免震化構造
【課題】既存建物の直下に新設躯体を構築でき、かつ、既存建物を免震化できる免震化構造を提供すること。
【解決手段】免震化構造は、既存基礎10と、この既存基礎10の上に設けられた既存躯体20と、を備える。この免震化構造は、既存建物1を挟んで構築された山留壁30および杭と、既存躯体20の最下階の天井梁を補強する補強梁40と、既存躯体20の直下でかつ既存基礎10を既存躯体20から分離して解体することで形成された空間に構築された新設躯体60と、を備え、既存躯体20は、新設躯体60と既存躯体20との間に設置された免震装置92を介して新設躯体60に支持されている。
【解決手段】免震化構造は、既存基礎10と、この既存基礎10の上に設けられた既存躯体20と、を備える。この免震化構造は、既存建物1を挟んで構築された山留壁30および杭と、既存躯体20の最下階の天井梁を補強する補強梁40と、既存躯体20の直下でかつ既存基礎10を既存躯体20から分離して解体することで形成された空間に構築された新設躯体60と、を備え、既存躯体20は、新設躯体60と既存躯体20との間に設置された免震装置92を介して新設躯体60に支持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震化構造に関する。詳しくは、既存基礎と、この既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物の免震化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既存基礎と、この既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物を免震化する方法が知られている。例えば、中央部分から外周部分に向かって、既存基礎の直下に新たな基礎を構築しながら既存基礎を解体し、新たな基礎と既存躯体との間に免震装置を介装する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−36608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存建物を免震化するだけでなく、この既存建物の地下空間をさらに有効活用するため、既存建物の直下に新たな地下躯体を構築したい、という要望がある。
しかしながら、既存躯体の直下に新たな地下躯体を構築しようとすると、既存基礎を解体して新たな地下躯体を構築するまでの期間、既存躯体全体を支持することが必要となるが、以上のような手法では、既存躯体全体を支持することができない。
【0005】
本発明は、既存建物の直下に新設躯体を構築でき、かつ、既存建物を免震化できる免震化構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の免震化構造は、既存基礎と、当該既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物の免震化構造であって、前記既存建物を挟んで構築された山留壁および/または杭と、前記既存躯体の最下階の天井梁を補強する補強梁と、前記既存躯体の直下でかつ前記既存基礎を前記既存躯体から分離して解体することで形成された空間に構築された新設躯体と、を備え、前記既存躯体は、前記新設躯体と前記既存躯体との間に設置された免震装置を介して前記新設躯体に支持されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、既存建物の周囲に山留壁や杭を支持部として構築する。次に、支持部同士の間に既存躯体を貫通して受桁を架け渡し、この受桁に既存躯体を仮支持させる。これにより、既存躯体は、受桁を介して山留壁に支持される。次に、既存基礎を既存躯体から分離して解体し、既存躯体の直下に新設躯体を構築する。次に、新設躯体に既存躯体を仮支持させて、受桁を撤去する。次に、新設躯体と既存躯体との間に免震基礎を構築し、既存躯体を免震基礎に支持させる。
このように、受桁を用いて既存躯体の荷重を支持部に仮支持させておき、この状態で、新設躯体を構築するので、既存建物の直下に新設躯体を構築できる。また、免震装置を介して既存躯体を新設躯体に支持させたので、既存建物を免震化できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受桁を用いて既存躯体の荷重を支持部に仮支持させておき、この状態で、新設躯体を構築するので、既存建物の直下に新設躯体を構築できる。また、免震装置を介して既存躯体を新設躯体に支持させたので、既存建物を免震化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る免震化方法のフローチャートである。
【図2】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その1)。
【図3】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その2)。
【図4】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その3)。
