説明

免疫調節物質および抗癌剤としてのハロゲン化トリプトライド誘導体

構造(I)を有する化合物は、細胞死(アポトーシス)を誘導するために有用であり、そして免疫抑制において有用である。構造Iにおいて、CRは、CHOH、C=O、CHF、CFおよびC(CF)OHより選択され;CRおよびCR13は、CH、COHおよびCFより選択され;CR、CR10およびCR1112は、CH、CHOH、C=O、CHFおよびCFより選択され;そしてCRは、CH、CHOH、C=O、COOH、CHF、CHFおよびCFより選択され;その結果:R〜R13のうちの少なくとも一つが、フッ素を含み;CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの2つ以下が、フッ素もしくは酸素を含み;そして、CRがCHOHである場合、CRは、CHFではない。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、免疫抑制剤、抗炎症剤および抗癌剤として有用な化合物に関する。
【0002】
(参考文献)
Gleichmann,E.ら、Immunol.Today 5:324(1984)。
【0003】
He,Q.ら、Beijing Da Xue Xue Bao 35:252−5(2003年6月)。
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【0017】
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【0021】
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【0022】
Zhou,Y.X.ら、Ai Zheng 21(10):1108−8(2002年10月)。
【背景技術】
【0023】
(発明の背景)
免疫抑制剤は、自己免疫疾患の処置および移植片対宿主病(GVHD)の処置を含む移植拒絶反応の処置もしくは予防において広く使用されている。一般的な免疫抑制剤としては、アザチオプリン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、ビンクリスチン、およびシクロスポリンAが挙げられる。一般的に、これらの薬物は、完全に効果的であるものではなく、そしてほとんどの薬物は、深刻な毒性により制限される。例えば、シクロスポリンAは、広く使用される薬物であるが、腎臓に対して非常に有毒である。さらに、有効な処置のために必要とされる用量は、種々の日和見感染性侵入による感染に対する患者の感受性を上昇させ得る。
【0024】
中国薬用植物Tripterygium wilfordii(TW)由来の多くの化合物が、例えば、自己免疫疾患の処置において、ならびに移植片対宿主病(GVHD)の処置を含む移植拒絶反応の処置および予防において、免疫抑制活性を有するものとして同定されている。トリプトライド(Triptolide)ならびにその特定の誘導体およびプロドラッグはまた、抗癌活性を示すことが報告されている。例えば、Kupchanら、1972、1977、ならびに共通に係る米国特許第6,620,843(2003年9月)を参照のこと(これらは、本明細書により参考として援用される)。
【0025】
一般的に、トリプトライド誘導体の生物活性自体は、ネイティブトリプトライドの生物活性よりも低いことが見出されている。しかし、これらの化合物は、薬物動態もしくは生体分布のような分野において、それらのプロドラッグとしての活性ならびに/または脂溶性もしくは水溶性の差異により、しばしば、ネイティブトリプトライドに比べて他の利益を提供する。例えば、Jungら、米国特許第5,972,998号および同第6,004,999号、Kupchanら、米国特許第4,005,108号、Lipskyら、米国特許第5,294,443号ならびにQianら、米国特許第5,430,054号、ならびに共通に係る米国特許第6,150,539号(高い水溶性を有するトリプトライドプロドラッグ)、同第5,962,516号(免疫抑制化合物および免疫抑制方法)、同第5,843,452号(免疫治療組成物および免疫療法)、同第5,759,550号(異種移植片拒絶反応を抑制するための方法)、同第5,663,335号(免疫良抑制化合物および免疫抑制方法)、ならびに同第5,648,376号(免疫抑制剤ジテルペン化合物)、ならびにそこに引用される参照を参照のこと。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0026】
(発明の要旨)
一つの局面において、本発明は、免疫抑制治療、抗炎症治療および抗癌治療のために有用な化合物を提供する。この化合物は、構造I:
【0027】
【化4】

により表わされるトリプトライド誘導体であり、ここで:
CRは、CHOH、C=O、CHF、CFおよびC(CF)OHより選択され;
CRおよびCR13は、CH、COHおよびCFより選択され;
CR、CR10およびCR1112は、CH、CHOH、C=O、CHFおよびCFより選択され;そして
CRは、CH、CHOH、C=O、COOH、CHF、CHFおよびCFより選択され;
その結果、R〜R13のうちの少なくとも一つは、フッ素を含み;
CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの2つ以下は、フッ素もしくは酸素を含み、そして好ましくは、CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの1つ以下は、フッ素もしくは酸素を含み;
そして、CRがCHOHである場合、CRは、CHFではない。
【0028】
好ましくは、CRの立体化学は、以下のようである:CRがCHOHである場合、それは、β−ヒドロキシ立体配置を有し、そして、CRがCHFである場合、それは、α−フルオロ立体配置を有する。同様に、CR10の立体化学は、好ましくは、以下のようである:CR10がCHOHである場合、それは、β−ヒドロキシ立体配置を有し、そして、CR10がCHFである場合、それは、α−フルオロ立体配置を有する。
【0029】
構造Iの好ましい実施形態において、CRはCHFであり、α−フルオロ立体配置を有する。
【0030】
好ましい実施形態はまた、CR、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112より選択される正確に一つの炭素中心がフッ素を含む化合物も含む。より好ましくは、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112のうちの正確に一つが、フッ素を含む。
【0031】
選択される実施形態において、CRのみが、フッ素を含む。従って、これらの実施形態において、CRは、CF、CHF、およびC(CF)OHより選択される。CRの立体化学は、好ましくは、以下のようである:CRがC(CF)OHである場合、それは、β−ヒドロキシ立体配置を有し、そして、CRがCHFである場合、それは、α−フルオロ立体配置を有する。
【0032】
構造Iの選択される他の実施形態において、CR10またはCRのいずれかがフッ素を含み、そしてCRが酸素を含み;好ましくは、CRはC=Oであるか、より好ましくは、CHOH(β−ヒドロキシ)である。これらの実施形態において、例えば、CR10は、CFおよびCHF(好ましくは、α−フルオロ)より選択されるか、またはCRは、CHFもしくはCFより選択される。
【0033】
構造Iの選択されるさらなる実施形態において、CRまたはCR1112のいずれかがフッ素を含み、そしてCRが酸素を含み;好ましくは、CRはC=Oであるか、もしくはより好ましくは、CHOH(β−ヒドロキシ)である。これらの実施形態において、例えば、CRは、CFおよびCHF(好ましくは、α−フルオロ)より選択されるか、もしくはCR1112は、CFおよびCHFより選択される。
【0034】
他の局面において、本発明は、免疫抑制をもたらす方法および細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。本発明は、抗増殖性治療(特に抗癌治療)において有用である。これらの方法は、本明細書中に記載されるような構造Iを有する有効量の化合物を、それぞれ、そのような処置を必要としている被験体に投与する工程、または上記細胞に接触させる工程を包含する。あるいは、本発明は、免疫抑制をもたらす薬剤もしくは細胞においてアポトーシスを誘導する薬剤の調製のための構造Iの化合物の使用を含む。この化合物は、代表的に、薬学的に受容可能なキャリア中で提供される。これらの方法およびこれらの使用の特定の実施形態は、本明細書中に記載される構造Iの任意の特定の実施形態を用い得る。
【0035】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の本発明の詳細な説明を添付の図面を合わせて読む場合に、より完全に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
(I.トリプトライド誘導体)
本開示の目的のために、トリプトライドおよびトリプトライド誘導体に関して以下の番号スキームを使用した。
【0037】
【化5】

