説明

免疫疾患の治療用ジフェノイル構造化合物

本発明はジフェノイル(Diphenoyl;DP)構造を含む化合物を有効性分として含有する免疫疾患の予防または治療用組成物、及び上記化合物を投与することによって免疫疾患を予防または治療する方法に関する。
本発明のジフェノイル(DP)構造を含む化合物は、亢進した免疫を調節するように働く調節性T細胞(Regulatory T cell:Treg)の数と活性を増加させる機能を果たし、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、過敏性炎症疾患などの免疫疾患を予防または治療することに有用に使われることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェノイル(diphenoyl;DP)構造を含む化合物を有効性分として含有する免疫疾患の予防または治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免疫とは、生体の内部環境が外部因子に対して防御する現状をいう。このような免疫システムは、バクテリア及びウイルスのような病原性外来微生物の認識及び除去による監視及び防御のメカニズムと共に開発されてきた。従って、生体は、自己の細胞または組織(自己−抗原)と外来微生物(非自己−抗原)とを区別して、自己−抗原に対しては反応しなかったり、また反応したとしても免疫機能を示さない(免疫寛容)。
【0003】
一連の免疫反応で非正常な反応がおきる時に、リンパ球、特にT細胞は、自己−抗原に強力に反応して、組織損傷を起こす可能性がある。このような状態を自己免疫疾患という。このような非正常な免疫反応を誘発する原因の一つは、ウイルスまたはバクテリアに対する正常な免疫反応が、ある種類のシステムにより自己−抗原に対する免疫反応に変化するためである。自己免疫疾患によって誘導される組織損傷または感染は、多様な種類の炎症反応を招く。
【0004】
炎症反応は、組織の損傷、微生物の感染、アレルゲン等により誘発される免疫反応を意味し、一般的に、熱感、むくみ、発赤、疼痛の4大特徴を有する。また、急性炎症と慢性炎症とに大別できるが、特に慢性炎症の場合には自己免疫疾患を含んだ多様な免疫関連疾病において重要な発生要因として作用している。
【0005】
また、臓器移植または骨髄(造血幹細胞)移植の場合に、被移植体において移植組織に対して拒否免疫反応が発生するが、このような免疫反応は、正常な免疫反応といっても抑制することが治療的に望ましい。
【0006】
現在、主に使われている免疫抑制剤は、増殖抑制剤、抗炎症ステロイド剤、信号伝達抑制剤、最近に登場した単一クローン抗体類などの範囲に分けることができる。しかし、メトトレキサート、サイクロホスファミドなどの増殖抑制剤は、効果は強力であるが、骨髄細胞や胃腸菅内膜などのような交替速度が高い正常細胞に対して深刻な毒性を有し、肝臓障害をよく起こす[参照:Miller, Semin. Vet. Med. Surg. 12(3):144-149, 1997]。免疫抑制を誘導するために使われるデキサメタゾン(Dexamethasone)、プレドニゾロンなどの抗炎症ステロイド製剤は、副作用として、頻繁な感染、非正常な代謝、高血圧及び糖尿などを誘発する可能性があり、濫用は薬物耐性を発生させる。リンパ球の活性化及び連続的な増殖を抑制するために使われるシクロスポリン、FK506などの薬物は、カルシウム依存性フォスファターゼであるカルシニューリンを抑制して活性化信号の伝達を抑制し、現在最もよく使われている免疫抑制剤である[参照:Liu et al.,Cell 66:807-815, 1991;Henderson et al.,Immun. 73:316-321, 1991]。これらは、腎臓、肝、心臓、骨髄などの臓器移植時における拒否反応の予防または治療に使われ、先に言及した炎症性臓疾患、乾癬、リューマチ性関節炎、再生不良性貧血及び多発性硬化症など多様な慢性炎症性または自己免疫性免疫疾患の治療にも使われる。しかし、シクロスポリンなどは、適正薬物濃度の範囲が狭く、腎毒性、肝毒性、高血圧、癌及び神経毒性を含む深刻な毒性効果を有する[参照:Philip and Gerson,Clin.Lab.Med.18(4):755-765, 1998;Hojo et al., Nature 397:530-534, 1999]。
【0007】
このような免疫抑制剤は全て、免疫細胞の亢進した活性を人体外部から与えられた薬物を通して強制的に下げるメカニズムを有しており、人体自体が有する調節機能は全く考慮しない。しかし、最近の研究結果によれば、免疫系には組織損傷を起こし得る他のT細胞の活動を能動的に抑制する調節性T細胞(regulatory T cell:Treg)群が存在し、これらが亢進した免疫を調節して自己免疫疾患または慢性的炎症を制御しているとの事実が明らかになっている。
【0008】
現在まで知られたことによると、Tリンパ球のうち、CD4CD25T細胞群が調節性T細胞であって、げっ歯類の実験で自己免疫性糖尿病を抑制し、炎症性臓疾患を予防し、亢進した他のT細胞の増殖と活性を抑制する[参照:Salomon et al., Immunity 12(4):431-40, 2000;Read et al., J. Exp. Med. 192(2):295-302, 2000;Annacker et al., J. Immunol. 166(5):3008-18, 2001]。そのメカニズムとしては、調節性T細胞の表面における抑制性分子の発現を通して他の免疫細胞との直接的接触方式により抑制する場合、及び免疫抑制性サイトカインとして知られているTGF−ベータ(transforming growth factor-beta)などの分泌を通して抑制する場合などが提示されている[参照:Read and Powrie, Curr. Opin. Immunol. 13(6):644-9, 2001]。
【0009】
