免疫調節性生体分子を組み合わせて送達するためのヒドロゲル
本開示の一実施形態は、ヒドロゲル形成性ポリマー、免疫細胞を補充もしくは維持するように機能し得る免疫調節性生体分子、および抗原関連生体分子を含む免疫調節性組成物に関する。本開示の別の実施形態は、動物に、投与部位において上記の免疫調節性組成物を投与することによって、抗原を、動物における抗原提示細胞に提供するための方法に関する。次に、上記ヒドロゲル形成性ポリマーからその場でヒドロゲルを形成し、次いで、上記免疫調節性生体分子を使用して、少なくとも1つの抗原提示細胞を上記投与部位に補充し、最終的には、上記抗原提示細胞による上記少なくとも1種の抗原関連生体分子のファゴサイトーシスを誘導する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の引用)
この出願は、2009年4月22日に出願された米国仮出願第61/171,663号(これは、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
(政府の権利の陳述)
この開示は、National Institutes of Health(NIH R21AI064179−01)からの資金供与を少なくとも部分的に使用して開発された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(背景)
免疫系は、望ましくない外来生物(例えば、ウイルス、細菌および寄生生物)による傷害から動物を保護する。上記免疫系は、2つの基本的な方法で機能する。先天免疫は、一般的なタイプの外来生物もしくは外来物質を単純に攻撃しかつ死滅させる、非常に単純な動物にすら見いだされる基本的な防御である。獲得免疫は、身体が遭遇しかつ以前に防御したことがある外来生物に身体が応答する、防御のはるかに複雑な形態である。
【0004】
獲得免疫は、多くの現代的医療処置(特に、ワクチンのような後天性処置)の基礎を形成する。上記免疫系が、最初に、特定の外来生物もしくはさらには身体自体の異常な一部(例えば、癌細胞)に応答するように教育される場合、獲得免疫は、それらの望ましくない生物もしくは細胞を身体が非常に効率的に攻撃することを可能にする。しかし、上記身体が環境中の多くの有害なものを攻撃することを学習しないように、獲得免疫は、生物もしくは細胞が危険であると認識し、破壊するために特異的に標的とする前に、非常に特殊な環境を必要とする。
【0005】
獲得免疫の1つのタイプにおいて、抗原提示細胞(APC)といわれる特別な免疫系細胞は、上記望ましくない生物もしくは細胞を飲み込み、それを、抗原と言われる成分へと処理し、次いで、それら抗原を、特別な抗原提示タンパク質における表面上に提示しなければならない。上記免疫系の攻撃細胞のみが、上記抗原を認識するように学習し得、それら抗原を含む上記望ましくない生物もしくは細胞を攻撃し得る。このプロセスは、特定の化学物質(しばしば、サイトカインといわれる(これらは化学誘引物質およびケモカインを含む))が、起こるべき種々の事象に関して存在する必要があることによって、さらに調節される。例えば、APCは、しばしば、身体全体で見いだされ、抗原が存在する領域へと、特定の化学誘引物質であるケモカインによって特異的に補充されるのみである。
【0006】
免疫調節性薬剤(例えば、ワクチン)は、しばしば、獲得免疫応答を引き起こすことに失敗するか、もしくは弱い応答を引き起こすに過ぎない。なぜなら、それらは、免疫を獲得するために使用される複雑なシステムの十分な要素を誘発しないからである。例えば、抗原としてウイルスDNAを使用すること、または別の方法で、傷害を受けた領域における抗原の生成を引き起こすためにDNAを使用することは、しばしば有用である。しかし、裸のDNAワクチンおよびDNA抗原負荷微粒子は、しばしば、筋肉内投与される場合に、顕著な免疫応答を誘導することに失敗する。これは、主に、かなりの数のAPCが上記注射部位に補充されないという事実に起因する。
【0007】
ワクチンの有効性を増大させることへの1つのアプローチは、アジュバントといわれる別の組成物を同時投与(co−administer)することである。上記アジュバントは、通常、望ましくない侵入者として大部分の免疫系によって認識される何かである。従って、身体は、上記アジュバントと戦いはじめ、上記プロセスにおいて、上記領域中で新たな抗原を探索する。しかし、上記アジュバントの有効性は、上記免疫系が、上記アジュバントとの戦いに幾分従事し、上記ワクチン抗原のみに焦点を当てることはないという事実によって制限される。さらに、多くのアジュバントは、このような強力な応答を誘発し、それらは、上記注射部位付近でかなりの腫脹および疼痛を引き起こし、実際に、上記アジュバントに対して強力な免疫応答を有する個体に対して有害であり得る。
【0008】
ケモカインはまた、以前、抗原とともに注射されて、ワクチン接種を改善しようとされてきた。しかし、ケモカインは、上記投与部位を迅速に離れ、実質的には、注射の24時間以内になくなってしまう。この問題は、最初に、ケモカインの反復注射によって治療できると思われていたが、このような毎日の注射はまた、少なくともいくらかの研究において不成功であることが判明した。
【0009】
現在では、微粒子は、動物において免疫応答を誘導するために使用されたが、大きな成功はしていない。特に、APCによる取り込みを促進しかつ取り込み後に上記APCにおけるファゴソームから放出するように表面が機能づけられた微粒子が、生成された。これら微粒子は、抗原およびケモカインの両方を含んでいた。これら微粒子は、形成の間にタンパク質が喪失すること、上記微粒子が形成された後の上記タンパク質の不活性化、および上記タンパク質の不十分な破裂放出という欠点がある。さらに、APCの表面上で作用することが必要なケモカインタンパク質(例えば、MIP−3およびMCP−1)は、それらを含む上記微粒子がAPCによって取り込まれた後に役に立たず、上記投与部位へより多くのAPCを補充するのに役立たない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
本開示は、一般に、免疫調節性組成物および関連する方法に関する。より具体的には、本開示は、少なくとも2種の異なる生体分子を含むヒドロゲルを含む免疫調節性組成物および関連する方法に関する。
【0011】
一実施形態において、本開示は、ヒドロゲル形成性ポリマー、免疫細胞を補充もしくは維持するように機能し得る免疫調節性生体分子、および抗原関連生体分子を含む免疫調節性組成物を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、動物に投与部位において上記の免疫調節性組成物を投与することによって、動物にいて抗原提示細胞に抗原を提供するための方法を提供する。次に、上記ヒドロゲル形成性ポリマーからその場でヒドロゲルが形成され、次いで、上記免疫調節性生体分子を使用して、少なくとも1種の抗原提示細胞が上記投与部位へ補充され、最終的に、上記抗原提示細胞による上記少なくとも1種の抗原関連生体分子のファゴサイトーシスが誘導される。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態は、以下の利点のうちの1つ以上を達成し得る:
・上記投与部位へのAPCの多くの補充;
・上記投与部位における複数の(例えば、2種もしくは3種以上の)免疫調節性生体分子の同時送達;
・上記免疫調節性生体分子および抗原関連生体分子(これらは、より多くのAPCを補充し得、より効率的な抗原提示を可能にし得る)の制御された送達;
・上記ヒドロゲルは、投与後に迅速に分解し始めて、抗原関連生体分子(任意の微粒子を含む)が、APCが到達した場合に存在することを可能にし得る;
・上記ヒドロゲルネットワークの放出および分解の速度の微細な調節;
・被包もしくは生体活性の相当な喪失なしに、微粒子およびケモカインの大用量の送達;
・生理学的条件でのヒドロゲルの形成は、光架橋もしくは他の従来の架橋方法の必要性を排除し得る。
【0014】
当業者は、全ての実施形態が全ての利点を達成し得るわけではなく、いくつかの実施形態は、異なる利点を達成し得ることを認識する。
【0015】
本開示の実施形態のより完全な理解は、本開示の種々の実施形態を記載する添付の図面とともに考慮される詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aおよび図1Bは、ヒドロゲルを調製し、これを使用して、ケモカインおよび微粒子を動物に送達するための全体的なスキームを図示する。
【図2】図2は、免疫調節性ヒドロゲルに対する樹状細胞の1つの潜在的な応答を図示する。
【図3A】図3Aは、APCによるIL−10生成に対する、上記ヒドロゲル中にインターロイキン−10(IL−10)の低分子干渉性RNA(siRNA)を含む効果を図示する。
【図3B】図3Bは、APCによるIL−10生成に対する、上記ヒドロゲル中にインターロイキン−10(IL−10)の低分子干渉性RNA(siRNA)を含む効果を図示する。
【図4A】図4Aは、免疫調節性ヒドロゲルによるAPC細胞表面マーカーに対する効果を図示する。
【図4B】図4Bは、免疫調節性ヒドロゲルによるAPC細胞表面マーカーに対する効果を図示する。
【図5A】図5Aは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図5B】図5Bは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図5C】図5Cは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図5D】図5Dは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図6】図6は、ゲル時間および種々の免疫調節性ヒドロゲルの組成物を図示する。
【図7】図7は、種々の免疫調節性ヒドロゲルの被包効率を図示する。
【図8】図8Aおよび図8Bは、免疫調節性ヒドロゲルの構造的形態を図示する。
【図9】図9Aおよび図9Bは、微粒子ありまたはなしでヒドロゲルから上記ケモカインMIP3αの放出を図示する。
【図10】図10は、微粒子ありおよびなしで、ならびに種々のケモカイン用量で異なるヒドロゲルに応じたAPCの化学走性を図示する。
【図11A】図11Aは、免疫調節性ヒドロゲルに応じてコラーゲンを介したAPC移動研究を図示する。
【図11B】図11Bは、免疫調節性ヒドロゲルに応じてコラーゲンを介したAPC移動研究を図示する。
【図11C】図11Cは、免疫調節性ヒドロゲルに応じてコラーゲンを介したAPC移動研究を図示する。
【図12】図12A〜12Fは、三次元免疫調節性ヒドロゲルを介したAPC移動を図示する。
【図13】図13は、免疫調節性ヒドロゲルにおけるAPCによる微粒子ファゴサイトーシスを図示する。
【図14】図14は、ヒドロゲル微粒子によるAPCにおけるIL−10遺伝子サイレンシングの有効性を図示する。
【図15A】図15Aは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15B】図15Bは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15C】図15Cは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15D】図15Dは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15E】図15Eは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15F】図15Fは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図16】図16は、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボ細胞傷害性T細胞活性を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特許および特許出願のファイルは、少なくとも1枚のカラーで仕上げられた図面を含む。カラー図面付きのこの特許および特許出願公開のコピーは、請求および必要な料金の支払いの際に、官庁によって提供される。
【0018】
本開示は、種々の改変および代替の形態に影響を受けやすいが、特定の例示的実施形態が図面において示されており、以下により詳細に記載される。しかし、特定の例示的実施形態の記載は、本発明を開示される特定の形態に限定することを意図しないが、対照的に、この開示は、一部、添付の特許請求の範囲によって図示されるように全ての改変および等価物を網羅することであると理解されるべきである。
【0019】
(説明)
