説明

入力装置

【課題】長時間にわたるコンピュータ操作に起因する使用者の頸部や肩甲帯の苦痛の発生を防止すること。
【解決手段】本発明では、コンピュータ(2)にキーボード(3)とともに接続される入力装置(1)において、コンピュータ(2)の使用者(6)の頸部又は肩甲帯に装着され、使用者(6)の頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかの動作によってコンピュータ(2)への入力操作を可能としたスイッチ(17,18)を設けることにした。特に、前記スイッチ(17,18)は、周囲を弾性体(23,24)で被覆し、また、使用者(6)の頸部に引掛けるための首掛け体(7)で支持し、また、使用者(6)の頸部の左右両側又は使用者(6)の左右両側の肩甲帯に配置し、さらに、コンピュータ(2)に接続されるマウス(4)の左右のクリックボタン(21,22)として機能するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータにキーボードとともに接続される入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンピュータには、データやコマンドなどを入力するためにキーボードやマウスなどの入力装置が接続されており、これらの入力装置を用いて使用者がコンピュータを操作するようになっている。
【0003】
これらのキーボードやマウスなどの入力装置は、いずれも指や腕で操作する構造の装置であるため、コンピュータの操作中に指や腕以外の身体部位を動かす必要がなかった。しかも、使用者がコンピュータを操作する時間は、コンピュータの機能の向上に伴ってより一層長くなってきている。
【0004】
その結果、長時間にわたるコンピュータの操作によって使用者の頸部や肩甲帯が長時間にわたって固定した姿勢となってしまい、使用者の頸部や肩甲帯において、静止状態の継続を原因とする苦痛を発生させる、いわゆるVDT症候群と呼ばれる症状が急速に増大している。
【0005】
そのため、たとえば厚生労働省策定の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に示されているように、連続してコンピュータの操作を行う場合には途中で休憩を挟み、ストレッチや体操などを行うことが推奨され、また、それを促すように一定時間経過後にコンピュータのディスプレイ上に警告を表示するプログラム(たとえば、特許文献1参照。)が開発され、さらには、使用者の疲労を軽減するような構造の入力装置(たとえば、特許文献2参照。)が開発されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−283150号公報
【特許文献2】特表2006−515700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1に開示されたプログラムでは、一定時間経過後にコンピュータのディスプレイ上に警告を表示するだけであり、使用者にストレッチや体操などの身体運動を強制するものではなく、警告を受けた使用者が自ら身体運動をしなければ使用者の頸部や肩甲帯の苦痛を解消することはできないものであった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示された入力装置では、使用者の疲労を軽減できるものではあったが、依然として使用者の頸部や肩甲帯の苦痛を抜本的に解消することはできないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る本発明では、コンピュータにキーボードとともに接続される入力装置において、コンピュータの使用者の頸部又は肩甲帯に装着され、使用者の頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかの側屈、牽上、牽下等の動作によってコンピュータへの入力操作を可能としたスイッチを設けることにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記スイッチは、周囲を弾性体で被覆することにした。
【0011】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記スイッチは、使用者の頸部に引掛けるための首掛け体で支持することにした。
【0012】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記スイッチは、使用者の頸部の左右両側又は使用者の左右両側の肩甲帯に配置することにした。
【0013】
また、請求項5に係る本発明では、前記請求項4に係る本発明において、前記スイッチは、コンピュータに接続されるマウスの左右のクリックボタンとして機能することにした。
【発明の効果】
【0014】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明では、コンピュータにキーボードとともに接続される入力装置において、コンピュータの使用者の頸部又は肩甲帯に装着され、使用者の頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかの側屈、牽上、牽下動作によってコンピュータへの入力操作を可能としたスイッチを設けることにしているために、コンピュータへの入力操作の際に使用者の頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかを動作させなければならず、これにより、コンピュータへの入力操作と同時に使用者の頸部や肩甲帯が側屈、牽上、牽下運動として適度に動かされ、長時間にわたるコンピュータ操作に起因する使用者の頸部や肩甲帯の苦痛の発生を防止することができる。
【0016】
