説明

入力機能付表示装置、および電子機器

【課題】タッチパネルに設けられた凹凸形状の粗いピッチと、表示面における画素の細かいピッチとに起因して画像の表示光が干渉を起こし、表示された画像が操作者に対してギラギラした感じを与えてしまうという不具合が生じることが確認された。このため、表示された画像が見え難くなってしまうという課題が生じていた。
【解決手段】タッチパネル1の表示面側と反対側の面には、光拡散を行う第1の凹凸形状22が形成され、表示面とタッチパネル1との間に、少なくとも表示面と対向する面またはタッチパネル1と対向する面のいずれかに光拡散を行う第2の凹凸形状82が形成された光拡散手段80が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などが接触した位置を検出可能なタッチパネルを備えた入力機能付表示装置、およびこの入力機能付表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター、券売機、銀行のATM端末などの電子機器においては、表示された画像や図柄や文字など(以降、これらを纏めて画像と呼ぶ)を指などによって押圧することによって所定の情報を電子機器に入力することが行われる。この入力手段として、表示パネルと、表示パネルの表示面に平面的に重ねて配置したタッチパネルとを備えた入力機能付表示装置が多用されている。このような入力機能付表示装置では、タッチパネルの操作者が、表示面に表示された画像の内容を視認してタッチパネルの該当個所を確実に押圧することができるように、表示された画像が常に操作者が視認しやすい状態で表示されることが肝要である。
【0003】
ところで、このような入力機能付表示装置では、タッチパネルの表面を指で押圧して操作するため、押された場所に操作者の指の指紋が付着することがある。すると、表示された画像は、操作者に対して付着した指紋によって見え難くなってしまう。そこで、例えば、特許文献1には、タッチパネルの表面に凹凸形状を形成する(アンチグレア処理とも呼ぶ)ことによって、表面反射を抑制するとともに、付着する指紋を見え難くする技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−96781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような指紋を見え難くする凹凸形状は、通常粗いピッチが好ましい。ところで、近年、表示される画像の高精細化が進み、表示パネルでは、画像の表示領域に細かい画素ピッチを有する複数の画素が設けられ、この高精細化された画像を表示する場合が多くなっている。このような場合、タッチパネルに設けられた凹凸形状の粗いピッチと、画像表示領域における画素の細かいピッチとに起因して、画素を通過した表示光が干渉を起こし、表示された画像が操作者に対してギラギラした感じを与えてしまうという不具合が生じることが確認された。このため、表示された画像が見え難くなってしまうという課題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]表示領域を有する表示パネルと、当該表示領域の少なくとも一部と平面的に重なって配設されたタッチパネルと、を備えた入力機能付表示装置であって、前記タッチパネルの前記表示領域と反対側の面には、光拡散を行う第1の凹凸形状が形成され、前記表示領域と前記タッチパネルとの間に、光拡散を行う第2の凹凸形状が形成された光拡散手段が配設されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1の凹凸形状によって指紋を見え難くすることができるとともに、第2の凹凸形状によって表示光の干渉を抑制することが可能となるので、表示画像を操作者に対してギラギラしたギラツキ感を与えない画像とすることが可能となる。
【0009】
[適用例2]上記入力機能付表示装置であって、前記第2の凹凸形状は、前記第1の凹凸形状よりも細かいピッチで形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1の凹凸形状によって効果的に指紋を見え難くするとともに、第1の凹凸形状よりも細かいピッチの第2の凹凸形状によって、表示画像のギラツキ感を適切に抑制することができる。
【0011】
[適用例3]上記入力機能付表示装置であって、前記光拡散手段は、前記タッチパネルと対向する面に前記第2の凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、表示画像のギラツキ感を抑制することができるとともに、操作者側に位置する光拡散板の表面において生ずる光反射を抑制することができる。従って、表示された画像が見え難くならないように抑制することができる。
【0013】
