説明

免疫賦活性イノシン一リン酸の5’−ヌクレオチダーゼ抵抗性誘導体およびその使用

【課題】より大きな免疫賦活性能力をもつ、より安定で、5’−ヌクレオチダーゼに対し
て抵抗性のイノシン−5’−一リン酸誘導体を提供すること。
【解決手段】5’−ヌクレオシダーゼに抵抗性のイノシン−5’−一リン酸及びその誘導体
の製造方法であって、イノシン−5’−一リン酸を以下の式を有する化合物に化学的に変
性し、イノシン−5’−一リン酸の生物学的活性を生体内で保持させ方法を提供する。



(式中、Rは、アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には免疫賦活剤、即ちイノシン-5’-一リン酸の有効性を高めること
によって、免疫応答性を高める方法並びに該増強剤の使用に関するものである。より詳し
くは、本発明は、腫瘍、ウイルスおよび細胞内バクテリア病原体に冒された患者の治療お
よびワクチンアジュバントに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
続発性免疫不全症は癌、老化、自己免疫、AIDS、およびその他のウイルス性およびバク
テリア性諸疾患において一般的である。これら続発性免疫不全症の治療は、長い間、これ
ら諸疾患における改善された予後をもたらすであろうと考えられていた。多くの実験的努
力にも拘らず、僅かにレバミソールおよびイソプリノシンのみが、広範に認可されかつこ
のような治療において臨床的に使用されているに過ぎない。この種のより効果的な薬物に
対する需要がある。
【0003】
免疫機能は、該免疫系の体液性および細胞性部分を含み、並びにこれらの局面はマクロ
ファージおよび顆粒球に依存している。免疫機能の、これら種々の局面を、一般的に免疫
賦活剤と呼ぶことのできる、種々の薬剤によって増進または改善することができる。薬剤
および生物学的物質を包含する免疫賦活剤は、ヒトの諸疾患の予防および治療において広
く利用されている。
【0004】
しかしながら、最近の研究(サッド&モスマン(Sad and Mosmann),1994;シーリン
グ(Sieling)等,1994;チャカラス&ティタス(Chakkalath and Titus),1994;トリッ
プ(Tripp)等,1994;ボグダン(Bogdan)等,1991;フィオレンチノ(Fiorentino)等,1989
)は、免疫応答の適当でない刺激が、実際には該疾患の過程を容易にしている可能性があ
ることを示唆している。マウスおよびヒトモデル両者において、免疫応答のサイトカイン
プロフィールが、調節され、それによってTヘルパー(Th)細胞のサブクラスの一方、Th1
またはTh2が該病原体に対する応答に際して活性化されることが明らかとなっている。Th1
細胞は、一般にIL-2、IFN-γおよびリンホトキシン分泌のあるパターンを有し、一方該Th
2の一般的な分泌パターンはIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10およびIL-13である。該Th1細
胞サイトカインプロフィールは、一般的に疾患に対する抵抗性に関連し、またTh2サイト
カインプロフィールは、疾患の進行に関与している。特に、細胞内病原体、例えばマイコ
バクテリウムレプラエ(Mycobacterium leprae)、リステリアモノサイトゲネス(Listeria
monocytogenes)およびライシュマニアメジャー(Leishmania major)に関連して、Th1細
胞由来のサイトカインプロフィールが、該病原体の成長を制限するのに必要であることが
示された。多くの因子が、T-細胞の何れのサブセットが該免疫応答中に活性化されるかを
決定し、またTh1応答に導くのが、活性化されたマクロファージ由来のIL-12を含む、因子
の組み合わせであることも明らかとなっている。これら疾患において、このTh1応答を増
大し、あるいはこれを刺激する手段をもつことは有用であろう。例えば、癩病患者はこの
タイプ1応答を示さず、寧ろその病巣は該タイプ2のサイトカインを発現し、該サイトカ
インは、細胞内病原体に抵抗するのに必要な、該細胞媒介免疫の、典型的な体液性応答お
よび免疫抑制である。
【0005】
免疫賦活剤の一つの群は、イノシンまたはハイポキサンチン等のプリン構造を由来とし
、例えばイソプリノシン(モル比1:3でイノシンと、N,N-ジメチルアミノ-2-プロパノー
ルのp-アセタミド−ベンゾエート塩、即ちDIP塩とを含む合成薬剤)を包含する。
【0006】
【化1】


【0007】
およびNPT 15392(9-エリスロ-2-ヒドロキシ-3-ノニル−ハイポキサンチン):
【0008】
【化2】

【0009】
これらの化合物は、これらが主として胸腺−由来の(T)リンパ球に作用することにより免
疫系を刺激することから、「胸腺模倣性(thymomimetic)薬物」(ハッデン(Hadden),1985
)として分類されているが、これらは免疫応答に関与する他の細胞にも作用する。イソプ
リノシン(isoprinosine)は、医学的に有用な胸腺模倣性薬物の一例であって、該薬物は世
界中の多くの国々において、ヒトに使用することが認可されているものである。インビト
ロでのイソプリノシンの作用は、イノシンの作用と類似し、DIP塩との錯化により賦活さ
れる(ハッデン(Hadden),1978)。インビボでのイソプリノシンの作用は、イノシンまた
はDIP塩のみによっては達成されず(ワイブラン(Wybran)等,1982)、このことは錯体形
成およびイノシン塩基の保護が、インビボでの活性について決定的であることを示唆して
いる。
【0010】
臨床用途用の、より免疫学的に活性なこの種の分子の探索は、莫大な文献を蓄積した。
【0011】
ゴードン(Godon)に付与された特許文献1は、イノシンとアミノ−アルコールとによっ
て形成された錯体を開示しており、該錯体はインフルエンザおよびヘルペスウイルスに対
する防禦における薬理活性を有している。
【0012】
ハッデン(Hadden)等に付与された特許文献2は、プリン誘導体(9-(ヒドロキシアルキル
)プリン類)と、p-アセタミド安息香酸のアミノ−アルコール塩との錯体を開示しており、
これらは免疫調節および抗−ウイルス活性を有している。
【0013】
ハッデン(Hadden)等に付与された特許文献3は、抗−ウイルス因子、免疫調節剤および
抗−白血病薬として有用な、9-(ヒドロキシアルキル)プリン類の、p-アセタミド安息香
酸塩を開示している。
【0014】
ギナー−ソロラ(Giner-Sorolla)等に付与された特許文献4は、免疫調節、抗−ウイル
ス、抗−腫瘍および酵素阻害剤活性をもつエステル(プリン化合物)を開示している。
【0015】
ギナー−ソロラ(Giner-Sorolla)等に付与された特許文献5は、免疫賦活剤、抗−ウイ
ルス因子および抗−白血病薬として有用な、9-(ヒドロキシアルキル)プリン類を開示し
ている。
【0016】
ギナー−ソロラ(Giner-Sorolla)等に付与された特許文献6は、免疫調節、抗−ウイル
スおよび抗−腫瘍活性を有するプリン誘導体を開示している。
【0017】
ギナー−ソロラ(Giner-Sorolla)等に付与された特許文献7および特許文献8は、免疫
調節活性を有するジヒドロチアゾロプリン誘導体を開示している。
【0018】
特許文献9は、(ヘプタミン-1-オール)-5’-アデノシン一リン酸を開示している。サ
ハ(Saha)等(1988)は、T細胞−依存抗原(ヒツジ赤血球)に対して、インビトロで一次体
液性免疫応答を賦活化する際の、脾細胞培養物の初期段階に存在する場合の、その活性を
開示している。サハ(Saha)等(1987)は、ICR雄マウスにおける抗−SRBC PFC活性および抗
体力価を高める際の、HAAの活性を記載している。彼等は、また一次的に高血圧症とされ
たラットにおける抗−SRBC PFC活性および抗体力価を高める際の、HAAの活性をも開示し
ている。
【0019】
非特許文献1は、プリン、特にイノシン−含有またはイノシン−様の化合物が、実験に
より、一般的に細胞内病原体の感染に応答して、プリカーサT-細胞分裂を誘発するおよび
成熟T-細胞、特にTh1細胞の機能的応答を賦活する、胸腺ホルモンの作用を模倣する能力
を有していることを示した。これら分子の一例である伝達因子は、最も綿密に調べられた
構造(非特許文献2)において、イノシン-5’-一リン酸(IMP)を含むものと想定された。
【0020】
以下に、本明細書で論ずるのに使用するために、これら免疫調節/免疫賦活化合物が利
用できることは、有益であろう。
【0021】
ウイルス感染および細胞内バクテリア病原体は、一般的に主な公共衛生上の関心事であ
る。これら両カテゴリーにおいて、該バクテリアおよびウイルス病原体は宿主免疫系を回
避する。というのは、これらは該宿主細胞内で成育しているからである。マクロファージ
により開始されるTh1細胞による細胞−媒介免疫(CMI)応答は、一旦感染が生じた場合には
、細胞内病原体に対する宿主防禦または抵抗性の一般的な様式である。免疫性付与に応答
する効果的な抗体応答は、免疫性を付与する可能性がある。
【0022】
抗生物質によるバクテリア関連疾患の治療を利用することができるが、バクテリアの薬
物耐性の増大により、治療の他の方法を考察することが必要となっている。感染した個体
の治療法の一つは、患者免疫系の有効性を高めることである。これら疾患において、感作
されたTリンパ球および活性化されたマクロファージは、免疫性におけるキーファクタで
ある。従って、これら疾患に対する効果的な治療は、マクロファージを活性化し、また適
当なTリンパ球を感作するものである必要がある(ライアンインスタイツ&テール(Ryan
in Stites and Terr),pp.637-645およびミルスインスタイツ&テール(Mills in St
ites and Terr),pp.646-656)。
【0023】
細胞内バクテリア病原体は、サルモネラ(Salmonella)、レジオネラ(Legionella)、リス
テリア(Listeria)、マイコバクテリア(Mycobacteria)およびブルセラ(Brucella)を含む。
サルモネラ種は、腸内細菌の一員であり、チフス様熱病を含む腸疾患の大部分を引き起こ
す。S.ティフィ(typhi)のカプセルは表面カプセル抗原を有し、かつこのカプセル抗原に
対する抗体は防禦性ではない。事実、チフス様疾患の多くの保菌者は、この病原体に対す
る高レベルの抗体を有する。
【0024】
レジオネラ(Legionella)の研究は、これがマクロファージの絶対細胞内寄生体であるこ
とを示している。リステリア(Listeria)は、髄膜感染および成人の敗血症並びに新生児に
おける種々の感染を引き起こすグラム−陽性菌である。これらの病原体に対する防禦の主
な役割は、T-リンパ細胞関連マクロファージの活性化であることが明らかにされている。
ブルセラ(Brucella)関連疾患の研究も、抗体が防禦をもたらさず、かつ特異的に感作され
たT-リンパ細胞により生成される、活性化されたマクロファージが防禦を行うことを明ら
かにした。
【0025】
これら疾患に対して有効な、マクロファージを活性化し、また該病原体に対する適当な
Tリンパ細胞を感作する、薬剤を得ることは有用であろう。
【0026】
一般的に、効果的な抗−ウイルス薬は殆どまたは全く存在しないので、ウイルス病原体
からの防禦もまた、公共衛生に係わる主な目的として残されている。免疫性付与は、ウイ
ルス疾患における最良の防禦源として残されている。しかしながら、ワクチンはしばしば
以下の理由から免疫性を付与しない。即ち、(1)乏しい免疫原性ウイルス抗原、(2)免疫性
付与とウイルスに対する暴露との間の時間の少なさ、または(3)免疫付与された個体の応
答不能性。
【0027】
例えば、インフルエンザワクチンは、該ウイルスが抗原性における変化を行うために、
定期的に更新する必要がある。最も一般的なワクチンは、しばしば入手不能であるか、あ
るいは流行のピーク月間である冬季月間の開始前に、十分に生産されていない。従って、
該ワクチンを投与したものが、抗体力価を獲得する前に、該ウイルスに暴露されてしまう
可能性がある。更に、より高い感染の危険性のある患者、即ち高齢者および若年者におい
ては、流行が開始するまで、ワクチン接種の応諾率が低い。その上、インフルエンザは、
特に高齢者および若年者層を酷く苦しめ、また心臓−呼吸系に疾患をもつ個体をも酷く苦
しめる。これらの特定の群は、しばしばこのワクチンに対する低い免疫応答をもつ。
【0028】
インフルエンザウイルス感染は、正常な肺の抗−バクテリア防禦を抑制して、インフル
エンザに罹った患者は、バクテリア性肺炎を発症する極めて高い危険性をもつ。インフル
エンザウイルス感染中には、肺胞マクロファージまたは好中球が阻害されることが分かっ
ている。
【0029】
従って、インフルエンザウイルス感染に対する免疫応答性またはバクテリア性肺炎に対
する抵抗性を増強する手段が、この疾患を治療する上で有用であろう。この治療の有効性
を高める可能な方法の一つは、免疫賦活特性をもつ物質で治療することである(ハッデン
(Hadden)等,1976;ハッデン(Hadden),1987)。
【0030】
慢性肝炎B感染は、主な公共衛生の関心事の一つである。この肝炎Bウイルスは急性お
よび慢性肝炎並びに肝臓癌の原因である。この急性疾患は限られた進行経過を辿るが、そ
の慢性感染はその宿主の生存中持続する。慢性の保菌者はその生存中感染性を維持する。
世界中で1億人を越える保菌者が存在するものと推定されている。
【0031】
この疾患に対する一般的な高い有効性をもつ治療は存在しない。免疫性付与による予防
が、唯一の解決策として残されている。これらの危険率の高いものに対する免疫付与が決
定的である(ジェームズ(James)等,1991;マイルズ(Mills),1991)。しかしながら、肝炎
Bウイルスの表面抗原により免疫付与する場合、ワクチン投与されたものの殆ど2〜15%
が、この肝炎Bウイルスの表面抗原(anti-HBs)に対する抗体を生成せず、従ってこの感染
に対して防禦されないことが分かっている。換言すれば、これら患者は非応答性患者であ
る(デインハート(Deinhardt),1983)。肝炎Bに対する強力な免疫性を誘発するために、
該抗原処方物の多重投与の種々のスキームが推奨されている(グロッスマン&コーエン(G
rossman and Cohen),1991)。しかしながら、依然として一群の非応答性患者が存在す
る。従って、この重大な公共衛生上の要求を解決するためには、ワクチン処方物の肝炎B
に対する免疫原性を高める別の手段が必要となる。
【0032】
感染の高い危険率をもつ人々は、継続的に血液透析治療を受けている患者(ファーガソ
ン(Ferguson),1990;バルツ(Walz)等,1989)、HIV-感染および他の免疫寛容化された患
者(ヘス(Hess)等,1989)中に最も高い頻度で見出される。これら群と接触した人々およ
び過去に肝炎Bウイルスと接触したことのない人々が感染の最大の危険性をもち、感染か
らの迅速かつ最大の防禦を必要とする。これは、健康管理供給者において特に重大である
(グロッスマン&コーエン(Grossman and Cohen),1991)。従って、これら群中の、肝
炎Bに対する一般的に入手できるワクチンに対して非応答性の患者は、より一層高い感染
の危険性に曝されている。
【0033】
この非応答性の患者群における免疫付与の有効性を高め得ることが有用であろう。予防
の有効性を高める一つの可能な方法は、入手可能なワクチンの免疫原性を、アジュバント
特性をもつ生物学的に活性な物質を使用することにより増強することである。
【0034】
アジュバントが、異種抗原に応答して、抗体の形成を刺激することは周知である。アジ
ュバントは、免疫応答を賦活できる化合物として定義され、従って一群の免疫賦活剤とし
て定義されている(スタイツ&テール(Stites and Terr),1991)。アジュバントは、免
疫付与における免疫応答性を高めるのに使用される(シーマン(Seaman),1991)。例えば
、肝炎Bに対するワクチン製剤では、HBsAgが一般的に水酸化アルミニウム上に吸収され
、かくして免疫原性効果が高められ、感染を予防する、抗-HBsの防禦力価(>10 IU/l)を
達成している。
【0035】
しかしながら、上記のように、この増強されたワクチンに対してさえも応答しない非応
答性患者が存在する(セリス(Celis)等,1987;ミューアー(Meuer)等,1989)。この免疫
付与による防禦免疫性の欠乏は、一部には、主要組織適合性錯体(MHC)のレベルで測定さ
れた、免疫応答性をもつ成分によるものと考えられる(アルパー(Alper)等,1989;ウォ
ーカー(Walker)等,1981)。「非応答性患者」は該MHC中の免疫応答の支配的な遺伝子に
欠けており、結果として抗-HBsの合成が、多くとも、一般的に適用される検出法によって
は殆ど検出し得ない程の低濃度で生ずることが示唆されている(トムソン(Thomson)等,1
977)。同様にマウス主要組織適合性錯体(H-2)と関連した免疫応答遺伝子が、HBsAgを包
含する、多数のT-細胞−依存性抗原上の決定基に対する、細胞性および体液性応答を制御
することが、明らかにされている。
【0036】
肝炎Bワクチンと、種々の免疫調節剤との組み合わせによる適用で得られた結果は、こ
の方法の便宜性を示唆する。というのは、この組み合わせによる治療は完全に応答しない
か、あるいは低濃度のHBsで応答する人々の数を減じることができるからである(セリス(
Celis)等,1987;ミューアー(Meuer)等,1989)。しかしながら、これらのデータには勇
気づけられるが、これらの治療に応答しない人々が依然として存在する。彼等に対しては
、アジュバントで強化した肝炎Bワクチンを使用することが有用であり、該アジュバント
は、特定の抗体の最大濃度での迅速な誘発を促進し、かつ該非応答性患者集団における防
禦性を高めるであろう。
【0037】
ハッデン(Hadden)等(1983)は、検討されたプリン特にイノシン−含有またはイノシン様
化合物が、一般的にプリカーサT-細胞分裂を誘発し、かつ成熟T-細胞の機能性の応答を賦
活する、胸腺ホルモン作用を模倣する能力をもつことを明らかにした。
【0038】
イソプリノシンは、マウスにおける致死性のインフルエンザ感染の治療において幾分か
の有効性を示し、また非−感染性用量のウイルスを投与した場合には、ウイルスによる後
の感染における致死性を阻害した。イソプリノシンは、そのヒトにおける臨床的活性に基
づいて、インフルエンザの治療におけるヒトでの使用が、幾つかの国において承認されて
いる(グラスキー(Glasky),1985)。しかしながら、ヒト内でのイソプリノシンの半減期
は、4時間未満であり、従ってインビボ治療に対して極めて有効という訳ではない。イソ
プリノシンは、迅速に加水分解され、結果としてインビボでの短い半減期をもたらす。イ
ンビトロでのイノシン(ハッデン,1978)は、イソプリノシンと同様な特性をもつが、イ
ンビボでは、迅速に異化作用を受けて、その半減期はイソプリノシンの半減期よりも更に
短縮され、かくしてこれはインビボでは活性をもたない(ワイブラン(Wybran)等,1982)
。より大きな免疫賦活性能力をもつ、より安定なイノシン−様化合物を得ることは有用で
あろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】米国特許第3,728,450号明細書
【特許文献2】米国特許第4,221,794号明細書
【特許文献3】米国特許第4,221,909号明細書
【特許文献4】米国特許第4,340,726号明細書
【特許文献5】米国特許第4,221,910号明細書
【特許文献6】米国特許第4,457,919号明細書
【特許文献7】米国特許第4,510,144号明細書
【特許文献8】米国特許第4,387,226号明細書
【特許文献9】特開昭58-140100号公報
【非特許文献】
【0040】
【非特許文献1】Haddenら、「Purine Analogs as Immunomodulators」、Progress in Immunology IV,(Academic Press,NY)、1983年、p.1393−1408
【非特許文献2】WillsonおよびFudenberg、「Controversy About Transfer Factor Therapy Nearing An End?」、Immunology Today,1983年、4:p.157
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0041】
(発明の概要)
本発明によれば、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-−リン酸誘導
体の製法が提供され、該方法は以下の式:
【0042】
【化3】

