入力部材およびそれを備える電子機器
【課題】スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】所定方向に列を為して配置される1または2以上の第一突出部11を操作面の裏面側に備える操作板10と、第一突出部11に対向して設けられた導電性シート20と、第一突出部11に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極32,33を互いに非接触状態で配置して成る電極群31を備える基板30と、を有すると共に、導電性シート20と電極群31との間には、所定の隙間が形成されている。
【解決手段】所定方向に列を為して配置される1または2以上の第一突出部11を操作面の裏面側に備える操作板10と、第一突出部11に対向して設けられた導電性シート20と、第一突出部11に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極32,33を互いに非接触状態で配置して成る電極群31を備える基板30と、を有すると共に、導電性シート20と電極群31との間には、所定の隙間が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用機器、携帯電話機および音響機器等の電子機器を操作するための入力部材としてタッチパネルが用いられている。タッチパネルでは、所望のアイコン等を選択するタッチ動作の他、指をタッチパネルに触れた状態で所望の方向にスライドするスライド動作により各種入力を行うことができる。スライド動作を検出できる入力部材としては、抵抗膜型のタッチパネルを用いるものがある(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−9095号公報(請求項等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明には、以下の問題がある。すなわち、ユーザーがある位置に触れるような操作を行った場合に、同じ位置に触れたにも関わらず異なる入力値が入力される場合があるという問題である。抵抗膜型のタッチパネルは、温度等の環境状況により、所定の位置から触れた位置までの抵抗値が変わりうるためである。
【0005】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の入力部材の実施の形態は、所定方向に列を為して配置される1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、導電性シートと電極群との間には、所定の隙間が形成されている。
【0007】
さらに、導電性シートの基板側の面に、絶縁性の第二突出部を複数備え得る。
【0008】
さらに、電極群は、櫛歯形状の1以上の第1電極と、1以上の第2電極とを互いにかみ合わせるように配置されるように配置され得る。
【0009】
さらに、導電性シートの基板と対向する面と反対側の面には、第一突出部に対向する位置に凸部を備え得る。
【0010】
また、本発明の電子機器の実施の形態は、所定方向に並ぶ1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、導電性シートと電極群との間には、所定の隙間が形成されている入力部材と、当該入力部材の内部若しくは外部に設けられる制御部と、を備える電子機器であって、制御部は、第一突出部が導電性シートを撓ませて、電極群と導電性シートとを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を所定の時間毎に計測する計測手段と、計測手段により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくとも操作位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段により特定された操作位置と計測時刻との関係により、操作板を連続的に触れたスライド動作あるいは操作板の所定部分に触れたタッチ動作のいずれか一方がなされたことを特定する操作種類特定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材および電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力部材を備える電子機器の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る入力部材の斜視図である。
【図3】図1の入力部材を図1のA−A線で切断した場合の断面図である。
【図4】図1の入力部材の導電シートを裏面側から見た場合の平面図である。
【図5】図1の入力部材の操作板を裏面側から見た場合の平面図である。
【図6】図1の入力部材の基板を表面側から見た場合の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子機器としての音響機器の模式的な構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る音響機器の動作の概略的な流れを説明するフローチャートである。
【図9】本実施の形態に係る音響機器の記憶部が有するテーブルの一例である。
【図10】本実施の形態の変形例に係る操作板の操作面を見た場合の平面図である。
【図11】本実施の形態の変形例に係る操作板を図3と同様の断面にて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る入力用部材およびそれを備える電子機器の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器の一例として車載用の音響機器1の入力部材を例に説明する。
【0014】
(入力部材の構造)
図1は、本発明の実施の形態に係る車載用の音響機器1の斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る音響機器1は、入力部材2を備える。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係る入力部材2の分解斜視図である。図3は、図1のA−A線に沿って操作面に対して垂直な面で入力部材2を切断した場合の断面図である。なお、図3では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を変更して図示している。また、以後、操作面側を表側、操作面と逆側を裏側という。また、表側から裏側に向かう方向を押圧方向という。
【0016】
入力部材2は、入力部材2の操作面側に露出する操作板10、操作板10の裏面側に対向して配置される導電性シート20、導電性シート20の裏面側に対向して配置される基板30を主に有する。
【0017】
操作板10は、ユーザーが触れる部分である。操作板10としては、たとえば、幅が1.5cm、長さが10cmで、長さ方向にて厚さが2〜50mmで変化する部材を用いることができる。たとえば、操作板10は、図1〜3で示すように、長さ方向の略中央で最大の厚さを有し、長さ方向両端で最小の厚さを有するような断面凸形状を有する。操作板10は、局部的に凹ませることができるのであればどのような材料から形成されていても良く、樹脂、金属、あるいはそれらのコンポジットから形成されていても良い。操作板10は、薄型の弾性シート(不図示)の表面側に固着されて、音響機器1の筺体に固定されてもよい。操作板10は、裏面側に第一突出部11を有し、第一突出部11は、導電性シート20の方向へ突出している。
【0018】
第一突出部11は、直径が2〜10mmの略半球状の弾性体であり、その球面部分が導電性シート20の方向へ突出している。合計5個の第一突出部11a,11b,11c,11d,11e(以後、総称する場合には、「第一突出部11」と称する。)は、操作板10の長手方向に列を為して固着されている。特に、各第一突出部11の中心が操作板10の長手方向に直線的に並ぶように配置されているのが好ましい。第一突出部11が基板30上に接触する際に、押圧力に応じて第一突出部11が弾性変形できるように、第一突出部11は、柔軟性に富む材料で構成されている。たとえば、第一突出部11のショアA硬度は、20度から90度であるのが好ましい。また、第一突出部11を構成する部材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。
【0019】