[適用例4]上記入力機能付表示装置であって、前記表示領域には、所定の画素ピッチを有する複数の画素が設けられ、前記第2の凹凸形状の凹凸ピッチは、前記画素ピッチに対して0.5倍以上2倍以下のピッチであることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、画素ピッチに対して、ギラツキ感を与えない適切な凹凸ピッチに形成することができる。従って、表示された画像が見え難くならないように抑制できる。
【0015】
[適用例5]上記入力機能付表示装置であって、前記光拡散手段は、散乱光線透過率を全光線透過率で割ったものを百分率で表したヘイズ値が20%以上50%以下であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、表示画像が見え難くならない範囲であって、ギラツキ感を抑制する範囲で、凹凸形状を形成した光拡散手段を提供することができる。
【0017】
[適用例6]上記入力機能付表示装置であって、前記表示パネルは液晶分子の配列方向の変化を利用して光変調する液晶パネルであることを特徴とする。
【0018】
液晶パネルは、薄型化が可能であり、かつ消費電力の少ない表示パネルである。従って、液晶パネルは、薄型および低消費電力の入力機能付表示装置用の表示パネルとして好適である。
【0019】
[適用例7]上記入力機能付表示装置であって、前記光拡散手段は前記液晶パネルが備える偏光板に設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、通常液晶パネルが備える偏光板を光拡散手段として用いるので、入力機能付表示装置の総厚の増加を抑制することができる。
【0021】
[適用例8]上記入力機能付表示装置を備えた電子機器。
【0022】
この構成によれば、表示された画像が指紋によって見え難くなったり、操作者に対してギラツキ感を与えたりすることがないように抑制された入力機能付表示装置を備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以降の説明において用いる図面は、説明のために誇張して図示している場合もあり、必ずしも実際の大きさや長さを示すものでないことは言うまでもない。
【0024】
(入力機能付表示装置の構成)
本発明を適用した一実施例となる入力機能付表示装置100について、図1および図2を用いて説明する。図1は、入力機能付表示装置100の概略構成を模式的に示した斜視図である。また図2は、図1に示した入力機能付表示装置100の主要な断面を模式的に示した断面図である。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施例の入力機能付表示装置100は、表示パネルとしての液晶パネル5と、この液晶パネル5において表示光(図中白抜き矢印)を射出する側の面に重ねて配置されたタッチパネル1とが、スペーサー3を挟んで貼り合わされた構造を有している。本実施例では、液晶パネル5は、透過型のアクティブマトリクス液晶パネルであり、複数の画素からなる表示領域としての画像表示領域110が設けられている。また、表示光の射出側とは反対側にバックライト装置(図示せず)が配置されている。
【0026】
液晶パネル5は、透光性の素子基板50と、この素子基板50に対して対向配置された状態でシール材70により貼り合わされた透光性の対向基板60と、対向基板60と素子基板50との間に保持された液晶層75とを備えている。また表示光の射出側に第1偏光板80が重ねて配置され、その反対側に第2偏光板90が重ねて配置されている。なお、素子基板50において、対向基板60の縁から張り出した張出領域には、液晶パネル5に対して画像を表示するための所定の信号を入力するフレキシブル基板73が接続されている。
【0027】
素子基板50には、液晶層75側の基板面に、表示する画像に応じて液晶層75の液晶分子の配列方向を変える電界を印加するための画素電極や対向電極、あるいはスイッチング素子などが形成されている。なお本実施例では、これらを図2において機能層55として簡略表示している。
【0028】
同じく図2に示すように、対向基板60には、液晶層75側の基板面に、遮光層(BM)で区画されたR(赤)、G(緑)、B(青)の各色フィルター領域を有するフィルター層65が所定の配列で形成されている。従って、バックライト装置から射出された光は、各色フィルターを通過した後、液晶層75の液晶分子の配列方向の変化に応じて光変調され、所定の明るさを有する表示光となって、第1偏光板80からタッチパネル1に向けて射出する。なお、本実施例では、フィルター層65が配列形成された領域が画像表示領域110に相当し、フィルター層65の配列ピッチが、画像表示領域110に形成された画素の画素ピッチに相当する。
【0029】
タッチパネル1は、抵抗膜型であり、ITO膜(Indium Tin Oxide)からなる透光性の第1電極15が内表面に形成された透光性の第1基板10と、ITO膜からなる透光性の第2電極25が内表面に形成された透光性の第2基板20とを、第1電極15と第2電極25とが所定の間隙を介して対向配置するようにシール材30で貼り合わされて形成されている。従って、その内側は空気層になっている。