【0043】
で表されるイノシン-5’-一リン酸を化学的に修飾することからなり、上記式において、
置換基Rはアルキル基、アルコキシ基および2級アミノ化合物由来の基からなる群から選
ばれ、その結果イノシン-5’-−リン酸の生物学的活性が、インビボで保持される。
【0044】
本発明は、さらに免疫賦活性組成物をも提供し、該組成物は免疫賦活に有効な量で、5
’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性の、以下の式で表されるイノシン-5’-一リン酸化合
物および製薬上許容される担体を含む:
【0045】
【化4】

【0046】
ここで、Rは該化合物の5’-ヌクレオチダーゼによる異化作用を阻害する部分であり、ア
ルキル、アルコキシおよび2級アミノ化合物からなる群から選ばれる。一態様において、
該免疫賦活作用は、T-細胞免疫賦活組成物を導き、またより具体的な態様においては、T
ヘルパー細胞サブセット1(Th1)細胞に導く。
【0047】
本発明は、また以下の式で表される、ワクチン用のアジュバントをも提供するものであ
る:
【0048】
【化5】

【0049】
ここで、Rは該化合物の、5’-ヌクレオチダーゼによる加水分解を阻害する部分であって
、アルキル、アルコキシおよび2級アミノ化合物からなる群から選ばれる。
【0050】
好ましい態様においては、本発明は肝炎B用のワクチンに関わり、これは精製されたウ
イルス抗原(好ましくは、組み換え)および以下の式で表される、肝炎B用のアジュバン
トを含有する:
【0051】
【化7】

【0052】
ここで、Rは該化合物の、5’-ヌクレオチダーゼによる加水分解を阻害する部分であって
、アルキル、アルコキシおよび2級アミノ化合物からなる群から選ばれる。
【0053】
本発明は、また以下の式で表される、細胞内バクテリア病原体およびウイルスに対する
、免疫刺激剤5’-ヌクレオチダーゼ耐性イノシン-5’-一リン酸誘導体を提供することに
ある:
【0054】
【化8】

【0055】
ここで、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、または式:-OR1(ここで、R1は炭素原子数
約1〜6のアルキル基である)で表されるアルコキシ基の何れかから選択される。
【0056】
本発明は、更に哺乳動物中のウイルスおよび細胞内バクテリア病原体を処理する方法を
提供し、該方法は、細胞内バクテリアおよびウイルス病原体からなる群から選ばれる病原
体により引き起こされる、感染性疾患をもつ患者を診断する工程を含む。次いで、この方
法によれば、同定された患者に、有効量の、以下の式で表される、免疫刺激剤5’-ヌクレ
オチダーゼ耐性イノシン-5’-一リン酸誘導体を投与する:
【0057】
【化9】

【0058】
ここで、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、または式:-OR1(ここで、R1は炭素原子数
約1〜6のアルキル基である)で表されるアルコキシ基の何れかから選択される。好まし
い態様においては、有効量のスクアランも投与することができる。
【0059】
本発明は、さらに、以下の項目を提供する:
(項目1) 5’−ヌクレオシダーゼに抵抗性のイノシン−5’−一リン酸の製造方法であ
って、イノシン−5’−一リン酸を以下の式を有する化合物に化学的に変性し、もって、
イノシン−5’−一リン酸の生物学的活性をin vivoで保持することを特徴とする方法。
【0060】
【化10】

【0061】
(式中、Rは、アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。

(項目2) 前記化学的変性工程が、アルコール、エーテル及び第二アミノ化合物の一つ
との縮合を含む項目1記載の方法。
(項目3) ジシクロヘキシルカルボジイミドを縮合剤として使用する項目1に記載の方
法。
(項目4) 前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、
ペンタノール及びヘプタノールからなる群から選択される項目2に記載の方法。
(項目5) 前記エーテルが、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブ
チルエーテル、ペンチルエーテル及びヘプチルエーテルからなる群から選択される項目2
に記載の方法。
(項目6) 前記第二アミノ化合物が、アルギニンである項目2に記載の方法。
(項目7) 前記第二アミノ化合物が、そのN-末端を通して、リン原子に連結されている
ペプチドである項目2に記載の方法。
(項目8) 前記ペプチドが、ARG−PRO、ARG−PRO−LYS及びARG−P
RO−LYS−THRからなる群から選択される項目2に記載の方法。
(項目9) 5’−ヌクレオシダーゼに抵抗性のイノシン−5’−一リン酸の製造方法であ
って、以下の工程:
(1)2’,3’-イソプロピリデンイノシンのヌクレオチドを保護する工程、
(2)保護した2’,3’-イソプロピリデンイノシンをメチルホスホン酸ジクロライドと
反応させる工程、
(3)前記ヌクレオチドを脱保護して、メチル−5’−イノシン一リン酸を生成させる
工程、
を含むことを特徴とする方法。
(項目10) 次式で示される免疫賦活化化合物。
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、Rは、5’−ヌクレオシダーゼによる化合物の加水分解を阻害する部分であり、
アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。)
(項目11) 前記アルキルが、約1〜6個の炭素数を有する項目10に記載の化合物。
(項目12) 前記アルキルが、メチルである項目11に記載の化合物。
(項目13) 前記アルコキシが、式:−OR’を有し、R’が、約1〜6個の炭素数を有
するアルキルである項目10に記載の化合物。
(項目14) R’が、メチルである項目13に記載の化合物。
(項目15) R’が、エチルである項目13に記載の化合物
(項目16) 前記第二アミノ化合物が、次式:
【0064】
【化16】

【0065】
(式中、R2は、約16個までの全炭素数を有するアルキルである)
で示される項目10に記載の化合物。
(項目17) R2が、次式:
【0066】
【化17】

【0067】
(式中、R3は、水素、低級C1〜C9のアルキル及びカルボキシルからなる群から選択
され、R4は、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、第二アルキル、アルキル置換ヒドロキ
シメチル、-NHC(NH)NH2、-CONH2
【0068】
【化18】

【0069】
からなる群から選択され、nは、0〜4の整数である。)で示される項目16に記載の化合
物。
(項目18) 前記第二アルキル基が、式:-CH(R5)R6で示され、R5及びR6は、同一でも異
なってもよく、独立に、炭素数1〜3個のアルキルから選択される項目17に記載の化合物

(項目19) 前記アルキル置換ヒドロキシメチルが、-C(R7)(R8)OHで示され、R7及びR8
、同一でも異なってもよく、独立に、水素及び炭素数1〜3個のアルキルから選択され、
少なくとも1つが水素以外である項目17に記載の化合物。
(項目20) 前記第二アミノ化合物が、そのN-末端を通して、リン原子に連結されている
ペプチドである項目10に記載の化合物。
(項目21) 前記ペプチドが、ARG−PRO、ARG−PRO−LYS及びARG−P
RO−LYS−THRからなる群から選択される項目20に記載の化合物。
(項目22) 次式で示される5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性のイノシン−5’−一リン酸化
合物の免疫強化効果量と、製薬上許容されるキャリヤーとを含有する免疫強化組成物。
【0070】
【化19】

【0071】
(式中、Rは、5’−ヌクレオシダーゼによる化合物の加水分解を阻害する部分であり、
アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。)
(項目23) 前記アルキルが、約1〜6個の炭素数を有する項目22に記載の組成物。
(項目24) 前記アルキルが、メチルである項目23に記載の組成物。
(項目25) 前記アルコキシが、式:−OR’を有し、R’が、約1〜6個の炭素数を有
するアルキルである項目22に記載の組成物。
(項目26) R’が、メチルである項目25に記載の組成物。
(項目27) R’が、エチルである項目25に記載の組成物。
(項目28) 前記第二アミノ化合物が、次式:
【0072】
【化20】

【0073】
(式中、R2は、約16個までの全炭素数を有するアルキルである)
で示される項目22に記載の組成物。
(項目29) R2が、次式:
【0074】
【化21】

【0075】
(式中、R3は、水素、低級C1〜C9のアルキル及びカルボキシルからなる群から選択
され、R4は、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、第二アルキル、アルキル置換ヒドロキ
シメチル、-NHC(NH)NH2、-CONH2
【0076】
【化22】

【0077】
からなる群から選択され、nは、0〜4の整数である。)で示される項目28に記載の組成
物。
(項目30) 前記第二アルキル基が、式:-CH(R5)R6で示され、R5及びR6は、同一でも異
なってもよく、独立に、炭素数1〜3個のアルキルから選択される項目29に記載の組成物

(項目31) 前記アルキル置換ヒドロキシメチルが、-C(R7)(R8)OHで示され、R7及びR8
、同一でも異なってもよく、独立に、水素及び炭素数1〜3個のアルキルから選択され、
少なくとも1つが水素以外である項目29に記載の組成物。
(項目32) 前記第二アミノ化合物が、そのN-末端を通して、リン原子に連結されている
ペプチドである項目22に記載の組成物。
(項目33) 前記ペプチドが、ARG−PRO、ARG−PRO−LYS及びARG−P
RO−LYS−THRからなる群から選択される項目32に記載の組成物。
(項目34) 次式で示される5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性のイノシン−5’−一リン酸化
合物の免疫強化効果量と、製薬上許容されるキャリヤーとを含有するT細胞免疫強化組成
物。
【0078】
【化23】

【0079】
(式中、Rは、5’−ヌクレオシダーゼによる化合物の加水分解を阻害する部分であり、
アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。)
(項目35) 前記T細胞が、Th1細胞である項目34に記載の組成物。
(項目36) 前記T細胞が、T細胞が、HIV感染患者からのものである項目34項に記載の
組成物。
(項目37) 次式を有するワクチン用のアジュバント。
【0080】
【化24】

