示した。意義深いことに、肺を通じてアジュバントとわずか少量の抗原量とが送達されたときでさえ、従来の非経口免疫付与によって誘導される免疫応答よりも100倍強い肺粘膜免疫応答が得られることが示された。
【0005】
グリフィス(Griffith)ら(1997)には、水酸化アルミニウムと一緒のリポソームまたはまたはPBS中のいずれかで製剤化されたリシン類毒素の気管内送達が記載されている。リポソーム処方群は、一番の保護を示した;水酸化アルミニウムは、PBSに対して保護(作用)を改善しなかった。WO2005/110379には、微粒子マラリアワクチンの肺送達について説明している。その製剤は、微粒子製剤として送達され、抗原の持続的な放出を可能とした。
【0006】
この明細書において先行文献(またはそれから得られる情報)または、知られている事項についての参照は、先行文献(またはそれから得られる情報)またはこの明細書が関連する活動の分野における一般常識を構成するものであると認識、承認、提案すると解釈されず、かつ解釈するべきではない。
【0007】
本明細書および請求の範囲を通して、文脈から別の解釈を要求されるときを除き、記載した整数もしくは工程、または整数もしくは工程以外を除外するものではないと解釈される。「含む」および/または「含んでいる」のようなバリエーションは、記載した整数もしくは工程の包含、または整数もしくは工程の群を包含することを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概略
本発明は、ヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導する方法であって、抗原およびアジュバントを含む組成物を前記被検体に投与することを含み、該組成物は、肺内経路または肺経路によって被検体に投与される前記方法を提供する。
【0009】
好ましくは、組成物は、肺内または肺投与に適した処方物である。
【0010】
別の局面では、本発明は、被検体に免疫応答を誘発または誘導するためのヒトまたは動物被検体に肺内投与における抗原およびアジュバントを含む組成物の使用、または、
被検体に免疫応答を誘発または誘導するためのヒトまたは動物被検体に肺内投与用の医薬製造のための抗原およびアジュバントを含む組成物の使用に関する。
【0011】
また、さらに別の局面では、本発明は、肺内経路によってヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導するための医薬品であって、抗原とアジュバントとを含む組成物である医薬品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】上部および下部(または深部)肺に対応する領域を示すヒツジ肺の略図である(ニッケルら、1979から改良した肺略図)。
【図2a】最初の実験で得られた結果を説明する図である。ヒツジの群は、インフルエンザウイルス抗原(インフルエンザ抗原)単独、または、100μgイスコマトリックス(以下、ISCOMATRIXTM)アジュバント(IMX=ISCOMATRIXTMアジュバント)と処方された抗原の3週間間隔をあけた3回の投与で皮下(s/c)または肺内(肺)経路によって免疫された。血(血清)および肺(気管支肺胞洗浄液−BAL)サンプルは、第1投与の1週間前および第1投与の2週間後および第2および第3投与の1週間後に採取された。抗体応答(15μgインフルエンザウイルス抗原単独からなる処方物(現在利用されているインフルエンザウイルスの1価の投与量と同等)、および100μgISCOMATRIXTMアジュバントと処方されたインフルエンザ抗原の量を減らした処方物を1、2および3回投与量(1°、2°および3°)の後の酵素イムノアッセイにおけるインフルエンザ特異的エンドポイントタイター)を示す。血清およびBAL(肺)サンプルに対してIgGおよびIgAの両方についのアッセイした。(*:マンホイットニー分析を用いた有意差)水平バー:中央値、オープンバー:値の中間50%、垂線:10および90%
【図2b】図2aに同じ。
【図2c】図2aに同じ。
【図2d】図2aに同じ。
【図3a】最初の実験で得られた結果を説明する図である。ヒツジの群は、インフルエンザウイルス抗原(インフルエンザ抗原)単独、または、100μgISCOMATRIXTMアジュバント(IMX=ISCOMATRIXTMアジュバント)と処方された抗原の3週間間隔をあけた3回の投与で皮下(s/c)または肺内(肺)経路によって免疫付与された。血(血清)および肺(気管支肺胞洗浄液−BAL)サンプルは、第1投与の1週間前および第1投与の2週間後および第2および第3投与の1週間後に採取された。 図2と同じ免疫とサンプリングスケジュールおよびアッセイ手順による抗体応答を示す。ISCOMATRIXTMアジュバントと一緒またはなしでインフルエンザ抗原(0.04μg)のとても低い投与量で皮下経路および肺内経路によって免疫を行なった。(#,*,^,§,☆:マンホイットニー分析を用いた有意差)水平バー:中央値、オープンバー:値の中間50%、垂線:10および90%
【図3b】図3aに同じ。
【図3c】図3aに同じ。
【図3d】図3aに同じ。
【図4】上部または下部肺(図1)のいずれかに送達された100μgISCOMATRIXTMと処方された0.04μgインフルエンザ抗原を3回投与量で免疫した後のヒツジの群における抗体応答を示す。血清とBAL(肺)サンプルは、3回目の投与後1週間後採取した。 統計分析は、データをlog変換した後に行ない、SPSSソフトウェアバーション13を用いたダネットポスト−ホック分析(Dunnett’s post−hoc analysis)での分散分析(ANOVA)によって群を比較した。水平バー:中央値、オープンバー:値の中間50%、垂線:10および90%
【図5】サイトメガロウイルス(CMV)△gBタンパク質をNHS−活性化HPカラムと結合させたgB特異的58−15モノクローナル抗体のアフィニティークロマトグラフィで精製したのち、精製された該タンパク質のクーマシー−ストレインSDS−PAGEゲル電気泳動ゲルである。レーン1〜4は、4つの異なるアフィニティ精製から精製された△gBが流れた様子を示す。
【図6a】皮下または肺内経路のいずれかで送達された100μgISCOMATRIXTMと処方されたCMV△gBを3回投与後の8匹ヒツジからなる群におけるCMV△gB特異的抗体応答を示す。血清およびBALサンプル中の抗体応答はアッセイされ、IgGおよびIgAのエンドポイントタイターを△gB特異的EIAを用いて決定した。グラフは、最初の投与の2週間後(第1後)、そして、第2(第2後)および第3(第3後)投与の1週間後の抗体応答を示す。(*:ANOVAを用いた有意差) 統計分析は、データをlog変換した後に行ない、SPSSソフトウェアバーション13を用いたダネットポスト−ホック分析(Dunnett’s post−hoc analysis)での分散分析(ANOVA)によって群を比較した。水平バー:中央値、オープンバー:値の中間50%、垂線:10および90%
【図6b】図6aに同じ。
【図6c】図6aに同じ。
【図6d】図6aに同じ。
【図7】図6と同じヒツジの群における、CMVに対する個体ごとの中和タイター率を示す。100μgISCOMATRIXTMアジュバントと処方されたCMV△gBの第1投与の1週間前(免疫前)、第1投与の2週間後(第2)、第2投与の1週間後(第3)および第3投与の1週間後(第3)に得られた血液からの血清サンプルでCMV中和活性のアッセイした。それぞれの丸点は、定めた投与点で採取された個々のヒツジ血清の中和率である。処方の2および3回投与量の後の血清CMV中和タイターは、肺内および皮下送達の免疫前血清よりとても高い値を示した。(*:ANOVAを用いた有意差) 統計分析は、データをlog変換した後に行ない、SPSSソフトウェアバーション13を用いたダネットポスト−ホック分析(Dunnett’s post−hoc analysis)での分散分析(ANOVA)によって群を比較した。
