説明

免疫調節ペプチド

Nogoのエピトープ断片(Nogo 45-66を含む)は、特異的かつ強力なT細胞応答およびB細胞応答を誘発する。Nogo抗原反応性T細胞は、他の抗原で誘導され得る進行中の疾患を寛解することができる。本発明は、免疫関連疾患の治療においてNogoエピトープ断片を使用および同定するための組成物および方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
自己免疫疾患は、身体の健康な細胞および/または組織を免疫応答が標的としてしまう間違いが原因で起こる。自己免疫疾患は、ポリペプチド、核酸、小さな核粒子などを含む自己分子と反応するTリンパ球およびBリンパ球を特徴とする。自己免疫疾患として、ある特定の組織に影響を及ぼす疾患、ならびに部分的に自己抗原の分布に応じて、複数の組織に影響を及ぼし得る疾患が挙げられる。
【0002】
Nogoタンパク質は、中枢神経系(CNS)ミエリンに特異的である主要なミエリン関連神経突起再成長阻害剤として最近同定されたレチクロン(Reticulon)(RTN)ファミリーのメンバーである(Chen 2000, GrandPre 2000)。Nogo-Aは、選択的に産生される3種類のnogo遺伝子転写物の中で最も長く、1,163アミノ酸残基であり、CNS特異的である。3種類のアイソフォームは全てC末端に推定細胞外66アミノ酸ループを含み、阻害能力のほとんどはこのループによるものだとされている。この細胞外ループはNogo-66と呼ばれ、Nogo受容体およびp75補助受容体との相互作用によって作用し、RhoAおよびRac1を介した細胞内シグナル伝達の拮抗的調節によって神経突起成長阻害を媒介する(Fournier 2001, Brittis 2001, Wang 2002a, Niederost 2002)。
【0003】
再成長阻害に結び付けられている他のミエリンタンパク質(例えば、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)およびオリゴデンドロサイト-ミエリン糖タンパク質(OMgp))もまた、Nogo受容体系を介したシグナル伝達によって作用する(Liu 2002, Wang 2002b)。
【0004】
軸索再生の改善を目的とした、いくつかの治療法では、Nogo-Nogo受容体系における相互作用のブロックが試みられている(Karim 2001)。これらの治療法には、Nogo-Aを認識する組換えモノクローナル抗体IN-1(Merkler 2000, Brosamle 2000)、Nogo受容体アンタゴニストペプチドNEP1-40(GrandPre 2002)、および短縮可溶性Nogo受容体(Fournier 2002)の使用が含まれた。もっと最近になって、研究者らにより様々なNogoノックアウトマウスモデルが作成され、再生能力の増加に関して相反する結果が得られた(Simonen 2003, Zheng 2003, Kim 2003)。他のグループらは、ミエリン関連軸索再成長阻害剤に対して免疫応答を誘導することによって(Huang 1999)、または特異的に、Nogo-A由来ペプチド472に対する免疫応答を誘導することによって(Hauben 2001)、神経突起再成長を増大させようとし、まずまずの成功をおさめた。この成功は、区別されない(non-descriminated)ミエリン成分に対する抗体応答の発生、またはp472に対するT細胞特異的応答によるものだとされた。
【0005】
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、ヒト疾患である多発性硬化症(MS)への病態生理学的および治療的な洞察の情報源として徹底的に調べられてきた動物モデルである(Steinman 2002, Steinman 1999)。EAEは、主に、CNSに対する免疫攻撃を連係させるミエリン抗原特異的T細胞応答によって媒介される(Steinman and Zamvil 1990)。B細胞応答の役割はEAEおよびMSでは明らかではないが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)を標的とする抗体はEAEおよびMSの両方で病原性であると考えられ、他の抗ミエリン抗体が検出されている(Genain 1999, Steinman 1996)。B細胞応答のエピトープスプレッディングは、能動的なEAE誘導後に起こり、その存在は慢性モデルにおける再発率と相関している。近年、軸索病変もMSにおける神経学的欠陥の大きな決定要因として浮上し(Trapp 1998)、軸索再成長阻害剤の作用のブロックもこの疾患に有益であり得るという考えにつながった。
【0006】
本発明の目的は、脱髄疾患を治療または予防する方法を提供することである。本発明の別の目的は、一般的に免疫系を損なわない、自己免疫疾患を治療または予防する特定の方法を提供することである。本発明のこれらの目的および他の目的は本明細書全体から明らかであろう。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
自己免疫疾患の診断および治療において、Nogoエピトープ断片(特に、Nogoペプチド)を使用するための組成物および方法が提供される。1種類またはそれ以上のNogoエピトープ断片(特に、Nogoペプチド45-66)を投与すると脱髄性自己免疫疾患における免疫応答が調節されるというのが本発明の発見であった。Nogoエピトープ断片は、炎症性中枢神経系疾患に対する防御免疫応答を発生させるのに治療上有用である。Nogoエピトープは、ペプチド、DNAワクチンなどとして投与することができる。防御免疫応答をもたらすNogo断片は特に関心が高く、Nogo-Aタンパク質の細胞外66アミノ酸ループに存在するペプチドを含むが、これに限定されない。
【0008】
態様の詳細な説明
Nogoペプチドに対して特異的かつ強力なT細胞応答およびB細胞応答を発生することができ、この応答は他のミエリン抗原と交差反応しない。Nogo抗原反応性T細胞は、他の抗原で誘導され得る進行中の疾患を寛解することができる。本発明は、免疫関連疾患の治療においてNogoエピトープ断片を同定および使用するための組成物および方法を提供する。関心対象の疾患として、炎症性中枢神経系疾患(例えば、EAE、多発性硬化症(MS)など)が挙げられる。
【0009】
本発明の1つの局面では、抗原特異的免疫学的因子を含む患者試料と、NogoまたはNogoから得られたNogoエピトープ断片を接触させ、NogoまたはNogoエピトープ断片と免疫学的因子との結合または反応性の存在を同定することによって、自己免疫疾患患者の自己抗原特異性プロファイルが作成される。本発明の1つの態様では、患者試料は、Nogoまたは1種類もしくはそれ以上のNogoエピトープ断片を含む自己抗原アレイと接触される。自己抗原アレイは、さらなる自己抗原(特に、他のミエリン抗原、例えば、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、オリゴデンドロサイト特異的糖タンパク質(OSP)、2',3'-環式ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ(CPNアーゼ)、およびα-Bクリスタリン(crystalin))をさらに含んでもよい。別の態様において、自己抗原または自己抗原アレイは、MHC抗原複合体を含む多量体の形で提供される。この多量体は、コグネイトT細胞抗原受容体に特異的に結合するのに十分なアビディティでT細胞に結合する。患者試料は免疫学的因子として自己抗体を含んでもよい。または、患者試料は免疫学的因子としてT細胞を含んでもよい。1つの態様において、詳細な結合分析によって、患者血清に存在する疾患関連抗体の範囲のハイスループット測定が行われる。
