免疫誘導剤
【課題】簡便な操作で生体内に移植又は注入することができ、生体内で副作用なく免疫作用を活性化させることができる免疫誘導剤を提供すること。
【解決手段】気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤を生体内、特にがん等の病変部の近傍(非病変部)に移植又は注入する。β−TCPの近傍には、T細胞、B細胞、NK細胞等のリンパ球や樹状細胞を誘導し、リンパ球が高密度で局在するリンパ節様組織を形成することができる。免疫誘導剤の剤型としては、粒径0.05以上25μm未満の粒子又は顆粒や、錠剤又は柱状体を挙げることができる。
【解決手段】気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤を生体内、特にがん等の病変部の近傍(非病変部)に移植又は注入する。β−TCPの近傍には、T細胞、B細胞、NK細胞等のリンパ球や樹状細胞を誘導し、リンパ球が高密度で局在するリンパ節様組織を形成することができる。免疫誘導剤の剤型としては、粒径0.05以上25μm未満の粒子又は顆粒や、錠剤又は柱状体を挙げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気孔率50%以下のβ−リン酸三カルシウム(β−Tricalciumphosphate:以下「β−TCP」ともいう)を含む免疫誘導剤、より詳しくは、生体内に移植又は注入されることにより、リンパ球及び樹状細胞(以下「DC細胞」ともいう)をその近傍に誘導する免疫誘導剤に関する。
【0002】
β−TCP等のリン酸カルシウム系化合物は、その優れた生体親和性により様々な製品が実用化されている。例えば、気孔率約75%で100〜400μmの連続するマクロ気孔とミクロ気孔からなる高純度のβ−TCPの結晶層を有し、手術現場で加工し易い強度である2〜3MPaの圧縮強度の品質の人工骨補填剤等が市販されており(例えば、非特許文献1参照)、かかるβ−TCP多孔体は、自分の骨に置き換わるという点で人工骨補填材料として理想的な性質を兼ね備えているが、かかる性質は、生体内における化学的な溶解と、細胞による貪食の2つのメカニズムによる吸収作用による旨の説明がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
本発明者らは、柔軟性のあるシート部材の表面に75%以上の気孔率を有する粒径25〜75μmのβ−TCP多孔体粉末をコーティングしてなる癌細胞抑制シートを用いて、がんに直接β−TCPを接触させ、マクロファージの活動を活発化させることにより悪性腫瘍を抑制できることを確認している(例えば、特許文献2参照)。この発明では、β−TCP多孔体粉末によるリンパ球及び樹状細胞の集積作用については確認されておらず、シートの導入という侵襲的処置が必要であり、複数回投与や濃度を変えての投与等の細やかな処置が困難であった。また、β−TCP多孔体粉末の場合、その粒径が25μmより小さいとき、初期的には粒径25〜75μmの場合と同様の細胞抑制効果が認められたが時間の経過とともに抑制効果が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−259016号公報
【特許文献2】特開2010−126434号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】セラミックス43(2008)No.11、967〜988頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、簡便な操作で生体内に移植又は注入することができ、生体内で副作用なく免疫作用を活性化させることができる免疫誘導剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、β−TCPの気孔率を変化させて、その免疫誘導作用について検討したところ、気孔率が50%以下のβ−TCPを生体内に移植・注入した場合、β−TCP近傍の領域に免疫作用に関わるB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞(以下「NK細胞」ともいう)等のリンパ球や樹状細胞が集積・誘導されることを見いだした。また、β−TCPが移植された部位の近傍の非病変部に、天然のリンパ節と類似した細胞構造が構築されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤や、(2)生体内への移植用又は注入用であることを特徴とする上記(1)記載の免疫誘導剤や、(3)近傍にリンパ球及び樹状細胞を誘導することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の免疫誘導剤や、(4)リンパ球が、T細胞、B細胞、及びNK細胞から選ばれる1又は2以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれか記載の免疫誘導剤や、(5)剤型が、粒径0.05以上25μm未満の粒子又は顆粒であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれか記載の免疫誘導剤や、(6)剤型が、錠剤又は柱状体であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれか記載の免疫誘導剤や、(7)上記(1)〜(6)いずれか記載の免疫誘導剤により形成されたリンパ節様組織に関する。
【0009】
また、本発明の別の態様としては、気孔率が50%以下であるβ−TCPを生体内へ移植又は注入する免疫反応を誘導する方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを生体内へ移植又は注入する免疫作用を活性化する方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを生体内へ移植又は注入するリンパ節様組織の形成方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを、生体内への移植用又は注入用の免疫誘導剤として使用する方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを、生体内への移植用又は注入用のリンパ節様組織の形成剤として使用する方法や、生体内への移植用又は注入用の免疫誘導剤の調製のための気孔率が50%以下であるβ−TCPの使用や、生体内への移植用又は注入用のリンパ節様組織の形成剤の調製のための気孔率が50%以下であるβ−TCPの使用を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気孔率が50%以下であるβ−TCPを含む免疫誘導剤を生体内、特にがん等の病変部の近傍(非病変部)に移植又は注入するという簡便な操作で免疫作用を活性化することにより、病変部位に対して治癒効果を発揮することができ、さらにがん等の病変部を切除した部位において再発防止を図ることが期待できる。また、移植又は注入されるのは、生体適合性のあるβ−TCPであり、患者の体内に元々存在しているリンパ球及び樹状細胞が誘導されるので、免疫活性化以外の反応が体内で起きるのを防ぐことができる。
【0011】
