免震装置
【課題】木造住宅等の比較的軽量建築物にも摘要し得る有効な免震装置を提供する。
【解決手段】下側支持部材２に回転自在に軸支した下側ローラー５の上部に、上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材６を設けて、その上部に、上側支持部材３に回転自在に軸支した上側ローラー５ａを、下側ローラーに交差するように構成し、各部を当接した免震装置。ローラーを交差することで全水平方向の動きに対応している。板状案内部材を設置することで交差するローラーの荷重伝達の接点が増え重荷重にも耐えられる。また、板状案内部材は上下共平らな面で、上下ローラーの回転軸を偏芯軸とすることでも同じ効果がある。また、上下を中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入して、ローラーの回転に減衰力を得ることも出来る。また、ローラーの外部に増速ギヤ−、電磁ブレーキ装置等を接続して、風力対策も可能になる。
【解決手段】下側支持部材２に回転自在に軸支した下側ローラー５の上部に、上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材６を設けて、その上部に、上側支持部材３に回転自在に軸支した上側ローラー５ａを、下側ローラーに交差するように構成し、各部を当接した免震装置。ローラーを交差することで全水平方向の動きに対応している。板状案内部材を設置することで交差するローラーの荷重伝達の接点が増え重荷重にも耐えられる。また、板状案内部材は上下共平らな面で、上下ローラーの回転軸を偏芯軸とすることでも同じ効果がある。また、上下を中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入して、ローラーの回転に減衰力を得ることも出来る。また、ローラーの外部に増速ギヤ−、電磁ブレーキ装置等を接続して、風力対策も可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、地震等による強い地震力から、構造物を保護するために、基礎面と構造物との間に設置される免震装置に係り、特に住宅等比較的軽量構造物の免震にも摘要し得る有効な免震装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から地震対策の１つとして、免震装置は地震力から構造物等を保護するために、種々の構造のものが提案されている。免震装置は、地震による水平方向の揺れを減衰することにより、構造物の耐震性を高めるだけでなく、構造物内部の家具、備品等の破壊、転倒そして人間の心理的不安をも、防止することができる。
【０００３】
このような免震装置には、所定の軸線回りにのみ転動可能に支持される車輪と、前記車輪を案内し上面の中央部が窪んだレールとを組合せてなる転がり免震装置がある。また、凸状の軸断面を持ったレール状の部材であって、長手方向の中央部を所定の曲率Ｒを持った円弧に形成してなる案内部材を上下向かい合わせて交差するように配設してなる免震装置がある。
【０００４】
前者の例として、例えば、特公平０６−７４６０９号公報に開示された免震装置があり、後者の例として、例えば、特開２００４−１９８５９号公報に開示された免震装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特公平０６−７４６０９号公報
【特許文献２】特開２００４−１９８５９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
上記特公平０６−７４６０９公報記載の免震装置では、車輪とレールとを組合せてなるユニットを上下において交差するよう組立ててなるために、所望の機能を発揮させるためには、個々の免震装置における車輪とレールとの相対移動が他の免震装置における車輪とレールとの相対移動と機械的干渉を起こさないようにする必要がある。そのために、車輪とレールを高精度に製作することが必要であり、また、個々の免震装置を高精度に組立てることが必要であった。
【０００７】
