説明

党参および黄耆の組成物、それらの調製方法およびその使用

【課題】主要成分がある特定の重量比の党参および黄耆に従って調製される党参および黄耆の組成物の提供。
【解決手段】原料として党参(Radix Codonopsis)および黄耆(Radix Astragali)を、前記党参および黄耆の重量比の範囲は、0.5:1〜1:0.5となるよう薬学的組成物を調製する。さらに、唐当帰(Radix Angelicae Sinensis)、地黄(Radix rehmanniae Praeparata)、何首鳥(Radix Polygoni Multiflori)、白朮(Rhizoma Atractylodis Macrocephalae)、山薬(Rhizoma Dioscoreae)、またはそれらの組合せであること、ならびに免疫調節薬および虚血性心疾患および急性肺障害の治療用薬物の調製におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要成分がある特定の重量比の党参(Radix Codonipsis)(Fllase AsiabelI Root Tangshen)および黄耆(Radix Astragali)(Milkvetch Root)に従って調製される党参および黄耆の組成物に関する。本発明はまた、薬学的組成物を調製する方法、ならびに免疫調節薬および虚血性心疾患および急性肺障害の治療用薬物の調製におけるその使用を提供する。
【発明の背景】
【0002】
消化管腫瘍は、中国で一般的な腫瘍である。適切な時期に同定されることが困難であるため、早期診断率が比較的低い。人々に貴重な手術の機会を失わせるだけでなく、過剰な病原体により引き起こされる低免疫学的機能が理由で化学的薬物の不耐性、衰弱した生命力または弱い気(weak vital QI)および気の欠乏に起因した血液うっ血を引き起こす。
【0003】
近年、非常に治り難い臨床問題となっている。
【0004】
現在のところ、腫瘍を治療するための多くの方法が存在する。シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、シスプラチンまたはドキソルビシンのような西洋医学による治療は、それらが核酸または腫瘍細胞タンパク質の合成を主に阻害することにより腫瘍細胞の成長を阻害するため、正常身体細胞に対して明らかに有毒な副作用を有することが知られている。したがって、西洋医学による治療は、悪心、嘔吐、骨髄阻害等のような幾つかの症状を引き起こし、多くの患者が化学療法に対して耐容性がなく、それらの治療を中断しなくてはならない。より深刻なことには、西洋医学による治療は、患者によっては死を引き起こす可能性がある。さらに、腫瘍の出現および発達は、ヒト免疫学的機能、特に細胞免疫学的機能に密接に関連する。したがって、理想的な免疫調節薬は、全身のストレス適応性を高め、化学療法のプロセスにおいてヒトの身体の免疫能力を維持し、有毒な副作用を減少させ、患者の生存期間を延長させることが見出されることが期待される。
【0005】
同様に、免疫調節改質剤として伝統的な東洋医学(Chinese medicine)を用いた研究も存在する。例えば、Xie Yan等は、ZL94101456.8号において御種人参(Panax ginseng)および黄耆の成分を含有する注射を報告しており、それは、ヒトの免疫学的機能を高め、また腫瘍の出現および発生を阻害するのに使用される。しかしながら、薬物の影響を証明することができる実験データは、当該特許では提供されていない。さらに、薬学的成分である御種人参は、非常に高価であり、長期にわたって薬物を使用しなくてはならない患者にとっては非常に重荷となり、金銭的な理由で患者に治療を断念させ得る。この問題を解決するために、本発明者等は、免疫調節における医学的組成物の作用システムを系統的に研究し、偶然にも本発明で記載する党参および黄耆の組成物が他の有用な用途を有することを見出した。例えば、本出願人は、党参および黄耆の組成物が、虚血性心疾患における明確な治療効果、ならびに急性肺障害の予防および治療における明瞭な効果を有することを見出した。また、それらの治療効果は、実験データにより証明された。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、党参および黄耆の伝統的な漢方薬から抽出される薬学的価値を有する組成物に関する。
【0007】
本発明はまた、上記薬学的組成物を調製する方法に関する。
【0008】
本発明の免疫調節薬は、原料として主に党参および黄耆から作製される。
【0009】
党参および黄耆の好ましい比は、0.5:1〜1:0.5の範囲内であり、より好ましくは1:1である。
【0010】
唐当帰(Radix Angelicae Sinensis)、地黄(Radix rehmanniae Praeparata)、何首鳥(Radix Polygoni Multiflori)、白朮(Rhizoma Atractylodis Macrocephalae)、山薬(Rhizoma Dioscoreae)等のような気を強化し、血を補う効果を有する伝統的な漢方薬もまた、本発明の免疫調節薬の原料に含まれ得る。
【0011】
本発明の免疫調節薬を調製する方法は、以下の工程を有する:
a)不純物を、党参および黄耆から除去し、精製した物質を、煎じ薬用に調製された薬草片にする;
b)党参および黄耆をある特定の重量比に従って採取し、脱イオン水で洗浄する;
c)党参および黄耆の質量に従ってある特定量の脱イオン水を段階的に添加し、続いて物質を加熱して、1〜3回抽出して、薬学的抽出物を得る;
d)上記薬学的抽出物を濃縮して、濃縮液体を得る;
e)適切な量のエタノールを添加して、標準的に沈殿させた、液体を濾過し、濾過した液体からエタノールを回収し、濃縮し、乾固させて、党参および黄耆の抽出組成物を得る。
【0012】
工程c)では、水を添加することにより薬物を抽出し、添加した水の量は、最初は8倍量が好ましく、水を1時間煎じて、続いて二回目には6倍量の水を添加して、0.5時間煎じた。
【0013】
工程e)では、エタノールを添加することにより薬物を沈殿させる。エタノールの量は、最初は総量の65%〜80%であり、エタノールの量は、二度目は総量の80%以上であることが好ましかった。
【0014】
本発明の党参の伝統的な漢方薬は、ヒカゲツルニンジン(Codonopsis Pilosula (Franch.) Nannf)の乾燥根であり、黄耆の伝統的な漢方薬は、キバナオウギ(Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge.)またはナイモウオウギ(Astragalus membranaceus) (Fisch.) Bge. Var. mongholicus (Bge.) Hsiao)の乾燥根である。
【0015】
本発明で提供される免疫調節薬1g当たり、0.325g以上の固体が含有される。その主な成分は、糖類(多糖および単糖を含む)、有機酸、サポニン、クマリン抽出物(少量)、フラボングリコシド、アルカロイド、ステロイド、パラフィン炭化水素等である。主な活性構成成分は、多糖、サポニン、クマリン抽出物およびフラボングリコシドである。本発明はまた、免疫調節用の薬物を調製する際での党参および黄耆の組成物の使用に関する。党参および黄耆の組成物は、化学療法、放射線療法または他の腫瘍阻害療法の薬物と一緒に使用することができる。
【0016】
本発明はさらに、虚血性心疾患を治療するための薬物の調製における党参および黄耆の組成物の使用に関する。虚血性心疾患としては、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、心筋炎、ならびに心筋虚血および心筋酸素欠乏症により引き起こされる他の心疾患が挙げられる。虚血性心疾患は、血液粘性の増大に起因した血小板凝集および/または血栓症により引き起こされる心疾患を含む。虚血性心疾患は、虚血性再灌流障害により引き起こされる心疾患を含む。
【0017】
本発明はさらに、過剰な血小板凝集により引き起こされる疾患を予防および治療するための薬物の調製における党参および黄耆の組成物の使用に関する。過剰な血小板凝集により引き起こされる疾患としては、大脳卒中、アテローム性動脈硬化症および末梢血管疾患が挙げられる。
【0018】
本発明はさらに、急性肺障害を治療する薬物の調製における党参および黄耆の組成物の使用に関する。
【0019】
組成物は、注射、錠剤、丸剤、カプセル、顆粒、溶液、懸濁剤、および乳剤の形態であり得る。組成物の有効量の質量範囲は、58〜70mg/kg(体重)/日である。
【0020】
上記使用においては、必要とされる形態を調製するために、希釈剤、賦形剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進薬、界面活性剤、吸着キャリア、潤滑剤等のような1つまたはそれ以上の薬学的に許容可能なキャリアが、本発明の薬物中に添加され得る。
【0021】
実際の要求に応じて、本発明の薬物はさらに、経口液体、錠剤、カプセル、顆粒および注射剤のような多くの形態で調製することができる。調製される薬剤の形態はすべて、薬学分野において慣用の方法に従って調製することができる。
【発明の好ましい実施形態】
【0022】
本発明の免疫調節薬、それらの調製方法およびその使用について、以下の実施形態および実験例を用いてさらに説明する。
【実施例1】
【0023】
党参および黄耆を抽出および分離して、党参および黄耆の組成物を得た。
【0024】
党参および黄耆からそれぞれ不純物を除去して、2つの薬物を、煎じ薬用に調製された薬草片にした。党参および黄耆400グラムをそれぞれ正確に秤量して、脱イオン水で洗浄した。脱イオン水3200mlを添加して、溶液を1時間加熱した。続いて、抽出液体を取り出した。次に、脱イオン水2400mlを添加することにより、抽出液体を得て、1時間加熱した。次に、脱イオン水2400mlを添加することにより抽出液体を得て、0.5時間加熱した。3つの抽出液体を濾過して、混合して、600mlに濃縮し、95%エタノールを添加して、60%のエタノール濃度を得た。24時間沈積させた後、濾液を400mlにまで回収して、続いて95%エタノールを添加して、エタノール濃度を80%に増大させた。沈積させ、濾過して、回収したエタノールを濃縮することにより、党参および黄耆の抽出組成物400グラムが得られた。
【0025】
適切なエタノール量を冷却貯蔵用に本発明の薬物に添加した。薬物はまた、乾燥させた後に室温で貯蔵することもできる。固体は、薬物1グラム当たり0.325g以上であった。その主な成分は、糖類(多糖および単糖を含む)、有機酸、サポニン、クマリン抽出物(少量)、フラボングリコシド、アルカロイド、ステロイド、パラフィン炭化水素等であり、それらの中で、主な活性構成成分は、多糖、サポニン、クマリン抽出物およびフラボングリコシドであった。
【0026】
本発明の上記薬物の有用な効果は、以下の実験例でさらに記載する。これらの実験例には、本発明の免疫調節薬の動物実験および臨床観察実験が含まれる。
【0027】
[実験例1]:
党参および黄耆の組成物の抗腫瘍効果、ならびにMTX(メトトレキサート)の致死効果に対する影響
1.実験薬物
党参および黄耆の組成物は、上述の実施例1で調製した党参および黄耆の抽出組成物であり、当該組成物中には、20ml当たり党参および黄耆の抽出物3.25gが存在した。続いて、それを水浴により2ml〜1mlに濃縮し、当該実験では蒸気により滅菌した。
【0028】
MTXは、Shanghai Second Pharmaceutical Factoryにより製品番号870615で製造された。当該実験ではそれを1mg/mlの水溶液に調製した。
【0029】
2.実験動物:
体重18〜22gを有する雌Kunmingハイブリッドマウスは、the Animal House of China Research Institutionにより提供された。
【0030】
3.実験方法:
1)マウスを無作為に高用量群、低用量群および対照群に分けた。マウスの肉腫180系統を腫瘍系統として使用した。新鮮な腫瘍組織を滅菌条件下で細胞プラズマ溶液にして、1:4の比で希釈した。各マウスの右の脇の下に溶液0.15mlを皮下接種し、24時間後に薬物を投与した。高用量群では、マウス1匹につき党参および黄耆の組成物の濃縮液体0.4mlを投与し、低用量群では、マウス1匹につき組成物の濃縮液体0.2mlを投与し、対照群に関しては、マウス1匹につき生理食塩水0.4mlを投与した。マウスはすべて、14日間毎日腹腔内注射した。15日目に、動物すべてを屠殺した。腫瘍を秤量して、腫瘍重量の阻害率を見出した。t検定方法によりデータを統計学的に解析した。
【0031】
2)マウスを、上述の方法に従って2群に分けて、腫瘍細胞を接種した。接種の3日前に、投与群および対照群それぞれに、ラット1匹につき党参および黄耆の抽出組成物0.2mlならびに生理食塩水0.2mlを連続的に8日間毎日腹腔内注射した。投与の4日目に、マウスに腫瘍細胞を接種して、接種の6時間後にMTXの22mg/kgの水溶液を腹腔内注射した。MTX注射後10日以内に、動物の死亡率を観察し、動物の2群の生存率を比較した。
【0032】
4.実験結果:
マウスの肉腫180系統に対する党参および黄耆の抽出組成物の影響の結果は、表1および表2に見出すことができる。
【表1】