【図8】△gBとインキュベーションした後の末梢血単核細胞(PBMCs)のインビトロ再刺激の結果を示す。PBMCsは、実施例7と同様に同じヒツジの末梢血から100μgISCOMATRIXTMアジュバントと処方されたCMV△gBの第3投与量の投与の1週間後に採取した。△gBで刺激した後、細胞増殖は、細胞に取り込まれたトリチウム化チミジンのアッセイで決定した。刺激インデックス(SI)は、刺激していないコントロール細胞に取り込まれたトリチウムの割合と、△gBで刺激された細胞に取り込まれたトリチウムの割合とから計算された。SI≧4は、ポジティブ増殖応答とみなす、
【図9a】さまざまなアジュバント処方物と一緒に処方されたインフルエンザ抗原による免疫されたヒツジの群(アジュバントなしインフルエンザ抗原付与群に4ヒツジ。それぞれのアジュバンドの群には7ヒツジ)における抗体応答を示す。免疫付与とサンプリングスケジュールとアッセイ手順は、図1と同様とした。(*:ANOVAを用いた有意差) 統計分析は、データをlog変換した後に行ない、SPSSソフトウェアバーション13を用いたダネットポスト−ホック分析(Dunnett’s post−hoc analysis)での分散分析(ANOVA)によって群を比較した。水平バー:中央値、オープンバー:値の中間50%、垂線:10および90%
【図9b】図9aに同じ。
【図9c】図9aに同じ。
【図9d】図9aに同じ。
【図10a】図9におけるヒツジと同じ群の血球凝集抑制(HAI)アッセイ結果を示す。それぞれのサンプルのHAIタイターは、七面鳥の赤血球におけるエンドポイント阻害によって決定した。(*:ANOVAを用いた有意差) 統計分析は、データをlog変換した後に行ない、SPSSソフトウェアバーション13を用いたダネットポスト−ホック分析(Dunnett’s post−hoc analysis)での分散分析(ANOVA)によって群を比較した。水平バー:中央値、オープンバー:値の中間50%、垂線:10および90%
【図10b】図10aに同じ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ひとつの局面として、本発明は、ヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導する方法であって、抗原およびアジュバントを含む組成物を前記被検体に投与し、前記組成物は、肺内経路によって被検体に投与される方法を提供する。
【0014】
好ましくは、被検体はヒトである。しかしながら、本発明の方法は、家畜動物(たとえばヒツジ、ウシまたはウマ)、研究試験用動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)、ペット(たとえば犬または猫)または野生動物のような動物被検体における免疫応答を誘発または誘導することにまで拡大することもできる。
【0015】
本明細書において、組成物の「肺内」または「肺」送達への言及は、肺の粘膜表面への組成物の送達を言及する。組成物の活性構成要素(言い換えれば抗原とアジュバント)は、肺および/または粘膜免疫系における毛細系を含むことができる。これらの用語は、組成物の「深部肺」または「下部肺」送達を含み、それは、肺の深部気管支、細気管支および/または肺胞への組成物の送達である。
【0016】
好ましくは、本発明にしたがって、抗原とアジュバントとを含む組成物は、噴霧器または、同様の機器を用いたエアロゾルまたは乾燥パウダーとともにエアロゾルまたは乾燥パウダーフォームで被検体の肺に投与される。薬剤活性製品の肺内または肺送達のための標準的な機器または製品は、当業者によく知られている。
【0017】
上述したように、別の局面として、本発明は、被検体に免疫応答を誘発または誘導するためのヒトまたは動物被検体に肺内投与における抗原およびアジュバントを含む組成物の使用、または、被検体に免疫応答を誘発または誘導するためのヒトまたは動物被検体に肺内投与用の医薬製造のための抗原およびアジュバントを含む組成物の使用を提供する。
【0018】
さらに別の局面として、本発明は、肺内経路によってヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導するための医薬品であって、抗原とアジュバントとを含む組成物である医薬品を提供する。
【0019】
好ましくは、本発明に従って投与される抗原は、肺の病原体に対して免疫応答を誘発または誘導するであろう抗原である。前記病原体は、たとえばインフルエンザ、クラミジア肺炎病原体(Chlamydia pneumoiae)、呼吸器合胞体ウイルス、または、肺炎球菌等である。しかしながら、抗原は、ほかの粘膜サイトの病原体を含む他の病原体に対する免疫応答を誘発または誘導するものから選ばれてもよい。これは、たとえば、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、サルモネラ菌(Salmonella)、大腸菌(E. coli)、コレラ、HIV、または、性感染症生物などである。本発明に従って投与される抗原は、高い受容体受容性の利点を有する(「針恐怖症」の回避および投与の容易性)。特に、強い粘膜および全身性免疫応答の双方を生じさせ、そのことは全身性免疫応答に依存しているすべてのワクチンにとって有益であろうことを示す。
【0020】
抗原は、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原であってもよい。好ましくは、腫瘍は、粘膜サイトに関連するものである。粘膜サイトに関連する腫瘍は、肺腫瘍に限定されるものではなく、消化管の腫瘍、または、生殖管腫瘍を含む。
【0021】
抗原は、ヒトまたは動物における免疫応答を誘発または誘導できる化学物質であってもよく、不活性細菌全細胞またはそれらのサブユニット、完全不活性ウイルスまたはそれらのサブユニット、タンパク質またはペプチド、グリコタンパク質、炭水化物、ガングリオシド、ポリサッカライド、リポポリサッカライドまたはリポペプチドを含むが、これらに限定されず、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
好ましくは、アジュバントは免疫刺激アジュバントであり、より好ましくは、サポニンベースアジュバントであり、さらにより好ましくは、ISCOMATRIXTM(イスコマトリックス)アジュバントのような免疫刺激複合体(またはISCOMTM)である。しかしながら、本発明は、単独またはそのほかのアジュバントと組み合わせた他の免疫刺激アジュバントの使用も含む。他の免疫刺激アジュバントとは、たとえば、リポソーム、MF59のような水中油型アジュバント、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムのようなアルミニウム塩アジュバント、リピッドAおよびモノホスホリル(monophosphoryl)リピッドA(MPL)のようなリポポリサッカライドアジュバント、CpGオリゴヌクレオチドアジュバントのようなオリゴヌクレオチドアジュバントおよびコレラ毒素のような粘膜アジュバントを含む免疫刺激複合体のようなものを挙げることができる。好ましい免疫刺激アジュバントは、コックス(Cox)とコールター(Coulter)、1997による例に説明されている。
【0023】
本発明の組成物は、現存する多くの技術と研究過程における同等の技術をもちいて肺に送達してもよい。薬を送達できる機械機器、または肺へのタンパク質調製物が存在し、および噴霧およびエアロゾル機器の多くの例がここ数十年間、喘息の治療に用いられている(ゴンダ(Gonda)、2000参照)。主に、これらの機器は、経口吸入による肺への送達手段を含む。本分野の近年の進歩は、3Mコーポレーション(ショエル(Shoyele)とスロウェイ(Slowey)、2006)およびTherapeutics システムInc.(クオ(Kuo)とレチュガ−バレステロス(Lechuga−Ballesteros)、2003)によってつくられたものを含む。
【0024】