導電性シート20は、厚さが2mm程度の導電性の弾性シートである。導電性シート20は、第一突出部11により表面側から押圧された際に容易に撓むことができるように、ショアA硬度が50〜90度である。また、導電性シート20に導電性を付与するために、導電性シート20には、導電性材料が分散されている。導電性シート20に分散される導電性材料としては、たとえば、カーボンブラックあるいは金属等を用いることができるが、粒子径が小さいもの(たとえば、ナノサイズの粒子)、特に、取り扱いが容易なカーボンブラックを用いるのが好ましい。導電性シート20を構成する母材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。導電性シート20の表面であって、第一突出部11と対向する位置には、凸部としてのバー部材21が配置されている。また、導電性シート20の裏面には、第二突出部としてのスペーサ22が配置されている。
【0020】
バー部材21は、操作板10の長手方向に延びる直線上の部材であって、導電性シート20の表面から操作板10方向へ突出している。操作板10に押圧力が加えられた際に、第一突出部11を介して導電性シート20を撓ませることができるように、バー部材21は、比較的柔軟性に富む材料から好適に構成される。たとえば、バー部材21のショアA硬度で60度以上、ショアD硬度で90度以下であるのが好ましい。また、バー部材21を構成する部材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。
【0021】
図4は、入力部材2の導電性シート20を裏面側から見た場合の平面図である。なお、図4では、表面側に配置されたバー部材21の位置を点線で図示している。
【0022】
スペーサ22は、導電性シート20の裏面に複数設けられている絶縁性の部材である。スペーサ22は、操作板10に押圧力が加えられていない状態で、導電性シート20と電極群31との間に所定の隙間を形成する役割を有する。ここで、「所定の隙間」とは、操作板10に押圧力が加えられていない状態で、導電性シート20と電極群31とが電気的に非接触の状態を保持できる隙間をいい、導電性シート20の弾性等に基づき適宜設定できる。また、所定の隙間は、ユーザーが操作板10を押圧した際に、導電性シート20が撓んで電極群31に接触できる程度の距離で形成されている。かかる場合には、操作板10に押圧力が加えられると、導電性シート20と電極群31とが容易に電気的に導通状態になる。導電性シート20と電極群31とは、非押圧時の状態で、所定の隙間として、好ましくは、250μm以下、より好ましくは、5〜200μmの距離で離間しているのが好ましい。また、スペーサ22の導電性シート20面からの突出量を調節することで、所定の隙間の大きさを調節することができる。スペーサ22は、操作板10に押圧力が加えられた際に、導電性シート20と電極群31との接触を妨げなければ、どのような位置に、どのような密度で配置されていてもよい。しかし、スペーサ22は、図4に示すように押圧方向でバー部材21に重ならない位置に設けられるのが好ましい。また、スペーサ22が、バー部材21の長さ方向に沿ってその両脇に配置されるのがより好ましい。スペーサ22は、好適には、絶縁性のインクを用いてドット状等で導電性シート20の裏面にパターン印刷し、乾燥・硬化させることにより形成される。
【0023】
図5は、入力部材2の操作板10を操作面側とは逆側から見た場合の平面図である。図6は、入力部材2の基板30を操作面側から見た場合の平面図である。
【0024】
基板30としては、たとえば、印刷回路基板(PCB)を用いることができる。また、基板30の表面側には、少なくとも第一突出部11と押圧方向で重なる位置に、電極群31が形成されている。
【0025】
電極群31は、ユーザーの指が操作板10に触れた際に生じる押圧力変化を、第一突出部11を介して検出するためのものである。電極群31は、第1電極32と、第2電極33a,33b,33c,33d,33e(以後、総称する場合には、「第2電極33」と称する。)と、を主に有する。第2電極33a,33b,33c,33d,33eは、第一突出部11a,11b,11c,11d,11eにそれぞれ対向する位置に配置されている。第1電極32および第2電極33は、ともに多数の歯を有する櫛歯状の電極であり、互いに接触しないように配置されている。具体的には、電極群31の長手方向に配設された櫛歯状の第1電極32は、電極群31の短手方向に櫛歯の開口側を向けて配置されている。櫛歯状の第2電極33は、第1電極32に接触しないように互いに噛みあった状態で近接して配置されている。
【0026】
ユーザーの指により基板30方向への荷重が操作板10に加えられると、第一突出部11がバー部材21を押圧する。バー部材21は、導電性シート20を撓ませて、第1電極32と第2電極33とに接触するので、第1電極32と第2電極33とが、導電性シート20を介して通電状態になる。操作板10に荷重が加えられると、第一突出部11がバー部材21に押しつけられるため、バー部材21を介して導電性シート20が撓み、導電性シート20と電極群31とが接触する。また、第一突出部11は、弾性変形しながらバー部材21に押しつけられるため、操作板10に加えられる荷重に応じて導電性シート20と電極群31との接触面積が増加する。導電性シート20と電極群31との接触面積が増加すると、第1電極32と第2電極33との間の電気抵抗値が小さくなる。このように、加えられた荷重に応じて第1電極32と第2電極33との間にて検出される電気抵抗値が変化する。また、電気抵抗値の変化に伴い、第1電極32と第2電極33との間の電圧値若しくは電流値が変化する。
【0027】
上述の構成を有する入力部材2では、所定の位置を軽く触れる動作(いわゆる、タッチ操作)の他、操作板10に指を触れた状態で所望の方向にスライドする動作(いわゆる、スライド操作)の両方を検出可能な入力部材2となる。
【0028】
ユーザーが、タッチ操作を行った場合には、ユーザーが操作板10の一部を指で軽く触れると、その触れた位置に近い1または複数の第一突出部11が押し下げられる。ユーザーが触れた位置で最も大きい荷重が加えられ、触れた位置から遠ざかるにつれて加えられる荷重が小さくなる。したがって、第一突出部11のうち、ユーザーが触れた位置に最も近い位置の第一突出部11と押圧方向で重なる電極群31が、導電性シート20に最も大きい接触面積で接する。そのため、最も電気抵抗値が低下した第2電極33の位置が、ユーザーが触れた位置であると特定できる。上述の構成を有する入力部材2では、抵抗膜式のタッチパネルと異なり、温度等の環境が変化しても、触れた位置に応じた正確な入力を行うことができる。
【0029】
また、上述の入力部材2において、ユーザーは、指を操作板10に触れたままで長手方向にスライドできる。ユーザーが、スライド操作を行った場合には、所定時間以内に隣接する第2電極33の位置に触れることになる。そのため、所定時間内の各第2電極33における電気抵抗値、電流値あるいは電圧値等の変化により、スライド操作が行われた旨およびスライド方向を特定できる。
【0030】
さらに、上述の構成の入力部材2では、厚さが変化する操作板10を用いた場合であっても、導電性シート20と電極群31とが、押圧力に応じた接触面積で接触するのが容易となる。押圧荷重が、バー部材21を介して導電性シート20に伝達されやすいからである。また、厚さの大きいあるいは厚さが一定でない操作板10を用いても、入力の検知が容易であるため、入力部材2は、本実施の形態における音響機器1のように操作面が曲面形状の機器に好適に用いることができる。
【0031】
(制御部の概略構成)
図7は、図1に示す音響機器1の例示的な構成を示すブロック図である。
【0032】
制御部40は、入力部材2における操作の種類(スライド操作またはタッチ操作)を特定し、かつ指が触れた位置を特定する機能を有する。制御部40は、たとえば、検出部41、中央処理装置(CPU)42、記憶部43およびインターフェイス(I/F)44を備える。制御部40は、入力部材2の基板30上あるいは基板30以外に設けられてもよい。
【0033】
検出部41は、第1電極32と第2電極33との間に電圧を印加し(電圧を印加するための電源は不図示)、第一突出部11が第2電極33と第1電極32とを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を計測値として計測する計測手段として機能する。また、検出部41は、検出した電圧値等をCPU42に送信する。
【0034】
