説明

免疫用抗原、免疫用抗原の作製方法ならびに免疫方法

【課題】低分子化合物が連結された、均一な性質を有する免疫用抗原を作製し、この抗原を用いて一定の品質の抗体を取得すると共に、トランスサイレチンの生体内修飾物の標準物質を作製し、それを基準として生体試料中のトランスサイレチンの解析するシステムの提供。
【解決手段】蛋白上に不対の単一チオール基を提示した蛋白質を利用して低分子標識用のキャリア蛋白を調製し、この不対の単一チオール基を有するキャリア蛋白を用いることで所望の免疫用抗原を取得して、これら抗原を各種動物に免疫することにより、低分子化合物に対する特異抗体が取得できる。またトランスサイレチンとして生体中に内在する修飾物として、システイン、ホモシステイン、グルタチオンなどとのチオール対結合による修飾蛋白質が調製し、人為的に作製したこれら修飾蛋白質は、生体試料中のそれぞれの成分の標準蛋白質として使用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子化合物に対する抗体を取得するために用いる、免疫用抗原の作製方法および免疫用抗原ならびにそれを用いた免疫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子量数百〜数千の化合物は単独では抗原性が低く、性能のよい抗体の作製が困難である場合が多い。そのためそれらの化合物を認識し、結合できる抗体を得ようとする場合、キャリアと呼ばれる、高分子と結合させた標識物が免疫用抗原として用いられる。例えば、数十アミノ酸からなる特定のペプチド配列や、テストステロンやエストラジオールなどの低分子化学物質は、架橋剤(リンカー)を介して高分子化合物と共有結合され、それらの複合体がネズミや家兎などに免疫され、それらの動物の血清より目的の低分子に対する抗体が採取される。あるいは免疫された動物の脾臓細胞、リンパ節細胞などを癌細胞と融合してハイブリドーマ株を作製し、特異的な抗体を産生する細胞株を選定後、それらを培養し、腹水や培養上清から抗体が採取される。各種の低分子化合物は、研究の過程あるいは臨床診断上において計測の対象となることが多く、それらに対する抗体作製の需要は高い。多種類かつより高性能な低分子化合物を認識する抗体作製を目指して、研究開発分野、臨床診断分野あるいは創薬分野などで、現在も幅広く抗体作製が継続的に試みられている。
【0003】
免疫用抗原として、均一な標識物を得ることには重要な意義がある。カサガイヘモシアニン(KLH)、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)、ヒトアルブミン(HSA)、サイログロブリン(TG)などは典型的に頻用される担体蛋白質である。これらKLH、OVAあるいはBSAの蛋白表面上のアミノ基、カルボキシル基は複数存在するが、それらに対して、活性化されたグルタルアルデヒドや、2価性リンカーを作用させ、目的の化合物が結合される。例えばアミノ基に対しては、低分子化合物にチオール基を導入し、MマレイミドベンゾイルNスクシニミドエステル(MBS:m−Maleimidobenzoyl−N−hydroxysuccinimide ester)等のマレイミド試薬を使用してカップリングすることが多い。またカルボキシル基に対しては、EDC試薬(1−ethy−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodi imide hydrochloride)等のカルボジイミド試薬を作用させてから低分子側のアミノ基と結合させることが多い。1蛋白質分子あたり複数基が導入されることが一般的であるが、その数の制御は統計的なものであり、1条件で作製される標識体中の目的低分子数は平均数で把握され、分布をもったものとして取り扱われる。担体蛋白質表面上のアミノ基やカルボキシル基を利用して、そこにチオール基を導入する試薬も市販されている。例えばSATA(N−スクシニミジルSアセチルチオアセテート)、SATA(N−スクシニミジルSアセチルプロピオネート)、PEO4SATAなどがある。蛋白表面上には、結合に利用できるアミノ基、カルボキシル基が多数存在するため、チオール基の導入数を調整することが難しい場合が多いが、チオール基導入後このチオール基を介して低分子化合物とカップリングして目的複合物を得ることができる。
【0004】
蛋白質以外にも分岐型リジンペプチドを有する高分子担体に、リジンのαあるいはε位(側鎖中)に低分子化合物を多数導入する方法(MAP法:Multiple−Antigen Peptide法)が使用されている。リジンペプチド中のアミノ基に上述のマレイミド試薬などを使用して、チオール基が導入された低分子化合物(有機合成で作製された低分子量ペプチドなど)が結合される。MAP法は多数の低分子を導入し、抗原性を高める目的で使用されているが、例えば7個の分岐型リジンを有する高分子担体には、8個までの低分子化合物を導入することができる。