調節性T細胞と他のT細胞とを区分できる、現在まで知られている最も特異的なマーカーとしては、転写因子であるFoxp3が知られている[参照:Fontenot et al.,Nat Immunol. 4:330-336, 2003]。Foxp3は、インターロイキン−2のようなリンパ球の活性化に関連したサイトカイン遺伝子のプロモーター部位に結合して免疫調節に関与する[参照:Schubert et al., J Biol Chem. 267:37672-37679, 2001]。Foxp3遺伝子が注入されたマウスでは、CD4CD25T細胞さえも免疫抑制活性を示すと報告され[参照:Khattri et al., Nat Immunol. 4:337-342, 2003]、反対に、Foxp3が遺伝的に除去されたマウスの場合には、自己免疫疾患と類似したリンパ増殖性疾患が発生すると知られている。そして、免疫調節が欠乏したマウスにFoxp3遺伝子を注入して過発現させると、自己免疫疾患の発生が遅れると報告されている[参照:Fontenot et al.,Nat Immunol.4:330-336, 2003]。
【0010】
このような事実は、非正常な免疫疾患等の発生原因である免疫細胞の過多な活性化が、まさに調節性T細胞の不在または機能低下に起因し得ることを意味する。調節性T細胞の機能回復は、既存の免疫抑制剤が有する方式とは異なる、即ち、人体自体が有する調節機能を利用して、新しい方式で免疫疾患を制御することが可能であることを示す。そして、調節性T細胞活性の復元あるいは活性増加は、最も特異的な転写因子であるFoxp3遺伝子の発現を通して測定できるので、調節性T細胞の免疫調節活性を増加させる新しい免疫調節剤の探索が可能になる。
【0011】
ジフェノイル(Diphenoyl;DP)構造、特にヘキサヒドロキシジフェノイル(Hexahydroxydiphenoyl;HHDP)構造は、薬用植物であるミロバラン(Terminalia chebula)またはキクバフウロ(Erodium stephanianum Willd)などから分離されたケブラジン酸(Chebulagic acid)、食用及び薬用植物である石榴(Punica granatum)などから分離されたパニカラギン(Punicalagin)、観賞及び薬用植物である目薬の木(Acer nikoense)から分離されたコリラジン(Corilagin)などの多様な植物成分から共通して発見される構造である。HHDP構造が含まれた植物成分の多様な生物学的活性に関する研究は相当多いが、この構造を有する化合物が調節性T細胞の活性を増加あるいは回復させ、それによって免疫疾患を治療あるいは予防するとの研究結果は全くなかった。
【発明の開示】
【0012】
本発明者等は、生体自体が有する調節機能を用いた新しい方式で免疫疾患を制御するための新規免疫調節剤の候補物を、天然物から探索しようと多くの研究を行い、その結果としてジフェノイル(DP)、望ましくはヘキサヒドロキシジフェノイル(HHDP)構造を共通的に含んでいる化合物が、自己免疫疾患及び過敏性炎症疾患などの制御の鍵となる調節性T細胞(regulatory T cell)の活性を増加させることを発見した。そしてDP、望ましくはHHDP構造を有する化合物のうち、ケブラジン酸とパニカラギンとが人間の混合白血球反応(Mixed Leukocytes Reaction)において強力な免疫抑制能を示すことも発見した。ケブラジン酸の生体実験結果、自己免疫疾患であるリューマチ関節炎モデルマウスで、免疫調節機能を通して慢性炎症性自己免疫疾患の発生と進行を抑制することを発見し、また過敏性炎症疾患である喘息モデルマウスでも、免疫調節機能を通して炎症が抑制されることを発見した。更に、このような効果が調節性T細胞の数と活性の増加に起因することを発見し、DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物が、調節性T細胞の活性増加を通して自己免疫疾患及び過敏性炎症疾患などを制御できることを確認し、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、化学式1のDP構造を有する化合物を有効性分として含有する免疫疾患の予防または治療用組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、化学式1のDP構造を有する化合物を有効性分として含有する組成物を患者に投与して、臓器移植拒否反応、移植片一対一宿主疾患、自己免疫疾患、過敏性炎症疾患などの免疫疾患を予防または治療する方法を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、化学式1のDP構造を有する化合物を、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、過敏性炎症疾患などの免疫疾患の予防または治療に使用する用途を提供することにある。
【0016】
一つの様態として、本発明は、下記化学式1のジフェノイル(Diphenoyl;DP)構造を含む化合物を有効性分として含有する免疫疾患の予防または治療用組成物に関するものである。
【0017】
【化1】

【0018】
上記化学式1において、Xは、水素(H)、ヒドロキシ(OH)、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれたハロゲン、シアノ(CN)、ニトロ(NO)、アミン(NH)、スルホニル(SO)、メチル(CH)、低級アルコキシ、低級アルキルからなる群から選択され、上記Xとして何れも同じ分子が選択されるものではない。
【0019】
、RあるいはO−R、O−Rは、水素(H)、ヒドロキシ(OH)、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれたハロゲン、シアノ(CN)、ニトロ(NO)、アミン(NH)、スルホニル(SO)、メチル(CH)、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、複素環、シクロアルキルからなる群から選択され、本構造は、RとR位置で糖化合物または複素環に同時に結合されても、RとR位置でアミノ酸、ペプチド、蛋白質及び核酸などと共有結合されてもよい。
【0020】