CPU42は、検出部41により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくともユーザーが触れた位置を特定する位置特定手段として機能する。計測値に連動する数値とは、計測値に基づいて決定される数値であって、たとえば、計測値に対して決定されるポイントや、計測値から算出される数値である。なお、位置特定手段は、操作位置のみならず、押圧の大きさも特定するようにしても良い。また、CPU42は、検出部41により計測された現在の計測値を、その計測値が計測された時刻に関連付けて記憶部43に格納する。さらに、CPU42は、検出部41が計測した現在の計測値と、記憶部43に記憶された過去の計測値および過去の計測値が計測された時刻と、を参照し、スライド操作が行われたのか、あるいは、タッチ操作が行われたのかを特定する操作種類特定手段としても機能する。
【0035】
記憶部43は、制御部40の制御用プログラム等を格納する。さらに、記憶部43は、第一突出部11が電極群31と接触した際の、第2電極33と第1電極32との間の計測値あるいは計測値に応じた数値、およびその計測値を取得した時刻を、それぞれの第2電極33毎に記述したテーブル若しくは数式を格納できる。記憶部43は、さらに、音声データ等を記憶できる。記憶部43は、たとえば、ROM、RAM、VRAM、EEPROM等から適宜構成される。
【0036】
I/F44は、制御部40の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。CPU42は、I/F44を介して入力部材2を介して入力された命令を各部に出力する。ここで、「制御部40の外部」には、「音響機器1の外部」も含まれる。
【0037】
次に、入力部材2からの入力に基づく制御部40の処理の流れについて説明する。
【0038】
(制御部の処理の流れ)
図8は、入力部材2が操作された際の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0039】
検出部41は、一定時間毎に第1電極32と各第2電極33との間の電圧値を計測値として計測する(ステップS101)。たとえば、ユーザーが操作板10に触れた場合には、ユーザーが触れた位置に近い第2電極33と第1電極32とが、第一突出部11を介して電気的に導通し、他の電極群31と比較して最も低い電圧値を示す(ただし、その電圧値は、ゼロではない。)。検出部41は、0.25秒毎に電圧値を測定し、測定された電圧値等に関する情報をCPU42に送信する。
【0040】
次に、CPU42は、検出部41から受信した電圧値を検出時刻と関連づけて記憶部43に記憶する(ステップS102)。たとえば、図9は、記憶部43に記憶されているテーブルの一例である。CPU42は、記憶部43に図9に示すようなテーブルに検出時刻と電圧値とを記憶する。
【0041】
次にCPU42は、記憶部43に格納された過去の電圧値を参照し、所定の時間内に、隣接した位置で最も低い電圧値が検出されたか否かを判定する(ステップS103)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極33bで検出された場合に、その0.25秒前の測定で、第2電極33aあるいは第2電極33cのいずれかにおいて、最も低い電圧値が検出されたか否かを判定する。
【0042】
所定の時間内に隣接した位置で最も低い電圧値が検出された場合には(ステップS103においてYES)、CPU42は、スライド操作が行われた旨を認識する(ステップS104)。次に、CPU42は、スライド方向を特定する(ステップS105)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極33bで検出され、その0.25秒前の測定においては、第2電極33aで最も低い電圧値が検出された場合、制御部40は、図3の紙面右方向へ指をスライドしたと認識できる。ステップS105の後には、CPU42は、I/F44を介して右方向へのスライド操作がされた旨を外部へ出力する(ステップS106)。この結果、たとえば、音響機器1では、制御部40は、表示部等に表示された曲選択リストをスライド方向に向かってスクロールさせたり、再生音量を上げたりする。
【0043】
一方、ステップS103において、所定の時間内に隣接した位置で最も低い電圧値が検出されなかった場合には(NO)、CPU42は、タッチ操作が行われた旨を認識する(ステップS107)。そして、CPU42は、最も低い電圧値が検出された第2電極33の位置、すなわち、どの温度が選択されたかを特定する(ステップS108)。そして、タッチ操作された旨およびステップS108で特定した位置を外部へ出力する(ステップS109)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極33bで検出され、その0.25秒前の測定では、第2電極33eで最も低い電圧値が検出された場合には、CPU42は、第2電極33bの位置をタッチしたと認識し、当該位置の情報を出力できる。また、最も低い電圧値が第2電極33bで検出され、その0.25秒前の測定では、どの第2電極33でも電圧値が低下しなかった場合にも、CPU42は、第2電極33bの位置をタッチしたと認識し、当該位置の情報を出力できる。この結果、たとえば、音響機器1は、当該位置に隣り合う楽曲リストの楽曲を選択する。
【0044】
なお、CPU42は、ステップS108において最も電圧値が低い第2電極33の位置を特定するものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、CPU42が、2箇所の第2電極33で電圧値が低下したことを確認した場合には、2箇所の第2電極33の中間が押圧されたと認識しても良い。かかる場合には、触れた位置をより正確に認識することができる。
【0045】
なお、2以上の第一突出部11が押し下げられた場合には、最も低い電圧値を検出した第2電極33を特定するのではなく、検出された電圧値の比により、第2電極33a,33b,33c,33d,33eの位置以外の部分に触れたと認識してもよい。たとえば、第2電極33aにて1Vの電圧値が検出され、第2電極33bにて2Vの電圧値が検出された場合には、第2電極33aと第2電極33bとの間を、2:1で分割する位置にユーザーが触れたと判断してもよい。
【0046】
上述のような音響機器1の構成とすることで、入力部材2によりスライド操作およびタッチ操作の両方が可能となる。たとえば、音響機器1において、タッチ操作が行われたときには、制御部40は、触れた位置に対応する楽曲を選択する。一方、スライド操作が行われたときには、そのスライド方向に応じて楽曲リストをスクロールできる。
【0047】
以上、本発明の入力部材2およびそれを用いた電子機器としての音響機器1の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0048】
たとえば、上述の実施の形態では、電子機器として車載用の音響機器1を例に説明したが、音響機器以外の機器、例えば、携帯電話、モバイルコンピュータ、音楽再生用端末、携帯テレビ、車載用エアーコンディショナーあるいは上記各機器の操作用リモートコントローラ等であっても良い。たとえば、車載用エアーコンディショナーに入力部材2を設けた場合には、ユーザーは、スライド操作で温度を上下に微調節することができると共に、タッチ操作で所望の温度に調整できるようにしてもよい。また、入力部材2は、音響機器1以外の入力用装置、たとえば、風量、音量あるいは光量等の調節部材であってもよい。また、入力部材2を車載用の電子機器に用いる場合には、入力部材2の操作面から突出するレバーやキー等の突出物がない。そのため、自動車事故等の際に、突出物とぶつかって怪我等をすることが少なくなる。
【0049】
また、上述の実施の形態において、第一突出部11は、直線上に5つ設けるものとしたが、4個以下の第一突出部11を設けてもよいし、6個以上の第一突出部11を設けてもよい。また、各第一突出部11は、等間隔で配置されなくてもよい。さらに、複数の第一突出部11が、操作板10側で連接されていてもよい。
【0050】
上述の実施の形態では、入力部材2は、操作面から見て長帯状の操作面を有するが、このような形態に限らない。たとえば、操作板10を操作面から見て長帯状の他、楕円状、湾曲した帯状等あるいはその一部を用いたような形状としてもよい。図10は、本実施の形態の入力部材2の操作板10の変形例である。なお、図10では、第一突出部11が配置される位置を点線で示している。図10に示すように、入力部材2の操作板10Aは、2つの長帯が交差したような形状(いわゆる、十字状)である。十字状の操作板10Aを有する入力部材とした場合には、図10の紙面上下方向の他、紙面左右方向への入力も、本実施の形態で説明した方法と同様の方法にて特定できる。
【0051】