また、粒径が0.05μm以上25μm未満の気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子若しくは顆粒を注入又は移植した場合、25μm以上の気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子若しくは顆粒を注入又は移植した場合に比べて、より多くのリンパ球や樹状細胞を誘導することができる。気孔率が50%以下であるβ−TCP錠剤を移植又は注入した場合、長期にわたる免疫誘導効果が期待できる。気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子(顆粒)やβ−TCP柱状体の場合、注射器等により、簡単に複数回投与や局所投与ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の免疫誘導剤の一実施形態であるβ−TCP錠剤の全体構成図である。
【図2】気孔率18%のβ−TCP錠剤の割断面のSEM写真である。
【図3】気孔率18%のβ−TCP錠剤を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図4】図3の領域aを拡大した写真である。
【図5】図3の領域bを拡大した写真である。
【図6】未処理の正常な皮膚組織のHE染色写真である。
【図7】気孔率60%のβ−TCP多孔体を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図8】気孔率75%のβ−TCP多孔体を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図9】プラスチックを移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図10】皮膚組織に移植された移植片の種類と、該移植片により誘導されたリンパ球とマクロファージとの細胞数の関係を示すグラフである。
【図11】β−TCPの気孔率とリンパ球誘導との関係を示す表である。
【図12】T細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×10倍)である。
【図13】T細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×10倍)である。
【図14】B細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×10倍)である。
【図15】B細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×10倍)である。
【図16】NK細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×40倍)である。
【図17】NK細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×40倍)である。
【図18】DC細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×40倍)である。
【図19】DC細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×40倍)である。
【図20】β−TCP粉体を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図21】β−TCP粉体の粒径と細胞誘導との関係を示す表である。
【図22】β−TCP粉体の粒径0.05〜25μmの分画のSEM写真である。
【図23】β−TCP粉体の粒径0.05〜25μmの分画の粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の免疫誘導剤としては、気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤であれば特に制限されず、ここで、免疫誘導とは、免疫反応を誘導すること、すなわち免疫系が異物(抗原)に対して起こす作用を誘導することをいう。上記β−TCPはCa3(PO4)2で表される組成物の一結晶形態であって、常温において安定であり生体親和性のある化合物である。また、上記β−TCPは焼結体であることが好ましい。
【0014】
上記β−TCPの気孔率を算出する方法としては、気孔率が0%のβ−TCP石(測定対象の焼結体と同じ組成、結晶形の気孔をもたないβ−TCP焼結体)の真密度ρを測定しておき、測定対象の焼結体の体積と重さから算出した見かけ密度ρ’とから気孔率P(%)=(1−ρ’/ρ)×100として算出する方法を挙げることができる。
【0015】
また、本発明の免疫誘導剤としては、気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子、気孔率が50%以下であるβ−TCP顆粒(複数の粒子の結合体)、気孔率が50%以下であるβ−TCP錠剤、気孔率が50%以下であるβ−TCP柱状体等を例示することができ、これらはβ−TCPのみからなるものであっても、β−TCPを有効成分とし、他の成分を含むものであってもよい。50%以下のβ−TCPの気孔率は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、中でも20%以下が特に好ましい。
【0016】
上記β−TCP粒子やβ−TCP顆粒は、粉末や懸濁液(ゾル)や粘稠物(ゲル)等の形態で生体のがん等の病変部の近傍など(非がん部など)に投与される。かかるβ−TCP粒子やβ−TCP顆粒の気孔率Pは、例えば、アキュピック1330シリーズ(株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0017】
上記β−TCP粒子やβ−TCP顆粒の製造方法としては、例えば、リン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムの粉末をモル比で1:1〜3、好ましくは1:1.5〜2.5になるように秤量して混合し、かかるリン酸水素カルシウム−炭酸カルシウム混合物に純水を添加してスラリーを調製し、調製されたスラリーをボールミルにより約24時間湿式磨砕処理を行うことでメカノケミカル法による反応をすすめ、磨砕処理されたスラリーを、70〜90℃、好ましくは75〜85℃にて乾燥し、乾燥して得られた固形物を粉砕して得られたβ−TCP粉末を700〜800℃にて、数時間仮焼することで、β−TCP仮焼粉末を作製し、得られたβ−TCP仮焼粉末をふるいにかけることで各粒径の分画を得ることができ、分画ごとの気孔率を測定することで、気孔率50%以下の分画を得ることができる。具体的には、まずふるい目が105μmのふるいを通過し、かつ、ふるい目が75μmのふるいにかけ残ったβ−TCPを分画(A)とし、次にふるい目が75μmのふるいを通過し、かつ、ふるい目が25μmのふるいにかけ残ったβ−TCPを分画(B)とし、さらに25μmのふるいを通過したβ−TCPを分画(C)とした場合に、分画(C)は、気孔率が確実に50%以下のβ−TCPとなる。
【0018】
上記β−TCP粒子やβ−TCP顆粒の粒径としては、例えば、0.05以上で500μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、さらに好ましくは25μm未満、中でも15μm未満を好適に例示することができる。これら粒径は、上記ふるいによる分画により、又はSEM写真でマーカーと比較して確認したβ−TCPの粒子や顆粒の大きさをもって評価することができる。
【0019】
移植又は注入されるβ−TCP粒子やβ−TCP顆粒の投与量は、免疫誘導効果が発揮される限り制限はされないが、疾病の種類、病変の大きさ、患者の体重等により適宜選定することができ、好ましくは0.01mg〜100g、より好ましくは0.1mg〜10g、さらに好ましくは1mg〜1gを例示することができる。移植及び/又は注入の頻度としては、1週間〜6週間に一回を例示することができる。
【0020】
