説明

入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、ならびに前記表示装置を用いた電子機器

【課題】 特に、両面テープ等の接合部材を使用せず、低コストで筐体に対して確実に固定することができ、小型化に適切に対応可能な入力装置、表示装置及び、ならびに前記表示装置を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】 入力装置1を構成する下部基板3を射出成形によって形成する。これによって、下部基板3の相対向する側面にそれぞれ嵌合凸状部30aを、下部基板3と一体に射出成形することができる。嵌合凸状部30aを筐体5側の嵌合凹状部5a1,5b1に嵌合させ、これによって入力装置1を筐体5内に固定支持することが可能になる。このため、両面テープ等の接合部材を用いることなく、低コストで入力装置1を筐体5内に組み込むことができ、しかも入力装置1の小型化においても、入力装置1を確実に筐体5内に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばタッチパネルなどの入力装置に係り、特に、両面テープ等の粘着部材を使用せず、低コストで筐体に対して確実に固定することができ、小型化に適切に対応可能な入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、ならびに前記表示装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばタッチパネルなどの入力装置を、液晶ディスプレイのような表示部材の上方に所定の間隔をあけて固定支持するためには、図6に示すような固定方法がとられていた。
【0003】
図6は従来の入力装置の部分断面図である。
入力装置101は、ガラス基板等で形成された下部基板102とフィルム状の上部シート106と下部基板102および上部シート106に形成された図示しない抵抗膜及び電極等を有して構成されている。
【0004】
図6に示すように、筐体104内には、表示部材105が組み込まれ、表示部材105の上方に所定の間隔を空けて入力装置101が組み込まれる。
【0005】
筐体104の内側壁面104a,104bからは、入力装置101を筐体104内で載置するための載置部104cが突出形成され、入力装置101が載置部104c上に両面テープ等の接合部材103によって固定支持される。
【0006】
下記特許文献1には、図7に示すようなタッチパネルの固定方法が開示されている。
図7に示すように、液晶表示パネル201を収納し、固定するケース本体202の上面には、開口部203の周縁に複数の位置決め兼固定用着脱治具204が設けられている。タッチパネル205は、治具204によって一体化用ケース206に位置決め固定される。
【0007】
下記特許文献2には、図8に示す表示装置、および図9に示す表示装置に対する透明タッチパネルの配置方法が開示されている。
【0008】
図8に示すように、液晶表示装置301は、周縁をベゼル302で保持されている。ベゼル302の4辺全てには舌片303,304,305,306が形成されており、これらの舌片は全て、図8に示すように、上方に垂直に起立させられる(なお、図8では、舌片305,306は図示していないが、舌片305は、ベゼル302のうち、舌片303と対向する位置に設けられ、舌片306は、ベゼル302のうち、舌片304と対向する位置に設けられる。)。なお、以下では、起立させられた舌片の面のうち、液晶表示装置301側の面、たとえば303aのような位置にある面を起立面とする。
【0009】
そして、まず、直交する、舌片303の起立面303aと舌片304の起立面とに透明タッチパネル307を当接し、位置決めする。その後、全ての舌片を折り曲げて透明タッチパネル307を液晶表示装置301上に圧接固定する。
【特許文献1】特開平8−211359号公報
【特許文献2】特開平7−160423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、近年、前記入力装置および前記表示装置を搭載する電子機器自体が小型化してきている。このため、図6に示す従来の入力装置101の固定方法では、下部基板102の下面102aに設けられる接合部材103の接着量が減少し、下部基板102の下面102aと支持部材104cとの接合強度が低下し、入力装置101を筐体104内に確実に固定支持することができない。
【0011】
一方、入力装置101の小型化においても、接合部材103の接着量を多くすると、接合部材103が、例えば入力装置101の操作領域下まではみ出したり(いわゆるデッドゾーンの増大)、あるいは表示部材105との間で塵を巻き込んだりして入力装置101を介して映し出される画像の鮮明度に悪影響を及ぼす。