本発明の化合物は、本明細書中にさらに記載されるような、ハロゲン原子(好ましくは塩素もしくはフッ素、そして最も好ましくはフッ素)によるC1、C2、C5、C14、C15、C16および/もしくはC19(好ましくはC2、C14、もしくはC16)の一つ以上のヒドロキシルもしくは水素原子の置換により生じるトリプトライド誘導体である。より詳細には、本発明の化合物は、以下の構造I:
【0038】
【化6】

により表わされ、ここで:
CRは、CHOH、C=O、CHF、CFおよびC(CF)OHより選択され;
CRおよびCR13は、CH、COHおよびCFより選択され;
CR、CR10およびCR1112は、CH、CHOH、C=O、CHFおよびCFより選択され;そして
CRは、CH、CHOH、C=O、COOH、CHF、CHFおよびCFより選択され;
そのため、R〜R13のうちの少なくとも一つは、フッ素を含み;
CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの2つ以下、そして好ましくは1つ以下は、フッ素もしくは酸素を含み;
そして、CRがCHOHである場合、CRは、CHFではない。
【0039】
好ましくは、CRおよびCR10の各々の立体化学は、CHOHが、β−ヒドロキシ立体配置を有し、そしてCHFが、α−フルオロ立体配置を有するようなものである。
【0040】
構造Iの好ましい実施形態において、CRは、CHF(α)である。(本明細書中で使用される場合、「CHX(α)」もしくは「CHX(β)」との告示は、非水素置換基であるXが、それぞれ、α立体配置もしくはβ立体配置を有することを示す。)より好ましくは、これらの実施形態において、CRのみが、フッ素を含む。さらにより好ましくは、これらの実施形態において、CR10および/もしくはCRのみが、酸素を含む;例えば、CR10および/もしくはCRのうちの一方もしくは両方(好ましくは一方)が、CHOH(好ましくは、CR10に関してCHOH(β))である。あるいは、これらの実施形態において、CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちのいずれも、酸素を含まない。
【0041】
構造Iの好ましい実施形態はまた、CR、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112より選択される正確に一つの炭素中心がフッ素を含む化合物も含む。より好ましくは、CR、CR、CR10、およびCR1112のうちの正確に一つは、フッ素を含む。好ましくは、これらの実施形態において、CR10および/もしくはCRのみが、酸素を含む;例えば、CR10および/もしくはCRのうちの一方もしくは両方(好ましくは、一方)が、CHOH(好ましくは、CR10に関してCHOH(β))である。あるいは、これらの実施形態において、CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちのいずれも、酸素を含まない。
【0042】
構造Iの選択される実施形態において、CRのみが、フッ素を含む。従って、CRは、CF、CHF、およびC(CF)OHより選択される。CRの立体化学は、好ましくはC(CF)OHがC(α−CF)β−OHであるか、もしくはCHFがCH(α−F)であるようなものである。
【0043】
構造Iの他の選択される実施形態において、CR10かCRかのいずれかが、フッ素を含み、そしてCRが酸素を含む;好ましくは、CRは、C=Oであるか、もしくは、より好ましくは、CHOH(β−ヒドロキシ)である。これらの実施形態において、CR10は、CFもしくはCHF(好ましくは、α−フルオロ)であり、そしてCRは、好ましくはCHFもしくはCFである。
【0044】
構造Iのさらなる選択される実施形態において、CRかCR1112かのいずれかがフッ素を含み、そしてCRが酸素を含む;好ましくは、CRが、C=Oであるか、もしくは、より好ましくは、CHOH(β−ヒドロキシ)である。これらの実施形態において、CRは、CFもしくはCHF(好ましくは、α−フルオロ)であり、そしてCR1112は、CFもしくはCHFである。
【0045】
本発明はまた、構造Iの化合物に対する類似化合物も含み、ここで、フッ素は、異なるハロゲン原子(すなわち、塩素、臭素、もしくはヨウ素(特に、塩素))により置き換えられる;例えば、14−デオキシ−14α−クロロトリプトライド。選択され、かつ好ましいこのような化合物の他の実施形態は、上の構造Iのフッ化化合物について記載される化合物に対応する。
【0046】
(A.調製)
本発明の化合物は、トリプトライドもしくはその水酸化誘導体から調製され得る。後者の化合物は、トリプジオライド(tripdiolide)(2−ヒドロキシトリプトライド)もしくは16−ヒドロキシトリプトライドを含み、これらの化合物は、トリプトライドとともに中国薬用植物Tripterygium wilfordii(TW)の根の木部もしくは他の公知の供給源より得られ得る。TW植物は、中国の福建省および他の南の省において見出される;TW植物材料は、一般的に、中国において得られ得るか、もしくは米国において商業的供給源から得られ得る。トリプトライド、トリプジオライドおよび16−ヒドロキシトリプリプトライドを得るための方法は、当該分野において公知であり、そして例えば、Kupchanら(1972、1977);Lipskyら(1994);Puら(1990);およびMaら(1992)に記載されている。
【0047】
トリプトライドの5−ヒドロキシ誘導体は、共有に係る米国仮出願番号60/532,702に記載されているようなトリプトライドの二酸化セレン酸化により調製され得る。簡単に言えば、代表的な調製物において、トリプトライドおよび約2.2当量の二酸化セレンのジオキサン中溶液は、N存在下で72時間、約90℃で攪拌される。
【0048】
L.Ningら(Tetrahedron 59(23):4209−4213、2003)に記載されているように、トリプトライドとCunninghamella blakesleanaとのインキュベーションにより、上の水酸化誘導体ならびに1β−ヒドロキシトリプトライド、トリプトリデノール(triptolidenol)(15−ヒドロキシトリプトライド)、19α−ヒドロキシトリプトライド、および19β−ヒドロキシトリプトライドが生成される。これらの生成物は、標準的な手順(すなわち、酢酸エチルによる濾過培養液の抽出、濃縮、およびこの残査のシリカゲルクロマトグラフィー)により単離される。
【0049】
構造Iの化合物は、C1、C2、C5、C14、C15、C16および/もしくはC19のヒドロキシル基もしくはオキソ基と、フッ化剤との反応により、トリプトライド、その水酸化誘導体、もしくはその酸化誘導体から調製されて、それぞれ、上記炭素にCHF基もしくはCF基を形成し得る。
【0050】
このようなフッ化試薬の説明は、Chemistry of Organic Fluorine Compounds II(M.HudlickyおよびA.E.Pavlath編;ACS Monograph 187、1995)ならびにOrganofluorine Chemistry:Principles and Commercial Applicatioins(R.E.Banks、B.E.SmartおよびJ.C.Tatlow編;Plenum Press、1994)のような参考文献において提供される。例えば、ヒドロキシル基(C−OH)からC−Fへの変換のために適切な試薬としては、HF−ピリジン(Olah’s試薬)もしくはHF−2,4,6−コリジンのようなHF−アミン錯体、四フッ化硫黄(SF)ならびに種々のSF誘導体((ジエチルアミノ)三フッ化硫黄(DAST)、(ジメチルアミノ)三フッ化硫黄(メチル−DAST)、モルフォリノ三フッ化硫黄(morph−DAST)、および[ビス(2−メトキシエチル)アミノ]三フッ化硫黄(Deoxo−FluorTM)を含む)が挙げられる。このヒドロキシル基は、まず、トリフレートのような脱離基に変換され得、次に、トリス(ジメチルアミノ)硫黄(トリメチルシリル)二フッ化物(TAS−F)、テトラ−n−ブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルケイ酸、または無機塩(例えば、KF、CsFおよびBuNF)のような求核性フッ化物試薬により置き換えられる。これらの反応は、一般的に、以下に示すように立体化学の反転を伴って進行する。
【0051】
例えば、天然トリプトライドは、C14にβ−ヒドロキシルを有し、実施例1に記載されるように、DASTとの反応により14−デオキシ−14−α−フルオロトリプトライド(本明細書中でPG763と称される)に変換され得る。あるいは、エピトリプトライド(14−α−トリプトライド、本明細書中で比較化合物PG524と称される)は、14−デオキシ−14−β−フルオロトリプトライドを調製するために使用され得る。
【0052】
(C14およびC2にβ−ヒドロキシルを有する)トリプトライドは、14−デオキシ−2α,14α−ジフルオロトリプトライドへと同様に変換され得る。フッ化試薬の限定量が使用される場合、この化合物は、2α−フルオロトリプトライドとの混合物として得られ得る(以下を参照のこと)。
【0053】
【化7】