本開示は、免疫調節性組成物およびこれを使用するための方法に関する。一実施形態において、本開示の免疫調節性組成物は、ヒドロゲル形成性ポリマー、免疫調節性生体分子、および抗原関連生体分子を含む。一般に、免疫調節性生体分子は、免疫細胞(例えば、抗原提示細胞(APC))を上記免疫調節性生体分子が位置する領域において補充、もしくは維持するのを助け得る。さらに、抗原関連生体分子は、上記補充された免疫細胞において特異的応答(例えば、抗原特異的応答)を誘導し得る。上記免疫調節性組成物は、各タイプの複数の異なる分子を含み得る。他のタイプの生体分子(例えば、抗原提示もしくは上記提示された抗原に対する攻撃細胞反応の効率を増大させ得る生体分子)もまた、含まれ得る。一実施形態において、上記抗原関連生体分子は、その放出のタイミングを調節するために、微粒子中に存在し得る。
【0020】
本開示における使用に適した免疫調節性生体分子は、サイトカイン(例えば、ケモカインもしくは化学誘引物質)であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、それは、APCを攻撃および/もしくは維持し得るケモカインであり得る。標的APCは、獲得免疫応答(特に、上記抗原関連生体分子に対する獲得免疫応答)の誘導に関与する任意のAPCを含み得る。標的とされ得る特異的APCとしては、ランゲルハンス細胞および樹状細胞(例えば、骨髄性樹状細胞)が挙げられる。いくつかの実施形態において、未成熟APCは、補充のために標的とされ得る。適切なケモカインの例としては、マクロファージ炎症性タンパク質3α(MIP3α)、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、MIP1α、MIP1β、二次リンパ組織ケモカイン(SLC)、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP)、IL−8、Regulated on Activation Normal T Cell Expressed and Secreted(RANTES(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5もしくはCCL5としても公知))、および間質細胞由来因子−1(SDF−1)、またはこれらおよび他の因子の任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。具体的実施形態において、本発明の免疫調節性組成物は、免疫調節性生体分子のうちの2種以上もしくは3種以上のタイプを含み得る。
【0021】
具体的実施形態において、免疫調節性生体分子は、例えば、拡散もしくは分解によって組織に注射された場合に、通常は迅速に除去される分子(例えば、タンパク質もしくはペプチド)であり得る。上記ヒドロゲルは、上記生体分子のこの動きを緩慢にし得るか、もしくはより長期間にわたって可能にするために経時的に上記生体分子の多くを放出し得る。その間に、上記免疫調節性生体分子の量が上記投与部位付近で上昇させられる。例えば、上記ヒドロゲルは、数日間にわたって持続性の勾配を作り出すような様式で、任意の免疫調節性生体分子を放出し得る。この持続性の勾配は、上記投与部位における未成熟APCの数および/もしくはそれらの存在の持続時間の両方を増大させ得る。
【0022】
本開示における使用に適した抗原関連生体分子は、免疫応答を最終的に誘発する因子に連結した生体分子の任意のタイプであり得る。例えば、それは、上記因子自体、または上記因子を代謝するかもしくは上記因子の生成を引き起こす何かであり得る。上記因子が抗原である例において、生体分子の第2のタイプは、上記抗原、上記抗原を含む核酸、または上記抗原を生成するために抗原提示細胞において切断もしくは改変されるタンパク質もしくは他の分子であり得る。特定の実施形態において、第2のタイプの生体分子は、ワクチン接種免疫応答を誘導し得る抗原(例えば、任意の現在使用されているワクチン抗原)であり得る。第2のタイプの生体分子はまた、癌細胞に由来する抗原であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗原関連生体分子は、微粒子に含まれ得る。微粒子は、抗原関連生体分子の取り込みを改善し得る。なぜなら、微粒子はしばしば、APCによって容易に取り込まれるからである。微粒子の合成的な性質、およびそれらのサイズ(ミクロン)(これは、多くの病原体のものに類似である)は、APCによるこの取り込みを促進し得る。いくつかの実施形態において、本開示における使用に適した微粒子は、ファゴソーム(微粒子が、上記APCによって取り込まれた後に行き着く)を緩衝化することによって、細胞質へのそれらの負荷物の送達を増強するために、カチオン性であり得る。微粒子はまた、単に注射されるかもしくは別の方法で投与された場合よりヒドロゲル中で存在する場合に長く、上記投与部位に残り得る。
【0024】
特定の実施形態における微粒子は、ポリエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンのような合成ポリマー、ヒアルロン酸、キトサン、アルギネート、デキストランのような天然ポリマー、ならびにホスファチジルコリンのような脂質ベースの材料などから作製され得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、1種以上の異なるタイプの抗原関連生体分子は、本開示の免疫調節性組成物に含まれ得る。例えば、一実施形態において、2種の異なるタイプの核酸が、含まれ得る。微粒子が使用されるいくつかの実施形態において、上記1種以上の異なる抗原関連生体分子は、同じ微粒子中にともに含まれ得るか、またはそれらは、別個の微粒子中に存在し得る。潜在的に、APCが上記抗原を提示するために1つの微粒子を取り込むことのみが必要であるように、1つの微粒子中に両方を含むことは有利であり得る。
【0026】
免疫調節性生体分子でも抗原関連生体分子でもないさらなる生体分子がまた、本開示の免疫調節性組成物中に含まれ得る。例えば、攻撃免疫細胞を補充するかもしくはAPC上の抗原のそれらの認識を促進するケモカインが、含まれ得る。上記APCにおける種々のタンパク質をダウンレギュレートするsiRNAがまた含まれ得る。なぜなら、このダウンレギュレーションは、全体的な望ましい免疫応答を促進するからである。同様に、上記全体的な望ましい免疫応答を促進するタンパク質もしくはペプチドをコードするプラスミドもしくは他の核酸もまた、含まれ得る。例えば、APCによるIL−10の生成は、TH−1タイプ免疫応答(ウイルスのような細胞内病原体に対してより有効)もしくはTH−2タイプ免疫応答(大部分の細菌のような細胞外病原体に対してより有効)のいずれかを生じるように、減少もしくは増大させられ得る。
【0027】
これらさらなる生体分子は、免疫調節性組成物に含まれ得るのみであってもよいし、任意の微粒子の一部でもあってもよい。任意のさらなる生体分子の最も適切な位置は、上記さらなる生体分子が放出される必要がある場合におよび上記さらなる生体分子が有効であるために行く必要がある場所によって、決定され得る。上記さらなる生体分子が、上記APC内で特定の効果を引き起こす必要がある場合、微粒子中に含めることが、より有効であり得る。上記抗原関連生体分子の種々の例の場合と同様に、上記さらなる生体分子は、別個の微粒子中にあってもよいし、微粒子中に他の分子と合わされてもよい。
【0028】
以前に言及したように、本開示の免疫調節性組成物は、ヒドロゲル形成性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲル形成性ポリマーは、いったん投与されると架橋し得、さらなる成分が添加されるかもしくは状態が投与部位条件(例えば、温度もしくはpH)とマッチするように変化した後にのみ、ヒドロゲルを形成する。ヒドロゲル形成性ポリマーの使用は、上記ヒドロゲルの投与を促進し得る。投与後に形成されるヒドロゲルは、その場で架橋可能なヒドロゲルと言われ得る。例示的実施形態において、上記ヒドロゲルは、上記投与部位に通常存在する生理学的条件下で、加水分解を受ける可能性がある。上記ヒドロゲルはまた、生体適合性ポリマーのような生体適合性材料から作製され得る。
【0029】
その場で架橋可能なヒドロゲル(特に、筋肉内注射によって投与されるもの)を使用する具体的実施形態において、使用に適したヒドロゲル形成性ポリマーとしては、ビニルスルホン、アクリル誘導体化ポリサッカリド、チオール誘導体化ポリサッカリド、アクリル誘導体化ポリエチレングリコール、チオール誘導体化ポリエチレングリコール、および任意のこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。その場での重合は、免疫調節性生体分子の高負荷能を可能にし得、1種より多くの異なるタイプが使用されることを可能にし得る。
【0030】
本開示のヒドロゲルの化学的組成、ポリマー濃度、架橋の程度および他の特性は、分解の速度、および従って種々の成分の放出速度に影響を及ぼすように変動させられ得る。特定の実施形態において、本開示の免疫調節性組成物は、患者に注射され得、投与後約40秒〜60秒以内でヒドロゲルを形成し得る。不適切な量の生体分子がヒドロゲル形成前に失われない限りにおいて、ヒドロゲル架橋のより長い時間もまた適切であり得る。
【0031】
1つの非常に特別な実施形態によれば、免疫調節性組成物は、その場で架橋し得、かつ未成熟樹状細胞を誘引するためにケモカイン(例えば、MIP3α)ならびに抗原が負荷される微粒子を含み得るヒドロゲル形成性ポリマーを含み得る。
【0032】
別の実施形態において、ヒドロゲルは、投与前に形成され得るか、または非架橋形態で投与され得る。非架橋形態で投与される場合、ヒドロゲルは、生理学的温度およびpHにおいて架橋し得る。種々の例において、上記架橋ヒドロゲルもしくは非架橋ヒドロゲルが、筋肉内に、皮下に、もしくは皮内に投与され得る。
【0033】
架橋後に、任意の免疫調節性生体分子(例えば、ケモカイン)は、上記投与部位でAPCを補充および/もしくは維持するために、持続様式で上記ヒドロゲルから放出され得る。次いで、これらAPCは、抗原関連生体分子(これは、微粒子であり得る)を取り込み(ファゴサイトーシスし)得、最終的には、上記APCによる抗原の提示および免疫系攻撃細胞によるそれら抗原の認識を誘発し得る。上記抗原関連生体分子は、上記ヒドロゲルが分解するにつれて、例えば、3〜4日間の過程を経て、より利用しやすくなり得る。上記APCは、上記ヒドロゲルから放出される場合に、上記ヒドロゲルに入った後に、またはその両方で、上記抗原関連生体分子をとりこみ得る。
【0034】
特定の実施形態において、上記ヒドロゲルは、3〜4日間にわたって分解し得、このことは、APC補充と、上記抗原関連生体分子の利用可能性との間の同期化を可能にする。
【0035】
上記免疫調節性組成物および本開示の関連方法は、種々の目的のために使用され得る。例えば、それらは、ワクチンとして、または複数の増殖因子を異なる放出部位において身体に送達するために使用され得る。全体的に、上記免疫調節性組成物は、特定の同時投与される因子の容易な置換を可能にし得る。例えば、任意のケモカインが、上記系の免疫学的要件(例えば、投与部位、抗原、および標的免疫細胞)に依存して使用され得る。上記免疫調節性組成物はまた、種々の生体分子(例えば、CpGオリゴ、インターロイキン、種々のタンパク質など)の複数様式の送達のために使用され得る。
【実施例】
【0036】
本開示は、以下の実施例への参照を介してよりよく理解され得る。これら実施例は、例示的実施形態を記載するためにのみ含まれ、本発明の全体の外延を包含すると解釈されるべきではない。
【0037】
(実施例1:全体的な、提唱される送達形設計の概説)
図1Aに図示されるように、抗原DNAおよび他の免疫調節性生体分子を含む微粒子が調製され得る。第1のsiRNA(例えば、IL−10 siRNA)を、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)微粒子中に被包し得る。次いで、この微粒子を、ポリエチレンイミン(PEI)で改変して、カチオン性にし得る。次に、抗原DNA(例えば、プラスミドの形態にある)を、上記微粒子上に静電気的に負荷し得る。
【0038】
図1Bに図示されるように、上記DNAおよびsiRNAが同時負荷された微粒子を、第1のヒドロゲル成分中で混合し、次いでケモカイン(例えば、MIP3α)を、第2のヒドロゲル成分中で混合し得る。
【0039】
最後に、図1Cに図示されるように、上記2つの溶液を一緒に混合し得、例えば、動物への筋肉内注射によって投与し得る。ここでそれらは、ケモカインおよび捕捉された微粒子とともにその場で架橋ヒドロゲルを形成する。
【0040】
(実施例2:樹状細胞移動)
