説明

免疫賦活用組成物及びその製造方法

【課題】 米糠から収率よく調製することができ、かつ高い免疫賦活能を有する免疫賦活用組成物を提供する。
【解決手段】 免疫賦活用組成物の有効成分として、1)米糠に水を加えた後、殺菌処理を行う工程、2)殺菌処理した米糠に、米糠由来の酵母と乳酸菌を接種して発酵処理を行う工程、3)発酵処理した米糠を多糖類分解酵素で処理する工程、4)前記工程で得られた処理物から水溶性画分を抽出、回収する工程を経て得られる水溶性画分を含有させる。前記多糖類分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。また、前記酵母がピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)であり、前記乳酸菌がエンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠由来の免疫賦活用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糠は、米や麦などの穀物を精白した際に出る果皮や種皮、胚芽などの部分であり、米を主食とする我が国においては多量の米糠が生じている。米糠には油分、タンパク質、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類などの栄養素が豊富に含まれている。米糠の主な用途としては、米油原料33%、飼料原料12%、キノコ菌床11%、漬物5%で、残りの39%は廃棄されているといわれている。また、米油製造の副産物である脱脂米糠には、タンパク質、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類などの栄養素の多くが残存しているが、その一部が飼料原料や肥料などに利用されているだけである。
【0003】
上記のように米糠の食品への利用が進んでいない原因としては、米糠特有の好ましくない風味やざらざらとした舌触りなどが挙げられる。そのため、風味や舌触りを改善した米糠製品の開発や、米糠を利用した機能性素材の開発が数多くなされている。
【0004】
例えば、米糠を利用した機能性素材として、特許文献1には、米糠の水抽出物を含有することを特徴とする免疫賦活用組成物について開示されている。
【0005】
特許文献2には、米糠の発酵物を極性溶媒で抽出してなる生理活性組成物について開示されており、該生理活性組成物が、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用、免疫賦活作用、ラジカル捕捉作用、及び抗酸化作用(SOD様活性)などを有することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、米糠やふすまなどの植物組織原料を糸状菌の培養液中で資化することを特徴とする生理活性ヘミセルロースの製造方法について開示されており、該生理活性ヘミセルロースは、免疫賦活作用、マクロファージ活性化作用、抗ウイルス作用、脂質代謝改善作用などを有していることが記載されている。
【0007】
特許文献4には、植物組織原料の熱水抽出物をグルコアミラーゼで処理した後、アスペルギルス属のAsp. oryzae及びバシディオミセテス属のLentinus edodesのいずれかの培養濾液から得られた酵素の複合体で処理して得られる免疫力増強物質について開示されている。
【0008】
特許文献5には、乳酸菌発酵代謝物と米糠抽出物の加水分解物を配合した免疫調整剤について開示されており、該米糠抽出物の加水分解物は、米糠を水、アルコールなどの溶媒で抽出して得られる抽出物を、酸、アルカリ、酵素などで加水分解して得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−255843号公報
【特許文献2】特開2002−265377号公報
【特許文献3】特開平1−153701号公報
【特許文献4】特開平9−23895号公報
【特許文献5】特開2002−37739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述したような従来の米糠由来の機能性素材の多くは、米糠からの収率が低いという問題を有しており、また、生理活性の点についても充分満足できるとは言いがたかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、米糠から収率よく調製することができ、かつ高い免疫賦活能を有する免疫賦活用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の一つは、米糠由来の酵母及び乳酸菌を用いて米糠を発酵させた後、この発酵物を多糖類分解酵素で処理して得られる処理物の水溶性画分を有効成分として含有することを特徴とする免疫賦活用組成物を提供する。