また、特開２００４−１９８５９号公報記載の免震装置では、レール状案内部材を向かい合わせて摺動させるために、低摩擦部材で形成されているものの、スムーズに摺動させることが困難であった。また、地震による垂直加速度が生じた場合の構造体の浮上りを防止するために、レール状案内部材を支持する支持体を連結部材で拘束する場合には、一層スムーズに摺動させることができないという問題があった。
【０００８】
この発明は、かかる現況に鑑みてなされたもので、きわめて簡単な構造とすることによって地震等による強い地震力の揺れを減衰させることができるとともに、容易に初期の位置に復元する免震装置を提供することを目的とする。また、この発明は予めユニット化することにより、複数個使用する構造物の免震装置とする場合でも容易に組立てることができ、高性能で安価な免震装置を提供することを目的とする。さらに、この発明はローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入してローラー本体に減衰力を持たせたり、増速ギヤ−、電磁式ブレーキ装置を配設することによって、風力等の外力に対しては作動せず、地震力の揺れに対してのみ作動することにより、確実に風力対策を備えた免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
この発明は上記目的を達成するためにつぎのような構成とした。即ち、この発明に係る免震装置は、下側支持部材に回転自在に軸支した下側ローラーの上部に、上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材を設けて、その上部に、上側支持部材に回転自在に軸支した上側ローラーを、下側ローラーに交差するように構成し、各部を当接して形成したユニットを有する免震装置。また、前記免震装置の上下ローラーの回転軸を偏芯軸とし、その外周から偏芯軸までの最少半径部付近を上下面共平らな板状案内部材のほぼ中央部にそれぞれ当設した構成としてもよい。
【００１０】
ローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入して、その抵抗力によりローラーの回転に減衰力を生じさせた免震装置。
【００１１】
ローラーの回転軸に増速ギヤ−、電磁式ブレーキ装置を配接することにより、風力対策を施すことができ、住宅用建築物に使用するのに好適な免震装置とする事が出来る。電磁式ブレーキ装置を配接した免震構造とする場合には、免震構造体の少なくても一ヶ所にタイマー付感震装置を設置することが好ましい。
【発明の効果】
【００１２】
この発明は、上記説明から明らかなように、ローラーを交差させるというきわめて簡単な構造であるから、製造、組立が容易であり、安価な装置として提供することができる。また、免震装置の板状案内部材を凹状案内部材とすることで、地震力等の外力を減衰させることができるとともに、最凹部が交差してなるから、地震力等が解除されると最凹部に移行して初期位置にもどる。また、他の方法として、板状案内部材は上下面共、平ら面でローラーの回転軸を偏芯軸とし、そのローラーの外周から偏芯軸までの最少半径部をそれぞれ交差させることでも、前記構成と同様に、免震と初期位置への復元が可能である。さらに、ローラーを交差させることによって、全水平方向の外力に対応することができる。板状案内部材を設置することで交差するローラーの荷重伝達の接点が点から線に増え、重荷重にも耐えられる。また、ローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入することにより、ローラーの回転に減衰力が生じて、従来使用していたダンパー等の機器類が省略できる。また、ローラーの回転軸に増速ギヤ−、電磁式ブレーキ装置を配設することによって、地震以外の外力に対しては，ローラーの回転を阻止することができるから、住宅用建築物の風力対策を施した免震装置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】この発明に係る免震装置を形成するユニットの図である。
【図２】ローラーを偏芯軸とした免震装置を形成するユニットの図である。
【図３】図１の免震装置のローラー内部に粘性体を挿入した図である。
【図４】図２の免震装置のローラー内部に粘性体を挿入した図である。
【図５】凹状案内部材の実施形態を示す図である。
【図６】風力対策用増速ギヤ−、電磁ブレーキ装置を備えたローラー単体図である。
