説明

免疫賦活剤または抗アレルギー剤

【課題】長期服用しても安全な、天然物由来で副作用の少ない、免疫バランス調整や免疫賦活作用により花粉症やアトピーなどのアレルギー症状及び発がんを予防しうる免疫賦活剤の提供。
【解決手段】サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有する免疫賦活剤。サラシア属植物としては、サラシア・レティキュラータ(Salaciareticulata)、サラシア・オブロンガ(Salaciaoblonga)、サラシア・キネンシス(Salaciachinensis)から選ばれる少なくとも1種の植物であることが好ましい。該免疫賦活剤は、食品または医薬品として投与することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有する免疫賦活剤または抗アレルギー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先進国おいて、花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などに代表されるアレルギー症状は最も発症率の高い疾患の一つである。特に花粉症患者は日本だけでも約2000万人に上るといわれており、大きな社会問題にもなっている。
【0003】
花粉症にはB細胞から過剰産生されるアレルゲン特異的IgE抗体、マスト細胞や好塩基球から放出されるヒスタミンやロイコトリエンと、Th1/Th2バランスのTh2側への偏向が直接的に関与していることが知られている。体内に進入したアレルゲンは自然免疫系細胞に取り込まれて分解され、その一部の情報がMHCクラスIIを介してT細胞へ提示される。抗原提示を受けたT細胞はTh2細胞へと分化・活性化され、IL−4などのサイトカインをB細胞へ作用させる。Th2細胞により刺激を受けたB細胞からはIgE抗体が産生され、マスト細胞や好塩基球表面に存在するFcレセプターに結合する。再度アレルゲンが体内に侵入してマスト細胞や好塩基球表面のIgE抗体に結合すると、細胞が脱顆粒してヒスタミンなどのケミカルメディエーターが大量に放出される上に細胞表面ではロイコトリエンなどが合成される。これら諸物質は、血管透過性を亢進させて鼻詰まりを引き起こしたり平滑筋を収縮させて気道収縮を起こす。このように近年の生活様式や食生活の変化等によりTh1/Th2バランスがTh2側へ偏向することが、アレルギー疾患の増加傾向の一因となっていることが明らかになりつつある。
【0004】
現在、花粉症の症状を改善する方法としては、マスクやゴーグルや空気清浄機を使用して花粉との接触機会を少なくする方法、抗ヒスタミン薬や脱顆粒抑制能やロイコトリエン合成阻害能を有する食品、例えば甜茶やシソ葉など、を摂取する方法、アレルゲンそのものを定期的に注射することにより寛容を誘導する減感作療法などがあり、ある程度の改善効果が期待できる(非特許文献1、2、特許文献1、2参照)。
しかしながら、花粉との接触機会を少なくする方法には技術的な限界があり、抗ヒスタミン薬や減感作療法は副作用が問題視されており、既存の機能性食品には十分な効果があるとはいえず、いずれも決定的でない。
したがって、最低限、花粉に暴露しないよう日常的な清掃が推奨される一方で、Th2偏向型の免疫系を正常な状態に戻すことでアレルギー体質を改善しつつ、ヒスタミン等の放出を抑制して花粉症等の症状を緩和できる複合的な効果を発揮する機能性食品が望まれていた。
【0005】
一方、インドやスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて天然薬物としてサラシア属植物の根や幹が利用されてきた。スリランカではサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)の根皮がリュウマチ、淋病、皮膚病の治療に有効であるとともに、初期糖尿病の治療に用いられると伝承されている。インドではサラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)の根が同様の治療に用いられるほか、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)も糖尿病の治療に用いるとされており、その作用メカニズムはα−グルコシダーゼ活性阻害に基づく糖吸収抑制作用によるものであることが報告されている(非特許文献3)。
【非特許文献1】日本サプリメント協会著「サプリメント健康バイブル」p.74(2004)
【非特許文献2】大塚博邦著「花粉症」保健同人社発行(1999)
【非特許文献3】FOOD Style 21、第6巻、第5号、第72〜78頁
【特許文献1】特開2000−041639号公報
【特許文献2】特開2004−217604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、長期服用しても安全な、天然物由来で副作用の少ない、免疫バランス調整や免疫賦活作用により花粉症やアトピーなどのアレルギー症状及び発がんを予防しうる食品または医薬品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはサラシアを摂取した際の血液への影響について鋭意検討し、その結果、サラシアは免疫賦活作用があり、更に免疫バランスを調節してアレルギーを緩和する効果があることを初めて見出した。
本発明は、具体的には下記構成よりなる。
【0008】