【0081】
(式中、Rは、5’−ヌクレオシダーゼによる化合物の加水分解を阻害する部分であり、
アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。)
(項目38) 前記アルコキシが、式:−OR1を有し、R1が、約1〜6個の炭素数を有す
るアルキルである項目37に記載のアジュバント。
(項目39) R1が、メチル及びエチルからなる群から選択される項目38に記載のアジュ
バント。
(項目40) 前記ワクチンが、B型肝炎用である項目37に記載のアジュバント。
(項目41) 精製B型肝炎抗原及び次式で示されるアジュバントを含有することを特徴と
するB型肝炎に対するワクチン。
【0082】
【化25】

【0083】
(式中、Rは、5’−ヌクレオシダーゼによる化合物の加水分解を阻害する部分であり、
アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。)
(項目42) 前記アルコキシが、式:−OR1を有し、R1が、約1〜6個の炭素数を有す
るアルキルである項目41に記載のワクチン。
(項目43) 前記Rが、式:−OR1を有し、R1が、メチル及びエチルからなる群から選
択される項目41に記載のワクチン。
(項目44) 細胞内細菌性病原体及びウィルスに対する免疫系刺激剤として使用され、以
下の式で示される5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸。
【0084】
【化26】

【0085】
(式中、Rは、
(a)炭素数1〜6個のアルキル基、及び
(b)式:−OR1を有し、R1が、約1〜6個の炭素数を有するアルキルであるアルコ
キシ基、
からなる群から選択される。)
(項目45) Rが、前記基−OR1を有し、R1が、メチルである項目44に記載の免疫系刺
激剤。
(項目46) Rが、メチルである項目44に記載の免疫系刺激剤。
(項目47) 免疫刺激の治療を必要とする哺乳動物の免疫応答を増強する方法であって、
次式で示される5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸の免疫賦活化効果
量を前記哺乳動物に投与することを特徴とする方法。
【0086】
【化27】

【0087】
(式中、Rは、5’−ヌクレオシダーゼによる化合物の加水分解を阻害する部分であり、
アルキル、アルコキシ及び第二アミノ化合物からなる群から選択される。)
(項目48) 前記哺乳動物が、HIV感染している項目47に記載の方法。
(項目49) 前記哺乳動物が、ガン性腫瘍を有する項目47に記載の方法。
(項目50) 5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸化合物の効果的量が
、少なくとも一日、1〜50mg/kg-体重である項目47に記載の方法。
(項目51) 哺乳動物におけるウィルス性及び細胞内細菌性病原体を治療する方法であっ
て、以下の工程:
(1)細胞内細菌性及びウィルス病原体からなる群から選択される病原体によって生じ
る感染性の病気に罹患している患者を診断する工程、
(2)次式で示される免疫刺激剤5’−ヌクレオシダーゼ耐性イノシン−5’−一リン酸
の効果量を投与する工程、
を含有することを特徴とする方法。
【0088】
【化28】

【0089】
(式中、Rは、
(a)炭素数1〜6個のアルキル基、及び
(b)式:−OR1を有し、R1が、約1〜6個の炭素数を有するアルキルであるアル
コキシ基、
からなる群から選択される。)
(項目52) Rが、基−OR1を有し、R1が、メチルである項目51に記載の方法。
(項目53) Rが、メチルである項目51に記載の方法。
(項目54) 投与量が、少なくとも一日、1〜50mg/kg-体重である項目51に記載の方法。
(項目55) 哺乳動物におけるウィルス性及び細胞内細菌性病原体を治療する方法であっ
て、以下の工程:
(1)細胞内細菌性及びウィルス病原体からなる群から選択される病原体によって生じ
る感染性の病気に罹患している患者を診断する工程、及び
(2)次式で示される免疫刺激剤5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン
酸の効果量を投与する工程、及び
【0090】
【化29】

【0091】
(式中、Rは、
(a)炭素数1〜6個のアルキル基、及び
(b)式:−OR1を有し、R1が、約1〜6個の炭素数を有するアルキルであるアルコ
キシ基、
からなる群から選択される。)
(3)効果的量のスクアランを投与する工程、
を含有することを特徴とする方法。
(項目56) Rが、基−OR1を有し、R1が、メチルである項目55に記載の方法。
(項目57) Rが、メチルである項目55に記載の方法。
(項目58) 前記治療される感染性の病気が、インフルエンザである項目55に記載の方法

(項目59) 前記5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸の投与量が、少
なくとも一日、1〜50mg/kg-体重であり、かつスクアランの投与量が、少なくとも一日、
1〜5mlである項目55に記載の方法。
(項目60) 5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸による治療から利益
を得る患者を決定する方法であって、以下の工程:
(1)末梢血リンパ球を単離する工程、
(2)分裂促進因子及び5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸の存在
下に、in vitroのリンパ球刺激分析を行う工程、
(3)5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸に対する低下したin vi
tro応答を有する患者を、5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸による
治療の候補でないことを特定する工程、
を有することを特徴とする方法。
(項目61) 前記分裂促進因子が、フィトヘマグルチニンである項目60に記載の方法。
(項目62) 前記5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン酸が、メチル−5
’−イノシン一リン酸(メチル−IMP又はMe-IMP)、メチル−5’−イノシンホスホネート
(Mp-IMP)、エチル-5’-イノシン一リン酸(Ethyl-IMP又はE-IMP)、アルギニン-5’-イノ
シン一リン酸(Arginin-IMP又はArg-IMP)及び(ヘプタンミン−1−オール)−5’−イノ
シン一リン酸(Ha-IMP)からなる群から選択される項目60に記載の方法。
(項目63) 腫瘍を有する患者の治療方法であって、以下の工程:
(1)次式で示される免疫刺激剤5’−ヌクレオシダーゼ抵抗性イノシン−5’−一リン
酸の効果的量を投与する工程、
【0092】
【化30】

【0093】
(式中、Rは、
(a)炭素数1〜6個のアルキル基、及び
(b)式:−OR1を有し、R1が、約1〜6個の炭素数を有するアルキルであるアル
コキシ基、からなる群から選択される。)、及び
(2)エンドトキシンの効果的量を投与する工程、を含有することを特徴とする方法。
(項目64) 前記エンドトキシンが、リポポリサッカライド及びサルモネラワクチンから
なる群から選択される項目63に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明のその他の利点は、以下の詳細な説明を添付図と共に参照することにより、容易に
理解され、また本発明はより一層十分に理解されよう。
【図1】第1図は、ヒト末梢血リンパ細胞の、該リンパ細胞マイトジェン植物凝集素に対する、コントロール応答を基準とする割合で表した応答(即ち、ヒト末梢血リンパ細胞の増殖)を、該培養培地中に存在するMp-IMP(---▲---)、Me-IMP(---△---)、IMP(--◇--)、E-IMP(--◆--)、Arg-IMP(--□--)およびHa-IMP(---●---)の投与量レベルに対してプロットしたグラフである。
【図2】第2図は、0.5μg/mlのPHAの存在下での、1〜1000μg/mlのMIMP(---○---)およびIMP(--●---)に対して、正常なヒトリンパ細胞の投与量応答曲線をプロットしたグラフであり、結果は2名のドナーからなるコントロールに対する比として表されている。
【図3】第3図は、3名のドナー由来の、CD4+(---○---)およびCD8+(---●---)に富むコントロールヒトリンパ細胞の投与量応答曲線を、PHAの存在下での、MIMP(1-200μg/ml)に対してプロットしたグラフである。
【図4】第4図は、種々の濃度のMIMP(0.1-100μg/ml)の存在下での、12.5μM(白抜きの棒)、25μM(あや目陰影を施した棒)、50μM(黒塗りの棒)および100μM(点描の最も短い棒)でのペプチドgp41に対する、コントロールヒトリンパ細胞の投与量応答を示す棒グラフであり、ペプチドを含まないコントロールの値は、水平の−−線で示され、また結果はテストした5名のドナーのうちの代表的な1名のCPM±SEMを表す。
【図5】第5図は、MIMP1-100μg/mlの存在下での、10(あや目陰影を施した棒)、100(斜線を施した棒)、および1000(実線)単位/mlの、組み換えインターフェロンαの抑制的影響に対する、コントロールヒトリンパ細胞の投与量応答の棒グラフであり、コントロール(白抜きの棒)は、PHAのみに対する応答であり、結果はCPM±SEMで示されている。
【図6】第6図は、コントロールヒトリンパ細胞の増殖応答を阻害する(黒塗りの棒)PGE2(10-5M)の作用、および濃度1、10および100μg/mlのMIMPの、この阻害を逆転する(あや目陰影を施した棒)作用を表すグラフであり、コントロール(白抜きの棒)はMIMPの不在下でのPHA応答であり、データはCPM±SEMで示されている。
【図7】第7図は、コントロール(c)、15名の正常な老齢個体(Ag+)、9名の抑制されたPHA応答をもつ老齢個体(Ag-)、8名のARC患者および8名のAIDS患者の、PHA応答(白抜きの棒)に及ぼす、濃度100μg/mlのMIMP(黒塗りの棒)の作用を示すグラフである。
【図8】第8図は、マウス脾臓リンパ細胞の、該リンパ細胞マイトジェンコンカナバリンAに対する、コントロール応答に関する割合で表した応答(即ち、マウス脾臓リンパ細胞の増殖)対、該培養培地中に存在するIMP(--□--)、Me-IMP(---△---)、E-IMP(--●---)、Arg-IMP(--◆--)、Ha-IMP(---◇--)およびMp-IMP(---▲---)の投与量レベルに対してプロットしたグラフである。
【図9】第9図は、ヒツジ赤血球(SRBC)に対して免疫付与されているマウスから収穫した脾細胞を、SRBCで刺激した場合に形成される(平均±SEM)脾臓プラーク抗体形成細胞(PFC)の数をプロットした棒グラフであり、ここで該マウスの免疫化は、Ha-IMP、Arg-IMP、Me-IMPの腹腔内投与と組み合わせて実施した。
【図10−1】第10A-C図は、SRBCに対して免疫付与されている、マウスから収穫した脾細胞を、SRBCで刺激した場合に形成される脾臓PFCの数(平均±SEM)をプロットした投与量応答棒グラフであり、ここで該マウスの免疫化は、種々の投与量の(A)ヘプタミン-1-オール)-5’-イノシン一リン酸、(B)アルギニン-5’-イノシン一リン酸および(C)メチル-5’-イノシン一リン酸の腹腔内投与と組み合わせて実施した。
【図10−2】第10A-C図は、SRBCに対して免疫付与されている、マウスから収穫した脾細胞を、SRBCで刺激した場合に形成される脾臓PFCの数(平均±SEM)をプロットした投与量応答棒グラフであり、ここで該マウスの免疫化は、種々の投与量の(A)ヘプタミン-1-オール)-5’-イノシン一リン酸、(B)アルギニン-5’-イノシン一リン酸および(C)メチル-5’-イノシン一リン酸の腹腔内投与と組み合わせて実施した。
【図11】第11図は、SRBCに対して免疫付与されている、マウスから収穫した脾細胞を、SRBCで刺激した場合に形成される脾臓PFCの数(平均±SEM)をプロットした投与量応答棒グラフであり、ここで該マウスの免疫化は、種々の投与量のメチル-5’-イノシン一リン酸の経口投与と組み合わせて実施した。
【図12】第12図は、マウス脾臓リンパ細胞の、該リンパ細胞マイトジェン植物凝集素(---■---)およびコンカナバリンA(---●---)に関するコントロール応答に対する割合で表した応答(即ち、マウス脾臓リンパ細胞の増殖)を、メチル-5’-イノシン一リン酸の投与量レベルに対してプロットしたグラフである。
【図13】第13図は、刺激した際の遅延型過敏性応答(即ち、平均肉跳厚みの増加±SEM)を、免疫付与時点で投与したメチル-5’-イノシン一リン酸の投与量レベルに対してプロットした、投与量応答グラフである。
【図14】第14図は、刺激の際にコントロールおよびMe-IMPの投与によって免疫化するに際して、コントロールまたはメチル-5’-イノシン一リン酸の投与による刺激における、該遅延型過敏性応答(即ち、平均肉趾厚みの増加±SEM)を比較した棒グラフである。
【図15】第15図は、フレンド白血病ウイルス(FLV)に感染したマウスを、コントロール(−)およびMe-IMP(---)処理した際の生存性を比較した線グラフである。
【図16】第16図は、エーロゾルインフルエンザ感染させ、かつコントロール(1日前にPBSを投与,--●--)、MIMP(1日前に100μgを投与,--△--)、MIMP(1時間前に100μgを投与,--○--)、MIMP(1時間後に100μgを投与,--◆--)、MIMP(1日前に200μgを投与,--□--)、MIMP(1時間に200μgを投与,--◇--)、およびMIMP(1時間に200μgを投与,--▽--)で処理した後の生存率(%)を比較した線グラフである。
【図17】第17図は、エーロゾルインフルエンザ感染させ、かつコントロール(1日前にPBSを投与,--●--)、コントロール(1時間後にPBSを投与,--○--)、MIMP(1日前に200μgを投与,--▽--)、MIMP(1時間後に200μgを投与,--△--)、MIMP(1日前に200μg+スクアランを投与,--◇--)、MIMP(1時間後に200μg+スクアランを投与,--◆--)で処理した後の生存率(%)を比較した線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
(好ましい態様の詳細な説明)
5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性(保護-IMP)であり、免疫賦活剤として使用するための、
イノシン-5’-一リン酸の製法を提供することにある。この方法は、イノシン-5’-一リン
酸またはその誘導体を化学的に修飾して、5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性であるが、インビ
トロでのその生物学的活性/イノシン-5’-一リン酸のプロフィールを維持し、かつ免疫
賦活/免疫刺激を要するインビボ用途に対する生物学的活性を拡張する。この製法は以下
の製造例1〜5に示される。一般的に、この化学的方法は、イノシン-5’-一リン酸また
はその誘導体とアルコール、エーテルまたは2級アミン化合物との間で縮合反応を行って
、インビボで活性な該5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性化合物を形成する。
【0096】
本発明は、T-細胞を刺激する手段を与える。更に、該5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性イノ
シン-5’-一リン酸誘導体は、ワクチン内でアジュバントとして機能して、他のワクチン
成分に対する応答性を高める。好ましい態様において、該ワクチンは肝炎B用のワクチン
である。
【0097】
本発明の他のもう一つの用途においては、該保護-IMPは腫瘍、ウイルス感染症および細
胞内バクテリア病原体の処置に利用できる。予想外のことに、感染個体内で、腫瘍、病原
体の治療に対する免疫応答性を高めるように作用し、かつまた免疫付与においてアジュバ
ントとして機能する一化合物が見出された。(かくして、本明細書で使用する、「治療」
なる用語は、治療および/または予防を包含する)。
【0098】
5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性化合物、保護-IMPを提供することにより、本発明は該化合
物に、治療において該免疫応答性を高めるのに効果的であるインビボ半減期をもたせるこ
とを可能とする。
【0099】
本発明は、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸の製法を提
供し、該方法は以下の式で表されるイノシン-5’-一リン酸を、以下に説明するように化
学的に修飾することにより、5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一リン酸を製
造する方法を提供する:
【0100】
【化31】