【0005】
【非特許文献1】P.Tijssen、「エンザイムイムノアッセイ」(1989年)、東京化学同人社
【非特許文献2】多田伸彦、「モノクローナル抗体作製マニュアル」(1996年)、学際企画社
【非特許文献3】高津聖志ら、「タンパク質研究のための抗体実験マニュアル」(2004年)、羊土社
【非特許文献4】大海忍ら、「抗ペプチド抗体実験プロトコール」第2版(2004年)、羊土社
【0006】
生体内部には多くの低分子化合物が存在し、それらのうち修飾に関与するものは、酵素による代謝反応、レセプターの結合反応、遺伝子の発現調節、転写調節、解毒作用、生体防御など幅広く関与している。それらの具体例としては、チオール基を有するグルタチオン、システイン、ホモシステインなどの還元物質やグルコースやグルクロン酸などの糖類、脂肪酸、イソプレノイド、ステロールなどの脂質、メチル基やアセチル基などがあり、蛋白質や核酸を修飾する。蛋白質上の修飾を受ける官能基としては、αアミノ基、アミノ酸側鎖のアミノ基、αカルボキシル基、アミノ酸側鎖のカルボキシル基、およびシステインの側鎖チオール基などがある。
単体としてのグルタチオン、ホモシステイン、システインなどは栄養状態や、疾患との関連付けにて測定される場合もあり、いくつかは臨床検査においても測定されている。これらの修飾を受けた蛋白質の生体内の状態・量を知ることは、生体内の新情報として価値があり、特定の疾患と結び付けられる可能性があり、特にそれらの修飾蛋白が疾患であることを示すマーカーだけでなく、疾患の前段階あるいは未病状態についてのマーカー、いわば疾患予防マーカーとして利用できる可能性がある。
またグルコース等も単体として、あるいは糖化蛋白として重要なマーカーとして測定されている。それら糖化蛋白としてしばしば測定される代表的な項目としては、フルクトサミンやヘモグロビンA1cなどがあり、広く病院検査室などで活用されている。
【0007】
【非特許文献5】ナドルスキーら、ジャーナル FEBSジャーナル、274巻(2007年)5202−5210頁(Nadolski M.J.et.al,FEBS J.(2007)Vol.4,pp5202−5210)
【非特許文献6】ヒルら、IUBMB ライフ、59巻(2007年)21−26頁(Hill B.G.et.al,IUBMB Life.(2007)Vol.59,pp21−26)
【非特許文献7】チュンら、メソッズ エンザイモロジー、396巻(2005年)139−150頁(Chung K.K.et.al,Methods Enzymol.(2005)Vol.396,pp139−150)
【非特許文献8】モスタファら、モレキュラ セル バイオケム、302巻(2007年)35−42頁(Mostafa A.A.et.al,Mol.Cell.Biochem.(2007)Vol.2,pp35−42.)
【非特許文献9】タスら、クリニカル ケム、2巻(1990年)1825−1830頁(Tas S.et.al,Clin.Chem.(1990)Vol.2,pp35−42)
【非特許文献10】ヒュアンら、クリカル チム アクタ、366巻(2005年)293−298頁(Clin.Chim.Acta.(2006)Vol.366,pp293−pp298)
【0008】
生体内部に存在する前述の修飾蛋白は、均一あるいは単一の修飾ではなく、不均一な修飾を多くの場合受けている。1蛋白上に、複数種の異なる修飾基が導入される場合もある。たとえばヒトアルブミン蛋白は、複数の箇所に、糖化修飾を受ける場合があり、ビリルビンなどの修飾を受ける場合がある。またトランスサイレチンの場合、糖化修飾だけでなく、システイン、ホモシステイン、グルタチオンなどの修飾を受けるが、それらの個々の比率や絶対量は生体内のシグナルとして利用できる可能性が高い。
トランスサイレチンの立体構造は詳細に解析されており、野生型、変異体あるいはそれらの修飾体とアミロイドーシスとの関連につき研究がなされている。
トランスサイレチンの10位のアミノ酸は、未修飾のままあるいはシステイン、ホモシステイン、グルタチオンなどの修飾を受けるが、チオールの修飾の場合はSS結合に基づく。ヒトトランスサイレチンがスルホン酸により修飾された場合の知見より、10位の位置のシステインが蛋白質表面上にあり、修飾基は蛋白分子上に提示された状態で存在することが示されている。([図1]を参照のこと。)
【0009】
【非特許文献11】ガレスら、バイオチム バイオフィズ アクタ、1774巻(2006年)、59−64頁、(Gales L.et.al,Biochim.Biophys.Acta,(2007)Vol.1774,pp59−64.)
