説明

免疫抑制剤として使用するためのデプシペプチドおよびその同族体

【課題】低い細胞障害特性および管理可能な副作用を伴う代替の免疫抑制剤を提供すること。
【解決手段】構造(I)を有するデプシペプチドおよびその同族体が開示される。ここで、m、n、p、q、X、R1、R2およびR3は本明細書中に定義されるとおりである。FR901228を含むこれらの化合物は、例えば、免疫抑制剤としての活性、ならびに、炎症、自己免疫もしくは免疫系関連疾患(移植片対宿主病を含む)を罹患もしくは罹患する危険性がある患者の予防または処置するための活性、ならびに、移植後の移植片/組織の生存を高めるための活性を有する。また、リンパ球の活性化、増殖を阻害するため、および/またはIL−2分泌を抑制するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は一般に、デプシペプチドまたはその同族体、およびその免疫抑制剤としての使用に関し、より詳細には、FR901228のようなデプシペプチドの有効量を動物に投与することによって、免疫障害(例えば、自己免疫疾患または炎症性疾患)の処置および/または予防、ならびに移植材料の免疫拒絶を軽減するため処置および/または予防に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系の調節は、自己免疫応答を阻害することから感染疾患を制御および移植片/組織拒絶を阻害することまでの様々な状況において望まれる。拒絶を軽減するための主なアプローチは、レシピエントの免疫系の薬理学的抑制である。これを考慮して、現在使用されている最も免疫調節性の化合物は、免疫抑制剤である。1960年代初め、これらの免疫抑制剤のアベイラビリティは、わずかな薬剤のみに制限されていた。しかし、1980年代初め、アザチオプリンおよびコルチコステロイドに加えて、シクロスポリンが幅広く利用可能になり、そしてそれ以来、選り抜きの薬物である(Kobaxhigawa、Trans.Proc.30:1095−1097,1998;Isoniemi,Ann.Chi.Gyn.86:164−170,1997)。しかしながら、より新しい免疫抑制剤は、比較的わずかな数であり、そしてまた初期の薬剤に関連する所望でない多くの副作用を被る。これらの薬物は、移植器官の生存時間を増大するために、単一の薬剤または他の免疫抑制剤と組み合わせてのいずれかとして使用されてきたが、多くはまた炎症性疾患および自己免疫疾患、移植片体宿主疾患、および類似の免疫系関連疾患を処置するために有用である。
【0003】
現在使用される免疫抑制剤は、抗増殖剤(例えば、メトトレキセート、アザチオピリン、およびシクロホスファミド)を含む。これらの薬物は、有糸分裂および細胞分裂に影響を与えるため、これらは、速い代謝回転速度を有する正常な細胞(例えば、骨髄細胞)および胃腸管内層に対する重篤な毒性効果を有する(Miller,Semin.Vet.Med.Surg.12(3):144−149,1997)。従って、骨髄低下および肝臓損傷は、一般的な副作用である。
【0004】
免疫抑制を誘発するために使用される抗炎症性化合物は、副腎コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾンおよびプレドニゾロン)を含む。これらの化合物を使用して観察される一般的な副作用は、頻繁な感染、異常な代謝、高血圧および糖尿病である。
【0005】
リンパ球の活性化および続く増殖を阻害するために現在使用されている他の免疫抑制化合物としては、シクロスポリン、FK506およびラパマイシンが挙げられる。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニュリン(シクロスポリンおよびFK506)を阻害するか、または増殖因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)を阻害するかのいずれかである(Liuら、Cell 66:807−815,1991;Hendersonら、Immun.73:316−321,1991;Biererら、Curr.Opin.Immun.5:763−773,1993;Isoniemi(前出))。中でもシクロスポリンおよびその類似物は、最も一般的に使用される免疫抑制剤である。シクロスポリンは、典型的に、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、骨髄および心臓−肺移植における器官拒絶を予防または処置するため、ならびに自己免疫疾患および炎症性疾患(例えば、クローン病、再生不良性貧血、多発性硬化症、重症筋無力症、ブドウ膜炎、胆汁性肝硬変など)の処置のために使用される。しかし、シクロスポリンは、小さな治療的用量ウインドウおよび重篤な毒作用(腎毒性、肝毒性、高血圧、多毛症、癌および神経毒性を含む)の問題を被る(PhilipおよびGerson、Clin.Lab.Med.18(4):755−765,1998;Hojoら、Nature 397:530−534,1999)。
【0006】
さらに、モノクローナル抗体(例えば、OKT3)は、移植片拒絶を予防および/または処置するために使用される。モノクローナル抗体の患者への導入は、多くの生物学的材料の場合と同様に、いくつかの副作用(例えば、硬直および呼吸困難)を引き起こす(Richardsら、CancerRes.59(9):2096−2101,1999)。
【0007】
多くの生命を脅かす疾患の状況では、器官移植は、標準的な処置と考えられ、そして多くの場合において、死の代替と考えられる。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によりコードされ、全ての細胞上に存在する、移植片上の異種細胞表面抗原に対する免疫応答は、一般的に、移植組織が適合性ドナー由来ではない限り、組織および器官の首尾良い移植を妨げ、そして正常な免疫応答は抑制される。一卵性双生児以外、最も適合性であり、かつ長期間の割合の移植は、MHC同一性同胞ドナーまたはMHC同一性無関係死体ドナーを使用して達成される(Strom.Clin.Asp.Autoimm.4:8−14,1990)。しかし、このような同一の適合は、達成しがたい。さらに、ドナーの器官の必要性が増加するにつれて、現存の移植された器官の不足が増加する。従って、異物移植が集約的な研究の領域として現れたが、レシピエント動物における拒絶に関する多くの障害に直面している(Kaufmanら、Annu.Rev.Immunol.13:339−367,1995)。
【0008】
器官同種移植に対する宿主応答は、異種抗原を認識し、異種抗原によって活性化されるTリンパ球およびBリンパ球、ならびにマクロファージまたは樹状細胞の中の複雑な一連の細胞相互作用を含む(Strom,前出;Cellular and Molecular Immunology,Abbasら(編)、WB Saunders Co.,Penn.,1994)。同時刺激因子、主にサイトカイン、および活性化補助細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)によって提供される特定の細胞−細胞相互作用は、T細胞増殖に必須である。これらのマクロファージまたは樹状細胞は、特定の接着タンパク質を介してT細胞に直接付着するか、またはT細胞を刺激するサイトカイン(例えば、IL−12およびPL−15)を分泌する(Strom,Organ Transplantation:Current Clinical and Immunological Concepts,1989)。補助細胞誘発性同時刺激シグナルは、インターロイキン−2(IL−2)遺伝子転写の活性化、およびT細胞における高親和性IL−2レセプターの発現を刺激する(Pankewyczら、Transplantation 47:318,1989;Cantrellら、Science 224:1312,1991;Williamsら、J.Immunol.132:2330−2337,1984)。IL−2(15kDaのタンパク質)は、抗原刺激の際にT細胞によって分泌され、そして正常な免疫応答のために必要とされる。IL−2は、リンパ細胞を刺激して、IL−2特異的細胞表面レセプター(IL−2R)に結合することによって増殖および分化する。IL−2はまた、細胞障害性T細胞のヘルパーT細胞活性化を開始し、そしてインターフェロン(IFN−)の分泌を刺激し、これ次いで、マクロファージの細胞破壊特性を活性化する(Farrarら、J.Immunol.126:1120−1125,1981)。さらに、IFN−およびIL−4はまた、移植された器官におけるMHCクラスII発現の重要なアクチベータであり、それにより移植器官の免疫原性を増大することによって拒絶カスケードをさらに拡大する(Poberら、J.Exp.Med.157:1339,1983:Kelleyら、J.Immunol.132:240−245,1984)。
【0009】
T細胞媒介性応答の現在のモデルは、T細胞は、主に樹状細胞によって、二次リンパ器官のT細胞ゾーンにおいてプライムされることを示唆する。初期の相互作用は、抗原提示細胞(APC)の抗原負荷MHC分子細胞とT細胞上のT細胞レセプター(TCR)/CD3複合体との間の細胞間接触を必要とする。TCR/CD3複合体の会合は、CD4T細胞におけるCD154発現を優勢に引き起こし、これは次いで、CD40会合によりAPCを活性化して、改善された抗原提示を生じる(Grewalら、Ann.Rev Immunol.16:111−135,1998)。これは、部分的に、APCにおけるCE80およびCD86発現の上方制御により引き起こされ、この両方は、T細胞上の重要なCD28同時刺激分子に対するリガンドである。しかし、CD40の会合はまた、MHC−抗原複合体の長期の表面発現、4−1BBおよびOX−40(活性化T細胞上で発現される強力な同時刺激分子)のリガンドの発現を導く。さらに、CD40の会合は、様々なサイトカイン(例えば、IL−2、IL−15、TNF−α、IL−1、IL−6およびIL−8)およびケモカイン(例えば、Rantes、MIP−1α、およびMCP−1)の分泌を生じ、これらの全ては、APCおよびT細胞活性化および成熟の両方に対する重要な効果を有する(Mackeyら、J.Leukoc.Biol.63:418−428,1998)。
【0010】
類似の機構は、自己免疫疾患(例えば、I型糖尿病)の発生に関する。ヒトおよび非肥満糖尿病マウス(NOD)において、インスリン依存性糖尿病(IDDM)は、年齢と共に増大するインスリン産生膵臓β細胞の自然なT細胞依存性自己免疫破壊から生じる。このプロセスは、主にTリンパ球と比較して、単核細胞を有する島の浸潤(インスリン炎)によって生じる(Bottazzoら、J.Engl.J.Med.113:353,1985;Miyazakiら、Clin.Exp.Immunol.60:622,1985)。自己凝集性T細胞と抑制型免疫現象との間のデリケートなバランスは、自己免疫の発現がインスリン炎に制限されるか、またはIDDMに進行するかを決定する。NODマウスにおいて、T細胞を標的化するヒトIDDMのモデルの治療ストラテジーは、IDDMの予防において首尾よい(Makinoら、Exp.Anim.29:1,1980)。これらは、新生児胸腺摘出、シクロスポリンの投与および抗panT細胞、抗CD4または抗CD25(IL−25)モノクローナル抗体(mAbs)の注入を含む(Taruiら、Insulitis and Type I Diabetes、lessons frome theNOD Mouse,Academic Press,Tokyo,143頁、1986)。他のモデルとしては、自己免疫疾患および炎症性疾患(例えば、多発性硬化症)(EAEモデル)、リウマチ様動脈炎、移植変態宿主疾患、全身性エリテマトーデス(全身性自己免疫−−−NZBxNZWFモデル)など)が挙げられる(例えば、TheofilopoulosおよびDixon、Adv.Immunol.37:269−389,1985;Eisenbergら、J.Immunol.125:1032−1036,1980;Bonnevilleら、Nature 344:163−165,1990;Dentら、Nature 343:714−719,1990;Toddら、Nature 351:542−547,1991;Watanabeら、Biochem Genet.29:325−335,1991;Morrisら、Clin.Immunol.Immunopathol.57:263−273,1990;Takahashiら、Cell 76:969−976,1994;Current Protocols in Immunology,Richard Coico編、John Wiley & Sons,Inc.,Chapter 15、1998)。
【0011】
全ての拒絶の防止のおよび自己免疫逆転ストラテジーの目的は、抗原性組織または因子に対する患者の免疫反応性を、最小の罹患率および死亡率で抑制することである。従って、多数の薬物が現在使用され、またはそれらの免疫抑制特性について研究されている。上記のように、最も一般的に使用される免疫抑制剤は、シクロスポリンであるが、シクロスポリンの使用は、多数の副作用を有する。従って、低い細胞障害特性および管理可能な副作用を伴う免疫抑制において効果的な薬剤についての比較的少ない選択の観点において、代替の免疫抑制剤の同定の必要性が、当該分野において存在する。本発明は、この必要性を満たし、そして他の関連の利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
簡潔には、本発明は、デプシペプチドおよびその同族体(本明細書中で「化合物」とも称される)、これは、免疫抑制剤としての活性を有する。一実施形態において、本発明は、有効量の以下の構造(I)を有する化合物(その薬学的に受容可能な塩および立体異性体を含む)を動物に投与することによってこの動物の免疫応答を抑制するための方法を開示する:
【0013】
【化11】

