説明

免疫調節性組成物、それらについての使用方法およびそれらの製造のための方法

本発明は、組成物におけるペプチドの少なくとも1セットの使用、および1つまたは複数のポリペプチド抗原に対する免疫応答を調節するための方法に関する。特定の態様において、ペプチドのそれぞれのセットの配列は、単一ポリペプチド抗原に、全部または一部、由来する。それぞれのペプチドセットの個々のペプチドは、単一ポリペプチド抗原に対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す。本発明はまた、予防的、診断的および治療的適用の範囲における、そのようなペプチドを用いる方法にまで及ぶ。さらに、本発明は、活性化条件に供されていない、かつ抗原に接触した無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体の、それらの細胞のレシピエントにおける免疫応答を調節するための方法および組成物においての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、免疫応答の調節に関する。より具体的には、本発明は、組成物におけるペプチドの少なくとも1セットの使用方法、および1つまたは複数のポリペプチド抗原に対する免疫応答を調節するための方法に関する。特定の態様において、ペプチドのそれぞれのセットの配列は、単一ポリペプチド抗原に、全部または一部、由来する。それぞれのペプチドセットの個々のペプチドは、単一ポリペプチド抗原に対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、ペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドに対する部分的配列同一性または類似性を示す。本発明はまた、予防的、診断的および治療的適用の範囲においてそのようなペプチドを使用する方法へと広がる。さらに、本発明は、活性化条件に供されていない、かつ抗原と接触した、無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体の、それらの細胞のレシピエントにおいて免疫応答を調節するための方法および組成物における使用方法に関する。
【0002】
本明細書において数字で参照された様々な刊行物の書誌詳細は、説明の終わりに集められている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ほとんど20年前の発見以来、ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)は、2千2百万人より多い命を奪い、世界中で地域社会に打撃を与え続けている(1)。4千2百万人の人々が、現在、HIV-1をもって生きており、危険な行動を改める努力にもかかわらず、毎年、推定5百万人の新しい感染が起きている(2)。同様に、C型肝炎ウイルス(HCV)およびB型肝炎ウイルス感染は、結果として、世界中の何百万という人々において、慢性肝臓損傷および肝細胞損傷を生じている。これらのウイルスについての安全かつ効果的な予防的または治療的ワクチンは、切に必要とされている。多くの癌からの免疫防御またはそれらの排除が、特異的なT細胞応答を必要とすると、今、考えられている。
【0004】
複製するウイルスのような持続性細胞内病原体の排除は、一般的に、細胞性免疫(CMI)の動員を必要とする。CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、CMIの最初のエフェクター細胞である;それらは、MHCクラスI分子との関係において細胞表面上に提示されたウイルスのペプチドを認識することによりウイルス感染細胞を殺す。ウイルス特異的抗体の出現の前に、激しいHIV-1特異的CTL応答が、一時的に、HIV-1感染の急性期中のウイルス血症の低下と相関する(3, 4)。さらに、強いCTL応答は、慢性感染中のHIV-1ウイルス血症の低下と関連しているが(5, 6)、HIV-1特異的CTLの減退は、AIDSへの急速な進行に結びつけられる(4, 7-9)。同様に、HCV感染の排除は、一般的に、ウイルス特異的T細胞応答により援助されると考えられている。
【0005】
HIV-1、HCVまたは癌に対する効果的なワクチンはない。初期のHIV-1ワクチンストラテジーは、不活性化ウイルス全体およびエンベロープ(env)糖タンパク質のような組換え構造タンパク質に基づいた。非ヒト霊長類モデルは、病原性サル免疫不全症ウイルス(SIV)および高度病原性SHIV(SIV-HIV-1キメラ)に対するこれらのワクチン投与により限られた種特異的防御のみを現した(10-13)。最初のヒト第三相試験もまた、効力を示すことができなかった(14)。
【0006】
粒子に基づいた、および組換え全タンパク質に基づいたワクチンは、安全ではあるが、多くの慢性ウイルス病原体に対する防御には不十分である抗体の産生に有利に働く。または、細胞内に発現された抗原は、後に、CTL応答を誘導する可能性がより高い。生弱毒ウイルスは、強力な細胞性免疫(CMI)応答を生じるが、それらの臨床的安全性は心配の種である(15)。結果として、HIV-1/SIV遺伝子(env、gagおよびpolのような)またはHCV遺伝子を発現させる遺伝子操作されたベクター(DNAプラスミドおよびポックスウイルスのような)へ多くの焦点がシフトした(16)。
【0007】
どの免疫標的抗原が防御性であるかは知られていないが、T細胞応答の幅広さは、ウイルスの逃避突然変異が起こる機会を低減させることが示された(17)。しかしながら、それは、多数のベクターの構築をしばしば困難にする、可能性のあるエピトープのこの幅広さであり、加えて、可能性のある安全性問題によって複雑化される。懸念は、免疫無防備状態宿主におけるウイルスベクターワクチンの安全性はもとより、宿主DNAと統合しうるDNAワクチンの可能性のある能力について生じている。これらは、これらの組換えワクチンについての重要な規制のハードルを示している。
【0008】
また、どのようにしてT細胞エピトープおよび線状B細胞エピトープがプロセシングされ、免疫系へ提示されるかの理解へのかなりの前進にもかかわらず、エピトープに基づいたワクチンの全潜在能力は、完全には活かされていない。これについての主な理由は、多数の異なるT細胞エピトープであり、ヒト集団における最大のヒト白血球抗原(HLA)多型を網羅しうるそのようなワクチンへの含有のために同定されなければならない。
【0009】
全抗原パルス化または単一エピトープパルス化培養抗原提示細胞(APC)の注入は、マウスモデルにおいて免疫原性であることが以前に報告された(22-27)。しかしながら、近交系マウスにおける他の報告は、単一ペプチドでパルスされた細胞の注入が、寛容原性(ワクチンとして逆効果である抗原に対する寛容状態を誘導する)でさえありうることを示唆している(28-31)。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、対象のウイルスのポリペプチド抗原の重複ペプチドと接触した自己細胞が、その後のウイルス攻撃に対して防御する、非近交系集団において強い免疫原性応答を生じるという発見を開示する。本発明者らは、類似した防御応答が、重複ペプチドそれ自体の全身投与を用いて達成されることを提案する。複数の重複ペプチドの使用は、逃避突然変異体の出現を低減させること、およびいずれのエピトープの予備的知識もなしにペプチドに基づいた免疫原性組成物の容易な作製を含む、いくつかの利点を提供する。このことにおいて、ペプチド間の配列重複は、可能性のあるエピトープの損失を低減させるまたは防ぎ、組成物の免疫学的適用範囲を広げて、非近交系集団に渡る主要組織適合複合体(MHC)における多様性を網羅する可能性がある。
【0011】
従って、本発明の一つの局面において、対象の1つまたは複数のポリペプチドに対する免疫応答を調節するためのペプチドの少なくとも1セットが提供される。それぞれのセットの個々のペプチドは、対象の単一ポリペプチド(例えば、ポリペプチドの特定の病原性領域)に対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、ペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドに対して部分的配列同一性または類似性を示す。特定の態様において、ペプチドの少なくとも2、3、4、5、6または7セットが用いられ、各セットにおけるペプチド配列は、対象の別個のポリペプチドに由来する。
【0012】
部分的配列同一性または類似性は、典型的には、個々のペプチドの一方または両方の末端に含まれる。適切には、これらの末端の一方または両方において、配列がペプチドの少なくとも1つの他のものの内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である、少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個の連続したアミノ酸残基がある。
【0013】
特定の態様において、ペプチドは、長さが少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個のアミノ酸残基、適切には、長さが約500個、200個、100個、80個、60個、50個、40個より多くないアミノ酸残基である。適切には、ペプチドの長さは、細胞溶解性Tリンパ球応答(例えば、長さが約8個〜約10個のアミノ酸のペプチド)またはTヘルパーリンパ球応答(例えば、長さが約12個〜約20個のアミノ酸のペプチド)の生成を増加させるように選択される。
【0014】
特定の態様において、ペプチド配列は、対象のポリペプチドに対応する配列の少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%に由来する。
【0015】
対象のポリペプチドは、適切には、タンパク質抗原、癌細胞により発現される抗原、粒子抗原、同種異系抗原、自己抗原もしくはアレルゲン、または免疫複合体から選択される抗原である。特定の態様において、対象のポリペプチドは、限定されるわけではないが、病原性生物体または癌により産生されるポリペプチドのような疾患または状態関連ポリペプチドである。病原性生物体の例は、限定されるわけではないが、酵母、ウイルス、細菌、蠕虫、原生動物およびマイコプラズマを含む。癌の例は、限定されるわけではないが、黒色腫、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ホジキンリンパ腫などを含む。
【0016】
もう一つの局面において、本発明は、ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞によりまたはそれらの前駆体により提示されるのに十分な時間および条件下において、上でおおまかに記載されているようなペプチドの1セットと接触した抗原提示細胞またはそれらの前駆体を提供する。
【0017】
関連局面において、本発明は、対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための抗原提示細胞を産生するための方法を提供する。方法は、ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞によりまたはそれらの前駆体により提示されるのに十分な時間および条件下において、上でおおまかに記載されているようなペプチドの少なくとも1セットに抗原提示細胞またはそれらの前駆体を接触させる段階を含む。適切には、前駆体が用いられる場合、前駆体は、前駆体から抗原提示細胞を分化させるのに十分な時間および条件下において培養される。
【0018】
いくつかの態様において、ペプチドのセットまたは各セットは、実質的に精製された抗原提示細胞またはそれらの前駆体と接触させられる。他の態様において、ペプチドのセットまたは各セットは、抗原提示細胞またはそれらの前駆体の不均一な集団と接触させられる。これらの態様において、細胞の不均一なプールは、血液または末梢血単核球でありうる。典型的には、抗原提示細胞またはそれらの前駆体は、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される。さらに他の態様において、ペプチドのセットまたは各セットは、抗原提示細胞またはそれらの前駆体の無培養集団と接触させられる。集団は、均一または不均一でありうり、その具体例は、全血、新鮮血、または限定されるわけではないが、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞のようなその画分を含む。
【0019】
上でおおまかに記載された抗原提示細胞はまた、特定された抗原または抗原群に対する免疫応答を調節するためのTリンパ球およびBリンパ球を含むリンパ球を産生するのに有用である。従って、さらにもう一つの局面において、本発明は、抗原特異的リンパ球を産生するための方法を提供する。方法は、重複ペプチドが由来している少なくとも1つのポリペプチドに対する免疫応答を調節する抗原特異的リンパ球を産生するのに十分な時間および条件下において、上でおおまかに記載されているような抗原提示細胞と、リンパ球またはそれらの前駆体の集団を接触させる段階を含む。
【0020】
さらにもう一つの局面において、本発明は、上でおおまかに記載されているような、ペプチドの少なくとも1セット、または抗原提示細胞、またはリンパ球、ならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む組成物を企図する。特定の態様において、組成物は、アジュバント、または宿主酵素による分解に対してペプチドもしくは抗原を安定化する化合物をさらに含みうる。
【0021】
さらにもう一つの局面において、本発明は、対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための方法であって、免疫応答を調節するのに十分な時間および条件下において、上でおおまかに記載されているような、ペプチドの少なくとも1セット、または抗原提示細胞、またはリンパ球、または組成物をそのような治療を必要としている患者へ投与する段階を含む方法を含む。
【0022】
関連局面において、本発明は、対象のポリペプチドの存在に関連した疾患の治療および/または予防のための方法であって、上でおおまかに記載されているような、ペプチドの少なくとも1セット、または抗原提示細胞、またはリンパ球、または組成物の有効量をそのような治療または予防を必要としている患者へ投与する段階を含む方法を含む。いくつかの態様において、ペプチドまたは抗原提示細胞またはリンパ球は、全身性に、典型的には注射により、投与される。
【0023】
なおさらにもう一つの局面において、本発明は、対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための、または対象のポリペプチドの存在に関連した疾患を治療もしくは予防するための、薬物の調製における、上でおおまかに記載されているような、ペプチドの少なくとも1セットの、または抗原提示細胞の、またはリンパ球の使用を企図する。
【0024】
本発明はまた、抗原提示細胞またはそれらの前駆体の集団を培養して、その集団を、標的抗原と接触させる前に、接触した集団が適切なレシピエントにおいて標的抗原に対する免疫応答を調節するのに有用であるように拡大する必要がないという発見を開示する。それどころか、本発明者らは、意外にも、標的抗原に対応する抗原に接触した場合の、無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体は、標的抗原に対する免疫応答を調節するのに十分であることを発見した。無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体の使用は、高価な培養および細胞処理設備の必要性を回避し、特定の望ましい態様において、現行のプロトコールと比較してずっと速いワクチン接種療法を提供する。さらに、本発明者らは、無培養抗原提示細胞を、標的抗原に対する免疫応答を効果的に調節するためにそれらの活性化へと導く条件下でインキュベートする必要がないことを発見し、それは、方法段階および操作の数をさらに低減させる。
【0025】
従って、もう一つの局面において、本発明は、標的抗原に対する被験者における免疫応答を調節するための組成物を特徴とし、組成物は、活性化条件に供されていない、かつ被験者の免疫系(例えば、Tリンパ球)への提示のための抗原のプロセシングまたは改変された形態を発現させるのに十分な時間(例えば、約1分間から約5日間まで)および条件下において標的抗原に対応する抗原と接触した、無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体を含む。無培養細胞の具体例は、全血、新鮮血、または限定されるわけではないが、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞のようなその画分を含む。
【0026】
標的抗原に対応する抗原は、例えば、核酸、ペプチド、ホルモン、全タンパク質抗原、細胞物質(例えば、生きているまたは不活性化癌細胞)、限定されるわけではないが、細胞片、アポトーシス細胞、リポソームのような脂質凝集体、膜性媒体、ミクロスフェア、熱凝集化タンパク質、ビロゾーム、ウイルス様粒子のような粒子状物質、および例えば、細菌、ミコバクテリア、ウイルス、真菌、原生動物を含む生物体全体またはそれらの部分を含む、任意の型でありうる。いくつかの態様において、抗原は、タンパク性分子または核酸分子から選択される。いくつかの態様において、無培養細胞は、2つまたはそれ以上の抗原と接触させられる。この型の具体例において、抗原は、重複もしくは非重複ペプチド、またはそのペプチドが発現できる1つもしくは複数のポリヌクレオチドの形態をとる。
【0027】
関連局面において、本発明は、疾患が標的抗原の存在または異常型発現と関連している、被験者における疾患の治療のための薬物の調製における無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体の使用であって、抗原提示細胞またはそれらの前駆体が、活性化条件に供されていないが、被験者の免疫系への提示のために抗原のプロセシングまたは改変された形態を発現させるのに十分な時間および条件下において標的抗原に対応する抗原と接触している、使用にまで及ぶ。
【0028】
発明の詳細な説明
1. 定義
他に規定がない限り、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は、当業者により一般に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと類似または等価の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験に用いられうるが、好ましい方法および材料が記載されている。本発明の目的のために、以下の用語が下に定義される。
【0029】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法上の対象を指すために本明細書で用いられる。例として、「1つの要素」とは、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0030】
用語「約」は、特定条件に対して30%だけ、好ましくは20%だけ、およびより好ましくは10%だけ、変動する条件(例えば、量、濃度、時間など)を指すために本明細書で用いられる。
【0031】
用語「活性化条件」とは、以下のものから選択された活性化処理条件に起因するレベルまたは機能活性でのCD2、CD83、CD14、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびTNF-αのそれぞれの発現へと導く処理条件を指す:サイトカイン(例えば、IL-4、GM-CSFまたはI型インターフェロン)、ケモカイン、マイトジェン、リポ多糖、または抗原提示細胞もしくはそれらの前駆体においてインターフェロン合成を誘導する作用物質から選択される作用物質の存在下において抗原提示細胞またはそれらの前駆体をインキュベートすること;または、抗原提示細胞もしくはそれらの前駆体を物理的ストレスに供すこと。しかしながら、用語「活性化条件」は、細胞の無視できる活性を生じる、例えば、細胞の約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%もしくは0.1%未満が活性化される場合の処理条件、またはCD2、CD83、CD14、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびTNF-αのそれぞれが、上記の活性化処理条件に供された抗原提示細胞もしくはそれらの前駆体におけるそのレベルもしくは機能活性より、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%高いまたはさらに少なくとも約100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%もしくは1000%高い、または少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、92%、94%、96%、97%、98%もしくは99%低いまたはさらに少なくとも約99.5%、99.9%、99.95%、99.99%、99.995%もしくは99.999%低い、レベルまたは機能活性で発現される場合の処理条件を除外することは理解されるべきである。