また両面テープ等の接合部材103は価格が高いため、製造コストが高くなる。
【0012】
さらに、入力装置101を接合部材103によって筐体104内に固定してしまうと、例えば入力装置101が故障し、入力装置101を取り替えたいときや、あるいはリサイクルのために入力装置101を取り外したいときに、入力装置101を取り外すのに手間がかかるなどリペア性及びリサイクル性が悪い構造となっていた。
【0013】
一方、前記特許文献1に記載の発明では、タッチパネル205を位置決め固定するために、ケース本体202とは別に治具204を設けなければならず、治具204を設けるためのコストがかかる。
【0014】
さらに前記特許文献1では、治具204がタッチパネル203の上面にはみ出すため、はみ出した部分はデッドゾーンになり、タッチパネル203の操作領域が狭くなってしまう。しかも治具204がタッチパネル203の上面から突出するため、実際の製品では、治具204を覆って表面から見えなくするための別部材(枠部材)が必要になってしまう。
【0015】
前記特許文献2に記載の発明でも前記特許文献1と同様に、透明タッチパネル307の上面の一部をベゼル302によって覆ってしまうため、その覆われた部分はデッドゾーンになってしまい、透明タッチパネル307の操作領域が狭くなってしまう。
【0016】
また図9に示されるように、舌片を起立させた状態から折り曲げて、透明タッチパネル307を固定支持したときに、前記舌片によって透明タッチパネル307の上面が下方へ押されるため、透明タッチパネル307が下方へ湾曲しやすく、その結果、液晶表示装置301からの画像が適切に透過されずに歪んで見えてしまう等、表示される画像に悪影響を及ぼしやすい。
【0017】
そこで、本発明は上記従来の課題を解決するものであり、特に、両面テープ等の接合部材を使用せず、低コストで筐体に対して確実に固定することができ、小型化に適切に対応可能な入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、ならびに前記表示装置を用いた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、下面に抵抗膜が形成された可撓性の上部シートと、上面に抵抗膜が形成された下部基板とを有し、
前記上部シートと前記下部基板とは所定の間隔を空けて配置され、前記上部シートの操作領域上を前記下部基板方向へ押圧したときに、その押圧点の平面座標が検出される入力装置において、
少なくとも前記下部基板の相対向する側端部のそれぞれに前記入力装置を筐体に嵌合させるための嵌合部が、前記下部基板と一体に射出成形されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、上記のように下部基板を射出成形によって形成しており、これによって嵌合部を、少なくとも下部基板の相対向する側端部のそれぞれに下部基板と一体に射出成形することができる。
【0020】
本発明では、入力装置の下部基板に形成された嵌合部を用いて筐体に嵌合させ、これによって入力装置を筐体内に固定支持することが可能になる。このため、従来のように両面テープ等の接合部材を用いなくても、低コストで入力装置を筐体内に組み込むことができ、しかも入力装置の小型化においても、入力装置を確実に筐体内に固定することができる。また接着剤等を用いた場合のように、不必要な箇所に接着剤が付着するなどの不具合がなく、取付作業が簡単で、さらにリペア性やりリサイクル性にも優れる。
【0021】
また本発明では、下部基板の側端部に形成された嵌合部を用いて、入力装置を筐体内に嵌合させるので、入力装置の操作領域から外れた位置で筐体内への取付を行ないやすく、デッドゾーンを適切に低減することができる。
【0022】
また本発明では、前記嵌合部は、前記上部シートの側面よりも外側に射出成形されていることが好ましい。これにより嵌合部が上部シートの側面から外側へ外れた位置に設けられるから、嵌合部の形成によって操作領域が制限されることなく、デッドゾーンの発生を適切に防止することが出来る。
【0023】
また本発明では、前記下部基板は、プラスチック部材で形成されることが好ましい。かかる場合、前記下部基板は、ノルボン系透明樹脂で形成されていることが好ましい。
【0024】
下部基板がプラスチック部材で形成されていると、下部基板を射出成形することが可能になり、これによって下部基板の側端部に嵌合部を下部基板と一体に射出成形することができる。
【0025】
