説明

入力部材およびそれを備える電子機器

【課題】多方向への操作と、クリック感のある操作との使い分けが可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】所定方向に列を為して配置される1または2以上の導電性弾性体11を操作面の裏面側に備える操作板10と、導電性弾性体11に対向する位置にそれぞれ設けられた複数の電極22,23を非接触状態で配置して成る電極群21を備える基板20と、を有する入力部材2としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用機器、携帯電話機および音響機器等の電子機器を操作するための入力部材としてタッチパネルが用いられている。タッチパネルでは、所望のアイコン等を選択するタッチ動作の他、指をタッチパネルに触れた状態で所望の方向にスライドするスライド動作により各種入力を行うことができる。スライド動作を検出できる入力部材としては、抵抗膜型のタッチパネルを用いるものがある(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−9095号公報(請求項等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明には、以下の問題がある。すなわち、ユーザーがある位置に触れるような操作を行った場合に、同じ位置に触れたにも関わらず異なる入力値が入力される場合があるという問題である。抵抗膜型のタッチパネルは、温度等の環境状況により、所定の位置から触れた位置までの抵抗値が変わりうるためである。
【0005】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の入力部材の実施の形態は、所定方向に列を為して配置される1または2以上の導電性弾性体を操作面の裏面側に備える操作板と、導電性弾性体に対向する位置にそれぞれ設けられた複数の電極を非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有する。
【0007】
さらに、電極群は、櫛歯形状の1以上の第1電極と、1以上の第2電極とを互いにかみ合わせるように配置されるように配置され得る。
【0008】
また、本発明の電子機器の実施の形態は、所定方向に並ぶ1または2以上の導電性弾性体を操作面の裏面側に備える操作板と、導電性弾性体に対向する位置に設けられた電極を備える基板と、を有する入力部材と、入力部材の内若しくは外に設けられる制御部と、を備える電子機器であって、制御部は、導電性弾性体により、電極群を構成する第1電極および第2電極を電気的に接続する際にその接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を所定の時間毎に計測する計測手段と、計測手段により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくとも操作位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段により特定された操作位置と計測時刻との関係により、操作板を連続的に触れたスライド動作あるいは操作板の所定部分に触れたタッチ動作のいずれか一方がなされたことを特定する操作種類特定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、スライド操作を可能とすると共に、ユーザーが触れた位置毎に所定の入力値を入力できる入力部材および電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力部材を備える電子機器の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る入力部材の斜視図である。
【図3】図1の入力部材を図1のA−A線で切断した場合の断面図である。
【図4】図1の入力部材の基板を操作面から見た場合の平面図である。
【図5】図1の入力部材の操作板を操作面側と逆側から見た場合の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子機器としてのエアーコンディショナーの模式的な構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子機器の動作の概略的な流れを説明するフローチャートである。
【図8】本実施の形態に係る電子機器の記憶部が有するテーブルの一例である。
【図9】本実施の形態の変形例に係る操作板の操作面を見た場合の平面図である。
【図10】本実施の形態の変形例に係る入力部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る入力用部材およびそれを備える電子機器の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器として自動車に設けられるエアーコンディショナー1の調節部材を例に説明する。
【0012】
(入力部材の構造)
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器として自動車に設けられるエアーコンディショナー1の斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電子機器の一例である自動車用のエアーコンディショナー1は、入力部材2を備える。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態に係る入力部材2の分解斜視図である。図3は、図1のA−A線に沿って操作面に対して垂直な面で入力部材2を切断した場合の断面図である。なお、図3では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を変更して図示している。