<1>
サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することを特徴とする免疫賦活剤。
<2>
サラシア属植物が、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)から選ばれる少なくとも1種の植物であることを特徴とする<1>に記載の免疫賦活剤。
<3>
サラシア属植物の粉砕物または抽出物のスクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が10μg/ml〜1000μg/mlの活性を示すことを特徴とする、<1>または<2>に記載の免疫賦活剤。
<4>
さらに、Toll様レセプターと結合しうる物質を含有することを特徴とする、<1>〜<3>のいずれかに記載の免疫賦活剤。
<5>
上記Toll様レセプターと結合しうる物質が、グルコポリサッカライド、リポポリサッカライド、およびヒアルロン酸から選ばれる少なくとも1種、またはその分解物であることを特徴とする、<1>〜<4>のいずれかに記載の免疫賦活剤。
<6>
<1>〜<5>のいずれかに記載の免疫賦活剤を含有する食品、または医薬品。
<7>
サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することを特徴とする抗アレルギー剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、長期服用しても安全な、天然物由来で副作用の少ない、免疫賦活剤および抗アレルギー剤、および食品または医薬品が提供される。これを服用することで花粉症などのアレルギー症状が緩和し、免疫指標が向上しがんなどの予防効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<サラシア属植物の粉砕物または抽出物>
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有する。
サラシア属植物とは、主としてスリランカやインドや東南アジア地域に自生するニシキギ科の植物で、より具体的にはサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)、サラシア・ラティフォリア(Salacia latifolia)、サラシア・ブルノニアーナ(Salacia burunoniana)、サラシア・グランディフローラ(Salacia grandiflora)、サラシア・マクロスペルマ(Salacia macrosperma)から選ばれる1種類以上の植物が用いられ、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)から選ばれる少なくとも1種の植物であることが好ましい。
サラシア属植物の粉砕物または抽出物とは、根、幹、葉、花、果実など可食部の粉砕物、乾燥物、抽出物またはその乾燥粉末(エキス末)などを意味する。1種類以上の部位を混合して使用しても良い。より好ましくは根、幹から抽出したエキス末が用いられる。
【0011】
該エキス末は、前述の可食部等から溶媒抽出によって得られたものを乾燥させたものである。抽出溶媒としては、水、またはメタノール、エタノールを初めとするアルコール類、あるいは水とアルコール類またはアセトンなどのケトン類との混合溶媒から選択されてよい。好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。
乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0012】
本発明に用いるサラシア属植物の粉砕物または抽出物は、スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)が10μg/ml〜1000μg/mlであることが好ましい。阻害活性がこの範囲にあることで、消化管からのブドウ糖吸収抑制作用が充分得られ、かつ、腹部膨満感やガスの発生を抑えられる。サラシア属植物抽出物のスクラーゼ50%阻害濃度は10μg/ml〜600μg/mlであることがより好ましく、100μg/ml〜450μg/mlであることが更に好ましい。
【0013】
スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は以下の方法で測定する。
【0014】
[実験法1] スクラーゼIC50値の測定
サンプル溶液の準備:チューブに2mgのサンプル(サラシア属植物の粉砕物または抽出物)を量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
基質液の準備:0.2Mマレイン酸バッファー(pH6.0)にスクロース濃度100mMとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
粗酵素液の準備:10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5min)した。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
前述の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温した。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37℃にて60分間反応させた。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させた。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業(株))を使用して定量を行う。
