説明

入力装置

【課題】各種電子機器の入力操作部に用いられる入力装置に関し、操作部分が球状のもので低背構成の新たな入力装置を提供する。
【解決手段】円板リング状の磁石39そのものをインサート成形して外皮部分が樹脂31からなる外形球状の球体部33に対し、その貫通部37に、一端側の近傍位置に鍔部51を有した棒状軸50を他端側から挿通させていき、貫通部37の一部をなす第一凹部42に鍔部51を圧入することで一体化させ回転磁石部材30に形成した。その圧入時に、鍔部51が磁石39に直接当接しないように樹脂31で一体に第一受け部44を設け磁石39の破損を低減させるようにした。そして、この回転磁石部材30の軸部35を回転可能に下ケース60上に支持させて、球体部33への回転操作ができる形態の低背構成のものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の入力操作部に用いられる入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の各種電子機器の高機能化や小型化が進むにつれ、これらの入力操作部用の入力装置にも様々な形態のものが用いられ、球体からなる操作体を回転操作するトラックボール装置を搭載するものも増えてきた。
【0003】
以下に、従来の入力装置として用いられているトラックボール装置について、図面を用いて説明する。
【0004】
図9は従来の入力装置としてなるトラックボール装置の断面図、図10は同分解斜視図、図11は同機構構成部と基板構成部との組み合わせ前の斜視図である。
【0005】
同図において、1は、側方四方向にそれぞれ突出する突出部2を備えた上面視十字形で、中央に貫通孔3を有する絶縁樹脂製の下ケースである。下ケース1の対向位置となる一組の突出部2の先端面中央には、係止突起がそれぞれ設けられ、残りの対向位置となる一組の突出部2の先端面には、係止段部がそれぞれ設けられている。
【0006】
また、下ケース1の貫通孔3を構成している内側壁には、板バネ7の他端側が埋設固定されており、板バネ7の一端側は片持ち状で貫通孔3内に位置している。なお、板バネ7は前記一端側の先端高さ位置が埋設箇所よりも上方位置になるように根元部分に上方への曲げ加工が施されている。
【0007】
9は、略円柱状に形成されたローラで、その一端には、円筒形状で周方向に沿ってN極とS極が所定角度で交互に着磁されたリング磁石10が固着されている。このローラ9の四つが下ケース1の各突出部2上にそれぞれ載置されている。その配置関係としては、各ローラ9の軸線が、載せられた突出部2の突出方向にそれぞれ直交する方向に向けられ、リング磁石10は隣り合う突出部2で挟まれた四ヶ所の角部となる空間部分にそれぞれ位置されている。つまり、四つのローラ9は、上面視では正方形となる配置関係で配されている。
【0008】
そして、12は操作体としてなる球形状のボールで、板バネ7の一端部上に載置されて上方に付勢されている。
【0009】
14は、絶縁樹脂製の上ケースで、中央に前記ボール12より小径の上方円形孔15を有すると共に、下ケース1の突出部2に対応して側方四方向に突出した突出部16を備えた形状となっている。それら各突出部16の下面両側には下方開口の鉤状部17が設けられ、この鉤状部17の下方開口部分と下ケース1の突出部2上面との間で、前記各ローラ9は回転可能に保持されている。
【0010】
19は、上ケース14の上方から突出部16の上面に重ねて配された金属板製のカバーで、重なり合う突出部16、2の先端位置から対向状態で垂下する一対の第一脚部20と一対の第二脚部21を備えている。第一脚部20の先端位置には角孔20Aが設けられ、第二脚部21の下端には係止爪21Aが設けられている。
【0011】
そして、第一脚部20は、角孔20A内に下ケース1の一対の突出部2に設けられた係止突起が嵌め合わされて係止され、第二脚部21は、係止爪21Aが下ケース1の残りの一対の突出部2に設けられた係止段部にかしめられて、下ケース1、ローラ9、ボール12、上ケース14が一体化されて機構構成部が構成されている(図11参照)。そして、この機構構成部は、ボール12の上方円形孔15からの上方への突出部分に対し、指等でボール12を回転操作および押圧操作ができるようになっている。
【0012】
