説明

入力装置、入力方法及びプログラム

【課題】 通常のタッチ操作を阻害せず、手間やコストを掛けずに不本意な動作態様の変更が行われないようにする。
【解決手段】 明るさ検出手段(102)の検出結果が所定の明るさ以下で且つ距離検出手段(103)の検出結果が所定の距離以下であるときに表示制御手段(106)に対して第1の表示態様から第2の表示態様への変更を指令する指令手段(107)と、表示手段(101)の表示態様が前記第2の表示態様であるときに物理キー(104)に対するユーザ操作が行われていた場合にはタッチパネル(100)へのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段(108)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、入力方法及びプログラムに関し、詳細には、携帯可能な小型電子機器に適用する入力装置、入力方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種コンピュータ応用機器の入力装置としてタッチパネルが広く用いられている。特に、携帯電話機やスマートフォンなどの携帯型の小型電子機器にあっては、入力装置としてタッチパネルの搭載が一般化しつつある。小さな筐体にできるだけ大きな画面サイズの表示装置を搭載するという要求があるため、ますます、物理的なキーボードを組み込むスペース的な余裕が少なくなる傾向にあるからである。
【0003】
タッチパネルは静電容量方式と抵抗膜方式の二つに大別されるが、今日における携帯型小型電子機器の主流は、指先で操作できる前者の静電容量方式である。
【0004】
タッチパネルは、液晶ディスプレイ等の表示装置の画面に貼り合わされた透明なタッチデバイスであり、このタッチデバイスを透して画面の情報を視認することができる。このため、たとえば、画面上にコマンドボタンなどを表示しておけば、このボタンなどに対するタッチ操作(つまり、タッチデバイスに対する操作)を直感的に行うことができ、操作性の改善を図ることができる。しかも、上記のコマンドボタンなどは、ソフトウェアによって任意に作成して表示できるから、レイアウトの自在性や改修の容易性も図ることができるという様々な利点が得られる。
【0005】
このような多くの利点を有するタッチパネルであるが、一方で、ポケットやバッグなどに入れたままの状態での目隠し操作(以下、ブラインド操作)を行う際の誤操作を否めないという不都合があった。タッチパネルを透して見えるコマンドボタン等はソフト的に描かれた図形に過ぎないので、一切の手触り感がなく、意図したボタン等を正確にブラインド操作できないからである。
このため、たとえば、会議などの最中に電話着信音が突然鳴った際、ブラインド操作で音を消そうとして間違って着信応答ボタン(オンフックボタン)を押してしまうなどの誤操作を招くことがあった。
【0006】
したがって、ブラインド操作を行う際の誤操作を防止できる技術が求められている。
【0007】
下記の特許文献1には、光センサを備え、この光センサの出力に基づいて鞄などに入れられている状態(周囲が暗い状態)であるか否かを判定するとともに、当該判定時にはタッチパネルの操作に応答した自動起動を禁止して電力の無駄な消費を防止する技術が記載されている。
下記の特許文献2には、タッチパネルに対する操作を二つの態様で使い分ける技術が記載されており、詳細には、第一の態様は明るい環境で用いられる通常のタッチ操作、第第二の態様はポケット内やバッグ内などの暗い環境で用いられるブラインド用のタッチ操作であり、明るい環境か暗い環境かの判定は照度センサの出力に基づいて行うとしている。
下記の特許文献3には、タッチパネルに対してブラインドタッチを行う際に、指先の動きから手首の方向を判定し、その方向に対応させてタッチパネル上の操作ボタンの配置を変更するという技術が記載されている。
下記の特許文献4には、近接センサを備え、この近接センサの検出信号に基づいて、ディスプレイの電力設定を変更するという技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−069235号公報
【特許文献2】特開2009−123004号公報
【特許文献3】特開2010−211401号公報
【特許文献4】特表2010−507870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1〜4に記載の技術は、以下の問題点を有している。
<特許文献1>
単に光センサの出力に基づいて「周囲が暗い状態」であるか否かを判定するものに過ぎない。このため、たとえば、夜間の屋外や暗い室内などの暗い環境(暗さを除けば通常の使用環境ともいえる)においても、鞄などに入れられている状態と同様の判定が行われてしまい、通常のタッチ操作を阻害する恐れがある。
<特許文献2>
特許文献1と同じ問題点を有している。つまり、明るい環境か暗い環境かの判定を照度センサの出力に基づいて行っているため、夜間の屋外や暗い室内なども暗い環境として判定される恐れがある。
<特許文献3>
事前に、指に所定の動き(指先を立ててタッチパネルに触れた後、その指先を手先方向にずらす)をさせる必要があるため、手間がかかって面倒であるという問題点があるうえ、そのような指の動きを検出するには、指先の多点検出が可能な投影型静電容量方式のタッチパネルを備えなければならす、コストがかさむという問題点がある。
<特許文献4>
近接センサの検出信号に基づいて、ディスプレイの電力設定を変更するので、たとえば、タッチパネルに手をかざしただけで不本意にディスプレイの電力設定が変更されてしまう恐れがある。
