免疫調節物質の同定方法及びシステム
抗炎症能力に関して、細菌、細菌により精製若しくは生成された産生物及び/又は他の細菌物質をスクリーニングするための方法並びにシステムが提示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2009年4月23日に出願され、“抗炎症性特性を有する細菌のためのハイスループットスクリーン”と題名を付された米国仮出願第61/172,101号(事件整理番号CIT−5354−P)の優先権を主張するものであり、その開示の全てを参照して本明細書に組み込む。
【0002】
政府機関の助成金の記述
国立衛生研究所から与えられた助成金第DK078938号に従って、アメリカ合衆国政府はこの発明において所定の権利を有する。
【0003】
本開示は、免疫調節物質、特に免疫調節微生物及び化合物の同定方法並びにシステムに関するものである。
【背景技術】
【0004】
免疫調節微生物及び化合物の同定は、特に興味が持たれている。ヒト消化管は、免疫システムの発達と機能とに大きな影響を有する非常に多くの微生物(腸内細菌叢として知られる)を宿している。哺乳類の消化管に生息する細菌の無数の種のうち、バクテロイデス門は最も豊富なグラム陰性菌の門である。
【0005】
特に、バクテロイデス・フラジリスは、免疫調節特性を有することが示されているヒト共生微生物である。特に、バクテロイデス・フラジリスの免疫調節特性は、該細菌による多糖類A(PSA)の産生に関連している。
【0006】
しかし、バクテロイデス・フラジリス(又は任意の共生細菌)が有益な微生物分子を免疫システムへ伝え、そして免疫調節特性を発揮するメカニズム及び/又は分子トリガーの同定は困難とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免疫調節性、特に抗炎症性特性を有する微生物及び関連する物質をスクリーニングする方法並びにシステムがここに提供される。特に、本明細書に提供されるのは、いくつかの実施形態において、バクテロイデス・フラジリスの免疫調節応答に匹敵する免疫調節応答を個体中に引き起こすことができる細菌物質の同定を可能にする方法及びシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様によれば、免疫調節能を有する細菌物質を同定することを目的として方法が記載される。前記方法は、候補細菌物質を、単独で、或いは、抗原提示細胞の存在下でT細胞と接触させることと、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17若しくはTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症性バイオマーカーの、少なくとも一つの発現を検出することとを含む。前記方法は、前記接触の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することを更に含む。
【0009】
第二の態様によれば、免疫調節能を有する細菌物質を同定することを目的として方法が記載される。前記方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、前記接触の後に前記抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。前記方法は、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17若しくはTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症バイオマーカーの、少なくとも一つの発現を検出することを更に含む。また、前記方法は、前記インキュベートの後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することを更に含む。
【0010】
他の態様によれば、動物において、免疫調節能を有する細菌物質を同定することを目的として方法が記載される。前記方法は、トランスジェニックマーカー非ヒト動物を、候補細菌物質で処理することを含み、前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物は、遺伝子的に修飾されて、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の標識化抗炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17又はTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの、少なくとも一つを発現する。前記方法は、前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカー、或いは、少なくとも一つの前記炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの、トランスジェニックマーカー非ヒト動物における発現を検出することと、前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することとを更に含む。
【0011】
別の態様によれば、細菌物質をスクリーニングするためのシステムが記載される。システムは、本明細書に記載された抗炎症性細菌物質を同定する方法における同時、組み合わせまたは連続使用のために、T細胞と、抗原提示細胞と、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性マーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17又はTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの検出するための試薬と、の少なくとも二つを備える。
【0012】
本明細書に記載された方法及びシステムは、本開示の解釈に応じて当業者により特定可能な、医学的、薬学的、獣医学的な用途、並びに、基礎生物学研究及び様々な用途に関連して使用されることができ、ここで、物質の免疫調節能、特に抗炎症性能を調査することが望ましい。
【0013】
開示についての一つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明において明らかにされている。他の特徴、目的、および利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【0014】
本明細書に取り込まれ、また本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示についての一つ以上の実施形態を示し、発明の詳細な説明及び実施例の部分と共に、本開示の原理および実装を説明するために役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1は、バクテロイデス・フラジリス由来の外膜小胞が、PSAを含むことを示している。図1Aは、EDL(高電子密度層)富化バクテロイデス・フラジリスについて透過型電子顕微鏡法により検出された、野生型バクテロイデス・フラジリスから産生されたOMV(WT−OMV)及びバクテロイデス・フラジリスΔPSAから産生されたOMV(ΔPSA−OMV)を示している。
【図1B】図1Bは、野生型細菌及びPSA−変異細菌からの全細胞(WC)及び外膜小胞(OMV)抽出物のイムノブロット分析を示している。
【図1C】図1Cは、抗PSA及び抗IgG−金コロイド複合体(5nm)で染色し、電子顕微鏡法により分析した精製OMVの免疫金法標識を示す。
【図1D】図1Dは、全細胞及びOMVからの莢膜多糖製剤の糖タンパク質染色を示す。
【図2A】図2は、OMVが、PSA依存的方法で、実験的大腸炎及び小腸炎から動物を保護していることを表す代表的な結果を示す。図2Aは、初期重量から屠殺した日(4日)までの減量として測定された、TNBS大腸炎の誘発(0日)後の動物グループにおける重量減を報告する図表を示す。全てのグループが少なくとも4頭の動物を含み、誤差棒は標準誤差(SEM)を示している。結果は三つの独立した試行を代表する。一元配置分散分析法によりp値は決定されている。*p<0.05;***p<0.001。
【図2B】図2Bは、切除直後の、媒体(EtOH)処理及びTNBSのグループ(n=4頭/グループ)からの未操作の大腸の画像と、長さの定量化(グラフ)を示す。誤差棒はSEMを示す。結果は、独立して実施された三つの混合実験から示される。p値は一元配置分散分析法により決定された。***p<0.001。NS(有意でない)。
【図2C】図2Cは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した、各処理グループの代表的な大腸の断面の画像を示す。
【図2D】図2Dは、標準得点システム(ONLINE METHODS)に従って盲検化病理学者(G.W.L)により指定された動物からの大腸炎スコアを示す(Scheiffele and Fuss. (2001) Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology. 1.19.1−15.19.14)。各記号は個々の動物を表す。結果は、独立して実施された三つの混合実験から示される。***p<0.001。NS:有意でない。
【図2E】図2Eは、全大腸から回収したRNAからのqRT−PCRによるサイトカイン転写分析を説明する図表を示す。誤差棒は、4頭/グループからのSEMを示している。結果は三つの独立した試行の代表である。
【図2F】図2Fは、精製した腸間膜リンパ節由来のCD4+T細胞から回収したRNAからのqRT−PCRによるサイトカイン転写分析を説明する図表を示す。誤差棒は、4頭/グループからのSEMを示している。結果は三つの独立した試行の代表である。
【図3A】図3は、PSAを含むOMVが、処理されたDCと共培養したT細胞からのIL−10産生及びFoxp3発現を誘導することを明らかにする結果を示す。図3Aは、DCによるOMV内部移行のフローサイトメトリー(FC)分析を示す。OMVは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識され、培養されたDCと共に様々な時間(図示のように)インキュベートされた。また、細胞は抗CD11cで染色された。百分率は、CD11C+OMV+集団を示す。
【図3B】図3Bは、WT−OMV及びΔPSA−OMVと共に様々な時間(図示のように)インキュベートされ、且つ、抗CD11c及び抗MHCIIで染色されたDCのFCプロットを示す。百分率は、CD11C+細胞中のMHCII+集団を示す。
【図3C】図3Cは、DC又はDC−T細胞共培養からの培養液上澄みのIL−10のELISA分析を示しており、ここで、DCは、OMVと18時間振動され、洗浄され、そして原発性CD4+T細胞とインキュベートされ、或いは、されなかった。上澄みは培養4日目に採取された。培養液試料は、OMVと振動されていないが、他の点では全く同じように処理されたDCを示す。抗CD3は、T細胞応答を増幅するためにいくつかの試料に加えられた。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、五つ以上の独立した試行を代表する。*p<0.05;**p<0.01。
【図3D】図3Dの左図は、IL−10−/−動物から分化したDCを含む以外は、図3Cと同様なELISA分析を示す。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、三つの独立した試行を代表する。*p<0.05。NS:有意でない。図3Dの右図は、TLR2−/−動物から分化したDCを含む以外は、図3Cと同様なELISA分析を示す。SEA:ブドウ球菌エンテロトキシンA。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、三つの独立した試行を代表する。*p<0.05。NS:有意でない。
【図3E】図3Eは、DCとの生体外での培養の後に精製したT細胞亜集団から得られたRNAのqRT−PCRにより決定された、IL−10(左図)及びFoxp3(右図)の転写濃度を示す。共培養は(c−e)のように作られ、4日目に、CD4+CD25+及びCD4+CD25−T細胞は磁器ビーズ分離で精製され(>95%純度)、そしてRNAはRNeasy miniキットを用いて抽出された。相対値はβ−アクチンに標準化した。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、三つの独立した試行を代表する。*p<0.05。***p<0.001。NS:有意でない。
【図3F】図3Fは、共培養が(c−e)のように作られたが、Foxp3−GFPマウス由来のCD4+T細胞を使用したことを示す。OMVで振動したDCとの4日間の培養の後に、細胞は抗CD4及びFCを用いたGFP発現により検出されたFoxp3で染色された。結果は、二つの独立した試行を代表する。
【図4A】図4は、PSA含有OMVによる、Tregの抑制機能の生体外発生を示す例示的な結果を表している。図4Aは、OMVで処理されたDCと4日間共培養した後の、CD4+T細胞亜集団によるIL−10発現のFCヒストグラムを示す。脾臓のCD4+T細胞はIL−10−GFPマウスから精製され、共培養の後に抗CD4及び抗CD25で染色され、そして、GFP発現によりIL−10発現が測定された。百分率は、CD4+CD25+及びCD4+CD25−亜集合のIL−10+集団を示す。結果は、三つの独立した試行を代表する。
【図4B】図4Bは、媒体(コントロール)、WT−OMV及びΔPSA−OMVで処理したDCで共培養した後の、精製されたCD4+CD25+T細胞による単純な応答細胞の生体外抑制を示す。細胞増殖は、CFSR希釈のFCにより測定された。Treg:Teffの比は示されており、百分率は全増殖細胞を示す。No TregはCD4+CD25−細胞のみである。結果は、二つの独立した試行を代表する。
【図4C】図4Cは、CD4+T細胞の、それぞれの増殖の最大時における百分率の定量化を示す(図4B中の1、2、3、4、5と同様に標識されている)。結果は、独立して実施された三つの混合実験から示される。*p<0.05。NS:有意でない。
【図5】図5は、野生型バクテロイデス・フラジリス及びPSA欠損変異バクテロイデス・フラジリスが、生体外培養中に同等のOMVを産出することを示す。各OMV製剤から回収された総タンパク質量は、収集時の培養液のOD600により標準化された。誤差棒はSEMを示している。結果は、独立して実施された十以上の混合実験から示される。p値はステューデントのt検定で決定された。NS:有意でない。
【図6】図6は、野生型バクテロイデス・フラジリスから精製した多数OMVがPSAを含むことを示している。精製されたOMV上のPSAの免疫金法標識は、試料の10領域(1μm×1μm)のランダム標本抽出で観測されたWT−OMVの60%以下がPSAに関連するが、観測されたΔPSA−OMVがPSAについて陽性に染色されていないことを示す(抗IgG−金を用いたWT−OMVの免疫金法標識は、標識の特異性のみを確認する)。
【図7】図7は、野生型バクテロイデス・フラジリス又はPSA欠損変異バクテロイデス・フラジリス由来のOMVが、タンパク質構成に有意差がないことを示す。プロテオーム質量分析法は、WT−OMVとΔPSA−OMVとの間で同定されたタンパク質の100%重複(各タンパク質について同定された一つ以上の特徴的なペプチド)を示す。全ての同定されたタンパク質の間で、我々は、それぞれのタンパク質について同定された特徴的なペプチドの番号に従い、相対的に大量のタンパク質の量を準定量的に比較した。それらの大部分は、独立して機能するような差異を示さない。誤差棒はSEMを示している。p値はステューデントのt検定で決定された。**p<0.01;*p<0.05;NS:有意でない。
【図8】図8は、アクチン重合が、DCによるOMVの取り込みに必要とされることを示している。サイトカラシンDで予め処理されたDCによるOMV内部移行のフローサイトメトリー分析である。OMVは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識され、培養されたDCと共に様々な時間で(図に示されている)インキュベートされる。細胞は抗CD11cで染色された。百分率はCD11C+OMV+集合を示す。
【図9】図9は、WT−OMV又はΔPSA−OMVが内部に取り込まれ、DCの細胞質に局在化されていることを示す。DCによるOMV(WT又はΔPSA)内部移行の蛍光顕微鏡写真である。OMVは、FITC(灰色矢印)で標識され、培養されたDCと二時間インキュベートされた。細胞は固定化され、細胞膜はコムギ胚芽凝集素(WGA)−テトラメチルローダミン(黒色矢印)を用いて染色された。スケールバー:7.5μm。
【図10】図10は、WT−OMV及びΔPSA−OMVが、DC活性化のための共刺激分子を増加させることを示している。WT−OMV及びΔPSA−OMVを用いて様々な時間で(図に示す)インキュベートされ、且つ、抗CD11c及び抗CD86で染色された、DCのFCプロットである。百分率はCD11c+の中のCD86+集合を示す。
【図11】図11は、本明細書に記載された実施形態における、バイオマーカーのPSA誘発発現を示す。各図表で示したデータは、各々の三つの独立した実験を代表する。色が薄い棒は、PBS処理されたマウスから誘導した細胞を示し、色が濃い棒は、PSA処理されたマウスから誘導した細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
方法およびシステムは、免疫調節細菌物質を同定するために適していることが記載されている。
【0017】
本明細書で使用される用語“免疫調節”は、炎症性応答のないことに関連付けられた状態を促進する能力を意味する。具体的な免疫調節特性は抗炎症性特性を含み、ここで、用語“抗炎症性”は、炎症を防ぐ若しくは低減する物質又は処理の特性を指す。
【0018】
本明細書で使用される用語“炎症”、“炎症性状態”又は“炎症性応答”は、病原菌、損傷細胞、又は刺激物質などの有害な刺激に対する、個体の維管束組織の複雑な生物学的応答を意味し、またサイトカイン、より具体的には炎症誘発性サイトカイン(すなわち、ミクログリアなどの活性化免疫細胞によって主に産生され、炎症性応答の増幅に伴われるサイトカイン)の分泌を含む。例示的な炎症誘発性サイトカインは、限定されないが、IL−1、IL−6、TNF−α、IL−17、IL−21、及びIL−23を含む。例示的な炎症は、急性炎症及び慢性炎症を含む。本明細書で使用される単語“急性炎症”は、血漿及び白血球による組織の浸潤に起因する、炎症の典型的兆候(腫れ、発赤、痛み、熱、および機能の喪失)を特徴とする短期的過程を意味する。急性炎症は、一般的に傷害性刺激が存在するかぎり発生し、そして刺激が、瘢痕化(線維症)によって除去され、壊滅され、又は遮断されると急性炎症が止む。本明細書で使用される単語“慢性炎症”は、同時発生性活動性炎症、組織破壊、及び修復の試みを特徴とする状態を意味する。慢性炎症は、上記の急性炎症の典型的兆候によって特徴付けられない。代わりに、慢性的に炎症を起こした組織は、単核免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、および形質細胞)の浸潤、組織破壊、並びに血管新生及び線維症を含む治療の試みにより特徴付けられる。
【0019】
本明細書で使用される用語“物質”とは、特定の又は明確な化学構造の物体を意味する。用語“細菌物質”とは、生きた細菌、死んだ細菌、及び特に加熱死菌、細菌抽出物、細菌由来の精製分子、細菌から精製された分子の組み合わせ、又は細菌から若しくは細菌由来の精製小胞から精製された一つの分子を若しくは分子の組み合わせを含む小胞などの細菌由来の物質を意味する。特に、細菌物質は、細菌の表面から放出される小胞であって、遠隔の標的細胞へ一連の積み荷分子を運ぶ膜外小胞により形成され得る。細菌物質は、同じ細菌から誘導した物質及び二つ以上の異なる細菌から誘導した物質を含む。
【0020】
本明細書で使用される用語“細菌”は、通常、長さ数マイクロメートルで、種々の形状を有している単細胞、原核細胞、微生物の大きなグループを意味する。特に、本開示の意味における細菌は、ヒトフローラの細菌、すなわち、ヒト組織の表面上並びに内部及び体液中、例えば、皮膚の深層、唾液中、口腔又は膣粘膜中及び消化管中に宿る微生物の集合を含む。細菌フローラは、腸フローラ(ヒト消化管において検出可能な細菌)、膣内フローラ(女性ヒトにおいて子宮から身体外側へつながる線維筋管路中において検出可能な細菌)及び皮膚フローラ(ヒト皮膚において検出可能な細菌)を含む。さらに、特に、本開示の意味における細菌とは、腸フローラの一つ以上のバクテロイデス門、特に、一つ以上のバクテロイデス属(ヒトと共生し、当業者によって識別可能である、グラム陰性の非芽胞形成嫌気性桿菌の属)により形成され得る。代表的なバクテロイデス属の細菌は、バクテロイデス・フラジリスである。
【0021】