以上の機構構成部に対し、それに組み合わせられる基板構成部の配線基板23には、各リング磁石10に対応するように四つのホール素子等の磁気検出素子24が前後左右位置に実装され、また、その中央位置には一つのプッシュスイッチ25が実装されている。基板構成部は、この配線基板23、磁気検出素子24、プッシュスイッチ25によって構成されている。
【0013】
そして、機構構成部と基板構成部とは、前記各リング磁石10が前記各磁気検出素子24に対して上下で所定間隔を保った対向状態になるように位置決めされて組み合わせられている。また、その状態で、図9に示すように、プッシュスイッチ25の上方位置には、板バネ7の一端部を介してボール12が位置している。
【0014】
以上のように、当該トラックボール装置は構成され、次に、その動作について説明する。
【0015】
まず、ボール12の上方への突出部分を回転操作すると、ボール12が若干押し下げられつつ対応する方向に移動していき、その方向側に位置したローラ9に当接して前記ローラ9はボール12の回転に伴って回転する。このローラ9の回転に応じてリング磁石10も共回りして磁気変化が発生し、その磁気変化を対応した磁気検出素子24が検出して所定出力が得られる。この出力信号に基づいて機器の制御部がボール12の回転操作状態などを判別して機器の所定機能が作動される。
【0016】
一方、ボール12の突出部分に対し押し下げ操作をすると、ボール12は板バネ7を押し下げながら下方に移動していき、板バネ7の一端部下面でプッシュスイッチ25を押してスイッチ信号が得られる。このプッシュスイッチ25からの信号も機器の制御部で検出されて機器の所定機能が作動される。
【0017】
前記の各操作では、例えば、前記ボール12への回転操作に応じて機器の表示部内のカーソルやポインタなどの移動がされ、前記ボール12への押し下げ操作によって選択されている項目が決定されるなどの制御がされて用いられるものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第4187035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前記トラックボール装置は、回転操作時にボール12が少し押し下げられつつ対応する方向にボール12が移動していき、その方向側のローラ9にボール12が当接して当該ローラ9が回転される機構のものであったため、ボール12をローラ9よりも若干上方位置に配したものとする必要があり、低背化に限度があった。そして、一般的に、トラックボール装置はボールを操作するものであるためスムーズに操作できて好ましかったが、機器の小型薄型化が進むにつれてトラックボール装置にも低背化が求められるようになってきており、近年では、トラックボール装置のように操作部分が球状で低背に構成された新たな入力装置の提案を要望されることも多くなってきた。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、操作部分が球状のもので低背構成の新たな入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するために本発明は、中央貫通孔を有した円板リング状でその周方向に沿ってN極とS極が交互に着磁されている磁石が、樹脂で覆われて球状の球体部に構成されると共に、その磁石の中央貫通孔の中心軸線に沿って外方各々の両側に突出した軸部を有した回転磁石部材と、その回転磁石部材の各軸部をそれぞれ回転可能に支持する下ケースと、対応する開口部から前記回転磁石部材の球体部の上部部分を所定量外方に突出させて前記下ケースに結合された上ケースとを有し、前記回転磁石部材を、一端側の近傍位置に鍔部を有する一本の棒状軸を他端側から前記磁石の中央貫通孔に挿通させて構成したものとすると共に、その棒状軸として、挿通されていく外面箇所と前記磁石の中央貫通孔の内壁との間に全周に亘って所定隙間を有するものを用いて、前記棒状軸の前記鍔部が、前記磁石を覆っている前記樹脂に圧入固定されることによって前記回転磁石部材に構成されていることを特徴とする入力装置としたものである。
【0023】
これであれば、回転磁石部材の磁石そのものを樹脂で覆って構成した球体部を操作する形態で、低背薄型構成の新たな入力装置に実現できる。また、当該構成であれば、球体部内の磁石が製造時・使用時共に保護される構成にでき、これによって、安定した使用状態が長期に亘って維持されるものとして実現することができるという作用も有する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、操作部分が球状のもので低背構成の新たな入力装置を提供できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置の断面図