このように、上記の特許文献1〜4の技術にあっては、通常のタッチ操作を阻害する恐れがある、手間がかかって面倒でしかもコストがかさむ、タッチパネルに手をかざしただけで不本意にディスプレイの電力設定が変更されてしまう恐れがあるという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、通常のタッチ操作を阻害せず、手間やコストを掛けず、且つ、不本意な動作態様の変更(ディスプレイの電力設定変更など)が行われない入力装置、入力方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の入力装置は、タッチパネル付きの表示手段と、本体周囲の明るさを検出する明るさ検出手段と、本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出手段と、本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出手段と、前記表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御手段と、前記明るさ検出手段の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出手段の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御手段に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令手段と、前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出手段によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の入力方法は、本体周囲の明るさを検出する明るさ検出工程と、本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出工程と、本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出工程と、タッチパネル付き表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御工程と、前記明るさ検出工程の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出工程の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御工程に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令工程と、前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出工程によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容工程とを含むことを特徴とする。
本発明のプログラムは、入力装置のコンピュータに、本体周囲の明るさを検出する明るさ検出手段、本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出手段、本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出手段、タッチパネル付き表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御手段、前記明るさ検出手段の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出手段の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御手段に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令手段、前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出手段によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段としての機能を与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常のタッチ操作を阻害せず、手間やコストを掛けず、且つ、不本意な動作態様の変更(ディスプレイの電力設定変更など)が行われない入力装置、入力方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る携帯電話機の外観図である。
【図2】携帯電話機1の概念的な内部ブロック図である。
【図3】中央制御部13のCPU13aで実行される制御プログラムの要部フローを示す図である。
【図4】通常操作用の表示態様の一例を示す図である。
【図5】ブラインド操作用の表示態様の一例を示す図である。
【図6】付記1の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る携帯電話機の外観図である。この図において、携帯電話機1は、手持ちに適した形状、たとえば、薄型箱形状の筐体2の主面(表面であって主たる操作対象となる面のこと)にタッチパネル3を設けるとともに、そのタッチパネル3の背面に液晶ディスプレイやELパネルなどの二次元表示デバイスからなる表示部4を設け、また、そのタッチパネル3の上端辺側の筐体2の表面に受話器としてのスピーカ5と、照度センサ6と、近接センサ7とを設け、さらに、そのタッチパネル3の下端辺側の筐体2の表面に送話器としてのマイク8と、物理キー9とを設けている。これらの部品配置のうち、タッチパネル3を含む表示部4、スピーカ5及びマイク8を除く部品、つまり、照度センサ6や近接センサ7及び物理キー9の配置は、図示の例に限定されない。後述の条件を満たす位置であればよい。