【0010】
本発明の別の態様において、NogoまたはNogoから得られるNogoエピトープ断片は、炎症性中枢神経系疾患に罹患している患者または炎症性中枢神経系疾患を発症する危険性のある患者を免疫または治療するのに用いられる。Nogoエピトープ断片は、ペプチド、改変されたペプチド、ペプチドをコードする核酸などとして提供されてもよい。Nogoエピトープ断片は第2の免疫調節因子と共に投与されてもよい。
【0011】
本発明のある特定の態様において、第2の免疫調節因子は抗原特異的である。1つの態様において、抗原特異的免疫調節因子は、自己免疫疾患に関連した自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターである。ポリヌクレオチドによってコードされる自己ポリペプチドは、例えば、タンパク質でもペプチドでもよい。ある特定の態様において、ポリヌクレオチドを含む自己ベクターは1種類の自己ポリペプチドをコードする。
【0012】
別の態様において、抗原特異的免疫調節因子はポリペプチドである。ポリペプチドは、例えば、タンパク質でもペプチドでもよい。さらに、ポリペプチドは、疾患に関連した自己ポリペプチドを含んでもよく、疾患に関連した自己ポリペプチドの自己抗原エピトープに対応するアミノ酸を含んでもよい。ポリペプチドが自己抗原エピトープに対応するアミノ酸を含む態様では、ランダム共重合体を形成するように、アミノ酸を無作為化してもよく、ポリペプチドが、順序付けられたアミノ酸モチーフを含むように、アミノ酸を順序付けてもよい。自己免疫疾患が脱髄性自己免疫疾患である態様では、順序付けられたアミノ酸モチーフは[1E2Y3Y4K]nであり、式中、nは2〜6である。
【0013】
他の態様において、第2の免疫調節因子は非抗原特異的である。1つの態様において、非抗原特異的免疫調節因子は、オステオポンチン、またはオステオポンチンをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターである。他の態様において、非抗原特異的免疫調節因子は免疫調節配列である。免疫調節配列は、例えば、5'-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'または5'-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'でもよく、式中、XおよびYはシトシン-グアニンであり得ないことを除けば、任意の天然ヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドである。
【0014】
他の態様において、非抗原特異的免疫調節因子は、自己免疫疾患の初回発症後に投与されるスタチンである。スタチンは、例えば、ロスバスタチン、メバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、またはセリバスタチンでもよい。
【0015】
本発明の方法が働く機構に限定されないが、Nogoエピトープ断片に対して反応性のT細胞は炎症部位に遊走し、有益なTh2表現型をとることによって他のミエリン反応性細胞を交差調節(cross-regulate)すると考えられる。
【0016】
Nogo-Aは、レチクロンタンパク質ファミリーのメンバーである。遺伝子配列およびアミノ酸配列は、GenBank,アクセッション番号AF148537で見ることができる。Nogoは、2つの阻害ドメイン(Nogo-66と呼ばれる細胞表面ドメイン(GrandPre et al.(2000)Nature 403:439を参照のこと)および長いアミノ末端領域)を有する。Nogo-66ドメインはNgRに結合する。本発明の方法では、Nogoエピトープ断片(例えば、Nogoポリペプチドもしくはそのペプチド断片)が用いられてもよく、このようなポリペプチドもしくはそのペプチド断片をコードするポリヌクレオチドが用いられてもよい。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「ポリペプチド断片」、「Nogoポリペプチド断片」、「ペプチド断片」、「Nogoペプチド断片」または「ポリペプチドもしくはペプチド断片」、あるいはその変異体は、少なくとも2アミノ酸残基、多くて10アミノ酸残基の長さを有する短いペプチド、少なくとも11アミノ酸残基、20アミノ酸残基、50アミノ酸残基、および約100アミノ酸残基までの長さを有するオリゴペプチド、ならびに約200アミノ酸残基までのさらに長いペプチドを示す。
【0018】
用語「実質的に純粋なポリペプチドまたはペプチド断片」は、自然状態で関連する、多くて5重量%の他のポリペプチドまたはペプチド物質を含むポリペプチドまたはペプチド調製物を意味し、パーセンテージがさらに低いことが好ましい(例えば、多くて4%、多くて3%、多くて2%、多くて1%、および多くて0.5%)。実質的に純粋なポリペプチドまたはペプチドは少なくとも96%純粋であることが(すなわち、ポリペプチドまたはペプチドは、調製物に存在する総ポリペプチドまたはペプチド物質の少なくとも96重量%を構成することが)好ましく、パーセンテージがさらに高いことが好ましい(例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.25%、少なくとも99.5%、および少なくとも99.75%)。ポリペプチドまたはペプチド断片は、自然状態で関連する他のどの抗原も本質的に含まないことが特に好ましい。これは、組換え法でポリペプチドまたはペプチド断片を調製することによって、あるいは液相ペプチド合成または固相ペプチド合成の周知の方法(例えば、Merrifieldに記載の方法またはそのバリエーション)でポリペプチドまたはペプチド断片を合成することによって実現することができる。
【0019】
本明細書で提供されるNogo抗原またはNogo断片(例えば、Nogoエピトープポリペプチドもしくはペプチド)は、本明細書で詳細に列挙されたDNA配列の1つまたはそれ以上に実質的に相同なDNA配列によってコードされる変異体(例えば、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%配列同一性を有する変異体)を含む。
【0020】
本発明の好ましい態様において、ポリペプチドまたはペプチド断片はエピトープを提供するか、エピトープを含む。抗体の結合部位は、一般的に、高親和性結合を実現するために、複数の非共有結合相互作用を利用する。抗原の数個の接触残基が結合ポケットに接近している間、結合を可能にするコンホメーションを維持するために抗原分子の他の部分も必要とされることがある。抗体が結合する抗原部分はエピトープと呼ばれる。本明細書で使用するエピトープは、高親和性結合に十分な抗原部分である。ポリペプチド抗原またはペプチド抗原において、一般的に、線状エピトープは長さが少なくとも約7アミノ酸であり、長さが少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも24、または少なくとも30アミノ酸残基でもよい。しかしながら、抗体は、抗原の非連続残基によって形成されるコンホメーション依存決定基も認識することがあり、従って、エピトープは、結合のために、より大きな抗原断片(例えば、ドメイン、またはタンパク質配列のほぼ実質的に全てまで)が存在することを必要とする場合がある。それぞれの抗原について、複数のエピトープ(つまり、抗原の免疫決定基に相当する)が存在するが、抗原が1つしかエピトープを含まない場合がある。
【0021】