【図７】免震装置の各部材を固定する固定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下に、この発明に係る免震装置を図示する実施形態について詳細に説明する。図１は、この発明に係る免震装置を形成するユニットの説明用図である。免震装置ユニット１は、下側支持部材２に支持された下側ローラー５と上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材６と上側支持部材３に支持された上側ローラー５ａとからなる。前記下側ローラー５と上側ローラー５ａは、それぞれ１つのローラーを配設した同一の構成であって、ローラー同士を向かい合わせるとともに、前記板状案内部材に上下交差するように配設してなる。前記交差は９０度直交するように交差させることが好ましい。前記下側ローラー５と上側ローラー５ａは凹状案内部材６を介して、各ローラーの軸方向の中央付近に当接して組立てられている。
【００１５】
下側ローラー５は、基礎面に設置する下側支持部材２に設けた軸受け７に回転軸８が回転自在に軸支してなる。その上部に凹状案内部材６を配設し、上側ローラー５ａは上部構造体に設置する上側支持部材３に設けた軸受け７ａに回転軸８ａが軸支してなり、凹状案内部材６の上部に下側ローラーと交差する位置に組立てた構成のユニットとする。
【００１６】
図２は、下側支持部材２に支持された下側偏芯ローラー９と上下偏芯ローラーが移動可能で、上下面共平らな板状案内部材１１と上側支持部材３に支持された、上側偏芯ローラー９ａとからなる。上下偏芯ローラー９、９ａは、それぞれ外周から偏芯軸までの最少半径部１０付近を上下面共平らな板状案内部材１１の中央付近に当設する。この構成でも、前記構成のユニットと同様に、地震等の揺れによる移動にも、揺れが止れば原点に復元する。上下ローラーが交差しているので、全方向の水平力に対応できる。
【００１７】
このような偏芯ローラー９、９ａとした場合には、ローラーの約半回転が左右それぞれの振幅巾となる。上下面共平らな板状案内部材１１を介して、交差しているので、ローラーが半回転したときに板状案内部材１１の端部に達するよう構成する。
【００１８】
前記、図１の凹状案内部材６及び図２の上下面共平らな板状案内部材１１の周囲にストッパー４を設けるのが好ましい。
【００１９】
上記ローラー５、５ａ、偏芯ローラー９、９ａの材質は、免震装置ユニットの設置場所における荷重等によって選定されるが、例えば、ステンレス、鋼材等の金属材、ポリウレタン系ポリマー等の合成樹脂、ガラス等を用いることができる。
【００２０】
上記凹状案内部材６、上下面共平らな板状案内部材１１の材質は、ステンレス、鋼材等の金属材、ポリウレタン系ポリマー等の合成樹脂、ゴム等を用いることができる。また、金属材で作製して、ローラーの移動面のみに合成樹脂、ゴム等を接着使用すれば、ローラーの回転を抑制できるから減衰力として利用可能である。
【００２１】
上記構成の免震装置ユニットにおける下側ローラー５と上側ローラー５ａはそれぞれ凹状案内部材６または、上下面共平らな板状案内部材１１を介して、線で当設しており、住宅等の建築物等の重荷重に対応できる。また、凹状案内部材６は図５で示すように、（ａ）は円弧、（ｂ）は放物線、（ｃ）は傾斜線とその他複数の組合せとすることができる。
【００２２】
図１の免震装置における下側ローラー５と上側ローラー５ａとは凹状案内部材６を介して、線で当設しており、重力によって互いに最凹部に移行して停止する。地震力等が加わると、下側ローラー５と上側ローラー５ａは最凹部から円弧面又は傾斜面に沿って案内板の端部へ回転しながら移行する。下側ローラー５と上側ローラー５ａのいずれか一方、又は双方が端部に移行することによって、凹状案内部材６及び上側ローラー支持部材３が上方に押し上げられることになる。
【００２３】
前記支持部材３が上方に押し上げられると、上方からの荷重による反力によって復元力が生じ、地震力等の外力を減衰させる。そして地震力等の外力が解除されると、下側ローラー５と上側ローラー５ａは、凹状案内部材６を介して、互いに円弧面又は傾斜面により、最凹部に移行し、初期位置に戻る。上下ローラーを互いに交差させることで、全方向の外力に対応できる。
【００２４】
図２の上下ローラーを偏芯軸ローラー９，９ａとし、上下面共平らな板状案内部材１１を介して、それぞれ交差させ、当設した場合の構成でも、作動状況は図１の構成と同じである。