ブランクの準備:前述の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
得られた値より検量線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度(IC50値)を求める。
【0015】
免疫賦活剤または抗アレルギー剤の1日あたりの摂取量または目安摂取量を設定する場合は、免疫賦活剤または抗アレルギー剤1日摂取量中のサラシア属植物の粉砕物または抽出物の量として、例えばIC50値が50μg/mlのサラシア属植物抽出物を用いる場合、10〜600mgが好ましく、40〜450mgがより好ましく、50〜350mgが特に好ましい。
【0016】
免疫賦活剤または抗アレルギー剤中の好ましいサラシア属植物の量は、上記の1日あたりの好ましい量より適宜計算できる。例えば、1日摂取量が3錠の錠剤を作製した場合、1錠あたり1日量の1/3を含有することが好ましい。すなわち、サラシア属植物の粉砕物または抽出物を好ましくは3〜200mg、より好ましくは13〜150mg、特に好ましくは17〜117mg含有する。
【0017】
また、下記の式1で求められる値が、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。
免疫賦活剤または抗アレルギー剤全体としてのIC50値は、式2で求められる値として、0.1〜7.5が好ましく、0.15〜4.50がより好ましく、0.3〜3.75が特に好ましい。
【0018】
[式1]
免疫賦活剤または抗アレルギー剤1日摂取量中のサラシア属植物抽出物(mg)/IC50値(μg/ml)
[式2]
免疫賦活剤または抗アレルギー剤質量(mg)/IC50値(μg/ml)
【0019】
前記サラシア属植物の粉砕物または抽出物が、抽出物中全量に対してマンジフェリンを0.8質量%以上含有することが好ましく、1〜30質量%含有することがより好ましく、3.0〜11質量%以上含有することが特に好ましい。また、本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤のマンジフェリン含量は、1日摂取量中に、1mg以上が好ましく、1.8〜54mgより好ましく、5.5〜19mgが特に好ましい。
【0020】
マンジフェリンは実験法2により測定できる。
[実験法2] マンジフェリン含量の測定
マンジフェリンの含有量はHPLCを用いて、以下の方法で測定する。
<HPLC条件>
カラム: Capcellpack C18 UG120 φ4.6×250mm(資生堂)
カラム温度: 40℃
検出: UV360
流速: 1.0mL/min
溶媒A: 1.0% 酢酸 溶媒B: メタノール
リニアグラジエント(%B): 15%(0min)→25%(20min)
サンプルは50%メタノールに溶解させた後、シリンジフィルターで不溶物を除去して調製する。
検出されたマンジフェリンのピーク面積から、標品の検量線を用いて含有量を算出する。
【0021】
<Toll様レセプターと結合しうる物質>
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、さらに、生体内のマクロファージ表面に存在するToll様レセプター(TLR)と結合・反応しうる物質を含有することが好ましい。
そのような物質としては、TLR2と結合・反応しうる物質、TLR4と結合・反応する物質が好ましく、それら両方を含有していることが更に好ましい。
TLR2と結合・反応しうる物質としては、βグルカンなどのグルコポリサッカライドまたはそれを含有する酵母類、乳酸菌類、リポペプチド類、リポタイコ酸、リポアラビノマンナンなどが挙げられ、βグルカン(β1,3−グルカン)がより好ましい。βグルカンは植物由来、菌類由来、細菌由来など特に限定されないが、キノコ類(たとえばアガリクス、霊芝、メシマコブ)や酵母類(たとえばパン酵母、ビール酵母)などの菌類由来のものがより好ましい。
TLR4と結合・反応しうる物質としては、ヒアルロン酸またはその分解物、ヒアルロン酸オリゴマー、リポポリサッカライドまたはそれを含むグラム陰性菌、マンナン類などが挙げられる。
Toll様レセプターと結合しうる物質がTLRに結合するとサイトカイン(インターフェロン、TNF−α)の産生、CD40、CD80、CD86、MHCクラスIIの表出増加などマクロファージが活性化することが知られている。
Toll様レセプターと結合しうる物質は、グルコポリサッカライド、リポポリサッカライド、およびヒアルロン酸から選ばれる少なくとも1種、またはその分解物であることが好ましい。
【0022】
Toll様レセプターと結合しうる物質は、ナノスケールオーダーまで分散していることが好ましい。具体的には、平均粒子径が1nm〜1000nmの乳化物(エマルション)または固体分散物(サスペンジョン)であることが好ましく、平均粒子径はより好ましくは5nm〜200nmである。
また、本発明において「高濃度エマルション」とはToll様レセプターと結合しうる物質の含有量が0.1%質量以上のエマルジョン組成物を示す。本発明の高濃度エマルジョンの平均粒子径は200nm以上であることが好ましく、より好ましくは300〜10000nm以上である。