「特異的」とみなされる抗体結合の親和性のレベルは、部分的には、抗体クラスによって決定される。例えば、IgMクラスの抗原特異的抗体の親和性は、例えば、IgGクラスの抗体より低いことがある。抗体相互作用を「特異的」であるとみなすために、本明細書で使用する「親和性」は、関心対象のエピトープに対して少なくとも約10-7M、通常約10-8〜10-9Mであり、10-11までまたはそれ以上でもよい。用語「特異性」はこのような高親和性結合を意味し、抗体が他の分子に同程度に結合できないことを意味することを目的としないことが当業者に理解されるだろう。例えば、抗原配列もしくは構造の関連性のために、または抗体結合ポケット自体の構造のために、異なるエピトープとの交差反応性が認められることがある。このような交差反応性を示す抗体は、本発明の目的のために、依然として特異的であるとみなされる。
【0022】
ポリペプチド配列またはペプチド配列は、組換え法によって作成された類似体および変異体を含む。ここで、このような核酸およびポリペプチドまたはペプチドの配列は、組換えポリペプチドの1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換、挿入、付加、および/または欠失するように核酸配列の1つまたはそれ以上のヌクレオチドを置換、挿入、付加、および/または欠失することによって改変される。
【0023】
本発明の特定のポリペプチドまたはペプチドおよびその類似体は、寛容または防御T細胞応答を誘導して自己免疫を治療するために治療的に投与することができる。寛容または防御T細胞応答を誘導するために、自己免疫応答の標的である本発明のネイティブなポリペプチドまたはペプチドを送達することができる。ネイティブなペプチドから改変されたポリペプチドまたはペプチドの送達も使用することができる。残基の選択的な変更によるネイティブなポリペプチドまたはペプチドの改変(変更ペプチドリガンド(altered peptide ligand:APL))によって、抗原特異的自己反応性T細胞の不反応性を誘導することができ、または抗原特異的自己反応性T細胞の反応性を変えることができる。
【0024】
「ペプチド類似体」は長さが少なくとも7アミノ酸であり、類似体とネイティブ抗原ペプチドとの間でアミノ酸配列に少なくとも1つの違いを含む。ネイティブペプチドのあるL-アミノ酸を、タンパク質で一般的に見られる20種類のL-アミノ酸の他のいずれか1つ、対応するD-アミノ酸のいずれか1つ、稀なアミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリジン)、または非タンパク質アミノ酸(例えば、β-アラニンおよびホモセリン)に変えることができる。化学的手段(例えば、メチル化(例えば、α-メチルバリン)、脱アミド、アルキルアミン(例えば、エチルアミン、エタノールアミン、およびエチレンジアミン)によるC末端アミノ酸のアミド化、およびアミノ酸側鎖基官能基のアシル化もしくはメチル化(例えば、リジンのεアミノ基のアシル化)、アルギニンからシトルリンへの脱イミノ化、イソアスパルチル化(isoaspartylation)、またはセリン、スレオニン、チロシン、もしくはヒスチジン残基におけるリン酸化)によって変えられたアミノ酸も本発明の範囲に含まれる。
【0025】
変更ペプチドリガンドが効果を生じる作用機構は、T細胞受容体(TCR)の不完全動員(incomplete mobilization)を含んでもよい。APLが誘導することができる機能変化がいくつかある。1番目は、単純なアンタゴニストとしての機能変化である。この場合、APLは、抗原提示細胞上でネイティブペプチドとMHC結合において競合することができ、完全にT細胞を活性化しない。このことは、APLによってT細胞受容体を介して伝達されるシグナルがないことを意味する。2番目はアネルギーによるものである。この場合、APLは、T細胞がネイティブペプチドに応答しないようにT細胞において完全非反応性の状態を誘導する。3番目は表現型スイッチ(phenotypic switching)によるものである。この場合、APLは、炎症誘発性サイトカインの産生を減少させ、および/または非炎症性サイトカイン(例えば、IL-4またはIL-10)の産生を増加させるようにT細胞において機能スイッチを誘導することができる。
【0026】
候補ポリペプチド類似体またはペプチド類似体は、MHCへの競合的結合を測定するアッセイおよびT細胞増殖を測定するアッセイによって疾患を治療する能力についてスクリーニングすることができる。ネイティブなポリペプチドまたはペプチドの結合を阻害し、自己反応性T細胞の増殖を刺激しない類似体は有用な治療剤である。候補ポリペプチド類似体またはペプチド類似体は、類似体がT細胞増殖を引き起こす能力を直接測定することによって、およびこのように誘導されるT細胞の応答プロファイルを確かめることによって(すなわち、T細胞が抑制性または炎症誘発性のプロファイルを有するかどうかを確かめることによって)、T細胞増殖を刺激または阻害する性質についてさらに試験される。
【0027】
関心対象のNogoエピトープ断片として、Nogo1-22、Nogo23-44、およびNogo45-66、特に、Nogo45-66、または防御免疫応答を誘導するのに十分なその一部が挙げられるが、これに限定されない。本発明では、C末端にある細胞外66アミノ酸ループに1〜66の番号が付けられた。当業者であれば、GenBankに示されるNogoタンパク質Aの3種類のアイソフォームの細胞外66アミノ酸ループの対応する番号を特定することができる。本発明のNogoエピトープペプチドの1つは、配列:

を有するNogo45-66である。本発明の別のNogoエピトープペプチドは、配列:

を有するNogo45-66である。
【0028】
患者反応性の特異性分析
本発明の1つの局面において、自己免疫疾患患者の自己抗原特異性プロファイルは、抗原特異的免疫学的因子を含む患者試料と、少なくとも1つのNogoポリペプチドもしくはペプチドまたはこれらから得られたエピトープ断片を接触させ、Nogoエピトープ断片と免疫学的因子との結合または反応性の存在を同定することによって作成される。本発明の1つの態様において、患者試料は、少なくとも1つのNogoポリペプチドまたはペプチドを含む自己抗原アレイと接触される。別の態様において、自己抗原または自己抗原アレイは、MHC抗原複合体を含む多量体の形で提供される。この多量体は、コグネイトT細胞抗原受容体に特異的に結合するのに十分なアビディティでT細胞に結合する。患者試料は免疫学的因子として自己抗体を含んでもよい。または、患者試料は免疫学的因子としてT細胞を含んでもよい。1つの態様において、詳細な結合分析によって、患者血清に存在する疾患関連抗体の範囲のハイスループット測定が行われる。
【0029】
ヒト患者サンプリングの形式は、疾患の進行を追跡する時間経過、同様の疾患段階(例えば、初期発症、急性段階、回復段階など)にある異なる患者の比較、治療(薬物療法、予防接種を含む)に対する応答間の患者の追跡などを含む。疾患経過、疾患に関与する抗原などを細部にわたって説明するデータベースを得るために、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、サルなど)からのデータを編集および分析することができる。
【0030】
患者抗体を集めることができる生物学的試料として、血液および血液からの派生物(例えば、血清、血漿、血漿画分など)が挙げられる。他の試料供給源は体液(例えば、滑液、リンパ、脳脊髄液、気管支吸引液)であり、さらに唾液、乳、尿などを含んでもよい。抗体およびT細胞受容体は両方とも適切なリンパ球から得ることができる。リンパ球は、血液、組織(例えば、脾臓、胸腺、リンパ節、胎児肝臓、自己免疫病変部位(例えば、脾臓、関節、腎臓)にある組織、脳脊髄液など)から集めることができる。リンパ球をそのまま分析してもよく、分析のために溶解産物を調製してもよい。患者試料は抗体を含み、Nogoとの結合を用いて、これらの抗体をプロファイルすることができる。
