説明

免疫調節因子であるBAFFレセプター(BCMA)

【課題】BAFFに対するレセプター、腫瘍壊死因子ファミリーのβ細胞活性化因子およびB細胞および免疫グロブリンの発現を阻害する方法を提供すること。
【解決手段】TNFファミリーにおける新規のレセプターである、BAFF−Rを提供する。BAFF−Rに対するキメラ分子および抗体、ならびにそれらの使用方法もまた提供する。本発明はさらに、動物におけるB細胞の増殖を阻害する方法に関し、この方法は、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント、異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および抗BAFF−R抗体ホモログからなる群より選択される、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、BAFFに対するレセプター、腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリーのβ細胞活性化因子およびB細胞および免疫グロブリンの発現を刺激するか、または阻害のいずれかをする、そのブロッキング因子の使用に関する。このレセプターは、抗癌および免疫制御の適用、ならびにHIVのような免疫抑制障害の処置のための使用を有する。さらに、このレセプターおよびそのブロッキング因子は、高血圧およびその関連する疾患の発達において役割を果たす。さらに、このレセプターに対する遺伝子でトランスフェクトされた細胞は、腫瘍、リンパ腫、自己免疫疾患またはB細胞に関連する遺伝した遺伝的障害を処置するための遺伝子療法において使用され得る。組換え改変体またはレセプターに特異的な抗体のようなブロッキング因子は、免疫調節適用さえも有する。例えば、器官移植(例えば、骨髄移植)を受ける患者、ならびにB細胞の産生を刺激するための癌処置から回復している患者に対する使用を含む免疫抑制疾患についてのB細胞刺激因子としての、BAFFに対するレセプターの使用が、意図される。およそ正常なレベルに対するB細胞のレベルをバーストおよび/または回復するためのアジュバントおよび/または共刺激因子としてのBAFFに対するレセプターの使用がまた、意図される。B細胞機能をブロックするBAFFに対する可溶性形態のレセプターはまた、B細胞媒介性疾患を阻害するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、TNFファミリーの新規のレセプターに関する。新規のレセプターは、BAFF−R(または「BCMA」)と同定された。
【0003】
TNFファミリーは、TNFファミリーリガンドおよびTNFファミリーレセプターと呼ばれる、リガンドおよびその特異的なレセプターのペアからなる(BazzoniおよびBeutler、1996)。このファミリーは、免疫系およびおそらく他の非免疫系の調節に関与する。この調節は、しばしば、「マスタースイッチ(master switch)」レベルにあり、TFNファミリーシグナル伝達は、TNFによって最も優れて代表される、多数の後の事象を生じ得る。TNFは、外からの侵入に対する器官の一般的な保護的炎症応答(細胞輸送に関与する接着分子の変化された提示、特定のコンパートメントへ特異的な細胞を駆動するためのケモカインの産生、および種々のエフェクター細胞のプライミングを含む)を開始し得る。それ自体、これらの経路の調節は、臨床的潜在性を有する。
【0004】
このようなTNFファミリーサイトカインによって媒介される種々の細胞応答の誘導は、それらの特異的細胞レセプターへの結合によって、開始されると考えられる。少なくとも2つの別のTNFレセプター、およそ55kDa(TNFR1)および75kDa(TNFR2)が同定された[Hohmanら、J.Biol.Chem.264:14927−14934(1989)およびBrockhausら、PNAS,87:3127−3131(1990)]。広範な多型性は、両方のTNFレセプター遺伝子に会合した。両方のTNFRは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、細胞表面レセプターの代表的な構造を共有する。1型および2型TNFRの細胞外部分は、4つのシステインリッチなドメイン(CDR)の代表的なアミノ酸配列パターンを含む。CDRの類似の代表的なパターンは、例えば、p75神経成長因子レセプター、B細胞抗原CD40を含む、いくつかの他の細胞表面タンパク質に存在する。
【0005】
レセプターは、免疫グロブリン融合タンパク質への容易な転換に起因して、生物学的経路を解明するための強力なツールである。これらの2量体可溶性レセプター形態は、分泌または表面結合リガンドによって媒介される事象の優れたインヒビターである。これらのリガンドへの結合によって、それらは、リガンドが、シグナル伝達し得る、細胞会合レセプターと相互作用することを妨げる。これらのレセプターIg融合タンパク質が、実験的な意味で有用であるのみでなく、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチおよびOKT3投与を伴う急性の臨床的症候群を処置するために、TNF−R−Igの場合においても、臨床的に成功裡に使用されている(Easonら、1996;Feldmannら、1996;van Dullemenら、1995)。TNFファミリーのレセプターを介したシグナル伝達によって媒介される多くの事象の操作は、免疫ベースの疾患および免疫系の関与に起因する病理学的後遺症を有する広範なヒト疾患の処置において、広範な適用を有することが想像され得る。可溶性形態の最近に記載されたレセプターの、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin)は、骨重量の欠損をブロックし得、従って、TNFファミリーレセプターシグナル伝達によって調節される事象は、免疫系調節に限定される必要はない。このレセプターに対する抗体は、リガンドの結合をブロックし得、従って臨床的適用を有し得る。このような抗体は、しばしば、非常に長期間機能し、そして、短い血液半減期を有する可溶性レセプターIg融合タンパク質よりも有利であり得る。
【0006】
レセプター媒介性経路の阻害は、これらのレセプターの多くの開発された治療適用を表し、本来は、臨床学的見込みを示すTNFレセプターの活性化であった(AggarwalおよびNatarajan,1996)。TNFレセプターの活性化は、標的細胞における細胞死を開始し得、従って腫瘍に対する適用は、なお魅力的であった(Eggermontら、1996)。このレセプターは、リガンドの投与によって、活性化され得る(すなわち、天然の経路)か、レセプターを架橋し得るまたはいくつかの抗体はまた、強力なアゴニストである。抗体は、腫瘍学において利点を有する。なぜなら、それらは、血液中で長時間持続し得るからである(一方、リガンドは一般的に血液中での寿命は短い)。これらのレセプターの多くは、腫瘍において、より選択的に発現され得るか、または細胞死または腫瘍の分化をシグナル伝達し得るのみであり、アゴニスト抗体は、癌の処置において、優れた兵器となり得る。同様に、多くのポジティブな免疫学的事象(例えば、宿主炎症性反応、抗体産生など)は、TNFレセプターを介して媒介され、従って、アゴニスト抗体は、他の非腫瘍学的適用において、有利な効果を有し得る。
【0007】
逆説的に、経路の阻害は、腫瘍の処置において、臨床学的な利点を有し得る。例えば、Fasリガンドは、いくつかの腫瘍によって発現され、そしてこの発現は、Fasポジティブリンパ球の死を生じ得、従って腫瘍が免疫系を逃れる能力を容易にする。この場合、腫瘍のFas系の阻害は、免疫系が他の経路で腫瘍と反応することを可能にするので、アクセスを可能にする(GreenおよびWare,1997)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本出願人は、本出願において「BAFF−R」または「BCMA」と呼ばれる、ポリペプチドをコードするcDNAクローンを同定した。このクローンは、腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリーに属する、腫瘍壊死因子BAFF(B細胞活性化因子)に結合する。BAFFは、WO/9912964(本明細書中で参考として援用される)に以前に記載されたのと同じ分子である。
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、BAFF−Rを使用する方法を提供する。このような方法に含まれるのは、BAFF−Rポリペプチドを使用して、動物における、B細胞増殖、樹状細胞誘導B細胞増殖および成熟を阻害する方法または免疫グロブリン産生を阻害する方法である。また含まれるのは、BAFF−Rポリペプチドを使用して、動物における、B細胞増殖、樹状細胞誘導B細胞増殖および成熟を刺激する方法または免疫グロブリン産生を刺激する方法、またはBAFF−Rポリペプチドおよび抗T抗体、CD40リガンドまたは抗CD40リガンドを使用して、動物における、B細胞増殖、樹状細胞誘導B細胞増殖および成熟、または免疫グロブリンの産生を同時刺激する方法である。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患、高血圧、心臓血管症癌、腎臓障害、B細胞リンパ増殖疾患、免疫抑制疾患、器官移植、およびHIVの処置において、BAFF−Rを使用する方法を提供する。また含まれるのは、BAFF−Rとそのリガンドとの間のシグナル伝達経路に関与する免疫応答の処置、抑制、または変化のために因子を使用する方法、およびBAFF−Rまたはそのエピトープに特異的な抗体の投与によって、炎症を阻害する方法である。
【0011】
本発明の方法は、好ましくは、BAFF−Rポリペプチド、異種アミノ酸配列に融合されたBAFF−Rポリペプチドを含むキメラ分子、または抗BAFF−R抗体ホモログの治療有効量を投与することによって行われる。
【0012】
1つの実施形態において、本発明は、BAFF−Rポリペプチドおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合されたBAFF−Rポリペプチドを含むキメラ分子を提供する。このようなキメラ分子の例は、免疫グロブリンまたはエピトープタグ配列のFc領域に融合されたBAFF−Rを含む。
別の実施形態において、本発明は、BAFF−Rポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。必要に応じて、抗体は、モノクローナル抗体である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する:
(項目1) 動物におけるB細胞の増殖を阻害する方法であって、該方法は、以下:(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目2) 動物における免疫グロブリン産生を阻害する方法であって、該方法は、以下:
(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目3) 動物における樹状細胞誘導性B細胞の増殖および成熟を阻害する方法であって、該方法は、以下:
(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目4) 自己免疫疾患を処置する方法であって、該方法は、以下:(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目5) 動物における高血圧を処置する方法であって、該方法は、以下:
(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量のB細胞増殖インヒビターを投与する工程を包含する、方法。