上記β−TCP錠剤やβ−TCP柱状体の形状としては、円板体、円柱体、略円柱体、楕円柱体、三角〜七角柱体などの柱状体を挙げることができ、上記β−TCP錠剤や柱状体のサイズとしては、病変部の種類、投与部位、病変の大きさ、患者の体重等を勘案の上適宜決定することができる。β−TCP錠剤の直径としては、1.0〜10.0mm、好ましくは、3.0〜7.0mm、より好ましくは4.0〜6.0mmを挙げることができ、高さとしては、0.5〜4.0mm、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.5〜2.5mmを挙げることができる。上記β−TCP柱状体の直径としては、0.1〜2.0mm、好ましくは、0.3〜1.0mm、より好ましくは0.4〜0.6mmを挙げることができ、長さとしては、1.0〜6.0mm、好ましくは2.0〜5.0mm、より好ましくは3.0〜4.0mmを挙げることができる。
【0021】
上記β−TCP錠剤やβ−TCP柱状体の製造方法としては、気孔率が50%以下の、単一相又はほぼ単一相のβ−TCPの錠剤や柱状体を製造することができる方法を挙げることができる。具体的には、前述のようにβ−TCP仮焼粉末を作製し、得られたβ−TCP仮焼粉末を圧縮成形(打錠)することにより錠剤や柱状体に賦形し、かかる賦形されたβ−TCP仮焼錠剤や柱状体を450〜650℃、好ましくは600℃にて2.5〜3.5時間、好ましくは3時間焼結し、次いで850〜950℃、好ましくは900℃で0.5〜1.5時間、好ましくは1時間焼結し、さらに1000〜1300℃で0.75〜1.5時間、好ましくは1時間焼結することで燒結体としてのβ−TCPの錠剤や柱状体を得る方法を挙げることができ、また上記β−TCP仮焼粉末を燒結し、β−TCPの焼結体としての粉体を得た後に圧縮成形(打錠)してβ−TCPの錠剤や柱状体を作製してもよい。なお、β−TCP柱状体は、β−TCP錠剤を柱状に打ち抜くことにより作製してもよい。
【0022】
本発明における生体内としては、骨や歯以外の部位であれば特に制限されず、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、脳内を挙げることができ、好ましくは皮下を挙げることができる。本発明の免疫誘導剤を生体内に移植及び/又は注入すると、T細胞、B細胞、NK細胞等のリンパ球及び樹状細胞を移植及び/又は注入された免疫誘導剤の近傍に集積させてリンパ節様組織を構築することができる。ここで、リンパ節様組織とは、リンパ球や樹状細胞が集積した細胞集塊を意味する。
【0023】
上記リンパ球及び樹状細胞を誘導する免疫誘導剤の近傍としては、病変部位の近傍に位置するが非病変部である部位や、病変部位から離れた遠隔部位や、病変部位を切除した後の部位を挙げることができ、具体的には病変部位や病変の切除部位から1mm以上100cm以内、好ましくは50cm以内、より好ましくは5cm以内、さらに好ましくは3cm以内、例えば1.5cm〜2.0cmの距離にある領域を挙げることができる。免疫誘導剤の近傍に誘導されるリンパ球及び樹状細胞は患者の体内に元々存在しているリンパ球や樹状細胞であるから、免疫活性化以外の反応が体内で起きることが防止される。
【0024】
本発明における病変としては、骨や歯以外における病変であれば特に制限はされず、がん、アレルギー免疫、感染症を例示することができ、中でもがんを好適に挙げることができ、頭蓋骨内組織、肺、皮膚、乳腺、軟組織、膀胱、胃、肝臓、胆嚢、すい臓、頭部、頸部、腎臓、副腎、前立腺、大腸、小腸、食道、女性器(例えば卵巣、子宮)又は甲状腺のがんを特に好適に例示することができる。
【0025】
本発明の免疫誘導剤の移植方法としては、上記錠剤を外科的処置による切開箇所に設置する方法や、上記粒子や顆粒を外科的処置による切開箇所に撒布する方法を挙げることができ、本発明の免疫誘導剤の注入方法としては、上記粒子や顆粒の懸濁液等を充填した注射器を用いて最小限の開口部から生体内へ直接注入する方法や、上記柱状物を注射針に装着した注射器を用いて最小限の開口部から生体内へ直接押出注入する方法を挙げることができる。
【0026】
本発明の免疫誘導剤には、本発明の効果を減殺又は阻害しない限りにおいて、β−TCP以外に薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を含めることもでき、これらの成分を上記粒子又は顆粒と混合して注入することもできるし、あらかじめ混合して圧縮成形(打錠)することで作製することもできる。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に制限されるものではない。
【実施例1】
【0028】
(β−TCP錠剤の調製)
リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムの粉末をモル比で1:2になるように秤量して混合し、かかるリン酸水素カルシウム−炭酸カルシウム混合物に純水を適切な割合で添加してスラリーを調製し、調製されたスラリーをボールミルにより約1日湿式磨砕処理を行い、磨砕処理されたスラリーを、80℃にて数時間乾燥し、乾燥して得られた固形物を粉砕してβ−TCP粉末を得た。得られたβ−TCP粉末を750℃にて数時間仮焼してβ−TCP仮焼粉末を作製した。上記β−TCP仮焼粉末を内径5mm、高さ2mmの容器内に収容し、回転数100rpmで打錠することにより、錠剤に賦形した。かかる錠剤は、600℃で3時間、900℃で1時間、さらに1000〜1300℃で1時間焼結した。得られたβ−TCP錠剤は、一部が結晶構造を有するために半透明であり、吸湿性が高いという特徴を有していた。図1は、β−TCP錠剤の全体構成図である。
【0029】
(β−TCP錠剤の物性)
上記β−TCP錠剤の気孔率を調べた。気孔率が0%のβ−TCP石(測定対象の焼結体と同じ組成、結晶形の気孔を持たない焼結体)の真密度ρを測定しておき、測定対象の焼結体の体積と重さから算出した見かけ密度ρ’とから気孔率P(%)=(1−ρ’/ρ)×100として算出した。その結果、気孔率3,8,18,42,50,60,及び75%のβ−TCP錠剤を得た。図2は、気孔率18%のβ−TCP錠剤について、その割断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。写真内のビーズは、寸法の指標として用いたものであり、直径2μmである。
【実施例2】
【0030】
(β−TCP錠剤の免疫細胞誘導効果の検討)
上記実施例1で作製したβ−TCP錠剤のうち、気孔率18%のβ−TCP錠剤を用いて、本願の免疫誘導剤の免疫細胞誘導効果を2匹の7週齢のマウスの皮下に移植することで評価した。具体的には、マウスを麻酔し、背部皮膚を約10mm切開し、気孔率18%のβ−TCP錠剤を皮下に移植後、マウスを2週間飼育し、錠剤の移植部位を含む皮膚組織を採取した。採取した皮膚組織を、ホルマリンにより固定した後、パラフィン包埋し、病理標本用の薄切片を作製し、HE(ヘマトキシン・エオシン)染色を施し、光学顕微鏡により観察した。
【0031】
気孔率18%のβ−TCP錠剤を移植した場合の写真を図3〜図5に示す。図4及び図5はそれぞれ、図3の移植部位の縁部分a又は中心部分bを拡大した写真である。また、ネガティブコントロールとしてβ−TCP錠剤を移植していない皮膚組織から作製した薄切片のHE染色画像を図6に示す。
【0032】
比較実験として、気孔率18%β−TCP錠剤に代えて、気孔率60%のβ−TCP錠剤、気孔率75%のβ−TCP錠剤、またはプラスチック片を移植片として用いたことのほかは、実施例3と同様の手順で移植、飼育及び薄切片の作製・染色を行い、光学顕微鏡で観察した。図7は気孔率60%のβ−TCP錠剤、図8は気孔率75%のβ−TCP錠剤、図9はプラスチック片を移植した結果を示している。また、各移植片を移植した皮膚組織を撮影したHE染色画像内において、移植片に誘導されたリンパ球とマクロファージの数を比較した。その結果を図10に示す。