ここで、m、n、p、q、X、Y、R、RおよびRは、以下で定義されるとおりである。
【0014】
別の実施形態において、上記の構造(I)を有する新規の化合物が開示されるが、特定の公知の化合物(すなわち、FR901228)は除かれる。さらなる実施形態は、本発明の化合物を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む組成物を含む。
【0015】
本発明の方法の実施において、この化合物は、自己免疫疾患、炎症性疾患、または移植片対宿主疾患を有する動物、ならびに同種移植または異種移植を受けた動物における免疫応答を抑制するために投与され得る。本発明のさらなる方法は、リンパ球の増殖を阻害するため、移植手順(同種異系移植および異種移植を含む)の前、同時またはその後に投与することによって移植後の移植片の生存を増強するため、リンパ球からのIL−2分泌を減少させるため、刺激後のリンパ球上のCD25またはCD154の誘導を阻害するため、および/または総T細胞数を維持しつつ、活性化T細胞のアネルギーまたはアポトーシスを誘導するために、本発明の化合物を投与する工程を包含する。
【0016】
別の局面において、本発明は、構造(I)の化合物の投薬量を動物に投与することによって、動物に対して耐性の免疫系を誘発するための方法を提供する。TNF−αの分泌を減少するため、および式(I)の化合物を投与することによって、S期に入る前に、活性化T細胞の細胞周期を阻害するための方法もまた提供される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する: (項1)以下の構造を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体であって:
【化1】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分であり;
ただし、該化合物は、FR901228ではない、
化合物。
(項2)mは、1であり、そしてnは、0、2または3である、上記項1に記載の化合物。
(項3)mは、2、3または4であり、そしてnは、1である、上記項1に記載の化合物。
(項4)pまたはqの一方が2であるか、またはpとqの両方が2である、上記項1に記載の化合物。
(項5)Xは、Oである、上記項1に記載の化合物。
(項6)Xは、NHまたはNRである、上記項1に記載の化合物。
(項7)RおよびRは、アミノ酸側鎖部分である、上記項1に記載の化合物。
(項8)Rは、アミノ酸側鎖誘導体である、上記項1に記載の化合物。
(項9)上記項1に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項10)動物の免疫応答または免疫媒介性応答を予防または抑制する方法であって、該方法は、有効量の以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体を該動物に投与する工程を包含し:
【化2】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項11)前記動物が、自己免疫疾患に罹患しているか、または自己免疫疾患に罹患する危険性がある、上記項10に記載の方法。
(項12)前記動物が、炎症性疾患に罹患しているか、または炎症性疾患に罹患する危険性がある、上記項10に記載の方法。
(項13)前記動物が、対宿主性移植片病に罹患しているか、または対宿主性移植片病に罹患する危険性がある、上記項10に記載の方法。
(項14)前記動物が、同種異系移植を受けるか、または同種異系移植を受けた、上記項10に記載の方法。
(項15)前記動物が、異種移植を受けるか、または異種移植を受けた、上記項10に記載の方法。
(項16)リンパ球の増殖を阻害するための方法であって、該方法は、有効量の以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体を動物に投与する工程を包含し:
【化3】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項17)移植後の移植片の生存を増大するための方法であって、該方法は、有効量の以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体を、移植手順の前、移植手順と同時、または移植手順の後に動物に投与する工程を包含し:
【化4】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項18)前記移植が、同種異系移植である、上記項17に記載の方法。
(項19)前記移植が、異種移植である、上記項17に記載の方法。
(項20)リンパ球からのインターロイキン−2の分泌を減少するための方法であって、該方法は、有効量の以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体を、動物に投与する工程を包含し:
【化5】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項21)リンパ球刺激の後のリンパ球上のCD25またはCD154の誘発を阻害するための方法であって、該方法は、有効量の以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体を、動物に投与する工程を包含し:
【化6】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項22)全T細胞数を維持しつつ、活性化T細胞のアネルギーまたはアポトーシスを誘発するための方法であって、該方法は、以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体の投薬量を、動物に投与する工程を包含し:
【化7】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項23)抗原に対して耐性である免疫系を誘発するための方法であって、該方法は、以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体の投薬量を、動物に投与する工程を包含し:
【化8】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項24)腫瘍壊死因子αの分泌を減少するための方法であって、該方法は、以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体の投薬量を、動物に投与する工程を包含し:
【化9】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項25)S期に入る前に活性化T細胞の細胞周期を阻害するため方法であって、該方法は、以下の構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体の投薬量を、動物に投与する工程を包含し:
【化10】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立してアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である、
方法。
(項26)mは、1である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項27)mは、2、3または4である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項28)nは、1である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項29)nは、0、2または3である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項30)pとqの両方が、1である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項31)pまたは1の一方が2であるか、またはpとqの両方が2である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項32)Xが、Oである、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項33)Xは、NHまたはNRである、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項34)RおよびRは、同じであるかまたは異なり、そして独立して、アミノ酸側鎖部分である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項35)RとRの両方が、−CH(CHである、上記項34に記載の方法。
(項36)Rは、アミノ酸側鎖誘導体である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項37)Rは、=CHCHである、上記項36に記載の方法。
(項38)任意の二重結合が存在する、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
(項39)前記二重結合が、トランス立体配置である、上記項38に記載の方法。
(項40)前記化合物が、FR901228である、上記項10、16、17、20、21、22、23、24または25のいずれか1項に記載の方法。
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明を参照して明らかとなる。このために、様々な引用文献が本明細書中で示され、これは、より詳細な特定の背景情報において、手順、化合物および/または組成物を記載し、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、FR901228と共にインキュベートし、そしてビーズに結合した抗CD3および抗CD28抗体を有するビーズにより刺激した後の末梢血リンパ球(PBL)増殖の用量依存性阻害を示す、棒グラフである。
【図2】図2は、FR901228と共にインキュベートし、そしてイオノマイシン/PMAで刺激した後の、末梢血リンパ球(PBL)増殖の用量依存性阻害を示す、棒グラフである。
【図3】図3は、FR901228と共にインキュベートし、そしてビーズに結合した抗CD3および抗CD28抗体を有するビーズにより刺激した後のCD4陽性T細胞増殖の用量依存性阻害を示す、棒グラフである。
【図4】図4は、FR901228と共にインキュベートし、インビトロで生成した同種樹状細胞で刺激した後のCD4陽性T細胞増殖の用量依存性阻害を示す、棒グラフである。
【図5】図5A〜5Dは、可変レベルのFR901228の存在下におけるT細胞活性化の後の、(A)CD154発現、(B)CD25発現、(C)CD69発現、および(D)細胞生存度のフローサイトメトリー測定を示す、棒グラフである。
【図6】図6は、可変レベルのFR901228の存在下におけるT細胞の、3×28ビーズ刺激(抗CD3および抗CD28結合ビーズ)の14時間後の、ELISAにより測定される、IL−2発現を示す棒グラフである。
【図7】図7は、様々な時点における、追加のFR901228と組み合わせた、3×28ビーズ刺激または刺激無しの後6日における、CFDA−SEで染色したCD4細胞の平均蛍光強度を示す棒グラフである。
【図8A】図8Aは、FR901228(20ng/ml)の存在または非存在下における、3×28ビーズでの刺激または刺激無しの後の、(A)CD137w、CD154、CD25、CD62LおよびCD49dの発現、および(B)CD11a、CD134、CD26、CD54、CD95、およびCD69の発現のフローサイトメトリー測定を示す、棒グラフである。
【図8B】図8Bは、FR901228(20ng/ml)の存在または非存在下における、3×28ビーズでの刺激または刺激無しの後の、(A)CD137w、CD154、CD25、CD62LおよびCD49dの発現、および(B)CD11a、CD134、CD26、CD54、CD95、およびCD69の発現のフローサイトメトリー測定を示す、棒グラフである。
【図9】図9は、20単位のIL−2の存在下における3×28ビーズでの最初の刺激、続く3〜4日目の3×28ビーズ、20単位のIL−2、3×28ビーズw/20単位のIL−2での刺激、または刺激無しおよび20ng/mlのRF901228(3日目に添加)での刺激後の、CD4細胞におけるCD154発現を示す棒グラフである。
【図10】図10A〜10Bは、FR901228(20ng/ml)およびシクロスポリン(500ng/ml)の存在下における3×28ビーズによる刺激後の、PBL細胞の上清中のIL−2およびTNF−αの存在を示す棒グラフである。
【図11】図11は、0、10、50および100ng/mlのFR901228の存在下における3×28ビーズでの刺激後24時間の、CD154プロモータの制御下における、緑色蛍光タンパク質の核酸配列を含むベクターで安定にトランスフェクトしたJurkatT細胞のフローデータを示す。
【図12】図12は、0、10、50および100ng/mlのFR901228の存在下における3×28ビーズで24時間刺激、または刺激無しの後の、CD4 T細胞の細胞内DNA染色のフローデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
上記のように、本発明は、化合物、特にFR901228およびその同族体に関し、これらは、免疫抑制の状況において有用である。FR901228は、陸生細菌Chromobacterium violaceumから単離されるデプシペプチドである。FR901228は、後に、Ha−rasトランスフェクトマウス線維芽細胞(NIH−3T3)の形質転換を阻害し得ることが示された。変異体rasタンパク質(ここで、バリンはグリシン−12を置換する)は、NIH−3T3細胞の形態学的変化を引き起こし得る。これらの細胞において、形質転換された表現型は、腫瘍活性化を示し、そして増加した腫瘍形成能と相関する。最近、この表現型を逆転し、従って、腫瘍形成細胞株の形質転換を逆転させる多数の薬物候補ならびに天然産物が同定された。FR901228は、この効果において同定された産物であり、後に動物ベースのモデルにおいて高度に活性であることが示された。結果としてFR901228は、抗腫瘍剤としてかなりの注目を浴びた。
【0019】
より詳細には、FR901228は、以下の構造を有する二環式デプシペプチド(すなわち、エステル結合およびアミド結合を含むペプチド)である:
【0020】
【化12】