【0015】
なお、筐体2の任意部分に、電源スイッチやバッテリ充電用端子などが設けられているが、図では省略している。
【0016】
図2は、携帯電話機1の概念的な内部ブロック図である。この図において、携帯電話機1は、無線通信部10、音声入出力部11、照度センサ6、近接センサ7、物理キー9、表示部4、タッチパネル3、電源部12及び中央制御部13を備える。
【0017】
無線通信部10は、アンテナ10aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で無線によるデジタルデータの送受信を行う。デジタルデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれる。この無線通信部10は、中央制御部13からの制御に従って、上記のデジタルデータの送信や受信を行う。
【0018】
音声入出力部11は、中央制御部13からの制御により、マイク8で拾った音声信号をデジタルデータに変換して中央制御部13に出力したり、中央制御部13から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ5から拡声したりする。
【0019】
照度センサ6は、携帯電話機1の周囲の明るさを検出して、その検出信号を中央制御部13へ出力する。周囲とは、携帯電話機1の全周方向であってもよいが、少なくとも携帯電話機1の主面(タッチパネル3が設けられている面)が向いている方向とその主面に交差する側面が向いている方向のいずれかであればよい。したがって、この照度センサ6を設ける位置は、主面または側面であればよく、この条件(主面または側面)を満たす限り、如何なる位置であってもかまわない。また、照度センサ6で検出される明るさは、照度であってもよく、あるいは、放射束や光束、光度、色温度または輝度などであってもよい。
【0020】
近接センサ7は、近く(数センチメートルから数十センチメートル程度)に位置する物体までの距離を検出するセンサであり、たとえば、高周波発振形や静電容量形などのセンサを用いることができる。この近接センサ9の検出方向も携帯電話機1の周囲であるが、上記の照度センサ6と同様に、この周囲も、少なくとも携帯電話機1の主面(タッチパネル3が設けられている面)が向いている方向とその主面に交差する側面が向いている方向のいずれかであればよい。したがって、この近接センサ7を設ける位置も、主面または側面であればよく、この条件(主面または側面)を満たす限り、如何なる位置であってもかまわない。
【0021】
物理キー9は、ユーザによって適宜に操作される入力デバイスであり、操作されている間、所定の操作信号を中央制御部13に継続的又は断続的に出力する。物理キー9とは、物理的に存在する入力デバイス(押し下げ式のボタンやキーなどのスイッチ、またはスライド式のスイッチなど)のことをいい、特に、手で触ってその存在を知ることができる特異な感触(手触り感)を持つ入力デバイスのことをいう。
【0022】
かかる特異な感触は、たとえば、キー(またはボタン)の表面に突起を設けたり、または、ディンプル加工などの特殊加工を施したりして得ることができるが、これに限定されない。周囲の感触(筐体2の表面の感触)と異なる感触をキー(またはボタン)の表面に有していればよい。また、この物理キー9は、押し下げ式やスライド式などの機械的なスイッチに限定されない。表面の感触が周囲と異なるものであればよく、たとえば、指先の接触を検出する、いわゆるタッチセンサなどであってもよい。
【0023】
物理キー9を設ける位置は、ユーザによって操作しやすい位置であればよい。したがって、この条件(操作しやすい位置)を満たす限り、物理キー9を如何なる位置に設けてもかまわない。
【0024】
表示部4は、先にも説明したとおり、その前面に、人体の一部(一般的には指先)の接触を検知できる静電容量方式のタッチパネル3を併設している。なお、「併設」は、表示部4の前面にタッチパネル3を“接着固定”するという意味であってもよく、あるいは、“非接着”で単に動かない(面方向にずれない)という意味であってもよい。また、多くのタッチパネルは、それ自体が独立した1つの部品であるが、これに限らず、たとえば、表示部4に組み込まれた(一般的には保護ガラスと表示層との間にタッチパネル層が挟み込まれている)一体型のものであってもよい。
【0025】
電源部12は、一次電池または充電可能な二次電池からなるバッテリを含み、このバッテリの電力から携帯電話機1の動作に必要な各種電源電圧を発生して各部に供給する。
【0026】
中央制御部13は、コンピュータまたはマイクロコンピュータ(以下、CPU)13aや読み出し専用半導体メモリ(以下、ROM)13b及び高速半導体メモリ(以下、RAM)13cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、あらかじめROM13bに格納されている制御プログラムなどの制御データをRAM13cにロードしてCPU13aで実行することにより、各種の処理を逐次に実行して、この携帯電話機1の全体動作を統括制御する。
【0027】
次に、実施形態の動作について説明する。
図3は、中央制御部13のCPU13aで実行される制御プログラムの要部フローを示す図である。この制御プログラムは、CPU13aで実行される制御プログラムのうち本実施形態の動作に係る部分を抜粋し、さらにその流れを把握しやすくするために単純化(模式化)したものであり、極めて短い所定の周期ごとにCPU13aで繰り返し実行されるものである。