【0101】
ここで、Rはアルキル、アルコキシおよび2級アミン化合物からなる群から選ばれる。該
アルキルまたはアルコキシは、1〜6個の炭素原子をもつものであり、一態様ではメチル
またはメチルエステルである。
【0102】
本発明の基本は、イノシン-5’-一リン酸(IMP)を、5’-ヌクレオチダーゼによる加水分
解から保護して、IMPをインビボで効果的に利用することを可能とする。好ましい態様に
おいては、この保護されたIMPはメチル-5’-イノシン−一リン酸であるか(メチル-IMP,
Me-IMP,MIMP)あるいはメチル-5’-イノシン−ホスホネート(Mp-IMP)である。議論の明
確化のために、本発明はこれら2つの態様の一方により、主として説明されるであろう。
しかしながら、本発明は同様にして、任意の他の5’-ヌクレオチダーゼに対して保護され
た、生物学的に活性なIMPにも適用できる。
【0103】
5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一リン酸における該アルコキシ基は式:-
OR1(ここで、R1は約1〜6個の炭素原子をもつアルキル基であり、特定の態様において
はメチルまたはエチル基である)で表される。
【0104】
5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一リン酸における該2級アミン化合物は
以下の式で表されるものである:
-NH-R2
ここで、R2は全体として約16個の炭素原子を有する置換ノルマルアルキル基である。この
R2はヒドロキシル、アミノ、カルボキシ、2級アルキル、アルキル置換ヒドロキシメチル
、-NHC(NH)NH2、-CONH2
【0105】
【化32】

【0106】
からなる群から選ばれる。好ましくは、R2は以下の式で表される:-CH(R3)-(CH2)n-R4
こでR3は、水素原子、低級C1〜C9アルキルおよびカルボキシル基からなる群から選ばれ、
一態様においてR3はメチル基である。
【0107】
R4はヒドロキシル、アミノ、カルボキシ、2級アルキル、アルキル置換ヒドロキシメチ
ル、-NHC(NH)NH2、-CONH2
【0108】
【化33】

【0109】
からなる群から選ばれ、nは0〜4、好ましくは1〜3および最も好ましくは3の整数を
表す。
【0110】
R4が2級アルキル基である態様においては、R4は好ましくは式:-CH(R5)R6で表される
ものであり、ここでR5およびR6は、同一でも異なっていてもよく、独立に1〜3個の炭素
原子をもつアルキル基から選ばれる。好ましくは、該2級アルキル基は全体で4個の炭素
原子をもつ。
【0111】
R4がアルキル置換ヒドロキシメチル基である態様においては、該基は好ましくは式:-C
(R7)(R8)OHで表されるものであり、ここでR7およびR8は同一でも異なっていてもよく、独
立に水素原子および1〜3個の炭素原子をもつアルキル基から選ばれ、その少なくとも一
方は水素原子以外の基である。一態様においては、R7およびR8は両者共にメチル基である

【0112】
該5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一リン酸において、該2級アミン化合
物は、N-末端を介して燐原子に結合したペプチドであり得る。一態様においては、該ペプ
チドはARG-PRO、ARG-PRO-LYSおよびARG-PRO-LYS-THRからなる群から選ばれる。この式は
、偶発的な加水分解が活性ペプチド、例えばタフツシン(tuftsin)(ARG-PRO-LYS-THR)を放
出する、薬理的にまたは免疫薬理的に活性なペプチドに関する好ましい態様の一つである

【0113】
他の適当な活性ペプチドはFK565(ヘプタノイル−γ-D-グルタミル-L-メソジアミノピネ
リル-D-アラニン)、ベスタチン(Bestatin)([(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニル
ブチリル]-L-ロイシン)、イムレグ(Imreg)(TYR-GLY)、Imreg(TYR-GLY-GLY)、IL1163-171(
GLN-GLY-GLU-GLU-SER-ASN-ASP-LYS-ILE)、チムリン(Thymulin)(Zn:GLU-ALA-LYS-SER-GLN
-GLY-GLY-SER-ASN)、チモペンチン(Thymopentin)(ARG-LYS-ASP-VAL-TYR,ARG-LYS-ASPお
よびARG-LYS-ASP-VAL)、スプレニン(Splenin)(ARG-LYS-GLU-VAL-TYRおよび/またはLYS-H
IS-GLY)を包含する。
【0114】
上記のような、イノシン-5’-一リン酸の保護誘導体は、所定のアルコール、または一
級アミンまたはペプチドと、イノシン-5’-一リン酸との、好ましくはジシクロヘキシル
カルボジイミド等の縮合剤の存在下で、縮合することにより容易に調製できる。製造例1
〜5は、このような処方の例を与える。適当なアルコールは、1〜20個の炭素原子、例え
ばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、
n-ヘキシルアルコール、n-オクチルアルコールおよびn-デシルアルコールを包含する。
【0115】
適当な一級アミンまたはペプチドは6-アミノ-2-メチル-2-ヘプタノール(ヘプタミノー
ル)、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシ
ン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、セリン、スレオ
ニン、バリン、およびARG-PRO、ARG-PRO-LYSおよびARG-PRO-LYS-THR並びにその類似体を
包含する。ポリアミド−オリゴヌクレオチド複合体を製造する適当な方法は、ハラランビ
ディス(Haralambidis)等(1990)の文献に記載されている。
【0116】
本発明は、また免疫原性刺激剤による治療を必要とする哺乳動物の免疫応答を賦活する
方法をも提供する。この方法は、該哺乳動物に、免疫賦活に有効な量の以下の式で表され
る、5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一リン酸化合物を投与する工程を含む

【0117】
【化34】

【0118】
ここで、Rは5’-ヌクレオチダーゼによる該化合物の加水分解を阻止する部分であり、ア
ルキル、アルコキシおよび二級アミン化合物からなる群から選ばれるものである。
【0119】
より特定的には、本発明は免疫応答を賦活する方法を提供し、ここで該T-細胞は、免疫
賦活に有効な量の以下の式で表される、5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一
リン酸化合物および製薬上許容される担体で刺激される:
【0120】
【化35】

【0121】
ここで、Rは5’-ヌクレオチダーゼによる該化合物の加水分解を阻止する部分であり、ア
ルキル、アルコキシおよび二級アミン化合物からなる群から選ばれるものである。好まし
い態様の一つにおいては、該Th1T-細胞サブセットが優先的に刺激される。
【0122】
本発明は、更に免疫賦活組成物を提供し、該組成物は免疫賦活に有効な量の、以下の式
で表される、5’-ヌクレオチダーゼ抵抗性のイノシン-5’-一リン酸化合物および製薬上
許容される担体を含む:
【0123】
【化36】

【0124】
ここで、Rは5’-ヌクレオチダーゼによる該化合物の加水分解を阻止する部分であり、ア
ルキル、アルコキシおよび二級アミン化合物からなる群から選ばれるものである。一態様
において、この免疫賦活はT-細胞免疫賦活組成物に導き、またより具体的な態様では、T
ヘルパー細胞サブセット1(Th1)細胞に導く。
【0125】
本発明は、またワクチン用のアジュバントが以下の式で表されるような、免疫賦活組成
物をも提供する:
【0126】
【化37】

【0127】
ここで、Rは5’-ヌクレオチダーゼによる該化合物の加水分解を阻止する部分であり、ア
ルキル、アルコキシおよび二級アミン化合物からなる群から選ばれるものである。好まし
い態様において、該アルコキシ基は式:-OR1(ここで、R1は約1〜6個の炭素原子をもつ
アルキル基およびより具体的にはメチルおよびエチル基である)で示される。
【0128】
一態様において、本発明は肝炎B用のワクチンに関わり、該ワクチンは精製されたウイ
ルス抗原(好ましくは、組み換え)および以下の式で表される肝炎B用のアジュバントを
含む:
【0129】
【化38】

【0130】
ここで、Rは5’-ヌクレオチダーゼによる該化合物の加水分解を阻止する部分であり、ア
ルキル、アルコキシおよび二級アミン化合物からなる群から選ばれるものである。好まし
い態様において、該アルコキシ基は式:-OR1(ここで、R1は約1〜6個の炭素原子をもつ
アルキル基およびより具体的にはメチルおよびエチル基である)で示される。
【0131】
同様に、本発明は、細胞内バクテリア病原体およびウイルスに対する、免疫系刺激剤と
して機能する、以下の式で示される、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5
’-一リン酸およびその誘導体の使用法を提供する:
【0132】
【化39】

【0133】
ここで、Rは1〜6個の炭素原子をもつアルキル基または式:-OR1(ここで、R1は約1〜
6個の炭素原子をもつアルキル基である)で示されるアルコキシ基から選択される。選択
された態様では、RおよびR1はメチル基である。
【0134】
本発明は、更に哺乳動物におけるウイルスおよび細胞内バクテリア病原体を処置する方
法をも提供し、該方法は、ウイルスおよび細胞内バクテリア病原体からなる群から選ばれ
る病原体により生じた、感染性疾患に冒された患者を診断する工程を含む。この方法では
、次に以下の式で表される免疫系刺激剤として機能する有効量の保護-IMP(5’-ヌクレオ
チダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸およびその誘導体)を、該同定された
患者に投与する工程を含む:
【0135】
【化40】