【００２５】
図３は、図１のローラーを中空ローラー１４、１４ａとして、内部に粘性体１７を挿入し、ローラーの回転に減衰力を発生させる一例を示す。上下支持部材２，３、に抵抗板１８を取付けたシャフト１２、１２ａを固定金具１３、１３ａにより固定し、中空ローラー１４、１４ａ、は両側に側板１５を設け、その側板１５の中心位置に前記シャフト１２、１２ａが通る軸受け１６を取付る。中空ローラー１４、１４ａの内部に適量の粘性体１７を挿入し、地震力によりローラー１４、１４ａが回転すると前記シャフト１２、１２ａは固定され回転しないので、シャフト１２、１２ａに取付けられた抵抗板１８と粘性体１７による摩擦抵抗により、減衰力が生じる。また地震力等、外力が無くなると粘性体１７により、ゆっくりと初期位置に復元する。抵抗板１８は孔明き板としてもよく、粘性体１７の粘度も各種研究により決定する。
【００２６】
図４は、図２の偏芯ローラー９，９ａを中空偏芯軸ローラー１９，１９ａと変更して、内部に粘性体を挿入し、中空偏芯軸ローラー１９，１９ａの回転に減衰力を発生させる一例を示す。
【００２７】
住宅等、屋外に使用する免震装置ユニットには、風力対策が必要である。このために各ローラーのすべてに電磁式ブレーキ装置（一例を図６に示す）を配設するとともに、免震構造体の少なくても一ヶ所にはタイマー付感震装置（図示せず）を設置する。各ローラーに取付ける電磁式ブレーキ装置について説明すると、図に示すように、ローラー５、５ａ、９，９ａに取付けた増速ギヤ−２１を介して電磁式ブレーキ２２等のブレーキユニットを配設する。
【００２８】
上記構成において、ブレーキユニットは、平常時は全て「閉」とし、全てのローラーを固定しておく。ローラーを固定しておくことによって、風力等外力が作用しても、ローラーは回転することなく、住宅等の揺れを防止する。地震時はタイマー付感震装置が作動して各ローラーのブレーキユニットを「開」とし、ローラーの回転を可能にして免震させる。地震が終了した後は、タイマーにより予め設定した時間が経過したときに電源を切って、ブレーキユニットが「閉」となり、ローラーは固定されて平常時に戻る。このようにローラーにブレーキユニットを配設することによって、確実な風力対策となる。
【００２９】
図７は、免震装置ユニットを設置するまでの間、保管、運搬の際に下側ローラー部と案内部材と上側ローラー部を固定する固定方法の一例を示す平面図と正、横面図である。図に明らかなように、上下ローラー部の支持部材と案内部材との間に両者をそれぞれ固定する仮止め材２３を止め具２４により、着脱自在に取付けてなる。上下ローラー部は案内部材を介して交差し、それぞれ水平に維持した状態で保管、運搬することができる。
【００３０】
上記仮止めされた免震装置ユニットを使用するときは、免震装置ユニットを予め水平に形成された基礎面や地上支持面に設置し、その上に住宅、構造物等を配設する。免震装置ユニットを複数、設置する場合には、それぞれ平行な位置に下側支持部材を基礎面に固定し、上側支持部材を構造物に固定した後、仮止め材２３を取り外せばよい。このように、予め免震装置ユニットの各部材を固定しておくで、簡単に、しかも正確に位置決めして設置することができる。
【符号の説明】
【００３１】
１、：免震装置ユニット
２、：下側支持部材
３、：上側支持部材
４、；ストッパー
５、：下側ローラー
５ａ：上側ローラー
６、：凹状案内部材
７、７ａ：軸受け
８、８ａ；回転軸
９、：下側偏芯軸ローラー
９ａ；上側偏芯軸ローラー
１０、：ローラーの外周から偏芯軸までの最少半径部
１１、：平らな板状案内部材
１２、：下側シャフト
１２ａ：上側シャフト
１３、１３ａ：固定金具
１４、１４ａ：中空ローラー
１５、：側板
１６、：シャフト用軸受け
１７、：粘性体
１８、：抵抗板
１９、１９ａ：中空偏芯軸ローラー
２０、：増速ギヤ−
２１、：電磁ブレーキ装置
２２、：ギヤ−座
２３、：仮止め材
２４、：止め具
【技術分野】
【０００１】