【0033】
(結果)
図3〜図5から、気孔率18%のβ−TCP錠剤を移植した場合、錠剤の周囲全体にリンパ球が多く分布し、特に錠剤の縁部分にリンパ球が高密度で局在するリンパ節様組織が形成されていることが確認された。具体的には、図10からわかるように、気孔率18%β−TCP錠剤の移植部位には、比較実験で用いた他の移植片の約120〜650倍の数のリンパ球が存在する一方、マクロファージはほとんど存在しなかった。気孔率60%及び75%のβ−TCP多孔体を移植した場合では、移植部位の縁部分を中心に骨芽細胞が確認されたが、リンパ球はほとんど確認されず、プラスチックを移植した場合、リンパ球が分散して確認されたが、その数は極めて少なかった。
【0034】
同様の分析を上記実施例1で調製された気孔率 3,8,18,42,50,60,75%のβ−TCP錠剤についても実施した結果を図11に示す。結論として、気孔率50%以下では、リンパ球の誘導を認めたが、気孔率60%及び75%のβ−TCP錠剤では、いずれのリンパ球の誘導もほとんど確認されなかった。
【0035】
以上の結果から、気孔率50%以下のβ−TCP錠剤は、リンパ球を効果的に誘導し、誘導されたリンパ球によって免疫機能が活性化される免疫誘導作用を有することが確認された。
【実施例3】
【0036】
(リンパ球の種類及び分布の検討)
上記実施例1で調製されたβ−TCP錠剤によって誘導されたリンパ球の種類及び分布を、免疫染色により調べた。気孔率18%のβ−TCP錠剤を、上記実施例2と同様の手順でマウスの皮下に移植し、移植後2週間マウスを飼育し、移植部位を採取し、薄切片を作製し、薄切片にT細胞、B細胞、NK細胞及びDC細胞にそれぞれ特異的な抗体を用いた免疫染色を施した。また、免疫誘導剤を移植したマウスから採取したリンパ節の薄切片にも、各細胞の免疫染色を施した。気孔率18%のβ−TCPを移植した移植部位近傍と移植を行っていない上記マウスの脾臓のリンパ組織とを光学顕微鏡により観察した結果を図12〜図19に示す。
【0037】
図12及び図13はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織においてT細胞を染色したものである。両者において同様に、縁部分よりも中心部分においてT細胞の密度が高くなっていることがわかる。
【0038】
図14及び図15はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織においてB細胞を染色したものである。両者において同様に、縁部分にB細胞が密集している(図14及び図15の矢印参照)ことがわかる。
【0039】
図16及び図17はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織においてNK細胞を染色したものである。矢印で示されている細胞がNK細胞である。両者において同様に、少数のNK細胞が分散して確認された。
【0040】
図18及び図19はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織において樹状細胞を染色したものである。矢印で示されている細胞がDC細胞である。両者において同様に、少数のDC細胞が分散して確認された。
【0041】
以上の免疫染色の観察結果から、上記実施例1で作製されたβ−TCP錠剤は、T細胞、B細胞、NK細胞等の各種類のリンパ球を誘導し、さらに樹状細胞をも誘導することが確認され、体内に移植後に正常のリンパ節と同様の分布及び密度を有し、正常のリンパ節と同様の細胞集塊構造を構築することが確認された。これらの結果は、本発明のβ−TCPを含む錠剤が、天然のリンパ節と同様のリンパ節様組織を誘導して免疫機能を発揮することができる、優れた免疫誘導剤であることを示唆するものである。
【実施例4】
【0042】
(β−TCP粒子又は顆粒の調製)
前記実施例1にて得られたβ−TCP仮焼粉末をふるいにかけ、ふるい目が105μmのふるいを通過し、更にふるい目が75μmのふるいにかけ残ったβ−TCPの粒径を75μm以上105μm未満(A)とし、ふるい目が75μmのふるいを通過し、さらにふるい目が25μmのふるいにかけ残ったβ−TCPの粒径を25μm以上75μm未満(B)とし、25μmのふるいを通過したβ−TCPの粒径を0.05μm以上25μm未満(C)として、3つの分画(A)〜(C)を得た。
【0043】
(β−TCP粒子又は顆粒の気孔率)
上記(A)〜(C)の3種類の分画について、気孔率を乾式自動密度計(アキュピック1330、株式会社島津製作所製)で計測したところ(A)分画は、気孔率:60〜70%、(B)分画は、気孔率:40〜50%、(C)分画は、気孔率:0〜30%であることが確認された。
【0044】
(β−TCP粒子又は顆粒の免疫細胞誘導効果の検討)
上記で選別した(A)〜(C)分画を各々等量で混合し、さらに、200g/mlの割合でPBSに懸濁させた。その後、皮内に注射して移植し、HE染色を行い、光学顕微鏡により薄切片を観察した。その観察結果の写真を図20に示す。また、図21にβ−TCP粉体の粒径と細胞誘導との関係を示す。
【0045】
図20において、Aは気孔率60〜70%、Bは気孔率40〜50%、Cは気孔率0〜30%のβ−TCPの粉体をそれぞれ示している。Aの周囲にはマクロファージが多く分布することが確認された。これに対し、Bの周囲にはリンパ球の分布が確認され、Cの周囲には非常に高密度にリンパ球が局在することが確認された。このように、特にCにおいては、より効果的にリンパ球を誘導することが明らかとなった。図22には、(C)分画の下限である粒径0.05μmの粒子について、そのSEM像を示した。また、図23には、(C)分画の粉体の粒度分布を示した。
【実施例5】
【0046】
(β−TCP錠剤による抗腫瘍効果)
気孔率が0.1〜12%の円板状のβ−TCP錠剤(直径5mm、高さ2mm)を用いてマウスにおける抗腫瘍効果について調べた。対照として、同サイズの、免疫原性をもつ可能性のある異種タンパク質を含まないプラスチックキャリアマテリアルを用いた。
【0047】
(方法)
6週齢の雄性ヌードマウス(BALB/c-nu/nu)皮内に2.5×106個のヒト大腸癌細胞COLO 205(ATCC社より購入)を移植し、5〜7日後、マウスに形成された腫瘍サイズを計測して腫瘍体積を算出した。腫瘍体積の算出は以下の数式によった。
腫瘍体積=(長径×短径2)/2(mm3)
【0048】
(結果)
β−TCP錠剤と対照としてのプラスチックキャリアマテリアルを、形成腫瘍から15〜20mm離れた部位の皮下にそれぞれ移植した。約1ヶ月後に腫瘍サイズを計測し、腫瘍の増殖に対するβ−TCPの作用を観察した。その結果、対照の腫瘍体積は1400mm3であったのに対し、β−TCP錠剤投与群では腫瘍体積は1200mm3に減少していた。
【符号の説明】
【0049】
1 免疫誘導剤
2 β−TCP
【技術分野】
【0001】
本発明は、気孔率50%以下のβ−リン酸三カルシウム(β−Tricalciumphosphate:以下「β−TCP」ともいう)を含む免疫誘導剤、より詳しくは、生体内に移植又は注入されることにより、リンパ球及び樹状細胞(以下「DC細胞」ともいう)をその近傍に誘導する免疫誘導剤に関する。
【0002】