本発明に従うと、本組成物は、免疫学的に効果的な量がヒトまたは動物被検体に投与される。ここで、免疫学的に効果的な量とは、少なくとも部分的に所望の免疫応答を達成するために、治療すべき特定の状態の(1)開始を遅延、(2)進行を阻止、(3)完全に停止するために必要な量である。この量は、治療される個体、治療される個体の分類学群、個体の免疫適格、所望の保護度合い、ワクチンの処方、医学状況の判定、そして他の関連のある要素に応じて変化する。この量は、通常の試行を通じて決定される比較的広い範囲にあることが期待される。
【0025】
注目すべきことは、しかしながら、本発明の特に重要な効果は、抗原およびアジュバントを含むワクチン組成物の肺内投与において、粘膜応答と同様の抗原に対する全身性抗体応答を引き起こすだけではなく、そのような全身性および粘膜応答を誘発または誘導するために必要な抗原投与量の大きな減少を可能とすることを発見したという事実を含むことである。加えて、本発明に従ったワクチン組成物の効果的な肺内投与は、マイクロカプセル化、または粘膜接着、または技術粘膜サイトにおけるワクチン摂取を増加するためのほかのテクノロジーのような複雑な送達システムの必要性を回避することができる。
【0026】
その上、大いに改良された粘膜抗体応答の誘導は、肺内免疫付与が、粘膜感染のワクチン有効性を高め、そして、潜在的に免疫化/感染化したヒトからの病原体伝達を減少することができることを示す。
【0027】
特に、粘膜抗体は、インフルエンザ攻撃に対する保護免疫の改良/改善において、大きな価値を有する可能性がある。近年のWHO協議レポート(consultation report)(カセッティ(Casseti)ら、2006))は、以下のように述べている:マウスモデルにおいて、粘膜IgAは、攻撃に対する保護と関連している。そして、ヒトにおける生きた衰弱ワクチンの研究において、粘膜IgAの存在はウイルス排泄の減少と実験感染に対する耐性とに関連する。粘膜IgAは、インフルエンザウイルス感染に対して保護する役割を果たすようであること、および多くの研究で、粘膜免疫応答を減少させるウイルスの能力を向上させるべきであること......と結論付けている。
【0028】
さらに、本発明の肺内送達経路は、他の感染に対するワクチンの潜在的価値を有し、そして、一次全身性抗体応答を要するワクチンのための代替送達経路を提供する。
【0029】
その上、本発明に従って投与される抗原は、強い細胞性免疫応答を誘導する。肺内経路によって送達されるアジュバントと一緒の抗原は、抗原に応答して、特異的に増殖する末梢血細胞の生成を刺激する。これらの細胞は、抗体応答を高め、ウイルス感染細胞の殺傷のようなエフェクター機能をなす機能を有するT細胞のCD4+およびCD8+クラスの双方に属する。抗体応答に加えて細胞免疫応答を誘導する能力は、感染物質、特にHIV、ヘルペスウイルスおよびマイコバクテリア、クラミジア菌およびリステリア菌のようなライフサイクルで細胞内相を含むバクテリアに対するワクチン接種において潜在的価値を有する。
【0030】
本発明のさらなる特徴は、以下の実施例でさらに十分に説明する。しかしながら、この詳細な説明は、単に本発明を例示する目的のために含めたものであって、上述に説明した本発明の広範な説明を制限するものと理解されてはならない。
【実施例】
【0031】
<実施例1>
≪背景≫
本発明の背景として、発明者は、カニューレ処置されたヒツジをモデルとしてワクチン送達の形態について調べた。カニューレ処置は、詳細に調査すべき流入領域リンパ節の流出を可能とする。この研究は、ヒツジに対して、ワクチンモデルとしてISCOMATRIXTM(イスコマトリックス)アジュバントインフルエンザウイルスワクチンを用いて行なった。この研究の重要な発見は、鼻腔内投与においては、高い抗原投与であったとしても、あまり効率的でなく、弱い局所免疫を誘導することである。
これらの発見は、ワクチンを肺葉深くに送達することによる肺内経路によって、カニューレ処置されていないヒツジに対するワクチン送達の効果を調査する方向への研究の変化を促進した。
【0032】
≪実験方法≫
血液採取
ヒツジを拘束し、10mLシリンジと18G針を用いて頚動脈から血液10mLを採取した。
【0033】
免疫付与
本研究では、スクロースグラディエント精製A/NEW Cledonia 20/99H1N1ウイルスをインフルエンザ抗原として用いた。該ウイルスは不活化されており、界面活性剤で破壊しておいた(Coulterら、1998)。抗原濃度は、血球凝集素含有量をベースにして一元放射免疫拡散法で決定した。GMPグレードISCOMATRIXTMアジュバンドは、以前説明されているプロセスに従ってCSLリミテッドより準備した(PearseとDrane、2005)。免疫付与の前に、ISCOMATRIXTMアジュバンドと好ましい量の抗原とを混合したものをワクチン処方物とした。
肺内免疫付与において、ヒツジを慎重にハーネスに拘束した。そして、左鼻腔から左肺の下葉に気管支鏡を注入した。
皮下免疫付与のために、ワクチン処方物を1mLシリンジと25G針を用いて大腿部内部に200μlの全容量を送達した。
【0034】
気管支肺胞洗浄液(BAL)採取
気管支肺胞洗浄液(BAL)サンプルを採取するために、免疫のためと同様に拘束しているヒツジに気管支鏡を挿入し、気管支鏡に取り付けたシリンジを用いて肺葉にPBS(リン酸バッファーpH7.2)10mLを送達した。その際、同じシリンジを用いて気管支鏡によってBAL流体を回収した。
【0035】
EIAによる抗体応答評価
BALにおける抗インフルエンザ抗体と血清サンプルは、EIA(エンザイム イムノエッセイ)によって二連で評価した。つまり、濃度10μl/mLでインフルエンザ抗原を含む炭酸塩バッファー(pH9.6)50μLで、96ウェルマキシソープフラットボトムプレート(NUNU、ロスキルド(Roskilde)、デンマーク)の表面を被覆して一晩おいた。プレートは1%カゼイン酸ナトリウムでブロッキングしてから、二連でサンプルの1/5系列希釈の100μL添加した。特異的抗インフルエンザ抗体の結合は、ホースラディッシュペルオキシダーゼと抱合するウサギ抗ヒツジ全Ig、または、ウサギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼによって結合させた抗ウシ/ヒツジIgA(セロテック(Serotec)、オクスフォード)を用いて検出した。色度はTMB物質(ザイムド(Zymed)、サンフランシスコ)を添加することで発色させ、2MのH2SO4を添加することで停止させた。450nm光学濃度をBiO−Tel ELx800プレートリーダーで検出し、抗体エンドポイントタイターを計算した。
【0036】
血球凝集抑制の評価
ELISAによる抗原特異的抗体応答を示した血清およびBALサンプルは、血球凝集抑制(HAI)についても調べた。このアッセイは、インフルエンザウイルスによる赤血球凝集の阻害状態を測定することで、機能的抗体のタイターを決定するものである。サンプルは、七面鳥の赤血球を用いてタマゴで増殖させたA/NEW Cledonia 20/99ウイルス(H1N1)に対してHAIテストした。HAIタイターは、赤血球のインフルエンザ凝集を阻害したエンドポイント希釈物によって決定した。HAIアッセイは、オーストラリアのメルボルンにあるWHOとのインフルエンザ委託研究共同研究所(WHO Collaborating Center for Reference and Research on Influenza)で行なった。
【0037】
末梢血単核球細胞のインビトロ抗原再刺激