【0032】
「抗原」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、において免疫応答を誘発する能力があるタンパク質、ペプチドまたは他の分子もしくは巨大分子の、全部または一部を意味する。そのような抗原はまた、そのタンパク質、ペプチドまたは他の分子もしくは巨大分子で免疫された動物由来の抗体と反応性である。
【0033】
「抗原結合分子」とは、標的抗原へ結合親和性を有する分子を意味する。この用語が、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、および抗原結合活性を示す非免疫グロブリン由来タンパク質フレームワークにまで及ぶことは理解されるものと思われる。
【0034】
「自己の」とは、同じ生物体由来の何か(例えば、細胞、組織など)を意味する。
【0035】
本明細書に用いられる場合の用語「同種異系間の」とは、異なる遺伝子構成である細胞、組織、生物体などを指す。
【0036】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises))」および「含むこと(comprising)」という語は、明白に規定された段階もしくは要素または段階もしくは要素の群の包含を意味するが、任意の他の段階もしくは要素または段階もしくは要素の群の排除を意味しないことを理解されるものと思われる。
【0037】
「に対応する(corresponds to)」または「に対応すること(corresponding to)」とは、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全部もしくは一部と実質的に同一もしくは相補的であるヌクレオチド配列を有する、または(b)ペプチドもしくはタンパク質におけるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチドを意味する。この句はまた、参照ペプチドもしくはタンパク質におけるアミノ酸の配列と実質的に同一もしくは類似であるアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドをその範囲内に含む。
【0038】
本明細書に用いられる場合、用語「培養(culturing)」、「培養する(culture)」などは、細胞の集団が、インビトロで細胞(または単細胞)の増殖または維持を支えることが示された条件下でインキュベートされるインビトロで用いられる一連の手順を指す。当技術分野では、培養系において定義される必要がある幅広い数の形式、培地、温度範囲、ガス濃度などを認識している。パラメーターは、選択された形式、および本明細書に開示された方法を実施する個人の特定のニーズに基づいて変わる。しかしながら、培養パラメーターの決定は事実上、日常的であることは認識されている。
【0039】
免疫応答を調節することまたは疾患を治療もしくは予防することに関連しての「有効量」とは、その調節、治療または予防に効果的である、単一用量かまたは一連の一部としてかのいずれかで、それを必要としている個体への組成物のその量の投与を意味する。有効量は、治療されるべき個体の健康および生理的状態、治療されるべき個体の分類群、組成物の剤形、医学的状態の評価、および他の関連因子に依存して変わる。量は、日常的試行を通して決定されうる比較的広い範囲に収まることが予想される。
【0040】
「発現ベクター」とは、ベクターによりコードされるタンパク質の合成を指揮する能力がある任意の自律的遺伝要素を意味する。そのような発現ベクターは、当業者により知られている。
【0041】
本明細書に用いられる場合の用語「遺伝子」は、細胞のゲノムのありとあらゆる別個のコード領域、加えて、付随した非コード領域および制御領域を指す。遺伝子はまた、特定のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、イントロン、ならびに発現の制御に関与する隣接する5'および3'非コードヌクレオチド配列を意味することが意図される。このことにおいて、遺伝子は、与えられた遺伝子と天然で付随している、プロモーター、エンハンサー、終結および/もしくはポリアデニル化シグナルのような制御シグナル、または異種性制御シグナルをさらに含みうる。DNA配列は、cDNAもしくはゲノムDNAまたはその断片でありうる。遺伝子は、染色体外維持のために、または宿主への組込みのために適切なベクターへ導入されうる。
【0042】
化合物または組成物は、それが以下のいずれかの能力がある場合には「免疫原性」である:a)ナイーブな個体において抗原(例えば、腫瘍抗原)に対して免疫応答を起こす;またはb)その化合物もしくは組成物が投与されなかったならば生じたであろうことを超えて、個体において免疫応答を再構成する、高める、もしくは維持する。化合物または組成物は、単一または複数用量で投与される場合、それがこれらの基準のいずれかを達成する能力がある場合には、免疫原性である。
【0043】
「免疫相互作用的な」への本明細書での言及は、分子間の、特に、分子のうちの1つが免疫系の構成要素である、または、を模倣するところの、任意の相互作用、反応または会合の他の形態への言及を含む。
【0044】
「単離された」とは、天然の状態において通常、付随している成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。
【0045】
「調節すること」とは、個体の免疫応答を直接的にかまたは間接的にかのいずれかで、増加または減少させることを意味する。特定の態様において、「調節」または「調節すること」は、所望の/選択された応答が、抗原の非存在下においてよりもまたは抗原が単独で用いられた場合よりも、効率がよい(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)、迅速である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)、大きさが大きい(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)、および/または容易に誘導される(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上)ことを意味する。
【0046】
本明細書に用いられる場合、用語「実施可能に結合された」または「実施可能に連結された」は、構造遺伝子をプロモーターの制御管理下に配置し、それで、遺伝子の転写および任意で翻訳を制御することを意味する。異種性プロモーター/構造遺伝子組み合わせの構築において、一般的に、遺伝子配列またはプロモーターを、その遺伝子配列またはプロモーターとそれが天然の設定;すなわち、遺伝子配列またはプロモーターが由来している遺伝子、において制御する遺伝子との間の距離とおよそ同じである、遺伝子転写開始部位からの距離に配置することが好ましい。当技術分野において知られているように、この距離におけるいくらかの変動は、機能の損失なしに適応しうる。同様に、制御配列エレメントの、その制御下に置かれうる異種性遺伝子に対しての好ましい配置は、その天然の設定;すなわち、それが由来している遺伝子、におけるエレメントの配置により限定される。
【0047】
用語「患者」、「対象」および「個体」は、治療または予防が望まれる、任意の対象、特に脊椎動物対象、およびなおより特に哺乳動物対象、を指すために本明細書で交換可能に用いられる。しかしながら、これらの用語は症状が存在することを含意しないことは理解されるものと思われる。本発明の範囲内に入る適した脊椎動物は、限定されるわけではないが、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、実験室試験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、イヌ)、および捕らわれの野生動物(例えば、キツネ、シカ、ディンゴ、爬虫類、鳥、魚)を含む。
【0048】
「薬学的に許容される担体」とは、局所的または全身投与に安全に用いられうる、固体もしくは液体増量剤、希釈剤またはカプセル物質を意味する。
【0049】
本明細書に用いられる場合の用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを表す。用語は、典型的には、長さが30ヌクレオチドより大きいオリゴヌクレオチドを指す。
【0050】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマー、ならびに同じものの変異体および合成類似体を指すために本明細書で交換可能に用いられる。従って、これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーへのみならず、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体のような合成の天然に存在しないアミノ酸であるアミノ酸ポリマーにも適用する。
【0051】
「プロモーター」への本明細書での言及は、その最も広い関係において解釈されるべきであり、CCAATボックス配列を含むまたは含まない、正確な転写開始に必要とされるTATAボックス、ならびに発生的および/もしくは環境的刺激に応答して、または組織特異的もしくは細胞型特異的様式で、遺伝子発現を変える付加的な制御エレメント(すなわち、上流活性化配列、エンハンサーおよびサイレンサー)を含む、古典的ゲノム遺伝子の転写制御配列を含む。プロモーターは、通常、必ずしもではないが、それが発現を制御する構造遺伝子の上流または5'側に配置される。さらになお、プロモーターを含む制御エレメントは、通常、遺伝子の転写の開始部位の2 kb内に配置される。本発明による好ましいプロモーターは、細胞において発現をさらに増強させるために、および/またはそれが実施可能に結合された構造遺伝子の発現のタイミングを変えるために、1つまたは複数の特定の制御エレメントの追加のコピーを含みうる。
【0052】
用語「精製されたペプチド」は、ペプチドが、ペプチドが由来している細胞もしくは組織源からの細胞物質もしくは他の含有タンパク質を実質的に含まない、または化学合成された場合化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないことを意味する。「実質的に含まない」とは、本発明のペプチドの調製が少なくとも10%純粋であることを意味する。特定の態様において、ペプチドの調製は、非ペプチドタンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)の、または化学的前駆体もしくは非ペプチド化学物質の約30%、25%、20%、15%、10%および望ましくは5%未満(乾燥重量として)を有する。本発明は、乾燥重量で少なくとも0.01、0.1、1.0および10ミリグラムの単離または精製された調製物を含む。
【0053】
本明細書に用いられる場合の用語「組換えポリヌクレオチド」は、天然で通常見出されない形態へと核酸の操作によりインビトロで形成されたポリヌクレオチドを指す。例えば、組換えポリヌクレオチドは、発現ベクターの形態をとりうる。一般的に、そのような発現ベクターは、ヌクレオチド配列に実施可能に連結された転写および翻訳制御核酸を含む。
【0054】
「組換えポリペプチド」とは、組換え技術を用いて、すなわち、組換えポリヌクレオチドの発現を通して、作製されるポリペプチドを意味する。
【0055】
本明細書に用いられる場合の「レポーター分子」とは、その化学的性質により、抗原結合分子およびその標的抗原を含む複合体の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルを与える分子を意味する。用語「レポーター分子」はまた、ラテックスビーズ上の赤血球などのような細胞凝集または凝集の阻害の使用にまで及ぶ。
【0056】
本明細書に用いられる場合の用語「配列同一性」は、配列が、比較のウィンドウに対してヌクレオチドごとを基礎にして、またはアミノ酸ごとを基礎にして、同一である程度を指す。従って、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウに対して最適に整列された2つの配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列に存在する位置の数を決定して、一致した位置の数をもたらし、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージをもたらすことにより計算される。本発明の目的のために、「配列同一性」は、ソフトウェアに添付の参照マニュアルに用いられているような標準デフォルトを用いてDNASISコンピュータープログラム(ウィンドウズ用バージョン2.5;Hitachi Software engineering Co., Ltd., South San Francisco, California, USAから入手できる)により計算された「一致パーセンテージ」を意味することを理解されているものと思われる。
【0057】
「類似性」とは、下記の表Bに定義されているような同一である、または保存的置換を構成するアミノ酸のパーセンテージ数を指す。類似性は、GAP(Deveraux et al. 1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)のような配列比較プログラムを用いて決定されうる。このようにして、本明細書に引用されているものと類似したまたは実質的に異なる長さをもつ配列は、アラインメントへのギャップの挿入により比較されうり、そのようなギャップは、例えば、GAPにより用いられる比較アルゴリズムにより決定される。
【0058】
2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係を記載するために用いられる用語は、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的同一性」を含む。「参照配列」は、長さが、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて、少なくとも12であるが、高い頻度で15〜18、およびしばしば、少なくとも25モノマー単位である。2つのポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で互いに異なる配列を含みうるため、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定かつ比較するように、「比較ウィンドウ」に対して2つのポリヌクレオチドの配列を比較することにより行われる。「比較ウィンドウ」とは、2つの配列が最適に整列された後に、配列が、連続した位置の同じ数の参照配列と比較される、少なくとも6個の連続した位置、通常には約50個〜約100個、より通常には約100個〜約150個の概念的区域を指す。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して約20%もしくはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAのコンピューター化された実行により、または洞察および選択された様々な方法のいずれかにより作成された最良アラインメント(すなわち、結果として比較ウィンドウに対して最高パーセンテージ相同性を生じる)により、行われうる。例えば、Altschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25:3389により開示されているようなプログラムのBLASTファミリーをも参照されうる。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al., "current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のUnit 19.3に見出されうる。
【0059】
「実質的に精製された集団」などとは、集団における細胞の約80%より多く、通常には約90%より多く、より通常には約95%より多く、典型的には約98%より多く、およびより典型的には約99%より多くが、選択された型の抗原提示細胞であることを意味する。
【0060】
本明細書に用いられる場合の用語「無培養の」とは、動物から取り出され、結果としてインビトロでの細胞の成長もしくは増殖を生じない、または結果として細胞の無視できる成長もしくは増殖(例えば、インキュベーションまたは処理の開始時点における細胞の数と比較して細胞数における約50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%。0.2%または0.1%未満の増加)を生じる条件下においてインキュベートまたは処理された細胞(または単細胞)の集団を指す。特定の望ましい態様において、細胞(または単細胞)の集団は、インビトロで細胞の維持を支える条件下においてインキュベートまたは処理される。
【0061】
「ベクター」とは、核酸配列が挿入またはクローニングされうる、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、または植物ウイルス由来の核酸分子、好ましくはDNA分子、を意味する。ベクターは、好ましくは、1つまたは複数の固有の制限酵素切断部位を含み、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞もしくは組織を含む定義済みの宿主細胞において自律複製の能力がありうる、またはクローニングされた配列が再生できるように定義済みの宿主のゲノムと統合可能でありうる。従って、ベクターは、自律複製するベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、複製が染色体複製から独立しているベクター、例えば、線状もしくは閉環状プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、または人工染色体、でありうる。ベクターは、自己複製を保証するための任意の手段を含みうる。または、ベクターは、宿主細胞へ導入された場合、ゲノムへ組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製されるものでありうる。ベクター系は、単一ベクターもしくはプラスミド、宿主細胞のゲノムへ導入されるべき全DNAを全体として含む2つもしくはそれ以上のベクターもしくはプラスミド、またはトランスポゾンを含みうる。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入されることになっている宿主細胞とのベクターの適合性に依存する。ベクターはまた、適した形質転換体の選択のために用いられうる抗生物質耐性遺伝子のような選択マーカーを含みうる。
【0062】
2. 免疫調節性の重複ペプチドのセット
本発明は、対象のウイルスポリペプチド抗原に及ぶ重複ペプチドの1セットとエクスビボで接触した抗原提示細胞(本明細書では、重複ペプチドパルス化自己細胞(Overlapping Peptide-pulsed Autologous ceLls, OPALとも呼ばれている)が、抗原のエピトープの予備的知識なしに、非近交系集団において強い免疫原性応答を生じるのに効果的であるという発見に一部、基づいている。抗原提示細胞は、循環系のかなりの部分を形成しているため、重複ペプチドそれ自体の全身送達が、同様の防御効果を生じることが提案されている。従って、本発明は、対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するためのペプチドの1セットであって、個々のペプチドが対象のポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、そのセットの少なくとも1つの他のペプチドと部分的配列同一性または類似性を示す、ペプチドを広く提供する。
【0063】
部分的配列同一性または類似性は、典型的には、個々のペプチドの一方または両方の末端に含まれる。一つの態様において、個々のペプチドの一方または両方の末端に少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、40個、50個の連続したアミノ酸残基があり、その配列が、ペプチドのうちの少なくとも1つの他のものの内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である。代わりの態様において、個々のペプチドの一方または両方の末端に500個、100個、50個、40個、30個未満の連続したアミノ酸残基があり、その配列が、ペプチドのうちの少なくとも1つの他のものの内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である。そのような「配列重複」は、対象のポリペプチド内に含まれる任意の可能性のあるエピトープの損失を防ぐまたは低減させるのに有利である。本明細書に開示された特定の例において、配列重複は、11個のアミノ酸残基である。
【0064】
典型的には、ペプチドは部分的配列類似性を有する場合、それらの配列は、通常、1つもしくは複数の保存されたおよび/または保存されていないアミノ酸置換により異なる。例示的な保存的置換は、以下の表に列挙されている。
【0065】
(表A)