FR901228の活性の分子の基礎は知られていないが、ジスルフィド結合が酸化還元制御立体配置スイッチとして機能し得、そして細胞の内側の環境を還元することにより、この化合物は単環式ジチオール形態に変換され得ると仮定されている(Khanら、J.Am.Chem.Soc.118:7237−7238,1996)。
【0021】
発酵プロセスによるFR901228の製造は、米国特許第4,977,138号(Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltd.に譲渡)(本明細書中でその全体が参考として援用される)に開示される。この特許において、Chromobacterium Violaceum属のWB968に属する細菌株の発酵は、同化可能な炭素および窒素の供給源を含む栄養性培地中、好気性条件下で増殖される。発酵の完了後、FR901228を回収し、そして従来の技術(例えば、溶媒抽出、クロマトグラフィーまたは再結晶)によって精製する。
【0022】
FR901228の天然産物としての単離に加えて、この化合物の全合成は、Khanら(前出)によって報告される。この手順は、14工程のプロセスを含み、全収率18%でFR901228を提供する。簡単には、この合成は、第1にCarreira触媒非対称アルドール反応を包含し、チオール含有βヒドロキシ酸を生じる。この化合物のペプチド部分は、標準的なペプチド合成法によって構築した。このチオール含有βヒドロキシ酸を、次いで、ペプチド部分に結合し、そしてエステル(デプシペプチド)結合の形成によって単環式環を精製した。FR901228の二環式環系は、次いで、保護したチオールをジスルフィド結合に変換して、形成した。
【0023】
本発明の実施において、FR901228は特に、または構造(I)の化合物は一般的に、免疫抑制特性を有することが発見された。このために、本発明の化合物は、FR901228に加えて、以下の構造(I)を有する化合物(その薬学的に受容可能な塩および立体異性体を含む)を含む:
【0024】
【化13】

ここで、
mは、1、2、3または4であり;
nは、0、1、2または3であり;
pおよびqは、独立して、1または2であり;
Xは、O、NH、またはNRであり;
、R、およびRは、同じであるかまたは異なり、そしてアミノ酸側鎖部分またはアミノ酸側鎖誘導体であり;そして
Rは、低級鎖のアルキル、アリールまたはアリールアルキル部分である。
【0025】
本明細書中で使用する場合、用語「アミノ酸側鎖部分」とは、天然に存在するタンパク質(表1で同定される天然に存在するアミノ酸側鎖部分が挙げられるが、これらに限定されない)に存在する、任意のアミノ酸側鎖部分を意味する。他の天然に存在する本発明のアミノ酸側鎖部分としては、フェニルグリシン、3,5−ジブロモチロシン、3,5−ジヨードチロシン、ヒドロキシリジン、ナフチルアラニン、チエニルアラニン、カルボキシグルタメート、ホスホチロシン、ホスホセリン、およびグリコシル化アミノ酸(例えば、グリコシル化セリン、アスパラギンおよびスレオニン)のアミノ酸側鎖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
【表1】

アミノ酸側鎖部分がプロリンである場合、R、RまたはR基は、隣接した窒素原子に結合して、プロリンのピロリンジニル(pyrrolinedinyl)環を形成することが理解されるべきである。例えば、構造(I)の一実施形態(ここで、m、n、pおよびqは、1である)において、R基は、プロリンであり得る−すなわち、Rは、隣接した窒素原子と一緒になって、以下の構造(II)によって表されるようなピロリンジニル環を形成する:
【0027】
【化14】

天然に存在するアミノ酸側鎖部分に加えて、本発明のアミノ酸側鎖部分はまた、様々なそれらの誘導体を含む。本明細書中で使用する場合、「アミノ酸側鎖部分誘導体」は、天然に存在するアミノ酸側鎖部分の修飾体および/または誘導体を含み、そしてR、Rおよび/またはRが、二重結合または三重結合によって構造(I)の二環式環に結合している実施形態を含む。例えば、アニリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルグリシンおよびフェニルアラニンのアミノ酸側鎖部分は、一般的に、低級鎖アルキル、アリールまたはアラルキル部分として分類され得る。アミノ酸側鎖部分の誘導体は、他の直鎖または分子鎖の環式または非環式の、置換または非置換の、飽和または不飽和の、低級鎖アルキル、アリールまたはアラルキル部分を含む。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「低級鎖アルキル部分」は、1〜12個の炭素原子を含み、「低級鎖アリール部分」は、6〜12個の炭素原子を含み、そして「低級鎖アラルキル部分」は、7〜12個の炭素原子を含む。従って、一実施形態において、アミノ酸側鎖誘導体は、C1−12アルキル、C6−12アリールおよびC7−12アラルキルから選択され、より好ましい実施形態において、C1−7アルキル、C6−12アリールおよびC7−11アラルキルから選択される。
【0029】
構造(I)に記載されるようなR、RおよびRが、二重結合または三重結合のいずれかによって結合される場合、代表的な実施形態は、Rが二重結合によって結合される構造(III)の化合物を含む:
【0030】
【化15】

構造(III)の一実施形態において、Rは、不飽和低級鎖アルキル(例えば、=CHCH、=CHCHCHなど)である。FR901288の場合、構造(III)のRは、=CHCHであり、そしてm、n、p、qは、それぞれ1であり、Xは、酸素であり、任意の二重結合が(トランス配置で)存在する。
【0031】
本発明のアミノ酸側鎖誘導体はさらに、低級鎖アルキル、アリールおよびアラルキル部分の置換誘導体を含み、ここで、この置換基は、以下の化学部分:−OH、−OR、−COOH、−COOR、−CONH、−CH、−CHR、−CRR、−SH、−SR、−SOR、−SOH、−SOR、−POR、−OPOR、およびハロゲン(F、Cl、BrおよびIを含む)の1つ以上(これらに限定されない)から選択され、ここで、各々の場合において、Rは、独立して、低級鎖アルキル、アリール、またはアラルキル部分から選択される。さらに、本発明の環式低級鎖アルキル、アリールおよびアラルキル部分としては、ナフタレン、ならびに複素環式化合物(例えば、チオフェン、ピロール、フラン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、3−ピロリン、ピロリジン、ピロリジン、ピリミジン、プリン、キノリン、イソキノリンおよびカルバゾール)が挙げられる。アミノ酸側鎖誘導体は、さらに、低級鎖アルキルおよびアラルキル部分のアルキル部分のヘテロアルキル誘導体(アルキルおよびアラルキルホスホネートおよびシランを含むがこれらに限定されない)を含む。
【0032】
構造(I)のpおよびqに関して、巻のペプチド部分のサイズは、1つのアミノ酸部分(すなわち、pまたはqのいずれかが2である場合)または2つのアミノ酸部分(すなわち、pとqの両方が2である場合)によって増加され得る。例えば、pが2であり、かつqが1である(そして、Xが酸素である)場合、本発明の化合物は、以下の構造(IV)を有する化合物を含む:
【0033】
【化16】

上記の構造(IV)において、構造(I)のR基に対応するアミノ酸側鎖部分は、これらのアミノ酸側鎖部分が同じかまたは異なり得るかを明確にするために、第1の例において、R’と命名され、第2の例においてR’’と命名される(この実施形態においてpは2であるため)。
【0034】
構造(I)において、記号「−」は、任意の二重結合を表す。存在する場合、この二重結合は、シスまたはトランス配置のいずれかであり得る。一実施形態において、二重結合は、FR901288の場合と同様に、トランス配置である。
【0035】
XおよびY部分の選択に依存して、本発明の化合物は、Xが水素である場合、エステル、XがNHまたはNRである場合、アミドを含む。例えば、pと1の両方が1である場合、本発明の代表的な化合物は、それぞれ構造(VI)および8VII)で表されるエステルおよびアミドを含む:
【0036】
【化17】