【0136】
ここで、Rは1〜6個の炭素原子をもつアルキル基または式:-OR1(ここで、R1は約1〜
6個の炭素原子をもつアルキル基である)で示されるアルコキシ基から選択される。選択
された態様では、RおよびR1はメチル基である。好ましい態様においては、有効量のスク
アランをも投与することができ、投与すべき該スクアランの量は少なくとも1日当たり1
〜5mlである。
【0137】
本発明は、腫瘍に罹った患者の治療方法を提供する。この方法は、本明細書に記載する
ような免疫刺激剤として、有効量の5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’
-一リン酸を投与する工程、および有効量の内毒素、例えばリポポリサッカライド(LPS)を
投与する工程を含み、あるいは好ましい態様においてはFDAガイドラインに従って投与さ
れる、サルモネラワクチンを投与する工程を含む。白血病においては、有効量の5’-ヌク
レオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸を、本明細書にFLV白血病につき記
載されたような、免疫刺激剤として、治療の目的で投与することが可能であることに注意
すべきである。
【0138】
本発明は、また5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸による
治療の利点を享受するであろう患者を決定する方法をも提供する。この方法は、当分野で
公知のようにして末梢血リンパ細胞を単離し、マイトジェンおよび保護-IMPの存在下で、
インビトロでのリンパ細胞刺激アッセイを実施する工程を含む。該保護-IMPに対して、低
下されたインビトロ応答を示す患者は、この保護-IMPによる治療の候補ではない。
【0139】
本明細書で使用するような「免疫刺激剤」および/または「免疫賦活剤」なる用語は、
個体に投与した場合、あるいはインビトロでテストした場合に、これが投与される個体ま
たはテスト系内の抗原および/または化合物に対する該免疫応答を増大する化合物を意味
する。幾つかの抗原は、単独で投与した場合には弱い免疫原性をもつか、該個体に免疫応
答を引き起こす濃度において、該個体に対して有害である。該免疫刺激剤または免疫賦活
剤は、該抗原をより一層免疫原性とすることにより、該抗原または化合物に対する、該個
体の免疫応答性を高めることを可能とするか、あるいはまた該免疫系をより応答性の高い
ものとすることが可能である。この免疫刺激剤/免疫賦活剤は、また該抗原/化合物のよ
り低い用量が、該個体における免疫応答を達成するのに必要とされるように、該免疫系に
影響を与えることができる。
【0140】
細胞内バクテリア病原体はサルモネラ、レジオネラ、リステリアおよびブルセラを包含
する。サルモネラ種は腸内細菌の構成員である。本発明で治療を意図するウイルス病原体
は、インフルエンザ、フレンド白血病ウイルス、肝炎、ヘルペスおよびHIVを包含するが
これらに制限されない。
【0141】
上で論じた疾患の治療については、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5
’-一リン酸誘導体から選ばれる免疫刺激剤は、癌性腫瘍、ウイルス感染または細胞内バ
クテリア感染に関連する、二次免疫不全の診断後に与えられるであろう。この免疫刺激剤
は、有効量で使用され、一般的には1日当たり1〜50mg/kg体重、好ましい態様では1日
当たり1〜10mg/kg体重で使用されるであろう。この免疫刺激剤は、最初の診断の時点で
投与されるか、毎日または良好な医療実務に従って決定された時点で、個々の患者の臨床
状態、投与部位並びに方法、投与のスケジュールおよび医療関係者には公知の他の因子を
考慮して与えられるであろう。
【0142】
本発明の目的にとって、「有効量」とは、従って二次免疫不全の治療分野において公知
の考察により決定される。ここでは、改善された生存率、より迅速な回復、症状の改善ま
たは排除または感染後合併症の軽減等(これらを包含するが、これらに制限されない)の
改善の発現等の、治療された個体の測定可能な軽減を達成するのに効果的である必要があ
り、また該感染物質に対する適当な抗体力価または高い力価、腫瘍質量の減少あるいは医
療における当業者にとって適当であり、かつ公知である他の測定を使用できるものである
必要がある。
【0143】
本発明の方法において、本発明の免疫刺激剤、即ちイノシン-5’-一リン酸の誘導体(
保護-IMP)は、種々の方法で投与できる。この免疫刺激剤は、該化合物自体として、製薬
上許容される塩として投与でき、また単独であるいは製薬上許容される担体との組み合わ
せで投与できる。これらの化合物は静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、および経鼻投与を
包含する、経口、皮下または非経口経路で投与できる。該化合物の移植片を使用すること
も可能である。治療される患者は、温血動物および特にヒトを含む哺乳動物である。
【0144】
ヒトの治療は、ここに例示するマウスの場合よりも一般的に長期間に渡ることに注意す
べきであり、該治療は該疾患過程の長さおよび薬物の有効性に比例する長さをもつ。一般
的に、用量は体重に比例し、また代謝と投与量は、当分野で公知の上記のような因子を考
慮して、ここに例示した動物モデルから、ヒトに変換される。
【0145】
該用量は、単一投与量であっても、また好ましい態様における数日に及ぶ期間に渡る多
重投与であってもよい。
【0146】
保護-IMP誘導体を非経口経路で投与する場合、該誘導体は一般的に単位投薬量の、注射
可能な形態(溶液、懸濁液、エマルション)に処方されるであろう。注射に適した製薬上
の処方は、滅菌水性溶液または分散液、および無菌注射溶液または分散液に再現するため
の滅菌粉剤を包含する。該担体は溶媒または分散媒、例えば水、エタノール、ポリオール
(例えば、グリセロール、液状ポリエチレングリコール等)、適当なその混合物、および
植物油であり得る。
【0147】
例えば、レシチン等の被膜の利用により、分散体の場合には所定の粒径を維持すること
により、および界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。非水ビ
ヒクル、例えばスクアラン、綿実油、胡麻油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマワリ
油、ピーナッツ油、およびエステル例えばイソプロピルミリステートを、該化合物の組成
物用の溶媒系として使用することも可能である。更に、組成物の安定性、無菌性および等
張性を高める種々の添加剤、例えば抗生物保存剤、酸化防止剤、キレート剤、およびバッ
ファー等を添加できる。微生物の作用の抑制は、種々の抗菌剤または抗真菌剤、例えばパ
ラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって保証し得る。多くの場
合において、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を含めることが望ましいであろう。注
射可能な剤形の長期に渡る吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばアルミニウムモノステア
レート、およびゼラチン等の使用によって可能となる。しかしながら、本発明によれば、
使用するあらゆるビヒクル、希釈剤または添加剤が該化合物と相容性である必要がある。
【0148】
適当な注射可能な溶液は、本発明の実施において使用される該化合物を、所望ならば種
々の他の成分と共に、適当な溶媒の所定量中に配合することにより調製できる。
【0149】
該保護-IMP誘導体の薬理処方物を、任意の相容性の担体、例えば種々のビヒクル、アジ
ュバント、添加剤および希釈剤を含有する注射可能な処方で、該患者に投与でき、あるい
は本発明で使用する該化合物を、徐放性皮下移植片または特定部位をターゲットとする放
出系、例えばポリマーマトリックス、リポソーム、および微小球等の形状で、該患者に非
経口的に投与できる。本発明で使用するのに適した移植片は、移植後に徐々に溶解するペ
レット形状、あるいは当業者には周知の生体適合性放出単位をとることができる。このよ
うな周知の投与形および単位は、該活性成分が、数日乃至数週間の期間に渡って徐放され
るように設計される。
【0150】
本発明において有用な、周知の移植片および単位の例は、制御された速度で薬物を分配
するための、移植可能な微量注入ポンプを開示している、米国特許第4,487,603号、皮膚
を通して薬物を投与するための治療装置を開示している米国特許第4,486,194号、正確な
注入速度で薬物を放出するための、薬物注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233
号、連続的薬物放出のための、可変流量の、移植可能な注入装置を開示している米国特許
第4,447,224号、多重チャンバー区画をもつ、浸透圧薬物放出装置を開示する米国特許第4
,439,196号、および浸透圧薬物放出装置を開示する米国特許第4,475,196号に記載されて
いる。これらの特許を本発明の参考文献とする。多くの他のこのような移植片、放出装置
、および単位が当業者には周知である。
【0151】
本発明で使用する該保護-IMP誘導体の薬理的処方物は、該患者に経口的に投与できる。
公知の方法、例えば錠剤、懸濁液、溶液、エマルション、カプセル剤、粉剤、シロップ等
の投与が利用可能である。
【0152】
該保護-IMPおよびその誘導体を、経口、静脈内または経鼻的に放出し、かつ生物学的活
性を維持する公知の技術が好ましい。
【0153】
一態様においては、該保護-IMPは、まず静脈内投与して、該保護-IMPの血中濃度を適当
なレベルに上げることができる。次いで、該患者内のレベルを経口投与剤形により維持す
る。但し、上記のような患者の状態に依存して、経鼻を包含する他の投与経路を利用する
ことも可能である。該保護-IMPおよびその誘導体の投与すべき量は、治療すべき患者毎に
変化し、1日当たり10μg/kg体重乃至1日当たり100mg/kg体重なる範囲で、また好ましく
は1〜10mg/kg体重なる範囲で変動するであろう。
【0154】
市販品として入手可能なFDA承認ワクチンが、本発明のワクチン−アジュバントの組み
合わせを調製するのに使用できる。また、ワクチンは、それ自体ワクチン調製分野で公知
の如く調製できる。一例として、肝炎ワクチンを使用する。例えば、市販品として入手で
きる肝炎ワクチンを使用できるか、あるいはFDAのガイドラインに従って、肝炎表面抗原
の投与量を使用して調製できる。該アジュバントは、有効量を与える濃度で使用され、該
濃度は一般的には0.01〜100mg/kg体重の範囲であろう。好ましい態様において、該アジュ
バントは0.01〜10mg/kg体重なる濃度で使用されるであろう(ソーサ(Sosa)等,1992)。
【0155】
また、ワクチン処方物を投与し、かつ5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン
-5’-一リン酸誘導体、例えばMp-IMPの一定服用量を同時に投与するであろう。
【0156】
更にまた、該ワクチン自体、該ワクチンとアジュバントとの同時投与あるいはアジュバ
ント−ワクチン複合体の初期投与に引き続き、該アジュバントを後投与することができる
。該アジュバントは有効量で使用され、一般的には0.01〜100mg/kg体重なる量を与える濃
度であろう。好ましい態様においては、該アジュバントは、0.01〜10mg/kg体重なる量を
与える濃度で使用されるであろう(ソーサ(Sosa)等,1992)。このアジュバントは、該初
期投与から7日以内に、毎日あるいは良好な医療実務に従って決定された時点にて、各患
者の臨床状態、投与部位および方法、投与スケジュールおよび医療実行者には公知の他の
因子を考慮して、投与される。
【0157】
本発明の目的にとって「有効量」とは、免疫付与技術において公知の如き考察により、
このようにして決定される。ここで、該アジュバントおよびワクチンを投与したヒトにお
ける、および好ましい態様においては、標準的なワクチンに対して非−応答性であるヒト
における、測定可能な抗−ウイルス力価を与えるのに効果的である必要がある。
【0158】
該アジュバントおよびワクチンは、一緒に単位用量の注射可能な形状に、あるいは単独
で、皮下および筋肉内および腹腔内投与を包含する、非−経口注入並びに経口および経鼻
投与製剤として処方できる。注入に適した薬理処方物は、無菌水性溶液または分散液、無
菌注射用溶液または分散液に再現するための無菌粉剤を包含する。公知の方法、例えば錠
剤、懸濁剤、溶液剤、エマルション剤、カプセル剤、粉剤、シロップ等としての、アジュ
バント−ワクチンの組み合わせの投与等を利用できる。本発明の処方物を、その生物学的
活性を維持しつつ、経口、経鼻または注射を介して放出する公知の技術が、好ましい。
【0159】
公知のワクチンに対して非−応答性であるヒト、および本発明によって免疫付与されて
いるヒトが、首尾よく免疫付与されるか否かを決定するために、力価を決定でき、またウ
イルス抗原に対する応答における増殖性のテストを、当分野で周知の如く行うことができ
る。
【0160】
イソプリノシンは、マウスの致死的なインフルエンザ誘発処理において幾分かの有効性
をもつことが示され、またウイルスの準感染的投与量で投与した場合には、ウイルスによ
る後の攻撃の際の、致死性が阻害された(グラスキー(Glasky),1985)。この防禦活性は
、恐らくイソプリノシンのアジュバント活性により説明される。
【0161】
実施例に示すように、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸
誘導体の活性は、生存率を増大し、かつインフルエンザ誘発における平均生存時間は、イ
ソプリノシンのそれに勝る活性を表す。致死的なインフルエンザ誘発において100%防禦を
与える、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸誘導体とスクア
ランとの使用は、如何なる免疫刺激剤/免疫賦活剤についても、公知技術には報告されて
いない。サルモネラおよびインフルエンザによる攻撃の後の、保護-IMP誘導体の、生存率
および平均生存時間を増大する作用(即ち、治療効率)は、5’-ヌクレオチダーゼに対し
て保護された任意のIMPに固有の作用である。これらの感染性の攻撃において、死は突然
生じ、該保護-IMP誘導体が作用するメカニズムは、全体的な免疫薬理学的プロフィールか
らは予想されない。5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸誘導
体の延命並びにリステリアにおける成分率の増大作用は、如何なる他のプリン免疫調節剤
については報告されていない。
【0162】
5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸誘導体の免疫刺激効果
の該メカニズムに関して、ある仮定をなすことができるが、この作用形式により何等本発
明は制限されるものではないと理解すべきである。感染誘発に伴う生存率に関与する重要
なメカニズムについての最近の洞察は、任意の細胞内病原体、例えばトキソプラズマ(Tox
oplasma)、ライシュマニア(Leishmania)およびリステリア(Listeria)を使用した研究には
含まれていない(モスマン&コフマン(Mossman and Coffman),1989;スコット(Scott)
,1991;ハーク−フレンドチョ(Haak-Frendocho)等,1992;トリンチエリ(Trinchieri),
1993;トリップ(Tripp)等,1994;スコット(Scott),1994;ボグダン(Bogdan)等,1991;
フィオレンチノ(Fiorentino)等,1989)。このモデルにおいて、Th1細胞応答はIL-12によ
り促進され、IL-2およびγ-IMPにより媒介され、かつIL-4により妨害され、またIL-10は
リステリア等の感染に対して動物を保護する。IL-4〜IL-10によって媒介されるTh2応答は
、リステリア等の感染による致死性と関連している。このモデルはマイコバクテリアレプ
ラエ(Mycobacteria leprae)によるヒトの感染に対して適用されることが明らかにされて
いる(セイリング(Seiling)等,1994)。かくして、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗
性のイノシン-5’-一リン酸誘導体が、Th2応答を越えるTh1の促進により機能するものと
予想された。この予測は、更に5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一
リン酸誘導体の、抗体媒介応答を凌駕する、遅延型の過敏性応答に及ぼす選択的作用によ
って支持されている(ソーサ(Sosa)等,1992)。
【0163】
本出願人は、以下に与える実施例において、MIMPが広い濃度範囲に渡り活性であって、
PHA等のT細胞マイトジェンに対して、およびより可変性の度合いで、LPSおよびヨウシュ
ヤマゴボウ等のB細胞マイトジェンに対する、マウスおよびヒトのリンパ細胞の応答を刺
激することを示す。MIMPの作用は、更に豊富化されたヒトCD4+およびCD8+リンパ細胞の応
答について確認された。その上、これらの結果は、HIVペプチド、IFN α、およびPGE2
、正常なリンパ細胞の該PHA応答に及ぼす抑制作用が、この抑制が温和乃至中程度であっ
て、極端ではなくあるいは毒性でない場合には、逆転される可能性のあることを示してい
る。これらの結果は、また高齢者およびHIV-感染個体のリンパ細胞が、該応答が過度に抑
制されない場合には、PHAの存在下で、該保護-IMPによる刺激に応答できることを示して
いる。これら研究における、例示したMe-IMPの作用はIMPの作用であると考えられる。と
いうのは、Me-IMPおよびIMPの作用は、インビトロにおいて類似するからである。
【0164】
Tリンパ細胞に及ぼす、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン
酸の選択的作用は、レセプタに基づく相互作用であることを暗示している。Me-IMPは、成
熟Tリンパ細胞に及ぼす、ここに記載した作用の他に、前胸腺細胞の分裂マーカーを誘発
することが明らかにされている(ツーレーン(Touraine)等,1991)。
【0165】
該プリンの引上げ路(salvage pathway)は、Tリンパ細胞の発達および機能に関する重
要な関連性をもつ。アデノシンデアミナーゼおよびヌクレオシドホスホリラーゼ両者の欠
乏は、機能性のTリンパ細胞の不足した、免疫不全症候群をもたらす。幾つかのイノシン
含有分子が、Tリンパ細胞の発達および機能にとって必須であるものと示唆できる。これ
を予測する基礎は、伝達因子との関連で存在している(ウイルソン&フーデンバーグ(Wil
son and Fudenberg),1983)。IMPが伝達因子現象の一部である場合には、該保護-IMP
は伝達因子機能の非−特異的局面を、多分Tリンパ細胞上のレセプタを介して、模倣でき
る。本出願人は、伝達因子調製が、前胸腺細胞中の分裂マーカーを誘発する、即ちMe-IMP
を模倣することを確認した(ハッデン(Hadden)等,1986)。
【0166】
保護-IMPがIL-2作用に関して調節性であることは、Th1型Tヘルパー細胞により媒介さ
れる、細胞性免疫応答を統括する上で、IL-2により演じられる中心的役割において重要な
意味をもつ。この点に関連して、保護-IMPを使用した本出願人の研究で使用した主なマイ
トジェンPHAが、サイトカインのTh1-パターン、即ちIL-1、IL-2、γ-IFNおよびIL-12を選
択的に誘導することに注目すべきである。本出願人はPHAがIL-10を誘発するが、IL-3また
はIL-4を誘発しないことを見出した。初期のデータは、Me-IMPが増大するPHA-誘発IL-2ま
たはγ-IFNに対して僅かな効果しか及ぼさず、しかも強力に1L-10産生を阻害することを
示している。これらの観測は、保護-IMPがTh1応答に影響を及ぼすことを示唆している。T
h1応答は、HIV、癌、および病原体感染、即ちトキソプラズマ、リステリア、およびライ
シュマニアに対する抵抗性において重大であることが明らかにされている(クレリシ&シ
ェアラー(Clerici and Shearer),1995;テップラー(Teppler),1993;スコット&トリ
ンチエリ(Scott and Trinchieri),1989)。かくして、保護-IMPの、これら応答を好ま
しいものとする作用は、このような条件における臨床的有用性を示している。
【0167】
この分析は、保護-IMPを用いたインビボでの研究により支持されており、該研究におい
てはDTHが、PFC応答を越えて選択的に刺激され、かつAIDS、腫瘍、および感染誘発(リス
テリアおよびサルモネラ)における生存率が増大している。これらの研究において、Me-I
MPは、1mg/kgまたはそれ以下の投与量で、経口経路で活性であることが立証されており
、また無毒であった(経口LD50>5000mg/kg)。
【0168】
従って、保護-IMP化合物、例えばMe-IMPの臨床的応用は、二次免疫不全における免疫回
復と関連しており、該二次免疫不全では、Tリンパ細胞機能が弱体化され、かつTリンパ
細胞数は妥当に保存されている。このような不全症状は、HIV感染(ARC)および癌両者の比
較的初期の段階において報告されている。
【0169】
初期のHIV感染において、Tリンパ細胞応答は、AIDSへの進行を阻止する上で必須であ
ると考えられている。Tリンパ細胞応答は、gp160、gp41およびTATを含むHIVの生成物に
より抑制される(論評については、グッド(Good)等,1991を参照のこと)。最近の研究は
、P-15Eと関連したレトロウイルスペプチド、CKS-17が、IL-2およびγ-IFNの生産を阻害
し、しかもIL-10産生を促進することにより、Th1からTh2へのシフトを誘発し得ることを
示唆している(ハラグチ(Haraguchi)等,1995)。本出願人はMe-IMPの、CKS-17との相同
性をもつgp41の17アミノ酸ペプチドの免疫抑制作用を逆転させる作用をテストし、該抑制
が温和乃至中程度である場合に、反転性であることが分かった。Me-IMPも、HIV-感染した
個体のPHA応答を増大した。これらの結果は、保護-IMPが、HIV-感染した患者のAIDSへの
進行を阻止するのに使用できることを示している。
【0170】
他のウイルス感染における保護-IMPの使用も、本発明により開示される。というのは、
免疫抑制が研究されたあらゆる型のウイルス感染に関与しているからである(ルース&ホ
ロホフ(Rouse and Horohov),1986)。高齢者におけるインフルエンザの高い致死率およ
び高い罹患率の原因となる免疫抑制は、二次的バクテリア感染によるものである。インタ
ーフェロン生産は、ウイルスが免疫性を抑制する可能性のあるメカニズムの一つを表す。
保護-IMPの、PHA応答におけるIFN αの抑制を逆転する作用は、この点に関するその応用
を推奨している。
【0171】
炎症および肉体的外傷は、部分的にプロスタグランジンにより媒介される、細胞性免疫
応答を抑制することが知られている(デービス&シーアズ(Davis and Shires),1986)
。MIMPの、PHA応答におけるPGE2の抑制作用を、逆転させる能力は、これら形態の二次免
疫不全症におけるその有用性を支持している。
【0172】
上記議論は、5’-ヌクレオチダーゼに対して抵抗性のイノシン-5’-一リン酸誘導体の
利用に関する事実上のおよび理論的な基礎を与える。本発明と共に使用される方法および
その利用性は、以下の実施例により明らかにすることができる。
【実施例】
【0173】
(一般的方法)
特に断らない限り、以下の物質および手順を使用した。
【0174】
(物質)
メチル-5’-イノシン−一リン酸(メチル-IMPまたはMe-IMP)、メチル-5’-イノシン−
リン酸(Mp-IMP)、エチル-5’-イノシン−一リン酸(エチル-IMPまたはE-IMP)、アルギニン
-5’-イノシン−一リン酸(アルギニン-IMPまたはArg-IMP)および(ヘプタミン-1-オール
)-5’-イノシン−一リン酸(Ha-IMP)を、それぞれ製造例1、2、3、4および5に従っ
て調製した。細胞培養で使用するためのMIMP処方物は、リムラス(カブトガニ)溶解物ア
ッセイ(MD州、ウォーカーズビルのウイッタカーバイオプローダクツ(Whittaker Bioprod
ucts))により、内毒素を含まないことを確認した。
【0175】
イノシン-5’-一リン酸(IMP)およびアデノシン-5’-一リン酸は、シグマケミカル社(Si
gma Chemical Co.)(MO州、セントルイス)から入手した。
【0176】
リンパ細胞マイトジェン植物凝集素(PHA)、コンカナバリンA(Con A)およびヨウシュ
ヤマゴボウマイトジェン(PWM)は指示のごとく、バローズウエルカム(Burroughs Wellcom
e)(NC州、リサーチトライアングルパーク)、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)
(MO州、セントルイス)、ギブコ(Gibco)(NY州、グランドアイランド)およびミューレッ
クスダイアグノスティックス(Murex Diagnostics)(GA州、アトランタ)から入手した。
【0177】
ヒツジ赤血球(SRBC)はダイアメディックス社(Diamedix Corp.)(FL州、マイアミ)か
ら入手した。ハンクス平衡塩類溶液およびモルモット補体はギブコから入手した。アガロ
ースはバクト(Bacto)(MI州、デトロイト)から入手し、DEAE−デキストラム(DEAE-Dextram
)はシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(MO州、セントルイス)から入手した。細
胞培養プレート(96ウエルおよび6ウエル)は、ファルコン(Falcon)社から入手した。フ
ィコールハイパック(FICOLL-HYPAQUE)はファルマーシア社(Pharmacia,Inc.)(NJ州、ピス
カタウエイ)から入手し、E.コリリポポリサッカライド(LPS)はシグマ社から入手した。
【0178】
組み換えIL-2(rIL-2)は、ヘキストファーマシューティカルズ(Hoechst Pharmaceutica
ls)(FRG州、フランクフルト)社のG.カスプリッツ(Caspritz)から贈呈された。
【0179】
M.ストランド(Strand)(MD州、バルチモアのジョーンズホプキンス大学)は、ヒト免疫不
全ウイルス(HIV)のgp160ペプチドのgp41部分を由来とする17アミノ酸をもつ配列を合成し
(ロイグ&ストランド(Reugg and Strand),1990)、親切にも我々に提供してくれた。
【0180】
プロスタグランジンE2はシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)から入手し、また組
み換えインターフェロンα(IFNα,イントロン(Intron)A)はシェーリング社(Schering
Corp.)(NJ州、ケニルワース)から入手した。
【0181】
ヒトドナーは22名の健康なコントロール(年齢構成20-50)、24名の高齢者(平均年齢84±
1)、8名のHIV-感染プレ−AIDS患者(CDCクラスII−CD4カウント544)および8名のAIDS患
者(平均CD4カウント 40)を含む。
【0182】
ヒトCD4+およびCD8+リンパ細胞サブセットは、工業的パンニング技術を利用して、正常
なコントロールから得た(CA州、サンタクララのアプライドイムノサイエンスズ(Applied
Immune Sciences))。
【0183】
(細胞培養)
細胞培養に係わる全工程は無菌条件下で実施した。ここに記載されていない細胞性免疫
学の一般的方法は、細胞性免疫学技術に関する参考文献、例えばミッシェル&シーギ(Mis
hell and Shiigi),細胞性免疫学における選ばれた方法(Selected Methods in Cell
ular Immunology),W.H.フリーマン社(Freeman & Co.)(NY,1981)およびスタイツ&テ
ール(Stites and Terr),基本および臨床的免疫学(Basic and Clinical Immunology)
,第7版,アップルトン&レンジ(Appleton & Lange)(コネチカット州、ノアウォーク
,1991)に記載されている。
【0184】
(リンパ細胞形質転換)
インビトロ:ヒト末梢血リンパ細胞(HPBL)およびマウス脾臓リンパ細胞(MSL)両者を使
用した。増殖は、ハッデン(Hadden)等(1975)およびハッデン等(1986)に記載されているよ
うに、トリチウム化したチミジンの取り込みによりアッセイした。HPBL形質転換について
は、PHAおよびPWMを0.5μg/mlで使用した。MSL形質転換については、Con Aを0.5μg/ml
で、植物凝集素(PHA,ミューレックスダイアグノスティックス(Murex Diagnostics)(GA
州、アトランタ)を0.5μg/mlでおよびリポポリサッカライド内毒素(LPS,MO州、セントル
イスのシグマ社)を10μg/mlで使用した。保護-IMP誘導体を添加する場合には、これらは
培養の開始時点において、0.1μg/ml〜100μg/mlの範囲内の種々の濃度で添加した。
【0185】
マウス脾細胞を、標準的な手順(ハッデン(Hadden)等,1975)で、4-12月齢のBALB/cマ
ウスから得た。これら細胞は、5%のウシ胎児血清(FCS,UT州、ローガンのハイクロンラブ
ス(Hyclone Labs))を補充した最小必須培地(MEM,NY州、グランドアイランドのギブコラ
ブス(Gibco Labs))1ml当たり1.5×106細胞/mlにて、マイクロウエルプレート内で培養
し、最終パルスにおける、(3H)トリチウム化チミジン(DE州、ウイルミントンのニューイ
ングランドヌクレアー(New England Nuclear),6.7Ci/mM; 2.5Ci/ml)の取り込みによ
り測定される、マイトジェンに対する該細胞の増殖応答についてテストし、次いで液体シ
ンチレーションスペクトル法を実施した。ヒト細胞を104/mlにて播種し、3H−チミジンに
よる18時間パルスを使用して、48時間培養した。
【0186】
インビボ:化合物をガバージュによって経口的に、または腹腔内投与した。終了時点に
おいて、フローレンチン(Florentin)等(1982)に記載されたようにして脾臓を得、かつ細
胞を、Con A=0.5μg/ml、PHA=0.5μg/mlまたはLPS=0.5μg/mlを使用した増殖応答を調
べるために調製した。
【0187】
(抗体−産生細胞)
直接マウス脾臓抗体−産生細胞(PFC)を、幾分改善したジェーン(Jerne)等(1963)の技術
に従ってアッセイした。簡単に言えば、一群のマウスを、腹腔内経路でSRBCにより免疫付
与し、対象とする化合物を、結果において示した如く、経口または腹腔内経路で投与した
。5日後に、脾臓細胞の懸濁液を調製し、その生存性を、トリパンブルー排除テストによ
り測定した。細胞は3x10/mlで懸濁した。0.2mlの脾細胞懸濁液を、0.8mlの0.7%アガロ
ースおよび0.2mlの新たに洗浄したSRBC(6x105/ml)と混合した。この混合物を、即座に該
プレートに注ぎ、固化させた。5%CO2含有湿潤空気雰囲気下で37℃にて60分間インキュベ
ートした後、該プレートを、ハンクス平衡塩水で1:5に希釈した、モルモット補体1mlで
満たした。溶血プラークを、倍率4xの倒立スコープで計数した。
【0188】
(統計的解析)
各実験は、示した如く2〜10回行った。各濃度点において、各ドナーから4つのサンプ
ルを使用した。データは、個々の代表的な実験についての、平均±平均の標準誤差(SEM)
として、あるいはプールしたデータについて、コントロールとの比±SEMとして表した。
特に断らない限り、データはスチューデンツt−テストを利用して、統計的有意性につき
解析した。
【0189】
(イムノアッセイ手順)
一般的に、イムノアッセイEIAsまたはRIAsは、表示した如く市販品として入手できるキ
ットを使用して実施した。また、EIAは当業者には公知の如く発展させ得る。ポリクロー
ナルおよびモノクローナル抗体両者を作成し、かつ該アッセイで使用することができる。
標準的抗体産生技術は、当業者には周知であり、一般的にはハーロウ&レーン(Harlow a
nd Lane),アンチボディーズ(Antibodies):アラボラトリーマニュアル(A Laboratory
Manual),コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)
発行、コールドスプリングハーバー,NY,1988に記載されている。適当な場合には、当業
者には周知の如く、他のイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)を利用する
ことも可能である。利用可能なイムノアッセイは特許および科学文献に広く記載されてい
る。例えば米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578
号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,93
5,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号、同
第4,879,219号および同第5,011,771号、並びにサムブルック(Sambrook)等,モレキュラー
クローニング(Molecular Cloning):アラボラトリーマニュアル(A Laboratory Manual
),コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor),NY,1988を参照のこと。
【0190】
(細胞内病原体を用いた研究用の一般的方法)
テストした病原体に依存して、マウスの種々の菌株を使用した。サルモネラおよびリス
テリアをテストするために、体重14-16gのBALB/cマウスを使用した。インフルエンザウイ
ルスに対する応答については、マウスのNMRI系を使用した。これらのマウスはロシア、ア
カデミーオブメジカルサイエンス(Academy of Medical Science)のアニマルラボラト
リー(Animal Laboratory)から入手し、本明細書に記載の実施例11-13で使用した。
【0191】
(肝炎ワクチンを使用した研究用の一般的方法:動物)
タンパクに対する免疫応答のための、Pre-S2ゾーンS-遺伝子HBVによりコード化された
、種々の系のマウスを、以下のハプロタイプ順に配置する(ベナセラフ&マックデービッ
ト(Benaceraf and McDevitt),1972):H-2b>H-2d>H-2s>H-2k>H-2f。DBA/2マウスは、抗
原のみで処理した場合には、高いレベルでHBsAgに対する抗体を生産しない(ウォーカー(
Walker)等,1981)。従って、体重16-18gの雄マウスは、ロシア、アカデミーオブメジカ
ルサイエンス(Academy of Medical Science)のアニマルラボラトリー(Animal Labora
tory)から入手し、本明細書で記載する実施例で使用した。このマウス系は、これらが肝
炎Bウイルスに対する貧弱な応答体であることから、選択された。
【0192】
(照射プロトコール)
実験用のマウスを、60Coγビーム源を使用して、25rad/min(1 rad=0.01Gy)なる照射線
量で4分間照射した。データは、各群における10匹の動物の平均値を表す。
【0193】
(イムノアッセイ手順)
免疫付与したマウス由来の血清検体を、酵素イムノアッセイ(EIA)において抗-HBsの存
在に対してテストした。このテストは、ロッシュダイアグノスティカ(Roche Diagnostic
a)製の診断キットを、製造業者等の指示に従って使用して実施した。この抗-HBs EIAキ
ット(ロッシュ製)の感度は<10 IU/lである。
【0194】
抗体濃度は、以下のような濃度:10 IU/L、50 IU/L、100 IU/Lおよび150 IU/Lをも
つ標準血清パネル(ロッシュダイアグノスティカ)で検出した抗-HBsの結果に基づいて工
夫した検量線の助けを借りて測定した。これら2種の実験の結果は平均値の計算のために
使用した。
【0195】
(保護-IMPおよびHBsAg投与のためのプロトコール)
HBsAgは、注射間2週間間隔で、2度、0.2ml PBS(pH 7.4)中、16mg/マウスなる投与
量で投与した。
【0196】
保護-IMP、MIMPは、50mg/kgなる投与量にて、経口または腹腔内量経路で導入した。
【0197】
MIMP投与について3つのスキームを使用した。即ち、
スキーム#1:MIMPを、HBsAG導入の30分前に、ガバージュによって経口経路で投与した。
スキーム#2:HBsAgおよびMIMPを腹腔内投与した。
スキーム#3:HBsAgおよびMIMPを、一度腹腔内投与し、次いで4日間MIMPをを経口投与し
た。
【0198】
(製造例1:メチル-5’-イノシン−一リン酸)
【0199】
【化41】