以下に示されるように、16−ヒドロキシトリプトライドと化学量論量もしくは過剰量のフッ化剤との反応は、14−デオキシ−14α,16−ジフルオロトリプトライドを提供する。
【0054】
【化8】

四フッ化硫黄およびその誘導体(例えば、上に列挙される誘導体)はまた、オキソ基(例えば、アルデヒドもしくはケトン)をgem−二フッ化物に変換するために用いられる最も頻繁に使用されるフッ化剤でもある。また、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリジン(DFI)も適切である。
【0055】
トリプトライドのC2、C14および/もしくはC16のオキソ基は、ケト基もしくはアルデヒド基への1つ以上のヒドロキシル基の酸化により形成され得る。アルコールの選択的酸化のために適切な酸化試薬および酸化プロセスの説明は、M.Hudlicky、Oxidations in Organic Chemistry(ACS Monograph Series 186、1990)、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations(第2版、Wiley、1999)、もしくはJ.March、Advanced Organic Chemistry(第4版、Wiley、1992)のような参考文献において提供される。強酸条件もしくは強塩基条件は、避けるべきである。必要な場合、所望される生成物は、例えば、HPLCを用いて、任意の副生成物から単離される。
【0056】
例えば、三酸化クロム−ピリジン錯体、CrOCl/アルミナ、もしくは類似の酸化試薬を用いることにより、例えば、トリプトライドのC14の二級アルコールは、ケトンへと酸化され得る(トリプトニド(triptonide)として公知の化合物を生じる)。例えば、DASTとの反応は、以下に示されるように、14−デオキシ−14,14−ジフルオロトリプトライドを生じる。
【0057】
【化9】

トリプトライド(2−ヒドロキシトリプトライド)の両方の二級アルコールはまた、このような酸化剤を用いてケトンに酸化され得る。DASTもしくは別の適切な試薬との反応は、以下に示される四フッ化化合物を生じる。この試薬が限定量で使用される場合、示されるように、2,2−ジフルオロ化合物もまた得られ得る。
【0058】
【化10】

あるいは、化学量論量の酸化試薬(例えば、上に示される試薬)を用いて、緩和な条件下で、トリプトライドの立体障害の小さいC2のアルコールが、ケトンへと選択的に酸化され得る。
【0059】
16−ヒドロキシトリプトライドの二級アルコールと一級アルコールの両方の酸化に関して、好ましくは、アルデヒド生成物をさらに酸化しない試薬(例えば、DMSO、塩化クロム酸ピリジニウム(Corey’s試薬)、もしくは硝酸セリウムアンモニウム)を用いて、ケト−アルデヒド中間体を生じる。ケトアルデヒドとDASTもしくは別の適切な試薬との反応は、以下に示される四フッ化化合物を与える。同様に、フッ化試薬が限定量で使用される場合、示されるように、14−オキソ−16,16−ジフルオロ化合物もまた得られ得る。
【0060】
【化11】

16−ヒドロキシトリプトライドの一級アルコールもまた、例えば、RuCl(PPh;(MeSiO)/触媒量のRuCl(PPh;DMSO/ClCOCOCl/EtN;もしくはDMSO/ピリミジン・SO/i−PrNEtのような試薬を用いて選択的に酸化され得る(上に引用されるLarockを参照のこと)。次に、このアルデヒドは、以下に示されるように16,16−ジフルオロトリプトライドへと変換され得る。
【0061】
【化12】

C16の一級ヒドロキシメチル(−CHOH)基もまた、以下のスキームに示されるように、カルボン酸への酸化、その後のSFとの反応を介してトリフルオロメチルに変換され得る。
【0062】
【化13】

トリフルオロメチル基は、以下のスキームにおいて示されるように、ケトンへの酸化、その後のトリフルオロメチルトリメチルシランとの反応により、C14に導入され得るか、または二級ヒドロキシルもしくは一級ヒドロキシルを有する別の中心(例えば、C1、C2、C16、もしくはC19)に導入され得る。
【0063】
【化14】