【0028】
この制御プログラムを開始すると、まず、周囲の明るさ判定と周囲の物体判定とを行う(ステップS1とステップS2)。明るさの判定は、照度センサ6の検出結果(以下、検出照度という)と所定の照度閾値とを比較し、検出照度が所定の照度閾値以下であるか否かを判定するというものであり、また、周囲の物体判定は、近接センサ7の検出結果(周囲の物体までの距離。以下、検出距離という)と所定の距離閾値とを比較し、検出距離が所定の距離閾値以下であるか否かを判定するというものである。ここで、照度閾値は、たとえば、ポケットやバッグなどの暗い環境下における明るさ相当とし、また、距離閾値は、同環境下における近傍物体(たとえば、ポケットであれば周囲の布地、バックであれば内壁など)までの距離相当とする。なお、当然ながら、これらの閾値は判定余裕のための若干のマージンを持っている。つまり、実際には、照度閾値は同環境下における明るさに所定の明るさマージンを加えた値であり、また、距離閾値も同様に同環境下における近傍物体までの距離に所定の距離マージンを加えた値である。
【0029】
かかる二つの判定(周囲の明るさ判定と周囲の物体判定)においては、要するに、携帯電話機1が通常の使用環境に置かれているのか、あるいは、ポケットやバックなどの閉鎖空間で且つ暗い環境に置かれているのかを判定している。すなわち、ステップS1の判定結果がNOの場合は、明るい環境(以下、第1の環境という)に置かれていると判定し、また、ステップS1の判定結果がYESの場合は、さらに、ステップS2の判定結果を調べて、その判定結果がNOの場合は、暗い環境であるが閉鎖されていない開放環境(以下、第2の環境という)に置かれていると判定する一方、そのステップS2の判定結果がYESの場合は、暗い環境で且つ閉鎖された環境(以下、第3の環境という)に置かれていると判定する。
【0030】
第1の環境は所定の閾値(照度閾値)を上回る明るさの環境であり、たとえば、日光が差し込む室内や照明された室内あるいは日中の屋外などの環境であるから、この第1の環境が判定された場合、タッチパネル3に対して行われる通常のタッチ操作(目視を伴うタッチ操作)に何らの支障もない。したがって、この第1の環境が判定されたとき(ステップS1の判定結果がNOのとき)は、表示部4の表示を「通常操作用の表示態様」とし(ステップS3)、今回のフローを終了する。
【0031】
第2の環境は所定の閾値(照度閾値)を下回る明るさで且つ周囲に物体が存在しない開放された環境であり、たとえば、照明が消された(あるいは照明を暗くした)室内や夜間の屋外などの環境であるから、この第2の環境が判定された場合も、暗さを我慢すれば、タッチパネル3に対して行われる通常のタッチ操作(目視を伴うタッチ操作)に何らの支障もない。したがって、この第2の環境が判定されたとき(ステップS1の判定結果がYESで且つステップS2の判定結果がNOのとき)も、上記の第1の環境判定時と同様に、表示部4の表示を「通常操作用の表示態様」とし(ステップS3)、今回のフローを終了する。
【0032】
このように、日光が差し込む室内や照明された室内あるいは日中の屋外などの明るい環境下では、表示部4の表示を「通常操作用の表示態様」とすることができ、また、照明が消された室内や夜間の屋外などの環境下でも、表示部4の表示を「通常操作用の表示態様」とすることができる。「通常操作用の表示態様」については後述する。
【0033】
さて、第3の環境は所定の閾値(照度閾値)を下回る明るさで且つ周囲に物体が存在する非開放の環境である。このような環境は、典型的にはポケットの中やバッグの中などである。かかる環境下におけるタッチパネル3への操作は、目視を伴わないタッチ操作、すなわち、手探りの操作(ブラインド操作)を余儀なくされるが、表示部4の表示を「通常操作用の表示態様」のままにしてブラインド操作を行うと、以下の不都合を招く。
【0034】
図4は、通常操作用の表示態様の一例を示す図である。この図において、タッチパネル3の直下に位置する表示部4の画面には、任意のコントロール(図では便宜的に5つのコマンドボタン14〜18)が配置されている。これらのコマンドボタン14〜18は、たとえば、メニューであり、タッチパネル3を介して第1のコマンドボタン14をタッチすると、その第1のコマンドボタン14に割り当てられている所定のプログラム(以下、第1のプログラムという)が実行されるようになっている。同様に、タッチパネル3を介して第2のコマンドボタン15をタッチすると、その第2のコマンドボタン15に割り当てられている所定のプログラム(以下、第2のプログラムという)が実行され、また、タッチパネル3を介して第3のコマンドボタン16をタッチすると、その第3のコマンドボタン16に割り当てられている所定のプログラム(以下、第3のプログラムという)が実行され、また、タッチパネル3を介して第4のコマンドボタン17をタッチすると、その第4のコマンドボタン17に割り当てられている所定のプログラム(以下、第4のプログラムという)が実行され、また、タッチパネル3を介して第5のコマンドボタン18をタッチすると、その第5のコマンドボタン18に割り当てられている所定のプログラム(以下、第5のプログラムという)が実行されるようになっている。
【0035】