また本発明では、上記のいずれかに記載された入力装置と、前記入力装置の下側に設けられた表示パネルと、前記入力装置と表示部材とを固定支持するための筐体とを有する表示装置において、
少なくとも前記下部基板の相対向する2つの側面からは、前記筐体の内側壁面に向けて嵌合凸状部が射出成形されており、前記筐体の前記内側壁面には、前記嵌合凸状部と対向する位置に嵌合凹状部が設けられ、前記嵌合凸状部が前記嵌合凹状部に挿入されて前記入力装置と前記筐体とが凹凸嵌合されていることを特徴とするものである。
【0026】
本発明では、上記のように入力装置の下部基板と筐体の内側壁面間での凹凸嵌合により、従来のように、両面テープ等を用いることなく入力装置を簡単に筐体内に固定保持できる。
【0027】
また本発明では、入力装置を筐体に凹凸嵌合によって固定保持することで、入力装置の筐体内での位置決めが簡単になり、またリペア性やリサイクル性も向上させることができて好ましい。
【0028】
特に本発明では、入力装置を構成する下部基板の側面と、筐体の内側壁面間での凹凸嵌合により、入力装置を筐体内に嵌合させるので、デッドゾーンを適切に低減することができる。
【0029】
本発明では、前記嵌合凸状部は、前記下部基板の操作領域での膜厚よりも、薄い膜厚で射出成形されることが好ましい。本発明では下部基板を射出成形することで、下部基板の側面に形成される嵌合凸状部を、下部基板の操作領域よりも薄い膜厚で形成することが可能である。下部基板に形成された嵌合凸状部を薄い膜厚で形成することで筐体と凹凸嵌合させやすくなる。
【0030】
また本発明では、前記嵌合凸状部にはスリットが形成されていることが好ましい。本発明では下部基板を射出成形することで、下部基板の側面に形成される嵌合凸状部に、スリットを入れることが簡単にできる。嵌合凸状部にスリットを入れることで、筐体と凹凸嵌合させやすくなる。
【0031】
また本発明では、前記スリットを真上から見ると、前記スリットは前記筐体の前記内側壁面の方向に沿って形成されていること好ましい。このようにすると、筐体との凹凸嵌合をより適切且つ簡単に行なうことが可能になる。
【0032】
また本発明では、少なくとも前記下部基板の相対向する2つの側面からは、前記筐体の前記内側壁面から離れる方向へ向けて嵌合凹状部が射出成形されており、前記筐体の前記内側壁面には、前記嵌合凹状部と対向する位置に嵌合凸状部が突出形成され、前記嵌合凸状部が前記嵌合凹状部に挿入されて前記入力装置と前記筐体とが凹凸嵌合されている構成であってもよい。
【0033】
本発明では、前記筐体の前記内側壁面には、前記内側壁面に設けられた嵌合部よりも下側に、前記入力装置を載置するための載置部が設けられ、前記入力装置が前記載置部上に直接、載置されることが好ましい。
【0034】
本発明では、入力装置の下部基板の側面に形成された嵌合部と、筐体の内側壁面に形成された嵌合部との凹凸嵌合によって入力装置を筐体内に固定保持できるので、載置部と入力装置との間に両面テープ等は必要なく、入力装置を載置部上に直接、載置することが可能である。
【0035】
または本発明では、前記筐体の内側壁面には前記入力装置を載置するための載置部が設けられ、前記下部基板には前記載置部に向けて突出する鉤部が射出成形され、前記載置部には貫通孔が形成され、前記入力装置が、前記載置部上に載置されるとともに、前記鉤部が前記貫通孔に通されて、前記入力装置と前記筐体とが嵌合される構成であってもよい。
【0036】
また本発明における電子機器は、上記のいずれかに記載された表示装置が装備されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明では、入力装置を構成する下部基板を射出成形によって形成しており、これによって下部基板の少なくとも相対向する側端部にそれぞれ、嵌合部を下部基板と一体に射出成形することができる。
【0038】
本発明では、入力装置の下部基板に形成された嵌合部を用いて筐体に嵌合させ、これによって入力装置を筐体内に固定支持することが可能になる。このため、従来のように両面テープ等の接合部材を用いることなく、低コストで入力装置を筐体内に組み込むことができ、しかも入力装置の小型化においても、入力装置を確実に筐体内に固定することができる。また接着剤等を用いた場合のように、不必要な箇所に接着剤が付着するなどの不具合がなく、取付作業が簡単で、さらにリペア性やリサイクル性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は本発明の第1の実施の形態の入力装置を有する表示装置を示す断面図、図2Aおよび図2Bは本発明の実施形態の下部基板を示す平面図である。
【0040】