【図2】同機構構成部と基板構成部との組み合わせ前の斜視図
【図3】同分解斜視図
【図4】同上ケースを除いた状態での上面図
【図5】図4のQ−Q線での断面図
【図6】同要部である下ケースの外観斜視図
【図7】同要部である回転磁石部材の断面図
【図8】同要部である回転磁石部材の分解斜視図
【図9】従来の入力装置としてなるトラックボール装置の断面図
【図10】同分解斜視図
【図11】同機構構成部と基板構成部との組み合わせ前の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による入力装置の断面図、図2は同機構構成部と基板構成部との組み合わせ前の斜視図、図3は同分解斜視図、図4は同上ケースを除いた状態での上面図である。なお、図1は、図4のP−P線での断面を示している。そして、図5は、図4のQ−Q線での断面図、図6は、同要部である下ケースの外観斜視図である。
【0028】
同図に示すように、当該入力装置は、従来品同様に機構構成部と基板構成部とを組み合わせて構成したものとなっており、以下に機構構成部、基板構成部の順に説明していく。
【0029】
同図において、30は回転磁石部材であり、この回転磁石部材30は、外形が球状で外皮部分が樹脂31からなる球体部33(図1〜図3、図5参照)と、球体部33から球体直径に同軸上で外方に向かって両側それぞれに直線状に突出している軸部35(図3、図4参照)とを有している。
【0030】
そして、回転磁石部材30は、図7の回転磁石部材の断面図、図8の回転磁石部材の分解斜視図に示すように、球体部33の直径方向に貫通した一つの貫通部37(図7参照)に、一本の棒状軸50を挿通させて構成されている。なお、詳細は後述するが、前記軸部35は棒状軸50の両端部分でそれぞれ構成されている。
【0031】
回転磁石部材30の球体部33内には、直径2〜3mm前後のフェライトやNd−Fe−B合金等からなる略円板リング状の磁石39が、インサート成形で固定されている(図7、図8参照)。磁石39は、その中央位置に設けられている中央貫通孔40の中心が球体部33中心に一致するように固定されている。そして、この磁石39としては、リングの周方向に沿って例えば60度間隔でN極とS極が交互に隣接して着磁されたものを用いている。
【0032】
回転磁石部材30において外皮部分を構成している樹脂31は、図7および図8に示したように、磁石39の円板リングの側面側においては、少なくとも中央貫通孔40の周囲近傍にあたる箇所を覆いこむことがないように、その箇所を露出状態とする第一孔部41、第二孔部46を有した形状に形成され、さらにそのそれぞれの外方位置には第一孔部41、第二孔部46にそれぞれ連通し、側面視で第一孔部41、第二孔部46よりも大きい形状の第一凹部42、第二凹部47が内側方向に窪むように、つまり磁石39の円板リングの側面側に窪んだ状態となるように形成されている。なお、この第一凹部42の第一孔部41以外の底部位置が第一受け部44としてなり、第二凹部47の第二孔部46以外の底部位置が第二受け部48としてなっている。つまり、当該構成では、部品点数などを増やすことなく、各受け部44、48を、円板状の磁石39のリング側面に密着状態で外皮部分を構成している樹脂31により一体形成して設けたものとなっている。
【0033】
前記のように樹脂31で磁石39そのものを覆った構成としたことによって、磁石39の中央貫通孔40は、各孔部41と46、各凹部42と47とを介して一直線状で外方に連通状態になっており、これらで前述した球体部33の貫通部37が構成されている。
【0034】
一方、棒状軸50は、図7や図8に示すように、断面が略円形の直線棒状で、一端側の近傍位置に鍔部51を有した形状になっている。
【0035】
この棒状軸50を、他端側から球体部33の貫通部37内に挿入させていき回転磁石部材30を製作する。つまり、棒状軸50の他端を、第一凹部42、第一孔部41、磁石39の中央貫通孔40、第二孔部46、第二凹部47に挿通させていく。なお、この棒状軸50の挿入時に磁石39を破損させることがないように、棒状軸50の貫通部37内に挿入される箇所の外形寸法としては、磁石39の中央貫通孔40内壁との間に全周に亘って所定の隙間が保たれるものとし、かつ鍔部51の形状としては、鍔部51が第一凹部42内に圧入される形状となるものとしている。
