説明

入力検知装置

【課題】 比較的大きな検知出力を得ることができ、且つフィードバック用などの振動を発生させることもできる入力検知装置を提供する。
【解決手段】 波形出力部27から第1の駆動信号S1が与えられると、振動発生部30のコイル2に、振動体31の固有振動数よりも高い周波数の検知用電流が与えられる。この電流の変動時に振動発生部30の外装ケース3Aに逆起電力による誘導電力E1が誘導される。この誘導電力E1が入力部10において変化させられ、その変化に伴う出力のレベルが大きく変動すると、波形出力部27から、第2の駆動信号S2が発せられ、第1の駆動信号S1と第2の駆動信号S2の論理和が駆動回路5に与えられる。このときコイル2に振動電流が流れ、振動体31が固有振動数で振動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部を操作したときに比較的大きな検知出力を得ることができ、また、共通のコイルを使用して、入力検知と振動の発生の双方を行うことが可能な入力検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1に、2つの基板の対向部のそれぞれに電極部が設けられた静電容量式センサーが開示されている。
【0003】
この静電容量式センサーは、入力部の操作に基づいて、対向する電極部の間のギャップが変化し、または電極の対向面積が変化したときに、その変化が静電容量の変動によって検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−314163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されている静電容量式センサーは、電極間のギャップの変化や対向面積の変化に対する検知出力の変動がきわめて微小であるため、外部ノイズの影響を受けやすく、微小な変化を高精度に検知することが難しい。
【0006】
また、特許文献1などに記載された静電容量式センサーは、入力部を操作した検知出力を得ることができるが、センサーそのものでフィードバック用などの振動を発生させることができず、振動を発生させるためには、センサーとは別の振動発生手段を設ける必要がある。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、入力部の操作により大きな検知出力を得ることが可能な入力検知装置を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、入力部の操作により検知出力を得るとともに、フィードバック用などの振動を発生させることが可能な入力検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の入力検知装置は、コイルと、前記コイルに接近して設けられた導電性の誘導部材と、前記コイルに交流の検知用電流を与える駆動回路と、前記コイルに前記検知用電流が与えられたときの逆起電力によって前記誘導部材に誘導される電力を検知する検知回路と、前記誘導部材から得られた電力を増減させる入力部と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の入力検知装置は、コイルに交流の検知用電流が与えられたときの逆起電力を誘導部材に誘導し、この誘導電力を入力部で変化させている。そのために、入力部を操作したときに比較的大きな電力の変化を取り出すことができ、検知精度が高くなり、外部ノイズの影響を受けにくくなる。
【0011】
本発明は、前記コイルを含む振動発生部を有しており、前記検知回路からの出力が変動したときに、前記コイルに交流の振動用電流を与えて前記振動発生部に振動を発生させる振動制御部が設けられているものが好ましい。
【0012】
上記入力検知装置は、共通のコイルを用いて、電力の誘導とともに、振動を発生させることが可能になる。
【0013】
本発明は、前記振動制御部には、前記駆動回路に前記検知用電流を発生させる第1の駆動信号と、前記駆動回路に前記振動用電流を発生させる第2の駆動信号を生成する波形出力部が設けられているものとして構成できる。
【0014】
前記振動用電流は、前記振動発生部の固有振動数に一致しまたはこれに近似した周波数の交流電流であり、前記検知用電流は、前記固有振動数よりも高い周波数の交流電流であることが好ましい。
