免疫疾患の検査方法、及び免疫疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法
【課題】免疫疾患を予測するための検査方法、および免疫疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】IBTK遺伝子上に存在する塩基、または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患を検査する。また、IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定し、該測定結果に基づいて免疫疾患を検査する。また、IBTK Long formの発現量を変化させる物質を選択することにより免疫疾患の予防又は治療薬のスクリーニングを行う。
【解決手段】IBTK遺伝子上に存在する塩基、または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患を検査する。また、IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定し、該測定結果に基づいて免疫疾患を検査する。また、IBTK Long formの発現量を変化させる物質を選択することにより免疫疾患の予防又は治療薬のスクリーニングを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫疾患の検査方法及びそれに使用するプローブやプライマー、並びに免疫疾患を予防又は治療するための医薬のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本人成人の約3%および小児の約6%は、気管支喘息に罹患しているといわれている。この気管支喘息は、喘鳴、咳、息切れなどを伴う慢性の可逆的気道閉塞を臨床的特徴としている。該気管支喘息は、近年増加の一途をたどっている疾患の一つであり、その病態の解明などが待たれている。成人気管支喘息は、遺伝要因と環境要因の総合的な寄与により発症する多因子疾患であると考えられている。遺伝要因に関しては、機能的に喘息発症に関与すると予想された候補遺伝子に対する多型研究がなされてきた。
気管支喘息に関連する遺伝子としてT−bet遺伝子(特許文献1)、Iκβ関連蛋白遺伝子(特許文献2)、IL−12B遺伝子プロモーター(特許文献3)、TRAIL受容体遺伝子(特許文献4)、TSLP遺伝子(特許文献5)などの多型をもとに気管支喘息の危険性を調べる方法が知られている。
【0003】
IBTK(Inhibitor of Bruton's Tyrosine Kinase)は、B細胞の分化に重要な働きをするBruton's tyrosine kinase (Btk)のPHドメインに結合し、Btkの活性を抑制する因子である(非特許文献1)が、IBTK遺伝子の転写産物は複数あることが知られている。そして、マイナーな転写産物であるshort formに関しては、B細胞受容体刺激の情報伝達を抑制することが示されている(非特許文献2)。一方、long formについては、機能、疾患との関連などは不明のままであった。また、これまでにIBTK遺伝子の多型と免疫疾患との相関は報告されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-149276号公報
【特許文献2】特開2002-218997号公報
【特許文献3】特開2006-101847号公報
【特許文献4】特開2005-027595号公報
【特許文献5】特開2008-109915号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liu, W., I. Quinto, X. Chen, et al. 2001. Direct inhibition of Bruton's tyrosine kinase by IBtk, a Btk-binding protein. Nat Immunol 2:939-946.
【非特許文献2】Spatuzza, C., M. Schiavone, E. Di Salle, et al. 2008. Physical and functional characterization of the genetic locus of IBtk, an inhibitor of Bruton's tyrosine kinase: evidence for three protein isoforms of IBtk. Nucleic Acids Res 36:4402-4406.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、免疫疾患の発症や進行を正確に予測するための検査方法を提供することを課題とする。本発明はまた、免疫疾患の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、気管支喘息などの免疫疾患に関連がある一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphism)を同定するため、解析を行った。その結果、IBTK遺伝子上に存在する塩基のSNPまたは該塩基と連鎖不平衡関係にあるSNPが成人気管支喘息に関連があることを見出した。さらに、IBTK遺伝子のlong formの発現が感染疑似刺激で誘導され、それによってIL-6、TNF-α、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカイン産生が亢進することを見出し、IBTK遺伝子long formの発現を抑制する物質が免疫疾患の予防薬や治療薬として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)IBTK遺伝子上に存在する塩基、または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患を検査する方法。
(2)前記一塩基多型が、配列番号1〜6のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基または該塩基と連鎖不平衡にある塩基における多型である、(1)の方法。
(2)前記連鎖不平衡にある塩基が、配列番号7〜37のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基である、(2)の方法。
(4)免疫疾患がアレルギー疾患である、(1)〜(2)のいずれかに記載の方法。
(5)アレルギー疾患が気管支喘息である、(4)の方法。
(6)配列番号1〜37の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する免疫疾患検査用プローブ。
(7)配列番号1〜37のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできる免疫疾患検査用プライマー。
(8)IBTK遺伝子long formまたはIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、免疫疾患の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
(9)IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、免疫疾患の検査方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成人気管支喘息などの免疫疾患の発症リスクの予測が正確かつ簡便に行うことができる。これにより、患者の生命に関わる危険な状態を避けることができる。
また、本発明のスクリーニング方法によれば、気管支喘息などの免疫疾患の治療薬または予防薬を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】成人気管支喘息に関連するSNPs探索の手順を示す図。
【図2】IBTK遺伝子周辺のLD(連鎖不平衡)マップを示す図。
【図3】選択した8種類のSNPsのIBTK遺伝子上での位置を示す図。
【図4】IBTK long formとshort formの転写産物と翻訳産物の構造を示す図。
【図5】各組織及び各細胞におけるIBTK long formとshort formの発現量を示す図。
【図6】NHBE(正常ヒト気管支上皮)細胞、NHLF(正常ヒト肺線維芽)細胞及びBSMC(正常ヒト気管支平滑筋)細胞におけるIBTK long formとshort formの刺激応答性発現パターンを示す図。
【図7】IBTK long formの安定発現細胞におけるNFκB-Luc(NFκBプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を連結したもの)の発現を示す図。
【図8】親株およびIBTK long formの安定発現細胞における各種サイトカインの発現を示す図。
【図9】親株およびIBTK long formのノックダウン細胞における各種サイトカインの発現を示す図。non targetは非特異的配列のsiRNA、IBTKはIBTK long formのsiRNAを導入したことを示す。
【図10】親株およびIBTK long formのノックダウン細胞における各種サイトカインの刺激応答性発現を示す図。non targetは非特異的配列のsiRNA、IBTKはIBTK long formのsiRNAを導入したことを示す。
【図11】IBTK long formを導入しない、または導入した各種TLR発現細胞における、刺激応答性NFκB-Luc活性化を示す図。
【図12】IBTK 非導入、またはIBTK long form (49393C>T (rs9449444)メジャーまたはマイナーアレル)もしくはIBTK short form (49393C>T (rs9449444)メジャーまたはマイナーアレル)を導入したTLR2/6発現細胞における、刺激(MALP-2:マクロファージ活性化リポペプチド)応答性NFκB-Luc活性化を示す図。
【図13】69371A>G (rs991781)のメジャーまたはマイナーアレルを含む3'-UTRを有するコンストラクトから発現されるルシフェラーゼ活性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>SNPに基づく検査方法
本発明の検査方法は、IBTK遺伝子上に存在する塩基のSNPまたは該塩基と連鎖不平衡にある塩基のSNPを分析し、該分析に基づいて免疫疾患を検査する方法である。免疫疾患としては、特に限定されないが、例えば、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が好ましく、気管支喘息がより好ましい。気管支喘息には成人気管支喘息、小児気管支喘息、アトピー性気管支喘息などが含まれるが、成人気管支喘息が好ましい。本発明において、「検査」とは免疫疾患の発症リスクの検査及び発症の有無の検査を含む。
【0012】