【0066】
保存されたまたは保存されていない置換は、対象のポリペプチドにおける多型に対応しうる。多型ポリペプチドは、様々な病原性生物体および癌により発現される。例えば、多型ポリペプチドは、異なるウイルス株もしくはクレードにより、または別個の個体における異なる癌により、発現されうる。従って、対象の病原体の多型領域が含まれる場合、一般的に、多型部位でのアミノ酸残基における変異を網羅するペプチドの追加のセットを用いることが望ましい。
【0067】
本発明のペプチドは、対象のポリペプチドに対する免疫応答を誘発するために利用されうる任意の適切なサイズでありうる。多数の因子が、ペプチドサイズの選択に影響を及ぼしうる。例えば、ペプチドのサイズは、それが、CD4+ T細胞エピトープ、CD8+ T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープ、ならびにそれらのプロセシング必要条件、を含む、または、のサイズに対応するように選択されうる。当業者は、クラスI拘束性CD8+ T細胞エピトープが、典型的には、長さが8個と10個の間のアミノ酸残基であり、非天然のフランキング残基の隣りに配置される場合には、そのようなエピトープは、一般的に、それらが効率的にプロセシングおよび提示されることを保証するために2〜3個の天然のフランキングアミノ酸残基を必要としうる。クラスII拘束性CD4+ T細胞エピトープは、通常、長さが12個と25個の間のアミノ酸残基の範囲であり、天然のフランキング残基が役割を果たしうると考えられているが、効率的タンパク分解性プロセシングのために天然のフランキング残基を必要としない可能性がある。クラスII拘束性エピトープのもう一つの重要な特徴は、それらが、一般的に、クラスII MHC分子に特異的に結合する中央における9〜10個のアミノ酸残基のコアを含み、このコアの両側にあるフランキング配列が、配列非依存的様式でクラスII MHC抗原の両側にある保存された構造と会合することにより結合を安定化させることである。従って、クラスII拘束性エピトープの機能的領域は、典型的には、長さが約15個未満のアミノ酸残基である。線状B細胞エピトープ、およびクラスII拘束性エピトープのようなそれらのプロセシングをもたらす因子のサイズは、そのようなエピトープはしばしば、15個のアミノ酸残基よりサイズが小さいが、かなり変わりやすい。前記から、ペプチドのサイズは少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個のアミノ酸残基であることが必須ではないが、有利である。適切には、ペプチドのサイズは、約500個、200個、100個、80個、60個、50個、40個のアミノ酸残基より多くない。一つの態様において、ペプチドのサイズは、T細胞および/またはB細胞エピトープの損失を最小限にするのに十分大きい。もう一つの態様において、ペプチドのサイズは、ペプチド内に含まれるT細胞および/またはB細胞エピトープの抗原提示細胞による提示のために十分である。この態様の一つの例において、ペプチドのサイズは、約15アミノ酸残基である。
【0068】
対象のポリペプチドは、適切には、個体により産生される内因性抗原または個体にとって外来である外因性抗原から選択されうる、疾患または状態関連抗原である。適した内因性抗原は、限定されるわけではないが、自己免疫応答の標的である自己抗原、および癌または腫瘍抗原を含む。自己免疫疾患の治療または予防に有用な自己抗原の具体例は、限定されるわけではないが、真性糖尿病、関節炎(慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬創反応によるアレルギー応答、クローン病、潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病逆反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳脊髄炎、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェグナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーヴンズ-ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および間質性肺線維症を含む。他の自己抗原は、全身性エリテマトーデスの治療のためのヌクレオソーム(例えば、GenBankアクセッション番号D28394; Bruggen et al., 1996, Ann. Med. Interne (Paris), 147:485-489)由来、および回施糸状虫抗原と交差反応性の眼組織の44,000 Da ペプチド成分(McKeclmie et al., 1993, Ann. Trop. Med. Parasitol. 87:649-652)由来のものを含む。従って、本発明の組成物および方法に用いられうる実例的な自己抗原の抗原は、限定されるわけではないが、狼瘡自己抗原、スミス(Smith)、Ro、La、U1-RNP、フィブリン(強皮症)、膵臓β細胞抗原、GAD65(糖尿病関連)、インスリン、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ヒストン、PLP、コラーゲン、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、シトルリン化タンパク質およびペプチド、甲状腺抗原、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、様々なtRNAシンセターゼ、、アセチルコリン受容体(AchR)の成分、MOG、プロテイナーゼ-3、ミエロペルオキシダーゼ、表皮性カドヘリン、アセチルコリン受容体、血小板抗原、核酸、核酸:タンパク質複合体、関節抗原、神経系の抗原、唾液腺タンパク質、皮膚抗原、腎臓抗原、心臓抗原、肺抗原、眼抗原、赤血球抗原、肝臓抗原ならびに胃抗原の少なくとも一部を含む。
【0069】
癌または腫瘍抗原の非限定的例は、ABL1プロトオンコジーン、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢胞性癌、副腎皮質癌、原因不明骨髄様化生、脱毛症、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、神経膠星状細胞腫、毛細管拡張性運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹膠腫、脳CNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、類癌腫、子宮頚癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝臓外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、フォロピーオ管癌、ファンコニー貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内性黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハウス細胞組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー-フラウメニ癌症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ水腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性の乳癌、腎臓の悪性横紋筋様腫瘍、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖症候群、鼻腔癌、鼻咽腔癌、腎性芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉腫瘍、下垂体癌、真性赤血球増加症、前立腺癌、希少癌および関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムント-トムソン症候群、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、(皮膚の)扁平上皮細胞癌、胃癌、滑膜肉腫、睾丸癌、胸腺癌、甲状腺癌、(膀胱の)移行上皮癌、(腎孟/尿管の)移行上皮癌、絨毛性癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン症、ウィルムス腫瘍から選択される癌または腫瘍由来の抗原を含む。特定の態様において、癌または腫瘍は、黒色腫に関連する。黒色腫関連抗原の具体例は、メラニン細胞分化抗原(例えば、gp100、MART、TRP-1、Tyros、TRP2、MC1R、MUC1F、MUC1Rまたはそれらの組み合わせ)および黒色腫特異的抗原(例えば、BAGE、GAGE-1、gp100In4、MAGE-1(例えば、GenBankアクセッション番号X54156およびAA494311)、MAGE-3、MAGE4、PRAME、TRP2IN2、NYNSO1a、NYNSO1b、LAGE1、p97黒色腫抗原(例えば、GenBankアクセッション番号M12154)、またはそれらの組み合わせを含む。他の腫瘍特異的抗原は、進行癌に関連したRasペプチドおよびp53ペプチド、乳癌に関連したMUC1-KLH抗原(例えば、GenBankアクセッション番号J03651)、結腸直腸癌に関連したCEA(癌胎児性抗原)(例えば、GenBankアクセッション番号X98311)、gp100(例えば、GenBankアクセッション番号S73003)、および前立腺癌と関連したPSA抗原(例えば、GenBankアクセッション番号X14810)を含む。p53遺伝子配列は、知られており(例えば、Harris et al., 1986 Mol. Cell. Biol. 6:4650-4656参照)、アクセッション番号M14694としてGenBankに寄託されている。
【0070】
外来抗原は、適切には、移植抗原、アレルゲン、および病原性生物体由来の抗原から選択される。移植抗原は、例えば心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、神経移植片成分からのドナー細胞もしくは組織由来、または外因性抗原の非存在下において自己抗原を負荷されたMHCを有するドナー抗原提示細胞由来でありうる。
【0071】
アレルゲンの非限定的例は、Fel d 1(すなわち、家ネコFelis domesticusのネコの皮膚および唾液腺アレルゲン、そのアミノ酸配列は、国際公開公報第91/06571号に開示されている)、Der p I、Der p II、Der fIまたはDer fII(すなわち、イエダニのヒョウヒダニ属(dermatophagoides)由来の主なタンパク質アレルゲン、そのアミノ酸配列は、国際公開公報第94/24281号に開示されている)を含む。他のアレルゲンは、例えば、以下のものに由来しうる:草、木および雑草(ブタクサを含む)花粉;真菌およびカビ;魚、貝、カニ、ロブスター、ピーナッツ、ナッツ、コムギグルテン、卵およびミルクのような食物;ハチ(bee)、ジガバチ(wasp)およびスズメバチ(hornet)のような刺す昆虫ならびにチルノミダエ(chirnomidae)(非刺咬性小昆虫);イエバエ、ミバエ、ヒツジクロバエ、ラセンウジバエ、コクゾウムシ、カイコ、ミツバチ(honeybee)、非刺咬性小昆虫幼虫、ハチミツガ幼虫、ゴミムシダマシの幼虫、ゴキブリおよびチャイロコメノゴミムシダマシ(Tenibrio molitor)甲虫の幼虫のような他の昆虫;クモおよびイエダニを含むダニ;ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ラット、モルモット、マウスおよびアレチネズミのような哺乳動物の鱗屑、尿、唾液、血液または他の体液に見出されるアレルゲン;一般的な空気によって運ばれる微粒子;ラテックス;ならびにタンパク質清浄分散剤。
【0072】
例示的病原性生物体は、限定されるわけではないが、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、藻類ならびに原生動物およびアメーバを含む。ウイルスの具体例は、限定されるわけではないが、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、小児麻痺、A型、B型(例えば、GenBankアクセッション番号E02707)およびC型(例えば、GenBankアクセッション番号E06890)肝炎、加えて他の肝炎ウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス(例えば、4型および7型)、狂犬病(例えば、GenBankアクセッション番号M34678)、黄熱病、エプスタイン-バーウイルスおよびパピローマウイルスのような他のヘルペスウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎(例えば、GenBankアクセッション番号E07883)、デング熱(例えば、GenBankアクセッション番号M24444)、ハンタウイルス、センダイウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、オルソミキソウイルス(othromyxovirus)、水疱性口内炎ウイルス、ビスナウイルス、サイトメガロウイルス、ならびにヒト免疫不全症ウイルス(HIV)(例えば、GenBankアクセッション番号U18552)を含む疾患の原因であるウイルスを含む。そのようなウイルス由来の任意の適切な抗原は、本発明の実施において有用である。例えば、具体的なHIV由来のレトロウイルス抗原は、限定されるわけではないが、gag、polおよびenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素、および他のHIV成分を含む。肝炎ウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、B型肝炎ウイルスのS、MおよびLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレS抗原のような抗原、ならびに他の肝炎、例えばA型、B型およびC型肝炎の、C型肝炎ウイルスRNAのようなウイルス成分を含む。インフルエンザウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、麻疹ウイルス融合タンパク質のような抗原および他の麻疹ウイルス成分を含む。風疹ウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、タンパク質E1およびE2のような抗原ならびに他の風疹ウイルス成分を含む;VP7SCのようなロタウイルス抗原および他のロタウイルス成分。サイトメガロウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、エンベロープ糖タンパク質Bのような抗原および他のサイトメガロウイルス抗原成分を含む。呼吸器合胞体ウイルス抗原の非限定的例は、RSV融合タンパク質、M2タンパク質のような抗原および他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分を含む。単純ヘルペスウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、最初期タンパク質、糖タンパク質Dのような抗原、および他の単純ヘルペスウイルス抗原成分を含む。水疱瘡ウイルス抗原の非限定的例は、9PI、gpIIのような抗原、および他の水疱瘡ウイルス抗原成分を含む。日本脳炎ウイルス抗原の非限定的例は、タンパク質E、M-E、M-E-NS 1、NS 1、NS 1-NS2A、80%Eのような抗原および他の日本脳炎ウイルス抗原成分を含む。狂犬病ウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパクのような抗原および他の狂犬病ウイルス抗原成分を含む。パピローマウイルス抗原の具体例は、限定されるわけではないが、L1およびL2キャプシドタンパク質、加えて子宮頚癌に関連したE6/E7抗原を含む。ウイルス抗原の追加の例について、Fundamental Virology、第2版、eds. Fields, B.N. and Knipe, D.M., 1991, Raven Press, New Yorkを参照されたい。
【0073】
真菌の具体例は、アクレモニウム種(Acremonium spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、バシジオボルス種(Basidiobolus spp.)、ビポラリス種(Bipolaris spp.)、ブラストミセス デルマティディス(Blastomyces dermatidis)、カンジダ種(Candida spp.)、クラドフィアロホーラ カリオニ(Cladophialophora carrionii)、コクシジオデス イミティス(Coccidiodes immitis)、コニジオボルス種(Conidiobolus spp.)、クリプトコックス種(Cryptococcus spp.)、クルブラリア種(Curvularia spp.)、エピデルモフィトン種(Epidermophyton spp.)、エキソフィアラ ジャンセルメイ(Exophiala jeanselmei)、エクスセロヒルム種(Exserohilum spp.)、フォンセカエア コンパクタ(Fonsecaea compacta)、フォンセカエア ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フザリウム オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)、ゲオトリチュム カンジダム(Geotrichum candidum)、ヒストプラスマ カプスラツム変異体カプスラツム(Histoplasma capsulatum var. capsulatum)、ヒストプラスマ カプスラツム変異体デュボイシ(Histoplasma capsulatum var. duboisii)、ホルタエア ウェルネキー(Hortaea werneckii)、ラカジア ロボイ(Lacazia loboi)、ラシオジプロジア セオブロマエ(Lasiodiplodia theobromae)、レプトスファエリア セネガレンシス(Leptosphaeria senegalensis)、マデュレラ グリセア(Madurella grisea)、マデュレラ ミセトマティス(Madurella mycetomatis)、マラセジア フルフル(Malassezia furfur)、小胞子菌種(Microsporum spp.)、ネオテスツジナ ロサチ(Neotestudina rosatii)、オニココーラ カナデンシス(Onychocola canadensis)、パラコシジオイデス ブラシリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、フィアロホーラ ヴェルコーサ(Phialophora verrucosa)、ピエドライア ホルタエ(Piedraia hortae)、ピエドラ イアホルタエ(Piedra iahortae)、ピチリアシス ヴェルシコロル(Pityriasis versicolor)、シューダレシェリア ボイジ(Pseudallesheria boydii)、ピレノカエタ ロメロイ(Pyrenochaeta romeroi)、リゾプス アリズス(Rhizopus arrhizus)、スコプラリオプシス ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、シタリジウム ジミジアツム(Scytalidium dimidiatum)、スポロスリックス シェンキー(Sporothrix schenckii)、トリコフィトン種(Trichophyton spp.)、トリコスポロン種(Trichosporon spp.)、接合菌類真菌、アブシジア コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール プシルス(Rhizomucor pusillus)およびリゾプス アリズス(Rhizopus arrhizus)を含む。従って、本発明の組成物および方法に用いられうる具体的な真菌抗原は、限定されるわけではないが、カンジダ真菌抗原成分;熱ショックタンパク質60(HSP60)のようなヒストプラスマ真菌抗原および他のヒストプラスマ真菌抗原成分;莢膜の多糖のようなクリプトコックス真菌抗原および他のクリプトコックス真菌抗原成分;小球体抗原のようなコクシジオデス真菌抗原および他のコクシジオデス真菌抗原成分;ならびにトリコフィチンのような白癬真菌抗原および他の白癬真菌抗原成分を含む。
【0074】
細菌の具体例は、限定されるわけではないが、ジフテリア(例えば、ジフテリア菌)、百日咳(例えば、百日咳菌)、GenBankアクセッション番号M35274)、破傷風(例えば、破傷風菌、GenBankアクセッション番号M64353)、結核(例えば、結核菌)、細菌性肺炎(例えば、インフルエンザ菌)、コレラ(例えば、ビブリオ コレラ)、炭疽(例えば、バシルス アンスラシス)、チフス、ペスト、細菌性赤痢(例えば、志賀赤痢菌)、ボツリヌス中毒(例えば、クロストリジウム ボツリヌム)、サルモネラ症(例えば、GenBankアクセッション番号L03833)、消化性潰瘍(例えば、ヘリコバクター ピロリ)、在郷軍人病、ライム病(例えば、GenBankアクセッション番号U59487)を含む疾患の原因である細菌を含む。他の病原性細菌は、大腸菌、ウェルシュ菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌および化膿連鎖球菌を含む。従って、本発明の組成物および方法に用いられうる細菌抗原は、限定されるわけではないが、以下のものを含む:百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、ペルタクチン、F M2、FIM3、アデニル酸シクラーゼのような百日咳細菌抗原および他の百日咳細菌抗原成分;ジフテリア毒素またはトキソイドのようなジフテリア細菌抗原および他のジフテリア細菌抗原成分;破傷風毒素またはトキソイドのような破傷風細菌抗原および他の破傷風細菌抗原成分、Mタンパク質のような連鎖球菌細菌抗原および他の連鎖球菌細菌抗原成分;リポ多糖のようなグラム陰性バチルス細菌抗原および他のグラム陰性細菌抗原成分;ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30 kDa 主要な分泌タンパク質、抗原85A、のようなミコバクテリウム ツベルクロシス細菌抗原および他のミコバクテリウム抗原成分;ヘリコバクター ピロリ細菌抗原成分、ニューモリシン、肺炎球菌莢膜多糖のような肺炎球菌細菌抗原および他の肺炎球菌細菌抗原成分;莢膜多糖のようなヘモフィルス インフルエンザ細菌抗原および他のヘモフィルス インフルエンザ細菌抗原成分;炭疽菌防御抗原のような炭疽菌細菌抗原および他の炭疽菌細菌抗原成分;rompAのようなリケッチア細菌抗原および他のリケッチア細菌抗原成分。また、任意の他の細菌、ミコバクテリウム、マイコプラズマ、リケッチアまたはクラミジアの抗原も、本明細書に記載された細菌抗原と共に含まれる。
【0075】
原生動物の具体例は、限定されるわけではないが、マラリア(例えば、GenBankアクセッション番号X53832)、鈎虫症、糸状虫症(例えば、GenBankアクセッション番号M27807)、住血吸虫症(例えば、GenBankアクセッション番号LOS 198)、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ジアルジア症(GenBankアクセッション番号M33641)、アメーバ症、フィラリア症(例えば、GenBankアクセッション番号J03266)、ボレリア症、旋毛虫症を含む疾患の原因である原生動物を含む。従って、本発明の組成物および方法に用いられうる原生動物抗原は、限定されるわけではないが、以下のものを含む:メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母体/配偶子表面抗原、血液期抗原pf 155/RESAのような熱帯熱マラリア原虫抗原および他のマラリア原虫抗原成分;SAG-1、p30のようなトキソプラズマ抗原および他のトキソプラズマ抗原成分;グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、パラミオシンのような住血吸虫抗原および他の住血吸虫抗原成分;gp63、リポホスホグリカンおよびその付随したタンパク質のようなリーシュマニア主要および他のレーシュマニア抗原、ならびに他のレーシュマニア抗原成分;ならびに、75〜77 kDa抗原、56 kDa抗原のようなトリパノソーマ クルージ(trypanosoma cruzi)抗原および他のトリパノソーマ抗原成分。
【0076】
本発明はまた、抗原として毒素成分を企図する。毒素の具体例は、限定されるわけではないが、ブドウ球菌エンテロトキシン、毒性ショック症候群毒素;レトロウイルス抗原(例えば、HIV由来の抗原)、連鎖球菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン-A(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシン-B(SEB)、ブドウ球菌エンテロトキシン1-3(SE1-3)、ブドウ球菌エンテロトキシン-D(SED)、ブドウ球菌エンテロトキシン-E(SEE)、加えて、マイコプラズマ、ミコバクテリウムおよびヘルペスウイルス由来の毒素を含む。
【0077】
本発明の一つの例において、個々のペプチドのサイズは、約14個または15個のアミノ酸残基であり、個々のペプチドの一方または両方の末端における配列重複は、約11個のアミノ酸残基である。しかしながら、他の適切なペプチドサイズおよび配列重複サイズが本発明により企図されており、当業者により容易に確認されうることは、理解されるものと思われる。
【0078】
重複ペプチドの1セットを作製するために対象のポリペプチドの全配列を利用することが、必ずしもではないが、有利である。典型的には、対象のポリペプチドに対応する配列の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が、本発明の重複ペプチドを作製するために用いられる。しかしながら、重複ペプチドを作製するために利用される対象のポリペプチドからの配列情報が多ければ多いほど、非近交系集団適用範囲は、免疫原としての重複ペプチドについて大きくなるだろう。適切には、対象のポリペプチドからの配列情報が無いのは、除外される(例えば、免疫学的エピトープの明らかな欠損のため、よりまれなまたは次位優先のエピトープがうっかり見逃される可能性があるため)。必要に応じて、対象のポリペプチド内の高頻度可変性配列が、重複のペプチドのセットの構築から除外されうるか、または多型領域を網羅するペプチドの追加のセットが構築かつ投与されうる。ペプチド配列は、対象のポリペプチドの由来ではない追加の配列を含みうる。これらの追加の配列は、溶解性、安定性もしくは免疫原性を改善すること、または精製を容易にすることを含む様々な機能をもちうる。典型的には、そのような追加の配列は、それぞれのペプチドの一方または両方の末端に含まれる。
【0079】
本発明により重複ペプチドの1セットを調製する場合、病原性生物体により産生された、または癌において発現された複数の異なるポリペプチドからの配列情報を用いることが有利でありうることは、当業者は認識するものと思われる。従って、特定の態様において、ペプチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、9個、10個、15個、20個の他のセットが、本発明の免疫調節性組成物の作製に用いられ、ペプチドのそれぞれの他のセットの配列は、対象の別個のポリペプチド由来であり、かつそれぞれの他のセットの個々のペプチドは、ペプチドの対応するセットの少なくとも1つの他のペプチドと部分的配列同一性または類似性を示す。重複ペプチドのセットの構築において、特定の供給源から、または、に関して、できるかぎり多くのポリペプチドを利用することが、この点で有利である。適切には、供給源により発現されたポリペプチドの少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および望ましくは100%が、重複ペプチドの対応するセットの構築において用いられる。そのような構築に用いられうる例示的ウイルスポリペプチドは、限定されるわけではないが、不顕性ポリペプチド、制御ポリペプチド、またはそれらの複製サイクル中の初期に発現されるポリペプチドを含む。適切には、原生動物、細菌、マイコプラズマ、真菌または蠕虫由来のポリペプチドは、限定されるわけではないが、分泌ポリペプチド、制御ポリペプチドおよびこれらの生物体の表面上に発現されたポリペプチドを含む。重複ペプチドセットの構築のために用いられうる癌または腫瘍由来のポリペプチドは、適切には、癌特異的ポリペプチドである。
【0080】
サル免疫不全症ウイルス(SIV)および/またはキメラSIV-HIV-1(SHIV)(両方ともヒトにおける病原性HIV-1ウイルスについての適切なモデルであることが知られている)に対する免疫応答を調節するための代表的な重複ペプチドセットは、例えば、表1〜4に示されているようなSIV gag、pol、nef、もしくはSHIV envから選択される1つまたは複数のポリペプチドに基づきうる。HIV-1に対する免疫応答を調節するための例示的重複ペプチドセットは、例えば、表5〜12に示されているような、HIV Gag、Nef、Pol、Rev、Tat、Vif、VprおよびVpuから選択される1つまたは複数のポリペプチドに基づきうる。HCV 1aに対する免疫応答を調節するための例示的重複ペプチドセットは、例えば表13に示されているようなHCV 1a H77ポリタンパク質配列に基づきうる。HBV遺伝子型Aに対する免疫応答を調節するための例示的重複ペプチドセットは、この遺伝子型により発現されるすべてのタンパク質、および例えば、表14に示されているような、遺伝子型A配列からの有意な可変性を示す遺伝子型B/C/Dから発現されたタンパク質のいくつかの部分に基づきうる。
【0081】
本発明の重複ペプチドセットは、当業者に公知の任意の適切な手順により調製されうる。例えば、ペプチドセットは、例えば、Atherton and Shephard(1989, Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach. IRL Press, Oxford)のChapter 9およびRoberge et al.(1995, Science 269:202)に記載されているような、溶液合成または固相合成を用いて都合よく合成されうる。合成は、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)または9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学のいずれかを用いうる(Coligan et al., CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE, John Wiely & Sons, Inc. 1995-1997のChapter 9.1; Stewart and Young, 1984, Solid Phase Peptide Synthesis, 2 nd ed. Pierce Chemical Co., Rockford, Ill;およびAtherton and Shephard、前記を参照)。特定の態様において、個々のペプチドは、ペプチドの大きなプールが、細胞上へパルスされる場合、過剰量のDMSOを含まないように、高濃度でDMSO(例えば、100%純粋DMSO)に溶解される。特定の有利な態様において、可溶型の本発明の1つまたは複数のペプチドセットは、対象への投与に都合がいいような単一の容器(例えば、すぐに再注入可能な血液チューブまたはバイアル)へ置かれ、そのような容器はまた、本発明により企図されている。
【0082】
または、個々のペプチドは、以下の段階を含む手順により調製されうる:(a)重複のペプチドのセットの個々のペプチドをコードする合成ポリヌクレオチドを含む合成構築物を調製する段階であって、合成ポリヌクレオチドが制御ポリヌクレオチドに実施可能に連結されている、段階;(b)合成構築物を適切な宿主細胞へ導入する段階;(c)宿主細胞を培養して、合成ポリヌクレオチドを発現させる段階;および(d)個々のペプチドを単離する段階。合成構築物は、好ましくは、発現ベクターの形態をとる。例えば、発現ベクターは、プラスミドのような自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムへ統合されるベクターでありうる。典型的には、制御ポリヌクレオチドは、限定されるわけではないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列を含む。当技術分野において知られているような恒常的または誘導性プロモーターが本発明により企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーターか、または1つより多いプロモーターのエレメントを結合するハイブリッドプロモーターのどちらでもありうる。制御ポリヌクレオチドは、一般的に、発現に用いられる宿主細胞に適している。適切な発現ベクターおよび適した制御ポリヌクレオチドの多数の型は、様々な宿主細胞について当技術分野において知られている。特定の態様において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にしうる選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は当技術分野においてよく知られており、用いられる宿主細胞によって異なる。他の態様において、発現ベクターはまた、個々のペプチドが融合パートナーを含む融合ポリペプチドとして発現されるように、融合パートナーをコードする核酸配列を含む。融合パートナーの主な利点は、それらが融合ポリペプチドの同定および/または精製を援助することである。例示的融合パートナーは、限定されるわけではないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MBP)およびヘキサヒスチジン(HIS6)を含み、アフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離に特に有用である。アフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチド精製を目的として、アフィニティークロマトグラフィーのための関連する基質は、それぞれ、グルタチオン-、アミロース-、およびニッケル-またはコバルト-結合樹脂である。多くのそのような基質は、(HIS6)融合パートナーに有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)およびPharmacia GST精製システムのような「キット」型として入手できる。好ましい態様において、組換えポリヌクレオチドは、市販ベクターpFLAG(商標)において発現される。有利なことには、融合パートナーはまた、第Xa因子、トロンビンについてのようなプロテアーゼ切断部位およびインテイン(タンパク質イントロン)を有し、関連するプロテアーゼが本発明の融合ポリペプチドを部分的に消化するのを可能にし、それにより本発明の組換えポリペプチドをそれから遊離させる。遊離したペプチドは、その後、次のクロマトグラフ分離により融合パートナーから単離されうる。本発明による融合パートナーはまた、通常、特異的抗体が利用できる短いペプチド配列である、「エピトープタグ」をそれらの範囲内に含む。特異的モノクローナル抗体が容易に利用できるエピトープタグの周知の例は、c-Myc、インフルエンザウイルス、赤血球凝集素およびFLAGタグを含む。
【0083】
合成構築物を宿主細胞へ導入する段階は、トランスフェクションおよび形質転換を含む任意の適した技術を用いて達成されうり、その選択は、用いられる宿主細胞に依存する。そのような方法は、当業者に周知である。本発明のペプチドは、合成構築物で形質転換された宿主細胞を培養することにより産生されうる。タンパク質発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって異なる。これは、日常的実験を通して当業者により容易に確かめられる。発現のための適切な宿主細胞は、原核生物または真核生物でありうる。本発明によるポリペプチドの発現のための1つの好ましい宿主細胞は細菌である。用いられる細菌は大腸菌でありうる。または、宿主細胞は、バキュロウイルス発現系で利用されうる、例えばSF9細胞のような、昆虫細胞でありうる。
【0084】
ペプチドのアミノ酸は、任意の天然に存在しないまたは任意の天然に存在するアミノ酸でありうる。ペプチド合成中の非天然アミノ酸および誘導体の例は、限定されるわけではないが、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニル吉草酸、4-アミノ3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、t-ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルチニチン、サルコシン、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体を含む。本発明により企図される非天然アミノ酸のリストは、表Bに示されている。
【0085】
(表B)