【0014】
入力部材2は、操作板10および操作板10の裏面側に対向して配置される基板20を主に有する。入力部材2の操作面側には、操作板10が露出している。また、操作板10の操作面側とは逆の面には、導電性弾性体11が基板20に向かって突出している。基板20には、導電性弾性体11と対向する位置に、電極群21が電極パターンとして形成されている。この実施の形態では、導電性弾性体11は、電極群21と非接触状態にあるが、接触していてもよい。
【0015】
操作板10は、ユーザーが触れる部分である。操作板10としては、たとえば、幅が1.5cm、長さが10cm、厚さが1mmのシート状の部材を用いることができる。操作板10は、局部的に凹ませることができるのであればどのような材料から形成されていても良く、樹脂、金属、あるいはそれらのコンポジットから形成されていても良い。操作板10は、薄型の弾性シート(不図示)の表面側に固着されて、エアーコンディショナー1の筺体に固定されてもよい。
【0016】
図4は、入力部材2の基板20を操作面側から見た場合の平面図である。図5は、入力部材2の操作板10を操作面側とは逆側から見た場合の平面図である。
【0017】
導電性弾性体11は、直径が2〜10mmの略半球状の導電性の弾性体であり、その球面部分が基板20の方向へ突出している。合計5個の導電性弾性体11a,11b,11c,11d,11e(以後、総称する場合には、「導電性弾性体11」と称する)は、操作板10の長手方向に列を為して固着されている。特に、各導電性弾性体11の中心が操作板10の長手方向に直線的に並ぶように配置されているのが好ましい。
【0018】
ユーザーが操作板10に触れると、導電性弾性体11が基板20上に接触する。導電性弾性体11が基板20上に接触する際に、押圧力に応じて導電性弾性体11が弾性変形できるように、導電性弾性体11は、柔軟性に富む材料で構成されている。たとえば、導電性弾性体11のショアA硬度は、50度から90度であるのが好ましい。また、導電性弾性体11には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。導電性弾性体11に分散される導電性材料としては、たとえば、カーボンブラックあるいは金属等を用いることができるが、粒子径が小さいもの(たとえば、ナノサイズの粒子)、特に、取り扱いが容易なカーボンブラックを用いるのが好ましい。また、導電性弾性体11を構成する母材としては、ウレタン樹脂、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、熱硬化性エラストマーの一例であるシリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
【0019】
基板20としては、たとえば、印刷回路基板(PCB)を用いることができる。また、基板20の表面側には、導電性弾性体11に対向して、電極群21が形成されている。
【0020】
電極群21は、ユーザーの指が操作板10に触れた際に生じる、裏側方向に向かう押圧力変化を、導電性弾性体11を介して検出するためのものである。電極群21は、第1電極22と、第2電極23a,23b,23c,23d,23e(以後、第2電極23a,23b,23c,23d,23eを総称する場合には、「第2電極23」と称する。)とを主に有する。第2電極23a,23b,23c,23d,23eは、導電性弾性体11a,11b,11c,11d,11eにそれぞれ対向する位置に配置されている。第1電極22と第2電極23とは、多数の歯を有する櫛歯状の電極であり、互いに接触しないように配置されている。具体的には、電極群21の長手方向に配設された櫛歯状の第1電極22は、電極群21の短手方向に櫛歯の開口側を向けて配置されている。第2電極23は、第1電極22に接触しないように噛みあった状態で並んで配置されている。
【0021】
櫛歯状の電極群21の上から導電性弾性体11を接触させると、まず、第1電極22と、第2電極23とが、導電性弾性体11を介して通電状態になる。さらに、ユーザーの指により基板20方向への荷重が操作板10に加えられると、その荷重に応じて導電性弾性体11が弾性変形しながら基板20に押しつけられる。導電性弾性体11の電極群21に対する接触面積が増加すると、第1電極22と第2電極23との間の電気抵抗値が小さくなる。したがって、導電性弾性体11に加えられた荷重により第1電極22と第2電極23との間にて検出される電気抵抗値が変化する。電気抵抗値の変化に伴い、第1電極22と第2電極23との間の電流値および電圧値も変化する。
【0022】
上述の構成を有する入力部材2では、所定の位置を軽く触れる動作(いわゆる、タッチ操作)の他、タッチパネルに指を触れた状態で所望の方向にスライドする動作(いわゆる、スライド操作)の両方を検出可能な入力部材2となる。
【0023】
ユーザーが、タッチ操作を行った場合には、ユーザーが操作板10の一部を指で軽く触れると、その触れた位置に近い位置の1または複数の導電性弾性体11が押し下げられる。ユーザーが触れた位置で最も大きい荷重が加えられ、触れた位置から遠ざかるにつれて加えられる荷重が小さくなる。したがって、導電性弾性体11のうち、ユーザーが触れた位置に最も近い位置の導電性弾性体11が、最も大きい接触面積で電極群21と接する。そのため、最も電気抵抗値が低下した第2電極23の位置が、ユーザーが触れた位置であると特定できる。上述の構成を有する入力部材2では、抵抗膜式のタッチパネルと異なり、温度等の環境が変化しても、触れた位置に応じた入力を行うことができる。
