説明

入力ペン

【課題】入力面を押圧した時に十分な変形度が得られるとともに、簡単な構成で作製できる先端チップ4を有した入力ペンに適用できる。
【解決手段】操作領域を入力ペンや指によって操作し、操作領域の操作部分の座標位置を静電容量変化に伴う電気量変化によって検出し、操作部分の座標位置を入力する座標入力装置に用いる入力ペン。この入力ペンの前部に設けられる先端チップ4を導電性ゲル素材で構成する。この先端チップ4を導電性の軸筒1の前部に接触させて構成することにより、前記先端チップ4が軸筒1を保持する手と導通するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作領域を入力ペンの先端チップで軽くなぞることにより、静電容量変化に伴う電気量変化によって位置を検出し、スムーズなカーソル移動ができる入力装置に用いる入力ペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性金属からなる芯部材と、芯部材の前部外面に取り付けられる導電性ゴムと、芯部材と導電性ゴムの間に充てんされるゲル状物質からなる充てん材により先端チップを構成し、この先端チップを導電性の軸筒の前部に取り付けた入力ペンが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、導電性ゴムはカーボンや金属等の固形導電剤を多く配合する構成であるため、硬くなってしまい、入力面に押圧しても十分な変形度が得られ難いため希望する接触面積が得られないものであった。その為、導電性ゴムの内側にゲル状物質を充てんしなければならず、構造が非常に複雑でコスト高になってしまうものであった。また、導電性ゴムにカーボンや金属等の固形導電剤を配合すると、黒色化したり不透明となり入力ペンを使用する際に入力面の入力部の視界を遮ることになり、入力操作時の視認性を著しく損なうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4142776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、導電性ゴムが硬い点と、黒色化したり不透明となる点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、操作領域を入力ペンや指によって操作し、操作領域の操作部分の座標位置を静電容量変化に伴う電気量変化によって検出し、操作部分の座標位置を入力する座標入力装置に用いる入力ペンであって、入力ペンの前部に設けられる先端チップを導電性ゲル素材で構成し、前記先端チップを導電性の軸筒の前部に接触させて構成することにより、先端チップが軸筒を保持する手と導通するように構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、先端チップを導電性ゲル素材で構成することにより、導電性を有する先端チップが硬くならず、入力面を押圧した時に十分な変形度が得られるとともに、先端チップを簡単な構成で作製できる利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例1の入力ペンを示す断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0009】
入力面を押圧した時に十分な変形度が得られるとともに、簡単な構成で作製できる先端チップを有した入力ペンを実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1に基づいて本発明における実施例1の入力ペンを説明する。また、図1の左側を前方とし、右側を後方とする。先ず、導電性を有した合成樹脂製の軸筒1の後部にクリップ2を一体成形で構成し、この軸筒1の後端に尾栓3を圧入固着する。この軸筒1の前部に先端チップ4を圧入固着して取り付ける。この先端チップ4は導電性ゲル素材で構成する。この導電性ゲル素材中に含まれる導電剤としては固体でも液体でも可能であるが、液体導電剤を用いた方が導電性ゲル素材の柔軟性、透明性が向上するため好ましい。このような液体導電剤としては、イオン液体や電解質を含む溶解液が挙げられる。
【0011】
イオン液体としては、ヨウ化−1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化−1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、N−メチル−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、N−メチル−プロピルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドなどが挙げられる。ゲル化剤としてはポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチル塩化物、ポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチルヨウ化物、ポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチルビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、ポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンヘキサフルオロフォスヘート、ポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチルテトラフルオロボレート、ポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチルチオシアネート、ポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチルトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられ、これらの組み合わせにより導電性ゲル素材を得ることができる。例えばN−メチル−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドとポリ(ピリジニウム−1,4−ジイミノカルボニル−1,4−フェニレンメチルビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドにより得られた導電性ゲル素材は、十分な導電性能と弾性性能更には透明性が得られて好ましい。
【0012】
また、電解質溶解液としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩を含む水溶液やヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムなどを含む有機溶媒液などが挙げられる。ゲル化剤としては、キサンタンガムやゼラチンなどの天然高分子、ポリエチレンイミンとポリグリシジルエーテルとの架橋体や架橋型アクリル酸、各種メタクリレートモノマーの重合体などが挙げられ、これらの組み合わせにより導電性ゲル素材を得ることができる。例えば、塩化カリウム水溶液とポリエチレンイミン−ポリグリシジルエーテル架橋体により得られた導電性ゲル素材は、十分な導電性能と弾性性能更に透明性が得られて好ましい。
【0013】
また、前記先端チップ4を電解質水溶液を含む導電性ゲル素材で構成した場合には、金属蒸着膜などをコーティングすることにより、表面のガスバリア性を向上させるので、水溶媒の揮発性防止の効果や表面の滑性向上の効果が得られる。
【0014】
前記入力ペンは、導電性を有する軸筒1を手で保持すれば、使用者の手と先端チップ4が電気的に導通する。したがって、先端チップ4が入力ペンを把持する使用者の手と同電位に維持される。
【0015】
この入力ペンの先端チップ4を座標入力装置の操作領域に軽く押圧すれば、先端チップ4が変形して所定の接触面積が得られ、座標領域の操作部分の使用者の手との間には、接触面積に依存した静電容量が形成される。この静電容量変化に伴う電気量変化によって座標位置を検出し、先端チップ4が接触した座標位置を入力する。また、先端チップ4が透明性を有しているので、入力面の入力部の視界を先端チップ4で遮ることがなく、入力操作時の視認性を損なう恐れもない。
【0016】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、軸筒は複数の部材を固着して一体化し構成しても良く、更に、内軸の把持部に導電性を有する金属部材を別体で取り付けて軸筒を構成し、先端チップと金属部材を導通させても良い。また、先端チップは、軸筒に接着して固着したり軸筒の一部を変形させて固着しても良い。更にまた、先端チップは上記導電性ゲル素材に限定されるものではなく、従来知られている種々の導電性ゲル素材を用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
先端チップと入力ペンを把持する使用者の手が同電位に維持されるとともに、先端チップが簡単な構成で十分な変形度が得られ、低価格の入力ペンに適用できる。
【符号の説明】
【0018】
1 軸筒
4 先端チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作領域を入力ペンや指によって操作し、操作領域の操作部分の座標位置を静電容量変化に伴う電気量変化によって検出し、操作部分の座標位置を入力する座標入力装置に用いる入力ペンであって、入力ペンの前部に設けられる先端チップを導電性ゲル素材で構成し、前記先端チップを導電性の軸筒の前部に接触させて構成することにより、前記先端チップが軸筒を保持する手と導通するように構成したことを特徴とする入力ペン。
【請求項2】
先端チップを、透明性を有する導電性ゲル素材で構成したことを特徴とする請求項1記載の入力ペン。

【図1】
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【公開番号】特開2013−54533(P2013−54533A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192161(P2011−192161)
【出願日】平成23年9月3日(2011.9.3)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】