【0086】
本発明はまた、本発明のペプチドを、タンパク分解に対するそれらの抵抗性を変えるために、または溶解性性質を最適化するために、またはそれらを免疫原としてより適したものにするために、通常の分子生物学的技術を用いて改変することを企図する。
【0087】
3. 抗原提示細胞態様
本発明はまた、セクション2で記載されているような重複ペプチドセットと接触した抗原提示細胞が、免疫応答の強力な調節剤であり、かつ対象の疾患の症状を予防または改善しうる強い免疫原性応答を生じるために特に有用であるという発見を開示する。従って、本発明は、抗原提示細胞またはそれらの前駆体を、上で大まかに記載されたペプチドの1つまたは複数のセットと、ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞またはそれらの前駆体により提示されるのに十分な時間および条件下において接触させる段階および、前駆体の場合には、前駆体から抗原提示細胞へ分化させるのに十分な時間および条件下において前駆体を培養する段階を含む、抗原特異的抗原提示細胞を産生するための方法を提供する。
【0088】
本発明者らはまた、予想外にも、現行のドグマとは対照的に、精製された抗原提示細胞を、それらの細胞のレシピエントにおいて抗原に対する免疫応答の効果的な調節のためにそれらに抗原を負荷する前に、それらの数または効力を増加させるために培養する必要がないことを見出した。それどころか、本発明者らは、活性化条件に供されていない抗原提示細胞またはそれらの前駆体の無培養集団が、被験者の標的抗原に対応する抗原と接触する場合、接触した集団のレシピエントにおいて標的抗原に対する免疫応答を効果的に調節するのに十分であることを発見した。従って、もう一つの局面において、本発明は、活性化条件に供されていない抗原提示細胞またはそれらの前駆体の無培養集団を、標的抗原に対応する抗原と、抗原提示細胞またはそれらの前駆体が抗原のプロセシングされたまたは改変された形態を発現させるのに十分な時間および条件下において接触させる段階を含む、抗原特異的抗原提示細胞を産生するための方法を提供する。抗原提示細胞またはそれらの前駆体の無培養集団の具体例は、全血、新鮮血、または限定されるわけではないが、末梢血単核球(PMBC)、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞のようなその画分を含む。特定の態様において、抗原提示細胞の無培養集団は、新鮮に単離された血液またはPMBCから選択される。他の態様において、抗原提示細胞の無培養集団は、壊死性またはアポトーシス性集団である。従って、細胞の無培養集団は、抗原と接触させられ、続いて、細胞へ不可逆性外傷をもたらす壊死性条件(例えば、浸透圧衝撃またはグルタルアルデヒドのような化学的毒物への曝露)に供されうり、細胞はミトコンドリアおよび細胞質の著しい腫脹、続いて細胞破壊および自己分解を特徴とする。または、無培養細胞集団は、抗原に接触させられ、続いて、アポトーシス性条件に供されうる。抗原を発現または提示する細胞は、限定されるわけではないが、ウイルス感染、紫外線、ガンマ線での照射、ステロイド、固定(例えば、グルタルアルデヒドでの)、サイトカイン、またはドナー細胞から細胞培地における栄養分を奪うことによる、を含む当技術分野において公知の様々な方法を用いてインビトロまたはインビボでアポトーシスを受けるように誘導されうる。経時変化研究は、細胞の集団におけるアポトーシスの最適な誘導に十分なインキュベーション期間を確立できる。例えば、インフルエンザウイルスに感染した単球は、感染後6時間目までにアポトーシスについての初期マーカーを発現し始める。アポトーシスについての特異的マーカーの例は、アネキシンV、TUNEL+細胞、DNAラダリングおよびヨウ化プロピジウムの取り込みを含む。
【0089】
本発明のこの局面により、集団に接触させるために用いられる抗原は、セクション2に記載された重複のペプチドのセットに限定されず、代わりに、例えば、単純な中間代謝産物、糖、脂質およびホルモン、加えて、複合糖質、リン脂質、核酸分子およびタンパク性分子のような巨大分子を含む任意の生物学的型の抗原を含む。具体例において、標的抗原に対応する抗原は、全タンパク質抗原、細胞物質(例えば、生きているまたは不活性化癌細胞)、限定されるわけではないが、細胞片、アポトーシス細胞、リポソームのような脂質凝集体、膜性媒体、ミクロスフェア、熱凝集化タンパク質、ビロゾーム、ウイルス様粒子のような粒子状物質、および例えば、細菌、ミコバクテリア、ウイルス、真菌、原生動物を含む生物体全体またはそれらの部分から選択される。
【0090】
標的抗原は、例えばセクション2に記載されているような、宿主により産生される内因性抗原、または宿主にとって外来である外因性抗原から選択されうる。特定の態様において、標的抗原に対応する抗原は、タンパク性抗原である。そのような抗原は、天然源から単離されうる、または当技術分野において公知の組換え技術により調製されうる。または、粗抗原調製物は、改変された免疫応答が望まれる細胞集団または組織の試料を単離し、試料を溶解するか、またはアポトーシス細胞の形成へと導く条件(例えば、紫外線またはガンマ線での照射、ウイルス感染、サイトカインまたは細胞から細胞培地における栄養分を奪うことによる、過酸化水素との、またはデキサメタゾン、セラミド化学療法剤およびLupron(商標)もしくはTamoxifen(商標)のような抗ホルモン剤のような薬剤とのインキュベーション)に試料を供すかのいずれかにより産生されうる。可溶化液またはアポトーシス細胞は、その後、可溶型での使用のための、または下により詳細に記載されている抗原提示細胞との接触のための、粗抗原の供給源として用いられうる。
【0091】
3.1 抗原提示細胞の供給源
抗原提示細胞は、適切には、抗原提示細胞のプロフェッショナル型および通性型の両方を含む。例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞は、限定されるわけではないが、マクロファージ、単球、単球性顆粒球性DC前駆細胞を含む骨髄系列の細胞、周辺帯クッパー細胞、ミクログリア、T細胞、B細胞、ランゲルハンス細胞、ならびに相互連結樹状細胞および濾胞樹状細胞を含む樹状細胞、を含む。通性抗原提示細胞の例は、限定されるわけではないが、活性化T細胞、アストロサイト、濾胞性細胞、内皮細胞および線維芽細胞を含む。好ましい態様において、抗原提示細胞は、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される。
【0092】
抗原提示細胞またはそれらの前駆体は、当業者に公知の方法により単離されうる。抗原提示細胞またはそれらの前駆体の供給源は、特定された免疫応答を調節するために必要とされる抗原提示細胞に依存して異なりうる。これに関連して、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、単球および骨髄系列の他の細胞から選択されうる。典型的には、抗原提示細胞の前駆体は、任意の組織から単離されうるが、血液、臍帯血または骨髄から最も容易に単離される(Sorg et al., 2001, Exp Hematol 29:1289-1294; Zheng et al., 2000, J Hematother Stem Cell Res 9:453-464)。生検もしくは関節穿刺後のリウマチ性滑膜組織または滑液のような病変組織から適切な前駆体を得ることも可能である(Thomas et al., 1994, J Immunol 152:2613-2623; Thomas et al., 1994, J Immunol 153:4016-4028)。他の例は、限定されるわけではないが、肝臓、脾臓、心臓、腎臓、消化管および扁桃を含む(Lu et al., 1994, Transplantation 64:1808-1815; McIlroy et al., 2001, Blood 97:3470-3477; Vremec et al., 2000, J Immunol 164:2978-2986; Hart and Fabre, 1981, J Exp Med 154(2):347-361; Hart and McKenzie, 1988, J Exp Med 168(1):157-170; Pavli et al., 1990, Immunology 70(1):40-47)。
【0093】
組織から直接的に単離された白血球は、抗原提示細胞前駆体の主な供給源を提供する。典型的には、これらの前駆体は、少なくとも約6〜9日間、エクスビボで様々な成長因子の存在下または非存在下において培養することにより、抗原提示細胞へ分化させるだけでありうる。しかしながら、本発明のいくつかの有利な態様において、抗原提示細胞またはそれらの前駆体(例えば、新鮮に単離された血液またはPMBCの形態で)は、単に、個体から単離され、かつ抗原および好ましくは1つまたは複数の成長因子の存在下において、ずっと短い期間、例えば、約48、36、24、12、8、7、6、5、4、3もしくは2時間未満または約60、50、40、30、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3もしくは2分間未満まででも、その抗原に対する免疫原性応答を生じるのに効果的である抗原特異的抗原提示細胞を産生するようにインキュベートされるだけである。
【0094】
いくつかの態様において、抗原提示細胞前駆体は、粗混合物から、または前駆体の部分的もしくは実質的に精製された調製物から分化しうる。白血球は、例えば、好中球および赤血球を除去するフィコール ヒパーク(Ficoll Hypaque)を用いる密度勾配遠心分離により(末梢血単核球またはPBMC)、または赤血球の塩化アンモニウム溶解により(白血球)、血液または骨髄から都合よく精製されうる。抗原提示細胞の多くの前駆体は、非増殖性単球として末梢血に存在し、適切には1つまたは複数の特定のサイトカインの存在下で前駆体をインキュベートすることにより、マクロファージおよび樹状細胞を含む特定の抗原提示細胞へ分化しうる。
【0095】
非分画化リンパ節由来単核球、組織樹状細胞のまたはランゲルハンス細胞の前駆体のような組織由来前駆体は、典型的には、組織を細かに切り刻み、それをコラゲナーゼまたはジスパーゼで消化し、続いて、密度勾配分離、または細胞表面マーカーのそれらの発現に基づいた前駆体の選択を行うことにより得られる。例えば、ランゲルハンス細胞前駆体は、CD1分子およびHLA-DRを発現させ、これを根拠として精製されうる。
【0096】
いくつかの態様において、抗原提示細胞前駆体は、マクロファージの前駆体である。一般的に、これらの前駆体は、任意の源の単球から得られうり、培地およびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の存在下における長時間のインキュベーションによりマクロファージへ分化しうる(Erickson-Miller et al., 1990, Int J Cell Cloning 8:346-356; Metcalf and Burgess, 1982, J Cell Physiol 111:275-283)。
【0097】
他の態様において、抗原提示細胞前駆体は、ランゲルハンス細胞の前駆体である。通常、ランゲルハンス細胞は、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-4/TNFαおよびTGFβの存在下においてヒト単球またはCD34+骨髄前駆体から生成されうる(Geissmann et al., 1998, J Exp Med 187:961-966; strobl et al., 1997, Blood 90:1425-1434; Strobl et al, 1997, Adv Exp Med Biol 417:161-165; Stroble et al., 1996, J Immunol 157:1499-1507)。
【0098】
いくつかの態様において、抗原提示細胞前駆体は、樹状細胞の前駆体である。いくつかの可能性のある樹状前駆細胞は、末梢血、臍帯血または骨髄から得られうる。これらは、単球、CD34+幹細胞、顆粒球、CD33+CD11c+ DC前駆細胞およびコミットメントされた骨髄系前駆細胞 − 下記、を含む。
【0099】
単球
単球は、組織培養培地(例えば、RPMI)および血清(例えば、ヒトもしくはウシ胎児血清)の存在下において、または無血清培地において、1〜2 h、プラスチックへの付着により精製されうる(Anton et al., 1998, Scand J Immunol 47:116-121; Araki et al., 2001, Br J Haematol 114:681-689; Mackensen et al., 2000, Int J Cancer 86:385-392; Nestle et al., 1998, Nat Med 4:328-332; Romani et al., 1996, J Immuol Meth 196:137-151; Thurner et al., 1999, J Immunol Methods 223:1-15)。単球はまた、末梢血から洗い分けられうる(Garderet et al., 2001, J Hematother Stem Cell Res 10:553-567)。単球はまた、CD14hi細胞を得るための抗CD14抗体での、免疫磁気選択、フローサイトメトリーのソーティングまたはパンニング(Araki et al., 2001, 前記; Battye and Shortman, 1991, Curr. Opin. Immunol. 3:238-241)を含む免疫親和性技術により精製されうる。循環単球の数(およびそれによって収率)は、GM-CSFを含む様々なサイトカインのインビボでの使用により増加されうる(Groopman et al., 1987, N Engl J Med 317:593-598; Hill et al., 1995, J Leukoc Biol 58:634-642)。単球は、GM-CSFおよびIL-4の存在下における長時間のインキュベーションにより樹状細胞へ分化しうる(Romani et al., 1994, J Exp Med 180:83-93; Romani et al., 1996, 前記)。約200 U/mL〜約2000 U/mL、より好ましくは約500 U/ml〜約1000 U/mL、およびよりいっそう好ましくは約800 U/mL(GM-CSF)〜1000 U/mL(IL-4)でのそれぞれの濃度におけるGM-CSFおよびIL-4の組み合わせは、未熟樹状細胞、すなわち抗原捕捉食作用性樹状細胞、の有効量を生成する。単球の抗原捕捉食作用性樹状細胞への分化を促進する他のサイトカインは、例えば、IL-13を含む。
【0100】
CD34+幹細胞
樹状細胞はまた、GM-CSF、TNFα±幹細胞因子(SCF、c-kitL)、またはGM-CSF、IL-4±flt3Lの存在下においてCD34+骨髄由来前駆体から生成されうる(Bai et al., 2002, Int J Oncol 20:247-53; Chen et al., 2001, Clin Immunol 98:280-292; Loudovaris et al., 2001, J Hematother Stem Cell Res 10:569-578)。CD34+細胞は、骨髄吸引液または血液から引き出されうり、例えば、免疫磁気選択または免疫カラムを用いて単球について濃縮されうる(Davis et al., 1994, J Immunol Meth 175:247-257)。血液におけるCD34+細胞の割合は、(最も一般には)G-CSFだが、flt3Lおよびプロゲニポイエチンも含む様々なサイトカインのインビボでの使用により増加されうる(Fleming et al., 2001, Exp Hematol 29:943-951; Pulendran et al., 2000, J Immunol 165:566-572; Robinson et al., 2000, J Hematother Stem Cell Res 9:711-720)。
【0101】
他の骨髄系前駆細胞
DCは、CD34+幹細胞と類似した様式で、GM-CSFおよびIL-4/TNFの存在下において、コミットメントされた初期骨髄系前駆細胞から生成されうる。そのような骨髄系前駆細胞は、関節リウマチ滑液を含む、炎症の多くの組織を浸潤する(Santiago-Schwarz et al., 2001, J Immunol 167(3):1758-68)。循環樹状前駆細胞および単球を含む全身の骨髄性細胞の増殖は、flt-3リガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)またはプロゲニポイエチン(pro-GP)を含む特定のサイトカインで達成されうる(Fleming et al., 2001, 前記; Pulendran et al., 2000, 前記; Robinson et al., 2000, 前記)。そのようなサイトカインの数日間のヒトまたは他の哺乳動物への投与は、ずっと多数の前駆体が末梢血または骨髄からインビトロ操作のために引き出されるのを可能にするものと思われる。樹状細胞はまた、GM-CSF、IL-4およびTNFαの存在下において、末梢血好中球前駆体から生成されうる(Kelly et al., 2001, Cell Mol Biol (Noisy-le-grand) 47(1):43-54; Oehler et al., 1998, J Exp Med. 187(7):1019-28)。樹状細胞がまた急性骨髄性白血病細胞から同様の方法を用いて生成されうることは注目すべきである(Oehler et al., 2000, Ann Hematol 79(7):355-62)。
【0102】
組織DC前駆細胞およびAPC前駆細胞の他の源
DC生成のための他の方法は、例えば、IL-3+/-GM-CSFの存在下における胸腺前駆体、ならびにGM-CSFおよびコラーゲンマトリックスの存在下における肝臓DC前駆細胞から存在する。形質転換または不死化された樹状細胞系は、例えば、(Paglia et al., 1993, J Exp Med 178(6):1893-901)により記載されたv-mycのようなオンコジーンを用いて、またはmyb(Banyer and Hapel, 1999, J Leukoc Biol 66(2):217-223; Gonda et al., 1993, Blood 82(9):2813-2822)により作製されうる。
【0103】
循環DC前駆細胞
これらは、ヒトおよびマウス末梢血において記載されている。適した樹状前駆細胞を同定するための特定の細胞表面マーカーも利用することができる。具体的には、樹状前駆細胞の様々な集団が、CD11cの発現ならびにCD14、CD19、CD56およびCD3の非存在または低発現により血液において同定されうる(O'Doherty et al., 1994, Immunology 82:487-493; O'Doherty et al., 1993, J Exp Med 178:1067-1078)。これらの細胞はまた、細胞表面マーカーCD13およびCD33により同定されうる(Thomas et al., 1993, J Immunol 151(12):6840-6852)。形質細胞系樹状前駆細胞として知られた、CD14、CD19、CD56およびCD3を欠く第二のサブセットは、CD11cを発現させないが、CD123(IL-3R鎖)およびHLA-DR(Farkas et al., 2001, Am J Pathol 159:237-243; Grouard et al., 1997, J Exp Med 185:1101-1111; Rissoan et al., 1999, Science 283:1183-1186)を発現させる。たいていの循環CD11c+樹状前駆細胞は、HLA-DR+であるが、いくつかの前駆細胞は、HLA-DR-でありうる。MHCクラスII発現の欠損は、明らかに、末梢血樹状前駆細胞について実証されている(del Hoyo et al., 2002, Nature 415:1043-1047)。
【0104】
任意で、CD33+CD14-/loまたはCD11c+HLA-DR+、上記の系譜マーカー陰性樹状前駆細胞は、培地または単球馴化培地において18〜36 hのインキュベーションによりより多くの成熟抗原提示細胞へ分化することができる(Thomas et al., 1993, J Immunol 151(12):6840-6852; Thomas and Lipsky, 1994, J Immunol 153:4016-4028; O'Doherty et al., 1993, 前記)。または、末梢血非T細胞または未精製PBMCのインキュベーション後、成熟末梢血樹状細胞は、低密度を特徴とし、それゆえ、メトリザミドおよびナイコデンツ(Nycodenz)を含む密度勾配上で(Freudenthal and Steinman, 1990, Proc Natl Acad Sci USA 87:7698-7702; Vremec and Shortman, 1997, J Immunol 159:565-573)、または限定されるわけではないが、CMRF-44 mAbのような特定のモノクローナル抗体により(Fearnley et al., 1999, Blood 93, 728-736; Vuckovic et al., 1998, Exp Hematol 26:1255-1264)、精製されうる。形質細胞系樹状細胞は、細胞表面マーカーに基づいて末梢血から直接的に精製され、その後、IL-3の存在下においてインキュベートされうる(Grouard et al., 1997, 前記; Rissoan et al., 1999, 前記)。または、形質細胞系DCは、上記のようなインキュベートされた末梢血細胞の密度勾配またはCMRF-44選択から引き出されうる。
【0105】