上述の実施の形態では、操作板10は、1つの部材から構成されているが、このような形態に限らない。図11は、本実施の形態の変形例に係る操作板10Bの断面図である。図11で示すように、入力部材2の操作板10Bは、複数の部材から構成されていても良い。たとえば、操作板10Bは、図11に示すように、第一突出部11が並ぶ方向に隣接する複数の操作板用部材50から構成されていてもよい。また、各操作板用部材50の操作面と逆側の面に、第一突出部11をそれぞれ有している場合には、各操作板用部材50への押圧荷重が、導電性シート20に伝達されやすい。各操作板用部材50は、隣接する操作板用部材50から独立して上下できるためである。また、図11のように、複数の操作板用部材50の操作面側を覆う操作面用シート51が設けられても良い。操作面用シート51を設けることにより、ユーザーがスライド操作する際に、各操作板用部材50の隣接部分にて指がひっかかりにくくなる。
【0052】
上述の実施の形態においては、操作板10は、厚さに変化のある部材としている。しかし、操作板10の形態は、このような形態に限らない。操作板10は、略一定の厚さを有するシート状の部材であってもよい。また、長手方向の厚さ変化があるのではなく、短手方向の厚さ変化があってもよい。
【0053】
上述の実施の形態においては、第一突出部11は、ゴム状弾性体から形成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、樹脂あるいは金属(比較的柔らかい方が好ましい)からなる成形体であっても良い。また、図3等では、第一突出部11がバー部材21から離間しているが、このような形態に限らない。第一突出部11は、弾性シート20を撓ませない程度でバー部材21に接していてもよい。
【0054】
上述の実施の形態において、導電性シート20は、導電性弾性体から構成されるシートとしたが、このような形態に限らない。たとえば、導電性シート20の基材は、絶縁性の弾性体から構成され、導電性シート20の裏面側が導電性の層で覆われているような形態であってもよい。たとえば、カーボンブラック等の導電性部材を含まない弾性体から構成されるシートの裏面に、印刷手法等で導電性インク層または金属薄膜層を形成する、あるいは金属蒸着等で金属薄膜を形成することもできる。
【0055】
上述の実施の形態において、バー部材21は、入力部材2の長手方向に伸びる直線上の部材であるが、このような形態に限らない。第一突出部11と対向する位置に設けられる突出形状を有する部材であれば、どのような形態であってもよい。しかし、バー部材21が入力部材2の長手方向に延びている場合には、操作板10に触れた状態で長手方向に向かってユーザーが指をスライドさせた場合に、押圧力を導電性シート20により効率よく伝達できる。
【0056】
なお、スペーサ22は、必須の構成ではなく、導電性シート20と電極群31とが電気的に非接触の状態に保つ他の手段があれば、スペーサ22は、なくてもよい。また、スペーサ22は、導電性シート20の裏面側ではなく、基板30の表面側に設けられても良い。
【0057】
上述の実施の形態において、電極群31を一対の櫛歯形状の電極としとしたが、このような形態に限らない。電極群31を櫛歯形状の電極ではなく、円を略半分に分割した半円形状の電極あるいは円を略4分の1に分割した扇形状の電極から構成することもできる。しかし、櫛歯形状の電極を用いる場合には、操作板10を押圧する量が小さい場合にも、検知感度が優れている。なぜなら、櫛歯形状の電極を用いると、第一突出部11が容易に一対の電極両方に接触できるが、扇状等の電極の場合、一方の極にしか第一突出部11が触れない場合があるからである。
【0058】
上述の実施の形態において、検出部41は、0.25秒毎に電圧値を測定するものとしたが、このような形態に限らない。検出部41は、0.25秒未満あるいは0.25秒よりも長い時間毎に電圧値を測定してもよい。
【0059】
上述の実施の形態のステップS103は、隣接した第2電極33に0.25秒前に触れたか否かを判定するステップであるが、このようなステップに限らない。ステップS103は、所定時間内にある一定範囲内を触れたか否かを判定するようなステップでもよい。また、ステップS103を、所定時間内に3以上の電極群31にて電圧の変動が生じたか否かを判別するステップとし、生じた場合にスライド動作が行われたと判断する一方、生じていない場合にタッチ操作が行われたと判断するようにしてもよい。
【0060】
図9では、検出時刻に関連付けた電圧値を、各第2電極33に記憶したテーブルを例示しているが、このような形態に限らない。ある閾値よりも低い電圧値を検出した第2電極33のみをテーブルに記憶してもよい。あるいは、ステップS102は、CPU42が電圧値に基づきユーザーが触れた位置を算出し、その算出した位置をテーブルに書き込むようなステップでもよい。また、検出時刻と測定値とを関連付けるのではなく、測定回数等と測定値とを関連付けても良い。
【0061】
また、上述の実施の形態において、CPU42は、ステップS104において、記憶部43に格納された過去の計測値と比較して、判断を行っている。しかし、このような形態ではなく、次に測定された計測値と比較することでスライド操作がなされたか、あるいはタッチ操作がなされたかを判断しても良い。
【0062】
また、上述の実施の形態では、一方向へのスライド操作のみを例示したが、たとえば、中央に向かって両端からスライドするようなスライド操作、あるいは、中央から両端に向かってスライドするようなスライド操作を認識できるようにしてもよい。また、制御部40は、スライド操作のみあるいはタッチ操作のみを特定してもよい。さらに、制御部40は、スライド操作の方向を特定せずに、スライド操作である旨だけを特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、たとえば、各種電子機器、およびそれが備える入力部材等に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 音響機器(電子機器)
2 入力部材
10,10A,10B 操作板
11 第一突出部
20 導電性シート
21 バー部材(凸部)
22 スペーサ(第二突出部)
30 基板
31 電極群
32 第1電極
33,33a,33b,33c,33d,33e 第2電極(電極、第2電極)
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用機器、携帯電話機および音響機器等の電子機器を操作するための入力部材としてタッチパネルが用いられている。タッチパネルでは、所望のアイコン等を選択するタッチ動作の他、指をタッチパネルに触れた状態で所望の方向にスライドするスライド動作により各種入力を行うことができる。スライド動作を検出できる入力部材としては、抵抗膜型のタッチパネルを用いるものがある(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−9095号公報(請求項等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明には、以下の問題がある。すなわち、ユーザーがある位置に触れるような操作を行った場合に、同じ位置に触れたにも関わらず異なる入力値が入力される場合があるという問題である。抵抗膜型のタッチパネルは、温度等の環境状況により、所定の位置から触れた位置までの抵抗値が変わりうるためである。
【0005】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の入力部材の実施の形態は、所定方向に列を為して配置される1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、導電性シートと電極群との間には、所定の隙間が形成されている。
【0007】
さらに、導電性シートの基板側の面に、絶縁性の第二突出部を複数備え得る。
【0008】
さらに、電極群は、櫛歯形状の1以上の第1電極と、1以上の第2電極とを互いにかみ合わせるように配置されるように配置され得る。
【0009】
さらに、導電性シートの基板と対向する面と反対側の面には、第一突出部に対向する位置に凸部を備え得る。
【0010】