図2に図示されるように、上記その場で架橋されるヒドロゲルは、上記ケモカインを最初に放出し、これは、未経験の(未成熟の)樹状細胞(DC)をその近くに誘引する。上記DNA/siRNA保有マイクロスフェアは、上記ヒドロゲルが分解しかつDCによってファゴサイトーシスを受けるにつれて、後に放出される(または上記DCが上記ヒドロゲルに入る)。上記粒子表面上の二級アミンもしくは三級アミンの存在は、ファゴサイトーシスの後のエンドソーム(ファゴソーム)から逃れ、上記DCの細胞質に入ることを可能にするように、その緩衝能を増大させる。細胞質において、上記マイクロスフェアは、siRNAを放出し、これは、対応する遺伝子をサイレントにし、上記DNAが同じ細胞の核に送達されて、後に抗原提示を引き起こすことを可能にする。
【0041】
(実施例3:siRNAおよびDNAプラスミドの組み合わせ処方物送達、単一処方物送達による免疫調節−pDNA発現およびsiRNAの有効性)
図3に示されるように、微粒子を、IL−10 siRNAおよびルシフェラーゼをコードするプラスミドDNA(pDNA)を使用して実施例1のように調製した。骨髄由来初代APCを、これら微粒子でトランスフェクトした。上記微粒子は、伝統的なEXGEN500トランスフェクションシステムで達成されたものよりも大きなルシフェラーゼ発現の増大を示した。ルシフェラーゼ発現の有意な増大は、未処理細胞でも、上記pDNAを欠いている微粒子で処理した細胞でも、認められなかった(図3g)。従って、上記微粒子は、上記細胞によってその発現を可能にする様式で、APCへの上記pDNAの送達において有効であった。
【0042】
同様に、トランスフェクション後2日間および5日間はそれほど有効でなかったが、にもかかわらず、上記微粒子は、伝統的なsiPORT Amineシステムを使用して送達したIL−10 siRNAと同様に、IL−10発現の低下において有効であった。IL−10発現の有意な低下は、未処理細胞もしくはscrambled siRNAを含むマイクロスフェアで処理した細胞では認められなかった(図3h)。よって、上記微粒子はまた、少なくとも15日間にわたってIL−10 RNAをサイレントにし得る様式で、上記APCにsiRNAを送達することにおいて有効であった。
【0043】
(実施例4:siRNAおよびDNAプラスミドの組み合わせ、単一処方物の送達による免疫調節−細胞表面マーカー効果)
図4は、トランスフェクトしたAPCにおける細胞表面マーカーに対する実施例3の微粒子の効果を図示する。これら特定の細胞表面マーカーの存在は、APCの成熟を示し、従って、APC活性化(これは、強力な免疫応答に必要とされる)の伝統的な指標である。従って、上記実施例3の微粒子でトランスフェクトしたAPC上の上記マーカーの高発現レベルは、APCが成熟し、強力な免疫応答を引き起こし得ることを示す。
【0044】
(実施例5:siRNAおよびDNAワクチンの組み合わせ、単一処方物の送達による免疫調節)
図5は、B型肝炎DNA発現を研究するために、マウスへの微粒子の投与のための一般的なスケジュールを図示する。上記微粒子を、実施例3の微粒子と同じ様式で調製したが、上記pDNAは、ルシフェラーゼの代わりに、B型肝炎表面抗原(HbsAg)をコードするプラスミドであった。最初の免疫の6週間後および9週間後の両方で、インターフェロン−γ(IFN−γ)発現は、上記微粒子を受けたマウスにおいて、siRNAなし、裸のプラスミドDNA、もしくはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む微粒子を受けたマウスより遙かに高かった(図5A)。このことは、上記DNA/siRNA微粒子のみが、有意な抗ウイルス免疫応答をマウスにおいて誘導したことを示す。
【0045】
IL−4レベルは、上記siRNAを欠いている微粒子を受けたマウスにおいて増大したが、上記DNA/siRNA微粒子、裸のDNA、もしくはPBSを受けたマウスでは低かった。このことは、(高いIFNγレベルおよび低いIL−4レベルによって示されるように)TH1タイプ免疫応答に対する有意な相違を示し、それによって、上記処方物の免疫調節効果が確認される(図5B)。
【0046】
(実施例6:その場で架橋可能なヒドロゲル−ゲル化特性および微粒子)
図6は、その場で架橋可能なヒドロゲルのゲル化時間および他の情報を提供する。いくつかのヒドロゲルは、主に、テトラチオール化ポリエチレングリコールに架橋されたデキストランビニルスルホン(デキストランVS−PEG4SH)もしくはテトラチオール化ポリエチレングリコールに架橋されたポリエチレングリコールジアクリレート(polyethyleneglycol diactrylate)(PEGDA−PEG4SH)から作製される。「DS」は、上記ヒドロゲルポリマーの置換の程度を示す。Xは、第1のヒドロゲル成分(例えば、デキストランVSもしくはPEGDA)の重量/体積(w/v)パーセンテージを示し、Yは、第2のヒドロゲル成分(例えば、PEG4SH)のw/vパーセンテージを示す。100μL ヒドロゲルを、各例において調製した。微粒子ありおよびなしのゲル化時間、ならびに任意の非連結ポリマーの存在もまた、報告する。従って、微粒子が存在してもなお適切なゲル化は、種々の異なるヒドロゲル組成物で得られ得る。
【0047】
エチルスペーサーを有するデキストランビニルスルホン(デキストランVS)の合成を、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミドおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム 4−トルエンスルホネート(DPTS)触媒を使用して、先に言及したように行った。DPTSを、100ml テトラヒドロフラン(THF)中に5gのpTSA一水和物を溶解することによって合成した。pTSAに対して1モル当量の4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP,99%)を、この混合物に添加し、濾過して、沈殿物を得た。これを、ジクロロメタン中にさらに溶解し、ロータリーバキュームエバポレーターを使用して再結晶化した。デキストランビニルスルホンエステル合成を、16.425g DVSを90mlの不活性窒素飽和DMSO中に添加し、続いて、連続攪拌下で0.75g 3−MPAをこれに滴下する(3−MPA 対 DVSのモル比は、1:20であった)ことによって行った。上記反応を、遮光して室温で4時間にわたって継続させた。ビニルスルホン部分の光架橋を回避するために、上記反応を、遮光して行った。5gもしくは2.5gのデキストランを、30ml DMSO中に溶解し、30ml DMSO中の2.17g DCCおよび0.32g DPTSの溶液をそれに滴下し、透明な溶液が得られるまで攪拌した。DPTSは、弱酸性触媒であり、DCCの反応効率を増強させる。最後に、上記混合物を、遮光してDVS/MPA溶液に添加し、上記反応を、24時間にわたって室温で進行させた。反応の完了後に、N,N−ジシクロヘキシル尿素(DCU)塩を、真空フィルタを使用して濾過し、その生成物を、1000mlの氷冷100%エタノール中に沈殿させることによって回収した。上記沈殿物を、3000rpmで15分間の遠心分離、続いて真空乾燥を介して残りのエタノールから分離した。沈殿物を、少なくとも100mlの脱イオン水(pHを7.8に調節した)中に再溶解し、ボルテックスして、透明な溶液を得た。最後に、未反応ポリマーを、Amiconフィルタ(MWCO 10000Da,Millipore)を使用する限外濾過を介して除去し、その粘性の生成物を、凍結乾燥して水を除去し、NMRを使用して分析した。
【0048】
(実施例7:その場で架橋可能なヒドロゲル−ケモカインおよび被包効率)
図7は、MIP3αの理論的ケモカイン負荷効率を示す。「理論的」とは、試みられる最初の負荷(すなわち、ケモカインの出発量の100%)を示す。図7はまた、実施例6に記載されるヒドロゲルについてのケモカインが被包される(すなわち、実際に被包される、理論的量の割合)効率を示す。
【0049】
(実施例8:微粒子ありおよびなしのヒドロゲルの構造的形態)
図8は、実施例6および7に記載される組成を有する種々のヒドロゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。上記ヒドロゲル成分の異なる相対量で試験した両方のタイプのヒドロゲルを示す。微粒子を、矢印で表示する。その画像が示すように、全ての試験したヒドロゲルは、微粒子をそれらの構造中に組み込むことができた。上記微粒子は、層中に沈着する傾向があった。
【0050】
(実施例9:ヒドロゲルからのインビトロでの放出研究)
図9は、実施例6〜8に記載されるタイプのうちの種々のヒドロゲルについてのインビトロでのMIP3α放出データを表す。MIP3αの放出は迅速であり、僅か数時間後に高レベルに達し、次いで、定常的な放出のプラトーになる。この迅速な初期放出、その後の、定常レベルは、上記MIP3αが、APCを投与部位へと迅速に補充し、次いで、新たなAPCを数日間にわたって補充し続けることを可能にするはずである。
【0051】
(実施例10:インビトロでの化学走性)
図10は、TranswellTM Chemotaxis Protocolを使用して集めたインビトロ化学走性データを示す。実施例6〜8に記載されるタイプのヒドロゲルに、100μLのゲルあたり50ngのMIP3αを負荷した。ヒドロゲルを、異なるポリマー濃度で調製した。類似の量の化学走性が、微粒子ありもしくはなしの異なるゲルで認められた。このことは、実施例10で認められたMIP3αの規則的な放出が、APCを補充するにおいて有効であることを示す。
【0052】
(実施例11:コラーゲン組織モデルを介するAPC移動)
図11Aは、コラーゲンゲルがどのように調製されるか、および種々の本開示のヒドロゲルが、APCを、上記ゲルを介して移動させ得るか否かを試験するためにどのように使用されるかの模式図を示す。APCがコラーゲンゲルを介して移動する能力は、APCが生きている組織を介して移動する能力と相関する。上記コラーゲンゲルを調製するために、6ウェルプレートの各ウェルを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の型を使用して、3つの同心円状のゾーンに分けた。真ん中のゾーンをコラーゲン溶液で満たし、30分間にわたってゲル化させた。最も外側のゾーンを、初代APCおよび赤いポリスチレン粒子含有コラーゲン溶液で満たし、30分間にわたってゲル化させた。最も内側のゾーンを上記デキストランVS DS2 10X10Y(もしくは関連するコントロールについてはMIP3αケモカインのボーラス)で満たし、30分間にわたってゲル化させた。金属構築物を最も内側のゾーンの上部に配置し、培養培地を、上記外側のゾーンに添加した。
【0053】
図11Bは、最初に最も外側のゾーンに存在する初代APCがどのようにして、真ん中および内側のゾーンに移動したかを示す。ケモカインはまた、真ん中のゾーンに移動させた。パネル写真において、上記ケモカインボーラスもしくは上記ヒドロゲルのいずれかが、真ん中のゾーンに存在した場合に4時間後および18時間後に上記APC移動が認められ得るが、ケモカインを使用しなかった場合には認められ得ない(白色破線は、時間ゼロでの最初のAPCゾーン−コラーゲンゾーンの境界を示す)。従って、本開示のヒドロゲルは、コラーゲンへのAPC移動を引き起こし得、生きている組織において同様の移動を引き起こし得ると予測される。
【0054】
図11Cは、上記ケモカインに応じて中心のヒドロゲルへAPCが移動していることを示す。上部のパネルは、単一画像を形成するために一緒に付けた一連のフレームの位相差画像を示す。APC移動は、上記画像の右側に向かって移動もしくは蓄積した小さな円形の細胞として認められ得る。下部のパネルは、単一の画像を形成するために一緒に付けた一連のフレームの蛍光画像を示す。ポリスチレン粒子は赤色であり、カルセイン染色初代APCは緑色である。APCの、上記コラーゲンゾーンおよびヒドロゲルへの移動が認められ得る。このことは、APCが、上記微粒子も位置する本開示のヒドロゲルへと移動し得ることを示す。
【0055】
(実施例12:ヒドロゲルのAPC浸潤)
図12は、ヒドロゲルを介したAPCの移動を示す。実施例6〜8に記載されるタイプの種々のヒドロゲル、ならびにケモカインを欠いているコントロールヒドロゲルを、赤色標識した微粒子とともに調製した。緑色標識したAPCを上記ヒドロゲルの付近に配置して、上記APCが、上記ヒドロゲルに入るか否かを研究した。ケモカインを有する全てのヒドロゲルは、実質的な浸潤を示した一方で、上記ケモカインを欠いているヒドロゲルは、浸潤を示さなかった。よって、上記ヒドロゲル浸潤は、上記ケモカインに応じている。このデータはまた、APCが、本開示に従う種々のヒドロゲルに入る能力をさらに確認する。
【0056】
(実施例13:微粒子のファゴサイトーシス)
図13は、本開示のヒドロゲル内部の種々の緑色に標識されたAPCを示す。微粒子は赤色で標識される。第3のパネルにおける上記赤色(第1の)および緑色(第2の)画像の重ね合わせは、赤色の粒子が、上記APCの内部に位置することを明らかに示す。このことは、それらがファゴサイトーシスを介してAPCによって取り込まれたことを示す。