異なるハロゲン原子によりフッ素が置き換えられる類似化合物の調製は、一般的に、類似の方法により調製され得る。XがCl、Br、もしくはIであるC−XへとC−OHを変換するための方法は、当該分野において周知である。塩化物の調製のための試薬としては、例えば、SOClもしくはPCl、POClなどが挙げられる。同様に、脱離基(例えば、トシレートもしくはトリフレート)へのヒドロキシル基の変換、その後のハロゲン化試薬との反応が、推奨される経路である。例えば、Larock、Comprehensive Organic Transformations(VCH、New York、1989)、360頁を参照のこと。PClもまた、SFと類似の様式で使用され、アルデヒドもしくはケトンからgem−二フッ化物を形成し得る。
【0064】
(B.生物学的活性)
上記のように、トリプトライドの種々の誘導体およびアナログが当該分野で公知であり、そして、その多くが治療上有用である。これらの化合物は、しばしば、薬物動態学または生体分布のような領域において、プロドラッグとしてのその活性および/または脂溶性もしくは水溶性の変化によって、ネイティブなトリプトライドに関して利益を提供する。しかし、一般に、このような誘導体およびアナログの生物学的活性自体は、ネイティブなトリプトライドよりも劣ることが見出されている。
【0065】
特に、当該分野において、14位(好ましくは14β位)の水素供与基の存在が、トリプトライド誘導体において生物活性を維持するために重要であると一般に考えられている。例えば、本明細書中の図3A〜Bおよび4A〜Bの比較データを参照のこと。図3Aおよび4Aに示されるように、C14にα−ヒドロキシ立体化学を有する一方で、免疫抑制活性およびアポトーシス活性を有するエピトリプトライドが、トリプトライドよりも有意に活性が劣っていた(免疫抑制アッセイにおいて、約30倍低く、アポトーシスアッセイにおいて25倍低かった)。C14において、14β立体化学および電気陰性基を有するが、水素供与基を有さない化合物(すなわち、14β−(メチルチオ)メチルトリプトライド)において、トリプトライドと比較して、生物活性の大きな減少が見られた(図3および4B)(免疫抑制アッセイにおいてトリプトライドの約60倍の効力の低下、アポトーシスアッセイにおいて40倍の効力の低下)。
【0066】
従って、本発明の14−デオキシ−14α−フルオロ化合物(PG763)の非常に高い生物活性は、当該分野の水準からは意外である。なぜなら、この化合物は、14位に水素供与基を欠くからである。図1〜2に示されるように、細胞毒性およびIL−2阻害を評価するアッセイにおけるPG763の活性は、トリプトライドのものとほぼ等価であった。
【0067】
従って、14−デオキシ−14α−フルオロ化合物は、本明細書中に開示される構造Iの特に好ましい実施形態である。特定の実施形態において、この化合物は、PG763である。
【0068】
(II.治療用組成物)
本発明のトリプトライド誘導体を含有する処方物は、錠剤、カプセル、散剤、徐放性処方物、溶液、懸濁液、エマルジョン、軟膏、ローションまたはエアロゾルのような、固形、半固形、凍結乾燥粉末または液体投薬形態の形態を取り得、好ましくは、正確な投薬量の単純な投与に適切な単位投与形態であり得る。この組成物は、代表的には、従来の薬学的キャリアまたは賦形剤を含み、そして、さらに、他の薬剤、キャリアまたはアジュバントを含み得る。
【0069】
好ましくは、この組成物は、約0.5重量%〜75重量%の本発明の化合物であり、残りは、適切な薬学的賦形剤から構成される。経口投与について、このような賦形剤としては、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどの製薬等級が挙げられる。所望される場合、この組成物はまた、湿潤剤、乳化剤または緩衝剤のような、微量の非毒性の補助物質を含み得る。
【0070】
組成物は、例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射または筋肉内注射によって、経口的に、経皮的に、または非経口的に被験体に投与され得る。経口用液体調製物における用途について、組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョンまたはシロップとして調製され得、液体形態、または水もしくは通常の生理食塩水中での水和に適切な乾燥形態のいずれかで供給される。非経口投与について、非経口投与のための注射可能組成物は、代表的には、滅菌生理学的塩溶液のような適切な静脈内溶液内にトリプトライド誘導体を含む。
【0071】
液体組成物は、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、生理食塩水溶液、デキストロース水溶液、グリセロールまたはエタノール)中にトリプトライド誘導体(約0.5%〜約20%)および任意の薬学的アジュバントを溶解または分散させて、液体または懸濁液を形成することによって調製され得る。
【0072】
化合物はまた、固体または液体のいずれかの、好ましくは吸入可能なサイズのエアロゾル粒子の形態で、吸入により投与され得る。このような粒子は、吸入されると口および咽頭を通り、気管支および肺の肺胞へと通過するのに十分小さい。一般に、約1〜10ミクロンのサイズ、好ましくは、約5ミクロン未満のサイズの範囲の粒子が、吸入可能である。吸入用の液体組成物は、水性キャリア(例えば、滅菌の発熱物質を含まない生理食塩水溶液または滅菌の発熱物質を含まない水)中に分散された活性因子を含む。所望される場合、この組成物は、組成物を噴霧し、エアロゾルを形成することを補助するための噴霧剤と混合され得る。
【0073】
このような投薬形態を調製するための方法は、当業者に公知であるか、または、当業者に明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、Williams & Wilkins,1995)を参照のこと。投与される組成物は、被験体において免疫抑制、または、標的化した細胞におけるアポトーシスに影響を及ぼすための有効量で、選択された化合物の量を含む。
【0074】
例えば、Panchagnulaら(2000)に記載されるように、経口バイオアベイラビリティを含む、薬剤の分配係数またはlogPは、種々の投薬経路についてのその適合性に影響を及ぼし得る。1つ以上のヒドロキシル基のフッ素での置換によって、本明細書中に記載される化合物は、親化合物であるトリプトライドよりも高い理論上のlogP値を有し、これらの化合物を経口のアベイラビリティについてのより良い候補にすることが期待される。
【0075】
(III.免疫調節処置および抗炎症処置)
図2に示されるように、構造Iの化合物14−デオキシ−14−α−フルオロ−トリプトライド(PG763と命名)は、用量依存性の様式で、トリプトライドを使用する同様のアッセイにおける濃度と匹敵する濃度において、Jurkat細胞におけるIL−2産生を阻害した(実施例4を参照のこと)。従って、本発明は、例えば、移植手順または自己免疫疾患の処置の補助として、免疫抑制剤としての本発明の化合物の使用を含む。
【0076】
免疫調節の異常は、広範種々の自己免疫性疾患および慢性炎症性疾患(全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、I型およびII型糖尿病、炎症性腸疾患、胆汁性肝硬変、ブドウ膜炎、多発性硬化症、ならびにクローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、魚鱗癬、グレーブス眼症および喘息のような他の障害を含む)において存在することが示されている。これらの状態の各々の根底にある病理は極めて異なり得るが、これらは共通して、種々の自己抗原、および自己反応性のリンパ球の出現を有する。このような自己反応性は、部分的に、正常な免疫系が機能する恒常性制御の喪失に起因し得る。
【0077】
同様に、骨髄移植、または、成熟なリンパ球を含むドナー組織源に由来する造血幹細胞の他の移植後に、その移されたリンパ球が、宿主組織抗原を外来であると認識する。これらの細胞は、活性型になり、生命を脅かし得る攻撃を宿主に与える(対宿主性移植片応答)。さらに、臓器移植の後、宿主のリンパ球は、臓器移植片の外来組織抗原を認識し、移植片の損傷および拒絶を引き起こす、細胞媒介性免疫応答および抗体媒介性免疫応答(対移植片性宿主応答)を起こす。
【0078】
自己免疫または拒絶反応の1つの結果は、炎症性細胞により引き起こされる組織の破壊であり、これらの放出するメディエーターである。NSAIDのような抗炎症剤は、主に、これらのメディエーターの効果または分泌をブロックすることによって機能するが、疾患の免疫の基礎は変更しない。一方で、シクロホスファミドのような細胞傷害性剤は、正常な応答および自己免疫応答の両方を遮断する、非特異的な様式で機能する。実際、このような非特異的な免疫抑制剤で処置された患者は、自己免疫疾患に由来するような感染に屈する傾向がある。
【0079】
本発明の組成物は、自己免疫疾患を処置するか、移植拒絶を防止するか、または、対宿主性移植片病(GVHD)を防止することにおいてのように、トリプトライドおよびそのプロドラッグ、ならびに他の誘導体が、証明された効果を有する用途(例えば、免疫抑制療法)において有用である。例えば、共有に係る、米国特許第6,150,539号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。トリプトライドおよび本発明の誘導体はまた、外傷性炎症および男性の受精能の減少のような他の炎症性状態の処置に有用である。
【0080】
この組成物は、不適合性のヒトドナーからの固形臓器移植、組織移植片、または細胞移植の拒絶を阻害し、従って、移植片の生存および機能、ならびにレシピエントの生存を延長するのに有用である。この用途としては、固形臓器移植(例えば、心臓、腎臓および肝臓)、組織移植片(例えば、皮膚、腸、膵臓、性腺、骨および軟骨)、および細胞移植(例えば、膵臓、脳および神経組織、筋肉、皮膚、骨、軟骨および肝臓に由来する細胞)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
この組成物はまた、異種移植片(種族間)の拒絶の阻害、すなわち、天然の状態でも、ヒトの遺伝子、RNA、タンパク質、ペプチドもしくは他の非天然の異種分子を発現するように生体工学的操作(一般に遺伝子操作)されていても、その動物の天然の遺伝子、RNA、タンパク質、ペプチドもしくは他の通常発現される分子の発現を欠くように生物工学的操作されていても、非ヒト動物に由来する固形臓器移植、組織移植片または細胞移植の拒絶の防止に有用である。本発明はまた、このような非ヒト動物に由来する固形臓器移植、組織移植片または細胞移植の生存を延長するための、上記のような組成物の使用を包含する。
【0082】
また、自己免疫疾患、あるいはアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、グレーブス病、ギランバレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、慢性関節リウマチおよびブドウ膜炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、橋本甲状腺炎、アレルギー性脳脊髄炎、子宮体腎炎および種々のアレルギーのような自己免疫性の徴候を有する疾患の処置の方法が含まれる。
【0083】
さらなる用途としては、以下の疾患の処置および予防が挙げられ得る:炎症性皮膚疾患および過剰増殖性皮膚疾患、ならびに、免疫媒介性疾病の皮膚徴候(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、蕁麻疹、皮膚好酸球増加症、座瘡、および円形脱毛症);種々の眼疾患(例えば、結膜炎、ブドウ膜炎、角膜炎およびサルコイドーシス);粘膜および血管の炎症(例えば、胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症により生じる脈管損傷、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患および壊死性腸炎);腸の炎症/アレルギー(例えば、セリアック病および潰瘍性大腸炎);腎疾患(例えば、間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群および糖尿病性腎症);造血性疾患(例えば、特発性血小板減少性紫斑病および自己免疫性溶血性貧血);皮膚疾患(例えば、皮膚筋炎および皮膚T細胞リンパ腫);循環疾患(例えば、動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症);腎疾患(例えば、虚血性急性腎不全および慢性腎不全);ならびにベーチェット病。
【0084】
本発明の組成物および方法はまた、例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息および塵埃喘息(特に、慢性もしくは難知性喘息(例えば、遅発性喘息および気道応答性亢進))のような、内因性および外因性の両方の徴候の喘息のような炎症性状態の処置に有用である。この組成物および方法はまた、他の炎症性状態(外傷性炎症、ライム病における炎症、慢性気管支炎(慢性感染性肺疾患)、慢性副鼻腔炎、敗血症関連の急性呼吸困難症候群、および肺サルコイドーシスが挙げられる)の処置にも有用であり得る。喘息のような呼吸器の状態の処置について、この組成物は、好ましくは、吸入を介して投与されるが、任意の従来の投与経路が有用であり得る。
【0085】
自己免疫状態の処置において、患者は、定期的な基礎(例えば、1週あたり1〜2回)に基づいて、症状を軽減し、患者の快適さを改善するのに十分な投薬レベルで組成物を与えられる。慢性関節リウマチの処置について、特に、この組成物は、静脈内注射によってか、または、冒された関節内への直接注射によって投与され得る。患者は、患者における疾患の症状の発症後、少なくとも24時間の繰り返し間隔で、数週間にわたって処置され得る。投与される用量は、好ましくは、1日あたり、患者の体重1kgあたり、1〜25mgの範囲であり、より低い量が、非経口投与には好ましく、より高い量が、経口投与に好ましい。最適な投薬量は、当該分野で公知の方法に従って、慣用的な実験により決定され得る。