シリンジおよび18G針を用いて頸静脈から採取された血液サンプル(50mL)を5000U/mLのヘパリン100μLが入った50mLチューブに入れた。該細胞が壊れないように800gで20分間遠心分離し、バフィーコートを15mLチューブに入れ、PBSで8mLになるよう希釈した。トランスファーピペットを用いてフイコール−パック(Ficoll−paque)の3.5mLを細胞懸だく液の底に加えて、そして、サンプルが壊れないように1000gで30分間遠心分離した。次に、末梢単核球細胞は、フイコール−PBSの界面から採取され、PBSで洗浄し、完全培地(10%FCS、L−グルタミン、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)および50μMの2−メルカプトエタノールを補充したダルベッコ 修正イーグル培地)に5×106/mLで再度懸だくした。
抗原再刺激アッセイに擱いて、細胞100μL(5×105/ウェル)を96ウェル組織培養プレートに分注した。該プレートには、培地のみ、または、A/NEW Cledoniaインフルエンザ抗原を10または20μg/mL含む培地いずれかを3連で100μL加えた(最終濃度5または10μg/mL抗原)。加湿インキュベーターにて37℃で5日間培養した後に、すべてのウェルを1μCiのトリチウム化チミジン20μLでパルスラベルした。細胞は、パッカードハーベスターを用いてグラスファイバフィルタの上に播種した。そして、細胞はマイクロスキント(Microscint)シンチレーション液とカセットに回収され、β放射線を自動マイクロプレートスキントカウンターを用いて測定した。
【0038】
上部および下部肺への免疫付与の評価
上部肺への送達、および下部肺への送達による免疫付与の有効性の評価は、以下に説明するように行なった。図1(Nickelら、1979)は、上部および下部肺への送達に用いられたヒツジ肺の場所(部位)を示す。
ワクチンは「上部肺」に送達した。−ワクチンは、ファイバ光学気管支鏡を用いて上部肺に送達された。ワクチンは、主気管分岐点の1cm先の主気管支に導入された。
ワクチンは、「下部肺」に送達した。−ワクチンは、ファイバ光学気管支鏡をもちいて下葉に深く送達された。ワクチンは、尾部気管支(caudal bronchus)が尾部区気管支(caudal segmental bronchi)とつながる10cm先の気管分岐点に導入された。
免疫付与、採血、BAL採取およびELISAアッセイは、ほかの実験で説明されるように行なった。ヒツジは、100μgISCOMATRIXTMアジュバンドに0.04μgインフルエンザ抗原の3回投与した。
【0039】
≪結果≫
肺内経路への免疫付与による抗体誘導
3回の別々の実験で、ヒツジに肺内経路によって免疫した。採血は、1回(°)投与から2週間後、そして、2回および3回投与から1週間後に行なわれた。
実験1 ヒツジに100μgISCOMATRIXTMアジュバンドを加えた抗原をそれぞれ1、5または15μg免疫した。3回免疫付与は、3週間間隔をあけて行なった。血清サンプルは、始まる前、および、それぞれワクチン接種した後採取した。
肺内に送達されたアジュバントインフルエンザ抗原の1μgは15μgと同様に有効であるという驚くべき発見に続いて、2番目の実験(実験2)では、抗原投与量のさらなる減少について調べた。
実験2 ヒツジに100μgISCOMATRIXTMアジュバンドを加えた抗原をそれぞれ0.04、0.2、1、5または15μg免疫した。3回免疫付与は、3週間別々に行なった。血清サンプルは、始まる前、および、それぞれ免疫付与した後採取した。
これらの実験ですべての抗原投与量(たとえ0.04μg抗原ほど低くても)が受容性動物に十分な抗体応答を誘導することが示された。低い抗原投与量は1回目の投与後ごくわずかな抗体を誘導する。しかしながら、受容性動物での免疫は、次の2および3回目の投与後は、高い抗原投与量の免疫と同様である。これらの抗体応答は、機能的に血球凝集抑制(HAI)を含む。
0.04μg抗原および100μgISCOMATRIXTMアジュバンドを有するヒツジ免疫化肺内における血清IgGおよびIgAレベルは、抗原単独で15μg皮下免疫付与して得られたものと同様であった(現在のワクチン投与量)。低い投与量の肺内免疫付与は、肺における特異的IgAおよびIgGの非常によいレベルをつくりだす(BAL−気管支肺胞洗浄)。低い投与量の肺内免疫付与は、皮下注入で高い投与量による誘導より優れている。
【0040】
実験3 第3の実験は、(i)低い抗原投与量による特異的免疫誘導のためのアジュバントの要件、(ii)肺内に送達された低い抗原投与量(0.04μg)と皮下に送達された低い投与量との直接比較、(iii)より低い抗原投与量を調べる(0.008μg 抗原)。
第3の実験により:
(a)第1、2による知見が再現された。
(b)アジュバントがとても低い抗原投与量に対して免疫の誘導に有効であることが示された。
(c)肺内にアジュバント添加した低い抗原投与量を送達することは、皮下に送達された同じ抗原の低い投与量ワクチンまたは現在のワクチン投与量とアジュバント添加と同様な血清抗体および優れた肺抗体を誘導することが見出された。
(d)皮下注入したとても低い投与量の抗原を2回以上投与するとトレランスを誘導することを示すようであり、または、第3の投与後の血清抗体としての阻害効果は減少したようである。この阻害は、以下の肺送達では起こらない。
(e)100μgISCOMATRIXTMアジュバントと0.04μg抗原とから誘導されるより少ないが、100μgISCOMATRIXTMアジュバントと0.008μg抗原でさえ肺内免疫付与は十分な抗体誘導を誘導したことが分かった。
実験1〜3の結合データは、図2および表1にまとめた。
【0041】
表1:インフルエンザ抗原とISCOMATRIXTMアジュバントとの投与量の肺内免疫付与によって誘導される血球凝集阻害(HAI)活性

【0042】
表1説明: データは、別々の3回の実験のものを一緒にした。ヒツジの群(1群につきn=8、ただし、15μgflu(インフルエンザ抗原)群(n=12)と0.04μgflu+IMX群(n=16)とを除く)は、ウイルス粒子成分(sprit virion)インフルエンザ抗原の投与量を減らし、ISCOMATRIXTMアジュバント(IMX)の100μgを加えて左肺を免疫した。ワクチンコントロールヒツジの群(S/C)は、現行のヒトインフルエンザワクチン1系統の同様の抗原投与量を皮下に免疫付与された(15μgインフルエンザ抗原単独)。ヒツジは3週間あけて3回免疫付与された。血清および左肺洗浄液(BAL)は、すべてのヒツジから第1投与の1週間前および第1投与の2週間後および第2および第3投与の1週間後に採取された。これらのインフルエンザ介在血球凝集が阻害されたサンプルの滴定はその際決定された。すべての免疫付与前のサンプルは、HAI活性を示さなかった(データ示さず)。
* 皮下免疫付与コントロールと比較して有意に高いHAIタイター(マンホイットニー;p<0.004)
【0043】
表2および図3は、実験3のデータを示す。
【0044】
表2:極めて低いインフルエンザ抗原投与量によって誘導される免疫付与による血球凝集阻害活性のアジュバントおよび送達経路の要件

【0045】
表2説明: ヒツジの群(n=8)は、ウイルス粒子成分(sprit virion)インフルエンザ抗原の極めて低い投与量(0.04μg)と100μgのISCOMATRIXTMアジュバント(IMX)(またはISCOMATRIXTMアジュバント(IMX)を含まない)とによって左肺に免疫した。ほかの群は、皮下に注入された同じワクチンを付与された(S/C)。コントロールヒツジのひとつの群は、現行のヒトインフルエンザワクチン1株の同様の抗原投与量を皮下に免疫付与された(15μgインフルエンザ抗原単独)。ヒツジは3週間あけて3回免疫付与された。血清および左肺洗浄液(BAL)は、すべてのヒツジから第1投与の1週間前および第1投与の2週間後および第2および第3投与の1週間後で採取された。これらのインフルエンザ介在血球凝集が阻害されたサンプルの滴定はその際決定された。すべての免疫付与前のサンプルは、HAI活性を示さなかった(データ示さず)。
# 皮下免疫付与コントロールと比較して有意に低いHAIタイター(マンホイットニー;p<0.002)
* 皮下免疫付与コントロールと比較して有意に高いHAIタイター(マンホイットニー;p<0.028)