【0010】
異なる修飾を受けた蛋白質は、抗体などで分画がなされた後、TOF−MS装置などを用い、分子量の違いによって分析される場合がある。あるいは修飾基の部分を認識する抗体と、蛋白質の修飾を受けていない部分を認識する抗体とを組み合わせて、定量される場合がある。
【0011】
【非特許文献12】グリッケら、ビー・エム・シー キャンサー、5巻(2005年)、133−141頁(Gericke B.et.al,BMC Cancer(2005)Vol.5,pp133−141)
【非特許文献13】キシカワら、ペディアトリック リサーチ、47巻(2000年)492−494頁(Kiwhiwaki M.et.al,Pediatric Research,(2000)Vol.47,pp492−494.)
【非特許文献14】シュバイゲルトら、プロテオーム サイエンス、2巻(2004年)5−10頁(Schweigert et.al,Proteome Science,(2004)Vol.2,pp5−10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
【0013】
低分子化合物に対する抗体を取得するための、免疫抗原として、低分子化合物を蛋白質に標識するためには、蛋白表面上の複数の官能基を利用するため、標識数のコントールなど、免疫抗原の作製のコントロールは困難であり、一定のものが取得できず、特に抗血清の作製の場合には一定の品質の抗体作製のための大きな障害となる。
さらに標識された低分子化合物の周囲の分子環境は、標識された位置において異なり、実質上複数の低分子化合物を標識した場合に近くなり、一定の抗体取得の妨げとなっていた。例えば標識の対象がアミノ基である場合、アミノ基がペプチド結合末端としてあるか、リジン、アルギニン、ヒスチジンの側鎖としてあるかの違いにより標識される低分子化合物の周辺は大きく異なり、いずれかの部位に標識するかは、取得できる抗体の性能にも大きく影響する。このため所定の位置に一定数の低分子化合物を導入できるキャリア蛋白質が望まれていた。またKLHなどの標識対象蛋白質は、水溶性が不十分であり、使用する際に効果的な免疫抗原として十分量得られない場合があった。これは標識する低分子化合物が疎水性の場合特に顕著であった。よって標識前も標識後も十分な水溶性を安定に保持したキャリア蛋白質が望まれていた。また低分子ペプチドや低分子化合物のアミノ基やカルボキシル基を利用する場合、架橋時にキャリア蛋白同士の結合が生じる場合もあり、不溶化するケースも多くみられ、その防止も望まれていた。
【0014】
さらに生体中で様々な修飾(システイニル化など)を受けた蛋白質で存在するトランスサイレチンの場合、それら個々の修飾体は生体内の変化を捉えるためのなんらかのマーカーとなる可能性が高く、それらを定量するための好適な標準品が要望されるが、現時点では市場には存在せず簡単に入手できないという状況にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の出願人は以上の困難な点及び問題点を解決すべく鋭意努力検討した結果、以下に関する発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の(1)〜(14)に関する。
(1) 単一の不対チオール基を有する天然由来の蛋白質あるいは組換え蛋白質を使用することを特徴とする免疫用抗原 に関するものであり、
(2) 単一の不対チオール基を有する蛋白質がトランスサイレチン、組換えイムノグロブリンの定常領域を含む蛋白質であることを特徴とする、(1)の免疫用抗原 に関するものであり、
(3) (1)および(2)の蛋白質が、哺乳動物・鳥類・両性類・魚類由来であることを特徴とする免疫用抗原 に関するものであり、
(4) (1)−(3)の免疫用抗原を哺乳動物・鳥類に免疫後抗血清を取得し、抗血清より抗体を精製することを特徴とする低分子化合物を認識し、結合する抗体の作製方法 に関するものであり、
(5) (1)−(3)の免疫用抗原を哺乳動物・鳥類に免疫後、脾臓細胞を採取し、がん細胞と細胞融合させることを特徴とする、低分子化合物を認識し、結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞の作製方法 に関するものであり、
(6) (5)の作製方法により得たハイブリドーマを培養し、培養上清より低分子化合物を認識し、結合する抗体を取得する抗体の作製方法 に関するものであり、
(7) (4)および(6)で得た抗体を使用することを特徴とする、該抗体が認識し、結合する低分子化合物を評価するための方法 に関するものであり、
(8) 低分子化合物がシステイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシン、糖、糖鎖の中から1以上選択されるものであることを特徴とする(1)−(3)の免疫用抗原、(4)、(6)の抗体の作製方法、(5)のハイブリドーマ細胞の作製方法、(7)の試薬組成物 に関するものであり、