一般的に、任意の前駆体から生成した樹状細胞について、単球由来サイトカイン、リポ多糖およびCpGリピート含有DNA、TNF-α、IL-6、IFN-α、IL-1βのようなサイトカイン、壊死細胞、再付着、細菌全体、膜成分、RNAまたはポリICのような活性化因子の存在下においてインキュベートされる場合、未熟樹状細胞は、活性化する(Clark, 2002, J Leukoc Biol 71:388-400; Hacker et al., 2002, Immunology 105:245-251; Kaisho and Akira, 2002, Biochim Biophys Acta 1589: 1-13; Koski et al., 2001, Crit Rev Immunol 21:179-189)。
【0106】
樹状細胞の単離、増殖および/または成熟のための他の方法は、例えば、Takamizawa et al. (1997, J Immunol, 158(5):2134-2142)、Thomas and Lipsky (1994, J Immunol, 153(9):4016-4028)、O'Doherty et al. (1994, Immunology, 82(3):487-93)、Fearnley et al. (1997, Blood, 89(10):3708-3716)、Weissman et al. (1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92(3):826-830)、Freudenthal and Steinman (1990, Proc Natl Acad Sci USA, 87(19):7698-7702)、Romani et al. (1996, J Immunol Methods, 196(2):137-151)、Reddy et al. (1997, Blood, 90(9):3640-3646)、Thurnher et al. (1997, Exp Hematol, 25(3):232-237)、Caux et al. (1996, J Exp Med, 184(2):695-706; 1996, Blood, 87(6):2376-85)、Luft et al. (1998, Exp Hematol, 26(6):489-500; 1998, J Immunol, 161(4):1947-1953)、Cella et al. (1999, J Exp Med, 189(5):821-829; 1997, Nature, 388(644):782-787; 1996, J Exp Med, 184(2):747-572)、Ahonen et al. (1999, Cell Immunol, 197(1):62-72)およびPiemonti et al. (1999, J Immunol, 162(11):6473-6481)により記載されている。
【0107】
特定の態様において、抗原提示細胞またはそれらの前駆体は、細胞の実質的に精製された集団の形態をとる。他の態様において、抗原提示細胞またはそれらの前駆体は、細胞の不均一なプールの形態をとる。適切には、抗原を接触させるために用いられる実質的に精製されたまたは不均一な集団は、本明細書に定義されているような培養の形態または無培養の形態をとる。抗原提示細胞またはそれらの前駆体の無培養集団を用いる特定の有利な態様において、集団は、短時間(例えば、約5、10、15、20、20、40、50、60 minほど)、インキュベートされうり、接触した集団は、細胞をさらに培養することなく、レシピエントへ直接的に注入されうる。これは、処理時間をさらに短くし、自己または同系抗原提示細胞の収集、それらの細胞の抗原での処理、および抗原に接触した細胞の患者への注入を一度に、または一日でできる可能性がある。
【0108】
3.2 抗原の抗原提示細胞への送達
外因性抗原の抗原提示細胞への送達は、当業者に公知の方法により向上されうる。例えば、いくつかの異なるストラテジーが、抗原提示細胞、特に樹状細胞、の内因性プロセシング経路への外因性抗原の送達について開発された。これらの方法は、pH感受性リポソームへの抗原の挿入(Zhou and Huang, 1994, Immunomethods, 4:229-235)、可溶性抗原の飲作用性取り込み後のピノソームの浸透圧溶解(Moore et al., 1998, Cell, 54:777-785)、抗原の強力なアジュバントへの結合(Aichele et al, J. Exp. Med., 171:1815-1820; Gao et al., 1991, J. Immunol., 147:3268-3273; Schulz et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:991-993; Kuzu et al., 1993, Euro. J. Immunol., 23:1397-1400;およびJondal et al., 1996, Immunity 5:295-302)、および抗原のアポトーシス性細胞送達(Albert et al., 1998, Nature 392:86-89; Albert et al., 1998, Nature Med. 4:1321-1324;および国際公開公報第99/42564号および第01/85207号)を含む。組換え細菌(例えば、大腸菌)またはトランスフェクションされた宿主哺乳動物細胞は、抗原送達のために(それぞれ、粒子抗原またはアポトーシス体として)樹状細胞上へパルスされうる。組換えキメラウイルス様粒子(VLP)もまた、樹状細胞系のMHCクラスIプロセシング経路への外因性異種性抗原の送達のための媒体として用いられた(Bachmann et al., 1996, Eur. J. Immunol., 26(11):2595-2600)。いくつかの態様において、可溶化抗原(例えば、DMSO中)が、抗原提示細胞とインキュベートされる。
【0109】
代わりとして、または加えて、抗原(例えば、ペプチド抗原)は、MHCクラスI経路への送達のために本発明の抗原提示細胞のサイトゾルへのペプチドの移入を促進させるために細胞溶解素に連結または会合されうる。例示的細胞溶解素は、サポニン含有免疫刺激複合体(ISCOM)のようなサポニン化合物(例えば、Cox and Coulter, 1997, Vaccine 15(3):248-256および米国特許第6,352,697号を参照)、ホスホリパーゼ(例えば、Camilli et al., 1991, J. Exp. Med. 173:751-754)、孔形成毒素(例えば、α-毒素)、リステリオリシンO(LLO、例えば、Mengaud et al., 1998, Infect. Immun. 56:766-772およびPortnoy et al., 1992, Infect. Immun. 60:2710-2717)、ストレプトリシンO (SLO、例えば、Palmer et al., 1998, Biochemistry 37(8): 2378-2383)およびペリフリンゴリシンO(PFO、例えば、Rossjohn et al., Cell 89(5):685-692)のようなグラム陽性細菌の天然の細胞溶解素を含む。抗原提示細胞がファゴソームである場合、酸活性化細胞溶解素が有利に用いられうる。例えば、リステリオリシンは、弱酸性pH(ファゴソーム内のpH条件)においてより強い孔形成能力を示し、それにより、液胞(ファゴソームおよびエンドソームを含む)内容物の細胞質への送達を促進する(例えば、Portnoy et al., Infect. Immun. 1992, 60:2710-2717)。
【0110】
抗原提示細胞に接触して置かれるべき抗原の量は、当業者により経験的に決定されうる。抗原提示細胞は、それらの細胞が、T細胞の調節のためにペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態を提示するのに十分な時間、抗原に供されるべきである。いくつかの有利な態様において、抗原提示細胞は、抗原の存在下において、約48、36、24、12、8、7、6、5、4、3もしくは2時間未満、または約60、50、40、30、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3もしくは2分間未満まででも、インキュベートされる。細胞がペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態を任意でプロセシングして、提示するために必要なペプチドの時間および用量は、ペプチドへの曝露に続いて、洗い流し期間、および読み出し系、例えば、抗原反応性T細胞、への曝露を行うパルス-チェイスプロトコールを用いて決定されうる。いったん、細胞がペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態をそれらの表面上で発現させるのに最適な時間および用量が決定されたならば、プロトコールは、免疫原性応答を誘導するための細胞およびペプチドを調製するために用いられうる。当業者は、このことにおいて、抗原提示細胞がその表面上に抗原を提示するために必要な時間の長さが、用いられる抗原または抗原の形態、その用量、および用いられる抗原提示細胞、加えて、抗原負荷が行われる条件に依存して変わりうることを認識しているものと思われる。これらのパラメーターは、日常的手順を用いて当業者により決定されうる。抗原提示細胞の初回抗原刺激の効率は、インビトロでT細胞の細胞傷害性活性をアッセイすること、またはCTLの標的として抗原提示細胞を用いることにより測定されうる。1つまたは複数の改変および非改変の抗原への曝露後、抗原提示細胞の表面上での抗原の存在を検出することができる当業者に公知の他の方法もまた、本発明により企図されている。
【0111】
通常、約百万〜千万個の抗原提示細胞に対して抗原(例えば、ペプチド抗原)の約0.1 μg/mL〜20 μg/mLが、初回抗原刺激された抗原特異的抗原提示細胞を作製するのに適している。典型的には、抗原提示細胞は、37℃で約1〜6時間、抗原とインキュベートされるが、1つまたは複数の成長因子とのインキュベーションの持続時間中、抗原提示細胞を抗原に供すことも可能である。上で考察されているように、本発明者らは、約10 μg/mL〜20 μg/mLの濃度での抗原を用いるずっと短い時間のインキュベーション(例えば、約5、10、15、20、30、40、50分間)を用いて、抗原(例えば、ペプチド抗原)またはそれらのプロセシングされた形態の提示の成功に達しうることを示した。
【0112】
必要に応じて、抗原提示細胞の全部または一部は、必要とされるまで、適切な凍結保存溶液中に凍結されうる。例えば、細胞は、リン酸緩衝食塩水に10%の自己血清+10%のジメチルスルホキシドを含むもののような適切な媒体に希釈されうる。特定の態様において、細胞は、脱水した形態で保存される。
【0113】
4. リンパ球態様
本発明の抗原提示細胞は、抗原またはそれらのプロセシングされた形態が、Tリンパ球およびBリンパ球を含む他の免疫細胞の可能性のある調節のために、ならびに特に、特定された抗原または抗原の群に対して応答するように初回抗原刺激されているTリンパ球およびBリンパ球を生成するために、それらの細胞により提示されるように、いくつの手段でも1つもしくは複数の抗原を含むおよび/もしくは発現させるように獲得または調製されうる。いくつかの態様において、対象抗原提示細胞は、抗原または抗原の群に対して初回刺激されたTリンパ球を生成するために有用である。リンパ球、特にTリンパ球、を特定された抗原に対する免疫応答を示すように誘導する効率は、限定されるわけではないが、抗原特異的細胞溶解性Tリンパ球(CTL)の標的として例えば、抗原特異的抗原提示細胞を用いる、インビトロでTリンパ球細胞溶解性活性をアッセイすること;抗原特異的Tリンパ球増殖をアッセイすること(例えば、Vollenweider and Groseurth, 1992, J. Immunol. Meth. 149:133-135参照);例えば、ELISPOTアッセイおよびELISAアッセイを用いて抗原に対するB細胞応答を測定すること;サイトカインプロファイルを問い合わせること;または特定された抗原に対する皮膚反応性の試験により遅延型過敏症(DTH)応答を測定すること(例えば、Chang et al., 1993, Cancer Res. 53:1043-1050参照)を含む任意の適した方法により測定されうる。抗原への曝露後、抗原提示細胞の表面上の抗原の存在を検出できる当業者に公知の他の方法もまた、本発明により企図されている。
【0114】
従って、本発明はまた、抗原の提示に対して抗原特異的様式で応答する抗原特異的Bリンパ球またはTリンパ球、特にTリンパ球、を提供する。いくつかの態様において、抗原特異的Tリンパ球は、上で定義された抗原提示細胞を、脾臓または扁桃/リンパ節のような任意の適切な源から得られうるが、好ましくは末梢血から得られるTリンパ球の集団と接触させることにより生成される。Tリンパ球は、粗調製物として、または、例えば、"Immunochemical Techniques, Part G: Separation and Characterization of Lymphoid Cells" (Meth. in Enzymol. 108, Di Sabato et al.編集, 1984, Academic Press)に記載されているような標準的技術を用いて適切に得られる、部分的に精製または実質的に精製された調製物として、用いられうる。これは、当技術分野において知られている、ヒツジ赤血球でのロゼット形成、付着細胞を除去するナイロンウールまたはプラスチック付着性のカラムの通過、適切なモノクローナル抗体を用いる免疫磁気またはフローサイトメトリー選択を含む。
【0115】
Tリンパ球の調製は、本発明の抗原提示細胞と、それらの抗原提示細胞により提示された抗原に対してTリンパ球を初回刺激するために適切な時間、接触させられる。この期間は、好ましくは、少なくとも約1日間、かつ約5日間までである。
【0116】
いくつかの態様において、抗原提示細胞の集団は、適切には末梢血から得られるTリンパ球の不均一な集団の存在下において、免疫応答が必要とされる抗原に対応する本発明のペプチドの1セットと共に、培養される。これらの細胞は、ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞により提示される;および抗原提示細胞がTリンパ球の亜集団を抗原に対して応答するように初回刺激するのに、十分な時間および条件下において培養される。
【0117】
5. 細胞に基づいた治療または予防
セクション3に記載された抗原提示細胞およびセクション4に記載されたリンパ球は、免疫応答を調節するために、特に、1つまたは複数の同族抗原に対する免疫応答を調節するために、それらだけでまたは併用してのいずれかで、患者に投与されうる。これらの細胞に基づいた組成物は、それゆえに、上で述べられているような疾患を治療または予防するために有用である。本発明の細胞は、任意の手段(例えば、注射)により患者へ導入されうり、抗原または抗原の群に対する所望の免疫応答を生じる。細胞は、患者由来(すなわち、自己細胞)、または患者とMHC適合または不適合(すなわち、同種異系間の)である個体由来でありうる。典型的には、自己細胞は、原細胞が得られたところの患者へ注射されて戻される。注射部位は、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、静脈内またはリンパ内でありうる。細胞は、すでに疾患に罹っている患者または疾患に罹りやすい者へ、疾患の症状を治療もしくは予防もしくは軽減するのに十分な数で投与されうる。治療または予防を必要としている患者へ注射される細胞の数は、とりわけ、抗原および個体の大きさに依存して変わりうる。この数は、例えば、約103個と1011個の間、通常には約105個と107個の間の細胞(例えば、血液、PMBCまたは精製された樹状細胞もしくはTリンパ球の形態をとって)の範囲でありうる。細胞の単回または複数回(2回、3回、4回または5回)投与は、治療を行う医師により選択されることになっている細胞数およびパターンで行われうる。細胞は、細胞および個体に対して非毒性である薬学的に許容される担体において投与されるべきである。そのような担体は、細胞が増殖した増殖培地、またはリン酸緩衝食塩水のような任意の適切な緩衝媒体でありうる。細胞は、単独で、または、望まれていない免疫応答の治療もしくは予防のための当技術分野において公知の他の治療用物質、例えば、限定されるわけではないが、グルココルチコイド、メトトレキセート、D-ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、金塩、スルファサラジン、、TNF-αもしくはインターロイキン-1、および/または特異的免疫療法の他の形態と併用した補助的療法として、投与されうる。
【0118】
6. 組成物
セクション2に記載された重複のペプチドのセット、およびセクション3に記載された、初回抗原刺激を受けた抗原提示細胞、またはセクション4に記載されたリンパ球(治療/予防剤)は、単独で、または1つもしくは複数の標的ポリペプチド抗原の存在と関連した様々な疾患の治療もしくは予防のための活性成分といっしょに、用いられうる。これらの治療/予防剤は、それらだけでか、または、それらが適切な薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤、またはアジュバントと混合されている組成物においてのいずれかで、患者へ投与されうる。
【0119】
本発明はまた、患者の免疫系を刺激するための、ならびに好ましくは対象のポリペプチドに対する体液性および/または細胞性免疫応答を誘発するための、上記のような治療剤または組成物を患者へ投与することによる方法を含む。そのような刺激は、限定されるわけではないが、病原性感染(例えば、ウイルスの、細菌の、真菌の、原生動物の)もしくは癌を含む疾患の治療および/または予防のために利用されうる。従って、本発明は、疾患の治療および/または予防のための方法であって、そのような治療を必要としている患者へ、上でおおまかに記載された治療剤または組成物の治療的/予防的有効量を投与することを含む方法を企図する。
【0120】
治療されることになっている特定の疾患に依存して、治療/予防剤は製剤化され、全身性にまたは局所的に投与される。製剤および投与についての技術は、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, Pa., 最新版に見出されうる。適した経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜的、または腸の投与;筋肉内、皮下、髄内注射、加えて髄腔内、直接的脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内もしくは眼内注射を含む非経口送達を含みうる。注射について、本発明の1つの望ましい態様を構成しているのだが、本発明の治療剤は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液または生理食塩緩衝液のような生理的適合性緩衝液において製剤化されうる。経粘膜的投与について、浸透されるべきバリアに適切な浸透剤が製剤に用いられる。そのような浸透剤は、一般的に当技術分野において知られている。筋肉内および皮下注射は、例えば、免疫原性組成物、ワクチンおよびDNAワクチンの投与に適している。本発明の特定の態様において、免疫原性組成物は、静脈内に投与される。
【0121】
治療/予防剤は、当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて、経口投与に適した製剤へ容易に製剤化されうる。そのような担体は、治療されるべき患者による経口摂取のために、本発明の化合物を、錠剤、ピル、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などのような剤形に製剤化されるのを可能にする。これらの担体は、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、モルト、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張食塩水、および発熱物質なしの水から選択されうる。
【0122】
本発明における使用に適した薬学的組成物は、活性成分が、その意図される目的を達成しうる有効量で含まれる組成物を含む。患者へ投与される薬剤の用量は、疾患に付随した症状の低減のような、時間がたてば患者において有益な応答をもたらすのに十分であるべきである。投与されるべき治療/予防剤の量は、年齢、性別、体重および一般的な健康状態を含む治療されるべき対象に依存しうる。このことにおいて、投与のための治療/予防剤の正確な量は、医師の判断に頼る。疾患の治療または予防において投与されるべき薬剤の有効量を決定するにおいて、医師は、標的抗原の組織レベルおよび疾患の進行を評価する場合がある。いずれにしても、当業者は、本発明の治療剤の適切な用量を容易に決定しうる。
【0123】
非経口投与のための薬学的製剤は、水溶性型の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されうる。適した脂肪親和性溶媒または媒体は、ゴマ油のような脂肪油、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような懸濁液の粘性を増加させる物質を含みうる。任意で、懸濁液はまた、適切な安定剤、または高濃縮液の調製を可能にするために化合物の溶解性を増加させる作用物質を含みうる。
【0124】
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と混合し、任意で、結果として生じた混合物をすりつぶし、必要に応じて、適切な補助剤を添加した後に、錠剤または糖衣錠コアを得るように顆粒の混合物を加工することにより得られうる。適した賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物のような増量剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤が添加されうる。そのような組成物は、製薬学の方法のいずれかにより調製されうるが、すべての方法は、上記の1つまたは複数の治療剤を、1つまたは複数の必要な成分を構成する担体と結合させる段階を含む。一般的に、本発明の薬学的組成物は、それ自身、知られている方法、例えば、通常の混合、溶解、顆粒状化、糖衣錠形成、粉末化、乳化、カプセル化、閉じ込めまたは凍結乾燥方法を用いて、製造されうる。