図1に示すように、本発明の入力装置1は、上部シート2と下部基板3を有しており、液晶ディスプレイなどの形成された表示パネル4の上方に所定の間隔Hを空けて、筐体5に位置決め固定される。
【0041】
上部シート2は透明なポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂から形成されて可撓性を有しており、上部シート2の下面2aの全面には図示しない抵抗膜が所定の厚さで形成されている。前記抵抗膜は、ITO(酸化インジウムスズ)を原料としてスパッタリング法や真空蒸着法などで成膜される。前記抵抗膜上には、X1−X2方向に間隔を置いて平行に形成された銀等からなる、図示しない1対の上部電極が形成され、この上部電極間に操作領域21が形成されている。
【0042】
下部基板3は透明なプラスチック基板であり、下部基板3の上面3aの全面には、ITOからなる抵抗膜(図示しない)が形成される。前記抵抗膜上には、Y1−Y2方向に間隔を置いて平行に形成された銀等からなる、図示しない1対の下部電極が形成され、この下部電極間に操作領域31が形成されている。
【0043】
図1に示すように、上部シート2は、下面2aに形成された抵抗膜を下部基板3に形成された抵抗膜に対向させ、かつ、上部シート2に形成された上部電極を下部基板3に形成された下部電極が存在しない側部に位置させて配置し、絶縁スペーサ6によって、所定の間隔を空けて下部基板3と対向するように組み合わされる。
【0044】
そして、たとえば図示しない入力ペン等で上部シート2の操作領域21内の任意の箇所を下方へ押圧すると、まず上部シート2が下方に変形して操作領域21と31との間において、上部シート2に形成された抵抗膜と下部基板3に形成された抵抗膜が接触する。
【0045】
押圧点でのX座標検出は、上部シート2の上部電極間に電圧を印加すると、上部シート2の下面2aに形成された抵抗膜の抵抗によって上部電極間に電位勾配が生じる。押圧点での電位を、下部基板3側を通じて検出すると押圧点でのX座標を知ることができる。
【0046】
また、押圧点でのY座標検出は、下部基板3の下部電極間に電圧を印加すると、下部基板3の上面3aに形成された抵抗膜の抵抗によって下部電極間に電位勾配が生じる。押圧点での電位を、上部シート2側を通じて検出すると押圧点でのY座標を知ることができる。
【0047】
筐体5は、射出成形により形成され、表示パネル4を固定保持するもの、あるいは導光部材(バックライト)7を固定保持するもの、または表示パネル4と導光部材7の両方を固定保持するためのものである。
【0048】
表示パネル4と導光部材7とを合わせて表示部材が構成され、本発明では、前記表示部材を固定支持するための筐体5を、入力装置1の筐体としても用いる。
【0049】
図1に示すように、筐体5は、側壁部5a,5b、及び底部を有しており、上面側は開放されている。図1において、X1側の側壁部を左側壁部5aとし、X2側の側壁部を右側壁部5bとする。側壁部5a,5bは、導光部材(バックライト)7からの光を筐体5の内部で効率よく反射させるために、白色のABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)から形成されている。
【0050】
図1および図2Aに示すように、下部基板3のX1側の左側面3cおよびX2側の右側面3dにはそれぞれ、筐体5の側壁部5a,5b方向に向って突出する嵌合凸状部30a,30aが、下部基板3と一体に射出成形されている。
【0051】
嵌合凸状部30aは、図2Aに示すように、左側面3c及び右側面3dに沿って形成されたレール形状となっている。
【0052】
また図1に示すように、筐体5の側壁部5a,5bの内側壁面5a2,5b2には、嵌合凸状部30aと対向する位置に、嵌合凹状部5a1,5b1が形成されており、下部基板3の嵌合凸状部30a,30aがそれぞれ、筐体5の内側壁面5a2,5b2に形成された嵌合凹条部5a1,5b1に凹凸嵌合されて、入力装置1が筐体5内で位置決め固定される。
【0053】
本発明では、入力装置1を構成する下部基板3を射出成形することを利用し、下部基板3に嵌合凸状部30aを、下部基板3と一体に射出成形する点に特徴的な部分がある。
【0054】
下部基板3を例えばプラスチック材を用いて形成することで、下部基板3を射出成形することが可能になり、しかも射出成形により、下部基板3に形成される嵌合凸状部30aを、筐体5側の内側側面5a2,5b2の形状に合わせて、色々な形状で形成することが可能になる。
【0055】