(9) 低分子化合物がシステイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシンの中から1以上選択されるものであり、キャリア蛋白質がトランスサイレチンであり、また架橋がチオール基同士の縮合によるものであることを特徴とする(1)−(3)の免疫用抗原を標準品として使用することを特徴とする、システイニルトランスサイレチン、ホモシステイニルトランスサイレチン、グルタチオニルトランスサイレチン、システイニルグリシン化トランスサイレチンの測定方法並びに試薬組成物 に関するものであり、
(10) 低分子化合物が糖、糖鎖から1以上選択されるものであり、キャリア蛋白質がトランスサイレチンであり、またトランスサイレチン配列中のシステインのチオール基と、低分子間で架橋がされることを特徴とする(1)−(3)の免疫用抗原、(4)、(6)の抗体の作製方法、請求項5のハイブリドーマ細胞の作製方法、(7)の試薬組成物 に関するものであり、
(11) トランスサイレチンがヒトトランスサイレチンであることを特徴とする(9)、(10)の測定方法並びに試薬組成物 に関するものであり、
(12) 抗トランスサイレチン抗体を用いることを特徴とする(9)、(11)の測定方法 に関するものであり、
(13) TOF−MS装置を使用することを特徴とする(12)の測定方法 に関するものであり、
(14) (11)及び(13)のための試薬組成物
に関するものである。
【0016】
本発明における「単一の不対チオール基を有する天然由来の蛋白質」とは分子間内で縮合した強固なチオール結合対ではなく、還元状態において対合対象のないチオール基を有する蛋白質のことをいう。一般に分子内のチオール結合は極めて強い還元剤の存在下にて、100℃近い温度にて漸く解離が認められるが、分子間のチオール結合は、ジチオスレイトールなど緩和な還元剤の存在下、pH6−10付近で容易に解離させることができる。天然の蛋白質としては、トランスサイレチン(別称プレアルブミン)があり、分子量約2万3千の蛋白が4つからなるホモテトラマーである。それぞれのモノマー蛋白中に、10番目のアミノ酸としてシステインが含まれ、かつ蛋白表面に位置しており、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシン、糖類などの修飾を受けるか、未修飾のまま存在している。このうちシステイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシンで修飾されたものは、緩和な還元剤にて処理し解離させることができる。このトランスサイレチン中のシステイン残基と同様の状態で存在している不対チオール基を有する蛋白質であれば、トランスサイレチンに限らず本発明に使用可能である。トランスサイレチンは、生体中にある状態と同じ条件(ネイティブな状態)で使用することもできるが、変性させて立体構造を壊した状態でも使用可能であり、必要条件として低分子化合物と架橋する際に、蛋白中の不対のチオール基が利用できればよい。
【0017】
本発明における「単一の不対チオール基を有する組換え蛋白質」とは遺伝子工学的に調製された蛋白ドメインであり、分子中に不対のチオール基(システイン)を有するものを言い、配列には特定の制限はなく、一定の構造をとるものでも、構造をとらない状態(変性状態)のものでもよいが、対合する分子間が解裂しておらず、単一の不対チオール基が保持されているものであればよい。これらは前述の「単一のチオール基を有する天然由来の蛋白質」と同様に、不対のチオール基が低分子化合物との架橋に利用することができればよい。それらのチオール基の導入は遺伝子工学的に可能である。
【0018】
イムノグロブリンの定常領域としては、蛋白分子中に不対チオール基が存在しうる範囲を使用することができ、具体的には例えば、ヒンジ領域より下部の領域に相当する部分を利用することができる。定常領域中の不対チオール基は複数とすることも可能であるが、低分子化合物との結合比率を厳密に調整するためには、単一の不対チオール基を有することが好ましい。
不対チオール基を有するイムノグロブリン定常領域は、各種の動物血清由来のイムノグロブリンをパパインやトリプシンなどで酵素処理することによって取得できる他、遺伝子工学的に定常領域に相当する部分の発現系を構築し、大腸菌や動物細胞を用いてイムノグロブリンの定常領域のみを生産することができる。平成20年時点おいてイムノグロブリン定常領域に相当する部分をハムスター細胞などで発現できるベクターが市販されており(ナカライテスク社取扱い)、それらを利用することもできる。これらの発現系にて目的の蛋白質を精製した後、ジチオスレイトールなどの緩和な還元剤で、不対チオール基を遊離状態とし、低分子化合物との標識に供することができる。
【0019】
使用する蛋白質の由来としては、所定の単一の不対チオール基を備えたものであれば、特に制限はされないが哺乳動物由来のイムノグロブリン定常領域、トランスサイレチンを使用することができる。イムノグロブリンは魚類などにも存在するため、それらの定常領域を利用することが可能である。多量のものが準備でき、また恒常的に入手できるものとして、ヒト、ウシ、ウマ、ウサギ、ネズミ、モルモット、イヌ、ネコなどのイムノグロブリン、トランスサイレチンなどを利用することができる。特にトランスサイレチンは、天然の状態で単一の不対チオール基を有するため、最も少ない加工ステップ数にて本発明に使用でき、好適である。