本明細書に記載の方法及びシステムにおいて、細菌物質の免疫調節能は、炎症性バイオマーカーおよび/または抗炎症性バイオマーカーの検出により決定され得る。本明細書で使用される用語“バイオマーカー”は、細胞周期の段階、生物学的プロセス、並びに健康状態及び疾患状態のような、生物学的状態の指標として使用される物質または特徴を意味する。バイオマーカーの存在、欠如、減少、発現上昇は、特定の状態に関連しており、また特定の状態を表示している。特に、本明細書に使用される用語“炎症性バイオマーカー”は、炎症状態の存在を表示しており、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL-21、IL-22、IL−23、IL-17、TNFα、並びに当業者により同定可能な追加の細胞マーカー及びサイトカインを含むバイオマーカーを意味する。本明細書に使用される用語“抗炎症性バイオマーカー”は、炎症状態がないことを表示し、Foxp3、IL−10、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムB並びに当業者により同定可能な追加の細胞マーカー及びサイトカインを含むバイオマーカーを意味する。
【0022】
本明細書で使用される用語“トランスジェニックマーカー非ヒト動物”とは、自然に又は多くの遺伝子工学的操作のうちの任意の操作により移植された非天然の遺伝子材料を有する動物を指す。そのような非天然の遺伝子材料(又は導入遺伝子)は、“バイオマーカー”(本明細書で定義される)として作用し得、及び/又は非ヒト動物においてRNA若しくはタンパク質を産生する能力を保持し得る。
【0023】
一実施形態において、免疫調節細菌物質の同定は、単独で又は抗原提示細胞存在下でT細胞により、炎症性又は抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することにより実行される。
【0024】
本明細書で使用される用語“T細胞”は、当業者により同定可能な異なる細胞種を含む、リンパ球(白血球の一種)の亜群を意味する。本開示によるヘルパーT細胞は、エフェクターTh細胞(Th1、Th2、及びTh17など)とサプレッサーT細胞(Tregなど)とを含み、エフェクターTh細胞は即ち、ヘルパーT細胞を含む、他の白血球と刺激し又は相互作用するサイトカイン、タンパク質又はペプチドを分泌するヘルパー細胞であり、サプレッサーT細胞は即ち、免疫システムの活性を抑制し、それにより免疫システムの恒常性と自己抗原への耐性とを維持するT細胞である。
【0025】
本明細書で使用される用語“抗原提示細胞”とは、細胞表面上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を用いて外来抗原複合体を提示する細胞を意味する。特に、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞及び当業者により同定可能な追加の細胞を含む。
【0026】
一実施形態において、本明細書に記載される方法は、候補細菌物質を、単独で又は又は抗原提示細胞存在下でT細胞と、接触することを含む。一実施形態において、本明細書に記載される方法は、候補細菌物質が抗原提示細胞と接触し、該接触の後の、前記抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。
【0027】
本明細書で使用される用語“接触”又は“インキュベート”は、二つの項目の間の少なくとも一つの相互関係のある動作若しくは影響、又は相互関係のない動作若しくは影響が発揮されうるような状況の下に、一時的に与えられた二つの項目間で空間的関係の創造へ指向される動作を意味する。特に、インキュベートすることは、細菌物質と細胞との間で実行されることができ、細菌物質と細胞との間で直接的接触及び/若しくは直接的相互作用という結果になり、又は細菌物質の間接的作用の後に(例えば、細胞と直接的相互作用する他の物質の活性化又は修飾の後に)細胞の修飾という結果になる。
【0028】
インキュベートはまた、細菌物質の第1の細胞との接触の後に、第1の細胞と第2の細胞との間で実行され得、その結果、第1の細胞と第2の細胞との間の直接的接触及び/又は直接的相互作用の結果になり得、又は第1の細胞の間接的作用の後に(例えば、第2の細胞と直接的な相互作用するサイトカイン又は他の分子の分泌の後に)第2の細胞の修飾の結果になり得る。
【0029】
例示的な、細菌物質をT細胞又は抗原提示細胞と接触させることは、特異的な細胞及び特異的な細菌物質に依存し、本開示を読む当業者により同定可能である適当な条件下で、細菌物質を含有する溶液内において、一つ以上の細胞種を含む全試料を溶液槽により、生体外で実行され得る。さらなる例示的な、細菌物質と、T細胞又は抗原提示細胞との接触は、適した条件下で精製細胞の細胞培養液へ細菌物質を生体外で誘導することによって、及び個体(標識化炎症性バイオマーカー又は抗炎症性バイオマーカーを発現するために遺伝子的に修飾されているヒト以外の遺伝子移植の動物)を細菌物質を用いて生体内処理することによって、実行され得る。処理は、細菌物質を、局所投与又は全身投与することによって実行され得る。全身投与は、腸内投与(例えば、経口投与、胃栄養管による投与、十二指腸栄養管による投与、胃瘻造設、経腸栄養、および直腸投与)および非経口投与(例えば静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、膀胱内注入)を含む。局所投与は、限定されないが、経皮投与、吸入投与(例えば、喘息治療薬内に)、浣腸、点眼(例えば、結膜上に)、点耳、鼻腔内経路(例えば、うっ血除去点鼻薬)、及び膣内投与を含む。
【0030】
例示的な、抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることは、T細胞を含む細胞培養液と抗原提示細胞を含む細胞培養液とを生体外混合することにより、T細胞の培養液に精製抗原提示細胞を生体外で添加することにより、又は抗原提示細胞の培養液に精製T細胞を生体外で添加することにより実行され得る。さらなる例示的な、生体内でのT細胞と抗原提示細胞とのさらなるインキュベートすることは、個体組織への抗原提示細胞の移植、T細胞を含む組織、又は抗原提示細胞を含む個体組織の組織へのT細胞の移植を含む。一実施形態において、個体は、標識化炎症性バイオマーカーまたは抗炎症性バイオマーカーを発現するように遺伝子的に修飾されたヒト以外のトランスジェニック動物である。
【0031】
物質と、抗原提示細胞又はT細胞との接触、及び抗原提示細胞とT細胞とのインキュベートを実行するための適切なさらなる手順や手法は、本開示を読むことにより当業者によって生体外又は生体内で同定することができる。
【0032】
接触またはインキュベートを実行するための適した条件は、当業者により同定可能であり、例えば、適した生育環境を細胞に与えるために、温度、また任意に大気のCO2、N2及び/又はO2の濃度、相対湿度、栄養量並びにその他の適した条件を調整し、監視するロボットの細胞培養器を使用することによって、生体外又は適当な環境下での細胞培養に適した環境の提供を含む。また、生体外又は生体内での、物質及び細胞の接触を行うためのさらなる適当な手順や手法は、本開示を読むことにより当業者によって同定され得る。
【0033】
生体外培養液に又は動物生体内に与えられた物質量だけでなく、インキュベートの時間フレームは、特定の細菌物質、特定のT細胞、抗原提示細胞、処理される動物、関連する適当な条件及び実験計画の実験的な観点において、当業者によって決定され得る。
【0034】
本明細書に記載の方法及びシステムにおいて、炎症性バイオマーカー又は抗炎症性バイオマーカーの発現の検出は、標識化バイオマーカー若しくはバイオマーカーに対し特異的な標識化分子又はそれらに関連した分子を含む、標識化分子の使用を含む、当業者にとって同定可能な手法により、生体外又は生体内で実行され得る。
【0035】
本明細書で用いられる用語“検出する”又は“検出”は、限定されないが、試料、反応混合物、分子複合体及び物質を含む、空間の限られた部分において分析又は関連する信号の実在、存在又は事実の決定を示す。検出は、分析物の数量若しくは量又は関連する信号の測定を参照し、測定に関連し、測定を含むとき(定量において同様に参照される)、“定量的”であり、限定されないが、分析物若しくは関連する信号の量又は比率を決めるために計画された任意の分析を含む。検出は、他の分析物又は関連する信号の相対的存在量に関して、分析物若しくは関連する信号の質又は種類の同定を、参照し、関連し、又は含むとき、“定性的”であり、定量化されない。
【0036】
用語“標識”及び“標識化分子”又は検出可能な分子を指す複合体若しくは分子の成分として本明細書で使用される用語は、限定されないが、放射性同位元素、蛍光物質、化学発光染料、発色団、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、染料、金属イオン、ナノ粒子、金属ゾル、リガンド(ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はハプテンなど)などを含む。用語“蛍光物質”は、検出可能な画像中に蛍光を示すことができる物質又はその部分を指す。結果として、本明細書で使用する言葉“信号”又は“標識信号”は、標識検出を可能にする標識から放出される信号を意味し、限定されないが、放射能、蛍光、化学発光、酵素反応の結果物中の化合物の生産などを含む。
【0037】
検出は、バイオマーカー、前駆体若しくはその類似体、及び/又はそれに関連する分析物の発現のレベルを検出することにより実行され得る。二つの項目に参照して本明細書で使用される言葉“に関連する”は、第一の項目の出現が、第二の項目の出現によって同時に伴われるような二つの項目間の関係を示し、限定されないが、因果関係及び兆候/症状−病気の関係を含む。特に、検出は、定性的又は定量的に実行され、RNA、タンパク質、その前駆体、異なる種類(すなわちmRNA、tRNA、及びrRNA)及び/若しくは分解生成物などの分子の検出、並びに/又はそれらに関連する検出若しくは測定可能な特性を含み得る。検出を実行するための技術および手順は、本開示を読む当業者により同定可能である。
【0038】
例示的な、バイオマーカー発現の検出のための方法は、限定されないが、ELISAと、Q−PCRと、FACSによって検出される細胞内サイトカイン染色とを含む、当業者に周知の方法を含む。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現は、蛍光物質で標識された、バイオマーカーに又はそれに関連する分子に特異な抗体を使用して実施される細胞培養液上の蛍光に基づく読み出しによって検出され、蛍光物質としては、網羅的でないが、低分子色素、タンパク質の発色団、量子ドット、及び金ナノ粒子を含む。一実施形態において、バイオマーカーの発現は、生体内で(例えば、動物組織内で)又は生体外で(例えば、細胞培養液中で)、バイオマーカープロモーターの転写制御下で標識の発現の検出により、検出され得る。それらのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、具体的にはIL−10又はFoxp3であり得る。さらなる手法は、本開示を読むことで当業者により同定可能であり、またさらなる詳細について説明されないだろう。
【0039】
本明細書に記載した方法及びシステムにおいて、候補細菌物質の抗炎症性能は、接触及び/又はインキュベートに続く、一つ以上の抗炎症性バイオマーカーの発現の増加又は一つ以上の炎症性バイオマーカーの発現の減少の検出を通じて決定され得る。バイオマーカー発現の増加及び/又は減少を決定することは、接触及び/又はインキュベートの後のバイオマーカーの検出発現と、接触及び/又はインキュベートがない状態で、同じバイオマーカーの予め決定された検出発現とを比較することにより実行される。バイオマーカーの発現の増加及び/又は減少を決定することは、検出された発現マーカーと、接触及び/又はインキュベートがない状態においてコントロール細胞で同じバイオマーカーの検出された発現とを、比較することにより実行されることができる。
【0040】
引用文献は、実施例の部分に記載されており、抗炎症性バイオマーカーのIL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBの発現の増加並びに炎症性バイオマーカーのTNF−αまたはIL−17Aの発現の減少が、上記発現様式とバクテロイデス・フラジリスの生物学的活性との関連性を支持する、バクテロイデス・フラジリスの作用の機構に関連する。バクテロイデス・フラジリスの抗炎症性能は、当業者により同定可能であり、限定されないが、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5を含む、様々な出版物や特許に説明されており、各々のその全体が本明細書において参照され援用される。当業者は、候補細菌物質の特定の抗炎症性能が、産生されたサイトカインと、本明細書に記載の方法によって同定された候補細菌物質によって活性化された細胞との特定のセットのさらなる決定に基づいて、決定される可能性があることを理解するであろう。
【0041】
一実施形態において、抗炎症性バイオマーカーの発現の増加又は炎症性バイオマーカーの発現の低下の検出は、IL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムB又はそれらの組み合わせなどの抗炎症性分子を誘導する物質の能力、または、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17若しくはTNFα又はそれらの組み合わせなどの炎症性サイトカインを抑制する物質の能力を示す。
【0042】
一実施形態において、方法は、生体外で及び/又は生体内で、候補細菌物質を、単独で又は抗原提示細胞存在下でT細胞と接触させることとし、またIL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される少なくとも一つの抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することを含み、ここで、接触の後の抗炎症性バイオマーカーの発現の増加は候補細菌物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL−10、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及び/又はグランザイムBの発現は、Foxp3を発現するT細胞上で、また特にFoxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0043】
一実施形態において、方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、接触の後に抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。この方法は、Foxp3、IL−10、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される少なくとも一つの抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することをさらに含み、ここで、インキュベートの後のバイオマーカー発現の増加の検出が候補物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL−10、パーフォリン及び/又はグランザイムBはFoxp3を発現するT細胞上で、また特に、Foxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0044】
一実施形態において、方法は、候補細菌物質を、単独で又は抗原提示細胞存在下でT細胞と接触させることと、IL17及びTNFαからなる群より選択される少なくとも一つの炎症性バイオマーカーの発現を検出することを含み、ここで、接触の後に炎症性バイオマーカーの発現の減少は候補細菌物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL17及びTNFαの発現は、Foxp3を発現するT細胞上で、また特に、Foxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0045】
一実施形態において、方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、接触の後に抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。該方法は、IL17及びTNFαからなる群より選択される少なくとも一つの抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することをさらに含み、ここで、接触の後の炎症性バイオマーカー発現の減少が候補物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL17及びTNFαは、Foxp3を発現するT細胞上で、また特に、Foxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0046】
一実施形態において、候補細菌物質は純粋なプール内の細菌を含む。他の実施形態において、候補細菌物質は混成のプール内の細菌を含む。細菌は生きた菌、死んだ菌、細菌から分離された抽出物若しくは産生物、又はそれぞれの組み合わせとすることができる。細菌はまた、実験室株、ATCCなどのリポジトリからの分離株、動物からの分離株、ヒトからの分離株、またはそれぞれの組み合わせであってもよい。
【0047】
一実施形態において、動物から分離株は排泄物から分離される。分離株はまた、腸内容物又は排泄物及び他の腸内容物の組み合わせを由来とすることができる。一実施形態において、ヒトからの分離株は排泄物から分離される。分離株はまた、腸内容物又は排泄物及び他の腸内容物の組み合わせを由来とすることができる。
【0048】
一実施形態において、方法は、トランスジェニックマーカー非ヒト動物を、特に、マウス又はラットのようなトランスジェニックマーカー非ヒト哺乳類を、候補物質で処理することを含み、トランスジェニックマーカー非ヒト動物は一般的に、IL−10及びFoxp3だけでなくパーフォリン及びグランザイムB、IL17及びTNFαからなる群から選択される標識化抗炎症性バイオマーカー又は炎症性バイオマーカーを発現するように遺伝子的に修飾されており、処理後にトランスジェニックマーカー非ヒト動物におけるバイオマーカー発現を検出する。
【0049】
特に、一実施形態において、前述のトランスジェニック非ヒト動物のモデルは、物質を経口に若しくは静脈内に処理され得、又は強制経口により生きた菌を恒久的にコロニー化され得、バイオマーカー発現のFoxp3又はIL10発現の量が、物質の免疫調節能の測定として、脾臓、腸間膜リンパ節、小腸及び大腸、肺、膵臓、および骨髄を含むマウスの様々なコンパートメントにおいて観察されるだろう。
【0050】
一実施形態において、樹状細胞、T細胞、制御性T細胞、B細胞又はマクロファージは、IL−10(若しくは、T細胞の分析の場合にはFoxp3)の発現が蛍光体である緑色蛍光タンパク質(GFP)でマークされているマウスから精製され又は分化される。これらの実施形態において、候補細菌物質は、前記細胞種のいずれかと接触させられ、GFPの発現量が、試験される物質の免疫調節能を意味することを決定される。また、樹状細胞または他の抗原提示細胞は物質とインキュベートすることができ、物質が洗浄されることができ、その後、樹状細胞は、T細胞から免疫調節活性を誘発するために樹状細胞の免疫調節能を決定するためにT細胞とインキュベートすることができる。GFPの発現は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)またはマイクロプレートリーダーを用いて決定されることができる。
【0051】
一実施形態において、T細胞と、抗原提示細胞と、IL−10、Foxp3、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、並びにIL17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの検出をするための試薬とは、本明細書に記載の方法にしたがって免疫調節能を有する細菌物質を同定するためのシステムを含み得る。
【0052】
一実施形態において、システムは、樹状細胞、T細胞、制御性T細胞、B細胞及び/又はマクロファージを含み、いくつかの実施形態において、樹状細胞、T細胞、制御性T細胞、B細胞及び/又はマクロファージがIL−10(若しくは、T細胞の分析の場合にはFoxp3)の発現が蛍光体である緑色蛍光タンパク質(GFP)でマークされているマウスから精製され又は分化されることができる。
【0053】
システムは、部品のキットの形態で提供され得る。部品のキットにおいて、方法を実行するためのマルチリガンド捕捉剤および他の試薬は、キット内で独立的に含まれ得る。抗原提示細胞、T細胞及び試薬は、一つ以上の構成物中に含められ得、また各々の細胞及び試薬は、適当な媒体と共に構成物にし得る。
【0054】