【0030】
第1基板10および第2基板20としては透光性を有する薄いプラスチック基板や薄いガラス基板を用いることができ、本実施例では、第1基板10および第2基板20のいずれにおいても、薄いガラス基板が用いられている。第1基板10において、第2基板20の縁から張り出した張出領域には、第1電極15と第2電極25とが接触した箇所を示す情報信号を出力するためのフレキシブル基板33が接続されている。
【0031】
なお、図2において、タッチパネル1の第1電極15および第2電極25、あるいは液晶パネル5の画素電極や対向電極などについては、所定のパターン形状で形成されているが、ここでは簡略化してそれぞれ実線で示している。
【0032】
このように構成されたタッチパネル1は、接着剤などによって、液晶パネル5の第1偏光板80にスペーサー3を挟んで重ねて配置されて入力機能付表示装置100を構成する。この入力機能付表示装置100において、液晶パネル5は画像表示領域110内に動画や静止画を表示可能であり、これらの画像を表示することによって、タッチパネル1を介して入力を行う際の指示画像を表示するのである。従って、利用者は、液晶パネル5で表示された指示画像を見ながら、タッチパネル1を指で押下すれば、押下された箇所で第2基板20が撓み、第1電極15と第2電極25とが接触する。それ故、第1電極15と第2電極25とが接触した箇所を検出すれば、入力された情報を判別することができる。
【0033】
このように構成された入力機能付表示装置100において、前述したようにタッチパネル1を押下した時の指の跡(指紋など)を目立ちにくくするため、第2基板20の表示光の射出面(外表面)には、凹凸形状22が形成されている。凹凸形状22は、凸部間(あるいは凹部間)の平均ピッチが、押下時の指の跡(指紋など)が目立ちにくくなるピッチで形成されている。ちなみに、本実施例では、凹凸形状22の平均ピッチは、画素ピッチの約3倍で形成されている。
【0034】
さて、本実施例の入力機能付表示装置100は、タッチパネル1の第2基板20の外表面に加えて、液晶パネル5の第1偏光板80において、表示光が射出する側の面つまりタッチパネル1と対向する側の面に、凹凸形状82が形成されている。凹凸形状82は、凸部間(あるいは凹部間)の平均ピッチが、凹凸形状22の平均ピッチよりも小さい値で形成されている。ちなみに、本実施例では、凹凸形状82の平均ピッチは、画素ピッチの約0.5倍で形成されている。このように凹凸形状82を、凹凸形状22よりも細かいピッチで形成することによって、前述したように、画像表示領域110に表示された表示画像に生ずるギラツキ感を抑制することが可能である。すなわち、本実施例は、第1偏光板80に、平均ピッチが凹凸形状22の平均ピッチよりも小さい値の凹凸形状82を形成することによって光拡散手段を設け、これを画像表示領域110とタッチパネル1との間に配設することによって、表示画像に生ずるギラツキ感を抑制することができるのである。
【0035】
(ギラツキ感の抑制についての説明)
ここで、表示画像に生ずるギラツキ感の抑制について、図3を用いて説明する。なお、図2を含め、本実施例および以降の変形例の説明において用いる図面は、説明を容易にするため、凹凸形状を総て平均ピッチで図示している。
【0036】
図3(a)は、第1偏光板80において凹凸形状82が形成されない場合における表示光の拡散具合を示す模式図である。図3(b)は、第1偏光板80において凹凸形状82を形成した場合における表示光の拡散具合を示す模式図である。
【0037】
まず、図3(a)に示すように、第1偏光板80に凹凸形状82を形成しない場合は、バックライトから射出されフィルター層65を通過したR,G,Bの各表示光は、第1偏光板80において拡散されずに、凡そ平行光の状態で直進して第2基板20に入射する。このとき、凹凸形状22は画素ピッチの3倍のピッチで形成されているため、R,G,Bの各フィルター層65を通過したそれぞれの表示光は、光束が凡そ同じ方向に向くように拡散されることになる。つまり、画素を通過したR,G,Bの各表示光は、凡そ画素毎の領域を有する光束の纏まりで、互いに異なる方向に傾いて射出されることになる。従って、画像表示領域110において、R,G,Bの各表示光の光束が均一に分散せず偏って重るため光の強弱が発生する。この結果、表示画像は、操作者に対して視覚上ギラツキ感を与える画像になってしまう。
【0038】
これに対して、図3(b)に示すように、第1偏光板80に凹凸形状82を形成した場合は、バックライトから射出されフィルター層65を通過した各R,G,Bの各表示光は、第1偏光板80において拡散され、凹凸形状に応じた散乱光となって第2基板20に入射する。この場合は、第2基板20に形成された凹凸形状22は画素ピッチの3倍のピッチであるが、入射するR,G,Bの各表示光は拡散光であることから、第2基板20から射出されるR,G,Bの各表示光の光束は、画素毎の纏まりで1つの方向に射出されるということが無く、散乱光となって種々の方向に射出されることになる。この結果、画像表示領域110において、R,G,Bの各表示光の光束は均一に混じり合うことになるため、光の強弱が発生し難くなる。従って、表示画像は、操作者に対して視覚上ギラツキ感を与えることのない画像に抑制することができるのである。