【0057】
(実施例14:ヒドロゲル中の微粒子のインビトロ遺伝子サイレンシング効力)
図14は、本開示のヒドロゲルから微粒子を取り込んだAPCにおけるIL−10遺伝子サイレンシングを示すデータを表す。骨髄由来初代APCを、ヒドロゲル包埋したpgWizLuciferase pDNAおよびIL−10 siRNAを含むPEI−PLGA微粒子に曝した5日後に試験した。IL−10遺伝子サイレンシングを、RT−PCRを使用して定量した。全ての試験群を、上記未処理群および微粒子のみの群を除いて、実施例6〜8に記載されるタイプのヒドロゲルベースの処方物に供した。コントロールナノ粒子は、scrambled siRNA配列を含んだ。微粒子を含まないヒドロゲルもしくはコントロール微粒子のみは、未処理細胞と比較して、IL−10発現の低下をほとんど示さなかった。機能的コントロール粒子を含む全てのヒドロゲルは、はるかにより有意な低下を示した。1つのヒドロゲル(デキストランVS DS2 10X10Y)は、コントロール微粒子で細胞をトランスフェクトした場合とほぼ同程度のIL−10発現の低下を示した。全体として、上記結果は、本開示のヒドロゲル中に含まれる微粒子が、APCによって取り込まれ、上記微粒子中のsiRNAが、上記APC内の免疫調節タンパク質のタンパク質発現を破壊し得ることを示す。
【0058】
(実施例15:弱い免疫原性のA20 B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるインビボでの免疫調節:概念の証明)
種々の処方物から生じる免疫応答を体系的に研究するために、被包されたIL10 siRNAありまたはなしの微粒子を、Balb/cマウスの筋肉内に投与した(図15A)。さらに、免疫刺激中心(immune priming center)を作り出す効果を評価し、免疫応答の程度およびタイプに対するヒドロゲルの分解速度の効果を調査するために、マウスを、本開示の免疫調節性組成物で免疫した。これら組成物は、MIP3αおよびDNA/siRNA微粒子を含んだ。1群あたり5匹のマウスからプールした脾細胞を、CD4+細胞およびCD8+細胞へと、フローサイトメトリーを使用して精製し(図15B)、A20タンパク質とインキュベートした未処理脾細胞で再刺激した。図15Cは、CD4+細胞が培養培地中に放出したTh1特異的IFN−γおよびTh2特異的IL4の濃度を示す。IFN−γ生成は、迅速に分解するデキストランVS 10X10Y DS2ヒドロゲルを使用して、ケモカインおよびDNA−IL10 siRNA負荷微粒子を同時送達した場合に、顕著に増大した。IL4発現は、全ての処方物において顕著に制限された。このことは、10X10Y DS2ヒドロゲルで免疫したマウスにおけるTh1表現型に対する「歪んだ」CD4+ Tヘルパー細胞応答を強く示唆する。ボーラスケモカインおよびpDNA負荷微粒子で免疫した動物、すなわち、実際にIL10 siRNAを同時送達したマウスは、この弱い免疫原性腫瘍モデルにおいて免疫応答を誘導できなかった。しかし、ケモカインおよび微粒子が、迅速に分解するヒドロゲルを使用して送達された場合、IFNγレベルの増大が認められたが、IL4の変化は認められなかった。上記IFNγレベルが、ケモカインおよびDNA−scrambled siRNA微粒子とともに10X10Y DS2ヒドロゲルと比較して、ケモカインおよびDNA−L10 siRNA微粒子とともに10X10Y DS2ヒドロゲルを受けた群について最大であったことはまた、明らかである。このIFNγおよびIL4 ELISAを使用して、種々のTh1/Th2/Th17サイトカインのさらなる分析のために、11群からのサンプルをスクリーニングおよび選択した。図15Dに示されるように、Th1特異的サイトカインであるIL2、IL12、およびTNFαのレベルは、PBS免疫した動物より、それぞれ約10倍、6倍および7倍高かった。裸のDNAもしくはDNA−IL10 siRNA微粒子で免疫した動物は、わずか1〜2倍の増加を示した一方で、ゆっくりと分解するDS5ヒドロゲル群は、わずか2〜3倍の増加を示した。同じDS2ヒドロゲルの間でも、20X10Y ヒドロゲルは、10X10Y DS2処方物とDS5処方物との間の中間の応答を示した。20X10Y免疫した動物におけるIL2レベルは、6倍であった一方で、IL12およびTNFαは、PBS免疫した動物より約4倍高かった。ケモカインおよびDNA微粒子のみもしくはscrambled siRNA負荷微粒子を含む10X10Y DS2ヒドロゲルにおけるIL2、IL12、およびTNFαのレベルは、PBS免疫した動物より2〜4倍の間で高かった。IL5、IL6、IL10、およびIL13を含むTh2サイトカインのレベルは、全ての群にわたって顕著に低かった(図15E)。従って、デキストランVS 10X10Y DS2ヒドロゲルでの一定の低いレベルのTh2サイトカインおよびTh1特異的サイトカインにおける増大は、弱く免疫原性のA20イディオタイプDNAワクチンですら、Th1タイプ免疫に向かう強力なシフトを示す。Th17サイトカインのレベルはまた、顕著に低く、IL23およびTGFβのレベルは、全群にわたってPBSに匹敵した。IL17サイトカインは、PBSより1.5〜3倍高かったが、いかなる処方物処置群の間でも大きな差異は認められなかった(図15F)。
【0059】
標的細胞におけるグランザイムBレベルを、T細胞によるCTL活性を評価するために測定した。精製したCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、A20マウスB細胞リンパ腫腫瘍細胞と、2時間にわたって20:1 E:T比で同時インキュベートした。標的細胞内のグランザイムB活性のフローサイトメトリーベースの測定は、T細胞媒介性細胞傷害性の初期時点で感受性の定量的評価を提供する。上記結果は、CD4+細胞媒介性グランザイムB応答が、裸のDNAまたはIL10 siRNAありもしくはなしのDNAを送達する微粒子で免疫したマウスにおいて本質的に低いことを示した。ケモカインのボーラス補充ですら、いかなるCTL応答をも押し上げるのに失敗した。他方で、迅速に分解するDS2ヒドロゲルは、各プロットの二重陽性四半分に示されるように、より強いグランザイムB陽性応答を示した(図16)。顕著なことには、IL10 siRNAを含めると、その応答はより強くなった(53.6% 対 29.12%)。DS5ヒドロゲルは、いかなる顕著なCTL活性も示さなかった。
【0060】
本開示は、いくつかの実施形態で記載されてきたが、無数の変化、バリエーション、改変、変形、および修飾が、当業者に示唆され得、本開示が、添付の特許請求の趣旨および範囲内に入るとしてこのような変化、バリエーション、改変、変形、および修飾を包含することを意図する。
【背景技術】
【0001】
(関連出願の引用)
この出願は、2009年4月22日に出願された米国仮出願第61/171,663号(これは、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
(政府の権利の陳述)
この開示は、National Institutes of Health(NIH R21AI064179−01)からの資金供与を少なくとも部分的に使用して開発された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(背景)
免疫系は、望ましくない外来生物(例えば、ウイルス、細菌および寄生生物)による傷害から動物を保護する。上記免疫系は、2つの基本的な方法で機能する。先天免疫は、一般的なタイプの外来生物もしくは外来物質を単純に攻撃しかつ死滅させる、非常に単純な動物にすら見いだされる基本的な防御である。獲得免疫は、身体が遭遇しかつ以前に防御したことがある外来生物に身体が応答する、防御のはるかに複雑な形態である。
【0004】
獲得免疫は、多くの現代的医療処置(特に、ワクチンのような後天性処置)の基礎を形成する。上記免疫系が、最初に、特定の外来生物もしくはさらには身体自体の異常な一部(例えば、癌細胞)に応答するように教育される場合、獲得免疫は、それらの望ましくない生物もしくは細胞を身体が非常に効率的に攻撃することを可能にする。しかし、上記身体が環境中の多くの有害なものを攻撃することを学習しないように、獲得免疫は、生物もしくは細胞が危険であると認識し、破壊するために特異的に標的とする前に、非常に特殊な環境を必要とする。
【0005】
獲得免疫の1つのタイプにおいて、抗原提示細胞(APC)といわれる特別な免疫系細胞は、上記望ましくない生物もしくは細胞を飲み込み、それを、抗原と言われる成分へと処理し、次いで、それら抗原を、特別な抗原提示タンパク質における表面上に提示しなければならない。上記免疫系の攻撃細胞のみが、上記抗原を認識するように学習し得、それら抗原を含む上記望ましくない生物もしくは細胞を攻撃し得る。このプロセスは、特定の化学物質(しばしば、サイトカインといわれる(これらは化学誘引物質およびケモカインを含む))が、起こるべき種々の事象に関して存在する必要があることによって、さらに調節される。例えば、APCは、しばしば、身体全体で見いだされ、抗原が存在する領域へと、特定の化学誘引物質であるケモカインによって特異的に補充されるのみである。
【0006】
免疫調節性薬剤(例えば、ワクチン)は、しばしば、獲得免疫応答を引き起こすことに失敗するか、もしくは弱い応答を引き起こすに過ぎない。なぜなら、それらは、免疫を獲得するために使用される複雑なシステムの十分な要素を誘発しないからである。例えば、抗原としてウイルスDNAを使用すること、または別の方法で、傷害を受けた領域における抗原の生成を引き起こすためにDNAを使用することは、しばしば有用である。しかし、裸のDNAワクチンおよびDNA抗原負荷微粒子は、しばしば、筋肉内投与される場合に、顕著な免疫応答を誘導することに失敗する。これは、主に、かなりの数のAPCが上記注射部位に補充されないという事実に起因する。
【0007】
ワクチンの有効性を増大させることへの1つのアプローチは、アジュバントといわれる別の組成物を同時投与(co−administer)することである。上記アジュバントは、通常、望ましくない侵入者として大部分の免疫系によって認識される何かである。従って、身体は、上記アジュバントと戦いはじめ、上記プロセスにおいて、上記領域中で新たな抗原を探索する。しかし、上記アジュバントの有効性は、上記免疫系が、上記アジュバントとの戦いに幾分従事し、上記ワクチン抗原のみに焦点を当てることはないという事実によって制限される。さらに、多くのアジュバントは、このような強力な応答を誘発し、それらは、上記注射部位付近でかなりの腫脹および疼痛を引き起こし、実際に、上記アジュバントに対して強力な免疫応答を有する個体に対して有害であり得る。
【0008】
ケモカインはまた、以前、抗原とともに注射されて、ワクチン接種を改善しようとされてきた。しかし、ケモカインは、上記投与部位を迅速に離れ、実質的には、注射の24時間以内になくなってしまう。この問題は、最初に、ケモカインの反復注射によって治療できると思われていたが、このような毎日の注射はまた、少なくともいくらかの研究において不成功であることが判明した。
【0009】
現在では、微粒子は、動物において免疫応答を誘導するために使用されたが、大きな成功はしていない。特に、APCによる取り込みを促進しかつ取り込み後に上記APCにおけるファゴソームから放出するように表面が機能づけられた微粒子が、生成された。これら微粒子は、抗原およびケモカインの両方を含んでいた。これら微粒子は、形成の間にタンパク質が喪失すること、上記微粒子が形成された後の上記タンパク質の不活性化、および上記タンパク質の不十分な破裂放出という欠点がある。さらに、APCの表面上で作用することが必要なケモカインタンパク質(例えば、MIP−3およびMCP−1)は、それらを含む上記微粒子がAPCによって取り込まれた後に役に立たず、上記投与部位へより多くのAPCを補充するのに役立たない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
本開示は、一般に、免疫調節性組成物および関連する方法に関する。より具体的には、本開示は、少なくとも2種の異なる生体分子を含むヒドロゲルを含む免疫調節性組成物および関連する方法に関する。
【0011】
一実施形態において、本開示は、ヒドロゲル形成性ポリマー、免疫細胞を補充もしくは維持するように機能し得る免疫調節性生体分子、および抗原関連生体分子を含む免疫調節性組成物を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、動物に投与部位において上記の免疫調節性組成物を投与することによって、動物にいて抗原提示細胞に抗原を提供するための方法を提供する。次に、上記ヒドロゲル形成性ポリマーからその場でヒドロゲルが形成され、次いで、上記免疫調節性生体分子を使用して、少なくとも1種の抗原提示細胞が上記投与部位へ補充され、最終的に、上記抗原提示細胞による上記少なくとも1種の抗原関連生体分子のファゴサイトーシスが誘導される。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態は、以下の利点のうちの1つ以上を達成し得る:
・上記投与部位へのAPCの多くの補充;
・上記投与部位における複数の(例えば、2種もしくは3種以上の)免疫調節性生体分子の同時送達;
・上記免疫調節性生体分子および抗原関連生体分子(これらは、より多くのAPCを補充し得、より効率的な抗原提示を可能にし得る)の制御された送達;
・上記ヒドロゲルは、投与後に迅速に分解し始めて、抗原関連生体分子(任意の微粒子を含む)が、APCが到達した場合に存在することを可能にし得る;
・上記ヒドロゲルネットワークの放出および分解の速度の微細な調節;
・被包もしくは生体活性の相当な喪失なしに、微粒子およびケモカインの大用量の送達;
・生理学的条件でのヒドロゲルの形成は、光架橋もしくは他の従来の架橋方法の必要性を排除し得る。
【0014】
当業者は、全ての実施形態が全ての利点を達成し得るわけではなく、いくつかの実施形態は、異なる利点を達成し得ることを認識する。
【0015】
本開示の実施形態のより完全な理解は、本開示の種々の実施形態を記載する添付の図面とともに考慮される詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aおよび図1Bは、ヒドロゲルを調製し、これを使用して、ケモカインおよび微粒子を動物に送達するための全体的なスキームを図示する。
【図2】図2は、免疫調節性ヒドロゲルに対する樹状細胞の1つの潜在的な応答を図示する。
【図3A】図3Aは、APCによるIL−10生成に対する、上記ヒドロゲル中にインターロイキン−10(IL−10)の低分子干渉性RNA(siRNA)を含む効果を図示する。
【図3B】図3Bは、APCによるIL−10生成に対する、上記ヒドロゲル中にインターロイキン−10(IL−10)の低分子干渉性RNA(siRNA)を含む効果を図示する。
【図4A】図4Aは、免疫調節性ヒドロゲルによるAPC細胞表面マーカーに対する効果を図示する。
【図4B】図4Bは、免疫調節性ヒドロゲルによるAPC細胞表面マーカーに対する効果を図示する。
【図5A】図5Aは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図5B】図5Bは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図5C】図5Cは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図5D】図5Dは、免疫調節性ヒドロゲルを使用する、B型肝炎免疫のインビボ試験の結果を図示する。
【図6】図6は、ゲル時間および種々の免疫調節性ヒドロゲルの組成物を図示する。
【図7】図7は、種々の免疫調節性ヒドロゲルの被包効率を図示する。
【図8】図8Aおよび図8Bは、免疫調節性ヒドロゲルの構造的形態を図示する。
【図9】図9Aおよび図9Bは、微粒子ありまたはなしでヒドロゲルから上記ケモカインMIP3αの放出を図示する。
【図10】図10は、微粒子ありおよびなしで、ならびに種々のケモカイン用量で異なるヒドロゲルに応じたAPCの化学走性を図示する。
【図11A】図11Aは、免疫調節性ヒドロゲルに応じてコラーゲンを介したAPC移動研究を図示する。
【図11B】図11Bは、免疫調節性ヒドロゲルに応じてコラーゲンを介したAPC移動研究を図示する。
【図11C】図11Cは、免疫調節性ヒドロゲルに応じてコラーゲンを介したAPC移動研究を図示する。
【図12】図12A〜12Fは、三次元免疫調節性ヒドロゲルを介したAPC移動を図示する。
【図13】図13は、免疫調節性ヒドロゲルにおけるAPCによる微粒子ファゴサイトーシスを図示する。
【図14】図14は、ヒドロゲル微粒子によるAPCにおけるIL−10遺伝子サイレンシングの有効性を図示する。
【図15A】図15Aは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15B】図15Bは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15C】図15Cは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15D】図15Dは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15E】図15Eは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図15F】図15Fは、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボTh1/Th2効力を図示する。
【図16】図16は、B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるケモカイン、siRNAおよびDNAワクチン送達ヒドロゲル−微粒子ワクチンの複数様式の送達のインビボ細胞傷害性T細胞活性を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特許および特許出願のファイルは、少なくとも1枚のカラーで仕上げられた図面を含む。カラー図面付きのこの特許および特許出願公開のコピーは、請求および必要な料金の支払いの際に、官庁によって提供される。
【0018】
本開示は、種々の改変および代替の形態に影響を受けやすいが、特定の例示的実施形態が図面において示されており、以下により詳細に記載される。しかし、特定の例示的実施形態の記載は、本発明を開示される特定の形態に限定することを意図しないが、対照的に、この開示は、一部、添付の特許請求の範囲によって図示されるように全ての改変および等価物を網羅することであると理解されるべきである。
【0019】
(説明)
本開示は、免疫調節性組成物およびこれを使用するための方法に関する。一実施形態において、本開示の免疫調節性組成物は、ヒドロゲル形成性ポリマー、免疫調節性生体分子、および抗原関連生体分子を含む。一般に、免疫調節性生体分子は、免疫細胞(例えば、抗原提示細胞(APC))を上記免疫調節性生体分子が位置する領域において補充、もしくは維持するのを助け得る。さらに、抗原関連生体分子は、上記補充された免疫細胞において特異的応答(例えば、抗原特異的応答)を誘導し得る。上記免疫調節性組成物は、各タイプの複数の異なる分子を含み得る。他のタイプの生体分子(例えば、抗原提示もしくは上記提示された抗原に対する攻撃細胞反応の効率を増大させ得る生体分子)もまた、含まれ得る。一実施形態において、上記抗原関連生体分子は、その放出のタイミングを調節するために、微粒子中に存在し得る。
【0020】
本開示における使用に適した免疫調節性生体分子は、サイトカイン(例えば、ケモカインもしくは化学誘引物質)であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、それは、APCを攻撃および/もしくは維持し得るケモカインであり得る。標的APCは、獲得免疫応答(特に、上記抗原関連生体分子に対する獲得免疫応答)の誘導に関与する任意のAPCを含み得る。標的とされ得る特異的APCとしては、ランゲルハンス細胞および樹状細胞(例えば、骨髄性樹状細胞)が挙げられる。いくつかの実施形態において、未成熟APCは、補充のために標的とされ得る。適切なケモカインの例としては、マクロファージ炎症性タンパク質3α(MIP3α)、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、MIP1α、MIP1β、二次リンパ組織ケモカイン(SLC)、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP)、IL−8、Regulated on Activation Normal T Cell Expressed and Secreted(RANTES(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5もしくはCCL5としても公知))、および間質細胞由来因子−1(SDF−1)、またはこれらおよび他の因子の任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。具体的実施形態において、本発明の免疫調節性組成物は、免疫調節性生体分子のうちの2種以上もしくは3種以上のタイプを含み得る。
【0021】
具体的実施形態において、免疫調節性生体分子は、例えば、拡散もしくは分解によって組織に注射された場合に、通常は迅速に除去される分子(例えば、タンパク質もしくはペプチド)であり得る。上記ヒドロゲルは、上記生体分子のこの動きを緩慢にし得るか、もしくはより長期間にわたって可能にするために経時的に上記生体分子の多くを放出し得る。その間に、上記免疫調節性生体分子の量が上記投与部位付近で上昇させられる。例えば、上記ヒドロゲルは、数日間にわたって持続性の勾配を作り出すような様式で、任意の免疫調節性生体分子を放出し得る。この持続性の勾配は、上記投与部位における未成熟APCの数および/もしくはそれらの存在の持続時間の両方を増大させ得る。
【0022】
本開示における使用に適した抗原関連生体分子は、免疫応答を最終的に誘発する因子に連結した生体分子の任意のタイプであり得る。例えば、それは、上記因子自体、または上記因子を代謝するかもしくは上記因子の生成を引き起こす何かであり得る。上記因子が抗原である例において、生体分子の第2のタイプは、上記抗原、上記抗原を含む核酸、または上記抗原を生成するために抗原提示細胞において切断もしくは改変されるタンパク質もしくは他の分子であり得る。特定の実施形態において、第2のタイプの生体分子は、ワクチン接種免疫応答を誘導し得る抗原(例えば、任意の現在使用されているワクチン抗原)であり得る。第2のタイプの生体分子はまた、癌細胞に由来する抗原であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗原関連生体分子は、微粒子に含まれ得る。微粒子は、抗原関連生体分子の取り込みを改善し得る。なぜなら、微粒子はしばしば、APCによって容易に取り込まれるからである。微粒子の合成的な性質、およびそれらのサイズ(ミクロン)(これは、多くの病原体のものに類似である)は、APCによるこの取り込みを促進し得る。いくつかの実施形態において、本開示における使用に適した微粒子は、ファゴソーム(微粒子が、上記APCによって取り込まれた後に行き着く)を緩衝化することによって、細胞質へのそれらの負荷物の送達を増強するために、カチオン性であり得る。微粒子はまた、単に注射されるかもしくは別の方法で投与された場合よりヒドロゲル中で存在する場合に長く、上記投与部位に残り得る。
【0024】
特定の実施形態における微粒子は、ポリエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンのような合成ポリマー、ヒアルロン酸、キトサン、アルギネート、デキストランのような天然ポリマー、ならびにホスファチジルコリンのような脂質ベースの材料などから作製され得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、1種以上の異なるタイプの抗原関連生体分子は、本開示の免疫調節性組成物に含まれ得る。例えば、一実施形態において、2種の異なるタイプの核酸が、含まれ得る。微粒子が使用されるいくつかの実施形態において、上記1種以上の異なる抗原関連生体分子は、同じ微粒子中にともに含まれ得るか、またはそれらは、別個の微粒子中に存在し得る。潜在的に、APCが上記抗原を提示するために1つの微粒子を取り込むことのみが必要であるように、1つの微粒子中に両方を含むことは有利であり得る。
【0026】
免疫調節性生体分子でも抗原関連生体分子でもないさらなる生体分子がまた、本開示の免疫調節性組成物中に含まれ得る。例えば、攻撃免疫細胞を補充するかもしくはAPC上の抗原のそれらの認識を促進するケモカインが、含まれ得る。上記APCにおける種々のタンパク質をダウンレギュレートするsiRNAがまた含まれ得る。なぜなら、このダウンレギュレーションは、全体的な望ましい免疫応答を促進するからである。同様に、上記全体的な望ましい免疫応答を促進するタンパク質もしくはペプチドをコードするプラスミドもしくは他の核酸もまた、含まれ得る。例えば、APCによるIL−10の生成は、TH−1タイプ免疫応答(ウイルスのような細胞内病原体に対してより有効)もしくはTH−2タイプ免疫応答(大部分の細菌のような細胞外病原体に対してより有効)のいずれかを生じるように、減少もしくは増大させられ得る。
【0027】