IBTK遺伝子としては、ヒトIBTK遺伝子が好ましく、例えば、GenBank Accession No. NC_000006.10の82936675..83014167(complement)に登録された配列を有する遺伝子を挙げることができる。ただし、該遺伝子は人種の違いなどによって1又は複数の塩基に置換や欠失等が存在する可能性があるため、上記配列の遺伝子に限定されない。
免疫疾患に関連するIBTK遺伝子のSNPは特に制限されないが、例えば、下記表1に示されるSNP-1〜SNP-6が挙げられる。
【0013】
【表1】
【0014】
表1において、例えば、SNP-1はゲノム上で翻訳開始点に相当する塩基から数えて-5507番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患の可能性が高い。また、アレルを考慮して解析した場合は、SNP-1がAA>GA>GGの順で免疫疾患の可能性が高い。dbSNPはNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。
その他のSNPについても同様であるが、SNP-2の場合、A>TのうちTの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-3の場合、T>GのうちGの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-4の場合、G>TのうちTの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-5の場合、G>AのうちAの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-6の場合、A>CのうちCの場合が免疫疾患の可能性が高い。
【0015】
なお、SNP-1〜SNP-6について、SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列を、配列番号1〜6に示した(61番目の塩基が多型を有する)(SNP-2以外はアンチセンス鎖の配列を示している)。
この塩基に相当する多型を本発明の方法によって解析する。ここで、「相当する」とは、ヒトIBTK遺伝子上の上記配列を有する領域中の該当塩基を意味し、仮に、人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、その中の該当塩基を解析することも含む。
【0016】
上記SNPの塩基の種類を調べることによって、免疫疾患を検査することができる。なお、IBTK遺伝子の配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。例えば、SNP-1(rs2132287)の場合、センス鎖を解析する場合の多型はG/Aであるが、アンチセンス鎖を解析する場合の多型はC/Tとなる。
また、本発明において解析する塩基は上記SNPに限定されず、上記の塩基と連鎖不平衡関係にある多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある多型」とは、上記の多型とr2>0.5の関係を満たす塩基をいう。
【0017】
例えば、上記SNP-2 (rs1495558)は、以下の複数のSNPsと連鎖不平衡(r2=1)の関係にあるので、以下のいずれかの塩基の多型を解析してもよい。なお、「3585C>T」とはゲノム上で翻訳開始点に相当する塩基から数えて3585番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)の多型を意味し、他のSNPにおいても同様である。そして、各SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列をそれぞれの配列番号で示す。
3585C>T (rs6939841)(配列番号7),
8548G>C (rs9449451)(配列番号8),
9046A>G (rs7766372)(配列番号9),
9187A>C(rs7766046)(配列番号10),
10627A>G(rs9353058)(配列番号11),
16895G>A (rs9361904)(配列番号12),
19558T>G(rs9344259)(配列番号13),
22713G>A (rs2273194)(配列番号14),
23426A>G(rs7743511)(配列番号15),
27816G>A(rs9353057)(配列番号16),
28865C>T (rs9341913)(配列番号17),
30357T>C (rs9361901)(配列番号18),
31317G>A (rs6454260)(配列番号19),
32300T>G (rs4706942)(配列番号20),
32513T>C (rs7381409)(配列番号21),
33115T>G (rs9443969)(配列番号22),
34944G>C (rs9294251)(配列番号23),
35744C>T (rs9361899)(配列番号24),
36233C>A (rs6454258)(配列番号25),
40656G>C (rs6929155)(配列番号26),
41801G>A (rs9294250)(配列番号27),
42170G>A (rs4706937)(配列番号28),
49126G>C (rs9350944)(配列番号29),
49393C>T(rs9449444)(配列番号30),
50507G>A (rs9359515)(配列番号31),
51766T>C (rs4706936)(配列番号32),
54332T>C (rs9361896)(配列番号33),
64340A>G (rs9344252)(配列番号34),
64340T>C (rs9449442)(配列番号35),
69371A>G (rs991781)(配列番号36),
72754A>G (rs9344251)(配列番号37)
配列番号8、23,26,29はセンス鎖、それ以外はアンチセンス鎖の配列を示している。
【0018】
IBTK遺伝子のSNPの解析に用いる試料としては、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されないが、例えば、血液、尿等の体液サンプル、細胞、毛髪等の体毛、爪などが挙げられる。SNPの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
【0019】
IBTK遺伝子のSNPの解析は、通常のSNP解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
シークエンスは通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンスを行う場合、あらかじめ多型を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
【0021】
また、PCRによる増幅の有無を調べることによっても解析することができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0022】
また、多型を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single−strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139−146.)が挙げられる。具体的には、まず、IBTK遺伝子の多型部位を含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0023】
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料をPCRで増幅し、それを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0024】
ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、免疫疾患を検査するためのデータを得ることができる。
【0025】
<2>免疫疾患検査用試薬
本発明はまた、免疫疾患を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、IBTK遺伝子における上記多型部位を含み、ハイブリダイズの有無によって多型部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜37において塩基配列の61番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さはより好ましくは、15〜35塩基であり、さらに好ましくは20〜35塩基である。
【0026】
また、プライマーとしては、IBTK遺伝子における上記多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記多型部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜37の塩基配列の61番目の塩基含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。
上記多型部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
【0027】
本発明の検査法においては、IBTK遺伝子の多型に加え、他の遺伝子の多型を解析し、それらの遺伝子の多型の組合わせに基いて免疫疾患の検査を行ってもよい。他の遺伝子としては、T-bet遺伝子(特開2006-149276号公報)、Iκβ関連蛋白遺伝子(特開2002-218997号公報)、IL-12B遺伝子のプロモーター(特開2006-101847号公報)、TRAIL受容体遺伝子(特開2005-027595号公報)、TSLP遺伝子(特開2008-109915号公報)などが挙げられる。
【0028】
<3>免疫疾患の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法
IBTKにはlong form(α型とも呼ばれる。配列番号38)とshort form(配列番号40)の少なくとも2種類の発現産物が存在する(図4)。本発明においては、IBTKのlong formの発現が感染擬似物質の刺激に応答して誘導され、それによってIL-6、TNF-α、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカインの産生が亢進すること、およびIBTK long form発現を抑制するとこれらのサイトカイン産生が抑制されることが示された。したがって、IBTK long formの発現を低下させる活性を指標にして薬剤をスクリーニングすることにより免疫疾患の予防薬又は治療薬となりうる物質を得ることができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法としては、IBTK遺伝子long formまたはIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、免疫疾患の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法が挙げられる。