(項目6) 動物における腎障害を処置するための方法であって、該方法は、以下:(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量のB細胞増殖インヒビターを投与する工程を包含する、方法。
(項目7) B細胞リンパ増殖障害を処置する方法であって、該方法は、以下:(a)BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)異種アミノ酸配列に融合された、BAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、キメラ分子;および
(c)抗BAFF−R抗体ホモログ、
からなる群より選択される、治療有効量のB細胞増殖インヒビターを投与する工程を包含する、方法。
(項目8) 前記BAFF−Rポリペプチドが可溶性である、項目1〜7に記載の方法。
(項目9) 前記可溶性BAFF−Rポリペプチドが、BAFF−R細胞外ドメインを含む、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記BAFF−R細胞外ドメインが、免疫グロブリンに融合される、項目9に記載の方法。
(項目11) 項目1〜7に記載の方法であって、ここで前記BAFF−Rポリペプチドが、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸残基1〜184を含む単離されたネイティブな配列のBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)配列番号1のアミノ酸残基1〜184を含むネイティブな配列のBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、単離されたBAFF−Rポリペプチド;
(c)配列番号1のアミノ酸残基1〜184を含むネイティブな配列のBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントと少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、単離されたBAFF−Rポリペプチド;
(d)配列番号1のアミノ酸残基1〜51を含む単離されたBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;および
(e)配列番号1のアミノ酸残基8〜41を含む単離されたBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント、
からなる群より選択される、方法。
(項目12) 前記抗BAFF−R抗体ホモログが、モノクローナル抗体である、項目1〜7に記載の方法。
(項目13) 前記抗BAFF−R抗体ホモログが、BCMA−IgGを含む、項目1〜7に記載の方法。
(項目14) 前記動物が哺乳動物である、項目1〜7に記載の方法。
(項目15) 前記哺乳動物がヒトである、項目14に記載の方法。
(項目16) BAFF−RとBAFFとの間のシグナル伝達経路に関わる免疫応答を処置、抑制または変化する方法であって、該方法は、該BAFF−RとBAFFとの間の結合を妨げ得る、有効量の因子を投与する工程を包含する、方法。
(項目17) BAFF−Rに特異的な抗体またはその活性なフラグメントの治療有効量を投与する工程を包含する、炎症を阻害する方法。
(項目18) BAFF−Rに特異的な抗体またはそのエピトープの治療有効量を投与する工程を包含する炎症を阻害する方法。
(項目19) 治療有効量の単離されたBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目20) 項目19に記載の薬学的組成物であって、ここで前記単離されたBAFF−Rポリペプチドは、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸残基1〜184を含む単離されたネイティブな配列のBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;
(b)配列番号1のアミノ酸残基1〜184を含むネイティブな配列のBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、単離されたBAFF−Rポリペプチド;
(c)配列番号1のアミノ酸残基1〜184を含むネイティブな配列のBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメントと少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、単離されたBAFF−Rポリペプチド;
(d)配列番号1のアミノ酸残基1〜51を含む、単離されたBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント;および
(e)配列番号1のアミノ酸残基8〜41を含む、単離されたBAFF−Rポリペプチドまたはそのフラグメント、
からなる群より選択される、組成物。
(項目21) 前記BAFF−Rポリペプチドフラグメントが、免疫グロブリンに融合されたBAFF−R細胞外ドメインを含む、項目19に記載の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ヒトBAFF−R(BCMA)のcDNAの核酸配列(配列番号2)およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号1)を示す。核酸残基219または228のいずれかでの潜在的な翻訳開始部位;配列番号2の核酸残基240〜341(配列番号1のアミノ酸残基8〜41)でのシステインリッチドメイン(CRD);および配列番号2の核酸残基375〜459での潜在的な膜貫通領域。
【図2】図2は、以下のBAFF−R−FcをコードするプラスミドpJST538の核酸配列(配列番号4)およびその誘導されるアミノ酸配列(配列番号3)を示す:核酸残基1〜69、マウスIgGκシグナル配列;核酸残基70〜222、BAFF−R(核酸残基1〜153);核酸残基223〜906、ヒトIgG。
【図3】図3は、全長ヒトBAFF−RをコードするプラスミドpJST535の核酸配列およびその誘導されるアミノ酸配列を示す。
【図4】図4は、TNF−R55とBAFF−Rとの間の構造比較を示す。
【図5】図5は、(a)CH269(1.0μg)または(b)pJST535(0.1μg)(全長BAFF−Rを発現するプラスミド)のいずれかでトランスフェクトし、そしてプレートアッセイ形式にて0.5μg/mlのflag−hBAFFで染色した293EBNA細胞を示す。
【図6a】図6aは、pJST535でトランスフェクトし、以下のように染色した、293EBNAのFACSオーバーレイを示す:リガンドなし(黒いヒストグラム)、1μg/mlのflag−hCD40L(ピンク)またはflag−hBAFF(緑)。次いで、全てのサンプルを、実施例2の方法に記載されるように、抗flagM2、およびその後に、ロバ抗マウスIgGで染色した。
【図6b】図6bは、同じ実験の統計学によるFACSヒストグラムを示す。染色は、以下のとおりである:(1)未染色、(2)7AADのみ、(3)第2工程および7AADのみ、(4)9μg/ml flag−hBAFF、(5)3μg/ml flag−hBAFF、(6)1μg/ml flag−hBAFF、(7)0.33μg/ml flag−hBAFF、(8)0.11μg/ml flag−hBAFF、(9)flag−hCD40L 1μg/ml。
【図7】図7は、実施例4の方法に記載されるようなBAFF−R−Fcでの免疫沈降を示す。分子量スタンダード(kDa)は、図の左側に標記したとおりである。レーン(1)12.5ng flag−hTWEAK、(2)12.5ng flag−hBAFF、(3)0.5ml BAFF−R−Fc馴化培地によるflag−hBAFFの免疫沈降、(4)0.5mlBAFF−R−Fc馴化培地によるflag−hTWEAKの免疫沈降、(5)0.5ml BAFF−R−Fc馴化培地によるリガンドなしの免疫沈降、(6)トランスフェクトしていない293EBNAからの0.5ml馴化培地によるflag−hBAFFの免疫沈降、(7)トランスフェクトしていない293EBNAからの0.5ml馴化培地によるflag−hTWEAKの免疫沈降。
【図8】図8は、脾細胞増殖アッセイの結果のプロットを示す。ここで、マウス脾細胞に取り込まれるカウント/分(CPM)を、添加したヒトBAFFの量(μg/ml)に対してプロットする。
【図9】図9は、Raji細胞に結合するBAFFを分析するBAFFブロッキングアッセイの結果のプロットを示す。ここで、MFI(平均蛍光強度)の読み取りを、R:hIgG1の量(ng/ml)に対してプロットする。
【図10a】図10aは、実施例11に記載されるような、h−Ig(中パネル)またはhBCMA−Ig(下パネル)を受けたBaff TgマウスならびにPBS注射(上パネル)を受けた野生型同腹仔コントロールに対するFACS分析における、IgM 対 CD1の発現のプロットを示す。
【図10b】図10bは、実施例11に記載されるような、h−Ig(中パネル)またはhBCMA−Ig(下パネル)を受けたBaff TgマウスならびにPBS注射(上パネル)を受けた野生型同腹仔コントロールに対する、IgD陽性集団に対してゲートすることによるFACS分析における、CD21 対 IgMの発現のプロットを示す。
【図10c】図10cは、実施例11に記載されるような、h−Ig(中パネル)またはhBCMA−Ig(下パネル)を受けたBaff TgマウスならびにPBS注射(上パネル)を受けた野生型同腹仔コントロールに対する、IgD陰性集団に対してゲートすることによるFACS分析における、CD21 対 IgMの発現のプロットを示す。
【図11】図11は、全ての群のBaff Tgマウスについての脾細胞を示す(重量(mg)+/−標準偏差で示す)。
【図12】図12は、PBS、hIg、hBCMA−Igで処置したBaff Tgマウスおよび同腹仔コントロールに対する、蛋白尿(mg/dL) 対 注射数のプロットを示す。
【図13】図13は、Baff Tgマウスおよび野生型コントロールについての、平均した平均動脈圧(mmHg)のプロットを示す。
【図14】図14は、Baff Tgマウスおよび野生型コントロールについての、個々の平均動脈圧(mmHg)のプロットを示す。
【図15】図15は、BAFF−R−Ig(BCMA−Ig)、HuIgGまたはPBSでの処置後の重篤な腎炎を提示する、SNF1マウスのパーセンテージの棒グラフを示す。
【図16】図16は、20μg BCMA−Ig、50μg BCMA−Ig、HuIgGまたはPBSでインビボにて処置したマウスについての、全CD11c+DC細胞数(百万)のグラフを示す。試験したCD11c+DC細胞集団は、:(1)CD8a−CD4−、(2)CD8a+CD4−、および(3)CD8a−CD4+であった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
(I.定義)
本明細書中で使用される場合、用語「BAFF−R」および「BCMA」は、ネイティブ配列BAFF−RおよびBAFF−Rの改変体(これらは、本明細書中でさらに定義される)を含む。BAFF−Rは、マウスまたはヒトの組織型のような種々の供給源あるいは別の供給源から単離され得るか、あるいは組換え方法または合成方法によって調製され得る。
【0016】
「ネイティブ配列BAFF−R」は、天然に由来するBAFF−Rと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このようなネイティブ配列BAFF−Rは、天然から単離され得るか、あるいは組換え手段または合成手段によって調製され得る。BAFF−Rの天然に存在する短縮形態または分泌形態(例えば、可溶性形態(例えば、細胞外ドメイン配列を含む))、天然に存在する改変体形態(例えば、選択的スプライシング形態)および天然に存在するBAFF−Rの対立遺伝子改変体。本発明の1つの実施形態において、ネイティブ配列BAFF−Rは、配列番号1のアミノ酸1〜184を含む、成熟または全長のネイティブ配列BAFF−Rポリペプチドあるいはそれらのフラグメントである。