これらさらなる生体分子は、免疫調節性組成物に含まれ得るのみであってもよいし、任意の微粒子の一部でもあってもよい。任意のさらなる生体分子の最も適切な位置は、上記さらなる生体分子が放出される必要がある場合におよび上記さらなる生体分子が有効であるために行く必要がある場所によって、決定され得る。上記さらなる生体分子が、上記APC内で特定の効果を引き起こす必要がある場合、微粒子中に含めることが、より有効であり得る。上記抗原関連生体分子の種々の例の場合と同様に、上記さらなる生体分子は、別個の微粒子中にあってもよいし、微粒子中に他の分子と合わされてもよい。
【0028】
以前に言及したように、本開示の免疫調節性組成物は、ヒドロゲル形成性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲル形成性ポリマーは、いったん投与されると架橋し得、さらなる成分が添加されるかもしくは状態が投与部位条件(例えば、温度もしくはpH)とマッチするように変化した後にのみ、ヒドロゲルを形成する。ヒドロゲル形成性ポリマーの使用は、上記ヒドロゲルの投与を促進し得る。投与後に形成されるヒドロゲルは、その場で架橋可能なヒドロゲルと言われ得る。例示的実施形態において、上記ヒドロゲルは、上記投与部位に通常存在する生理学的条件下で、加水分解を受ける可能性がある。上記ヒドロゲルはまた、生体適合性ポリマーのような生体適合性材料から作製され得る。
【0029】
その場で架橋可能なヒドロゲル(特に、筋肉内注射によって投与されるもの)を使用する具体的実施形態において、使用に適したヒドロゲル形成性ポリマーとしては、ビニルスルホン、アクリル誘導体化ポリサッカリド、チオール誘導体化ポリサッカリド、アクリル誘導体化ポリエチレングリコール、チオール誘導体化ポリエチレングリコール、および任意のこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。その場での重合は、免疫調節性生体分子の高負荷能を可能にし得、1種より多くの異なるタイプが使用されることを可能にし得る。
【0030】
本開示のヒドロゲルの化学的組成、ポリマー濃度、架橋の程度および他の特性は、分解の速度、および従って種々の成分の放出速度に影響を及ぼすように変動させられ得る。特定の実施形態において、本開示の免疫調節性組成物は、患者に注射され得、投与後約40秒〜60秒以内でヒドロゲルを形成し得る。不適切な量の生体分子がヒドロゲル形成前に失われない限りにおいて、ヒドロゲル架橋のより長い時間もまた適切であり得る。
【0031】
1つの非常に特別な実施形態によれば、免疫調節性組成物は、その場で架橋し得、かつ未成熟樹状細胞を誘引するためにケモカイン(例えば、MIP3α)ならびに抗原が負荷される微粒子を含み得るヒドロゲル形成性ポリマーを含み得る。
【0032】
別の実施形態において、ヒドロゲルは、投与前に形成され得るか、または非架橋形態で投与され得る。非架橋形態で投与される場合、ヒドロゲルは、生理学的温度およびpHにおいて架橋し得る。種々の例において、上記架橋ヒドロゲルもしくは非架橋ヒドロゲルが、筋肉内に、皮下に、もしくは皮内に投与され得る。
【0033】
架橋後に、任意の免疫調節性生体分子(例えば、ケモカイン)は、上記投与部位でAPCを補充および/もしくは維持するために、持続様式で上記ヒドロゲルから放出され得る。次いで、これらAPCは、抗原関連生体分子(これは、微粒子であり得る)を取り込み(ファゴサイトーシスし)得、最終的には、上記APCによる抗原の提示および免疫系攻撃細胞によるそれら抗原の認識を誘発し得る。上記抗原関連生体分子は、上記ヒドロゲルが分解するにつれて、例えば、3〜4日間の過程を経て、より利用しやすくなり得る。上記APCは、上記ヒドロゲルから放出される場合に、上記ヒドロゲルに入った後に、またはその両方で、上記抗原関連生体分子をとりこみ得る。
【0034】
特定の実施形態において、上記ヒドロゲルは、3〜4日間にわたって分解し得、このことは、APC補充と、上記抗原関連生体分子の利用可能性との間の同期化を可能にする。
【0035】
上記免疫調節性組成物および本開示の関連方法は、種々の目的のために使用され得る。例えば、それらは、ワクチンとして、または複数の増殖因子を異なる放出部位において身体に送達するために使用され得る。全体的に、上記免疫調節性組成物は、特定の同時投与される因子の容易な置換を可能にし得る。例えば、任意のケモカインが、上記系の免疫学的要件(例えば、投与部位、抗原、および標的免疫細胞)に依存して使用され得る。上記免疫調節性組成物はまた、種々の生体分子(例えば、CpGオリゴ、インターロイキン、種々のタンパク質など)の複数様式の送達のために使用され得る。
【実施例】
【0036】
本開示は、以下の実施例への参照を介してよりよく理解され得る。これら実施例は、例示的実施形態を記載するためにのみ含まれ、本発明の全体の外延を包含すると解釈されるべきではない。
【0037】
(実施例1:全体的な、提唱される送達形設計の概説)
図1Aに図示されるように、抗原DNAおよび他の免疫調節性生体分子を含む微粒子が調製され得る。第1のsiRNA(例えば、IL−10 siRNA)を、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)微粒子中に被包し得る。次いで、この微粒子を、ポリエチレンイミン(PEI)で改変して、カチオン性にし得る。次に、抗原DNA(例えば、プラスミドの形態にある)を、上記微粒子上に静電気的に負荷し得る。
【0038】
図1Bに図示されるように、上記DNAおよびsiRNAが同時負荷された微粒子を、第1のヒドロゲル成分中で混合し、次いでケモカイン(例えば、MIP3α)を、第2のヒドロゲル成分中で混合し得る。
【0039】
最後に、図1Cに図示されるように、上記2つの溶液を一緒に混合し得、例えば、動物への筋肉内注射によって投与し得る。ここでそれらは、ケモカインおよび捕捉された微粒子とともにその場で架橋ヒドロゲルを形成する。
【0040】
(実施例2:樹状細胞移動)
図2に図示されるように、上記その場で架橋されるヒドロゲルは、上記ケモカインを最初に放出し、これは、未経験の(未成熟の)樹状細胞(DC)をその近くに誘引する。上記DNA/siRNA保有マイクロスフェアは、上記ヒドロゲルが分解しかつDCによってファゴサイトーシスを受けるにつれて、後に放出される(または上記DCが上記ヒドロゲルに入る)。上記粒子表面上の二級アミンもしくは三級アミンの存在は、ファゴサイトーシスの後のエンドソーム(ファゴソーム)から逃れ、上記DCの細胞質に入ることを可能にするように、その緩衝能を増大させる。細胞質において、上記マイクロスフェアは、siRNAを放出し、これは、対応する遺伝子をサイレントにし、上記DNAが同じ細胞の核に送達されて、後に抗原提示を引き起こすことを可能にする。
【0041】
(実施例3:siRNAおよびDNAプラスミドの組み合わせ処方物送達、単一処方物送達による免疫調節−pDNA発現およびsiRNAの有効性)
図3に示されるように、微粒子を、IL−10 siRNAおよびルシフェラーゼをコードするプラスミドDNA(pDNA)を使用して実施例1のように調製した。骨髄由来初代APCを、これら微粒子でトランスフェクトした。上記微粒子は、伝統的なEXGEN500トランスフェクションシステムで達成されたものよりも大きなルシフェラーゼ発現の増大を示した。ルシフェラーゼ発現の有意な増大は、未処理細胞でも、上記pDNAを欠いている微粒子で処理した細胞でも、認められなかった(図3g)。従って、上記微粒子は、上記細胞によってその発現を可能にする様式で、APCへの上記pDNAの送達において有効であった。
【0042】
同様に、トランスフェクション後2日間および5日間はそれほど有効でなかったが、にもかかわらず、上記微粒子は、伝統的なsiPORT Amineシステムを使用して送達したIL−10 siRNAと同様に、IL−10発現の低下において有効であった。IL−10発現の有意な低下は、未処理細胞もしくはscrambled siRNAを含むマイクロスフェアで処理した細胞では認められなかった(図3h)。よって、上記微粒子はまた、少なくとも15日間にわたってIL−10 RNAをサイレントにし得る様式で、上記APCにsiRNAを送達することにおいて有効であった。
【0043】
(実施例4:siRNAおよびDNAプラスミドの組み合わせ、単一処方物の送達による免疫調節−細胞表面マーカー効果)
図4は、トランスフェクトしたAPCにおける細胞表面マーカーに対する実施例3の微粒子の効果を図示する。これら特定の細胞表面マーカーの存在は、APCの成熟を示し、従って、APC活性化(これは、強力な免疫応答に必要とされる)の伝統的な指標である。従って、上記実施例3の微粒子でトランスフェクトしたAPC上の上記マーカーの高発現レベルは、APCが成熟し、強力な免疫応答を引き起こし得ることを示す。
【0044】
(実施例5:siRNAおよびDNAワクチンの組み合わせ、単一処方物の送達による免疫調節)
図5は、B型肝炎DNA発現を研究するために、マウスへの微粒子の投与のための一般的なスケジュールを図示する。上記微粒子を、実施例3の微粒子と同じ様式で調製したが、上記pDNAは、ルシフェラーゼの代わりに、B型肝炎表面抗原(HbsAg)をコードするプラスミドであった。最初の免疫の6週間後および9週間後の両方で、インターフェロン−γ(IFN−γ)発現は、上記微粒子を受けたマウスにおいて、siRNAなし、裸のプラスミドDNA、もしくはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む微粒子を受けたマウスより遙かに高かった(図5A)。このことは、上記DNA/siRNA微粒子のみが、有意な抗ウイルス免疫応答をマウスにおいて誘導したことを示す。
【0045】
IL−4レベルは、上記siRNAを欠いている微粒子を受けたマウスにおいて増大したが、上記DNA/siRNA微粒子、裸のDNA、もしくはPBSを受けたマウスでは低かった。このことは、(高いIFNγレベルおよび低いIL−4レベルによって示されるように)TH1タイプ免疫応答に対する有意な相違を示し、それによって、上記処方物の免疫調節効果が確認される(図5B)。
【0046】
(実施例6:その場で架橋可能なヒドロゲル−ゲル化特性および微粒子)
図6は、その場で架橋可能なヒドロゲルのゲル化時間および他の情報を提供する。いくつかのヒドロゲルは、主に、テトラチオール化ポリエチレングリコールに架橋されたデキストランビニルスルホン(デキストランVS−PEG4SH)もしくはテトラチオール化ポリエチレングリコールに架橋されたポリエチレングリコールジアクリレート(polyethyleneglycol diactrylate)(PEGDA−PEG4SH)から作製される。「DS」は、上記ヒドロゲルポリマーの置換の程度を示す。Xは、第1のヒドロゲル成分(例えば、デキストランVSもしくはPEGDA)の重量/体積(w/v)パーセンテージを示し、Yは、第2のヒドロゲル成分(例えば、PEG4SH)のw/vパーセンテージを示す。100μL ヒドロゲルを、各例において調製した。微粒子ありおよびなしのゲル化時間、ならびに任意の非連結ポリマーの存在もまた、報告する。従って、微粒子が存在してもなお適切なゲル化は、種々の異なるヒドロゲル組成物で得られ得る。
【0047】
エチルスペーサーを有するデキストランビニルスルホン(デキストランVS)の合成を、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミドおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム 4−トルエンスルホネート(DPTS)触媒を使用して、先に言及したように行った。DPTSを、100ml テトラヒドロフラン(THF)中に5gのpTSA一水和物を溶解することによって合成した。pTSAに対して1モル当量の4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP,99%)を、この混合物に添加し、濾過して、沈殿物を得た。これを、ジクロロメタン中にさらに溶解し、ロータリーバキュームエバポレーターを使用して再結晶化した。デキストランビニルスルホンエステル合成を、16.425g DVSを90mlの不活性窒素飽和DMSO中に添加し、続いて、連続攪拌下で0.75g 3−MPAをこれに滴下する(3−MPA 対 DVSのモル比は、1:20であった)ことによって行った。上記反応を、遮光して室温で4時間にわたって継続させた。ビニルスルホン部分の光架橋を回避するために、上記反応を、遮光して行った。5gもしくは2.5gのデキストランを、30ml DMSO中に溶解し、30ml DMSO中の2.17g DCCおよび0.32g DPTSの溶液をそれに滴下し、透明な溶液が得られるまで攪拌した。DPTSは、弱酸性触媒であり、DCCの反応効率を増強させる。最後に、上記混合物を、遮光してDVS/MPA溶液に添加し、上記反応を、24時間にわたって室温で進行させた。反応の完了後に、N,N−ジシクロヘキシル尿素(DCU)塩を、真空フィルタを使用して濾過し、その生成物を、1000mlの氷冷100%エタノール中に沈殿させることによって回収した。上記沈殿物を、3000rpmで15分間の遠心分離、続いて真空乾燥を介して残りのエタノールから分離した。沈殿物を、少なくとも100mlの脱イオン水(pHを7.8に調節した)中に再溶解し、ボルテックスして、透明な溶液を得た。最後に、未反応ポリマーを、Amiconフィルタ(MWCO 10000Da,Millipore)を使用する限外濾過を介して除去し、その粘性の生成物を、凍結乾燥して水を除去し、NMRを使用して分析した。