【0031】
一般的なアッセイでは、抗体またはT細胞を含む患者試料は、高親和性結合が可能であるが、非特異的相互作用を最小限にする条件下で抗原と物理的に接触される。患者試料中の抗体に結合する疾患関連抗原を同定する手段は、当技術分野において既知の検出方法を使用する。これらの同定方法は、試料を直接または間接的に前標識し、抗体または間接標識に結合する第2段階の抗体(例えば、標識ヤギ抗ヒト血清、ラット抗マウスなど)を添加することを含んでもよい。他の同定方法として、アレイ上のアドレス指定できる要素(例えば、ビーズ、ナノ粒子、タグ、切断可能なタグ)および要素の他の物理的性質または要素に付与される他の物理的性質の分析が挙げられる。結合した抗体の定量を容易にするために、様々な濃度の1種類のエピトープが存在してもよい。
【0032】
有用な標識として、蛍光色素(例えば、Cy2、Cy3、Cy5、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、またはN,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA))が挙げられる。間接標識として、ハプテン(例えば、ジゴキシンおよびジゴキシゲニン、ビオチンなど)が挙げられる。この場合、第2段階の結合パートナー(例えば、アビジン、抗ジゴキシン抗体など)は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、蛍光色素、放射性標識などで標識されてもよい。好ましくは、対照試料が含まれる場合、対照配列を標識するのに用いられる蛍光レポーターは、試験配列を標識するのに用いられる蛍光レポーターとは検出上異なる励起波長および/または発光波長で蛍光シグナルを発する。
【0033】
標識を必要としない方法を用いて、検出を行ってもよい。例として、単一電子トランジスタ、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ網目構造に適用されるタンパク質、表面プラズモン共鳴、原子間力顕微鏡、および当業者に周知の他の方法などの方法または装置を用いて、結合した自己抗原の電荷または質量の変化を検出することが挙げられる。
【0034】
一般的に、アッセイは、当技術分野において周知なように様々な負の対照および正の対照を含む。これらは、既知の自己抗体を含む「添加(spiked)」試料、既知の疾患を有する患者などの正の対照を含んでもよい。負の対照は、正常患者からの血清、動物血清などを含む。
【0035】
抗体含有試料と抗原との結合は、当技術分野において周知の方法に従って行われる。結合条件および洗浄は、好ましくは、高親和性結合パートナーだけが保持される条件下で行われる。
【0036】
対照試料と比較して患者試料の結合レベルをアッセイするために、同じ試料との結合または別々の試料との結合において、異なる抗体の2色標識を使用することができる。どの抗原についても、一方の色と他方の色との比から、2種類の試料における特定の特異性を有する抗体の相対量を求めることができる。さらに、2種類の試料の結合を比較することによって、アッセイの内部標準が得られる。競合アッセイは当技術分野において周知である。この場合、既知の特異性の競合抗体またはエピトープ含有分子を結合反応物に含めることができる。
【0037】
患者試料から自己抗原特異性プロファイルを求めるために、様々な方法を使用することができる。自己抗原特異性プロファイルは、最初、患者一人ひとりについて求められ、本明細書で使用するように、患者試料の抗体および/またはT細胞が結合した自己抗原またはエピトープを意味する。患者試料から得られた結合パターンと、対照または基準から得られた結合パターンの比較は、適切な演繹法、AIシステム、統計比較、パターン認識アルゴリズムなどを用いて行われる。基準パターンからの情報は、誘導、抗原またはエピトープスプレッディング、相対量、経時変化、産生される抗体アイソタイプの変化、および他の関連する変化を求める分析方法において使用することができる。
【0038】
特定の試料の特異性のサブセットが同定されたら、このデータを新たな診断剤の開発に、および一人一人に最も適した治療の選択に使用することができる。一人一人について自己抗体特異性を分析することによって、疾患状態で存在する特異的なエピトープ標的が確かめられる。次いで、患者一人一人および疾患に対して最大の特異性を有する1種類またはそれ以上の治療剤を選択することができる。
【0039】
治療方法
用語「治療」または「治療する」は、哺乳動物の疾患(ヒトおよび動物の自己免疫疾患を含む)の任意の治療を意味する。治療は、疾患を阻止すること(すなわち、疾患の誘導前にNogoエピトープ断片組成物を投与することによって疾患の臨床症状を発生させないこと)、疾患を抑止すること(すなわち、誘導事象の後だが、疾患が臨床的に出現または再出現する前にNogoエピトープ断片組成物を投与することによって疾患の臨床症状を発生させないこと)、疾患を阻害すること(すなわち、疾患の初回出現の後にNogoエピトープ断片組成物を投与することによって臨床症状の発生を止めること)、および/または疾患を軽減すること(すなわち、疾患の初回出現の後にNogoエピトープ断片組成物を投与することによって臨床症状を後退させること)を含む。
【0040】
ヒト医学では、最終的な誘導事象が分からない場合があるので、または事象が出現するまで患者が確かめられないので、「阻止」と「抑止」は常に区別できるとは限らないことが理解されるだろう。従って、「治療」とは別個のものとして用語「予防」を、本明細書で定義される「阻止する」および「抑止する」の両方を含むように使用することはよくあることである。本明細書で使用する用語「治療」は「予防」を含むことが意図される。
【0041】
用語「有効量」は、治療されている疾患状態を治療するのに十分な投薬量を意味する。これは、患者、疾患、および行われている治療に応じて異なる。インビボ活性は、ヒトの状態を模倣する異常なB細胞機能およびT細胞機能の動物モデルを対照群および治療群において試験することによって証明することができる。ヒトでの臨床効力は、当業者に周知の方法を用いて臨床試験において証明される。
【0042】
様々な投与方法を使用することができる。Nogoエピトープ断片を含む治療処方物の投与量は、疾患の種類、投与頻度、投与方法、投与目的、宿主からのNogoエピトープ断片のクリアランスなどに応じて大幅に異なる。投与される投与量は、既知の要因(例えば、特定のNogoエピトープ断片の薬力学的特性、投与方法および投与経路、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、症状の種類および程度、現在の治療、治療の頻度および望まれる効果)に応じて異なる。この用量は、毎週、隔週、もしくは毎月のように、より少ない回数で投与されてもよく、有効な投与量レベルを維持するために少量に分けて毎日、週二回などで投与されてもよい。一般的に、活性Nogoエピトープ断片の一日量は約0.01〜100mg/kg体重でありうる。内部投与に適した剤形は、一般的に、約0.1mg〜500mgの活性Nogoエピトープ断片/単位を含む。活性Nogoエピトープ断片は、組成物の総重量に基づいて0.5〜95重量%まで変化してもよい。
【0043】