【0125】
糖衣錠コアは、適したコーティング剤で提供される。この目的のために、濃縮糖溶液が用いられうり、任意で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/もしくは二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適した有機溶媒または溶媒混合物を含みうる。染料または色素が、識別のために、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティング剤に添加されうる。
【0126】
経口で用いられうる薬は、ゼラチンからできている押し込み型カプセル剤、加えて、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤からできている軟らかい密閉カプセル剤を含む。押し込み型カプセル剤は、乳糖のような増量剤、デンプンのような結合剤および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意で、安定剤と混合して活性成分を含みうる。軟カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィンもしくは液体ポリエチレングリコールのような適した液体に溶解または懸濁されうる。さらに、安定剤が添加されうる。
【0127】
本発明の治療剤の剤形はまた、この目的のために特別に設計された注射または埋め込み徐放性装置、またはこの様式で追加的に作用するように改変されたインプラントの他の形態を含みうる。本発明の作用物質の徐放性は、例えば、アクリル樹脂、蜜蝋、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースのような特定のセルロース誘導体を含む疎水性ポリマーで同じものをコーティングすることによりもたらされうる。さらに、徐放性は、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いることによりもたらされうる。
【0128】
本発明の治療剤は、薬学的に適合する対イオンとの塩として提供されうる。薬学的に適合する塩は、限定されるわけではないが、塩化水素酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸で形成されうる。塩は、水性、または対応する遊離塩基型である他のプロトン性溶媒においてより可溶性である傾向がある。
【0129】
本発明の方法に用いられる任意の化合物について、有効用量は、最初は、細胞培養アッセイから推定されうる。例えば、用量は、細胞培養において測定されるIC50(例えば、標的抗原において最大半減の低下に達する試験作用物質の濃度)を含む循環濃度範囲に達するように動物モデルにおいて処方されうる。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために用いられうる。
【0130】
本発明の化合物の毒性および治療効力は、細胞培養物または実験動物における、例えば、LD50(集団の50%に対して致死の用量)およびED50(集団の50%に治療効果のある用量)を測定するための標準的薬学的手順により測定されうる。毒性効果と治療的効果の用量比は、治療指数であり、それは、比LD50/ED50として表されうる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用のための用量の範囲を公式化するのに用いられうる。そのような化合物の用量は、好ましくは、有るか無しかの毒性をもつED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いられる剤形および利用される投与の経路に依存してこの範囲内を変動しうる。正確な製剤、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択されうる。(例えば、Fingl et al., 1975, "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p1を参照)。
【0131】
投与量および間隔は、標的抗原低減効果または疾患を改善する効果を維持するのに十分である活性化合物の血漿レベルを供給するように個々に調整されうる。全身投与についての通常の患者用量は、1〜2000 mg/日、一般には1〜250 mg/日、および典型的には10〜150 mg/日の範囲である。患者体重に換算して言えば、通常の用量は、0.02〜25 mg/kg/日、一般には0.02〜3 mg/kg/日、典型的には0.2〜1.5 mg/kg/日の範囲である。患者体表面積に換算して言えば、通常の用量は、0.5〜1200 mg/m2/日、一般には0.5〜150 mg/m2/日、典型的には5〜100 mg/m2/日の範囲である。
【0132】
または、作用物質を、全身性よりむしろ局所的様式において、例えば、化合物の直接的に組織への注射により、しばしばデポーまたは徐放性製剤において、投与しうる。さらに、作用物質を、標的ドラッグデリバリーシステムにおいて、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて、投与しうる。リポソームは、その組織に向けられ、その組織により選択的に取り込まれる。
【0133】
前述から、本発明の作用物質は、治療的もしくは予防的免疫調節組成物またはワクチンとして用いられうることは理解されているものと思われる。従って、本発明は、本発明の治療/予防剤の1つまたは複数を活性化合物として含む免疫調節組成物の製造にまで及ぶ。そのようなワクチンを製造するために任意の適した手順が企図される。例示的手順は、例えば、NEW GENERATION VACCINES(1997, Levine et al., Marcel Dekker, Inc. New York, Basel Hong Kong)に記載されたものを含む。
【0134】
本発明による免疫調節組成物は、水、リン酸緩衝食塩水および食塩水のような薬学的に許容された希釈剤または賦形剤を含みうる。それらはまた、当技術分野においてよく知られているアジュバントを含みうる。適したアジュバントは、限定されるわけではないが、以下のものを含む:ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N-ジオクタデシル-N'、N'ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニックポリオールのような表面活性物質;ピランのようなポリアミン、デキストラン硫酸、ポリICカルボポール;ムラミルジペプチドおよび誘導体のようなペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン;油乳濁液;ならびにリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはミョウバンのようなミネラルゲル;リンフォカイン、QuilAおよび免疫刺激複合体(ISCOMS)。
【0135】
前記のような、本発明の初回抗原刺激を受けた抗原提示細胞およびこれらの抗原提示細胞で生成された抗原特異的Tリンパ球は、予防的または治療的適用のための免疫調節組成物における活性化合物として用いられうる。いくつかの態様において、本発明の初回抗原刺激を受けた抗原提示細胞は、正常な免疫応答を起こすことができない免疫抑制者への養子免疫伝達のための多数のCD8+またはCD4+ CTLを生成するために有用である。例えば、抗原特異的CD8+ CTLは、HIV感染(Koup et al., 1991, J. Exp. Med., 174:1593-1600; Carmichael et al., 1993, J. Exp. Med., 177:249-256;およびJohnson et al., 1992, J. Exp. Med., 175:961-971)、マラリア(Hill et al., 1992, Nature, 360:434-439)および黒色腫のような悪性腫瘍(Van der Brogen et al., 1991, Science, 254:1643-1647;およびYoung and Steinman , 1990, J. Exp. Med., 171:1315-1332)に苦しんでいる個体において治療目的として養子免疫伝達される。
【0136】
他の態様において、本発明の免疫調節組成物は、癌の治療または予防に適している。本発明の実施に従って適切に治療されうる癌は、子宮頚癌(例えば、パピローマウイルス感染)およびバーキットリンパ腫(例えば、エプスタイン-バーウイルス感染)のようなウイルス感染に関連した癌を含む。他のウイルス関連癌は、限定されるわけではないが、HTLV1関連白血病、非ホジキンリンパ腫(EBV)、肛門癌、皮膚癌(HPV)、肝細胞癌(HBV)およびカポジ肉腫(HHV8)を含む。または、癌は、限定されるわけではないが、黒色腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ホジキンリンパ腫などのような非ウイルス関連癌でありうる。
【0137】
さらに他の態様において、免疫調節組成物は、ウイルス、細菌または原生動物の感染の治療または予防に適している。本発明により企図されるウイルス感染は、限定されるわけではないが、HIV、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスにより引き起こされる感染を含む。細菌感染は、限定されるわけではないが、ナイセリア(Neisseria)種、髄膜炎菌(Meningococcal)種、ヘモフィルス(Haemophilus)種 、サルモネラ(Salmonella)種、連鎖球菌(Streptococcal)種、レジオネラ(Legionella)種およびマイコバクテリウム(Mycobacterium)種に引き起こされるものを含む。本発明により含まれる原生動物感染は、限定されるわけではないが、プラスモディウム(Plasmodium)種(例えば、マラリア)、住血吸虫(Schistosoma)種(例えば、住血吸虫症)、リーシュマニア(Leishmania)種、トリパノソーマ(Trypanosoma)種、トキソプラズマ(Toxoplasma)種およびジアルジア(Giardia)種に引き起こされるものを含む。
【0138】
7. 免疫調節を評価するための方法
免疫化の有効性は、任意の適した技術を用いて評価されうる。外来または疾患特異的抗原(例えば、ウイルス抗原および癌抗原)に対して応答する個体の能力は、そのような抗原を攻撃するように初回抗原刺激を受けたそれらの細胞が、数、活性、およびそれらの抗原を検出かつ破壊する能力において増加しているかどうかを評価することにより測定されうる。免疫応答の強さは、以下のものを含む標準的試験により測定される:当技術分野にとって公知の手段による末梢血リンパ球の直接的測定;ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性アッセイ(例えば、Provinciali M. et al. (1992, J. Immunol. Meth. 155:19-24)参照)、細胞増殖アッセイ(例えば、Vollenweider, I. and Groseurth, P.J. (1992, J. Immunol. Meth. 149:133-135)参照)、免疫細胞およびサブセットの免疫アッセイ(例えば、Loeffler, D.A., et al. (1992, Cytom. 13:169-174); Rivoltini, L., et al. (1992, Can. Immunol. Immunother. 34:241-251)参照);または細胞性免疫についての皮膚試験(例えば、Chang, A.E. et al. (1993, Cancer Res. 53:1043-1050)参照)。または、免疫化の効力は、限定されるわけではないが、HLAクラスI四量体染色 − 新鮮なおよび刺激されたPBMCの両方の(例えば、Allen et al.、前記を参照)、増殖アッセイ(Allen et al.、前記)、ELISPOTアッセイおよび細胞内サイトカイン染色(Allen et al.、前記)、ELISAアッセイ − 線形B細胞応答について;ならびに合成ポリヌクレオチドを発現させる細胞試料のウェスタンブロットを含む1つまたは複数の技術を用いてモニターされうる。特に関連性のあるのは、抗原により活性化されたT細胞のサイトカインプロファイル、より特には、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TGFβおよびTNFαの産生および分泌である。
【0139】
Tリンパ球の細胞傷害性活性、および特に、抗原提示細胞により誘導されうる細胞傷害性Tリンパ球の能力は、当業者に公知の任意の適した技術により評価されうる。例えば、細胞傷害性活性についてアッセイされるべきTリンパ球を含む試料が採取され、Tリンパ球は、その後、抗原を提示するように引き起こされた、初回抗原刺激を受けた抗原提示細胞に供される。細胞傷害性細胞になるように誘導される能力があることが知られているTリンパ球の対照集団の細胞傷害性活性を評価することにより決定されうる適当な時間後、評価されるべきTリンパ球は、標準的細胞傷害性アッセイにおいて細胞傷害性活性について試験される。
【0140】
CTL活性を評価する方法は、特に、腫瘍またはウイルス抗原を発現させる細胞に対して細胞傷害性応答を生じる個体の能力を評価するために有用である。従って、この方法は、癌またはウイルスに対する免疫応答を起こす個体の能力を評価するために有用である。例えば、CTL溶解アッセイは、51Cr標識標的細胞を用いるペプチドをコーティングされたまたは組換えウイルスに感染した細胞に、刺激された脾細胞または末梢血単核球(PBMC)を使用して、用いられうる。そのようなアッセイは、例えば、霊長類、マウスまたはヒト細胞を用いて行われうる(Allen et al., 2000, J Immunol. 164(9):4968-4978、またWoodberry et al.、下記)。さらに、CTL活性は、図1に記載されたインビボ検出方法を用いて非近交系霊長類において測定されうる。この方法において、自己細胞(例えば、PMBC)は、光学的に検出可能な標識(例えば、蛍光性、化学ルミネセンス性もしくはリン光性もしくは視覚性標識または色素)で標識され、本明細書に開示されたような1つまたは複数のペプチドセットと接触させられる。ペプチドセットは、それらが、被験者において試験中のCTL応答の対象である抗原に対応するように選択される。自己細胞は、被験者へ注入され、被験者からのリンパ球は、被験者の免疫系に、自己細胞に対して応答するのに十分な時間を許しうる適切な時間後(例えば、注入から10分〜24時間後)、収集される。収集されたリンパ球は、その後、被験者において抗原に対するインビボのCTL応答の測定を示す、光学的に検出可能な標識を含むまたは所有するリンパ球の数または割合を同定するように分析される。
【0141】
本発明が容易に理解され、実際的効果へと進められるように、特定の好ましい態様が、今、以下の非限定的実施例として記載される。
【0142】
実施例
実施例1
インビボでの細胞傷害性Tリンパ球殺害
ウイルス特異的CTLエフェクターの標準的測定は、標的細胞からの放射性同位元素51Crの放出により測定され、長たらしく、感度が低いアッセイ法である。色素標識された自己マカークPBMCをSIVおよびSHIV重複ペプチドの大きなプールでパルスし(OPAL)、その細胞を同じ動物へ注入して戻すことにより、本発明者らは、フローサイトメトリーにより、OPALの注入後、様々な時点でサンプリングされた血液におけるSHIV特異的殺害を動力学的に示すことができた。
【0143】
完全免疫化から2週間後(10週間目)、4匹の免疫された動物のうち3匹が、OPAL注入後16時間目までにgagパルス化PBMCの中程度〜大きい程度(11.4〜76%)の殺害を示したが、対照の免疫化サルは、<7%gag特異的殺害を示した。1匹の免疫された動物、サルH20、は注入後4時間ほどで強いgag特異的殺害(27.3%)を示した(図2)。これらのデータは、IFNγ ELISpotおよびICSにより分析された場合のワクチンにより誘導されたT細胞応答(データ示さず)と一致し、DNAおよびFPVワクチンにより初回刺激を受けた有効なCTLエフェクター応答を測定しうるOPALの有用性を示している。
【0144】
SHIV直腸内負荷後間もなく(2週間)、すべての4匹の免疫化動物は、OPAL注入後16時間目に、大きい程度のgag特異的殺害(65〜98.3%)を示し、4匹のうちの2匹(サルH20およびH21)は、さらに、>99%pol特異的殺害を示した(図3)。対照免疫化動物と比較して、サルE20は、gagおよびpolパルス化PBMCの両方の<6%殺害を示したが、サルE22は、gagおよびpolパルス化PBMC、それぞれの>90%および31.9%を示した。興味深いことに、中程度〜高程度のpol特異的殺害を示した動物(サルH20、H21およびE22)はまた、注入されるpolパルス化PBMCの2回投与を以前に受けた(10週間目および15週間目)動物だけであったが、サルB00、H8およびE20は、前に1回のみpolパルス化PBMCを受けた。この観察は、OPALの注入が:(a)IFNγ ELISpotおよびICSにより弱く検出されたまたは検出されなかった(データ示さず)ワクチンにより初回刺激を受けたpol特異的T細胞応答をブーストした、および;(b)SHIV負荷後ナイーブ動物におけるpol特異的免疫を明らかに誘導した、可能性があることを示唆している。
【0145】
実施例2
ペプチドパルス化自己細胞を注入することにより誘導された免疫原性の分析
インビボCTL殺害がOPAL注入により効率的に測定されるとすれば、この方法は、新しい免疫応答を初回刺激するかまたは現存する免疫応答をブーストするかのいずれかができる可能性があることは、妥当と思われる。それゆえに、IFNγ ELISpotおよびICSアッセイは、ワクチンによりまたはOPAL注入方法自身により以前に初回刺激を受けたT細胞免疫原性において増加があるかどうかを分析するために、各OPAL注入アッセイの前および1週間後に行われた(図4)。
【0146】
10週間目に行われた最初のOPAL注入後、SIV gagペプチドプールに対してIFNγ分泌細胞の3倍〜16倍の増加が、サルH20およびH21において検出され、最大430のスポット形成細胞を測定した(図5)。サルH8は、215のスポット形成細胞に達する54%増加を測定したが、対照免疫化動物においては、増加は測定されなかった。分析されるすべての抗原についてのサルB00(OPAL注入後)およびE20(OPAL注入前)の分析は、アッセイ法の開発上の問題により除外された。10週間目にpolパルスを受けた4匹の動物のうち、サルH20、H21およびE22は、OPAL注入後、最大140のスポット形成細胞分のpol応答の増加を示したが、サルE20においては、有意なELISpot応答は検出されなかった。nef特異的T細胞は、すべての動物において、OPAL注入の前または後、明らかではなかった。これらの結果は、SIVgag/pol応答について以前に初回刺激を受けた動物においてgag-およびpol-ペプチドパルス後のT細胞免疫原性におけるブーストする効果を示唆し、さらに、ナイーブ動物におけるSIVpolについての初回刺激を示している(サルE22)。
【0147】
15週間目、完全免疫から8週間後、において、2回目のOPAL注入アッセイが6匹の動物において行われた。ELISpot分析により、DNAおよびFPVワクチンで予備免疫された4匹の動物において、OPAL注入の前の約50またはそれ未満のスポット形成細胞から最大500のスポット形成細胞だけ、gagペプチドプールに対する応答の増加が明らかにされた。対照免疫化動物において、gag特異的T細胞は、アッセイの前または後に測定されなかった(図6)。相対的に、pol特異的応答のベースラインからのわずかな増加(最大40のスポット形成細胞)が、数匹の動物のみに測定された。WI SIVに対する応答の大きな増加が、すべての予備免疫された動物において観察されたが(最大450のスポット形成細胞)、対照免疫化動物は、ささやかな増加を示したまたは増加を示さなかった(最大50のスポット形成細胞)。SIV nefおよびSHIV envに対するすべての応答は、OPAL注入前および後、すべての動物において最小であった、または検出されなかった。
【0148】
SHIV直腸内負荷後、サルE20を除くすべての動物は、50〜600のスポット形成細胞を測定するgag応答の増加を示した。同様の応答は、最大200のスポット形成細胞のレベルまでだがWI SIVについて観察されたが、50のスポット形成細胞より大きいpol応答は、サルH20においてのみ明らかであった。
【0149】
OPAL注入の免疫原性は、同じ免疫化計画を受けたが、OPAL注入を受けなかった動物との比較によりさらに検証された(図7)。SIV gag、polまたはWI SIV特異的T細胞における増加は、群1(対照免疫化)および群2(2xDNA/FPV免疫化)において、9〜11週間目および15〜18週間目に検出されなかった。20〜21週間目の応答は、18週間目のSHIV負荷により増強された応答に起因するのだが、わずかに群を増加させた。
【0150】
ペプチドパルス化全血を注入されたマカークにおいて行われた実験もまた、(a)SHIV-ペプチドパルス化血液のレシピエントにおけるSHIVのいくつかの部分(図9)、(b)HCV-ペプチドパルス化血液のレシピエントにおける全HCVゲノムに及ぶHCVペプチドの2つのプール(図10)、および(c)HIV-1耐性ペプチドでパルス化された自己血液のレシピエントにおける既知のHIV-1薬剤耐性突然変異に及ぶペプチドのプール(図11)のどれに対しても、CD4+およびCD8+T細胞応答におけるブーストを実証した。
【0151】
実施例3
SHIVmn229直腸内負荷の結果
高病原性のSHIVmn229負荷貯蔵物は、105 TCID50の用量で、完全免疫化後10週間目にすべてのマカークへ直腸内へ接種された。血漿SHIV RNAおよびCD4+ T細胞の計数は、すべての対照および2xDNA/FPV免疫化動物において追跡された(図8)。
【0152】