【表2】

【0033】
表1および表2から、本発明者等は、2つの投与群の平均腫瘍重量がともに、投与の14日後に対照群の平均腫瘍重量より小さかったことを認識し得る。抽出物6.50g/kgの群の3つの実験では、腫瘍阻害率は、それぞれ36.7%、55.28%および33.84%であった。データは、統計学的に解析した後、2つの投与群と対照群との間に有意な差を示す。抽出物3.25g/kgの群の3つの実験では、腫瘍阻害率は、それぞれ20.86%、23.40%および19.69%であった。これらのデータは、党参および黄耆の抽出組成物がマウスの肉腫180系統に対して阻害効果を有することを示した。
【0034】
2)MTXの致死効果に対する党参および黄耆の抽出組成物の影響の結果は、表3に見出すことができる。
【表3】

【0035】
表3から、本発明者等は、党参および黄耆の組成物の群の生存率が、対照群の生存率よりも明らかに高かったことを認識し得る。Card検定による試験後の統計学解析においてP<0.05の有意な差が存在した。実験により、党参および黄耆の抽出組成物が、MTXの致死効果に対する防御的毒性減少効果を有すること、すなわち当該組成物が、実験動物の生存期間を延長することができることが提唱された。
【0036】
上述の2つの実験により、党参および黄耆の抽出組成物は、マウスの肉腫180系統に対して阻害効果を有し、MTXの致死効果により引き起こされるマウスの死亡率を減少させることができ、動物の生存期間を延長させることが証明された。
【0037】
[実験例2]:
造血系に対する党参および黄耆の組成物の影響
1.実験薬物
党参および黄耆の組成物の1回の注射は20mlであり、同等に党参および黄耆の抽出物3.25gを含有していた。実験では、各マウスに0.2ml(10ml/kg/体重)を腹腔内注射した。
【0038】
2.実験動物:
体重18〜22gを有するKunmingハイブリッドマウスに、肉腫S180系を接種した。接種の24時間後に、実験群のマウスに党参および黄耆の組成物の注射液体0.2ml(粗製薬剤約0.2gを含有する)を腹腔内注射し、実験が終了するまで対照群のマウスに同等量の水を注射した。実験では、マウス1匹当たりシクロホスファミド1.5mgを2回連続して腹腔内投与した。
【0039】
4.実験結果:
1)マウス髄質細胞の総数に対する党参および黄耆の組成物の注射の影響
【表4】

【0040】
表4における結果は、シクロホスファミドが、マウス髄質細胞の総数を減少させることができることを示した。党参および黄耆の組成物の注射と併用すると、髄質細胞の総数は、対照群よりも多かった。
【0041】
2)マウスの髄質カリオサイトに対する党参および黄耆の組成物の注射の影響
【表5】

【0042】
髄質カリオサイトは、造血機能を有する細胞を示した。表5における結果は、党参および黄耆の組成物の注射と併用した後には、髄質カリオサイト数は、シクロホスファミドのみの対照群よりも明らかに多いことを示した。
【0043】
3)マウスの髄質細胞の容積に対する党参および黄耆の組成物の注射の影響
【表6】

【0044】
髄質細胞の容積は、細胞の成熟度を示した。細胞がより未熟なほど、容積は大きかった。未熟な細胞は主として、造血前駆細胞を表す。表6の結果は、党参および黄耆の組成物の注射と併用した群の平均容積は、シクロホスファミドの対照群の平均容積よりも大きいことを示した(P<0.01)。
【0045】
4)マウスの髄質細胞のヘマトクリットに対する党参および黄耆の組成物の注射の影響
【表7】

【0046】
髄質細胞のヘマトクリット値は、細胞のサイズと数を表した。表7の結果は、党参および黄耆の組成物と併用した群のヘマトクリットが、シクロホスファミドの対照群のヘマトクリットよりも大きいことを示した(P<0.01)。
【0047】
[実験例3]:
党参および黄耆の組成物の注射は、腫瘍に対する協同的阻害効果を有した
この実験の実験薬物および動物は、実験例2と同様であった。
【0048】
実験結果:
腫瘍体に対するシクロホスファミドと併用した党参および黄耆の組成物の注射の影響
党参および黄耆の組成物の注射は、化学療法により引き起こされるマウス髄質の阻害効果を緩和することができた。この実験では、組成物が抗癌効果を破壊するかどうかが試験された。
【表8】