【0086】
移植拒絶の治療について、この方法は、心臓、腎臓、肝臓、細胞および骨髄の移植の拒絶の処置について特に意図され、そしてまた、GVHDの処置においても使用され得る。この処置は代表的には、外科的移植手順の直前または直後のいずれかに、手術に際して開始され、急性の移植拒絶の処置のために、少なくとも数週間の期間にわたって、毎日投薬のレジメンで継続される。処置期間の間に、患者は、例えば、アレルギー性リンパ球の関与する混合型リンパ球反応によってか、または、移植された組織の生検を採取することによって、免疫抑制レベルについて定期的に試験され得る。
【0087】
さらに、この組成物は、移植片拒絶の予防、または、遅発性移植片拒絶の急性発症の処置に対して慢性的に投与され得る。上記のように、投与される用量は、好ましくは、1日当たり、患者の体重1kgあたり1〜25mgであり、より低い量が非経口投与に好ましく、より高い量が、経口投与に好ましい。この用量は、患者の応答、処置の期間、患者の感染に抵抗する能力に依存して、適切に増加または減少され得る。
【0088】
レシピエントへの、適合したか、または非適合の骨髄、脾臓細胞、胎児組織、臍帯血、または、動員されたかもしくは他の方法で回収された幹細胞への移植から生じた、対宿主移植片病の処置または予防において、用量は、好ましくは、1日あたり、体重1kgあたり、0.25〜2mgの範囲であり、好ましくは、0.5〜1mg/kg/日で、経口または非経口で与えられる。
【0089】
また、構造Iの化合物および1つ以上の従来の免疫抑制剤を含む併用療法も、本発明の範囲内である。本発明の範囲内のこれらの免疫抑制剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:IMUREKTM(アザチオプリンナトリウム)、ブレキナルナトリウム(brequinar sodium)、SPANIDINTM(ガスペリマス三塩酸塩(gusperimus trihydrochloride)、デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin)としてもまた公知)、ミゾリビン(mizoribine)(ブレジニン(bredinin)としてもまた公知)、CELLCEPTTM(ミコフェノール酸モフェチル)、NEORALTM(Cyclosporin A;商標SANDIMMUNETMの下で、異なる処方物としても市販されている)、PROGRAFTM(タクロリムス、FK−506としても公知)、RAPIMMUNETM(シロリムス、ラパマイシンとしても公知)、レフルノミド(HWA−486としても公知)、ZENAPAXTM、糖質コルチコイド(例えば、プレドニゾロンおよびその誘導体)、抗体(例えば、オルトクローン(orthoclone)(OKT3))、ならびに抗胸腺細胞グロブリン(例えば、胸腺グロブリン)。この化合物は、上記のように免疫抑制治療のための別の免疫抑制薬と同時に投与される場合、増強剤として有用である。上記のような従来の免疫抑制薬は、従って、その化合物が単独で投与される場合よりも実質的に少ない量(例えば、標準的な用量の20%〜50%)で投与され得る。あるいは、本発明の化合物および免疫抑制薬は、得られる免疫抑制が、薬物と本発明の化合物を単独で使用した場合に得られる効果の合計から予測または得られるものよりも大きくなるような量で投与される。代表的には、免疫抑制薬および増強剤は、少なくとも2週間の期間にわたって、一定間隔で投与される。
【0090】
本発明の組成物はまた、従来の抗炎症性薬物と組合せて投与され得、ここで、この薬物、または投与される薬物の量は、それ自体では、炎症の適切な抑制または阻害を誘導するのに効果がない。
【0091】
インビボにおける化合物の免疫抑制活性は、当該分野で公知の確立された動物モデルの使用により評価され得る。このようなアッセイは、免疫抑制化合物の相対効率を評価し、そして、免疫抑制治療についての適切な投薬量を見積もるために使用され得る。これらのアッセイとしては、例えば、OnoおよびLindsey(1969)により記載された同種移植のための十分に特徴付けられたラットモデル(このモデルにおいて、移植された心臓が、同種のレシピエント動物の腹部の大きな血管に付着し、この移植された心臓の生存度は、レシピエント動物において拍動する心臓の能力により測定される)が挙げられる。レシピエント動物が、異なる種である、異種移植モデルは、Wang(1991)およびMurase(1993)により記載される。GVHDに対する効率を評価するためのモデルは、親の脾臓細胞を用いた正常なFマウスの注射を含み;このマウスは、脾腫および免疫抑制により特徴付けられるGVHD症候群を発症する(Korngold,1978;Gleichmann,1984)。単一細胞の懸濁物は、個々の脾臓から調製され、そして、マイクロウェルの培養物が、コンカナバリンAの存在下および非存在下で確立されて、マイトジェンの応答性の程度を評価する。
【0092】
(IV.抗癌処置)
図1に示されるように、構造Iの化合物、14−デオキシ−14−α−フルオロ−トリプトライド(PG763と命名)は、トリプトライドを使用する同様のアッセイにおける濃度に匹敵する濃度において、Jurkat細胞に対して用量依存性の様式で細胞傷害性であった(実施例2を参照のこと)。従って、本発明は、特に癌を処置するための、細胞傷害剤としての本発明の化合物の用途を含む。本明細書中で使用される場合、「癌」とは、哺乳動物(特にヒト)において見出される、あらゆる型の癌もしくは新生物もしくは悪性腫瘍(白血病、肉腫、癌腫および黒色腫を含む)をいう。
【0093】
用語「白血病」とは、広く、血液形成器官の進行性かつ悪性の疾患をいい、そして一般には、血液および骨髄における白血球およびその前駆体の変形した増殖および発生により特徴付けられる。用語「肉腫」は一般に、胚性結合組織様の物質から構成され、そして一般には、原線維内に埋め込まれた密に詰まった細胞または均質な物質から構成される腫瘍をいう。用語「黒色腫」は、皮膚および他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味するために用いられる。用語「癌腫」は、周囲組織に浸潤し、そして、転移を生じる傾向がある上皮細胞から構成される、悪性新生物をいう。
【0094】
例えば、生殖組織(例えば、セルトリ細胞、生殖細胞、発生途上もしくはより成熟した精原細胞、精子細胞または精母細胞、ならびに栄養細胞、卵巣の生殖細胞および他の細胞)、リンパ系もしくは免疫系(例えば、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫)、造血系および上皮(例えば、皮膚、悪性黒色腫および消化管を含む)、固形器官、神経系(例えば、神経膠腫(Y.X.Zhouら、2002を参照のこと))、ならびに骨格筋組織に由来する細胞を含む癌が含まれる。化合物は、種々の癌細胞型の処置に使用され得、これらの癌細胞型としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:脳腫瘍(髄芽細胞腫を含む)、頭頸部腫瘍、胸部腫瘍、結腸腫瘍、小細胞肺腫瘍、大細胞肺腫瘍、甲状腺腫瘍、精巣腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、膵臓腫瘍、食道(esophogeal)腫瘍、胃腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸部腫瘍、またはリンパ腫の腫瘍。胸部腫瘍、結腸腫瘍、肺腫瘍および前立腺腫瘍の処置が、特に意図される。
【0095】
この組成物は、上記のような、任意の従来の投与経路によって、癌および/または白血病に冒された患者に投与され得る。この方法は、腫瘍の増殖を遅延し、腫瘍の増殖を予防し、腫瘍の部分的な退行を誘導し、そして、完全な消失の時点まで腫瘍の完全な退行を誘導することに有用である。この方法はまた、固形腫瘍に由来する転移の増殖の予防に有用である。
【0096】
本発明の組成物は、単独の治療として、または、被験体において抗癌効果を有するようには設計されていない他の支持的もしくは治療的処置と共に投与され得る。この方法はまた、1つ以上の従来の抗癌薬物または生物タンパク質製剤と組合せて、被験体において所望の抗癌効果を有するのに十分な量で、本発明の組成物を投与する工程を包含し、この方法において、その薬物または製剤の量は、それ自体では、癌の増殖の適切な抑制を誘導する効果がない。このような抗癌薬としては、アクチノマイシンD、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、イリノテカン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、パクリタキセル、タキソテール、テニポシド、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが挙げられる。抗癌生物タンパク質製剤としては、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、他のTNF関連もしくはTRAIL関連リガンドおよび因子、インターフェロン、インターロイキン−2、他のインターロイキン、他のサイトカイン、ケモカインおよび因子、腫瘍関連分子もしくはレセプターに対する抗体(例えば、抗HER2抗体)、ならびにこれらの因子と反応するか、またはこれらの因子に結合する因子(例えば、レセプターのTNFスーパーファミリーのメンバー、他のレセプター、レセプターアンタゴニスト、およびこれらの因子に対する特異性を有する抗体)が挙げられる。
【0097】
特定の組成物のインビボにおける抗腫瘍活性は、例えば、Fidlerら、米国特許第6,620,843号に記載されるような確立された動物モデルを使用することによって評価され得る。臨床的な用量およびレジメンは、疾患の重篤度、および患者の全身状態のような因子に基づいて、医師に公知の方法に従って決定される。
【0098】
(V.他の適応症)
本発明の化合物はまた、特定のCNS疾患の処置においても使用され得る。グルタミン酸は、種々の神経疾患および精神疾患の病理における重要な役割を含む、多数の生理学的機能を果たす。グルタミン酸の興奮毒性および神経毒性は、低酸素症、虚血および外傷、ならびに、慢性の神経変性疾患もしくは神経代謝疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病に関与している。トリプトライドの報告された神経保護作用(特に、グルタミン酸誘導性の細胞死からの保護(Q.Heら、2003;X.Wangら、2003))の点から、本発明の化合物は、グルタミン酸の神経毒性作用に拮抗すると考えられ、従って、このような疾患のための新規治療であり得る。
【0099】
再発におけるMS患者からの最近の証拠により、脳におけるグルタミン酸恒常性の変更が示唆される。MS患者において生じる神経毒性事象は、希突起神経膠細胞および神経細胞の死の原因であり得る。本発明の化合物を用いる処置により、グルタミン酸レセプター媒介性の興奮毒性に拮抗することは、MS患者における治療適応を有し得る。他のCNS疾患(例えば、ギランバレー症候群、メニエール病、多発性神経炎(polyneuritis)、多発性神経炎(multiple neuritis)、単発神経炎および神経根障害)がまた、本発明の化合物を用いて処置され得る。
【0100】
本発明の化合物はまた、特定の肺疾患の処置において使用され得る。特発性肺線維症(PF)は、病因が不明な進行性の間質性肺疾患である。PFは、肺の間質における細胞内マトリクスおよびコラーゲンの過度の堆積、ならびに、炎症および線維症の結果としての瘢痕組織による肺胞の漸進的な置換により特徴付けられる。疾患が進行するにつれ、瘢痕組織の増加が、肺から血流へと酸素を運ぶ能力に干渉する。トリプトライドの14−スクシンイミドエステルは、ブレオマイシン誘導性のPFをブロックすると報告されている(G.Krishnaら、2001)。従って、本発明の化合物は、PFの処置に有用であり得る。他の呼吸器疾患(例えば、サルコイドーシス、肺線維症および特発性間質性肺炎)の処置がまた考えられる。
【0101】
肺に関し、本発明の化合物により処置可能であると考えられる他の疾患としては、重症急性呼吸器症候群(SARS)および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が挙げられる。特に、SARSに関して、疾患の進行のピークより前のウイルス含量(SARS−CoV)の減少、および鉱質コルチコイド処置の有用性は、以下に示されるように、SARSによる多くの重症かつ生命を脅かす効果の発症が、ウイルス自体の効果ではなく、感染に対する身体の過剰な反応(免疫機能亢進)から生じ得ることを示唆する。(同時継続中であり、共有に係る米国仮特許出願番号60/483,335(本明細書中に参考として援用される)をまた参照のこと)。コルチコステロイドによる処置は、SARS患者において、免疫機能亢進段階を特徴付け得るサイトカインの大量放出を抑制するために、次の段階において肺疾患の進行を停止することを期待して、使用されている。コルチコステロイドによる処置は、SARSのいくつかの主要な症状の減少において、良好な臨床結果を生じている。しかし、いくつかの処置に関連する副作用が存在し、そして、より選択的な免疫抑制剤および/または抗炎症剤に対する明らかな必要性が存在する。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、本発明を例示することが意図されるが、決して、本発明を限定しない。
【0103】
(実施例1.14−デオキシ−14α−フルオロトリプトライドの調製)
【0104】
【化15】