本発明では、入力装置1の下部基板3に形成された嵌合凸状部30aを用いて筐体5の嵌合凹状部5a1,5b1に凹凸嵌合させ、これによって入力装置1を筐体5内に固定支持することが可能になる。このため、従来のように両面テープ等の接合部材を用いなくても、低コストで入力装置1を筐体5内に組み込むことができ、しかも入力装置1の小型化においても、入力装置1を確実に筐体5内に固定することができる。また接着剤等を用いた場合のように、不必要な箇所に接着剤が付着するなどの不具合がなく、取付作業が簡単で、さらにリペア性やリサイクル性にも優れる。
【0056】
本発明では、下部基板3に形成される嵌合凸状部30aは、図1,図2Aに示すように、少なくとも相対向する2つの側面3c,3dに形成されていることが必要であり、これにより、入力装置1を筐体5内に接着剤等を用いなくても固定保持できる。
【0057】
より確実に固定保持するには、下部基板3の3つの側面、及び全ての側面(4つの側面)に、嵌合凸状部30aが形成されていることが好ましい。しかし、特にすべての側面に嵌合凸状部30aが形成されている形態であると、筐体5内への組み込み作業に手間取り、また4つの側面全てに嵌合凸状部30aを形成することは、実際には、下部基板3を射出成形するときに下部基板間3をゲートで繋いでいるため、ゲートが設けられる側面に嵌合凸状部30aを形成することは困難である。よって、下部基板3の相対向する2つの側面か、あるいは3つの側面に嵌合凸状部30aが形成されていれば十分である。
【0058】
図2Aの嵌合凸状部30aは、側面3c、3dに沿って長く延びるレール形状で、各側面3c,3dに一つづつ嵌合凸状部30aが形成されている形態であったが、図2Bのように、各側面3c,3dに、複数の嵌合凸状部30aが、側面3c,3d方向に間隔を置いて形成されていてもよい。
【0059】
図1に示すように、筐体5の内側壁面5a2,5b2には、嵌合凹状部5a1,5b1よりも下側に、入力装置1を載置するための載置部52,52が設けられ、入力装置1が載置部52上に載置されている。
【0060】
本発明では、筐体5との凹凸嵌合によって入力装置1を筐体5内に組み込むことができるため、載置部52は必ず必要とはならないが、載置部52は設けられていたほうが、載置部52上に入力装置1を載せた状態で、入力装置1と筐体5とを凹凸嵌合させることができる。このため、前記凹凸嵌合の作業性を向上させることができ、また入力装置1を組み込むとき、誤って表示パネル4に入力装置1をぶつけてしまうなどの不具合も抑制できる。
【0061】
また載置部52と嵌合部との両方で入力装置1を位置決めでき、入力装置1の位置決め精度を向上させることができる。
【0062】
また本発明では、載置部52が設けられているときに、載置部52と入力装置1との間に、従来のように両面テープ等の接合部材は必要なく、入力装置1を載置部52上に直接、載置しても、筐体5との凹凸嵌合により入力装置1を筐体5内に確実に固定支持することが可能である。
【0063】
ところで本発明では、上記したように下部基板3をプラスチック材で形成しているため、図1に示すように、嵌合凸状部30aを、上部シート2の側面よりも外側に突出成形しても、嵌合凸状部30aは弾性変形するから、入力装置1を筐体5内に組み込むとき、筐体5の内側壁面5a2,5b2に形成された嵌合凹状部5a1,5b1内に、嵌合凸状部30aを弾性変形させて、挿入することができ、よって作業性を良好に維持することができる。
【0064】
そして、特に、図1に示すように嵌合凸状部30aを、上部シート2の側面よりも外側に突出成形すると、下部基板3と筐体5との嵌合部は、上部シート2の操作領域21よりも外側に離れた位置に設けられるから、操作領域21内に、前記嵌合部が延出することは無く、操作領域として機能させることができない、いわゆるデッドゾーンを適切に抑制することができる。
【0065】
デッドゾーンは、特に入力装置1の小型化に伴って深刻な問題となっており、入力装置1の小型化によって操作領域21自体も小さくなるため、デッドゾーンの発生は、さらに操作領域21を狭めることになり好ましくない。前記特許文献1や前記特許文献2はデッドゾーンが発生しやすい構造であるが、本発明では、下部基板3と筐体5との嵌合部を、上部シート2の操作領域21よりも外側に設けたことで、前記デッドゾーンの発生を無くし、入力装置1の小型化においても操作領域21を広くとることが可能である。
【0066】
また上記において、下部基板3に形成された嵌合凸状部30a,30aはプラスチック材であるため弾性変形することを説明したが、より前記弾性変形をしやすくするために、図1に示すように、嵌合凸状部30a,30aの膜厚を下部基板3の操作領域31での膜厚よりも薄い膜厚で形成することが好ましい。本発明では嵌合凸状部30a,30aを射出成形するため、嵌合凸状部30a,30aの膜厚を下部基板3の操作領域31での膜厚と異なる膜厚で形成することが簡単にできる。
