説明

入力装置および触読文字記号入力方法

【課題】表示画面の上にタッチパネル等の座標位置検出手段を作動させるための部材が覆うように配置された状態でも、この部材に対応する表示領域を有効に活用することができる入力装置および触読文字記号入力方法を得ること。
【解決手段】表示画面202の上には、矩形の開口部203の周囲の枠部204を包囲するように、透明な樹脂製の保持部材205が配置されている。保持部材205には透明な材料からなる押しボタン221〜229が配置されており、これらを押下すると図示しないタッチパネルが検知して表示画面の対応する領域の表示を反転させる。この表示態様の変更により押しボタン221〜229の操作の確認が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点字等の触読文字記号を使用して各種データを入力する機構を備えた入力装置および触読文字記号入力方法に係り、特に表示画面の前面にタッチパネル等の座標位置検出手段と触読文字記号による入力機構を組み込んだ入力装置および触読文字記号入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを使用した入力装置は、画面上のタッチした箇所に応じた直感的な操作を行うことができるだけでなく、マウス等のポインティングデバイスを別に備える必要なく座標あるいは位置の入力を行うことができる。このため、PDA(Personal Digital Assistant)のような携帯端末やキャッシュディスペンサ、あるいは駅の券売機等の各種の情報処理装置の表示装置に入力装置を兼用する形で使用されている。また、曲線や点の位置を自在に入力することができるので、グラフィックソフトウェアやCAD(Computer Aided Design)ソフトウェアを使用するタブレットにも採用されている。
【0003】
タッチパネルは、表示装置の表示面を覆うように感圧式のセンサを配置したものが従来から使用されてきている。最近では、表示画面の手前に位置する空間領域に超音波を送出したり、光線をマトリックス状に出力したり、あるいはカメラで表示画面の手前の画像を捉えることで、画面にタッチした箇所の座標を認識するようにしたタッチパネルも登場している。
【0004】
ところでタッチパネルを用いた入力装置は、入力する位置あるいは座標を定めるための画像を表示する表示装置と不可分な関係を有している。このため、目の不自由な人(以下、視覚障害者という。)にとっては目で確認の困難な表示装置に連動した入力装置としてのタッチパネルは使い辛いという問題がある。そこで、表示装置とは関係のないキーボードパネル上に、半球状に打ち出された点の組み合わせを触読文字記号とした点字を表わした触読識別シートを配置することが第1の提案として提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
この第1の提案によると、キーボードパネルという入力専用の構成部品の表面に点字用の凸形状パターンを形成した触読識別シートを配置することにしている。すなわち、この入力装置では、各種の情報を表示する表示画面そのものにキーボードを表示してタッチパネルでキーの選択を行うのではなく、専用のキーボードパネルの上に点字用の凸部を設けるようにしている。したがって、CRT(CathodeRay Tube)等の表示画面は、このキーボードパネルの配置されている場所とは別の場所に設ける必要がある。この結果、配置スペースが制限されているPDA等の情報処理装置では、この第1の提案を採用しにくいだけでなく、表示画面を用いた直感的な操作を行い辛いという問題がある。
【0006】
そこで、表示画面上にタッチパネルを直接配置し、その表面に凸部を設けたシートを貼り付けるようにした第2の提案が行われている(たとえば特許文献2参照)。この第2の提案では、画像の濃度の調整を行う専用の操作パネルとしての液晶パネルの上にタッチパネルを配置している。タッチパネル上のそれぞれタッチすべき箇所の表面には、対応するマークあるいは点字等の触読文字記号を凸部として形成した透明シートが貼り付けられている。したがって、視覚障害者はタッチパネル上の触読文字記号を手で探していくことで所望の触読文字記号を付したキー位置を探し出すことができ、そのキー位置で指をタッチパネルに押し付けることで、所望の入力操作を行うことができる。
【0007】