例えば、医薬候補物質の存在下において、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量が医薬候補物質非存在下と比べて抑制される場合に、当該医薬候補物質を免疫疾患の予防薬又は治療薬の候補として選択することができる。なお、発現量測定の際に、医薬候補物質とともにLPS(リポ多糖)などの刺激物質を添加し、刺激時のlong formの誘導が医薬候補物質非添加時と比べて抑制されるかを指標にして免疫疾患の予防薬又は治療薬をスクリーニングすることもできる。
IBTK遺伝子long formを発現する細胞としては、単球系細胞THP-1細胞などを用いることができる。
【0029】
IBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を用いる場合、IBTK遺伝子long formのプロモーターとしては、long formの転写開始点の上流約2kbpを含む領域が好ましく、上流約5kbpを含む領域がより好ましい。プロモーターの配列情報はNucleic Acids Res. 2008 August; 36(13): 4402−4416. などより入手できる。
レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子などが例示できる。これらのレポーター遺伝子をIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結し、これを哺乳類細胞に遺伝子を導入するために用いられるプラスミドに組み込み、リポフェクションなどの通常の方法にて細胞にトランスフェクションする。
上記のようなIBTK遺伝子long formを発現する細胞、又はレポーター遺伝子が導入された細胞に医薬候補物質を添加し、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する。
【0030】
医薬候補物質としては特に制限はなく、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドや核酸であってもよい。スクリーニングには個々の被検物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。候補物質の中から、IBTK遺伝子long form又はレポーター遺伝子の発現量を(非添加時と比べて)低下させるものを選択することにより、免疫疾患薬となりうる物質を得ることができる。
【0031】
IBTK遺伝子の発現量はRT−PCR、定量PCR、ノーザンブロット、ELISA、Western blotting、In situ hybridization、免疫組織染色などの方法により測定することができる。
レポーター遺伝子の発現量はレポーター遺伝子の種類にもよるが、蛍光強度や発光強度、放射能強度などによって測定することができる。
【0032】
<5>IBTK遺伝子long formの発現量に基づく検査方法
本発明はまた、IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、免疫疾患の検査方法(検査データを得る方法)を提供する。IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量が健常人などの対照と比べて増加している場合、免疫疾患に罹患している、または免疫疾患の危険性が高いと判定することができる。
IBTK遺伝子の発現量は、RT−PCR、ノーザンブロット、マイクロアレイ法などで調べることができる。また、IBTK遺伝子long form産物の発現量はELISA、ウエスタンブロットなどで調べることができる。抗体は市販の抗体を用いることもできるし、IBTK long form 蛋白質のアミノ酸配列(例えば配列番号39)の一部を抗原として作製された抗体を用いることもできる。IBTK long form のコード領域の塩基配列としては(配列番号38)が例示され、この配列等を利用して発現解析用プライマーやプローブなどを設計または取得することができる。RT−PCRのプライマーとしては、例えば、配列番号42および43のプライマーセットが例示される。
検査に用いる試料は血液サンプル、気管支上皮細胞あるいは口腔内細胞などが挙げられる。
【0033】
また、本発明においては、IBTK遺伝子のlong formの発現量を、免疫疾患治療薬の存在下と非存在下とで比較し、免疫疾患治療薬の効果を判定することもできる。例えば、気管支上皮細胞などに免疫疾患治療薬を添加し、LPSなどで刺激した時のlong formの誘導が免疫疾患治療薬非添加時と比べて抑制されるかを指標にして判定することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0035】
(1)IBTK遺伝子領域のSNPs
「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」において、成人気管支喘息患者群(アメリカ胸部疾患学会(American Thoracic Society)の診断基準に基づいて診断)と対照群を用いてゲノムワイドスクリーニングを行った(図1)。なお、人種は全て日本人であり、理化学研究所 遺伝子多型研究センター (The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN) , SNP Research center)をはじめ各共同研究機関における研究倫理委員会の規則に従って、全員から研究に参加することについて書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0036】
1次および2次スクリーニングで成人気管支喘息の疾患感受性と強い関連を示したランドマークSNPsの一つに、IBTK遺伝子領域を含むLDブロック(図2)に存在する17814A>T(rs1495558)が確認された(表2)。
【0037】
【表2】
【0038】
このブロックは、以下の8カ所のtag SNPsの遺伝子型決定をすることで、IBTK遺伝子領域についてminor allele frequencyが10%以上の遺伝子型を完全に決定することができる
(図3)。
-5507G>A (rs2132287),
17814A>T (rs1495558),
32300T>G (rs4706942),
56115T>A (rs2323642),
56627G>T (rs2132288),
63504G>A (rs9353054),
70943T>C (rs16893965),
77890A>C (rs2095671)。
これらのSNPsは、それぞれのalleleの周辺配列に特異的なTaqMan (商標)probeを用いて遺伝子型タイピングを実施した。
【0039】
(2)IBTKのSNPs
3次スクリーニングとして、成人気管支喘息患者468例および非患者740例の末梢血よりゲノムDNAを抽出し、上記の方法でIBTKの遺伝子型タイピングを実施したところ、6カ所のSNPsにおいて(-5507G>A (rs2132287), 17814A>T (rs1495558), 32300T>G (rs4706942), 56627G>T (rs2132288), 63504G>A (rs9353054), 77890A>C (rs2095671))、成人気管支喘息の疾患感受性との有意な関連を示した(表3)。統計解析は、カイ二乗検定にて実施した。
【0040】
【表3】
【0041】
tag SNPsのうち、特に-5507G>A (rs2132287), 17814A>T (rs1495558), および32300T>G (rs4706942)は、ほぼ同等に、成人気管支喘息患者との強い関連を示した(それぞれ、p=0.0040, p=0.0045, およびp=0.0090、オッズ比は2.28, 2.29, および2.14)。以上より、有意な相関を示したSNPs、あるいは、それらSNPsと連鎖不平衡係数r2=1の関係にあるSNPsの遺伝子型タイピングの実施が、成人気管支喘息の発症予測に有用だと考えられた。
【0042】
(3)IBTKの発現細胞
IBTK遺伝子の転写産物にはlong formとshort formが存在する(図4)が、これらの発現パターンを各組織において調べた。なお、発現パターンはRT-PCRによって調べ、GAPDHで標準化した。long formの検出に用いたプライマーは、Long forward primer: 5'-TTACACTATGGGACTAAATGGTGGACAAC-3'(配列番号42); Long reverse primer: 5'-GTCTTTATGGTGAAGGGCAGA-3' (配列番号43)であり、short formの検出に用いたプライマーは、Short forward primer: 5'-TTTCTTATTATTTTTCTGCATTTGATG-3' (配列番号44); Short reverse primer 5'-ACAAGAGGTGGATTATCAACTCAA-3' (配列番号45)である。
その結果、long formとshort formは様々な臓器で発現しているが、いずれにおいてもlong formが50倍程度の強い発現であることが確認できた(図5上)。特に、long formの発現は、免疫系の組織や肺組織、気道組織で高い発現を示した。
【0043】
また、各種免疫細胞(PBMC(末梢血単核球)、CD4+細胞、CD8+細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、単球細胞、DC(樹状細胞))において感染疑似刺激の存在下、および非存在下でlong formとshort formの発現を調べた(図5下)。その結果、免疫系細胞のlong formはB細胞や単球細胞を感染擬似物質で刺激した場合には誘導される傾向にあった。
また、気道上皮組織を構成する、上皮細胞(NHBE)、繊維芽細胞(NHLF)、および平滑筋細胞(BSMC)でも感染擬似物質で刺激した場合に、long formは誘導される傾向にあった(図6)。
すなわち、自然免疫で誘導されるIBTKのlong formは、アレルギー炎症に重要な免疫系細胞と、炎症現場で高く発現することから、気管支喘息の発症への関与する可能性を示唆するものである。
【0044】
(4)IBTK long formの機能解析
単球系細胞THP-1を用いてIBTK long form cDNAを安定発現する複数の強制発現クローン細胞を樹立して機能解析した (図7)。樹立した各クローン細胞へpNF-κB-promoter vector(NF-κBプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクト)を遺伝子導入した。24時間後に感染擬似物質の一つであるLPSで細胞を刺激し、NF-κB活性に依存したluciferaseによる化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、ウミシイタケの化学発光タンパク質を発現するコントロールベクターも同時に遺伝子導入した。LPSで刺激したところ、全てのIBTK long form強制発現クローン細胞において、親株細胞より強くluciferase活性が観察され、NF-κB活性化の亢進作用が確認できた。