【0067】
上記のように、下部基板3に形成された嵌合凸状部30a,30aの膜厚を操作領域31での膜厚よりも薄い膜厚で形成することで、嵌合凸状部30a、30aを弾性変形しやすくでき、嵌合凸状部30a,30aを弾性変形させて嵌合凹状部5a1,5b1内に挿入しやすくできる。
【0068】
あるいは図3(図3Aは本発明の他の変形例の下部基板を示す平面図、図3Bは入力装置を有する表示装置の部分拡大断面図である。)に示すように、嵌合凸状部30bにスリット30cを形成することが好ましい。スリット30cは、嵌合凸状部30bの上面から下面まで貫通する貫通孔である。本発明では嵌合凸状部30bを射出成形により形成するので、嵌合凸状部30bに容易にスリット30cを形成することが出できる。
【0069】
またスリット30cを真上から見ると、スリット30cは、筐体5の内側壁面5a2,5b2の方向に沿って形成されていることが好ましい。
【0070】
図3に示すように、嵌合凸状部30bにスリット30cを設けると、嵌合凸状部30bは、X1−X2方向へ伸縮しやくなる。特に、スリット30cを、筐体5の内側壁面5a2,5b2の方向であるY1−Y2方向に沿って形成すれば、嵌合凸状部30bを、Y1−Y2方向と直角方向にあるX1−X2方向により適切に伸縮させることができる。
【0071】
このため、嵌合凸状部30bにスリット30cを設けることで、嵌合凸状部30bをより弾性変形しやくでき、嵌合凸状部30bを嵌合凹状部5a1内に嵌合させ易い。
【0072】
また図3Bに示すように、嵌合凹状部5a1上の筐体5の内側壁面5a4を下方から上方にかけて入力装置1に対して離れる方向に傾く傾斜面で形成しておくと、入力装置1を筐体5内に取り付けるとき、入力装置1の嵌合凸状部30bを、内側壁面5a4上の傾斜により徐々に下部基板3の側面3c,3d方向に縮ませながら、嵌合凸状部30bを、嵌合凹状部5a1まで導くことができる。このため、無理に嵌合凸状部30bを縮ませる作用が生じず、入力装置1の筐体5への位置決め固定作業がより簡便となり、作業効率がより向上し、また嵌合凸状部30bへの損傷を防止することができる。内側壁面5a4の傾斜面形状は図1,図2に示す実施形態に適用してもよい。
【0073】
図1ないし図3に示すように、本発明では、下部基板3と筐体5との間での凹凸嵌合により入力装置1を筐体5内に固定している。このため、前記特許文献1や前記特許文献2のように、入力装置1の上面側から入力装置1を押さえる別部材等は必要なく、図1や図3Bに示すように、入力装置1の上部シート2の表面と筐体5の上面とをほぼ同一平面とすることができる。このように、入力装置1の上部シート2の表面と筐体5の上面とをフラットにすると、操作者は入力装置1の表面(操作面)を操作しやすく、操作性に優れたものになる。
【0074】
図4Aは本発明の別の実施の形態の入力装置を示す断面図、図4Bは下部基板の平面図である。
【0075】
本形態の下部基板3には、図1ないし図3の実施形態の場合と異なり、X1側の左側面3cおよびX2側の右側面3dに、操作領域31の方向に窪んだ嵌合凹状部30dが左側面3cおよび右側面3dに沿って凹み形成されており、一方、筐体5の内側壁面5a2,5b2には、嵌合凹状部30dと対向する位置に、嵌合凸状部51,51が突出形成されている。
【0076】
本発明では、下部基板3に形成された嵌合凹状部30dを用いて筐体5の嵌合凸状部51,51に凹凸嵌合させ、これによって入力装置1を筐体5内に固定支持することが可能になる。このため、従来のように両面テープ等の接合部材を用いなくても、低コストで入力装置1を筐体5内に組み込むことができ、しかも入力装置1の小型化においても、入力装置1を確実に筐体5内に固定することができる。また接着剤等を用いた場合のように、不必要な箇所に接着剤が付着するなどの不具合がなく、取付作業が簡単で、さらにリペア性やリサイクル性にも優れる。
【0077】
本発明では、下部基板3に形成される嵌合凹状部30dは、図4に示すように、少なくとも相対向する2つの側面3c,3dに形成されていることが必要であり、これにより、入力装置1を筐体5内に接着剤等を用いなくても固定保持できる。
【0078】
嵌合凹状部30dのX1−X2方向への深さは、少なくとも図4Bに示す操作領域31に至る手前までである。このことにより、デッドゾーンの発生を抑制でき操作領域を広くとることができる。
【0079】
図5は本発明の別の実施の形態の入力装置を有する表示装置を示す部分拡大断面図である。
【0080】