【0017】
「BAFF−R細胞外ドメイン」または「BAFF−R ECD」とは、BAFF−Rの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを本質的に含まない、BAFF−Rの形態をいう。通常、BAFF−R細胞外ドメインは、1%未満のこのような膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを有し、そして好ましくは0.5%未満のこのようなドメインを有する。通常、BAFF−R ECDは、配列番号1のアミノ酸残基8〜41、配列番号1のアミノ酸残基4〜51、または配列番号1のアミノ酸残基1〜53を含む。本発明の好ましい実施形態において、BAFF−R ECDは、配列番号1のアミノ酸残基1〜51を含む。本発明のBAFF−Rポリペプチドについて同定された膜貫通ドメインが、この型の疎水性ドメインを同定するための当該分野で慣用的に使用される基準に準じて同定されることが、当業者に理解される。膜貫通ドメインの正確な境界は、変化し得るが、ほぼおそらく、本明細書中に詳細に言及されるこのドメインのいずれかの末端で約5アミノ酸までで変化し得る。従って、BAFF−R ECDは、必要に応じて、アミノ酸8〜41(配列番号1)を含む。
【0018】
「BAFF−R改変体」は、全長ネイティブ配列BAFF−Rについて配列番号1に示される推定アミノ酸配列を有するBAFF−Rとか、またはBAFF−R ECD配列と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する、以下に規定されるような活性なBAFF−Rを意味する。このようなBAFF−R改変体としては、例えば、1以上のアミノ酸残基が、配列番号1の配列の末端またはC末端で付加または欠失されている、BAFF−Rポリペプチドが挙げられる。通常、BAFF−R改変体は、配列番号1のアミノ酸配列と、少なくとも約80%または85%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、そしてさらにより好ましくは、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0019】
本明細書中で同定されるBAFF−R配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を達成するように候補配列およびBAFF−R配列ならびに導入ギャップ(必要な場合)を整列化(そして、この配列同一性の部分として、いかなる保存的置換も考慮しない)した後の、BAFF−R配列のアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列化は、例えば、公に入手可能なコンピューターソフトウェア(例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア)を使用して、当業者の範囲内にある種々の方法で達成され得る。当業者は、整列化を測定するための適切なパラメーター(比較される配列の全長にわたって最大の整列化を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む)を決定し得る。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「エピトープタグ化(した)」とは、「タグポリペプチド」に融合されたBAFF−R(またはそのドメイン配列)を含む、キメラポリペプチドをいう。タグポリペプチドは、それに対して抗体が作製され得るかまたはある他の薬剤によって同定され得る、エピトープを提供するように、十分な残基を有するが、これはなお、BAFF−Rの活性を干渉しないように十分短い。好ましくは、タグポリペプチドはまた、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないように、全く固有のものである。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6アミノ酸残基を有し、通常、約8〜約50の間のアミノ酸残基(好ましくは、約10〜約20残基)を有する。
【0021】
本明細書中に開示される種々のポリペプチドを記載するために使用される場合、「単離(された)」とは、同定され、そしてその天然の環境の成分から分離および/または回収されたポリペプチドを意味する。その天然の環境の混入成分は、通常、このポリペプチドの診断用途または治療用途を干渉せず、これらとしては、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、(1)スピンカップ(spinning cup)配列決定機の使用によって少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るに十分な程度にか、または(2)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用する、非還元条件または還元条件下のSDSPAGEで均質なまでに、精製される。単離されたポリペプチドとしては、組換え細胞内のインサイチュのポリペプチドが挙げられる。これは、BAFF−Rの天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかし、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0022】
用語「抗体」は、最も広範な意味で用いられ、そして特に単一のBAFF−Rモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニストおよび中和抗体を含む)およびポリエピトープ特異性を有する抗BAFF−R抗体組成物を包含する。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体、すなわち、微量で存在し得る可能な天然に存在する変異以外は同一であるこの集団が含む個々の抗体をいう。
【0023】
ポリペプチドの「精製された調製物」または「実質的に純粋な調製物」は、本明細書中で使用される場合、ポリペプチドとともに天然で存在する他のタンパク質、脂質および核酸から分離されたポリペプチドを意味する。好ましくは、このポリペプチドはまた、このポリペプチドを精製するために用いられた他の物質(例えば、抗体、マトリックスなど)からも分離されている。
【0024】
用語「処置する」「処置」および「治療」は、本明細書中で使用された場合、治癒的治療、予防(prophylactic)治療および予防的(preventative)治療をいう。
【0025】
用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書中で交換可能に用いられる。
【0026】
「生物学的に活性な」は、本明細書中で用いられる場合、直接的または間接的に行われ得る、インビボまたはインビトロで活性を有することを意味する。BAFF−Rの生物学的に活性なフラグメントは、例えば、レセプターの活性部位と70%アミノ酸相同性を、より好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも90%相同性を有し得る。レセプターに関する同一性または相同性は、候補配列中の、配列番号1のBAFF−R残基と同一であるかまたは配列番号1中のアミノ酸残基の規定された部分と同一であるアミノ酸残基の百分率として本明細書中で定義される。
【0027】
用語「哺乳動物」は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物として分類される任意の動物をいい、これとしては、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、マウスおよびネコが挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0028】
本発明の実施は、他に示さない限り、当該分野の技術範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学的、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、文献に記載される。
【0029】
ここで、本発明のこの好ましい実施形態が詳細に参照される。本発明は、B細胞の増殖および成熟ならびに免疫グロブリンの分泌をもたらす、BAFF−RおよびBAFF−R関連分子の使用に関する。本発明は、免疫関連障害によって必要となるような、免疫系の応答をもたらすためのBAFF−RおよびBAFF−R関連分子の使用に関する。さらに、本発明は、遺伝子治療法による、BAFF−RまたはBAFF−R関連遺伝子の使用を通した癌および免疫障害の処置を包含する。
【0030】
本発明の配列によって形質転換された宿主によって産生されるBAFF−Rおよびそのホモログ、ならびに当該分野で公知のプロセスによって精製されたかまたは既知のアミノ酸配列から産生されたネイティブなBAFF−Rは、抗癌適用、抗腫瘍適用および免疫調節適用のための種々の方法において有用である。これらはまた、他の疾患に対する治療および方法において有用である。
【0031】
本発明の別の局面は、「アンチセンス」治療において、BAFF−Rをコードする単離された核酸によってコードされるポリペプチドの使用に関する。本明細書中で使用される場合、「アンチセンス」治療とは、細胞条件下で、目的のリガンドをコードする細胞性mRNAおよび/またはDNAと特異的にハイブリダイズし、それゆえ、すなわち、転写および/または翻訳を阻害することによって、コードされるタンパク質の発現を阻害するオリゴヌクレオチドまたはそれらの誘導体の投与またはインサイチュ生成をいう。結合は、従来の塩基対相補性によってであってもよく、または例えば、DNA二重鎖に対する結合の場合、二重らせんの主溝における特異的相互作用を通してであってもよい。一般に、「アンチセンス」治療とは、当該分野において一般的に用いられるある範囲の技術をいい、そしてオリゴヌクレオチド配列に対する特異的結合に依存する任意の治療を包含する。
【0032】
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、細胞中で転写された場合、BAFF−リガンドをコードする細胞性mRNAの少なくとも一部に相補的であるRNAを産生する発現プラスミドとして送達され得る。あるいは、このアンチセンス構築物は、エキソビボで生成されるオリゴヌクレオチドプローブであり得る。このようなオリゴヌクレオチドプローブは好ましくは、内因性ヌクレアーゼに耐性であり、それゆえ、インビボで安定である、改変されたオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用するための例示的な核酸分子は、DNAのホスホルアミデート、ホスホチオエートおよびメチルホスホネートアナログである(例えば、5,176,996;5,264,564;および5,256,775を参照のこと)。さらに、アンチセンス治療において有用なオリゴマーを構築するための一般的アプローチは、例えば、本明細書中に参考として得に援用される、Van Der Krolら(1988)Biotechniques 6:958−976およびSteinら(1988)Cnacer Res 48:2659−2668によって概説されている。
【0033】
本発明のBAFF−Rは、上記で考察したように、TNFレセプターファミリーのメンバーである。このタンパク質、そのフラグメントまたはホモログは、広範囲の治療適用および診断適用を有し得る。