【0020】
本発明において使用する、標識用蛋白質中の不対チオール基と低分子化合物と架橋させるための架橋剤としては、m−マレイミドベンジル−N−ヒロドキシスクシニミドエステル、スクシニミル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート以外にも同様のマレイミド試薬であれば適宜使用することができる。不対チオール基をマレイミド試薬と反応させた後、低分子化合物中の利用可能なアミノ基と反応させればよい。また低分子化合物中に利用できるチオール基がある場合には、架橋剤なしに不対チオール基を有する標識用蛋白質とチオール基を有する低分子化合物とを混合し、そのまま酸化条件下となるまで攪拌するか、緩和な酸化剤を共存させて標識体を作製することができる。緩和な酸化剤としては、低濃度の過ヨウ素酸カリウムや低濃度の過酸化マンガン溶液などがある。システイン修飾物、グルタチオン(GSH)修飾物、ホモシステイン修飾物を作製する場合は、それぞれシスチン、ホモシスチン、酸化型グルタチオン(GSSH)などを酸化剤として使用することができる。
架橋剤の好適な使用時濃度は、それぞれによって異なるが、一般的には 数ナノモル/l から数百ミリモル/lの範囲で使用することができる。好ましくは数10ナノモル/l から数10ミリモル/l の範囲で使用する。反応は4−40℃の間において設定される一定の温度調節を行いながら、数10回転/分の低速で、ミニスターラーバーなどで攪拌しながら行う。反応終了後は、セファデックスなどの樹脂カラムを使用するか、透析膜を用いて脱塩し、所望の標識蛋白を分離すればよい。
【0021】
抗体作製の対象とされる低分子化合物としては、生体中で重要な役割を担っている、ステロイド系のホルモン類、サイロキシンなどの甲状腺ホルモン、種々の生理活性ペプチド配列、芳香族系の化合物及び代謝物、治療薬として使用される薬剤化合物、脂質およびそれらの酸化物あるいはビスフェノール化合物やダイオキシン類など、極めて多岐多種類にわたる。それら対象は特に制限されることはないが、前述の蛋白キャリアと架橋するための官能基が存在するものが好適である。しかしながら官能基が元来存在しない場合でも、有機合成反応により所望のアミノ基、カルボキシル基などを導入することができれば、本発明に適用できる。
【0022】
作製した低分子化合物標識免疫用抗原は、ネズミ、ウサギ、ヤギなど、免疫動物として頻用されている動物種に対して使用することができる。それらの免疫方法は、[非特許文献1][非特許文献2][非特許文献3][非特許文献4]に記載された例に従うことができる。低分子化合物標識免疫抗原はそれ単独で、もしくはフロイントのアジュバントや細菌類などを免疫原性の増強剤として併用することができる。
【0023】
特異的抗体産生細胞の選別方法としては、例えば、免疫時に使用した低分子化合物標識抗原を、96ウエルマイクロプレートなどに固定化し、その抗原と産生細胞の培養上清とを反応させ、上清中の結合抗体の有無を、酵素免疫測定法などで評価する方法がある。低分子抗原の部位に特異的に反応する抗体と、その部位以外に対する抗体との区別は、免疫時に使用した低分子化合物とは全く異なる他の低分子化合物標識蛋白質(I)を固相として使用するか、あるいは免疫時とは全く異なるキャリア蛋白を使用して作成した、同一の低分子化合物標識蛋白(II)を固相として使用して、同様の酵素免疫反応によって評価すればよい。この場合免疫時に使用した低分子化合物標識抗原と反応するが、IまたはIIの蛋白質とは反応しない抗体を産生する細胞株を選択すればよい。
選別に使用する抗原結合96ウエルマイクロプレートの固定化方法としては、物理吸着法、静電力を用いた方法、架橋剤を用いた方法などを採用して適用できるが、抗原固定化時の濃度としては0.01μg/ml−50mg/mlを10−300μl使用することができる。さらに好ましくは0.1mg/ml−5mg/mlを30−100μl使用することができる。抗原固定化時の抗原の希釈緩衝液としては、pH6.5−8.0のりん酸緩衝液や、トリス緩衝液、pH9.0の炭酸緩衝液を使用することができる。
【0024】
蛋白質が修飾される例としては、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、硫酸化、グルコシル化、糖鎖付加、メチルグルオキサル化、ニトロ化あるいはチオール化合物の付加などがある。チオール化合物の付加としては、システイン化、グルタチオン(GSH)付加、ホモシステイン化、ニトロソチオール付加などが挙げられる。
これらの各種修飾蛋白は、生体内の状態を知る指標となり得る場合がある。例えばグルコシル化や、ホモシステイン付加などは糖尿病などの病態と関連が知られており、各種の疾患と修飾蛋白との対応のデータが広く研究機関、臨床現場などにおいて蓄積されている。なおチオール化合物が付加される対象蛋白は、血清中にμg/ml以上の濃度で比較的多量に存在するものであることが多く、トランスサイレチンはそのひとつである。今後も修飾蛋白として特定の病態、疾患あるいは、疾患発症の前段階、未病ではあるが予備的段階であることを示す、信頼に足りるマーカーが見いだされていくと予想される。しかしながらこれら修飾蛋白質において個々の標準物質が整備されている例は極めて少なく、生体中のそれら修飾蛋白を定量するためには、各研究者は個別に標準物質を作製・準備しなければならないケースが多い。