【0039】
なお、本実施例では、凹凸形状82の平均ピッチを、画素ピッチの0.5倍としたが、上記説明から明らかなように、凹凸形状22の平均ピッチよりも細かいピッチであれば、R,G,Bの各表示光は、第1偏光板80において拡散されることが解かる。一方、凹凸形状82の平均ピッチが、画素ピッチの0.5倍以下とすると、凸部間あるいは凹部間の間隔が狭くなるために、凹凸形状の形成が困難になるという課題が生ずる。そこで、本実施例において実際に凹凸形状の平均ピッチを変えた第1偏光板80を試作し、操作者に対して視覚上ギラツキ感が抑制された表示画像を得ることができる平均ピッチを調べた。その結果、平均ピッチが画素ピッチの0.5倍以上2倍以下の凹凸形状が好ましいことが確認された。
【0040】
また、図3の説明から明らかなように、第1偏光板80において、凹凸形状82による表示光の光束の広がり(つまり拡散度)が大きいと、第2基板20を通過した表示光の拡散度も大きくなってしまう。すると、画像表示領域110の略法線方向に射出される表示光が減少して透過率が低下することになるため、操作者が観察する表示画像は暗くなる。また、表示光が散乱光となるため、表示画像はボケた画像になる。
【0041】
そこで、本実施例において、操作者に対して視覚上ギラツキ感を与えることのない表示画像が得られる範囲において、拡散度を調節することが好ましい。具体的には、第1偏光板80に形成する凹凸形状82の凹凸間の高さを変えることによって調節することができる。これを図4を用いて説明する。図4(a)は、図3における第1偏光板80とフィルター層65の、それぞれ一部を示した模式図であり、図4(b)は、図4(a)に示した凹凸形状82よりも凹凸間の高さが低い凹凸形状82aが第1偏光板80に形成された状態を示した模式図である。
【0042】
図示するように、第1偏光板80を通過するR,G,Bの各表示光は、凹凸形状82に比べて凹凸間の高さが低い凹凸形状82aの方が、原理的に光束の広がりが少なくなり、直進する光束が多くなる。従って、第2基板20を通過した表示光の拡散度が小さくなり、画像表示領域110の略法線方向に射出される表示光の減少割合が抑制される。この結果、透過率の低下が抑制されるので、操作者が観察する表示画像は暗くならず、またボケの少ない画像になる。
【0043】
本実施例では、第1偏光板80に形成した凹凸形状82の拡散度(凹凸間の高さ)を、周知のヘイズ値で規定する。実際に第1偏光板80の表面に形成される凹凸は、不規則なランダム形状であることが多い。従って、凹凸間の高さを一つの値で規定することが困難であることから、本実施例では、散乱光線透過率を全光線透過率で割ったものを百分率で表したヘイズ値を用いて、凹凸形状の拡散度とするのである。
【0044】
上述した内容から明らかであるが、ヘイズ値は、小さい値であると光拡散が少なくなるので表示画像にギラツキ感が生じ、大きな値であると光拡散が多くなるので表示画像がボケるという関係になる。そこで、本実施例において実際に凹凸形状を変えた第1偏光板80を試作し、操作者に対して視覚上ギラツキ感を与えることなく、かつ操作者が観察する表示画像は暗くならずボケの少ない表示画像を得ることができるヘイズ値の範囲を調べた。その結果、ヘイズ値が20%以上50%以下である凹凸形状を形成すればよいことが確認された。更に、より好ましくは、ヘイズ値が40%以上50%以下である凹凸形状を形成するとよいことが確かめられた。なお、このとき用いた第1偏光板80の厚さは、約0.1〜0.3mmである。
【0045】
また、本実施例では、図2に示した如く、液晶パネル5を構成する第1偏光板80において、タッチパネル1と対向する面に凹凸形状82を形成した。従って、液晶パネル5とタッチパネル1との間に、凹凸形状82が形成された第1偏光板80が配置されることになり、液晶パネル5における表示画像に対して、凹凸形状22よりも近い距離で表示光を拡散することになる。この結果、表示面から射出される表示光を、画素毎に効果的に拡散する効果を奏する。
【0046】
この効果について、図5を用いて説明する。図5は、図3における第1偏光板80とフィルター層65とについて、それぞれの一部を示した模式図である。図5(a)は、第1偏光板80とフィルター層65との間が距離S1で形成された状態を示し、図5(b)は、第1偏光板80とフィルター層65との間が、図5(a)に示した距離S1よりも遠い距離S2で形成された状態を示している。
【0047】