【0045】
NF-κBに依存して誘導される各種サイトカインの産生能に対するIBTK long formの影響を、親株および図7で得られたIBTK long form 安定発現株2B6において、RT-PCR法によるmRNA誘導量測定、およびELISA法(以下の抗体をそれぞれ用いた。 IL-23: eBio473P19, C8.6; IL-12p70: B-T21, C8.6; IL-6: MQ2-13A5, MQ2-39C3; TNF-α: MABa, MAB11)によるタンパク質産生量測定を行うことにより評価した(図8)。その結果、供試した全てのIBTK long form発現クローン細胞について親株細胞と比較すると、LPS刺激でIL-6、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカイン産生の亢進作用が確認できた。
【0046】
THP-1細胞においてsiRNA(配列siRNA A028643-13: UCUUGAUGUUUUAAGCGAU(配列番号46)とsiRNA A028643-14: CAACCAUAUUUCAGAUUUA(配列番号47)の混合した核酸)を用いたknockdown法によりIBTK long formの発現を抑制し、LPS刺激に応答したサイトカイン産生を調べた(図9)。その結果、LPS刺激時には、陰性コントロール(非抑制群)と比較すると、IBTK発現抑制群では、IL-6、TNF-α、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカイン産生の低下作用が確認できた。
【0047】
気道上皮細胞の炎症関連サイトカインについては、siRNAを用いたIBTK long formの発現抑制の下で、RT-PCR法で評価した(図10)。刺激に用いる感染擬似物質としては、気道上皮細胞の反応性の高いpoly(I:C)を用いた。その結果、陰性コントロールと比較すると、IBTK発現抑制群では、刺激によって産生誘導されるIL6、TNF、IL1B、IL8などの炎症増悪に関与する生理活性物質の産生誘導は低下した。
以上より、相関解析から同定された気管支喘息関連分子であるIBTKのlong formは、自然免疫刺激時の単球細胞や気道上皮組織から産生される生理活性物質の産生を増強する活性があることが示された。これらの機能解析の結果は、気管支喘息の発症に関するIBTK long formの作用機序を説明するものと考えられた。
【0048】
(5)IBTK分子の関与するTLRs受容体刺激の種類
IBTKのlong formには、感染擬似物質の刺激で産生される生理活性物質の産生増強活性が示されたので、次に、long formの関与する情報伝達経路を明らかにする一環として、感染擬似物質の受容体と考えられる各種TLRs受容体とリガンド刺激による活性化能の比較検討を行った(図11)。
pNF-κB-promoter vectorと、IBTK long formのタンパク質を発現するベクターコンストラクトを、それぞれTLR-2/6、TLR-4、TLR-3受容体を発現する3種類のHEK293細胞へ遺伝子導入した。24時間後に種々の感染擬似物質で刺激し、NF-κB活性に依存したluciferaseタンパク質の発する化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、コントロールベクターも同時に遺伝子導入した。その結果、それぞれのTLR受容体に対応する特異的なリガンドで刺激した場合にのみ、NF-κBが活性化し、IBTK long formによる増強活性が示された。一方、short formでは、NF-κB活性化に対する増強作用は確認できなかった。
以上より、IBTKのlong formはTLR受容体刺激に依存的にNF-κBの活性化の増強を示すこと、感染刺激の代表的なリガンド分類である微生物由来の核酸、タンパク質、およびリポ多糖刺激によって、全てのTLRsの情報伝達経路で亢進作用を持つことが示された。これらの機能解析から、IBTK long formには、感染刺激等のNF-κBの活性化を介して、炎症関連の生理活性物質の産生を増加して気管支喘息の増悪に関与することが示唆された。
【0049】
(6)IBTK 49393C>T (rs9449444)の機能解析
気管支喘息との高い関連が検出された遺伝子多型のうち、49393C>T (rs9449444) は、IBTKの翻訳領域に存在し、アミノ酸置換をともなっており(A1185V)、機能的な違いが生じる可能性が考えられた。
このSNPを含みIBTK long formのcDNAを発現するベクターコンストラクトをそれぞれのalleleについて作製した。そして、該ベクターコンストラクトをpNF-κB-promoter vectorとともにHEK293-TLR2/6細胞へ遺伝子導入し、その24時間後にTLRリガンドで刺激し、 NF-κB活性に依存したluciferaseタンパク質の発する化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、コントロールベクターも同時に遺伝子導入した。その結果、TLR受容体刺激を加えた場合にはIBTK long formの強制発現でNF-κB活性化の増強が確認できたが、気管支喘息患者において健常者よりも頻度の高いrs944944 T allele(1185番目のアミノ酸がバリン)を持つコンストラクトを導入した細胞の方が、より強いNF-κB活性化の亢進作用が観察された(図12)。
以上より、気管支喘息患者において頻度の高いrs9449444 T alleleを有する集団では、C alleleの集団よりもIBTK long formのNF-κB活性化の亢進作用が強いことが示された。その結果、炎症に関わる生理活性化物質の産生量が上昇し、炎症の増悪を亢進し気管支喘息へとつながる可能性が示唆された。すなわちこれらの機能解析の結果は気管支喘息と49393C>T (rs9449444)との関連解析の結果を補強するものである。
【0050】
(7)IBTK 69371A>G (rs991781)の機能解析
気管支喘息との関連が検出された、3'非翻訳領域に存在する69371A>G (rs991781)は、IBTK mRNAの安定性に寄与する可能性が考えられた(図13)。
まず、このSNPによるIBTK発現量の差を検討するため、luciferase assayを実施した。pGL4.23-promoter vector(Promega)のluciferase遺伝子の3'側末端に、このSNPを含むIBTK 3'非翻訳領域のDNA配列をサブクローニングしたコンストラクトをそれぞれのalleleについて作製し、これをIBTK発現が認められる単球系の細胞腫であるTHP-1細胞へ遺伝子導入し、24時間後のluciferaseタンパク質の発する化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、コントロールベクターも同時に遺伝子導入した。その結果、気管支喘息患者における頻度の高いrs991781 G alleleを持つコンストラクトを導入した細胞において、より強いluciferase活性が観察された。
さらに、それぞれrs991781A alleleおよび G allele含む周辺のDNA配列の3回繰り返し配列を、pGL4.21-promoter vectorのluciferase遺伝子の3'非翻訳領域にサブクローニングしたコンストラクトを作製し、同様に安定性への寄与を評価した。その結果、気管支喘息患者における頻度の高いrs9917811 G alleleの3回繰り返し配列を持つコンストラクトを導入した細胞において、より強いluciferase活性が観察された。
以上より、気管支喘息において頻度の高いrs991781 G alleleを有する集団では、強いIBTKの安定性のためにIBTK発現量が上昇し、そのことが炎症性サイトカインなどの生理活性化物質の産生を促し、これらの疾患へとつながる可能性が示唆された。すなわちこれらの機能解析の結果は、気管支喘息とIBTK 69371A>G (rs991781)との関連解析の結果を補強するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫疾患の検査方法及びそれに使用するプローブやプライマー、並びに免疫疾患を予防又は治療するための医薬のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本人成人の約3%および小児の約6%は、気管支喘息に罹患しているといわれている。この気管支喘息は、喘鳴、咳、息切れなどを伴う慢性の可逆的気道閉塞を臨床的特徴としている。該気管支喘息は、近年増加の一途をたどっている疾患の一つであり、その病態の解明などが待たれている。成人気管支喘息は、遺伝要因と環境要因の総合的な寄与により発症する多因子疾患であると考えられている。遺伝要因に関しては、機能的に喘息発症に関与すると予想された候補遺伝子に対する多型研究がなされてきた。
気管支喘息に関連する遺伝子としてT−bet遺伝子(特許文献1)、Iκβ関連蛋白遺伝子(特許文献2)、IL−12B遺伝子プロモーター(特許文献3)、TRAIL受容体遺伝子(特許文献4)、TSLP遺伝子(特許文献5)などの多型をもとに気管支喘息の危険性を調べる方法が知られている。
【0003】
IBTK(Inhibitor of Bruton's Tyrosine Kinase)は、B細胞の分化に重要な働きをするBruton's tyrosine kinase (Btk)のPHドメインに結合し、Btkの活性を抑制する因子である(非特許文献1)が、IBTK遺伝子の転写産物は複数あることが知られている。そして、マイナーな転写産物であるshort formに関しては、B細胞受容体刺激の情報伝達を抑制することが示されている(非特許文献2)。一方、long formについては、機能、疾患との関連などは不明のままであった。また、これまでにIBTK遺伝子の多型と免疫疾患との相関は報告されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-149276号公報
【特許文献2】特開2002-218997号公報
【特許文献3】特開2006-101847号公報
【特許文献4】特開2005-027595号公報
【特許文献5】特開2008-109915号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liu, W., I. Quinto, X. Chen, et al. 2001. Direct inhibition of Bruton's tyrosine kinase by IBtk, a Btk-binding protein. Nat Immunol 2:939-946.