抗原またはエピトープに特異的な療法を開発および選択するために、1種類またはそれ以上のNogoエピトープ断片またはその変異体を使用することができる。このような療法は、Nogoエピトープ断片および抗原またはエピトープに特異的な治療剤を投与することを含む。治療方法として、特異的抗原の経口投与(「経口寛容」と呼ばれる(Annu Rev Immunol. 12:809-37))、ネイティブペプチドの投与(Science 258:1491-4; J Neurol Sci. 152:31-8)、変更ペプチドリガンドの投与(Nature 379:343-5)、タンパク質全体の投与(Science 263:1139)、融合タンパク質またはペプチドの投与、および標的自己タンパク質またはアレルゲンをコードするポリヌクレオチド配列の投与(J. Immunol 162:3336-41; Curr. Dir. Autoimmun. 2:203-16)が挙げられるが、これに限定されない。これらの療法の全てについて、免疫抑制のために投与される抗原(またはDNAにコードされる抗原)は、抗体またはT細胞受容体によって同定されるエピトープの全てまたは一部を含んでもよい。1つの態様において、このように同定されたエピトープの1つまたはそれ以上、通常、2つ以上、さらに通常、3つ以上が投与され、10以上と多くの異なるエピトープを含んでもよい。個々のペプチドまたはペプチドをコードするDNAを投与してもよい。または、タンパク質全体、または抗原タンパク質の全てもしくは実質的に全てをコードするDNAを投与してもよい。従って、1種類またはそれ以上、通常、2種類以上、3種類以上と多くのタンパク質抗原を投与することができる。本明細書で使用する「抗原特異的療法」は、本発明の新規の方法によって確かめられた抗原特異的プロファイルに基づく治療レジメを意味する。
【0044】
1つの態様において、治療は、Nogoエピトープ断片の投与と、宿主組織(例えば、筋肉または皮膚)に注射されるDNA発現カセットの投与、または抗原特異的で抑制的なT細胞応答を誘導するペプチドの投与(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、PCT出願US00/0623、US02/37686、およびWO02/084249に記載の投与)の組み合わせを含む。ベクターは、自己抗原、移植抗原などの少なくとも一部をコードするDNA配列を含む。この予防接種に応答して、抑制応答が惹起される。抗原特異的T細胞増殖が阻害され、Th1サイトカインの産生が低下する。Nogoエピトープ断片を含む治療用組成物は、1つのエピトープをコードするDNAまたはエピトープ配列のカクテルを用いて処方することができる。場合によっては、それぞれの配列が異なるエピトープをコードする複数の配列を含むことが望ましい場合がある。例えば、Leadbetter et al.(1998)J. Immunol. 161:504-512を参照のこと。より強力な、および/または持続的な抑制応答を誘導するために、異なるエピトープの複数のコード配列からなる処方物を使用することができる。複数の自己反応性T細胞集団を特異的に標的化することによって、このような処方物は、自己抗原耐性の発生を遅く、または阻止することができる。
【0045】
標的抗原を伴う自己免疫疾患の阻止は、明白な疾患が発生する前にNogoエピトープ断片を投与することによって行われる。進行中の疾患の治療は特に関心が高い(この場合、Nogoエピトープ断片は患者の臨床症状を安定化または改善する)。このような治療は、望ましくは、罹患組織の機能が完全に消失する前に行われる。
【0046】
実験
実施例1
NogoA/B/C変異体マウスにおけるEAEの誘導
EAEモデルにおけるNogo-Aタンパク質の軸索再生に対する寄与を研究するために、本発明者らは、Nogo-66(Zheng 2003)を含む共通C末端領域の標的変異によって作成されたNogo-A/B/Cノックアウトマウス(C57BL/6×129Sバックグラウンド)において、完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化された100μgのMOG35-55ペプチドの皮下注射および静脈内百日咳菌毒素を用いて疾患を誘導した。誘導後6週間、動物を疾患表現型について追跡した。図1Aに示すように、Nogo KOマウスの疾患重篤度は野生型C57BL/6対照と比較して違いがなかった(統計的に有意でなかった)。これは、主に、死亡率の低下によるものである(図1B)。実験の終わりでの標準的なミエリン染色による組織学的評価によって、病変のタイプにも重篤度にも、軸索染色により証明されるように軸索病変の存在にもはっきりとした違いは認められなかった。Nogo-66は、EAEにおける疾患経過を変えることができる調節性自己抗原として特定の役割を果たしているのかもしれない。
【0047】
感受性マウス系統におけるEAEの誘導およびNogo-66ペプチドによるT細胞応答
Nogo-Aが自己免疫性脱髄の標的自己抗原として作用する可能性を確かめるために、露出している細胞外66アミノ酸ループNogo-66が免疫細胞と最も相互作用しやすい領域であるはずなので、本発明者らはNogo-66に焦点をあてることにした。適切な年齢のEAE感受性SJL/JおよびC57BL/6雌マウスに、百日咳菌毒素の静脈内投与と共に、CFAに溶解した様々な濃度(200μg〜1000μg)のNogo-66由来ペプチドを皮下注射した。
【0048】
全ての配列(ペプチド1-22、23-44、および45-66)を含むように、3種類の任意に選択されたペプチドを合成した。選択されたNogo免疫動物の脳および脊髄の組織学的評価によって、髄膜および実質に炎症が存在することが認められた。免疫用抗原に対するT細胞増殖応答の発生を評価するために、本発明者らは、実験の終わりに流入領域リンパ節を集め、Nogoおよび非関連ペプチドの本発明者らのパネルに対して全リンパ節細胞増殖アッセイを準備した。本発明者らは、SJL/J動物におけるpNogo1-22およびpNogo45-66に対して強力かつ特異的な増殖応答を発見し、C57BL/6動物では、それより低い程度でpNogo1-22およびpNogo23-44に対する増殖応答を見出した(図2)。従って、T細胞エピトープは、これらの2種類の系統間でわずかに異なるように見える。
【0049】
Nogo-66ペプチド免疫によって、他のミエリン抗原に対するエピトープスプレッディングを伴うB細胞応答が誘導される。免疫用Nogoペプチドに対する特異的抗体応答の誘導および他のミエリン抗原に対するスプレッドを追跡するために、本発明者らは、本発明者らの研究室で開発された、293種類の抗原(タンパク質、ならびに全ての主要なEAE関連標的に相当する重複ペプチドおよび数種類のNogo-66重複ペプチドのセットとp472(Robinson, 2001)を含む)を含む2304フィチャースポットペプチドアレイを使用した。数匹の免疫動物から血清を、3種類全てのNogoペプチドを用いたEAE誘導後に様々な時点で入手し、本発明者らのプロトコールに従ってプロテオームアレイにハイブリダイズさせた。結果から、それぞれのNogo-66ペプチドで免疫した後に、免疫用抗原に対して強力かつ特異的なB細胞応答が両系統において生じることが分かる(図3Aおよび3B)。
【0050】
数匹のグループ分けした動物からのアレイデータの統計解析およびクラスター解析によって、他のミエリンペプチドおよびタンパク質(例えば、

)に対する抗体応答の著しい分子内および分子間エピトープスプレッディングも明らかになった。これは、両系統におけるpNogo45-66による免疫の後に、C57BL/6マウスの場合ではpNogo23-44による免疫の後に特に関係がある。B細胞応答のスプレッディングは、それぞれの系統内でそれぞれの免疫用抗原に特異的なパターンを示し、これらの間で重複はほとんどなかった。B細胞応答は、pNogo1-22から主にMBPペプチドに、pNg23-44からMOGおよびMBPペプチドに(特に、C57BL/6動物)、pNogo45-66からMAG、MBP、PLP、OSP、およびα-Bクリスタリンに広がる(図3C)。従って、本発明者らの結果から、pNogo45-66は、他の2種類の合成ペプチドよりかなり強力なB細胞抗原であることが分かる。
【0051】
