説明

入力装置及びそれを用いた電子機器

【課題】 小型化、特に薄型化が可能で、原点復帰機構を有し、磁石がどの位置にあるかを特定でき、複数の検出機能と防水機能を有すること。
【解決手段】 磁石12が発生する磁束密度を検知する磁気検出手段11と、磁石12を一軸上で移動又は傾斜可能に保持する弾性部材13と、磁石12を移動又は傾斜させる操作部材14とを備え、磁石12の移動又は傾斜によって生じる周囲磁束密度の変化を磁気検出手段11で検出する。実装基板15上には弾性部材13が設けられている。磁石12は、実装基板15に対して垂直な方向に着磁され、磁気検出手段11は、磁石12の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出し、磁石12の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ実装基板15上に複数個配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや携帯電話などの入力手段として使用する入力装置及びそれを用いた電子機器に関し、より詳細には、磁石の移動による周囲の磁束密度変化を検出することにより、カメラのズーム制御や画面のスクロールなどを行なうための入力装置及びそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石の移動に伴う周囲磁束密度の変化を検出することにより、操作部の移動又は傾斜を検知する検出スイッチとして、例えば、特許文献1に記載されているような入力装置が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載されている入力装置は、外部操作により軌道10A上を移動する可動磁石13と、この軌道10Aの両端において、可動磁石13が吸着する固定磁性体7L,7Rの背面側に一体に設けられたホール素子2L、2Rとを有し、このホール素子2L、2Rの出力に基づいてスイッチング信号を得るようにしたもので、可動磁石13や固定磁性体7L,7R、その他にもコイルスプリングやアンダーカバーなど様々な部品を必要とし、入力装置の小型化や製造工程の簡略化には自ずと限界がある。
【0004】
また、この入力装置は、可動磁石や固定磁性体の吸着力を利用したものであり、左右どちらか一方にキートップが固定されている状態が安定状態であり、原点復帰機構を備えていないばかりでなく、その中間状態などは検出できない。したがって、出力は、ON/OFFのデジタル的なものとなり、例えば、画面のスクロールを行う際にそのスピードを変えることができず、操作性が悪くなるという問題がある。その上、左右位置で状態を保持するためにアンダーカバーに凸状曲面を設け、さらに、コイルスプリングも必要とするので、薄型化を図るには特に問題がある。
【0005】
また、この種のスイッチング装置は、左右のどちらかにあるかを判定するだけで、例えば、カメラのズーム機能とシャッター機能のように複数の機能を持たせることはできない。また、昨今、防水タイプのデジタルカメラや携帯電話など、防水機能を有した電子機器が増えており、防水タイプの入力装置が必要となっている。また、入力装置としては、接触式の入力装置(櫛の歯電極と導電性ゴムなど)が一般的であるが、寿命が短く、出力のチャタリングが起きやすいなどの問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−16463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、小型化、特に薄型化が可能で、原点復帰機構を有し、さらに磁石が左右のみならずどの位置にあるかを特定でき、複数の検出機能を有し、防水機能を有して、かつ製造工程を簡略化できるようにした入力装置及びそれを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、移動又は傾斜可能な磁束発生手段と、該磁束発生手段が発生する磁束密度を検知する磁気検出手段と、前記磁束発生手段を一軸上で移動又は傾斜可能に保持する弾性部材と、前記磁束発生手段を移動又は傾斜させる操作部材とを備え、前記磁束発生手段の移動又は傾斜によって生じる周囲磁束密度の変化を前記磁気検出手段で検出することを特徴とする。(図1,図3,図5,図6,図7に対応)
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記磁束発生手段が、平面に対して平行に移動可能な状態に維持されつつ、前記弾性部材により保持されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、実装基板上又はフレキシブル基板上に前記弾性部材が設けられ、前記磁気検出手段を前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に配置したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記弾性部材がシリコーン樹脂からなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記磁束発生手段が、前記実装基板又は前記フレキシブル基板に対して垂直な方向に着磁されており、前記磁気検出手段が、前記磁束発生手段の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出するものであるとともに、前記磁束発生手段の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に複数個配置されていることを特徴とする。(図1に対応)
