免疫抑制性エキソソーム
本発明は、免疫抑制反応の媒介における使用のための方法および組成物に関する。本発明の組成物は、免疫抑制活性を有するエキソソームを含んでなる。かかるエキソソームは、樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞をはじめとする種々の異なる細胞タイプに由来するものであってよい。エキソソームの単離に先立って、前記エキソソームの免疫抑制活性を増強することが可能な分子を発現するように細胞を遺伝子操作するか、かつ/または細胞をサイトカインもしくはサイトカインインヒビターなどの1種以上の作用物質(これもまたエキソソームの免疫抑制活性を増強することが可能である)に曝露することができる。本発明はまた、免疫系の望ましくない活性化に関連した疾患および障害の治療のための、そのようなエキソソームの使用にも関する。本発明は、免疫抑制性であることが示された血清から直接的に単離されたエキソソームも包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 導入
本発明は、免疫抑制反応の媒介における使用のための方法および組成物に関する。本発明の組成物は、免疫抑制活性を有するエキソソームを含んでなる。かかるエキソソームは種々の異なる細胞タイプ由来であってよく、その細胞タイプには、樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞が含まれる。エキソソームの単離に先立って、前記エキソソームの免疫抑制活性を増強することが可能な分子を発現するように細胞を遺伝子操作するか、ならびに/あるいは細胞をサイトカインまたはサイトカインインヒビターなどの1種以上の作用物質(これもまたエキソソームの免疫抑制活性を増強することが可能である)に曝露してよい。また本発明は、免疫系の望ましくない活性化に関連する疾患および障害の治療のための、前記エキソソームの使用に関する。また本発明は、免疫抑制性であることが示されている血清から直接単離されたエキソソームを包含する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
自己免疫障害は、自分自身の抗原に対する寛容の喪失、「自己の」抗原(自己抗原)に対するリンパ球反応性の活性化、および標的器官の病理学的損傷を特徴とする。自己免疫障害には、関節リウマチ、骨関節炎、アレルギー、全身性エリテマトーデス、自己免疫疾患1型糖尿病、炎症性障害、喘息、等が含まれる。ほとんどの状況で、自己免疫は末梢性寛容によって妨げられる可能性があり、それは、抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)、およびエフェクターT細胞の間の一連の多段階相互作用が関与すると推定される過程である。
【0003】
例えば、関節リウマチ(RA)は消耗性の全身性自己免疫疾患であり、遠位可動(diarthriodial)関節の慢性炎症を特徴とする。RAが確立されると、罹患した関節は、軟骨および骨の進行性の劣化に寄与する炎症細胞の浸潤および滑膜の過形成を示し、結果として正常な関節機能が完全に喪失する。最近、TNF−αおよびIL−1βの炎症誘発活性をモジュレートする生体物質について、新規の抗関節炎薬としての有効性が示されている(Evans and Robbins, J. Rheumatol. 21:779-782 (1994); Robbins and Evans, Gene Ther. 3:187-189 (1996); Evans and Robbins, Curr Opin Rheumatol. 8:230-234 (1996); Evansら, Arthritis Rheum. 42:1-16 (1999); Ghivizzaniら, Clin Orthop. 379 (Suppl):S288-299 (2000))。
【0004】
さらに、関節炎の動物モデルで種々の治療的作用物質の遺伝子導入が有効であることが示されている。特に、種々の治療的作用物質、例えばsTNF−α受容体、IL−1Ra、sIL−1受容体I型およびII型、IL−10、vIL−10およびIL−4を発現するアデノウイルスベクターの関節内局所注入および全身性注入は、関節炎のマウス、ラット、およびウサギモデルで顕著な抗関節炎効果を付与することができた(Arend, Lancet. 341: 155-156 (1993); Bandaraら, Proc Natl Acad Sci U S A. 90:10764-10768 (1993); Ghivizzaniら, Proc Natl Acad Sci U S A. 95: 4613-4618 (1998); Moriら, J. Immunol. 157:3178-3182 (1996); Joostenら, Arthritis Rheum. 39:797-809 (1996); Kimら, Arthritis Res. 2:293-302; Kimら, J. Immunol. 164: 1576-1581 (2000))。
【0005】
興味深いことに、遺伝子導入によって片方の関節または足に前記治療的作用物質を局所送達すると、反対側の膝または無処置の足で治療効果が得られた。例えば、エプスタイン・バーウイルスによってコードされるIL−10遺伝子であるvIL−10を発現するアデノウイルスベクターを関節内注射すると、注射された膝だけでなく、反対側の対照の膝においても、疾患の病変が減少し、白血球の浸潤が減少し、軟骨代謝が改善された(Lechmanら, J. Immunol. 163:2202-2208 (1999))。膝関節炎のウサギモデルで行われた当初の観察に基づいて、前記効果は対側効果(contralateral effect)と称された。ウサギ、ラットおよびマウスの関節にレトロウイルスベクター、リポソームを注射した場合、および遺伝子改変型滑膜線維芽細胞を用いた場合でさえも、同様の効果が観察されている(Ghivizzaniら, Gene Ther. 4:977-982 (1997); Ceponisら, Arthritis Rheum. 44:1908-1916 (2001); Kimら Mol Ther. 6:591-600 (2002))。
【0006】
前記効果についての最近の分析では、抗原提示細胞(APC)、例えばマクロファージおよび樹状細胞(DC)の機能の改変が、遠位関節に対する抗原特異的効果の付与に主要な役割を果たすことが示唆されている(Whalenら, Mol Ther. 4:543-550 (2001); Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001))。特に、培養中の遺伝子改変された骨髄由来DCが、マウスモデルにおいて確立した関節炎を回復させるために有効な作用物質であるという知見によって、DCの治療上の役割がさらに立証されている。例えば、IL−4またはFasLをDCに遺伝子導入した後、確立した関節炎を有するマウスに注射すると、関節炎の顕著な退行が生じ、処置後少なくとも2か月間で処置マウスの半数以上が疾患を有しないようになった(Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001); Kimら, Mol Ther. 6:584-590 (2002); Moritaら, J. Clin Invest. 107:1275-84)。
【0007】
樹状細胞は、免疫応答の制御に重大な役割を果たす専門のAPCであり、種々の機構によって自己免疫応答を増加または減少させることができる。また、免疫抑制性分子を発現するように遺伝子操作されたDCは、外来移植片の拒絶および自己免疫障害を軽減するための魅力的なアプローチであるとみなされている(Luら, 1999, J. Leukoc. Biol. 66:293-296)。例えば、組換えアデノウイルス(Ad)ベクターによって細胞障害性Tリンパ球抗原4−免疫グロブリン(CTLA4Ig)をDCに送達すると、同種レシピエント中での前記DCの寛容原性(tolerogenicity)および生存を促進することが示されている(Luら, 1999, Gene Ther. 6:554-563)。
【0008】
しかし、前記アプローチに関連する潜在的な問題が存在する。例えば、低反応性の未成熟DCの投与によって宿主における寛容原性が向上する場合があるが、ウイルスに基づくベクターによるDCの形質導入は成熟を刺激する可能性があり、免疫賦活能の増強が生じるかもしれない(Reaら, 1999, J. Virol. 73:10245-10253)。ゆえに、疾患の発症を遅延させる、その潜在的な治療効果にもかかわらず、樹状細胞全体の投与は望ましくない結果を招く可能性がある。
【0009】
DCを含めた種々の細胞タイプが、エキソソームと称される小型の脂質小胞を放出することは、30年以上にわたって詳細に報告されている。エキソソームは30〜100nmのサイズの小さな粒子であり、当初の報告では、5’ヌクレオチダーゼ活性およびトランスフェリン受容体を含有し、後期エンドソーム区画由来であり、腫瘍細胞株(Culvenorら, J. Cell Biochem. 20:127-138 (1982))および網状赤血球(Johnstoneら J. Biol. Chem. 262:9412-9420 (1987))から放出される小型の粒子であると報告された。エキソソームは内向きまたは逆向きの出芽によって生成され、それによって、サイトゾルおよび特定の膜結合タンパク質の露出した細胞外ドメインを含有する粒子が生じる(Stoorvogelら, Traffic 3:321-330 (2002))。エキソソームは、アポトーシス小体ならびに原形質膜の分断によって生じると思われるより大型の微小胞とは異なることが示されている。多数の細胞タイプでエキソソームが生成されることが示されていて、その細胞タイプには、樹状細胞、網状赤血球、Tリンパ球、B細胞、血小板、上皮細胞および腫瘍細胞が含まれる(Johnstoneら Blood. 74:1844-1851 (1989); Petersら, Eur J. Immunol. 19:1469-1475 (1989); Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996); Heijnenら, Blood 94:3791-3799 (1999); Theiryら, J. Cell. Biol. 147:599-610 (1999); Wolfersら, Nature Med. 7:297-303 (2001); van Niel and Heyman, Am J. Physiol Gastrointest Liver Physiol. 283:G251-255 (2002))。高純度のDC由来エキソソームは、特定のサイトゾルタンパク質、例えばチュブリン、アクチンおよび特定のアクチン結合性タンパク質ならびにMHCクラスIおよびII抗原、CD86、ICAM−1、lamp−2、αM−β2インテグリン、テトラスパニンCD9およびCD63、およびMFGE8/ラクトアドヘリンを含有することが示されている(Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996); Theiryら, J. Cell. Biol. 147:599-610 (1999); Escolaら, J. Biol Chem. 273:20121-20127 (1998); Theryら, J. Immunol. 166:7309-7318 (2001))。
【0010】
腫瘍抗原ペプチドでパルス(間欠的に処理)したDC由来のエキソソーム(その場合、エキソソームは腫瘍抗原をその表面に露出する)は、マウスの抗腫瘍応答の刺激においてDCそのものと同等の有効性で有効であることが示されている(Zitvogelら, Nature Med. 4:594-600 (1998))。腫瘍抗原ペプチドでパルスしたDC由来のエキソソームを使用した臨床試験では、初期に肯定的な結果が報告されている(Andreら, Adv Exp Med Biol. 495:349-354 (2001); Morse.ら, Proc. Am. Soc. Oncol. 21 A42, p. 11a (2002))。エキソソームは免疫賦活能を示すようであり、抗原提示細胞を感作することが可能である(Zitvogelら, US20040028692)。
【0011】
またエキソソームは、なんらかの免疫抑制活性を有することが示されている。特定のT細胞、ならびに黒色腫細胞では、その表面にFasLを有してT細胞のアポトーシスを刺激することができるエキソソームが生成され、腫瘍の成長を可能にする(Andreolaら J. Exp Med. 195:1303-1316 (2002); Martinez-Lorenzoら, J. Immunol. 163:1274-1281 (1999))。さらに、INF−γおよび消化型オボアルブミンの存在下で培養されたラット腸上皮細胞によって産生される、トレロソーム(tolerosomes)と称されるエキソソーム粒子は、注射後に抗原特異的寛容を誘発することができた(Karlssonら, Eur. J. Immunol. 31:2892-2900 (2001))。
【0012】
Pecheらは、同種ドナー由来のエキソソームを使用すると、ラットにおける移植片の生存が延長されることを報告した(Pecheら, Transplantation 76:1503-1510 (2003))。しかし、著者らは、抗ドナーMHCクラスII同種抗体産生の対応する増加もまた明らかにした。このことは免疫賦活効果が同時に存在することを示唆する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに、自己免疫疾患および炎症性障害を治療する安全で有効な方法を開発する必要性が依然として存在する。本発明は、そのような疾患および障害を治療するための組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
3. 発明の要旨
本発明は、免疫抑制活性を有するエキソソームおよび前記エキソソームを生成および利用するための方法に関する。詳細には、本発明のエキソソームを哺乳動物宿主に投与して、望ましくない免疫応答を抑制することができる。
【0015】
本発明のエキソソームは種々の異なる細胞由来であってよく、その細胞には、非限定的に、樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞が含まれる。好ましくは、エキソソームの調製元である細胞を、遺伝子操作するか、ならびに/あるいは、非限定的にサイトカインまたはサイトカインインヒビターなどの作用物質で処理してよい。その後、エキソソームの回収を行う。
【0016】
種々の実施形態で、本発明はエキソソームの組成物ならびに免疫抑制剤としてのその使用方法を提供する。本発明にしたがって治療される疾患および障害には、非限定的に、炎症および炎症に関連する症状、例えばアレルギー、喘息、関節炎および創傷治癒、ならびに非限定的に関節リウマチおよび糖尿病を含めた自己免疫疾患が含まれる。さらに、エキソソームの免疫抑制活性を考慮して、本発明は、エキソソームをアンタゴナイズすることによって免疫応答を促進する方法を提供する。それは、例えば、被験体における抗腫瘍性免疫を促進するための方法である。
【0017】
4. 図面の簡単な説明
図1A−C. (A)マウスBM−DC由来のエキソソームの全載透過型電子顕微鏡観察(TEM)。バー=200nm。(B)いくつかのエキソソーム関連タンパク質の存在に関するエキソソームおよびBMDCライセートのウエスタンブロット解析。(C)MHC IおよびII、CD11c、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)の発現に関する、マウスDC由来のエキソソームおよびDCのフローサイトメトリーによる分析。
【0018】
図2. 骨髄樹状細胞(「BMDC」)由来のエキソソームの蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)による特性決定。
【0019】
図3A−D. DC由来のエキソソームのin vivoでの輸送。PKH67標識エキソソームのIV注射6時間後、(A)MOMA−1+および(B)ER−TR9+のマクロファージおよび(C)CD11c+のDCが、脾臓において、エキソソームを内部に取り込んでいることが示された。(D)種々の時点でのCD8−αおよびPKH67に関するFACSによって評価された脾臓DCのサブセットによる標識エキソソームの取り込み。
【0020】
図4A−C. (A)マウス骨髄DCおよびDC由来のエキソソームのフローサイトメトリーによる分析。この場合、精製済みエキソソームはAd.対照およびAd.FasLで形質導入された骨髄DC由来である。(B)FasLの発現を示すDCおよびDC由来のエキソソームのウエスタンブロット。(C)DC由来のエキソソーム画分の透過型電子顕微鏡写真。
【0021】
図5. FasLを保持するDCおよびエキソソームで処置されたマウス足蹠における遅延型過敏性(DTH)の抑制を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0022】
図6. 同種異系エキソソームおよびDCと比較して、同系エキソソームおよびDCを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0023】
図7A−B. (A)Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型およびMHC I欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。(B)Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型またはMHC II欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0024】
図8. 免疫抑制性エキソソームの抗原特異性を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0025】
図9A−B. (A)DCおよびDC由来のエキソソームのDTH抑制効果を比較する棒グラフ。DCおよびエキソソームは、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから調製され、対照アデノウイルス(psi5)またはFasLを発現するアデノウイルス(FasL)のいずれかに感染させ、前もってKLHで免疫した野生型マウスの足蹠に注射して戻し、その12時間後、足蹠にKLHを注射した。(B)野生型と比較して、lpr(Fas−/−)マウスに注射して戻された、(A)と同様に調製されたエキソソームのDTH抑制効果を示す棒グラフ。
【0026】
図10A−B. (A)マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。(B)マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL提示エキソソームについての疾患進行の抑制を実証するグラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0027】
図11A−B. (A)リンパ球混合培養反応(MLR)でのvIL−10発現DC添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフ。(B)リンパ球混合培養反応でのAd.vIL−10に感染させたDCから単離されたエキソソームの添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフ。
【0028】
図12A−B. (A)Ad.vIL−10で形質導入されたDCおよび該DC/vIL−10由来エキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH応答の抑制を示す棒グラフ。(B)組換えマウスIL−10で処理されたBMDCおよび組換えマウスIL−10で処理されたDC由来のエキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH反応の抑制を示す棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0029】
図13A−C. (A)Ad−vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソームの全載透過型電子顕微鏡写真。(B)Ad.vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソーム調製物についての、Hsc70の存在を検出するウエスタンブロット。(C)Ad.vIL−10に感染させたDCから単離された膜破壊エキソソームがDTH反応を抑制できないことを実証する棒グラフ。
【0030】
図14A−B. (A)Ad.vIL−10に感染させたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。(B)組換えIL−10で処理されたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0031】
図15. マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたvIL−10発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフ。
【0032】
図16A−C. 確立したコラーゲン誘発関節炎モデルにおけるDC/IL−10由来エキソソームの治療効果についての分析。(A)Ad.vIL−10に感染させたか、あるいは組換えマウスIL−10でパルスしたDBA1マウス骨髄DCからエキソソームを単離し、確立したCIAを有するマウスに投与した。(B)組換えIL−10でパルスしたDC由来のエキソソームを2群に分け、その一方を3サイクルの凍結・解凍に付して膜を破壊し、その後、確立したCIAを有するマウスに投与した。(C)確立されたCIAマウスにおいて、組換えマウスIL−10の直接注射と比較して、DC/rmIL−10由来のエキソソームを試験した。A〜Cで、28日目にウシII型コラーゲンで免疫し、LPSを投与したDBA1マウスに、32日目(矢印によって示す)に精製済みエキソソームを静脈内注射した。確立されている巨視的なスコア化システムによってマウスを定期的にモニターした。そのスコア化システムは、すべての足に関する累積値で表され、最大限のスコアは16である。
【0033】
図17. マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【0034】
図18. マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加。この場合、処置対象の足蹠には、DC/smIL−4、DC/smIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【0035】
図19. マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/FasL、DC/FasLから調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、またはDC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)を注射した。
【0036】
図20. 野生型またはlpr(Fas−/−)マウスのいずれかのマウスDTHモデルにおける足膨大の増加。この場合、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから回収されたDCから調製され、可溶性(smIL−4)または膜結合型(mbmIL−4)IL−4のいずれかを発現するように改変されたエキソソームを注射した。
【0037】
図21A−B. (A)同系または(B)同種異系マウスのいずれかに由来する、膜結合型IL−4で増強されたDCから調製されたエキソソームを注射した後のマウスDTHモデルにおける足膨大の増加。
【0038】
図22. マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、野生型またはB7.1およびB7.2欠損(KO)マウスのいずれかの処置対象の足(黒色バー)には、Ad.Psi5またはIL−4遺伝子を有するアデノウイルスベクターのいずれかで処理されたDCから調製されたエキソソームを注射した。無処置の足のサイズは白抜きのバーによって表される。
【0039】
図23. Ad.psi=5(対照)、Ad.mIL−4、またはAd.mbmIL−4のいずれかに感染させたDCから調製したエキソソームで処置されたCIAモデルマウスの関節炎指数を示すグラフ。
【0040】
図24A−B. (A)DC/IL−4由来のエキソソームで最初に処置されたマウスまたは(B)最初の被験体由来のCD11Cを投与されたマウスにおけるDTH反応。
【0041】
図25. 生理食塩水、無処理のDC由来のエキソソーム、またはDC/IL−4から調製されたエキソソームのいずれかで処置されたマウスにおける高血糖の発生を示すグラフ。
【0042】
図26. 無処理の全血清およびビーズで処理された全血清をDTHモデルのマウスに投与した48時間後の足蹠の膨大を示す棒グラフ。
【0043】
図27. KLH免疫マウス由来の血清、微小胞、およびエキソソームを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフ。
【0044】
図28. 種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフ。この場合、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【0045】
図29. 種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフ。この場合、KLHおよびOVA免疫マウスから血清を分離し、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【0046】
図30. マウス血清から単離されたエキソソームの電子顕微鏡写真。
【0047】
図31. 抗MHCクラスIIを保持するビーズで標識された血清由来のエキソソームのFACS解析。
【0048】
図32. マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム(群I)、(b)無処置のマウスの血清から回収されたエキソソーム(群II)、または(c)生理食塩水(群III)のいずれかを注射した。処置された足は黒色のバーで表され、反対側の足は白抜きのバーで表される。
【0049】
図33. マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(b)KLH免疫マウスの血清から回収され、抗MHCII抗体であらかじめ吸収した(preabsorbed)エキソソーム;(c)MHCクラスII陽性のKLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(d)抗IgG抗体であらかじめ吸収したエキソソーム枯渇対照;または(e)生理食塩水のいずれかを注射した。
【0050】
図34. マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、(a)FasL欠損gld(FasL−/−)マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(b)野生型マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(c)gldマウスの血清由来のエキソソームをlpr(Fas−/−)レシピエントに投与;(d)野生型マウスの血清由来のエキソソームをlprレシピエントに投与;または(e)対照として生理食塩水を投与した。
【0051】
図35. 血清由来のエキソソームで処置されたマウスDTHモデルにおける足膨大のDTH増加を示す棒グラフ。エキソソームは、エキソソームドナー動物を免疫した14日後に回収し、レシピエント動物を免疫した14日後に投与した。
【0052】
図36. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたVASにおける痛みを示すグラフ。
【0053】
図37. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESaff(感情的疼痛尺度:Affective Pain Scale)における痛みを示すグラフ。
【0054】
図38. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESsens(感覚的疼痛尺度:Sensitive Pain Scale)における痛みを示すグラフ。
【0055】
図39. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の4時点で測定されたOswestryスコアにおける痛みを示すグラフ。
【0056】
図40A−F. Orthokine(登録商標)血清由来のエキソソーム濃縮画分の透過型電子顕微鏡写真(TEM)((B)は濾過済みの血清から作成されたイメージである)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
5. 発明の詳細な説明
限定する目的ではなく、明確化のために、発明の詳細な説明を下記の節に分ける:
(i) エキソソームの細胞供給源;
(ii) エキソソーム回収のための細胞のコンディショニング;
(iii) 細胞からのエキソソーム調製;
(iv) 血清からのエキソソーム調製;
(v) エキソソーム含有組成物;
(vi) 免疫抑制の方法;および
(vii) エキソソーム媒介性の免疫抑制をアンタゴナイズする方法。
【0058】
5.1 エキソソームの細胞供給源
本発明のエキソソームは種々の異なる細胞由来であってよく、その細胞としては、非限定的に、樹状細胞(「DC」)およびマクロファージなどの抗原提示細胞(「APC」)が挙げられ、例えば、骨髄、脾臓、リンパ節、または胸腺などの組織からか、あるいは末梢血またはそれに由来する血清から回収してよい。本発明の範囲には、皮膚のランゲルハンス細胞または肝臓のクッパー(Kuppfer)細胞などの特殊化した抗原提示細胞がさらに包含される。それらはその起源の組織から調製することができる。特にAPCおよびDCを回収する方法は当技術分野において公知である。
【0059】
下記実施例で実証されるように、エキソソームの免疫抑制活性はMHCクラスII抗原依存的であり、かつ、エキソソームドナーとレシピエントとの関係が同種異系である場合よりも同系である場合に非常に高いことが観察される。したがって、ドナーおよびレシピエントの同系性を最大にすることが望ましい。したがって、本発明は、ある哺乳動物種由来のエキソソームを別の動物種での免疫抑制に使用することを包含するが、好ましくは、ドナーおよび所期のレシピエントの動物種は同一であり、ならびに/あるいは、好ましくは、ドナーおよび所期のレシピエントのMHCクラスII抗原は同一であり(あるいは、例えば、意図される組織移植物に採用される考慮すべき条件を使用して、実質的に類似または適合性であり)、ならびに/あるいは、好ましくは、ドナーおよび所期のレシピエントは同一(自家)または家族関係である(兄弟/姉妹;姉妹/姉妹;親/子)。同様に、エキソソームの免疫抑制活性は抗原特異的であるため、本発明の特定の非限定的な実施形態では、エキソソームドナーを抗原を用いて免疫してよく、その抗原はレシピエントにおいて反応が抑制されるべき対象の抗原である。
【0060】
5.2 エキソソーム回収のための細胞のコンディショニング
本発明の好ましい非限定的な実施形態では、APCをコンディショニングして、それから調製されるエキソソームの免疫抑制活性を増強する。本明細書中で使用される場合の「コンディショニング(調整)済み(Conditioned)」には、(i)in vitroまたはin vivoでAPCを増強物質に曝露すること、ならびに(ii)増強物質を発現するようにAPCを遺伝子操作することが含まれる。
【0061】
増強物質は、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、およびNFκBアンタゴニストであってよく、それには、非限定的に、TGF−β、IL−10、CTLA4−Ig、sCD40−Ig、IL−4、IL−13、FasL、IL−1受容体アンタゴニストタンパク質(「IRAP」)、vIL−10、sICAM−1、sICAM−3、およびTRAILが含まれる。好ましい非限定的な実施形態では、増強物質はIRAPまたはIL−10またはIL−4あるいはそれらの組み合わせである。例えば細胞培養中でAPCに増強物質を投与する特定の非限定的な実施形態では、IRAPの濃度は約5μg/mlであってよく、またはIL−10の濃度は約1000U/mlであってよく、またはIL−4の濃度は約1000U/mlであってよい。場合により、特定の抗原または特定の抗原供給源が公知である場合、そのような特定の抗原または特定の抗原供給源(例えば、固定したかまたは弱毒化された感染性物質)を無毒で非病原性の量で増強物質として培養に加えてよい。
【0062】
本発明の一群の実施形態では、増強物質をコードする異種「増強性遺伝子」を発現するようにAPCを遺伝子操作してよい。そのような「増強性遺伝子」には、非限定的に、TGF−β、IL−10、CTLA4−Ig、sCD40−Ig、IL−4、IL−13、FasL、IRAP、VIL−10、sICAM−1、sICAM−3、およびTRAILをコードする核酸が含まれ、それはAPCにおいて活性なプロモーターエレメントに作動的に連結されている。好ましい実施形態では、増強性遺伝子はFasL、IL−10、IL−4またはIRAPである。増強性遺伝子の産物は、エキソソームの表面に発現させるか(例えば膜結合型)またはエキソソームの内部で発現させてよい。あるいは、非限定的にDel1などの血管新生因子またはソーティングおよび局在化シグナルをコードする増強性遺伝子を発現するようにAPCを操作してよい。増強性遺伝子は、当技術分野において公知の方法を使用して導入してよく、その方法には、トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、などが含まれる。場合により、増強性遺伝子を適切な発現ベクターに組み込んで、その導入を容易にすることができる。本発明の非限定的な実施形態では、発現ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターであってよい。本発明の特定の好ましい実施形態では、ウイルスベクターはアデノウイルス由来である(一般的には、Horwitz, M.S., "Adenoviridae and Their Replication," in Virology, 2nd edition, Fieldsら, (編), Raven Press, New York, 1990を参照のこと)。組換えアデノウイルスは、アデノウイルスキャリアに対して外来性のタンパク質をコードする核酸分子用の発現系としての使用に有利であり、その利点には、分裂細胞と非分裂細胞の両者に関する親和性、最小の病原可能性、ベクターストックの調製用の高い力価にまで複製する能力、および大きなインサートを輸送する能力が含まれる。Berkner, K.L., 1992, Curr. Top. Micro Immunol, 158:39-66; Jolly D., 1994, Cancer Gene Therapy, 1:51-64を参照のこと。
【0063】
本発明の特定の非限定的な実施形態では、E1およびE3領域が実質的に欠失しているアデノウイルス血清型2(Ad2)または血清型5(AD5)由来のアデノウイルスベクターに増強性遺伝子を保持させてよい。アデノウイルスベクター用の骨格として他のアデノウイルス血清型を使用することもでき、それには、とりわけ、Ad6、Ad9、Ad12、Ad15、Ad17、Ad19、Ad20、Ad22、Ad26、Ad27、Ad28、Ad30およびAd39が含まれる。列挙されたこれらのアデノウイルス血清型のうち、Ad2およびAd5が好ましい。
【0064】
例えば、適切なプロモーターエレメントに作動的に連結された増強性遺伝子を含み、場合によりウイルスベクターに含有された核酸を、リポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルへのカプセル化などの送達系を介してAPCに提供してよい。
【0065】
5.3 細胞からのエキソソーム調製
細胞からのエキソソーム調製は当技術分野において公知である;例えば、Raposoら, J. Exp. Med. 183:1161 (1996)を参照のこと。
【0066】
本発明の特定の非限定的な実施形態では、以下の通り、好ましくは(培養培地中で、または遺伝子操作によって)増強物質によってコンディショニングされたAPCの培養物からエキソソームを調製してよい。培養上清を回収し、300gで5分間、1,200gで20分間、および10,000gで30分間の3回の連続遠心分離に付して細胞および残渣を取り除き、その後、100,000gで1時間遠心分離してよい。次いで過剰の血清タンパク質を除去するために、エキソソームペレットをPBSで洗浄し、再度100,000gで1時間遠心分離し、その後、得られたペレットをPBSに再懸濁してよい。micro Bradford protein assay(Bio-Rad, CA)によってエキソソームを定量することができ、好ましくは該アッセイによって測定されるタンパク質1mgに対応するエキソソームの量をPBS20mlに懸濁してよい。場合により、電子顕微鏡観察によってエキソソームの完全性を確認してよく(図1Aを参照のこと)、場合により、特徴的な表面マーカーに関するFACS解析によってエキソソームを特性決定してよい(下記セクション6および7を参照のこと)。