この発明は、地震等による強い地震力から、構造物を保護するために、基礎面と構造物との間に設置される免震装置に係り、特に住宅等比較的軽量構造物の免震にも摘要し得る有効な免震装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から地震対策の１つとして、免震装置は地震力から構造物等を保護するために、種々の構造のものが提案されている。免震装置は、地震による水平方向の揺れを減衰することにより、構造物の耐震性を高めるだけでなく、構造物内部の家具、備品等の破壊、転倒そして人間の心理的不安をも、防止することができる。
【０００３】
このような免震装置には、所定の軸線回りにのみ転動可能に支持される車輪と、前記車輪を案内し上面の中央部が窪んだレールとを組合せてなる転がり免震装置がある。また、凸状の軸断面を持ったレール状の部材であって、長手方向の中央部を所定の曲率Ｒを持った円弧に形成してなる案内部材を上下向かい合わせて交差するように配設してなる免震装置がある。
【０００４】
前者の例として、例えば、特公平０６−７４６０９号公報に開示された免震装置があり、後者の例として、例えば、特開２００４−１９８５９号公報に開示された免震装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特公平０６−７４６０９号公報
【特許文献２】特開２００４−１９８５９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
上記特公平０６−７４６０９公報記載の免震装置では、車輪とレールとを組合せてなるユニットを上下において交差するよう組立ててなるために、所望の機能を発揮させるためには、個々の免震装置における車輪とレールとの相対移動が他の免震装置における車輪とレールとの相対移動と機械的干渉を起こさないようにする必要がある。そのために、車輪とレールを高精度に製作することが必要であり、また、個々の免震装置を高精度に組立てることが必要であった。
【０００７】
また、特開２００４−１９８５９号公報記載の免震装置では、レール状案内部材を向かい合わせて摺動させるために、低摩擦部材で形成されているものの、スムーズに摺動させることが困難であった。また、地震による垂直加速度が生じた場合の構造体の浮上りを防止するために、レール状案内部材を支持する支持体を連結部材で拘束する場合には、一層スムーズに摺動させることができないという問題があった。
【０００８】
この発明は、かかる現況に鑑みてなされたもので、きわめて簡単な構造とすることによって地震等による強い地震力の揺れを減衰させることができるとともに、容易に初期の位置に復元する免震装置を提供することを目的とする。また、この発明は予めユニット化することにより、複数個使用する構造物の免震装置とする場合でも容易に組立てることができ、高性能で安価な免震装置を提供することを目的とする。さらに、この発明はローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入してローラー本体に減衰力を持たせたり、増速ギヤ−、電磁式ブレーキ装置を配設することによって、風力等の外力に対しては作動せず、地震力の揺れに対してのみ作動することにより、確実に風力対策を備えた免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
この発明は上記目的を達成するためにつぎのような構成とした。即ち、この発明に係る免震装置は、下側支持部材に回転自在に軸支した下側ローラーの上部に、上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材を設けて、その上部に、上側支持部材に回転自在に軸支した上側ローラーを、下側ローラーに交差するように構成し、各部を当接して形成したユニットを有する免震装置。また、前記免震装置の上下ローラーの回転軸を偏芯軸とし、その外周から偏芯軸までの最少半径部付近を上下面共平らな板状案内部材のほぼ中央部にそれぞれ当設した構成としてもよい。
【００１０】
ローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入して、その抵抗力によりローラーの回転に減衰力を生じさせた免震装置。
【００１１】
ローラーの回転軸に増速ギヤ−、電磁式ブレーキ装置を配接することにより、風力対策を施すことができ、住宅用建築物に使用するのに好適な免震装置とする事が出来る。電磁式ブレーキ装置を配接した免震構造とする場合には、免震構造体の少なくても一ヶ所にタイマー付感震装置を設置することが好ましい。