【図5】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その4)。
【図6】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その5)。
【図7】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その6)。
【図8】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その7)。
【図9】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その8)。
【図10】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その9)。
【図11】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その10)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る免震化方法のフローチャートである。
以下、図1のフローチャートに従って、既存建物1の直下に新設躯体を構築するとともに、既存建物1を免震化する手順について説明する。
ここで、既存建物1は、既存基礎10と、この既存基礎10の上に設けられた既存躯体20と、を備える(図2参照)。
既存基礎10は、ペデスタル杭11、耐圧盤12、基礎梁13などを含んで構成される。一方、既存躯体20の最下階つまり既存基礎10の直上階は、地下1階であり、この既存躯体20の地下1階部分は、地下1階柱21、1階梁22、1階床23などを含んで構成される。
【0011】
まず、ステップS1では、図2に示すように、既存建物1の周囲に、支持部としての山留壁30および新設杭を構築する。
【0012】
具体的には、既存建物1の近傍(図2中左側)に、山留壁30を構築する。この山留壁30は、SMW(Soil Mixing Wall)壁であり、H鋼である芯材31が埋め込まれている。
また、既存建物1の近傍(図2中右側)に、新設する地下躯体のための杭を構築する。この杭には、構真柱32が挿入されている。
これにより、山留壁30と構真柱32とは、既存躯体20を挟んで配置されることになる。
【0013】
ステップS2では、図3に示すように、既存躯体20の最下階の天井梁つまり1階梁22を補強する補強梁40を構築する。
【0014】
ステップS3では、図3に示すように、構真柱32の周囲を掘削し、これら構真柱32同士の間に受桁を支持するための受梁33を架け渡し、その後、埋め戻しておく。
また、山留壁30の芯材31に鉄筋コンクリート造の受桁用基礎34を構築する。
また、既存躯体20の最下階の床つまり既存基礎10の上面に、平滑な移動路盤35を構築する。具体的には、既存躯体20の凸部をはつり、凹部にモルタルを流し込んで、この上に鉄板やレールを敷設することで、移動路盤35を構築する。
【0015】
ステップS4では、図4および図5に示すように、山留壁30と杭の構真柱32との間に既存躯体20を貫通して受桁50を架け渡す。
すなわち、図4に示すように、既存建物1の外部にて受桁50を複数の部材51に分割しておき、各部材51を図示しない台車に載せて移動路盤35上を水平移動させ、既存躯体20の内部に引き込む。続いて、この引き込んだ部材51を、図示しないチェーンブロックで吊り上げて、この部材51の直下の移動路盤35を撤去する。この作業を繰り返すことにより、各部材51を所定の位置に配置する。その後、各部材51の継手部分をボルトで締めて連結する。
これにより、図5に示すように、受桁50の一端側が受桁用基礎34に支持され、他端側が受梁33に支持されて、受桁50は、既存基礎10を跨いだ状態となる。
【0016】
なお、本実施形態では、既存建物1の外部にて受桁50を複数の部材51に分割し、各部材51を別々に既存躯体20の内部に引き込んだが、これに限らず、既存建物1の外部にて受桁50を完成させ、受桁50を一度で既存躯体20の内部に引き込んでもよい。この場合も、受桁50の全体をチェーンブロックで吊り上げて、この受桁50の直下の移動路盤35を撤去する。
【0017】
ステップS5では、図5に示すように、新設躯体の一部である1階床部分61を先行して構築し、さらに、この1階床部分61から既存躯体20の側面に当接する仮設スラブ62を構築する。
【0018】
ステップS6では、図6に示すように、受桁50に既存躯体20を仮支持させる。
具体的には、補強梁40と受桁50との間に仮受けジャッキ70を設置し、図示しない変位計により変位を管理しながらプレロードを導入して、既存躯体20を受桁50に支持させる。
【0019】
ステップS7では、図7に示すように、図示しない変位計により変位を管理しながら、ワイヤーソー71により地下1階柱21を切断することで、既存基礎10を既存躯体20から分離する。
【0020】
ステップS8では、図8に示すように、掘削を行って、ワイヤーソー71の切断箇所よりも下の部分を解体する。
ステップS9では、図9に示すように、既存躯体20の直下に新設躯体60を構築する。
【0021】
ステップS10では、図10に示すように、新設躯体60に既存躯体20を仮支持させる。