【0013】
本発明の組成物においては、前記多糖類分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0014】
また、前記酵母がピキア
sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM
P-21702)であり、前記乳酸菌がエンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)であることが好ましい。
【0015】
本発明のもう一つは、1)米糠に水を加えた後、殺菌処理を行う工程、2)殺菌処理した米糠に、米糠由来の酵母と乳酸菌を接種して発酵処理を行う工程、3)発酵処理した米糠を多糖類分解酵素で処理する工程、4)前記工程で得られた処理物から水溶性画分を抽出、回収する工程、を含むことを特徴とする免疫賦活用組成物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の製造方法においては、前記多糖類分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群から選ばれた1種以上であることが好ましく、前記酵母としてピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)を用い、前記乳酸菌としてエンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)を用いることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、米糠由来の酵母及び乳酸菌を用いて米糠を発酵させた後、多糖類分解酵素で処理することにより、従来に比べて米糠からの収率が高く、かつ高い生理活性を有する免疫賦活用組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の免疫賦活用組成物は、米糠由来であるため、継続的に摂取しても副作用の心配がなく、安全に免疫能(特に初期免疫能)を高めることができる。また、米糠の高度利用の一つの方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】各サンプルを添加した場合の好中球・単球の貪食活性相対値を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の免疫賦活用組成物の原料として用いられる米糠は、食用に適したものであればよく、好ましくは米油を抽出した後の脱脂米糠が用いられる。
【0021】
本発明において米糠の発酵に用いられる酵母及び乳酸菌は、米糠から分離された菌が用いられる。米糠からの菌の分離は、常法に従って行うことができ、例えば以下のようにして行うことができる。
【0022】
・酵母の単離
新鮮な脱脂米糠10gに生理食塩水10ml添加してよく撹拌した後、遠心して上清を回収する。この上清を生理食塩水で段階希釈した液をポテトデキストロース寒天培地に播種し、30℃で2〜3日間培養する。
【0023】
出現したコロニーをピックしてポテトデキストロース液体培地に接種し、30℃で1〜3日間培養し、この培養液を生理食塩水で段階希釈して、ポテトデキストロース寒天培地に播種し、30℃で2〜3日間培養し、出現したコロニーをピックして単離株とする。
【0024】
単離した酵母のうち、米糠の発酵速度、ペプチド化、風味等を指標に使用する酵母を選択する。
【0025】
本発明においては、上記のようにして米糠から分離された酵母であるピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)が好ましく用いられる。
【0026】
・乳酸菌の単離
培地として炭酸カルシウム含有GYP培地を用いた以外は、上記と同様にして米糠から乳酸菌を単離することができる。
【0027】
本発明においては、上記のようにして米糠から分離された乳酸菌であるエンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)が好ましく用いられる。
【0028】
上記のようにして米糠から分離された酵母及び乳酸菌を用いることにより、米糠を効率よく発酵させることができる。
【0029】
以下、本発明の免疫賦活用組成物の製造方法について説明する。
1)米糠に水を加えた後、殺菌処理を行う工程
米糠1質量部に対し、水を0.2〜50質量部添加し、90〜100℃で1〜3時間加熱殺菌を行う。本発明においては、オートクレーブ処理を行うことが好ましい。この工程を行うことにより、発酵処理工程における腐敗を防止できる。
【0030】
2)殺菌処理した米糠に、米糠由来の酵母と乳酸菌を接種して発酵処理を行う工程