乳化物の粒子径は、粒度分布計等で計測することができる。
【0023】
乳化物は、公知の乳化物調製方法にて調製することができ、例えば「乳化・可溶化の技術」(辻 著、工業図書(株)発行)の65−66頁、92−105頁に記載されており、凝集法・分散法のいずれも好ましく用いられる。また、「食品用乳化剤 第2版」(日高 著、幸書房発行)の88−90頁記載のように、(1)自己乳化法、(2)セッケン生成法、(3)単純乳化法、(4)転送乳化法、(5)界面活性剤法乳化法と分類されるいずれの方法も好ましいが、特に、高濃度エマルジョンの調製には、単純乳化法または界面活性剤法乳化法が好ましく、界面活性剤法乳化法が特に好ましい。Toll様レセプターと結合しうる物質の乳化物は、本発明の高濃度エマルジョンを経由して調製されることが好ましい。固体分散物についてはせん断や高圧粉砕などの破砕法や、酵素分解、熱分解、加水分解、乳化重合のような反応を介する方法にて調製されることが好ましい。
界面活性剤法乳化法により本発明の高濃度エマルションを経由して調製する場合は、エマルション組成物となる溶液に高濃度エマルションを攪拌しながら添加することにより調製することができる。この場合の希釈倍率は、5〜1000倍が好ましく、10〜200倍がより好ましい。
【0024】
Toll様レセプターと結合しうる物質の分子量は、100〜800万が好ましい。より好ましくは、1000〜100万であり、分子量3000〜30万であることが更に好ましい。
Toll様レセプターと結合しうる物質は通常、1日摂取量として1〜2000mg摂取することが好ましく、50mg〜1000mgが更に好ましい。
Toll様レセプターと結合しうる物質は、免疫賦活剤または抗アレルギー剤中、0.1質量%〜95質量%含有されていることが好ましく、0.5質量%〜70質量%含有されていることがより好ましく、1質量%〜50質量%含有されていることがさらに好ましい。
Toll様レセプターと結合しうる物質は、各種市販品を用いてもよく、通常の方法で合成されたものを用いても良い。
【0025】
<その他成分>
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、更に他の成分を含有していてもよく、例えば、乳酸菌、ミネラル酵母、フラボノイドやポリフェノール等を含有していてもよい。
【0026】
乳酸菌類は、ヒトを含む哺乳動物に経口的に投与することができ、生体消化管内で有用な作用を発揮する菌であることが好ましい。
【0027】
より具体的には、宿主に対して無害で、胃酸や胆汁酸に比較的耐性があり、生体腸内に定着性を有して乳酸を産生し、腸内微生物叢を整える作用を有するものが望ましい。かかる有用乳酸菌類としては、例えばアシドフィルス乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum等)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)、レウテリ乳酸桿菌(Lactobacillus reuteri)、カセイ乳酸桿菌(Lactobacillus casei)、プランタラム菌(Lactobacillus plantarum)、フェルメンタム乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)、ラムノサス乳酸桿菌(Lactobacillus rhamnosus)、アギルス乳酸桿菌(Lactobacillus agilis)、ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)、メセンテリカス菌(Bacillus mesentericus)、酪酸菌(Clostridium butyricum)又はそれらのサブスピーシーズ等を例示することができるが、好ましくはアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum等)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)であり、これらの乳酸菌類は1種単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0028】
これらの乳酸菌類は、生菌であれば取得の由来は特に制限されず、簡便には商業的に市販されているものを広く用いることができる。
【0029】
本発明に用いる乳酸菌類の量は、免疫賦活剤または抗アレルギー剤の1日あたりの摂取量または目安摂取量を設定する場合、免疫賦活剤または抗アレルギー剤1日量中の乳酸菌類の生菌数として、1000万個〜1000億個が好ましく、5000万個〜500億個がより好ましく、1〜100個が特に好ましい。
【0030】
ミネラル酵母とは、ミネラルを含有する酵母を意味する。ミネラルとしては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、硫黄(S)および、微量元素と呼ばれる鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ヨウ素(I)、モリブデン(Mo)、セレン(Se)の16種の金属元素が挙げられる。本発明に用いるミネラル酵母としては、クロムを含有するクロム酵母が好ましい。酵母の種類に特に制限はないが、パン酵母またはビール酵母が好ましい。
クロム酵母のクロム含有量は、クロム酵母100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