【0049】
表8の結果は、党参および黄耆の免疫調節薬が、化学療法の抗癌効果を破壊しないことを示した。対比して、化学療法とともに組成物を使用した場合の腫瘍阻害の比率は、化学療法単独を使用した場合よりもかなり高かった。党参および黄耆の組成物群1では、用量は、ヒトに関する用量の4倍程度高かった。党参および黄耆の組成物群2では、用量は、ヒトに関する用量の2倍程度高かった。
【0050】
[実験例4]:
麻酔したイヌの心筋虚血、心筋梗塞、冠状動脈の関連血流、心筋酸素消費および生化学指数に対する党参および黄耆の組成物の影響
体重14.02±1.90kgを有する30匹の健常な成体イヌ(雄および雌)は、Beijing TONGLI Experimental Animal Breeding Factoryにより提供された(ライセンス番号010,2000)。
【0051】
実験薬物:
党参および黄耆の組成物の濃縮液体は、5ml/片、粗製薬剤2g/mlであった。1mg/片のヘルベッサー注射(ジルチアゼム塩酸塩)は、Tianjin TIANBIAN Pharmacy Co., Ltd.(B.N.0003003)により製造された。0.9%塩化ナトリウム注射は、Beijing Double-crane Pharmaceutical Co., Ltd.(B.N.000320332)により製造された。丹参葉(Radix Salviae Miltiorrhizae)の注射は、10ml/片、1.5g/mlであり、Zhengda Qingchunbao Pharmacy Co. Ltd.(Hangzhou, Zhejiang Province)(B.N.0003132)により製造された。ニトロブルーテトラゾール(N−BT)は、the Medicinal Materials Supply Station of the Military Medical Science College(B.N.971120)により製造された。エンドセリン(ET)ラジオイムノ薬物キットは、Beijing FURUI Bioengineering Co.(B.N.0102)により製造された。トロンボキサンB(TXB)および6−ケト−プロスタグランジンF1α(6−ケト−PGF1α)ラジオイムノ薬物キットは、Beijing FURUI Bioengineering Co.(B.N.0102)により製造された。
【0052】
実験群:
(1)ブランク対照群、3ml/kg、n=5
(2)ヘルベッサー注射群、0.5ml/kg、n=5
(3)丹参葉注射群、0.6g/kg、n=5
(4)党参および黄耆の組成物群、0.6g/kg、n=5
(5)党参および黄耆の組成物群、1.2g/kg、n=5
(6)党参および黄耆の組成物群、2.4g/kg、n=5。
【0053】
実験薬物は、生理食塩水を用いて同容積(50ml)に調製し、コンピュータミニムシリンジポンプ(タイプAJ−5803、Shanghai)を用いて5ml/分の速度で大腿部静脈を介して注射した。
【0054】
実験方法:
動物をペントバルビタールナトリウムで麻酔し(30mg/kg、静脈内)、気管内挿管後に電気レスピレータと接続させた。第四左肋骨の位置で胸部を開き、心臓を露出させた。心膜を切り取って、心膜床を作製した。冠状動脈の左旋性岐を分離して、電磁気流量計(タイプMF−1100)のプローブをそこに配置させて、冠状動脈の血流を測定した。冠状動脈の前方下行性分岐の中央部分を分離して、結紮用にスレッドをそこに介して設置し、実験急性心筋層心筋虚血のモデルを作製した。多点を固定した心外膜電極を縫合して、マルチランニング生理学的レコーダ(タイプRM−6100、Japan Photoelectricity)と接続して、心外膜の心電図を表示および記録した<1>。冠状動脈を15分間結紮して、薬物投与前の対照値として記録した。実験薬物または生理食塩水を、大腿部静脈を介して注射した。薬物投与の5分、15分、30分、45分、60分、90分、120分および180分後に、心外膜心電図の30個の測定点を記録した。2mVを上回る上昇S−T切片を判断基準として採用して、心筋虚血の度合い(上昇S−T切片の総mv数Σ−ST)および心筋虚血の範囲(上昇S−T切片の総点数N−ST)を算出した。頸動脈を介して冠状静脈洞に挿管した後、血中酸素装置(タイプAVL912、Swiss)により冠状静脈の血中酸素含有量を測定する一方で、虚血前、虚血の15分(投与前)、薬物投与の15分、30分、60分、120分および180分後に血液試料を採取した。続いて、動物の頸動脈に挿管して、動脈の血中酸素含有量を測定した。冠状動脈の血流と一緒に算出して、心筋酸素消費を測定した:
心筋酸素消費=(動脈の血中酸素含有量−冠状静脈の血中酸素含有量)×冠状動脈の血流/100。
【0055】
血液試料を上述の時点で採取し、続いて完全自動生化学分析機(タイプRA−1000、USA)を用いて血清クレアチンリン酸キナーゼ(CK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定した。また、ラジオイムノ法により、かつ完全自動γ計数機(タイプFT−630G、Beijing)を用いてET、TXB2および6−ケト−PGFを測定した。
【0056】
記録が薬物投与の180分後に終了すると、心臓を直ちに取り出し、生理食塩水で洗浄して、全体として秤量した。心臓の縫合ラインの下で、冠状溝に並行して、心室を5片に均等に切断した。続いて、当該片をN−BT溶液中に入れて、室温で15分間染色した。心筋層の各片の側方側上の梗塞面積(N−BT非染色面積)および非梗塞面積(N−BT染色面積)を、マルチメディアカラー病理学イメージ解析システム(タイプMPIAS−500、Beijing)を用いて測定した。心筋層の各片の面積、心室の総面積および梗塞切片の面積を算出した。心室に対する梗塞面積の割合および心臓全体に対する梗塞面積の割合を算出した。
【0057】
実験結果を統計学的に処理して、その有意性をt−検定で試験した。
【0058】
実験結果:
イヌの心筋虚血の度合い(Σ−ST)(心外膜の心電図により記録される)に対する影響
組成物は、イヌの心筋虚血の度合い(Σ−ST)に対する影響を有していた。十二指腸を介して薬物を投与した後、党参および黄耆の組成物の粗製薬剤1.2g/kg群および粗製薬剤2.4g/kg群はともに、心筋虚血の度合い(Σ−ST)の減少を示した。また、粗製薬剤6g/kg群の効果は、粗製薬剤3g/kg群の効果よりも良好であった。党参および黄耆の組成物の粗製薬剤2.4g/kg群のΣ−STは、薬剤投与前では293.80±97.91mVであった。その効果は、薬物投与後5分の時点で現れた。15分から180分まで、心筋虚血の度合いは、徐々に減少した。180分で、Σ−STは、151.40±59.54mVであり、45.70±26.23%の減少が見られた。薬物投与前のものおよび対照群と比較して、それは有意な差(P<0.05およびP<0.01)を示した。組成物の粗製薬剤2.4g/kg群のΣ−STは、薬物投与の30分後には減少し始め、薬物効果は、薬物投与が長期にわたるにつれ増大した。180分では、動物のΣ−STは、366.80±144.99mVから212.40±92.77mVに下降し、40.00±18.60%の減少が見られた。薬物投与前のものおよび対照群と比較して、それは有意な差(P<0.05およびP<0.01)を示した。
【0059】
イヌの心筋虚血の範囲(N−ST)に対する影響
生理食塩水を注射した場合、対照群のN−STは、はっきりとは変化しなかった。党参および黄耆の組成物の粗製薬剤2.4g/kg群では、心筋虚血の範囲(N−ST)を減少させる明らかな効果が見られた。薬剤投与後120分および180分では、N−STは、29.40±0.89測定点から26.60±2.70測定点および26.20±2.28測定点に下降し、それぞれ9.62±7.52%および10.33±6.51%の減少が見られた。薬物投与前のものおよび対照群と比較して、有意な差(P<0.05)が見られた。
【0060】
上述の結果により、党参および黄耆の組成物は、イヌの実験急性心筋虚血に対して有意な改善効果を有することが示された。当該組成物は、心筋虚血の度合い(Σ−ST)を緩和し、かつ心筋虚血の範囲(N−ST)を減少させることができる。
【0061】
イヌの急性心筋梗塞の範囲に対する影響(N−BT染色測定)表9を参照
【表9】