【0067】
5.4 血清からのエキソソーム調製
本発明にしたがって免疫抑制に使用するエキソソームは、適切な被験体の血清から回収してよい。好ましくは、被験体は、その血清由来のエキソソームの所期のレシピエントでもある(自家投与)。エキソソームドナーおよびレシピエントが同一でない場合、エキソソーム媒介性の免疫抑制活性の抗原特異性およびMHCクラスII依存性のために、ドナーおよびレシピエントはMHCクラスII抗原適合性であり、かつ/またはレシピエントにおいて免疫が抑制されることが望まれる抗原にドナーを曝露しておくことが好ましい。
【0068】
エキソソームはサイズが30〜100nMの小さな粒子であるため、末梢血サンプルからより大きな細胞要素を除去することによって、例えば、限定目的ではなく、1500gで10分間の遠心分離によって、血清中にそれらを回収してよい。
【0069】
好ましくは、連続遠心分離ステップによってエキソソームをさらに厳密に精製する。例えば、限定目的ではなく、細胞培養上清からエキソソームを調製するための上記で概説される方法、または等価な方法を使用してよい。そのような方法は、好ましくは、実験用超遠心機の使用を含む。非限定的な一例では、(標準の実験技術を使用して末梢血から回収された)血清から、1200gで5分間、1,200gで20分間、および10,000gで30分間の3回の連続遠心分離を行い、その後、100,000gで1時間遠心分離し、得られたペレットをPBSで洗浄し、PBSに再懸濁し、次いで再度100,000gで1時間遠心分離することによってエキソソームを分離してよく、その後、得られたペレットをPBSに再懸濁してよい。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、血清およびエキソソームの回収に先立って、サイトカインの産生を刺激するためにビーズの存在下で末梢血をインキュベートしてよい。その目的で使用してよいビーズには、非限定的に、直径0.5〜10mmの範囲または0.5〜5mmの範囲のガラスもしくはプラスチックビーズが含まれ、それは、場合により、リンパ球増殖を刺激するCrSO4などの物質で処理されている(Migniniら, 2004, Preventive Med 39(4) 767-775; Rheeら, 2002, Clin Exp Immunol 127(3):463-469)。本発明の好ましい非限定的な一実施形態では、医療用グレードの直径2.5mmで21mm2の表面積を有するガラスビーズを使用する。その表面は、50%CrSO4(Merck, Germany)中で5分間インキュベートすることによって処理され、次いでpHが蒸留水のpHと同一になり、ならびに洗浄液の伝導率が0.3μS未満になるまで蒸留水で洗浄されたものである。処理済みのビーズは、マイクロタイタープレート、遠心管、培養試験管、またはシリンジなどの適切な容器に入れてよく、その後、滅菌してよい(例えば、オートクレーブまたはガンマ線照射によって)。次いで末梢血をビーズの入った容器に入れ、その後、37℃、5%CO2で例えば24時間、無菌的にインキュベートしてよい。次いで、ビーズ/血液懸濁物から、例えば3500rpmで10分間の遠心分離によって血清を回収してよい。典型的には、元の総末梢血容量の20%が回収されるであろう。次いで、得られたエキソソームを含有する血清を−20℃で保存してよい。Orthokine(登録商標)血清はこのようにして調製される(米国特許第6,759,188号および同第6,713,246号を参照のこと)。
【0071】
本発明の、関連する特定の非限定的な実施形態では、ビーズとインキュベートする前、またはその代わりに、末梢血サンプルにIRAPを加えてよい。例えば、末梢血1mlあたりIRAP5μgを加えてよい。
【0072】
本発明の好ましい非限定的な実施形態では、場合によりビーズおよび/またはIRAPとインキュベートされた末梢血から、固形(formed)血液成分を除去するための遠心分離(例えば3000〜5000gで10分間)を行い、その後、例えば100,000gで1時間の超遠心を行うことによって血清を回収し、それによって、エキソソームの濃縮調製物を調製してよい。得られたペレットを生理食塩水に再懸濁してよく、その後、好ましくは滅菌してよい(例えば、0.2μmフィルターを通して濾過することによって)。ペレットを懸濁する容量によってエキソソームの濃度が決まる。好ましくは、その濃度は、血清約100ml:エキソソーム濃縮物1ml(「100×濃縮物」)〜血清2ml:エキソソーム濃縮物1ml(「2×濃縮物」)の範囲、好ましくは血清約50ml:エキソソーム濃縮物1ml(「50×濃縮物」)〜血清5ml:エキソソーム濃縮物1ml(「5×濃縮物」)の範囲、好ましくは血清約10ml:エキソソーム濃縮物1ml(「10×濃縮物」)である。
【0073】
5.5 エキソソーム含有組成物
本発明は、エキソソームが適切な医薬用担体に懸濁されているエキソソーム含有組成物を提供する。
【0074】
本発明の組成物は、エキソソームの濃度が、平均的な投与対象またはエキソソームの所期のレシピエントのいずれかの血清中のその濃度と比較して濃縮されていることを特徴とすることができる。非限定的な実施形態では、その濃度は、血清と比較して、約100×〜2×の範囲、または50×〜5×の範囲であってよく、あるいは約10×である。
【0075】
本発明の組成物は、前記セクションに記載のように、増強物質で処理されたAPCまたは末梢血から得られたエキソソームを含んでよい。
【0076】
本発明の組成物は、超遠心によって調製されたエキソソームを含んでよい。
【0077】
好ましい非限定的な一群の実施形態では、本発明は、増強物質によってコンディショニングされた被験体のAPCを培養し、次いで該コンディショニングされたAPCの培養培地からエキソソームを単離することによって調製されたエキソソームを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0078】
別の好ましい非限定的な群の実施形態では、本発明は、末梢血をガラスビーズとインキュベートし、末梢血から血清を回収し、超遠心によって血清からエキソソームを単離することによって調製されたエキソソームを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0079】
別の好ましい非限定的な群の実施形態では、本発明は、増強物質、好ましくはIRAPの存在下で末梢血をガラスビーズとインキュベートし、末梢血から血清を回収し、好ましくは超遠心によって、血清からエキソソームを単離し、好ましくはエキソソーム濃縮調製物を得ることによって調製されたエキソソームを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0080】
5.6 免疫抑制の方法
本発明は、有効量のAPC由来のエキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を減少させ、阻害し、または予防するための方法を提供する。減少/阻害/予防は、炎症パラメータ、例えば炎症の臨床徴候(膨大、潮紅、蓄熱、痛み、制限された関節可動性、発疹、炎症性神経障害、髄膜炎、脳炎)、アレルギーまたは喘息の臨床徴候(くしゃみ、そう痒、咳嗽、発疹、じんま疹、喘鳴)、炎症性腸疾患の臨床徴候(痙攣、便中の血液および/または粘液)または臨床マーカー、例えばCRP、ESR、WBCの減少によって立証してよい。
【0081】
免疫応答の減少、阻害、または予防が望まれる疾患および障害には、非限定的に、関節炎、アレルギー、喘息、または自己免疫疾患、例えば、非限定的に、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosis)、強皮症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、多発性硬化症、クローン病、乾癬、グレーヴス病、セリアック病、円形脱毛症、中枢神経系脈管炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、結節性多発性動脈炎、特発性血小板紫斑病、巨細胞動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、アジソン病、強直性脊椎炎、ライター症候群、高安動脈炎、および白斑が含まれる。本発明にしたがって処置することが望ましい他の症状には、筋ジストロフィーなどの疾患、および軟部組織、靭帯、もしくは骨の偶発的または医原性の創傷、または非免疫性の現象によって損傷した組織、例えば心筋梗塞後の心筋などの、炎症が適正な治癒を妨害しうる症状が含まれる。
【0082】
本発明の方法は、本発明にしたがって調製された有効量のエキソソームを、そのような処置を必要とする被験体に投与するステップを含む。例えば、前記セクションに記載のエキソソーム組成物を投与してよい。エキソソームは任意の臨床的経路によって投与してよいが、好ましくは、例えば外科的処置中に、静脈内、筋肉内、関節内、皮下、くも膜下腔内に投与するか、あるいは局所注射もしくは点滴注入によって投与する。
【0083】
投与されるエキソソームの量は以下の通りであってよく、あるいは臨床的に、例えば、被験体ごとに決定される通りであってよい。特定の非限定的な実施形態では、約5〜100μgの範囲のタンパク質を有するエキソソームの量、または約50μgのタンパク質を有するエキソソームの量を、被験体体重1キログラムあたりに投与してよい。「特定の量のタンパク質を有するエキソソーム」との表現は、エキソソーム調製物中に存在するタンパク質の量が定量され(例えば、セクション5.3に記載のようにBradford protein assayによって、またはタンパク質を測定するための別の標準的技術によって)、タンパク質の量が、投与されるエキソソームの用量についての指標として使用されることを意味する。本発明の一群の特定の非限定的な実施形態では、約20〜50mlの範囲、約50〜100mlの範囲、約100〜200mlの範囲、約200〜300mlの範囲、約300〜400mlの範囲、または約400〜500mlの範囲の末梢血から回収された血清由来のエキソソームの量をヒト被験体に投与してよい。本発明の別の群の特定の非限定的な実施形態では、約100μg〜5mgの範囲のタンパク質、または約500μg〜2mgの範囲のタンパク質を有するエキソソームの量をヒト被験体に投与してよい。
【0084】
特定の非限定的な実施形態では、本発明は、抗原提示細胞の培養物から調製された有効量のエキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を阻害する方法を提供する。本明細書中で使用される「抗原提示細胞の培養物」とは、当技術分野において公知の方法によって回収され抗原提示細胞に関して富化された細胞の培養物である;かかる培養物は必ずしも100%純粋でなくてよい。
【0085】
5.7 エキソソーム媒介性の免疫抑制をアンタゴナイズする方法
APC由来のエキソソームは免疫抑制性であることが見出されているため、それらは、特定の条件下で、例えば、腫瘍または感染に対する宿主の免疫応答を抑制するという面において、悪影響を及ぼすであろう。したがって、本発明は、免疫の増加が望まれる部位に有効量のAPC由来エキソソームインヒビターを投与するステップを含む、そのような望ましくない免疫抑制を阻害する方法を提供する。そのようなインヒビターは、例えば、図1C、2および4Aに示される、エキソソーム関連抗原、例えばトランスフェリンまたは任意の表面分子に対する抗体であってよい。
【実施例】
【0086】
6. 実施例:エキソソームの特性決定−I
DC由来のエキソソームの免疫調節の役割を実証するために、GMCSF/IL−4中で高密度で培養されたC57BL/6マウス骨髄前駆体からDCを産生させた。次いで、DCによって産生されたエキソソームを分画遠心法によって培養培地から単離し、電子顕微鏡観察、ウエスタンブロットおよびフローサイトメトリーによって特性決定した。
【0087】
6.1 材料および方法
マウス:すべて7〜8週齢のメスC57BL/6(H−2Kb)マウスおよびオスDBA1/LacJ(H−2Kq)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。University of Pittsburgh Biotechnology Center(Pittsburgh, PA)の無菌動物施設で動物を飼育した。
【0088】
骨髄由来DCの産生および培養:Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001)に記載のように骨髄由来DC(BMDC)を産生させた。簡潔には、マウス脛骨および大腿から骨髄を回収し、ナイロンメッシュに通して骨の小片および残渣を取り除いた。0日目に、0.83M NH4Clバッファーで混入した赤血球を溶解し、Ab(RA3−3A1/6.1、抗B220;2.43、抗Lyt2;GK1.5、抗L3T4;すべてAmerican Type Culture Collection, Manassas, VAより入手)およびウサギ補体(Accurate Chemical and Scientific, Westbury, NY)の反応混液でリンパ球を枯渇させた。次いで、完全培地(CM;10%FBS、50μM 2−ME、2mMグルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、100μg/mlストレプトマイシン、および100IU/mlペニシリンを含有するRPMI 1640)中で24時間、細胞を培養し、接着性マクロファージを除去した。次いで1日目に、組換えマウスGM−CSF(1000U/ml)および組換えマウスIL−4(1000U/ml)を含有する新鮮なCMに非接着性細胞を入れた。細胞を4日間培養し、5日目に、アデノウイルスによる形質導入または組換えサイトカイン処理のために回収した。
【0089】
アデノウイルス感染では、1×106DC/ウェルを24ウェルプレートに入れ、5×107PFUの各組換えアデノウイルスを総容量1mlの無血清培地に加えた。37℃で24時間インキュベートした後、細胞を回収し、PBS中で5回洗浄し、新鮮な培地を加えた。7日目に、感染DCおよびエキソソームを回収し、よく洗浄し、動物に注射した。
【0090】
エキソソーム精製:以前に報告されたように分画遠心法によって7日目のBMDC培養物の細胞培養上清からエキソソームを調製した(Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996))。簡潔には、各BMDC培養物から回収された培養上清を、300g(5分)、1,200g(20分)、および10,000g(30分)の3回の連続遠心分離に付して細胞および残渣を取り除き、その後、100,000gで1時間遠心分離した。過剰の血清タンパク質を除去するために、エキソソームペレットを大容量のPBSで洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、最終的に、以後の研究のために120μlのPBSに再懸濁した。micro Bradford protein assay(Bio-Rad, CA)によってエキソソームを定量した。各バッチをタンパク質含量によって標準化し、in vivoにおけるマウスでの研究のために、20μlのPBSに1μgを懸濁した。MHC IIの吸収のために、100μlの洗浄済み抗マウスMHC II常磁性ビーズ(Miltenyi Biotech)を、あらかじめ希釈済みのエキソソーム(1μg/20μl)とインキュベートした。インキュベーションは、穏やかに振盪しながら、4℃で1時間行った。磁気を用いた分離後、微量遠心管に保持されなかった画分をPBSで調節して元の容量にした。ドライアイス/エタノール浴中で瞬間凍結(snap freezing)し、その後37℃の水浴中で温めることを3回繰り返し、あらかじめ希釈済みのエキソソームの凍結/解凍を実施した。最終エキソソーム調製物中のIL−10およびvIL−10の混入濃度をIL−10 ELISA(Endogen)によって決定した。
【0091】
電子顕微鏡観察:分画遠心法によってエキソソームを精製し、Formvar/カーボンコーティンググリッドに10μlを載せ、中性1%水性リンタングステン酸(phosphotungastic acid)10μlでネガティブ染色し、JEOL−1210コンピュータ制御高コントラスト120kv透過型電子顕微鏡を使用して観察した。
【0092】
タンパク質解析:細胞に関して、25G注射針を60回通過させることによって、CLAP(キモトリプシン、ロイペプチン、アプロチニン、およびペプスタチン、各100μM)を添加した10mMトリエタノールアミン、1mM EDTA、10mM酢酸、250mMショ糖、pH7.4中でホモジナイズし、それによって全膜(total membrane)からサイトゾルを分離した。1,200gで遠心分離して、核および細胞残渣から上清を除去した。100,000gで1時間遠心分離した後、ペレット中に全膜を回収した。次いで10μgの細胞ライセートまたはエキソソーム調製物を5−20%勾配SDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース上にトランスファーし、enhanced chemiluminescence detection kit(Amersham)を使用してウエスタンブロットによって検出した。
【0093】
FACS解析:大多数の培養細胞(60〜95%)において、FACScan(Becton Dickinson, Sunnyvale, CA)による、CD11b、CD11c、CD80、CD86、ならびにMHCクラスIおよびクラスIIの発現に関する表現型解析によってDCを規定した。エキソソームに関して、最終容量30〜100μl中で室温で15分間、30μgのペレット化エキソソームを10μlの直径4μmのアルデヒド/スルファートラテックスビーズ(Interfacial Dynamics, Portland, OR)とインキュベートし、その後、PBS1ml中で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートした。100mMグリシン中で30分間インキュベートすることによって反応を停止させた。エキソソームコーティングビーズをFACS洗浄バッファー(PBS中の3%FCS、および0.1%NaN3)中で3回洗浄し、FACS洗浄液500μlに再懸濁した。ビーズを各一次抗体と1時間インキュベートし、その後、必要であればFITCコンジュゲート二次抗体中でインキュベートし、洗浄し、FACSCaliber(Becton Dickinson, San Diego, CA)で分析した。Lysis II FACScan software(Becton Dickinson)を使用してデータ収集および分析を実施した。
【0094】
6.2 結果
全載透過型電子顕微鏡観察によるエキソソームペレットの超微細構造の分析では、特徴的な受け皿型の直径40〜90nmのエキソソームについての顕著な富化が示された(図1A)。ウエスタンブロット解析では、DC由来のエキソソームは、エキソソーム関連タンパク質CD71およびHsp70に関して陽性である(図1B)が、エキソソームにおいて見出されないタンパク質、例えばHsp90、インバリアント鎖、およびカルネキシンに関しては陰性であることが実証された。エキソソーム画分の無傷の小胞の性質をさらに実証するために、eGFP/C57マウスのBMDCからエキソソームを精製した。その理由は、その動物の体内の大多数の細胞はマーカータンパク質eGFPを構成的に発現しているからである(図1B)。高度に富化されたエキソソーム画分のウエスタン解析では、かなりのレベルの完全長eGFPが示された。したがって、可溶性eGFPがBMDC由来のエキソソームの内腔の保護環境内にカプセル化されていることが示唆される。
【0095】
DC由来のエキソソーム画分を表面タンパク質に関するフローサイトメトリーによってさらに調査した。100,000×gで遠心した後にエキソソームを回収し、ラテックスビーズに結合させ、マウスDC結合型白血球性マーカータンパク質に対する複数のモノクローナル抗体で染色した。エキソソームの表面はMHC IIに関して高レベルで陽性に染色され、より中程度のレベルでMHC I、CD11C、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)が検出された(図1C)。総合すると、これらのデータは、他者によって報告されるDC由来エキソソーム関連タンパク質の多数のマーカーを含有する無傷のエキソソームにについて富化することができることを実証する(Stoorvogelら, Traffic. 3:321-330 (2002); Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996); Kleijmeerら, Traffic. 2:124-137 (2001))。
【0096】
7. 実施例:エキソソームの特性決定−II
表面抗原.図2は、DC由来のエキソソームの表面表現型を実証するFACS解析の結果を示す。エキソソームを、CD11b(MHCクラスIIの分析用)またはMHCクラスII(IAd)抗体でコーティングされた4.5μmビーズとインキュベートした。ビーズを使用してエキソソームのサイズを増加させ、FACSによって検出可能となるようにした。次いで、ビーズでコーティングされたエキソソームを指定のタンパク質に対するPE mAbで標識した。図2に記載の表面抗原に加えて、骨髄由来のエキソソームはCD11c、CD14、CD54、MFG−E8、CD80、CD86およびCD9に関しても陽性であった。かなりの割合のエキソソームがCD11a、CD11bおよび膜結合型TNF−αに関して陽性であったが、CD8−α、CD32、CD49d、CD25、CD40、CD107a(Lamp−1)、CD95およびTrailに関しては陰性であった。興味深いことに、その調製元のDCのうちの少ない割合しかFasL陽性ではなかったにもかかわらず、99%のエキソソームがFasL(CD178)に関して陽性であった。この結果は、FasLがエキソソームに優先的にソーティングされることを示唆し、その場合、いかなる理論にも拘束されないが、このことは、観察された治療効果の付与に本質的な役割を果たすと思われる。
【0097】
輸送.図3A−Dは、DC由来のエキソソームのin vivoでの輸送を示す。BDMC由来のエキソソームをPKH67で標識し、マウスにIV注射し、注射2時間後からマウスを分析した(Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001))。脾性辺縁帯のMOMA−1+のマクロファージ、ER−TRP+のマクロファージおよびCD11c+のDCにおいて標識エキソソームを検出した。CD11c+のDCでは、エキソソームがLamp−1+のエンドサイトーシス小胞と共存していることが見出された。さらに、まず、エキソソームはCD8−α陰性CD11c+の細胞によって取り込まれ、標識エキソソームに関するCD8−α+Dc陽性の割合は経時的に増加した。24時間後、エキソソームはT細胞領域のCD11c+のDCと共存していることが示された。また、エキソソーム陽性DCの分析では、それらがDC成熟マーカー(IAb、CD86またはCD54)をアップレギュレーションしないことが示された。これらの結果は、DC由来のエキソソームが、脾臓に認められる未成熟DCならびにマクロファージによって効率的に内部に取り込まれ、DCの成熟を誘発することなく、DCの成熟能に影響することもないことを示唆する。ゆえにエキソソーム機能に関するワーキングモデルは、それらが脾臓およびリンパ節の抗原提示細胞のサブセットと相互作用し、そして次にT細胞応答を抑制し、その結果、調節性T細胞集団の誘導が生じるのであろうというものである。
【0098】
8. 実施例:DC/FasL由来のエキソソームは免疫抑制活性を有する
記号「DC/‘X’」(記号中の‘X’はFasL、IL−10、IL−4、などの作用物質である)は、樹状細胞からエキソソームを調製する前に、樹状細胞がXを発現するように操作されたか、あるいはDCがXに曝露されたことを示す。
【0099】
8.1 DC/FasL由来のエキソソームは外因性FasLを保持する
以下の実施例は、外因性遺伝子を形質導入されたDCから単離されたエキソソームがその遺伝子産物を提示することが可能であることを実証する。特に、DCがFasL遺伝子を保持するアデノウイルスベクターで形質導入されている場合、そのDC由来のエキソソームはFasLを提示する。
【0100】
8.1.1 材料および方法
DCの産生:以前に報告されたように骨髄由来DCを産生させた(Whalenら, Mol Ther. 4:543-550 (2001); Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001); Kimら, Mol Ther. 6:584-590 (2002))。簡潔には、C57BL/6マウスの脛骨および大腿から骨髄を回収した。混入赤血球を溶解し、抗体の反応混液(RA3−3A1/6.1、抗B220;2.43、抗Lyt2;GK1.5、抗L3T4;すべてATCC, MDより入手)でリンパ球を枯渇させた。次いで完全培地(CM)中で24時間、細胞を培養して、接着性マクロファージを除去した。次いで、1000U/mlのmGM/CSFおよびmIL−4を含有する新鮮なCMに非接着性細胞を入れた。細胞を4日間培養し、アデノウイルスによる形質導入のために回収した。アデノウイルス感染では、総容量1mlの無血清培地中で1×106のDCを5×107PFUのウイルスと混合した。24時間インキュベートした後、DCをPBSで3回よく洗浄し、さらに48時間インキュベートした。8日目に、エキソソームの精製および感染DCの回収のために培養上清を回収した。
【0101】
エキソソームの単離:以前に報告された方法に軽微な変更を加えてエキソソームを単離した(Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996))。回収済みの培養上清を、300gで10分間、1200gで20分間、および3000gで30分間遠心分離した。最終の遠心分離から得られた上清を、超遠心機で100,000gで1時間、再度遠心分離した。エキソソームペレットを生理食塩水中で洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、生理食塩水に再懸濁した。
【0102】
フローサイトメトリー:DCの表現型解析では、マウス表面分子(CD11b、CD11c、CD80、CD86、H−2Kb、I−Ab、および適切なアイソタイプ対照)に対するPE−またはFITC−コンジュゲートモノクローナル抗体でDCを染色した。
【0103】
FACS解析では、最終容量20μl中で室温で15分間、エキソソームを5μlの直径4μmのアルデヒド/スルファートラテックスビーズとインキュベートした。各ビーズ/エキソソームサンプルにウシ血清アルブミン(BSA)10mgを加えた後、インキュベーションを15分間継続した。1mlの生理食塩水を加え、その後、穏やかに振盪しながら75分間のインキュベーションを行った。100mMグリシンと30分間インキュベートすることによって反応を停止させた。エキソソームコーティングビーズを抗体で染色し、FACSバッファー(生理食塩水中の3%ウシ胎児血清(FBS)および0.1%NaN3)で2回洗浄し、FACSバッファー400μlに再懸濁した。DCおよびエキソソームをFACScan(Becton Dickenson, CA)によって調べた。
【0104】
電子顕微鏡観察:分画遠心法によってエキソソームを精製し、Formvar/カーボンコーティンググリッドに10μlを載せ、中性1%水性リンタングステン酸10μlでネガティブ染色し、JEOL−1210コンピュータ制御高コントラスト120kv透過型電子顕微鏡を使用して観察した。骨髄由来DCを単離した。5日目に、単離されたDCの半分をAd.FasLに感染させた。上記のようにエキソソームを単離した。
【0105】
タンパク質解析およびウエスタンブロッティング:5マイクログラムのエキソソームタンパク質およびDCライセートを12%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離した。タンパク質をニトロセルロース膜(Amersham)上にブロットした。ブロッキング後、抗体、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼを膜に接触させ、X線フィルムを使用してenhanced chemiluminescence(Perkin Elmer Life Science)によって検出した。
【0106】
8.1.2 結果
Ad.eGFPまたはAd.FasLでの形質導入の1日後によく洗浄した後、感染したマウスDCを48時間培養し、分画遠心法によって上清からエキソソームを単離した。106個のマウス骨髄DCは48時間にわたって1〜2μgのエキソソームを産生した。次いで、MHCおよび共刺激分子の存在に関してDCおよび単離されたDC由来のエキソソームを分析した。その分析は、ラテックスビーズにカップリングされた抗体とのインキュベーション、その後のフローサイトメトリーによって行った。図4A〜Cに示されるように、Ad.eGFPおよびAd.FasLで形質導入されたDCならびに対照で形質導入されたDC由来のエキソソームは、MHCクラスIおよびII分子、CD11cならびに共刺激分子CD80およびCD86に関して陽性であった(図4A)。さらに、抗FasL抗体を使用するウエスタン解析によって、DC/FasLおよびDC/FasL由来のエキソソームはともに約40KdaのヒトFasLトランスジーンに関して陽性であることが示された(図4B)。これらの結果は、Ad/FasLで形質導入されたDC由来のエキソソームが、タンパク質分解されていない、無傷のFasLならびにMHC、共刺激分子、およびCD11cを含有していたことを実証する。EMによるエキソソーム画分の分析では、かなりの数の、エキソソームに特徴的な受け皿型の小胞が示された(図4C)。
【0107】
8.2 足蹠膨大アッセイにおいて、FasLを提示するエキソソームを局所投与すると、処置された足および反対側の足の両方において遅延型過敏性(「DTH」)に関連する膨大が減少した
FasLを発現するように遺伝子改変されたDC、ならびにその改変型DC由来のエキソソームがin vivoで炎症を抑制できるかどうかを試験するために、DTHマウスモデルを利用した。このモデルでは、特定の抗原、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミン(OVA)でマウスを免疫し、その後、免疫の10〜14日後にその特定の抗原を後肢の足蹠(footpad)に注射することによってTh1媒介性の炎症反応を誘発する。
【0108】
8.2.1 材料および方法
骨髄からの単離後、DCをAd.Ψ5またはAd.FasLに感染させた。セクション8.1に記載のようにエキソソームを精製した。
【0109】
DTHモデルへのエキソソームの投与:フロイント完全アジュバント(FCA)中で1:1で乳化された抗原(KLHまたはOVA)100μgを1箇所の背側部位に注射することによってC57BL/6マウスを感作した。10日後、免疫したマウスの一方の後肢の足蹠に106個のDCまたはDC由来のエキソソーム1μgを注射し、その12時間後に抗原に曝露した。反対側の足蹠には、DCまたはエキソソームの代わりに等容量の生理食塩水を投与した。生理食塩水20μlに溶解された抗原20μgを両足蹠に注射することによってマウスを抗原に曝露した。曝露の24、48および72時間後に足蹠の膨大を測定した。抗原での追加免疫注射の前およびその後に、結果を膨大の差異(×0.01mm)として表した。
【0110】
統計解析:スチューデントt検定を使用し、また分散分析によって、結果を比較した。
【0111】
8.2.2 結果
図5に示されるように、DC/FasLまたはDC/FasL由来エキソソームを送達すると、抗原の注射の24、48および72時間後に、処置された足だけでなく、無処置の反対側の足においても足膨大が顕著に抑制された。対照的に、DC/Ψ5または対照DC由来のエキソソームを注射しても、DTH応答を阻害することはできなかった。これらの結果は、FasLを発現する遺伝子改変型DC、ならびにDC/FasL由来のエキソソームが、処置された足だけでなく、反対側の無処置の足においてもDTH応答の抑制に等しく有効であることを実証する。
【0112】
関節炎の複数の異なる動物モデルにおいて、種々の異なる治療用遺伝子をin vivoおよびex vivo送達すると、いずれの送達においても対側効果が観察される(Kimら, J. Immunol. 164:1576-1581 (2000); Whalenら, J. Immunol. 162:3625-3632 (1999); Lechmanら, J. Immunol. 163:2202-2208 (1999); Ghivizzaniら, Proc Natl Acad Sci U S A. 95:4613-4618 (1998); Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001); Ijimaら, Hum Gene Ther. 12:1063-1077 (2001); Kimら, Mol Ther. 6:584-590 (2002); Smeetsら, Arthritis Rheum. 48:2949-2958 (2002); Lechmanら, Gene Ther. 10:2029-2035 (2003))。
【0113】
8.3 FasLを提示する同系エキソソームによる遅延型過敏性の抑制
8.3.1 材料および方法
DC由来のエキソソームが炎症を抑制できるメカニズムを調べるために、観察された効果がMHC依存的および抗原特異的であるかどうかを調べた。エキソソームのDTH応答阻害能がMHC依存的であるかどうかを決定するために、同種異系エキソソームがin vivoでDTH応答を抑制できるかどうかを調べた。同系エキソソームの供給源としてC57BL/6(H−2b,I−Ab)マウス由来のDCを使用し、一方、同種異系エキソソームの供給源としてBalb/C(H−2d,I−Ad)由来のDCを使用した。同系および同種異系のDC由来のエキソソームのin vivoにおけるDTH抑制能を調べるために、KLH免疫マウスの両側の後肢の一方に同系または同種異系エキソソームを注射し、その12時間後に、両後肢に抗原を注射した。48時間後に足蹠の膨大の程度を測定した。
【0114】
8.3.2 結果
同種異系DC由来のエキソソームはDTH応答を抑制できなかった(図6)。対照的に、同系マウス由来の、Ad.FasLで形質導入されたDCまたはDC/FasL由来のエキソソームを注射すると、DTHの抑制が観察された。さらに、同系DC/FasL由来のエキソソームによる局所処置を施すと、処置された足および無処置の反対側の足の両方において足膨大が減少した。また、このin vivoでの結果は、そのExo/FasLの効果が、FasLを保持する細胞膜の注射に由来する、広範囲に及ぶアポトーシスの誘発のためではないことを実証する。
【0115】
8.4 FasLを提示するエキソソームの遅延型過敏性の抑制はMHCクラスII依存的である
8.4.1 材料および方法
DCおよびエキソソームによって付与される免疫調節の性質をさらに調べるために、MHCクラスIおよびクラスII欠損マウスの両者からDCを調製し、Ad.FasLまたはAd.Ψ5に感染させた。MHCクラスIおよびクラスII欠損マウスのDC/FasLまたはDC/Ψ5からエキソソームを単離し、KLH免疫マウスの後肢に注射した。
【0116】
8.4.2 結果
クラスI欠損マウス由来の遺伝子改変型DCおよびDC由来のエキソソームの注射は、治療効果の大きさに対して最低限の効果しか有さない(図7A)。しかし、MHCクラスII欠損マウス由来のFasL発現DCおよびDC由来のエキソソームを注射すると、どちらの場合も、治療的な抗炎症性効果が完全に抑止された(図7B)。これらの結果は、DC/FasLの治療効果が、クラスIではなくMHCクラスII依存的であることを示し、DTH応答の調節に関するCD4+T細胞の主要な役割と合致する(Ptakら, J. Immunol. 146:469-475 (1991))。さらに、その結果は、DTH応答についての観察された調節に関して、エキソソームが、DCと同様に、クラスIではなくクラスIIを必要とすることを示す。
【0117】
8.5 エキソソーム媒介性の遅延型過敏性応答の阻害は抗原特異的である
8.5.1 材料および方法
FasLを提示するエキソソームが免疫応答の抗原依存的な抑制をもたらすことができることを実証するために、マウスをKLHに対して免疫した。DCを調製し、Ad.FasLまたはAd.eGFPに感染させ、次いで、KLHまたはOvaタンパク質のいずれかでパルスした。個々のDC培養物からエキソソームを調製し、免疫したマウスに注射し、その直後にKLHを注射してDTH応答を誘発した。応答を48時間後に測定した。
【0118】
8.5.2 結果