また、本発明では、スイッチの周囲を弾性体で被覆することにしているために、使用者が頸部や肩甲帯を動作させてコンピュータへの入力操作を行っても弾性体が使用者の頸部や肩甲帯とスイッチとの間に介在する緩衝材として機能して、使用者の頸部や肩甲帯に痛みを感じさせることがなく、入力装置の使い勝手を向上させることができ、しかも、使用者の頸部や肩甲帯に装着した入力装置が床に落下してしまっても弾性体が緩衝材として機能して、スイッチが破損してしまうことがなく、入力装置の長寿命化を図ることができる。
【0017】
また、本発明では、使用者の頸部に引掛けるための首掛け体でスイッチを支持することにしているために、首掛け体を使用者の頸部に引掛けるだけで入力装置を装着することができるので、入力装置の使い勝手を向上させることができ、また、首掛け体を使用者の頸部に引掛けた状態で使用することができるので、入力装置が落下してスイッチが破損してしまうことがなく、入力装置の長寿命化を図ることができる。
【0018】
また、本発明では、使用者の頸部の左右両側又は使用者の左右両側の肩甲帯にスイッチを配置することにしているために、コンピュータへの入力操作に応じて使用者の頸部や肩甲帯が左右両側にバランス良く動かされることになり、長時間にわたるコンピュータ操作に起因する使用者の頸部や肩甲帯の苦痛の発生をより一層防止することができる。
【0019】
また、本発明では、コンピュータに接続されるマウスの左右のクリックボタンとしてスイッチが機能することにしているために、従来より多用され使用者が慣れ親しんだマウスの左右のクリックボタンと同様の感覚で入力装置のスイッチを操作することができ、入力装置の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0020】
また、本発明では、コンピュータに接続されたマウスの左右のクリックボタンとしてスイッチが機能するが、カーソルの移動は従来のデスクマウスを併用することになり、そのため、本発明でのスイッチと、従来のデスクマウスでのスイッチを、両用することができ、クリックボタンとしていずれか、もしくは両方を用いるのかは、利用者の用途、もしくはソフトウエア制御によって指定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る入力装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る入力装置1は、コンピュータ2にキーボード3やマウス4とともに接続され、キーボード3やマウス4と同様にコンピュータ2への入力操作を行う装置である。なお、入力装置1は、キーボード3やマウス4などと同様に汎用又は特定のインターフェイスを介してコンピュータ2に接続されている。図中、5はコンピュータ2に接続されたディスプレイである。
【0023】
入力装置1は、図2及び図3に示すように、使用者6の頸部に引掛けるための略U字状の可撓性を有する首掛け体7の左右先端部に略球形状のスイッチ操作部8,9をそれぞれ取付けるとともに、首掛け体7の左右先端部に使用者6の肩甲帯に引掛けるための可撓性を有する肩掛け体10,11の基端部をそれぞれ取付けている。
【0024】
首掛け体7は、中空状の可撓性素材からなり、使用者6の頸部を左右に挟むようにして使用者6の頸部に装着できるようになっており、左右先端部と湾曲した中央部(後端部)との間の中空部にコンピュータ2への配線12を収容している。
【0025】
スイッチ操作部8,9は、首掛け体7の左右先端部に円筒状の支持ロッド13,14を取付け、支持ロッド13,14の上部に矩形板状の支持体15,16を取付け、支持体15,16の上部にオン・オフ型プッシュ式のスイッチ17,18を取付けており、これにより、左右のスイッチ操作部8,9のスイッチ17,18を首掛け体7で支持している。図中、19,20はスイッチ17,18と配線12とを接続するリード線である。
【0026】
ここで、左側のスイッチ操作部8に設けたスイッチ17は、マウス4の左側のクリックボタン21(図1参照。)として機能し、右側のスイッチ操作部9に設けたスイッチ18は、マウス4の右側のクリックボタン22(図1参照。)として機能するように、コンピュータ2に設けたインターフェイス回路やプログラムを設定している。なお、ここでは、左右のスイッチ17,18をマウス4の左右のクリックボタン21,22として機能させているが、これに限られず、たとえば、キーボード3の左右のカーソルキーなどの所定のキーとして機能させるようにしてもよい。
【0027】
また、スイッチ操作部8,9は、中空球形状のスポンジ又はゴムなどの弾性素材からなる弾性体23,24の中空部に支持ロッド13,14や支持体15,16やスイッチ17,18を収容しており、これにより、左右のスイッチ17,18を弾性体23,24で被覆している。
【0028】
なお、ここでは、左右一対のスイッチ操作部8,9としているが、首掛け体7の左右いずれか一方のみにスイッチ操作部8(9)を取付けた構造とすることもできる。また、首掛け体7にスイッチ操作部8,9を取付けて使用者6の頸部に装着できるように構成した場合に限られず、スイッチ操作部8,9を使用者6の肩甲帯に載置できるように構成してもよく、また、スイッチ操作部8,9を使用者6の頸部に貼着できるように構成してもよい。
【0029】
肩掛け体10,11は、首掛け体7の左右先端部からスイッチ操作部8,9の弾性体23,24の前側を保持し後方下部へ向けて伸延させた可撓性素材からなり、使用者6の肩甲帯を前後に挟むようにして使用者6の肩甲帯に装着できるようになっている。
【0030】
そして、入力装置1は、図3に示すように、使用者6の頸部に首掛け体7を後側から引掛けることで使用者6の頸部又は肩甲帯にスイッチ17,18(スイッチ操作部8,9)を装着することができ、使用者6が頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかを側屈、牽上、牽下動作させることで、スイッチ17,18が押圧操作され、コンピュータ2への入力操作を行うことができる。具体的には、上記入力装置1では、頸部を左側に向けて側屈動作させるか、左側の肩甲帯を挙上・引き下げ動作させるか、或いは、頸部を左側に向けて側屈動作させるとともに左側の肩甲帯を挙上・引き下げ動作させることによって、左側のスイッチ17が押圧され、左側のスイッチ17からコンピュータ2へ入力操作が行われ、一方、頸部を右側に向けて側屈動作させるか、右側の肩甲帯を挙上・引き下げ動作させるか、或いは、頸部を右側に向けて側屈動作させるとともに右側の肩甲帯を挙上・引き下げ動作させることによって、右側のスイッチ18が押圧され、右側のスイッチ18からコンピュータ2へ入力操作が行われる。