【0015】
例えば、前記振動制御部では、前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号の論理和が前記駆動回路に与えられる。
【0016】
上記構成の入力検知装置は、入力部を操作して検知出力を変化させると、その検知出力の変化に基づいてフィードバック用などの振動を発生させることが可能になる。
【0017】
本発明は、前記誘導部材を、前記振動発生部を収納するケースとすることも可能である。
【0018】
本発明は、前記入力部は、前記誘導部材と導通する第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極との対向距離の変化と対向面積の変化の少なくとも一方が変化したときの前記第2の電極の電力の変化が、前記検知回路で検知されるものとして構成することができる。
【0019】
あるいは、前記入力部は、前記誘導部材と前記検知回路との間に設けられた可変抵抗部を有しているものとして構成できる。
【0020】
例えば、前記入力部は、前記第1の電極と前記第2の電極とを有する電極対が複数箇所に設けられており、複数の前記電極対を選択的に動作させる操作部材が設けられているものとして構成できる。
【0021】
また前記入力部は、前記第1の電極と、それぞれが前記検知回路に接続された複数の前記第2の電極と、前記第1の電極および複数の前記第2の電極に選択的に対向する可動電極とを有しているものとして構成できる。
【0022】
さらに本発明は、入力部は、前記可変抵抗部が複数箇所に設けられ、複数の前記可変抵抗部を選択的に変化させる操作部材が設けられているものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の入力検知装置は、コイルに交流の検知用電流を与えて、導電性の誘導部材に電力を誘導し、この電力を用いて入力部の変化を検知している。したがって、検知出力およびその変化量を大きな電力として取り出すことができ、外部ノイズなどの影響を受けにくい検知出力を得ることが可能である。
【0024】
また、本発明は、誘導部材に電力を誘導するためのコイルを用いて、フィードバック用などの振動を発生させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態の入力検知装置を示す説明図、
【図2】第1の実施の形態の入力検知装置の変形例を示す説明図、
【図3】第1の実施の形態の入力検知装置の動作を示す波形図、
【図4】本発明の第2の実施の形態の入力検知装置を示す説明図、
【図5】第2の実施の形態の入力検知装置の動作を示す波形図、
【図6】第2の実施の形態の入力検知装置の動作を示す波形図、
【図7】入力部の構造の一例を示す分解斜視図、
【図8】図7に示す入力部の断面図、
【図9】複数の入力部を備えた入力装置を示す分解斜視図、
【図10】複数の入力部を備えた入力装置の他の構造例を示す分解斜視図、
【図11】図10に示す入力装置の断面図、
【図12】図10と図11に示す入力部の動作説明図、
【図13】図9と図10に示す入力部を備えた入力検知装置の回路構成図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示す第1の実施の形態の入力検知装置1は、コイル2と誘導部材3を有している。誘導部材3は、導電体であり、鉄を主体とした合金などの磁性で且つ導電性の材料、または銅あるいは銅を主体とした合金のように非磁性で導電性の材料で形成されている。コイル2は、表面が絶縁被覆された導線が巻かれたものである。誘導部材3はコイル2に接近して設けられている。図1に示す入力検知装置1では、誘導部材3がコイル2の巻き中心に挿入されている。ただし、誘導部材3がコイル2の外側でコイル2に接近して配置されていてもよい。
【0027】
入力検知装置1に、駆動回路5が設けられている。この駆動回路5では、コイル2を構成する導線の第1の端部2aが、3Vの直流電圧が与えられる接続端子6に接続されている。また、コイル2と並列のツェーナダイオード7が設けられ、コイル2に印加される電圧の安定化が図られている。
【0028】
駆動回路5には、スイッチ素子として機能するトランジスタ8が設けられている。コイル2を構成する導線の第2の端部2bが、トランジスタ8のコレクタ端子に接続されている。トランジスタ8には、一方の向きの逆起電力による電力の誘導を解消するためのダイオード9が設けられている。