本願発明のDP構造を含む化合物は、望ましくは下記化学式2のヘキサヒドロキシジフェノイル(hexahydroxydiphenoyl;HHDP)構造を含む化合物である。
【0021】
【化2】

【0022】
上記化学式2において、RとRあるいはO−RとO−Rは、水素(H)、ヒドロキシ(OH)、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれたハロゲン、シアノ(CN)、ニトロ(NO)、アミン(NH)、スルホニル(SO)、メチル(CH)、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、複素環、シクロアルキルからなる群から選択され、本構造は、RとR位置で糖化合物または複素環に同時に結合されても、RとR位置でアミノ酸、ペプチド、蛋白質及び核酸などと共有結合されてもよい。
【0023】
上記の化学式2のHHDP構造を含む化合物は、天然物質から公知の抽出方法を使用して製造したり、当分野において広く公知された方法を用いて合成することができる。
【0024】
HHDP構造を含む化合物としては、薬用植物であるミロバラン(Terminalia chebula)またはキクバフウロ(Erodium stephanianum Willd)などから分離された化学式3のケブラジン酸(Chebulagic acid)、食用及び薬用植物である石榴(Punica granatum)などから分離された化学式4のパニカラギン(Punicalagin)、観賞及び薬用植物である目薬の木(Acer nikoense)などから分離された化学式5のコリラジン(Corilagin)、化学式6のペドゥンクラジン(Pedunculagin)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
本発明の免疫疾患治療用組成物には、化学式3〜6のように純粋分離したHHDP構造を有する化合物だけではなく、この化合物を分離することができる植物、例えばミロバランまたはキクバフウロの全草から分離された、ケブラジン酸を含む抽出物が使われることができる。
【0030】
本発明で用語"免疫疾患"とは、外部又は自己抗原によって誘発される、生体に有利でない免疫反応をいう。外部または自己抗原によって誘発される免疫反応により炎症反応が起き得、このような炎症反応は急性炎症と慢性炎症とに区分される。特に、慢性炎症は、自己免疫疾患(例えば、リューマチ関節炎(rheumatoid arthritis)、乾癬(psoriasis)、炎症性臓疾患(inflammatory bowel disease)など)、喘息(asthma)、動脈硬化(atherosclerosis)、アルツハイマー病(Alzheimer's disease)などと緊密な連関性がある[参照:Balkwill and Mantovani, Lancet 357(9255):539-45, 2001]。
【0031】
臓器移植拒否反応及び移植片−対−宿主疾患は正常な免疫反応であるが、移植された臓器または移植片を生体と調和させるためには、これらを拒否する免疫反応を抑制させることが望ましい。本発明は、薬物による直接的な免疫反応の抑制を誘導するのではなく、免疫反応の抑制を誘導することができる関連細胞、特に調節性T細胞を活性化させ、このような調節性T細胞によって目的とする免疫抑制効果を達成する。
【0032】
本実施例からも確認されるように、本発明のDP、望ましくはHHDP構造を含む免疫抑制組成物は、調節性T細胞の数と活性を増加させ、同種異系白血球の認識によりリンパ球の増殖を抑制し、関節炎、喘息及び組織移植などの動物モデルにおける自己免疫疾患の発病を遅延または抑制して治療する優秀な効果を示した。
【0033】
従って、本発明の免疫疾患治療用組成物は、望ましくは、調節性T細胞の活性化によって、予想されるあらゆる望ましくない免疫疾患を予防または治療することができ、その具体的な例として、上記の臓器移植拒否反応[参照:Kingsley et al., J. Immunol. 168:1080-86, 2002]、移植片−対−宿主疾患[参照:Hequet et al., Am. J. Transplant. 4(6):872-8, 2004]、自己免疫疾患及び過敏性炎症疾患[参照:Thompson and Powrie, Curr. Opin. Pharmacol. 4(4):408-14, 2004]などが挙げられる。
【0034】
自己免疫疾患としては、上記のリューマチ関節炎[参照:Morgan et al., Arthritis Rheum. 48(5):1452-60, 2003]、乾癬、炎症性臓疾患[参照:Martin et al., J. Immunol. 172(6):3391-8, 2004]、糖尿病[参照:Peng et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(13):4572-7, 2004]、潰瘍性大膓炎[参照:Powrie et al., Norvatis Found. Symp. 252:92-8, 2003]、多発性硬化症[参照:Adorini, J. Neurol.Sci.223(1):13-24, 2004]、強皮症、重症筋無力症、多発性筋肉炎、皮膚筋炎、自己免疫血球減少症、脈管炎症候群、全身性エリテマトーデス[参照:Crispin et al., J. Autoimmun. 21(3):273-6, 2003]などが、過敏性炎症疾患としては、喘息及びアレルギー[参照:Robinson and Dao, J. Allergy Clin. Immunol. 114(2):296-301, 2004]などが挙げられる。
【0035】
もう一つの様態として、本発明は、化学式1のジフェノイル(DP)構造を含む化合物を有効性分として含有する組成物を、免疫調節が必要な患者に投与することによって、免疫疾患を予防または治療する方法に関するものである。
【0036】
望ましい様態として、本発明は、免疫調節に関与する調節性T細胞の活性化による免疫調節方法に関するものである。より望ましい様態として、本発明は、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患または過敏性炎症疾患を治療または予防する方法に関するものである。