図8に示されるように、Ad.FasL感染、KLHパルス済みDC由来のエキソソームは、注射された足ならびに無処置の反対側の足において炎症を減少させた。対照的に、Ovaパルス済み、FasL発現DC由来のエキソソームは、KLH処理、Ad.eGFP感染DC由来のエキソソームと同様に、炎症を中程度にしか抑制できなかった。これらの結果は、FasL発現DC由来のエキソソームが抗原特異的な様式で炎症を抑制できることを示唆する。
【0119】
8.6 FasL欠損マウスの樹状細胞から調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を抑制できなかった
8.6.1 材料および方法
野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかからDCおよびDC由来のエキソソームを単離し、対照アデノウイルスまたはFasLを発現するアデノウイルスに感染させた。DCおよびDC由来のエキソソームを、あらかじめKLHに対して免疫された野生型マウスの足蹠に注射して戻し、その12時間後に足蹠にKLHを注射した。そして抗原注射後の足膨大の程度を測定した。また、野生型およびgld(FasL−/−マウス)由来のエキソソームをlpr(Fas−/−)マウスに注射して戻して、エキソソームおよびDCの効果がレシピエントマウス中の機能的Fasの存在を必要とすることを実証した。
【0120】
gld(FasL−/−)マウス由来のDCおよびエキソソームは、注射された足および反対側の足においてDTH応答を抑制できなかったが、gld DCおよびDC由来のエキソソームをAd.FasLで形質導入するとその効果が回復した(図9A)。さらに、FasLを含有するエキソソームならびにDC−FasLはlpr(Fas−/−)マウスにおいて効果がなかった(図9B)。
【0121】
8.7 FasLを保持するエキソソームを投与するとコラーゲン誘発関節炎モデルにおいて疾患の重症度が改善された
DC/FasL由来のエキソソームがコラーゲン誘発関節炎を治療できることを実証するために、マウスコラーゲン誘発関節炎モデルにエキソソームを注射した。
【0122】
8.7.1 材料および方法
7〜8週齢のオスDBA/1 lacJ(H−2q)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入し、University of Pittsburgh Biotechnology Centerの無菌動物施設で飼育した。0.05M酢酸中の2mg/mlの濃度のウシII型コラーゲン(Chondrex)を等容量のフロイント完全アジュバント(FCA)中で乳化し、マウスの尾のつけ根に注射した。
【0123】
確立されている巨視的なスコア化システム(0〜4の範囲)によってマウスをモニターした:0,正常;1,紅斑(erythma)を伴う検出可能な関節炎;2,顕著な膨大および潮紅;3,関節から指にかけての重篤な膨大および潮紅;および4,最大の膨大および強直症を伴う変形。巨視的スコアの平均をすべての足に関する累積値として表した。マウスあたりの最大限のスコアは16である(n=7)。
【0124】
DCをAd/FasLまたはAd/Ψ5に感染させ、28日目に、ウシII型コラーゲンで免疫したDBA1マウスに、感染DCから単離したエキソソームを静脈内注射した。
【0125】
8.7.2 結果
DC/FasL(図10A)およびFasLを提示するエキソソーム(図10B)での処置では、1回の処置後に、疾患の発症を遅延させ、かつ関節炎の進行を抑制することができ、一方、Exo/Ψ5対照群では、DC対照および生理食塩水対照と比較して、疾患の退行に関する中程度の効果が示された。これらの結果は、FasLを発現するDC由来のエキソソームの1回の注射によってコラーゲン誘発関節炎を抑制できることを示唆する。同様に、確立した疾患を有するマウス(32日目)にExo/FasLを注射した場合も疾患が抑制された。
【0126】
9. 実施例:DC/IL−10由来のエキソソームは免疫抑制活性を有する
9.1 IL−10を提示するBMDC由来のエキソソームのin vitroにおける機能
BM−DC由来のエキソソームがT細胞の増殖を抑制する能力を実証するために、混合白血球反応(MLR)へのDC由来のエキソソームの添加の効果を調査した。潜在的に免疫抑制性であるDC由来のエキソソームの供給源として、ウイルス性IL−10(vIL−10)と称される、エプスタイン・バーウイルスによってコードされるIL−10遺伝子を発現するアデノウイルスで形質導入されたBMDCを使用した。vIL−10を関節内に遺伝子導入すると、抗原誘発関節炎(AIA)ウサギモデルおよびコラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデル(5,6)の両者において炎症が抑制されることが示されている。対照として、ルシフェラーゼを発現するアデノウイルスベクター(Ad.Luc)で形質導入されたBM−DCを使用した。
【0127】
9.1.1 材料および方法
ベクターの構築およびアデノウイルスの作製:以前に報告されている標準的プロトコルにしたがって、ウイルス性IL−10を発現するアデノウイルス(Ad.vIL−10)および改良型緑色蛍光タンパク質を発現するアデノウイルス(Ad.eGFP)を構築し、増殖させ、力価測定した(Kimら, Arthritis Res. 2:293-302 (2000))。簡潔には、DNA、アデノウイルス5由来のE1およびE3欠失型アデノウイルス骨格(psi5)およびアデノウイルスシャトルベクターであるpAdloxの同時トランスフェクション後に、Creリコンビナーゼを発現する293細胞(CRE8細胞)における相同組換えによって組換えアデノウイルスを作製した。ヒトCMVプロモーターの制御下で挿入されたcDNA配列を発現させる。CsCl勾配超遠心によって組換えアデノウイルスを精製し、無菌のウイルス保存バッファー中で透析し、アリコートに分け、使用時まで−80℃で保存した。CRE8細胞を培養し、10%ウシ胎児血清を添加したDMEM(Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で維持した。
【0128】
リンパ球混合培養反応:丸底96ウェルプレート中でin vitroミクロ培養するためにBALB/cマウスの脾臓からT細胞を精製した。各ウェルに、対照C57BL/6由来のDCもしくは遺伝子改変型C57BL/6由来のDC(vIL−10、rIL−10またはルシフェラーゼ)またはその単離されたエキソソームのいずれかとともに5×104個の脾臓T細胞を播種した。5:1、10:1、20:1、および40:1のT細胞:DC比でT細胞にDCを加えた。培養5日目に、各ウェルに1μCiの3H−チミジンを加え、その16時間後に回収した。microplate Beta counter(Wallac, Truku, Finland)で増殖性T細胞の放射性標識を測定した。
【0129】
9.1.2 結果
Ad.vIL−10で形質導入されたDCをMLRに加えると、3H−チミジンの取り込みによって測定されるT細胞の増殖をほとんど完全に抑制できたが、形質導入されていないDCを加えてもほとんど効果を示さないか、または全く効果を示さなかった(図11A)。Ad.vIL−10に感染させたBM−DCによって分泌されたエキソソームは、T細胞増殖に関して4分の1への中程度の減少を示した(図11B)。これらのデータは、免疫抑制性vIL−10発現性DCから単離されたエキソソームがT細胞の増殖をブロックできること、および無改変BMDC由来のエキソソームがそれ自体で部分的な抗炎症特性を有している可能性があることを示唆する。
【0130】
9.2 IL−10を提示するエキソソームは遅延型過敏性モデルにおいて炎症を抑制できる
in vivoにおけるBM−DC由来のエキソソームの抗炎症性効果を実証するために、C57BL/6マウスの遅延型過敏性モデルを使用した。このモデルは、以前、一方の後肢の足蹠にAd.vIL−10を注射すると、注射された足蹠および反対側の足蹠の両方において炎症が抑制されることを示すために使用されている。さらに、DTHモデルにおいて局所性Ad.vIL−10送達後に観察された対側効果は内因性APCによって付与されたことが養子移入実験によって示されている。感作済みマウスの群の右後肢の足蹠に、無処理もしくは遺伝子改変型DCまたはこれらの細胞の培養培地由来のエキソソームのいずれかを注射した。反対側の足蹠には同様の容量の生理食塩水注射を投与した。12時間後、各足蹠をKLH20μgに曝露し、疾患誘発の24、48および72時間後に足蹠の膨大をモニターした。
【0131】
9.2.1 材料および方法
遅延型過敏性:0日目に、フロイント完全アジュバント(Difco, Detroit, MI)中で1:1で乳化された抗原(OVA)100μgを皮下注射することによってマウスを感作した。2週間後、あらかじめ感作されたマウスの一方の後肢の足蹠に、1×106個の処理済みDC(50μlのPBS中)または各実験DC群由来の精製済みエキソソーム1μg(50μlのPBS中)のいずれかを注射した。実験DC群には、50moiのAd.ルシフェラーゼで形質導入されたDCおよび50moiのAd.vIL−10で形質導入されたDCが含まれる。反対側の足蹠には、等容量の生理食塩水を注射した。1日後、マウスの両後肢の足蹠に、50μlのPBSに溶解された抗原20μgを注射することによって抗原に曝露し、24時間、48時間、および72時間後にバネ付きカリパス(Dyer Co. Lancaster, PA)で足蹠を測定した。その結果を、膨大に基づくサイズ差(mm×10−2)として表した。
【0132】
統計解析:Microsoft Excelソフトウェアプログラムを使用してすべてのデータを分析した。スチューデントt検定およびANOVAの両者を使用して群の比較を実施した。
【0133】
9.2.2 結果
図12に示されるように、生理食塩水対照動物におけるDTH応答は重篤であり、足の厚みの平均増加は2mmを超えた。しかし、Ad.vIL−10で形質導入された1×106個のBM−DCを投与されたマウスの注射された足蹠では、足蹠の膨大が50%以上減少した。また、これらの同一の動物の生理食塩水で処置された反対側の足蹠で、炎症の減少(40%)が観察された。興味深いことに、Ad.vIL−10で形質導入されたBMDC由来の1マイクログラムの分泌エキソソームの注射はさらにより保護性であり、生理食塩水対照マウスと比較して足膨大が65%抑制された。さらにまた、Ad.vIL−10/エキソソームで処置された関節の反対側の足蹠においても顕著な減少が観察された(図9A)。Ad.Luc/DC、Ad.Luc/エキソソーム、無処理DCまたは無処理DC由来のエキソソームを投与しても、足蹠の膨大の顕著な減少は観察されなかった。これらのデータは、Ad.vIL−10で形質導入されたBMDC由来のエキソソームが、感作済みマウスに局所送達されると、処置された足蹠および無処置の反対側の足蹠の両方においてDTHを抑制できることを示唆する。
【0134】
9.3 組換えIL−10で処理されたDC由来のエキソソームは免疫抑制性である
9.3.1 材料および方法
上で実施された実験は、Ad.vIL−10で形質導入されたDC由来のエキソソームが免疫抑制性であることを示唆するが、低レベルのAd.vIL−10またはvIL−10タンパク質がエキソソーム調製物に混入した可能性がある。アデノウイルスの感染またはvIL−10タンパク質の混入が、観察された効果に寄与しなかったことを示すために、BM−DCを、培養中で24時間、1μg/mlの組換えマウスIL−10タンパク質で処理し、生成されたエキソソームを、実施例9に記載のようにC57BL/6マウスの遅延型過敏性モデルを利用してin vivoで試験した(図12B)。
【0135】
9.3.2 結果
組換えマウスIL−10で処理されたDC由来のエキソソームは、抗原への曝露の48時間後に強い免疫抑制効果を生じた。それは、処置された足において足膨大が6分の1に減少し、無処置の反対側の足では3分の1に減少したことによって実証される。総合すると、これらの結果は、マウスIL−10で処理されたBMDC由来のエキソソームが、処置された足蹠および無処置の反対側の足蹠の両方においてDTHを抑制でき、この効果のメカニズムとしてアデノウイルスの混入が実質的に除外されることを実証する。エキソソーム調製物中で、ELISAによって組換えIL−10タンパク質が検出されなかったことに留意することも重要である。
【0136】
9.4 膜破壊はエキソソームの免疫抑制能を喪失させる
9.4.1 材料および方法
100,000×g富化ペレット画分中に存在するエキソソームがDTHモデルにおける治療効果の付与に重要であることを確認するために、無傷のエキソソーム粒子の有効性に関する必要条件を調べた。
【0137】
DCまたはAd.ルシフェラーゼもしくはAd.vIL−10で形質導入されたDC由来のエキソソームを単離し、4サイクルの凍結/解凍に付した。5μgの調製物をSDS−PAGE解析によって分離し、Hsc70に関してブロットした。
【0138】
エキソソームがDTH応答の抑制に無傷の膜を必要とするかどうかを試験するために、Ad−vIL−10で形質導入されたDC由来の1μgの無傷または凍結/解凍エキソソームをKLH免疫マウスの一方の後肢の足蹠に注射して処置した(図10C)。24時間後、各足蹠をKLHで追加免疫し、足蹠の膨大の程度を測定した。
【0139】
9.4.2 結果
4サイクルの凍結/解凍によってエキソソームの完全性が破壊されたことが電子顕微鏡観察によって実証された(図13A)。実際、可溶性のエキソソーム関連タンパク質Hsc70は凍結/解凍処理エキソソーム画分では検出されなかったが、無処理エキソソームには共存していた(図13B)。
【0140】
無傷のexo/vIL−10で処置された群では足蹠の膨大の減少が観察されたが、凍結/解凍処理exo/vIL−10を注射された群は、生理食塩水または対照DC由来のエキソソームで処置された対照群と同様に足膨大の減少を示さなかった。これらの結果は、複数サイクルの凍結/解凍によってエキソソームの膜構造が破壊され、それによってDTHモデルにおけるエキソソームの免疫抑制能が失われたことを実証する。
【0141】
9.5 遅延型過敏性応答の抑制に必要とされるMHCクラスII含有エキソソーム
以下のデータは、DTH応答の抑制に関する、MHCクラスII陽性エキソソームを枯渇させることの影響を実証する。
【0142】
9.5.1 材料および方法
Ad.vIL−10で形質導入されたBMDC由来のエキソソームを前処理のために4つのサンプルに分け、その後、感作済みマウスに注射した(図14A)。第一のエキソソームサンプルはマウスMHC IIに特異的な常磁性ビーズであらかじめ吸収し(Exo/vIL−10(MHC II IP))、第二のサンプルは、DC由来のエキソソーム上に存在しない細胞表面分子であるNK1.1に特異的な常磁性ビーズであらかじめ吸収した(Exo/vIL−10(IP対照))。第三のサンプルは複数サイクルの凍結/解凍に付し(Exo/vIL−10(F/T))、第四のサンプルは無処理のままにした。次いで、エキソソームサンプルをマウスの一方の後肢の足蹠に注射し、12時間後、両後肢の足蹠においてDTHによって誘発された足蹠の膨大を以後72時間にわたって測定した。
【0143】
9.5.2 結果
対照DC由来のエキソソームは足蹠の膨大に関して効果を有さず、一方、Ad.vIL−10/エキソソームは、注射された足蹠および無処置の反対側の足蹠の両方においてDTHを劇的にブロックすることができた。NK1.1ビーズであらかじめ吸収したエキソソーム調製物は免疫抑制活性を示した。しかし、Ad.vIL−10/エキソソームサンプルをクラスIIビーズであらかじめ吸収すると、ほぼ100%のin vivo活性が抑止された。重要なことに、クラスII陽性エキソソームが結合しているその常磁性ビーズそのものを注射すると、吸収していないAd−vIL−10エキソソームの場合に観察される活性と同様の免疫抑制活性が得られた。組換えマウスIL−10タンパク質で処理されたDC由来のエキソソームは、MHC II枯渇後のDTH応答の場合と同様の結果を示した(図14B)。その結果は互いに合致していた。また、Ad−vIL−10または組換えIL−10処理DC由来の両方のエキソソームにおいて複数回の凍結/解凍サイクルを経た製剤は活性を失っていた(図13C)。これらのデータは、エキソソーム画分をマウスに投与した場合に観察されるin vivoの抗炎症性効果がMHCクラスII依存的であることを示唆する。MHCクラスIIはエキソソーム表面に高レベルで存在するため、このことは、マウスで観察されるin vivo活性がエキソソームに起因することを示唆する。さらにまた、小胞の完全性も必要とされるようである。また、これらのin vivoの抗炎症性効果は構造的に無傷のMHCクラスII陽性エキソソームに特異的であるようであり、その効果のメカニズムとしてアデノウイルスの混入が実質的に除外される。
【0144】
9.6 IL−10を提示するエキソソームはマウスのコラーゲン誘発関節炎を抑制できる
9.6.1 材料および方法
4℃で一晩撹拌することによって、ウシII型コラーゲン(Chondrex L.L.C., Redmond, WA)を0.05M酢酸中に2mg/mlの濃度で溶解し、等容量のフロイント完全アジュバント(CFA)中で乳化した。コラーゲン100μgを用いて尾のつけ根で皮内的にマウスを免疫した。初回免疫後の21日目に、マウスにフロイント不完全アジュバント(IFA)中のII型コラーゲンの皮内追加免疫注射を行った。確立されている巨視的なスコア化システム(0〜4の範囲)によって1日おきにマウスをモニターした:0=正常;1=紅斑を伴う検出可能な関節炎;2=顕著な膨大および潮紅;3=関節から指にかけての重篤な膨大および潮紅;および4=最大の膨大および強直症を伴う変形。巨視的スコアの平均をすべての足に関する累積値として表した。マウスあたりの最大限のスコアは16である。また、バネ付きカリパスで各足の厚みを測定し、全4足の厚みを加算することによって各マウスの足膨大を算出した。群あたり10匹のマウスを用いてin vivo実験を実施し、2回繰り返して再現性を確かめた。
【0145】
関節リウマチ(RA)は消耗性の自己免疫疾患であり、遠位可動(diarthroidial)関節の慢性炎症および軟骨組織の進行性の破壊を特徴とする。DBA1/lacJ(H−2kq)系統にウシII型コラーゲンを注射すると、関節において同様の病状ならびに炎症を誘発できる。DCおよびDC由来のエキソソームがコラーゲン誘発関節炎を治療する能力を調べるために、DCをAd−vIL−10に感染させ、その後、得られたエキソソームを、ウシII型コラーゲンで免疫されたDBA1マウスに静脈内注射した。28日目に注射を実施し、その直後に疾患が発症した。
【0146】
9.6.2 結果
DC/vIL−10またはDC/vIL−10由来のエキソソームのいずれかを1回注射することによって、関節炎の発症を遅延させ、かつその重症度を減少させることができたが、生理食塩水を注射された対照群では、疾患が通常通りに進行した(図15)。この結果は、IL−10を発現するDC由来のエキソソームの1回の注射が、自己免疫性、炎症性疾患において全身性の治療効果を付与することができる遺伝子改変型DCの注射に匹敵することを示す。
【0147】
疾患の予防研究におけるDC由来のエキソソームの分析に加えて、確立したCIAを有するマウスにおいてDC−IL−10由来のエキソソームを試験した。Ad.vIL−10で形質導入されたDCまたは組換えIL−10で処理されたDC由来のエキソソームを、確立した疾患を有するマウスに静脈内注射した(図16A−C)。exo−IL−10処置群における疾患の抑制が予防研究で示された抑制より劣っていたとはいえ、Ad.vIL−10で形質導入されたDCおよび組換えIL−10で処理されたDC由来の両エキソソームは、確立した疾患の重症度を減少させることができた(図16A)。さらに、エキソソームを凍結/解凍処理すると治療効果が抑止され(図16B)、一方、組換えIL−10を直接注射しても疾患の進行に影響はなかった(図16C)。
【0148】
10. 実施例:DC/IL−4由来のエキソソームは免疫抑制活性を有する
10.1 DC/mbmIL−4およびそれから調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を抑制する
膜結合型IL−4を保持するアデノウイルスベクター(Ad.mbmIL−4)または陰性対照ウイルス(Ad.Psi5またはΨ5)のいずれかで樹状細胞をトランスフェクトした。これらのDCの一部分からエキソソームを調製した。次いで、本明細書中に記載のマウス足蹠DTHモデルにおいてDCおよびエキソソームを試験した。その結果は図17に示される通りである。DC/mbmIL−4およびDC/mbmIL−4から調製されたエキソソームはともに、注射された足およびその反対側の足の両方においてDTH応答を抑制した。したがって、膜結合型IL−4の増強物質としての有効性が実証される。
【0149】
10.2 DC/smIL−4およびそれから調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を抑制する
可溶型IL−4を保持するアデノウイルスベクター(Ad.sIL−4)または陰性対照ウイルス(Ad.Psi5またはΨ5)のいずれかで樹状細胞をトランスフェクトした。これらのDCの一部分からエキソソームを調製した。次いで、本明細書中に記載のマウス足蹠DTHモデルにおいてDCおよびエキソソームを試験した。その結果は図18に示される通りである。DC/smIL−4およびDC/smIL−4から調製されたエキソソームはともに、注射された足およびその反対側の足の両方においてDTH応答を抑制した。したがって、可溶性IL−4の増強物質としての有効性が実証される。
【0150】
10.3 DC/mbmIL−4およびそれから調製されたエキソソームならびにDC/FasLおよびそれから調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を阻害した
10.3.1 材料および方法
ウイルスに感染していないか、あるいはAd.eGFP対照ベクター、Ad.FasLまたは膜結合型IL−4を保持するアデノウイルスベクター(Ad.mbIL−4)に感染させたC57/BL6骨髄由来のDCからエキソソームを単離した。精製済みエキソソーム(1μgの総タンパク質量)ならびに種々のDC集団(5×105個の細胞)を、あらかじめKLHに対して免疫されたマウスの右足蹠に注射した。エキソソームまたはDCの注射の24時間後、左右後肢の足蹠にKLH抗原を注射し、処置された足蹠およびその反対側の左の足蹠の両方に関して48時間にわたって膨大の程度を測定した。
【0151】
10.3.2 結果
FasLまたはIL−4改変型DC由来のエキソソーム画分がDTH応答の阻害に有効であるかどうかを決定するために、C57/BL6マウスからDCを単離し、アデノウイルスの感染によってFasLまたはIL−4を発現するように遺伝子改変した。これらの実験では、IL−4に融合させたCD28の膜貫通領域を含有する膜結合型IL−4を使用した(mbmIL−4)。次いで、DCおよびエキソソーム画分を右の後肢の足蹠に注射し、その24時間後に両後肢の足蹠に抗原を注射した。興味深いことに、DCおよびAd.FasLおよびAd.mbmIL−4に感染させたDC由来のエキソソーム画分はともに、処置された足だけでなく、反対側の足においても同様に、炎症反応を抑制することができた(図19)。この結果は、エキソソームおよびその由来のDCが、抗原特異的である何らかのメカニズムによって、局所注射後に、全身性の免疫抑制を付与できることを示唆する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、エキソソームは、in vivoにおいて、特異的抗原をプロセシングしている流入領域リンパ節の抗原提示細胞と相互作用し、その結果、抗原特異的な抑制が生じる可能性がある。
【0152】
10.4 DC/IL−4由来のエキソソームはFasLおよびFasを必要とする
野生型およびgld(FasL−/−)マウスからDCを単離し、可溶性(smIL−4)または膜結合型(mbmIL−4)マウスIL−4のいずれかを発現するように改変した。DC集団およびDC由来のエキソソームを、野生型またはlpr(Fas−/−)マウスのいずれかの足蹠に注射して戻し、足蹠に抗原を注射した後の足膨大に対する影響を測定した。
【0153】
DC/IL−4(膜結合型または可溶性のいずれか)から単離されたエキソソームは、DTH応答を抑制するために、レシピエント中のFasLならびにFasを必要とする(図20)。
【0154】
10.5 エキソソームの免疫抑制には同系性が必要とされる
図21A−Bに示されるように、同種異系ではなく、同系のDC/mbmIL−4から調製されたエキソソームだけがマウス足蹠モデルにおいてDTH応答を抑制することが観察された。このことは、エキソソーム媒介性の免疫抑制におけるMHCクラスII抗原の役割と合致する。
【0155】
10.6 DC/IL−4由来のエキソソームはB7.1およびB7.2を必要とする
10.6.1. 材料および方法
B7.1およびB7.2がともに欠損しているマウスからDCを単離し(KO)、対照(Psi−5)またはIL−4発現性アデノウイルスベクターのいずれかに感染させた。種々のDC集団からエキソソームを単離し、次いで、それ(1μgのエキソソーム)をKLH免疫マウスの一方の足に注射した。注射された足ならびに無処置の足において足膨大の程度を測定した。
【0156】
10.6.2 結果
図22に示されるように、アデノウイルスによる遺伝子導入によってIL−4を発現するように改変された野生型DC由来のエキソソームはDTH応答を抑制することができたが、B7.1/B7.2二重GKO(「KO」)DC由来のエキソソームはDTH応答に対して影響しなかった。さらに、B7欠損DCは、B7欠損DC由来のエキソソームの場合に観察された結果と同様に、DTH応答に対して影響を有さなかった。Lohrら, 2003, Nature Immunol. 4:664によれば、糖尿病を抑制するためのT調節細胞の誘導に関して、B7に関する同様の必要条件が観察されている。
【0157】
さらに、免疫抑制性DCおよびDC由来のエキソソームがCD4+CD25+のT細胞の集団を刺激することが観察されており、この細胞集団は調節性T細胞集団である可能性がある。
【0158】
10.7 DC/IL−4由来のエキソソームはコラーゲン誘発関節炎モデルの関節炎を改善させる
10.7.1 材料および方法
擬感染、あるいはAd.psi−5(対照)、Ad.mIL−4、またはAd.mbmIL−4のいずれかに感染させたDBA1骨髄由来のDCからエキソソームを単離した。次いで、疾患の発症後(32日目)に、エキソソーム(1μgの総タンパク質量)をDBA1マウスに静脈内注射した。1か月の期間にわたって各処置群の各足に関して関節炎の重症度をモニターした(スケール0〜4、最大スコア16)。
【0159】
10.7.2 結果
図23に示されるように、DC/IL−4および特にDC/mbmIL−4から調製されたエキソソームで処置すると、疾患の進行をブロックすることができた(32日目には、すべての被験動物が疾患病態の徴候を示した)。一部の処置マウスは無疾患のようであった。
【0160】
11. 免疫抑制活性の養子移入
図24A−Bに示されるように、エキソソームで処置されたマウス由来のCD11C細胞を養子移入するとDTH応答をブロックすることができた。このことは、CD11C陽性細胞が免疫抑制性エキソソームによる調節に関する標的であることを実証する。
【0161】
12. 糖尿病のマウスモデルにおけるエキソソーム媒介性の高血糖の抑制
12.1 材料および方法
若いNODマウスの骨髄からDCを作成し、Ad.IL−4に感染させるか、または感染させなかった。DC集団由来のエキソソームを単離し、1μgのエキソソームを5〜6週齡のNODマウスに静脈内注射した。生理食塩水(sale)処置を対照として使用した。次いで、高血糖に関して動物をモニターした。
【0162】
12.2 結果
CIAマウスモデルで観察された顕著な治療効果に基づいて、高血糖(hypoglycemia)の発症をブロックする活性に関して免疫抑制性DCの能力を同様に試験した。IL−4を発現するように改変された、若いNODマウス(3〜4週齢)の骨髄由来のDCを静脈内注射すると、10週齢で投与された場合に高血糖になるNODマウスの割合が減少することが観察された。さらに、NF−κBインヒビター(二本鎖NF−κBデコイオリゴヌクレオチド)で処理されて、より未成熟なDC表現型(低CD80、CD86およびCD40)になったNODマウスの骨髄由来のDCで処置すると、NODマウスの高血糖の発症を抑制できることが示された。これらの観察ならびにCIAモデルでの結果と合致して、FasLを発現するように遺伝子改変されたDCは、膵島炎の初期に投与された場合、NODマウスの高血糖の発症を抑制することが示されている(J. Mountz)。ゆえに、IL−4またはFasLのいずれかを発現するように改変されているか、あるいはNF−κBインヒビターで処理された免疫抑制性DCは、疾患を予防するか、または回復させることができる場合がある。
【0163】
図25に示されるように、上記実験では、Ad.Il−4で形質導入されたDC由来のエキソソームはNODマウスの高血糖の発症を遅延させ、ならびにその発症の頻度を減少させることができた。
【0164】
13. 実施例:血清から調製されたエキソソーム
13.1 血清を適用するとDTH応答が抑制される
13.1.1 材料および方法
C57BL6マウスをKLHの皮内注射で免疫した。2週間後、マウスから血液を回収した。サンプルを1500gで10分間遠心分離して血清を単離した。合計で50μlの血清をKLH免疫マウスの後肢に注射し、その24時間後に、両側後肢にKLH抗原を追加免疫注射した。KLHの追加免疫注射の48時間後に足蹠の膨大を測定した。
【0165】
13.1.2 結果
ビーズと24時間インキュベートされた、未処置のマウス由来の血清を注射すると、生理食塩水処理対照と比較して、膨大のいくらかの減少が示された(図26,群Iを参照のこと)。インキュベーションまたはビーズなしで、KLH免疫マウス由来の血清を注射すると、生理食塩水対照と比較して、足蹠の膨大の最大の減少が示された(図26,群IIを参照のこと)。ヒトおよびマウスから単離できる血清の量に適切な小型のシリンジであるMinikinを用いてインキュベートされた場合およびそれを用いずにインキュベートされた場合の、KLH免疫マウス由来の血清を注射すると、生理食塩水処理対照と比較して、膨大のいくらかの減少が示された(図26,群IIIおよびIVを参照のこと)。
【0166】
13.2 血清由来のエキソソームはDTH応答を抑制する
13.2.1 材料および方法
KLHの皮内注射でマウスを免疫した。2週間後、マウスから血液を回収し、4時間氷冷した。サンプルを1500gで10分間遠心分離して血清を単離した。次いで、分画遠心法によってエキソソームを単離した。回収された血清を1500gで20分間および3000gで30分間遠心分離した。最終の遠心分離から得られた上清を、再度、超遠心機で100,000gで1時間遠心分離した。エキソソームペレットを生理食塩水で洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、生理食塩水に再懸濁した。
【0167】
50マイクロリットルの生理食塩水中の1マイクログラムのエキソソームをKLH免疫マウスの後肢の足蹠に注射した。他方の後肢には、同一の量の生理食塩水を投与した。24時間後、マウスの両後肢に、50μlの生理食塩水中の20マイクログラムのKLH抗原を注射した。KLHの追加免疫注射の48時間後に足蹠の膨大を測定した。
【0168】
簡潔には、各BMDC培養から回収された培養上清を、300g(5分)、1,200g(20分)、および10,000g(30分)の3回の連続遠心分離に付して細胞および残渣を取り除き、その後、100,000gで1時間遠心分離した。過剰の血清タンパク質を除去するために、エキソソームペレットを大容量のPBSで洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、最終的に、以後の研究のために120μlのPBSに再懸濁した。
【0169】
微小胞を得るために、血清を3,000g(20分)および10,000g(30分)で遠心し、ペレットを生理食塩水に再懸濁した。エキソソームペレットを取り出す超遠心後に血清の上清を得た。その上清は以後の遠心分離の対象とはしなかった。
【0170】
13.2.2 結果
KLH免疫マウス由来の血清の微小胞、血清のエキソソーム、および全血清を投与すると、生理食塩水処理対照または未処置のマウス由来の血清をDTHマウスに投与した場合と比較して、膨大の減少が生じる(図27)。エキソソームは膨大の最大の減少を生じ、全血清の使用よりも顕著に大きな減少を示した(図27,群II)。KLH免疫マウス由来の血清のエキソソームは、KLH免疫マウス由来の上清、凍結/解凍済みエキソソーム、および超音波処理エキソソームより大幅な膨大の減少を生じさせ、非免疫マウス由来の上清およびエキソソームならびに生理食塩水処理対照より非常に大幅な減少を生じさせた(図28)。群VIIは非免疫マウス由来の全血清で処置されている。群VIIIは生理食塩水で処置された対照群である。KLH免疫マウス由来の血清のエキソソームを投与すると、OVA免疫マウス由来の血清のエキソソームより非常に大幅な膨大の減少が示された(図29)。
【0171】
13.3 血清由来のエキソソームは、抗原特異的、MHCクラスII依存的様式で遅延型過敏性応答を抑制する
図30は、マウス血清から精製されたエキソソームを示す電子顕微鏡写真である。図31は、抗MHCクラスII抗体を保持するビーズで標識された血清由来のエキソソームのFACS解析である。留意すべきは、すべてのクラスII陽性エキソソームがCD178(FasL)に関して陽性であると見出されたことである。
【0172】
図32に示されるように、KLHに対して免疫されたマウスの血清から調製されたエキソソームはKLHに対するDLHの抑制に有効であったが、未処置のマウスの血清から調製されたエキソソームはそうではなかった。このことは抗原特異性を例証する。図33は、MHCクラスII抗原を保持するエキソソームに関して枯渇させた血清由来のエキソソーム調製物がほぼすべての免疫抑制活性を失ったことを実証し、このことは血清由来のエキソソームのMHCクラスI依存性を例証する。図34は、血清由来のエキソソームの免疫抑制効果が抗原での免疫の14日後にピークに達することを例証する。
【0173】
14. 実施例:血清から調製されたエキソソームはヒト被験体において免疫抑制性である
14.1 インターロイキン−1受容体アンタゴニストでコンディショニングされた血清(ORTHOKINE(登録商標))は腰部神経根痛を減少させる
無作為、二重盲検臨床試験を実施して、84患者の腰部神経根痛(lumbar radicular pain)の減少に関して、IL−1Rアンタゴニストでコンディショニングされた血清の効果を評価した。データは、痛みの感覚を減少させるために、前記コンディショニングされた血清由来のエキソソームを使用し得ることを示す。
【0174】
14.1.1 材料および方法
ビーズ調製:マイクロタイタープレート(24および48ウェル, Nunc, Denmark)または60mlシリンジ(Perfusor Syringes, Becton Dickinson, USA)中で血液をインキュベートした。シリンジは200個のガラスビーズを含有していた。ガラスビーズは、直径が2.5mmであり、21mm2の表面積を有し、医療用グレードであった。滅菌再蒸留水でビーズを洗浄し、その伝導率が0.3μS未満になるようにした(Hanna Instruments, USA)。50%v/v CrSO4(Merck, Germany)中で5分間インキュベートすることによってビーズの表面を処理した。次いで、ビーズを繰り返し洗浄して、そのpHが、水洗に使用された蒸留水のpHと同一になり、かつその伝導率が0.3μS未満になるようにした(Hanna Instruments, USA)。マイクロタイタープレートまたはシリンジにビーズを詰め、オートクレーブまたはガンマ線照射のいずれかによって滅菌した。
【0175】
血液培養技術:すべての実験で、ビーズが詰まった容器(マイクロタイタープレートまたは60mlシリンジ)に、20〜50歳の範囲の健康な男性または女性のドナーから新たに採取されたヒト全血を充填した。特に記載しない限り、抗凝固剤を使用しなかった。全血培養を滅菌層流条件下で確立した(Kendro, Germany)。インキュベーションは、24時間間隔で、37℃、5%CO2で無菌的に実行した(Kendro, Germany)。インキュベーション後、血清を回収し、遠心分離した(3500rpm,10分間, Megafuge, Kendro, Germany)。マイクロタイタープレート200mlおよびシリンジ10mlから血清を回収した。それは元の総血液量の約20%に相当する。その血清を−20℃で保存した。その血清は、増加したレベルのインターロイキン−1−受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)、ならびに増加したレベルのIL−4およびIL−10を含有することが以前に示されている(Meierら, Inflam Res. 52:1-4 (2003))。その血清は商業的にOrthokine(登録商標)としても知られている。
【0176】