さらなる構成部分は、標識化分子及び特に、抗炎症性バイオマーカー若しくは炎症性バイオマーカーに特異的な標識化捕捉剤、又はその発現に関連する分子、マイクロ流体チップ、標準試料、並びに本開示を読むことで当業者により同定可能なさらなる格子得部分を含むことができる。
【0055】
本明細書で用いられる用語“捕捉剤”は、目標物に対し特異的に結合し得る化合物を示す。第一の分子に対する第二の分子への結合を参照するときの本明細書で使用される単語“特異的な”“特異的に”又は“特異性”は、第一の分子と第二の分子との安定した複合体の認識、接触及び形成とともに、第一の分子と第二の分子とのそれぞれが、存在し得る他の分子と一緒に安定な複合体の認識をせず、接触をせず及び形成をしないことが実質的に少ないことを指す。例示的な特異な結合としては、抗体−抗原相互作用、分子レセプター−リガンド相互作用、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、酵素基質の相互作用などである。“安定な複合体”は、検出可能であり、安定性の任意のレベルを必要とせず、しかしより大きな安定が通常好ましい。いくつかの実施形態において、キットは標識化ポリヌクレオチド又は標識化抗体を含みうる。
【0056】
キットの構成部分は、本明細書中に記載する方法を実行するために、適当な指示及び他の必要な試薬を与え得る。キットは通常、別々の容器に構成物を含むだろう。指示(例えば、解析するにために、書面上に又はテープ若しくはCD−ROMのように電子的に対応されているもの上に、記載された指示又は音声指示)は、キット内に通常含まれるだろう。キットはまた、特定の使用の方法、他のパッケージ化試薬及び材料(すなわち洗浄用バッファーなど)に応じて含めることができる。
【0057】
好適な担体剤または構成物の助剤の同定に関するさらなる詳細、およびキットの一般的な製造及び包装は、本開示を読む当業者により同定され得る。
【実施例】
【0058】
本明細書に記載する方法及びシステム並びに関連する構成物は、さらに後の実施例においてさらに示され、実施例は、例示のために提供され、制限されることを意図されていない。
【0059】
特に、次の実施例は、例示的な細胞培養、並びにPSAを細胞と接触させ及びIL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン、グランザイムB、TNFα、IL17Aの発現を検出するための方法を示している。当業者は、本開示に従うことにより、PSA及びバクテロイデス・フラジリスの追加物質に対する免疫調節活性を検出するために適した、PSA及びバクテロイデス・フラジリス並びに細胞/培養液/動物のシステムのために、詳細において述べられている特徴の適応性を理解するだろう。同様に、当業者は、本明細書に記載された他のバイオマーカーへの、IL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン、グランザイムB、TNFα、IL17Aのようなバイオマーカーの検出の適応性を理解するだろう。
【0060】
材料及び方法
以下の材料および方法は、本明細書に例示した免疫調節物質の検出を目的に全ての方法及びシステムのために使用された。
【0061】
菌種、培養条件及びマウス
バクテロイデス・フラジリス株 NCTC 9343は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から得、その同質遺伝子的PSA欠損変異株及びmpi44変異株(PSAのみを産生し、他の多糖類を産生しない)は、「MJ.Coyne,A.O.Tzianabos,B.C.Mallory,V.J.Carey,D.L.Kasper and L.E.Comstock,(2001)Polysaccharide biosynthesis locus required for virulence of Bacteroides fragilis,Infect.Immun.69:4342−4350」に記載されている。細菌は、1LのddH2O中に37gBHI(BD社#237200)、0.5μg/mlヘミン(Sigma社 H5533)、及び0.5μg/mlビタミンK(Sigma社 V3501)を含む富栄養培地、又は1LのRPMI(Invitrogen社 SKU#11835−030)中に8gグルコース、1%FBS、0.5μg/mlヘミン、及び0.5μg/mlビタミンKを含むカスタマイズした最小培地(MM)のいずれかで生育された。C57BL/6及びBalb/c株のSPFマウスはTaconic Farms社(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から購入された。TLR2−/−及びIL−10ノックアウトマウスは、Jacksom laboratories社から購入された。IL−10GFPマウスはthe laboratory of Christopher Karp from Cincinnati Childrens medical hospitalから調達し、また、Foxp3GFPマウスはthe laboratory of Talal Chatila from the University of California Los Angelesから得られた。
【0062】
EDL富化細菌集団の分離
パーコール(GE Healthcare社#17−0891−01)不連続密度勾配遠心分離は、野生型バクテロイデス・フラジリス及びバクテロイデス・フラジリスΔPSAの両方におけるEDL分離のために用いられた(Patrick S, Reid JH.(1983)Separation of capsulate and non−capsulate Bacteroides fragilis on a discontinuous density gradient. J Med Microbiol.16(2):239−41)。簡単に言えば、20%、40%、60%、80%のパーコール勾配(PBSで希釈)は14ml試験管に作製された(各層2ml)。その後、PBSに再懸濁されたバクテロイデス・フラジリス培養液は20%パーコール層の上部に慎重に加えられた。続いて、勾配は、室温、800g、20分間の条件で遠心分離された。EDL富化細菌は、分離後勾配の40%−60%の境界面から回収され得る。
【0063】
OMVの精製と標識
この方法は、E.coliからOMVを調製するために、以前記載された手順(Amanda L. Horstman and Meta J.Kuehn.(2000)Enterotoxigenic Escherichia coli secretes active heat−labile enterotoxin via outer membrane vesicles.J Biol Chem.275:12489−12496)に適応された。簡単に言えば、EDL富化バクテロイデス・フラジリスは、カスタマイズ化されたMMの中で生育された。OMVは、4000g、2時間、4℃の条件で遠心により培養液中の細菌が取り除かれた上澄みから回収され、PBSで二回洗浄され、0.45μmスピンカラム(Millipore社 #20−218)によりろ過された。精製されたOMVの総タンパク質濃度はBradford分析(Biorad社 #500−0205)により測定した。FITC標識化OMVは、以前記載されたように調製された(Nicole C. Kesty and Meta J.Keuhn.(2004)Incorporation of heterologous outer membrane and periplasmic proteins into Escherichia coli outer membrane vesicles.J Biol Chem.279:2069−2076)。簡単に言えば、OMVは、室温で1時間、染色緩衝液(lmg/ml FITC (Thermo Scientific社 #46424),100mM NaCl,50mM Na2CO3,pH9.2)中でインキュベートされた。標識化OMVは、4℃、30分、40,000gの条件で遠心分離により収集され、PBS+200mM NaClで2回洗浄された。
【0064】
細菌超薄切片の電子顕微鏡
EDL富化バクテロイデス・フラジリスの超薄切片は、以前記載されたように調製された(Patrick S, McKenna JP, O’Hagan S, Dermott E.(1996)A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles.Microb Pathog.20(4):191−202)。簡単に言えば、試料は、2.5%(v/v)グルタルアルデヒド(Sigma社 G5882)のカコジル酸緩衝液中で、4℃で、一晩かけて固定化され、そして、四酸化オスミウム(1%、w/v)中で、3時間、室温、暗所でさらに固定化された。ルテニウムレッド(lmg/ml、Sigma社 R2751)は、固定化手順の両方に含有された。その後、固定化試料は、アルコールによる一連の段階的脱水後、エポキシ樹脂に包埋された。TEMにより可視化する前に、超薄切片(100−200nm)は切断され、ホルムバール/炭素被膜銅格子上で2%の酢酸ウラニル及びクエン酸鉛でネガティブ染色された。
【0065】
精製OMVの免疫金標識
この方法は、以前記載された手順(Patrick S,McKenna JP,O’Hagan S,Dermott E.(1996)A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles.Microb Pathog.20(4):191−202)に適応された。簡単に言えば、ごく少量の精製OMVは、ホルムバール/炭素被膜金格子(EMS社 #FF200−Au)に塗られ、空気で乾燥された。免疫金標識は、“OMV”が付された格子の側面が下になるように浮かした状態にされ、一連の抗体及び洗浄溶液の滴下により、室温で実行された。具体的には、試料は、0.12%グリシン中で5分間のインキュベートの後、10%FBS中で10分間ブロックされ、続いて、PBSで3分間の洗浄が5回実施された。その後、5nm 金粒子を有する第二の抗体−IgG結合体(Dr.Paul Webster、House Ear Institute、Los Angelesからの親切な寄贈品)は20分間試料に適用され、続いて、再度、PBSを用いて4分間の洗浄を5回実施された。標識後、試料は1%グルタルアルデヒド中で5分間固定化され、PBSの1分間×4回の滴下へ、またH2O1分間×4回の滴下へ格子が移されることで十分に洗浄された。対比染色は、氷上で10分間、3−5%酢酸ウラニルが2%メチルセルロースに溶解した溶液の滴下に格子が配置されることにより実施された。最後に、格子は、ワイヤーループにより染色液から取り除かれ、空気乾燥された。メチルセルロースの薄膜で覆われた試料は、ループから取り除かれ、透過型電子顕微鏡(TEM)によって可視化するために使用された。
【0066】
糖タンパク質分析
全細胞抽出物またはOMV(バクテロイデス・フラジリス変異株mpi44由来)から精製したPSAはSDS−PAGEに供され、続いて、ゲルは、PSAの存在を示すための糖タンパク質染色キット(G bioscience社 #786−254)により染色された。
【0067】
化学的(TNBS)誘発性の実験的大腸炎
この手順は、以前記載された方法(Scheiffele and Fuss.(2001)Induction of TNBS colitis in mice.Current Protocols in Immunology.15.19.1−15.19.14)に適応された。簡単に述べると、野生型(Balb/c)雄マウスは、TNBS投与される前に、PBS、WT−OMV(5μg)又はΔPSA−OMV(5μg)を一日おきに一週間、経口処理された。処理されたマウスは、イソフルランで麻酔され、2%TNBS(50%EtOH中、Sigm社 P2297)の直腸投与が3.5Fカテーテル(Instech Solomon社 SIL−C35)を通じて適用された。TNBS投与の後、経口処理はさらに二回続けられ、最後の処置後1−2日にマウスは分析された。
【0068】
組織病理学的解析
マウスの大腸は、10%中性緩衝ホルマリン液(ScyTek Laboratories社 CAS#50−00−0)に固定され、H&E染色のためにPacific Pathology社により処理された。各大腸断片の大腸炎スコアは、病理学者(Dr. Gregory Lawson, David Geffen School of Medicine, UCLA, Los Angeles)によって盲検方式で評価された。組織学的画像は光学顕微鏡(Zeiss社)を使用して20倍率で撮影された。
【0069】
定量リアルタイムPCR
RNAは、TRizol(Invitrogen社 #15596−018)を用いてマウス組織から、又はRNeasy Mini Kit(Qiagen社 #74104)を用いて精製細胞から、いずれかにより収集された。iSCRIPT cDNA合成キット(バイオラッド社 #170−8890)はcDNAの変換に使用され、IQ SYBR Green supermix(BioRad社 #172−8882)は、リアルタイムPCRに使用された。本研究で使用されたプライマーは、TNFα(F−5’ACG GCA TGG ATC TCA AAG AC 3’(配列番号:1)、R−5’ GTG GGT GAG GAG CAC GTA GT 3’)(配列番号:2)、IL−17(F−5’TTA AGG TTC TCT CCT CTG AA 3’(配列番号:3)、R−5’TAG GGA GCT AAA TTA TCC AA 3’)(配列番号:4)IL−10(F−5’GGT TGC CAA GCC TTA TCG GA 3’(配列番号5)、R−5’ACC TGC TCC ACT GCT TGC T 3’)(配列番号6)、Foxp3(F−5’GCA ATA GTT CCT TCC CAG AGT TCT 3’(配列番号7)、R−5’GGA TGG CCC ATC GGA TAA G 3’(配列番号:8))である。
【0070】
蛍光顕微鏡検査法
生体外で分化されたBMDCは、50,000細胞/ウェルでLab−Tek II 8ウェルチャンバースライド(Nunc社 #154534)に蒔かれた。FITC標識化OMVは10μg/mlで細胞培養液に添加された。2時間のインキュベートの後、細胞は室温で20分間、4%PFAで固定された。5分間のPBS洗浄が3回された後に、細胞膜は、1μg/mlのWGA(Invitrogen社 W849)結合テトラメチルローダミンで、4℃で1時間染色された。プロロングゴールド褪色防止剤(P36930)は、細胞膜の染色を、膜染色に続く広範な洗浄後に、試料に対し適用された。蛍光画像は、LSM 510顕微鏡とPlan−Neofluar 63x/1.25油浸対物レンズとを用いて撮影した。
【0071】
フローサイトメトリー及び染色
OMV取込み解析またはOMV活性化解析の結果のBMDCは採取され、氷上で30分間、5%のマウス血清でブロックされた。ブロックした後、細胞は、氷上で30分間抗CD11c−APC、抗MHCII−FITC又は抗CD86−PE(eBioscience社)で染色され、フローサイトメトリー分析の前にFACS緩衝液(HBSS(Ca2+/Mg2+不含有)、1%FBS、2mM EDTA、10mM HEPES)を用いて4℃で2回洗浄された。同様に、生体外でのBMDC−T細胞の共培養由来の細胞は、ブロックされ、採取される前に4−4.5時間PMA/イオノマイシンを用いて細胞を再刺激したことを除いて同じ方法で、抗CD4−APC/抗CD25−PEを用いて染色された。全てのフローサイトメトリーは、BD FACSCaliburを用いて行われ、結果はFlowJoを用いて分析された。
【0072】
BMDC−T細胞の生体外共培養
骨髄は、マウスの異なる株から採取され、従来の記載のように(Mazmanian,Liu,Tzianabos,and Kasper(2005)An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System.Cell 122:1 107−118)20ng/mlのGM−CSF(Miltenyi Biotec社#9517571)存在下で生体外で8日間分化された。(細胞の純度>90%)。CD4+脾臓T細胞は、磁気マイクロビーズ精製(Miltenyi Biotec社#130−090−860)(細胞の純度>95%)により単離された。OMVが振動されたBMDC(10μl/ml OMV、100,000細胞/ml、12時間から24時間)は、HBSSで洗浄され、CD4+T細胞(1,000,000細胞/ml)が、0.01μl/ml抗CD3(0日目、図3D、E、F、図4Aに示されるように図3C)と、2ng/ml TGFβ(0日目、図3C、D及びF、図4A)の追加と、5ng/ml IL−2(1日目とで3日目、生体外で全てのDC−T細胞共培養分析)丸底96ウェルプレート内でインキュベートした。合計4日の培養後、上清をELISA(#88−7104−77 eBioscience社)又は細胞は、染色及びフローサイトメトリーの解析のために採取された。
【0073】
生体外での抑制分析
BMDC(WT−OMV又はΔPSA−OMVと振動されている)−T細胞の共培養から精製したCD4+CD25+細胞は、制御性T細胞(Miltenyi Biotec社, #130−091−041)の供給源として使用された。マイトマイシンC(Sigma社 M4278)で処理し、CD4除去マウスの脾細胞は、APC(100,000細胞/ml)として使用された。マウスの脾臓から直接精製したCD4+CD25−T細胞は、10分間、37℃でCFSEと振動され、続いて、まずPBSで次に培養液で洗浄され、レスポンダー細胞(エフェクターT細胞)として(500,000細胞/ml)をすぐに使用された。この分析は、200μl体積の5μg/mlの抗CD3(eBioscience社 #16−0031−86)追加により、丸底96ウェルプレートで行われた。エフェクターT細胞と制御性T細胞との比を滴定により測定され、細胞はFACS分析のための培養2−3日後に採取された。
【0074】
統計的分析
ステューデントのt検定及び一元配置分散分析法は、一対比較及び二つを超えるグループ間の比較にそれぞれ適用された。分散分析により検出されたグループ間の有意差は、統計学的有意差を示すグループを識別するために、事後テストとしてニューマン−クールズの検定を用いて分析した。すべての誤差棒はSEMを示す。NS:有意でない。*p<0.05。***p<0.01。***p<0.001。
【0075】
実施例1:免疫調節莢膜多糖体PSAは、バクテロイデス・フラジリスのOMVの中へ活発に局在化される。
EDL富化バクテロイデス・フラジリスの超薄切片は、材料及び方法に記載されたように調製され、透過型電子顕微鏡により画像化された。
【0076】
図1Aに示される結果は、OMVが豊富に細菌によって産生され、細菌の外被(図1A、より高倍率)からの出芽を観測されることができたことを示す。出願人らこれまでの研究では、PSA欠損が、バクテロイデス・フラジリスの免疫調節能を抑制することを示している(Mazmanian,Liu,Tzianabos,and Kasper(2005)An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System.Cell 122:1 107−118.)(Mazmanian,Round, and Kasper(2008)A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease.Nature. 453(7195)620−625)。PSA変異株(バクテロイデス・フラジリス ΔPSA)の電子顕微鏡写真は、OMV合成において欠陥のないことを示し、そして、産生されたOMVの大きさ、形状及び豊富さは、野生型細菌(図1A及び図5)と識別不能であった。特に、図1Aに示される結果は、小胞が細菌の表面から活発に出芽していることを明らかにした。
【0077】
PSAが、バクテロイデス・フラジリスのOMVに関連するかを判断するために、野生型細菌及びΔPSA細菌から精製した小胞は、材料及び方法の部分で記載したように分析され免疫ブロットが行われた。
【0078】
図1Bに示される結果は、野生型由来の小胞が、バクテロイデス・フラジリスΔPSA由来のOMVとは異なり、PSAへの免疫反応性を表示することを示す。バクテロイデス・フラジリスは、細菌細胞の表面を覆っている、PSA〜PSHという名称の、少なくとも8つの異なる莢膜多糖を産生する。PSBも小胞の標本内で検出されたが、PSGは存在せず、OMVで包まれるために特定の多糖類に対する選択性を示す(図1B)。したがって、図1Bの結果は、PSGのみが細菌表面上で検出される一方で、PSA及びPSBは、小胞に関連することを示している。莢膜多糖体に対する欠損変異株は、各抗血清の特異性を確認する。
【0079】
免疫ブロット分析の結果は、材料及び方法の部分に記載されたように実行され、免疫金標識の実験により確認された。精製小胞の免疫ブロット標識の結果は図1Cに示され、PSAが物理的にOMVに関連していること、及び野生型バクテロイデス・フラジリス株からのOMVの大半が、PSAに対し陽性に染色していることを確認する(図6)。PSAの不存在がOMVの分子構成物を変化しなかったかったことを確かめるため、プロテオーム分析は、野生型細菌からの又はPSA変異細菌からの小胞間のタンパク質構成物において、質的または量的な違いはないことを明らかにした質量分析法により、実行された(図7)。