ところで、先に説明したようにタッチパネルには押圧式のものだけでなく、表示画面の直前に存在する指等の物体を検知することで座標の入力を行うものも存在している。このような光学あるいは超音波を使用したようなタッチパネルでは、表示画面上で所望のキーを探し出すための操作を行うと、その過程で目的のキー以外のキーを軽く触れるという行為だけで、そのキーの検出を行ってしまうという問題が発生する。また、第2の提案の入力装置でたとえば弱視の人が、表示されている文字を認識するために極端にタッチパネルに目を近づけると、その人の鼻や眼鏡の部品が超音波や光の検知領域に入り込んだり、あるいは光学像の一部としてキャッチされることになる。すると、その段階でキーが押されたと検出されてしまい、ユーザの全く意図しないキーが意図しないタイミングで入力されてしまう危険性が大きくなる。
【0008】
表示画面上に設けたシートにタッチパネルに貼り付ける第2の提案とは異なり、タッチパネルの表面自体に凸部を設けるようにした第3の提案(たとえば特許文献3参照)も存在するが、この第3の提案も第2の提案と同様の問題がある。そこで、点字等の凹凸を手で確認している状態でタッチパネルによる誤検知が生じないようにした入力装置が第4の提案として提案されている。
【0009】
図7は、この第4の提案による入力装置の要部を表わしたものである。外枠101に囲まれた表示画面102には、タッチパネル103が備えられている。表示画面102には、一例として、ある処理を確認するための「確認」ボタン104が表示されている。ユーザがこの「確認」ボタン104を指等で押下すると、タッチパネル103が押下された箇所を検出して、「確認」の入力を行うようになっている。以上は、視覚障害者以外の者の動作である。
【0010】
第4の提案では、視覚障害者のために、「確認」ボタン104の近傍で表示画面102の表面からわずかに離れた位置に、外枠101に取り付けられた形の押下用部材105が配置されている。押下用部材105の表面には、「確認」ボタンであることを示す点字の突起106が設けられている。点字の突起106の代わりに、手で触れて文字や記号あるいは図形を認知するための触読文字記号が表面の凹凸によって形成されてもよい。ただし、この明細書では、説明を簡単にするために触読文字記号の一例として点字を中心に説明を行う。
【0011】
図8は、図7に示した押下用部材の近傍をA−A方向に切断した状態を表わしたものである。押下用部材105は、表示画面102に垂直な支柱部105Aと、この支柱部105Aの上端から水平方向に延びる押圧部105Bと、この押圧部105Bの先端から表示画面102の方向に折れ曲がった遮光部105Cから構成されており、弾性に富んだ不透明な樹脂で形成されたものである。押圧部105Bには、点字を表わすための半球状の突起106が形成されている。表示画面102の表面は透明なシート状の保護部材107が覆っており、その端部は盛り上がって検出機構部107Aを構成している。検出機構部107Aには、光学式センサ108が配置されている。この光学式センサ108は、保護部材107の表面からわずか数ミリメートル程度上部の位置をこの表面に沿って進行してくる光線109を受光するようになっている。
【0012】
この第4の提案の入力装置では、押圧部105Bを押し下げていない状態で、光線109が遮断されず、光学式センサ108は光線を検出している。ユーザが「確認」を入力するために押圧部105Bを押し下げると、遮光部105Cが光線109を遮断する。光学式センサ108は光線109が遮断されたことで、押圧部105Bが押されたことを検出する。このようにして視覚障害者も、必要に応じて「確認」等の各種のボタンの入力操作が可能になる。表示画面102に直接タッチしないで操作を行うことができるので、入力装置の操作のわからない老人にとっても操作が行いやすい場合もある。
【0013】
この第4の提案の光学式の検出原理を感圧式としたものが、第5の提案として提案されている(たとえば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−49461号公報(第0019、第0020段落、図1)
【特許文献2】特開平7−319623号公報(第0018段落、図2)
【特許文献3】特開2001−13868号公報(第0027段落、図1)
【特許文献4】特開2004−265035号公報(第0018段落、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
第4および第5の提案では、タッチパネルから離れた位置に点字等の凹凸のマークを付した押圧用部材105を配置したので、凹凸のマークを指で触って確認した段階ではタッチパネルが位置の検出を行わない。しかしながら、これらの提案の入力装置では、表示画面の表示領域に押下用部材105が突出する。したがってこれら突出した部材の直下の表示部分は視界から遮られてしまい、この部分の表示領域を表示に活用できないという問題が発生する。
【0015】