また、本発明の電子機器の実施の形態は、所定方向に並ぶ1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、導電性シートと電極群との間には、所定の隙間が形成されている入力部材と、当該入力部材の内部若しくは外部に設けられる制御部と、を備える電子機器であって、制御部は、第一突出部が導電性シートを撓ませて、電極群と導電性シートとを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を所定の時間毎に計測する計測手段と、計測手段により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくとも操作位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段により特定された操作位置と計測時刻との関係により、操作板を連続的に触れたスライド動作あるいは操作板の所定部分に触れたタッチ動作のいずれか一方がなされたことを特定する操作種類特定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材および電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力部材を備える電子機器の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る入力部材の斜視図である。
【図3】図1の入力部材を図1のA−A線で切断した場合の断面図である。
【図4】図1の入力部材の導電シートを裏面側から見た場合の平面図である。
【図5】図1の入力部材の操作板を裏面側から見た場合の平面図である。
【図6】図1の入力部材の基板を表面側から見た場合の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子機器としての音響機器の模式的な構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る音響機器の動作の概略的な流れを説明するフローチャートである。
【図9】本実施の形態に係る音響機器の記憶部が有するテーブルの一例である。
【図10】本実施の形態の変形例に係る操作板の操作面を見た場合の平面図である。
【図11】本実施の形態の変形例に係る操作板を図3と同様の断面にて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る入力用部材およびそれを備える電子機器の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器の一例として車載用の音響機器1の入力部材を例に説明する。
【0014】
(入力部材の構造)
図1は、本発明の実施の形態に係る車載用の音響機器1の斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る音響機器1は、入力部材2を備える。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係る入力部材2の分解斜視図である。図3は、図1のA−A線に沿って操作面に対して垂直な面で入力部材2を切断した場合の断面図である。なお、図3では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を変更して図示している。また、以後、操作面側を表側、操作面と逆側を裏側という。また、表側から裏側に向かう方向を押圧方向という。
【0016】
入力部材2は、入力部材2の操作面側に露出する操作板10、操作板10の裏面側に対向して配置される導電性シート20、導電性シート20の裏面側に対向して配置される基板30を主に有する。
【0017】
操作板10は、ユーザーが触れる部分である。操作板10としては、たとえば、幅が1.5cm、長さが10cmで、長さ方向にて厚さが2〜50mmで変化する部材を用いることができる。たとえば、操作板10は、図1〜3で示すように、長さ方向の略中央で最大の厚さを有し、長さ方向両端で最小の厚さを有するような断面凸形状を有する。操作板10は、局部的に凹ませることができるのであればどのような材料から形成されていても良く、樹脂、金属、あるいはそれらのコンポジットから形成されていても良い。操作板10は、薄型の弾性シート(不図示)の表面側に固着されて、音響機器1の筺体に固定されてもよい。操作板10は、裏面側に第一突出部11を有し、第一突出部11は、導電性シート20の方向へ突出している。
【0018】
第一突出部11は、直径が2〜10mmの略半球状の弾性体であり、その球面部分が導電性シート20の方向へ突出している。合計5個の第一突出部11a,11b,11c,11d,11e(以後、総称する場合には、「第一突出部11」と称する。)は、操作板10の長手方向に列を為して固着されている。特に、各第一突出部11の中心が操作板10の長手方向に直線的に並ぶように配置されているのが好ましい。第一突出部11が基板30上に接触する際に、押圧力に応じて第一突出部11が弾性変形できるように、第一突出部11は、柔軟性に富む材料で構成されている。たとえば、第一突出部11のショアA硬度は、20度から90度であるのが好ましい。また、第一突出部11を構成する部材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。
【0019】
導電性シート20は、厚さが2mm程度の導電性の弾性シートである。導電性シート20は、第一突出部11により表面側から押圧された際に容易に撓むことができるように、ショアA硬度が50〜90度である。また、導電性シート20に導電性を付与するために、導電性シート20には、導電性材料が分散されている。導電性シート20に分散される導電性材料としては、たとえば、カーボンブラックあるいは金属等を用いることができるが、粒子径が小さいもの(たとえば、ナノサイズの粒子)、特に、取り扱いが容易なカーボンブラックを用いるのが好ましい。導電性シート20を構成する母材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。導電性シート20の表面であって、第一突出部11と対向する位置には、凸部としてのバー部材21が配置されている。また、導電性シート20の裏面には、第二突出部としてのスペーサ22が配置されている。
【0020】
バー部材21は、操作板10の長手方向に延びる直線上の部材であって、導電性シート20の表面から操作板10方向へ突出している。操作板10に押圧力が加えられた際に、第一突出部11を介して導電性シート20を撓ませることができるように、バー部材21は、比較的柔軟性に富む材料から好適に構成される。たとえば、バー部材21のショアA硬度で60度以上、ショアD硬度で90度以下であるのが好ましい。また、バー部材21を構成する部材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。
【0021】
図4は、入力部材2の導電性シート20を裏面側から見た場合の平面図である。なお、図4では、表面側に配置されたバー部材21の位置を点線で図示している。
【0022】
スペーサ22は、導電性シート20の裏面に複数設けられている絶縁性の部材である。スペーサ22は、操作板10に押圧力が加えられていない状態で、導電性シート20と電極群31との間に所定の隙間を形成する役割を有する。ここで、「所定の隙間」とは、操作板10に押圧力が加えられていない状態で、導電性シート20と電極群31とが電気的に非接触の状態を保持できる隙間をいい、導電性シート20の弾性等に基づき適宜設定できる。また、所定の隙間は、ユーザーが操作板10を押圧した際に、導電性シート20が撓んで電極群31に接触できる程度の距離で形成されている。かかる場合には、操作板10に押圧力が加えられると、導電性シート20と電極群31とが容易に電気的に導通状態になる。導電性シート20と電極群31とは、非押圧時の状態で、所定の隙間として、好ましくは、250μm以下、より好ましくは、5〜200μmの距離で離間しているのが好ましい。また、スペーサ22の導電性シート20面からの突出量を調節することで、所定の隙間の大きさを調節することができる。スペーサ22は、操作板10に押圧力が加えられた際に、導電性シート20と電極群31との接触を妨げなければ、どのような位置に、どのような密度で配置されていてもよい。しかし、スペーサ22は、図4に示すように押圧方向でバー部材21に重ならない位置に設けられるのが好ましい。また、スペーサ22が、バー部材21の長さ方向に沿ってその両脇に配置されるのがより好ましい。スペーサ22は、好適には、絶縁性のインクを用いてドット状等で導電性シート20の裏面にパターン印刷し、乾燥・硬化させることにより形成される。
【0023】
図5は、入力部材2の操作板10を操作面側とは逆側から見た場合の平面図である。図6は、入力部材2の基板30を操作面側から見た場合の平面図である。
【0024】
基板30としては、たとえば、印刷回路基板(PCB)を用いることができる。また、基板30の表面側には、少なくとも第一突出部11と押圧方向で重なる位置に、電極群31が形成されている。