【0037】
もう一つの様態として、本発明は、化学式1のジフェノイル(DP)構造を有する化合物を、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、過敏性炎症疾患などの免疫疾患の予防または治療に使用する用途に関するものである。
【0038】
本発明の組成物は、それぞれの使用目的に合わせて、通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤形、滅菌注射溶液の形態、軟骨剤などの外用剤、坐剤などに剤形化して使われることができ、このような組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸(alginate)、ゼラチン、リン酸カルシウム(calcium phosphate)、珪酸カルシウム(calcium silicate)、セルロース、メチルセルロース、アモルファスセルロース、ポリビニールピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate)、鉱物油などが挙げられる。
【0039】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、上記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて剤形化する。また、単純な賦形剤の他にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤等も使われる。経口のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、油剤、シロップ剤などが該当するが、よく使われる単純希釈剤である水、液体パラフィンの他に多様な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0040】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオールレートのような、注射可能なエステルなどが使われ得る。注射剤の基剤としては、溶解剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤及び防腐剤のような従来の添加剤を含むことができる。
【0041】
本発明の組成物は、経口、静脈内、皮下、皮内、鼻腔内、腹腔内、筋肉内、硬皮など多様な方式を用いて投与でき、投与量は患者の年齢、性別、体重によって変わるが、これは当業者が容易に決定できることである。例えば、体重kg当り1〜50mgの量を毎日または隔日投与したり、1日1〜3回に分けて投与することができる。
【0042】
また、組成物の投与量は、投与経路、疾病の程度、性別、体重、年齢などによって増減できる。したがって、上記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、DP(diphenoyl-)またはHHDP(hexahydroxydiphenoyl-)構造を含む化合物のうち、代表的にケブラジン酸、パニカラギン、コリラジン等によって、免疫調節細胞の特異的転写因子であるFoxp3遺伝子の発現が増加したことを示す図面である(CT:対照群、CRN:コリラジン、CHE:ケブラジン酸、PCG:パニカラギン)。
【図2】図2は、DPまたはHHDP構造を含む化合物であるケブラジン酸とパニカラギンが、混合白血球反応(Mixed Leukocytes Reaction)によりリンパ球の増殖を抑制することを示す図面である(CsA:シクロスポリンA、CT:対照群、CHE:ケブラジン酸、PCG:パニカラギン)。
【図3】図3は、コラーゲン誘導性関節炎(Collagen-Induced Arthritis)の動物モデルにおいて、DPまたはHHDP構造を含む化合物であるケブラジン酸の関節炎発生に対する予防効果を示す図面である(●:生理食塩水、■:ケブラジン酸10mg/kg、▲△(黒三角)▼:ケブラジン酸20mg/kg)。
【図4】図4は、コラーゲン誘導性関節炎(Collagen-Induced Arthritis)の動物モデルにおいて、DPまたはHHDP構造を含む化合物であるケブラジン酸による、発生された関節炎に対しての治療効果を示す図面である(●:生理食塩水、▲△(黒三角)▼:ケブラジン酸20mg/kg)。
【図5】図5は、オボアルブミン誘導性喘息(Ovalbumin-Induced Asthma)の動物モデルにおいて、DPまたはHHDP構造を含む化合物であるケブラジン酸による、発生された喘息に対しての血液内IgE減少を示す図面である(Normal:正常マウス群、OVA−Control:対照群、OVA−CHE:ケブラジン酸20mg/kg投与群)。
【図6】図6は、皮膚組織移植(Skin Allograft)の動物モデルにおいて、DPまたはHHDP構造を含む化合物であるケブラジン酸による組織移植の成功率及び成功期間の増加を示す図面である(◆:対照群、●:ケブラジン酸20mg/kg投与群)。
【0044】
以下、実施例を通して本発明をより一層詳しく説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは、当業界において通常の知識を持った者に自明なことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
実施例において、動物モデルの場合には同一グループ内の個体数を10に、その他は同一グループ内の試料/検体数を最小3以上とし、Student's t-testを用いた統計分析を利用した。有意性の限界はp<0.05を基準に定め、図面の*表示は実験値の有意性が95%以上であることを意味する。各実験値は、平均±標準誤差で表示された。
【0046】
製造例1.ケブラジン酸(Chebulagic acid)、パニカラギン(Punicalagin)、コリラジン(Corilagin)の抽出、精製及び分析