β−TCP等のリン酸カルシウム系化合物は、その優れた生体親和性により様々な製品が実用化されている。例えば、気孔率約75%で100〜400μmの連続するマクロ気孔とミクロ気孔からなる高純度のβ−TCPの結晶層を有し、手術現場で加工し易い強度である2〜3MPaの圧縮強度の品質の人工骨補填剤等が市販されており(例えば、非特許文献1参照)、かかるβ−TCP多孔体は、自分の骨に置き換わるという点で人工骨補填材料として理想的な性質を兼ね備えているが、かかる性質は、生体内における化学的な溶解と、細胞による貪食の2つのメカニズムによる吸収作用による旨の説明がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
本発明者らは、柔軟性のあるシート部材の表面に75%以上の気孔率を有する粒径25〜75μmのβ−TCP多孔体粉末をコーティングしてなる癌細胞抑制シートを用いて、がんに直接β−TCPを接触させ、マクロファージの活動を活発化させることにより悪性腫瘍を抑制できることを確認している(例えば、特許文献2参照)。この発明では、β−TCP多孔体粉末によるリンパ球及び樹状細胞の集積作用については確認されておらず、シートの導入という侵襲的処置が必要であり、複数回投与や濃度を変えての投与等の細やかな処置が困難であった。また、β−TCP多孔体粉末の場合、その粒径が25μmより小さいとき、初期的には粒径25〜75μmの場合と同様の細胞抑制効果が認められたが時間の経過とともに抑制効果が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−259016号公報
【特許文献2】特開2010−126434号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】セラミックス43(2008)No.11、967〜988頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、簡便な操作で生体内に移植又は注入することができ、生体内で副作用なく免疫作用を活性化させることができる免疫誘導剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、β−TCPの気孔率を変化させて、その免疫誘導作用について検討したところ、気孔率が50%以下のβ−TCPを生体内に移植・注入した場合、β−TCP近傍の領域に免疫作用に関わるB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞(以下「NK細胞」ともいう)等のリンパ球や樹状細胞が集積・誘導されることを見いだした。また、β−TCPが移植された部位の近傍の非病変部に、天然のリンパ節と類似した細胞構造が構築されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤や、(2)生体内への移植用又は注入用であることを特徴とする上記(1)記載の免疫誘導剤や、(3)近傍にリンパ球及び樹状細胞を誘導することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の免疫誘導剤や、(4)リンパ球が、T細胞、B細胞、及びNK細胞から選ばれる1又は2以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれか記載の免疫誘導剤や、(5)剤型が、粒径0.05以上25μm未満の粒子又は顆粒であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれか記載の免疫誘導剤や、(6)剤型が、錠剤又は柱状体であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれか記載の免疫誘導剤や、(7)上記(1)〜(6)いずれか記載の免疫誘導剤により形成されたリンパ節様組織に関する。
【0009】
また、本発明の別の態様としては、気孔率が50%以下であるβ−TCPを生体内へ移植又は注入する免疫反応を誘導する方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを生体内へ移植又は注入する免疫作用を活性化する方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを生体内へ移植又は注入するリンパ節様組織の形成方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを、生体内への移植用又は注入用の免疫誘導剤として使用する方法や、気孔率が50%以下であるβ−TCPを、生体内への移植用又は注入用のリンパ節様組織の形成剤として使用する方法や、生体内への移植用又は注入用の免疫誘導剤の調製のための気孔率が50%以下であるβ−TCPの使用や、生体内への移植用又は注入用のリンパ節様組織の形成剤の調製のための気孔率が50%以下であるβ−TCPの使用を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気孔率が50%以下であるβ−TCPを含む免疫誘導剤を生体内、特にがん等の病変部の近傍(非病変部)に移植又は注入するという簡便な操作で免疫作用を活性化することにより、病変部位に対して治癒効果を発揮することができ、さらにがん等の病変部を切除した部位において再発防止を図ることが期待できる。また、移植又は注入されるのは、生体適合性のあるβ−TCPであり、患者の体内に元々存在しているリンパ球及び樹状細胞が誘導されるので、免疫活性化以外の反応が体内で起きるのを防ぐことができる。
【0011】
また、粒径が0.05μm以上25μm未満の気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子若しくは顆粒を注入又は移植した場合、25μm以上の気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子若しくは顆粒を注入又は移植した場合に比べて、より多くのリンパ球や樹状細胞を誘導することができる。気孔率が50%以下であるβ−TCP錠剤を移植又は注入した場合、長期にわたる免疫誘導効果が期待できる。気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子(顆粒)やβ−TCP柱状体の場合、注射器等により、簡単に複数回投与や局所投与ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の免疫誘導剤の一実施形態であるβ−TCP錠剤の全体構成図である。
【図2】気孔率18%のβ−TCP錠剤の割断面のSEM写真である。
【図3】気孔率18%のβ−TCP錠剤を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図4】図3の領域aを拡大した写真である。
【図5】図3の領域bを拡大した写真である。
【図6】未処理の正常な皮膚組織のHE染色写真である。
【図7】気孔率60%のβ−TCP多孔体を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図8】気孔率75%のβ−TCP多孔体を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図9】プラスチックを移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図10】皮膚組織に移植された移植片の種類と、該移植片により誘導されたリンパ球とマクロファージとの細胞数の関係を示すグラフである。
【図11】β−TCPの気孔率とリンパ球誘導との関係を示す表である。
【図12】T細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×10倍)である。
【図13】T細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×10倍)である。