Nogo-66ペプチドに対するT細胞応答は特異的であり、他のミエリン抗原と交差反応しない。本発明者らは、Nogoペプチドと、既知のミエリン自己抗原であるPLP139-151またはMOG35-55との交差反応性を評価することによってT細胞応答の特異性を研究した。これを行うために、本発明者らは、抗pNogo1-22、抗pNogo45-66、および抗PLP13-151特異的T細胞株を、これらのペプチドで免疫したSJL/J動物から作成した。図4から分かるように、PLP139-151特異的T細胞株は、その適切な抗原に対して活発に増殖するが、3種類全てのNogo-66ペプチドに対して反応性を示さない。Nogoペプチドを用いて作成されたT細胞株も、これらの特異的ペプチドに対してのみ反応性を示し、PLP139-151、MBP85-99、またはMOG35-55に対して増殖しない。従って、本発明者らは、Nogo免疫によって、他のミエリン自己抗原に対して交差反応性を示さない特異的T細胞応答が生じるという結論を下している。現在、Nogoタンパク質の二次構造は分かっていないので、本発明者らは、コンピュータモデリング、ならびにハイドロパチシティー(hydropathicity)(Kyte and Doolitle)、極性(Zimmerman)、認識因子、およびバルキネス(bulkiness)の周知の一次構造スケールを用いて、Nogoペプチドの一次構造とPLP139-151およびMOG35-55の一次構造を比較した。これらの尺度を用いても、本発明者らは、Nogo-66ペプチドと他の研究されたミエリン抗原とを関連付けて比較することができなかった(図4)。前述の一次構造スケールに基づいた潜在的な免疫原性ドメインの完全長Nogo-66配列分析は、本発明者らの実験における免疫のために任意の選択された各ペプチドの配列内に可能性の高い領域が存在することを示しているように見える。
【0052】
Nogoペプチド反応性T細胞は正常な活性化表現型を示す。本発明者らは、PLP139-151、pNogo1-22、およびpNogo45-66で免疫した10日後に雌SJL/J動物から全リンパ節細胞を精製し、いくつかの活性化マーカーおよび補助刺激分子の発現を蛍光活性化細胞スキャン(FACScan)分析によって調べた。本発明者らは、T細胞におけるCD25、CD18、CD40L、CD62、CD69、CD28、およびCTLA4eの細胞表面発現にも、樹状細胞におけるCD80、CD86、CD40の細胞表面発現にも違いを見つけることができなかった(図5Aおよび5B)。Nogoペプチドは、APCによる正常な提示が可能であり、免疫が正常なT細胞活性化につながる。
【0053】
抗Nogo反応性T細胞株の養子移入によって、SJL/JマウスにおけるEAEが寛解する。次に、本発明者らは、抗NogoT細胞株の養子移入によってSJL/J雌マウスにおいて疾患を誘導することを試みた。これを行うために、未処置マウスを、CFAで乳化したpNogo1-22またはpNogo45-66で免疫し、10日後に流入領域リンパ節を集め、全リンパ節細胞培養物を精製し、Nogoペプチドを用いてインビトロで再評価した。これらから、本発明者らは抗原特異的T細胞株(TCL)を樹立し、養子移入およびサイトカイン分泌プロファイル評価に使用した。
【0054】
本発明者らは、5000万個までのpNogo1-22反応性TCLまたはpNogo45-66反応性TCLを未処置SJLマウスの静脈内に移入し、疾患臨床徴候を追跡した。実験の1つでは、動物に1000万個のTCLを投与し、15日後に、CFAに溶解した100μgのNogoペプチドエマルジョンおよび静脈内百日咳菌毒素注射を用いて追加免疫した。本発明者らは、インビトロ増殖反応によって、2ヵ月後まで養子移入動物にNogo反応性T細胞が存在することを認めることができたが、これらの動物は疾患の臨床徴候を示さなかった(図6A)。Nogo-66はミエリンの微量成分であり、従って、隠蔽自己抗原である可能性が高いので、疾患誘導時のこの能率の悪さは、Nogo反応性細胞を、既に罹患している動物に移入することによって克服できるかもしれない。この場合、Nogo-66は急性脱髄病巣におけるT細胞への提示に使用できるかもしれない。
【0055】
本発明者らは、CFAに溶解した100μgのPLP139-151ペプチドを用いた免疫によってSJL/JマウスにおいてEAEを誘導し、これらの動物の疾患経過を追跡した。2回目の再発のピーク(31日目)に動物をランダムに3つのグループに分け、PBS、PBSに溶解した抗pNogo1-22反応性T細胞または抗pNogo45-66反応性T細胞(平均1500万個の細胞)を、静脈内投与によって3週間、毎週投与した。TCL移入の4日後に、Nogo反応性TCLを投与した動物、特に、抗pNogo45-66 TCLを投与した動物(図6B)は、統計的に有意な臨床スコア低下を示した(マン-ホイットニー(Mann-Whitney)p<0.05)。これらの動物について、実験のさらに45日間全体にわたって、最後のTCL投与の30日後まで、この改善は持続した。抗pNogo1-22については、効果は一過的であり、臨床スコアは最後の投与後に悪化したが、PBS対照レベルと比較して悪化しなかった。実験の終わりに、本発明者らは、インビトロ増殖アッセイによって、PLP139-151およびNogo反応性T細胞が両方とも存在することを依然として認めることができた(図6B)。実際には、pNogo45-66に対する増殖は、EAE誘導抗原に対する増殖より非常に強かった。このことは、これらの細胞によるPLP反応性T細胞の交差抑制(cross-suppression)がある可能性を示唆している。
【0056】
養子移入されたNogo反応性T細胞がEAE動物のCNSを通過できることを証明するために、本発明者らは、Thy1.1a SJL/J雌をNogoペプチドまたはPLP139-151で免疫し、10日後に流入領域リンパ節を集め、免疫用抗原を用いて全リンパ球をインビトロで再評価した。次いで、本発明者らは、EAEで誘導されており、疾患のピークにある野生型(Thy1.2)SJL/J雌に、1000万個のThy1.1a T細胞を静脈内投与した。3日後に、本発明者らは、これらの動物からCNSを集め、免疫組織化学によってCNSにThy1.1a細胞が存在することを調べた。本発明者らは、EAE動物のCNSのいくつかの病変、脈管構造、脈管周囲浸潤物、および実質に、養子移入された抗PLP細胞および抗Nogo細胞が存在することを認めることができた(図6B)。このことから、本発明者らは、Nogo反応性T細胞が、活発なEAEを有する動物のCNSに遊走することができ、末梢部ではなく局所的に疾患を調節する可能性があると結論を下している。
【0057】
最後に、本発明者らは、インビトロサイトカイン産生アッセイによって抗Nogo TCLの表現型を調べた。簡単に述べると、抗Nogop1-22 TCLおよび抗pNogo45-66 TCLを、放射線を照射した同系の抗原提示細胞の存在下で特異的抗原を用いてインビトロで刺激した。48時間後に上清を回収し、サイトカイン産生をELISAで測定した。結果から、抗pNogoは多量のIL-4およびIL-10を産生するTh2表現型を自然発生したのに対して、抗pNogo1-22 TCLは多くのIFNγを産生したことが分かる(図6C)。
【0058】
これらの結果に基づいて、養子移入されたNogo反応性細胞は、活発な脱髄病巣に遊走することによって進行中のEAEを調節する。脱髄病巣において、養子移入Nogo反応性細胞は特異的抗原に遭遇し、自己免疫応答を調節することができる潜在的に有益な表現型に分化する。
【0059】