【非特許文献2】Spatuzza, C., M. Schiavone, E. Di Salle, et al. 2008. Physical and functional characterization of the genetic locus of IBtk, an inhibitor of Bruton's tyrosine kinase: evidence for three protein isoforms of IBtk. Nucleic Acids Res 36:4402-4406.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、免疫疾患の発症や進行を正確に予測するための検査方法を提供することを課題とする。本発明はまた、免疫疾患の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、気管支喘息などの免疫疾患に関連がある一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphism)を同定するため、解析を行った。その結果、IBTK遺伝子上に存在する塩基のSNPまたは該塩基と連鎖不平衡関係にあるSNPが成人気管支喘息に関連があることを見出した。さらに、IBTK遺伝子のlong formの発現が感染疑似刺激で誘導され、それによってIL-6、TNF-α、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカイン産生が亢進することを見出し、IBTK遺伝子long formの発現を抑制する物質が免疫疾患の予防薬や治療薬として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)IBTK遺伝子上に存在する塩基、または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患を検査する方法。
(2)前記一塩基多型が、配列番号1〜6のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基または該塩基と連鎖不平衡にある塩基における多型である、(1)の方法。
(2)前記連鎖不平衡にある塩基が、配列番号7〜37のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基である、(2)の方法。
(4)免疫疾患がアレルギー疾患である、(1)〜(2)のいずれかに記載の方法。
(5)アレルギー疾患が気管支喘息である、(4)の方法。
(6)配列番号1〜37の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する免疫疾患検査用プローブ。
(7)配列番号1〜37のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできる免疫疾患検査用プライマー。
(8)IBTK遺伝子long formまたはIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、免疫疾患の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
(9)IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、免疫疾患の検査方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成人気管支喘息などの免疫疾患の発症リスクの予測が正確かつ簡便に行うことができる。これにより、患者の生命に関わる危険な状態を避けることができる。
また、本発明のスクリーニング方法によれば、気管支喘息などの免疫疾患の治療薬または予防薬を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】成人気管支喘息に関連するSNPs探索の手順を示す図。
【図2】IBTK遺伝子周辺のLD(連鎖不平衡)マップを示す図。
【図3】選択した8種類のSNPsのIBTK遺伝子上での位置を示す図。
【図4】IBTK long formとshort formの転写産物と翻訳産物の構造を示す図。
【図5】各組織及び各細胞におけるIBTK long formとshort formの発現量を示す図。
【図6】NHBE(正常ヒト気管支上皮)細胞、NHLF(正常ヒト肺線維芽)細胞及びBSMC(正常ヒト気管支平滑筋)細胞におけるIBTK long formとshort formの刺激応答性発現パターンを示す図。
【図7】IBTK long formの安定発現細胞におけるNFκB-Luc(NFκBプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を連結したもの)の発現を示す図。
【図8】親株およびIBTK long formの安定発現細胞における各種サイトカインの発現を示す図。
【図9】親株およびIBTK long formのノックダウン細胞における各種サイトカインの発現を示す図。non targetは非特異的配列のsiRNA、IBTKはIBTK long formのsiRNAを導入したことを示す。
【図10】親株およびIBTK long formのノックダウン細胞における各種サイトカインの刺激応答性発現を示す図。non targetは非特異的配列のsiRNA、IBTKはIBTK long formのsiRNAを導入したことを示す。
【図11】IBTK long formを導入しない、または導入した各種TLR発現細胞における、刺激応答性NFκB-Luc活性化を示す図。
【図12】IBTK 非導入、またはIBTK long form (49393C>T (rs9449444)メジャーまたはマイナーアレル)もしくはIBTK short form (49393C>T (rs9449444)メジャーまたはマイナーアレル)を導入したTLR2/6発現細胞における、刺激(MALP-2:マクロファージ活性化リポペプチド)応答性NFκB-Luc活性化を示す図。
【図13】69371A>G (rs991781)のメジャーまたはマイナーアレルを含む3'-UTRを有するコンストラクトから発現されるルシフェラーゼ活性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>SNPに基づく検査方法
本発明の検査方法は、IBTK遺伝子上に存在する塩基のSNPまたは該塩基と連鎖不平衡にある塩基のSNPを分析し、該分析に基づいて免疫疾患を検査する方法である。免疫疾患としては、特に限定されないが、例えば、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が好ましく、気管支喘息がより好ましい。気管支喘息には成人気管支喘息、小児気管支喘息、アトピー性気管支喘息などが含まれるが、成人気管支喘息が好ましい。本発明において、「検査」とは免疫疾患の発症リスクの検査及び発症の有無の検査を含む。
【0012】
IBTK遺伝子としては、ヒトIBTK遺伝子が好ましく、例えば、GenBank Accession No. NC_000006.10の82936675..83014167(complement)に登録された配列を有する遺伝子を挙げることができる。ただし、該遺伝子は人種の違いなどによって1又は複数の塩基に置換や欠失等が存在する可能性があるため、上記配列の遺伝子に限定されない。
免疫疾患に関連するIBTK遺伝子のSNPは特に制限されないが、例えば、下記表1に示されるSNP-1〜SNP-6が挙げられる。
【0013】
【表1】
【0014】
表1において、例えば、SNP-1はゲノム上で翻訳開始点に相当する塩基から数えて-5507番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患の可能性が高い。また、アレルを考慮して解析した場合は、SNP-1がAA>GA>GGの順で免疫疾患の可能性が高い。dbSNPはNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。
その他のSNPについても同様であるが、SNP-2の場合、A>TのうちTの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-3の場合、T>GのうちGの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-4の場合、G>TのうちTの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-5の場合、G>AのうちAの場合が免疫疾患の可能性が高く、SNP-6の場合、A>CのうちCの場合が免疫疾患の可能性が高い。
【0015】
なお、SNP-1〜SNP-6について、SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列を、配列番号1〜6に示した(61番目の塩基が多型を有する)(SNP-2以外はアンチセンス鎖の配列を示している)。
この塩基に相当する多型を本発明の方法によって解析する。ここで、「相当する」とは、ヒトIBTK遺伝子上の上記配列を有する領域中の該当塩基を意味し、仮に、人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、その中の該当塩基を解析することも含む。
【0016】
上記SNPの塩基の種類を調べることによって、免疫疾患を検査することができる。なお、IBTK遺伝子の配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。例えば、SNP-1(rs2132287)の場合、センス鎖を解析する場合の多型はG/Aであるが、アンチセンス鎖を解析する場合の多型はC/Tとなる。
また、本発明において解析する塩基は上記SNPに限定されず、上記の塩基と連鎖不平衡関係にある多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある多型」とは、上記の多型とr2>0.5の関係を満たす塩基をいう。
【0017】
例えば、上記SNP-2 (rs1495558)は、以下の複数のSNPsと連鎖不平衡(r2=1)の関係にあるので、以下のいずれかの塩基の多型を解析してもよい。なお、「3585C>T」とはゲノム上で翻訳開始点に相当する塩基から数えて3585番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)の多型を意味し、他のSNPにおいても同様である。そして、各SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列をそれぞれの配列番号で示す。