【0080】
PSAは、繰り返されるサブユニットの異種ポリマーである。クロマトグラフィーにより全細胞抽出物から回収されたPSAのサイズ分離は、材料及び方法において示されているような、全細胞由来の、及び精製OMV由来の莢膜多糖標本の抗PSAを用いた免疫ブロット分析と同様に実行された。
【0081】
図1Dに示される関連性の高い結果は、驚くほどに、低分子量種のみがOMVに関連していることを示し、小胞へのPSA包み込みの特異性を表している。特に、図1Dの結果は、低分子量PSA(L−PSA)は、細菌細胞外被に関連し維持している高分子量(H−PSA)種とは異なり、小胞に包み込まれることを示している。
【0082】
併せて上記の結果は、免疫調節莢膜多糖体PSAがバクテロイデス・フラジリスのOMVへ活発に局在化されていることを明らかにしている。
【0083】
実施例2:OMVは、PSA−依存的方法で実験的大腸炎及び腸炎から動物を保護する。
OMVが疾患の臨床症状を改善できるか調査するために、マウスは、TNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)誘発性大腸炎の期間中にOMV強制経口投与によって処理された。
【0084】
図2Aに示された結果は、コントロール動物がTNBS(図2A;TNBS+PBS)の直腸投与後に体重が急速に減少しており、媒体処理されたマウス(図2A;ETOH+PBS)と比較し、コントロール動物の体重が回復しなかったことを示している。驚くべきことに、TNBS動物にOMV経口投与すると、体重減少(図2A;TNBS+WT−OMV)から大きく保護された。最も重要なことは、バクテロイデス・フラジリスΔPSA由来のOMVを投与した場合、体重減少がTNBS動物(図2A;TNBS+ΔPSA−OMV)と区別できなく、PSAが、消耗性疾患を抑えることに完全に関連することを実証した。
【0085】
胃内経管栄養の後に大腸内の損傷を受けていない小胞を検出する努力は、以前の報告のように無菌マウスでさえ(データは示されず)、宿主由来の小胞の観測によって混乱された。
【0086】
大腸の長さの減少がTNBS大腸炎の顕著な特徴であるので、盲腸から直腸までの切除し、長さの定量化(グラフ)した後、直ちに、媒体(EtOH)処理されたグループ及びTNBSグループ(n=4匹/グループ)からの大腸の長さの検出は、未操作の大腸において、実行された。具体的に、測定は屠殺の時(疾患誘導から4日目)に実行された。
【0087】
図2Bに示される結果は、PSA含有小胞を処理した動物において、通常の腸の長さであることを示し、しかしPSA欠乏OMVで処理した動物においては通常の腸の長さでないことを示している(図2B)。
【0088】
実験的大腸炎は、腸構造内で重篤な病理学的変化の結果になる。したがって、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した、各処理グループの大腸断片の代表物を挙げ、図2Cに示す。大腸組織の組織学的分析により、重篤な疾患がTNBS処理動物において観測され、TNBS処理動物がPSA含有小胞の経口投与によって改善されたことを、図2Cの画像は示している。
【0089】
図2Cの結果は、盲検化病理学者により指定された動物からの大腸炎スコアによって確認された。TNBS大腸炎は、クローン病で観察される病状を模倣した、大腸全域の限局性病巣においてそれ自体を明らかにする。定量的に疾患を評価するために、臨床症状が標準得点システムを用いて盲検化病理学者によって評価された(Scheiffele and Fuss.(2001)Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology.15.19.1−15.19.14)。図2Dに示される結果は、TNBS及びΔPSA−OMVを投与されたすべての動物が深刻な影響を受けた一方で、WT−OMVがほとんどの動物において疾病を劇的に減少させることを示している。野生型細菌由来のOMVで処理された動物は、遥かに少ない病状の限局的サイトを有していたが、病巣が観察された時、ΔPSA−OMVを与えられた動物と比べて、病巣が小さく、相当正常な組織構造を保持していた。
【0090】
上記の結果は、PSAがOMVの疾患防御活性に必要とされることを立証する。
【0091】
実施例3:PSA含有OMVは、TNF−α/IL−17を阻害し、IL−10の発現を高める。
大腸炎に関連し標準的な炎症促進性及び抗炎症性サイトカインの産生は、実施例2に例示されるように処理されたマウスにおいて測定された。具体的には、サイトカインの転写産物の分析は、大腸全体より回収され又は腸間膜リンパ節由来の精製CD4+T細胞より回収されたRNAについて、定量RT−PCRを用いて実施された。
【0092】
3つの独立した試験の代表的な関連性の高い結果は、図2E(大腸全体)及び図2F(腸間膜リンパ節から精製されたCD4+T細胞)で報告されている。これらの結果は、腫瘍壊死因子(TNF−α及びIL−17A)の転写レベルがTNBS処理動物において高められ、しかし、OMV投与によりPSA−依存的方法(図2E)で減少させられたことを示す。病状からの保護と矛盾しないで、ΔPSA−OMV経口投与動物と比較して、OMVは増加したIL−10濃度の産生を誘発する(図2F)。腸間膜リンパ節(MLN)由来の精製CD4+T細胞によって産生されたサイトカインの分析は、IL−10が、T細胞のPSAへの応答により実際に産生されていることを確認した(図2F)。強力な炎症誘発性マーカーTNF−α濃度のように、Thl7細胞の浸潤は、疾患のために必要であるが、OMVにより劇的に減少した(図2F)。我々は、バクテロイデス・フラジリスOMV中へのPSAの包み込みが、実験的大腸炎の病理学的および免疫学的症状発現から動物を保護すると結論付ける。
【0093】
実施例4:バクテロイデス・フラジリス由来のOMVを含むPSAは、樹状細胞応答を誘導する。
樹状細胞(DC)は、腸管内腔へ突起を伸ばし、腸の粒子を採取し、続いてT細胞の反応を開始するためにMLNに移行する。確かに、動物へPSAの経口投与は、MLNにおけるCD11c+DCに関連している。したがって、出願人は、PSAを含むOMVが同様に樹状細胞に取り込まれ得るかどうかの研究に努めた。
【0094】
図3Aに示される結果は、サイトカラシンDを用いた細胞の処理が、大幅に小胞への取り込みを阻害したため、骨髄由来のDCが急速にアクチン依存的方法でOMVを内部移行したことを示す(図3A及び図8)。細胞間の局在は共焦点顕微鏡により確認された(図9)。
【0095】
T細胞活性化マーカーのPSAを介したDCでの誘導は、同様に調査された。図3Bに示される結果は、T細胞活性化マーカー(MHCII、CD86)の発現が、WT−OMV及びΔPSA−OMVの両方の内部移行に続いて、同等に上昇させられたことを示した(図3B及び図10)。
【0096】
MHC及び共刺激分子の発現増加は、バクテロイデス・フラジリス由来のOMVを含むPSAが、T細胞応答に影響を与え得ることを示している。
【0097】
実施例5:PSAは、DCのIL−10発現を通じてCD4+T細胞におけるIL−10発現を誘導する。
実施例1〜3に例示した実験に示すように、大腸炎におけるPSA保護の役割に照らして、抑制性T細胞応答の誘導にOMVの生物学的効果は試験された。特に、様々な制御性T細胞(Treg)集団が大腸炎を抑制することが知られているので、Tregの発達を促進するOMVの能力は検討された。
【0098】
図3Cに示される結果は、DC−T細胞の生体外共培養の条件下でWT−OMVがIL−10の発現を誘導し、一方、同条件下でIL−10がDCのみからでは産生されないことを示している。増加が媒体コントロールを超えて検出されているが、バクテロイデス・フラジリスΔPSAから精製された小胞は、WT−OMVよりIL−10を有意に低く誘導していた。DCからのIL−10の産生は、生体内及び生体外におけるCD4+IL−10+T細胞の発達を支援することが知られている。したがって、IL−10−/−の動物から分化されたDCを含み、図3Cに示されている結果と同様のELISA分析は実行された。
【0099】
図3D(左パネル)に示される結果は、IL−10−/−DCがOMVで処理された場合、DC−T細胞の共培養において大幅に減少したIL−10を示しており、DCによるIL−10発現が、パラクリン的方法でCD4+T細胞からIL−10を誘導するために必要とされることを示している。
【0100】
実施例6:PSAは、Foxp3 Tregの発達及び/又は増殖を指示するようにDCをプログラムする。
微生物のリガンドは、パターン認識受容体のいくつかのクラスによって感知され、Th1サイトカイン産生を惹起するために、PSAがToll様受容体2(TLR2)を通じた信号へ示されている。一連の実験は、したがって、最近の報告が、Tregの機能及びIL−10発現がTLR2の影響を受けていることを示しているように、TLR2が、PSAによるIL−10の誘導に必要であるかどうかを試験するために実行された。
【0101】
図3D(右パネル)に示される結果は、野生型DCと比較して、TLR2の欠如(TLR2−/−動物由来のDC)が、完全にOMVに応答してIL−10産生を阻害することを示している。両方のDCはスーパー抗原(SEA)刺激に同様に応答し、PSAセンシングにおける特異的な欠陥ではなく、TLR2−/−DCによるT細胞活性化の一般的な欠如を実証している(図3D)。転写因子Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞は、重要なTregの亜集団である。最近の研究では、示されているCD4+CD25+Foxp3+TregはIL−10を発現することができ、TregからのIL−10の産生は腸の炎症を抑制するために必要とされる。
【0102】
OMV上のPSAにより誘導されるIL−10の起源を決定するために、CD4+CD25+T細胞及びCD4+CD25−T細胞は、DCとの共培養に続いて精製され、そしてIL−10及びFoxp3の発現は定量RT−PCRによって測定された。
【0103】
図3Eに示される結果は、注目に値し、PSAがCD4+CD25−T細胞由来ではなく、CD4+CD25+Treg集合内でIL−10発現を大幅に誘導することを示している。バクテロイデス・フラジリスΔPSAから精製したOMVは、媒体コントロールと同じ濃度で、どちらのT細胞集団からであってもIL−10産生を促進することができなかった。Foxp3の発現はまた、OMVによって、PSA依存的方法でもっぱらCD4+CD25+T細胞において有意に増加した(図3E)。
【0104】
共培養液は、図3C〜Eに示される実験用として作成され、Foxp3−GFPマウス由来のCD4+T細胞を使用した。OMVを振動されたDCで4日培養した後、細胞は、抗CD4で染色され、FCを使用してGFPの発現によりFoxp3が検出された。
【0105】
二つの独立した試験の代表的な結果は、図3Fに示されている。CD4+T細胞の間で増加したFoxp3転写と一致し、CD4+Foxp3+T細胞の割合は、ΔPSA−OMV処理でなく、WT−OMV処理への応答において増加した(図3F)。まとめると、完全なる生体外培養システムにおいてPSA含有OMVは、Tregの発達および/または増殖をする方向へDCをプログラムする。
【0106】
実施例7:PSA含有OMVは、Foxp3 Tregの抑制機能の媒介によりIL−10を誘発する。
細胞治療としてのTregの使用は、IBD、自己免疫及びアレルギーのために提案されている。OMVで処理されたDCとの4日間共存培養後のCD4+T細胞亜集団によるIL−10の発現は調査された。脾臓CD4+T細胞はIL−10−GFPマウスから精製され、共培養後に抗CD4及び抗CD25で染色され、IL−10の発現がGFPにより測定された。
【0107】
図4Aに示す、精製DC及びT細胞の関連するOMV処置の結果は、PSAが、CD4+CD25+Tregからの特異的なIL−10産生を促進することを明らかにしていることを示す。
【0108】
この知見に基づいて、PSAの能力は、媒体(コントロール)、WT−OMV及びΔPSA−OMVで処理したDCとの共培養に続いて、精製したCD4+CD25+T細胞により、単純な応答細胞の生体外でのTegの抑制能を促進するために調査された。CD4+CD25−応答細胞(エフェクター細胞; Teff)は、野生型マウスの脾臓から精製され、細胞内の色素のCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で振動され、Tregとインキュベートされ、3日間抗CD3で刺激を与えられた。細胞増殖はCFSE希釈のFCにより測定された。
【0109】
図4B及び4Cに示される結果は、WT−OMVで処理されたDCを用いた条件から回収されたTregが、ΔPSA−OMVに対応したCD4+CD25+T細胞と比較して、大幅に強化された抑制能力を表示することを示す。
【0110】
したがって、他の多数の微生物性リガンド(LPS、リポタンパク質、ペプチドグリカンなど)を含むOMVからのPSAの特異的欠落は、機能的なTregを誘導するための、バクテロイデス・フラジリスの小胞の能力を抑制する。
【0111】
実施例8:PSAは、Foxp3 Tregにおいて、様々なバイオマーカーの組み合わせを誘導する。
Foxp3−GFPマウスは、一日おきに6日間精製PSAで経口処理された。MLNは抽出され、CD4+Foxp3+T細胞又はCD4+Foxp3−T細胞は、±GFPの発現に基づいたFACSにより精製された(純度>99%)。RNAは抽出され、定量−PCRに使用された。
【0112】
図11に示される結果は、PSAが、IL−10、TGF−β、パーフォリン、及びグランザイムAを含む複数の抗炎症性遺伝子の誘導と、TNFαおよびIL17(特にIL17A)の阻害とを調整することを実証する。
【0113】
上記の結果は、バクテロイデス・フラジリスの生菌活性の分子機構を提供し、制御性T細胞の発達へシグナル伝達する自然免疫受容体を結合する微生物リガンドのための独創的な例を明らかにする。特に上記の結果は、PSAが、外膜小胞(OMV)によって、及び細菌分子を宿主細胞へ標的とする分泌構造によって、宿主に運ばれることを示している。PSAを含むOMVは、宿主免疫システムの樹状細胞によって内部移行される。OMVの取り込みに続いて、PSAは、Foxp3及び抗炎症性サイトカインのインターロイキン−10(IL−10)を発現する制御性T細胞(Treg)の分化を誘導するために樹状細胞をプログラムする。OMVによるTregの発達は、樹状細胞によるToll様受容体2(TLR2)の発現及びIL−10の産生を必要とする。驚くべきことに、精製OMVは、PSA依存的方法で強力な抑制活性を持つ、機能的なTregの生体外分化を指示する。PSA含有OMVを用いた動物の処理は、実験的大腸炎を防ぎ、腸内の炎症誘発性サイトカイン応答を抑制する。これらの知見は、IBDのための生菌治療が運ぶという新しいアプローチに設計され得るプロセスである小胞の分泌を通じて、共生細菌が有益な微生物の因子を提供することが明らかにする。
【0114】
特に、上記の結果は、PSA含有OMVによって誘導されるTregが、機能的に抑制し、培養中のT細胞の活性化を阻害することを示している。これは、微生物のリガンドによる生体外Tregの発達についての最初の実証であり、自然免疫受容体シグナル伝達がTregの機能を調節することが広く推測される観念に対する原理証明を提供する。IBDのための現在の治療は、効果がない又は重篤な副作用を持っているかのどちらかであるので、活性免疫調節のためのよく進化したメカニズムを利用することによる、有望な新しい治療の選択肢を生菌が表している。Tregが複数の組織において免疫応答を抑制することを考えると、PSAによる生体外Tregの発達の私たちの独創性に富んだ実証は、自己免疫、喘息及びアレルギーを含む多数の炎症性疾患のための新規細胞治療の心躍る可能性を示唆している。
【0115】
免疫調節を媒介する微生物によって生産された分子を識別するために、細菌産生物の一部が精製され得、全細菌が使用されるとき、純粋な化合物がどのその成果を模倣するのかを発見されるまで、同じ解析が上記のように実施される。また、上記のアプローチは、この活性を有する菌株のそれぞれのクローンにおいて欠損されている免疫調節分子を識別するために、関心のある微生物の変異体ライブラリーをスクリーンするために使用されるだろう。
【0116】
要約すると、いくつかの実施形態において、抗炎症能力に関して、細菌、細菌により精製若しくは生成された産生物及び/又は他の細菌物質をスクリーニングするための方法並びにシステムが提示される。
【0117】
上記に明らかにした例は、当業者に、開示による小胞と、システムと方法との実施形態を生成する方法および使用方法の完全な開示並びに説明を与えるために提供されており、本発明者らがそれらの開示としてみなすことの範囲を制限するために意図されていない。当業者に明白な開示を行うための上記の様式の変更は、以下の特許請求の範囲内であることを意図している。明細書に記載されている全ての特許および刊行物は、開示が属する当業者の技術の水準を示している。それぞれの参照が個々にその全体が参照として援用されたかのように、この開示における引用のすべての参照は、同じ程度に参照として援用される。
【0118】
背景技術、要約、詳細な説明、および実施例で引用されている各文書(特許、特許出願、雑誌論文、抄録、実験マニュアル、書籍、またはその他の開示を含む)の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、配列表のハードコピーは、これに提出し、対応するコンピュータ読み取り可能な書式は、その全体が参照により本明細書に両方とも組み込まれている。
【0119】
開示が、当然に変化し得る特定の構成物または生物学的システムに限定されないことを理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定することに意図されないことを理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形は、内容が別途明確に指示しない限り、複数の参照対象を含む。内容が別途明確に指示しない限り、用語“複数”は、二つ以上の参照対象を含む。他に定義しない限り、本明細書に使用されているすべての技術用語および科学用語は、開示の属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を持っている。
【0120】
しかし、本明細書に記載されたものと類似または等価の任意の方法および材料は、本明細書に記載されている適当な材料および方法の特定の実施例を試験するために実際に使用されることができる。
【0121】
多数の開示の実施形態は記載されている。それにもかかわらず、種々の変更が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく行われることができることは理解されるであろう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0679654号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0083777号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0092433号明細書
【特許文献4】国際公開第07/092451号
【特許文献5】国際公開第2007/062132号
【非特許文献】
【0123】
【非特許文献1】Xavier,RJ.& Podolsky,D.K.Unravelling the pathogenesis of inflammatory bowel disease.Nature 448,427−434(2007).
【非特許文献2】Mazmanian,S.K.,Round,J.L.& Kasper,D.L.A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease.Nature 453,620−625(2008).
【非特許文献3】Braun,J.& Wei,B.Body traffic:ecology,genetics,and immunity in inflammatory bowel disease.Annu Rev Pathol 2,401−429(2007).
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【非特許文献5】Scheiffele and Fuss.(2001)Induction of TNBS colitis in mice.Current Protocols in Immunology. 15.19.1−15.19.14.
【非特許文献6】Mazmanian,Liu,Tzianabos,and Kasper(2005)An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System.Cell 122:1 107−118.