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記磁束発生手段が、前記実装基板又は前記フレキシブル基板に対して平行な方向に着磁されており、前記磁気検出手段が、前記磁束発生手段の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出するものであるとともに、前記磁束発生手段の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に複数個配置されていることを特徴とする。(図6に対応)
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記磁束発生手段を複数個備えていることを特徴とする。(図7に対応)
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記磁束発生手段が、前記実装基板又は前記フレキシブル基板に対して平行な方向に着磁されており、前記磁気検出手段が、前記磁束発生手段の着磁方向と垂直な方向の磁束密度を検出するものであるとともに、前記磁束発生手段のN極とS極の境界部に対向する位置で、かつ前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に配置されていることを特徴とする。(図3,図5に対応)
【0016】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記操作部材が湾曲に移動可能であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明において、前記実装基板又は前記フレキシブル基板の前記弾性部材側で、かつ前記操作部材と対向する部分に電気的開閉部材を設けたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記電気的開閉部材に対向する前記弾性部材の位置に、該電気的開閉部材を押すための押圧部材を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載の発明において、前記電気的開閉部材は、2段階の押し込み状態を検知可能であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の発明において、前記磁束発生手段が、前記操作部材内に設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13のいずれかに記載の発明において、前記磁束発生手段が、前記弾性部材上で、かつ前記操作部材の外周部で保持されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項15に記載の発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載の発明において、前記弾性部材が湾曲された状態でも使用可能であることを特徴とする。
【0023】
また、請求項16に記載の発明は、請求項1乃至15のいずれかに記載の発明において、前記弾性部材が防水機能を有していることを特徴とする。
【0024】
また、請求項17に記載の発明は、請求項1乃至16にいずれかに記載の入力装置が組み込まれていることを特徴とする電子機器である。
【0025】
なお、磁気検出手段としては、ホール素子、ホールIC、磁気抵抗効果素子(MR素子)、磁気抵抗効果IC(MRIC)、リードスイッチなど様々な磁気センサの適用が可能である。磁束発生手段がどの位置(どの角度)にあるかを検出するにはアナログ出力型の磁気検出手段が望ましい。特に、複数個の磁気検出手段を用いて、その差分の信号を読みことにより、磁束発生手段の移動をほぼリニアなアナログ出力に変換することが可能である。また、例えば、磁束発生手段が右にあるか左にあるかというようなデジタル出力を要求される場合は、アナログ出力型の磁気検出手段を用いると容易に構成可能である。
【0026】
また、磁気検出手段は、実装基板の弾性部材側に配置することが、入力装置の小型化と低背化を進める上で好ましい。
【0027】
また、磁気センサがホールICであり、出力端子を1本のみ有する磁気センサであれば、出力信号線の数をホール素子に比べて低減することができるので、実装基板の省スペース化と、外部ノイズの影響の低減を図ることができる。
【0028】
また、2つの磁気抵抗効果素子をある直線上に配置する場合、2つの磁気抵抗効果素子を第1の結合点で電気的に結合し、この結合点における電気信号を用いて、磁束密度変化を検知するようにしても良い。このような構成を採ることにより、出力信号線の数をホール素子に比べて低減することができるので、実装基板の省スペース化と、外部ノイズの影響の低減を図ることができる。