【0036】
そして、前記のように棒状軸50を貫通部37内に挿入させていき、鍔部51の他端側の面が、樹脂31からなる第一受け部44に当接するまで、鍔部51を第一凹部42内に圧入させ、仕掛品とする。その仕掛品では、鍔部51を樹脂31からなる第一受け部44で受ける構成としているため、磁石39の不用意な破損などが防止できる。なお、鍔部51と第一凹部42との形状は特に限定されることはないが、鍔部51を側面視円形のものとし、第一凹部42を側面視で略正方形のものとしておけば、圧入箇所が部分的な四箇所で均等な圧入状態のものにできるため圧入作業性に優れると共に、鍔部51形状や第一凹部42形状の微修正により圧入状態の調整なども簡単に行えるため好ましい。
【0037】
前記仕掛品においては、棒状軸50の他端側は、球体部33から外方に突出している。その状態で、次に前記他端側の先端から、棒状軸50に対し自由に回転しないように圧入状態となるCリングやOリングなどの固着部材53を嵌め込み球体部33側に押し込んでいく。この固着部材53としても、外形が第二凹部47内に圧入状態となる形状のものを用い、前記のように押し込んでいって第二凹部47内に圧入し、第二受け部48に当接する状態で停止させる。このように、固着部材53側も、樹脂31からなる第二受け部48で受ける構成としているため、磁石39の不用意な破損などが防止できる。なお、固着部材53と第二凹部47との形状は、前述した第一凹部42と鍔部51の形状関係と同様に、第二凹部47を側面視で略正方形のものとし、固着部材53を側面視円形のものとすれば、同様の効果が得られるので好ましく、さらに固着部材53としても安価なものが使用できて好ましい。
【0038】
以上のように、棒状軸50は両側ともに球体部33内で圧入保持状態になされて球体部33に一体化され、これによって回転磁石部材30が製作されている。このとき、球体部33の直径方向に同軸で、棒状軸50一端側の鍔部51からの外方位置が一方側に突出して一端側の軸部35となり、固着部材53から他方側に突出した棒状軸50他端側の外方位置が他方側の軸部35となる。なお、当該構成であれば、回転磁石部材30を少ない工数で安価に得ることができる。
【0039】
この回転磁石部材30を四つ使用して機構構成部は構成されており、その機構構成部についての説明をさらに続ける。
【0040】
図1〜図6において、60は、ポリアセタール等の絶縁樹脂製の下ケースで、その上面には、直線溝62付きの半球状凹部61が四つ設けられている。半球状凹部61の内壁はそれぞれ下方にいくにつれて小径となる形状で、その下方中央位置は上下に貫通している。この四つの半球状凹部61は、下ケース60の中心位置から等距離で、90度ピッチの位置に形成されている。そして、個々の半球状凹部61には、図4や図6などからも判るように、各々一対の直線溝62が設けられている。直線溝62は、半球状凹部61の円形中心を通る直径の延長線に沿ってそれぞれ外方に向かって一つずつ設けられ、その配設状態としては、上面視で異なる半球状凹部61に設けられて隣り合った直線溝62どうしが直交した正方形となる位置関係で設けられている。
【0041】
この一対の直線溝62付きの半球状凹部61が、回転磁石部材30の配設箇所となり、回転磁石部材30は、球体部33の下方部分が半球状凹部61内に配されて一対の軸部35が対応する一対の直線溝62内に回転可能に支持されている。
【0042】
ここで、直線溝62の構成や直線溝62内での軸部35の支持構造について詳細説明をする。
【0043】
直線溝62は、図6に示したように、半球状凹部61側の底面に対し半球状凹部61より離れた側となる先端底面位置が水平面で一段高く形成された段部63となっている。そして、直線溝62の軸部35外周面側に応じて対向している内側壁には、上面視で略かまぼこ状の突起からなる第一支持部65、第二支持部67が一つずつ設けられている。ここに、第一支持部65と第二支持部67とは軸線方向には互いに位置をずらして設けている。そして、これらの突出中心位置によって、軸部35を、軸部35の中心軸線の高さ位置で軸部35外周面からその中心軸線に向かって支持可能なものに形成している。一方、直線溝62の軸部35の軸線方向先端に対向する内側壁にも、上面視で略かまぼこ状の突起からなる第三支持部69が設けられており、その突出中心位置によって、軸部35の中心軸線の高さ位置を含んで軸部35の軸線方向先端の側面を支持可能なものに形成している。なお、三つの各支持部65、67、69は略かまぼこ状の突起以外の形状であってもよい。