【発明の効果】
【００１２】
この発明は、上記説明から明らかなように、ローラーを交差させるというきわめて簡単な構造であるから、製造、組立が容易であり、安価な装置として提供することができる。また、免震装置の板状案内部材を凹状案内部材とすることで、地震力等の外力を減衰させることができるとともに、最凹部が交差してなるから、地震力等が解除されると最凹部に移行して初期位置にもどる。また、他の方法として、板状案内部材は上下面共、平ら面でローラーの回転軸を偏芯軸とし、そのローラーの外周から偏芯軸までの最少半径部をそれぞれ交差させることでも、前記構成と同様に、免震と初期位置への復元が可能である。さらに、ローラーを交差させることによって、全水平方向の外力に対応することができる。板状案内部材を設置することで交差するローラーの荷重伝達の接点が点から線に増え、重荷重にも耐えられる。また、ローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入することにより、ローラーの回転に減衰力が生じて、従来使用していたダンパー等の機器類が省略できる。また、ローラーの回転軸に増速ギヤ−、電磁式ブレーキ装置を配設することによって、地震以外の外力に対しては，ローラーの回転を阻止することができるから、住宅用建築物の風力対策を施した免震装置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】この発明に係る免震装置を形成するユニットの図である。
【図２】ローラーを偏芯軸とした免震装置を形成するユニットの図である。
【図３】図１の免震装置のローラー内部に粘性体を挿入した図である。
【図４】図２の免震装置のローラー内部に粘性体を挿入した図である。
【図５】凹状案内部材の実施形態を示す図である。
【図６】風力対策用増速ギヤ−、電磁ブレーキ装置を備えたローラー単体図である。
【図７】免震装置の各部材を固定する固定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下に、この発明に係る免震装置を図示する実施形態について詳細に説明する。図１は、この発明に係る免震装置を形成するユニットの説明用図である。免震装置ユニット１は、下側支持部材２に支持された下側ローラー５と上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材６と上側支持部材３に支持された上側ローラー５ａとからなる。前記下側ローラー５と上側ローラー５ａは、それぞれ１つのローラーを配設した同一の構成であって、ローラー同士を向かい合わせるとともに、前記板状案内部材に上下交差するように配設してなる。前記交差は９０度直交するように交差させることが好ましい。前記下側ローラー５と上側ローラー５ａは凹状案内部材６を介して、各ローラーの軸方向の中央付近に当接して組立てられている。
【００１５】
下側ローラー５は、基礎面に設置する下側支持部材２に設けた軸受け７に回転軸８が回転自在に軸支してなる。その上部に凹状案内部材６を配設し、上側ローラー５ａは上部構造体に設置する上側支持部材３に設けた軸受け７ａに回転軸８ａが軸支してなり、凹状案内部材６の上部に下側ローラーと交差する位置に組立てた構成のユニットとする。
【００１６】
図２は、下側支持部材２に支持された下側偏芯ローラー９と上下偏芯ローラーが移動可能で、上下面共平らな板状案内部材１１と上側支持部材３に支持された、上側偏芯ローラー９ａとからなる。上下偏芯ローラー９、９ａは、それぞれ外周から偏芯軸までの最少半径部１０付近を上下面共平らな板状案内部材１１の中央付近に当設する。この構成でも、前記構成のユニットと同様に、地震等の揺れによる移動にも、揺れが止れば原点に復元する。上下ローラーが交差しているので、全方向の水平力に対応できる。
【００１７】
このような偏芯ローラー９、９ａとした場合には、ローラーの約半回転が左右それぞれの振幅巾となる。上下面共平らな板状案内部材１１を介して、交差しているので、ローラーが半回転したときに板状案内部材１１の端部に達するよう構成する。
【００１８】
前記、図１の凹状案内部材６及び図２の上下面共平らな板状案内部材１１の周囲にストッパー４を設けるのが好ましい。
【００１９】