【0029】
また、磁束発生手段については磁石が好ましく、特に種類の限定はないが、通常、量産されているフェライト系、サマリウム−コバルト系、ネオジ系など様々な磁石が適用可能である。入力装置の小型化を進めるうえでは、磁石の小型化が必須であるので、小さくても強磁場を発生するサマリウム−コバルト系やネオジ系などの磁石が好ましい。また、磁石の薄型化を進めるうえでは、バルク磁石より成形性のよいボンド磁石の方が好ましい。外部への漏洩磁場が気になる場合は、磁力の弱い磁石を用いるのが好ましい。また、磁石の着磁方向を変更することにより、漏洩磁場を小さくすることが可能である。
【0030】
また、磁石の配置場所は、操作部材の下部に配置できるが、入力装置全体の薄型化を図るため、別の場所に配置することも当然可能である。
【0031】
また、弾性部材は、例えば、弾力性を有する樹脂層などからなるシートが好ましく、特に種類の限定はないが、様々な用途で用いられ、伸縮変形可能で可撓性のあるシリコーン樹脂などが好ましい。この弾性部材を用いることにより、本発明の入力装置は操作後に、必ず操作部材が原点位置に戻るようになる。このように、従来、コイルスプリングなどの複雑で大型な機構を設けないと達成できなかった原点復帰の構成を、弾性部材のみを用いることにより、単純な機構で構成でき、かつ小型化(特に薄型化)が可能となる。
【0032】
また、弾性部材には、本発明の入力装置の操作部である操作部材(キートップ)を固着できる。この操作部材は、硬質材料で形成されたものの方が入力装置の操作感を高める上で好ましい。また、操作部材内に磁石を向けることにより、入力装置により一層の低背化が可能となる。また、操作部材は操作しやすいように、適宜、形状や材料を選定することが可能である。
【0033】
また、実装基板の弾性部材側に電気的開閉部材(スイッチ)を配設してもよい。また、このスイッチに対向する弾性部材部分に、スイッチを押すための押圧部材を設けてもよい。また、スイッチは、基本的に操作部材の下部に配置することができる。
【0034】
また、スイッチとしては、特に種類の限定はないが、押したことが確認しやすく(クリック感のある)、スイッチを押し込んだ後に自動復帰するタクティール(tactile)スイッチ、ドームスイッチ、押しボタンスイッチ、タクト(tact)スイッチ、タッチ(touch)スイッチなど対象物との物理的接触を利用して対象物を確認するスイッチが適しており、薄型のタクティールスイッチが、検出スイッチの小型化を進めるうえで好ましい。
【0035】
また、カメラのズーム機能を本発明の入力装置を用いて操作する場合は、下部に配置したスイッチでシャッター機能をも含めることができる。また、下部のスイッチが2段階の押し込みを検出できれば、オートフォーカスカメラにおけるピント合わせの機能も有することができる。
【0036】
また、磁石は実装基板に対して略平行移動することにより、周囲の磁束密度変化を生じるようにすると、入力装置の一層の低背化が可能になるので好ましい。磁石を略平行移動させるために、弾性部材に蛇腹構造を持たせることが可能である。
【0037】
また、弾性部材と実装基板との対向面が接着されていないことが好ましい。弾性部材は、実装基板と弾性部材上部の筐体で挟み込むだけでよい。また、弾性部材は穴を有さない一体のシートで構成されており、水などが浸入してきても実装基板側に漏れないようにすることが可能である。
【0038】
また、例えば、携帯電話などの電子機器に本発明の入力装置を適用する場合、入力装置用の弾性部材を特別に用意しなくても、他のスイッチ(例えば、電子機器にあるキースイッチ)用シートと一体に成形することが可能である。また、筐体の同じ面内に検出スイッチがない場合でも、弾性シートを折り曲げて別の面で使用できるようにすることが可能である。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、移動又は傾斜可能な磁束発生手段と、磁束発生手段が発生する磁束密度を検知する磁気検出手段と、磁束発生手段を一軸上で移動又は傾斜可能に保持する弾性部材と、磁束発生手段を移動又は傾斜させる操作部材とを備え、磁束発生手段の移動又は傾斜によって生じる周囲磁束密度の変化を磁気検出手段で検出するようにしたので、小型化、特に薄型化が可能で、原点復帰機構を有し、さらに磁石が左右のみならずどの位置にあるかを特定でき、複数の検出機能を有し、防水機能を有して、かつ製造工程を簡略化できるようにした入力装置及びそれを用いた電子機器を提供するこが可能となる。
【0040】
また、多様なアプリケーションに対して、好都合に対応することは可能となる。さらに、このような入力装置を電子機器に組み込むことにより、電子機器の小型化を進めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0042】
図1(a),(b)は、本発明に係る入力装置の実施例1を説明するための構成図で、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)におけるa−a’線断面図である。