【0044】
回転磁石部材30の軸部35は、この直線溝62内に、軸部35先端を軸線方向に線接触状態で段部63上に載せられると共に、第三支持部69で軸部35の軸線方向先端の側面が支持され、かつ第一支持部65と第二支持部67とで軸部35の外周面を中心軸線に向かって支持された状態で配されている(図4参照)。
【0045】
以上のように、個々の回転磁石部材30は、一対の軸部35が対応する一対の直線溝62内で回転可能に支持されて配され、球体部33は、下方部分が半球状凹部61内に位置されている。そして、四つの回転磁石部材30としては、図4に示したように、下ケース60上に上面視で正方形になる関係で配されており、個々の回転磁石部材30は、球体部33の中心どうしを繋ぐ仮想円の直径方向に沿って回転可能に支持されたものとなっている。なお、四つの回転磁石部材30は、四つの球体部33を一本の指で同時に触れることが可能なように各々3〜5mm前後の間隔などに配置されていると好ましい。
【0046】
そして、下ケース60においては、その上面に、さらに、半球状凹部61どうしで囲まれている中央位置に円形リング状になるように磁性板設置用凹部70を有し(図3、図6参照)、その中にはリング状磁性板72が固定されている(図1、図4、図5参照)。このリング状磁性板72は、下ケース60のそりなどを防ぐと共に、回転磁石部材30の磁石39を吸引させ、非操作時に不用意に回転磁石部材30が回転することを防ぐために設けたものである。
【0047】
また、下ケース60は、上面視で対向した位置に第一外方突出部75、第二外方突出部76を有している(図3〜図5参照)。第一外方突出部75は、突出方向先端位置が下方に向かう略L字状で、その下端を当接させて配する形態のものとしている。一方、第二外方突出部76には、その下面に押圧突起77が設けられている。
【0048】
80は、下ケース60に結合される上ケースである。上ケース80は、各回転磁石部材30の球体部33の上方部分を、対応する開口部から突出させて下ケース60に上方から結合されている(図1、図2、図5参照)。なお、上ケース80は、軸部35の上方への抜け止め機能も果たす。そして、上ケース80の材質としては、ポリカーボネートなどの樹脂製のものやステンレスなどの磁性板製のものなどとすればよい。なお、上ケース80と下ケース60との結合方法については特に限定はされないが、当該構成では、図3などからも判るように、下ケース60側部に設けたカシメ突起60Aを上ケース80側部に設けたカシメ用貫通孔80Aに挿入させ、カシメ突起60Aの上端を潰しカシメすることによって上ケース80と下ケース60とを結合させたものとしている。
【0049】
以上のように、当該入力装置の機構構成部は構成されている。そして、この機構構成部は、図5に示したように、第一外方突出部75の下端位置を支点として第二外方突出部76側が低くなる傾倒動作が可能なように、第一外方突出部75を基板構成部上に載せて配されている。
【0050】
一方、基板構成部は、図1〜図5に示したように、配線基板82を有し、その配線基板82には、各回転磁石部材30の球体部33に対応した位置に四つのホール素子等の磁気検出素子84が、また、一つのプッシュスイッチ86が第二外方突出部76の押圧突起77に対応した位置に実装されて構成されている。なお、基板構成部上を絶縁シートで覆い防水性を高める構成などとしてあってもよい。なお、プッシュスイッチ86としては、押圧操作で節度感触を伴ってスイッチオン状態に切り換わるものが好ましいが、特にそれのみに限定はされない。
【0051】
基板構成部に対して機構構成部は、第一外方突出部75の下端位置が支点となる傾倒動作が可能となるように、配線基板82に第一外方突出部75の下端を載せ、第二外方突出部76の押圧突起77をプッシュスイッチ86に当接させて配されている。その状態で、回転磁石部材30の球体部33は、対応する各磁気検出素子84に上下に所定間隔をあけて対向して位置している。
【0052】
当該入力装置は以上のように構成されており、次に、その動作について説明する。
【0053】
四つの回転磁石部材30は、非操作時の通常状態では、各球体部33は、下ケース60に固定されたリング状磁性板72に磁石39が吸引された状態となっている。このため、四つの回転磁石部材30は安定した停止状態で維持されている。