【0048】
(実施例7:その場で架橋可能なヒドロゲル−ケモカインおよび被包効率)
図7は、MIP3αの理論的ケモカイン負荷効率を示す。「理論的」とは、試みられる最初の負荷(すなわち、ケモカインの出発量の100%)を示す。図7はまた、実施例6に記載されるヒドロゲルについてのケモカインが被包される(すなわち、実際に被包される、理論的量の割合)効率を示す。
【0049】
(実施例8:微粒子ありおよびなしのヒドロゲルの構造的形態)
図8は、実施例6および7に記載される組成を有する種々のヒドロゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。上記ヒドロゲル成分の異なる相対量で試験した両方のタイプのヒドロゲルを示す。微粒子を、矢印で表示する。その画像が示すように、全ての試験したヒドロゲルは、微粒子をそれらの構造中に組み込むことができた。上記微粒子は、層中に沈着する傾向があった。
【0050】
(実施例9:ヒドロゲルからのインビトロでの放出研究)
図9は、実施例6〜8に記載されるタイプのうちの種々のヒドロゲルについてのインビトロでのMIP3α放出データを表す。MIP3αの放出は迅速であり、僅か数時間後に高レベルに達し、次いで、定常的な放出のプラトーになる。この迅速な初期放出、その後の、定常レベルは、上記MIP3αが、APCを投与部位へと迅速に補充し、次いで、新たなAPCを数日間にわたって補充し続けることを可能にするはずである。
【0051】
(実施例10:インビトロでの化学走性)
図10は、TranswellTM Chemotaxis Protocolを使用して集めたインビトロ化学走性データを示す。実施例6〜8に記載されるタイプのヒドロゲルに、100μLのゲルあたり50ngのMIP3αを負荷した。ヒドロゲルを、異なるポリマー濃度で調製した。類似の量の化学走性が、微粒子ありもしくはなしの異なるゲルで認められた。このことは、実施例10で認められたMIP3αの規則的な放出が、APCを補充するにおいて有効であることを示す。
【0052】
(実施例11:コラーゲン組織モデルを介するAPC移動)
図11Aは、コラーゲンゲルがどのように調製されるか、および種々の本開示のヒドロゲルが、APCを、上記ゲルを介して移動させ得るか否かを試験するためにどのように使用されるかの模式図を示す。APCがコラーゲンゲルを介して移動する能力は、APCが生きている組織を介して移動する能力と相関する。上記コラーゲンゲルを調製するために、6ウェルプレートの各ウェルを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の型を使用して、3つの同心円状のゾーンに分けた。真ん中のゾーンをコラーゲン溶液で満たし、30分間にわたってゲル化させた。最も外側のゾーンを、初代APCおよび赤いポリスチレン粒子含有コラーゲン溶液で満たし、30分間にわたってゲル化させた。最も内側のゾーンを上記デキストランVS DS2 10X10Y(もしくは関連するコントロールについてはMIP3αケモカインのボーラス)で満たし、30分間にわたってゲル化させた。金属構築物を最も内側のゾーンの上部に配置し、培養培地を、上記外側のゾーンに添加した。
【0053】
図11Bは、最初に最も外側のゾーンに存在する初代APCがどのようにして、真ん中および内側のゾーンに移動したかを示す。ケモカインはまた、真ん中のゾーンに移動させた。パネル写真において、上記ケモカインボーラスもしくは上記ヒドロゲルのいずれかが、真ん中のゾーンに存在した場合に4時間後および18時間後に上記APC移動が認められ得るが、ケモカインを使用しなかった場合には認められ得ない(白色破線は、時間ゼロでの最初のAPCゾーン−コラーゲンゾーンの境界を示す)。従って、本開示のヒドロゲルは、コラーゲンへのAPC移動を引き起こし得、生きている組織において同様の移動を引き起こし得ると予測される。
【0054】
図11Cは、上記ケモカインに応じて中心のヒドロゲルへAPCが移動していることを示す。上部のパネルは、単一画像を形成するために一緒に付けた一連のフレームの位相差画像を示す。APC移動は、上記画像の右側に向かって移動もしくは蓄積した小さな円形の細胞として認められ得る。下部のパネルは、単一の画像を形成するために一緒に付けた一連のフレームの蛍光画像を示す。ポリスチレン粒子は赤色であり、カルセイン染色初代APCは緑色である。APCの、上記コラーゲンゾーンおよびヒドロゲルへの移動が認められ得る。このことは、APCが、上記微粒子も位置する本開示のヒドロゲルへと移動し得ることを示す。
【0055】
(実施例12:ヒドロゲルのAPC浸潤)
図12は、ヒドロゲルを介したAPCの移動を示す。実施例6〜8に記載されるタイプの種々のヒドロゲル、ならびにケモカインを欠いているコントロールヒドロゲルを、赤色標識した微粒子とともに調製した。緑色標識したAPCを上記ヒドロゲルの付近に配置して、上記APCが、上記ヒドロゲルに入るか否かを研究した。ケモカインを有する全てのヒドロゲルは、実質的な浸潤を示した一方で、上記ケモカインを欠いているヒドロゲルは、浸潤を示さなかった。よって、上記ヒドロゲル浸潤は、上記ケモカインに応じている。このデータはまた、APCが、本開示に従う種々のヒドロゲルに入る能力をさらに確認する。
【0056】
(実施例13:微粒子のファゴサイトーシス)
図13は、本開示のヒドロゲル内部の種々の緑色に標識されたAPCを示す。微粒子は赤色で標識される。第3のパネルにおける上記赤色(第1の)および緑色(第2の)画像の重ね合わせは、赤色の粒子が、上記APCの内部に位置することを明らかに示す。このことは、それらがファゴサイトーシスを介してAPCによって取り込まれたことを示す。
【0057】
(実施例14:ヒドロゲル中の微粒子のインビトロ遺伝子サイレンシング効力)
図14は、本開示のヒドロゲルから微粒子を取り込んだAPCにおけるIL−10遺伝子サイレンシングを示すデータを表す。骨髄由来初代APCを、ヒドロゲル包埋したpgWizLuciferase pDNAおよびIL−10 siRNAを含むPEI−PLGA微粒子に曝した5日後に試験した。IL−10遺伝子サイレンシングを、RT−PCRを使用して定量した。全ての試験群を、上記未処理群および微粒子のみの群を除いて、実施例6〜8に記載されるタイプのヒドロゲルベースの処方物に供した。コントロールナノ粒子は、scrambled siRNA配列を含んだ。微粒子を含まないヒドロゲルもしくはコントロール微粒子のみは、未処理細胞と比較して、IL−10発現の低下をほとんど示さなかった。機能的コントロール粒子を含む全てのヒドロゲルは、はるかにより有意な低下を示した。1つのヒドロゲル(デキストランVS DS2 10X10Y)は、コントロール微粒子で細胞をトランスフェクトした場合とほぼ同程度のIL−10発現の低下を示した。全体として、上記結果は、本開示のヒドロゲル中に含まれる微粒子が、APCによって取り込まれ、上記微粒子中のsiRNAが、上記APC内の免疫調節タンパク質のタンパク質発現を破壊し得ることを示す。
【0058】
(実施例15:弱い免疫原性のA20 B細胞リンパ腫マウスモデルにおけるインビボでの免疫調節:概念の証明)
種々の処方物から生じる免疫応答を体系的に研究するために、被包されたIL10 siRNAありまたはなしの微粒子を、Balb/cマウスの筋肉内に投与した(図15A)。さらに、免疫刺激中心(immune priming center)を作り出す効果を評価し、免疫応答の程度およびタイプに対するヒドロゲルの分解速度の効果を調査するために、マウスを、本開示の免疫調節性組成物で免疫した。これら組成物は、MIP3αおよびDNA/siRNA微粒子を含んだ。1群あたり5匹のマウスからプールした脾細胞を、CD4+細胞およびCD8+細胞へと、フローサイトメトリーを使用して精製し(図15B)、A20タンパク質とインキュベートした未処理脾細胞で再刺激した。図15Cは、CD4+細胞が培養培地中に放出したTh1特異的IFN−γおよびTh2特異的IL4の濃度を示す。IFN−γ生成は、迅速に分解するデキストランVS 10X10Y DS2ヒドロゲルを使用して、ケモカインおよびDNA−IL10 siRNA負荷微粒子を同時送達した場合に、顕著に増大した。IL4発現は、全ての処方物において顕著に制限された。このことは、10X10Y DS2ヒドロゲルで免疫したマウスにおけるTh1表現型に対する「歪んだ」CD4+ Tヘルパー細胞応答を強く示唆する。ボーラスケモカインおよびpDNA負荷微粒子で免疫した動物、すなわち、実際にIL10 siRNAを同時送達したマウスは、この弱い免疫原性腫瘍モデルにおいて免疫応答を誘導できなかった。しかし、ケモカインおよび微粒子が、迅速に分解するヒドロゲルを使用して送達された場合、IFNγレベルの増大が認められたが、IL4の変化は認められなかった。上記IFNγレベルが、ケモカインおよびDNA−scrambled siRNA微粒子とともに10X10Y DS2ヒドロゲルと比較して、ケモカインおよびDNA−L10 siRNA微粒子とともに10X10Y DS2ヒドロゲルを受けた群について最大であったことはまた、明らかである。このIFNγおよびIL4 ELISAを使用して、種々のTh1/Th2/Th17サイトカインのさらなる分析のために、11群からのサンプルをスクリーニングおよび選択した。図15Dに示されるように、Th1特異的サイトカインであるIL2、IL12、およびTNFαのレベルは、PBS免疫した動物より、それぞれ約10倍、6倍および7倍高かった。裸のDNAもしくはDNA−IL10 siRNA微粒子で免疫した動物は、わずか1〜2倍の増加を示した一方で、ゆっくりと分解するDS5ヒドロゲル群は、わずか2〜3倍の増加を示した。同じDS2ヒドロゲルの間でも、20X10Y ヒドロゲルは、10X10Y DS2処方物とDS5処方物との間の中間の応答を示した。20X10Y免疫した動物におけるIL2レベルは、6倍であった一方で、IL12およびTNFαは、PBS免疫した動物より約4倍高かった。ケモカインおよびDNA微粒子のみもしくはscrambled siRNA負荷微粒子を含む10X10Y DS2ヒドロゲルにおけるIL2、IL12、およびTNFαのレベルは、PBS免疫した動物より2〜4倍の間で高かった。IL5、IL6、IL10、およびIL13を含むTh2サイトカインのレベルは、全ての群にわたって顕著に低かった(図15E)。従って、デキストランVS 10X10Y DS2ヒドロゲルでの一定の低いレベルのTh2サイトカインおよびTh1特異的サイトカインにおける増大は、弱く免疫原性のA20イディオタイプDNAワクチンですら、Th1タイプ免疫に向かう強力なシフトを示す。Th17サイトカインのレベルはまた、顕著に低く、IL23およびTGFβのレベルは、全群にわたってPBSに匹敵した。IL17サイトカインは、PBSより1.5〜3倍高かったが、いかなる処方物処置群の間でも大きな差異は認められなかった(図15F)。
【0059】
標的細胞におけるグランザイムBレベルを、T細胞によるCTL活性を評価するために測定した。精製したCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、A20マウスB細胞リンパ腫腫瘍細胞と、2時間にわたって20:1 E:T比で同時インキュベートした。標的細胞内のグランザイムB活性のフローサイトメトリーベースの測定は、T細胞媒介性細胞傷害性の初期時点で感受性の定量的評価を提供する。上記結果は、CD4+細胞媒介性グランザイムB応答が、裸のDNAまたはIL10 siRNAありもしくはなしのDNAを送達する微粒子で免疫したマウスにおいて本質的に低いことを示した。ケモカインのボーラス補充ですら、いかなるCTL応答をも押し上げるのに失敗した。他方で、迅速に分解するDS2ヒドロゲルは、各プロットの二重陽性四半分に示されるように、より強いグランザイムB陽性応答を示した(図16)。顕著なことには、IL10 siRNAを含めると、その応答はより強くなった(53.6% 対 29.12%)。DS5ヒドロゲルは、いかなる顕著なCTL活性も示さなかった。
【0060】
本開示は、いくつかの実施形態で記載されてきたが、無数の変化、バリエーション、改変、変形、および修飾が、当業者に示唆され得、本開示が、添付の特許請求の趣旨および範囲内に入るとしてこのような変化、バリエーション、改変、変形、および修飾を包含することを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節性組成物であって、
少なくとも1種のヒドロゲル形成性ポリマー;