【0034】
本発明のポリペプチドは特に、本明細書中に参考として援用されるWO99/12964に以前に記載されたポリペプチドであるBAFFと相互作用する。しかし、本明細書中に開示されるペプチドおよび方法は、BAFF−Rまたはそのフラグメントと特異的に相互作用する分子の同定を可能にする。
【0035】
特定の実施形態における本願発明は、BAFFに結合する能力を有する、BAFF−R由来ペプチドを用いる方法を包含する。BAFF−Rのフラグメントは、いくつかの方法で(例えば、組換えによって、PCRによって、タンパク質分解消化によって、または化学合成によって)産生され得る。ポリペプチドの内部フラグメントまたは末端フラグメントは、このポリペプチドをコードする核酸の一方の末端または両方の末端から1以上のヌクレオチドを除去することによって生成され得る。変異誘発されたDNAの発現は、ポリペプチドフラグメントを産生する。
【0036】
本発明において使用するためのキメラ分子はまた、当該分野で公知の技術を使用して産生され得る。本発明は、異種アミノ酸配列(例えば、免疫グロブリンのIgG Fcドメイン)に融合されたBAFF−Rポリペプチド(またはその改変体)のキメラ分子の使用を意図する。好ましくは、このようなキメラ分子は可溶性であり、そして可溶性BAFF−Rポリペプチドを含む。
【0037】
ポリペプチドフラグメントはまた、従来のMerrifield固相f−mocまたはt−boc化学として当該分野で公知の技術を用いて化学合成され得る。例えば、本発明のペプチド配列およびDNA配列は、フラグメントの重複なしに所望の長さのフラグメントへと任意に分割されてもよいし、所望の長さの重複するフラグメントへと分割されてもよい。これらのような方法は、以下でより詳細に記載される。
【0038】
(可溶性形態のBAFF−Rの生成)
可溶性形態のBAFF−Rはしばしば、効果的にシグナルを出し、それゆえ、天然の膜形態をここで模倣する薬物として投与され得る。本明細書中で請求されるBAFF−Rが可溶性サイトカインとして天然に分泌されることが可能であるが、そうでない場合、分泌させるようにこの遺伝子を再度操作し得る。可溶性分泌形態のBAFF−Rを作製するために、N末端膜貫通領域および茎(stalk)領域のいくつかの部分をDNAレベルで除去して、そしてこれらを、選択された発現系における効率的なタンパク質分解性切断を可能にする、I型リーダー配列あるいはII型リーダー配列で置き換える。当業者は、分泌発現構築物中に保持された茎領域の量を変動させて、リガンド結合特性および分泌効率の両方を最適化し得る。例えば、全ての可能な茎長を含む構築物(すなわち、N末端短縮物)は、アミノ酸1で始まりアミノ酸51までのタンパク質が生じるように調製され得る。最適な長さの茎配列は、この型の分析から生じる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、可溶性BAFF−Rポリペプチドは、以下である:配列番号1のアミノ酸残基1〜51を含む、単離されたネイティブ配列BAFF−Rポリペプチドもしくはそのフラグメント;配列番号1のアミノ酸残基1〜51を含むネイティブ配列BAFF−Rポリペプチドと少なくとも80%(そしてより好ましくは90%)のアミノ酸配列同一性を有する単離されたBAFF−Rポリペプチドもしくはそのフラグメント;または配列番号1のアミノ酸残基8〜41を含む、単離されたBAFF−Rポリペプチドもしくはそのフラグメント。
【0040】
(BAFF−Rと反応性の抗体の生成)
本発明はまた、本願BAFF−Rまたはそのコレセプターと特異的に反応性の抗体を包含する。抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体は、標準的なプロトコルによって作製され得る(例えば、Antibodies:A Laboratory
Manual、HawlowおよびLane編(Cold Spring Harbor Press:1988)を参照のこと)。マウス、ハムスターまたはウサギのような哺乳動物は、免疫原性形態のペプチドで免疫され得る。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技術としては、当該分野で周知の、キャリアに対する結合体化または他の技術が挙げられる。
【0041】
BAFF−Rまたはそのコレセプターの免疫原性部分は、アジュバントを存在させて投与され得る。免疫の前進は、血漿または血清中の抗体力価の検出によってモニタリングされ得る。標準的なELISAまたは他の免疫アッセイは、抗原としての免疫原とともに用いられて、抗体のレベルを評価し得る。
【0042】
好ましい実施形態では、本願抗体は、BAFF−Rもしくはそのコレセプターの抗原決定基(例えば、配列番号1のポリペプチドの抗原決定基)または密接に関連したヒトもしくは非ヒト哺乳動物ホモログ(例えば、70、80または90パーセント相同、より好ましくは少なくとも95パーセント相同)に免疫特異的である。本発明のなおさらなる好ましい実施形態では、抗BAFF−Rまたは抗BAFF−コレセプター抗体は、例えば、配列番号1に80パーセント未満相同である、好ましくは配列番号1に90パーセント未満相同である、そして最も好ましくは配列番号1に95パーセント未満相同であるタンパク質に実質的に交差反応しない(すなわち、特異的に反応する)。「実質的に交差反応しない」によって、抗体が、配列番号1のタンパク質についての結合親和性の10パーセント未満、より好ましくは5パーセント未満、そしてさらにより好ましくは1パーセント未満の結合親和性である、非相同タンパク質についての結合親和性を有することが意味される。
【0043】
本明細書において使用される用語抗体とは、BAFF−Rまたはそのレセプターと特異的に反応性でもある、そのフラグメントをも含むことが意図される。抗体は、慣用技術を用いてフラグメント化され得、そのフラグメントは、抗体全体について上記されるのと同様の様式で有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab’)2フラグメントは、ペプシンで抗体を処理することにより作製され得る。得られたF(ab’)2フラグメントを処理して、Fab’フラグメントを処理して、ジスルフィド架橋を還元して、Fab’フラグメントを生成する。本発明の抗体はさらに、抗BAFF−Rまたは抗BAFF−コレセプター活性を有する二特異性およびキメラの分子を包含することが意図される。従って、BAFF−Rおよびそのコレセプターに対して指向されるモノクローナル抗体(Ab)およびポリクローナル抗体(Ab)の両方、ならびにFab’およびF(ab’)2のような抗体フラグメントを使用して、BAFF−Rおよびそのそれぞれのコレセ
プターの作用をブロックし得る。
【0044】
種々の形態の抗体はまた、標準的な組換えDNA技術を用いて作製され得る。(本明細書において参考として具体的に援用される、Winter and Milstein,Nature 349:293−299(1991))。例えば、ヒト定常ドメインに動物抗体由来の抗原結合ドメインが結合したキメラ抗体が構築され得る(例えば、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号、これは本明細書において参考として援用される)。キメラ抗体は、ヒト臨床処置において使用される場合、動物抗体によって惹起される、観察される免疫原性応答を減少し得る。
【0045】
さらに、BAFF−Rまたはそのコレセプターを認識する、組換え「ヒト化抗体」が合成され得る。ヒト化抗体は、その領域が特異的抗原を担うヒトIgG配列のほとんどを含むキメラである。動物は、所望の抗原で免疫され、対応する抗体が単離され、そして特異的抗原結合を担う可変領域配列の部分が取り出される。次いで、動物由来の抗原結合領域が、抗原結合領域が欠失されたヒト抗体遺伝子の適切な位置にクローニングされる。ヒト化抗体は、ヒト抗体における異種(すなわち、種間の)配列の使用を最小化し、従って、処置された被験体における免疫応答を惹起する可能性が低くなる。
【0046】
異なるクラスの組換え抗体の構築はまた、異なるクラスの免疫グロブリンから単離された、可変ドメインおよびヒト定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を含む、キメラまたはヒト化の抗体を作製することによって達成され得る。例えば、抗原結合部位価が増加した抗体は、ヒト:鎖定常領域を有するベクター中に抗原結合部位をクローニングすることによって組換え産生され得る(Arulanandam et al.,J.Exp.Med.,177:1439−1450(1993)、これは、本明細書において参考として援用される)。
【0047】
さらに、標準的な組換えDNA技術を用いて、抗原結合部位の付近のアミノ酸残基を変更することによってその抗原と組換え抗体との結合親和性を変更し得る。ヒト化抗体の抗原結合親和性は、分子モデリングに基づく変異誘発により増加され得る(Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86:10029−33(1989)、これは、本明細書により参考として援用される)。
【0048】
(アナログの生成:変更されたDNAおよびペプチドの配列の生成)
BAFF−Rのアナログは、天然に存在するBAFF−Rとは、アミノ酸配列が異なり得るか、または配列を有しない点で異なり得るか、あるいはその両方であり得る。非配列改変には、BAFF−Rのインビボまたはインビトロの化学誘導体化が含まれる。非配列改変としては、アセチル化、メチル化、リン酸化、カルボキシル化、またはグリコシル化における変化が挙げられるがそれらに限定されない。
【0049】
好ましいアナログとしては、配列番号1に与えられる配列とは、1つ以上の保存的アミノ酸置換の分、または1つ以上の非保存的なアミノ酸置換、欠失もしくは挿入(であって、BAFFリガンドの活性を除外しないもの)の分、その配列が異なる、BAFF−R、その生物学的に活性なフラグメントが挙げられる。保存的置換としては、代表的に、あるアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸に置換することが挙げられる。例えば、以下の群の中での置換:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0050】
(使用)
全長BAFF−R遺伝子(配列番号2)またはその部分は、cDNAライブラリーについてのハイブリダイゼーションプローブとして用いられて、例えば、配列番号2に開示されるBAFF−R配列と所望の配列同一性を有する、なお他の遺伝子を単離し得る。BAFF−Rをコードするヌクレオチド配列はまた、BAFF−Rをコードする遺伝子をマッピングするため、および遺伝子障害を有する個体の遺伝的分析のための、ハイブリダイゼーションプローブを構築するために用いられ得る。スクリーニングアッセイは、BAFF−Rの生物学的活性を模倣するリード化合物を見出すように設計され得る。そのようなスクリーニングアッセイとしては、化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングに受け入れられるアッセイが挙げられ、これにより、そのアッセイが低分子薬物候補を同定するために特に適切となる。企図される低分子としては、合成有機化合物または無機化合物が挙げられる。BAFF−Rまたはその改変形態をコードする核酸はまた、トランスジェニック動物または「ノックアウト」動物のいずれかを作製するために用いられ得る。これは次いで、治療上有用な試薬の開発およびスクリーニングにおいて有用となる。
【0051】