上記ローラー５、５ａ、偏芯ローラー９、９ａの材質は、免震装置ユニットの設置場所における荷重等によって選定されるが、例えば、ステンレス、鋼材等の金属材、ポリウレタン系ポリマー等の合成樹脂、ガラス等を用いることができる。
【００２０】
上記凹状案内部材６、上下面共平らな板状案内部材１１の材質は、ステンレス、鋼材等の金属材、ポリウレタン系ポリマー等の合成樹脂、ゴム等を用いることができる。また、金属材で作製して、ローラーの移動面のみに合成樹脂、ゴム等を接着使用すれば、ローラーの回転を抑制できるから減衰力として利用可能である。
【００２１】
上記構成の免震装置ユニットにおける下側ローラー５と上側ローラー５ａはそれぞれ凹状案内部材６または、上下面共平らな板状案内部材１１を介して、線で当設しており、住宅等の建築物等の重荷重に対応できる。また、凹状案内部材６は図５で示すように、（ａ）は円弧、（ｂ）は放物線、（ｃ）は傾斜線とその他複数の組合せとすることができる。
【００２２】
図１の免震装置における下側ローラー５と上側ローラー５ａとは凹状案内部材６を介して、線で当設しており、重力によって互いに最凹部に移行して停止する。地震力等が加わると、下側ローラー５と上側ローラー５ａは最凹部から円弧面又は傾斜面に沿って案内板の端部へ回転しながら移行する。下側ローラー５と上側ローラー５ａのいずれか一方、又は双方が端部に移行することによって、凹状案内部材６及び上側ローラー支持部材３が上方に押し上げられることになる。
【００２３】
前記支持部材３が上方に押し上げられると、上方からの荷重による反力によって復元力が生じ、地震力等の外力を減衰させる。そして地震力等の外力が解除されると、下側ローラー５と上側ローラー５ａは、凹状案内部材６を介して、互いに円弧面又は傾斜面により、最凹部に移行し、初期位置に戻る。上下ローラーを互いに交差させることで、全方向の外力に対応できる。
【００２４】
図２の上下ローラーを偏芯軸ローラー９，９ａとし、上下面共平らな板状案内部材１１を介して、それぞれ交差させ、当設した場合の構成でも、作動状況は図１の構成と同じである。
【００２５】
図３は、図１のローラーを中空ローラー１４、１４ａとして、内部に粘性体１７を挿入し、ローラーの回転に減衰力を発生させる一例を示す。上下支持部材２，３、に抵抗板１８を取付けたシャフト１２、１２ａを固定金具１３、１３ａにより固定し、中空ローラー１４、１４ａ、は両側に側板１５を設け、その側板１５の中心位置に前記シャフト１２、１２ａが通る軸受け１６を取付る。中空ローラー１４、１４ａの内部に適量の粘性体１７を挿入し、地震力によりローラー１４、１４ａが回転すると前記シャフト１２、１２ａは固定され回転しないので、シャフト１２、１２ａに取付けられた抵抗板１８と粘性体１７による摩擦抵抗により、減衰力が生じる。また地震力等、外力が無くなると粘性体１７により、ゆっくりと初期位置に復元する。抵抗板１８は孔明き板としてもよく、粘性体１７の粘度も各種研究により決定する。
【００２６】
図４は、図２の偏芯ローラー９，９ａを中空偏芯軸ローラー１９，１９ａと変更して、内部に粘性体を挿入し、中空偏芯軸ローラー１９，１９ａの回転に減衰力を発生させる一例を示す。
【００２７】
住宅等、屋外に使用する免震装置ユニットには、風力対策が必要である。このために各ローラーのすべてに電磁式ブレーキ装置（一例を図６に示す）を配設するとともに、免震構造体の少なくても一ヶ所にはタイマー付感震装置（図示せず）を設置する。各ローラーに取付ける電磁式ブレーキ装置について説明すると、図に示すように、ローラー５、５ａ、９，９ａに取付けた増速ギヤ−２１を介して電磁式ブレーキ２２等のブレーキユニットを配設する。
【００２８】
上記構成において、ブレーキユニットは、平常時は全て「閉」とし、全てのローラーを固定しておく。ローラーを固定しておくことによって、風力等外力が作用しても、ローラーは回転することなく、住宅等の揺れを防止する。地震時はタイマー付感震装置が作動して各ローラーのブレーキユニットを「開」とし、ローラーの回転を可能にして免震させる。地震が終了した後は、タイマーにより予め設定した時間が経過したときに電源を切って、ブレーキユニットが「閉」となり、ローラーは固定されて平常時に戻る。このようにローラーにブレーキユニットを配設することによって、確実な風力対策となる。
【００２９】