本実施の形態における下部基板3には、下面3bから下方向へ突出する方向に延びる、略L字形状の鉤部30eが、下部基板3と一体に射出成形されている。
【0081】
図5に示すように、筐体5の内側壁面5a2には筐体5の内部の方向に延びる載置部52が設けられており、載置部52上に入力装置1が載置される。
【0082】
図5に示すように、載置部52には上面52aから下面52bにかけて貫通する貫通孔53が設けられている。
【0083】
図5に示すように、入力装置1は、載置部52上に載置されるとともに、入力装置1の下部基板3に設けられた鉤部30eが、載置部52の貫通孔53に通されて、入力装置1と筐体5とが嵌合される。
【0084】
なお図示していないが、内側壁面5a2とは相対向する側の内側壁面5b2側においても同様に、下部基板3には鉤部30eが形成され、鉤部30eを、内側壁面5b2から形成された載置部52の貫通孔53に嵌合させている。
以上により、入力装置1を筐体5に位置決め固定することができる。
【0085】
本発明では、入力装置1の下部基板3に形成された鉤部30eを用いて筐体5の貫通孔53,53に嵌合させ、これによって入力装置1を筐体5内に固定支持することが可能になる。このため、載置部52上に両面テープ等の接合部材を用いず、載置部52上に直接、入力装置1を載置しても、入力装置1を筐体5内に固定保持でき、しかも入力装置1の小型化においても、入力装置1を確実に筐体5内に固定することができる。また接着剤等を用いた場合のように、不必要な箇所に接着剤が付着するなどの不具合がなく、低コストで、取付作業が簡単で、さらにリペア性やリサイクル性にも優れる。
【0086】
なお本発明では、少なくとも下部基板3の相対向する側端部のそれぞれに入力装置1を筐体5に嵌合させるための嵌合部が、下部基板3と一体に射出成形されていればよい。前記嵌合部は、図1ないし図4のように下部基板3の側面3c,3dから形成されていてもよいし、図5のように、下部基板3の下面3bから形成されていてもよいし、前記嵌合部が、下部基板3の中央部(少なくとも操作領域31)からではなく前記中央部の周囲を取り巻く側端部から設けられていれば、特に形成される位置については限定されない。
【0087】
本発明の下部基板3は、プラスチック材で形成され、特にノルボン系透明樹脂で形成されていることが好ましい。ノルボン系透明樹脂は、光の透過率が高く、かつ下部基板3内部において複屈折が起きにくい。このため、表示パネル4に表示された画像等が鮮明に写し出され、上方から前記画像等を確実に見ることができる。また、ノルボン系透明樹脂は、耐熱性に優れており、射出成形時の高温にも耐えることができ、下部基板3の成形時の反りを少なくすることができる。さらに、ノルボン系透明樹脂は、耐湿性に優れ、吸湿による下部基板3の強度変化を防止することができる。
【0088】
図1ないし図5に示した入力装置1を有する表示装置では、接着剤等を用いることなく適切に入力装置1を筐体5内に固定保持できるとともに、前記筐体5内に設けられた表示パネル4との間に所定の間隔Hを有して対向させることができる。よって、表示パネル4から映し出される画像等が、入力装置1を介して歪むことなく鮮明に確実に映し出される。また、入力装置1が筐体5に、表示パネル4と所定の間隔Hを空けて確実に位置決め固定される。このため、外力等により入力装置1が筐体5から外れて表示パネル4に衝突することによって、表示パネル4が歪むことや破損することを防止することができる。その結果、本発明の表示装置の信頼性が損なわれることがなく、本発明の表示装置から鮮明な画像が映し出される。
【0089】
上記のような、本発明の入力装置1が実装された表示装置は、PDA(パーソナルディジタルアシスタント)や手のひらサイズの小型パーソナルコンピュータ、あるいは携帯電話等の電子機器に搭載することができる。
【0090】
このような電子機器は、本発明の入力装置1を備えており、入力装置1は筐体5に上記のように位置決め固定されるため、筐体5が小型である場合にも、入力装置1は筐体5に確実に位置決め固定される。このため、PDA等のような小型の電子機器においても、入力装置1の信頼性が損なわれることが防止され、入力装置1によって確実に所望の情報を入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態の入力装置を有する表示装置を示す部分断面図、
【図2】図2Aおよび図2Bは本発明の下部基板を示す平面図、
【図3】図3Aは図2とは異なる形態の下部基板を示す平面図、図3Bは図1とは異なる別の実施形態の入力装置を有する表示装置を示す部分拡大断面図、
【図4】図4Aは本発明の別の実施形態の入力装置を有する表示装置を示す部分断面図、図4Bは図4Aに用いられた下部基板を示す平面図、