本明細書に記載されるように、本発明の1つの実施形態において、BAFF−Rポリペプチドを用いて、動物におけるB細胞増殖、樹状細胞誘導されたB細胞増殖および成熟または免疫グロブリン生成を刺激する方法、あるいはBAFF−Rおよび抗T抗体、CD40リガンドまたは抗CD40リガンドを用いて動物における、B細胞増殖、樹状細胞誘導されたB細胞増殖および成熟または免疫グロブリン産生を同時刺激する方法が提供される。BAFF−Rポリペプチドを用いて、B細胞増殖、樹状細胞誘導されたB細胞増殖および成熟または免疫グロブリン産生を阻害する方法もまた包含される。
【0052】
別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患、高血圧、心臓血管障害、腎臓障害、B細胞リンパ増殖障害、免疫抑制疾患、臓器移植、炎症およびHIVの処置においてBAFF−Rを用いる方法を提供する。BAFF−Rとそのリガンドとの間のシグナル伝達経路を包含する免疫応答を、処置、抑制または変更するための因子を用いる方法もまた包含される。
【0053】
1つの実施形態において、本発明は、BAFF−Rポリペプチドおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。例えば、BAFF−Rポリペプチドのための適切なキャリア、およびその処方物はRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th ed.,1980,Mack Publishing Co.,Oslo et al編に記載されている。代表的には、薬学的に受容可能な塩の適切な量をその処方物に用いてその処方物の等張性を付与する。そのキャリアの例としては、生理食塩水のような緩衝液、リンゲル溶液、およびデキストロース溶液が挙げられる。その溶液のpHは、好ましくは、約5〜約8であり、そしてより好ましくは、約7.4〜約7.8である。さらなるキャリアとしては、固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスのような徐放性調製物が挙げられる。このマトリクスは、成型された物品(例えば、リポソーム、フィルムまたは微粒子)の形態で存在する。当業者には、特定のキャリアが、例えば、投与されるBAFF−Rポリペプチドの投与経路および濃度に依存してより好ましくあり得ることは明白である。
【0054】
投与は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下内、筋肉内)によるか、または有効形態で血流に送達されることが確実になる、注入のような他の方法達成され得る。
【0055】
本発明の実施では、そうでないと指示しない限り、当該分野の技術常識に入る、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、タンパク質化学、および免疫学の慣用技術を使用する。例えば、以下を参照のこと:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition.(Sambrook,Fritsch and Maniatis,eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover,ed),1985;Oligonucleotide Synthesis,(M.J.Gait,ed.),1984;米国特許第4,683,195号(Mullis et al.,);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames and S.J.Higgins,eds.),1984;Transcription and Translation(B.D.Hames and S.J.Higgins,eds.),1984;Culture of Animal Cells(R.I.Freshney,ed).Alan R.Liss,Inc.,1987;Immobilized Cells and Enzymes,IRL Press,1986;A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal),1984;Methods in Enzymology,Volumes 154 and 155(Wu et al.,eds),Academic Press,New York;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos,eds.),1987,Cold Spring Harbor Laboratory;Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.),Academic Press,London,1987;Handbook of Experiment Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.),1986;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1986。
【0056】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、そして本発明を制限するとはみなされるべきではない。
【実施例】
【0057】
(実施例1:プレートアッセイを使用してのBAFF−Rに対するBAFF結合の検出)
本実施例において、プレートアッセイを使用するBAFFのBAFF−Rトランスフェクト細胞に対する結合が記載される。
【0058】
全長ヒトBAFF−Rを、SuperscriptIIプレ増幅キット(Life Technologies)を使用して、BJABポリA+RNAから生成し、cDNAテンプレートを生成し、そしてBAFF−Rの5’および3’コード配列に相補的なプライマーを使用してPfu1によって増幅した。PCR産物を、CH269(pCEP4の誘導体)(Invitrogen)にクローニングした。得られるクローンをpJST535と命名した。EBNA−1遺伝子(293EBNA)を含有するヒト胚腎臓細胞を、フィブロネクチンでコートした6ウェルのプレートに播種し、そして種々の希釈のpJST535またはバックグラウンドコントロールとしてのCH269のいずれかで、リポフェクタミン(Life Technologies)によってトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、トランスフェクトした細胞を、可溶性flag−hBAFF(アミノ酸L83−L285)に結合するそれらの能力について、以下のようにアッセイした。全てのインキュベーションを室温で行った。馴化培地を、ウェルから吸引し、そして細胞をBHA緩衝液(20mM HEPES pH7.0、0.5mg/ml BSA、0.1% NaN3)で洗浄し、そして1mM MgCl2、1mM CaCl2、および0.1% NaN3を含有するPBS中において希釈した0.5μg/mlのFL
AG−hBAFFでインキュベートした。1時間のインキュベーションの後、BAFF溶液を除去し、そしてその細胞をBHAで洗浄した。その細胞を、次に、1μg/mlの抗FLAGモノクローナル抗体M2(Sigma)を含有するPBS溶液中で30分間インキュベートした。この溶液を吸引し、そしてその細胞をBHAで洗浄した。次いで、その細胞を、アルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗マウスIgG(f(ab)’2(Jackson ImmunoResearch)の1:3000希釈中で30分間インキュベートした。この溶液を吸引し、そしてその細胞をBHAで洗浄した。内因性アルカリホスファターゼに起因するバックグラウンド染色の量を減少するために、その細胞を、15分間、100mM NaCl、100mM Tris−Cl pH9.5、および5mM MgCl2中にて希釈した2.5mMのレバミソール(Vector Laboratories)中でインキュベートした。アルカリホスファターゼの色素生産性検出のために、インヒビター溶液を吸引し、そしてその細胞をファーストレッドおよびナフトールホスフェート(Pierce)の溶液中でインキュベートした。染色を観察し、そして低出力顕微鏡で写真を撮った。
【0059】
ファーストレッド色素の沈着を、BAFF−Rを発現するプラスミドpJST535でトランスフェクトした全てのウェルについて観察した。細胞中へトランスフェクトしたプラスミドの量として滴定されたシグナルの頻度は、減少した。コントロールの発現ベクターCH269でトランスフェクトされた細胞について染色は観察されなかった。また、FLAG−hBAFFが染色プロトコルから排除された場合、または別のTNFファミリーメンバーのリガンド、FLAGタグ化LIGHTでflag−hBAFFを置換した場合、いずれのトランスフェクトされた細胞についても、染色は観察されなかった。したがって、BAFF−Rトランスフェクト細胞のBAFFでの染色は、特異的であるようであった。
【0060】
(実施例2:FACS分析によるBAFF−Rでトランスフェクトされた細胞に対するBAFF結合)
この実施例は、FACS分析を使用しての、BAFFのBAFF−Rトランスフェクト細胞への検出を記載する。
【0061】
全長BAFF−RをコードするプラスミドであるpJST535を、FuGene6(Boehringer Mannheim)を使用して、293EBNA細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの24または48時間後に、細胞を5mMのEDTAをPBS中で使用してプレートから除去し、そして計数した。その細胞を2回FACS緩衝液(10%の胎仔ウシ血清、0.1%NaN3、および10μg/mlのhIgG(Jackson ImmunoResearch)を含有するPBS)で洗浄し、次いで、2.5×105個の細胞を、1時間氷上で、FACS緩衝液中に9μg/mlから0
.037μg/mlの範囲の濃度に希釈したFLAG−hBAFFとともにインキュベートした。その細胞をFACS緩衝液で洗浄し、そして抗FLAGモノクローナル抗体M2の5μg/mlとともに30分間氷上でインキュベートした。その細胞を、FACS緩衝液で洗浄し、そして30分間、氷上で、R−フィコエリスリン結合体化F(ab’)2ロバ抗マウスIgGおよび10μg/mlの7−AADの1:100希釈を含有する溶液中でインキュベートした。その細胞をFACS緩衝液で洗浄した後、それらを、1%パラホルムアルデヒドを含有するFACS緩衝液中で再懸濁した。続いてFACS分析を行い、そこで7−AAD陽性(死)細胞が分別された。
【0062】
FACS分析の結果は、BAFF−Rでトランスフェクトした細胞の画分がBAFFに結合し得ることを示す。9μg/mlのBAFF濃度で、約28%の細胞が、366の平均の蛍光強度(MFI)でBAFFに結合する。PE標識ロバ抗マウス試薬単独を使用した場合、細胞の有意なシフトは存在しない。細胞の1.3%のみが、23.5のMFI(全ての細胞の平均は5.5)を有する。BAFF−Rトランスフェクト細胞についてのシグナルは、BAFFの漸減量で滴定される。100ng/mlで、8.76%の細胞が、78.9のMFIを有する。
【0063】
(実施例3:GFPマーカーを含むBAFF/BAFF−R相互作用のFACS分析)
この実施例において、BAFFの、BAFF−RおよびGFPレポータープラスミドと同時トランスフェクトした細胞に結合する能力が記載される。
【0064】
293EBNA細胞を、pJST535およびGFPレポータープラスミドを用いて、実施例2に記載するようにトランスフェクトした。そのレポータープラスミドは、膜に結合したGFP分子をコードする。2つのプラスミドの同時トランスフェクションを使用して、本発明者らは、BAFFに結合し得たトランスフェクトした細胞のパーセンテージを分析した。その細胞を、プレートから除去し、そしてBAFF結合に供し、そして実施例2に記載されるように検出した。再び、7−AADを死滅細胞を分別するために含めた。そのサンプルをFACSによって分析し、そしてプロットした。その右上四半分は、結合したBAFF(フィコエリスリン陽性)および発現するGFPを有する細胞を表す。