そこで本発明の目的は、表示画面の上にタッチパネル等の座標位置検出手段を作動させるための部材が覆うように配置された状態でも、この部材に対応する表示領域を有効に活用することができる入力装置および触読文字記号入力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、(イ)情報を視覚的に表示する表示画面と、(ロ)この表示画面の手前の空間領域に配置され、その表面に形成された凹凸形状で文字や記号を表わした、少なくとも光線の一部を透過する透光性の部材であって、外力に応じてその特定部位を表示画面に向けて弾性的に変位させる入力用部材と、(ハ)表示画面と入力用部材の前記した特定部位の間に配置され、この特定部位の変位に対して表示画面上の座標位置を検出する座標位置検出手段とを入力装置に具備させる。
【0017】
すなわち本発明では、文字や記号を凹凸形状によって表わした入力用部材を用いて、この変位をいわゆるタッチパネルとしての座標位置検出手段で検出するものにおいて、少なくとも光線の一部を透過する透光性の材料で入力用部材を構成することで、表示画面の入力用部材に対応する部分の表示領域の表示内容を有効活用できるようにしている。すなわち、従来では表示画面の該当する領域に対応する部分が不透明であったため、その部分の視覚情報を活用することができなかったが、本発明ではその部分が透明あるいは半透明となっているために、表示画面の対応する領域の画像を反転させたり色を変える等の変更処理を行うことができ、表示領域を有効に活用することができるだけでなく、直感的な操作が可能になる。
【0018】
また、本発明では、(イ)情報を視覚的に表示する表示画面の手前の空間領域に配置され、その表面に形成された凹凸形状で文字や記号を表わした、少なくとも光線の一部を透過する透光性の部材であって、外力に応じてその特定部位を表示画面に向けて弾性的に変位させる入力用部材の前記した特定部位の変位を検出する特定部位変位検出ステップと、(ロ)この特定部位変位検出ステップで変位が検出されたとき表示画面の変位した透光性の部材に対応する部位の視覚的な表示態様を変化させる表示態様変更ステップと、(ハ)前記した特定部位変位検出ステップで変位が検出されたときその変位が検出された表示画面上の座標を検出して透光性の部材の凹凸形状で表わされた文字や記号を入力する対応文字記号入力ステップとを触読文字記号入力方法に具備させる。
【0019】
すなわち本発明では、透光性の部材からなる入力直感的な操作が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、表示画面の手前に文字や記号等の入力用に配置した入力用部材を、少なくとも光線の一部を透過する透光性の部材としたので、これが弾性変形したときに表示画面上での座標位置を検出することができるだけでなく、表示画面の対応する部位の表示態様をこれに応じて変形させれば、表示画面の画像を認識できる者はこれを認識することができ、操作の確認が容易となり、老人等の操作に不慣れな者であっても、直感的な操作が可能になり、入力操作を確実に行うことができる。また、入力用部材が透光性の部材なので、これを透過して表示される文字等の表示画面の情報を活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の一実施例における入力装置の要部を表わしたものである。本実施例の入力装置201は、キャッシュディスペンサに使用されている装置であり、図では装置の上部に配置された表示画面202の部分を示している。表示画面202は、たとえばCRTの表示面を上側に向けて配置したものである。表示画面202の上には、中央に設けられた矩形の開口部203の周囲の枠部204を包囲するように、透明な樹脂製の保持部材205が配置されている。枠部204の内側は表示画面202が露出している。この露出部分の表示面には、本実施例のキャッシュディスペンサとしての機能を実現するために、その左側の表示領域に「お預入れ」ボタン211、「お引出し」ボタン212、「残高照会」ボタン213、「通帳記入」ボタン214および「拡張」ボタン215がそれぞれ表示されている。また、右側の領域には「取消」ボタン216、「訂正」ボタン217、「確認」ボタン218および「バリアフリー」ボタン219がそれぞれ表示されている。ここで「バリアフリー」ボタン219とは、視覚障害者のために設けられたボタンであり、これを選択すると表示画面202に表示される文字が大きく表示されたり、太く表示されるようになっている。後に説明するタッチパネル機構で、ユーザがこれら各ボタン211〜219のいずれかに触れると、これらの検出(入力)が行われるようになっている。
【0023】