【0054】
その通常状態から、指などで上ケース80の上面に沿って平行になぞり操作をして、回転磁石部材30の球体部33を回転操作する。このとき、各回転磁石部材30は、一対の軸部35が対応する一対の直線溝62内で支持されて回転可能な方向が限定されているので、前記のなぞり操作に応じて回転動作が可能なものが所定量回転する。なお、このなぞり操作時に、プッシュスイッチ86が押圧突起77で不用意に作動されないように、プッシュスイッチ86のスイッチ動作力設定や、第一外方突出部75の下端位置から押圧突起77までの距離を適宜検討して設定しておくことは重要である。
【0055】
なお、前記なぞり操作は、回転磁石部材30の球体部33に対し磁石39外周を覆っている樹脂31部分への操作になり、また磁石39外周を樹脂31で覆っているものとしているため、外的衝撃などを含んで磁石39が樹脂31で保護されて磁石39の不用意な破損なども発生し難い。また、球体部33内においても、棒状軸50の鍔部51と磁石39との間および固着部材53と磁石39との間に樹脂31からなる第一受け部44および第二受け部48を介在させたものとし、さらに、磁石39の中央貫通孔40の内壁と、そこに挿通されている棒状軸50の外面との間に全周に亘って所定隙間を有する構成としていることも、磁石39の不用意な破損などの発生防止に寄与している。
【0056】
そして、回転磁石部材30は、いずれの軸部35も、対応した直線溝62内で先端位置を段部63上に線接触状態で載せられる共に、第一〜第三支持部65、67、69によって支持されている。特に、第一支持部65と第二支持部67との位置を軸線方向にずらして軸部35の外周面箇所をそれぞれ支持させているため、軸部35のガタツキを大きく発生させることなく軸部35の外周面と各支持部65、67間のクリアランスを大きくとることが可能となって、回転磁石部材30の回転動作も滑らかなものにできる。なお、一般的に、例えば上方開口のU字状に形成した支持部に、回転可能な軸体を載せて同一円周上の外周面位置を支持させた構成であれば、その支持された円周上の位置に異物が噛み込んだ場合に軸体の回転状態が阻害されやすいが、当該構成のように、第一支持部65と第二支持部67との位置を軸線方向にずらした配置としておけば、異物の噛み込みなども低減できて、長期に亘って安定した回転動作がなされるものに実現できる。
【0057】
前記のなぞり操作によって、回転磁石部材30が回転すると、その球体部33内に一体化されている磁石39も同期回転する。これによって磁気変化が発生し、その磁気変化に応じて対応する磁気検出素子84から所定の出力信号が得られる。そして、機器の制御部は、四つの回転磁石部材30に応じたそれぞれの磁気検出素子84からの信号に基づき演算処理などをして操作された方向や距離を判別し、それに応じて機器の所定機能を作動させる。
【0058】
前記のなぞり操作をやめると、四つの回転磁石部材30はリング状磁性板72に再び磁石39が吸引された状態となって、各回転磁石部材30が安定して停止している通常状態に戻る。
【0059】
次に、指などで球体部33上から、つまり上ケース80上から押し下げ操作をすると、機構構成部は、第一外方突出部75の下端位置を支点として第二外方突出部76側が低くなる傾倒動作をして、下方に移動する押圧突起77でプッシュスイッチ86を作動させる。そのプッシュスイッチ86のスイッチ出力も前記機器の制御部で検出されて機器の所定機能が作動される。このとき、プッシュスイッチ86から節度感触が得られると操作状態が判りやすくなり好ましい。
【0060】
なお、このときに回転磁石部材30においては、上ケース80から上方に突出した球体部33部分を含んで指などで押し下げ操作されるようになるが、各球体部33は径が小さく、かつ各球体部33内の磁石39がリング状磁性板72に吸引されているため、この押し下げ操作時において回転磁石部材30の回転動作が大きく発生することはない。
【0061】
前記の押し下げ操作力を除くと、プッシュスイッチ86が押し下げ前の状態に戻って押圧突起77を押し戻し、機構構成部も押し下げ前の状態に戻る。
【0062】
なお、前述の機器の所定機能とは、例えばなぞり操作で機器の表示部内のカーソル移動をさせ、前記押し下げ操作で選択されている項目を決定させるなどの制御がなされる事例があげられるが、それのみに特に限定はされない。
【0063】