【0065】
GFPでトランスフェクトした細胞の全てがBAFFに結合するようには見えないが、有意な画分の細胞が、コントロールに比較して右上四半分に存在する。トランスフェクトされた細胞の33パーセントは、8パーセントに比較して右上部にある。特定のレベルのBAFF−R発現が、BAFFがその細胞に結合するのに必要とされることであり得る。それはまた、同時レセプターが、高親和性相互作用に必要とされること、およびこのレセプターが、293EBNA細胞に限定されることが可能である。
【0066】
(実施例4:BAFF−R−Fc融合物によるflag−hBAFFの免疫沈降)
この実施例は、flag−hBAFFの、BAFF−R−Fc(ヒトIgG1のFcドメインに融合したBAFF−Rのシステインリッチドメイン(CRD)から構成される分子)との特定の相互作用を記載する。
【0067】
BAFF−RのCRDを、実施例1におけるように、3’プライマーとして、hBAFF−Rコード配列のヌクレオチド132〜152に相補的なオリゴを使用して、BJABポリA+RNAからRT−PCRによって生成した。得られるPCRフラグメントを、マウスIgGカッパシグナル配列CH269の下流およびヒトIgGのFc部分の上流においてクローニングした。この構築物を、pJST538と命名した。構築物pJST538またはCH269を、293EBNAにリポフェクタミンによってトランスフェクトした。馴化培地および細胞抽出物を、トランスフェクションの20時間後に収集した。細胞を、20mM Tris pH7.5/50mM NaCl/0.5%NP40/0.5%デオキシコール酸中に可溶化し、遠心分離した。馴化培地および細胞抽出物のアリコートを、等容量の2×SDS還元緩衝液と合わせ、煮沸し、そしてSDS−PAGEおよびウエスタントランスファーに供した。発現を評価するために、その膜を、TBST中の5%の脱脂乾燥乳中で、室温で30分間、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化したマウス抗ヒトIgGの1:3000希釈でプローブし、そしてTBSTで洗浄した。ブロットをECL(Amersham)で現像し、フィルムに露光した。
【0068】
免疫沈降を、flag−hBAFFまたはflag−hTWEAKのいずれかの25ngを、pJST538またはCH269のいずれかとともに、4℃で、1時間、攪拌しながら、トランスフェクトした293EBNA由来の0.5mlの馴化培地とともにインキュベートし、その後30μlのプロテインA−Sepharose(Pharmacia)を添加し、そして一晩攪拌を続けることによって行った。プロテインA−SepharoseビーズをPBSで2回洗浄し、そして2×SDS還元サンプル緩衝液中で再懸濁した。SDS−PAGEおよびウエスタンブロットトランスファーの後に、そのブロットを、5%脱脂乾燥乳中で、TBST中の5μg/mlの抗flagモノクローナル抗体M2(Sigma)とともに、室温で1時間インキュベートした。ブロットをTBSTで洗浄し、そしてTBST中、5%脱脂乾燥乳中のヤギ抗マウスIgG HRP結合体(Jackson Immunoresearch)の1:3000希釈とともに、室温で30分間インキュベートした。ブロットをECL(Amersham)で減増し、そしてフィルムに露光した。
【0069】
pJST538の293EBNA細胞へのトランスフェクションの際に、約43kDaのタンパク質の発現が、両方の細胞抽出物および馴化培地において、ウエスタンブロット分析によって、マウス抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch)検出され、これは、BAFF−R−Fc融合物が効率的に発現され、そして分泌されたことを示す。
【0070】
免疫沈降において、バンドを、BAFF−R−Fcおよびflag−hBAFFのインキュベーションの結果としてのみ観察した。このバンドは、flag−hBAFFの直接ロードしたサンプルと同時に移動した。その他のレーンのいずれも、シグナルを生成しなかった。これは、BAFF−R−Fcとflag−hBAFFとの間の相互作用が、特異的であることを示す。
【0071】
(実施例5:可溶性レセプター形態の生成)
ヒトにおける使用のためのレセプターインヒビターを形成するために、当業者は、細胞外ドメインのヒトレセプターcDNA配列を必要とする。マウスの形態が公知である場合、ヒトcDNAライブラリーは、マウスcDNA配列を使用してスクリーニングされ、そしてそのような操作は、当該分野で慣用的に行われる。ヒトcDNA配列を用いて、当業者は、オリゴヌクレオチドプライマーを設計して、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインの非存在下で、レセプターの細胞外ドメインのPCR増幅を行い得る。代表的には、1つは、最後のジスルフィド連結した「TNFドメイン」と膜貫通ドメインとの間のほとんどのアミノ酸を含む。当業者は、得られる可溶性レセプターの効力を最適化するように含まれる「柄」の領域の量を変化させ得る。この単純化した部分は、種々のC末端Ig融合キメラベクターにクローニングし得るように、適切な制限部位を含むように操作される。あるいは、当業者は、3’末端に終結シグナルを挿入し得、そして、レセプターの可溶性形態をIg融合キメラアプローチの使用に頼ることなしに、作成し得る。得られるベクターを、酵母、昆虫細胞、細菌、および哺乳動物を含むバイオテクノジーにおいて使用されるほとんどの系において発現し得、全ての発現の型についての例が存在する。種々のヒトFcドメインは、所望のように、FcRを最適化するかまたは排除するために、または相互作用を相補するために、結合され得る。あるいは、これらのFcドメインの変異形態は、FcR選択的に除去するため、またはFcドメインへの相互作用またはN連結糖の付着(これは特定の利点を有する)を相補するために使用され得る。
【0072】
(実施例6:アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体の生成)
上記の可溶型レセプターを用いて、従来の方法によってマウスを免疫し、そしてモノクローナル抗体を作成し得る。ELISA法によって同定される、得られた組換えmAbは、種々のインビトロ細胞性アッセイにおいて、可溶性抗体またはプラスチック上へ固定された抗体のいずれかとして、アゴニスト活性についてさらにスクリーニングされ得る。しばしば、HT29細胞株の死亡は、都合の良いシステムであり、多くのTNFレセプターを通じたシグナル伝達に感受性である。この株が目的のレセプターを保有しない場合、その全長レセプターは、HT29株中に安定にトランスフェクトされ得、ここで細胞障害性アッセイを行うことを可能にする。あるいは、このような細胞を、細胞センサー装置に用いて、レセプターの活性化がpH変化(シグナル伝達事象の指標である)を惹起し得るか否かを評価し得る。このような様式およびこの方法において、TNFファミリーレセプターシグナルウェルは、このレセプターによって誘引される実際の生物学的事象を知るには必要のないものである。アゴニストmAbは、臨床使用のために「ヒト化」される。この手順はまた、アンタゴニストmAbを規定するためにも用いられ得る。このようなmAbは、アゴニスト活性の欠損およびレセプター−リガンド相互作用を阻害する能力(ELISA、古典的結合方法またはBIAコア方法によってモニターされる場合)によって規定される。最終的に、アゴニスト抗体に応答する、種々の細胞によるケモカイン分泌の誘導は、スクリーニングアッセイを形成し得る。
【0073】
(実施例7:レセプター−リガンド相互作用のインヒビターのスクリーニング)
レセプター−Ig融合タンパク質を用いて、当業者は、レセプターに直接結合し得る分子についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングし得る。次いで、これらの分子は、レセプター−リガンド相互作用を阻害する能力について、レセプター−Ig融合タンパク質および可溶型のリガンドを用いて、ELISA形式のアッセイにおいて、試験され得る。このELISAは、阻害性化合物について、種々の天然産物ライブラリーなどをスクリーニングするために直接用いられ得る。このレセプターは、HT29株のような細胞株中にトランスフェクトされ、生物学的アッセイ(この場合細胞毒性)を形成し、次いでスクリーニングアッセイを形成し得る。
【0074】
(実施例8:BAFF−R−IgGは、正常マウスにおいてB細胞数の減少を起こす)
8週齢の雌性BALB/cマウスを、Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。8日前、5日前、1日前および2日後、PBS、400μgのヒトBAFF−R−huIgG1(hBAFF−R−Ig)融合タンパク質(Teresa Cachero,Biogenより供給)、または400μgの精製ヒトIgG(HuIgG)(Sandoz,Basel,Switzerland)のいずれかを、マウス(1群に3匹)に、腹腔内投与した。0日目に、マウスに、10%ヒツジ赤血球(SRBC)(Colorado Serum Company,Denver,CO)を100μl投与した。
【0075】
屠殺時に、心臓穿刺を介してEDTを含有するチューブに血液を収集し、そして赤血球を低張緩衝液中に溶解した。血液をまた、血清調製のためのEDTAなしに収集した。単一細胞懸濁液を脾臓および腸間膜リンパ節(MLN)から調製し、そして赤血球を低張性緩衝液に溶解した。PE結合体化抗CD45R/B220、抗シンデカン(syndecan)/CD138および抗B7.2、ならびにFITC結合体化抗IgMおよび抗CD45R/B220を用いて、フローサイトメトリーを実施した。全てのmAbは、Pharmingen(San Diego,CA)から購入した。簡略には、Fcレセプターを、氷上で15分間10μg/mlのFc Block(Pharmingen)を用いてブロックし、続いてPE結合体化mAbおよびFITC結合体化mAbを添加し、そして氷上で20〜30分間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、そして0.5%パラホルムアルデヒドに懸濁した。FACSCaliburTMフローサイトメトリー(Becton Dickinson,San Jose,CA)において細胞蛍光データを得、そしてCELLQuestTMソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0076】
hBAFF−R−Igを用いる処理後、試験した末梢血液および末梢リンパ器官において、B細胞数は、ほぼ50%減少していた。B220高IgM低(B220highIgMlow)B細胞は、PBS処理マウスおよびHuIgG処理マウスにおいて、それぞれ、細胞
の23.4%および21.5%とみなされたが、一方、この集団は、hBAFF−R−Ig処理マウスにおいては、細胞のわずか9.9%であった。血漿細胞(シンデカン(sndecan)/CD138+)は、hBAFF−R−Ig処理マウスにおける3.9%と比較して、PBS処理マウスおよびHuIgG処理マウスの血液中で、それぞれ、5.7%および4.8%程度までわずかに減少するようであった。B7.2分子は、hBAFF−R−Ig処理マウスにおける1.9%と比較して、PBS処理マウスおよびHuIgG処理マウスにおいて、それぞれ、B220+細胞の3.1%および4.5%に上方制御された。
【0077】
脾臓B220高(B220high)B細胞は、PBS処理したマウスおよびHuIgG処理したマウスにおける、それぞれ36.7%および40%と比較して、hBAFF−R−Ig処理マウスでは18.8%と顕著な減少であった。この低下は、IgM高(IgMhigh)およびIgM低(IgMlow)の両方の小集団において観察された(表8Aを参照の