免疫細胞を補充もしくは維持するように機能し得る少なくとも1種の免疫調節性生体分子;および
少なくとも1種の抗原関連生体分子、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のヒドロゲル形成性ポリマーは、動物における生理学的条件下でヒドロゲルを形成するように機能し得るヒドロゲル前駆物質として含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、ビニルスルホン、アクリル誘導体化ポリサッカリド、チオール誘導体化ポリサッカリド、アクリル誘導体化ポリエチレングリコール、チオール誘導体化ポリエチレングリコール、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、デキストランビニルスルホンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、テトラチオール化ポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、ポリエチレングリコールジアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫調節性生体分子は、サイトカインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記サイトカインは、ケモカインを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ケモカインは、化学誘引物質を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫調節性生体分子は、MIP3α、MCP−1、MIP1α、MIP1β、SLC、fMLP、IL−8、RANTES、SDF−1、およびこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
補充もしくは維持される前記免疫細胞は、抗原提示細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原関連生体分子は、抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原関連生体分子は、核酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記核酸は、抗原をコードする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記核酸は、抗原である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗原関連生体分子は、B型肝炎表面抗原をコードするDNAを含むプラスミドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗原関連生体分子を含む微粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
第3の生体分子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記第3の生体分子は、ケモカインを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記第3の生体分子は、siRNAを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記第3の生体分子を含む微粒子をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記プラスミドを含み、IL−10 siRNAをさらに含む微粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記微粒子は、ポリエチレンイミンおよびポリ(乳酸−co−グリコール酸)をさらに含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
抗原を動物における抗原提示細胞に提供するための方法であって、該方法は、
該動物に、投与部位において免疫調節性ヒドロゲル組成物を投与する工程であって、該組成物は、
少なくとも1種のヒドロゲル形成性ポリマー;
該抗原提示細胞を補充もしくは維持するように機能し得る少なくとも1種の免疫調節性生体分子;および
少なくとも1種の抗原関連生体分子、
を含む、工程;
該ヒドロゲル形成性ポリマーからその場でヒドロゲルを形成する工程;
該免疫調節性生体分子を使用して、少なくとも1種の抗原提示細胞を、該投与部位へと補充する工程;
該抗原提示細胞による該少なくとも1種の抗原関連生体分子のファゴサイトーシスを誘導する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
前記免疫調節性ヒドロゲル組成物を投与する工程は、該免疫調節性ヒドロゲル組成物の筋肉内注射、皮下注射、もしくは皮内注射を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒドロゲルをその場で形成する工程は、投与後60秒以内に起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
形成する工程は、前記少なくとも1種のヒドロゲルポリマーを架橋する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
補充する工程は、投与の終了後少なくとも72時間にわたって起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原提示細胞は、ランゲルハンス細胞もしくは樹状細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
免疫調節性組成物であって、
少なくとも1種のヒドロゲル形成性ポリマー;
免疫細胞を補充もしくは維持するように機能し得る少なくとも1種の免疫調節性生体分子;および
少なくとも1種の抗原関連生体分子、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のヒドロゲル形成性ポリマーは、動物における生理学的条件下でヒドロゲルを形成するように機能し得るヒドロゲル前駆物質として含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、ビニルスルホン、アクリル誘導体化ポリサッカリド、チオール誘導体化ポリサッカリド、アクリル誘導体化ポリエチレングリコール、チオール誘導体化ポリエチレングリコール、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、デキストランビニルスルホンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、テトラチオール化ポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロゲル形成性ポリマーは、ポリエチレングリコールジアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫調節性生体分子は、サイトカインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記サイトカインは、ケモカインを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ケモカインは、化学誘引物質を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫調節性生体分子は、MIP3α、MCP−1、MIP1α、MIP1β、SLC、fMLP、IL−8、RANTES、SDF−1、およびこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
補充もしくは維持される前記免疫細胞は、抗原提示細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原関連生体分子は、抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原関連生体分子は、核酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記核酸は、抗原をコードする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記核酸は、抗原である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗原関連生体分子は、B型肝炎表面抗原をコードするDNAを含むプラスミドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗原関連生体分子を含む微粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
第3の生体分子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記第3の生体分子は、ケモカインを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記第3の生体分子は、siRNAを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記第3の生体分子を含む微粒子をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記プラスミドを含み、IL−10 siRNAをさらに含む微粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記微粒子は、ポリエチレンイミンおよびポリ(乳酸−co−グリコール酸)をさらに含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
抗原を動物における抗原提示細胞に提供するための方法であって、該方法は、
該動物に、投与部位において免疫調節性ヒドロゲル組成物を投与する工程であって、該組成物は、
少なくとも1種のヒドロゲル形成性ポリマー;
該抗原提示細胞を補充もしくは維持するように機能し得る少なくとも1種の免疫調節性生体分子;および
少なくとも1種の抗原関連生体分子、
を含む、工程;
該ヒドロゲル形成性ポリマーからその場でヒドロゲルを形成する工程;
該免疫調節性生体分子を使用して、少なくとも1種の抗原提示細胞を、該投与部位へと補充する工程;
該抗原提示細胞による該少なくとも1種の抗原関連生体分子のファゴサイトーシスを誘導する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
前記免疫調節性ヒドロゲル組成物を投与する工程は、該免疫調節性ヒドロゲル組成物の筋肉内注射、皮下注射、もしくは皮内注射を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒドロゲルをその場で形成する工程は、投与後60秒以内に起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
形成する工程は、前記少なくとも1種のヒドロゲルポリマーを架橋する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
補充する工程は、投与の終了後少なくとも72時間にわたって起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原提示細胞は、ランゲルハンス細胞もしくは樹状細胞である、請求項24に記載の方法。
【図11C】
【図15B】
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16】
【図15B】
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16】
【公表番号】特表2012−524793(P2012−524793A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507339(P2012−507339)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/031866
【国際公開番号】WO2010/123971
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/031866
【国際公開番号】WO2010/123971
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
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