3585C>T (rs6939841)(配列番号7),
8548G>C (rs9449451)(配列番号8),
9046A>G (rs7766372)(配列番号9),
9187A>C(rs7766046)(配列番号10),
10627A>G(rs9353058)(配列番号11),
16895G>A (rs9361904)(配列番号12),
19558T>G(rs9344259)(配列番号13),
22713G>A (rs2273194)(配列番号14),
23426A>G(rs7743511)(配列番号15),
27816G>A(rs9353057)(配列番号16),
28865C>T (rs9341913)(配列番号17),
30357T>C (rs9361901)(配列番号18),
31317G>A (rs6454260)(配列番号19),
32300T>G (rs4706942)(配列番号20),
32513T>C (rs7381409)(配列番号21),
33115T>G (rs9443969)(配列番号22),
34944G>C (rs9294251)(配列番号23),
35744C>T (rs9361899)(配列番号24),
36233C>A (rs6454258)(配列番号25),
40656G>C (rs6929155)(配列番号26),
41801G>A (rs9294250)(配列番号27),
42170G>A (rs4706937)(配列番号28),
49126G>C (rs9350944)(配列番号29),
49393C>T(rs9449444)(配列番号30),
50507G>A (rs9359515)(配列番号31),
51766T>C (rs4706936)(配列番号32),
54332T>C (rs9361896)(配列番号33),
64340A>G (rs9344252)(配列番号34),
64340T>C (rs9449442)(配列番号35),
69371A>G (rs991781)(配列番号36),
72754A>G (rs9344251)(配列番号37)
配列番号8、23,26,29はセンス鎖、それ以外はアンチセンス鎖の配列を示している。
【0018】
IBTK遺伝子のSNPの解析に用いる試料としては、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されないが、例えば、血液、尿等の体液サンプル、細胞、毛髪等の体毛、爪などが挙げられる。SNPの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
【0019】
IBTK遺伝子のSNPの解析は、通常のSNP解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
シークエンスは通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンスを行う場合、あらかじめ多型を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
【0021】
また、PCRによる増幅の有無を調べることによっても解析することができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0022】
また、多型を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single−strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139−146.)が挙げられる。具体的には、まず、IBTK遺伝子の多型部位を含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0023】
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料をPCRで増幅し、それを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0024】
ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、免疫疾患を検査するためのデータを得ることができる。
【0025】
<2>免疫疾患検査用試薬
本発明はまた、免疫疾患を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、IBTK遺伝子における上記多型部位を含み、ハイブリダイズの有無によって多型部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜37において塩基配列の61番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さはより好ましくは、15〜35塩基であり、さらに好ましくは20〜35塩基である。
【0026】
また、プライマーとしては、IBTK遺伝子における上記多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記多型部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜37の塩基配列の61番目の塩基含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。
上記多型部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
【0027】
本発明の検査法においては、IBTK遺伝子の多型に加え、他の遺伝子の多型を解析し、それらの遺伝子の多型の組合わせに基いて免疫疾患の検査を行ってもよい。他の遺伝子としては、T-bet遺伝子(特開2006-149276号公報)、Iκβ関連蛋白遺伝子(特開2002-218997号公報)、IL-12B遺伝子のプロモーター(特開2006-101847号公報)、TRAIL受容体遺伝子(特開2005-027595号公報)、TSLP遺伝子(特開2008-109915号公報)などが挙げられる。
【0028】
<3>免疫疾患の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法
IBTKにはlong form(α型とも呼ばれる。配列番号38)とshort form(配列番号40)の少なくとも2種類の発現産物が存在する(図4)。本発明においては、IBTKのlong formの発現が感染擬似物質の刺激に応答して誘導され、それによってIL-6、TNF-α、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカインの産生が亢進すること、およびIBTK long form発現を抑制するとこれらのサイトカイン産生が抑制されることが示された。したがって、IBTK long formの発現を低下させる活性を指標にして薬剤をスクリーニングすることにより免疫疾患の予防薬又は治療薬となりうる物質を得ることができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法としては、IBTK遺伝子long formまたはIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、免疫疾患の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法が挙げられる。
例えば、医薬候補物質の存在下において、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量が医薬候補物質非存在下と比べて抑制される場合に、当該医薬候補物質を免疫疾患の予防薬又は治療薬の候補として選択することができる。なお、発現量測定の際に、医薬候補物質とともにLPS(リポ多糖)などの刺激物質を添加し、刺激時のlong formの誘導が医薬候補物質非添加時と比べて抑制されるかを指標にして免疫疾患の予防薬又は治療薬をスクリーニングすることもできる。
IBTK遺伝子long formを発現する細胞としては、単球系細胞THP-1細胞などを用いることができる。
【0029】
IBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を用いる場合、IBTK遺伝子long formのプロモーターとしては、long formの転写開始点の上流約2kbpを含む領域が好ましく、上流約5kbpを含む領域がより好ましい。プロモーターの配列情報はNucleic Acids Res. 2008 August; 36(13): 4402−4416. などより入手できる。
レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子などが例示できる。これらのレポーター遺伝子をIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結し、これを哺乳類細胞に遺伝子を導入するために用いられるプラスミドに組み込み、リポフェクションなどの通常の方法にて細胞にトランスフェクションする。
上記のようなIBTK遺伝子long formを発現する細胞、又はレポーター遺伝子が導入された細胞に医薬候補物質を添加し、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する。
【0030】
医薬候補物質としては特に制限はなく、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドや核酸であってもよい。スクリーニングには個々の被検物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。候補物質の中から、IBTK遺伝子long form又はレポーター遺伝子の発現量を(非添加時と比べて)低下させるものを選択することにより、免疫疾患薬となりうる物質を得ることができる。
【0031】
IBTK遺伝子の発現量はRT−PCR、定量PCR、ノーザンブロット、ELISA、Western blotting、In situ hybridization、免疫組織染色などの方法により測定することができる。
レポーター遺伝子の発現量はレポーター遺伝子の種類にもよるが、蛍光強度や発光強度、放射能強度などによって測定することができる。
【0032】
<5>IBTK遺伝子long formの発現量に基づく検査方法
本発明はまた、IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、免疫疾患の検査方法(検査データを得る方法)を提供する。IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量が健常人などの対照と比べて増加している場合、免疫疾患に罹患している、または免疫疾患の危険性が高いと判定することができる。