【0029】
誘導部材3の端部は、リード線3aを介して入力部10に接続されている。入力部10は、第1の電極11と第2の電極12を有している。前記リード線3aは第1の電極11に接続されている。第1の電極11と第2の電極12は、銅板や銅箔あるいは銀ペーストの印刷層などの低抵抗の導電性材料で形成されている。第1の電極11と第2の電極12は共に平板状で間隔を空けて平行に対向しており、入力部10では、外部からの操作力により、両電極11,12の対向間隔dと対向面積Aの少なくとも一方を変化させることができる。
【0030】
第2の電極12に検知回路20が接続されている。検知回路20には、電圧増幅部21とピークホールド部22が設けられている。
【0031】
図3の波形図を参照して、前記入力検知装置1の動作を説明する。
図1に示すように、駆動回路5に設けられたトランジスタ8のベース端子に第1の駆動信号S1が与えられる。第1の駆動信号S1は、1kHz以上の周波数であり、好ましくは10kHz〜60kHz程度の高い周波数に設定されている。トランジスタ8のスイッチ機能により、図3(A)に示すように、コイル2に、第1の駆動信号S1と同じ周波数の検知用電流Iaが流れる。トランジスタ8のコレクタとエミッタ間を流れる電流に応じて、コイル2に流れる検知用電流Iaは比較的大きな交流電流となる。
【0032】
図3(A)に示す検知用電流Iaは、立ち上がり時a1に、コイル2の第1の端部2aから第2の端部2bに向けて正方向電流I1が流れ始め、立ち下り時a2に、第2の端部2bから第1の端部2aに向けて逆方向電流I2が流れ始める。コイル2に正方向電流I1が流れ始めると、コイル2に第2の端部2bから第1の端部2aに向かう逆起電力が発生する。このときの逆起電力の電流は、ダイオード9を流れることで短絡し、これによりトランジスタ8が保護される。
【0033】
コイル2に逆方向電流I2が流れ始めるときに、コイル2に第1の端部2aから第2の端部2bに向かう逆起電力が発生するが、導電性の誘導部材3がコイル2に接近しているため、図3(B)に示すように、誘導部材3に、検知用電流Iaの立ち下り時a2の逆起電力に同期した誘導電力E1が誘導される。
【0034】
コイル2に流れる電流量が比較的大きいため、誘導部材3に1V以上さらには2V以上の大きな電圧の誘導電力E1を誘導することができる。
【0035】
誘導部材3に誘導される誘導電力E1は、リード線3aを介して、入力部10の第1の電極11に導かれる。入力部10では、第1の電極11と第2の電極12とが狭いギャップで対向しているため、第1の電極11に導かれた誘導電力E1により、第2の電極12に同様の波形の二次誘導電力E2が導かれる。第2の電極12に誘導された二次誘導電力E2は、検知回路20の電圧増幅部21により増幅され、ピークホールド部22によりそのピーク値がホールドされる。このホールド値は、ピーク値が一定の範囲以上変化したときに更新される。
【0036】
図3(C)には、ピークホールド部22でピーク値がホールドされた検知出力D1が示されている。
【0037】
前記検知出力D1、すなわち二次誘導電力E2のピーク値をホールドした出力は、第1の電極11と第2の電極12との対向間隔dの二乗に反比例し、第1の電極11と第2の電極12との対向面積Aに比例する。
【0038】
前記対向間隔dは、例えば5〜100μmであり、対向面積Aは、1〜100mm2程度である。
【0039】
この入力検知装置1では、駆動回路5に一定の周波数の第1の駆動信号S1が印加されているときに、図示しない操作部材を操作して、入力部10の第1の電極11と第2の電極12の対向距離dと対向面積Aの少なくとも一方を変化させることで、入力部10での操作部材の操作状態を反映して可変する検知出力D1を得ることが可能である。
【0040】
図2に示す変形例の入力検知装置1Aは、可変抵抗式の入力部10Aを有している。この入力部10Aは、可撓性または伸縮性のシート18の表面にカーボン層などの抵抗層Rが形成されている。抵抗層Rの一方の端部がリード線3aを介して誘導部材3に導通され、抵抗層Rの他方の端部が検知回路20の電圧増幅部21に接続されている。
【0041】