【0043】
図中符号11は磁気センサ(磁気検出手段)、12は磁石(磁束発生手段)、13は弾性シート(弾性部材)、14はキートップ(操作部材)、15は実装基板、16はスイッチ(電気的開閉部材)、17は突起(押圧部材)を示している。なお、図1(a)においては、磁気センサ11と磁石12の位置関係のみを示している。
【0044】
本実施例1における入力装置は、移動又は傾斜可能な磁石12と、この磁石12が発生する磁束密度を検知する磁気センサ11と、磁石12を一軸上で移動又は傾斜可能に保持する弾性シート13と、磁石12を移動又は傾斜させるキートップ14とを備えており、磁石12の移動又は傾斜によって生じる周囲磁束密度の変化を磁気センサ11で検出するように構成されている。なお、磁気センサとしてホール素子を用いることも可能である。
【0045】
また、磁石12は、平面に対して平行に移動可能な状態に維持されつつ、弾性シートにより保持されており、実装基板15上には弾性シート13が設けられ、磁気センサ11は実装基板15上に配置されている。また、弾性シート13は、シリコーン樹脂からなっている。なお、実装基板としてフレキシブル基板を用いることも可能である。
【0046】
図1(b)に示すように、磁石12は、実装基板15に対して垂直な方向に着磁されており、磁気センサ11は、磁石12の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出する。また、この磁気センサ11は、磁石12の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ実装基板15上に複数個配置されている。
【0047】
つまり、図1(b)に示すように、キートップ14は、X軸方向に移動可能であり、このキートップ14を操作すると、その動きに連動して磁石12も移動するように構成されている。磁気センサ11は、磁石12の移動方向(図中のX軸方向)と平行な直線上に配置されている。また、磁気センサ11の検出する磁束密度は、実装基板15に垂直な方向(図中のZ軸方向)の磁束密度である。本実施例1では、磁気センサ11は、実装基板15の弾性シート13側に配置されているが、当然、実装基板15の裏側に配置してもよい。
【0048】
また、磁石12は、実装基板15に垂直な方向(図中のZ軸方向)にN極とS極の着磁を行なっている。N極とS極の向き(どちら側をN極又はS極にするか)については、特に制限されない。また、弾性シート13と実装基板15との対向面は、接着固定されずに保持されている。
【0049】
また、弾性シート13は、外力を加えると容易に変形し、その外力を除くと直ちに外力を加えていない初期状態に復帰する。つまり、キートップ14を操作して図中のX軸方向に移動させた場合、磁石12も同様に移動し、その外力を除くと直ちに初期状態に復帰する。また、弾性シート13を用いることにより、移動機構と原点復帰機構の小型化と薄型化が可能となる。
【0050】
また、磁石12の移動は、実装基板15に対して略平行移動するように構成すれば、薄型化が可能となる。磁石12を略平行移動させるために、弾性シート13に蛇腹部を設けてもよい。薄型化の要求が厳しくない用途では、磁石12を傾斜させることでも同様の磁束密度変化を得ることができる。
【0051】
磁石12の弾性シート13への固定方法は、接着剤などを用いる簡易な方法で行なうことができる。その場合、磁石12の弾性シート13との接触面の全面に接着剤を塗布するのではなく、外周付近の部分は塗布しないで接着することにより、弾性シート13の伸縮性を有効に利用することができ、磁石12の移動範囲を大きくとることができるので好適である。また、磁石12の位置決めの問題があるので、弾性シート13の磁石12の配置場所には、凹部を設けておくことが好ましい。また、弾性シート13を成形する際に、磁石12をインサート成形することも可能である。
【0052】
また、磁石12と弾性シート13をラバー磁石に置き換えることにより、さらなる低背化も可能である。弾性シート13の一部に磁性材料を混ぜておき、後から着磁することにより磁石を形成してもよい。また、磁石12をキートップ14に内包させることにより、薄型化を図ることができる。
【0053】
本発明の入力装置は、磁石12の座標値を出力するためのデバイスであるが、スイッチ機能を付与することにより、座標値のみならず、操作の決定機構を付加した検出スイッチになる。キートップ14をZ軸方向に押し込むことにより、スイッチ機能を満足する構成になっている。このようなスイッチ機能を設けることにより、座標値と決定の2信号を持つことになる。例えば、座標値によるカメラのズーム機能と、決定機構によるシャッター機能を併せ持った検出スイッチになり得る。
【0054】
また、スイッチ16としては、押しボタンスイッチなどのようなスイッチでもかまわないが、押したことが確認しやすく(クリック感のある)、スイッチを押し込んだ後に自動復帰するタクティール(tactile)スイッチ、ドームスイッチ、タクト(tact)スイッチなど対象物との物理的接触を利用して対象物を確認するスイッチが適している。
【0055】