【0062】
イヌの急性心筋梗塞の範囲に対する影響(N−BT染色測定)は、表9に見ることができる。心筋梗塞の範囲は、定量的な組織学のN−BT染色方法により示される。生理食塩水の対照群の心筋梗塞面積は、それぞれ心臓および心室の6.94±1.20%および21.53±2.98%を占めた。党参および黄耆の組成物の3つの群は、心筋梗塞面積を減少させ、ここで粗製薬物2.4g/kg群の心筋梗塞面積は、それぞれ心臓および心室の3.65±0.85%および10.43±2.14%を占め、生理食塩水の対照群と比較してそれぞれ47.40%および51.55%の減少が見られた。生理食塩水の対照群と比較して非常に明らかな差が見られた(平均してP<0.001)。また、ヘルベッサー注射群の心臓および心室の心筋梗塞の割合もまた明らかに減少した。
【0063】
イヌの実験急性心筋虚血の冠状動脈の血流に対する影響
麻酔イヌの冠状動脈を縫合して、心筋虚血を誘発させた後、冠状動脈の血流を短期間で代償的に15%増加させた。ヘルベッサーならびに党参および黄耆の組成物を投与した後に、冠状動脈の血流を増加させる明白な効果が見られた。薬物投与後の粗製薬物2.4g/kg群では、冠状動脈の血流は、15〜180分の間で増加し、180分では23.13±23.22%の増加が見られた。生理食塩水の群と比較して、有意な差(P<0.05)が見られた。
【0064】
イヌの実験急性心筋虚血の心筋層動脈/静脈の血中酸素含有量および心筋酸素消費に対する影響
生理食塩水の対照群では、薬物投与前後で、動脈/冠状静脈洞の血中酸素含有量および心筋酸素消費に明らかな変化は見られなかった。ヘルベッサーならびに党参および黄耆の組成物の群では、静脈洞の血中酸素含有量を増加させる効果動向が見られた。しかしながら、そこでは統計学的意義は見られなかった。党参および黄耆の組成物の3つの用量群では心筋酸素消費の明らかな変化は見られなかった。6−ケト−PGF1を投与した15分後、心筋酸素消費は明らかに減少した。
【0065】
イヌの実験急性心筋虚血の血液生化学指数に対する影響
1.イヌの血清クレアチンキナーゼ(CK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性に対する影響
心筋虚血の前では、血清CKおよびLDHの含有量は、それぞれ491.70±201.29u/Lおよび86.73±30.01u/L(n=25)であった。冠状動脈を縫合して、急性心筋虚血を誘発させた後では、血液中のCKおよびLDHの含有量は、それぞれ669.37±239.09u/Lおよび100.30±31.29u/Lのレベルに明らかに増加した。心筋虚血前のものと比較して、心筋虚血後のCKおよびLDH含有量は、それぞれ43.98%および25.55%分増加した。CKおよびLDHの活性は、長期にわたる縫合に伴ってさらに増加した。ヘルベッサー群ならびに党参および黄耆の組成物の粗製薬物2.4g/kg群では、心筋虚血および心筋梗塞により引き起こされるCKおよびLDHの増加していく活性が有意に阻害された。生理食塩水の群と比較して有意な差(P<0.05)が見られた。
【0066】
2.イヌの血漿中のエンドセリン(ET)、トロンボキサンB2(TXB2)および6−ケト−プロスタグランジンFIa(6−ケト−PGF1a)の活性に対する影響
イヌの冠状動脈を連続的に縫合するプロセスでは、血漿中のETおよびTXB2の含有量は明らかに増加し、6−ケト−PGFIaおよび6−ケト−PGFIa/TXB2の比は明らかに減少した。ヘルベッサーならびに党参および黄耆の組成物は、心筋虚血および心筋梗塞により引きこされるET活性に対して明らかな阻害効果を有していた。生理食塩水の群と比較して、有意な差が見られた。また、同じ時間で、それは、6−ケト−PGFIaおよび6−ケト−PGFIa/TXBの比を明らかに増加させることができる。
【0067】
この実験では、心筋虚血の範囲および度合いを、心外膜心電図を用いて測定および記録し、心筋梗塞の面積は、N−BT染色方法を用いて測定し、冠状動脈の血流、心筋酸素消費の変化、血清のCKおよびLDH活性、ならびに血漿のET、TXB2および6−ケト−PGFIa活性もまた同じ時間に測定した。同様に、イヌの実験急性心筋虚血、心筋梗塞および関連指数に対する、消化管を介して投与した党参および黄耆の組成物の影響も研究した。
【0068】
実験結果により、党参および黄耆の組成物がイヌの急性心筋虚血および心筋梗塞の改善に対して明らかな効果を有し、心外膜心電図により測定される心筋虚血の度合い(Σ−ST)を緩和し、かつN−BT染色方法により表示される梗塞面積を減少させることが証明された。
【0069】
心筋虚血および心筋梗塞が、種々の病原体により引き起こされる冠状動脈の局所的な狭窄または閉塞に起因して出現する場合、他の冠状動脈の分岐は代償的に拡大および開放して、心筋虚血および心筋梗塞を緩和することができる。広い面積の心筋虚血および心筋梗塞が出現し、代償的容量が無用となった場合、心筋壊死および逆行不可能な障害が出現し、生命の脅威となる。党参および黄耆の組成物は、心筋虚血および心筋梗塞が出現した場合に、冠状動脈の血流を有意に増加させることができることが実験で観察された。それは、外側枝循環の開放および樹立を促進し、同時に心筋層の酸素供給を増加させることが示された。
【0070】
クレアチンキナーゼ(CK)は、細胞質中に、特に心筋細胞中で広く存在していた。心筋細胞が負傷すると、CKはあふれて、血清中でその活性を増加させた。血清中のCK活性が高いほど、心筋障害はより重度であることが観察された。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は、心筋梗塞が出現すると、組織球から体液中へと大いに放出される。冠状静脈洞の血液中のその活性もまた、心筋障害の度合いを示した。イヌの冠状動脈が連続的に縫合されると、CKおよびLDH活性は増加し続けることが実験で観察された。党参および黄耆の組成物は、イヌの実験心筋障害の血清中でCKおよびLDHのオーバーフローを部分的に防止し、かつCKおよびLDH活性を減少させることができることが実験で証明された。
【0071】
プロスタサイクリン(PGI)、エンドセリン(ET)およびトロンボキサンA(TXA)はすべて、内皮細胞から排出される血管活性物質であり、そこでPGIは、血管運動剤であり、ETおよびTXAは血管収縮剤であった。実験では、EKおよびPGIの最終代謝産物6−ケト−PGFIaおよびTXAの代謝産物TXBのような活性物質を測定して、冠状動脈を連続的に縫合することにより引き起こされる心筋虚血および心筋梗塞のプロセスの変化、ならびに薬物の影響をモニタリングした。結果により、党参および黄耆の組成物が、心筋虚血および心筋梗塞に起因した増加していくTXB活性に対する明らかな阻害効果を有し、党参および黄耆の組成物はまた、同時に6−ケト−PGF1a血漿レベルを高めることが示された。
【0072】
上述の結果は、党参および黄耆の組成物が、急性心筋虚血および心筋梗塞の病理学的症状を明らかに改善し、心筋虚血の度合いを緩和し、かつ心筋梗塞の面積を減少させることができることを示している。
【0073】
[実験例5]:
虚血再灌流により引き起こされる心筋梗塞に対する党参および黄耆の組成物の影響
体重260〜280gを有する56匹の雄のWistarマウスは、品質証明書第01−3056号とともにthe Animal Department of Beijing General Medical Courses Universityにより提供された。
【0074】
実験薬物:
党参および黄耆の組成物は、5ml/片、粗製薬物2g/mlであった。ヘルベッサー注射(注射用のジルチアゼム塩酸塩)は、10mg/片であり、Tianjin Tianbian Pharmaceutical Co., Ltd.により製造された。丹参葉注射は、10ml/片、1.5g/mlであり、QINGCHUNBAO Pharmaceutical Co.,Ltd. (Hangzhou, Znejiang Province)(B.N.:0003132)により製造された。ジルチアゼム塩酸塩は、the Medicinal Materials Supply Station of the PLA Academy of Military Medical Sciences(B.N.971120)により提供された。
【0075】
実験方法:
動物を無作為に6つの群に分けた:擬似手術群(血清を正常対照として採取した)、1.0mg/kgモデル群、ヘルベッサー群、0.6g/kg丹参葉注射群、党参および黄耆の組成物の粗製薬剤8g/kg群、粗製薬剤4g/kg群、粗製薬剤2g/kg群。薬物を、生理食塩水を用いて所望の濃度に希釈した。投与した薬物の容積は、4ml/kgであった。また、薬物は、左の大腿部静脈を介して投与した。
【0076】
動物を、腹腔を介したペントバルビタールナトリウムで麻酔し(45mg/kg)、バックストロークの位置に固定した。動物を心電図のStandard LeadII(タイプECG−6511、CardiofaxX, Shanghai)により観察した。気管を切り開いて、気管カニューレを挿入し、気管を人工呼吸用レスピロメータ(タイプSC−3、Shanghai)(32/分、1:3の呼吸比を用いて)と接続させた。胸部を開いた後に、第3〜第5肋骨を切り出して、心膜を開いて、心臓を露出させた。縫合糸(縫合糸No.0)を縫合のために冠状動脈の左前下行性岐の根元に通した。縫合糸を10分間安定に通した後に、プラスチック凹パイプを血管に並行して配置させ、続いてそれを縫合した(STおよびT波の変化のないものを排除する)。実験薬物を投与した。40分後に、縫合糸を溝に沿って切り出し、前下行性枝の再灌流を誘発した。続いて、胸部を縫って、個々の呼吸を回復させた。
【0077】
縫合の2時間後に、腹側大動脈から血液試料を採取して、血清SODおよびMDA含有量を測定した。心臓縫合の下で、心臓を5つの片にスライスして、N−BTにより染色した。マルチメディア病理学カラーイメージ解析システム(Multimedia Pathological Color Image Analyzing System)(タイプMPIAS−500、Beijing)を用いて、正常な心筋層および心筋梗塞の面積を算出した。心筋梗塞の度合いを観察した。また、実験結果を統計学的に解析した(t−検定)。
【0078】
実験結果:
心筋梗塞の度合いに対する影響は、表10に見出すことができる。
【表10】