前記のデータから、Nogo-66配列は、EAE感受性マウス系統において脱髄性自己免疫応答を誘導することができる少なくとも3つの抗原的に重要なドメインを含むことが分かる。これらのドメインは系統特異的であるように思われる。SJL/J(H-2s)動物は、ペプチドNg1-22およびNg45-66に対してのみT細胞反応を示し、C57BL/6(H-2b)動物は、Ng1-22およびNg23-44に対してT細胞反応を示す。本発明者らは、強力で、特異的な、かつ他の既知の自己抗原と交差反応しないT細胞応答が存在し、特異的であるが、いくつかの他のミエリン抗原に対して著しいエピトープスプレッディングを示すB細胞応答も存在することを証明することができた。最後に、本発明者らは、Nogo抗原反応性T細胞が、恐らく、炎症部位へ遊走し、有益なTヘルパー2表現型をとることによって他のミエリン反応性細胞を交差調節した後に、他の抗原で誘導された進行中のEAEを寛解することができることを示した。
【0060】
従って、この意味では、Nogo抗原は、これらの系統の他の既知のミエリンEAE抗原(例えば、PLP139-151およびMOG35-55)またはマイナー決定基(minor determinant)であるMBP85-99、MOBP、OSP、およびCNPアーゼと非常に似た特性を示すように思われる。しかしながら、これらの抗原とは異なり、MAGおよびOMgp以外の、これらの他のミエリンタンパク質はどれも軸索再成長に役割を果たすことが知られておらず、従って、CNS自己免疫性脱髄へのNogo-66の寄与の認識は二重に重要である。まず第1に、EAE抗原として、Nogo-66は、この疾患およびMSにおける軸索病変に関して重要な役割を担っているのかもしれない。また、Nogo-66に対する免疫応答を調節すると、EAEが寛解できるように見られるので、この現象を利用してヒト自己免疫脱髄性疾患を治療するために、いくつかの抗原特異的治療法を考案できるかもしれない。第2に、Nogoペプチドを用いた免疫は、MAGなどの他のミエリン抗原に対して、このような広範な基礎となるB細胞応答を発生することができるので、これらの抗原による予防接種は、脊髄損傷などのCNS外傷モデルにおける軸索再生の改善に有益な役割を果たすかもしれない。ミエリン抗原による免疫後のB細胞応答のエピトープスプレッディングの現象は、このような状況では、1回のミエリン抗原予防接種でも、他のいくつかの潜在的に重要な神経突起成長阻害剤(例えば、MAG)に対する治療上重要な抗体応答を得ることができることを意味しているもかもしれない。
【0061】
材料および方法
マウス
雌SJL/JおよびC57BL/6マウスは、5週齡でJackson laboratories(Maine)から入手した。実験を始めた時、マウスは6〜8週齡であった。Nogo-A/B/Cノックアウトマウスは、Zheng et al(Zheng 2003)に記載のように作成した。SJL/J Thy1.1a同系マウスは、Harley Tse(Tse et al 1998)から厚意により供与された。
【0062】
ペプチド

ペプチドを、本発明者らの施設において標準的な9-フルオレニルメトキシカルボニル化学によって合成し、HPLC精製し、PBSに2mg/ml濃度まで再懸濁した。
【0063】
組織学
動物をCO2過剰投与によって屠殺し、4%ホルマリンで灌流した。この後、脳および脊髄を解剖し、保存した。標準的な組織学的技法のために、試料をパラフィン包埋した後、切断および染色した。標準的なプロトコールに従って、ヘマトキシリン-エオシン、ルクソールファストブルー、およびビールショウスキー染色を行った。Thy1.1a免疫組織化学の場合、CNSを液体N2に部分的に浸した後、Tissue Tek(OCT)で急速冷凍した。染色のために、8μm凍結切片をビオチン化抗Thy1.1a抗体結合体(Pharmingen)で染色した。
【0064】
免疫
Nogo免疫のために、SJL/JおよびC57BL/6雌マウスに、CFAに溶解したNogoペプチドエマルジョン(100μg〜500μg/注射の濃度)を皮下注射した。CFAは、IFA(Difco)および1mg/ml熱不活化結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(株H37RA;Difco laboratories, Detroit MI)からなった。動物の異なる部位(側腹部および鼠径部)に1週間あけて2回皮下注射を行った。2回目の免疫時および48時間後に、マウスに、PBSに溶解した百日咳菌毒素(List Laboratories)(500ng/動物)を静脈内注射した。Nogo-A/B/Cノックアウトの場合、動物を、CFAに溶解した100μgのMOG35-55ペプチドエマルジョンで皮下免疫し、免疫時および48時間後に、300ngの百日咳菌毒素を2回静脈内注射した。慢性EAEは、SJL/Jマウスにおいて、CFAに溶解した100mgのPLP139-151ペプチドエマルジョンの皮下注射によって誘導した。動物の臨床スコアを、以下のスケールに従って毎日付けた:0-正常;1-尾部麻痺;2-後肢麻痺;3-完全な後肢麻痺;4-前肢の不全麻痺または麻痺;5-死亡。
【0065】
増殖アッセイ
全リンパ節細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて0.5×106細胞/ウェルで培養した。培地は、L-グルタミン(2mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、非必須アミノ酸(0.1mM)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(0.1mg/ml)、2-ME(5×10-5M)、および10%胎仔ウシ血清を添加したRPMI1640からなった。培養の最後の16時間、ウェルに1μCi[3H]TdRをパルスラベルし、ベータプレート(betaplate)シンチレーションカウンターを用いて、取り込まれた放射能を測定した。
【0066】
参考文献



【0067】
本発明は、説明された特定の方法、プロトコール、および試薬に限定されず、このような方法、プロトコール、および試薬は異なってもよいことが理解されるべきである。本明細書で使用する専門用語は特定の態様を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定することを目的とせず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。
【0068】
本明細書で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含む。従って、例えば、「1つの試薬」についての言及は複数のこのような試薬を含み、「特定の試薬」についての言及は1つまたはそれ以上の試薬および当業者に周知のその等価物などを含む。特別の明確な定めのない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0069】
本明細書に記載の全ての刊行物は、説明および開示のために(例えば、本発明と共に用いられ得る刊行物に記載の方法の説明および開示のために)参照として本明細書に組み入れられる。前記でおよび本文全体を通して述べられた刊行物は、単に、本願の出願日前の刊行物を開示するために示される。本明細書には、本発明者らが、先行する発明ゆえに、このような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるものは何もない。
【0070】
以下の実施例は、当業者に本発明を作成および使用する方法を完全に開示および説明するために示されるが、本発明とみなされるものの範囲を限定することを目的としない。使用される数値(例えば、量、温度、濃度など)に関する精度を保証するように努力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差が占められるはずである。特別の定めのない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるか、または大気圧に近い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】Nogo KOマウスの疾患重篤度の低下は野生型C57BL/6対照と比較して統計学的に有意でない。