具体的には、新設躯体60と既存躯体20との間に仮受けジャッキ70を設置し、図示しない変位計により変位を管理しながらプレロードを導入して、既存躯体20を新設躯体80に支持させる。
【0022】
ステップS11では、図10に示すように、受桁50を撤去する。
ステップS12では、図11に示すように、新設躯体60と既存躯体20との間に免震装置92を設置する。
具体的には、新設躯体60の上に免震下部基礎90を構築し、既存躯体20に免震上部基礎91を構築し、これら免震下部基礎90と免震上部基礎91との間に免震装置92を設置する。
ステップS13では、図11に示すように、免震装置92を介して既存躯体20を新設躯体60に支持させ、その後、仮受けジャッキ70を撤去する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)受桁50を用いて既存躯体20の荷重を山留壁30および構真柱32に仮支持させておき、この状態で、新設躯体60を構築するので、既存建物1の直下に新設躯体60を構築できる。また、免震装置92を介して既存躯体20を新設躯体60に支持させたので、既存建物1を免震化できる。
【0024】
(2)新設躯体の一部である1階床部分61を先行して構築し、さらに、この1階床部分61から既存躯体20の側面に当接する仮設スラブ62を構築したので、この仮設スラブ62で既存躯体20の側面を押さえることとなり、既存躯体20の水平方向のずれを確実に防止できる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1…既存建物
10…既存基礎
11…ペデスタル杭
12…耐圧盤
13…基礎梁
20…既存躯体
21…地下1階柱
22…1階梁
23…1階床
30…山留壁
31…芯材
32…構真柱
33…受梁
34…受桁用基礎
35…移動路盤
40…補強梁
50…受桁
51…部材
60…新設躯体
61…1階床部分
62…仮設スラブ
70…仮受けジャッキ
72…ワイヤーソー
90…免震下部基礎
91…免震上部基礎
92…免震装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震化構造に関する。詳しくは、既存基礎と、この既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物の免震化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既存基礎と、この既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物を免震化する方法が知られている。例えば、中央部分から外周部分に向かって、既存基礎の直下に新たな基礎を構築しながら既存基礎を解体し、新たな基礎と既存躯体との間に免震装置を介装する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−36608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存建物を免震化するだけでなく、この既存建物の地下空間をさらに有効活用するため、既存建物の直下に新たな地下躯体を構築したい、という要望がある。
しかしながら、既存躯体の直下に新たな地下躯体を構築しようとすると、既存基礎を解体して新たな地下躯体を構築するまでの期間、既存躯体全体を支持することが必要となるが、以上のような手法では、既存躯体全体を支持することができない。
【0005】
本発明は、既存建物の直下に新設躯体を構築でき、かつ、既存建物を免震化できる免震化構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の免震化構造は、既存基礎と、当該既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物の免震化構造であって、前記既存建物を挟んで構築された山留壁および/または杭と、前記既存躯体の最下階の天井梁を補強する補強梁と、前記既存躯体の直下でかつ前記既存基礎を前記既存躯体から分離して解体することで形成された空間に構築された新設躯体と、を備え、前記既存躯体は、前記新設躯体と前記既存躯体との間に設置された免震装置を介して前記新設躯体に支持されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、既存建物の周囲に山留壁や杭を支持部として構築する。次に、支持部同士の間に既存躯体を貫通して受桁を架け渡し、この受桁に既存躯体を仮支持させる。これにより、既存躯体は、受桁を介して山留壁に支持される。次に、既存基礎を既存躯体から分離して解体し、既存躯体の直下に新設躯体を構築する。次に、新設躯体に既存躯体を仮支持させて、受桁を撤去する。次に、新設躯体と既存躯体との間に免震基礎を構築し、既存躯体を免震基礎に支持させる。