^ アジュバントを含まない群と比較して有意に高いHAIタイター(マンホイットニー;p<0.01)
【0046】
図1および2において
水平バー:中央値
オープンバー:値の中間50%
垂線:10および90%
IMX:ISCOMATRIXTMアジュバント
バーは、上述したように第1(1°)、第2(2°)および第3(3°)の後の免疫付与インフルエンザ特異的エンドポイント抗体タイターを示す。
図1: *15μg s/c群より有意に高い(マンホイットニー;p<03)
図2において、
# 15μg s/c群より有意に低い(マンホイットニー;p<0.01)
* 15μg s/c群より有意に高い(マンホイットニー;p<0.038)
^ 同じ経路に向かうアジュバントなしワクチン送達より有意に高い(マンホイットニー;p<0.038)
§ 皮下、同じワクチン送達肺内より有意に高い(マンホイットニー;p<0.028)
☆ 肺内、同じワクチン送達皮下より有意に高い(マンホイットニー;p<0.021)
【0047】
実験4 この実験では、上記実験で用いられた下部肺への送達と比較して、上部肺へのアジュバント化インフルエンザ抗原の送達の有効性を評価した。8ヒツジの2群は、0.04μgインフルエンザ抗原と100μgISCOMATRIXTMアジュバントとを含む処方物をそれぞれ上部肺または下部肺のいずれかに3回付与され、血清とBAL抗体応答は、EIAによって調べた(図4)。
これらの結果は、3回の投与の後、上部肺への送達は血清とBAL応答を誘導したけれども、IgGおよびIgA双方の血清およびBAL双方の有意によい応答は、下部肺送達によって誘導されたことを示した。
【0048】
≪要約≫
100μgISCOMATRIXTMアジュバントとインフルエンザウイルス抗原とを用いて肺内免疫付与することで、全身性および粘膜の双方の抗体誘導においてHAI活性を伴う高い有効性が証明された。
強い血清抗体応答は、抗原の極めて低いレベル(100μgISCOMATRIXTMアジュバントおよび0.04μgインフルエンザ抗原)でさえ観測することができる。これらの応答は、インフルエンザ抗原単独で15μgの皮下注入(現行のワクチンと同様に)によって誘導される応答よりも強いものであり、ISCOMATRIXTMアジュバントと皮下0.04μgインフルエンザ抗原とによって誘導される応答と同等であった。
ISCOMATRIXTMアジュバントと0.04μgインフルエンザ抗原との肺内送達によって誘導される粘膜抗体応答は、皮下にインフルエンザ抗原15μg注入する場合、または皮下にISCOMATRIXTMアジュバントとインフルエンザ抗原0.04μgとを注入する場合よりも、高く評価された。後者のいずれもが、検出できる粘膜(肺)応答を誘導しなかった。
【0049】
<実施例2>
≪肺内経路を通じたワクチンによる細胞免疫誘導≫
ヒツジは、0.04μgインフルエンザ抗原単独、または0.04μgインフルエンザ+100μgISCOMATRIXTMアジュバントのいずれかで4回肺内免疫付与された。最後の免疫付与の後1週間後、末梢血を採取し、培地のみ(ネガティブコントロール)で、または5または10μgインフルエンザ抗原と一緒に(再刺激)単細胞を96ウェルプレートで培養した。5日後、ウェルは、24時間トリチル化チミジンでパルスした。その際、放射線を測定して、細胞増殖を数えた。刺激インデックスは、培地単独のコントロール群の平均cpmで再刺激された群の1分間あたりの平均カウント(cpm)を割ることで、計算された。
細胞増殖調査の結果は、表3に示す。ヒツジを抗原単独で肺内にワクチン接種した場合、末梢血において増殖応答は検出することができなかった。しかしながら、そのような応答は、ISCOMATRIXTMアジュバントと抗原とを受けたヒツジにおいては、検出された。これらのデータは、アジュバントの必要性、次に肺ワクチン送達することで、末梢循環における細胞増殖記憶応答を誘導することが示された。
【0050】
表3:ISCOMATRIXTMアジュバントがある場合とない場合とに分けて、インフルエンザ刺激された、低い投与量抗原で肺内を免疫付与したヒツジから得られた末梢血単細胞の増殖応答

【0051】
<実施例3>
≪微小流動化水中油アジュバントを含む肺内経路による投与のための抗原処方物≫
好ましい濃度の抗原(結果として0.01〜500μgの範囲の単位用量を生成する最終抗原濃度)は、0.05%アジ化ナトリウム、pH7.2のPBS中における5%v/vスクアラン、0.5v/vトゥイーン80、0.5%v/vスパン85と混合した。次に、この混合液は、1平方インチ(6.452cm2)あたり(psi)19〜20,000ポンド(8.618〜9071.849kg)の圧力で高圧流動化を行なった。この処方物は、上述された方法による肺内経路を通じて送達された。
【0052】
<実施例4>
≪ISCOMATRIXTMアジュバントと処方した組換え型サイトメガロウイルスgB抗原で肺内経路を通じた免疫付与によって誘導された全身性および粘膜免疫≫
インフルエンザ抗原とISCOMATRIXTMアジュバントから得られた結果を確証し、拡張するために、組換えウイルス抗原の肺内送達によって誘導された免疫応答をヒツジで調べて研究した。ISCOMATRIXTMアジュバントと処方されたサイトメガロウイルスgBグリコタンパク質の短縮形態を肺内、および皮下経路で送達し、EIAによって血清および肺における抗体応答を評価した。加えて、機能的抗体の誘導を、血清におけるCMV中性抗体アッセイで評価した。肺内にT細胞応答の誘導をもたらした処方の能力は、末梢血単細胞のgB特異的細胞増殖を評価することでも調べられた。
【0053】
≪実験方法≫
短縮組換えヒトCMVgBタンパク質(△gB)の製造
1.CMV△gBタンパク質をコードしたDNAを含むプラスミドの作製
タンパク質の膜貫通領域を取り除いて設計されたCMVgBの短縮形態をコードしたDNAをオーストラリアのブリズベンのクイーンズランドメディカルリサーチ研究所の准教授ラージ ハーナ(Rajiv Khanna)からいただいた。このDNAは、gBの細胞外、および細胞質内ドメイン(NCBI P06473)がインフレームで融合した組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のシグナル配列を含むタンパク質をコードしている。なお、そのDNAは、発現タンパク質の開裂を防止するためのアミノ酸460/461周辺の領域をコードしたヌクレオチドにポイントミューテーションを導入した。そのDNAを、KpnI/NotIフラグメントとしてpCEP4ベクターにクローン化した。得られたプラスミド(pCEP4△gB)は、大腸菌(E.Coli)で増殖させ、キアゲン(Qiagen)マキシキットを用いて精製プラスミドを調製した。
【0054】
2.哺乳類細胞における△gBタンパク質発現
振とうフラスコにおいて37℃でFreeStyleTM発現培地(Expression Medium)中で増殖させたFreeStyleTM293−Fの培養物を293フェクチントランスフェクションリージェント(インビトロゲン)を用いてpCEP4△gBでトランスフェクションした。培養中ハイグロマイシンBを用いてセレクションをかけたタンパク質△gBの分泌発現は細胞上澄みサンプルのSDS−PAGEゲル分析で決定した。細胞培養上澄みを採取し、2500rpmで遠心分離機によって浄化した。次に、0.45μmフィルターを通した後にクロマトグラフィにかけた。
【0055】
3.△gBタンパク質の精製
gB特異的モノクローナル抗体58−15(シング(Singh)とコンプトン(Compton)、2000)で捕獲するアフィニティークロマトグラフィを用いて△gBタンパク質を精製した。抗体は、Prosep−A(ミリポア)タンパク質Aカラムで精製した。△gBタンパク質の精製のため、精製された抗体を、平衡バッファー(0.2M NaHCO3/0.5M NaCl,pH8.5)中でHiTrap NHS−活性化HPカラムとカップリングした。浄化した細胞培養上澄みは、100mMホウ酸塩/150mM NaCl pH8.5で、1:1に希釈した。希釈した上澄みを、HiTrapカラムにアプライし、平衡バッファーで平衡化し、そして、まず、0.1Mグリシン−HCl pH2.5、続いて平衡バッファーで溶出し、今度は、0.15M水酸化アンモニウムで再び溶出した。溶出した画分は、3MトリスpH8または1MグリシンpH2.5のいずれかを用いて中和させた。タンパク質精製はクーマシー−ストレインSDS−PAGEゲル電気泳動法で調べた(図5)。タンパク質濃度は、280nmのODを決定することで測定した。