ケブラジン酸の場合、乾燥されたミロバラン(Terminalia chebula)の未成熟果実500gを粉砕機を用いて粉末にし、ここに70%のアセトン4Lを加えて、常温で2時間攪拌して抽出した。抽出後、ろ過及び減圧濃縮段階を経て抽出固形物を得た後に、再び1Lの水に溶解させて、1Lのエチルアセテートで3回以上抽出した。抽出されたアセテート層を減圧濃縮段階を経て再び固形物にして、50%のメタノールに溶かしてろ過した後に、C−18逆相HPLCコラム(30mmX250mm;Shimadzu, Japan)の中に入れて、0.05%のTFA(Trifluoroacetic acid)を含んだメタノール30%の溶液で有効性分を溶出した。また、再び減圧濃縮して固形化させ50%のメタノールに溶かしてろ過した後に、C−18逆相HPLCコラム(20mmX250mm;Shimadzu、Japan)の中に入れることによって、有効性分のピークを純粋精製した。この最終精製された2gの有効性分は、ZQ−質量分析機(MS)(Waters, USA)及びAMX500MHz核磁気共鳴器(NMR)(Bruker, USA)を用いてケブラジン酸であることを確認し、その純度は98%以上であった。
【0047】
パニカラギンの場合、乾燥された石榴(Punica granatum)の果皮500gを粉砕機を用いて粉末にし、ここに70%のアセトン4Lを加えて、常温で2時間攪拌して抽出した。抽出後、ろ過及び減圧濃縮段階を経て抽出固形物を得た後に、再び1Lの水に溶解させて、HP−20コラム(50mmX1000mm;Sam-Yang, Korea)の中に入れて、メタノール30%の溶液で有効性分を溶出した。また、再び減圧濃縮して固形化させてから、50%メタノールに溶かしてろ過した後に、C−18暦象HPLCコラム(20mmX250mm;Shimadzu, Japan)の中に入れることによって、有効性分のピークを純粋精製した。この最終精製された4gの有効性分は、ZQ−質量分析機(MS)(Waters, USA)及びAMX500MHz核磁気共鳴器(NMR)(Bruker, USA)を用いてパニカラギンであることを確認し、その純度は98%以上であった。
【0048】
コリラジンの場合、目薬の木(Acer nikoense)の葉200gを熱水抽出した後に、減圧濃縮して固形化させ50%のメタノールに溶かしてろ過した後に、C−18逆相HPLCコラム(20mmX250mm;Shimadzu, Japan)の中に入れることによって、有効性分のピークを純粋精製した。この最終精製された5gの有効性分は、ZQ−質量分析機(MS)(Waters, USA)及びAMX500MHz核磁気共鳴器(NMR)(Bruker, USA)を用いてコリラジンであることを確認し、その純度は98%以上であった。
【0049】
実施例1.調節性T細胞の活性増加に対する効果
DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物が特異的に調節性T細胞の活性を増加させるかどうかを確認するために、調節性T細胞の特異的転写因子であるFoxp3遺伝子の発現量を、リアルタイム逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(Real time RT-PCR)を用いて測定した。
【0050】
マウスの脾臓からCD4T細胞を分離した後に、1x10/mlの濃度で10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum)が含まれたIMDM培養培地(Gibco, USA)に浮遊させて、anti−CD3(BD Bioscience, USA)及びanti−CD28(BD Bioscience,USA)抗体でT細胞を刺激した後に37℃の温度で5%の二酸化炭素濃度が維持される細胞培養器にて48時間培養した。RNA−Bee溶液(Tel-test, USA)を用いて総RNAを抽出した後に、既に報告されている方式でcDNAに逆転写し[参照:McIntyre et al., Arthritis Rheum., 48(9):2652-2659,2003]、mRNA発現水準を測定するためにSYBR GreenI(Roche,USA)を用いたリアルタイム定量PCRを行った。各反応は3倍数で、SYBR Green Master Mix(Roche, USA)を用い、製作社の使用方法に従って実験された。使われたプライマー(primer)の塩基配列は、配列番号1〜4の配列と同じである(PCR反応条件:30sec-94℃、30sec-58℃、30sec-72℃;40 cycles)。
【0051】
図1において、CTは対照群のFoxp3発現量であり、CRN(コリラジン)、CHE(ケブラジン酸)、PCG(パニカラギン)は全て50μMの濃度で使われた。各実験値は平均±標準誤差で表示され、p*<0.05である。
【0052】
図1から明らかなように、DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物3種全てが、50μMの濃度で調節性T細胞の特異的転写因子であるFoxp3の遺伝子発現量を大きく増加させた(対照群対比増加量はコリラジン:350%、ケブラジン酸:375%、パニカラギン:737%)。この結果から、DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物3種全てが、調節性T細胞の活性をいちじるしく増加させることを確認することができる。
【0053】
実施例2.同種異系(allogenic)ヒト白血球間の免疫反応抑制効果
DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物が、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患のような同種異系ヒト白血球間の免疫反応に対して効果があるのかどうかを確認するために、混合白血球反応(Mixed Leukocytes Reaction)実験を行った。
【0054】