0℃において、ジクロロメタン(1.0ml)中のPG490(トリプトライド、17.3mg、0.048mmol)の溶液に、N下で、(ジエチルアミノ)三フッ化硫黄(DAST、100μl、0.763mmol)を添加した。この反応混合物を0℃にて2時間撹拌し、次いで、飽和NaHCO溶液(0.8ml)を添加した。この反応混合物を2mlのジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。所望の生成物(PG763)を定量的な収率で得た。
分析用TLC Rf=0.78(酢酸エチル/ヘキサン/メタノール 1:1:0.1)。IR(KBr):3031.0,2961.2,2942.4,2873.8,1764.6,1680.9,1449.3,1438.3,1172.2,1098.1,1074.5,1057.0,1047.1,1034.2,1018.2,1005.6,987.3,972.3,923.9,909.0,743.6,586.0,566.0,539.8,527.6cm−1H NMR(300MHz,CDCl):δ=5.16(d,1H,14−CH),4.70(q,2H,19−CH),3.80(d,1H,11−CH),3.73(d,1H,7−CH),3.50(t,1H,12−CH),2.70(m,1H,5−CH),2.34(d,1H,2−CHb),2.27−2.02(m,3H,6−CHb,2−CHaおよび15−CH),1.95(m,1H,6−CHa),1.56(dd,1H,1−CHb),1.24(m,1H,1−CHa),1.11(s,3H,20−CH),1.10(d,3H,17−CH),0.91(d,3H,16−CH)ppm。
【0105】
(実施例2.細胞傷害性(MTT)アッセイ)
試験化合物を、20mMの濃度でDMSO中に溶解した。10%ウシ胎仔血清(HyClone Laboratories,Logan,UT)を補充したRPMI1640培地(GIBCO,Rockville,MD)中でさらに希釈した。
【0106】
化合物の細胞傷害性を、Cell Proliferation Kit I(#1 465 007,Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)を使用して、標準的なMTTアッセイにおいて決定した。簡単に述べると、ヒトT細胞リンパ腫(Jurkat)細胞(4×10細胞/ウェル)を、試験化合物の連続3倍希釈の存在下、もしくは、各希釈点における試験サンプルの希釈と同じ濃度のDMSOを含む培地中、96ウェル組織培養プレート内で、24時間培養した。次いで、培養物に、10μl/ウェルのMTT試薬を4時間補充し、次いで、さらに16時間、0.1ml/ウェルの可溶化試薬を補充した。570nmにおける吸光度(OD570)を、ThermoScanマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Menlo Park,CA)にて測定した。このデータは、化合物の濃度に対するOD570値として表される。PG490(トリプトライド)および培地コントロールと比較した、PG763(14−デオキシ−14−α−フルオロ−トリプトライド)についての結果を図1に示す。
【0107】
(実施例3:アネキシンVのアポトーシスアッセイ)
試験サンプルを、完全組織培養培地(RPMI1640培地+5% 熱不活性化ウシ胎仔血清、1% HEPES、1% ペニシリン/ストレプトマイシン、1% グルタミン)中、1mMに希釈した。アリコートを、マイクロ培養プレートに入れ、最終濃度が、半対数増分で2〜6,000nMの範囲に入るように、連続希釈を調製した。JurkatヒトTリンパ腫細胞株(American Type Culture Collection,Manassas,VAから入手した#TIB−152)の指数関数的に増殖させた培養物から細胞を回収し、遠心分離により1回洗浄し、完全組織培養培地中に再懸濁し、そしてさらに、1×10細胞/mlの濃度まで希釈した。100μl容量の細胞(1×10細胞)を100μlの希釈した化合物を含むウェルに添加し、このプレートを5% COインキュベーター内で37℃にてインキュベートした。
【0108】
24時間後、このプレートを遠心分離して細胞をペレット化し、そして、この細胞を、PBS中2% 熱不活性化ウシ胎仔血清で2回洗浄した。アネキシンVアッセイ手順(BioVision,Inc.,Mountain View,CA)に従って、各ウェルに、500μlの結合緩衝液を添加した。続いて、5μlのアネキシンVのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合体(BioVision,Inc.)を各ウェルに添加し、その後、暗所にて5分間インキュベートした。いくつかのアッセイにおいて、ヨウ化プロピジウム(BioVision,Inc.)をこの段階で添加して、壊死細胞を確認した。ウェルの内容物を、試験管に別個に移し、FACSCaliburフローサイトメーター(BD Immunocytometry Systems,San Jose,CA)を使用してアポトーシスを分析した。アネキシンV結合に対してポジティブな細胞をアポトーシスであるとみなし、このデータを、アポトーシス細胞の百分率として計算した。
【0109】
データを、アポトーシス細胞の百分率に対する化合物の濃度としてプロットした。PG490(トリプトライド)と比較した、2つの14置換トリプトライド、14−α−ヒドロキシトリプトライド(エピトリプトライドとも呼ばれる;PG524と命名)および14−β−(メチルチオ)メチルトリプトライド(PG691と命名)についての比較データを、図3A〜Bに示す。
【0110】
(実施例4:IL−2産生アッセイ)
試験サンプルを、完全組織培養培地中1mMに希釈した。アリコートを、抗CD3抗体(Jurkat細胞によるIL−2の産生を刺激するために使用される)でコーティングしたマイクロ培養プレートに入れ、最終濃度が、対数増分で0.001〜10,000nMの範囲に入るように、連続希釈を調製した。JurkatヒトT細胞株(American Type Culture Collection,Manassas,VAから入手した#TIB−152)の指数関数的に増殖させた培養物から細胞を回収し、遠心分離により1回洗浄し、完全組織培養培地中に再懸濁し、そして、2×10細胞/mlの濃度まで希釈した。50μl容量のJurkat細胞(1×10細胞)を100μlの希釈した化合物を含むウェルに添加し、各ウェルに50μlのPMA(10ng/ml)を添加し、このプレートを5% COインキュベーター内で37℃にてインキュベートした。24時間後、プレートを遠心分離して細胞をペレット化し、150μlの上清を各ウェルから回収し、そしてこのサンプルを−20℃にて保存した。保存した上清を、Luminex 100(Luminex Corporation,Austin,TX)、抗IL−2捕捉抗体に結合したLuminexミクロスフェア、および蛍光色素が結合した抗IL−2検出抗体を用いて、ヒトIL−2濃度について分析した。データを、IL−2のpg/mlとして表した。
【0111】
データをIL−2濃度に対する化合物の濃度としてプロットした。PG490(トリプトライド)および溶媒コントロールと比較した、PG763(14−デオキシ−14−α−フルオロ−トリプトライド)についての結果を、図2に示す。PG490(トリプトライド)と比較した、他の14−置換トリプトライドである14−α−ヒドロキシトリプトライド(エピトリプトライドとも呼ばれる;PG524と命名)および14−β−(メチルチオ)メチルトリプトライド(PG691と命名)についての比較データを、図4A〜Bに示す。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、トリプトライド(PG490と称される)と比較した、本発明の化合物14−デオキシ−14−α−フルオロ−トリプトライド(PG763と称される)のJurkat細胞における細胞毒性効果を示す(実施例2)。
【図2】図2は、トリプトライドと比較した、本発明の化合物(PG763)によるJurkat細胞におけるIL−2産生の阻害を示す(実施例4)。
【図3A】図3Aは、トリプトライドと比較した、比較化合物である14−α−ヒドロキシトリプトライド(また、エピトリプトライドとも呼ばれる;PG524と称される)および14−β−(メチルチオ)メチルトリプトライド(PG691と称される)によるJurkat細胞における用量依存的アポトーシス誘導を示す(実施例3)。
【図3B】図3Bは、トリプトライドと比較した、比較化合物である14−α−ヒドロキシトリプトライド(また、エピトリプトライドとも呼ばれる;PG524と称される)および14−β−(メチルチオ)メチルトリプトライド(PG691と称される)によるJurkat細胞における用量依存的アポトーシス誘導を示す(実施例3)。
【図4A】図4Aは、トリプトライドと比較した、比較化合物である14−α−ヒドロキシトリプトライド(また、エピトリプトライドとも呼ばれる)および14−β−(メチルチオ)メチルトリプトライドによるJurkat細胞におけるIL−2産生の阻害を示す(実施例4)。
【図4B】図4Bは、トリプトライドと比較した、比較化合物である14−α−ヒドロキシトリプトライド(また、エピトリプトライドとも呼ばれる)および14−β−(メチルチオ)メチルトリプトライドによるJurkat細胞におけるIL−2産生の阻害を示す(実施例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造I:
【化1】