図2は、図1(a),(b)に示した実施例1の入力装置における磁気検出回路を示す図で、図中符号1は検出部、2は差動アンプ、3は検出制御部、4は出力制御部で、その他、図1(a),(b)と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0056】
検出部1は、2個の磁気センサ(例えば、ホール素子)11からなり、この磁気センサ11の中間に磁石12が配置されている。この磁石12の移動又は傾斜により磁気センサ11での磁束密度変化により磁気センサ11の出力が変化する。
【0057】
差動アンプ2は、各磁気センサ11の出力信号を差動的に増幅する。磁石12が原点にあるとき、出力が0になるようにしてあり、磁石12が移動又は傾斜すると、これに応じて差動アンプ2に出力が発生し、その出力(アナログ値)を検出制御部3が磁石12の移動量又は傾斜量に換算し、出力制御部4を介して出力するように構成されている。このような構成を採ることにより、検出スイッチは、磁石12の移動量に比例した出力を発生することが可能になる。
【0058】
磁気センサ11によって検知可能な磁石12の移動範囲は、およそ2個の磁気センサ11間の距離である。したがって、例えば、磁石12がX軸上を2mm移動可能な場合、磁気センサ11間の距離も最低2mm程度あけておく必要がある。
【実施例2】
【0059】
図3(a),(b)は、本発明に係る入力装置の実施例2を説明するための構成図で、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)におけるa−a’線断面図である。
【0060】
図中符号21は磁気センサ、22は磁石、23は弾性シート、24はキートップ、25は実装基板、26はスイッチ、27は突起を示している。なお、図3(a)においては、磁気センサ21と磁石22の位置関係のみを示している。
【0061】
本実施例2における入力装置は、磁石22の着磁方向と、磁気センサ21の個数と、磁気センサ21の配置位置が、上述した実施例1の構成と相違している。
【0062】
つまり、磁石22は、実装基板25に対して平行な方向に着磁されており、磁気センサ21は、磁石22の着磁方向と垂直な方向の磁束密度を検出するものである。また、磁気センサ21は、実装基板25上に1個配置されている。
【0063】
キートップ24は、X軸方向に移動可能であり、キートップ24を操作すると、その動きに連動して磁石22も移動するようになっている。磁気センサ21は、磁石22の磁極の境界(N極とS極の境)付近に配置されている。また、磁気センサ21の検出する磁束密度は、実装基板25に垂直な方向(図中のz軸方向)の磁束密度である。本実施例2では、磁気センサ21は、実装基板25の裏側に配置されているが、当然、弾性シート23側に配置してもよい。
【0064】
また、磁石22は、実装基板25に平行な方向(図中のX軸方向)にN極とS極の着磁を行っている。N極とS極の向き(どちら側をN極又はS極にするか)については特に制限されない。
【0065】
図4は、図3(a),(b)に示した実施例2の入力装置における磁気検出回路を示す図で、図中符号5はアンプ、6は検出制御部、7は出力制御部で、その他、図2及び図3(a),(b)と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0066】
検出部1は、1個の磁気センサ(例えば、ホール素子)21からなり、この磁気センサ21の配置は、磁石22の磁極の境界と重なるよう配置されている。この磁石22の移動又は傾斜による磁気センサ21部での磁束密度変化により磁気センサ21の出力が変化する。
【0067】
アンプ5は、磁気センサ21の出力を増幅する。磁石22が原点にあるとき、出力が0になるようにしてあり、磁石22が移動又は傾斜すると、これに応じてアンプ5に出力が発生し、その出力(アナログ値)を検出制御部6が磁石22の移動量又は傾斜量に換算し、これを出力制御部7が出力するように構成している。このような構成を採ることにより、入力装置は、磁石22の移動量に比例した出力を発生することが可能になる。
【0068】
以上説明したように、実施例2では、1個の磁気センサ21しか用いていないが、実施例1と同様の出力特性を得ることができる。
【0069】
図5は、図3(a),(b)に示した実施例2の他の実施例を説明するための構成図で、磁気センサ21と磁石22の位置を、キートップ24の真下からずらしたところに配置することにより、磁気センサ21を実装基板25の弾性シート23側に容易に配置することができるようになり、薄型化を進めるうえで好ましい。
【実施例3】
【0070】
図6(a),(b)は、本発明に係る入力装置の実施例3を説明するための構成図で、図6(a)は上面図、図6(b)は図6(a)におけるa−a’線断面図である。
【0071】
図中符号31は磁気センサ、32は磁石、33は弾性シート、34はキートップ、35は実装基板、36はスイッチ、37は突起を示している。なお、図6(a)においては、磁気センサ31と磁石32の位置関係のみを示している。
【0072】
本実施例3における入力装置は、磁気センサ31の個数と磁気センサ31の配置位置が、上述した実施例2の構成と相違している。
【0073】