患者に硬膜外神経周囲注射を週に1回で3度施した。客観的および主観的評価を患者1人につき6回(t1〜t6)行った。その評価には、視覚的アナログ尺度(VAS)(Joyceら, Eur J Clin Pharmacol. 14:415-20 (1975))、Oswestry疼痛質問表(Oswestry Pain Questionnaire)(Fairbankら Spine, 25:2940-2953(2000))、SF−36(略式健康調査)(Wareら, Med. Care, 30:473-483 (1992))、および標準化された問診が含まれる。2mlのOrthokine(登録商標)を注射した。一群にIL1−Raコンディショニング血清(Orthokine(登録商標))を投与し、別の群にはトリアムシノロン10mgを投与し、最後の群にはトリアムシノロン5mgを投与した。トリアムシノロンは、炎症、アレルギー、関節炎、および喘息を処置するために一般に使用されるステロイドである。トリアムシノロンは腰部神経根痛の減少に有効であることが示されている(無作為二重盲検試験, Kramer Eur Spine 1997)。
【0177】
14.1.2 結果
各注射後に痛みの顕著な減少(VAS)が生じた(p<0.01)。Orthokine(登録商標)およびTriam群の間には有意差があった(p<.001)。Triam群では6週間後(t4)に痛みが増加するが、Orthokine群では減少が持続する(図36)。Triam 5mgおよび10mgの間には有意差が無かった。SESaff(感情的疼痛尺度:Affective Pain Scale)に関して、t1およびt4の間で顕著な減少が認められたが、群間では差異がなかった(図37)。SESsens(感覚的疼痛尺度:Sensitive Pain Scale)に関して、t1およびt4の間で顕著な減少が認められたが、群間では差異がなかった(図38)。Oswestryスコアに関して、t1およびt4の間で顕著な減少が認められたが、群間では差異がなかった(図39)。3群のいずれにおいても顕著な有害影響は観察されなかった。
【0178】
Orthokine(登録商標)群で観察された結果は、低および高トリアムシノロン群に関する観察結果より非常に良好であった。
【0179】
14.2 ORTHOKINE(登録商標)血清はエキソソームを含有する
14.2.1 材料および方法
実施例16に記載のように血清の調製物からエキソソーム画分を調製した。ヒト血液から血清を単離した。分画遠心法によって血清からエキソソームを富化し、Formvar/カーボンコーティンググリッドに載せ、中性1%水性リンタングステン酸10μlでネガティブ染色し、JEOL−1210コンピュータ制御高コントラスト120kv透過型電子顕微鏡を使用して観察した。
【0180】
14.2.2 結果
図40A〜Cは、富化Orthokine(登録商標)血清中のエキソソームの存在を明らかに示す。
【0181】
14.3 ORTHOKINE(登録商標)血清からの濃縮エキソソームの調製
特殊表面処理を施したシリンジ(Orthokine(登録商標)シリンジ)中で全血をインキュベートすることによってエキソソームを生成した。細胞は6〜24時間にわたって小胞体から小胞を排出させた。全血1mlあたりIL−1ra(IRAP)5μgを加えることによってこの過程を促進することができた(下記実施例A〜D)。実施例A〜Dでは、インキュベーション後に、5000gで10分間の遠心分離によって血液細胞から血清を分離した。そして、その血清は種々の量のエキソソームを含有していた。100,000gで1時間の2回目の遠心分離によって小胞の濃縮を実施した。遠心分離後に20mlの血清由来の約1ml容量のペレットを遠心バイアルの底から回収し、濾過(0.2μMフィルターを通して)し、ねじ口バイアルに入れた。そのエキソソーム溶液1mlを、後に患者に注射した。1回の注射として、高用量(例えば1ml量の濃縮エキソソーム5本分)を投与した事例もある。
【0182】
14.4 濃縮エキソソームでのヒト被験体の処置
14.4.1 実施例A
エキソソーム処置前の症状:被験体は22歳の男性であり、若年性関節リウマチ(仙腸骨炎、股関節炎、膝関節炎を伴うオリゴ−II型、HLA−B27陽性)を約10年間患っていた。患者は、MTX 10mg/週およびデコルチン(decortin)5mg/週で処置されていたが、右膝の激しい痛みおよび膨大を患い続けており;被験体の腫脹した関節にステロイドを注射しても改善は生じなかった。
【0183】
エキソソーム処置前の検査時には、被験体は90/60mmHgの血圧および肩運動の低下を示し、外転は50度であった。両膝は極度に腫脹し、伸展障害(extension deficit)は10度であった。被験体の膝のX線研究では、滲出液が認められたが、顕著な軟骨破壊は認められず、被験体の臀部のX線研究では、臀部関節形成術の適用を伴うレベルIVの軟骨破壊が示された。血液検査では、CRP 9.9mg/dl;BSR 59;RF、CCP−AKおよびANA陰性が示された。11.3の貧血、および血小板511 000μlであった。
【0184】
まとめると、被験体は慣用の治療に不応性の重い若年性関節炎の臨床徴候を示した。
【0185】
エキソソーム処置.上の14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。右膝が非常に痛みを伴い、腫脹し、主要な罹患関節であったため、右膝関節に注射することを決定した。治療目標は、右膝の膨大および痛みを減少させること、および罹患した他の関節で治療効果を有することであった。20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの、右膝への関節内注射を合併症なく実施した。
【0186】
注射の4週間後、両膝で痛みの100%の減少が認められ、WOMACスコアは両膝で顕著に減少し、両肩で痛みの100%の減少が認められた。CRPレベルは6mg/dlに減少し、右膝の膨大は処置前の値と比較して3cm減少した。患者はその転帰に非常に満足した。
【0187】
濃縮エキソソームの最初の注射の9週間後、20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの2回目の注射を右膝に行い、20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームを左肩および左膝の各々に関節内注射した。右膝は100%の改善を示すことが見出され、左膝は70%の改善を示し、肩は80%の改善を示した。
【0188】
2回目の注射の4週間後(最初の注射の13週間後)、さらに濃縮エキソソーム処置を行った。
【0189】
処置後、患者の若年性関節リウマチは寛解状態であり、それは無関係のリウマチ専門医の評価によって確認された。ゆえに、濃縮エキソソーム治療は、その疾患過程の改善を得るためにMTXおよびステロイドより有効であるようであった。
【0190】
14.4.2 実施例B
エキソソーム処置前の症状:被験体は65歳の男性であり、血清反応陽性関節リウマチを10年間患っていた。被験体の母親もその疾患に罹患していた。被験体は激しい膝痛を訴え、Kellgreenの軟骨変性度(cartilage degradation grade)III−IVを示した。検査では、MCPで痛みを伴う手関節、肩運動の痛みを伴う低下、左膝からの滲出液、および両側の臀部内旋(inner rotation)の低下が示された。血液検査では、SR 28/65;CRP 0.8mg/ml;RF 211U/ml;ANA陰性,白血球7900,血小板353 000が示された。X線研究では、手のRA段階II、および膝段階III−IVが示された。被験体は金治療で処置されていて、その治療はエキソソーム治療中も継続された。
【0191】
エキソソーム処置:14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。各々が20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームで注射された両膝の関節内注射は合併症がなく、有害な副作用はなかった。
【0192】
注射の4週間後、患者を再検査し、全観察期間で非常に良好に処置を許容していることが見出された。患者は、処置前の値と比較して98%の症状の改善を示した。WOMACスコアは非常に顕著で良好な転帰の尺度(50〜80%)を示した。処置前の値と比較して膨大は完全に消失し、エキソソーム処置後に関節の直径が2cm減少した。
【0193】
4週間後、エキソソーム処置前の症状と比較して、左膝では改善の約50%の、右膝では約30%の痛みの再発が認められた。両膝の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの2回目の関節内注射を実行した。2週間後、両膝の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの3回目のエキソソーム注射を実行し、濃縮エキソソーム処置の痛みの症状と比較して、両膝においてこの時点で70%の改善が見られた。
【0194】
2か月後、患者は、エキソソーム治療前の症状と比較して、両膝で80%の痛みの改善を示した。WOMACスコアは、継続して、処置前の値と比べて顕著に改善された。
【0195】
14.4.3 実施例C.
エキソソーム処置前の症状:患者は20歳の女性であり、膝の拘縮を伴う若年性スチール病(Morbus Still)(8年間認知)、両側臀部内部置換(endoprotheses)、両側外側膝軟骨変性、骨粗鬆症および心膜心筋炎を有していた。患者は長期間のステロイド治療を受けており、患者の疾患は、抗TNF、ステロイド、MTX、およびそれらの組み合わせなどの治療には不応性であるとみなされた。血液検査では、CRP 20mg/ml、BSR 98、およびすべての他のパラメーターの重篤な免疫欠如の知見;22900/nlの白血球増加(Leucocytois)、560 000/nlの血小板増加が示された。被験体は有効性の欠如を理由に以前の治療を中断することに決めた。半年間、血液パラメータは基本的に不変のままであった。CRP値は12.3〜11.5mg/mlの範囲であり、白血球増加は22 300/nlであった。濃縮エキソソーム治療中、他の化学治療は施さなかった。
【0196】
エキソソーム処置.14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。両膝の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの関節内注射を合併症なく実行した。
【0197】
2週間後、両肩の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームを合併症なく関節内注射した。
【0198】
最初の注射の4週間後、患者は、処置前の値と比較して、左肩の痛みの100%改善、右肩の痛みの70%改善、および両膝の痛みの100%改善を示した。
【0199】
最初の注射の8週間後、20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームを右肩に関節内注射した。
【0200】
最初の注射の15週間後、CRPは12.3mg/mlから8.3mg/mlに減少していて、被験体は、膝が80%良好であり、肩が約60%良好であると報告した。
【0201】
最初の注射の16週間後、濃縮エキソソームを両膝に関節内注射した。被験体は膝および肩の80%改善を報告し、他の関節でも同様に50%を超える改善が認められることを述べた。患者は、濃縮エキソソーム処置後の改善を考慮して、慣用の治療を再開する意思はないことを示した。
【0202】
エキソソームの最初の注射の7か月後、患者が有益な臨床効果のいくらかの減退を経験したため、エキソソームの用量を6倍に増量することを決定した。この時点で、CRPは8.6mg/mlであり、白血球は22 500/nlであった。高用量のエキソソーム、すなわち100mlのコンディショニング済み血清から調製された5mlの濃縮エキソソームを両肩の各々に関節内注射した。
【0203】
1週間後、患者は高用量のエキソソームの注射前と比べて80%改善を示すことが見出され、肩運動は外転について約30度改善し;膝および手は50%改善した。高用量の注射は肩に施されたにも関わらず、WOMACスコアは膝に関して50%を超える劇的な改善を示した。CRPは7.2mg/dlに減少し、白血球は18 800/mlに減少した。
【0204】
14.4.4 実施例D.
エキソソーム処置前の症状:患者は49歳であり、18年の病歴の花粉症および草および花粉に対する実証済みのアレルギーを有していた。
【0205】
エキソソーム処置.14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。100mlのコンディショニング済み血清から調製された5mlの濃縮エキソソームを皮下注射によって投与したところ、2週間後、花粉症の症状、例えばくしゃみならびに眼および鼻の炎症が顕著に減少した。くしゃみの頻度は124回/日から0回/日に減少した。その効果は花粉症の季節を通して持続した。処置によっていかなる有害な副作用も生じなかった。
【0206】
14.5 ORTHOKINE(登録商標)血清を使用する別の臨床研究
上記セクション14.1およびMeierら, Inflam Res. 52:1-4 (2003)に記載のように血清を調製した。これらの患者シリーズでは、追加の外的IL−1raを使用せず、エキソソームを濃縮するための100 000gの遠心分離ステップを実施しなかった。したがって、低濃縮のエキソソーム集団に加えて、自家サイトカインおよび成長因子が存在する。
【0207】
関節リウマチおよび手の関節変化を有し、慣用の治療で以前に処置されているか、あるいは以前には無処置の56人の患者を、種々の罹患RA関節にOrthokine(登録商標)血清を週2回で4〜6回注射して(2ml/注射)処置した。臨床追跡は4年まで継続した。平均の痛みの改善は、処置前の値と比較して、3か月後に65.31%SE 7.00であった。応答者の割合は68.8%であった。応答者とは、これらの患者が、3か月後に、注射前の値と比較して、罹患した関節で少なくとも50%の痛みの改善を有したことを示す。平均では、これらの値は処置後の時間に応じて減少した。罹患した関節にステロイドをさらに同時注射しても、Orthokine(登録商標)血清の注射と比較して、3か月の結果に対する、有益な、統計学的に有意な影響はなかった。副作用は生じなかった。
【0208】
本発明の範囲は、本明細書中に記載の具体的な実施形態によって限定されるべきではない。事実、前記説明および添付の図面から、本明細書中に記載の改変に加えて本発明の種々の改変が当業者に自明になるであろう。そのような改変は特許請求の範囲内に入るものとする。
【0209】
本明細書中では種々の刊行物が引用されているが、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1A】マウスBM−DC由来のエキソソームの全載透過型電子顕微鏡観察(TEM)を示す。バー=200nm。
【図1B】いくつかのエキソソーム関連タンパク質の存在に関するエキソソームおよびBMDCライセートのウエスタンブロット解析を示す。
【図1C】MHC IおよびII、CD11c、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)の発現に関する、マウスDC由来のエキソソームおよびDCのフローサイトメトリーによる分析を示す。
【図2】骨髄樹状細胞(「BMDC」)由来のエキソソームの蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)による特性決定を示す。
【図3】DC由来のエキソソームのin vivoでの輸送について示す。PKH67標識エキソソームのIV注射6時間後、(A)MOMA−1+および(B)ER−TR9+のマクロファージおよび(C)CD11c+のDCが、脾臓において、エキソソームを内部に取り込んでいることが示された。(D)種々の時点でのCD8−αおよびPKH67に関するFACSによって評価された脾臓DCのサブセットによる標識エキソソームの取り込み。
【図4A】マウス骨髄DCおよびDC由来のエキソソームのフローサイトメトリーによる分析を示す。この場合、精製済みエキソソームはAd.対照およびAd.FasLで形質導入された骨髄DC由来である。
【図4B】FasLの発現を示すDCおよびDC由来のエキソソームのウエスタンブロットを示す。
【図4C】DC由来のエキソソームの画分の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図5】FasLを保持するDCおよびエキソソームで処置されたマウス足蹠における遅延型過敏性(DTH)の抑制を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図6】同種異系エキソソームおよびDCと比較して、同系エキソソームおよびDCを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図7A】Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型およびMHC I欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図7B】Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型またはMHC II欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図8】免疫抑制性エキソソームの抗原特異性を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図9】(A)DCおよびDC由来のエキソソームのDTH−抑制効果を比較する棒グラフである。DCおよびエキソソームは、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから調製され、対照アデノウイルス(psi5)またはFasLを発現するアデノウイルス(FasL)のいずれかに感染させ、前もってKLHで免疫された野生型マウスの足蹠に注射して戻し、その12時間後、足蹠にKLHを注射した。(B)野生型と比較して、lpr(Fas−/−)マウスに注射して戻された、(A)と同様に調製されたエキソソームのDTH抑制効果を示す棒グラフである。
【図10A】マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図10B】マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL提示エキソソームについての疾患進行の抑制を実証するグラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図11A】リンパ球混合培養反応(MLR)でのvIL−10発現DCの添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフである。
【図11B】リンパ球混合培養反応での、Ad.vIL−10に感染させたDCから単離されたエキソソームの添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフである。
【図12A】Ad.vIL−10で形質導入されたDCおよび該DC/vIL−10由来エキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH応答の抑制を示す棒グラフである。
【図12B】組換えマウスIL−10で処理されたBMDCおよび組換えマウスIL−10で処理されたDC由来のエキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH反応の抑制を示す棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図13A】Ad−vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソームの全載透過型電子顕微鏡写真である。
【図13B】Ad.vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソーム調製物についての、Hsc70の存在を検出するウエスタンブロットである。
【図13C】Ad.vIL−10に感染させたDCから単離された膜破壊エキソソームがDTH反応を抑制できないことを実証する棒グラフである。
【図14A】Ad.vIL−10に感染させたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図14B】組換えIL−10で処理されたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図15】マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたvIL−10発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフである。
【図16】確立したコラーゲン誘発関節炎モデルにおけるDC/IL−10由来エキソソームの治療効果についての分析を示す。(A)Ad.vIL−10に感染させたか、あるいは組換えマウスIL−10でパルスしたDBA1マウス骨髄DCからエキソソームを単離し、確立したCIAを有するマウスに投与した。(B)組換えIL−10でパルスしたDC由来のエキソソームを2群に分け、その一方を3サイクルの凍結・解凍に付して膜を破壊し、その後、確立したCIAを有するマウスに投与した。(C)確立されたCIAマウスにおいて、組換えマウスIL−10の直接注射と比較して、DC/rmIL−10由来のエキソソームを試験した。A〜Cで、28日目にウシII型コラーゲンで免疫し、LPSを投与したDBA1マウスに、32日目(矢印によって示す)に精製済みエキソソームを静脈内注射した。確立されている巨視的なスコア化システムによってマウスを定期的にモニターした。そのスコア化システムは、すべての足に関する累積値で表され、最大限のスコアは16である。
【図17】マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加を示す。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【図18】マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加を示す。この場合、処置対象の足蹠には、DC/smIL−4、DC/smIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【図19】マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加を示す。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/FasL、DC/FasLから調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、またはDC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)を注射した。
【図20】野生型またはlpr(Fas−/−)マウスのいずれかのマウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す。この場合、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから回収されたDCから調製され、可溶性(smIL−4)または膜結合型(mbmIL−4)IL−4のいずれかを発現するように改変されたエキソソームを注射した。
【図21】(A)同系または(B)同種異系マウスのいずれか由来の、膜結合型IL−4で増強されたDCのいずれかから調製されたエキソソームを注射した後のマウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す。
【図22】マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、野生型またはB7.1およびB7.2欠損(KO)マウスのいずれかの処置対象の足(黒色バー)には、Ad.Psi5またはIL−4遺伝子を有するアデノウイルスベクターのいずれかで処理されたDCから調製されたエキソソームを注射した。無処置の足のサイズは白抜きのバーによって表される。
【図23】Ad.psi=5(対照)、Ad.mIL−4、またはAd.mbmIL−4のいずれかに感染させたDCから調製したエキソソームで処置されたCIAモデルマウスの関節炎指数を示すグラフである。
【図24】(A)DC/IL−4由来のエキソソームで最初に処置されたマウスまたは(B)最初の被験体由来のCD11Cを投与されたマウスにおけるDTH反応を示す。
【図25】生理食塩水、無処理のDC由来のエキソソーム、またはDC/IL−4から調製されたエキソソームのいずれかで処置されたマウスにおける高血糖の発生を示すグラフである。
【図26】無処理の全血清およびビーズで処理された全血清をDTHモデルのマウスに投与した48時間後の足蹠の膨大を示す棒グラフである。
【図27】KLH免疫マウス由来の血清、微小胞、およびエキソソームを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフである。
【図28】種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフである。この場合、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【図29】種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフである。この場合、KLHおよびOVA免疫マウスから血清を分離し、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【図30】マウス血清から単離されたエキソソームの電子顕微鏡写真である。
【図31】抗MHCクラスIIを保持するビーズで標識された血清由来のエキソソームのFACS解析を示す。
【図32】マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム(群I)、(b)無処置のマウスの血清から回収されたエキソソーム(群II)、または(c)生理食塩水(群III)のいずれかを注射した。処置された足は黒色のバーで表され、反対側の足は白抜きのバーで表される。
【図33】マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(b)KLH免疫マウスの血清から回収され、抗MHCII抗体であらかじめ吸収した(preabsorbed)エキソソーム;(c)MHCクラスII陽性のKLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(d)抗IgG抗体であらかじめ吸収したエキソソーム枯渇対照;または(e)生理食塩水のいずれかを注射した。
【図34】マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、(a)FasL欠損gld(FasL−/−)マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(b)野生型マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(c)gldマウスの血清由来のエキソソームをlpr(Fas−/−)レシピエントに投与;(d)野生型マウスの血清由来のエキソソームをlprレシピエントに投与;または(e)対照として生理食塩水を投与した。
【図35】血清由来のエキソソームで処置されたマウスDTHモデルにおける足膨大のDTH増加を示す棒グラフである。エキソソームは、エキソソームドナー動物を免疫した14日後に回収し、レシピエント動物を免疫した14日後に投与した。
【図36】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたVASにおける痛みを示すグラフである。
【図37】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESaff(感情的疼痛尺度:Affective Pain Scale)における痛みを示すグラフである。
【図38】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESsens(感覚的疼痛尺度:Sensitive Pain Scale)における痛みを示すグラフである。
【図39】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の4時点で測定されたOswestryスコアにおける痛みを示すグラフである。
【図40A−C】Orthokine(登録商標)血清由来のエキソソーム濃縮画分の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である((B)は濾過済みの血清から作成されたイメージである)。
【図40D−F】Orthokine(登録商標)血清由来のエキソソーム濃縮画分の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【技術分野】
【0001】
1. 導入
本発明は、免疫抑制反応の媒介における使用のための方法および組成物に関する。本発明の組成物は、免疫抑制活性を有するエキソソームを含んでなる。かかるエキソソームは種々の異なる細胞タイプ由来であってよく、その細胞タイプには、樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞が含まれる。エキソソームの単離に先立って、前記エキソソームの免疫抑制活性を増強することが可能な分子を発現するように細胞を遺伝子操作するか、ならびに/あるいは細胞をサイトカインまたはサイトカインインヒビターなどの1種以上の作用物質(これもまたエキソソームの免疫抑制活性を増強することが可能である)に曝露してよい。また本発明は、免疫系の望ましくない活性化に関連する疾患および障害の治療のための、前記エキソソームの使用に関する。また本発明は、免疫抑制性であることが示されている血清から直接単離されたエキソソームを包含する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
自己免疫障害は、自分自身の抗原に対する寛容の喪失、「自己の」抗原(自己抗原)に対するリンパ球反応性の活性化、および標的器官の病理学的損傷を特徴とする。自己免疫障害には、関節リウマチ、骨関節炎、アレルギー、全身性エリテマトーデス、自己免疫疾患1型糖尿病、炎症性障害、喘息、等が含まれる。ほとんどの状況で、自己免疫は末梢性寛容によって妨げられる可能性があり、それは、抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)、およびエフェクターT細胞の間の一連の多段階相互作用が関与すると推定される過程である。
【0003】
例えば、関節リウマチ(RA)は消耗性の全身性自己免疫疾患であり、遠位可動(diarthriodial)関節の慢性炎症を特徴とする。RAが確立されると、罹患した関節は、軟骨および骨の進行性の劣化に寄与する炎症細胞の浸潤および滑膜の過形成を示し、結果として正常な関節機能が完全に喪失する。最近、TNF−αおよびIL−1βの炎症誘発活性をモジュレートする生体物質について、新規の抗関節炎薬としての有効性が示されている(Evans and Robbins, J. Rheumatol. 21:779-782 (1994); Robbins and Evans, Gene Ther. 3:187-189 (1996); Evans and Robbins, Curr Opin Rheumatol. 8:230-234 (1996); Evansら, Arthritis Rheum. 42:1-16 (1999); Ghivizzaniら, Clin Orthop. 379 (Suppl):S288-299 (2000))。
【0004】
さらに、関節炎の動物モデルで種々の治療的作用物質の遺伝子導入が有効であることが示されている。特に、種々の治療的作用物質、例えばsTNF−α受容体、IL−1Ra、sIL−1受容体I型およびII型、IL−10、vIL−10およびIL−4を発現するアデノウイルスベクターの関節内局所注入および全身性注入は、関節炎のマウス、ラット、およびウサギモデルで顕著な抗関節炎効果を付与することができた(Arend, Lancet. 341: 155-156 (1993); Bandaraら, Proc Natl Acad Sci U S A. 90:10764-10768 (1993); Ghivizzaniら, Proc Natl Acad Sci U S A. 95: 4613-4618 (1998); Moriら, J. Immunol. 157:3178-3182 (1996); Joostenら, Arthritis Rheum. 39:797-809 (1996); Kimら, Arthritis Res. 2:293-302; Kimら, J. Immunol. 164: 1576-1581 (2000))。
【0005】
興味深いことに、遺伝子導入によって片方の関節または足に前記治療的作用物質を局所送達すると、反対側の膝または無処置の足で治療効果が得られた。例えば、エプスタイン・バーウイルスによってコードされるIL−10遺伝子であるvIL−10を発現するアデノウイルスベクターを関節内注射すると、注射された膝だけでなく、反対側の対照の膝においても、疾患の病変が減少し、白血球の浸潤が減少し、軟骨代謝が改善された(Lechmanら, J. Immunol. 163:2202-2208 (1999))。膝関節炎のウサギモデルで行われた当初の観察に基づいて、前記効果は対側効果(contralateral effect)と称された。ウサギ、ラットおよびマウスの関節にレトロウイルスベクター、リポソームを注射した場合、および遺伝子改変型滑膜線維芽細胞を用いた場合でさえも、同様の効果が観察されている(Ghivizzaniら, Gene Ther. 4:977-982 (1997); Ceponisら, Arthritis Rheum. 44:1908-1916 (2001); Kimら Mol Ther. 6:591-600 (2002))。
【0006】
前記効果についての最近の分析では、抗原提示細胞(APC)、例えばマクロファージおよび樹状細胞(DC)の機能の改変が、遠位関節に対する抗原特異的効果の付与に主要な役割を果たすことが示唆されている(Whalenら, Mol Ther. 4:543-550 (2001); Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001))。特に、培養中の遺伝子改変された骨髄由来DCが、マウスモデルにおいて確立した関節炎を回復させるために有効な作用物質であるという知見によって、DCの治療上の役割がさらに立証されている。例えば、IL−4またはFasLをDCに遺伝子導入した後、確立した関節炎を有するマウスに注射すると、関節炎の顕著な退行が生じ、処置後少なくとも2か月間で処置マウスの半数以上が疾患を有しないようになった(Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001); Kimら, Mol Ther. 6:584-590 (2002); Moritaら, J. Clin Invest. 107:1275-84)。
【0007】
樹状細胞は、免疫応答の制御に重大な役割を果たす専門のAPCであり、種々の機構によって自己免疫応答を増加または減少させることができる。また、免疫抑制性分子を発現するように遺伝子操作されたDCは、外来移植片の拒絶および自己免疫障害を軽減するための魅力的なアプローチであるとみなされている(Luら, 1999, J. Leukoc. Biol. 66:293-296)。例えば、組換えアデノウイルス(Ad)ベクターによって細胞障害性Tリンパ球抗原4−免疫グロブリン(CTLA4Ig)をDCに送達すると、同種レシピエント中での前記DCの寛容原性(tolerogenicity)および生存を促進することが示されている(Luら, 1999, Gene Ther. 6:554-563)。
【0008】
しかし、前記アプローチに関連する潜在的な問題が存在する。例えば、低反応性の未成熟DCの投与によって宿主における寛容原性が向上する場合があるが、ウイルスに基づくベクターによるDCの形質導入は成熟を刺激する可能性があり、免疫賦活能の増強が生じるかもしれない(Reaら, 1999, J. Virol. 73:10245-10253)。ゆえに、疾患の発症を遅延させる、その潜在的な治療効果にもかかわらず、樹状細胞全体の投与は望ましくない結果を招く可能性がある。
【0009】