この入力部10Aは、図示しない操作部材によって、シート18を撓ませまたは伸ばすことで抵抗層Rの抵抗値が変化し、その結果、誘導部材3に誘導された誘導電力E1を可変させた可変誘導電力E3を得ることができる。この可変誘導電力E3を増幅し、ピークホールドすることで、入力部10Aの変化を反映した検知出力を得ることができる。
【0042】
図4は本発明の第2の実施の形態の入力検知装置100を示している。この入力検知装置100は、図1に示す第1の実施の形態の入力検知装置1と同じ構成部分に同じ符号を付している。同じ符号を付した部分は、詳しい説明を省略することがある。
【0043】
この入力検知装置100は、逆起電力を発生するためのコイル2が、振動発生部30の一部として構成されている。
【0044】
振動発生部30は、コイル2やその他の構成部材を収納する外装ケース3Aを有している。外装ケース3Aは導電性の金属材料で形成されており、図1に示した誘導部材3と同じ機能を発揮している。
【0045】
振動発生部30は、外装ケース3Aの内部に、一定の質量を有する振動体31が収納されている。振動体31はフェライトなどの軟磁性材料で細長く形成されており、前記コイル2が、振動体31の外周に巻かれている。外装ケース3Aの内部で、振動体31が弾性支持部材32で支持されて、振動体31が図示上下方向へ振動できるようになっている。弾性支持部材32は、板ばねや圧縮コイルばねなどで形成されている。振動体31は、その質量とコイルの質量および弾性支持部材32の弾性係数とで決まる固有振動数を有している。
【0046】
外装ケース3Aの内部に、1対の磁石33,34が設けられている。磁石33は、振動体31の左側端部31aに対向しており、磁石34は、振動体31の右側端部31bに対向している。左側の磁石33は、上側の対向面33aがN極に着磁され下側の対向面33bがS極に着磁されている。右側の磁石34は上側の対向面34aがS極に着磁され、下側の対向面34bがN極に着磁されている。すなわち、左右の磁石33,34は、共に上下の部分が異なる磁極に着磁されており、磁石33と磁石34とでは、互いに異なる磁極が対向している。
【0047】
コイル2に通電されておらず、振動体31に外力が作用していないときに、振動体31の左側端部31aは、磁石33の上側の対向面33aと下側の対向面33bとの境界部に対向し、振動体31の右側端部31bは、磁石34の上側の対向面34aと下側の対向面34bとの境界部に対向している。
【0048】
図4に示すように、コイル2の第1の端部2aは、外装ケース3Aの外部に引き出されて電源を印加する接続端子6に接続されている。また、コイル2と並列に接続されたツェーナダイオード7が設けられている。コイル2の第2の端部2bは、外装ケース3Aの外部に引き出されて、駆動回路5を構成するトランジスタ8とダイオード9とに接続されている。
【0049】
図4に示す入力検知装置100は、振動発生部30の外装ケース3Aがコイル2に接近して配置された誘導部材として機能しており、コイル2と外装ケース3Aの内面との距離は、0.1から1.5mm程度に設定されている。
【0050】
誘導部材である外装ケース3Aに接続されたリード線3aが、入力部10を構成している第1の電極11に接続されている。第1の電極11に対向している第2の電極12が、検知回路20の電圧増幅部21に接続されている。図3(C)に示すように、ピークホールド部22から得られる検知出力D1は直流出力(DC出力)であるため、この検知出力D1は、A/D変換部23でディジタル値に変換されて、振動制御部25に与えられる。
【0051】
振動制御部25はマイクロコンピュータのCPUなどで構成されており、その主な制御動作として、レベル検出部26と波形出力部27とを有している。波形出力部27からは、コイル2に検知用電流Iaを与えるための第1の駆動信号S1の波形と、コイル2に振動用電流Ibを与えるための第2の駆動信号S2の波形が出力される。第1の駆動信号S1と第2の駆動信号S2はOR回路28に与えられ、OR回路28からの論理和出力が、駆動回路5のトランジスタ8のベース端子に与えられる。
【0052】