遺伝的に連関性のない2名のボランティアの末梢血液から白血球を分離して、各々2x10/mlの濃度で10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum)が含まれたIMDM培養培地(Gibco, USA)に浮遊させた。96ウェル細胞培養プレートにそれぞれ100μlの細胞浮遊液を入れて混合した後に、対照群には生理食塩水、実験群には生理食塩水で2倍数系列希釈したケブラジン酸またはパニカラギンを添加した。37℃の温度で5%の二酸化炭素濃度が維持される細胞培養器で5日間培養した後に、20μl(0.5μCi)のH−TdR(Tritiated thymidine)を各ウェルに添加して、8時間延長培養した。
【0055】
培養後は、細胞収集器(cell harvester;Cambridge, USA)で各ウェルの細胞をガラス繊維フィルターに吸着させて乾燥させた後に、シンチレーションベータカウンター(Scintillation beta counter;Packard,USA)で細胞内に含まれていたH−TdRの量をcpm値で測定することによって、リンパ球の増殖度を調査した。その結果を図2に示す。
【0056】
図2において、CsAは陽性標準試料として使われたシクロスポリン(1μM)であり、ケブラジン酸とパニカラギンの濃度は50μMで使われた。各実験値は、平均±標準誤差で表示され、p*<0.05である。
【0057】
図2から明らかなように、ケブラジン酸とパニカラギンは、50μMで同種異系白血球の認識によりリンパ球の増殖を有意的に抑制し(ケブラジン酸:対照群の9.7%、パニカラギン:対照群の34.1%)、特に、ケブラジン酸の場合には、50μMの濃度で陽性標準試料として使われたシクロスポリンA(CsA;1μM)と同じ程度に有効な効果を示した。
【0058】
実施例3.自己免疫疾患動物モデルでの免疫調節効果
DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物の慢性炎症または自己免疫疾患での免疫調節効果を確認するために、マウスを用いたコラーゲン誘導性関節炎(collagen-induced arthritis;CIA)モデルを使用した[参照:Luross and Williams. Immunology 103(4):407-16, 2001]。7〜9週齢のDBA/1J雄マウス(SLC co., Japan)に完全フロインドアジュバント(Complete Freund's Adjuvant, CFA;Sigma,USA)と200μgの第2型コラーゲンとを混合して、実験開始日に尻尾の基底面に皮下注射し、実験開始21日目に再び注射して、全身性自己免疫関節炎を誘導した。コラーゲン誘導性関節炎は何らかの処置がない場合、大慨実験開始63日目前後に、注射されたマウス全てで誘導された。
【0059】
DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物のうち、ケブラジン酸が自己免疫関節関節炎の予防及び治療に効果的かどうかを確認するために、次の2種類の投与方式で実験を進行した[参照:Leung et al., J. Immunol. 170:1524-30, 2003]。
【0060】
まず、予防効果を確認するための実験では、実験開始22日目から42日目までの3週間、対照群には生理食塩液を、実験群には10mg/kg、20mg/kgのケブラジン酸を毎日1回ずつ各々腹腔注射した。実験開始22日目から63日目まで、3〜4日間隔でマウスの関節炎程度を測定して記録し、その結果を図3に示した。図3において、実験群(■:ケブラジン酸10mg/kg、▲△(黒三角)▼:ケブラジン酸20mg/kg)と対照群(●:生理食塩液)とに分けて示した。各グループの個体数は10匹であり、各実験値は平均±標準誤差で表示され、p*<0.05である。
【0061】
治療効果を確認するための実験では、上の実験とは別に、実験開始63日目以後に全てのマウスで関節炎が誘導された後、各マウスを10匹ずつグループ化し、対照群には生理食塩液を、実験群には20mg/kgのケブラジン酸を、3週間毎日1回ずつ腹腔注射した。また、3週の治療期間中に3〜4日間隔でマウスの関節炎程度を測定して記録し、その結果を図4に示した。図4において、実験群(▲△(黒三角)▼:ケブラジン酸20mg/kg)と対照群(●:生理食塩液)に分けて示した。各グループの個体数は10匹であり、各実験値は平均±標準誤差で表示され、p*<0.05である。
【0062】
毎日観察されたマウスの関節炎の程度は、それぞれの足について、0点=正常、1点=弱い程度の発赤とむくみ、2点=足跡の消失を伴う程のむくみ、3点=深刻なむくみ、4点=深刻なむくみと関節屈曲部の硬直のように点数化した。マウスの関節炎の程度は、各足の点数の合計である関節指数(Articular Index)で示し、各グループの関節炎の点数は各マウスの関節指数の平均値(Mean Articular Index)で表示した。
【0063】
図3から明らかなように、ケブラジン酸は、自己免疫疾患であるコラーゲン誘導性関節炎の発病及び関節指数を有意的に減少させた。また、図4から明らかなように、既に発病の関節炎に対しても薬物投与後1週目からは関節指数を有意的に減少させた。
【0064】
実施例4.生体内調節性T細胞(Treg)の増加に及ぼす効果
上記のケブラジン酸による免疫調節と調節性T細胞との相関関係を確認するために、上記実施例3のコラーゲン誘導性関節炎モデルの各グループのマウスで、調節性T細胞の増減を炎症が発生した滑膜組織(synovial tissue)において測定した。
【0065】
まず、むくみが発生した足のひざ関節を分離し、周囲の筋肉と靭帯及び表皮などを除去して滑膜組織だけを得た後に、組織を細切りし、コラゲナーゼ(Collagenase type VI, 1μg/ml;Sigma, USA)、2%のウシ胎児血清(Gibcoa, USA)、及び1mMEDTA(Sigma, USA)が含まれた緩衝溶液に37℃で30分間2回反応させた。
【0066】