殺菌処理を行った米糠を充分に冷ました後、酵母の前培養液と乳酸菌の前培養液をそれぞれ添加し、20〜40℃で48〜120時間発酵させる。発酵処理中は、発酵物のpHをモニタリングし、発酵物のpHが4.0〜5.5になるまで発酵を行うことが好ましい。
【0031】
なお、酵母の前培養液は、例えば、ポテトデキストロース培地に酵母を接種し、常法に従って1〜2日間培養し、この培養液を米糠1質量部に対し、0.0001〜0.1質量部添加すればよい。
【0032】
乳酸菌の前培養液は、例えば、GYP培地に乳酸菌を接種し、常法に従って1〜2日間培養し、この培養液を米糠1質量部に対し、0.0001〜0.1質量部添加すればよい。
【0033】
3)発酵処理した米糠を多糖類分解酵素で処理する工程
上記工程で得られた米糠発酵物に、多糖類分解酵素を添加し、30〜55℃で0.5〜24時間酵素反応を行う。多糖類分解酵素の添加量は、原料米糠1質量部に対して0.0001〜0.1質量部が好ましい。酵素処理後は、加熱処理を行い、殺菌と酵素失活を行うことが好ましい。
【0034】
上記多糖類分解酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群から選ばれた1種以上が好ましく用いられ、特にヘミセルラーゼが好ましく用いられる。
【0035】
多糖類分解酵素で処理することにより、収率も大幅に向上させることができるだけでなく、組成物の免疫賦活活性を向上させることができる。
【0036】
4)前記工程で得られた処理物から水溶性画分を抽出、回収する工程
多糖類分解酵素で処理した処理物を、常法により濾過して濾液を回収し、必要に応じて乾燥・粉末化する。
【0037】
本発明の免疫賦活用組成物は、上記の水溶性画分をそのまま用いることもできるが、その他の成分として、賦形剤、乳化剤、安定剤、甘味料、pH調整剤、増粘剤、香料、酸味料等の食品添加剤や、ビタミン類、ミネラル類等を含むこともできる。
【0038】
本発明の免疫賦活用組成物の形態は、特に制限されず、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、液剤など使用形態に応じて適宜選択すればよい。また、本発明の免疫賦活用組成物を飲料、ゼリー飲料、ヨーグルト、菓子、パン類などといった各種飲食品に配合することもできる。
【0039】
本発明の免疫賦活用組成物の有効摂取量は100〜1000mgであり、好ましくは250〜750mgである。なお、各種飲食品における配合量は、該有効摂取量を基準にすればよい。
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって特に限定されるものではない。また、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
【実施例1】
【0041】
(1)米糠由来の酵母・乳酸菌の単離
・酵母の単離
新鮮な脱脂米糠10gに生理食塩水10ml添加してよく撹拌した後、遠心して上清を回収し、この上清を生理食塩水で段階希釈した液をポテトデキストロース寒天培地に播種し、30℃で2日間培養した。
【0042】
出現したコロニーをピックしてポテトデキストロース液体培地に接種し、30℃で3日間培養し、この培養液を生理食塩水で段階希釈して、ポテトデキストロース寒天培地に播種し、30℃で2日間培養し、出現したコロニーをピックして単離株とした。そして、米糠の発酵速度、ペプチド化、風味を指標に酵母を選択し、ピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)を単離した。
【0043】
・乳酸菌の単離
新鮮な脱脂米糠10gに生理食塩水10ml添加してよく撹拌した後、遠心して上清を回収し、この上清を生理食塩水で段階希釈した液を炭酸カルシウム含有GYP寒天培地に播種し、30℃で2日間培養した。
【0044】
出現したコロニーをピックしてGYP液体培地に接種し、30℃で1日間培養し、この培養液を生理食塩水で段階希釈して、炭酸カルシウム含有GYP寒天培地に播種し、30℃で2日間培養し、出現したコロニーをピックして単離株とした。そして、米糠の発酵速度、pH、風味を指標に乳酸菌を選択し、エンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)を単離した。
【0045】
(2)米糠の発酵処理
ピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)をポテトデキストロース液体培地100mlに接種し、30℃で24時間培養し、前培養液とした。
【0046】
また、エンテロコッカス
sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM
P-21703)をGYP液体培地100mlに接種し、30℃で24時間培養し、前培養液とした。
【0047】
脱脂米糠1.5kgに水を8L加え、オートクレーブ処理(121℃、15分間)を行った後、充分に冷ましてから、酵母の前培養液8mlと乳酸菌の前培養液8mlを加えて均一に撹拌した後、30℃で96時間発酵処理を行った。
【0048】
発酵処理終了後、ヘミセルラーゼ(商品名「ヘミセルラーゼ「アマノ」90」、天野エンザイム(株)製)を1.5g添加・混合し、60℃で1時間酵素反応を行った。
【0049】
酵素反応終了後、オートクレーブ処理(121℃、15分間)を行い、酵素失活及び殺菌処理を行った後、濾過して濾液を回収した。
【0050】
この濾液をスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、本免疫賦活用組成物(サンプル1)を0.6kg得た(収率40%)。
【0051】
ヘミセルラーゼ処理を行わなかった以外は、上記と同様にして米糠発酵エキス(サンプル2)を得た(収率20%)。
【0052】
一方、脱脂米糠1.5kgに水を8L加え、オートクレーブ処理(121℃、15分間)を行った後、濾過して濾液を回収し、噴霧乾燥して米糠熱水抽出物(サンプル3)を得た(収率10%)。
【0053】
(3)免疫賦活活性の測定
上記で得られた各サンプルを用いて、好中球・単球の貪食能、及び食胞融合能に与える影響を調べた。
【0054】
・好中球及び単球の調製
ヘパリン加採血した健常ヒト末梢血20mlをMono-Poly Resolving Medium(商品名、DSファーマバイオメディカル株式会社製)5mlの入った滅菌済み丸底スピッツ管4本に5mlずつ分注し、20℃、1500rpmで30分間遠心分離を行った。遠心分離により4層(下から赤血球層、好中球層、単球層及び血漿を含んだ層)に分離し、このうち好中球層と単球層をそれぞれ取り出した。
【0055】
取り出した好中球層に0.1%ゼラチン−ハンクス緩衝液を加え、4℃、1500rpmで15分間遠心分離した後、上清を捨て洗浄した。同様の操作を計3回繰り返した後、細胞にトリス−塩化アンモニウム緩衝液を20ml加えて撹拌し、室温で15分間放置し、混在している赤血球を溶血させた後、4℃、1500rpmで15分間遠心分離し、上清を捨て細胞を洗浄した。
【0056】
その後、RPMI 1640培地を20ml加えて撹拌した後、細胞数をカウントし、細胞数が5.0×10cell/mlとなるように溶液(含10%容量の非働化Fetal bovine serum)を調製した。
【0057】
単球層についても上記と同様にして洗浄操作を行い、細胞数が5.0×10cell/mlとなるように溶液(含10%容量の非働化Fetal bovine serum)を調製した。
【0058】
・貪食能の測定
サンプル1〜3をそれぞれ0.1%ゼラチン−ハンクス緩衝液に溶解した後、黄色ブドウ球菌の死菌体を1×10個/mlとなるように添加して均一に懸濁し、各濃度のサンプル溶液を調製した。
【0059】
上記で調製した好中球(又は単球)懸濁液(5×10cell/ml)200μlをcover slip上で培養(37℃、90分間、COインキュベーター)し、吸着させた。その後、RPMI
1640培地で3回洗浄し、cover slip上に吸着しなかった細胞を除去した。その後、cover slip上に各サンプル溶液200μlを加え、培養(37℃、60分間、COインキュベーター)した。
【0060】
インキュベート後、RPMI 1640培地で3回洗浄し、メタノールに約10秒間つけて固定し、スライドグラスにのせて自然乾燥させた。乾燥後、レフレルメチレンブルー液200μlを滴下して20秒間染色し、純水で洗浄して乾燥させた。これを顕微鏡観察(1000倍)し、各サンプル溶液について無作為に120個(30個×4ヶ所)の好中球(又は単球)を選び、その細胞内に貧食された菌数を数え、その平均値を求めた。そして、サンプル濃度0μg/mLの時の平均値を100とし、各サンプル濃度における貧食活性の相対値を求めた。その結果を図1に示す。
【0061】
図1(a)、(b)から、サンプル1(本免疫賦活用組成物)は、サンプル2(米糠発酵エキス)及びサンプル3(米糠熱水抽出物)に比べてより低濃度で好中球及び単球の貧食能を促進していることが分かる。そして、サンプル1(本免疫賦活用組成物)は、特に好中球の貧食能を強く促進していることが分かる(図1(b)参照)。
【0062】
・殺菌能
サンプル1を0.1%ゼラチン−ハンクス緩衝液に溶解した後、黄色ブドウ球菌の死菌体を1×10個/mlとなるように添加して均一に懸濁し、各濃度のサンプル溶液を調製した。
【0063】
上記と同様にして調製した好中球懸濁液(5×10cell/ml)200μlをcover slip上で培養(37℃、90分間、COインキュベーター)し、吸着させた。その後、RPMI