【0079】
実験結果により、梗塞面積/心室および梗塞面積/心臓の割合は、モデル群においてそれぞれ31.5%および25.3%であることが証明された。梗塞面積、梗塞面積の重量ならびに梗塞面積/心室および梗塞面積/心臓の割合は、ヘルベッサー注射および丹参葉注射の対照薬物群では明らかに有意に減少した。対照群と薬物群との間ではこれらの指数に大きな差が存在した(P<0.01)。党参および黄耆の組成物の粗製薬剤8gおよび4g/kg群に関して、梗塞面積は減少し、梗塞面積の重量は緩和され、梗塞面積/心室および梗塞面積/心臓の割合は減少した。対照群と比較して、有意な差が見られた(P<0.01)。党参および黄耆の組成物の粗製薬剤2g/kg群に関して、梗塞面積は減少し、梗塞面積の重量は緩和され、梗塞面積/心室および梗塞面積/心臓の割合は減少した。同様に対照群と比べて有意な差が見られた(P<0.05.P<0.01)。
【0080】
血清中のSODおよびMDAの含有量に対する影響は、表11に見出すことができる。
【表11】

【0081】
実験結果により、SOD値が明らかに減少する一方で、MDA値は明らかに増加することが証明された。モデル群と擬似手術群との間には有意な差が存在した(P<0.05、P<0.01)。陽性対照薬物ヘルベッサーに関して、SOD値は増加し、MDA値は減少した。丹参葉注射群では、SOD値は明らかに増加した。これらはすべて、モデル群と比較して有意な差を有していた(P<0.05〜P<0.01)。党参および黄耆の組成物の8.0g/kgおよび4.0g/kg群では、MDA値は明らかに減少した。同様に、モデル群と比較して顕著な差が見られた(P<0.05〜P<0.01)。
【0082】
ある特定の期間の心筋虚血により心筋層が傷付いた後に、再灌流は虚血障害を悪化させ得て、心筋梗塞を導き得ることが認められた。
【0083】
薬物の効果は、ラットの心筋虚血再灌流障害のモデルを用いた実験で観察された。虚血再灌流障害は、心臓細胞膜の障害を導き、モデル群の血清のSOD活性は明らかに減少し、MDA含有量は明らかに増加することが観察された。上述の症状は、酸素フリーラジカルの産生が心筋障害をさらに悪化し得ることを間接的に示した。
【0084】
党参および黄耆の組成物は、心筋梗塞の面積を明らかに減少させ、梗塞面積の重量を明らかに減少させ、ヘルベッサーおよび丹参葉注射の対照薬物と同じ効果を有し得る。党参および黄耆の組成物は、MDA含有量を著しく減少させ、心筋虚血再灌流障害を防御することができる。
【0085】
[実験例6]:
イヌの心臓血行力学および心臓酸素消費に対する党参および黄耆の組成物の影響
体重14.10±0.22kgを有する30匹の健常な成体イヌ(雄雌)は、Beijing TONGLI Experimental Animal Farmにより提供された(動物ライセンス番号第010,2000号を伴って)。
【0086】
実験薬物
党参および黄耆の組成物は、5ml/片および粗製薬剤2g/mlであった。ヘルベッサー注射(注射用ジルチアゼム塩酸塩)は、10mg/片であり、Tianjin Tianbian Pharmaceutical Co., Ltd.(B.N:0003003)により製造された。0.9%塩化ナトリウム注射は、Beijing Double-crane Pharmaceutical Co., Ltd.(B.N:000320332)により製造された。丹参葉注射は、10ml/片、1.5g/mlであり、QINGCHUNBAO Pharmaceutical Co. Ltd.(B.N:0003132)(Hangzhou, Zhejiang Province)により製造された。
【0087】
実験群:
(1)ブランク対照群、3ml/kgの生理食塩水、n=5
(2)ヘルベッサー注射群、0.5ml/kg、n=5
(3)丹参葉注射群、0.6g/kg、n=5
(4)党参および黄耆の組成物群、0.6g/kg、n=5
(5)党参および黄耆の組成物群、1.2g/kg、n=5
(6)党参および黄耆の組成物群、2.4g/kg、n=5。
【0088】
実験薬物を生理食塩水と同量(50ml)に調製し、コンピュータミニムシリンジポンプ(タイプAJ−5803、Shanghai)で5ml/分の速度で大腿静脈を介して注入した。
【0089】
実験方法:
動物をペントバルビタールナトリウムで静脈内麻酔し(30mg/kg、静脈内)、気管内挿管後に電気レスピレータと接続させた。第四左肋骨の位置で胸部を開き、心臓を露出させた。心膜を切り取って、心膜床を作製した。冠状動脈の左旋性岐および大動脈の根元を分離して、電磁気流量計(タイプMF−1100)のプローブをそこに配置させて、冠状動脈の血流および心拍出量を測定した。左心室の先端を挿管して、圧力エネルギートランスデューサ(MPU−0.5A)に接続した。キャリア増幅器(AG−601G)を用いて左心室の内部圧力を測定し、示差計(ED−601G)を用いて左心室の内部圧力の最大上昇率(dp/dtmax)を測定した。動物に、外頸静脈を介して冠状静脈洞へ挿管し、また頚動脈を介して挿管した。血液酸素装置(タイプAVL912、Swiss)を用いて冠状静脈洞および動脈の血液酸素含有量を測定して、心筋酸素消費を算出した。続いて、大腿動脈を挿管して、動脈の血圧を測定した。また次に、心電図のStandard Limb Lead II、心拍数および心電図の関連パラメータを算出した。式を用いて、血行力学の他の指数を算出した:心臓一回拍出量、酸素消費指数、心臓指数、冠状動脈の抵抗、全末梢血管抵抗および酸素利用率等。上述の指数はすべて、マルチランニング生理学的レコーダ(タイプRM−6000、Japan Photoelectricity)により同時に記録された。
【0090】
操作および観察される指数が安定した後、薬物投与前の値を記録して、続いて実験薬物を投与した。投与プロセスの途中の5分、薬物投与の直後、薬物投与の1分後、3分後、5分後、10分後、15分後、30分後および60分後に、値を記録した。測定した指数および誘導されるパラメータはすべて、統計学的に処理された。薬物投与前後の種々の期間内の実際の測定値の自己比較を行った。t−検定を用いて、変化した比率の割合を比較して、群間の有意性を示した。
【0091】
実験結果:
イヌの動脈血圧、心拍数および心電図に対する影響
ヘルベッサー注射は、投与した後に、血圧を下げ、心拍数を落とす明らかな効果を有していた。党参および黄耆の組成物の粗製薬物用量1.2gおよび2.4g群では、動脈血圧は、投与の途中でおよび投与後の短期間内(1分)でともに下がった。党参および黄耆の組成物はまた、心拍数を落とした。動物の心電図StandardIIのPR波、QRS波、QT波およびT波のパラメータは、はっきりとは変化しなかった。
【0092】
イヌの冠状動脈の血流および抵抗に対する影響
薬物を投与する前後で、生理食塩水の群では、冠状動脈の血流および抵抗には明らかな変化は見られなかった。党参および黄耆の組成物の粗製薬剤0.6g群では、薬物投与後に、冠状動脈の血流が増加し、組成物の他の2つの群では明らかな効果は見られなかった。党参および黄耆の組成物の3つの用量群では、冠状動脈の抵抗が減少した。また、薬物投与のプロセスにおいて、冠状動脈の抵抗は約15%低減し、連続的に60分間この低い状態を維持した。カルシウム拮抗薬であるヘルベッサー注射もまた、冠状動脈の血流および抵抗を著しく増加させた。
【0093】
左心室の収縮力および作業に対する影響
薬物投与後に、実験群すべてにおいて、動物の左心室の収縮力および作業における明らかな差は見られなかった。
【0094】
イヌの左心室における内部圧力および内部圧力の最大上行速度に対する影響
党参および黄耆の組成物の3つの用量群では、対照群と比較して、左心室における内部圧力および内部圧力の最大上行速度(dp/dtmax)における明らかな差は見られなかった。
【0095】
イヌの心拍出量、心臓一回拍出量および全末梢血管抵抗に対する影響
党参および黄耆の組成物の粗製薬剤2.4g/kg群では、心拍出量は徐々に増加し、投与の5分後に最も顕著な効果が出現した。投与前の指数および生理食塩水の群の指数と比較して、有意な差が見られた(P<0.05〜0.01)。また、同時に、外部末梢の抵抗は明らかに減少した。6−ケト−PGFIは、心臓一回拍出量を著しく増加させ、外部末梢の抵抗を減少させた。
【0096】
イヌの冠状動脈および静脈の血液酸素含有量に対する影響
党参および黄耆の組成物の粗製薬剤2.4g/kg群では、動物冠状静脈洞の血液酸素含有量は、投与後5〜15分の間に明らかに増加し、投与前のものおよび生理食塩水の群のものと有意な差が見られた(P<0.05〜0.001)。
【0097】
イヌの心筋層の酸素消費、酸素消費指数および酸素利用率に対する影響
党参および黄耆の組成物の群では、心筋層の酸素消費および酸素利用率は明らかには変化しなかった。心筋層の酸素消費指数は、薬物投与のプロセス中でおよび薬物投与後の短期間で、明らかに減少した。この実験では、標準的に麻酔をしたイヌの心臓血行力学および心筋酸素消費に対する党参および黄耆の組成物の影響を観察した。陽性対照薬物としてヘルベッサー注射を用いて、実験方法および得られた指数の信頼性ならびに感度を証明した。実験結果では、党参および黄耆の組成物が冠状動脈を拡張させて、冠状静脈洞の血液酸素含有量を増加させて、心筋層の血液および酸素供給を改善する効果を有していた。同時に、組成物は、左心室の作業を改善し、心拍出量を増加させ、心臓血管コンプライアンスを調節した。組成物は、心臓血管系においてある特定の調節の役割および改善の役割を果たし、虚血心疾患の臨床的治療に関して実験上の証拠を提供した。
【0098】
[実験例7]:
ラットのin vitroでの血栓症および血液粘性に対する党参および黄耆の組成物の影響
実験薬物:
党参および黄耆の組成物:5ml/片;粗製薬剤2g/ml、丹参葉注射:10ml/片、1.5g/ml、QINGCHUBAO Pharmaceutical Co., Ltd.(Hangzhou, Zhejiang Province)(B.N.:0003132)により製造;注射用アスピリン−DL−リシン(0.9g/ボトル、アスピリン0.5gに等しい):LAIBILIN Pharmaceutical Co., Ltd.(Bengbu, Anhui Province)(B.N.:000116)により製造;0.9%塩化ナトリウム注射:Beijing Double-crane Pharmaceutical Co., Ltd.(B.N.:000320332)により製造。
【0099】
体重248.9±16.9gを有する60匹の健常な雄ラットは、医療動物の証明書第01−3067号とともにthe Medical Experimental Animal Center of Chinese Academy of traditional Chinese medicineにより提供された。in vitro血栓症装置タイプSDZ−A1は、Electronic Instrument Factory of Wuxi(Jiangsu Province)により製造された。血液粘度計(タイプLG−R−20)は、Beijing SHIDI Scientific Instrument Co.により製造された。
【0100】
実験方法:
60匹のラットを無作為に6つの群に分けた(1群当たり10匹):
(1)対照群(0.9%塩化ナトリウム注射、4ml/Kg)、
(2)党参および黄耆の組成物群の高用量(粗製薬剤8g/kg)、
(3)党参および黄耆の組成物群の中用量(粗製薬剤4g/kg)、
(4)党参および黄耆の組成物群の低用量(粗製薬剤2g/kg)、
(5)丹参葉注射群(粗製薬剤1.6g/kg)、
(6)注射用アスピリン−DL−リシン群(90mg/kg)。
【0101】
動物群すべてに、連続して3日間、一日に一回、4ml/kgの上記用量で尾静脈を介して薬物を静脈内注射をした。最終注射の30分後に、動物をペントバルビタールナトリウム(30.0mg/kg)で麻酔した。続いて、in vitroでの血栓症測定用に、血液2mlを腹大動脈から抜き取り、血液粘度の測定用に血液3ml(ヘパリン処理した血液)を抜き取った。
【0102】
in vitroでの血栓症の測定:in vitroでのChandler法に従って、血液を直ちに充填して、1/2リング(1.8ml)未満の容積を有する回転リング中に密封した。血栓症装置上に配置させて、10分間回転させた(実験温度37℃を使用)。続いて、血栓を溢れ出させて、生理食塩水で洗浄した。長さを測定し、湿潤量を秤量した。血栓棒を3時間80℃のオーブン中に入れた。重量が安定してきた後にそれを秤量した。
【0103】
血液粘度の測定:血液0.8mlを3mlの血液試料(ヘパリン処理したもの)から採取して、全血粘度を測定した。試料の残りを、650×gで10分間遠心分離した。上清0.8mlを採取して、血液血漿粘度を測定した。
【0104】
実験結果:
in vitroでの血栓症に対する影響は、表12に見出すことができる。
【表12】