【図5】本発明の別の実施形態の入力装置を有する表示装置を示す部分拡大断面図、
【図6】従来の入力装置を示す部分断面図、
【図7】従来のタッチパネルの固定方法を示す図、
【図8】従来の表示装置を示す斜視図、
【図9】図8の表示装置に対する透明タッチパネルの配置方法を示す図、
【符号の説明】
【0092】
1 入力装置
2 上部シート
3 下部基板
4 表示部材
5 筐体
5a,5b 側壁部
5a1,5b1,30d 嵌合凹状部
21,31 操作領域
30a,30b,51 嵌合凸状部
30c スリット
30e 鉤部
52 載置部
53 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に抵抗膜が形成された可撓性の上部シートと、上面に抵抗膜が形成された下部基板とを有し、
前記上部シートと前記下部基板とは所定の間隔を空けて配置され、前記上部シートの操作領域上を前記下部基板方向へ押圧したときに、その押圧点の平面座標が検出される入力装置において、
少なくとも前記下部基板の相対向する側端部のそれぞれに前記入力装置を筐体に嵌合させるための嵌合部が、前記下部基板と一体に射出成形されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記上部シートの側面よりも外側に射出成形されている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記下部基板は、プラスチック部材で形成される請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記下部基板は、ノルボン系透明樹脂で形成されている請求項3記載の入力装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された入力装置と、前記入力装置の下側に設けられた表示部材と、前記入力装置と表示部材とを固定支持するための筐体とを有する表示装置において、
少なくとも前記下部基板の相対向する2つの側面からは、前記筐体の内側壁面に向けて嵌合凸状部が射出成形されており、前記筐体の前記内側壁面には、前記嵌合凸状部と対向する位置に嵌合凹状部が設けられ、前記嵌合凸状部が前記嵌合凹状部に挿入されて前記入力装置と前記筐体とが凹凸嵌合されていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記嵌合凸状部は、前記下部基板の操作領域での膜厚よりも、薄い膜厚で射出成形される請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記嵌合凸状部にはスリットが形成されている請求項5または6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記スリットを真上からみると、前記スリットは前記筐体の前記内側壁面の方向に沿って形成されている請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
少なくとも前記下部基板の相対向する2つの側面からは、前記筐体の前記内側壁面から離れる方向へ向けて嵌合凹状部が射出成形されており、前記筐体の前記内側壁面には、前記嵌合凹状部と対向する位置に嵌合凸状部が突出形成され、前記嵌合凸状部が前記嵌合凹状部に挿入されて前記入力装置と前記筐体とが凹凸嵌合されている請求項5記載の表示装置。
【請求項10】
前記筐体の前記内側壁面には、前記内側壁面に設けられた嵌合部よりも下側に、前記入力装置を載置するための載置部が設けられ、前記入力装置が前記載置部上に直接、載置される請求項5ないし9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
前記筐体の前記内側壁面には前記入力装置を載置するための載置部が設けられ、前記下部基板には前記載置部に向けて突出する鉤部が射出成形され、前記載置部には貫通孔が形成され、前記入力装置が、前記載置部上に載置されるとともに、前記鉤部が前記貫通孔に通されて、前記入力装置と前記筐体とが嵌合される請求項5記載の表示装置。
【請求項12】
請求項5ないし11のいずれかに記載された表示装置が装備されたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−4215(P2006−4215A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180470(P2004−180470)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】