つまり、磁石32は、実装基板35に対して平行な方向に着磁されており、磁気センサ31は、磁石32の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出するものである。また、磁気センサ31は、磁石32の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ実装基板35上に複数個配置されている。
【0074】
キートップ34は、X軸方向に移動可能であり、キートップ34を操作すると、その動きに連動して磁石32も移動するようになっている。磁気センサ31の検出する磁束密度は、実装基板35に平行な方向(図中のX軸方向)の磁束密度である。本実施例3では、磁気センサ31は、実装基板35の弾性シート33側に配置されているが、当然、実装基板35の裏側に配置してもよい。
【0075】
また、磁石32は、実装基板35に平行な方向(図中のX軸方向)にN極とS極の着磁を行っている。N極とS極の向き(どちら側をN極又はS極にするか)については特に制限されない。
【0076】
本発明の入力装置の磁気検出回路を示すブロック図は、上述した実施例1で示した図2と同じ構成である。このような構成を採ることにより、入力装置は、磁石32の移動量に比例した出力を発生することが可能になる。
【0077】
図7は、図6(a),(b)に示した実施例3の他の実施例を説明するための構成図で、上述した実施例3においては、磁石32は、キートップ34内に配置されていたが、この実施例においては、磁石32a,32bを弾性シート33内におけるキートップ34の外周部付近で、かつ磁気センサ31の内側に配置したものである。
【0078】
つまり、2個の磁石32a,32bを使用して、図6(b)と同じ構成を採っている。このような構成を採ることにより、磁気センサ31と磁石32a,32bの距離やZ軸方向のギャップを縮めることが可能になり、磁気センサ31の出力が増大されるうえ、検出スイッチ全体の薄型化を進めるうえでも好ましい。なお、この場合も磁石32a,32bのN極とS極の向き(どちら側をN極又はS極にするか)については特に制限されない。
【0079】
また、この実施例においては、磁石32a,32bの移動によって生じる磁気センサ31部の磁束密度変化は、磁石32a,32bが大きく動けば動くほど磁束密度変化も大きくなる特長がある。つまり、他の実施例と比較して、この実施例の入力装置の出力特性は、より人間の感覚に近い特性を有しているので検出スイッチの操作感が向上する。
【0080】
(その他の実施例)
上述した実施例については、各実施例に特有の構成をその他の実施例に適用することも可能である。例えば、実施例1の、磁石12と弾性シート13をラバー磁石に置き換えることを実施例2や実施例3に適用してもよい。
【0081】
また、例えば、携帯電話などの電子機器に本発明の入力装置を適用する場合、検出スイッチ用の弾性シート13を特別に用意しなくても、他のスイッチ(例えば、電子機器にあるキースイッチ)用シートと一体に成形することが可能である。筐体の同じ面内に検出スイッチがない場合でも、弾性シートを折り曲げて別の面で使用できるようにすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、デジタルカメラや携帯電話などの入力手段として使用する入力装置及びそれを用いた電子機器に関し、小型化、特に薄型化が可能あり、原点復帰機構を有し、さらに磁石が左右のみならずどの位置にあるかを特定でき、複数の検出機能を有し、防水機能を有して、かつ製造工程を簡略化できるので、多様なアプリケーションに対して、好都合に対応することが可能となる。また、このような入力装置を電子機器に組み込むことにより、携帯電話やPDA、デジタルカメラなどの電子機器のより一層の小型化を進めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る入力装置の実施例1を説明するための構成図で、(a)は上面図、(b)は(a)におけるa−a’線断面図である。
【図2】図1(a),(b)に示した実施例1の入力装置における磁気検出回路を示す図である。
【図3】本発明に係る入力装置の実施例2を説明するための構成図で、(a)は上面図、(b)は(a)におけるa−a’線断面図である。
【図4】図3(a),(b)に示した実施例2の入力装置における磁気検出回路を示す図である。
【図5】図3(a),(b)に示した実施例2の他の実施例を説明するための構成図である。
【図6】本発明に係る入力装置の実施例3を説明するための構成図で、(a)は上面図、(b)は(a)におけるa−a’線断面図である。
【図7】図6(a),(b)に示した実施例3の他の実施例を説明するための構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1 検出部
2 差動アンプ
3,6 検出制御部
4,7 出力制御部
5 アンプ
11,21,31 磁気センサ(磁気検出手段)
12,22,32,32a,32b 磁石(磁束発生手段)
13,23,33 弾性シート(弾性部材)
14,24,34 キートップ(操作部材)
15,25,35 実装基板
16,26,36 スイッチ(電気的開閉部材)