このように、受桁を用いて既存躯体の荷重を支持部に仮支持させておき、この状態で、新設躯体を構築するので、既存建物の直下に新設躯体を構築できる。また、免震装置を介して既存躯体を新設躯体に支持させたので、既存建物を免震化できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受桁を用いて既存躯体の荷重を支持部に仮支持させておき、この状態で、新設躯体を構築するので、既存建物の直下に新設躯体を構築できる。また、免震装置を介して既存躯体を新設躯体に支持させたので、既存建物を免震化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る免震化方法のフローチャートである。
【図2】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その1)。
【図3】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その2)。
【図4】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その3)。
【図5】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その4)。
【図6】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その5)。
【図7】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その6)。
【図8】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その7)。
【図9】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その8)。
【図10】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その9)。
【図11】前記実施形態に係る免震化方法により既存建物を免震化する手順を説明するための断面図である(その10)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る免震化方法のフローチャートである。
以下、図1のフローチャートに従って、既存建物1の直下に新設躯体を構築するとともに、既存建物1を免震化する手順について説明する。
ここで、既存建物1は、既存基礎10と、この既存基礎10の上に設けられた既存躯体20と、を備える(図2参照)。
既存基礎10は、ペデスタル杭11、耐圧盤12、基礎梁13などを含んで構成される。一方、既存躯体20の最下階つまり既存基礎10の直上階は、地下1階であり、この既存躯体20の地下1階部分は、地下1階柱21、1階梁22、1階床23などを含んで構成される。
【0011】
まず、ステップS1では、図2に示すように、既存建物1の周囲に、支持部としての山留壁30および新設杭を構築する。
【0012】
具体的には、既存建物1の近傍(図2中左側)に、山留壁30を構築する。この山留壁30は、SMW(Soil Mixing Wall)壁であり、H鋼である芯材31が埋め込まれている。
また、既存建物1の近傍(図2中右側)に、新設する地下躯体のための杭を構築する。この杭には、構真柱32が挿入されている。
これにより、山留壁30と構真柱32とは、既存躯体20を挟んで配置されることになる。
【0013】
ステップS2では、図3に示すように、既存躯体20の最下階の天井梁つまり1階梁22を補強する補強梁40を構築する。
【0014】
ステップS3では、図3に示すように、構真柱32の周囲を掘削し、これら構真柱32同士の間に受桁を支持するための受梁33を架け渡し、その後、埋め戻しておく。
また、山留壁30の芯材31に鉄筋コンクリート造の受桁用基礎34を構築する。
また、既存躯体20の最下階の床つまり既存基礎10の上面に、平滑な移動路盤35を構築する。具体的には、既存躯体20の凸部をはつり、凹部にモルタルを流し込んで、この上に鉄板やレールを敷設することで、移動路盤35を構築する。
【0015】
ステップS4では、図4および図5に示すように、山留壁30と杭の構真柱32との間に既存躯体20を貫通して受桁50を架け渡す。
すなわち、図4に示すように、既存建物1の外部にて受桁50を複数の部材51に分割しておき、各部材51を図示しない台車に載せて移動路盤35上を水平移動させ、既存躯体20の内部に引き込む。続いて、この引き込んだ部材51を、図示しないチェーンブロックで吊り上げて、この部材51の直下の移動路盤35を撤去する。この作業を繰り返すことにより、各部材51を所定の位置に配置する。その後、各部材51の継手部分をボルトで締めて連結する。
これにより、図5に示すように、受桁50の一端側が受桁用基礎34に支持され、他端側が受梁33に支持されて、受桁50は、既存基礎10を跨いだ状態となる。
【0016】
なお、本実施形態では、既存建物1の外部にて受桁50を複数の部材51に分割し、各部材51を別々に既存躯体20の内部に引き込んだが、これに限らず、既存建物1の外部にて受桁50を完成させ、受桁50を一度で既存躯体20の内部に引き込んでもよい。この場合も、受桁50の全体をチェーンブロックで吊り上げて、この受桁50の直下の移動路盤35を撤去する。
【0017】