【0105】
表12に示されるように、対照群のものと比較して、党参および黄耆の組成物の高用量群では、血栓の長さは明らかに短くなり(P<0.001)、血栓の湿潤重量および乾燥重量は明らかに軽くなり(P<0.01)、党参および黄耆の組成物の中用量群では、血栓の長さは明らかに短くなり(P<0.01)、血栓の湿潤重量および乾燥重量は軽くなる傾向が見られ、低用量群の血栓の長さならびに湿潤重量および乾燥重量は、有意な差を示さなかった。対照群と比較して、丹参葉注射の群では、血栓の長さは明らかに短くなり(P<0.01)、血栓の湿潤重量および乾燥重量は明らかに軽くなり(P<0.05)、アスピリン−DL−リシン群では、血栓の長さは明らかに短くなり(P<0.001)、血栓の湿潤重量および乾燥重量は明らかに軽くなった(P<0.01〜0.001)。
【0106】
血液粘度に対する影響は、表13に見出すことができる。
【表13】

【0107】
表13に示されるように、党参および黄耆の組成物の高用量群では、100S−1、30S−1および5S−1のせん断速度下でのラットの全血粘度は、対照群のものよりも明らかに低く(P<0.05)、また200S−1のせん断速度下でも下降傾向が見られた。党参および黄耆の組成物の中用量群では、ラットの全血粘度は、対照群の全血粘度と比較して、100S−1のせん断速度下で下降傾向が見られ、高せん断および低せん断下では有意な差は見られなかった。党参および黄耆の組成物の低用量群では、すべてのせん断速度下での全血粘度が、対照群の全血粘度と比較して有意な差は見られなかった。丹参葉注射の群では、すべてのせん断速度下での全血粘度は、対照群の全血粘度よりも明らかに低かった(P<0.05〜0.01)。注射用アスピリン−DL−リシン群では、すべてのせん断速度下でのラットの全血粘度が、対照群の全血粘度よりも低かった。対照群と比較して、薬物投与群すべての血液血清粘度には有意な差が見られなかった。
【0108】
ラットへ薬物を3日間連続して静脈内注射することにより、粗製薬剤8g/kgの用量を有する党参および黄耆の組成物は、血栓の長さを著しく短くし(P<0.001)、血栓の湿潤重量および乾燥重量を軽くし(P<0.01)、100S−1、30S−1および5S−1のせん断速度下で全血粘度を減少させる(P<0.05)ことが上述の結果で示された。党参および黄耆の組成物は、血栓を阻害し、かつ血液粘度を減少させる効果を有することが示唆された。
【0109】
[実験例8]:
ウサギの血小板凝集に対する党参および黄耆の組成物の影響
実験薬物:
党参および黄耆の組成物は、5ml/片および粗製薬剤2g/mlであった。丹参葉注射は、10ml/片、1.5g/mlであり、QINGCHUBAO Pharmaceutical Co., Ltd.(Hangzhou, Zhejiang Province)(B.N.:0003132)により製造された。0.9%塩化ナトリウム注射はBeijing Double-crane Pharmaceutical Co., Ltd.(B.N.:000320332)により製造された。注射用アスピリン−DL−リシン(0.9g/ボトル、アスピリン0.5gに等しい)は、LAIBILIN Pharmaceutical Co., Ltd.(Bengbu, Anhui Province)(B.N.:000116)により製造された。アデノシン二リン酸(ADP)二ナトリウム塩は、Shanghai Biochemistry Research Institute(B.N.:9209258)により製造され、生理食塩水を用いて、1.0mM/L溶液に調製され、4℃で保管した。アラキドン酸(AA)は、Fluka AGにより製造され、1.0mM/L NaOHを用いて5.0g/Lの濃度のナトリウム塩に一時的に調製した。コラーゲン(100μg/ml)は、KOKEN Co.により製造された。
【0110】
実験動物:
体重2.75±0.15kgを有する48匹の健常な雄日本垂れ耳白色ウサギは、資格番号004(1999年)とともにthe Experimental Animals Center of China Veterinary Medicaments Supervision Instituteにより提供された。血小板凝集装置(タイプBS634)は、Beijing Biochemical Instrument Factoryにより製造された。
【0111】
実験方法:
投与前に、耳の動脈に穴をあけ、血液を採取して、血小板凝集率を測定した。血小板凝集レベルおよび体重にしたがって、48匹のウサギを無作為に6つの群に分けた(1群当たりウサギ8匹)。
【0112】
(1)対照群(0.9%塩化ナトリウム注射、2.5ml/Kg)、
(2)党参および黄耆の組成物の高用量群(粗製薬剤5g/kg)、
(3)党参および黄耆の組成物の中用量群(粗製薬剤2.5g/kg)、
(4)党参および黄耆の組成物の低用量群(粗製薬剤1.25g/kg)、
(5)丹参葉注射群(粗製薬剤1g/kg)、
(6)注射用アスピリン−DL−リシン群(45mg/kg)。
【0113】
連続して3日間、1日につき1回、投与群には、薬物を上記投与量で耳の縁を介して静脈内投与し、対照群には等しい容積の0.9%塩化ナトリウムを注射した。最終薬物投与後に、耳の動脈に穴をあけ、血液試料を採取し、血小板凝集率を測定した。
【0114】
血小板凝集率の測定方法
耳の動脈にシリコン処理したインジェクターで穴をあけ、血液試料を採取し、それをシトロンナトリウム溶液で抗凝固処理した(血液:抗凝固剤=9:1)。血液試料溶液を200×gで8分間遠心分離し、上清、すなわち多血小板血漿(PRP)を取り出した。溶液の残部を2200×gで10分間遠心分離して、最上部の透明部分、すなわち乏血小板血漿(PPP)を取り出した。PRP中の血小板の計数は約4.0×10/mmであった。Bornの比濁法に従って、PRP200μlおよび小さな磁気スティックの入った濁度チューブを血小板凝集装置に置いて、37℃で1分間維持した。PPPを規格化した後に、攪拌しながら誘導物質を添加して、凝集を誘導した。誘導物質の最終濃度は、47.6μM/L(ADP)、782.0μM/L(AA)、および4.8mg/ml(コラーゲン)である。血小板凝集に対する薬物の影響は、凝集曲線により分析し、最大凝集率が、装置により印刷された。最大凝集率に関する計算式は、下記の通りであった:
最大凝集率=(PRP凝集後の透過率−PRP凝集前の透過率)/(PPPの透過率−PRP凝集前の透過率)×100%
実験結果は、表14に見出すことができる。
【表14】