DCを含めた種々の細胞タイプが、エキソソームと称される小型の脂質小胞を放出することは、30年以上にわたって詳細に報告されている。エキソソームは30〜100nmのサイズの小さな粒子であり、当初の報告では、5’ヌクレオチダーゼ活性およびトランスフェリン受容体を含有し、後期エンドソーム区画由来であり、腫瘍細胞株(Culvenorら, J. Cell Biochem. 20:127-138 (1982))および網状赤血球(Johnstoneら J. Biol. Chem. 262:9412-9420 (1987))から放出される小型の粒子であると報告された。エキソソームは内向きまたは逆向きの出芽によって生成され、それによって、サイトゾルおよび特定の膜結合タンパク質の露出した細胞外ドメインを含有する粒子が生じる(Stoorvogelら, Traffic 3:321-330 (2002))。エキソソームは、アポトーシス小体ならびに原形質膜の分断によって生じると思われるより大型の微小胞とは異なることが示されている。多数の細胞タイプでエキソソームが生成されることが示されていて、その細胞タイプには、樹状細胞、網状赤血球、Tリンパ球、B細胞、血小板、上皮細胞および腫瘍細胞が含まれる(Johnstoneら Blood. 74:1844-1851 (1989); Petersら, Eur J. Immunol. 19:1469-1475 (1989); Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996); Heijnenら, Blood 94:3791-3799 (1999); Theiryら, J. Cell. Biol. 147:599-610 (1999); Wolfersら, Nature Med. 7:297-303 (2001); van Niel and Heyman, Am J. Physiol Gastrointest Liver Physiol. 283:G251-255 (2002))。高純度のDC由来エキソソームは、特定のサイトゾルタンパク質、例えばチュブリン、アクチンおよび特定のアクチン結合性タンパク質ならびにMHCクラスIおよびII抗原、CD86、ICAM−1、lamp−2、αM−β2インテグリン、テトラスパニンCD9およびCD63、およびMFGE8/ラクトアドヘリンを含有することが示されている(Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996); Theiryら, J. Cell. Biol. 147:599-610 (1999); Escolaら, J. Biol Chem. 273:20121-20127 (1998); Theryら, J. Immunol. 166:7309-7318 (2001))。
【0010】
腫瘍抗原ペプチドでパルス(間欠的に処理)したDC由来のエキソソーム(その場合、エキソソームは腫瘍抗原をその表面に露出する)は、マウスの抗腫瘍応答の刺激においてDCそのものと同等の有効性で有効であることが示されている(Zitvogelら, Nature Med. 4:594-600 (1998))。腫瘍抗原ペプチドでパルスしたDC由来のエキソソームを使用した臨床試験では、初期に肯定的な結果が報告されている(Andreら, Adv Exp Med Biol. 495:349-354 (2001); Morse.ら, Proc. Am. Soc. Oncol. 21 A42, p. 11a (2002))。エキソソームは免疫賦活能を示すようであり、抗原提示細胞を感作することが可能である(Zitvogelら, US20040028692)。
【0011】
またエキソソームは、なんらかの免疫抑制活性を有することが示されている。特定のT細胞、ならびに黒色腫細胞では、その表面にFasLを有してT細胞のアポトーシスを刺激することができるエキソソームが生成され、腫瘍の成長を可能にする(Andreolaら J. Exp Med. 195:1303-1316 (2002); Martinez-Lorenzoら, J. Immunol. 163:1274-1281 (1999))。さらに、INF−γおよび消化型オボアルブミンの存在下で培養されたラット腸上皮細胞によって産生される、トレロソーム(tolerosomes)と称されるエキソソーム粒子は、注射後に抗原特異的寛容を誘発することができた(Karlssonら, Eur. J. Immunol. 31:2892-2900 (2001))。
【0012】
Pecheらは、同種ドナー由来のエキソソームを使用すると、ラットにおける移植片の生存が延長されることを報告した(Pecheら, Transplantation 76:1503-1510 (2003))。しかし、著者らは、抗ドナーMHCクラスII同種抗体産生の対応する増加もまた明らかにした。このことは免疫賦活効果が同時に存在することを示唆する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに、自己免疫疾患および炎症性障害を治療する安全で有効な方法を開発する必要性が依然として存在する。本発明は、そのような疾患および障害を治療するための組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
3. 発明の要旨
本発明は、免疫抑制活性を有するエキソソームおよび前記エキソソームを生成および利用するための方法に関する。詳細には、本発明のエキソソームを哺乳動物宿主に投与して、望ましくない免疫応答を抑制することができる。
【0015】
本発明のエキソソームは種々の異なる細胞由来であってよく、その細胞には、非限定的に、樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞が含まれる。好ましくは、エキソソームの調製元である細胞を、遺伝子操作するか、ならびに/あるいは、非限定的にサイトカインまたはサイトカインインヒビターなどの作用物質で処理してよい。その後、エキソソームの回収を行う。
【0016】
種々の実施形態で、本発明はエキソソームの組成物ならびに免疫抑制剤としてのその使用方法を提供する。本発明にしたがって治療される疾患および障害には、非限定的に、炎症および炎症に関連する症状、例えばアレルギー、喘息、関節炎および創傷治癒、ならびに非限定的に関節リウマチおよび糖尿病を含めた自己免疫疾患が含まれる。さらに、エキソソームの免疫抑制活性を考慮して、本発明は、エキソソームをアンタゴナイズすることによって免疫応答を促進する方法を提供する。それは、例えば、被験体における抗腫瘍性免疫を促進するための方法である。
【0017】
4. 図面の簡単な説明
図1A−C. (A)マウスBM−DC由来のエキソソームの全載透過型電子顕微鏡観察(TEM)。バー=200nm。(B)いくつかのエキソソーム関連タンパク質の存在に関するエキソソームおよびBMDCライセートのウエスタンブロット解析。(C)MHC IおよびII、CD11c、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)の発現に関する、マウスDC由来のエキソソームおよびDCのフローサイトメトリーによる分析。
【0018】
図2. 骨髄樹状細胞(「BMDC」)由来のエキソソームの蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)による特性決定。
【0019】
図3A−D. DC由来のエキソソームのin vivoでの輸送。PKH67標識エキソソームのIV注射6時間後、(A)MOMA−1+および(B)ER−TR9+のマクロファージおよび(C)CD11c+のDCが、脾臓において、エキソソームを内部に取り込んでいることが示された。(D)種々の時点でのCD8−αおよびPKH67に関するFACSによって評価された脾臓DCのサブセットによる標識エキソソームの取り込み。
【0020】
図4A−C. (A)マウス骨髄DCおよびDC由来のエキソソームのフローサイトメトリーによる分析。この場合、精製済みエキソソームはAd.対照およびAd.FasLで形質導入された骨髄DC由来である。(B)FasLの発現を示すDCおよびDC由来のエキソソームのウエスタンブロット。(C)DC由来のエキソソーム画分の透過型電子顕微鏡写真。
【0021】
図5. FasLを保持するDCおよびエキソソームで処置されたマウス足蹠における遅延型過敏性(DTH)の抑制を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0022】
図6. 同種異系エキソソームおよびDCと比較して、同系エキソソームおよびDCを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0023】
図7A−B. (A)Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型およびMHC I欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。(B)Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型またはMHC II欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0024】
図8. 免疫抑制性エキソソームの抗原特異性を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0025】
図9A−B. (A)DCおよびDC由来のエキソソームのDTH抑制効果を比較する棒グラフ。DCおよびエキソソームは、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから調製され、対照アデノウイルス(psi5)またはFasLを発現するアデノウイルス(FasL)のいずれかに感染させ、前もってKLHで免疫した野生型マウスの足蹠に注射して戻し、その12時間後、足蹠にKLHを注射した。(B)野生型と比較して、lpr(Fas−/−)マウスに注射して戻された、(A)と同様に調製されたエキソソームのDTH抑制効果を示す棒グラフ。
【0026】
図10A−B. (A)マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。(B)マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL提示エキソソームについての疾患進行の抑制を実証するグラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0027】
図11A−B. (A)リンパ球混合培養反応(MLR)でのvIL−10発現DC添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフ。(B)リンパ球混合培養反応でのAd.vIL−10に感染させたDCから単離されたエキソソームの添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフ。
【0028】
図12A−B. (A)Ad.vIL−10で形質導入されたDCおよび該DC/vIL−10由来エキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH応答の抑制を示す棒グラフ。(B)組換えマウスIL−10で処理されたBMDCおよび組換えマウスIL−10で処理されたDC由来のエキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH反応の抑制を示す棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0029】
図13A−C. (A)Ad−vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソームの全載透過型電子顕微鏡写真。(B)Ad.vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソーム調製物についての、Hsc70の存在を検出するウエスタンブロット。(C)Ad.vIL−10に感染させたDCから単離された膜破壊エキソソームがDTH反応を抑制できないことを実証する棒グラフ。
【0030】
図14A−B. (A)Ad.vIL−10に感染させたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。(B)組換えIL−10で処理されたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフ。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【0031】
図15. マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたvIL−10発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフ。
【0032】
図16A−C. 確立したコラーゲン誘発関節炎モデルにおけるDC/IL−10由来エキソソームの治療効果についての分析。(A)Ad.vIL−10に感染させたか、あるいは組換えマウスIL−10でパルスしたDBA1マウス骨髄DCからエキソソームを単離し、確立したCIAを有するマウスに投与した。(B)組換えIL−10でパルスしたDC由来のエキソソームを2群に分け、その一方を3サイクルの凍結・解凍に付して膜を破壊し、その後、確立したCIAを有するマウスに投与した。(C)確立されたCIAマウスにおいて、組換えマウスIL−10の直接注射と比較して、DC/rmIL−10由来のエキソソームを試験した。A〜Cで、28日目にウシII型コラーゲンで免疫し、LPSを投与したDBA1マウスに、32日目(矢印によって示す)に精製済みエキソソームを静脈内注射した。確立されている巨視的なスコア化システムによってマウスを定期的にモニターした。そのスコア化システムは、すべての足に関する累積値で表され、最大限のスコアは16である。
【0033】
図17. マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【0034】
図18. マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加。この場合、処置対象の足蹠には、DC/smIL−4、DC/smIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【0035】
図19. マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/FasL、DC/FasLから調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、またはDC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)を注射した。
【0036】
図20. 野生型またはlpr(Fas−/−)マウスのいずれかのマウスDTHモデルにおける足膨大の増加。この場合、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから回収されたDCから調製され、可溶性(smIL−4)または膜結合型(mbmIL−4)IL−4のいずれかを発現するように改変されたエキソソームを注射した。
【0037】
図21A−B. (A)同系または(B)同種異系マウスのいずれかに由来する、膜結合型IL−4で増強されたDCから調製されたエキソソームを注射した後のマウスDTHモデルにおける足膨大の増加。
【0038】
図22. マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、野生型またはB7.1およびB7.2欠損(KO)マウスのいずれかの処置対象の足(黒色バー)には、Ad.Psi5またはIL−4遺伝子を有するアデノウイルスベクターのいずれかで処理されたDCから調製されたエキソソームを注射した。無処置の足のサイズは白抜きのバーによって表される。
【0039】
図23. Ad.psi=5(対照)、Ad.mIL−4、またはAd.mbmIL−4のいずれかに感染させたDCから調製したエキソソームで処置されたCIAモデルマウスの関節炎指数を示すグラフ。
【0040】
図24A−B. (A)DC/IL−4由来のエキソソームで最初に処置されたマウスまたは(B)最初の被験体由来のCD11Cを投与されたマウスにおけるDTH反応。
【0041】
図25. 生理食塩水、無処理のDC由来のエキソソーム、またはDC/IL−4から調製されたエキソソームのいずれかで処置されたマウスにおける高血糖の発生を示すグラフ。
【0042】
図26. 無処理の全血清およびビーズで処理された全血清をDTHモデルのマウスに投与した48時間後の足蹠の膨大を示す棒グラフ。
【0043】
図27. KLH免疫マウス由来の血清、微小胞、およびエキソソームを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフ。
【0044】
図28. 種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフ。この場合、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【0045】
図29. 種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフ。この場合、KLHおよびOVA免疫マウスから血清を分離し、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【0046】
図30. マウス血清から単離されたエキソソームの電子顕微鏡写真。
【0047】
図31. 抗MHCクラスIIを保持するビーズで標識された血清由来のエキソソームのFACS解析。
【0048】
図32. マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム(群I)、(b)無処置のマウスの血清から回収されたエキソソーム(群II)、または(c)生理食塩水(群III)のいずれかを注射した。処置された足は黒色のバーで表され、反対側の足は白抜きのバーで表される。
【0049】
図33. マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(b)KLH免疫マウスの血清から回収され、抗MHCII抗体であらかじめ吸収した(preabsorbed)エキソソーム;(c)MHCクラスII陽性のKLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(d)抗IgG抗体であらかじめ吸収したエキソソーム枯渇対照;または(e)生理食塩水のいずれかを注射した。
【0050】
図34. マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフ。この場合、(a)FasL欠損gld(FasL−/−)マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(b)野生型マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(c)gldマウスの血清由来のエキソソームをlpr(Fas−/−)レシピエントに投与;(d)野生型マウスの血清由来のエキソソームをlprレシピエントに投与;または(e)対照として生理食塩水を投与した。
【0051】
図35. 血清由来のエキソソームで処置されたマウスDTHモデルにおける足膨大のDTH増加を示す棒グラフ。エキソソームは、エキソソームドナー動物を免疫した14日後に回収し、レシピエント動物を免疫した14日後に投与した。
【0052】
図36. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたVASにおける痛みを示すグラフ。
【0053】
図37. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESaff(感情的疼痛尺度:Affective Pain Scale)における痛みを示すグラフ。
【0054】
図38. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESsens(感覚的疼痛尺度:Sensitive Pain Scale)における痛みを示すグラフ。
【0055】
図39. 3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の4時点で測定されたOswestryスコアにおける痛みを示すグラフ。
【0056】
図40A−F. Orthokine(登録商標)血清由来のエキソソーム濃縮画分の透過型電子顕微鏡写真(TEM)((B)は濾過済みの血清から作成されたイメージである)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
5. 発明の詳細な説明
限定する目的ではなく、明確化のために、発明の詳細な説明を下記の節に分ける:
(i) エキソソームの細胞供給源;
(ii) エキソソーム回収のための細胞のコンディショニング;
(iii) 細胞からのエキソソーム調製;
(iv) 血清からのエキソソーム調製;
(v) エキソソーム含有組成物;
(vi) 免疫抑制の方法;および
(vii) エキソソーム媒介性の免疫抑制をアンタゴナイズする方法。
【0058】
5.1 エキソソームの細胞供給源
本発明のエキソソームは種々の異なる細胞由来であってよく、その細胞としては、非限定的に、樹状細胞(「DC」)およびマクロファージなどの抗原提示細胞(「APC」)が挙げられ、例えば、骨髄、脾臓、リンパ節、または胸腺などの組織からか、あるいは末梢血またはそれに由来する血清から回収してよい。本発明の範囲には、皮膚のランゲルハンス細胞または肝臓のクッパー(Kuppfer)細胞などの特殊化した抗原提示細胞がさらに包含される。それらはその起源の組織から調製することができる。特にAPCおよびDCを回収する方法は当技術分野において公知である。
【0059】
下記実施例で実証されるように、エキソソームの免疫抑制活性はMHCクラスII抗原依存的であり、かつ、エキソソームドナーとレシピエントとの関係が同種異系である場合よりも同系である場合に非常に高いことが観察される。したがって、ドナーおよびレシピエントの同系性を最大にすることが望ましい。したがって、本発明は、ある哺乳動物種由来のエキソソームを別の動物種での免疫抑制に使用することを包含するが、好ましくは、ドナーおよび所期のレシピエントの動物種は同一であり、ならびに/あるいは、好ましくは、ドナーおよび所期のレシピエントのMHCクラスII抗原は同一であり(あるいは、例えば、意図される組織移植物に採用される考慮すべき条件を使用して、実質的に類似または適合性であり)、ならびに/あるいは、好ましくは、ドナーおよび所期のレシピエントは同一(自家)または家族関係である(兄弟/姉妹;姉妹/姉妹;親/子)。同様に、エキソソームの免疫抑制活性は抗原特異的であるため、本発明の特定の非限定的な実施形態では、エキソソームドナーを抗原を用いて免疫してよく、その抗原はレシピエントにおいて反応が抑制されるべき対象の抗原である。
【0060】
5.2 エキソソーム回収のための細胞のコンディショニング
本発明の好ましい非限定的な実施形態では、APCをコンディショニングして、それから調製されるエキソソームの免疫抑制活性を増強する。本明細書中で使用される場合の「コンディショニング(調整)済み(Conditioned)」には、(i)in vitroまたはin vivoでAPCを増強物質に曝露すること、ならびに(ii)増強物質を発現するようにAPCを遺伝子操作することが含まれる。
【0061】
増強物質は、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、およびNFκBアンタゴニストであってよく、それには、非限定的に、TGF−β、IL−10、CTLA4−Ig、sCD40−Ig、IL−4、IL−13、FasL、IL−1受容体アンタゴニストタンパク質(「IRAP」)、vIL−10、sICAM−1、sICAM−3、およびTRAILが含まれる。好ましい非限定的な実施形態では、増強物質はIRAPまたはIL−10またはIL−4あるいはそれらの組み合わせである。例えば細胞培養中でAPCに増強物質を投与する特定の非限定的な実施形態では、IRAPの濃度は約5μg/mlであってよく、またはIL−10の濃度は約1000U/mlであってよく、またはIL−4の濃度は約1000U/mlであってよい。場合により、特定の抗原または特定の抗原供給源が公知である場合、そのような特定の抗原または特定の抗原供給源(例えば、固定したかまたは弱毒化された感染性物質)を無毒で非病原性の量で増強物質として培養に加えてよい。
【0062】
本発明の一群の実施形態では、増強物質をコードする異種「増強性遺伝子」を発現するようにAPCを遺伝子操作してよい。そのような「増強性遺伝子」には、非限定的に、TGF−β、IL−10、CTLA4−Ig、sCD40−Ig、IL−4、IL−13、FasL、IRAP、VIL−10、sICAM−1、sICAM−3、およびTRAILをコードする核酸が含まれ、それはAPCにおいて活性なプロモーターエレメントに作動的に連結されている。好ましい実施形態では、増強性遺伝子はFasL、IL−10、IL−4またはIRAPである。増強性遺伝子の産物は、エキソソームの表面に発現させるか(例えば膜結合型)またはエキソソームの内部で発現させてよい。あるいは、非限定的にDel1などの血管新生因子またはソーティングおよび局在化シグナルをコードする増強性遺伝子を発現するようにAPCを操作してよい。増強性遺伝子は、当技術分野において公知の方法を使用して導入してよく、その方法には、トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、などが含まれる。場合により、増強性遺伝子を適切な発現ベクターに組み込んで、その導入を容易にすることができる。本発明の非限定的な実施形態では、発現ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターであってよい。本発明の特定の好ましい実施形態では、ウイルスベクターはアデノウイルス由来である(一般的には、Horwitz, M.S., "Adenoviridae and Their Replication," in Virology, 2nd edition, Fieldsら, (編), Raven Press, New York, 1990を参照のこと)。組換えアデノウイルスは、アデノウイルスキャリアに対して外来性のタンパク質をコードする核酸分子用の発現系としての使用に有利であり、その利点には、分裂細胞と非分裂細胞の両者に関する親和性、最小の病原可能性、ベクターストックの調製用の高い力価にまで複製する能力、および大きなインサートを輸送する能力が含まれる。Berkner, K.L., 1992, Curr. Top. Micro Immunol, 158:39-66; Jolly D., 1994, Cancer Gene Therapy, 1:51-64を参照のこと。
【0063】
本発明の特定の非限定的な実施形態では、E1およびE3領域が実質的に欠失しているアデノウイルス血清型2(Ad2)または血清型5(AD5)由来のアデノウイルスベクターに増強性遺伝子を保持させてよい。アデノウイルスベクター用の骨格として他のアデノウイルス血清型を使用することもでき、それには、とりわけ、Ad6、Ad9、Ad12、Ad15、Ad17、Ad19、Ad20、Ad22、Ad26、Ad27、Ad28、Ad30およびAd39が含まれる。列挙されたこれらのアデノウイルス血清型のうち、Ad2およびAd5が好ましい。
【0064】
例えば、適切なプロモーターエレメントに作動的に連結された増強性遺伝子を含み、場合によりウイルスベクターに含有された核酸を、リポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルへのカプセル化などの送達系を介してAPCに提供してよい。
【0065】
5.3 細胞からのエキソソーム調製
細胞からのエキソソーム調製は当技術分野において公知である;例えば、Raposoら, J. Exp. Med. 183:1161 (1996)を参照のこと。
【0066】
本発明の特定の非限定的な実施形態では、以下の通り、好ましくは(培養培地中で、または遺伝子操作によって)増強物質によってコンディショニングされたAPCの培養物からエキソソームを調製してよい。培養上清を回収し、300gで5分間、1,200gで20分間、および10,000gで30分間の3回の連続遠心分離に付して細胞および残渣を取り除き、その後、100,000gで1時間遠心分離してよい。次いで過剰の血清タンパク質を除去するために、エキソソームペレットをPBSで洗浄し、再度100,000gで1時間遠心分離し、その後、得られたペレットをPBSに再懸濁してよい。micro Bradford protein assay(Bio-Rad, CA)によってエキソソームを定量することができ、好ましくは該アッセイによって測定されるタンパク質1mgに対応するエキソソームの量をPBS20mlに懸濁してよい。場合により、電子顕微鏡観察によってエキソソームの完全性を確認してよく(図1Aを参照のこと)、場合により、特徴的な表面マーカーに関するFACS解析によってエキソソームを特性決定してよい(下記セクション6および7を参照のこと)。
【0067】
5.4 血清からのエキソソーム調製
本発明にしたがって免疫抑制に使用するエキソソームは、適切な被験体の血清から回収してよい。好ましくは、被験体は、その血清由来のエキソソームの所期のレシピエントでもある(自家投与)。エキソソームドナーおよびレシピエントが同一でない場合、エキソソーム媒介性の免疫抑制活性の抗原特異性およびMHCクラスII依存性のために、ドナーおよびレシピエントはMHCクラスII抗原適合性であり、かつ/またはレシピエントにおいて免疫が抑制されることが望まれる抗原にドナーを曝露しておくことが好ましい。
【0068】
エキソソームはサイズが30〜100nMの小さな粒子であるため、末梢血サンプルからより大きな細胞要素を除去することによって、例えば、限定目的ではなく、1500gで10分間の遠心分離によって、血清中にそれらを回収してよい。
【0069】
好ましくは、連続遠心分離ステップによってエキソソームをさらに厳密に精製する。例えば、限定目的ではなく、細胞培養上清からエキソソームを調製するための上記で概説される方法、または等価な方法を使用してよい。そのような方法は、好ましくは、実験用超遠心機の使用を含む。非限定的な一例では、(標準の実験技術を使用して末梢血から回収された)血清から、1200gで5分間、1,200gで20分間、および10,000gで30分間の3回の連続遠心分離を行い、その後、100,000gで1時間遠心分離し、得られたペレットをPBSで洗浄し、PBSに再懸濁し、次いで再度100,000gで1時間遠心分離することによってエキソソームを分離してよく、その後、得られたペレットをPBSに再懸濁してよい。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、血清およびエキソソームの回収に先立って、サイトカインの産生を刺激するためにビーズの存在下で末梢血をインキュベートしてよい。その目的で使用してよいビーズには、非限定的に、直径0.5〜10mmの範囲または0.5〜5mmの範囲のガラスもしくはプラスチックビーズが含まれ、それは、場合により、リンパ球増殖を刺激するCrSO4などの物質で処理されている(Migniniら, 2004, Preventive Med 39(4) 767-775; Rheeら, 2002, Clin Exp Immunol 127(3):463-469)。本発明の好ましい非限定的な一実施形態では、医療用グレードの直径2.5mmで21mm2の表面積を有するガラスビーズを使用する。その表面は、50%CrSO4(Merck, Germany)中で5分間インキュベートすることによって処理され、次いでpHが蒸留水のpHと同一になり、ならびに洗浄液の伝導率が0.3μS未満になるまで蒸留水で洗浄されたものである。処理済みのビーズは、マイクロタイタープレート、遠心管、培養試験管、またはシリンジなどの適切な容器に入れてよく、その後、滅菌してよい(例えば、オートクレーブまたはガンマ線照射によって)。次いで末梢血をビーズの入った容器に入れ、その後、37℃、5%CO2で例えば24時間、無菌的にインキュベートしてよい。次いで、ビーズ/血液懸濁物から、例えば3500rpmで10分間の遠心分離によって血清を回収してよい。典型的には、元の総末梢血容量の20%が回収されるであろう。次いで、得られたエキソソームを含有する血清を−20℃で保存してよい。Orthokine(登録商標)血清はこのようにして調製される(米国特許第6,759,188号および同第6,713,246号を参照のこと)。
【0071】
本発明の、関連する特定の非限定的な実施形態では、ビーズとインキュベートする前、またはその代わりに、末梢血サンプルにIRAPを加えてよい。例えば、末梢血1mlあたりIRAP5μgを加えてよい。
【0072】
本発明の好ましい非限定的な実施形態では、場合によりビーズおよび/またはIRAPとインキュベートされた末梢血から、固形(formed)血液成分を除去するための遠心分離(例えば3000〜5000gで10分間)を行い、その後、例えば100,000gで1時間の超遠心を行うことによって血清を回収し、それによって、エキソソームの濃縮調製物を調製してよい。得られたペレットを生理食塩水に再懸濁してよく、その後、好ましくは滅菌してよい(例えば、0.2μmフィルターを通して濾過することによって)。ペレットを懸濁する容量によってエキソソームの濃度が決まる。好ましくは、その濃度は、血清約100ml:エキソソーム濃縮物1ml(「100×濃縮物」)〜血清2ml:エキソソーム濃縮物1ml(「2×濃縮物」)の範囲、好ましくは血清約50ml:エキソソーム濃縮物1ml(「50×濃縮物」)〜血清5ml:エキソソーム濃縮物1ml(「5×濃縮物」)の範囲、好ましくは血清約10ml:エキソソーム濃縮物1ml(「10×濃縮物」)である。
【0073】
5.5 エキソソーム含有組成物
本発明は、エキソソームが適切な医薬用担体に懸濁されているエキソソーム含有組成物を提供する。
【0074】
本発明の組成物は、エキソソームの濃度が、平均的な投与対象またはエキソソームの所期のレシピエントのいずれかの血清中のその濃度と比較して濃縮されていることを特徴とすることができる。非限定的な実施形態では、その濃度は、血清と比較して、約100×〜2×の範囲、または50×〜5×の範囲であってよく、あるいは約10×である。
【0075】
本発明の組成物は、前記セクションに記載のように、増強物質で処理されたAPCまたは末梢血から得られたエキソソームを含んでよい。
【0076】
本発明の組成物は、超遠心によって調製されたエキソソームを含んでよい。
【0077】
好ましい非限定的な一群の実施形態では、本発明は、増強物質によってコンディショニングされた被験体のAPCを培養し、次いで該コンディショニングされたAPCの培養培地からエキソソームを単離することによって調製されたエキソソームを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0078】
別の好ましい非限定的な群の実施形態では、本発明は、末梢血をガラスビーズとインキュベートし、末梢血から血清を回収し、超遠心によって血清からエキソソームを単離することによって調製されたエキソソームを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0079】
別の好ましい非限定的な群の実施形態では、本発明は、増強物質、好ましくはIRAPの存在下で末梢血をガラスビーズとインキュベートし、末梢血から血清を回収し、好ましくは超遠心によって、血清からエキソソームを単離し、好ましくはエキソソーム濃縮調製物を得ることによって調製されたエキソソームを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0080】
5.6 免疫抑制の方法
本発明は、有効量のAPC由来のエキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を減少させ、阻害し、または予防するための方法を提供する。減少/阻害/予防は、炎症パラメータ、例えば炎症の臨床徴候(膨大、潮紅、蓄熱、痛み、制限された関節可動性、発疹、炎症性神経障害、髄膜炎、脳炎)、アレルギーまたは喘息の臨床徴候(くしゃみ、そう痒、咳嗽、発疹、じんま疹、喘鳴)、炎症性腸疾患の臨床徴候(痙攣、便中の血液および/または粘液)または臨床マーカー、例えばCRP、ESR、WBCの減少によって立証してよい。
【0081】
免疫応答の減少、阻害、または予防が望まれる疾患および障害には、非限定的に、関節炎、アレルギー、喘息、または自己免疫疾患、例えば、非限定的に、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosis)、強皮症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、多発性硬化症、クローン病、乾癬、グレーヴス病、セリアック病、円形脱毛症、中枢神経系脈管炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、結節性多発性動脈炎、特発性血小板紫斑病、巨細胞動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、アジソン病、強直性脊椎炎、ライター症候群、高安動脈炎、および白斑が含まれる。本発明にしたがって処置することが望ましい他の症状には、筋ジストロフィーなどの疾患、および軟部組織、靭帯、もしくは骨の偶発的または医原性の創傷、または非免疫性の現象によって損傷した組織、例えば心筋梗塞後の心筋などの、炎症が適正な治癒を妨害しうる症状が含まれる。
【0082】