【図14】B細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×10倍)である。
【図15】B細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×10倍)である。
【図16】NK細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×40倍)である。
【図17】NK細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×40倍)である。
【図18】DC細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したβ−TCPの移植部位の写真(×40倍)である。
【図19】DC細胞に特異的な抗体を用いて免疫染色したマウス脾臓リンパ組織の写真(×40倍)である。
【図20】β−TCP粉体を移植した皮膚組織のHE染色写真である。
【図21】β−TCP粉体の粒径と細胞誘導との関係を示す表である。
【図22】β−TCP粉体の粒径0.05〜25μmの分画のSEM写真である。
【図23】β−TCP粉体の粒径0.05〜25μmの分画の粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の免疫誘導剤としては、気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤であれば特に制限されず、ここで、免疫誘導とは、免疫反応を誘導すること、すなわち免疫系が異物(抗原)に対して起こす作用を誘導することをいう。上記β−TCPはCa3(PO4)2で表される組成物の一結晶形態であって、常温において安定であり生体親和性のある化合物である。また、上記β−TCPは焼結体であることが好ましい。
【0014】
上記β−TCPの気孔率を算出する方法としては、気孔率が0%のβ−TCP石(測定対象の焼結体と同じ組成、結晶形の気孔をもたないβ−TCP焼結体)の真密度ρを測定しておき、測定対象の焼結体の体積と重さから算出した見かけ密度ρ’とから気孔率P(%)=(1−ρ’/ρ)×100として算出する方法を挙げることができる。
【0015】
また、本発明の免疫誘導剤としては、気孔率が50%以下であるβ−TCP粒子、気孔率が50%以下であるβ−TCP顆粒(複数の粒子の結合体)、気孔率が50%以下であるβ−TCP錠剤、気孔率が50%以下であるβ−TCP柱状体等を例示することができ、これらはβ−TCPのみからなるものであっても、β−TCPを有効成分とし、他の成分を含むものであってもよい。50%以下のβ−TCPの気孔率は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、中でも20%以下が特に好ましい。
【0016】
上記β−TCP粒子やβ−TCP顆粒は、粉末や懸濁液(ゾル)や粘稠物(ゲル)等の形態で生体のがん等の病変部の近傍など(非がん部など)に投与される。かかるβ−TCP粒子やβ−TCP顆粒の気孔率Pは、例えば、アキュピック1330シリーズ(株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0017】
上記β−TCP粒子やβ−TCP顆粒の製造方法としては、例えば、リン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムの粉末をモル比で1:1〜3、好ましくは1:1.5〜2.5になるように秤量して混合し、かかるリン酸水素カルシウム−炭酸カルシウム混合物に純水を添加してスラリーを調製し、調製されたスラリーをボールミルにより約24時間湿式磨砕処理を行うことでメカノケミカル法による反応をすすめ、磨砕処理されたスラリーを、70〜90℃、好ましくは75〜85℃にて乾燥し、乾燥して得られた固形物を粉砕して得られたβ−TCP粉末を700〜800℃にて、数時間仮焼することで、β−TCP仮焼粉末を作製し、得られたβ−TCP仮焼粉末をふるいにかけることで各粒径の分画を得ることができ、分画ごとの気孔率を測定することで、気孔率50%以下の分画を得ることができる。具体的には、まずふるい目が105μmのふるいを通過し、かつ、ふるい目が75μmのふるいにかけ残ったβ−TCPを分画(A)とし、次にふるい目が75μmのふるいを通過し、かつ、ふるい目が25μmのふるいにかけ残ったβ−TCPを分画(B)とし、さらに25μmのふるいを通過したβ−TCPを分画(C)とした場合に、分画(C)は、気孔率が確実に50%以下のβ−TCPとなる。
【0018】
上記β−TCP粒子やβ−TCP顆粒の粒径としては、例えば、0.05以上で500μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、さらに好ましくは25μm未満、中でも15μm未満を好適に例示することができる。これら粒径は、上記ふるいによる分画により、又はSEM写真でマーカーと比較して確認したβ−TCPの粒子や顆粒の大きさをもって評価することができる。
【0019】
移植又は注入されるβ−TCP粒子やβ−TCP顆粒の投与量は、免疫誘導効果が発揮される限り制限はされないが、疾病の種類、病変の大きさ、患者の体重等により適宜選定することができ、好ましくは0.01mg〜100g、より好ましくは0.1mg〜10g、さらに好ましくは1mg〜1gを例示することができる。移植及び/又は注入の頻度としては、1週間〜6週間に一回を例示することができる。
【0020】
上記β−TCP錠剤やβ−TCP柱状体の形状としては、円板体、円柱体、略円柱体、楕円柱体、三角〜七角柱体などの柱状体を挙げることができ、上記β−TCP錠剤や柱状体のサイズとしては、病変部の種類、投与部位、病変の大きさ、患者の体重等を勘案の上適宜決定することができる。β−TCP錠剤の直径としては、1.0〜10.0mm、好ましくは、3.0〜7.0mm、より好ましくは4.0〜6.0mmを挙げることができ、高さとしては、0.5〜4.0mm、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.5〜2.5mmを挙げることができる。上記β−TCP柱状体の直径としては、0.1〜2.0mm、好ましくは、0.3〜1.0mm、より好ましくは0.4〜0.6mmを挙げることができ、長さとしては、1.0〜6.0mm、好ましくは2.0〜5.0mm、より好ましくは3.0〜4.0mmを挙げることができる。
【0021】
上記β−TCP錠剤やβ−TCP柱状体の製造方法としては、気孔率が50%以下の、単一相又はほぼ単一相のβ−TCPの錠剤や柱状体を製造することができる方法を挙げることができる。具体的には、前述のようにβ−TCP仮焼粉末を作製し、得られたβ−TCP仮焼粉末を圧縮成形(打錠)することにより錠剤や柱状体に賦形し、かかる賦形されたβ−TCP仮焼錠剤や柱状体を450〜650℃、好ましくは600℃にて2.5〜3.5時間、好ましくは3時間焼結し、次いで850〜950℃、好ましくは900℃で0.5〜1.5時間、好ましくは1時間焼結し、さらに1000〜1300℃で0.75〜1.5時間、好ましくは1時間焼結することで燒結体としてのβ−TCPの錠剤や柱状体を得る方法を挙げることができ、また上記β−TCP仮焼粉末を燒結し、β−TCPの焼結体としての粉体を得た後に圧縮成形(打錠)してβ−TCPの錠剤や柱状体を作製してもよい。なお、β−TCP柱状体は、β−TCP錠剤を柱状に打ち抜くことにより作製してもよい。
【0022】