【0024】
また、上述の入力部材2が有する操作板10は、平滑な操作面を有する部材であるため、ユーザーは、指を操作板10に触れたままで長手方向にスライドできる。ユーザーが、スライド操作を行った場合には、所定時間以内に隣接する第2電極23の位置に触れることになる。そのため、所定時間内の各第2電極23における電気抵抗値、電流値あるいは電圧値等の変化により、スライド操作が行われた旨およびスライド方向を特定できる。
【0025】
(制御部の概略構成)
図6は、図1に示すエアーコンディショナー1の例示的な構成を示すブロック図である。
【0026】
制御部30は、入力部材2における操作の種類(スライド操作またはタッチ操作)を特定し、かつ、指が触れた位置を特定する機能を有する。制御部30は、たとえば、検出部31、中央処理装置(CPU)32、記憶部33およびインターフェイス(I/F)34を備える。制御部30は、入力部材2の基板20上あるいは基板20以外に設けられてもよい。
【0027】
検出部31は、第1電極22と第2電極23との間に電圧を印加し(電圧を印加するための電源は不図示)、導電性弾性体11が第2電極23と第1電極22とを電気的に接続する際に、その接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を計測値として計測する計測手段として機能する。また、検出部31は、検出した電圧値等をCPU32に送信する。
【0028】
CPU32は、検出部31により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくともユーザーが触れた位置を特定する位置特定手段として機能する。計測値に連動する数値とは、計測値に基づいて決定される数値であって、たとえば、計測値に対して決定されるポイントや、計測値から算出される数値である。なお、位置特定手段は、操作位置のみならず、押圧の大きさも特定するようにしても良い。また、CPU32は、検出部31により計測された現在の計測値を、その計測値が計測された時刻に関連付けて記憶部33に格納する。さらに、CPU32は、検出部31が計測した現在の計測値と、記憶部33に記憶された過去の計測値および過去の計測値が計測された時刻と、を参照し、スライド操作が行われたのか、あるいは、タッチ操作が行われたのかを特定する操作種類特定手段としても機能する。
【0029】
記憶部33は、制御部30の制御用プログラム等を格納する。さらに、記憶部33は、導電性弾性体11が電極群21と接触した際の、第2電極23と第1電極22との間の計測値あるいは計測値に応じた数値、およびその計測値を取得した時刻を、それぞれの第2電極23毎に記述したテーブル若しくは数式を格納できる。記憶部33は、たとえば、ROM、RAM、VRAM、EEPROM等から適宜構成される。
【0030】
インターフェイス34は、制御部30の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。CPU32は、インターフェイス34を介して入力部材2を介して入力された命令を各部に出力する。ここで、「制御部30の外部」には、「エアーコンディショナー1の外部」も含まれる。
【0031】
次に、入力部材2からの入力に基づく制御部30の処理の流れについて説明する。
【0032】
(制御部の処理の流れ)
図7、入力部材2が操作された際の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0033】
検出部31は、一定時間毎に第1電極22と各第2電極23との間の電圧値を計測値として計測する(ステップS101)。たとえば、ユーザーが操作板10に触れた場合には、ユーザーが触れた位置に近い各第2電極23と第1電極22とが、導電性弾性体11を介して電気的に導通し、他の電極群21と比較して最も低い電圧値を示す(ただし、その電圧値は、ゼロではない。)。検出部31は、0.25秒毎に電圧値を測定し、測定された電圧値等に関する情報をCPU32に送信する。
【0034】
次に、CPU32は、検出部31から受信した電圧値を検出時刻と関連づけて記憶部33に記憶する(ステップS102)。たとえば、図8は、記憶部33に記憶されているテーブルの一例である。CPU32は、記憶部33に図8に示すようなテーブルに検出時刻と電圧値とを記憶する。
【0035】
次にCPU32は、記憶部33に格納された過去の電圧値を参照し、所定の時間内に、隣接した位置で最も低い電圧値が検出されたか否かを判定する(ステップS103)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極23bで検出された場合に、その0.25秒前の測定で、第2電極23aあるいは第2電極23cのいずれかにおいて、最も低い電圧値が検出されたか否かを判定する。
【0036】
所定の時間内に隣接した位置で最も低い電圧値が検出された場合には(ステップS103においてYES)、CPU32は、スライド操作が行われた旨を認識する(ステップS104)。次に、CPU32は、スライド方向を特定する(ステップS105)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極23bで検出され、その0.25秒前の測定においては、第2電極23aで最も低い電圧値が検出された場合、制御部30は、図2の紙面右方向へ指をスライドしたと認識できる。ステップS105の後には、CPU32は、インターフェイス34を介して右方向へのスライド操作がされた旨を外部へ出力する(ステップS106)。この結果、エアーコンディショナー1は、設定温度を1℃上昇させる。ただし、温度を1℃以上あるいは1℃未満上昇させるようにしてもよい。