本発明の化合物は、以下の反応スキーム1に従って調製され得る:
(反応スキーム1)
工程(1)
【0037】
【化18】

工程(1)7において、Kahnら、J.Am.Chem.Soc.118:7237−7238,1996に記載される3ステップの手順によって、アルデヒド2をジエノエート1(ここで、n=1、2または3である)から調製する。アルデヒド2に、O−ベンジル、O−TMSケテンアセタールをTi−(IV)触媒で付加することによって、ベンジルエステル3を形成する(ここで、R’=HかつR’’=OH、またはR’=OHかつR’’=H)。ベンジルエステル3を、MeOH/HO中でLiOH用いて加水分解して、ヒドロキシ酸4を得る。
【0038】
工程(2)
【0039】
【化19】

工程(2)において、この化合物のペプチド部分を、適切なアミノ酸メチルエステル5を使用して開始する、標準的なペプチド合成技術によって調製する。メチルエステル5を、BOP試薬を使用して、N保護アミノ酸と反応させて、ジペプチド6を得、続いて、mが1である場合、N−Fmoc−システイン−(S−トリフェニルメチル)、またはmが2である場合、そのアナログと反応させて、トリペプチド7を得る。次いで、トリペプチド7をN保護テトラペプチド8に変換し、続いて、FMOC基を脱保護して、テトラペプチド9を得る。上記の反応スキームにおいて、R、RおよびRは、同じかまたは異なり、そして独立して、上記のようなアミノ酸側鎖部分またはその誘導体を表す。pとqの両方が1である場合、上記の技術は、構造(I)の化合物の合成に対応することが理解される。pおよび/またはqの一方または両方が2である実施形態において、上記の技術は、1つまたは2つのさらなるアミノ酸基をこの化合物のペプチド部分に組み込むために使用される。
工程(3)
【0040】
【化20】

工程(3)において、テトラペプチド9およびヒドロキシ酸4とBOPおよびおDIEAとのカップリングは、ヒドロキシメチルエステル19を生じる。メチルエステル10のLiOH媒介性加水分解により、対応するカルボン酸が生じ、これは次いで、DEADおよびPPhを用いて環化することによって、単環式ラクトン中間体11に変換され得る。最後に、希MeOH溶液中のヨウ素で、ビス(S−トリフェニルメチル)ラクトンを酸化することによって、構造(I)を有する本発明の化合物を得る。
【0041】
あるいは、本発明の化合物はまた、以下の技術によって合成され得る:
代替の工程(1):
【0042】
【化21】