1640培地で3回洗浄し、cover slip上に吸着しなかった細胞を除去した後、細胞をアクリジンオレンジ(5mg/ml)で染色し、RPMI
1640培地で3回洗浄した。
【0064】
cover slip上に各サンプル溶液200μlを加え、培養(37℃、60分間、COインキュベーター)した後、RPMI
1640培地で3回洗浄し、メタノールに約10秒間つけて固定し、スライドグラスにのせて自然乾燥させた。乾燥後、レフレルメチレンブルー液200μlを滴下して20秒間染色し、純水で洗浄して乾燥させた。これを蛍光顕微鏡観察し、各サンプル溶液について無作為に120個(30個×4ヶ所)の好中球を選び、アクリジン染色された黄色ブドウ球菌の数をカウントした。
【0065】
そして、1個あたりの細胞内で融合を起こしていた細菌の平均数に、融合が見られた細胞の割合を乗じて食胞融合能〔fusion index(FI)〕を算出し、1個あたりの細胞内に貪食された細菌の平均数に、貧食が見られた細胞の割合を乗じて貪食能〔phagocytosis index(PI)〕を算出し、殺菌能(FI/PI)を求めた。その結果を表1に示す。なお、FI(Fusion Index)は、1個あたりの細胞内で融合を起こしていた細菌の平均数に、融合が見られた細胞の割合を乗じた値であり、PI(Phagocytic Index)は、1個あたりの細胞内に貧食された細菌の平均数に、貧食が見られた細胞の割合を乗じた値である。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から、サンプル1(本免疫賦活用組成物)の添加により、濃度依存的に殺菌能(FI/PI)が増大していることが分かる。
【0068】
以上の結果から、本免疫賦活用組成物は、自然免疫の初期段階を活性化していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の免疫賦活用組成物は、米糠由来であるため、継続的に摂取しても副作用の心配がないので、日常的に摂取するサプリメントなどとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠由来の酵母及び乳酸菌を用いて米糠を発酵させた後、この発酵物を多糖類分解酵素で処理して得られる処理物の水溶性画分を有効成分として含有することを特徴とする免疫賦活用組成物。
【請求項2】
前記多糖類分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群から選ばれた1種以上である請求項1記載の免疫賦活用組成物。
【請求項3】
前記酵母がピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)であり、前記乳酸菌がエンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)である請求項1又は2記載の免疫賦活用組成物。
【請求項4】
1)米糠に水を加えた後、殺菌処理を行う工程、2)殺菌処理した米糠に、米糠由来の酵母と乳酸菌を接種して発酵処理を行う工程、3)発酵処理した米糠を多糖類分解酵素で処理する工程、4)前記工程で得られた処理物から水溶性画分を抽出、回収する工程、を含むことを特徴とする免疫賦活用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記多糖類分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼからなる群から選ばれた1種以上である請求項4記載の免疫賦活用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記酵母としてピキア sp-01(Pichia sp-01、寄託番号FERM P-21702)を用い、前記乳酸菌としてエンテロコッカス sp-L3(Enterococcus sp-L3、寄託番号FERM P-21703)を用いる請求項4又は5記載の免疫賦活用組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−106013(P2010−106013A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223267(P2009−223267)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年4月1日 第62回日本栄養・食糧学会大会会頭発行の「第62回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(500101243)株式会社ファーマフーズ (30)
【Fターム(参考)】