【0037】
一方、ステップS103において、所定の時間内に隣接した位置で最も低い電圧値が検出されなかった場合には(NO)、CPU32は、タッチ操作が行われた旨を認識する(ステップS107)。そして、CPU32は、最も低い電圧値が検出された第2電極23の位置、すなわち、どの温度が選択されたかを特定する(ステップS108)。そして、タッチ操作された旨およびステップS108で特定した位置を外部へ出力する(ステップS109)。たとえば、最も低い電圧値が第2電極23bで検出され、その0.25秒前の測定では、第2電極23eで最も低い電圧値が検出された場合には、CPU32は、第2電極23bの位置をタッチしたと認識し、当該位置の情報を出力できる。また、最も低い電圧値が第2電極23bで検出され、その0.25秒前の測定では、どの第2電極23でも電圧値が低下しなかった場合にも、CPU32は、第2電極23bの位置をタッチしたと認識し、当該位置の情報を出力できる。この結果、エアーコンディショナー1は、当該位置にて予め特定された温度に設定する。
【0038】
なお、CPU32は、ステップS108において最も電圧値が低い第2電極23の位置を特定するものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、CPU32が、2箇所の第2電極で電圧値が低下したことを確認した場合には、2箇所の第2電極23の中間が押圧されたと認識しても良い。かかる場合には、触れた位置をより正確に認識することができる。
【0039】
なお、2以上の導電性弾性体11が押し下げられた場合には、最も低い電圧値を検出した第2電極23を特定するのではなく、検出された電圧値の比により、第2電極23a,23b,23c,23d,23eの位置以外の部分に触れたと認識してもよい。たとえば、第2電極23aにて1Vの電圧値が検出され、第2電極23bにて2Vの電圧値が検出された場合には、第2電極23aと第2電極23bとの間を、2:1で分割する位置にユーザーが触れたと判断してもよい。
【0040】
上述のようなエアーコンディショナー1とすることで、入力部材2によりスライド操作およびタッチ操作の両方が可能となる。たとえば、エアーコンディショナー1において温度を操作において、タッチ操作が行われたときには、制御部30は、触れた位置に対応する温度にエアーコンディショナー1を設定するように制御し、スライド操作が行われたときには、そのスライド方向に応じて温度を上下に微調整することができる。
【0041】
以上、本発明の入力部材2およびそれを用いた電子機器としてのエアーコンディショナー1の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0042】
たとえば、上述の実施の形態では、電子機器として自動車に設けられるエアーコンディショナー1を例に説明したが、エアーコンディショナー以外の機器、例えば、携帯電話、モバイルコンピュータ、音楽再生用端末、携帯テレビ、車載用オーディオ機器あるいは上記各機器の操作用リモートコントローラ等であっても良い。たとえば、車載用オーディオ機器に入力部材2を設けた場合には、ユーザーは、スライド操作で楽曲検索のための画面スクロールを行い、タッチ操作で所望の楽曲を検索できるようにしてもよい。また、入力部材2は、エアーコンディショナー1の調節部材以外の入力用装置、たとえば、風量、音量あるいは光量等の調節部材であってもよい。しかし、入力部材2を車載用の電子機器に用いる場合には、入力部材2の操作面から突出するレバーやキー等の突出物がない。そのため、自動車事故等の際に、突出物とぶつかって怪我等をすることが少なくなり好ましい。
【0043】
また、上述の実施の形態において、導電性弾性体11は、直線上に5つ設けるものとしたが、4個以下の導電性弾性体11を設けてもよいし、6個以上の導電性弾性体11を設けてもよい。また、各導電性弾性体11は、等間隔で配置されなくてもよい。さらに、複数の導電性弾性体11が、操作板10側で連接されていてもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、入力部材2は、長帯状の操作面を有するが、このような形態に限らない。たとえば、操作板10を長帯状の他、楕円状、湾曲した帯状等あるいはその一部を用いたような形状としてもよい。図9は、本実施の形態の入力部材2の操作板10の変形例である。図9に示すように、入力部材2の操作板10aは、2つの長帯が交差したような形状(いわゆる、十字状)である。十字状の操作板10aを有する入力部材とした場合には、図9の紙面左右方向の他、紙面上下方向への入力も、本実施の形態で説明した方法と同様の方法にて特定できる。
【0045】
上述の実施の形態においては、操作板10は、略一定の厚さを有するシート状の部材として図示されている。しかし、操作板10の形態は、このような形態に限らない。図10は、上述の実施の形態の変形例に係る入力部材2aを図1のA−A線で切断した場合の断面図である。図10に示すように、入力部材2aが有する操作板10bは、断面で凸形状、すなわち、長手方向中央付近で最も厚く、長手方向両端付近で薄い部材であってもよい。厚さが変化するような操作板10bを用いた場合にも、入力部材2aは、厚さが一定の操作板10を用いた場合と同様の動作を行うことができる。