【0056】
≪△gBを用いたヒツジの免疫付与≫
血液採取
方法は、実施例1で説明した方法と同じとした。
免疫付与
ヒツジは、ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gB
タンパク質とで免疫付与された(表4)。サイトメガロウイルスの△gBタンパク質は上述したように調製した。
すべてのヒツジは、3回ワクチン投与を受けた。血液採取スケジュールを含む詳細は、実施例1で説明したとおりである。
【0057】
表4:ヒツジの群は、ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gBタンパク質とで免疫付与された。

【0058】
BAL採取
BALの採取は、実施例1で説明したとおり行なった。
EIAによる抗体応答の評価
ヒツジIgGおよびIgAを検出する方法は、以下の例外を含めて実施例1の方法と同様とした。プレート(96ウェル)に、1ウェルあたり100μlの2μg/mL精製△gBタンパク質を含むPBSで一晩コートした。固定したヒツジIgGは、ホースラディッシュペルオキシダーゼと結合したウサギ抗ヒツジ全IgG(H+L)を用いて検出した。IgGおよびIgA双方の場合において、TMBペルオキシダーゼ基質は、それぞれKPLキークガード(Kirkegaard)およびペリー(Perry)ラボラトリーズから供給された。1ウェルあたり、0.5MのH2SO4を50μl添加することで反応をとめた。
【0059】
CMVに対する機能活性の評価
機能的血清抗体を誘導するワクチンの能力は、MRC−5細胞の組換えヒトサイトメガロウイルス感染を基礎とした中和アッセイを用いて評価した。アッセイは、オーストラリアのブリズベンのクイーンズランドメディカルリサーチ研究所の准教授ラージ ハーナ(Rajiv Khanna)と同業者とが、緑色蛍光タンパク質を発現する組換えCMVAd169wt86−EGFPを用いて行なった(マースチェル(Marschall)ら、2000;ワング(Wang)ら、2004)。血清希釈物にCMVAd169wt86−EGFPをさらした後にヒト繊維芽細胞(MRC−5細胞)に感染するウイルスの能力をフローサイトメトリー(FACS)を用いて細胞核蛍光の割合を定量化することで評価した。
【0060】
1. ヒツジの血清を56℃で30分間インキュベートした。
2. ヒツジの血清(ストレート、100μlDMEMの2倍、4倍希釈物)を96ウェルトレイに分注した。
3. 25μl(2.5×104PFU)Ad169wt86−EGFPウイルスをそれぞれの血清サンプルに添加した。
4. 血清/ウイルスサンプルを空気中7%CO2の雰囲気で2時間37℃インキュベートした。
5. あらかじめ、空気中7%CO2の雰囲気において2時間37℃でインキュベートした10%胎児ウシ血清(DMEM−10)を含むDMEMで生育させたMRC−5細胞を含む48ウェル平板底トレイを準備し、使用するときまで細胞密集度80〜90%とした。
6. 細胞培養培地をMRC−5細胞から取り除いた。その際、それぞれのウイルス/血清サンプル50μlを、MRC−5細胞を含む48ウェル平板底トレイにおいて対応するウェルに移動させた。50μlDMEMを加え、48ウェルトレイはゆるやかにゆすって空気中7%中CO2の雰囲気で2時間37℃インキュベートした。
7. 接種物は、48ウェルトレイから吸引され、ウェルは3回DMEM−10で洗浄し、その後それぞれのウェルに500μlのDMEM−10を添加し、空気中7%中CO2の雰囲気で一晩37℃インキュベートした。
8. 翌日、細胞培地と細胞(トリプシンを使用)とを48ウェルトレイから集め、遠心分離によって細胞ペレット化した。
9. ペレットは、PBSに再懸だくし、そして、再度遠心分離によってペレット化した。
10. 1mg/mLの7−アミノクチンマイシン(Aminoctinmycin)Dを0.2μl含む低張バッファー(0.1%クエン酸ナトリウム、0.1%(v/v)トリトンX−100)100μlに、ペレットを激しく再懸だくし、暗所室温で20分間静置した。
11. それぞれのペレットのサンプルは、FACS分析に適したチューブに移され、1%パラホルムアルデヒドを含む100μlのPBSを添加した。混合物は、FACS分析の前30分間氷上で静置させた。
12. サンプルは、ベクトンディッキンソンFACSCantoで分析し、サンプル中の蛍光核の割合を定量化した。
13. それぞれのサンプルの中和百分率は以下の式を用いて計算した。
%中和=[蛍光核の割合(血清不添加)−蛍光核の割合(血清サンプル)÷蛍光核の割合(血清不添加)]×100
【0061】
末梢血単核球細胞のインビトロ抗原再刺激
シリンジおよび18G針を用いて頸静脈から採取された血液サンプル(50mL)を5000U/mLのヘパリン100μLが入った50mLチューブに入れた。該細胞が壊れないように800gで20分間遠心分離し、バフィーコートを15mLチューブに入れ、PBSで8mLになるよう希釈した。トランスファーピペットを用いてフイコール−パック(Ficoll−paque)の3.5mLを細胞懸だく液の底に加えて、そして、サンプルが壊れないように1000gで30分間遠心分離した。その際、末梢単核球細胞は、フイコール−PBSの接触面から採取し、PBSで洗浄し、完全培地(10%FCS、L−グルタミン、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)および50μMの2−メルカプトエタノールを補充したダルベッコ 修正イーグル培地)に5×106/mLで再度懸だくした。
抗原再刺激アッセイのため、細胞100μL(5×105/ウェル)を96ウェル組織培養プレートに分注した。該プレートには、培地のみ、または、gBタンパク質を5、10、20または40μg/mL含む培地いずれかを3連で100μL加えた(最終濃度2.5、5、10または20μg/mL)。加湿インキュベーターにて37℃で5日間培養した後に、すべてのウェルを1μCiのトリチウム化チミジン20μLでパルスした。細胞は、パッカードハーベスターを用いてグラスファイバフィルタの上に播種した。そして、細胞をマイクロスキント(Microscint)シンチレーション液とともにカセットに設置し、β放射線を自動マイクロプレートスキントカウンターを用いて測定した。
【0062】
≪結果≫
ISCOMATRIXTMアジュバントと処方した組換えCMV△gB抗原を肺内および皮下に免疫付与して起こる免疫応答
ヒツジは、3週間間隔で皮下または肺内にISCOMATRIXTMアジュバントと処方されたCMV△gB抗原を3回投与量受けた。血清とBALサンプルは、第1投与の1週間前、第2投与の2週間後、ならびに第2および第3投与の1週間後に採取された。抗体EIAデータにおいて、着床前の抗体タイターは、差し引いた。
ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gBにおけるこれらの実験の結果(図6)は、概して、ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された低用量インフルエンザ抗原(0.04μg)と実施例2と同様であった。肺内におけるIgGおよびIgA応答は、3回目の投与後、皮下送達における応答と同様であった。しかしながら、インフルエンザ抗原処方から得られた結果と比較して、肺内経路で送達されたISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gBは、血清IgGおよびIgAを2回投与のみののちの皮下送達と同様に誘導した。肺内経路で送達されたISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gBは、1回投与量後の応答を調べたとき、有意に高い血清IgGを誘導した(図6aおよびb)。