IBTK遺伝子の発現量は、RT−PCR、ノーザンブロット、マイクロアレイ法などで調べることができる。また、IBTK遺伝子long form産物の発現量はELISA、ウエスタンブロットなどで調べることができる。抗体は市販の抗体を用いることもできるし、IBTK long form 蛋白質のアミノ酸配列(例えば配列番号39)の一部を抗原として作製された抗体を用いることもできる。IBTK long form のコード領域の塩基配列としては(配列番号38)が例示され、この配列等を利用して発現解析用プライマーやプローブなどを設計または取得することができる。RT−PCRのプライマーとしては、例えば、配列番号42および43のプライマーセットが例示される。
検査に用いる試料は血液サンプル、気管支上皮細胞あるいは口腔内細胞などが挙げられる。
【0033】
また、本発明においては、IBTK遺伝子のlong formの発現量を、免疫疾患治療薬の存在下と非存在下とで比較し、免疫疾患治療薬の効果を判定することもできる。例えば、気管支上皮細胞などに免疫疾患治療薬を添加し、LPSなどで刺激した時のlong formの誘導が免疫疾患治療薬非添加時と比べて抑制されるかを指標にして判定することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0035】
(1)IBTK遺伝子領域のSNPs
「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」において、成人気管支喘息患者群(アメリカ胸部疾患学会(American Thoracic Society)の診断基準に基づいて診断)と対照群を用いてゲノムワイドスクリーニングを行った(図1)。なお、人種は全て日本人であり、理化学研究所 遺伝子多型研究センター (The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN) , SNP Research center)をはじめ各共同研究機関における研究倫理委員会の規則に従って、全員から研究に参加することについて書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0036】
1次および2次スクリーニングで成人気管支喘息の疾患感受性と強い関連を示したランドマークSNPsの一つに、IBTK遺伝子領域を含むLDブロック(図2)に存在する17814A>T(rs1495558)が確認された(表2)。
【0037】
【表2】
【0038】
このブロックは、以下の8カ所のtag SNPsの遺伝子型決定をすることで、IBTK遺伝子領域についてminor allele frequencyが10%以上の遺伝子型を完全に決定することができる
(図3)。
-5507G>A (rs2132287),
17814A>T (rs1495558),
32300T>G (rs4706942),
56115T>A (rs2323642),
56627G>T (rs2132288),
63504G>A (rs9353054),
70943T>C (rs16893965),
77890A>C (rs2095671)。
これらのSNPsは、それぞれのalleleの周辺配列に特異的なTaqMan (商標)probeを用いて遺伝子型タイピングを実施した。
【0039】
(2)IBTKのSNPs
3次スクリーニングとして、成人気管支喘息患者468例および非患者740例の末梢血よりゲノムDNAを抽出し、上記の方法でIBTKの遺伝子型タイピングを実施したところ、6カ所のSNPsにおいて(-5507G>A (rs2132287), 17814A>T (rs1495558), 32300T>G (rs4706942), 56627G>T (rs2132288), 63504G>A (rs9353054), 77890A>C (rs2095671))、成人気管支喘息の疾患感受性との有意な関連を示した(表3)。統計解析は、カイ二乗検定にて実施した。
【0040】
【表3】
【0041】
tag SNPsのうち、特に-5507G>A (rs2132287), 17814A>T (rs1495558), および32300T>G (rs4706942)は、ほぼ同等に、成人気管支喘息患者との強い関連を示した(それぞれ、p=0.0040, p=0.0045, およびp=0.0090、オッズ比は2.28, 2.29, および2.14)。以上より、有意な相関を示したSNPs、あるいは、それらSNPsと連鎖不平衡係数r2=1の関係にあるSNPsの遺伝子型タイピングの実施が、成人気管支喘息の発症予測に有用だと考えられた。
【0042】
(3)IBTKの発現細胞
IBTK遺伝子の転写産物にはlong formとshort formが存在する(図4)が、これらの発現パターンを各組織において調べた。なお、発現パターンはRT-PCRによって調べ、GAPDHで標準化した。long formの検出に用いたプライマーは、Long forward primer: 5'-TTACACTATGGGACTAAATGGTGGACAAC-3'(配列番号42); Long reverse primer: 5'-GTCTTTATGGTGAAGGGCAGA-3' (配列番号43)であり、short formの検出に用いたプライマーは、Short forward primer: 5'-TTTCTTATTATTTTTCTGCATTTGATG-3' (配列番号44); Short reverse primer 5'-ACAAGAGGTGGATTATCAACTCAA-3' (配列番号45)である。
その結果、long formとshort formは様々な臓器で発現しているが、いずれにおいてもlong formが50倍程度の強い発現であることが確認できた(図5上)。特に、long formの発現は、免疫系の組織や肺組織、気道組織で高い発現を示した。
【0043】
また、各種免疫細胞(PBMC(末梢血単核球)、CD4+細胞、CD8+細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、単球細胞、DC(樹状細胞))において感染疑似刺激の存在下、および非存在下でlong formとshort formの発現を調べた(図5下)。その結果、免疫系細胞のlong formはB細胞や単球細胞を感染擬似物質で刺激した場合には誘導される傾向にあった。
また、気道上皮組織を構成する、上皮細胞(NHBE)、繊維芽細胞(NHLF)、および平滑筋細胞(BSMC)でも感染擬似物質で刺激した場合に、long formは誘導される傾向にあった(図6)。
すなわち、自然免疫で誘導されるIBTKのlong formは、アレルギー炎症に重要な免疫系細胞と、炎症現場で高く発現することから、気管支喘息の発症への関与する可能性を示唆するものである。
【0044】
(4)IBTK long formの機能解析
単球系細胞THP-1を用いてIBTK long form cDNAを安定発現する複数の強制発現クローン細胞を樹立して機能解析した (図7)。樹立した各クローン細胞へpNF-κB-promoter vector(NF-κBプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクト)を遺伝子導入した。24時間後に感染擬似物質の一つであるLPSで細胞を刺激し、NF-κB活性に依存したluciferaseによる化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、ウミシイタケの化学発光タンパク質を発現するコントロールベクターも同時に遺伝子導入した。LPSで刺激したところ、全てのIBTK long form強制発現クローン細胞において、親株細胞より強くluciferase活性が観察され、NF-κB活性化の亢進作用が確認できた。
【0045】
NF-κBに依存して誘導される各種サイトカインの産生能に対するIBTK long formの影響を、親株および図7で得られたIBTK long form 安定発現株2B6において、RT-PCR法によるmRNA誘導量測定、およびELISA法(以下の抗体をそれぞれ用いた。 IL-23: eBio473P19, C8.6; IL-12p70: B-T21, C8.6; IL-6: MQ2-13A5, MQ2-39C3; TNF-α: MABa, MAB11)によるタンパク質産生量測定を行うことにより評価した(図8)。その結果、供試した全てのIBTK long form発現クローン細胞について親株細胞と比較すると、LPS刺激でIL-6、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカイン産生の亢進作用が確認できた。
【0046】
THP-1細胞においてsiRNA(配列siRNA A028643-13: UCUUGAUGUUUUAAGCGAU(配列番号46)とsiRNA A028643-14: CAACCAUAUUUCAGAUUUA(配列番号47)の混合した核酸)を用いたknockdown法によりIBTK long formの発現を抑制し、LPS刺激に応答したサイトカイン産生を調べた(図9)。その結果、LPS刺激時には、陰性コントロール(非抑制群)と比較すると、IBTK発現抑制群では、IL-6、TNF-α、IL-23などの炎症増悪に関与するサイトカイン産生の低下作用が確認できた。
【0047】
気道上皮細胞の炎症関連サイトカインについては、siRNAを用いたIBTK long formの発現抑制の下で、RT-PCR法で評価した(図10)。刺激に用いる感染擬似物質としては、気道上皮細胞の反応性の高いpoly(I:C)を用いた。その結果、陰性コントロールと比較すると、IBTK発現抑制群では、刺激によって産生誘導されるIL6、TNF、IL1B、IL8などの炎症増悪に関与する生理活性物質の産生誘導は低下した。
以上より、相関解析から同定された気管支喘息関連分子であるIBTKのlong formは、自然免疫刺激時の単球細胞や気道上皮組織から産生される生理活性物質の産生を増強する活性があることが示された。これらの機能解析の結果は、気管支喘息の発症に関するIBTK long formの作用機序を説明するものと考えられた。
【0048】
(5)IBTK分子の関与するTLRs受容体刺激の種類
IBTKのlong formには、感染擬似物質の刺激で産生される生理活性物質の産生増強活性が示されたので、次に、long formの関与する情報伝達経路を明らかにする一環として、感染擬似物質の受容体と考えられる各種TLRs受容体とリガンド刺激による活性化能の比較検討を行った(図11)。