ここで、第1〜第5のコマンドボタン14〜18は、通常操作用のコマンドボタンである。つまり、目視を伴って行われるタッチ操作用のコマンドボタンである。したがって、それらのコマンドボタン(第1〜第5のコマンドボタン14〜18)の大きさは、一般的な画面設計の習わしに従い、操作のしやすさを第一義的に考慮したものとなり、多くの場合、指先の大きさに対応した適切な大きさに設計されることになる。さて、かかる大きさを有するコマンドボタン(第1〜第5のコマンドボタン14〜18)は、目視を伴うタッチ操作の場合、当然ながら意図したボタンを間違いなく操作することができる。しかし、目視を伴わないタッチ操作、つまり、ブラインド操作の場合は、しばしば、間違ったボタンにタッチしてしまうという誤操作を招きやすい。これは、目視を伴うタッチ操作の場合には最適といえるボタンの大きさであっても、ブラインド操作の場合には、目視に頼らずに複数のボタンの中から意図したボタンを見つけ出すのが難しいからである。
【0036】
かかる点に鑑み、本実施形態では、ブラインド操作が行われるであろう環境(前記の第3の環境)では、表示部4の表示を、図4の通常操作用の表示態様から、以下に説明する「ブラインド操作用の表示態様」に変更する(ステップS4)ようにした。
【0037】
図5は、ブラインド操作用の表示態様の一例を示す図である。この図において、タッチパネル3の直下に位置する表示部4の画面には、任意のコントロール(図では便宜的に1つのコマンドボタン19)が配置されている。このコマンドボタン19は、たとえば、図4に示した5つのコマンドボタン(第1〜第5のコマンドボタン14〜18)のうちの1つに対応させてもよく、特に、ブラインド操作時に選択される可能性がある1つのコマンドボタンに対応させてもよい。以下、このコマンドボタン19を第iのコマンドボタン19ということにする。第iのコマンドボタン19を第1〜第5のコマンドボタン14〜18に対応させる場合、iは1〜5のいずれかになる。
【0038】
このブラインド操作用の表示態様においても、タッチパネル3を介して第iのコマンドボタン19をタッチすると、その第iのコマンドボタン19に割り当てられている所定のプログラム(以下、第iのプログラムという)が実行されるようになっている。
【0039】
「通常操作用の表示態様」との違いは、目視を伴わないブラインド操作時においても、その第iのコマンドボタン19を間違いなく操作できるように、ボタンの大きさや配置などを最適設計している点にある。たとえば、図示のように、1個のコマンドボタン(第iのコマンドボタン19)とするとともに、その1個のコマンドボタン(第iのコマンドボタン19)をできるだけ大きくし、且つ、表示部4の所定位置(たとえば、中央等)に配置するなどは最適設計の好ましい例である。表示部4の概ね中央付近にタッチすればよいからであり、そのようなタッチ操作は目視によらず誰でも間違いなく行うことができるからである。
【0040】
このように、第3の環境下における表示部4の表示を「通常操作用の表示態様」(図4参照)から「ブラインド操作用の表示態様」(図5参照)に変更することにより、ブラインド操作の間違いを一応解消できるが、それだけでは誤操作の解消を確実なものとすることができない。
【0041】
たとえば、携帯電話機1を入れたポケットに手を差し込んだときに、偶然に手先が携帯電話機1のタッチパネル3に触れてしまうことがあるが、このような場合には、たとえば、図5の例であれば、第iのコマンドボタン19に対して意図しないタッチ操作が発生してしまう可能性がある。
【0042】
かかる誤操作は、たとえば、第iのコマンドボタン19に割り当てられている第iのプログラムが待機モード(表示部4のバックライトを消灯するモード)からの復帰プログラムであれば、表示部4のバックライトが点灯して無駄な電力消費を招くという不都合発生につながり、あるいは、第iのプログラムが電話帳の先頭に登録されている特定相手への自動発信プログラムであれば、不要な電話発信が行われてしまうという不都合発生につながるから、そのようなブラインド操作の間違いが生じない何らかの対策を講じなければならない。
【0043】
本実施形態において、かかる対策は、図3のステップS5〜ステップS7で具現化されている。すなわち、ステップS4で表示部4の表示を「ブラインド操作用の表示態様」(図5参照)に変更すると、次のステップS5でタッチパネル3へのタッチ操作の有無を判定し、タッチ操作が行われていなければ、そのまま今回のフローを終了し、タッチ操作が行われている場合は、次いで、ステップS6で物理キー9の押し下げを判定し、そして、物理キー9が押し下げられていなければ、そのまま今回のフローを終了する一方、物理キー9が押し下げられていれば、ステップS7でタッチパネル3のタッチ操作を許容した後、フローを終了するという流れになっている。
【0044】
このような特有の処理(ステップS5〜ステップS7)を有するので、たとえば、携帯電話機1を入れたポケットに手を差し込んだときに、偶然に手先が携帯電話機1のタッチパネル3に触れてしまっても上述の不都合は発生しない。意図的に物理キー9を押し下げない限り、タッチパネル3へのタッチ操作が許容されないからである。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、ポケット内やバッグ内などの暗くて非開放の環境(第3の環境)に携帯電話機1を入れたままで所要のブラインド操作を支障なく行うことができ、しかも、同環境(第3の環境)下における意図しないタッチ操作を回避して誤操作を確実に防止できるという特有の効果が得られる。
【0046】
なお、以上の説明では、表示部4に選択的に表示する二つの表示態様(図4に示す通常操作用の表示態様と図5に示すブラインド操作用の表示態様)について、各々にコマンドボタンを設けるとしているが、それに限らず、たとえば、コマンドボタンの代わりにアイコンなどを設けてもよく、あるいは、その他のコントロールを設けたり、または、ローカルコンテンツやネットワークコンテンツへのリンクなどを設けてもよい。