ここで、フィルター層65を通過し、その後第1偏光板80に入射するR,G,Bの各表示光は、実際には光束の広がりが少なからず発生していると考えられる。従って、距離とともに直進以外の斜めの光束が多くなる。このとき、図5(a)に示したように、距離S1が小さい値の場合は、フィルター層65を通過したR,G,Bの各表示光は、凡そ光束が広がっていない直進光と実質的に見なすことができる。従って、第2基板20を通過した表示光の拡散度は、凹凸形状82に応じた値となる。
【0048】
これに対して、距離S2が大きい値の場合は、フィルター層65を通過し、その後第1偏光板80に入射するR,G,Bの各表示光において直進以外の斜めの光束が多くなる。従って、図5(b)に示したように、第2基板20を通過した表示光の拡散度は、凹凸形状82に応じた値よりも大きくなってしまう。加えて、画素間においてR,G,Bの各表示光の光束が第1偏光板80への入射時点で、互いに混ざり合うことも起こり得る。この結果、R,G,Bの各表示光について、それぞれを個別に拡散することが出来ず、光束が混ざった状態で拡散することになるので、操作者が観察する表示画像は一層ボケた画像になりやすい。
【0049】
そこで、本実施例では、フィルター層65からの距離を最短にするため、前述したように第1偏光板80に凹凸形状82を形成するのである。こうすることで、R,G,Bの各表示光を、それぞれ個別に拡散することが出来るので、表示光を効果的に拡散することが可能となる。
【0050】
さらに、本実施例では、第1偏光板80において、タッチパネル1と対向する面に凹凸形状82を形成しているので、操作者側すなわちタッチパネル1側から液晶パネル5に入射する外光の正反射を抑制することができる。具体的には、第1偏光板80の表面において外光が反射する際、凹凸形状82によって乱反射させて正反射を抑えることができる。従って、画像表示領域110に表示された表示画像が、外光の反射により見えにくいという問題を抑制することができる。
【0051】
[電子機器]
次に、上述した実施例に係る入力機能付表示装置100を備えた電子機器について説明する。図6(a)に、入力機能付表示装置100を備えたモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての入力機能付表示装置100と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
【0052】
図6(b)に、入力機能付表示装置100を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての入力機能付表示装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、入力機能付表示装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0053】
図6(c)に、入力機能付表示装置100を備えた情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants )の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての入力機能付表示装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が入力機能付表示装置100に表示される。
【0054】
なお、入力機能付表示装置100が備えられる電子機器としては、図6に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末などが挙げられる。もとより、これらの各種電子機器の表示部として、前述した入力機能付表示装置100を備えることが可能である。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下、変形例を挙げて説明する。
【0056】
(第1変形例)
上記実施例では、第1偏光板80において、タッチパネル1と対向する面に凹凸形状82を形成して光拡散手段を設けることとしたが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、タッチパネル1と対向する面と反対側の面に、凹凸形状を形成することとしてもよい。本変形例について、図7を用いて説明する。
【0057】
図7は、本変形例の入力機能付表示装置100aの主要な断面を模式的に示した断面図である。入力機能付表示装置100aは、図2に示した上記実施例の入力機能付表示装置100に対して、凹凸形状82を素子基板50と対向する面側に形成した第1偏光板80を、素子基板50に貼り付けて備えたものである。従って、入力機能付表示装置100aの構成要素については、上記実施例の入力機能付表示装置100(図2)と同一であるので、ここでは説明を省略し、第1偏光板80についての効果について説明する。
【0058】