【0031】
以上に説明したように、上記入力装置1は、コンピュータ2の使用者6の頸部又は肩甲帯に装着され、使用者6の頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかの動作によってコンピュータ2への入力操作を可能としたスイッチ17,18を設けた構成となっている。
【0032】
そのため、上記入力装置1では、コンピュータ2への入力操作の際に、使用者6が頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかを動作させなければならなくなる。これにより、上記入力装置1では、強制的に休憩時間を設けて身体運動を行わなくても、コンピュータ2への入力操作と同時に使用者6の頸部や肩甲帯が適度に動かされ、長時間にわたるコンピュータ操作に起因する使用者6の頸部や肩甲帯の苦痛の発生を防止することができる。
【0033】
また、上記入力装置1は、スイッチ17,18の周囲を弾性体23,24で被覆した構成となっている。
【0034】
そのため、上記入力装置1では、使用者6が頸部や肩甲帯を動作させてコンピュータ2への入力操作を行っても弾性体23,24が使用者6の頸部や肩甲帯とスイッチ17,18との間に介在する緩衝材として機能して、使用者6の頸部や肩甲帯に痛みを感じさせることがなく、入力装置1の使い勝手を向上させることができる。しかも、上記入力装置1では、使用者6の頸部や肩甲帯に装着した入力装置1が床に落下してしまっても弾性体23,24が緩衝材として機能して、スイッチ17,18が破損してしまうことがなく、入力装置1の長寿命化を図ることができる。
【0035】
また、上記入力装置1は、使用者6の頸部に引掛けるための首掛け体7でスイッチ17,18を支持する構成となっている。
【0036】
そのため、上記入力装置1では、首掛け体7を使用者6の頸部に引掛けるだけで入力装置1を装着することができ、入力装置1の使い勝手を向上させることができる。また、上記入力装置1では、首掛け体7を使用者6の頸部に引掛けた状態で使用することができ、入力装置1が落下してスイッチ17,18が破損してしまうことがなく、入力装置1の長寿命化を図ることができる。
【0037】
また、上記入力装置1は、使用者6の頸部の左右両側又は使用者6の左右両側の肩甲帯にスイッチ17,18を配置する構成となっている。
【0038】
そのため、上記入力装置1では、コンピュータ2への入力操作に応じて使用者6の頸部や肩甲帯が左右両側にバランス良く動かされることになり、長時間にわたるコンピュータ操作に起因する使用者6の頸部や肩甲帯の苦痛の発生をより一層防止することができる。
【0039】
また、上記入力装置1は、コンピュータ2に接続されるマウス4の左右のクリックボタン21,22としてスイッチ17,18が機能するように構成している。
【0040】
そのため、上記入力装置1では、従来より多用され使用者6が慣れ親しんだマウス4の左右のクリックボタン21,22と同様の感覚で入力装置1のスイッチ17,18を操作することができ、入力装置1の使い勝手をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る入力装置をコンピュータに接続した状態を示す説明図。
【図2】本発明に係る入力装置を示す正面図。
【図3】本発明に係る入力装置の使用状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 入力装置
2 コンピュータ
3 キーボード
4 マウス
5 ディスプレイ
6 使用者
7 首掛け体
8,9 スイッチ操作部
10,11 肩掛け体
12 配線
13,14 支持ロッド
15,16 支持体
17,18 スイッチ
19,20 リード線
21,22 クリックボタン
23,24 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにキーボードとともに接続される入力装置であって、コンピュータの使用者の頸部又は肩甲帯に装着され、使用者の頸部、肩甲帯、頸部及び肩甲帯のいずれかの動作によってコンピュータへの入力操作を可能としたスイッチを設けたことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記スイッチは、周囲を弾性体で被覆したことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記スイッチは、使用者の頸部に引掛けるための首掛け体で支持したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記スイッチは、使用者の頸部の左右両側又は使用者の左右両側の肩甲帯に配置したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の入力装置。
【請求項5】
前記スイッチは、コンピュータに接続されるマウスの左右のクリックボタンとして機能することを特徴とする請求項4に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−39814(P2010−39814A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202853(P2008−202853)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(591224788)大分県 (31)
【Fターム(参考)】