【0046】
上述の実施の形態においては、導電性弾性体11は、ゴム状弾性体から形成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、導電性を有する樹脂あるいは金属(比較的柔らかい方が好ましい)からなる成形体であっても良い。
【0047】
上述の実施の形態において、電極群21を一対の櫛歯形状の電極としとしたが、このような形態に限らない。電極群21を櫛歯形状の電極ではなく、円を略半分に分割した半円形状の電極あるいは円を略4分の1に分割した扇形状の電極を用いることもできる。しかし、櫛歯形状の電極を用いる場合には、操作板10を押圧する量が小さい場合にも、検知感度が優れている。なぜなら、櫛歯形状の電極である場合には、導電性弾性体11が容易に一対の電極両方に接触できるが、扇状等の電極の場合、一方の極にしか導電性弾性体11が触れない場合があるからである。
【0048】
上述の実施の形態において、検出部31は、0.25秒毎に電圧値を測定するものとしたが、このような形態に限らない。検出部31は、0.25秒未満あるいは0.25秒よりも長い時間毎に電圧値を測定してもよい。
【0049】
上述の実施の形態のステップS103では、隣接した第2電極23に0.25秒前に触れたか否かを判定したが、このような形態に限らない。所定時間内にある一定範囲内を触れたか否かを判定するような形態としてもよい。また、ステップS103を、所定時間内に3以上の電極群21にて電圧の変動が生じたか否かを判別するステップとし、生じた場合にスライド動作が行われたと判断する一方、生じていない場合にタッチ操作が行われたと判断するようにしてもよい。
【0050】
図8では、検出時刻に関連付けた電圧値を、各第2電極23毎に記憶したテーブルを例示しているが、このような形態に限らない。ある閾値よりも低い電圧値を検出した第2電極23のみをテーブルに記憶してもよい。あるいは、ステップS102でCPU32が電圧値に基づきユーザーが触れた位置を算出し、その算出した位置をテーブルに書き込むような形態としてもよい。また、検出時刻と測定値とを関連付けるのではなく、測定回数等と測定値とを関連付けても良い。
【0051】
また、上述の実施の形態において、CPU32は、ステップS104において、記憶部33に格納された過去の計測値と比較して、判断を行っている。しかし、このような形態ではなく、次に測定された計測値と比較することでスライド操作がなされたか、あるいはタッチ操作がなされたかを判断しても良い。
【0052】
また、上述の実施の形態では、一方方向へのスライド操作のみを例示したが、たとえば、中央に向かって両端からスライドするようなスライド操作、あるいは、中央から両端に向かってスライドするようなスライド操作を認識できるようにしてもよい。また、制御部30は、スライド操作のみあるいはタッチ操作のみを特定してもよい。さらに、制御部30は、スライド操作の方向を特定せずに、スライド操作である旨だけを特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、たとえば、各種電子機器の入力部材等に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 エアーコンディショナー(電子機器)
2 入力部材
10 操作板
11,11a,11b,11c,11d,11e 導電性弾性体
20 基板
21 電極群
22 第1電極(電極、第1電極)
23,23a,23b,23c,23d,23e 第2電極(電極、第2電極)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に列を為して配置される1または2以上の導電性弾性体を操作面の裏面側に備える操作板と、
上記導電性弾性体に対向する位置にそれぞれ設けられた複数の電極を非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有することを特徴とする入力部材。
【請求項2】
請求項1に記載の入力部材であって、
前記電極群は、櫛歯形状の1以上の第1電極と、1以上の第2電極とを互いにかみ合わせるように配置されることを特徴とする入力部材。
【請求項3】
所定方向に並ぶ1または2以上の導電性弾性体を操作面の裏面側に備える操作板と、
上記導電性弾性体に対向する位置にそれぞれ設けられた複数の電極を非接触状態で配置して成る電極群を備える基板と、を有する入力部材と、
当該入力部材の内若しくは外に設けられる制御部と、
を備える電子機器であって、
上記制御部は、
上記導電性弾性体により、上記電極群を構成する第1電極および上記第2電極を電気的に接続する際にその接続の度合いに応じて変化する電気抵抗値、電圧値若しくは電流値を所定の時間毎に計測する計測手段と、
上記計測手段により計測された計測値若しくはその計測値に連動する数値に基づいて、少なくとも操作位置を特定する位置特定手段と、
上記位置特定手段により特定された上記操作位置と計測時刻との関係により、上記操作板を連続的に触れたスライド動作あるいは上記操作板の所定部分に触れたタッチ動作のいずれか一方がなされたことを特定する操作種類特定手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−209906(P2011−209906A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75790(P2010−75790)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】