本発明の方法は、本発明にしたがって調製された有効量のエキソソームを、そのような処置を必要とする被験体に投与するステップを含む。例えば、前記セクションに記載のエキソソーム組成物を投与してよい。エキソソームは任意の臨床的経路によって投与してよいが、好ましくは、例えば外科的処置中に、静脈内、筋肉内、関節内、皮下、くも膜下腔内に投与するか、あるいは局所注射もしくは点滴注入によって投与する。
【0083】
投与されるエキソソームの量は以下の通りであってよく、あるいは臨床的に、例えば、被験体ごとに決定される通りであってよい。特定の非限定的な実施形態では、約5〜100μgの範囲のタンパク質を有するエキソソームの量、または約50μgのタンパク質を有するエキソソームの量を、被験体体重1キログラムあたりに投与してよい。「特定の量のタンパク質を有するエキソソーム」との表現は、エキソソーム調製物中に存在するタンパク質の量が定量され(例えば、セクション5.3に記載のようにBradford protein assayによって、またはタンパク質を測定するための別の標準的技術によって)、タンパク質の量が、投与されるエキソソームの用量についての指標として使用されることを意味する。本発明の一群の特定の非限定的な実施形態では、約20〜50mlの範囲、約50〜100mlの範囲、約100〜200mlの範囲、約200〜300mlの範囲、約300〜400mlの範囲、または約400〜500mlの範囲の末梢血から回収された血清由来のエキソソームの量をヒト被験体に投与してよい。本発明の別の群の特定の非限定的な実施形態では、約100μg〜5mgの範囲のタンパク質、または約500μg〜2mgの範囲のタンパク質を有するエキソソームの量をヒト被験体に投与してよい。
【0084】
特定の非限定的な実施形態では、本発明は、抗原提示細胞の培養物から調製された有効量のエキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を阻害する方法を提供する。本明細書中で使用される「抗原提示細胞の培養物」とは、当技術分野において公知の方法によって回収され抗原提示細胞に関して富化された細胞の培養物である;かかる培養物は必ずしも100%純粋でなくてよい。
【0085】
5.7 エキソソーム媒介性の免疫抑制をアンタゴナイズする方法
APC由来のエキソソームは免疫抑制性であることが見出されているため、それらは、特定の条件下で、例えば、腫瘍または感染に対する宿主の免疫応答を抑制するという面において、悪影響を及ぼすであろう。したがって、本発明は、免疫の増加が望まれる部位に有効量のAPC由来エキソソームインヒビターを投与するステップを含む、そのような望ましくない免疫抑制を阻害する方法を提供する。そのようなインヒビターは、例えば、図1C、2および4Aに示される、エキソソーム関連抗原、例えばトランスフェリンまたは任意の表面分子に対する抗体であってよい。
【実施例】
【0086】
6. 実施例:エキソソームの特性決定−I
DC由来のエキソソームの免疫調節の役割を実証するために、GMCSF/IL−4中で高密度で培養されたC57BL/6マウス骨髄前駆体からDCを産生させた。次いで、DCによって産生されたエキソソームを分画遠心法によって培養培地から単離し、電子顕微鏡観察、ウエスタンブロットおよびフローサイトメトリーによって特性決定した。
【0087】
6.1 材料および方法
マウス:すべて7〜8週齢のメスC57BL/6(H−2Kb)マウスおよびオスDBA1/LacJ(H−2Kq)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。University of Pittsburgh Biotechnology Center(Pittsburgh, PA)の無菌動物施設で動物を飼育した。
【0088】
骨髄由来DCの産生および培養:Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001)に記載のように骨髄由来DC(BMDC)を産生させた。簡潔には、マウス脛骨および大腿から骨髄を回収し、ナイロンメッシュに通して骨の小片および残渣を取り除いた。0日目に、0.83M NH4Clバッファーで混入した赤血球を溶解し、Ab(RA3−3A1/6.1、抗B220;2.43、抗Lyt2;GK1.5、抗L3T4;すべてAmerican Type Culture Collection, Manassas, VAより入手)およびウサギ補体(Accurate Chemical and Scientific, Westbury, NY)の反応混液でリンパ球を枯渇させた。次いで、完全培地(CM;10%FBS、50μM 2−ME、2mMグルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、100μg/mlストレプトマイシン、および100IU/mlペニシリンを含有するRPMI 1640)中で24時間、細胞を培養し、接着性マクロファージを除去した。次いで1日目に、組換えマウスGM−CSF(1000U/ml)および組換えマウスIL−4(1000U/ml)を含有する新鮮なCMに非接着性細胞を入れた。細胞を4日間培養し、5日目に、アデノウイルスによる形質導入または組換えサイトカイン処理のために回収した。
【0089】
アデノウイルス感染では、1×106DC/ウェルを24ウェルプレートに入れ、5×107PFUの各組換えアデノウイルスを総容量1mlの無血清培地に加えた。37℃で24時間インキュベートした後、細胞を回収し、PBS中で5回洗浄し、新鮮な培地を加えた。7日目に、感染DCおよびエキソソームを回収し、よく洗浄し、動物に注射した。
【0090】
エキソソーム精製:以前に報告されたように分画遠心法によって7日目のBMDC培養物の細胞培養上清からエキソソームを調製した(Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996))。簡潔には、各BMDC培養物から回収された培養上清を、300g(5分)、1,200g(20分)、および10,000g(30分)の3回の連続遠心分離に付して細胞および残渣を取り除き、その後、100,000gで1時間遠心分離した。過剰の血清タンパク質を除去するために、エキソソームペレットを大容量のPBSで洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、最終的に、以後の研究のために120μlのPBSに再懸濁した。micro Bradford protein assay(Bio-Rad, CA)によってエキソソームを定量した。各バッチをタンパク質含量によって標準化し、in vivoにおけるマウスでの研究のために、20μlのPBSに1μgを懸濁した。MHC IIの吸収のために、100μlの洗浄済み抗マウスMHC II常磁性ビーズ(Miltenyi Biotech)を、あらかじめ希釈済みのエキソソーム(1μg/20μl)とインキュベートした。インキュベーションは、穏やかに振盪しながら、4℃で1時間行った。磁気を用いた分離後、微量遠心管に保持されなかった画分をPBSで調節して元の容量にした。ドライアイス/エタノール浴中で瞬間凍結(snap freezing)し、その後37℃の水浴中で温めることを3回繰り返し、あらかじめ希釈済みのエキソソームの凍結/解凍を実施した。最終エキソソーム調製物中のIL−10およびvIL−10の混入濃度をIL−10 ELISA(Endogen)によって決定した。
【0091】
電子顕微鏡観察:分画遠心法によってエキソソームを精製し、Formvar/カーボンコーティンググリッドに10μlを載せ、中性1%水性リンタングステン酸(phosphotungastic acid)10μlでネガティブ染色し、JEOL−1210コンピュータ制御高コントラスト120kv透過型電子顕微鏡を使用して観察した。
【0092】
タンパク質解析:細胞に関して、25G注射針を60回通過させることによって、CLAP(キモトリプシン、ロイペプチン、アプロチニン、およびペプスタチン、各100μM)を添加した10mMトリエタノールアミン、1mM EDTA、10mM酢酸、250mMショ糖、pH7.4中でホモジナイズし、それによって全膜(total membrane)からサイトゾルを分離した。1,200gで遠心分離して、核および細胞残渣から上清を除去した。100,000gで1時間遠心分離した後、ペレット中に全膜を回収した。次いで10μgの細胞ライセートまたはエキソソーム調製物を5−20%勾配SDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース上にトランスファーし、enhanced chemiluminescence detection kit(Amersham)を使用してウエスタンブロットによって検出した。
【0093】
FACS解析:大多数の培養細胞(60〜95%)において、FACScan(Becton Dickinson, Sunnyvale, CA)による、CD11b、CD11c、CD80、CD86、ならびにMHCクラスIおよびクラスIIの発現に関する表現型解析によってDCを規定した。エキソソームに関して、最終容量30〜100μl中で室温で15分間、30μgのペレット化エキソソームを10μlの直径4μmのアルデヒド/スルファートラテックスビーズ(Interfacial Dynamics, Portland, OR)とインキュベートし、その後、PBS1ml中で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートした。100mMグリシン中で30分間インキュベートすることによって反応を停止させた。エキソソームコーティングビーズをFACS洗浄バッファー(PBS中の3%FCS、および0.1%NaN3)中で3回洗浄し、FACS洗浄液500μlに再懸濁した。ビーズを各一次抗体と1時間インキュベートし、その後、必要であればFITCコンジュゲート二次抗体中でインキュベートし、洗浄し、FACSCaliber(Becton Dickinson, San Diego, CA)で分析した。Lysis II FACScan software(Becton Dickinson)を使用してデータ収集および分析を実施した。
【0094】
6.2 結果
全載透過型電子顕微鏡観察によるエキソソームペレットの超微細構造の分析では、特徴的な受け皿型の直径40〜90nmのエキソソームについての顕著な富化が示された(図1A)。ウエスタンブロット解析では、DC由来のエキソソームは、エキソソーム関連タンパク質CD71およびHsp70に関して陽性である(図1B)が、エキソソームにおいて見出されないタンパク質、例えばHsp90、インバリアント鎖、およびカルネキシンに関しては陰性であることが実証された。エキソソーム画分の無傷の小胞の性質をさらに実証するために、eGFP/C57マウスのBMDCからエキソソームを精製した。その理由は、その動物の体内の大多数の細胞はマーカータンパク質eGFPを構成的に発現しているからである(図1B)。高度に富化されたエキソソーム画分のウエスタン解析では、かなりのレベルの完全長eGFPが示された。したがって、可溶性eGFPがBMDC由来のエキソソームの内腔の保護環境内にカプセル化されていることが示唆される。
【0095】
DC由来のエキソソーム画分を表面タンパク質に関するフローサイトメトリーによってさらに調査した。100,000×gで遠心した後にエキソソームを回収し、ラテックスビーズに結合させ、マウスDC結合型白血球性マーカータンパク質に対する複数のモノクローナル抗体で染色した。エキソソームの表面はMHC IIに関して高レベルで陽性に染色され、より中程度のレベルでMHC I、CD11C、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)が検出された(図1C)。総合すると、これらのデータは、他者によって報告されるDC由来エキソソーム関連タンパク質の多数のマーカーを含有する無傷のエキソソームにについて富化することができることを実証する(Stoorvogelら, Traffic. 3:321-330 (2002); Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996); Kleijmeerら, Traffic. 2:124-137 (2001))。
【0096】
7. 実施例:エキソソームの特性決定−II
表面抗原.図2は、DC由来のエキソソームの表面表現型を実証するFACS解析の結果を示す。エキソソームを、CD11b(MHCクラスIIの分析用)またはMHCクラスII(IAd)抗体でコーティングされた4.5μmビーズとインキュベートした。ビーズを使用してエキソソームのサイズを増加させ、FACSによって検出可能となるようにした。次いで、ビーズでコーティングされたエキソソームを指定のタンパク質に対するPE mAbで標識した。図2に記載の表面抗原に加えて、骨髄由来のエキソソームはCD11c、CD14、CD54、MFG−E8、CD80、CD86およびCD9に関しても陽性であった。かなりの割合のエキソソームがCD11a、CD11bおよび膜結合型TNF−αに関して陽性であったが、CD8−α、CD32、CD49d、CD25、CD40、CD107a(Lamp−1)、CD95およびTrailに関しては陰性であった。興味深いことに、その調製元のDCのうちの少ない割合しかFasL陽性ではなかったにもかかわらず、99%のエキソソームがFasL(CD178)に関して陽性であった。この結果は、FasLがエキソソームに優先的にソーティングされることを示唆し、その場合、いかなる理論にも拘束されないが、このことは、観察された治療効果の付与に本質的な役割を果たすと思われる。
【0097】
輸送.図3A−Dは、DC由来のエキソソームのin vivoでの輸送を示す。BDMC由来のエキソソームをPKH67で標識し、マウスにIV注射し、注射2時間後からマウスを分析した(Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001))。脾性辺縁帯のMOMA−1+のマクロファージ、ER−TRP+のマクロファージおよびCD11c+のDCにおいて標識エキソソームを検出した。CD11c+のDCでは、エキソソームがLamp−1+のエンドサイトーシス小胞と共存していることが見出された。さらに、まず、エキソソームはCD8−α陰性CD11c+の細胞によって取り込まれ、標識エキソソームに関するCD8−α+Dc陽性の割合は経時的に増加した。24時間後、エキソソームはT細胞領域のCD11c+のDCと共存していることが示された。また、エキソソーム陽性DCの分析では、それらがDC成熟マーカー(IAb、CD86またはCD54)をアップレギュレーションしないことが示された。これらの結果は、DC由来のエキソソームが、脾臓に認められる未成熟DCならびにマクロファージによって効率的に内部に取り込まれ、DCの成熟を誘発することなく、DCの成熟能に影響することもないことを示唆する。ゆえにエキソソーム機能に関するワーキングモデルは、それらが脾臓およびリンパ節の抗原提示細胞のサブセットと相互作用し、そして次にT細胞応答を抑制し、その結果、調節性T細胞集団の誘導が生じるのであろうというものである。
【0098】
8. 実施例:DC/FasL由来のエキソソームは免疫抑制活性を有する
記号「DC/‘X’」(記号中の‘X’はFasL、IL−10、IL−4、などの作用物質である)は、樹状細胞からエキソソームを調製する前に、樹状細胞がXを発現するように操作されたか、あるいはDCがXに曝露されたことを示す。
【0099】
8.1 DC/FasL由来のエキソソームは外因性FasLを保持する
以下の実施例は、外因性遺伝子を形質導入されたDCから単離されたエキソソームがその遺伝子産物を提示することが可能であることを実証する。特に、DCがFasL遺伝子を保持するアデノウイルスベクターで形質導入されている場合、そのDC由来のエキソソームはFasLを提示する。
【0100】
8.1.1 材料および方法
DCの産生:以前に報告されたように骨髄由来DCを産生させた(Whalenら, Mol Ther. 4:543-550 (2001); Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001); Kimら, Mol Ther. 6:584-590 (2002))。簡潔には、C57BL/6マウスの脛骨および大腿から骨髄を回収した。混入赤血球を溶解し、抗体の反応混液(RA3−3A1/6.1、抗B220;2.43、抗Lyt2;GK1.5、抗L3T4;すべてATCC, MDより入手)でリンパ球を枯渇させた。次いで完全培地(CM)中で24時間、細胞を培養して、接着性マクロファージを除去した。次いで、1000U/mlのmGM/CSFおよびmIL−4を含有する新鮮なCMに非接着性細胞を入れた。細胞を4日間培養し、アデノウイルスによる形質導入のために回収した。アデノウイルス感染では、総容量1mlの無血清培地中で1×106のDCを5×107PFUのウイルスと混合した。24時間インキュベートした後、DCをPBSで3回よく洗浄し、さらに48時間インキュベートした。8日目に、エキソソームの精製および感染DCの回収のために培養上清を回収した。
【0101】
エキソソームの単離:以前に報告された方法に軽微な変更を加えてエキソソームを単離した(Raposoら, J. Exp Med. 183:1161-1172 (1996))。回収済みの培養上清を、300gで10分間、1200gで20分間、および3000gで30分間遠心分離した。最終の遠心分離から得られた上清を、超遠心機で100,000gで1時間、再度遠心分離した。エキソソームペレットを生理食塩水中で洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、生理食塩水に再懸濁した。
【0102】
フローサイトメトリー:DCの表現型解析では、マウス表面分子(CD11b、CD11c、CD80、CD86、H−2Kb、I−Ab、および適切なアイソタイプ対照)に対するPE−またはFITC−コンジュゲートモノクローナル抗体でDCを染色した。
【0103】
FACS解析では、最終容量20μl中で室温で15分間、エキソソームを5μlの直径4μmのアルデヒド/スルファートラテックスビーズとインキュベートした。各ビーズ/エキソソームサンプルにウシ血清アルブミン(BSA)10mgを加えた後、インキュベーションを15分間継続した。1mlの生理食塩水を加え、その後、穏やかに振盪しながら75分間のインキュベーションを行った。100mMグリシンと30分間インキュベートすることによって反応を停止させた。エキソソームコーティングビーズを抗体で染色し、FACSバッファー(生理食塩水中の3%ウシ胎児血清(FBS)および0.1%NaN3)で2回洗浄し、FACSバッファー400μlに再懸濁した。DCおよびエキソソームをFACScan(Becton Dickenson, CA)によって調べた。
【0104】
電子顕微鏡観察:分画遠心法によってエキソソームを精製し、Formvar/カーボンコーティンググリッドに10μlを載せ、中性1%水性リンタングステン酸10μlでネガティブ染色し、JEOL−1210コンピュータ制御高コントラスト120kv透過型電子顕微鏡を使用して観察した。骨髄由来DCを単離した。5日目に、単離されたDCの半分をAd.FasLに感染させた。上記のようにエキソソームを単離した。
【0105】
タンパク質解析およびウエスタンブロッティング:5マイクログラムのエキソソームタンパク質およびDCライセートを12%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離した。タンパク質をニトロセルロース膜(Amersham)上にブロットした。ブロッキング後、抗体、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼを膜に接触させ、X線フィルムを使用してenhanced chemiluminescence(Perkin Elmer Life Science)によって検出した。
【0106】
8.1.2 結果
Ad.eGFPまたはAd.FasLでの形質導入の1日後によく洗浄した後、感染したマウスDCを48時間培養し、分画遠心法によって上清からエキソソームを単離した。106個のマウス骨髄DCは48時間にわたって1〜2μgのエキソソームを産生した。次いで、MHCおよび共刺激分子の存在に関してDCおよび単離されたDC由来のエキソソームを分析した。その分析は、ラテックスビーズにカップリングされた抗体とのインキュベーション、その後のフローサイトメトリーによって行った。図4A〜Cに示されるように、Ad.eGFPおよびAd.FasLで形質導入されたDCならびに対照で形質導入されたDC由来のエキソソームは、MHCクラスIおよびII分子、CD11cならびに共刺激分子CD80およびCD86に関して陽性であった(図4A)。さらに、抗FasL抗体を使用するウエスタン解析によって、DC/FasLおよびDC/FasL由来のエキソソームはともに約40KdaのヒトFasLトランスジーンに関して陽性であることが示された(図4B)。これらの結果は、Ad/FasLで形質導入されたDC由来のエキソソームが、タンパク質分解されていない、無傷のFasLならびにMHC、共刺激分子、およびCD11cを含有していたことを実証する。EMによるエキソソーム画分の分析では、かなりの数の、エキソソームに特徴的な受け皿型の小胞が示された(図4C)。
【0107】
8.2 足蹠膨大アッセイにおいて、FasLを提示するエキソソームを局所投与すると、処置された足および反対側の足の両方において遅延型過敏性(「DTH」)に関連する膨大が減少した
FasLを発現するように遺伝子改変されたDC、ならびにその改変型DC由来のエキソソームがin vivoで炎症を抑制できるかどうかを試験するために、DTHマウスモデルを利用した。このモデルでは、特定の抗原、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミン(OVA)でマウスを免疫し、その後、免疫の10〜14日後にその特定の抗原を後肢の足蹠(footpad)に注射することによってTh1媒介性の炎症反応を誘発する。
【0108】
8.2.1 材料および方法
骨髄からの単離後、DCをAd.Ψ5またはAd.FasLに感染させた。セクション8.1に記載のようにエキソソームを精製した。
【0109】
DTHモデルへのエキソソームの投与:フロイント完全アジュバント(FCA)中で1:1で乳化された抗原(KLHまたはOVA)100μgを1箇所の背側部位に注射することによってC57BL/6マウスを感作した。10日後、免疫したマウスの一方の後肢の足蹠に106個のDCまたはDC由来のエキソソーム1μgを注射し、その12時間後に抗原に曝露した。反対側の足蹠には、DCまたはエキソソームの代わりに等容量の生理食塩水を投与した。生理食塩水20μlに溶解された抗原20μgを両足蹠に注射することによってマウスを抗原に曝露した。曝露の24、48および72時間後に足蹠の膨大を測定した。抗原での追加免疫注射の前およびその後に、結果を膨大の差異(×0.01mm)として表した。
【0110】
統計解析:スチューデントt検定を使用し、また分散分析によって、結果を比較した。
【0111】
8.2.2 結果
図5に示されるように、DC/FasLまたはDC/FasL由来エキソソームを送達すると、抗原の注射の24、48および72時間後に、処置された足だけでなく、無処置の反対側の足においても足膨大が顕著に抑制された。対照的に、DC/Ψ5または対照DC由来のエキソソームを注射しても、DTH応答を阻害することはできなかった。これらの結果は、FasLを発現する遺伝子改変型DC、ならびにDC/FasL由来のエキソソームが、処置された足だけでなく、反対側の無処置の足においてもDTH応答の抑制に等しく有効であることを実証する。
【0112】
関節炎の複数の異なる動物モデルにおいて、種々の異なる治療用遺伝子をin vivoおよびex vivo送達すると、いずれの送達においても対側効果が観察される(Kimら, J. Immunol. 164:1576-1581 (2000); Whalenら, J. Immunol. 162:3625-3632 (1999); Lechmanら, J. Immunol. 163:2202-2208 (1999); Ghivizzaniら, Proc Natl Acad Sci U S A. 95:4613-4618 (1998); Kimら, J. Immunol. 166:3499-3505 (2001); Ijimaら, Hum Gene Ther. 12:1063-1077 (2001); Kimら, Mol Ther. 6:584-590 (2002); Smeetsら, Arthritis Rheum. 48:2949-2958 (2002); Lechmanら, Gene Ther. 10:2029-2035 (2003))。
【0113】
8.3 FasLを提示する同系エキソソームによる遅延型過敏性の抑制
8.3.1 材料および方法
DC由来のエキソソームが炎症を抑制できるメカニズムを調べるために、観察された効果がMHC依存的および抗原特異的であるかどうかを調べた。エキソソームのDTH応答阻害能がMHC依存的であるかどうかを決定するために、同種異系エキソソームがin vivoでDTH応答を抑制できるかどうかを調べた。同系エキソソームの供給源としてC57BL/6(H−2b,I−Ab)マウス由来のDCを使用し、一方、同種異系エキソソームの供給源としてBalb/C(H−2d,I−Ad)由来のDCを使用した。同系および同種異系のDC由来のエキソソームのin vivoにおけるDTH抑制能を調べるために、KLH免疫マウスの両側の後肢の一方に同系または同種異系エキソソームを注射し、その12時間後に、両後肢に抗原を注射した。48時間後に足蹠の膨大の程度を測定した。
【0114】
8.3.2 結果
同種異系DC由来のエキソソームはDTH応答を抑制できなかった(図6)。対照的に、同系マウス由来の、Ad.FasLで形質導入されたDCまたはDC/FasL由来のエキソソームを注射すると、DTHの抑制が観察された。さらに、同系DC/FasL由来のエキソソームによる局所処置を施すと、処置された足および無処置の反対側の足の両方において足膨大が減少した。また、このin vivoでの結果は、そのExo/FasLの効果が、FasLを保持する細胞膜の注射に由来する、広範囲に及ぶアポトーシスの誘発のためではないことを実証する。
【0115】
8.4 FasLを提示するエキソソームの遅延型過敏性の抑制はMHCクラスII依存的である
8.4.1 材料および方法
DCおよびエキソソームによって付与される免疫調節の性質をさらに調べるために、MHCクラスIおよびクラスII欠損マウスの両者からDCを調製し、Ad.FasLまたはAd.Ψ5に感染させた。MHCクラスIおよびクラスII欠損マウスのDC/FasLまたはDC/Ψ5からエキソソームを単離し、KLH免疫マウスの後肢に注射した。
【0116】
8.4.2 結果
クラスI欠損マウス由来の遺伝子改変型DCおよびDC由来のエキソソームの注射は、治療効果の大きさに対して最低限の効果しか有さない(図7A)。しかし、MHCクラスII欠損マウス由来のFasL発現DCおよびDC由来のエキソソームを注射すると、どちらの場合も、治療的な抗炎症性効果が完全に抑止された(図7B)。これらの結果は、DC/FasLの治療効果が、クラスIではなくMHCクラスII依存的であることを示し、DTH応答の調節に関するCD4+T細胞の主要な役割と合致する(Ptakら, J. Immunol. 146:469-475 (1991))。さらに、その結果は、DTH応答についての観察された調節に関して、エキソソームが、DCと同様に、クラスIではなくクラスIIを必要とすることを示す。
【0117】
8.5 エキソソーム媒介性の遅延型過敏性応答の阻害は抗原特異的である
8.5.1 材料および方法
FasLを提示するエキソソームが免疫応答の抗原依存的な抑制をもたらすことができることを実証するために、マウスをKLHに対して免疫した。DCを調製し、Ad.FasLまたはAd.eGFPに感染させ、次いで、KLHまたはOvaタンパク質のいずれかでパルスした。個々のDC培養物からエキソソームを調製し、免疫したマウスに注射し、その直後にKLHを注射してDTH応答を誘発した。応答を48時間後に測定した。
【0118】
8.5.2 結果
図8に示されるように、Ad.FasL感染、KLHパルス済みDC由来のエキソソームは、注射された足ならびに無処置の反対側の足において炎症を減少させた。対照的に、Ovaパルス済み、FasL発現DC由来のエキソソームは、KLH処理、Ad.eGFP感染DC由来のエキソソームと同様に、炎症を中程度にしか抑制できなかった。これらの結果は、FasL発現DC由来のエキソソームが抗原特異的な様式で炎症を抑制できることを示唆する。
【0119】
8.6 FasL欠損マウスの樹状細胞から調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を抑制できなかった
8.6.1 材料および方法
野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかからDCおよびDC由来のエキソソームを単離し、対照アデノウイルスまたはFasLを発現するアデノウイルスに感染させた。DCおよびDC由来のエキソソームを、あらかじめKLHに対して免疫された野生型マウスの足蹠に注射して戻し、その12時間後に足蹠にKLHを注射した。そして抗原注射後の足膨大の程度を測定した。また、野生型およびgld(FasL−/−マウス)由来のエキソソームをlpr(Fas−/−)マウスに注射して戻して、エキソソームおよびDCの効果がレシピエントマウス中の機能的Fasの存在を必要とすることを実証した。
【0120】
gld(FasL−/−)マウス由来のDCおよびエキソソームは、注射された足および反対側の足においてDTH応答を抑制できなかったが、gld DCおよびDC由来のエキソソームをAd.FasLで形質導入するとその効果が回復した(図9A)。さらに、FasLを含有するエキソソームならびにDC−FasLはlpr(Fas−/−)マウスにおいて効果がなかった(図9B)。
【0121】
8.7 FasLを保持するエキソソームを投与するとコラーゲン誘発関節炎モデルにおいて疾患の重症度が改善された
DC/FasL由来のエキソソームがコラーゲン誘発関節炎を治療できることを実証するために、マウスコラーゲン誘発関節炎モデルにエキソソームを注射した。
【0122】
8.7.1 材料および方法
7〜8週齢のオスDBA/1 lacJ(H−2q)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入し、University of Pittsburgh Biotechnology Centerの無菌動物施設で飼育した。0.05M酢酸中の2mg/mlの濃度のウシII型コラーゲン(Chondrex)を等容量のフロイント完全アジュバント(FCA)中で乳化し、マウスの尾のつけ根に注射した。
【0123】
確立されている巨視的なスコア化システム(0〜4の範囲)によってマウスをモニターした:0,正常;1,紅斑(erythma)を伴う検出可能な関節炎;2,顕著な膨大および潮紅;3,関節から指にかけての重篤な膨大および潮紅;および4,最大の膨大および強直症を伴う変形。巨視的スコアの平均をすべての足に関する累積値として表した。マウスあたりの最大限のスコアは16である(n=7)。
【0124】
DCをAd/FasLまたはAd/Ψ5に感染させ、28日目に、ウシII型コラーゲンで免疫したDBA1マウスに、感染DCから単離したエキソソームを静脈内注射した。
【0125】
8.7.2 結果
DC/FasL(図10A)およびFasLを提示するエキソソーム(図10B)での処置では、1回の処置後に、疾患の発症を遅延させ、かつ関節炎の進行を抑制することができ、一方、Exo/Ψ5対照群では、DC対照および生理食塩水対照と比較して、疾患の退行に関する中程度の効果が示された。これらの結果は、FasLを発現するDC由来のエキソソームの1回の注射によってコラーゲン誘発関節炎を抑制できることを示唆する。同様に、確立した疾患を有するマウス(32日目)にExo/FasLを注射した場合も疾患が抑制された。
【0126】
9. 実施例:DC/IL−10由来のエキソソームは免疫抑制活性を有する
9.1 IL−10を提示するBMDC由来のエキソソームのin vitroにおける機能
BM−DC由来のエキソソームがT細胞の増殖を抑制する能力を実証するために、混合白血球反応(MLR)へのDC由来のエキソソームの添加の効果を調査した。潜在的に免疫抑制性であるDC由来のエキソソームの供給源として、ウイルス性IL−10(vIL−10)と称される、エプスタイン・バーウイルスによってコードされるIL−10遺伝子を発現するアデノウイルスで形質導入されたBMDCを使用した。vIL−10を関節内に遺伝子導入すると、抗原誘発関節炎(AIA)ウサギモデルおよびコラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデル(5,6)の両者において炎症が抑制されることが示されている。対照として、ルシフェラーゼを発現するアデノウイルスベクター(Ad.Luc)で形質導入されたBM−DCを使用した。
【0127】
9.1.1 材料および方法
ベクターの構築およびアデノウイルスの作製:以前に報告されている標準的プロトコルにしたがって、ウイルス性IL−10を発現するアデノウイルス(Ad.vIL−10)および改良型緑色蛍光タンパク質を発現するアデノウイルス(Ad.eGFP)を構築し、増殖させ、力価測定した(Kimら, Arthritis Res. 2:293-302 (2000))。簡潔には、DNA、アデノウイルス5由来のE1およびE3欠失型アデノウイルス骨格(psi5)およびアデノウイルスシャトルベクターであるpAdloxの同時トランスフェクション後に、Creリコンビナーゼを発現する293細胞(CRE8細胞)における相同組換えによって組換えアデノウイルスを作製した。ヒトCMVプロモーターの制御下で挿入されたcDNA配列を発現させる。CsCl勾配超遠心によって組換えアデノウイルスを精製し、無菌のウイルス保存バッファー中で透析し、アリコートに分け、使用時まで−80℃で保存した。CRE8細胞を培養し、10%ウシ胎児血清を添加したDMEM(Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で維持した。
【0128】
リンパ球混合培養反応:丸底96ウェルプレート中でin vitroミクロ培養するためにBALB/cマウスの脾臓からT細胞を精製した。各ウェルに、対照C57BL/6由来のDCもしくは遺伝子改変型C57BL/6由来のDC(vIL−10、rIL−10またはルシフェラーゼ)またはその単離されたエキソソームのいずれかとともに5×104個の脾臓T細胞を播種した。5:1、10:1、20:1、および40:1のT細胞:DC比でT細胞にDCを加えた。培養5日目に、各ウェルに1μCiの3H−チミジンを加え、その16時間後に回収した。microplate Beta counter(Wallac, Truku, Finland)で増殖性T細胞の放射性標識を測定した。
【0129】
9.1.2 結果
Ad.vIL−10で形質導入されたDCをMLRに加えると、3H−チミジンの取り込みによって測定されるT細胞の増殖をほとんど完全に抑制できたが、形質導入されていないDCを加えてもほとんど効果を示さないか、または全く効果を示さなかった(図11A)。Ad.vIL−10に感染させたBM−DCによって分泌されたエキソソームは、T細胞増殖に関して4分の1への中程度の減少を示した(図11B)。これらのデータは、免疫抑制性vIL−10発現性DCから単離されたエキソソームがT細胞の増殖をブロックできること、および無改変BMDC由来のエキソソームがそれ自体で部分的な抗炎症特性を有している可能性があることを示唆する。
【0130】
9.2 IL−10を提示するエキソソームは遅延型過敏性モデルにおいて炎症を抑制できる
in vivoにおけるBM−DC由来のエキソソームの抗炎症性効果を実証するために、C57BL/6マウスの遅延型過敏性モデルを使用した。このモデルは、以前、一方の後肢の足蹠にAd.vIL−10を注射すると、注射された足蹠および反対側の足蹠の両方において炎症が抑制されることを示すために使用されている。さらに、DTHモデルにおいて局所性Ad.vIL−10送達後に観察された対側効果は内因性APCによって付与されたことが養子移入実験によって示されている。感作済みマウスの群の右後肢の足蹠に、無処理もしくは遺伝子改変型DCまたはこれらの細胞の培養培地由来のエキソソームのいずれかを注射した。反対側の足蹠には同様の容量の生理食塩水注射を投与した。12時間後、各足蹠をKLH20μgに曝露し、疾患誘発の24、48および72時間後に足蹠の膨大をモニターした。
【0131】
9.2.1 材料および方法
遅延型過敏性:0日目に、フロイント完全アジュバント(Difco, Detroit, MI)中で1:1で乳化された抗原(OVA)100μgを皮下注射することによってマウスを感作した。2週間後、あらかじめ感作されたマウスの一方の後肢の足蹠に、1×106個の処理済みDC(50μlのPBS中)または各実験DC群由来の精製済みエキソソーム1μg(50μlのPBS中)のいずれかを注射した。実験DC群には、50moiのAd.ルシフェラーゼで形質導入されたDCおよび50moiのAd.vIL−10で形質導入されたDCが含まれる。反対側の足蹠には、等容量の生理食塩水を注射した。1日後、マウスの両後肢の足蹠に、50μlのPBSに溶解された抗原20μgを注射することによって抗原に曝露し、24時間、48時間、および72時間後にバネ付きカリパス(Dyer Co. Lancaster, PA)で足蹠を測定した。その結果を、膨大に基づくサイズ差(mm×10−2)として表した。