本発明における生体内としては、骨や歯以外の部位であれば特に制限されず、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、脳内を挙げることができ、好ましくは皮下を挙げることができる。本発明の免疫誘導剤を生体内に移植及び/又は注入すると、T細胞、B細胞、NK細胞等のリンパ球及び樹状細胞を移植及び/又は注入された免疫誘導剤の近傍に集積させてリンパ節様組織を構築することができる。ここで、リンパ節様組織とは、リンパ球や樹状細胞が集積した細胞集塊を意味する。
【0023】
上記リンパ球及び樹状細胞を誘導する免疫誘導剤の近傍としては、病変部位の近傍に位置するが非病変部である部位や、病変部位から離れた遠隔部位や、病変部位を切除した後の部位を挙げることができ、具体的には病変部位や病変の切除部位から1mm以上100cm以内、好ましくは50cm以内、より好ましくは5cm以内、さらに好ましくは3cm以内、例えば1.5cm〜2.0cmの距離にある領域を挙げることができる。免疫誘導剤の近傍に誘導されるリンパ球及び樹状細胞は患者の体内に元々存在しているリンパ球や樹状細胞であるから、免疫活性化以外の反応が体内で起きることが防止される。
【0024】
本発明における病変としては、骨や歯以外における病変であれば特に制限はされず、がん、アレルギー免疫、感染症を例示することができ、中でもがんを好適に挙げることができ、頭蓋骨内組織、肺、皮膚、乳腺、軟組織、膀胱、胃、肝臓、胆嚢、すい臓、頭部、頸部、腎臓、副腎、前立腺、大腸、小腸、食道、女性器(例えば卵巣、子宮)又は甲状腺のがんを特に好適に例示することができる。
【0025】
本発明の免疫誘導剤の移植方法としては、上記錠剤を外科的処置による切開箇所に設置する方法や、上記粒子や顆粒を外科的処置による切開箇所に撒布する方法を挙げることができ、本発明の免疫誘導剤の注入方法としては、上記粒子や顆粒の懸濁液等を充填した注射器を用いて最小限の開口部から生体内へ直接注入する方法や、上記柱状物を注射針に装着した注射器を用いて最小限の開口部から生体内へ直接押出注入する方法を挙げることができる。
【0026】
本発明の免疫誘導剤には、本発明の効果を減殺又は阻害しない限りにおいて、β−TCP以外に薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を含めることもでき、これらの成分を上記粒子又は顆粒と混合して注入することもできるし、あらかじめ混合して圧縮成形(打錠)することで作製することもできる。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に制限されるものではない。
【実施例1】
【0028】
(β−TCP錠剤の調製)
リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムの粉末をモル比で1:2になるように秤量して混合し、かかるリン酸水素カルシウム−炭酸カルシウム混合物に純水を適切な割合で添加してスラリーを調製し、調製されたスラリーをボールミルにより約1日湿式磨砕処理を行い、磨砕処理されたスラリーを、80℃にて数時間乾燥し、乾燥して得られた固形物を粉砕してβ−TCP粉末を得た。得られたβ−TCP粉末を750℃にて数時間仮焼してβ−TCP仮焼粉末を作製した。上記β−TCP仮焼粉末を内径5mm、高さ2mmの容器内に収容し、回転数100rpmで打錠することにより、錠剤に賦形した。かかる錠剤は、600℃で3時間、900℃で1時間、さらに1000〜1300℃で1時間焼結した。得られたβ−TCP錠剤は、一部が結晶構造を有するために半透明であり、吸湿性が高いという特徴を有していた。図1は、β−TCP錠剤の全体構成図である。
【0029】
(β−TCP錠剤の物性)
上記β−TCP錠剤の気孔率を調べた。気孔率が0%のβ−TCP石(測定対象の焼結体と同じ組成、結晶形の気孔を持たない焼結体)の真密度ρを測定しておき、測定対象の焼結体の体積と重さから算出した見かけ密度ρ’とから気孔率P(%)=(1−ρ’/ρ)×100として算出した。その結果、気孔率3,8,18,42,50,60,及び75%のβ−TCP錠剤を得た。図2は、気孔率18%のβ−TCP錠剤について、その割断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。写真内のビーズは、寸法の指標として用いたものであり、直径2μmである。
【実施例2】
【0030】
(β−TCP錠剤の免疫細胞誘導効果の検討)
上記実施例1で作製したβ−TCP錠剤のうち、気孔率18%のβ−TCP錠剤を用いて、本願の免疫誘導剤の免疫細胞誘導効果を2匹の7週齢のマウスの皮下に移植することで評価した。具体的には、マウスを麻酔し、背部皮膚を約10mm切開し、気孔率18%のβ−TCP錠剤を皮下に移植後、マウスを2週間飼育し、錠剤の移植部位を含む皮膚組織を採取した。採取した皮膚組織を、ホルマリンにより固定した後、パラフィン包埋し、病理標本用の薄切片を作製し、HE(ヘマトキシン・エオシン)染色を施し、光学顕微鏡により観察した。
【0031】
気孔率18%のβ−TCP錠剤を移植した場合の写真を図3〜図5に示す。図4及び図5はそれぞれ、図3の移植部位の縁部分a又は中心部分bを拡大した写真である。また、ネガティブコントロールとしてβ−TCP錠剤を移植していない皮膚組織から作製した薄切片のHE染色画像を図6に示す。
【0032】
比較実験として、気孔率18%β−TCP錠剤に代えて、気孔率60%のβ−TCP錠剤、気孔率75%のβ−TCP錠剤、またはプラスチック片を移植片として用いたことのほかは、実施例3と同様の手順で移植、飼育及び薄切片の作製・染色を行い、光学顕微鏡で観察した。図7は気孔率60%のβ−TCP錠剤、図8は気孔率75%のβ−TCP錠剤、図9はプラスチック片を移植した結果を示している。また、各移植片を移植した皮膚組織を撮影したHE染色画像内において、移植片に誘導されたリンパ球とマクロファージの数を比較した。その結果を図10に示す。
【0033】
(結果)
図3〜図5から、気孔率18%のβ−TCP錠剤を移植した場合、錠剤の周囲全体にリンパ球が多く分布し、特に錠剤の縁部分にリンパ球が高密度で局在するリンパ節様組織が形成されていることが確認された。具体的には、図10からわかるように、気孔率18%β−TCP錠剤の移植部位には、比較実験で用いた他の移植片の約120〜650倍の数のリンパ球が存在する一方、マクロファージはほとんど存在しなかった。気孔率60%及び75%のβ−TCP多孔体を移植した場合では、移植部位の縁部分を中心に骨芽細胞が確認されたが、リンパ球はほとんど確認されず、プラスチックを移植した場合、リンパ球が分散して確認されたが、その数は極めて少なかった。
【0034】
同様の分析を上記実施例1で調製された気孔率 3,8,18,42,50,60,75%のβ−TCP錠剤についても実施した結果を図11に示す。結論として、気孔率50%以下では、リンパ球の誘導を認めたが、気孔率60%及び75%のβ−TCP錠剤では、いずれのリンパ球の誘導もほとんど確認されなかった。
【0035】
以上の結果から、気孔率50%以下のβ−TCP錠剤は、リンパ球を効果的に誘導し、誘導されたリンパ球によって免疫機能が活性化される免疫誘導作用を有することが確認された。
【実施例3】
【0036】
(リンパ球の種類及び分布の検討)
上記実施例1で調製されたβ−TCP錠剤によって誘導されたリンパ球の種類及び分布を、免疫染色により調べた。気孔率18%のβ−TCP錠剤を、上記実施例2と同様の手順でマウスの皮下に移植し、移植後2週間マウスを飼育し、移植部位を採取し、薄切片を作製し、薄切片にT細胞、B細胞、NK細胞及びDC細胞にそれぞれ特異的な抗体を用いた免疫染色を施した。また、免疫誘導剤を移植したマウスから採取したリンパ節の薄切片にも、各細胞の免疫染色を施した。気孔率18%のβ−TCPを移植した移植部位近傍と移植を行っていない上記マウスの脾臓のリンパ組織とを光学顕微鏡により観察した結果を図12〜図19に示す。