保持部材205には、表示画面202上に表示される各ボタン211〜219に近接する箇所にそれぞれ押しボタン221〜229が紙面に垂直方向に上下動自在に配置されている。これらの押しボタン221〜229の表面にはこれらのボタンの押下された場合の入力内容を示す凹凸をしたマークの他に図示しないが点字が半球状のマークとして刻印されている。また、保持部材205における「バリアフリー」ボタン219の表示されている表示画面手前側の位置には「1」から「0」までの数字と、「万円」および「千円」を示す記号(図では「○○」および「○」と表示)からなる数字入力用押しボタン群231が枠部204に沿う形で一列に配置されている。これら数字入力用押しボタン群231に隣接して、保持部材205には入力数字等を点字で表わした点字刻印部232、233が配置されている。
【0024】
本実施例では、保持部材205が透明な樹脂で形成されているのに伴って、押しボタン221〜229および数字入力用押しボタン群231も透明な樹脂で製造されている。透明なガラスで製造されていてもよい。ただし、これらは完全に透明で光学的に下の表示画面202上の画像が歪みなく視認することができるものである必要はない。たとえば、保持部材205における押しボタン221〜229ならびに数字入力用押しボタン群231が配置されている場所および点字刻印部232、233以外の部分では、樹脂表面に微細な凹凸を設けて表示画面202の該当する箇所の明るさや色のみが視認できるようにしてもよい。また、保持部材205は半透明あるいは着色されたものであっても可視光を一部でも透過できるものであればよい。
【0025】
図2は、図1に示した押しボタンの周囲をB−B方向に切断した際の断面構造を表わしたものである。ここでは押しボタン228を示しているが、他の押しボタン221〜227、229および数字入力用押しボタン群231における個々の押しボタンについても基本的に同一である。そこで、押しボタン228についての説明のみを行い、他の押しボタン221〜227、229および数字入力用押しボタン群231における個々の押しボタンの具体的な断面の図示および説明は省略する。
【0026】
図2で表示画面202の表面は透明なシート状の保護部材241が覆っており、その端部は盛り上がって検出機構部241Aを構成している。保持部材205は、ほぼ垂直に配置された側壁部205Aからほぼ水平方向に折れ曲がったボタン保持部205Bを備えている。ボタン保持部205Bは、その先端近傍が皿状に窪んでおりボタン収容部205Cを構成している。このボタン保持部205Bの底には円形の開口242が設けられている。この開口242には、支柱上部に平板を取り付けた形状で断面がT字状をした押しボタン228の支柱下部が上下動自在に遊嵌されている。この支柱下部はその筒状の外表面に金属の被覆(薄膜)が施されているか、この外表面に光を散乱させる細かな凹凸あるいは網目模様が刻まれている。また、押しボタン228の平板部分とボタン収容部205Cの底部との間の支柱部分には、透明な樹脂をらせん状に巻回したバネ部材243が巻き付けられている。
【0027】
押しボタン228がユーザによって押し下げられていない通常の状態では、バネ部材243によって押しボタン228の支柱の下端が開口242内にとどまるか、この開口242からわずかに突出している。押しボタン228を押し下げると、バネ部材243が上下方向に圧縮されて、押しボタン228の支柱部分が開口242から大きく下方向に突出して、保護部材241の表面に近接するようになっている。
【0028】
保護部材の検出機構部241Aには、光学式センサ244が配置されている。この光学式センサ244は、保護部材241の表面からわずかに上部の位置をこの表面に沿って進行してくる光線245を受光するようになっている。したがって、押しボタン228が押し下げられていない通常の状態で光学式センサ244は光線245を検出しており、押しボタン228が押し下げられるとこの検出がオフになるようになっている。
【0029】
実際には、光線は図1の数字入力用押しボタン群231の配列方向としてのX軸方向と直交するY軸方向に間隔を置いて、図2に示した光線245以外にX軸方向と平行に複数本出力されるようになっている。また、X軸方向にも間隔を置いて、Y軸方向と平行に複数本出力されるようになっている。このようにしてマトリックス状に出力される複数本の光線のオン・オフをそれぞれ対応する光学式センサで検出することで、どの押しボタンが押下されたかの検出を行うことができる。
【0030】
図3は、一例として同じX軸方向の位置に配置された2つの押しボタンの押下についての検出原理を表わしたものである。「通帳記入」ボタン214に対応して配置された押しボタン224と、「確認」ボタン218に対応して配置された押しボタン228は、Y軸方向に同一の位置にある。したがって、押しボタン224と押しボタン228のいずれを押しても、光線245は遮断され、図2に示した光学式センサ244はボタンの押下を検出する。