この実施形態において、化合物4’は、上記の手順によって作製され、次いで、上記の工程(3)において、工程(2)により作製されたペプチド部分に付加される。得られた中間体は、上記のようにして環化されて、構造(I)の化合物を生じる。
【0043】
XがNHまたはNRである場合において、このような化合物は、化合物4のR’またはR’’が、それぞれNHまたはNHRである場合に作製され得る。さらに、式(I)の任意の二重結合が存在しない場合、対応する飽和中間体を用いること以外は、同じ反応技術が用いられ得る。
【0044】
本発明の化合物はまた、酸付加塩を含み、これは、当該分野で周知の方法によって調製され、そして有機酸および無機酸から形成され得る。適切な有機酸としては、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、桂皮酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸およびベンゼンスルホン酸が挙げられる。適切な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸が挙げられる。本明細書中で使用する場合、構造(I)の「薬学的に受容可能な塩」は、任意または全ての適切な塩の形態を含むことが意図される。
【0045】
立体異性体に関して、構造(I)の化合物はキラル中心を有し得、そしてラセミ体、ラセミ混合物として、および個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在し得る。それらの混合物を含む全てのこのようなイソマーの形態が、本発明に含まれる。さらに、構造(I)の化合物の結晶の形態のいくつかは、多形体として存在し得、これは、本発明に含まれる。さらに、構造(I)の化合物のいくつかはまた、水またはたの有機溶媒とともに溶媒化合物を形成し得る。このような溶媒化合物が、同様に、本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
本発明は、以下のための、動物の被験体(好ましくは、哺乳動物、そしてより好ましくは、ヒト)での構造(I)の化合物の使用に関する:異種移植片を含む、以下のような組織の機能の全てまたは一部を置きかえるための、全身的なまたは器官の移植材料、細胞、器官、または組織の移植の後の拒絶の予防または処置のような、免疫応答または免疫によって媒介される応答および疾患の処置および/または予防のため:例えば、心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、血管、肺、膵臓、小腸、四肢、筋肉、神経組織、十二指腸、小腸、膵臓の島細胞;以下のような移植片対宿主疾患、自己免疫疾患を処置または予防するため:例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎、橋本病、多発性硬化症、重症性筋無力症、I型糖尿病ブドウ膜炎、若年性発症性または細菌発症下真性糖尿病、ブドウ膜炎、グレーブス病、乾癬、アトピー性皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、脈管炎、自己抗体によって媒介される疾患、再生不良性貧血、エバンス症候群、自己免疫性溶血性貧血など;ならびにさらに、例えば以下を含む、外傷性のまたは病原体によって誘導される免疫の脱調節のような、異常な免疫応答および/または活性化を引き起こす感染性の疾患を処置するため:B型肝炎およびC型肝炎の感染、staphylococcus aureus感染、ウイルス性の脳炎、敗血症、寄生虫による疾患によって引き起こされるもの(ここでは、損傷は、炎症性の応答によって誘導される(例えば、ハンセン病));ならびに、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、結節性多発動脈炎、および心筋炎のような循環系の疾患を予防または処置するため。さらに、本発明は、遺伝子治療による処置(例えば、外来遺伝子の自己細胞中への導入、およびコードされる産物の発現)に関係している免疫応答を予防/抑制するために、使用され得る。
【0047】
本明細書中で使用される場合には、「免疫応答」は、外来または自己抗原に対する体の反応をいい、その結果これらは、中和および/または排除される。細胞によって媒介される免疫応答は、抗原への暴露に応答して胸腺(T細胞)によるリンパ球の産生を含む。この反応は、遅延させられた過敏症、組織移植片の拒絶、およびいくつかの感染において重要である。体液性の免疫応答においては、血漿のリンパ球(B細胞)が、続く抗体の形成を伴って、抗原への暴露に応答して産生される。この応答は、免疫および過敏症を生じ得る。非特異的な免疫応答、または炎症は、任意の供給源(例えば、外傷、生物体、化学物質、虚血など)による損傷に対する体の組織および細胞の応答である。任意の兆しに対する免疫システムの最初の応答は、血管、化学薬品、および血液の細胞活性を含む。特異的な免疫応答が、炎症が、生物体または試薬による損傷または侵襲に抵抗するためには不適切である場合には、必要とされる。これは、T細胞およびB細胞によって指向されそして制御される。細胞性の免疫は、T細胞応答をいう;体液性の免疫は、B細胞応答をいうように以前から使用される用語である。さらに、CD4またはCD8細胞などについての本明細書中での言及は、細胞がCD4またはCD8細胞の表面マーカーについてポジティブであると推測されることを意味する。
【0048】
さらに、用途は、以下の処置および/または予防を含み得る:炎症性および過増殖性の皮膚疾患、ならびに免疫学的に媒介される疾病(例えば、脂漏性皮膚炎、血管性浮腫、紅斑、座瘡、および円形脱毛症)のガン性の発現;種々の眼の疾患(自己免疫および他のもの);アレルギー反応(例えば、花粉アレルギー、可逆的な閉塞性気道疾患(これは、喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、および塵による喘息)、特に、慢性または根深い喘息(例えば、後発の喘息および気道の過敏応答)、気管支炎、アレルギー性鼻炎などのような状態を含む);粘膜および血管の炎症;特定のウイルス感染(例えば、サイトメガロウイルス感染およびエプスタインバーウイルス感染)の活性。
【0049】
1つの実施形態においては、構造(I)の化合物の有効量を投与する工程を包含する、その処置がリンパ球の増殖および/または活性化の減少(例えば、CD25および/またはCD154のダウンレギュレーション)によって影響を受けるかまたはそれによって促進される、動物の症状の処置方法が、提供される。その処置が、リンパ球の増殖の阻害および/または活性マーカー(例えば、CD25およびCD154)の阻害、および免疫機能の阻害によって促進される(ここでは、症状は、自己免疫、炎症、移植片/組織拒絶であり得るか、または免疫学的に誘導されるかまたは悪化させられる、本明細書中に記載されているもののような任意の数の指標を含む)、動物の症状を処置する方法が、提供される。
【0050】
従って、本発明の実施形態は、自己免疫疾患の処置のための方法である。一方、本発明の別の実施形態は、本発明の化合物の治療有効量を、そのような治療を必要としている患者に対して投与する工程を包含する、外来の器官移植片の拒絶の予防または処置のための方法である。
【0051】
上記に記載されているように、シクロスポリンは、現在は、移植された器官の拒絶を防ぐために使用される主な薬物である。この薬物は、リンパ球中のカルシニューリンの機能を阻害することによって作用し、それによって、移植片の外来タンパク質を拒絶するように天然の防御因子のその膨大な蓄積を動員することから体の免疫システムを妨害する。シクロスポリンは、移植拒絶に抵抗する際に有効であるが、これは腎毒性であり、そして、腎不全、異常な肝機能、胃腸の不快感、およびガンの誘導を含む、いくつかの所望されない副作用を引き起こすことが公知である(Hojoら、Nature 397:530−534、1999)。
【0052】
より少ない副作用を示す、より新しくより安全な薬物が、この分野で絶えず求められている。本発明は、特定の作用機構に束縛されることは望まないが、長期間持続する免疫寛容を誘導するようであるような免疫抑制剤を提供する。FR901228は、CD4 T細胞の部分的な活性化を可能にする(例えば、CD69の誘導、しかし、CD25、CD137w、CD11a、CD134、CD54、CD95、およびCD154の表面発現の減少、ならびにIL−2および/またはTNF−αの産生の減少)。
【0053】
FR901228の存在下で活性化されたCD4 T細胞は、活性化によって誘導される細胞死(AICD)を受けないが、これらは続いて、IL−2の分泌および/またはIL−2−レセプターの刺激が存在しないことに起因して、ほぼおそらく、インビトロでアポトーシスを受ける。さらに、以前に活性化されたCD4およびCD8 T細胞の、FR901228のクラスの化合物(例えば、構造(I)に示されるもの)での処置によって、短い時間内でそれらの増殖を阻害し、そしてアポトーシスを誘導するが、休止しているT細胞は見かけ上は影響を受けないままにする。応答性のT細胞におけるアポトーシスの誘導は、活性化されたT細胞を排除するだけではなく、長期間の免疫寛容の状態をもまた誘導する(FergusonおよびGreen、Nature Med.5(11):1231−1232、1999)。この特異的な寛容性についての理由は、十分には理解されていない。それにもかかわらず、移植の前のFR901228の存在下での分裂していないドナー細胞(例えば、樹状細胞または照射された末梢血リンパ球)での免疫化は、さらなるFR901228の存在を伴うことなく、将来の宿主対移植片応答に対する特異的な寛容性を非常に十分に付与し得る。
【0054】
用語「寛容性」は、本明細書中で使用される場合には、免疫システムが反応する能力を有する抗原に対する、免疫システムの非応答性の状態をいう。特定の機構に束縛されることは望まないが、寛容性は、活性化されたT細胞中でのアポトーシスの誘導によって本発明の化合物によって誘導されると考えられる。例えば、T細胞が抗原によって活性化され、そして続いてアポトーシスを受ける場合には、続くこの抗原に対する免疫応答は生じない。特定の化合物による寛容性の誘導は、当業者に公知の任意の方法およびモデルによって試験され得る。1つの例においては、抗原による一次および二次的な刺激が、本発明の化合物の存在下で試験され得る。簡潔には、動物は、抗原で接種され、続いて化合物で接種され、そして約2週間後に、動物は化合物の非存在下で同じ抗原で接種され、そして二次的な免疫応答が測定される。従って、一次および任意の二次的な応答の両方が、単純な血液の分析によって測定され得る。二次的な免疫応答を示さないサンプルは、免疫抑制性の化合物によって誘導された寛容性を示す。さらに、CTLアッセイまたはIL−2の分泌についての試験のような、標準的なインビトロでのアッセイが、T細胞の活性化を決定するために利用され得る。
【0055】
アポトーシスの誘導に加えて、共存するCD3およびCD28のエンゲージメント、イオノマイシン/ホルボールミリスチン酸(PMA)での刺激、ならびに同種異系の樹状細胞での刺激を含む多数の刺激で誘導されたCD4およびCD8 T細胞は、刺激と同時にまたは刺激に続いてのいずれかでFR901228で処理された場合には、増殖の阻害を実証する。従って、このような組成物は、CD4 T細胞を活性化のカスケードの非常に初期に阻害するシクロスポリンのような薬物に対して、大いに改善する。これによって、事実上天然のものであるかまたは活性化されていない細胞である、シクロスポリンの存在下で活性化されたCD4 T細胞を生じる。これは、アポトーシスを受けない。従って、シクロスポリンでの処理が終了すると、阻害された免疫応答が再開する。言い換えると、CD4細胞が本発明の化合物の存在下で活性な状態にある場合には、これらの細胞はアポトーシスを受け、そして従って、抗原に対して長期間寛容性であるが、一方、これらの同じ細胞がシクロスポリンで処理される場合には、シクロスポリンは存在したまま、免疫応答のみが阻害される。
【0056】
さらに、FR901228免疫抑制によって、活性化されたT細胞中でのみ、抗原反応不顕性および/またはアポトーシスの誘導を導く;従って、T細胞および他の造血細胞の一般的なレベルは維持される。対照的に、シクロスポリンおよびFK506の両方ともが、T細胞の活性化の最初の事象をブロックし、そして従って、T細胞がこれらがアポトーシスの誘導に対して敏感になる状態に入ることを妨げる。
【0057】
FR901228は、強力な免疫抑制剤として作用するその能力を補助する多数の特徴を有する。従って、FR901228を含有している構造(I)に記載されているクラスの化合物は、1つ以上の以下の特徴を有し得る:CD3およびCD28のエンゲージメント、イオノマイシン/PMA、または同種異系樹状細胞によって誘導されるCD4およびCD8 T細胞の増殖の阻害;最初の活性化の後に添加される場合に、CD4およびCD8 T細胞の進行中の増殖の阻害;CD3/CD28エンゲージメントおよびIL−2刺激の両方についてのシグナル伝達経路の阻害;CD4 T細胞上でのCD25、CD134、CD137w、CD154、CD11a、CD54、およびCD95の誘導の阻害;CD69の誘導または活性化によって誘導されるCD62Lのダウンレギュレーションに対して有意な影響を有さないこと;末梢血リンパ球からのIL−2の分泌の減少;末梢血リンパ球からのTNF−αの分泌の減少;活性化されたT細胞についてのS期への進行の前での細胞周期の阻害;活性化されたT細胞中でのp21 cip/wafおよびC/EPB−αの誘導の阻害;活性化されたT細胞中でのc−mycの発現の阻害;活性化されたT細胞のIL−2によって誘導される増殖の阻害;ならびに転写レベルでのCD154の阻害。さらに、FR901228は、ホスホチロシンウェスタンブロットによって測定された場合には、バルクでのリン酸化には影響を与えない。従って、これらの観察は、構造(I)の化合物が、複数の時点でT細胞の活性化経路に影響を与え、従って、活性化が初期の段階(例えば、リン酸化)に進行することを可能にするが、続く活性化および増殖の事象を妨げることを示す。