図７は、免震装置ユニットを設置するまでの間、保管、運搬の際に下側ローラー部と案内部材と上側ローラー部を固定する固定方法の一例を示す平面図と正、横面図である。図に明らかなように、上下ローラー部の支持部材と案内部材との間に両者をそれぞれ固定する仮止め材２３を止め具２４により、着脱自在に取付けてなる。上下ローラー部は案内部材を介して交差し、それぞれ水平に維持した状態で保管、運搬することができる。
【００３０】
上記仮止めされた免震装置ユニットを使用するときは、免震装置ユニットを予め水平に形成された基礎面や地上支持面に設置し、その上に住宅、構造物等を配設する。免震装置ユニットを複数、設置する場合には、それぞれ平行な位置に下側支持部材を基礎面に固定し、上側支持部材を構造物に固定した後、仮止め材２３を取り外せばよい。このように、予め免震装置ユニットの各部材を固定しておくで、簡単に、しかも正確に位置決めして設置することができる。
【符号の説明】
【００３１】
１、：免震装置ユニット
２、：下側支持部材
３、：上側支持部材
４、；ストッパー
５、：下側ローラー
５ａ：上側ローラー
６、：凹状案内部材
７、７ａ：軸受け
８、８ａ；回転軸
９、：下側偏芯軸ローラー
９ａ；上側偏芯軸ローラー
１０、：ローラーの外周から偏芯軸までの最少半径部
１１、：平らな板状案内部材
１２、：下側シャフト
１２ａ：上側シャフト
１３、１３ａ：固定金具
１４、１４ａ：中空ローラー
１５、：側板
１６、：シャフト用軸受け
１７、：粘性体
１８、：抵抗板
１９、１９ａ：中空偏芯軸ローラー
２０、：増速ギヤ−
２１、：電磁ブレーキ装置
２２、：ギヤ−座
２３、：仮止め材
２４、：止め具
【特許請求の範囲】
【請求項１】
下側支持部材に回転自在に軸支した下側ローラーの上部に、上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材を設けて、その上部に、上側支持部材に回転自在に軸支した上側ローラーを、下側ローラーに交差するように構成し、各部を当接して形成したユニットを有することを特徴とする免震装置。
【請求項２】
請求項１の上下ローラーを偏芯軸とし、その外周から偏芯軸までの最少半径部付近を上下面共、平らな板状案内部材にそれぞれ当設して形成したユニットを有することを特徴とする免震装置。
【請求項３】
ローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入したことを特徴とする請求項１〜２の免震装置。
【請求項４】
ローラーの外部に増速ギヤ−、電磁ブレーキ装置等を有した請求項１〜２の免震装置。
【請求項１】
下側支持部材に回転自在に軸支した下側ローラーの上部に、上下ローラーが移動可能で凹面を交差するよう上下に持つ板状案内部材を設けて、その上部に、上側支持部材に回転自在に軸支した上側ローラーを、下側ローラーに交差するように構成し、各部を当接して形成したユニットを有することを特徴とする免震装置。
【請求項２】
請求項１の上下ローラーを偏芯軸とし、その外周から偏芯軸までの最少半径部付近を上下面共、平らな板状案内部材にそれぞれ当設して形成したユニットを有することを特徴とする免震装置。
【請求項３】
ローラーを中空ローラーとして、内部に粘性体を挿入したことを特徴とする請求項１〜２の免震装置。
【請求項４】
ローラーの外部に増速ギヤ−、電磁ブレーキ装置等を有した請求項１〜２の免震装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１２−２３７４３４（Ｐ２０１２−２３７４３４Ａ）
【公開日】平成２４年１２月６日（２０１２．１２．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−１１７４１３（Ｐ２０１１−１１７４１３）
【出願日】平成２３年５月９日（２０１１．５．９）
【出願人】（５０９３４７１４７）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１２月６日（２０１２．１２．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年５月９日（２０１１．５．９）
【出願人】（５０９３４７１４７）
【Ｆターム（参考）】
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