17,27,37 突起(押圧部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動又は傾斜可能な磁束発生手段と、該磁束発生手段が発生する磁束密度を検知する磁気検出手段と、前記磁束発生手段を一軸上で移動又は傾斜可能に保持する弾性部材と、前記磁束発生手段を移動又は傾斜させる操作部材とを備え、前記磁束発生手段の移動又は傾斜によって生じる周囲磁束密度の変化を前記磁気検出手段で検出することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記磁束発生手段が、平面に対して平行に移動可能な状態に維持されつつ、前記弾性部材により保持されていることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
実装基板上又はフレキシブル基板上に前記弾性部材が設けられ、前記磁気検出手段を前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記弾性部材がシリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記磁束発生手段が、前記実装基板又は前記フレキシブル基板に対して垂直な方向に着磁されており、前記磁気検出手段が、前記磁束発生手段の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出するものであるとともに、前記磁束発生手段の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に複数個配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
前記磁束発生手段が、前記実装基板又は前記フレキシブル基板に対して平行な方向に着磁されており、前記磁気検出手段が、前記磁束発生手段の着磁方向と平行な方向の磁束密度を検出するものであるとともに、前記磁束発生手段の移動方向又は傾斜方向と平行な直線上で、かつ前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に複数個配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項7】
前記磁束発生手段を複数個備えていることを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記磁束発生手段が、前記実装基板又は前記フレキシブル基板に対して平行な方向に着磁されており、前記磁気検出手段が、前記磁束発生手段の着磁方向と垂直な方向の磁束密度を検出するものであるとともに、前記磁束発生手段のN極とS極の境界部に対向する位置で、かつ前記実装基板上又は前記フレキシブル基板上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項9】
前記操作部材が湾曲に移動可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の入力装置。
【請求項10】
前記実装基板又は前記フレキシブル基板の前記弾性部材側で、かつ前記操作部材と対向する部分に電気的開閉部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の入力装置。
【請求項11】
前記電気的開閉部材に対向する前記弾性部材の位置に、該電気的開閉部材を押すための押圧部材を設けたことを特徴とする10に記載の入力装置。
【請求項12】
前記電気的開閉部材は、2段階の押し込み状態を検知可能であることを特徴とする請求項10又は11に記載の入力装置。
【請求項13】
前記磁束発生手段が、前記操作部材内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の入力装置。
【請求項14】
前記磁束発生手段が、前記弾性部材上で、かつ前記操作部材の外周部で保持されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の入力装置。
【請求項15】
前記弾性部材が湾曲された状態でも使用可能であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の入力装置。
【請求項16】
前記弾性部材が防水機能を有していることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の入力装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の入力装置が組み込まれていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−49015(P2006−49015A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226060(P2004−226060)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000116851)旭化成電子株式会社 (18)
【Fターム(参考)】