【0058】
特定の化合物が有効な免疫抑制剤であるかどうかを決定するために、当該分野で公知の種々の方法論が行われ得る。これに関して、リンパ球の増殖および/または活性化が、刺激の前の、刺激と同時の、または刺激の後での、目的の化合物との接触後に測定され得る。例えば、T細胞の活性化および続く増殖の誘導(そして、炎症の開始因子である)の鍵となる特徴は、IL−2、IFN−γ、CD25、CD69、またはCD154の産生である。これらは、ELISAおよびフローサイトメトリーを含む種々の方法によって測定され得る。細胞の増殖およびサイトカインの分泌を測定するために一般的に使用される他の実験方法もまた、利用され得る。これらには、以下が含まれる:ヨウ化プロピジウム染色を使用する比色アッセイ、MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]、2−5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)、生体染色法、CFDA−SE(5−(および6)−カルボキシフルオレセインジアセテート−スクシンイミジルエステル)、細胞の計数、ブロモデオキシウリジンの取り込み、またはチミジンの取り込みのアッセイ(例えば、Avian Dis.43(2):172−181、1999;Anticancer Res.17(1B):725−728、1997;Geller.Scand.J.Immunol.35:327−334、1992;Levineら、Int.J.Immun.7(6):891−904、1995;Haraら、J.Exp.Med.161:1513−1524、1985:Hardingら、Nature 356:607−609、1992;Linsleyら、Science 257:792−795、1992;PCT国際公開番号第WO95/33823号を参照のこと)。
【0059】
リンパ球を活性化しそして従ってリンパ球の増殖を刺激する方法は、当該分野で周知であり、そしてIL−2の存在下または非存在下での、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(ConA)、抗CD3抗体(抗CD28抗体の存在下または非存在下で)、同種異系細胞、スーパー抗原、またはイオノマイシン/PMAでの刺激を含む。(Paul、Fundamental Immunology、第4版、Lippincott−Raven、1998)。
【0060】
本発明の免疫抑制性の化合物を試験しそして確証するため、そして特定の免疫システムに関連する疾患または適応症に対するそれらの適用可能性を試験しそして確証するための、種々のインビトロおよび動物モデルが、存在する。従って、当業者は、当該分野において現在存在しているものから適切なモデルを容易に選択し得る。このようなモデルは、NODマウス(ここでは、IDDMが、年齢に伴って大きくなるインシュリンを産生する膵臓のβ細胞の、自発的なT細胞依存性の自己免疫崩壊によって生じる)の使用を含む(Bottazzoら、J.Engl.J.Med.113:353、1985;Miyazakiら、Clin.Exp.Immunol.60:622、1985)。ヒトのIDDMのモデルであるNODマウスにおいては、T細胞を標的化する治療ストラテジーが、IDDMを防ぐことにおいて良好である(Makinoら、Exp.Anim.29:1、1980)。これらは、新生児の胸腺摘出術、シクロスポリンの投与、および抗pan T細胞、抗CD4、または抗CD25(IL−2R)モノクローナル抗体(mAb)の注入を含む(Taruiら、Insulitis and Type I Diabetes、Lessons from the NOD Mouse、Academic Press、Tokyo、143頁、1986)。他のモデルとして、例えば、自己免疫および炎症性の疾患(例えば,多発性硬化症)のために代表的に利用されているもの(EAEモデル)、慢性関節リウマチ、移植片対宿主疾患(皮膚の移植片、心臓移植、ランゲルハンス島の移植、大腸および小腸の移植などを使用して移植片の拒絶を研究するための移植モデル)、喘息モデル、全身性エリテマトーデス(全身性の自己免疫−−−NZBxNZWFモデル)などが挙げられる。(例えば、Takakuraら、Exp.Hematol.27(12):1815−821、1999;Huら、Immunology 98(3):379−385、1999;Blythら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.14(5):425−438、1996;TheofilopoulosおよびDixon,Adv.Immunol.37:269−389、1985;Eisenbergら、J.Immunol.125:1032−1036、1980;Bonnevilleら、Nature 344:163−165、1990;Dentら、Nature 343:714−719、1990;Toddら、Nature 351:542−547、1991;Watanabeら、Biochem Genet.29:325−335、1991;Morrisら、Clin.Immunol.Immunopathol.57:263−273、1990;Takahashiら、Cell 76:969−976、1994;Current Protocols in Immuology、Richard Coico(編)、John Wiley & Spns,Inc.,第15章、1998を参照のこと)。
【0061】
免疫システムを抑制する処置を必要としている被験体として、自己免疫疾患を有している被験体;移植を受けた被験体;および心臓血管の疾患を有している被験体;アレルギー反応を有している被験体;ならびに外傷性または病原体によって誘導される免疫の脱調節を有している被験体が挙げられる。自己免疫疾患の例として、インシュリン依存性真性糖尿病、喘息、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ならびに上記に議論される他の疾患が挙げられる。器官または細胞/組織移植を有する被験体もまた、器官の移植の拒絶を抑制するかまたは防ぐために、免疫システムを抑制するための処置を必要としている。「器官の移植」は、ドナーからレシピエントへの内部器官(例えば、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胃、大腸および小腸、ならびに骨髄)、または外部器官(例えば、皮膚)の移入または「移植」をいう。ここでは、ドナーは、移植片を受容する個体または動物とは遺伝的に異なる。「器官の移植」はまた、種にまたがる移植(すなわち、異種移植)を含む。
【0062】
「有効量」は、所望される治療および/または予防効果を達成するために必要とされる化合物の投与量である;例えば、これは、個体または動物において天然のまたはメモリー免疫応答の抑制を生じる化合物の投与量であるか、または被験体において器官の移植の拒絶の抑制を生じる化合物の投与量である。「所望される治療効果および/または予防効果」として、例えば、自己免疫疾患(例えば、喘息、乾癬、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなど)を有しているかまたはそれらを有する可能性がある個体または動物の寿命を延長させるか、またはそれらの症状を緩和することが挙げられる。緩和され得る症状の例として、以下が挙げられる:糖尿病における高血糖;関節の痛み;慢性関節リウマチにおける硬直および非可動性;多発性硬化症における麻痺;ならびに全身性エリテマトーデスにおける紅斑および皮膚の病変。インシュリン依存性真性糖尿病に関しては、「所望される治療または予防効果」は、血管の障害のような、この疾患によって生じる二次的な合併症を緩和することまたは予防することを含む。適切な投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、疾患の程度、共存する処置の種類(存在する場合)、処置の頻度および所望される効果の性質に依存する。例えば、投与量は、1日あたり約0.001〜100ミリグラムであり得る。通常は、1回以上の適用において1日あたり0.1から50ミリグラムが、所望される結果を得るために有効である。特定の実施形態においては、投与量は、活性化されていないT細胞が維持され、そして実質的に活性化されたT細胞のみがアポトーシス、抗原反応不顕性、および/または一時的な機能的な非応答性に対して指向されるように、調節され得る(すなわち、T細胞および/または他の分裂している細胞の一般的なレベルが維持される)。他の実施形態においては、デプシペプチドでの処置によって免疫抑制効果を達成するが、一方他の実施形態においては、利用される投与量は、造血細胞の分裂には影響を与えず、そしてなお他の実施形態においては、投与量は一般的には細胞分裂に実質的に影響を与えない。しかし、有効投与量の範囲は、臨床試験の間に、そして当該分野で利用可能である標準的な試験方法論によって容易に決定され得る。これらの投与量は、自己免疫疾患の予防または処置のため、外来の移植片の拒絶、ならびに/または関連する苦悩、疾患、および疾病の予防または処置のための有効量である。
【0063】
「被験体」は、好ましくは、哺乳動物(例えば、ヒト)であるが、獣医学的な処置を必要としている動物でもあり得る(例えば、家畜動物(例えば、イヌ、ネコなど)、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ニワトリなど)、および研究室動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど))。
【0064】
化合物は、単独で、あるいは他の薬理学的に活性な因子とともに(例えば、他の免疫抑制剤とともに、または抗生物質および/もしくは抗ウイルス剤とともに)投与され得る。同時に投与され得る化合物として、ステロイド(例えば、メチルプレドニソロンアセテート)、NSAID、および他の公知の免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、15−デオキシスパガリン、シクロスポリン、ミゾリビン、マイコフェノレートモフェチル(mycophenolate mofetil)、ブレキナーナトリウム(brequinar sodium)、レフルノミド、FK−506、ラパマイシンおよび関連する化合物が挙げられる。これらの薬物の投与量もまた、処置される状態および個体に依存して変化する。
【0065】
化合物の有効量は、単回の用量で、または複数回の用量で、適切な経路によって投与され得る。
【0066】
薬学的に受容可能な塩として、金属の(無機)塩および有機塩の両方が挙げられる。これらのリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1418頁(1985)に与えられる。適切な塩の形態が、物理的および化学的な安定性、流動性、吸湿性、および溶解度に基づいて選択されることが、当業者に周知である。当業者によって理解されるように、薬学的に受容可能な塩として、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、および硝酸塩のような無機酸の塩、またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、またはパルモエート(palmoate)、サリチル酸塩、およびステアリン酸塩のような有機酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、薬学的に受容可能な陽イオンとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(特に、第2級アミンを有するアンモニウム塩)が挙げられるがこれらに限定されない。上記の理由のために本発明の好ましい塩として、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびアンモニウム塩が挙げられる。本発明の化合物の立体異性体、結晶形態、水和物、および溶媒和物もまた、本発明の範囲内である。
【0067】
免疫抑制剤として、これらの化合物は、自己免疫疾患の処置、外来の器官の移植の拒絶ならびに/または関連する苦悩、疾患、および疾病の予防において有用である。
【0068】
本発明の化合物は、自己免疫疾患の処置、外来の器官の移植の拒絶、ならびに/または関連する苦悩、疾患、および疾病の予防のために、温血動物の体の作用部位との有効成分の化合物の接触を達成する任意の手段によって、本発明に従って投与され得る。例えば、投与は、経口、局所(経皮、眼球、頬、鼻腔内、吸入、膣内、直腸内、槽内、および非経口的を含む)であり得る。用語「非経口的」は、本明細書中で使用される場合には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内注射または注入、胸骨内または腹腔内を含む投与の態様をいう。
【0069】
化合物は、個々の治療薬としてまたは治療薬の組合せのいずれかにおいて、医薬品と組合せての使用に利用可能である任意の便利な手段によって投与され得る。これらは、単独で投与され得るが、一般的には、選択される投与経路および標準的な医学的な実施の基準に基づいて選択される薬学的キャリアとともに投与される。
【0070】