を有する化合物であって、ここで:
CRは、CHOH、C=O、CHF、CFおよびC(CF)OHより選択され;
CRおよびCR13は、CH、COHおよびCFより選択され;
CR、CR10およびCR1112は、CH、CHOH、C=O、CHFおよびCFより選択され;そして
CRは、CH、CHOH、C=O、COOH、CHF、CHFおよびCFより選択され;
その結果、R〜R13のうちの少なくとも一つは、フッ素を含み;
CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの2つ以下は、フッ素もしくは酸素を含み;
そして、CRがCHOHである場合、CRは、CHFではない、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、CRおよびCR10の各々が、CH、CHOH(β)、C=O、CHF(α)およびCFより独立して選択される、化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの一つ以下が、フッ素もしくは酸素を含む、化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物であって、CR、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112のうちの正確に一つが、フッ素を含む、化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物であって、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112のうちの正確に一つが、フッ素を含む、化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物であって、CRがフッ素を含む、化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物であって、CRがCFである、化合物。
【請求項8】
請求項6に記載の化合物であって、CRがCHF(α)である、化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、R〜R13のうちの各々が、水素である、化合物。
【請求項10】
免疫抑制をもたらす方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なビヒクル中の有効量の化合物を、そのような処置を必要としている被験体に投与する工程を包含し、該化合物が、構造I:
【化2】