【0031】
一方、これら2つの押しボタン228、224にそれぞれ対応するY軸方向の2つの光線251、252に着目してみると、押しボタン228が押された場合には光線251が遮断される。したがって、対応する光学式センサ253がオフ状態を検出する。このとき、光線252に対応する光学式センサ254はオンの状態を保持する。このため、X軸方向の検出を行う光学式センサ244のオン・オフ情報と、Y軸方向の検出を行う光学式センサ253、254のオン・オフ情報を総合することで、2つの押しボタン224、228の押下の有無を検出することができる。図1に示した他の押しボタン221〜223、225、226、227、229および数字入力用押しボタン群231についても同様である。なお、光学式センサ244等の光学式センサに対向して配置される光源は、発光ダイオード等の現実の発光源であってもよいし、表示画面202の発光をミラー等の光学系で対向する光学式センサ方向に出力させるようなものであってもよい。
【0032】
ところで、本実施例の入力装置201では、押しボタン221〜229および数字入力用押しボタン群231のいずれが押されたかをユーザが確認できるように、表示画面202における押された部位に対応する領域の画面の色を反転させるような表示態様変更制御を行っている。これを次に説明する。
【0033】
図4は、本実施例の入力装置の表示態様変更制御を行う回路部分の要部を表わしたものである。入力装置201は、CPU261を備えている。CPU261は、データバス等のバス262を介して、この入力装置201の各部と接続されている。このうちROM263は、各種制御を行う制御プログラムを格納した記憶媒体としてのリード・オンリ・メモリである。RAM264は、CPU261が制御プログラムを実行する際に一時的に必要とする各種データを格納するランダム・アクセス・メモリである。センサ入力回路265は、図2に示した押しボタン228に対応する光学式センサ244等の押しボタン221〜229および数字入力用押しボタン群231に対応した各種光学式センサの光線の検出の有無を入力する回路である。表示制御回路266は、図1に示した表示画面202を備えたディスプレイ267の表示を制御する回路である。
【0034】
図5は、光学式センサが光線がオフ状態になったことを検知したときの入力装置の制御の様子を表わしたものである。この制御は、前記したROM263に格納された制御プログラムをCPU261が実行することによって実現する。すなわち、CPU261はセンサ入力回路265を介して光学式センサ244等のいずれかの光学式センサが光線の遮断(オフ)を検知するタイミングを監視している(ステップS301)。いずれかの光学式センサがオフを検知したら(Y)、図3で説明したように、オフとなった光学式センサの組み合わせによってどの座標位置の押しボタンが押されたかを判別してその押しボタンが押された旨の入力制御を行う(ステップS302)。そして、表示制御回路266を制御して、表示画面202における判別された押しボタンに対応する領域の表示色を反転させる(ステップS303)。このとき、たとえば文字が白地に黒色で表示されていたときに黒字に白色で文字を表示するようにしてもよいし、赤色の背景を緑色の背景に変化させるようにしてもよい。
【0035】
押しボタン221〜229および数字入力用押しボタン群231に対応するそれぞれの領域は、あらかじめROM263に登録しておけば、これらの領域のうちの該当する押しボタンに対応する領域のみを反転表示すればよい。もちろん、輝度を単純に変化させたり、点滅表示を行う等の通常行われる強調表示をこれに代わって行ってもよい。
【0036】
表示画面202の該当する押しボタンに対応する領域の強調表示は、該当する光学式センサが再び光線を検知してオンとなるまでの間、継続される(ステップS304、S303)。このとき、押しボタン228に対応する「確認」ボタン218も同様に強調表示が行われてもよい。押しボタンを短時間だけ押した場合には、強調表示の行われる時間を一定時間に延長してもよい。このようにユーザが操作した押しボタンに対応する領域の強調表示が行われるので、文字や記号を個々に認識できない弱視の視覚障害者であっても、光あるいは色の変化が認識できれば該当する押しボタンの押下を確認することができる。また、視覚障害者以外の者であっても、押しボタンの押下の確認をより容易に行うことができる。したがって、老人等の装置の操作に不慣れな者であっても入力操作をより確実に行うことができる。また、表示画面202における従来表示に使用しなかった領域を有効に活用することができることになる。
【0037】