【0025】
トランスサイレチンに修飾される低分子化合物としては、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシンの他に、糖類、糖鎖および糖脂質、セラミドなど生体中に存在しうるものが挙げられる。チオール基同士の酸化縮合による結合によって、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシンで修飾された修飾物は、緩和な還元剤にて処理することができるが、還元処理によっては、グルコースなど糖類の修飾体を解離させることができない。糖類が結合しているトランスサイレチンの割合は、正常な動物から採取した場合きわめて低く、低分子化合物を連結した免疫用抗原の作製の障害とはならない。
【0026】
低分子化合物としての糖類は、グルコース、マンノース、シアル酸など一般的なものが使用できる。 糖脂質としてはシアル基や硫酸基を有するガングリオシド、セラミドに糖の結合したセレブロシドなどが使用できる。また数分子の糖からなる糖鎖を使用できる他、多数単位の糖からなるものも適用できる。糖鎖としては、人工的に合成されたものの他、細胞や組織などから抽出・分離された多種類の糖鎖を使用することができ、特に癌や特定の疾患で特徴的に認められる糖鎖も使用可能である。これらの糖、糖鎖、糖脂質、セラミドなどにチオール基を導入し、あるいは導入せずに前述の架橋剤を用いてトランスサイレチン、哺乳動物由来のイムノグロブリン定常領域と結合させることができ、それらはいずれも免疫用抗原として使用できる。
【0027】
低分子化合物を架橋した後の免疫用抗原は、高性能液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)や、飛行時間型質量分析(Time of Flight Mass Spectrometry:TOF−MS)装置などを用いて解析することができる([非特許文献12][非特許文献13][非特許文献14])。
【0028】
修飾された蛋白質を精製、回収方法としては、HPLC法などのクロマトグラフィー法、電気泳動法、アフィニティークロマトグラフィー、ポリエチレングリコールや他のポリマーによる共沈法、塩析法、抗体を用いた免疫沈降法、レクチンを用いた共沈法などをそれぞれ単独であるいは、適宜選択組み合わせて使用することができ、目的蛋白質を純化することが可能である。
【0029】
生体試料中より目的の蛋白を回収後、分析するシステムの例示としては、樹脂担体粒子(例えばプロテインG固相化セファロースや磁性粒子など)に目的蛋白に対する特異抗体を固定化・架橋し、次いで生体試料と接触させて抗原・抗体反応を行い、よく洗浄した後固定化された抗体より、目的成分を酸性下にて遊離させて、その画分をTOF−MS装置などで解析することができる。例えばヒトトランスサイレチンに対する特異的なポリクローナル抗体固定・架橋したプロテインGセファロースを血清と反応させ、免疫沈降した画分をTOF−MS装置で各修飾体、未修飾体を解析することができる。高分解能TOF−MS装置であれば、分子量の違いがわずかであっても十分分析・評価が可能であり、同一蛋白質の異なる種類の修飾体を分別することができる。
【0030】
本発明におけるTOF−MS装置としては、マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF−MS)などがある。MALDI−TOF−MS法は、マトリックスと呼ばれるイオン化促進試薬と混合された試料にレーザーを照射することによって、サンプルをイオン化し、生じた各イオンを加速電圧によって運動エネルギーを与え、高真空中のフライトチューブ内で自由飛行させ、分子量によって飛行速度が異なることを利用して分子量測定を行うものである。また同様のシステムとして、表面増強レーザー脱離イオン化法(SELDI)とTOF−MSを組み合わせたプロテインチップシステム(バイオラッド社)による手段も使用可能である。しかしながらこれらは例示であり、同様の分析が可能であり、性能的に同等のものであれば特に限定されることはない。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
低分子化合物標識免疫抗原の作製時において、導入できる低分子化合物の数を1対1にコントロールすることが可能であり、かつ蛋白質と標識される低分子化合物との立体的な位置関係、架橋部位の周辺環境なども含めて、作製する抗原の性質を一定のものとすることができる。このため免疫用抗原として一定の品質のものが再現性よく作製できる。一定の抗原の性能は、それらによって作製される抗体性能の均一性をもたらし、一定の抗原やそれらによって作製された抗体をパーツとして構成する試薬についても品質を安定化させることができる。