免疫賦活剤または抗アレルギー剤中のクロム酵母含有量は、免疫賦活剤または抗アレルギー剤100質量部に対し、3〜5質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、0.5〜50質量部が特に好ましい。
1日の摂取量または目安摂取量を設定する場合、免疫賦活剤または抗アレルギー剤1日量中のクロム酵母量として、5〜500mgが好ましく、10〜100mgがより好ましく、30〜50mgが特に好ましい。免疫賦活剤または抗アレルギー剤1日量中のクロムの量としては、20〜200μgが好ましく、40〜150μgがより好ましく、60〜100μgが特に好ましい。
【0031】
フラボノイドは、植物の全器官に存在する色素成分の総称であり、主に果実や野菜に含まれ、特に、緑葉や白色野菜、柑橘類の皮の中に配糖体の形で存在する。
本発明において、フラボノイドとは、植物に広く含まれる色素成分の総称で、特に、野菜や果実に多く含まれるフラバン誘導体を意味する。
【0032】
フラボノイドとしては、フラボノール類、イソフラボン類およびカテキン類が好ましい。フラボノール類は、ポリフェノール類として知られている。
フラボノイドは体内に摂取される物質であるが、一般に吸収しにくい。しかしながら、フラボノイドは少量でも有効であり、強力な抗酸化物質であるため、発ガン物質の活性を抑制したり、血行促進作用や抗血栓作用があることが知られている。
【0033】
本発明において、フラボノイドは茶、ブドウ、タマネギなどの各由来物から得ることができる。ここで、由来物とは、生体の少なくとも一部から抽出されるものを意味する。抽出には、例えば、上記サラシア属植物の抽出物を調製する方法が適用され、抽出物の形態も上記と同様のものが可能であり、例えば、抽出後の濾液のままで、または濃縮もしくは希釈した状態またはその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
カテキン類を含む茶抽出物は、ツバキ科の常緑樹である茶の木より作製する。茶の木は、インドやスリランカ、東南アジアで栽培されているアッサミカと中国や日本で栽培されているカメリア・シネンシスのどちらも用いられる。抽出には、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0034】
茶抽出物中には、ポリフェノールやカテキン類などの抗酸化物質を含有する。カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートが含まれていることが好ましく、特に、エピガロカテキンガレートを含有することが好ましい。
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、該茶抽出物を、0.1〜40質量%含有することが好ましく、0.5〜35質量%含有することが更に好ましく、1.0〜30質量%含有することが特に好ましい。
【0035】
また、フラボノイドのひとつであるフラボノール類は、活性酸素を除去し、動脈硬化の抑制や血流改善等の抗酸化作用を示す。フラボノール類の中でも、ポリフェノールのひとつであるレスベラトロールが抗酸化物質として着目されている。レスベラトロールは、スチルベン骨格から構成されており、ブドウの果皮に多く含まれ、そのため、ブドウから作られる赤ワインにも含有されている。
本発明は、該フラボノール類を成分として含む、ブドウエキスまたはブドウ酒濃縮物を含有することが好ましい。
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、ブドウ抽出物を、0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜10質量%を含有することが更に好ましい。
【0036】
レスベラトロールは、脂肪を燃焼させる働きがあり、血管系の疾患である動脈硬化防止や、抗ガン作用、また、DNAの細胞分裂による短化を防ぎ、カロリー制限をしたのと同様の細胞延命効果があり、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0037】
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤におけるレスベラトロールの含有量は、0.0001〜5.00質量%が好ましく、更には、0.001〜2.00質量%が好ましい。
【0038】
また、フラボノール類の中でも、ポリフェノールであるケルセチンが抗酸化物質として着目されている。ケルセチンは、フラバン構造を有しており、タマネギの外皮に多く含まれる。
【0039】
ケルセチンは、ビタミンCの吸収サポート、抗酸化作用、免疫作用等の生理作用が報告されており、さらには、脂肪吸収抑制に有効であることがわかっており、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0040】
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤におけるケルセチンの含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、更には、0.05〜10質量%が好ましく、更には、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0041】