【0115】
表14から得られた結果:
(1)ADPを使用して、凝集を誘導した場合、薬物投与前の群すべての間では血小板凝集率に明らかな差は見られなかった。投与後、血小板凝集率は、対照群の血小板凝集率よりも、党参および黄耆の組成物の高用量群、ならびに丹参葉注射の群で明らかに低かった(P<0.05)。アスピリン−DL−リシン群の血小板凝集率は、対照群の血小板凝集率よりも明らかに低かった(P<0.01)。党参および黄耆の組成物の中用量群ならびに低用量群では、対照群の血小板凝集率と比較して、血小板凝集率に下降傾向が見られた。
【0116】
(2)AAを使用して、凝集を誘導した場合、薬物投与前の群すべての間では血小板凝集率に明らかな差は見られなった。投与後、血小板凝集率は、対照群の血小板凝集率よりも、党参および黄耆の組成物の高用量群ならびに中用量群で明らかに低かった(P<0.05〜0.01)。党参および黄耆の組成物の低用量群では、対照群と比較して、血小板凝集率に明確な差は見られなかった。丹参葉注射の群の血小板凝集率は、対照群の血小板凝集率よりも明らかに低かった(P<0.05)。また、アスピリン−DL−リシン群の血小板凝集率は、対照群の血小板凝集率よりも明らかに低かった(P<0.001)。
【0117】
(3)コラーゲンを使用して、凝集を誘導した場合、薬物投与前の群すべての間では血小板凝集率に明らかな差は見られなった。投与後、アスピリン−DL−リシン群の血小板凝集率は、対照群の血小板凝集率よりも明らかに低かった(P<0.001)。また、他の群すべての血小板凝集率に関しては、対照群の血小板凝集率と比較して有意な差は見られなった。
【0118】
上述の結果により、3日間の連続的に静脈を介して注射した後、党参および黄耆の組成物(粗製薬剤5g/kg)は、アデノシン(ADP)およびアラキドン酸(AA)により誘導されたウサギの血小板凝集率を明らかに減少させる(P<0.05〜0.01)ことが示された。党参および黄耆の組成物(粗製薬剤2.5g/kg)は、AAにより誘導されたウサギの血小板凝集率を明らかに減少させた(P<0.05)。党参および黄耆の組成物は、血小板凝集を阻害する効果を有することが示唆された。
【0119】
[実験例9]:
1.実験薬物:
党参および黄耆の組成物は、上述の実行実施例に従って調製した党参および黄耆の抽出組成物であり、ここで各組成物20mlは、3.25gに等しい量の党参および黄耆を含有していた。上記組成物を水浴にひたし、2ml〜1mlに濃縮して、40分間蒸気を循環させることにより滅菌した。
【0120】
LPS:粉末、USA Sigma Co.、使用前に滅菌生理食塩水で希釈。
【0121】
デキサメタゾン(Chengdu Pharmaceutical Factory No.1)
2.実験動物:
Wistarラットは、微生物制御レベルIIでHuaxi College Animal Center of Sichuan Universityにより提供された。
【0122】
3.実験方法:
60匹のラットを無作為に4つの群、すなわち正常対照群、モデリング群(LPS+NS群)、デキサメタゾン介入(処理)群(LPS+DEX群)ならびに党参および黄耆の組成物注射介入(処理)群(LPS+SQ群)に分けた。また、モデリング群、LPS+DEX群、およびLPS+SQ群それぞれを再度3つの時間段階群、すなわち1時間群、2時間群および4時間群に分けた。この実験では合計10つの群が存在し、1群当たりマウス6匹である。
【0123】
実験方法:
1.準備作業
実験の3日前に、器具、容器および移植剤すべてを高温および高圧で滅菌して、後の使用のために乾燥させた。総RNAを抽出するのに使用される実験器具および試薬は、DEPC溶液中に一晩浸し、滅菌して乾燥させた。
【0124】
2.ALIモデルの調製および投与方法
モデリングの1週間前に、LPS+SQ群の18匹のラットに、前処理として党参および黄耆の抽出組成物2mlを毎日腹腔注射した。LPS+DEX群の18匹のラットに、モデリングの2時間前に50mg/kgのデキサメタゾンを腹腔注射した。LPS+NS群の18匹のラットに、モデリングの2時間前に生理食塩水を注射した。正常対照群を除いて、3つの上述の群すべてに、尾静脈においてLPS(4mg/kg)を注射した。
【0125】
3.サンプリング
動物すべてを、既定の時間段階時点で腹腔注射により抱水クロラールで麻酔をした後、血液2mlを頸動脈からサンプリングし、800gr/分で8分間遠心分離した。上清を抽出し、後の使用のために−20℃で冷凍庫中に入れた。胸部を開き、右の肺の下葉をサンプリングした。それらをDEPC溶液で処理したEPチューブに入れて、総RNA抽出のために−70℃にて冷凍庫中に即座に入れた。右肺の上葉をサンプリングして、10%ホルムアミド溶液中に浸して、固定した。湿潤/乾燥重量の比の測定のために、左の肺を取り出した。
【0126】
4.相当する時間段階時点で、動物の肺組織を取り出し、ヒトの眼で、およびHE染色方法を用いて顕微鏡下で観察した。組織の湿潤/乾燥重量の比も測定した。
【0127】
実験結果:
頻呼吸、唇チアノーゼ、精神衰弱、動きが少ないことおよび摂食が少ないことの症状が、尾静脈中にLPSを注射した実験動物すべて、特にLPS+NS群の動物において、あらゆる時間段階時点で出現した。しかしながら、症状は比較的穏やかであり、LPS+DEX群およびLPS+SQ群では比較的短期間持続した。動物はすべて、この実験で設定した時間段階時点すべてで生存した。
【0128】
全体的な観察
正常対照群では、肺組織は白色と赤みを帯び、軟質かつ弾性であるようであった。1時間のLPS+NS群では、うっ血および水腫が肺に観察され、表面上では時折斑点状出血が観察された。2時間の群では、肺の表面は、明らかなうっ血、水腫、フレーク状点状出血および出血巣を伴って濃赤色を呈していた。4時間の群の状態は概して、2時間の群の状態と同様であった。群LPS+DEXおよび群LPS+SQで観察される症状は、群LPS+NSで観察される症状と比較して、同じ時間段階時点で異なる程度にまで緩和されたようであった。
【0129】
光学微量分析による観察
結果は、全体的な観察と規範的に一致した。正常対照群の肺組織は、薄い肺胞壁を有する構造で透明であった。拡張間質性肺において湿潤した炎症性細胞および水腫も存在していた。それは、急性肺障害の病理学的類別において軽度として類別された。2時間の群の肺細胞障害は、最も明白であった。顕著な拡張間質性肺は、滲出および水腫を伴って見て取れた。透明な膜が形成され、肺胞は出血し、大量の炎症性細胞が湿潤した。それは、ALI病理学的類別において中度〜重度として類別された。4時間の群の肺細胞の障害は、2時間の群の障害と基本的に同じであり、ALI病理学的類別において主として中度と類別された。LPS+NS群では、障害は、相当する時間段階時点である程度に緩和された。群すべての病理学的類別は、表15に見出すことができる。
【表15】