また既に不対チオール基が導入された状態の蛋白質を活用するため、極めて簡便に短時間で低分子化合物の標識ができ、免疫用抗原が取得できる。特にトランスサイレチンを利用する場合、水溶性が高く、免疫用抗原としての利用が容易であり、また多量に調製が可能かつ安価であるため、利便性が高い。さらに本発明により、生体中に内在する各種の修飾型のトランスサイレチンが作製でき、それらの標準品として使用できる。さらにはそれら修飾部分を認識しうる特異抗体作製が可能となる。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、低分子化合物標識免疫用抗原ならびに生体内に存在する修飾蛋白質の標準品に関する、本発明の実施の形態の例について具体的に説明する。本発明は下記の具体的説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱することない範囲において、種々の構成・変更をとりうることはもちろんである。
【実施例1】
【0033】
(ヒトトランスサイレチンの還元処理)
ヒトトランスサイレチン(カルビオケム社)5mgを、150mM塩化ナトリウム含有するりん酸緩衝液(pH7.2:以下PBSと略)5mLに溶解した(1.5mLエッペンドルフチューブに1mLづつ5本に分注)。
この溶液の一部をとり、SELDIプロテインチップシステムを用いてTOF−MS分析を実施した。その分析パターンを[図3]に示す。標識物に由来する複数のピークが確認できた。次にジチオスレイトール(和光純薬社:以下DTTと略)をPBSにて100mM濃度となるよう溶解後、DTT濃度 10mMとなるように、DDT溶液をヒトトランスサイレチン溶液に添加し、チューブを1分間に60回回転させながら、室温にて反応を行った。反応後の溶液の一部をとり、同様にTOF−MS分析を実施したところ、システイン化物、ホモシステイン化物、グルタチオン化物のピークが消失し、ほぼ単一の未修飾トランスサイレチンのピークとなることを確認した([図4])。
【実施例2】
【0034】
(還元処理後の再酸化およびシスチンとの結合反応)
[実施例1]で作製した、還元処理したヒトトランスサイレチン溶液を、セントリコン(分子量1万カット)を用いて、4000RPMにて遠心しPBS溶液に置換した。置換後、内部溶液をチューブに移し、1mL容量とし、シスチン溶液(10mM)を添加して、室温にて終夜反応させた。反応時は[実施例1]と同様に1分間に60回回転させた。この反応後の溶液をTOF−MS解析し、システイニル化トランスサイレチンとトランスサイレチンに相当するピークが存在し、他の修飾体がないことを確認した。この混合物を免疫した場合、トランスサイレチンに対する抗体と、システニル化トランスサイレチンに対する抗体が惹起されると考えられる。反応産物はフロインドのアジュバンドと混合して、免疫に使用できる。またこの産物および、[実施例1]で作製した還元ヒトトランスサイレチンをそれぞれ、96ウェル型マイクロプレートに固相化した抗原結合プレートを用いることで、システイニル部を特異的に認識する抗体の選別・分別が可能である。さらにこのシステイニル化トランスサイレチンを基準化することで、SELDIシステムや酵素免疫測定法で定量する際の標準物質として使用することが可能である。
【実施例3】
【0035】
(免疫沈降法とSELDIシステムによる分析)
ピアス社製の免疫沈降システムキットを用いて、キット添付のプロトコールに従い、抗トランスサイレチンウサギ抗体(ダコ サイトメーション社製)を固定化した。固定化したビーズ懸濁溶液 50μLにヒト血清50μLおよびPBS 200μLを添加し、終夜室温にて反応させた。反応後ビーズを2000RPMの低速遠心にて回収し、PBS 200μLにて3回洗浄した。洗浄ビーズに100μLのグリシン塩酸(pH3.0)50mMを加え、溶出される蛋白成分を200RPMの低速遠心にてビーズから分離し、トリス溶液100μLを保持した別チューブに移して混合した。混合後の溶液をSELDIシステムにてTOF−MS解析した。
ヒト血清の操作と同時に、[実施例2]で作製した、システイニル化トランスサイレチン溶液を標準品に対してアッセイを行い、そのTOF−MS解析パターンを基準として、ヒト血清中のシステイニルトランスサイレチンを評価した。
【実施例4】
【0036】
(低分子化合物との結合反応1)
1mgのダイライト649 マレイミド(ピアス社製)を100μLのジメチルホルムアミドに溶解し、その溶液20μLを[実施例1]におけるヒトトランスサイレチン溶液をPBSに置換した溶液(1.5mLチューブ内:タンパク1mg相当)1mLに加え、チューブを1分間に60回回転させながら、室温にて反応終夜を行った。余剰のダイライト649 マレイミドは、セントリコン上でバッファー交換することで除去し、最終的に0.1%(W/V)アジ化ナトリウム含PBSにて置換した。得られた産物はダイライト649化合物に対する抗体作製のための免疫抗原として供与した(免疫直前にアジ化ナトリウムは除去して使用した)。
【実施例5】
【0037】
(低分子化合物との結合反応2)