前記振動発生部30は、携帯用通信機器、リモートコントローラなどの各種電子機器のケースの内面に設置され、振動発生部30で発生した振動が、ケースを保持している手または指で感じることができる。前記入力部10は、ケースに設けられた操作部材で操作することが可能である。なお、振動発生部30の外装ケース3Aの表面に前記入力部10が設けられて、操作部材を介して入力部10が操作されたときに、振動発生部30で発生した振動が、操作部材を操作している指に直接に与えられるようにしてもよい。
【0053】
次に、上記入力検知装置100の動作を、図3に示す波形図と図5に示す波形図を参照して説明する。
【0054】
操作部材によって入力部10が動作させられておらず、第1の電極11と第2の電極12との対向距離dおよび対向面積Aが初期状態のときは、振動制御部25の波形出力部27から図5(A)に示す第1の駆動信号S1のみが出力されている。第1の駆動信号S1は、1kHz以上の周波数であり、好ましくは10kHz〜60kHz程度の高い周波数に設定されている。図4に示す入力検知装置100では、第1の駆動信号S1が32kHzに設定されている。図5(A)に示す第1の駆動信号S1は、第2の駆動信号S2との比較のために、短いピッチで図示されている。
【0055】
入力検知装置100では、第1の駆動信号S1がOR回路28を通過してトランジスタ8のベース端子に与えられると、コイル2に図3(A)に示す検知用電流Iaが流れる。図4と図5に示す実施の形態では、第1の駆動信号S1と検知用電流Iaの周波数が共に32kHzである。一方、振動発生部30の振動体31の固有振動数は、50Hzから500Hz程度であり、図5に示す実施の形態では、固有振動数が160Hzである。検知用電流Iaの周波数は振動体31の固有振動数よりも充分に高いため、コイル2に検知用電流Iaが流れても、振動体31はほとんど振動することがない。
【0056】
振動体31を振動させることなくコイル2に検知用電流Iaを与えるためには、検知用電流Iaの周波数が、振動体31の固有振動数の10倍以上であることが必要であり、50倍以上であることが好ましい。
【0057】
振動体31が振動することなく、コイル2に検知用電流Iaが流れると、コイル2に接近している誘導部材である外装ケース3Aに、図3(B)に示す逆起電力による誘導電力E1が発生し、この誘導電力E1が入力部10の第1の電極11に導かれる。操作部材によって入力部10が操作されていないときは、第2の電極12に誘導される二次誘導電力E2が変化せず、図3(C)に示すピークホールドされた検知出力D1も変化しない。振動制御部25のレベル検出部26では、出力D1がA/D変換部でディジタル値に変換されたレベルを監視しており、このレベルの変化が予め決められたしきい値の範囲内であるときは、入力部10が動作していないと判断し、波形出力部27から第1の駆動信号S1のみを出力し続ける。
【0058】
操作部材によって入力部10が操作され、第1の電極11と第2の電極12との対向距離dと対向面積Aの少なくとも一方が変化して、図3(C)に示す出力D1が変化し、A/D変換されたレベルがしきい値の範囲を超えて変化したと、レベル検出部26において判断されると、波形出力部27から図5(B)に示す第2の駆動信号S2が出力される。第2の駆動信号S2は、振動発生部30の振動体31を固有振動数で振動させることができるように、固有振動数と同じ周波数(160Hz)またはこれに近い周波数に設定されている。
【0059】
第1の駆動信号S1と第2の駆動信号S2は、OR回路28に与えられ、図5(C)に示す論理和の信号Lが出力される。この信号Lには、第1の駆動信号S1と第2の駆動信号S2とが混在している。この信号Lが駆動回路5のトランジスタ8のベース端子に与えられると、コイル2に、第1の駆動信号S1に相当する周波数の検知用電流Iaと、第2の駆動信号S2に相当する周波数の振動用電流Ibの双方が与えられ、振動用電流Ibが与えられたタイミングで、振動体31が固有振動数またはこれに近似した振動数で振動させられる。
【0060】
図6は、波形出力部27で生成される第2の駆動信号S2のさらに詳しい波形を示している。均一の周波数のパルス波形である第2の駆動信号S2は、幅Wの間に連続して出力され、幅Wのパルス群が周期Pで繰り返される。図6に示す波形で振動体31が駆動されると、振動発生部30が搭載されたケースを保持している人の手または指に、比較的大きな衝撃が周期Pで繰り返されるような振動を感じるようになる。
【0061】