対照免疫化サルE20およびE22は、負荷後2週間目に7.8±0.7 log10コピー/mLのピークウイルス量を示した。サルE20のピークウイルス量は、1週間目と2週間目の間に生じた可能性があるが、両方のサルのセットポイントレベル(負荷後5〜11週間目に測定された)は、5.9±0.3 log10コピー/mLで高いままであった。逆に、2週間目に、CD4+ T細胞計数は、総リンパ球の1.6±1.1%まで劇的に下がり、セットポイントレベルは、0.3±0.2%で不変であった。同じ免疫化を受けたがOPAL注入を受けなかったサル(群1)は、ピークおよびセットポイントのウイルス量(8.2±0.1 log10コピー/mLおよび6.2±0.3 log10コピー/mL)、加えてCD4+計数(セットポイント0.5±0.3%)に関して、サルE20およびE22よりわずかに悪いのみで実行した。
【0153】
2回の別々のOPAL注入に起因した可能性がある増強したpol特異的殺害に基づいて、サルH20およびH21のSHIVウイルス量ならびにCD4+ T細胞計数は、pol-OPAL注入の1回投与のみを受けたサルB00およびH8と比較された。サルH20およびH21(2回のpol-OPAL注入を受けた)のピークウイルス量は、サルB00およびH8より少なくとも10倍低く(5.9±1.3対7.1±0.4 log10コピー/mL、P=0.08)、セットポイントのウイルス量はより低くなっていく傾向を示した(4.1±0.9対5.4±0.7 log10コピー/mL、P=0.08、スチューデントのt検定)。付随的に、サルH20およびH21についてのセットポイントCD4+ T細胞計数は、サルB00およびH8より有意に大きかった(18.9±6.1%対8.4%、P=0.02)。同じ免疫化を受けたがOPAL注入を受けなかった群2の動物と比較して統計学的に有意ではなかったが(P=0.12)、複数回のpol-OPAL注入を受けたサルH20およびH21は、ウイルス量は比較的類似していたとはいえ、CD4+ T細胞の保持への傾向を示し、ウイルス負荷防御を示した。群2のセットポイントCD4+ T細胞計数およびウイルス量は、ぞれぞれ、13.3±3.7%および4.8±0.2 log10コピー/mLであった。
【0154】
対照免疫化サルE20およびE22と比較して、サルH20およびH21のセットポイントウイルス量およびCD4+ T細胞計数の両方は、有意に異なった(P=0.01、P=0.00)。他方では、サルB00およびH8のセットポイントウイルス量は、有意なCD4+ T細胞のセットポイントレベル(P=0.01)にもかかわらず、サルE20およびE22より有意には低くなかった(P=0.37)。サルH20が、5週間目およびそれ以後、血漿ウイルスRNAを完全に排除し、CD4+ T細胞を正常レベルに保持したことは注目されたい。
【0155】
実施例の考察
HIV-1複製を制御することにおけるHIV-1特異的CD4+ Tヘルパー(Th)およびCD8+ CTL応答についての極めて重要な役割は、多くの現行のワクチン構想の焦点である。大きな重複のSHIV 15マーのペプチドのセットでパルスされた自己PBMC(OPAL)の注入は、驚くべきことに、IFNγ ELISpotおよびICSアッセイにより分析される場合、SHIV特異的免疫応答をブーストするその能力において免疫原性であった。この発見は、本明細書に記載されているような新規なワクチンまたは免疫療法的ストラテジーの可能性のある基礎を形成する。
【0156】
ペプチドパルス化新鮮PBMCのこの免疫原性についての証拠は、5つの部分からなる:(a)SIV gag特異的IFNγ ELISpot応答の増加が、すべてのワクチン接種されたサルにおいて、3回のSIV gag OPAL注入(10、15および20週間目)のそれぞれから1週間後、観察された。対照的に、10および15週間目において、OPAL注入を受けなかった等価的に免疫された動物におけるSIV gag応答は、有意に衰えた。(b)SIV pol特異的IFNγ ELISPot応答の増加が、10および20週間目におけるSIV pol注入から1週間後、免疫された動物において観察された。興味深いことに、これは、SHIV負荷(10および15週間)の前に複数回のSIV pol OPAL注入を受けた2匹のサルH20およびH21のみにおいて観察され、15週間目にSIV polペプチドパルス化細胞を受けた動物において観察されなかった。これは、DNAおよびFPVワクチン単独に対するpol特異的T細胞応答がささやかであった、またはELISpotおよびICSにより検出できなかったゆえに、特に興味深い。(c)高レベルのSIV pol特異的インビボ殺害もまた、SIV pol OPAL注入の2回の事前注入を受けた2匹のサルにおいて見られた。(d)この免疫原性データは、複数回のSIV pol OPAL注入を受けた2匹の免疫された動物における高レベルのSIV pol特異的IFNγ細胞内サイトカイン応答によりさらに確証された。(e)複数回のOPAL注入を受けた動物において、SHIV負荷からのより強い防御への傾向があった。総合して、これらの結果は、自己PBMCをエクスビボで重複ペプチドのプールでパルスすることが、免疫応答をブーストするための効果的な方法であることを示唆している。さらに、データは、ペプチドパルス化全血が、SHIVペプチドパルス化血液のレシピエントにおいてSHIVのいくつかの部分に対するT細胞応答を刺激する、加えて(a)HCVペプチドパルス化血液のレシピエントにおいて全HCVゲノムに及ぶHCVペプチドの2つのプール、および(b)HIV-1耐性ペプチドでパルスされた自己血液のレシピエントにおいて既知のHIV-1薬剤耐性突然変異に及ぶペプチドのプールに対するT細胞応答を新たに誘導することの両方ともできることを示している。
【0157】
免疫応答の誘導のための、自己または同系細胞を定義済みのペプチドエピトープまたは抗原全体でパルスすることの使用を確かめる一連のデータがある(22,23,27,34,35)。例えば、単一腫瘍抗原または完全不活性化SIVでパルスされた単球由来樹状細胞のような特定化された抗原提示細胞の使用はまた、免疫療法のツールとして広範に研究されてきた(36-39)。しかしながら、本発明者らの知る限りでは、これは、全タンパク質(125 SIV gag 15マーまたは263 SIV pol 15マー)に及ぶ大きなペプチドプールを利用すること、および免疫応答をブーストする方法として、エクスビボで短期間培養された全PBMCの使用の最初の報告である。
【0158】
SIV pol(およびSIV gag)でパルスされたPMBCの複数回の注入を受けた、1匹の対照免疫化動物、サルE22において、SIV gagおよびSIV pol特異的IFNγ ELISpot応答のささやかな誘導が検出された。この動物は、その後、おそらくSHIV負荷のブーストする効果からと思われるが、20週間目に分析された高レベルのSIV gagおよびpol特異的殺害を示した。OPAL注入により免疫応答を初回刺激することの有効性は、それゆえに、実行可能であるように思われる。これらのデータは、全血がHCVまたはHIV-1薬剤耐性ペプチドでパルスされた場合に確認され、ICSにより評価された場合、高レベルのCD4+およびCD8+ T細胞応答を効率的に誘導した。これらのデータはまた、抗原提示細胞(APC)源として全血を用いることの実行可能性を実証し、当分野において、PBMCまたは他のより複雑なAPC調製物(単球由来樹状細胞のような)より実用的であるように思われる。
【0159】
APCおよび/または樹状細胞(DC)についての濃縮(40)のようなOPAL技術へのさらなる改変は、HIV感染患者(41,42)およびSIV感染動物(40)のPBMCから培養されたDCが強力なT細胞応答を誘発することができるため、治療的ワクチンとしてOPAL注入の免疫原性を増強させる可能性があると思われる。または、OPALを送達する手段としてPBMC画分よりむしろ全血を用いることの見込みは、確かに、臨床的設定の、特にHIV感染者にとって、ためになると思われる。さらに、1 μg/mLがICSによる全血分析についてインビトロで有効であることから、より小さい全血試料は、ペプチドの濃度を高く必要としなくてよい。プールされたペプチドの直接的静脈内感染は、OPAL効果の免疫原性を模倣することも考えられる。gagおよびpolのコンセンサスHIV-1クレードペプチドセットの使用は、ヒトのための効果的な治療的ワクチンの望まれる広いエピトープの幅を与える。現行のワクチンアプローチによっては弱い免疫原性であるrev、tat、vpu、vifおよびvprのようなウイルス複製を制御する抗原の免疫原性もまた、このストラテジーを用いて改善されるはずである。さらに、血液またはPBMCまたは他の無培養APC含有画分を直接的にAPC源として用いる一般的な方法は、注入の前にそのようなAPC集団上に抗原の他の源(限定されるわけではないが、全タンパク質、DNA、生ベクターワクチンまたは癌細胞調製物を含む)をパルスする可能性をすぐさま思いつかせる。そのような抗原負荷細胞APC集団は、筋肉内へ(ほとんどAPCが存在しないところ)のような他の一般の方法により抗原を投与することより免疫原性が大きくありうる(おそらく、豊富なAPCに直接的に結合することにより)と考えられる。
【0160】
実施例4
材料および方法
動物
雄の幼いコロニー育成ブタオザル(Macaca nemestrina、2〜4歳)が研究された。すべての動物は、CSIRO Australian Animal Health Laboratory, Geelongにおいて訓練を受けた動物専門家によりPC3バイオセイフティ条件下で飼育された。すべての手順の前に、動物はケタミン(筋肉内に10 mg/kg)で麻酔された。健康状態および体重は日常的にモニターされた。すべての条件およびプロトコールは、CSIRO動物健康およびUniversity of Melbourne動物倫理委員会により是認された。
【0161】
予備免疫化
OPAL方法が、あらかじめ初回抗原刺激された応答をもつ動物においてT細胞応答をブーストすることができるかどうかを評価すること。以前に記載されているように(16)、HIVまたはSIV構造遺伝子を発現させる2つのDNAワクチンを、続いて類似したHIVまたはSIV遺伝子を発現させるFPVブーストワクチンを投与することにより、マカークにT細胞応答を誘導した。食塩水中のDNAワクチンを、1 mg/回の用量で筋肉内に(各前大腿四頭筋へ0.5 mL)2回、投与した。FPVブーストは、筋肉内に5x107 pfuの用量で送達された。
【0162】
全血からの血漿および末梢血単核球(PBMC)の単離
ワクチン接種およびSHIV負荷の前および後の研究週間において各動物の大腿深静脈から9 mL Na+ヘパリンおよび3 mL EDTAバキュテーナー(vacutainer)に血液を採取した。遠心分離(800xg、室温、RT、8分;Beckman Coulter)後、血漿試料を取り出し、-70℃で3x1.5-mL チューブに保存した。EDTA抗凝固処理血液に収集された血漿をRNA抽出に用いた。製造会社の使用説明書(Amersham Pharmacia)に従って用いられるFicoll-Paque上でのPBMC単離の前に、収集された血漿の容量と等しい培地(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびグルタミンを追加したRPMI-1640;Invitrogen)を血液に加え、混合した。PBMCを2回洗浄し(500xg、10℃、6分)、免疫学的アッセイの調製における計数(Beckman Coulter Counter(登録商標))のために1 mL 培地に再懸濁した。
【0163】
重複ペプチド
SIVmac239の全gag(125ペプチド)、pol(260ペプチド)およびnef(21ペプチド)ならびにSHIVSF162P3のenv(211ペプチド)タンパク質に及ぶ11個のアミノ酸により重複している15マーペプチド(>80%純度)(NIH AIDS Research and Reference Reagent保管所)(表1〜4)を、最終濃度:SIVmac239 gag(670 μg/mLまたは730 μg/mL);pol(304 μg/mL)、および;nef(4.762 mg/mL)、ならびに;SHIVSF162P3 env(330 μg/mL)へ10〜40 μLのDMSOに各1 mg ペプチドアリコートを可溶化することにより各タンパク質についてプールし、使用まで-70℃で保存した。全HCVオープンリーディングフレームに及ぶ11個のアミノ酸により重複している18マーペプチド(NIH AIDS Research and Reference Reagent保管所)を、HCVの構造および制御遺伝子を含む2つのプール(HCV1およびHCV2)へとプールした。HIV-1薬剤耐性突然変異の既知の部位に及ぶ非重複の17マーペプチドを特に設計し、Mimotopes Australiaから購入した(図12)。
【0164】
インビボ分析のためのSIV抗原
完全不活性化SIV(WI SIV)およびその対照(WI SIVを培養するために用いられるHut78-CLE細胞系からの上清)(AIDS Vaccine Program, National Cancer Institute, MD)を使用まで-70℃で保存した。
【0165】
インビボの細胞傷害性Tリンパ球殺害
最初のワクチン接種後10、15および20週間目において、マカーク由来のPBMCを上記のように40〜50 mL 血液から単離した。血液量不足症を防ぐために血液採取後すぐに動物へ25 mL 無菌注射用食塩水を注入した。PBMCをPBSに再懸濁し、3つまたは4つの等容量、0.5 mLへ分割した。細胞を、PBS中で90 min、37℃または氷上で、普通の混合で、SIV gag、pol、nefまたはSHIV envペプチドプール(10 μg/mL)またはDMSO(SIV gagの容量と等しい容量)でパルスした。続いて、各ペプチドパルス化細胞集団をフローサイトメトリーにより追跡するために、各ペプチド/DMSOパルス化集団をその後、CFSEの濃度またはSNARF(Molecular Probes)で標識した。-20℃でのDMSO中の5 mM CFSE貯蔵物を解凍し、PBS中に希釈した。ストレートのSNARF貯蔵物を1 mMになるように83 μL DMSOに溶解し、PBS中に希釈した。表1は、各色素の最終濃度を示している。細胞を、入念に混合し、37℃水浴で10 min、染色し、続いて、RF5中、その後PBS中で1回洗浄した(500xg、10℃、6 min)。各動物についてのすべてのペプチド/DMSOパルス化細胞を、大腿深静脈への再注入のために1.5 mL 食塩水においてプールした。注入後5分間目、ならびに4時間および16時間目において、3 mL 血液を反対側の大腿深静脈から採取した。赤血球を10 mL FACS Lysing Solution(BD Biosciences)で溶解させ、室温で10 min、インキュベートした。細胞をペレットにし、PBSで2回洗浄し(800xg、RT、7 min)、1〜2 mL 2% パラホルムアルデヒドで固定した(図1)。
【0166】
細胞集団が選択的に殺されているかを測定するために、106個の事象のゲート制御された生きているリンパ球をフローサイトメトリー(FACSort Calibre, BD)により収集した。CFSEおよびSNARF蛍光は、それぞれ、FL1およびFL2チャネルにより検出された。分析について、殺害は、標的対対照のペプチドパルス化細胞クリアランスのパーセンテージとして表された。OPAL注入後5分間目においてフローサイトメトリーにより不等な標識集団を得た場合、殺害の程度は、その後、5分間目において得られた最初の集団比率に対して計られた。PBMCはまた、T細胞免疫応答が増強されたかどうかを検出するためにIFNγ ELISpotおよびICSにより、OPAL注入の前および後に分析された。
【0167】
マカークのSHIV負荷
ワクチンについての効力を評価するために、各マカークに、以前に記載されているように(32)、0.5 mL 用量におけるSHIVmn229(CD8除去ブタオザル(M. nemestrina)PBMCにおいて5x104 TCID50/mL)を最初の免疫化から18週間後、2日間に渡って(合計105 TCID50/mL)、直腸内へ接種した。
【0168】
逆転写酵素リアルタイムPCRによるウイルスSHIV RNAの定量
RNA抽出
SHIV負荷後のマカークにおけるSHIV RNAを検出するために、以前に記載されているように(32)、最初に、全RNAを、QIAamp(登録商標)Viral RNA市販キット(Qiagen)で、EDTAに収集された抗凝固処理血液由来の保存された血漿試料から抽出された。簡単には、血漿試料を遠心分離して(500xg、RT、10 min)、細胞を除去した(DNA混入を防ぐ)。バッファーAVLおよび96〜100% エタノールにおいてキャリアRNAに結合した140 μL 血漿RNAを遠心分離して、フィルター膜へ結合させた。60 μL RNAを、スピンカラムに通してバッファーAW1およびAW2で溶出した。エタノールを除くすべての試薬は、キットにより供給された。
【0169】
逆転写酵素PCR
10 μL RNAをその後、二連で、反応混合物(20 μL):2.9 μL RNA分解酵素/DNA分解酵素を含まない水(Promega);3 μL 10x TaqMan緩衝液A(Applied Biosystems);6 μL MgCl2(25 nM)(Applied Biosystems);1.5 μL Random Hexamers(1/2希釈;Applied Biosystems);6 μl dNTPs(2.5 nM;Promega);1.5 μL;Promega);0.5 μL Rnasin(40 U/mL;Promega);0.1 μL MMLV-RTスーパースクリプト(200 U/mL;Invitrogen)で、1温度サイクル:25℃(15 min)→42℃(40 min)→75℃(5 min)(GeneAmp PCR System 9700、Applied Biosystems)の間、cDNAへ逆転写した。試料あたりの第三の試験は、MMLV-RTスーパースクリプトを除く同じ反応混合物を用いてSHIV DNA混入の存在を評価するために設定された。SIV RNA標準(33)は、段階希釈され、二連で逆転写された(検出の限界、1500コピー/mL)。
【0170】
リアルタイムPCR
cDNAを、以前に記載されているように(33)、反応混合物(20 μL):141 μl RNA分解酵素/DNA分解酵素を含まない水(Promega);2 μl 10x PCR緩衝液II(Applied Biosystems);1 μL MgCl2(Applied Biosystems);1 μL SL03 SIV gag(20 pmol/μL);1 μL SL04 SIV gag(20 pmol/μL);0.3 μL SL07分子ビーコン0.5 μL Tag Gold(Applied Biosystems)で増幅した。反応温度は、最初に上昇させ、Tag Gold酵素を活性化させるために95℃で10 min、維持し、続いて、45回の温度サイクル:95℃(15 sec)→55℃(30 sec)→72℃(30 sec)を行った。リアルタイム解析は、Sequence Detectorソフトウェアv1.6.3(Applied Biosystems)により55℃(33 sec)段階における単位複製配列検出において行われた。
【0171】
CD4+ T細胞計数
SHIV負荷後のCD4+ T細胞の消耗を評価するために、200 μL 全血を、5 μL PE結合型抗ヒトCD3、5 μL FITC結合型抗CD4、5 μL PerCP結合型抗ヒトCD8(それぞれ、クローンSP34;L200およびLeu-2a;BD Pharmingen)のモノクローナル抗体と暗闇で20 min、インキュベートした。赤血球を2 mL FACS Lysing Solution(BD Biosciences)で溶解し、方法2.8に記載されているように、固定させた。50,000の全事象を、3色FACScan Calibre(登録商標)により収集し、CD4+およびCD8+ T細胞計数は、ゲート制御されたリンパ球のパーセンテージとして表された。
【0172】
全血OPAL技術によるSHIV、HCVおよび耐性HIV-1株由来のペプチドの刺激または誘導の分析
(a)ペプチドパルス化全血(前に用いられたPBMCと比較して)は、免疫刺激物として効果的に用いられうるかどうか、および(b)OPAL技術は、初回刺激を受けていない免疫応答を新たに刺激することができるかどうかを評価するための別々の実験において、図9〜12に図示されているように、選択されたSHIV感染マカークに、一連の重複15マーのSHIVペプチド(3つのプール)かまたは一連の重複18マーHCVペプチド(2つのプール)のいずれか、およびHIV-1薬剤により誘導された既知の突然変異を含む一連の非重複17マーのペプチドで5 μg/mLで1 hr、パルスされた全血のいずれかを注入した。
【0173】
本明細書に引用されたあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0174】
本明細書におけるいずれの参照文献の引用も、そのような参照文献が本出願の「先行文献」として有効であるという承認として解釈されるべきではない。
【0175】
本明細書を通じて、目的は、いずれか1つの態様または特徴の特定の選択に本発明を限定することなく、本発明の好ましい態様を記載することであった。それゆえに、当業者は、本開示に照らして、様々な改変および変化が、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の態様においてなされうることを理解しているものと思われる。すべてのそのような改変および変化は、添付された特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0176】
(表1)SIVmac236 gagペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド125は、長さが14個のアミノ酸である。完全長gag配列[SEQ ID NO:2184]は、HIV配列データベースhttp://hiv-web.lanl.govから改変されている。