分離された滑膜組織内の細胞は、遠心分離を通して集めた後にanti−CD4−FITC抗体(BD Bioscience, USA)とanti−CD25−PE抗体(BD Bioscience, USA)で染色して、FACS−caliburフローサイトメーター(Fluorescence Activated Cell Sorter, FACS;BD Bioscience, USA)で計数して分析した。CD4CD25調節性T細胞群集の各グループでの比率を表1に示した。
【0067】
また、上記の実施例1の方法でFoxp3遺伝子の生体内発現量も測定し、表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
上記の表1から明らかなように、自己免疫疾患動物モデルでのケブラジン酸の生体投与は、20mg/kg容量で調節性T細胞群として知られたCD4CD25Foxp3T細胞群の有意的な増加を示した。20mg/kgの容量では、生理食塩液だけ処理した対照群に比べて100%のCD4CD25T細胞群の増加を示し、Foxp3の発現量は550%の増加を示した。これによって、ケブラジン酸による免疫調節が、生体内で免疫調節に関与すると知られている調節性T細胞群の増加を伴うことを確認することができた。
【0070】
実施例5.過敏性炎症疾患動物モデルでの免疫調節効果
DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物の過敏性炎症疾患での免疫調節効果を確認するために、マウスを用いたオボアルブミン誘導性喘息(Ovalbumin-induced asthma;OIA)モデルを使用した[参照:Gordon et al., J. Immunol., 175(3):1516-1522, 2005]。
【0071】
Balb/cマウス(Samtaco, Korea)に、実験開始0日目と14日目とにオボアルブミン(Sigma, USA)を腹腔注射し、1%のオボアルブミン溶液を実験開始30日目、32日目、34日目に毎日20分間噴霧する。DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物のうち、ケブラジン酸が過敏性炎症疾患動物モデルにおいて効果的であるかどうかを確認するために、2週間20mg/kgの濃度で毎日腹腔投与した後に血液を採血してIgE水準を測定した。
【0072】
図5に示すように、過敏性炎症疾患動物モデルでのケブラジン酸の生体投与は、対照群(OVA-Control)に比べて、20mg/kg容量投与群(OVA-CHE)で過敏性炎症疾患の直接的なマーカーであるIgEの水準を正常マウス群(Normal)の水準に近づける程大幅減少させることを確認した(対照群対比28.5%に減少)。これはケブラジン酸による免疫調節が生体内で過敏性炎症疾患の治療にも有効であることを意味する。
【0073】
実施例6.組織移植動物モデルでの免疫調節効果
DP、望ましくはHHDP構造を有する化合物が、生体内で直接的に臓器移植に対する拒否反応あるいは移植片−対−宿主疾患を抑制できるのかどうかを確認するために、遺伝的に相互に異質的なマウス種間の皮膚移植を実施して、ケブラジン酸の投与が組織移植に対する拒否反応をどれくらい抑制するのかを確認した[参照:Schwoebel et al.,Lab Anim.,39(2):209-214, 2005]。
【0074】
Balb/cマウス(Samtaco,Korea)とC57Bl/6マウス(Samtaco,Korea)との背側皮膚組織(1cmx1cm、真皮含む)を麻酔下で切開した後に、Balb/cマウスの皮膚組織をC57Bl/6マウスの背に移植して縫合した。移植翌日から実験群には20mg/kgのケブラジン酸を、対照群には生理食塩水を、毎日腹腔投与して移植部位の維持または拒否反応に伴う壊死の有無を観察した。
【0075】
図6に示すように、DP、望ましくはHHDP構造を有するケブラジン酸は、対照群に比べて組織移植部位の維持の成功率と成功期間を顕著に増加させた。これは、実施例2での同種異系ヒト白血球間の免疫反応抑制効果と、生体内での組織移植に対する拒否反応の抑制効果とが相互に一致していることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の免疫調節組成物は、生体内で調節性T細胞の数と活性の増加を伴って、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、過敏性炎症疾患などの予防及び治療に有用に使われることができる。
【0077】
本発明のあらゆる単純な変形または変更は本発明の属する分野における通常の知識を持った者によって容易に実施でき、このような全ての変形または変更は、本発明の領域に含まれるものと解釈することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のジフェノイル(diphenoyl;以下"DP"と称する)構造を含む化合物を有効性分として含有する、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、及び過敏性炎症疾患からなる群より選ばれた免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】

上記化学式1において、Xは、水素(H)、ヒドロキシ(OH)、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれたハロゲン、シアノ(CN)、ニトロ(NO)、アミン(NH)、スルホニル(SO)、メチル(CH)、低級アルコキシ、低級アルキルからなる群から選択され、上記Xとして何れも同じ分子が選択されるものではない。
、RあるいはO−R、O−Rは、水素(H)、ヒドロキシ(OH)、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれたハロゲン、シアノ(CN)、ニトロ(NO)、アミン(NH)、スルホニル(SO)、メチル(CH)、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、複素環、シクロアルキルからなる群から選択され、本構造は、RとR位置で糖化合物または複素環に同時に結合されても、RとR位置でアミノ酸、ペプチド、蛋白質及び核酸などと共有結合されてもよい。
【請求項2】