【0200】
縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミドを使用して、イノシン-5’-一リン酸と
メタノールとを反応させることにより、メチル-5’-イノシン−一リン酸を調製した。
【0201】
イノシン-5’-一リン酸(2.2g,6mM)のメタノール(300ml)溶液に、トリブチルアミン(1.
4ml,12mM)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(6.56g,30mM)を添加した。この溶液
を4日間25℃に維持し、減圧下で蒸発乾固した。2.3%NaOH溶液(20ml,11.4mM)を、得られ
た残渣に添加し、生成した懸濁液を濾過した。得られた沈殿を水(20ml)で洗浄し、捨てた
。濾液を3回エーテルで抽出し、50gのアンバーライト(Amberlite)IR/20 PLUS(NH4+型)
を充填したカラム内に配置し、水で溶出させた。UV吸収画分を減圧下で蒸発させ、得られ
たシロップをメタノール(20ml)に溶解した。この溶液をアセトン(300ml)に注ぎ、得られ
た懸濁液をアセトンおよびエーテルで洗浄し、真空下でP2O5上にて乾燥して、粉末生成物
を収量1.4g(68%)で得た。この生成物の融点m.p.は145℃であり、またUVλmaxは249nm(pH
5.5,H2O)および253nm(pH 10)であった。
元素分析(C11H20N5O9P(M.W.397.24)として計算)
計算値:C,33.25;H,5.07;N,17.63
実測値:C,33.36;H,5.13;N,17.34
NMRデータDMSO-d6:3.50(s,3H,CH3OP),3.20-4.70(m,7H,リボース),5.95(d,1H,
アノマーJ-6Hz),8.12(s,1H,C-2),8.40(s,1H,C-8),8.20(br.s,5H,NH(CO)およびN
H4)
(製造例2:メチル-5’-イノシン−一リン酸)
【0202】
【化42】