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、特にカテキンを1〜50質量%含有することが好ましい。カテキンとしては、緑茶由来のもの等が特に好ましい。
また、本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノール類を2〜80質量%含有することが好ましい。リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノールとしては、烏龍茶由来のもの、ブドウ由来のもの、リンゴ由来のもの、ライチ由来のもの、松樹皮由来のもの、カンカ由来のもの等が特に好ましい。
【0042】
<使用方法・製剤>
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤はヒトを含む哺乳類を対象とし、該哺乳類に経口的に投与される。本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、食品(飲料を含む)、食品材料、医薬部外品、医薬品、医薬品材料、医薬部外品材料であってもよい。他の成分としては、経口投与剤として薬学的若しくは食品衛生上許容される各種の担体、例えば賦形剤、滑沢剤、安定剤、分散剤、結合剤、希釈剤、香味料、甘味料、風味剤、着色剤などを例示することができる。
【0043】
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤の形態は、本発明の効果を奏するものである限り特に制限されず、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセルに充填されたもの)、液剤、チュアブル剤、飲料等が挙げられる。その他の食品の形態であってもよい。
【0044】
これらの投与形態は、当該分野で通常知られた慣用的な方法を用いて調製することができる。
【0045】
なお、錠剤、丸剤及び顆粒剤の場合、必要に応じて慣用的な剤皮を施した剤形、例えば糖衣錠,ゼラチン被包剤、腸溶被包剤、フィルムコーティング剤等とすることもでき、また錠剤は二重錠等の多層錠とすることもできる。
【0046】
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤には、上記の他にビタミン、ビタミン様物質、タンパク質、アミノ酸、油脂、有機酸、炭水化物、植物由来原料、動物由来原料、微生物、食品用添加物、医薬品用添加物等、経口摂取可能な成分を適宜含有させることができる。
【0047】
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤の摂取により、血清中のIFN−γが増大し、免疫バランスが改善される。また、腸管免疫器官を有する盲腸の質量が増大し盲腸上皮細胞中のリンパ球数が増加し、免疫が賦活される。これにより、花粉症やアトピーなどのアレルギー症状の緩和や、風邪の予防、発がんの予防が期待される。
本発明の免疫賦活剤または抗アレルギー剤は、飲食可能な天然物であるサラシア属植物由来のものであり、長期服用しても安全であり、副作用が少ない。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実験例1)
サラシア・レチキュラータ(S. reticulata)とサラシア・オブロンガ(S. oblonga)の根及び幹の部分を粉砕後等重量ずつ混合し、98℃の熱水抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥し、サラシアエキス末1を得た。サラシアエキス末1のスクラーゼIC50値は41であった。
Wistar系雄性ラット(6週齢、体重約200g)を7日間予備飼育後、5匹づつ表1に示す投与群に分け飼育した。投与は各水溶液(100mg/ml液)を胃ゾンデを用いて行い、コントロールは同量の水を投与した。
【0050】
表1中、投与量はラット体重1kgあたりに投与する1日量を示す。βグルカンはアルブロン社製「ピュアホワイト」、低分子ヒアルロン酸は株式会社中原製のもの(分子量10万以下)を使用した。
【0051】
飼育8週間後にエーテル麻酔下で開腹し、腹大動脈より血液を採取して免疫学的指標であるIFN−γを測定した(コスモ・バイオ株式会社製 rat IFN−γ ELISAを使用)。
また、剖検を行い各器官の質量測定および病理組織学検査を行った。
各投与群の比較結果から、差の大きかったIFN−γ、盲腸質量、盲腸上皮細胞中のリンパ球数の結果を表1に示す。なお、値は各群5匹の平均値をコントロール群を100とした時の相対値として示した。
【0052】
【表1】

【0053】
実験例1の結果、本発明の実施例は比較例と比較して血清中のIFN−γが顕著に増大しており、免疫バランスが改善されていることがわかった。また、腸管免疫器官を有する盲腸の質量が増大し盲腸上皮細胞中のリンパ球数が対象群に対し顕著に増えており、免疫賦活の効果があることがわかった。
なお、試験期間中各群間での体重は差が見られず、肝機能や腎機能などの異常についても見られなかった。
【0054】
(実験例2)
サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)の根及び幹の部分を粉砕後、40℃のエタノール水(エタノール30体積%)による抽出工程を経て得られた液にデキストリンを加えてスプレー乾燥し、サラシアエキス末2(デキストリン含有率30質量%)を得た。