【0177】
(表2)SIVmac236polペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。完全長pol配列[SEQ ID NO:2185]は、HIV配列データベースhttp://hiv-web.lanl.govから改変されている。




【0178】
(表3)SIVmac236nefペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。完全長nef配列[SEQ ID NO:2186]は、HIV配列データベースhttp://hiv-web.lanl.govから改変されている。

【0179】
(表4)SIVSF162P3 envペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド211は、長さが14個のアミノ酸である。ペプチドは、禁止のQのn末端ペプチドを排除するために10個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。完全長env配列[SEQ ID NO:2187]は、HIV配列データベースhttp://hiv-web.lanl.govから改変されている。



【0180】
(表5)HIV-1コンセンサスBクレードGagペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド124は、長さが12個のアミノ酸である。完全長Gag配列[SEQ ID NO:2188]は、HIV配列データベースから改変されている。


【0181】
(表6)HIV-1コンセンサスBクレードNefペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド49は、長さが14個のアミノ酸である。完全長Nef配列[SEQ ID NO:2189]は、HIV配列データベースから改変されている。

【0182】
(表7)HIV-1コンセンサスBクレードPolペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド248は、長さが14個のアミノ酸である。完全長Pol配列[SEQ ID NO:2190]は、HIV配列データベースから改変されている。




【0183】
(表8)HIV-1コンセンサスBクレードRevペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド27は、長さが13個のアミノ酸である。完全長Rev配列[SEQ ID NO:2191]は、HIV配列データベースから改変されている。

【0184】
(表9)HIV-1コンセンサスBクレードTatペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド24は、長さが14個のアミノ酸である。完全長Tat配列[SEQ ID NO:2192]は、HIV配列データベースから改変されている。

【0185】
(表10)HIV-1コンセンサスBクレードVifペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド46は、長さが12個のアミノ酸である。完全長Vif配列[SEQ ID NO:2193]は、HIV配列データベースから改変されている。

【0186】
(表11)HIV-1コンセンサスBクレードVprペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド22は、長さが12個のアミノ酸である。完全長Vpr配列[SEQ ID NO:2194]は、HIV配列データベースから改変されている。

【0187】
(表12)HIV-1コンセンサスBクレードVpuペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが15個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチド18は、長さが13個のアミノ酸である。完全長Vpu配列[SEQ ID NO:2195]は、HIV配列データベースから改変されている。

【0188】
(表13)HCV 1a H77のペプチドプール配列の1つの態様。各ペプチドは、長さが18個のアミノ酸であり、11個のアミノ酸だけ、前のペプチドと重複する。ペプチドの対、25と26、153と154、220と221、239と240、242と243、244と245、345と346は、本来の18マーのペプチドの問題の配列のせいで、15マーおよび14マーへ分類される。完全長HCV 1a H77配列[SEQ ID NO:2196]は、HCV配列データベースから改変されている。






【0189】
(表14)HBVのすべてのタンパク質に及ぶ重複15マーのペプチドの1つの態様。遺伝子型Aは、最初のHBV株として選択された。HBVゲノムにおける有意な可変性が遺伝子型Aと遺伝子型B〜Dの間に観察される場合、完全セットがHBVのすべての遺伝子型に対する応答を誘導するように、追加のペプチドが設計された。特定のT細胞エピトープが最小のエピトープに位置づけられた場合、これらはまた、これらのエピトープ特異的応答を最も最適に誘導しうるペプチドセットに含まれる。配列の分類:1〜394の遺伝子型A配列 − すべての遺伝子 - (合計394個のペプチド);395〜543の遺伝子型B/C/D − 遺伝子型Aからの有意な可変性に対応する - (合計149個のペプチド);および544〜564の既知のエピトープ(合計21個のペプチド)。








【0190】
参考文献




【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】10、15および20週間目において行われたインビボのCTL殺害アッセイの概略図である。
【図2】SIV gag重複ペプチドパルス化細胞のインビボCTL殺害を示す概略図である。FPVブーストから2週間後(10週間目)、3つの等しいPBMC集団をSNARF(2.5 μM)またはCFSE(2.5 μMまたは0.25 μM)で標識し、SIV pol、nefまたはgag重複ペプチドプールで、それぞれ、パルスした(OPAL)。OPAL注入後5 minにおいて、ならびに4 hおよび16 hにおいて採取された血液をRBC溶解し、106個のリンパ球事象をフローサイトメトリーにより得た。5 minにおいて、標識PBMCのすべての3集団は、比較的等しい数である。4時間目および16時間目については、2xDNA/FPV免疫化サルH20が、それぞれ、SIV nefパルス化PBMCに対してSIV gagパルス化PBMCの27.3%および76.0%クリアランスを示したが、SIV gag特異的殺害は、対照免疫化サルE20において観察されなかった。より少ない事象が、16 hより4 hにおいて収集されたことは注目されたい。
【図3】SHIV負荷後SIV gagおよびSIV polパルス化PBMCの活発な殺害を示すグラフ表示である。SHIV負荷から2週間後(20週間目)、等しいPBMC集団をSNARF(5 μM)またはCFSE(6 μMまたは2.5 μM)で標識し、SIV pol、ペプチド無し、SIV gagの重複ペプチドプールで、それぞれ、パルスした(OPAL)。106個のRBC溶解リンパ球事象がフローサイトメトリーにより得られた。2xDNA/FPV免疫化サルH20およびH21は、SIV gagパルス化PBMCの92.3%および98.3%を示した。これらの動物は、SIV polパルス化PBMCの2回の別々の注入を受けたが、さらに、>99%のSIV pol特異的殺害を示した。前にCFSE標識されたPBMCは、OPAL注入直前に106個のリンパ球のフローサイトメトリー分析により計上された(示されず)。
【図4】IFNγ ELISpotにより分析された、OPAL注入後1週間目におけるT細胞免疫原性のブーストを示す写真表示である。SIV gagおよびpolペプチドプール応答におけるブーストは、2xDNA/FPV免疫化サルH21において明らかであり、SIV polペプチドプールに対する初回刺激された応答として、対照免疫化サルE20において検出されている(上方に示された10週間目)。
【図5】10週間目におけるOPAL注入から1週間後のINFγ ELISpot分析を描くグラフ表示である。10週間目におけるOPAL注入によるSIV gag、polおよびnef重複ペプチドプールに対するT細胞免疫原性のブーストは、ELISpotにより1週間後に分析された。SIV gagに対する応答の増加が、2xDNA/FPV免疫化サル、H20およびH21(サルB00およびH8は、少しのpolパルス化PBMCも受けなかった)、ならびに1匹の対照免疫化サル、E20において存在した。SIV nefに対する応答は、いずれの動物においても初回刺激されなかった。サルE20(OPAL注入前)およびB00(OPAL注入後)におけるIFNγスポットは、ELISpot開発上の問題のために除外された。
【図6】15週間目におけるOPAL注入から1週間後のINFγ ELISpot分析を示すグラフ表示である。15週間目におけるOPAL注入によるSIV gag、pol、nefおよびHIV-1 env重複ペプチドプールに対するT細胞免疫原性のブーストは、INFγ ELISpotにより1週間後に分析された。SIV gagに対する応答の増加は、すべての4匹の2xDNA/FPV免疫化動物において検出された。SIV pol応答は、サルE22、B00、H20およびH21においてわずかに増加した(または初回刺激された)。WI SIVに対する応答の増加は、すべての動物において明らかであったが、いずれの動物においても、SIV nefまたはHIV-envについて応答は検出されなかった。
【図7】OPAL注入の免疫原性の平均IFNγ ELISpotを描くグラフ表示である。OPAL注入を受けた対照および2xDNA/FPV免疫化動物の(A)SIV gagおよび(B)SIV pol重複ペプチドプールに対する平均INFγ ELISpot応答は、免疫化後、10週間目および15週間目において与えられたOPAL注入前および後に、等価の免疫化を受けたがOPAL注入を受けなかった動物と比較された。SIV pol特異的応答の比較について、2xDNA/FPV免疫化動物は、pol-OPAL注入の1回用量(B00およびH8)かまたは2回用量(H20およびH21)のいずれかを受けたことに基づいてグループ化された。
【図8】SHIV直腸内負荷の結果を示すグラフ表示である。18週間目において、すべての対照および2xDNA/FPV免疫化マカークは、SHIVmn229で直腸内に負荷され、感染の経過に渡って、血漿SHIV RNAウイルス量およびCD4+ T細胞計数について評価された。OPAL注入のレシピエントは、それらのそれぞれの免疫されたOPAL無しのレシピエントと比較された。群比較は、平均±SEを示す。OPAL注入を受ける2xDNA/FPV免疫化マカークは、polパルス化PBMCの1回用量かまたは2回別々の用量のいずれかを受けることに基づいてさらにグループ化された(それぞれ、B00とH8、およびH20とH21)。
【図9】全SHIVゲノムのオープンリーディングフレームを含む重複15マーのペプチドでパルスされた全血の投与を利用するSHIVに感染したサルにおけるSHIV抗原に対するCD4+およびCD8+ T細胞の誘導を描くグラフ表示である。ペプチドをパルスされた全血は、0週間目、4週間目および8週間目において(矢印)、投与され、ICSにより検出されるSHIV抗原gag、pol、envおよびrev-tat-vpu-nefに対するIFNγ産生により測定されるCD4+ならびにCD8+ T細胞の両方のT細胞免疫原性におけるブーストは、各時点後に見られる。OPAL前のT細胞応答は、第1回OPALの1週間前(-1週間目)に測定された。
【図10】全HCV 1a H77型ゲノムのオープンリーディングフレームを含む重複18マーのペプチドでパルスされた全血の投与を利用するサルにおけるHCVに対するCD4+およびCD8+ T細胞応答の新たな誘導を描くグラフ表示である。ペプチドをパルスされた全血は、2つの別々のプール(ペプチド:1〜116および;117〜441)において、0週間目、4週間目および8週間目において(矢印)、投与された。ICSにより検出されるHCV抗原に対するIFNγ産生により測定されるCD4+およびCD8+ T細胞の両方のT細胞免疫原性の誘導およびブーストすることは、各時点後に見られる。OPAL前のT細胞応答は、第1回OPALの1週間前(-1週間目)に測定された。
【図11】逆転写酵素またはプロテアーゼ耐性突然変異の既知の部位を含む17マーのペプチドでパルスされた全血の投与を利用するサルにおける、HIV-1感染したヒトにおいて記載されたHIV-1における薬剤耐性突然変異を代表するペプチドに対するCD4+およびCD8+ T細胞応答の新たな誘導を示すグラフ表示である。ペプチドをパルスされた全血は、0週間目、4週間目および8週間目において(矢印)、投与された。ICSにより検出されるHIV-1薬剤耐性突然変異ペプチドに対するIFNγ産生により測定されるCD4+およびCD8+ T細胞の両方のT細胞免疫原性の誘導およびブーストすることは、各時点後に見られる。OPAL前のT細胞応答は、第1回OPALの1週間前(-1週間目)に測定された。
【図12】HIV-1ヒトにおいて記載された野生型HIV-1の逆転写酵素領域またはプロテアーゼ領域における薬剤耐性突然変異に対応する単一ペプチドのプールの一つの態様を示す図表示である(Mimotopes, Melbourne)。17マーのペプチドは、エクスビボのタンパク分解性切断の結果としてのあらゆる9マーのエピトープ(CD8+ T細胞エピトープの最も一般的な長さ)が突然変異を含むように、一般の既知の突然変異の部位に渡って各17マーのペプチド上の9番目のアミノ酸残基(太字)に耐性突然変異を取り込むように設計された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を調節するための薬物の調製におけるペプチドの少なくとも1セットの使用方法であって、それぞれのセットの個々のペプチドが、対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、ペプチドの少なくとも1セットの使用方法。
【請求項2】
ペプチドの少なくとも2セットが用いられ、かつ各セットにおけるペプチド配列が対象の別個のポリペプチド由来である、請求項1記載の使用方法。
【請求項3】
ペプチドの少なくとも3セットが用いられ、かつ各セットにおけるペプチド配列が対象の別個のポリペプチド由来である、請求項1記載の使用方法。
【請求項4】
部分的配列同一性または類似性が個々のペプチドの一方の末端または両方の末端に含まれる、請求項1記載の使用方法。
【請求項5】
配列が少なくとも1つの他のペプチド内に含まれるアミノ酸配列と同一または類似である少なくとも4個の連続したアミノ酸残基が、これらの末端の一方または両方に含まれる、請求項4記載の使用方法。
【請求項6】
ペプチドが長さが少なくとも6個のアミノ酸残基である、請求項1記載の使用方法。
【請求項7】
ペプチドが長さが約500個より多くないアミノ酸残基である、請求項1記載の使用方法。
【請求項8】
ペプチドの長さが細胞溶解性Tリンパ球応答の生成を増強させるように選択される、請求項1記載の使用方法。
【請求項9】
ペプチドの長さが約8個から約10個までのアミノ酸残基である、請求項8記載の使用方法。
【請求項10】
ペプチドの長さがTヘルパーリンパ球応答の生成を増強させるように選択される、請求項1記載の使用方法。
【請求項11】
ペプチドの長さが約12個から約20個までのアミノ酸残基である、請求項10記載の使用方法。
【請求項12】
ペプチド配列が対象のポリペプチドに対応する配列の少なくとも約30%に由来する、請求項1記載の使用方法。
【請求項13】
ペプチド配列が対象のポリペプチドに対応する配列の少なくとも約90%に由来する、請求項1記載の使用方法。
【請求項14】
対象のポリペプチドが、タンパク質抗原、癌細胞により発現される抗原、粒子抗原、同種異系抗原、自己抗原もしくはアレルゲン、または免疫複合体から選択される抗原である、請求項1記載の使用方法。
【請求項15】
対象のポリペプチドが疾患または状態関連ポリペプチドである、請求項1記載の使用方法。
【請求項16】
疾患または状態関連ポリペプチドが病原性生物体または癌により産生されるポリペプチドである、請求項15記載の使用方法。
【請求項17】
疾患または状態関連ポリペプチドが、酵母、ウイルス、細菌、蠕虫、原生動物およびマイコプラズマから選択される病原性生物体により産生される、請求項15記載の使用方法。
【請求項18】
疾患または状態関連ポリペプチドが、黒色腫、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)およびホジキンリンパ腫から選択される癌により産生される、請求項15記載の使用方法。
【請求項19】
ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞によりまたはその前駆体により提示されるのに十分な時間および条件下において、ペプチドの少なくとも1セットと接触した抗原提示細胞またはその前駆体であって、それぞれのセットの個々のペプチドが対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、抗原提示細胞またはその前駆体。
【請求項20】
ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞によりまたはそれらの前駆体により提示されるのに十分な時間および条件下において、ペプチドの少なくとも1セットと接触した抗原提示細胞またはそれらの前駆体の集団であって、それぞれのセットの個々のペプチドが対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、抗原提示細胞またはそれらの前駆体の集団。
【請求項21】
ペプチドまたはそれらのプロセシングされた形態が抗原提示細胞によりまたはそれらの前駆体により提示されるのに十分な時間および条件下において、抗原提示細胞またはそれらの前駆体をペプチドの少なくとも1セットと接触させる段階を含む、対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための抗原提示細胞を作製するための方法であって、それぞれのセットの個々のペプチドが対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、方法。
【請求項22】
前駆体から抗原提示細胞を分化させるのに十分な時間および条件下において培養する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ペプチドのセットまたは各セットが実質的に精製された抗原提示細胞またはそれらの前駆体と接触する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
ペプチドのセットまたは各セットが抗原提示細胞またはそれらの前駆体の不均一な集団と接触する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
細胞の不均一なプールが血液または末梢血単核球から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
抗原提示細胞またはそれらの前駆体が、単球、マクロファージ、骨髄系列の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項27】
ペプチドのセットまたは各セットが抗原提示細胞またはそれらの前駆体の無培養集団と接触する、請求項21記載の方法。
【請求項28】
集団が均一である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
集団が不均一である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
集団が、全血、新鮮血、または末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞もしくはナチュラルキラーT細胞から選択されるそれらの画分、から選択される不均一な集団である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
リンパ球またはそれらの前駆体の集団を、請求項19記載の抗原提示細胞またはそれらの前駆体と、対象のポリペプチドの少なくとも1つに対する免疫応答を調節する抗原特異的リンパ球を生成するのに十分な時間および条件下において接触させる段階を含む、抗原特異的リンパ球を作製するための方法。
【請求項32】
ペプチドの少なくとも1セットならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む組成物であって、それぞれのセットの個々のペプチドが対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、組成物。
【請求項33】
アジュバント、または宿主の酵素による分解に対してペプチドを安定させる化合物をさらに含む、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
請求項19記載の抗原提示細胞もしくはその前駆体、または請求項20記載の抗原提示細胞もしくはそれらの前駆体の集団、ならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む組成物。
【請求項35】
アジュバントをさらに含む、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
請求項31記載の方法により作製される抗原特異的リンパ球、ならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む組成物。
【請求項37】
アジュバントをさらに含む、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための方法であって、そのような治療を必要としている患者へペプチドの少なくとも1セットを、免疫応答を調節するのに十分な時間および条件下において投与する段階であって、それぞれのセットの個々のペプチドが対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、段階を含む、方法。
【請求項39】
対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための方法であって、そのような治療を必要としている患者へ請求項20記載の抗原提示細胞の集団を、免疫応答を調節するのに十分な時間および条件下において投与する段階を含む、方法。
【請求項40】
対象のポリペプチドに対する免疫応答を調節するための方法であって、そのような治療を必要としている患者へ請求項31記載の方法により作製される抗原特異的リンパ球を、免疫応答を調節するのに十分な時間および条件下において投与する段階を含む、方法。
【請求項41】
対象のポリペプチドの存在に関連した疾患または状態の治療および/または予防のための方法であって、そのような治療または予防を必要としている患者へペプチドの少なくとも1セットの有効量を投与する段階であって、それぞれのセットの個々のペプチドが対象の単一ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の異なる部分を含み、かつペプチドの同じセットの少なくとも1つの他のペプチドとの部分的配列同一性または類似性を示す、段階を含む、方法。
【請求項42】
対象のポリペプチドの存在に関連した疾患または状態の治療および/または予防のための方法であって、そのような治療または予防を必要としている患者へ請求項20記載の抗原提示細胞の集団の有効量を投与する段階を含む、方法。
【請求項43】
対象のポリペプチドの存在に関連した疾患または状態の治療および/または予防のための方法であって、そのような治療または予防を必要としている患者へ請求項31記載の方法により作製される抗原特異的リンパ球の有効量を投与する段階を含む、方法。
【請求項44】
活性化条件に供されていない、かつ被験者の免疫系への提示のために抗原のプロセシングされたまたは改変された形態を発現させるのに十分な時間および条件下において標的抗原に対応する抗原と接触した無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体を含む、標的抗原に対する被験者における免疫応答を調節するための物質の組成物。
【請求項45】
無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体が抗原と約1分間から約5日間まで接触する、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体が、全血、新鮮血またはそれらの画分から選択される、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
画分が、末梢血単核球、全血の軟膜画分、濃縮赤血球、照射された血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞から選択される、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
標的抗原に対応する抗原が以下のものから選択される、請求項44記載の組成物:核酸;ペプチド;ホルモン;全タンパク質抗原;細胞物質;細胞片、アポトーシス細胞、脂質凝集体、膜性媒体、ミクロスフェア、熱凝集化タンパク質、ビロゾーム、ウイルス様粒子から選択される粒子状物質;および、細菌、ミコバクテリア、ウイルス、真菌、原生動物から選択される生物体全体またはそれらの部分。
【請求項49】
抗原がタンパク性分子または核酸分子から選択される、請求項44記載の組成物。
【請求項50】
無培養細胞が2つまたはそれ以上の抗原と接触する、請求項44記載の組成物。
【請求項51】
抗原が、重複ペプチド、非重複ペプチド、重複ペプチドが発現できる1つもしくは複数のポリヌクレオチド、または非重複ペプチドが発現できる1つもしくは複数のポリヌクレオチドから選択される形態をとる、請求項50記載の組成物。
【請求項52】
疾患または状態が標的抗原の存在または異常な発現に関連している、被験者における疾患または状態の治療のための薬物の調製における無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体の使用方法であって、抗原提示細胞またはそれらの前駆体が、活性化条件に供されていないが、標的抗原に対応する抗原と、被験者の免疫系への提示のために抗原のプロセシングされたまたは改変された形態を発現させるのに十分な時間および条件下において接触した、無培養抗原提示細胞またはそれらの前駆体の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−537975(P2007−537975A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515537(P2006−515537)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000775
【国際公開番号】WO2004/108753
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(591143869)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (9)
【氏名又は名称原語表記】The University of Melbourne
【Fターム(参考)】