【0132】
統計解析:Microsoft Excelソフトウェアプログラムを使用してすべてのデータを分析した。スチューデントt検定およびANOVAの両者を使用して群の比較を実施した。
【0133】
9.2.2 結果
図12に示されるように、生理食塩水対照動物におけるDTH応答は重篤であり、足の厚みの平均増加は2mmを超えた。しかし、Ad.vIL−10で形質導入された1×106個のBM−DCを投与されたマウスの注射された足蹠では、足蹠の膨大が50%以上減少した。また、これらの同一の動物の生理食塩水で処置された反対側の足蹠で、炎症の減少(40%)が観察された。興味深いことに、Ad.vIL−10で形質導入されたBMDC由来の1マイクログラムの分泌エキソソームの注射はさらにより保護性であり、生理食塩水対照マウスと比較して足膨大が65%抑制された。さらにまた、Ad.vIL−10/エキソソームで処置された関節の反対側の足蹠においても顕著な減少が観察された(図9A)。Ad.Luc/DC、Ad.Luc/エキソソーム、無処理DCまたは無処理DC由来のエキソソームを投与しても、足蹠の膨大の顕著な減少は観察されなかった。これらのデータは、Ad.vIL−10で形質導入されたBMDC由来のエキソソームが、感作済みマウスに局所送達されると、処置された足蹠および無処置の反対側の足蹠の両方においてDTHを抑制できることを示唆する。
【0134】
9.3 組換えIL−10で処理されたDC由来のエキソソームは免疫抑制性である
9.3.1 材料および方法
上で実施された実験は、Ad.vIL−10で形質導入されたDC由来のエキソソームが免疫抑制性であることを示唆するが、低レベルのAd.vIL−10またはvIL−10タンパク質がエキソソーム調製物に混入した可能性がある。アデノウイルスの感染またはvIL−10タンパク質の混入が、観察された効果に寄与しなかったことを示すために、BM−DCを、培養中で24時間、1μg/mlの組換えマウスIL−10タンパク質で処理し、生成されたエキソソームを、実施例9に記載のようにC57BL/6マウスの遅延型過敏性モデルを利用してin vivoで試験した(図12B)。
【0135】
9.3.2 結果
組換えマウスIL−10で処理されたDC由来のエキソソームは、抗原への曝露の48時間後に強い免疫抑制効果を生じた。それは、処置された足において足膨大が6分の1に減少し、無処置の反対側の足では3分の1に減少したことによって実証される。総合すると、これらの結果は、マウスIL−10で処理されたBMDC由来のエキソソームが、処置された足蹠および無処置の反対側の足蹠の両方においてDTHを抑制でき、この効果のメカニズムとしてアデノウイルスの混入が実質的に除外されることを実証する。エキソソーム調製物中で、ELISAによって組換えIL−10タンパク質が検出されなかったことに留意することも重要である。
【0136】
9.4 膜破壊はエキソソームの免疫抑制能を喪失させる
9.4.1 材料および方法
100,000×g富化ペレット画分中に存在するエキソソームがDTHモデルにおける治療効果の付与に重要であることを確認するために、無傷のエキソソーム粒子の有効性に関する必要条件を調べた。
【0137】
DCまたはAd.ルシフェラーゼもしくはAd.vIL−10で形質導入されたDC由来のエキソソームを単離し、4サイクルの凍結/解凍に付した。5μgの調製物をSDS−PAGE解析によって分離し、Hsc70に関してブロットした。
【0138】
エキソソームがDTH応答の抑制に無傷の膜を必要とするかどうかを試験するために、Ad−vIL−10で形質導入されたDC由来の1μgの無傷または凍結/解凍エキソソームをKLH免疫マウスの一方の後肢の足蹠に注射して処置した(図10C)。24時間後、各足蹠をKLHで追加免疫し、足蹠の膨大の程度を測定した。
【0139】
9.4.2 結果
4サイクルの凍結/解凍によってエキソソームの完全性が破壊されたことが電子顕微鏡観察によって実証された(図13A)。実際、可溶性のエキソソーム関連タンパク質Hsc70は凍結/解凍処理エキソソーム画分では検出されなかったが、無処理エキソソームには共存していた(図13B)。
【0140】
無傷のexo/vIL−10で処置された群では足蹠の膨大の減少が観察されたが、凍結/解凍処理exo/vIL−10を注射された群は、生理食塩水または対照DC由来のエキソソームで処置された対照群と同様に足膨大の減少を示さなかった。これらの結果は、複数サイクルの凍結/解凍によってエキソソームの膜構造が破壊され、それによってDTHモデルにおけるエキソソームの免疫抑制能が失われたことを実証する。
【0141】
9.5 遅延型過敏性応答の抑制に必要とされるMHCクラスII含有エキソソーム
以下のデータは、DTH応答の抑制に関する、MHCクラスII陽性エキソソームを枯渇させることの影響を実証する。
【0142】
9.5.1 材料および方法
Ad.vIL−10で形質導入されたBMDC由来のエキソソームを前処理のために4つのサンプルに分け、その後、感作済みマウスに注射した(図14A)。第一のエキソソームサンプルはマウスMHC IIに特異的な常磁性ビーズであらかじめ吸収し(Exo/vIL−10(MHC II IP))、第二のサンプルは、DC由来のエキソソーム上に存在しない細胞表面分子であるNK1.1に特異的な常磁性ビーズであらかじめ吸収した(Exo/vIL−10(IP対照))。第三のサンプルは複数サイクルの凍結/解凍に付し(Exo/vIL−10(F/T))、第四のサンプルは無処理のままにした。次いで、エキソソームサンプルをマウスの一方の後肢の足蹠に注射し、12時間後、両後肢の足蹠においてDTHによって誘発された足蹠の膨大を以後72時間にわたって測定した。
【0143】
9.5.2 結果
対照DC由来のエキソソームは足蹠の膨大に関して効果を有さず、一方、Ad.vIL−10/エキソソームは、注射された足蹠および無処置の反対側の足蹠の両方においてDTHを劇的にブロックすることができた。NK1.1ビーズであらかじめ吸収したエキソソーム調製物は免疫抑制活性を示した。しかし、Ad.vIL−10/エキソソームサンプルをクラスIIビーズであらかじめ吸収すると、ほぼ100%のin vivo活性が抑止された。重要なことに、クラスII陽性エキソソームが結合しているその常磁性ビーズそのものを注射すると、吸収していないAd−vIL−10エキソソームの場合に観察される活性と同様の免疫抑制活性が得られた。組換えマウスIL−10タンパク質で処理されたDC由来のエキソソームは、MHC II枯渇後のDTH応答の場合と同様の結果を示した(図14B)。その結果は互いに合致していた。また、Ad−vIL−10または組換えIL−10処理DC由来の両方のエキソソームにおいて複数回の凍結/解凍サイクルを経た製剤は活性を失っていた(図13C)。これらのデータは、エキソソーム画分をマウスに投与した場合に観察されるin vivoの抗炎症性効果がMHCクラスII依存的であることを示唆する。MHCクラスIIはエキソソーム表面に高レベルで存在するため、このことは、マウスで観察されるin vivo活性がエキソソームに起因することを示唆する。さらにまた、小胞の完全性も必要とされるようである。また、これらのin vivoの抗炎症性効果は構造的に無傷のMHCクラスII陽性エキソソームに特異的であるようであり、その効果のメカニズムとしてアデノウイルスの混入が実質的に除外される。
【0144】
9.6 IL−10を提示するエキソソームはマウスのコラーゲン誘発関節炎を抑制できる
9.6.1 材料および方法
4℃で一晩撹拌することによって、ウシII型コラーゲン(Chondrex L.L.C., Redmond, WA)を0.05M酢酸中に2mg/mlの濃度で溶解し、等容量のフロイント完全アジュバント(CFA)中で乳化した。コラーゲン100μgを用いて尾のつけ根で皮内的にマウスを免疫した。初回免疫後の21日目に、マウスにフロイント不完全アジュバント(IFA)中のII型コラーゲンの皮内追加免疫注射を行った。確立されている巨視的なスコア化システム(0〜4の範囲)によって1日おきにマウスをモニターした:0=正常;1=紅斑を伴う検出可能な関節炎;2=顕著な膨大および潮紅;3=関節から指にかけての重篤な膨大および潮紅;および4=最大の膨大および強直症を伴う変形。巨視的スコアの平均をすべての足に関する累積値として表した。マウスあたりの最大限のスコアは16である。また、バネ付きカリパスで各足の厚みを測定し、全4足の厚みを加算することによって各マウスの足膨大を算出した。群あたり10匹のマウスを用いてin vivo実験を実施し、2回繰り返して再現性を確かめた。
【0145】
関節リウマチ(RA)は消耗性の自己免疫疾患であり、遠位可動(diarthroidial)関節の慢性炎症および軟骨組織の進行性の破壊を特徴とする。DBA1/lacJ(H−2kq)系統にウシII型コラーゲンを注射すると、関節において同様の病状ならびに炎症を誘発できる。DCおよびDC由来のエキソソームがコラーゲン誘発関節炎を治療する能力を調べるために、DCをAd−vIL−10に感染させ、その後、得られたエキソソームを、ウシII型コラーゲンで免疫されたDBA1マウスに静脈内注射した。28日目に注射を実施し、その直後に疾患が発症した。
【0146】
9.6.2 結果
DC/vIL−10またはDC/vIL−10由来のエキソソームのいずれかを1回注射することによって、関節炎の発症を遅延させ、かつその重症度を減少させることができたが、生理食塩水を注射された対照群では、疾患が通常通りに進行した(図15)。この結果は、IL−10を発現するDC由来のエキソソームの1回の注射が、自己免疫性、炎症性疾患において全身性の治療効果を付与することができる遺伝子改変型DCの注射に匹敵することを示す。
【0147】
疾患の予防研究におけるDC由来のエキソソームの分析に加えて、確立したCIAを有するマウスにおいてDC−IL−10由来のエキソソームを試験した。Ad.vIL−10で形質導入されたDCまたは組換えIL−10で処理されたDC由来のエキソソームを、確立した疾患を有するマウスに静脈内注射した(図16A−C)。exo−IL−10処置群における疾患の抑制が予防研究で示された抑制より劣っていたとはいえ、Ad.vIL−10で形質導入されたDCおよび組換えIL−10で処理されたDC由来の両エキソソームは、確立した疾患の重症度を減少させることができた(図16A)。さらに、エキソソームを凍結/解凍処理すると治療効果が抑止され(図16B)、一方、組換えIL−10を直接注射しても疾患の進行に影響はなかった(図16C)。
【0148】
10. 実施例:DC/IL−4由来のエキソソームは免疫抑制活性を有する
10.1 DC/mbmIL−4およびそれから調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を抑制する
膜結合型IL−4を保持するアデノウイルスベクター(Ad.mbmIL−4)または陰性対照ウイルス(Ad.Psi5またはΨ5)のいずれかで樹状細胞をトランスフェクトした。これらのDCの一部分からエキソソームを調製した。次いで、本明細書中に記載のマウス足蹠DTHモデルにおいてDCおよびエキソソームを試験した。その結果は図17に示される通りである。DC/mbmIL−4およびDC/mbmIL−4から調製されたエキソソームはともに、注射された足およびその反対側の足の両方においてDTH応答を抑制した。したがって、膜結合型IL−4の増強物質としての有効性が実証される。
【0149】
10.2 DC/smIL−4およびそれから調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を抑制する
可溶型IL−4を保持するアデノウイルスベクター(Ad.sIL−4)または陰性対照ウイルス(Ad.Psi5またはΨ5)のいずれかで樹状細胞をトランスフェクトした。これらのDCの一部分からエキソソームを調製した。次いで、本明細書中に記載のマウス足蹠DTHモデルにおいてDCおよびエキソソームを試験した。その結果は図18に示される通りである。DC/smIL−4およびDC/smIL−4から調製されたエキソソームはともに、注射された足およびその反対側の足の両方においてDTH応答を抑制した。したがって、可溶性IL−4の増強物質としての有効性が実証される。
【0150】
10.3 DC/mbmIL−4およびそれから調製されたエキソソームならびにDC/FasLおよびそれから調製されたエキソソームは遅延型過敏性応答を阻害した
10.3.1 材料および方法
ウイルスに感染していないか、あるいはAd.eGFP対照ベクター、Ad.FasLまたは膜結合型IL−4を保持するアデノウイルスベクター(Ad.mbIL−4)に感染させたC57/BL6骨髄由来のDCからエキソソームを単離した。精製済みエキソソーム(1μgの総タンパク質量)ならびに種々のDC集団(5×105個の細胞)を、あらかじめKLHに対して免疫されたマウスの右足蹠に注射した。エキソソームまたはDCの注射の24時間後、左右後肢の足蹠にKLH抗原を注射し、処置された足蹠およびその反対側の左の足蹠の両方に関して48時間にわたって膨大の程度を測定した。
【0151】
10.3.2 結果
FasLまたはIL−4改変型DC由来のエキソソーム画分がDTH応答の阻害に有効であるかどうかを決定するために、C57/BL6マウスからDCを単離し、アデノウイルスの感染によってFasLまたはIL−4を発現するように遺伝子改変した。これらの実験では、IL−4に融合させたCD28の膜貫通領域を含有する膜結合型IL−4を使用した(mbmIL−4)。次いで、DCおよびエキソソーム画分を右の後肢の足蹠に注射し、その24時間後に両後肢の足蹠に抗原を注射した。興味深いことに、DCおよびAd.FasLおよびAd.mbmIL−4に感染させたDC由来のエキソソーム画分はともに、処置された足だけでなく、反対側の足においても同様に、炎症反応を抑制することができた(図19)。この結果は、エキソソームおよびその由来のDCが、抗原特異的である何らかのメカニズムによって、局所注射後に、全身性の免疫抑制を付与できることを示唆する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、エキソソームは、in vivoにおいて、特異的抗原をプロセシングしている流入領域リンパ節の抗原提示細胞と相互作用し、その結果、抗原特異的な抑制が生じる可能性がある。
【0152】
10.4 DC/IL−4由来のエキソソームはFasLおよびFasを必要とする
野生型およびgld(FasL−/−)マウスからDCを単離し、可溶性(smIL−4)または膜結合型(mbmIL−4)マウスIL−4のいずれかを発現するように改変した。DC集団およびDC由来のエキソソームを、野生型またはlpr(Fas−/−)マウスのいずれかの足蹠に注射して戻し、足蹠に抗原を注射した後の足膨大に対する影響を測定した。
【0153】
DC/IL−4(膜結合型または可溶性のいずれか)から単離されたエキソソームは、DTH応答を抑制するために、レシピエント中のFasLならびにFasを必要とする(図20)。
【0154】
10.5 エキソソームの免疫抑制には同系性が必要とされる
図21A−Bに示されるように、同種異系ではなく、同系のDC/mbmIL−4から調製されたエキソソームだけがマウス足蹠モデルにおいてDTH応答を抑制することが観察された。このことは、エキソソーム媒介性の免疫抑制におけるMHCクラスII抗原の役割と合致する。
【0155】
10.6 DC/IL−4由来のエキソソームはB7.1およびB7.2を必要とする
10.6.1. 材料および方法
B7.1およびB7.2がともに欠損しているマウスからDCを単離し(KO)、対照(Psi−5)またはIL−4発現性アデノウイルスベクターのいずれかに感染させた。種々のDC集団からエキソソームを単離し、次いで、それ(1μgのエキソソーム)をKLH免疫マウスの一方の足に注射した。注射された足ならびに無処置の足において足膨大の程度を測定した。
【0156】
10.6.2 結果
図22に示されるように、アデノウイルスによる遺伝子導入によってIL−4を発現するように改変された野生型DC由来のエキソソームはDTH応答を抑制することができたが、B7.1/B7.2二重GKO(「KO」)DC由来のエキソソームはDTH応答に対して影響しなかった。さらに、B7欠損DCは、B7欠損DC由来のエキソソームの場合に観察された結果と同様に、DTH応答に対して影響を有さなかった。Lohrら, 2003, Nature Immunol. 4:664によれば、糖尿病を抑制するためのT調節細胞の誘導に関して、B7に関する同様の必要条件が観察されている。
【0157】
さらに、免疫抑制性DCおよびDC由来のエキソソームがCD4+CD25+のT細胞の集団を刺激することが観察されており、この細胞集団は調節性T細胞集団である可能性がある。
【0158】
10.7 DC/IL−4由来のエキソソームはコラーゲン誘発関節炎モデルの関節炎を改善させる
10.7.1 材料および方法
擬感染、あるいはAd.psi−5(対照)、Ad.mIL−4、またはAd.mbmIL−4のいずれかに感染させたDBA1骨髄由来のDCからエキソソームを単離した。次いで、疾患の発症後(32日目)に、エキソソーム(1μgの総タンパク質量)をDBA1マウスに静脈内注射した。1か月の期間にわたって各処置群の各足に関して関節炎の重症度をモニターした(スケール0〜4、最大スコア16)。
【0159】
10.7.2 結果
図23に示されるように、DC/IL−4および特にDC/mbmIL−4から調製されたエキソソームで処置すると、疾患の進行をブロックすることができた(32日目には、すべての被験動物が疾患病態の徴候を示した)。一部の処置マウスは無疾患のようであった。
【0160】
11. 免疫抑制活性の養子移入
図24A−Bに示されるように、エキソソームで処置されたマウス由来のCD11C細胞を養子移入するとDTH応答をブロックすることができた。このことは、CD11C陽性細胞が免疫抑制性エキソソームによる調節に関する標的であることを実証する。
【0161】
12. 糖尿病のマウスモデルにおけるエキソソーム媒介性の高血糖の抑制
12.1 材料および方法
若いNODマウスの骨髄からDCを作成し、Ad.IL−4に感染させるか、または感染させなかった。DC集団由来のエキソソームを単離し、1μgのエキソソームを5〜6週齡のNODマウスに静脈内注射した。生理食塩水(sale)処置を対照として使用した。次いで、高血糖に関して動物をモニターした。
【0162】
12.2 結果
CIAマウスモデルで観察された顕著な治療効果に基づいて、高血糖(hypoglycemia)の発症をブロックする活性に関して免疫抑制性DCの能力を同様に試験した。IL−4を発現するように改変された、若いNODマウス(3〜4週齢)の骨髄由来のDCを静脈内注射すると、10週齢で投与された場合に高血糖になるNODマウスの割合が減少することが観察された。さらに、NF−κBインヒビター(二本鎖NF−κBデコイオリゴヌクレオチド)で処理されて、より未成熟なDC表現型(低CD80、CD86およびCD40)になったNODマウスの骨髄由来のDCで処置すると、NODマウスの高血糖の発症を抑制できることが示された。これらの観察ならびにCIAモデルでの結果と合致して、FasLを発現するように遺伝子改変されたDCは、膵島炎の初期に投与された場合、NODマウスの高血糖の発症を抑制することが示されている(J. Mountz)。ゆえに、IL−4またはFasLのいずれかを発現するように改変されているか、あるいはNF−κBインヒビターで処理された免疫抑制性DCは、疾患を予防するか、または回復させることができる場合がある。
【0163】
図25に示されるように、上記実験では、Ad.Il−4で形質導入されたDC由来のエキソソームはNODマウスの高血糖の発症を遅延させ、ならびにその発症の頻度を減少させることができた。
【0164】
13. 実施例:血清から調製されたエキソソーム
13.1 血清を適用するとDTH応答が抑制される
13.1.1 材料および方法
C57BL6マウスをKLHの皮内注射で免疫した。2週間後、マウスから血液を回収した。サンプルを1500gで10分間遠心分離して血清を単離した。合計で50μlの血清をKLH免疫マウスの後肢に注射し、その24時間後に、両側後肢にKLH抗原を追加免疫注射した。KLHの追加免疫注射の48時間後に足蹠の膨大を測定した。
【0165】
13.1.2 結果
ビーズと24時間インキュベートされた、未処置のマウス由来の血清を注射すると、生理食塩水処理対照と比較して、膨大のいくらかの減少が示された(図26,群Iを参照のこと)。インキュベーションまたはビーズなしで、KLH免疫マウス由来の血清を注射すると、生理食塩水対照と比較して、足蹠の膨大の最大の減少が示された(図26,群IIを参照のこと)。ヒトおよびマウスから単離できる血清の量に適切な小型のシリンジであるMinikinを用いてインキュベートされた場合およびそれを用いずにインキュベートされた場合の、KLH免疫マウス由来の血清を注射すると、生理食塩水処理対照と比較して、膨大のいくらかの減少が示された(図26,群IIIおよびIVを参照のこと)。
【0166】
13.2 血清由来のエキソソームはDTH応答を抑制する
13.2.1 材料および方法
KLHの皮内注射でマウスを免疫した。2週間後、マウスから血液を回収し、4時間氷冷した。サンプルを1500gで10分間遠心分離して血清を単離した。次いで、分画遠心法によってエキソソームを単離した。回収された血清を1500gで20分間および3000gで30分間遠心分離した。最終の遠心分離から得られた上清を、再度、超遠心機で100,000gで1時間遠心分離した。エキソソームペレットを生理食塩水で洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、生理食塩水に再懸濁した。
【0167】
50マイクロリットルの生理食塩水中の1マイクログラムのエキソソームをKLH免疫マウスの後肢の足蹠に注射した。他方の後肢には、同一の量の生理食塩水を投与した。24時間後、マウスの両後肢に、50μlの生理食塩水中の20マイクログラムのKLH抗原を注射した。KLHの追加免疫注射の48時間後に足蹠の膨大を測定した。
【0168】
簡潔には、各BMDC培養から回収された培養上清を、300g(5分)、1,200g(20分)、および10,000g(30分)の3回の連続遠心分離に付して細胞および残渣を取り除き、その後、100,000gで1時間遠心分離した。過剰の血清タンパク質を除去するために、エキソソームペレットを大容量のPBSで洗浄し、100,000gで1時間遠心分離し、最終的に、以後の研究のために120μlのPBSに再懸濁した。
【0169】
微小胞を得るために、血清を3,000g(20分)および10,000g(30分)で遠心し、ペレットを生理食塩水に再懸濁した。エキソソームペレットを取り出す超遠心後に血清の上清を得た。その上清は以後の遠心分離の対象とはしなかった。
【0170】
13.2.2 結果
KLH免疫マウス由来の血清の微小胞、血清のエキソソーム、および全血清を投与すると、生理食塩水処理対照または未処置のマウス由来の血清をDTHマウスに投与した場合と比較して、膨大の減少が生じる(図27)。エキソソームは膨大の最大の減少を生じ、全血清の使用よりも顕著に大きな減少を示した(図27,群II)。KLH免疫マウス由来の血清のエキソソームは、KLH免疫マウス由来の上清、凍結/解凍済みエキソソーム、および超音波処理エキソソームより大幅な膨大の減少を生じさせ、非免疫マウス由来の上清およびエキソソームならびに生理食塩水処理対照より非常に大幅な減少を生じさせた(図28)。群VIIは非免疫マウス由来の全血清で処置されている。群VIIIは生理食塩水で処置された対照群である。KLH免疫マウス由来の血清のエキソソームを投与すると、OVA免疫マウス由来の血清のエキソソームより非常に大幅な膨大の減少が示された(図29)。
【0171】
13.3 血清由来のエキソソームは、抗原特異的、MHCクラスII依存的様式で遅延型過敏性応答を抑制する
図30は、マウス血清から精製されたエキソソームを示す電子顕微鏡写真である。図31は、抗MHCクラスII抗体を保持するビーズで標識された血清由来のエキソソームのFACS解析である。留意すべきは、すべてのクラスII陽性エキソソームがCD178(FasL)に関して陽性であると見出されたことである。
【0172】
図32に示されるように、KLHに対して免疫されたマウスの血清から調製されたエキソソームはKLHに対するDLHの抑制に有効であったが、未処置のマウスの血清から調製されたエキソソームはそうではなかった。このことは抗原特異性を例証する。図33は、MHCクラスII抗原を保持するエキソソームに関して枯渇させた血清由来のエキソソーム調製物がほぼすべての免疫抑制活性を失ったことを実証し、このことは血清由来のエキソソームのMHCクラスI依存性を例証する。図34は、血清由来のエキソソームの免疫抑制効果が抗原での免疫の14日後にピークに達することを例証する。
【0173】
14. 実施例:血清から調製されたエキソソームはヒト被験体において免疫抑制性である
14.1 インターロイキン−1受容体アンタゴニストでコンディショニングされた血清(ORTHOKINE(登録商標))は腰部神経根痛を減少させる
無作為、二重盲検臨床試験を実施して、84患者の腰部神経根痛(lumbar radicular pain)の減少に関して、IL−1Rアンタゴニストでコンディショニングされた血清の効果を評価した。データは、痛みの感覚を減少させるために、前記コンディショニングされた血清由来のエキソソームを使用し得ることを示す。
【0174】
14.1.1 材料および方法
ビーズ調製:マイクロタイタープレート(24および48ウェル, Nunc, Denmark)または60mlシリンジ(Perfusor Syringes, Becton Dickinson, USA)中で血液をインキュベートした。シリンジは200個のガラスビーズを含有していた。ガラスビーズは、直径が2.5mmであり、21mm2の表面積を有し、医療用グレードであった。滅菌再蒸留水でビーズを洗浄し、その伝導率が0.3μS未満になるようにした(Hanna Instruments, USA)。50%v/v CrSO4(Merck, Germany)中で5分間インキュベートすることによってビーズの表面を処理した。次いで、ビーズを繰り返し洗浄して、そのpHが、水洗に使用された蒸留水のpHと同一になり、かつその伝導率が0.3μS未満になるようにした(Hanna Instruments, USA)。マイクロタイタープレートまたはシリンジにビーズを詰め、オートクレーブまたはガンマ線照射のいずれかによって滅菌した。
【0175】
血液培養技術:すべての実験で、ビーズが詰まった容器(マイクロタイタープレートまたは60mlシリンジ)に、20〜50歳の範囲の健康な男性または女性のドナーから新たに採取されたヒト全血を充填した。特に記載しない限り、抗凝固剤を使用しなかった。全血培養を滅菌層流条件下で確立した(Kendro, Germany)。インキュベーションは、24時間間隔で、37℃、5%CO2で無菌的に実行した(Kendro, Germany)。インキュベーション後、血清を回収し、遠心分離した(3500rpm,10分間, Megafuge, Kendro, Germany)。マイクロタイタープレート200mlおよびシリンジ10mlから血清を回収した。それは元の総血液量の約20%に相当する。その血清を−20℃で保存した。その血清は、増加したレベルのインターロイキン−1−受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)、ならびに増加したレベルのIL−4およびIL−10を含有することが以前に示されている(Meierら, Inflam Res. 52:1-4 (2003))。その血清は商業的にOrthokine(登録商標)としても知られている。
【0176】
患者に硬膜外神経周囲注射を週に1回で3度施した。客観的および主観的評価を患者1人につき6回(t1〜t6)行った。その評価には、視覚的アナログ尺度(VAS)(Joyceら, Eur J Clin Pharmacol. 14:415-20 (1975))、Oswestry疼痛質問表(Oswestry Pain Questionnaire)(Fairbankら Spine, 25:2940-2953(2000))、SF−36(略式健康調査)(Wareら, Med. Care, 30:473-483 (1992))、および標準化された問診が含まれる。2mlのOrthokine(登録商標)を注射した。一群にIL1−Raコンディショニング血清(Orthokine(登録商標))を投与し、別の群にはトリアムシノロン10mgを投与し、最後の群にはトリアムシノロン5mgを投与した。トリアムシノロンは、炎症、アレルギー、関節炎、および喘息を処置するために一般に使用されるステロイドである。トリアムシノロンは腰部神経根痛の減少に有効であることが示されている(無作為二重盲検試験, Kramer Eur Spine 1997)。
【0177】
14.1.2 結果
各注射後に痛みの顕著な減少(VAS)が生じた(p<0.01)。Orthokine(登録商標)およびTriam群の間には有意差があった(p<.001)。Triam群では6週間後(t4)に痛みが増加するが、Orthokine群では減少が持続する(図36)。Triam 5mgおよび10mgの間には有意差が無かった。SESaff(感情的疼痛尺度:Affective Pain Scale)に関して、t1およびt4の間で顕著な減少が認められたが、群間では差異がなかった(図37)。SESsens(感覚的疼痛尺度:Sensitive Pain Scale)に関して、t1およびt4の間で顕著な減少が認められたが、群間では差異がなかった(図38)。Oswestryスコアに関して、t1およびt4の間で顕著な減少が認められたが、群間では差異がなかった(図39)。3群のいずれにおいても顕著な有害影響は観察されなかった。
【0178】
Orthokine(登録商標)群で観察された結果は、低および高トリアムシノロン群に関する観察結果より非常に良好であった。
【0179】
14.2 ORTHOKINE(登録商標)血清はエキソソームを含有する
14.2.1 材料および方法
実施例16に記載のように血清の調製物からエキソソーム画分を調製した。ヒト血液から血清を単離した。分画遠心法によって血清からエキソソームを富化し、Formvar/カーボンコーティンググリッドに載せ、中性1%水性リンタングステン酸10μlでネガティブ染色し、JEOL−1210コンピュータ制御高コントラスト120kv透過型電子顕微鏡を使用して観察した。
【0180】
14.2.2 結果
図40A〜Cは、富化Orthokine(登録商標)血清中のエキソソームの存在を明らかに示す。
【0181】
14.3 ORTHOKINE(登録商標)血清からの濃縮エキソソームの調製
特殊表面処理を施したシリンジ(Orthokine(登録商標)シリンジ)中で全血をインキュベートすることによってエキソソームを生成した。細胞は6〜24時間にわたって小胞体から小胞を排出させた。全血1mlあたりIL−1ra(IRAP)5μgを加えることによってこの過程を促進することができた(下記実施例A〜D)。実施例A〜Dでは、インキュベーション後に、5000gで10分間の遠心分離によって血液細胞から血清を分離した。そして、その血清は種々の量のエキソソームを含有していた。100,000gで1時間の2回目の遠心分離によって小胞の濃縮を実施した。遠心分離後に20mlの血清由来の約1ml容量のペレットを遠心バイアルの底から回収し、濾過(0.2μMフィルターを通して)し、ねじ口バイアルに入れた。そのエキソソーム溶液1mlを、後に患者に注射した。1回の注射として、高用量(例えば1ml量の濃縮エキソソーム5本分)を投与した事例もある。
【0182】
14.4 濃縮エキソソームでのヒト被験体の処置
14.4.1 実施例A
エキソソーム処置前の症状:被験体は22歳の男性であり、若年性関節リウマチ(仙腸骨炎、股関節炎、膝関節炎を伴うオリゴ−II型、HLA−B27陽性)を約10年間患っていた。患者は、MTX 10mg/週およびデコルチン(decortin)5mg/週で処置されていたが、右膝の激しい痛みおよび膨大を患い続けており;被験体の腫脹した関節にステロイドを注射しても改善は生じなかった。
【0183】
エキソソーム処置前の検査時には、被験体は90/60mmHgの血圧および肩運動の低下を示し、外転は50度であった。両膝は極度に腫脹し、伸展障害(extension deficit)は10度であった。被験体の膝のX線研究では、滲出液が認められたが、顕著な軟骨破壊は認められず、被験体の臀部のX線研究では、臀部関節形成術の適用を伴うレベルIVの軟骨破壊が示された。血液検査では、CRP 9.9mg/dl;BSR 59;RF、CCP−AKおよびANA陰性が示された。11.3の貧血、および血小板511 000μlであった。
【0184】
まとめると、被験体は慣用の治療に不応性の重い若年性関節炎の臨床徴候を示した。
【0185】
エキソソーム処置.上の14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。右膝が非常に痛みを伴い、腫脹し、主要な罹患関節であったため、右膝関節に注射することを決定した。治療目標は、右膝の膨大および痛みを減少させること、および罹患した他の関節で治療効果を有することであった。20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの、右膝への関節内注射を合併症なく実施した。
【0186】
注射の4週間後、両膝で痛みの100%の減少が認められ、WOMACスコアは両膝で顕著に減少し、両肩で痛みの100%の減少が認められた。CRPレベルは6mg/dlに減少し、右膝の膨大は処置前の値と比較して3cm減少した。患者はその転帰に非常に満足した。
【0187】
濃縮エキソソームの最初の注射の9週間後、20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの2回目の注射を右膝に行い、20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームを左肩および左膝の各々に関節内注射した。右膝は100%の改善を示すことが見出され、左膝は70%の改善を示し、肩は80%の改善を示した。
【0188】
2回目の注射の4週間後(最初の注射の13週間後)、さらに濃縮エキソソーム処置を行った。
【0189】
処置後、患者の若年性関節リウマチは寛解状態であり、それは無関係のリウマチ専門医の評価によって確認された。ゆえに、濃縮エキソソーム治療は、その疾患過程の改善を得るためにMTXおよびステロイドより有効であるようであった。
【0190】
14.4.2 実施例B
エキソソーム処置前の症状:被験体は65歳の男性であり、血清反応陽性関節リウマチを10年間患っていた。被験体の母親もその疾患に罹患していた。被験体は激しい膝痛を訴え、Kellgreenの軟骨変性度(cartilage degradation grade)III−IVを示した。検査では、MCPで痛みを伴う手関節、肩運動の痛みを伴う低下、左膝からの滲出液、および両側の臀部内旋(inner rotation)の低下が示された。血液検査では、SR 28/65;CRP 0.8mg/ml;RF 211U/ml;ANA陰性,白血球7900,血小板353 000が示された。X線研究では、手のRA段階II、および膝段階III−IVが示された。被験体は金治療で処置されていて、その治療はエキソソーム治療中も継続された。
【0191】
エキソソーム処置:14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。各々が20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームで注射された両膝の関節内注射は合併症がなく、有害な副作用はなかった。
【0192】
注射の4週間後、患者を再検査し、全観察期間で非常に良好に処置を許容していることが見出された。患者は、処置前の値と比較して98%の症状の改善を示した。WOMACスコアは非常に顕著で良好な転帰の尺度(50〜80%)を示した。処置前の値と比較して膨大は完全に消失し、エキソソーム処置後に関節の直径が2cm減少した。
【0193】
4週間後、エキソソーム処置前の症状と比較して、左膝では改善の約50%の、右膝では約30%の痛みの再発が認められた。両膝の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの2回目の関節内注射を実行した。2週間後、両膝の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの3回目のエキソソーム注射を実行し、濃縮エキソソーム処置の痛みの症状と比較して、両膝においてこの時点で70%の改善が見られた。
【0194】
2か月後、患者は、エキソソーム治療前の症状と比較して、両膝で80%の痛みの改善を示した。WOMACスコアは、継続して、処置前の値と比べて顕著に改善された。
【0195】
14.4.3 実施例C.