図示するように、本変形例では、第1偏光板80に形成した凹凸形状82が素子基板50側になるので、フィルター層65に近づくことになる。この結果、前述したように、フィルター層65を通過した表示光は、さらに光束が広がらない状態において光散乱することができる。従って、凹凸形状に則した拡散度でR,G,Bの各表示光を適切に拡散することができる。この結果、外光の正反射を抑制することは困難ではあるが、操作者に対して視覚上ギラツキ感を与えることなく、かつ操作者が観察する表示画像は暗くならずボケの少ない表示画像を、より的確に得ることが期待できる。
【0059】
(第2変形例)
上記実施例では、第1偏光板80に凹凸形状を形成することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、第1偏光板80とタッチパネル1との間に、タッチパネル1と対向する面に凹凸形状を形成した別の拡散部材を備えることとしてもよい。本変形例について、図8を用いて説明する。
【0060】
図8は、本変形例の入力機能付表示装置100bの主要な断面を模式的に示した断面図である。入力機能付表示装置100bは、図2に示した上記実施例の入力機能付表示装置100に対して、拡散部材としての拡散板85を追加して備えたものである。従って、ここでは拡散板85についてのみ説明し、他の構成要素については、図2と同符号を付してその説明を省略する。
【0061】
拡散板85は、図示するように、スペーサー3に囲まれた領域において、透光性の接着剤等を用いて液晶パネル5(第1偏光板80)に貼り付けられている。拡散板85は、透光性を有する樹脂板やガラス板を用いることができる。そして、拡散板85のタッチパネル1に対向する面には、化学的な加工(例えばエッチング)や機械的な加工(例えば樹脂粒子の衝突加工)あるいは塗布加工などによって、上述した実施例で説明した平均ピッチおよびヘイズ値を有する凹凸形状が形成されている。
【0062】
通常第1偏光板80は延伸材料などの特殊材料が用いられるために高額材料であることから、凹凸形状の形成歩留まりが低い場合は、コストアップの原因となる虞がある。これに対して、本変形例は、第1偏光板80とは異なる別部材の拡散板85を備えるので、入力機能付表示装置100bの総厚が増えるというデメリットはあるものの、拡散板85を第1偏光板80よりも安価な材料で形成することが可能であることから、凹凸形状の形成歩留まりが低い場合でも、コストアップを抑制することができる。
【0063】
(第3変形例)
上記実施例では、第1偏光板80において、タッチパネル1と対向する面の片面に凹凸形状82を形成することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、タッチパネル1と対向する面と反対側の面にも凹凸形状を形成して、第1偏光板80の両面に凹凸形状を形成することとしてもよい。本変形例について、図9を用いて説明する。
【0064】
図9は、本変形例の一例としての入力機能付表示装置100cについて、その主要な断面を模式的に示した断面図である。入力機能付表示装置100cは、図2に示した上記実施例の入力機能付表示装置100に対して、上記第2変形例と同様、拡散部材としての拡散板85aを追加して備えたものである。従って、ここでは拡散板85aについてのみ説明し、他の構成要素については、図2と同符号を付してその説明を省略する。
【0065】
拡散板85aは、図示するように、スペーサー3に囲まれた領域において、接着剤等を用いて液晶パネル5(第1偏光板80)に貼り付けられている。拡散板85aは、透光性を有する樹脂板やガラス板を用いることができる。そして、拡散板85aの両面には、エッチング加工や機械加工などによって、所定の平均ピッチおよび凹凸間の高さを有する凹凸形状がそれぞれ形成されている。
【0066】
本変形例によれば、上述した実施例において説明した平均ピッチおよびヘイズ値を有する凹凸形状と同等の形状を、拡散板85aの両面に形成された2つの凹凸形状によって形成することができる。例えば、上記実施例の第1偏光板80に形成された凹凸形状82の凹凸間の高さの約半分の高さの凹凸形状を、拡散板85aの両面にそれぞれ形成することによって、上述した実施例において説明したヘイズ値と同等のヘイズ値を有する凹凸形状を形成することができる。あるいは、上記実施例の第1偏光板80に形成された凹凸形状82の平均ピッチの約半分のピッチの凹凸形状を、拡散板85aの両面にそれぞれ形成することによって、上述した実施例において説明した平均ピッチと同等のピッチを有する凹凸形状を形成することができる。
【0067】
従って、本変形例によれば、両面に形成する必要はあるものの、平均ピッチが粗く、あるいは凹凸間の高さが低い凹凸形状を、それぞれの面に形成すればよいことから、凹凸形状の加工作業が容易となる効果を奏する。なお、本変形例は、上記実施例の第1偏光板80に対して適用できることは勿論である。
【0068】
また、本変形例によれば、拡散板85aの両面に形成する凹凸形状は、粗い平均ピッチでよいことから、これらの平均ピッチは、必ずしもタッチパネル1に形成された凹凸形状22よりも細かい平均ピッチに限定されるものでないことは勿論である。
【0069】