有効成分は、固体の投与量形態(例えば、カプセル剤、錠剤、トローチ剤、糖衣錠、顆粒剤、および散剤)で、または液体の投与量(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、乳濁剤、分散剤、および懸濁剤)の形態で、経口投与され得る。(例えば、Chanら、Invest.New Drugs 15:195−206、1997を参照のこと、これは、FR901228の経口投与量のバイオアベイラビリティを実証する)。有効成分はまた、分散剤、懸濁剤、または溶液のような滅菌の液体の投与量形態で、非経口的に投与され得る。有効成分を投与するためにまた使用され得る他の投与形態として、以下が挙げられる:軟膏、クリーム剤、ドロップ、局所的な投与のための経皮パッチまたは散剤として、眼科用の溶液または懸濁物の処方物(すなわち、眼科用の投与のための、点眼液)として、吸入または鼻腔内投与のためのエアゾールスプレーまたは散剤組成物として、あるいは直腸または膣投与のためのクリーム剤、軟膏、スプレー、または坐剤として。
【0071】
ゼラチンカプセルは、有効成分および粉末にされたキャリア(例えば、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)を含む。同様の希釈剤が、圧縮された錠剤を作成するために使用され得る。錠剤およびカプセル剤の両方が、数時間にわたる医薬品の持続的な放出を提供するように、徐放製品として製造され得る。圧縮された錠剤は、任意の不快な味をマスクし、そして大気から錠剤を保護するために糖でコーティングされ得るかまたはフィルムでコーティングされるか、あるいは、胃腸管での選択的な分解のために腸溶コーティングされ得る。
【0072】
経口投与のための液体の投与量形態は、患者の受け付けやすさを増大させるために、着色料および矯味矯臭剤を含有し得る。
【0073】
一般的には、水、適切な油、生理食塩水、水性のブドウ糖(グルコース)、ならびに関連する糖溶液およびグリコール(例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)が、非経口溶液のための適切なキャリアである。非経口投与のための溶液は、好ましくは、有効成分の水溶性の塩、適切な安定剤、および必要である場合には、緩衝物質を含む。抗酸化剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸)が、単独でまたは組合せてのいずれかで、適切な安定剤である。クエン酸およびその塩、ならびにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)ナトリウムもまた、使用される。さらに、非経口用の溶液は、保存料(例えば、塩化ベンズアルコニウム、メチル−またはプロピル−パラベン、およびクロロブタノール)を含み得る。特定の実施形態においては、組成物は、10mgの凍結乾燥されたデプシペプチドおよび20mgのポビドン、USPを、2mlの溶液(20%のエタノール(USP)をプロピレングリコール(USP)中に含有している)で稀釈することによって調製される。次いで、溶液は、注射用0.9%塩化ナトリウム(USP)によってさらに稀釈されて、0.02から5.0mg/mlの範囲の最終的な薬物濃度にされる。
【0074】
吸入による投与のために、本発明の化合物は、加圧されたパックまたはネブライザーからのエアゾールスプレーの提示の形態で、便利に送達され得る。化合物はまた、処方され得る散剤としても送達され得、そして散剤組成物は、ガス注入散剤吸入デバイスの補助によって吸入され得る。適切な噴射剤(例えば、フルオロカーボンまたは炭化水素)中に本発明の化合物の懸濁物または溶液として処方され得る、吸入のための好ましい送達システムは、メーターで測定される用量吸入(MDI)エアゾールである。
【0075】
眼科用の投与のためには、眼科用の調製物は、適切な眼科用ビヒクル中に、本発明の化合物の適切な重量パーセントの溶液または懸濁物で処方され得る。その結果、化合物は、この化合物が粘膜の表面を処置するか、または角膜および眼の内部領域を処置することを可能にするための十分な時間の間、眼の表面と接触させられて維持される。
【0076】
同じ投与量形態が、一般的には、本発明の化合物が段階的に投与されるか、または別の治療薬と組合せて投与される場合に、使用され得る。
【0077】
薬物が物理的な組合せにおいて投与される場合には、投与量形態および投与経路は、混合される薬物の適合性に依存して選択されるはずである。従って、用語同時投与は、2つの有効成分の付随したまたは連続した、あるいは、固定された用量での組合せとして、2つの試薬の投与を含むように理解される。
【0078】
上記から、本発明の特定の実施形態が説明の目的のために本明細書中に記載されるが、種々の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが明らかである。従って、本発明は、添付される特許請求の範囲による場合を除いて、制限されない。さらに、全ての特許、特許出願、学術文献、および本明細書中で引用される参考文献は、それらの全体において参考として援用されている。
【実施例】
【0079】
実施例
実施例1
細胞の増殖および調製
ヒトの血液から単離した細胞を、X−vivo培地(Biowhittaker Inc.,Walkersville,MD)中で増殖させ、そしてこれは、20U/mlのIL−2(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)で補充して、またはそれを補充せずに、そして5%のヒトの血清(Biowhittaker)、2mMのグルタミン(Life Technologies、Rockville、MD)、および20mMのHEPES(Life Technology)で補充したものの使用に依存する。Jurkat E6−1細胞(ATCC、Manassas、VA)を、10%のウシの胎児の血清(FBS)(Biowhittaker)、2mMのグルタミン(Life Technologies)、2mMのペニシリン(Life Technologies)、および2mMのストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したRPMI 1640(Life Technologies)中で増殖させる。
【0080】
健康なヒトのボランティアのドナーに由来するバフィーコートを得る(American Res Cross、Portland、OR)。末梢血単核細胞(PBMC)を、Lymphocyte Separation Media(ICN Pharmaceuticals,Costa Mesa,CA)を使用して、製造業者の説明書に従って得る。
【0081】
末梢血リンパ球(PBL)を、培養フラスコ(Costar、Pittsburgh、PA)中でのインキュベーションによって、またはコーティングしていないDynabeads(Dynal、Oslo、Norway)を用いて、PBMC画分から得る(1×10個の細胞/ml、2個のビーズ/細胞、37℃で2時間)。単球およびマクロファージを、培養フラスコへの接着によって除去するか、または製造業者の説明書(Dynal)に従って、磁気細胞分離によって枯渇させられた常磁性ビーズを食作用する。CD4細胞を、CD8に対する10μg/mlのモノクローナル抗体(クローンG10−1)、CD20に対する10μg/mlのモノクローナル抗体(クローンIF5)、CD14に対する10μg/mlのモノクローナル抗体(クローンF13)、およびCD16に対する10μg/mlのモノクローナル抗体(Coulter)とのインキュベーション(10個の細胞/ml、4℃で20分間)によって、PBL画分から精製する。洗浄後、細胞を、ヒツジの抗マウスIg結合ダイナビーズを用いて2回枯渇させ(10個の細胞/ml、6個のビーズ/細胞、4℃で20分間)、そして磁気による細胞分離を行う。CD4細胞の純度は、フローサイトメトリーによって測定する場合には、日常的には91〜95%である。
【0082】
樹状細胞を、培養フラスコ(Costar)に対してPBMCを接着させることによって作成する(10個の細胞/ml、37℃で2時間)(Dynabeadsを用いない)。十分な洗浄の後、接着細胞を、500U/mlのGM−CSF(Boehringer−Mannheim)および12.5U/mlのIL−4(Boehringer−Mannheim)を含有している培地中で7日間培養する。得られた細胞の集団は、弱く接着性であり、そして樹状細胞の特徴的な表面マーカーを発現する(HLA−DR、CD86、CD83、CD11cについてのポジティブであり、そしてCD4についてはネガティブである)。(注:全ての抗体を、Becton Dickinson,CAから入手した)。
【0083】
抗CD3 mAb(OKT3)は、Ortho Biotec.(Raritan,NJ)から入手することが可能であり、そして抗CD28 mAb(9.3)は、Bristol−Myers Squibb(Stamford,Conn.)から入手することが可能である。
【0084】
実施例II
T細胞の刺激およびその測定
細胞を、3個の異なる方法論によって刺激する:1)製造業者の説明書(Dynal)に従って、抗CD3(OKT−3)および抗CD28(9.3)抗体(3×28個のビーズ)に対して共有的にカップリングさせたDynabeads(M−450)(3個のビーズ/細胞)、2)イオノマイシン(Calbiochem,La Jolla、CA)(100ng/ml)およびホルボール12−ミリステート−13−アセテート(PMA)(Calbiochem)(10ng/ml)、3)同種異系樹状細胞(25,000個の樹状細胞/200,000個のCD4細胞)。全ての細胞を、1×10個の細胞/mlの濃度で刺激する。細胞を、上記に概説するように、刺激の前に1から2時間の間、構造(I)の化合物(例えば、FR901228)(NCI、Bethesda、MD)とともにインキュベートする。増殖アッセイを、96ウェル平底プレート中で4連で行う。細胞を、1×10個の細胞/mlで、200lの最終容量で刺激する。増殖を、MTTアッセイによって(MTTアッセイキット、Chemicon International Inc.,Temecula,CA)、3日目(刺激方法1および2)または6日目(刺激方法3)に測定し、そして結果を、4連の平均値として示す。PBL培養物または精製したCD4細胞培養物を、3×28個のビーズ、イオノマイシン/PMA、または同種異系樹状細胞で刺激する。図1〜4に示すように、10ng/mlのFR901228程度の低い濃度で、3×28個のビーズまたはイオノマイシン/PMAで刺激したCD4細胞の増殖を完全に阻害するが、それにもかかわらず、1ng/mlのFR901228またはそれ未満の濃度は、有意な効果は有さない(これらの実験を、刺激の前のFR901228との2時間のインキュベーションを使用して行う)。興味深いことに、同種異系樹状細胞によって誘導される増殖は、1ng/ml程度の低い濃度で、FR901228によって有意に阻害される。さらに、より大きな細胞の生存性は、sub−G1 DNA測定および細胞膜の完全性によって評価する場合には、FR901228によっては影響を受けない(図5D)。FR901228の細胞毒性の欠損は、Byrdら、Blood 94(4):1401−1408、1999;Batesら、Clinical Pharmacology、Programs and Proceedings of Americal Society of Clinical Oncology、要約693、1999;およびChassaingら、J.Chrmatogr.B719:169−176、1998によって記載されている結果と一致する。
【0085】
増殖および活性化のプロトコールは、上記に記載するプロトコールと同じである。
【0086】
実施例III
活性化のマーカーのアッセイ
CD4細胞上での種々の活性化のマーカーの誘導に対するFR901228の影響を、実験する。これに関して、細胞を、1つ以上の以下の抗体で標識する:抗−ヒトCD4 Ab(Immunotech.Fullerton,CA)、FITCでカップリングした抗ヒトCD11a Ab(Pharmingen)、FITCでカップリングした抗ヒトCD26 Ab(Pharmingen)、FITCでカップリングした抗ヒトCD49d Ab(Coulter)、FITCでカップリングした抗ヒトCD54 Ab(PharmingenおよびBecton Dickinson)、FITCでカップリングした抗ヒトCD95 Ab(Pharmingen)、FITCでカップリングした抗ヒトCD134 Ab(Pharmingen)、FITCでカップリングした抗ヒトCD25 Ab(Becton Dickinson,Fullerton,CA)、FITCでカップリングした抗ヒトCD69 Ab(Becton Dickinson)、FITC−またはPE−でカップリングした抗ヒトCD154 Ab(Becton Dickinson)、あるいはFITC−またはPE−でカップリングしたIgG1イソ型コントロールAb。細胞(2×10個)を、30μlの最終容量中で2μlのそれぞれの抗体を用いて、4℃で20分間標識し、洗浄し、そして1%のパラホルムアルデヒド(Sigma、St.Louis,MO)中に再懸濁する。興味深いことに、CD25およびCD154の発現は、10ng/mlのFR90122程度の低い濃度で、3×28個のビーズでの刺激の後で強力に抑制される(図5Aおよび5B)。対照的に、CD69の誘導は、100ng/mlのFR901228によっては影響を受けない(図5C)。さらに、図8A〜8Bは、CD69の誘導または活性化によって誘導されるCD62Lのダウンレギュレーションに対して有意な影響を有さずに、CD4 T細胞上でのCD25、CD134、CD137w、CD154、CD11a、CD54、およびCD95の誘導の阻害を実証する(図8A〜8B)。このことは、FR901228は、近位のCD4細胞の活性化の、特異的であるが完全ではない阻害を課することを示唆する。さらに、より大きな細胞の生存性は、標準的なフローサイトメトリー手順を使用するヨウ化プロピジウム(PI)排除によって測定する場合には、100ng/mlまでのFR901228の濃度によっては有意な影響を受けない(Denglerら、Anticancer Drugs.6(4):522−532、1995を参照のこと)。