また、ブラインド操作用の表示態様(図5参照)については、1個の大きなコマンドボタン(第iのコマンドボタン19)を画面中央付近に設けるとしているが、これも一例に過ぎない。ブラインド操作時に誤操作を招かない表示態様であればよく、たとえば、通常操作用の表示態様と同じコマンドボタン(第1〜第5のコマンドボタン14〜18)を設け、且つ、それらのコマンドボタンのうちブラインド操作に不要なもの(またはブラインド操作時に操作されては困るもの)を選択不可(使用不可プロパティ=True)にしたり、不可視(可視プロパティ=False)にしたりしてもよい。
【0047】
また、以上の説明では、携帯電話機1への適用を例にしたが、これに限らない。タッチパネルを備えた携帯型または携帯可能な電子機器であればよく、たとえば、スマートフォン、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance)、タブレット形などのパーソナルコンピュータ、電子辞書、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機、電子書籍表示機、携帯型ナビゲーション装置、携帯型GPS受信装置、携帯型テレビ受信機、携帯型録音装置、携帯型音楽再生装置、業務用専用端末など様々なものに適用できる。
【0048】
以下、本発明の特徴を付記する。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
図6は、付記1の構成図である。
付記1は、
タッチパネル100(実施形態のタッチパネル3に相当)付きの表示手段101(実施形態の表示部4に相当)と、
本体周囲の明るさを検出する明るさ検出手段102(実施形態の照度センサ6に相当)と、
本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出手段103(実施形態の近接センサ7に相当)と、
本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キー104(実施形態の物理キー9に相当)に対するユーザ操作を検出する操作検出手段105(実施形態の中央制御部13に相当)と、
前記表示手段101の表示態様を少なくとも第1の表示態様(実施形態の通常操作用の表示態様に相当)とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様(実施形態のブラインド操作用の表示態様に相当)のいずれか一方に変更することが可能な表示制御手段106(実施形態の中央制御部13に相当)と、
前記明るさ検出手段102の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出手段103の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御手段106に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令手段107(実施形態の中央制御部13に相当)と、
前記表示手段101の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出手段105によって前記物理キー104に対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネル100へのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段108(実施形態の中央制御部13に相当)と
を備えたことを特徴とする入力装置109(実施形態の携帯電話機1に相当)である。
【0049】
(付記2)
付記2は、
前記第1の表示態様は目視を伴うタッチ操作に適合した表示態様であり、また、前記第2の表示態様は目視を伴わないタッチ操作(ブラインド操作)に適合した表示態様であることを特徴とする付記1に記載の入力装置である。
【0050】
(付記3)
付記3は、
本体周囲の明るさを検出する明るさ検出工程と、
本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出工程と、
本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出工程と、
タッチパネル付き表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御工程と、
前記明るさ検出工程の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出工程の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御工程に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令工程と、
前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出工程によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容工程と
を含むことを特徴とする入力方法である。
【0051】
(付記4)
付記4は、
入力装置のコンピュータに、
本体周囲の明るさを検出する明るさ検出手段、
本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出手段、
本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出手段、