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【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2009年4月23日に出願され、“抗炎症性特性を有する細菌のためのハイスループットスクリーン”と題名を付された米国仮出願第61/172,101号(事件整理番号CIT−5354−P)の優先権を主張するものであり、その開示の全てを参照して本明細書に組み込む。
【0002】
政府機関の助成金の記述
国立衛生研究所から与えられた助成金第DK078938号に従って、アメリカ合衆国政府はこの発明において所定の権利を有する。
【0003】
本開示は、免疫調節物質、特に免疫調節微生物及び化合物の同定方法並びにシステムに関するものである。
【背景技術】
【0004】
免疫調節微生物及び化合物の同定は、特に興味が持たれている。ヒト消化管は、免疫システムの発達と機能とに大きな影響を有する非常に多くの微生物(腸内細菌叢として知られる)を宿している。哺乳類の消化管に生息する細菌の無数の種のうち、バクテロイデス門は最も豊富なグラム陰性菌の門である。
【0005】
特に、バクテロイデス・フラジリスは、免疫調節特性を有することが示されているヒト共生微生物である。特に、バクテロイデス・フラジリスの免疫調節特性は、該細菌による多糖類A(PSA)の産生に関連している。
【0006】
しかし、バクテロイデス・フラジリス(又は任意の共生細菌)が有益な微生物分子を免疫システムへ伝え、そして免疫調節特性を発揮するメカニズム及び/又は分子トリガーの同定は困難とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免疫調節性、特に抗炎症性特性を有する微生物及び関連する物質をスクリーニングする方法並びにシステムがここに提供される。特に、本明細書に提供されるのは、いくつかの実施形態において、バクテロイデス・フラジリスの免疫調節応答に匹敵する免疫調節応答を個体中に引き起こすことができる細菌物質の同定を可能にする方法及びシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様によれば、免疫調節能を有する細菌物質を同定することを目的として方法が記載される。前記方法は、候補細菌物質を、単独で、或いは、抗原提示細胞の存在下でT細胞と接触させることと、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17若しくはTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症性バイオマーカーの、少なくとも一つの発現を検出することとを含む。前記方法は、前記接触の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することを更に含む。
【0009】
第二の態様によれば、免疫調節能を有する細菌物質を同定することを目的として方法が記載される。前記方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、前記接触の後に前記抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。前記方法は、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17若しくはTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症バイオマーカーの、少なくとも一つの発現を検出することを更に含む。また、前記方法は、前記インキュベートの後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することを更に含む。
【0010】
他の態様によれば、動物において、免疫調節能を有する細菌物質を同定することを目的として方法が記載される。前記方法は、トランスジェニックマーカー非ヒト動物を、候補細菌物質で処理することを含み、前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物は、遺伝子的に修飾されて、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の標識化抗炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17又はTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの、少なくとも一つを発現する。前記方法は、前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカー、或いは、少なくとも一つの前記炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの、トランスジェニックマーカー非ヒト動物における発現を検出することと、前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することとを更に含む。
【0011】
別の態様によれば、細菌物質をスクリーニングするためのシステムが記載される。システムは、本明細書に記載された抗炎症性細菌物質を同定する方法における同時、組み合わせまたは連続使用のために、T細胞と、抗原提示細胞と、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性マーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17又はTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの検出するための試薬と、の少なくとも二つを備える。
【0012】
本明細書に記載された方法及びシステムは、本開示の解釈に応じて当業者により特定可能な、医学的、薬学的、獣医学的な用途、並びに、基礎生物学研究及び様々な用途に関連して使用されることができ、ここで、物質の免疫調節能、特に抗炎症性能を調査することが望ましい。
【0013】
開示についての一つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明において明らかにされている。他の特徴、目的、および利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【0014】
本明細書に取り込まれ、また本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示についての一つ以上の実施形態を示し、発明の詳細な説明及び実施例の部分と共に、本開示の原理および実装を説明するために役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1は、バクテロイデス・フラジリス由来の外膜小胞が、PSAを含むことを示している。図1Aは、EDL(高電子密度層)富化バクテロイデス・フラジリスについて透過型電子顕微鏡法により検出された、野生型バクテロイデス・フラジリスから産生されたOMV(WT−OMV)及びバクテロイデス・フラジリスΔPSAから産生されたOMV(ΔPSA−OMV)を示している。
【図1B】図1Bは、野生型細菌及びPSA−変異細菌からの全細胞(WC)及び外膜小胞(OMV)抽出物のイムノブロット分析を示している。
【図1C】図1Cは、抗PSA及び抗IgG−金コロイド複合体(5nm)で染色し、電子顕微鏡法により分析した精製OMVの免疫金法標識を示す。
【図1D】図1Dは、全細胞及びOMVからの莢膜多糖製剤の糖タンパク質染色を示す。
【図2A】図2は、OMVが、PSA依存的方法で、実験的大腸炎及び小腸炎から動物を保護していることを表す代表的な結果を示す。図2Aは、初期重量から屠殺した日(4日)までの減量として測定された、TNBS大腸炎の誘発(0日)後の動物グループにおける重量減を報告する図表を示す。全てのグループが少なくとも4頭の動物を含み、誤差棒は標準誤差(SEM)を示している。結果は三つの独立した試行を代表する。一元配置分散分析法によりp値は決定されている。*p<0.05;***p<0.001。
【図2B】図2Bは、切除直後の、媒体(EtOH)処理及びTNBSのグループ(n=4頭/グループ)からの未操作の大腸の画像と、長さの定量化(グラフ)を示す。誤差棒はSEMを示す。結果は、独立して実施された三つの混合実験から示される。p値は一元配置分散分析法により決定された。***p<0.001。NS(有意でない)。
【図2C】図2Cは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した、各処理グループの代表的な大腸の断面の画像を示す。
【図2D】図2Dは、標準得点システム(ONLINE METHODS)に従って盲検化病理学者(G.W.L)により指定された動物からの大腸炎スコアを示す(Scheiffele and Fuss. (2001) Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology. 1.19.1−15.19.14)。各記号は個々の動物を表す。結果は、独立して実施された三つの混合実験から示される。***p<0.001。NS:有意でない。
【図2E】図2Eは、全大腸から回収したRNAからのqRT−PCRによるサイトカイン転写分析を説明する図表を示す。誤差棒は、4頭/グループからのSEMを示している。結果は三つの独立した試行の代表である。
【図2F】図2Fは、精製した腸間膜リンパ節由来のCD4+T細胞から回収したRNAからのqRT−PCRによるサイトカイン転写分析を説明する図表を示す。誤差棒は、4頭/グループからのSEMを示している。結果は三つの独立した試行の代表である。
【図3A】図3は、PSAを含むOMVが、処理されたDCと共培養したT細胞からのIL−10産生及びFoxp3発現を誘導することを明らかにする結果を示す。図3Aは、DCによるOMV内部移行のフローサイトメトリー(FC)分析を示す。OMVは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識され、培養されたDCと共に様々な時間(図示のように)インキュベートされた。また、細胞は抗CD11cで染色された。百分率は、CD11C+OMV+集団を示す。
【図3B】図3Bは、WT−OMV及びΔPSA−OMVと共に様々な時間(図示のように)インキュベートされ、且つ、抗CD11c及び抗MHCIIで染色されたDCのFCプロットを示す。百分率は、CD11C+細胞中のMHCII+集団を示す。
【図3C】図3Cは、DC又はDC−T細胞共培養からの培養液上澄みのIL−10のELISA分析を示しており、ここで、DCは、OMVと18時間振動され、洗浄され、そして原発性CD4+T細胞とインキュベートされ、或いは、されなかった。上澄みは培養4日目に採取された。培養液試料は、OMVと振動されていないが、他の点では全く同じように処理されたDCを示す。抗CD3は、T細胞応答を増幅するためにいくつかの試料に加えられた。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、五つ以上の独立した試行を代表する。*p<0.05;**p<0.01。
【図3D】図3Dの左図は、IL−10−/−動物から分化したDCを含む以外は、図3Cと同様なELISA分析を示す。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、三つの独立した試行を代表する。*p<0.05。NS:有意でない。図3Dの右図は、TLR2−/−動物から分化したDCを含む以外は、図3Cと同様なELISA分析を示す。SEA:ブドウ球菌エンテロトキシンA。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、三つの独立した試行を代表する。*p<0.05。NS:有意でない。
【図3E】図3Eは、DCとの生体外での培養の後に精製したT細胞亜集団から得られたRNAのqRT−PCRにより決定された、IL−10(左図)及びFoxp3(右図)の転写濃度を示す。共培養は(c−e)のように作られ、4日目に、CD4+CD25+及びCD4+CD25−T細胞は磁器ビーズ分離で精製され(>95%純度)、そしてRNAはRNeasy miniキットを用いて抽出された。相対値はβ−アクチンに標準化した。誤差棒は、三つの試料からのSEMを示している。結果は、三つの独立した試行を代表する。*p<0.05。***p<0.001。NS:有意でない。
【図3F】図3Fは、共培養が(c−e)のように作られたが、Foxp3−GFPマウス由来のCD4+T細胞を使用したことを示す。OMVで振動したDCとの4日間の培養の後に、細胞は抗CD4及びFCを用いたGFP発現により検出されたFoxp3で染色された。結果は、二つの独立した試行を代表する。
【図4A】図4は、PSA含有OMVによる、Tregの抑制機能の生体外発生を示す例示的な結果を表している。図4Aは、OMVで処理されたDCと4日間共培養した後の、CD4+T細胞亜集団によるIL−10発現のFCヒストグラムを示す。脾臓のCD4+T細胞はIL−10−GFPマウスから精製され、共培養の後に抗CD4及び抗CD25で染色され、そして、GFP発現によりIL−10発現が測定された。百分率は、CD4+CD25+及びCD4+CD25−亜集合のIL−10+集団を示す。結果は、三つの独立した試行を代表する。
【図4B】図4Bは、媒体(コントロール)、WT−OMV及びΔPSA−OMVで処理したDCで共培養した後の、精製されたCD4+CD25+T細胞による単純な応答細胞の生体外抑制を示す。細胞増殖は、CFSR希釈のFCにより測定された。Treg:Teffの比は示されており、百分率は全増殖細胞を示す。No TregはCD4+CD25−細胞のみである。結果は、二つの独立した試行を代表する。
【図4C】図4Cは、CD4+T細胞の、それぞれの増殖の最大時における百分率の定量化を示す(図4B中の1、2、3、4、5と同様に標識されている)。結果は、独立して実施された三つの混合実験から示される。*p<0.05。NS:有意でない。
【図5】図5は、野生型バクテロイデス・フラジリス及びPSA欠損変異バクテロイデス・フラジリスが、生体外培養中に同等のOMVを産出することを示す。各OMV製剤から回収された総タンパク質量は、収集時の培養液のOD600により標準化された。誤差棒はSEMを示している。結果は、独立して実施された十以上の混合実験から示される。p値はステューデントのt検定で決定された。NS:有意でない。
【図6】図6は、野生型バクテロイデス・フラジリスから精製した多数OMVがPSAを含むことを示している。精製されたOMV上のPSAの免疫金法標識は、試料の10領域(1μm×1μm)のランダム標本抽出で観測されたWT−OMVの60%以下がPSAに関連するが、観測されたΔPSA−OMVがPSAについて陽性に染色されていないことを示す(抗IgG−金を用いたWT−OMVの免疫金法標識は、標識の特異性のみを確認する)。
【図7】図7は、野生型バクテロイデス・フラジリス又はPSA欠損変異バクテロイデス・フラジリス由来のOMVが、タンパク質構成に有意差がないことを示す。プロテオーム質量分析法は、WT−OMVとΔPSA−OMVとの間で同定されたタンパク質の100%重複(各タンパク質について同定された一つ以上の特徴的なペプチド)を示す。全ての同定されたタンパク質の間で、我々は、それぞれのタンパク質について同定された特徴的なペプチドの番号に従い、相対的に大量のタンパク質の量を準定量的に比較した。それらの大部分は、独立して機能するような差異を示さない。誤差棒はSEMを示している。p値はステューデントのt検定で決定された。**p<0.01;*p<0.05;NS:有意でない。
【図8】図8は、アクチン重合が、DCによるOMVの取り込みに必要とされることを示している。サイトカラシンDで予め処理されたDCによるOMV内部移行のフローサイトメトリー分析である。OMVは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識され、培養されたDCと共に様々な時間で(図に示されている)インキュベートされる。細胞は抗CD11cで染色された。百分率はCD11C+OMV+集合を示す。
【図9】図9は、WT−OMV又はΔPSA−OMVが内部に取り込まれ、DCの細胞質に局在化されていることを示す。DCによるOMV(WT又はΔPSA)内部移行の蛍光顕微鏡写真である。OMVは、FITC(灰色矢印)で標識され、培養されたDCと二時間インキュベートされた。細胞は固定化され、細胞膜はコムギ胚芽凝集素(WGA)−テトラメチルローダミン(黒色矢印)を用いて染色された。スケールバー:7.5μm。
【図10】図10は、WT−OMV及びΔPSA−OMVが、DC活性化のための共刺激分子を増加させることを示している。WT−OMV及びΔPSA−OMVを用いて様々な時間で(図に示す)インキュベートされ、且つ、抗CD11c及び抗CD86で染色された、DCのFCプロットである。百分率はCD11c+の中のCD86+集合を示す。
【図11】図11は、本明細書に記載された実施形態における、バイオマーカーのPSA誘発発現を示す。各図表で示したデータは、各々の三つの独立した実験を代表する。色が薄い棒は、PBS処理されたマウスから誘導した細胞を示し、色が濃い棒は、PSA処理されたマウスから誘導した細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
方法およびシステムは、免疫調節細菌物質を同定するために適していることが記載されている。
【0017】
本明細書で使用される用語“免疫調節”は、炎症性応答のないことに関連付けられた状態を促進する能力を意味する。具体的な免疫調節特性は抗炎症性特性を含み、ここで、用語“抗炎症性”は、炎症を防ぐ若しくは低減する物質又は処理の特性を指す。
【0018】
本明細書で使用される用語“炎症”、“炎症性状態”又は“炎症性応答”は、病原菌、損傷細胞、又は刺激物質などの有害な刺激に対する、個体の維管束組織の複雑な生物学的応答を意味し、またサイトカイン、より具体的には炎症誘発性サイトカイン(すなわち、ミクログリアなどの活性化免疫細胞によって主に産生され、炎症性応答の増幅に伴われるサイトカイン)の分泌を含む。例示的な炎症誘発性サイトカインは、限定されないが、IL−1、IL−6、TNF−α、IL−17、IL−21、及びIL−23を含む。例示的な炎症は、急性炎症及び慢性炎症を含む。本明細書で使用される単語“急性炎症”は、血漿及び白血球による組織の浸潤に起因する、炎症の典型的兆候(腫れ、発赤、痛み、熱、および機能の喪失)を特徴とする短期的過程を意味する。急性炎症は、一般的に傷害性刺激が存在するかぎり発生し、そして刺激が、瘢痕化(線維症)によって除去され、壊滅され、又は遮断されると急性炎症が止む。本明細書で使用される単語“慢性炎症”は、同時発生性活動性炎症、組織破壊、及び修復の試みを特徴とする状態を意味する。慢性炎症は、上記の急性炎症の典型的兆候によって特徴付けられない。代わりに、慢性的に炎症を起こした組織は、単核免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、および形質細胞)の浸潤、組織破壊、並びに血管新生及び線維症を含む治療の試みにより特徴付けられる。
【0019】
本明細書で使用される用語“物質”とは、特定の又は明確な化学構造の物体を意味する。用語“細菌物質”とは、生きた細菌、死んだ細菌、及び特に加熱死菌、細菌抽出物、細菌由来の精製分子、細菌から精製された分子の組み合わせ、又は細菌から若しくは細菌由来の精製小胞から精製された一つの分子を若しくは分子の組み合わせを含む小胞などの細菌由来の物質を意味する。特に、細菌物質は、細菌の表面から放出される小胞であって、遠隔の標的細胞へ一連の積み荷分子を運ぶ膜外小胞により形成され得る。細菌物質は、同じ細菌から誘導した物質及び二つ以上の異なる細菌から誘導した物質を含む。
【0020】
本明細書で使用される用語“細菌”は、通常、長さ数マイクロメートルで、種々の形状を有している単細胞、原核細胞、微生物の大きなグループを意味する。特に、本開示の意味における細菌は、ヒトフローラの細菌、すなわち、ヒト組織の表面上並びに内部及び体液中、例えば、皮膚の深層、唾液中、口腔又は膣粘膜中及び消化管中に宿る微生物の集合を含む。細菌フローラは、腸フローラ(ヒト消化管において検出可能な細菌)、膣内フローラ(女性ヒトにおいて子宮から身体外側へつながる線維筋管路中において検出可能な細菌)及び皮膚フローラ(ヒト皮膚において検出可能な細菌)を含む。さらに、特に、本開示の意味における細菌とは、腸フローラの一つ以上のバクテロイデス門、特に、一つ以上のバクテロイデス属(ヒトと共生し、当業者によって識別可能である、グラム陰性の非芽胞形成嫌気性桿菌の属)により形成され得る。代表的なバクテロイデス属の細菌は、バクテロイデス・フラジリスである。
【0021】
本明細書に記載の方法及びシステムにおいて、細菌物質の免疫調節能は、炎症性バイオマーカーおよび/または抗炎症性バイオマーカーの検出により決定され得る。本明細書で使用される用語“バイオマーカー”は、細胞周期の段階、生物学的プロセス、並びに健康状態及び疾患状態のような、生物学的状態の指標として使用される物質または特徴を意味する。バイオマーカーの存在、欠如、減少、発現上昇は、特定の状態に関連しており、また特定の状態を表示している。特に、本明細書に使用される用語“炎症性バイオマーカー”は、炎症状態の存在を表示しており、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL-21、IL-22、IL−23、IL-17、TNFα、並びに当業者により同定可能な追加の細胞マーカー及びサイトカインを含むバイオマーカーを意味する。本明細書に使用される用語“抗炎症性バイオマーカー”は、炎症状態がないことを表示し、Foxp3、IL−10、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムB並びに当業者により同定可能な追加の細胞マーカー及びサイトカインを含むバイオマーカーを意味する。
【0022】
本明細書で使用される用語“トランスジェニックマーカー非ヒト動物”とは、自然に又は多くの遺伝子工学的操作のうちの任意の操作により移植された非天然の遺伝子材料を有する動物を指す。そのような非天然の遺伝子材料(又は導入遺伝子)は、“バイオマーカー”(本明細書で定義される)として作用し得、及び/又は非ヒト動物においてRNA若しくはタンパク質を産生する能力を保持し得る。
【0023】
一実施形態において、免疫調節細菌物質の同定は、単独で又は抗原提示細胞存在下でT細胞により、炎症性又は抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することにより実行される。
【0024】
本明細書で使用される用語“T細胞”は、当業者により同定可能な異なる細胞種を含む、リンパ球(白血球の一種)の亜群を意味する。本開示によるヘルパーT細胞は、エフェクターTh細胞(Th1、Th2、及びTh17など)とサプレッサーT細胞(Tregなど)とを含み、エフェクターTh細胞は即ち、ヘルパーT細胞を含む、他の白血球と刺激し又は相互作用するサイトカイン、タンパク質又はペプチドを分泌するヘルパー細胞であり、サプレッサーT細胞は即ち、免疫システムの活性を抑制し、それにより免疫システムの恒常性と自己抗原への耐性とを維持するT細胞である。
【0025】
本明細書で使用される用語“抗原提示細胞”とは、細胞表面上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を用いて外来抗原複合体を提示する細胞を意味する。特に、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞及び当業者により同定可能な追加の細胞を含む。
【0026】
一実施形態において、本明細書に記載される方法は、候補細菌物質を、単独で又は又は抗原提示細胞存在下でT細胞と、接触することを含む。一実施形態において、本明細書に記載される方法は、候補細菌物質が抗原提示細胞と接触し、該接触の後の、前記抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。
【0027】
本明細書で使用される用語“接触”又は“インキュベート”は、二つの項目の間の少なくとも一つの相互関係のある動作若しくは影響、又は相互関係のない動作若しくは影響が発揮されうるような状況の下に、一時的に与えられた二つの項目間で空間的関係の創造へ指向される動作を意味する。特に、インキュベートすることは、細菌物質と細胞との間で実行されることができ、細菌物質と細胞との間で直接的接触及び/若しくは直接的相互作用という結果になり、又は細菌物質の間接的作用の後に(例えば、細胞と直接的相互作用する他の物質の活性化又は修飾の後に)細胞の修飾という結果になる。