(その他の変形例)
上記実施例では、表示パネルとして、薄型化が可能であり、かつ消費電力の少ないという利点を有する液晶パネルを用いるものとして説明したが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、有機あるいは無機のエレクトロルミネッセンス(EL)や電気液動素子を用いた表示体、あるいはプラズマやCRT方式を用いた表示体を、表示パネルとして用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例の入力機能付表示装置の構成を模式的に示した斜視図。
【図2】本実施例の入力機能付表示装置の主要な断面を模式的に示した断面図。
【図3】表示光の拡散具合を示す模式図で、(a)は偏光板において凹凸形状が形成されない場合、(b)は偏光板において凹凸形状を形成した場合を示す図。
【図4】表示光の拡散具合を示す模式図で、(a)は凹凸間の高さが高い凹凸形状が偏光板に形成された状態、(b)は凹凸間の高さが低い凹凸形状が偏光板に形成された状態を示す図。
【図5】表示光の拡散具合を示す模式図で、(a)はフィルター層と偏光板とが近い場合、(b)はフィルター層と偏光板とが遠い場合を示す図。
【図6】入力機能付表示装置を備えた電子機器で、(a)はモバイル型のパーソナルコンピューター、(b)は携帯電話機、(c)は情報携帯端末の構成を示す模式図。
【図7】第1変形例の入力機能付表示装置の主要な断面を示した模式断面図。
【図8】第2変形例の入力機能付表示装置の主要な断面を示した模式断面図。
【図9】第3変形例の入力機能付表示装置の主要な断面を示した模式断面図。
【符号の説明】
【0071】
1…タッチパネル、3…スペーサー、5…液晶パネル、10…第1基板、15…第1電極、20…第2基板、22…凹凸形状、25…第2電極、30…シール材、33…フレキシブル基板、50…素子基板、55…機能層、60…対向基板、65…フィルター層、70…シール材、73…フレキシブル基板、75…液晶層、80…第1偏光板、82,82a…凹凸形状、85,85a…拡散板、90…第2偏光板、100,100a,100b,100c…入力機能付表示装置、110…画像表示領域、2000…パーソナルコンピューター、2001…電源スイッチ、2002…キーボード、2010…本体部、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン、4000…情報携帯端末、4001…操作ボタン、4002…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有する表示パネルと、当該表示領域の少なくとも一部と平面的に重なって配設されたタッチパネルと、を備えた入力機能付表示装置であって、
前記タッチパネルの前記表示領域と反対側の面には、光拡散を行う第1の凹凸形状が形成され、
前記表示領域と前記タッチパネルとの間に、光拡散を行う第2の凹凸形状が形成された光拡散手段が配設されていることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力機能付表示装置であって、
前記第2の凹凸形状は、前記第1の凹凸形状よりも細かいピッチで形成されていることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の入力機能付表示装置であって、
前記光拡散手段は、前記タッチパネルと対向する面に前記第2の凹凸形状が形成されていることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置であって、
前記表示領域には、所定の画素ピッチを有する複数の画素が設けられ、
前記第2の凹凸形状の凹凸ピッチは、前記画素ピッチに対して0.5倍以上2倍以下のピッチであることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置であって、
前記光拡散手段は、散乱光線透過率を全光線透過率で割ったものを百分率で表したヘイズ値が20%以上50%以下であることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置であって、
前記表示パネルは液晶分子の配列方向の変化を利用して光変調する液晶パネルであることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の入力機能付表示装置であって、
前記光拡散手段は前記液晶パネルが備える偏光板に設けられていることを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−170447(P2010−170447A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13867(P2009−13867)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】