【0025】
電極群31は、ユーザーの指が操作板10に触れた際に生じる押圧力変化を、第一突出部11を介して検出するためのものである。電極群31は、第1電極32と、第2電極33a,33b,33c,33d,33e(以後、総称する場合には、「第2電極33」と称する。)と、を主に有する。第2電極33a,33b,33c,33d,33eは、第一突出部11a,11b,11c,11d,11eにそれぞれ対向する位置に配置されている。第1電極32および第2電極33は、ともに多数の歯を有する櫛歯状の電極であり、互いに接触しないように配置されている。具体的には、電極群31の長手方向に配設された櫛歯状の第1電極32は、電極群31の短手方向に櫛歯の開口側を向けて配置されている。櫛歯状の第2電極33は、第1電極32に接触しないように互いに噛みあった状態で近接して配置されている。
【0026】
ユーザーの指により基板30方向への荷重が操作板10に加えられると、第一突出部11がバー部材21を押圧する。バー部材21は、導電性シート20を撓ませて、第1電極32と第2電極33とに接触するので、第1電極32と第2電極33とが、導電性シート20を介して通電状態になる。操作板10に荷重が加えられると、第一突出部11がバー部材21に押しつけられるため、バー部材21を介して導電性シート20が撓み、導電性シート20と電極群31とが接触する。また、第一突出部11は、弾性変形しながらバー部材21に押しつけられるため、操作板10に加えられる荷重に応じて導電性シート20と電極群31との接触面積が増加する。導電性シート20と電極群31との接触面積が増加すると、第1電極32と第2電極33との間の電気抵抗値が小さくなる。このように、加えられた荷重に応じて第1電極32と第2電極33との間にて検出される電気抵抗値が変化する。また、電気抵抗値の変化に伴い、第1電極32と第2電極33との間の電圧値若しくは電流値が変化する。
【0027】
上述の構成を有する入力部材2では、所定の位置を軽く触れる動作(いわゆる、タッチ操作)の他、操作板10に指を触れた状態で所望の方向にスライドする動作(いわゆる、スライド操作)の両方を検出可能な入力部材2となる。
【0028】
ユーザーが、タッチ操作を行った場合には、ユーザーが操作板10の一部を指で軽く触れると、その触れた位置に近い1または複数の第一突出部11が押し下げられる。ユーザーが触れた位置で最も大きい荷重が加えられ、触れた位置から遠ざかるにつれて加えられる荷重が小さくなる。したがって、第一突出部11のうち、ユーザーが触れた位置に最も近い位置の第一突出部11と押圧方向で重なる電極群31が、導電性シート20に最も大きい接触面積で接する。そのため、最も電気抵抗値が低下した第2電極33の位置が、ユーザーが触れた位置であると特定できる。上述の構成を有する入力部材2では、抵抗膜式のタッチパネルと異なり、温度等の環境が変化しても、触れた位置に応じた正確な入力を行うことができる。
【0029】
また、上述の入力部材2において、ユーザーは、指を操作板10に触れたままで長手方向にスライドできる。ユーザーが、スライド操作を行った場合には、所定時間以内に隣接する第2電極33の位置に触れることになる。そのため、所定時間内の各第2電極33における電気抵抗値、電流値あるいは電圧値等の変化により、スライド操作が行われた旨およびスライド方向を特定できる。
【0030】
さらに、上述の構成の入力部材2では、厚さが変化する操作板10を用いた場合であっても、導電性シート20と電極群31とが、押圧力に応じた接触面積で接触するのが容易となる。押圧荷重が、バー部材21を介して導電性シート20に伝達されやすいからである。また、厚さの大きいあるいは厚さが一定でない操作板10を用いても、入力の検知が容易であるため、入力部材2は、本実施の形態における音響機器1のように操作面が曲面形状の機器に好適に用いることができる。
【0031】
(制御部の概略構成)
図7は、図1に示す音響機器1の例示的な構成を示すブロック図である。
【0032】
制御部40は、入力部材2における操作の種類(スライド操作またはタッチ操作)を特定し、かつ指が触れた位置を特定する機能を有する。制御部40は、たとえば、検出部41、中央処理装置(CPU)42、記憶部43およびインターフェイス(I/F)44を備える。制御部40は、入力部材2の基板30上あるいは基板30以外に設けられてもよい。
【0033】
検出部41は、第1電極32と第2電極33との間に電圧を印加し(電圧を印加するための電源は不図示)、第一突出部11が第2電極33と第1電極32とを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を計測値として計測する計測手段として機能する。また、検出部41は、検出した電圧値等をCPU42に送信する。
【0034】
CPU42は、検出部41により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくともユーザーが触れた位置を特定する位置特定手段として機能する。計測値に連動する数値とは、計測値に基づいて決定される数値であって、たとえば、計測値に対して決定されるポイントや、計測値から算出される数値である。なお、位置特定手段は、操作位置のみならず、押圧の大きさも特定するようにしても良い。また、CPU42は、検出部41により計測された現在の計測値を、その計測値が計測された時刻に関連付けて記憶部43に格納する。さらに、CPU42は、検出部41が計測した現在の計測値と、記憶部43に記憶された過去の計測値および過去の計測値が計測された時刻と、を参照し、スライド操作が行われたのか、あるいは、タッチ操作が行われたのかを特定する操作種類特定手段としても機能する。
【0035】
記憶部43は、制御部40の制御用プログラム等を格納する。さらに、記憶部43は、第一突出部11が電極群31と接触した際の、第2電極33と第1電極32との間の計測値あるいは計測値に応じた数値、およびその計測値を取得した時刻を、それぞれの第2電極33毎に記述したテーブル若しくは数式を格納できる。記憶部43は、さらに、音声データ等を記憶できる。記憶部43は、たとえば、ROM、RAM、VRAM、EEPROM等から適宜構成される。
【0036】
I/F44は、制御部40の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。CPU42は、I/F44を介して入力部材2を介して入力された命令を各部に出力する。ここで、「制御部40の外部」には、「音響機器1の外部」も含まれる。
【0037】
次に、入力部材2からの入力に基づく制御部40の処理の流れについて説明する。
【0038】
(制御部の処理の流れ)
図8は、入力部材2が操作された際の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0039】
検出部41は、一定時間毎に第1電極32と各第2電極33との間の電圧値を計測値として計測する(ステップS101)。たとえば、ユーザーが操作板10に触れた場合には、ユーザーが触れた位置に近い第2電極33と第1電極32とが、第一突出部11を介して電気的に導通し、他の電極群31と比較して最も低い電圧値を示す(ただし、その電圧値は、ゼロではない。)。検出部41は、0.25秒毎に電圧値を測定し、測定された電圧値等に関する情報をCPU42に送信する。
【0040】
次に、CPU42は、検出部41から受信した電圧値を検出時刻と関連づけて記憶部43に記憶する(ステップS102)。たとえば、図9は、記憶部43に記憶されているテーブルの一例である。CPU42は、記憶部43に図9に示すようなテーブルに検出時刻と電圧値とを記憶する。
【0041】
次にCPU42は、記憶部43に格納された過去の電圧値を参照し、所定の時間内に、隣接した位置で最も低い電圧値が検出されたか否かを判定する(ステップS103)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極33bで検出された場合に、その0.25秒前の測定で、第2電極33aあるいは第2電極33cのいずれかにおいて、最も低い電圧値が検出されたか否かを判定する。
【0042】