【0063】
肺における抗体応答の場合には、再度、ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gBで免疫付与した後の応答は、ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された低い投与量のインフルエンザ抗原で免疫付与した実験と同様の結果であった。ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gBは、肺内に送達したとき、同じ処方を皮下送達した場合と比較して、3回目の投与の後、肺で有意に高い抗体応答を誘導した(図6cおよびd)。
機能的抗体誘導の場合、血清におけるCMV中和アッセイの結果は、EIAにおいて得られる血清IgG応答の結果と合致した(図7)。ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された△gB処方の肺内および皮下の送達の中和抗体応答は、十分に着床前の血清と比較して有意に高かった。中和応答は、3回目の投与の後さらに増加した。この結果は、ISCOMATRIXTMアジュバントと処方された抗原は、肺内および皮下経路によって送達されたとき、中和抗体の誘導における同等性を示している。
【0064】
△gBと末梢血単核細胞の再刺激のアッセイ結果(図8)において、肺内または皮下経路のいずれかで送達されたISCOMATRIXTMアジュバントと処方された抗原を、2〜3回投与量(4またはそれ以上の刺激インデックス)の後、T細胞応答が誘導されることが示された。
【0065】
<実施例5>
肺内を通じたさまざまなアジュバント技術によるワクチン接種によって誘導される全身性および粘膜免疫
これらの実験は、ISCOMATRIXTMアジュバントよりも他のアジュバントが肺内経路による送達をされたときに抗原特異的粘膜および全身性抗体応答を誘導することができるかどうかを調べるために行なわれた。ヒツジ群は、肺内経路で、さまざまなアジュバント処方物と一緒に処方されたインフルエンザ抗原で免疫付与した(表5)。
【0066】
表5:肺内経路で、さまざまなアジュバント処方物と一緒に処方されたインフルエンザ抗原による免疫付与されたヒツジ群

【0067】
≪実験方法≫
アジュバント処方物の調製
A.リポソームは以下の方法によって調製した。:
バッファー溶液:
IRバッファー: 0.14M NaCl, 3mM KCl, 8mM
Na2HPO4, 0.05mM CaCl2.2H2O, 1.5mM K
2PO4 pH7.2
IVDバッファー: 0.14M NaCl, 3.5mM Na2HP
4, 1.4mM NaH2PO4.2H2O pH7.2
【0068】
1.11.4mg/mLコレステロール、12.4mg/mLジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびメガ(Mega)10の溶液をIRバッファー中で調製した(Chol/DPPC)。
2.Chol/DPPCは、IVDバッファーを30分以上かけて徐々に添加することで1/40に希釈した。
3.希釈溶液は、ST 200 Diafiltration Cartridge (Nephral)を用いてはじめの薄められた体積の1/40に濃縮した。
4.濃縮溶液は、IVDバッファーの25倍体積で限外ろ過することで洗浄した。
5.Chol/DPPCは、さらに限外ろ過することで、2倍に濃縮した。
6.脂質押出しに先立ちChol/DPPCは、少なくとも1時間40℃でインキュベートした。
7.手順どおり、42℃に保った10mLサーモバーレルエクストラダー(Thermobarrel Extruder)を装備した脂質押出し機(T.001 Northern Lipids Inc.,カナダ)を用いてChol/DPPCからリポソームを押出した。
8.1400−2000kPaの圧力を用いて0.1μm PC ディスクフィルターを通してChol/DPPCの10mLロットで押出しを行なった。
9.Chol/DPPC溶液すべてがこの系を10回供するまで、この工程を繰り返した。
10.結果物のリポソームは、コレステロールとDPPC内容物について測定し、そして、ネガティブ染色を用いて電子顕微鏡下で大きさと均質性とを評価した。
【0069】
B.MPLの調製
脂質Aモノホスホリル(MPL)(Sigma L6895)は、2mg/mLでDMSO(Sigma D2650)に再懸だくされ、使用するまで4℃で保った。
【0070】
C.CpGの調製
CpG (Sigma−Genosys 1062 4856−011)をpH8の10mM Tris/1mM EDTAに再懸だくし、使用するまで4℃で保った。
【0071】
D.アジュバント処方物の調製
すべてのアジュバント処方物は、インフルエンザ抗原の添加前の希釈としてPBSを用いた関連組成物を混合して調製した(表5)。このあとに、リポソームを含む処方物を1/8インチ(0.3175cm)プローブを用いてセッティング4にてVirSonicソニケーターで超音波処理にさらした。処方物は、30秒間空けて5秒2回の超音波処理を施し、すべての操作は氷上で行なった。
【0072】
免疫付与
実施例1で説明した方法を用いて表5に示すように、ヒツジの群は、インフルエンザ抗原とアジュバントとの処方物で免疫付与し、採血した。
BAL採取
BALの採取は、実施例1で説明したとおり行なった。
ELISAによる抗体応答の評価
血清中およびBALサンプル中のインフルエンザ抗原への抗体応答のアッセイは、実施例1で説明したとおり行なった。
血球凝集抑制の評価
血清中およびBALサンプル中のHAI活性アッセイは、実施例1で説明したとおり行なった。
【0073】
≪結果≫
さまざまなアジュバントとインフルエンザ抗原との処方物の肺内ワクチン接種後における免疫応答の評価
ヒツジは、3週間の間隔で3回投与量を受けた。血清と肺(BAL)サンプルとは、最初の投与量の前と2週間後、そして2回目および3回目の投与量の1週間後に採取した。抗体ELISAデータにおいて、免疫付与前抗体タイターは差し引いた。
これらの実験結果において、さまざまなアジュバント処方物は、アジュバントが抗原と併用され、肺内経路によって送達されたとき、抗体応答を誘導する能力は多様であることが示された(図9および図10)。
【0074】
すべてのアジュバントは、血清中の抗体の誘導において、抗原単独と比較していくつかの利益をもたらす。ISCOMATRIXTMアジュバントを含む処方物は、3回目の投与の抗原単独に比較して、血清およびBAL中の双方において有意に大きな応答を誘導し、ならびに、2回投与の後大きな応答が誘導された血清IgGの場合は、2回投与後優れた応答を誘導した。
特に注目すべきであるのは、2回投与量の後の血清中および3回投与量の後のBAL中双方におけるISCOMATRIXTMアジュバント処方によって、機能的(HAI)抗体の誘導が示されたデータである(図10)。そのデータ(図9)からは、抗原とISCOMATRIXTMアジュバント+MPLとを含む処方物で免疫されたヒツジに1回および2回投与ののち、それぞれ血清IgGおよびIgA抗体においてアジュバント単独に比較して有意な増加が生じたという点でISCOMATRIXTMアジュバントへMPLを添加することによる長所も示される。
【0075】
参照文献:
Casetti, M.C., et al. Report of a consultation on role of immunological assays to evaluate efficacy of influenza vaccines. Initiative for Vaccine Research and Global Influenza Programme, World Health Organization, Geneva, Switzerland, 25 January 2005. Vaccine (2006), 24(5):541-543.