<発明の変形例>
【0038】
図6は、本発明の変形例における押しボタンについてその周囲を含めた断面構造を表わしたものである。図6で図2と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この変形例の入力装置では、押下用部材405は、表示画面202に垂直な支柱部405Aと、この支柱部405Aの上端から水平方向に延びる平板状の押圧部405Bと、この押圧部405Bの先端から表示画面202の方向に折れ曲がった遮光部405Cから構成されており、弾性に富んだ透明な樹脂で形成されたものである。押圧部405Bには、その上面に点字の突起406が形成されている。表示画面202の表面は透明なシート状の保護部材407が覆っており、その端部は盛り上がって検出機構部407Aを構成している。検出機構部407Aには、光学式センサ244が配置されている。この光学式センサ244は、保護部材407の表面からわずかに上部の位置をこの表面に沿って進行してくる光線245を受光するようになっている。
【0039】
ところで、押下用部材405における遮光部405Cは透明な材質となっているため、そのままでは光線を透過させてしまう。そこで遮光部405Cの内面には光線245を遮光するための不透明な遮光テープ411が接着されている。遮光テープ411の代わりに光を遮断したり反射させる物質をこの遮光部405Cに塗布してもよい。また、この遮光部405C自体を遮光性の物質で構成してもよい。押下用部材405はこのように構成されているので、視覚障害者等のユーザが押圧部405Bを押下すると、遮光部405Cの遮光テープ411が光線245を遮断する。これにより、光学式センサ244はその時点からオン(検知)からオフ(非検知)に切り替わることになる。
【0040】
押下用部材405は遮光部405Cを除いて透明なので、光学式センサ244のオン・オフ検知に応じて表示画面202の対応する領域の色や明るさを変化させることで、該当する押しボタンが押されたことをユーザが確認することができる。もちろん、この変形例の場合にも表示画面202におけるその押しボタンに隣接した領域に配置された「確認」等のボタンにユーザがタッチすれば、実施例と同様にそのボタンに隣接する画面領域の表示が変化する。したがって、表示画面202を有効に活用してユーザフレンドリな入力装置を実現することができる。
【0041】
また、この変形例では、押下用部材405に実施例のような押しボタンが組み込まれていない。したがって、入力装置全体としてのコストダウンを図ることができるだけでなく、押圧部405Bに存在する点字の突起406等のマークの凹凸を除けば、この押圧部405Bを透明な平板として形成することができる。したがって、表示画面202における押下用部材405の直下の領域に文字や画像を表示することができ、ユーザがこれを情報として取得することが可能である。すなわち、図1に示す枠部204よりも外における表示画面202の活用を図ることができる。
【0042】
<発明のその他の変形可能性>
【0043】
以上説明した変形例では押下用部材の押圧部405Bを平板状の透明な部材としたが、これに限るものではない。たとえば、この部分あるいは表示画面202をユーザが対向する方向から見たとき、押圧部405B等の光が透過する領域の必要な部分を凸レンズにして、表示画面202の対応する領域に表示される文字等の情報を弱視の者でも判別しやすいように拡大して表示できるようにしてもよい。また、反対に保持部材205の全部または特定の部位の表面あるいは裏面に細かいスリットを刻んだり、網目模様にしたり、あるいは梨子地状にして、画面の色を拡散することで、それぞれの部位の色を平均化して明確に表示するようにすることも可能である。
【0044】
更に以上説明した実施例および変形例では、キャッシュディスペンサに本発明を適用した場合を示したが、タッチパネルを使用した各種入力装置に本発明を同様に適用することができることは当然である。また、タッチパネルは、実施例で説明したようにX,Y両方向に光線を間隔を置いて射出して、これにより特定部位の表面からたとえば数ミリ程度の領域に指等の物体が存在するかどうかを検出するものに限らない。たとえば、テレビカメラによって表示画面上にタッチする指等の物体の画像を撮像して、それぞれを分析してタッチされる位置を検出するようにしてもよいし、超音波を使用して同様の位置検出を行う公知の手法を採用するようにしてもよい。もちろん、従来のように指等の物体の押圧位置を検出するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例における入力装置の要部を表わした平面図である。
【図2】図1に示した押しボタンの周囲をB−B方向に切断した要部断面図である。