所定の時間内に隣接した位置で最も低い電圧値が検出された場合には(ステップS103においてYES)、CPU42は、スライド操作が行われた旨を認識する(ステップS104)。次に、CPU42は、スライド方向を特定する(ステップS105)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極33bで検出され、その0.25秒前の測定においては、第2電極33aで最も低い電圧値が検出された場合、制御部40は、図3の紙面右方向へ指をスライドしたと認識できる。ステップS105の後には、CPU42は、I/F44を介して右方向へのスライド操作がされた旨を外部へ出力する(ステップS106)。この結果、たとえば、音響機器1では、制御部40は、表示部等に表示された曲選択リストをスライド方向に向かってスクロールさせたり、再生音量を上げたりする。
【0043】
一方、ステップS103において、所定の時間内に隣接した位置で最も低い電圧値が検出されなかった場合には(NO)、CPU42は、タッチ操作が行われた旨を認識する(ステップS107)。そして、CPU42は、最も低い電圧値が検出された第2電極33の位置、すなわち、どの温度が選択されたかを特定する(ステップS108)。そして、タッチ操作された旨およびステップS108で特定した位置を外部へ出力する(ステップS109)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極33bで検出され、その0.25秒前の測定では、第2電極33eで最も低い電圧値が検出された場合には、CPU42は、第2電極33bの位置をタッチしたと認識し、当該位置の情報を出力できる。また、最も低い電圧値が第2電極33bで検出され、その0.25秒前の測定では、どの第2電極33でも電圧値が低下しなかった場合にも、CPU42は、第2電極33bの位置をタッチしたと認識し、当該位置の情報を出力できる。この結果、たとえば、音響機器1は、当該位置に隣り合う楽曲リストの楽曲を選択する。
【0044】
なお、CPU42は、ステップS108において最も電圧値が低い第2電極33の位置を特定するものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、CPU42が、2箇所の第2電極33で電圧値が低下したことを確認した場合には、2箇所の第2電極33の中間が押圧されたと認識しても良い。かかる場合には、触れた位置をより正確に認識することができる。
【0045】
なお、2以上の第一突出部11が押し下げられた場合には、最も低い電圧値を検出した第2電極33を特定するのではなく、検出された電圧値の比により、第2電極33a,33b,33c,33d,33eの位置以外の部分に触れたと認識してもよい。たとえば、第2電極33aにて1Vの電圧値が検出され、第2電極33bにて2Vの電圧値が検出された場合には、第2電極33aと第2電極33bとの間を、2:1で分割する位置にユーザーが触れたと判断してもよい。
【0046】
上述のような音響機器1の構成とすることで、入力部材2によりスライド操作およびタッチ操作の両方が可能となる。たとえば、音響機器1において、タッチ操作が行われたときには、制御部40は、触れた位置に対応する楽曲を選択する。一方、スライド操作が行われたときには、そのスライド方向に応じて楽曲リストをスクロールできる。
【0047】
以上、本発明の入力部材2およびそれを用いた電子機器としての音響機器1の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0048】
たとえば、上述の実施の形態では、電子機器として車載用の音響機器1を例に説明したが、音響機器以外の機器、例えば、携帯電話、モバイルコンピュータ、音楽再生用端末、携帯テレビ、車載用エアーコンディショナーあるいは上記各機器の操作用リモートコントローラ等であっても良い。たとえば、車載用エアーコンディショナーに入力部材2を設けた場合には、ユーザーは、スライド操作で温度を上下に微調節することができると共に、タッチ操作で所望の温度に調整できるようにしてもよい。また、入力部材2は、音響機器1以外の入力用装置、たとえば、風量、音量あるいは光量等の調節部材であってもよい。また、入力部材2を車載用の電子機器に用いる場合には、入力部材2の操作面から突出するレバーやキー等の突出物がない。そのため、自動車事故等の際に、突出物とぶつかって怪我等をすることが少なくなる。
【0049】
また、上述の実施の形態において、第一突出部11は、直線上に5つ設けるものとしたが、4個以下の第一突出部11を設けてもよいし、6個以上の第一突出部11を設けてもよい。また、各第一突出部11は、等間隔で配置されなくてもよい。さらに、複数の第一突出部11が、操作板10側で連接されていてもよい。
【0050】
上述の実施の形態では、入力部材2は、操作面から見て長帯状の操作面を有するが、このような形態に限らない。たとえば、操作板10を操作面から見て長帯状の他、楕円状、湾曲した帯状等あるいはその一部を用いたような形状としてもよい。図10は、本実施の形態の入力部材2の操作板10の変形例である。なお、図10では、第一突出部11が配置される位置を点線で示している。図10に示すように、入力部材2の操作板10Aは、2つの長帯が交差したような形状(いわゆる、十字状)である。十字状の操作板10Aを有する入力部材とした場合には、図10の紙面上下方向の他、紙面左右方向への入力も、本実施の形態で説明した方法と同様の方法にて特定できる。
【0051】
上述の実施の形態では、操作板10は、1つの部材から構成されているが、このような形態に限らない。図11は、本実施の形態の変形例に係る操作板10Bの断面図である。図11で示すように、入力部材2の操作板10Bは、複数の部材から構成されていても良い。たとえば、操作板10Bは、図11に示すように、第一突出部11が並ぶ方向に隣接する複数の操作板用部材50から構成されていてもよい。また、各操作板用部材50の操作面と逆側の面に、第一突出部11をそれぞれ有している場合には、各操作板用部材50への押圧荷重が、導電性シート20に伝達されやすい。各操作板用部材50は、隣接する操作板用部材50から独立して上下できるためである。また、図11のように、複数の操作板用部材50の操作面側を覆う操作面用シート51が設けられても良い。操作面用シート51を設けることにより、ユーザーがスライド操作する際に、各操作板用部材50の隣接部分にて指がひっかかりにくくなる。
【0052】
上述の実施の形態においては、操作板10は、厚さに変化のある部材としている。しかし、操作板10の形態は、このような形態に限らない。操作板10は、略一定の厚さを有するシート状の部材であってもよい。また、長手方向の厚さ変化があるのではなく、短手方向の厚さ変化があってもよい。
【0053】
上述の実施の形態においては、第一突出部11は、ゴム状弾性体から形成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、樹脂あるいは金属(比較的柔らかい方が好ましい)からなる成形体であっても良い。また、図3等では、第一突出部11がバー部材21から離間しているが、このような形態に限らない。第一突出部11は、弾性シート20を撓ませない程度でバー部材21に接していてもよい。
【0054】
上述の実施の形態において、導電性シート20は、導電性弾性体から構成されるシートとしたが、このような形態に限らない。たとえば、導電性シート20の基材は、絶縁性の弾性体から構成され、導電性シート20の裏面側が導電性の層で覆われているような形態であってもよい。たとえば、カーボンブラック等の導電性部材を含まない弾性体から構成されるシートの裏面に、印刷手法等で導電性インク層または金属薄膜層を形成する、あるいは金属蒸着等で金属薄膜を形成することもできる。
【0055】
上述の実施の形態において、バー部材21は、入力部材2の長手方向に伸びる直線上の部材であるが、このような形態に限らない。第一突出部11と対向する位置に設けられる突出形状を有する部材であれば、どのような形態であってもよい。しかし、バー部材21が入力部材2の長手方向に延びている場合には、操作板10に触れた状態で長手方向に向かってユーザーが指をスライドさせた場合に、押圧力を導電性シート20により効率よく伝達できる。
【0056】
なお、スペーサ22は、必須の構成ではなく、導電性シート20と電極群31とが電気的に非接触の状態に保つ他の手段があれば、スペーサ22は、なくてもよい。また、スペーサ22は、導電性シート20の裏面側ではなく、基板30の表面側に設けられても良い。
【0057】
上述の実施の形態において、電極群31を一対の櫛歯形状の電極としとしたが、このような形態に限らない。電極群31を櫛歯形状の電極ではなく、円を略半分に分割した半円形状の電極あるいは円を略4分の1に分割した扇形状の電極から構成することもできる。しかし、櫛歯形状の電極を用いる場合には、操作板10を押圧する量が小さい場合にも、検知感度が優れている。なぜなら、櫛歯形状の電極を用いると、第一突出部11が容易に一対の電極両方に接触できるが、扇状等の電極の場合、一方の極にしか第一突出部11が触れない場合があるからである。