Coulter, A. et al. Studies on experimental adjuvanted influenza vaccines: comparison of immune stimulating complexes (IscomsTM) and oil-in-water vaccines. Vaccine (1998), 16 (11/12): 1243-1253.
Cox, J.C. and Coulter, A.R. Adjuvants - a classification and review of their modes of action. Vaccine (1997), 15(3):248-256.
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Griffith, G.D., et al. Liposomally-encapsulated ricin toxoid vaccine delivered intratracheally elicits a good immune response and protects against a lethal pulmonary dose of ricin toxin. Vaccine (1997), 15 (17/18): 1933-1939.
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Nickel, R., Schummer A. and Seiferle E. Eds. The Viscera of the Domestic Animals. 2nd edition. Verlag Paul Parey, Berlin (1979).
Pearse, M.J. and Drane, D. ISCOMATRIXTM adjuvant for antigen delivery. Adv. Drug. Del. Rev. (2005), 57:465-474.
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Shoyele, S.A. and Slovey, A. Prospects for formulating proteins/peptides as aerosols for pulmonary drug delivery. International Journal of Pharmaceutics (2006), 314:1-8.
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導する方法であって、
抗原およびアジュバントを含む組成物を前記被検体に投与することを含み、前記組成物は、肺内経路によって被検体に投与される方法。
【請求項2】
組成物が、肺内経路用に処方されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物が、エアロゾルまたは乾燥粉末フォームである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が、前記被検体に経口投与で送達される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
組成物が、前記被検体の下部肺に送達される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
組成物が、免疫刺激アジュバントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組成物が、サポニンベースアジュバント、リポソーム、水中油型アジュバント、アルミニウム塩アジュバント、リポポリサッカライドアジュバント、オリゴヌクレオチドアジュバントおよび粘膜アジュバントからなる群から選ばれる少なくとも1つのアジュバントを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
組成物が、免疫刺激複合体を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、イスコマトリックスアジュバントを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
組成物が、ほかの免疫刺激アジュバントと組み合わされた免疫刺激複合体を含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
組成物が、リポポリサッカライドアジュバントと組み合わされた免疫刺激複合体を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、モノホスホリル脂質A(MPL)と組み合わされたイスコマトリックスアジュバントを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原が、粘膜病原体に対する免疫応答を誘発または誘導する抗原である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粘膜病原体が、インフルエンザウイルス、クラミジア肺炎病原体、呼吸器合胞体ウイルス、または、肺炎球菌である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原が、非粘膜部の病原体に対する免疫応答を誘発または誘導する抗原である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記病原体が、ピロリ菌、サルモネラ菌、大腸菌、コレラ、HIV、または、性感染症生物である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗原が、腫瘍特異的、または腫瘍関連抗原である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍が、粘膜部と関連する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍が、肺腫瘍、消化管の腫瘍、または、生殖管腫瘍である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
被検体に免疫応答を誘発または誘導するためのヒトまたは動物被検体に肺内投与における抗原およびアジュバントを含む組成物の使用、または、
被検体に免疫応答を誘発または誘導するためのヒトまたは動物被検体に肺内投与用の医薬製造のための抗原およびアジュバントを含む組成物の使用。
【請求項21】
肺内経路によってヒトまたは動物被検体の免疫応答を誘発または誘導するための医薬品であって、
抗原とアジュバントとを含む組成物である医薬品。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10a】
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【図10b】
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【公表番号】特表2010−501595(P2010−501595A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525861(P2009−525861)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001277
【国際公開番号】WO2008/025095
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【出願人】(509060039)ユニヴァーシティー オブ メルボルン (6)
【Fターム(参考)】