pNF-κB-promoter vectorと、IBTK long formのタンパク質を発現するベクターコンストラクトを、それぞれTLR-2/6、TLR-4、TLR-3受容体を発現する3種類のHEK293細胞へ遺伝子導入した。24時間後に種々の感染擬似物質で刺激し、NF-κB活性に依存したluciferaseタンパク質の発する化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、コントロールベクターも同時に遺伝子導入した。その結果、それぞれのTLR受容体に対応する特異的なリガンドで刺激した場合にのみ、NF-κBが活性化し、IBTK long formによる増強活性が示された。一方、short formでは、NF-κB活性化に対する増強作用は確認できなかった。
以上より、IBTKのlong formはTLR受容体刺激に依存的にNF-κBの活性化の増強を示すこと、感染刺激の代表的なリガンド分類である微生物由来の核酸、タンパク質、およびリポ多糖刺激によって、全てのTLRsの情報伝達経路で亢進作用を持つことが示された。これらの機能解析から、IBTK long formには、感染刺激等のNF-κBの活性化を介して、炎症関連の生理活性物質の産生を増加して気管支喘息の増悪に関与することが示唆された。
【0049】
(6)IBTK 49393C>T (rs9449444)の機能解析
気管支喘息との高い関連が検出された遺伝子多型のうち、49393C>T (rs9449444) は、IBTKの翻訳領域に存在し、アミノ酸置換をともなっており(A1185V)、機能的な違いが生じる可能性が考えられた。
このSNPを含みIBTK long formのcDNAを発現するベクターコンストラクトをそれぞれのalleleについて作製した。そして、該ベクターコンストラクトをpNF-κB-promoter vectorとともにHEK293-TLR2/6細胞へ遺伝子導入し、その24時間後にTLRリガンドで刺激し、 NF-κB活性に依存したluciferaseタンパク質の発する化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、コントロールベクターも同時に遺伝子導入した。その結果、TLR受容体刺激を加えた場合にはIBTK long formの強制発現でNF-κB活性化の増強が確認できたが、気管支喘息患者において健常者よりも頻度の高いrs944944 T allele(1185番目のアミノ酸がバリン)を持つコンストラクトを導入した細胞の方が、より強いNF-κB活性化の亢進作用が観察された(図12)。
以上より、気管支喘息患者において頻度の高いrs9449444 T alleleを有する集団では、C alleleの集団よりもIBTK long formのNF-κB活性化の亢進作用が強いことが示された。その結果、炎症に関わる生理活性化物質の産生量が上昇し、炎症の増悪を亢進し気管支喘息へとつながる可能性が示唆された。すなわちこれらの機能解析の結果は気管支喘息と49393C>T (rs9449444)との関連解析の結果を補強するものである。
【0050】
(7)IBTK 69371A>G (rs991781)の機能解析
気管支喘息との関連が検出された、3'非翻訳領域に存在する69371A>G (rs991781)は、IBTK mRNAの安定性に寄与する可能性が考えられた(図13)。
まず、このSNPによるIBTK発現量の差を検討するため、luciferase assayを実施した。pGL4.23-promoter vector(Promega)のluciferase遺伝子の3'側末端に、このSNPを含むIBTK 3'非翻訳領域のDNA配列をサブクローニングしたコンストラクトをそれぞれのalleleについて作製し、これをIBTK発現が認められる単球系の細胞腫であるTHP-1細胞へ遺伝子導入し、24時間後のluciferaseタンパク質の発する化学発光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、コントロールベクターも同時に遺伝子導入した。その結果、気管支喘息患者における頻度の高いrs991781 G alleleを持つコンストラクトを導入した細胞において、より強いluciferase活性が観察された。
さらに、それぞれrs991781A alleleおよび G allele含む周辺のDNA配列の3回繰り返し配列を、pGL4.21-promoter vectorのluciferase遺伝子の3'非翻訳領域にサブクローニングしたコンストラクトを作製し、同様に安定性への寄与を評価した。その結果、気管支喘息患者における頻度の高いrs9917811 G alleleの3回繰り返し配列を持つコンストラクトを導入した細胞において、より強いluciferase活性が観察された。
以上より、気管支喘息において頻度の高いrs991781 G alleleを有する集団では、強いIBTKの安定性のためにIBTK発現量が上昇し、そのことが炎症性サイトカインなどの生理活性化物質の産生を促し、これらの疾患へとつながる可能性が示唆された。すなわちこれらの機能解析の結果は、気管支喘息とIBTK 69371A>G (rs991781)との関連解析の結果を補強するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IBTK遺伝子上に存在する塩基、または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患を検査する方法。
【請求項2】
前記一塩基多型が、配列番号1〜6のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基または該塩基と連鎖不平衡にある塩基における多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連鎖不平衡にある塩基が、配列番号7〜37のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
免疫疾患がアレルギー疾患である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アレルギー疾患が気管支喘息である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
配列番号1〜37の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する免疫疾患検査用プローブ。
【請求項7】
配列番号1〜37のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできる免疫疾患検査用プライマー。
【請求項8】
IBTK遺伝子long formまたはIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、免疫疾患の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
【請求項9】
IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、免疫疾患の検査方法。
【請求項1】
IBTK遺伝子上に存在する塩基、または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患を検査する方法。
【請求項2】
前記一塩基多型が、配列番号1〜6のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基または該塩基と連鎖不平衡にある塩基における多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連鎖不平衡にある塩基が、配列番号7〜37のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
免疫疾患がアレルギー疾患である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アレルギー疾患が気管支喘息である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
配列番号1〜37の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する免疫疾患検査用プローブ。
【請求項7】
配列番号1〜37のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできる免疫疾患検査用プライマー。
【請求項8】
IBTK遺伝子long formまたはIBTK遺伝子long formのプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、IBTK遺伝子long formまたはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、免疫疾患の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
【請求項9】
IBTK遺伝子long formのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、免疫疾患の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−4619(P2011−4619A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149093(P2009−149093)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 文部科学省、科学技術試験研究「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(508067851)一般社団法人徳洲会 (12)
【出願人】(803000034)学校法人日本医科大学 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 文部科学省、科学技術試験研究「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(508067851)一般社団法人徳洲会 (12)
【出願人】(803000034)学校法人日本医科大学 (37)
【Fターム(参考)】
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