以上のように、当該入力装置は、磁石39そのものを球状にインサート成形した球体部33を操作部分としている。このために、従来のトラックボール装置よりも低背で薄型のものに構成することができる。そして、前述したように、その球体部33は、磁石39の不用意な破損発生が防止できる構成のものとしているため、長期に亘って安定した使用状態が維持できるものに実現できる。また、軸部35の支持構造を、異物の噛み込みなどの発生が抑えられる構成のものとしたため、操作性に優れ、また、この支持構造も長期に亘って安定した使用状態が維持できることに大きく寄与する。
【0064】
なお、前記には、押し下げ操作時にプッシュスイッチ86が作動される構成のものを説明したが、その構成は必須ではなく、必要に応じて押し下げ操作でプッシュスイッチ86が作動されるものとすればよい。なお、機構構成部がプッシュスイッチ86を作動させるための構成も前述説明したものに限定されることはない。
【0065】
また、以上には四つの回転磁石部材30を上面視で正方形となる位置関係で配置した例を説明したが、上面視で正方形以外となる位置関係に配してあってもよい。さらには、回転磁石部材30は、四つ以外の複数であってもよく、または一つのみであってもよい。それらのときには、回転磁石部材30の球体部33の配置状態に応じて磁気検出素子84を配置したものとすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明による入力装置は、操作部分が球状のもので低背構成の新たな入力装置を提供できるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の入力操作部用に有用である。
【符号の説明】
【0067】
30 回転磁石部材
31 樹脂
33 球体部
35 軸部
37 貫通部
39 磁石
40 中央貫通孔
41 第一孔部
42 第一凹部
44 第一受け部
46 第二孔部
47 第二凹部
48 第二受け部
50 棒状軸
51 鍔部
53 固着部材
60 下ケース
60A カシメ突起
61 半球状凹部
62 直線溝
63 段部
65 第一支持部
67 第二支持部
69 第三支持部
70 磁性板設置用凹部
72 リング状磁性板
75 第一外方突出部
76 第二外方突出部
77 押圧突起
80 上ケース
80A カシメ用貫通孔
82 配線基板
84 磁気検出素子
86 プッシュスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央貫通孔を有した円板リング状でその周方向に沿ってN極とS極が交互に着磁されている磁石が、樹脂で覆われて球状の球体部に構成されると共に、その磁石の中央貫通孔の中心軸線に沿って外方各々の両側に突出した軸部を有した回転磁石部材と、その回転磁石部材の各軸部をそれぞれ回転可能に支持する下ケースと、対応する開口部から前記回転磁石部材の球体部の上部部分を所定量外方に突出させて前記下ケースに結合された上ケースとを有し、前記回転磁石部材を、一端側の近傍位置に鍔部を有する一本の棒状軸を他端側から前記磁石の中央貫通孔に挿通させて構成したものとすると共に、その棒状軸として、挿通されていく外面箇所と前記磁石の中央貫通孔の内壁との間に全周に亘って所定隙間を有するものを用いて、前記棒状軸の前記鍔部が、前記磁石を覆っている前記樹脂に圧入固定されることによって前記回転磁石部材に構成されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
棒状軸の鍔部とこれに対向する磁石の側面との間に介在する受け部が、前記磁石の外周を覆っている樹脂によって一体形成されている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
回転磁石部材の軸部を回転可能に支持する支持構造として、少なくとも、前記軸部の外周面箇所をそれぞれ支持する第一支持部と第二支持部とを有し、その第一支持部と第二支持部との支持位置を軸線方向にずらしている構成とした請求項1記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113596(P2012−113596A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263360(P2010−263360)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】