タッチパネル付き表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御手段、
前記明るさ検出手段の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出手段の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御手段に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令手段、
前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出手段によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段
としての機能を与えることを特徴とするプログラムである。
【符号の説明】
【0052】
1 携帯電話機
3 タッチパネル
4 表示部
6 照度センサ
7 近接センサ
9 物理キー
13 中央制御部
100 タッチパネル
101 表示手段
102 明るさ検出手段
103 距離検出手段
104 物理キー
105 操作検出手段
106 表示制御手段
107 指令手段
108 タッチ操作許容手段
109 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネル付きの表示手段と、
本体周囲の明るさを検出する明るさ検出手段と、
本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出手段と、
本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出手段と、
前記表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御手段と、
前記明るさ検出手段の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出手段の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御手段に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令手段と、
前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出手段によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段と
を備えたことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記第1の表示態様は目視を伴うタッチ操作に適合した表示態様であり、また、前記第2の表示態様は目視を伴わないタッチ操作(ブラインド操作)に適合した表示態様であることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
本体周囲の明るさを検出する明るさ検出工程と、
本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出工程と、
本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出工程と、
タッチパネル付き表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御工程と、
前記明るさ検出工程の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出工程の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御工程に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令工程と、
前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出工程によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容工程と
を含むことを特徴とする入力方法。
【請求項4】
入力装置のコンピュータに、
本体周囲の明るさを検出する明るさ検出手段、
本体近傍に位置する物体までの距離を検出する距離検出手段、
本体表面に設けられ且つ特異な手触り感を有する物理キーに対するユーザ操作を検出する操作検出手段、
タッチパネル付き表示手段の表示態様を少なくとも第1の表示態様とこの第1の表示態様とは異なる第2の表示態様のいずれか一方に変更することが可能な表示制御手段、
前記明るさ検出手段の検出結果が所定の明るさ以下で且つ前記距離検出手段の検出結果が所定の距離以下であるときに前記表示制御手段に対して前記第1の表示態様から前記第2の表示態様への変更を指令する指令手段、
前記表示手段の表示態様が前記第2の表示態様であるときに前記操作検出手段によって前記物理キーに対するユーザ操作が検出されている場合には前記タッチパネルへのタッチ操作を許容するタッチ操作許容手段
としての機能を与えることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−247967(P2012−247967A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118674(P2011−118674)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】