【0028】
インキュベートはまた、細菌物質の第1の細胞との接触の後に、第1の細胞と第2の細胞との間で実行され得、その結果、第1の細胞と第2の細胞との間の直接的接触及び/又は直接的相互作用の結果になり得、又は第1の細胞の間接的作用の後に(例えば、第2の細胞と直接的な相互作用するサイトカイン又は他の分子の分泌の後に)第2の細胞の修飾の結果になり得る。
【0029】
例示的な、細菌物質をT細胞又は抗原提示細胞と接触させることは、特異的な細胞及び特異的な細菌物質に依存し、本開示を読む当業者により同定可能である適当な条件下で、細菌物質を含有する溶液内において、一つ以上の細胞種を含む全試料を溶液槽により、生体外で実行され得る。さらなる例示的な、細菌物質と、T細胞又は抗原提示細胞との接触は、適した条件下で精製細胞の細胞培養液へ細菌物質を生体外で誘導することによって、及び個体(標識化炎症性バイオマーカー又は抗炎症性バイオマーカーを発現するために遺伝子的に修飾されているヒト以外の遺伝子移植の動物)を細菌物質を用いて生体内処理することによって、実行され得る。処理は、細菌物質を、局所投与又は全身投与することによって実行され得る。全身投与は、腸内投与(例えば、経口投与、胃栄養管による投与、十二指腸栄養管による投与、胃瘻造設、経腸栄養、および直腸投与)および非経口投与(例えば静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、膀胱内注入)を含む。局所投与は、限定されないが、経皮投与、吸入投与(例えば、喘息治療薬内に)、浣腸、点眼(例えば、結膜上に)、点耳、鼻腔内経路(例えば、うっ血除去点鼻薬)、及び膣内投与を含む。
【0030】
例示的な、抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることは、T細胞を含む細胞培養液と抗原提示細胞を含む細胞培養液とを生体外混合することにより、T細胞の培養液に精製抗原提示細胞を生体外で添加することにより、又は抗原提示細胞の培養液に精製T細胞を生体外で添加することにより実行され得る。さらなる例示的な、生体内でのT細胞と抗原提示細胞とのさらなるインキュベートすることは、個体組織への抗原提示細胞の移植、T細胞を含む組織、又は抗原提示細胞を含む個体組織の組織へのT細胞の移植を含む。一実施形態において、個体は、標識化炎症性バイオマーカーまたは抗炎症性バイオマーカーを発現するように遺伝子的に修飾されたヒト以外のトランスジェニック動物である。
【0031】
物質と、抗原提示細胞又はT細胞との接触、及び抗原提示細胞とT細胞とのインキュベートを実行するための適切なさらなる手順や手法は、本開示を読むことにより当業者によって生体外又は生体内で同定することができる。
【0032】
接触またはインキュベートを実行するための適した条件は、当業者により同定可能であり、例えば、適した生育環境を細胞に与えるために、温度、また任意に大気のCO2、N2及び/又はO2の濃度、相対湿度、栄養量並びにその他の適した条件を調整し、監視するロボットの細胞培養器を使用することによって、生体外又は適当な環境下での細胞培養に適した環境の提供を含む。また、生体外又は生体内での、物質及び細胞の接触を行うためのさらなる適当な手順や手法は、本開示を読むことにより当業者によって同定され得る。
【0033】
生体外培養液に又は動物生体内に与えられた物質量だけでなく、インキュベートの時間フレームは、特定の細菌物質、特定のT細胞、抗原提示細胞、処理される動物、関連する適当な条件及び実験計画の実験的な観点において、当業者によって決定され得る。
【0034】
本明細書に記載の方法及びシステムにおいて、炎症性バイオマーカー又は抗炎症性バイオマーカーの発現の検出は、標識化バイオマーカー若しくはバイオマーカーに対し特異的な標識化分子又はそれらに関連した分子を含む、標識化分子の使用を含む、当業者にとって同定可能な手法により、生体外又は生体内で実行され得る。
【0035】
本明細書で用いられる用語“検出する”又は“検出”は、限定されないが、試料、反応混合物、分子複合体及び物質を含む、空間の限られた部分において分析又は関連する信号の実在、存在又は事実の決定を示す。検出は、分析物の数量若しくは量又は関連する信号の測定を参照し、測定に関連し、測定を含むとき(定量において同様に参照される)、“定量的”であり、限定されないが、分析物若しくは関連する信号の量又は比率を決めるために計画された任意の分析を含む。検出は、他の分析物又は関連する信号の相対的存在量に関して、分析物若しくは関連する信号の質又は種類の同定を、参照し、関連し、又は含むとき、“定性的”であり、定量化されない。
【0036】
用語“標識”及び“標識化分子”又は検出可能な分子を指す複合体若しくは分子の成分として本明細書で使用される用語は、限定されないが、放射性同位元素、蛍光物質、化学発光染料、発色団、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、染料、金属イオン、ナノ粒子、金属ゾル、リガンド(ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はハプテンなど)などを含む。用語“蛍光物質”は、検出可能な画像中に蛍光を示すことができる物質又はその部分を指す。結果として、本明細書で使用する言葉“信号”又は“標識信号”は、標識検出を可能にする標識から放出される信号を意味し、限定されないが、放射能、蛍光、化学発光、酵素反応の結果物中の化合物の生産などを含む。
【0037】
検出は、バイオマーカー、前駆体若しくはその類似体、及び/又はそれに関連する分析物の発現のレベルを検出することにより実行され得る。二つの項目に参照して本明細書で使用される言葉“に関連する”は、第一の項目の出現が、第二の項目の出現によって同時に伴われるような二つの項目間の関係を示し、限定されないが、因果関係及び兆候/症状−病気の関係を含む。特に、検出は、定性的又は定量的に実行され、RNA、タンパク質、その前駆体、異なる種類(すなわちmRNA、tRNA、及びrRNA)及び/若しくは分解生成物などの分子の検出、並びに/又はそれらに関連する検出若しくは測定可能な特性を含み得る。検出を実行するための技術および手順は、本開示を読む当業者により同定可能である。
【0038】
例示的な、バイオマーカー発現の検出のための方法は、限定されないが、ELISAと、Q−PCRと、FACSによって検出される細胞内サイトカイン染色とを含む、当業者に周知の方法を含む。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現は、蛍光物質で標識された、バイオマーカーに又はそれに関連する分子に特異な抗体を使用して実施される細胞培養液上の蛍光に基づく読み出しによって検出され、蛍光物質としては、網羅的でないが、低分子色素、タンパク質の発色団、量子ドット、及び金ナノ粒子を含む。一実施形態において、バイオマーカーの発現は、生体内で(例えば、動物組織内で)又は生体外で(例えば、細胞培養液中で)、バイオマーカープロモーターの転写制御下で標識の発現の検出により、検出され得る。それらのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、具体的にはIL−10又はFoxp3であり得る。さらなる手法は、本開示を読むことで当業者により同定可能であり、またさらなる詳細について説明されないだろう。
【0039】
本明細書に記載した方法及びシステムにおいて、候補細菌物質の抗炎症性能は、接触及び/又はインキュベートに続く、一つ以上の抗炎症性バイオマーカーの発現の増加又は一つ以上の炎症性バイオマーカーの発現の減少の検出を通じて決定され得る。バイオマーカー発現の増加及び/又は減少を決定することは、接触及び/又はインキュベートの後のバイオマーカーの検出発現と、接触及び/又はインキュベートがない状態で、同じバイオマーカーの予め決定された検出発現とを比較することにより実行される。バイオマーカーの発現の増加及び/又は減少を決定することは、検出された発現マーカーと、接触及び/又はインキュベートがない状態においてコントロール細胞で同じバイオマーカーの検出された発現とを、比較することにより実行されることができる。
【0040】
引用文献は、実施例の部分に記載されており、抗炎症性バイオマーカーのIL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBの発現の増加並びに炎症性バイオマーカーのTNF−αまたはIL−17Aの発現の減少が、上記発現様式とバクテロイデス・フラジリスの生物学的活性との関連性を支持する、バクテロイデス・フラジリスの作用の機構に関連する。バクテロイデス・フラジリスの抗炎症性能は、当業者により同定可能であり、限定されないが、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5を含む、様々な出版物や特許に説明されており、各々のその全体が本明細書において参照され援用される。当業者は、候補細菌物質の特定の抗炎症性能が、産生されたサイトカインと、本明細書に記載の方法によって同定された候補細菌物質によって活性化された細胞との特定のセットのさらなる決定に基づいて、決定される可能性があることを理解するであろう。
【0041】
一実施形態において、抗炎症性バイオマーカーの発現の増加又は炎症性バイオマーカーの発現の低下の検出は、IL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムB又はそれらの組み合わせなどの抗炎症性分子を誘導する物質の能力、または、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17若しくはTNFα又はそれらの組み合わせなどの炎症性サイトカインを抑制する物質の能力を示す。
【0042】
一実施形態において、方法は、生体外で及び/又は生体内で、候補細菌物質を、単独で又は抗原提示細胞存在下でT細胞と接触させることとし、またIL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される少なくとも一つの抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することを含み、ここで、接触の後の抗炎症性バイオマーカーの発現の増加は候補細菌物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL−10、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及び/又はグランザイムBの発現は、Foxp3を発現するT細胞上で、また特にFoxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0043】
一実施形態において、方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、接触の後に抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。この方法は、Foxp3、IL−10、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される少なくとも一つの抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することをさらに含み、ここで、インキュベートの後のバイオマーカー発現の増加の検出が候補物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL−10、パーフォリン及び/又はグランザイムBはFoxp3を発現するT細胞上で、また特に、Foxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0044】
一実施形態において、方法は、候補細菌物質を、単独で又は抗原提示細胞存在下でT細胞と接触させることと、IL17及びTNFαからなる群より選択される少なくとも一つの炎症性バイオマーカーの発現を検出することを含み、ここで、接触の後に炎症性バイオマーカーの発現の減少は候補細菌物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL17及びTNFαの発現は、Foxp3を発現するT細胞上で、また特に、Foxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0045】
一実施形態において、方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、接触の後に抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることを含む。該方法は、IL17及びTNFαからなる群より選択される少なくとも一つの抗炎症性バイオマーカーの発現を検出することをさらに含み、ここで、接触の後の炎症性バイオマーカー発現の減少が候補物質の抗炎症性能を意味する。特に、それらのいくつかの実施形態において、IL17及びTNFαは、Foxp3を発現するT細胞上で、また特に、Foxp3を発現する制御性T細胞上で実行される。
【0046】
一実施形態において、候補細菌物質は純粋なプール内の細菌を含む。他の実施形態において、候補細菌物質は混成のプール内の細菌を含む。細菌は生きた菌、死んだ菌、細菌から分離された抽出物若しくは産生物、又はそれぞれの組み合わせとすることができる。細菌はまた、実験室株、ATCCなどのリポジトリからの分離株、動物からの分離株、ヒトからの分離株、またはそれぞれの組み合わせであってもよい。
【0047】
一実施形態において、動物から分離株は排泄物から分離される。分離株はまた、腸内容物又は排泄物及び他の腸内容物の組み合わせを由来とすることができる。一実施形態において、ヒトからの分離株は排泄物から分離される。分離株はまた、腸内容物又は排泄物及び他の腸内容物の組み合わせを由来とすることができる。
【0048】
一実施形態において、方法は、トランスジェニックマーカー非ヒト動物を、特に、マウス又はラットのようなトランスジェニックマーカー非ヒト哺乳類を、候補物質で処理することを含み、トランスジェニックマーカー非ヒト動物は一般的に、IL−10及びFoxp3だけでなくパーフォリン及びグランザイムB、IL17及びTNFαからなる群から選択される標識化抗炎症性バイオマーカー又は炎症性バイオマーカーを発現するように遺伝子的に修飾されており、処理後にトランスジェニックマーカー非ヒト動物におけるバイオマーカー発現を検出する。
【0049】
特に、一実施形態において、前述のトランスジェニック非ヒト動物のモデルは、物質を経口に若しくは静脈内に処理され得、又は強制経口により生きた菌を恒久的にコロニー化され得、バイオマーカー発現のFoxp3又はIL10発現の量が、物質の免疫調節能の測定として、脾臓、腸間膜リンパ節、小腸及び大腸、肺、膵臓、および骨髄を含むマウスの様々なコンパートメントにおいて観察されるだろう。
【0050】
一実施形態において、樹状細胞、T細胞、制御性T細胞、B細胞又はマクロファージは、IL−10(若しくは、T細胞の分析の場合にはFoxp3)の発現が蛍光体である緑色蛍光タンパク質(GFP)でマークされているマウスから精製され又は分化される。これらの実施形態において、候補細菌物質は、前記細胞種のいずれかと接触させられ、GFPの発現量が、試験される物質の免疫調節能を意味することを決定される。また、樹状細胞または他の抗原提示細胞は物質とインキュベートすることができ、物質が洗浄されることができ、その後、樹状細胞は、T細胞から免疫調節活性を誘発するために樹状細胞の免疫調節能を決定するためにT細胞とインキュベートすることができる。GFPの発現は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)またはマイクロプレートリーダーを用いて決定されることができる。
【0051】
一実施形態において、T細胞と、抗原提示細胞と、IL−10、Foxp3、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、並びにIL17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの検出をするための試薬とは、本明細書に記載の方法にしたがって免疫調節能を有する細菌物質を同定するためのシステムを含み得る。
【0052】
一実施形態において、システムは、樹状細胞、T細胞、制御性T細胞、B細胞及び/又はマクロファージを含み、いくつかの実施形態において、樹状細胞、T細胞、制御性T細胞、B細胞及び/又はマクロファージがIL−10(若しくは、T細胞の分析の場合にはFoxp3)の発現が蛍光体である緑色蛍光タンパク質(GFP)でマークされているマウスから精製され又は分化されることができる。
【0053】
システムは、部品のキットの形態で提供され得る。部品のキットにおいて、方法を実行するためのマルチリガンド捕捉剤および他の試薬は、キット内で独立的に含まれ得る。抗原提示細胞、T細胞及び試薬は、一つ以上の構成物中に含められ得、また各々の細胞及び試薬は、適当な媒体と共に構成物にし得る。
【0054】
さらなる構成部分は、標識化分子及び特に、抗炎症性バイオマーカー若しくは炎症性バイオマーカーに特異的な標識化捕捉剤、又はその発現に関連する分子、マイクロ流体チップ、標準試料、並びに本開示を読むことで当業者により同定可能なさらなる格子得部分を含むことができる。
【0055】
本明細書で用いられる用語“捕捉剤”は、目標物に対し特異的に結合し得る化合物を示す。第一の分子に対する第二の分子への結合を参照するときの本明細書で使用される単語“特異的な”“特異的に”又は“特異性”は、第一の分子と第二の分子との安定した複合体の認識、接触及び形成とともに、第一の分子と第二の分子とのそれぞれが、存在し得る他の分子と一緒に安定な複合体の認識をせず、接触をせず及び形成をしないことが実質的に少ないことを指す。例示的な特異な結合としては、抗体−抗原相互作用、分子レセプター−リガンド相互作用、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、酵素基質の相互作用などである。“安定な複合体”は、検出可能であり、安定性の任意のレベルを必要とせず、しかしより大きな安定が通常好ましい。いくつかの実施形態において、キットは標識化ポリヌクレオチド又は標識化抗体を含みうる。
【0056】
キットの構成部分は、本明細書中に記載する方法を実行するために、適当な指示及び他の必要な試薬を与え得る。キットは通常、別々の容器に構成物を含むだろう。指示(例えば、解析するにために、書面上に又はテープ若しくはCD−ROMのように電子的に対応されているもの上に、記載された指示又は音声指示)は、キット内に通常含まれるだろう。キットはまた、特定の使用の方法、他のパッケージ化試薬及び材料(すなわち洗浄用バッファーなど)に応じて含めることができる。
【0057】
好適な担体剤または構成物の助剤の同定に関するさらなる詳細、およびキットの一般的な製造及び包装は、本開示を読む当業者により同定され得る。
【実施例】
【0058】
本明細書に記載する方法及びシステム並びに関連する構成物は、さらに後の実施例においてさらに示され、実施例は、例示のために提供され、制限されることを意図されていない。
【0059】
特に、次の実施例は、例示的な細胞培養、並びにPSAを細胞と接触させ及びIL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン、グランザイムB、TNFα、IL17Aの発現を検出するための方法を示している。当業者は、本開示に従うことにより、PSA及びバクテロイデス・フラジリスの追加物質に対する免疫調節活性を検出するために適した、PSA及びバクテロイデス・フラジリス並びに細胞/培養液/動物のシステムのために、詳細において述べられている特徴の適応性を理解するだろう。同様に、当業者は、本明細書に記載された他のバイオマーカーへの、IL−10、Foxp3、TGFβl、TGFβ2、パーフォリン、グランザイムB、TNFα、IL17Aのようなバイオマーカーの検出の適応性を理解するだろう。
【0060】
材料及び方法
以下の材料および方法は、本明細書に例示した免疫調節物質の検出を目的に全ての方法及びシステムのために使用された。
【0061】
菌種、培養条件及びマウス
バクテロイデス・フラジリス株 NCTC 9343は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から得、その同質遺伝子的PSA欠損変異株及びmpi44変異株(PSAのみを産生し、他の多糖類を産生しない)は、「MJ.Coyne,A.O.Tzianabos,B.C.Mallory,V.J.Carey,D.L.Kasper and L.E.Comstock,(2001)Polysaccharide biosynthesis locus required for virulence of Bacteroides fragilis,Infect.Immun.69:4342−4350」に記載されている。細菌は、1LのddH2O中に37gBHI(BD社#237200)、0.5μg/mlヘミン(Sigma社 H5533)、及び0.5μg/mlビタミンK(Sigma社 V3501)を含む富栄養培地、又は1LのRPMI(Invitrogen社 SKU#11835−030)中に8gグルコース、1%FBS、0.5μg/mlヘミン、及び0.5μg/mlビタミンKを含むカスタマイズした最小培地(MM)のいずれかで生育された。C57BL/6及びBalb/c株のSPFマウスはTaconic Farms社(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から購入された。TLR2−/−及びIL−10ノックアウトマウスは、Jacksom laboratories社から購入された。IL−10GFPマウスはthe laboratory of Christopher Karp from Cincinnati Childrens medical hospitalから調達し、また、Foxp3GFPマウスはthe laboratory of Talal Chatila from the University of California Los Angelesから得られた。
【0062】
EDL富化細菌集団の分離
パーコール(GE Healthcare社#17−0891−01)不連続密度勾配遠心分離は、野生型バクテロイデス・フラジリス及びバクテロイデス・フラジリスΔPSAの両方におけるEDL分離のために用いられた(Patrick S, Reid JH.(1983)Separation of capsulate and non−capsulate Bacteroides fragilis on a discontinuous density gradient. J Med Microbiol.16(2):239−41)。簡単に言えば、20%、40%、60%、80%のパーコール勾配(PBSで希釈)は14ml試験管に作製された(各層2ml)。その後、PBSに再懸濁されたバクテロイデス・フラジリス培養液は20%パーコール層の上部に慎重に加えられた。続いて、勾配は、室温、800g、20分間の条件で遠心分離された。EDL富化細菌は、分離後勾配の40%−60%の境界面から回収され得る。
【0063】
OMVの精製と標識
この方法は、E.coliからOMVを調製するために、以前記載された手順(Amanda L. Horstman and Meta J.Kuehn.(2000)Enterotoxigenic Escherichia coli secretes active heat−labile enterotoxin via outer membrane vesicles.J Biol Chem.275:12489−12496)に適応された。簡単に言えば、EDL富化バクテロイデス・フラジリスは、カスタマイズ化されたMMの中で生育された。OMVは、4000g、2時間、4℃の条件で遠心により培養液中の細菌が取り除かれた上澄みから回収され、PBSで二回洗浄され、0.45μmスピンカラム(Millipore社 #20−218)によりろ過された。精製されたOMVの総タンパク質濃度はBradford分析(Biorad社 #500−0205)により測定した。FITC標識化OMVは、以前記載されたように調製された(Nicole C. Kesty and Meta J.Keuhn.(2004)Incorporation of heterologous outer membrane and periplasmic proteins into Escherichia coli outer membrane vesicles.J Biol Chem.279:2069−2076)。簡単に言えば、OMVは、室温で1時間、染色緩衝液(lmg/ml FITC (Thermo Scientific社 #46424),100mM NaCl,50mM Na2CO3,pH9.2)中でインキュベートされた。標識化OMVは、4℃、30分、40,000gの条件で遠心分離により収集され、PBS+200mM NaClで2回洗浄された。