このサラシアエキス末を用いて表1の試料1〜8の配合をした粉末を作成し、また試料1錠あたりのスクラーゼIC50値を[実験法1]記載の方法で測定した。
これらを用いて以下の表2に示す配合成分を打錠し、試料7〜12を作成した。
被験者の服用量は表2の試料を3錠/日で設定した。βグルカンはアルブロン社製「ピュアホワイト」、低分子ヒアルロン酸は株式会社中原製のもの(分子量10万以下)、結晶セルロースは旭化成ケミカルズ社製「セオラスFD−101」を使用した。
【0055】
通年性のアレルギー鼻炎患者30名に十分なインフォームドコンセントを行った後、5名ずつのグループに、試料7〜12をそれぞれ毎日の食後30分以内に1錠経口摂取してもらい、それを30日間繰り返した。摂取期間の終了後、鼻炎症状に関し下記の基準により効果を評価してもらい各群で平均値を算出した。
点数 評価基準
0 ほとんど症状に変化なし
1 症状が少し改善した
2 症状が改善した
3 症状がかなり改善した
結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
実験例2の結果から、本発明の実施例は比較例と比較して顕著な鼻炎症状の改善が見られた。この効果はスクラーゼIC50値が1000より小さい時に顕著であり、またβグルカンと併用することによって更に効果が増進されることがわかった。
【0058】
(実験例3) (サラシアエキス末を使用した錠剤)
表3に示す配合により、錠剤を作成しシェラックコーティングを施したサプリメントを作成した。サラシアエキス末1は上記実験例1のもの、その他の各成分は下記のものを使用した。
・緑茶抽出物:太陽化学製 サンフェノン100s(カテキン55質量%含有)
・タマネギ外皮抽出物:太邦(株)製
・ヘマトコッカス藻色素:武田紙器(株)製ASTOTS−S(アスタキサンチン類含有率20質量%)
・クロム酵母:LALLEMAND BIO−INGREDIENTS(クロム0.2質量%以上含有) LALLEMAND社製)
・ショ糖ラウリン酸エステル:リョートーシュガーエステルL−1695:三菱化学フーズ(株)製
・カルニチン:伊藤ライフサイエンス(株)製
【0059】
【表3】

【0060】
杉花粉の飛散する直前の2月(場所:小田原市)に、杉花粉症の既往症がある成人10名に十分なインフォームドコンセントを行った後、表3の錠剤をそれぞれ毎日の食後30分以内に1錠経口摂取してもらいそれを60日間繰り返して、杉花粉飛散後の影響について調べた。
その結果、この配合の錠剤摂取でも実施例2で示された効果が得られた。更に、摂取被験者より、便秘が解消した、身体が軽くなった、風邪をひきにくくなったなどの報告を得た。
【0061】
(実験例4) (サラシアエキス末2を使用したドリンク)
表4の成分を混合、溶解し飲料液を調製した。これを50ccずつ瓶に充填し85℃で10分間加熱殺菌し、これを室温まで冷却し飲料とした。
杉花粉の飛散する直前の2月(場所:小田原市)に、杉花粉症の既往症がある成人10名に十分なインフォームドコンセントを行った後、表4のドリンクをそれぞれ毎日の食後30分以内に1本経口摂取してもらいそれを60日間繰り返して、杉花粉飛散後の影響について調べた。
各成分は上記実験例1〜3と同様のものを使用した。
【0062】
【表4】

【0063】
この配合の飲料摂取でも実施例2で示された効果が得られた。更に、摂取被験者より、腹囲が減少した、身体が軽くなった、二日酔いしにくくなったなどの報告を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することを特徴とする免疫賦活剤。
【請求項2】
サラシア属植物が、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)から選ばれる少なくとも1種の植物であることを特徴とする請求項1に記載の免疫賦活剤。
【請求項3】
サラシア属植物の粉砕物または抽出物のスクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が10μg/ml〜1000μg/mlの活性を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の免疫賦活剤。
【請求項4】
さらに、Toll様レセプターと結合しうる物質を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活剤。
【請求項5】
上記Toll様レセプターと結合しうる物質が、グルコポリサッカライド、リポポリサッカライド、およびヒアルロン酸から選ばれる少なくとも1種、またはその分解物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の免疫賦活剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の免疫賦活剤を含有する食品、または医薬品。
【請求項7】
サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することを特徴とする抗アレルギー剤。

【公開番号】特開2010−77039(P2010−77039A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244869(P2008−244869)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】