【0203】
2’,3’-イソプロピリデンイノシンと、メチルホスホン酸ジクロリドとを反応させ、次
いで該ヌクレオチドを脱保護することにより、メチル-5’-イノシン−一リン酸を調製し
た。
【0204】
2’,3’-イソプロピリデンイノシン(2g,6.49mM)と50mlの乾燥ピリジンとの10℃の低温
混合物に、メチルホスホン酸ジクロリド(0.86g,6.49mM)を滴下した。この混合物を18時
間攪拌した後、氷および水を添加して、保護されたヌクレオチドを得た。該保護されたヌ
クレオチドの加水分解を、蟻酸を使用して実施した。HPLCを、H2O/メタノールを使用して
実施した。適当な画分を減圧下で蒸発させて、メチル-5’-イノシン−一リン酸を生成し
た。
【0205】
(製造例3:エチル-5’-イノシン−一リン酸)
【0206】
【化43】

【0207】
製造例1と同様にしてエチル-5’-イノシン−一リン酸を調製した。但し、イノシン-5
’-一リン酸は、ジシクロヘキシルカルボジイミドを縮合剤として使用して、エタノール
と反応させた。
【0208】
(製造例4:アルギニン-5’-イノシン−一リン酸)
【0209】
【化44】

【0210】
縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミドを使用して、イノシン-5’-一リン酸と
アルギニンとを反応させることにより、アルギニン-5’-イノシン−一リン酸を調製した

【0211】
イノシン-5’-一リン酸(0.55g,0.15mM)のホルムアミド(3ml)溶液に、L-アルギニン(1.
04g,6mM)を添加した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.6g,7.5mM)のt-ブチルアルコ
ール(10ml)溶液を該混合物に添加し、得られた懸濁液を80℃にて8時間加熱した。
【0212】
生成した沈殿を濾別し、3回水洗し、、併合した濾液を蒸発させて、t-ブチルアルコー
ルを除去した。この溶液を3回等体積のエーテルで抽出し、真空下で蒸発させて、シロッ
プを得た。エタノール(30ml)を添加して、生成する沈殿を濾別し、極めて吸湿性のガム状
物質を得た。10日間放置した後、該ガム状物質は固体となった。mp130℃、UVmax 249nm(
H2O)。
【0213】
(製造例5:(ヘプタミン-1-オール)-5’-イノシン−一リン酸)
【0214】
【化45】

【0215】
縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミドを使用して、イノシン-5’-一リン酸と6
-アミノ-2-メチル-2-ヘプタノールとを反応させることにより、(ヘプタミン-1-オール)
-5’-イノシン−一リン酸を調製した。
【0216】
イノシン-5’-一リン酸(1.045g,3mM)のホルムアミド(5ml)溶液に、6-アミノ-2-メチル
-2-ヘプタノール塩酸塩を添加した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(6.22g,30mM)のブ
チルアルコール(25ml)溶液を該混合物に添加した。得られた反応混合物を、攪拌下で80−
90℃にて8時間加熱した。生成した沈殿を濾別し、5mlの水で3回洗浄した。ジシクロヘ
キシル尿素の沈殿を捨て、併合した濾液を蒸発させて、ブチルアルコールを除去した。こ
の溶液を3回エーテルで抽出し、真空下で蒸発乾固させた。得られた油状残渣をアセトン
に懸濁して、白色の吸湿性物質を生成した。これは、水に溶解し、活性炭素で処理し、次
いでアセトン中で沈殿させることにより精製して、白色の吸湿性物質を得た。UVmax 249
nm(H2O)。
【0217】
精製した物質の収量:0.7g(53.4%);mp95℃;実験式:C18H28N5O8P:
%P 計算値 7.03;実測値 5.81
(製造例6 B型肝炎ウィルス表面抗原(HBsAg))
B型肝炎ウィルス表面抗原(HBsAg;サブタイプad及びay)を以下のスキームに従って
抗原キャリヤーの血漿から精製した。
【0218】
(1)初めに2倍量の生理的塩類溶液で希釈したHBsAgを含む血漿を80℃において6
0分間水浴中で加熱した。生成した凝血塊を除去し、機械的に崩壊させ、変性タンパク質
を遠心分離により除去した。
【0219】
(2)次いでHBsAgを、ポリエチレングリコールM 6000を用い、15%(wt/vol)の最終
濃度で再び沈殿させた。HBsAgを含む沈殿物を0.9M NaClに対して透析し、ペプシン(100m
g/ml)及びTween-80(最終濃度 2%)で処理した。
【0220】
(3)得られたHBsAg溶液を線形蔗糖勾配で2回超遠心分離した。精製したHBsAg試料を
0.9M NaClに対して透析し、1mlを分取し、−60℃で凍結させた。
【0221】
(4)50乃至100倍に濃縮した後、得られた試料は以下の特性を有した。
【0222】
試料は直径が18乃至25nmの球状粒子のみからなり、DANE粒子もHBsAgの糸状粒子も
なかった。HBeAg(Abbott laboratoriesからのEIA kit);DNA-ポリメラーゼ;有向増幅
方法によるHBV-DNA;及び正常なヒトの血漿を特徴とするタンパク質の存在に関する試験
においては、負の結果が得られた。
【0223】
得られた試料は、B型肝炎ワクチンの実験ロットの加工の基礎として使用した(Alper
et al.,1989)。
【0224】
あるいは、B型肝炎ワクチンはSmithKline Beecham Biologicalsから入手でき、HBsA
gはSigmaから購入できる。
【0225】
(実施例1 5’-ヌクレオチダーゼ活性からの保護に関する試験)
5’-ヌクレオチダーゼ(ミズーリ州セント・ルイスのCrotalus atrox venom,Sigma
Chemical Co.から入手)のIMPを加水分解する能力を、Amesらの方法(1960)に従って
無機リン酸塩の遊離を測定することにより調べた。ヌクレオチド試料(40乃至60nmole
)を、100μlの総容量中に50mmoleのpHが7.3のHEPES及び5mmoleのMgCl2を含む0
.02単位の5’-ヌクレオチダーゼを用いて37℃で10分間インキュベートした。モリ
ブデン酸ナトリウムの0.42% 1N H2SO4:10%アスコルビン酸(6:1,v/v)溶液800
μl、次いで0.3mlのH2O・KH2PO4を 添加することにより反応を停止した。標準(2乃
至80nmole)は同様に処理し、試料及び標準を45℃で20分間インキュベートした。リ
ン酸塩は820nmの吸収により決定した。ヌクレオチドは含むが酵素を含まないブランク
は、非酵素的加水分解に関して補正するために平行して試験した。加水分解された百分率
を、249nmにおける吸光係数e=12.2を用い、紫外線吸収により決定したヌクレオ
チド基質の正確な量から計算した。4つの実験結果を表1Aにまとめる。
【0226】
【表1A】

【0227】
試験した物質は、5’-ヌクレオチダーゼによる分解作用に対して種々の耐性があること
が見出された。Ha-IMP及びArg-IMPは、それぞれ加水分解に対して軽度及び中程度の耐性
を示すが、Me-IMP及びMp-IMPの両方は、E-IMPと同様に加水分解に対して非常に耐性があ
った。5’-IMP誘導体はいずれもIMPの加水分解を阻害することが見出されず、化合物はそ
れ自体では5’-ヌクレオチターゼの阻害剤ではないことを示した。
【0228】
IMP、MIMP及びアデノシン-5’-モノホスフェート(AMP)について、5’-ヌクレオチダー
ゼによる分解作用に対する感受性を調べるという更なる組合わせの実験を企画した。第一
のインキュベーションが、200μlの総容量中に0.1mMのHEPES及び10mMのMgCl2
含む20分間のそれであること以外は前述のような実験記録であった。ヌクレオチドの加
水分解%は、各定量について二重に実施した。結果を表1Bに示す。
【0229】
【表1B】

【0230】
これらのデータは、5’-IMP誘導体の免疫刺激効果が、特定の置換基の種類よりむしろ置
換5’-IMPの加水分解に対する耐性の作用であることを示す。
【0231】
(実施例2 ヒトの末梢血リンパ球を用いた研究)
(分裂促進因子による刺激に対する正常なHPBLの応答)
正常なヒトの末梢血リンパ球(HPBL)を、分裂促進剤PHA又はPWMで刺激した。一連の実
験においては、0.1、1、10、及び100μg/mlの濃度範囲で、これらの応答を刺激
する効果について、Ha-IMP、Arg-IMP、E-IMP、Me-IMP、Mp-IMP及びイノシン-5’-モノホ
スフェート(IMP)について分析した。個々の血液ドナーは、これらの分裂促進因子及び化
合物に対する応答において変化するが、5種類の全てのIMP誘導体は図1に示すように一
貫してPHAに対してHPBL応答を刺激した。IMP自体はMe-IMPに匹敵する活性を示した。Arg-
IMP、Me-IMP及びE-IMPは更に活性であったが、Ha-IMPの活性は低く、Mp-IMPは最も活性な
化合物であった。試験した化合物はPWM応答に対してほとんど又は全く影響を示さなかっ
た。化合物はいずれも分裂促進因子の不在下ではHPBLを刺激しなかった。PHA応答はTリ
ンパ球増殖に反映し、PWM応答はBリンパ球増殖に反映するので、結果は5’-置換IMP誘導
体が優先的にTリンパ球応答を高めることを示す。代表例として、Me-IMP(MIMP)を以下
の実験に使用した。
【0232】
図2には、IMP及びMIMPの存在下における2人のドナーのインビトロにおけるPHAに対す
るHPBL応答の結果を示す。3人の正常なドナーに関するPHAを用いた刺激に対する対照リ
ンパ球の応答は、一連の濃度範囲にわたってMIMPにより影響されなかった。
【0233】
ヒトの末梢血リンパ球は、平均して約80%がTリンパ球で20%がBリンパ球であり
、Tリンパ球のうち2/3は、CD4+ヘルパー/インデューサ表現型であり、1/3は、C
D8+抑圧遺伝子/細胞毒表現型である。CD4+T細胞及びCD8+T細胞の濃縮は、単クロー
ン抗体をコーティングしたフラスコへの粘着性を用いてその他の表現型を除去して減少さ
せる(>98%)ことによりなしうる(パニング)。そのような濃縮は3つの正常な対照
(共同利用データ)とともに使用され、図3はこれらの2種の細胞の集団に及ぼすMIMPの
影響を示す。CD4+及びCD8+リンパ球のPHA応答はMIMPにより有意に増大される(3人の
各々の応答についてp<0.01)。
【0234】
(HIV-誘導ペプチド、インターフェロンα及びPGE2による抑圧現象に対するHPBLの応答

ヒトの免疫欠損ウィルス(HIV)の膜内gp41部分の免疫抑制サイトを表す合成17アミノ酸
ペプチドを、対照からのリンパ球について試験した。このペプチドが、100mMの最大抑
圧供与量でPHA-誘導リンパ球増殖の漸進的な抑制を誘導する5つの実験の内代表的な実験
が図4に示されている。種々の程度のペプチドによる抑制と組み合わせて、0.1乃至1
00μg/mlのMIMPの効果を調べた。ペプチド-誘導抑制が50%未満の場合には、MIMPは
増殖応答を正常に近い範囲に回復させた。しかしながら、抑制が更に過酷(>50%)で
ある場合には、MIMPの効果は有意ではなかった。これらのデータは、効果が軽度乃至中程
度であるが、過酷ではない場合には、MIMPがHIV-関連ペプチドの免疫抑制を逆転しうるこ
とを示す。
【0235】
ウィルス感染はリンパ増殖低下応答と関連する。図5は、リンパ球のインビトロPHA-応
答を対照から抑制するウィルス-誘導媒介物質、rIFN-αの効果、及び効果が中程度である
場合、すなわち10及び100単位/mlのIFN-α濃度において抑制を逆転させる1、10
、100μg/mlのMIMPの効果を示す。
【0236】
リウマチ様動脈炎にみられるような炎症はリンパ増殖低下応答と関連する。図6は、通
常のリンパ球のPHA-応答を抑制する炎症伝達物質の一であるPGE2(10-5M)の効果、及び
抑制を逆転させるMIMP(1乃至100μg/ml)の効果を示す。
【0237】
(高齢者及びHIV-感染者のHPBLの応答)
図7は、高齢者及びHIV-感染者のPHA応答、及び正常の対照(C)と比較した100μg
/mlのMIMPによる刺激の効果を表す。対照患者(22)は正常のPHA及びMIMP応答を示した
。15人の高齢患者(Ag+)は正常のPHA応答及びMIMPに対する応答を示した。9人の高
齢患者(Ag−)は著しく低下したPHAに対する応答及びMIMPに対する応答を示した。PHAに
対する応答が不十分な9人の外見上健康な高齢患者のうち、5人についてリンパ球の数を
調べると平均して正常であった。
【0238】
8人のHIV-感染者(ARC)は平均して、平均的な正常のPHA応答の50%を示し、MIMPに対
しては有意に応答した。8人のエイズ患者は応答を示さなかった。これらのデータは、MI
MP治療の臨床被検者は、治療前にインビトロで薬剤に対する感受性の予備テストをすべき
であることを示唆する。
【0239】
10及び100μg/mlのMp-IMPを用いて前述の実験記録を繰り返すと、100μg/mlの
MIMPに関して得られた結果と同一の結果が得られた。
【0240】
(実施例3 マウスの脾臓のリンパ球を用いた研究)
MSLを分裂促進剤Con A及びLPSで刺激した。0.1、1、10、及び100μg/mlの濃
度範囲の、これらの応答を刺激する効果に関する一連の実験において、Ha-IMP、Arg-IMP
、E-IMP、Me-IMP、Mp-IMP及びIMPについて分析した。図8に示されるように、Ha-IMP、Ar
g-IMP、E-IMP、Me-IMP、Mp-IMP及びIMPはCon Aに対するMSLの増殖応答を刺激した。
【0241】
マウス(図8)及びヒトのリンパ球(図1)のデータを比較すると、ヒトのリンパ球の
ほうがマウスのリンパ球よりこれらの化合物に対して敏感である。
【0242】
更なる実験において、マウスの脾臓細胞を、PHA又はLPS及びMIMP(1乃至100μg/ml
)を用いてインキュベートした。MIMPは、分裂促進剤の不在下では脾臓細胞応答に影響を
及ぼさなかった。分裂促進剤の存在下では、以下に示すように、MIMPはトリチウム標識チ
ミジンの添加により測定されるリンパ球の増殖応答を漸進的かつ有意に増大させた。PHA
に対する脾臓細胞の応答は優先的にTリンパ球応答に反映するので、Con Aを用いた場合
に見られる応答を確認した。LPS応答も又前記の実験に平行して応答する。
【0243】
【表1C】