【0064】
細菌超薄切片の電子顕微鏡
EDL富化バクテロイデス・フラジリスの超薄切片は、以前記載されたように調製された(Patrick S, McKenna JP, O’Hagan S, Dermott E.(1996)A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles.Microb Pathog.20(4):191−202)。簡単に言えば、試料は、2.5%(v/v)グルタルアルデヒド(Sigma社 G5882)のカコジル酸緩衝液中で、4℃で、一晩かけて固定化され、そして、四酸化オスミウム(1%、w/v)中で、3時間、室温、暗所でさらに固定化された。ルテニウムレッド(lmg/ml、Sigma社 R2751)は、固定化手順の両方に含有された。その後、固定化試料は、アルコールによる一連の段階的脱水後、エポキシ樹脂に包埋された。TEMにより可視化する前に、超薄切片(100−200nm)は切断され、ホルムバール/炭素被膜銅格子上で2%の酢酸ウラニル及びクエン酸鉛でネガティブ染色された。
【0065】
精製OMVの免疫金標識
この方法は、以前記載された手順(Patrick S,McKenna JP,O’Hagan S,Dermott E.(1996)A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles.Microb Pathog.20(4):191−202)に適応された。簡単に言えば、ごく少量の精製OMVは、ホルムバール/炭素被膜金格子(EMS社 #FF200−Au)に塗られ、空気で乾燥された。免疫金標識は、“OMV”が付された格子の側面が下になるように浮かした状態にされ、一連の抗体及び洗浄溶液の滴下により、室温で実行された。具体的には、試料は、0.12%グリシン中で5分間のインキュベートの後、10%FBS中で10分間ブロックされ、続いて、PBSで3分間の洗浄が5回実施された。その後、5nm 金粒子を有する第二の抗体−IgG結合体(Dr.Paul Webster、House Ear Institute、Los Angelesからの親切な寄贈品)は20分間試料に適用され、続いて、再度、PBSを用いて4分間の洗浄を5回実施された。標識後、試料は1%グルタルアルデヒド中で5分間固定化され、PBSの1分間×4回の滴下へ、またH2O1分間×4回の滴下へ格子が移されることで十分に洗浄された。対比染色は、氷上で10分間、3−5%酢酸ウラニルが2%メチルセルロースに溶解した溶液の滴下に格子が配置されることにより実施された。最後に、格子は、ワイヤーループにより染色液から取り除かれ、空気乾燥された。メチルセルロースの薄膜で覆われた試料は、ループから取り除かれ、透過型電子顕微鏡(TEM)によって可視化するために使用された。
【0066】
糖タンパク質分析
全細胞抽出物またはOMV(バクテロイデス・フラジリス変異株mpi44由来)から精製したPSAはSDS−PAGEに供され、続いて、ゲルは、PSAの存在を示すための糖タンパク質染色キット(G bioscience社 #786−254)により染色された。
【0067】
化学的(TNBS)誘発性の実験的大腸炎
この手順は、以前記載された方法(Scheiffele and Fuss.(2001)Induction of TNBS colitis in mice.Current Protocols in Immunology.15.19.1−15.19.14)に適応された。簡単に述べると、野生型(Balb/c)雄マウスは、TNBS投与される前に、PBS、WT−OMV(5μg)又はΔPSA−OMV(5μg)を一日おきに一週間、経口処理された。処理されたマウスは、イソフルランで麻酔され、2%TNBS(50%EtOH中、Sigm社 P2297)の直腸投与が3.5Fカテーテル(Instech Solomon社 SIL−C35)を通じて適用された。TNBS投与の後、経口処理はさらに二回続けられ、最後の処置後1−2日にマウスは分析された。
【0068】
組織病理学的解析
マウスの大腸は、10%中性緩衝ホルマリン液(ScyTek Laboratories社 CAS#50−00−0)に固定され、H&E染色のためにPacific Pathology社により処理された。各大腸断片の大腸炎スコアは、病理学者(Dr. Gregory Lawson, David Geffen School of Medicine, UCLA, Los Angeles)によって盲検方式で評価された。組織学的画像は光学顕微鏡(Zeiss社)を使用して20倍率で撮影された。
【0069】
定量リアルタイムPCR
RNAは、TRizol(Invitrogen社 #15596−018)を用いてマウス組織から、又はRNeasy Mini Kit(Qiagen社 #74104)を用いて精製細胞から、いずれかにより収集された。iSCRIPT cDNA合成キット(バイオラッド社 #170−8890)はcDNAの変換に使用され、IQ SYBR Green supermix(BioRad社 #172−8882)は、リアルタイムPCRに使用された。本研究で使用されたプライマーは、TNFα(F−5’ACG GCA TGG ATC TCA AAG AC 3’(配列番号:1)、R−5’ GTG GGT GAG GAG CAC GTA GT 3’)(配列番号:2)、IL−17(F−5’TTA AGG TTC TCT CCT CTG AA 3’(配列番号:3)、R−5’TAG GGA GCT AAA TTA TCC AA 3’)(配列番号:4)IL−10(F−5’GGT TGC CAA GCC TTA TCG GA 3’(配列番号5)、R−5’ACC TGC TCC ACT GCT TGC T 3’)(配列番号6)、Foxp3(F−5’GCA ATA GTT CCT TCC CAG AGT TCT 3’(配列番号7)、R−5’GGA TGG CCC ATC GGA TAA G 3’(配列番号:8))である。
【0070】
蛍光顕微鏡検査法
生体外で分化されたBMDCは、50,000細胞/ウェルでLab−Tek II 8ウェルチャンバースライド(Nunc社 #154534)に蒔かれた。FITC標識化OMVは10μg/mlで細胞培養液に添加された。2時間のインキュベートの後、細胞は室温で20分間、4%PFAで固定された。5分間のPBS洗浄が3回された後に、細胞膜は、1μg/mlのWGA(Invitrogen社 W849)結合テトラメチルローダミンで、4℃で1時間染色された。プロロングゴールド褪色防止剤(P36930)は、細胞膜の染色を、膜染色に続く広範な洗浄後に、試料に対し適用された。蛍光画像は、LSM 510顕微鏡とPlan−Neofluar 63x/1.25油浸対物レンズとを用いて撮影した。
【0071】
フローサイトメトリー及び染色
OMV取込み解析またはOMV活性化解析の結果のBMDCは採取され、氷上で30分間、5%のマウス血清でブロックされた。ブロックした後、細胞は、氷上で30分間抗CD11c−APC、抗MHCII−FITC又は抗CD86−PE(eBioscience社)で染色され、フローサイトメトリー分析の前にFACS緩衝液(HBSS(Ca2+/Mg2+不含有)、1%FBS、2mM EDTA、10mM HEPES)を用いて4℃で2回洗浄された。同様に、生体外でのBMDC−T細胞の共培養由来の細胞は、ブロックされ、採取される前に4−4.5時間PMA/イオノマイシンを用いて細胞を再刺激したことを除いて同じ方法で、抗CD4−APC/抗CD25−PEを用いて染色された。全てのフローサイトメトリーは、BD FACSCaliburを用いて行われ、結果はFlowJoを用いて分析された。
【0072】
BMDC−T細胞の生体外共培養
骨髄は、マウスの異なる株から採取され、従来の記載のように(Mazmanian,Liu,Tzianabos,and Kasper(2005)An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System.Cell 122:1 107−118)20ng/mlのGM−CSF(Miltenyi Biotec社#9517571)存在下で生体外で8日間分化された。(細胞の純度>90%)。CD4+脾臓T細胞は、磁気マイクロビーズ精製(Miltenyi Biotec社#130−090−860)(細胞の純度>95%)により単離された。OMVが振動されたBMDC(10μl/ml OMV、100,000細胞/ml、12時間から24時間)は、HBSSで洗浄され、CD4+T細胞(1,000,000細胞/ml)が、0.01μl/ml抗CD3(0日目、図3D、E、F、図4Aに示されるように図3C)と、2ng/ml TGFβ(0日目、図3C、D及びF、図4A)の追加と、5ng/ml IL−2(1日目とで3日目、生体外で全てのDC−T細胞共培養分析)丸底96ウェルプレート内でインキュベートした。合計4日の培養後、上清をELISA(#88−7104−77 eBioscience社)又は細胞は、染色及びフローサイトメトリーの解析のために採取された。
【0073】
生体外での抑制分析
BMDC(WT−OMV又はΔPSA−OMVと振動されている)−T細胞の共培養から精製したCD4+CD25+細胞は、制御性T細胞(Miltenyi Biotec社, #130−091−041)の供給源として使用された。マイトマイシンC(Sigma社 M4278)で処理し、CD4除去マウスの脾細胞は、APC(100,000細胞/ml)として使用された。マウスの脾臓から直接精製したCD4+CD25−T細胞は、10分間、37℃でCFSEと振動され、続いて、まずPBSで次に培養液で洗浄され、レスポンダー細胞(エフェクターT細胞)として(500,000細胞/ml)をすぐに使用された。この分析は、200μl体積の5μg/mlの抗CD3(eBioscience社 #16−0031−86)追加により、丸底96ウェルプレートで行われた。エフェクターT細胞と制御性T細胞との比を滴定により測定され、細胞はFACS分析のための培養2−3日後に採取された。
【0074】
統計的分析
ステューデントのt検定及び一元配置分散分析法は、一対比較及び二つを超えるグループ間の比較にそれぞれ適用された。分散分析により検出されたグループ間の有意差は、統計学的有意差を示すグループを識別するために、事後テストとしてニューマン−クールズの検定を用いて分析した。すべての誤差棒はSEMを示す。NS:有意でない。*p<0.05。***p<0.01。***p<0.001。
【0075】
実施例1:免疫調節莢膜多糖体PSAは、バクテロイデス・フラジリスのOMVの中へ活発に局在化される。
EDL富化バクテロイデス・フラジリスの超薄切片は、材料及び方法に記載されたように調製され、透過型電子顕微鏡により画像化された。
【0076】
図1Aに示される結果は、OMVが豊富に細菌によって産生され、細菌の外被(図1A、より高倍率)からの出芽を観測されることができたことを示す。出願人らこれまでの研究では、PSA欠損が、バクテロイデス・フラジリスの免疫調節能を抑制することを示している(Mazmanian,Liu,Tzianabos,and Kasper(2005)An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System.Cell 122:1 107−118.)(Mazmanian,Round, and Kasper(2008)A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease.Nature. 453(7195)620−625)。PSA変異株(バクテロイデス・フラジリス ΔPSA)の電子顕微鏡写真は、OMV合成において欠陥のないことを示し、そして、産生されたOMVの大きさ、形状及び豊富さは、野生型細菌(図1A及び図5)と識別不能であった。特に、図1Aに示される結果は、小胞が細菌の表面から活発に出芽していることを明らかにした。
【0077】
PSAが、バクテロイデス・フラジリスのOMVに関連するかを判断するために、野生型細菌及びΔPSA細菌から精製した小胞は、材料及び方法の部分で記載したように分析され免疫ブロットが行われた。
【0078】
図1Bに示される結果は、野生型由来の小胞が、バクテロイデス・フラジリスΔPSA由来のOMVとは異なり、PSAへの免疫反応性を表示することを示す。バクテロイデス・フラジリスは、細菌細胞の表面を覆っている、PSA〜PSHという名称の、少なくとも8つの異なる莢膜多糖を産生する。PSBも小胞の標本内で検出されたが、PSGは存在せず、OMVで包まれるために特定の多糖類に対する選択性を示す(図1B)。したがって、図1Bの結果は、PSGのみが細菌表面上で検出される一方で、PSA及びPSBは、小胞に関連することを示している。莢膜多糖体に対する欠損変異株は、各抗血清の特異性を確認する。
【0079】
免疫ブロット分析の結果は、材料及び方法の部分に記載されたように実行され、免疫金標識の実験により確認された。精製小胞の免疫ブロット標識の結果は図1Cに示され、PSAが物理的にOMVに関連していること、及び野生型バクテロイデス・フラジリス株からのOMVの大半が、PSAに対し陽性に染色していることを確認する(図6)。PSAの不存在がOMVの分子構成物を変化しなかったかったことを確かめるため、プロテオーム分析は、野生型細菌からの又はPSA変異細菌からの小胞間のタンパク質構成物において、質的または量的な違いはないことを明らかにした質量分析法により、実行された(図7)。
【0080】
PSAは、繰り返されるサブユニットの異種ポリマーである。クロマトグラフィーにより全細胞抽出物から回収されたPSAのサイズ分離は、材料及び方法において示されているような、全細胞由来の、及び精製OMV由来の莢膜多糖標本の抗PSAを用いた免疫ブロット分析と同様に実行された。
【0081】
図1Dに示される関連性の高い結果は、驚くほどに、低分子量種のみがOMVに関連していることを示し、小胞へのPSA包み込みの特異性を表している。特に、図1Dの結果は、低分子量PSA(L−PSA)は、細菌細胞外被に関連し維持している高分子量(H−PSA)種とは異なり、小胞に包み込まれることを示している。
【0082】
併せて上記の結果は、免疫調節莢膜多糖体PSAがバクテロイデス・フラジリスのOMVへ活発に局在化されていることを明らかにしている。
【0083】
実施例2:OMVは、PSA−依存的方法で実験的大腸炎及び腸炎から動物を保護する。
OMVが疾患の臨床症状を改善できるか調査するために、マウスは、TNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)誘発性大腸炎の期間中にOMV強制経口投与によって処理された。
【0084】
図2Aに示された結果は、コントロール動物がTNBS(図2A;TNBS+PBS)の直腸投与後に体重が急速に減少しており、媒体処理されたマウス(図2A;ETOH+PBS)と比較し、コントロール動物の体重が回復しなかったことを示している。驚くべきことに、TNBS動物にOMV経口投与すると、体重減少(図2A;TNBS+WT−OMV)から大きく保護された。最も重要なことは、バクテロイデス・フラジリスΔPSA由来のOMVを投与した場合、体重減少がTNBS動物(図2A;TNBS+ΔPSA−OMV)と区別できなく、PSAが、消耗性疾患を抑えることに完全に関連することを実証した。
【0085】
胃内経管栄養の後に大腸内の損傷を受けていない小胞を検出する努力は、以前の報告のように無菌マウスでさえ(データは示されず)、宿主由来の小胞の観測によって混乱された。
【0086】
大腸の長さの減少がTNBS大腸炎の顕著な特徴であるので、盲腸から直腸までの切除し、長さの定量化(グラフ)した後、直ちに、媒体(EtOH)処理されたグループ及びTNBSグループ(n=4匹/グループ)からの大腸の長さの検出は、未操作の大腸において、実行された。具体的に、測定は屠殺の時(疾患誘導から4日目)に実行された。
【0087】
図2Bに示される結果は、PSA含有小胞を処理した動物において、通常の腸の長さであることを示し、しかしPSA欠乏OMVで処理した動物においては通常の腸の長さでないことを示している(図2B)。
【0088】
実験的大腸炎は、腸構造内で重篤な病理学的変化の結果になる。したがって、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した、各処理グループの大腸断片の代表物を挙げ、図2Cに示す。大腸組織の組織学的分析により、重篤な疾患がTNBS処理動物において観測され、TNBS処理動物がPSA含有小胞の経口投与によって改善されたことを、図2Cの画像は示している。
【0089】
図2Cの結果は、盲検化病理学者により指定された動物からの大腸炎スコアによって確認された。TNBS大腸炎は、クローン病で観察される病状を模倣した、大腸全域の限局性病巣においてそれ自体を明らかにする。定量的に疾患を評価するために、臨床症状が標準得点システムを用いて盲検化病理学者によって評価された(Scheiffele and Fuss.(2001)Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology.15.19.1−15.19.14)。図2Dに示される結果は、TNBS及びΔPSA−OMVを投与されたすべての動物が深刻な影響を受けた一方で、WT−OMVがほとんどの動物において疾病を劇的に減少させることを示している。野生型細菌由来のOMVで処理された動物は、遥かに少ない病状の限局的サイトを有していたが、病巣が観察された時、ΔPSA−OMVを与えられた動物と比べて、病巣が小さく、相当正常な組織構造を保持していた。
【0090】
上記の結果は、PSAがOMVの疾患防御活性に必要とされることを立証する。
【0091】
実施例3:PSA含有OMVは、TNF−α/IL−17を阻害し、IL−10の発現を高める。
大腸炎に関連し標準的な炎症促進性及び抗炎症性サイトカインの産生は、実施例2に例示されるように処理されたマウスにおいて測定された。具体的には、サイトカインの転写産物の分析は、大腸全体より回収され又は腸間膜リンパ節由来の精製CD4+T細胞より回収されたRNAについて、定量RT−PCRを用いて実施された。
【0092】
3つの独立した試験の代表的な関連性の高い結果は、図2E(大腸全体)及び図2F(腸間膜リンパ節から精製されたCD4+T細胞)で報告されている。これらの結果は、腫瘍壊死因子(TNF−α及びIL−17A)の転写レベルがTNBS処理動物において高められ、しかし、OMV投与によりPSA−依存的方法(図2E)で減少させられたことを示す。病状からの保護と矛盾しないで、ΔPSA−OMV経口投与動物と比較して、OMVは増加したIL−10濃度の産生を誘発する(図2F)。腸間膜リンパ節(MLN)由来の精製CD4+T細胞によって産生されたサイトカインの分析は、IL−10が、T細胞のPSAへの応答により実際に産生されていることを確認した(図2F)。強力な炎症誘発性マーカーTNF−α濃度のように、Thl7細胞の浸潤は、疾患のために必要であるが、OMVにより劇的に減少した(図2F)。我々は、バクテロイデス・フラジリスOMV中へのPSAの包み込みが、実験的大腸炎の病理学的および免疫学的症状発現から動物を保護すると結論付ける。
【0093】
実施例4:バクテロイデス・フラジリス由来のOMVを含むPSAは、樹状細胞応答を誘導する。
樹状細胞(DC)は、腸管内腔へ突起を伸ばし、腸の粒子を採取し、続いてT細胞の反応を開始するためにMLNに移行する。確かに、動物へPSAの経口投与は、MLNにおけるCD11c+DCに関連している。したがって、出願人は、PSAを含むOMVが同様に樹状細胞に取り込まれ得るかどうかの研究に努めた。
【0094】
図3Aに示される結果は、サイトカラシンDを用いた細胞の処理が、大幅に小胞への取り込みを阻害したため、骨髄由来のDCが急速にアクチン依存的方法でOMVを内部移行したことを示す(図3A及び図8)。細胞間の局在は共焦点顕微鏡により確認された(図9)。
【0095】
T細胞活性化マーカーのPSAを介したDCでの誘導は、同様に調査された。図3Bに示される結果は、T細胞活性化マーカー(MHCII、CD86)の発現が、WT−OMV及びΔPSA−OMVの両方の内部移行に続いて、同等に上昇させられたことを示した(図3B及び図10)。
【0096】
MHC及び共刺激分子の発現増加は、バクテロイデス・フラジリス由来のOMVを含むPSAが、T細胞応答に影響を与え得ることを示している。
【0097】
実施例5:PSAは、DCのIL−10発現を通じてCD4+T細胞におけるIL−10発現を誘導する。
実施例1〜3に例示した実験に示すように、大腸炎におけるPSA保護の役割に照らして、抑制性T細胞応答の誘導にOMVの生物学的効果は試験された。特に、様々な制御性T細胞(Treg)集団が大腸炎を抑制することが知られているので、Tregの発達を促進するOMVの能力は検討された。
【0098】
図3Cに示される結果は、DC−T細胞の生体外共培養の条件下でWT−OMVがIL−10の発現を誘導し、一方、同条件下でIL−10がDCのみからでは産生されないことを示している。増加が媒体コントロールを超えて検出されているが、バクテロイデス・フラジリスΔPSAから精製された小胞は、WT−OMVよりIL−10を有意に低く誘導していた。DCからのIL−10の産生は、生体内及び生体外におけるCD4+IL−10+T細胞の発達を支援することが知られている。したがって、IL−10−/−の動物から分化されたDCを含み、図3Cに示されている結果と同様のELISA分析は実行された。
【0099】
図3D(左パネル)に示される結果は、IL−10−/−DCがOMVで処理された場合、DC−T細胞の共培養において大幅に減少したIL−10を示しており、DCによるIL−10発現が、パラクリン的方法でCD4+T細胞からIL−10を誘導するために必要とされることを示している。
【0100】
実施例6:PSAは、Foxp3 Tregの発達及び/又は増殖を指示するようにDCをプログラムする。
微生物のリガンドは、パターン認識受容体のいくつかのクラスによって感知され、Th1サイトカイン産生を惹起するために、PSAがToll様受容体2(TLR2)を通じた信号へ示されている。一連の実験は、したがって、最近の報告が、Tregの機能及びIL−10発現がTLR2の影響を受けていることを示しているように、TLR2が、PSAによるIL−10の誘導に必要であるかどうかを試験するために実行された。
【0101】
図3D(右パネル)に示される結果は、野生型DCと比較して、TLR2の欠如(TLR2−/−動物由来のDC)が、完全にOMVに応答してIL−10産生を阻害することを示している。両方のDCはスーパー抗原(SEA)刺激に同様に応答し、PSAセンシングにおける特異的な欠陥ではなく、TLR2−/−DCによるT細胞活性化の一般的な欠如を実証している(図3D)。転写因子Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞は、重要なTregの亜集団である。最近の研究では、示されているCD4+CD25+Foxp3+TregはIL−10を発現することができ、TregからのIL−10の産生は腸の炎症を抑制するために必要とされる。
【0102】
OMV上のPSAにより誘導されるIL−10の起源を決定するために、CD4+CD25+T細胞及びCD4+CD25−T細胞は、DCとの共培養に続いて精製され、そしてIL−10及びFoxp3の発現は定量RT−PCRによって測定された。
【0103】
図3Eに示される結果は、注目に値し、PSAがCD4+CD25−T細胞由来ではなく、CD4+CD25+Treg集合内でIL−10発現を大幅に誘導することを示している。バクテロイデス・フラジリスΔPSAから精製したOMVは、媒体コントロールと同じ濃度で、どちらのT細胞集団からであってもIL−10産生を促進することができなかった。Foxp3の発現はまた、OMVによって、PSA依存的方法でもっぱらCD4+CD25+T細胞において有意に増加した(図3E)。
【0104】
共培養液は、図3C〜Eに示される実験用として作成され、Foxp3−GFPマウス由来のCD4+T細胞を使用した。OMVを振動されたDCで4日培養した後、細胞は、抗CD4で染色され、FCを使用してGFPの発現によりFoxp3が検出された。