入力部10において、第1の電極11と第2の電極12の対向間隔dが狭められるにしたがって、ピークホールド部22から出力される図3(C)に示す検知出力D1が大きくなる。図4に示すレベル検出部26で、検知出力D1のレベルが大きくなったと判断したときに、波形出力部27から出力される第2の駆動信号S2の周期Pを検知出力D1のレベルの大きさに比例させて変化させることで、第1の電極11と第2の電極12の対向間隔dが狭まるにしたがって、手や指に感じる振動の周期が大きくなるように設定することができる。
【0062】
また、入力部10において、第1の電極11と第2の電極12の相対位置のずれ量が大きくなって電極間の対向面積Aが小さくなるにしたがって、検知出力D1が小さくなる。図4に示すレベル検出部26で、検知出力D1のレベルが小さくなったと判断したときに、波形出力部27から出力される第2の駆動信号S2の周期Pをレベルの大きさに反比例させて変化させることで、第1の電極11と第2の電極12のずれ量が大きくなり対向面積Aが小さくなるにしたがって、手や指に感じる振動の周期が大きくなるように設定することができる。
【0063】
図7と図8は、図1と図4に示した入力部10の詳しい構造の一例を示している。
非導電性のベースフィルム13の上に第2の電極12が固定されて設けられている。第2の電極12は、銅箔層や銀ペースト層などの低抵抗材料層である。第2の電極12から延びる引き出し層12eが、検知回路20の電圧増幅部21に接続されている。第2の電極12の表面に、非導電性のギャップフィルム14が貼着されている。
【0064】
非導電性の上部フィルム15の下面に第1の電極11が固定されて設けられている。第1の電極11は第2の電極12と同じ低抵抗材料で形成されている。第1の電極から延びる引き出し層11aが、図1または図4に示すリード線3aに接続されている。第1の電極11と第2の電極12とが対向する対向領域の外周に非導電性のスペーサフィルム16が設けられ、スペーサフィルム16を介して、ベースフィルム13と上部フィルム15とが接合されている。スペーサフィルム16は両面接着テープなどである。
【0065】
図8に示すように、上部フィルム15に外力が作用していないとき、第1の電極11と第2の電極12の対向間隔d1は50μmである。操作部材で上部フィルム15が押されて、第1の電極11がギャップフィルム14に密着すると、第1の電極11と第2の電極の対向間隔d2が、ギャップフィルム14の厚さ寸法である25μmとなる。なお、第1の電極11と第2の電極12は、4mm×4mmの正方形である。
【0066】
図7と図8に示す入力部10では、第1の電極11に導かれる図3(B)に示す誘導電力E1の電圧のピーク値が4.2Vの場合に、第1の電極11と第2の電極12の対向間隔がd1=50μmのとき、第2の電極12に導かれる二次誘導電力E2の電圧のピーク値が0.72Vであり、対向間隔d2=25μmのとき、二次誘導電力E2の電圧のピーク値が1.08Vとなり、大きな検知出力を得ることができる。上部フィルム15に与えられる押圧力を調整して第1の電極11と第2の電極12との対向間隔をd1とd2との間で変化させると、その変化量の二乗に反比例して出力電圧のピーク値を可変させることができる。
【0067】
図9は、前記構造の入力部10を使用した入力装置110を示している。
この入力装置110には、十字形状のベースフィルム113および上部フィルム115が設けられ、ベースフィルム113と上部フィルム115との間の4箇所に、入力部10a,10b,10c,10dが配置されている。それぞれの入力部10a,10b,10c,10dの構造は、図7と図8に示したのと同じである。ベースフィルム113と上部フィルム115の間に、第2の電極12とギャップフィルム14および第1の電極11が重ねられた電極対が設けられている。
【0068】
上部フィルム115の上に操作部材111が配置されている。操作部材111は中心部111aの下面に支点を有して、X−Y平面内でどの方向へも傾かせることが可能である。
【0069】
図13は、前記入力装置110を備えた入力検知装置の回路図である。コイル2には、図1に示す誘導部材3や図4に示す外装ケース3Aが接近して設けられている。
【0070】