【0087】
FR901228の阻害は、イオノマイシン/PMAの活性化によってはバイパスされ得ず、このことは、FR901228の阻害が、CD4細胞のCD3での刺激のすぐ後に観察される細胞内カルシウムの上昇の下流にあることを暗に意味する。
【0088】
実施例IV
IL−2およびTNF−αアッセイ
細胞を、上記のように調製する。24時間刺激した細胞に由来する上清を、製造業者の説明書に従って、IL−2またはTNF−α酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に供する(Biosource International,Sunnyvale,CA)。
【0089】
別のアッセイにおいては、IL−2を、フローサイトメトリーを使用してCD4 T細胞の細胞内染色によって測定する。IL−2またはIFN−の細胞内標識のために、細胞を最初に、アッセイの前に4時間の間、1g/mlのMonensin(Calbiochem)とともにインキュベートする。細胞を、続いて、上記に記載するように表面タンパク質について染色し、固定し、そしてBecton Dickinson細胞内染色キットを使用して浸透性にし、PEとカップリングさせられた抗ヒトIL−2 AbおよびFITCとカップリングさせられた抗ヒトIFN Ab、または対応するコントロールのAbを用いて、製造業者によって記載されているように標識する。データの獲得およびフローサイトメトリー分析を、製造業者のプロトコール(Becton Dickinson)に従ってCellquestソフトウェアを使用して、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメトリー上で行う。
【0090】
CD4細胞の増殖のFR901228による阻害の背景にある機構を研究するために、活性化されたCD4細胞によるIL−2およびTNF−αの産生を分析した。10ng/ml程度の低い濃度では、FR901228は、精製したCD4細胞の3×28個のビーズ(抗CD3および抗CD28抗体をカップリングさせたビーズ)での刺激の24時間後に、ELISAによって測定したIL−2の産生を大きく阻害する(図6)。同様の阻害を、細胞内IL−2測定を使用して観察した(示さない)。しかし、減少したIL−2の産生は、100U/mlのIL−2(Boehringer Manheim)の添加が増殖を回復しないので、T細胞の増殖の欠損にはもっぱら応答しない。TR901228がIL−2の産生を阻害するという観察は、FR901228が、A1.1 T細胞ハイブリドーマのCD3によって誘導されるIL−2の産生を阻害しないことを報告した、Wangらによって報告された以前の結果とは対照的である(Oncogene 17(12):1503−1508、1998)。この差異の理由は現在はわかっていない。
【0091】
さらなる実験においては、IL−2およびYNF−αの両方を、20ng/mlのFR901228および500ng/mlのシクロスポリンの存在下または非存在下で、3×28個のビーズでの末梢血リンパ球(PBL)の刺激の24時間後に、ELISAによって測定した(図10Aおよび19B)。
【0092】
実施例V
増殖の阻害のアッセイ
末梢血リンパ球を、上記に記載するように調製し、3×28個のビーズで刺激し、そして刺激の6日後に、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA−SE)で染色する。細胞の刺激を、上記に示すように行い、そして細胞を培地で洗浄し、そしてPBSおよび色素の取り込みを測定した。FR901228を、刺激後の種々の時点(刺激後0、または24、72、および120時間)で添加した。図7は、CFDA−SE染色によって生成される流れのデータを示す。y軸は、平均の蛍光強度を示し、これは、細胞増殖の逆数に関係する。従って、このデータは、活性化されたT細胞の細胞増殖が、3×28個のビーズでの刺激の前に、それと同時に、またはその後のいずれかに、FR901228と細胞を接触させることによって、FR901228によって阻害されることを示す。
【0093】
実施例VI
CD4細胞上でのCD154の発現
CD4細胞上のCD154活性化マーカーの誘導に対するFR901228の影響を研究する。これに関して、細胞を、FITCとカップリングさせた抗ヒトCD4 Ab(Immunotech,Fullerton,CA)、PEとカップリングさせた抗ヒトCD154 Ab(Becton Dickinson、Fullerton、CA)、またはFITC−もしくはPE−とカップリングさせたIgG1イソ型コントロールAbで標識する。2×10個の細胞を、30μlの最終容量中で2μlのそれぞれの抗体を用いて、4℃で20分間標識し、洗浄し、そして1%のパラホルムアルデヒド(Sigma、St.Louis,MO)中に再懸濁する。細胞を、3×28個のビーズおよび/または20ユニット/mlのIL−2の存在下で、または抗IL−2抗体で4日間刺激し、そして3日目に、FR901228を、20ng/mlの濃度で培養物に対して添加する。4日目に、平均の蛍光強度を、フローサイトメトリーによって測定する。図9に示すように、IL−2が存在しないことが存在することは、FR901228によって誘導されるCD154の発現の抑制を補わなかった。
【0094】
実施例VII
転写レベルでのCD154の抑制
この実験においては、Jurkat T細胞を、ベクター構築物(p−EGFP1、Clonetech)で安定にトランスフェクトした。ここでは、緑色蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、Jurkat細胞からクローン化されたCD154プロモーターに対して作動可能に連結された。目的のベクターを含有している細胞の選択の後、細胞を、種々の濃度(0から100ng/ml)のFR901228の存在下で、3×28個のビーズでの24時間の間の刺激に供した。次いで、蛍光を、フローサイトメトリーを使用して検出した。図11に示すように、0ng/mlのFR901228を有している細胞のみが、刺激を有さない細胞のものを上回るGFPの発現の誘導を示した。
【0095】
別の実験においては、CD154転写物のRT−PCRを、3×28個のビーズ、および種々の量のFR901228での刺激の18時間後に行った。これらの実験によって、漸増量のFR901228に伴う、CD154の発現の減少したレベルを示した(データは示さない)。実験をまた、c−mycのアンチセンス構築物とともにインキュベートしたCD4細胞を使用して行った。3×28個のビーズによる24時間の刺激の後、アンチセンスc−myc構築物は、以下を含有しているコントロールと比較した場合に、フローサイトメトリーによって測定されるようなCD154の発現を、約50%減少させた:構築物なし、センス、スクランブルされたc−myc構築物でのトランスフェクション(データは示さない)。従って、FR901228および同様の構築物は、c−mycの活性を標的とし得、そして免疫抑制の1つの機構としてのCD154のその誘導を標的とし得る。
【0096】
実施例VIII
S期への進行の前での細胞周期の阻害
刺激していないおよび刺激した(3×28個のビーズでの刺激)CD4細胞を、種々の濃度のFR901228とともにインキュベートし、そして細胞内DNA含有量を、標準的な手順を使用してヨウ化プロピジウム(PI)での染色によって測定した。簡潔には、細胞を、PBS中の1μg/mlのPIおよび0.03%のサポニンの混合物で、20から30分間染色した。図12に示すように、DNA合成は、刺激していない細胞、または10から100ng/mlのFR901228とともにインキュベートした刺激した細胞中では起こらなかった。従って、FR901228は、S期への進行の前に活性化されたT細胞の細胞周期を阻害するようである。
【0097】
実施例IX
放射性同位元素によるT細胞の増殖のアッセイ
健康なドナーに由来する末梢血単核細胞(PBMC)を、ficoll−hypaque(LSM,Organon Teknika、Durham,North Carolina)を用いた密度遠心分離によって分離する。完全な培地(5%のヒトの血清、100mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの必須ではないアミノ酸、2mMのペニシリン(Life Technologies)、および2mMのストレプトマイシン(Life Technologies)を有するRPMI 1640培地)でのPBMCの洗浄後、次いで、それらに7,500RADSを照射し、そして完全な培地中に4〜4.5×10個の細胞/mlに再懸濁した。PBMCの別のアリコートを、ノイラミニダーゼで処理したヒツジの赤血球(SRBC)で赤色にする。LSMでの別の遠心分離後に、これらの赤色にしたT細胞のSRBCを、次いで、塩化アンモニウム溶解緩衝液(Life Techonologies)で溶解させる。完全な培地での2回の洗浄後に、これらの精製したT細胞をまた、完全な培地中に2〜2.5×10個の細胞/mlで再懸濁する。試験化合物の種々の稀釈物を、96ウェル平底マイクロ培養プレート(Coster,Cambridge、Massachusetts)中に50l/ウェルで3連で添加する。次いで、T細胞懸濁物を、100l/ウェルでウェル中にすぐに分配する。試験化合物と細胞との、5%のCO−95%の空気の加湿大気中での37℃で30分間のインキュベーションの後、抗CD3 Ab(OKT−3、Ortho Diagnostic,New Jersey)を、それぞれのウェルに添加し(10ng/mlの最終濃度で)、続いて50lの照射したPBMCを添加する。次いで、培養プレートを、5%のCO−95%の空気の加湿大気中で72時間、37℃でインキュベートする。Tリンパ球の増殖を、トリチン化した(H)チミジンの取り込みの測定によって評価する。培養の最後の18〜24時間の間に、細胞が、トリチン化されたチミジンの2Ci/ウェルでパルス標識される(NEN,Cambridge、Massachusetts)。培養物を、複数のサンプル回収装置(MACH−II,Wallace、Gaitherburg,Maryland)を使用してガラス繊維フィルター上に回収する。個々の細胞に対応しているフィルターディスクの放射活性を、標準的な液体シンチレーションカウント方法によって測定する(Betaplate Scint Counter.Wallace)。レプリカウェルの1分あたりの平均の計数を計算し、そして結果を、T細胞のトリチン化されたチミジンの取り込みを50%阻害するために必要とされる濃度として示す。
【0098】
実施例X
NODまたはNODSCIDマウスにおける糖尿病の発症の予防および/または遅延
この実施例は、NODおよびNODSCIDマウスにおいて糖尿病の発症を予防するかまたは遅延させる、代表的なデプシペプチド化合物FR901228の能力を示す。
【0099】
FR901228をPBS中の10%のDMSO中に溶解させ、そして1日おきにNODまたはNODSCIDマウスにi.p.で投与した。コントロールは、DMSO賦形剤のみを含んだ(PBS中の10%のDMSO)。NODSCIDマウスが自発的には糖尿病を発症しないと仮定して、10週齢のNODマウスに由来する30×10個のNOD脾臓細胞を、糖尿病を誘導するために、4週齢のそれぞれのNODSCIDマウスに注射した。0.5mg/kgのFR901228を20匹の動物(10匹のNOD動物および10匹のNODSCIS動物)に対してそれぞれの処置の時点で投与した。2週ごとに、糖尿病になったそれぞれの処置グループ中のマウスの数を、隔週の間隔でグルコメーターを使用して血液グルコースレベルを測定することによって評価した。2回の連続する観察についての200mg/dl以上の血液グルコースの読み取りを、明らかな糖尿病の指標と考えた。これらのグループについての平均のグルコースの数を、以下の表2に示す。
【0100】
表2に示すように、NODSCIDマウスにおいては、明らかな糖尿病の発症は、賦形剤のみで処置したマウスと比較した場合に、化合物で処置したこれらのマウスにおいては少なくとも2週間遅延させられた。驚くべきことに、NODの結果は、なおさらに劇的であり、化合物で処置したNODマウスは、18週間の実験の間には明らかな糖尿病は発症せず、一方、10匹の賦形剤で処置したマウスのうちの8匹が、同じ時間枠の中で明らかな糖尿病を発症した。明らかに、このデータは、表現形による糖尿病の発症の遅延における免疫抑制効果を示す。
【0101】
【表2】


上記から、本発明の特定の実施形態は、本発明の例示のみの目的のために本明細書中に記載されてきたが、様々な改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−84585(P2011−84585A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−17260(P2011−17260)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【分割の表示】特願2001−543579(P2001−543579)の分割
【原出願日】平成12年12月6日(2000.12.6)
【出願人】(505003137)エクサイト セラピーズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】