【0058】
上述の実施の形態において、検出部41は、0.25秒毎に電圧値を測定するものとしたが、このような形態に限らない。検出部41は、0.25秒未満あるいは0.25秒よりも長い時間毎に電圧値を測定してもよい。
【0059】
上述の実施の形態のステップS103は、隣接した第2電極33に0.25秒前に触れたか否かを判定するステップであるが、このようなステップに限らない。ステップS103は、所定時間内にある一定範囲内を触れたか否かを判定するようなステップでもよい。また、ステップS103を、所定時間内に3以上の電極群31にて電圧の変動が生じたか否かを判別するステップとし、生じた場合にスライド動作が行われたと判断する一方、生じていない場合にタッチ操作が行われたと判断するようにしてもよい。
【0060】
図9では、検出時刻に関連付けた電圧値を、各第2電極33に記憶したテーブルを例示しているが、このような形態に限らない。ある閾値よりも低い電圧値を検出した第2電極33のみをテーブルに記憶してもよい。あるいは、ステップS102は、CPU42が電圧値に基づきユーザーが触れた位置を算出し、その算出した位置をテーブルに書き込むようなステップでもよい。また、検出時刻と測定値とを関連付けるのではなく、測定回数等と測定値とを関連付けても良い。
【0061】
また、上述の実施の形態において、CPU42は、ステップS104において、記憶部43に格納された過去の計測値と比較して、判断を行っている。しかし、このような形態ではなく、次に測定された計測値と比較することでスライド操作がなされたか、あるいはタッチ操作がなされたかを判断しても良い。
【0062】
また、上述の実施の形態では、一方向へのスライド操作のみを例示したが、たとえば、中央に向かって両端からスライドするようなスライド操作、あるいは、中央から両端に向かってスライドするようなスライド操作を認識できるようにしてもよい。また、制御部40は、スライド操作のみあるいはタッチ操作のみを特定してもよい。さらに、制御部40は、スライド操作の方向を特定せずに、スライド操作である旨だけを特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、たとえば、各種電子機器、およびそれが備える入力部材等に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 音響機器(電子機器)
2 入力部材
10,10A,10B 操作板
11 第一突出部
20 導電性シート
21 バー部材(凸部)
22 スペーサ(第二突出部)
30 基板
31 電極群
32 第1電極
33,33a,33b,33c,33d,33e 第2電極(電極、第2電極)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に列を為して配置される1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、
上記第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、
上記第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、
上記導電性シートと上記電極群との間には、所定の隙間が形成されていることを特徴とする入力部材。
【請求項2】
請求項1に記載の入力部材であって、
前記導電性シートの前記基板側の面に、絶縁性の第二突出部を複数備えていることを特徴とする入力部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の入力部材であって、
前記電極群は、櫛歯形状の1以上の第1電極と、1以上の第2電極とを互いにかみ合わせるように配置されることを特徴とする入力部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の入力部材であって、
前記導電性シートの前記基板に対向する面と反対側の面には、前記第一突出部に対向する位置に凸部を備えることを特徴とする入力部材。
【請求項5】
所定方向に並ぶ1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、
上記第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、
上記第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、上記導電性シートと上記電極群との間には、所定の隙間が形成されている入力部材と、
当該入力部材の内部若しくは外部に設けられる制御部と、
を備える電子機器であって、
上記制御部は、
上記第一突出部が上記導電性シートを撓ませて、上記電極群と上記導電性シートとを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を所定の時間毎に計測する計測手段と、
上記計測手段により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくとも操作位置を特定する位置特定手段と、
上記位置特定手段により特定された上記操作位置と計測時刻との関係により、上記操作板を連続的に触れたスライド動作あるいは上記操作板の所定部分に触れたタッチ動作のいずれか一方がなされたことを特定する操作種類特定手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
所定方向に列を為して配置される1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、
上記第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、
上記第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、
上記導電性シートと上記電極群との間には、所定の隙間が形成されていることを特徴とする入力部材。
【請求項2】
請求項1に記載の入力部材であって、
前記導電性シートの前記基板側の面に、絶縁性の第二突出部を複数備えていることを特徴とする入力部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の入力部材であって、
前記電極群は、櫛歯形状の1以上の第1電極と、1以上の第2電極とを互いにかみ合わせるように配置されることを特徴とする入力部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の入力部材であって、
前記導電性シートの前記基板に対向する面と反対側の面には、前記第一突出部に対向する位置に凸部を備えることを特徴とする入力部材。
【請求項5】
所定方向に並ぶ1または2以上の第一突出部を操作面の裏面側に備える操作板と、
上記第一突出部に対向して設けられた導電性シートと、
上記第一突出部に押圧方向で重なる位置にそれぞれ設けられた複数の電極を互いに非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有すると共に、上記導電性シートと上記電極群との間には、所定の隙間が形成されている入力部材と、
当該入力部材の内部若しくは外部に設けられる制御部と、
を備える電子機器であって、
上記制御部は、
上記第一突出部が上記導電性シートを撓ませて、上記電極群と上記導電性シートとを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を所定の時間毎に計測する計測手段と、
上記計測手段により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくとも操作位置を特定する位置特定手段と、
上記位置特定手段により特定された上記操作位置と計測時刻との関係により、上記操作板を連続的に触れたスライド動作あるいは上記操作板の所定部分に触れたタッチ動作のいずれか一方がなされたことを特定する操作種類特定手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−209880(P2011−209880A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75444(P2010−75444)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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