誘導部材3または外装ケース3Aから延びるリード線3aは、入力部10a,10b,10c,10dのそれぞれの第1の電極11に接続されている。入力部10aの第2の電極12は、電圧増幅器21aとピークホールド部22aを有する検知回路20aに接続されている。同様に、入力部10b,10c,10dの第2の電極12が、検知回路20b,20c,20dの電圧増幅部21b,21c,21dにそれぞれ接続されている。
【0071】
図9に示す入力装置110では、操作部材111がX1方向へ押されると、入力部10aの出力がその押圧力の大きさに追従して変化し、X2方向、Y1方向、Y2方向へ押されると、入力部10b,10c,10dの出力がその押圧力の大きさに追従してそれぞれ変化する。操作部材111でX−Y平面内での各方向への押圧力を検知でき、また押圧力の大きさの変化に応じた可変する検知出力を得ることができる。
【0072】
また、図9に示す入力装置110と同様に、図2に示す抵抗変化式の入力部10Aが、X1側とX2側およびY1側とY2側に配置され、操作部材111がX−Yの各方向へ押されたときに、4箇所の入力部10Aが個別に撓み変形して、4箇所の入力部10Aから得られる検知出力のそれぞれが変動するものであってもよい。
【0073】
図10と図11に示す入力装置120は、固定電極として中央部に第1の電極11が設けられ、その外周に4つの第2の電極12a,12b,12c,12dが設けられている。第1の電極11と第2の電極12a,12b,12c,12dは、共通の非導電性のベースフィルム上に印刷工程やエッチング工程で設けられている。
【0074】
第1の電極11は、誘導部材3または外装ケース3Aから伸びるリード線3aに接続されている。第2の電極12aは、図13に示す検知回路20aの電圧増幅部21aに接続されており、第2の電極12b,12c,12dは、検知回路20b,20c,20dの電圧増幅部21b,21c,21dにそれぞれ接続されている。
【0075】
入力装置120は、第1の電極11と第2の電極12a,12b,12c,12dの上に非導電性のギャップフィルム114が乗せられ、その上に可動電極118が設けられている。可動電極118は、第1の電極11および第2の電極12a,12b,12c,12dと同じ低抵抗材料で形成されている。可動電極118は、円盤形状などの操作部材の底面に設けられている。操作部材を操作することで、可動電極118を、第1の電極11と第2の電極12a,12b,12c,12dとの対向間隔daを維持した状態で、X−Y方向のそれぞれの向きにスライドさせることができる。
【0076】
図10と図11に示す入力装置120は、第1の電極11の直径Daが8mm、リング状に配列した第2の電極12a,12b,12c,12dの外周縁の直径Dbが20mm、可動電極118の直径Dcが15mmである。また、可動電極118と、第1の電極11ならびに第2の電極12a,12b,12c,12dとの対向間隔daは25μmである。
【0077】
図12は、可動電極118が各方向へスライドした入力動作状態を示している。誘導部材3または外装ケース3Aに誘導される誘導電力E1の電圧のピーク値が4.2Vであると、図12(A)に示すように、可動電極118が中央にあるとき、第2の電極12a,12b,12c,12dに誘導される二次誘導電力E2のピーク値は、0.38Vである。
【0078】
図12(B)に示すように、可動電極118の中心がY1方向へ移動していると、第2の電極12a,12dに誘導される二次誘導電力E2の電圧のピーク値が0.45Vであり、第2の電極12b,12cでは、ピーク値が0.34Vである。
【0079】
図12(C)に示すように、可動電極118の中心が、X1方向とY1方向の双方に対して45度の角度で移動していると、第2の電極12aの二次誘導電力E2のピーク値が0.5V、第2の電極12b,12dが0.4V、第2の電極12cが0.32Vである。
【0080】
上記のように、入力装置120では、可動電極118のスライド方向とそのスライド距離の変動に対応した検知出力を得ることができる。
【0081】
図9に示す入力装置110において、図4に示すように、振動発生部30の外装ケース3Aから誘導電力E1を導くと、例えば、操作部材111の各方向への押圧力を大きくして、第1の電極11と第2の電極12との対向距離dを短くしていくにしたがって、図6に示す振動周期Pを徐々に広くするなどの振動制御が可能である。
【0082】