【0130】
符号付順位和検定(sighed-rank sum test)の結果は以下の通りであった:
モデリング群と他の介入群との間で1時間の段階時点では病理学的変化において有意な差は見られなかった(P>0.05)。しかしながら、2時間および4時間では病理学的変化において有意な差が見られた(p<0.05)。それぞれ種々の時点での介入群すべて間を比較すると、群LPS+NSでは有意な差が見られ(p<0.05)、群LPS+DEXおよびLPS+SQにおける差は、統計学的意義を持たなかった(p>0.05)。
【0131】
肺湿潤/乾燥(W/D)重量比の変化
時間段階時点すべてでの群LPS+NSの肺W/D比は、正常対照群の肺W/D比と比較して明らかに高かった(p<0.05)。群LPS+DEXおよびLPS+SQの肺W/D比は、同じ時間段階時点で減少した(P<0.05)。データは、表16に参照された。
【表16】

【0132】
産業上の利用可能性
本発明の免疫調節薬は、以下の効果を有することが、動物試験および臨床試験で示される:
1.本発明の免疫調節薬は、脾臓および腎臓を活性化することができ、かつ気の欠乏および弱い気(impairing QI)を患う患者すべてを治療することができる。
【0133】
2.本発明の免疫調節薬は、癌患者の臨床上の症状を改善し、生存期間を延長させることができ、身体の正常な機能を回復させて、体質を強固にする効果を有する。
【0134】
3.本発明の免疫調節薬は、放射線療法および化学療法の手順において、造血を維持し、放射線療法および化学療法の有毒な副作用を緩和し、かつ白血球減少症を減少させることができる。
【0135】
4.本発明の免疫調節薬は、マクロファージの食作用を増加させ、かつリンパ球のトランスフォーミング能力を高めることができる。本発明の免疫調節薬は、理想的な免疫調節薬である。
【0136】
5.本発明の免疫調節薬は、腫瘍阻害のある特定の効果を有する。
【0137】
党参および黄耆の組成物は、虚血心疾患を治療する下記効果を有することが、動物実験により証明された:
1.党参および黄耆の組成物は、イヌの急性心筋虚血および心筋梗塞の治療、心外膜心電図により記録される心筋虚血の度合い(Σ−ST)の緩和、心外膜心電図により記録される心筋虚血の範囲(N−ST)の減少、およびN−BT染色方法により表示される梗塞面積の減少に対する明白な改善効果を有する。党参および黄耆の組成物は、虚血性心臓における冠状動脈の血流を明らかに増加させることができる。その顕著な効果はまた、心筋虚血および心筋梗塞により引き起こされるLDHの増加していく放出および上昇していくCK活性の治療に存する。また、同時に、党参および黄耆の組成物は、心筋虚血中に6−ケト−PGF1aの比率および6−ケト−PGF1a/TXB2を血漿中で増加させることができる。
【0138】
2.党参および黄耆の組成物は、心筋障害の度合い、心筋梗塞の梗塞面積、梗塞部分の重量、およびMDA含有量を明らかに減少させることができる。
【0139】
3.党参および黄耆の組成物は、正常な麻酔イヌの動脈血圧を減少させ、心拍数を落とし、動脈血管を拡張し、動脈耐性を減少させ、心拍出量および心臓一回拍出量を増加させ、心筋酸素消費指数を減少させ、かつ心筋血液および酸素供給を改善させることができる。党参および黄耆の組成物はまた、全末梢血管抵抗を減少させ、心臓血管系において制御または改善することができる。
【0140】
4.党参および黄耆の組成物は、ラットの血栓の長さを明らかに短くし(P<0.001)、血栓の湿潤/乾燥重量を緩和し(P<0.01)、かつ100s−1、30s−1および5s−1のせん断速度下において全血粘度を減少させる(P<0.05)ことができる。このことは、党参および黄耆の組成物は、血栓症を阻害し、かつ血液粘度を減少させる効果を有することを示している。
【0141】
5.党参および黄耆の組成物は、アデノシン二リン酸(ADP)およびアラキドン酸(AA)により誘導されるウサギ血小板凝集率を明らかに減少させることができる(P<0.05〜0.01)。このことは、党参および黄耆の組成物が、血小板凝集を阻害する効果を有することを示す。
【0142】
本発明の党参および黄耆の組成物は、急性肺障害中の病理学的変化、すなわち、リポ多糖により引き起こされる急性肺障害の病理学的変化を明らかに減少させることができることが、さらなる動物実験で証明された。本発明の党参および黄耆の組成物はまた、肺組織の水腫を明らかに緩和することができる。未処理群と比較して、肺組織のW/D重量の比は明らかに減少される。本発明の党参および黄耆の組成物を単独で使用して、急性肺障害を治療する場合、治療効果は、デキサメタゾン単独を使用する場合の治療効果とほぼ同じである。
【0143】
本発明では、伝統的な医薬品である党参および黄耆は、包括的かつ系統的に研究されている。それらの有効な部分が明確に規定され、かつ機能メカニズムについて記載されている。特殊な抽出技術が設計された。不純物は、できるかぎり多く除去する一方で、薬物の有効性は維持され、その結果、投与量および有毒な副作用を減少させることができる。上記方法は、強力な実用性、創造性および顕在化を伴って簡潔なものである。上記方法は、伝統的な漢方薬の近代化にとって強力な基盤となり得る。
【0144】
本発明は、上述の実施例により記載している。しかしながら、上述の実施例は、単に本発明を記載するのに使用するものであり、本発明を限定するのに使用するものではない。多くの修正および変更を、本発明の添付の特許請求の範囲内で行うことができ、これらの変更および変化もまた、本発明の範囲に網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】党参および黄耆の伝統的な漢方薬の抽出技術を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として党参(Radix Codonopsis)および黄耆(Radix Astragali)を含む薬学的組成物。
【請求項2】
前記党参および黄耆の重量比の範囲は、0.5:1〜1:0.5であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記党参および黄耆の重量比の範囲は、1:1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記原料は、気(QI)を活気づけ、血を補う漢方薬(Chinese medicine)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記気(QI)を活気づけ、血を補う漢方薬は、唐当帰(Radix Angelicae Sinensis)、地黄(Radix rehmanniae Praeparata)、何首鳥(Radix Polygoni Multiflori)、白朮(Rhizoma Atractylodis Macrocephalae)、山薬(Rhizoma Dioscoreae)、またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的組成物を調製する方法であって:
a)党参および黄耆から不純物を除去した後、それらを煎じ薬用に調製された薬草片にする工程と、
b)ある特定の重量比で党参および黄耆を採取し、それらを脱イオン水で洗浄する工程と、
c)党参および黄耆の質量に従ってある特定量の脱イオン水を段階的に添加し、加熱して、1〜3回抽出する工程であって、それにより前記薬学的抽出物を得る、添加し、加熱し、抽出する工程と、
d)前記薬学的抽出物を濃縮して、濃縮液体を得る工程と、
e)提唱される量のエタノールを添加し、標準的に沈積させ、濾過し、濾過した液体からエタノールを回収し、乾固するまで濃縮して、それにより党参および黄耆の抽出組成物を得る工程と
を具備する方法。
【請求項7】
水で煎じることにより薬物を抽出する工程c)において、添加する水の量は、最初は8倍量であり(1時間煎じる)、添加する水の量は、二度目は6倍量である(0.5時間煎じる)ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エタノールを添加することにより薬物を沈積させる工程e)において、エタノールの含有量は、最初は総重量の65%〜80%であり、エタノールの含有量は総重量の80%以上であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
免疫調節薬の調製工程における、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の党参および黄耆の前記組成物の使用。
【請求項10】
党参および黄耆の組成物は、化学療法剤と一緒に使用することができ、また紫外線療法または他の腫瘍阻害方法において使用することができることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
虚血性心疾患の治療用薬物の調製工程における、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の党参および黄耆の前記組成物の使用。
【請求項12】
前記虚血性心疾患は、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、心筋炎、ならびに心筋虚血および心筋酸素欠乏症により引き起こされる他の心疾患を含むことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記虚血性心疾患は、血小板粘性の増大に起因した血小板凝集および/または血栓症により引き起こされる心疾患を含むことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記虚血性心疾患は、虚血性再灌流障害により引き起こされる心疾患を含むことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
過剰な血小板凝集により引き起こされる疾患の治療用薬物の調製工程における、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の党参および黄耆の前記組成物の使用。
【請求項16】
前記過剰な血小板凝集により引き起こされる疾患は、大脳卒中、アテローム性動脈硬化症および末梢血管疾患を含むことを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
急性肺障害を予防および治療するための薬物の調製工程における、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の党参および黄耆の前記組成物の使用。
【請求項18】
前記組成物は、注射、錠剤、丸剤、カプセル、顆粒、溶液、懸濁剤または乳剤の形態で使用することができることを特徴とする、請求項9ないし17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物の有効投薬量範囲は、58〜70mg/kg(体重)/日であることを特徴とする、請求項9ないし17のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2011−52005(P2011−52005A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250022(P2010−250022)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2006−504191(P2006−504191)の分割
【原出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(505039789)
【Fターム(参考)】