【0244】
データは4匹の異なる動物から得られ、各濃度について4倍の試料を表す。それらは平均
したCPM±SEMとして表され、*はp<0.05の有意性を示し、**はp<0.01の有意
性を示す。
【0245】
(実施例4 PFC応答のインビボ刺激)
(腹腔内(ip)投与)
化合物がインビボでリンパ球を刺激するか否かを決定するために、マウスに1×108
細胞のヒツジの赤血球(SRBC)及び体重1kg当たり50mgのHa-IMP、Arg-IMP、Me-IMP又はI
MPを腹腔内投与して免疫性を与え、脾臓のプラーク抗体形成細胞(PFC)を5日後に測定し
た。Ha-IMP、Arg-IMP及びMe-IMPは、(図9に示されるように)PFC応答を有意に刺激した
。体重1kg当たり50mgの3つの実験においてIMPを対照と比較したところ、有意な効果
はなかった(IMP:平均PFCが197±21の12試料;対照:平均PFCが210±17の
15試料)。このことは、5’-ヌクレオチダーゼ活性から保護された場合にはIMP単独で
インビボ活性を有することを示す。
【0246】
PFC応答に及ぼすHa-IMP、Arg-IMP及びMe-IMPの投与量応答のデータは、それぞれ図10
A、10B及び10Cに示されるように表された。3つの全ての化合物は、体重1kg当た
り50mgで最適に刺激したが、Me-IMPは低投与量で活性であった。
【0247】
これに対し、マウスのリンパ球増殖に関するインビトロデータにおいては、試験した化
合物の中でMe-IMPが最も影響力があると思われた。
【0248】
(経口投与)
経口投与時に活性があるか否かを決定するために、マウスに1×108細胞のヒツジの
赤血球(SRBC)を腹腔内投与し、Me-IMPを経口投与して免疫性を与えた。Me-IMPは、SRBC抗
原で免疫化するとき及びその後5日間毎日投与した。脾臓のプラーク抗体形成細胞(PFC)
は5日の終了時に測定した。図11は、種々の投与量のMe-IMPに関する結果を示す。
【0249】
SRBC抗原とともに、及び5日間毎日経口的に投与されたMe-IMPは、体重1kg当たり50
mgのときにピークとなりPFC応答を刺激した。
【0250】
(実施例5 Me-IMPのインビボ投与後の分裂促進物質に対するインビトロ応答)
実施例4の実験に平行した実験により、脾臓のリンパ球のPHA及びCon A応答の両方がM
e-IMPの経口投与により刺激されることを確認する。
【0251】
脾臓のリンパ球は、5日間体重1kg当たり0乃至100mgの範囲でMe-IMPを経口投与し
、次いで犠牲したマウスから得た。脾臓のリンパ球を、PHA(0.5μg/ml)又はCon A(0
.5μg/ml)とともに48時間インキュベートした。培養は、最後の18時間はトリチウ
ム標識チミジンでパルスした。図12は、種々の経口投与量のMe-IMPに関する結果を示す

【0252】
これらのデータは、IMPと比較して、5’-IMP誘導体がT細胞依存性抗体応答の有力な補
助薬であり、Me-IMPの場合には、Tリンパ球増殖応答の有力な刺激剤であることを示す。
【0253】
使用した投与量においては、Me-IMPは非経口及び経口投与の両方において活性であり、
外見上非毒性であった。Me-IMPの急性毒性(LD50)は、腹腔内投与では体重1kg当たり50
0mg以上であり、経口投与では体重1kg当たり5000mg以上であった。
【0254】
(実施例6 遅延型のインビボ過敏性の刺激)
106乃至109細胞の勾配のある投与量でSRBCを腹腔内投与することによりマウスに免
疫性を付与した。予備的な実験では、遅延型の過敏症に対するSRBCの最適免疫化投与量は
107乃至108細胞であることが示された。この研究においては、動物を免疫化するのに
107の投与量が選択された。
【0255】
免疫化の4日後に、50μlの食塩加リン酸緩衝液(PBS)中の108のSRBCを各マウスの
左後ろ足に皮下注射することにより抗原投与した。賦形剤(50μl)を対照として右後
ろ足に皮下注射した。試験する化合物は、免疫化時又は誘発時のいずれかに腹腔内に注入
した。抗原投与の24時間後に、技術者のカリパスを用いて足の太さの増加(左−右)と
して足の膨潤を測定した。
【0256】
結果は、足の太さの増加として0.1mm単位で表す。このようにして測定した遅延型の
過敏症の特性決定は、MacDonaldらにより既に記載されている(1979)。図13及び14は
この試験の結果を示す。特に、図13は、免疫化時に投与された場合の、Me-IMPに関する
投与量応答プロットを示す。図14は、免疫化時(Immunization)に投与された場合及び抗
原投与時(Challenge)に投与された場合の、Me-IMPに関する応答を示す。
【0257】
免疫化時に1回でMe-IMPを投与した場合には、遅延型の過敏症が有意に刺激された。抗
原投与時に1回でMe-IMPを投与した場合には、その効果は有意ではなかった。これらのデ
ータは、おそらく免疫応答の導入肢(afferent limb)、Tヘルパー細胞における作用によ
りMe-IMPが細胞免疫を促進することを示す。このことは、増大する抗体産生の投与量より
少ない投与量においてもそうであり、DTH及びこれらの応答を媒介するTh1細胞に及ぼす優
先的な効果を示す。
【0258】
(実施例7 保護された-IMP誘導体によるインビボ治療)
(フレンド白血病ウィルス(FLV))
保護された-IMP誘導体の臨床治療の有用性を示すために、BALB/cマウスにフレンド白血
病ウィルス(FLV)を感染させた。対照マウスは、感染後3日乃至13日に塩類液で腹腔内
的に治療し、Me-IMPで治療するマウスは、3日乃至13日に1mg/kg/日で治療し、死んだ
日を記録した。図15は、Me-IMPで治療したマウスのほうが平均生存時間(MST)が長いこ
とを示す。それは、Wilcoxon試験により満足に有意である(p<0.04)
(腫瘍の発生)
癌の発生した動物に及ぼすMe-IMPの効果を試験するために、スイスマウス(6)のグル
ープに、Carswellらの方法(1975)に従ってMeth A腫瘍を皮下に接種した。8日後、腫瘍
が約8mmの大きさになった時に、動物に初回免疫投与量の種々の量のMe-IMP又は等量の塩
類液で静脈内に治療した。5時間後、動物に10μgのリポ多糖類エンドトキシン(LPS)で
静脈内的に治療した。腫瘍壊死因子(TNF)の量は治療の24時間後に血清を分析し、腫瘍
の壊死(−乃至+++)は48時間後に評価した。完全な腫瘍の退縮は20日後に評価し
た。結果を表2に示す。
【0259】
【表2】

【0260】
表2は、Me-IMP(100)単独、又はLSP(10)単独では腫瘍壊死(全て十又は−)、腫瘍の退
縮(0/12)又は20日経過後の生存(0/6)に有意な効果はなかったが、Me-IMP(1
00)及びLSP(10)の場合には、有意な腫瘍壊死(2/3は++又は+++)、完全な腫瘍の
退縮(2/12)及び20日における生存の増加(6/6)を誘導した。これらの条件下
では、TNFの量は、塩類溶液及びLPS(4匹のマウス)の対照標準よりMe-IMP治療及びLSP(4
匹のマウス)のほうが24時間で多かった(4240対<200)。これらのデータは、
単独ではなくLSPとともに使用する場合には、Me-IMPは、たぶんTNF及び関連リンフォカイ
ンの誘導により媒介された有意な抗癌活性を有することを示す。
【0261】
(実施例8 リステリア感染に及ぼす保護された-IMPの効果)
(実験記録)
(感染)
マウス適応細菌菌株L.単球遺伝子EGD(ロシアのGamaleya Research Institute Acad
emy Medical Science)を、感染日(0日)に0.5mlのPBS(pH=7.4)中1.7×1
4細胞/マウスの投与量でマウスの腹腔内からオスのBALB/cマウス(14乃至16gm)
に投与した。
【0262】
(治療)
種々の濃度のMIMP(AGS-36-217)の溶液を、表3に示すように感染5日前(−5日)か
ら経口的又は非経口的に投与した。
【0263】
【表3】

【0264】
(結果)
【0265】
【表4】

【0266】
表4に示されるように、経口により10mg/kg体重及び腹腔内注入により1及び10mg/
kgのMIMPを、抗原投与の5日前に投与した場合には、平均生存時間(MST)及び生存物の絶
対数が増大した。0.1乃至10mg/kgのMIMPを、腹腔内及び経口の両方を組み合わせて
抗原投与の5日前から投与した場合には、MST及び生存物が増大した。
【0267】
(実施例9 サルモネラ感染に及ぼす保護された-IMPの効果)
(実験記録)
(感染)
マウス適応ネズミチフス菌菌株415(ロシアのGamaleya Research Institute,Academy
Medical Science)を、0.5mlのPBS(pH=7.4)中5×104細胞の投与量でマウス
の腹腔内から注入した。投与量は、平均生存時間が2.5日で6日目の死亡率が100%
になるように決定した。
【0268】
(治療)
種々の濃度のMIMP(AGS-36-217)の溶液を、表5に示すように非経口的に投与し、治療
の結果を以下の表6に示す。
【0269】
【表5】

【0270】
【表6】

【0271】
表6に示されるように、対照の動物は全て約2.5日の平均生存時間で5日間で死んだ
。MIMPの種々の治療により、MSTは約4日間(p<0.01)に増大し、長期間の生存物
も出現した。N3の治療の場合が最も明らかである。
【0272】
(実施例10 インフルエンザウィルス誘導死亡率に及ぼすMIMPの効果)
このモデルにおいては、NMRIマウスにエアゾール法によりインフルエンザウィルスを抗
原投与した。インフルエンザウィルスの投与量は、対照動物において平均生存時間が8乃
至11日で80乃至100%の死亡率であるように決定した。対照(PBS)、MIMP(100
又は200μg/マウス)及びスクアラン(1%)+MIMP(200μg/マウス)による治
療を、感染1日前、感染1時間前及び感染1時間後に開始した。
【0273】
結果を以下の表7及び8に示す。抗原投与24時間(1日)前又は1時間前後に鼻腔内
に200μg/マウス(5mg/kg)のMIMPを投与した場合には、生存物の数及び平均生存時間(
MST)が増大した(表7)。感染1時間前にMIMPを100μg/マウスだけ投与した場合にも
、生存物及びMSTが増大した(図16)。
【0274】
第二の実験においては、感染1日前又は感染1時間後にスクアラン(1%)とともに2
00μg/マウスのMIMPを鼻腔内に投与した場合に生存物及びMSTが増大した。図17に示
されるように、これらの治療をしたグループ中のマウスは100%生存した。スクアラン
のみでは効果はなかった。
【0275】
【表7】

【0276】
【表8】

【0277】
(実施例11 HBsAgに対する抗体応答の刺激)
前の研究を使用して、HBsAg(Walker et al.,1981)に対する抗体産生における不十分
な応答動物としてDBA/2マウスを選択した。
【0278】
(正常な(対照)DBA/2マウス)
HBsAgのみで治療した対照グループ及び、実施例で調製したような、HBsAgとMIMPの組合
わせで治療したグループにおける抗-HBs検出結果を表9に示す。以下の表に種々の接種計
画を提供する。
スキーム 治療
1 HBsAgのみ
2 HBsAg+MIMPを経口投与(接種30分前)
3 HBsAg+MIMPを同時に腹腔内投与、次いで4日毎にMIMPを経口投与
4 HBsAg+MIMPを同時に腹腔内投与
5 照射+HBsAg
6 照射+スキームN2
7 照射+スキームN3
8 対照
【0279】
【表9】

【0280】
種々のスキームに従ってHBsAg及びMIMPを組み合わせて投与した場合に得られた抗体応
答は、対照グループの動物の抗体量を上回った。
【0281】
(免疫無防備状態のDBA/2マウス)
第二組の実験においては、電離放射線を受けた免疫無防備状態のDBA/2マウスにおいて
、HBsAgに対する特異的な免疫応答の誘導に及ぼすMIMPの効果を、対照DBA/2 について示
したものと同一の接種スキームを用いて分析した。
【0282】
対照グループ(HBsAgのみを投与)の照射マウス及び組合わせ(スキーム2及び3を用いH
BsAg及びMIMP)で治療したマウスにおける抗-HBs検出結果を表10に示す。
【0283】
【表10】

【0284】
データから、スキーム2及び3の場合には、21日目には抗-HBsが有意に増大して、こ
れらの照射動物の免疫欠乏系に及ぼすMIMPの回復効果を示すことが分かる。
【0285】
実施例11に示された結果は、保護された-IMP誘導体がHBsAgに対する体液性免疫応答
の発現に影響を及ぼしうることを示す。腹腔内投与単独、並びに経口投与単独として50
mg/kgのMIMPを投与すると、HBsAgに対する抗体の量が有意に増大しうることが示された。
抗原を腹腔内投与した後、MIMPを更に経口投与してもその活性は増大しなかった。
【0286】
5’-ヌクレオチダーゼに耐性のあるイノシン-5’-モノホスフェート誘導体の補助薬効
果のメカニズムに関する仮説は作成しうるが、本発明がこの作用様式に限定されるとみな
されるべきではない。血液透析患者及び免疫無防備状態の個体において、B型肝炎ワクチ
ンに対する免疫不応答が観察された(それぞれ、Walz et al.,1989;Hess et al.,19
89)。ワクチン投与量を増大させたり投与回数を増大させてセロコンバーション(seroconv
ersion)となることもある(Walker et al.,1981)。これらの患者においては可溶性の
インターロイキン-2-受容体が観察され、入手しうるIL-2の結合によるインターロイキン-
2作用の機能障害が、B型肝炎ワクチンに対する応答に影響した(Walz et al.,1989;M
euer et al.,1989)。Meuerらは、40mgのワクチン、次いで1.2×105単位の天然
インターロイキン-2を、免疫不応答の10人の血液透析患者に注射した。4週間後、10
人のうち6人の患者は、抗体量が正常以下であったけれどもセロコンバーションを示した
。タンパク質又はペプチド抗原に対するMHC-結合免疫不応答は、IL-2の投与により克服さ
れうる。これらの実施例の結果は、保護された-IMP誘導体が補助薬としてT細胞により実
現され、インターロイキン-2を含みうることを示唆する。
【0287】
この出願中の種々の刊行物は引用又は番号により参照される。本明細書中に十分に引用
していない参考文献は以下に挙げる。これらの刊行物の完全な形での開示は、本発明の関
連する技術の状態を更に十分に記載するために本出願に参考として導入されている。
【0288】
本発明は説明的に記載されており、使用されている専門用語は限定する用語ではなく記
述する用語であることは理解されるべきである。
【0289】
明らかに、前述の教示を考慮して本発明の多くの修正及び変化が可能である。従って、
請求の範囲以内で、本発明は明細書に記述された以外にも実施しうる。
【0290】
【数1】

【0291】
【数2】

【0292】
【数3】

【0293】
【数4】

【0294】
【数5】

【0295】
【数6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−1552(P2012−1552A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177779(P2011−177779)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【分割の表示】特願2006−330014(P2006−330014)の分割
【原出願日】平成7年4月21日(1995.4.21)
【出願人】(398014333)ユニヴァーシティ オブ サウス フロリダ (17)
【Fターム(参考)】