【0105】
二つの独立した試験の代表的な結果は、図3Fに示されている。CD4+T細胞の間で増加したFoxp3転写と一致し、CD4+Foxp3+T細胞の割合は、ΔPSA−OMV処理でなく、WT−OMV処理への応答において増加した(図3F)。まとめると、完全なる生体外培養システムにおいてPSA含有OMVは、Tregの発達および/または増殖をする方向へDCをプログラムする。
【0106】
実施例7:PSA含有OMVは、Foxp3 Tregの抑制機能の媒介によりIL−10を誘発する。
細胞治療としてのTregの使用は、IBD、自己免疫及びアレルギーのために提案されている。OMVで処理されたDCとの4日間共存培養後のCD4+T細胞亜集団によるIL−10の発現は調査された。脾臓CD4+T細胞はIL−10−GFPマウスから精製され、共培養後に抗CD4及び抗CD25で染色され、IL−10の発現がGFPにより測定された。
【0107】
図4Aに示す、精製DC及びT細胞の関連するOMV処置の結果は、PSAが、CD4+CD25+Tregからの特異的なIL−10産生を促進することを明らかにしていることを示す。
【0108】
この知見に基づいて、PSAの能力は、媒体(コントロール)、WT−OMV及びΔPSA−OMVで処理したDCとの共培養に続いて、精製したCD4+CD25+T細胞により、単純な応答細胞の生体外でのTegの抑制能を促進するために調査された。CD4+CD25−応答細胞(エフェクター細胞; Teff)は、野生型マウスの脾臓から精製され、細胞内の色素のCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で振動され、Tregとインキュベートされ、3日間抗CD3で刺激を与えられた。細胞増殖はCFSE希釈のFCにより測定された。
【0109】
図4B及び4Cに示される結果は、WT−OMVで処理されたDCを用いた条件から回収されたTregが、ΔPSA−OMVに対応したCD4+CD25+T細胞と比較して、大幅に強化された抑制能力を表示することを示す。
【0110】
したがって、他の多数の微生物性リガンド(LPS、リポタンパク質、ペプチドグリカンなど)を含むOMVからのPSAの特異的欠落は、機能的なTregを誘導するための、バクテロイデス・フラジリスの小胞の能力を抑制する。
【0111】
実施例8:PSAは、Foxp3 Tregにおいて、様々なバイオマーカーの組み合わせを誘導する。
Foxp3−GFPマウスは、一日おきに6日間精製PSAで経口処理された。MLNは抽出され、CD4+Foxp3+T細胞又はCD4+Foxp3−T細胞は、±GFPの発現に基づいたFACSにより精製された(純度>99%)。RNAは抽出され、定量−PCRに使用された。
【0112】
図11に示される結果は、PSAが、IL−10、TGF−β、パーフォリン、及びグランザイムAを含む複数の抗炎症性遺伝子の誘導と、TNFαおよびIL17(特にIL17A)の阻害とを調整することを実証する。
【0113】
上記の結果は、バクテロイデス・フラジリスの生菌活性の分子機構を提供し、制御性T細胞の発達へシグナル伝達する自然免疫受容体を結合する微生物リガンドのための独創的な例を明らかにする。特に上記の結果は、PSAが、外膜小胞(OMV)によって、及び細菌分子を宿主細胞へ標的とする分泌構造によって、宿主に運ばれることを示している。PSAを含むOMVは、宿主免疫システムの樹状細胞によって内部移行される。OMVの取り込みに続いて、PSAは、Foxp3及び抗炎症性サイトカインのインターロイキン−10(IL−10)を発現する制御性T細胞(Treg)の分化を誘導するために樹状細胞をプログラムする。OMVによるTregの発達は、樹状細胞によるToll様受容体2(TLR2)の発現及びIL−10の産生を必要とする。驚くべきことに、精製OMVは、PSA依存的方法で強力な抑制活性を持つ、機能的なTregの生体外分化を指示する。PSA含有OMVを用いた動物の処理は、実験的大腸炎を防ぎ、腸内の炎症誘発性サイトカイン応答を抑制する。これらの知見は、IBDのための生菌治療が運ぶという新しいアプローチに設計され得るプロセスである小胞の分泌を通じて、共生細菌が有益な微生物の因子を提供することが明らかにする。
【0114】
特に、上記の結果は、PSA含有OMVによって誘導されるTregが、機能的に抑制し、培養中のT細胞の活性化を阻害することを示している。これは、微生物のリガンドによる生体外Tregの発達についての最初の実証であり、自然免疫受容体シグナル伝達がTregの機能を調節することが広く推測される観念に対する原理証明を提供する。IBDのための現在の治療は、効果がない又は重篤な副作用を持っているかのどちらかであるので、活性免疫調節のためのよく進化したメカニズムを利用することによる、有望な新しい治療の選択肢を生菌が表している。Tregが複数の組織において免疫応答を抑制することを考えると、PSAによる生体外Tregの発達の私たちの独創性に富んだ実証は、自己免疫、喘息及びアレルギーを含む多数の炎症性疾患のための新規細胞治療の心躍る可能性を示唆している。
【0115】
免疫調節を媒介する微生物によって生産された分子を識別するために、細菌産生物の一部が精製され得、全細菌が使用されるとき、純粋な化合物がどのその成果を模倣するのかを発見されるまで、同じ解析が上記のように実施される。また、上記のアプローチは、この活性を有する菌株のそれぞれのクローンにおいて欠損されている免疫調節分子を識別するために、関心のある微生物の変異体ライブラリーをスクリーンするために使用されるだろう。
【0116】
要約すると、いくつかの実施形態において、抗炎症能力に関して、細菌、細菌により精製若しくは生成された産生物及び/又は他の細菌物質をスクリーニングするための方法並びにシステムが提示される。
【0117】
上記に明らかにした例は、当業者に、開示による小胞と、システムと方法との実施形態を生成する方法および使用方法の完全な開示並びに説明を与えるために提供されており、本発明者らがそれらの開示としてみなすことの範囲を制限するために意図されていない。当業者に明白な開示を行うための上記の様式の変更は、以下の特許請求の範囲内であることを意図している。明細書に記載されている全ての特許および刊行物は、開示が属する当業者の技術の水準を示している。それぞれの参照が個々にその全体が参照として援用されたかのように、この開示における引用のすべての参照は、同じ程度に参照として援用される。
【0118】
背景技術、要約、詳細な説明、および実施例で引用されている各文書(特許、特許出願、雑誌論文、抄録、実験マニュアル、書籍、またはその他の開示を含む)の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、配列表のハードコピーは、これに提出し、対応するコンピュータ読み取り可能な書式は、その全体が参照により本明細書に両方とも組み込まれている。
【0119】
開示が、当然に変化し得る特定の構成物または生物学的システムに限定されないことを理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定することに意図されないことを理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形は、内容が別途明確に指示しない限り、複数の参照対象を含む。内容が別途明確に指示しない限り、用語“複数”は、二つ以上の参照対象を含む。他に定義しない限り、本明細書に使用されているすべての技術用語および科学用語は、開示の属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を持っている。
【0120】
しかし、本明細書に記載されたものと類似または等価の任意の方法および材料は、本明細書に記載されている適当な材料および方法の特定の実施例を試験するために実際に使用されることができる。
【0121】
多数の開示の実施形態は記載されている。それにもかかわらず、種々の変更が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく行われることができることは理解されるであろう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0679654号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0083777号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0092433号明細書
【特許文献4】国際公開第07/092451号
【特許文献5】国際公開第2007/062132号
【非特許文献】
【0123】
【非特許文献1】Xavier,RJ.& Podolsky,D.K.Unravelling the pathogenesis of inflammatory bowel disease.Nature 448,427−434(2007).
【非特許文献2】Mazmanian,S.K.,Round,J.L.& Kasper,D.L.A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease.Nature 453,620−625(2008).
【非特許文献3】Braun,J.& Wei,B.Body traffic:ecology,genetics,and immunity in inflammatory bowel disease.Annu Rev Pathol 2,401−429(2007).
【非特許文献4】Round,J.L.& Mazmanian,S.K.The gut microbiota shapes intestinal immune responses during health and disease.Nat Rev Immunol(2009).
【非特許文献5】Scheiffele and Fuss.(2001)Induction of TNBS colitis in mice.Current Protocols in Immunology. 15.19.1−15.19.14.
【非特許文献6】Mazmanian,Liu,Tzianabos,and Kasper(2005)An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System.Cell 122:1 107−118.
【非特許文献7】M.J.Coyne,A.O.Tzianabos,B.C.Mallory,V.J.Carey,D.L.Kasper and L.E.Comstock,(2001)Polysaccharide biosynthesis locus required for virulence of Bacteroides fragilis,Infect.Immun.69:4342−4350.
【非特許文献8】Patrick S,Reid JH.(1983)Separation of capsulate and non−capsulate Bacteriodes fragilis on a discontinuous density gradient.J Med Microbiol.16(2):239−241.
【非特許文献9】Amanda L.Horstman and Meta J.Kuehn.(2000)Enterotoxigenic Escherichia coli secretes active heat−labile enterotoxin via outer membrane vesicles.J Biol Chem.275:12489−12496.
【非特許文献10】Nicole C.Kesty and Meta J.Keuhn.(2004)Incorporation of heterologous outer membrane and periplasmic proteins into Escherichia coli outer membrane vesicles.J Biol Chem.279:2069−2076.
【非特許文献11】Patrick S,McKenna JP,O’Hagan S,Dermott E.(1996)A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles.Microb Pathog.20(4):191−202.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節能を有する細菌物質を同定する方法であって、該方法は、
候補細菌物質を、単独で又は抗原を示す細胞の存在下でT細胞と接触させることと、
IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカーの発現、或いは、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症性バイオマーカーの減少濃度若しくは発現の、少なくとも一つの発現を検出することと、
前記接触の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することと、を含む方法。
【請求項2】
免疫調節能を有する細菌物質を同定する方法であって、該方法は、
候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、
前記接触の後、前記抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることと、
IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、及び、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症バイオマーカーの、少なくとも一つの発現を検出することと、
前記インキュベートの後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することと、を含む方法。
【請求項3】
前記検出が、Foxp3の発現を、単独で、或いは、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及び/又はグランザイムBとの組み合わせで検出することにより実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出が、Foxp3の発現を、単独で、或いは、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及び/又はTNFαとの組み合わせで検出することにより実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記検出が、Foxp3及びIL−10の発現を検出することにより実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞が制御性T細胞である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記抗原提示細胞が、原発性又は細胞培養由来のいずれかである請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記候補細菌物質が、生きた細菌、死んだ細菌、細菌抽出物、細菌由来の精製分子、細菌から精製された分子、及び分子を内包する小胞からなる群より選択され、或いは、それらの組み合わせである請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記候補細菌物質が外膜小胞を備える請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
動物において、免疫調節能を有する細菌物質を同定する方法であって、該方法は、
トランスジェニックマーカー非ヒト動物を、候補細菌物質で処理し、ここで、当該トランスジェニックマーカー非ヒト動物は、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの、少なくとも一つを発現するために遺伝子的に修飾されており、
前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカー又は少なくとも一つの前記炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物における発現を検出することと、
前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加又は一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することと、を含む方法。
【請求項12】
前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物が、マウスである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マウスが、IL−10−GFPマウス及びFoxp3−GFPマウスからなる群より選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理が、前記候補細菌物質を経口又は静脈内投与することにより実施される請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記候補細菌物質が生きた細菌を含み、
前記処理が、強制経口により前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物を前記生きた細菌で恒久的にコロニー化することにより実施される請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
免疫調節能を有する細菌物質を同定する方法であって、該方法は、
候補細菌物質を、単独で又は抗原を示す細胞の存在下でT細胞と接触させることと、
IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカーの発現、或いは、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症性バイオマーカーの減少濃度若しくは発現の、少なくとも一つの発現を検出することと、
前記接触の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することと、を含む方法。
【請求項2】
免疫調節能を有する細菌物質を同定する方法であって、該方法は、
候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させることと、
前記接触の後、前記抗原提示細胞をT細胞とインキュベートすることと、
IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の抗炎症性バイオマーカー、及び、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の炎症バイオマーカーの、少なくとも一つの発現を検出することと、
前記インキュベートの後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加、或いは、一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することと、を含む方法。
【請求項3】
前記検出が、Foxp3の発現を、単独で、或いは、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及び/又はグランザイムBとの組み合わせで検出することにより実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出が、Foxp3の発現を、単独で、或いは、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及び/又はTNFαとの組み合わせで検出することにより実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記検出が、Foxp3及びIL−10の発現を検出することにより実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞が制御性T細胞である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記抗原提示細胞が、原発性又は細胞培養由来のいずれかである請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記候補細菌物質が、生きた細菌、死んだ細菌、細菌抽出物、細菌由来の精製分子、細菌から精製された分子、及び分子を内包する小胞からなる群より選択され、或いは、それらの組み合わせである請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記候補細菌物質が外膜小胞を備える請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
動物において、免疫調節能を有する細菌物質を同定する方法であって、該方法は、
トランスジェニックマーカー非ヒト動物を、候補細菌物質で処理し、ここで、当該トランスジェニックマーカー非ヒト動物は、IL−10、Foxp3、TGFβ1、TGFβ2、パーフォリン及びグランザイムBからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカー、並びに、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−13、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17及びTNFαからなる群より選択される一つ以上の標識化炎症性バイオマーカーの、少なくとも一つを発現するために遺伝子的に修飾されており、
前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカー又は少なくとも一つの前記炎症性バイオマーカーの少なくとも一つの前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物における発現を検出することと、
前記処理の後の、一つ以上の前記抗炎症性バイオマーカーの前記発現の増加又は一つ以上の前記炎症性バイオマーカーの前記発現の減少の検出を通じて前記候補細菌物質の抗炎症性能を決定することと、を含む方法。
【請求項12】
前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物が、マウスである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マウスが、IL−10−GFPマウス及びFoxp3−GFPマウスからなる群より選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理が、前記候補細菌物質を経口又は静脈内投与することにより実施される請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記候補細菌物質が生きた細菌を含み、
前記処理が、強制経口により前記トランスジェニックマーカー非ヒト動物を前記生きた細菌で恒久的にコロニー化することにより実施される請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−524910(P2012−524910A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507451(P2012−507451)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032300
【国際公開番号】WO2010/124256
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(301059570)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032300
【国際公開番号】WO2010/124256
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(301059570)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (14)
【Fターム(参考)】
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