同様に、図10と図11に示す入力装置120において、可動電極118を中心から離れる方向へ移動させるにしたがって、図6に示す振動周期Pを徐々に広くするなどの振動制御が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 入力検知装置
2 コイル
3 誘導部材
3A 外装ケース
5 駆動回路
8 トランジスタ
9 ダイオード
10 入力部
10a,10,10c,10d 入力部
11 第1の電極
12 第2の電極
12a,12b,12c,12d 第2の電極
13 ベースフィルム
14 ギャップフィルム
15 上部フィルム
16 スペーサフィルム
20 検知回路
20a,20b,20c,20d 検知回路
21 電圧増幅部
22 ピークホールド部
25 振動制御部
26 レベル検出部
27 波形出力部
28 OR回路
30 振動発生部
31 振動体
32 弾性支持部材
33,34 磁石
110,120 入力装置
Ia 検知用電流
Ib 振動用電流
S1 第1の駆動信号
S2 第2の駆動信号
E1 誘導電力
E2 二次誘導電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、前記コイルに接近して設けられた導電性の誘導部材と、前記コイルに交流の検知用電流を与える駆動回路と、前記コイルに前記検知用電流が与えられたときの逆起電力によって前記誘導部材に誘導される電力を検知する検知回路と、前記誘導部材から得られた電力を増減させる入力部と、を有することを特徴とする入力検知装置。
【請求項2】
前記コイルを含む振動発生部を有しており、前記検知回路からの出力が変動したときに、前記コイルに交流の振動用電流を与えて前記振動発生部に振動を発生させる振動制御部が設けられている請求項1記載の入力検知装置。
【請求項3】
前記振動制御部には、前記駆動回路に前記検知用電流を発生させる第1の駆動信号と、前記駆動回路に前記振動用電流を発生させる第2の駆動信号を生成する波形出力部が設けられている請求項2記載の入力検知装置。
【請求項4】
前記振動用電流は、前記振動発生部の固有振動数に一致しまたはこれに近似した周波数の交流電流であり、前記検知用電流は、前記固有振動数よりも高い周波数の交流電流である請求項3記載の入力検知装置。
【請求項5】
前記振動制御部では、前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号の論理和が前記駆動回路に与えられる請求項3または4記載の入力検知装置。
【請求項6】
前記誘導部材は、前記振動発生部を収納するケースである請求項2ないし5のいずれかに記載の入力検知装置。
【請求項7】
前記入力部は、前記誘導部材と導通する第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極とを有し、
前記第1の電極と前記第2の電極との対向距離の変化と対向面積の変化の少なくとも一方が変化したときの前記第2の電極の電力の変化が、前記検知回路で検知される請求項1ないし6のいずれかに記載の入力検知装置。
【請求項8】
前記入力部は、前記誘導部材と前記検知回路との間に設けられた可変抵抗部を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の入力検知装置。
【請求項9】
前記入力部は、前記第1の電極と前記第2の電極とを有する電極対が複数箇所に設けられており、複数の前記電極対を選択的に動作させる操作部材が設けられている請求項7記載の入力検知装置。
【請求項10】
前記入力部は、前記第1の電極と、それぞれが前記検知回路に接続された複数の前記第2の電極と、前記第1の電極および複数の前記第2の電極に選択的に対向する可動電極とを有している請求項1ないし6のいずれかに記載の入力検知装置。
【請求項11】
入力部は、前記可変抵抗部が複数箇所に設けられ、複数の前記可変抵抗部を選択的に変化させる操作部材が設けられている請求項8記載の入力検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−65495(P2013−65495A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204165(P2011−204165)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】