上記化合物は、化学式2のヘキサヒドロキシジフェノイル(hexahydroxydiphenoyl;以下"HHDP"と称する)構造を含む化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【化2】

、RあるいはO−R、O−Rは、水素(H)、ヒドロキシ(OH)、F、Cl、Br、Iからなる群より選ばれたハロゲン、シアノ(CN)、ニトロ(NO)、アミン(NH)、スルホニル(SO)、メチル(CH)、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、複素環、シクロアルキルからなる群から選択され、本構造は、RとR位置で糖化合物または複素環に同時に結合されても、RとR位置でアミノ酸、ペプチド、蛋白質及び核酸などと共有結合されてもよい。
【請求項3】
上記化合物は、ケブラジン酸(Chebulagic acid)、パニカラギン(Punicalagin)、コリラジン(Corilagin)及びペドゥンクラジン(Pedunculagin)からなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
上記化合物は、ケブラジン酸であることを特徴とする請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
上記自己免疫疾患は、リューマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、乾癬(psoriasis)、炎症性臓疾患(inflammatory bowel disease)、糖尿病(diabetes mellitus)、潰瘍性大膓炎(ulcerative colitis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、強皮症(dermatosclerosis)、重症筋無力症(Myastheniagravis)、多発性筋肉炎(Polymyositis)、皮膚筋炎(dermatomyositis)、自己免疫血球減少症(autoimmune hemolytic anemia)、脈管炎症候群(vasculitis syndrome)、全身性エリテマトーデス(systemic erythematosus lupus)からなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
上記過敏性炎症疾患は、喘息(asthma)またはアレルギー(allergy)であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
植物から分離された抽出物の形態であるHHDP構造を含む化合物を有効性分として含有する、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、及び過敏性炎症疾患からなる群より選ばれた免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
ミロバラン(Terminalia chebula)またはキクバフウロ(Erodium stephanianum Willd)の全草から分離された抽出物形態のケブラジン酸を有効性分として含有する、請求項7に記載の免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
石榴(Punica granatum)から分離された抽出物形態のパニカラギンを有効性分として含有する、請求項7に記載の免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
目薬の木(Acer nikoense)から分離された抽出物形態のコリラジンを有効性分として含有する、請求項7に記載の免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
上記自己免疫疾患は、リューマチ性関節炎、乾癬、炎症性臓疾患、糖尿病、潰瘍性大膓炎、多発性硬化症、強皮症、重症筋無力症、多発性筋肉炎、皮膚筋炎、自己免疫血球減少症、脈管炎症候群、全身性エリテマトーデスからなる群から選ばれ、上記過敏性炎症疾患は、喘息またはアレルギーであることを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
化学式1のDP構造化合物または化学式2のHHDP構造化合物、望ましくはケブラジン酸、パニカラギン、コリラジンまたはペドゥンクラジンを有効性分として含有する、免疫調節に関与する調節性T細胞(regulatory T cell)の増殖促進剤。
【請求項13】
化学式1のDP構造化合物または化学式2のHHDP構造化合物、望ましくはケブラジン酸、パニカラギン、コリラジンまたはペドゥンクラジンを投与することにより、臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、及び過敏性炎症疾患からなる群より選ばれる免疫疾患を予防または治療する方法。
【請求項14】
臓器移植拒否反応、移植片−対−宿主疾患、自己免疫疾患、及び過敏性炎症疾患からなる群より選ばれる免疫疾患の予防または治療における、化学式1のDP構造化合物または化学式2のHHDP構造化合物、望ましくはケブラジン酸、パニカラギン、コリラジンまたはペドゥンクラジンの用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−510799(P2008−510799A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529682(P2007−529682)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002764
【国際公開番号】WO2006/022502
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(507049957)ニューロジェネックス カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】