【図3】本実施例で同じX軸方向の位置に配置された2つの押しボタンの押下についての検出原理を表わした説明図である。
【図4】本実施例で入力装置の表示態様変更制御を行う回路部分の要部を表わしたブロック図である。
【図5】本実施例で光学式センサが光線がオフ状態になったことを検知したときの入力装置の制御の様子を表わした流れ図である。
【図6】本発明の変形例における押しボタンについてその周囲を含めた要部断面図である。
【図7】従来の第4の提案による入力装置の要部を表わした要部平面図である。
【図8】図7に示した押下用部材の近傍をA−A方向に切断した状態を表わした要部断面図である。
【符号の説明】
【0046】
201 入力装置
202 表示画面
203 開口部
204 枠部
205 保持部材
205B ボタン保持部
211〜219 ボタン
221〜229 押しボタン
231 数字入力用押しボタン群
243 バネ部材
244 光学式センサ
245 光線
261 CPU
263 ROM
265 センサ入力回路
266 表示制御回路
267 ディスプレイ
405 押下用部材
405B 押圧部
405C 遮光部
406 点字の突起
411 遮光テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を視覚的に表示する表示画面と、
この表示画面の手前の空間領域に配置され、その表面に形成された凹凸形状で文字や記号を表わした、少なくとも光線の一部を透過する透光性の部材であって、外力に応じてその特定部位を前記表示画面に向けて弾性的に変位させる入力用部材と、
前記表示画面と入力用部材の前記特定部位の間に配置され、この特定部位の前記変位に対して前記表示画面上の座標位置を検出する座標位置検出手段
とを具備することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記表示画面における前記座標位置検出手段で検出した前記入力用部材に対応する領域の視覚的な表示状態を検出の前後で変化させる表示態様変更手段を具備することを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記座標位置検出手段は前記特定部位の変位による押圧箇所の座標位置を検知する手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
前記座標位置検出手段は前記特定部位の変位による光線のオン・オフによって変位を生じた箇所の座標位置を検知する手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の入力装置。
【請求項5】
前記座標位置検出手段は前記特定部位の変位の画像を解析することで変位を生じた箇所の座標位置を検知する手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の入力装置。
【請求項6】
前記座標位置検出手段は前記特定部位の変位による超音波を解析することで変位を生じた箇所の座標位置を検知する手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の入力装置。
【請求項7】
前記透光性の部材は前記表示画面の対応する部位を拡大して表示する凸レンズを構成していることを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかに記載の入力装置。
【請求項8】
情報を視覚的に表示する表示画面の手前の空間領域に配置され、その表面に形成された凹凸形状で文字や記号を表わした、少なくとも光線の一部を透過する透光性の部材であって、外力に応じてその特定部位を前記表示画面に向けて弾性的に変位させる入力用部材の前記特定部位の変位を検出する特定部位変位検出ステップと、
この特定部位変位検出ステップで変位が検出されたとき前記表示画面の変位した前記透光性の部材に対応する部位の視覚的な表示態様を変化させる表示態様変更ステップと、
前記特定部位変位検出ステップで変位が検出されたときその変位が検出された前記表示画面上の座標を検出して前記透光性の部材の凹凸形状で表わされた前記文字や記号を入力する対応文字記号入力ステップ
とを具備することを特徴とする触読文字記号入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−209279(P2006−209279A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17655(P2005−17655)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】