を有し、ここで:
CRは、CHOH、C=O、CHF、CFおよびC(CF)OHより選択され;
CRおよびCR13は、CH、COHおよびCFより選択され;
CR、CR10およびCR1112は、CH、CHOH、C=O、CHFおよびCFより選択され;そして
CRは、CH、CHOH、C=O、COOH、CHF、CHFおよびCFより選択され;
その結果、R〜R13のうちの少なくとも一つは、フッ素を含み;
CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの2つ以下は、フッ素もしくは酸素を含み;
そして、CRがCHOHである場合、CRは、CHFではない、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、CRおよびCR10の各々が、CH、CHOH(β)、C=O、CHF(α)およびCFより独立して選択される、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、CR、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112のうちの正確に一つが、フッ素を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、CRがフッ素を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、CRがCFである、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、CRがCHF(α)である、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、R〜R13のうちの各々が、水素である、方法。
【請求項17】
細胞においてアポトーシスを誘導する方法であって、該方法が、有効量の化合物と該細胞とを接触させる工程を包含し、該化合物が、構造I:
【化3】

を有し、ここで:
CRは、CHOH、C=O、CHF、CFおよびC(CF)OHより選択され;
CRおよびCR13は、CH、COHおよびCFより選択され;
CR、CR10およびCR1112は、CH、CHOH、C=O、CHFおよびCFより選択され;そして
CRは、CH、CHOH、C=O、COOH、CHF、CHFおよびCFより選択され;
その結果、R〜R13のうちの少なくとも一つは、フッ素を含み;
CR、CR、CR、CR10、CR1112、およびCR13のうちの2つ以下は、フッ素もしくは酸素を含み;
そして、CRがCHOHである場合、CRは、CHFではない、
方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、CRおよびCR10の各々が、CH、CHOH(β)、C=O、CHF(α)およびCFより独立して選択される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、CR、CR、CR、CR、CR10、およびCR1112のうちの正確に一つが、フッ素を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、CRがフッ素を含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、CRがCFである、方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、CRがCHF(α)である、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、R〜R13のうちの各々が、水素である、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524581(P2007−524581A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503870(P2006−503870)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005612
【国際公開番号】WO2004/075853
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(501085821)ファーマジェネシス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】