ステップS5では、図5に示すように、新設躯体の一部である1階床部分61を先行して構築し、さらに、この1階床部分61から既存躯体20の側面に当接する仮設スラブ62を構築する。
【0018】
ステップS6では、図6に示すように、受桁50に既存躯体20を仮支持させる。
具体的には、補強梁40と受桁50との間に仮受けジャッキ70を設置し、図示しない変位計により変位を管理しながらプレロードを導入して、既存躯体20を受桁50に支持させる。
【0019】
ステップS7では、図7に示すように、図示しない変位計により変位を管理しながら、ワイヤーソー71により地下1階柱21を切断することで、既存基礎10を既存躯体20から分離する。
【0020】
ステップS8では、図8に示すように、掘削を行って、ワイヤーソー71の切断箇所よりも下の部分を解体する。
ステップS9では、図9に示すように、既存躯体20の直下に新設躯体60を構築する。
【0021】
ステップS10では、図10に示すように、新設躯体60に既存躯体20を仮支持させる。
具体的には、新設躯体60と既存躯体20との間に仮受けジャッキ70を設置し、図示しない変位計により変位を管理しながらプレロードを導入して、既存躯体20を新設躯体80に支持させる。
【0022】
ステップS11では、図10に示すように、受桁50を撤去する。
ステップS12では、図11に示すように、新設躯体60と既存躯体20との間に免震装置92を設置する。
具体的には、新設躯体60の上に免震下部基礎90を構築し、既存躯体20に免震上部基礎91を構築し、これら免震下部基礎90と免震上部基礎91との間に免震装置92を設置する。
ステップS13では、図11に示すように、免震装置92を介して既存躯体20を新設躯体60に支持させ、その後、仮受けジャッキ70を撤去する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)受桁50を用いて既存躯体20の荷重を山留壁30および構真柱32に仮支持させておき、この状態で、新設躯体60を構築するので、既存建物1の直下に新設躯体60を構築できる。また、免震装置92を介して既存躯体20を新設躯体60に支持させたので、既存建物1を免震化できる。
【0024】
(2)新設躯体の一部である1階床部分61を先行して構築し、さらに、この1階床部分61から既存躯体20の側面に当接する仮設スラブ62を構築したので、この仮設スラブ62で既存躯体20の側面を押さえることとなり、既存躯体20の水平方向のずれを確実に防止できる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1…既存建物
10…既存基礎
11…ペデスタル杭
12…耐圧盤
13…基礎梁
20…既存躯体
21…地下1階柱
22…1階梁
23…1階床
30…山留壁
31…芯材
32…構真柱
33…受梁
34…受桁用基礎
35…移動路盤
40…補強梁
50…受桁
51…部材
60…新設躯体
61…1階床部分
62…仮設スラブ
70…仮受けジャッキ
72…ワイヤーソー
90…免震下部基礎
91…免震上部基礎
92…免震装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存基礎と、当該既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物の免震化構造であって、
前記既存建物を挟んで構築された山留壁および/または杭と、
前記既存躯体の最下階の天井梁を補強する補強梁と、
前記既存躯体の直下でかつ前記既存基礎を前記既存躯体から分離して解体することで形成された空間に構築された新設躯体と、を備え、
前記既存躯体は、前記新設躯体と前記既存躯体との間に設置された免震装置を介して前記新設躯体に支持されていることを特徴とする免震化構造。
【請求項1】
既存基礎と、当該既存基礎の上に設けられた既存躯体と、を備える既存建物の免震化構造であって、
前記既存建物を挟んで構築された山留壁および/または杭と、
前記既存躯体の最下階の天井梁を補強する補強梁と、
前記既存躯体の直下でかつ前記既存基礎を前記既存躯体から分離して解体することで形成された空間に構築された新設躯体と、を備え、
前記既存躯体は、前記新設躯体と前記既存躯体との間に設置された免震装置を介して前記新設躯体に支持されていることを特徴とする免震化構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−15016(P2013−15016A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236404(P2012−236404)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2010−48883(P2010−48883)の分割
【原出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2010−48883(P2010−48883)の分割
【原出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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