エキソソーム処置前の症状:患者は20歳の女性であり、膝の拘縮を伴う若年性スチール病(Morbus Still)(8年間認知)、両側臀部内部置換(endoprotheses)、両側外側膝軟骨変性、骨粗鬆症および心膜心筋炎を有していた。患者は長期間のステロイド治療を受けており、患者の疾患は、抗TNF、ステロイド、MTX、およびそれらの組み合わせなどの治療には不応性であるとみなされた。血液検査では、CRP 20mg/ml、BSR 98、およびすべての他のパラメーターの重篤な免疫欠如の知見;22900/nlの白血球増加(Leucocytois)、560 000/nlの血小板増加が示された。被験体は有効性の欠如を理由に以前の治療を中断することに決めた。半年間、血液パラメータは基本的に不変のままであった。CRP値は12.3〜11.5mg/mlの範囲であり、白血球増加は22 300/nlであった。濃縮エキソソーム治療中、他の化学治療は施さなかった。
【0196】
エキソソーム処置.14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。両膝の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームの関節内注射を合併症なく実行した。
【0197】
2週間後、両肩の各々に20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームを合併症なく関節内注射した。
【0198】
最初の注射の4週間後、患者は、処置前の値と比較して、左肩の痛みの100%改善、右肩の痛みの70%改善、および両膝の痛みの100%改善を示した。
【0199】
最初の注射の8週間後、20mlのコンディショニング済み血清から調製された1mlの濃縮エキソソームを右肩に関節内注射した。
【0200】
最初の注射の15週間後、CRPは12.3mg/mlから8.3mg/mlに減少していて、被験体は、膝が80%良好であり、肩が約60%良好であると報告した。
【0201】
最初の注射の16週間後、濃縮エキソソームを両膝に関節内注射した。被験体は膝および肩の80%改善を報告し、他の関節でも同様に50%を超える改善が認められることを述べた。患者は、濃縮エキソソーム処置後の改善を考慮して、慣用の治療を再開する意思はないことを示した。
【0202】
エキソソームの最初の注射の7か月後、患者が有益な臨床効果のいくらかの減退を経験したため、エキソソームの用量を6倍に増量することを決定した。この時点で、CRPは8.6mg/mlであり、白血球は22 500/nlであった。高用量のエキソソーム、すなわち100mlのコンディショニング済み血清から調製された5mlの濃縮エキソソームを両肩の各々に関節内注射した。
【0203】
1週間後、患者は高用量のエキソソームの注射前と比べて80%改善を示すことが見出され、肩運動は外転について約30度改善し;膝および手は50%改善した。高用量の注射は肩に施されたにも関わらず、WOMACスコアは膝に関して50%を超える劇的な改善を示した。CRPは7.2mg/dlに減少し、白血球は18 800/mlに減少した。
【0204】
14.4.4 実施例D.
エキソソーム処置前の症状:患者は49歳であり、18年の病歴の花粉症および草および花粉に対する実証済みのアレルギーを有していた。
【0205】
エキソソーム処置.14.3に記載のように自家末梢血からエキソソームを調製した。100mlのコンディショニング済み血清から調製された5mlの濃縮エキソソームを皮下注射によって投与したところ、2週間後、花粉症の症状、例えばくしゃみならびに眼および鼻の炎症が顕著に減少した。くしゃみの頻度は124回/日から0回/日に減少した。その効果は花粉症の季節を通して持続した。処置によっていかなる有害な副作用も生じなかった。
【0206】
14.5 ORTHOKINE(登録商標)血清を使用する別の臨床研究
上記セクション14.1およびMeierら, Inflam Res. 52:1-4 (2003)に記載のように血清を調製した。これらの患者シリーズでは、追加の外的IL−1raを使用せず、エキソソームを濃縮するための100 000gの遠心分離ステップを実施しなかった。したがって、低濃縮のエキソソーム集団に加えて、自家サイトカインおよび成長因子が存在する。
【0207】
関節リウマチおよび手の関節変化を有し、慣用の治療で以前に処置されているか、あるいは以前には無処置の56人の患者を、種々の罹患RA関節にOrthokine(登録商標)血清を週2回で4〜6回注射して(2ml/注射)処置した。臨床追跡は4年まで継続した。平均の痛みの改善は、処置前の値と比較して、3か月後に65.31%SE 7.00であった。応答者の割合は68.8%であった。応答者とは、これらの患者が、3か月後に、注射前の値と比較して、罹患した関節で少なくとも50%の痛みの改善を有したことを示す。平均では、これらの値は処置後の時間に応じて減少した。罹患した関節にステロイドをさらに同時注射しても、Orthokine(登録商標)血清の注射と比較して、3か月の結果に対する、有益な、統計学的に有意な影響はなかった。副作用は生じなかった。
【0208】
本発明の範囲は、本明細書中に記載の具体的な実施形態によって限定されるべきではない。事実、前記説明および添付の図面から、本明細書中に記載の改変に加えて本発明の種々の改変が当業者に自明になるであろう。そのような改変は特許請求の範囲内に入るものとする。
【0209】
本明細書中では種々の刊行物が引用されているが、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1A】マウスBM−DC由来のエキソソームの全載透過型電子顕微鏡観察(TEM)を示す。バー=200nm。
【図1B】いくつかのエキソソーム関連タンパク質の存在に関するエキソソームおよびBMDCライセートのウエスタンブロット解析を示す。
【図1C】MHC IおよびII、CD11c、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)の発現に関する、マウスDC由来のエキソソームおよびDCのフローサイトメトリーによる分析を示す。
【図2】骨髄樹状細胞(「BMDC」)由来のエキソソームの蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)による特性決定を示す。
【図3】DC由来のエキソソームのin vivoでの輸送について示す。PKH67標識エキソソームのIV注射6時間後、(A)MOMA−1+および(B)ER−TR9+のマクロファージおよび(C)CD11c+のDCが、脾臓において、エキソソームを内部に取り込んでいることが示された。(D)種々の時点でのCD8−αおよびPKH67に関するFACSによって評価された脾臓DCのサブセットによる標識エキソソームの取り込み。
【図4A】マウス骨髄DCおよびDC由来のエキソソームのフローサイトメトリーによる分析を示す。この場合、精製済みエキソソームはAd.対照およびAd.FasLで形質導入された骨髄DC由来である。
【図4B】FasLの発現を示すDCおよびDC由来のエキソソームのウエスタンブロットを示す。
【図4C】DC由来のエキソソームの画分の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図5】FasLを保持するDCおよびエキソソームで処置されたマウス足蹠における遅延型過敏性(DTH)の抑制を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図6】同種異系エキソソームおよびDCと比較して、同系エキソソームおよびDCを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図7A】Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型およびMHC I欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図7B】Ad.Ψ5またはAd.FasLに感染させたエキソソームおよびDCを野生型またはMHC II欠損マウスに注射して使用した場合のマウス足蹠におけるDTH応答を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図8】免疫抑制性エキソソームの抗原特異性を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図9】(A)DCおよびDC由来のエキソソームのDTH−抑制効果を比較する棒グラフである。DCおよびエキソソームは、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから調製され、対照アデノウイルス(psi5)またはFasLを発現するアデノウイルス(FasL)のいずれかに感染させ、前もってKLHで免疫された野生型マウスの足蹠に注射して戻し、その12時間後、足蹠にKLHを注射した。(B)野生型と比較して、lpr(Fas−/−)マウスに注射して戻された、(A)と同様に調製されたエキソソームのDTH抑制効果を示す棒グラフである。
【図10A】マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図10B】マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたFasL提示エキソソームについての疾患進行の抑制を実証するグラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図11A】リンパ球混合培養反応(MLR)でのvIL−10発現DCの添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフである。
【図11B】リンパ球混合培養反応での、Ad.vIL−10に感染させたDCから単離されたエキソソームの添加によるT細胞増殖の抑制を実証するグラフである。
【図12A】Ad.vIL−10で形質導入されたDCおよび該DC/vIL−10由来エキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH応答の抑制を示す棒グラフである。
【図12B】組換えマウスIL−10で処理されたBMDCおよび組換えマウスIL−10で処理されたDC由来のエキソソームを使用した場合のマウス足蹠のDTH反応の抑制を示す棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図13A】Ad−vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソームの全載透過型電子顕微鏡写真である。
【図13B】Ad.vIL−10で形質導入されたBM−DC由来の無処理または凍結/解凍エキソソーム調製物についての、Hsc70の存在を検出するウエスタンブロットである。
【図13C】Ad.vIL−10に感染させたDCから単離された膜破壊エキソソームがDTH反応を抑制できないことを実証する棒グラフである。
【図14A】Ad.vIL−10に感染させたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図14B】組換えIL−10で処理されたDCから単離されたMHC II枯渇エキソソームの免疫抑制効果を実証する棒グラフである。「*」はp<0.01での有意性を示す。
【図15】マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルに注射されたvIL−10発現DCについての疾患進行の抑制を実証するグラフである。
【図16】確立したコラーゲン誘発関節炎モデルにおけるDC/IL−10由来エキソソームの治療効果についての分析を示す。(A)Ad.vIL−10に感染させたか、あるいは組換えマウスIL−10でパルスしたDBA1マウス骨髄DCからエキソソームを単離し、確立したCIAを有するマウスに投与した。(B)組換えIL−10でパルスしたDC由来のエキソソームを2群に分け、その一方を3サイクルの凍結・解凍に付して膜を破壊し、その後、確立したCIAを有するマウスに投与した。(C)確立されたCIAマウスにおいて、組換えマウスIL−10の直接注射と比較して、DC/rmIL−10由来のエキソソームを試験した。A〜Cで、28日目にウシII型コラーゲンで免疫し、LPSを投与したDBA1マウスに、32日目(矢印によって示す)に精製済みエキソソームを静脈内注射した。確立されている巨視的なスコア化システムによってマウスを定期的にモニターした。そのスコア化システムは、すべての足に関する累積値で表され、最大限のスコアは16である。
【図17】マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加を示す。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【図18】マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加を示す。この場合、処置対象の足蹠には、DC/smIL−4、DC/smIL−4から調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、DC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)、または生理食塩水(対照)を注射した。
【図19】マウスDTHモデルにおける足蹠の膨大の増加を示す。この場合、処置対象の足蹠には、DC/mbmIL−4、DC/mbmIL−4から調製されたエキソソーム、DC/FasL、DC/FasLから調製されたエキソソーム、DC/Psi5(対照)、またはDC/Psi5から調製されたエキソソーム(対照)を注射した。
【図20】野生型またはlpr(Fas−/−)マウスのいずれかのマウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す。この場合、野生型またはgld(FasL−/−)マウスのいずれかから回収されたDCから調製され、可溶性(smIL−4)または膜結合型(mbmIL−4)IL−4のいずれかを発現するように改変されたエキソソームを注射した。
【図21】(A)同系または(B)同種異系マウスのいずれか由来の、膜結合型IL−4で増強されたDCのいずれかから調製されたエキソソームを注射した後のマウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す。
【図22】マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、野生型またはB7.1およびB7.2欠損(KO)マウスのいずれかの処置対象の足(黒色バー)には、Ad.Psi5またはIL−4遺伝子を有するアデノウイルスベクターのいずれかで処理されたDCから調製されたエキソソームを注射した。無処置の足のサイズは白抜きのバーによって表される。
【図23】Ad.psi=5(対照)、Ad.mIL−4、またはAd.mbmIL−4のいずれかに感染させたDCから調製したエキソソームで処置されたCIAモデルマウスの関節炎指数を示すグラフである。
【図24】(A)DC/IL−4由来のエキソソームで最初に処置されたマウスまたは(B)最初の被験体由来のCD11Cを投与されたマウスにおけるDTH反応を示す。
【図25】生理食塩水、無処理のDC由来のエキソソーム、またはDC/IL−4から調製されたエキソソームのいずれかで処置されたマウスにおける高血糖の発生を示すグラフである。
【図26】無処理の全血清およびビーズで処理された全血清をDTHモデルのマウスに投与した48時間後の足蹠の膨大を示す棒グラフである。
【図27】KLH免疫マウス由来の血清、微小胞、およびエキソソームを使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフである。
【図28】種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフである。この場合、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【図29】種々の血清画分を使用した場合のマウス足蹠におけるDTH抑制を示す棒グラフである。この場合、KLHおよびOVA免疫マウスから血清を分離し、追加免疫の48時間後に膨大を測定した。
【図30】マウス血清から単離されたエキソソームの電子顕微鏡写真である。
【図31】抗MHCクラスIIを保持するビーズで標識された血清由来のエキソソームのFACS解析を示す。
【図32】マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム(群I)、(b)無処置のマウスの血清から回収されたエキソソーム(群II)、または(c)生理食塩水(群III)のいずれかを注射した。処置された足は黒色のバーで表され、反対側の足は白抜きのバーで表される。
【図33】マウスDTHモデル(この場合のDTHはKLHに対するものである)における足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、処置対象の足には、(a)KLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(b)KLH免疫マウスの血清から回収され、抗MHCII抗体であらかじめ吸収した(preabsorbed)エキソソーム;(c)MHCクラスII陽性のKLH免疫マウスの血清から回収されたエキソソーム;(d)抗IgG抗体であらかじめ吸収したエキソソーム枯渇対照;または(e)生理食塩水のいずれかを注射した。
【図34】マウスDTHモデルにおける足膨大の増加を示す棒グラフである。この場合、(a)FasL欠損gld(FasL−/−)マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(b)野生型マウスの血清由来のエキソソームを野生型レシピエントに投与;(c)gldマウスの血清由来のエキソソームをlpr(Fas−/−)レシピエントに投与;(d)野生型マウスの血清由来のエキソソームをlprレシピエントに投与;または(e)対照として生理食塩水を投与した。
【図35】血清由来のエキソソームで処置されたマウスDTHモデルにおける足膨大のDTH増加を示す棒グラフである。エキソソームは、エキソソームドナー動物を免疫した14日後に回収し、レシピエント動物を免疫した14日後に投与した。
【図36】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたVASにおける痛みを示すグラフである。
【図37】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESaff(感情的疼痛尺度:Affective Pain Scale)における痛みを示すグラフである。
【図38】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の6時点で測定されたSESsens(感覚的疼痛尺度:Sensitive Pain Scale)における痛みを示すグラフである。
【図39】3群:Orthokine(登録商標)血清および2群のTriamに関する注射後の4時点で測定されたOswestryスコアにおける痛みを示すグラフである。
【図40A−C】Orthokine(登録商標)血清由来のエキソソーム濃縮画分の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である((B)は濾過済みの血清から作成されたイメージである)。
【図40D−F】Orthokine(登録商標)血清由来のエキソソーム濃縮画分の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞の培養物から調製した有効量のエキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を阻害する方法。
【請求項2】
培養中に、前記抗原提示細胞を増強物質に曝露する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増強物質を発現するように前記抗原提示細胞を遺伝子操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記増強物質がIL−4である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記増強物質がIL−4である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記増強物質がIL−10である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記増強物質がIL−10である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記増強物質がFasLである、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記増強物質がFasLである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
阻害される免疫応答が関節炎として表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記関節炎が関節リウマチである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
阻害される免疫応答が創傷に関連した炎症である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
阻害される免疫応答がアレルギーとして表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
阻害される免疫応答が喘息として表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
阻害される免疫応答がI型糖尿病として表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
阻害される免疫応答が自己免疫応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記自己免疫応答が、以下のもの:関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、多発性硬化症、クローン病、乾癬、グレーヴス病、セリアック病、円形脱毛症、中枢神経系脈管炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、結節性多発性動脈炎、特発性血小板紫斑病、巨細胞大動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、アジソン病、強直性脊椎炎、ライター症候群、高安動脈炎、および白斑からなる群より選択される自己免疫疾患として表れている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血清から調製した有効量の濃縮エキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を阻害する方法。
【請求項20】
前記血清が、ガラスビーズの存在下でインキュベートされた末梢血から調製される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ガラスビーズの存在下でのインキュベーションの前に前記末梢血に増強物質を添加する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
阻害される免疫応答が関節炎として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記関節炎が関節リウマチである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
阻害される免疫応答が創傷に関連した炎症である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
阻害される免疫応答がアレルギーとして表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
阻害される免疫応答が喘息として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
阻害される免疫応答がI型糖尿病として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
阻害される免疫応答が自己免疫応答である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記自己免疫応答が、以下のもの:関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、多発性硬化症、クローン病、乾癬、グレーヴス病、セリアック病、円形脱毛症、中枢神経系脈管炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、結節性多発性動脈炎、特発性血小板紫斑病、巨細胞大動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、アジソン病、強直性脊椎炎、ライター症候群、高安動脈炎、および白斑からなる群より選択される自己免疫疾患として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
増強物質の存在下で抗原提示細胞を培養し、培養上清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項32】
前記増強物質がサイトカインである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記増強物質が、インターロイキン4およびインターロイキン10からなる群より選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記増強物質がサイトカインインヒビターである、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記増強物質がNFκBインヒビターである、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
増強物質を発現するように遺伝子操作された抗原提示細胞を培養し、培養上清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項38】
前記増強物質がサイトカインである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記増強物質が、インターロイキン4およびインターロイキン10からなる群より選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記増強物質がサイトカインインヒビターである、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記増強物質がFasLである、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
血清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項44】
ガラスビーズとともにインキュベートされた末梢血サンプルから調製された血清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項45】
インキュベートされる末梢血サンプルに増強物質を添加する、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項45に記載の組成物。
【請求項1】
抗原提示細胞の培養物から調製した有効量のエキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を阻害する方法。
【請求項2】
培養中に、前記抗原提示細胞を増強物質に曝露する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増強物質を発現するように前記抗原提示細胞を遺伝子操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記増強物質がIL−4である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記増強物質がIL−4である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記増強物質がIL−10である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記増強物質がIL−10である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記増強物質がFasLである、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記増強物質がFasLである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
阻害される免疫応答が関節炎として表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記関節炎が関節リウマチである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
阻害される免疫応答が創傷に関連した炎症である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
阻害される免疫応答がアレルギーとして表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
阻害される免疫応答が喘息として表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
阻害される免疫応答がI型糖尿病として表れている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
阻害される免疫応答が自己免疫応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記自己免疫応答が、以下のもの:関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、多発性硬化症、クローン病、乾癬、グレーヴス病、セリアック病、円形脱毛症、中枢神経系脈管炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、結節性多発性動脈炎、特発性血小板紫斑病、巨細胞大動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、アジソン病、強直性脊椎炎、ライター症候群、高安動脈炎、および白斑からなる群より選択される自己免疫疾患として表れている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血清から調製した有効量の濃縮エキソソームを被験体に投与するステップを含む、そのような処置を必要とする被験体において免疫応答を阻害する方法。
【請求項20】
前記血清が、ガラスビーズの存在下でインキュベートされた末梢血から調製される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ガラスビーズの存在下でのインキュベーションの前に前記末梢血に増強物質を添加する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
阻害される免疫応答が関節炎として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記関節炎が関節リウマチである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
阻害される免疫応答が創傷に関連した炎症である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
阻害される免疫応答がアレルギーとして表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
阻害される免疫応答が喘息として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
阻害される免疫応答がI型糖尿病として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
阻害される免疫応答が自己免疫応答である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記自己免疫応答が、以下のもの:関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、多発性硬化症、クローン病、乾癬、グレーヴス病、セリアック病、円形脱毛症、中枢神経系脈管炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、結節性多発性動脈炎、特発性血小板紫斑病、巨細胞大動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、アジソン病、強直性脊椎炎、ライター症候群、高安動脈炎、および白斑からなる群より選択される自己免疫疾患として表れている、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
増強物質の存在下で抗原提示細胞を培養し、培養上清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項32】
前記増強物質がサイトカインである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記増強物質が、インターロイキン4およびインターロイキン10からなる群より選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記増強物質がサイトカインインヒビターである、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記増強物質がNFκBインヒビターである、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
増強物質を発現するように遺伝子操作された抗原提示細胞を培養し、培養上清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項38】
前記増強物質がサイトカインである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記増強物質が、インターロイキン4およびインターロイキン10からなる群より選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記増強物質がサイトカインインヒビターである、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記増強物質がFasLである、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
血清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項44】
ガラスビーズとともにインキュベートされた末梢血サンプルから調製された血清からエキソソームを回収することにより調製されたエキソソームを含んでなる組成物。
【請求項45】
インキュベートされる末梢血サンプルに増強物質を添加する、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記増強物質がインターロイキン1受容体アンタゴニストタンパク質である、請求項45に記載の組成物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40A−C】
【図40D−F】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40A−C】
【図40D−F】
【公表番号】特表2008−505104(P2008−505104A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519446(P2007−519446)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023336
【国際公開番号】WO2006/007529
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(500091313)ユニヴァーシティ オヴ ピッツバーグ オヴ ザ コモンウェルス システム オヴ ハイアー エデュケーション (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023336
【国際公開番号】WO2006/007529
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(500091313)ユニヴァーシティ オヴ ピッツバーグ オヴ ザ コモンウェルス システム オヴ ハイアー エデュケーション (10)
【Fターム(参考)】
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