こと)。脾臓において、新しく形成されたB細胞区画(B220低(IgM高)には変化は観察されなかった(データ示さず)。血漿細胞(シンデカン/CD138+)は、hBAFF−R−Ig処理したマウスにおける、2.4%と比較して、PBS処理したマウスおよびHuIgG処理したマウスの脾臓において、それぞれ3.3%および3.4%と減少がわずかであるようであった。
【0078】
MLNは、PBS処理したマウスおよびHuIgG処理したマウスにおける、それぞれ26.7%および35.8%と比較して、hBAFF−R−Ig処理マウスでは14.1%と、B220+B細胞の減少を示した。データを、表8Aにまとめる。
【0079】
【表1】

SRBCを用いた免疫後のhBAFF−R−Ig処理マウスの血液および脾臓中の血液細胞および血漿細胞におけるB7.2+B細胞のパーセンテージは低下しており、このことは、B細胞活性化および/または成熟の阻害、ならびに活性化B細胞の潜在的に増大した排除が存在することを示唆する。非常に少ない割合の抗原特異的B細胞が、活性化され、そして任意の抗原(この場合、SRBC)に応答した。hBAFF−R−Ig処理は、試験した全ての組織においてB細胞の割合のそのような劇的な減少(約50%)を生じたので、hBAFF−R−Igの活性は、また得られた成熟B細胞を標的するようである。
【0080】
従って、BAFF−R融合タンパク質は、B細胞媒介疾患において臨床適用を有する治療薬として用いられ得る。疾患としては、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質症候群、シャーガス病、グレーヴズ病、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性結節性動脈炎、および急速進行性糸球体腎炎のような本質的に自己免疫である疾患が挙げられる。治療剤はまた、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、原発性アミロイドーシスまたは免疫細胞関連アミロイドーシス、および重度不定単一クローン性高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)(MGUS)のような血漿細胞障害において適用を有する。腫瘍学の標的としては、B細胞癌腫、白血病、およびリンパ腫が挙げられる。
【0081】
(実施例9:可溶性BAFF−Rを用いた、インビトロでのBAFF誘導性B細胞増殖のブロック)
本実施例において、本発明者らは、可溶性BAFF−R:hIgG1融合タンパク質が、マウス脾細胞におけるBAFF誘導性B細胞増殖をブロックし得ることを示す。
【0082】
Balb/cマウスからマウス脾細胞(5×105細胞/ml)を単離し、そして10%ウシ胎仔血清(JRH)、2mMグルタミン、100単位/mlのペニシリンおよび100mg/mlのストレプトマイシン(Life Technologies)を補充した、100μlのRPMI(Life Technologies)を含有する96ウェルプレート中で培養した。次いで、種々の量のヒトBAFF、10μg/mlのヒトBAFF−R:hIgG1またはヒトIg、ならびに10μg/mlの抗マウス表面μ重鎖(Jackson Immuno Research)を添加した。37℃での培養48時間後、1μCi/ウェル[メチル−3H]チミジン(Dupont NEN)を用いて細
胞を24時間パルスし、そしてTomtec(Orange,CT)細胞ハーベスターを用いて収集した。Betaplate液体シンチレーションカウンター(Pharmacia Biotech)で放射活性を測定した。
【0083】
図8は、脾細胞増殖アッセイ(Splenocyte Proliferation Assay)の結果を示す。添加されたヒトBAFF試薬の量に対する、マウス脾臓細胞に取り込まれたカウント毎分(CPM)を示す。抗μまたは融合タンパク質またはコントロールhIgGのレベルは、10μg/mlで一定に保つ。黒四角は、BAFFのみで誘導された増殖のレベルを示す。黒丸は、BAFFおよび抗μを用いた、細胞の増殖を示す。白三角の曲線は、BAFF−R:hIgG1BAFFを抗μ+BAFF−R:hIgG1とともに添加した場合に観察された阻害を示す。白菱形は、コントロールのヒトIgを用いて観察された阻害を示す。
【0084】
BAFFプラス抗μの添加は、インビトロにおいてマウス脾細胞の増殖を生じる。細胞に取り込まれた3Hチミジンのレベルは、BAFF単独または抗μ単独のいずれかを脾細
胞に添加したときに得られたレベルよりも有意に高い。BAFF単独での脾細胞の処理は、非常に高い濃度でのみ、3Hチミジン取り込みを生じる。抗μ単独の添加は、増殖を生
じない。漸増する量のBAFFおよび10μg/mlの抗μとともに、脾細胞に10μg/mlのコントロールヒトIgを添加した場合、増殖のレベルにおいて穏やかな減少が存在した。対照的に、同じ条件下で、10μg/mlのヒトBAFF−R:hIgG1融合タンパク質を、このアッセイに添加した場合、増殖の程度は、BAFF単独処理について観察されたレベルへ減じる。このことは、BAFF−R:hIgG1融合タンパク質がBAFFおよび抗μによって誘導される脾細胞の増殖を阻害し得ることを示す。
【0085】
(実施例10:BAFF−R:hIgG1を用いた、Raji細胞に対するBAFFの結合のブロック)
本実施例においては、Raji B細胞リンパ腫株に結合するBAFFの減少を生じる、BAFF−R:hIgG1融合タンパク質とのBAFFのプレインキュベーションを記載する。
【0086】
このFACSアッセイでは、20μg/ml〜39ng/mlにわたる2倍稀釈で、ヒトBAFF−R:hIgG1またはヒトLTβR:hIgG1とともに、または融合タンパク質なしのいずれかで、200ng/ml FLAG標的化ヒトBAFFを、氷上で30分間、プレインキュベートした。Ca2+もMg2+も含まず、そして10%FCS(JRH)および0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSを含有するFACS緩衝液中でインキュベーションを行った。プレインキュベーション後、BAFF融合タンパク質混合物を5×106Raji(ATCC)細胞/mlに添加した。このインキュベーションを、3
0分間氷上に置き、次いで4℃で2mlのFACS緩衝液を用いて細胞を洗浄した。結合したBAFFを検出するため、5μg/mlの抗FLAG抗体M2(Sigma)を細胞に添加し、30分間氷上でインキュベートした。この細胞を再度上記のように洗浄し、次いで1:100稀釈のPE結合体化ロバ抗マウスIg(Jackson Immuno Research)とともに30分間インキュベートした。FACS緩衝液を用いて細胞を再度洗浄した後、細胞を1%パラホルムアルデヒドで固定し、そしてFACS(登録商標)(Becton Dickinson and Co.)で読み取った。
【0087】
図9は、BAFFブロッキングアッセイの結果を示す。Raji細胞に対するBAFF結合を試験するFACS(登録商標)分析から得たMFI(平均蛍光強度)の読み取りを示す。黒四角は、細胞への結合の前にBAFFとともにヒトBAFF−R:hIgG1をプレインキュベートする場合のデータを示す。丸は、BAFFに対する非特異的融合タンパク質であるヒトLTβR:hIgG1の添加によって得られた曲線を示す。x軸は、細胞とのインキュベーション前に200ng/mlまでBAFFに添加された融合タンパク質の量を示す。
【0088】
融合タンパク質をヒトBAFFとともにプレインキュベートしないとき、サンプルの平均蛍光強度(MFI)は80であった。ヒトLTβR:hIgG1をBAFFとともにプレインキュベートするときは、20μg/mlでさえ、Raji細胞に対するBAFF結合の検出は変化しない。しかし、ヒトBAFF−R:hIgG1をBAFFとともにプレインキュベートするとき、625ng/mlの融合タンパク質でさえ20〜25まで、MFIは実質的に減少する。この実験についてのバックグラウンドMFIは7である。従って、BAFF−R:hIgG1は、RajiB細胞に対するBAFF結合をブロックするのに非常に効果的である。
【0089】
(実施例11:BAFF−R−IgGは、トランスジェニックマウスにおいて狼瘡様自己免疫障害を減弱する)
本実施例は、末梢B細胞プールを減じ、そして巨脾腫症および腎炎の発生を阻害するBAFF−R−Igの効果を記載する。
【0090】
5ヶ月齢のBAFFトランスジェニック(Tg)マウス(C57BL/6)および年齢の適合する同腹仔を、本実験に用いた。BAFF Tgマウスは、リンパ性障害および全身性エリテマトーデスに類似の自己免疫の表現型を表す(Mackayら、1999)。この表現型は、増大した末梢性B細胞集団を含み、この集団は、移行性(Transitional 1)(T1)および2(T2)、成熟(M)、帯域(marginal zone)(MZ)およびCD1high/IgMhighのB細胞を含んだ。
【0091】
PBS、400mgの精製したヒトIgG(hIg)(Sandoz,Basel,Switzerland)(3/群)、または400μgのCHO由来ヒトBAFF−R−huIgG1(hBCMA−Ig)融合タンパク質(2/群)を、0日目、4日目、7日目、11日目、14日目、18日目、21日目、25日目、28日目、32日目、35日目に、このマウスに腹腔内投与し、40日目に屠殺した。
【0092】
屠殺の時点で脾臓重量を測定し、そして低張性緩衝液中での赤血球溶解後、単一細胞懸濁液を調製した。FITC結合体化抗CD21/CD35、PE結合体化抗IgDおよび抗CD1、cychrome結合体化抗CD45R/B220、およびビオチン結合体化抗IgMを用いて、フローサイトメトリーを実施した。全てのmAbは、Pharmingen(San Diego,CA)から購入した。簡略には、Fcレセプターを氷上で10分間10μg/ml Fc Block(Pharmingen)を用いてブロックし、続いて氷上で30分間ビオチン結合体化mAbを添加し、細胞を1回洗浄し、続いて、FITC、PE、Cychrome結合体化Ab、ストレップ−アビジンAPCおよび10μg/ml Fc Blockを添加した。細胞を氷上で30分間インキュベートし、1回洗浄し、そして0.5%パラホルムアルデヒドに懸濁した。細胞蛍光データをFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson,San Jose,CA)上で得て、CELLQuest(software Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0093】
尿分析用のMultistix 10 SG試薬片(Bayer Corp.,Diagnostics Division)を用いてマウス尿中のタンパク質の存在を測定した。
【0094】
結果を以下の表11Aおよび11Bに示す:
【0095】
【表2】

3ヶ月齢Baff Tgマウス(n=3)および年齢の適合した同腹仔(n=2)の脾臓を単離し、そして材料および方法に記載のようにFACS分析に供した。T1、T2、MおよびMZ細胞を、以下の表面マーカーの発現によって規定した(hi:high(高).,lo:low(低).,int:intermediate(中間)):
T1:IgD-、IgMhigh、CD21lo
MZ:IgD-、IgMhi、CD21
T2:IgD+、IgMhi、CD21hi
M:IgD+、IgMlo、CD21int
【0096】
【表3】

10ヶ月齢Baff Tgマウス(n=3)および年齢の適合した同腹仔(n=3)を、表1に記載のようにFACS分析に供した。