【0037】
図12及び図13はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織においてT細胞を染色したものである。両者において同様に、縁部分よりも中心部分においてT細胞の密度が高くなっていることがわかる。
【0038】
図14及び図15はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織においてB細胞を染色したものである。両者において同様に、縁部分にB細胞が密集している(図14及び図15の矢印参照)ことがわかる。
【0039】
図16及び図17はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織においてNK細胞を染色したものである。矢印で示されている細胞がNK細胞である。両者において同様に、少数のNK細胞が分散して確認された。
【0040】
図18及び図19はそれぞれ、上記移植部位近傍及び脾臓リンパ組織において樹状細胞を染色したものである。矢印で示されている細胞がDC細胞である。両者において同様に、少数のDC細胞が分散して確認された。
【0041】
以上の免疫染色の観察結果から、上記実施例1で作製されたβ−TCP錠剤は、T細胞、B細胞、NK細胞等の各種類のリンパ球を誘導し、さらに樹状細胞をも誘導することが確認され、体内に移植後に正常のリンパ節と同様の分布及び密度を有し、正常のリンパ節と同様の細胞集塊構造を構築することが確認された。これらの結果は、本発明のβ−TCPを含む錠剤が、天然のリンパ節と同様のリンパ節様組織を誘導して免疫機能を発揮することができる、優れた免疫誘導剤であることを示唆するものである。
【実施例4】
【0042】
(β−TCP粒子又は顆粒の調製)
前記実施例1にて得られたβ−TCP仮焼粉末をふるいにかけ、ふるい目が105μmのふるいを通過し、更にふるい目が75μmのふるいにかけ残ったβ−TCPの粒径を75μm以上105μm未満(A)とし、ふるい目が75μmのふるいを通過し、さらにふるい目が25μmのふるいにかけ残ったβ−TCPの粒径を25μm以上75μm未満(B)とし、25μmのふるいを通過したβ−TCPの粒径を0.05μm以上25μm未満(C)として、3つの分画(A)〜(C)を得た。
【0043】
(β−TCP粒子又は顆粒の気孔率)
上記(A)〜(C)の3種類の分画について、気孔率を乾式自動密度計(アキュピック1330、株式会社島津製作所製)で計測したところ(A)分画は、気孔率:60〜70%、(B)分画は、気孔率:40〜50%、(C)分画は、気孔率:0〜30%であることが確認された。
【0044】
(β−TCP粒子又は顆粒の免疫細胞誘導効果の検討)
上記で選別した(A)〜(C)分画を各々等量で混合し、さらに、200g/mlの割合でPBSに懸濁させた。その後、皮内に注射して移植し、HE染色を行い、光学顕微鏡により薄切片を観察した。その観察結果の写真を図20に示す。また、図21にβ−TCP粉体の粒径と細胞誘導との関係を示す。
【0045】
図20において、Aは気孔率60〜70%、Bは気孔率40〜50%、Cは気孔率0〜30%のβ−TCPの粉体をそれぞれ示している。Aの周囲にはマクロファージが多く分布することが確認された。これに対し、Bの周囲にはリンパ球の分布が確認され、Cの周囲には非常に高密度にリンパ球が局在することが確認された。このように、特にCにおいては、より効果的にリンパ球を誘導することが明らかとなった。図22には、(C)分画の下限である粒径0.05μmの粒子について、そのSEM像を示した。また、図23には、(C)分画の粉体の粒度分布を示した。
【実施例5】
【0046】
(β−TCP錠剤による抗腫瘍効果)
気孔率が0.1〜12%の円板状のβ−TCP錠剤(直径5mm、高さ2mm)を用いてマウスにおける抗腫瘍効果について調べた。対照として、同サイズの、免疫原性をもつ可能性のある異種タンパク質を含まないプラスチックキャリアマテリアルを用いた。
【0047】
(方法)
6週齢の雄性ヌードマウス(BALB/c-nu/nu)皮内に2.5×106個のヒト大腸癌細胞COLO 205(ATCC社より購入)を移植し、5〜7日後、マウスに形成された腫瘍サイズを計測して腫瘍体積を算出した。腫瘍体積の算出は以下の数式によった。
腫瘍体積=(長径×短径2)/2(mm3)
【0048】
(結果)
β−TCP錠剤と対照としてのプラスチックキャリアマテリアルを、形成腫瘍から15〜20mm離れた部位の皮下にそれぞれ移植した。約1ヶ月後に腫瘍サイズを計測し、腫瘍の増殖に対するβ−TCPの作用を観察した。その結果、対照の腫瘍体積は1400mm3であったのに対し、β−TCP錠剤投与群では腫瘍体積は1200mm3に減少していた。
【符号の説明】
【0049】
1 免疫誘導剤
2 β−TCP
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤。
【請求項2】
生体内への移植用又は注入用であることを特徴とする請求項1記載の免疫誘導剤。
【請求項3】
近傍にリンパ球及び樹状細胞を誘導することを特徴とする請求項1又は2記載の免疫誘導剤。
【請求項4】
リンパ球が、T細胞、B細胞、及びNK細胞から選ばれる1又は2以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の免疫誘導剤。
【請求項5】
剤型が、粒径0.05以上25μm未満の粒子又は顆粒であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の免疫誘導剤。
【請求項6】
剤型が、錠剤又は柱状体であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の免疫誘導剤。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の免疫誘導剤により形成されたリンパ節様組織。
【請求項1】
気孔率が50%以下であるβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を含む免疫誘導剤。
【請求項2】
生体内への移植用又は注入用であることを特徴とする請求項1記載の免疫誘導剤。
【請求項3】
近傍にリンパ球及び樹状細胞を誘導することを特徴とする請求項1又は2記載の免疫誘導剤。
【請求項4】
リンパ球が、T細胞、B細胞、及びNK細胞から選ばれる1又は2以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の免疫誘導剤。
【請求項5】
剤型が、粒径0.05以上25μm未満の粒子又は顆粒であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の免疫誘導剤。
【請求項6】
剤型が、錠剤又は柱状体であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の免疫誘導剤。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の免疫誘導剤により形成されたリンパ節様組織。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−46510(P2012−46510A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166051(P2011−166051)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】
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