【図1B】Nogo KOマウスの死亡率は低い。
【図2】免疫用抗原に対するT細胞増殖応答の評価。
【図3A】Nogo-66ペプチドによる免疫後の結果。
【図3B】Nogo-66ペプチドによる免疫後の結果。
【図3C】他のミエリンペプチドおよびタンパク質に対する抗体応答の分子内および分子間エピトープスプレッディング。
【図4】Nogo免疫によって、他のミエリン自己抗原と交差反応性を示さない特異的T細胞応答が発生する。
【図5】図5A〜B。T細胞におけるCD25、CD18、CD40L、CD62、CD69、CD28、およびCTLA4eの細胞表面発現、または樹状細胞におけるCD80、CD86、CD40の細胞表面発現は、Nogoで免疫された動物と、他のミエリン抗原で免疫された動物の間で違いがない。
【図6A】動物を、Nogoエピトープ断片(特に、Nogoペプチド、pNogo1-22またはpNogo45-66)で免疫し、養子移入のために抗原特異的T細胞株(TCL)を樹立した。Nogo反応性TCLを与えたSJLマウスはEAEを誘導しなかった。
【図6B】PLP139-151を用いた免疫によって、SJL/JマウスにおいてEAEが誘導された。2回目の再発のピークに、静脈内投与によって、動物にPBS、抗p-Nogo1-22または抗pNogo45-66反応性T細胞を与えた。Nogo反応性T細胞を与えた動物(特に、抗pNogo45-66 TCLを与えた動物)は、臨床スコアの統計的に有意な低下を示した。インビトロ増殖アッセイによって、PLP139-151反応性T細胞およびNogo反応性T細胞が両方とも存在することが証明された。
【図6C】抗Nogo TCLの表現型を、インビトロサイトカイン産生アッセイによって調べた。抗Nogo1-22および抗Nogo45-66 TCLを、放射線を照射した同系の抗原提示細胞の存在下で特異的抗原を用いてインビトロで刺激した。上清を回収し、サイトカイン産生をELISAで測定した。抗pNogo45-66 TCLは、多量のIL-4およびIL-10を産生するTh2表現型を示したのに対して、抗pNogo1-22 TCLは多くのIFNγを産生した。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のNogoエピトープを患者に投与する段階を含む方法であって、該Nogoエピトープは防御免疫応答を誘発する、自己免疫疾患を治療するための方法。
【請求項2】
NogoエピトープがNogo-45-66アミノ酸配列内の配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Nogoエピトープがポリペプチドである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
Nogoエピトープが、野生型Nogo配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項3載の方法。
【請求項5】
Nogoエピトープが、Nogo-45-66アミノ酸配列内の配列をコードするポリヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
Nogoエピトープが第2の免疫調節因子と共に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2の免疫調節因子が抗原特異的である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗原特異的免疫調節因子が、自己免疫疾患に関連した自己ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗原特異的免疫調節因子がペプチドである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
ペプチドが、疾患に関連した自己ポリペプチドの自己抗原エピトープである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ペプチドが、順序付けられたアミノ酸モチーフ[1E2Y3Y4K]nを含み、式中、nは2〜6である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
第2の免疫調節因子が非抗原特異的である、請求項6記載の方法。
【請求項13】
非抗原特異的免疫調節因子が免疫調節配列である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
免疫調節配列が、5'-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'または5'-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3'を含み、XおよびYはシトシン-グアニンであり得ないことを除けば、任意の天然ヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
非抗原特異的免疫調節因子がスタチンである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
自己免疫疾患の抗原特異性を決定する方法であり、以下の段階を含む方法:
疾患関連抗原に特異的な免疫学的因子を含む患者試料を、少なくとも1つのNogoエピトープに結合させる段階;
該患者試料の免疫反応性と対照試料の免疫反応性を比較する段階であり、該対照と比較して免疫反応性が陽性であれば、該Nogoエピトープが該免疫関連疾患に関与していることが分かる、段階。
【請求項17】
Nogoエピトープポリペプチドまたはペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項18】
NogoエピトープポリペプチドまたはペプチドがNogo45-66である、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
Nogo45-66が配列

を有する、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
Nogo45-66が配列

を有する、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項21】
Nogo-45-66が配列

を有する、請求項2記載の方法。
【請求項22】
Nogo-45-66が配列

を有する、請求項2記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−537985(P2007−537985A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533135(P2006−533135)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015387
【国際公開番号】WO2004/110353
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505190208)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー (4)
【出願人】(505423704)ベイヒル セラピューティクス インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】