国内のペプチド合成受託会社にて、9アミノ酸からなるA型インフルエンザウイルスのHAタグ配列ペプチドを委託合成した。遊離のアミノ基は最初のN末端チロシン残基に存在する。このペプチド3mgを3mLのPBSに溶解した。m−マレイミドベンジル−N−ヒロドキシスクシニミドエステル(MBS) 2mgを100μL ジメチルホルムアミドに溶解し、その溶液20μLを3mLのペプチド溶液と混合し、1分間に60回回転させながら室温にて終夜反応を行った。さらにこの反応溶液300μLを、[実施例1]におけるヒトトランスサイレチン溶液をPBSに置換した溶液(1.5mLチューブ内:タンパク1mg相当)1mLに加え、チューブを1分間に60回回転させながら、室温にて反応終夜を行った。反応後溶液中の低分子化合物は、セントリコン上でバッファー交換することで除去を行い、最終的に0.1%(W/V)アジ化ナトリウム含PBSにて置換した。得られた産物はペプチド配列に対する抗体作製のための免疫抗原として供与した(免疫直前にアジ化ナトリウムを除去して使用した)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】標識用蛋白質(キャリア蛋白)であるヒトトランスサイレチンの立体構造(モノマーが2つ会合したものに相当する)を示す。黒丸は10番目のアミノ酸であるシステインと結合できる部位を示す。
【図2】トランスサイレチンに低分子化合物Rを標識した時の、免疫用抗原の模式図を示す。
【図3】ヒト血漿より調製されたたヒトトランスサイレチンのTOF−MS分析パターンを示す。
【図4】ヒト血漿より調製されたヒトトランスサイレチンをジチオスレイトールにて還元処理した後のTOF−MS分析パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の不対チオール基を有する天然由来の蛋白質あるいは組換え蛋白質を使用することを特徴とする免疫用抗原。
【請求項2】
単一の不対チオール基を有する蛋白質がトランスサイレチン、組換えイムノグロブリンの定常領域を含む蛋白質であることを特徴とする、請求項1の免疫用抗原。
【請求項3】
請求項1および2の蛋白質が、哺乳動物・鳥類・両性類・魚類由来であることを特徴とする免疫用抗原。
【請求項4】
請求項1−3の免疫用抗原を哺乳動物・鳥類に免疫後抗血清を取得し、抗血清より抗体を精製することを特徴とする低分子化合物を認識し、結合する抗体の作製方法。
【請求項5】
請求項1−3の免疫用抗原を哺乳動物・鳥類に免疫後、脾臓細胞を採取し、がん細胞と細胞融合させることを特徴とする、低分子化合物を認識し、結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞の作製方法。
【請求項6】
請求項5の作製方法により得たハイブリドーマを培養し、培養上清より低分子化合物を認識し、結合する抗体を取得する抗体の作製方法。
【請求項7】
請求項4および6で得た抗体を使用することを特徴とする、該抗体が認識し、結合する低分子化合物を評価するための方法。
【請求項8】
低分子化合物がシステイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシン、糖、糖鎖の中から1以上選択されるものであることを特徴とする請求項1−3の免疫用抗原、請求項4、6、7の抗体の作製方法、請求項5のハイブリドーマ細胞の作製方法、請求項8の試薬組成物。
【請求項9】
低分子化合物がシステイン、ホモシステイン、グルタチオン、システイニルグリシンの中から1以上選択されるものであり、キャリア蛋白質がトランスサイレチンであり、また架橋がチオール基同士の縮合によるものであることを特徴とする請求項1−3の免疫用抗原を標準品として使用することを特徴とする、システイニルトランスサイレチン、ホモシステイニルトランスサイレチン、グルタチオニルトランスサイレチン、システイニルグリシン化トランスサイレチンの測定方法並びに試薬組成物。
【請求項10】
低分子化合物が糖、糖鎖から1以上選択されるものであり、キャリア蛋白質がトランスサイレチンであり、またトランスサイレチン配列中のシステインのチオール基と、低分子間で架橋がされることを特徴とする請求項1−3の免疫用抗原、請求項4、6、7の抗体の作製方法、請求項5のハイブリドーマ細胞の作製方法、請求項8の試薬組成物。
【請求項11】
トランスサイレチンがヒトトランスサイレチンであることを特徴とする請求項9、10の測定方法並びに試薬組成物。
【請求項12】
抗トランスサイレチン抗体を用いることを特徴とする請求項9、11の測定方法。
【請求項13】
TOF−MS装置を使用することを特徴とする請求項12の測定方法。
【請求項14】
請求項11及び13のための試薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−215273(P2009−215273A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99761(P2008−99761)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(506133792)住商ファーマインターナショナル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】