Baff Tgマウスへのh BAFF−R−Igの投与後、脾臓中のT1、T2、M、MZ集団およびCD1high/IgMhighB細胞は、PBSおよびhIgで処理したBAff Tgマウスに比べて、有意に低下した。T1、T2、M、MZおよびCD1high/IgMhighのB細胞の総数は、PBSで処理したコントロールの同腹仔のレベルと同程度かまたは低いレベルまで減じた(図10a、10b、10c)。
【0097】
Baff TgマウスのBAFF−R Ig処置は、BAFF−R処置マウスが正常サイズの脾臓を有した一方で、コントロール処置Baff Tgマウスが巨脾腫を示したという観察により証明されるように、Baff媒介性自己免疫疾患の低減を生じた(図11)。さらに、タンパク尿の発症、腎不全の徴候がBAFF−R−Ig処置マウスにおいて阻害されたのに対し、コントロール処置Baff Tgマウスでは、タンパク尿レベルの増加により決定されるように、腎炎を発症した(図12)。
【0098】
Baffについてのトランスジェニックマウスは、末梢B細胞の数が非常に増加しており、そして本発明者らの分析により、これらのマウスにおいてT1、T2、MZ B細胞亜集団が主に増大していることが示された。B細胞発生(T1およびT2)の移行段階は、チェックポイントであり、この段階において、自己反応性B細胞はおそらく除去されている。CD1hi/IgMhigh B細胞(これは、周辺領域に存在する傾向にある)はまた、Baff Tgマウスにおいて非常に増加していた。この後者のB細胞集団は、NZB/NZW狼瘡マウスにおいて自己抗体生成の主要な供給源であることが示された。Baff TgマウスをBAFF−R Igで処置することにより、T1、T2、MZおよびCD1hi B細胞集団が、野生型同腹仔コントロールにおいて見出されたレベルと同様以下のレベルまで減少した。
【0099】
BAFF−R Igは、末梢B細胞プールを減少し、そして巨脾症および腎炎の発症を阻害するように機能する。従って、全身エリテマトーデス、ループス腎炎におけるその有用性に加え、BAFF−R Igの作用はまた、本質的に自己免疫疾患であるB細胞媒介性疾患(例えば、重症筋無力症、自己免疫溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質症候群、シャーガス病、グレーブス病、ヴェーゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎および急速進行性糸球体腎炎)においても同様に有用である。この治療薬剤はまた、プラズマ細胞障害(例えば、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、原発性または免疫担当細胞関連アミロイド−シス、および意味未決定の単一クローン性高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermine significance)(MGUS))において適用を有する。腫瘍学の標的としては、B細胞癌腫、白血病、およびリンパ腫が挙げられる。
【0100】
(実施例12:BAFFトランスジェニックマウスにおける平均動脈圧)
この実験は、BAFFトランスジェニックマウスにおける血圧の測定を記載する。BAFFトランスジェニックマウスの表現型評価の間に行われた観察により、マウスにおける高血圧についての可能性が示された。
【0101】
上記のBaff Tgマウスを、ケタミンで麻酔した。左頸動脈を頸部切開により露出させた。血圧および心拍数を測定するために、頸動脈にカテーテルを挿入した。このカテーテルを圧力変換器に接続し、そして血圧をGouldデータ取得システム(Po−Ne−Mah Data Aquisition SystemおよびGould polygraph)を用いて測定した。拍動圧波形から、収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧および心拍数を導出した。2つの群のマウスを用いた:BAFFトランスジェニック(n=8)および野生型コントロール(n=9)。
【0102】
図13は、2群を平均した平均動脈圧(MAP(mmHg))を示す。示されるように、BAFFトランスジェニックマウスは、102±8mmHgという平均MAPを有した。コントロールマウスは、92±6mmHgという平均MAPを有した。従って、BAFFマウスは、コントロールに対して、MAPが10mmHg増加していることを示すが、統計的有意には達しなかった(ANOVA)。
【0103】
データのより詳細な分析を図14に示す。この図において、個々の動物からの結果を示す。野生型コントロール(BAFF−)において、データ分布は、代表的な二項分布になった。対照的に、BAFFトランスジェニックマウス(BAFF+)における血圧は、それらが2群に分類されるかのように現れた。一方の群は、120〜130mmHg範囲であり、もう一方の群は、80〜90mmHg範囲であった。
【0104】
集団として、BAFFトランスジェニックマウスは、ネガティブコントロールマウスと比較して、高血圧の傾向を有する。動脈圧の個々のレベルの分析により、BAFFトランスジェニックマウスが2つの亜集団、すなわち、一方は、高血圧、もう一方は正常血圧に分けられる。従って、可溶性BAFF−R、融合タンパク質または抗体ホモログの投与は、高血圧の効果を改善し得る。
【0105】
(実施例13:確立された疾患を有するSNF1マウスのBAFF−R−Ig処置は、重篤な腎炎への進行を遅らせる)
雌性狼瘡易発性(SWR×NZB)F1(SNF1)マウス(21週齡であり、中程度の腎炎(30〜100mg/dl タンパク尿)を示す)に、200μgの融合タンパク質(ヒトBAFF−R−huIgG1(hBCMA−Ig))、ヒトIgG(HuIgG)(Sandoz)または200μlのPBSを1週間に1回、8週間にわたり、腹腔内で与えた。各マウスの尿をAlbustix(Bayer Corp.,Terrytown,NY)を用いてタンパク尿について1週間に1回モニターした。100mg/dlを超えるタンパク尿を、重篤な腎炎とスコアリングした。BAFF−R−Igを一過性にトランスフェクトしたEBNA 293細胞から生成した。hBCMA−Igを過剰発現する293細胞由来の馴化培地を、プロテインAカラムにロードした。タンパク質を25mM リン酸 100mM NaCl pH2.8を用いて溶出し、続いて、1/20容量の0.5M NaPO4 pH8.6を用いて中和した。OD280に基づいて選択した画分を、還元および非還元のSDS−PAGEゲルおよびウェスタンブロットに供して、精製タンパク質を同定した。
【0106】
処置の3週間後、HuIgGおよびPBSを与えたマウスのそれぞれ75%および87.5%と比較して、BAFF−R−Igで処置したマウスの50%が重篤な腎炎を示したという結果になった(図15を参照のこと)。これらのデータは、可溶性BAFFレセプター、BCMA−IgがB細胞媒介性自己免疫疾患(例えば、ループス腎炎)をブロックするように機能し得、疾患進行において顕著な遅延を生じる。
【0107】
(実施例14:正常マウスのBAFF−R−Ig処置は、脾臓樹状細胞(DC)の数の減少および異型の脾臓局在を生じる)
7週齡の雌性BALB/cマウス(3匹/群)に、20μgまたは50μgのヒトBAFF−R−IgG1(hBCMA−Ig)、50μgのヒトIgG(HuIgG)または100μlのPBSのいずれかを、1週間に1回、4週間にわたり、腹腔内で与えた。hBCMA−Ig融合タンパク質を、安定にトランスフェクトしたCHO細胞株の培養上清から精製した。脾臓を最後に注射してから8日後に得て、そして37℃で1時間、コラゲナーゼ(Sigma cat#C−5138)で消化した。単一細胞の懸濁物を調製し、高浸透圧緩衝液中でRBCを溶解し、そして細胞を3回、PBSで洗浄した。脾細胞を、抗CD11c−ビオチン、続いて、ストレプトアビジン−APC、抗CD8a−cychrome、および抗CD4−FITCで染色することによりフローサイトメトリー分析用に調製して、DC集団を評価した。
【0108】
別の実験において、雌性BALB/c(N=3)マウスに、100μg hBCMA−Igを1週間に1回、4週間にわたり腹腔内で与えた。その後、脾臓を、CO2で冷却した2−メチルブタンを用いてOCT中に急速凍結した。低温切片を切り出し、そしてアセトン固定した。切片を、DCを可視化するために抗CD11c−ビオチン、続いてストレプトアビジン−AP、そして基質BCIP(Pierce)とともに、好金属性マクロファージを可視化するためにmAb MOMA−1、続いて抗ラットIgG−HRP(Jackson ImmunoResearch)そして基質3,3’ジアミノベンジジン(Sigma,St.Louis,MO,Cat.#D−1293)とともに、濾胞性樹状細胞(follicular dendritic cell)(FDC)を可視化するために抗CD35−ビオチン、続いてストレプトアビジン AP、そして基質(アルカリホスファターゼ基質キットI,Vector cat#SK−5100)とともにインキュベートした。
【0109】
20μgまたは50μgのBCMA−Igのいずれかで1週間に1回、4週間にわたりインビボで処置したマウスは、HuIgGおよびPBS処置コントロールと比較して、脾臓CD11c+DCにおいて有意な減少を示した(ステューデントt検定によりp<0.05)。この減少は、試験した全てのCD11c+ DC集団について見られた:CD8a−CD4−、CD8a+CD4−、およびCD8a−CD4+(図16、表14A)。
【0110】
【表4】

脾臓DC(これは、重要な抗原提示細胞である)におけるこの減少は、B細胞活性化、成熟および体液性免疫に影響を及ぼし得る。
【0111】
凍結脾臓切片を、材料および方法において記載したように、マウスから得た。BCMA−Ig処置マウスは、抗CD11cで染色した場合に、異型のDCホーミングパターンを示した。DCは、通常は、チャネルにまたがる周辺領域における濃度で、白色脾髄のT細胞領域内および周辺領域内に局在する。しかし、BCMA−Ig処置マウス由来のDCが見出され、これは、周辺領域の周界を取り囲んでおり、そして白色脾髄内にさらに移動し得ることはほとんどないようである(データは示さず)。従って、可溶性BAFFレセプターとのBAFF/BAFF−R相互作用のブロッキングは、抗原提示細胞として機能するそれらの能力に影響を及ぼし得るDCのホーミングパターンを妨害し、それによりB細胞活性化、成熟および体液性免疫に影響を及ぼすようである。さらに、BCMA−Ig処置マウスの脾臓は、免疫組織化学により決定されるように、CD35+FDCを欠いていた(データは示さず)。FDCは、胚中心(GC)内のB細胞に抗原を提示するように機能するので、このような細胞の欠如は、GC構造およびB細胞親和性成熟に対して好ましくない影響を有し得る。
【0112】
本発明のポリペプチド、組成物および方法において、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく種々の改変および変化が行われ得ることは当業者に明らかである。従って、本発明は、本発明の改変および変化が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入る場合は、これらの改変および変化を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−116790(P2011−116790A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−59944(P2011−59944)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【分割の表示】特願2001−516900(P2001−516900)の分割
【原出願日】平成12年8月16日(2000.8.16)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(501223984)
【Fターム(参考)】